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腰部硬膜外ステロイド注射によって椎体骨折のリスクが増加

 腰部硬膜外ステロイド注射(LESI)は神経根障害や脊髄神経の圧迫から生じる神経性跛行の治療に用いられるが、副腎皮質ステロイドは骨形成を低下し骨吸収を促進することで骨強度に悪影響を及ぼすことが示唆されている。米国・ヘンリーフォード ウェストブルームフィールド病院のShlomo Mandel氏らは、後ろ向きコホート研究において、LESIが椎体骨折の増加と関連していることを明らかにした。LESIの使用はこれまで考えられていたより大きなリスクを伴う可能性があり、骨粗鬆症性骨折のリスクを有する患者には慎重に行わなければならないとまとめている。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年6月5日の掲載報告。 本研究の目的は、LESIが、椎体骨折のリスクを増加するのかについて評価をすることであった。 ヘンリーフォード ウェストブルームフィールド病院のデータベースから、ICD-9診断コードを用いて、椎間板障害など脊椎に関連した疾患を有する患者計5万345例(うち1回以上のLESIを受けていた患者は3,415例)を特定した。 LESI施行例3,000例を無作為に抽出するとともに、傾向スコアマッチングによりLESI非施行例3,000例を選び出し、両群における椎体骨折の発生率を生存時間分析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・LESI施行群と非施行群で、年齢、傾向スコア、性別、人種、甲状腺機能亢進症、ステロイド使用に差はなかった。・生存時間分析の結果、注射回数の増加は骨折リスクの増加と関連していた。・注射が1回増えるごとに、骨折リスク(共変量調整後)は1.21倍(95%信頼区間:1.08~1.30)増加した(p=0.003)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

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Vol. 1 No. 2 糖尿病患者におけるPCIのエビデンス

