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DPP-4阻害薬の動脈硬化抑制、インスリン治療患者でも

 順天堂大学の三田 智也氏らは、2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬(アログリプチン)投与による動脈硬化進展抑制をすでに報告している(Diabetes Care. 2016;39:139-48)。今回、同氏らは、動脈硬化が進展していると考えられるインスリン治療中の2型糖尿病患者でのDPP-4阻害薬の影響を検証するため、シタグリプチン併用による頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)への影響を評価した。その結果、シタグリプチンが通常治療に比べて頸動脈IMTの進展を抑制させることが認められた。Diabetes Care誌オンライン版2016年1月28日号に掲載。 本試験(SPIKE試験:Sitagliptin Preventive Study of Intima-Media Thickness Evaluation)は前向き、無作為化、オープン、エンドポイントブラインド、多施設、並行群間比較研究である。12施設で募集した、心血管疾患の既往がないインスリン治療下の2型糖尿病患者282例を、シタグリプチン併用群(142例)と通常治療群(140例)にランダムに割り付けた。主要アウトカムは、治療開始104週後における超音波検査による頸動脈の平均IMTと最大IMTの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・シタグリプチン併用群では、通常治療群と比較して、低血糖エピソードや体重増加を伴うことなく、より強力な血糖降下作用が認められた(-0.5±1.0% vs.-0.2±0.9%、p=0.004)。・平均IMTと左の最大IMTの変化量は、シタグリプチン併用群が通常治療群と比較し、有意に大きかった(平均IMT:-0.029 [SE 0.013] vs.0.024 [0.013]mm、p=0.005、左の最大IMT:-0.065[0.027] vs.0.022[0.026]mm、p=0.021)。右の最大IMTについては有意ではなかった(-0.007[0.031] vs. 0.027[0.031]mm、p=0.45)。・シタグリプチン併用群では、平均IMTと左の最大IMTについて、104週にわたって、ベースラインに対して有意に減少した。

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陰性症状の重症度と表情認知との関連を検証

 統合失調症の陰性症状における相手の顔の表情に関する、selective attention(脳の情報処理において、複数の刺激から特定の刺激だけを選択すること)のバイアスと事後記憶(subsequent memory)への影響を、韓国・高麗大学のSeon-Kyeong Jang氏らが評価した。Cognitive neuropsychiatry誌オンライン版2016年1月20日号の報告。 陰性症状レベルが高いまたは低い統合失調症患者30例(各15例)と健常対照者21例を対象に、ビジュアルプローブ検出法によりselective attentionバイアスを調査した(幸せ、悲しみ、怒りの表情がランダムに50、500、1000ミリ秒表示)。表情記憶課題に対する諾否を収集した。attentionバイアススコアと認識エラーを計算した。 主な結果は以下のとおり。・valence(ポジティブまたはネガティブな感情)に関係なく、表情が500ミリ秒表示されたとき、陰性症状レベルが高いと自然な表情に対して感情的な表情の認識が低下し、陰性症状レベルが低いと逆パターンが示された。・陰性症状レベルが高い患者では、健常対照者と比較し、幸せな表情に対する記憶課題の誤りがより多かった。・統合失調症患者のみにおいて、ビジュアルプローブ検出法による感情的な表情の認知減少は、喜びや意欲の少なさ、幸せな表情のより多い認識エラーと有意に相関していた。・比較的初期のアテンショナルプロセスやポジティブ記憶の減少に付随する感情的な情報へのattentionバイアスは、陰性症状による病理学的メカニズムと関連していると考えられる。関連医療ニュース 精神疾患患者の認知機能と炎症マーカーとの関連が明らかに 第1世代と第2世代抗精神病薬、認知機能への影響の違いは チェリージュースで認知機能が改善

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禁煙のための薬物療法、長期効果は同等/JAMA

 禁煙を希望する喫煙成人において、ニコチンパッチ、バレニクリン、ニコチンパッチ+ニコチントローチのいずれの介入も長期の禁煙効果は同等であることが、米国・ウィスコンシン大学のTimothy B. Baker氏らが1,086例を対象に行った非盲検無作為化試験の結果、示された。12週間治療を行い、26週、52週間後の禁煙率を生化学的検査で調べたが、その値に有意差は認められなかったという。著者は、「今回の結果は、禁煙治療の薬物強化療法に関する相対的な効果について疑問を呈するものであった」と述べている。JAMA誌2016年1月26日号掲載の報告。26週後の7日間禁煙率を比較 研究グループは、2012年5月~15年11月にかけて、米国・ウィスコンシン州マジソンとミルウォーキーで、喫煙者1,086例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、ニコチンパッチのみ(241例)、バレニクリンのみ(424例)、ニコチンパッチ+ニコチントローチ(C-NRT群、421例)を、それぞれ12週間投与した。全被験者に対し、6回のカウンセリングを行った。 主要評価項目は、26週後の自己報告による7日間禁煙率で、呼気一酸化炭素濃度により確認した。副次評価項目は、自己報告による初回禁煙と26週後の禁煙持続率、4、12、52週時点における7日間禁煙率だった。26週、52週の7日間喫煙率、いずれの群も同等 被験者のうち女性は52%、平均年齢は48歳、平均喫煙量は17本/日だった。被験者のうち12ヵ月時点で追跡データが得られたのは917例(84%)だった。 結果、26週後の7日間禁煙率は、ニコチンパッチ群が22.8%、バレニクリン群が23.6%、C-NRT群が26.8%で、有意な差はみられなかった。また、52週時点の7日間禁煙率も、それぞれ20.8%、19.1%、20.2%と同等だった。 26週後の禁煙維持に関する群間リスク差も、ニコチンパッチ群 vs.バレニクリン群が-0.76%、ニコチンパッチ群 vs.C-NRT群が-4.0%、バレニクリン群 vs.C-NRT群が-3.3%で有意差は認められなかった。 なお、いずれの薬剤も忍容性は良好だったが、バレニクリン群で明晰夢や不眠、吐き気、便秘、眠気、消化不良といった副作用の発生頻度が高かった。

