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EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)-428

 この結果をみて真っ先に連想したのは、高血圧治療薬で、利尿薬がCa拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬などよりも優れた心血管合併症予防効果を証明したALLHAT試験である。利尿作用が心不全悪化を防いだために全体を有利に導き、心疾患合併症例における利尿薬の強さをみせた試験であった。 EMPA-REG試験でも、利尿作用を有するSGLT2阻害薬が虚血性心疾患で心機能が低下した症例での心不全死を抑制したと考えやすい。しかし、心血管死の内訳をみると必ずしもそうではないようである。心不全の悪化による死亡は10%前後にすぎず、心臓突然死や心原性ショックも広い意味での心不全死と捉えると40%を占めることになり、本剤の利尿作用の貢献も考えられる。しかし、「その他の心血管死」とはどのような内容なのかが明らかでない限り、エンパグリフロジンがどのような機序で心血管死を減らしたのかを推定するのは難しい。 しかし、本試験で重要なことは、致死的、非致死的を含めた心筋梗塞と脳卒中発症はいずれも抑制されていないことである。不安定狭心症は急性心筋梗塞と同等の病態であり、なぜこれを3エンドポイントから外したか不明だが、これを加えた4エンドポイントとすると有意性は消失する。したがって、本試験はSGLT2阻害薬の優位性を証明できなかったという解釈もできる。本試験の対象は、すでに高度な冠動脈疾患、脳血管障害、ASOを有していて循環器専門医に治療を受けているような糖尿病患者であり、実質的には2次予防効果を検証した試験での結果である。試験開始時に、すでにACE阻害薬/ARBが80%、β遮断薬が65%、利尿薬が43%、Ca拮抗薬が33%に処方されている。糖尿病治療にしてもメトホルミンが74%、インスリン治療が48%、SU薬も42%が処方されており、さらにスタチン薬81%、アスピリンが82%にも処方されており、かつ高度肥満という、専門病院レベルの合併症を持つ高度な治療抵抗性の患者を対象にしている。 このことから、一般診療で診る、単に高血圧や高脂血症などを合併した糖尿病症例に対する有用性が示されたわけではない。 本試験における、エンパグリフロジンの主要エンドポイント抑制効果は、利尿作用に加えて、HbA1cを平均7.5~8.1%に下げた血糖降下作用、そして体重減少、血圧降下利尿作用というSGLT2阻害薬が有する薬理学的な利点が、肥満を伴う超高リスク糖尿病例で理想的に反映された結果として、心血管死を予防したと考えるほうが自然であろうと考える。臨床試験という究極の適正使用だからこそ、本剤の特性がメリットに作用したのであろう。 本試験を日常診療に活用する点で注意しておくことは、1.本試験はすでに冠動脈疾患、脳血管障害の既往があり、近々心不全や突然死が発症する可能性が高い、きわめて超高リスクの糖尿病例を対象としており、診療所やクリニックでは診療する一般の糖尿病患者とは異なる点。2.本試験の結果は、臨床試験という究極の適正使用の診療下で行われた結果である点。3.心筋梗塞、脳卒中の再発予防には効果がなく、不安定狭心症を主要エンドポイントに追加すると有意性は消失してしまう点。したがって、従来の糖尿病治療薬同様、血糖降下治療に大血管疾患の発症予防効果は期待できないという結果を皮肉にも支持する結果となっている。 本試験が、高度の心血管合併症をすでに有している肥満の治療抵抗性の糖尿病症例の治療にとって、福音となるエビデンスであることは否定しないが、この結果を十分に批判的吟味することなく、一般臨床医に喧伝されることは大きな危険性をはらんでいるといえよう。本薬の基本的な抗糖尿病効果は利尿という点にあり、とくに口渇を訴えにくい高齢者では、脱水という重大な副作用と表裏一体であることは常に念頭に置くべきである。企業の節度ある適正な広報を願うばかりである。関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)リンゴのもたらした福音~EMPA-REG OUTCOME試験~(解説:住谷 哲 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)

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わかる統計教室 第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比 セクション3

インデックスページへ戻る第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション3 オッズ比の使い道セクション1 セクション2※「■オッズ比で何がわかるのか」の内容を一部加筆・修正いたしました(2015年10月16日)。セクション2では、オッズ比でよく誤解される使い方やオッズ比の解釈を学習しました。読者の皆さんの中には、オッズ比の使い道があまりないのではないか、と考えてしまう方もいるかもしれません。確かにリスク比に比べ、オッズ比は理解しにくいのですが、実際には臨床研究でよくみられます。それでは、事例に沿って説明をしていきましょう。■オッズ比で何がわかるのか不整脈になる要因はいろいろありますが、ここでは仮に、喫煙の有無、飲酒の有無、性別、年代を取り上げ、どの要因が不整脈の有無に影響を及ぼしているかを調べることにします。表8は、それぞれの要因についての分割表、リスク比、オッズ比を示したものです。最初にリスクの差を求めてみましょう。喫煙の有無は80%-30%により50%、飲酒の有無は26.7%、性別は3.3%、年代は22.2%です。そして、その差が大きい要因ほど、不整脈の影響要因といえるわけです。次に、リスク比の順位はどうなっているでしょうか? 値が高い順からみてみましょう。喫煙の有無が2.67で1位、飲酒の有無が1.67 で2位、年代が1.33で3位、性別が1.07 で4位となります。では、オッズ比の順位はどうなっているでしょう? 1位は喫煙の有無、2位は年代、3位は飲酒の有無、4位は性別です。リスク比の順位とオッズ比の順位は一致していません。リスク比の値が大きければ、オッズ比の値も大きくなるという傾向はありますが、大小関係の順位は必ずしも一致しません。つまり、不整脈に影響を及ぼす要因の順序を付ける場合、オッズ比の順位の適用は好ましくありません。ただし、リスク比、オッズ比どちらも値が大きいほど不整脈の影響要因といえるので、順位付けが必要でない場合、リスク比、オッズ比、どちらを用いても構いません。リスク比のほうが使いやすいので、リスク比で解析することが多いのですが、臨床研究ではオッズ比を用いる人のほうが多いように思います。それは、影響要因であるかがわかれば目的を達成できるからでしょう。リスク比とオッズ比について、一度、今までの内容をまとめてみましょう。不整脈の影響要因であるかは、リスク比やとオッズ比の値の大小で把握できる。リスク比とオッズ比の順位は必ずしも一致しない。複数の影響要因があり、要因間の順位を把握する目的であれば、リスク比を使いオッズ比は使わない。リスクの倍率を比較したい場合はリスク比を適用する。表8の1番上の喫煙の有無と不整脈の有無の関係性について、オッズ比で解析した場合、オッズ比の値から「喫煙者が不整脈となるリスクは、非喫煙者に比べ9.33倍である」といってはいけない。これらを一言でまとめると、「オッズ比は、影響要因であるかを把握するだけで、複数要因の順位付けやリスクの倍率の把握には適用できない」ということになります。■理解しづらい「逆相関」を理解しやすくする方法下記の表9の分割表のリスク比、オッズ比をみてみましょう。表8との違いがおわかりになるでしょうか?表9は、喫煙と非喫煙のデータを入れ替えて表にしたものです。飲酒と非飲酒、男性と女性、60代と50代も同様です。表9の一番上の表について、どのように解釈できるのか説明していきましょう。リスクは、喫煙者のほうが非喫煙者に比べて小さくなっています。喫煙者が不整脈になるリスクは30%で、非喫煙者のリスクは80%なので、喫煙者のほうが50%リスクが低い。リスク比が0.38(30%÷80%)ということから、喫煙者が不整脈となるリスクは、非喫煙者に比べ0.38倍となります。表8は「喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になりやすいという事例」でした。表9は、「(実際にはあり得ないですが)喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になりにくいという事例」となります。喫煙と不整脈の関連性をみると、表8は「喫煙あり→不整脈あり」、「喫煙なし→不整脈なし」と通常考えられる関連ですが、表9では「喫煙あり→不整脈なし」、「喫煙なし→不整脈あり」という、通常ではあり得ない関連となってしまうのです。前者(表8)の関連を正の相関、後者(表9)を逆相関といいます。これらの表からわかるように、リスク比、オッズ比どちらも、正の相関の場合は1より大きく、逆相関の場合は1より小さくなっています。ここまでのところをまとめてみましょう。リスク比、オッズ比ともに値が1より大きくなるほど、喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になる傾向が高まるといえます。このような関連性を「正の相関関係がある」といいます。リスク比、オッズ比とも値が1より小さくなるほど、喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈にならないという傾向が高まるといえます。このような関連性を「逆相関」といいます。つまり、表8の場合、リスク比は2.67>1で正の相関、すなわち、喫煙する人ほど不整脈になりやすい。表9の場合、リスク比は0.38<1で逆相関、すなわち、喫煙する人ほど不整脈になりにくい、ということになります。さて、理解はできたものの、リスク比が0.38倍というのが何か気になる、わかりにくいという方もいらっしゃるのではないでしょうか? 一般にはあり得ない表9の一番上の表の喫煙と非喫煙の位置を入れ替えた表10を作り、リスク比を計算してみましょう。このように、リスク比は1を上回りました。リスク比を解釈するとどうなるでしょうか? 非喫煙者は喫煙者に比べ2.67倍、不整脈になるといえます。表9の解釈、つまり「喫煙者は非喫煙者に比べ0.38倍、不整脈になる」と同じことになりますが、表10の表現のほうがわかりやすくなりますね。リスク比が1を下回った場合は、このような対応をお勧めいたします。次回は、なぜオッズ比が臨床研究で使われるのかを学びます。■今回のポイント1)オッズ比は、影響要因であるかを把握することでのみ活用できる!2)オッズ比は、複数要因の順位付けやリスクの倍率把握には適用できない!インデックスページへ戻る

