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葉酸の長期摂取、がん発症を増大も減少もせず/Lancet

 葉酸を長期にわたって摂取しても、がん発症リスクは増大も減少もしないことが、約5万人を対象にしたメタ解析の結果、示された。ノルウェー・Bergen大学のStein Emil Vollset氏らが、葉酸の心血管疾患予防効果などを調べた13の無作為化プラセボ対照試験のデータからメタ解析を行い報告したもので、Lancet誌オンライン版2013年1月25日号で発表した。葉酸の摂取は、妊婦においては生まれてくる子どもの神経管欠損症を予防することが、これまでの疫学試験で示されているが、一方でがん発症リスクとの関連が懸念されていた。葉酸摂取期間1年以上、心血管疾患予防に関する試験のデータで解析 研究グループは、2011年までに終了した葉酸に関する無作為化プラセボ対照試験で、がん罹患率に関する記録のある13試験(被験者総数4万9,621人)について、メタ解析を行った。対象となった試験は、葉酸摂取期間が1年以上、被験者数はそれぞれ500人以上だった。 対象試験のうち10件が、葉酸と心血管疾患予防に関して検討したもの(被験者合計4万6,969人)で、3件が大腸腺腫患者を対象にしたもの(同2,652人)だった。いずれの試験も、被験者は同等に割り付けされていた。 主要アウトカムは、予定治療期間中の非メラノーマ性皮膚がんを除くがん罹患率とした。血中葉酸値は葉酸摂取群で4倍でも、がん発症率は部位別にみてもプラセボ群と変わらず 解析に組み込んだ試験の治療期間の加重平均値は5.2年だった。被験者の血中葉酸濃度平均値は、葉酸群が57.3nmol/Lと、プラセボ群の13.5nmol/Lの4倍近くに上った。しかし、がんを発症したのは、葉酸群1,904人、プラセボ群1,809人であり、両群で有意差はみられなかった(相対リスク:1.06、95%信頼区間:0.99~1.13、p=0.10)。 治療の長期化とがん発症リスクとの間には関連はなかった。また、大腸がん、前立腺がん、肺がん、乳がん、その他部位別にみても、がん発症リスクと葉酸摂取には有意な関連は認められなかった。 葉酸とがん罹患率との関連について、13試験の個別差や、心血管疾患予防に関する試験と腺腫に関する試験での有意差は認められなかった(それぞれ、p=0.23、p=0.13)。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(57)〕 重ね着にメリットなし、かえって風邪をひくかも-ACE阻害薬とARB併用に効果増強みられず-

 Renin-angiotensine(RA)系抑制薬として、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)そして直接的レニン阻害薬 アリスキレン(商品名:ラジレス)が実用に供されているが、これらのうち2種類の併用を“dual blockade”と称する。最近このdual blockade 治療を検証したONTARGET試験やALTITUDE試験などで、その有用性が相次いで否定されている。 本試験はこれまで発表されたDual Blockade Therapy(DBT)に関する33のランダム化試験約6万8,000人のメタ解析である。その結果は、DBTは単独治療に比べて全死亡を減らすことはなく、高カリウム血症や低血圧、腎不全などの有害事象を増加させたというものである。本試験は、各トライアルの患者の臨床背景が不一致であるというメタ解析一般にみられるlimitationを差し引いても妥当な結果といえよう。 過剰なRA系の抑制は、かえって生体の代償機転を損ねる可能性が示唆されるが、今後保険上の縛りをいれることで、RA系同士の併用が処方されることのないようにわが国の臨床医に啓蒙していく必要があろう。

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難治性の慢性特発性蕁麻疹患者、ピロリ菌除菌療法で約3割が症状消失

 抗ヒスタミン薬が無効の慢性特発性蕁麻疹(CU)患者について、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori、以下 ピロリ菌)感染症の除菌療法がベネフィットをもたらす可能性が、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学のE. Magen氏らによる検討の結果、報告された。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年1月21日号の掲載報告。一部のCU患者では抗ヒスタミン薬の常用量投与に耐性を示す。一方、最近の研究報告で、慢性特発性蕁麻疹とピロリ菌感染症との関連が報告されていた。 研究グループは、ピロリ菌感染症の根治がCU患者の抗ヒスタミン薬耐性状況を改善可能かについて調べた。 CU患者の症例を後ろ向きにレビューし、蕁麻疹活性スコア(UAS)の記録と、ピロリ菌感染症について13C-urea breath test(13C-UBT)を行った。 初回投与量の4倍の抗ヒスタミン薬での8週治療にもかかわらずCU改善がみられない患者は難治性CU群とし、反応がみられた患者は反応CU群とした。 難治性CUで13C-UBT陽性の患者に対し、アモキシシリン1g・クラリスロマイシン500mg・オメプラゾール20mgを1日2回、14日間投与した。 CUにおけるピロリ菌除菌の効果は、UASにて評価した(3剤投与開始後のベースライン、8、16、28週時点で評価)。 主な結果は以下のとおり。・難治性CU患者46例のうち、29例(63%)が13C-UBT陽性であった。・29例のうち、18例がピロリ菌感染症の除菌を受けた(サブグループA)。11例は3剤併用療法を辞退した(サブグループB)。なお46例のうち17例は13C-UBT陰性であった(サブグループC)。・サブグループAにおいて、UASはベースラインの5.29±0.94から、8週時点3.62~0.96(p=0.03)、16週時点1.43±0.41(p

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(56)〕 脂肪摂取の基準はいかに-リノール酸による死亡リスクの増加-

