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プライマリ・ケアにおける高血圧診断、ABPMが費用対効果に優れる

24時間自由行動下血圧測定(ABPM)は、診察室(CBPM)や家庭(HBPM)での血圧測定よりも費用対効果が優れ、高血圧の診断戦略として最も有用であることが、イギリス内科医師会(Royal College of Physicians)のKate Lovibond氏らによる調査で示された。従来、プライマリ・ケアにおける高血圧の診断はCBPMに基づいて行われるが、HBPMやABPMのほうが心血管アウトカムとよく相関し、ABPMはCBPMやHBPMに比べ高血圧の診断精度が高いことが示されている。Lancet誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月24日号)掲載の報告。高血圧診断戦略としての費用対効果をMarkovモデルで解析研究グループは、Markovモデルを用いて、高血圧の診断戦略としてのCBPM、HBPM、ABPMの費用対効果を比較するために、基本ケース解析(base-case analysis)を行った。スクリーニング時の血圧が140/90mmHg以上で一般集団と同等のリスク因子を有する40歳以上の仮説的なプライマリ・ケア受診集団を対象とした。CBPM(月1回、3ヵ月)、HBPM(週1回)、ABPM(24時間)について、生涯コスト、質調整生存年(QALY)、費用対効果の評価を行った。ABPMは全年齢でコストが削減、50歳以上でQALYが延長ABPMはCBPMやHBPMに比べ全年齢の男女において費用対効果が優れていた。ABPMは全年齢の男女でコストが削減され(CBPMとの比較、範囲:75歳男性の56ポンド削減から40歳女性の323ポンド削減まで)、50歳以上の男女ではQALYが延長した(CBPMとの比較、範囲:60歳女性の0.006年から70歳男性の0.022年まで)。HBPMも同様に、全年齢の男女でコストが削減され(CBPMとの比較、範囲:75歳男性の16ポンド削減から40歳女性の68ポンド削減まで)、50歳以上の男女でQALYが延長した(CBPMとの比較、範囲:60歳女性の0.001年から70歳男性の0.005年まで)が、ABPMに比べて費用対効果は低かった。著者は、「診察室での初回血圧測定値が高値を示した集団における高血圧の診断戦略として、ABPMは誤診を減らし、コストを削減する優れた方法である」と結論し、「ABPMで新たに生じるコストは、より対象を絞り込んだ高血圧治療の実現によるコストの削減で相殺された。降圧薬治療開始前の患者の診断には、ABPMが推奨される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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推奨量より少ない運動でも、平均寿命が延長

余暇時間における身体活動(leisure-time physical activity; LTPA)は、たとえそれが推奨運動量より少なくても、健康状態を改善し平均寿命の延長をもたらすことが、台湾・国立健康研究所のChi Pang Wen氏と国立体育大学のJackson Pui Man Wai氏らの調査で示された。LTPAが健康状態を改善することはよく知られており、アメリカ(2008年)やWHO(2010年)の身体活動ガイドラインでは平均150分/週以上のLTPAが推奨されている。アメリカの成人の3分の1がこの推奨運動量を実行しているのに対し、東アジア人(中国、日本、台湾)の達成率は5分の1以下にすぎないが、推奨量より少ない運動が平均寿命に及ぼす影響は明らかではないという。Lancet誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月16日号)掲載の報告。41万人以上の成人を8年以上追跡した前向きコホート試験研究グループは、台湾の地域住民において身体活動量が健康に及ぼす影響を評価するプロスペクティブなコホート試験を実施した。1996~2008年までに、台湾の標準的な検診プログラムに参加した20歳以上の41万6、175人(女性:21万6,910人、男性:19万9,265人)について、平均8.05(SD 4.21)年の追跡調査を行った。参加者は、自己記入式質問票に記述した1週間の運動量に基づき、5つのカテゴリー(AinsworthらのMET[metabolic equivalent]の定義で運動強度を判定して1週間の運動量を算出。身体活動なし[非運動群]、少ない[low群]、普通[medium群]、多い[high群]、たいへん多い[very high群])のうちの1つに分類された。非運動群との比較における4つの群の死亡リスクのハザード比を算出し、平均寿命を推算した。推奨される150分/週よりも運動量が少ない場合の生存ベネフィットの評価を行った。low群で全死因死亡、平均余命が改善92分/週(95%信頼区間:71~112)あるいは15分/日(SD 1.8)の運動群(low群)では、非運動群に比べて全死因死亡率が14%低下し、平均寿命が3年延長した。最低でも15分/日以上の運動量の集団では、運動量がさらに15分/日増加するごとに全死因死亡率が4%(95%信頼区間:2.5~7.0)ずつ低下し、がんによる死亡率が1%(同:0.3~4.5)ずつ減少した。これらのベネフィットは全年齢の男女および心血管疾患リスクを有する集団でも認められた。非運動群は、low群に比べ死亡リスクが17%(ハザード比:1.17、95%信頼区間:1.10~1.24)増加していた。著者は、「15分/日、90分/週という推奨される運動量よりも少ないlow群および心血管疾患リスクのある群で生存ベネフィットが確認された」と結論し、「少ない運動量であっても、非伝染性疾患との世界的な戦いにおいて重要な役割を担っており、医療コストや医療格差の低減に寄与する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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旧社会主義国生まれの禁煙補助薬シチシンの有効性と安全性

