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慢性のかゆみ、基礎疾患やひっかき行動などの男女差を確認

 慢性のかゆみについて、かゆみの質や部位、起因のみならず、基礎疾患やひっかき行動に関しても男女があることが、ドイツ・ミュンスター大学のS. Stander氏らによる検討の結果、明らかにされた。医療において性差は重大な因子として認識が高まってきているが、慢性のかゆみについてはこれまでごくわずかな認識にとどまっていたという。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年2月6日号の掲載報告。 研究グループは、慢性のかゆみ(>6週)を有する患者を対象に、QOL、慢性のかゆみの基礎疾患、共存症など複数の指標について、性差が認められるかを解析した。 各変数の性差についての特異性については、McNemar検定やカイ二乗検定、t検定などを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者は1,037例で、54.8%が女性であった。・男性のほうが、女性よりも有意に高齢であった(p<0.001)。また心血管系(p<0.001)、泌尿生殖器系(p<0.0001)の共存症を有している人が有意に多く、複数の服薬を受けている人が多く(p=0.041)、慢性のかゆみに結びつく皮膚疾患および全身性の疾患をより多く有していた。・女性は、慢性のかゆみの基礎疾患として、神経障害性疾患および心身症をより多く有していた。また、慢性のかゆみの悪化が、感情(p=0.002)や心身の因子(p=0.046)による頻度が有意に高かった。・女性は、ヒリヒリ感、温感、痛みを伴う質の局所のかゆみを報告する頻度が高かった。さらに、男性よりも視覚アナログスケールスコアが高く(p=0.031)、QOLへの影響が高いと報告した(p=0.033)。・男性はしばしば炎症を起こしていない皮膚に慢性のかゆみが生じているが(p=0.031)、それとは対照的に、女性では慢性のひっかき傷と結節性痒疹が有意にみられた(p=0.004)。・上記の結果を踏まえて著者は、「慢性のかゆみの質や部位、起因のみならず、基礎疾患やひっかき行動にも性差があることが明らかとなった。これらの事実は、慢性のかゆみの患者の治療において、またかゆみのあらゆる臨床研究において考慮しなければならない」と述べ、「さらなる研究により、性特異的な診断法や治療法を極める必要がある」と結論している。

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抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か?

 これまで、幅広い重症度にわたるアルツハイマー病に対するアセチルコリンエステラーゼ阻害薬およびメマンチンの有効性が、数々の無作為化臨床試験により評価されてきた。しかし、従来の試験では、これらの薬剤は認知機能検査に基づく正確なカットオフ値(上限および下限)に基づいて、処方が行われていた。イタリア・Fondazione サンタルチアIRCCSのSimona Gabriella Di Santo氏らは、メタ解析により、これら薬剤の有効性が、認知症の重症度に依存するかを明らかにしようと試みた。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2月14日号の掲載報告。 研究グループは、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンなどのAChE阻害薬と、メマンチンの有効性について、アルツハイマー病の重症度との関連を明らかにすることを目的にメタ解析を行った。解析にあたっては、アルツハイマー病による認知症患者を対象に、AChE阻害薬またはメマンチンの有効性に関する評価を実施した無作為化プラセボ対照試験で、英語により発表された論文を採用した。なお、認知症の重症度、薬剤の用量および治療期間は問わなかった。各試験から認知、行動および機能のアウトカムを抽出するとともに、同一試験における多様なアウトカムを併せ、認知障害、機能障害および行動・精神障害への有効性に関する独自の指標を明らかにした。効果とMini-Mental State Examination(MMSE)により評価される認知症重症度との関連は、パラメトリックおよびノンパラメトリック法による相関分析により評価した。 主な結果は以下のとおり。・AChE阻害薬、メマンチンともに、認知アウトカムにおいて有意な効果が認められた。報告数は少なかったものの、機能および精神行動アウトカムにおいても有意な効果が認められた。・本メタ解析では、試験間ならびに薬剤間に高い異質性がみられた。・メマンチン以外の薬剤(=AChE阻害薬)は、すべてのドメインにおいて、重症度によらず有効性を示した。・メマンチンの機能障害に対する有効性は、より重症例で良好であった。・抗認知症薬の認知機能に対する適度に有益な効果は、重症度によらず認められた。メマンチンについては、重症例での機能障害においてより効果的であることが示された。関連医療ニュース ・認知症患者の興奮症状に対し、抗精神病薬をどう使う? ・ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度? ・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の長期曝露、ミツバチの生態行動に影響