大塚 頼隆 氏福岡和白病院循環器内科はじめに糖尿病(DM)および境界型糖尿病(IGT)患者の罹患数は、今後も全世界で増加の一途をたどると推測されている1)。現在、日本のDM有病率は全世界の第6位であり1)、また、厚生労働省のDM実態調査からもDM患者数は年々増加傾向にあり、2007年時点でDMかDMの可能性が否定できない人数は2,210万人に達すると報告されている2)。日本人において、DM(特に2型DM)患者は非DM患者に比べて心血管疾患、特に冠動脈疾患の発症のリスクが2~4倍に増加することが、久山町研究3)やJapan DiabetesComplications Study(JDCS)4)などの疫学調査から明らかである。また、舟形町研究からも、DMばかりでなく、IGTも心血管病のリスクファクターであることは明らかである3)。DMやIGTは、高血糖や酸化ストレスの増大ばかりでなく、インスリン抵抗性、高血圧、脂質代謝異常などの合併により複合的な病態を呈し、動脈硬化が進展すると考えられている。特に、食後過血糖(glucose spikes)は炎症・酸化ストレス増加により動脈硬化進展およびプラークの不安定化を招き、血管不全を起こす重要な因子と考えられている5)。事実、DM患者を長期観察したDiabetes Intervention Study(DIS)により、食後過血糖が心筋梗塞症の発症を増加させることが明らかとなり6)、食後過血糖が動脈硬化の強い促進因子であることも報告されている7)。本稿では、日本でも今後も増加し、他のリスクファクターよりも未だ解決されていないことが多いDMやIGTを有する患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)のエビデンスについて概説する。1)糖尿病合併の虚血性心疾患患者の冠動脈の特徴欧米の報告によると、DM患者の死因の約80%が動脈硬化性疾患によるものであり、その約7割以上が冠動脈疾患によるものである。DM患者の冠動脈疾患の死亡率が高い原因として、(1)無症候性であることがしばしばあり、発見が遅れる(2)多枝病変、重症左主幹部病変、びまん性病変であることが多く、重症かつ治療難治性である(3)心機能低下症例(拡張能障害を含めた)が多い(4)経皮的冠動脈形成術後の再狭窄率が高い(5)多数のリスクファクター合併や他の合併症が多いなどの特徴があるなどが考えられる8)。また、2型DM患者における心血管病発症率や死亡率は、非DM患者に比し、男性の場合約2倍、女性の場合は約4倍で、特に女性においてDMと非DMとの差は顕著である9)。われわれは、耐糖能異常患者の冠動脈病変の特徴を明らかにするために、冠動脈造影を施行しOGTTを施行した534名の冠動脈の定量的冠動脈解析を行い、平均血管径および平均狭窄病変長を算出した10)。また、その2つの冠動脈指標に寄与している因子も同時に解析した。その結果、平均血管径は「正常耐糖能」「IGT」「preclinical DM」「treated DM」の順に小さくなり、平均狭窄病変長もその順に長くなることが証明された(本誌p21の図1を参照)。つまりこの結果は、耐糖能の病状が進むほどプラーク増加に伴い血管径が細くなり、びまん性の病変になることを示している。また、血管径および狭窄病変長に食後過血糖が強く関与していることがこの検討からは示唆された。このような特徴は、血管内超音波で調べられた研究におけるプラーク量が、非DM患者に比しDM患者において有意に多いことと一致するデータと考えられる11)。2)PCI後の予後上記のような冠動脈の特徴を持つDM患者は、PCI後の再狭窄率が高く、長期的な心血管イベント率が高いことが以前から知られている。われわれは、この冠動脈の特徴と耐糖能異常が、PCI後の長期の予後にどのように関与しているかを検討した12)。PCI対照血管径を、2.5mm以上と未満で大血管径、小血管径とに分け、「小血管径+耐糖能異常グループ」「小血管径+正常耐糖能グループ」「大血管径+耐糖能異常グループ」「大血管径+正常耐糖能グループ」の4群に分類し、PCI後の長期予後を検討した。小血管径+耐糖能異常グループは早期から心血管イベントが多く予後は不良であるが、大血管径であっても耐糖能異常があるグループは特に5年後より心血管イベントが増加し、長期的に予後不良であることが判明した(本誌p22の図2を参照)。また、多変量解析により、耐糖能異常が心血管イベントおよび死亡に大きく関与することが示され、PCI後の患者において長期的な予後に耐糖能異常そのものが大きな因子であることが明らかとなった。最近のimaging modalityを用いた研究では、急性冠症候群患者において、DM患者は非DM患者に比べて、不安定プラークを意味するTCFA(thincap fibroatheroma)が多く存在していることが明らかとなった13)。また、DMの罹病歴が長い患者ほどプラーク量が多く、TCFAの比率が高いことも証明されている14)。つまり、耐糖能異常をもつ患者は血管性状も悪く、“質も悪い”ということになる。局所治療のPCIのみでは、血管全体が悪いDM患者の長期予後の改善効果には結びつかないのである。このことはPCI(局所治療)を行った後も、DM患者においてはよりintensiveな動脈硬化治療を長期に行わなければならないことを意味している。3)PCIまたはCABG経皮的バルーン血管形成術(POBA)およびベアメタルステント(BMS)時代のDM患者は、非DM患者に比べて再狭窄率が高く、治療に難渋する症例も多々存在した。しかし、薬剤溶出性ステント(DES)の登場により再狭窄率は激減し、再狭窄率が高かったDM患者においても再狭窄率は激減している15)。DESを用いたPCIが標準治療となった現在、複雑病変や多枝病変についても良好な成績が示されている。しかしながら、DMが合併した多枝病変の治療において、血行再建の選択は難しい問題である。POBA時代のBARI研究においては、DMを有する患者において、冠動脈バイパス術(CABG)の方がPOBAによるPCI治療に比べて、長期的に死亡率が有意に低いことが示されている16)。POBA(6 trials)およびBMS(4 trials)を用いたPCI治療とCABGを比較したメタ解析によると、約5年予後において全体では死亡、心筋梗塞の発生率に両群間に差はなく、再血行再建率はCABGが有意に低いという結果であった17)。一方、DM患者のみのサブ解析では、BARI研究と同様にPCI治療群において死亡率が有意に高いという結果であった17)。再狭窄の問題とは別に、PCIがlesion treatmentであるのに対して、CABGはvessel treatmentであるため、血管全体が悪いDM患者においてCABGの方が血管保護的に働く(バイパスされている血管にイベントが生じても、心血管イベントに繋がらない)のではないかと推測される。一方、薬物療法が発達した現在、DM患者に対してDESを用いたPCIとCABGを比較した最近の研究においては、短期から中期予後において、少なくとも死亡・心筋梗塞・脳卒中の発生率において両群間に差がないことが示されている(本誌p23の図3を参照)18-20)。CARDia試験においてはDESまたはBMS vs. CABGが、SYNTAX試験のサブグループにおいてはpaclitaxel-eluting stent vs. CABGが比較検討されている(本誌p24~25の図4を参照)。これらの報告からは、DM患者における血行再建において未だ再血行再建率はPCI群が高いが、脳血管イベントに関してはCABGが高いことが示されている。また、SYNTAX scoreを用いた解析で、冠動脈が重症な患者ほどCABGの心血管イベントが低いことが報告されており(本誌p24~25の図4を参照)21)、DM患者の治療選択の際に冠動脈の重症度は大きな因子である。われわれも、多枝病変を有するDM患者に対するoff-pump CABGとDES(sirolimus-eluting stent)を用いたPCIの3年予後を検討しており、3年の死亡、心筋梗塞を含めた総心血管イベントに両群間で差は認めないが、PCIは再血行再建率が有意に高く、CABGは脳血管イベントが有意に高いという結果が得られた(本誌p26の図5を参照)22)。また、SYNTAX scoreはCABGで有意に高値であった。このデータはrandomized controlled trialではないので、すべての多枝病変を有するDM患者にこの結果を当てはめることはできない。しかし、内科医・外科医が患者背景および冠動脈の重症度からPCIまたはCABGの選択を適切に判断すれば、DM合併多枝病変患者においてもDESを用いたPCIで良好な成績が期待できると思われる。また、PCIとCABGの直接比較試験ではないが、DM合併の虚血性心疾患患者を対象に、「早期血行再建+積極的薬物療法」と「積極的薬物療法単独」とを比較したBARI-2D研究では23)、積極的薬物療法単独群の42%が血行再建へ移行したが、両群間に死亡率の差はなく、より重症冠動脈病変が多いCABG群のほうが薬物療法群より心筋梗塞発症率が少ないことが報告された。つまり、血行再建を行う上で積極的薬物療法は不可欠であるのは間違いなく、重症冠動脈病変にはCABGがより有効であることが示唆される。長期のイベントにおいては、未だ十分なデータの蓄積はないが、RAS系降圧薬、スタチンや抗血小板薬などの内科的治療が発達した現在、多枝病変をもつDM患者におけるPCI治療の位置づけが今後のデータによりはっきりするのではないかと考えられる。特に、第1世代のDESに比べ、安全性および有効性が良好な第2・第3世代のDESでのデータが待たれる。現状では、DM合併の虚血性心疾患患者は予後不良と認識し、積極的薬物療法を行いつつ、個々の患者背景、冠動脈病変の重症度を十分評価した上で、心臓血管外科医との適切な検討のもと治療戦略を立てて治療に当たるべきであると考えられる。4)再狭窄への対応DMは、ステント留置後のステント内再狭窄において最も重要なリスク因子の1つである。ステント留置後の再狭窄の原因は新生内膜の増生であるが、DM患者へのステント留置後のステント内新生内膜の増生は、非DM患者へのステント留置後に比べて多いことが知られている。それは、DM患者の血管性状(4つの重要な因子)が大きく関与している(本誌p27の表1を参照)24)。DMでは、高血糖、インスリン抵抗性だけでなく、先にも述べたように高血圧や脂質代謝異常の合併により複合的な病態を有しており、DM患者に合併した多数のリスク因子の合併が新生内膜の増生や動脈硬化進展に寄与しているところが大きい。DMは慢性高血糖状態によりprotein kinase Cの活性化に伴う酸化ストレスの産生亢進や、NF-κBの活性化を介した炎症性サイトカインや増殖因子の分泌を促進し、内皮障害、血管拡張障害および動脈硬化進展を引き起こしている25)。しかし、血糖を下げる糖尿病治療薬において、現在のところ、再狭窄を予防できる確立したエビデンスはない。また、転写調節因子のperoxisome proliferator-activated receptor(PPAR)-γは、インスリン抵抗性の改善や脂肪細胞の分化誘導、および抗炎症作用などと関連していることが報告され、それにより動脈硬化進展や再狭窄予防に作用することが知られている25)。PPAR-γのアゴニストでインスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン薬は、炎症反応、LDLコレステロール、中性脂肪などの減少効果を持ち合わせ、動物実験により平滑筋細胞の増殖抑制や再狭窄予防効果が確認されている26)。また、いくつかの臨床研究において、チアゾリジン薬がステント内再狭窄を抑制することが報告されており27-29)、最近のメタアナリシスでもチアゾリジン薬がDM患者の再狭窄を予防するばかりでなく30)、非DM患者においても再狭窄予防効果があることが報告されている31)。このことは、チアゾリジン薬が血糖降下作用ばかりでなく、他の多面的効果により再狭窄を予防する可能性が示唆されるデータと考えられる。また、PERISCOPE試験におけるスルホニルウレア(SU)薬との比較では、チアゾリジン薬が動脈硬化進展抑制(むしろ退縮)する可能性を示した32)。一方、SU薬やインスリンに比べ、心筋梗塞症および死亡の減少に効果があることがUKPDS 80において報告されたメトホルミンが33)、PCI後のDM患者の心筋梗塞症や再血行再建術の発生を減らすことがいくつかの臨床試験で報告されており34, 35)、現在のところ、チアゾリジン薬、メトホルミン、後述するDPP-4阻害薬は、再狭窄を予防する糖尿病治療薬として期待できる薬剤であり、PCIを施行したDM患者に選択すべき薬剤ではないかと考える(本誌p27の表2を参照)。5)2次予防このように、長期的に予後不良なDMおよびIGT患者は、血行再建を行うと同時に長期的予後改善を目指して、厳重なる2次予防が重要である。DM患者を対象としたSteno-2 試験では、厳格かつ集学的な治療(血糖コントロールばかりでなく、厳密な脂質コントロールや血圧コントロールなど)を行うと、特に長期的に心血管イベントを有意に抑制できることや、legacy effect(遺産効果)を認めることが証明されている36)。従来療法群に比較して、強化療法群では心血管死、非致死性心筋梗塞および脳卒中を含めた複合1次エンドポイントが50%低下している。現在のところ、虚血性心疾患患者の2次予防としてエビデンスがあるのはピオグリタゾンのPROactive研究である37)。PROactive研究の中で心筋梗塞症の既往のあるサブグループ解析では、placeboに比べピオグリタゾンは急性冠症候群の発症を有意に(37%)減少させている。また、先にも述べたPERISCOPE研究において、SU薬のグリメピリドでは冠動脈プラークの進展が認められたが、ピオグリタゾンでは冠動脈プラークがむしろ退縮させることが確認され、抗動脈硬化作用があることが証明されている32)。また、新規DM患者を対象としたUKPDS 80では、SU薬とインスリンによる厳格な血糖コントロールを行った群の方が、通常治療群よりも心筋梗塞症の発症率や死亡率を減少させることが証明され、特にメトホルミンを使用した群では、さらに心筋梗塞症の発症率や死亡率を低下させることが証明されている33)。メトホルミンは、血糖コントロール以外にも心血管保護作用があることが報告されており、虚血性心疾患の2次予防にも期待できる薬剤である。インクレチン(GLP-1)の働きを利用する薬剤として、最近使用可能となったDPP-4阻害薬が注目されている。GLP-1受容体は心筋細胞や血管内皮細胞に存在しているため、DPP-4阻害薬は心血管保護作用をもつのではないかと推測されている。最近の動物実験により、DPP-4阻害薬はApo Eノックアウトマウスの内皮機能改善効果および動脈硬化進展予防が確認されている38)。また、この論文では、虚血性心疾患のない患者の血中活性型GLP-1濃度は、虚血性心疾患のある患者の血中活性型GLP-1濃度よりも有意に高値であることが示され、それは非DM患者においても同様であることが報告されている。このことは、血糖コントロールによる動脈硬化進展予防効果以外に、活性型GLP-1上昇による抗動脈硬化作用がDPP-4阻害薬には期待できる可能性を示唆している38, 39)。よって、DPP-4阻害薬も虚血性心疾患患者の2次予防に期待できる薬剤と考えられる。また、IGT患者に対しては、STOP-NIDDM研究40)や日本人のVICTORY研究41)においてα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)が有意に新規DM発症を予防することが報告されており、STOP-NIDDMにおいては、心血管イベントを49%低下させることが報告されている42)。特に、心血管イベントの中で、急性心筋梗塞症の発症を有意に低下させていることは注目すべき点である。このことは、DM患者を対象にしたメタ解析のMeRIA7における、α-GIが心血管イベント特に心筋梗塞症の発症リスクを有意に減少させるとした結果と一致しており43)、食後過血糖を抑制するα-GIは、虚血性心疾患患者の2次予防に期待できる薬剤であるといえる。現在のところ、虚血性心疾患の2次予防という観点において、DM患者にはチアゾリジン薬、メトホルミン、DPP-4阻害薬、IGT患者にはα-GIまたはDPP-4阻害薬が期待できる薬剤ではないかと考えられる。最後にDM患者に対するPCIは、DESの登場により再狭窄は激減しているが、未だDM患者はPCI後のハイリスク因子であることに変わりはない。DM患者を治療する上での留意点としては、上記のようなDM患者の冠動脈の特徴を理解しつつ、血管(狭窄)のみを診て治療するのではなく、患者全体を診て、長期的な予後改善の観点に立ちインターベンション治療と同時に積極的薬物的なインターベンションも考慮して治療を行わなければならないと考えている。また、早期の耐糖能異常の検索も重要である。われわれは急性心筋梗塞症患者に対して退院前に75g OGTTを施行している44)。その結果、正常耐糖能の 25%に対し、IGT 33%、preclinical DM 16%、DM 26%という割合であり、いわゆる“隠れ耐糖能異常”の存在が多いことが明らかとなった。これは、欧米からの報告45)とまったく同じ結果であり、虚血性心疾患患者における隠れ耐糖能異常の存在は日本人にとっても“対岸の火事”ではない。また、虚血性心疾患発症後は耐糖能異常を発症するリスクが高まることも報告されている46)。このように、虚血性心疾患を発症した患者には耐糖能異常が多く存在することを認識し、また、耐糖能異常の発症リスクが高いことも理解し、早期からの検索および治療介入を行う必要があるのではないか。そのためにも、日本人におけるDMまたはIGT合併の虚血性心疾患患者に対する検索の意義および治療介入のエビデンスがさらに必要である。さいたま医療センターの阿古潤哉先生、神戸大学の新家俊郎先生らとともに、糖尿病専門医の先生方も交えて心疾患と糖尿病に関する研究会「Cardiovascular Diabetology meeting」を発足し、日本人におけるエビデンス構築に一役買いたいと考えている。興味のある方は、ぜひともご参加いただきたい。文献1)http://www.eatlas.idf.org/media/2)http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/h1225-5.html3)Tominaga M, Eguchi H, Manaka H, et al. 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相次いで導入されるロボット支援前立腺摘除術 —国際医療福祉大学病院でも導入—