1964年にブルガリアで発売され、40年以上にわたり旧社会主義国で商品名Tabexとして流通してきた禁煙補助薬シチシンについて、英国・ロンドン大学のRobert West氏らが、有効性と安全性に関する単施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。一部の禁煙補助薬には寿命保持への費用対効果が認められるが、国によってはその治療コストが喫煙コストよりも非常に高くつく(たとえば中国では、8週間課程ニコチン補充療法230ドルに対しタバコ20本約73セント、15セントのものもあるという)。シチシンは、2004年にEU加入後も発売を続けるポーランドでは15ドル、またロシアではOTC薬として6ドルほどで入手でき、研究グループはその低コストに着目した。NEJM誌2011年9月29日号掲載報告より。25日間治療終了後、12ヵ月の継続禁煙を評価シチシンは、α4β2ニコチンアセチルコリン受容体と高親和性に結合する部分的作動薬で、至適用量についての検討をはじめ現在標準に適合した治験は行われていない。研究グループは、比較的短期治療(25日間)および最低限の医療専門家との接触でとの設定で、ポーランドのワルシャワにあるSklodowska-Curie記念がんセンターで被験者を募り行った。1,542例がスクリーニングを受け、740例が登録され、シチシン投与群(370例)とプラセボ投与群(370例)に無作為化に割り付けられた。シチシン投与は、2004年にEUに加盟した国で許可されている方法に従い、1~3日は1日6錠(2時間ごとに1錠服用)、4~12日は同5錠、13~16日は同4錠、17~20日は同3錠、21~25日は同2錠のスケジュールで行われた。両群被験者は治療期間中4回のカウンセリング[0、0~7(電話)、7、28日目]を受け、投与終了後6ヵ月の間に2回、さらにその後6ヵ月の間に2回のフォローアップを受けた。主要評価項目は、投与終了後12ヵ月間の化学的に確認された継続禁煙とされた。世界的な禁煙促進の安価な治療薬と成りえる被験者登録は2007年12月10日に開始され、フォローアップ最終は2010年9月2日だった。結果、投与終了後12ヵ月継続禁煙の割合は、シチシン群8.4%(31例)、プラセボ群2.4%(9例)だった(格差:6.0ポイント、95%信頼区間:2.7~9.2、P=0.001)。最終12ヵ月時点フォローアップ前週の禁煙達成者は、シチシン群13.2%、プラセボ群7.3%だった(P=0.01)。両群計10例以上が報告された消化器系、精神医学的、神経系、皮膚・皮下組織の4区分の有害事象のうち、シチシン群の頻度が最も高かったのは消化器系イベントで、プラセボ群との格差は5.7ポイント(95%信頼区間:1.2~10.2)だった。研究グループは、「この単施設試験において、シチシンはプラセボより有効だった。他の禁煙療法と比べて安価であるシチシンは、禁煙を世界的に促進させるために手に入れやすい治療と成りえる」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

30664.

新生児敗血症への免疫グロブリン静注療法、転帰を改善せず

新生児敗血症に対する免疫グロブリン静注療法は、転帰に対する効果がないことが明らかにされた。国際新生児免疫療法試験(INIS)共同研究グループは、9ヵ国113施設で約3,500例の被験児を対象に行った結果による。新生児の主要な死因であり合併症をもたらす敗血症は、抗菌薬治療に加えた有効な治療が必要とされる。そうした患児に対して免疫グロブリン静注療法は全死因死亡を減らすことがメタ解析の結果、示されていた。しかし解析対象であった試験は小規模で、試験の質もバラバラであったことから、INIS共同研究グループが、国際化多施設共同二重盲検無作為化試験を行った。NEJM誌2011年9月29日号掲載報告より。9ヵ国113施設3,493例を対象に二重盲検無作為化試験試験は、2001年10月~2007年9月に、イギリス、オーストラリア、アルゼンチンなど9ヵ国113施設から、重度感染症が疑われるか、または認められ抗菌薬治療を受けていた新生児合計3,493例が登録され行われた。被験児は無作為に、多価IgG免疫グロブリン静注投与(投与量500mg/kg体重)群(1,759例)か、プラセボ群(1,734例)に割り付けられ追跡された。投与は2回ずつ行われ、1回目と2回目の間隔は48時間だった。主要アウトカムは、2歳時点の死亡または重度障害とした。2歳時点の死亡または重度障害、両群に有意差認められず結果、主要アウトカムの発生率について、両群に有意な差は認められなかった。免疫グロブリン静注群は39.0%(686/1,759例)、プラセボ群は39.0%(677/1,734例)で、相対リスク1.00(95%信頼区間:0.92~1.08)だった。その後の敗血症エピソードの発生率など、副次アウトカムの発生率についても同様に有意差は認められなかった。2歳児フォローアップにおいても、重度・非重度障害または有害事象の発生率に有意差は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

30665.

高齢者の頸動脈ステント留置術、施術者の経験がアウトカムに有意に影響

高齢者に対する頸動脈ステント留置術は、施術者の年間手術件数が少ないと、多い場合に比べ、30日死亡リスクが約2倍に増大することが明らかにされた。通算手術数が少ない施術者の同リスクは1.7倍であったという。米国・ミシガン大学ヘルスケアアウトカム・政策センターのBrahmajee K. Nallamothu氏らが、頸動脈ステント留置術を行った高齢者、約2万5,000人について行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。これまで、ステント術の有効性については臨床試験で検証がされているが、施術者の経験がアウトカムに及ぼす影響について臨床ベースで検討されていなかった。施術者を年間手術件数と通算手術件数で分類、30日死亡率を比較研究グループは、65歳以上のメディケア出来高払い制プラン加入者で、2005~2007年に頸動脈ステント留置術を行った人と施術者について調査を行った。頸動脈ステント留置術に対する、メディケアおよびメディケイド(Centers for Medicare & Medicaid Services:CMS)での支払いカバーは、2005年3月から導入されている。調査は、施術者を年間の頸動脈ステント留置術実施件数によって、「6件未満」「6~11件」「12~23件」「24件以上」の4区分に分類して検討。また、CMSが導入後に初めて手術を行った施術者について、手術経験が「1~11件」までと浅かった場合と、「12件以上」の場合とを比較した。主要アウトカムは、術後30日死亡率だった。結果、調査対象期間中の頸動脈ステント留置術は2万4,701件、施術者数は2,339人だった。そのうち、CMSが導入後に初めて施術した医師は1,792人で、それらの実施件数は1万1,846件だった。年間手術件数が少ないと死亡率は1.9倍に、経験が浅いと同1.7倍に術後30日死亡率は、被験者全体では1.9%(461人)だった。塞栓防止用デバイスを用いての手術失敗率は4.8%(1,173人)だった。メディケア加入者に対する年間施術数の中央値は、3.0(四分位範囲:1.4~6.5)だった。調査期間中、年間12件以上施術をしていたのは、施術者の11.6%だった。30日死亡率は、年間手術件数が少ないほど高く(p<0.001)、「6件未満」2.5%、「6~11件」1.9%、「12~23件」1.6%、「24件以上」1.4%だった。また、手術経験が11件以下の人の同率は2.3%で、12件以上の1.4%に比べ、有意に高率だった(p<0.001)。多変量解析の結果、年間6件未満の施術者の、同24件以上施術者に対する30日死亡補正後オッズ比は、1.9(95%信頼区間:1.4~2.7、p<0.001)だった。また、CMS導入後の施術者の経験別にみた、年間11件以下の施術者の、同12件以上施術者に対する30日死亡補正後オッズ比は、1.7(同:1.2~2.4、p=0.001)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30666.

腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率や必要検査数、男女間で格差

腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率は、同年齢層でみるといずれも男性で高率であり、検診で1人の疾病を検出するための必要検査数(NNS)も性別によって異なることが明らかにされた。オーストリア胃腸・肝臓学会のMonika Ferlitsch氏らが、約4万4,000人について行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率はいずれも男性が女性の約2倍研究グループは、2007~2010年に、全オーストリアの大腸内視鏡検査によるスクリーニング・プログラムを受けた4万4,350人について解析を行い、腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率とNNSについて、男女の年齢層別における格差を調べた。被験者は、女性が51.0%、年齢中央値は女性60.7歳、男性60.6歳だった。結果、腺腫が検出されたのは全体の19.7%(8,743人)、進行腺腫は6.3%(2,781人)、大腸がんは1.1%(491人)だった。NNSは、腺腫5.1、進行腺腫15.9、大腸がん90.9だった。男女別にみた、腺腫の有病率は男性24.9%、女性14.8%(補正前オッズ比:1.9、p<0.001)、進行線種は同8.0%、4.7%(同:1.8、p<0.001)、大腸がんは同1.5%、0.7%(同:2.1、p<0.001)であり、いずれも男性で高率だった。進行腺腫有病率と必要検査数、45~49歳男性と55~59歳女性で同等年齢別では、男性50~54歳の進行腺腫有病率は5.0%に対し、同年齢層の女性では2.9%と低く、必要検査数も男性20に対し女性34だった(いずれも補正後p=0.001)。一方で、同有病率について男性45~49歳(3.8%)と、それより高齢層の女性55~59歳(3.9%)とで同等であることが認められ、同年齢層比較では、必要検査数も同等だった(男性:26.1、女性26)(p=0.99)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

30667.

2009年イギリスのA/H1N1型インフルエンザ流行は軽度のパンデミックだった

2009年のイギリスにおけるA/H1N1型インフルエンザの流行は軽度のパンデミックであり、従来のサーベイランスシステムではパンデミックの程度を正確に推定するには不十分なことが、イギリスCambridge University Forvie SiteのA M Presanis氏らの調査で示された。2009年のA/H1N1型インフルエンザの流行が当初どの程度と推定されたかは不明であり、後に比較的軽度だが感染の年齢分布が季節性のインフルエンザとは異なることが示唆されている。パンデミックの程度に関する以前の研究では、バイアスの説明が不十分で、不確実性の定量化に関連するエビデンスが包括的に援用されておらず、パンデミックの程度の変化や定期的なサーベイランスシステムの妥当性の評価が含まれていないなどの問題があるという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載の報告。2009年のパンデミックの影響を、Bayesian evidence synthesisで評価研究グループは、2009年のA/H1N1型インフルエンザのパンデミックの影響を評価するために、2010年2月下旬までの2回の流行期における重症化の確率や感染率を推定した。パンデミックの程度の推定には、2009年6月~2010年2月までにイギリスで実施されたサーベイランスのデータを用い、ベイズ法によるエビデンスの統合解析(Bayesian evidence synthesis)を行った。イギリス国民全体の感染率は11.2%、5~14歳は29.5%A/H1N1型インフルエンザの夏の流行期には、推定60万6,100人(95%信頼区間:41万9,300~88万6,300)の症候性の患者のうち3,200人(同:2,300~4,700、0.54%[同:0.33~0.82])が入院し、310人(同:200~480、0.05%[同:0.03~0.08])が集中治療室(ICU)に収容され、90人(同:80~110、0.015%[同:0.010~0.022])が死亡した。2回目の流行期には、推定135万2,000人(95%信頼区間:82万9,900~280万6,000)の症候性の患者のうち7,500人(同:5,900~9,700、0.55%[同:0.28~0.89])が入院し、1,340人(同:1,030~1,790、0.10%[同:0.05~0.16])がICUに収容され、240人(同:310~380、0.025%[同:0.013~0.040])が死亡した。感染者の3分の1以上(35%[95%信頼区間:26~45])が症候性であったと推定された。夏の流行期には入院患者の30%(95%信頼区間:20~43)がサーベイランスシステムによって検出されたのに対し、2回目の流行期では20%(同:15~25)にとどまった。2回の流行期を通じて、イギリス国民の11.2%(95%信頼区間:7.4~18.9)がA/H1N1型インフルエンザに感染したと推定され、5~14歳の推定感染率は29.5%(同:16.9~64.1)に上昇していた。感度分析による感染率は5.9(同:4.2~8.7)~28.4(同:26.0~30.8)%と推算され、2回目の流行期の感染死亡率は0.0027(同:0.0024~0.0031)~0.017(同:0.011~0.024)%と推算された。著者は、「2009年のA/H1N1型インフルエンザの流行は軽度のパンデミックであったと推察され、就学年齢の子どもの感染率が高かった。特に重症例の把握が不十分であり、現在のサーベイランスシステムの限界が明らかとなった」と結論し、「特に2010~2011年のインフルエンザ流行期における2009年のA/H1N1株の明らかな再流行をふまえると、適切な保健医療施策の情報を伝えるには、パンデミックの程度を早期に確実に推定するシステムの確立が重要なことが浮き彫りとなった」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

30668.

統合失調症/双極性障害患者は一般人よりも若くして自然死する傾向に

統合失調症および双極性障害の患者は、一般人に比べて実質的に若くして自然死していることが、イギリス・オックスフォード大学のUy Hoang氏らの調査で示された。統合失調症/双極性障害患者は、自然死、不自然死の割合がともに一般人よりも高い。イギリスでは精神疾患患者の自殺や不自然死は安定化しつつあるとされ、最近の政府のメンタルヘルス戦略では「早死にする精神障害者は減少するだろう」と明言しているという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載の報告。統合失調症/双極性障害患者の死亡率を評価するレトロスペクティブな記録調査研究研究グループは、統合失調症/双極性障害患者と一般住民の死亡率の差を評価するために、レトロスペクティブな記録調査研究を行った。1999~2006年までの病院統計データと退院患者の死亡登録データを用い、統合失調症あるいは双極性障害の診断で入院治療を受けた患者について、退院後1年間追跡調査を行った。1999年と2006年の統合失調症/双極性障害患者と一般人の死亡率を比較するために、年齢標準化死亡比を算出した。経時的な傾向の評価にはPoisson分布検定を用いた。標準化死亡比:統合失調症は1.6から2.2へ、双極性障害は1.3から1.9へ2006年までに、統合失調症/双極性障害患者の標準化死亡比は一般人の約2倍に達し、死亡率の差は経時的に広がる傾向がみられた。すなわち、統合失調症の退院患者の標準化死亡比は1999年が1.6(95%信頼区間:1.5~1.8)、2006年は2.2(同:2.0~2.4)であり、双極性障害ではそれぞれ1.3(同:1.1~1.6)、1.9(同:1.6~2.2)であった。標準化死亡比は自然死よりも不自然死で高かったが、全死亡の約4分の3は自然死として認定されており、全死因死亡の増大の主な原因は、循環器および呼吸器疾患による自然死の増加であった。著者は、「統合失調症および双極性障害の患者は、一般人に比べて実質的に若くして自然死していることがわかった」と結論し、「退院後の精神疾患患者と一般人の死亡率の差が持続的に増大している原因を解明し、これらの患者の自然死、不自然死双方のリスク因子をターゲットとした継続的な調査を進める必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

30669.

