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ACC 2012 速報

2012年3月24日~27日まで米国・シカゴで『第61回米国心臓病学会(ACC.12)』が開催されます。Late-Breaking Clinical Trialsの発表を含めた主要トピックスの中から、事前投票で先生方からの人気の高かった上位6演題のハイライト記事をお届けします。ACC2012 注目の演題一覧2012年3月28日掲載現地時間:3月27日発表CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II現地時間:3月25日発表経カテーテル的腎除神経術、降圧作用は3年間持続:Symplicity HTN-12012年3月27日掲載現地時間:3月26日発表「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005現地時間:3月26日発表"On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験2012年3月26日掲載現地時間:3月24日発表自己骨髄単核球移植、虚血性心疾患例の心機能を改善せず:FOCUS-CCTRN試験現地時間:3月24日発表動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

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ACC 2012 速報 自己骨髄単核球移植、虚血性心疾患例の心機能を改善せず:FOCUS-CCTRN試験

虚血性心不全〔左室機能障害〕に対する薬物治療の限界を受け、自己骨髄単核球(BMC)移植の有用性に期待が寄せられている。しかし残念ながら、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告された第II相無作為化試験 "FOCUS-CCTRN" では、心内膜への投与による虚血改善、心機能改善のいずれも確認されなかった。ただし、有用性が期待できるサブグループも示唆されており、米国テキサス・ハート・インスティチュートのEmerson C Perin氏は、今後に期待するとの姿勢を示した。本試験の対象は、症候性の左室機能低下(左室駆出率≦45%〕を認める安定冠動脈疾患92例である。全例、最大用量での薬物治療を受けている。平均年齢は63歳、NYHA心不全分類II度とIII度が90%以上を占めた。CCS狭心症分類は、Class IIが分類者の40%強と最も多かった。これら92例は、BMC群(61例)とプラセボ群(31例)に無作為化され、二重盲検法にて6か月間追跡された。BMC群では、腸骨上縁から採取した骨髄を自動化されたプロセス(Sepax)で純化し、100×106を心内膜に注入した。注入箇所は15箇所。いずれも、電気機械的マッピング(NOGAシステム)を用いて、"viable"と判断された部位である。6か月後、3つ設定されていた一次評価項目──「左室収縮末期容積(LVESV)」、「心筋酸素消費量(MVO2)」と「心筋SPECT上虚血」──はいずれも、BMC群とプラセボ群の間に有意差を認めなかった。ただし、試験前から定められていたサブ解析から、BMCが有用であるサブグループが浮かび上がった。すなわち、血管内皮前駆細胞(Endothelial Colony Forming Cell)濃度が中央値よりも高い群において、MVO2の有意な改善が認められた。また後付け評価項目だが「左室駆出率(LVEF)」も、CD34陽性細胞、CD133陽性細胞の血中濃度と有意な正の相関を示した。いずれも、内皮前駆細胞のマーカーとなり得る細胞だという。このような患者ではBMC移植が有用な可能性があると、Perin氏は述べた。ただし、年齢の中央値である「62歳未満」でもEFは有意に改善していたため、年齢とこれら細胞数の相関が気になる。しかしその点に関するデータは、現時点では持ち合わせていないとのことだった。なお、パネルディスカッションでは、採取骨髄の自動純化プロセスに問題はなかったのかとの指摘もあった。本試験は、今後、より詳細なデータが報告される予定だという。

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ACC 2012 速報 動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

経口プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗剤は、「トロンビンによる血小板凝集」の抑制という、新たな機序を持つ抗血小板剤である。しかし、動脈硬化性疾患例全般に対する有用性は、TRA 2°P-TIMI 50試験の結果、疑問符がついた。ブリガム・アンド・ウィミンズ病院(米国)のDavid A. Morrow氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。なお、本試験は2月7日、米国Merck社から概要が公表されている。本試験の対象は、心筋梗塞(MI)、虚血性脳血管障害(iCVD)あるいは末梢動脈疾患(PAD)の既往を有する26,449例。全例、病態は安定しており、標準的薬物治療を受けていた。既往歴はMIが最多で67%、次いでiCVDの19%、PADの14%だった。チエノピリジン系を含む抗血小板薬併用(DAPT)は、MI既往例の80%弱、PADの28%、iCVDの8%に認められた。これら26,449例は、PAR-1拮抗剤 "vorapaxar" 2.5mg/日群(13,225例)とプラセボ群(13,224例)に無作為化され、二重盲検法で追跡された。しかし試験開始1年後、PAR-1拮抗剤群におけるiCVD既往例の頭蓋内出血増加を、安全性監視委員会から指摘される。iCVD例(4,883例)の追跡はこの時点で中止され、残り21,556例が、最終的に2.5年間〔中央値〕追跡された。ただし、評価項目の解析には、iCVD例も含めた。その結果、有効性の一次評価項目である「心血管系死亡、心筋梗塞、脳卒中」は、PAR-1拮抗剤群でプラセボ群に比べ有意に減少していた(9.3%/3年 vs 10.5%/3年、ハザード比 [HR]:0.87、95%信頼区間 [CI]:0.80~0.94、p<0.001)。iCVD例を除外しても同様で、PAR-1拮抗剤群におけるHRは0.84だった(p<0.001)。一方、PAR-1拮抗剤群では、出血も有意に増加していた。安全性一次評価項目である「GUSTO分類中等度~重度出血」(要輸血・血行動態著明増悪 [含む頭蓋内出血])発生率は、プラセボ群の「2.5%/3年」に対し「4.2%/3年」だった〔HR:1.66、p<0.001)。iCVD例を除外して解析しても同様だった(HR:1.55、p=0.049)。そこで、上記「有効性一次評価項目」と「安全性一次評価項目」を併せ、「全般的有効性」として発生リスクを比較した。その結果、PAR-1拮抗剤群とプラセボ群に有意差は認められなかった(HR:0.97、95%CI:0.90-1.04、vsプラセボ群)。iCVD例を除いて解析しても、同様の結果だった(HR:0.96、95%CI:0.88~1.05) 。この結果を受けMorrow氏は、PAR-1拮抗剤が全ての動脈硬化性疾患例に適しているとは思わないとした上で、有用性が期待できる患者群の特定が重要だと述べた。本試験のサブ解析からは、体重60kg以上でiCVD既往のないMI患者における、有用性が示唆されている。