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摂食てんかんが食事中に起こる種々のメカニズムが明らかに

 摂食てんかん(Eating Epilepsy)は、食事摂取によりてんかん発作が誘発される反射性てんかんの一つであるが、その病態はまだ十分に認識されていない。今回、この摂食てんかんについて、大半が最初の誘発刺激から長い期間を経て発症し、治療抵抗性の経過をたどるという特徴があることが、トルコ・イスタンブール大学のUlgen Kokes氏らにより明らかにされた。Clinical EEG and Neuroscience誌オンライン版2013年2月6日号の掲載報告。摂食てんかんは食事中に種々のメカニズムを介して起こる 本研究では、摂食てんかんの特徴を明らかとするため、てんかん患者8,996例のカルテファイルをレトロスペクティブに調べた。その結果、摂食てんかん患者は6例のみ(0.067%)で認められた。男性が4例、女性が2例であり、年齢は20~63歳であった。 摂食てんかん患者6例に認められた所見は以下のとおり。・6例には焦点発作がみられ、大半が食事により誘発された認知不全または経験的前兆があり、自発性の発作であった。・全例で、初期にてんかん発作の誘発刺激(頭部/分娩時外傷または脳炎)があった。・4例は食事の途中または食事直後にてんかん発作が起こり、2例は食事開始時にてんかん発作が起きた。このことから、2つの異なる摂食てんかんメカニズムの存在が示唆された。・MRI所見は2例で正常であったが、その他の症例では異常がみられた。・脳波所見において、5例で左側頭領域の広い範囲で頻繁なスパイク(棘波)が認められ、1例は右側頭領域で同所見がみられた。また、左側頭に由来する発作が3例で記録された。・2例において、脳波所見とPET検査所見が一致していた。・1例を除き、治療抵抗性の経過をたどった。 ・以上より著者は、摂食てんかんの特徴を以下のようにまとめた。  ・頻度が少なく、きわめてまれである。  ・初期の誘発刺激から長い期間を経た後に起こる。  ・大半が認知不全または経験的前兆を伴い、通常、発作は左側頭領域に由来する。  ・多くが治療抵抗性の経過をたどる  ・食事中に種々のメカニズムを介して起こる。関連医療ニュース ・妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全? ・検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響 ・うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」

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高頻度振動換気法、成人ARDS患者の30日死亡率を改善せず:OSCAR試験/NEJM

 急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の治療において、高頻度振動換気法(high-frequency oscillation ventilation:HFOV)は従来の機械的換気法と30日死亡率が同等で、改善効果はないことが、英国・オックスフォード大学のDuncan Young氏らの検討で示された。ARDS患者は動脈血の酸素化を維持するために機械的人工換気を要するが、この治療法は2次的に肺傷害を引き起こすことがある。HFOVは、肺傷害のリスクの回避に有用な可能性があるという。NEJM誌オンライン版2013年1月22日号掲載の報告。HFOVの有用性を従来の人工換気法と比較 OSCAR(Oscillation in ARDS)試験は、ARDS患者に対するHFOVの有用性を従来の人工換気法と比較する無作為化対照比較試験。 対象は、年齢16歳以上、呼気終末陽圧(PEEP)≧5cm水柱の動脈血酸素分圧(PaO2)/吸気酸素分画(FIO2)≦200mmHg(26.7kPa)で、最低2日以上の機械的人工換気を要すると予測される症例とした。これらの患者が、HFOVを施行する群または通常の人工換気を行う群(参加施設の通常の換気法)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、割り付けから30日までの全死因死亡。30日全死因死亡率:41.7%vs 41.1%(p=0.85) 2007年12月~2012年7月までに、イングランド、ウェールズ、スコットランドの29施設から795例が登録され、HFOV群に398例(平均年齢54.9歳、男性64.3%、平均APACHE IIスコア21.8、平均PaO2/FIO2 113mmHg)が、通常介入群には397例(同:55.9歳、60.2%、21.7、113mmHg)が割り付けられた。 30日全死因死亡率は、HFOV群が41.7%(166/398例)、通常介入群は41.1%(163/397例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(p=0.85)。施設、性別、APACHE IIスコア、PaO2/FIO2で調整後の通常介入群のオッズ比は1.03(95%信頼区間:0.75~1.40、p=0.87)であった。 初回ICU退院時死亡率はHFOV群44.1%、通常介入群42.1%(p=0.57)、初回病院退院時死亡率はそれぞれ50.1%、48.4%(p=0.62)で、いずれも有意差はみられなかった。平均ICU入院期間はHFOV群17.6日、通常介入群16.1日(p=0.18)、平均病院入院期間はそれぞれ33.9日、33.1日(p=0.79)だった。 抗菌薬の平均投与期間はHFOV群12.8日、通常介入群12.4日(p=0.56)、そのうち肺感染症に対する投薬率はそれぞれ64.4%、67.5%であった。 著者は、「ARDSの治療において、HFOVは従来の機械的換気法に比べ30日死亡率を改善しなかった」と結論し、「本試験ではHFOVの有用性および有害性はともに示されなかった。HFOVはルーチンの治療には使用しないよう推奨する」としている。

