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Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸と心血管イベント 臨床的側面からその意義を考える

木島 康文 氏岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 循環器内科学はじめに動脈硬化プラークに蓄積しているのはコレステロールである。コレステロールの中でも特に低比重リポ蛋白コレステロール(low density lipoprotein cholesterol:LDL-C)と心血管疾患との関連性については広く認知されており、それに対して、スタチンの投与は、心血管イベントの1次予防、2次予防、ハイリスク群に対する投与のいずれにおいても20~30%の相対リスク減少をもたらす1)。では、これで十分かといえば、残りの70%を超える症例がスタチンを投与されているにもかかわらず、心血管イベントを起こしていることになる。すなわち、スタチン単独療法には限界があることを示しており、近年“残余リスク”として注目されている。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』では心血管リスク因子がない患者群に対して、リスクの高い患者群ではより低いLDL-Cの目標値が設定されている。これはLDL-Cの“質”がリスク因子の影響を受けることを意味している。つまり、これからは心血管リスク因子としての脂質においてはLDL-Cの量とともにリポ蛋白の“質”により注目すべきといえる。リポ蛋白の“質”に影響を及ぼす残余リスクに、多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid:PUFA)のバランス異常がある。具体的には、アラキドン酸(arachidonic acid:AA)に対するエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid:EPA)の相対的低下に代表される、オメガ6系PUFAとオメガ3系PUFAのバランス異常である。オメガ3系PUFAの代表的なものとして魚介由来のEPAやドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid:DHA)と植物由来のα-リノレン酸(alpha-linolenic acid:ALA)がある。これらオメガ3系PUFAには中性脂肪低下作用だけでなく、血小板凝集抑制作用、抗炎症作用、プラーク安定化作用、抗不整脈作用、自律神経調節作用などの多面的効果を有し、これらの効果を介し心血管系に保護的に働くと考えられる。本稿ではオメガ3系PUFAと心血管イベントとの関係について臨床的側面を中心に述べる。オメガ3系PUFAと心血管イベントの関係:その根拠は?オメガ3系脂肪酸の最初のエビデンスは疫学調査によるものである。1970年代に、デンマーク領グリーンランドのイヌイットでは、デンマークの白人に比し、心筋梗塞・狭心症による死亡率が有意に低いことが報告された(白人34.7% vs. イヌイット5.3%)2)。食事内容を比較すると、総摂取エネルギーに対する脂肪の割合はいずれも約40%であったが、白人は主に牛や豚から、イヌイットは主に魚や(魚を大量に摂取する)アザラシから脂肪を摂取していた3)。また、血清コレステロールエステル中にイヌイットではEPAが15.4%存在し、AAが0%であったのに対し、白人ではそれぞれ0%、4.4%と著しい差を認めた。これにより、虚血性心疾患による死亡には脂肪の“質”が関与していることが示唆され、オメガ3系PUFAの心血管イベント抑制効果が注目されることとなった。1985年に、オランダの50~69歳男性852人を20年間追跡し、30g/日以上の魚介を食べる人はまったく食べない人と比べて虚血性心疾患による死亡が約半分であったことが報告された4)。その後、アメリカの40~55歳の健常男性を追跡調査した結果では、35g/日以上の魚介類摂取を行っている場合には心筋梗塞による死亡の相対危険率は0.56で、冠動脈疾患全体では0.62と、魚介類摂取による死亡抑制効果が認められた5)。また、アメリカのPhysicians' Health Studyにおいて、40~80歳までの医師20,551人を対象として最長17年間追跡調査した報告では、週1回以上の魚介類摂取習慣と心臓突然死との関連性が認められた。そして、実際の血清サンプル脂肪酸解析から突然死群のオメガ3系PUFAが対照群と比べて有意に低値であることも報告された6)。そのほかにも、イギリスにおける心筋梗塞後患者の追跡比較試験では、魚介類摂取指導がある群ではない群と比較して総死亡、虚血性心疾患死が有意に少なくなっていたことも報告されている7)。一方、日本人の冠動脈疾患の発症率は欧米に比し低いものの、近年その増加が指摘されている。国民1人当たりの魚介類消費量と男性における冠動脈疾患による死亡率を国別に比較すると、魚介類消費量と冠動脈疾患死の間には明らかな負の相関が認められる。欧米に比べて日本人の魚介類の摂取量は多く、冠動脈疾患の死亡率は低い。このことより、魚介類の摂取量が多いから日本人は冠動脈疾患が少ないものと考えられてきた。近年、日本人が摂取する脂肪の割合は増加しており、増加した脂肪の多くがオメガ6系PUFAに属する動物性油や植物性油である。それに対し、魚介由来のオメガ3系PUFAの摂取量は低下してきている。つまり、本邦における脂肪酸摂取の“質”は近年変わりつつあるといえる。本邦における総脂肪に対するEPAの推定比と脳梗塞あるいは虚血性心疾患による死亡率の経年的変化をみると、1950年代から総脂肪に対するEPAの推定比が低下するとともに、脳梗塞あるいは虚血性心疾患による死亡が増加している8)。これは、オメガ3系PUFAの摂取の減少が動脈硬化性疾患の増加に関与していることを示唆する所見と考えられる。実際に本邦のJapan Public Health Center-Based(JPHC)Study CohortⅠでは、40~59歳までの一般人41,578人を対象として約11年間の追跡調査を行っているが、魚介摂取量に準じて分割された5つの集団において、最も摂取量の多い群では最も少ない群に比べて冠動脈疾患のリスクが37%、心筋梗塞のリスクが56%低値であったと報告された(本誌p.10図を参照)9)。オメガ3系PUFAによる心血管イベントの抑制効果:その効果は?オメガ3系PUFAによる大規模な介入研究としては、これまで2つの報告がなされている。イタリアのGISSI-Prevenzione Trialでは、3か月以内に心筋梗塞に罹患した男性11,324人を対象とし、1g/日のオメガ3系PUFA(EPA+DHA)摂取群、ビタミンE摂取群、両者の摂取群、対照群の4群に分けて約3.5年間追跡調査したところ、オメガ3系PUFA摂取群では対照群に比べ、心血管死亡が30%、総死亡が20%の相対的低下を認め、併用群でも同様であったことが報告された10)。その後の再解析で、オメガ3系PUFAの総死亡や突然死、心血管死の抑制効果が比較的早期から認められる可能性が報告された(本誌p.11図aを参照)11)。一方本邦では、1996年から日本人の高脂血症患者における高純度EPA製剤による冠動脈イベントの発生抑制効果を検討するため、世界初の大規模無作為比較試験JELIS (Japan EPA Lipid Intervention Study)が実施された。JELISでは、高コレステロール患者18,654例(総コレステロール≧250mg/dL、男性:40~75歳、女性:閉経後~75歳)を対象に、スタチン単独投与群(対照群)とスタチンに高純度EPA製剤1.8g/日を追加投与した群(EPA群)で、約5年間、主要冠動脈イベントの発症を比較検討した。その結果、EPA群では対照群と比較して、主要冠動脈イベントが19%抑制され、特に2次予防における抑制効果が認められた(本誌p.11図bを参照)12)。次に、JELISの1次予防サブ解析の結果によると、中性脂肪(triglyceride:TG)≧150mg/dLかつ高比重リポ蛋白コレステロール(high density lipoprotein cholesterol:HDL-C)<40mg/dLの高リスク群では、正常群に比し主要冠動脈イベント発症は有意に高く、この患者群では、EPAの追加投与により主要冠動脈イベント発症が53%抑制された(本誌p.12図aを参照)13)。2次予防のサブ解析では、心筋梗塞の既往かつ冠動脈インターベンション施行例では、EPA群において主要冠動脈イベント発症が41%抑制されることが報告され14)、この患者群における高純度EPA製剤の積極的投与を支持する結果であった。ほかにも、サブ解析の結果、脳梗塞再発予防や末梢動脈疾患の冠動脈イベント予防に有効であることが示されている15, 16)。オメガ3系PUFAを臨床に生かす:その対象は?オメガ3系PUFAが心血管イベントに対する抑制効果を有することはわかってきたといえるが、それではどのような患者群で強い抑制効果が見込めるのだろうか?EPA/AA比を指標として、オメガ3系PUFAが不足している患者に投与しようと考えるのは妥当なことといえる。JELIS脂肪酸サブ解析で、EPA/AA比をもとに冠動脈イベント発生リスクを検討した結果では、EPA/AA比が0.5以上の高値群では低値群に比べて冠動脈イベントリスクに有意差を認めなかった。これに対して、0.75以上の高値群では低値群に比べ冠動脈イベントリスクに有意差が認められた17)。このことから、EPA/AA比0.75以上の維持が心血管イベント抑制につながる可能性が示唆されたといえる。また、JELISの1次予防サブ解析では、高TGおよび低HDL-C群でその他の群に比べイベント発生率が高いことが明らかとなった。そして、この群においてEPAの冠動脈イベントの抑制効果が強く現れていた(本誌p.12図aを参照)。また、このJELISの糖代謝異常に注目したサブ解析でも、糖代謝異常を有する患者群では血糖の正常患者群に比べて冠動脈イベント発生率が高かった。また、この糖代謝異常群においては、HbA1c値やLDL-C値によらず、EPA群のイベント発生リスクが対照群に比べて22%抑制されたことも報告された(本誌p.12図bを参照)18)。つまり、これらはdiabetic dyslipidemiaとも称されるインスリン抵抗性を基盤とした脂質異常をきたしている患者群が、EPA投与のよい適応となる可能性を示しているともいえる。オメガ3系PUFAは各ガイドラインに記載もあるが、高リスク症例の心血管イベントの抑制に有用であるとされている。つまりは、LDL-Cの量を十分に低下させてもイベントを抑制できないような残余リスクが問題となる高リスク症例に対して、リポ蛋白の“質”を改善することでイベント抑制効果がより顕著に発揮されるといえるのではないだろうか。おわりに魚介類摂取およびオメガ3系PUFAと心血管イベントとの関連性についてはほぼ確立されているものの、日本人が伝統的に欧米人と比べ魚介摂取量が多いことを考慮すると、欧米の研究結果をそのまま日本人にあてはめることには抵抗を感じる方も少なくないだろう。JELISは、欧米人よりも一般的にEPA/AA比が高い日本人においてもオメガ3系PUFAが心血管イベントをさらに抑制する可能性を示したといえる。メタボリックシンドロームの増加などが進む本邦において、diabetic dyslipidemiaの増加は今後も予想されている。若者の魚離れが重なることで、脂肪酸の“質”の根幹をなす魚介由来のオメガ3系PUFAの重要性は日本人においてもさらに増し、循環器領域の臨床に携わる医師にとってこの領域の知識は必須となるものと考えられる。不整脈や心不全などオメガ3系PUFAとの関連性が議論されている循環器領域も含めて、今後さらなるエビデンスの確立が期待される。文献1)Alagona P. Beyond LDL cholesterol: the role of elevated triglycerides and low HDL cholesterol in residual CVD risk remaining after statin therapy. Am J Manag Care 2009; 15: S65-73.2)Dyerberg J et al. A hypothesis on the development of acute myocardial infarction in Greenlanders. Scand J Clin Lab Invest Suppl 1982; 161: 7–13.3)Bang HO et al. The composition of the Eskimo food in north western Greenland. Am J Clin Nutr 1980; 33: 785-807.4)Kromhout D et al. The inverse relation between fish consumption and 20-year mortality from coronary heart disease. N Engl J Med 1985; 312:1205-1209.5)Daviglus ML et al. Fish consumption and the 30 year risk of fatal myocardial infarction. N Engl J Med 1997; 336: 1046-1053.6)Albert CM et al. Blood levels of long-chain n-3 fatty acids and the risk of sudden death. N Engl J Med 2002; 346: 1113-1118.7)Burr ML et al. Effects of changes in fat, fish, and fibre intakes on death and myocardial reinfarction: diet and reinfarction trial (DART). Lancet 1989; 2: 757-761.8)厚生統計協会: 国民衛生の動向, 厚生の指標. 1989; 36: 48.9)Iso H et al. Intake of fish and n3 fatty acids and risk of coronary heart disease among Japanese:the Japan Public Health Center-Based (JPHC)Study CohortⅠ. Circulation 2006; 113: 195-202.10)GISSI-Prevenzione Investigators. Dietary supplementation with n-3 polyunsaturated fatty acids and vitamin E after myocardial infarction:results of the GISSI-Prevenzione trial. Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Infarto miocardico. Lancet 1999; 354: 447-455.11)Marchioli R et al. Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per Io Studio della Sopravvivenza nell’Infarto Miocardico (GISSI) -Prevenzione. Circulation 2002; 105: 1897-1903.12)Yokoyama M et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomized open-label, blinded endpoint analysis. Lancet 2007; 369: 1090-1098.13)Saito Y et al. Effects of EPA on coronary artery disease in hypercholesterolemic patients with multiple risk factors: sub-analysis of primary prevention cases from the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS). Atherosclerosis 2008;200: 135-140.14)Matsuzaki M et al. Incremental effects of eicosapentaenoic acid on cardiovascular events in statin-treated patients with coronary artery disease. Circ J 2009; 73: 1283-1290.15)Tanaka K et al. Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients: subanalysis of the JELIS trial. Stroke 2008; 39: 2052-2058.16)Ishikawa Y et al. Preventive ef fects of eicosapentaenoic acid on coronary artery disease in patients with peripheral artery disease. Circ J 2010; 74: 1451-1457.17)Itakura H et al. Relationships between plasma fatty acid composition and coronary artery disease. J Atheroscler Thromb 2011; 18: 99-107.18)Oikawa S et al. Suppressive effect of EPA on the incidence of coronary events in hypercholesterolemia with impaired glucose metabolism: Sub-analysis of the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS). Atherosclerosis 2009; 206: 535-539.

