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治療を完遂したがん患者、運動によりQOLが改善

治療を終えたがん患者では、運動によってQOLの改善を含め種々の好ましい効果が得られることが、中国・香港大学のDaniel Y T Fong氏らの検討で示された。がんサバイバー(cancer survivor)は、治療終了後に診断前と同等の生活を期待するが、治療の影響で疲労感が増大したり、身体活動性やQOLが低下することが多い。がん治療を完遂した患者における運動の効果に関する最近のメタ解析では、試験の不均一性の増大が指摘されており、その原因は異なるドメインあるいは異なる方法でアウトカムを評価した試験が混在しているためだという。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。治療を終えたがん患者における運動の効果を評価研究グループは、がん治療を完遂した成人がん患者における運動の効果を評価するために、無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。2名の研究者が別個に、データベース(CINAHL、Google Scholar)を検索し、メタ解析や総説の文献を調査して、試験データの抽出と試験の質の評価を行った。対象は、ホルモン療法を除くがん治療を受けた成人患者における運動の効果を評価した無作為化対照比較試験であった。34試験を解析、22試験は乳がん患者が対象34の無作為化対照比較試験が解析の対象となり、そのうち22試験(65%)が乳がん患者に関するものであった。多くが有酸素運動の効果を評価した試験で、筋力トレーニングを加えた試験もあった。運動期間(中央値)は13週(3~60週)で、多くの試験が無運動群を対照群としていた。乳がん患者の試験では、運動によりインスリン様成長因子(IGF)-1、ベンチプレス、レッグプレス、疲労、うつ状態、QOLの改善が得られた。他の種の試験を統合すると、体格指数(BMI)、体重、最大酸素消費量、最大パワー出力、6分間歩行距離、右手握力、QOLの有意な改善効果が認められた。試験の不均一性の原因としては、年齢、試験の質、試験の規模、運動のタイプや期間が考えられた。本研究の結論には出版バイアスの影響はなかった。著者は、「運動は、治療を終えた乳がん患者の生理機能、身体組成、身体機能、心理的なアウトカム、QOLに良好な効果を示した。乳がん以外のがん患者でも、運動はBMIや体重の減少などとともにQOLを改善し、好ましい効果が確認された」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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医学ジャーナルのプレスリリースは、新聞報道に影響するか?

医学ジャーナルが特定の論文について発表したプレスリリースの質が高い場合は、それを報じる新聞記事の質も高くなるが、プレスリリースの質が低ければ関連新聞記事の質も低下することが、米在郷軍人局医療センターのLisa M Schwartz氏らの調査で明らかとなった。医学ジャーナルが発行するプレスリリースには質のばらつきがみられ、重要な要素が除外されたり、試験の重大な限界を伝えていないことが多いという。これらのプレスリリースが、新聞報道の質に及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。プレスリリースが新聞記事の質に及ぼす影響を後ろ向きに評価研究グループは、医学ジャーナルによるプレスリリースの質が、新聞の関連記事の質に及ぼす影響を評価するために、レトロスペクティブなコホート試験を実施した。医学ジャーナル主要5誌(Annals of Internal Medicine、BMJ、Journal of the National Cancer Institute、JAMA、New England Journal of Medicine)を2009年1月号から順に古い号へとレビューし、アウトカムの定量化が可能で、新聞で報道(100語以上の独自記事)された最新の原著論文100編を抽出した。オンラインデータベース(Lexis Nexis、Factiva)を検索して759本の新聞記事を同定し、Eurekalertと当該ジャーナルのウェブサイトを検索して68本のプレスリリースを抽出した。2名の研究者が別個に、論文、プレスリリース、関連新聞記事のサンプル(343本)の質の評価を行った。プレスリリース発表論文の新聞掲載率は71%1編の論文に関する新聞記事数の中央値は3本(1~72)であった。解析の対象となった新聞記事343本のうち、71%は医学ジャーナルがプレスリリースを発表した論文に関するものだった。絶対リスクを明示した主要結果を掲載した記事は、プレスリリースにその情報がない場合は9%、それがある場合は53%で(相対リスク:6.0、95%信頼区間:2.3~15.4)、プレスリリースそのものがない場合は20%であった(同:2.2、0.83~6.1)。記事の39%(133本)は有益な介入に関する研究を報じるものだった。プレスリリースが有害性に触れていない場合でもそれを報じた記事は24%で、プレスリリースが触れている場合は68%が有害性を報じており(相対リスク:2.8、95%信頼区間:1.1~7.4)、プレスリリースがない場合は36%であった(同:1.5、0.49~4.4)。研究に重大な限界がある場合にそれを報じた記事は75%(256本)であった。プレスリリースがそれに触れていなくても限界について報じた記事は16%、プレスリリースが触れていれば48%が報じていて(相対リスク:3.0、95%信頼区間:1.5~6.2)、プレスリリースが発表されていなくても限界を記載したのは21%だった(同:1.3、0.50~3.6)。これらの結果から、著者は「医学ジャーナルが発表した質の高いプレスリリースは関連新聞記事の質を高め、プレスリリースの質が低ければ新聞記事の質も低下すると考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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人工妊娠中絶は世界的に低下、危険な中絶は増加傾向に