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統合失調症、双極性障害の急性期興奮状態に対する治療:アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国)

 統合失調症患者や双極性障害患者の急性期興奮状態に対する薬物治療では、急速な鎮静作用だけでなく、長期的な治療を見据えた薬剤選択が重要である。英国・Northcroft HospitalのDomingo Gonzalez氏らは、双極性躁病と統合失調症の興奮に対する急速鎮静法としてのアリピプラゾール筋注について、コンセンサス・ステートメントを発表した。Current Medical Research and Opinion誌2013年3月号(オンライン版2013年2月4日号)の掲載報告。 本論文は、双極1型障害と統合失調症における興奮や異常行動に対する迅速コントロールを目的とした治療オプションとして、アリピプラゾール筋注に関する入手可能な臨床データを評価し、英国の急性期治療に携わる医師の経験に基づくコンセンサス・ステートメントを提供することを目的とした。 主な論旨は以下のとおり。・双極性障害や統合失調症のような重度の精神疾患について、理想とする治療目標は、急性エピソードの反復や再発を予防もしくは遅延させることである。同時に、患者が急性エピソードを呈した時には、行動症状を制御し、症状のコントロールを従前レベルへと引き戻すことが目標となる。・重度の精神疾患において、暴力的行動や異常行動をコントロールするために、他のあらゆる鎮静の方法が奏功しない時には、急性期の制御として急速鎮静法(RT)を必要とする可能性がある。・現在の臨床ガイドラインでは、急性期の異常行動への緊急介入として、睡眠時を除き、穏やかな鎮静により興奮を鎮めることで患者を落ち着かせることが支持されている。それは、患者との相互コミュニケーションを可能とし、正確な診断を確実にするためであり、治療について患者が能動的に関わることを可能とするためである。・RTでは薬物療法は必須である。利用可能な薬剤は、特色があるもので、患者の通常の治療コースとは別のものである可能性がある。なぜなら、RTに用いられる主な薬物は、長期的治療に適しておらず、有効性、安全性の面で好ましくない可能性があるからである。・その一方で薬物療法の選択は、効果的なRTを達成し、通常ケアへの移行および患者の日常生活をスムーズに取り戻すのに重要である。・アリピプラゾールは、筋注製剤を含めると双極1型障害と統合失調症の短期および長期治療のいずれにおいても良好な有効性と安全性プロファイルを有する薬物である。関連医療ニュース第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析統合失調症患者の再発を予測することは可能か?統合失調症に対するベンゾジアゼピン、最新レビュー知見

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大腸3D-CT検査(CTC)vs. バリウム注腸、CTCのほうが感度が高い:SIGGAR/Lancet