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51)糖尿病予防でできること、5つ!【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者(肥満の患者から)親が糖尿病なので心配です・・・どんなことをしたら、糖尿病になるのを防げますか? 医師糖尿病を予防するには、5つのポイントがあります。 患者それは何ですか?(興味津々) 医師まずは、体重を減らすことですね。Aさんは80kgですので、5%減、つまり4kg減が第一目標になります。 患者なるほど。4kgですか、理想体重や20歳くらいの体重まで戻さなくても大丈夫なのですね。他にはどんなことに気をつけたらいいですか? 医師次は運動ですね。 患者やっぱり、運動ですか。今、なかなかできていないです。他には? 医師油ものや菓子パンなど脂肪分を減らす、たっぷり野菜をとる、そしてお酒を飲みすぎないことです。 患者なるほど。頑張ってやってみます。●ポイント糖尿病予防のための5つのポイントについて、わかりやすく説明します 1) Tuomilehto J, et al. N Engl J Med. 2001; 344: 1343-1350.

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出血性脳卒中、日本は欧米の2倍

 秋田県立脳血管研究センターの鈴木 一夫氏らは、秋田県脳卒中発症登録における1995年~2004年の新規発症例(2万8,781例)の脳画像を評価し、日本における出血性脳卒中の割合は欧米諸国の約2倍であることを報告した。Neurological sciences誌オンライン版2014年8月10日号に掲載。 対象症例を脳画像により脳梗塞(1万8,018例、62.6%)、脳出血(7,423例、25.8%)、クモ膜下出血(3,340例、11.6%)の3つに分類した。脳梗塞および脳出血はそれぞれ病変領域で分類し、クモ膜下出血は破裂動脈瘤の場所により3つに分類した。 主な結果は以下のとおり。・日本における出血性脳卒中の割合は37.4%であり、欧米諸国の約2倍であった。・脳梗塞のうち、ラクナ梗塞が5,437例(30.2%)、皮質梗塞が6,121例(34.0%)、テント下梗塞が2,703例(15.0%)であった。・脳出血のうち、被殻出血が1,379例(18.6%)、視床出血が2,251例(30.3%)、皮質下出血が1,204例(16.2%)であった。・破裂脳動脈瘤の場所は性別により異なり、女性では内頸動脈の割合が最も高く(40.8%)、男性では前交通動脈の割合が最も高かった(46.8%)。

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本当にナッツが血糖改善するか?