最近の人工妊娠中絶の世界的な傾向として、1995年以降に観察された中絶率が実質的に低下した状態が、現在まで継続しているものの、危険な中絶は増加していることが、米国・Guttmacher研究所のGilda Sedgh氏らの調査で明らかとなった。妊産婦の健康増進(ミレニアム開発目標5)や家族計画の利用状況を評価するには、妊娠中絶の発生率やその傾向に関するデータが必要となる。また、中絶を取り巻く議論の一つに、中絶を制限する法律が、果たして女性を中絶から救出し得るかという問題がある。Lancet誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月19日号)掲載の報告。1995~2008年の人工妊娠中絶の世界的な傾向を調査研究グループは、1995~2008年の人工妊娠中絶の世界的な傾向について調査した。「危険な中絶」は標準的なWHOの定義で判定し、各国の公式統計や調査データに基づいて安全な中絶の推定値を算出した。危険な中絶は、主に公表された試験結果、病院記録、女性を対象とした調査の情報に基づいて推算した。データが誤っていたり、不完全な場合や古い場合には、必要に応じて付加的な情報源などを利用して修正や予測を行った。1995年、2003年、2008年に同じ方法で算出された数値を用いて中絶の傾向を評価した。線形回帰モデルで、中絶の法的な位置づけと2008年の世界各地の中絶率の関連について解析した。進歩的な中絶法を擁する地域で中絶率が有意に低い15~44歳の女性1,000人当たりの中絶件数は、1995年の35件から減少期に入り、2003年は29件、2008年は28件と世界的に安定していた。中絶率の年間変化率の平均値は、1995~2003年が約2.4%、2003~2008年は0.3%と小さかった。1995年の世界の人工妊娠中絶の44%が危険な中絶であったのに対し、2008年は49%に上昇していた。2008年は、妊娠5件当たり約1件の頻度で中絶が行われていた。中絶率は、進歩的な中絶法を擁する地域で有意に低かった(p<0.05)。著者は、「1995年以降に観察された中絶率が実質的に低下した状態が、現在まで継続しており、危険な中絶は増加していた。中絶を制限する法律が中絶率の低下には結びつかないことが示された」とまとめ、「家族計画サービスや安全な中絶のためのケアへの出資など、望まない妊娠や危険な中絶を抑制するための対策が、『ミレニアム開発目標5』の達成に向けた重要なステップとなる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高用量抗ウイルス薬治療、HSV-2再活性化の抑制効果は不十分

単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は、高用量抗ウイルス薬治療中にも潜在性の再活性化を認めることが、米国・ワシントン大学のChristine Johnston氏らの検討で示された。同氏は「HSV感染の除去には、より強力な抗ウイルス薬治療を要する」と指摘している。HSV-2感染は世界的に蔓延し、HIV-1感染リスクを増大させることが示されている。抗ウイルス薬の連日投与は性器病変を減少させ、性器粘膜表面へのHSV排出を抑制するが、性感染リスクの改善効果は十分ではないという。Lancet誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月5日号)掲載の報告。3つの相補的試験でウイルス排出を評価研究グループは、標準用量および高用量の抗ウイルス薬治療によるHSV-2ウイルス排出頻度の低減効果を評価するために、3つの非盲検無作為化クロスオーバー試験のデータを解析した。ワシントン大学ウイルス学研究クリニックでHSV-2の血清反応陽性/陰性者を登録し、3つの相補的なクロスオーバー試験を実施した。1)無治療とアシクロビル(商品名:ゾビラックスなど)400mg×2回/日(標準用量)の比較、2)バラシクロビル(商品名:バルトレックス)500mg/日(標準用量)とアシクロビル800mg×3回/日(高用量)の比較、3)標準用量バラシクロビルとバラシクロビル1g×3回/日(高用量)を比較した。試験期間は4~7週で、wash-out期間は1週間とした。性器スワブを1日4回採取し、real-time PCR法でHSV DNAを定量。検査室要員には臨床データがマスクされた。主要評価項目は、個人内ウイルス排出率とし、per protocol解析を行った。再活性化は高用量群で低いが十分でない2006年11月~2010年7月までに113例が登録され90例が評価可能であった。採取された2万3,605スワブのうち1,272例(5.4%)がHSV陽性だった。HSV-2ウイルス排出頻度は、無治療群が18.1%と標準用量アシクロビル群の1.2%に比べ有意に高かった(罹患率比[IRR]:0.05、95%信頼区間[CI]:0.03~0.08)。高用量アシクロビル群のウイルス排出頻度は4.2%と、標準用量バラシクロビル群の4.5%よりも低かった(IRR:0.79、95%CI:0.63~1.00)。高用量バラシクロビル群は3.3%と、標準用量バラシクロビル群の5.8%よりも低頻度だった(IRR:0.54、95%CI:0.44~0.66)。人・年当たりのウイルス排出頻度は、標準用量バラシクロビル群(22.6)と高用量アシクロビル群(20.2)、標準用量バラシクロビル群(14.9)と高用量バラシクロビル群(16.5)の比較では両群で同等だった(それぞれ、p=0.54、p=0.34)が、無治療群(28.7)と標準用量アシクロビル群(10.0)には有意な差が認められた(p=0.001)。ウイルス排出期間中央値は、無治療群が13時間と標準用量アシクロビル群の7時間よりも長く(p=0.01)、標準用量バラシクロビル群は10時間と高用量バラシクロビル群の7時間に比べ長かった(0=0.03)。一方、標準用量バラシクロビル群(8時間)と高用量アシクロビル群(8時間)には差を認めなかった(p=0.23)。HSVのlog10コピー数/mLにも同様の傾向が認められた。著者は、「高用量抗ウイルス薬治療中にも潜在性のHSVの再活性化が認められた。HSV感染の除去には、より強力な抗ウイルス薬治療を要する」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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不眠症治療薬 エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)

