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重症ANCA関連血管炎、リツキシマブは長期に有効/NEJM

 抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の重症(臓器障害)例の寛解導入と維持の長期(18ヵ月間)有効性について、リツキシマブ(商品名:リツキサン)の1コース(週に1回を4週間)単独投与の治療が、継続的に免疫抑制薬を投与する従来の免疫療法と、同程度の効果があることが明らかにされた。米国・メイヨークリニック財団のUlrich Specks氏らが、多施設共同無作為化二重盲検ダブルダミー非劣性試験「RAVE」を行い報告した。ANCA患者は大部分が最終的に再発するため、導入療法の選択においては、寛解までの期間、再発の重症度、治療の累積による毒性が重要な因子となる。RAVE試験では、6ヵ月時点の寛解達成がリツキシマブ治療群において優れていたことが報告されていた。NEJM誌2013年8月1日号掲載の報告より。6ヵ月までに完全寛解し18ヵ月時点でも寛解維持がされているかを比較検討 重症ANCA患者に対する治療として比較検討されたのは、リツキシマブ(375mg/m2体表面積を週1回)を4週間投与しその後はプラセボを投与する治療(リツキシマブ1コース治療)と、シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)3~6ヵ月間投与+アザチオプリン12~15ヵ月間投与する治療(従来の免疫療法)であった。 主要評価指標は、6ヵ月までに完全寛解し、18ヵ月時点でも寛解が維持されていることとした。 被験者は、2004年12月~2008年6月の間に登録された197例の重症ANCA患者で、リツキシマブ治療群に99例、従来免疫療法群に98例が無作為に割り付けられた。リツキシマブ治療群は非劣性基準をクリア 6ヵ月までの完全寛解達成は、以前に報告したように、従来免疫療法群53%に対し、リツキシマブ治療群は64%だった。 12ヵ月、18ヵ月時点で完全寛解を維持していたのは、それぞれリツキシマブ治療群では48%、39%であったのに対し、従来免疫療法群は39%、33%で、リツキシマブ治療群は事前規定の非劣性基準を満たした(非劣性マージン20%でp<0.001)。 完全寛解の持続期間または再発の頻度および重症度を含むいかなる有効性基準にも、有意な群間差はみられなかった。 ベースラインで再燃例だった101例の患者においては、6ヵ月時点(p=0.01)、12ヵ月時点(p=0.009)ではリツキシマブ治療群が従来免疫療法群より優れていた。しかし、18ヵ月時点(p=0.06)では優越性が認められず、同時点においてリツキシマブ治療群のほとんどの患者においてB細胞の再構築が認められた。 有害事象については、全患者について登録から試験終了時まで収集されたが、有意な群間差は認められなかった。

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小学生へのにきび治療薬処方の実態

 米国・ウェイクフォレスト大学のScott A. Davis氏らは、米国食品医薬品局(FDA)が12歳以上への処方を認可しているざ瘡(にきび)治療薬について、思春期(12~18歳)とそれよりも年少者(本研究では7~11歳と定義)への処方について比較すること、および皮膚科医と小児科医で処方パターンに違いがあるかを調べた。年少者のざ瘡有病率は増大しているが、これまでFDAが12歳以上への適応を認可しているざ瘡治療薬が、この年齢層に処方されているのかは不明であったという。Pediatric Dermatology誌オンライン版2013年7月22日号の掲載報告。 研究グループは、ざ瘡と診断された小児の治療に関するデータを、1993~2009年の全米外来医療調査(NAMCS)から集めて解析を行った。集めたデータを、年齢層と医師の専門分野で層別化し検討した。 主な結果は以下のとおり。・医師は、年少者(7~11歳)に対し、多岐にわたるFDA認可薬を適応外処方していた。・主要な治療は、アダパレン(14.4%、商品名:ディフェリン)、過酸化ベンゾイル(12.8%、国内未承認)、トレチノイン(12.5%、国内未承認)などの外用薬によるものであった。・年少者への治療は、医師の専門によってかなり異なっていた。皮膚科医は外用レチノイドの頻度が高く、プライマリ・ケア医は抗生物質(とくに経口薬)を好んで処方していた。・本研究は、NAMCSからの痤瘡の重症度および形態に関するデータが不足していることと、縦断的データが欠如している点で限界があった。・年少者のざ瘡に対して、FDA認可の治療選択肢が限られている中で、適応外処方は一般的に行われていることが明らかになった。また本研究によって、その処方パターンから、小児科医の間に知識のギャップが存在する可能性があることが判明した。

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第4回医療法学シンポジウム 開催のご案内

 EBM(Evidence-based medicine)の推進とともに、各診療領域において診療ガイドラインの整備が進められています。 診療ガイドラインは、「医療者と患者が特定の臨床状況で適切な決断を下せるよう支援する目的で、体系的な方法に則って作成された文書」のことであり、肝診療ガイドライン2005年版前文にも「本ガイドラインが今後の肝細胞の診療に大いに役立つものと信じるが、臨床の現場での判断を強制するものではないし、医師の経験を否定するものでもない。  本ガイドラインを参考にした上で、医師の裁量を尊重し、患者の意向を考慮して個々の患者に最も妥当な治療法を選択することが望ましい。」とされているとおり、個別具体的な患者に対する診療を行うに当たり絶対的に従わなければならないルールではありません。 しかしながら、ひとたび医療訴訟となった場合、診療ガイドラインは医療水準を検討するに当たり、最も重要な文書となります。 この現実は、司法におけるどのような理論からきているのか。それに対し、医療者は診療ガイドラインは絶対的なルールではないと言い続けるほかないのか。本シンポジウムでは、医療と司法の双方の立場からあるべき診療ガイドライン像を検討したいと考えております。司法と医療の相互理解の促進という「医療法学」の世界にぜひ、触れてみてください。■メインテーマ 「医療法学的視点から見た診療ガイドラインのあり方」■開催日時 2013年9月14日(土) 13:00~17:00(17:30~レセプション/要予約)■参加費 無料(レセプション3,000円) ■会場 東京大学医学部附属病院 入院棟A15階 大会議室(〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1)  ・ 東大病院アクセスマップ  ・ 構内マップ■対象 医師、看護師、医療従事者、医学生、法学部生 など■プログラム  ・13:00~13:10 開会のあいさつ    古川 俊治氏(慶應義塾大学法科大学院教授・医学部外科教授:医師、弁護士)  ・13:10~13:40 医療訴訟において診療ガイドラインが重視された実例    富永 愛氏(富永愛法律事務所:医師、弁護士)   ・13:40~14:10 医療者から見た診療ガイドライン    山田 奈美恵氏(東京大学医学部附属病院総合研修センター特任助教:医師)  ・14:20~14:50 裁判における診療ガイドライン等文献の法的位置づけ    山崎 祥光氏(井上法律事務所:弁護士、医師)  ・14:50~15:20 医療法学的視点から見た診療ガイドラインのあり方    大磯 義一郎氏(浜松医科大学医学部教授〔医療法学〕、帝京大学医療情報システム研究    センター客員教授:医師、弁護士)  ・15:20~15:50 医療法学的視点から見たよりよい診療ガイドラインの提示    小島 崇宏氏(北浜法律事務所:医師、弁護士)  ・16:00~16:50 パネルディスカッション  ・16:50~17:00 閉会のあいさつ    土屋 了介氏(公益財団法人がん研究会 理事)■申込 氏名、所属、連絡先、レセプション参加の有無を記載のうえ、    事務局(lawjimu@hama-med.ac.jp)までお申込みください。●参考 医療法学の学習コンテンツ「MediLegal」はこちら http://www.carenet.com/report/series/litigation/medilegal/index.html

