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EMPA-REG OUTCOME試験:リンゴのもたらした福音(解説:住谷 哲 氏)-422

 リンゴを手に取ったために、アダムとイブは楽園から追放された。ニュートンは、リンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見した。どうやら、リンゴは人類にとって大きな変化をもたらす契機であるらしい。今回報告されたEMPA-REG OUTCOME試験の結果も、現行の2型糖尿病薬物療法に変革をもたらすだろう。 優れた臨床試験は、設定された疑問に明確な解答を与えるだけではなく、より多くの疑問を提出するものであるが、この点においても本試験はきわめて優れた試験といえる。本試験は、FDAが新たな血糖降下薬の認可に際して求めている心血管アウトカム試験(cardiovascular outcome trial:CVOT)の一環として行われた。SGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害薬であるエンパグリフロジンが、心血管イベントリスクを増加しないか、増加しないならば減少させるか、が本試験に設定された疑問である。短期間で結果を出すために、対象患者は、ほぼ100%が心血管疾患を有する2型糖尿病患者が選択された。かつ、心血管疾患を有する2型糖尿病患者に対する標準治療に加えて、プラセボとエンパグリフロジンが投与された。その結果、3年間の治療により心血管死が38%減少し、さらに、総死亡が32%減少する驚くべき結果となった。しかし、奇妙なことに、非致死性心筋梗塞および非致死性脳卒中には有意な減少が認められず、心不全による入院の減少が、心血管死ならびに総死亡の減少と密接に関連していることを示唆する結果であった。さらに、心血管死の減少は、治療開始3ヵ月後にはすでに認められていることから、血糖、血圧、体重、内臓脂肪量などのmetabolic parameterの改善のみによっては説明できないことも明らかになった。つまり、インスリン非依存性に血糖を降下させるエンパグリフロジンが、血糖降下作用とは無関係に患者の予後を大きく改善したことになる。この結果の意味するところを、われわれはじっくりと咀嚼する必要があるだろう。 エンパグリフロジンが心血管死を減少させたメカニズムは何か? これが本試験の提出した最大の疑問である。残念ながら本試験は、この疑問に解答を与えるようにはデザインされておらず、新たなexplanatory studyが必要となろう。科学史における多くの偉大な発見は、瞥見すると突然もたらされたようにみえるが、実際はそこに至るまでに多くの知見が集積されており、そこに最後の一歩が加えられたものがほとんどである。したがって本試験の結果も、これまでに蓄積された科学的知見の文脈において理解される必要がある。ニュートンも、過去の多くの巨人達の肩の上に立ったからこそ、はるか遠くを見通せたのである。この点において、われわれは糖尿病と心不全との関係を再認識する必要がある。 糖尿病と心不全との関係は古くから知られているが、従来の糖尿病治療に関する臨床試験においては、システマティックに評価されてきたとは言い難い1)。これは、FDAの規定する3-point MACE(Major adverse cardiac event:心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)および4-point MACE(3-point MACEに不安定狭心症による入院を加えたもの)に、心不全による入院が含まれていないことから明らかである。糖尿病と心不全との関係は病態生理学的にも血糖降下薬との関係においても複雑であり、かつ現時点でも不明な点が多く、ここに詳述することはできない(興味ある読者は文献2)を参照されたい)。血糖降下薬については、唯一メトホルミンが3万4,000例の観察研究のメタ解析から心不全患者の総死亡を抑制する可能性のあることが報告されているだけである3)。 本試験においては、ベースラインですでに心不全と診断されていた患者が約10%含まれていたが、平均年齢が60歳以上であること、すべての患者が心血管病を有していること、糖尿病罹病期間が10年以上の患者が半数を占めること、約半数の患者にインスリンが投与されていたことから、多くの潜在性心不全患者または左室機能不全(収縮不全または拡張不全)患者が含まれていた可能性が高い。筆者が考えるに、これらの患者に対して、エンパグリフロジンによる浸透圧利尿が心不全の増悪による入院を減少させたと考えるのが現時点での最も単純な推論であろう。これは、軽症心不全患者に対するエプレレノン(選択的アルドステロン拮抗薬)の有用性を検討したEMPHASIS-HF試験4)において、総死亡の減少が治療開始3ヵ月後の早期から認められている点からも支持されると思われる。興味深いことに、ベースラインで約40%の患者がすでに利尿薬を投与されており、エンパグリフロジンには既存の利尿薬とは異なる作用がある可能性も否定できない。 本試験の結果から、エンパグリフロジンは2型糖尿病薬物療法の第1選択薬となりうるだろうか? 筆者の答えは否である。EBMのStep4は「得られた情報の患者への適用」とされている。Step1-3は情報の吟味であるが、本論文の内的妥当性internal validityにはほとんど問題がない。しいて言えば、研究資金が製薬会社によって提供されている点であろう。したがって、この論文の結果はきわめて高い確率で正しい。ただし、本論文のpatient populationにおいて正しいのであって、明日外来で目前の診察室の椅子に座っている患者にそのまま適用できるかはまったく別である。つまり、外的妥当性applicabilityの問題である。そこでは医療者であるわれわれの技量が問われる。その意味において、本論文は糖尿病診療におけるEBMを考えるうえでの格好の教材だろう。 薬剤の作用は多くの交互作用のうえに成立する。そこで注意すべきは、本試験が心血管病の既往を有する2型糖尿病患者における2次予防試験であることである。2次予防で有益性の確立した治療法が1次予防においては有益でないことは、心血管イベント予防におけるアスピリンを考えると理解しやすい。心血管イベント発症絶対リスクの小さい1次予防患者群においては、消化管出血などの不利益が心血管イベント抑制に対する有益性を相殺してしまうためである。同様に、心不全発症絶対リスクの小さい1次予防患者においては、性器感染症やvolume depletionなどの不利益が、心不全発症抑制に対する有益性を相殺してしまう可能性は十分に考えられる。さらに、エンパグリフロジンの長期安全性については現時点ではまったく未知である。 薬剤間の交互作用については、メトホルミン、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬、β遮断薬、スタチン、アスピリンなどの標準治療に追加することで、エンパグリフロジンの作用が発揮されている可能性があり、本試験の結果がエンパグリフロジン単剤での作用であるか否かは不明である。それを証明するためには、同様の患者群においてエンパグリフロジン単剤での試験を実施することが必要であるが、その実現可能性は倫理的な観点からもほとんどないと思われる。 糖尿病治療における基礎治療薬(cornerstone)に求められるのは、(1)確実な血糖降下作用、(2)低血糖を生じない、(3)体重を増加しない、(4)真のアウトカムを改善する、(5)長期の安全性が担保されている、(6)安価である、と筆者は考えている。現時点で、このすべての要件を満たすのはメトホルミンのみであり、これが多くのガイドラインでメトホルミンが基礎治療薬に位置付けられている理由である。本試験においても、約75%の患者はベースラインでメトホルミンが投与されており、エンパグリフロジンの総死亡抑制効果は、前述したメトホルミンの持つ心不全患者における総死亡抑制効果との相乗作用であった可能性は否定できない。 ADA/EASDの高血糖管理ガイドライン2015では、メトホルミンに追加する薬剤として6種類の薬剤が横並びで提示されている。メトホルミン以外に、総死亡を減少させるエビデンスのある薬剤のないのがその理由である。最近の大規模臨床試験の結果から、インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬およびGLP-1受容体作動薬)の心血管イベント抑制作用は、残念ながら期待できないと思われる。本試験の結果から、心血管イベント、とりわけ心不全発症のハイリスク2型糖尿病患者に対して、エンパグリフロジンがメトホルミンに追加する有用な選択肢としてガイドラインに記載される可能性は十分にある。EMPA-REG OUTCOME試験は、2型糖尿病患者の予後を改善するために実施された多くの大規模臨床試験が期待した成果を出せずにいる中で、ようやく届いたgood newsであろう。参考文献はこちら1)McMurray JJ, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2014;2:843-851.2)Gilbert RE, et al. Lancet. 2015;385:2107-2117.3)Eurich DT, et al. Circ Heart Fail. 2013;6:395-402.4)Zannad F, et al. N Engl J Med. 2011;364:11-21.関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験:試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)

