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神経ステロイド減量が双極性障害患者の気分安定化につながる?

 近年、臨床および前臨床研究から、GABA受容体作動性神経ステロイドの量的変動と気分障害の病態との関連性が明らかになりつつある。イタリア・カリアリ大学のMauro Giovanni Carta氏らは、これまでに報告された基礎的ならびに臨床的研究をレビューし、神経ステロイド量の減少が気分障害の悪化に関連しており、神経ステロイド量の是正/増加が気分安定化につながる可能性を示唆した。Behavioral and Brain Functions誌オンライン版2012年12月19日号の掲載報告。 神経ステロイドは脳内で合成され、脳の興奮性を調節しているが、この神経ステロイドが鎮静作用、麻酔作用、抗痙攣作用を有し、さらに気分に影響を及ぼすというエビデンスが蓄積されつつある。一般に、神経ステロイドはプレグナン系(アロプレグナノロン、アロテトラヒドロデオキシコルチコステロン)、アンドロスタン系(アンドロスタンジオール、エチオコラノン)、サルフェート系(プレグネノロンサルフェート、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート)などに分類されるが、とくにアロプレグナノロン、アロテトラヒドロデオキシコルチコステロンなどのプロゲステロン誘導体が気分障害の病態に関与し、気分安定化に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。  著者は、これらは、以下の主な知見によって支持されるとした。・双極性障害の気分安定化への有効性が示されているクロザピンおよびオランザピンは、ラットの海馬、大脳皮質および血清中のプレグネノロンレベルを上昇させる。・リチウム投与マウスでは、非投与マウス(コントロール)に比べ血中アロプレグナノロン、プレグネノロンレベルの上昇が認められる。・双極性障害の女性では、概して月経周期に関連して症状の悪化がみられる。出産直後はプロゲステロン誘導体レベルの低下が認められ、それに伴って気分障害が発症または再発しやすい。・一方、双極性障害の改善を認めた女性では、月経前の期間に健常人または大うつ病性障害の女性に比べて血漿アロプレグナノロン濃度の上昇が認められる。・うつ病エピソードの期間、血中アロプレグナノロンレベルは低い。・フルオキセチンは、うつ病患者における神経ステロイドレベルを正常化する傾向にある。・以上の結果、「多くの抗痙攣薬が双極性障害に対して有効である、あるいは神経ステロイドに抗痙攣作用がみられるという事実と矛盾しない」とした上で、「神経活性ステロイドの作用に関するさらなる探究は、気分障害、とくに双極性障害の病因および治療の研究において、新分野の開拓につながりうる」としている。関連医療ニュース ・夢遊病にビペリデンは有望!? ・オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善 ・南に住んでる日本人では発揚気質が増強される可能性あり

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イヌの嗅覚を活かしたC difficile感染症の病棟スクリーニングの可能性/BMJ

 オランダ・VU University Medical CentreのMarije K Bomers氏らは、イヌの優れた嗅覚を、便検体および入院患者のクロストリジウム・ディフィシル(C difficile)感染症の検出に活用できることを実証するための試験(principle study)を行った。その結果、感度・特異度ともに高く(便検体では100%)、検出が可能であることが示されたという。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月13日号)掲載「クリスマス特集」より。イヌに嗅ぎ分けを訓練し、便検体および300人の患者で検証 研究は、ケースコントロール研究デザインの手法を用いて、オランダの2つの教育病院で行われた。 2歳のビーグル犬にC difficileを嗅ぎ分ける訓練を2ヵ月間行った後、2つの診断精度を検証する試験を行った。 1つは便検体を嗅ぎ分ける試験で、陽性検体50例と陰性検体50例を用いて行われた。C difficileの匂いを正確に嗅ぎ分けられるかを調べるため、それぞれの検体は異なる材質に貼付し環境や濃度を変えて繰り返し(10回)ビーグル犬に提示された。 もう1つは、300人の患者を嗅ぎ分ける試験だった。患者は30人がC difficile感染症群、270人が対照群で、トレーナー(患者の感染状態を知らされていない)がビーグル犬を病室に導いて行われた。各病室には、10人の患者(1人が感染症者、9人が対照群)がおり、ビーグル犬は、感染者を見つけたらその場に座るか伏せをするように訓練されていた。 主要評価項目は、便検体および患者対象の試験におけるC difficile検出の感度と特異度であった。検出の感度と特異度、便検体は100%・100%、患者は83%・98% 結果、便検体の試験では、感度、特異度ともに100%(95%信頼区間:91~100)であった。 患者検出試験では、感染者については30人中25人(感度83%、95%信頼区間:65~94)を正しく嗅ぎ分け、対照群については270人中265人(特異度98%、95%信頼区間:95~99)を正しく嗅ぎ分けた。 C difficile感染症は、早期かつ迅速に同定し十分な隔離と治療を開始することが感染の拡大を防ぐために重要となる。しかし先行研究によると、症状発現から治療開始までに平均3~8日を要していると報告されていた。本研究の結果を受けて著者は、「イヌがC difficile感染症を検出できるよう訓練することは可能であり、病棟スクリーニングに活用できる可能性がある。そのようなスクリーニングは、よくある診断の遅れを回避し、C difficile感染症のコントロールおよび拡大防止に役立つ可能性がある」とまとめている。

