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2型糖尿病では診断時に肥満な人ほど死亡率が低いのは本当か?/NEJM

 2型糖尿病診断時のBMIと全死因死亡リスクにはJ字型の関係がみられ、標準体重の患者が最もリスクが低いことが、米国ハーバード公衆衛生大学院のDeirdre K Tobias氏らの検討で確認された。2型糖尿病患者における体重と死亡の関連は未解決の問題である。標準体重に比べ過体重や肥満の患者のほうが死亡率が低いことを示唆する報告があり、肥満パラドックス(obesity paradox)と呼ばれている。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告。2つの前向きコホート試験のデータを解析 研究グループは、2つの大規模な前向きコホート試験のデータを用いて、2型糖尿病患者におけるBMIと死亡の関連につき詳細な解析を行った。 Nurses’ Health Study(NHS)およびHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)の参加者のうち、2型糖尿病の診断時に心血管疾患およびがんがみられない集団を対象とし、BMIは診断直前の体重および身長から算出した。 Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行い、BMI別の死亡のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。BMIは、18.5~22.4、22.5~24.9(参照値)、25.0~27.4、27.5~29.9、30.0~34.9、≧35.0の6段階に分類した。健康的な体重の維持が肝要 本検討では1万1,427例(NHS:8,970例、HPFS:2,457例)が解析の対象となった。糖尿病診断時の平均年齢は、NHSが62歳(35~86歳)、HPFSは64歳(41~91歳)であった。平均観察期間15.8年で3,083例が死亡した。 2型糖尿病患者のBMIと全死因死亡にはJ字型の関係が認められた。すなわち、HR(95%CI)は、BMI 18.5~22.4の群が1.29(1.05~1.59)、22.5~24.9群は1.00、25.0~27.4群は1.12(0.98~1.29)、27.5~29.9群は1.09(0.94~1.26)、30.0~34.9群は1.24(1.08~1.42)、≧35.0群は1.33(1.14~1.55)であった。 このBMIと全死因死亡の関係は、生涯非喫煙者では線形であった(BMIの低い群から高い群の順にHRが1.12、1.00、1.16、1.21、1.36、1.56)が、喫煙経験者では非線形であった(1.32、1.00、1.09、1.04、1.14、1.21)。また、診断時に65歳未満の患者では、BMIと全死因死亡の間に直接的な線形傾向が認められたが、65歳以上の場合はこのような関係は認めなかった。 著者は、「全死因死亡のリスクは標準体重の患者が最も低かった。糖尿病の診断時に過体重または肥満のみられる患者は標準体重患者よりも死亡率が低いとのエビデンスは得られず、肥満パラドックスは確認されなかった」とし、「過体重や肥満と他の重要な公衆衛生上の問題(心血管疾患、がんなど)との関連を考慮すると、糖尿病の管理では喫煙状況にかかわらず健康的な体重を維持することが肝要である」と指摘している。

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小児の自殺企図リスク、SSRI/SNRI間で差はあるか

 抗うつ薬を服用する小児の自殺企図リスク増大について、SSRI、SNRIの服用者間で差異があるとのエビデンスはないことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のWilliam O. Cooper氏らが、自殺企図の医療記録のあった3万6,842例の小児コホートを後ろ向きに検討した結果、報告した。最近のデータで、SSRIやSNRIの治療を受ける小児および青少年患者で自殺行動のリスクが増大していることが示されていた。そのため、保護者、家族、医療提供者に著しい懸念が生じており、各抗うつ薬のリスクに対する関心が高まっていた。Pediatrics誌オンライン版2014年1月6日号の掲載報告。 本検討は、抗うつ薬治療を受ける小児患者の自殺企図リスクについて検討するため、フルオキセチン(国内未承認)の新規服用者のリスクと、セルトラリン、パロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム(国内未承認)、ベンラファキシン(国内未承認)のリスクを比較するようデザインされた。対象者は、1995~2006年にテネシー州のメディケイドに登録された6~18歳の小児3万6,842例で、1種以上の抗うつ薬新規服用者(過去365日間に抗うつ薬処方を受けていなかったと定義)であった。自殺企図については、メディケイドファイルから特定し、医療記録レビューにて確認した。 主な結果は以下のとおり。・コホートのうち、419例に自殺企図が確認された。4例は死亡に至っていた。・検討した試験薬の自殺企図率は、24.0/1,000人年から29.1/1,000人年にわたった。・補正後自殺企図率は、フルオキセチン服用者との比較で、SSRIおよびSNRI服用者で有意な差は認められなかった。・複数抗うつ薬の服用者では、自殺企図のリスク増大がみられた。関連医療ニュース 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか? 小児および思春期うつ病に対し三環系抗うつ薬の有用性は示されるか 境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為を減少させるには

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シリコンによる補強が椎体圧迫骨折の二次骨折リスクを軽減

 骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対し、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)というアクリル樹脂を用いた椎骨補強による治療が広く行われているが、合併症として処置部に隣接する椎骨の二次骨折が知られている。この二次骨折は、椎骨と比較してPMMAの剛性が高いことによると考えられることから、骨に近い生体力学的特性を有しているシリコンがPMMAの代替として期待されている。ドイツ・ミュンスター大学病院のTobias L. Schulte氏らは、初めてシリコンとPMMAを用いた椎体補強時の剛性を比較し、シリコンにより二次骨折のリスクが軽減される可能性があることを示唆した。シリコンによる椎骨補強は骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対する治療の選択肢となりうるとまとめている。European Spine Journal誌2013年12月号(オンライン版2013年7月24日号)の掲載報告。 研究グループは、本検討でPMMAあるいはシリコンで補強した椎骨の生体力学的な違い、とくに剛性を調べることを目的とした。 検討には、骨粗鬆症であるが圧迫骨折がないことを確認した40体のヒトの脊椎(T10-L5)を用い、標準的な方法で楔状骨折を作成し、4群に分けてPMMAまたはシリコンを各々2つの充填率(16%および35%)で椎体に注入した。 次いで、無処置椎体、充填椎体および周期的負荷を与えた充填椎体について、低負荷時(100~500 N)の剛性を測定した。また、充填椎体に破断強度の20~65パーセントの高負荷(5,000サイクル=0.5Hz)を与えた場合の剛性を測定した。 主な結果は以下のとおり。・低負荷時剛性は、無処置椎体に比べ周期的負荷処置後にPMMA充填椎体で増加(充填率35%群で115%、16%群で110%)、シリコン充填椎体で低下した(それぞれ87%および82%)。・高負荷時剛性は、無処置椎体に比べPMMA充填率35%群で361%、16%群で304%、シリコン充填率35%群で243%、16%群で222%であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part2

