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糖尿病における血圧と転帰の関係はJカーブか?線形か?~587万例の用量反応メタ解析

 2型糖尿病における血圧とアウトカムとの関連は、とくに血圧が低い場合には十分に解明されておらず、低血圧域において死亡や心血管リスクが増加するJカーブ現象の有無が議論されてきた。今回、2型糖尿病患者を対象に、収縮期・拡張期血圧と全死亡や心血管イベント、腎アウトカムとの関連を検討した用量反応メタ解析により、血圧と多くのアウトカムとの関係は見かけ上のJ字型を示す場合があるものの、低血圧域でのリスク上昇は明確ではなく、全体としては線形または単調な関連を示すことを、中国・上海交通大学のSiyu Wang氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2026年1月14日号掲載の報告。 研究グループは、PubMed、Embase、Web of Scienceをデータベース開始から2024年11月30日まで体系的に検索し、血圧値と全死亡、心血管疾患および腎疾患との関連を評価したコホート研究を抽出した。血圧とアウトカムとの曲線的関連を評価するため、1段階混合効果モデルを用いた用量反応メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・2型糖尿病患者587万5,364例を含む113論文から、89コホート研究が同定された。・全体解析では、収縮期血圧と全死亡・心血管イベント、ならびに拡張期血圧と全死亡においてJ字型の関連が認められた。しかし、低血圧域におけるリスク上昇の勾配は緩やかで、実質的にはリスクは平坦化していた。・ベースライン時に心血管疾患またはがんを有する参加者を含む研究を除外した解析の結果、収縮期血圧が低いほど心血管イベントのリスクは有意に低下し、全死亡リスクも上昇に転じることなく平坦化した。・腎イベント、推定糸球体濾過量の低下およびアルブミン尿の新規発現または進行についてはJ字型の関連は認められず、血圧上昇に伴う正の線形または単調な関連が認められた。 これらの結果より、研究グループは「低い収縮期血圧は、高い収縮期血圧と比較して全死亡リスクを増加させる明確な証拠は認められなかった。これまで報告されてきたJカーブ現象は、逆因果関係および未調整の交絡因子による影響である可能性が高いことを示唆している」とまとめた。

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閉経前女性における卵巣がんの診断に最適な指標は?/BMJ

 閉経前女性の卵巣がんのリスク予測モデルの研究は、主に専門の超音波検査技師がいる2次検査以降の環境下で行われており、非専門医、プライマリケアまたは地域設定で一般化するには限りがある。すべての検査を直接比較した研究も見当たらないことから、英国・Sandwell and West Birmingham Hospitals NHS TrustのSudha Sundar氏らは、閉経前女性の卵巣がんの診断に寄与する最適なリスク予測モデルを特定する前向きコホート研究「ROCkeTS研究」を行った。現在、英国の国民保健サービス(NHS)の3次医療のトリアージで使用されているRisk of Malignancy Index 1(RMI 1)(閾値250)と比較して、他のほとんどの検査指標は、特異度は低いが感度が高く、なかでもInternational Ovarian Tumour Analysis(IOTA)のADNEXモデル(閾値10%)の感度が最も高く、特異度の低さは他の検査と同程度であることが示された。著者は、「IOTA ADNEXモデル(閾値10%)を用いた超音波検査を、2次医療における閉経前女性のトリアージとして新たな標準検査とすべきである。実施に当たっては、スタッフのトレーニングと質保証を組み込む必要がある」とまとめている。BMJ誌2026年1月28日号掲載の報告。6つのモデルについて比較 研究グループは、非特異的な症状を有し、血清腫瘍マーカーCA125値の上昇または画像検査異常を認め、主にNHSのがんが疑われる患者の緊急紹介制度を通じて一般診療所から紹介された患者を前向きに登録した。 IOTA画像診断用語の使用について訓練を受けたNHSスタッフが実施した血液検査と超音波検査を用い、6つのリスク予測モデルとスコアの精度を比較した。使用した指標は、RMI 1(事前に設定された閾値は200、250)、卵巣悪性腫瘍推定値(Risk of Malignancy Algorithm[ROMA])(7.4%、11.4%、12.5%、13.1%)、IOTAのAssessment of Different Neoplasias in the adnEXa(IOTA ADNEX)(3%、10%)、simple rules risk model(IOTA SRRisk)(3%、10%)およびsimple rules、ならびにCA125(87 IU/mL)であった。 患者は、手術標本、生検組織または細胞診の病理検査、または手術を受けなかった患者に対する12ヵ月間の経過観察で得られた参照基準に基づき、原発性浸潤性卵巣がん群と良性または正常群に分類された。なお、研究対象集団は、2018年6月より前に登録されたコホート1(保存的治療の患者も登録)と、2018年6月以降に登録されたコホート2(3ヵ月以内の手術予定患者のみを登録)で構成された。 主要評価項目は、卵巣がんの診断精度で、感度、特異度、陽性および陰性予測値、判別能(C指数、ROC曲線)および較正能(較正プロット、較正勾配)により評価した。 2015年6月30日~2023年3月23日に、英国の23施設より紹介された適格患者2,453例が登録され、2023年3月31日まで追跡調査を行った。本論では、2,453例のうち閉経前女性1,211例について報告されている。IOTA ADNEX(閾値10%)が優れる 閉経前女性1,211例のうち88例が原発性卵巣がんと診断された。コホート1では857例中49例(有病率5.7%)、コホート2では354例中39例(有病率11.0%)であった。 原発性卵巣がんの診断(他の診断58例を除外した799例)において、RMI 1(閾値250)の感度は42.6%(95%信頼区間[CI]:28.3~57.8)、特異度は96.5%(95%CI:94.7~97.8)であった。RMI 1(閾値250)と比較し、CA125と他のすべての検査は感度が高く(CA125[閾値87 IU/mL]:55.1%、p=0.06、ROMA[閾値11.4%]:79.2%、p<0.001、IOTA ADNEX[閾値10%]:89.1%、p<0.001、IOTA SRRisk[閾値10%]:83.0%、p<0.001、IOTA simple rules:75.0%、p=0.01)、特異度は低かった(それぞれ89.0%、73.1%、75.1%、76.0%[いずれもp<0.001]、95.2%[p=0.06])。なお、IOTA simple rulesでは、799例中120例で結果を確定できなかった。 卵巣がん発症リスクが高い閉経前女性354例を含む全コホート1,211例の解析でも、同様の結果が得られた。

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IPFの慢性咳嗽、nalbuphine徐放剤が有望/JAMA

 特発性肺線維症(IPF)関連の慢性咳嗽患者に対する、κオピオイド受容体作動薬/μオピオイド受容体拮抗薬であるnalbuphine徐放剤(ER)の投与は、27mg、54mgおよび108mgの3つの用量すべてで、プラセボ群と比較し6週時の咳嗽頻度を有意に減少し、2つの高用量では患者報告による咳嗽頻度も有意に改善した。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのPhilip L. Molyneaux氏らが、10ヵ国52施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験「CORAL試験」の結果を報告した。IPF患者では、咳嗽は生活の質を低下させるため、IPFに伴う咳嗽に対する有効な治療が求められている。JAMA誌オンライン版2026年1月22日号掲載の報告。nalbuphine ERの有効性を27mg、54mg、108mgの3用量でプラセボと比較 CORAL試験の対象は、IPFと診断され、スクリーニング前8週間以上続く慢性咳嗽を有し、咳嗽重症度数値評価尺度スコア(0:咳なし~10:最悪の咳嗽)が4以上、FVCが正常予測値の40%以上、一酸化炭素肺拡散能が正常予測値の25%以上、パルスオキシメーターによる酸素飽和度が92%以上の患者であった。 研究グループは、対象患者をnalbuphine ER 27mg群、54mg群、108mg群、またはプラセボ群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日2回6週間経口投与した。 主要アウトカムは、6週時における24時間咳嗽頻度のベースラインからの変化率(デジタル咳モニターで測定)。重要な副次アウトカムは、6週時の患者報告による咳嗽頻度(IPF呼吸器症状評価の咳サブスケールスコア[範囲:0~4、低スコアほど咳嗽頻度が少ないことを示す])のベースラインからの変化であった。 2024年2月~2025年2月に、223例がスクリーニングされ、165例が無作為化された(nalbuphine ER 27mg群42例、54mg群43例、108mg群40例、プラセボ群40例)。最終追跡調査は2025年4月に行われた。6週時の咳嗽頻度の減少率は3用量群それぞれ47.9%、53.4%、60.2%、プラセボ群16.9% 無作為化された165例のうち、ベースラインの咳嗽頻度の測定値がない5例を除く160例が、主要解析に組み入れられた。患者背景は年齢中央値71歳(範囲:51~85)、女性が28.5%で、ベースラインの咳嗽頻度(平均値±SD)は28.3±27.4回/時であった。 6週時の24時間咳嗽頻度のベースラインからの変化率は、nalbuphine ER 27mg群-47.9%(24.6回/時から11.9回/時)、54mg群-53.4%(28.0回/時から14.9回/時)、108mg群-60.2%(31.5回/時から11.9回/時)、およびプラセボ群-16.9%(29.4回/時から28.1回/時)であり、プラセボ群と比較してnalbuphine ERの3用量群ともに有意に減少した(27mg群はp=0.008、54mg群および108mg群はいずれもp<0.001、対プラセボ群)。 重要な副次アウトカムである6週時の患者報告による咳嗽頻度の変化率(絶対変化)は、3用量群がそれぞれ-31.4%(2.3から1.5、対プラセボ群のp=0.14)、-40.6%(2.6から1.4、p=0.004)、-40.2%(2.4から1.4、p=0.005)、プラセボ群が-21.9%(2.6から1.9)であった。