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認知症患者へタブレットPC導入、その影響は?

 直感的なインターフェースであるタブレットPCの導入と使用は、早期認知症の人の日常生活に役立つ可能性があり、彼らに余暇活動や社会的つながりのためのソースを提供しうる。また、介護者の負担軽減やケアに必要な注意を提供することも可能である。しかし、認知症の人や介護者がタブレットPCを利用することはほとんどないと予測される。オーストラリア・フリンダース大学のFabian S Lim氏らは、早期認知症の人におけるタブレットPCのユーザビリティーと介護の負担に関して検討した。Gerontology誌オンライン版2012年12月18日号の報告。 7日間の在宅試験により早期認知症の人がタブレットPCを使用することが可能であったかどうかを検討した。試験には、21名の早期認知症の人と介護者が参加した。フィードバックは、早期認知症の人と介護者双方からのアンケート調査により、日常生活の一部としてのタブレットPCの利用に関する情報を収集した。介護の軽減は、認知症の人への付き添いなしでデバイスを使用していた時間により、定量化された。 主な結果は以下のとおり。・認知症の人の約半数は、自主的にタブレットPCを使用可能であり、介護者に役立つことが示された。・タブレットPCを使用することが少ない方を識別することは困難であった。・本研究により、早期認知症の状況にある人に新しい技術を導入するための意義深い見識が得られた。認知症の人へのタブレットPC導入をうまく促進するためには、ケースバイケースの原則に立ち、ユーザーのニーズが考慮されなければならない。・本研究によって、早期認知症に限らず認知症の人全般におけるタブレットPC使用について、さらに調査をするための十分に正当な理由が得られた。関連医療ニュース ・アルツハイマー病の興奮、抗精神病薬をどう使う? ・認知症患者が車で徘徊、発見方法は? ・認知症ケアでプライマリケア・リエゾンに求められる3つのポイント

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(45)〕 腎障害を伴った心不全に対して持続的限外濾過療法は有害?

本研究は、腎機能悪化を伴う急性非代謝性心不全例に対して持続的静静脈限外濾過治療と通常治療(フロセミドの静脈内投与)の効果や副作用を比較したものである。このような急性心腎症候群例は実臨床ではよく遭遇するが、エビデンスのある治療法は確立されていない。 本研究は、このような例を対象に限外濾過法を早期から使用することによりその予後を改善できることを期待して行われたが、その結果は、残念ながら明らかな改善効果はみられず副作用が若干多かったというものであった。しかし、この研究を解釈するにあたり、考慮しなければならない事がいくつかある。 第一に、患者群は比較的若年(中央値で68歳)で、軽症(早期)の心腎症候群と思われる(割り付け前の血清クレアチニン上昇値は0.45 mg/dL)。つまり、利尿薬やその他の抗心不全薬でまだ改善が期待できそうな例が含まれている。第二に、研究開始時には血管拡張薬と強心薬が静脈内投与されていた例は除外されているが、最終的(第1エンドポイント確定前)に限外濾過群と比較して通常群で強心薬の静脈内投与が多く用いられている(3% vs 12%、p < 0.05)。第三に、心不全の原因として虚血性心疾患の割合が通常治療群に比較して、限外濾過群で有意に高いことである(51% vs 70%、 p < 0.01)。虚血性心疾患による心不全例は非虚血性心疾患によるものに比較して予後が悪いことが知られている。最後に、論文中でも述べられているように、急性心腎症候群に対する適切な限外濾過治療法(濾過の速度、量、時間)がまだ確立されていない事も問題である。 以上より、本研究を解釈する際には、利尿薬静注の工夫でまだ改善させうる余地がある急性心腎症候群例に対し、限外濾過群が若干不利な状況(虚血性心疾患が多い、強心薬併用頻度が低い、濾過の適切使用法が未確立)で行った結果であることを考慮する必要があろう。