2012年1月、不眠症を適応とするエスゾピクロン(商品名:ルネスタ)が承認された。本剤は非ベンゾジアゼピン系に属するGABAA受容体作動薬であり、GABAの作用を増強することにより臨床効果を発揮すると考えられている。わが国で増加する不眠症患者現在、日本国民の約5人に1人が睡眠障害を抱えていると言われている。夜型社会への移行、交代勤務などの影響により睡眠覚醒リズム障害が増加している1)。また、高齢者では睡眠障害の頻度が高いことが知られており、高齢化社会を迎えるわが国において、睡眠障害への対応は今後ますます重要となる。睡眠障害の中でも最も高頻度に認められるのが不眠症である。不眠症には入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の4つのタイプがあり、中でも入眠障害は高頻度で認められる。加えて、中途覚醒を併発している症例も一定数存在すると言われている。不眠症治療の課題不眠症治療は本来単剤での治療が基本となっているが、複数の症状がある場合には多剤併用されることも少なくない。厚生労働省の調査によると、睡眠薬を2種類以上処方している割合は2009年で27.3%であり2005年と比較して3.2ポイント増加している2)。そして、不眠症治療薬の長期投与による耐性も問題となっている。本来、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は適正に使用すれば耐性が生じることは少ないと言われているが、長期間・高用量の不眠症治療薬を投与することや、不眠の原因が解消されないうちに投与を中止してしまうことで、耐性を生じることがある。また、患者の自己判断により急に減量したり中断したりすると反跳性不眠(治療前よりもさらに強い不眠が出現する)が見られることがあり、これも問題となっている。エスゾピクロンの特徴エスゾピクロンはラセミ体であるゾピクロンを光学分割して得られたS体でありGABAの作用を増強することで臨床効果を示す。Tmaxは約1時間、T1/2は約5時間であり超短時間型睡眠薬の中では長い部類に属する。国内外の臨床試験では不眠症の主症状である入眠障害と中途覚醒のいずれにも有効であることが示されている。海外で実施された12ヵ月の長期投与試験において、エスゾピクロンは耐性を示さないことが報告されている3)。米国では初めて投与期間に関する制限を受けない不眠症治療薬として承認を取得しており、幅広い患者に使用されている。求められる不眠症治療薬の適正使用不眠症を慢性化、難治化をさせず効果的に治療していくためには、正しい知識の普及と不眠症治療薬の適正使用推進が強く求められる。今後ますます不眠症患者が増加する中、新たな選択肢であるルネスタの登場は、患者ごとに合わせた不眠症治療の実現につながるものと考えられる。そして、患者の症状や薬剤の特性を理解したうえで、より適切な不眠症治療がおこなわれることが期待される。

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市中てんかん重積状態患者へのミダゾラム筋注、ベンゾジアゼピン系薬静注に対し非劣性

てんかん重積状態の患者に対する病院到着前の処置について、ミダゾラム(商品名:ドルミカムほか)の筋肉内投与は、ロラゼパム(商品名:ワイパックスほか)の静脈内投与と、痙攣発作の停止に関する有効性と安全性は同等以上であることが報告された。米国・ミシガン大学救急医学部門のRobert Silbergleit氏らが、二重盲検無作為化非劣性試験を行った結果による。持続性の発作は、ベンゾジアゼピン系薬の静脈内投与で早期に停止することで転帰が改善するが、より速く確実に薬を投与するため、米国の救急救命士の間では筋注で処置する傾向が増えているという。NEJM誌2012年2月16日号より。5分以上痙攣が持続する患者を筋注と静注に無作為化研究グループは、病院到着前に救急救命士の処置を受けた、てんかん重積状態の小児と成人を対象に、ミダゾラム筋肉内投与とロラゼパム静脈内投与の有効性を比較する試験を行った。被験者は痙攣が5分以上続き、救急救命士が現場に到着後も痙攣が続いていて、筋肉内自動注入装置または点滴静注のいずれかで試験薬が投与された。主要評価項目は、病院救急部門到着時点で発作が停止しており救急治療の必要性がなかったこととし、副次評価項目は、気管内挿管、再発作、痙攣発作停止と関連する治療のタイミングとした。本研究におけるミダゾラム筋肉内投与のロラゼパム静脈内投与に対する非劣性のマージンは、10%ポイントと定義し検討が行われた。ミダゾラム筋注はロラゼパム静注と同等以上の効果病院救急部門到着時に発作が停止しており救急治療の必要がなかったのは、ミダゾラム筋肉内投与群は被験者448例中329例(73.4%)、ロラゼパム静脈内投与群は445例中282例(63.4%)だった(絶対差:10%ポイント、95%信頼区間:4.0~16.1、非劣性と優越性のいずれもP<0.001)。気管内挿管の必要性(ミダゾラム筋肉内投与群14.1%、ロラゼパム静脈内投与群14.4%)と再発作(それぞれ11.4%、10.6%)に関しては、両群は同程度だった。病院救急部門到着前に発作が停止した被験者における、試験薬投与までの時間の中央値は、ミダゾラム筋肉内投与群1.2分、ロラゼパム静脈内投与群4.8分であり、投与から痙攣発作停止までの時間の中央値は、それぞれ3.3分と1.6分だった。有害事象の発生率は両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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がん化学療法中の患者へのsemuloparin、血栓塞栓症イベントを低下

がん化学療法を受けている患者に対するsemuloparinの投与は、重大出血の顕著な増加なく、血栓塞栓症イベント発生率を低下することが明らかにされた。イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らが、47ヵ国395施設から3,212例を対象とした多施設共同無作為化二重盲検試験の結果による。がん化学療法を受けている患者は、静脈血栓塞栓症のリスクが高いことが知られる。これまで、抗血栓薬の予防処置の臨床上の有益性が支持された試験データは限定的なものだった。NEJM誌2012年2月16日号掲載報告より。静脈血栓塞栓症予防と出血を判定研究グループは、がん化学療法を受けている患者の静脈血栓塞栓症予防について、超低分子量ヘパリンsemuloparinの有効性と安全性を評価することを目的に試験を行った。転移性または局所進行性の固形腫瘍に対する化学療法を受ける患者を、semuloparinを1日1回20mg皮下投与群またはプラセボ投与群に無作為に割り付け、化学療法のレジメン変更となるまで投与が行われた。主要有効性アウトカムは、あらゆる症候性深部静脈血栓症、あらゆる非致死性肺塞栓症、静脈血栓塞栓症に関連した死亡の複合とした。主要安全性アウトカムは、臨床的意義のある出血(重大および重大でない)とした。血栓塞栓症イベントの発生率を抑え得る治療期間の中央値は3.5ヵ月だった。静脈血栓塞栓症は、プラセボ投与群1,604例のうち55例(3.4%)で発生(リスク比:0.36、95%信頼区間:0.21~0.60、P<0.001)したのと比較して、semuloparin投与群では1,608例のうち20例(1.2%)だった。がんの原発部位、ステージ、ベースラインの静脈血栓塞栓症リスクで定義されたサブグループにおいても、一貫した有効性が認められた。臨床的意義のある出血の発生率は、semuloparin群2.8%、プラセボ群2.0%だった(リスク比:1.40、95%信頼区間:0.89~2.21)。大出血は、semuloparin投与群1,589例中19例(1.2%)、プラセボ投与群は1,583例中18例(1.1%)だった(同:1.05、0.55~1.99)。その他の有害事象の発生率はすべて両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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急性副鼻腔炎に対する抗菌薬治療、プラセボとの比較で症状改善みられず