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EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)-423

 2015年9月14日から、ストックホルムで開催された欧州糖尿病学会(EASD)に参加した。今大会でEMPA-REG OUTCOME試験の結果が発表されるとあって、世界中から集まった糖尿病の臨床医や研究者の注目を集めていた。私も当日、発表会場に足を運んだが、超満員でスクリーンの文字がよく見えない位置に座るしかなかった。しかし、EMPA-REG OUTCOME試験の結果は同日論文に掲載されたため、内容を確認することができた1)。 2008年以降、米食品医薬品局(FDA)は新規の糖尿病治療薬に対し、心血管系イベントに対する安全性を評価する、ランダム化プラセボ対照比較試験の実施を義務付けている。そして、SGLT2阻害薬ではエンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジンで心血管系の安全性試験が行われている。この3製剤の中で、エンパグリフロジンの試験(EMPA-REG OUTCOME)が最も早く終了し、今回の発表となった。 この試験は、心筋梗塞・脳梗塞の既往や心不全などのある、心血管イベントの発症リスクの高い2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)10mgあるいは25mgを投与し、プラセボと比較して心血管イベントに対する影響を検討した研究である。主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞のいずれかの初回発現までの期間で、結果の解析はエンパグリフロジン群(10mg群と25mg群をプールしたもの)のプラセボ群に対する非劣性を検定した後に優越性を検定する、とデザインペーパーに記載されている2)。 日本を含む世界42ヵ国、約7,000人がこの試験に参加し、追跡期間の中央値は3.1年であった。主要エンドポイントは、エンパグリフロジン群(10mgと25mgの合計)がプラセボ群より有意に低かった(hazar ratio:0.86、95%CI:0.74~0.99)。また、非致死的心筋梗塞と非致死的脳梗塞では有意差が付かなかったが、心血管死は有意に低下していた(3.7% vs.5.9%、Hazard ratio:0.62、95%CI:0.49~0.77)。また、全死亡も有意に低下しており(5.7% vs.8.3%、Hazard ratio:0.68、95%CI:0.57~0.82)、生命予後を改善することが示唆された。 おそらく多くの方々がこの結果を評価するであろう。これまでの糖尿病治療薬でこれほど心血管イベントを抑制した薬剤はなく、世界中の医療関係者を驚かせた。また、高血圧症や脂質異常症の標準治療をされたうえでも心血管死を減少したというのは特筆すべき結果である。 本稿ではあえて気になった点を列記する。(1)主要エンドポイントはエンパグリフロジン10mg群および25mg群ではいずれも有意差が付いていない。おそらく症例数が少ないことによるものであろう。(2)心血管死の発症は著明に抑制されていたが、一方で心筋梗塞や脳梗塞の発症は抑制されておらず、とくに脳梗塞は、むしろ増加する傾向を認めている点には注意が必要である。(3)心血管死や心不全による入院は試験開始直後から減少しているが、この点をどう解釈するか。これほど早く薬剤の臨床効果が出現するものだろうか。 また、なぜSGLT2阻害薬エンパグリフロジンを投与すると、試験開始早期より心血管死を抑制できたのであろうか。HbA1cはプラセボ群よりたかだか0.5%程度しか低下していない。これまでに行われた糖尿病治療薬の試験でも今回のような効果は認められたことはなく、血糖コントロールの改善が寄与したとは考えにくい。また、血圧に関しても収縮期血圧はおよそ4mmHgの低下を認めるが、血圧低下だけでは十分に説明できない。脂質に関しても、HDLコレステロールの増加はわずか2mg/dL程度であり、むしろLDLコレステロール値は上昇している。1つの機序としては、心血管死と心不全に対する効果が早くかつ大きいことや、これまでの心不全に関する試験においても今回と同様の結果が認められることから、SGLT2阻害薬の利尿作用が関係している可能性がある。また、別の機序として、複数の治療目標を同時に積極介入したSteno-2試験の結果に類似することから、SGLT2阻害薬が血糖のみならず血圧、脂質、肥満などをトータルに改善したことが結果につながったのかもしれない。いずれにしても、この心血管イベント抑制のメカニズムは推測の域を超えない。 この効果がエンパグリフロジンだけに認められる結果なのか、それともほかのSGLT2阻害薬でも認められるのか。今後のカナグリフロジン(CANVAS試験)やダパグリフロジン(DECLARE-TIMI58試験)の結果を待たなければ断言できないが、現時点ではクラスエフェクトと考えるほうが妥当であろう、そうEASDで発表者の一人が質疑応答で返答していた。 EMPA-REG OUTCOME試験により、SGLT2阻害薬の心血管イベントに対する効果のみならず、さらに興味深い結果が得られた。これまで日本では、「若くて肥満のある患者が良い適応だ」とうたわれてきた。しかし、主要アウトカムのサブグループ解析で、高齢者(65歳以上)や非肥満者(BMI 30以下)のほうが、むしろ効果が高いという結果をみると、SGLT2阻害薬の対象となる患者の範囲は案外広いのかもしれない。また、「利尿薬との併用はしてはいけない」ともいわれてきたが、この研究では実に約43%の症例で利尿薬が併用されていたにもかかわらず、体液減少による有害事象の増加は認められなかった。EMPA-REG OUTCOME試験はこれまでの常識を覆す、インパクトのある試験であることは間違いない。参考文献はこちら1)Zinman B, et al. N Engl J Med. 2015 Sep 17. [Epub ahead of print]2)Zinman B, et al. Cardiovasc Diabetol. 2014;13:102.関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験:試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:リンゴのもたらした福音(解説:住谷 哲 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)