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パーキンソン病で「痩せる理由」、体重減少の背景にあるエネルギー代謝の変化

 パーキンソン病(PD)は、手足の震えや動作の遅れなどの運動症状で知られる神経変性疾患だが、体重減少も重要な非運動症状の一つとされている。今回、PD患者では糖を使うエネルギー代謝が低下し、脂質やアミノ酸を利用する代謝へとシフトしている可能性が示され、体重減少が疾患特異的な代謝変化と関係していることが明らかになった。研究は、藤田医科大学医学部脳神経内科学教室の東篤宏氏、水谷泰彰氏らによるもので、詳細は11月30日付で「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry(JNNP)」に掲載された。 PDにおける体重減少は、疾患進行や予後と関連する重要な非運動症状であり、体脂肪量の低下が主であることは知られていた。しかし、その背景でエネルギー代謝がどのように変化しているのか、糖・脂質・アミノ酸の利用経路がどう再編されているのかは明らかでなかった。本研究では、PD患者の体組成と血漿中のエネルギー代謝に関連する物質を包括的に解析し、体重減少が単なる栄養不足ではなく、エネルギー利用のシフトを伴う代謝異常と関連する可能性を検討した。 本研究では、藤田医科大学病院脳神経内科においてPDと診断された91名の患者と、対照として年齢・性別をマッチさせた健常人47名が登録された。体組成は生体電気インピーダンス法を用いて評価した。血漿代謝物は、質量分析法により、解糖系およびクエン酸回路に関連する代謝物、脂質やアミノ酸代謝に由来する代謝物など、計17種類の代謝物を測定した。これらのデータを用いて、PDにおける体組成の変化と血漿代謝物との関連を解析した。PD患者と健常対照の体重、BMI、体脂肪量、血漿代謝物濃度などの比較には、Wilcoxon順位和検定を使用した。体組成成分と血漿代謝物濃度との関連については、Spearmanの順位相関係数により相関解析を行った。多重検定の影響を考慮し、血漿代謝物解析では偽発見率(FDR)補正も併用して統計学的有意性を評価した。 PD患者では、健常対照と比べて体重(P=0.003)、BMI(P=0.001)、体脂肪量(P

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ラテンアメリカにおける最も一般的な非虚血性心筋症、シャーガス心筋症に対して、サクビトリル・バルサルタンはエナラプリルと比較して有効性は示されなかった(解説:原田和昌氏)

 シャーガス病はトリパノソーマ・クルジという原虫によって引き起こされるラテンアメリカにおける非虚血性心筋症(慢性シャーガス心筋症:CCC)の最も一般的な原因である。CCCは急性心筋炎と慢性線維化性心筋炎を呈する。これまでエナラプリルがCCC患者の心機能に良い効果を有する、CCCの動物モデルでエナラプリルが心筋線維化と心機能を改善したという報告があるが、ガイドラインが推奨する心不全治療のCCC患者に対する有効性と安全性は明らかでない。米国Duke臨床研究所のLopes氏らは非盲検多施設共同無作為化試験(PARACHUTE-HF)により、CCCで左室駆出率が40%未満に低下した心不全(HFrEF)患者において、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリル・バルサルタン投与群とエナラプリル投与群とを比較した。 アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、メキシコの83施設で、CCCと診断されたHFrEF患者を対象に、ARNIの有効性と安全性についてwin ratioアプローチで階層的複合アウトカムを評価した。臨床的アウトカムに関する有意差は認められなかったが、ARNI投与患者は12週時点でNT-proBNPの低下が認められた。NT-proBNP値の低下は心負荷の軽減を意味しており、忍容性において懸念された低血圧は問題とならなかった。シャーガス病はわが国ではまだまれな疾患であるが、心不全患者でラテンアメリカ出身や在住歴がある場合には念頭に置く必要がある疾患と考えられる。

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知人が死んだ【Dr. 中島の 新・徒然草】(617)

六百十七の段 知人が死んだ寒さが続きますね。家の中にいても寒い。なので、風呂に入って身体を温めたりして何とか凌いでいます。もうすっかり寒さに弱い人になってしまいました。さて、オンライン英会話では講師との話題選びが大切。毎回どのような話をするか、頭を絞っています。話題として鉄板なのは最近の出来事。記憶も感情も新しいことが、英語を喋る駆動力になるからです。今回は、つい先日亡くなった知人についての話をしようと思いました。知人というのは、友達の友達くらいの関係です。同じ中学校に通っていたことになりますが、お互いに知りませんでした。なんせ1学年が12クラスほどあったので、同学年でも知らない人のほうが多かったくらいです。せっかくなので、知人と友人それぞれに名前を付けておきましょう。知人はヒロノリ、友人はトモキくらいにしておきます。昨年の夏ごろ、トモキから数年ぶりに連絡がありました。トモキは中学校時代の卓球部のチームメイト。親友のヒロノリががんになって困っているから相談に乗ってくれないか、というものです。私のよく知らないがんではありましたが、ともかく話を聴くことにしました。トモキとヒロノリは、2時間ほどかかって車でやってきました。一見したところ、ヒロノリはとくにどこも悪くはなさそうです。ステージの進んだがんにしては、しっかりしているというのが第一印象でした。彼は数ヵ月前に体調不良を感じたため、いくつかの医療機関を受診したけれども、どこでも軽くあしらわれたとのこと。で、知り合いの精神科医に頼んでCTを撮影してもらったところ、怪しい影が見つかりました。「このがんなら○○病院の××先生だ」と皆が口を揃えて言うので、○○病院を受診したそうです。××先生はすぐに生検で診断を確定し、治療を開始したのだとか。ただ、すでに進行していたがんのため、治療をしていても先が見えてきません。そこで、今の主治医でいいのだろうか、都会に行けばもっと気の利いた治療があるのではないか、そう思って私にアドバイスを求めてきたのです。彼の話を聴いた私は、現在の治療を続けるように伝えました。その理由はいくつかあります。まず、複数の医師が現在の主治医の名前を挙げたこと。その先生は診断・治療とも即応してくれたこと。さらに医学的な必要性があれば休日出勤を厭わないこと、などなどです。そして私はこうも付け加えました。「標準治療こそが最強だ。この世に奇跡の治療なんぞ存在しない」と。私の説明を聴くにしたがって、徐々にヒロノリの顔が明るくなっていきました。2人は再び車に乗って帰っていきましたが、トモキによると、ヒロノリは目に見えて元気になったとのこと。「頑張って今の治療を続けて、残された時間で孫の成長を見守りたい」と言っていたそうです。その後、時々トモキやヒロノリから連絡をもらいました。抗がん剤の副作用がつらいとか、周囲との人間関係がうまくいっていないとか。進行がんなら当然起こりそうなことです。私も自分にできる範囲でアドバイスを行いました。そしてつい先週のこと。トモキからメールをもらいました。素人目に見ても、ヒロノリは状態が良くないのだとか。治療を中止して家で過ごしたいと言っている、とのこと。それも1つの方法です。なので、在宅緩和ケアについて、一般的なアドバイスをしました。私の患者さんが自宅で眠るように息を引き取ったということもあり、在宅緩和ケアは1つの有力な方法だと思ったからです。が、病状の悪化は予想以上に速く、4日後にトモキから来たメールは、ヒロノリが亡くなったことを知らせるものでした。いずれ起こることではあったので、その時は「そうか」と思っただけです。以上のことを時系列に沿って並べてみました。オンライン英会話で喋るための予習です。文字にしながら、改めて彼らとのやり取りを思い出しました。あくまでも英語の勉強なので、レッスン中には講師相手にできるだけ淡々と喋るよう心掛けたつもりです。でも、喋っているうちに胸につかえるものがありました。私の手元には、彼らが私を訪ねてきた時に撮った写真があります。夏らしく軽装のものでした。ヒロノリが前向きの闘病姿勢になってくれたことを考えると、専門外とはいえ医師として有用なアドバイスができたのではないか、と思います。専門にかかわらず、友人や知人にこういった助言を求められる年齢になったのかもしれません。最後に1句夏の日の 写真の君は 旅立てり

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ロジスティック回帰分析 その2【「実践的」臨床研究入門】第61回