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第17回 健康診断の落とし穴 紛争化する原因を考える

■今回のテーマのポイント1.集団健康診断における胸部X線写真の読影に求められる医療水準は、通常診療における医療水準より低い2.しかし、ひとたび異常を発見し、前年度の写真と比較読影するに到った場合は、通常診療と同等の医療水準が求められる3.国民の健康診断に対する「期待感」を過剰に保護することは、実医療現場に有害な作用を及ぼすおそれがある事件の概要患者X(死亡時57歳)は、毎年、Y病院にて会社の定期健康診断として胸部X線撮影を行っていました。昭和62年4月21日に行われた会社の定期健康診断において、胸部X線上、右肺上部に空洞を伴う陰影が認められたことから、読影を行ったA医師は、一旦、Xの健康診断票に要精密検査としました。その後、A医師は、前年度の定期健康診断時の胸部X線写真と比較したところ、変化がなく、形態も悪性を示しておらず逐年的な健康診断で足りると判断して、Xの健康診断票の要精密検査の記載を抹消し、精密検査は不要としました。Xは、特に病院を受診することもなかったところ、翌昭和63年6月に行われた定期健康診断において、右肺上部の陰影の増大を指摘されました。2日後に再度検査(直接撮影)を行ったところ、やはり右肺上部の陰影が増大していたことから、Xは、要受診と指示されました。しかし、Xは病院を受診することはありませんでした。平成元年3月にY病院で行われた胃の精密検診を受けた際に撮影した胸部X線上、右肺上部に異常があると診断されたことから、Z病院を紹介されました。Xは、同年4月にZ病院で精密検査を受け、肺がんと診断され、同年6月に、右肺切除術を受けましたが、翌平成2年10月、肺がんにて死亡しました。これに対し、Xの妻と子は、昭和62年の胸部X線撮影の際に要検査とすべきであったなどと争い、2050万円の損害賠償を請求しました。事件の経過患者X(死亡時57歳)は、毎年、Y病院にて会社の定期健康診断として胸部X線撮影を行っていました。昭和62年4月21日に行われた会社の定期健康診断において、胸部X線上、右肺上部に空洞を伴う陰影が認められたことから、読影を行ったA医師は、一旦、Xの健康診断票に要精密検査としました。その後、A医師は、前年度の定期健康診断時の胸部X線写真と比較したところ、変化がなく形態も悪性を示しておらず逐年的な健康診断で足りると判断して、Xの健康診断票の要精密検査の記載を抹消し、精密検査は不要としました。Xは、特に病院を受診することもなかったところ、翌昭和63年6月に行われた定期健康診断において、B医師から右肺上部に空洞を伴う陰影の増大を指摘されました。2日後に再度検査(直接撮影)を行ったところ、やはり右肺上部の陰影が増大していたことから、B医師は、Xの健康診断票に「昨年と変化あり」「要受診」と記載した上で、Xにもう一度検査を受けるよう伝えてほしいと看護師に伝え、看護師、会社の衛生管理代理を介して、口頭でXに対し、また検査を受けるよう指示がなされました。しかし、B医師は、胸部X線についてはすでに直接Xに伝えていたことから、定期健康診断の検査医意見欄や指導票の病名欄および指導事項欄には記載しませんでした。それをみたXは、直接撮影を行ったことでこれでよかったのかと思い、病院を受診することはありませんでした。平成元年3月にY病院で行われた胃の精密検診を受けた際に撮影した、胸部X線上、右肺上部に異常があると診断されたことから、Z病院を紹介されました。Xは、同年4月にZ病院で精密検査を受け、肺がんと診断され、同年6月に、右肺切除術を受けましたが、翌平成2年10月、肺がんにて死亡しました。事件の判決Xの胸部エックス線間接撮影フィルムの所見から肺を疑うことは困難であり、A医師が右所見から肺を疑い肺に対する精密検査を指示すべきであったとはいえない。しかしながら、昭和62年度の定期健康診断における胸部エックス線間接撮影フィルムにおける陰影は前年度のものと比較して変化していたものであるから、前年度のフィルムと比較して右陰影に変化がないとしたA医師の判断は、誤っていたものと認められる。これに対して、被告は、昭和62年度のエックス線撮影フィルムに発見された陰影を前年度のものと比較して変化がないとしたA医師の判断は、医師に求められる一定水準に満たす専門的知識に基づくものであり、医師に認められた裁量の範囲内の問題であるとし、また、肺である可能性の少ない陰影がある場合に安易に精密検査に付することを義務づけるのは妥当ではないと主張する。確かに、定期健康診断においては、短時間に大量の間接撮影フィルムを読影するものであるから、その中から異常の有無を識別するために医師に課せられる注意義務の程度にはおのずと限界があり、鑑定人が供述するように、昭和62年度定期健康診断時に撮影されたエックス線間接撮影フィルムにおける陰影は、短時間の読影では見逃されるおそれがあることも否定できないところ、右読影の過程において本件異常陰影を発見しフィルムの比較読影を試みたA医師の判断は、一面において要求される水準を十分に満たすものであったと認められる。しかしながら、A医師が本件異常陰影を発見し、一度は精密検査が必要と考え、Xのフィルムにつき前年度のものと比較読影して右陰影につき医学的判断を下す段階においては、前記のように大量のフィルムを読影するという状況ではなく、認識した個別の検査結果の異状の存在を前提に一般的に医師に要求される注意を払って判断しなければならないものと考えられる。そして、前述のとおり鑑定の結果によれば、本件異常陰影が前年度の陰影と対比して客観的に変化しているのであるから陰影の変化の有無という判断自体には裁量の余地はないものと認められ、A医師は右判断において要求される注意義務を怠ったものといわざるを得ない。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(富山地判平成6年6月1日 判時1539号118頁)ポイント解説今回からは、各論として、各診療領域における代表的な紛争を取り上げていきます。各論の最初は、健康診断です。「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」(労働安全衛生法66条1項)と定められており、行われる健康診断の内容も、労働安全衛生規則44条において、表のように定められています。表 一般定期健康診断の内容●労働安全衛生規則(定期健康診断)第四十四条1項 事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。 一  既往歴及び業務歴の調査 二  自覚症状及び他覚症状の有無の検査 三  身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 四  胸部エックス線検査及び喀痰検査 五  血圧の測定 六  貧血検査 七  肝機能検査 八  血中脂質検査 九  血糖検査 十  尿検査十一  心電図検査2項  第一項第三号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。4項  第一項第三号に掲げる項目(聴力の検査に限る。)は、四十五歳未満の者(三十五歳及び四十歳の者を除く。)については、同項の規定にかかわらず、医師が適当と認める聴力(千ヘルツ又は四千ヘルツの音に係る聴力を除く。)の検査をもつて代えることができる。健康診断に関する紛争において、最も多いのが「胸部X線写真における肺がんの見落とし事例」です。ただ、医療者からしてみると、他の情報に乏しい受診者のX線フィルムのみを短時間の間に大量に読影しなければならないこと、健康診断の目的としても、明らかな異常影が発見されれば足りるものであること、通常の診療のように特定の疾患を疑って読影する場合とは異なる状況であることなどから、あまりに要求水準が高くなると現場に不可能を強いることとなりますし、本件において被告が主張しているように何でもかんでも要精密検査にせざるを得なくなります。この健康診断の特殊性については、裁判所も一定の理解を示しており、「集団健診におけるレントゲン写真を読影する医師に課せられる注意義務は、一定の疾患があると疑われる患者について、具体的な疾患を発見するために行われる精密検査の際に医師に要求される注意義務とは、自ずから異なるというべきであって、前者については、通常の集団健診における感度、特異度及び正確度を前提として読影判断した場合に、当該陰影を異常と認めないことに医学的な根拠がなく、これを異常と認めるべきことにつき読影する医師によって判断に差異が生ずる余地がないものは、異常陰影として比較読影に回し、再読影して再検査に付するかどうかを検討すべき注意義務があるけれども、これに該当しないものを異常陰影として比較読影に回すかどうかは、読影を担当した医師の判断に委ねられており、それをしなかったからといって直ちに読影判断につき過失があったとはいえないものと解するのが相当である」(仙台地判平成8年12月16日 判タ950号212頁)としたものや、傍論ではありますが、最高裁においても「多数者に対して集団的に行われるレントゲン健診における若干の過誤をもつて直ちに対象者に対する担当医師の不法行為の成立を認めるべきかどうかには問題がある」(最判昭和57年4月1日 民集36巻4号519頁)などと一般の診療とは異なる医療水準で判断すべきと判示しています。しかし、本判決は、同様に定期健康診断において読影に求められる医療水準は通常診療におけるそれとは異なるとしたものの、ひとたび医師が異常陰影を認め、前年度の写真と比較読影すると判断した段階においては、求められる医療水準は、もはや集団健診時のものではなく、通常の診療と同等のものが求められると判示しました。確かに、健康診断における胸部X線写真の読影に求められる医療水準を2段階でとらえる裁判所の考え方は一見妥当なようにみえます。しかし、このような厳しい判決の結果、実医療現場において、従来なら比較読影の結果、「著変なし。経過観察」としていた事例が「要精密検査」とされることが増加し、本来ならば不要な検査が行われるなど、萎縮医療・過剰診療が行われるようになりました。そもそも、胸部X線撮影による肺がん検診によって、肺がんによる死亡率は減少しないという報告がなされるなど、検診自体の有効性にも疑問が呈されています。そのような中、健康診断に対する国民の「期待感」を過剰に保護することは、バランスを失することとなるのではないでしょうか。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)富山地判平成6年6月1日 判時1539号118頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。仙台地判平成8年12月16日 判タ950号212頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。最判昭和57年4月1日 民集36巻4号519頁

