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31001.

CABG合併症としての脳卒中発症、30年間で年率約4.7%の減少傾向に

米国クリーブランド・クリニックにおける、冠状動脈バイパス術(CABG)の合併症としての脳卒中発症率は、過去30年間で、年率約4.7%の減少傾向にあることが報告された。また患者のリスクプロフィールが厳しくなっているにもかかわらず、そうした脳卒中の発症は術中よりも術後の方が半数以上を占め(58%がCABG後)ていたことも明らかにされた。同クリニックのKhaldoun G. Tarakji氏らが、過去30年間に同クリニックでCABGを受けた4万5,000人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月26日号で発表した。患者の共存症は増加したものの、脳卒中発症率は減少研究グループは、CABG後の脳卒中の経時的傾向、脳卒中のリスク因子の特定および長期アウトカムとの関連を目的に、1982~2009年に、クリーブランド・クリニックでCABGを受けた4万5,432人(平均年齢63歳、SD:10)について前向きに追跡し、術中・術後の脳卒中発症率とそのタイミング、アウトカムなどについて解析した。脳卒中後の合併症と生存については、傾向スコア適合群との比較で検討がされた。なお検討されたCABGは、4つの異なる術式(off-pump:体外循環非使用、on-pump with beating heart:体外循環使用心拍動下、on-pump with arrested heart:体外循環使用心停止下、on-pump with hypothermic circulatory arrest:体外循環使用超低体温循環停止下)を含んだ。その結果、CABGの術中・術後に脳卒中を発症したのは、全体の1.6%(95%信頼区間:1.4~1.7)にあたる705人だった。CABGを受ける患者は脳卒中歴があったり、高血圧症、糖尿病といった共存症が増えているにもかかわらず、CABG術中・術後の脳卒中発症率は、1988年の2.6%(95%信頼区間:1.9~3.4)を最高に、年率4.69%(同:4.68~4.70、p=0.04)の割合で減少傾向にあった。術後40時間が術後脳卒中発症のピークCABG術中に脳卒中を発症したのは279人(40%)、術後は409人(58%)だった。術後の脳卒中発症は、術後40時間が最も多く、6日後までは0.055%/日の割合で低下した。術中・術後の脳卒中発症に関するリスク因子は、加齢と動脈硬化症だった。CABGの種類別で見てみると、術中脳卒中発症率が最も低かったのは、体外循環非使用CABG(0.14%)と体外循環使用心拍動下CABG(0%)で、続いて体外循環使用心停止下CABG(0.50%)、最も高率だったのは体外循環使用超低体温循環停止下CABG(5.3%)だった。脳卒中を発症した人の、術後追跡期間中(平均11年、SD:8.6)の死亡率や集中治療室入室時間、術後入院日数といったアウトカムは、そうでない人に比べ悪かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

31002.

頭痛は、脳病変や認知機能障害と関連するか?

重度頭痛と大脳白質病変の大きさには関連があるが、脳梗塞との相関は前兆を伴う片頭痛に限られることが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)神経疫学のTobias Kurth氏らの検討で明らかとなった。これまでに、片頭痛は大脳白質病変の総容積と関連することが症例対照研究や地域住民ベースの調査で示されている。さらに、前兆を伴う片頭痛は臨床的または潜在的な脳梗塞と相関するとの知見もあるという。BMJ誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月18日号)掲載の報告。780人を対象とした地域住民ベースの横断的研究研究グループは、フランス西部のナント市で実施された地域住民ベースの横断的研究である「Epidemiology of Vascular Ageing study」において、頭痛一般あるいは特定の頭痛と大脳白質病変、脳梗塞、認知機能との関連について評価を行った。対象は、頭痛に関する詳細なデータが得られた780人(平均年齢69歳、58.5%が女性)。頭痛の評価は、「International Classification of Headache Disorders」改訂第2版に基づいて行った。MRIで大脳白質病変の大きさおよび梗塞の種類を決定し、認知機能はミニメンタルステート検査(MMSE)など複数の試験で評価した。認知機能障害との関連は認めず163人(20.9%)が重度頭痛(片頭痛116人、非片頭痛47人)の既往歴を報告した。片頭痛のうち前兆症状を伴うと答えたのは17人(14.7%)であった。大脳白質病変総容積を三分位数に分けて解析したところ、総容積が下位3分の1で重度頭痛歴のない集団に比べ、上位3分の1の集団では重度頭痛歴の補正オッズ比が2.0(95%信頼区間:1.3~3.1、傾向検定:p=0.002)であった。前兆を伴う片頭痛のみが、大脳深部白質病変の大きさ(総容積下位3分の1に対する上位3分の1の集団のオッズ比:12.4、95%信頼区間:1.6~99.4、傾向検定:p=0.005)および脳梗塞(同:3.4、1.2~9.3)と強い相関を示した。梗塞の大部分は小脳や脳幹以外の部位に認められた。認知機能が、頭痛や脳病変の有無と関連することを示すエビデンスは確認できなかった。著者は、「重度頭痛歴と大脳白質病変の大きさには相関関係がみられたが、脳梗塞との関連は前兆を伴う片頭痛に限られた。頭痛単独あるいは頭痛と大脳白質病変の併存が認知機能障害と関連することを示唆するエビデンスは得られなかった」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

31003.

胎児トリソミー21の出生前診断に有用な非侵襲的診断検査法

胎児トリソミー21(21番染色体トリソミー症、ダウン症候群)の非侵襲的な出生前診断法として2-plexプロトコールによる超並列DNA塩基配列決定法が有用なことが、香港中文大学循環胎児核酸研究センターのRossa W K Chiu氏らによる大規模な臨床研究で明らかとなった。すでに、胎児トリソミー21は母体血漿DNAを超並列DNA塩基配列決定法で解析することで出生前に非侵襲的に検出可能なことが示されているが、その臨床における診断能や実行性を検証した大規模試験はないという。BMJ誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月11日号)掲載の報告。高リスク妊婦で非侵襲的検査法による診断の正確度を評価研究グループは、胎児トリソミー21のリスクが高く、臨床的に侵襲度の高い診断検査(羊水穿刺、絨毛生検)を要すると考えられる妊婦に対する非侵襲的なスクリーニング法として、母体血漿DNAを用いた超並列DNA塩基配列決定法の臨床効果および実行性を検証する大規模な試験を実施した。香港、イギリス、オランダの出生前診断施設においてプロスペクティブに収集された母体血漿サンプルを用い、侵襲的に得られたサンプルの染色体核型分析との比較において、超並列DNA塩基配列決定法による診断の正確度を評価した。対象は、胎児トリソミー21のリスクが高い妊婦753人で、染色体核型分析では86人の胎児がトリソミー21と確定診断された。これらの妊婦について、二つのプロトコール(2-plex、8-plex)に基づく多重超並列DNA塩基配列決定法による検査を行った。主要評価項目はトリソミー21由来のDNA分子の比率とし、Zスコアが>3の場合に胎児はトリソミー21と診断した。トリソミー21の検出に関する感度、特異度、陽性予測値、陰性予測値を算出した。高侵襲的診断検査の98%を回避できる8-plex DNA配列決定法の結果は753人から、2-plex DNA配列決定法の結果は314人から得られた。検出能は2-plexプロトコールの方が優れていた。すなわち、2-plex DNA配列決定法の感度は100%、特異度は97.9%であり、陽性予測値は96.6%、陰性予測値は100%であった。これに対し、8-plex DNA配列決定法の感度は79.1%、特異度は98.9%、陽性予測値は91.9%、陰性予測値は96.9%であった。著者は、「母体血漿DNA配列決定法は高リスク妊婦における胎児トリソミー21の除外診断に使用可能であり、羊水穿刺、絨毛生検という高侵襲的診断検査の98%を回避できると考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

31004.

