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非小細胞肺がんの予後は術前化学療法により改善するか(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(187)より-

全世界で毎年150万人の新規肺がんが診断され、その8割は非小細胞肺がん(NSCLCs)で、切除だけで完治が期待できる症例は20~25%程度である。術前化学療法は腫瘍径や転移巣の縮小効果を期待できる一方で、手術を遅らせ、がんの進行により切除不能になってしまうことも時にありうる。 これまで、術前化学療法が予後改善に結びつくことを期待し、多くの臨床試験が実施されてきたが、いまだ最終的な結論には至っていない。その理由の一つは、非小細胞肺がんの多様性・不均一性にある。 今回紹介したLancetの論文はシステマティックレビューとメタ解析を用い、術前化学療法が予後を改善するという結果だが、結語ではNSCLCsにおいて術前化学療法を導入することが望ましい、ないし導入すべき、という記載でなく、valid optionとの表現がなされている。 2014年に日本肺学会肺診療ガイドライン改訂版が発刊予定なので、日本の現況と比較し、概説する。 本論文で取り上げた対象報告は1965年以降の発刊が対象だが、当然ながら1990年代以降の成績が主体となっている。一言で術前化学療法と一括しているが、術後化学療法導入例や放射線療法実施例も混在しており、純粋に術前化学療法単独の比較解析ではない。 また背景因子が、臨床病期はIBが最多、次いでIIB、IIIAであること、扁平上皮がんが最多で腺がんの2倍弱、男性が8割、60歳以下が4割、などは日本の現状と大きく異なることに留意する必要がある。本邦での切除対象非小細胞肺がんは臨床病期IA、IBが主で、腺がんが多く、男性が6割、切除症例の8割弱は60歳以上、と背景因子が異なる。 日本肺学会のガイドラインでは、非小細胞肺がんの術前治療として、I-IIIAに術前プラチナ併用化学療法を考慮してもよい、一部のIIIA(N2)に対して術前化学放射線療法を考慮してもよい、との見解が発表予定である。裏付けとなる検索対象論文は2編しか同一ではないものの、結語は大筋類似している。 結論として術前化学療法の意義は存在すると考えられるものの、実地医療では症例ごとの治療選択において、各臨床病期別での成績が求められる。臨床病期を評価するうえでcT3における不均一性の認識も重要である。現在のT3には胸壁、横隔膜、心嚢などへの浸潤と、腫瘍先進部、無気肺などいくつかのカテゴリーが混在し、予後の不均一性が問題であるので、新たなT3基準が検討されており、UICCのTNM分類も近々に新分類が発表予定である。 メタ解析により総括的な術前化学療法の価値が認められても、次の段階として非小細胞肺がんの病期別・層別化成績、そして最終段階としての個別化医療の選択基準が解明されて初めて臨床に還元できる研究となる。本邦の実地臨床ではI期症例の術前化学療法はごく少数でのみ導入されている。II期でも臨床試験以外で積極的に導入する施設は決して多いものではない。臨床病期をさらに層別化したうえで、術前化学療法の意義を明らかにできる報告の登場が待たれる。