大気汚染による心肺死亡率上昇、心筋梗塞リスク以外の影響が大きい

心筋梗塞のリスクは、典型的な交通関連の大気汚染物質である直径10μm未満の大気粒子(PM10)と二酸化窒素(NO2)への曝露によって一過性に上昇するものの、時間の経過とともに低下しており、大気汚染による心肺死亡率の上昇には他のメカニズムの影響が大きいことが、英国・ロンドン大学公衆衛生学熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らの検討によって示唆された。いくつかの大気汚染物質については、日常的な高レベル状態が死亡率の上昇に関連することが示されている。大気汚染が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響に関するエビデンスは存在するが、曝露後数時間における短期的な影響を評価した研究はほとんどないという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月20日号)掲載の報告。大気汚染と心筋梗塞の短期的な関連を評価する地域住民ベースの研究研究グループは、イングランドとウェールズの15の大都市圏において、大気汚染と心筋梗塞の関連を1時間単位のデータを用いて短期的に評価する地域住民ベースの研究を行った。Myocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)の臨床データと、UK National Air Quality ArchiveのPM10、オゾン、一酸化炭素(CO)、NO2、二酸化硫黄(SO2)のデータを用い、汚染時間を1~6、7~12、13~18、19~24、25~72時間に分けて解析した。2003~2006年に心筋梗塞と診断された7万9,288例のデータに基づき、汚染レベルが10μg/m3増加するごとの心筋梗塞リスクの増分を評価した。PM10、NO2への曝露により、1~6時間後の短期的な心筋梗塞リスクが上昇単一の汚染物質に関する解析では、PM10およびNO2への曝露により、1~6時間後の短期的な心筋梗塞のリスクが上昇した(10μg/m3増加ごとのリスクの上昇:PM10 1.2%[95%信頼区間:0.3~2.1]、NO2 1.1%[同:0.3~1.8])。この影響は複数汚染物質の解析でも一貫して認められたが、PM10の影響に関するエビデンスはごく弱いものであった(p=0.05)。中等度の心筋梗塞リスク上昇がみられた汚染物質も、時間の経過とともにそのリスクが低下した。5つの汚染物質のうち、72時間以上にわたって心筋梗塞のリスクを上昇させるものは確認されなかった。著者は、「PM10とNO2という典型的な交通関連汚染物質による一過性の心筋梗塞リスクの上昇がみられたが、時間の経過とともにリスクは低下していることから、大気汚染によって全体的なリスクが上昇するというよりも、イベントの発生が時間的に前倒しされる(イベント発生の短期的な置き換え)ことが考えられる」とまとめ、「大気汚染が心肺死亡率に及ぼす確固たる影響は、心筋梗塞の急性のリスク上昇によるものではなく、他のメカニズムが関与している可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

30670.

肺炎予防推進プロジェクト「シニアの備え」普及運動を開始 新大使に加賀まりこ氏

「肺炎予防推進プロジェクト」が9月14日、65歳以上のシニア層のライフスタイルの包括的なサポートを目指す「シニアの備え」普及運動のキックオフ記者発表会を開催した。また、肺炎予防大使には2009年の発足時から大使を務める中尾彬氏に続き、新たに加賀まりこ氏が就任した。2011年9月に発足した「肺炎予防推進プロジェクト」では、7つの賛同企業と団体が引き続き参画し、従来の肺炎予防啓発活動をさらに発展させ、シニアのライフスタイルの包括的なサポートを目指す「シニアの備え」普及運動を開始するという。特に今年度は、シニアの方々の声や実像に基づいて、食事、運動、趣味や生きがいなどの社会活動、そして予防医療の4つのテーマで「シニアの備え」を実践するための情報や様々なプログラムを提供していく予定とのこと。同プロジェクトでは2009年9月の発足時より、急性肺炎を患った経験を持つ俳優の中尾氏が大使となり65歳以上の肺炎予防の重要性と予防法の啓発活動を展開してきた。その後、肺炎球菌ワクチンの接種者数は約2倍に増加したという。しかし、全国平均の推定接種率はいまだ約11.8%と少ないのが現状だ。記者発表会当日は、同プロジェクト顧問である日本医科大学特任教授、日本医科大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏による「高齢者の肺炎予防」に関するレクチャーのほか、新肺炎予防大使に加賀まりこ氏を迎え、就任式も同時に行われた。また、大使3年目の中尾彬氏、新大使の加賀氏と、NPO法人シニアわーくすRyoma 21理事長の松本すみ子氏の3名による「シニアの備え」トークショーも開催された。トークショーでは、それぞれが自身の体験談を交えながら、65歳以上の方々が日々いきいきとアクティブに暮らすためにも、食事や運動に気を使うのと同じように予防医療を暮らしの中に取り入れていくなど、「シニアの備え」が重要であるという話で締めくくられた。同社は今回新たに「シニアの備え」の普及運動と意識調査、情報やプログラムの提供を開始するが、今後も継続して、テレビコマーシャル放映と新聞広告の全国展開、また、Webサイトによる情報提供 (http://www.haienyobo.com/)、ポスターの掲示・情報冊子の提供などの活動を行っていくという。「肺炎予防促進プロジェクト」サイトはこちらhttp://www.haienyobo.com/

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腸管出血性大腸菌O104: H4感染による重度神経症状に免疫吸着療法が有効