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リスクマネジメント

解説医療従事者のための「リスクマネジメント」では、過去のさまざまな医事裁判をケーススタディに、医療従事者に必要なリスクを回避する知識を学習していきます。複雑化する現代においては、自分のミスのみならず、チーム員のミスや医療機器の不調、救急搬送の対応でも、責任を追及されるケースも散見されます。あの場合、どうすれば良かったか、いかに対応するべきだったかを、医師の視点から長野展久氏(東京海上日動メディカルサービス株式会社 顧問/医師)に解説を加えていただきます。今後も増加が予想される医事裁判について、診療の合間の5分間、被告人にならないための知識のアップデートにご覧ください。解説者の著書のご紹介 「医学のしおり」より『医療事故の舞台裏 25のケースから学ぶ日常診療の心得』

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医療事故の舞台裏 25のケースから学ぶ日常診療の心得

そのトラブルには理由(わけ)がある保険会社顧問医である著者が、実際の医療紛争事例を臨場感溢れるドキュメンタリー風のケースストーリーにアレンジし、なぜトラブルに至ったのかを丁寧に解説する。医療紛争の具体的な再発予防策も提示。臨床医であれば誰でも遭遇しそうなケース25話を掲載した。難解な法律用語の解説コラムも充実。好評を博した総合診療誌『JIM』、内科総合誌『medicina』での連載をもとに、全面書き換え・書き下ろしを加え書籍化。画像をクリックすると、一部をPDFでご覧いただけます。医療事故の舞台裏 25のケースから学ぶ日常診療の心得定価 本体2,500円+税判型 A5判頁数 272頁発行 2012年9月著者 長野 展久Amazonでご購入の場合はこちら

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活動性全身型JIAへのカナキヌマブ投与、症状改善などに効果/NEJM

 活動性の全身型若年性特発性関節炎(JIA)へのカナキヌマブ(商品名:イラリス)投与は、症状改善効果と、再び症状が悪化する再燃リスクを減少する効果があることが明らかにされた。イタリア・Istituto Giannina GasliniのNicolino Ruperto氏らが、190人の全身型JIA患者について行った、カナキヌマブに関する2つの第3相臨床試験の結果、報告した。NEJM誌2012年12月20日号掲載より。試験1では症状の改善、試験2では改善した症状の悪化について調査 Ruperto氏らは2009~2010年にかけて63ヵ所の医療機関を通じ、2~19歳のJIAで活動性の全身症状が認められる患者190人を対象とする2つの試験を行った。 研究グループはまず被験者を無作為に2群に分け、1群にはカナキヌマブ単回皮下投与(4mg/kg)を、もう1群にはプラセボ投与を行い29日間追跡した(試験1)。主要アウトカムは、15日目のJIA・ACR30(JIAコアセット6つのうち3つ以上で改善率30%以上、1つ未満クライテリアでの30%超の悪化、発熱がない)だった。 試験2では、オープンラベルでカナキヌマブ投与(毎4週)を12~32週間受けた後、治療に反応した患者については、グルココルチコイドのテーパリング後、無作為に2群に分け、1群にはカナキヌマブ投与を継続、もう1群にはプラセボを投与した。主要アウトカムは、全身性JIA症状再燃までの時間とした。カナキヌマブ群の8割以上でJIA・ACR30を達成 その結果、試験1では、JIA・ACR30が認められた人の割合は、プラセボ群が41人中4人(10%)だったのに対し、カナキヌマブ群では43人中36人(84%)と、大幅に高率だった(p<0.001)。 試験2では、被験者のうち無作為化の対象となったのは100人だった。全身性JIAを再燃しなかった人の割合は、プラセボに切り替えた群が25%だったのに対し、カナキヌマブ群では74%と大幅に高率だった(ハザード比:0.36、p=0.003)。 試験開始時点では、グルココルチコイドを服用していたのは128人だったが、うち33%の42人が、服用中止を達成した。 有害事象については、マクロファージ活性化症候群が7例に出現した(試験1で各群1例、試験2のオープンラベルで4例、切り替え後プラセボ群で1例)。またカナキヌマブ群のほうがプラセボ群よりも感染症の頻度が高かった。

