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COSIRA試験:血管を開けるのか?それとも、閉じるのか? 狭心症治療に新たな選択肢(解説:香坂 俊 氏)-326

 狭心症の患者さんといえば、冠動脈の狭窄を探す。そして、・見つかれば、開ける・開けられなければ、バイパスする・症状が残っても、それは「狭心症ではないので大丈夫です」の三段論法で対応されてきた(注.極論です)。ここに今回新たに・症状が残ったら、「血管を閉じる」 という選択肢が提示された。読み違いではなく、本当に閉じるのである。 ただし、冠動脈ではなく冠「静脈」、つまり血管系の出口のほうを狭くして、相対的に動脈の虚血領域の血流を増やそうという試みである。これが今回NEJM誌に発表されたCOSIRA試験であるが、すでに「血行再建の適応とならない」難治性狭心症患者104例(シンチで虚血あり、ほとんどの方にバイパスの既往)に対して、砂時計のような形の冠静脈洞径縮小デバイスをランダム化し植え込んだところ、症状改善に有効性を発揮したとされている。 具体的には、この縮小デバイスを留置した患者群のほうが、ブラインドされたSham群(カテーテル手技は行ったがデバイス留置は行っていない)よりも6ヵ月後のQOLスコアが改善した、という結果が得られたというものである。 デバイスの形状は中央部が3mm程度だが、両端が8~12mm程度に広がり3~6ヵ月程度でメッシュ部が血栓化する。留置の手技には9Fのシースを使い、2例を除きすべての症例に留置が可能であったという高い成功率も目を引く。臨床の現場に出てくるまでにはまだ長期的な成績が必要となるが、今後狭心症に対する新たな治療選択肢として注目されている。(おまけ) 個人的に、この試験の意味することとしてもう1つ大きなポイントがあるように思われる。それは、 狭心症は冠動脈を開けるだけでは解決しないということである。 周知のとおり、安定狭心症に対するステントやバルーンの効果は限定的で、COURAGE試験などでは、むしろ随伴する至適薬物療法の重要性が強調されている。このCOSIRA試験でも、そうした目に見えない部分に対する介入の重要性を再確認させられた結果であるように感じた。

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まずは自立から【Dr. 中島の 新・徒然草】(060)

六十の段 まずは自立から前回に引き続いて医学生との雑談。今度は女子医学生で、なぜ医学部に行ったのかという話題です。 学生 「私はとにかく自立して家を出たかったんです」 中島 「なんでまた」 学生 「経済的に自立していれば自由になれますから」 中島 「たしかに自分に経済力があれば、甲斐性なしのイケメンを亭主にしようが、独身を通そうが自由やしなあ」 学生 「そうなんですよ」 ふと、「色男、金と力はなかりけり」という諺(ことわざ)を思い出しました。 中島 「自立はともかく、家を出たいと思ったのは?」 学生 「ウチは父が厳しいんです」 中島 「お父さんは何をしてはるの」 学生 「〇〇県警察本部に勤めています」 中島 「日夜、市民の安寧秩序を守る立派なお父さんやんか」 学生 「それは間違いなく立派なんですけど、立派すぎて職場のテンションをそのまま家に持ち込むんですよ。お母さんも私もまるで尋問されているみたいです」 中島 「それで遠くの大学に行ったわけ?」 学生 「そうなんです。私がお金を稼ぐことができるようになったら、次はお母さんをあの家から救い出します」 中島 「おいおい、救い出すってアアタ」 世の中にはいろんな家庭があるもんですね。この話をマッチング試験の面接で披露してくれたら、私なら満点をつけたいところです。他の試験官は顔をしかめるかもしれませんが。最後に1句夢語れ とにもかくにも 自立して

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ガイドライン改善には個人データに基づくメタ解析の活用を/BMJ

 臨床ガイドラインの作成に当たり、被験者個人データ(IPD)に基づくメタ解析の引用の割合は4割未満であることが明らかにされた。英国・ロンドン大学のClaire L Vale氏らが、177の診療ガイドラインについて調べた結果、報告した。IPDに基づくメタ解析は、エビデンスのゴールド・スタンダードと考えられており、臨床ガイドライン作成の鍵となるエビデンスを示している可能性も大きいとされる。結果について著者は、「IPDに基づくシステマティック・レビューとメタ解析が、活用されていないことが示された」と述べ、「ガイドライン開発者はルーティンに質のよい最新のIPDメタ解析を探索すべきである。IPDメタ解析の活用増大が、ガイドラインの改善につながり、最新の最も信頼性のあるエビデンスに基づくケアを患者にルーティンに提供することが可能となる」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年3月6日号掲載の報告より。33のIPDに基づくメタ解析と177の臨床ガイドラインを検証 Vale氏らは、コクランIPDメタ解析メソッド・グループが管理するデータベースと、その他公表されたIPDに基づくメタ解析データベースから、33のIPDに基づくメタ解析と、それに対応する177の診療ガイドラインについて調査を行った。 ガイドラインへのIPDの活用について、評価を行った。IPDメタ解析を引用したガイドラインは37%のみ 結果、177のガイドラインのうち、マッチングするIPDメタ解析を引用していたのは、66件・37%に留まった。さらにそれら引用したメタ解析について、妥当性や信頼性などについて批判的視点で評価を行っていたのは、そのうちの22件・34%のみだった。 臨床ガイドラインのうち、マッチングするIPDメタ解析を直接根拠にして作成されたものは、66件中18件(27%)だった。 IPDメタ解析を引用していないガイドラインのうち、マッチングするIPDメタ解析の発表以降に作成しているものは、111件中23件(21%)にも上った。一方で、IPDメタ解析を引用しなかった明確な理由については、不明だった。