腸管出血性大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群(HUS)患者にみられる重篤な神経症状のレスキュー治療として免疫吸着療法が有効なことが、ドイツ、エルンスト・モーリッツ・アルント大学のAndreas Greinacher氏らの検討で明らかとなった。2011年5月の北ドイツ地方におけるShiga毒素産生性腸管出血性大腸菌O104: H4の感染拡大により、血漿交換療法や抗補体抗体(eculizumab)に反応しない腸炎後の溶血性尿毒症症候群や血栓性微小血管症が多発した。患者の中には、腸炎発症の1週間後に発現した重篤な神経学的合併症のために人工呼吸を要する者がおり、これは症状の発現機序に抗体が介在することを示唆するという。Lancet誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月5日号)掲載の報告。免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験研究グループは、大腸菌O104: H4感染に関連して重度神経症状がみられる患者に対する、レスキュー治療としての免疫吸着療法の有用性を評価するプロスペクティブな非対照試験を実施した。重篤な神経学的症状を呈し、大腸菌O104: H4感染が確認され、他の急性の細菌性感染症やプロカルシトニン値の上昇がみられない患者を対象とした。12Lの血漿量のIgG免疫吸着処置を2日間行った後、IgG補充(0.5g/kgの静脈内IgG投与)を実施した。連日、複合的神経症状スコア(低いほど良好)を算出し、免疫吸着療法前後の変化を評価した。12例中10例で神経症状、腎機能が完全回復初期症状として腸炎を発症したのち腎不全を来した12例が登録された。そのうち10例(83%)は、中央値8.0日(5~12日)までに腎代替療法を要した。神経学的合併症(患者の50%にせん妄、刺激感受性ミオクローヌス、失語、てんかん発作がみられた)の発症までの期間は中央値で8.0日(5~15日)であり、9例で人工呼吸を要した。免疫吸着療法開始の3日前の時点で3.0(SD 1.1、p=0.038)まで上昇した複合的神経症状スコアは、免疫吸着療法施行後3日目には1.0(SD 1.2、p=0.0006)まで改善した。人工呼吸を必要としなかった患者では、免疫吸着療法中に失語の消失など明らかな改善がみられた。人工呼吸を要した9例のうち5例は48時間以内に、2例は4日までに機器が外されたが、残る2例は呼吸障害のために人工呼吸が継続された。12例全例が生存し、10例は神経症状および腎機能が完全に回復した。著者は、「大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群患者の重篤な神経症状の病因として抗体の関与が示唆される。免疫吸着療法は、これらの重篤な合併症を迅速に改善するレスキュー治療として安全に施行可能である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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週3回血液透析における2日間隔は、死亡・入院リスクを高める

 週3回行われる血液維持透析は、1日間隔と2日間隔のインターバルが存在するが、2日という間隔が血液透析を受けている患者の死亡率を高める時間的要因であることが明らかにされた。本研究は、米国NIHの資金提供を受けたUnited States Renal Data SystemのRobert N. Foley氏らがnational studyとして行った結果で、20年来の懸念となっていた血液透析患者の生存率の低さ、および末期腎不全患者の大半は循環器疾患を有した状態で血液透析を始めるが、長期インターバルがそれら患者の死亡リスクを高めているのではないかとの仮説に対して言及することを目的に行われた。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。週3回透析を受けていた末期腎不全患者3万2,065例を対象に2日間隔後と1日間隔後を比較 試験は、米国で週3回の血液透析を受けている代表的患者集団であるEnd-Stage Renal Disease Clinical Performance Measures Projectの参加者3万2,065例を対象とした。 被験者は、2004年末から2007年末に週3回透析を受けていた末期腎不全患者で、平均年齢は62.2歳、24.2%が1年以上血液透析を受けていた。 研究グループは、死亡率および心血管関連の入院率について、2日間隔後と1日間隔後について比較を行った。一般に米国週3回の血液透析患者に行われているスケジュールから、金曜日から月曜日の間、または土曜日から火曜日の間に2日間隔があった。週3回透析において2日間隔後の日のほうが死亡率および入院率が高い 平均追跡期間2.2年の間で、週3回透析は2日間隔後の日のほうが1日間隔後の日よりも、死亡率および入院率が高かった。 死亡率については、100人・年当たりの全死因死亡22.1 vs. 18.0(P<0.001)、以下同じく心臓が原因の死亡10.2 vs. 7.5(P<0.001)、感染症関連での死亡2.5 vs. 2.1(P =0.007)、突然死1.3 vs. 1.0(P =0.004)、心筋梗塞による死亡6.3 vs. 74.4(P<0.001)であった。 入院率については、100人・年当たりの心筋梗塞による入院6.3 vs. 3.9(P<0.001)、以下同じくうっ血性心不全による入院29.9 vs. 16.9(P<0.001)、脳卒中による入院4.7 vs. 3.1(P<0.001)、不整脈による入院20.9 vs. 11.0(P<0.001)、あらゆる心血管イベントによる入院44.2 vs. 19.7(P<0.001)であった。 結果を受けてFoley氏は、「試験結果に限りはあるが、いくつかの興味深い所見が得られた。被験者は全米を代表する患者集団であり、間隔が長いことに関してサブグループと全体とで同様の転帰が認められ、未解明だがイベント発生率の格差は、臨床的に意味があるようだった。したがって本試験は、血液透析の提供方法について行われるコントロール試験の臨床的均衡(clinical equipoise)を提供する」とまとめている。

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ロタウイルスワクチン導入後、5歳未満児の入院、医療コストが激減

米国で2006年から開始された、乳児への5価ロタウイルスワクチン(RV5;2、4、6ヵ月齢に経口投与が標準)の直接的、間接的ベネフィットについて、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennifer E. Cortes氏らが調査を行った結果、導入後3年間で入院が推定で約6万5千件減少、医療コストは2億7,800万ドル削減と、いずれも激減したことが報告された。ワクチン導入時は、年間の下痢関連受診が約40万人、救急外来受診20万人、入院は5万5千件で、年間20~60人の5歳未満児が死亡しており、医療コストは年間3億ドルを要していたという。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。導入2年で、1歳未満児の接種率は73%調査は、MarketScanデータベースを使って、5歳未満児のRV5接種率および下痢関連の医療利用について、2007年7月~2009年6月と2001年7月~2006年6月とを比較して行われた。また、未接種児の下痢関連の医療利用の割合について、2008年と2009年それぞれの1~6月期とワクチン導入前とを比較し、間接的なベネフィットについて推定評価した。そして下痢関連の入院の全米的な減少数、およびコストについて外挿法で推定した。2008年12月31日時点で、少なくとも1回接種済みの1歳未満児は73%、1歳児は64%、2~4歳児は8%であった。ロタウイルス感染症入院、導入前と比べて導入2年目75%減、3年目60%減各年の5歳未満児の1万人・年当たりの下痢関連入院は、2001~2006年(導入前)52件、2007~2008年35件、2008~2009年39例となっており、2001~2006年と比べて相対的に、2007~2008は33%減少(95%信頼区間:31~35)、2008~2009年は25%減少(同:23~27)していた。同じく、ロタウイルス感染症と特定された入院は各年、14例、4例、6例で、75%減少(同:72~77)、60%減少(同:58~63)となっていた。2007~2009年で、入院6万4,855件減、医療費2億7,800万ドル減2008年と2009年それぞれ1~6月期の、相対的減少の接種児vs.未接種児の比較は、以下のとおりだった。下痢入院:44%(同:33~53)vs. 58%(同:52~64)、ロタウイルス感染症と診断入院:89%(同:79~94)vs. 89%(同:84~93)、下痢で救急外来受診:37%(同:31~43)vs. 48%(同:44~51)、下痢で外来受診:9%(同:6~11)vs. 12%(同:10~15)。未接種児の間接的なベネフィットは、2007~2008年は認められたが2008~2009年には認められなかった。一方で、2007~2009年の間に米国全体で、入院が推定6万4,855件減少、医療費は2億7,800万ドル削減したと推定された。(武藤まき:医療ライター)

