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心臓植込み型電子機器の現状-米国より-/JAMA

 米国FDAに市販前承認(PMA)の申請を行った心臓植込み型電子機器(CIED)は、初回承認後、継続的に補足申請を行い機器のデザイン変更などを行っていることが明らかになった。その期間は約15年の長期にわたるが、補足申請では、新規臨床データを提出する場合が少ないことも明らかになった。米国・ハーバード・メディカル・スクールのBenjamin N. Rome氏らが、FDAのデータベースを基に行った調査で明らかにしたもので、結果を踏まえて、「CIEDの厳格な市販後調査が重要である現状が浮き彫りになった」と報告している。JAMA誌2014年1月22・29日号掲載の報告より。34年間の市販前承認データを調査 米国FDAは、ペースメーカーや植込み型除細動器、心臓再同期療法のデバイスなどCIEDのような高度な医療機器についてはPMAによる評価を行い、その間にメーカーが安全性と有効性の臨床データを提出する仕組みとなっている。承認されたハイリスクデバイスの以降の変更は、補助申請を介して行うこととされているが、そのプロセスでの臨床試験は必要とされていない。 そこで研究グループは、CIEDの変更申請の状況(変化率)とどのような変更がされているのか(特徴)を調べることとした。FDAのPMAに関するデータベースを基に、1979~2012年に承認を受けたCIEDについて、その補足申請の発生頻度や特徴などについて調査を行った。 各補足申請について、補足申請内容の種別や変更内容などについて分析し、規制区分ごとの傾向などを調べた。 重要なデザイン変更が含まれることの多い「180日以内補足申請」については、2010~2012年にかけて、追加臨床データが含まれている割合も調べた。 「180日以内補足申請」のうち臨床データを含む割合は23% 1979~2012年にかけて、FDAが承認したCIEDのオリジナル申請は77件であった一方、補足申請は5,829件だった。オリジナル申請1件当たりの補足申請数の中央値は、50件(四分位範囲:23~87)だった。デザイン変更を必要としない製造元による変更を除き、補足申請の承認件数は年平均2.6件(標準偏差:0.9)と安定していた。 PMAはまた、継続的な補足申請を行うことで、中央値15年(四分位範囲:8~20)にわたり有効だった。オリジナル申請を受けた77件のうち79%もが、2012年に1件以上の補足申請を行っていた。 一方で2010~12年に承認を受けた「180日以内補足申請」のうち、安全性と有効性を示す新たな臨床データを含んでいたものは、64件中15件と、23%にとどまった。 以上の結果を踏まえて著者は「臨床医が現在使用している多くのCIEDは、初回申請時のモデルではなく、PMA補助申請で承認されたものであることが明らかになった」と結論。そのうえで、「大半のデバイスは新たな臨床データがないまま、安全、有効であるとみなされている。厳格な市販後調査が重要である現状が浮き彫りになった」と指摘している。

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アトピー性皮膚炎患者が避けるべきスキンケア用品

 アトピー性皮膚炎(AD)患者は、ホルムアルデヒド放出防腐剤が使われているスキンケア用品の使用は避けるべきであることが明らかにされた。米国・ルイビル大学医学部のCristin N. Shaughnessy氏らがAD患者の皮膚の遅延型過敏反応として、局部的な防腐剤の反応を調べた結果、報告した。AD患者では乾燥肌が慢性化しているが、その多くが防腐剤入りのスキンケアを使用しており、遅延型過敏反応を呈する温床となっている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2014年1月号(オンライン版2013年11月9日号)の掲載報告。 研究グループは、AD患者と非AD患者について、北米接触性皮膚炎共同研究班(North American Contact Dermatitis Group:NACDG)標準のアレルゲンパッチテストの陽性率を比較し、AD患者が防腐剤に陽性を示しやすいかについて検討した。 主な結果は以下のとおり。・合計2,453例の患者が、NACDG標準スクリーニングシリーズのパッチテストを受けた。AD患者は342例、非AD患者は2,111例であった。・解析(カイ二乗検定)の結果、AD患者は非AD患者と比較して、パッチテストで陽性反応を示す割合が統計学的により多い傾向がみられた。・ADと接触性過敏症との関連が示された防腐剤は、クオタニウム-15、イミダゾリジニル尿素、DMDMヒダントイン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)であった。・パラベン、ホルムアルデヒド、ジアゾリジニル尿素とは関連がみられなかった。・本検討は、被験者が疑い例を含むアレルギー性の接触性皮膚炎のみを有する患者であった点、検討地域がカンザスシティとミズーリ州、およびニューヨークの都市部に限られていた点で限定的であった。・以上を踏まえて著者は、「AD患者は、ホルムアルデヒド放出防腐剤が使われているスキンケア用品の使用は避けるべきである」と結論している。

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てんかん治療の改善は健康教育から始まる

 てんかん治療の格差は貧困国において最も大きい。ケニア・KEMRI(Kenyan Medical Research Institute)のFredrick Ibinda氏らは、健康教育プログラムにより治療アドヒアランスが改善するのか、無作為化試験にて評価を行った。農村地帯への1日の介入で行われた検討の結果、健康教育がてんかんに関する知識を向上することが示された。しかし1日だけの教育では、アドヒアランスの改善には結びつかなかったことも判明し、著者は「継続的な教育がアドヒアランスを改善する可能性があり、さらなる研究が必要である」と述べている。Epilepsia誌オンライン版2014年1月21日号の掲載報告。 ケニアの農村地帯への1日健康教育プログラム(キリフィてんかん教育プログラム)の有効性について検討した無作為化試験は、738例のてんかん患者を介入群と非介入(対照)群に割り付けて行われた。主要アウトカムは、抗てんかん薬(AED)のアドヒアランス状況で、血中薬物濃度(標準的な血液アッセイで測定、検査技師は割り付けをマスキング)にて評価した。副次アウトカムは、てんかん発作の頻度とKilifi Epilepsy Beliefs and Attitudes Scores(KEBAS)(訓練された介入スタッフにより行われた質問アンケートで評価)であった。データは、ベースライン時と介入群への教育介入後1年時点に集め分析した。また事後解析として、修正ポアソン回帰分析にて、アドヒアランス改善(AEDのベースライン時の非至適血中濃度からの変化で評価)、発作の減少、KEBASの改善に関連した因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時と介入後1年時点の両時点で評価が行われたのは581例であった。・試験終了時点で血液サンプルが入手できたのは、介入群105例、対照群86例であった。解析は、最もよく服用されていたAED(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン)について行われた。・結果、AED血中濃度ベースのアドヒアランスについて、介入群と対照群で有意差はみられなかった(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:0.74~2.90、p=0.28)。自己報告でみた場合も同様であった(同:1.00、0.71~1.40、p=1.00)。・一方で、介入群のほうが対照群よりも、てんかんの原因についての伝承、民間療法、ネガティブなステレオタイプに対する固定観念を持っている人が有意に少なかった。・発作の頻度については、差がなかった。・ベースライン時とフォローアップ時のデータを比較した結果、アドヒアランス(血中濃度で評価)は介入群(36%から81%、p<0.001)、対照群(38%から74%、p<0.001)ともに有意に増大した。・発作頻度が減少した(直近3ヵ月で3回以下)患者数は、介入群は62%から80%(p=0.002)、対照群67%から75%(p=0.04)と増大した。・治療アドヒアランスの改善(両群を統合して検討)は、てんかんリスクについてのポジティブな信条への変化(リスク比[RR]:2.00、95%CI:1.03~3.95)、および非伝統的宗教的信条への変化(同:2.01、1.01~3.99)と明らかな関連がみられた。・発作頻度の減少は、アドヒアランスの改善と関連していた(RR:1.72、95%CI:1.19~2.47)。・KEBASのポジティブな変化は、高次教育を受けたことと関連していた(非教育との比較でのRR:1.09、95%CI:1.05~1.14)。・以上のように、健康教育はてんかんについての知識を改善するが、1回だけではアドヒアランスは改善しないことが示された。しかしながら、将来的な検討で継続的教育はアドヒアランスを改善する可能性がある。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン部分アゴニスト、新たなてんかん治療薬として期待 日本の高齢者てんかん新規発症、半数以上が原因不明:産業医大 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か

