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SFTSに気を付けろッ!その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

タイトル募集中ケアネットをご覧の皆さま、はじめまして。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那と申します。感染症医であり感染症全般の診療をさせていただいておりますが、そのなかでも専門は新興再興感染症であります。この連載では日本を取り巻く新興再興感染症について、時にまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと書き綴っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。さて、本連載のタイトル「新興再興感染症に気を付けろッ!」ですが、いったい何に気を付ければいいのかまったく伝わってこない漠然としたタイトルであり、私が5秒で考えたタイトルであるとバレバレかもしれませんが、時間もありませんので(なぜならすでにこの原稿は締め切りを過ぎているのですッ!)とりあえずこのタイトルで進めていきたいと思います。ほかによいタイトルがあれば積極的に変えていきたいと思いますのでぜひご教示ください。最近流行の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)第1回目となる今回は「SFTSに気を付けろッ!」ということで、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の謎に迫りたいと思います!メディアでも大きく報道されたのでSFTSという感染症については、ご存じの方も多いと思いますが、SFTSが最初に報告されたのは中国でした。2007年頃からこの感染症の存在が知られはじめ、2011年にはブニヤウイルス科フレボウイルス属であるSFTSウイルスによる感染症であることが報告されました1)。クリミア・コンゴ出血熱に類似した臨床像であり、致死率も高い疾患であることが明らかになるにつれ「中国におっかないウイルスがいるなあ……」と思っていたところ、なんとなんと2013年1月には日本の山口県でSFTS患者が報告されました。日本でも(広義の)ウイルス性出血熱が……。その後、次々と日本国内でSFTS患者が報告され、これまでに西日本を中心に110例が報告されています2)(図1)。画像を拡大するSFTSは主にタカサゴキララマダニとフタトゲチマダニによって媒介されるダニ媒介感染症と考えられています。ちなみに図2がフタトゲチマダニです。これは私が趣味のダニ狩りにいった際に撮ったものです。症例の発生はマダニの活動期に一致して春から夏にかけて多く報告されています。画像を拡大するSFTSの症状と治療SFTSの臨床症状ですが、SFTSウイルスに感染すると6~14日の潜伏期を経て発熱、消化器症状(嘔吐、下痢、腹痛など)、頭痛、筋肉痛などの症状で発症します。意識障害や失語などの神経症状、下血などの出血症状がみられることもあります。PCRによるSFTSウイルス遺伝子の検出によって診断されます。2013年1月に厚生労働省から「SFTSの症例定義」なるものが発表され(表)、この1~7をすべて満たす症例に関して全国の医療機関に情報提供の依頼がなされていますが、診断のためには必ずしもこれらすべてを満たす必要はなく、実際にこれらすべてを満たさなくてもPCRでSFTSウイルスが検出され、診断されている事例もあります。診断のためというよりも、参考程度に使うという理解でよろしいかと思いますが、自治体によっては症例定義を満たさないと検査してくれないところもあるようです。画像を拡大する治療は支持療法が中心です。これまでの日本での致死率は29%と高く、恐ろしい感染症です。さて、このSFTS、いまだによくわかっていないことがいくつかあります。この「新興再興感染症に気を付けろッ!」では、SFTSに気を付けるために2回にわたってSFTSに潜む謎に深く切り込む予定です。とりあえず急に頑張り過ぎるとろくなことがありませんので、今日のところはこのくらいで……次回に続きます。1)Yu XJ, et al. N Engl J Med. 2011;364:1523-1532.2)国立感染症研究所. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS).(参照 2015.3.27)

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85)インスリン分泌がどこからされるか、クイズで説明【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師世界で一番小さな島はどこか、知っていますか? 患者「ツバル」ですか? 医師残念、その島は人間の身体の中にあります。 患者人間の身体の中にある!? 医師そうです。膵臓の中にある「ランゲルハンス島」です。 患者ランゲルハンス島!? 医師顕微鏡でみると島のようにみえます。この島からインスリンが分泌されているんです。 患者ハハハ。水没しないように島を大事にしないといけないですね。 *「ツバル」オセアニアにある国家でバチカンに次いで小さな島国。温暖化の影響で海に水没する危機にある。●ポイントユーモアを交えて、ランゲルハンス島とインスリン分泌の関係について説明

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医療事故調査制度の注意点とその対策

 2015年10月より「医療事故調査・支援センター」にて、医療事故調査が行われることが決定した。この制度の目的は、「医療安全の確保」であるが、その事故調査報告書が、民事・刑事訴訟で使用されるとも限られず、運用が懸念されている。今回のシンポジウムでは、医療事故調査制度の実務上の注意点と対策を話し合うために開催される。【プログラム概要】テーマ 「医療事故調査制度に向けての実務上の注意点とその対策」期 日  2015年4月19日(日)9:00~13:00 開催場所 昭和大学病院 入院棟地下1階 臨床講堂プログラム内容 ●開会の挨拶  有賀 徹(昭和大学病院 病院長・全国医学部長病院長会議      「大学病院の医療事故対策委員会」委員長) ●あるべき医療事故調査制度とその限界   セッション1 米村 慈人(東京大学大学院 法学政治学研究科 准教授)   セッション2 井上 清成(井上法律事務所) ●医療事故調査制度の施行に係る検討会を振り返って   セッション3 小田原 良治(日本医療法人協会 常務理事)   セッション4 田邉 昇(中村・平井・田邉法律事務所) ●これから始まる医療事故調査制度における実務上の注意点  医療従事者の生命、健康、人権保護の重要性   セッション5 佐藤 一樹(いつき会 ハートクリニック 院長)   セッション6 大磯 義一郎(浜松医科大学 医学部 教授) ●ディスカッション  事例をもとに医療事故調査の実務上の注意点とその対策を検討 ●閉会の挨拶 有賀 徹※なお事前登録はなく、無料でのシンポジウムとなる。当日、上記の会場にご参集いただきたい。■関連リンク『MediLegal 医療従事者のためのワンポイント・リーガルレッスン』

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中心静脈カテーテル 感染予防に有効な消毒薬は

 血液内科領域の患者における中心静脈カテーテル挿入部位の皮膚消毒にはどの消毒液を使用すればよいのだろうか。福島県立医科大学の山本 夏男氏らは、1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノールと10%ポビドンヨードの効果を比較した。その結果、1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノールのほうがより効果的であることがわかった。American Journal of Infection Control誌2014年5月号(オンライン版2014年3月18日)の掲載報告。 著者らは、前向き研究により、血液内科における中心静脈カテーテル長期留置患者を対象とし、1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノールと10%ポビドンヨードの皮膚消毒効果について比較を行った。 主な結果は、以下のとおり。・1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール使用群と10%ポビドンヨード使用群のCVCコロニゼーション発生率はそれぞれ11.9%、29.2%であった。・カテーテル関連血流感染の発生率は、1,000カテーテル日当たりそれぞれ0.75件、3.62件であった。

