サイト内検索|page:1554

検索結果 合計:33593件 表示位置:31061 - 31080

31061.

ω-3脂肪酸、心房細動再発の減少効果確認できず

発作性・持続性心房細動既往歴のある患者に対し、オメガ(ω)-3脂肪酸を24週間投与しても、6ヵ月間の心房細動の再発リスクは減少しないことが示された。米国・ペンシルベニアのLankenau Institute for Medical Research循環器疾患部門のPeter R. Kowey氏らが、663人を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年12月1日号(オンライン版11月15日号)で発表した。これまでに示唆されている、ω-3脂肪酸の心房細動に対する治療効果と安全性に関するデータは、小規模試験からの発表だったという。症候性心房細動663人を2群に分け、6ヵ月間追跡Kowey氏らは、2006年11月~2009年7月、症候性心房細動の患者663人について試験を行った。被験者の平均年齢は60.5歳、56%が男性、542人が発作性心房細動、121人が持続性心房細動だった。被験者を無作為に2群に分け、一方には、ω-3脂肪酸(当初7日間は8g/日、その後24週間までは4g/日)を投与した。もう一方の群には、プラセボを投与した。主要エンドポイントは発作性心房細動の症候性再発であり、副次エンドポイントは持続性心房細動の症候性再発と、発作性・持続性両グループの症候性再発だった。発作性・持続性ともに心房細動再発率に両群で有意差なし結果、主要エンドポイントである、発作性心房細動群のうち症候性心房細動の再発または心房粗動がみられたのは、プラセボ群269人中129人(48%)に対し、ω-3群258人中135人(52%)であり、両群に有意差は認められなかった(ハザード比:1.15、95%信頼区間:0.90~1.46、p=0.26)。また副次エンドポイントでも、持続性心房細動群のうち症候性心房細動の再発がみられたのは、プラセボ群18人(33%)に対し、ω-3群32人(50%)と、両群に有意差は認められず(ハザード比:1.64、同:0.92~2.92、p=0.09)、発作性・持続性両群の症候性心房細動の再発も、ω-3群とプラセボ群で有意差は認められなかった(ハザード比:1.22、同:0.98~1.52、p=0.08)。有害作用のために服用を中止したのは、プラセボ群の5%に対しω-3群の4%で、いずれも低く、また両者に差はなかった。4週と24週時点で測定した、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の血中濃度は、ω-3群の方がプラセボ群より有意に高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

31062.

低リスク前立腺がん患者には積極的経過観察が妥当、選択は個々人の意思で

65歳で前立腺がんの診断を受けた仮定的コホートで、選択した治療の違いによるQOL調整後の期待余命(Quality-adjusted life expectancy ;QALE)について検討した意思決定解析の結果、積極的経過観察を選択した患者群が、他の放射線治療や手術などを選択した患者群に比べアウトカムは良好で、積極的経過観察が妥当な治療戦略であることが示された。米国ハーバード大学医学部ダナファーバーがん研究所のJulia H. Hayes氏らの報告によるもので、「治療か積極的経過観察かの選択は個々人が中心的に担うもの」と結論している。JAMA誌2010年12月1日号掲載より。仮想患者のPSA値は10ng/mL未満、病期分類T2a以下、グリーソン・スコア6以下本研究の背景には、米国では、2009年には前立腺がん患者が19万2,000人に上り、そのうち低リスク患者が70%を占め、90%以上が初期治療として手術や放射線治療を受けるものの、その大半が一つ以上の副作用を有するとの報告を踏まえ、「PSAスクリーニングを受けた人の最大60%で前立腺がんが診断される時代に、治療を義務づけることはないであろう」という著者らの提起がある。しかし、低リスク前立腺がんに対する積極的経過観察と、放射線治療や外科治療について、その長期アウトカムや生活の質(QOL)に与える影響を分析した試験はほとんどなかった。研究グループは、65歳で初めて診断を受けた、臨床的限局性の低リスク前立腺がんの仮想コホートについて、過去の研究結果に基づくシミュレーション・モデルを作り、意思決定解析を行った。仮想患者のPSA値は10ng/mL未満、病期分類T2a以下、グリーソン・スコア6以下の患者とされた。患者の選択肢は、近接照射療法、強度変調放射線治療(IMRT)、前立腺全摘除術、または積極的経過観察だった。積極的経過観察では、定期的な直腸内診、PSA値検査と、生検(診断の1年後、それ以降は3年ごと)を行い、グリーソン・スコアが7以上や、その他疾患の進行が認められた場合や、患者の選択意思が示された場合に処置が行われた。主要評価項目は、それぞれの選択肢におけるQALEだった。QALEは積極的経過観察が最高、次いで近接照射療法、最低は前立腺全摘除術結果、QALEが最高だったのは積極的経過観察群で、質調整後の生存年数は11.07 QALYだった。次いで、近接照射療法の10.57 QALY、IMRTの10.51 QALY、前立腺全摘除術の10.23 QALYだった。前立腺がんでの死亡の相対リスクは、診断時にいずれかの治療をした場合が、積極的経過観察群と比べ0.6倍と低かった。それにもかかわらず、QALEは積極的経過観察群が最高のままだった。QALE増加、最適治療は、個々人が積極的経過観察かいずれかの治療を行うかによっていることが認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

31063.

不適切な気管支内挿管を検出する最適な方法は?

気管挿管は臨床家にとってルーチンの手技だが、経験によって手技のレベルは異なり、気管内チューブの置き違いから重大な合併症が起きる可能性がある。これまで、チューブの位置を評価する方法として、両胸への聴診法が推奨されてきたが、オーストリア・ウィーン医科大学総合病院のChristian Sitzwohl氏らのグループは、不適切な気管支内挿管を検出する最も感度と特異度が高い臨床的手法はどのようなものかを判定する、前向き無作為化盲検試験を行った。BMJ誌2010年11月27日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載より。4つの臨床テストについて検証試験は、三次救急を行っている大学病院の麻酔部門で、19~75歳の婦人科または泌尿器科の待機的手術予定の患者(米国麻酔学会分類IまたはII)160例を対象とした。患者は無作為に、最終的に8つの試験群に割り付けられた。まず、気管内チューブを内視鏡的に気管分岐部より2.5~4.0cm上に置く群と、右主気管支に置く群に割り付けられ、各群は4つの異なる、気管内チューブ位置を判定する臨床テスト群に割り付けられた。4つの臨床テストは、(1)胸部両側への聴診(聴診法)、(2)胸部対称運動の観察と触診(観察法)、(3)チューブに印刷されたcmスケールで位置を推定(深度法)、(4)3つを組み合わせて行う(総合法)だった。各手技およびテストは、1年目のレジデントと経験豊富な麻酔医により行われ、160例の患者は、計320回の観察を受けた。主要評価項目は、気管内チューブの位置の正誤とされた。チューブ挿入深度での評価が最適だが、完全ではないこの臨床テストで、1年目のレジデントは、聴診法では55%の症例で判定を誤り、経験豊富な麻酔医より有意に見落としが多かった(オッズ比:10.0、95%信頼区間:1.4~434)。不適切な気管支内挿管の検出感度は、深度法88%(95%信頼区間:75%~100%)、総合法100%であり、聴診法65%(同:49%~81%)、観察法43%(同:25%~60%)より有意に高かった(P

31064.