CareNet.comではうつ病特集を配信するにあたって、事前に会員の先生方からうつ病診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、産業医科大学 杉田篤子先生にご回答いただきました。今回は、うつ病患者に対する生活指導、うつ病患者の自殺企図のサインを見落とさないポイント、仕事に復帰させるまでの手順・ポイント、認知症に伴ううつ症状の治療法、リチウム(適応外)による抗うつ効果増強療法の効果についての質問です。うつ病患者に対する生活指導について具体的に教えてください。生活習慣の改善といった患者自身ができる治療的対処行動を指導することは非常に有用です。とくに、睡眠・覚醒リズムを整えることは重要です。具体的には、毎日同じ時刻に起床し、朝、日光を浴びること、規則正しく3回食事摂取をすること、昼寝をするのは15時までに20~30分以内にすること、不眠のため飲酒するのは治療上逆効果であることを伝えます。また、医師の指示通りきちんと服薬するよう、指導することも大切です。うつ病の症状が軽快したからといって、自己判断で内服を中止する患者さんもいますが、再燃の危険性があることをあらかじめ説明しておきます。症状が悪化した際や副作用の心配が生じた際は、主治医にきちんと相談するように伝えます。軽症のうつ病の場合は、定期的な運動もうつ症状の改善の効果を期待できるため、負担のかからない範囲での運動を勧めます1)。1)National Institute for Health and Clinical Excellence. Depression: management of depression in primary and secondary care: NICE guidance. London: National Institute for Health and Clinical Excellence; 2007.うつ病患者の自殺企図のサインを見落とさないポイントを教えてください。自殺の危険率が高いうつ病患者の基本的特徴として、男性(5~10倍)、65歳以上、単身者(とくに子供がいない)、病歴・家族歴として、自殺企図歴あり、精神科入院歴あり、自殺の家族歴あり、合併疾患として、アルコール・薬物依存の併発、パニック障害の併存・不安の強さ、がんなどの重症身体疾患の併発などが挙げられます1)。自殺企図のサインを見落とさないため、とくに注意すべき点は、希死念慮を何らかの形で表明する際に注意を払うことです。希死念慮は、言語的に表出されるだけでなく、非言語的に伝えられることもあります。“死にたい”、“自殺する”と直接的に言葉にするだけでなく、“生きている意味がない”、“どこか遠くへ行きたい”などと言ったり、不自然な感謝の念を表したり、大切にしていた持ち物を人にあげてしまうこともあります。具体的な自殺の方法を考え、自殺に用いる手段を準備し、自殺の場所を下見に行く場合は自殺のリスクが切迫していると考えるべきです。さらに、自傷行為や過量服薬を行う患者さんも、長期的には自殺既遂のリスクが高い状態です2)。1)Whooley MA, et al. N Engl J Med. 2000;343:1942-1950.2)Skegg K. Lancet. 2005;366:1471-1583.仕事に復帰させるまでの手順、ポイントについて教えてください。職場復帰までの手順は、厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 に示しており、第1から第5のステップに沿った支援を行います。第1ステップは、病気休業開始および休業中のケアを行う段階です。主治医による治療はもちろん、家族のサポートや管理監督者や産業医・産業保健スタッフによる病気休業期間中の労働者に安心を与えるような対応が必要です。うつ病が軽快し、家庭での日常生活ができる状態となれば、職場復帰に向けて、生活リズムの立て直し、コミュニケーションスキルの習得、職場ストレスへの対処法の獲得などを目的としたリワークプログラムを行うことがあります。これは、都道府県の障害者職業センターで行われていますが、ほかに、精神保健福祉センター、精神科病院や診療所でも復職デイケアとして行われているところもあります。第2ステップは、休業している労働者本人の職場復帰の意思表示と職場復帰可能の主治医の判断が記された診断書を提出する段階です。この際、主治医が的確に判断を下せるように、産業医が主治医へ会社の職場復帰の制度や本人の置かれている職場環境について情報提供を行います。第3ステップは、職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成を行います。職場復帰支援プランとは、職場復帰を支援するための具体的なプラン(職場復帰日、管理監督者による業務上の配慮、配置転換や異動の必要性など)であり、主治医からの意見を参考に、産業医、管理監督者、人事労務担当者らが協力して作成します。第4ステップは、最終的な職場復帰の決定の段階で、労働者の状態の最終確認が行われ、就業上の配慮に関する意見書が作られ、事業者によって職場復帰の決定がなされます。第5ステップは、職場復帰後のフォローアップで、病気が再燃、再発したり、新たな問題が生じたりしていないかを注意深く見守る段階です。管理監督者や人事担当者が勤務状況や業務遂行能力の評価を行ったり、産業医、産業保健スタッフが病状、治療状況の確認を行ったりし、職場復帰支援プランの実施状況の確認を行います。さらに必要に応じて、見直しを行い、職場環境の改善や就業上の配慮を行っていきます。これらの5つのステップに従い、本人を取り巻く家族、主治医、産業医、産業保健スタッフ、管理監督者、人事担当者などがしっかり連携してサポートすることが大切です。認知症に伴う、うつ症状の治療法を教えてください。認知症の抑うつに対して、抗うつ薬とプラセボを使用した19本のランダム化比較試験(RCT)のうち、11本でシタロプラム(国内未承認)、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドンなどの抗うつ薬の有用性が報告されています1)。さらに、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、パロキセチンなどの抗うつ薬を継続して使用することで抑うつ症状の再燃を予防するといったデータもあります2)。しかし、認知症の抑うつに対するセルトラリンまたはミルタザピンの効果を検証した大規模RCTでは、有効性がプラセボに対して差が出ず、有害作用は有意に増加したというデータがあります3)。三環系抗うつ薬に比して有害事象が少ないため、新規抗うつ薬が使用されることが多いですが、常にリスクとベネフィットを常に慎重に勘案しながら、慎重に治療する必要があります。薬物療法以外の治療として、日常生活において活動性を向上させるようなデイサービスなどの枠組みを提供したり、介護者が目標指向的な行動を促したりすることも選択肢に挙がります。1)Henry G, et al. Am J Alzheimers Dis Other Demen, 2011;26:169-183.2)Bergh S, et al. BMJ. 2012;344:e1566.3)Banerjee S, et al. Lancet. 2011;378:403-411.リチウム(適応外)による抗うつ効果増強療法はどの程度の効果があるのでしょうか?リチウムと抗うつ薬の併用による抗うつ効果増強作用は、10本中8本のRCTで支持されています1)。リチウムによる増強療法の有効率は44~83%とされています2)。11本のRCTを用いたメタ解析3)では、リチウムが有効となるには、0.5mEq/Lに達する血中濃度が必要であり、最低1週間の併用を要すると報告されています。通常、効果発現には抗うつ薬より時間がかかり、最低6週間以上の投与を推奨する見解もあります4)。リチウム併用による再発予防効果を示すメタ解析もあります5)。リチウムの増強効果は三環系抗うつ薬で発揮され、エビデンスも確立されています。SSRIでは、シタロプラムをリチウムで増強したRCTも報告されており、プラセボと比較して有害作用は認めなかったという報告もあります6)。パロキセチンとアミトリプチリンをリチウムで増強したRCTによると、有害作用や血中リチウム濃度に差は認めず、パロキセチン+リチウム群ではアミトリプチリン+リチウム群に比べて抗うつ効果発現が早かったとされています7)。2013年のEdwardsらの系統的レビューでは、SSRI単独とSSRI+リチウムの比較では有効性に有意差はなく、SSRI単独とSSRI+抗精神病薬の比較では、SSRI+抗精神病薬の有効性が高く、SSRI+リチウムとSSRI+抗精神病薬の比較では有意差は認めなかったとされています8)。1)Crossley NA, et al. J Clin Psychiatry. 2007;68:935-940.2)Thase ME, et al. Treatment-resistant depression. In: Bloom FE et al, eds. Psychopharmacology: The Fourth Generation of Progress. New York: Raven Press;1995. p.1081-1097.3)Bauer M, et al. J Clin Psychopharmacol. 1999;19:427-434.4)井上 猛ほか. 臨床精神医学. 2000;29:1057-1062.5)Kim HR, et al. Can J Psychiatry. 1990;35:107-114.6)Baumann P, et al. J Clin Psychopharmacol. 1996;16:307-314.7)Bauer M, et al. J Clin Psychopharmacol. 1999;19:164-171.8)Edwards S, et al. Health Technol Assess. 2013;17:1-190.※エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part1はこちら