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化粧品に含まれる防腐剤メチルイソチアゾリノンへのアレルギー患者が急増

 近年、化粧品やスキンケア製品などに防腐剤として使われるようになっているメチルイソチアゾリノン(MI)へのアレルギー反応を示す患者が急増していることが、ドイツ・エアランゲン・ニュルンベルク大学のJohannes Geier氏らにより報告された。MIとメチルクロロイソチアゾリノン(MCI)を合わせた感作頻度は、1998~2009年の間は常に約2.1%(ドイツIVDK統計)であったが、2011年に3.9%に増大したという。Contact Dermatitis誌2012年12月号(オンライン版2012年9月21日号)の掲載報告。メチルイソチアゾリノン陽性患者の割合が43%から59%へ増大 2011年にMCI/MIに対する感作頻度が増大した背景には、メチルイソチアゾリノンに対するアレルギー反応の報告頻度が2009年1.9%から2011年4.4%に上昇したという状況がある。化粧品などの防腐剤として使われるようになっているのはメチルイソチアゾリノンであり、研究グループは、発症増加の原因を疫学的に調査し、MCI/MIとメチルイソチアゾリノンに対するアレルギー反応について、2009~2011年のIVDKデータを後ろ向きに解析した。 メチルイソチアゾリノンに対するアレルギー反応についての主な解析結果は以下のとおり。・階層化データ解析により、MCI/MIとメチルイソチアゾリノンに対するアレルギー反応の顕著な増大が明らかになったのは、「女性」「顔の皮膚炎患者」「化粧品が合わないことが疑われ検査を受けた患者」であった。・MCI/MIへの反応を示した患者のうちメチルイソチアゾリノン陽性であった患者の割合は、2009年の43%から2011年には59%へと増大していた。・一次感作としてメチルイソチアゾリノンが増大したのは、消費者曝露の拡大によるものと思われ、その後、免疫学的交差反応によりMCI/MIに対する感作が増大したと思われた。・著者は、「メチルイソチアゾリノンの最大使用濃度を減少することが望ましいようだ」「メチルイソチアゾリノンをパッチテストの基本対象に組み込むべきである」と提言している。

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抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」

 統合失調症患者では体重増加がしばしば問題となる。中枢神経系経路における食欲や体重を調節する薬剤としてレボキセチン(選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)、ベタヒスチン(ヒスタミンH1受容体アゴニスト/H3受容体アンタゴニスト)が補完的薬剤として期待されている。Michael Poyurovsky氏らは、プラセボ対照二重盲検比較試験においてレボキセチンとベタヒスチンの併用が統合失調症患者のオランザピン誘発性体重増加を減弱させるかどうかを検討した。Psychopharmacology誌オンライン版2012年12月13日号の報告。 対象はDSM-IVで統合失調症と診断された入院患者43例。対象患者をレボキセチン(4mg/日)+ベタヒスチン(48mg/日)併用群29例、プラセボ群14例に無作為に割り付け、オランザピン(10mg/日)とともに6週間継続投与を行った。精神症状は、ベースラインとエンドポイントのレーティングスケールにて評価した。統計分析には、Intention-to-treat解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・レボキセチン+ベタヒスチン併用群で7例、プラセボ群で4例が試験を中止した。・試験終了時において、レボキセチン+ベタヒスチン併用群はプラセボ群と比較し体重増加が有意に少なかった(2.02±2.37kg vs. 4.77±3.16kg 、t=2.89、自由度[df]=41、p=0.006)。・レボキセチン+ベタヒスチンによる体重増加抑制効果は、以前にレボキセチン単独で認められた効果と比較し2倍であった。・レボキセチン+ベタヒスチン併用群はプラセボ群と比較し7%以上の体重増加(臨床的に有意な体重増加)が認められた患者の割合が有意に少なかった(3/29[10.3%] vs. 6/14[42.9%]、Χ2=6.03、df=1、p=0.014)。・レボキセチン+ベタヒスチンの併用は安全であり、忍容性は良好であった。関連医療ニュース ・統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証! ・統合失調症患者における「多飲」その影響は? ・オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善