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ACC 2012 速報 「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005

急性冠症候群(ACS)診断が疑われる低~中等度リスク患者を対象に、マルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)を用いてACSを除外した場合、除外例における30日間「死亡・心筋梗塞」発生率は1%未満と極めて低いことが、無作為化試験 "ACRIN PA 4005" の結果、明らかになった。米国ペンシルバニア大学のHarold Litt氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。同氏は「CCTAを用いたACS除外は安全で効率的だ」と結論している。本試験の対象は、ACSを疑う症状がありながら、心電図上虚血性変化を認めない救急外来(ER)受診1,370例である。全米5施設から登録された。ACSを除外し得た例は含まれておらず、全例、TIMIリスクスコアは2以下だった。平均年齢は50歳弱、男女ほぼ半数ずつだった。これら1,370例が、即時CCTA施行群(908例)と、通常の診療を行う対照群(462例)に無作為化された。CCTA群では64列以上のモダリティを用い、狭窄が50%未満であれば加療せず帰宅、対照群では各施設の判断にゆだねた。Litt氏によれば米国の「通常診療」では、ER受診時に心電図検査と血中マーカーを検査し、それでACSが除外できない場合、入院または日を改めての「負荷試験」というのが一般的だという。30日間追跡した結果、CCTA所見に基づくACS除外の安全性が確認された。すなわち、CCTAにより「狭窄率<50%」とされ、加療せず帰宅した患者は83%に上ったが、それらの「30日以内の心臓死・心筋梗塞」(第一評価項目)発生リスクは、0%(95%信頼区間[CI]:0.00~0.57%)。95%CI上限が、当初仮説で設定した「1%」を下回った。「30日以内の重篤イベント発生率<1%」は、米国ガイドラインが「低リスク」とする基準だという。加えて、全CCTA群と対照群の「死亡・心筋梗塞」、「冠血行再建術施行」発生率にも有意差はなかった。CCTAを用いた鑑別はまた、医療経済的にも好ましいと考えられた。ERからの退院率は、CCTA群で50%と、対照群の23%に比べ有意に高い。院内滞在時間も、CCTA群で有意に短かった。一方、心臓カテーテル検査、ER再受診、再入院、心臓専門医受診──はいずれも、両群の頻度に差はなかった。現在、Litt氏らは、CCTAによるACS除外の安全性・経済性が長期間維持されるか、1年間の追跡を継続中だという。

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ACC 2012 速報 "On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験

わが国の冠動脈バイパス術(CABG)において、off-pump CABGの施行数はon-pumpをしのぐ。一方、off-pumpの予後改善作用がon-pumpを超えるとのエビデンスはない。Late Breaking Clinical Trialsセッションで報告されたCORONARY試験(CABG Off or On Pump Revascularization Study)もまた、off-pumpとon-pumpを比較した過去最大の試験ながら、off-pumpの優越性は証明されなかった。カナダ・マクマスター大学のAndré Lamy氏が報告した。CORONARY試験の対象は、正中胸骨切開によるCABGの適応がある4,752例。いずれも、「末梢血管疾患」、「腎機能低下」、「70歳以上」、「70歳未満だが危険因子保有」などのリスクを有する。試験開始時の平均年齢は68歳、男性が80%を占めた。EuroSCOREは「0~2」〔低リスク〕が3割弱、「3~5」〔中等リスク〕が半数強だった。また、40%弱は緊急手術例である。さらに、60%近くが3枝病変、20%弱が2枝病変例だった。これら4,752例が、”Off-pump”CABG群(2,375例)と"On-pump"CABG群(2,377例)に無作為化された。CABG術者は、off-pump、on-pumpともそれぞれ100例以上の経験がある、2年以上のキャリアを有する心臓外科医である。この点は、先に報告されているROOBY試験と大きく異なる。30日間追跡後、一次評価項目である「死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全」発生率は、off-pump群:9,8%、on-pump群:10.3%で両群間に有意差はなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、p=0.59)。内訳を比較しても、いずれかの群で有意に減少していたイベントはなかった。ただし、血行再建術再施行は、off-pump群で有意に多かった。一方、輸血の必要、急性腎傷害はon-pump群で有意に多かった。Lamy氏は上記から、「熟練者が行う限り、off-pump、on-pumpいずれのCABGも合理的な選択肢」と結論した。これに対し壇上のパネリストからは「本試験はoff-pumpの優越性を証明できなかっただけであり、off-pumpとon-pumpの同等性は証明されているのか」との疑問の声があがった。確かに、当初仮説は「off-pump群で28%のリスク減少が見られる」というものである。これに対しLamy氏は、両群の結果の類似性を強調していた。なお、本試験には、もう一つの一次評価項目、「5年間の死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全と冠血行再建術再施行」が設定されている。長期追跡によりoff-pumpとon-pumpの予後に差がつく可能性は否定できない。公表予定は2016年。結果が待たれる。

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ACC 2012 速報 CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II