 前立腺がんなどの手術に最新型の手術支援ロボット「ダヴィンチSi」を導入する医療機関が増加している。国際医療福祉大学病院(栃木県那須塩原市)もその1つ。同院腎泌尿器外科では、先月27日に「ダヴィンチSi」を用いた初めての前立腺摘除術を実施したことを発表した。 従来の前立腺摘除術は、縦横無尽に走る細かい血管や神経を避け病巣を摘出するもので、容易ではなかった。「ダヴィンチSi」では、1〜2cmの小さな創から挿入した内視鏡カメラで拡大して映し出された高解像度3D画像を確認しながら、人間の手首以上の可動域を持つロボットアームに装着された鉗子やメスを操作し、精確で安全な内視鏡手術が可能となる。さらに、ロボット支援前立腺摘除術は従来の手術より低侵襲であり、術後の尿失禁や性機能障害などの合併症が軽減されることが期待されている。 現在、米国では前立腺摘除術の8割がロボット支援手術で行われているという。日本では「ダヴィンチ」は、2009年に厚生労働省薬事・食品衛生審議会で国内の製造販売が承認され、2012年4月より前立腺がんの全摘出手術のみ保険が適用されている。

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日焼け止め塗布は自動車運転中も大切

 米国・ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のDennis P. Kim氏らは、皮膚がん患者の自動車運転中のサンプロテクトについて評価した。その結果、ほとんどの患者の認識が薄かったことを報告し、「皮膚がん予防運動について、とくに運転中の日光曝露に主眼を置いた修正が必要である」と提言した。これまで、運転中のサンプロテクトに関する認識や具体的行動について調べた患者データはなかったという。Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年6月号の掲載報告。 研究グループは、モース顕微鏡手術クリニックの患者をレトロスペクティブに評価し、患者が自動車運転中のサンプロテクトの重要性を認識していたのか、サンプロテクトについての認知およびコンプライアンスについて評価した。また第2の目的として、悪性黒色腫と非悪性黒色腫における有意差がみられる偏側性を調べた。 主な結果は以下のとおり。・日常的な日焼け止めの使用と比較して、運転中に日焼け止めを塗布すると回答した患者は、有意に少数であった(52%対27%、p<0.05)。・回答者の大半は、運転中に日焼け止めが必要とは考えていなかった。とりわけ窓を閉めていれば必要ないと考えていた。・運転中は日光によるダメージから守られていると信じていた患者ほど、日焼け止めを使用する人が有意に少なかった(12%対46%、p<0.05)。・窓にスモークフィルムを貼った車を運転していた患者を除くと、ドライバー(左ハンドルのため左側に乗車)について非悪性黒色腫の有意な左側優性が認められた。

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高齢者の喘息、若年期発症と中高年発症で違いはあるのか?

 40歳以下で発症した喘息と40歳以上で発症した喘息を比べると、40歳以下で発症した喘息ではアトピー性が強く、ピークフローの測定が多く行われていた。一方、40歳以上で発症した喘息では呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)が高く、重症の喘息も多いことがミシガン大学内科のAlan P. Baptist氏らにより報告された。Journal of Asthma誌オンライン版2013年6月20日号の掲載報告。 高齢者の喘息には、小児期または若年期で発症し、それが高齢期まで継続している場合と、中高年で発症した場合があるが、この発症年齢の違いが、診断および治療のうえで何らかの影響をもたらしているかもしれない。今回の研究の目的は、喘息の発症年齢によって、人口動態、コントロール状況、QOL、医療サービスの利用にどのような違いがあるのかを明らかにすることである。 本研究では65歳以上の喘息患者に関する横断的研究のデータを分析した。小児・若年期の発症か中高年の発症かは40歳を基準とした。喘息の人口動態と重症度を分析し、プリックテストと肺機能検査(スパイロメトリー、FeNO測定)を行った。 主な結果は以下のとおり。・小児・若年期発症の喘息患者では中高年期発症に比べ、プリックテスト陽性が有意に多かった(92% vs 71% p=0.04)。これらの結果は両群とも過去の報告より多いものであった。・小児・若年期発症の喘息患者はピークフロー測定を有意に多く受けていた(p=0.07)。・中高年期発症の喘息患者は中等症または重症が有意に多く(オッズ比[OR]:3.1、p=0.05)、FeNOも有意に高かった(p=0.02)。・中高年期発症の喘息患者は入院率も有意に高かったが(p=0.04)、回帰分析後では有意差はなかった。・喘息の人口動態的な情報、併存症、スパイロメトリー、コンプライアンス、喘息のコントロール、QOLにおいては小児・若年期発症と中高年期発症との間に有意差はなかった。 高齢者の喘息では、発症年齢を定義することにより、推奨される治療やアウトカムが改善される可能性があると著者は述べている。

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非定型抗精神病薬のLAIを臨床使用するためには

 第二世代抗精神病薬(SGA)の持効性注射剤(LAI)は統合失調症の広範な治療におけるファーストラインになっている。イタリア・ASL SalernoのSalvatore Gentile氏は、SGA-LAI治療に関する有害反応について、システマティックレビューを行った。Pharmacotherapy誌オンライン版2013年6月17日号の掲載報告。 2001年1月~2013年4月の間のMEDLINE、EMBASE、PsycINFO、DAREデータベース、Cochrane Libraryの各電子データベースを検索して、安全性と忍容性についての報告が英語で執筆されたピアレビュー論文を特定した。検索した論文は、以下の場合は除外した(レビュー論文、事後解析、以前の試験に登録されたサブセット被験者の解析、1症例報告、症例シリーズ研究、小規模[50例未満] 試験、安全性のデータがない、試験期間が8週未満)。評価の対象となったSGA-LAIは、アリピプラゾールLAI、オランザピンパモエート、パリペリドンパルミチン酸エステル(ともに国内未承認)、リスペリドンLAI(商品名:リスパダールコンスタ)である。 主な結果は以下のとおり。・検索により181件の論文が特定された。そのうち140件は除外され、41件が適格として解析に組み込まれた。・予想されたとおり、情報を見直した結果、SGA-LAIの安全性プロファイルは経口剤と整合性が取れていた。・しかしながら、不測の気がかりな安全性シグナルがみられるようでもあった。・たとえば実際に、臨床におけるアリピプラゾールLAIのルーチン使用は制限されている可能性があった。・レビュー情報から、リスペリドンLAIとパリペリドンパルミチン酸エステルはいずれも、精神症状およびうつ病の悪化と関連している可能性があった。リスペリドンLAI試験に登録された患者の死因のトップは自殺であった。・以上の結果を踏まえて著者は、「SGA-LAIの臨床使用の指数関数的増加を図るには、それら薬剤と関連する潜在的な安全性シグナルを確認し、取り除くための、さらなる検討を緊急に行う必要がある」と結論した。関連医療ニュース 統合失調症、デポ剤と抗精神病薬併用による効果はどの程度? 統合失調症へのアリピプラゾール持効性注射剤、経口剤との差は? どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与

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新種のMERSコロナウイルスの院内ヒト間感染を確認/NEJM

 重篤な肺炎を引き起こす新種の中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome; MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)の、医療施設内でのヒト間感染の可能性を示唆する調査結果が、サウジアラビア保健省のAbdullah Assiri氏らKSA MERS-CoV調査団により、NEJM誌オンライン版2013年6月19日号で報告された。 2003~2004年のSARSパンデミック以降、呼吸器感染症の原因となる2種類の新規ヒトコロナウイルス(HKU-1、NL-63)が確認されているが、いずれも症状は軽度だった。一方、2012年9月、世界保健機構(WHO)に重篤な市中肺炎を引き起こす新種のヒトコロナウイルス(β型)が報告され、最近、MERS-CoVと命名された。現在、サウジアラビアのほか、カタール、ヨルダン、英国、ドイツ、フランス、チュニジア、イタリアでヒトへの感染が確認されているが、感染源などの詳細は不明とされる。院内アウトブレイクの実態を調査 調査団は、サウジアラビアの医療施設で発生したMERS-CoV感染症の院内アウトブレイクの実態を調査した。 医療記録を精査して臨床的、人口学的情報を収集し、感染者および感染者と接触した可能性のある者を同定して面接調査を行った。潜伏期間および発症間隔(感染者とこの感染者と接触した者の症状発現の時間差)について検討した。 2013年4月1日~5月23日までに、サウジアラビア東部で23例のMERS-CoV感染者が報告された。年齢中央値は56歳(24~94歳)、男性が17例(74%)、50歳以上が17例(74%)、65歳以上が6例(26%)であり、基礎疾患は末期腎疾患が12例(52%)、糖尿病が17例(74%)、心疾患が9例(39%)、喘息を含む肺疾患が10例(43%)に認められた。15例(65%)が死亡、21例(91%)はヒト間感染 症状としては、発熱が20例(87%)、咳嗽が20例(87%)、息切れが11例(48%)、消化管症状が8例(35%)にみられ、腹部または胸部X線画像上の異常所見が20例(87%)に認められた。 6月12日の時点で15例(65%)が死亡し、6例(26%)が回復、2例(9%)は入院中であった。潜伏期間中央値は5.2日、発症間隔は7.6日であった。 23例中21例(91%)が、透析室、集中治療室、病室などの入院施設内でのヒト間感染であった。感染者と接触のあった家族217人(成人120人、小児97人)のうち成人5人(3人は検査で確定)、および感染者と接触のあった200人以上の医療従事者のうち2人(2人とも検査で確定)が感染した。 著者は、「医療施設内におけるMERS-CoVのヒト間感染が示唆され、重大な感染拡大に結びついた可能性がある」と結論している。

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急性虚血性脳卒中、迅速なt-PA開始を支持する新たなエビデンス/JAMA