心疾患のリスクを抑制するための食事療法として、飽和脂肪酸を多く含む動物性脂質を可能な限り避け、多価不飽和脂肪酸の豊富な植物性脂質に変更することは、有意義であると考えられている。 しかし、オーストラリアで1966~1973年に実施された単盲検並行群間ランダム化試験であるSydney Diet Heart Study(SDHS)を再解析した本論文では、食習慣に介入しない対照群と比較して、動物性脂質(マーガリンやショートニング)をリノール酸(紅花油や紅花油由来のマーガリン)に変更した介入群では全死亡のリスク、心血管疾患の再発が有意に高かったというのである。 心筋梗塞、狭心症などの心血管イベントで入院した30~59歳の男性258人をランダムに対照群(237人)と介入群(221人)に分け、介入群では食事中の多価不飽和脂肪酸をエネルギー摂取量の15%に増やし、飽和脂肪酸を10%未満、食事性のコレステロールも300mgに制限、紅花油・紅花由来のマーガリンを配布し、特別な食事指導は行わない対照群と比較している。 Cox比例ハザードモデルを用いた解析で5年後の累積死亡を比較すると、対照群の死亡が11.8%であるのに対し、介入群では17.6%であり、ハザード比(HR)は1.62(95%信頼区間、1.00~2.26)と報告されている。同様に、心血管死、冠動脈疾患による死亡のHRもそれぞれ1.70(95%信頼区寛、1.03~2.80)、1.74(95%信頼区間、1.04~2.29)と、いずれも介入群でのリスクの有意な上昇が示されたというのである。 この論文は2013年2月5日に公表され、米国心臓協会(AHA)は2月7日、飽和脂肪酸は摂取エネルギー量の7%未満、多価不飽和脂肪酸は5~10%という指針を継続すると発表している。 食事における脂肪摂取のバランスについては、十分なエビデンスが得られていない。飽和脂肪酸は本当に悪なのか、魚油に多く含まれるω3-多価不飽和脂肪酸と植物由来のω6-多価不飽和脂肪酸はどのように違うのかなど、今後の展開が注目される。

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エキスパートに聞く!「COPD」Q&A

認知症や寝たきり患者さんのCOPD診断の方法は?この場合、呼吸機能検査や胸部所見もとれませんので厳しい状態ではありますが、換気不全については呼気CO2アナライザーを用いて確認可能です。換気不全があると呼気中CO2濃度は上昇します。間質性肺疾患など拘束性換気障害ではこのような現象はみられませんので、呼気中CO2濃度の上昇は閉塞性障害がベースにあるという根拠になります。長い喫煙歴がありCOPDの肺所見もあるが、スパイロメトリーは正常な患者に対する対応法は?横隔膜の平低化などの画像所見がある方で、スパイロメトリーが正常だということはまずなく、何か異常があるものです。しかし、閉塞性換気障害が確認できない場合でも、咳や痰などの症状がある場合、旧分類ではステージ0とされ、将来COPDになる可能性が高いため、禁煙が推奨されています。また、こういった方たちの進行をいかにして防ぐかというのは今後の課題でもあります。呼吸器・循環器疾患の既往がなく非喫煙者であるものの、スパイロメトリーが異常な患者に対する対応法は?このケースではさまざまな要素が考えられます。閉塞性換気障害があることを想定すると、まず喘息の鑑別が必要です。また、非喫煙者であっても受動性喫煙についての情報をとることも重要です。さらに、胸郭の変形の確認や、日本人にはほとんどいませんがαアンチトリプシン欠損の除外も必要です。それから、もう1つ重要なことは、再検査によるデータの確認です。患者さんの努力依存性の検査ですから、適切に測定されて得られる結果かどうかの確認はぜひとも必要です。COPDと心不全合併症例における治療方針は?原則としてCOPDについてはCOPDの治療を行いますが、薬物療法とともに低酸素血症への酸素投与が重要です。COPDにより誘導される心不全は、基本的には右心不全であり、利尿薬が選択されます。拡張性心不全に準じて、利尿薬とともに利尿薬によるレニン-アンジオテンシン系の刺激作用を抑制するためにACE阻害薬やARBの併用が勧められています。不整脈などの症状が出たら、それに合わせた対応が必要となります。吸入ステロイドを導入するケースは?吸入ステロイド(以下:ICS)はCOPDそのものに対する有効性はあまり認められていません。しかし、急性増悪の頻度を減らすことが認められています。そのため、ICSは増悪を繰り返す際に安定を得るために投与するのが良いと考えられます。また、現在は長時間作用性β2刺激薬(以下:LABA)との配合剤もあり、選択肢が広がっています。LAMA、LABA/ LAMA配合薬、ICS/LABA配合薬の使い分けについて教えてくださいLAMAおよびLABA/LAMAについては、さまざまな有効性が証明されており、COPDの薬物療法のベースとして考えていただくべきだと思います。ICS/LABA配合薬 については、上記ICSの適応症例に準じて、適用を判断していくべきだと思います。また、テオフィリンのアドオンも良好な効果を示し、ガイドラインで推奨されているオーソドックスな方法であることを忘れてはいけないと思います。*ICS:吸入ステロイド、LABA:長時間作用性β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬

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統合失調症の診断・治療に期待!新たなバイオマーカー

 統合失調症リスク遺伝子と関わりを持っていることなどが知られている「NDEL1」。統合失調症の臨床診断および薬物治療のバイオマーカーとして、血中NDEL1酵素活性が期待できることが示された。ブラジル・サンパウロ連邦大学のAry Gadelha氏らが、統合失調症患者と健常対照者の血中NDEL1酵素活性レベルを比較し、臨床プロファイルや治療反応との関連を調べた結果、統合失調症患者では同値が有意に低いことなどが示されたという。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2013年2月3日号の掲載報告。 NDEL1オリゴペプチダーゼは統合失調症リスク遺伝子DISC1と作用し合って、神経突起伸長や神経細胞遊走に関連するいくつかの機能を伝達し、また、統合失調症発症に先立ち神経ペプチドを加水分解すること(ニューロテンシンとブラジキニン)が知られている。研究グループは、こうしたNDEL1の特性を踏まえて、統合失調症患者と健常対照者における同値を測定し比較した。NDEL1酵素活性は、FRETペプチド基質Abz-GFSPFRQ-EDDnp加水分解率の蛍光定量的測定によって判定した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者92例、健常対照者96例について、血中NDEL1酵素活性を測定し比較した。・統合失調症患者は健常対照者と比べて、Ndel1酵素活性が平均31%低かった(Student's t検定=4.36、p<0.001、Cohen's d=0.64)。・NDEL1酵素活性と統合失調症患者/健常対照者のステータスに関するROC曲線下面積(AUC)は、0.70であった。・治療抵抗性(TR)の統合失調症患者では、治療に反応した(NTR)患者と比べて、NDEL1酵素活性がt検定解析の結果、有意に低かった(t=2.25、p=0.027)。・より低いNDEL1酵素活性は、NTR患者(p=0.002、B=1.19、OR:3.29、95%CI:1.57~6.88)、TR患者(p<0.001、B=2.27、OR:9.64、95%CI:4.12~22.54)のいずれとも有意な関連がみられた。・NDEL1酵素活性と、抗精神病薬投与量、ニコチン依存、BMIとには関連は認められなかった。・本検討は、統合失調症患者と健常者との比較でNDEL1酵素活性の差を検討した最初の試験であり、TR患者はNTR患者と比較して同活性が有意に低いことを初めて示した。その知見は、統合失調症の臨床診断および薬物治療において、NDEL1酵素活性は意味があることを支持する。関連医療ニュース ・日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに ・検証!統合失調症患者の体重増加と遺伝子の関連 ・初回エピソード統合失調症患者におけるGABA機能への影響