ナッツ類が血糖値にもたらす影響を検討した試験はあるものの、ナッツ消費と糖尿病リスクの関連についてメタ解析は行われていなかった。そこで、2型糖尿病患者を対象にランダム化比較試験のメタ解析を行ったところ、ナッツ類は糖尿病患者のHbA1cを有意に低下させることが示された。方法:DM患者が対象の12のランダム化試験を抽出●対象試験:MEDLINE、EMBASE、CINAHL、コクランより抽出した12試験(n=450)(2014年4月6日時点まで)●データ抽出条件:・ナッツ類※を基調とした食事(含有中央値:56g/日)と等カロリーのナッツなしの食事の比較・糖尿病患者を対象に行われた3週間以上のランダム化比較試験 ・HbA1c、空腹時血糖値、空腹時インスリン値、HOMA-IRの評価あり※ナッツ類:アーモンド、ブラジルナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ピーカン、松の実、ピスタチオ、クルミ結果:ナッツ食で血糖値低下● ナッツ類を基調とした食事で下記指標の有意な低下が認められた。・HbA1c: 平均差  -0.07%(95% CI:-0.10、-0.03%)、p = 0.0003・空腹時血糖値: 平均差 -0.15 mmol/L(95%CI:-0.27、-0.02 mmol/L)、p = 0.03※ナッツ食群 vs コントロール群●空腹時インスリン値、HOMA-IRはナッツ類での好影響が示されたが、有意差は認められなかった。考察:長期の検討が求められる地中海食やDASH食などナッツ類を含む食生活は、2型糖尿病にも好影響をもたらすことが明らかになっている。著者は今回のメタ解析の結果から、2型糖尿病患者の食事療法にナッツ類を取り入れることを支持している。ただし、過去実施された試験の多くは短期間かつ限定的であり、今後は、長期の、より質の高い検討が求められる。

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乾癬治療へのセチリジン追加投与は有効か

 フマル酸エステル(FAE)治療を受ける乾癬患者への、経口抗ヒスタミン薬セチリジン(同:ジルテックほか)10mgの1日1回投与の追加は、治療開始12週間の有害事象を減少しなかったことが報告された。オランダ・エラスムス大学医療センターのD.M.W. Balak氏らが無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。FAEは乾癬の有効かつ安全な長期治療薬とみなされているが、30~40%の患者が耐え難い胃腸障害や潮紅などの有害事象のために服用を中断している。今回の結果を踏まえて著者は、「FAEが引き起こす胃腸障害や潮紅の発症機序には、ヒスタミン以外のメディエーターが関与していると思われる」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2014年7月17日号の掲載報告。 試験は、PASI 10以上の乾癬患者でFAE 720mg/日の治療を開始した患者を、無作為に、セチリジン1日1回10mg群とプラセボ群に割り付け、12週間投与した。無作為化と治療割付は試験病院の院内薬局で行われた。 主要アウトカムは、有害事象の発生と治療を中断した患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・50例の患者(男性33例、女性17例、年齢中央値44歳)が登録され、1対1の割合で各群に割り付けられた。・セチリジンの追加投与は、プラセボと比較して、有害事象を減少しなかった(84%vs. 84%、p=1.00)。・有害事象のタイプは、両群で異ならなかった。また、最も共通してみられたのは、胃腸障害(68%vs. 64%)、潮紅(60%vs. 48%)であった。・治療を中止した患者の割合も統計的有意差はみられなかった(24%vs. 32%、p=0.529)。

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新規抗てんかん薬の催奇形性リスクは

 新規抗てんかん薬(とくに、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート)の催奇形性リスクを評価するため、オーストラリア・メルボルン大学のF J E Vajda氏らは検討を行った。Acta neurologica Scandinavica誌オンライン版2014年7月18日号の報告。 胎児の催奇形性リスクは、妊娠初期の妊婦における抗てんかん薬曝露群(1,572例)と非曝露群(153例)で比較した。信頼区間は回帰法を用いて検討を行った。新規抗てんかん薬の催奇形性リスクを分析 新規抗てんかん薬による催奇形性リスクの主な分析結果は以下のとおり。・妊娠初期に治療を受けていなかったてんかん女性における胎児の催奇形性率(3.3%)と比較して、新規抗てんかん薬の曝露群ではラモトリギン4.6%、レベチラセタム2.4%、トピラマート2.4%(いずれも単剤投与)と、統計学的な有意差は認められなかった。・ただし、トピラマート併用投与の一部で14.1%、バルプロ酸単剤投与13.8%、バルプロ酸併用投与10.2%であり、いずれも統計学的に有意に高かった。・新規抗てんかん薬の単剤投与と併用投与のデータを合わせた回帰分析では、ラモトリギンとレベチラセタムは、催奇形性リスクの有意な増加は認められなかった。しかし、妊娠初期のトピラマート(p=0.01)およびバルプロ酸(p<0.0001)では、催奇形性リスクは統計学的に有意であり、かつ用量依存的であった。

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リーダーが病院を変える~変革者たちの軌跡と挑戦~ メディカルコーチング研究会・総会開催

7月19日、東京大学(東京都文京区)においてメディカルコーチング研究会・総会が開催され、全国から200人を超える医師、医療関係者が参集した。今回は「リーダーが病院を変える~変革者たちの軌跡と挑戦~」をテーマに、メディカルコーチングを導入している医療機関より5人の演者がコーチング導入とその効果を講演した。●開会挨拶はじめにメディカルコーチング研究会 世話人代表である安藤 潔氏(東海大学医学部 血液・腫瘍内科 教授)が登壇。メディカルコーチングが対患者、対部下のものから、医療機関全体に広がっている現状について触れ、「医療が高度化、複雑化する中で、医療機関やその組織風土の在り方が問われている。組織を変えるとき、つくるときに必要となるシステミック・コーチングについて今日は実際にコーチングを取り入れている3つの組織の具体的な事例を聞くことで役立ててもらいたい」と開会挨拶を行った。■事例-海老名総合病院 (神奈川県海老名市)講演1●「変える? いや、『変わる』でした」内山 喜一郎氏(JMA海老名総合病院 院長)恩田氏が、メディカルコーチングを受講したきっかけは、院長の内山氏にステークホルダー(リーダーからコーチングを受ける人)に指名されたこと。プロジェクト参加のうえでは「考えて行動する組織づくり」を目指したという恩田氏は、部下を信頼し仕事を任せ、新しい気付きを生む質問の投げかけを心がけるとともに、目標づくりをサポートし、達成できるように行動したことなどの実体験を語った。コーチングを行っていく工夫として、失敗したらその要因分析と次への方策をステークホルダーと対話すること、部下の失敗には信頼と忍耐で見守るスタンスを取り、相手の限界を引き上げるように接していくことがカギとコーチングのコツを伝えた。メディカルコーチングの受講を経て、コミュニケーションのやり方を変えただけでリーダーとして変容し、目標達成ができるようになったと語り、「一番自分が成長させてもらった体験だった」と感想を述べた。■事例-東北大学病院 (宮城県仙台市)講演3●「高度専門医療チーム活性化におけるコーチングの活用~東北大学病院での取組み~」出江 紳一氏(東北大学大学院 医工学研究科 リハビリテーション医工学分野 教授)演者による講演終了後、質疑応答となり活発な議論が行われた。最後に世話人代表の安藤氏が、「医療機関へのコーチングの導入とその実際について、今日は示唆に富んだお話を聞くことができた。とくにコーチング効果のエビデンスについては、今後も検証し、導入時に吟味できるようにする必要がある。今日の経験を持ち帰り、役立てていただきたい」と閉会の挨拶を述べた。インデックスページへ戻る