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感度、特異度の話(最終回)【Dr. 中島の 新・徒然草】(087)

八十七の段 感度、特異度の話(最終回)これまでの回(その1、その2、その3、その4)では、休日に受診した突然の激しい頭痛患者さんの頭部CTで出血が見当たらない場合、研修医としてどうするか、という想定での医学生との問答を紹介しました。「突然」の「激しい頭痛」という2つもキーワードを持っている患者さんですから、たとえCTで出血がなくても安直に帰宅させてはなりません。その後の診療に自信がなければ、脳外科医を呼ぶか、脳外科のある病院に送る必要があります。でもCTが陰性の場合、どういうプレゼンをすれば快く脳外科医が受けてくれるのでしょうか? 中島 「こういう時の台詞は1つ」 学生 「何と言うのですか」 中島 「『60代の女性、突然の激しい頭痛です。頭部CTで少量のクモ膜下出血を疑います』と言ったらエエんや」 学生 「そんなウソをついてもいいのでしょうか」 中島 「ウソやないぞ」 学生 「でもCTでは陰性なんですよね」 中島 「君が見て出血をみつけることができなかった、というのが正確な表現やろ?」 学生 「それはそうですけど」 中島 「放射線科医とか脳外科医やったらわずかな出血を見つけるかもしれんぞ」 CTが陰性といっても、それは研修医が見たときの所見です。専門医がよく見れば、思わぬところに出血があった、というのはこれまで何度も経験してきました。 中島 「たとえばこのCTや。クモ膜下出血があるかないか?」 学生 「僕の目にはなさそうに見えますけど」 中島 「『絶対ない』と断言できるか?」 学生 「絶対とまでは言えません」 中島 「たしかに脳底槽にヒトデ形に拡がる出血はないよな。でも、この脳溝のところはちょっと白くなってないか?」 学生 「そう言われればそんな気もします」 中島 「ここも少し白いぞ」 学生 「そう……ですね」 中島 「じゃあ、どっちや」 学生 「あり……でしょうか?」 中島 「それなら、『少量のクモ膜下出血を疑います』と言ってもエエんやないか」 実際、どんなCTを見ても出血っぽく見えるところが必ず何ヵ所かあります。 学生 「実際のところ、このCTは正常なんですか異常なんですか?」 中島 「正常や」 学生 「ひどーい!」 中島 「さっき『あり、でしょうか』と言ったのは君自身やないか」 学生 「それはそうですけど」 中島 「本当は他院に送った後で、『クモ膜下出血なんかどこにもなかったぞ!』と怒られたくないんやろ」 学生 「そうかもしれません」 中島 「けどな。事後確率を考えたら、一刻も早く専門医に送るべきやろ」 学生 「そうですね」 中島 「頭部CTで出血を否定しきるだけの自信もないわけやろ」 学生 「ええ」 中島 「なら結論は見えとるやないか」 実際、このような状況で患者さんを受け取った脳外科医も、頭部CTだけ見て「出血なし」と断言することはしていません。必ず頭部MRIや腰椎穿刺を追加した上でクモ膜下出血の有無を判断しています。 中島 「ええか、クモ膜下出血を否定しきれないときの君の台詞は1つ。『突然の激しい頭痛です。頭部CTで少量のクモ膜下出血を疑います』、これ一択や」 学生 「なるほど」 中島 「脳外科医なら十人が十人、『すぐに送ってくれ』と言うやろ」 学生 「そうですね」 中島 「後で『クモ膜下出血なんか何処にもないぞ!』と怒られたら、『てへっ』と笑って頭を掻いておけ」 学生 「そうします」 中島 「自分のメンツより、患者の命や」 学生 「今の僕にメンツなんかありません」 中島 「なら、良し!」 若者は素直ですね。 学生 「あの……」 中島 「ん?」 学生 「どう言えば受けてくれるのか、というのが一番勉強になりました」 中島 「後は実戦あるのみ。研修で頑張ってくれ」 学生 「精一杯頑張ります!」 というわけで、合計5回にわたった「感度、特異度の話」。お付き合いいただき、ありがとうございました。最後に1句学ぶのは 人を動かす 良い台詞ついでにもう1句人助け メンツなんぞは くそくらえ!

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青年期の運動能力・筋力が高い人は血管疾患リスクが低い/BMJ

 青年期に運動能力や筋力が高い人は、いずれも低い人と比べて、血管疾患や不整脈に関する長期リスクが低いことが示された。ただし運動能力と不整脈リスクについての関連はU字型の相関がみられ、運動能力が高く血管疾患リスクが低くてもその健康ベネフィットが、不整脈リスクを上回ることはなかったという。スウェーデン・ウプサラ大学のKasper Andersen氏らが、同国1,100万人の青年について行ったコホート試験の結果、明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年9月16日号掲載の報告。年齢中央値は18.2歳、中央値26.3年追跡 研究グループは、1972年8月~95年12月にかけて、徴兵義務に参加した1,100万人の男性について、2010年末まで追跡した。運動能力・筋力と、血管疾患とそのサブグループ(虚血性心疾患、心不全、脳卒中、心血管疾患死)のリスク、また、不整脈とそのサブグループ(心房細動や心房粗動、徐脈性不整脈、上室頻拍、心室不整脈、突然心臓死)のリスクとの関連について分析を行った。 被験者の試験開始時点の年齢中央値は18.2歳で、追跡期間の中央値は26.3年だった。 最大運動能力は、自転車運動負荷試験の結果から推算した。筋力は、握力計を使った握力測定の結果とした。いずれも中央値を超えた人を、運動能力や筋力が高いと定義した。運動能力・筋力が高いと、血管イベントリスクは共に低い人の0.67倍に 追跡期間中に発生した血管疾患イベントは2万6,088件、不整脈イベントは1万7,312件だった。 運動能力は、血管疾患・サブグループのリスクと逆相関の関連が認められた。また筋力は、血管疾患リスクと逆相関の関連が認められ、筋力の強さと心不全や心血管死リスク低下との関連が認められた。 運動能力と不整脈リスクにはU字型の相関が認められた。その内容をみてみると、心房細動とは直接の相関が、徐脈性不整脈とはU字型の相関が認められた。また、筋力が高いと不整脈リスクが低くなり、とくに徐脈性不整脈と心室性不整脈のリスクが低下した。 運動能力も筋力も共に高い人は、いずれも低い人と比べて、血管イベントのハザード比が0.67(95%信頼区間:0.65~0.70)、不整脈イベントのハザード比は0.92(同:0.88~0.97)だった。