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第8回 底力をつけるにはやはりコレ!英語力を磨くには?

英語のロジックを身に付ける第1回では「英語に惑わされるな」「メッセージを伝えることが大切」と力説した。しかし、もちろん英語が大切でないはずはない。英語プレゼン力を底上げしたいなら、英語力を磨いて損はない。画像を拡大するでは、どこに力点を置くのか? リスニング? スピーキング? どれも大切だが、あえて何が一番大切かと聞かれれば、私は「英語のロジック」と答えることにしている。要はイイタイコトを最初に言う癖をつけるということだ。日本語は「起承転結」のロジックだ。多くの日本人には、この奥ゆかしい伝統が染みついている。しかし、この奥ゆかしさは英語プレゼンでは邪魔になる。起承~くらいで「コイツ、何言ってんの?」と思われてしまう。英語のロジックは「結論・理由・転・結」だから、みんな最初に結論が出てくると期待している。それが来ないと「???」となってしまうのだ。英語のロジックを身に付けるには、意識して訓練するしかない。普段の日本語の会話やメールでも、とにかく結論を最初に述べる癖をつけることだ。さらに、本格的にこの「結・理由・転・結」の論理展開を強化したければ、TOEFLのエッセイを書く練習がお勧めである。練習問題のたくさん載った参考図書が多く出回っている。これをしっかり訓練すると骨太な英語ロジック力が身に付くし、それは英会話、簡潔明瞭な質疑応答や論文執筆にも大いに役に立つこと請け合いである。英語のロジックでは最初に結論を述べることでゴールを示す。そして、どうやってそのゴールにたどりつくかを説明し、最後にもう一度念を押す。もう気が付いたかもしれないが、考え方は、8回にわたってお送りしてきた今シリーズに一貫して流れている。1枚のスライドも、プレゼン全体も1つのゴール=イイタイコトにベクトルを合わせる。7行ルール(第2回)も究極的にはそのためにある。イイタイコトに始まりイイタイコトに終わるのだ。英語上達に最も重要な3つのこと「英語のロジック」を身に付ける以外にも、やることはたくさんある。発音やリスニングにもコツはあるし、単語力も増やしたい。基本的には1つのこと(たとえば単語の勉強)だけをやるのではなく、読んだり、聞いたり、話したり、書いたり、いろいろやりながら全体として英語力アップを図るのがいい。画像を拡大するそうしたこともすべて含めてだが、英語上達に最も重要なことは結局、継続することに尽きると思っている。英語の学習法に関してさまざまな意見や説があり、それに振り回されがちだし、それが業界では商売のネタになっている感もある。焦る気持ちが、もっといい方法はないか? と浮気心をくすぐるかもしれない。だが、お金をかけていろいろなことに手を出している人には、半年以上、毎日英語を勉強したことがありますか? と問いたい。何だかんだ言っても、とにかく継続すること―これほど効果が確実な英語上達法はほかにないのではないだろうか。8回にわたって英語プレゼンの上達法を述べてきましたが、いかがでしたか? 皆さんの英語プレゼン、そして将来に少しでも役立てば幸いです。もっと詳しく知りたい方は、CareNeTVの同名のプログラム、そして拙書『流れがわかる英語プレゼンテーションHow To』(メディカルレビュー社)をご参照ください。講師紹介