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【寄稿】難治性GERDの治療

はじめに胃食道逆流症(GERD)は、食道裂孔ヘルニアや食道胃運動機能障害により、胃酸を含んだ胃内容物が食道内に逆流停滞するために発症する疾患であり、定型症状は胸やけ、呑酸である。食道にびらん・粘膜障害があれば、びらん性GERD(逆流性食道炎)、食道にびらんが認められない場合は、非びらん性胃食道逆流症(NERD)と定義される。GERDに対する治療の中心は薬物療法であり、強力な酸分泌抑制力を持つプロトンポンプ阻害薬(PPI)が、GERDの第一選択薬としてGERD診療ガイドラインで推奨されている。PPIの治療効果は非常に高く、PPI投与後8週間の時点での逆流性食道炎の治癒率は、80~90%と報告されている。しかし8週間のPPI投与でも治癒が得られない逆流性食道炎も存在し、このような難治性の逆流性食道炎が臨床上問題となっている。また、NERD患者においても、PPI投与にてGERD症状のコントロールが困難なケースが多く存在する。本稿では、難治性GERDの要因について考察を加え、治療法を含めて概説する。CYP2C19遺伝子多型GERDの難治化の要因の1つとしてまず考慮しなければならないのは、CYP2C19遺伝子多型の問題である。PPIは主に肝の代謝酵素CYP2C19で代謝を受ける。このCYP2C19には遺伝子多型が存在することが報告されており、その酵素活性が遺伝子型により異なり、代謝活性の高い順にhomo extensive metabolizer(EM)、hetero EM、poor metabolizer(PM)の3群に分類されている。すなわち、PPIの酸分泌抑制効果は、代謝の遅いPMでは強く、代謝の早いhomo EMでは弱くなることが推察され、実際に24時間胃内pHモニタリングの結果から、このことが証明されている。このCYP2C19遺伝子多型のばらつきは、欧米白人に比較して日本人で大きいことが明らかになっており、実際の逆流性食道炎患者の検討で、homo EMではPMに比較して初期治療における治癒率が有意に低く(図1)、維持療法においてもhomo EMのほうが有意に再発しやすいこと(図2)が報告されている。すなわち、逆流性食道炎の難治化の要因の1つとしてPPI投与時のCYP2C19遺伝子多型の影響が挙げられる。しかしながら、CYP2C19遺伝子多型の判定が保険診療で認められているわけではないので、日常臨床においては逆流性食道炎が難治の場合に、CYP2C19遺伝子多型の影響を受けにくいPPI(ラベプラゾールやエソメプラゾール)への変更を考慮するといった対応を行うのが現実的である。図を拡大する図を拡大するPPI製剤の特徴GERDの難治化のもう1つの要因としてPPI製剤の特徴が挙げられる。PPIは酸と接触すると失活してしまう特性があり、PPIはすべて腸溶製剤となっている。よって、PPIの作用発現には、薬剤が速やかに胃を通過して小腸に達する必要がある。逆に言うと、潰瘍瘢痕などによる胃の変形や幽門部狭窄などのために胃排出遅延がある症例では、PPIが胃内に長時間停滞するために失活してしまい、その酸分泌抑制効果が減弱する可能性が容易に想像される。このような症例の場合、逆流性食道炎が難治となることをしばしば経験する。この場合は、PPI注射剤の投与のほか、PPIをH2受容体拮抗薬(H2RA)に変更、もしくはPPIの剤形を錠剤から顆粒や細粒製剤に変更してみるのも1つの方法である。GERD診療ガイドラインでは、常用量のPPIの1日1回投与にもかかわらず食道炎が治癒しない、もしくは強い症状を訴える場合には、PPIの倍量投与など、投与量・投与方法の変更により、食道炎治癒および症状消失が得られる場合があると記載されている。すなわち、標準量のPPI治療に反応しない患者でも、PPI倍量投与により食道炎治癒および症状消失が得られるとする報告がみられ、常用量のPPIの1日1回投与でGERDに対する十分なコントロールが得られない場合の対応として推奨されている。また、倍量投与の際に、朝・夕と分割投与したほうが、酸分泌抑制効果が高いとの報告があり、分割投与を考慮するのも1つの方法である。さらに、PPIは、食事により活性化するプロトンポンプを阻害するという作用機序、酸性環境のほうが酸分泌抑制効果が強いこと、錠剤の場合は空腹時強収縮により胃より小腸に速やかに薬剤が移行し効果が出現することから、PPIは食前投与のほうが、その酸分泌抑制効果が速やかに発現する。わが国の場合、ほかの薬剤と一緒にPPIを内服することを考慮し、食後にPPIを投与することも多いが、難治性GERDの場合は、食前投与にて症状が良好にコントロールされることをしばしば経験する。nocturnal gastric acid breakthroughさらに、GERDの難治化の要因の1つとして、PPI投与中にもかかわらず夜間の酸分泌が抑制されない例の存在が指摘されている。これはnocturnal gastric acid breakthrough(NAB)と呼ばれるもので、PPI投与中にもかかわらず夜間の胃内pHが4.0以下になる時間が1時間以上連続して認められる現象である。このNABに対して就寝前にH2RAを追加投与することにより、夜間の酸分泌が抑制されることが報告されており、PPIで効果不十分な難治性GERD患者の治療として選択されることがある。NERD、機能性胸やけびらん性GERDよりNERDにおいて、PPIの症状改善率が低い傾向にあることが報告されている。このことは、NERD患者では酸以外の逆流要因がある症例が多く含まれている可能性を示唆している。このような場合、消化管運動賦活薬投与が有効な場合がある。また、逆流と関連のない胸やけ症状は、機能性胸やけ(functional heartburn:FH)とされ、精神的な要因と判断されれば、抗うつ薬の投与などを検討することもある。機能性消化管粘膜障害(functional gastrointestinal disorders:FGID)の研究グループであるRome委員会が提唱するRome IIIによる定義では、FHは、食道内酸逆流が証明できず、病理組織学的に確認しうる食道粘膜障害がないこと、そしていわゆる「胸やけ」症状のあること、なおかつ、この症状が6ヵ月以上前から慢性的に出現していること、とされている。FHの診断にあたっては、除外診断を行う必要がある。すなわち、(1)食道内pHモニタリング検査で食道内への明らかな酸逆流のあるもの、(2)pHモニタリング検査で酸逆流と自覚症状の発現との間に関連がみられるもの、(3)PPI投与で症状改善があるもの―は、NERDと診断されるので、それ以外をFHと診断することができる。日常臨床では、PPI投与で症状が改善するものをNERD、PPI投与による症状改善がないものをFHと診断することも多いが、PPI投与により症状が改善しないNERDはPPI抵抗性NERDとしても扱われており、PPI抵抗性NERDのなかにFHと診断するべき病態が含まれていることを認識する必要がある。近年、pH測定に加えて多チャンネルの食道内インピーダンスを測定することにより、胃酸以外の逆流を評価することが可能となってきた。とくにPPI抵抗性NERDの診断には、pHモニタリング検査による胃酸逆流の評価のみでは不十分である。すなわち、現在は保険適用にはなっていないものの、多チャンネルインピーダンス・pHモニタリング検査を施行し、逆流と胸やけ症状の関連性を検討することにより、PPI抵抗性NERDとFHを鑑別することが可能となる。難治性NERDの場合は、病態をきちんと診断し、適切な治療法を選択する必要がある。外科的治療難治性GERDの場合、外科手術の選択も積極的に考慮してよいと思われる。外科的治療が有効だった症例を提示する(図3)。PPI投与にて逆流性食道炎は治癒するも、著明な食道裂孔ヘルニアのために、前かがみになると食物が口まで逆流してきてしまうという症例であるが、腹腔鏡下噴門形成術を施行し、食道裂孔ヘルニアが改善しGERD症状が消失した。図を拡大する内視鏡的バルーン拡張重度の逆流性食道炎の場合、食道狭窄を来すことがあるが、内視鏡的バルーン拡張術が有効なこともある。図4に症例を提示する。図を拡大する難治性GERDと鑑別すべき疾患難治性GERDと診断されている症例のなかで、実際はGERDではないにもかかわらず、漫然とPPI投与が継続されている症例にしばしば遭遇する。難治性GERDと鑑別すべき疾患をきちんと認識しておくことは、臨床上きわめて重要である。1)食道運動異常食道には、食道アカラシア、びまん性食道痙攣(diffuse esophageal spasm:DES)、ナッツクラッカー食道(nutcracker esophagus)などの機能性疾患が存在し、GERDとの鑑別が必要となる。これらの疾患のいずれも、その治療に亜硝酸薬やカルシウム拮抗薬が有効とされているが、GERD患者では下部食道括約筋圧を低下させ、逆流を増悪させることがあるため注意が必要である。2)好酸球性食道炎好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis:EoE)は、嚥下困難、food impaction(食物塊の食道嵌頓)などを主訴とし、食道上皮の好酸球浸潤を特徴とする原因不明の疾患である。EoEの診断で最も重要なものは、内視鏡検査および生検による病理診断である。縦走溝、輪状溝、カンジダ様の白斑、白濁肥厚した粗造粘膜が、特徴的な内視鏡所見である(図5)。病理診断では、一般に400倍の強拡大で15ないし20個以上の好酸球浸潤を少なくとも1視野に認める場合、EoEと診断される。EoEの治療に関しては、プレドニゾロンの内服や、吸入用ステロイド薬であるプロピオン酸フルチカゾン(商品名:フルタイド)の咽頭噴霧後の嚥下による食道内局所投与の有効性などが報告されている(いずれも保険適用外)。なお、PPIが有効な症例が存在し、PPIを投与しても症状が持続する場合に難治性GERDとの鑑別が必要となることがある。EoEに対する認識がないと診断に苦慮することとなる。図を拡大する機能性ディスぺプシア上腹部痛や胃もたれなどの症状が、主に胃や十二指腸に由来していると考えられる患者のうち、各種検査を行っても症状を説明しうる器質的疾患がない場合は、機能性ディスぺプシア(functional dyspepsia:FD)と診断される。Rome III基準ではFDは「つらいと感じる食後のもたれ感、早期飽満感、心窩部痛、心窩部灼熱感の4項目のうち1つ以上の症状が、6ヵ月以上前からあり、最近の3ヵ月間は症状が続いている」と定義されているが、GERD症状とFD症状はオーバーラップすることが多いとされている。すなわちGERD患者では、胸やけや呑酸症状以外に、胃もたれ、胃の痛み、胃の張りなどの症状がみられ、げっぷ、吐き気、食欲不振といった症状も高い頻度で認められる。なお、PPI投与でGERD症状は軽快したものの上腹部のさまざまなFD症状が軽快しない場合、PPI抵抗性NERDとして診療されていることもあるが、症状をきちんと聴取しFDと診断したほうがよいと思われる。しかし、実際にはGERDの定型的症状である「胸やけ」と「心窩部痛」、「心窩部灼熱感」を厳密に区別することは難しい。一般的には、GERD症状は剣状突起より頭側の胸骨下部で、FDでは剣状突起より肛門側の心窩部領域で認めることで鑑別を行っている。おわりに難治性GERDの原因およびその治療法、難治性GERDの鑑別疾患について概説した。難治性GERDの治療には、適切な診断と薬剤の特性を認識した薬物療法および適切なタイミングでの薬物以外の治療法の選択が必要である。参考文献1)日本消化器病学会編.胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン. 南江堂;2009.2)Kawamura M, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2003;17:965-973. 3)Kawamura M, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2007;22:222-226.4)Ariizumi K, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2006;21:1428-1434.5)小池智幸ほか.医学と薬学. 2014;71:519-525.6)Galmiche JP, et al. Gastroenterology. 2006;130:1459-1465.7)Abe Y, et al. J Gastroenterol. 2011;46:25-30.