急性副鼻腔炎に対するアモキシシリン(商品名:サワシリンほか)10日間投与の効果を、プラセボとの比較で検討した無作為化試験の結果、投与開始3日後、10日後での症状改善は認められなかったことが報告された。ただし7日後ではアモキシシリン群で有意な改善が認められたという。急性副鼻腔炎への抗菌薬投与に関するエビデンスは乏しいものの、医療現場では広く投与が行われている。本報告は、米国・ワシントン大学総合医科学部門のJane M. Garbutt氏らが、約170人について行った無作為化プラセボ対照試験の結果で、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。アモキシシリン1,500mg/日を10日間投与、3、7、10、28日時点のアウトカムを評価研究グループは、2006年11月1日~2009年5月1日にかけて、米国ミズーリ州10ヵ所の医療機関で治療を受けた、合併症のない急性副鼻腔炎の成人166人(男性36%)について試験を行った。被験者を無作為に二群に分け、一方にはアモキシシリン1,500mg/日(1日3回投与、85人、平均年齢32歳)を、もう一方にはプラセボを(81人、同31歳)、それぞれ10日間投与した。被験者には、その他に、痛みや発熱、咳、鼻づまりの症状を抑える薬が必要に応じて5~7日間投与された。対症療法は92%(アモキシシリン群94%、プラセボ群90%、p=0.34)。主要アウトカムは、副鼻腔アウトカム尺度16により測定した生活の質(QOL)だった。副次アウトカムは、患者の後ろ向き自己評価による、症状や機能上の変化、再発や治療に対する満足度、副作用などだった。アウトカムの評価は、治療開始後3、7、10、28日後に、電話インタビューにより行われた。治療開始7日後のみで、アモキシシリン群の症状が有意に改善その結果、副鼻腔アウトカム尺度16の変化の平均値は、治療開始3日後でアモキシシリン群が-0.59に対し、プラセボ群は-0.54(群間差:0.03、95%信頼区間:-0.12~0.19)、10日後では同群間差0.01(同:-0.13~0.15)と、いずれも有意差はなかった。ただし、治療開始7日後の評価では、アモキシシリン群で改善幅が有意に大きく、群間差は0.19(同:0.024~0.35)だった。症状が改善したと答えた人の割合も、治療開始3日後がアモキシシリン群37%、プラセボ群34%(p=0.67)、同10日後がそれぞれ78%、80%(p=0.71)と、いずれの時点でも両群は同等だった。一方、治療開始7日後では、アモキシシリン群74%に対しプラセボ群が56%と、アモキシシリン群で有意に高率だった(p=0.02)。その他副次アウトカムについて、両群の差は認められなかった。重篤な有害事象は発生がなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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小児・青年期の身体活動時間が長いと、心血管代謝リスク因子は良好に

小児・青年期の身体活動時間が長いほど、座位時間の総量にかかわらず、心血管代謝に関するリスク因子は良好であることが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学アデンブルックス病院代謝科学研究所のUlf Ekelund氏らが、2万人超の4~18歳に対して行ったメタ解析の結果、報告したもので、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。これまで、健康児における身体活動時間と座位時間との複合でみた心血管代謝リスクとの関連についてはあまり検討されていなかった。被験者の中等度~強度の身体活動時間の平均値は1日30分研究グループは、1998~2009年にかけて行われた14試験に参加した4~18歳のデータベース「Children’s Accelerometry Database」から、計2万871人のデータについてメタ解析を行った。中等度~強度の身体活動(moderate- to vigorous-intensity physical activity:MVPA)時間、座位時間と、ウエスト周囲、収縮期血圧、空腹時トリグリセリド値、HDLコレステロール値、インスリン値の関連を分析した。被験者の、MVPA時間の平均値は1日30分(SD:21)、座位時間は1日354分(同:96)だった。MVPA時間が長いと心血管代謝アウトカムは良好、座位時間が長い群で格差が顕著MVPA時間は、すべての心血管代謝アウトカムと有意に関連しており、性別や年齢、日中活動時間、座位時間、ウエスト周囲とは独立していた。一方で座位時間は、いずれの心血管代謝アウトカムとも関連しておらず、MVPA時間と関連していなかった。被験者データは、MVPA時間と座位時間をそれぞれ三分位範囲(短・中・長時間)に層別化して検討された。層別化に基づく複合解析の結果、MVPA時間は長いほど心血管代謝リスク因子は良好であることが認められた。その関連は、座位時間、三分位範囲いずれの群においても認められた。MVPA時間の長短によるアウトカムの格差は、座位時間がより短いほど大きかった。具体的には、MVPA時間の長時間群と短時間群とのウエスト周囲格差の平均値は、座位時間長時間群では5.6cmだったのに対し、短時間群では3.6cmだった。また、MVPA長時間の群と短時間群との収縮期血圧格差の平均値は、座位時間長時間群で0.7mmHg、短時間群では2.5 mmHgだった。HDLコレステロール値の同格差平均値も、それぞれ-2.6mg/dLと-4.5mg/dLだった。トリグリセリド値とインスリン値の格差も同様だった。これらのアウトカム格差をもたらしたMVPA長時間群の同時間は35分/日以上であり、一方短時間群の同時間は18分/日未満だった。被験者のうち6,413人を2.1年間前向きに追跡した解析結果では、MVPA時間と座位時間の複合はフォローアップ時において、ウエスト周囲とは関連していなかったが、基線でウエスト周囲が大きかった群は座位時間が長時間であることとの関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ツムラが漢方入門情報を医療者に広く開放

