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家族の関与に負担を感じる?ICU看護師の意識調査【論文から学ぶ看護の新常識】第25回

家族の関与に負担を感じる?ICU看護師の意識調査オランダのICU看護師は、家族が患者ケアに関与することに対して、肯定的ではない意識を抱えていることがIsha Verkaik氏らの研究で示された。Intensive and Critical Care Nursing誌2025年8月号に掲載の報告。集中治療中の成人患者への家族関与の重要性に関する、集中治療室看護師の意識:多施設横断研究研究チームは、看護ケアへの家族の関与に関するICU看護師の意識を明らかにし、人口統計学的および職業的特徴とこれらの意識との関連を調査することを目的に、多施設横断研究を行った。オランダ全土の10病院で実施し、ICU看護師は、家族看護態度調査票(FINC-NA、スコア範囲22〜110点)を含むオンライン質問票に回答した。データは記述統計と重回帰分析を用いて分析した。主な結果は以下の通り。583名のICU看護師がFINC-NAに回答した(回答:42%)。ICU看護師の意識の平均スコアは73.3(標準偏差:8.78)であった。全体として、ICU看護師はケア提供において家族を重要であると認識していた。しかし、「家族の関与を促進する」と「負担としての家族」というサブスケールにおいて、ICU看護師の意識はあまり肯定的ではなかった。家族の関与に対する肯定的な意識が低いことは、週あたりの臨床勤務時間が長いこと、および教育病院ではなく大学病院に勤務していることと、有意に関連していた。ICU看護師は、他の臨床現場の看護師と比較して、家族をケアに関与させることに対する意識があまり肯定的でないことが示された。本研究では、ICU看護師は家族をケア提供において重要だと認識している一方、「家族の関与を促進する」および「家族を負担に感じる」という点では、肯定的ではないことが明らかになりました。とくに、週あたりの臨床勤務時間が長い看護師や、大学病院に勤務する看護師でその傾向がみられることも示されました。この結果は、集中治療という困難な臨床環境に直面する患者の家族に対する看護師の態度を浮き彫りにしています。看護師の役割は、患者だけでなくその家族をもサポートすることに本質があり、家族が役割を果たせることや家族自身の力が発揮できるように支援することは、非常に重要だと考えます。しかし現実は、家族の存在が仕事の負担感の増加やストレス、仕事の妨げとなると感じているICU看護師が多いという結果でした。これは、多忙なICU現場での家族看護実践における課題を示しています。しかし、この結果は、看護師が主導となって家族の関与を推進していくための示唆に富んだ内容でもあります。とくに、ガイドラインの不足が家族の関与を妨げている可能性が指摘されており、現場で活用できる「家族関与のガイドライン」を整備することが、家族のケア参加を推進し、この課題を解決する一歩となると考えます。論文はこちらVerkaik I, et al. Intensive Crit Care Nurs. 2025;89:104065.

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誤嚥性肺炎へのスルバクタム・アンピシリンvs.第3世代セファロスポリン~日本の大規模データ

 誤嚥性肺炎に対する抗菌薬として米国胸部学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)の市中肺炎ガイドライン2019では、セフトリアキソン(CTRX)やセフォタキシム(CTX)などの第3世代セファロスポリンを推奨しており、膿胸や肺膿瘍が疑われない限り、スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)など嫌気性菌に有効な抗菌薬のルーチン投与は推奨されていない。今回、東京大学の谷口 順平氏らは全国DPCデータベースを用いて、誤嚥性肺炎の入院患者に対するこれらの単一抗菌薬治療の有効性を直接比較する大規模研究を実施した。その結果、SBT/ABPCが第3世代セファロスポリン(CTRXが主)より院内死亡率が低く、Clostridioides difficile(C. difficile)感染症の発生率が低いことが示された。Respiratory Medicine誌2025年10月号に掲載。 本研究では、わが国の包括的な全国入院患者データベースであるDPCデータベースを用いて、2010年7月~2022年3月に誤嚥性肺炎と診断された患者を同定し、投与薬剤に基づきSBT/ABPC群と第3世代セファロスポリン(CTRXまたはCTX)群に分けた。交絡因子を調整するため、傾向スコアオーバーラップウェイティングを用いて、両群間の院内死亡率およびC. difficile感染症の発生率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象となった54万8,972例のうち、SBT/ABPC群は42万4,446例、第3世代セファロスポリン群が12万4,526例(CTRX 97.7%、CTX 2.3%)であった。・平均治療期間は、SBT/ABPC群が8.5日(標準偏差[SD]:4.3)、第3世代セファロスポリン群が7.9日(SD:4.1)であった。・傾向スコアオーバーラップウェイティングの結果、SBT/ABPC群のほうが院内死亡率が有意に低く(14.6%vs.16.4%、リスク差[RD]:-1.8%、95%信頼区間[CI]:-2.1~-1.5、p<0.001)、C. difficile感染症発生率も低かった(2.0%vs.2.8%、RD:-0.8%、95%CI:-0.9~-0.7、p<0.001)。 本結果から、著者らは「誤嚥性肺炎に対する抗菌薬選択は、個々の患者の臨床状況に応じて調整する必要があると考えられる」とした。

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治療抵抗性うつ病に対する早期ブレクスピプラゾール補助療法

 うつ病治療では、患者の苦痛を最小限に抑えて、臨床的ベネフィットを最大化するために、可能な限り早い段階で適切な治療を行う必要がある。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & Commercialization Inc.のShivani Kapadia氏らは、うつ病の早期および後期におけるブレクスピプラゾール併用療法の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験の事後解析を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2025年7月3日号の報告。 対象は、抗うつ薬治療で効果不十分な成人の治療抵抗性うつ病外来患者。ブレクスピプラゾール併用療法に関する3件の6週間ランダム化二重盲検プラセボ対照試験のデータを統合した。年齢中央値、診断時年齢、エピソード数、エピソード持続期間、過去に服用していた抗うつ薬数に基づき早期群および後期群に分類した。有効性はMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)総スコアの変化、安全性は治療中に発現した有害事象により評価した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬にブレクスピプラゾール2〜3mg/日を併用した併用群(579例)は、プラセボを併用した対照群(583例)と比較し、6週目のMADRS総スコアの改善(p<0.05)が大きかった。早期群および後期群などのすべてのサブグループにおいて有効であった(範囲:−1.79〜−2.92)。・治療中に発現した有害事象の発生率は、サブグループ全体で併用群53.1〜67.2%、対照群43.0〜51.8%であり、早期群と後期群での差は認められなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾール併用療法は、治療抵抗性うつ病の早期段階において抑うつ症状を改善し、患者および医療制度へのベネフィットを最大化する。うつ病の後期段階においても、ブレクスピプラゾール併用療法の有効性は示されるが、投与を遅らせるメリットは認められない」と結論付けている。