ロジスティック回帰モデルの基本的な考え方 その2オッズ比(odds ratio:OR)はロジスティック回帰モデルにおいて、ある事象の起こりやすさが説明変数の影響によって、どの程度変化するかを示す重要な指標として用いられます。今回は前回のオッズの解説に引き続き、ORについて説明します。オッズは「ある事象が起こる確率と起こらない確率の比」であり、Aという事象が起こる確率をp(A)とした場合、事象Aのオッズはでした。ORは2つの群のオッズの比であり、事象Aがある群で起こる確率をp(A)、別の群で起こる確率をq(A)とした場合、となり、ORの取りうる値の範囲はオッズと同様に0から∞になります(連載第60回参照)。ここからは、ロジスティック回帰モデルの考え方の説明に戻ります。前回解説したように、ロジスティック回帰モデルの基本的な形は、以下のような数式で表されます。今回も、われわれのResearch Question(RQ)を題材に具体的な事例で解説します(連載第60回参照)。たとえば、「厳格低たんぱく食の遵守あり」という事象Aの起こりやすさを、対象患者特性の1つである、糖尿病(DM)の有無でORを用いて比較することを考えてみます。DMありの場合に事象Aの起こる確率がp(A)、DMなしの場合の事象Aの起こる確率がq(A)だとした場合、そのロジットはそれぞれ下記の数式になります(連載第60回参照)。次に求めるのは、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)です。高校の数学で習った次の公式を用いると、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)は、下記のように計算できます。ORの値の取りうる範囲はオッズと同様に0から∞ですが、その対数(log OR)をとることで-∞から∞の範囲の値として扱えるようになります。上記の式のとおり、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)は、DMあり・なしの項以外はすべて相殺されて、DMの項の回帰係数b1となります。また、これも高校の数学で習った次の公式より、xの自然対数をyとした場合、xは自然対数の底eのy乗となります。したがって、DMの有無による事象AのORは、eb1として、計算で求めることができるのです。では、この計算式から得られるORはどのように解釈できるでしょうか。ロジスティック回帰モデルを用いた多変量解析により、交絡因子を調整して算出されたORは「調整OR」です。これは、注目している説明変数(DMの有無)以外の交絡因子(年齢、性別、血圧、eGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値)の影響を統計学的に制御し、それらがすべて同一であるとみなした条件下で、注目している説明変数(DMの有無)のみが変化した場合の事象AのORを示しています。そのため、単純な2群比較で求めたORよりも、交絡となりうる要因の影響をある程度取り除いた、より信頼性の高い指標として解釈できます。

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キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル【ReGeneral インタビュー】第4回

キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル「医師という仕事が好きです。総合診療の入り口を担いながら、専門的なことももっと学んで、糖尿病や内分泌疾患を中心にコモンディジーズや救急初期対応ができるようになりたい」そう語るのは、総合医育成プログラム修了生の帆秋 理笑子氏。糖尿病内科専攻後、家庭の事情で約7年間のブランクを経て、再び糖尿病を中心にした診療スタイルに戻るまでの道のりで出会ったのが、総合診療でした。専門性を高めることと総合診療がどのように関連するのかを聞きました。プライマリ・ケア認定医取得を機に、専門キャリアを再設計――現在どのような診療をされているか教えてください。流動的ですが、糖尿病内科7割、一般内科3割くらいで診療をしています。約1年前に今の勤務先に赴任した当時は、糖尿病診療よりも誤嚥性肺炎などを診ることが多かったのですが、だんだんと引継ぎと新患どちらも増えて、現在は糖尿病を中心に内科診療を行っています。前職は大分県内の同じような中核病院で働いていましたが、糖尿病専門医を取得したいという思いがあり、研修施設である今の職場に移りました。2023年にプライマリ・ケア認定医を取得したことが、このキャリアチェンジを実行する自信にも武器にもなりました。――2023年に認定医取得とのことですが、プログラムはいつ・どのような経緯で受講されたのですか。受講は2021年からです。きっかけは2016年に常勤で診療を再開したことです。卒後数年してから、糖尿病内科を専攻していましたが、9年目くらいから臨床から離れた期間が7年ほどあり、最初は老健施設から仕事を再開して徐々に体力面と治療のアップデートを行いました。前職の病院で糖尿病を診ながら一般内科診療も始め、地域医療でさまざまな役割を担ううちに、「ジェネラルに診られるようになりたい、総合診療のトレーニングを受けたい」と強く思うようになりました。そこで、2019年に勇気を出して大分大学総合診療科に研修希望で見学に伺い、このプログラムを教えていただきました。私の話に耳を傾けてくれた先生方に今でもとても感謝しています。当時は東京に行って受講する形式で費用も高くて諦めていましたが、2021年にオンライン化されて「ああ、これなら家でもできる。チャンスだ!」と思って参加を決めました。2023年に認定医を取得した後も受講を続けています。大人の学び直し 安心して飛び込める環境――印象的な講義はありましたか。診療実践コースでは、整形外科、循環器内科が印象的でした。整形外科では、脊髄からの神経支配域を身振り手振りや語呂合わせで教えてくれたのをよく覚えています。また骨折の写真や整形外科的診察の動画をたくさん使って説明してくださったのが面白くて理解しやすかったです。循環器では、日常診療で使える心電図の読み方や高血圧の診療、胸痛への対応などをざっくばらんに教えていただきました。循環器は興味があっても苦手に感じていた分野なので、動画を何度も見返して勉強した分、印象が強いですね。ノンテクニカルスキルコースでは、ミーティング・ファシリテーションの講義が記憶に残っています。ここで会議やグループ活動の舵取りの手法を学びました。板書の効果や、会議に応じた机や椅子の並べ方、アイデアを広げてからまとめる方法など、これまで無意識に行っていたことも、意識を向けると意味があると知りました。――受講中に苦労した点はありますか。糖尿病や、それに関連する腎臓や認知症の講義は安心して受けられましたが、あまり馴染みのない科、たとえばマイナーエマージェンシーや救急、耳鼻科の講義を受けるときは、自信がなく不安が大きかったです。実際に受講してみると、講師の先生方はとても優しく熱心でしたし、講義のやり方も工夫されていて新鮮でした。また、事務局が手厚くサポートして心理的安全性をしっかり担保してくれたのが大きな支えになりました。オンラインですので、受講中に画面がフリーズしてしまうことも何度かありましたが、講義によっては復習用動画を作って何度も視聴できるような環境を整えられていて、聴き取れなかった部分は後から補うことができました。――心理的安全が保たれた。それはどんなサポートだったのですか。たとえば、質問のときです。質問するのは意外と難しいんです。自分がよく知っている疾患なら「いい質問だね」と言ってもらいやすいですが、詳しくない分野だと的外れになりがちです。講師からしたらわけがわからない質問かも…と不安になることもありました。実際、一度スルーされたのかな?と思った瞬間もあります。ですが、運営の先生方が参加者全員の質問をリストアップして、どんな質問も漏れなくすべて扱ってもらえる仕組みになっていました。それから、最初の受講時に「ほかの人の発言を否定しないでください」というアナウンスもありました。この声掛けがあったので、自分の意見を批判されることはあっても、否定されない。これが安心感につながって、得意ではない診療科の授業にも思い切って飛び込むことができましたし、質問やグループ内での発言を行うことができました。――ご自身の診療にこのプログラムはどう役立っていますか。最近の出来事だと、糖尿病性の足壊疽を診るとき、皮膚科の褥瘡の講義で学んだ内容がとても役立っています。壊疽も褥瘡も血流障害が関係していることが多く、評価や薬の選択がリンクしていて、受けてよかったなと思う瞬間でした。それから、腎臓内科の講義を受けたことで、糖尿病診療の中で腎臓を診るときに、薬をいつまで継続すべきかといった、細かい判断がしやすくなりました。糖尿病の合併症で腎機能が悪化して透析になる方も多いですから、お互いの専門領域に関わる聞きづらい質問ができたのは、このプログラムならではかもしれません。専門医がその疾患をよく理解していることは確かですが、付随するさまざまな問題や合併症の管理に他科の医師の協力は必要不可欠です。その時に、こうして他科の医師の考え方を知ったおかげで、コミュニケーションを取りやすくなりました。糖尿病という疾患を診るときの視野が広がりましたし、自分の専門性を高める上でも、何をもっと勉強しなければならないのかが少しずつ見えてきた気がします。ほかにも一般内科の診療を行う上でリハビリテーションの必要性は年々高まっていると感じていたため、リハビリの講義で、リスク管理や障害の診断とADLの評価法などを学び、疾患と生活を結びつける上でとても役立っています。――他科の先生から刺激を受けたという点で、印象に残っていることはありますか。行動変容1)という診療実践コースの授業のグループワークが印象に残っています。行動変容というと、問診で情報を引き出して患者さんが生活習慣を修正できるように導くといった、糖尿病内科で日頃からやっていることがテーマになります。正直、自分は得意だと思っていました。でも、同じグループのある先生の問診に目を見張りました。外科出身で、今は開業して一般内科を診ているこの先生は、私よりずっと上手だったんです。本当に驚きました。糖尿病内科では診察に追われて、ついイエス・ノーで答えられるクローズドクエスチョンで聞いてしまうことが多いのですが、その先生はオープンクエスチョンをとても上手に使って、患者役の方から自然に話を引き出していました。その姿を見て、私ももっと頑張ろうとやる気になりましたし、負けられないという刺激にもなりました。他科の先生が自分より上手だと落ち込むこともできますけど、前向きに捉える方がいいですよね。いろんな先生のやり方を、自分が奮起する材料にできるといいなと思っています。総合診療能力を活かして専門性も磨く、新しい働き方――専門性を磨きたいと思う人にとっても、総合診療能力は必要でしょうか。わたしはそう思います。総合診療の必要性を感じて大分大学総合診療科を見学したとき、自分の進みたい方向をもう一度深く考えました。そこでクリアになったのは、私は専門の糖尿病と隣接する内分泌の診療の幅を広げながら、同時に一般内科の初期対応やマネジメントといった“総合診療の入り口”をマスターしたいという希望でした。さまざまな専門性・働き方の先生方を尊重し、そこから真摯に学び、力を借りながら、自分が決めた進路を進みたいと思ったんです。一方で専門だけでは対応しきれない現実も理解しています。患者さんの多くは高齢で、認知症や肺炎や骨折など複数の疾患があり、生活や家族の問題も絡んでいます。都会なら各診療科に回せるかもしれませんが、地方や個人病院では難しい。だから、専門的な治療だけでなく、専門と専門の間をつなぐマネジメントや初期対応は、どの科の専門医にも必要なのではないかと思います。総合診療的なアプローチを学ぶことは、専門診療の視野が広がる、地域のニーズに応えられることでキャリアの選択肢が増えるという2つの点で、専門性を高めたいと思う人にも価値があると思います。大人になってからの学習ですから、習ったことすべてをすぐに活用・実践できるというような大きな期待は持たずに、経験を積みながら少しずつできることを増やしていくくらいの気楽な気持ちで始めてもよいのではないでしょうか。――今後の展望は?総合診療の基本的なことを今以上にできるようになりながら、糖尿病と内分泌の専門的な診療を深めていくのが個人的な夢です。 人間は忘れる生き物だと痛感しているので、この先も反復学習と実臨床での実践を続けて、総合医育成プログラムの内容をしっかりできるようになりたい。そして専門以外でも得意な分野が生まれてくるといいなと思っています。私自身はプログラムを受けていてもできていないことが多々あります。でも全部を自分で賄えなくても、このプログラムで学んだエッセンスを活かしながら他の人の力を借りて、少しでもよい方向に診療を進めていき、自分の夢が実現するように頑張っていきたいと思っています。――同じように専門性を大切にしながら、総合診療にも興味を持たれた方にメッセージを。私は約7年のブランクを経て、再び臨床に戻る決断をしてからの一歩一歩が、このプログラムとの出会いにつながりました。時間はかかりましたが、希望していた糖尿病診療を増やすことができ、プログラムでの学びは一般内科や救急だけでなく、自分の専門にも新しい発見をもたらしています。努力しても診療がうまくいかず落ち込む日もあれば、うれしくて喜びを感じる瞬間もあります。一喜一憂の毎日ですが、やりがいがあり、この仕事が好きです。プログラムに参加して、恥をかくのは確かに嫌です。ただ自分のやりたいことに挑戦しないと失敗もないけれど進歩もありません。挑戦して、そこから学べることはありますし、次につなげていくこともできます。そして何より、医師になってある程度経験を積んでから、もう一度、大人の学び直しをできることがすごく楽しいです。このプログラムは、授業料を払い土日を費やしてでも学びたいと思っている、年齢も専攻科も異なるさまざまな背景を背負った全国のやる気に満ちた医師仲間と知りあうことができ、切磋琢磨しながら学べる貴重な場です。事務局のサポートも手厚く、先生方も熱心です。また私のように診療の第一線から離れた医師が復職する上でも大きな助けになってくれると思います。取り組み方次第で道は開けます。もし迷っているなら、ぜひ思い切ってチャレンジしてみてください。 引用 1) 行動変容:喫煙・食事・運動に関する患者の行動変容を支援する面接技法を学び、準備段階の評価や効果的な対話を通じて生活習慣改善を促す力を養うことを目的としたセッション