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家庭血圧を薬剤師とともに管理することで降圧達成率は大幅に改善(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(123)より-

家庭血圧データを薬局に電送し、薬剤師が血圧管理に介入することで、降圧達成率が通常の血圧管理よりも格段に高くなることをランダム化試験で証明した点で価値のある研究である。 家庭血圧値が診察室血圧値よりも心血管疾患発症や死亡の予測に有用であることは、すでに多くの追跡調査によって明らかになっている。診察室血圧だけでは、白衣高血圧や仮面高血圧などの病態が把握できない。やはり家庭という普段の場所での日常の血圧管理が予後を決定するのである。 また、高血圧患者は非常に多く、外来も混雑するために、実地医家は高血圧患者の家庭血圧指導をきめ細かく行う時間的余裕がないのが現状である。本試験は、薬剤師が、電送された家庭血圧値をみながら生活習慣の指導と治療薬アドヒアランスをチェックすることで、降圧達成率が大幅に改善することを示した。このようなシステムの導入すると無駄な降圧薬の処方も減り、医療経済の観点からも良い方向に向かう。 わが国でもこのような方法を取り入れるべきである。私の勤務する板橋区では、調剤薬局に血圧計を設置してもらい、家庭血圧計の正しい測り方を指導していただいている。また家庭血圧日誌は調剤薬局で薬剤師さんに提示するよう指導している。さらに降圧薬を変更したり用量変更した場合には、その理由を処方箋の空きスペースに簡単に記載することで、薬剤師さんも治療に参加しているという意識を高めてもらうようにしている。

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抗精神病薬治療中の若者、3割がADHD

 米国・ザッカーヒルサイド病院のMichael L. Birnbaum氏らは、若年者の注意欠陥多動性障害(ADHD)における抗精神病薬使用に関する薬剤疫学データのシステマティックレビューとプール解析を実施した。その結果、若年ADHDの約1割で抗精神病薬が投与されていること、抗精神病薬による治療を受けている若年者の約3割にADHDがみられる状況を報告した。Current Psychiatry Reports誌2013年8月号の掲載報告。 若年ADHDへの抗精神病薬の処方について懸念が高まっているが、利用可能なデータベースは個々の試験に限られている。そこで、全体的な頻度と経年的な傾向を明らかにすることを目的に、若年ADHDにおける抗精神病薬使用に関する薬剤疫学データのシステマティックレビューとプール解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ヒットした1,806件の試験のうち21件で、以下の3つの集団解析データの報告を含んでいた。1)抗精神病薬による治療を受けている若年者( 15件、34万1,586例)2)若年ADHD(9件、619万2,368例)3)一般の若年者(5件、1,428万4,916例)・抗精神病薬による治療を受けている若年者の30.5±18.5%がADHDを有していた。その割合は、1998年から2007年の間に21.7±7.1%から27.7 ±7.7%(比= 1.3±0.4)へと増加していることが長期試験で示された。・若年ADHDの11.5±17.5%が抗精神病薬の投与を受けていた。その割合は、1998年から2006年の間に5.5±2.6%から11.4±6.7%(比= 2.1±0.6)へと増加していることが長期試験で示された。・一般の若年者の0.12±0.07%でADHDが確認され、抗精神病薬の投与を受けていた。その割合は、1993年から2007年の間に0.13±0.09%から0.44±0.49%(比= 3.1±2.2)へと増加していることが長期試験で示された。・以上の知見より、抗精神病薬は臨床的に重要かつ大勢の若年ADHDに使用されていることが示唆された。処方の理由およびリスク対ベネフィットに関するエビデンスが少ないため、さらなる検討が望まれる。関連医療ニュース 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学 摂食障害、成人期と思春期でセロトニン作動系の特徴が異なる!

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肺保護的換気法、腹部大手術アウトカムを改善/NEJM

 術後肺合併症のリスクがある腹部大手術施行患者では、術中の肺保護的な換気法により臨床アウトカムが改善され、医療資源利用が抑制されることが、フランス・クレルモンフェラン大学中央病院(CHU)付属エスタン病院のEmmanuel Futier氏らが行ったIMPROVE試験で示された。低1回換気量および呼吸終末陽圧(PEEP)による肺保護的な換気法は、重症患者に対する最良の換気法とされるが、麻酔下に大手術を施行された患者における役割は、これまで知られていなかった。NEJM誌2013年8月1日号掲載の報告。400例を無作為化試験で評価 IMPROVE試験は、肺合併症リスクを有し、腹部大手術を受けた患者に対する肺保護的換気法の有用性を評価する多施設共同二重盲検並行群間無作為化試験。対象は、術前の評価で術後肺合併症リスクが中等度~高度と判定され、2時間以上を要すると予測される腹腔鏡または非腹腔鏡的な待機的腹部大手術が予定されている40歳以上の患者であった。 参加者は、肺保護的換気法(1回換気量:6~8mL/kg、PEEP:6~8cmH2O、気管挿管後30分ごとにリクルートメント手技を繰り返す)を施行する群または非保護的な換気法(1回換気量:10~12mL/kg、PEEPやリクルートメント手技は行わない)を施行する群に無作為に割り付けられた。 2011年1月~2012年8月までにフランスの7施設から400例が登録された。非保護的換気法群に200例(平均年齢63.4歳、男性60.5%、開腹手術78.0%)、肺保護的換気法群にも200例(61.6歳、58.0%、79.5%)が割り付けられ、30日間のフォローアップが行われた。診断名は約8割ががんであり、手技としては膵頭十二指腸切除術が約4割、肝切除術が約2割、大腸切除術が約2割であった。7日以内の肺・肺外合併症リスクが60%低下 主要評価項目(術後7日間における肺および肺外合併症の複合アウトカム)の発生率は、肺保護的換気法が10.5%(21/200例)と、非保護的換気法群の27.5%(55/200例)に比べ有意に低かった(調整相対リスク:0.40、95%信頼区間[CI]:0.24~0.68、p=0.001)。術後30日間の発生率は、それぞれ12.5%(25例)、29.0%(58例)であり、やはり有意な差が認められた(同:0.45、0.28~0.73、p<0.001)。 術後7日間に急性の呼吸器不全で非侵襲的な換気や挿管を要した患者の割合は、肺保護的換気法群が5.0%(10例)であり、非保護的換気法群の17.0%(34例)に比し有意に低かった(同:0.29、0.14~0.61、p=0.001)。 術後7日間の肺合併症発生率は、Grade 1/2は肺保護的換気法群12.5%(25例)、非保護的換気法群15.0%(30例)と両群で同等であった(同:0.67、0.39~1.16、p=0.16)が、Grade 3以上はそれぞれ5.0%(10例)、21.0%(42例)であり、肺保護的換気法群で有意に少なかった(同:0.23、0.11~0.49、p<0.001)。 入院期間中央値は、肺保護的換気法群が有意に短かった(11vs. 13日、調整平均差:-2.45日、95%CI:-4.17~-0.72、p=0.006)。ICU入室期間中央値は両群間に差はなかった(6 vs. 7日、-1.21、-4.98~7.40、p=0.69)。 著者は、「肺保護的換気法は腹部大手術を受けた患者の臨床アウトカムを改善し、医療資源利用を抑制することが示された」とし、「予想よりも合併症発生率がわずかに高かったが、これは低リスク例を除外したことなどによると考えられる」と考察している。