院外心停止に対するACD-CPR、標準的CPRよりも有効

院外心停止例に対する能動的圧迫-減圧心肺蘇生法(ACD-CPR)は、標準的CPRよりも神経機能温存退院率および1年生存率が優れることが、アメリカ・ウィスコンシン医科大学救急医療部のTom P Aufderheide氏らが行った無作為化試験で示された。ACD-CPRは、1)胸部に吸着させる吸引カップ、2)胸部の押し下げ/引き上げ用のハンドル、3)80拍/分にセットされた可聴式メトロノーム、4)操作中に圧迫、減圧の程度を表示するゲージからなる携帯式医療機器で、インピーダンス閾値弁装置(より効果的に心臓に陰圧をかけるための装置)を併用するとより高い効果が得られるとされる。胸骨圧迫が解除された拡張期圧に胸腔内圧の陰圧が増強された状態でACD-CPRを施行すると、標準的なCPRに比べ良好な血行動態が得られる可能性があるという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載の報告。退院時の良好な神経機能温存率を評価する無作為化試験研究グループは、院外心停止に対するACD-CPRが、良好な神経機能を温存した生存に及ぼす効果および安全性を評価する多施設共同無作為化試験を実施した。アメリカの都市部、都市周辺部、地方部の46の救急医療施設(地域住人:230万人)において、院外心停止患者のアウトカムをUtsteinガイドラインに準拠して評価した。対象患者は、標準的CPRあるいはインピーダンス閾値弁装置で胸腔内圧の陰圧を増強させた状態でACD-CPRを施行する群に無作為に、暫定的に割り付けられた。心臓が原因と推定される非外傷性の心停止で、初期的および最終的な選択基準を満たした成人患者(18歳以上、確認できない場合は推定年齢)が、割り付けられたCPRを受け、最終解析の対象とされた。主要評価項目は、退院時の良好な神経機能温存率(modified Rankin scaleスコア≦3)とし、初期救助者以外の全研究者には治療割り付け情報は知らされなかった。神経機能温存退院率:6% vs. 9%、1年生存率:6% vs. 9%仮登録された2,470例が無作為に各CPRに割り付けられ、標準的CPR群(対照群)1,201例のうち813例(68%)が、ACD-CPR群1,269例のうち840例(66%)が実際に治療を受け、最終解析の対象となった。対照群では6%(47/813例)が良好な神経機能を温存した状態で退院したのに対し、ACD-CPR群は9%(75/840例)であり、有意な差が認められた(オッズ比:1.58、95%信頼区間:1.07~2.36、p=0.019)。1年生存率も対照群が6%(48/813例)、ACD-CPR群は9%(74/840例)と有意差を認め(p=0.03)、この間の認知能力、身体障害度、情緒的/心理的状態は両群で同等に保持されていた。全般に重篤な有害事象の発現率は両群間に差はなかったが、肺水腫は対照群[7%(62/813例)]よりもACD-CPR群[11%(94/840例)]で多くみられた(p=0.015)。著者は、「ACD-CPRは標準的CPRに比べ高い有効性と一般化可能性(generalizability)を有することが示された」と結論し、「この知見に基づくと、心停止後の長期生存を改善するには、標準的CPRの代替治療として胸腔内圧の陰圧増強下におけるACD-CPRの施行を考慮すべきと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

31005.

早期乳がんに対する術後エキセメスタン、継続投与と逐次投与のいずれが有効か?

第3世代アロマターゼ阻害薬(AI)エキセメスタン(商品名:アロマシン)の5年継続投与と、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスなど)→エキセメスタン逐次投与は、いずれも早期乳がんの術後補助療法として有用な治療選択肢となる可能性があることが、オランダLeiden大学医療センターのCornelis J H van de Velde氏らが行ったTEAM(Tamoxifen Exemestane Adjuvant Multinational)試験で示唆された。同じく第3世代のAIであるアナストロゾール(同:アリミデックス)およびレトロゾール(同:フェマーラ)は、継続投与、逐次投与ともにタモキシフェン継続投与に比べ無病生存率(DFS)を上昇させるが、全生存率(OS)は改善しないことが示されている。TEAM試験は当初、エキセメスタンとタモキシフェンの単剤の比較試験として開始されたが、もう一つのランドマーク試験であるIES試験の結果(逐次投与群のエストロゲン受容体陽性/不明例でDFS、OSが有意に改善)を受けてプロトコールが変更されたという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月18日号)掲載の報告。日本の30施設が参加した継続投与と逐次投与の国際的第III相試験TEAM試験の研究グループは、エキセメスタン継続投与とタモキシフェン→エキセメスタン逐次投与の長期的有用性を比較する多施設共同無作為化第III相試験を実施した。9ヵ国566施設(ヨーロッパ357施設、アメリカ179施設、日本30施設)から、閉経後ホルモン受容体陽性早期乳がん女性(年齢中央値64歳、範囲:35~96歳)が登録され、エキセメスタン25mg/日(経口)を5年間投与する群(継続投与群)あるいはタモキシフェン20mg/日(経口)を2.5~3年間投与後エキセメスタン25mg/日に切り替えて合計5年間投与する群(逐次投与群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治療5年の時点におけるDFSとし、intention-to-treat(ITT)解析を行った。DFSは同等、有害事象プロフィールは異なる9,779例が登録され、逐次投与群に4,875例が、継続投与群には4,904例が割り付けられた。このうち、逐次投与群の4,868例および継続投与群の4,898例がITT解析の対象となった。治療5年の時点で逐次投与群の4,154例、継続投与群の4,186例が無病生存しており、DFSはそれぞれ85%(4,154/4,868例)、86%(4,186/4,898例)、ハザード比は0.97(95%信頼区間:0.88~1.08)と両群で同等であった(p=0.60)。婦人科的症状は、逐次投与群が20%(942/4,814例)と、継続投与群の11%(523/4,852例)に比べ高頻度であった。静脈血栓症[2%(99例) vs. 1%(47例)、p<0.0001]や子宮内膜の異常[4%(191例) vs. 1%(19例)、p<0.0001]も、逐次投与群で多くみられた。継続投与群で多い有害事象としては、筋骨格系障害[44%(2,133/4,814例) vs. 50%(2,448/4,852例)]、高血圧[5%(219例) vs. 6%(303例)、p=0.0003]、脂質異常症[3%(136例) vs. 5%(230例)、p<0.0001]などが認められた。これらの知見に基づき、著者は「エキセメスタン単独の5年継続投与およびタモキシフェン2.5~3年→エキセメスタン2~2.5年の逐次投与は、いずれも閉経後ホルモン受容体陽性早期乳がんに対する適切な治療選択肢となる可能性がある」と結論し、「ニつの治療アプローチは有害事象プロフィールが異なるため、治療法を決める際はこの点を十分に考慮することが重要であろう。今後、TEAM試験と他のアロマターゼ阻害薬の臨床試験の成果に関するトランスレーショナル・リサーチにより、特定の治療戦略のベネフィットが最も大きい患者を同定することが可能になるだろう」と考察している。(菅野守:医学ライター)

31006.

増税でもやっぱりタバコはやめられない?!