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第47回 脅威の致死率「ニパウイルス」について、私たちが知っておくべきこと

南アジアを中心に、散発的ながらも深刻な被害をもたらし続けている「ニパウイルス」。高い致死率とパンデミックを引き起こす潜在的なリスクから、世界保健機関(WHO)も「最優先で対策すべき病原体」の一つに指定しています1)。日本とニューヨークの医療現場ではもちろん出会ったことのない感染症ではありますが、最近になりインドで感染者が確認され、話題となっています。今回は、このウイルスの正体や感染の仕組み、そして希望の光となりうるワクチン開発状況について、これまで報告されている論文に基づいて解説します。「最優先病原体」ニパウイルスの正体とは ニパウイルスは、1998年にマレーシアで初めて確認されたウイルスで、オオコウモリを自然宿主としています1)。当初はブタを介してヒトへ感染しましたが、その後のバングラデシュやインドでの流行では、ウイルスに汚染されたナツメヤシの樹液を摂取することによる感染や、ヒトからヒトへの直接感染も確認されています2)。 このウイルスが恐れられている最大の理由は、その高い致死率にあります。流行の場所やウイルスの変異などによっても異なりますが、致死率は40%から、高い場合では75〜100%にも達すると報告されています1, 2)。ただし、新興感染症が生じた場合の常ですが、軽症者や無症状の患者は検出されていない可能性があり、実際の致死率は報告されている数値よりも低くなる可能性が高いと考えられます。しかしいずれにしても、新型コロナウイルスと比較すると、感染した場合の重症度は桁違いでしょう。 感染すると、発熱、頭痛、筋肉痛といった風邪のような症状から始まり、多くの場合は急速に悪化して重篤な脳炎を引き起こします2)。けいれんや意識障害が現れ、発症からわずか24〜48時間で昏睡状態に陥ることもまれではありません1, 2)。また、回復した場合でも、約20%の人に神経学的な後遺症が残るとされており、長期的な生活の質への影響も甚大とされています1)。ヒトからヒトへはどう広がるのか? 一般的にニパウイルスのヒトからヒトへの感染伝播(基本再生産数)は起こりにくいとされていますが、特定の条件下では「スーパースプレッダー」のような現象が起こりうることも指摘されています。この点について、バングラデシュでの14年間にわたる調査データがNew England Journal of Medicine誌に掲載されているのでご紹介します3)。 この研究によれば、ヒトからヒトへの感染リスクを高める要因として、呼吸器症状、年齢、濃厚接触かどうかといった点が指摘されています。 呼吸困難などの呼吸器症状がある患者は、そうでない患者に比べて、他者に感染させるリスクが劇的に高いようです。この研究では、呼吸器症状のない患者からの感染拡大は、きわめてまれであったのに対し、呼吸困難を伴う患者は感染源になりやすいことが示されています3)。これは、咳などによる飛沫が感染の主要なルートとなりうることを裏付けています。 また、患者の年齢が高い場合や、看病などで長時間(とくに48時間以上)患者と接した場合、または患者の体液に直接触れた場合に、感染リスクが有意に増加するようです。実際、配偶者への感染率は他の親族よりも高いという結果が報告されています3)。 こうしたデータは、私たちが住む地域で万が一感染者が発生した場合にどう行動すべきかを教えてくれます。つまり、呼吸器症状のある患者との接触には飛沫感染予防策を含む最大限の警戒が必要で、体液への曝露を防ぐための厳重な感染防御策も不可欠だということです。進むワクチン開発 現在、ニパウイルス感染症に対して承認された特効薬やワクチンは残念ながら存在しません1)。治療はあくまで症状を和らげる対症療法に限られており、これが高い致死率が報告される一因となっています。リバビリンなどの抗ウイルス薬が試されたこともありますが、その効果は限定的あるいは不明確のようです1)。 しかし、希望がまったくないわけではありません。すでに、ニパウイルスワクチンの第I相臨床試験の結果が発表されています4)。 この試験で用いられたのはサブユニットワクチン。これは、ニパウイルスと非常に似た構造を持つヘンドラウイルスのタンパク質(G糖タンパク質)を利用したもので、交差免疫(似たウイルスに対する免疫反応)によってニパウイルスも防ごうという戦略です。 この試験は18~49歳の健康な成人を対象に行われていますが、深刻な副反応や死亡例は報告されず、主な副反応は注射部位の痛みなどの軽度なものでした。 また、100μgのワクチンを28日間隔で2回接種したグループで最も高い効果が得られ、2回目の接種から7日後には、ニパウイルスに対する中和抗体(ウイルスを無力化する抗体)が劇的に上昇しました4)。 この結果は、まだ初期段階の試験ではあるものの、将来的にこのワクチンが実用化されれば、流行地域で感染拡大を防ぎ医療従事者を守る予防接種として使える可能性を示唆しています。今、どう向き合うか ニパウイルスは、現時点ではヒトからヒトへの感染伝播が起こりにくい以上、日本国内で大規模な感染流行が起こったり、世界的なパンデミックを起こすリスクは低いと考えられます。そこは冷静に捉えておくべきでしょう。しかし、グローバル化が進む現代において「対岸の火事」と決めつけることもできません。 同時に、私たち人間は無力でもありません。ワクチンのような科学の進歩が、着実に解決への道を切り開きつつもあります。今私たちに必要なのは、「ただ恐れる」ことではなく「解像度の高い理解」でしょう。病原体が身近になればなるほど、誤情報も増加します。データが示す科学的根拠とともに、今後の動向を冷静に見つめていく必要があります。 1) Madhukalya R, et al. Nipah virus: pathogenesis, genome, diagnosis, and treatment. Appl Microbiol Biotechnol. 2025;109:158. 2) Ganguly A, et al. The rising threat of Nipah virus: a highly contagious and deadly zoonotic pathogen. Virol J. 2025;22:139. 3) Nikolay B, et al. Transmission of Nipah Virus - 14 Years of Investigations in Bangladesh. N Engl J Med. 2019;380:1804-1814. 4) Frenck RW Jr, et al. Safety and immunogenicity of a Nipah virus vaccine (HeV-sG-V) in adults: a single-centre, randomised, observer-blind, placebo-controlled, phase 1 study. Lancet. 2025;406:2792-2803.