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高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫、早期介入が有用/NEJM

 くすぶり型多発性骨髄腫の高リスク例については、レナリドミド(商品名:レブラミド)、デキサメタゾン(同:レナデックス)を用いた治療を早期に開始したほうがベネフィットを得られることが、スペイン・サラマンカ大学病院のMaria-Victoria Mateos氏らによる検討の結果、明らかにされた。くすぶり型多発性骨髄腫に対する治療は、有効な治療薬がほとんどなく、利用可能な治療薬は長期毒性への懸念があり、症状が発現するまでは経過観察が標準とされている。背景には、同疾患の活動性疾患への進行リスクが低い(年率10%)ことがあるが、研究グループは、これまで研究ターゲット集団として検討されていなかった、同患者の40%を占める高リスク例(進行する確率が2年で50%)について、早期介入の有用性を検討する第3相無作為化オープンラベル試験を行った。NEJM誌2013年8月1日号の掲載報告。高リスクの119例を治療群と観察群に無作為化 試験は、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫患者119例を、治療群と観察群に無作為に割り付けて行われた。治療群の患者は、1サイクル4週間の導入療法[レナリドミド25mg/日(1~21日目)+デキサメタゾン20mg/日(1~4日目、12~15日目)投与]を9サイクル受け、その後に1サイクル28日間の維持療法(1~21日目にレナリドミド10mg/日投与)を2年間受けた。 主要エンドポイントは、症候性疾患に進行するまでの期間とした。副次的エンドポイントは奏効率、全生存率、安全性とした。治療群の進行ハザード比0.18、死亡ハザード比0.31 119例のうち、57例が治療群に、62例が観察群に割り付けられた。ベースラインの両群の特性は均等であった。 追跡期間中央値40ヵ月後、進行までの期間中央値は、治療群(未到達)が観察群(21ヵ月)よりも有意に延長した(治療群の進行のハザード比[HR]:0.18、95%信頼区間[CI]:009~0.32、p<0.001)。 また、3年生存率も治療群のほうが高率であった(94%vs. 80%、治療群の死亡のHR:0.31、95%CI:0.10~0.91、p=0.03)。 治療群では部分奏効以上の達成が、導入療法後に79%、維持療法中では90%で認められた。 毒性は主にグレード2以下であった。

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逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症のリスク因子は大きく異なる

 逆流性食道炎(RE)と非びらん性胃食道逆流症(NERD)のリスク因子は、病態生理学的に大きく異なることが、東京大学医学系研究科消化器内科の皆月ちひろ氏らの研究で明らかになった。また、RE有病率はヘリコバクター・ピロリ(HP)感染群よりも除菌群で有意に高かったのに対して、NERD有病率は両群で有意な差を認めなかった。HP除菌療法を行う際には、REの発症および進行につながることを考慮すべきである。PLoS One誌2013年7月26日号の報告。 胃食道逆流症(GERD)は高い有病率にもかかわらず、そのリスク因子は依然として論争中である。これはおそらく、REとNERDの区別および胃周辺部の評価が不十分であるためと考えられる。本研究の目的は、HP感染と胃の萎縮の評価に基づいて、REとNERDの独立した背景因子を定義することであった。 対象は、上部消化管内視鏡検査を受けた健常人1万837人(男性6,332人、女性4,505人、20~87歳、日本人)。対象のうち、「食道の粘膜破壊を認める」1,722人(15.9%)がRE、「食道の粘膜破壊を認めず、胸焼けや胃酸逆流を認める」733人(6.8%)がNERDと診断された。REおよびNERDと診断されなかった被験者を対照群とし、RE群とNERD群の背景因子は、ロジスティック回帰分析を用いて標準化係数(SC)、オッズ比(OR)、p値で評価した。 主な結果は以下のとおり。・REと正の相関を認めた因子は、男性(SC=0.557、OR=1.75)、HP非感染(SC=0.552、OR=1.74)、ペプシノーゲンI/II比高値(SC=0.496、OR=1.64)、BMI高値(SC=0.464、OR=1.60)、飲酒(SC=0.161、OR=1.17)、加齢(SC=0.148、OR=1.16)、喫煙(SC=0.129、OR=1.14)であった。・NERDと正の相関を認めた因子は、HP感染(SC=0.106、OR=1.11)、女性(SC=0.099、OR=1.10)、若年齢(SC=0.099、OR=1.10)、ペプシノーゲンI/II比高値(SC=0.099、 OR=1.10)、喫煙(SC=0.080、OR=1.08)、BMI高値(SC=0.078、OR=1.08)、飲酒(SC=0.076、OR=1.08)であった。・REの有病率は、HP感染群(2.3%)と比較し、HP除菌成功群(8.8%)で有意に高かった(p<0.0001)。・NERDの有病率は、HP感染群(18.2%)とHP除菌成功群(20.8%)で有意な差を認めなかった(p= 0.064)。

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メタボは上肢痛のリスク因子か

 内臓脂肪は上肢痛のリスク因子であるようだ。フィンランド労働衛生研究所のTapio Vehmas氏らが、コホート研究の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究にて、そのメカニズムを解明し、減量が疼痛管理に有用かどうかを明らかにすることが必要だ」とまとめている。Pain Medicine誌2013年7月号(オンライン版2013年5月3日号)の掲載報告。 研究グループは、代謝障害、とくに内臓肥満の徴候が上肢痛と関連があるかどうかを評価することを目的としたコホート研究を行った。 対象は、上肢障害のため産業保健サービスで医師の診察を受けている労働者177例であった(女性154人、男性23人、年齢20~64歳、平均年齢45歳)。 対象者について、体重、身長、ウエスト周囲径、ヒップ周囲径を計測し、内臓脂肪量、肝臓脂肪量ならびに頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)を超音波測定するとともに、調査開始時、2、8、12、52および104週後に、疼痛強度と疼痛による睡眠障害度を視覚的アナログスケールで評価した。 主な結果は以下のとおり。・すべての肥満に関する指標が、疼痛強度ならびに疼痛による睡眠障害度の両方と関連していた。・内臓脂肪の厚さは、疼痛強度および疼痛の睡眠妨害度の最も強い予測因子であった。・IMTは、疼痛強度および疼痛の睡眠妨害度のどちらとも関連していなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

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エキスパートに聞く!「認知症診療」Q&A 2013 Part1

