HIV感染者への腎移植、課題は優れた免疫抑制薬の開発

提供元:ケアネット

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公開日:2010/12/01

 



欧米の末期腎不全(ESRD)患者の約1%はHIV感染者であるなど、HIV感染者にESRDが増加しており、そうした患者にも腎移植が期待されるようになっている。しかし、HIV感染者への腎移植や免疫抑制のアウトカムについては十分には明らかになっていない。そこで米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPeter G. Stock氏らの研究グループが、腎移植を希望するHIV感染者を対象に、安全性と有効性について多施設共同の前向き非無作為化試験を行った。NEJM誌2010年11月18日号掲載より。

HIV感染レシピエント150例を中央値1.7年追跡




試験は、抗レトロウイルス療法が安定しており、CD4+T細胞数が≧200個/mm3、血漿HIV1型(HIV-1)RNAが検出されないHIV感染者の腎移植希望者を対象とした。被験者は移植後、あらかじめ決められた試験プロトコルに従い、日和見感染に対する予防処置、生検処置、許容可能な範囲での免疫抑制療法、拒絶反応に対する管理、抗レトロウイルス療法などの移植後管理が行われ追跡された。

被験者は2003年11月~2009年6月の間に、米国19施設で腎移植を受け生存した150例で、期間中央値1.7年間追跡された。

生存率・生着率は高い




移植後1年、3年時点の患者生存率(±SD)は、それぞれ94.6±2.0%、88.2±3.8%であり、平均生着率はそれぞれ90.4%、73.7%であった。これらの割合は、65歳以上の高齢腎移植レシピエントまたは全腎移植レシピエントに関する結果が集約されている全米データベース(SRTR)に報告されている結果の範囲内のものだった。

多変量比例ハザード解析の結果、graft lossのリスク増加は、拒絶反応が起きて治療を受けた患者(ハザード比:2.8、95%信頼区間:1.2~6.6、P=0.02)、抗胸腺細胞グロブリン導入療法を受けた患者(同:2.5、1.1~5.6、P=0.03)で認められ、生体腎移植の場合は、保護効果が認められた(同:0.2、0.04~0.8、P=0.02)。

拒絶反応は、予想以上に高率で観察された。推定値で1年時点31%(95%信頼区間:24~40)、3年時点41%(同:32~52)であった。

HIV感染状態についてはコントロールが良好で、CD4+T細胞数は安定しており、HIV関連の合併症もほとんど認められなかった。

Stock氏は、「慎重に選別したHIV感染集団における腎移植は、術後1年、3年時点の生存率および生着率ともに高く、HIV感染に関連する合併症の増加もみられなかった。しかし、拒絶反応が予想以上に高く重大な懸念事項であり、より優れた免疫抑制薬の開発が必要であることが示された」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)