文化の異なる国家間にみる飲酒パターンと虚血性心疾患リスクの違い

生活習慣が対照的な北アイルランドとフランス2ヵ国の50代男性の、飲酒パターンが虚血性心疾患に及ぼす影響を調査した結果、毎日決まって中等量(平均アルコール消費量32.8g、参考値:ビール中瓶20g http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html)の飲酒を習慣とするフランス男性の虚血性心疾患リスクは低く、一方、1日の平均アルコール消費量、飲酒者割合ともフランスより低かったものの不節制飲酒(毎週1日以上50g以上消費)が多くみられた北アイルランド・ベルファストに住む男性の同リスクは高いことが明らかにされた。フランス・トゥールーズ医科大学校疫学部門/INSERM U558のJean-Bernard Ruidavets氏らの報告による。BMJ誌2010年11月27日号(オンライン版2010年11月23日号)掲載より。生活習慣、虚血性心疾患発病率が対照的と知られるフランスと北アイルランドで評価飲酒パターンと虚血性心疾患との関連については、相関、逆相関ともに報告があり、またワイン、ビール、蒸留酒といった酒類別に言及したものもあるが、生活習慣や酒癖が対照的と知られる国と国との比較を検討したものはほとんどないという。そこでRuidavets氏らは、虚血性心疾患の発病率が対照的である両国(フランスは低く、北アイルランドは高い)における関連について、「PRIME(Prospective Epidemiological Study of Myocardial Infarction)」試験のコホートデータを解析し評価した。評価は、週のアルコール消費、不節制飲酒(週1日以上50g以上アルコール消費)の発生率、定期飲酒(毎週1日以上、1回のアルコール消費は50g未満)の発生率、アルコール摂取量、飲酒頻度、酒の種類について包括的に行われた。コホートは10年追跡され、その間に起きたすべての冠動脈イベントが前向きに記録され、Cox比例ハザード回帰分析法により、基線における被験者の特徴と、心筋梗塞または冠動脈死(hard冠動脈イベントと規定)との関連、および狭心症イベントとの関連が評価された。hard冠動脈イベント発生、1,000人年あたり北アイルランド5.63、フランス2.78解析されたコホートは、1991~1994年に、北アイルランド(ベルファスト)の1施設から2,405例、フランス(リール、ストラスブール、トゥールーズ)の3施設から7,373例、いずれも50~59歳の虚血性心疾患を有していない被験者、計9,778例だった。1週間に1日以上飲酒をする人は、ベルファストでは1,456例(60.5%)、フランスは6,679例(90.6%)だった。 そのうち、毎日飲むと回答した人は、ベルファストでは12%(173/1,456例)だったが、フランスでは75%(5,008/6,679例)だった。平均アルコール消費量は、ベルファストは22.1g/日、フランスは32.8g/日だった。不節制飲酒者の割合は、ベルファスト9.4%(227/2,405例)に対して、フランス0.5%(33/7,373例)だった。追跡期間10年の間に、虚血性心疾患イベントはコホート全体(9,778例)で683例(7.0%)が記録された。内訳は、hard冠動脈イベント322例(3.3%)、狭心症イベント361例(3.7%)だった。hard冠動脈イベントの年間発生率は、1,000人年あたり、ベルファストでは5.63(95%信頼区間:4.69~6.69)、フランスでは2.78(同:2.41~3.20)だった。多変量(代表的な心血管リスク因子、登録施設)調整後の、定期飲酒者との比較によるhard冠動脈イベントのハザード比は、不節制飲酒者1.97(95%信頼区間:1.21~3.22)、非飲酒者2.03(同:1.41~2.94)、元飲酒者1.57(同:1.11~2.21)だった。ベルファストとフランスとの比較によるhard冠動脈イベントのハザード比は、補正前は1.76(同:1.37~2.67)、飲酒パターンとワイン飲酒で補正後は1.09(同:0.79~1.50)だった。なおワイン飲酒者だけの解析では両国とも、hard冠動脈イベントリスクは低かった。(朝田哲明:医療ライター)

31065.