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循環器内科 米国臨床留学記 第2回

第2回:日米における循環器専門医トレーニング 臨床と研究の両方において、日本の循環器医師のレベルは非常に高いと米国でも認識されていますので、お前はわざわざ米国でなんのためにトレーニングを繰り返しているんだといつも聞かれます。答えにはいつも困っています。日本の循環器の先生はどこの病院に行っても、遅くまで残業し、臨床や研究に励んでいました。そういった姿を見て、自分の中でも循環器医の心構えが育ったと思います。このように、日本の循環器は現状のトレーニングでも優れた医師が輩出されているわけですが、問題点がないわけではないと思います。今回は、日米の長所、短所を比較しながら、これからの専門医教育の課題を考えてみました。日本の循環器専門医教育の長所誰でも循環器医になれる! 日本の医者には、職業選択の自由があります。つまり、循環器を含め、どの医者もなりたい専門医になれる。他の国と比べても、これは非常に恵まれている点だと思います。米国に来て、循環器医になりたくても諦めている人などを見ると、本当に幸せなことだと痛感します。専門医の意義 米国>日本 日本では循環器専門医を取得した瞬間、一人前と見なされるというわけではありませんから、専門医を取ったからといって、医局を辞めて独立をする人は少ないでしょう。また、開業医においても、循環器専門医がなくても、循環器と標榜できるのが現状で、専門医を持つことの意義が低いような気がします。徒弟制度 徒弟制度には、修業年限はありません。師匠が少しずつフェードアウトし、気がつけば1人で手技をさせてもらっている。逆に言えば、何年経とうが、師匠が認めない限り、一人前とは認められない。人によって成長のスピードが違うことを考えると、何年間で一人前になると決められ、フェローシップ終了後に独立を義務付けられる米国の制度のほうがおかしいようにも思います。市中病院:インターベンションなどの臨床トレーニングのスピードが早い 一概に、日本の循環器専門医トレーニングと言っても、市中病院と大学病院で大きく異なると思います。研修医の頃、私の中で、循環器=インターベンションのイメージがありました。 実際、日本の市中病院では冠動脈造影、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)に重きが置かれる傾向があると思います。多くの市中病院では若手に積極的にカテをさせて、5年目ぐらいには基本的なPCIを行えるようになることが多いと思います。また、緊急カテーテルのオンコールを5~6人の循環器医でうまく回すためには、早く一人前になってもらわないと困るという実情もあると思います。若い医師もPCIなどの経験が積める病院に集まる傾向があるようです。慶応大学の香坂先生らの報告(Am J Cardiol.2014;114:629-634.)によると、卒後10年以内の若い循環器医のトレーニングに対する満足度は、冠動脈造影、PCI、エコーなどの症例数と大きく関係することが示されています。大学病院系列:豊富で幅広い症例・専門家による指導 逆に、大学病院や国立循環器病研究センター病院(国循)などでPCIを5年目がメインで行うというのは少し難しいと思いますが、大学病院や国循のような大きな施設には市中病院にない大きなメリットがあります。 医師6-7年目を過ごした国立循環器病センター研究病院(NCVC)東京都済生会中央病院、NCVCというタイプの異なる二つの病院で、素晴らしい指導医や仲間に出会え、有意義な研修を送ることができました。 第一に、肺高血圧、重症心不全、遺伝性疾患などのまれな症例を診る機会もあり、幅広いトレーニングが期待できます。また、各サブスペシャルティの専門家から直接指導を受けられます。実際、私も不整脈に関する知識や手技をもっと重点的に修練したいと感じ、国循に移動しました。その国循で、レジデント達∗が心エコーやリハビリなどに関して、手厚い指導をトップクラスの先生から受けているのを見て、うらやましく感じたのを覚えています。 ∗国循では循環器の基礎的な訓練を3年間で受けます。初期研修を終えた、3年目以降で応募でき、レジデントといいます。立場的には米国で言うフェローに当たると思います。研究の機会 大学や国循では、基礎研究、臨床研究のチャンスもあります。各専門分野の指導者もおり、循環器学会やAHA、ACC、ESCなどの国際学会での発表や一流雑誌への掲載といった可能性もあり、研究者として大きく羽ばたけるチャンスがあります。日本の循環器専門医教育の問題点曖昧な施設基準・膨大な研修施設 日本には循環器フェローシッププログラムというものは存在しませんが、専門医となるには3年間以上認定施設でトレーニングを受ける必要があります。表1)に日本の専門医施設の基準を示しました。2名以上で指導が十分な体制とあります。何をもって十分とするのかそもそも曖昧です。日本循環器学会のホームページによると日本全国で1,000近くの循環器研修施設がありますが、人口が倍以上の米国で180しかないことを考えると、いかに日本の認定施設が米国に比して多いかがわかります。これだけあると、すべての施設で十分な教育ができているかは疑問の余地があります。研修施設に名乗りを上げないと、若い医師が獲得できないという事情もあると思います。Common diseaseへの偏り 一部の有名な市中病院を除くと、市中病院では、冠動脈疾患、不整脈、心不全、末梢血管、心エコー、リハビリテーションなどの循環器のサブスペシャルティの専門医を揃えることは難しく、結果として、循環器のcommon diseaseである冠動脈疾患や心不全に偏ったトレーニングにならざるを得ない側面もあると思います。さまざまな症例を経験することも大切です。市中病院から国循などに来ると、3年間のトレーニングで見たことがないような症例に出くわします。たとえ、将来的にその疾患を自ら治療する機会がないとしても、一度の経験がその後の臨床の助けになることがあります。ほぼ義務化された研究・大学院 大学にも問題点はあります。先ほど挙げましたが、手技などのトレーニングは大学自体で数多くこなすのは難しそうです。恵まれた医局に所属していれば、関連病院でその点は十分に挽回できるでしょう。また、医局では研究や博士号の取得はほぼ義務化されています。これはメリットでもありますが、臨床で研鑽を積みたい人にとっては、4年間の大学院生活はデメリットにもなりえます。米国のフェローシップの長所指導者の数の保障 米国ではプログラムディレクターに加えて、3人以上のKey Clinical Facultyが必要、つまり最低でも4人の指導教官が必要ということになります2)。また、フェロー3人に対して2人のKey Clinical Facultyが義務付けられているので、実際、University hospitalなどの施設では10人以上の指導教官がいることがほとんどです。手厚い教育・確保された症例数 先ほど述べましたように、米国には、180しか循環器フェローシッププログラムがなく、毎年850人しか循環器フェローになれません。そうすることで全米のCardiologistの数をコントロールしています。狭き門ですが、一度入ると手厚い教育が保障されます。どちらかというと、米国のフェローシップは日本の大学や国循のような特徴を有していると思いますが、それに加えて、経験症例数が確保されており、雑用が少なく、トレーニングに集中できる環境が整っています。米国のフェローシップの問題点狭き門=Cardiologistになれない? 第1回でお話ししましたが、循環器フェローシップは狭き門であり、Cardiologistになれない可能性があります。外国人は半分以下、米国人でも85%ほどしかCardiologistになれません。10年以上かけて苦労して内科医になったうえで、やりたいことができないのは、ある意味悲惨です。段階を超えて、次のトレーニングへ進めない サブスペシャルティがあることから、いくら優秀でも循環器フェローシップ中は基本的には高度なPCIやアブレーションのトレーニングを開始することはできません。トレーニングが終わったら一人前 フェローシップを卒業した瞬間、どんなに手技が下手でも、一人前と見なされます。同じ病院の先輩も含めて、もはや、誰も助けてくれません。インターベンションやEP(不整脈)のフェローを卒業したものの、就職先で使い物にならず、クビになるという話はよくあります。日本が取り入れたほうが良いと思われる点 現状でも、日本の循環器医は世界のトップクラスであり、結果としては問題ないのかもしれませんが、私の経験を基に、以下の点を今後の日本の循環器専門医トレーニングが検討すべき課題として挙げました。経験症例数の保障 冠動脈造影や心エコーの能力は症例数で決まるものではありませんが、専門医教育を評価するうえで、トレーニング中にどのくらいの症例が経験できるかは最低限保証されるべきだと思います。また、選ぶ側は症例数を基にどこのプログラムで研修を行うかを決める指標ともなります。学年当たりのフェローの数の明確化 症例数を保証するなら、おのずとフェローの数も明確にしなければならないと思います。同じ学年のフェローが増え過ぎると当然、症例数も減ります。ただ、無制限に人を受け入れなければいけない日本の医局制度と相いれるかは微妙なところです。フェローによるプラグラムの評価 フェローによるプログラムの評価は必須です。ただ、医局に所属している医局員が自分の医局のプログラムを批評するようなことは、日本では難しいのかもしれません。公的な機関による積極的なプログラムへの評価・指導 公的な機関がフェローの意見を聞き、教育体制が不十分なプログラムの指導や廃止をすることも必要です。終わりに 医局制度との絡みなど難しい問題はありますが、米国の良いところのみを参考にして、日本の良さを残した、日本独自の優れた専門医教育が発展してほしいと思います。 次回も、もう少し具体的にアメリカのトレーニングについて触れたいと思います。 参考文献 1) 日本循環器学会.日本循環器学会認定循環器専門医制度規則.日本循環器学会ホームページ.(参照 2015-09-21). 2) ACGME. ACGME Program Requirements for Graduate Medical Education in Cardiovascular Disease (Internal Medicine). Accreditation Council for Graduate Medical Education. (accessed 2008-08-25).