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乳児の細気管支炎、SpO2値90%でもアウトカム良好/Lancet

 細気管支炎で入院した乳児の酸素飽和度(SpO2)目標値は、90%でも、94%とその治療効果や安全性は同等であることが判明した。英国・エジンバラ大学のSteve Cunningham氏らが細気管支炎の乳児615例を対象に行った、二重盲検無作為化同等性試験の結果、報告された。同目標値について、米国小児科学会やWHO(世界保健機構)では90%としている。しかし、その裏付けとなるエビデンスはなかった。Lancet誌2015年9月12日号掲載の報告より。小児病院8ヵ所に入院した生後6週~12ヵ月の乳児について試験 研究グループは2012年3月~13年3月に、英国8ヵ所の小児病院に入院した、生後6週~12ヵ月の細気管支炎の乳児615例を対象に試験を行った。SpO2目標値が90%以上の場合と94%以上の場合で、そのアウトカムが同等であるかどうかを検証した。 一方の群(308例)には標準オキシメータを用いてSpO2 94%未満で酸素投与を行い、もう一方の群(307例)は、投与値が90%の際に94%と表示されるオキシメータを使い、90%未満で酸素が投与された。 患者の両親や臨床スタッフ、アウトカム評価者は全員、被験者の割り付けについて知らされなかった。咳消失までの日数中央値は、両群ともに15.0日 その結果、咳が消失するまでの日数中央値は、両群とも15.0日(両群の差に関する95%信頼区間:-1~2)で、同等であることが示された。 重篤有害事象については、94%群35件(32例)、90%群25件(24例)で報告された。 94%群では、重症ケア室に入室となった患者は8例、再入院は23例、長期入院は1例だった。90%群では、重症ケア室に入室となった患者は12例、再入院は12例だった。 これらの結果を踏まえて著者は、「酸素飽和度の目標値が90%でも、94%とその安全性と臨床効果は同等だった」と結論。そのうえで、「とくに医療資源の限られている発展途上国を対象に、より年齢の高い小児について、同目標値の違いによるベネフィットとリスクについての評価を行うべきだろう」と提言している。

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カフェインとアスピリンの併用は頭痛の頻度を増加させない

 カフェインとアスピリンの併用は、アスピリン単独または鎮痛薬不使用と比較して頭痛の頻度を増加させないことが、ドイツ・エッセン大学病院のSara H. Schramm氏らによるドイツ・頭痛コンソーシアム研究において示された。カフェインと鎮痛薬の併用は、頭痛慢性化のリスクがあるとして議論の的となっていた。Pain誌2015年9月号の掲載報告。 研究グループは、18~65歳の一般住民が参加したドイツ・頭痛コンソーシアム研究において、カフェイン+アスピリン併用が、アスピリン単独と比較して片頭痛、緊張型頭痛および片頭痛+緊張型頭痛の頻度を増加させるかについて検討した。 ベースライン(2003~2007年:t0)、第1回追跡調査時(1.87±0.39年後:t1)、第2回追跡調査時(3.26±0.60年後:t2)に頭痛と鎮痛薬について調査し、t0で頭痛を有し、t0およびt2においてアスピリン単独、カフェイン+アスピリン服用または鎮痛薬不使用で頭痛頻度がわかっている人について解析した。 線形回帰法にて、頭痛頻度の変化量(Δt2-t0)を95%信頼区間[CI]値とともに推算して評価した。変化量は、性別、年齢、t1時点の鎮痛薬、飲酒、喫煙、BMI、教育レベル、t0時の頭痛頻度で補正を行い、鎮痛薬服用量に応じ、頭痛サブタイプに層別化して算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は509例(平均42.0±SD 11.8歳、女性56.0%、)であり、45.2%がアスピリン単独服用者、11.8%がカフェイン+アスピリン服用者、43.0%が鎮痛薬不使用者であった。・アスピリン単独服用者(41.3±10.9歳、女性59.6%)の頭痛頻度は、t0で2.8±3.1日/月、t2で3.6±4.1日/月であった。・カフェイン+アスピリン服用者(46.0±9.8歳、女性73.3%)の頭痛頻度は、t0で4.8±6.1日/ヵ月、t2で5.3±5.1日/ヵ月であった。・鎮痛薬不使用者(41.6±13.1歳、女性47.5%)の頭痛頻度は、t0で3.8±6.2日/月、t2で5.3±6.6日/月であった。・カフェイン+アスピリン服用者群において、アスピリン単独服用者群または鎮痛薬不使用者群と比較して頭痛頻度の増加は認められなかった。・アスピリン単独服用者群と比較したカフェイン+アスピリン服用者群の補正後頭痛頻度変化推定値は、全頭痛:-0.34日/月(95%信頼区間[CI]:-2.50~1.82)、片頭痛:-1.36日/月(95%CI:-4.76~2.03)、緊張型頭痛:-0.57日/月(同:-4.97~3.84)、片頭痛+緊張型頭痛:2.46日/月(同:-5.19~10.10)であった。・鎮痛薬不使用者群と比較したときの同推定値は、全頭痛:-2.24日/月(95%CI:-4.54~0.07)、片頭痛:-3.77日/月(同:-9.22~1.68)、緊張型頭痛:-4.68日/月(同:-9.62~0.27)、片頭痛+緊張型頭痛-3.22日/月(同:-10.16~3.71)であった。

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クロザピン誘発性好中球減少症、アデニン併用で減少:桶狭間病院

 クロザピンで問題となる好中球減少症。桶狭間病院の竹内 一平氏らは、クロザピン誘発性好中球減少症を予防するためのアデニンの有用性を検討した。その結果、アデニンがクロザピン誘発性好中球減少症による治療中止率を減少させることを報告した。Clinical psychopharmacology and neuroscience誌2015年8月号の報告。 治療抵抗性統合失調症患者におけるクロザピン誘発性好中球減少症に対するアデニンの効果を、レトロスペクティブに検証した。本試験は2010年7月~2013年6月に桶狭間病院にて実施された。アデニンは2011年6月以降に使用可能であった。対象患者は、2010年7月~2011年4月にクロザピン治療を受けた21例(アデニン非服用群)、2011年5月~2013年6月にクロザピン治療を受けた47例(アデニン併用後群)。アデニンの効果は、患者の白血球数の変化、クロザピン誘発性好中球減少症による治療中止の頻度に基づいて評価した。 主な結果は以下のとおり。・2010年7月~2013年6月までにクロザピン治療を受けた患者は68例であった。・クロザピン誘発性好中球減少症による治療中止は、アデニン非服用群では21例中4例であったのに対し、アデニン併用群では47例中2例だけであった。・クロザピン誘発性好中球減少症による治療中止率は、アデニン非服用群よりもアデニン併用群で有意に低かった(p=0.047)。 結果を踏まえ、著者らは「治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザピンとアデニンの併用治療は、安全かつ効果的な治療戦略であることが示唆された」とまとめている。関連医療ニュース 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 治療抵抗性統合失調症へのクロザピン投与「3つのポイント」 統合失調症、心臓突然死と関連するプロファイルは  担当者へのご意見箱はこちら