 大腸がんの診断法としての大腸3D-CT検査(CT Colonography:CTC)について、バリウム注腸造影検査よりも、がん病変や≧10mmポリープの検出能が有意に高いことが、英国・University College LondonのSteve Halligan氏らによる多施設共同無作為化試験SIGGARの結果、報告された。バリウム注腸は大腸がんの診断で広く用いられているが、診断精度や被検者の受容性に対する懸念が示されている。CTCはバリウム注腸と比べると新しい大腸X線検査法で、検出能の感度が高いと考えられ、患者も好むことが試験によって示されているが、これまでCTCをバリウム注腸に代わる診断法とすべきかについて保健政策に反映するような無作為化試験は行われていなかったという。Lancet誌オンライン版2013年2月14日号掲載より。無作為に2対1の割合に割り付け比較検証 SIGGARは、臨床での症候性大腸がんの診断を想定し、2つの実践的な多施設共同無作為化試験(CTC vs. バリウム注腸、CTC vs. 内視鏡検査)が行われた。 Halligan氏らの試験では、大腸がんと大きめのポリープの検出能についてCTCとバリウム注腸(BE)とを比較することを目的とした。 試験は、英国内21病院から症候性の大腸がんが疑われる患者を集めて行われた。医師から大腸X線検査が指示・紹介された55歳以上の患者3,838例を適格患者とし、コンピュータで無作為に2対1の割合(BE群2,553例、CTC群1,285例)に割り付け検査結果を解析した。  主要アウトカムは、大腸がんまたは≧10mmポリープの診断精度とし、intention to treatにより評価した。CTCのほうが大腸がんまたは≧10mmポリープの検出率が有意に高い 解析には、了解が得られなかった34例を除外した、BE群2,527例、CTC群1,277例が組み込まれた。 大腸がんまたは≧10mmポリープの検出率は、CTC群(93/1,277例、7.3%)がBE群(141/2,527例、5.6%)より有意に高率だった(相対リスク:1.31、95%信頼区間:1.01~1.68、p=0.0390)。 3年間のフォローアップ中に新たな大腸がんが発見されたのはCTC群3例、BE群12例であった。見逃し率は、CTC群7%(45例のうち3例)、BE群14%(85例のうち12例)であった。 検査後に内視鏡検査が行われた割合は、BE群よりもCTC群が有意に多かった(CTC群283/1,206例・23.5%対BE群422/2,300例・18.3%、p=0.0003)。これは主にポリープの検出率が高かったことに起因していた。なお、重篤な有害事象はまれであった。 これらの結果からHalligan氏らは、「CTC検査はBE検査より感度が高い。今回の試験結果は、CTCが症候性大腸がんが疑われる患者にとって好ましいX線検査であることが示された」と結論づけている。