CareNet.comでは認知症特集を配信するにあたって、事前に会員の先生方から認知症診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、大阪大学 数井裕光先生にご回答いただきました。2回に分けて掲載します。今回は、認知症とうつの鑑別方法、抗認知症薬の投与開始時期と効果の判定方法、増量のタイミング、コリンエステラーゼ阻害薬にメマンチンを併用する場合のタイミングについての質問です。Part2(Q6~Q10)はこちら1 認知症とうつ病の鑑別方法を教えてください。うつ病は高齢者に多く、患者さんやご家族が物忘れを訴えることもしばしばです。また注意力や集中力の低下のために、認知機能検査の得点が初期の認知症の患者さんと同程度に低下することもあります。このため、認知症とうつ病との鑑別は臨床的に重要です。うつ病と比べて認知症(とくにアルツハイマー病)で認められやすい症状を列挙すると、初発症状が物忘れである(うつ病では気分の落ち込みや意欲低下)記憶検査で自由再生も再認も障害される(たとえば、3単語を用いた記憶検査などで、覚えた単語をヒントなしに患者さんに思い出してもらう想起法を「自由再生」と呼ぶ。一方、答えの単語とそうでない単語をランダムに提示し、あったかなかったかを答えてもらう想起法を「再認」と呼ぶ。うつ病では自由再生は障害されても再認は障害されにくい)物忘れの自覚と深刻味が乏しい(うつ病では過剰に訴えることが多い)見当識障害を伴う(うつ病では見当識は保たれる)うつ病の既往がないなどです。頭部MRIや脳血流検査などの神経画像検査が鑑別に必要な場合もあります。とくに、早発性のアルツハイマー病患者さんでは上記の認知症の特徴が明らかにならず、MRIでも明瞭な萎縮を認めないことがあるので、脳血流検査が必要となることがあります。うつ病と診断していても、抗うつ薬などの治療の効果が乏しかったり、認知障害が進行したりする場合には、専門医への紹介を検討してください。アルツハイマー病患者さんの40~50%に抑うつ気分を認めるともいわれているため、認知症にうつ症状が合併しているかもしれないという視点も重要です。認知症に伴ううつ症状は、悲哀感、罪責感、低い自己評価のような古典的なうつ症状よりも、喜びの欠如、身体的不調感などの非特異的な症状が目立ちやすいという特徴があります。また、認知症患者さんに高頻度に認めるアパシーをうつ症状と混同しないことも重要です。アパシーでは、趣味や家事などの日常の活動や身の回りのことに興味を示さない、意欲が低下するなどの症状を認めますが、悲哀感、罪責感、低い自己評価、喜びの欠如、身体的不調感は認めません。2 抗認知症薬の投与開始時期について教えてください。抗認知症薬を早期から投与したほうがよいのでしょうか? わが国で使用可能な抗認知症薬は、アルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬3種類(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)とNMDA受容体拮抗薬1種類(メマンチン)です。コリンエステラーゼ阻害薬は軽度の状態から使用可能なので、薬の投与開始時期はアルツハイマー病と診断した時ということになります。また、これらの薬剤の主たる効能は、症状の進行抑制なので、アルツハイマー病の診断が確かであれば、早期から投与して、良い状態を少しでも長く維持させることを目指します。実際、早期に治療開始した患者さんのほうが、その後の全般的機能や認知機能の悪化が少ないという報告もあります。最近の研究では、アルツハイマー病患者さんが認知症の段階になった時、あるいはその前段階の軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)の段階でも、脳内のアルツハイマー病の病理過程はかなり進行していることが明らかになっています。したがって、症状が軽くても疾患としてはある程度進行していると考えるべきです。また、コリンエステラーゼ阻害薬にはアルツハイマー病患者さんの海馬や全脳の萎縮の進行を遅延させる効果も報告されており、神経保護作用を有する可能性もあるからです。留意点としては、MCIの基準を満たす患者さんの原因疾患はアルツハイマー病だけでなく、うつ病などもあるため、すべてのMCI患者さんにコリンエステラーゼ阻害薬を投与してよいわけではなく、アルツハイマー病の診断を正確に行うことが前提です。3 抗認知症薬の効果の判定方法について、判定するまでの期間など、具体的に教えてください。効果判定の時期や方法について、わが国でとくに推奨されているものはありません。海外のガイドラインでは6ヵ月後に評価するとされていますが、評価法については明確に記載されていません。逆に認知機能検査に関して、Mini Mental State Examination(MMSE)のような簡易なものでは不十分であると記載されています。しかし実臨床場面では、複数のご家族やデイケアなどのスタッフからの情報とMMSEのような認知機能検査の結果などをもとに効果を判定することになると思います。ご家族が最も期待するのは記憶障害の改善なのですが、ご家族が記憶障害の改善を実感できる患者さんは少ないと思います。どの抗認知症薬においても改善を認めやすい症状は、意欲低下、注意・集中力の障害です。したがって、まず効果の判定には、これら症状の改善の有無を患者さんの周囲の複数の人に確認してもらうのがよいと思います。ご家族に聞くときは、具体的には、「言葉数が増えましたか」「何かをしようとすることが多くなりましたか」「表情が明るくなりましたか」などというように質問しましょう。しかしながら、アルツハイマー病は進行性の疾患なので、大きな変化がないというのも、効果があると考えてよいと思います。実際、前述の海外のガイドラインでは、投与前と同様に投与後も悪化している場合に、他剤への変更を検討するということになっています。ただし投与後に不変であっても、患者さん自身やご家族が、よりよい改善を期待して他剤への変更を希望する場合には変更してよいと思います。4 抗認知症薬の増量のタイミング(症状の目安など)を教えてください。ドネペジルは軽度から重度まで、すべての段階のアルツハイマー病に適応があります。これに対してガランタミン、リバスチグミンは軽度と中等度の患者さんに、メマンチンは、中等度と重度の患者さんに適応を有しています。したがって、保険適用の観点からは、中等度になったらメマンチンを併用し、重度になったらドネペジル10mgに増量、あるいは変更します。軽度認知症レベルとは、銀行などの手続きも含めた財産管理ができない、買い物で必要な物を必要な量だけ買うことができない、パーティーの段取りのような複雑な作業はできないが、家庭内の日常生活には支障が生じていない段階です。中等度認知症レベルとは、時期や場面にあった服を選べない、入浴を時々忘れるなどが生じ、日常生活にある程度の介護が必要な状態です。重度認知症レベルとは、服を着ることができない、入浴に介助が必要、トイレがうまく使えないなど、日常生活に多大な介助が必要な状態です。しかし、アルツハイマー病は緩徐に連続的に進行していく疾患なので、どこからが中等度でどこからが重度かの線引きをすることは困難ですし、境界には幅があります。そこで実臨床場面では、患者さんやご家族から日常生活上の障害に関する情報を聴取し、中等度、重度への移行をおおまかに判断しますが、同時に、患者さんやご家族の進行に対する不安、増量に対する意向なども聞いて、総合的に判断します。たとえば、ご家族が明らかに進行したと感じ、これに対して何とかしてほしいという気持ちが強い場合は、日常生活のごく一部のみで次の段階に移行した可能性がある程度でも、追加や増量を検討します。5 コリンエステラーゼ阻害薬にメマンチンを併用する場合のタイミングと、併用する際の増量や追加の順番を教えてください。アルツハイマー病患者さんにコリンエステラーゼ阻害薬を使用していても、症状が進行し、中等度認知症レベル(Q4参照)に至った時にコリンエステラーゼ阻害薬にメマンチンを併用します。メマンチンの増量は規定に従い、5mgから開始し、1週間ごとに5mgずつ増量していき、20mgの維持量まで持っていきます。しかしわが国での発売後の調査で、めまいや眠気などの副作用を認める例が少なくないことが明らかになりました。そこでこの副作用を防止するために、2~4週間ごとに増量する先生もいらっしゃいます。中等度の段階で初めてアルツハイマー病と診断した患者さんの場合は、コリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンのどちらを先に処方するかという選択に迫られます。これまでの研究報告からは、コリンエステラーゼ阻害薬のほうがメマンチンよりも、認知機能に対する効果が大きいようなので、コリンエステラーゼ阻害薬を先に処方するほうがよいでしょう。ただし、患者さんの身体的既往症、合併症、精神行動障害によってはメマンチンを先に投与する場合もあります。しかし単独処方よりも両薬剤を併用することによって進行抑制効果が増すため、基本的には併用処方を目指します。したがって、どちらか一方のみを処方する期間は短いでしょうから、どちらが先かについてはあまり神経質にならなくてもよいと思います。※2012年10月の認知症特集におけるQ&Aも併せてご覧ください。認知症のエキスパートドクターが先生方からの質問に回答!(Part1)認知症のエキスパートドクターが先生方からの質問に回答!(Part2)

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統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か