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エボラ出血熱にまだまだ気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。 本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」(まあ誰も呼んでないんですけどね)は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第11回目となる今回は「エボラ出血熱」についてお話しいたします。エボラ出血熱というと、もはや一昔前に流行った感染症であり、今や時代遅れだなんて思っていませんか? とんでもありません! まだ、エボラとの戦いは終わっていないのですッ!エボラ出血熱の現在の状況それではまず、エボラ出血熱の現在の状況をみてみましょう。2013年末にギニア、シエラレオネ、リベリアの西アフリカ3ヵ国を中心に始まったエボラ出血熱の流行は、2015年9月2日までに2万8,256人の感染者が報告され、1万1,306人が死亡しています(死亡率40.0%)(図)1)。症例の報告数は、一時期指数関数的に増加していましたが、2014年11月以降はそれまで最も感染者が出ていたリベリアでの報告数が減り始め、そのリベリアの報告数を追い越し感染者が増えていたシエラレオネでも、2015年1月にようやく新規の症例報告数が減少に転じ始めました。これも現地で働く医療従事者、そして世界中から支援に駆け付けた医療従事者の懸命な努力のおかげですね。現在、リベリアでは終息宣言が出され、シエラレオネとギニアでも1週間の報告数が10例未満になってきています。これを受けて2015年9月18日に厚生労働省もエボラ出血熱の疑似症の定義を、これまでの「流行国への21日以内の渡航歴+発熱」から「エボラ出血熱に矛盾しない臨床症状+エボラ出血熱患者との接触歴(またはコウモリなどの動物との接触歴)」に変更しました。これまでよりも疑似症の基準の閾値を高くしたことになります。(エボラ出血熱の国内発生を想定した対応について)しかし、まだ完全に終息したわけではありません。流行が完全に終息するまで、日本にいるわれわれも(特に特定・一類感染症指定医療機関で働く医療従事者は)気を抜かずに、いつ輸入症例が入ってきても適切に対処できるように、訓練を続けておく必要があるのですッ!今回の大流行でわかってきたエボラ出血熱の新たな病像かつてない規模となった今回の西アフリカでのエボラ出血熱の大流行によって、これまでに知られていなかったエボラ出血熱の新たな病像が、明らかになってきました。驚異的な致死率であるエボラ出血熱から何とか無事に生還した人々の間で、遷延する食思不振や関節痛・筋肉痛が問題になっています。つい最近の報告では、ギニアでエボラ出血熱に罹患し、生還した105人のうち、103人で遷延する食思不振が、8割以上の人に慢性関節痛が、2割の人に慢性筋肉痛が認められたとのことです2)。このような病態は現地では“Post-Ebola Syndrome”と呼ばれています。このような症状以外にも、視力障害や聴力障害といった後遺症に悩まされている生還者もいるようです。このような病態はデング熱にかかった後の患者さんでも時に散見され“Post Dengue Fatigue Syndrome”と呼ばれることがありますが、デング熱と比較しても頻度・症状の深刻さはずっとタチが悪いようです。生還した人たちをなおも苦しめ続けるエボラ出血熱、やはり恐ろしい感染症です…。発症から約200日経っていても感染しうる?先日、エボラ出血熱に関するある衝撃的な報告が出されました。リベリアのエボラ出血熱生還者と性交渉をもった相手が、エボラ出血熱を発症し、またこの生還者の精液からエボラウイルスが検出されたのです3)。しかもなんとこの生還者がエボラ出血熱を発症したのは、相手が検査をした199日も前だったのですッ!エボラウイルスは精液から長期間検出される、というのは以前からいわれていたことですが、それが199日も続き、また実際に感染力があることがわかった驚異的なレポートでした。2015年5月にリベリアでは、西アフリカ3ヵ国のうち最初のエボラ出血熱終息宣言が出されました。しかし、終息したはずのリベリアで、2015年7月に新規のエボラ出血熱患者が報告されました。当初、単に症例が十分に追跡できていなかっただけではないか、あるいは動物と曝露したことによる感染ではないか、などと推測されていましたが、実は性交渉による感染である可能性も出てきました。というわけで、生還者の体液から長期間ウイルスが検出され続けることがあるということは、いったん終息したようにもみえても、また新規症例が出てくる可能性があるということになります。やはりエボラ出血熱への警戒は、まだまだ続ける必要がありそうです。さて、今回は新興再興感染症の代名詞ともいえるエボラ出血熱について取り上げましたが、次回はおそらく読者のどなたも興味を示さないであろう「ダニ媒介性脳炎」について、わが国での流行の可能性も含めて取り上げたいと思いますッ!1)WHO. Ebola Situation Report-2 Sep 2015.2)Qureshi AI, et al. Clin Infect Dis.2015;61:1035-1042.3)Christie A, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2015;64:479-481.

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薬剤性QT延長症候群とは

QT延長は、致死性の多形性心室頻拍(Torsades de Pointes)などを誘発する可能性がある心電図所見です。薬剤によるQT延長は薬剤性QT延長症候群と呼ばれ、さまざまな領域において、適正に使用される薬剤であってもQT延長のリスクが存在することがあります。リスクを最小化しながら、それらの薬剤を臨床場面で役立てていくにはどのような点に気を付けるべきでしょうか。QT延長の機序を交えながら、動画で解説します。