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「納豆が健康に良い」のはなぜ?

 納豆の健康効果に、新たな科学的根拠が追加された。井田 智章氏、居原 秀氏(共に大阪公立大学)らの研究グループは、納豆の発酵過程において、抗酸化作用などを有する「超硫黄分子」※が増加することを明らかにした。納豆には超硫黄分子が多く含まれるとされているが、その詳細は明らかになっていなかった。本研究結果は、Nitric Oxide誌2026年2月号に掲載された。※:システインなどのチオールに硫黄原子が1個以上付加したパースルフィド、ポリスルフィド型の反応性硫黄分子群。近年、酸化還元の制御やタンパク質修飾を介した生理作用が注目されている 研究グループは、3種類の大豆品種(フクユタカ、ユキシズカ、スズオトメ)および市販の納豆4製品について、解析を行った。自家製納豆も作製し、発酵日数(0~6日)ごとに解析した。誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)を用いて総硫黄含量を定量し、質量分析の手法を用いて超硫黄分子の種類や量を調べた。また、分子サイズによる分画(不溶性画分、可溶性高分子画分、可溶性低分子画分)を行うことで、発酵に伴う硫黄代謝物の動態変化を詳細に調査した。 主な結果は以下のとおり。・乾燥大豆の品種間(フクユタカ、ユキシズカ、スズオトメ)で超硫黄含量に差はみられなかった。市販納豆では、製品ごとにばらつきがあったものの超硫黄含量が乾燥大豆よりも多かった。また、総硫黄含量に対する超硫黄分子含量の割合は、市販納豆が乾燥大豆よりも多かった。・自家製納豆の作製過程において、総硫黄含量は発酵による有意な変化がみられなかった。一方で、超硫黄含量は発酵が進むにつれて増加した。オートクレーブ直後(発酵0日目)、発酵2日目、発酵6日目において、乾燥大豆よりも超硫黄含量が有意に多かった。これは、加熱処理および納豆菌による発酵により、大豆に含まれる既存の硫黄化合物が超硫黄分子へ変換されていることを示唆するものであった。・発酵0日目において、超硫黄分子は主に不溶性画分に多く含まれていた。発酵が進むにつれ、超硫黄分子の分布は不溶性画分から可溶性画分、とくに可溶性低分子画分へとシフトした。 本研究結果について、著者らは「発酵が超硫黄分子の構成やバランスを大きく変化させることを明らかにしたものである。超硫黄分子は心血管疾患に対して保護的効果を示す可能性が報告されており、納豆の摂取は、心血管疾患リスクの低下などと関連することが疫学研究で知られている。そのため、納豆に含まれる豊富で多様な超硫黄分子が、その健康効果の一因である可能性が示唆された」と考察した。また「納豆由来の超硫黄分子がヒトの体内でどのように吸収され、作用するのか検討することが今後の課題である」としている。

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抗加齢医学の初心者にもおすすめ『第8回アンチエイジングセミナーin松山』【ご案内】

 2026年3月8日(日)、松山市立子規記念博物館にて『第8回アンチエイジングセミナー in 松山』が開催される。参加費は無料で、医師・歯科医師・研究者・メディカルスタッフなど、医療関係者であれば誰でも参加可能。申込締切は3月3日(火)、定員100名に達し次第締め切りとなる。 本セミナーは、「抗加齢医学に興味はあるが、これまで体系的に学ぶ機会がなかった」「日常診療にどのように取り入れればよいのか知りたい」といった医療従事者にも参加しやすい内容となっている。 老化を疾患として捉え、長寿研究を基礎に学際的な視点から健康長寿を目指す抗加齢医学は、循環器疾患、認知症、生活習慣病、フレイル対策など、日常診療と密接に関わる分野として注目を集めている。本セミナーでは、抗加齢医学を取り巻く最新の知見を踏まえつつ、日常診療や生活指導、予防医療の現場での実践につながる視点を中心に、明日から活かせる内容をわかりやすく解説する。 主催の日本抗加齢医学会では、「愛媛県をはじめとする地域から抗加齢医学の輪を広げ、日常診療に役立つ知見を共有する場にしたい」としており、専門分野や経験年数を問わず、幅広い医療関係者の参加を呼びかけている。 開催概要は以下のとおり。開催日時:3月8日(日)13:00~16:15開催場所:松山市立子規記念博物館    〒790-0857 愛媛県松山市道後公園1-30 TEL:089-931-5566     道後温泉駅より徒歩5分/JR松山駅より市内電車20分     開催形式:会場開催(WEB配信はなし)参加方法:無料(事前参加登録制)申込締切:3月3日(火)または定員100名になり次第終了■参加登録はこちらから【プログラム】座長:北野 克宣氏(医療法人菅井内科 理事長・院長/抗加齢・生活習慣病センター長)講演1 13:00~13:45「統合医療としての抗加齢〜Life’s crucial 9と糖化対策〜」    山岸 昌一氏    (昭和医科大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 主任教授)講演2 13:45~14:30 「食健幸プロジェクト」    高橋 路子氏    (神戸大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科/栄養管理部長)休憩  14:30~14:45講演3 14:45~15:30 「認知症予防における歯周炎対策の重要性」    伊賀瀬 道也氏    (愛媛大学病院抗加齢予防医療センター長/愛媛大学大学院循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座 特任教授)講演4 15:30~16:15 「笑顔と健幸プロジェクト    〜疲労と睡眠・精神健康対策でHealthy Ageingの社会実装を目指す〜」    北野 克宣氏    (医療法人菅井内科 理事長・院長/抗加齢・生活習慣病センター長)【主催】 一般社団法人日本抗加齢医学会【お問い合わせ先】 日本抗加齢医学会事務局 〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町6-3 日本橋山大ビル4F TEL:03-5651-7500 FAX:03-5651-7501 E-mail:seminar@anti-aging.gr.jp 学会ホームページはこちら

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うつ病予防に最適な睡眠時間が判明!

 睡眠時間とうつ病の関係は、公衆衛生上の重要な懸念事項である。中国・四川農業大学のHansen Li氏らは、米国成人における平日と週末の睡眠時間がうつ病の有病率とどのように関連しているかを調査した。International Journal of Behavioral Medicine誌オンライン版2025年12月19日号の報告。 対象は、パンデミック前の最新の米国国民健康栄養調査(NHANES)2017~20年3月より抽出された、20歳以上の成人4,089人。睡眠時間とうつ病指標との関連を調査するため、相関分析および非線形回帰分析を実施した。さらに、性別による差異の可能性を調査するため、性別ごとに層別化し、分析した。 主な結果は以下のとおり。・スピアマン相関係数および制限付き3次スプライン解析の結果、週末の睡眠時間はうつ病の有病率と相関していた。しかし、うつ病の総スコアやアノイアンスとは相関は認められなかった。・制限付き3次スプライン解析では、睡眠時間とうつ病の有病率、総スコア、アノイアンスとの間にU字型の関連が認められた。・うつ病の有病率の変曲点は、平日で約7.7時間、週末で約8.3時間であった。・睡眠時間中央値を基準とした期待オッズ比に基づくと、より良い睡眠時間は、平日7.5~7.8時間、週末8.0~8.7時間であると特定された。・この関連性には、男女差も認められた。 著者らは「本研究結果は、これまでの知見を裏付け、さらに発展させ、睡眠不足と睡眠過剰の両方がうつ病の有病率の上昇と関連していることを明らかにした。特定された睡眠時間は、性別によって若干の差異はあるものの、うつ病のリスク低減に役立つ可能性がある。また、今回の結果は、睡眠とメンタルヘルスの複雑な関係をさらに強調し、睡眠行動の週内変動にも注意を払う必要性があることを示唆している。これらの知見が、今後より洗練され、個別化されたメンタルヘルス促進戦略の開発に役立つ可能性がある」とまとめている。

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LH-RHアゴニスト5年後も閉経前のリンパ節陽性早期乳がん、ET延長は再発抑制と関連するか?/JCO