楽天リサーチ株式会社は24日、たばこ税増税に関する継続調査の結果を発表した。2010年10月にたばこ税増税が実施され、たばこの価格は大幅な値上げとなった。増税から3ヵ月が経過したが、喫煙者に変化はみられるのかどうか、同社では、2010年9月末時点での喫煙者に対し、増税後1ヵ月ごとに喫煙状況を調査した。たばこ税増税後の喫煙状況を比較してみたところ、9月末時点での喫煙者については3ヵ月後も大きな変化はみられなかった。9月末時点では喫煙していたが「増税をきっかけに禁煙を検討」した人のうち、実際に禁煙している人は約13%で推移している。しかしながら、9月末時点ですでに「増税をきっかけに喫煙を中止した」人については、3ヵ月後には18.9%の人が喫煙をしており、16.3ポイントも増加した。また、9月末の時点で増税をきっかけに「たばこをやめる」との意向があった人でも、喫煙率は徐々に上昇しているという。各調査時点での喫煙者に対し、たばこ税増税前後で比較して喫煙本数が減ったかどうかを聞いたところ、9月末時点から継続して喫煙している人では、一貫して約40%が本数を減らしていることがわかった。やめるつもりはないが増税は負担であり、節約しながら喫煙を継続している様子がうかがえる。一方、増税を機に禁煙を検討、もしくはその意向があった人については、喫煙本数が「減った」と回答した人は徐々に増加の傾向にある。禁煙しようと試みたものの禁煙できず、本数を減らして喫煙を復活していることが考えられるとのこと。各調査時点での喫煙者に今後の喫煙意向を聞いたところ、増税後3ヵ月間でたばこを「やめる」ことをあきらめている傾向にあるようだという。特に、9月末時点ですでに禁煙していた人、禁煙を検討していた人ではいずれも16.3ポイントも減少している。ただし、9月末時点での喫煙者全体をみてみると、各調査時点で「今後やめる」「やめた」を選択した人は、増税後3ヵ月間で「今まで通りの本数を吸う」と、元に戻っているのに対し、9月末時点で「たばこを吸うのをやめる」と回答した禁煙意向者は、禁煙を継続できなかった後ろめたさからか、喫煙しつつも、今まで通りの本数は吸わずに「吸う本数を減らす」ことに転換していることがうかがえるという。詳細はこちらへhttp://research.rakuten.co.jp/report/20110124/

31007.

転移性トリプルネガティブ乳がんに対する化学療法とiniparibの併用の有効性と安全性

DNA修復機能に固有の障害を有する転移性トリプルネガティブ乳がん治療で、カルボプラチン(商品名:パラプラチンなど)+ゲムシタビン(同:ジェムザールなど)化学療法へのiniparibの追加併用は、臨床的ベネフィットおよび生存期間を改善することがオープンラベル第2相試験により示された。iniparibはポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害活性を持つ抗がん薬として開発された。in vitroおよび臨床試験で、カルボプラチン+ゲムシタビンの抗腫瘍・細胞毒性作用を増強することが証明されたのを受け、米国Baylor Charles A. SammonsがんセンターのJoyce O’Shaughnessy氏らにより有効性と安全性を検討する第2相試験が行われた。NEJM誌2011年1月20日号(オンライン版2011年1月5日号)掲載より。123例の被験者を対象にオープンラベル無作為化試験試験は、転移性トリプルネガティブ乳がんにおいて、カルボプラチン+ゲムシタビン療法にiniparibを追加した場合としなかった場合との、有効性と安全性を比較検討することを目的に行われた。123例の被験者は、1、8日目にゲムシタビン(1,000mg/m2体表面積)+カルボプラチン(血中濃度曲線下面積2線量当量で)を投与し、1、4、8、11日目にiniparib(5.6mg/kg体重量で)を投与する群としない群(いずれも21日サイクル)に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは、臨床的ベネフィット[客観的奏効(完全あるいは部分寛解)+6ヵ月以上の病状安定を認める患者の割合]の割合と安全性とした。追加エンドポイントには、客観的奏功率、無増悪生存期間、全生存期間も含まれた。臨床的ベネフィットは34%から56%に改善、有害事象の有意差は認められず結果、iniparib追加群では、臨床的ベネフィットの割合が34%から56%へと改善が認められた(P=0.01)。また全奏功率も32%から52%に改善された(P=0.02)。平均無増悪生存期間も3.6ヵ月から5.9ヵ月に延長した(増悪に対するハザード比:0.59、P=0.01)、平均全生存期間は7.7ヵ月から12.3ヵ月に延長していた(死亡に対するハザード比:0.57、P=0.01)。両群で発生したグレード3、4の有害事象で発生が高頻度であったのは、好中球減少症、血小板減少症、貧血、疲労、無力症、白血球減少症、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇などであった。しかしグレード3、4の有害事象の発生率は両群で有意差は認められなかった。本結果に基づき、全生存期間と無増悪生存期間の評価に十分な検出力を有する第3相試験が実施中だという。(武藤まき:医療ライター)

31008.

心血管イベント再発と責任・非責任病変関連のリスク因子

 急性冠症候群の原因となるアテローム硬化性プラークは、血管造影では軽度な冠動脈の狭窄部位で起こることが多いが、そのようなイベントの病変関連のリスク因子については十分に解明されていない。そうした中で米国コロンビア大学医療センターのGregg W. Stone氏らが、冠動脈アテローム性硬化の自然経過に関する前向き研究(PROSPECT研究)を行い見出した特徴などを報告した。NEJM誌2011年1月20日号掲載より。急性冠症候群でPCIを受けた患者に冠動脈造影と血管内超音波検査を行い前向きに追跡 Stone氏らは、急性冠症候群を来し経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた697例に対し、3枝についての冠動脈造影とグレイスケール・高周波血管内超音波検査を行った。その後に発生した主要有害心血管イベントについて、最初に治療した(責任)病変と未治療(非責任)病変のいずれと関連しているかを判定した。 平均追跡期間は3.4年、主要有害心血管イベントの3年累積発生率は20.4%だった。非責任病変に血管内超音波検査に基づく特徴が 責任病変との関連が認められたイベントは12.9%、非責任病変との関連が認められたのは11.6%だった。追跡期間中のイベントで非責任病変との関連が認められたもの大半は、基線の冠動脈造影では軽度[平均狭窄度(±SD):32.3±20.6%]であった。 しかし多変量解析の結果、イベント再発に関連した非責任病変は、関連していなかった非責任病変と比べて、プラーク面積≧70%(ハザード比:5.03、95%信頼区間:2.51~10.11、P<0.001)、最小内腔面積<4.0mm2(同:3.21、1.61~6.42、P=0.001)、高周波血管内超音波検査で薄膜線維性アテローム(TCFA)に分類される(同:3.35、1.77~6.36、P<0.001)という特徴が認められた。 Stone氏は「急性冠症候群を来しPCIを受けた患者において、追跡期間中に発生した主要有害心血管イベントは、責任病変と非責任病変では同程度であった。予期しないイベントの原因となった非責任病変は冠動脈造影では狭窄は軽度であったが、グレイスケール・高周波血管内超音波検査により、大半はTCFAで、プラーク面積率が大きく、内腔面積は小さいという特徴が、単独もしくは複合して有していることが認められた」と報告をまとめている。

31009.