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欧米で普及するハロセラピー COPDに有効か

 ハロセラピーとは、岩塩の洞穴に似せた空洞の中で、塩のエアロゾル(空気中に浮遊する微粒子)を吸入する療法である。最近、この療法がCOPDの症状を改善させる可能性があるという医療報告がある。今回、オーストラリア・ウェスタンシドニー大学のRachael Rashleigh氏らはCOPD治療におけるハロセラピーのエビデンスを評価、要約することを目的に、レビューを行った。International journal of chronic obstructive pulmonary disease誌オンライン版2014年2月21日号の掲載報告。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は慢性かつ進行性の疾患であり、現在、症状(とくに呼吸機能)の改善には吸入による薬物治療が行われている。著者らは、COPD治療におけるハロセラピーのエビデンスを評価、要約することを目的に、系統的なアプローチと叙述的総説によりレビューを行った。対象としたのは、コクラン比較臨床試験登録、PuBMed、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Google Scholarのデータであった。2人のレビュアーが独立して、あらかじめ規定した選択基準を満たしたアブストラクトと研究のレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・データベースやリファレンスから151報が選定され、1つの無作為化比較試験が組み入れ基準を満たしていた。・公表されている研究の数が少ないため、メタアナリシス解析はできなかった。・その後、組み入れ基準を拡大し、3つの症例対象研究が組み入れられたことにより、叙述的総説ができあがった。・4つの研究の蓄積データから、1,041例(661例:治療介入群、380例:対照群)が研究の対象となった。・方法論的な質の評価では、ランダム化と患者選定が問題点としてあげられた。・叙述的総説の結果により、呼吸機能、QOL、薬剤使用の3つのテーマが同定された。 叙述的総説により明らかになった3つのテーマは、COPD患者に対する薬剤介入研究において、定常的に用いられる評価基準でもあった。著者らは「現時点では、COPD治療にハロセラピーを含めるかどうかについては判断することができない。本療法の有効性を検証するために、より質の高い研究が必要である」としている。

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大腸がんスクリーニング、年齢で推奨するのは不適切/BMJ

 大腸がんスクリーニングの実施を年齢ベースで推進することは適切ではないことを、米国・退役軍人(VA)アナーバーヘルスケアシステムのSameer D Saini氏らが、後ろ向きコホート研究の結果、報告した。米国で最大の統合ヘルスケアシステムのVAヘルスケアシステム加入者を対象に行った検討において、75歳以降では実施が顕著に低下しており、75歳で健康に問題がある人では過剰に、76歳で健康な人では過小に行われているなどの状況が示されたという。現在、同システムでは50~75歳でのスクリーニング実施が推奨されており、全米、英国でも同様に広く行われている。しかし、今回の結果を踏まえてSaini氏は、単に年齢ではなく、もっと個々人の臨床的なリスク・ベネフィットに着目した質的指標を開発すべきであると述べている。BMJ誌オンライン版2014年2月26日号掲載の報告より。one size fits allの指標=年齢による推奨が、治療に影響を与えるかを検討 研究グループは本検討において、個別リスクやベネフィットを考慮しない万能型(one size fits all)指標を用いた質的評価が、適切治療または不適切治療の両者に影響を与えるかを調べることを目的とした。具体的に、VAヘルスケアシステムの加入者を対象に、大腸がんスクリーニングに関する質的評価の上限年齢が、過剰または過小なスクリーニング実施と関連しているかを対象者の健康状態を踏まえて評価した。 分析は、2010年度に1回以上プライマリ・ケアを受診した、大腸がんスクリーニングの推奨対象年齢である50歳以上の退役軍人で、前年に便潜血検査を受けていない人、過去5年間でS状結腸鏡検査を受けていない人、過去10年間で内視鏡検査を受けていない人を適格とした。また、定期受診者にフォーカスを当てることを目的に、2010年以前の12~24ヵ月に便潜血検査を受けたが陰性だった人も適格とした。 対象について、受診から24ヵ月以内に内視鏡検査、S状結腸鏡検査、便潜血検査が行われているかを調べた。推奨年齢上限を超えると受検率が約3分の1に 結果、包含/除外基準を満たした39万9,067例(平均年齢67歳、男性97%)のうち、プライマリ・ケア受診から24ヵ月以内に検査が行われていた人は38%いた。 多変量ログ二項回帰分析(Charlson併存疾患指数、性別、プライマリ・ケア受診回数で補正)の結果、スクリーニングは質的評価の上限年齢である75歳以降は、顕著に減少していた(補正後相対リスク:0.35、95%信頼区間[CI]:0.30~0.40)。 一方、75歳で健康に問題があった(余命が限られている可能性、およびスクリーニングがより負荷や有害性をもたらすと思われた)人のほうが、76歳で健康であった人よりもスクリーニングを有意に多く受けていた(補正前相対リスク:1.64、95%CI:1.36~1.97)。 著者は、「本検討により、質的評価の基準は、臨床治療に重要な影響をもたらすことが示された」と述べ、「患者が、それを受けることで年齢に関係なくベネフィットが得られるように、また害を受けそうな患者が不要で高コストの治療を免れることができるように、質的指標は、もっと個人のリスク・ベネフィットに焦点を当てたものでなければならない」とまとめている。