最終日のLate Breaking Clinical Trialsセッションでは、昨日のACRIN PA 4005試験に続き、急性冠症候群(ACS)鑑別におけるマルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)の有用性が示された。1,000例登録の無作為化試験 "ROMICAT II" である。CCTAを用いた結果、転帰を増悪させることなく、救急外来受診例の院内滞在時間は有意に短縮した。米国マサチューセッツ総合病院(MGH)のUdo Hoffmann氏が報告した。ROMICAT IIの対象は、ACRIN PA 4005と同じく「救急外来にて胸痛を訴え、ACSを確定も除外もできない」1,000例である。心電図上で虚血が確認された例、血中トロポニンT濃度上昇例、冠動脈疾患既往例などは除外されている。平均年齢は54歳、女性が45%強を占めた。これら1,000例は、501例がCCTA群に、499例が「通常診断」群に無作為化された。CCTA群では64列(以上)CCTAを施行、通常診断群ではストレステストなど、各施設が必要と判断した検査が行われた。ACSの有無は、参加施設が独自に判断する。なお参加9施設に、救急外来でCCTAをACS鑑別に用いた経験はない。CCTA読影者は本試験のために新たに教育を受けた。その結果、一次評価項目である「院内滞在時間」は。CCTA群:23.2時間、通常診断群:30.8時間と、CCTA群で有意(p=0.0002)に短縮していた。内訳を見ると、最終的にACSと診断された75例では両群間の滞在時間に有意差はなく、確定診断でACSが除外された例で著明に低値となっていた(CCTA群:17.2時間、通常診断群:27.2時間、p<0.0001)。背景には、CCTA群の46.7%が救急外来からそのまま帰宅したという事実がある(通常診断群:12.4%)。ちなみに、冠動脈造影を施行された患者は、CCTA群の12.0%、通常診断群の8.0%に過ぎなかった。さらに、CCTAによるACS除外の正確性も示唆された。全例の記録を研究グループが検証したところ、ACS偽陰性例は両群とも1例も認めなかった。また、診断後28日間の「死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、緊急血行再建術施行」の発生率は、CCTA群で0.4%、通常診断群で1.0%と、有意差はなかった。本試験は米国国立心肺血液研究所(NHLBI)により実施された。

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ACC 2012 速報 経カテーテル的腎除神経術、降圧作用は3年間持続:Symplicity HTN-1

治療抵抗性高血圧に対し著明な降圧作用を示す「経カテーテル的腎除神経術」だが、その有用性は、少なくとも3年間は持続する可能性が示された。また当初「無効」と思われながら、のちに降圧作用が発現する患者も相当数、存在することが明らかになった。"Symplicity HTN-1" 3年間追跡データとして、米国オハイオ州立大学のPaul A. Sobotka氏が、一般口演にて報告した。Symplicity HTN-1は、治療抵抗性高血圧に対する「カテーテルを用いた腎動脈アブレーション」による、降圧の可能性を検討したコホート研究である。現在、153例が登録されている。利尿薬を含む3剤以上〔平均:5.1±1.4剤)の降圧薬服用にもかかわらず、収縮期血圧(SBP)は160mmHg以上が対象となった(血圧平均値:175/98mmHg)。追跡開始時の平均年齢は57歳。腎機能は、推算糸球体濾過率(eGFR)45ml/分/1.73m2未満が除外されているため、平均83±20mL/分/1.73m2に保たれていた。3年間の追跡が終了したのは、153例中24例である。追跡開始時からの降圧幅は「33/19mmHg」。2年間の追跡完了59例における「33/15mmHg」、2年半追跡24例の「33/14mmHg」からの減弱は観察されなかった。「SBP<140mmHg」達成率も、2年間追跡時、3年間追跡時とも40%前後で、差はなかった。興味深いのは、腎除神経術による降圧作用が経時的な増強傾向を示した点である。「SBP≧10mmHgの降圧」が認められた割合は、除神経術施行後1か月後の69%(143例中)から時間の経過にしたがい増加し、3年後には100%(24例中)となっていた。また、腎除神経術施行1か月後に「SBP≧10mmHgの降圧」が認められなかった45例でも、3ヶ月後には58%(45例中)で10mmHg以上の降圧を達成し、達成率は2年後に82%(17例中)、3年後では100%〔8例中)と増加傾向を示した。一方、腎除神経術の降圧作用が減弱するサブグループは、認められなかった。「年齢(65歳未満/以上)」、「糖尿病合併の有無」、「腎機能低下(eGFR60mL/分/1.73m2未満)の有無」にかかわらず、除神経によりSBP、拡張期血圧とも、著明に低下していた。重篤な有害事象は、3年間追跡でも認められなかった。腎機能の著明低下は認めず、また懸念されていた腎動脈狭窄は、中等度狭窄を1例に認めるも血行動態に影響はなく、介入の必要はなかったという。3例が死亡の転帰をとったが、いずれも腎除神経術とは無関係とのことだ。なお現在、シカゴ大学George Bakris氏を主任研究者とする無作為化試験 "Symplicity HTN-3" が進行している。治療抵抗性高血圧に対する腎除神経術による「イベント抑制作用」が検討される。来年3月には終了予定とのことで、結果が待たれる。

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地域の精神保健サービス、自殺率を低減

イングランドとウェールズでは1997~2006年までの10年間で、精神保健サービスの提供によって自殺率が有意に低下したことが、英国・マンチェスター大学のDavid While氏らの調査で示された。自殺による死亡者の多くは、死亡時に気分障害などの精神疾患を有していたり、アルコールや薬物を過剰に摂取するなどしており、精神保健サービスは自殺リスクの抑制において重要な役割を担うことが示唆されている。しかし、自殺予防における精神保健サービス提供の有効性を検証した研究は少ないという。Lancet誌2012年3月17日号(オンライン版2012年2月2日号)掲載の報告。精神保健サービスの実施状況と自殺率の関連を評価研究グループは、1997~2006年までのイングランドとウェールズの自殺データを用い、精神保健サービスの主な対策の実施状況を経時的に調査し、介入の実施と自殺率の関連を横断的に分析した。自殺前の12ヵ月間に精神保健サービスの介入を受けた自殺死亡者のデータを収集した。精神保健サービスは9項目の主対策からなり、その大部分を実施した場合と、ほとんど実施しなかった場合の自殺率を比較し、介入の前後の自殺率について検討した。実施対策数が経時的に増加、介入によって自殺率は低下1997~2006年の間に5万437人が自殺し、そのうち1万2,881人(26%)が精神保健サービスを受けていた。実施された対策の項目数の平均値は、1998年の1サービス当たり0.3項目から2006年には7.2項目へ増加していた。横断的分析および介入前後の比較の双方において、対策の実施によって自殺率が低下していた。自殺率の低下が最も大きかった対策は「24時間対応の危機的状態に対するケア(対策チームが精神的に危機的な状態にある者に24時間対応する地域サービス。他の対策の準備が整うまでの短期的介入)」で、年間1万人当たりの自殺者数が介入前の11.44から介入後には9.32にまで低下した(p<0.0001)。同様に、「二重診断(dual diagnosis、精神疾患と薬物/アルコールの依存/濫用の併存)患者の管理対策」により介入前の10.55から介入後は9.61へ(p=0.0007)、「多分野協働評価(multidisciplinary review)に関する対策」によって11.59から10.13へ有意に低下した(p<0.0001)。対策を行っていないサービスでは自殺率はほとんど低下しなかった。著者は、「精神保健サービスの提供は自殺率に影響を及ぼす可能性が示唆された」と結論し、「新たな対策と自殺率の関連を評価することで、今後の自殺予防に有益な情報がもたらされ、精神保健ケアを受ける患者の安全性の改善に資すると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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小児の熱傷面積62%以上で死亡リスクが増大