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重篤な慢性疼痛、遠隔・オンライン認知行動療法で改善/JAMA

 通常の慢性疼痛よりも身体活動が制限される可能性が高い、高インパクト慢性疼痛の患者において、通常ケアと比較して遠隔医療または自己完結型のオンライン技術による拡張性のある認知行動療法に基づく慢性疼痛(CBT-CP)治療は、疼痛重症度を有意に軽減し、疼痛に関連する身体機能/生活の質(QOL)にも改善をもたらす可能性があることが、米国・Kaiser Permanente Center for Health ResearchのLynn L. DeBar氏らが実施したRESOLVE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年7月23日号で報告された。米国の第III相無作為化試験 RESOLVE試驗は、高インパクト慢性疼痛の重症度の軽減における遠隔またはオンラインでのCBT-CP治療の相対的な有効性の評価を目的とする第III相無作為化試験であり、2021年1月~2023年2月に米国の4つの保健システムから患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 年齢18歳以上、Graded Chronic Pain Scale-Revisedの基準で筋骨格系の高インパクト慢性疼痛と判定され、英語での会話およびインターネットか電話での通信が可能で、電子健康記録(EHR)に基づく臨床的な基準を満たす患者を対象とした。 被験者を、次の3つの群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。(1)健康指導員群:CBT-CP治療に基づく、指導員による1対1での技能訓練(8つのセッション)を、電話またはビデオカンファレンス(被験者の好みでいずれかを選択)で受ける、(2)painTRAINER群:CBT-CP治療に基づく、オンラインでの技能訓練(8つのセッション)を無料のサイト(painTRAINER)で受ける、(3)通常ケア群:米国慢性疼痛協会(ACPA)の疼痛管理リソースガイド(2020年版)のコピーを受け取る。 主要アウトカムは、ベースラインから3ヵ月後までの、11項目の簡易疼痛質問票(短縮版)(Brief Pain Inventory-Short Form:BPI-SF)の疼痛重症度スコアの臨床的に意義のある最小変化量(MCID)(30%以上の低下)の達成とした。オンラインより指導員で高い効果 2,331例(平均年齢58.8歳、女性1,712例[74%]、農村部/医療過疎地域在住者1,030例[44%])を登録し、健康指導員群に778例、painTRAINER群に776例、通常ケア群に777例を割り付けた。2,210例(94.8%)が試験を完了した。 3ヵ月の時点で、疼痛重症度スコアのMCID(30%以上の低下)を達成した患者の補正後の割合は、健康指導員群が32.0%(95%信頼区間[CI]:29.3~35.0)、painTRAINER群が26.6%(23.4~30.2)、通常ケア群は20.8%(18.0~24.0)であった。 通常ケア群に比べ2つの介入群はいずれも、疼痛重症度のMCID達成率が有意に高く(通常ケア群に対する健康指導員群の相対リスク[RR]:1.54[95%CI:1.30~1.82]、通常ケア群に対するpainTRAINER群のRR:1.28[1.06~1.55])、オンラインでの自己完結型のpainTRAINERプログラムよりも健康指導員で高い効果が得られた(painTRAINER群に対する健康指導員群のRR:1.20[1.03~1.40])(オムニバス検定p<0.001)。副次アウトカムも介入群で良好 副次アウトカムであるベースライン時から6ヵ月後および12ヵ月後の疼痛重症度のMCID達成率、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月後の疼痛強度のMCID達成率、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月後の疼痛関連障害(pain-related interference)スコアのMCID達成率は、いずれも通常ケア群に比べ2つの介入群で有意に優れ、全般的にpainTRAINER群より健康指導員群で良好であった。 著者は、「これらのCBT-CP治療は医療資源の消費が少なく、医療システム内でエビデンスに基づく非薬物療法による疼痛治療の利用可能性を向上させると考えられる」「電話/ビデオカンファレンスおよびオンライン介入によるCBT-CP治療に基づくプログラムの提供を集約化することが効果的であり、今後、全国の臨床組織や医療機関に広く普及する可能性があると示唆される」としている。

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大気汚染物質への曝露は髄膜腫リスクを高める

 大気汚染物質を吸い込む量が多い人は、髄膜腫と呼ばれる脳腫瘍のリスクが高いことが、新たな研究で示された。髄膜腫は、脳や脊髄を覆う組織の層にできる脳腫瘍の中でも発生頻度が高い腫瘍だが、ほとんどは良性である。この研究では、粒子状物質や二酸化窒素など複数の種類の大気汚染物質が髄膜腫のリスクを高める可能性のあることが示された。デンマークがん研究所のUlla Hvidtfeldt氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に7月9日掲載された。Hvidtfeldt氏は、「さまざまなタイプの大気汚染物質が健康に悪影響を与えることが示されてきた。このうち超微小粒子は極めて小さく、血液脳関門を通過できるため、脳組織に直接的な影響を与える可能性がある」と話している。 米クリーブランド・クリニックによると、米国では毎年17万人以上が髄膜腫と診断されている。髄膜腫の症状は、頭痛、めまい、吐き気、視力の変化、難聴、けいれん、記憶障害、筋力低下または麻痺、行動や性格の変化などで、主な治療法は手術や放射線療法、化学療法である。  Hvidtfeldt氏らは今回の研究で、デンマークの成人395万9,619人(平均年齢35歳、女性49.6%)を対象に、21年間にわたって追跡し、大気汚染物質への曝露と中枢神経腫瘍(脳や脊髄の腫瘍)との関連を検討した。追跡期間中に1万6,596人が中枢神経腫瘍を発症しており、そのうち4,645人は髄膜腫だった。大気汚染物質は、直径0.1μm未満の超微小粒子、直径2.5μm以下の微粒子物質(PM2.5)、二酸化窒素、元素状炭素を対象とし、10年間の平均曝露量を住所から推定した。 その結果、髄膜腫の発症率は、大気汚染物質への曝露量が最も少なかった人で0.06%であったのに対し、最も多かった人では0.2%と約3倍に達していたことが明らかになった。対象とした各大気汚染物質への曝露量が四分位範囲当たり増加するごとの髄膜腫発症のハザード比は、二酸化窒素が(8.3μg/m3増加)で1.12、直径0.1μm未満の超微小粒子(5,747個/cm3増加)で1.10、PM2.5(0.4μg/m3増加)で1.21、元素状炭素(4μg/m3増加)で1.03であった。ただし、これらの大気汚染物質とより悪性度の高いタイプの脳腫瘍の間には明確な関連は認められなかった。 Hvidtfeldt氏は、「われわれの研究は、交通やその他の原因による大気汚染物質への長期的な曝露が髄膜腫の発症に関与している可能性があることを示唆している。またこの研究は、大気汚染が心臓や肺だけでなく脳にも影響を及ぼすというエビデンスの蓄積にも寄与するものだ」と付け加えた。 さらにHvidtfeldt氏らは、この研究デザインでは大気汚染物質と髄膜腫に直接的な因果関係があることは証明できず、今回はこれらの間の関連性を示したに過ぎないことも付け加えている。Hvidtfeldt氏は、「この結果を確認するためにさらなる研究が必要だが、もし、大気の清浄化によって脳腫瘍のリスクが下がるのであれば、公衆衛生に大きな変化をもたらす可能性がある」と話している。

