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30681.

重症血友病A男児への第VIII因子の有効な投与法

1960年代に行われた小規模試験の結果を受け、血友病性関節症の予防に第VIII因子の投与が有効であることが推奨され臨床家の間に広がった。その後 1980年代に、血漿由来の第VIII因子がヒト免疫不全や肝炎ウイルスに汚染されていることが判明し予防的治療は激減。1992年にアメリカで血友病患者への安全投与を見据えた組み換え型第VIII因子が承認されたが、投与の開始時期、投与量、期間については明らかになっていない。 コロラド大学保健科学センターのMarilyn J. Manco-Johnson氏らは、重症の血友病Aの男児を対象に無作為化試験を行い、有効な方法について検証した。NEJM誌8月9日号の報告から。生後30ヵ月未満65例を予防治療群と発症時治療群に割り付け無作為化試験は、生後30ヵ月未満の重症の血友病Aの男児(65例)を、予防的治療群(32例)と関節内出血発症時に強化注入を行う対照群(33例)とに割り付け行われた。前者は、組み換え型第VIII因子を1日おきに25 IU/kg投与。関節内出血が起きた場合は40 IUを投与し、その後また予防的投与が続けられた。後者は発症時に、第VIII因子を3回以上、最低80 IU/kg投与した(最初に40 IU、24時間後と72時間後に20 IU)。主要評価項目は、X線またはMRIによってindex joint(足関節、膝、肘)で検出された骨・軟骨傷害の発生率とした。予防治療群のほうが正常の割合高く出血回数少ない男児6歳時に、MRI上で正常なindex joint構成が認められたのは、予防群93%、発症時治療群55%だった。MRIで発見された発症時治療群の関節障害の相対リスクは、予防治療群に比べて6.1だった(95%信頼区間1.5-24.4)。研究終了時点での関節内出血およびその他部位を含めた総出血の平均年間回数は、発症時治療群で予防治療群より多かった(両群間比較に関してP<0.001)。また、予防治療群の2例で第VIII因子の高い抗体価が認められ、発症時治療群の3例で致命的な出血を呈する症例があった。中心静脈カテーテル留置に関連した入院と感染症については両群間で有意差は見られなかった。Manco-Johnson氏らは、「組み換え型第VIII因子の予防的投与は、関節障害を予防し、重篤な血友病A男児の関節およびその他の出血頻度を減少させる」と結論付けている。(朝田哲明:医療ライター)

30682.

天疱瘡患者にリツキシマブ1サイクル投与は有効

リツキシマブと免疫グロブリン静注併用の複数サイクル投与は、重症天疱瘡患者に効果的だと報じられている。フランス・ルーアン大学病院のPascal Joly氏らは、1サイクル投与の有効性について評価を行った。NEJM誌8月9日号の報告から。週1回リツキシマブ375mg/m2体表面積注入を4週投与本研究は天疱瘡患者計21例(男性14例、女性7例)を対照に行われた。患者はプレドニゾン1.5mg/kg/日を8週にわたって投与しても反応しなかった者(ステロイド抵抗例)、20mg/日超のプレドニゾン投与にもかかわらず2回以上再発した者(ステロイド依存例)およびステロイド絶対禁忌の者から構成される。これら21例の患者に、週1回リツキシマブ375mg/m2体表面積を、4週にわたって注入された。主要エンドポイントは、リツキシマブ投与終了後3ヵ月時点での完全寛解。完全寛解の定義は「すべての皮膚および粘膜病変の上皮化」とされた。重症度が最も高い病型のみで用いるべき投与終了後3ヵ月時点で完全寛解が認められたのは18/21例(86%、95%信頼区間64-97%)。また9例で、平均18.9±7.9ヵ月後に再発が認められた。34ヵ月(中央値)の追跡調査後、疾患が認められなかったのは18/21例(86%)。このうち8例はステロイド投与を受けていなかった。プレドニゾンの平均投与量は、ステロイド抵抗例の患者で94.0±mg/日から12.0±7.5mg/日に減量し(P=0.04)、ステロイド依存例の患者では29.1±12.4mg/日から10.9±16.5mg/日に減量した(P=0.007)。なお、リツキシマブ投与12ヵ月後に腎盂腎炎を発症した患者が1例、18ヵ月後に敗血症で死亡した患者が1例あった。いずれの患者も血中Bリンパ球が著しく減少していた。血清IgG値は正常だった。これらの結果から、Joly氏らは「天疱瘡治療としてリツキシマブ1サイクル投与は有効である。ただし重篤な有害事象の可能性があり、重症度が最も高い病型のみで用いるべき」と結論付けた。(朝田哲明:医療ライター)

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高齢男性の骨粗鬆症性骨折予防治療の費用対効果は?