 5年間のLH-RHアゴニストベースの術後内分泌療法(ET)を完了後も閉経前であったリンパ節転移陽性のHR陽性早期乳がん患者に対するETの延長は、浸潤性乳がん再発および遠隔再発のいずれにおいても臨床的に意義のある減少と関連していたことが、米国・ハーバード大学のCarmine Valenza氏らによって示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年1月15日号掲載の報告。 閉経前および閉経後のER陽性早期乳がん患者では、タモキシフェンによる術後療法を10年に延長すると、乳がん死亡率が低下することが報告されている(ATLAS試験)。LH-RHアゴニストによる5年間の術後療法を完了した後も閉経前である患者に対するETの延長を支持するエビデンスはないが、実臨床では多くの患者でタモキシフェン単独療法への切り替えまたはLH-RHアゴニスト(+タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬)によるETの延長が実施されている。そこで研究グループは、2つの前向きに収集されたデータセット(Young Women's Breast Cancer StudyおよびEuropean Institute of Oncology Breast Cancer Cohort)を用いたコホート研究の解析を実施して、ET延長のベネフィットを調査した。 対象は、2005~16年に40歳以下で早期乳がんと診断され、リンパ節転移陽性かつHR陽性で、LH-RHアゴニストベースの術後療法を開始して5年経過後も再発を認めない閉経前の女性であった。なお、閉経前の定義は、45歳未満、LH-RHアゴニスト中止後のエストラジオール値が閉経前の範囲内または月経再開のいずれかとした。主要評価項目は浸潤性乳がんのない生存期間(IBCFS)、その他の評価項目は無遠隔再発生存期間(DRFS)、骨折や主要な心血管イベントなどで、傾向スコア重み付け法を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は合計501例で、延長のETを受けたのは287例(57%)、受けなかったのは214例(43%)であった。年齢中央値は両群ともに37歳であった。延長群では、非延長群と比較して、pT3/4(14%vs.7%)、pN2/3(36%vs.26%)、組織学的グレード3(49%vs.42%)の患者が多かった。・延長群における延長後のET期間中央値は3.7年(四分位範囲[IQR]:2.3~5.0)であった。延長後のETとしてタモキシフェン単独療法を受けた患者が48%、LH-RHアゴニストとタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬の併用療法を受けた患者が52%であった。・追跡期間中央値7.3年(IQR:4.8~10.3)で、IBCFSイベントは延長群で53件(19%)、非延長群で74件(34%)発生した。5年IBCFS率はそれぞれ85%および78%であり、ET延長と再発リスク低下との関連が示唆された(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.44~0.89、p=0.0135)。この傾向はpT1症例を除くほとんどのサブグループで一貫していた。・DRFSイベントは延長群で28件(10%)、非延長群で44件(21%)発生した。5年DRFS率はそれぞれ91%および83%であった(HR:0.49、95%CI:0.31~0.79)。・両群において、骨折および主要な心血管イベントは患者の1%に発現した。

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高血圧アプリの有効性決定因子が明らかに/Hypertension

 苅尾 七臣氏(自治医科大学内科学講座循環器内科学 教授/自治医科大学附属病院循環器センター センター長)らが高血圧治療補助アプリを用いた研究「B-INDEX研究」を実施し、ベースライン血圧値とは無関係に、高齢・減塩・初期の体重減少が治療アプリ(デジタルセラピューティクス:DTx)による効果的な血圧低下の予測因子であることを明らかにし、「DTxによる高血圧治療では、最初の4週間が重要」と示唆した。Hypertension誌2026年1月号掲載の報告。 本研究は、高血圧患者を対象とした12ヵ月間の多施設共同介入研究で、DTx介入による家庭血圧低下効果の決定要因を調査。6ヵ月間のDTx介入期間、その後6ヵ月間のDTx介入終了期間を設定し、家庭血圧、体重と体組成、身体活動、睡眠パターンについて、各種デジタル機器を用いて毎日測定した。今回、6ヵ月間のDTx介入期間のデータ解析結果に、DTx介入終了後6ヵ月の追跡データを加えた。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は高血圧患者198例で、平均年齢54.9±10.6歳、男性57.1%、平均BMI 26.7±5.3 kg/m2、降圧薬服用者57.6%であった。・対象者が服用していた降圧薬の種類は、カルシウム拮抗薬43.4%、ARB 35.9%、利尿薬7.6%と続いた。・ベースライン時点の血圧は、診察室血圧141.7±12.5mmHg、家庭血圧(朝)137.1±12.5mmHg、家庭血圧(夕)129±15.8mmHgであった。・最初の4週間で血圧の顕著な低下が認められた(朝の家庭血圧SBP/DBP:-6.2/-2.6mmHg)。・混合モデルを解析した結果、ベースラインの家庭血圧、高齢、自己効力感スコア、自己申告による食塩摂取量の減少、および軽度の初期体重減少(4週目で-0.5kg)が、6ヵ月後の家庭血圧低下の有意な決定因子であることが示された。 なお、本研究は、自治医科大学がAMED(日本医療研究開発機構)の令和4年度「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(ヘルスケア社会実装基盤整備事業)」に係る公募に応募して採択されたものである。

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米国の肥満有病率、2035年に向けて人種/民族問わず増加の見込み/JAMA

 1990~2022年の間の米国における成人肥満(BMI値30以上)有病率の変動を集団単位で調べた結果、人種/民族、居住州、性別、年齢によって大きな違いがみられたものの、すべての集団で肥満の有病率は高く、2035年に向けて増加し続けると見込まれることが、米国・ワシントン大学のNicole K. DeCleene氏らによって示された。米国における肥満の有病率は、過去数十年で急激に上昇しており、公衆衛生上の大きな負担となっている。集団によってかなりのばらつきがあることが示されている一方で、保健政策の策定や格差の縮小に必要な、集団レベルの肥満推計や予測の詳細情報は不足していた。JAMA誌オンライン版2026年1月28日号掲載の報告。合計1,131万5,421人のBMIデータを解析 研究グループは、人種/民族、居住州、性別、年齢(20歳以上)別に、1990~2022年の米国における肥満(BMI値30以上)の有病率を推定し、2035年に向けた傾向を予測した。 米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)からのBMI測定データと、行動リスク要因サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System:BRFSS)およびGallup Daily Surveyの、自己申告の身長と体重から算出したバイアス調整後BMI値を、時空間ガウス過程回帰法と年率換算変化率・メタ回帰ベイジアンスプライン統合モデルを用いて解析した。 入力データのサーベイは、州別および人種/民族別の集団ベースサンプリングを用いて行われ、米国人合計1,131万5,421人が参加した。 結果は、ヒスパニック系(人種は問わない)、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人の集団について報告された。1990年19.3%から2022年42.5%に上昇、2035年には46.9%に 2022年の米国成人のうち肥満者は推定1億700万人(95%不確実性区間[UI]:1億101万~1億1,300万)で、米国成人の42.5%(95%UI:40.2~45.0)を占め、1990年の3,470万人(95%UI:3,110万~3,830万)・19.3%(95%UI:17.3~21.3)から増加しており、2035年には1億2,600万人(95%UI:1億1,800万~1億3,400万)・46.9%(95%UI:43.9~49.9)まで増加すると予測された。 全米全体でみると、2022年の人種/民族別にみた年齢標準化肥満有病率は、非ヒスパニック系白人男性の40.1%(95%UI:37.8~42.5)から非ヒスパニック系黒人女性の56.9%(95%UI:54.1~59.9)の範囲にわたっていた。 肥満有病率は、州レベルの差異が大きく、中西部および南部の州で最も高く、また州内の人種/民族によっても格差が見られ、男性よりも女性で格差は大きかった。 肥満有病率は年齢によってもばらつきが大きく、中年成人で最も高く、また若年成人のとくに女性で大幅に増加していた。

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巣状分節性糸球体硬化症、新規の選択的TRPC6阻害薬が有望/Lancet