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カミナリ喘息【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第11回

カミナリ喘息呼吸器内科医として、研修医の方々に「雷やストレスは気管支喘息を悪化させるリスク因子なんだよ」と薀蓄(うんちく)を酒の肴に語ることがあります。「本当なんですか?」と言われて、「あれ、どうだったっけ?」と思い、調べなおしてみました。結論としては、雷によってある程度の気管支喘息の悪化が観察されるようです。今回紹介する論文以外にも、過去にいくつか報告があります(J Epidemiol Commun Health. 1997;51:233-238)。Dales RE, et al.Dales RE, et al.The role of fungal spores in thunderstorm asthma.Chest. 2003;123:745-750.この研究は雷による気管支喘息、すなわち「カミナリ喘息」について入院した小児に基づいて報告されたものです。東オンタリオ小児病院のデータを用いて解析されました。雷雲が観察された日(151日)は、そうでなかった日(919日)と比較して、1日あたりの気管支喘息による受診が8.6人/日から10人/日と15%増加しました(p<0.05)。また、真菌の飛散胞子は雷雲が観察された日では約2倍に増えていたと報告されました(不完全菌類が1,512/m3から2,749/m3に増加)。真菌のほとんどがクラドスポリウムでした。また、担子菌類も雷雲が観察された日に有意に多かったそうです。過去の試験では、悪天候によって数倍から10倍という喘息発作の頻度の増加がみられたという報告もあるのですが、現時点ではこの東オンタリオ小児病院の15%程度の増加というのが現実的に妥当なデータだろうと考えられています。ただ、雷、雨、風のすべての因子を独立して検証することは気象学的に不可能ですので、雷単独が気管支喘息を悪化させるかどうかはわかりません。雨や雷といった悪天候の場合、花粉や真菌は雨とくっついて大気中から減るというイメージがあります。飛散量が確実に増えるのか減るのか、まだまだ議論の余地があります。しかし強い風によって飛散量が増えるため、悪化するのではないかという見解(Lancet. 1985; 2:199-204)があるだけでなく、悪天候の前の日が“晴れ”だった場合、舞い上がったアレルゲンが雨とともに落下してくるといわれています。そのため、雨であろうとアレルゲンが一時的に増えることがあります。とくに、小雨のときは上空から落下してくる雨粒が途中で蒸発してしまい、花粉や真菌だけが地表に落下してくると考えられています。

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大腸がん術後の定期検査、全死亡率を減少させず/JAMA

 原発性大腸がんで根治目的の手術後、定期的にがん胎児性抗原(CEA)検査やCT検査を実施しても、症状がある時のみ診察するという最少のフォローアップに比べ、死亡率は減少しないようだ。一方で、再発した大腸がんに対する根治目的手術の実施率は、定期的にCEA検査やCT検査を行った群で有意に高率だった。英国・サウサンプトン大学のJohn N. Primrose氏らが行った無作為化前向き比較試験の結果、明らかにした。JAMA誌2014年1月15日号掲載の報告より。CEA検査、CT検査、CEA+CT検査、症状がある時のみフォローアップで比較 Primrose氏らは2003年1月~2009年8月にかけて、英国内39ヵ所のNHS病院を通じ、原発性大腸がんの根治目的の手術を行った1,202例について試験を行った。被験者は、適応があれば補助療法を行い、また残存病変の疑いはなかった。 研究グループは被験者を無作為に4群に分け、CEA検査のみ(300例)、CT検査のみ(299例)、CEA検査とCT検査(302例)、症状がある時のみフォローアップ(301例)を、それぞれ実施した。血中CEA値は、当初2年間は3ヵ月ごとに、その後3年間は6ヵ月ごとに測定した。胸部、腹部、骨盤部CT検査は、当初2年間は6ヵ月ごとに、その後3年間は毎年行った。 主要アウトカムは、再発時の根治目的手術の実施とした。副次アウトカムは、全死亡率と大腸がん死亡率、再発診断までの期間、再発後の根治目的手術後の生存率だった。CEAやCT実施の有無で、再発がんの手術率は有意差あるが全死亡率は有意差なし 平均追跡期間は4.4年(SD 0.8)だった。その間にがんの再発が認められたのは199例(16.6%)であり、再発時に根治目的手術を行ったのは71例(5.9%)だった。 それぞれの群について見てみると、症状がある時のみフォローアップした最少追跡群の再発がん手術率は2.3%(301例中7例)、CEA群で6.7%(300例中20例)、CT群で8%(299例中24例)、CEA+CT群で6.6%(302例中20例)だった。最少追跡群と比較した場合の同率絶対格差は、CEA群が4.4%、CT群が5.7%、CEA+CT群が4.3%といずれも有意に高率だった(各群の補正後オッズ比は3.00、3.63、3.10)。 一方、全死亡率については、最少追跡群が15.9%に対し、その他3群では18.2%と、有意差はなかった(絶対格差:2.3%、95%信頼区間:-2.6~7.1)。 著者は、「いずれのスクリーニング戦略をとっても、生存ベネフィットはわずかなようだ」と結論している。

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高血糖でも血管合併症リスクが低い遺伝的素因が明らかに/JAMA