教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

1981年滋賀医科大学卒業後、千葉大学医学部第二内科入局。アイルランド・トリニティ大学留学。2003年東邦大学医学部付属佐倉病院内科助教授、2004年同院消化器センター長、2006年より現職。日本消化器内視鏡学会認定指導医、日本消化器病学会認定専門医。難病「潰瘍性大腸炎」「クローン病」が日本で急増中「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」は、日本ではまだ歴史が浅い病気で、元々は欧米諸国の白色人種に多いことで知られています。特に北欧・西欧・北米地域で広がりをみせており、クローン病は近代化された地域の人たちに多く発症している病気であると認知されています。しかし、今、日本でこれら両疾患が急増しています。当院の診療科では約800人以上の患者さんを診療しており、外来には多い時で1日約100人位の患者さんが来院します。患者さんの絶対数は欧米諸国に比べまだまだ少ないのですが、増加率が他の国に比べ高いのが特徴です。私は日本人を取り巻く食生活、ライフスタイル、衛生環境などの変化が影響していると考えています。我々が最近注目している発症要因の一つに、腸内細菌のバランスがあります。まだ研究している段階ですが、腸というのは実は複雑な臓器で腸内の各種要因、特に細菌叢のバランスが重要で、それらは大脳へも強く影響している可能性もあることがわかってきました。最近話題にされるメタボリックシンドロームですが、その病因にも腸が関係している可能性があり、腸の働きがクローズアップされています。私たち人間の体は腸の働きによって健康を保っているとも考えられているのです。よって、我々は「潰瘍性大腸炎」「クローン病」と、腸内細菌叢のバランスとの因果関係に注目しているのです。難病相談、講演活動の日々が臨床開発のヒントに十数年前まで、千葉県には「潰瘍性大腸炎」「クローン病」を専門に診察する医師がいなかったこともあり、現在では急増する患者さんに対応が追いつかない医療機関が多くあります。また、最近では治療方法の選択肢が多くなったため、治療の質を上げてもらうために、それぞれの治療成績、治療戦略、対処方法などについて講演して回っている状況です。また、講演活動とともに地域での難病相談にも20年近く携わっています。県内全域を一人で回っていたこともありました。講演・難病相談とともに年々回数が増加していますが、今では後輩の専門医が参加してくれるようになり、手分けして対応できるようになりました。悩み相談に応じることにより、多くのことを学ぶことができました。病院の外来では、多い時で1日100人の患者さんを診察しなければならないため、残念ながら一人の患者さんに多くの時間を割くことができません。一方、難病相談では一人ひとりに時間を割けるため、様々なことを知ることができます。その中から研究開発のヒントを得たことは数多く、まさに臨床は研究の基礎でもありますね。患者さんには情報を開示して治療の道を迷わせない「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」はとても手ごわく、またきめ細かい診断が必要です。そのため私は内視鏡を用いた検査から診断まで、一貫して自分で行うようにしています。その他はチームで治療にあたることになりますが、良質のチーム医療を行うためにはスタッフ同士の意思統一が必要不可欠です。また、最近ではインターネット上に疾患の情報が氾濫しているため、疾患や治療方法に対する誤った認識をもたらしているようです。そのため、私は医師をはじめ、看護師、薬剤師、栄養士と患者さんたちが一堂に会する会合をもち、栄養・薬剤・治療などに関する正確な情報開示を行い、当院での治療方針を説明し共有してもらうようにしています。スタッフの意思を統一し、また患者さんの気持ちをきちんと落ち着かせるためにも、このような会合を大切にしています。海外研究留学でクローン病患者と再度出会ったことで私が入局した頃は、海外留学をして欧米から学ぶというスタイルがほとんどでした。私はEPAの抗炎症効果に関する共同研究をすることになり、アイルランドに研究留学しました。研修医として初めての受け持ち患者さんがクローン病だったのですが、不思議な御縁で、留学でクローン病とまた出会うことになりました。留学するまで、クローン病はまだまだ日本では珍しい病気でしたのであまり意識したことはありませんでした。また、それまでの私は、当時の先端医療をリードしていた内視鏡が好きで、特にがん領域での内視鏡治療に携わっていきたいとの強い思いがありました。しかし、この留学で2年間内視鏡から離れたこと、多くのクローン病の患者さんたちに出会い、おそらくこれから日本でも増加する病気の一つになるだろうと思うようになったことから、「潰瘍性大腸炎」「クローン病」の臨床研究をしていきたいと考えるようになりました。そして帰国後は、困っている難病患者さんを前にして留学での経験を生かして貢献したいという気持ちが日に日に大きくなり、今に至っています。今の若い人たちは海外留学を希望する人が少ないと聞いていますが、自分の専門分野がどこで一番臨床研究されているかと考えると、やはり留学は重要な位置を占めるのではないでしょうか。そういった意味でも後輩たちに留学を勧めています。海外の生活は苦労が多いのですが、その苦労が人生のプラスにもなりその後の医師としてのキャリアに大いに役立つと思います。若い人にはもっと外へ出かけ、知識や技術を磨くきっかけにして欲しいと考えています。グローバルに活躍できる医療現場がここにはある今現在、当院では世界同時進行で、新薬の臨床製薬治験を行っています。病院のある佐倉市は都市部からは離れていますが、この地で欧米諸国と肩を並べられる、最先端の診療体制を構築することができたと自負しております。私の場合、身近にこの分野の先輩・指導者はいませんでした。そのため積極的に外へ出かけていき専門医の先生たちとコミュニケーションを取る、海外に出向き最新治療の情報を入手するなどして勉強することが多かったです。特に難病の専門分野を極めるにはこれが一番大事だと私は思います。医師としてこの分野で頑張るという強い思い、志は高く持ち、視線は患者さんと同じでいるというのが私のいつも信条としていることです。患者さんと同じ目線で病気を診ていると、わからなかったこともみえてくるものです。医師は自分の思い込みだけで診療をしていては駄目ですね。困っている患者さんは大勢います。私が若い時は欧米からただ学ぶだけでしたが、今の日本は他国をリードすることができると思います。目の前で困っている患者さんのためにも、今まで以上に世界に先駆けた臨床研究を行って欲しいと思うのです。最近、診療など上手くこなせる若い医師は多いのですが、一歩踏み出していける人が少ないと感じています。難病は先がみえず、特にこの病気は再発を繰り返す特徴があり、患者さんにとっては一生を通じて苦痛が伴いますから、患者さんの情報をしっかり把握できることが望ましいでしょうね。私はチームスタッフや若い医師に、「私たちの治療は世界で肩を並べられるものである。自信を持つよう」と常々言い聞かせています。佐倉から世界へ最新治療・治験の発信を行っており、これからもここ佐倉から発信していくつもりです。これからの医療を創っていく若い医師たちには、どんな場所でも、どんな環境でも、自信を持って世界に通じる医療創りに挑戦していただきたいと思います。質問と回答を公開中!

31066.

教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓・膵臓に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸の発生は、慢性的炎症が持続する結果として化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス・細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

31067.

DSソフトで症候診断力を高めよう!

メディカ出版では、医療従事者向け任天堂DSソフト『症候診断トレーニングDS』を12月中旬に発売する予定だ。現在予約受付中で、制作委員会にはケアネットでおなじみの医師、中島 伸氏(独立行政法人 国立病院機構大阪医療センター)が企画発案し、池田 正行氏(長崎大学 医歯薬学総合研究科)、金井 伸行氏(医療法人社団 淀さんせん会 金井病院)、前野 哲博氏(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)も参画している。同ソフトは、医師の症候診断や看護師のアセスメントに必須な知識や技術を、ゲーム感覚で楽しく学べるもの。5つのコンテンツが用意され、設問数は800以上、症候診断の基礎的な知識を4択問題で勉強できる「症候診断トレーニング」、代表的な48症候に絞って、各設問を解きながら重要ポイントを講義形式で学べる「ドクターPの症候診断レクチャー」、ドクターやナース向けの臨床での実際の場面に沿って、対応力を磨ける連続問題の「実践! シナリオ問題」、同ソフト内の関連用語について、詳細解説が読める「お助け用語集」、症候診断において、8つの可能性から3つの正解を絞り込んでいくミニゲーム「3チョイスゲーム」と、充実した内容となっている。詳細・予約はこちらhttp://www.medica.co.jp/ds/subscribe/ds4/

31068.