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小児・青年期の強迫性障害、SRI+認知行動療法で治療効果が有意に向上

小児や青年期の強迫性障害(OCD)の治療には、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)の服薬指導と徹底した認知行動療法(CBT)の介入を併用することで、服薬指導のみや、服薬指導と簡単なCBT指示のみの介入に比べ、治療効果が有意に向上することが明らかにされた。米国・ペンシルベニア大学のMartin E. Franklin氏らが、7~17歳のOCD患者124人について行った、無作為化比較試験の結果報告したもので、JAMA誌2011年9月21日号で発表した。被験者はCY-BOCSスコア16以上、治療12週後の30%以上改善を評価試験は2004~2009年にかけて、3ヵ所の大学医療センターで、7~17歳のOCD患者124人を対象に行われた。被験者は、SRIを服薬後も部分奏効で、OCD症状評価スケールの「Children’s Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale」(CY-BOCS)でスコア16以上だった。研究グループは、被験者を無作為に3群に分け、一群にはSRIの服薬指導のみ(12週間中7セッション、1回約35分)、二群目には服薬指導と簡単なCBT指示のみ(12週間中7セッション、1回約45分)、もう一群には服薬指導とより徹底したCBT介入(12週間中14セッション、1回約60分)を行った。主要評価項目は、12週間後のCY-BOCSにおける30%以上の改善と、同スコアの変化とされた。評価は、intention-to-treat解析にて行われた。CY-BOCSスコア30%以上改善は、CBT治療併用群で約7割、他の2群は約3割結果、服薬指導+CBT治療併用群では、CY-BOCSスコアの30%以上改善が認められた人の割合は68.6%(95%信頼区間:53.9~83.3)と、服薬指導+CBT指示群の34.0%(同:18.0~50.0)や服薬指導単独群の30.0%(同:14.9~45.1)に比べ、有意に高率だった。CBT治療併用群は、他の2群(CBT指示併用群、服薬指導単独群)に対する優越性が認められた(いずれもp<0.01)。一方で、CBT指示併用群の服薬指導単独群に対する優越性は認められなかった(p=0.72)。推定治療必要数(NNT)は、CBT治療併用群vs. 服薬指導単独群では3人、CBT治療併用群vs. CBT指示併用群でも3人であったが、CBT治療併用群と服薬指導単独群では25人であった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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在胎週数が短いと、早期小児期と若年成人期で死亡率が増加

在胎週数の短さは、5歳以下の早期小児期と、18~36歳の若年成人期の死亡増大の独立した因子であることが明らかにされた。米国・スタンフォード大学のCasey Crump氏らが、スウェーデンの単生児約2万8,000人を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月21日号で発表した。これまで先進国において、早産は乳児死亡の大きな原因であることは知られていたが、成人期の死亡リスクとの関連については明らかにされていなかった。早期小児期の死亡リスク、在胎週数が1週増すごとに約8%減研究グループは、スウェーデン出生レジストリ67万4,820人の記録から、1973~1979年に生まれた単生児の早産児(在胎37週未満)で、生後1年以上生存した2万7,979人について追跡し、全死因死亡および死因特異的死亡について評価を行った。追跡期間は2008年末までで、被験者年齢は29~36歳だった。結果、追跡期間中に死亡したのは7,095人/2,080万人・年だった。1~5歳までの早期小児期における死亡リスクは、在胎週数が少ないほど高く、同週数が1週増加することによるハザード比は0.92(95%信頼区間:0.89~0.94、p<0.001)だった。しかし、6~12歳の後期小児期と13~17歳の青年期では、同傾向はみられなくなり、在胎週数が1週増えることによる死亡に関するハザード比はそれぞれ、0.99(同:0.95~1.03、p=0.61)と0.99(同:0.95~1.03、p=0.64)だった。若年成人期、在胎週数34週以降の早産でも死亡リスクは満期産の1.3倍にその後、18~36歳の若年成人期では、再び在胎週数と死亡率の関与が認められ、同週数が1週増えることによる死亡に関するハザード比は、0.96(同:094~0.97、p<0.001)だった。また若年成人期では、在胎週数34週以降の早産でも死亡リスクは増加し、死亡に関する満期産に対するハザード比は、1.31(同:1.13~1.50、p<0.001)だった。若年成人期の死亡の原因についてみてみると、なかでも先天異常、呼吸や内分泌、心血管の障害による死亡と在胎週数とが関連していた。一方で、神経学的異常やがん、外傷による死亡とは関連が認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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「眠気の強さ」=「効果の強さ」!?