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エドキサバン、臨床的特徴で減量しても有効?/Lancet

 心房細動患者に対し、エドキサバン(商品名:リクシアナ)の投与量を、臨床的特徴に応じて半減しても、脳卒中・全身性塞栓症の予防効果は維持され、大出血リスクは低下することが明らかにされた。米国ハーバード・メディカル・スクールのChristian T Ruff氏らが、2万人超を対象に行った二重盲検無作為化試験「ENGAGE AF-TIMI 48」のデータを分析し報告した。Lancet誌オンライン版2015年3月10日号掲載の報告より。クレアチニン・クリアランス値や体重に応じて投与量を半減 ENGAGE AF-TIMI 48は、2008年11月19日~2010年11月22日にかけて、心房細動患者2万1,105例を対象に行われた。試験では被験者を、エドキサバン60mg/日(高用量群)、または同30mg/日(低用量群)、もしくはワルファリン(国際標準化比[INR]:2.0~3.0)のいずれかの投与を受ける群に無作為に割り付け比較検討された。 また同試験では、ベースライン時、または試験実施期間中に、クレアチニン・クリアランスが30~50mL/分、体重が60kg以下、またはP糖タンパク質の相互作用のある併用薬を服用している人については、エドキサバン投与量を半減した。 研究グループは、こうしたエドキサバンの投与量の調整と、過剰な血中濃度および出血イベントの予防との関連を検証した。投与量半減で血中濃度は3割減 投与量を減少した患者は5,356例、減少しなかった患者は1万5,749例だった。減少した患者のほうが、脳卒中、出血、死亡の発生が高率だった。 エドキサバンの投与量は15~60mgにわたり、血中濃度の平均トラフ値(データが入手できた患者6,780例において16.0~48.5ng/mL)、および抗Xa因子活性の平均トラフ値(データが入手できた患者2,865例において0.35~0.85IU/mL)は2~3倍の範囲にわたった。 分析の結果、エドキサバン投与量の減少によって、血中濃度平均値は高用量群で29%(48.5ng/mLから34.6ng/mL)、低用量群では35%(24.5ng/mLから16.0ng/mL)、それぞれ減少した。抗Xa因子活性の平均値についても、それぞれの投与群で、25%(0.85IU/mLから0.64IU/mL)、20%(0.44IU/mLから0.35IU/mL)減少した。 また、エドキサバン高用量群、低用量群ともに用量を減少しても、脳卒中や全身性塞栓症の予防について、ワルファリン投与群と比べた有効性は維持された(高用量群p=0.85、低用量群p=0.99)。一方、大出血については、そのリスクの低下が認められた(高用量群p=0.02、低用量群p=0.002)。 これらの結果を踏まえて著者は、「エドキサバンの投与量を患者の臨床的特徴のみで調整することで、過剰な血中濃度を防ぎ、虚血性イベントリスクと出血イベントリスクの適正化に寄与する」と結論付けた。■「リクシアナ」関連記事リクシアナ効能追加、静脈血栓症、心房細動に広がる治療選択肢

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蜂窩織炎・膿瘍への抗菌薬 治癒率に違いはある? クリンダマイシンvs.トリメトプリム・スルファメトキサゾール

 蜂窩織炎および膿瘍において、クリンダマイシンまたはトリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)を10日間投与したところ、治癒率や副作用プロファイルは同程度であったことが、米国・カリフォルニア大学のLoren G. Miller氏らにより報告された。NEJM誌2015年3月19日号の掲載報告。 皮膚および軟部組織感染症は、外来診療では一般的であるものの、市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗生物質レジメンの効果は十分に明らかにされていなかった。 Miller氏らは、蜂窩織炎、5cm以上の膿瘍(小児ではより小さい径も含む)のいずれか、または両方を有する合併症のない単純性皮膚感染症の外来患者を4施設で登録した。すべての膿瘍は切開排膿を行った。 被験者らはクリンダマイシン群またはTMP-SMX群に無作為に1:1で割り付けられ、10日間投与された。被験者と医師にレジメンの割付および微生物学的検査結果は知らされず、二重盲検下で実施された。 主要評価項目は治療終了から7~10日後の臨床的治癒であった。 主な結果は以下のとおり。・合計524例の被験者が登録され、そのうち155例(29.6%)が小児であった。・264例がクリンダマイシン群、260例がTMP-SMX群に登録された。・160例(30.5%)が膿瘍単独、280例(53.4%)が蜂窩織炎単独、82例(15.6%)が膿瘍と蜂窩織炎の両方を罹患していた。・黄色ブドウ球菌は217例(41.4%)の被験者の病変部から分離され、そのうち167例(77.0%)の分離株がMRSAであった。・intention-to-treat 集団における治癒率は、両群で同程度であった(クリンダマイシン群80.3%、TMP-SMX群77.7%、差:-2.6%ポイント、95%信頼区間:-10.2~4.9、p=0.52)。・評価可能であった466例における治癒率も、両群で同程度であった(クリンダマイシン群89.5%、TMP-SMX群88.2%、差:-1.2%ポイント、95%信頼区間:-7.6~5.1、p=0.77)。・サブグループ(小児、成人、膿瘍または蜂窩織炎単独の患者)における治癒率も、両群で同程度であった。・両群でみられた副作用プロファイルに有意な差はみられなかった。