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模擬証人尋問でわかる医事裁判 被告人になり尋問されることは何?

医師資格を持つ3人の弁護士、大磯義一郎氏(浜松医科大学)、富永愛氏(富永愛法律事務所)および小島崇宏氏(大阪A&M法律事務所)が、「模擬証人尋問」を通じて実際の医事裁判の模様を伝える催しが、6月2日横浜市立大学附属病院にて開催された。この催しは、約3ヵ月に1回の割合で全国の大学医学部などで医師、医療従事者、医学生を対象に開催されているものであり、今回は同院の安全管理者会議の一環として開催された。ケアネットでは、同院医療安全管理室のご厚意により、当日の模様を収録。医師が医事裁判で被告の立場に置かれた場合、原告・被告双方からどのような尋問がなされるのか、なかなか垣間見ることのできない模擬尋問の内容を動画ダイジェストでお届けする。事例概要●患者概要患者42歳 男性職業自営業(製靴業)既往歴虫垂炎(18歳・手術)、胆石(36歳)、右肩関節痛(現在被告病院にて加療中)家族歴特記事項なし家族構成妻、子(14歳中学生)嗜好タバコ 15本/日(15歳から)飲酒 5合位/日現病歴右肩関節痛にて被告病院整形外科受診中の患者。整形外科にて肝機能障害指摘。飲酒量も多いことから精査・加療目的で紹介受診となる。●初診時現症(2010年5月21日)主訴肝機能障害指摘身体所見 体温36.6℃、血圧144/88、脈拍60/分、眼瞼結膜 貧血なし、眼球結膜 黄染なし、胸部聴診上異常なし、腹部平坦、軽度膨隆あり、圧痛なし、肝2横指触知、脾臓触知せず、下腿浮腫なし検査所見WBC 7800/μL、RBC 490/μL、Plt 15万/μL、AST 55IU/L、ALT 79IU/L、LDH 592IU/L、γ-GTP 432IU/L、T-Bil 1.6mg/dL、D-Bil 0.9mg/dL、TP 5.8g/dL、Alb 3.4g/dL、BUN 12mg/dL、Cre 0.68mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 102mEq/L、UA 8.3mg/dL、BS 132mg/dL●診療の時間経過●裁判の経過患者の死亡を受けて、患者家族が主治医の診断の見落としを疑い、弁護士へ相談。その後に裁判へと発展した。本コンテンツは、その裁判の流れの中での被告医師への尋問を模したものである。●参考資料 民事紛争の流れと医事裁判の流れ模擬証人尋問(ダイジェスト)(監修:大磯義一郎氏、富永愛氏、小島崇宏氏)●裁判用語ミニ解説宣誓証人は宣誓した上で証言を求められる。これは、宣誓という手続きの下で証言内容の真実性を担保するものであり、自分の記憶や意思と異なることを証言すると裁判で敗訴する可能性が高まるだけでなく、刑法169条[偽証罪]により処罰の対象となる。証拠裁判中で「甲1号証」という言葉がでてくる。これは原告(患者側)が提出する証拠が甲○号証、被告(病院側)が提出する証拠が乙○号証となる。丸には提出した順番に数字が入っていくもので、本件では、患者の診療録や肝診療ガイドラインなどが証拠として提出された。まとめ(クリックすると下へ開きます) ●証人尋問を終えて 参加者の判断参加者が裁判官の立場で双方の弁論を判断して投票した結果、原告勝訴(23票)、被告勝訴(32票)となり「原告の請求棄却(病院側勝訴)」という結果になった。また、日常診療の際に医療側が注意すべきポイントとして、なるべくカルテへの記載は、丁寧に行う。病状説明の内容、診療の見通しの説明などカルテに記載があれば、裁判になっても事実認定で争われても重要な証拠となる診療時間が限られる中で、パンフレットなどを準備し、渡している姿勢を示す、パンフレットに書き込みなどをして、説明しているという跡を残すなども重要患者に連絡がつかない場合、できる限りの連絡をした旨の内容を示せば訴訟になった場合に考慮されるなどの現場で役立つ内容がアドバイスされた。●実際の医事裁判から学べるコンテンツはこちら。MediLegalリスクマネジメント

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大腸がん診断後のスタチンで生存延長

 英国・クイーンズ大学ベルファストのChris R Cardwell氏らは、大規模な大腸がん患者のコホートにおいて、大腸がん診断後のスタチン使用が大腸がん特異的死亡リスクを低下させるかどうかを調査した。その結果、大腸がん診断後のスタチン使用が生存期間延長に関連することが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年8月4日号に掲載。 著者らは、National Cancer Data Repository(英国のがん登録データ)から、1998年~2009年に新たにステージI~III大腸がんと診断された患者7,657例を同定した。さらにこのコホートを、処方箋記録を提供する臨床試験研究データベースと国家統計局の死亡データ(2012年まで)に結合し、大腸がん特異的死亡1,647例を同定した。なお、診断後のスタチン使用によるがん特異的死亡のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)の算出、および潜在的交絡因子に対するHRの調整のために、時間依存Cox回帰モデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・大腸がん診断後のスタチン使用は、大腸がん特異的死亡率減少と関連していた(完全調整HR:0.71、95%CI:0.61~0.84)。・スタチン使用量と大腸がん特異的死亡率に関連が認められ、1年以上のスタチンを使用している大腸がん患者では、より顕著な減少が認められた(調整HR:0.64、95%CI:0.53~0.79)。・大腸がん診断後のスタチン使用患者において、全死因死亡率の減少が認められた(完全調整HR:0.75、95%CI:0.66~0.84)。