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出生前検査、非侵襲的DNA検査は低リスク妊婦でも優れる/NEJM

 低リスクを含む一般妊婦集団を対象に、出産前DNA検査について、大量並列塩基配列決定法による母体血漿無細胞DNA検査(cfDNA検査)と標準的スクリーニングの検出力を比較検討した結果、同集団でもcfDNA検査群のほうが、21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー(エドワーズ症候群)の偽陽性率は有意に低く、陽性適中率は有意に高いことが明らかにされた。米国・タフツ大学病院のDiana W. Bianchi氏らが、全米14州21施設から登録された妊婦1,914例を対象とした検討の結果、報告した。非侵襲的な出生前検査であるcfDNA検査は、高リスク妊婦においては胎児の常染色体異数性を正確に検出することが知られる。しかし、低リスク妊婦における同検出力については不明であった。NEJM誌2014年2月27日号掲載の報告より。標準スクリーニングと、21、18トリソミーの偽陽性率を比較 検討は2012年7月2日~2013年1月4日にわたり、18歳以上で、標準的な染色体異数性スクリーニング(血清マーカー検査のみ、または併せて項部浮腫測定を実施)が予定されていた単胎妊娠女性を適格として行われた。各血液検体を入手し、盲検下でcfDNA検査を行い、染色体数を確認した。 主要エンドポイントは、標準スクリーニングの結果とcfDNA検査の結果を比較した、胎児の21トリソミーと18トリソミーの偽陽性率だった。出生アウトカムもしくは核型を参照基準とした。cfDNA検査では、異数性の全ケースを検出 主要解析には、適格な血液検体があり、染色体異数性のない単胎児を妊娠しており、cfDNA検査の結果が得られた1,914例の妊婦(平均年齢29.6歳)が含まれた。標準スクリーニングの結果に基づきリスク層別化をして評価した。 結果、cfDNA検査vs.標準スクリーニングの偽陽性率は、21トリソミーは0.3%vs. 3.6%(p<0.001)、18トリソミーについては0.2%vs. 0.6%(p=0.03)で、いずれもcfDNA検査が有意に低かった。 またcfDNA検査を用いた場合、異数性の全ケースが検出できた(21トリソミー5例、18トリソミー2例、13トリソミー1例、陰性適中率100%、95%信頼区間[CI]:99.8~100)。 cfDNA検査vs.標準スクリーニングの陽性適中率は、21トリソミーは45.5%vs. 4.2%、18トリソミーについては40.0%vs. 8.3%だった。