 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)では、一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーCメンバー6(TRPC6)の過剰な活性が、腎糸球体のポドサイトの減少と進行性腎障害を引き起こす可能性が示唆されている。米国・ミシガン大学のHoward Trachtman氏らは、FSGSの治療薬として、新規の1日1回経口投与の選択的TRPC6阻害薬BI 764198の安全性と有効性を評価する探索的試験を行い、蛋白尿の低下が認められ、忍容性は良好であったことを報告した。Lancet誌オンライン版2026年1月27日号掲載の報告。BI 764198(3用量)の安全性と有効性をプラセボと比較、第II相試験 研究グループは、第II相の多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験により、BI 764198(20mg、40mg、80mg、1日1回)の安全性と有効性をプラセボと比較し評価した。投与期間は12週間。 対象は、18~75歳の生検で原発性FSGSが確認された患者(続発性である臨床的エビデンスがないことに基づく)または疾患を引き起こすTRPC6変異を伴うFSGS患者。安定した保存療法と免疫抑制療法を受けており、スクリーニング時の尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)は1.0g/g以上、推算糸球体濾過量(eGFR)は30mL/分/1.73m2以上であった。 被験者は中央ブロック法にて1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、コルチコステロイドの使用により層別化された。 主要エンドポイントは、12週時点の蛋白尿反応(24時間UPCRがベースラインから25%以上低下)とした。そのほかの重要なアウトカムとして、安全性と忍容性を評価した。12週時点の蛋白尿低下、BI 764198群35%、プラセボ群7% 試験は2022年3月10日~2024年9月3日に10ヵ国31施設で行われ、139例がスクリーニングされ、67例がBI 764198(20mg、40mg、80mg用量)群またはプラセボ群に無作為化された。うち5例は誤って無作為化され治療を受けなかった。 62例が治療を受けた(BI 764198群48例[20mg群18例、40mg群15例、80mg群15例]、プラセボ群14例)。うち2例(BI 764198 40mg群と80mg群の各1例)がベースラインまたはベースライン後のUPCRが欠測値であり、Full Analysis Set(FAS)には含まれなかった。 被験者(62例)は、37例(60%)が男性、25例(40%)が女性で、平均年齢は40.7歳(SD 12.6)。多くを白人が占めた(39/62例、63%)。 12週時点の蛋白尿反応は、BI 764198 20mg群8/18例(44%)、40mg群2/14例(14%)、80mg群6/14例(43%)で観察され(全用量統合群16/46例[35%])、プラセボ群は1/14例(7%)であった。対プラセボ群のオッズ比は、BI 764198 20mg群10.0(95%信頼区間[CI]:1.6~118.1)、40mg群1.5(95%CI:0.2~19.5)、80mg群6.0(95%CI:0.9~73.6)であり、全用量統合群4.9(95%CI:1.0~48.8)であった。 全体では56例(90%)が試験期間および治療期間を完遂した。 BI 764198の忍容性は良好で、治療群間で有害事象の発現頻度に意味のある差は認められなかった。治療中に発現した有害事象は、44/62例(71%)で報告され、発現頻度はプラセボ群(10/14例[71%])とBI 764198群(34/48例[71%])で同等であった。

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PPIの長期使用と胃がんリスクの関連性否定:北欧5ヵ国での集団ベースの症例対照研究(解説:上村直実氏)

 北欧5ヵ国(デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、アイスランド)の全国登録レジストリーから前向きに収集したデータを用いた大規模症例対照研究の結果、1年超のPPI長期使用と胃がんリスクの関連性はなく、H2ブロッカーと同様であることが、2026年1月のBMJ誌に発表された。PPI長期使用による胃がんリスクの上昇を示唆する報告は多数あるが、コホート研究などの観察研究における精度の問題を指摘して、考えられるバイアスである診断前のPPI開始時期やH. pylori関連変数の調整不足、噴門部がんの混在などを厳密に調整するデザインを採用した結果、両者の関連性が否定されたとしている。 最近報告された3つのシステマティックレビューとメタアナリシスでもPPIと胃がん発症の関連性が強く示唆されたように、多くの観察研究およびメタアナリシスが両者間の正の関連性を示している。一方、両者の関連性を検証する観察研究と違って、因果関係を検証するための研究デザインとしてのプラセボを対照とした前向きランダム化比較試験(RCT)に関しては、2019年に報告された1本のみである(Moayyedi P, et al. Gastroenterology. 2019;157:682-691.)。この試験は対象が抗血栓薬内服者であるという制限があるものの、PPI群とプラセボ群の消化器がんを含む有害事象を検証した唯一のRCTであり、PPIとプラセボ両群間で胃がんのみでなく観察研究によりPPIによる有害事象として報告されている市中肺炎、骨折、貧血、クロストリジウム・ディフィシル腸炎などの発生リスクに関して、平均3年の観察期間で両群間に差を認めず両者の因果関係を否定する結果であった。 筆者らは、H. pylori感染陰性者を対象としてPPIと胃酸分泌抑制作用がより強力なP-CABの長期投与による有害事象を検証する目的のRCTを行った(Uemura N, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2025;23:748-757.)。5年間の観察中、1年毎の内視鏡検査により両群における胃腫瘍の発生を検証した結果、両群ともに胃がんやカルチノイドの発生は認められなかった。2つの研究は今回の研究結果を支持するものであり、PPIによる胃がんリスク増加の関連性および因果関係が否定されたものと思われる。 今回の報告ではPPIと胃がんリスクに関して偽陽性をもたらす可能性がある複数の要因が特定されている。胃がん診断前の薬剤の開始時期すなわち胃がんの随伴症状に対するPPIやH2ブロッカーの使用、H. pylori関連変数の調整不足、噴門部がんの混在などである。今後の薬剤疫学研究に携わる研究者や論文の読者にとって、本論文において指摘されたバイアスの要因が的確に調整されているかどうか十分に注意しなければならない。なお、ほとんどが進行胃がんで診断される欧米と違って、内視鏡検査によって胃がんが診断されるわが国において最近はやりの大規模レセプトデータを使用する疫学研究では、胃がんの有無自体に内視鏡検査の回数が重要な交絡因子であることを忘れてはならない。

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最新科学が覆す 体にいいのはどっち?

ニューヨークの専門医×最新論文で解き明かす本書では、ニューヨークの老年医療の最高峰であるマウントサイナイ医科大学に勤める山田 悠史氏が、「白湯は体にいい?」「バリウム検査は受けたほうがいい?」「グルテンフリーは健康にいいの?」など、多くの人が気になる健康神話を、食事・健康・運動・睡眠・民間療法などといったジャンルごとに分類し、最新の論文をもとに「本当に正しいのはどちらか」を解説します。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する最新科学が覆す 体にいいのはどっち?定価1,870円(税込)判型四六判頁数272頁発行2025年12月著者山田 悠史ご購入はこちらご購入はこちら

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第301回 総長記者会見で明らかになった東大のゆるゆるガバナンス、研究費入金わずか100万円も経理当局気付かず、東大病院は医学部附属から大学附属に組織改編も検討