 急性虚血性脳卒中患者の治療では、発症から組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)による血栓溶解療法の開始が迅速であるほど、良好な転帰が達成されることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJeffrey L Saver氏らの検討で示された。これまでに、急性虚血性脳卒中に対するt-PAの静脈内投与の効果は時間依存性であることが、無作為化臨床試験で示唆されている。一方、発症からt-PA投与開始(onset to treatment:OTT)までの時間が転帰に及ぼす影響を評価するには、いまだに症例数が十分でないため、臨床的知見の一般化可能性は確定的ではないという。JAMA誌2013年6月19日号掲載の報告。GWTG-Strokeの登録データを解析 研究グループは、米国心臓協会(AHA)と米国脳卒中協会(ASA)が運営する全国的な患者登録システムであるGet With The Guidelines–Stroke(GWTG-Stroke)のデータを用いて、t-PA静脈内投与を受けた急性虚血性脳卒中患者の転帰とOTT時間の関連を評価した。 2003年4月~2012年3月までに、GWTG-Strokeに参加する1,395施設で発症から4.5時間以内にt-PAの投与を受けた急性虚血性脳卒中患者5万8,353例のデータを解析した。院内死亡、頭蓋内出血が低下、退院時自立歩行、自宅退院が増加 全t-PA投与患者の年齢中央値は72歳で、女性が50.3%を占めた。OTT時間中央値は144分であり、OTT時間90分以内は9.3%(5,404例)、OTT時間91~180分は77.2%(4万5,029例)、OTT時間181~270分は13.6%(7,920例)であった。治療前のNIH脳卒中重症度スケール(NIHSS)のデータは登録患者の87.7%から得られ、スケールの中央値は11であった。 脳卒中の重症度が上がるほど(NIHSSの5点上昇ごと)OTT時間が有意に短縮した(オッズ比[OR]:2.8、95%信頼区間[CI]:2.5~3.1、p<0.001)。また、搬送に救急医療サービスを利用した場合は利用しなかった場合に比べ(142.6 vs 151.1分、OR:5.9、95%CI:4.5~7.3、p<0.001)、搬送施設の通常稼働時間(午前7~午後7時、月~金曜)内に到着した場合は時間外に到着した場合に比べ(141.5 vs 145.9分、OR:4.6、95%CI:3.8~5.4、p<0.001)、OTT時間が有意に短かった。 全体として、5,142例(8.8%)が院内で死亡し、2,873例(4.9%)が頭蓋内出血を発症し、1万9,491例(33.4%)が退院時自立歩行を達成し、2万2,541例(38.6%)が退院して自宅へ戻った。 OTT時間が15分短くなるごとに、院内死亡率(OR:0.96、95%CI:0.95~0.98、p<0.001)および症候性頭蓋内出血率(OR:0.96、95%CI:0.95~0.98、p<0.001)は有意に低下し、退院時自立歩行率(OR:1.04、95%CI:1.03~1.05、p<0.001)および自宅退院率(OR:1.03、95%CI:1.02~1.04、p<0.001)は増加した。 著者は、「脳卒中の発症から血栓溶解療法の開始が早いほど、死亡や症候性頭蓋内出血のリスクが低下し、退院時自立歩行や自宅退院の達成状況が良好だった」とまとめ、「これらの知見は、脳卒中患者はできるだけ迅速に病院へ搬送して早期に血栓溶解療法を開始するよう努めることの重要性を改めて強調するもの」と指摘している。

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コーヒー・紅茶の摂取量と原因別の死亡率の関係~人種によって異なる?

 コーヒーや紅茶の摂取量と死亡率は逆相関することが示唆されているが、原因別の死亡率との関係はあまりわかっていない。米国マイアミ大学のHannah Gardener氏らは、コーヒーや紅茶の摂取量と原因別の死亡率(血管関連、血管関連以外、がん、すべての原因)との関係を、多民族集団ベース研究であるNorthern Manhattan Studyでプロスペクティブに検討した。この調査では、人種によりコーヒー摂取量と血管関連死との関係が異なることが示唆された。Journal of Nutrition誌オンライン版2013年6月19日号に掲載。 調査には、ベースライン時に脳卒中、心筋梗塞、がんの既往がなかった2,461人が参加した(平均年齢68.30±10.23歳、男性36%、白人19%、黒人23%、ヒスパニック56%)。平均追跡期間11年で、食事摂取頻度調査票により調査したコーヒーと紅茶の摂取量と863人の死亡(そのうち血管関連死は342人、がんによる死亡160人を含む非血管関連死は444人)との関連について、多変量補正Coxモデルにより検討した。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー摂取量と全死因による死亡率の間に逆相関が認められた(1日当たりの杯数増加につき、HR=0.93、95%CI:0.88~0.99、p=0.02)。カフェイン入りのコーヒーを4杯/日以上飲んだ人では全死因死亡における強い抑制効果が認められた。・紅茶摂取量と全死因による死亡率の間に逆相関が認められた(1日当たりの杯数増加につき、HR=0.91、95%CI:0.84~0.99、p=0.01)。・コーヒー4杯/日以上の摂取は非血管関連死を抑制した(1杯/月未満に対して、HR=0.57、95%CI:0.33~0.97)。・紅茶2杯/日以上の摂取は非血管関連死(HR=0.63、95%CI:0.41~0.95)とがんによる死亡(HR=0.33、95%CI:0.14~0.80)を抑制した。・ヒスパニックのみ、コーヒーと血管関連死の間に強い逆相関があった。

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小児てんかん患者、最大の死因は?

 米国・ルリー小児病院(シカゴ)のAnne T. Berg氏らは、小児てんかん患者の死因とリスクについて検討を行った。その結果、神経障害または脳の基礎疾患を有するてんかんの場合は一般人口に比べて死亡率が有意に高いこと、発作関連の死亡よりも、むしろ肺炎または他の呼吸器疾患による死亡のほうが多いことを報告した。Pediatrics誌オンライン版2013年6月10日号の掲載報告。 本研究は、小児てんかん患者の死因とリスク(とくに発作関連)の推定、および発作関連の死亡とその他の主な死因による死亡リスクを比較することを目的とした。新規にてんかんと診断された小児患者4コホートにおける死亡実績を統合した。死亡原因を、発作関連(突然の予期しない死亡:SUDEP)、自然要因、非自然的要因、不明に分けて検討した。また、神経障害または脳の基礎疾患を有する場合を「合併症・基礎疾患あり」とした。 主な結果は以下のとおり。・被験者2,239例について、3万例を超える観察人年において、死亡は79例であった。なお、致死的な神経代謝疾患のある10例は最終的に除外した。・全死因死亡率は、10万人年当たりの228例であった(合併症・基礎疾患あり:743例、なし:36例)。・発作関連の死亡は、13例(SUDEP:10例、その他:3例)で、全死亡の19%であった。・発作関連死亡率は、10万人年当たり43例であった(合併症・基礎疾患あり:122例、なし:14例)。・自然要因による死亡率は、10万人年当たり159例であった(合併症・基礎疾患あり:561例、なし:9例)。・自然要因による死亡48例中37例は、肺炎または他の呼吸器疾患によるものであった。・若年のてんかん患者において、発作関連が最大の死因ではないことが示された。・合併症・基礎疾患のある小児てんかん患者の死亡率は、一般人口に比べ有意に高かった。・SUDEPの割合は、乳幼児突然死症候群と同程度またはそれ以上であった。・合併症・基礎疾患のない若年性てんかん患者におけるSUDEPの割合は、事故、自殺、殺人などその他の原因の場合と同程度またはそれ以上であった。・今回得られた知見を踏まえて著者は、「てんかんの死亡リスクが、ありふれたリスクであるということは、患者や家族とのてんかん発作関連の死亡に関する話し合いを容易なものとするだろう」と述べている。関連医療ニュース てんかん患者の頭痛、その危険因子は?:山梨大学 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学