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米国で肥満関連がんによる死亡が20年で3倍以上に

 米国では過去20年間で、肥満に関連するがんによる死亡が3倍以上に増加したとする研究結果が、米国内分泌学会(ENDO2025、7月12~15日、サンフランシスコ)で発表された。米ハッケンサック・メリディアン・ジャージーショア大学医療センターのFaizan Ahmed氏らが報告した。 Ahmed氏らの研究によって、肥満関連の13種類のがんによる米国での死亡率が、1999年から2020年の間に、100万人当り3.7人から13.5人に増加したことが明らかにされた。主任研究者である同氏は、「肥満は多くのがんの重大な危険因子であり、死亡率の上昇に寄与している」と解説。また、「われわれの研究から、特に農村部や医療サービスが行き届いていない地域で、肥満に関連するがんによる死亡のリスクが高いことも示された」としている。 研究者らは、研究背景の説明の中で、米国の成人の40.3%が肥満であり、肥満関連のがんは、同国で毎年診断されるがん全体の約40%を占めていると述べている。肥満関連のがんとは、具体的には食道がん、乳がん、大腸がん、子宮がん、胆嚢がん、胃がん、腎臓がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、甲状腺がん、脳腫瘍の一種である髄膜腫、そして血液がんの一種である多発性骨髄腫が該当するという。 今回発表された研究では、米疾病対策センター(CDC)のデータを用いて肥満関連のがんによる死亡例3万3,572件を特定し、その経時的な推移を解析した。その結果、肥満関連のがんによる死亡率は1999年から2020年の間に、平均すると1年に6%近くのスピードで増加していた。特に、2018年から2020年にかけての死亡率の増加は、平均で19%以上と急速なものだった。 この研究ではまた、女性、高齢者、黒人、ネイティブアメリカン、農村部の居住者など、特定のグループで、肥満関連のがんによる死亡率の増加が顕著であることも明らかになった。肥満関連のがんによる死亡率を地域で比較すると、中西部が100万人当たり約8人と最も高く、反対に北東部は同6人未満と最も低かった。研究者らは、「このような傾向のあることを踏まえると、肥満関連のがんの予防措置、早期スクリーニング、医療アクセスの公平性の確保など、的を絞った公衆衛生対策が極めて重要と考えられる」と結論付けている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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バイオニック膝関節を用いた義足で下肢切断患者の動きが改善

 「より良く、より強く、より速く」。これはテレビドラマシリーズ『600万ドルの男(Six Million Dollar Man)』に登場するバイオニック・マンのキャッチフレーズだが、近い将来、足を膝上で切断した人にも同じ言葉が当てはまるようになるかもしれない。米マサチューセッツ工科大学(MIT)K. Lisa Yangバイオニクス・センター共同ディレクターのHugh Herr氏らが、オッセオインテグレーテッド・メカノニューロナル人工装具(OMP)と呼ばれるバイオニック膝関節を用いた義足(以下、バイオニック義足)によって切断患者の歩行速度が向上し、階段の昇降も楽になり、障害物をうまく避けられるようになったとする研究結果を、「Science」に7月10日発表した。 Herr氏らによると、一般的な切断例に対して作られる義足は、切断された足の残存部分に差し込むソケットを備えている。それに対し、このバイオニック義足は骨に直接固定され、神経系によって直接制御される組織統合型の人工装具であり、ユーザーの筋肉や骨組織と一体化することで、より高い安定性と動作のコントロール性の向上を実現させるという。実際、このバイオニック義足を装着した2人の被験者は、「義足が自分の体の一部であるかのように感じた」と話したという。 このバイオニック義足は、切断部位に残された大腿骨にチタン製の棒状のロッドを挿入することで、従来の義足よりも優れた機械的制御と荷重支持が可能になる。論文の筆頭著者であるMITのTony Shu氏は、「われわれの義足は、荷重に耐える構造と考えられている骨格に直接荷重をかけるようになっている。これに対し、従来のソケット式の義足は不快感を伴いやすく、皮膚感染を引き起こしやすい」とニュースリリースの中で述べている。 埋め込まれたロッドには、切断された足に残存する筋肉から情報を収集するためのワイヤーと電極も組み込まれている。収集されたデータはロボット制御装置に送られ、ユーザーが意図した通りに義足を動かすために必要なトルク(回転力)の計算に用いられるという。Shu氏は、「身体とデバイス間の情報伝達と機械的な接続を向上させるために、全てのパーツが連携して動くようになっている」と言う。 今回、男女2人の被験者が、切断部位の主動筋と拮抗筋を人工的に連結し、残存神経をこれらの筋に接合させる手術(agonist-antagonist myoneuronal interface;AMI)を受け、バイオニック義足を装着。この2人の運動機能の改善状況を、AMIは受けたがバイオニック義足は装着していない8人と、AMIとバイオニック義足装着のいずれも受けていない7人の計15人の改善状況と比較した。 その結果、AMIを受けバイオニック義足を装着した2人では、AMIは受けたがバイオニック義足は装着していない被験者や、従来型の義足を装着した被験者と比べて、歩く、指定角度まで膝を曲げる、階段を上る、障害物をまたぐといった動作がより優れていたことが示された。 Herr氏は、「ロボット義足のAIシステムの精度をどんなに高めても、ユーザーにとっては外部装置のようにしか感じられなかった。しかし、この組織統合型のアプローチでは、ユーザーに『どこまでがあなたの体ですか?』と尋ねた場合、統合が進んでいれば進んでいるほど、ユーザーが『義足も自分の一部だ』と回答する可能性が高まるのだ」と述べている。 なお、OMPシステムが米食品医薬品局(FDA)の承認を得るためにはより大規模な臨床試験が必要であり、承認までには5年程度かかる可能性があるとHerr氏は話している。