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世界の死因は過去20年で大きく変化、心疾患やCOPD、肺がんなどが主因に/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の死因別死亡率の動向について、米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのRafael Lozano氏らがGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の死因で感染症などは大幅に減少 GBD2010において研究グループは、世界187ヵ国から入手可能な死因に関わるあらゆるデータ(人口動態、言語剖検、死亡率サーベイランス、国勢調査、各種サーベイ、病院統計、事件・事故統計、遺体安置・埋葬記録)を集め、1980~2010年の年間死亡率を235の死因に基づき、年齢・性別に不確定区間(UI)値とともに算出し、世界の死因別死亡率の推移を評価した。 その結果、2010年に世界で死亡した人は5,280万人であった。そのうち最大の統合死因別死亡率(感染症・母体性・新生児期・栄養的)は24.9%であったが、同値は1990年の34.1%(1,590万/4,650万人)と比べると大幅に減少していた。その減少に大きく寄与したのが、下痢性疾患(250万人→140万人)、下気道感染症(340万人→280万人)、新生児障害(310万人→220万人)、麻疹(63万人→13万人)、破傷風(27万人→6万人)の死亡率の低下であった。 HIV/AIDSによる死亡は、1990年の30万人から2010年は150万人に増加していた。ピークは2006年の170万人であった。 マラリアの死亡率も1990年から推定19.9%上昇し、2010年は117万人であった。 結核による2010年の死亡は120万人であった。2010年の世界の主要死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDS 非感染症による死亡は、1990年と比べて2010年は800万人弱増加した。2010年の非感染症死者は3,450万人で、死亡3例のうち2例を占めるまでになっていた。 また2010年のがん死亡者は、20年前と比べて38%増加し、800万人であった。このうち150万人(19%)は気管、気管支および肺のがんであった。 虚血性心疾患と脳卒中の2010年の死亡は1,290万人で、1990年は世界の死亡5例に1例の割合であったが、4例に1例を占めるようになっていた。なお、糖尿病による死亡は130万人で、1990年のほぼ2倍になっていた。 外傷による世界の死亡率は、2010年は9.6%(510万人)で、20年前の8.8%と比べてわずかだが増加していた。その要因は、交通事故による死亡(2010年世界で130万人)が46%増加したことと、転倒からの死亡が増加したことが大きかった。 2010年の世界の主要な死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDSであった。そして2010年の世界の早期死亡による生命損失年(years of life lost:YLL)に影響した主要な死因は、虚血性心疾患、下気道感染症、脳卒中、下痢性疾患、マラリア、HIV/AIDSであった。これは、HIV/AIDSと早期分娩合併症を除き1990年とほぼ同様であった。下気道感染症と下痢性疾患のYLLは1990年から45~54%減少していた一方で、虚血性心疾患、脳卒中は17~28%増加していた。 また、主要な死因の地域における格差がかなり大きかった。サハラ以南のアフリカでは2010年においても統合死因別死亡(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が早期死亡要因の76%を占めていた。 標準年齢の死亡率は一部の鍵となる疾患(とくにHIV/AIDS、アルツハイマー病、糖尿病、CKD)で上昇したが、大半の疾患(重大血管系疾患、COPD、大半のがん、肝硬変、母体の障害など)は20年前より減少していた。その他の疾患、とくにマラリア、前立腺がん、外傷はほとんど変化がなかった。 著者は、「世界人口の増加、世界的な平均年齢の上昇、そして年齢特異的・性特異的・死因特異的死亡率の減少が組み合わさって、世界の死因が非感染症のものへとシフトしたことが認められた。一方で、サハラ以南のアフリカでは依然として従来死亡主因(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が優位を占めている。このような疫学的な変化の陰で、多くの局地的な変化(たとえば、個人間の暴力事件、自殺、肝がん、糖尿病、肝硬変、シャーガス病、アフリカトリパノソーマ、メラノーマなど)が起きており、定期的な世界の疫学的な死因調査の重要性が強調される」とまとめている。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(44)〕 MADIT試験の変遷