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「阿部式BPSDスコア」は軽度~中等度の認知症のBPSD評価に有用:岡山大

 岡山大学の阿部 康二氏らは、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を評価する「阿部式BPSDスコア(Abe's BPSD score:ABS)」を開発し、スコアの有用性について、標準的BPSDスコアであるneuropsychiatric inventory(NPI)と比較検討した。その結果、NPIスコアと良好な相関性が示され、より短時間で評価でき、評価者間信頼性も高いことが明らかになった。結果を踏まえて著者は「阿部式BPSDスコアは軽度~中等度の認知症患者のBPSDの評価に有用である」と報告している。Neurological Sciences誌2015年1・2月号の掲載報告。阿部式BPSDスコアは評価が完了するまでの時間を有意に短縮 BPSDは、認知障害とともに認知症患者の大半でみられる重要な側面である。阿部氏らは、簡易なBPSD評価の開発に取り組んだ。まず、認知症介護者協会のメンバー全員(129例)に調査表を送り、地域における臨床的サーベイを行った。その後、10項目から成る新たなBPSDスコアを作成した。同スコアをNPIスコアと比較し、相関性(認知症792例)、スコア評価が完了するまでの時間(認知症136例)について検討した。また、評価者間信頼性について、主介護者・従介護者(70例)間でスコアを比較して調べた。 阿部式BPSDスコアの有用性についてNPIと比較検討した主な内容は以下のとおり。・阿部式BPSDスコアは、地域の介護者に対する臨床的サーベイに基づき作成された。・各BPSD評価項目は、頻度や重症度に基づき4段階(配点は最大1~9点)で評価し、BPSDの一時的発生を考慮に入れたものとなった。・阿部式BPSDスコアは、主介護者により44点満点で評価された。・認知症792例(78.6±7.0歳、MMSEスコア:19.0±5.9)で評価したNPIスコアとの相関性は良好であることが示された(r=0.716、p<0.01)。・認知症136例で評価したスコア評価が完了するまでの時間は、NPIスコア132.7±94.0秒に対し、阿部式BPSDスコアはわずか56.8±38.8秒で有意な短縮が認められた(p<0.01)。・主・従介護者の評価者間信頼性は高かった(r=0.964、p<0.01)。主介護者と従介護者の阿部式BPSDスコアの差はわずかであった(0.877倍)。・阿部式BPSDスコアは迅速かつ簡便にBPSDを評価する新しい検査法で、NPIと良好な相関性を示した。時間も短縮でき、評価者間信頼性も高かった。・阿部式BPSDスコアは、軽度~中等度の認知症患者のBPSD評価に有用である。関連医療ニュース 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット BPSD治療にベンゾジアゼピン系薬物治療は支持されるか 認知症のBPSD改善に耳ツボ指圧が効果的  担当者へのご意見箱はこちら

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末期腎臓病への腎代替療法が急増中/Lancet

 2010年に、末期腎臓病(end-stage kidney disease)で腎代替療法(renal replacement therapy:RRT)を受けていた患者は世界で260万人以上に上り、2030年にはこれが倍以上に増加する可能性があることが、オーストラリア・シドニー大学のThaminda Liyanage氏らの検討で示された。末期腎臓病は世界的に発症率が高く、主要な死亡原因であり、今後、数十年で有病率およびRRTの施行数が急激に増加すると予測されている。患者へのサービス供給戦略を確立するには、疾病負担やRRTの施行状況を知り、将来のRRTの需要を予測する必要がある。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告より。末期腎臓病の疾病負担やRRT施行状況を推定して将来の傾向を予測 研究グループは、末期腎臓病の疾病負担やRRTの施行状況を定量的に推定し、将来の傾向の予測を目的に、文献の系統的レビューを行った(Australian National Health and Medical Research Councilの助成による)。末期腎臓病は、維持透析の継続または腎移植を要する腎不全と定義した。RRTは、短期的透析を除く血液または腹膜透析による維持透析および腎移植とした。 医療文献データベース(Medline)で観察研究や腎臓レジストリを検索し、さらに各地域の専門家と連絡を取り、未発表データを含む末期腎臓病のRRT施行データを収集した。ポアソン回帰モデルを用いて国別のRRTの施行数を算出した。RRTを必要とする腎臓病患者数と実際の施行数の乖離を推算し、2030年までの必要例数を予測した。アジアで末期腎臓病のRTT非施行による死亡が多く急激に増加の予測 18編の論文などから、123ヵ国と台湾、香港のデータが得られた。これは世界の人口の93%に相当した。2010年の末期腎臓病のRRT施行例数は世界で261万8,000人であり、このうち205万人(78%)は透析を、残りは腎移植を受けていた。 同年のRRTを要する腎臓病患者数は、最低でも490万2,000人、最高では970万1,000人と推算された。RRTを受けられないことが原因で死亡した可能性がある腎臓病患者数は、少なくとも228万4,000人、多い場合は708万3,000人と推定された。 この予防可能な死亡の負担のほとんどを、低所得国と中所得国が負っていた。すなわち、RRTを要するが受療していない腎臓病患者の数は低所得国で多く、とくにアジアは190万7,000人にも上り、次いでアフリカが43万2,000人であった。 2030年までに、末期腎臓病のRRT施行例数は543万9,000人に達し、2010年の2倍以上になると予測された。なかでもアジアは2010年の96万8,000人から2030年には216万2,000人へと最も増加すると推定された。 著者は、「多数の末期腎臓病患者がRRTを受けており、受療できずにいる患者も相当数に上ることがわかった。低コストの治療法の開発とともに、効果的な地域住民ベースの予防戦略を実行に移す必要があることが示された」と結論している。