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(55)〕 急性期脳梗塞に対する血管内治療の優位性は示されず

本論文は、SYNTHESIS Expansion Investigatorsによる急性期脳梗塞を対象とした、rt-PA静注療法と血管内治療(rt-PA動注療法、デバイスによる血栓の破砕か回収、あるいは両方の組み合わせ)の無作為化比較研究の結果報告である。 血管内治療はrt-PA静注療法よりも閉塞血管の再開通率が高く、良好な転帰が期待されるため、両治療法の臨床的効果の比較が必要となっていた。本研究では、発症から4.5時間以内の急性期脳梗塞患者362人が無作為に両群に割り付けられ、3ヵ月後の転帰(mRS)が評価された。両群に各181人が割り付けられ、発症から治療開始までの中央時間は、血管内治療で3.75時間、rt-PA静注療法で2.75時間であった。3ヵ月後のmRS 0, 1は、前者30.4%、後者34.8%と有意差がなく、7日以内の致死的及び非致死的症候性頭蓋内出血は両群とも6%に生じ、血管内治療の優位性は示されなかった。 今年のISC2013で報告されたIMS IIIの最終結果でも血管内治療の優位性は示されず、血管内治療での治療開始時間の遅れが、今後の課題となる可能性がある。

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低用量ゾルピデム舌下錠、不眠症患者における中途覚醒後の入眠潜時を短縮

 米国・ヘンリーフォード病院(デトロイト)のThomas Roth氏らは、中途覚醒後の入眠困難を訴える不眠症患者を対象に、新規低用量ゾルピデム舌下錠の有用性をプラセボと比較検討した。その結果、低用量ゾルピデム舌下錠は中途覚醒後の入眠潜時を有意に短縮することを報告した。Sleep誌2013年2月1日号の掲載報告。ゾルピデム舌下錠は中途覚醒後の入眠潜時を短縮するとともに睡眠の質を改善 本研究は、中途覚醒後の入眠困難に対するゾルピデム酒石酸塩舌下錠3.5mgの有効性と安全性を評価することを目的に実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験であった。対象は、原発性不眠症で中途覚醒後の入眠困難を訴える成人295例(年齢中央値43歳、女性が68.1%)であり、スクリーニング期間中、1週間に3回以上の中途覚醒を認める患者を適格とした。2週間の単盲検プラセボ適格期間終了後、中途覚醒時にゾルピデム酒石酸塩舌下錠3.5mg を頓用する群とプラセボを頓用する群に1対1に無作為化し、28日間観察した。自動音声応答システムを用いて試験薬の服用状況を判定し、有効性評価項目として睡眠/覚醒を記録した。 ゾルピデム舌下錠の有用性をプラセボと比較検討した主な結果は以下のとおり。・4週間にわたり、ゾルピデム酒石酸塩舌下錠群の入眠潜時(ベースライン時:68.1分、試験薬服用:38.2分)は、プラセボ群(ベースライン時:69.4分、プラセボ服用:56.4分)に比べ有意に短かった(p<0.0001)。・4週間のうち試験薬が服用された日数の割合は、ゾルピデム酒石酸塩舌下錠群が62%、プラセボ群が64%であった。・ゾルピデム酒石酸塩舌下錠群において、夜間に使用した場合は使用しなかった場合に比べ、朝の眠気/覚醒の状況が有意に良好であった(p=0.0041)。・有害事象は概して軽度で、発現頻度は両群で同程度であった(19.3%)。治療関連の重篤な有害事象は認められず、プラセボ群の1例で試験中止に至る有害事象が出現した。・試験期間を通して増量された例はなかった。・ゾルピデム酒石酸塩舌下錠3.5mgの頓用は中途覚醒後の入眠潜時を短縮するとともに睡眠の質を改善し、忍容性も良好であった。関連医療ニュース ・不眠症の人おすすめのリラクゼーション法とは ・夢遊病にビペリデンは有望!? ・慢性不眠症患者の中途覚醒の原因は?

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静注ブスルファンと全身放射線照射との造血幹細胞移植後の全生存率の比較の報告が“Best Abstracts”に選出される【2013 BMT Tandem Meetings】