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新システム人工膵臓、長期使用の有用性を確認/NEJM

 クローズドループシステムの人工膵臓の、長期使用の有用性が報告された。1型糖尿病患者を対象とした検討で、これまでのセンサー併用型ポンプ療法と比較して血糖コントロールを改善し、低血糖の発生は低く、成人被験者では血糖値の低下に結びついたという。英国・ケンブリッジ大学のHood Thabit氏らが、小児・青年25例と成人33例を対象とした12週間使用について検討を行い報告した。在宅療法としてのクローズドループシステムの人工膵臓の長期使用の可能性、安全性および有効性については、これまで確認されていなかった。NEJM誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告。1型糖尿病、成人33例と小児・青年25例を対象に12週間使用を評価 試験は、被験者が自宅で自由に生活している状況下で、クローズドループインスリン投与法とセンサー併用型ポンプ療法を比較して行われた。 検討は、2件の多施設無作為化対照試験にて実施され、被験者は58例(小児・青年25例、成人33例)であった。 クローズドループシステムは、成人被験者には昼夜にわたって、小児・若年者被験者には夜間に使用。クローズドシステムを12週間使用し、センサー併用型ポンプ療法(対照)を同一期間使用し評価した。 主要エンドポイントは、成人被験者については血糖値が70~180mg/dL、小児・青年については同70~145mg/dLであった時間割合とした。目標血糖値達成時間割合が11.0ポイント有意に増大 成人被験者において、目標血糖値達成の時間割合は、クローズドループシステム群67.7±10.6%、対照群56.8±14.2%で、クローズドループシステム群のほうが11.0ポイント(95%信頼区間[CI]:8.1~13.8)有意に増大した(p<0.001)。 また、平均血糖値は、クローズドループシステム群のほうが有意に低かった(差:11mg/dL、95%CI:6~17、p<0.001)。同様に、血糖値63mg/dL未満期間に関する曲線下面積(AUC)(39%低減、95%CI:24~51、p<0.001)、平均HbA1c値(差:0.3%、0.1~0.5、p=0.002)も有意に低かった。 小児・青年被験者では、目標夜間血糖値達成割合は、クローズドループシステム群が24.7ポイント(95%CI:20.6~28.7)有意に多かった(p<0.001)。 また、平均夜間血糖値は、29mg/dL(同:20~39)有意に低く(p<0.001)、昼夜血糖値63mg/dL未満期間に関するAUCは42%有意に低かった(95%CI:4~65、p=0.03)。 重度低血糖の報告は、クローズドループシステム群で3件発生した。1件は成人で、バッテリーの低下によるものであった。小児・青年群の報告例2件は第三者の支援を必要としたが入院とはならなかった。

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携帯メッセージでの生活習慣支援、LDL-C値改善に有効/JAMA

 冠動脈疾患患者に対し、携帯電話を活用した生活習慣に焦点を合わせたテキストメッセージサービス介入で、大半のLDL-C値が改善し、その他の心血管疾患リスク因子も大きく改善したことが報告された。オーストラリア・シドニー大学のClara K. Chow氏らが通常ケア介入と比較した無作為化試験Tobacco, Exercise and Diet Messages(TEXT ME)の結果、報告した。ただし、示された結果について著者は、「改善効果の期間や、臨床的アウトカムに結び付くのかどうかはなお不明である」と述べ、さらなる検討の必要性を指摘している。JAMA誌2015年9月22/29日号掲載の報告より。週4通6ヵ月の介入群 vs.通常ケア群の無作為化試験で評価 研究グループは、心血管リスク因子に関するテキストメッセージを携帯電話で送るという方法で、生活習慣に焦点を合わせた半カスタマイズ化された支援プログラムの効果を調べた。 試験は、オーストラリア、シドニーの3次機能病院1施設で2011年9月~13年11月に、単盲検並行群比較にて、710例を対象に行われた。被験者の平均年齢は58(SD 9.2)歳、男性82%、現在喫煙者が53%を占め、冠動脈性心疾患(CHD)を有していた(心筋梗塞既往または血管造影でCHD確認)。 被験者は、介入群(352例)と通常ケア群(358例)に無作為に割り付けられ、介入群には、通常ケアと、毎週4つのテキストメッセージが6ヵ月間送付された。テキストメッセージの内容は、生活習慣を変えるためのアドバイス、動機付けとなるリマインダー、支援を提供するものであった。 メッセージの送付はコンピュータシステムで自動化されていたが、対象被験者のベースライン特性(喫煙状況など)に合わせて選択して送られるようになっていた(双方向システムではない)。 主要エンドポイントは、6ヵ月時点のLDL-C値とした。副次エンドポイントは、収縮期血圧、BMI、身体活動度(MET)、喫煙状況などだった。介入群のLDL-C値5mg/dL有意に低下 結果、6ヵ月時点のLDL-C値は、介入群79mg/dL、通常ケア群84mg/dLで、介入群の有意が低下が認められた(差:5mg/dL、95%信頼区間[CI]:0~9、p=0.04)。 収縮期血圧は、128.2mmHg vs.135.8mmHg(差:7.6mmHg、95%CI:5.4~9.8、p<0.001)、BMIは29.0 vs.30.3(同:1.3、0.9~1.6、p<0.001)、METは936.1分/週 vs.642.7(同:293.4、102.0~484.8、p=0.003)、非喫煙者率は26.0%(88/339例) vs.42.9%(152/354例)(リスク比:0.61、95%CI:0.48~0.76、p<0.001)と、いずれも介入群が有意に低かった。 また、被験者の報告で、大半が、テキストメッセージが有用(91%)であり、わかりやすい(97%)と回答し、また送付頻度についても適切(86%)と回答していた。

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転移性メラノーマにニボルマブ・イピリムマブ併用療法をFDAが承認

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY/本社:米国・ニューヨーク/CEO:ジョバンニ・カフォリオ)は2015年10月1日、米国食品医薬品局(FDA)が、BRAF V600 野生型の切除不能または転移性の悪性黒色腫患者を対象とした、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法を承認したと発表した。 今回の承認は、未治療の切除不能または転移性の悪性黒色腫患者において、オプジーボとヤーボイの併用療法を評価したCheckMate069試験のデータに基づいている。ニボルマブ・イピリムマブ併用群が有意に優れた結果 CheckMate 069試験は、未治療の切除不能または転移性悪性黒色腫の患者140名を登録した第Ⅱ相二重盲検無作為化試験で、BRAF 野生型とBRAF 変異陽性の双方の悪性黒色腫患者が含まれた。試験の主要評価項目は、BRAF野生型患者における奏効率(ORR)。追加的な有効性評価項目はBRAF V600野生型悪性黒色腫患者における医師評価による奏効期間とPFSであった。無作為化はBRAFの変異状態による層別化をもとに行われた。ニボルマブ・イピリムマブ併用群には、併用フェーズで、ニボルマブ1mg/kgとイピリムマブ3mg/kgを3週間に1回4サイクル実施した後、単剤フェーズで、ニボルマブ3mg/kgを隔週で投与した。一方、ヤーボイ単剤群には、ニボルマブ3mg/kgとプラセボを3週間に1回4サイクル投与した。BRAF野生型悪性黒色腫患者(109 名)において、併用群の奏効率は60%(95%信頼区間:48-71, p

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日本初のバルーン型「Arctic Front Advance 冷凍アブレーションカテーテル」発売