60歳白人男性が残りの生涯で、骨粗鬆症が原因で骨折する可能性は29%に上るなど、高齢男性の骨粗鬆症性骨折は重大な健康問題と認識されている。カナダ骨粗鬆学会は70歳以上あるいは65歳以上の全男性で骨密度検査を行うべきと提唱しているが、米国予防医療対策委員会やカナダ予防医療対策委員会では勧告を行っていない。女性については65歳以上での骨密度検査と予防的治療の費用対効果が実証されているが、男性については明らかになっていないため。そこでミネアポリスのPark Nicollet Health Servicesリウマチ学のJohn T. Schousboe氏らは、男性について費用対効果を検証した。JAMA誌8月8日付け報告から。生活の質を調整した生存年(QALY)当たりのコストを比較Schousboe 氏らは、骨密度検査の結果、骨粗鬆症と判明した男性(大腿骨頸部Tスコア-2.5以下)で、骨折予防を目的に5年間ビスフォスフォネートを投与した群と非介入群との費用対効果を比較した。コンピュータでMarkov microsimulation modelを作成し、65、70、75、80、85歳男性を骨折経験の有無で階層化し検証した。主要評価項目は、骨密度検査を行いフォローアップした治療群と非介入群との、生活の質を調整した生存年(QALY)当たりのコストの差、および治療戦略ごとの生涯コストおよびQALYsの累積とした。得られる利益のために支払ってよいとする額次第で介入群ではQALY当たりの生涯コストは上がったものの、骨折経験のある65歳以上の男性と骨折経験のない80歳以上の男性では50,000ドル未満で、費用対効果の可能性が確認できた。この結果は、ビスフォスフォネートのコストと骨折率低下の有効性への感受性が最も高く、骨塩量と骨折、骨折率と不利益、服薬遵守との相関も強かった。Schousboe氏らは、「経口ビスフォスフォネートのコストが年間500ドル未満の場合、あるいは、QALY当たりのコストを100,000ドルまで支払ってもよいという社会的合意がある場合は、骨折経験のない70歳以下の男性にもこの治療戦略の有効性は認められる」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

30684.

早期・持続的・重層的な非薬物的介入は有効なインフルエンザ対策となる

インフルエンザ・パンデミック(世界的大流行)への重要な対策の1つに、非薬物的介入がある。流行時期を遅らせ、全体の発病率やピークを低下させ、死亡者数を減らす可能性のほか、ワクチンや抗ウイルス剤の生産と供給に時間的余裕をもたらす可能性があるからだ。最適かつ適切な非薬物的介入は、医療サービスと発症地域の負担を減少させることになる。ミシガン大学医学部医学史センターのHoward Markel氏らは、最適かつ適切な非薬物的介入を明らかにするため、20世紀最悪と言われたいわゆる「スペイン風邪」流行時の、全米43都市における非薬物的介入の状況を調べた。JAMA誌8月8日号の報告から。非薬物的介入を3つのカテゴリーに分類し比較検証本研究は、1918年9月8日から1919年2月22日の間に全米43都市で流行を緩和するために実行された非薬物的介入を、史実研究や統計学的解析、疫学的分析をもとに検証された。調査対象は、非薬物的介入のタイミング、期間、組み合わせによる都市ごとの死亡率の差異、先行流行波による集団感染率の変化、年齢および性分布、人口規模・密度など。非薬物的介入は主に「学校閉鎖」「集会の禁止」「隔離、封鎖」の3つにカテゴリー化された。主要評価項目は、週間超過死亡率(EDR)、非薬物的介入開始からファーストピークEDRまでの時間、ファーストピークの週間EDR、そして対象期間24週の累積EDR。「学校閉鎖」+「集会の禁止」を34都市で実施24週にわたる43都市の肺炎・インフルエンザの超過死亡は115,340人(EDR、人口500/100,000)だった。各都市は非薬物的介入の3つのカテゴリーのうち、少なくとも1つを採用しており、組み合わせでは「学校閉鎖」+「集会の禁止」が最も多く34都市(79%)で実行していた。この組み合わせの実行期間中央値は4週(範囲1-10週)で、週間EDR低下と強い相関を示した。また、非薬物的介入を早期に実行した都市ほどピーク死亡率を遅らせ(Spearman r=-0.74、P<0.001)、ピーク死亡率は低く(同 r =0.31、P=0.02)、総死亡率が低かった(同 r=0.37、P=0.008)。介入期間の長さと総死亡率の減少には統計学的に有意差が認められた(同 r=-0.39、P=0.005)。Markel 氏らは、「これらの所見は、非薬物的介入を早期から持続的かつ重層的に行うこととインフルエンザによる死亡率の減少との強い関連性を示すもの。インフルエンザ大流行への対策として、ワクチン開発や薬物療法と並んで非薬物的介入を考慮に入れるべきだ」と結論付けている(武藤まき:医療ライター)

30685.

性的禁欲だけで、高所得層のHIV感染を予防できるか

2005年にはAIDS関連の原因により毎日7,600人以上が死亡し、世界のHIV感染者数は約3,860万人に達している。新規感染率は1990年代末にピークを迎えたとの見方がある一方で、新たな感染拡大が懸念されるなか、これまでの治療偏重への反省から、最近では予防に関する研究が活発化している。 「性的禁欲のみによる予防プログラム」とは、HIV感染予防の手段として性的禁欲教育のみを実施し、コンドームの使用など、より安全な性交の奨励は行わない予防戦略。Kristen Underhill氏ら、オックスフォード大学Evidence-based Interventionセンターの研究グループは、高所得層は貧困などHIV感染の構造的なリスク因子に接する機会が少ないため、性的禁欲のみによる予防プログラムの効果を示すには最適の対象との仮説に基づいて体系的なレビューを行った。BMJ誌7月26日付オンライン版、8月4日付本誌掲載の報告から。HIV感染予防プログラムの無作為化/準無作為化試験をレビュー30のデータベースから、2007月2月までの文献を言語および地理的な制限なしに検索した。選択基準は、高所得国における性的禁欲のみによる予防プログラムに関する無作為化あるいは準無作為化対照比較試験とした。また、プログラムの目的はHIV感染予防あるいは妊娠とHIV感染の予防であり、生物学的アウトカム(HIV、性感染症、妊娠)あるいは行動学的アウトカム(避妊手段をとらない性交の頻度など)の評価を行う試験を対象とした。対照としての通常ケアには、「介入なし」「コンドームを使用したより安全な性交の奨励」「より安全な性交と初回性交時期の先送りの奨励」などが含まれた。禁欲の奨励だけではHIV感染予防には無効だが、アメリカの若者に限定的年齢制限を設けずに世界中の既報、未報の文献を渉猟したにもかかわらず、選択基準を満たした13試験はいずれもアメリカの青少年および若年成人を対象としたものであった。1万5,940人が登録され、すべての評価項目は自己申告によった。予防プログラムは、避妊手段をとらない性交、パートナー数、コンドームの使用、初回性交年齢には影響を及ぼさなかった。予防プログラムにより短期的および長期的な有害作用(性感染症の増加など)が見られた試験、および短期的に性交頻度が低下した試験が1つずつ認められたが、いずれの影響も全体としては相殺された。Underhill氏は、「高所得層においては、性的禁欲のみによる予防プログラムはHIV感染リスクを低下も上昇もさせない」と結論し、「本研究から得られるエビデンスは、『HIV感染の予防を目的とした性的禁欲のみによる予防プログラムは無効だが、この知見を一般化できるのはアメリカの若者に限定される』というものだ」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

30686.