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日本の小学6年生、2人に1人がスギ花粉に感作

 日本の小学1年生220例を6年間追跡し、スギ花粉感作の既往および新規発症について調べた結果、1年生時点で31.4%がスギ花粉への感作を有しており、卒業までに14.5%が発症、未感作であった児童は54.1%であったことが、大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室の金沢 敦子氏らにより報告された。スギ花粉症有病率は15.8%で、スギ花粉感作はハウスダスト感作と強く関連していることなども明らかになったという。Allergology International誌2014年3月号の掲載報告。 日本では1980年代からスギ花粉症が増加している。これまで、小学生においてスギ花粉症IgEの陽性率が増えていること、1992~1994年において中学生の有病率が17.1%であったとの報告はあるが、小学生の有病率および発現率については明らかにされていなかった。 研究グループは、スギ花粉感作およびスギ花粉症発症の予防可能な因子を明らかにすることを目的に、小学生を対象とした6年間の追跡観察研究を行った。1994年~2007年にかけて、毎年5~6月に、血清スギ花粉IgEとハウスダストIgEを測定し、また鼻炎症状の有無について調べた。 主な結果は以下のとおり。・小学生220例(男児49.1%)が、1年生時から6年生時まで毎年、調査を受けた(途中脱落なし)。・1年生時に、69例(31.4%)がスギ花粉IgE陽性(0.70 IU/mL以上)であった。・6年間で、32例(14.5%)にスギ花粉感作が新たに認められ、未感作であったのは119例(54.1%)であった。・スギ花粉IgE値は、高学年になるほど増加したが、ハウスダストIgE値は学年と相関していなかった。・スギ花粉症状の有病率は、6年間で増加するとの傾向は認められなかった(1年生時30%、6年生時40%)。なお、本研究におけるスギ花粉症(症状と感作を有する)児は15.8%であった。・1年生時に、ハウスダストIgE陽性でスギ花粉IgE陰性であった児童(16例)は、6年生までに56%(9例)がスギ花粉感作を発症した。対照的に、1年生時にハウスダストIgE陰性であった児童(135例)では、発症は15%(23例)のみであった。ハウスダストIgE陽性は、2年生以降でのスギ花粉感作の発症に有意な影響を有していた(p=0.001)。・以上を踏まえて著者は、「ハウスダスト特異的感作は、スギ花粉IgE上昇に寄与する、スギ花粉症の主要なリスク因子である。ただし、ハウスダスト感作の発症時期は就学前で、この発症時期により、ハウスダスト感作とスギ花粉感作は見分けられた」とまとめている。

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肩こりは頚椎X線で“みえる”のか

 頚部症状とX線所見との関連についてはいまだ議論が続いているが、弘前大学整形外科の熊谷 玄太郎氏らは地域住民762例を対象とした調査において、その関連を評価した。その結果、男女とも頚椎の矢状面アライメントは頚部症状と関連していないことが示されたが、女性においては頚椎の変性変化と頚部痛強度との関連が有意であったことを報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2014年2月26日の掲載報告。 研究グループは、弘前市岩木地区の住民を対象とした「岩木健康増進プロジェクト」の「プロジェクト健診」の一部として調査を行った。 頚椎のX線撮影を行うとともに、頚部痛や肩こりの強度について視覚的アナログスケール(VAS)を用いて測定した。解析対象には、頚椎外傷や関節リウマチなどの既往歴を有する者は除いた。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、762例であった。・健診当日の肩こりの有病率は、男性より女性が有意に高かった。・健診当日のVAS評価による頚部痛および肩こり、ならびに12ヵ月前の肩こりの強度は、男女間で有意差は認められなかった。・12ヵ月前の頚部痛は、男性より女性で有意に強かった。・男性、女性いずれにおいても頸椎(C2~C7)矢状面アライメントと頚部症状との間に関連はみられなかった。しかし、女性では、年齢補正後に、健診当日ならびに12ヵ月前の変性指数と頚部痛強度(VAS)との間に有意な関連が認められた。・頚椎矢状面アライメントより直線型、前弯型、後弯型に分類すると、頚部痛および肩こりの有病率と強度について各グループ間で有意差はなかった。