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エボロクマブ追加でLDL-Cが長期に減少/NEJM

 脂質異常症の標準治療に新規のLDLコレステロール(LDL-C)低下薬であるエボロクマブ(承認申請中)を追加し約1年の治療を行うと、標準治療単独に比べLDL-C値が有意に減少し、心血管イベントが抑制されることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S Sabatine氏らOSLER試験の研究グループの検討で明らかとなった。エボロクマブは、前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であり、短期的な臨床試験でLDL-C値を約60%減少させることが確認されていた。NEJM誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。12件の親試験の第II、III相別の延長試験を統合解析 OSLER試験は、エボロクマブに関する12の親試験(parent study、第II相:5件[日本のYUKAWA-1試験を含む]、第III相:7件)を完遂した患者を対象とする延長試験であり、本薬の長期的な有用性の評価を目的に、OSLER-1試験(第II相試験)とOSLER-2試験(第III相試験)に分けて検討が行われた(Amgen社の助成による)。親試験には、脂質異常症治療薬未使用例、スタチン±エゼチミブ投与例、スタチン不耐容例、ヘテロ型家族性高コレステロール血症例などが含まれた。 被験者は、親試験での割り付けとは別に、標準治療+エボロクマブまたは標準治療のみを施行する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。エボロクマブは、OSLER-1試験では2週ごとに140mgが皮下投与され、OSLER-2試験では2週ごと140mgと月1回420mgのいずれかを患者が選択した。 脂質値、安全性および事前に規定された探索的解析として心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建術、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全)の評価を行い、2つの試験の統合解析を実施した。 2011年10月~2014年6月までに4,465例(OSLER-1試験:1,324例、OSLER-2試験:3,141例)が登録され、エボロクマブ群に2,976例(平均年齢57.8歳、男性50.1%、LDL-C中央値120mg/dL)、標準治療単独群には1,489例(58.2歳、51.4%、121mg/dL)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は11.1ヵ月であった。LDL-C値が61%減少、心血管イベントは53%減少 12週時のLDL-C値は、エボロクマブ群が48mg/dLであり、標準治療単独群の120mg/dLと比較した減少率は61%であった(p<0.001)。OSLER-1とOSLER-2試験の間に減少率の差はなかった。また、このエボロクマブ群のLDL-C値の減少は48週まで持続した(24週の減少率:59%、36週:54%、48週:58%、いずれもp<0.001)。 12週時に、エボロクマブ群の90.2%がLDL-C値≦100mg/dLとなり、73.6%が≦70mg/dLを達成した。標準治療単独群はそれぞれ26.0%、3.8%だった。 12週時の非HDL-C、アポリポ蛋白B、総コレステロール、トリグリセライド、リポ蛋白(a)は、LDL-Cと同様にエボロクマブ群で有意に減少した(いずれもp<0.001)。また、HDL-Cとアポリポ蛋白A1は有意に増加した(いずれもp<0.001)。 有害事象はエボロクマブ群の69.2%、標準治療単独群の64.8%に認められ、重篤な有害事象はそれぞれ7.5%、7.5%に発現した。神経認知障害(せん妄、認知/注意障害、認知症、健忘症など)はエボロクマブ群で多くみられた(0.9 vs. 0.3%)が、治療期間中のLDL-C値とは関連がなかった。 エボロクマブによる治療中止は2.4%、注射部位反応は4.3%に認められ、そのほか関節痛や頭痛、四肢痛、疲労感が標準治療単独群よりも多くみられた。 1年時の心血管イベントの発症率は、エボロクマブ群が0.95%であり、標準治療単独群の2.18%に比し有意に低かった(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.28~0.78、p=0.003)。 著者は、「61%というLDL-C値の減少率は、既報の短期的な試験と一致しており、48週にわたる効果の持続はより小規模な試験(DESCARTES試験)の結果と一致した。他の脂質に対する効果にも既報との一貫性が認められた」としている。

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SCOT-HEART試験:冠動脈疾患による狭心症が疑われる症例への冠動脈CT検査(解説:近森 大志郎 氏)-342

 冠動脈CT(CTCA)は外来で非侵襲的に実施できることから、本検査の日常臨床への広がりに伴い、虚血性心疾患が疑われる患者に対する、より良い診断アプローチの中心となることが期待されている。スコットランドの12の胸痛クリニックを中心としたSCOT-HEART試験の研究者たちは、有症状で狭心症が疑われる4,146例を対象にして、クリニックでの初期診療の後に無作為に2群(通常診療群 対 通常診療+CTCA群)に割り付けた。試験のエンドポイントは、冠動脈疾患による狭心症の診断についての確実性という、かなり主観性の強い評価項目である。しかも、Yes、Probable、Unlikely、No、と定義された診断の確実性について、初期診察時の確実性が6週後にどのように修正されたかという医師の認識に関する評価である。 対象症例の平均年齢は57歳で、男性が57%と多く、高血圧34%、糖尿病11%、脂質異常症53%、喫煙53%という冠危険因子の頻度であった。なお、症状として胸痛を訴えてはいるが、狭心症としては非典型的胸痛、あるいは非狭心症と判断された症例が65%と高率である。対象群の85%で運動負荷心電図が実施されて、62%が正常、15%が異常の結果を示した。この初期検査結果に基づき、主治医は診断の確実性を4つのカテゴリー(Yes 7%、Probable 29%、Unlikely 51%、No 13%)に判断した。そして、必要に応じて、負荷心エコー(31%)・核医学検査(9%)・侵襲的冠動脈造影(12%)の診断計画を立案した。この後、CTCA群では3つの画像センターでCT検査を実施している。 6週間後にこれらのデータを主治医が再評価して診断の確実性を見直したところ、CTCA群において冠動脈疾患による狭心症の診断頻度は変化しなかったが、確実性については相対リスク1.79と増加を認めた。すなわち、通常診療群では6週間で1%しか診断が変わらなかったのに対して、CTCA群では23%で診断が修正されたことになる。この結果、CTCA群では121例で機能的検査の予定がキャンセルされ、29例での侵襲的冠動脈造影もキャンセルされた。これに対して、94例の新たな冠動脈造影が予定された。さらに、1.7年の経過観察中に有意差はないものの、CTCA群では通常診療群と比較して相対的に38%の心事故低下を認めた。 本研究は、クリニックを中心とした実地診療に携わる医師が画像センターとタイアップすることによって、冠動脈疾患による狭心症の診断精度とマネジメントを向上できることを示した興味深い研究である。しかしながら、スコットランドという特定の地域の医療事情も無視することはできない。一般に英国の通常の医療は無償である一方、救急救命を除く医療へのアクセスが悪いことはよく知られている。受診までに長期の待ち期間を必要とするのである。初診から6週間経過しても、次の検査が実施されていないことは日本では稀であろう。多分、重症例では冠インターベンション治療も終了しているのではないか? このように考えると、CTCAの役割は画像診断としての科学的側面だけではなく、それが活かされるか否かについては、それぞれの地域における医療制度の適合性も無視することはできないと思う。