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PALB2変異で乳がんリスクが5~9倍/NEJM

 PALB2遺伝子の機能喪失型変異は遺伝性乳がんの重要な原因であることが、英国・ケンブリッジ大学のAntonis C Antoniou氏らの検討で示された。生殖細胞系におけるPALB2遺伝子の機能喪失型変異は、乳がん発症の素因となることが知られているが、この変異がもたらす乳がんの生涯リスクは明らかにされていないという。NEJM誌2014年8月7日号掲載の報告。変異保因女性の乳がんリスクを年齢別に解析 研究グループは、PALB2遺伝子に有害性の短縮変異やスプライス変異、欠失変異を有する154家族362人の乳がんリスクを分析した。 PALB2遺伝子の遺伝型と家族集積性の影響を考慮した複合分離比分析変法(modified complex-segregation-analysis methods)を用いて、変異保因者の乳がんリスクを年齢層別に推定した。 適格基準を満たした154家族311例のうち229例が乳がんを発症した。年齢層別の乳がん患者数は、20歳台が7例、30歳台が50例、40歳台が84例、50歳台が55例、60歳台が24例、70歳台が7例、80歳以上が2例であった。機能喪失型変異はPALB2遺伝子の48部位でみつかった。乳がんリスクは一般集団の5~9倍 PALB2遺伝子変異保因女性の年間乳がん発症率は、20~24歳の0.01%から50~54歳の1.60%まで加齢とともに上昇し、55歳以降は年間約1.4%で横ばいとなった。 変異保因女性の乳がんリスクは一般集団に比べ、40歳未満で8~9倍、40~60歳で6~8倍、60歳以上では約5倍の上昇であった。また、変異保因女性における乳がんの推定累積リスクは、50歳までは14%(95%信頼区間[CI]:9~20%)、70歳までは35%(同:26~46%)と推算された。 変異保因女性の出生年別の乳がんリスクは、1940年以前に出生した女性に比べ、1940~59年に生まれた女性は2.84倍、1960年以降生まれの女性は6.29倍であり、有意な差が認められた(p<0.001)。さらに、遺伝、環境、生活様式などの家族因子も有意な影響を及ぼしていた(p=0.04)。一方、居住国別の乳がんリスクには差はみられなかった(p=0.11)。 変異保因女性が70歳までに乳がんを発症する絶対リスクは、乳がんの家族歴がない場合の33%(95%CI:25~44%)から、50歳の時点で乳がんに罹患していた第一度近親者(母親、姉妹)が2人以上いる場合の58%(95%CI:50~66%)までの幅があった。 著者は、「PALB2遺伝子の機能喪失型変異は、乳がんの素因となる変異の頻度およびそれらに関連するリスクの双方の点で、遺伝性乳がんの重要な原因である」と結論し、「今回のデータにより、PALB2遺伝子変異の保因者の乳がんリスクはBRCA2遺伝子変異の保因者と部分的に重複する可能性が示唆された」と指摘している。

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4.5時間以内のrt-PAが脳卒中転帰を改善/Lancet

 脳卒中発症後4.5時間以内のアルテプラーゼ(商品名:アクチバシンほか)投与は、早期の致死的頭蓋内出血リスクを増大させるが、脳卒中アウトカムの全般的な改善をもたらすことが、英国・オックスフォード大学のJonathan Emberson氏らStroke Thrombolysis Trialists’ Collaborative Groupの検討で示された。4.5時間以内であれば治療開始が早いほどベネフィットが大きいこともわかった。遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)であるアルテプラーゼは、急性虚血性脳卒中の治療に有効であるが、高齢者や脳卒中の重症度が高い患者への、発症から長時間経過後の使用については議論が続いている。Lancet誌オンライン版2014年8月6日号掲載の報告。予後予測因子をメタ解析で評価 研究グループは、アルテプラーゼ投与患者の良好な脳卒中アウトカムに影響を及ぼす因子(年齢、脳卒中重症度)を検討するために、急性虚血性脳卒中に対するアルテプラーゼとプラセボまたは非盲検対照薬を比較した9つの無作為化第III相試験のメタ解析を実施した。 良好な脳卒中アウトカムは、3~6ヵ月時に機能障害がみられない場合(modified Rankin Score:0~1)と定義した。そのほか、症候性頭蓋内出血(7日以内の2型実質性出血およびSITS-MOST基準による36時間以内の2型実質性出血と定義)、7日以内の致死的頭蓋内出血、90日死亡の評価を行った。年齢、重症度はアウトカムに影響しない 9試験に登録された6,756例(アルテプラーゼ群3,391例、対照群3,365例)が解析の対象となった。全体の平均年齢は71歳、80歳超が26%、女性が45%であった。 アルテプラーゼ投与により良好な脳卒中アウトカムの達成率が改善し、投与時期が早いほど、これに比例してベネフィットが大きくなった。 すなわち、発症後3.0時間以内に投与した場合の良好なアウトカムの達成率は、アルテプラーゼ群が32.9%(259/787例)で、対照群の23.1%(176/762例)に比べ有意に高かった(オッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.35~2.27)。また、投与時期3.0~4.5時間での達成率は、アルテプラーゼ群が35.3%(485/1,375例)、対照群は30.1%(432/1,437例)と、両群とも3.0時間以内よりも改善する傾向がみられたが、有意差は保持しつつもORは小さくなった(OR:1.26、95%CI:1.05~1.51)。 これに対し、4.5時間以降はそれぞれ32.6%(401/1,229例)、30.6%(357/1,166例)であり、有意な差はなかった(OR:1.15、95%CI:0.95~1.40)。このような投与時期が早いほどベネフィットが大きい傾向は、どの年齢や脳卒中重症度でも認められた。 一方、アルテプラーゼ投与により症候性頭蓋内出血および致死的頭蓋内出血が有意に増加した。すなわち、2型実質性出血の発生率はアルテプラーゼ群が6.8%(231/3,391例)、対照群は1.3%(44/3,365例)(OR:5.55、95%CI:4.01~7.70、p<0.0001)、SITS-MOST基準の2型実質性出血はそれぞれ3.7%(124例)、0.6%(19例)(OR:6.67、95%CI:4.11~10.84、p<0.0001)、7日以内の致死的頭蓋内出血は2.7%(91例)、0.4%(13例)(OR:7.14、95%CI:3.98~12.79、p<0.0001)であった。 90日死亡率は、アルテプラーゼ群が17.9%(608/3,391例)、対照群は16.5%(556/3,365例)であり、両群間に差は認めなかった(ハザード比:1.11、95%CI:0.99~1.25、p=0.07)。 したがって、アルテプラーゼ投与により頭蓋内出血による早期死亡の絶対リスクが約2%増加したが、これは3~6ヵ月間に機能障害のない生存率が3.0時間以内投与で約10%増加し、3.0~4.5時間での投与で約5%増加したことで相殺された。 著者は、「脳卒中発症4.5時間以内のアルテプラーゼ投与により、治療後数日内の致死的頭蓋内出血のリスクは増大したものの、年齢や脳卒中の重症度にかかわらず良好な脳卒中アウトカムの全般的な改善をもたらし、4.5時間以内であれば治療開始がより早いほどベネフィットが大きかった」とまとめ、「アルテプラーゼの投与開始の遅延による効果の減弱の程度に関する新たなエビデンスがもたらされた」と指摘している。

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不眠と腰痛、その因果関係は

 腰痛は成人における最も頻度の高い疼痛性障害の1つで、不眠症を伴うことが多い。しかしながら、腰痛が不眠症に先行するのか、はたまた不眠症が腰痛に先行するのか明らかではなかった。イスラエル・ハイファ大学のMaayan Agmon氏らは、健康な人における不眠症は、腰痛発症のリスク因子である可能性を報告した。また、逆のエビデンス(腰痛は不眠症のリスク因子)は見つからなかったという。PLos One誌2014年8月1日号の掲載報告。 不眠症と腰痛の時間的関連を調べる試験は、縦断的評価の方法にて、活動的で健康な労働者コホートを対象に行われた。評価は3回(T1、T2、T3)行われた。ロジスティック回帰分析にて、不眠症状の増大がT1からT2の腰痛の新規発症を予測するかを調べた。また最小二乗法を用いて、T2時の腰痛が、T2からT3の不眠症の増大を予測するかを調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は2,131例で、そのうち34%が女性であった。・3回の評価は、追跡3.7年(範囲:2.2~5.12年)の間に行われた。・社会経済的指数、自己申告による健康状態、ライフスタイル習慣、身体測定値について補正後、T1-T2の不眠症増加が認められた人は、T3で腰痛を有するリスクが1.40倍高かった(OR:1.40、95%CI:1.10~1.71)。・反対に、腰痛は不眠症の発症増大を予測するといった逆の相関性の裏付けは見つからなかった。関連医療ニュース 不眠の薬物療法を減らすには 認知症の不眠にはメラトニンが有用 期待の新規不眠症治療薬、1年間の有効性・安全性は  担当者へのご意見箱はこちら

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合併症の予防が大切

【関節リウマチ】合併症にも注意!メモ関節リウマチは、他の自己免疫の病気を合併することがある。・リウマチ患者さんの5人に1人が「シェーグレン症候群」・シェーグレン症候群は、自己免疫にかかわる病気。涙腺や唾液腺に炎症が起こり、目や口が乾きやすくなる。・日ごろからリウマチの炎症をコントロールして、合併症を予防することが大切。監修:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 金子祐子氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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体にいいことやってますか?【Dr. 中島の 新・徒然草】(030)