携帯電話のショートメールサービスのサポートで患者のアウトカムが改善

ケニアのHIV感染患者を対象とした無作為化試験で、患者に携帯電話のショートメールサービス(SMS)を使ったサポート介入を行ったところ、非介入群と比べ抗レトロウイルス治療(ART)のアドヒアランスおよびウイルス抑制の割合が改善されたことが報告された。ケニア・ナイロビ大学医療微生物学部門のRichard T Lester氏らが実施報告したもので、「医療資源が不十分な環境で、携帯電話は患者のアウトカムを改善する効果的なツールとなる可能性がある」と結論している。Lancet誌2010年11月27日(オンライン版2010年11月9日号)掲載より。週1回メッセージを送信、12ヵ月間の介入効果を検証医療サービス提供を改善する手段として携帯電話が提案されているが、医療資源が不十分な環境で、携帯電話が患者のアウトカムにもたらす効果に関するデータは限られているという。そこでLester氏らはケニアで、医療従事者とARTを開始する患者との携帯電話を介したコミュニケーションが、服薬アドヒアランスおよび血漿HIV-1 RNA量を改善するかを目的とする、多施設共同無作為化試験「WelTel Kenya1」を行った。試験は2007年5月~2008年10月の間に、ケニアの3つのクリニックで行われ、538例の患者が、SMS介入群(273例)か通常ケア群(265例)に無作為化された。SMS介入群の患者には、週1回、クリニックのナースからメッセージが送信され、患者は48時間以内に返信をすることになっていた。主要評価項目は、追跡12ヵ月時点での、自己申告によるARTアドヒアランス(追跡6ヵ月と12ヵ月時点で尋ねた過去30日間の処方薬の服薬割合が95%超)、血漿HIV-1 RNA量の抑制(<400コピー/mL)とした。アドヒアランス、ウイルス抑制ともに改善ARTアドヒアランスは、SMS介入群では168/273例、通常ケア群では132/265例が報告され、非アドヒアランスの相対リスクは0.81(95%信頼区間:0.69~0.94、p=0.006)だった。ウイルス抑制は、SMS介入群では156/273例、通常ケア群では128/265例が報告され、ウイルス学的な治療失敗の相対リスクは0.84(同:0.71~0.99、p=0.04)だった。95%超のアドヒアランス達成に要する治療数(NNT)は9例(95%信頼区間:5.0~29.5)であり、ウイルス抑制についての同NNTは11例(同:5.8~227.3)だった。

31069.

今後の対策のため2009新型インフルの小児死亡例を解析:英国保健省

英国保健省のNabihah Sachedina氏らは、今後の新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)対策のため、昨シーズンの小児死亡例についての解析を行った。背景には、0~18歳の新型インフルの罹患に関してバラつきがみられたことがある。Lancet誌2010年11月27日号(オンライン版2010年10月27日号)掲載より。小児(0~17歳)の全死亡70例を解析解析は、2009年6月26日~2010年3月22日に英国で報告された新型インフルに関する小児(0~17歳)の全死亡70例(平均年齢7歳)について行われた。いずれもデイリーレポートシステムによって報告され、カルテとの照合が行われた症例であり、新型インフル感染のラボ報告もしくは死亡診断書がある症例だった。症例個々の病歴、症状、急性疾患の臨床経過はそれぞれの担当医から提供されており、新型インフルと推定された症例のデータは英国健康保護局(Health Protection Agency:HPA)から入手された。主要評価項目は、集団死亡率と致死率だった。死亡率は1歳未満児で最も高い結果、昨シーズンの小児死亡率は、100万あたり6例だった。死亡率は、1歳未満児で最も高く、100万あたり14例だった。死亡率は人種間で異なる傾向がみられ、英国白人小児の100万あたり4例(95%信頼区間:3~6)に比べ、バングラデシュ系小児(同47例、17~103)とパキスタン系小児(同36例、18~64)で高かった。死亡した小児のうち15例(21%)は、新型インフルに感染する前は健康児だった。一方で、45例(64%)は、慢性神経学的、胃腸系、呼吸器系など重度な疾患を有していた。なかでも、慢性神経学的疾患を有する子どもの年齢標準化死亡率が最も高く、100万あたり1,536例だった。また、入院中の死亡例は19例(27%)だった。これらは、退院後に死亡した例よりも、健康的で既存疾患もごく軽症であることが有意に認められた(p=0.0109)。なお、オセルタミビル(商品名:タミフル)を投与されていたのは全体で45例(64%)で、症状発症から48時間以内に投与を受けていたのは7例だった。これら解析結果を受け、Sachedina氏は、「ワクチン接種は、重症疾患および死亡リスクの高い小児に優先して行わなくてはならない。これら小児には、特定の既存疾患を有する子どもやいくつかの少数民族の子どもも対象に含まれる。また、入院前早期からのサポート的また治療的ケアも重要である」と報告をまとめている。

31070.

減量達成後は、タンパク質多め、GI指数低めの食事が体重減少を維持

減量達成後の体重減少維持には、タンパク質が多め、グリセミック指数(GI)は低めの食事が、長続きする食事療法であり体重減少維持に結びつくことが、ヨーロッパ8ヵ国で行われた無作為化試験「Diogenes(Diet, Obesity, and Genes)」の結果、明らかになった。スクリーニングを受けた平均年齢41歳、平均BMI値34の1,209例のうち、938例に対しまず8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入が行われ、基線体重より8%以上の体重減少に達した773例を、5つの食事療法群に無作為化し26週間にわたり比較検討した結果による。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。5つの食事療法群に無作為化し、いずれが長続きし体重減少を維持するかを検討本試験は、体重減少後のリバウンドおよび肥満関連リスクを抑制するために有効な食事療法を、タンパク質量およびGI値に着目して評価することを目的とした。評価された5つの食事療法群は、(1)低タンパク(総エネルギーの13%)・低GI食群、(2)低タンパク・高GI食群、(3)高タンパク(総エネルギーの25%)・低GI食群、(4)高タンパク・高GI食群、(5)対照群(各国食事療法ガイドラインに準じ中タンパクで、GI値は不問)であった。群間の摂取タンパク質量の高低差は12%を、GI値の高低差は15単位を目標とされた。食欲と体重管理能力を調べるため、総エネルギー量に制限は設けられなかったが、5群とも脂肪摂取は中等度(総エネルギーの25~30%)となるよう調整された。目標摂取量が達成できるよう、家族に対するレシピ提供、調理法や行動のアドバイスが行われ、参加国のうち2ヵ国では栄養量が調整済みの食品が無料で配布された。被験者は、体重減少維持試験当初6週間は隔週で、その後は1ヵ月に1回、食事カウンセリングを受けた。また維持試験介入前3日間、4週後、26週後に食事量を量り記録することが求められた。低タンパク・高GI食群のみリバウンドが有意に維持試験を完了したのは548例(71%)だった。試験脱落者が少なかったのは、高タンパク食群26.4%、低GI食群25.6%だった(低タンパク・高GI食群37.4%との比較で、それぞれP=0.02、P=0.01)。最初に行われた8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入時の体重減少は、平均11.0kgだった。その後の維持試験完了者548例について解析した結果、低タンパク・高GI食群のみ有意なリバウンドが認められた(1.67kg、95%信頼区間:0.48~2.87)。維持試験被験者(773例)のintention-to-treat解析の結果、体重再増加は、高タンパク食群の方が低タンパク食群よりも0.93kg(95%信頼区間:0.31~1.55)少なく、また、低GI食群の方が高GI食群よりも0.95kg(同:0.33~1.57)少なかった(いずれもP=0.003)。試験完了者の解析結果も同様だった。食事療法に関する有害事象は群間に有意な違いは認められなかった。なお栄養摂取量について、高タンパク食群の方が低タンパク食群と比べて、タンパク質量が5.4%多く、炭水化物量は7.1%低かった(両群間比較のP

31071.