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期外収縮の患者さんへの説明

期外収縮監修:公益財団法人 心臓血管研究所 所長 山下 武志氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.期外収縮とは?通常のリズム以外に心臓の収縮が出現するものです。最もよくみられる不整脈で、ほとんどの健康な人が持っているといわれています。期外収縮では、通常の場所(洞結節)以外の場所(心房や心室)から異常な電気刺激が発生します。通常の心臓はこのように興奮が伝わりますが…①洞結節①洞結節②房室結節②房室結節③ヒス束③ヒス束④左脚④脚④右脚⑤プルキンエ線維プルキンエ線維心房期外収縮心室期外収縮異常な電気刺激が心房で発生したものを心房期外収縮、心室で発生したものを心室期外収縮といいます。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.期外収縮とは?◆通常の心臓はこのように興奮が伝わり、規則正しく収縮しますが…トントントントン◆期外収縮では正常よりも早いタイミングで心臓が収縮します。トント、トントントン多くの方は無症状ですが、「脈が飛ぶ」「一瞬胸がつかえる」と表現される方もいます。この余分な収縮は非常に小さいため、脈が抜けたように感じることがあります。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.心房の収縮心室の収縮(脈)期外収縮とは?◆心房期外収縮は健康成人の90%以上に、心室期外収縮は50%近くにみられるといわれています。◆双方とも命に悪影響を及ぼす不整脈ではないため、放置しても問題となりません。治療しないのが基本的な考え方です。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.生活上の注意◆とくにありません。他の人たちとまったく同じです。◆それでも、症状が気になり日常生活の妨げになるような場合は、睡眠不足、ストレス、アルコール、カフェインなどを除くよう生活改善をします。◆生活改善を行っても症状が気になる場合は、薬物療法を行い、症状を少なくします。Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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親の年齢とADHDリスク

 親の年齢と精神障害との関連性を示す研究が増加しているが、注意欠如/多動症(ADHD)との関連については矛盾した結果が出ている。今回、フィンランド・トゥルク大学Roshan Chudal氏らは、出生時の親の年齢がADHDと関連しているかどうかをコホート内症例対照研究で検討した。その結果、ADHDは出生時の父親または母親の年齢が若いことと関連していた。著者らは「医療者は若い親と協力し、子供のADHDのリスク増加に注意すべき」としている。Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry誌オンライン版2015年3月26日号に掲載。出生時の母親の年齢が高いほどADHDは少なかった 本研究では、全国の集団ベースの登録から、1991~2005年にフィンランドで生まれ、1995~2011年にADHDと診断された1万409人と、性別・誕生日・出生地でマッチさせた対照3万9,125人を同定した。出生時の親の年齢と子供のADHDとの関連性について、条件付きロジスティック回帰を用いて調べた(親の精神疾患の既往、母親の社会経済的地位、婚姻状況、妊娠中の母親の喫煙状況、過去の出産回数、妊娠週数に対する出生時体重を潜在的な交絡因子として調整)。 出生時の親の年齢とADHDとの関連について調べた主な結果は以下のとおり。・子供の出生時に父親の年齢が20歳未満だった場合、25~29歳の場合と比較して、子供のADHDリスクは1.5倍増加した(OR 1.55、95%CI:1.11~2.18、p=0.01)。同様に母親の年齢が20歳未満だった場合ではリスクが1.4倍増加した(OR 1.41、95%CI:1.15~1.72、p=0.0009)。・出生時の母親の年齢が高いほどADHDは少なかった(OR 0.79、95%CI:0.64~0.97、p=0.02)。

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ピタバスタチンの糖尿病への影響は?:メタ解析結果発表

 興和株式会社は4月8日、3月22日~25日にイギリス・グラスゴーで開催された「第83回 欧州動脈硬化学会」のポスターセッションにおいて、高コレステロール血症治療剤「ピタバスタチン」(商品名:リバロ錠/リバロOD錠)の糖代謝に対するメタ解析の結果が発表されたことを報告した。ピタバスタチンは糖尿病の新規発症を増加させなかった 今回の発表は、国内外の非糖尿病患者におけるピタバスタチンのランダム化比較試験をメタ解析することにより、ピタバスタチンの空腹時血糖、HbA1c、糖尿病新規発症への影響を検討したもの。その結果、対照群(プラセボ、または他のスタチン系薬剤投与)と比較して、ピタバスタチンは、空腹時血糖およびHbA1cに悪影響を与えることはなく、糖尿病の新規発症を増加させることもなかったという。 詳細は興和のプレスリリース(PDF)へ

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乳房生検、病理医による診断の精度は?/JAMA

 乳房生検について、病理医による診断vs. 参照診断の一致率は75.3%であったことが、米国・ワシントン大学のJoann G. Elmore氏らにより報告された。検討は、病理医115人が行った240症例のスライド標本の診断6,900件について、3人のエキスパート病理医から成るコンセンサスパネルが下した診断との一致を調べて行われた。一致率は、浸潤がんで高く、非浸潤性乳管がん(DCIS)や異型過形成では低いことも判明した。結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、これら一致率と患者マネジメントとの関連について理解をする必要がある」と述べている。乳房の病理診断の結果は、治療やマネジメント決定の根拠となるが、その精度については十分に解明されていなかった。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。エキスパートのコンセンサスパネルとの一致率を調査 検討は、病理医とコンセンサスパネルの診断とを比較してその不一致度を定量化すること、患者と病理診断医の特徴を評価することを目的とし、米国内8州の臨床現場で乳房生検の病理診断を行っている病理医に参加を呼びかけて行われた。参加者はそれぞれ2011年11月~2014年5月に、60個の乳病生検のスライド標本セット(総計240症例、1症例ごとに1つのスライド標本)を診断した。症例には浸潤性乳がん23例、DCIS 73例、異型過形成72例、良性72例が含まれていた。 参加病理医に対して、他の病理医やコンセンサスパネルの診断については知らされなかった。 コンセンサスパネルにおける病理診断の一致率は75%で、コンセンサスにより導き出された参照診断率は90.3%であった。 主要評価項目は、参照診断との比較による過剰診断率および過小診断率とした。診断数が少ない、従事現場が小規模、非アカデミックで不一致率が高い 691例の病理医に参加を呼びかけ、適格基準を満たし承認を得ることができた65%が試験に参加した。そのうち91%(115人)が試験を完了し、6,900件の診断が提出された。 参照診断と、試験参加病理医診断との全一致率は75.3%(95%信頼区間[CI]:73.4~77.0%、5,194/6,900件)だった。浸潤がん症例(提出診断663件)は、一致率は96%で、不一致の4%は過小診断例だった。DCIS症例(2,097件)は、一致率84%で、3%が過剰診断、13%が過小診断だった。異型過形成(2,070件)は、一致率48%で、17%が過剰診断、35%が過小診断だった。また、異型過形成のない良性症例(2,070例)は、一致率87%で、13%は過剰診断だった。 参照診断との不一致は、先行して行われたマンモグラフィにおける乳腺濃度が高値の患者(122例)のほうが、低値の患者(118例)と比べて統計的に有意に高かった(全一致率は73% vs. 77%、p<0.001)。 また、不一致率が統計的に有意に高かった病理医の特徴として、1週間に行う病理診断数が少ない(p<0.001)、規模の小さな臨床現場(p=0.034)や非アカデミックな現場(p=0.007)に従事していることが示された。