三十の段 体にいいことやってますか?皆さん、体にいいことやってますか?よく医者の不養生といわれますが、われわれも自分自身の健康に注意を払う必要があります。私がやっているのは水泳、歩き、そして Wii です。正確には Wii Sports Resort というゲームです。アーチェリーやボウリングなどいろいろな種目がありますが、私が主にやっているのはピンポンとゴルフです。卓球については中学から大学まで10年以上、しかも体育会卓球部でもやっていました。そのような私から見ても、画面に向かってコントローラーを振り回す Wii は実にリアルです。1ゲーム6点で、5ゲームやると30分ほどかかりますが、結構な汗をかきます。相手も手強いキャラクターが多く、5試合やって平均すると4勝1敗程度。やっているうちにどんどん感情移入し、エッジすると、 つい「失礼!」と画面に向かって叫んでしまいます。Wii ピンポンはプレーヤーの強さのレベルを2500点満点で表示してくれるのですが、だいたい2500点取っています。さすが、青春のすべてを捧げてしまった卓球馬鹿!これに対してゴルフの方は、いくらやっても上達しません。やはり基礎のまったくできていない我流のせいか、2500点満点の1800点くらいで頭打ちです。さて、このようなゲームは exergame とも呼ばれ、健康にも心にもいいとされています。何とアメリカには Game for Health という学会まであり、2012年6月には私も出席しました。ゲーム王国を自認する日本がグズグズしているうちに、欧米では、ゲームで犯罪をなくす!ゲームで貧困をなくす!ゲームで10年長生きをするなど、「ホンマかいな?」と思うようなことが、大真面目に取り組まれているのです。でも本当にゲームで犯罪や貧困がなくなったら、素晴らしいことですね。もし私が役に立つゲームを作るとしたら、ゲームで英語が上達するゲームで健康になるゲームで金持ちになるといったところかな。Wii ピンポンをしながら、構想を練ってみましょう。★私が Wii ピンポンをしているところを YouTube にアップしています。よかったら御覧ください。(編集部注:本気のWiiピンポンです。)

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QOLに焦点をあてる糖尿病診療

 2014年8月6日(水)、アストラゼネカ株式会社は「Patient Centered Care-患者さんの生活の質(QOL)を中心とした治療アプローチについて」をテーマに都内でプレスセミナーを開催した。 糖尿病の診療では、診療を中断する患者が問題となっている。こうした背景の下、今回の講師である石井 均氏(奈良県立医科大学糖尿病学講座 教授)は、患者中心の治療アプローチに取り組み、治療継続について研究、成果を上げている。本セミナーでは、石井氏がその取り組みについて詳しく語った。■糖尿病の今 糖尿病を治療する意味は、病状進展による網膜症や腎症などの合併症を防ぐこと、そして健康な人と変わらない生活の質(QOL)を保つことである。そのためには、わが国の学会が定める、合併症予防のための血糖コントロール目標値HbA1c 7%未満に保つことが重要、と石井氏は説明した。 また、2型糖尿病患者のうち、早い人は診断後5年くらいで合併症を併発する。石井氏は、最近の研究を基に合併症の傾向について述べた。いわく、糖尿病特有の細小血管障害、肥満や脂質異常と関係する動脈硬化性疾患のほか、認知症、脂肪肝、がん、骨折などの疾患もみられること。とくに2型糖尿病の半数は脂肪肝が疑われるという。そのうえで、糖尿病の現実的な目標は、「cure(治療)」ではなく「care(管理)」であり、このケアが続くことが患者に中断をもたらす一因ともなっているのではないか、と指摘した。■なぜ患者は医師の話を聞かないか 石井氏が、日々の診療を通じて気付いたことは、「患者さんの耳には、正しいことは入っていかない」ということだ。主に2型糖尿病では、顕著な症状は病初期では現れない。患者は、血糖値測定や治療薬の服用を通じてでしか、糖尿病を実感することができない。そのため今まで通りの生活をしたり、治療の自己中断をしたりするという。医師が患者の将来のためを思い、糖尿病合併症予防のため食事制限やタバコ、飲酒など嗜好品の制限を説いても、患者がなかなか守ってくれないのは、このためである。 また、現在の医師と患者の関係が、「コンプライアンスモデル(医師からの伝達型で患者の自主性がない)」であることも関係している、と石井氏は指摘した。 欧米では、すでにこのモデルから脱却しつつあり、患者の自主性を引き出しながら治療につなげていこうという「アドヒアランスモデル」が志向されている。わが国でも、最近になって多くの医療者が取り入れるようになり、臨床現場で実践されている。 アドヒアランスモデルが上手くいくには、患者の自発性を促すために医療者が患者に深く関わることが必要である。たとえば、医師の診療前に看護師など別のスタッフが患者の具合や悩みなどを聞くといった対応が重要となる。これからは、患者が理解し、行動するように寄り添っていく医療にしなくてはいけないと説明を行った。■患者のQOLを重視し、一緒に治療戦略を立てる 一度、糖尿病と診断されると、患者は人生の多くの時間を、病と過ごすことになる。だからこそ医療者は、患者の価値観を尊重し、診療にあたらなければならない。患者の長寿だけが最大目標ではなく、「いかにQOLを保ちつつ、健常人と同じように過ごすことができるかが重要」と石井氏は指摘する。そのため、多彩な血糖降下治療薬がある中で、その選択基準に患者のQOLも考慮に入れることが大切であるという。 たとえば、GLP-1受容体作動薬は、アナログ製剤であるために経口薬と比べ処方が進んでいない。しかし、持続性エキセナチドは、週1回の注射で済むために、働き盛りや高齢者の患者には、QOLを落とすことなく継続使用できる。また、血糖値を-1.1%(26週投与データ)程度降下させるとともに、体重増加を来さないという特徴を持つ。 こうした患者の生活サイクルや事情に合った治療薬を用いることで、治療継続できるように医療者がアプローチすることが大切だと講演をまとめた。