WHIスタディに続き閉経後ホルモン補充療法の有用性を否定:WISDOM

閉経後女性に対するホルモン補充療法は心血管系イベントを、かつて考えられていたのとは逆に増加させることが、英、豪、ニュージーランド3国の共同研究であるWISDOMの結果、明らかになり、2004年に米国で報告されたWomen's Health Initiative(WHI)スタディの結果が再確認される形となった。BMJ誌のHPにて早期公開された(オンライン版7月11日号、本誌8月4日号掲載)。閉経後平均15年経過した女性を対象対象とされたのは50~69歳で心血管系疾患の既往がない閉経後女性。「エストロゲン+プロゲスチン群(2,196例)vs プラセボ群(2,189例)」と「エストロゲン+プロゲンスチン併用群(815例) vs エストロゲン単独群(826例)に無作為化された。エストロゲンの用量はWHIスタディと同一、またプロゲスチンはWHIスタディと同量から2倍量が用いられた。平均年齢は62.8歳、閉経からの平均年数は15年だった。短期間追跡にも関わらずホルモン補充療法で心血管系イベントが有意に増加WHI スタディの結果が公表されたため、本試験は早期中止となり、追跡期間中央値は11.9ヵ月(7.1~19.6ヵ月)。このような短期間の追跡にもかかわらず心血管系イベントは「エストロゲン+プロゲスチン群」で「プラセボ群」に比べ有意に多かった(26.9例/1,000人年 vs 0例/1,000人年、p=0.016)。同様に静脈血栓症も有意かつ著明(相対リスク:7.36、95%信頼区間:2.20-24.60)に増加していた。またホルモン補充療法による骨折の有意な減少は観察されなかった。なお「エストロゲン単独群」では「エストロゲン+プロゲスチン併用群」に比べ、心血管系イベントと静脈血栓症が減少する傾向が見られた。筆者らは閉経後長期間経過した女性に対するホルモン補充療法が心血管系イベントと静脈血栓症のリスクを増加させることを認める一方、より若年の更年期から開始するホルモン補充療法の有用性は否定されていないと述べている。(宇津貴史:医学レポーター)

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IFN beta-1bによる早期治療が多発性硬化症の進展を抑制

最初の神経学的症状[clinically isolated syndrome(最初のエピソードからなる症候群)]により多発性硬化症(MS)が強く示唆される症例に対するinterferon (IFN)beta-1b治療は、臨床的に診断確実なMS(CDMS)への進展を遅延させることが示されている。また、不可逆的な軸索損傷や身体障害をもたらすイベントを早期に抑制すれば、より優れた効果が期待できることも指摘されている。 一方、初回イベント発生後、早期のIFN beta-1b治療を遅延的治療と比較した対照比較試験はない。スイス・バーゼル大学病院のLudwig Kappos氏らは、早期治療の有用性を評価するBENEFIT試験の3年間のデータについて解析を行い、8月4日付Lancet誌上で報告した。プラセボ対照試験期間とフォローアップ期間で2つの治療を評価対象は、MSが示唆される初回イベントおよびMRI上で臨床症状を伴わない2つ以上の病変が確認された症例とした。試験はプラセボ対照試験期間とフォローアップ期間に分けられ、症例は以下の2つの群に無作為に割り付けられた。早期治療群:IFN beta-1b 250μgを2年間にわたり隔日に皮下投与後、フォローアップ期間も引き続き同様の治療を継続、遅延的治療群:プラセボを2年間あるいはCDMSと診断されるまで隔日に皮下投与後、フォローアップ期間にIFN beta-1b治療を開始。プラセボ対照試験には468例(早期治療群292例、遅延的治療群176例)が登録され、そのうち418例(261例、157例)がフォローアップ期間に進み、無作為割り付け後3年間の追跡が完遂されたのは392例(249例、143例)であった。早期治療で、CDMS発症および身体障害進行のリスクが有意に低下無作為割り付け後3年の時点におけるCDMSの発症率は、早期治療群が37%に対し、遅延的治療群は51%であり、CDMS発症のリスクは早期治療で41%低下していた(p=0.0011、絶対リスク低下14%)。拡大身体障害状態スケール(EDSS)で病態の進行が確定された症例はそれぞれ16%、24%であり、身体障害進行のリスクは早期治療群で40%低下していた(p=0.022、絶対リスク低下8%)。身体機能評価スケール(FAMS-TOI)のスコアは両群間に有意な差を認めなかった(p=0.31)。Kappos氏は、「IFN beta-1b治療の早期開始はMSにおける身体障害の確定化を予防することが示された」と結論し、「寛解と再発を繰り返すMS(RRMS)の最初の症状発現が確認された場合は、IFN beta-1b治療を開始すべき」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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途上国の子宮頸予防に4%酢酸による頸部視診(VIA)が有効