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難治性しゃっくり、抗精神病薬で治るのはなぜか

 しゃっくりは横隔膜のリズミカルな不随意運動であり、延髄や脊柱上の吃逆中枢の神経核機能阻害などさまざまな条件により引き起こされる。しゃっくりの病態に関与する神経伝達物質や受容体は十分に定義されていないが、ドパミンは重要な役割を果たすと考えられている。難治性のしゃっくりの治療には、クロルプロマジンや他の抗精神病薬が使用されることがあるが、その有効性は限られている。島根県・清和会西川病院の西川 正氏らは、難治性しゃっくり患者のエピソードを紹介した。Annals of general psychiatry誌オンライン版2015年3月5日号の報告。 本ケースレポートは、数週間または数ヵ月持続するストレス誘発性の難治性しゃっくりの2つのエピソードを経験した18歳の患者について報告するものである。 主な結果は以下のとおり。・どちらのエピソードでも、ハロペリドールを最初に使用したが、有意な効果は認められなかった。・対照的に、ドパミンとセロトニンに拮抗作用を有する第2世代抗精神病薬であるリスペリドンを使用すると、しゃっくりは6時間後に完全に止まった。・本ケースレポートは、1人の患者に対し2種類の抗精神病薬を使用し、薬物治療効果が明らかに異なった、数少ない症例報告の1つである。 結果を踏まえ、著者らは「しゃっくり症例の病態生理にはドパミン作動系に加え、セロトニン作動系が関与している可能性があり、リスペリドンのようなセロトニン作動性抗精神病薬を難治性しゃっくりの薬物治療選択肢として考慮すべきである」とまとめている。関連医療ニュース 強迫的行動の抑制にセロトニン5-HT2Aが重要 パーキンソン病患者でみられる衝動性にセロトニンが関与か EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか  担当者へのご意見箱はこちら

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【日本発】FRAXの骨折予測精度を高める方法

 骨折リスク評価ツールFRAXは骨折リスクの評価に利用されているが、その精度は十分とはいえず、改善が望まれている。 そこで近畿大学の伊木 雅之氏らは、12の地域に住む65歳以上の高齢日本人男性2,000人を対象に、FRAXを補完する手段として海綿骨スコア(TBS)が有用であるかどうかの調査を行った。 その結果、TBSはFRAXと組み合わせることで予測精度を向上させる可能性が示唆された。Osteoporos Int誌 オンライン版2015年3月10日掲載の報告。FRAXにTBSを組み合わせることにより予測精度に有意な改善 FRAXを補完する手段としてTBSが有用であるかどうかの調査の、主な結果は以下のとおり。・追跡可能な1,872人のうち22例に骨粗鬆症性骨折が認められた。・骨粗鬆症性骨折がある群は、骨折がない群と比較して、有意にTBSが低く(p=0.0015)FRAXスコアが高かった(p=0.0089)。・統合判別改善度(IDI)、総再分類改善度(NRI)において、FRAXにTBSを組み合わせることにより予測精度に有意な改善がみられた。(IDI:0.006[p=0.0362]、NRI:0.452[p=0.0351])

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ドイツでは国家機関が新薬に関する評価を公表している(解説:折笠 秀樹 氏)-324

 2011年、ドイツでは新薬を上市する際に特別の書類(dossier)を提出するための法律を制定した。その法律はAMNOG(Act on the reform of the market for medicinal products)と呼ばれ、新薬に関する情報提供を促す法律である。また、その提出書類はIQWiG(ヘルスケアの質と効率に関する研究所)の協力の下に評価され、Federal Joint Committeeという国家機関が評価書類として公表している。なお、IQWiGという組織は2004年頃からあったようである。ちなみに、提出書類は平均446ページに及ぶ膨大な資料のようであり、また、評価書類のほうは平均83ページとみられる。ホームページでいろいろ調べたが、提出書類および評価書類の実物を見ることはできなかった。なお、書類はほとんどドイツ語で書かれているようである。 本研究では、2011年~2013年2月までに提出された書類を調査した。27件の書類があったが、ここでは15件の書類について調査された。AMNOGに則った書類では情報の報告率は90%に及んでいたが、そうでない公開された情報源(論文・登録情報など)ではわずか52%という結果であった。AMNOGには競合品との比較に関する情報も載っており、系統的レビュー(Systematic Review)や医療技術評価(Health Technology Assessment)に基づく報告も含まれているようである。さらに、最近流行のネットワークメタアナリシスという間接比較の統計手法を使った分析も見られるようである。 多くの国では、添付文書や企業提供のパンフレット・論文などを介し、医師や患者へ新薬の情報提供を行っている。しかしながら、これらの情報は患者にあまり関係のない項目も多く、またすべての情報がこれらから得られるわけではない。このドイツの事例のように、上市に当たって新薬に関する全情報を公表するようなシステムがあると良いだろう。ただし、これには膨大な労力が必要となるに違いない。それは製薬企業のみならず、審査当局も同様である。公平性を確認するような努力も必要となるし、比較有効性研究(Comparative Effectiveness Research)などを駆使することも求められる。かなり専門性が要求されるため、ドイツではこうした資料を作成するCRO(医薬品開発業務受託機関)も登場してきたようである。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第18回