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統合失調症治療、家族への介入に効果はあるか

 支援的でポジティブな家族がいることは、統合失調症患者のアウトカムを改善する。一方で、家族が批判的で敵対的あるいは関与が過剰な場合は、アウトカムが不良で再発頻度が高いことが示唆されている。そこで現在、ポジティブ環境を広め、家族間の感情レベルを低減するようデザインされた心理社会的介入が、広く導入されるようになっている。英国・ノッティンガム大学のUzuazomaro Okpokoro氏らは、統合失調症もしくは統合失調症様障害患者の短期的家族介入の効果を評価することを目的にレビューを行った。Cochrane Database Systematic Reviews誌オンライン版2014年3月5日号の掲載報告。 CINAHL、EMBASE、MEDLINE、PsycINFOをベースとするCochrane Schizophrenia Group Trials Registerを2012年7月時点で検索し、さらに選出した試験の参考文献も調べて試験を検索し、著者と連絡して追加情報も得た。適格とした試験は、統合失調症もしくは統合失調症様障害患者の家族に焦点が当てられ、短期的心理社会的介入と標準ケアとの比較に関連していたすべての無作為化試験であった。試験の選択、質的評価およびデータ抽出は厳格に行われた。バイナリアウトカムについて、標準推定リスク比(RR)とその95%信頼区間(CI)を算出。また連続アウトカムについて、グループ間の平均差(MD)とその95%CIを算出し、主要アウトカムやサマリーに記された所見のエビデンスの質をGRADEにて評価した。なお、包含試験のバイアスリスクについても評価した。 主な結果は以下のとおり。・レビューに組み込むことができたのは、4本の無作為化試験、被験者計163例のデータであった。・結果、短期的家族介入が、患者の医療サービスの利用を抑制するかどうかは不明であった。・結果の大半は長期的で不確かなものであり、主要アウトカムとして入院に関するデータを報告していたのは、1試験(30例)のみであった(RR:0.50、95%CI:0.22~1.11、質的エビデンス:非常に低い)。・また再発に関するデータも、中期的で不確かなものであった(1試験・40例、RR:0.50、95%CI:0.10~2.43、質的エビデンス:低い)。・一方で、家族アウトカムに関するデータのうち、家族メンバーの理解が短期的家族介入を有意に支持することを示した(1試験・70例、MD:14.90、95%CI:7.20~22.60、質的エビデンス:非常に低い)。・入院日数、有害事象、服薬コンプライアンス、QOLまたはケアへの満足感、あらゆる経済的アウトカムなどに関するその他のアウトカムデータを報告した試験はみられなかった。・著者は、「今回、データを抽出した試験の規模および質により、顕著なレビュー結果は得られなかった。分析したアウトカムも極小でメタ解析はできなかった。また、サマリー所見におけるすべてのアウトカムの質的エビデンスは、低い(もしくは非常に低い)ものであった」とした。そのうえで、「しかしながら、需要があり、役立つリソースであるとの現状から、短期的家族介入の重要性は完全に退けられるべきではない」と述べ、「短期介入のデザインは大規模試験でより効果的となるよう修正することが可能であり、同時に臨床現場に十分な影響力をもたらす可能性があるだろう」とまとめている。関連医療ニュース この25年間で統合失調症患者の治療や生活環境はどう変わったのか? 複雑な薬物療法レジメン、認知症介護者の負担増加 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始

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血圧長期変動性よりも若年時の血圧が、冠状動脈石灰化スコアに影響を及ぼすことが明らかになる(コメンテーター:石上 友章 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(186)より-