 統合失調症治療では、急性期に使用した薬剤をそのまま維持期でも使用することが少なくない。そのため、抗精神病薬誘発性の副作用などにより、維持期統合失調症患者の社会的機能低下が問題となる。ノッティンガム大学のStephanie Sampson氏らは、維持期における間欠的な抗精神病薬治療が有用かを検討した。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2013年7月16日号の報告。 著者らは、コクラン統合失調症グループの試験登録(2012年4月)を検索し、関連する研究の著者に連絡を取ったり、参考文献リストの作成を行うなどしてこれを補足した。 主な結果は以下のとおり。・関連するランダム化試験(RCTs)が17試験抽出された。・再発例は、長期にわたり抗精神病薬の間欠的投与を受けた群で有意に高かった(436例、RCTs:7試験、RR:2.46、95%CI:1.70~3.54)。・間欠的投与はプラセボより有効であったが、間欠的に抗精神病薬を服用している患者では中期までに再発する例は有意に少なかった(290例、RCTs:2試験、RR:0.37、95%CI:0.24~0.58)。・間欠的な抗精神病薬治療は、統合失調症患者の再発を防ぐために連続的治療ほどの効果はないものの、無治療よりは有意に優れることが示された。関連医療ニュース 維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か 新規抗精神病薬は患者にどう評価されているか? 青年期統合失調症の早期寛解にアリピプラゾールは有用か?

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違法な美白化粧品の迅速検出法を開発

 EU市場では昨年、インターネット上のいわゆる“闇市場”と呼ばれる購入サイト上に違法化粧品が氾濫する事態が生じた。その大半を占めたのが、美白化粧品であったという。ベルギー国立保健科学研究所のB. Desmedt氏らは、流通する美白化粧品が合法なものか違法なものかを迅速に検出するため、新たに超高速液体クロマトグラフィー‐ダイオードアレイ検出法(UHPLC-DAD)というスクリーニング法を開発し検証を行った。その結果、12分間で詳細な成分の同定が可能であることが示されたという。Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis誌2013年9月号(オンライン版2013年5月4日号)の掲載報告。 氾濫していた違法な美白化粧品には、EUの現行の化粧品に関する法律(Directive 76/768/EEC)で規制されている、ハイドロキノン、トレチノイン、コルチコステロイドなど複数の違法な活性成分が含まれていた。それらは、局所ばかりでなく全身性に毒性作用をもたらすことから、EU市場では禁止成分の対象とされている。 Desmedt氏らは、市場統制のために、多様な違法成分を迅速に検出できる新たなスクリーニング法を開発し検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・開発・検証したのは、UHPLCの手法を用いたスクリーニング法であった。・同スクリーニング法によって、主要な違法成分(ハイドロキノン、トレチノイン、6つの皮膚外用性コルチコステロイド)と合法的な美白成分を検出可能なだけでなく、合法成分(コウジ酸、アルブチン、ニコチンアミド、サリチル酸)の濃度や適用に関する制限についても検出可能であった。また、これらを12分間で定量化することも可能であった。・スクリーニング法は、ISO-17025準拠の検証要件に即した「トータルエラー」アプローチに基づき実効性が確認された。・検証において、クリーム、ローション、石鹸など多様なコスメティック商品が考慮すべき対象であることが明らかになった。

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小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用

 急性頭部外傷を受けた外傷後てんかんリスクを有する小児へのレベチラセタムについて、安全性および良好な忍容性が確認されたことが、米国・国立小児医療センターのPhillip L. Pearl氏らによる第2相試験の結果、報告された。外傷後てんかんは、重症頭部外傷(TBI)を受けた小児において最大20%で発現することが報告されているという。Epilepsia誌2013年7月22日号の掲載報告。 今回の第2相試験は、6~17歳の小児で、頭蓋内出血、頭蓋骨陥没骨折、穿通性損傷など外傷後てんかんの発症に関するリスク因子、または外傷後発作の発現に関するリスク因子を1つ以上有する者を集めて行われた。被験者には30日間にわたり、レベチラセタム55mg/kg/日を1日2回で投与した。投与は外傷後8時間以内に開始された。治療被験者の目標数は、20例であり、TBI後8~24時間以内に受診しその他の適格基準を満たした20例を観察対象として組み込んだ。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップの期間は2年であった。45例がスクリーニングを受け、20例が治療群に組み込まれた。・TBI後に最も頻度が高かったリスク因子は、即時の発作であった。・レベチラセタムの投与には95%が応じた。死亡例はみられなかった。治療被験者20例のうち、1例が途中で追跡不能となった。・治療被験者で最も頻度の高かった重篤な有害事象は、頭痛、疲労感、傾眠、易刺激性であった。・治療被験者が対照被験者と比較して、感染症、気分変化、問題行動の発生が多いということはみられなかった。・被験者40例のうち、外傷後てんかん(外傷後7日超での発作と定義)を呈したのは1例のみ(2.5%)であった。・今回の試験によって、外傷性脳損傷のリスク集団において、小児外傷後てんかんを予防する研究の実現可能性が示された。・以上の結果を踏まえて著者は、「レベチラセタムは、今回対象としたリスク集団において、安全であり忍容性が良好であった。本研究は、外傷後てんかんリスク集団の予防に関する、前向き試験実現のためのステージを用意するものとなった」とまとめている。関連医療ニュース 抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証 小児てんかん患者、最大の死因は? 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学

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インターネット研修、抗菌薬処方を抑制/Lancet

 プライマリ・ケア医に対しインターネットを利用した気道感染症治療に関する2つの研修を行うことで、抗菌薬の処方率が大幅に抑制されることが、英国・サザンプトン大学のPaul Little氏らGRACEコンソーシアムの検討で示された。プライマリ・ケアにおける大量の抗菌薬処方は、薬剤耐性の重大な促進要因とされる。処方は医師や患者への教育によって低下する可能性があるが、高度に訓練された教育担当員を要する場合が多いことから、簡便で効果的な研修法の開発が望まれている。Lancet誌オンライン版2013年7月31日号掲載の報告。クラスター無作為化試験で4群を比較 GRACEコンソーシアムは、インターネットを利用した気道感染症治療関連の研修法を開発し、その抗菌薬処方に対する効果を評価するために、国際的なクラスター無作為化試験を実施した。 欧州6ヵ国のプライマリ・ケア施設が、通常治療群、医師に対しC反応性蛋白(CRP)検査の研修を行う群、コミュニケーション技法の向上を目的とした研修を行う群、2つの研修の両方を行う群の4群に無作為に割り付けられた。 2010年10~12月に、割り付け前のベースライン調査が行われた。259施設に登録された6,771例[下気道感染症5,355例(79.1%)、上気道感染症1,416例(20.9%)]のうち3,742例(55.3%)に抗菌薬が処方されていた。両方の研修を行うのが最も効果的 2011年2~5月に、246施設を4群に無作為に割り付け、そのうち228施設(92.7%、医師372人)に登録された4,264例がフォローアップの対象となった。内訳は、通常治療群が53施設(870例)、CRP検査研修群が58施設(1,062例)、コミュニケーション技法研修群が55施設(1,170例)、CRP検査+コミュニケーション技法研修群は62施設(1,162例)であった。 抗菌薬処方率はCRP検査研修群が33%であり、CRP検査研修を行わなかった群の48%に比べ有意に低下した(調整リスク比:0.54、95%信頼区間[CI]:0.42~0.69、p<0.0001)。また、コミュニケーション技法研修群の処方率は36%と、コミュニケーション技法研修を行わなかった群の45%に比し有意に低下した(同:0.69、0.54~0.87、p<0.0001)。 抗菌薬処方率は、両方の研修を行ったCRP検査+コミュニケーション技法研修群が最も低く、リスク比は0.38(95%CI:0.25~0.55、p<0.0001)であった。 著者は、「プライマリ・ケア医に対するインターネットによる2つの簡便な研修は、いずれも抗菌薬処方の抑制に有効で、両方の研修を行った場合に最も高い有効性が示された」とまとめ、「このような母国語や文化的な境界を超えた介入が大きな成果を上げたことは、これらの介入が多くの保健システムにおいて広く実行可能であることを示唆する」としている。