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ゴルフ関連眼外傷は重症になりやすい【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第12回

ゴルフ関連眼外傷は重症になりやすい大学生の頃、社会人としてゴルフと麻雀はできないとダメだよ、と言われたことがあります。じゃあまずは麻雀を勉強するか、と学び始めたのはいいのですが、結局麻雀にどっぷりはまってしまい、ゴルフクラブを握ることがないまま30代になってしまいました。 いつだったか急変続きで疲労していた頃に、上司に「ゴルフの打ちっぱなしでも行ってきたらどうだ」と言われましたが、ゴルフクラブを握ったこともない私の場合、“打ちっぱなし”どころか“空振りっぱなし”になるのは必至です。 Hink EM , et al.Pediatric golf-related ophthalmic injuries.Arch Ophthalmol. 2008;126:1252-1256.この研究は、小児におけるゴルフ関連の眼外傷をまとめたものです。といっても、ゴルフ関連の眼外傷自体の報告が少なく、眼科外傷を扱っている2施設でも15年間で11例の患児しか同定することができませんでした。ゴルフ関連眼外傷を来した11人のうち6人が男の子、5人が女の子でした。平均年齢は10.2歳でした。10人がゴルフクラブによる外傷で、1人がゴルフボールによる外傷でした。外傷により視力障害を来した眼球のうち20/20(視力1.0)が4眼(36%)、20/25(視力0.8)から20/80(視力0.25)が3眼(27%)、全盲が3眼(27%)、測定不能が1眼(9%)でした。ちなみに欧米の場合は、日本の視力測定とは違って、「20/20」「6/6」のように分数で表記します。分子が検査距離(フィート)を表し、分母は被験者がようやく弁別できる視標を健常者(視力1.0の人)がどこまで下がって弁別できるかという距離を表します。「20/40」であれば、被験者が20フィートでようやく見える視標を健常者は40フィートの距離から見えるという意味(視力0.5)です。そのまま分数を少数に置き換えれば、日本の視力表記と一致します。さて、ゴルフ関連眼外傷を来した11人のうち9人が手術を要しました。あらゆる治療が行われましたが、最終的には全盲になったのは2眼(18%)、20/70が1眼(9%)、20/20以上が8眼(73%)という結果でした。この研究では、ゴルフに関連した眼外傷では手術を要するような重度の眼外傷が多いことに警鐘を鳴らしています。過去の成人を含めた10例の検討でも、手術を要した例が多かったと報告されています(Ir Med J. 2008;101:167-169.)。本研究ではゴルフクラブによる眼外傷の方が多かったのですが、ゴルフボールによる外傷の方が多かったという研究もあります(Ir Med J. 2008;101:167-169.、Arch Ophthalmol. 1995;113:1410-1413.)。ゴルフボールが眼に飛んできたら、もはやきわめて不運としか言いようがないように思います。とくに子どもの場合、ゴルフをするときには注意が必要であることは言うまでもありません。

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早期乳がんにおける「温存」vs「切除」、疾患特異的生存率を直接比較

 乳房温存療法と乳房切除術の生存率を直接比較する最近の研究はあまりない。米ミシガン大学のShailesh Agarwal氏らは、同年代の患者コホートを用いて、乳房温存療法、乳房切除術単独、もしくは放射線治療を伴う乳房切除術を受けた13万人超の早期浸潤性乳管がん患者の乳がん特異的生存率を比較した。その結果、乳房温存療法を受けた患者のほうが、乳房切除術単独もしくは放射線治療を伴う乳房切除術で治療された患者と比べて、乳がん特異的生存率が高いことが示された。JAMA surgery誌オンライン版2014年1月15日号に掲載。 著者らは、1998~2008年に乳房温存術、乳房切除術単独、放射線治療を伴う乳房切除術で治療された早期浸潤性乳管がんの女性患者の死亡ハザードを比較するために、単変量、多変量ロジスティック回帰および傾向の分析を行った。データは、サーベイランス、疫学、最終結果のデータベースから抽出し、早期乳がんはリンパ節転移が3個以下かつ腫瘍の大きさが4 cm以下とした。主要アウトカムは、各治療を受けた患者の乳がんによる死亡ハザードとした。 主な結果は以下のとおり。・計13万2,149人の患者が解析され、そのうち70%が乳房温存療法、27%が乳房切除術単独、3%が放射線治療を伴う乳房切除術で治療された。・乳房温存療法、乳房切除術単独、放射線治療を伴う乳房切除術の各治療を受けた患者の5年乳がん特異的生存率は、順に97%、94%、90%であり(p<0.001)、10年乳がん特異的生存率は、94%、90%、83%(p<0.001)であった。・多変量解析では、乳房温存療法を受けた女性の生存率のほうが、乳房切除術単独よりも高く(ハザード比:1.31、p<0.001)、放射線治療を伴う乳房切除術よりも高かった(同:1.47、p<0.001)。・傾向スコアの層別解析を用いた場合、各治療の生存に対する効果は同様であった。

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PM2.5/PM10の長期曝露、冠動脈リスク増大と相関/BMJ

 イタリア・ラツィオ州保健局のGiulia Cesaroni氏らは、ヨーロッパの大気汚染曝露コホート研究(ESCAPEプロジェクト)に参加する11コホート・約10万人を平均11.5年追跡したデータを解析した結果、大気中の粒子状物質いわゆるPM2.5やPM10などへの長期曝露と冠動脈イベント発生とが相関していることを明らかにした。その関連は、現在ヨーロッパで定められている制限基準値(PM2.5は年間25μg/m3未満、PM10は40μg/m3未満)以下でも認められたという。結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、現状の基準値が死亡率だけを考慮したもので過小評価されていることを示し、基準値を引き下げることを支持するものである」と報告している。BMJ誌オンライン版2014年1月21日号掲載の報告。ヨーロッパ5ヵ国10万166例を平均11.5年間追跡 研究グループは、大気中汚染物質による長期曝露の急性冠動脈イベント発生への影響を調べるため、ESCAPEプロジェクトに参加する11コホート(フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、イタリアから参加)の前向きに集めたデータをメタ解析にて評価した。解析には、1997~2007年に登録された冠動脈イベント非既往10万166例が組み込まれた。平均追跡期間は11.5年だった。 2008~2012年に自宅を起点に測定した大気中の粒子状物質<2.5μm(PM2.5)、2.5~10μm(粗いPM)、