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小児用ワクチン中のアルミニウム塩は慢性疾患と関連しない

 120万人以上を対象とした新たな研究で、小児用ワクチンに含まれるアルミニウム塩と自閉症、喘息、自己免疫疾患などの長期的な健康問題との間に関連は認められなかったことが示された。アルミニウム塩は、幼児向け不活化ワクチンの効果を高めるためのアジュバントとして使用されている。スタテンス血清研究所(デンマーク)のAnders Hviid氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。 アルミニウム塩はワクチンのアジュバントとして長年使われているものの、アルミニウム塩が慢性自己免疫疾患やアトピー性皮膚炎、アレルギー、神経発達障害のリスクを高めるのではないかとの懸念から、ワクチン懐疑論者の標的にもなっている。 今回Hviid氏らは、デンマークで1997年から2018年の間に生まれ、2歳時にデンマークに居住していた122万4,176人の児を対象に、ワクチン接種によるアルミニウム塩への累積曝露量と慢性疾患との関連を検討した。対象児は2020年まで追跡された。アルミニウム塩の累積曝露量は生後2年間に接種したワクチンに含まれる成分から推算し、曝露量1mg増加ごとのリスクを検討した。アウトカムとした慢性疾患は、以下の3つの疾患グループに分類される50種類の疾患であった。すなわち、自己免疫疾患として皮膚・内分泌・血液・消化管に関わる疾患とリウマチ性疾患が36疾患、アトピー性またはアレルギー性疾患として喘息、アトピー性皮膚炎、鼻結膜炎、アレルギーなど9疾患、神経発達障害として自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など5疾患である。 その結果、生後2年間のアルミニウム塩の累積曝露量は、対象とした50種類の疾患のいずれについても、発症率の増加とは関連していないことが示された。疾患グループ別に見ると、アルミニウム塩曝露量が1mg増加するごとの調整ハザード比は、自己免疫疾患で0.98(95%信頼区間0.94~1.02)、アトピー性・アレルギー性疾患で0.99(同0.98~1.01)、神経発達障害で0.93(同0.90~0.97)であった。 Hviid氏は、「これらの結果は、アルミニウム塩に対する懸念の多くに対処し、小児用ワクチンの安全性について明確かつ強固なエビデンスを提供している」と述べるとともに、「この結果は、親が子どもの健康のために最善の選択をする必要があることを示すエビデンスでもある」と付け加えている。 なお、この研究は、2022年に米疾病対策センター(CDC)の資金提供を受けて実施された、アルミニウム塩含有ワクチンと喘息の関連性を示唆した研究に対する反論として実施された。同研究はその後、ワクチンに含まれるアルミニウム塩と、食品、水、空気、さらには母乳など他の発生源由来のアルミニウムを区別できていなかったとして批判されている。  米フィラデルフィア小児病院ワクチン教育センター所長のPaul Offit氏も、「ワクチンによるアルミニウム塩曝露量が多い人と少ない人を比較する場合、交絡因子をコントロールし、これらの人が摂取したアルミニウム塩供給源がワクチンに限定されていることを知る必要がある」と指摘している。 米国では、アルミニウム塩はジフテリア・破傷風・百日咳(DTaP)ワクチンのほか、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)、B型肝炎ワクチン、肺炎球菌ワクチンにも使用されている。接種したアルミニウム塩は大部分が2週間以内に体内から排出されるが、微量のアルミニウム塩は何年も体内に残ることがある。専門家らは、単一の研究で何かが安全であると証明することはできないものの、この研究は、ワクチンに含まれるアルミニウム塩が無害であることを示してきた過去の研究成果に加わるものであるとの見解を示している。

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自分のトリセツを知るとだいぶ楽になる(解説:岡村毅氏)

 認知行動療法について、皆さんはどのくらい知っているだろうか? 医療が「悪いところを取る」「折れたものをつなげる」「薬を飲んで治す」といった領域だけだと思っているシンプルな人にはなかなかわかってもらえない。大学生などに説明するときに使っているのは「自分のトリセツを知ることだ」という説明である。 たとえば、こうである…。最近とても暑いので、精神科の外来では調子の悪いパニック症の人によく出会う。「空気が熱いと息苦しい感じがする。パニック発作のときみたいな体験をする。そうなると不安が亢進し、呼吸が速くなり、確かにパニック発作が起きてしまう」と説明すると、多くの患者さんは良くなる。自分の身に何が起きているかわかるからである。 相手によっては、さらに畳み掛ける。「人間なんて天候に左右される弱い存在なのです。暑すぎると調子が悪い、雨だと気分が沈む。そういうものです」と言うと、ハッとする人もいる。別に大したことは言っていないのだが、自分が弱い存在だということをつい忘れてしまっているのだ。私に言わせれば、これも認知行動療法の原型である。 さて、慢性疼痛に対して認知行動療法が効くことはずいぶん前からわかっていた。身体が損傷を受ければ痛みが生じる。これが急性の疼痛である。ところが、その時期を過ぎても延々と痛みが続くものが慢性疼痛である。慢性疼痛には複合的な要因があり、もちろん心理的要因も大きい。痛みが続くと気持ちが沈み、痛みが来たらどうしようといつも構えていると、身体が緊張して、より一層痛みが生じる、というようなことも起こる。いつも痛みのことを考えていると、症状がより目立ってしまうということもあるだろう(読者の皆さま、40歳を過ぎるといつもどこか微妙に痛くないですか?)。 ただし、認知行動療法をするために医療機関等を受診するのは大変である。そこで本研究は、(1)電話やオンライン会議を用いた1対1の認知行動療法、(2)e-learningのようなオンライン教材、(3)相談先や対処方法の情報を渡す(これが対照群である通常のケア)に分けて比較している。臨床的に意味のある改善は、(1)は(3)に比べて1.54倍、(2)は(3)に比べて1.28倍得られた。 オンラインの1対1の認知行動療法ができればよいし、それが無理でもオンラインの自己学習型のプログラムでも十分効果があるということだ。なお、このオンラインプログラムは実は無料で公開されている(painTRAINER)。 となると、オンラインの認知行動療法と、対面の(リアルの)認知行動療法は違うのだろうか、という疑問が生じる。うつ病に関してはメタアナリシス(文献)があり、効果は同等、ただし対面のほうが脱落率は低い。まあそうだろうな、という結果だ。知識として自分のトリセツを知る分にはオンラインでも対面でも変わらないが、人と人が数十センチの距離で対峙するとき、さまざまな不確実な事象が起こり、これが対面の心理療法の醍醐味だ、というのが精神科医である私の見解だ。