 日本メドトロニック株式会社は10月5日、不整脈の一種である薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動を目的とした冷凍アブレーションカテーテル「Arctic Front Advance 冷凍アブレーションカテーテル(以下、Arctic Front Advance)」を、全国で発売開始した。バルーン型、冷凍方式のアブレーションカテーテルは日本国内で初となる。 冷凍アブレーションシステムを用いたバルーン形状のアブレーションカテーテルArctic Front Advanceにより、肺静脈を閉塞しながら円周状に冷凍焼灼を行うことで、心房細動を引き起こす不要な電気刺激の回路を遮断する経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術(冷凍アブレーション)治療が可能になる。 心房細動は肺静脈内からの異常な電気信号が原因であることが多く、治療法としては根治を目的とした、肺静脈入口部に電気的な絶縁部(隔離)を形成する心筋焼灼術が知られる。既存のアブレーションは高周波電流で点状あるいは線状で心筋を焼灼することで不要な電気刺激の回路を遮断しているのに対し、Arctic Front Advanceを用いた冷凍アブレーションはバルーンの形状のアブレーションカテーテルにより円周状に焼灼し遮断できるため、手技時間の短縮が期待されるという。 また、従来の高周波電流を用いた焼灼術と比較し、血栓形成リスクの低さや結合組織(コラーゲンなど)の温存など合併症発生の軽減につながることが期待されている。そして、亜酸化窒素ガスによる冷却を利用した治療法であるため、肺静脈周囲の組織とバルーンが固着することにより、カテーテルを安定的に保持することが可能になった。 なお、Arctic Front Advanceの導入には、日本不整脈心電学会のウェブサイトに掲載されている「経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術に関する施設基準」を満たす必要がある。日本メドトロニック株式会社のプレスリリースはこちら。(PDF)

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甘くみていませんか、RSウイルス感染症

 10月1日、都内においてアッヴィ合同会社は、RSウイルス感染症に関するプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、小保内 俊雅氏(多摩北部医療センター 小児科部長)が「秋から冬に流行る呼吸器感染症 侮れないRSウイルス~突然死を含む重症例の観点から~」と題し、最新のRSウイルス感染症の動向や臨床知見と小児の突然死を絡め、解説が行われた。注意するのは小児だけでない 秋から冬に流行するRSウイルス(以下「RSV」と略す)は、新生児期から感染が始まり、2歳を迎えるまでにほとんどのヒトが感染するウイルスである。これは、生涯にわたり感染を繰り返し、麻疹のように免疫を獲得することはない。症状としては、鼻みず、咳、喉の痛み、発熱などの感冒様症状のほか、重症化すると喘鳴、肩呼吸、乳児では哺乳ができないなどの症状が出現し、肺炎、細気管支炎などを引き起こすこともある。成人では鼻風邪のような症状であり、乳幼児では多量の鼻みずと喘鳴などが診断の目安となる。インフルエンザと同じように迅速診断キットがあり、これで簡易診断ができる(ただし成人には保険適用がない。小児のみ保険適用)。治療は対症療法のみとなる。 「乳幼児」(なかでも早産児、慢性肺疾患、先天性心疾患の児)、「褥婦」、「65歳以上の高齢者」では、時に重症化することがあるので注意を要する。とくに褥婦は、容易に感染しやすく、感染に気付かないまま病院の新生児室などを訪れることで、感染拡大を起こす例が散見される。また、高齢者では、施設内での集団感染で重篤化した事例も報告されているので、感染防止対策が必要とされる。約7割の親はRSV感染症を知らないと回答 次にアッヴィ社が行った「RSV感染症と保育施設利用に関する意識調査」に触れ、一般的な本症の認知度、理解度を説明した。アンケート調査は、2歳以下の乳幼児を保育施設に預ける両親1,030名(男:515名、女:515名)にインターネットを使用し、本年7月に行われたものである。 アンケートによると66.8%の親が「RSV感染症がどのような病気か知らない」と回答し、重症化のリスクを知っている親はわずか17.3%だった。また、56.9%の親が子供に病気の疑いがあっても保育施設を利用していることが明らかとなった。なお、子供が病気の際に必要なサポートとしては、「職場の理解」という回答が一番多く、母親の回答では「父親の協力」を求めるものも多かった。 今後、院内保育の充実や本症へのさらなる啓発の必要性が示された結果となった。怖い乳幼児のRSV感染症 小児集中治療室(PICU)に入院する、呼吸器感染症の主要原因トップが「RSV感染症」であるという。主症状としては、呼吸不全(喘鳴を伴う下気道感染)、中枢神経系の異常(痙攣、脳炎)、心筋炎、無呼吸発作(生後3ヵ月未満で起こる)が認められる。これに伴い、乳幼児の突然死がみられることから、小保内氏が月別のRSVの流行期と突然死の発生状況を調査したところ、相関することが明らかとなった。また、RSV感染に続発する突然死として、その機序は無呼吸ではなく、致死的不整脈であること、症状の重症度とは相関せず突然死が発生すること、SIDSの好発年齢(1歳以上)を超えても発生することが報告された。知らないことが最大の脅威 RSV感染症は、生涯にわたり感染する。よって、誰でも、いつでも感染源になる危険性を知っておく必要がある。当初は弱い症状であっても、急変することも多く、軽く考えずに軽い風邪と思い込んで子供を保育園などに通園させないほうがよいとされる。また、突然死は、危機的症状と相関しないので、病初期から注意が必要となる。 RSV感染症の予防としては、手洗い、うがいの励行であり、とくに大人の子供への咳エチケットは徹底する必要がある、また、流行期には、人混みへの不要不急の外出を避けるなどの配慮も必要となる。これら感染予防を充実することで、大人が子供を守らなければならない。その他、ハイリスクの乳幼児(たとえば1歳未満の早産や2歳未満の免疫不全など)には、重症化を防ぐ抗体としてパリビズマブ(商品名:シナジス)がある。これは、小児にしか保険適用が認められておらず、接種要件も厳格となっているので、日常診療での説明の際は注意が必要となる。 最後に、「RSV感染症は単なる鼻風邪ではなく、実は怖い病気であると、よく理解することが重要であり、予防と感染拡大防止の知識の普及と啓発が今後も期待される」とレクチャーを終えた。 「RS ウイルス感染症と保育施設利用に関する意識調査」は、こちら。