小児の重度熱傷では、受傷面積が大きくなるほど不良な予後のリスクが増大し、熱傷面積が全体表面積の62%を超えると死亡のリスクが有意に上昇することが、米国・テキサス大学医学部シュライナー小児病院のRobert Kraft氏らの検討で示された。1998年、Ryanらは熱傷患者の予後予測モデルを開発し、不良な予後の予測因子として熱傷面積が全体表面積の40%に及ぶ場合を提唱した。しかし、その後の10年で熱傷治療は大きな発展を遂げ、生存および予後はさらに改善されたという。Lancet誌2012年3月17日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。小児の熱傷面積と合併症罹患率、死亡率の関連を前向きに評価研究グループは、小児における熱傷面積と合併症罹患率、死亡率の関連を評価するために、単施設におけるプロスペクティブな観察コホート試験を実施した。解析には全体表面積の30%以上の熱傷を受けた小児の臨床データを用いた。熱傷面積30~100%の患児を10%ごとに7群に分け、各群の予後を比較した。カットオフ値の算出には、受信者動作特性(ROC)分析を用いた。熱傷面積60%以上の患児は直ちに熱傷専門施設へ1998~2008年までに、テキサス大学医学部シュライナー小児病院(ガルベストン)に952例の重度熱傷患児が入院した。全体の平均年齢は7.3歳で、男児が628例(66%)であった。123例(13%)が死亡し、そのうち熱傷面積30~39%の群の死亡率が3%(5/180例)であったのに対し、90~100%の群は55%(28/51例)と有意に高かった(p<0.0001)。154例(16%)が多臓器不全をきたしたが、熱傷面積30~39%群の6%(10/180例)に比べ90~100%群は45%(23/51例)と有意に高値であった(p<0.0001)。敗血症は9%(89例)が発症し、30~39%群の2%(3/180例)に対し90~100%群は26%(13/51例)と、やはり有意差を認めた(p<0.0001)。死亡に関するROC分析では、熱傷面積が62%を超えると死亡リスクが有意に上昇した(オッズ比:10.07、95%信頼区間:5.56~18.22、p<0.0001)。著者は、「熱傷後の合併症罹患や死亡リスクの受傷面積閾値はおよそ60%であった」とし、「これらの知見に基づき、熱傷面積60%以上の患児は直ちに熱傷専門施設に搬送することが推奨される。さらに、熱傷面積が大きくなると不良な予後のリスクが増大することから、熱傷専門施設では最大限の注意を払って治療を進め、さらなる治療法の改善に努めるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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55~69歳のPSAスクリーニング、前立腺がん死亡は減らすが全死因死亡には影響なし

PSA検査に基づくスクリーニングは前立腺がん死亡に効果があるのか、ないのか。相反する試験結果が示される中、オランダ・エラスムス大学医療センターのFritz H. Schroder氏ら欧州8ヵ国が参加する前立腺がんスクリーニング欧州無作為化試験(ERSPC)の共同研究グループが、2年間の追跡データを追加した11年間の前立腺がん死亡についての追跡調査結果を発表した。以前に同グループが示した知見を強化するものであったと報告し、「PSAスクリーニングは前立腺がん死亡を有意に減少する。しかし、全死因死亡に対する影響は認められなかった」と結論している。NEJM誌2012年3月15日号掲載報告より。欧州8ヵ国から被験者、追跡11年時点の前立腺がん死亡等を解析ERSPCは、1991年にオランダとベルギーの2ヵ国でスタートし、その後1994~1998年の間にスウェーデン、フィンランド、イタリア、スペイン、スイスの5ヵ国でも被験者登録が開始され、2003年まで募集が行われた。その間の2000年にはフランスでも被験者募集が始まり、合計8ヵ国が参加することとなった多施設共同無作為化試験である。研究グループが今回行った解析は、2003年までに登録された8ヵ国の50~74歳18万2,160例で、そのうち、55~69歳の16万2,388例を事前特定のコアグループと定義した。被験者は、無作為に、PSA検査に基づくスクリーニングを受ける群と、スクリーニングを受けない対照群に割り付けられ追跡された。主要評価項目は、前立腺がん死亡の割合であった。PSA検査スクリーニング群、前立腺がん死亡の相対的減少は21%結果、コアグループの追跡期間中央値11年時点での解析の結果、PSA検査スクリーニング群の前立腺がん死亡リスクについての相対的な減少は、21%であった(比率比:0.79、95%信頼区間:0.68~0.91、P=0.001)。ノンコンプライアンスについて補正後の同値は29%だった。そしてPSA検査スクリーニング群の死亡率の絶対的減少は、1,000人・年につき0.10例だった。無作為化を受けた被験者での解析結果では、1,000人につき1.07例であった。追跡10年時点と11年時点との前立腺がん死亡の比率比は、0.62(95%信頼区間:0.45~0.85、P=0.003)だった。追跡11年の結果、スクリーニング受診を1,055人に勧め、そのうち37例でがんを見つけることができれば、前立腺がん死を1例防ぐことに結びつくとの試算が得られた。なお、全死因死亡率の違いについては、スクリーニング群と非スクリーニング群に有意差は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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卵円孔開存を有する原因不明の脳卒中、閉鎖術は薬物療法単独を上回らない