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心房細動による脳塞栓症に対するDOAC開始のタイミング(解説:内山真一郎氏)

 心房細動による脳塞栓症の再発予防に直接経口抗凝固薬を開始する適切なタイミングは確立されていなかった。本研究は、脳梗塞後の開始時期が4日以内と5日以後の効果を比較した4件の無作為化比較試験(TIMING、ELAN、OPTIMAS、START)のメタ解析である。1次評価項目は、30日以内の脳梗塞再発、症候性脳内出血、または分類不能の脳卒中であった。 結果は、4日以内に開始したほうが1次評価項目の複合エンドポイントが有意に少なく、脳梗塞の再発は少なく、脳内出血は増加しなかった。日本脳卒中学会の『脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2025)』でも、「非弁膜症性心房細動を伴う急性期脳梗塞患者に、出血性梗塞のリスクを考慮して発症早期(例えば発症後4日以内)から直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を投与することは妥当である(推奨度B、エビデンスレベル中)」となっており、このメタ解析により推奨度とエビデンスレベルは確実に上昇した。ちなみに、日本で行われた観察研究であるSAMURAI-AFとRELAXEDの統合解析から、DOACの開始時期はTIA、軽症、中等症、重症別に「1-2-3-4 day rule」が提唱されている。

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U=Uは、母子感染予防にも適応できるか?(解説:岡慎一氏)

 HIVの母子感染予防を論じた論文である。その前に、U=Uについて簡単に解説しておく。U=Uとは、「治療で血中のウイルス量(VL)が検出限界以下(<50copies/mL)になれば、HIVはうつらない:Undetectable equals Untransmittable」を略したものである。U=Uは、782組の片方がHIV+で治療を受けていてVLが検出限界以下、片方がHIV-のゲイカップルが、2年間に7万6,088回のコンドーム無しの肛門性交を行っても感染はゼロであったという、臨床試験の結果から導き出された結論である。 今回の論文は、「最も感染リスクが高いコンドーム無しの肛門性交でもうつらないのであるから、母子感染も大丈夫ではないか?」という疑問に答えるものである。母子感染には、妊娠中、出産時、授乳時という3つの場面がある。4,675例の妊婦の出産データから、妊娠前からHIVがわかっており、治療により妊娠期間中VLが検出限界以下の場合、母子感染はゼロで、出産に関してはU=Uが示された。出産方法に関しては、経膣分娩でも帝王切開でもウイルス量にかかわらず感染率に差はなかった。また、データが不十分ではあるが、母乳に関しては、ウイルスが検出限界以下でも、感染率は0.1%と非常に低いもののゼロではなかった。 日本では、感染妊婦への治療は行われており、帝王切開で出産し、新生児への6週間のAZT投与を行い人工乳で育てることが多い。母子感染リスクだけで言うならば、帝王切開に関しては、見直してもよいのかもしれない。また、U=U出産新生児には、AZTは不要かもしれない。幸い日本では、感染妊婦は少ない。このため、本邦における限られたデータでは、独自のガイドライン作成は困難である。今後の日本の母子感染予防ガイドラインを改訂する際に参考にすべき論文である。

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固定用量の潰瘍性大腸炎治療薬「ベルスピティ錠2mg」【最新!DI情報】第44回

固定用量の潰瘍性大腸炎治療薬「ベルスピティ錠2mg」今回は、スフィンゴシン 1-リン酸受容体(S1P1,4,5)調節薬「エトラシモドL-アルギニン(商品名:ベルスピティ錠2mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、1日1回の固定用量での経口投与が可能な中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療薬であり、患者QOLの向上が期待されています。<効能・効果>中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2025年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはエトラシモドとして2mgを1日1回経口投与します。<安全性>重大な副作用として、黄斑浮腫(0.1%)、感染症(0.9%)、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)、リンパ球数減少(5.8%、28.0%)注)、リンパ球減少症(7.8%、10.8%)注)、肝機能障害(0.7%)、徐脈性不整脈(徐脈:1.5%、房室ブロック:0.6%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)があります。その他の副作用として、浮動性めまい、頭痛、γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加(いずれも1%以上)、高コレステロール血症、傾眠、悪心、潰瘍性大腸炎、腹部膨満、嘔吐、ALT増加、肝酵素上昇、AST増加(いずれも0.3~1%)、尿路感染、好中球減少症、高カリウム血症、食欲減退、頭部不快感、片頭痛、視力障害、耳鳴、高血圧、口内炎、寝汗、発熱、疲労、非心臓性胸痛、無力症、血中アルカリホスファターゼ増加、体重減少(いずれも0.3%未満)があります。注)発現頻度は以下の順:本剤2mgを投与された日本人を含む1,037例(6試験、最長投与期間163.0週、投与期間の中央値49.57週)、本剤2mgを投与された日本人93例(4試験、最長投与期間203.0週、投与期間の中央値78.14週)<患者さんへの指導例>1.この薬は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎に用いられる薬です。炎症部位に到達するリンパ球数が減少することで、潰瘍性大腸炎の症状を改善すると考えられています。2.これまで、他の薬物療法で適切な治療を行っても潰瘍性大腸炎の症状が残っている場合に使用されます。3.失神、浮動性めまい、息切れなどの症状が現れた場合は、ただちに医師に相談してください。とくにこの薬の使用を開始してから早い時期に注意が必要です。4.視覚異常(視野の中に見えない部分がある、物がゆがんで見える、視野の中心が暗くなる、色が見分けにくい)が現れた場合は、ただちに医師に相談してください。5.この薬の投与開始12週後までに効果が得られない場合は、他の治療に切り替えることがあります。6.妊婦または妊娠している可能性のある女性は服用できません。<ここがポイント!>潰瘍性大腸炎(UC)は、再燃と寛解を繰り返す慢性炎症性腸疾患です。病因は完全には解明されていませんが、腸管局所における異常な免疫応答、それに続くリンパ節から消化管内の炎症部位へのリンパ球の遊走が病態形成に深く関与していると考えられています。薬物治療には、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤やステロイドが用いられます。ステロイドに抵抗性を示す場合は、タクロリムス、生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬などが寛解導入のために用いられます。エトラシモドL-アルギニンは、S1P受容体のサブタイプ1、4、5(S1P1,4,5)に選択的に作用し、炎症部位へのリンパ球の遊走を減少させることで、腸の炎症を抑制します。S1P受容体調節薬としては、オザニモドが2024年12月に承認されましたが、中等度以上の肝障害に対する使用制限や初回投与時から用量を漸増する必要があるなどの注意点があります。これに対して、エトラシモドは肝機能による使用制限がなく、1日1回の固定用量で経口投与できるため、肝機能に異常がある患者や初期の用量調節が困難な患者にとって、より使用しやすい選択肢となる可能性があります。中等症~重症の活動期にあるUC患者に対する寛解導入試験のAPD334-302/ELEVATE UC12試験(国際共同第III相試験)において、12週時(導入期)の臨床的寛解率は、プラセボ群の15.2%に対し、本剤2mg/日群は24.8%であり、本剤2mg/日群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(p=0.026、Mantel-Haenszel法による層別因子)。