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トランス脂肪酸の禁止で冠動脈疾患死2.6%回避/BMJ

 英国・ランカスター大学のKirk Allen氏らは、英国で食品へのトランス脂肪酸の使用を削減または禁止する方針を打ち出した場合の、健康や社会経済に与える影響や費用対効果について調べる疫学的モデル研究を行った。その結果、禁止とした場合、今後5年間の冠動脈疾患死を2.6%回避もしくは延期する可能性があることなどを報告した。BMJ誌オンライン版2015年9月15日号掲載の報告。完全禁止、表示改善、外食のみ禁止それぞれの場合の影響を試算 研究は、英国の国民食事栄養調査(National Diet and Nutrition Survey)、低所得者食事栄養調査(Low Income Diet and Nutrition Survey)、統計局からのデータおよびその他公表されている研究からの医療経済データを用いて行われた。 25歳以上成人を、社会経済的状況で5群に層別化し、加工食品へのトランス脂肪酸の使用を完全に禁止、トランス脂肪酸の表示を改善、レストランおよびテイクアウトでのトランス脂肪酸の使用を完全に禁止としたそれぞれの場合の影響を調べた。 主要評価項目は、冠動脈疾患による死亡の回避または延期、生存年(life years gained)、質調整生存年(QALY)。また、政府および産業界のポリシーコストや、医療費およびインフォーマルケアの減少がもたらす節減、および生産性低下などとした。完全禁止で、不平等な冠動脈疾患死も15%減少可能 加工食品へのトランス脂肪酸の使用を完全に禁止とした場合、2015~20年において、冠動脈疾患死について約7,200例(2.6%)を回避または延期可能であることが示された。また、冠動脈疾患による早期死亡が、社会経済的に最も恵まれていない階層群で多いが、この不平等さを完全禁止とすることで約3,000例(15%)減少可能であることが示された。 表示の改善やレストラン/ファストフードでの使用のみを禁止とした場合は、冠動脈疾患死の回避は1,800例(0.7%)~3,500例(1.3%)、不平等さの減少は600例(3%)~1,500例(7%)と試算され、効果は半減に留まることが示された。 また、完全禁止とした場合、楽観的な試算(完全禁止による生産活動が通常のビジネスサイクルとして行われる)では最大で約2億6,500万ポンド(4億1,500万ドル)のコスト削減がもたらされること、悲観的に見積もっても(アウトサイドの正常サイクルとして行われる)でも6,400万ポンドのコスト削減が見込まれた。 これらを踏まえて著者は、「トランス脂肪酸を排除する規制方針が、英国において最も効果的で公正な政策オプションである。中間的な方針も有益である。しかしながら、産業界に自発的な改善を望むだけでは、健康アウトカムおよび経済アウトカムともにマイナスの影響を与え続けるだけである」と述べている。

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ホルモン受容体陽性早期乳がん対象のpalbociclib大規模国際共同第III相試験

 2015年8月26日-Alliance Foundation Trials, LLC(AFT)、オーストリア乳がん・結腸直腸がん研究グループ(ABCSG)、ファイザー社は、PALLAS(Palbociclib Collaborative Adjuvant Study:Palbociclibの術後補助療法に関する共同研究)試験を開始したことを発表した。この国際共同第III相臨床試験は、早期乳がん患者を対象としたもので、Breast International Group(BIG)、German Breast Group(GBG)、National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)、およびPrECOG, LLC(PrECOG)と共同で実施される。 PALLAS試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんを対象とし、palbociclibと標準療法の併用によりPFSの改善、再発予防を評価するもの。同試験は、ステージ2またはステージ3のHR+/HER2-早期乳がんを有する閉経前および閉経後の女性または男性を対象とした多施設・前向き無作為化オープンラベル2群間比較国際共同第III相試験。被験者は、2群に無作為に割り付けられ、試験薬群では、palbociclibを2年間投与(1~21日目に125mg/日経口投与し7日間休薬する28日サイクル)に並行して標準的内分泌術後補助療法を少なくとも5年間投与する。比較対照群では、単独の標準的内分泌術後補助療法を少なくとも5年間投与する。 サイクリン依存性キナーゼ(CDK4/6)は細胞周期の調節に主要な役割を果たしており、細胞増殖を引き起こす。palbociclibはCDK4/6を阻害する経口薬であり、ER+/HER2-閉経後進行乳がんに対する初期内分泌療法として、2015年2月に米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得している。ファイザー株式会社のプレスリリースはこちら

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アレルギー持ちのミドル~シニア層はがん・全死因死亡が低い?

 中高年~高齢者で花粉アレルギーを有する患者では、免疫機能に影響を及ぼし、特定の原因による死亡に対して保護的に作用する可能性が、東京大学の小西 祥子氏らによって報告された。Clinical & Experimental Allergy誌オンライン版2015年9月14日掲載の報告。花粉アレルギーを有する患者は悪性腫瘍による死亡も有意に低かった 本研究は「こもいせコホート疫学研究」データを使用して、花粉症(アレルギー性鼻炎型)の罹患の有無が全死因死亡、原因別死亡を予測するかどうかを調査するために実施された。本コホートは群馬県の2エリアに住む40~69歳の住民が1993年から登録された。 現在の研究は、2000年のフォローアップ研究から得られた花粉アレルギーの情報を基に行われた。死亡や転居の情報は、2008年12月までのフォローアップ期間を通して得られた。比例ハザードモデルで花粉アレルギーと死亡率との関係を調べた。 花粉アレルギーと死亡率との関係を調べた主な結果は以下のとおり。・2000年のフォローアップ研究において、コホート参加者の12%(8,796例中1,088例)が過去12ヵ月で花粉アレルギーの症状がみられた。・7万6,186人年のフォローアップ中、全死因で748人が死亡した(外因性37人、心血管208人、呼吸器74人、悪性腫瘍329人)。潜在的な交絡因子を調節した後、花粉アレルギーを有する患者では有意に全死因死亡の割合が低かった(ハザード比:0.57、95%CI:0.38~0.87)。・悪性腫瘍による死亡も同様の結果であった(ハザード比:0.48、95%CI:0.26~0.92)。