妊娠第1期のPPI投与、先天異常のリスク増大と有意な関連認められず

妊娠第1期の妊婦にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与しても、産児の主要な先天異常リスクの増大とは有意な関連が認められなかったことが、大規模コホート試験の結果、明らかにされた。デンマークStatens Serum Institut疫学部門のBjorn Pasternak氏らがデンマークで1996~2008年に生まれた新生児約84万児を対象とした調査の結果による。妊娠中の胃食道逆流症状はよくみられるが、妊娠初期におけるPPI曝露と先天異常リスクに関するデータは限定的なものしかなかった。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。デンマークの新生児、約84万児のPPI使用と先天異常リスクとの関連を調査調査は、妊娠中のPPI曝露と先天異常リスクとの関連を評価するため、1996年1月~2008年9月にデンマークで生まれた全新生児84万968児を対象に行われた。PPI曝露、先天異常、潜在的交絡因子に関するデータは、各種の国内登録データベースから収集。主要な先天異常とは、出生後1年以内に診断されたものとし、EUROCAT(European surveillance of congenital anomalies)に即して分類された。本調査における主要解析は、受胎前4週~妊娠12週と、妊娠0~12週(妊娠第1期)における、PPI使用について評価が行われた。妊娠第1期、PPI曝露群と非曝露群の先天異常有病率のオッズ比は1.10調査対象期間中に生まれた84万968児のうち、主要な先天異常が認められたのは2万1,985例(2.6%)だった。受胎前4週~妊娠第1期にPPIに曝露されていたのは5,082児だった。そのうち主要な先天異常が認められたのは174例(3.4%)だった。一方、同期間中に母親がPPIに曝露されていなかった83万5,886児のうち、主要な先天異常が認められたのは2万1,811児(2.6%)であり、有病率の補正後オッズ比は1.23(95%信頼区間:1.05~1.44)だった。また、妊娠第1期に限ってみてみると、PPIに曝露されていたのは3,651児で、そのうち主要な先天異常が認められたのは118例(3.2%)であり、有病率の補正後オッズ比は1.10(95%信頼区間:0.91~1.34)だった。先天異常リスクは、妊娠第1期間中の服用期間別といった副次解析や、PPIの処方を受けていて服用の機会があったという母親に限定した副次解析でも、有意な増大は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

31072.

2型糖尿病患者、有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用でHbA1c値が低下

2型糖尿病患者が、有酸素運動とウエイトトレーニングのようなレジスタンストレーニングの両方の運動を行うことで、HbA1c値が有意に低下することが無作為化対照試験で明らかになった。どちらか一方のみの運動では、HbA1c値の有意な低下は認められなかったという。米国ルイジアナ州立大学ペニントン・バイオメディカルリサーチセンターのTimothy S. Church氏らが、2型糖尿病患者262人を追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月24日号で発表した。2型糖尿病患者に対する運動ガイドラインでは、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方を勧めているが、両運動を行うことによる効果を目的とする研究はこれまでほとんど行われていなかった。被験者を4群に分け、9ヵ月の運動プログラム実施研究グループは、2007年4月~2009年8月にかけて、2型糖尿病の患者262人について、9ヵ月の運動プログラムを行った。被験者を無作為に4群に分け、一群(73人)はレジスタンストレーニングのみを週3回、別の群(72人)は有酸素運動(12kcal/kg/週)のみを、また別の群(76人)は有酸素運動(10kcal/kg/週)とレジスタンストレーニングを週2回、さらに残りの一群(41人)は対照群としていずれの運動プログラムも行わなかった。レジスタンストレーニングの内容は、上体運動(ベンチプレス、シーテッド・ロウイング、ショルダープレス、ラットプルダウン)2セット、足部運動(レッグプレス、レッグエクステンション、スクワット)3セット、腹筋・背筋運動2セットで構成されていた。被験者の63.0%は女性で、平均年齢は55.8歳、HbA1c値は6.5%以上で平均値は7.7%だった。併用運動群、対照群に比べHbA1c値が0.34%ポイント低下、最大酸素消費量も改善その結果、対照群に比べ、併用運動群のみがHbA1c値の絶対平均値が有意に低下していた。対照群との差は-0.34ポイント(95%信頼区間:-0.64~-0.03、p=0.03)だった。レジスタンストレーニング群(-0.16ポイント、p=0.32)、有酸素運動群(-0.24ポイント、p=0.14)ではいずれも、HbA1c値の絶対平均値の有意な低下はみられなかった。対照群に比べ、最大酸素消費量の有意な改善が認められたのも併用運動群のみで、平均改善幅は1.0mL/kg/分(95%信頼区間:0.5~1.5、p<0.05)だった。腹囲はすべての運動群で対照群に比べ減少していた(レジスタンストレーニング群:-1.9cm、有酸素運動群:-1.5cm、併用運動群:-2.8cm)。また体脂肪量は、レジスタンストレーニング群で平均1.4kg、併用運動群で平均1.7kg、それぞれ対照群に比べ有意に減少した(ともにp

31073.

果糖を多く含む飲料摂取で女性の痛風リスクが増大、1日1杯で1.74倍に

加糖炭酸飲料やオレンジジュースのような果糖(フルクトース)を多く含む飲料の摂取量が多いと、女性の痛風発症リスクが増大することが報告された。米国ボストン医科大学リウマチ・臨床疫学部門のHyon K. Choi氏らが、大規模前向きコホート試験「Nurses’ Health Study」の中から、8万人弱の女性について調べた結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月24日号(オンライン版2010年11月10日号)で発表した。果糖を多く含む飲料摂取が尿酸値の増加につながることは知られていたが、痛風発症との関連についての前向き試験データはほとんどなかったという。1日2杯以上なら痛風リスクは約2.4倍に研究グループは、Nurses’ Health Studyの被験者のうち、痛風歴がなく、食事に関する必要データが得られた7万8,906人について、1984~2006年まで22年間追跡した。追跡期間中、痛風を発症したのは778人だった。加糖炭酸飲料の摂取量と痛風発症リスクについてみてみると、1日1杯(serving)摂取する人は、1ヵ月に1杯未満しか摂取しない人に比べ、痛風の発症に関する多変量相対リスクは1.74(95%信頼区間:1.19~2.55)に増加した。1日に2杯以上摂取する人はさらにリスクが増大し、同多変量相対リスクは2.39(同:1.34~4.26)だった(傾向p<0.001)。オレンジジュースとの関連についてみてみると、1日1杯摂取する人の同多変量相対リスクは、1ヵ月に1杯未満しか摂取しない人に比べ1.41(95%信頼区間:1.03~1.93)、1日2杯以上摂取する人は2.42(95%信頼区間:1.27~4.63)だった(傾向p=0.02)。ダイエット飲料は痛風リスクを増大せず痛風発症に関する絶対格差は、加糖炭酸飲料1日1杯摂取では36人/10万人年、1日2杯以上摂取では68人/10万人年だった。オレンジジュースでは、1日1杯摂取では14人/10万人年、1日2杯以上摂取では47人/10万人年だった。果糖摂取量が多くなるほど痛風発症に関する多変量相対リスクは増大し、摂取量上位五分位範囲の群は、下位五分位範囲の群に比べ、同リスクは1.62(同:1.20~2.19、傾向p=0.004)だった。なお、ダイエット飲料の摂取は、痛風発症リスクの増大には関与していなかった(傾向p=0.27)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

31074.