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FDAの新薬承認根拠の臨床試験、質にばらつき/JAMA

 新薬承認に際してFDAが用いている臨床試験エビデンスの質は、ばらつきが大きいことを、米国・イェール大学医学大学院のNicholas S. Downing氏らが検証の結果、報告した。医師および患者は新薬の安全性および有効性は十分に評価がされているものだと確信している。しかし、ばらつきが明らかになったことで著者は、「新薬使用の決定に際して医師および患者に、重大な影響をもたらすものである」と指摘している。これまで、FDAが承認した新薬のエビデンスを支持する臨床試験の質について、評価が行われたことはなかったという。JAMA誌2014年1月22日号掲載の報告より。2005~2012年に承認された新薬についてFDA公開文書を入手し調査 Downing氏らは本検討において、承認新薬の有効性評価の臨床試験(FDAが承認の根拠とした臨床試験)の特徴を明らかにすることを目的とした。2005~2012年に承認された新薬についてFDA公開文書を入手し断面調査を行った。 主要有効性試験について、無作為化、盲検化、比較群、エンドポイントの項目デザインで層別化し評価を行った。臨床効果が予測できたと思われるバイオマーカーをエンドポイントに用いていた場合は代用アウトカムであると定義し、被験者数、試験期間、試験を完了した被験者の割合についても調べた。36.8%の新薬は1試験をベースに承認 2005~2012年の間に、FDAが承認した新薬は188件であった。448件の主要有効性試験に基づき206の適応が承認されていた。 1適応当たりの主要有効性試験数の中央値は、2試験(四分位範囲:1~2.5)であった。一方で、74の適応(36.8%)は1試験をベースに承認されていた。 ほとんどすべての試験は、無作為化(89.3%)、二重盲検化(79.5%)、試験薬 vs. プラセボ比較(87.1%)にて行われていた。全主要有効性試験における1適応ごとの登録被験者数の中央値は、760例(四分位範囲:270~1,550)だった。 少なくとも1試験が6ヵ月以上の試験期間である主要試験が、68(33.8%)の適応の根拠となっていた。 主要アウトカムとして代用エンドポイントを用いていた主要有効性試験は、91の適応について独占承認の基礎を形成していた。一方で臨床的アウトカムを用いていたものは、67の適応(33.3%)、臨床尺度を用いていたものは、36の適応(17.9%)であった。 また、各試験には、治療や適応の特徴ごとに(治療領域、予想される治療期間、希少性、急がれた承認など)異なる特色が認められた。

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ブプレノルフィン経皮吸収型製剤、慢性腰痛患者の日常生活動作も改善

 ブプレノルフィン経皮吸収型製剤(BTDS、商品名:ノルスパンテープ)は、日常生活動作(ADL)に支障を来す中等度~重度の慢性腰痛に対して鎮痛効果を示すことが知られている。米国・Optum社のKate Miller氏らは、臨床試験成績の事後解析により、同製剤が鎮痛のみならず睡眠や腰痛に関連したADLの実行能力をも改善することを明らかにした。Clinical Journal of Pain誌オンライン版2014年1月3日の掲載報告。 研究グループは、腰痛と関連があるADLの実行能力に対するBTDS治療の影響を検討する目的で、中等度~重度の慢性腰痛を有するオピオイド未使用患者を対象とした12週間の多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験のデータを用い、ADLについて解析した。 ADLの評価項目は、国際生活機能分類(ICF)の腰痛コアセットに含まれ、臨床試験で用いられた患者報告に基づくアウトカム尺度の項目に関連した23項目とし、ロジスティック回帰モデルにより各ADL実行能力のベースラインに対する投与12週後のオッズ比(OR)を求めた。 主な結果は以下のとおり。・BTDS群では睡眠、持ち上げること、腰を曲げること、仕事をすることに関する10項目のORに統計学的有意性が認められ、プラセボ群に比べBTDS群でADL実行能力が大きいことが示された。・これら10項目の実行能力は、ベースラインに比べBTDS投与12週後に1.9~2.4倍となった(1.9:仕事遂行に身体的健康に関連した制限がない、2.4:疼痛に妨げられずに眠ることができる)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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うつ病患者とかかりつけ医、認識のギャップが浮き彫りに

 米国・コロラド大学のRobert D Keeley氏らは、うつ病診療におけるプライマリ・ケア医と患者の認識について質的研究を行った。その結果、患者がうつ病であることを受け入れ、治療を求めることについて感じているスティグマを、医師は過小評価する傾向にあること、また患者は十分に時間をかけて医師とディスカッションすることを望んでいるのに対して、医師は長時間のディスカッションが患者にとって不利益をもたらすと考えているなど、医師と患者の認識の相違が浮き彫りになったことを報告した。BMC Family Practice誌オンライン版2014年1月15日号の掲載報告。 米国では、プライマリ・ケアにおける診療を“Patient-Centered Medical Homes(PCMH)”、すなわち患者中心型医療に変えるための努力が、プライマリ・ケアでの診療改善の焦点となっている。しかし、PCMHをめぐる技術革新や通信インフラの発展にもかかわらず、患者の認識を踏まえた前向きな診療に対する理解と促進が十分に進んでいないのが現状である。そこでKeeley氏らは、プライマリ・ケアでのうつ病診療に際し、患者の体験、期待、嗜好などについて、医師と患者の認識の差を検討した。地方および都会の小~中規模のプライマリ・ケア4施設が参加し、うつ病性障害患者30例を抱えるプライマリ・ケア医6名にインタビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・満足のいくうつ病ケアには、以下の3つの過程があることが示唆された。(1)砕けてしまったものをつなぐ。(2)個々の患者のうつ病に対する理解を探る。(3)現在のうつ状態と将来のエピソードを防止するための、独自の治療空間をつくる。・患者がうつ病を受容し、治療を求めることをスティグマであるとみていることについて、医師は過小評価する傾向にあった。・患者は、自分の思いに共感を示し、耳を傾けてくれる医師を好むが、一方で医師は、長々と患者と話すことで“パンドラの箱”を開けてしまうことや、診察時間が長くなってしまうことを懸念していた。・うつ病により身体に現れた症状が、患者自身のうつ病の苦悩の理解を妨げるという点に関しては、医師も患者も同意見であった。・医師らは、ガイドラインに基づくうつ病のためのアプローチ以外のいくつかの治療手段を支持するとした。また、患者らが述べている多面的なサポートについても表面的には理解を示した。・プライマリ・ケアのプロセスとアウトカムの改善にあたっては、患者の体験、期待および嗜好を理解し、評価する能力の向上が要求されることが示唆された。・今後の研究で、うつ病ケアにおけるスティグマ、ならびに受診時にうつ病に関するディスカッションに費やす時間について、医師と患者の認識の相違にまつわる検討が進められる必要がある。・うつ病などの慢性疾患のケアとアウトカムの改善にあたっては、プライマリ・ケア医が患者独自の“治療空間”を理解し、サポートすることが求められる。関連医療ニュース うつ病や不安症の患者は慢性疾患リスクが高い 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学