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神経障害性疼痛の実態をさぐる

神経障害性疼痛が見逃されているたとえば熱いものを触ったり、刃物で切れば痛みを感じる。そういう通常の痛みを「侵害受容性疼痛」といいます。末梢神経の終末にある侵害受容器が刺激されたときに感じる痛みです。侵害受容性疼痛の中には炎症に伴って起こる炎症性疼痛も含まれますが、これらを合わせて生体を守るための生理的な疼痛と呼んでいます。一方、「神経障害性疼痛」は、末梢神経から脊髄、さらに大脳に至るまでの神経系に何かの障害が起こったときに、エラーとして生じる痛みです。生体を守る意義はなく、病的な疼痛と考えられています。このように、神経障害性疼痛と炎症性疼痛は区別して考える事になっています。ただし、臨床的には炎症が遷延し持続的に痛みのシグナルが入力されるような状態では、神経系はエラーとしての過敏性を獲得するため、炎症性疼痛が続いた結果起こる痛みと神経障害性疼痛は明確に区別できないと考えられています。多くの神経障害性疼痛は痛みの重症度が高く、患者さんのQOLは著しく低下します。神経障害性疼痛は、まだまだ医療者に浸透していない痛みの概念です。神経障害性疼痛であることが疑われないで治療されているケースも多くみられ、神経障害性疼痛には特別なスクリーニングが必要だと考えます。神経障害性疼痛のスクリーニング痛みと一口にいっても、ナイフで刺された時の痛みと、炎や熱に手をかざした時の痛みは、おのずと性質が違ってきます。神経障害性疼痛の患者さんの多くは、「ヒリヒリと焼けるような痛み」「電気ショックのような痛み」「痺れたような痛み」「ピリピリする痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」といった特徴的な性質の痛みを訴えます。一方、炎症性疼痛の患者さんでは、ズキズキする、ズキンズキンするといった、明らかに痛みの性質が異なった訴えをします。痛みの性質の違いは、痛みの発生メカニズムの違いを表していると考えられています。患者さんの自覚的な訴えから痛みの種類を鑑別するために、痛みの問診票が各国で開発されています。私たちはドイツでつくられた「PainDETECT」の日本語版を許可を得て開発し、その妥当性の検証試験を行っています。痛みの性質、重症度、場所、範囲、時間的変化を1つの質問用紙に記入する形のもので、臨床で使いやすい問診票になっています。侵害受容性疼痛なのか神経障害性疼痛なのか、あるいは両方が混合している疼痛なのかを分類することができます。画像を拡大する痛みの具体性を評価する痛みのスクリーニングにおいて、痛みの性質と共に痛みの具体性を評価することが重要です。たとえば捻挫をした患者さんにどこが痛いか聞くと、「足首のここが痛い、足首を伸ばすと痛い」と明確な答えが得られます。これは痛みの具体性が高いといえます。一方、器質的な異常を伴わない非特異的腰痛や、外傷後の頸部症候群(むち打ち症)では、「腰のあたりが全体的に痛い」とか、「何となく首の周りが痛い」といった部位を特定しにくい漠然とした痛みを訴えることがあります。そのような場合は痛みの具体性が低いと評価します。痛みの具体性が高いときには身体的な問題、器質的な異常があり、痛みの具体性が低い場合は器質的な異常がない(少ない)と判断し、心因性疼痛の要素の有無を考えます。器質的異常の有無は薬物療法の適応を考える際に重要なポイントになりますので、痛みの性質と共に具体性を聞くことは非常に有用です。神経障害性疼痛が合併しやすい疾患神経障害性疼痛が多く見られる疾患は、糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛、脊柱管狭窄症です。たとえば帯状疱疹では、神経にウイルスが棲んでいて神経の炎症や障害が起きます。日本での大規模な調査研究で、これまで神経障害性疼痛ではないと考えられていた腰痛や膝関節症を含む多くの慢性疼痛患者さんの中にも、神経障害性疼痛が含まれていることがわかってきました。首から背中、腰の痛みを訴える患者さんの実に約8割が、神経障害性疼痛だろうと推察される報告もあります。手術後の痛みは意外に調べられていない領域です。傷が治れば痛くないと医療者が思っているので、患者さんが痛みを訴えにくい環境があるようです。開胸手術後は6~8割、乳腺の術後には5~6割、鼠径ヘルニアの術後では3~4割の患者さんが傷が治った後にも痛みを持っていることがわかっています。もちろん手術後に遷延する痛みの病態のすべてが神経障害性疼痛ではありません。術後遷延痛には、神経障害性疼痛とも炎症性疼痛ともいえない独特のメカニズムがありそうだ、ということが分子生物学的な病態研究によってわかってきています。薬物療法による神経障害性疼痛の治療神経障害性疼痛の治療は、侵害受容性疼痛とは治療戦略がまったく異なります。基本的に消炎鎮痛薬は効果がありません。神経障害性疼痛の第一選択薬はCa2+チャネルα2δリガンドであるプレガバリン(商品名:リリカ)と三環系抗うつ薬です。第二選択薬としては、抗うつ薬セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のうちの一つであるデュロキセチン(商品名:サインバルタ)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)、抗不整脈薬メキシレチン(商品名:メキシチールほか)です。第三選択薬は、麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。まず初めにプレガバリンか三環系抗うつ薬を用います。効果が不十分であれば、いずれかに切り替えるか併用する。プレガバリンは添付文書では、朝と夕方に内服することになっていますが、私たちは就寝前の服用を勧めています。神経障害性疼痛の患者さんは痛みが強く不眠を訴える方が多いのですが、プレガバリンによる眠気の作用を逆に利用した服用方法です。プレガバリンの眠気は鎮静によって生じるものではなく、生理的な睡眠作用であることがわかっています。そのためか、患者さんもぐっすり眠れたという満足感を持つことが多いようです。そして第一選択薬で効果が不十分な場合は、第二選択薬への切り替え、あるいは第二選択薬との併用を行います。ただし三環系抗うつ薬とデュロキセチンの併用では、副作用として興奮・せん妄等のセロトニン症候群を起こす危険性があるので、三環系抗うつ薬とデュロキセチンは基本的に併用はしません。第二選択薬が無効な場合は、第三選択薬として麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)を使います。非がん性の慢性疼痛に対して使えるオピオイド鎮痛薬は、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(商品名:トラムセット)とフェンタニル貼付剤(商品名:デュロテップMTパッチ)が主なものです。ブプレノルフィン貼付剤(商品名:ノルスパンテープ)は変形性関節症、腰痛症のみが保険適応となっています。オピオイドは最も高い鎮痛効果を期待できますが、長期間使った場合に便秘や吐き気、日中の眠気などの副作用が問題になります。オピオイド鎮痛薬に対して精神依存を起こす患者さんもまれにですがいます。そのため、第一選択薬、第二選択薬が無効な場合にのみ使うことが推奨されています。オピオイド鎮痛薬使用における注意点非がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使い方は、がん性疼痛とは異なります。がん性疼痛の場合は、上限を設けずに患者さんごとに投与量を設定し、痛みが続いている間は使い続けます。痛みが発作的に強まったときには頓用薬も用います。一方、非がん性の疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、経口のモルヒネ製剤換算で120mgを上限に設定することが推奨されています。オピオイド鎮痛薬の使用期間は極力最少期間にとどめ、痛みが強くなったときの頓用は推奨されていません。これらのオピオイド鎮痛薬の使用に制限を設けている理由は、すべて精神依存の発症リスクを抑えるためです。がん性疼痛と非がん性疼痛では、オピオイド鎮痛薬の使い方の原則が違うことをご理解いただきたいと思います。オピオイド鎮痛薬の精神依存は、器質的な痛みの患者さんでは基本的に発症しないことがわかっています。器質的ではない疼痛、すなわち痛みの具体性の低い患者さんでは精神依存を起こす可能性が高まるので、オピオイド鎮痛薬を積極的に使用すべきではないと考えています。うつ病や不安障害といった精神障害を合併している患者さんも、オピオイド鎮痛薬による精神依存を発症しやすいことがわかっています。最も強い鎮痛効果を求めるときは、われわれはオピオイド鎮痛薬とプレガバリンを併用しています。プレガバリンには抗不安作用があり、それがオピオイド鎮痛薬による吐き気の発生に対する予期不安を抑制し、制吐効果が期待できます。オピオイド鎮痛薬と三環系抗うつ薬の併用も強い鎮痛効果が期待できますが、吐き気、眠気、抗コリン作用による口渇などを相乗的に増強してしまうため推奨していません。