βアミロイド42/40濃度が低いと、認知機能低下が促進

血漿中のβアミロイド42/40濃度が低い人は、高い人に比べ、認知機能の低下が促進することが明らかにされた。その傾向は、認知的予備力の低い人ほど強いことも示された。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神科部門のKristine Yaffe氏らが、地域在住の高齢者997人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。βアミロイド42/40濃度と認知症発症との関連は知られているが、否定的な報告もあり、また認知症ではない高齢者における検討はほとんどされていなかった。βアミロイドβアミロイド42、42/40濃度と3MSスコアとの関連を検討Yaffe氏らは、1997~1998年に地域在住の高齢者997人について試験を開始し、2006~2007年まで10年間前向きに追跡した。被験者はメンフィス、テネシー、ピッツバーク(ペンシルベニア州)に住む70~79歳の黒人および白人の高齢者で「Health ABC Study」の登録者だった。試験開始時点の被験者の平均年齢は74.0歳、うち女性は550人(55.2%)だった。試験開始後、初回の追跡調査時点(中央値:53.4週後)で採血し保存していたサンプルを用い、血漿中のβアミロイド42とβアミロイド42/40を測定した。試験開始後1年、3年、5年、8年、10年の時点で、改定ミニメンタルステート検査(3MS)を行い認知能力の低下について分析した。βアミロイド42/40濃度の最低三分位範囲で、3MSスコア低下幅が有意に増大結果、βアミロイド42/40濃度が最も高い三分位範囲の群では、9年間の3MSスコアの低下幅は-3.60ポイント(95%信頼区間:-2.27~-4.73)だったのに対し、同濃度の最も低い三分位範囲の群では、同低下幅は-6.59ポイント(同:-5.21~-7.67)、中間の三分位範囲の群では-6.16ポイント(同:-4.92~-7.32)と、有意な関連が認められた(p<0.001)。この関連は、年齢や人種、教育程度、糖尿病、喫煙、アポリポ蛋白Ee4の有無で補正し、認知症の認められた72人を除いた後も、変わらなかった。しかし関連は、高校卒業者、6年制卒以上の教養がある、アポリポ蛋白Ee4対立遺伝子がない、といった認知的予備力の高い群では弱まった。たとえば、高校を卒業していない人の同スコア低下幅は、βアミロイド42/40の最も高い三分位範囲群が-4.45ポイントに対し、最も低い三分位範囲群は-8.94ポイントだったが、一方で高校卒業以上の学歴のある人の同スコア低下幅は、βアミロイド42/40の最も高い三分位範囲群が-2.88ポイントに対し、最も低い三分位範囲群は-4.60ポイントで格差はより小さかった(相互作用p=0.004)。教養の有無(p=0.005)、アポリポ蛋白Ee4対立遺伝子の有無(p=0.02)でも同様の関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

31010.

SSRIのescitalopram、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のescitalopramは、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減することが示された。服用後8週間で、ほてりの頻度が半分以下に減少したと報告した人は、escitalopram群の50%に上った。米国ペンシルベニア大学産科婦人科のEllen W. Freeman氏らが、200人超の女性を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。閉経後のエストロゲンとプロゲスチン投与に関して、効用よりもリスクが上回るとする試験結果が発表されて以来、閉経期のほてりに対する効果的治療薬は他にないのが現状という。escitalopramとプラセボを投与し8週間追跡研究グループは、2009年7月~2010年6月にかけて、40~62歳の閉経期の女性、205人(アフリカ系アメリカ人95人、白人102人、その他8人)について調査を行った。被験者の平均年齢は53歳だった。同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはescitalopram 10~20mg/日を、もう一方にはプラセボを8週間投与し追跡した。主要評価項目は、服用後4週と8週時点の、ほてりの頻度と程度で、被験者の日記に基づき評価を行った。副次評価項目は、ほてりの程度、臨床改善指数(基線から50%以上ほてりの頻度が減少と定義)とした。ほてりの頻度減少幅、escitalopram群4.6回に対しプラセボ群が3.2回試験開始時点での、被験者のほてりの回数は、1日平均9.78回(標準偏差5.60)だった。8週後、1日のほてりの頻度の減少幅は、プラセボ群が平均3.20回(95%信頼区間:2.24~4.15)だったのに対し、escitalopram群では平均4.60回(同:3.74~5.47)で、両群の平均差は1.41回(同:0.13~2.69)だった(p<0.001)。8週時点で、ほてりの頻度が半分以下に減ったと答えた人の割合は、プラセボ群が36%に対し、escitalopram群では50%だった(p=0.009)。ほてりの程度の軽減幅に関する平均スコアも、プラセボ群が-0.30(95%信頼区間:-0.42~-0.17)に対し、escitalopram群では-0.52(同:-0.64~-0.40)だった(p

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外科医の魅力を伝えたい - 医学生・若手医師へのメッセージ -

2010年12月16日(木)、ホテルニューオータニ東京において、『きみが外科医になる日』(講談社)の出版を記念し、出版記念メディアセミナー及び出版を祝う会が開催されました。この会は「NPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会(以下CENS)」が主催したもの。当日は会の趣旨に賛同された多くの医師・医療関係者が集まり、大盛況のまま幕を閉じました。この会の場で、CENSの役員より医学生や若手医師の方への熱いメッセージが寄せられました。いずれも日本の外科領域を牽引する名医の先生方です。ご自身の経験も含め、外科医の魅力を存分に語っていただきました。外科という領域を超えて、プロフェッショナリズムの真髄に触れることができます。是非この機会にご覧ください。副理事長 北島 政樹氏国際医療福祉大学 学長 理事 跡見 裕氏杏林大学 学長 理事 兼松 隆之氏長崎大学大学院移植・消化器外科 教授理事 小栁 仁氏東京女子医科大学 名誉教授理事 北野 正剛氏大分大学医学部第一外科 教授理事 門田 守人氏日本医学会 副会長大阪大学 理事 副学長理事 山口 俊晴氏研有明病院 副院長消化器外科 部長監事 里見 進氏日本外科学会 理事長東北大学 病院長評議員 和田 則仁氏慶應義塾大学医学部一般・消化器外科 助教ケアネットは、「NPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」を応援しています関連リンクNPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会のご案内日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会ホームページ

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部長 中山優子 先生「がん治療における放射線治療医は多くの可能性をもつ魅力ある分野」