子宮頸は多くの途上国で最も発症頻度が高い女性のである。細胞診によるスクリーニングの有用性は途上国でも確認されているが、サハラ以南のアフリカ、南アジアなど細胞診が困難な地域では代替法として3~5%酢酸を用いた頸部視診(VIA)が行われている。生涯に1度のVIAは費用効果に優れることが示唆されているが、実際の臨床プログラムにおける子宮頸の予防、死亡率の抑制効果は不明である。 Rengaswamy Sankaranarayanan氏ら、フランス・リヨン市の国際研究機関(IARC、http://www.iarc.fr/)の研究グループは、インドの高リスク集団を対象に4%酢酸によるVIAスクリーニングの効果を検討、8月4日付Lancet誌でその結果を報告した。インドの地方都市における健常女性を対象としたクラスター無作為化試験南インド・タミル・ナードゥ州ドゥンドグル市の114の試験群(クラスター)を、看護師によるVIAを1回施行する群(57クラスター)と対照群(57クラスター)に無作為に割り付けた。対象は30~59歳の健常女性とした。VIAによるスクリーニングの陽性者には即座にコルポスコピーを実施、異常がみつかった場合は狙い生検(directed biopsy)を施行後、必要に応じて凍結療法を行った。主要評価項目は子宮頸の発症率および死亡率。介入群で子宮頸の発症率が25%、死亡率が35%低下2000~2003 年に、介入群4万9,311人の女性のうち3万1,343人(63.6%)がスクリーニングを受け、対照群3万958人の女性は標準的ケアを受けた。スクリーニング陽性3,088人(9.9%)のうち3,052人がコルポスコピーを、2,539人が生検を受けた。介入群のうち1,874人に前病変が見つかり、72%が治療を受けた。2000~2006年の7年間に、対照群17万8,781人年では158人が子宮頸を発症、 92人が死亡したのに対し、介入群(27万4,430人年)ではそれぞれ167人、83人であり、介入群で発症率が25%(ハザード比0.75、95%信頼区間0.55-0.95)、死亡率が35%(同0.65、0.47-0.89)低下していた。Sankaranarayanan 氏は、「適切な訓練と持続的な質の保障があれば、VIAによるスクリーニングは途上国における子宮頸の予防法として有効」と結論、「年間に約12万人が子宮頸を発症し、約8万人が死亡しているインドだけでなく、同様のリスクを抱える他の途上国もVIAスクリーニングをルーチン化すべき」と主張している。また、「スクリーニングのインフラの確立に向け、本法はヒトパピローマウイルス(HPV)の検出技術の開発にも容易に適用できる」という。(菅野 守:医学ライター)

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子宮頸管短縮症へのプロゲステロン投与は自然早産リスクを低下する

早産を経験した女性へのプロゲステロン投与が、再発リスクを低下させることは過去の無作為化試験によって明らかにされている。妊娠中期スクリーニンググループ(Fetal Medicine Foundation Second Trimester Screening Group)のEduardo B. Fonseca氏らは今回、自然早産のリスクが極めて高い妊娠中期に子宮頸管短縮が見られる無症候例について、プロゲステロン投与がリスクを低下させるかどうかを検証した。報告はNEJM誌8月2日号に掲載された。頸管長15mm以下の413例を無作為割り付け試験は、まず妊娠期間20~25週(中央値22週)の定期検査を受けるために受診した妊婦24,620例に対して、経腟超音波造影法を用いて子宮頸管長が測定された。頸管長15mm以下の妊婦は413例(1.7%)存在した。このうち250例(60.5%)に対して、妊娠24週から34週にかけてプロゲステロン200mgを毎晩腟内投与、残りの妊婦にはプラセボを投与するようランダムに割り付けられた。主要評価項目は34週未満の自然分娩。子宮頸管短縮症による早産の減少に有効結果は、プロゲステロン投与群はプラセボ群より、自然分娩(34週未満)の頻度が低かった(19.2%対34.4%、相対リスク0.56)。しかしプロゲステロン投与群は、顕著とは言えないものの新生児罹患率の減少との関連が認められた(8.1%対13.8%、相対リスク0.59)。プロゲステロン投与に関連する重篤な有害事象は認められていない。これらから研究グループは、子宮頸管短縮症と診断された妊婦に対するプロゲステロンの投与は、自然早産のリスクを低下させると結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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リウマチ性心疾患の二次予防高めるためにも心エコースクリーニングを

リウマチ性心疾患の有病率に関する疫学研究を見ると、疑いのある症例が見いだされると心エコーで確認するという臨床的スクリーニング法が用いられていることが明らかである。パリ・デカルト大学のEloi Marijon氏らは、調査対象すべての小児に対して心エコースクリーニングを施行すれば、リウマチ性心疾患の有病率は有意に高くなると仮説を立て両スクリーニングによる検出に違いがないかを検討した。背景には、公衆衛生の上で重要な意義を持つのではないかとの考えがあっての研究報告。NEJM誌8月2日号に掲載された。心エコーは予想通りの高率でリウマチ性心疾患を確認本試験はカンボジアとモザンビークの小児を対象に行われた。ランダムに選ばれた6~17歳の学童に対し、リウマチ性心疾患の有無について、標準的な臨床的スクリーニング法と心エコースクリーニング法とを比較している。その結果、臨床的スクリーニング法では、カンボジアでは3,677人中8例に、モザンビークでは2,170人中5例にリウマチ性心疾患が検出された。有病率(95%信頼区間)は、カンボジア1,000対2.2(0.7-3.7)、モザンビーク1,000対2.3(0.3-4.3)である。一方の心エコースクリーニングでは、カンボジアで79例、モザンビークでは66例を検出した。有病率(95%信頼区間)は、カンボジア1,000対30.4 (16.8-26.2)、モザンビーク1,000対21.5(23.2-37.6)だった。検出された症例の大半(カンボジア87.3%、モザンビーク 98.4%)で、僧帽弁の病変が関与していた。二次予防に生かせるスクリーニング法の選択を示唆臨床的スクリーニング法による有病率と、系統的な心エコースクリーニング法では、約10倍という非常に大きな開きがあった。リウマチ性心疾患はしばしば重篤な予後をもたらす。しかし初期症状の正確な診断が得られれば二次予防が有効となる。Marijon氏らはその意味で、「公衆衛生の面で重要な意義を持つ結果が得られた」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

30691.