第18回:高齢者における意図しない体重減少へのアプローチ方法監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 高齢者の体重減少は、外来でよく出会う愁訴の1つです。まず真っ先に思い浮かぶのは悪性腫瘍ですが、それ以外にも考えるべき鑑別診断がいくつかあります。外来ではまず、食事摂取がどの程度できているかを、その方の社会的背景を踏まえて評価するかと思います。また、疾患を見つけた場合に治療が可能かどうかを想像しながら、検査の適応を判断しなければいけませんが、非常に個別性が高く、毎回悩ましい問題だと感じています。 以下、American Family Physician 2014年5月1日号1)より意図しない体重減少は高齢者の15~20%に起こり、ADLの低下、病院内での疾病罹患率の上昇、女性の大腿骨頚部骨折、全死亡率の上昇の原因となる。有意な体重減少とは、6~12ヵ月以内に5%以上の体重減少があった場合、などと定義されるが、このような意図しない体重減少に関する適切な評価や管理のためのガイドラインは、現在、存在していない。しかし、もし存在したとしても、このような非特異的な病態に対する適切な検査を決定するのは難しいだろう。体重は通常60歳代をピークとして、70歳代以降は毎年0.1~0.2kgずつ減少する。それ以上の減少であれば、年齢相応の体重減少とは言えない。最もよくある理由としては、悪性腫瘍、非悪性の胃腸疾患、うつや認知症といった精神疾患であるが、全体の割合としては、非悪性の疾患が悪性腫瘍を上回っている。また、6~28%は原因不明である。(表1) 【表1:意図しない高齢者の体重減少】 悪性腫瘍(19~36%) 原因不明(6~28%) 精神疾患(9~24%) 非悪性の胃腸疾患(9~19%) 内分泌(4~11%) 心肺疾患(9~10%) アルコール関連(8%) 感染症(4~8%) 神経疾患(7%) リウマチ関連(7%) 腎疾患(4%) 全身性炎症疾患(4%) 鑑別の記憶法としては、MEALS‐ON‐WHEELS[「食事宅配サービス」の意味、(注1)]あるいは高齢者の9D's(注2)として覚える。薬剤の副作用もよくある原因だが、しばしば見逃される。多剤服薬は味覚に干渉するとみられ、食思不振を生じ、体重減少の原因となりうる。さらには貧困、アルコール問題、孤立、財政的制約などといった、社会的な要素とも体重減少は関連している。Nutritional Health Checklist(表2)は栄養状態を簡単に評価するツールである。各項目に当てはまれば、質問の後ろにある得点を加算し、合計得点を算出する。0~2点は良好、3~5点は中等度のリスク、6点以上はハイリスクである。 【表2:Nutritional Health Checklist】 食事量が変わるような病状がある 2点 食事の回数が1日2回より少ない 3点 果物、野菜、乳製品の摂取が少ない 2点 ほとんど毎日3杯以上のビール、蒸留酒、ワインを飲んでいる 2点 食べるのが困難になるほどの歯や口腔の問題がある 2点 いつも必要なだけの食料を購入するお金がない 4点 ひとりで食事をする事が多い 1点 1日3種類以上の処方か市販薬を服用している 1点 過去6ヵ月で4.5kg以上の予期しない体重減少がある 2点 いつも買い物や料理、自力での食事摂取を身体的に行えない 2点 推奨される一般的な検査としては、CBC、肝・腎機能、電解質、甲状腺機能、CRP、血沈、血糖、LDH、脂質、蛋白・アルブミン、尿酸、尿検査がある。また、胸部レントゲン、便潜血検査は行うべきであり、腹部超音波も考慮されても良いかもしれない。これらの結果が正常だとしても、3~6ヵ月間の注意深い経過観察が必要である。治療には食事、栄養補助、薬物療法などがあるが、研究結果がさまざまであったり、副作用の問題があったりして、体重減少がある高齢者の死亡率を改善するような明確なエビデンスのある治療法は存在しない。(注1:MEALS‐ON‐WHEELS)M:Medication effects(薬剤性)E:Emotional problems, especially depression(気分障害、とくにうつ)A:Anorexia nervosa; Alcoholism(神経性食思不振症、アルコール依存症)L:Late-life paranoia(遅発性パラノイア)S:Swallowing disorders(嚥下の問題)O:Oral factors, such as poorly fitting dentures and caries(口腔内の要因、たとえば合っていない義歯、う歯など)N:No money(金銭的問題)W:Wandering and other dementia-related behaviors(徘徊、その他認知症関連行動)H:Hyperthyroidism, Hypothyroidism, Hyperparathyroidism, andHypoadrenalism(甲状腺機能亢進および低下、副甲状腺機能亢進、副腎機能低下)E:Enteric problems; Eating problems, such as inability to feed oneself(腸管の問題;摂食の問題、たとえば手助けなしに一人では食べられないなど)L:Low-salt and Low-cholesterol diet(低塩分、低コレステロール食)S:Stones; Social problems, Such as isolation and inability to obtain preferred foods(結石;社会的問題、たとえば孤独、好きな食べ物を手に入れられないなど)(注2:高齢者の9D's)Dementia(認知機能障害)Dentition(歯科領域の問題)Depression(抑うつ)Diarrhea(下痢)Disease [acute and chronic](急性・慢性疾患)Drugs(薬剤)Dysfunction [functional disability](機能障害)Dysgeusia(味覚異常)Dysphagia(嚥下困難)※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Gaddey HL, et al. Am Fam Physician. 2014; 89: 718-722.