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持効性注射剤と経口薬の比較分析、どんなメリットがあるか

 抗精神病薬投与は統合失調症の治療の柱であるが、大多数の患者でアドヒアランス不良が顕著な問題となっている。それらの患者に対しては持効性注射剤(LAI)が治療オプションとして推奨されているが、その利点に関するエビデンスは明確ではなく、とくに新規の第2世代LAIに関する観察データは限定的であった。米国・ペンシルベニア大学のSteven C. Marcus氏らによるメディケイド支払データベースの分析結果から、退院後の統合失調症患者に対する投薬は、LAIのベネフィットを支持するエビデンスが増加していることが示唆された。製剤はとくに第2世代LAIで認められた。著者らは、「新たなLAIが登場しており、さらなる大規模なリアルワールド試験を行い、LAIの臨床的アウトカムおよびコスト面での利点を詳細に明らかにする必要があるだろう」とまとめている。Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy誌2015年9月号の掲載報告。 研究グループは、メディケイド患者のデータを用いて、統合失調症関連の入院後6ヵ月間の経口薬 vs.LAIの抗精神病薬投与について、アドヒアランス不良、投薬中断、再入院率を調べる検討を行った。2010~13年のTruven Health Analytics MarketScanのメディケア研究データベースを利用し、直近にアドヒアランス不良(前6ヵ月間)が認められ、経口薬またはLAIを投与されていた統合失調症関連での入院後30日以内の成人患者を特定し評価した。主要評価項目は、退院後6ヵ月間について調べたアドヒアランス不良(服用日数割合が0.80未満)、服用中断(60日以上服用なし)、統合失調症関連の再入院であった。社会人口統計学的、臨床的および治療の特色に関して、記述的分析法を用いて経口薬使用群 vs.LAI使用群を比較した。ロジスティック回帰分析法により、特色の違いを調整し、経口薬 vs.LAIの使用と各試験アウトカムの関連を調べた。すべてのアウトカムは、3つの分析レベル、すなわち全LAIクラス、世代レベル(第1世代[FGA]または第2世代[SGA])、個々のLAI製剤(フルフェナジンデカン酸エステル、ハロペリドールデカン酸エステル、リスペリドンLAI、パリペリドンパルミチン酸エステル)で比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・最終サンプルでは、退院後の経口薬使用者は91%(3,428例)、LAI使用者は9.0%(340例)であった。LAI群のうち、SGA LAI使用は半数強(53.8%、183例)であった。・アドヒアランス不良患者の割合は、経口薬群と比較してLAI群が有意に少なかった(51.8% vs.67.7%、p<0.001)。60日間以上の中断者の割合も有意に少なく(23.8% vs.39.4%、p<0.001)、統合失調症の再入院率も有意に低かった(19.1% vs.25.3%、p=0.01)。・これらの差の大きさは、SGA LAI使用群と経口薬使用群のアドヒアランス不良の比較において拡大した。・すべての差を共変量で調整後、経口薬使用群との比較において、LAI開始群の以下のオッズ比が有意に低かった。アドヒアランス不良の補正後オッズ比(AOR)が 0.35(95%信頼区間[CI]:0.27~0.46、p<0.001)、60日間以上の中断のAORが0.45(同: 0.34~0.60、p<0.001)。・FGA LAI群とSGA LAI群はいずれも、経口薬群との比較においてアドヒアランス不良のオッズ比が低かった。・同様に60日間以上の中断についても、経口薬群との比較でFGA LAI使用者(AOR:0.58、95CI:0.40~0.85、p=0.005)、SGA LAI開始者(同:0.34、0.23~0.51、p<0.001)のオッズ比が有意に低かった。・また、経口薬群との比較において、LAI開始者は再入院率のオッズ比も有意に低かった(AOR:0.73、95%CI:0.54~0.99、p=0.041)。しかし、製剤の世代別に分析した場合は、SGA LAI使用群のみが、再入院オッズ比が統計的に有意に低く(AOR:0.59、95%CI:0.38~0.90、p=0.015)、FGA LAI群では有意な低下はみられなかった(同:0.90、0.60~1.34、p=0.599)。・LAI製剤個別の分析では、再入院オッズ比は、パリペリドンパルミチン酸エステル開始群でのみ、経口薬群との統計的に有意な差が認められた(AOR:0.53、95%CI:0.30~0.94、p=0.031)。・リスペリドンLAI群の経口薬群と比較した再入院のオッズ比は33%低下したが、統計的な有意差には達しなかった(AOR:0.67、95%CI:0.37~1.22、p=0.194)。関連医療ニュース 2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは 経口抗精神病薬とLAI併用の実態調査 初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る  担当者へのご意見箱はこちら

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母の名言【Dr. 中島の 新・徒然草】(088)

八十八の段 母の名言事の起こりは交通事故です。20代の女性が自動車にはねられたのですが、もともと先天的な障害を持っていたこともあって、退院してからも社会復帰が思うようにいきません。事故前に毎日通っていた作業所のほうも、まずは隔日での短時間作業から始めることになりました。でも、2時間も仕事をしていると疲れてしまい、翌日は1日中家で寝ているのだとか。ということで、車椅子で診察室にやってきた患者さんとお母さんが揉めていたのは作業所での仕事を何時間にするか、でした。 患者 「でも、『2時間しか働かれへん』と言ってるのに、外で代表に出くわしたら気まずいし」 中島 「代表の顔を見たら、『お疲れさまっ』とか言っといたらええやんか」 母親 「そうよ。『あさってもお願いしま~す』とかね」 中島 「家で練習したらどう?」 患者 「何の練習ですか?」 中島 「爽やかに笑って、『お疲れさま~』とか『あさってもよろしく~』とか言う練習や」 母親 「そうそう。私が練習相手になってあげるわよ」 患者 「お母さんと私では性格が違うし。だいたいお母さんはアッケラカンとしすぎや」 母親 「そんなもん、アッケラカンとしてなかったら、障害持ってる子を育てられへんがな」 患者 「でもお」 中島 「お母さん、それ…すごい名言ですね!」 患者・母親 「はあ?」 「1日おきに2時間の作業をさせてもらったら?」と説得するお母さんと私は、「外で作業所の代表と出くわしたら気まずいし、私はお母さんみたいにアッケラカンとしていないから」という意味不明の抵抗をくらいました。その時飛び出したのが、前述の名セリフ、「アッケラカンとしてなかったら、障害持ってる子を育てられへんがな」です。いやはや、母は強し。確かに障害を持った子供を育てるというのは大変なことです。悲しいことや悔しいことも沢山あったことでしょう。でもそれら一切を乗り越えたところにアッケラカンの境地があったわけですね。普通の人の一言、いつもながら感心させられました。最後に1句障害は アッケラカンで 跳ね返せ

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アルツハイマー病の焦燥性興奮に新規配合薬が有望/JAMA

 アルツハイマー病が疑われ焦燥性興奮を呈する患者に対し、開発中の配合薬デキストロメトルファン臭化水素酸塩+キニジン硫酸塩の10週間投与により、興奮症状の軽減が認められたことが報告された。米国・Cleveland Clinic Lou Ruvo Center for Brain HealthのJeffrey L. Cummings氏らが行った第II相臨床試験の結果、示された。全体的に忍容性も良好だったという。JAMA誌2015年9月22/29日号掲載の報告より。患者220例を対象に、ベースラインからの症状変化を比較 研究グループは2012年8月~14年8月にかけて、米国42ヵ所の医療機関で、アルツハイマー病の可能性が高く、臨床的焦燥性興奮が認められ(臨床全般印象尺度[CGI]で焦燥性興奮スコアが4以上)、Mini-Mental State Examination(MMSE)スコアが8~28の患者220例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。 同試験では、順次並行比較(sequential parallel comparison)デザインを採用し、第1段階(1~5週)では被験者を無作為に3対4に分け、デキストロメトルファン-キニジン(93例)またはプラセボ(127例)をそれぞれ投与した。第2段階(6~10週)では、第1段階のデキストロメトルファン-キニジンについては、そのまま投与を継続。一方プラセボ群については、反応状況(プラセボ効果あり・なし)によって層別化したうえで、無作為に1対1の割合で2群に分けてデキストロメトルファン-キニジン(59例)またはプラセボ(60例)を投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインからの神経精神症状評価尺度(NPI)焦燥性興奮/攻撃性ドメインのスコア[0(症状なし)~12(日々顕著な症状あり)]の変化だった。デキストロメトルファン-キニジン群で焦燥性興奮症状が有意に低減 試験を終了した被験者は194例(88.2%)で、デキストロメトルファン-キニジン群は152例、プラセボ群は127例だった。 試験の第1・2段階を総合した結果、ベースラインからのNPI焦燥性興奮/攻撃性ドメインのスコアは、デキストロメトルファン-キニジン群がプラセボ群に比べて有意に低下した(最小二乗法でのZ統計値:-3.95、p<0.001)。 第1段階では、同スコアはプラセボ群でベースライン7.0から5.3に低減したのに対し、デキストロメトルファン-キニジン群では7.1から3.8に低減した(最小二乗法平均値:-1.5、95%信頼区間[CI]:-2.3~-0.7、p<0.001)。 第2段階の同スコアは、プラセボ群でベースライン6.7から5.8に低減し、デキストロメトルファン-キニジン群では5.8から3.8に低減した(同:-1.6、-2.9~-0.3、p=0.02)。 有害事象としては、転倒発生率がプラセボ群3.9%に対しデキストロメトルファン-キニジン群で8.6%、尿路感染症がそれぞれ3.9%と5.3%の発症が報告された。重篤有害事象の発生率は、プラセボ群4.7%に対し、デキストロメトルファン-キニジン群が7.9%だった。なお、デキストロメトルファン-キニジンと認知機能低下、鎮静、臨床的に有意なQTc延長との関連はみられなかった。