1959年7月8日神奈川県横須賀市生まれ。84年群馬大学医学部卒業。専門分野は放射線腫瘍学・肺がんの放射線治療。99年群馬大学医学部放射線科講師、05年東海大学医学部放射線治療科学准教授、08年神奈川県立がんセンター放射線腫瘍科部長就任。日本医学放射線学会・放射線科専門医、日本放射線腫瘍学会・放射線腫瘍学認定医、日本がん治療認定医機構・がん治療認定医等。日本放射線腫瘍学会(評議員)、米国放射線腫瘍学会、日本医学放射線学会、日本肺学会(評議員)、世界肺学会、日本治療学会など。放射線治療医の魅力放射線治療を専門とするがん専門医のことを、私たちは放射線腫瘍医と言っていますが、ここではわかりやすく放射線治療医という言い方をします。私が卒業した群馬大学医学部は、放射線治療がとても盛んで、講義も臨床実習も内科や外科と同じコマ数があり、おかげでびっしりと放射線治療について学ぶことができました。また、私がいた群馬県内の病院では、放射線科だけで50床あり、そこで全身の状態を内科的診療で診ながら放射線治療ができるという理想的な環境にありました。放射線治療が対象とするがんは広範囲です。がん診療では通常、消化器、呼吸器など診療科ごとに特定の臓器への関与に限られます。しかし、放射線治療は、脳腫瘍から骨、皮膚、その他すべての臓器と横断的に関われるというのが、私にとって一番の魅力でした。医療手技についても幅広く習得できました。日常臨床で、頭頸部の診察なら喉頭ファイバー、肺の診察なら気管支ファイバー、消化器であれば消化管の内視鏡検査、婦人科であれば内診をやりますから、このような手技的にも幅広く経験できるのです。放射線治療では、人の身体全体を診ることにより新たな知識を得ることができます。たとえば、放射線治療は、喉頭がん、子宮頸がんの早期には非常に高い治療効果があるので、同じ扁平上皮がんの肺がんでも治療効果は高いはずだ、などの考え方ができるようになります。このように、医師としての深い知識を横断的に得ることができたのも大きな魅力だといえます。幅広い放射線治療の可能性がんにおける放射線治療の活用方法は幅広いものです。まず、がんの根治を目的とする根治照射、延命を図るための姑息照射、そして骨転移・脳転移などの症状を和らげる緩和照射まで適応可能です。それに加え最近では、一方向からの放射線の線量を変えたり、精度高く照射部位を絞ったり、重粒子線などを用いることによる治療のバリエーション拡大で、個々の患者さんに合った治療選択ができるようになりました。放射線治療の特長として考えられるのは、まず身体への侵襲の少なさです。放射線治療は一般に身体外からの照射ですので、手術と異なりメスを入れずにすみます。また、放射線治療は局所療法ですので、抗がん剤とは異なり全身性の副作用が少ないのです。そのため、全身状態が悪い人や高血圧・心臓疾患などの合併症を患っている方、高齢者にも適応しやすいというメリットがあります。もう一つの特長は、臓器の機能保持が可能だということです。同じ局所療法でも手術とは異なり、放射線療法では臓器を残し機能を温存することができます。たとえば、声門部がんでの喉頭部摘出などは、患者さんのQOLに関わる大変重要な問題ですが、放射線治療が適応できれば喉頭部を残すことができます。臓器を残せるというメリットは非常に大きいといえます。放射線治療が有用ながんの代表は,早期の頭頸部がんです。その他子宮頸部などの扁平上皮がんには非常に高い効果があります。また、進行がんにも適応が確立しつつあり、遠隔転移がない肺、食道、頭頸部の進行がんでは抗がん剤と併用する化学放射線療法が積極的に行われています。さらに、術後の照射にも使用が拡大しています。乳がん乳房温存手術後の放射線照射により、術後の顕微鏡的な残存腫瘍を根絶するというものです。この治療により再発リスクが約3分の1に減少することが明らかになっています。放射線治療の新しい分野である重粒子線治療についても具体的な有用性が明らかになっています。骨肉腫や悪性黒色腫などの難治性腫瘍や穏やかな脊索腫などで高い効果を上げています。今までX線の放射線では治らなかったがんが治癒できるということは画期的なことです。何よりも患者さんにとって非常に大きな朗報だといえるでしょう。重粒子線治療ができる施設は千葉県の重粒子医科学センター病院など日本全国で現在3つしかありませんが、今後増えていくでしょう。日本における放射線治療の現状と問題点放射線治療医が足りないことが大きな問題です。放射線治療に興味を持ってもらうためには、まず大学教育の改革が大切だと思います。今まで、多くの大学では放射線科講座がひとつあるだけで、そこで画像診断、核医学、放射線治療もすべて教えるという状況でした。そのため日本放射線腫瘍学会では、治療科と診療科の講座を別々にしてくださいという要望を各大学に出しています。その結果、いくつかの医学部では診断と治療が独立する方向で、放射線治療の講座ができつつあります。学会でも学生教育が最重要課題と考え、放射線治療の魅力を知っていただくために、夏に学生や研修医を対象としたセミナーを継続して開いています。国でも、がんプロフェッショナル養成プランにより放射線療法に関する腫瘍専門医師の養成を推進しています。臨床の現場では各臓器別のキャンサーボードに、内科系、外科系、病理、画像診断、そして放射線治療医が集まり患者さんの治療方針について検討するのが理想です。各臓器のスペシャリストの先生方と同じ土俵で討論するには知識が必要ですが、放射線治療医の特性も上手く生かせると思います。各スペシャリストと我々の違うところは、我々はがんについて広く知っているという強みです。また、現在は一臓器だけでなく、様々ながんを合併して発症している患者さんも少なくありません。たとえば、頭頸部と食道部に合併しているがんでは、放射線治療により両方治療できるのも大きな利点です。このように、放射線治療医としての特性や放射線治療のメリットを生かしながら、スペシャリストの先生方に積極的に関わっていくという姿勢が必要であると思います。そして、がん治療に関わっている先生方には放射線治療についてもっと知っていただけたらと思います。我々からのアプローチ不足もありますが、これも大きな問題です。たとえば、新規患者さんが来られた場合、放射線治療ができるかどうかを放射線治療医に相談していただければと思います。大きな腫瘍だから抗がん剤でないとダメ……など先入観や知識不足から、放射線治療の適応があるにもかかわらず治療選択肢に入らないことも少なくないと思います。がんが進行してから我々に相談されることもありますが、それでは患者さんにとって最良の治療ができなくなってしまうことが多々あります。放射線治療の適応については、独自に判断せず、是非治療を始める前に一度近くの放射線治療医の意見を聞いて欲しいと思います。現状では放射線治療医の常勤がいないこともありますが、せめて電話での問い合わせをしていただくとか、こちらに患者さんに来ていただいてお話を聞くという方法でも構わないと思います。新設予定の神奈川県立がんセンターの重粒子治療施設平成26年度にオープンする予定の重粒子治療施設ができれば、日本で5ヵ所目の施設となります。神奈川がんセンターの中にできるこの施設は、病院との併設型です。各診療科でがんの各臓器の専門医がいるところにできるので、包括的なサポートが可能になります。この施設はよりたくさんの患者さんに治療を提供できるように、臨床に特化した施設にしようというのが我々のポリシーです。さらに、一般的なX線治療にも高精度治療装置が導入されます。そこに一つのモダニティとして重粒子線治療が入ります。ですから構想的にいえば、放射線腫瘍センターに来られた患者さんに、重粒子線治療を含めた最も適した放射線治療を提供できるように準備していきたいと思っています。設備には大変な金額がかかりますが、それでも重粒子線でなければ治らない患者さんもいます。このセンターができれば、県内だけでなく東京都南部及び西部からの通院が可能な位置にあることから、全身状態が悪くない患者さんについては外来で治療を行う"外来通院型"の重粒子線治療を目指しています。これは現役で仕事をされているような患者さんにとっては大変な朗報だと思います。放射線治療医を目指す皆さんへ前述の通り、放射線治療医はすべてのがんを診ることができます。また、自分がやりたいスタイルを選ぶことができます。たとえば、ベッドを持たず外来診療だけを行っている施設もあります。このような施設では夜中に入院患者さんの治療で呼び出されるということはありません。これは家庭があってお子さんのいる女性医師にとっては、とても魅力的だと思います。逆に、以前私が働いていた病院のように、ベッド数を多く持ち患者さんの全身を診ながら放射線治療を行う、内科的な意味合いも兼ねた放射線治療医という形もあります。放射線治療科といっても機能の幅が広いので、自分がどのような医師になりたいか、あるいは自分のライフスタイルやポリシーに合った施設を選ぶことができるのです。最近の放射線治療では、物理的に精度の高いロボットのような機械を用いて治療することがあります。若い医師の中には、自分の手を使わずにロボットでがん治療するという、物理学的な興味から入ってくる方も多いですね。一方、外科的な部分もありますので、外科医もやりたいけどがんを全体的に診たいという人も入ってきます。生物学的、物理学的研究なども、広く学べる。がん治療のチームに入ったならばどのポジションもできるのが放射線治療医なのです。質問と回答を公開中!