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Mother(後編)【家族機能】

みなさんは、職場で「私はほめられて伸びる子なの」や「おれは叱られて伸びた」と言う意見を耳にしたことはありませんか?人を伸ばす、人を育てるには、結局、「ほめること」が良いのか、「叱ること」が良いのか?どっちなんでしょうか?答えは、どっちもです。さらに「見守ること」も大切です。大事なのはその3つのバランスです。今回も、前々回、前回に引き続き、2010年に放映されたドラマ「Mother」を取り上げます。そして、家族機能を通して、ほめること、叱ること、見守ることのバランスについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。あらすじ主人公の奈緒は、30歳代半ばまで恋人も作らず、北海道の大学でひたすら渡り鳥の研究に励んでいました。そんな折に、研究室が閉鎖され、仕方なく一時的に地域の小学校に勤めます。そこで1年生の担任教師を任され、怜南に出会うのです。そして、怜南が虐待されていることを知ります。最初は見て見ぬふりの奈緒でしたが、怜南が虐待されて死にそうになっているところを助けたことで、全てをなげうって怜南を守ることを決意し、怜南を「誘拐」します。そして、継美と名付け、逃避行をするのです。実のところ、奈緒をそこまで駆り立てたのは、奈緒自身がもともと「捨てられた子」だったからでした。その後に、奈緒は、奈緒の実母(葉菜)に出会い、助けられることによって、少しずつ閉ざしていた心を開いていきます。そして、奈緒、継美(怜南)、葉菜の3人で生きていくという家族の形が描かれます。「子どもの目を見る」母性と「世間の目を見る」父性―表1最初、奈緒は、継美(怜南)とともに、奈緒の育ての親(藤子)の実家に身を寄せます。しかし、やがて、藤子やその娘たちは、継美(怜南)の「誘拐」の事実に気付いてしまいます。奈緒は、迷惑を掛けたくないという思いから、継美を連れて、その実家を出ていきます。その後、藤子は、他の娘たちを守るために奈緒の戸籍を抜くかどうか葛藤します。そんな中、妊娠中の芽衣(藤子の実の子、奈緒の義妹)から「世間の目を見るのが母親じゃないじゃん」「子どもの目を見るのが母親じゃん」とたしなめられるのです。「子どもの目を見る」、子どもの幸せをまず考えるのは、母親の役割です。子どもは愛されているという欲求(愛情欲求)が満たされることで、愛着を育みます。こうして、乳児期の1歳半、2歳までは、心の拠りどころ(安全基地)としての母性による見守り(保護)により、精神的に安定する力の土台を作ることができます(レジリエンス)。つまり、安全感です。この土台は、その後の父性によるしつけを乗り越える原動力となります。それでは、「世間の目を見る」のは誰の役割でしょうか?それは父性の役割です。「世間の目を見る」とは、社会のルールを重んじることです。2、3歳以降は、父親、兄弟、親戚、同年代の子どもとのかかわりや遊びを通して、子どもは、期待に応えたいという欲求(承認欲求)を満たそうとします。この時、しつけ(社会性)としての父性による見張り(監視)、つまりほめられることと叱られることで、人間関係のルールや我慢などを身に付け、生き方のモデルを学びます。そして、母性と離れる不安(分離不安)が和らぎ、自立の道を歩もうとします。また同時に、誇り、罪悪感、羨ましさ、憐れみなどの様々な社会的感情を育んでいきます。母性は、期待に応えるという条件がなくても愛してくれる絶対的なものです(無条件の愛情)。それとは対照的に、父性は期待に応えられて初めて、ほめて愛してくれます。しかし、期待に応えられなければ叱る、つまり恐怖を与えます。つまり、父性は、期待に応えるという条件が付いて愛してくれる相対的なものであるということです(条件付きの愛情)。表1 母性と父性の役割母性父性年齢0歳~2、3歳~特徴見守ること心の拠りどころ(安全基地)絶対的(無条件の愛情)見張ること(ほめることと叱ること)しつけ(社会性)相対的(条件付きの愛情)プラス面子どもの愛情欲求を満たす父性によるしつけにくじけないように、精神的に安定する力の土台を育む子どもの賞賛欲求を満たす母性から引き離し、自立を促す生き方のモデルを示すマイナス面社会性が乏しい心の拠りどころが乏しい父性の心理の源は?―人間の進化の産物それでは、なぜ父性はこのような心理になるのでしょうか?そもそもなぜ父性はあるのでしょうか?前回は母性の心理の源を探りました。今回は、父性の心理の源を掘り下げていきたいと思います。700万年の人間の心の進化の歴史を振り返ると、原始の時代からいつの時代でもどこの場所でも、ほとんどの民族の子どもには母親と父親が1人ずつ変わらず存在し続けました。進化論的には、存在し続けるものには必ず意味があります。その意味とは、父性は、霊長類、特に私たち人間が手に入れた進化の産物の心理だからです。700万年前から1万年前までの原始の時代、つまり農耕牧畜がまだ発見されていない時代、人々は、食糧を貯めることができませんでした。そこで、男性(父親)は日々食糧を確保し、女性(母親)は日々子育てをするというふうに、性別で役割を分担して共同生活を行いました。そして、この生活スタイルをとった種がより生き残りました。その後、進化の過程で人間の脳が大きくなり、それに伴い、子どもの成長には時間がかかるようになりました。そんな中、子育てに積極的に参加する養育者としての父性が進化したのです。その進化には、3つの要素があります。1つ目は、子どものメリットです。子育てに積極的な男性(父親)は、女性(母親)といっしょになってその子どもを猛獣や飢餓から守ります。そして、その子どもの生存確率をより高めます。その子どもの父親の父性的な遺伝子はその子にも受け継がれていきます。2つ目は、女性(母親)のメリットです。子育てに積極的な男性(父親)は、女性(母親)を助けることにより女性(母親)から生殖のパートナーとしてより選ばれるようになります。3つ目は、男性(父親)のメリットです。子育てに積極的な男性(父親)は、早くに子どもを離乳させ女性(母親)から引き離すことになるため、早くに女性の発情が再開され、再び生殖が可能になるのです。3つの要素とも、結果的に、子孫を残しやすくなるということです。そして、この父性の心理がより働く遺伝子が現在の私たち、特に男性に受け継がれています。母性が「そうしたいからしている」という欲求であるのと同じように、父性もまた、遺伝子によって突き動かされていると言えます。家族機能―安定した家族の形葉菜(奈緒の実の母)と奈緒は、新しい戸籍を手に入れるため、継美(怜南)を連れて伊豆に行きます。そこで継美は、砂浜で砂の家を作ります。そして、「継美とお母さんとおばあちゃん、家族3人で暮らすの」「3人でね、『スミレ理髪店』するの」「お母さんは髪の毛洗う係でしょ」「おばあちゃんは髪の毛切る係でしょ」「継美はね、髪の毛乾かす係とお菓子上げる係」「家族のお店だね」と言います。継美は、まぶしく暖かい海辺に飛んでいる海鳥に向かって「鳥さ~ん!ここだよ~ここにいるよ~」と叫びます。かつて北海道の暗く寒い海岸で飛んでいる渡り鳥に向かって「怜南(継美)も連れてって~!」と叫んだ時とは対照的です。継美の心の中には、心の拠りどころ(安全基地)や安心感がはっきりと芽生えています。と同時に、夢を描くためのモデルや役割もはっきりと見いだされています。このように、子どもにとっての安定した家族の形は、本来、母性と父性が両方バランスよく発揮されることで成り立ちます(家族機能)。母性と父性のアンバランス―取り込みと突き放し逆に、バランスが保たれていないとどうなるでしょうか?実は、母性と父性のプラス面は度が過ぎると、マイナス面になります(表1)。母性が強すぎると、相対的に父性が足りなくなり、母子はべったりと一体化します。そして、見守りが先回りに転じて、子どもを母親の思い通りのペットや人形にしてしまいます。自由を許してくれるはずの母性がもはや自由を許してくれなくなるという逆説的な状態になります。すると、子どもは取り込まれた感覚になります。守ってくれるはずの安全基地が、逆に身動きのとれない監獄になってしまうのです。このように、母性は強すぎると歪んでしまうことが分かります。この状況は、特に母性の一極集中が起きやすい一人っ子や末っ子に見られます。また、この心の間合い(心理的距離)の取りにくさは、母親とだけでなく、やがて友人や恋人との間にも起こってしまいます。このようにして、自立ができづらくなり、社会性が育まれません。昨今、社会問題となっている引きこもりを引き起こす大きな要因となっています。一方、父性が強すぎると、相対的に母性が足りなくなり、心の拠りどころが希薄になります。例えば、子どもが父親や先生に叱られた時、母親もいっしょになって叱る場合です。子どもに味方はいません。子どもは突き放された感覚になり、安全感や安心感はありません。子どもの時は何とか「良い子」で乗り切ろうとしますが、やがて思春期を迎えると、欲求不満になりやすく、精神的に不安定になります。このメカニズムは前々号や前号でご紹介しました。このように、過剰な母性は取り込みが起こり、過剰な父性は突き放しが起こります。どちらにせよ、子育てのための家族の働きがとても弱まっていることになります(機能不全家族)。子どもは、何があっても愛されるという心の拠りどころ(安全基地)を土台にして、期待に応えたらもっと愛されるという社会性を高めていきます。つまり、無条件の愛情(母性)による鉄壁の守りがあるからこそ、条件付きの愛情(父性)への勇敢な攻めができるのです。そして、「こうなりたい」「こうあるべきだ」という自分なりのモデルができあがるのです。また、芯があってブレないので、自己評価も適切に行えるのです。母性と父性は、お互いの長所を保ち、欠点を補い合うものなのです。足りない母性を補う存在は?継美(怜南)の新しい家族には、父性を発揮すべき父親がいません。では、どうしてこの家族はうまくいっているのでしょうか?奈緒と継美と葉菜(奈緒の実の母)が3人で暮らす中、食事の場面で、奈緒が継美に「おかず取る時はご飯置いて」とマナーの注意をします。継美が威勢よく「はい」と返事をすると、葉菜は「フフ」とほほ笑みます。また、奈緒は1人でいる時、警察が嗅ぎ回っていることを察知し、継美といっしょにいる葉菜に電話します。継美が奈緒に「あのね、さっきね」と話たがっているのに、奈緒は「ごめん、急いでるの。(葉菜に)代わって!」「後で!」と急き立てます。その後に継美が葉菜に「お母さん、何か怒ってた?」と不安そうにすると、葉菜は「ううん。怒ってなかったわよ」「お母さん帰ってきたら教えてあげよう」と優しくフォローします。実は、奈緒は、継美の母親になって母性を発揮しつつ、父親がいないので、父性の役割も果たす必要がありました。そもそも父性は条件付きの愛情です。そのため、奈緒が父性を発揮すると、どうしても無条件の愛情である母性が危うくなります。この時に絶妙な助けとなっているのが、祖母である葉菜です。これが、継美の新しい家族がうまくいっている答えです。葉菜によって、継美へ注がれる母性が補われて、安定しているのです。母性を補う存在は必ずしも母親でなくてもいいのです。祖母、父親、祖父、そして叔母や叔父も母性を注ぐことができるのです。このことから、必ずしも生物学的な女性が100%の母性を発揮し、男性が100%の父性を発揮する必要はないということです。より良い子育ての視点に立てば、大事なのは、母性的な養育者と父性的な養育者がそれぞれ1人ずつ、つまり養育者は合わせて2人いることです。性別が逆転していても、世代が違っていてもよいのです。例えば、働いている母親が70%の父性と30%の母性を発揮しているなら、専業主夫の父親または祖母は70%の母性と30%の父性を発揮してバランスを取れば良いわけです。おばあちゃん子―「家族力」最近の研究仮説で、祖母による母親への支援は、「祖母効果」「おばあちゃん仮説」と呼ばれています。そもそもほとんどの動物は、繁殖が終わる年齢と寿命はだいたい一致しています。つまり、繁殖力がなくなった時が寿命の尽きる時です。しかし、私たち人間は違います。