ピア・レビューワーのウェブ公開は、査読の質には影響しない

ピア・レビューワーに事前に、担当した査読報告(ピア・レビュー)内容がウェブ公開されることを知らせても、査読の質には影響しないことが、BMJのリサーチャーであるSusan van Rooyen氏らが行った無作為化試験で示された。開示性および透明性は、医学研究の中でも特に薬剤関連分野で高い関心を集める領域であり、秘密主義や説明責任の欠如が査読の大きな欠陥とされる。科学ジャーナルの多くはその点への対応に消極的だが、これまでの研究で、論文のレビューワーの身元が他のレビューワーや著者に知られても査読の質を損なわないことは示唆されているという。BMJ誌2010年11月20日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載の報告。ピア・レビューワーを公開する群としない群を比較研究グループは、原著論文のピア・レビューワーにその査読内容がBMJのウェブサイトに掲載されることを知らせることが、査読の質に影響を及ぼすか否かについて検討する無作為化対照比較試験を行った。試験には541人の著者、471人のピア・レビューワー、12人のエディターが参加。適格基準を満たした論文とともにレビューワーの査読報告がBMJのウェブサイトに掲載される群(介入群)あるいは著者のみが査読報告を知りうる群(対照群、BMJの通常の方法)に無作為化された。介入群のレビューワーは、査読を引き受けてからそれに取りかかる前に、査読報告がウェブサイトで公開されることを知らされた。主要評価項目は査読の質とし、2人のエディターと著者が別個に、妥当性が実証された方法を用いて5段階で評価した。エディター、著者にはどの論文が介入群かは知らされず、著者の場合は自分の論文の採否が決定する前に評価を行った。査読に要した時間およびレビューワーによる掲載の推薦傾向についても検討がされた。辞退率が55%に達し、執筆時間が25分延長したが、質には影響しない558編の論文が無作為割り付けされ、471編が解析の対象となった。試験への参加を打診された1,039人のレビューワーのうち568人(55%)が辞退した。2人のエディターは全471論文の評価を行い、著者は453論文について評価した。介入群と対照群で査読の質に有意な差は認めなかった(エディター:介入群3.40点、対照群3.36点、平均差:0.04、95%信頼区間:-0.09~0.17、著者:介入群3.16点、対照群3.10点、平均差:0.06、95%信頼区間:-0.09~0.20)。著者はエディターよりも評価点が低かったが、平均点の差は0.26であり、これは編集作業に影響を及ぼすとされる最低値である0.4を十分に下回っていた。介入群のレビューワーが査読に費やした時間は182分であり、対照群の157分に比べ有意に長かった(平均差:25分、95%信頼区間:3.0~47.0、p<0.05)。著者は、「ピア・レビューワーに、自分の査読報告がBMJのウェブサイトに公開される可能性を知らせても、査読の質には影響しなかった」と結論し、「査読のオンライン上への掲載は、ピア・レビューワーの辞退率を上昇させ、査読報告の執筆時間を延長させたが、査読の公開を支持する倫理的な議論はこれらの不利益を上回ると考えられる」と考察している。なお、本論文の審査、査読報告は完全に外部に委託され、BMJの編集スタッフは採否の決定には関わっていないという。(菅野守:医学ライター)

31075.

O157による急性胃腸炎が、高血圧、腎障害、心血管リスクの増大と関連

大腸菌O157:H7に起因する急性胃腸炎の経験者は、高血圧、腎障害、心血管疾患のリスクが増大していることが、カナダ・ロンドン健康科学センターのWilliam F Clark氏らが行ったコホート試験で示された。アメリカでは年間、O157:H7感染症による消化管疾患が5~12万例にみられ、そのうち2,000例以上が入院し、約60例が死亡している。O157:H7が産生するShiga toxinは腎臓や血管を傷害し、溶血性尿毒症症候群(HUS)をきたす可能性がある。O157:H7曝露によるHUSの長期的な影響は、子どもではよく知られているが、症状がみられ比較的曝露量の少ない成人では不明であったという。BMJ誌2010年11月20日号(オンライン版2010年11月17日号)掲載の報告。汚染水飲用後8年以内の高血圧、腎障害、心血管疾患のリスクを評価研究グループは、大腸菌O157:H7とカンピロバクターに汚染された水道水の飲用による胃腸炎から8年以内に、高血圧、腎障害、心血管疾患を発症するリスクの評価を目的にプロスペクティブなコホート試験を行った。2000年5月のWalkerton市(カナダ、オンタリオ州)の水道システムの汚染による胃腸炎の集団発生後、2002~2005年までにWalkerton Health Studyに登録された成人1,977人を解析の対象とした。調査、健康診断、臨床検査を通じて年ごとに情報を収集した。主要評価項目は、急性胃腸炎(3日以上持続する下痢性疾患、出血性の下痢、1日3回以上の軟便)、高血圧(≧140/90mmHg)、腎障害(微量アルブミン尿、推算糸球体濾過量<60mL/分/1.73m2)であった。自己申告後に医師によって診断された心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全)を副次評価項目とした。O157:N7胃腸炎経験者は定期的に血圧、腎機能をモニタリングすべき集団発生時の急性胃腸炎の発生率は54%(1,067/1,977人)であった。高血圧は35%(697/1,977人)で確認され、非急性胃腸炎例では32%(294/910人)であったのに対し、急性胃腸炎例では38%(403/1,067人)であった。腎障害の指標を少なくとも一つ満たした例は29%(572/1,977人)で、非急性胃腸炎例29%(266/910人)、急性胃腸炎例29%(306/1,067人)ともに同率であった。二つの指標のいずれをも満たした例は1.5%(30/1,977人)にすぎなかったが、非急性胃腸炎例の0.9%(8/910人)に対し、急性胃腸炎例では2.1%(22/1,067人)であった。心血管疾患は1.9%(33/1,749人)に認められた。急性胃腸炎の集団発生前に対する発生後の高血圧および心血管疾患の補正ハザード比は、それぞれ1.33(95%信頼区間:1.14~1.54)、2.13(同:1.03~4.43)と有意であった。腎障害の指標のいずれか一方を満たす例における急性胃腸炎発生前後の補正ハザード比は1.15(同:0.97~1.35)であったが、二つの指標の双方を満たす例では3.41(同:1.51~7.71)に上昇した。著者は、「大腸菌O157:H7とカンピロバクターに汚染された水道水の飲用による急性胃腸炎は、高血圧、腎障害、自己申告による心血管疾患のリスクの上昇と有意な相関を示した」と結論し、「大腸菌O157:H7に起因する胃腸炎を経験した患者に対しては、血圧と腎機能の定期的なモニタリングを行うべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

31076.