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部長 中山優子 先生の答え

晩期後遺症重粒子線の晩期後遺症として組織壊死、ろうこう形成があるようです。理論的にないといわれたこれらの後遺症の頻度はどれくらいですか。質問01から03までは,これから建設予定施設にいる私には経験がなくお答えできない質問です.そこで,今までに5000名以上の重粒子線治療を手がけた放射線医学総合研究所(放医研)・重粒子医科学センター長の鎌田正先生に伺いました.「重粒子線治療を開始した初期のころ線量増加試験を各臓器で実施しています。その中で高線量を広い範囲に照射した症例において瘻こう形成などの強い副作用を認めています。その経験から各臓器において線量や照射範囲に制限を設けるとともに照射技術に改善を加えた結果、最近ではそのような副作用は殆ど認められなくなっています。」現在,重篤な副作用はほとんど見られていないとのことです.放医研では,1994年に炭素線を用いて重粒子線治療が開始されました。それ以来,種々の疾患について適切な照射技術や線量分割法を開発するための臨床試験が行われ、2003年10 月には「高度先進医療(いまの先進医療)」としての承認が得られて今日に至っています.日本では,放医研,兵庫県立粒子線医療センター,群馬大学重粒子医学研究センターの3施設で重粒子線治療を行っています.悪性リンパ腫に重粒子線治療は効果ありますでしょうか?抗ガン剤治療や通常の放射線治療でなかなか効果が得られない悪性リンパ腫に、重粒子線治療は適応ありますでしょうか?同じく,鎌田正先生のコメントです.「悪性リンパ腫は全身疾患として考える必要があり、また通常の放射線や化学療法が良く効くことから、重粒子線治療の適応としていませんでした。そのためにこれまでまったく重粒子線での治療の経験がありません。従って他治療に効果を認めない悪性リンパ腫についてもその効果は不明です。仮に行うとすれば局所にとどまるものであれば臨床試験の対象となる可能性はあると思います。」局所進展型膵局所進展型の膵頭部に対し、重粒子線の効果と合併症をお聞きします。膵頭部は消化管がすぐ近くにあるので、照射後の消化管に対する合併症が心配となります。どんな合併症がいつ頃出現するのか、またやせた人は合併症が多いと聞きますが、どのくらい増えるのか、をご教示下さい。また定位放射線治療と比べ、重粒子線の効果はどのくらいあるのでしょうか。極論でいえばCRを目指せますか?。膵体部、尾部ではどうでしょう。よろしくお願いします。同じく,鎌田正先生のコメントです.「切除非適応の局所進行膵について現在、化学療法を同時に併用した重粒子線治療の線量増加試験を実施しています。まだ試験中ですので詳細を示すことはできませんが、十二指腸を含む消化管への副作用の頻度は少なく、安全に線量増加試験を継続しています。治療効果も同様ですが、線量増加とともにCRとなる症例も経験されています。」重粒子線治療の受け入れ態勢について重粒子線治療は紙面でもテレビでもとりあげられており、患者さまにも希望される方が増えてきている印象です。しかし、実際は適応症例を絞っていたり、順番待ちが長いという噂も多いです。とくに他県の患者を紹介しても、結局治療が受け入れられないという場合は、さっさと地元でX線照射をしていた方が時間的に有利かと思われます。もっと受け入れ態勢の情報や、適応症例を情報公開するなどできないでしょうか?確かに,重粒子線治療をインターネットなどで調べ,希望する患者が増えてきています.先日も,局所進行非小細胞の放射線治療目的で受診された方で,放射線治療を勧めたところ,重粒子線治療希望なので待ってくれ,と言われました.「縦隔リンパ節転移があるので重粒子線治療の適応はないです」とお話し,通常の放射線治療を施行しました.重粒子線治療の適応については,放医研や兵庫県立粒子線医療センターのホームページに詳しく掲載されています.しっかりと情報公開されています.放射線治療医にまず紹介し,そこで判断してもらうのもいいと思います.肺に対するトモセラピーについて勤務している病院でトモセラピーが使用できるようになりました。放射線治療医の勧めもあり、I期の非小細胞肺に対してトモセラピーでのSRTも数例施行していだだきましたが、重篤な放射線肺炎を一例経験しました。肺に対するトモセラピーのSRTには、通常のリニアックを使用したSRTや重粒子線治療に比べてエビデンスは少ないようです。肺に対するトモセラピーが放射線肺炎を起こしやすいということはあるのでしょうか。末梢型の早期肺で手術が内科的非適応の場合や手術拒否の場合に,SRTや重粒子線治療が行われています.SRTでは三次元的に多方向から病変に照射するため1回線量を増やすことができます.最近,日本で行われた臨床試験(JCOG0403)では1回線量12Gyを4回,総線量48Gyを用いています.重粒子線治療では,分割回数を少しづつ減らしていき,現在は1回照射法を臨床試験で行っています.いずれにしても,従来の放射線治療よりも抗腫瘍効果が高く,良好な治療成績が報告されています.ご質問の重篤な放射線肺臓炎についてですが,既存肺に間質性肺炎があるときには,重篤な放射線肺臓炎が生じることがあります.また,腫瘍サイズが大きいときも結果的に照射される正常肺の体積が大きくなりますので,注意が必要となります.トモセラピーの場合には,少線量が照射される正常肺の体積が大きくなる可能性がありますが,治療装置の違いよりも,既存肺の状態や腫瘍の大きさなどの影響が大きいと思われます.放射線腫瘍医を目指すには?医学部に通う者です。放射線医学見学会に参加したことがきっかけで、放射線腫瘍医に興味を持ちました。キャリア形成についてお聞きしたいのですが、放射線腫瘍医になるには、どのような施設で研修を受けていくべきでしょうか?また、学生のうちに勉強しておいた方がよいことがあれば教えていただければと思います。宜しくお願いします。放射線治療は,全身のすべてのがんが対象となります.それらを診断するための基礎知識・手段として,画像診断や内視鏡検査などの診察手技を習得することが必要です.また,対象の多くは高齢者ですから,一般的な内科の知識も必要となります.がん患者のお話に耳を傾けることも大切です.また,放射線腫瘍医だけではがん治療はできません.外科医や内科医とよいチームを組み,最適な診療を提供していきます.したがって,極端にいえば,どのような施設で研修を受けても勉強になると思います.学生のうちに勉強しておいた方がよいことですが,何でも役に立ちますので,自由に勉強をしたらどうでしょうか.私が医学生だった頃には,第一種放射線取扱主任者の試験を,記憶力のいい若いうちに受けておくようにいわれたことがあります.まじめな同級生は受験して合格していました.彼女は内科医になりましたが,役に立っているかな.教育について先生の記事、大変勉強になりました。ありがとうございます。神奈川県立がんセンターさんでは、教育部門にも力を入れているとのことですが、ホームページを見てもその辺の情報が掲載されていませんでしたので、差し支えなければ、具体的な取り組みをご紹介いただけないでしょうか?(特長的なもの1例だけでも参考になります。)特に専門医向けの教育だけでなく、看護師向けの教育も行っているということに大変興味を持っております。宜しくお願いします。放射線治療には看護師の存在が欠かせません.私たちの施設は,これから放射線治療装置の増設や重粒子線治療施設の新設など,より放射線治療症例は増える予定です.これに伴い,看護師の担う業務内容の拡大が求められます.たとえば,放射線治療中の口内炎や皮膚炎などが通常の反応か否かなど,放射線治療室担当の看護師が判断できれば,日常診療の効率化の上で,大きな力になります.また,看護師にとってもやりがいが出ることでしょう.まずは,看護師が放射線治療のことを知り,興味を持つことが大切です.そこで,神奈川県立がんセンターでは,2010年度は看護局と協力して看護職員研修として「がん放射線治療の現場を知ろう!」を実施しました.すでに病棟に勤務している看護師に希望を募り,勤務の合間に放射線治療の講義の後,現場をみてもらいました.「放射線治療の基本から一連の流れがわかり,患者への説明も行いやすくなったと感じました」「病棟側からの視点だった放射線治療を広い視野で理解することができました」などの感想があり,今後も続ける予定です.総括この度の東日本大震災で被災された方々に心からお見舞いを申し上げます.そして,さらに福島原発の放射線による被害も加わり,近隣の方々はもちろんのこと,日本中の人々が大きな不安を持っていることと思います.がん治療の手段として放射線治療を用いている私たちには,患者さんや他科の診療科医師から沢山の質問がありました.がん治療に使われている放射線と放射能との違い,子供を家から出さない方がいいか,水道水を煮沸すれば放射能はなくなるのか,などです.目に見えない放射線への不安に対して,わかりやすい言葉で説明をする大切さをひしひしと感じました.部長 中山優子 先生「がん治療における放射線治療医は多くの可能性をもつ魅力ある分野」