はじめに 欧米における心臓突然死は年間35万人と推定され、その約80~90%が虚血性心疾患による心室性頻脈性不整脈が原因とされている1)。わが国における心臓突然死は年間6~8万人と推測され2)、約35%が心筋症(拡張型、肥大型、催不整脈右室心筋症など)、約30%が虚血性心疾患、その他プライマリ不整脈疾患(ブルガダ症候群、QT延長症候群、J波症候群など)の内訳となっている3)。心臓不整脈死の予防に対して、植込み型除細動器(ICD)の有効性はすでに確立されているが、本稿では主にMADIT試験の変遷に準拠して概説してみる。MADIT(Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial)-I試験4) 陳旧性心筋梗塞の既往を持つ左室駆出率35%以下の心不全例(NYHA I~III)で、無症候性の非持続性心室頻拍(心拍数>120/分、3連発以上)を有し、プロカインアミド無効な心室頻拍・心室細動が誘発された196例を対象に、ICD治療群と抗不整脈薬治療群の無作為割り付けによる生命予後を比較した試験である(平均観察期間27ヵ月)。その結果、ICD治療群は抗不整脈薬治療群に比し総死亡率を54%低下させた(p=0.009)。サブ解析では、左室駆出率26%未満の高度左室機能障害例でとくに高いICD治療群の生命予後改善効果が示された。本試験により、虚血性心疾患に対するICD治療の高い心臓突然死の一次予防効果が確認された。MADIT-II試験5) 同様に、陳旧性心筋梗塞の既往を持つ左室駆出率30%以下の心不全患者1,232例(NYHA I~III)を対象に、非持続性心室頻拍や心室頻拍・心室細動の誘発性は問わず、ICD治療群742例と抗不整脈薬群490例の無作為割り付けによる生命予後を比較した試験である(平均観察期間20ヵ月)。その結果、ICD治療群は抗不整脈薬治療群に比し総死亡率を31%低下させた(p=0.007)。サブ解析では、左室駆出率25%未満の高度左室機能障害例やQRS幅150msec以上の心室内伝導障害例における高いICD治療群の生命予後改善効果が示された。MADIT-CRT(Cardiac Resynchronization Therapy)試験5) 虚血性、非虚血性を問わず左室駆出率30%以下、QRS幅130msec以上の心不全患者1,820例(NYHA I~II)を対象に、ICD治療群731例とCRTD治療群1,089例の3:2無作為割り付けによる生命予後、ならびに心不全発症の複合イベントを比較した試験である(平均観察期間2.4年)。その結果、CRTD治療群はICD治療群に比し複合イベント率を41%低下させた(p<0.001)。サブ解析では、QRS幅150msec以上の心室内伝導障害例における高いCRTD治療群の心不全予防効果が示された。MADIT-RIT(Reduce Inappropriate Therapy)試験7) 以前より、ICDの上室性頻脈性不整脈などによる不適切作動は患者の生命予後を悪化させることが指摘されていた8)。そのICDの不適切作動を減らすために、ICD移植1,500例を対象に異なる3つの作動プログラミング設定(標準、高心拍、待期的)について検証した国際多施設無作為化試験の結果が、最近になって報告された(平均観察期間1.4年)。従来のICD標準作動プログラム群(170~199拍/分は2.5秒待機で作動、200拍/分以上は1.0秒待機で作動)に比し、高心拍数作動群(200拍/分以上は2.5秒待機で作動)は、初回不適切作動を79%減らし(p<0.001)、全死亡を55%減らす(p=0.01)結果であった。同様に、従来のICD標準作動プログラム群に比し、待機的作動群(170~199拍/分は60秒待機で作動、200~250拍/分は12秒待機で作動、250拍/分以上は2.5秒で作動)は、初回不適切作動を76%減らし(p<0.001)、全死亡を44%減らす(p=0.06)結果であった6)(参考文献6 Figure1、Figure2)。本研究の結果より、ICDの作動プログラミング設定を適切に調節することにより、誤作動を減らし、患者の生命予後を改善させることが示された。おしまいに イスラエル出身のミロウスキー博士によって開発されたICDは、第1例目の移植術が始まってすでに30年以上も経過している。もし、より疼痛が少ない抗頻拍ペーシングや短時間での除細動が可能となれば、患者の精神的苦痛も軽減されるであろう。今後のICD治療には、患者の生命予後改善のみならず、日常生活の質(QOL)向上を目的としたデバイスの開発ならびに設定の配慮が必要であろう。参考文献1. Bayés de Luna A, et al. Am Heart J. 1989; 117:151-159.2. 豊嶋英明ほか.心臓性突然死の疫学.In:村山正博ほか編.心臓性突然死.医学書院;1997.p.6-18.3. 笠貫宏.ICDの適応.日本心臓ペーシング・電気生理学会植込み型除細動器調査委員会編.植込み型除細動器の臨床.医学書院;1998:p.15-32.4. Moss AJ, et al. N Engl J Med. 1996; 335: 1933-1940.5. Moss AJ, et al. N Engl J Med. 2002; 346: 877-883.6. Moss AJ, et al. N Engl J Med. 2009; 361: 1329-1338.7. Moss AJ, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 2275-2283.8. Daubert JP, et al. J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 1357-1365.