 株式会社ツムラは医療者向け会員制サイト「漢方スクエア」の人気コーナーを期間限定で開放する。 「漢方スクエア」は医師を中心に6万2千人の会員を有するが、高齢化により疾病構造の複雑化するなか全人的医療の可能な漢方へのニーズが高まっていること、チーム医療の推進により医師およびコ・メディカルスタッフへの幅広い情報提供の必要性が高まったことを鑑み期間限定の公開することとしたもの。 公開するのは、もっともアクセスが多く全体の半分以上のページビューを占める「漢方を学ぶ」コーナー。このコーナーには臨床医・研修医・薬剤師向けの入門コンテンツ、診療録を通して漢方処方のコツを共有する症例解説などがある。また、4月以降は「六君子湯」「大建中湯」「抑肝散」「Oncology漢方」など領域に特化したコーナー、スマートフォンアプリなども公開の予定。公開は4月30日まで。《主な開放コンテンツ》・入門漢方医学 エッセンシャル漢方医学、漢方入門セミナーなど・領域・疾患別解説・処方解説・古典解説・症例解説漢方スクエアhttp://www.tsumura.co.jp/password/top.htm漢方スクエア「漢方を学ぶ」http://www.tsumura.co.jp/password/study.htm

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プライマリ・ケア医の抗菌薬使用減に有効な多面的教育プログラムが開発

英国・カーディフ大学プライマリ・ケア部門教授のChristopher C Butler氏らは、プライマリ・ケアでの抗菌薬使用の減少を目的とした多面的教育プログラム「STAR」を開発、臨床実践ベースの無作為化対照試験の結果、その使用減少が認められ、その後の入院や再受診、コストの有意な増大は認められなかったことが報告された。プライマリ・ケアでの抗菌薬は、有益性がほとんどないことが立証されているにもかかわらず、過剰に処方され続け、患者は不必要な有害反応に曝露されており、耐性菌発生を招いていることが指摘されている。Butler氏らは、診断能力のトレーニングによって、抗菌薬処方を減らす可能性があるとしてプログラム開発を行った。BMJ誌2012年2月11日号(オンライン版2012年2月2日号)掲載報告より。プログラム介入群と非介入群で無作為化試験Butler氏らが開発した教育プログラム「STAR(Stemming the Tide of Antibiotic Resistance)」は、多面的な内容(e-ラーニング、実際診療での経験学習と熟考を促す)で、局面に敏感となり(抗菌薬使用と耐性についてのデータに反応する)、以前に推奨されていた鑑別(使用について時間的な効率性を重視した診療戦略)を基本とする。その介入効果を検証するため、ウェールズと英国の68(GP)の診療所(患者約48万人のデータ)を対象に無作為化試験を行った。GPを、プログラムを受ける群(34ヵ所、介入群)と通常ケアを行う群(34ヵ所、対照群)に無作為化。無作為化前に試験への参加を了承していた医師は、介入群139人、対照群124人だった。解析は、68ヵ所全医師の診療データについて行われた。主要評価項目は、前年使用で補正後、介入後1年間の、全症例に対する抗菌薬使用件数(1,000診療・患者当たり)で、副次評価項目には、再受診、入院、費用などが含まれた。介入群の抗菌薬使用は年間4.2%減少結果、経口抗菌薬使用総計(1,000登録患者当たり)は、介入群で14.1件減った一方で、対照群は12.1件増加し、正味26.1件の差が生じていた。基線での使用について補正後、対照群と比較して介入群では、総経口抗菌薬使用の減少は年間4.2%(95%信頼区間:0.6~7.7)に上っていた(P=0.02)。使用減はペニシリナーゼ耐性ペニシリン(PRP)以外の全クラスの抗菌薬でみられ、個別にみると、フェノキシメチルペニシリン(ペニシリンV、使用減:7.3%、95%信頼区間:0.4~13.7)とマクロライド系(同:7.7%、1.1~13.8)の減少が大きく有意であった。入院、再受診(7日以内の気道感染による)については介入群と対照群に有意差は認められなかった。プログラムにかかった平均費用は、2,923ポンド(4,572ドル)/診療所だった。一方で、対照群と比べた介入群の抗菌薬使用コスト減は、5.5%で、1つの平均的介入によって年間約830ポンドの削減効果に匹敵する。

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甲状腺摘出術、臨床経験20年以上の外科医で合併症リスクが上昇

甲状腺摘出術の最良の技能は、内分泌外科医が経験を積んだだけで達成されるわけではなく、合併症リスクは経験年数が20年を超えると有意に増大することが、フランス・リヨン大学のAntoine Duclos氏らの検討で示された。専門医は30~50歳でその専門的技能の頂点に達するとされ、大学卒業後長期にわたり実地臨床に携わってきた医師は実際的な知識が低下し、EBMに基づくケアを着実に実行する能力が劣化している可能性があるという。術後合併症の発生率は、外科医が経験を重ねるに従い、大きなばらつきが生じることも示されている。BMJ誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月10日号)掲載の報告。外科医の経験年数と術後合併症の関連を評価研究グループは、甲状腺摘出術における内分泌外科医の経験と術後合併症の関連を評価するプロスペクティブな横断的多施設共同試験を実施した。2008年4月1日~2009年12月31日までに、フランスの5つの大学病院の専門施設で甲状腺摘出術を施行した外科医を対象とし、術後に患者の登録を行った。主要評価項目は、2つの恒久的な術後合併症である再発性喉頭神経麻痺および副甲状腺機能低下症の発生率とした。解析には、混合効果ロジスティック回帰モデルを用いた。35~50歳の外科医で患者のアウトカムが良好1年間に28人(平均年齢41歳、平均経験年数10年、女性医師5人)の外科医が3,574件の手術を行った。再発性喉頭神経麻痺は2,357件(66%)で、副甲状腺機能低下症は2、904件(81%)で評価可能であった。再発性喉頭神経麻痺の発生率は2.08%(49例)、副甲状腺機能低下症の発生率は2.69%(78例)だった。多変量解析では、臨床経験が20年以上になると、再発性喉頭神経麻痺(オッズ比:3.06、p=0.04)および副甲状腺機能低下症(同:7.56、p=0.01)のリスクが有意に増大した。外科医の技能は経験年数(p=0.036)や年齢(p=0.035)と負の相関を示し、35~50歳の外科医では35歳未満および50歳以上の医師に比べ、患者のアウトカムが良好だった。著者は、「甲状腺摘出術の最良の技能は、経験を積んだだけで達成されたり、維持できるわけではないことが示された」と結論し、「経験豊富な外科医の技能が劣る場合、これにどのような因子が寄与するかについてはさらなる検討を要する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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成人ダウン症の認知症に、抗アルツハイマー病薬は有効か?