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脳卒中に対するt-PA+血管内治療、t-PA単独療法を凌駕しない/NEJM

 脳卒中治療について、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注の単独療法と血管内治療を併用した場合とを比較した結果、有効性に有意な差はなく、安全性アウトカムも同程度であったことが、米国・シンシナティ大学のJoseph P. Broderick氏らによる無作為化試験の結果、報告された。中等度から重症の急性脳梗塞患者の治療では、t-PA静注療法後に血管内治療を併用するケースが増えているが、同アプローチが単独療法よりも有効であるのかどうかは明らかではなかった。NEJM誌オンライン版2013年2月7日号より。t-PA単独療法群または血管内治療併用群に2対1に無作為化し追跡 研究グループが行ったのは、国際第3相無作為化オープンラベル臨床試験Interventional Management of Stroke (IMS)IIIであり、発症後3時間以内にt-PA静注を受けた患者を適格とした。同患者を、さらに血管内治療を行う群またはt-PA静注単独療法とする群に、無作為に2対1の割合で割り付け追跡した。 主要評価項目は、90日時点の修正Rankinスケール(身体機能の自立度を示す、スコア0~6の範囲で、スコアが高いほど機能障害の程度が高い)のスコアが2以下であるとした。 IMS IIIは2006年に登録が開始され、2012年4月に656例(計画では900例であった)が無作為化された時点で、試験の無益性を理由に早期打ち切りとなった。本論文では、事前規定のプロトコルに基づく追跡90日間の主要有効性の結果とサブグループ解析、安全性が報告された。両治療アプローチ間に有意差はみられず 無作為化された656例の内訳は、血管内治療併用群434例、t-PA静注単独群222例であった。 90日時点の修正Rankinスコア2以下の患者の割合は、両治療群間で有意差はみられなかった。血管内治療併用群40.8%、t-PA静注単独群38.7%であった。補正後絶対差は1.5ポイント[95%信頼区間(CI):-6.1~9.1]であり、修正NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)スコアによる階層化別(スコア8~19の中等度群、≧20の重症群)で両治療群を比較しても修正Rankinスコアに有意な差はみられなかった。 事前定義のサブグループでもNIHSSスコア≧20の重症群(両群格差:6.8ポイント、95%CI:-4.4~18.1)でも、同スコア8~19の中等度群(同:-1.0ポイント、-10.8~8.8)でも有意な差はみられなかった。 また、両治療間の90日時点の死亡率(血管内治療併用群19.1%、t-PA静注単独群21.6%、p=0.52)、t-PA静注後30時間以内に症候性脳内出血を呈した患者の割合(それぞれ6.2%、5.9%、p=0.83)についても同程度だった。