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花粉症の診療ガイドライン・検査に関するアンケート結果

対象ケアネット会員の医師 耳鼻咽喉科87名、内科541名方法インターネット調査実施期間2012年12月4日~12月11日Q1花粉症診療を行う際に「鼻アレルギー診療ガイドライン」を参考にしていますか?Q2花粉症診断の際、どの検査を実施していますか?(複数回答)2012年12月ケアネット調べ

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「世界貿易センター健康レジストリ」登録者のがん発生リスクは増大したか?/JAMA

 2001年9月11日の世界貿易センタービルへのテロ攻撃は、周辺環境に発がん性物質を拡散したといわれており、市民の間に、その曝露により、がん罹患の可能性が増大したとの懸念があった。ニューヨーク市保健・精神衛生部のJiehui Li氏らは、「世界貿易センター健康レジストリ」に登録された人におけるがん発生状況を調べた。その結果、救急隊員/復旧作業員について、一般レジストリ者と比べて2007-2008年に前立腺がん、甲状腺がん、骨髄腫の過剰リスクがみられたが、発生数は少なく、この年にすべてのがんが増大したということではなかった。著者は、「曝露の強さの違いによる関連は認められなかった」と述べた上で、「潜伏期間が長期にわたるがんもあるので、長期のフォローアップと特異的がんについては注意が必要である」と結論している。曝露の違い(救急・復旧作業員とその他)でがん発生との関連を調査、標準発生比も検証 Li氏らは、2003-2004年に「世界貿易センター健康レジストリ」に登録されたニューヨーク州の住民5万5,778人を対象とする観察研究を行った。レジストリには、救急隊員・復旧作業員(2万1,850人)とそれ以外の救出・復旧作業に関わらなかった人(3万3,928人)が登録されていた。登録から2008年12月31日までフォローアップした。 Cox比例ハザードモデルを用いてレジストリ内コホート比較を行い、世界貿易センター曝露の強さと各種がん(11種類)との関連を評価した。 レジストリ者のがん症例は、標準発生比(SIR)を用いてニューヨーク州一般集団とで比較し、予想されたがん発生に対し実際に観察された症例を検証した。SIRは、年齢(5歳階級群)、人種/民族、性、期間別(2003-2006年と2007-2008年:9.11後とその後の期間での曝露に対する関連を調べるため)について算出した。 また、2007~2008年のレジストリ群とニューヨーク州一般集団の、10万人・年当たりの全体および特異的がん発生率の差(RD)も算出した。曝露の強さの違いによる関連は認められず レジストリ累計25万3,269人・年のうち、がんと診断された人は1,187人だった(救急隊/復旧作業者439人、その他748人)。 2007~2008年のすべてのがん統合SIRについて、有意な上昇は認められなかった。救急隊/復旧作業者群の同SIRは1.14(95%信頼区間:0.99~1.30)であり、2003-2006年の統合SIRの0.94(同:0.82~1.08)と有意な差はなかった。また、その他群の同SIRは、それぞれ0.92(同:0.83~1.03)、0.92(同:0.83~1.02)であった。 各種がん別にみると、救急隊/復旧作業者群において、2007-2008年に3種のがんで有意な増大がみられた。SIRは、前立腺がん1.43(同:1.11~1.82)、甲状腺がん2.02(同:1.07~3.45)、多発性骨髄腫2.85(同:1.15~5.88)だった。それぞれの症例数およびRDは、前立腺がんが67例、61/10万人・年、甲状腺がんが13例、16/10万人・年、多発性骨髄腫が7例、11/10万人・年であった。 一方、その他群において2007-2008年に増大がみられたがんはなかった。 コホート内比較において、世界貿易センター曝露の強さの違いによる、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、非ホジキンリンパ腫、血液がんとの有意な関連は認められなかった。