卵円孔開存症がみられる原因不明の脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)に対する、経皮的デバイスを用いた閉鎖術は、再発予防のベネフィットとしては、薬物療法単独を上回らなかったことが示された。米国・University Hospitals Case Medical Center(クリーブランド)のAnthony J. Furlan氏らが、約900例を対象とした多施設共同無作為化オープンラベル試験の結果、報告した。原因不明の脳卒中患者では、一般的に卵円孔開存の出現率が高く、多くの場合、経皮的デバイスを用いた閉鎖術が推奨される。しかし、この介入が脳卒中の再発リスクを減らすかどうかは明らかではなかった。NEJM誌2012年3月15日号より。薬物療法と閉鎖術を比較研究グループは、原因不明の脳卒中またはTIAを呈し、卵円孔開存症が認められた18~60歳の患者を対象に、薬物療法単独と経皮デバイスを用いた閉鎖術のベネフィットについて検討した。主要エンドポイントは、フォローアップ2年の期間中における脳卒中またはTIAの発症、介入初期の30日間における全死因死亡、31日目から2年までの間の神経系の原因による死亡の複合とした。試験には、2003年~2008年の間に米国とカナダ87施設から合計909例の患者が登録された。脳卒中・TIAの2年累積発生率、両群間で有意差なし主要エンドポイントの累積発生率(Kaplan-Meier推計値)は、閉鎖術群が5.5%(447例)に対し、薬物療法群は6.8%(462例)で(補正ハザード比:0.78、95%信頼区間:0.45~1.35)、有意差は認められなかった(P=0.37)。また、脳卒中の累積発生率についても、閉鎖術群2.9%、薬物療法群3.1%(P=0.79)、TIAの累積発生率はそれぞれ3.1%、4.1%(P=0.44)だった。介入初期30日間の死亡は両群ともに発生はなく、2年間のフォローアップ期間中の神経系の原因による死亡例もなかった。神経系イベントを再発した患者の原因のほとんどは、明らかに奇異性塞栓症以外のものであった。(朝田哲明:医療ライター)

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医療コストが高い病院ほど、死亡率、再入院率、心イベント発生率は良好

カナダ・オンタリオ州の病院を対象とした調査の結果、医療コストが高い病院のほうが低い病院に比べ、急性心筋梗塞やうっ血性心不全、股関節部骨折などの30日死亡率が低いなど、治療アウトカムが良好であることが明らかにされた。カナダ・Institute for Clinical Evaluative SciencesのTherese A. Stukel氏らが、約39万人の入院患者について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月14日号で発表した。いわゆる国民皆保険下において、医療サービスの選択と集中が、よりよい患者アウトカムをもたらすのかを検討したもので、これまで明らかではなかった。30日・1年死亡率、再入院率、心イベント発生率などを比較研究グループは、カナダのオンタリオ州在住で、1998~2008年に、初回急性心筋梗塞(17万9,139人)、うっ血性心不全(9万2,377人)、股関節部骨折(9万46人)、大腸がん(2万6,195人)のいずれかで入院した18歳以上を、1年間追跡調査した。病院での終末期に支払われた医療コストや、医師、救急部門のサービスにかかる医療費と、入院患者の30日・1年死亡率、再入院率、主な心イベント発生率などアウトカムとの関連を調べた。うっ血性心不全30日死亡リスク、医療コスト最高三分位病院は最低三分位病院の0.8倍その結果、医療コストが最高三分位群の病院では、最低三分位群に比べ、患者アウトカムが有意に良好であることが示された。具体的には、年齢・性別補正後の30日死亡率は、医療コストが最高三分位群の病院と最低三分位群の病院ではそれぞれ、急性心筋梗塞で12.7%と12.8%、うっ血性心不全で10.2%と12.4%、股関節部骨折で7.7%と9.7%、大腸がんで3.3%と3.9%だった。完全補正後の最高三分位群の最低三分位群に対する相対30日死亡率は、急性心筋梗塞で0.93(95%信頼区間:0.89~0.98)、うっ血性心不全で0.81(同:0.76~0.86)、股関節部骨折で0.74(同:0.68~0.80)、大腸がんで0.78(同:0.66~0.91)だった。1年死亡率や再入院率、主な心イベント発生率も、同様の傾向を示した。医療コストが高い病院では、看護スタッフ比率が高く、入院中の専門医による診察回数が多く、急性心筋梗塞やうっ血性心不全患者は手術や内科的な専門治療を、大腸がん患者では術前の専門的治療をいずれも多く受けていた、などの特長が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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O104:H4へのアジスロマイシン投与、排菌期間を短縮

腸管凝集性志賀毒素産生大腸菌(STEC O104:H4)の感染者に対し、アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)を投与することで、排菌期間を短縮できることが示された。ドイツ・Schleswig-Holstein大学病院のMartin Nitschke氏らが、65人の感染者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月14日号で発表した。STEC感染への抗菌薬治療は、溶血性尿毒症症候群(HUS)発症リスクを増大する可能性があるとして、あまり行われていないが、一方で、腸管凝集性大腸菌への抗菌薬投与は広く行われている。65人を約40日追跡研究グループは、2011年5月15~7月26日の間に、ドイツ・ルベックにあるセンター病院単施設で、STEC O104:H4に感染した65人について、アジスロマイシン投与の有無と、排菌期間について追跡調査を行った。被験者の中には、HUSを発症している人も、していない人も含まれた。発症後の追跡期間の平均値は、39.3日だった。主要アウトカムは、STEC O104:H4の保菌期間とアジスロマイシン投与の関係だった。長期保菌者発生、非投与群81%に対し、アジスロマイシン群4.5%被験者のうち、経口アジスロマイシンを投与したのは22人、投与しなかったのは43人だった。結果、28日超の長期STEC保菌者は、アジスロマイシン群が22人中1人(4.5%、95%信頼区間:0~13.3)だったのに対し、非投与群は43人中35人(81.4%、同:69.8~93.0)と、有意に高率だった(p<0.001)。アジスロマイシン群全員が、同服用終了後に、3回以上の便検査でSTEC陰性が得られ、再発は認められなかった。また、非投与群で長期STEC保菌者のうち15人について、アジスロマイシンを3日投与したところ、便検査でSTEC陰性が得られた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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深在性真菌症治療薬 カスポファンギン酢酸塩(商品名:カンサイダス)