閉経を終えて繁殖力がなくなった女性が長生きすることには進化論的な意味があるということです。その意味とは、繁殖を終えてまだ体力のある祖母が、子育てをする次世代の自分の娘(母親)を助けることで、娘の繁殖力を高め、孫の生存率を高めることです(包括適応度)。いわゆる「おばあちゃん子」の存在も、「祖母効果」の延長線上にあるものと考えられます。現代の母親は働いていることが多く、精神的な支えとして、注ぎ足りない母性を「おばあちゃん」が補っているというわけです。そもそも原始の時代から、子育ては、兄弟や親戚を含んだ大家族、もっと言えば地域全体で協力して行っていました(アロマザリング)。本来、子育ては母親1人で行うものではなかったのです。大事なことは、子どもへの母性や父性がいざ足りなくなった時のために、家族機能には余力(予備能力)が必要だということです。言うなれば、「家族力」です。これは、ちょうど体力に似ています。例えば、体の運動や病気によって日々の活動以上の体力が必要になる時のために、普段から心臓、肺、肝臓、腎臓など様々な臓器には、予備の能力が残されています。一人親の難しさと危うさそれでは家族機能に余力のない状況について考えてみましょう。代表的なのは、昨今増えつつある母子家庭(一人親)です。もっと広げて言えば、父親はいたとしても、仕事に没頭するなどして子育てに参加しない、つまり父親不在の核家族です。一人親、つまり母親だけだと、母親は母性と父性を一人二役でやる必要があります。しつけの面ではどうしても父性が強まってしまい、母性が足りなくなります。とても器用にやってバランスを取らなければなりません。これが一人親の難しさであり危うさです。奈緒も、葉菜(奈緒の実の母)がいなければ、継美の子育てにおいてこの状況に陥っていたかもしれません。見守ること、ほめること、そして叱ることのバランス子育てには、母性も父性もほどほどが良く、大事なのはそのバランスであるということが分かりました。さらに、母性により見守ることとは別に、父性により見張ること、つまりほめることと叱ることもほどほどが良く、大事なのはそのバランスであると言えます。そのメカニズムを詳しく見てみましょう。(1)二面性―表2見守ること、ほめること、そして叱ることとは、具体的にどういうことなのでしょうか?その特徴と二面性について考えてみましょう。見守るとは、子ども(相手)の行動を温かくも注意深く見て、いざ危険になった時に助けて守るなどフォローすることです。例えば、子どもが父親や教師にほめられた時も叱られた時も、母親など誰かがその気持ちをそばで共感することです。すると、子どもは、自分にはどんな時も味方がいると安心します。見守られている子どもの脳内では、オキシトシンという神経伝達物質が放たれ、安全感や安心感が得られ、自己評価はプラスに保たれます。自己評価とは、自分自身への評価や価値であり、自分を大切にする心理です。ただし、見守られること自体には、直接的な学習効果はありません。学習とは、例えば、1人でトイレを済ます、隣の家のおじさんに挨拶をする、困っている人を助けるなど期待されたことを行うことです。ほめるとは、期待されたことを行った子ども(相手)に対して、その行為や子どもの存在を肯定することです。ほめられた子どもの脳内では、ドパミンという神経伝達物質が放たれ、楽しく心地良くなり、達成感が得られ、自己評価は上がります。すると、その子どもは、次も同じことをやろうと学習します。これが、ほめることによる学習効果です。ただし、この学習効果はある一定量しかなく、従って自己評価もある一定量しか上がりません。よって、学習効果や自己評価を高めるために、ほめることは、なるべくこまめに繰り返し行う必要があります(繰り返し効果)。叱るとは、期待されなかったことを行った子ども(相手)に対して、その行為や子どもの存在を否定することです。叱られた子どもの脳内では、ノルアドレナリンという神経伝達物質が放たれ、緊張や恐怖を感じ、自己評価は下がります。これは、哺乳類の敵の学習に通じるものです。敵に襲われた時、恐怖という否定的な感情によって、敵を記憶するのです。それと同じように、子どもも、「敵に近付くこと」、つまり同じことはもうやらないように学習します。これが、叱ることの学習効果です。この学習効果は、1回だけでもとても高いのですが(即時効果)、同時に自己評価を大きく下げてしまう難点があります。よって、叱るのは、絶対にやってはいけないこと、つまり禁止のルールの学習に限定し、最小限にする必要があります。禁止のルールとは、例えば、人を傷付けてはいけない、人の物を盗ってはいけないなどです。表2 見守ること、ほめること、そして叱ることの比較母性により見守ること(保護)父性により見張ること(監視)ほめること叱ること特徴子ども(相手)の行動を温かくも注意深く見て、いざ危険になった時に助けて守る安全感期待されたことを行った子ども(相手)に対して、その行為や子どもの存在を肯定する楽しさ、心地良さ、達成感期待されなかったことを行った子ども(相手)に対して、その行為や子どもの存在を否定する緊張、恐怖神経伝達物質オキシトシンドパミンノルアドレナリン学習効果直接的になし比較的低いとても高い自己評価プラスに保つ少し上げる大きく下げる注意点一定して絶え間なく注ぐ必要がある繰り返す必要がある限定する必要がある(2)アンバランスの危うさ―グラフ1次に、見守ること、ほめること、そして叱ることのアンバランスの危うさについて考えてみましょう。見守り(母性)が行き過ぎだったり足りなかったりした場合に起きる問題は、すでに「母性と父性のアンバランス」の段落で触れました。よって、見守ることは、多くも少なくもなく、一定して絶え間なく必要であるということです。ほめることが行き過ぎて叱ることが足りない場合、つまりほめてばかりで叱らない親はどうでしょうか?いわゆる甘やかし、溺愛です。子どもは、自己評価が高くなりすぎて、自惚れが起きやすくなります(自己愛パーソナリティ)。また、禁止のルールの学習が進まず、やりたい放題で奔放な行動パターンを取りやすくなります。イメージとしては、いわゆる「ドラ息子」です。逆に、叱ることが行き過ぎてほめることが足りない場合、つまり叱ってばかりでほめない親はどうでしょうか?厳格な家庭環境ということになります。子どもは、自分の行動にいつも怯えてしまい、安心感をなくします。また、自己評価を大きく低めてしまいます。この問題も、すでに「母性と父性のアンバランス」の段落で触れました。さらに、時として、厳しいしつけや体罰は虐待に発展して、心の傷(トラウマ)も残してしまいます(PTSD)。最後に、見守ることもほめることも叱ることも足りない場合、つまり見守りもほめも叱りもしない親はどうでしょうか?放ったらかし、つまり放任です。子どもは、安心感や達成感を持てず、禁止のルールも分からないまま、とても野性的になります。欲望と恐怖だけに支配され、ただ生きるために生き続けているだけで、社会生活を送るのが、極めて難しくなります。(3)ほめることと叱ることの割合―グラフ2ここで、ほめることと叱ることの具体的なバランス、つまり割合について考えてみましょう。それぞれの特徴を踏まえて、自己評価をほどほどなプラスにすることに重きを置くと、ほめることは、叱ることよりも量、質ともにある程度多くする必要があります。そして、その前提として、もちろん絶え間ない見守り(母性)による自己評価の安定も重要です。例えば、5回ほめることによる自己評価のアップが1回叱ることによる自己評価のダウンと同じになるモデルを考えてみましょう。グラフのように、繰り返しほめることで学習効果は徐々に進み、自己評価も徐々に上げっていきます。ところが、1回叱られると学習効果は大きく進むのですが、同時に自己評価は大きく下がります。そして、続けて叱られるとさらに学習効果が進みますが、自己評価が大きくマイナスになってしまいます。それは叱ることはとても威力があるからです。つまり、5回以上ほめて初めて1回叱ることができます。または、1回叱ったら、5回以上ほめる必要があります。なぜなら、叱り続けたら、自己評価がどんどん下がっていき、精神的に不安定になってしまうからです。日頃から、見守られてほめられているからこそ、叱られても、そのストレスに耐えられるのです。別の言い方をすれば、ほめる「貯金」をたくさんしてこそ、叱る「借金」ができるのです。これが、ほめることと叱ることのバランスです。そして、これが、冒頭の問いかけの答えでもあります。「人育て」における見守ること、ほめること、そして叱ることのバランスこれまで、子育てにおいてのほめること、叱ること、そして見守ることのバランスについて考えてきました。それでは、「人育て」、つまり人材育成においてはどうでしょうか?昨今、特にプロフェッショナルな集団では、たとえ上司と部下、先輩と後輩、年配と若手の関係があっても、フラット(対等)な関係が好まれる傾向にあります(フラット化)。しかし、まだプロになり切れていない新人の教育にあたっては、3つのバランスは大いに重要です。見守ることが行き過ぎると、先回りをしてしまい、新人が指示待ち人間になってしまいます。自発性や積極性が育まれず、横並び意識が強まり、成長はしません。逆に、見守ることが足りないと、安全感(セーフティネット)がなく、競争原理や人間関係のストレスなどに耐えられません。よって、見守ることは、子育てと同じく、多くも少なくもなく一定して絶え間なく必要であるということです。ほめることが行き過ぎて叱ることが足りないと、新人は自惚れて仕事を舐めてかかります。やがて、現状に甘んじてしまい、成長はしません。また、禁止の学習がなされないので、同じ間違いを繰り返しやすくなります。逆に、叱ることが行き過ぎてほめることが足りないと、新人は仕事の出来不出来にいつも怯えてしまいます。そして、自発性が萎縮してしまいます。欲求不満の状態に陥り、離職率を高めます。集団での母性と父性―リーダーとサブリーダーの役割のバランスそれでは、職場という組織(集団)において、見守りによる母性を発揮するのは誰が良いでしょうか?また、ほめ叱りによる父性を発揮するのは誰が良いでしょうか?答えは、リーダーが母性、サブリーダーが父性を発揮することです。これは、1つの安定モデルです。実際に、リーダーは温かく見守り人望があり、サブリーダーは口うるさく有能であるというスタイルで機能している集団はよく見かけます。また、サブリーダーの時は口うるさかったのに、リーダーになったら穏やかになったという人も見かけます。新しいサブリーダーがしっかりしていて父性を強めてくれれば、リーダーは母性を強めることができて、集団の機能として安定するわけです。逆に、リーダーが父性的、サブリーダーが母性的である場合もありえます。ただし、この場合は、リーダーが孤立する可能性が高まり、集団としてのまとまりが弱くなるリスクがあります。とても危ういのは、リーダーとサブリーダーのキャラがかぶり、2人が揃って父性的で、メンバーたちを叱ってばかりいるという集団です。コミュニケーションにおける母性と父性普段からのコミュニケーションにおいても、私たちは相手によって一人二役で母性と父性を使い分けたり、組み合わせたりしています。かつては「がんばれ!負けるな!」という父性的な言い回しを世の中でよく耳にしました。最近では「がんばって。でも無理しないでね」という言い方をよく耳にします。これは、「がんばるのはいいけど、無理しなくても、人生は大丈夫なもんだからね」という母性的な保証のニュアンスが込められていることが分かります。今の世の中は、母性的なコミュニケーションに傾いてきているようです。今回、ドラマ「マザー」を通して家族機能を解き明かしながら、子育てのあり方から「人育て」のあり方を探ってきました。これらを見通す視点を持つことで、私たちは日々のコミュニケーションのあり方を見つめ直し、見守ること、ほめること、そして叱ることのそれぞれのバランス感覚を身に付けることができるのではないでしょうか?1)山極寿一:家族進化論、東京大学出版会、20122)北村英哉・大坪康介:進化と感情から解き明かす社会心理学、有斐閣アルマ、20123)澤口俊之:「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育、講談社+α新書、2011