 BMT Tandem Meetings(米国造血細胞移植学会/国際骨髄移植研究センター 合同学術集会)において、造血幹細胞移植前治療としての静注ブスルファンと全身放射線照射(TBI)の骨髄破壊的レジメンを比較した試験の結果が、オタワ大学(カナダ)のChristopher Bredeson氏により報告された。この試験は、本学会の全553演題の中から最も優れた6題を表彰する“Best Abstracts”セッションにおいて、15日に米国ユタ州ソルトレイク市で発表された。 造血幹細胞移植前治療として、経口ブスルファンに代わり静注剤を使用することにより、血中濃度の厳密なコントロールが可能となったが、その臨床効果を、TBIと比較した前向き研究は未施行であった。今回、静注ブスルファンとTBIの骨髄破壊的レジメンを比較した多施設共同前向きコホート試験の結果が報告された。この試験は、CIBMTR(Center for International Blood and Marrow Transplant Research)が中心になって施行した、初めての大規模前向きコホート試験である。 同試験の対象は、すべての病期(early、intermediateおよび advanced phase)における骨髄性血液腫瘍(急性骨髄性白血病AML、骨髄異形成症候群MDS、慢性骨髄性白血病CML)に対して初回同種造血幹細胞移植を施行した60歳以下の患者である。血縁もしくは非血縁をドナーとし、骨髄および末梢血幹細胞を使用した例を含み、臍帯血移植あるいはex vivo T細胞除去を施行した例は除いた。前治療として、静注ブスルファン(BU)群では、BU(>9mg/kg)+シクロホスファミド(Cy)またはフルダラビン(Flu)投与例、TBI群では、≧500 cGyの単回照射または ≧800 cGyの分割照射に加えCyまたはエトポシドを使用した例を対象とした。主目的は、全生存におけるBU群のTBI群に対する非劣性の検証である。 2009年3月から 2011年2月までに、北米を主とした120施設から1,483 例(BU: n=1,025、TBI: n=458)が適格例として登録された。両群間に大きな偏りは見られず、年齢、性別、Karnofsky Performance StatusおよびHCT-CIスコアは同様であった。移植片としては末梢血幹細胞が主に使用された(BU:77%、TBI:76%)。両群ともAMLが多く(BU:68%、TBI:78%)、MDS が続いた(BU:21%、TBI:10 %)。両群間において、原疾患の進行度およびHLA適合血縁ドナーの割合(BU:41%、TBI:39%)に偏りはみられなかった。BU群において、1日1回投与は42%, 1日4回投与は57%であり、Cy併用例、Flu併用例はそれぞれ59%、41%であった。 2年全生存率(95%CI)は、BU群が 56%(53~60%)、TBI群が48%(43~54%)であり、2年全生存率に統計学有意差が認められた[p=0.019]。病期別2年全生存率は、Early phase(BU:64%、TBI:51%[p=0.006])、Intermediate phase(BU:57%、TBI:56%[p=NS])、Advanced phase(BU:43%、TBI:38%[p=NS])であった。 全例1,483 例における移植関連死は、移植後100日において両群ともに7%であった。静脈閉塞症肝疾患(VOD)/ 類洞閉塞症候群(SOS)の出現頻度は、BU群が5%、TBI群が1%であった[p

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(54)〕 がん検診の正しい情報とは?

EBM(Evidence-Based Medicine)の領域では、医療介入がどれだけのベネフィットをもたらすかということを、NNT(Number Needed to Treat)という指標が使われる。NNTとは、患者さん1人がメリットを得るために、同様の患者さん何人に治療(介入)を行わなくてはならないのかを示す指数である。医学論文などでは、効果の指標として、相対リスクやハザード比などがよく使われ、◯%の患者に効果が認められたなどと示されるが、相対リスク減少率などは過大評価されやすく、またわかりにくい指標であるので、EBMの世界では、NNTがよく使用される。 今回のBMJに報告された研究は、NNTに時間の概念を加えて、1人のがん死亡を防ぐために何名の検診が必要で、そのベネフィットが確認されるまでどれくらいの期間が必要であるかを計算した結果である。結論は、乳がん検診や大腸がん検診では、受診者1,000人当たり1例の死亡を予防するのに(つまり、NNTが1,000)、約10年を要するというものであった。 近年、検診の意義を問う研究報告がいくつかなされている。乳がんマンモグラフィー検診で相当数の過剰診断がある(Jørgensen KJ et al. BMJ. 2009; 339: b2587.)という報告、米国予防医療サービス専門作業部会(the U.S. Preventive Services Task Force)による、乳がん検診の推奨年齢を従来の40~74歳(毎年)から50~74歳(2年に1度)に変更し、過剰診断というリスクに関して十分に認識すべき(US Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2009; 151: 716-726.)という報告などがある。また、NEJM誌2012年11月22日号では、乳がん検診によって、早期乳がんが増えたのに対して、進行がんが減っていないことのアンバランスから、過剰診断がなされているのではないか、検診のベネフィットは少ないのではないか、ということを指摘している(Bleyer A et al. N Engl J Med. 2012; 367:1998-2005.)。 NNT1,000を妥当と判断したのは、1,000人に1人は過剰診断がなされているという報告(Nelson HD et al. Agency for Healthcare Research and Quality. 2009:1-89.)からであるが、言い換えると、乳がん・大腸がん検診を受けると、1/1,000の確率、0.001%の確率で10年後に乳がん・大腸がんで死亡することを防げるというものである。またその場合、1/1,000の確率で誤診もされてしまうということである。また、色々な合併症があり10年以上の予後が見込めない場合には、検診を受ける必要はないということになる。 日本はがん検診後進国であり、先進国の中では最低の検診率である。検診の啓蒙は大切なことであるが、全てのがんに検診が有効というわけではなく、限られたがんにしか有効ではない、しかもその利益を受ける者は、一部の者だけであるという正しい情報も伝えられる必要があると思われる。勝俣 範之先生のブログはこちら

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新規結核ワクチンの有効性示せず:MVA85A 020 Trial Study/Lancet