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高頻度振動換気法により、成人ARDS患者の院内死亡率が上昇:OSCILLATE試験/NEJM

 中~重度の急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の成人患者に対する早期の高頻度振動換気法(high-frequency oscillation ventilation:HFOV)による治療は、低1回換気量法(low tidal volume)や呼気終末高陽圧換気法(high positive end-expiratory pressure)を用いた治療戦略に比べ予後を改善しないことが、カナダ・トロント大学のNiall D. Ferguson氏らの検討で示された。ARDSは重症疾患で高頻度にみられる合併症で、死亡率が高く、生存例にも長期的な合併症をもたらすことが多い。いくつかの報告により、HFOVは成人ARDS患者の死亡率を抑制することが示唆されているが、これらの試験は比較群が旧式の換気法であったり、症例数が少ないなどの限界があるという。NEJM誌オンライン版2013年1月22日号掲載の報告。HFOVの有用性を最新の換気法と比較 OSCILLATE(Oscillation for Acute Respiratory Distress Syndrome Treated Early)試験は、成人の早期ARDS患者に対するHFOVの有用性を評価する多施設共同無作為化対照比較試験。 対象は、年齢16~85歳、2週以内に肺症状を発症した中~重度のARDS患者とした。これらの患者が、HFOVを行う群または低1回換気量や呼気終末高陽圧換気法を用いた治療戦略を施行する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は院内死亡率とした。院内死亡率:47%vs 35%(p=0.005)、試験は早期中止に 2007年7月~2008年6月まで2ヵ国(カナダ、サウジアラビア)12施設でパイロット試験を行い、引き続き2009年7月~2012年8月まで3ヵ国(米国、チリ、インド)27施設を加えて患者登録を行った。 1,200例を予定していたが、548例の割り付けを行った時点で、HFOV群の高い死亡率が強く示唆されたため、事前に規定された中止基準には抵触していなかったものの、データ監視委員会の勧告により試験は中止された。PaO2:FiO2 HFOV群に275例(平均年齢55歳、女性39%、平均APACHE IIスコア 29、平均PaO2/FiO2 121mmHg)が、対照群には273例(同:54歳、44%、29、114mmHg)が割り付けられた。ベースラインの患者背景は両群間でよくバランスがとれていた。HFOV群のHFOV施行日数中央値は3日、対照群の34例(12%)が難治性の低酸素血症でHFOVを受けた。 院内死亡率はHFOV群が47%と、対照群の35%に比べ有意に高率であった[相対リスク:1.33、95%信頼区間(CI):1.09~1.64、p=0.005]。この院内死亡率はベースラインの酸素供給や呼吸器コンプライアンスの異常とは関連がなかった。 HFOV群は対照群に比べ、鎮静薬(ミダゾラム)の投与量が有意に多く(199mg/日vs 141mg/日、p<0.001)、神経筋遮断薬の投与率(83%vs 68%、p<0.001)が高かった。さらに、HFOV群は血管作用薬の投与率が高く(91%vs 84%、p=0.01)、投与期間も長かった(5日vs 3日、p=0.01)。 著者は、「中~重度の成人ARDS患者に対する早期HFOV療法は、低1回換気量や呼気終末高陽圧換気法による治療戦略に比べ院内死亡率を抑制しない」と結論し、「これらの知見は、たとえ生命を脅かすほど重度の低酸素血症の場合でも、HFOVのベネフィットは確実とはいえないことを示唆する」と指摘している。

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