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脂質中心で炭水化物を極力控えるケトン食が神経性やせ症(拒食症)に有益らしいことが、少人数の試験で示されました1-3)。拒食症は摂食を極端に制限してやせ細ることを特徴とする重度精神疾患です。たとえ体重が回復しても容姿への不満、食べることをひどく恐れる、体型や体重に執着するなどの根本症状がしばしば続くことが拒食症の再発の多さに寄与しています。ケトン食は1920年代に始まり、てんかん発作を減らすか止めることが知られる絶食に代わる治療手段として使われるようになりました3)。エネルギー源のほとんどを摂取した脂肪で賄うことを原理とするケトン食は、脳でのエネルギー代謝を大きく変えます4)。脳はそもそもケトン体をあまり使いませんが、ケトン食を実践すると脳はエネルギー源の糖の一部をケトン体に置き換えて利用するようになります。それに、ケトン食は拒食症と関係するらしい神経伝達物質の働きを調節するらしく、てんかん小児の試験でケトン食が脳脊髄液のGABAを増やすことが示唆されています5)。GABAは拒食症に付きもののうつや不安症状を減らすことが知られる抑制性神経伝達物質であり、全身のケトン体を増やすことはうつや不安と関連する振る舞いを減じることが動物実験で示されています6,7)。加えて、全身のケトン体増加は拒食症の回復に寄与するらしい炎症抑制にも一役買うようです8)。カリフォルニア大学サンディエゴ校のGuido Frank氏らによる先立つ小規模試験で、ケトン食を4~8週間続けた後に強迫症状改善効果が示唆されているケタミンを投与する拒食症治療の効果が示唆されています9)。試験には拒食症から回復して体重が戻ったとはいえ摂食障害の思考や振る舞いが続く成人5例が参加しました。ケトン食開始後の病状は日増しに上向き、食べることに関する悩みや体重の心配、体の不自由さを含む拒食症関連症状一揃いがだいぶ改善しました。ケトン食で体重が減る恐れがあることから試験では体重が回復した被験者を選びましたが、幸い被験者の体重は一定で安定していました。Frank氏はその結果に励まされ、より多くを募ってケタミン投与なしのケトン食の効果を調べる新たな試験に着手しました。新たな試験も、先立つ試験と同様に体重が回復したかわずかに低体重の拒食症女性22例が参加し、栄養士、精神科医、それに拒食症の経験があるいわば被験者と気心通じた相談員(peer counselor)の監督の下でケトン食に臨みました。14週間のケトン食を完遂した18例もやはり拒食症症状や不安、うつ症状の改善を示しました。それら18例中13例(72%)は拒食症やうつ病の診断基準を外れるほどに回復していました。その回復のほどは他の拒食症治療のはるか上をいくものだとFrank氏は述べています3)。試験期間中の被験者の体重に有意な変化はなく、程よいかいくらか低い体重を維持しました。再発もみられませんでした。また、試験を完遂した18例のその後の追跡で、ケトン食の継続が症状を抑える効果が示唆されました。3ヵ月後に摂食障害評価質問表(EDE-Q)のスコアが上昇していた患者の割合は、ケトン食を続けていた7例では3割弱の28%(2例)で済んでいましたが、ケトン食を止めた11例では6割超の64%(7例)がEDE-Q上昇を示しました。Frank氏らのチームはケトン食による拒食症治療はさらなる検討の価値があると言っています。現在、拒食症のみならず過食症の患者も募っている今回の試験の延長(extension)が進行中です2,10)。 1) Frank GKW, et al. Commun Med(Lond). 2026;6:315. 2) New evidence offers hope for ketogenic therapy in treatment of anorexia nervosa / Eurekalert 3) Keto diet shows real promise for anorexia recovery / NewScientist 4) Hartman AL, et al. Pediatr Neurol. 2007;36:281-292. 5) Dahlin M, et al. Epilepsy Res. 2005;64:115-125. 6) Yamanashi T, et al. Sci Rep. 2020;10:21629. 7) Gumus H, et al. Neurosci Lett. 2022;770:136443. 8) Yamanashi T, et al. Sci Rep. 2017;7:7677. 9) Calabrese L, et al. Eat Weight Disord. 2022;27:3751-3757. 10) Therapeutic Ketogenic Diet in Anorexia Nervosa(ClinicalTrials.gov)