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カテーテル関連感染症、クロルヘキシジン消毒で大幅減/Lancet

 カテーテル挿入前に、皮膚消毒をクロルヘキシジン・アルコールで行うと、ポビドンヨード・アルコールを使った場合に比べて、カテーテル関連感染症リスクは85%低下することが示された。フランス・CHU de PoitiersのOlivier Mimoz氏らが、2,546例を対象とした無作為化比較試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「血管内カテーテル関連感染症予防のためにも全例について、皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコールを用いるべきである」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告より。皮膚消毒前の洗剤による皮膚洗浄の有無についても比較 研究グループは、2012年10月~14年2月にかけて、フランス国内11ヵ所のICU入室となり、中心静脈カテーテル、血液透析、動脈カテーテルのいずれかを行った18歳以上の患者2,546例を対象に試験を行った。クロルヘキシジン・アルコールまたはポビドンヨード・アルコールによる皮膚消毒の、カテーテル関連の感染症予防効果について比較を行った。 被験者を無作為に4群に分け、2%クロルヘキシジン・70%イソプロピルアルコールまたは5%ポビドンヨード・69%エタノールのいずれかによる皮膚消毒群、および同実施前の洗剤による皮膚洗浄の有無別に割り付けた。 医師、看護師は、割り付けについてマスキングされなかったが、細菌学者およびアウトカム評価者には割り付けをマスキングされた。 主要アウトカムは、カテーテル関連感染症の発生率だった。皮膚洗浄の有無は感染率に有意差みられず クロルヘキシジン・アルコール群は1,181例、そのうち洗剤による皮膚洗浄を行ったのは594例だった。ポビドンヨード・アルコール群は1,168例、うち皮膚洗浄群は580例だった。 カテーテル関連感染症の発生率は、ポビドンヨード・アルコール群が1.77/1,000カテーテル日に対し、クロルヘキシジン・アルコール群は0.28/1,000カテーテル日と有意に低率だった(ハザード比:0.15、95%信頼区間:0.05~0.41、p=0.0002)。 洗剤による皮膚洗浄の有無では、同発生率に有意差はなかった(p=0.3877)。 また、全身性有害事象は認められなかったが、重篤皮膚反応の発生が、ポビドンヨード・アルコール群で1%(7人)に対しクロルヘキシジン・アルコール群では3%(27人)と有意に高率にみられた(p=0.0017)。2例はクロルヘキシジン・アルコール中断となった。

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ゴーシェ病専門ウェブサイト「ゴーシェテラス」が開設

 シャイアー・ジャパン株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:グレン・スノハラ)は、10月1日の「世界ゴーシェ病の日」に合わせ、ゴーシェ病の患者とその家族のための専門サイト『ゴーシェテラス』を開設した。 ゴーシェ病とは、遺伝性の希少疾病で、わが国では33万人に1人の割合で発症すると報告されている(推定患者数約130人)。男女ともに発症し、とくにアーシュケナージ系ユダヤ人に最も多くみられ、850人に1人の割合で発生する。本症は、先天的な酵素(グルコセレブロシダーゼ)の活性低下あるいは欠損により、糖脂質(グルコセレブロシド)が組織に蓄積する疾患で、主症状として肝脾腫、貧血、血小板減少、骨症状、神経症状などがある。治療として、わが国では酵素補充療法と骨髄移植が現在保険適用とされており、実臨床の場で用いられている。酸素補充療法では、イミグルセラーゼ(商品名:セレザイム)のほか、2014年9月にベラグルセラーゼ アルファ(同:ビプリブ/点滴静注用)が発売された。 「ゴーシェテラス」では、ゴーシェ病と診断された患者と家族の日常生活や疑問に役立つさまざまなコンテンツが掲載されている。 具体的な内容として、・ゴーシェ病について(ゴーシェ病の原因、症状、診断方法、治療法を解説)・患者・家族の話(患者、家族の貴重な体験談)・動画で見る専門医のゴーシェ病講座(専門医がイラストなどを使用し説明)・社会保障制度(医療費助成制度の内容紹介)・用語集(医師・医療従事者らとの会話でよく出てくる用語の解説)などが、掲載されている。シャイアー・ジャパン株式会社のプレスリリースはこちら。関連リンク 希少疾病ライブラリ ゴーシェ病

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てんかん重積状態の薬物療法はエビデンス・フリー・ゾーン

 てんかん重積状態(SE)は、最も重篤なてんかんの様式であり、最もよく発生する精神的緊急症状で、発生頻度は10万人年当たり61件、推定死亡率は20%である。臨床的に強直性間代性けいれんSEは、4つの連続するステージすなわちearly、established、refractory、super-refractoryに分けられる。しかしSEの薬物治療について、とくに後半のステージには、臨床決定の情報となる質の高い対照試験がないことから、“エビデンス・フリー・ゾーン”となっている。オーストリア・パラケルスス医科大学のEugen Trinka氏らは、SEの経過に応じた薬物療法のエビデンスについて包括的ナラティブレビューを行った。その結果、established SEにはフェニトインやフェノバルビタール、refractory、super-refractoryには麻酔薬が広く使用されていることを明らかにした。Drugs誌2015年9月号の掲載報告。 研究グループは、上述の4ステージアプローチに従って展開し、利用可能な文献の科学的エビデンスの強さに応じて、各抗てんかん薬の薬理学的特性と有効性/安全性のデータを提供しているSEの薬物療法に焦点を絞った包括的ナラティブレビューを行った。データソースは、MEDLINEおよび関連研究の参考文献とした。 主な結果は以下のとおり。・early SEでは、ロラゼパム静注またはミダゾラム筋注により約63~73%で有効なコントロールを得ていた。・established SEの治療には、安全性プロファイルは最適ではないものの、フェニトインの静注またはフェノバルビタールの静注が広く使用されていた。また、代替薬としてバルプロ酸、レベチラセタム、ラコサミドなどがあった。・refractoryまたはsuper-refractory SEには、十分な試験が行われていないにもかかわらず麻酔薬が広く使用されていた。また、後半ステージの代替治療に関するデータは限定的であった。・第1選択薬のベンゾジアゼピン系薬投与にもかかわらずestablished SEが持続している場合、バルプロ酸およびレベチラセタムが、フェノバルビタールおよびフェニトインの代替薬として安全かつ有効であることが示された。・いずれにせよ、established、refractory、super-refractory SEに対する抗てんかん薬として最も強く推奨支持するクラスIのデータはなかった。 結果を踏まえ、著者らは「established SEにはフェニトインやフェノバルビタール、refractory、super-refractoryには麻酔薬が広く使用されていることが明らかになったが、推奨治療を支持するエビデンスデータは乏しかった。試験間の方法論的不均一性を是正し、establishedおよびrefractory SEに対する最適な治療に関する情報を臨床医に提供できる、質の高いランダム化対照試験の実施が求められる」と指摘している。関連医療ニュース てんかん再発リスクと初回発作後消失期間 寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきか てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか  担当者へのご意見箱はこちら

