ケアネットでは、11月3~7日に開催されたAHA(米国心臓協会)学術集会での注目演題を速報した。その一つとして、ダビガトランの長期投与が脳梗塞リスクと出血リスクに及ぼす効果について報じたが、この発表に対する後藤 信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授)のコメントを得たため合わせて掲載する。
後藤 信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授)のコメント
RE-LY試験に限らず、薬剤の認可承認のための第三相試験において、新薬群の投与期間を延長して「長期投与」の経験を積むことはしばしば行なわれる。
もともとの出発点が「治験」であるため、投与期間を延長しても厳密な登録基準と除外基準を満たした特殊な症例の経験であることには変わりがない。
本邦ではダビガトランの認可承認後、既に数万例の症例に処方されていることを考えると、観察期間を延長して第三相試験時と血栓イベントリスク・出血イベントリスクともに試験期間内と差異がないことを示しても、臨床家にはインパクトは少ない。
RE-LY試験に登録された症例はCHADS
2スコア2前後の、リスクが高いとは言えない心房細動症例である。脳卒中の既往があるわけでもない。本人が困っていない状態において、予防介入として年間3%以上に重篤な出血イベントリスクを負わせることは果たして医療介入として妥当と言えるのか?筆者には疑問である。
本試験の結果をみて、この試験にて確認された年間3%以上の重篤な出血イベント発症リスクの説明を受けても、服用したい患者がいるか否かも筆者には疑問である。