甲状腺摘出術、臨床経験20年以上の外科医で合併症リスクが上昇

提供元:ケアネット

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公開日:2012/02/24

 



甲状腺摘出術の最良の技能は、内分泌外科医が経験を積んだだけで達成されるわけではなく、合併症リスクは経験年数が20年を超えると有意に増大することが、フランス・リヨン大学のAntoine Duclos氏らの検討で示された。専門医は30~50歳でその専門的技能の頂点に達するとされ、大学卒業後長期にわたり実地臨床に携わってきた医師は実際的な知識が低下し、EBMに基づくケアを着実に実行する能力が劣化している可能性があるという。術後合併症の発生率は、外科医が経験を重ねるに従い、大きなばらつきが生じることも示されている。BMJ誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月10日号)掲載の報告。

外科医の経験年数と術後合併症の関連を評価




研究グループは、甲状腺摘出術における内分泌外科医の経験と術後合併症の関連を評価するプロスペクティブな横断的多施設共同試験を実施した。

2008年4月1日~2009年12月31日までに、フランスの5つの大学病院の専門施設で甲状腺摘出術を施行した外科医を対象とし、術後に患者の登録を行った。

主要評価項目は、2つの恒久的な術後合併症である再発性喉頭神経麻痺および副甲状腺機能低下症の発生率とした。解析には、混合効果ロジスティック回帰モデルを用いた。
35~50歳の外科医で患者のアウトカムが良好




1年間に28人(平均年齢41歳、平均経験年数10年、女性医師5人)の外科医が3,574件の手術を行った。再発性喉頭神経麻痺は2,357件(66%)で、副甲状腺機能低下症は2、904件(81%)で評価可能であった。

再発性喉頭神経麻痺の発生率は2.08%(49例)、副甲状腺機能低下症の発生率は2.69%(78例)だった。多変量解析では、臨床経験が20年以上になると、再発性喉頭神経麻痺(オッズ比:3.06、p=0.04)および副甲状腺機能低下症(同:7.56、p=0.01)のリスクが有意に増大した。

外科医の技能は経験年数(p=0.036)や年齢(p=0.035)と負の相関を示し、35~50歳の外科医では35歳未満および50歳以上の医師に比べ、患者のアウトカムが良好だった。

著者は、「甲状腺摘出術の最良の技能は、経験を積んだだけで達成されたり、維持できるわけではないことが示された」と結論し、「経験豊富な外科医の技能が劣る場合、これにどのような因子が寄与するかについてはさらなる検討を要する」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)