 開発中の新規結核ワクチンMVA85Aは、BCG接種歴のある幼児において良好な安全性を示したものの、予想に反して結核の予防効果はほとんどないことが、南アフリカ共和国・ケープタウン大学のMichele D Tameris氏の検討で示された。2011年の世界の結核患者数は約870万人で、約140万人が結核が原因で死亡している。南アフリカのような流行地では、BCGが広く普及しているにもかかわらず、幼児、小児の結核発症率がきわめて高く、ワクチンの改良が喫緊の課題とされる。MVA85AはBCGの予防効果を増強するようデザインされ、結核の予防に重要と考えられる抗体特異的Th1細胞およびTh17細胞を誘導することが確認されているという。Lancet誌オンライン版2013年2月4日号掲載の報告。安全性、有効性を無作為化第IIb相試験で評価 MVA85A 020 Trial Studyは、幼児における結核およびMycobacterium tuberculosis感染に対するMVA85Aの安全性、免疫原性、有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第IIb相試験。 BCGワクチン接種歴があり、HIVに感染していない健康な幼児(生後4~6ヵ月)を対象とした。これらの幼児を、MVA85Aを皮内接種する群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。3ヵ月ごとに最長37ヵ月のフォローアップを行った。 主要評価項目は安全性(有害事象および重篤な有害事象の発現)とし、ワクチン接種群の有効率の評価も行った。有効性の評価項目として、微生物学的、X線画像上、臨床的な判定基準に基づく結核の発症率およびM tuberculosis感染(抗体陽性化)の検討を行った。結核発症に対する有効率17.3%、感染に対する有効率-3.8% 2009年7月15日~2011年5月4日までに2,797人が登録され、MVA85Aワクチン接種群に1,399人が、プラセボ群には1,398人(2人が接種を受けなかった)が割り付けられた。per-protocol集団のフォローアップ期間中央値は24.6ヵ月で、両群間に有意な差はなかった。ワクチン接種群の1,399人(生後146.6日、男児51%)、プラセボ群の1,395人(同:145.7日、51%)が解析の対象となった。 局所的有害事象の発生率はワクチン群で多かった[89%(1,251/1,399人)vs 45%(628/1,396人)]が、全身性の有害事象[80%(1,120/1,399人)vs 76%(1,059/1,396人)]や重篤な有害事象の発生率に差は認めなかった[18%(257/1,399人)vs 18%(258/1,396人)]。これら515人の幼児にみられた648件の重篤な有害事象はMVA85Aワクチンとは無関係だった。 ワクチン群の結核の発症率は2%(32/1,399人)で、これは100人年当たり1.15〔95%信頼区間(CI):0.79~1.62〕に相当した。M tuberculosis感染率は13%(178/1,398人、95%CI:11.0~14.6)であった。 これに対し、対照群の結核発症率は3%(39/1,395人)で、100人年当たり1.39(95%CI:1.00~1.91)、感染率は12%(171/1,394人、同:10.6~14.1)だった。 結核の発症に対するワクチン接種の有効率は17.3%(95%CI:-31.9~48.2)、M tuberculosis感染に対する有効率は-3.8%(同:-28.1~15.9)であった。 著者は、「MVA85Aワクチンは良好な忍容性を示し、細胞性免疫反応も誘導したが、結核の発症およびM tuberculosis感染の抑制効果はほとんどなかった」と結論し、「現行の結核ワクチンの候補選定のパラメータは不適切な可能性があり、試験のデザインや遂行の仕方をも含め、本試験の教訓は今後のワクチン開発にとって重要である」と指摘している。

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前立腺全摘除術vs. 放射線療法、15年後の機能的アウトカムは有意差なし/NEJM

 限局性前立腺がんで前立腺全摘除術を受けた患者と放射線療法を受けた患者の機能的アウトカムについて、15年の長期にわたる追跡の結果、両群で有意な差はみられなかったことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のMatthew J. Resnick氏らが、Prostate Cancer Outcomes Study(PCOS)の被験者データを解析した結果で、NEJM誌2013年1月31日号で発表した。限局性前立腺がん患者1,655人を15年間追跡、排尿・排便・性機能について比較 PCOSは、1994年~1995年に全米6州で限局性前立腺がんと診断され登録した被験者を、6、12ヵ月時点で評価したサーベイ研究で、3,533人がサーベイを完了した。Resnick氏らは同データを用いて、診断時年齢55~74歳で2、5年時の追跡評価を完了しており、診断後1年以内でプライマリ治療として根治的前立腺摘除術あるいは体外照射療法(アンドロゲン除去療法有無問わず)を受けた1,655人を対象とし、両群の長期の排尿・排便・性機能について比較した。 機能状態の比較は、診断後2、5、15年時点について行い、多変量傾向スコアを用いて治療別の機能アウトカムを比較した。 解析対象の1,655人のうち、前立腺全摘除術群は1,164人、放射線療法群は491人であった。2、5年時点は有意差がみられたが、15年時点では認められず 尿失禁について、2年時点、5年時点のいずれにおいても全摘除群が放射線療法群よりも多い傾向が認められた。オッズ比は、2年時点6.22[95%信頼区間(CI):1.92~20.29]、5年時点5.10(同:2.29~11.36)だった。 しかし15年時点では、尿失禁に関する両群のオッズ比に有意な差はみられなかった(オッズ比:2.34、95%CI:0.88~6.23)。 同様に、勃起障害についても、2年時点(同:3.46、1.93~6.17)、5年時点(同:1.96、1.05~3.63)では全摘除群が多い傾向がみられたが、15時点では両群間の有意差は認められなかった(同:0.38、0.12~1.22)。 排便機能については、便意切迫が全摘除群で低い傾向が、2年時点(同:0.39、0.22~0.68)、5年時点(同:0.47、0.26~0.84)でみられたが、15年時点では有意差は認められなくなっていた(同:0.98、0.45~2.14)。 以上を踏まえて著者は、「前立腺全摘除術または放射線療法を受けた患者間に、15年時点では疾患特異的な機能アウトカムの相対的な有意差はみられなかった。ただし15年の追跡期間中、概して限局性前立腺がんの治療を受けた男性はすべての機能が低下していた」と結論し、「前立腺がんは治療後、多くの場合が長期生存する。そのことを考慮して、本データは限局性前立腺がんの治療を検討している男性患者への助言として役立つであろう」とまとめている。

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抗精神病薬や気分安定薬を服薬中の女性、妊娠・出産のリスクはどの程度?