ウガンダ北部内戦を生き延びた少年少女に対する有効な心のケアは?

ウガンダ北部内戦で強制移住させられた人々には、先行研究によって重大な精神衛生上あるいは心理社会的な問題があることが明らかになっている。ジョンズ・ホプキンス公衆衛生大学院のPaul Bolton氏らは、ウガンダ北部で戦争と強制移住を生き延びた青少年の間に広がる抑うつ症、不安症、問題行動への介入効果を評価するため、無作為化対照試験を行った。報告はJAMA誌8月1日号に掲載された。集団対人関係療法群、activity-based介入群、待機群で比較対象は、強制移住させられた人々が住むウガンダ北部の2つのキャンプの14~17歳の青少年。地域性を考慮して開発されたスクリーニング・ツールによって、抑うつ症状と不安症状、問題行動などが評価され、研究の判定基準を満たした314人を、精神療法介入群105例(集団対人関係療法)、activity-based介入群105例(音楽や美術などクリエイティブ活動)、待機対照群104例(研究終了時に治療を受ける待機者リスト)にランダムに割り付けた。介入グループは16週間にわたって毎週、1時間半から2時間のミーティングが継続され、介入群と対照群は研究終了時点で再評価された。試験は2005年5月~12月にかけて行われた。主要評価項目は抑うつ症の改善、副次評価項目は不安症、問題行動、機能スコアの改善。抑うつ症、不安症、問題行動は下限値32を最小スコアとするAcholi Psychosocial Assessment Instrument(最大スコアは105)を用いて評価された。集団対人関係療法で少女のうつ改善、少年には別の介入が必要集団対人関係療法群の抑うつ症改善を示す補正平均スコアは、対照群との間で9.79ポイントの差があった。特に女子についての両群の差は12.61ポイントで実質的に有意な改善と呼べる効果を示していたが、男子は5.72ポイントで統計学的に有意と言える改善は認められなかった。また抑うつ症改善は、クリエイティブ活動群では認められなかった(-2.51ポイント)。不安症、問題行動および機能スコアについては、いずれの介入群でも統計学的に有意な改善は見られなかった。Bolton氏らは、「かろうじて少女の抑うつ症状に対して集団対人関係療法の効果があることはわかったが、少年に対しては他の有効な介入方法を開発しなければならない」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

30692.

国外に連れ出され売春強要されたネパール少女・女性のHIV感染の実態

性的搾取を目的とする少女・女性の人身売買は南アジア全域にわたり、凶悪な性犯罪かつ重大な人権侵害と認められる。その被害少女・女性たちのHIV有病率と感染予測因子について、ハーバード大学公衆衛生スクールのJay G. Silverman氏らが調査を行った。報告は、JAMA誌8月1日号に掲載された。売買時年齢17.0歳、HIV陽性38.0%本研究は、ネパールの被害少女・女性を対象に行われた。性的搾取を目的にネパールから連れ出され、NGOによって保護され本国へ戻りリハビリサービスを受けた287例。1997年1月~2005年12月にかけての彼女たちの健康診断および診療録を、2006年1月に総合的に調査した。主要評価項目は、人口統計学的特性および人身売買・売春体験に基づくHIV有病率とリスク。無事に本国に戻れた少女・女性のうち38.0%(109/287)がHIVポジティブだった。このうち人身売買の証拠書類が残っていた225例の記録から、売買時の年齢正中値は17.0歳、15歳未満の少女が14.7%(33例)いたことが確認された。15歳未満の少女のリスクがとりわけ高い売買時の年齢が18歳以上群と15歳未満群を比べると、15歳未満群のHIVリスクが高かった(補正オッズ比;AOR 3.70)。感染率は60.6%(20/33)である。さらに、HIVポジティブには、売買先がインドのムンバイである(AOR 4.85)、強制売春の期間が比較的長い(AOR 1.02)との特性が見られ、売春宿での隷属的な期間が増すほどリスクは増加していた。事後解析では、複数の売春宿に抑留されていた15歳未満群でオッズ比が高く(対18歳以上群オッズ比5.03)、抑留期間が1年以上に及んだ者で高かった(同2.67)。以上のように対象のHIV有病率は高く、とりわけ15歳未満で人身売買された少女のリスクが高いことが明らかとなった。Silverman氏らは、「明らかとなった所見は、南アジアの特に若年者を対象に、性的搾取を目的とした人身売買が減るよう注意を払うこと、および治療介入する必要性を示している」と結論づけた。(武藤まき:医療ライター)

30693.