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抗グルタミン酸受容体抗体が神経系にきわめて有害な影響か

 グルタミン酸は中枢神経系(CNS)の主な興奮性神経伝達物質であり、多くの主要な神経機能に必要な物質である。しかし、過剰なグルタミン酸はグルタミン酸受容体活性化を介した有害な興奮毒性により、重度の神経細胞死と脳害を引き起こす。イスラエル・School of Behavioral Sciences, Academic College of Tel-Aviv-YafoのMia Levite氏は、抗グルタミン酸受容体抗体に関して、これまでに得られている知見をレビューした。抗AMPA-GluR3B抗体、抗NMDA-NR1 抗体、抗NMDA-NR2A/B抗体、抗mGluR1抗体、抗mGluR5抗体、以上5種類の抗グルタミン酸受容体抗体について言及し、いずれもさまざまな神経疾患に高頻度に認められ、神経系にきわめて有害な影響を及ぼしていることを示唆した。Journal of Neural Transmission誌オンライン版2014年8月号の掲載報告。抗グルタミン酸受容体抗体は中枢神経系で強い病理学的影響を誘導 グルタミン酸による興奮毒性は、多くのタイプの急性および慢性CNS疾患および傷害に生じる主要な病理学的プロセスである。近年、過剰なグルタミン酸だけでなく、いくつかのタイプの抗グルタミン酸受容体抗体もまた、重度の脳傷害を引き起こしうることが明らかになってきた。抗グルタミン酸受容体抗体は神経疾患患者の血清および脳脊髄液(CSF)中に存在し、CNSにおいて何らかの強い病理学的影響を誘導することにより、脳に傷害を引き起こす。抗グルタミン酸受容体自己免疫抗体ファミリーは、これまでに開発されたなかで最も広範かつ強力、危険で興味深い抗脳自己免疫抗体だと思われる。ヒトの神経疾患および自己免疫疾患において種々のタイプの抗グルタミン酸受容体抗体が認められ、髄腔内産物に由来しCNS内に高濃度存在し、脳にさまざまな病理学的影響を及ぼし、またユニークかつ多様なメカニズムでグルタミン酸受容体とシグナル伝達に作用し、神経伝達を障害して脳に傷害を誘導する。2つの主な自己免疫抗グルタミン酸受容体抗体ファミリーが神経および/または自己免疫疾患患者においてすでに発見されており、抗AMPA-GluR3抗体、抗NMDA-NR1抗体、抗NMDA-NR2抗体などイオンチャンネル型のグルタミン酸受容体に直接作用する抗体、そして抗mGluR1抗体、抗mGluR5抗体など代謝型のグルタミン酸受容体に直接作用する抗体などがCNSに有害な影響を及ぼすことが示されている。 この包括的レビューでは、それぞれの抗グルタミン酸受容体抗体について、発現が認められたヒト疾患、神経系における発現と産物、さまざまな精神/行動/認知/運動障害との関連、特定の感染臓器との関連の可能性、マウス、ラット、ウサギなど動物モデルにおけるin vivoでの有害な作用そしてin vitroにおける有害な作用、多様でユニークなメカニズム、以上についてそれぞれの抗グルタミン酸受容体抗体別に言及する。また、これら抗グルタミン酸受容体抗体を有し、さまざまな神経疾患および神経系の問題を抱える患者における免疫療法に対する反応性についても言及する。5種類の抗グルタミン酸受容体抗体について、それぞれ項目を立て有用な図を用いて解説し、最後にすべての主要な知見をまとめ、診断、治療、ドラッグデザインおよび今後の検討に関する推奨ガイドラインを提示する。抗グルタミン酸受容体抗体は神経系にきわめて有害であることが判明 ヒトを対象とした試験、in vitro試験、マウス、ラット、ウサギなど動物モデルを用いたin vivo試験から、5種類の抗グルタミン酸受容体抗体に関して得られた知見は以下のとおり。(1)抗AMPA-GluR3B抗体・さまざまなタイプのてんかん患者で~25~30%に認められる。・てんかん患者にこれら抗グルタミン酸受容体抗体(またはその他のタイプの自己免疫抗体)を認める場合、およびこれら自己免疫抗体がしばしば発作や認知/精神/行動障害を誘発または促進していると思われる場合、てんかんは“自己免疫性てんかん”と呼ばれる。・“自己免疫性てんかん”患者の中には、抗AMPA-GluR3B抗体が有意に精神/認知/行動異常に関連している者がいる。・in vitroおよび/または動物モデルにおいて、抗AMPA-GluR3B抗体自身が多くの病理学的影響を誘発する。すなわち、グルタミン酸/AMPA受容体の活性化、“興奮毒性”による神経細胞死、および/または補体調節タンパク質による補体活性化により脳への複数のダメージ、痙攣誘発化学物質による発作、行動/運動障害の誘発などである。・抗AMPA-GluR3B抗体を有する“自己免疫性てんかん”患者の中には、免疫療法に対する反応性が良好で(時々一過性ではあるが)、発作の軽減および神経機能全体の改善につながる者がいる。(2)抗NMDA-NR1 抗体・自己免疫性“抗NMDA受容体脳炎”に認められる。・ヒト、動物モデルおよびin vitroにおいて、抗NMDA-NR1抗体は海馬神経に発現している表面NMDA受容体を著しく減少させうること、そしてNMDA受容体のクラスター密度ならびにシナプス性局在もまた減少させることから重要な病因となりうる。・抗NMDA-NR1抗体は、NMDA受容体と架橋結合およびインターナリゼーションを介してこれらの作用を誘発する。・このような変化はNMDA受容体を介するグルタミン酸シグナル伝達を障害し、さまざまな神経/行動/認知/精神の異常を来す。・抗NMDA-NR1抗体は、その髄腔内産物により抗NMDA受容体脳炎患者のCSF中にしばしば高濃度に認められる。・抗NMDA受容体脳炎患者の多くは、いくつかの免疫療法に良好に反応する。(3)抗NMDA-NR2A/B抗体・神経精神的問題の有無にかかわらず、全身性エリテマトーデス(SLE)患者の多くに認められる。・抗NMDA-NR2A/B抗体を有するSLE患者の割合は報告により14~35%とさまざまである。・ある1件の試験では、びまん性神経精神的SLE患者の81%、焦点性“神経精神的SLE”患者の44%で抗NMDA-NR2A/B抗体が認められることが報告されている。・抗NMDA-NR2A/B抗体は、いくつかのタイプのてんかん、いくつかのタイプの脳炎 (慢性進行性辺縁系脳炎、傍腫瘍性脳炎または単純ヘルペス性脳炎など)、統合失調症、躁病、脳卒中またはシェーグレン症候群患者にも認められる。・患者の中には、抗NMDA-NR2A/B抗体が血清とCSFの両方に認められる者がいる。・dsDNAと交差反応する抗NMDA-NR2A/B抗体もある。・いくつかの抗NMDA-NR2A/B抗体は、SLE患者の神経精神/認知/行動/気分障害と関連している。・抗NMDA-NR2A/B抗体は、NMDA受容体の活性化により神経死をもたらすこと、“興奮毒性”を誘発して脳を傷害する、膜NMDA受容体発現の海馬神経における著明な減少、そして動物モデルにおいて認知行動障害を誘発することなどから、病因となりうることは明らかである。・しかし、抗NMDA-NR2A/B抗体の濃度は、グルタミン酸受容体に対するポジティブまたはネガティブな影響、神経の生存を決定付けていると思われる。・このため、低濃度において抗NMDA-NR2A/B抗体は受容体機能のポジティブモジュレーターであり、NMDA受容体を介した興奮性シナプス後電位を増加させる一方、高濃度ではミトコンドリア膜透過性遷移現象を介した“興奮毒性”を促進して病因となる。 (4)抗mGluR1抗体・これまでに、少数の傍腫瘍性小脳運動失調患者に認められており、これら患者では髄腔内で産生されるため血清中よりもCSF中濃度のほうが高い。・抗mGluR1抗体は、基本的な神経活性の減弱、プルキンエ細胞の長期抑圧の誘導阻害、プルキンエ細胞の急性および可塑反応の両方に対する速やかな作用による脳運動調節欠乏、慢性的な変性などにより脳疾患のきわめて大きな原因になりうる。・抗mGluR1抗体をマウス脳に注射後30分以内に、マウスは著しい運動失調に陥る。・運動失調患者に由来する抗mGluR1抗体は、動物モデルにおいて眼球運動もまた障害する。・抗mGluR1抗体を有する小脳性運動失調患者の中には、免疫療法が非常に効果的な者がいる。(5)抗mGluR5抗体・これまでに、ホジキンリンパ腫および辺縁系脳炎(オフェリア症候群)患者の血清およびCSF中にわずかに認められている。・抗GluR5抗体を含むこれら患者の血清は、海馬の神経線維網およびラット海馬ニューロン細胞表面と反応し、培養ニューロンを用いた免疫沈降法および質量分析法により抗原がmGluR5であることが示された。 以上のエビデンスから、著者は「抗グルタミン酸受容体抗体は、これまでに認識されていた以上にさまざまな神経疾患に高頻度に存在し、神経系に対してきわめて有害であることがわかった。したがって、診断、治療による抗グルタミン酸受容体抗体の除去あるいは鎮静化、および将来の研究が求められる。広範な抗グルタミン酸受容体抗体ファミリーに関しては、興味深く、新規でユニークかつ重要であり、将来に向けた努力はいずれも価値があり必須であることがわかった」とまとめている。関連医療ニュース 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所 精神疾患のグルタミン酸仮説は支持されるか グルタミン酸作動薬は難治性の強迫性障害の切り札になるか

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献血ドナーのHEV感染率は予想以上/Lancet

 英国の献血ドナー中の遺伝子3型E型肝炎ウイルス(HEV)感染者の割合は0.04%と、予想以上に高率で存在することが明らかになった。また、そうした感染者の献血を受けたレシピエントのうち、同ウイルスへの感染は4割以上で検出されたという。英国National Health Service Blood and TransplantのPatricia E Hewitt氏らが、同国で行われた献血後ろ向きに調査を行い報告した。Lancet誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告より。HEV RNAについてスクリーニング、レシピエントも追跡調査 研究グループは、2012年10月~2013年9月に、英国南東部で行われた22万5,000件の献血について、後ろ向きにHEV RNAのスクリーニングを行った。 HEV RNAの検出については、血清学的、ゲノムによる系統学的な分析を行った。同献血のレシピエントも特定し、献血による同ウイルス感染のアウトカムについて調査した。HEV感染ドナー、71%が献血時に血清学的陰性 その結果、79例のドナーで遺伝子3型HEVのウイルス血症が検出され、HEV RNAの有病率は、2,848件中1件(0.04%)相当であることが示された。なお、同ウイルス血症を持つドナーのうち56例(71%)が、献血時には血清学的陰性だった。 79例のドナーから129個の血液製剤がつくられ、そのうち62個が60例への輸血に使われていた。同輸血のレシピエント43例について調べたところ、18例(42%)で同感染が認められた。 研究グループは、献血ドナーのHEV RNA罹患率は予想より高かったとまとめている。また、2,848件中1件という有病率から推定すると、試験を行った年に英国内で発生した急性HEV感染の発生件数は8~10万件に上るとしている。

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