 高血糖であっても、グルコキナーゼ(GCK)遺伝子変異のある人は、微小血管性または大血管性合併症の罹患率は低いことが示された。英国・エクセター大学のAnna M. Steele氏らが横断研究を行い、明らかにした。糖尿病の血糖目標値は、合併症リスクを最小限とするために開発されたものだが、GCK遺伝子変異のある人は、出生時から軽度の空腹時高血糖を呈し、その値は1型および2型糖尿病での治療推奨値とほぼ同値であることが知られていた。JAMA誌2014年1月15日号掲載の報告より。GCK遺伝子変異群、コントロール群、YT2D群で血管合併症罹患率を比較 研究グループは、英国で2008年8月~2010年12月にかけて、GCK遺伝子変異の認められた99例(年齢中央値:48.6歳)、その家族でGCK遺伝子変異がなく非糖尿病のコントロール群91例(同:52.2歳)、45歳以下で診断を受けた若年発症型2型糖尿病(YT2D)の83例(同:54.7歳)について、微小血管性または大血管性合併症の罹患率を比較する横断研究を行った。 HbA1c値の中央値は、GCK遺伝子変異群が6.9%、コントロール群が5.8%、YT2D群が7.8%だった。 分析の結果、臨床的に重大な微小血管性合併症罹患率は、GCK遺伝子変異群は1%と低く、コントロール群の2%と有意差はなかった(p=0.52)。一方で、YT2D群の同罹患率は36%で、GCK遺伝子変異群が有意に低率であることが示された(p<0.001)。糖尿病性網膜症はコントロール群より有意に高率、神経障害、大血管性合併症は同等 糖尿病性網膜症の罹患率は、GCK遺伝子変異群は30%で、コントロール群の14%に比べ高率であり(p=0.007)、YT2D群の63%より低率だった(p<0.001)。ただし糖尿病性網膜症のレーザー治療を要した人については、YT2D群では28%に上ったが、GCK遺伝子変異群やコントロール群ではいなかった。 蛋白尿症はGCK遺伝子変異群やコントロール群では認められず、微量アルブミン尿症の罹患率はそれぞれ1%、2%と低かった。しかしYT2D群では、タンパク尿症が10%、微量アルブミン尿症が21%と、GCK遺伝子変異群に比べ有意に高率だった(p<0.001)。 神経障害についても、GCK遺伝子変異群、コントロール群ではそれぞれ2%、0%だったのに対し、YT2D群では29%に上った(p<0.001)。 また、臨床的意義のある大血管性合併症についても、GCK遺伝子変異群の罹患率は4%と、コントロール群の11%と有意差はなかった一方で、YT2D群の30%に比べ有意に低率だった(p<0.001)。 著者は、「本検討で、GCK遺伝子変異被験者は、高血糖状態が中央値48.6年続いていたにもかかわらず微小血管性および大血管性合併症の罹患率が低かった。今回得られた所見は、特定の軽度の高血糖リスクへの洞察を深めるものである」とまとめている。

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高齢の乾癬患者、非アルコール性脂肪性肝疾患併発が1.7倍

 高齢の乾癬患者は、非乾癬患者と比べて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有する割合が1.7倍高いことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのElla A.M. van der Voort氏らによる住民ベースのコホート研究の結果、明らかにされた。最近のケースコントロール試験で、乾癬患者でNAFLDの有病率が上昇していることが観察されていた。研究グループは、NAFLDを伴うことは乾癬の至適治療の選択に関連することから、住民ベースコホートで、その実態を明らかにする検討を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年12月24日号の掲載報告。 本検討は、大規模前向き住民ベースコホート研究「Rotterdam Study」の参加者である、55歳超の高齢者を登録して行われた。 NAFLDは、ほかの肝疾患を有しておらず、超音波検査で脂肪肝と診断された場合と定義し、規定アルゴリズムを用いて乾癬を有する被験者を特定した。 多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、人口統計学的因子、ライフスタイルの特徴および検査所見で補正後、乾癬とNAFLDに関連が認められるかどうかを調べた。 主な結果は以下のとおり。・合計2,292例の被験者が分析に組み込まれた。平均年齢は76.2±6.0歳、女性58.7%、BMI:27.4±4.2であった。・被験者のうち、乾癬を有していた人は118例(5.1%)であった。・NAFLDの有病率は、乾癬患者46.2%に対し、乾癬を有していなかった参照群は33.3%であった(p=0.005)。・乾癬は、NAFLDと有意に関連していた。アルコール消費量、喫煙量(パック/年)、喫煙状態、メタボリック症候群の有無、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)値で補正後も、乾癬はNAFLD発症の有意な予測因子のままであった(補正後オッズ比:1.7、95%CI:1.1~2.6)。・今回の調査は、断面調査であった点において限界があるが、以上のように、高齢の乾癬患者でNAFLDを有している人は、非乾癬患者と比べて70%多いとみられた。そのリスクは、一般的なNAFLDリスクとは独立していた。

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不眠症への行動療法、夜間頻尿を軽減できるか

 不眠症に対する行動療法は夜間頻尿の軽減につながる可能性が示唆された。米国・ピッツバーグ大学のShachi Tyagi氏らが、不眠症と夜間頻尿を併発している60歳以上の地域住民を対象に、行動療法を行った場合と情報提供のみを行った場合を比較検討した結果、報告した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2014年1月2日号の掲載報告。 研究グループは、慢性不眠症を呈する60歳以上の地域住民において、行動療法が夜間頻尿に及ぼす影響を評価することを目的に、睡眠への行動介入の無作為化対照試験の二次解析を行った。対象は、大学病院で登録された79例のうち、不眠症があり夜間に1回以上トイレに起きる30例であった。介入はNurse clinicianにより、簡易行動療法(BBTI)または情報提供(IC)が行われた。BBTI群(14例)では「ベッドにいる時間を少なくする」「規則正しい睡眠スケジュールを立てる」などの指導が行われた。IC群(16例)では印刷物が手渡された。ベースライン時と介入開始4週間後に、自己報告の毎晩(14日間)の夜間覚醒について評価した。ベースライン時に夜間トイレのために少なくとも1回起きた者を解析対象とした。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に夜間頻尿を示した患者において、14日間の夜間覚醒の回数は、BBTI群で6.5±4.8回の減少が、IC群では1.3±7.3回の増加が認められた(p=0.04、効果サイズ:0.82)。・ベースライン時の夜間頻尿エピソードで補正後も、その差は有意なままであった(p=0.05)。・不眠症と夜間頻尿を併発している高齢者において、不眠症に対する行動療法は、自己報告による夜間頻尿を改善させる可能性があった。この点について、さらに検討する必要がある。関連医療ニュース 睡眠薬、長期使用でも効果は持続 長期の睡眠薬服用、依存形成しない?! 自殺と不眠は関連があるのか

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第4回

第4回:小児のいぼのnatural history-約半数が自然治癒する いぼ(wart, 疣贅)は年に何回かはお母さん方から質問/相談を受けます。経過観察でよいのか?皮膚科に紹介したほうがよいのか?それとも診療所でも冷凍凝固を導入して治療したほうがよいのか?対応が悩ましいことも多いですが、Annals of Family Medicine誌の2013年12月15日号にも総説があり、日常的に遭遇する問題ですのでご紹介いたします。 以下、Annals of Family Medicine 2013年12月15日号1)よりいぼ(疣贅)1.背景いぼは自然に軽快することが多く、仮に治療を行った場合でも失敗するケースがある。したがって、家庭医および患者は経過観察という方法も知っておいたほうがよい。この研究では、いぼの自然経過および、どのようなタイミングで治療が行われているかをプライマリ・ケアベースでのコホート研究によって調査した。2.方法オランダの3つの小学校に通う4~12歳の小児を対象に、手掌足底にいぼがないかをベースライン時に調べた。その後平均15ヵ月間追跡調査を行った。また、対象小児の親にいぼがあることによる不便さと治療の有無についてアンケート調査した。3.結果1,134人の小児のうち1,009人(97%)が参加した。そのうち366 (33%)にベースライン時、いぼがあった。いぼを有する小児のうち9%がフォローできなかった。親のアンケートに回答した割合は83%であった。完全に治癒するのは、100人年中52であった。年齢が若い、非コーカサス系の肌は治癒率が高かった。フォローアップの期間中38%がなんらかの治療を受け、そのうち18%が市販薬(over-the-counter)、15%が家庭医の治療、5%がいずれの治療も受けた。1cmを超えるいぼでは、とくに治療を受ける割合が高かった。また、いぼがあることによって不便さを感じている小児も治療を受ける割合が高かった。4.結語約半数のいぼが自然軽快をした。より若年、非コーカサス系の肌は治癒率が高かった。大きくて不便を感じるいぼでは、治療する傾向があった。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Bruggink SC, et al. Ann Fam Med. 2013;11:437-441.