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重症大動脈弁狭窄へのTAVR、5年転帰良好/Lancet

 手術非適応の重症大動脈弁狭窄(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)vs. 標準治療を検討した無作為化試験PARTNER1の5年アウトカムが、米国・クリーブランドクリニックのSamir R Kapadia氏らにより報告された。TAVRの有益性が示され、著者は、非手術適応患者の生存および機能を改善するためにTAVR施術の検討を強化すべきであると提言している。また、患者の適切な選択により、TAVRの有益性を最大限に引き出すことになり、重篤な併存疾患による死亡を抑制することにもつながるだろうと述べている。すでにPARTNER試験の早期評価の結果で、TAVRが重症AS患者で手術非適応の患者について忍容性のある治療であることは報告されているが、より長期の臨床アウトカムに関する情報は限定的であった。Lancet誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。TAVR群vs. 標準治療の無作為化試験PARTNER PARTNER試験は、カナダ、ドイツ、アメリカの経験症例豊富な21ヵ所の弁膜症治療センターで、重症AS患者をTAVR施術群または標準治療(バルーン大動脈弁形成施術を含む)群に無作為に割り付けて行われた。 主要アウトカムは、intention-to-treat分析による1年時点の全死因死亡率であった。本検討で研究グループは、事前規定の5年時点の評価を行った。5年時点の全死因死亡リスク、TAVR群71.8%、標準治療群93.6% 2007年5月11日~2009年3月16日に3,015例に対してスクリーニングが行われ、試験には358例が登録された(平均年齢83歳、STS[Society of Thoracic Surgeons]死亡予測リスク11.7%、女性54%)。179例がTAVR群に、179例が標準治療群に無作為に割り付けられた。なお20例が標準治療群からクロスオーバーされ、10例は試験を中断したが、5年時点で離脱していたのは6例のみであった。そのうち5例は、試験外で大動脈弁置換術を受けていた。 結果、5年時点の全死因死亡リスクは、TAVR群71.8%、標準治療群は93.6%で、TAVR群の有意な半減が認められた(ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.65、p<0.0001)。 5年時点のNYHA心機能分類1または2の患者は、TAVR群の生存者49例のうち42例(86%)に対し、標準治療群は同5例のうち3例(60%)であった。 TAVR後の心エコーで、良好かつ永続的な血行動態が認められた(5年時の大動脈弁口面積1.52cm2、平均弁圧較差10.6mmHg)。置換弁の構造的な劣化はみられなかった。

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天馬PEGASUSは空を駆けるか?心筋梗塞後長期の抗血小板療法の意味と価値:PEGASUS-TIMI 54試験(解説:後藤 信哉 氏)-340