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第278回 自己免疫疾患の電気治療を米国が初承認

自己免疫疾患の電気治療を米国が初承認自己免疫疾患の関節リウマチ(RA)を治療する迷走神経刺激(VNS)装置を米国FDAが承認しました1,2)。米国の医療機器会社SetPoint Medicalが開発し、製品名は同社の名を冠してSetPoint Systemといいます。SetPoint Systemは免疫系を調節する神経刺激(神経免疫調節)機器であり、自己免疫疾患への使用が承認された初の神経刺激装置となりました。他の自己免疫疾患と同様にRAも過剰な炎症反応を誘発する免疫の組織攻撃で生じ、痛みや腫れを引き起こし、ひどくすると内臓をも傷めます。RAの治療に使われる薬の多くは免疫系を抑制する作用があり、副作用としてがんや感染症を生じやすくする恐れがあります。治療が不十分な場合は多いらしく、米国のRA患者を調べた試験では4例に3例ほどが治療に満足していませんでした3)。治療が億劫になることも少なくないようで、多ければ2例に1例が薬物治療を2年以内に止めてしまうようです1)。既存のRA治療と異なり、SetPoint Systemは電気で迷走神経を刺激し、体にもともと備わる仕組みを活性化して炎症を鎮めて免疫を正常化します。SetPoint Systemはカプセル剤ほどの小粒な機器です。外来での手術で首の片方の迷走神経に沿わすように植え込んで使用します。長ければ10年間自動で迷走神経を1日1回電気で刺激し、迷走神経とつながる脾臓の免疫反応を調節します。SetPoint Systemの効果や安全性は中等~重度RA患者242例が参加した二重盲検無作為化RESET-RA試験で裏付けられています。SetPoint Systemが植え込まれて実際に電気刺激された患者のおよそ35%(35.2%)が12週間でACR20(20%以上のRA症状改善)を達成しました4)。SetPoint Systemを植え込みはしたものの目当ての電気刺激はしなかった偽治療群のACR20達成率は24%でした。RESET-RA試験を率いたリウマチ医のJohn Tesser氏によると、同試験でのSetPoint Systemの効果は1年後までの経過観察でも認められており、4例に3例が抗リウマチ薬なしで1年時点を迎えることができています。免疫を害さずRAを治療しうるSetPoint Systemは、免疫低下の代償と引き換えのこれまでのRA治療を刷新しうるとSetPoint Medical社は期待しています。SetPoint Systemの用途はどうやらRAにとどまらず、多発性硬化症やクローン病などの他の自己免疫疾患も治療できる可能性があります。実際、多発性硬化症患者を対象とした手始めの臨床試験の開始が昨年の10月初めまでに米国FDAに許可されており5)、Clinicaltrials.gov登録情報によると同試験は間もなく来月9月末に始まります6)。 参考 1) SetPoint Medical Receives FDA Approval for Novel Neuroimmune Modulation Therapy for Rheumatoid Arthritis / BusinessWire 2) Vagus nerve stimulation receives US approval to treat arthritis / NewScientist 3) Radawski C, et al. Rheumatol Ther. 2019;6:461-471. 4) SetPoint Medical Announces Late-Breaking Data from RESET-RA Study at ACR Convergence 2024 / BusinessWire 5) SetPoint Medical Receives FDA’s IDE Approval for U.S. Pilot Study of Neuroimmune Modulation Platform in Adults with Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis / BusinessWire 6) The SetPoint System as a Pro-Remyelination Therapy for Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis: A Pilot Study / Clinicaltrials.gov

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肺がん個別化医療のさらなる進展を目指し、サーモフィッシャーと戦略的提携/国立がん研究センター

 国立がん研究センター東病院は、2025年7月28日、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループと戦略的提携を締結。非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした新たなマルチ遺伝子検査システム「Oncomine Dx Express Test」の臨床導入を目指す。 このシステムはサーモフィッシャーサイエンティフィックの次世代シーケンサー(NGS)「Ion Torrent Genexusシステム」を用いており、高速自動解析により24時間以内に解析結果を提供可能である。これにより、進行肺がん患者の検体から複数の遺伝子を迅速に診断できるようになり、最適な精密医療の推進が期待される。 現在、進行肺がんの治療にはEGFR、ALK、ROS1、BRAF、RET、MET、HER2、KRAS、NTRK1-3などの遺伝子異常を標的とする分子標的薬が推奨されている。しかし、既存のNGS検査は結果判明までに約2~3週間かかることから、結果を確認する前に分子標的薬以外の通常の抗がん剤で治療を開始しなければならない状況もあったという。 国立がん研究センター東病院が主導する「LC-SCRUM-Asia」では、同システムの研究用プロトタイプを2020年9月から導入し、約1万1,000例の肺がん臨床検体の解析実績がある。今回の提携では、この蓄積データを活用し、「Oncomine Dx Express Test」の臨床性能を検証することで、早期の臨床応用、薬事承認、保険収載、そして全国的な普及を目指す。 今回の提携により、日本における肺がんのプレシジョンメディシンを一層推進するものと期待される。

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日本の認知症動向、その傾向と地域差

 アルツハイマー病やその他の認知症は、深刻な公衆衛生上の懸念事項であり、日本においてはさらに重要な課題となっている。ベトナム・RMIT University VietnamのDeepak Kumar Behera氏らは、アルツハイマー病やその他の認知症負担の経時的傾向を調査し、関連するリスク因子を特定し、時系列モデリングを用いて将来予測を行った。Alzheimer's & Dementia誌2025年7月号の報告。 世界疾病負担(GBD)研究2021のデータを用いて、日本におけるアルツハイマー病やその他の認知症の傾向を分析し、罹患率、死亡率、障害調整生存年(DALY)を評価した。リスク因子の特定には回帰分析を、2021〜30年までの疾病負担の予測には自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・日本におけるアルツハイマー病やその他の認知症は、着実に増加しており、2030年まで引き続き増加すると予測された。・高齢化および平均寿命の延長が主な因子として特定された。・関東や関西の都市部では、東北や九州よりも有病率が高かった。・高空腹時血糖値、肥満、喫煙は、重要な修正可能なリスク因子であった。・ARIMAモデルでは、継続的な増加傾向が予測され、公衆衛生上の課題の深刻さを浮き彫りにする結果であった。 著者らは「日本におけるアルツハイマー病やその他の認知症の負担を軽減するためには、対象を絞った介入、早期介入、公平な医療アクセスが不可欠である」と議論し、「高齢化に伴い、アルツハイマー病やその他の認知症が増加している。高空腹時血糖値、肥満、喫煙などが、主なリスク因子であることも明らかとなった。とくに関東や関西の都市部では、他の地域よりも有病率が高く、2030年まで継続的に増加すると予測される。これらの負担を軽減するためにも、的を絞った医療政策と予防策が求められる」とまとめている。