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Postneoadjuvant treatment with zoledronate in patients with tumor residuals after anthracyclines-taxane-based chemotherapy for primary breast cancer - The phase III NATAN study (GBG 36/ABCSG XX) -- von Minckwitz G, et al.

術前化学療法後の腫瘍残存例に対するゾレドロン酸の効果 ほか1題ドイツからの報告である。術前化学療法後、腫瘍が残存した症例に対して、ゾレドロン酸使用群と観察群を無作為化割付し、プライマリーエンドポイントとして無再発生存率をみた。ゾレドロン酸(4mg静注)は最初の6回は4週間毎、次の8回は3ヵ月毎、その後の5回は6ヵ月毎に投与した。サンプルサイズは、無再発率が観察群58.0%、ゾレドロン酸群67.2%、α=0.05、β=0.20、脱落5%と仮定して、654例の患者数と316のイベントが必要とされた。最終的に693例がリクルートされ、ゾレドロン酸群343例、観察群350例であった。それぞれ65例、60例が5年未満の観察であり、まだ試験継続中である。エストロゲン受容体陽性(10%以上)は約79%、HER2陽性は約17%であった。結果として無再発生存率、全生存率ともにまったく有意差はなかった。ただし、閉経後では、ゾレドロン酸群で乳による死亡率は改善していた(HR=0.83、SE:0.06)。閉経後の定義の記載がなかったので、おそらく術前化学療法と手術後の割付時での評価だと考えられるが、どのように基準を設けていたかは不明である。最終結果はまだであるが、今後大きな変化はなさそうにみえる。次はビスフォスフォネート治療に関するメタ分析の報告であり、こちらがより重要である。Effect of bisphosphonate treatment on recurrence and cause-specific mortality in women with early breast cancer: A meta-analysis of individual patient data from randomized trials -- Coleman R , et al.2012年ASCOでもビスフォスフォネートの術後補助療法に関するメタ分析の結果が2演題報告されていたが、今回はEarly Breast Cancer Clinical Trials Collaborative Group(EBCTCG)'s Bisphosphonate Working Groupから一般演題で採用されていた。現在まで15年にわたり、ビスフォスフォネートの術後補助療法の臨床試験データが蓄積されてきた。これらの臨床試験から、ビスフォスフォネートは局所よりも遠隔転移を主に抑制し、骨転移に対して最大の効果が期待できそうである、女性ホルモン値の低い状況でのみ有効である、閉経前では非骨転移に対しては逆効果である可能性がある、といった仮説が予想される。そこで静注および経口ビスフォスフォネートとプラセボの無作為化比較試験からのデータを収集し、メタ分析を行った。プライマリーアウトカムは再発までの期間と遠隔再発までの期間、そして乳関連死である。あらかじめ計画されたサブグループ解析として、再発部位、初発遠隔再発部位(骨とそれ以外)、閉経状態、ビスフォスフォネートの種類、組織学的異型度、ビスフォスフォネートのスケジュール、年齢、エストロゲン受容体、リンパ節転移、ビスフォスフォネートの投与期間、化学療法の有無、各期間毎の再発率が検討された。全36試験(22,982例)のうち、22試験(17,791例、77%)でデータを収集できた。全再発率では有意差はなかったが(p=0.08)、遠隔転移ではビスフォスフォネート使用群で再発リスクが低かった(p=0.03)。遠隔転移のうち骨転移での再発率は有意差がみられたが(p=0.0009)、非骨転移では差がなかった(p=0.71)。局所再発、対側乳発生率も差はなかった。閉経後に限ってみると、遠隔転移による再発率(p=0.0003)と骨転移(p

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EC followed by paclitaxel(T) versus FEC followed by T, all given every 3 weeks or 2 weeks, in node-positive early breast cancer(BC) patients(pts). Final results of the Gruppo Italiano Mammella(GIM)-2 randomized phase III study -- Cognetti F, et al.