英国独自の心血管系リスクスコア・QRISKの有効性確認される

英国人のデータから作成された「10年間心血管系イベント率予測スコア」であるQRISKは、米国人データを基にしたFraminghamスコアに比べリスク予測がより正確であるとする論文がBMJ誌HPで早期公開された(オンライン版7月5日号、本誌7月21日号掲載)。英国University ParkのJulia Hippisley-Cox氏らによる研究だが、背景には「より適切なリスク評価による医療費削減」という狙いもあるという。「家族歴」だけでなく「貧富」もリスクにQRISKの基になったのはQRESEARCHと呼ばれる電子データベースである。17年間にわたり蓄積された英国529件の一般医を受診したおよそ1千万人のデータが蓄積されている。この中から初診時35~74歳で心血管系疾患と糖尿病を認めなかった約130万例を抽出し、その後10年間の心血管系イベント発生率とリスク因子を検討した。その結果QRISKでは、年齢、LDLコレステロール/総コレステロール比、喫煙、収縮期血圧(SBP)に加え、「降圧薬服用の有無」と「SBPと降圧治療の相互作用項」、さらに「家族歴」と「貧富」が有意な因子となっていた。後者4要因は、Framinghamリスクスコアでは評価されない。なおサッチャー政権以前は「ゆりかごから墓場まで」と言われていた英国において、現在では「貧富」が有意なリスクとなっている点も感慨深い。Framinghamリスクスコアよりも英国人には適している次にこのQRISKの妥当性をQSEARCH内61万例で検討したところ、QRISKによるイベント発生予測率は実際のイベント発生率を相対的に0.4%上回ったのみだった。一方Framinghamリスクスコアでは、実際のイベント発生リスクよりも相対的に35%の過大評価となった。またD statisticとR2 statisticを用いて検討したモデルの適合度も、Framinghamに比べQRISKで高かった。「治療方針の決定にあたりQRISKはより適したツールであろう」と筆者らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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BMIに基づく青少年の「やせ」の新定義

青少年における栄養失調は公衆衛生上の重要課題である。栄養失調は、身長の割に体重が低い「痩身(wasting)」よりも、年齢の割にbody mass index(BMI)が低い「やせ(thinness)」として評価すべきであるが、青少年の「やせ」に関するBMIの適切なカットオフ値は明確ではない。 イギリス・ロンドン大学児童保健研究所小児疫学・統計学センターのTim J. Cole氏らは、18歳時のBMIに基づいて青少年のやせを定義し、そのカットオフ値を決定するための検討を行った。BMJ誌6月25日付オンライン版、7月28日付本誌掲載の報告から。成長に関する国際的な横断的研究本試験は、6ヵ国(ブラジル、イギリス、香港、オランダ、シンガポール、アメリカ)の参加のもとに実施された成長に関する大規模な横断的研究であり、25歳までの男性9万7,876名、女性9万4,851名が解析の対象となった。主要評価項目はBMI(体重/身長×身長、kg/m2)。世界保健機構(WHO)は成人のgrade 2のやせをBMI<17で定義しているが、同じカットオフ値を18歳のデータセットに適用すると、平均BMIはzスコア-2および中央値の80%に近似した。この値は既存の体重と身長に基づく児童の痩身の判定基準に一致した。国際的な青少年のやせのカットオフ値は18歳時のBMI 17個々のデータセットを解析したところ、やせに関するBMIのカットオフ値は18歳時の17 kg/m2と算出された。これはWHOの定義における成人のgrade 2のやせのカットオフ値と一致する。同様に、18歳時のBMI 16、18.5もカットオフ値であることが明らかとなった。以上により、Cole氏は「青少年のやせの国際的な定義の基準として、18歳時のBMI 17が適切なカットオフ値である」と結論している。同氏は、これらの知見に基づき、児童のやせをgrade 1(BMI 17~18.5)、grade 2(BMI 16~17)、grade 3(BMI<16)に分類している。また、「新定義を用いて青少年の栄養状態を世界規模で直接的に比較することを推奨したい。これらのカットオフ値は、やせに関する成人と青少年の統一定義や、過体重および肥満の国際的な定義の策定にも利用できるだろう」と考察している。(菅野 守:医学ライター)

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若者に「大麻を吸うと将来、精神障害になる」と警告すべきか

大麻あるいはマリファナは、多くの国において最も使用頻度の高い違法薬物である。イギリスでは若者の約20%が少なくとも週1回以上使用しているとの報告もある。使用頻度は特に青年期初期に増大するが、発達期の脳は環境曝露の影響を受けやすく、大麻中毒により一過性の精神障害や感情障害が引き起こされる。 では、一過性の大麻中毒が解消した後も、慢性的な精神障害、感情障害は残存するのだろうか。イギリス・ブリストル大学精神科のTheresa H.M. Moore氏らは、この高い関心を集める課題を解決する目的で体系的なレビューを行った。7月28日付Lancet誌掲載の報告から。膨大な医学データベースから35試験を抽出して解析2006年9月の時点で10の医学データベースに登録された関連文献を検索し、地域集団ベースの縦断的研究あるいは縦断的にデザインされた症例対照研究に関する35の研究論文を抽出した。精神障害アウトカムには、統合失調症/統合失調症様障害/統合失調性感情障害/精神病性障害、非感情的/感情的精神障害、特定不能の精神障害、精神病症状、妄想、幻覚、思考障害を含め、感情障害アウトカムは感情障害/気分障害/双極性障害、不特定の感情障害、うつ病、自殺念慮、自殺企図、不安、神経症、躁病とした。大麻使用者は精神障害、感情障害をきたすリスクが有意に増大大麻使用歴のある者は、一過性の中毒が解消した後も何らかの精神障害アウトカムのリスクが有意に増大していた。用量-反応効果がみられ、最も使用頻度が高い群でリスクが有意に高かった。臨床的関連性が強い研究に限定した解析でも同様の結果が得られた。感情障害アウトカムのうち、うつ病、自殺念慮、不安については大麻使用との相関が確認されたが、精神障害に比べれば関連性は低かった。精神障害および感情障害には本質的な交絡作用が確認された。Moore氏は、「これ以上の縦断的研究を行っても大麻と精神障害には関連がないとの結論に達する可能性は低い」とし、「若者に、『大麻の使用は将来、精神障害をきたすリスクを高める』と警告する根拠としては十分なエビデンス」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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VATSと開胸手術の気胸再発率は同等とする見解は誤り