平成23年9月28日、東京・大手町にて、NPO法人「皮膚の健康研究機構」理事・東京女子医科大学皮膚科学教授川島眞氏、東京大学大学院医学系研究科医学部皮膚科学教授佐藤伸一氏により、大規模比較検討試験「ACROSS Trial」の結果が発表された。「ACROSS Trial」の背景と目的じんましんやアトピー性皮膚炎の治療薬である抗ヒスタミン薬は、副作用として眠気をきたすことがある。80年代から眠気が少ない非鎮静性抗ヒスタミン薬(ほとんどが第2世代)が登場してきたが、眠気が強い第1世代抗ヒスタミン薬のシェアは、2008年に56%、2009年に52%、2010年に49%と依然高いままである1)。その理由として、約半数の臨床医と患者は「眠気の強さ」=「効果の強さ」と考えていることがわかっている 2)。この考えは正しいかどうかを検証するため、NPO法人「皮膚の健康研究機構」は2010年1月~10月にかけて、比較検討試験「ACROSS Trial(Antihistamine CROSSover Trial)」を実施した。ACROSS Trialはアトピー性皮膚炎および慢性じんましん患者502例を対象として行った多施設無作為化オープンラベルクロスオーバー比較試験である。非鎮静性抗ヒスタミン薬としてベポタスチンベシル酸塩を1回10mg、1日2回経口投与、鎮静性抗ヒスタミン薬としてd-クロルフェニラミンを1回2mg、1日3回経口投与、もしくはケトチフェンを1回1mg、1日2回経口投与した 3)。「眠気の強さ」≠「効果の強さ」本試験の結果をみると、鎮静性抗ヒスタミン薬において、投与前後に眠気の程度が悪化したのに対し、非鎮静性抗ヒスタミン薬では眠気の程度に変化がなく、薬剤間で統計学的に有意差が認められた。一方、かゆみの抑制効果について、非鎮静性抗ヒスタミン薬は、鎮静性抗ヒスタミン薬と同程度の抑制効果を示し、両薬剤間に有意差は認められなかった。また、眠気以外の有害事象は、鎮静性抗ヒスタミン薬が8例9件(口渇2件、倦怠感5件、下痢1件、ふらつき感1件)がみられ、非鎮静性抗ヒスタミン薬であるベポタスチンベシル酸塩には1件も認められなかった。まとめ非鎮静性抗ヒスタミン薬であるベポタスチンベシル酸塩は、眠気の程度に影響を与えない一方、鎮静性抗ヒスタミン薬と同等の有効性を有することから、佐藤氏らは「眠気の強さと効果の強さは相関しない」と結論付けた。さらに、安全性の観点から、蕁麻疹診療ガイドライン(日本皮膚科学会ガイドライン)に基づき、鎮静性の低い第2世代抗ヒスタミン薬を第一選択薬として扱うべきと強調した 4)。 出典:1) 株式会社医療情報総合研究所(JMIRI)の調査より2) 川島眞 監修. 抗ヒスタミン薬の真・事実. じほうヴィゴラス, 2011.  3) 川島眞 ほか. J Clin Therap Med. 2011; 27: 563-573.4) 秀道広 ほか. 日本皮膚科学会雑誌. 2011; 121: 1339-1388.(ケアネット 呉 晨)

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マンモグラフィ検診導入後、手術例が顕著に増大:ノルウェー調査

ノルウェーでは1996年から2004年にかけて順次、50~69歳女性の乳がん検診としてマンモグラフィ・スクリーニングを導入した。その手術治療への影響について、オスロ大学病院病理学部門のPal Suhrke氏らが検証した結果、手術例が導入前と比べて1.7倍と顕著に増えており、乳房切除術の割合も、マンモグラフィ検診非対象群では減少していたが、50~69歳群では増大し、若年群との比較で約1.3倍の格差があったという。ただし増大は一時的で、時代が下がるにつれ上昇は鈍り、2002年以降は減少に転じていた。Suhrke氏は、「初期の頃の増大要因は過剰診断によるものと思われた。後年に起きた変化は、手術方針の変化によるもののようだ」と分析している。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。50~69歳検診対象群の乳房手術、導入前と比べ導入後は70%増本研究は、ノルウェーのがん登録データを比較解析して行われた。解析されたのは、1993~2007年の間に登録された40~79歳の、侵襲性乳がん3万2,200例と乳管上皮内がん3,208例の計3万5,408例だった。なお2008年現在のノルウェー人口に占める40~79歳女性は100万人である。解析は被験者を40~49歳、50~69歳、70~79歳各群に分け、それぞれの乳房手術率(乳房切除術+乳房温存療法)と、乳房切除術の割合について調べた。また、マンモグラフィ検診導入前(1993~1995年)から導入期(1996~2004年)、および導入後(2005~2008年)の割合変化について、検診対象群と非対象群とのハザード比を算出して評価した。結果、50~69歳の検診対象群では、導入前(1993~1995年)から導入後(2005~2008年)の乳房手術の割合が、年間10万人当たり108件から350件へと70%増(ハザード比:1.70、95%信頼区間:1.62~1.78)となっていた。一方、40~49歳の検診非対象群は、同133件から144件とわずか8%増(同:1.08、1.00~1.16)であり、同じく高齢だが検診非対象群の70~79歳では、同227件から214件へと8%減(同:0.92、0.86~1.00)となっていた。ステージIの乳房切除術の割合が導入直後に一時的に増大乳房切除術の割合は、検診対象・非対象群とも、導入前と比べて導入後は減少していたが、50~69歳の検診対象群では、導入前(1993~1995年)から導入期(1996~2004年)の割合が、年間10万人当たり156件から167件へと9%増(同:1.09、1.03~1.14)となっていた。同期間、40~49歳は同109件から91件へと17%減(同:0.83、0.78~0.90)で、結果として、40~49歳群の検診非対象群よりも50~69歳の検診対象群の乳房切除術の割合は31%高かった(同:1.31、1.20~1.43)。また、50~69歳の検診対象群の手術時の病期についてみたところ、ステージ0、I、IIの乳房手術の割合は対象期間中いずれも増大していた。ステージIの乳房切除術の割合については、検診導入当初3年間、一時的に増大していた。しかし2002年以降は減少していた。ステージ0とIIに対する乳房切除術も導入期(1996年以降)には増大がみられたが、2003年頃から減少していた。ステージIII、IVに関しては顕著な変化はみられなかった。

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慢性腰椎神経根症へのステロイドまたは生理食塩水注射は推奨できない