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monarchE適格基準を満たす乳がんの予後、サブグループ間でばらつき

 monarchE試験において、高リスクHR+/HER2-早期乳がんに対する術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加のベネフィットが示されているが、高リスク患者のサブグループごとの再発リスクの差異については不明である。そこで、国立がん研究センター中央病院の星野 舞氏らは自施設の症例を対象に、monarchEコホート1の適格基準(リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個で腫瘍径5cm超または組織学的グレード3)のサブグループ別に予後を解析したところ、ばらつきがあることが示された。Breast Cancer誌オンライン版2025年7月28日号に掲載。 本研究は、2017年1月~2019年8月に国立がん研究センターで手術を受けたHR+/HER2-乳がん患者989例を後ろ向きに解析した。患者を非適格群(monarchEコホート1適格基準を満たさない)、N1+>5cm群(腫瘍径5cm超かつリンパ節転移1~3個)、N1+G3群(組織学的グレード3かつリンパ節転移1~3個)、≧N2群(リンパ節転移4個以上)の4群に分け、無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無病生存期間、全生存期間を含む生存アウトカムを、Kaplan-MeierモデルおよびCox比例ハザードモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・5年iDFS率は、非適格群94.7%、N1+>5cm群88.9%、N1+G3群83.3%、≧N2群77.3%であった(p<0.001)。・多変量解析では、予後不良因子としてN1+G3(ハザード比[HR]:3.38、p=0.005)、≧N2(HR:3.39、p<0.001)、術前化学療法(HR:2.71、p=0.003)が同定された。 これらの結果から著者らは、「HR+/HER2-乳がんにおける術後療法のベネフィットを最適化するために、個別のリスク評価が鍵となるだろう」とまとめている。

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マラリア抑制にイベルメクチンが有効/NEJM

 イベルメクチンは、内部寄生虫と外部寄生虫の双方に有効なエンデクトサイドであり、集団投薬によりオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症の伝播を抑制することが知られている。スペイン・ISGlobalのCarlos Chaccour氏らは「BOHEMIA試験」において、マラリアが高度に蔓延した地域に居住する小児では、アルベンダゾールと比較してイベルメクチンの集団投薬は、マラリア感染率が有意に低く、安全性に関する懸念はみられないこと示した。研究の成果は、NEJM誌2025年7月24日号に掲載された。ケニア・クワレ郡でのクラスター無作為化試験 BOHEMIA試験は、マラリア伝播の抑止におけるイベルメクチンの安全性と有効性の評価を目的とする非盲検評価者盲検クラスター無作為化対照比較試験であり、ケニア海岸地帯のマラリアが蔓延し、殺虫処理済みの蚊帳の普及率と使用率が高い地方(クワレ郡[人口86万6,820人])で、クラスターとして世帯地域を登録した(Unitaidの助成を受けた)。 世帯地域クラスターを、イベルメクチン(400μg/kg体重)の集団投薬を行う群またはアルベンダゾール(400mg、実薬対照)の集団投薬を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。短期の雨季(“short rains”season)の始まり(2023年10月)に合わせて投薬を開始し、月1回、3ヵ月連続で投与した。年齢5~15歳の小児において、1回目の投与から6ヵ月間、マラリア感染の検査を月1回行った。 主要アウトカムは、マラリア感染の累積発生率(年齢5~15歳の小児[有効性コホート]で評価)と、有害事象の累積発生率(適格基準を満たしたすべての参加者[安全性コホート]で評価)の2つとした。10~15歳や男児で発生率が高い 84地域(2万8,932例、年齢5~15歳の小児2,871例)を登録し、両群に42地域ずつを割り付けた。両群とも参加者の93%以上が少なくとも2回の試験薬の投与を受けた。全体の平均年齢はイベルメクチン群が25.4歳、アルベンダゾール群が25歳、女性の割合はそれぞれ51.2%および49.8%であり、有効性コホートの小児の平均年齢は9.7歳および9.5歳、女児の割合は49.4%および49.9%であった。 1回目の投与から6ヵ月後の時点での、感染リスクのある小児におけるマラリア感染の粗累積発生率は、アルベンダゾール群が1人年当たり2.66件であったのに対し、イベルメクチン群は2.20件と有意に低率であった(補正後発生率比:0.74[95%信頼区間[CI]:0.58~0.95]、p=0.02)。 また、5~10歳に比べ>10~15歳(補正後発生率比:1.09[95%CI:1.00~1.20])、女児に比べ男児(1.09[1.01~1.17])、ベースラインの小児におけるマラリア感染の有病率が30%以下の地域に比べ30%超の地域(2.73[1.93~3.87])で、アルベンダゾール群に対するイベルメクチン群のマラリア発生の率比が高く、人口密度が613人/km2以下の地域に比べ613人/km2超の地域(0.73[0.54~0.99])、相対的に貧困な世帯に比べ富裕な世帯(0.67[0.54~0.83])では率比が低かった。試験薬関連の重篤な有害事象はなかった 妊娠以外に関連した重篤な有害事象が17例に17件発現し、9例(2例がイベルメクチン群)が死亡、7例(3例がイベルメクチン群)が入院したが、試験薬に関連したものはないと考えられた。投与100回当たりの重篤な有害事象の発生率には両群間に差を認めなかった(イベルメクチン群0.023[95%CI:0.010~0.051]vs.アルベンダゾール群0.037[0.016~0.082]、発生率比:0.63[95%CI:0.21~1.91]、p=0.46)。 参加者2万657例(イベルメクチン群9,662例、アルベンダゾール群1万995例)に、5万6,003回の投与が行われ(2万6,028回がイベルメクチン群)、1,975例に2,796件(1,651件がイベルメクチン群)の有害事象が発現した。投与100回当たりの有害事象発生率は、イベルメクチン群が6.19件(95%CI:4.92~7.77)、アルベンダゾール群は3.75件(2.98~4.71)で、発生率比は1.65(95%CI:1.17~2.34)とイベルメクチン群で有意に高率であった(p=0.005)。これらの有害事象は、主に全身性、知覚、神経系、筋骨格系、皮膚の症状だった。 著者は、「この試験の結果は、マラリアが中程度に流行し、年間を通じて伝播する地域において、マラリアの制御と予防のための補完的な戦略としてのイベルメクチンの使用を支持するエビデンスをもたらすものである」としている。