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抗精神病薬でけいれん発作リスクが増大する疾患は

 スイス・バーゼル大学のMarlene Bloechliger氏らは、統合失調症、情動障害、認知症患者における抗精神病薬の使用と初回けいれん発作発生との関連を検討した。その結果、情動障害患者では、中~高力価第1世代抗精神病薬の使用は抗精神病薬非服用に比べけいれん発作のリスクを2.5倍に増加したが、その他の抗精神病薬使用とけいれん発作との関連は認められなかった。また認知症患者では、アミスルプリド、アリピプラゾール、リスペリドン、スルピリドを除く抗精神病薬で、その使用がけいれん発作リスクを増大させる所見が示されたことを報告した。CNS Drugs誌2015年7月号の掲載報告。 研究グループは、1998~2013年のUK-based Clinical Practice Research Datalinkデータベースを用いて、コホート内症例対照分析法による追跡研究を実施した。統合失調症、情動障害、認知症患者を特定し、けいれん発作誘発可能性が示唆されている4種の抗精神病薬――(1)オランザピンまたはクエチアピン、(2)アミスルプリド、アリピプラゾ-ル、リスペリドンまたはスルピリド、(3)低~中力価の第1世代抗精神病薬(クロルプロマジン、ズクロペンチキソール、フルペンチキソール、ペリシアジン、プロマジン、チオリダジン)、(4)中~高力価の第1世代抗精神病薬(ハロペリドール、プロクロルペラジン、トリフロペラジン)を服用している患者、および抗精神病薬を非服用患者における、けいれん発作の発生頻度を推定した。交絡調整のため、情動障害または認知症患者におけるけいれん発作のオッズ比を、抗精神病薬の使用と使用時期で層別化し、独立して推測した。 主な結果は以下のとおり。・コホートの総患者数は6万121例であった。・それらのけいれん発作頻度は、1万人年当たり、(1)オランザピンまたはクエチアピン使用者で32.6(95%信頼区間[CI]:22.6~42.6)、(2)アミスルプリド、アリピプラゾール、リスペリドンまたはスルピリド使用者で24.1(同:13.2~34.9)、(3)低~中力価の第1世代抗精神病薬使用者で49.4(同:27.7~71.0)、(4)中~高力価の第1世代抗精神病薬使用者で59.1(同:40.1~78.2)、そして抗精神病薬非服用患者では11.7(同:10.0~13.4)であった。・認知症患者は、抗精神病薬使用の有無にかかわらず、情動障害患者と比べ初回けいれん発作の発生頻度が有意に高かった。・情動障害患者では、非服用者と比べ(3)低~中力価の第1世代抗精神病薬使用が、けいれん発作のリスク増加と関連したが(調整オッズ比:2.51、95%CI:1.51~4.18)、他の抗精神病薬の使用との関連は認められなかった。・認知症患者においては、非服用者と比べ(1)オランザピンまたはクエチアピンの使用(調整オッズ比:2.37、95%CI:1.35~4.15)、(3)低~中力価の第1世代抗精神病薬の使用(同:3.08、1.34~7.08)、(4)中~高力価の第1世代抗精神病薬の使用(同:2.24、1.05~4.81)は、けいれん発作のリスク増加と関連したが、(2)アミスルプリド、アリピプラゾール、リスペリドンまたはスルピリドの使用との関連は示されなかった(同:0.92、0.48~1.75)。・統合失調症患者における抗精神病薬の使用に関しては、対象数が少なく検討できなかった。関連医療ニュース 抗精神病薬の適応外処方、年代別の傾向を調査 せん妄患者への抗精神病薬、その安全性は 認知症への抗精神病薬、用量依存的に死亡リスクが増加  担当者へのご意見箱はこちら

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デブと呼んでごめんね! DEB改めDCB、君は立派だ(解説:中川 義久 氏)-419

 PCI(経皮的冠動脈インターベンション)の歴史は、再狭窄との戦いであったといわれます。現在の進化した薬剤溶出性ステント(DES)を用いても、依然として再狭窄は一定の確率で生じます。このステント内再狭窄に対する再治療をいかに行うかは、今なお残された重大な課題です。 薬物溶出性ステントを用いて治療することも1つの戦略です。しかし、ここで再度の再狭窄を生じれば2枚重ねのステントの内部の狭窄病変ということになります。このような病変への治療は非常に難渋します。ステントを何枚も重ねることなく治療する方法が望まれてきました。バルーンで拡張するだけの方法では不十分であることがわかっていました。そこで登場したのが、薬剤被覆バルーン:Drug coated balloon (DCB)です。 現在主流のDCBは、パクリタキセルを薬剤として用いています。この薬剤は脂溶性であるため組織への移行性に優れるとされるからです。しかし、これまでは、ステント内再狭窄へのDCBを含む治療成績の報告はありましたが、個々の報告の症例数は結論を下すには十分なものではありませんでした。 薬剤溶出性ステント内の再狭窄治療に対する27のランダマイズ試験の結果を、メタ解析で検討した結果がLancet誌に報告されました。その結果では、最も有効であったのがエベロリムス溶出性ステント(EES)による再PCI、次に有効だったのはDCBを用いた治療でした。DCBを用いた治療が、再度DESを用いて治療することに取って代わるということを示したわけではありませんが、このDCBの有効性を確認した研究として非常に大切な報告と考えられます。 DCBは、つい最近まで薬剤溶出性バルーン:Drug eluting balloon (DEB)と呼称されていました。薬剤が徐放性に溶け出すステントが薬剤溶出性ステント(DES)と呼ばれることに対応した用語でした。しかし、正確には徐放性を有せず拡張の際に薬剤が壁に刷り込まれるだけであることから、薬剤被覆バルーン(DCB)と名前を変えたのです。この古い呼称であるDEBの時代には、このデバイスは皆から「デブ」、「デブ」と呼ばれていました。その言葉の中には「デブ」って本当に効くの? といったイメージも重なっていました。今回のしっかりしたメタ解析の結果から「デブ」を見直した、というのが正直な感想です。「君はもうデブじゃない、DCBとして役割をしっかり果たしてくれ!」と応援メッセージを送ります。 また、このメタ解析論文を構成する個々の研究の中には、日本の倉敷中央病院からの発信された研究も重要な要素として含まれていることも強調したい点です。

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FFRの賞味期限と消費期限を知っていますか?(解説:中川 義久 氏)-420