 1980年代に循環器内科に進んだわれわれ世代の循環器内科医にとって、「心筋梗塞は死に至る病」であった。実際、再灌流療法も、抗血栓療法も標準化していない当時の心筋梗塞は院内死亡率も10%を超えていた。日本以上に冠動脈疾患の有病率の高い欧米では、「心筋梗塞」が日本の「がん」並みに恐ろしい病気と理解されたことは容易に想像できる。1970~80年代には心筋梗塞の原因が「冠動脈血栓」であるとの知識も普及していなかった。筆者ら、血栓症の専門家がAHA、ACCなどの欧米のmajorな学会では1990年代になってもマイノリティーであった。 循環器内科医一般に血栓症と抗血栓療法の知識が乏しかったため、心筋梗塞、ステント血栓症などの冠動脈イベントが「血栓症」とわかった後は、メーカーの強烈な宣伝に抗うすべもなく、抗血栓薬は循環器内科領域の標準治療として急速に普及した。多くの循環器内科医は、アスピリン、クロピドグレルの薬効メカニズムは理解していないが、使用の経験は蓄積されている状態にある。実際、アスピリンは抗血小板薬と言い切れない部分もある各種細胞のシクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害薬であるが、薬効メカニズムの詳細は筆者にもよくわからない。 クロピドグレルも臨床試験の結果に基づいて1997年に米国で承認された。「心筋梗塞が怖い」欧米人は、「冠動脈血栓予防」のためにクロピドグレルも大量使用した。クロピドグレルの薬効標的P2Y12がクローニングされたのは2001年である。われわれは、抗血小板薬は薬効メカニズムもわからないままに使用していたのだ。これが1990年代の医療の実態であった。P2Y12クローニング後、この標的に対する選択的阻害薬が開発された(日本のプラスグレルはクロピドグレルの類似薬として開発された)。その成功例がチカグレロルである。P2Y12 ADP受容体はADPに特異的な受容体であるが、構造上ADPはATPに近い。チカグレロルの構造もATPに近い。低分子の非可逆的受容体阻害薬である。 薬効もわからないクロピドグレルの急性冠症候群の試験が成功したので、薬効を理解したチカグレロルはクロピドグレルに対する優越性を示すPLATO試験に挑戦した。試験の内部には不均一性があり、日本と東アジアにて施行されたPHILO試験もPLATO試験と同様の傾向ではないので、PLATO試験の全体としての成功は「運の良さ」の寄与が大きい。それでもPLATO試験では死亡率低減効果を示したので、欧州では急性冠症候群に対する標準治療になろうとしている。 さて、チカグレロルが天馬の如く世界を駆けるか否かを規定するのは、急性冠症候群以外の慢性期の疾病適応を取得できるか否かにかかっている。クロピドグレルは、「冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患」という広い適応をCAPRIE試験により取得した。国際共同試験に「脳血管疾患」を入れると、画像診断の普及していない諸国にて脳梗塞と脳出血の弁別ができず、脳出血の増加により試験が失敗するリスクがある。 PEGASUS試験を実施したTIMI groupは、クロピドグレルの類似薬プラスグレル、トロンビン受容体vorapaxarの開発試験のデータベースを保有しているので、「脳血管疾患」の危険性を十分に理解していた。クロピドグレルのように「冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患」という広い適応が取れなくても、「心筋梗塞後慢性期の血栓イベント抑制」の適応を取得できれば、冠動脈疾患は急性期から慢性期までチカグレロルを天馬として羽ばたかせることができる。その意味でPEGASUS試験はきわめて重要であり、医師、企業関係者、投資家などの注目を集めた。 Gene Braunwald氏率いるTIMI groupは、「臨床の科学」にも妥協のない科学者グループである。PLATO試験ではチカグレロル群において出血が多い傾向を認めたことから、発症後1~3年の心筋梗塞では出血リスクが血栓リスク低減効果を超えることを危惧した。急性期に用いた90mg1日2回に加えて、60mg1日2回のチカグレロルのアームを作った。低用量のアームがあったことで、安全性重視のわが国の参加もPLATO試験よりは容易になった。実際、PLATO試験には本邦は参加しなかったが、PEGASUS試験には参加した。 「臨床の科学」の質を上げるためには、ランダム化した症例の追跡の徹底化を図る必要がある。実際、追加リスクがあるとはいっても、心筋梗塞後1~3年後の症例の心血管イベントリスクは、アスピリン単剤でも年率3%程度にすぎない(9.04%/3年)。60mg、90mgのチカグレロル服用により、年率2.6%程度(7.77%/3年:60mg、7.85%/3年:90mg)に低下したとはいっても、これだけの軽微な差異を統計学的に検出するためには、数例の追跡不能すら許されないのだ。心血管領域では、標準治療の進歩により「現在の標準治療」下における心血管イベントリスクが低い。1980年代に「怖い病気」であった心筋梗塞の「怖さ」は21世紀になって激減した。わずかな差異を科学的に占めるためには大量の症例を登録し、徹底的に追跡する必要がある。有効性を示したことでチカグレロルは天馬になるかもしれないが、関係者が尽くした努力は計りしれない。 抗血小板薬なので、出血リスクが増えることは予測の範囲である。「科学的に質の高い」試験であるため、出血イベントも精緻に計測した。われわれは、2次予防におけるアスピリン服用時の重篤な出血イベント発症率を、年率0.2~0.5%程度と理解して、患者からインフォームド・コンセントを取得していた。PEGASUS試験はわれわれの想定が現在も大きく違っていないことを裏付けた。アスピリン群の重篤な出血イベント発症率は1.06%/3年(年間0.3%程度)であった。60mg1日2回、90mg1日2回のチカグレロルを追加すると、重篤な出血イベント発症率は2.30%/3年、2.60%/3年と2倍以上に増加した。プラセボとの比較において、アスピリン服用者の頭蓋内出血が約1.6倍に増加していた過去の事実に比較すると、頭蓋内出血、致死性出血が増えていないことに関係者は胸をなでおろしたであろう。 アスピリン使用時には「この薬を飲むと1,000人のうち、2~5人くらいが重篤な出血を起こすけど、将来の心筋梗塞を25%減らせる。どうしようか?」との患者さんとのICのプロセスが、「アスピリンにチカグレロルを追加すると、1,000人のうち、5人に重篤な出血が起こるけど心筋梗塞や心血管死亡、脳卒中は15%くらい減る。どうしようか?」となる。重篤な出血に頭蓋内出血、致死的出血が含まれないことは朗報であるが、このような説明によって、どの程度の患者さんが長期のチカグレロルの服用を希望するかを予測することは難しい。ATPに似たチカグレロルでは徐脈、呼吸困難感などの自覚的、他覚的副作用の増加も実臨床では問題になる。認可承認後に爆発的に売り上げを伸ばしたクロピドグレルは、CAPRIE試験ではほんのわずかにアスピリンに勝る優越性を示したのみであった。筆者ら血小板研究の専門家は、クロピドグレルの爆発的売り上げを予測できなかった。抗血小板薬に比較すれば、はるかに重篤な出血イベントリスクの多い新規経口抗トロンビン薬、抗Xa薬が予防介入において広く使用されているのも、ランダム化比較試験を主導した研究者としての筆者の予測を超えた。チカグレロルがクロピドグレル並みの天馬となれば、わずかの差異のランダム化比較試験の結果が世界の医療界に影響を与える「てこ」のメカニズムを理解したいものである。

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家族性高コレステロール患者は糖尿病になりにくい…?!(解説:吉岡 成人 氏)-341

スタチン薬による糖尿病の発症増加 スタチン薬の投与により、糖尿病の新規発症が約1.1倍(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.02~1.17)増加する1)。アトルバスタチンやシンバスタチンなどの疎水性のスタチン薬は、親水性のプラバスタチンと異なり、インスリンの作用を低下させることが報告されている。その機序として、アトルバスタチンが脂肪細胞における糖輸送担体(GLUT4)の発現を抑制することにより、糖の取り込みを減少させ、シンバスタチンでは、Caチャネルを阻害し血糖依存性のインスリン分泌を低下させることで、耐糖能が悪化する。また、スタチン薬のLDL受容体発現を亢進させる作用が、膵β細胞へのコレステロールの取り込みを促進して、インスリン分泌機能の障害に結び付く可能性についても検討されている。一方、LDL-コレステロールが著しく上昇する家族性高コレステロール血症(FH:familial hypercholesterolemia)の患者では、糖尿病の発症が少ないことが知られている。その理由として、LDL受容体の機能低下によりLDLの膜輸送障害を生じていることが、膵β細胞へのLDL輸送の低下と結び付き、アポトーシスを緩和するために糖尿病を引き起こしにくいのではないかと考えられている。家族性高コレステロールでは糖尿病の罹患率が低い オランダ、アムステルダムのAcademic Medical CenterのKastelein氏らは、1994年から2014年にオランダにおける国民検診プログラムに登録し、FHについてのDNA検査を受けた6万3,320例を対象として、FH患者における糖尿病の罹患率をFHに罹患していない親族での糖尿病の罹患率と比較検討している。糖尿病の診断は、患者の申告(self-reported diagnosis)によって行われている。 2型糖尿病の罹患率は、FH患者では440/2万5,137例(1.75%)、対照群(FHではない親族)では1,119/3万8,183例(2.93%)であり、FH患者で有意に少ない(OR:0.62、95%CI:0.55~0.69)ことが確認された。年齢、BMI、HDL-C、トリグリセリド・スタチン使用の有無、心血管疾患、家族歴で調整した後の多変量解析では、FH患者の2型糖尿病罹患率は1.44%、対照群では3.26%(OR:0.49、95%CI:0.42~0.58)であった。FHの遺伝子異常にはいくつもの変異があるが、APOB(アポリポ蛋白)遺伝子の異常とLDL受容体の異常を持つ場合の糖尿病の罹患率は、前者で1.91%(OR:0.65、95%CI:0.48~0.87)、後者で1.33%(OR:0.45、95%CI:0.38~0.54)であり、LDL受容体異常の患者における糖尿病の罹患が少ないことが確認された。また、LDL受容体が減少している場合と欠損している場合では、それぞれの糖尿病の罹患率は1.44%(OR:0.49、95%CI:0.40~0.60)、1.12%(OR:0.38、95%CI:0.29~0.49)と報告されている。今後の展望 今回の検討における糖尿病の診断は患者の申告によるものであり、血糖値やHbA1cを測定しているのではなく、ましてや経口ブドウ糖負荷試験を実施しているわけではない。おそらく、2型糖尿病の頻度は報告されている以上に多いのではないかと考えられる。とはいえ、FH患者、とくにFH受容体欠損患者では糖尿病の発症が少ないことが確認され、細胞内のコレステロール代謝が膵β細胞機能に影響を及ぼしていることが示唆される。今後、2型糖尿病患者においてみられる、アポトーシスによる継時的な膵β細胞機能低下を引き起こすメカニズムに、新たな視点からの検討が加えられる契機となる臨床的な知見かもしれない。