低用量アスピリン、大腸がんリスクを長期に抑制

低用量アスピリン(75~300mg/日)の5年以上の服用により、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に有意に低下することが、イギリス・オックスフォード大学臨床神経学のPeter M Rothwell氏らの検討で明らかとなった。高用量アスピリン(≧500mg/日)は大腸がんの発症率を長期的に抑制することが示されているが、出血リスクが高いため予防に用いるには問題がある。一方、低用量アスピリンの長期的な大腸がんの抑制効果は明確ではないという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。5つの無作為化試験を20年間追跡後、個々の患者データをプール解析研究グループは、大腸がんの発症率および死亡率に及ぼすアスピリンの用量、投与期間、腫瘍の部位について検討を行った。5つの無作為化試験を解析の対象とした。すなわち、血管イベントの一次予防においてアスピリンと対照を比較した2つの無作為化試験(Thrombosis Prevention Trial、British Doctors Aspirin Trial)と、二次予防において同様の比較を行った2つの試験(Swedish Aspirin Low Dose Trial、UK-TIA Aspirin Trial)、さらにアスピリンの2種類の用量を比較した1つの試験(Dutch TIA Aspirin Trial)である。これらの試験を20年間追跡し、試験終了後に個々の患者データのプール解析を行って、アスピリンが大腸がんのリスクに及ぼす影響を評価した。低用量5年投与により、20年間の発症・死亡リスクが有意に低下4つの対照比較試験(平均治療期間6.0年)では、追跡期間中央値18.3年における大腸がんの発症率は2.8%(391/14,033例)であった。部位別には、アスピリンは、20年間で結腸がんの発症リスクを24%有意に低減し(発症率のハザード比:0.76、95%信頼区間:0.60~0.96、p=0.02)、死亡リスクを35%有意に低減した(死亡率のハザード比:0.65、95%信頼区間:0.48~0.88、p=0.005)が、直腸がんについては有意な差を認めなかった(発症率のハザード比:0.90、95%信頼区間:0.63~1.30、p=0.58、死亡率のハザード比:0.80、95%信頼区間0.50~1.28、p=0.35)。結腸の部位別の解析では、アスピリンは近位結腸がんの発症リスクを55%有意に低減し(発症率のハザード比:0.45、95%信頼区間:0.28~0.74、p=0.001)、死亡リスクを66%有意に低減した(死亡率のハザード比:0.34、0.18~0.66、p=0.001)が、遠位結腸がんについては有意差はみられず(発症率のハザード比:1.10、95%信頼区間:0.73~1.64、p=0.66、死亡率のハザード比:1.21、95%信頼区間0.66~2.24、p=0.54)、両部位間のリスクの差は有意であった(発症率の差:p=0.04、死亡率の差:p=0.01)。ところが、投与期間が5年以上の場合に限ると、遠位結腸がん(発症率のハザード比:0.35、95%信頼区間:0.20~0.63、p<0.0001、死亡率のハザード比:0.24、95%信頼区間0.11~0.52、p<0.0001)だけでなく、近位結腸がんでもリスク低減効果が認められた(発症率のハザード比:0.58、95%信頼区間:0.36~0.92、p=0.02、死亡率のハザード比:0.47、95%信頼区間0.26~0.87、p=0.01)。アスピリンの用量を75mg/日以上に増量しても、それ以上のベネフィットの上昇はみられず、75~300mg/日の5年投与による20年間の致死的な大腸がんリスクの絶対減少率は1.76%(95%信頼区間:0.61~2.91、p=0.001)であった。一方、Dutch TIA trialの長期追跡の結果では、致死的な大腸がんのリスクは283mg/日に比べ30mg/日で高い傾向が認められた(オッズ比:2.02、95%信頼区間0.70~6.05、p=0.15)。著者は、「アスピリン75mg/日以上を5年以上服用すると、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に抑制された。ベネフィットが最も大きかったのは、S状結腸鏡や大腸内視鏡によるスクリーニングの予防効果が低い近位結腸の腫瘍であった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

31077.

腱症に対する注射療法のエビデンス

腱症に対するコルチコステロイド注射は、短期的には有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性があることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のBrooke K Coombes氏らが行った系統的なレビューで示された。現在、エビデンスに基づく腱症の治療ガイドラインはほとんどないという。腱症は、angiofibroblastic hyperplasia(細胞過形成、血管新生、蛋白合成増進、基質破壊などがみられる)を特徴とし、炎症性疾患ではないためコルチコステロイド注射には疑問の声もあり、ラウロマクロゴール(一般名:ポリドカノール)、多血小板血漿、ボツリヌス毒素、プロテイナーゼなどの注射療法の施行機会が増えているという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。腱周囲注射とプラセボ、非手術的介入の無作為化試験を解析研究グループは、腱症に対する注射療法の臨床効果および有害事象リスクの評価を目的に系統的なレビューを行った。8つのデータベースを、言語、発表の形態や時期を制限せずに検索し、腱症に対する腱周囲注射とプラセボあるいは非手術的介入の効果を比較した無作為化対照比較試験を抽出した。メタ解析にはランダム効果モデルを用い、相対リスクおよび標準化平均値差(standardised mean difference:SMD)を推算した。臨床効果に関する主要評価項目は、プロトコルで規定した疼痛スコアとし、短期(4週、範囲:0~12週)、中期(26週、同:13~26週)、長期(52週、同:52週以上)に分けて解析した。コルチコステロイド注射は短期的には有効同定された3,824試験のうち、適格基準を満たした41試験に登録された2,672例のデータが解析の対象となった。多くの質の高い無作為化試験では、コルチコステロイド注射の短期的な疼痛改善効果が他の介入法に比べ優れるとの一致した知見が示されたが、この効果は中期、長期には逆転した。たとえば、外側上顆痛の治療に関するプール解析では、コルチコステロイド注射は短期的には非介入群に比べ疼痛の抑制において大きな効果(SMD>0.8と定義)が認められた(SMD:1.44、95%信頼区間:1.17~1.71、p<0.0001)が、中期(同:-0.40、-0.67~-0.14、p<0.003)、長期(同:-0.31、-0.61~-0.01、p=0.05)には非介入群の方が効果は有意に大きかった。回旋腱板障害に対するコルチコステロイド注射の短期的な効果は、明確ではなかった。有害事象の報告のある試験においてコルチコステロイド注射を受けた991例のうち、重篤な有害事象(腱断裂)がみられたのは1例(0.1%)のみであった。外側上顆痛の治療のプラセボ対照比較試験では、ヒアルロン酸ナトリウム注入が短期(SMD:3.91、95%信頼区間:3.54~4.28、p<0.0001)、中期(同:2.89、2.58~3.20、p<0.0001)、長期(同:3.91、3.55~4.28、p<0.0001)に有効で、ボツリヌス毒素注入は短期(同:1.23、同:0.67~1.78、p<0.0001)に有効、prolotherapyは中期(同:2.62、1.36~3.88、p<0.0001)に有効であった。アキレス腱症の治療では、ラウロマクロゴール、アプロチニン、多血小板血漿はプラセボに比べ有効ではなかったのに対し、prolotherapyは伸張性運動よりも有効ではなかった。著者は、「外側上顆痛の治療では、短期的にはコルチコステロイド注射は有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性がある」と結論し、「しかし、腱症は部位によって効果にばらつきがみられるため、注射療法の効果を一般化すべきではない」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

31078.