 小生は、天理よろづ相談所病院で循環器内科の部長を務めさせていただいておりますが、実は、栄養部部長も兼任しております。食事を通じて患者さんの健康を増進するために、管理栄養士や調理師の方々と共に頑張っております。栄養部で学んだ言葉に「賞味期限」と「消費期限」があります。それぞれの言葉は耳にしたことがあっても、その言葉の定義や違いを明確に説明できる方は少ないのではないでしょうか。 賞味期限とは、未開封の状態で表示されている保存方法に従って保存したときに、おいしく食べられる期限を示します。賞味期限内においしく食べましょう。ポイントは、賞味期限を過ぎても食べられなくなる訳ではないことです。スナック菓子、缶詰など、冷蔵や常温で保存がきく食品に表示されます。 消費期限とは、未開封の状態で表示されている保存方法に従って保存したときに、食べても安全な期限を示します。消費期限を過ぎた食品は食べないほうが良いとされます。生クリームを使用したケーキや弁当など、長く保存がきかない食品に表示されます。閑話休題 FAME試験の5年追跡の結果が、ロンドンで開催されたESC Congress 2015で発表されました。この結果はLancet誌に同時掲載されています。 FAME試験は、PCIが予定されている多枝冠動脈疾患患者において、FFR(冠血流予備比:狭窄血管の最大血流量/正常血管の最大血流量比)を指標として冠動脈病変の生理的意義を評価して、機能的に虚血が証明された病変に対してのみPCIを施行することで、予後が改善すると同時に医療費が削減できるという結果を報告したものです。 従来は、造影所見に基づく解剖学的狭窄度に応じて病変を同定していましたが、FFRに基づく機能的完全血行再建の有用性を示した点で、画期的な報告でした。死亡・心筋梗塞・血行再建術再施行の複合エンドポイントで定義される主要有害心イベントは、1年の時点で造影ガイド群の18%に比べて、FFRガイド群において13%と有意に低いことが主論文として報告されています(p=0.02)1)。今回の5年の追跡結果では、主要有害心イベントには有意差はなく、それぞれ31%と28%でした(p=0.31)。両群の差は、主に初期の3ヵ月間に生じ2年まで拡大し、それ以降は並行線をたどっていました。多枝疾患患者において、FFRガイドPCIの長期の有効性と安全性が確認されたと結論付けています。 この結果の小生の解釈は、FFRによる評価の「賞味期限」は2年間、「消費期限」は5年以上であるというものです。FFRガイドPCIが造影ガイドPCIに比べて有意に優ることが担保される期間、つまり、おいしく食べることができる期間は2年間であるといえます。今回の報告で新たに確認されたことは、2年を過ぎて少なくとも5年まではFFRガイドPCIの有効性と安全性が示されたことです。つまり、食べても大丈夫な期間は5年以上あるということです。この賞味期限と消費期限の例えが良い例えかどうかわかりませんが、栄養部部長として妙に気に入っている私です。皆さんの評価はいかがでしょうか?

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事例72 リザトリプタン安息香酸塩(商品名:マクサルトRPD)錠10mgの査定【斬らレセプト】

解説事例は、片頭痛と確定診断された女性患者に対して、効果のあったリザトリプタン安息香酸塩(マクサルトRPD®)錠10mgを内服投与したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となったものである。同薬の効能・効果は、確定診断がついている片頭痛であり、用法・用量には、通常、成人にはリザトリプタン安息香酸塩として1回10mgを片頭痛の頭痛発現時に経口投与する。効果が不十分な場合には、1日の総投与量を20mg以内として追加投与することができるとある。さらに、使用上の注意には、「片頭痛の頭痛発現時に限り使用し、予防的に投与しない」ことなどが記載されている。頭痛の発現時に臨時的に服用させる薬なのである。したがって、「内服投与は算定要件に合致しない」と判断され、屯服への減額査定になったものである。新薬の採用時などには、用法・用量の誤用が生じやすいので、細心の注意を払われて算定いただきたい。

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エンパグリフロジン、心血管死リスクを有意に低下/NEJM

 心血管ハイリスク2型糖尿病患者に対して、標準治療へのエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)の追加投与は、主要複合心血管系アウトカムおよび全死因死亡を低下したことが、カナダ・トロント大学のBernard Zinman氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。エンパグリフロジンは、新規クラスのナトリウム依存性グルコース共輸送担体2(SGLT2)阻害薬。これまで、心血管ハイリスク2型糖尿病患者への上乗せ治療効果については検討されていなかった。NEJM誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告。エンパグリフロジンの上乗せ治療効果を対プラセボで検証 試験は、標準治療を受ける心血管ハイリスク2型糖尿病患者において、エンパグリフロジンの上乗せ治療による心血管系疾患の罹患および死亡への効果を、プラセボと比較することを目的としたものであった。 検討は、患者を、エンパグリフロジン10mgまたは25mg、プラセボを投与(いずれも1日1回)する群に無作為に割り付けて行われた。 主要アウトカムは、心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合とし、エンパグリフロジンのプール群 vs.プラセボ群で解析を行った。 また、キー副次複合アウトカムは、主要複合アウトカムの各項目と不安定狭心症による入院とし評価を行った。主要アウトカム発生のハザード比0.86 2010年9月~13年4月に7,028例が無作為化を受け、7,020例(プールエンパグリフロジン群4,687例、プラセボ群2,333例)が主要解析に包含された。観察期間の中央値は3.1年。 主要アウトカムの発生は、エンパグリフロジン群490/4,687例(10.5%)、プラセボ群282/2,333例(12.1%)で、ハザード比(HR)は0.86(95.02%信頼区間[CI]:0.74~0.99、優越性p=0.04)であった。 両群間で、心筋梗塞(4.8% vs.5.4%)、脳卒中(3.5% vs.3.0%)については有意な差は認められなかったが、心血管死は、エンパグリフロジン群で有意に減少し(3.7% vs.5.9%、相対リスク38%減少、p<0.001)、また、心不全による入院(2.7% vs.4.1%、相対リスク35%減少、p=0.002)、全死因死亡(5.7% vs.8.3%、相対リスク32%減少、p<0.001)についても有意に減少した。 キー副次アウトカムについては、有意差は認められなかった(12.8% vs.14.3%、HR:0.89、95.02%CI:0.78~1.01、優越性p=0.08)。 有害事象については、エンパグリフロジン群で生殖器感染症の増大がみられたが、その他の有害事象の増大は報告されなかった。

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冬の高齢者の血圧上昇、暖房の指導が有効

 冬季の心血管疾患による死亡率増加の原因の1つに、寒冷曝露によって引き起こされる血圧上昇がある。寒冷曝露を減らすよう、医師が家庭での暖房使用を指導することは実現可能な選択肢であるが、有効性は不明である。奈良県立医科大学の佐伯 圭吾氏らは、その有効性を調査するため、冬季にオープンラベル単純無作為化比較試験を実施した。その結果、暖房使用の指導により室内温度が有意に上昇し、高齢者の自由行動下血圧が有意に低下した。このことから、家庭の暖房に関する指導が冬季の心血管系疾患発症予防に短期的に有効であることが示唆された。Journal of hypertension誌オンライン版2015年9月12日号に掲載。 介入群の参加者には、予想される起床時刻の1時間前に、居間の暖房機器の設定温度を24℃にセットして起動することと、起床後2時間までは居間でできるだけ長く過ごすように要請した。自由行動下血圧、身体活動、起床後4時間までの室温について、ランダム切片のマルチレベル線形回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・合計359人の適格な参加者(平均年齢±SD:71.6±6.6歳)を、対照群(n=173)と介入群(n=186)に無作為に割り付けた。・年齢、性別、降圧薬、世帯収入、身体活動などの交絡因子を調整し評価したところ、介入により居間の温度は有意に上昇し(2.09℃、95%CI:1.28~2.90)、収縮期血圧および拡張期血圧は有意に減少した(4.43/2.33mmHg、95%CI:0.97~7.88/0.08~4.58mmHg)。

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