胎児トリソミー21の出生前診断に有用な非侵襲的診断検査法

提供元:ケアネット

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公開日:2011/02/04

 



胎児トリソミー21(21番染色体トリソミー症、ダウン症候群)の非侵襲的な出生前診断法として2-plexプロトコールによる超並列DNA塩基配列決定法が有用なことが、香港中文大学循環胎児核酸研究センターのRossa W K Chiu氏らによる大規模な臨床研究で明らかとなった。すでに、胎児トリソミー21は母体血漿DNAを超並列DNA塩基配列決定法で解析することで出生前に非侵襲的に検出可能なことが示されているが、その臨床における診断能や実行性を検証した大規模試験はないという。BMJ誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月11日号)掲載の報告。

高リスク妊婦で非侵襲的検査法による診断の正確度を評価




研究グループは、胎児トリソミー21のリスクが高く、臨床的に侵襲度の高い診断検査(羊水穿刺、絨毛生検)を要すると考えられる妊婦に対する非侵襲的なスクリーニング法として、母体血漿DNAを用いた超並列DNA塩基配列決定法の臨床効果および実行性を検証する大規模な試験を実施した。

香港、イギリス、オランダの出生前診断施設においてプロスペクティブに収集された母体血漿サンプルを用い、侵襲的に得られたサンプルの染色体核型分析との比較において、超並列DNA塩基配列決定法による診断の正確度を評価した。

対象は、胎児トリソミー21のリスクが高い妊婦753人で、染色体核型分析では86人の胎児がトリソミー21と確定診断された。これらの妊婦について、二つのプロトコール(2-plex、8-plex)に基づく多重超並列DNA塩基配列決定法による検査を行った。

主要評価項目はトリソミー21由来のDNA分子の比率とし、Zスコアが>3の場合に胎児はトリソミー21と診断した。トリソミー21の検出に関する感度、特異度、陽性予測値、陰性予測値を算出した。

高侵襲的診断検査の98%を回避できる




8-plex DNA配列決定法の結果は753人から、2-plex DNA配列決定法の結果は314人から得られた。

検出能は2-plexプロトコールの方が優れていた。すなわち、2-plex DNA配列決定法の感度は100%、特異度は97.9%であり、陽性予測値は96.6%、陰性予測値は100%であった。

これに対し、8-plex DNA配列決定法の感度は79.1%、特異度は98.9%、陽性予測値は91.9%、陰性予測値は96.9%であった。

著者は、「母体血漿DNA配列決定法は高リスク妊婦における胎児トリソミー21の除外診断に使用可能であり、羊水穿刺、絨毛生検という高侵襲的診断検査の98%を回避できると考えられる」と結論している。

(菅野守:医学ライター)