EC→T vs FEC→T:アンスラサイクリンへの5-FUの上乗せ及びタキサンdose denseの意義イタリアからの報告である。4群の無作為化比較試験(2×2要因計画)であり、リンパ節転移陽性の乳術後補助療法としてアンスラサイクリンとタキサンを用いる場合、1つは5-FUをアンスラサイクリンに上乗せすることの意義、もう1つはdose denseの意義を確かめるものである。レジメンとしてはEC(90/600)またはFEC(600/75/600)を4サイクル行った後、タキサンとしてパクリタキセル(P 175)を4サイクル行うものである。A群:EC x 4 → P x 4 q. 3 wB群:FEC x 4 → P x 4 q. 3 wC群:EC x 4 → P x 4 q. 2 w + PegfilgrastimD群:FEC x 4 → P x 4 q. 2 w + Pegfilgrastimプライマリエンドポイントは無再発生存率であり、セカンダリーエンドポイントは全生存率と安全性である。再発と第2の腫瘍、あるいは死亡について、20%のリスク低減が検出(OR=0.8)でき、α=0.05,1-β=0.80と仮定して、平均5.5~9年の観察期間で2,000例の必要症例数で、635例のイベントが要求された。最終的に2,091例が登録された(A:545例、B:544例、C:502例、D:500例)。閉経前後がほぼ半数ずつ、リンパ節転移1~3個が約60%、4~9個約25%、10個以上約15%であった。組織学的異型度はグレード1が6~8%、HER2陽性が20%以上に認められた。ホルモン受容体は約80%で陽性であった。治療完遂率はいずれもほぼ同様で、88~89%であった。EC(A+C)とFEC(B+D)を比較したとき、無再発生存率に差はなかった(p=0.526)。2週毎のdose denseと3週毎のstandardと比較したとき、dose denseのほうが有意に無再発生存率が高かった(p=0.002)。全生存率もdose denseで有意に良好であった。グレード3以上の有害事象は、好中球減少がdose denseに比べstandardで有意に多かったが、貧血はdose denseで有意に多かった。その他はほぼ変わりなかった。これらの結果からアンスラサイクリンとタキサンを逐次投与で併用するとき、5-FUによる生存率改善効果はないようにみえる。逆に5-FUが加わることによって、特有の有害事象が上昇する可能性はある。若干解釈を難しくしているのは、各薬剤の投与量の差である。さらに本邦の多くの施設ではFEC(500/100/500)が用いられており、EC(90/600)と比較するとE10、F500の増加および、C100の減少となる。参考になる過去の報告を挙げてみる。転移性乳390例におけるFEC3週毎6サイクルで、投与量500/50/500と500/100/500の比較では、奏効率はE100のほうが良いものの、無増悪生存期間、全生存期間にはまったく差がなかった(Brufman G, et al. Ann Oncol. 1997; 8: 155-162.)。このようなデータも加味すると、FEC(600/75/600、500/100/500あるいは500/50/500など)が、EC(90/600)に対して優越性をもっているとはいえない。タキサンが加わると投与量のわずかな差はさらに意味を持たなくなるだろう。またdose denseの意義であるが、本試験でのコントロールがパクリタキセル3週投与であり、これは標準とはいえない。通常臨床では術後補助療法でも転移性乳でもパクリタキセルの12回毎週投与が行われており、そのほうが効果も高いことが知られている(Sparano JA, et al. N Engl J Med.2008; 358:1663-1671. / Seidman AD, et al. J Clin Oncol. 2008;26: 1642-1649.)。そのことから本試験におけるdose denseが、効果面で真に現在のスタンダードレジメンより優れているかどうかは、少なくとも本試験からは不明である。後は治療期間、毒性、コスト、QOL評価も加味して今後の臨床での意義を議論していく必要があろう。過去の報告でも投与薬剤、投与量、投与スケジュールが一定していないため、何ら結論的なことを言うことはできない。本試験とは直接関係ないが、AC(60/600)とEC (90/600)ではどうだろうか。過去に治療効果と毒性の両面からしっかりした大規模な試験は残念ながら存在しない。小規模な臨床試験データを解釈するとエピルビシンのほうが毒性面(心毒性)で若干よいようにもみえるのだが、試験によって投与量や投与スケジュールが異なり、エピルビシンの明らかな優越性も証明できていない。エピルビシンはドキソルビシンに比べ高価であるという事実も加味して、日常臨床での使用を考えることが必要であろう。参考にdose denseに関する論文を2つ紹介するので、参考にしてほしい。Citron ML, et al. J Clin Oncol. 2003; 21: 1431-1439.米国からの報告で、リンパ節転移陽性乳に対する4群の無作為化比較試験(2×2要因計画)。1)sequential A(60) x4 → P(175) x4 → C(600) x4 with doses every 3 weeks2)sequential Ax4 → Px4 → Cx4 every 2 weeks with filgrastim3)concurrent ACx4 → Px4 every 3 weeks 4)concurrent ACx4 → Px4 every 2 weeks with filgrastim観察期間中央値36ヵ月,リンパ節転移1~3個59~60%、エストロゲン受容体陽性64~66%。無再発生存期間、全生存期間とも dose-dense>3週毎(p=0.010、p=0.013)。sequentialかconcurrentかでは差なし。Venturini M, et al. J Natl Cancer Inst. 2005; 97: 1724-1733.イタリアからの報告である。FEC(600/60/600) 6サイクルを2週毎(604例、Filgrastim使用)と3週毎(610例)で比較。リンパ節転移陰性36%、腫瘍のグレード15%、エストロゲン受容体陽性52%。観察期間中央値10.4年。死亡222例。10年生存率80%対78%(p=0.35)。無再発生存率63%対57%(p=0.31)。グレード1以上の有害事象はFEC2週群で多かったが、白血球減少は3週群で多かった(G-CSF)。グレード3以上の心毒性は両群とも0.2%。

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破裂性腹部大動脈瘤に対する開腹手術 vs. 血管内修復術/BMJ

 破裂性腹部大動脈瘤に対する治療戦略について、血管内治療と外科治療では30日死亡率低下およびコストに差がないことが、無作為化試験の結果、示された。同治療戦略について検討する英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJanet T Powell氏らのIMPROVE試験研究グループが、30施設・613例について検討した結果、報告した。これまで選択的患者を対象とした英国内単施設の検討では、血管内治療が外科治療よりも30日死亡率が約30%低いことが示されていたが、他の施設や他国の多施設で行われた試験では、いずれも小規模試験だが両者間の違いは示されなかった。BMJ誌オンライン版2014年1月13日号掲載の報告より。30施設・613例を対象に血管内修復術vs.開腹修復術 本検討実施の背景には、先行研究での対象のように破裂性腹部大動脈瘤が常にステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair;EVAR)適応の形態を有してはいないこと、また同施術を常時提供するには人的・物的整備が必要で、現状では多くの施設がその基準を満たせないことなどがあった。 IMPROVE(Immediate Management of Patients with Rupture: Open Versus Endovascular repair)無作為化試験では、破裂性腹部大動脈瘤が疑われる患者について、血管内治療(形態が適切な場合に施行し、不適な場合は外科治療に切り替える)vs. 外科治療の、術後早期死亡の低下について検討した。 2009~2013年に、30施設(英国29、カナダ1)にて613例(うち男性480例)を対象に行われた。被験者は無作為に、316例が血管内治療を受ける群に(275例が破裂性腹部大動脈瘤と確認、血管内治療適応は174例)、297例が外科治療を受ける群に(261例が確認例)割り付けられた。 主要アウトカムは30日死亡率。また、24時間死亡率、院内死亡率、入院コスト・期間、退院先などを副次アウトカムとした。30日死亡率に有意差なし、医療コストの有意な削減効果もみられず 結果、30日死亡率は、血管内治療群35.4%(112/316例)、外科治療群37.4%(111/297例)であった。オッズ比は、補正前0.92(95%信頼区間[CI]:0.66~1.28、p=0.62)、補正後(年齢、性、Hardman index)0.94(同:0.67~1.33、p=0.73)で両群間に有意差はみられなかった。 性別にみたオッズ比は、女性が0.44(同:0.22~0.91)に対し、男性は1.18(0.80~1.75)で、女性のほうが男性よりも血管内治療を受けるベネフィットがみられた(相互作用検定p=0.02)。 破裂性と確認された患者の30日死亡率は、血管内治療群36.4%(100/275例)、外科治療群40.6%(106/261例)で、有意差はみられなかった(p=0.31)。 24時間死亡率については補正前オッズ比1.15であり、院内死亡率は30日死亡率と同程度だった(オッッズ比:0.92)。一方で平均期間は血管内治療群で短く(9.8日vs. 12.2日)、退院先について、自宅に直接退院できた人が同群で有意に多かった(94%対77%、p<0.001)。しかしは医療コストの有意な削減効果はみられなかった。血管内治療群の削減コスト(30日間の平均値)は1,186ポンド(1,939ドル)であった。 著者は、「血管内治療の治療戦略は30日死亡率や医療コストを有意に削減しなかった」とまとめたうえで、「より長期にわたる費用対効果の検討で、同戦略の完全な評価を男女ともに行う必要がある」と指摘している。

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進行期パーキンソン病に対する新たな遺伝子治療/Lancet