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一般市民による心肺蘇生の普及率を高めるにはどうすればよい?(解説:上田 恭敬 氏)-426

 本報告は、日本における院外心停止レジストリの2005年~2012年までのデータを後ろ向きに解析し、目撃者による蘇生措置と神経学的予後の関係を検討したものである。レジストリは、救急搬送されたすべての院外心停止症例が含まれるが、この解析においては、目撃者ありの心源性と考えられる、院外心停止症例16万7,912例のデータを用いている。 2005年と2012年を比較すると、目撃者による胸骨圧迫施行率は39%から51%へと増加し、目撃者による電気的除細動施行率は0.1%から2.3%へと増加していた。目撃者による胸骨圧迫あるいは電気的除細動がある場合には、ない場合に比して、より良好な神経学的予後が認められた。 以上より、2005年に比して2012年では、目撃者による胸骨圧迫あるいは電気的除細動の実施率が増加しており、このことが神経学的予後の改善に貢献していたと結論している。 しかし、胸骨圧迫は比較的広く普及しているため、予後改善に大きく貢献しているものの、その効果は限定的である。 これに対して、電気的除細動は予後改善に強力な効果があるものの、普及率は非常に低い。今後は、AEDの使用頻度が高い場所を検討することによって、その適切な配置を考える必要があると指摘している。日本においては、鉄道の駅やスポーツ施設での心停止症例数およびAED使用数が高く、これらの場所へのAEDの配備がより重要であり、これら施設のスタッフに対してAEDの使用法を指導するほうが、一般市民に対して指導するよりも効率的であるとしている。目撃者による胸骨圧迫の頻度が50%程度に留まっていることも問題であり、いっそうの普及活動が必要としている。 ただし、今回観察された予後改善効果のわずか23%のみが、目撃者による蘇生措置の改善に起因していることが示されており、それ以外の院外・院内における処置・治療法の進歩も予後改善に大きく貢献していると考えられた。 電気的除細動の施行率が低いことについては、AEDの配備などハード面での問題もあるが、胸骨圧迫の施行率が低いことについては、意識の低さが主な問題であり、こちらを改善しなければ、いくらハード面に力を入れても、電気的除細動の施行率も上昇しないであろう。 この意識の低さについては、必ずしも蘇生措置法を学習する機会が少ないことが主な理由ではないだろう。蘇生措置法を知っていても、関わることで自身に不必要な災いを被りたくないと考える人も少なくないのではないだろうか。善意で蘇生措置を行っても、訴えられたり責任を問われることがあるかもしれないと心配するからであり、この懸念を払拭することが、心肺蘇生法を普及させる以上に重要な課題ではないだろうか。 もちろん、重大な過失がなければ責任を問われることはないだろうが、誰も「重大な過失なく」処置をできる自信などないであろう。「過失だらけのことをしても、しないよりは良い」というくらいの意識を持てる状況がなければ、一般市民による蘇生措置の普及は困難と思われ、善意の人が確実に守られるような法律上の整備がまず必要であろう。蛇足かもしれないが、このことは、航空機内での医師による応急処置についても当てはまることである。

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REACT試験:クローン病に対する早期複合免疫療法の有用性~集団無作為化試験(解説:上村 直実 氏)-427

 クローン病は原因不明で根治的治療が確立していない炎症性腸疾患であり、わが国では医療費補助の対象である特定疾患に指定されている。しかし、抗TNF受容体拮抗薬の出現とともに、本疾患に対する薬物療法が大きく変わりつつある。欧米では、症状や炎症の程度によって、5-ASA製剤、ステロイド、代謝拮抗薬、抗TNF受容体拮抗薬と段階的にステップアップする従来型の薬物療法に対して、代謝拮抗薬と抗TNF-α受容体拮抗薬を早期から使用する早期複合免疫療法の有効性と安全性を比較検証する臨床研究が、盛んに行われている。 今回、カナダやベルギーの60施設(対象患者1,982例)が参加して行われた非盲検クラスター無作為化試験(REACT試験)の結果、早期複合免疫療法は、12ヵ月間の寛解維持効果に関しては従来療法と差を認めなかったものの、2年以内の外科的手術、入院回数、重篤な疾患の合併などの重大な有害事象の発生率は、従来療法に比べて有意に低かった(27.7% vs.35.1%、95%CI:0.62~0.86、p=0.0003)。なお、両群における薬剤関連有害事象の発生率には差を認めていない。この結果から、早期複合免疫療法は薬物関連の有害事象を増加することはなく、今後、さらなる比較試験での有用性の検証が期待できると結論されている。 わが国では、日本消化器病学会による「クローン病診療ガイドライン(GL)」が2010年に刊行されているが、本邦での大規模な介入試験はほとんどなく、GLにおけるステートメントの基になるエビデンスのレベルは、非常に低いものばかりとなっている。確かに、クローン病は患者個々の病態に応じた取り扱いが千差万別であり、エビデンスに加えて経験に即した治療法を選択することが重要となる疾患であるが、今後、わが国のクローン病患者を対象として、最適とされる治療方針を導く臨床研究が遂行できる体制が構築されることが待望される。

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子宮頸がん、新規ワクチンに治療効果の可能性/Lancet

 HPV-16/18に関連する子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)に対し、HPV-16/18(E6/E7蛋白)を標的にする合成プラスミドVGX-3100を投与することで、病理組織学的な退縮がみられ、治療効果がある可能性が示された。米国・ジョンズホプキンス大学のCornelia L. Trimble氏らが、167例を対象に行った第IIb相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、報告した。CINの治療は切除とされているが、切除では生殖性の罹患状態が長期に続く可能性がある。そこで研究グループは、VGX-3100ワクチンに対宿効果があるかどうかを調べた。Lancet誌オンライン版2015年9月16日号で発表した。36週後のCIN1・正常病理への改善率を比較 試験は2011年10月19日~13年7月30日にかけて、7ヵ国36ヵ所の婦人科医療機関を通じて、HPV-16とHPV-18に関連するCIN2またはCIN3の認められる患者167例を対象に行われた。研究グループは被験者を、無作為に3対1の割合で2群に分け、一方の群(125例)にはVGX-3100(6mg)を、もう一方の群にはプラセボを、それぞれ0、4、12週目に筋注投与した。 主要有効性エンドポイントは、初回投与から36週後のCIN1または正常病理への退縮とした。 per-protocol解析と修正intention-to-treat(ITT)解析を、プロトコルの不備なく3回投与した患者を対象に、また少なくとも1回投与した患者を対象にそれぞれ行った。VGX-3100群のおよそ半数で退縮 試験実施計画適合集団のper-protocol解析では、病理組織学的な退縮が認められたのは、プラセボ群では36例中11例(30.6%)であったのに対し、VGX-3100群では107例中53例(49.5%)だった(絶対差:19.0ポイント、95%信頼区間[CI]:1.4~36.6、p=0.034)。 修正ITT解析では、同割合はプラセボ群40例中12例(30.0%)に対し、VGX-3100群114例中55例(48.2%)だった(同:18.2ポイント、1.3~34.4、p=0.034)。 なお、注射部位の紅斑発症が、プラセボ群42例中24例(57.1%)に対し、VGX-3100群は125例中98例(78.4%)と有意に高率だった(同:21.3ポイント、5.3~37.8、p=0.007)。 これらの結果を踏まえて著者は、「VGX-3100は、HPV-16/18に関連するCIN2/3に対し効果を示した初の治療的ワクチンである。VGX-3100は、CIN2/3の非外科的な治療オプションとして、同疾患治療の動向を変えうる可能性がある」と述べている。

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