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特発性間質性肺炎の経過中に肺がんを見落としたケース

呼吸器最終判決判例タイムズ 1739号124-129頁概要息切れ、呼吸困難を主訴に総合病院を受診し、特発性間質性肺炎、連発型心室性期外収縮などと診断された75歳男性。当初、右肺野に1.5cmの結節陰影がみられたが、炎症瘢痕と診断して外来観察を行っていた。ところが初診から6ヵ月後、特発性間質性肺炎の急性増悪を契機に施行した胸部CTで右肺野の結節陰影が4cmの腫瘤陰影に増大、骨転移を伴う肺小細胞がんでステージIVと診断された。特発性間質性肺炎の急性増悪に対してはステロイドパルス療法などを行ったが、消化管出血などを合併して全身状態は悪化、治療の効果はなく初診から7ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報75歳男性、1日30本、50年の喫煙歴あり経過1994年3月29日息切れ、呼吸困難、疲れやすいという主訴で某総合病院循環器科を受診。医学部卒業後1年の研修医が担当となる。胸部X線写真:両肺野の微細な網状陰影呼吸機能検査:拘束性換気障害心電図検査:二段脈と不完全右脚ブロック血液検査:肝・胆道系の酵素上昇、腫瘍マーカー陰性4月5日胸部CTスキャン:肺野末梢および肺底部に強い線維性変化、蜂窩状陰影。続発性の肺気腫と嚢胞、右肺の胸膜肥厚。なお、右肺下葉背側(segment 6)に1.0×1.5cmの結節陰影が認められたが、炎症後の瘢痕と読影。慢性型の特発性間質性肺炎と診断した腹部CTスキャン:異常なし4月6日ホルター心電図:連発型の非持続性心室性期外収縮があり、抗不整脈薬を投与開始。以後胸部については追加検査されることはなく、外来通院が続いた11月頃背部痛、腰痛、全身倦怠感を自覚。12月8日息苦しさと著しい全身倦怠感が出現したため入院。胸部X線写真、胸部CTスキャンにより、右肺下葉背側に4.0×3.0cmの腫瘤陰影が確認された(半年前の胸部CTスキャンで炎症瘢痕と診断した部分)。諸検査の結果、特発性間質性肺炎に合併した肺小細胞がん、骨転移を伴うステージIVと診断した。12月20日特発性間質性肺炎が急性増悪し、ステロイドパルス療法施行。ところが消化管出血を合併し、全身状態が急速に悪化。1995年1月13日特発性間質性肺炎の悪化により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.特発性間質性肺炎に罹患したヘビースモーカーの患者に、胸部CTスキャンで結節性陰影がみつかったのであれば、肺がんを念頭においた精密検査を追加するべきであった2.肺がんのような重大な疾患を経験の浅い医師が受け持つのであれば、経験豊かな医師が指導するなど十分なバックアップ体制をとる注意義務があった病院側(被告)の主張1.精密検査ができなかったのは、原告が健康保険に加入していなかったので高い診療費を支払うことができなかったためである2.死因は特発性間質性肺炎の急性増悪であり、肺がんは関係ない。たとえ初診時に肺がんの診断ができていたとしても、延命の可能性は低かった裁判所の判断1.診察当初の胸部CTスキャンで結節性陰影がみつかり、喫煙歴が1日30本、約50年というヘビースモーカーであり、慢性型の特発性間質性肺炎と診断し、肺がんがその後半年間発見されなかったという診断ミスがあった2.直接死因は特発性間質性肺炎の急性増悪であり、肺小細胞がんが直接寄与したとはいえない。しかし、早期に肺小細胞がんの確定診断がつき、化学療法を迅速に行っていれば、たとえ特発性間質性肺炎が急性増悪を来してもステロイドの治療効果や胃潰瘍出血などの副作用も異なった経過をたどり、肺小細胞がんの治療も特発性間質性肺炎の治療も良好に推移したと考えられ、少なくとも約半年長く生存できたはずである。したがって、原告の精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべきである原告側2,200万円の請求に対し、550万円の支払命令考察今回の事件は、ある地方の基幹病院で発生しました。ご遺族にとってみれば、信頼できるはずの大病院に半年間も通院していながら、いきなり「がんの末期で治療のしようがない」と宣告されたのですから、裁判を起こそうという気持ちも十分に理解できると思います。それに対し病院側は、たとえ最初からがんと診断しても死亡とは関係はなかった、それよりも、きちんと国民健康保険に加入せず治療費が高いなどと文句をいうので、胸部CTスキャンなどの高額な検査はためらわれた、と反論しましたが、裁判官には受け入れられず「病院側の注意義務違反」として判決は確定しました。あとから振り返ってみると、多くの先生方は「このような肺がんハイリスクの患者であれば、診断を誤ることはない」という印象を持たれたと思いますが、やはり原点に返って、どうすれば最初から適切な診断ができたのか、そして、その後の定期外来通院中になぜ肺がん発見には至らなかったのか、などについて考えてみたいと思います。1. 研修医もしくは若手医師の指導今回当事者となったドクターは、医学部を卒業後1年、そして、当該病院に勤務してから3ヵ月しか経過していない研修医でした。このような若いドクターが医師免許を取得して直ぐに医事紛争に巻き込まれ、裁判所に出廷させられるなどということは、できる限り避けなければなりませんが、今回の背景には、指導医の監督不十分、そして、当事者のドクターにも相当な思い込みがあったのではないかと推測されます。おそらく、当初の胸部CTスキャンで問題となった「右肺下葉背側(segment 6)に1.0×1.5cmの結節陰影」というのは、放射線科医が作成したレポートをこの研修医がそのまま信用し、結節=炎症瘢痕=がんではない、と半ば決めつけていたのだと思います。しかし、通常であれば「要経過観察」といった放射線科医のコメントがつくはずですから、最初につけた診断だけで安心せず、次項に述べるようなきちんとした外来観察計画を立てるべきであったと思います。そして、指導医も、卒後1年しか経過していないドクターを一人前扱いとせずに、新患のケースでその後も経過観察が必要な患者には、治療計画にも必ず関与するようにするべきだと思います。従来までの考え方では、このような苦い経験を踏まえて一人前の医師に育っていくので、最初から責任を負わせるようにしよう、とされていることが多いと思いますし、実際に多忙をきわめる外来診療で、そこまで指導医が配慮するというのも困難かもしれません。しかし、今回のような医師同士のコミュニケーション不足が原因で紛争に発展する事例があるのも厳然たる事実ですから、個人の力だけでは防ぎようのない事故については、組織のあり方を変更して取り組むべきだと思います。2. 定期的な外来観察計画上気道炎の患者さんなど短期間の治療で終了するようなケースを除いて、慢性・進行性疾患、場合によっては生命を脅かすような病態に発展することのある疾患については、初期の段階から外来観察計画を取り決めておく必要があると思います。たとえば、今回のような特発性間質性肺炎であれば(肺がんの合併が約20%と高率なので)胸部X線写真は6ヵ月おきに必ずとる、血液ガス検査は毎月、血算・生化学検査は2ヵ月おきに調べよう、などといった具合です。一度でも入院治療が行われていれば、退院後の外来通院にも配慮することができるのですが、ことに今回の症例のようにすべて外来で診ざるを得なかったり、複数の医師が関わるケースでは、なおさら「どのような治療方針でこの患者を診ていくのか」という意思決定を明確にしておかなければなりません。そして、カルテの見やすいところに外来観察計画をはさんでおくことによって、きちんと患者さんをフォローできるばかりか、たとえ医事紛争に巻き込まれても、「適切な外来管理を行っていた」と判断できる重要な証拠となります。今回の症例は、やりようによっては最初から肺がん合併を念頭においた外来観察をできたばかりか、けっして軽い病気とはいえない特発性間質性肺炎の経過観察を慎重に行うことで、結果が悪くても医事紛争にまでは至らなかった可能性も考えられます。裁判官の判断は、「がんが発見されていれば別の経過(=特発性間質性肺炎の急性増悪も軽くすんだ?)をたどったかもしれない」ことを理由に、たいした根拠もなく「半年間は延命できた」などという判決文を書きました。しかし、一般に特発性間質性肺炎の予後は悪いこと、たとえステロイドを使ったとしても劇的な効果は期待しにくいことなどの医学的事情を考えれば、「半年間は延命できた」とするのはかなり乱暴な考え方です。結局、約半年も通院していながら末期になるまでがんをみつけることができなかったという重大な結果に着目し、精神的慰謝料を支払え、という判断に至ったのだと思います。呼吸器

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乳児の急性細気管支炎治療、アドレナリン吸入は食塩水吸入と同程度/NEJM

 乳児の急性細気管支炎の治療について、ラセミ体アドレナリン(商品名:ボスミン)吸入は、食塩水吸入よりも有効でなかったことが示された。一方で、吸入治療戦略に関して、固定スケジュールよりも必要に応じて行うオンデマンド吸入が優れていると考えられることも明らかになった。ノルウェー・オスロ大学病院のHavard Ove Skjerven氏らが、多施設共同無作為化試験の結果、報告した。乳児の急性細気管支炎は大半はRSウイルスが原因で、入院率が高く換気補助を必要とし、致死的なこともある。治療では気管支拡張薬の使用は推奨されておらず、食塩水吸入の治療が行われることが多いが、吸入治療の効果の可能性については、薬剤の種類、投与の頻度に関するコンセンサスは得られていないのが現状であった。NEJM誌2013年6月13日号掲載の報告より。アドレナリン吸入vs.食塩水吸入、オンデマンドvs. 固定スケジュールを検討 研究グループは本検討において、急性細気管支炎で入院した乳児を対象に、ラセミ体アドレナリン吸入療法が食塩水吸入療法よりも優れているとの仮定を検証すること、また吸入治療の頻度に関する戦略[オンデマンドvs. 固定スケジュール(最高2時間ごと)]の評価を行うことを目的とした。 2010年1月~2011年5月にノルウェー南東部にある8施設で2×2因子無作為化二重盲検試験を行った。対象は、中等度~重度(0~10評価の臨床スコアが4以上)の急性細気管支炎を有した12ヵ月齢未満児。被験児については、酸素療法、経鼻胃管栄養、換気補助の利用についても記録を行った。 主要アウトカムは、入院期間で、intention-to-treat(ITT)解析にて評価した。投与戦略は、オンデマンドが固定スケジュールよりも優れる 試験対象児は404例だった。平均年齢は4.2ヵ月、59.4%が男児であった。 入院期間、酸素療法・経鼻胃管栄養・換気補助の使用、臨床スコアのベースライン(吸入療法前)からの相対的改善は、ラセミ体アドレナリン吸入群と食塩水吸入群で同程度だった(すべての比較のp>0.1)。 一方、頻度の比較においては、オンデマンド群のほうが固定スケジュール群よりも、入院期間が有意に短縮した(p=0.01)。入院期間は、オンデマンド群47.6時間(95%信頼区間[CI]:30.6~64.6)、固定スケジュール群61.3時間(同:45.4~77.2)だった。 また、オンデマンド群のほうが有意に、酸素療法の使用が少なく(38.3%vs. 48.7%、p=0.04)、換気補助の使用も少なく(4.0%vs. 10.8%、p=0.01)、入院期間中の吸入療法投与の頻度が少なかった(12.0回vs. 17.0回、p<0.001)。 これらの結果を踏まえて著者は、「乳児の急性細気管支炎の治療において、ラセミ体アドレナリン吸入は、食塩水吸入よりも優れていなかった。一方、吸入治療はオンデマンド戦略が固定スケジュール戦略よりも優れていると思われる」と結論している。

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イブルチニブ、再発・難治性CLLで高い長期寛解率を達成/NEJM

 ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブ(ibrutinib、国内未承認)は、再発・難治性慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療において高い有用性を示す可能性があることが、米国・オハイオ州立大学のJohn C. Byrd氏らの検討で明らかとなった。BTKはB細胞受容体シグナル伝達系の主要コンポーネントで、腫瘍微小環境との相互作用を誘導し、CLL細胞の生存や増殖を促進するとされる。イブルチニブはBTKを阻害する経口薬で、正常T細胞には有害な影響を及ぼさないという特徴を持ち、CLL、SLLを含む第I相試験で有望な安全性と抗腫瘍効果が確認されている。NEJM誌オンライン版2013年6月19日号掲載の報告。2種類の用量を第Ib/II相試験で評価 研究グループは、再発・難治性のCLL、SLLに対するイブルチニブの安全性および有効性を評価する第Ib/II相試験を実施した。2010年5月~2011年8月までに、多くが高リスク病変を持つCLL、SLL患者85例が登録された。 CLLが82例、SLLは3例で、年齢中央値は66歳(37~82歳)、男性が76%であった。Stage III/IVが55例(65%)、前治療数中央値は4(1~12)であり、細胞遺伝学的異常として17p13.1欠失が33%、11q22.3欠失が36%に認められた。 このうち51例にはイブルチニブ 420mgが1日1回、経口投与され、34例には840mgが同様に投与された。全奏効率71%、無増悪生存率75%、全生存率83% フォローアップ期間中央値20.9ヵ月の時点で、54例(64%)が治療継続中で、31例(36%)は治療を中止していた。 有害事象のほとんどがGrade 1/2であり、一過性の下痢、疲労感、上気道感染症などがみられた。血液毒性は最小限にとどまったため、患者は治療を継続することが可能であった。 全奏効率(ORR)は420mg群が71%(完全奏効[CR]2例、部分奏効[PR]34例)、840mg群も71%(PR 24例)であった。さらに、持続性リンパ球増多症を伴うPRが、420mg群の10例(20%)、840mg群の5例(15%)で達成された。進行病変、前治療数、17p13.1欠失などの治療開始前に確認された臨床的、遺伝学的リスク因子は、奏効とは関連しなかった。 イブルチニブは用量にかかわらず良好な長期寛解をもたらし、フォローアップ期間26ヵ月時における全症例の推定無増悪生存率(PFS)は75%、全生存率(OS)は83%であった。 著者は、「イブルチニブは、高リスクの遺伝子病変を有する再発・難治性CLLおよびSLLの治療において高い長期寛解率を達成した」と結論し、「本薬剤は良好な治療指数(therapeutic index)を有することから他剤との併用療法が進められる可能性があるが、単剤でも多くのCLL患者に長期寛解をもたらすと考えられる」と指摘している。

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慢性疼痛に対し認知行動療法をベースにした疼痛自己管理プログラムが有効

 慢性疼痛に対してしばしば認知行動療法が行われているが、オーストラリア・シドニー大学のMichael K. Nicholas氏らは、認知行動療法をベースとした疼痛自己管理(pain self-management:PSM)プログラムが高齢の慢性疼痛患者において、少なくとも短期的には有効であることを無作為化試験により明らかにした。Pain誌2013年6月号(オンライン版2013年2月26日号)の掲載報告。 慢性疼痛を有する65歳超の高齢者141例を対象に、認知行動療法および運動を用いた外来患者用PSMプログラムの効果を、運動-注意制御(Exercise-Attention Control:EAC)群および通常ケア群と比較した。 評価には、ローランド-モリス障害質問票(RMDQ)、うつ病・不安ストレススケール(DASS)、運動恐怖に関する評価スケール(TSK)、痛み自己効力質問票(PSEQ)などを用いた。 主な結果は以下のとおり。・治療直後、PSM群ではEAC群と比較して苦痛、障害、気分、無用な痛み思考およびファンクショナルリーチが有意に改善した(効果量:平均値0.52、範囲0.44~0.68)。 ・1ヵ月後においても、PSM群ではEAC群に比べほとんどの評価項目が良好であった。・1ヵ月後、通常ケア群と比較し、PSM群では苦痛、障害および無用な痛み思考の有意な改善(効果量:平均値0.69、範囲0.56~0.83)を認めたが、EAC群ではすべての評価項目において有意差はみられなかった。・PSM群において、1ヵ月後に全評価項目が確実に改善した患者の割合が41%で、他の2群の約2倍にのぼり、統計学的に有意差が認められた。・同様に、疼痛障害に関して臨床的に重要な改善が得られた患者の割合は、PSM群44%、EAC群22%、通常ケア群20%で、PSM群が有意に高かった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる

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5-HT1A受容体が精神科薬物治療で注目されている

 スペイン・バルセロナ バイオメディカル研究所のPau Celada氏らは、新たな精神疾患の治療薬開発にあたって注目されているセロトニン5-HT1Aの合理的根拠と研究の現状について報告した。冒頭、著者は精神疾患の治療薬の現状について、「現代社会において精神疾患は、多額の経済損失をもたらしている。一方で、薬物治療は、いまだ至適とは言い難い状況にある」と指摘している。CNS Drugsオンライン版2013年6月12日号の掲載報告。 著者は5-HT1Aに着目した背景について、「大うつ病性障害(MDD)および不安障害に用いられる薬品(選択的セロトニン5-HT再取り込み阻害薬[SSRI]、セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬[SNRI])は、第一世代の三環系が改良されたものである。偶然に発見されたものであり、有効性は低く、効果が出るまでに時間がかかる。また、抗精神病薬は、統合失調症の陽性症状には多少は効果があるが、陰性症状および認知障害への効果は乏しい」と述べている。そのうえで、5-HT1Aに着目した根拠、その研究の現状と今後の展望などについてまとめた。シナプス前後5-HT1A受容体の活性は抗不安および抗うつ効果にいずれも必要 5-HT1Aの合理的根拠と研究の現状について報告した主な内容は以下のとおり。・直近の論文において、神経生物学的基盤に着目し、MDDや不安障害といった精神疾患の治療における5-HT1A受容体(5-HT1A-R)機能、およびシナプス前後の5-HT1A-Rの役割が見直されている。・具体的には、コルチコ辺縁系におけるシナプス後5-HT1A-R活性は、抗うつ薬の治療的作用として有望視されている一方で、シナプス前5-HT1A-Rは、MDDにおいて有害な役割を演じることが解明されており、シナプス前5-HT1A-Rが高密度・機能の人では、気分障害や自殺への感受性が高く、抗うつ薬への反応性が不良である。さらに、SSRI/SNRIによる間接的なシナプス前5-HT1A-Rの活性は、5-HTニューロン活性と末端5-HT放出を低減し、そのため細胞外5-HTの上昇に対して前脳のセロトニントランスポーター(SERT)の遮断が引き起こされる。・慢性の抗うつ薬治療は、シナプス前5-HT1A-Rの感度を減じる。そのため5-HT1A自己受容体による陰性症状への効果が低下する。・非選択的部分作用薬ピンドロール(商品名:カルビスケンほか)は、このプロセスを防御し、臨床的な抗うつ作用を促進する。・2種の新たな抗うつ薬であるvilazodone(米国で販売、国内未承認)とvortioxetine(開発中)は、SERT遮断の5-HT1A-R部分作動薬である。・トランスジェニックマウスを用いたいくつかの研究においても、MDDと不安障害におけるシナプス前後5-HT1A-Rのそれぞれの役割が立証されている。・薬理学的研究においても、シナプス前後5-HT1A-Rの活性は、抗不安および抗うつ効果にいずれも必要であること、さらに5-HT1A-Rの神経発生的役割についても必要であると思われる見解が示されている。・同様に、選択的5-HT1A自己受容体ノックダウンマウスにおいて、siRNAを用いることで強力な抗うつ様の効果を示すことが可能であることも明らかになっている。・また、前頭前皮質(PFC)におけるシナプス後5-HT1A-Rは、統合失調症治療においてクロザピンとその他の第2世代(非定型)抗精神病薬の優れた臨床効果にとって重要であり、精神疾患との関連が認められている。・結合試験で5-HT1A-Rは、in vitroにおける中程度の親和性を示したが、クロザピン(同:クロザリル)はこのタイプの受容体とin vivoにおいて機能作動薬の性質を示した。・PFCにおける5-HT1A-Rの刺激作用は、中脳皮質神経路の遠位活性をもたらし、PFCのドパミン放出を増大する。また、統合失調症の陰性症状と認知障害におけるクロザピンの臨床的活性と関与している可能性がある効果を増大することが示された。・前臨床試験において、5-HT1A-R作動薬の抗不安/抗うつ作用特性は予想を大きく上回るものであった。しかしながら、これらの作動薬は、おそらくシナプス後5-HT1A-Rの部分的作動特性とシナプス前5-HT1A-R自己受容体の完全作動性、および消化器系への副作用のため、臨床的成功には至っていない。・部分的5-HT1A-R作動薬のブスピロン、ジェピロン(ともに国内未承認)、タンドスピロン(同:セディール)は、抗不安薬として上市されており、ブスピロンは、MDDでも利用促進の戦略が取られている。・新たな選択的シナプス後5-HT1A-R作動薬の開発が、精神疾患治療薬の新たな展望を開く可能性がある。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮 SSRIは月経前症候群の治療に有用か?