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ニーズいろいろ【Dr. 中島の 新・徒然草】(062)

六十二の段 ニーズいろいろ先日、初診でお見えになった患者さん。やけにいろいろな訴えのある60代の女性です。 患者 「頭が痛いし」 中島 「頭が痛いわけですね」 患者 「心臓も心配だし」 中島 「思いあたるフシが?」 患者 「以前に狭心症やってんですよ」 中島 「なるほど」 患者 「最近目が見えにくくなってきて」 中島 「目が見えない・・・わけですか」 ふと思いついて尋ねてみました。 中島 「お仕事は何をやっているんですか?」 患者 「テレアポですよ、お墓の」 中島 「電話でお墓を売っているってことですか」 患者 「そう。その前は会社経営を25年やってましてね」 中島 「そうなんですか」 患者 「若いときにずっと営業でトップだったもんですから、最後に自分の納得のいくものを売りたいと思って、会社を畳んだんですよ」 わかるようなわからないような理屈です。 中島 「その『納得のいくもの』がお墓というわけですか」 患者 「そうなんです」 ここで何となく、この人のニーズが掴めました。 中島 「つまり、いろいろと体に不調があるので、それらを全部すっきりさせて、『安心してお墓に入りたい』と。そういうことですか?」 患者 「そう! そうなのよ」 中島 「『安心してお墓に入る』って、考えれば考えるほど理解しがたいセリフですね」 患者 「そうね(笑)」 中島 「でも、何となくその気持ちはわかりますよ」 患者 「わかってくれます?」 中島 「納得して死にたいってことでしょ?」 患者 「そう・・・かもしれませんね。それで私、お墓を売っているのかな」 理屈ではわからないことでも、感覚的には「安心してお墓に入りたい」という気持ちは理解できるような気がします。 中島 「わかりました。まず脳に関係したことを調べましょう。その後、必要に応じて循環器内科や眼科にも紹介しますので、不安を1つずつ消していきましょう」 患者 「ぜひお願いします」 ということで、お互いのペースに合わせてゆっくり診療を進めていくことになりました。それにしても世の中には色んなニーズがあるものです。最後に1句目標は お墓に行くぞ 安らかに

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医師と患者の意識差を糖尿病治療にどう反映する

 2015年3月24日、「糖尿病患者と医師の意識の違い~調査から読み解く!糖尿病治療を継続させるために~」と題したプレスセミナー(主催:シオノギ製薬)が、寺内 康夫氏(横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授)を講師に迎え、東京都内において開催された。 このセミナーは、同社が行ったインターネット調査「糖尿病患者と医師の治療と行動に関する意識調査(T-CARE Survey2※)」の結果発表に合わせて行われたもの。寺内氏は、この結果を基に、糖尿病診療の現状や課題に触れたうえで、トータルケアの実践へ向けたサポート施策の在り方について述べた。※T-CARE Survey2:患者と医師双方に対し同内容の質問項目(発症状況の把握、治療の状況、生活満足度など)を設定し、両者の意識のギャップを明らかにすることで、今後の円滑な治療へ導くことを目的に行われた調査。全国の糖尿病患者3,580人(20~60代男女)ならびに医師298人を調査対象とし、2015年1月に実施された。医師が考えるよりも、患者は合併症リスクを軽く考えている 調査によると、合併症などのリスクについての説明は、医師が思っているほど患者には伝わっていないことが明らかになった。医師の「説明をしている」よりも患者の「説明を受けたことがある」がすべての項目で下回っており、とくに「脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなる」説明を「受けたことがある」患者と「説明している」医師の間には、大きな開きがあった(患者49.1%vs.医師93.3%)。 このこととも関係してか、患者の合併症への心配・不安は、それほど高くない。たとえば「脳卒中になりそうで怖い」と思っている患者は、医師が考えているよりも少なく(患者23.2%vs.医師39.6%)、また、血糖値の治療目標値についても、医師が思っているほど患者には認知されていないことも判明した(目標血糖値を知っている:患者48.0%vs.医師62.1%)。生活習慣改善の治療実践はまだ不十分 その反面、医師が思っているよりも、治療継続の必要性を感じている患者は多い。糖尿病治療を「継続しなければならない」と回答した患者が89.4%であったのに対して、「患者自身が治療を継続しなければならないと思っている」と回答した医師は62.1%と、開きがあった。 一方で、患者に生活習慣改善治療に関して聞いたところ、「運動をしっかりやっている」(30.3%)、「食事の管理をしっかりやっている」(32.5%)と、いずれの回答も約3割にとどまった。どちらも医師が考えている割合(運動41.6%、食事管理42.3%)を下回っており、患者は医師が期待するほど生活習慣の改善を実践できていないことが判明した。医師以外の相談相手がいないと感じている患者たち チームサポートの視点から見た場合、医師がメディカルスタッフに与えている役割については、施設間の格差が生じる結果となった。とくに看護師による「糖尿病教室」の開設(開業医7.5%vs. 病院32.2%)や「フットケア」の実施(開業医14.0%vs. 病院46.8%)では、開業医と病院で大きな開きが出た。 また、患者の7割弱が「医師以外に治療に関係している医療関係者がいない」(64.9%)と回答するなど、患者がメディカルスタッフを相談相手として認識できていないことも明らかとなった。半数の患者家族が病気に理解あり、ただし診察への同行まではしてくれない 家族を含む周囲のコミュニティサポートでは、家族が「治療やケアに協力的」な患者は半数にとどまり(患者55.2%vs. 医師46.1%)、また、家族が「診察に一緒に同行してくれる」と回答した患者は10人に1人にとどまった(患者12.7%vs.医師33.6%)。生活習慣の改善や家族の協力をいかに確保するか 最後に、今回の調査のまとめとして、以下の事項があげられた。すなわち、医師の意識よりも患者は「糖尿病の内容や治療の必要性を理解している」こと、その一方で医師が思うよりも患者は「自身の病状・合併症のリスクを理解しておらず、治療(とくに生活習慣改善)が実践できていない」こと、「治療実践に必要なメディカルスタッフや家族のサポートも少なく、医師以外に相談する意識も低い」ことなどである。 したがって、医師側の今後の課題としては、「合併症リスクの説明の充実」や「より一層の生活習慣改善の指導」に加え、「患者家族や周囲を巻き込んだサポート体制の構築」が挙げられる。 将来的には、現在国が推進している「地域包括ケアシステム」を念頭に、患者のトータルケア実践に向け、患者自らが治療方針や治療実践に積極的に関与できるように、医療機関や家族のサポート、地域ケアが円滑に進むことが期待されるとレポートを終えた。 なお、調査の詳細については、同社のサイトから確認することができる。 シオノギ製薬:調査結果一覧(PDF)