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睡眠障害に関するアンケート

対象ケアネット会員の内科、精神科・心療内科医師方法インターネット調査実施期間2013年12月19日回収200名(内科医師100名、精神科・心療内科医師100名)Q.「睡眠薬の適切な使用と休薬のための診療ガイドライン」(厚生労働省・日本睡眠学会)をご存じですか?また、どのように扱われていますか?Q.レストレスレッグス症候群をご存じですか?また、どのように対応していますか?2013年12月ケアネット調べ

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インフルエンザ検出2倍以上に(厚生労働省)

 厚生労働省は1月31日、2014年第4週(2014年1月20日~1月26日)インフルエンザの発生状況を公表した。AH3亜型(A香港型)が最も多く検出されている。なお、昨シーズンは報告が少なかったAH1pdm09が次いで多く、とくに直近の5 週間(2013 年第52 週~2014 年第4 週)ではAH1pdm09 の検出割合が最も多いという。 発表内容は以下の通り。 2013/2014 年シーズンのインフルエンザの定点当たり報告数は2013 年第43 週以降増加が続いている。2014 年第4 週の定点当たり報告数は24.81(患者報告数122,618)となり、前週の報告数(定点当たり報告数11.78)よりも大きく増加した。都道府県別では沖縄県(54.12)、大分県(39.62)、宮崎県(37.86)、佐賀県(34.79)、埼玉県(33.69)、長崎県(32.47)、福岡県(32.19)、神奈川県(31.52)、滋賀県(31.32)、千葉県(30.08)の順となっており、第4 週も全47都道府県で増加がみられた。 全国の保健所地域で警報レベルを超えているのは146 箇所(33 都府県)、注意報レベルを超えている保健所地域は317箇所(46 都道府県)と共に増加した。定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1 週間に受診した患者数を推計すると約132万人(95%信頼区間:121~144 万人)となり、5~9 歳が約29 万人、0~4 歳が約18 万人、10~14 歳、30 代がそれぞれ約17 万人、40 代が約14 万人、20 代が約12 万人、50 代が約8 万人、15~19 歳が約7 万人、60 代が約6 万人、70歳以上が約4 万人の順となっている。また、2013 年第36 週以降これまでの累積の推計受診者数は約275 万人となった。 基幹定点からのインフルエンザ患者の入院報告数は807 例であり、第3 週(519 例)より増加した。全47 都道府県から報告があり、年齢別では0 歳(75 例)、1~9 歳(232 例)、10 代(45 例)、20 代(17 例)、30 代(25 例)、40 代(22例)、50 代(37 例)、60 代(76 例)、70 代(118 例)、80 歳以上(160 例)であった。 2013 年第36 週以降これまでの国内のインフルエンザウイルスの検出状況をみると、AH3 亜型(A 香港型)の割合が最も多く、次いでAH1pdm09、B 型の順で検出されている一方で、直近の5 週間(2013 年第52 週~2014 年第4 週)ではAH1pdm09 の検出割合が最も多く、次いでB 型、AH3 亜型(A 香港型)の順となっている。