 女性に対する抗精神病薬や気分安定薬の処方は、妊娠や出産へのリスクを十分に考慮する必要がある。イタリア・ヴェローナ大学のC Barbui氏らは、抗精神病薬服薬中の妊娠可能年齢女性における、妊娠転帰に関するデータをまとめ、発表した。Epidemiology and psychiatric sciences誌オンライン版2013年2月1日号の報告。 イタリア・ロンバルディア州(人口1,000万人、妊娠可能年齢女性175万2,285人)で、抗精神病薬を投与されている統合失調症および双極性障害を有する妊娠可能年齢の女性の割合を算出し、妊娠転帰に関するデータを調査した。精神科医療、薬物療法、妊娠転帰に関するデータは、12ヵ月の国勢調査によるローカル管理データベースから取得した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬または気分安定薬を投与されていた妊娠可能年齢女性は、統合失調症を有する2,893例(すべての統合失調症を有する女性の74.8%)、双極性障害を有する918例(すべての双極性障害を有する女性の80.1%)であった。・有病率は1,000人の女性あたり、統合失調症で1.65(95%CI:1.59~1.71)、双極性障害で0.52(95%CI:0.49~0.55)であった。・催奇形性のある薬剤の継続的投与を受けていたのは、妊娠可能年齢女性1,000人あたり1人であった。・統合失調症女性における妊娠は57例、そのうち正常分娩は23例(40%)であった。双極性障害女性における妊娠は26例、そのうち正常分娩は10例(38%)であった。関連医療ニュース ・抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮 ・双極性障害とADHDは密接に関連 ・妊娠中のSSRI服用と死産、新生児・0歳時死亡には有意な関連みられず

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Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND

第1回「抗菌薬の危うい未来」第2回「感染臓器と原因微生物、そして?」第3回「薬理学を武器にせよ」第4回「市中肺炎に潜む罠」 第1回「抗菌薬の危うい未来」前シリーズ「感染症アップグレード」では、抗菌薬の多くの間違った使い方を指摘してきました。あれから数年、日本の感染症診療は大きくレベルアップしました。にも関わらず未だに見当違いの診断、不適切な抗菌薬使用は後を絶ちません。日常臨床で毎日のように処方される抗菌薬のことを、私たちは思いの外何も知らないのです。今回は、そもそも抗菌薬は何か、その目的とリスクはどのこにあるのか、そして、抗菌薬を取り巻く現状と問題点を詳しく解説し、これからの感染症診療への道筋をしめします。第2回「感染臓器と原因微生物、そして?」感染症の患者さんについてよく指導医が尋ねる「体温は?」「CRPは?」「白血球は?」といった質問。日本の感染症診療の現場では伝統的にこれらのパラメータが重要視されてきたのです。しかし感染症診療において、本当に必要な情報は、体温でもCRPでも白血球数でも知ることが出来ません。それではいったいどうすればいいのでしょうか?基礎中の基礎でありながら無下にされてきた感染症診療の考え方を再確認しましょう。第3回「薬理学を武器にせよ」抗菌薬を使う上で、「薬理学なんて役に立たないよ」と思っているあなた。それは、役に立たないではなく、役に立てていないのです。抗菌薬を選ぶときに、PKの知識がないと失敗します。投与量や投与回数を考える上で、PDを無視しては確実な治療効果を得ることはできません。そしてなにより、現実の臨床で出会う様々な病態、例えば、第1選択薬はアレルギーがあって使えない、第2選択薬は腎不全で使えない、そんな複雑な状況に立ち向かうためにも、薬理学は大きな武器になるのです。一味違う抗菌薬の使い方を是非身につけてください。第4回「市中肺炎に潜む罠」普段、院内でよく見る肺炎、特に市中肺炎をしっかりマネジメントできるようになれば、他の全ての感染症マネジメントに応用が利きます。まずはこの市中肺炎をしっかり押さえましょう。とはいえその診断は一筋縄では行きません。典型的な症状がないもの、肺炎に見えて肺炎でないものなど、ピットフォールは多く、これらに注意することが大切です。また、原因微生物の考え方と、抗菌薬の選択も重要です。今回はそれらを解説するとともに、肺炎球菌性肺炎に第一選択薬となるペニシリン、日本では誤用が甚だしいマクロライドについても詳説します。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(53)〕 HOPE試験の再来か?ACE阻害薬が間歇性跛行に”降圧を超えた”有効性

ASOによる間歇性跛行を有する症例に対して、ACE阻害薬ラミプリルの6ヵ月投与は、歩行距離、歩行時間、歩行スピードのいずれも改善し、疼痛の軽減させることでQOL改善をもたらしたという論文である。 しかも、これらの改善に対する血圧低下は収縮期/拡張期血圧各々3.1/4.3mmHgと比較的少なく、また高血圧の有無にかかわらずその改善度は同様であった。このことから著者らは、HOPE試験と同じようにACE阻害薬の「降圧を超えた」血管保護効果があったとしている。この程度の血圧低下を、“降圧”とみなすか“降圧以外”とみなすかは判定が難しいが、HOPE試験では診察室血圧の差は軽微であっても24時間血圧、とくに夜間血圧に大きな差がみとめられていた。 本研究では、921例リクルートされた症例から212例のみが登録されており、大多数が登録基準を満たさず脱落している。患者背景では、高血圧患者は50%前後にすぎず、糖尿病患者も25%しか含まれていない。すなわち、冠動脈疾患、腎疾患など他の心血管合併症を有する例やプラセボ治療に耐えることのできない症例はすべて除外されていることになる。 実臨床の世界では、ASO症例は他の心血管合併症を有していることが多く、本試験の結果が実臨床の世界で通用するか否かは不明である。もう一つ、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)でも同様な結果が得られるか否かについて著者らは言及していないが、ACE阻害薬のブラジキニンによる血管拡張効果をWIQスコアの改善と関連づけていることから、ARBでは同様の改善効果は期待できないであろう。 いずれにしても比較的軽症なASO症例では高血圧の有無にかかわらずACE阻害薬の処方が有用であることを示す一つのエビデンスではあろう。

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ACE阻害薬、末梢動脈疾患患者の間欠性跛行とQOLを改善/JAMA