HIV感染者への腎移植、課題は優れた免疫抑制薬の開発

欧米の末期腎不全(ESRD)患者の約1%はHIV感染者であるなど、HIV感染者にESRDが増加しており、そうした患者にも腎移植が期待されるようになっている。しかし、HIV感染者への腎移植や免疫抑制のアウトカムについては十分には明らかになっていない。そこで米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPeter G. Stock氏らの研究グループが、腎移植を希望するHIV感染者を対象に、安全性と有効性について多施設共同の前向き非無作為化試験を行った。NEJM誌2010年11月18日号掲載より。HIV感染レシピエント150例を中央値1.7年追跡試験は、抗レトロウイルス療法が安定しており、CD4+T細胞数が≧200個/mm3、血漿HIV1型(HIV-1)RNAが検出されないHIV感染者の腎移植希望者を対象とした。被験者は移植後、あらかじめ決められた試験プロトコルに従い、日和見感染に対する予防処置、生検処置、許容可能な範囲での免疫抑制療法、拒絶反応に対する管理、抗レトロウイルス療法などの移植後管理が行われ追跡された。被験者は2003年11月~2009年6月の間に、米国19施設で腎移植を受け生存した150例で、期間中央値1.7年間追跡された。生存率・生着率は高い移植後1年、3年時点の患者生存率(±SD)は、それぞれ94.6±2.0%、88.2±3.8%であり、平均生着率はそれぞれ90.4%、73.7%であった。これらの割合は、65歳以上の高齢腎移植レシピエントまたは全腎移植レシピエントに関する結果が集約されている全米データベース(SRTR)に報告されている結果の範囲内のものだった。多変量比例ハザード解析の結果、graft lossのリスク増加は、拒絶反応が起きて治療を受けた患者(ハザード比:2.8、95%信頼区間:1.2~6.6、P=0.02)、抗胸腺細胞グロブリン導入療法を受けた患者(同:2.5、1.1~5.6、P=0.03)で認められ、生体腎移植の場合は、保護効果が認められた(同:0.2、0.04~0.8、P=0.02)。拒絶反応は、予想以上に高率で観察された。推定値で1年時点31%(95%信頼区間:24~40)、3年時点41%(同:32~52)であった。HIV感染状態についてはコントロールが良好で、CD4+T細胞数は安定しており、HIV関連の合併症もほとんど認められなかった。Stock氏は、「慎重に選別したHIV感染集団における腎移植は、術後1年、3年時点の生存率および生着率ともに高く、HIV感染に関連する合併症の増加もみられなかった。しかし、拒絶反応が予想以上に高く重大な懸念事項であり、より優れた免疫抑制薬の開発が必要であることが示された」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

31079.

低用量のEPA-DHA摂取、心筋梗塞患者のイベント抑制に効果は認められず

心筋梗塞後で最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている患者に、海産物由来のn-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、また植物由来のα-リノレン酸(ALA)の低用量摂取を行っても、主要心血管イベント発生率が有意には低下しなかったことが報告された。オランダWageningen大学栄養学部門のDaan Kromhout氏らAlpha Omega試験グループが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照臨床試験による。これまで行われた前向きコホート試験や無作為化対照試験により、n-3系脂肪酸には心血管疾患に対して保護作用があるとのエビデンスが得られていた。NEJM誌2010年11月18日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載より。60~80歳の心筋梗塞後患者4,837例に40ヵ月間摂取してもらい追跡Alpha Omega試験は、オランダ国内32病院で、心筋梗塞後に最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている60~80歳の4,837例(男性78%)を対象に行われた。被験者は40ヵ月間、次の4つの試験用マーガリンのうちの一つを摂取するよう無作為化された。(1)EPA-DHA配合添加マーガリン(EPA-DHAを1日400mg付加摂取が目標)、(2)ALA添加マーガリン(ALAを1日2g付加摂取が目標)、(3)EPA-DHAとALAが添加されたマーガリン、(4)プラセボマーガリン。主要エンドポイントは、致死性・非致死性心血管イベントおよび心臓介入から成る主要心血管イベントの発生率であった。データはCox比例ハザードモデルを用いintention-to-treat解析され検討された。EPA-DHAまたALA摂取でも主要心血管イベント発生は低下せず被験者が摂取した1日のマーガリン量は平均18.8gだった。(1)~(3)のマーガリンを摂取した群においては、EPAは226mg、DHAは150mg、ALAは1.9gの摂取増加がみられた。追跡期間中、主要心血管イベントは671例(13.9%)で発生した。EPA-DHA摂取、またALA摂取のいずれによっても、同イベント発生率は低下しなかった。EPA-DHA摂取群のハザード比は1.01(95%信頼区間:0.87~1.17、P=0.93)、ALA摂取群は同0.91(0.78~1.05、P=0.20)であった。ただ、女性のみを対象としたサブグループ解析の結果では、ALA摂取群で主要心血管イベント発生率の低下が、プラセボまたはEPA-DHA摂取群と比べて、有意に近い関連で認められた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.51~1.03、P=0.07)。有害事象については、4群間で有意差は認められていない。(武藤まき:医療ライター)

31080.

心停止入院患者へのAED使用、生存率を改善せずむしろ15%低下

心停止を起こした入院患者に対する自動体外式除細動器(AED)の使用は、退院時生存率の改善にはつながらず、むしろ同生存率が約15%低下するという。米国Saint Luke’s Mid America Heart InstituteのPaul S. Chan氏らが、院内心停止をした約1万2,000人を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月17日号(オンライン版2010年11月15日号)で発表された。これまでに、院外心停止に対するAEDの使用が生存率を改善することは報告されていたが、院内心停止へのAED使用に関する研究は、単一医療機関におけるものに限られており、その効果が普遍性のあるものかは明らかになっていなかった。院内心停止の82%がショック非適応の波形研究グループは、2000年1月1日~2008年8月26日の間に、AEDを一般病棟に設置している米国内204ヵ所の病院で、院内心停止をした1万1,695人について追跡調査を行った。主要評価項目は、退院時生存率とAED使用との関連だった。被験者のうち、ショック非適応の波形(心静止と無脈性電気活動)患者は9,616人(82.2%)、ショック適応の波形(心室細動と無脈性心室頻拍)患者は2,079人(17.8%)だった。AEDを使用したのは、4,515人(38.6%)だった。ショック非適応の波形患者へのAED使用は、さらに退院時生存率を低下結果、退院時に生存していたのは、2,117人(18.1%)だった。被験者全体で、院内心停止後にAEDを使用しなかった人の退院時生存率が19.3%だったのに対し、AEDを使用した人の同生存率は16.3%であり、補正後生存率比は0.85(95%信頼区間:0.78~0.92、p

検索結果 合計:33593件 表示位置:31061 - 31080