高血圧のもつリスクは、大きく二種類に分けることができる。固有の血圧値に由来するリスクと、変動する血圧値に由来するリスクの2つである1)。 近年、ABPMや家庭血圧計の普及により、高血圧治療の質を高めるために、日内変動や、日間変動といった血圧変動を評価することが勧められている2)。現時点では、それぞれの変動幅の抑制や、改善にどのクラスの降圧薬が有効なのかについては、探索的な研究の結果が報告されている程度にとどまっている3)。将来、降圧薬ではなく、変動性改善薬というような、新規の薬物が有効とされるかもしれないが、今後の研究成果を待たなければならないだろう。 Allenらによる本論文では、CARDIA研究のコホートを対象に、25年という長期間にわたるデータから、若年時の血圧値および、中年期にかけての血圧長期変動性の違いにより、対象が5種類のTrajectoryに分類(five discrete trajectory groups)されることを報告している。 さらに25年の時点での、マルチスライスCTによる冠状動脈石灰化スコアを指標にした解析の結果、観察開始時点で血圧が上昇している(Elevated)グループでは、その後の血圧が安定していても(Stable)、上昇(Increasing)しても、有意に冠状動脈石灰化スコアが高かった。開始時点で中等度の血圧を呈して、25年の間に高値安定群よりも血圧が高値になる、中等値-上昇(Moderate-increasing)群では、石灰化スコアに与える影響は有意ではなかった。このことは、血圧の長期変化よりも、起点となる血圧値が予後に影響を与えていることを示唆している。 冠動脈石灰化スコアという、静的なエンドポイントによる評価であり、プラーク破綻といった生命予後に直結する動的なエンドポイントに与える影響については、改めて検討しなくてはならないだろう。本研究では、交絡する複数のリスクについてModel 1~Model 3の3パターンで検討している。年齢、人種、教育歴、性別、降圧薬の使用、脂質、糖尿病、喫煙、BMI (以上Model 1)、さらには開始時血圧 (Model 2)、25年時血圧 (Model 3)で補正しても、この関係はかわらない。Model 2の解析による結果は、一見すると開始時血圧の重みについて一貫してないようにもみえるが、本論文では他の交絡因子についての詳細なデータの提示がないので、より深く検討することはできない。 今後は、本コホートに由来する続報や、他の報告による結果に期待したい。

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遺跡が出てきた!【Dr. 中島の 新・徒然草】(009)

九の段 遺跡が出てきた!某科長「いくら患者さん優先といっても職員も大切やろ!」某部長「『駐車場が使えん』って、いきなり言われても納得でけんぞ」中島「診療時間だけしか来ない患者さんより、24時間シフトの職員の方がシリアスやないですか?」朝から会議が紛糾したのは、遺跡が出てきたからです。隣が難波宮、斜め向かいが大阪城という当院の性格上、試掘調査で遺跡がひょっこり、というのは十分に予測されたことでした。しかし、現実問題として、本格的な遺跡調査のために駐車場は使用制限、職員は原則として電車通勤、ということになると死活問題です。「こうなったら車を売ってしまうしかない(泣)」という医師まで出てくる始末。私なんぞも自動車通勤組なので被害甚大。とはいえ、文句を言っても無駄なので、「季節の変化を感じながら出勤するのも一興じゃわい」と思いつつ、公共交通機関での通勤経路を算段しております。それにしても、テレビで遺跡発見のニュースを見ても素直に喜ぶ気になれないところではあります。

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アトピー性皮膚炎、自家血療法の効果に迫る

 先行研究において、アトピー性皮膚炎(AD)患者における自家血療法(ABT)の臨床的有効性が無作為化二重盲検プラセボ対照試験によって示されているが、韓国・亜洲大学校のSu-Mi Cho 氏らによる検討の結果、同効果をもたらしている血液成分は、高分子量の血漿蛋白分画に存在する可能性が示唆された。Dermatology誌2014年2月号(オンライン版2013年12月10日号)の掲載報告。 研究グループは本検討において、先行研究で示されたADに対するABTの有効性をもたらした血液成分を明らかにすることを目的とした。また、自家血漿療法(APT)と自家高分子血漿蛋白分画療法(AHPT)の臨床的効果について評価した。 難治性のAD患者について、7週間で計8回の筋注によるAPTもしくはAHPTを行った。投与は、0~3週目の4回は2mL、4~7週目の4回は5mLであった。 主要有効性アウトカムは、ADの臨床的重症度の変化で、SCORAD測定により評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、APT群11例(男性8例、26.6±7.3歳)、AHPT群11例(男性8例、26.5±4.7歳)の計22例であった。SCORAD 50点超の重症AD患者は両群とも10例ずつであった。また、APT群の5例、AHPT群の3例が、試験登録より3ヵ月超前にシクロスポリン療法を受けていた。・結果、AHPT群の治療を完了した患者11例は、SCORADが有意に低下した。ベースライン時79.7±17.0点から、6週時点65.8±16.4点、7週時点60.1±16.0点であった(Wilcoxon signed-rank検定p<0.05)。・一方、APT群で治療を完了した10例は、SCORADの変化は有意ではなかった。ベースライン時74.2±19.6点から、6週時点66.3±23.6点、7週時点67.5±20.8点であった(p>0.05)。・治療反応(臨床的重症度スコアがベースライン時から30%以上減少した患者の割合)については、両群で有意差はみられなかった(p=0.08)。・以上を踏まえて著者は、「本検討において、難治性ADについてAHPTは有意な臨床的改善をもたらすことが示された。このことは、AD患者のABTにおける効果をもたらしている血液成分は高分子量血漿蛋白分画であることを示唆する。さらなる検討により、ABT治療の作用機序を明らかにする必要がある」とまとめている。