 成人ダウン症患者の認知機能障害や認知症に対し、アルツハイマー病治療薬のメマンチン(商品名:メマリー)は効果を示さないことが、英キングス・カレッジ・ロンドンのMarisa Hanney氏らが行ったMEADOWS試験で示された。ダウン症患者のアルツハイマー病発症率はきわめて高く、40歳以上になると多くにアルツハイマー病に特徴的な病理学的な変化がみられるという。N-メチル-D-アスパラギン酸型(NMDA)グルタミン酸受容体拮抗薬であるメマンチンは、ダウン症の遺伝子導入マウスモデルで有効性が示されているが、ダウン症患者に対するアルツハイマー病治療薬の投与を支持するエビデンスは十分ではない。Lancet誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月10日号)掲載の報告。成人ダウン症に対するメマンチンの有用性を評価 MEADOWS試験は、成人ダウン症患者の認知機能障害に対するメマンチンの有用性を評価するプロスペクティブな多施設共同二重盲検無作為化試験。 対象は、英国とノルウェーの4つの学習障害センターから登録された40歳以上のダウン症または年齢を問わず認知症と診断されたダウン症の患者であった。これらの患者が、メマンチンあるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 主要評価項目は、DAMESスコア(注意、記憶、実行機能からなるダウン症の認知機能評価尺度)および適応行動評価尺度I、II(ABS-I、-II)に基づく認知機能と適応行動機能の変化とし、ベースライン、12、26、52週に評価を行った。両群とも認知機能、適応行動機能が低下、有意差はなし 試験は2005年6月20日に開始され、2008年12月30日にフォローアップを終えた。173例が登録され、メマンチン群に88例(平均年齢51.7歳、男性57%、認知症35%)、プラセボ群には85例(同:51.0歳、56%、35%)が割り付けられた。メマンチン群のうちDAMESスコアは72例(82%)、ABSは75例(85%)で得られ、プラセボ群はそれぞれ74例(87%)、73例(86%)から得られた。 52週の治療後、両群ともに認知機能、適応行動機能の低下が認められたが、群間に有意な差はなかった。ベースラインスコアで調整後も、両群間のDAMESスコアの差は-4.1(p=0.36)、ABS-Iの差は-8.5(p=0.15)、ABS-IIの差は2.0(p=0.67)と有意差は認めず、むしろプラセボ群で良好な傾向がみられた。メマンチン群の10例(11%)、プラセボ群の6例(7%)で重篤な有害事象が認められた(p=0.33)。重篤な有害事象により、メマンチン群の5例、プラセボ群の4例が死亡した(p=0.77)。 著者は、「40歳以上のダウン症患者では、メマンチンによる認知機能障害や認知症の改善効果を示すエビデンスは得られなかった」と結論し、「アルツハイマー病に有効な薬剤が、成人ダウン症の認知機能障害に効果を示すとは限らないことが示唆された」と指摘している。

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成人とは異なる小児の肺高血圧症の臨床的特徴が明らかに

小児の肺高血圧症では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)が多く、その半数以上を特発性(IPAH)や家族性(FPAH)が占めるなど、成人とは異なる臨床的特徴を示すことが、オランダ・フローニンゲン大学のRolf M F Berger氏らの検討で明らかとなった。肺血管抵抗増加をともなう肺高血圧症は、高い合併症罹患率や死亡率を示す重大な疾患だが、その臨床的特徴は十分には知られていない。成人と小児では病理生物学的、臨床的特徴が類似する部分もあるが、たとえばIPAHやFPAHは小児のほうが予後不良であり、成人に比べ治療法の開発も遅れているため、分けて考える必要があるという。Lancet誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月11日号)掲載の報告。19ヵ国31施設が参加する国際的レジストリー研究Tracking Outcomes and Practice in Pediatric Pulmonary Hypertension(TOPP)は、小児肺高血圧症の人口学的背景、治療、アウトカムに関する情報の提供を目的とする国際的な前向きレジストリー研究。2008年1月31日の開始から2010年2月15日までに、19ヵ国31施設から肺高血圧症または肺血管抵抗増加と診断された18歳未満の患者が登録された。患者背景および疾患特性として、診断時と登録時の年齢、性別、人種、主症状、肺高血圧症分類、併存疾患、病歴、家族歴、血行力学的指標、WHO機能分類クラスなどが記録された。フォローアップの決定は、個々の患者の医療ケアの必要性に応じて主治医が行った。88%がPAH、その57%がIPAHまたはFPAH、特定疾患によるものは先天性心疾患が多数456例が登録され、362例(79%)が肺高血圧症と確定された。317例(88%)がPAHと診断され、そのうち182例(57%)が特発性(IPAH)または家族性(FPAH)で、他の特定の疾患に起因した135例(43%)のうち115例(85%)は先天性心疾患が原因であった。42例(12%)は呼吸器疾患あるいは低酸素症に起因する肺高血圧症で、その多くに気管支肺異形成がみられた。慢性血栓塞栓性肺高血圧症あるいは他の原因による肺高血圧症は3例のみであった。染色体異常(主に21トリソミー)は47例(13%)で報告された。診断時年齢中央値は7歳(IQR:3~12)、59%(268/456例)が女児であった。呼吸困難と疲労が最も頻度の高い症状だったが、IPAHまたはFPAHの31%(57/182例)と、手術を受けた先天性心疾患患者の18%(8/45例)に失神が認められた。手術を受けていない先天性短絡性心疾患患者では失神はみられなかった。362例中230例(64%)は、重篤な肺高血圧症にもかかわらずWHO機能分類クラスI/IIであり、右心機能は一貫して保持されていた。著者は、「TOPP研究によって、小児肺高血圧症に特有の重要な臨床的特徴が同定された。これは、成人の試験のデータを外挿するよりも、小児特有のデータの必要性に関心を促すものだ」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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甲状腺機能低下症の妊婦への出産前治療、出生児の認知機能を改善せず