慢性の腰椎神経根症に対する仙骨部硬膜外ステロイドまたは生理食塩水注射は「推奨されない」と結論する多施設盲検無作為化試験の結果が報告された。ノルウェー・北ノルウェー大学病院リハビリテーション部門のTrond Iversen氏らによる。腰椎神経根症への硬膜外ステロイド注射は1953年来の治療法だが、長期有効性のエビデンスは乏しかった。それにもかかわらず、例えば米国では1994年から2001年に10万患者当たり553例から2,055例へと使用が増加、英国では2002~2003年の最も頻度の高い脊椎注射処置の1つとなっていた。本試験では、同注射の有効性について、短期(6週)、中期(12週)、長期(52週)の評価が行われた。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。シャム群、生理食塩水注射群、ステロイド注射群に無作為化し短中長期に評価試験は、ノルウェーの5つの病院付属外来クリニックにて被験者を募り行われた。被験者は無作為に、0.9%生理食塩水2mLの皮下シャム注射群、0.9%生理食塩水30mLの仙骨部硬膜外注射群、0.9%生理食塩水29mL中にトリアムシノロンアセトニド(商品名:ケナコルト)40mgの仙骨部硬膜外注射群の3群に割り付けられ追跡評価された。主要評価項目は、オスウェトリー障害指数スコア(oswestry disability index scores)とし、副次評価項目は、ヨーロッパQOL尺度、腰痛と下肢痛の視覚アナログスケールスコアとした。2005年10月~2009年2月の間に461例の患者(>12週の腰椎神経根症を呈する)が登録されたが、328例は評価から除外された。馬尾症候群、重度の麻痺、痛みが激しい、脊髄注射または手術の既往、奇形、妊娠、母乳育児中、ワルファリン治療中、NSAID治療中、BMI>30、精神状態が不安定、重症の共存症といった理由からであった。また、試験結果の適切な評価のためには、各群に41例の被験者を含む必要があったが、試験に適格であった133例のうち17例は、無作為化の前に症状改善が認められ割り付けができず解析は116例(皮下シャム注射群40例、生理食塩水注射群39例、ステロイド注射群37例)にて行われた。3群ともに症状改善、統計的・臨床的な差は認められず結果、介入後3群ともに症状の改善が認められ、統計的および臨床的格差は認められなかった。シャム群のオスウェトリー障害指数は、基線補正後、6週時点で-4.7(95%信頼区間:-0.6~-8.8)、12週時点で-11.4(同:-6.3~-14.5)、52週時点で-14.3(同:-10.0~-18.7)とそれぞれ低下が推定された。生理食塩水注射群の各時点の同指数は、シャム群と比較して6週時点は-0.5(同:-6.3~5.4)、12週時点は1.4(同:-4.5~7.2)、52週時点は-1.9(同:-8.0~4.3)だった。ステロイド注射群は、それぞれ-2.9(同:-8.7~3.0)、4.0(同:-1.9~9.9)、1.9(同:-4.2~8.0)となっていた。下肢痛、腰痛、または病気により休薬した期間で補正後も、この傾向は変わらなかった。

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70歳以上の非小細胞肺がん患者への併用化学療法は生存ベネフィットあり

非高齢の進行型非小細胞肺がん患者に対して推奨されるプラチナ製剤ベースの併用化学療法カルボプラチン(同:パラプラチンなど)+パクリタキセル(同:タキソールなど)は、従来推奨されていなかった70歳以上の高齢患者においても、ビノレルビン(商品名:ナベルビンなど)やゲムシタビン(同:ジェムザールなど)の単剤療法との比較で、毒性作用の増大はあるものの生存ベネフィットが認められることが示された。フランス・ストラスブール大学Elisabeth Quoix氏らが、第3相無作為化試験「IFCT-0501」の結果、報告したもので、「現在の高齢患者への治療パラダイムを再考すべきと考える」と結論している。がんの疾患リスクは先進諸国では、長寿社会の進展とともに増大しており、肺がんの診断時の年齢中央値は現在63~70歳と、高齢患者の顕著な増加が認められているという。Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月9日号)掲載報告より。WHOパフォーマンスステータススコア0-2の、70~89歳の高齢患者を被験者に試験は、2006年4月~2009年12月の間に多施設共同オープンラベルにて61施設から、進行型または転移性非小細胞肺がんで、WHOパフォーマンスステータススコアが0-2の、70~89歳の高齢患者が登録され行われた。被験者は、カルボプラチン(1日目)+パクリタキセル(1、8、15日目)の併用化学療法(3週投薬1週休薬)の4サイクル投与群か、ビノレルビンまたはゲムシタビン単剤化学療法(1、8日目)(2週投薬1週休薬)の5サイクル投与群に無作為に割り付けられ追跡された。主要エンドポイントは、全生存率とし、intention to treat解析された。全生存率中央値、併用療法群10.3ヵ月、単剤療法群6.2ヵ月登録患者451例(併用療法群225例、単剤療法群226例)は、年齢中央値77歳、追跡期間中央値は30.3ヵ月(範囲:8.6~45.2)であった。全生存率の中央値は、併用療法群10.3ヵ月、単剤療法群6.2ヵ月であった(ハザード比:0.64、95%信頼区間:0.52~0.78、p<0.0001)。また、1年生存率は、併用療法群44.5%(95%信頼区間:37.9~50.9)、単剤療法群25.4%(同:19.9~31.3)であった。毒性作用は、併用療法群のほうが単剤療法群より頻度が高かった。最も頻度が高かったのは好中球減少症で108例(48.4%)対28例(12.4%)、また無力症は23例(10.3%)対13例(5.8%)であった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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大腸菌集団感染発生時の血漿交換療法は有用:デンマークO-104発生時の観察研究結果

成人の下痢関連溶血性尿毒症症候群(HUS)に対して、早期段階での血漿交換療法が、経過の改善に有用である可能性が示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のEdin Coli氏らが報告したもので、Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月25日号)にて発表された。成人の下痢関連HUSは、急性の溶血性貧血、血小板減少症、腎不全によって特徴づけられ、稀な疾患であるが死亡率は高い。血漿交換療法は死亡率を低下する可能性は示唆されていたが、その有用性については議論の的となっていた。今回示された知見は、南デンマークで2011年5月に発生したO-104集団感染患者への同手技に関する所見をまとめた観察研究の結果である。年齢中央値62歳5例に行われた血漿交換療法について評価研究対象は、南デンマークで下痢関連HUSと診断され、連日にわたって血漿交換療法(遠心分離法、新鮮凍結血漿交換法)が行われた患者で、具体的に、2011年5月25~28日の間に、稀なタイプの志賀毒素産生大腸菌(Shiga toxigenic E. coli;STEC)であるO104:H4株に集団感染し、下痢関連HUSを呈した年齢中央値62歳(範囲:44~70歳)の5人の患者だった。Coli氏らは、便培養法と血清学的試験にて病因を特定し、血漿交換療法による管理が成功したかについて、血小板数、糸球体濾過量(GFR)、乳酸脱水素酵素(LDH)の変化によって評価した。施行後に血小板数、GFRは上昇、LDHは低下、全例およそ7日後に退院結果、血漿交換療法後、被験者の血小板数中央値およびGFRは上昇し、LDHは低下、また神経学的状態の改善が認められた。観血的な下痢発症から血漿交換療法開始までの時間間隔と、血漿交換療法によるLDH低下とは逆相関の関係が認められた(p=0.02)。全患者とも、血漿交換療法開始後7日(範囲:5~8)で、神経学的状態正常にて退院していた。一方、本試験のE. coli株について、基質拡張型βラクタマーゼを有し、第三世代のセファロスポリン系薬剤に対し高度耐性化を示したことも確認されている。Coli氏は、「我々は、HUSの集団発生時における血漿交換療法の評価を行うことができた。そのような評価の無作為化試験は疾患の稀少性から難しいかもしれないが、今回得られた知見に関して無作為化試験で検証する必要はある」とまとめている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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