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多枝冠動脈疾患の糖尿病患者、DES-PCIよりCABGが長期アウトカム良好/NEJM

 糖尿病で多枝冠動脈疾患の認められる患者には、冠動脈バイパス術(CABG)が、積極的薬物治療併用の薬剤溶出性ステント(DES)による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも、長期アウトカムが良好であることが明らかになった。一方で脳卒中発生率は、CABG群でDES-PCI群のおよそ2倍に上った。これまでに、糖尿病患者に対するCABGがPCIより良好であるとする試験結果はあったが、DES-PCIと積極的薬物治療の併用を比較したものは今回が初めてという。米国・Mount Sinai School of MedicineのMichael E. Farkouh氏らが、140ヵ所の医療機関を通じて行った無作為化比較試験「FREEDOM試験」の結果、報告した。NEJM誌2012年12月20日号(オンライン版2012年11月4日号)掲載より。被験者1,900人を無作為化、中央値4年弱追跡 FREEDOM試験では2005~2010年にかけて、糖尿病で多枝冠動脈疾患の認められる患者1,900人を無作為に2群に分け、一方にはDES-PCIを、もう一方にはCABGを行い追跡した。被験者には全員、LDLコレステロール、収縮期血圧、糖化ヘモグロビンのコントロールに関する推奨薬物治療が行われた。 主要アウトカムは、総死亡、非致死心筋梗塞または脳卒中の複合イベント発生だった。追跡期間は最低2年(中央値:3.8年)だった。 被験者の平均年齢は63.1歳(標準偏差:9.1)で、女性は29%、三枝冠動脈疾患が認められたのは全体の83%だった。心筋梗塞発生率、総死亡率ともにCABG群がPCI群より低率 結果、主要アウトカム発生はPCI群で多く、5年発生率は、PCI群が26.6%、CABG群が18.7%だった(p=0.005)。 内訳をみると、心筋梗塞5年発生率はPCI群が13.9%に対しCABG群が6.0%、総死亡率はそれぞれ16.3%と10.9%と、いずれもCABG群で有意に低率だった(それぞれ、p<0.001、p=0.049)。 一方で脳卒中発生率は、CABG群でPCI群より有意に高率で、5年発生率は、PCI群が2.4%に対しCABG群は5.2%だった(p=0.03)。

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MDMA誘発の高熱にメマンチンが有用?:自治医大

 自治医科大学精神医学教室教授・西嶋康一氏ら研究グループはラット試験の結果、違法ドラッグ3,4-Methylenedioxymethamphetamine (MDMA)が引き起こす可能性がある致命的ともなりうる高熱に対し、メマンチンが有用である可能性が示唆されたことを報告した。Neuroscience Letters誌2012年12月7日号(オンライン版2012年11月6日号)の掲載報告。 本研究は、効果的な薬物治療が確立されていないMDMA誘発の高熱に対する、メマンチン、非競合的N-methyl-d-aspartate(NMDA)型グルタミン酸受容体拮抗薬、α-7ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)拮抗薬の効果について、ラット試験により検討することを目的とした。 主な内容は以下のとおり。・MDMA(10mg/kg)の投与前あるいは投与後のメマンチン(10または20mg/kg)投与により、いずれの場合もラットの最高体温は有意に低下した。・マイクロダイアリシス法の結果、MDMA投与前のメマチン20mg/kg投与は、視床下部前部のMDMA誘発により増大したセロトニン(5-HT)およびドパミン(DA)への影響は認められなかった。・非競合的NMDA受容体拮抗薬のMK-801(0.5mg/kg)や、競合的NMDA拮抗薬のCGS 19755(5mg/kg)について、事前投与の場合、MDMA誘発の高熱は有意に低下した。一方、選択的α-7 nAChR拮抗薬のメチルリカコニチン(6または10mg/kg)では低下はみられなかった。・以上の結果は、MDMA誘発の高熱におけるメマンチンの抑制効果は、NMDA受容体拮抗薬そのものの活性によるものであり、5-HTやDAシステムへのメマンチンの効果によってもたらされるものではない可能性を示唆する。・本研究は、メマンチン中等量の投与が、ヒトにおけるMDMA誘発の高熱の治療薬として役立つ可能性を示唆する。関連医療ニュース ・難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」 ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か? ・NMDA拮抗薬メマンチンによる再発低血糖症の拮抗ホルモン減弱のメカニズム

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