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血圧変動が大きい高齢者は認知機能が不良/BMJ

 心血管疾患リスクを持つ高齢者では、平均血圧とは無関係に、診察室血圧の変動が大きい集団で認知機能が不良であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのBehnam Sabayan氏らが実施したPROSPER試験で示された。血圧変動は心血管イベントの独立のリスク因子とされる。また、診察室血圧の変動が大きいほど、無症候性および臨床的に明らかな脳血管障害のリスクが高くなることが知られている。BMJ誌オンライン版2013年7月30日号掲載の報告。欧州の3施設で行われた前向きコホート試験 PROSPER試験は、高齢者における診察室血圧の変動と認知機能の関連の評価を目的とする前向きコホート試験。 アイルランド、スコットランド、オランダの3施設から、心血管疾患リスクを有する高齢者(>70歳)が登録された。血圧は3ヵ月ごとに測定し、血圧変動は試験期間中の測定値の標準偏差(SD)と定義した。 血圧変動の大きさを三分位法で3つの集団(大、中、小)に分け、認知機能に関する4項目(選択的注意、処理速度、即時記憶、遅延記憶)の評価を行った。また、オランダの参加者(553例)ではMRIを用いて脳の体積、微小出血、梗塞、白質病変を測定した。すべての認知機能評価項目が有意に不良 5,461例が登録され、ベースラインの平均年齢は75.3歳、女性が51.7%で、既往歴は高血圧が62.2%、糖尿病が10.5%、脳卒中/TIAが11.1%、心筋梗塞が13.1%、血管疾患が44.0%であり、喫煙者は26.2%であった。平均フォローアップ期間は3.2年で、この期間中の平均血圧測定回数は12.7回、平均血圧は153.1/82.5mmHgであった。 収縮期血圧の変動大(16.3~64.4mmHg)、中(12.3~16.2mmHg)、小(0.7~12.2mmHg)、拡張期血圧の変動大(8.6~33.1mmHg)、中(6.6~8.5mmHg)、小(0~6.5mmHg)の群にそれぞれ1,820例、1,821例、1,820例ずつが登録された。 平均血圧や心血管リスク因子で調整後、収縮期血圧の変動が大きい集団では認知機能の評価項目がすべて有意に不良であることが示された(選択的注意:p<0.001、処理速度:p<0.001、即時記憶:p<0.001、遅延記憶:p=0.001)。拡張期血圧の変動が大きい集団でも同様の結果が得られた(選択的注意:p<0.001、処理速度:p<0.001、即時記憶:p<0.001、遅延記憶:p=0.001)。 収縮期血圧および拡張期血圧の変動が大きい集団では、海馬体積の減少(いずれもp=0.01)、皮質の梗塞(いずれもp=0.02)との関連が認められ、拡張期血圧の変動が大きい集団では脳の微小出血(p=0.01)との関連が確認された。 著者は、「認知機能障害の発症機序として、脳の微小出血、皮質梗塞、海馬体積の減少が関与している可能性がある。今後は介入試験を行って、血圧変動の抑制により認知機能障害のリスクが低下するかを検証する必要がある」と指摘している。

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足白癬患者の靴下、洗濯水は何℃が望ましいか

 真菌が付着した靴下を洗浄する場合、低温での洗濯では真菌病原体が十分に死滅しないため、高温で洗濯することが望ましいことが、イスラエル・テルアビブ大学のBoaz Amichai氏らによって報告された。 真菌が付着した衣類からは再感染の可能性があるが、これまで十分に検証されていなかった。 The International Society of Dermatology誌オンライン版2013年7月24日掲載報告。 Amichai氏らは、異なる水温での家庭洗濯によって、靴下に付着した真菌をどのくらい排除できるか、その効果を評価した。靴下は足白癬患者から81足集められた。 主な結果は以下のとおり。・調査に使用した靴下は、足白癬患者が着用した後、40℃または60℃の洗濯水で洗浄され、室温で乾燥された。・真菌培養検査に用いたサンプルは、つま先部分とかかと部分の2ヵ所からそれぞれ採取された。・40℃の洗濯水で洗浄されたサンプルのうち、29足(36%)の真菌培養が陽性であった。なお、14足はつま先部分で、15足はかかと部分であった。・そのうち、紅色白癬菌は4検体、アスペルギルス属は20検体で検出された。・同様の条件の靴下を60℃の洗濯水で洗浄した場合、5足(6%)の真菌培養が陽性であった。なお、3足はつま先部分で、2足はかかと部分であった。・60℃の洗濯水で洗浄した靴下では、アスペルギルス属のみ検出された。・酵母は40℃の洗濯で死滅した。・以上の結果より、真菌を死滅させるためには低温の洗濯水は効果的ではないことから、省エネや環境保護といった流れに反するものの、真菌が付着した靴下は高い水温(60℃)での洗濯が必要であることが示唆された。