 ACE阻害薬ラミプリル(本邦未承認)は、間欠性跛行のみられる末梢動脈疾患(PAD)患者の歩行能を有意に改善し、その結果として健康関連QOLの改善をもたらすことが、オーストラリア・Baker IDI心臓・糖尿病研究所のAnna A. Ahimastos氏らの検討で示された。PAD患者は欧州と北米で約2,700万人に上る。その約3分の2が歩行時疼痛(安静時には消失)による間欠性跛行を来し、身体の機能的障害やライフスタイルの制約を受けることになる。これまでに行われた薬物療法の臨床試験では、歩行距離の延長効果は12~60%だが、同氏らはパイロット試験でラミプリル の有効性を示唆するデータを得ているという。JAMA誌2013年2月6日号掲載の報告。歩行能、QOLをプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、間欠性跛行がみられるPAD患者の客観的な歩行能、歩行能に関する患者の印象、健康QOLに及ぼすラミプリルの効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。 対象は、2008年5月~2011年8月までにオーストラリアの3施設から登録されたPAD患者212例。これらの患者が、ラミプリル10mg/日を24週投与する群(106例、平均年齢65.5歳、男性82.1%、平均BMI 25.4kg/m2、糖尿病22.6%、高血圧48.1%、喫煙者36.8%)またはプラセボ群(106例、65.5歳、84.9%、25.7kg/m2、25.5%、51.9%、30.2%)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、標準的なトレッドミル運動負荷検査で測定した最長歩行時間および無痛歩行時間(跛行痛が発症するまでの時間)とした。歩行能については歩行障害調査票(Walking Impairment Questionnaire:WIQ)で、健康関連QOLはShort-Form 36 Health Survey(SF-36)で評価した。無痛歩行時間が77%改善、最長歩行時間は123%改善、精神面QOLへの影響なし 治療終了時(6ヵ月後)の平均無痛歩行時間は、ラミプリル群がプラセボ群よりも有意に75秒延長し(延長時間:ラミプリル 群88秒、プラセボ群14秒、p<0.001)、最長歩行時間は255秒長かった(同:277秒、23秒、p<0.001)。 WIQの距離スコア中央値はラミプリル群がプラセボ群よりも13.8点改善し[Hodges-Lehmann 95%信頼区間(CI):12.2~15.5]、WIQ速度スコアは13.3点(同:11.9~15.2)、WIQ階段上がりスコアは25.2点(同:25.1~29.4)有意に改善した(いずれもp<0.001)。 SF-36の身体面の総合スコア中央値は、ラミプリル群がプラセボ群に比べ8.2点有意に改善した(Hodges-Lehmann 95%CI:3.6~11.4、p=0.02)。ラミプリル群では、SF-36の精神面の総合スコア中央値への影響は認めなかった(同:-0.7~1.1、p=0.74)。 著者は、「間欠性跛行を呈するPAD患者において、ラミプリル24週投与により無痛歩行時間および最長歩行時間がプラセボに比べ有意に改善し、その結果としてSF-36スコアの身体機能の有意な改善が得られた」と結論している。なお、トレッドミルでの最長歩行時間の255秒の延長は実際の坂道歩行で184mの延長に相当する。また、無痛歩行時間の75秒の延長は77%の改善、最長歩行時間の255秒の延長は123%の改善であり、これは、これまでに同様の試験が行われた薬剤の効果を上回るものだという。

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術中脊髄モニタリングは術後の永続的神経障害の発生を有意に低下させる

 脊椎脊髄手術後の永続的神経障害の回避に術中モニタリング(IOM)が有効であることが、米国・Barnes-Jewish病院のBarry L. Raynor氏らによる、25年間にわたる計1万2,375例の後ろ向き研究で確認された。IOMを行いデータの著しい変化/消失が発生した時に対処することで、永続的神経障害の発生率は最悪のシナリオである3.1%(IOMデータの著しい変化/消失の発生率)から0.12%に有意に低下した(p<0.0001)という。Spine誌2013年1月15日号の掲載報告。 本研究の目的は、IOMデータの著しい変化または消失に関与する術中事象について調査することであった。 多元的IOMには、体性感覚誘発電位(SEP)、下行性神経誘発電位(DNEP)、神経原性運動誘発電位(n-MEP)、自発筋電図および誘発筋電図が含まれた。 1985年1月~2010年12月に脊椎脊髄手術を受けた計1万2,375例について後ろ向きに調査した(女性59.3%/男性40.7%、頸部29.7%、胸部・胸腰部45.4%、腰仙部24.9%、18歳以上72.7%/18歳未満27.3%、初回手術77.8%/再手術22.2%)。 主な結果は以下のとおり。・1万2,375例中、386例(3.1%)、406件のIOMデータ変化/消失が発生した。・データ悪化/消失の原因は、インストゥルメンテーション(131件)、ポジショニング(85件)、補正(56件)、全身性因子(49件)、不明(24件)、限局性脊髄圧迫(15件)などであった。・データ変化/消失は、初回手術(2.3%、219 / 9,633例)より再手術(6.1%、167 / 2,742例)で高頻度にみられた(p<0.0001)。・対処により88.7%(360 / 406件)はデータが改善したのに対して、11.3%(46 / 406件)は改善しなかった。・術後に永続的神経障害を呈した患者は15例(0.12%)で、このうち1例は対処によりデータが改善した患者であったのに対し、14例は改善しなかった患者であった(p<0.0001)。【おすすめコンテンツ】~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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ω-6リノール酸、むしろ死亡率を高める?:Sydney Diet Heart Studyとメタ解析/BMJ