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早い時間に寝ると翌日の運動量が増える

 古くから「早寝早起き」は健康や気分、さらには運気にも良いとされているが、運動量を増やすというメリットもあることが報告された。モナッシュ大学(オーストラリア)のElise Facer-Childs氏らの研究によるもので、詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に6月30日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「睡眠と身体活動はどちらも健康にとって非常に重要だが、それら両者がいかに複雑に絡み合っているかを、われわれは今まで十分に理解していなかった」と述べている。 この研究では、2種類の大規模な集団を対象に、就寝時刻や睡眠時間と翌日の身体活動時間との関連が調査された。いずれの研究も参加者は成人であり、自由行動下で行われた。 一つ目の研究には1万9,963人が参加し、2021年9月から翌年8月までの1年間、手首装着型のデバイスを用いて睡眠と身体活動が客観的に評価された。599万5,080人日のデータの解析の結果、研究参加者の平均的な就寝時刻は23時頃だった。年齢や性別、BMI、季節などの影響を調整後、21時頃に就寝する人の日々の中~高強度身体活動(MVPA)時間は、23時頃に寝ている人よりも約15分長く、さらに1時まで起きている夜型の人との比較では約30分長かった。 次に、同一個人内での日々の変動を解析。すると、普段よりも就寝時刻が早く睡眠時間が短い夜の翌日にはMVPA時間が有意に長く、反対に就寝時刻が遅く睡眠時間が長い夜の翌日のMVPA時間は有意に短いという関連が認められた。 二つ目の研究は、参加者数が5,898人で、63万5,477人日分のデータが解析された。この研究でも一つ目の研究と同様の傾向が認められた。また、普段よりも早く就寝し、かつ普段どおりの睡眠時間を確保した翌日のMVPA時間が最も長くなることが分った。 論文の筆頭著者である同大学のJosh Leota氏は、「これらの結果は、日中に仕事に充てる時間の長さが人々の運動習慣を妨げる可能性を示唆している。また、一般的な9時から17時という勤務時間は夜型の人のリズムには適しておらず、睡眠の質の低下、日中の眠気、社会的時差ぼけの増加につながり、それらは全て、運動の意欲および機会を減少させる」と語っている。 一方、本研究では上記のように、同一の個人内の日差変動の解析から、普段より早く寝た翌日は身体活動量が増えることも明らかにされた。つまり、生活パターンを変えることで、身体活動量を増やせる可能性が示された。この点についてLeota氏は、「公衆衛生施策を考える上で意味のある結果だ」とし、「人々に対して睡眠と身体活動をそれぞれ個別に推奨するのではなく、就寝時刻を早めることを積極的に奨励することで、自然に活動的なライフスタイルへと導くことができるのではないか」と付け加えている。

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孤独感は心身の健康に悪影響を及ぼす

 孤独感は、うつ病や体調不良のリスクを劇的に高めるようだ。新たな研究で、常に孤独を感じていると答えた人では半数(約50%)がうつ病の診断を受けると予測されたのに対し、孤独を感じたことがない人では10%弱にとどまると推定された。また、常に孤独を感じている人では、精神的・身体的な不調を感じる日も多かったという。米ハワード大学医学部のOluwasegun Akinyemi氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に7月9日掲載された。研究グループは、「孤独感は単なる感情状態ではない。心身の健康に明らかな影響を及ぼす。孤独感への対処は、うつ病を軽減し、全体的なウェルビーイングを改善するために、公衆衛生上の重要な優先事項となる可能性がある」と述べている。 この研究でAkinyemi氏らは、2016年から2023年の間に米国で実施された行動リスク要因サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System;BRFSS)のデータを分析して、孤独感とうつ病の診断、精神的または身体的に不調な日との関連を検討した。孤独感は「どのくらいの頻度で孤独を感じますか?」という質問で測定され、「常に」「たいてい」「時々」「まれに」「全くない」の5つのレベルに分類された。社会人口学的特徴を調整し、BRFSSのサンプリングウェイトおよび州・年ごとの固定効果を考慮した上で、逆確率重み付け(IPW)を用いて孤独感が及ぼす平均的な影響を推定した。対象者は総計4万7,318人で、白人が73.3%、女性が62.1%、18〜64歳が72.1%を占めていた。 分析の結果、孤独を感じる頻度が高いほどうつ病発症のリスクも高まることが示された。具体的には、「全くない」群での予測確率は9.7%であったのに対し、「まれに」の群では16.3%、「時々」の群では30.6%、「たいてい」の群では47.7%、「常に」の群では50.2%であった。また、孤独感の頻度が高いほど、精神的・身体的に不調を感じる日数が増加する傾向が認められた。例えば、精神的な不調を感じる日数は、「常に」の群で月平均19.95日であるのに対し「全くない」群では9.36日、身体的な不調を感じる日数は、それぞれ15.83日と11.22日であった。 さらに、一部のグループは他のグループよりも孤独の影響をより強く受けることも判明した。例えば、孤独を感じる頻度を問わず、女性では男性よりも、また白人では黒人よりもうつ病になる可能性が高く、精神的に不調な日も多かった。 Akinyemi氏は、「若い成人、女性、失業者、教育歴があまりない人は、孤独感を訴える傾向が強かった。孤独感は、高齢者だけではなく、あらゆる年齢層や背景を持つ人々にも影響を及ぼす」と述べている。 Akinyemi氏らは、孤独感はストレスのかかった状況下で生じる防御システムである闘争・逃走反応を刺激するか、セロトニンやドパミンなどの神経伝達物質の流れに影響を及ぼすことで、健康に影響を与えるのではないかと推測している。同氏らは、「これらの神経化学的変化は、社会とのつながりが失われているという心理的負担が重なって、うつ病の症状のリスクを増大させる可能性が高い」と記している。さらに同氏は、「孤独を認めることは、弱さや社会的失敗と捉えられがちであり、それが支援を求めることをためらわせてしまう。この沈黙が、健康への悪影響や長期的な害を引き起こす可能性がある」と述べている。 研究グループは、今後の研究では孤独感を軽減することで心身の健康が改善されるのかどうかを検討すべきだと話している。

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