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前医批判がもとで医事紛争に発展した手指切断のケース

整形外科最終判決平成15年2月14日 前橋地方裁判所 判決概要プレス作業中に右手第2指先端を負傷した24歳男性。キルシュナー鋼線による観血的整復固定術を受けたが、皮膚の一部が壊死に陥っていた。プロスタグランジンの点滴注射などでしばらく保存的な経過観察が行われたが、病院に対して不信感を抱いた患者は受傷から18日後に無断で退院。転院先の医師から「最悪ですよ。すぐ手術しなければならない」と説明され、指の切断手術が行われた。詳細な経過患者情報24歳男性経過平成10年11月9日午前9:00右手第2指をプレス機に挟まれて受傷。第1関節から先の肉が第3指(中指)側にずれるようにして切れ、めくれ上がり、傷口から骨がみえる状態であった。ただちに当該病院に運ばれ、キルシュナー鋼線2本を用いた観血的整復固定術を受けた。以下カルテ記載より11月9日朝9:00頃指を機械に挟まれた。挫滅創。11月10日(指の先端について)針の痛み刺激OK。知覚なし。(指の第1関節付近について)紫色不良。治療方針(非常勤整形外科医師のコメント)。伸筋腱は切れてはいなかったでしょうか。もしも切断されていて、創部切断を免れた場合は、腱縫合を2週間以内に考えた方がいいと思います。11月11日ワイヤー1本抜去(指の先端について)。血流弱い。→プロスタグランジン開始。1日120mg(生食100mL)を2回。11月13日包交、色良くなってきている。11月14日変化なし。11月16日包交、出血なし、膨張少し、色よい。11月17日(指の先端について)知覚なし。(指の第1関節付近について)色よい、ペンローズ抜去、明日よりヒビテン®浴開始。11月19日創きれい、色よい。11月21日創痛なし。(指の先端について)両側の知覚障害あり。(指のつめの根元付近について)この部分からの血流供給よい。11月22日膿はなく、出血もないが、創面はまだドライではない。11月24日X線写真の整合性よい。(指の先端のてのひら側について)壊死性皮膚、しかし感染はない。11月27日患者は「携帯電話を買いにいく」とウソをついて無断で当該病院を退院し、別病院を受診。そこの整形外科医師から、「最悪ですよ。すぐ手術しなければならない」と説明され、緊急で右第2指近位1/3の切断手術を受けた。別病院での手術所見指のてのひら側は、末節の一部を残してDIp(第1関節)にかけてまで黒く壊死になっていた。指の背側の中節の一部も壊死になっていた。これを切除していくと、軟部も壊死となっており、屈筋腱も壊死しており、Kワイヤーを抜去すると、DIp関節も壊死となっていたためにブラブラになってしまった。末節骨も壊死になっていた。このため、生存していた皮膚および中節骨の2/3を残して切断した。FDp(深指屈筋)も切除。FDS(浅指屈筋)は一部残した。生存していた皮膚を反転させ、縫合した。少し欠損は残ったが、これは肉芽が上がるのを待つこととした。鑑定書DIp以遠の挫創については、一般にマイクロサージャリーの適応はないとされ、本件のような骨折部の観血的創閉鎖術で問題ない。ただし結果論的には、予想以上に組織挫滅の大きかったことから、当初から切断術適応でも差し支えなかった症例である。また、術後の抗菌薬・血管拡張薬投与も適正であり、さらにその後の経過観察においても感染兆候なく、また、創部の処置も適正に行っていると認められる。別病院での手術所見からみると、軟部組織はもちろん、骨部分においても壊死に陥っており、予想以上に深部まで血管損傷・組織挫滅が強かったと認められる不全切断であり、最初からマイクロサージャリーを施行していたとしても、生着していた可能性は低かったと考える。切断はやむを得ない症例である。ただし、最初の手術の時点で切断可能性について十分に説明していなかったことがこのような紛争につながったのではないかと推測された。別病院の術中所見をみる限り、手術適応と手技に問題はないと思われる。ただし、被告病院に何の連絡もなく手術したことは、医療連携として問題である。当事者の主張患者側(原告)の主張被告病院の担当医師は整形外科の専門医ではないのに、キルシュナー鋼線を10回以上も入れ直すなど手術が粗雑であったため、指の組織の腐食が始まった。著しく汚染された傷でありながら、ゴールデンアワーに適切な洗浄、消毒および切除(デブリドマン)を怠り、原告自身に消毒を行わせるなどずさんな治療しかしなかった。しかも創部の疼痛や指先の感覚異常、色調変化を訴えていたが、担当医師らは聞き流して適切な治療を一切行わなかった。被告病院の担当医師が、患部の状態についてきちんと説明し、患者の要求どおり早期に別の医療機関でさらに検査および診療を受ける機会を与えていれば、自分の指の症状をある程度客観的に知ることができ、今後も被告病院で治療を続けるか、それとも別病院で治療を受けるかについて、自らの意思で選択することができたはずである。ところが、「入院中は、何も考えないで病気を治すことだけを考えなさい」、「血色の良い部分もあるので、悪い部分も良くなるでしょう」などというのみで、今後の治療方法などについて説明はななかった。病院側(被告)の主張担当医師は手の外科を専門とする形成外科医であり、手の手術経験は200例を超える。今回の手術ではキルシュナー鋼線は2回入れ直したにすぎない。負傷直後の段階で、適正な消毒、デブリドマン(除去施術)を行った。指の状態は、その後の点滴および消毒などの治療により改善傾向にあったのであり、時間を争って指を切断しなければならないほど悪化してはいなかった。患者自身に消毒させたというのは、ヒビテン®浴のことを誤解しただけである。担当医師は事あるごとに、患者に対し十分な説明をくり返した。当時の治療方針は、負傷部のデマルケーション(壊死部の境界線がはっきりすること)をみながら、植皮するか、最悪の場合には切断する予定であった。ところが、切断をすることもやむを得ないとの方向を検討し、患者に説明しようとしていた矢先に勝手に退院したため、説明の機会を失ったにすぎない。裁判所の判断被告病院では、手術の状況などを記載した手術記録をのこさず、さらにカルテにも記録していなかった。また、初診時に撮影したX線フィルムを紛失してしまったため、どのような手術が行われたのか、手術の状況はどうだったのかなどについて判断できない。ただし手術に際し、キルシュナー鋼線を10回以上も入れ直したと認めるに足りる証拠は何もないので、手術が粗雑であったとまで認めることはできない。担当医師は形成外科の専門医であり、手の外科の専門医でないとまで認めることはできない。カルテや看護記録の記載によれば、指の色が良くなってきた時期もあるので、一方的に悪くなっていったわけではない。また、感染症に対する予防措置や、指の血行障害の発生を防止する措置も十分に行っていたので、担当医師らによる治療が不適切なものであったと認めることはできない。別病院の医師が被告病院に無断で原告の指を切断し、また、手術中に指のポラロイド写真を撮影したり、指の組織検査の標本を採らなかったことから、指を切断する前に手術ミスを犯し、それを隠すために指を切断したのではないかなどと被告病院は主張するが、虚偽の事実を伝えて被告病院を抜け出し、無断で別病院の診察を受けに来たのであるから、すでに患者と被告病院との間の信頼関係は破綻していた。このような場合にまで、別病院の医師にそれまでの治療経過を被告病院に確認すべきであったとまでいうことはできない。結局のところ、被告病院における治療に強い不信感を抱いた原因は、被告病院の医師から指の状態や治療方針(指の切断の可能性など)などに関する説明がなかったためである。原告側合計670万円の請求に対し、合計110万円の判決考察ほかの病院で治療を受けていた患者が、紹介状もなく来院した時、どのように対応されていますでしょうか。もちろん、診察した時点で「正しい」と思った診断、あるいは治療方針を、患者にきちんと説明するのは当然のことと思われます。ただしその際に、前医の医療行為に対して配慮を欠いた発言をすると、思わぬ医事紛争へ発展する「不用意な一言」になりかねません。本件ではあとから振り返ると、最終的には手指切断を免れなかった症例と思われます。そして、被告病院の医師がとった初期段階の治療方針も、その後の別病院ですぐに切断手術が行われたのも、どちらも医学的にみて適切と考えられる医療行為でした。ところが、負傷から18日も経過した段階の所見をはじめて目の前にした医師が、それまでの治療経過をよく確かめずに、「最悪ですよ。すぐ手術しなければならない」などとコメントすれば、患者が被告病院を訴えたくなるのも当然でしょう。実際にこの一言をきっかけとして、4年以上にも及ぶ不毛な医事紛争へと発展しました。この事案を鑑定した整形外科専門医が、「被告病院に何の連絡もなく手術したことは、医療連携として問題である」と指摘したのは、きわめて当たり前の考え方であると思います。さらに被告病院は、「指を切断する前に手術ミスを犯し、それを隠すために指を切断したので、術中写真ものこさず、指の病理組織検査もしなかった」というような理解しがたい主張まで行い、「最悪ですよ」と批判した後医に対する敵意をあらわにしました。患者を前にして、自らの診断・治療に自信を持つ気持ちは十分に理解できますし、不適切な医療行為を批判したくなるのもよくわかりますが、同じ医師同士でこのような争いをするのは、絶対に避けたいと思います。とくにそれまでの医療行為に対して不満を抱く患者が、自分のことを頼って来院したような場合には、ほんのわずかな配慮によって患者の不信感を拭うこともできるのですから、前医の批判は絶対に避けなければなりません。最初に診た医師よりも、あとから診た医師の方が「名医」になるというのは、昔からいわれ続けている貴重な教訓です。本件では、患者が紹介状を持参せずに来院したので、何か「訳あり」であろうと初診時から予測することができたと思います。そこでまずは患者の言い分を聞き、そのうえで被告病院に電話を入れて治療状況を確認すれば、被告病院の立場にも配慮した説明(なるべく指を切断しないで残そうと努力していたのだけれども、当初のケガが重症だったので切断もやむを得ない段階にきている、というような内容)をすることができたと思います。そうしていれば、患者も納得して治療(手指の切断)を受け入れることができたでしょうし、医事紛争の芽を事前に摘み取ることができたかも知れません。もう一つの問題点として、被告病院では医師と患者のコミュニケーションが絶対的に不足していたと思われます。病院側は十分な説明を行ったと主張していますが、患者の印象に残った説明とは、「入院中は、何も考えないで病気を治すことだけを考えなさい」ですとか、指の色が悪いことを心配して質問しても、「血色の良い部分もあるので、悪い部分も良くなるでしょう」程度の曖昧な説明しか行わず、もしかすると切断するかもしれない、という重要な点には言及しなかったようです。このような患者の場合、勝手に離院するまでの入院中にはいろいろな徴候がでていたと思いますので、普段接する看護師や理学療法士などの意見にも耳を傾けて、不毛な医事紛争を避けるようにしたいと思います。本件は最終的には「説明義務違反」という名目で結審し、判決の金額自体はそれほど高額ではありませんでした。しかし、判決に至るまでに費やした膨大な時間と労力に加えて、患者への評判、社会的信用、医師同士の信頼感など、失ったものは計り知れないと思います。整形外科

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