一連の医学部の不祥事を受けて東大総長が記者会見こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。東京大学大学院の共同研究を巡り、収賄容疑で大学院医学系研究科の教授が逮捕された事件については、前回(第300回 東大皮膚科教授、高級クラブやソープランドで約30回、約180万円の接待受け収賄で逮捕、国際卓越研究大学の認定に黄信号)詳しく書きましたが、1月28日、東大の藤井 輝夫総長が今回の逮捕や昨年11月の准教授の逮捕など、一連の医学部の不祥事を受けて記者会見を行いました。本郷まで出向いて、安田講堂で行われた記者会見を聞いてきましたので、その内容をリポートしたいと思います。3時間にも及んだ記者会見で浮き彫りになったのは、東大の呆れるしかないゆるゆるのガバナンスでした。S元教授は逮捕2日後の1月26日に懲戒解雇の処分記者会見には、藤井総長、相原 博昭理事(副学長で病院・教育人事担当)、東大から調査を依頼された国広総合法律事務所の國廣 正弁護士が出席しました。冒頭と会見終了後の都合2回、藤井総長、相原理事が30秒以上深く頭を下げ続けたのが印象的でした。私もいろいろな謝罪会見をみてきましたが、頭を下げ続けた時間は長い部類に入るのではないでしょうか。東大は先々週に逮捕された皮膚科教授に加え、昨年11月には医学部准教授も収賄罪で逮捕、起訴されています。これらの事件の舞台となったのは東大病院と医学系研究科ですが、記者会見に田中 栄病院長は1月27日付で引責辞任しており欠席、医学系研究科長・医学部長も欠席でした。これから医学部と附属病院の改革を進めるという割には、当該部署の責任者が1人も出席しないことに大きな違和感を抱きました。藤井総長は冒頭、「教育機関として、社会の信頼を著しく損ねましたことを、深く心よりお詫び申し上げます」と陳謝、続いてS元教授へのヒアリングなどから確認した高額接待の内容、舞台となった社会連携講座の設立から廃止の経緯、今後のガバナンス改革策などを説明しました。なお、S元教授には逮捕の2日後の1月26日に懲戒解雇の処分が下されていました。26日に書類送検された元特任准教授(46)については、すでに雇用関係が終了しており、処分は行われていません。また、大学幹部については、総長と3人の担当理事は役員報酬の自主返納、医学系研究科長・医学部長は訓告、医学部附属病院長は前述したように自ら辞任を申し出ています。警視庁は2024年11月から捜査開始、東大内部の調査は一時中断記者会見を聞いてわかったのは、警視庁は相当早くから捜査に着手していたという事実です。東大が日本化粧品協会から内部通報を受けたのが2024年9月、10月には東大のコンプライアンス基本規則に基づいて附属病院長に調査を要請していました。しかし、11月上旬に警視庁から東大に捜査協力要請が行われ、それを受けて東大は調査を中断しました。この事件が世の中に知られることになったのは2025年3月の週刊文春の報道ですが、警視庁はその4ヵ月も前から動いていたわけです。その後、2025年3月に日本化粧品協会と東大との社会連携講座設置契約と共同研究契約が解約に至り、5月に同協会がS元教授らや東大を相手取り、損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。この提訴をきっかけに6月、東大は対応本部を改めて設置、外部弁護士の調査チームが調査を開始しました。その直後、6月30日にはS元教授に対し、自宅待機命令を出しています。今回の記者会見はS元教授の逮捕を受けてのもので、東大も調査チームの調査結果を明らかにしたわけですが、それと並行して警視庁も別途捜査を着々と進めていたのです。自宅待機となっていたS元教授の懲戒解雇が決定したのが1月23日、逮捕は24日、懲戒解雇の発令は26日、記者会見は28日という一連の流れから、東大は警視庁の捜査当局と相当綿密に情報のやり取りをしていたことが伺えます。本連載の前回で「贈収賄事件になる可能性が当初からあったにもかかわらず、S元教授は教授のまま、さしたる処分も受けずにいた」と書きましたが、むしろ「まもなく逮捕」の情報を得て懲戒解雇の決定を下し、逮捕直後に発令するというシナリオだったと考えられます。S元教授が「商品の宣伝には利用しない旨を日本化粧品協会に誓約させる」と回答し講座開設が承認されるも誓約書は提出されず記者会見では、調査チームの責任者である國廣氏が日本化粧品協会とS元教授の案件について調査結果を説明しました。調査は、大学内に存在する申請書や議事録などの資料、関係者のメールのデジタルフォレンジック(PC、スマホ、サーバ等のデジタル機器から法的証拠となるデータを収集・分析する技術)調査、S元教授及び皮膚科の関係者のヒアリングなどによって行ったとのことです。S元教授が受けた過剰な接待の実態(民事訴訟の訴状では86件総額2,076万円、調査チームのヒアリングでS元教授が認めたのは31件総額918万円。ただし調査チームは31件を超えると推定)もさることながら、会見で出席していた記者たちが驚き、質問が集中したのは東大のガバナンス不全についてでした。國廣氏は説明の中で、日本化粧品協会の出資でつくった臨床カンナビノイド学社会連携講座(通称カンナビ講座)に対する大学の管理体制の杜撰だった点を2つ指摘しています。1つはカンナビ講座設置の申請時の審議の甘さです。医学系研究科先端研究調整部会の審議では複数の委員から「東大病院がカンナビノイド商品の宣伝・広告に利用されるのではないか」といった懸念が示されたそうです。この時S元教授は「商品の宣伝には利用しない旨を日本化粧品協会に誓約させる」と回答して講座開設が承認されました。しかし、結局誓約書は提出されないままで、未提出であることを大学側も確認していませんでした。その後、日本化粧品協会はウェブサイトなどで、研究室が東大医学部附属病院内にあるかのような表示をするなど、東大ブランドを宣伝に使うようになり、S元教授らも協会のウェブサイトやYouTubeなどに登場していたとのことです。研究費の入金は100万円、「未入金を把握していなかった大学側の問題も大きい」と調査を担当した弁護士そしてもう1つが研究資金の管理の杜撰さです。カンナビ講座の研究費は日本化粧品協会などから2023~25年度に3,000万円ずつ計9,000万円、その後増額申請を経て総額1億9,948万5,000円が支払われることになっていましたが、実際に支払われたのはわずか100万円でした。調査チームはこれについて「(S元教授側は)支払いを強く請求していない。接待を受けていたためと思われる」とする一方で、「大学の研究経費の入金管理体制に不備があったことは事実」と説明、会見で國廣氏も「未入金を把握していなかった大学側の問題も大きい」とコメントしました。記者会見ではこの問題について多くの記者から質問が集中、「会計責任者が意図的に確認をスルーしていた可能性」を尋ねる質問も出ましたが、國廣氏は「まあ、ルーズだったよね」と語り、東大総長もそれを認めました。なお、研究費の入金がないにもかかわらず、特任准教授の2年分の給与2,600万円などは大学が支払っていました。「講座を潰されたくないなら早く金を持ってこい」の「金」とは「未払いの研究費」のことだったか?大学であっても企業であっても、あるプロジェクトの入金、出金をきちんと管理するのは基本中の基本です。なのに、何千万円という入金の確認をせず、カンナビ講座を継続させていたとは、東大の経理部門はいったい何をやっていたのでしょう。払わないほうも払わないほうですが、未入金を確認し請求というアクションを起こさなかった大学側にも、國廣氏が指摘したように大きな問題があったと言えます。日本化粧品協会はまさか、「巨額の接待費用=研究費」と勘違いしていたわけでもないでしょうが、それにしても異常です。S元教授は会食の場で「講座を潰されたくないなら早く金を持ってこい」などと暴言を吐いていたとの報道もありましたが、「金」とは「自分への小遣い」ではなく「未払いの研究費」のことだったのかもしれません。S元教授らは良い金づるを見付けたと呑気に高級クラブや風俗接待を受けていたものの、研究費を一向に払わない悪質な相手先だったことに後になって気付き、ドツボにはまっていったのかもしれません。だとしたら、今回の贈収賄事件はまた違った様相を帯びてきます。なお、東大は今回の事案を受け、社会連携等検証・改革委員会を2025年6月30日に設置し、倫理規程に定める利害関係者との不適切な行為の実態について、全教職員を対象に調査を行ったそうです。その結果、1万3,000人強の回答や通報から倫理規定に抵触する事案が22件見つかり、うち3件は高額の接待と認められたため、懲戒手続きを開始しているとのことでした。3件はいずれも医学部の案件ではないとしています。東京大学医学部附属病院から東京大学附属病院へ改組も検討会見では国際卓越研究大学の審査について審査継続中であることも踏まえ、ガバナンス改革策も示されました。藤井総長は、「本件の事実関係を調査する中で、3つの問題点が明らかになった。1つは教職員の倫理意識が希薄であったこと。2つ目は社会連携講座等の民間資金を受け入れて行う諸活動の運営状況のチェックが十分に機能していなかったこと、3つ目は医学部及び附属病院における本件の発生を未然に防げず、周囲もそれに気付かないという組織風土」と語った上で、1)現場、管理部門、独立した監査部門による「三線防御」の考え方を導入した管理体制、2)最高リスク責任者(CRO)の配置とリスク・コンプライアンス統括部の設置、3)教職員の倫理意識の徹底、4)社会連携講座等のチェック体制の強化、5)医学部・医学部附属病院の組織風土の抜本的見直し──等からなるガバナンス改革策について説明しました。中でも、医学部・医学部附属病院については、閉鎖的と指摘される組織風土を抜本的に見直すため、医局制度の見直し、教授を頂点とするヒエラルキー構造の解体などが協議されているとのことで、「東京大学医学部附属病院から東京大学附属病院とする案も検討中」だそうです。これまで本部、医学部、病院と2段階を経ていた統治・支配・管理を、1段階にするのが目的とのことです。藤井総長は、「2025年度内にプランを固め、可能なものは2026年度当初から実装する」と語りました。国の有識者会議は、国際卓越研究大学の審査継続中に「法人としてのガバナンスに関わる新たな不祥事が生じたと判断された場合、審査を打ち切る」としていますが、今回の逮捕事案は2025年中に発覚しており、「新たな不祥事」に該当しないと見る向きもあるようです。しかし、社会連携講座のゆるゆるの審議や経理当局の杜撰な会計の体制は、記者会見で新たに発覚した重大事案と捉えることもできます。東大のガバナンス改革策の本気度が審査を行う有識者会議に伝わるかどうかが、国際卓越研究大学審査の最大のポイントになるでしょう。

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青年期の進行古典的ホジキンリンパ腫、ニボルマブ+AVDの3年PFS(S1826サブ解析)/JCO

 進行古典的ホジキンリンパ腫に対する1次治療としてニボルマブ(N)+AVD(ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)とブレンツキシマブ ベドチン(BV)+AVDを比較した第III相S1826試験における青年コホートを対象としたサブグループ解析で、N+AVDが放射線療法を最小限に抑えつつ、高い3年無増悪生存(PFS)率を達成したことを、米国・エモリー大学のSharon M. Castellino氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年1月9日号に掲載。 S1826試験は、StageIII~IVの古典的ホジキンリンパ腫と新たに診断された患者を対象に、N+AVD 6サイクルもしくはBV+AVD 6サイクルに無作為に割り付け、主要評価項目としてPFS、副次評価項目として全生存期間、無イベント生存期間、安全性を比較した試験である。 今回のサブグループ解析の結果は以下のとおり。・登録された994例のうち、24%(240例)が12~17歳であった。・3年PFS率は、N+AVD群が93%(95%信頼区間[CI]:87~96)でBV+AVD群の82%(同:73~88)より有意に高かった(ハザード比:0.37、95%CI:0.17~0.80)。・プロトコルで規定された残存部位放射線治療を受けたのは、N+AVD群1例、BV+AVD群2例であった。・両群とも発熱性好中球減少症および敗血症の発現率は低かった。・重篤な免疫関連有害事象はまれであったが、N+AVD群では甲状腺機能障害が7%に認められた。・感覚神経障害(Grade2以上)はBV+AVD群で多かった(14%vs.7%)。・治療中止はN+AVD群12例、BV+AVD群4例で報告されたが、N+AVD群ではPFSイベントは認められなかった。・患者報告アウトカムではN+AVD群の毒性が低かった。

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