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あらゆるNSAID処方時に心血管リスクへの考慮が必要

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の心血管系に対する安全性について、可能な限りのデータを集めて行われたネットワーク・メタ解析の結果、エビデンスを示すデータはほとんどなかったとの報告が、スウェーデン・ベルン大学社会・予防医学研究所のSven Trelle氏らにより示された。2004年にrofecoxibが心血管イベントリスク増大から販売中止となって以後、選択的COX-2阻害薬そしてNSAID全体へと心血管リスクについての懸念が広がったこと、最近ではリスク・ベネフィットが不十分として米国FDAがetoricoxibを承認しなかったなどの動きを受けて本解析を行ったというTrelle氏は、「どんなNSAIDの処方を書く時も心血管リスクを考慮する必要がある」とまとめている。BMJ誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月11日号)掲載の報告より。NSAIDに関する大規模無作為化試験31試験のデータを解析 試験は、最終更新2009年7月の可能な限り入手できたデータを集めて行われた。収集先は、文献データベース、会報、登録臨床試験、FDAのWEBサイト、関連論文の文献リスト、Science Citation Indexからの引用関連論文報告で、セレコキシブ(商品名:セレコックス)とlumiracoxibの製造元からは追記データが提供された。 解析対象となったのは、NSAID同士またはNSAIDとプラセボを比較検証した大規模な無作為化試験すべてで、2人の研究者各々によって試験適格についての判定が行われた。 主要転帰は心筋梗塞、副次転帰は脳卒中、心血管系疾患による死亡、全死因死亡などで、2人の研究者各々によってデータ抽出が行われた。 31試験、患者11万6,429例、追跡11万5,000人・年が適格となり解析が行われた。患者は、ナプロキセン(商品名:ナイキサン)、イブプロフェン(同:ブルフェン)、ジクロフェナク(同:ボルタレンなど)、セレコキシブ、etoricoxib、rofecoxib、lumiracoxibまたはプラセボに割り付けられていた。NSAIDの心血管系に対する安全を示すエビデンスはほとんどない プラセボとの比較で心筋梗塞との関連性が最も高かったのはrofecoxib(対プラセボ比:2.12、95%信頼区間:1.26~3.56)であり、次いでlumiracoxib(同:2.00、0.71~6.21)であった。 脳卒中についてプラセボとの比較で関連性が最も高かったのはイブプロフェン(同:3.36、1.00~11.6)であり、次いでジクロフェナク(同:2.86、1.09~8.36)であった。 心血管系疾患による死亡についてプラセボとの比較で関連性が最も高かったのはetoricoxib(同:4.07、1.23~15.7)であり、次いでジクロフェナク(同:3.98、1.48~12.7)であった。 Trelle氏は「確定ではないが、調査を行ったNSAIDについて心血管系に対する安全を示すエビデンスはほとんどなかった。ナプロキセンの有害性は最も少ないようであった」と結論し、「どんなNSAIDの処方を書く時も心血管リスクを考慮する必要がある」とまとめている。

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臨床試験報告のバイアス発生には、試験研究者の認識不足が原因

臨床試験のアウトカム報告におけるバイアス発生頻度は高く、理由として試験研究者の認識不足が原因であることが、イギリス・リバプール大学医療統計・保健評価センターのRMD Smyth氏らによる調査研究で明らかにされた。BMJ誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月6日号)掲載より。プロトコルとのアウトカム報告の矛盾特定と試験報告者のインタビューで調査調査は、試験プロトコルとその後に公表された試験報告を比較し、アウトカム報告の矛盾を特定することを目的とした。より広範囲の研究報告および未公表アウトカムの問題も調査するため各試験研究者への電話インタビューも行われた。調査対象者は試験のチーフ研究者もしくは試験リーダーや共著者で、二つのソースから選定された。一つはCochraneソースで、Cochrane libraryの三つの刊行号(2006年issue4、2007年issue1、issue2)において一つ以上の試験が解析されたシステマティックレビューでバイアス発生が推察された2002年以降公表の論文関係者だった。もう一つはPubMedソースで、2007年8月~2008年7月に無作為抽出しインデックス化された試験報告であった。対象となった国は、オーストラリア、カナダ、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカで、不完全なアウトカム報告の発生頻度、研究者がどうしてそのような報告をしたのかについてを主要評価項目に解析が行われた。解析しても報告せず、一方で事前特定アウトカムを解析していないことも解析が行われたのは、268試験(Cochrane:183試験、PubMed:85試験)だった。インタビューには当初161人が要請に応じてくれ、130人(81%)が実際に応じてくれた。しかし「その後の接触に失敗」「プロトコルのコピーを入手できなかった」のどちらかもしくは両方の理由で、最終的にインタビューが行われたのは59/161人(37%)だった。16人が最初の報告時に解析アウトカムの報告に失敗していた。17試験のアウトカムデータはその後の解析が行われていなかった。5試験は事前特定した試験全体にわたるアウトカムの評価を行っていなかった。ほとんどすべての試験で事前特定したアウトカムの解析は行われていたが、報告はされていなかったことも認められ(15/16試験、94%)、バイアス発生につながっていた。事前特定したアウトカムを評価していた試験の約4分の1は、解析がされていなかった(4/17試験、24%)。主要な所見の“傾向”は試験研究者の決定に影響を及ぼすが、集められたすべてのデータの解析はされていなかった。PubMedで無作為に選ばれた21試験のうち14試験(67%)では、有効性または有害事象のアウトカムについていずれかもしくはどちらも報告がされていなかった。また4分の1以上の試験(6/21試験、29%)にバイアスがあることが認められた。Smyth氏は、「不完全なアウトカム報告は高率に起きている。多くの試験研究者がすべてのアウトカムを報告しないこと、プロトコルの変更を報告しないことがエビデンスベースに与える影響について気づいていないようであった。特に臨床設定でのアウトカムの選択に注意するというコンセンサスの欠如が明白で、試験設計、実施、分析、報告に影響を及ぼしている」と結論している。

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妊娠高血圧腎症の予後予測に有用なモデルを開発

妊娠高血圧腎症(子癇前症)で入院した女性のうち有害なアウトカムのリスクが高い患者の同定に有用な、fullPIERS(Pre-eclampsia Integrated Estimate of RiSk)と呼ばれるモデルが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学産婦人科のPeter von Dadelszen氏らによって開発された。妊娠高血圧腎症は単なる蛋白尿を伴う妊娠高血圧を超える病態とされ、全身性の過剰な炎症状態と考えられており、世界的に妊産婦の死亡および罹病の直接的な主原因となっている。妊娠高血圧腎症関連の疾病負担の低減は、ミレニアム開発目標5の趣旨にも関わる重要な課題だという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2010年12月24日号)掲載の報告。妊娠高血圧腎症の入院患者における重篤なアウトカムの予測モデル研究グループは、入院後48時間以内の妊娠高血圧腎症女性患者における死亡あるいは生命を脅かす合併症のリスクの同定を目的としたfullPIERSモデルを開発、検証するプロスペクティブな多施設共同試験を行った。対象は、妊娠高血圧腎症で三次産科施設に入院した女性あるいは入院後に妊娠高血圧腎症を発症した女性であった。対象としたアウトカムは妊産婦死亡あるいは妊娠高血圧腎症の重篤な合併症であった。これらの有害なアウトカムを予測するために、段階的変数減少重回帰(stepwise backward elimination regression)モデルを用いて、定期的に報告された変数の解析を行った。モデルのパフォーマンスは受信者動作特性(ROC)の曲線下面積(AUC)で評価し、過適合(overfitting)の評価には標準的なブートストラップ法を用いた。直接的な患者ケアの変更が可能に妊娠高血圧腎症患者2,023例のうち261例が、入院後に有害なアウトカムを発現した[入院後48時間以内の発現は106例(5%)]。有害な妊産婦アウトカムの予測因子として、妊娠期間、胸痛/呼吸困難、酸素飽和度、血小板数、クレアチニン、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値が確認された。fullPIERSモデルは、入院後48時間以内の有害な妊産婦アウトカムの予測に有用であった(AUC ROC:0.88、95%信頼区間:0.84~0.92)。過適合は認めず、パフォーマンスは7日目まで良好であった(AUC ROC>0.7)。著者は、「fullPIERSモデルは、有害なアウトカムのリスクが高い妊娠高血圧腎症患者を、合併症発現前の7日間において同定し、その結果として分娩のタイミングやケアの場所を変えるなどの直接的な患者ケアの変更が可能となった」と結論し、「臨床試験のデザインの改善や、妊娠高血圧腎症関連の生物医学的研究に多くの情報もたらすことも可能にした」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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肺結核症にビタミンD補助薬は有効か?