 進行期パーキンソン病に対し、新たな遺伝子治療「ProSavin」の有効性と安全性、忍容性を検討した第1/2相試験の結果が発表された。フランス・パリ第12大学のStephane Palfi氏らが同患者15例を、低・中・高用量投与の3群で12ヵ月間検討した結果、いずれの投与群でも安全性と忍容性が認められ、また全患者について運動症状の改善がみられたことを報告した。パーキンソン病では経口ドパミン補充療法が行われているが、治療が長期にわたると、運動合併症や衝動制御障害が起きることから根治につながる治療が求められている。Lancet誌オンライン版2014年1月9日号掲載の報告より。レンチウイルス・ベクターベースの遺伝子治療ProSavin ProSavinは、レンチウイルス・ベクターベースの遺伝子治療で、進行期パーキンソン病患者のドパミン産生機能を回復させることを目的とする。レンチウイルス・ベクターは、ドパミン合成に必要な3つの酵素の遺伝子コードを含む生成ベクターで、ProSavinの治療原理は、この生成ベクターを線条体(被殻)の運動野に送達し線条体細胞を「ドパミン工場」に転化して、パーキンソン病で失われるドパミンの恒常的な供給源を置き換えていくというものだという。ベクター活用には挿入細胞に腫瘍形成を招くリスクも指摘されているが、レンチウイルス・ベクターではそのリスクが最小である可能性が示唆されているという。 研究グループは、英国とフランスの2地点で12ヵ月間追跡の第1/2相非盲検試験を行い、パーキンソン病患者の被殻に、両側性にProSavinを注射投与した後の安全性と有効性を評価した。患者は全員、引き続き長期安全性を評価する別個の非盲検追跡試験に組み込まれた。各群コホートは、3つの投与量(低用量:1.9×107TU、中用量:4.0×107TU、高用量:1×108TU)について評価を受けた。 被験者の試験適格基準は、年齢48~65歳、罹病期間5年以上、運動症状の日内変動あり、経口ドパミン薬による運動症状改善50%超とした。 第1/2相試験の主要エンドポイントはベクター注射投与後6ヵ月時点の、ProSavin関連有害イベントの発生件数と重症度、およびパーキンソン病統一スケール(UPDRS)パート3(off時)で評価した運動症状の改善だった。3用量群で検討した15例全例で6ヵ月後、運動症状が有意に改善 患者15例がProSavinを投与され追跡を受けた(低用量群3例、中用量群6例、高用量群6例)。 当初12ヵ月の追跡期間中、試験薬関連有害イベントは54例報告された(51例は軽度、3例が中程度)。最も頻度が高かったのは、on時ジスキネジア(20件、11例)、on-off現象(12件、9例)の増大だった。試験薬および手技に関連した重篤な有害イベントは報告されなかった。 UPDRSパート3の平均スコアは、6ヵ月時点、12ヵ月時点ともにベースライン時との比較で全患者に有意な改善がみられた。6ヵ月時点の平均スコアは、38[SD 9]vs. 26[8](p=0.0001)、12ヵ月時点は38vs. 27[8](p=0.0001)だった。

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腰椎固定術の手術時間の長さは術後合併症のリスク増加と関連

 腰椎固定術は慢性腰痛などの治療に広く用いられている。これまでさまざまな外科分野で手術時間の長さが、術後合併症発生率および死亡率の増加と相関することが示されているが、腰椎手術において検討した大規模研究はなかった。米国・ロザリンド・フランクリン医科大学のBobby D Kim氏らは、データベースを用いた後ろ向き研究により、腰椎手術においても手術時間の増加が多彩な合併症と関連していることを明らかにした。「手術時間は腰椎固定術の質の重要な評価尺度であり、患者の予後改善には手術時間を短縮する戦略と手術時間の長さと関連する危険因子を同定するさらなる研究が必要だ」とまとめている。Spine誌オンライン版2013年12月20日の掲載報告。 研究チームは、単一レベルの腰椎固定術の予後に対する手術時間の影響を調べることを目的に、米国外科学会の手術の質改善プログラム(ACS-NSQIP)データベースを用い、2006~2011年に腰椎固定術を受けた全患者の手術時間、術後30日の合併症発生率および死亡率を解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は4,588例で、平均手術時間は197±105分であった。 ・多変量ロジスティック回帰分析の結果、手術時間の増加は全合併症(オッズ比[OR]:2.09~5.73)、内科的合併症(OR:2.18~6.21)、外科的合併症(OR:1.65~2.90)、表層の手術部位感染(SSI)(OR:2.65~3.97)および術後輸血(OR:3.25~12.19)のリスク増加と関連した。・5時間を超える手術時間は再手術(OR:2.17)、臓器/腔SSI(OR:9.72)、敗血症/敗血症性ショック(OR:4.41)、創傷離開(OR:10.98)、および深部静脈血栓症(OR:17.22)のリスク増加と関連した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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双極性障害の診断、DSM-IV-TRでは不十分

 双極性障害を正確に診断することは容易ではない。とくに、かかりつけ医においてはうつ病との鑑別が困難な場合も少なくない。スイス・チューリッヒ大学精神科病院のJules Angst氏らは、ICD-10基準で双極性障害(BD)と診断が付いている患者が、プライマリ・ケアの場面でDSM-IV-TRによってBDと診断されるかを検証した。その結果、診断された患者はわずかで、DSM-IV-TRのBD診断基準は限定的であることが示された。過去20年の間に、DSM-IVおよびDSM-IV-TRにおける軽躁病の診断概念が、非常に限定的であるとのエビデンスが蓄積されていた。Journal of Affective Disorders誌2014年1月号の掲載報告。 研究グループは、DSM-IVおよび修正版DSM-IV-TRが、BD治療歴のある患者について双極性を検出できるかを検討するBipolact II試験を実施した。現在、新たに出現した大うつ病エピソード(MDE)について一般開業医(GP)の診療を受けている患者を対象に、観察的な単回受診サーベイ法にて検討した。 主な結果は以下のとおり。・試験は、フランスのGP診療所201ヵ所で、成人患者390例を対象に行われた。・GPは、平均年齢53.3±6.5歳、男性80.1%であり、Bipolact Educational Programによる専門的教育を受けており、うつ病患者の治療に精通していた。・被験者390例のうち、129例(33.1%)は双極性障害(ICD-10基準適格)の既往患者であった。・大半の患者(89.7%)に抗うつ薬による治療歴があった。しかし、それらの患者のうち、DSM-IV-TRのBD診断基準を満たした例は9.3%にとどまった。・対照的に、ICD-10基準BD患者129例では、79.1%が修正版DSM-IV-TRのBD診断基準を満たした。それらの患者は、抗うつ薬治療中に衝動制御障害や躁病/軽躁病を繰り返すことが強く認められた。・本検討は、試験に参加したGPの訓練が限定的である点、患者の思い出しバイアスと、BD未治療患者が関与していない点で限定的であった。・以上を踏まえて著者は、「MDEについてフランスGPを受診したICD-10基準適格BD患者が、DSM-IV-TRのBD診断基準を満たした例はわずかであった。このことは、DSM-IV-TR診断基準はBD診断に不十分であり、非常に限定的なものであることを示唆する。修正版DSM-IV-TRは感度は高かったが、BD患者の20%を検出できなかった」とまとめている。関連医療ニュース うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上

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腋窩郭清の必要性に関する検討(ACOSOG Z0011の結果を踏まえ)