妊娠期間の平均が12週3日の妊婦を対象に甲状腺機能スクリーニングを行い、機能低下が認められた妊婦に治療を行っても、生まれた子どもの認知機能に改善は認められなかったことが報告された。英国・カーディフ大学のJohn H. Lazarus氏らが、約2万2,000人を対象とした無作為化試験の結果、報告した。胎児が甲状腺ホルモンを分泌するようになるのは在胎約18~20週以降で、それまでは母胎の遊離サイロキシン(T4)に依存して、中枢神経系の成熟を含む成長を遂げていくとされている。遊離T4にはヨウ素が不可欠で、妊娠前のヨウ素サプリメントの服用は認知機能を増強することや、一方で妊娠中の甲状腺刺激ホルモン高値は出生児の認知機能障害をもたらすことが知られ、甲状腺機能障害を出産前に検知し治療することは有益である可能性が示唆されていた。NEJM誌2012年2月9日号掲載報告より。出産前スクリーニングで陽性の妊婦にレボチロキシン投与試験は、英国10ヵ所、イタリア1ヵ所の医療機関から集められた、妊娠期間が15週6日未満の妊婦2万1,846人を対象とし、被験者から血液サンプルの提供を受け、甲状腺刺激ホルモンと遊離サイロキシン(T4)を測定して行われた。被験者は、スクリーニング群(直ちに測定:1万924人)と対照群(血清を保存し、分娩直後に測定:1万922人)に割り付けられ測定、追跡がされた。測定において、甲状腺刺激ホルモン値97.5パーセンタイル超か、遊離T4値2.5パーセンタイル未満、またはその両方の場合を「スクリーニング結果陽性」とした。スクリーニング群で陽性だった妊婦には、レボチロキシン(商品名:チラージンほか)150μg/日が投与された。主要評価項目は、スクリーニング陽性だった妊婦から生まれた子どもの3歳時のIQとした。評価は割り付け情報を知らされていない心理学者が測定した。甲状腺刺激ホルモン投与の効果みられず血液サンプルを提供した女性2万1,846例の妊娠期間中央値は12週3日だった。スクリーニングの結果が陽性だったのは、スクリーニング群390例、対照群404例だった。スクリーニング群陽性者へのレボチロキシン治療開始は、妊娠期間中央値13週3日で、投与は甲状腺ホルモン値0.1~1.0mIU/L達成を目標に必要に応じて調整された。スクリーニングの結果が陽性だった女性の出生児の平均IQスコアは、スクリーニング群99.2、対照群100.0だった(格差:0.8、95%信頼区間:-1.1~2.6、intention-to-treat解析によるP=0.40)。IQ 85未満の出生児の比率は、スクリーニング群12.1%、対照群14.1%であった(格差:2.1ポイント、95%信頼区間:-2.6~6.7、P=0.39)。on-treatment解析でも同様の結果が示された。(朝田哲明:医療ライター)

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軽度~中等度パーキンソン病患者に太極拳が有益

軽度~中等度のパーキンソン病患者に対し太極拳トレーニングを行うと、平衡障害が軽減し、運動能力の向上および転倒の減少という付加的なベネフィットが得られることが報告された。米国・ウィラメット大学のFuzhong Li氏らが行った無作為化試験の結果による。パーキンソン病患者では平衡障害が著しく、運動能力の低下と転倒リスクの増加が知られる。医療提供者によって常に運動が推奨されてきたが、これまで効果が実証された運動プログラムはほとんどなかった。NEJM誌2012年2月9日号掲載報告より。可動域と方向制御についてベースラインからの変化を比較研究グループは、オーダーメードの太極拳プログラムが特発性パーキンソン病患者の姿勢制御能力を高めることができるかどうかを評価する無作為化対照試験を行った。ホーエン・ヤールの重症度分類(1~5の範囲で、数値が大きいほど重篤であることを示す)で病期1~4の患者195例を、太極拳群、筋力トレーニング群、ストレッチ群の3つのプログラム群に無作為に割り付け、24週間にわたり、毎週2回60分の運動セッションが行われた。主要評価項目は、安定性限界テスト結果(Limits-of-Stability Test、最大可動域と方向制御について、範囲:0~100%)のベースラインからの変化量とした。副次評価項目は、歩行(歩幅と速度)、筋力(膝の伸筋・屈筋)、FRT(Functional-Reach test)とTUG(Timed Up-and-Go)の評価スコア、パーキンソン病評価統一尺度における運動スコア、転倒回数などだった。太極拳、最大可動域と方向制御はストレッチ、筋トレより優れる結果、最大可動域と方向制御について、太極拳群が、筋力トレーニング群、ストレッチ群より一貫してよい成績が示された。ベースラインからの変化量の群間差は、最大可動域が、対筋力トレーニング群5.55ポイント(95%信頼区間:1.12~9.97)、対ストレッチ群11.98ポイント(同:7.21~16.74)、方向制御が、それぞれ10.45ポイント(同:3.89~17.00)、11.38ポイント(同:5.50~17.27)だった。また太極拳群は、すべての副次評価項目について、ストレッチ群より成績がよかった。歩幅とFRTについては、筋力トレーニング群よりも成績が上回っていた。転倒の発生率は、太極拳群は他の2群より低かった。その差はストレッチ群とは有意だったが、筋力トレーニング群とは有意差ではなかった。太極拳訓練の効果は介入後3ヵ月間持続し、重篤な有害事象は観察されなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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急性単純性膀胱炎に対するセフポドキシムvs. シプロフロキサシン