 冠動脈疾患(CHD)の2次予防において、飽和脂肪酸をω-6リノール酸(多価不飽和脂肪酸)で代替する食事療法は、全死因死亡、CHD死、心血管疾患(CVD)死をむしろ増加させる可能性があることが、米国・国立衛生研究所(NIH)のChristopher E Ramsden氏らの検討で示された。食事に含まれる飽和脂肪酸をω-6リノール酸で置き換えると、総コレステロール値やLDLコレステロール値が低下することが知られている。そのため、CHD患者の食事療法ガイドラインではこれらの代替が推奨されているが、リノール酸の臨床的なベネフィットは確立されていない。Sydney Diet Heart Study(SDHS)は、サフラワー油由来のリノール酸の、CHD死やCVD死の抑制効果に関する包括的な解析を目的とした無作為化試験で、データが紛失したため長年放置されていたが、同氏らがオリジナルのデータセットの回収に成功したという。BMJ誌オンライン版2013年2月5日号掲載の報告。SDHSの回復データの解析と、これを含めた最新のメタ解析 研究グループは、食事に含まれる飽和脂肪酸のω-6リノール酸(多価不飽和脂肪酸)への代替による、CHDの2次予防効果を評価するために、SDHSの回復されたデータの解析を行い、さらにこれらのデータを含めた最新のメタ解析を実施した。 SDHSは、1966~73年にオーストラリア・シドニー市で進められた単盲検無作為化対照比較試験で、直近の冠動脈イベント歴を有する30~59歳の男性患者458例が対象となった。 これらの患者が、飽和脂肪酸(動物脂肪、マーガリン、ショートニング由来)をω-6リノール酸(サフラワー油、サフラワー油製の多価不飽和マーガリン由来)で代替した食事療法を受ける群または対照群(特別な食事指導を受けず、代用食は摂取しない)に無作為に割り付けられた。試験は、食事以外の要素はすべて両群で同等となるようデザインされた。 主要評価項目は全死因死亡とし、副次的評価項目はCVD死およびCHD死とした。全死因死亡率:介入群17.6% vs 対照群11.8%(p=0.05)、メタ解析では有意差なし 介入群に221例(平均年齢48.7歳、平均BMI 25.1kg/m2)、対照群には237例(同:49.1歳、25.4kg/m2)が割り付けられた。 全死因死亡率は、介入群が17.6%と、対照群の11.8%に比べ有意に高かった〔ハザード比(HR):1.62、95%信頼区間(CI):1.00~2.64、p=0.05〕。 CVD死は、介入群が17.2%、対照群は11.0%(HR:1.70、95%CI:1.03~2.80、p=0.04)、CHD死はそれぞれ16.3%、10.1%(同:1.74、1.04~2.92、p=0.04)であり、いずれも対照群のほうが有意に良好だった。 これらのデータを含めたリノール酸介入試験のメタ解析では、CHD死(HR:1.33、95%CI:0.99~1.79、p=0.06)およびCVD死(同:1.27、0.98~1.65、p=0.07)のリスクが、ともに介入群で増大する傾向がみられたが、有意な差は認めなかった。 著者は、「飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換える食事療法は、全死因死亡、CVD死、CHD死をむしろ増加させ、メタ解析でもω-6リノール酸介入による心血管ベネフィットのエビデンスは示されなかった」と結論し、「現在、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸で代用する方法は、世界的にCHDのリスク低減に向けた食事療法ガイドラインの中心となっているが、今回、ω-6リノール酸を最も豊富に含む食事の臨床的ベネフィットは確立されなかった。この知見は、このような代替食事療法を勧告するガイドラインにとって重要な意味を持つだろう」と指摘している。

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双極性障害、再入院を減らすには専門外来での治療が必要

 デンマーク・コペンハーゲン大学病院のLars Vedel Kessing氏らは、双極性障害のため精神病院に入院し、退院した患者の予後について、退院後に気分障害クリニック専門外来での治療を受けた場合と地域病院で標準治療を受けた場合を比較検討した。その結果、気分障害クリニック専門外来での治療は精神病院への再入院を減らし、治療満足度も高いことを報告した。British Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年1月24日号の掲載報告。 本研究は、双極性障害のため精神病院に入院し、退院した患者について、気分障害クリニック専門外来での治療を受けた場合と地域病院で標準治療を受けた場合の予後を比較検討することを目的とした。単一躁病エピソードまたは双極性障害により入院した精神病院(1件目、2件目または3件目)から退院した患者を、気分障害クリニック専門外来で治療を受ける群または地域病院で標準治療を受ける群に無作為化した。主要評価項目は、デンマークPsychiatric Central Registerに基づく再入院とした。 主な結果は以下のとおり。・単一躁病エピソードまたは双極性障害患者158 例が試験に登録された。・気分障害クリニック専門外来での治療を受けた群は、地域病院で標準治療を受けた群と比べ有意に再入院率が低かった(未調整ハザード比:0.60、95%CI:0.37~0.97、p=0.034)。・気分障害クリニック専門外来での治療を受けた群では、気分安定薬または抗精神病薬がより多く使用されており、治療満足度がより高かった。・以上の結果から、双極性障害の早期に気分障害クリニック専門外来で治療を受けることにより精神病院への再入院が大きく減り、ケア満足度も高まることが示された。関連医療ニュース ・バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは? ・認知症ケアでプライマリケア・リエゾンに求められる3つのポイント ・うつ病の治療転帰を予測するには、臨床的要因 < 社会経済的要因

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(52)〕 NoboriステントはCypherステントより優れているとは言えない?

Biolimus-eluting biodegradable polymer-coated stent(Nobori、1,229症例)とdurable polymer-coated sirolimus-eluting stent(Cypher、1,239症例)の無作為化比較試験であるSORT OUT Vの結果が、Lancetに報告された。 心臓死、急性心筋梗塞、ステント血栓症、再血行再建術を合わせた主要エンドポイントにおいて、9ヵ月(4.1% vs. 3.1%)と12ヵ月(5.4% vs. 4.4%)のいずれの時点においても、有意差を認めなかった。 しかし、30日以内のステント血栓症が、Nobori群で有意に高頻度であった(0.7% vs. 0.2%、 p=0.034)ことが、結果に大きく影響している。さらに、無作為化しているにもかかわらず、有意にNobori群で冠動脈バイパス術(CABG)の既往症例が多く、ステント留置時の拡張圧が低い。より進行した病変により低い圧で留置されたために、Nobori群でステント拡張不良の症例が多くなり、早期のイベントにつながったのではないかと疑いたくなる。また、新生内膜による被覆遅延、動脈硬化の進行促進といった点で、NoboriはCypherよりも優れていると考えられているが、その効果は1年以後の遅発性のイベントに影響すると考えられる。 よって、1年で評価した今回の試験は、論文の著者も述べているように、あまりにフォローアップ期間が短すぎる。しかも、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)手技の影響が大きいと考えられる早期のイベントの差が結果に影響しており、背景因子も必ずしも同じでないことを考えると、これでも症例数が少なすぎるのではないだろうか? あるいは、血管内超音波法(IVUS)を使用する等によって手技のばらつきを小さくする努力も必要ではないだろうか? いずれにしても、このまま鵜呑みにできない結果であることは多くの専門家が認めるだろうが、結果だけが一人歩きして社会的影響力を持たないように、各人が大規模臨床試験の結果を公正に評価できる能力を持つ必要がある。

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