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アログリプチン、心不全リスク増大せず:EXAMINE試験の事後解析結果/Lancet

 2型糖尿病で直近に急性冠症候群(ACS)を発症した患者について、DPP-4阻害薬アログリプチン(商品名:ネシーナ)は心不全リスクを増大しないことが示された。フランス・ロレーヌ大学のFaiez Zannad氏らがEXAMINE試験の事後解析を行い明らかにした。同試験では、2型糖尿病で直近にACSを発症した患者の主要有害心血管イベント(MACE)について、アログリプチンがプラセボに対して非劣性であることが示された。しかし、他のDPP-4阻害薬試験で院内心不全の過剰な発生に対する懸念が報告され、研究グループは本検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年3月9日号掲載の報告より。EXAMINE試験を事後解析して心不全リスクを評価 EXAMINEは、2009年10月~2013年3月に49ヵ国898施設から被験者を登録して行われた多施設共同無作為化二重盲検試験であった。被験者は、2型糖尿病と直近15~90日以内にACSイベントを経験した患者で、糖尿病と心血管疾患予防のためアログリプチンまたはプラセボ+標準治療に無作為に割り付けられた。 事前規定の探索的拡張MACEエンドポイントは、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による緊急血行再建術、および心不全による入院であった。 事後解析では、心血管死亡と心不全入院について、試験開始時の心不全歴および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値により評価した。また、試験開始~6ヵ月時のN末端プロBNP(NT-pro-BNP)値の変化についても評価した。アログリプチンの心血管死亡と心不全入院の複合イベント発生はプラセボと同等 5,380例の患者が、アログリプチン群(2,701例)またはプラセボ群(2,679例)に割り付けられた。追跡期間は中央値533日(IQR:280~751日)であった。 探索的拡張MACEエンドポイントの発生は、アログリプチン群433例(16.0%)、プラセボ群441例(16.5%)の患者に認められた(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.86~1.12)。 初発の心不全入院の発生は、アログリプチン群とプラセボ群それぞれ85例(3.1%)、79例(2.9%)であった(HR:1.07、95%CI:0.79~1.46)。 事後解析の結果、心血管死亡および心不全入院の複合イベントへのアログリプチンの影響は認められず(HR:1.00、95%CI:0.82~1.21)、結果についてベースライン時のBNP値による違いはみられなかった。NT-pro-BNP値の変化は、両群とも有意かつ同等に減少した。

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抗うつ効果に文化的背景は影響するか

 大うつ病性障害(MDD)を有するラテン系アメリカ人は、非ラテン系白人と比べ、薬物療法へのアクセス、薬物治療開始、服用、治療維持など、どの定義においても、抗うつ療法の実施が低調である。こうした差異がみられる理由の1つとして、ラテン系アメリカ人の薬物療法に対する文化的適合性が低い可能性が挙げられる。そこで、南カリフォルニア大学のSylvanna M. Vargas氏らは、ラテン系アメリカ人のうつ病と抗うつ療法に対する認識を明らかにする調査を行った。その結果、うつ病を有していないラテン系アメリカ人には、うつ病およびその治療に対して批判的な意見があること、その一方、うつ病患者は抗うつ療法に関心はあるものの、薬物中毒や薬物依存への懸念があることがわかったという。著者は「ラテン系アメリカ人の抗うつ療法への関わり方を改善するには、処方医がそうした見解や懸念に着目していかなくてはならない」と指摘している。Transcultural Psychiatry誌オンライン版2015年3月3日号の掲載報告。 研究グループは、ラテン系アメリカ人のうつ病および抗うつ療法に対する見解を調査した。抗うつ療法を始めようとしているラテン系アメリカ人の外来患者30例に対し、半構造化された治療遵守および維持に関する質問票を用いて、初回治療前に質的インタビューを実施した。ベースラインでのインタビューは、ラテン系アメリカ人のうつ病外来患者の治療参加を高める新たな介入を検証する無作為化対照試験で収集されたデータより、ランダムに選択された。聞き取った内容はグラウンデッド・セオリーに基づくオープン・コーディングおよび反復解析的アプローチを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・患者は、彼らが同じ社会集団に属する非患者から受けるスティグマを気にかけていることが認められた。・大半の被験者はそうした見解に対して、うつ病の経験を説明することで直接的に反論した。・また、抗うつ療法についても明らかにスティグマを意識していたが、被験者はそうした見解に対しては反論しない傾向がみられた。むしろ、抗うつ薬に関する懸念を表出し、精神科医療を求めることへの葛藤が認められた。・一方で被験者は、抗うつ療法に対する懸念に対処するため臨床医と患者が協力する方法があることを示唆した。・薬物中毒や薬物依存への懸念といった文化的見解は、乗り越えられる治療障壁であると思われた。・処方を行う医師は、ラテン系アメリカ人の抗うつ療法への関与を改善するために、文化的見解や懸念に対処する必要があると思われた。関連医療ニュース 治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ うつ病患者とかかりつけ医、認識のギャップが浮き彫りに 呼称変更から10年、統合失調症患者へのスティグマを減らすためには:日医大  担当者へのご意見箱はこちら

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母親のFLG変異が、子のアトピーのリスクを高める

 疫学研究から、アレルギーのリスクはインプリンティング(遺伝子刷り込み)により母親から子へ遺伝することが示唆されている。アトピー性皮膚炎(AD)は、フィラグリン遺伝子(FLG)の機能喪失型変異による皮膚バリア機能の欠乏に起因する可能性が知られているが、ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のJorge Esparza-Gordillo氏らは、FLG突然変異の遺伝から独立して母親の遺伝子型の影響がみられることを明らかにした。母親における突然変異誘導性の全身免疫応答が、子のADリスクに影響している可能性を示唆している。PLoS Genetics誌2015年3月10日の掲載報告。 研究グループは、欧州における2つの家族研究(759家族および450家族)の検体を用い、欧州で最も一般的な4つのFLG突然変異(c.2282del4、p.R501X、p.R2447X、p.S3247X)について分析した。 主な結果は以下のとおり。・2つの独立した家族研究の両方において、4つのFLG突然変異のすべてについて、ADにおけるFLG遺伝の既知の役割を超える強力な母性FLG遺伝子型の影響が観察された。・全体としてFLG変異を保有している母親の子供は、ADのリスクが1.5倍に増加した。・FLG母性の影響は、母親がアレルギー感作を有する場合(アレルゲン特異的IgE抗体の血漿中濃度の上昇)のみ観察された。・母性の影響は、最近、ゲノムワイド関連解析により同定されたADで最も頻度が高い遺伝的リスク因子より強力であった。