Radiation field design on the ACOSOG Z0011 trial -- Jagsi R, et al.乳房部分切除後の放射線照射野(ACOSOG Z0011)ほか1題ACOSOG Z0011試験は、センチネルリンパ節転移1~2ケ陽性で、乳房部分切除術と放射線治療、全身療法を行う乳患者に対して、腋窩郭清は不要であるということを証明してきた(Giuliano AE, et al. Ann Surg. 2010; 252: 426-432,Giuliano AE, et al. JAMA. 2011; 305: 569-575.)。観察期間中央値6.3年で全生存率、局所・所属リンパ節再発とも腋窩郭清(ALND)群とセンチネルリンパ節生検のみ(SLND)群で差がなかった。Z0011プロトコールは標準的な接線照射野を用いた全乳房照射を受けることを必要としていたが、リンパ節の直接的な治療のための鎖骨上リンパ節領域への照射は必須ではなかった。そのため所属リンパ節への照射がどれくらい行われたかについては今まで詳細な記載がなく、とくに放射線腫瘍医はALND群よりもSLND群で腋窩レベル1~2以上を含む照射野を用いたかもしれない、ということが推測されてきたのみである。それ故この情報の真偽が確かめられた。方法:ACOSOG Z0011では、1999年5月から2004年12月までに891例が登録され、856例がintent-to-treat sampleとして構成された。照射データは、登録から18ヵ月後に、再度改めて各症例の報告用紙を記載してもらい収集した。調査はすべての放射線腫瘍医に連絡し、中央判定のためにより詳細な放射線治療の記録を要求した。放射線治療のデータはQuality Assurance Review Center(QARC)に送られ、無作為化された患者の群を伏せて、2名の放射線腫瘍医によって評価された。鎖骨上リンパ節領域への照射が行われたか、Schlembachらによって報告されたように(Schlembach PJ, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001; 51: 671-678.)、内側接線の頭側境界が上腕頭の2cm以内であったかどうか考慮した。結果:605例の患者において症例報告用紙が利用可能であった。過去に報告されているように、89%が全乳房照射を受けていた。そのうち15%(89例)は鎖骨上リンパ節領域への治療も受けていた。228例において詳細な放射線治療の報告が中央判定のために記録された。104例はALND群、124例がSLND群であった。患者背景では、SLND群で乳管がより多かった。228例のうち185例(81.1%)は接線照射のみであった。185例のうち142例(76.8%)で接線照射野の高さに関して十分なデータが得られた。ハイタンジェントはALND群の50%(33/66)、SLND群の52.6%(40/76)で用いられていた。228例のうち43例(18.9%)は3門以上の照射野を用いてリンパ節領域の照射が行われていた(ALND群22例、SLND群21例)。より多くのリンパ節転移があるほど、より高頻度にリンパ節領域への照射を受けていた(p

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よいメタ解析、悪いメタ解析?(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(171)より-

心房細動の脳卒中予防の適応取得を目指した、いわゆる新規経口抗凝固薬の開発試験の結果が出揃った。最後に残っていたのはTIMI groupの主導するENGAGE-TIMI 48試験であった。試験対象となったエドキサバンは、日本の第一三共の薬剤であったが、試験は実績のあるTIMI groupに持って行かれてしまった。ENGAGE TIMI 48試験は2013年11月のAHAにおいて発表された。それまでTIMI group以外のものは試験結果にアクセスすることはできない。最後に残った心房細動の脳卒中予防試験の結果を抱えているTIMI groupは、新規経口抗凝固薬の臨床試験の情報について昨年の11月まで圧倒的に有利な状況にあった。 その有利な地位を利用して「心房細動の脳卒中予防の第三相開発」の結果をメタ解析したのが本論文である。2013年11月には世界の全ての人がENGAGE TIMI 48試験の結果にアクセスできるようになったとはいえ、その前から結果をみて準備をしていたTIMI groupの優位性は明らかである。この論文は「メタ解析」ではあるが、筆者の目にはよいメタ解析には見えない。 イベント発症リスクの低減した現在、数万例の症例を薬剤Aと薬剤Bに割り振って「薬剤Aと薬剤Bには差異がない」という臨床的仮説を検証するランダム化比較試験の困難性は増している。この困難なランダム化比較試験を10年後に行なっても、第三相試験の治験として行なっても、医師主導研究で行なっても、高齢の症例に行なっても、腎障害の症例に行なっても、日本で行なっても、金持ちに行なっても、一貫性があるか否かを検証する「メタ解析」は筆者の目にはよいメタ解析である。 1996年にAntiplatelet Trialistsにより、2002年、2007年にAntithrombotic Trialistsにより施行されたアスピリンの試験のメタ解析は「よいメタ解析」の代表である。Ruffらのメタ解析は、新薬の認可承認を得るために開発企業が必死の修飾を行なった薬剤開発の「第三相」試験のメタ解析である。過去の標準治療(ワルファリン)と新薬の有効性、安全性を比較した各試験は、当局の審査に耐えることを主目的に、各国毎に治験慣れした特殊な施設から登録された症例により構成されている。 「メタ解析」しても対象症例の一般性は広まらない。むしろ、各試験と真実の世界の差異を増幅してしまう。Ruffらは本メタ解析の限界を十分に理解しているので、論文の結論を「Our findings offer clinicians a more comprehensive picture of the new oral anticoagulants as a therapeutic option to reduce the risk of stroke in this patient population」としている。決して、本メタ解析により個別の第三相試験以上のインパクトが生まれたとは主張していない。読者も限界を理解して本メタ解析を読むべきである。Ruffらは、同時期に心房細動を合併したアテローム血栓症のサブ解析を発表しており、臨床家にはこちらの方が参考になる(Ruff CT, et al. Int J Cardiol. 2014; 170 : 413-418)。 Evidence Based Medicineの世界は人工的な世界である。筆者のように20年以上医者をやっている専門家の見解よりも、ランダム化比較試験の結果に科学性があるとする。1つのランダム化比較試験の結果よりも、複数のランダム化比較試験の結果のエビデンスレベルが高いと規定してある。この人工的な世界のルールに基づいて「診療ガイドライン」が作成され、初学者は「診療ガイドライン」に基づいた医療を質の高い医療と判断する。専門家の見解よりも「ランダム化比較試験の結果に基づいた医療」が「質が高い」のは、最初に定義したEvidence Based Medicineの世界に限局される。 実診療の世界では、ランダム化比較試験の集積に基づいて行なう医療と、経験を積んだ臨床医の判断に基づいた医療のアウトカムに差があるか否かは誰も知らない。Evidence Based Medicineの世界は、民主主義の議会で多数派が作る法律により支配される世界に類似している。人間の営む社会であれば、人工的な法律を仮に正しいとしても大きな矛盾はないかも知れないが、医学、医療は詳細、微細な自然現象の観察から真実を見いだす自然科学の領域である。Evidence Based Medicineの世界はそれなりに完結した論理体系ではあるが、その世界の常識は、必ずしも真実の世界の常識ではないことに注意しよう。 本メタ解析はメタ解析ではあるが、Evidence Based Medicineの骨子を決めたときに想定した、独立した多くの研究のメタ解析ではない。同一クラスの薬剤が同時期に開発、認可承認されるケースが増えている。開発品の、開発試験の「メタ解析」をエビデンスレベルの高い「メタ解析」と混同しないようにしよう。

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