肺結核症の集中治療期に標準的な抗生物質治療を受けている患者に、高用量のビタミンD補助薬を投与すると、ビタミンD受容体TaqI tt遺伝子型の患者で喀痰培養陰転時間の短縮効果を認めることが、イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリーのAdrian R Martineau氏らの検討で明らかとなった。抗生物質が普及する以前は、ビタミンDが結核症の治療に用いられており、その代謝産物はin vitroで抗マイコバクテリア免疫を誘導することが知られている。これまでに、ビタミンDが喀痰培養菌に及ぼす影響を評価した臨床試験はないという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月6日号)掲載の報告。ビタミンD補助薬の喀痰培養陰転時間を評価する無作為化プラセボ対照試験研究グループは、ロンドン市在住の喀痰塗抹陽性肺結核症患者に対するビタミンD補助薬の効果を検討する多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験を実施した。146例が、ビタミンD3 2.5mgあるいはプラセボをそれぞれ4回(ベースライン、標準的な抗生物質治療開始後14、28、42日)投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、抗生物質治療開始から喀痰培養陰転までの期間とした。ビタミンD受容体であるTaqIおよびFokIの遺伝子多型解析を行い、ビタミンD受容体遺伝子型がビタミンD3に対する反応に及ぼす効果を評価するために相互作用解析を実施した。喀痰培養陰転時間に差はなし126例(ビタミンD群62例、プラセボ群64例)で主要評価項目の解析が可能であった。喀痰培養陰転までの期間の中央値は、ビタミンD群が36.0日、プラセボ群は43.5日であり、両群間に有意な差は認めなかった(補正ハザード比:1.39、95%信頼区間:0.90~2.16、p=0.14)。TaqI遺伝子型ではビタミンD補助薬が喀痰培養陰転時間に影響を及ぼしており(相互作用p=0.03)、TaqI tt遺伝子型で陰転時間の短縮効果が認められた(補正ハザード比:8.09、95%信頼区間:1.36~48.01、p=0.02)。FokI遺伝子型ではビタミンD補助薬の効果は認めなかった(相互作用p=0.85)。56日目における平均血清25-hydroxyvitamin D濃度は、ビタミンD群が101.4nmol/L、プラセボ群は22.8nmol/Lと有意な差が認められた(両群の差の95%信頼区間:68.6~88.2、p<0.0001)。著者は、「肺結核症に対する集中治療を受けている患者にビタミンD3 2.5mgを補助的に4回投与すると、血清25-hydroxyvitamin D濃度が増加した。全体としてビタミンDは喀痰培養陰転時間を短縮しなかったが、ビタミンD受容体TaqI遺伝子多型がtt遺伝子型の患者では有意な短縮効果が認められた」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸治療は有効か―その1

2歳未満の急性中耳炎について、即時に抗菌薬治療を行うべきか、それとも経過観察をすべきか、国によって勧告は異なっている。米国ピッツバーク大学小児科部門のAlejandro Hoberman氏らは、無作為化プラセボ対照試験の結果、生後6~23ヵ月の2歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)の10日間投与は、症状消失期間の短縮など短期的ベネフィットをもたらすと報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。7日間の症状スコア、アモキシシリン-クラブラン酸投与群の方が低い試験は、発症48時間以内で両親によるAOM-SOS(Acute Otitis Media Severity of Symptoms)スコア評価が3以上、中耳滲出液が認められ、中等度、鼓膜隆起、耳痛を伴う腫脹があるなど厳密な診断基準で急性中耳炎と診断された生後6~23ヵ月児291例を無作為に、10日間アモキシシリン-クラブラン酸を投与される群(144例)もしくはプラセボ投与群(147例)に割り付け、症状についての反応と臨床的失敗率を評価した。結果、初期症状の消失は、アモキシシリン-クラブラン酸投与群の小児については、投与2日で35%に、4日までに61%、7日までに80%に認められた。一方プラセボ投与群では、初期症状の消失は2日で28%、4日で54%、7日で74%に認められるという結果であった(全体の比較のP=0.14)。症状の持続的な消失も同様の傾向が認められた。アモキシシリン-クラブラン酸投与群の小児については、投与2日で20%に、4日までに41%、7日までに67%に認められる一方、プラセボ投与群では、同14%、36%、53%であった(全体の比較のP=0.04)。治療7日間の症状スコアの平均値は、プラセボ群よりもアモキシシリン-クラブラン酸投与群の方が低かった(P=0.02)。厳密な基準で診断された患児への短期的ベネフィットは大きい臨床的な失敗(耳鏡検査で急性感染症の徴候の持続していることを確認)率も、プラセボ群と比べてアモキシシリン-クラブラン酸投与群の方が低かった。具体的には、4~5日もしくはそれ以前の受診時の失敗率は4%対23%(P<0.001)、10~12日もしくはそれ以前の受診時の失敗率は16%対51%(P<0.001)であった。有害事象については、乳様突起炎がプラセボ群で1例認められた。また、アモキシシリン-クラブラン酸投与群の方が、下痢、おむつ皮膚炎が多くみられた。鼻咽頭の非感受性肺炎球菌Streptococcus pneumoniaeの保菌率については、両群とも有意な変化は認められなかった。これら結果を受けてHoberman氏は、「重症度に関係なく、アモキシシリン-クラブラン酸の10日間投与は、相当な短期的ベネフィットをもたらす」と結論。その上で、「このベネフィットについては、有害事象だけでなく耐性菌出現のことも重視し、治療は厳密な基準で診断された患児に限定して行うことが強調される」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸治療は有効か―その2

急性中耳炎児への抗菌薬治療の有効性については、なお議論が続いている。フィンランド・トゥルク大学病院小児科部門のPaula A. Tahtinen氏らは、二重盲検無作為化試験の結果、3歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)投与は、プラセボと比べて有害事象は多いがベネフィットがあると報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。8日間の治療失敗62%低下、レスキュー治療の必要性81%低下試験は二重盲検無作為化試験で、(1)耳鏡検査で中耳滲出液が認められ隆起や可動性の喪失・制限など二つ以上の鼓膜所見があり、(2)鼓膜に紅斑など一つ以上の急性炎症性徴候が認められ、(3)発熱、耳痛など小児が急性症状を呈する、といった厳密な基準で急性中耳炎と診断された生後6~35ヵ月児319例を対象とした。被験児は、無作為に、7日間アモキシシリン-クラブラン酸を投与される群(161例)もしくはプラセボ投与群(158例)に割り付けられ、治療開始から終了までの8日間における治療失敗までの期間を主要転帰に評価が行われた。治療失敗の定義は、有害事象を含む小児の病態全般と耳鏡検査下での急性中耳炎の徴候とした。結果、治療失敗は、アモキシシリン-クラブラン酸投与群は18.6%であったが、プラセボ群は44.9%に認められた(P

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