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過剰診断についての情報を含むリーフレットを使うことは乳がん検診のインフォームド・チョイスの支援となるか(解説:山本 精一郎 氏)-323

 この論文は、過去2年間、乳がん検診を受けなかった者をランダムに2群に分け、片方にはリーフレットによって検診による死亡率減少効果と偽陽性についての情報を与え、もう片方にはそれに加えて過剰診断についての情報を、やはりリーフレットによって与えることによって、乳がん検診による知識が高まるか、検診を受けるかどうかのインフォームド・チョイスをする割合が高まるかを調べた研究である。結果、知識も上昇し、インフォームド・チョイスも上昇した。知識が上がった部分は、主に過剰診断に関する項目のおかげであり、インフォームド・チョイスによって検診を受けるという意図を持った者は、少し減少したという結果であった。 本研究は、リーフレットの開発、試験の実施、解析を含め、とてもきちんと実施された研究と読める。結果も非常にリーズナブル(というか当たり前とも思える結果)である。検診を受けるかどうかが強制でなく、本人がそのリスクとベネフィットを十分に理解したうえで、受けるかどうかを決定するほうがいいと、本研究の目標に対しても何の異論もない。ただ、わが国の状況と比較した際に、少し違和感を覚えるのも事実である。本稿には記載がないが、オーストラリアの乳がん検診受診率はOECD health data 2011によると、50~69歳で56%である。これに比べてわが国の乳がん検診受診率は、2013年の国民生活基礎調査のデータによると34%である。違和感の原因は、受診率がようやく30%を超えてきたわが国と、欧米諸国の中では低いものの、わが国に比べずいぶん受診率が高い国とでは課題が異なるからであろうか。この論文では、discussionに「がん検診に対する熱狂が大衆に広まる中で、その害に対する情報に抵抗があったのか、過去にはきちんと伝えられてこなかった」といった記載があるが、わが国には熱狂もなかったし、無料クーポンを配ってもあまり受診率が上がらなかったという現実もあった。不利益の前に、検診の有効性自体がきちんと伝わっているのかという思いさえある。 本論文の結果の解釈上注意すべき点を、わが国の問題と絡めて考える。どのように利益・不利益を伝えるかということは、その方法に強く依存するため、本研究で開発されたリーフレットと異なる方法で伝えれば、また違った結果となるかもしれない。本研究をそのまま鵜呑みにして、利益もきちんと伝えられていない中で、形式的に不利益も伝えるべきと主張することは、自らの免責のためというそしりを免れないのではないだろうか。また、わが国の例で、ピンクリボンキャンペーンなどにより、乳がん検診の認知度は上がったが、受診率はそれほど上がらなかったということもあり、認知と行動の間にはそれほど直接的な関係がないという証左もある。本研究も、受診意図ではなくて、実際に受診したかどうか、自分の意図に沿って、または反して受診した後に、どう感じたか(受けてはみたが受けなければよかった、受けたくないと思ったが受けてよかったということもあるかもしれない)についてもフォローアップ調査を行い、解析していただくと、より有効な洞察が得られるように思う。本論文では、正確な知識を持つことができていて、乳がん検診への態度と受診意図が一致したことをもって、インフォームド・チョイスができたとしているが、もっともっと理解すれば判断も変わるかもしれない。専門家の中でも過剰診断の捉ええ方には大きな開きがある。われわれのように毎日検診のことに取り組んでいる者でさえ、過剰診断について心底から理解することは難しく、受けるべきかどうか迷うことがあるのだから。 この研究のわが国へのimplicationとしては、きちんと作成したリーフレットによってがん検診の利益と不利益の両方を伝えれば、対象者のインフォームド・チョイスによって検診受診が決定されるということであろう。わが国の場合、そうすれば受診率は向上するかもしれない。いずれにしろ、受診意図が形成された者がきちんと検診受診につながるような誘導・環境整備が必要である。

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事例45 レボフロキサシン(商品名: クラビット)点眼液の査定【斬らレセプト】

解説事例では、レボフロキサシン(クラビット®)点眼液を外用投与したところA事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。「全身アトピー性皮膚炎であり、同皮膚炎による眼瞼部の炎症に対して処方したが、なぜ査定となったのか」と問い合わせがあった。同点眼液の添付文書を見てみる。適応症に、「眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、眼科周術期の無菌化療法」とある。薬効は広範囲抗菌点眼薬に分類される。感染が明らかか、著しく疑われる傷病名の記載が必要な薬剤である。全身アトピー性皮膚炎の病名では、炎症はあるが感染を来しているかの判断はできない。また、保険診療では予防投与はできない。したがって、適応外使用もしくは不適当使用と判断されて査定となったものであろう。このことを説明し、必要を認めて投与した場合には、全身アトピー性皮膚炎の他に感染性眼瞼炎などの感染が読みとれる傷病名もしくはコメントを付与していただくようにお願いした。