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統合失調症患者は処理速度が著しく低下、日本人でも明らかに:大阪大学

 統合失調症患者は文化的要因が影響する神経心理学的検査において、統合失調症でない患者と比較してパフォーマンスが劣ることが報告されている。大阪大学の藤野 陽生氏らは、ウェクスラー成人知能検査(WAIS-III)日本語版を用いて、統合失調症患者のパフォーマンスを検討した。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2013年1月22日号の報告。 日本人統合失調症患者157例と健常者264例を対象に、WAIS-IIIでのパフォーマンスを評価した。WAIS-IIIから得られた、すべての知能指数スコアと4群指数(言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度)により比較検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は健常者と比較し、すべての知能指数スコアと4群指数が損なわれていた。・とくに処理速度は、健常者よりも約2SD低かった。・13のサブテストのなかで、理解(z = -1.70、d = 1.55)、符号(z =-1.84、d = 1.88)、記号探し(z-1.85、d = 1.77)は健常者と比較し著しく損なわれていた。・日本人統合失調症患者におけるWAIS-IIIによって評価された障害のタイプや程度は、これまで英語圏で報告されたものと同様であった。また、機能的転帰に関連するいくつかの神経心理学的分野の障害は、統合失調症の普遍的な特徴であると考えられる。関連医療ニュース 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学 統合失調症の実行機能障害に関与する遺伝子を発見:獨協医大 統合失調症患者へのセロトニン作動薬のアドオン、臨床効果と認知機能を増大

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脂漏性皮膚炎への経口抗真菌薬の使用実態が明らかに

 カナダ・トロント大学のA.K. Gupta氏らは、脂漏性皮膚炎に対する経口薬治療について発表された文献数とその質について系統的レビューを行った。脂漏性皮膚炎は通常、局所ステロイドまたは抗真菌薬による治療が行われ、重症例もしくは治療抵抗性の場合には経口薬治療が可能とされている。Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology誌2014年1月号の掲載報告。 Gupta氏らによる系統的レビューは、MEDLINE、Embaseのデータベースおよび文献参照リストを探索して行われた。脂漏性皮膚炎の経口薬治療に関するあらゆる報告を対象とした。 文献の質について、Downs&Black修正27項目チェックリストを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・検索により、8つの経口薬治療(イトラコナゾール、テルビナフィン、フルコナゾール、ケトコナゾール、プラミコナゾール、プレドニゾン、イソトレチノイン(国内未承認)、ホメオパシー療法)をカバーした21本の報告(無作為化対照試験、非盲検試験、症例報告)が特定された。・大半の報告は、経口抗真菌薬について検討していたが、その質は概して低かった。・臨床的有効性アウトカムは、試験間でかなりのばらつきがあり、統計解析と治療間の直接比較は難しかった。・その中で、ケトコナゾール治療は、ほかの経口薬治療と比較して脂漏性皮膚炎再発との関連がより大きかった。・イトラコナゾールの投与量は通常、最初の1ヵ月の第一週は200mg/日、2~11ヵ月は、月初めの2日間に200mg/日が投与されていた。・テルビナフィンは、250mg/日を連続投与(4~6週)もしくは間欠投与(月に12日間を3ヵ月)で処方されていた。・フルコナゾールは、連日投与(50mg/日を2週間)もしくは毎週投与(200~300mg)を2~4週で設定されていた。・ケトコナゾールの投与レジメンは1日200mgを4週間であった。・プラミコナゾールは、200mg単回投与であった。・著者は、「今回のレビューにより、将来、試験をデザインする際に考慮すべきキー領域が明らかになった」とまとめている。

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異国の確定申告【Dr. 中島の 新・徒然草】(003)

三の段 異国の確定申告多くの医師の皆さん同様、私もそろそろ確定申告の準備をしなくてはなりません。たいして稼いでもいないのに、計算だけは大変です。10数年前アメリカにいたときは、J1ビザの外国人留学生でありながら複数の収入があるというややこしい存在だったので、もっと大変でした。最初は知り合いに紹介してもらったCPA(certified public accountant:公認会計士)に頼んで税金の計算をしてもらっていたのですが、どうも頼りなかったのです。そこで、外国人の税金計算に明るいという別のCPAにお願いしました。「IRS(Internal Revenue Service:アメリカ版国税庁)の言うことは間違いだらけだ」と公言するだけあって、非常に頼もしい人でした。最初の人と違って、法律を隅から隅まで調べ、複数の選択肢のある部分をはっきり示し、どうすれば一番上手に申告できるか、われわれ夫婦と共に一生懸命考えてくれました。その仕事ぶりは時給90ドルを決して高いと感じさせず、「医師患者関係もこのようにあるべきだ」とすら思ったくらいです。余談ですが、彼と共に確定申告に真剣に取り組んだせいか、graduated tax(累進課税)とかdeath tax(相続税)とかreimbursement(償還)とか、その関係の英単語にはやたら詳しくなってしまいました。確定申告の季節になると、つい思い出してしまいます。

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うつ病や不安症の患者は慢性疾患リスクが高い

 これまでの先行研究において、抑うつや不安が慢性疾患発症と関連することが報告されていた。米国・ウェストバージニア大学のRituparna Bhattacharya氏らは、うつ病や不安症が、関節炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、心疾患、高血圧および骨粗鬆症などの慢性疾患に及ぼす影響を検討した。その結果、うつ病、不安症患者は、これらの症状がない人に比べて、慢性疾患のリスクが高いことが明らかになった。今回の結果を踏まえて、著者は「うつ病や不安症の存在は、人口動態および生活習慣リスク調整後も慢性疾患の独立したリスクであることが判明した」と述べている。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年1月16日号の掲載報告。 研究グループは、うつ病や不安症に関連する慢性疾患の過剰リスクについて後ろ向き横断研究を行った。2007~2009年のMedical Expenditure Panel Surveyに登録された22~64歳の成人患者を対象とした。被験者を、うつ病または不安症に関する自己報告に基づき、1)うつ病単独、2)不安症単独、3)うつ病と不安症を併発、4)うつ病も不安症もなし、の4群に分類し、関節炎、喘息、COPD、糖尿病、心疾患、高血圧および骨粗鬆症の有無を従属変数として、うつ病や不安症に関連する慢性疾患の過剰リスクを算出した。検討に際してComplementary log-log 回帰モデルを用い、人口動態(性別、年齢、人種/民族)および生活習慣(肥満、身体活動欠如、喫煙)リスク因子で補正した多変量フレームワークを用いた。多重比較にはBonferroniの補正を行い、p≦0.007を統計学的有意差ありとした。 主な結果は以下のとおり。・全症例のうち、うつ病単独は7%、不安症単独は5.2%、うつ病と不安症の併発は2.5%であった。・うつ病も不安症もない人と比べて、うつ病と不安症を併発している患者、うつ病単独の患者、不安症単独の患者のいずれにおいても、すべての慢性疾患のリスクが高いことが多変量解析により示された。・うつ病と不安症を併発している患者の調整済みリスク比(ARR)は、骨粗鬆症に対する2.47(95%CI:1.47~4.15、p=0.0007)から、糖尿病に対する1.64(同:1.33~2.04、p<0.0001)にわたった。・また、うつ病単独の患者も、骨粗鬆症を除くすべての慢性疾患と有意な相関を示した。・不安症単独の患者では、関節炎、COPD、心疾患および高血圧のリスクが高かった。関連医療ニュース 食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか 少し歩くだけでもうつ病は予防できる ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか