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躁病の早期発見・予防は可能となるか

 米国ジャッカー・ヒルサイド病院のChristoph U Correll氏らは、10代後半の思春期躁病の前駆症状について系統的評価を行った。その結果、思春期に双極I型障害(BD-I)を呈した人では、比較的長期にわたり閾値下の躁病や抑うつ的精神病理学的症状を含む、遅発の躁病前駆症状が一般的にみられることを報告した。著者は、「これらの所見は、双極性障害における早期診断と介入が可能であることを示唆するものである」として、躁病発症直前の臨床症状と関連する生物学的マーカーを特定することが、躁病が完全に発症する前の早期の検出および予防の機会を増すことに結びつく可能性があると報告している。Bipolar Disorders誌オンライン版2014年3月5日号の掲載報告。 本検討は、BD-Iの研究診断基準を満たした52例の若者(16.2±2.8歳)を対象に、初発躁病に先行する中等度以上躁病の新規発症/症状悪化/徴候を系統的に評価したものであった。若者や介護者に、双極性障害前駆症状尺度を用いてレトロスペクティブに半構造化インタビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・躁病前駆症状は、大半が思春期(88.5%)に段階的にみられるようになることが報告された。症状は緩徐(59.6%)もしくは急速な(28.8%)悪化を呈するが、一方で、前駆症状が急に発症し悪化することはまれであった(11.5%)。・3つ以上の症状で定義した躁病前駆症状の持続期間は、10.3±14.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.3~14.4ヵ月)であった。被験者の65.4%は4ヵ月以上症状が認められた。・若者の50%以上が前駆症状を報告したが、そのうち3例は実質的に閾値以下の躁病であった(易刺激性:61.5%、観念奔逸:59.6%、気分/活動度の上昇:50.0%)。また2例は非特異的で(学業/仕事機能の低下:65.4%、気分変動/不安定:57.7%)、抑うつが1例(抑うつ気分:53.8%)、閾値下の躁病/鬱病が1例(不注意:51.9%)であった。・“特異的”な閾値下の躁病症状(気分高揚、誇大妄想、睡眠欲求の減少、観念奔逸、性行動過剰など)を有している若者は、その有する数が増えるほど該当者は減少し、持続期間も短縮することが判明した。・すなわち同症状が1以上の若者は84.6%で9.5±14.9ヵ月間(95%CI:5.0~14.0ヵ月)、2以上は48.1%で3.5±3.5ヵ月(同:2.0~4.9ヵ月)、3以上は26.9%で3.0±3.2ヵ月(同:1.0~5.0ヵ月)であった。関連医療ニュース アリピプラゾールは急性躁病治療のファーストラインになりうるか うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける? 双極性障害の自殺予防に求められるのは

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中国で初めて報告された鳥インフルエンザA(H10N8)のヒト感染例―既報のトリ由来H10N8とは異なるタイプと判明―(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(185)より-

鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染し、重症となるケースがあとを絶たない。A型のH5N1やH7N9がその代表であり、H7N9は2014年1月27日までに既に中国で250例が報告され、うち70例が死亡している。 一方H10N8は、これまで北米、欧州、アジア、オーストラリアなど広い範囲で、主にカモから分離されていたものの、ヒトへの感染例はなかった。しかしながら2013年11月、中国江西省南昌市で最初の感染例が報告された。さらに、患者から分離されたH10N8は既報の鳥由来ウイルスとは異なる、新たな再集合体であることが判明した。 患者は73歳女性で、高血圧、冠動脈疾患、重症筋無力症の既往があり、11月27日(Day 0とする)から咳嗽および呼吸困難を訴え、30日(Day 3)に南昌市の病院に入院した。入院時は38.6℃の発熱を来たしており、翌31日に撮影したCTでは右下葉と左下葉にコンソリゼーションが認められた。細菌性肺炎に対する治療を行ったが、呼吸不全が進行し、12月2日にはICUに入室した。両側性の胸水とスリガラス状陰影の急速な悪化を来たし、オセルタミビル(12月3日開始)、グルココルチコイド、アルブミンの投与を行うも、重症肺炎と敗血症性ショックおよび多臓器不全を呈し、6日(Day 9)に死亡した。 検査所見上、白血球数は入院翌日(Day 4)で10,340/μLであり、好中球数は76.4%、リンパ球数は7.0%であった。リンパ球数はその後もずっと正常範囲以下であった。CRPはDay 4ですでに高値であり、またDay 4に正常範囲内にあったクレアチニン、BUN、AST、ALP、総蛋白、アルブミンはDay 7にはすべて異常値を示した。トランスサイレチンはDay 4以降すべての時点で低下していた。 本患者からDay 7とDay 9に採取した気管内吸引物からH10N8ウイルスが分離された。また痰・血液培養と吸引物のdeep sequencingの結果、細菌や真菌の同時感染は示されず、気管内でH10N8が極めて優位であったことが判明した。さらに本ウイルスのHA蛋白に対する血清抗体を測定したところ、Day 5からDay 9で上昇したことも明らかになった。病理解剖の同意は得られなかったが、H10N8による肺炎と呼吸不全、死亡と判断された。 一方、ウイルス遺伝子はすべて鳥由来で、HA、NA以外の6つの内部遺伝子は中国の家禽で流行しているH9N2に最も近縁であった(注:中国でかつて分離されたH5N1ウイルスもH9N2由来の内部遺伝子を有していた)。さらに既報の鳥・環境由来のH10N8とも異なっており、新たな再集合体のH10N8が初めてヒトに感染したと結論付けられた。さらに本症例のH10N8はその塩基配列により、家禽への病原性は低いが、哺乳類の細胞に親和性を持っていること、経過中に哺乳類への病原性が高まる変異(PB2のGlu627Lys)を獲得したこと、ノイラミニダーゼ阻害薬に感受性を示すことも判明した。 また患者は発症4日前に家禽市場を訪れており、これが感染の契機になった可能性があるが、患者に接触した者の中で、発症者、ウイルス陽性者、抗体陽性者はいずれも見つかっていない。 さらに2014年1月26日、南昌市の55歳女性がH10N8に罹患し重体となったこと、また2月までに江西で1名が感染し、死亡したことも判明した。このため現時点(3月13日)で感染者は3名、うち死亡者が2名となっている。 著者らは、「1997年に香港で最初の死亡例が報告された鳥インフルエンザH5N1の感染では、その後6ヵ月間で17例の死亡を報告した。新規のH10N8ウイルスのパンデミックの可能性が過小評価されてはならない」とまとめている。ヒトへの病原性、伝播性、ウイルスの出現・再集合のメカニズムはもちろんのこと、ヒトの感染例が今後増加するのか、どの程度家禽で流行しているのかについてもまだ全く見通しが立たない1)。 H5N1による上記の報告から15年以上が経過した現在でも、科学的な根拠を持って本ウイルスの特徴を明らかにするには、今後長い時間が必要である。

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