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TAVR後、1年アウトカムは?/JAMA

 米国・メイヨークリニックのDavid R. Holmes Jr氏らは、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)を受けた患者1万2,182例について、1年時点のアウトカムを発表した。全死因死亡は23.7%、脳卒中発生は4.1%であり、死亡と脳卒中の複合アウトカムの発生は26.0%であることが明らかにされた。新規医療デバイスに対しては臨床導入後、無作為化試験での結果とはアウトカムが異なるのではないかとの懸念がある。TAVRについてはこれまでに30日時点のアウトカムは報告されていたが、長期アウトカムについては不明なままであった。著者は、「今回の所見を、TAVRを受ける患者とのディスカッションに役立てるべきであろう」と述べている。JAMA誌2015年3月10日号掲載の報告。米国299病院、1万2,182例の患者データを分析 研究グループは、米国におけるTAVR後のアウトカムについて、以前に報告された30日時点のデータをアップデートし、1年時点での同結果を明らかにする検討を行った。 米国胸部外科学会/米国心臓病学会経カテーテル弁療法レジストリ(STS/ACC TVTレジストリ)データと、メディケア&メディケイドサービスセンター(CMC)の患者特異的診療報酬データを結び付けて分析した。2011年11月~2013年6月30日にTAVRを受けた、299病院、1万2,182例の患者データが組み込まれた。 2014年6月30日時点まで追跡し、1年アウトカムとして、死亡、脳卒中、再入院について多変量モデルを用いて評価した。全死因死亡23.7%、脳卒中4.1%、複合アウトカム発生は26.0% 患者は、年齢中央値84歳、女性は52%、STSの周術期死亡予測リスク(STS PROM)スコア中央値は7.1%であった。 TAVR後、大半の患者が自宅へと退院した(59.8%)。30日死亡は847例、7.0%(95%信頼区間[CI]:6.5~7.4%)であった。 TAVR後1年間で、患者が病院外で生存していた期間は中央値353日(IQR:312~359日)であった。なお、生存者のうち24.4%(2,074例)が1回再入院を、12.5%(1,525例)は2回再入院をしていた。 1年時点の全死因死亡率は23.7%(95%CI:22.8~24.5%、2,450例)であり、脳卒中発生率は4.1%(同:3.7~4.5%、455例)であった。死亡と脳卒中の複合アウトカムの発生率は26.0%(同:25.1~26.8%、2,719例)であった。 1年死亡と有意に関連していた特性は、より高齢であること(75歳未満との比較で95歳以上のハザード比[HR]:1.61、同85~94歳のHR:1.35、同75~84歳のHR:1.23)、男性(HR:1.21)、末期腎不全(HR:1.66)、重度のCOPD(HR:1.39)、非経大腿動脈アクセス(HR:1.37)、STS PROMスコア15%超vs. 8%未満(HR:1.82)、術前心房細動/心房粗動(HR:1.37)であった。また男性と比較して女性の脳卒中リスクが高かった(HR:1.40、95%CI:1.15~1.71)。

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去勢抵抗性前立腺がん治療、今後の課題は

 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対して、昨年わが国で3つの新薬が承認・発売された。これらの薬剤の特徴や注意点、さらに今後の治療戦略について、3月10日に東京都内で開催された第13回日本泌尿器科学会プレスセミナーにて、鈴木 啓悦氏(東邦大学医療センターさくら病院泌尿器科 教授)が紹介した。去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対する新規薬剤 CRPCに対する新規薬剤として、より強化されたホルモン療法を目指したエンザルタミド(商品名:イクスタンジ)とアビラテロン(同:ザイティガ)、ドセタキセル療法後の新規タキサン系化学療法薬であるカバジタキセル(同:ジェブタナ)がわが国で承認されている。また、国内では未承認であるが、免疫に作用する薬剤(ワクチン療法)であるSipuleucel-T、骨転移に対する薬剤である塩化ラジウム-223といった薬剤がある。エンザルタミドとアビラテロン エンザルタミドはアンドロゲン受容体をより強力にブロックすることにより、またアビラテロンはアンドロゲン産生を強力に低下させることにより効果を発揮する。 エンザルタミドとアビラテロンの2剤は、当初はドセタキセル治療後のみに適応であったが、現在はドセタキセル治療の前にも適応を取得している。 ドセタキセルには抗がん作用のみだけでなく、アンドロゲン受容体を抑える作用があることから、ドセタキセル・エンザルタミド・アビラテロンの3剤の間には交差耐性があることが明らかになってきている。この交差耐性のため、ドセタキセル治療後にエンザルタミドやアビラテロンを投与した場合、必ず効果があるわけではないという。 両剤の大規模臨床試験での全生存期間の延長効果は、ともにドセタキセル治療前で約1年~1年半、ドセタキセル治療後で約5ヵ月程度という。また、主な有害事象として、エンザルタミドでは全身倦怠感、食欲低下、まれに痙攣発作、アビラテロンでは低カリウム血症と肝機能障害に注意が必要である。なお、アビラテロンはプレドニゾロン併用が必須である。カバジタキセル エンザルタミドやアビラテロンで治療しても、3人に1人は効果がなく、3人に1人はしばらく経過後に効果がなくなってくるため、これらの患者に対する薬剤として、カバジタキセルが必要になってくる。カバジタキセルはエンザルタミド・アビラテロンと交差耐性がなく、海外ではよく使用されているという。 ただし、日本人の試験では重篤な好中球減少が100%、重篤な発熱性好中球減少症が55%発現しているため、注意が必要である。今後、持続型G-CSF製剤の予防投与で副作用の回避が期待できるが、やはり注意が必要という。個々の患者に応じた治療へ 最後に鈴木氏は、現在の前立腺がん治療薬について、「従来のホルモン製剤とドセタキセルのほかにエンザルタミドとアビラテロンが発売されたが、これら2剤とドセタキセルには交差耐性があるため、必ずしもそれぞれの薬剤が効果を示すわけではない。これら3剤に効果のない患者に対してカバジタキセルが期待されているが、副作用のマネジメントという点で注意が必要である」と述べた。そのうえで、「よい薬剤を、よいタイミングで、適切な患者に、適切な手順で使用されることが今後の課題である」と指摘した。

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カマンベールチーズ 認知症予防に効果あり?