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再発慢性リンパ球性白血病に新規PI3Kδ阻害薬が有効/NEJM

 合併症を有する高齢の慢性リンパ球性白血病(CLL)再発例の治療において、イデラリシブ+リツキシマブ(商品名:リツキサン)療法はリツキシマブ単独療法に比べ有効性が高く、安全性プロフィールは許容できるものであることが、米国・ワイルコーネル医科大学のRichard R Furman氏らの検討で示された。臨床的に重大な合併症を有する再発CLL例は標準的な化学療法が施行不能な場合が多いため、安全性プロフィールが許容可能で、かつ有効な治療法が求められている。イデラリシブは低分子量の選択的PI3Kδ阻害薬であり、再発・難治性CLLを対象とした第I相試験において単剤もしくはリツキシマブなどとの併用で許容しうる毒性の範囲内で有意な臨床効果が確かめられている。NEJM誌オンライン版2014年1月22日号掲載の報告。 上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、再発CLLの治療におけるイデラリシブのリツキシマブへの上乗せ効果の評価を目的とする多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。対象は、腎機能低下、前治療による骨髄抑制、重篤な合併症がみられる再発CLL患者で、イデラリシブ(150mg、1日2回、経口投与)+リツキシマブまたはプラセボ+リツキシマブを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。本試験は、事前に計画された初回中間解析においてイデラリシブ群で顕著な効果が確認されたため、データ・安全性モニタリング委員会の勧告で早期中止となった。 PFSとともに、奏効率、OSも有意に改善 2012年5月~2013年8月までに220例が登録された。78%が65歳以上で、40%が中等度以上の腎機能障害(クレアチニンクリアランス<60mL/分)を有し、35%が骨髄機能不良(Grade 3以上の貧血、血小板減少、好中球減少)、85%が累積疾患評価尺度(Cumulative Illness Rating Scale; CIRS)のスコアが6点以上であった。イデラリシブ群に110例、プラセボ群にも110例が割り付けられた。 PFS中央値は、イデラリシブ群が未到達、プラセボ群は5.5ヵ月であり、病勢進行または死亡のハザード比は0.15(p<0.001)と、イデラリシブの追加により85%の改善が得られた。奏効率はイデラリシブ群が81%、プラセボ群は13%(死亡のオッズ比:29.92、p<0.001)、1年全生存率(OS)はそれぞれ92%、80%(死亡のハザード比:0.28、p=0.02)であり、いずれもイデラリシブ群で顕著に良好であった。 有害事象は、強力な前治療を受けた再発CLL患者で予測されたものとほぼ一致した。重篤な有害事象の発現率は、イデラリシブ群が40%、プラセボ群は35%であった。 著者は、「標準的化学療法が施行できない可能性が高い再発CLL患者の治療において、イデラリシブ+リツキシマブ療法は、リツキシマブ単独療法に比べ、PFS、奏効率、OSを有意に改善した」とまとめ、「イデラリシブは、イブルチニブ(ブルトン型チロシンキナーゼ[BTK]阻害薬)やABT-199(B細胞リンパ腫2[BCL2]蛋白阻害薬)などと共にCLLに有効な薬剤のリストに加えられる。これらの薬剤をより効果的に使用するには、さらなる検討を要する」と指摘している。

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抗アミロイド療法は発症後では遅すぎる?/NEJM

 抗アミロイドβ(Aβ)モノクローナル抗体バピヌズマブは、アルツハイマー病(AD)関連のバイオマーカーを改善するが、臨床アウトカムの改善はもたらさないことが、米国・バトラー病院のStephen Salloway氏らの検討で示された。バピヌズマブは、軽度~中等度AD患者を対象とした第II相試験において、プラセボに比べてPET画像上のアミロイドを減少させ、脳脊髄液(CSF)中のリン酸化タウを低下させたことから、標的への到達および神経変性の減弱効果が示唆されていた。NEJM誌2014年1月23日号掲載の報告。APOEε4対立遺伝子の有無別の2つのプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、軽度~中等度AD患者に対するバピヌズマブの有用性の評価を目的とする2つの二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。1つはアポリポ蛋白E(APOE)ε4対立遺伝子のキャリアを対象に、米国の170施設の参加の下で2007年12月~2012年4月に行われ、もう1つはAPOEε4対立遺伝子非キャリアを対象に、米国、カナダ、ドイツ、オーストリアの218施設が参加して2007年12月~2012年6月に進められた。 対象は、年齢50~88歳、ADの診断基準を満たし、MRI上でAD所見を認め、軽度~中等度認知機能低下がみられ、虚血の徴候が低い患者とした。キャリアの試験ではバピヌズマブ0.5mg/kg(13週ごと6回=78週、静脈内投与)またはプラセボを投与する群に、非キャリアの試験ではバピヌズマブ 0.5mg/kg、1.0mg/kgまたはプラセボを投与する群に、患者を無作為に割り付けた。 主要評価項目は、アルツハイマー病評価スケールの認知機能評価11項目(ADAS-cog11、0~70点、点数が高いほど認知機能が良好)および認知症機能障害尺度(DAD、0~100点、点数が高いほど身体機能障害は低い)のスコアの変化とした。副次評価項目は、Pittsburgh compound Bを用いたPET画像上のアミロイド所見(PIB-PET)およびCSF中のリン酸化タウ濃度とした。抗アミロイド療法は発症後では遅すぎる? キャリア1,090例(バピヌズマブ群:658例、プラセボ群:432例)および非キャリア1,114例(0.5mg群:314例、1.0mg群307例、プラセボ群493例)が有効性解析の対象となった。 主要評価項目は有意な群間差を認めなかった。APOEε4対立遺伝子キャリア試験ではベースラインから78週までのADAS-cog11スコアおよびDADスコアの差(バピヌズマブ群-プラセボ群)は、それぞれ-0.2(p=0.80)および-1.2(p=0.34)であり、非キャリア試験ではバピヌズマブ0.5mg/kg群がそれぞれ-0.3(p=0.64)、2.8(p=0.07)、1.0mg/kg群は0.4(p=0.62)、0.9(p=0.55)であった。 安全性に関する重要所見として、バピヌズマブ群でアミロイド関連画像異常としての浮腫がみられ、用量およびAPOEε4対立遺伝子の数が多くなるに従って頻度が高くなった。非キャリア試験で当初設定されていた2.0mg/kg群は、これが原因で早期中止となった。 キャリアではPIB-PETおよびCSF中のリン酸化タウ濃度が、バピヌズマブ群で有意に改善した(それぞれp=0.004、p=0.005)が、非キャリアでは1.0mg群のリン酸化タウを除き有意な改善は認めなかった(0.5mg群:p=0.19、p=0.98、1.0mg群:p=0.47、p=0.009)。 著者は、「バピヌズマブは、APOEε4対立遺伝子キャリアではバイオマーカーを改善させたが、臨床アウトカムの改善はもたらさなかった」とまとめ、「アミロイドの蓄積は症状発現のかなり以前に始まっており、抗アミロイド療法は認知症が発症してから開始したのでは遅すぎて、臨床経過には影響を及ぼさない可能性がある」と指摘している。

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