 気胸の再発予防手術(胸膜癒着術)は良性胸膜疾患の手術法として最も施行頻度の高い手技である。2002~2005年のイギリスおよびアイルランドの調査では、より侵襲性の低いビデオ支援下胸腔鏡手術(VATS)の施行数は開胸手術の約3倍にも達しており、その理由として再発率が同等で術後疼痛や入院日数が少ない点が挙げられている。しかし、その論拠とされる研究には無作為化試験が少なく、しかも検出パワーが低いため、これらのエビデンスは疑問視されている。 イギリス・ケンブリッジ市のPapworth病院心臓胸郭手術部のAllanah Barker氏らは、VATSと開胸手術の気胸再発率のより厳密な比較を目的に、無作為化試験および非無作為化試験の体系的なレビューおよびメタ解析を実施、その結果を7月28日付Lancet誌上で報告した。相対リスクは無作為化試験と非無作為化試験の間で差はない 医学データベースを用いて気胸手術に関する体系的な文献検索を行い、29の試験(無作為化試験:4試験、非無作為化試験:25試験)を抽出した。VATS施行例と開胸手術施行例の気胸再発率を統合しメタ解析を行った。開胸手術に対するVATSの気胸再発の相対リスクは、無作為化試験と非無作為化試験の間で差を認めなかった。気胸再発に関するVATSの全体の相対リスクは4.731であり、有意差を認めた(p<0.0001)。VATSの気胸再発率は開胸手術の約4倍 全比較試験における開胸手術に対するVATSの相対リスクは3.991(p<0.0001)、唯一の質の高い試験では4.016(p<0.0001)であり、VATSの高い相対リスクは変量効果モデルを適用しても強力に維持されていた(4.051、p<0.0001)。 Barker氏は、「多くの試験は方法論的な質が低いが、無作為化試験と非無作為化試験の結果は一致しており、VATSの気胸再発率は開胸手術の約4倍にも達した」と結論したうえで、「VATSは開胸手術に比べ再発率が同等で術後疼痛や入院日数が少ないとするこれまでの一般的な見解は誤り」と指摘している。

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急性B型大動脈解離では部分血栓閉塞も重要な予後因子

解離が下降大動脈に限局している急性B型大動脈解離は、安静と降圧剤投与による内科的治療が第一選択となる。その場合、偽腔が開存型か血栓閉塞型かによって予後が予測されてきたが、部分的血栓閉塞が見られる場合の予後についての報告が、NEJM誌7月26日号に掲載された。偽腔状態で階層化Thomas T. Tsai氏ら大動脈解離国際登録(IRAD:International Registry of Acute Aortic Dissection)の研究グループは、1996年から2003年の間に同トライアルに登録された、生存退院した急性B型大動脈解離患者201例を調査した。入院期間中に判定された偽腔の状態(開存型、部分的血栓閉塞型、完全な血栓閉塞型)に基づいて対象を階層化し、Kaplan-Meier死亡率にて評価。死亡の独立予測因子を同定するため、Cox比例ハザード分析を行った。部分的血栓閉塞型の退院後3年死亡率は31.6±12.4%偽腔タイプ別の対象数は、開存型114例(56.7%)、部分的血栓閉塞型68例(33.8%)、完全な血栓閉塞型19例(9.5%)だった。3年死亡率の平均(±SD)は、開存型で13.7±7.1%、部分的血栓閉塞で31.6±12.4%、完全な血栓閉塞で22.6±22.6%だった(追跡期間中央値2.8年、ログランク検定によるP = 0.003)。また退院後死亡の独立予測因子は、部分的血栓閉塞(相対リスク2.69、95%信頼区間1.45-4.98、P=0.002)、大動脈瘤の既往(同2.05、1.07-3.93、P=0.03)、アテローム性動脈硬化症の既往(同1.87、1.01-3.47、P=0.05)であった。Tsai氏らは、「急性B型大動脈解離患者において、偽腔の部分的血栓閉塞は、死亡転帰の重要な独立予測因子である」と述べている。(朝田哲明:医療ライター)

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COX-2のrofecoxib、結腸直腸のアジュバント療法でも心血管有害事象増加

関節炎治療薬のCOX-2選択的阻害薬rofecoxib(商品名Vioxx)は、心血管有害事象を増加するおそれがあるとして2004年に全世界で販売が停止された。 一方でCOX-2には、の進行を遅らせる可能性があるとされている。David J. Kerr氏らVICTOR Trial Group(Vioxx in Colorectal Cancer Therapy: Definition of Optimal Regime)は、この特性に着目して行った、結腸直腸の再発低下を目的とするrofecoxib投与治験について、患者の心血管有害事象に関する報告を行った。詳細はNEJM誌7月26日号に掲載。ステージIIとIII の結腸直腸2,434例対象に無作為化プラセボ対照対象は、結腸直腸ステージIIまたはIIIの患者で、rofecoxibの無作為化プラセボ対照試験に参加した2,434例。心血管系の重篤な血栓性イベントの有害事象すべてが検討され、持続的なリスクを評価するため、試験終了24ヵ月後までの心血管イベント報告を含んで行われた。rofecoxibの投与は、腫瘍切除術、化学療法あるいは放射線療法といった加療が行われた後に、25mg/日で開始された。心血管イベントの相対リスクは1.50本試験はrofecoxibの販売停止で当初予定より早く終了となっている。実薬治療の継続期間の中央値は7.4ヵ月間。追跡調査期間中央値は投与群(1,167例)33.0ヵ月、プラセボ群(1,160例)33.4ヵ月だった。確認された23件の心血管イベントのうち16件がrofecoxib投与群で、治療期間中かもしくは治療期間後14日以内で発生していた。推定相対リスクは2.66(P=0.04)。Antiplatelet Trialists' Collaborationエンドポイント(心血管系・出血・原因不明による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞ならびに脳出血の複合発生率)の解析では、相対リスク(未調整)は1.60だった(P=0.37)。また試験終了後2年以内に14件の心血管イベントが報告され、このうち6件がrofecoxib投与群だった。全体の相対リスク(未調整)は1.50と報告されている(P=0.24)。さらに、治療期間中もしくは治療期間後14日以内にrofecoxib投与群4例とプラセボ群2例で血栓症による死亡が確認され、追跡期間中にrofecoxib投与群1例とプラセボ群5例の心血管イベントによる死亡が確認された。Kerr氏らは、結腸直腸に対するアジュバント療法としての投与でも、rofecoxibは心血管系有害事象の増加と関連していたと結論している。(武藤まき:医療ライター)