 キリン株式会社の基盤技術研究所は、小岩井乳業株式会社、東京大学大学院 農学生命科学研究科と共同で、乳製品のアルツハイマー病予防効果を調べるため、アルツハイマー病モデルマウスを用いて実験を行った。その結果、カマンベールチーズの摂取がアルツハイマー病の予防に役立つ可能性があることを発表した。本研究の成果は、PLoS One誌2015年3月11日号で2報にわたる論文として掲載されている。 チーズなどの発酵乳製品を摂取することにより老後の認知機能低下が予防されることは、疫学の分野ですでに報告されていたが、認知症への予防効果のメカニズムや有効成分は不明だった。今回の研究ではこの点に着目し、市販のカマンベールチーズの摂取によるアルツハイマー病への効果を検証した。 その結果、アルツハイマー病モデルマウスにカマンベールチーズから調製した餌を摂取させると、脳内のアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの沈着が有意に抑制され、脳内の炎症状態が緩和されることが認められた。 さらに、有効成分としてカマンベールチーズにオレイン酸アミド※1とデヒドロエルゴステロール※2が含まれていることが確認された。これらの成分は、乳の微生物による発酵過程で生成されたと考えられる。※1 オレイン酸アミド…アミド基を有する脂肪酸で、睡眠関連物質として発見されている。脳内のアミロイドβなどの老廃物を除去する役割を担うミクログリアと呼ばれる細胞を活性化しながら、抗炎症活性を示す。※2  デヒドロエルゴステロール…菌類の細胞膜の構成成分であるステロールの一種。 抗炎症活性を示す。詳細はプレスリリースへ

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神経難病へのメマンチンの可能性:群馬大

 脊髄小脳変性症1型(SCA1)はSca1遺伝子内にあるCAGリピートの伸長を原因とする進行性の神経変性疾患である。SCA1症状の発症機序は明確になっていないが、ニューロンの異常活性が、この疾患の特徴であるニューロン細胞死の一因となっている可能性が高い。群馬大学の飯塚 朗氏らは、SCA1ノックイン(KI)マウスにN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)のメマンチンを長期経口投与し、SCA1の発症メカニズムについて検討した。その結果、マウスの体重減少抑制と生存期間の延長が認められ、SCA1の発症にNMDAR異常活性が関与している可能性を示唆した。Neuroscience Letters誌オンライン版2015年2月25日号の掲載報告。 本研究では、SCA1 KIマウスを用いて、低親和性非競合的NMDARアンタゴニストのメマンチンを投与し、SCA1発症過程にシナプス領域外NMDAR活性が関与している可能性について検討した。 主な結果は以下のとおり。・KIマウスでは、ataxin 1遺伝子上のエクソンが異常伸長154CAGリピートと置換されている。・SCA1 KIマウスに生後4週から死亡するまでメマンチンを経口投与したところ、体重減少の抑制と寿命の有意な延長が認められた。・さらに、メマンチンは小脳内のプルキンエ細胞および迷走神経背側運動核にある運動ニューロンの減少を有意に抑制した。・プルキンエ細胞と運動ニューロンはどちらも運動機能や副交感神経の機能に不可欠なものである。これらの結果はシナプス領域外NMDARの異常活性がSCA1 KIマウスのニューロン細胞死に関与することを裏付けるものであり、メマンチンが人間のSCA1患者に対し治療効果を有することも示唆している。関連医療ニュース マグネシウム摂取と脳内NMDA受容体の関与が明らかに 2つのNMDA受容体拮抗薬、臨床像はなぜ異なるのか ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度?  担当者へのご意見箱はこちら

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ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)-322

 わが国と同様、世界の先進国は超高齢化社会を迎えている。一方において、各国は主要な疾患に対してガイドラインを制定して、標準的治療の推進を呼びかけているという事実がある。実は、この2つは大きな矛盾も抱えているのである。すなわち超高齢化社会の最大の特徴は多様性であり、画一的な集団での研究から得られた臨床研究の結果であるガイドライン、あるいは標準的治療とは必ずしもそぐわないのである。 NICEガイドラインは、イギリスの国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence)によって策定された治療指針であり、治療法や臨床運用のみでなく、それぞれの医療技術の費用対効果も盛り込むなど、世界的に最も洗練された評価の高いガイドラインである。 超高齢者では腎機能障害を有する例が多いことと、多疾患であることも特徴であり、この点は高齢者で薬物治療を行うに当たって最大の注意を払うべきポイントである。 本論文は、NICEが策定した12のガイドラインのうち、高齢者に多い2型糖尿病、心不全、うつ病の3疾患と、11の一般的症状または併存疾患との関連について、薬剤誘発性疾患あるいは薬物間相互作用を詳細に分析した報告である。 その結果によると、重篤な薬物-疾患相互作用や薬物間作用についての記述は数多く認められてはいるものの、強調されているとはいえないとして、ガイドライン作成者は他疾患を併存する場合を想定した、薬物相互作用あるいは薬物誘発性疾患について系統的アプローチを考慮すべきと結論付けている。 翻ってわが国の、たとえば「高血圧治療ガイドライン2014」をみてみると、薬物相互作用についての記載はごくわずかであり、きわめて一般的なことに限定されており、腎機能障害などとの関連についての記載は非常に乏しい。 とくに最近登場した新規抗凝固薬(NOAC)や、新規糖尿病治療薬による有害事象が頻発しているが、ガイドラインでは、これらの新薬に関して腎機能との関連や薬物相互作用にはもっとページを割くべきであった。

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