深在性真菌症治療薬のカスポファンギン酢酸塩(商品名:カンサイダス点滴静注用50mg、同点滴静注用70mg)が2012年1月18日に製造承認を取得した。適応は「(1)真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症(FN)、(2)カンジダ症(食道カンジダ症、侵襲性カンジダ症)、アスペルギルス症(侵襲性アスペルギルス症、慢性壊死性肺アスペルギルス症、肺アスペルギローマ)」となっている。深在性真菌症の現状深在性真菌症は、主に、白血病をはじめとした血液疾患やがんに対する化学療法、造血幹細胞移植における好中球減少時など、免疫力が低下している患者において、深部組織や臓器にカンジダ属やアスペルギルス属などが日和見感染することで感染を引き起こす疾患である。一般に重症化しやすく、治療が難しい感染症である。我が国における深在性真菌症の患者数は年々、増加傾向にあり、その中でもアスペルギルス症の増加が著しいとの報告がある1)。カスポファンギンの承認これまで、アゾール系、ポリエン系、フロロピリミジン系、キャンディン系などの深在性真菌症治療薬が使用されてきた。この度、承認されたカスポファンギンは、国内で2剤目となるキャンディン系抗真菌薬で、2000年12月に世界初のキャンディン系として承認されて以来、これまでに世界84ヵ国(2011年9月現在)と、多くの臨床現場で使用されてきた。カスポファンギンは既に、IDSA(米国感染症学会)のガイドラインをはじめ、さまざまな海外のガイドラインで推奨されている。このため、深在性真菌症治療に携わる医療関係者からの認知度は高く、国内での承認が待ち望まれてきた薬剤である。特に、カスポファンギンがキャンディン系で初めて「真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症」の適応を取得した意義は大きい。発熱性好中球減少症におけるエンピリック治療発熱性好中球減少症とは好中球が1,000/μL未満で且つ、500/μL未満になる可能性がある状況下で、腋窩で37.5℃以上(口腔内温≧38℃)の発熱が生じ、薬剤熱、腫瘍熱、膠原病、アレルギーなど原因がはっきりわかっているものを除外できる疾患をいう。発熱性好中球減少症は血液培養で10%程度の陽性率と低く、臨床的に感染巣が明らかなものは10~20%程度に留まり、70~80%で原因不明の発熱がおこる2)。このようなことから発熱性好中球減少症では、起因菌が特定できないまま、細菌や真菌感染を疑い、エンピリック治療が行われることが多い。しかしながら、これまで、キャンディン系には、発熱性好中球減少症の適応はなかった。この度、カスポファンギンが適応を取得したことにより、深在性真菌症治療に新たな選択肢が加わることは、患者や医療関係者にとって福音となるであろう。まとめ医療技術の発展による、骨髄・臓器移植、がんに対する化学療法などといった高度医療の普及や高齢化社会の進行により、患者の免疫低下リスクが高まる要因は増えていくと考えられる。そして、免疫低下患者の増加に伴い、深在性真菌症も増加することが予想される。このような背景の中、カスポファンギンが新たな選択肢となり、深在性真菌症治療の幅が広がることは、医療関係者にとって新たな治療戦略となる。そして、それは患者やその家族の明日への希望につながるといえよう。

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統合失調症への集団アートセラピー、臨床的効果認められず

統合失調症の症状は薬物療法によって軽減されるが、多くの患者はメンタル面の回復や社会復帰を果たせずにいる。そうした統合失調症患者への補助療法として行われている集団アートセラピーの臨床的な効果について、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMike J Crawford氏らによる多施設での介入無作為化試験による検証が行われた。これまで、同療法のベネフィットについての検討はほとんど行われていなかった。BMJ誌2012年3月10日号(オンライン版2012年2月28日号)掲載報告より。集団アート療法、活動療法、標準治療の3群で比較研究グループは、統合失調症患者への集団アートセラピーの臨床的効果を評価し、そのベネフィットについて検証するため、3アーム評価者盲検介入無作為化比較試験を行った。被験者は、英国の二次的ケアサービスを提供する15病院で募集された、統合失調症の診断を受け、研究への参加について文書で説明了解を得た18歳以上の417例だった。参加者は病院ごとに分けられ、12ヵ月間にわたって、週1回集団アートセラピー+標準治療を受ける群(140例)、週1回集団活動療法+標準治療を受ける群(140例)、標準治療のみ群(137例)の3群に無作為化された。アートセラピー群と活動療法群のグループ構成は最大8人とし、1セッションは90分間。アートセラピー群のメンバーには、芸術材料は限定されず、自由に自己表現するよう促された。活動療法群のメンバーには、芸術と工芸関係を除くさまざまな活動が提示され、続けたいと思う活動を共同で選択して行うよう勧められた。主要評価項目は、無作為化24ヵ月後の、総合機能スケールを使って計測した全般的な機能状態と、陽性・陰性症状評価スケールで測定したメンタル症状とした。副次評価項目は、12ヵ月時点と24ヵ月時点の出席状況、社会参加、治療に対する満足度とした。3群間でアウトカムに差はみられず結果、3群間で主要評価項目に格差は認められなかった。24ヵ月後の総合機能スケール評価は、アートセラピー群と標準治療群との補正平均差は-0.9(95%信頼区間:-3.8~2.1)で、陽性・陰性症状評価スケールは0.7(同:-3.1~4.6)だった。12ヵ月時点と24ヵ月時点の副次評価項目については、アートセラピー群と標準治療群との間で格差は認められなかった。アートセラピーと活動療法への出席レベルは低調だった。研究グループは、「統合失調症と診断された患者に集団アートセラピーを受けさせても、全体的な機能状態、メンタル面ほか健康関連アウトカムは改善しなかった」と結論づけている。

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子宮頸がん検出の最善のスクリーニングは?