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー〔DMD: duchenne muscular dystrophy〕

1 疾患概要■ 概念・定義筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死を主病変とし、臨床的には進行性の筋力低下をみる遺伝性の筋疾患の総称である。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)はその中でも最も頻度が高く、しかも重症な病型である。■ 疫学欧米ならびにわが国におけるDMDの発症頻度は、新生男児3,500人当たり1人とされている。有病率は人口10万人当たり3人程度である。このうち約2/3は母親がX染色体の異常を有する保因者であることが原因で発症し、残りの1/3は突然変異によるものとされている。まれに染色体転座などによる女児または女性のDMD患者が存在する。ジストロフィン遺伝子のインフレーム欠失により発症するベッカー型筋ジストロフィー(BMD:becker muscular dystrophy)はDMDと比べ、比較的軽症であり、BMDの有病率はDMDの1/10である。■ 病因DMDはX連鎖性の遺伝形式をとり、Xp21にあるジストロフィン遺伝子の異常により発症する。ジストロフィン遺伝子の産物であるジストロフィンは、筋形質膜直下に存在し、N端ではF-アクチンと結合し、C端側では筋形質膜においてジストロフィン・糖タンパク質と結合し、ジストロフィン・糖タンパク質複合体を形成している(図1)。ジストロフィン・糖タンパク質複合体に含まれるα-ジストログリカンは、基底膜のラミニンと結合する。したがって、ジストロフィンは、細胞内で細胞骨格タンパク質と、一方ではジストロフィン・糖タンパク質複合体を介して筋線維を取り巻く基底膜と結合することにより、筋細胞(筋線維)を安定させ、筋収縮による形質膜のダメージを防いでいると考えられている。DMDではジストロフィンが完全に欠損するが、そのためにジストロフィン結合糖タンパク質もまた形質膜から欠損する。その結果、筋線維の形質膜が脆弱になり、筋収縮に際して膜が破綻して壊死に陥り、筋再生を繰り返しながらも、徐々に筋線維組織が脂肪組織へと置き換わっていく特徴を持っている。画像を拡大する■ 症状乳児期に軽度の発育・発達の遅れにより、処女歩行が1歳6ヵ月を過ぎる例も30~50%いる。しかしながら、通常、異常はない。2~5歳の間に転びやすい、走るのが遅い、階段が上れないなど、歩行に関する異常で発症が明らかになる。初期より腰帯部が強く侵されるため、蹲踞(そんきょ)の姿勢から立ち上がるとき、臀部を高く上げ、次に体を起こす。進行すると、膝に手を当て自分の体をよじ登るようにして立つので、登はん性起立(Gowers徴候)といわれる。筋力低下が進行してくると脊柱前弯が強くなり、体を左右に揺するようにして歩く(動揺性歩行:waddling gait)。筋組織が減少し、結合組織で置換するため、筋の伸展性が無くなり、関節の可動域が減り、関節の拘縮をみる。関節拘縮はまず、足関節に出現し、尖足歩行となる。10~12歳前後で歩行不能となるが、それ以降急速に膝、股関節が拘縮し、脊柱の変形(脊柱後側弯症:kyphoscoliosis)、上肢の関節拘縮もみるようになる。顔面筋は初期には侵されないが、末期には侵され、咬合不全をみる。10代半ばから左心不全症状が顕性化することがあり、急性胃拡張、イレウス、便通異常、排尿困難などを呈することもある。外見的な筋萎縮は初期にはあまり目立たないが、次第に躯幹近位筋が細くなる。本症では、しばしば下腿のふくらはぎなどが正常よりも大きくなる。これは一部筋線維が肥大することにもよるが、主に脂肪や結合組織が増えることによるもので、偽(仮)性肥大(pseudohypertrophy)と呼ばれる。知能の軽度ないし中等度低下をみることがまれでなく、平均IQは80前後といわれている。しかし、病理学的に中枢神経系に異常はない。最終的に呼吸障害や心障害を合併するが、近年の人工呼吸器の進歩により40歳位まで寿命を保つことが可能となっている。■ 分類X連鎖性の遺伝形式をとる筋ジストロフィーとしては、DMDやジストロフィン遺伝子のインフレーム欠失によって発症するBMDのほかにX染色体長腕のエメリン遺伝子異常によって発症するエメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー(EDMD:emery-dreifuss muscular dystrophy)がある。■ 予後発症年齢は2~5歳、症状は常に進行し10~12歳前後で歩行不能となる。自然経過では20代前半までに死亡する。わが国では呼吸不全、感染症などに対する対策が進み、40歳以上の生存例も増えている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断本症が強く疑われる場合は、遺伝子検査を遺伝カウンセリングの下に行う。MLPA(Multiplex ligation-dependent probe amplification)法では、比較的大きな欠失/重複(DMD/BMD患者の約70%)が検出できる。微細な欠失/重複・挿入・一塩基置換による変異(ミスセンス・ナンセンス変異)の検出には、ダイレクトシークエンス法が必要となる。遺伝子検査で異常がみつからない場合も、筋生検で免疫組織学的にジストロフィン染色の異常が証明されれば診断できる。■ 検査1)一般生化学的検査血清クレアチンキナーゼ(creatine kinase: CK)が中程度~高度上昇(そのほか、ミオグロビン、アルドラーゼ、AST、ALT、LDHなども上昇)する。発症前に高CK血症で気付かれるケースがある。そのほか、血清クレアチンの上昇、尿中クレアチンの上昇、尿中クレアチニンの減少をみる。2)筋電図筋原性変化(低振幅・単持続・多相性活動電位、干渉波の形成)を確認する。3)骨格筋CTおよびMRI検査4歳以降に大臀筋の脂肪変性、引き続き大腿、下腿の障害がみられる。大腿直筋、薄筋、縫工筋、半腱様筋は比較的保たれる。4)筋生検筋線維の変性・壊死、大小不同像、円形化、中心核線維の増加、再生筋線維、間質結合組織増加、脂肪浸潤の有無を確認する(図2(A))。ジストロフィン抗体染色で筋形質膜の染色性の消失(DMD)(図2(B))、低下がみられる。また、骨格筋のイムノブロット法で、DMDでは427kDaのジストロフィンのバンドの消失、BMDでは正常より分子量の小さい(もしくは大きい)バンドが確認される。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)DMDに対するステロイド治療以外は、対症的な補助治療にとどまっているが、医療の進歩と専門医の努力、社会的なサポート体制の整備などにより、DMDの寿命は平均で約10年延長した。このことはQOLや社会への参加など、患者の人生全体を見据えた取り組みが必要なことを強く示唆している。1)根本治療開発の状況遺伝子治療、幹細胞移植治療、薬物治療など精力的に基礎・臨床研究が進められている。モルフォリノや2'O-メチルなどのアンチセンス化合物を用いたエクソン・スキップ薬の開発に期待が集まっている。2011年初頭から、エクソン51スキップ薬開発のための国際共同治験に日本も参加し、これ以外のエクソンをターゲットにした治療も開発研究が進んでいる。また、リードスルー薬、遺伝子治療や幹細胞移植治療も北米・欧州を中心に、臨床研究がすでに始まっており、早期の臨床応用が望まれる。2)ステロイド治療DMDにおいてステロイド治療は筋力、運動能力、呼吸機能の面で有効性を認める。一般に5~15歳の患者に対して、プレドニゾロンの投与を行う。事前に水痘ワクチンを含む予防接種は済ませておくように指導する。ADL(日常生活動作)や運動機能、心機能、呼吸機能の評価と共に、ステロイドの副作用(体重増加、満月様顔貌、白内障、低身長、尋常性ざ瘡、多毛、消化器症状、精神症状、糖尿病、感染症、凝固異常など)についても十分評価を行う。ステロイドの投与量は必要に応じて増減する。なお、DMDに対するプレドニゾロンの効能・効果については、2013年2月に公知申請に係る事前評価が終了し、薬事承認上は適応外であっても保険適用となっている。3)呼吸療法DMDの呼吸障害の病態は、一義的には呼吸筋の筋力低下や側弯などの骨格変形による拘束性障害である。肺活量は9~14歳でプラトーに達し、以降低下する。深呼吸ができないため肺・胸郭の可動性(コンプライアンス)の低下によって肺の拡張障害と、さらに排痰困難のため気道閉塞による窒息のリスクが生じる。進行に応じ、呼吸のコンプライアンスを保つことが重要である。(1)舌咽頭呼吸による最大強制呼吸量の維持訓練に加え(2)気道クリアランスの確保(徒手的咳介助、機械的咳介助、呼吸筋トレーニングなど)を行うことは、換気効率の維持や有効な咳による喀痰排出につながる(3)車いす生活者もしくは12歳以降に車いす生活になった患者は定期的に(年に2回)呼吸機能評価を行う(4)必要に応じ、夜間・日中・終日の非侵襲的陽圧換気療法の導入を検討する4)心合併症対策1970年代には死因の70%近くが呼吸不全や呼吸器感染症であったが、人工呼吸療法と呼吸リハビリテーションの進歩により、現在では60%近くが心不全へと変化した。心不全のコントロールがDMD患者の生命予後を左右する。特徴的な心臓の病理所見は線維化であり、左室後側壁外側から心筋全体に広がる。進行すると心室壁は菲薄化、内腔は拡大し、拡張型心筋症様の状態となる。定期的な評価が重要で、身体所見、胸部X線、心電図、心エコー(胸郭の変形を念頭におく)、血漿BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)測定、心筋シンチグラフィー、心臓MRIなどを行う。薬物治療としては、心筋リモデリング予防効果を期待してACE阻害薬、β遮断薬の投与が広く行われている。5)栄養幼少期から学童初期は、運動機能低下と骨格筋減少によるエネルギー消費の低下、偏食による栄養障害の助長、ステロイド治療などによる肥満が問題となることが多い。体重のコントロールがとくに重要であり、体重グラフをつけることが推奨される。呼吸不全が顕著化する時期に急激な体重減少を認める場合、努力呼吸によるエネルギー消費量の増加、摂食量の減少など複数の要因の関与が考えられる。咬合・咀嚼力の低下に対しては、栄養効率の良い食品(チーズなど)や濃厚流動食を利用し、嚥下障害が疑われる場合は、嚥下造影などを行い状態を評価して対応を検討する。経鼻経管栄養は、鼻マスク併用時にエアーリークや皮膚トラブルの原因になることがある。必要に応じて経皮内視鏡的胃瘻造設術などによる胃瘻の造設を検討する。6)リハビリテーション早期からのリハビリテーションが重要である。筋力の不均衡や姿勢異常による四肢・脊柱・胸郭変形によるADLの障害、座位保持困難や呼吸障害の増悪、関節可動域制限を予防する。適切な時期にできる限り歩行・立位保持、座位の安定、呼吸機能の維持、臥位姿勢の安定を目指す。7)外科治療病気の進行とともに脊柱の側弯と四肢の関節拘縮を呈する頻度が高くなる。これにより姿勢保持が困難になるのみならず、心肺機能の低下を助長する要因となる。脊柱側弯に対して外科治療の適用が検討される。側弯の発症早期に進行予防的な外科手術が推奨され、Cobb角が30°を超えると適応と考えられる。脊柱後方固定術が一般的で、術後早期から座位姿勢をとるように努める。関節拘縮に対する手術も、拘縮早期に行うと効果的である。8)認知機能DMD患者の平均IQは80~90前後である。学習障害、広汎性発達障害、注意欠陥多動障害(ADHD)など、軽度の発達障害の合併が一般頻度より高い。健常者と比較して言語性短期記憶の低下がみられる傾向があり、社会生活能力、コミュニケーション能力に乏しい傾向も指摘されている。精神・心理療法的アプローチも重要である。4 今後の展望DMDの根本的治療法の開発を目指し、遺伝子治療、幹細胞移植治療、薬物治療などの基礎・臨床研究が進められているが、ここではとくに2013年現在、治験が行われているエクソン・スキップとストップコドン・リードスルーについて取り上げる。1)エクソン・スキップエクソン欠失によるフレームシフトで発症するDMDに対し、欠失領域に隣接するエクソンのスプライシングを阻害(スキップ)してフレームシフトを解消し、短縮形ジストロフィンを発現させる手法である。スキップ標的となるエクソンに相補的な20~30塩基の核酸医薬品が用いられ、グラクソ・スミスクライン社とProsensa社が共同開発中のDrisapersen(PRO051/GSK2402968)は2'O-メチル製剤のエクソン51スキップ治療薬として、現在日本も含め世界23ヵ国で第3相試験が進行中である。副作用として蛋白尿を認めるが、48週間投与の結果、6分間歩行距離の延長が報告されている。(http://prosensa.eu/technology-and-products/exon-skipping)また、Sarepta therapeutics社が開発中のEteplirsen(AVI-4658)はモルフォリノ製剤のエクソン51スキップ治療薬で、現在米国で第2a相試験が進行中である。これまで投与された被験者数はDrisapersenより少ないものの臨床的に有意な副作用は認めず、74週投与の時点で6分間歩行距離の延長が報告されている。(http://investorrelations.sareptatherapeutics.com/phoenix.zhtml?c=64231&p=irol-newsArticle&id=1803701)2)ストップコドン・リードスルーナンセンス点変異により発症するDMDに対し、リボゾームが中途停止コドンだけを読み飛ばす(リードスルー)ように誘導し、完全長ジストロフィンを発現させる手法である(http://www.ptcbio.com/ataluren)。アミノグリコシド系化合物にはこのような作用があることが知られており、PTC therapeutics社のAtaluren(PTC124)は、世界11ヵ国で行われた第2b相試験の結果、統計的に有意ではないもののプラセボよりも歩行機能の低下を抑制する作用を示した。現在欧州での条件付き承認を目的とした第3相試験が計画されている。なお、日本ではアルベカシン硫酸塩のリードスルー作用を検証する医師主導治験が計画されている。5 主たる診療科小児科、神経内科、リハビリテーション科、循環器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本小児科学会(医療従事者向けの診療、研究情報)日本小児神経学会(医療従事者向けの診療、研究情報)日本神経学会(医療従事者向けの診療、研究情報)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部(研究情報)国立精神・神経医療研究センター TMC Remudy 患者情報登録部門(一般利用者向けと医療従事者向けの神経・筋疾患患者登録制度)筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク(一般利用者向けと医療従事者向けの筋ジストロフィー臨床試験に向けてのネットワーク)患者会情報日本筋ジストロフィー協会(筋ジストロフィー患者と家族の会)