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肥大型心筋症、ハイリスク因子1つで植込型除細動器の検討に値する

近年、肥大型心筋症(HCM)での突然死予防を目的とする、植込型除細動器(ICD)の装着が推進されている。しかし、その効果とどのような患者に適切なのかという課題は未解決のままである。アメリカ・ミネアポリス心臓研究所財団HCMセンターのBarry J. Maron氏らは、その評価を見極めるべく多施設共同無作為化試験を行った。JAMA誌7月25日号で報告された。ICD装着506例を追跡調査対象は、1986年から2003年の間にICD多施設共同研究に参加登録した506例。アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアの42機関にわたる、HCMとは関係なく突然死のリスクが高いと判断されICDを装着した患者である。平均年齢は42歳(SD 17)と総じて若く、またほとんど(87%)がHCMの症状がないか、あってもごくわずかな症状の経験でICD装着に至っていた。それら患者を追跡調査し、臨床リスク像と発生率との関連を調べ、HCMに対するICD介入の有効性を評価した。突然死の臨床像を正確に把握するため、リスク因子として、突然死の家族歴、広範囲に及ぶ左心室肥大(壁厚30mm以上)、ホルター心電図による非持続性心室頻拍、不明な失神の既往を含んで行われた。平均追跡期間は3.7年(SD 2.8)。主要評価項目は、ICD介入が適切に心室頻拍あるいは心室細動の発作を収めたかどうか。ICD介入の可能性は、リスクマーカーが1つでも複数でも有意差なし主要評価項目は2割(103例)で認められた。ICD介入率は、心停止を経験した二次予防目的の装着患者で10.6%/年[5年累積率39%(SD 5)]、一次予防目的の装着患者では3.6%/年[5年累積率17%(SD 2)]。介入が装着後5年以上経ってから初めてあったのは27%(SD 7)、最高は10年だった。一次予防目的患者で実際にICD介入を経験したのは51例で、そのうち18例(35%)は1つの危険因子だけで装着をしていた。一方でICD介入の可能性は、リスクマーカーが1つでも2つでも、3つ以上でも有意差はなかった(P=0 .77)。なお、ICDの故障による突然死が1例、ICD合併症によるショックは136例(27%)となっている。これら結果からMaron氏らは、「リスクの大きいHCM患者に対するICD介入は非常に効果的である。特に注目すべきは、ICD介入がリスク因子1つの一次予防装着患者でも起きていたことだ。したがって、HCM患者が予防目的でICD装着を選択する際には、1つのハイリスク指標があれば十分検討に値する」と結論付けた。(武藤まき:医療ライター)

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ヒッププロテクターの股関節骨折予防の効果見られず

アメリカでは年間34万件の股関節骨折(90%が転倒による)が発生しており、ナーシングホーム入所者の罹患率が最も高いという現状がある。しかし一方で、ナーシングホーム入所者を対象とする、股関節骨折予防のためのヒッププロテクター装着の有効性に関する過去のスタディは、相反する結果を有してきた。 ボストンにあるInstitute for Aging Research のDouglas P. Kiel氏らは、ヒッププロテクター装着の有効性についてHIP PRO(Hip Impact Protection PROject)と称する多施設共同無作為化試験を行った。JAMA誌7月25日号からの報告。衝撃分散・吸収両タイプを用い多施設共同無作為でヒッププロテクターには、衝撃を分散させるタイプと、吸収するタイプがある。本研究ではいずれかを用いるのではなく両タイプを使い、37施設のナーシングホーム入所者を対象に無作為に、左右いずれか片方だけに装着してもらうよう割り付けた。また先行研究の反省点として遵守率に留意し、参加者は事前に2週間、装着遵守した者だけを登録し試験対象とした。さらに試験中も週3回、アポなし訪問で装着遵守率が確認された。試験期間は2002年10月~2004年10月の2年間。主要評価項目は、プロテクターを装着した側としなかった側それぞれの臀部の股関節骨折事象の発生。左右臀部プロテクター装着の有無、高い遵守率群でも罹患率に有意差なし本研究は追跡調査期間20ヵ月(観察676人年)で効力の欠如により終了となった。参加者は1,042人(平均年齢85歳;SD 7、女性79%)、平均参加期間は7.8ヵ月。有害事象は特に起きなかった。結果は、プロテクターの有無の違いによる左右の股関節骨折の罹患率に有意差は見られなかった(P=0.70)。プロテクター装着の遵守率は73.8%。遵守率80%を超える334人の群についても、左右のプロテクター有無による罹患率の有意差は見られなかった(P=0.42)。Kiel氏らは、「プロトコルの良好な遵守にもかかわらず、我々は股関節骨折のリスクに対するヒッププロテクター装着の有効性を見出すことができなかった。本研究は、股関節部骨折の予防には有効ではないというエビデンスを補強する結果ものだった」と結論付けた。(武藤まき:医療ライター)

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