急性単純性膀胱炎への抗菌薬投与について、セフェム系のセフポドキシム(商品名:バナンほか)はフルオロキノロン系のシプロフロキサシン(同:シプロキサンほか)に対し、非劣性を示さなかったことが報告された。米国・マイアミ大学のThomas M. Hooton氏らが、女性患者300人を対象に行った無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月8日号で発表した。フルオロキノロン系の抗菌薬は単純性膀胱炎に対し最も有効として一般的に使用されている一方で、その耐性大腸菌発生率の上昇が世界的に報告されており、最近公表された米国感染症学会のガイドラインでは、使用の制限が勧告されている。同疾患に対するセフポドキシムの使用については、これまで十分な検討データがなかった。3日間投与し、30日後の治癒率を比較研究グループは、2005~2009年にかけて、18~55歳の急性単純性膀胱炎と診断された女性300人を、無作為に二群に分け検討した。一方にはシプロフロキサシン(250mg、1日2回)を、もう一方にはセフポドキシム(100mg、1日2回)をそれぞれ3日間投与した。治療終了後、5~9日目と、28~30日目に、アウトカムを評価した。主要アウトカムは、30日後の診察時における臨床的治癒とした。副次アウトカムは、治療終了後5~9日目の診察時における、臨床的・微生物学的治癒と、両診察時における膣の大腸菌コロニー形成とされた。30日後臨床的治癒率、5~9日後微生物学的治癒率ともに非劣性示さずその結果、追跡不能を治癒とみなした場合では、30日後の臨床的治癒率は、シプロフロキサシン群が93%(150人中139人)に対し、セフポドキシム群は82%(150人中123人)で、治癒率格差は11%(95%信頼区間:3~18)と、事前に定義した非劣性マージン10%未満の基準を満たさなかった。また、追跡不能を治療に反応しなかったとみなした場合では、30日後臨床的治癒率は、それぞれ83%(150人中124人)と71%(150人中106人)で、治癒率格差は12%(同:3~21)で、非劣性マージン基準を満たさなかった。治療終了後5~9日目の微生物学的治癒率も、各群96%と81%、同率格差は15%で基準を満たさなかった。治療終了後の初回診察時に、膣大腸菌のコロニー形成が認められたのは、シプロフロキサシン群で16%に対し、セフポドキシム群では40%に上った。結果を受けてHooton氏は、「他の広域β-ラクタムへの重大な生態学的影響の懸念は残るが、セフポドキシムを急性単純性膀胱炎に対し、シプロフロキサシンに代わって第一選択薬として使用することは支持できない」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ロタウイルスワクチン、腸重積罹患率を増大せず

乳幼児への5価ロタウイルス(RV5)ワクチン接種は、接種後1~7日、同1~30日後の腸重積罹患率を増大しないことが報告された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のIrene M. Shui氏らが、米国のワクチン安全データリンク(VSD)に登録された、RV5接種を受けた乳幼児について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月8日号で発表した。RV5ワクチン接種後の腸重積発症は、開発試験段階では報告されなかったが、承認後の国際的なトライアルで、特に1回目の接種後1週間以内の低レベルのリスク上昇の可能性が示唆されていた。約79万回のRV5接種について追跡調査研究グループは、2006年5月~2010年2月の間に、VSDに登録された、生後4~34週にRV5ワクチン接種を受けた乳幼児について、その後の腸重積罹患率について追跡調査を行った。主要アウトカムは、接種後1~7日、同1~30日間の、それぞれの腸重積罹患率だった。対照群として、RV5以外の推奨ワクチンを接種した乳幼児の同罹患率について比較した。試験期間中に被験者が受けたRV5ワクチン接種回数は、78万6,725回で、うち初回接種は30万9,844回だった。接種後7日、30日までのそれぞれの腸重積罹患率に増大なしその結果、RV5接種群で、非RV5接種群と比べ、接種後1~7日、同1~30日後の腸重積罹患率の有意な増大は認められなかった。具体的には、接種後1~30日後の腸重積発症数は、RV5接種群で21人に対し、非RV5接種群の期待値は20.9人だった(標準化罹患比:1.01、95%信頼区間:0.62~1.54)。また初回接種後1~30日後の同発症数も、それぞれ7人と5.7人だった(同:1.23、同:0.5~2.54)。接種後1~7日後の腸重積発症数は、RV5接種群が4人に対し、非RV5接種群期待値は4.3人(同:0.92、同:0.25~2.36)、初回接種後はそれぞれ1人と0.8人(同:1.21、同:0.03~6.75)であり、いずれも有意差はなかった。なお、この初回接種後1~7日での発症に関する標準化罹患比の95%信頼区間上限値の6.75は、初回接種者6万5,287人につき1例の発症リスクを示すものだった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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NHK、人気番組で漢方を取り上げる

NHK総合2月25日OA「夜なのにあさイチ 漢方スペシャル」NHKは2月25日夜、漢方薬を特集した生活情報番組「あさイチ」のスペシャル番組「夜なのにあさイチ 漢方スペシャル」を放映する。病院に行くほどでもないが、頭痛、倦怠感。そんな不調の数々を同番組では「なんとなく不調」と命名し、漢方で改善する方法を紹介する。また、有働由美子アナウンサー自ら半年間の症状改善もレポート。主な内容は、(1)漢方ならではの「同病異治」この不思議を半年にわたって取材(2)花粉症、頭痛、更年期障害、ストレス性倦怠感といった「なんとなく不調」の治療体験談(3)昔は土瓶で煎じていた薬が現代では粉薬として気軽に服用できるのはなぜか?(4)今注目を集める漢方薬「抑肝散」30年をかけ抑肝散の研究を続ける島根大学の堀口淳教授は、副作用で苦しむ患者の姿に心を痛めているなか、やっと出会えた患者を苦しめない薬だという。暴言や徘徊など認知症の周辺症状に効果があると注目されるこの薬剤……番組では精神科隔離病棟に密着し、患者の変化を実録。 放映:2012年2月25日(土)午後7:30~8:43出演:井ノ原快彦、有働由美子アナ、柳澤秀夫解説委員ほか 「夜なのにあさイチ」番組告知http://www.nhk.or.jp/asaichi/yoruichi/index.html

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