子宮頸がん検出を目的としたスクリーニングテストについて、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査は細胞診よりも有益なのか、オランダ・Erasmus MC大学メディカルセンターのInge M C M de Kok氏らによるシミュレーション研究が行われた。費用対効果に着目して、女性の生涯での適切なスクリーニング回数についても検証された。病変部検出にHPV検査は細胞診よりも感受性が高いが特異度は低い。HPVスクリーニングについての既存の報告では、費用対効果の結果は千差万別で、de Kokらは、オランダモデルを各種条件が異なる欧州各国と適合させて検討した。BMJ誌2012年3月10日号(オンライン版2012年3月5日号)掲載報告より。プライマリHPVスクリーニングかプライマリ細胞診かをシナリオ戦略に基づき検証研究グループは、欧州で1932~1992年に生まれたHPVワクチン非接種の女性を対象とし、オランダモデルに基づく費用対効果の解析を行った。ベース症例解析では、ミクロシミュレーションモデルで1,500通り以上のスクリーニング政策の費用対効果を調べた。その後、スクリーニング政策を異なる5つの想定シナリオ(子宮頸がんリスク、既往スクリーニング、検査特性関連の質、検査費用、HPV有病率について起こり得る可能性が異なるシナリオ)で比較した。主要評価項目は、HPV検査の感度とコストについての増分費用効果比(寿命獲得に要する費用)に関する最善のスクリーニング戦略とした。プライマリHPVスクリーニングが好ましいが、組織的に実施することが重要結果、想定シナリオのほとんどで、HPVスクリーニングは30歳以上ではプライマリ検査として好ましいとする結果だった。細胞診が好ましいとされたのは、低コストが好ましいとするシナリオの場合と、HPVの有病率が高く費用が高いHPV検査と合わせて行うとするシナリオの場合であった。Kok氏は、「欧州の国の多くは、子宮頸がんに対してプライマリ細胞診からプライマリHPVスクリーニングに考え方の切り替えるべきである」と結論。シミュレーションの結果から、重要なことはプライマリHPVスクリーニングを組織的に実施することで、それが低コストに結びつくとし、「HPVスクリーニングは、スクリーニングがよりよくコントロールされている状況で実施されなければならない」と結論している。

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両腕のSBP差15mmHg以上、血管疾患や死亡の指標に

両腕の収縮期血圧(SBP)の差が10mmHg以上の場合、末梢血管疾患などを想定した精査が必要で、差が15mmHg以上になると血管疾患や死亡の指標となる可能性があることが、英エクセター大学のChristopher E Clark氏らの検討で示された。末梢血管疾患は心血管イベントや死亡のリスク因子だが、早期に検出されれば禁煙、降圧治療、スタチン治療などの介入によって予後の改善が可能となる。両腕のSBP差が10~15mmHg以上の場合、末梢血管疾患や鎖骨下動脈狭窄との関連が指摘されており、これらの病態の早期発見の指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年1月30日号)掲載の報告。両腕の血圧差と血管疾患、死亡率との関連をメタ解析で検証研究グループは、両腕の血圧差と血管疾患、死亡率との関連を検証するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Embase、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literatureなどの医学関連データベースを検索して、2011年7月までに公表された文献を抽出した。対象は、両腕のSBPの差と鎖骨下動脈狭窄、末梢血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、生存のデータを含む論文とした。変量効果を用いたメタ解析を行い、両腕のSBP差と各アウトカムの関連について評価した。10mmHg以上の差があると、鎖骨下動脈狭窄のリスクが約9倍に28編の論文がレビューの条件を満たし、そのうち20編がメタ解析の対象となった。血管造影法を用いた侵襲的な試験では、狭窄率>50%の鎖骨下動脈狭窄の患者における両腕のSBP差の平均値は36.9mmHg(95%信頼区間[CI]:35.4~38.4)であり、10mmHg以上の差は鎖骨下動脈狭窄の存在と強い関連を示した(リスク比[RR]:8.8、95%CI:3.6~21.2)。非侵襲的な試験の統合解析では、両腕SBPの15mmHg以上の差は、末梢血管疾患(RR:2.5、95%CI:1.6~3.8、感度:15%、特異度:96%)、脳血管疾患の既往(RR:1.6、95%CI:1.1~2.4、感度:8%、特異度:93%)、心血管死の増加(ハザード比[HR]:1.7、95%CI:1.1~2.5)、全死因死亡(HR:1.6、95%CI:1.1~2.3)と関連を示した。10mmHg以上の差は末梢血管疾患と関連した(RR:2.4、95%CI:1.5~3.9、感度:32%、特異度:91%)。著者は、「両腕のSBPの10mmHg以上または15mmHg以上の差は血管の精査を要する患者の同定に役立ち、15mmHg以上の差は血管疾患や死亡の有用な指標となる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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Y染色体ハプログループIの男性、冠動脈疾患リスクが有意に高い

Y染色体ハプログループIの男性は、他のY染色体系統の男性に比べ冠動脈疾患リスクが50%以上高いことが、オーストラリア・バララト大学のFadi J Charchar氏らの検討で示された。冠動脈疾患の発生率や有病率には性差がみられ、男性は女性に比べて頻度が高い。Y染色体の主要部分(男性特異的領域:MSY)は父親から息子へと完全なかたちで伝えられるが、Y染色体が心血管系(心血管死や血圧など)や血中コレステロール濃度に影響を及ぼすことを示すデータが報告されているという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年2月9日号)掲載の報告。約3,200人の男性で冠動脈疾患とY染色体の関連を評価研究グループは、性差による不均衡に基づき、冠動脈疾患におけるY染色体の役割について検討した。対象は、3つのコホート(British Heart Foundation Family Heart Study[BHF-FHS]、West of Scotland Coronary Prevention Study[WOSCOPS]、Cardiogenics Study)に登録された生物学的に血縁関係のないイギリス人男性3,233人。Y染色体のハプログループと冠動脈疾患のリスクの関連を評価し、次いでこのY染色体の系統と冠動脈疾患の発現の関連について検討した。さらに、単球やマクロファージのトランスクリプトーム(特定の状態にある細胞内のすべての遺伝子転写産物[mRNA]を要素とする集合)に及ぼすY染色体の影響について機能分析を行った。炎症や免疫関連遺伝子との相互関連も同定された9つのハプログループのうち2つ(R1b1b2とI)が、Y染色体の約90%に認められた。ハプログループIのキャリアは、他のY染色体系統に比べ冠動脈疾患の年齢調整リスクが50%以上高かった(BHF-FHSコホート:オッズ比[OR];1.75、95%信頼区間[CI];1.20~2.54、p=0.004、WOSCOPSコホート:OR;1.45、95%CI;1.08~1.95、p=0.012、2つのコホートの統合解析:OR;1.56、95%CI;1.24~1.97、p=0.0002)。ハプログループIと冠動脈疾患リスクの増加の関連には、従来の冠動脈リスク因子や社会経済的リスク因子の影響はなかった。Cardiogenics Studyコホートにおけるマクロファージのトランスクリプトーム解析では、ハプログループIと他のY染色体系統の男性間で発現状況が著しく異なる19の分子経路が同定されたが、これらは炎症や免疫関連遺伝子と相互関連を示し、そのうちいくつかはアテローム性動脈硬化と強い関連を示した。著者は、「ヒトのY染色体はヨーロッパ系の男性の冠動脈疾患リスクと関連しており、この関連性は免疫系や炎症との相互作用を介する可能性がある」と結論付けている。(菅野守:医学ライター)