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小児への抗精神病薬使用で推奨される血糖検査、その実施率は

 米国糖尿病協会(ADA)は2004年に、小児および青少年について、第2世代抗精神病薬の治療開始前後に代謝スクリーニングを実施することを推奨する治療ガイドラインを発表した。これに関連し、ブリガム&ウィメンズ病院のJohn G. Connolly氏らは、ガイドライン発表時期とその後8年間のスクリーニング実施率の変化を調べ、ガイドライン発表後はわずかに実施率が上昇したが、その後は低下していたことを明らかにした。先行研究で、ガイドライン公表時期に小児および成人の血糖検査がわずかだが増大していることが報告されていたが、その後についての報告は限定的であった。Psychiatr Services誌オンライン版2015年3月1日号の掲載報告。 研究グループは、全米をカバーする大規模民間保険の支払データベースで、2003年1月1日~2011年12月31日の期間中に5万2,407例の試験患者を特定した。試験集団は、第2世代抗精神病薬を使用する5~18歳の非糖尿病集団であった。アメリカ医師会(AMA)独自の診療コーディングCPT(Current Procedural Terminology)-4により、同薬服用開始前後に血糖値検査およびHbA1c検査完了の有無を特定した。また、処方されていた第2世代抗精神病薬、および精神科の診断ごとの代謝スクリーニング実施率についても調べた。 主な結果は以下のとおり。・第2世代抗精神病薬の治療開始前に血糖値検査を受けていた患者の割合は、2003年17.9%から2004年18.9%に増大していた。同時期に、治療開始後の検査は14.7%から16.6%に増大していた。・これら血糖値検査のわずかな増大は、その後は継続していなかった。2008年に再上昇がみられたが、それまでの期間は低下していた。・血糖スクリーニングの頻度は、アリピプラゾール服用患者で最も高かった。一方、多動障害を診断された患者の検査頻度が、最も低いと思われた。・HbA1c検査の実施頻度は、より低かったが、実施パターンについては類似していた。・以上のように、2004年のADAガイドライン発表後、代謝スクリーニング実施率はわずかに改善していたが、継続していなかったことが明らかになった。・全体として、代謝スクリーニング率は調査対象期間中、最適には及ばない基準で推移していた。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状 抗精神病薬治療中の若者、3割がADHD 本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか

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狭心症疑い、CT冠動脈造影で診断確度アップ/Lancet

 冠動脈性心疾患(CHD)で狭心症が疑われた患者に対し、コンピュータ断層撮影を用いた冠動脈造影(CTCA)を実施することで、診断確度が増大することが示された。CTCAにより介入ターゲットが明確になり、有意差は示されなかったが将来的な心筋梗塞リスクを低下可能であることが示されたという。英国・ボーダーズ総合病院のDavid Newby氏らSCOT-HEART研究グループが、4,146例を対象に行った無作為化試験の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。4,146例を無作為に2群に分け、一方には標準ケア+CTCAを実施 試験は、2010年11月~2014年9月にかけて、スコットランドの12ヵ所の心臓・胸痛クリニックから、冠動脈性心疾患(CHD)により狭心症が疑われ紹介された18~75歳の患者4,146例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に分け、一方には標準的ケアに加えCTCAを行い、もう一方の群には標準ケアのみを行った(各群2,073例)。 主要評価項目は、6週間後の狭心症の診断確度だった。狭心症の診断確度はCTCA群で約1.8倍に 被験者のうち、ベースラインで臨床的にCHDの診断を受けていたのは47%、CHDによる狭心症の診断を受けたのは36%だった。 6週間後、CTCA群でCHDの診断に再分類されたのは27%(558例)、CHDによる狭心症の診断に再分類されたのは23%(481例)だった。 CTCA+標準ケアは、標準ケアのみに比べ、6週間時点におけるCHD診断確度を約2.6倍(相対リスク:2.56、95%信頼区間:2.33~2.79、p<0.0001)増大し、診断頻度もわずかだが増大した(同:1.09、同:1.02~1.17、p=0.0172)。また、主要評価項目のCHDによる狭心症については、診断確度は増加し(同:1.79、同:1.62~1.96、p<0.0001)、診断頻度は同等だった(同:0.93、同:0.85~1.02、p=0.1289)。 これら診断確度や頻度の変化は、予定されていた検査法の変更(CTCA群15% vs. 標準ケアのみ群1%、p<0.0001)や、治療の変更(同23% vs. 5%、p<0.0001)と関連していた。しかし、6週時点の症状の重症度やその後の胸痛による入院への影響はみられなかった。 1.7年後、標準ケアのみ群の致死的・非致死的心筋梗塞の発生は42例だったのに対し、CTCA群は26例で、有意差は示されなかったが同リスクの抑制が認められた。(ハザード比:0.62、同:0.38~1.01、p=0.0527)。

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