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乾癬性関節炎に対するウステキヌマブの有効性と安全性を確認/Lancet

 中等症~重症の尋常性乾癬に対して有効性が示されているウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)は、活動期の乾癬性関節炎に対しても有効であることが示された。イギリス・グラスゴー大学のIain B McInnes氏らが、第3相多施設共同二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。乾癬患者の多くが乾癬性関節炎を呈し、QOLの低下や死亡率増大が認められるが、ウステキヌマブの第2相試験において、症候性症状の改善およびQOLの改善が報告されていた。Lancet誌オンライン版2013年6月12日号掲載の報告より。ウステキヌマブ45mg群、同90mg群、プラセボの3群で安全性と有効性を評価 第3相試験では、活動期の乾癬性関節炎に対するウステキヌマブの安全性と有効性を評価することを目的とした。 試験は14ヵ国(ヨーロッパ、北米、環太平洋)104施設から被験者を登録して行われた。適格とされたのは、活動期の乾癬性関節炎(関節のこわばり≧5、腫脹≧5、CRP≧3.0mg/L)を有する成人患者で、無作為に、ウステキヌマブ45mg群、同90mg群、プラセボの3群(0週、4週、その後は12週ごと投与)に割り付けられた。 被験者は16週時点で、こわばりと腫脹の改善が5%未満である場合は、割り付けられている介入群より1段上の群に(プラセボ群なら45mg群へ、45mgなら90mg群へ)組み換えを受けた。また、24週時点でもプラセボ群に割り付けられていた患者は、ウステキヌマブ45mg投与を受け、28週時点で同様の投与を受けたあと12週ごとの投与を受けた。 主要エンドポイントは、24週時点の米国リウマチ学会のRA評価基準による20%以上の改善(ACR20)であった。ウステキヌマブ両投与群ともプラセボと比較して、ACR20を有意に達成 2009年11月30日~2011年3月30日の間に、615例の被験者が無作為化された。割り付けの内訳は、プラセボ群206例、ウステキヌマブ45mg群205例、同90mg群204例だった。 主要エンドポイント(24週時点のACR20)の達成率は、プラセボ群(47/206例、22.8%)と比べて、45mg群(87/205例、42.4%)、90mg群(101/204例、49.5%)がいずれも有意に大きかった(両比較のp<0.0001)。 同改善の達成率は、52週時点でも維持されていた。 16週時点でみた、有害事象の患者の割合は、ウステキヌマブ群41.8%、プラセボ群42.0%と同程度であった。 以上の結果を踏まえて著者は、ウステキヌマブに適応拡大が認められる可能性があるとまとめている。

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ITを活用した肥満児のプライマリ共同ケアモデル、効果には疑問/BMJ

 3~10歳の肥満児に対する、一般開業医と体重マネジメント専門サービス(小児科医3人、栄養士2人)による「共同ケアモデル」の介入は、実行可能で有害性はなく、家族と一般医からの評価は高いが、対照群と比較してBMIならびに他のアウトカムを改善しなかったことが明らかになった。オーストラリア・王立小児病院のMelissa Wake氏らが無作為化試験の結果、報告した。同国では、専門的な肥満治療クリニックにアクセスできる肥満児が限られているという。共同ケアモデルはITを駆使したもので、アクセス改善が期待されたが、その有効性は検証されていなかった。BMJ誌オンライン版2013年6月10日号掲載の報告より。共同ケアモデル介入群と通常ケア群のアウトカムを比較 本検討は、メルボルン市のファミリークリニック22施設(一般開業医35人)と体重マネジメントサービス1施設(小児科医3人、栄養士2人)で行われた。2009年7月~2010年4月にかけてBMI 95パーセンタイル以上の3~10歳の小児が、一般開業医を通じて集められた。 小児は無作為に、専門サービスを1回受けたあと11人の一般開業医による診察(ウェブ上のソフトウェアを介した共同ケアサポートで)を1年間にわたって受ける群(介入群)と、通常ケアを受ける群(対照群)に割り付けられた。割付情報は、アウトカムデータを集めた研究者には知らされなかった。 主要アウトカムは、小児のBMIのzスコアで、そのほかに体脂肪率、腹囲、身体活動度、食事の質、健康関連QOL、自己評価と身体的不満、両親のBMIについても評価が行われた。評価はすべて試験登録後15ヵ月時点で行われた。両群とも改善、共同ケアモデルの有効性あるいは有害性のエビデンスは見つからない 118例の小児が集められ(介入群60例、対照群56例)、そのうち107例(91%)のケアが継続され解析に組み込まれた(介入群56例、対照群51例)。介入継続の小児は、専門サービスと、体重管理の専門医の診察を少なくとも1回[平均:3.5(SD 2.5、範囲:1~11回)]受けた。 解析の結果、両群のアウトカムについて、BMI(補正後平均差:-0.1、95%信頼区間[CI]:-0.7~0.5、p=0.7)、BMI zスコア(同:-0.05、-0.14~0.03、p=0.2)のいずれも有意差はなく同程度だった。 同様に、すべての副次アウトカムについて、有効性あるいは有害性のエビデンスは見つからなかった。 複合コホートではアウトカムのバラつきが大きかった[BMI zスコア変化の平均値:-0.20(SD 0.25、範囲:-0.97~0.47)]。 体重改善は、肥満から過体重になった小児は26%、正常体重に改善したのは2%だった。 著者は「両群でBMI改善はみられ、有効性の評価では非治療対照群の価値が強調される結果であった」とまとめている。

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