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中等度~重度アルツハイマー病に対するドネペジルvs.メマンチンvs.両者併用vs.治療中止

 軽度~中等度アルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬のベネフィットは臨床試験により示されているが、中等度~重度に進行後もベネフィットが持続するかは明らかとなっていない。英国・ロンドン大学のRobert Howard氏らは、3ヵ月以上ドネペジル(商品名:アリセプトほか)を服用していた中等度~重度の居宅アルツハイマー病患者を対象に、同薬を中止した場合、継続した場合、NMDA受容体拮抗薬メマンチン(商品名:メマリー)に切り替えた場合、両薬を併用した場合とを比較する多施設共同二重盲検2×2プラセボ対照試験を行った。NEJM誌2012年3月8日号より。295例を4群に割り付け52週間治療、認知機能、ADLの改善度を評価 試験は2008年2月~2010年3月に、地域で暮らす中等度~高度[標準化ミニメンタルステート検査(SMMSE)スコア:5~13、スコアは0~30で高いほど認知機能が良好]アルツハイマー病患者295例(平均年齢約77歳)を対象に行われた。被験者は、ドネペジル投与継続群(10mg/日)、ドネペジル投与中止群(4週間5mg投与後5週目からプラセボ)、ドネペジル投与中止後メマンチン投与開始群(5mg/日から開始し4週目から20mg/日)、ドネペジル投与継続+メマンチン投与開始に割り付けられ、52週間治療を受け評価された。 共同主要アウトカムは、SMMSEスコア、ブリストル日常生活動作尺度(BADLS)スコア(スコア0~60、高いほど機能障害が大きい)とし、臨床的に意味のあるスコア差を、SMMSEは1.4ポイント以上、BADLSは3.5ポイント以上とした。ドネペジル継続にベネフィット 中止群患者と比較して、ドネペジル継続投与群はSMMSEスコアが平均1.9ポイント高く(95%信頼区間:1.3~2.5)、BADLSスコアは3.0ポイント低く(同1.8~4.3)、認知機能、機能障害とも有意な改善(いずれもP<0.001)、臨床的に意味のあるスコア変化が示された。メマンチン投与を受けていた患者は、メマンチン投与を受けていなかった患者との比較で、SMMSEスコアは平均1.2ポイント高く(同0.6~1.8、P<0.001)、BADLSスコアは1.5ポイント低かった(同:0.3~2.8、P=0.02)が、両スコアとも臨床的に意味のある最小変化値を下回っていた。 ドネペジルとメマンチンの有効性は、併用することで有意差が示されることはなく、そのベネフィットはドネペジル単独使用を有意には上回らなかった。これらの結果からHoward氏は、「中等度~高度アルツハイマー病患者では、ドネペジルの継続投与が、12ヵ月間にわたって、認知機能、機能障害の改善についてのスコア差が臨床的に意味のある最小数値を上回り、有意なベネフィットがあることが示された」と結論している。

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開発中のENB-0040酵素補充療法、重篤な低ホスファターゼ症を改善

重篤な低ホスファターゼ症の乳幼児に対し、開発中のENB-0040による酵素補充療法が、肺および身体機能を改善することが報告された。米国・シュライナーズ小児病院(ハワイ州)のMichael P. Whyte氏らによる多国間オープンラベル試験の結果で、治療24週でX線上の所見での骨格改善が認められた。くる病や骨軟化症に至る低ホスファターゼ症は、組織非特異型アルカリホスファターゼアイソザイム(TNSALP)の遺伝子変異により生じる。重篤な乳児では、進行性胸部変形を呈し呼吸機能不全を来し死亡に至ったり、また骨疾患が持続する場合が多いが、承認されている内科的治療法はいまだない。ENB-0040は、骨を標的とする遺伝子組換えヒトTNSALPで、マウス試験で低ホスファターゼ症の症状発現を抑えることが認められていた。NEJM誌2012年3月8日号掲載報告より。重度の低ホスファターゼ症患者11例を対象にオープンラベル試験被験者として応募したのは、生後2週~3歳の生命が危機的状態にあるまた衰弱が激しい低ホスファターゼ症の乳幼児11例(女児7例、男児4例)だった。そのうち10例が6ヵ月のENB-0040治療を完了し(1例は試験同意後撤回)、9例は1年間治療が行われた(1例は治療開始7.5ヵ月後に敗血症により死亡)。試験の主要目的はくる病の治癒とし、X線所見で評価した。運動と認知の発達、呼吸機能、安全性、ENB-0040の薬物動態と薬力学についても評価が行われた。6ヵ月治療でくる病治癒、発達指標と肺機能も改善6ヵ月治療を完了した9例ではくる病の治癒が認められ、発達指標および肺機能の改善も認められた。基線で高値であったTNSALP基質の無機ピロリン酸とピリドキサール5’-リン酸塩値も、ともに低下が認められた。また骨格の治癒とともに、血清副甲状腺ホルモンの上昇が認められ、頻繁に食事性カルシウム・サプリメントを必要とした。低カルシウム血症、異所性石灰化、薬物関連の重大有害事象の所見は認められなかった。4例に低値の抗ENB-0040抗体が出現したが、治療48週時点での明らかな臨床的、生化学的、自己免疫の異常は認められなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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