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睡眠時無呼吸症候群、緑内障リスクを増大

 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は緑内障のリスク因子であることを、中国・重慶医科大学附属第一医院のLiu Shulin氏らはメタ解析の結果、報告した。これまでの研究で、OSAが緑内障と関連していることは示唆されていたが、データ的には議論の的となっていた。著者は、「今後、OSAが緑内障に関与するメカニズムを解明するためにさらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of Glaucoma誌2016年1月号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane library、Web of ScienceおよびChinese BioMedical Literature Databaseにて、2014年11月20日までに発表された論文を検索。緑内障とOSAとの関連について、オッズ比(OR)とその95%信頼区間(CI)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・コホート研究3件、症例対照研究3件、計6件の研究(228万8,701例)のデータが組み込まれた。・OSAは緑内障と有意に関連していることが認められた。・症例対照研究に関する補正後効果要約ORは2.46(95%CI:1.32~4.59、p=0.005)。・コホート研究に関する補正後効果要約ORは1.43(同:1.21~1.69、p=0.000)。・有意な出版バイアスはみられなかった。

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C型肝炎IFNフリー治療薬の費用対効果とは?

 英国、オーストラリアなどで公的医療保険の給付の可否の判断に使用されている医療技術評価(HTA)が2016年4月より日本で試行導入される。これに先立ち、アッヴィ合同会社は、2月4日にC型肝炎インターフェロンフリー治療薬の費用対効果に関するプレスセミナーを都内で開催した。 1月に中医協が示した選定基準によると、C型肝炎治療薬のソバルディ(一般名:ソホスブビル)やその類似薬が日本版HTAの対象になる見込みだ。この日本版HTAにおいて、効果指標には、質調整生存年(QALY)が基本的に用いられることとなる。 講師を務めた東京大学大学院 薬学系研究科 特任准教授・五十嵐 中氏の最新の研究結果(論文投稿準備中)によると、非肝硬変における、C型肝炎無治療群とC型肝炎治療薬のヴィキラックス(一般名:オムビタスビル・パリタプレビル・リトナビル)使用群との費用対効果の比較では、ヴィキラックス使用群のほうがより安く、効果があるといえるとのことだ。そしてこのように高価な薬において、“安くてよく効く”という結果になることはまれであることを付け加えた。 また、各国のHTAにおいても、C型肝炎インターフェロンフリー治療薬は価格に見合った効果があるという評価がされているという。一方で、HTAでは、医療予算全体へのインパクトは測れないため、総合的な評価も重要であると述べた。 2015年に実施された医師対象の調査では、肝臓専門医の約半数が、QALY、ICERなどの医療経済用語を知っており、肝臓専門医、消化器専門医の約7割が、C型肝炎治療薬処方の際の重要な判断項目の1つとして取り入れている/取り入れたいと考えているという状況を紹介した。これを受けて同氏は、昨今、医療系の学会においても、医療経済がテーマとして取り上げられていることがしばしばあり、関心の高まりは喜ばしいことだが、費用のみの比較が中心であることが多いため、そこに効果の視点を加え評価するという費用対効果の考えを、ぜひより多くの現場の医療者に知ってほしいと訴えた。 日本版HTAは4月の試行導入後、企業や大学による分析を経て、総合評価の結果が2018年以降の薬価に反映される予定だ。

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悪性胸膜中皮腫へのシスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ療法(解説:小林 英夫 氏)-478

 悪性胸膜中皮腫は早期発見が困難で、診断時点では進行期である症例が大多数を占める。2003年のVogelzang 氏らの報告に基づいて、ペメトレキセドが世界初の悪性胸膜中皮腫治療薬として米国で承認され、わが国でも2007年に薬価収載された。現在、悪性胸膜中皮腫標準化学療法はペメトレキセド+シスプラチン併用と認識されている。しかし、その治療成績は必ずしも満足できるレベルには到達しておらず、胸膜肺全摘除術や片側全胸郭照射などを組み合わせたマルチモダリティー療法などが検討されている。 こうした中、中皮腫において血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルが重大な役割を果たすことが示唆され、2010年以降いくつかの試験が実施された。そこで、VEGFをターゲットとする抗血管新生治療薬ベバシズマブの上乗せ効果について、Zalcman氏らによる本検討(第III相試験)が実施された。その結果、彼らは「循環器系の有害事象が増えるものの予想範囲内のものであり、ベバシズマブ上乗せは全生存期間(OS)を有意に改善する」とまとめている。Appendixを閲覧すると循環器系有害事象のほとんどは高血圧であった。 本研究デザインは、フランスの73病院において、18~75歳の切除不能悪性胸膜中皮腫、化学療法未治療、Eastern Cooperative Oncology Group PSスコア0~2、重大な心血管疾患の併存なし、CTで評価可能病変が少なくとも1つあり、余命12週超の症例が対象である。除外基準は、脳転移、抗血小板薬使用中、ビタミンK拮抗薬・ヘパリン・非ステロイド性抗炎症薬の投与中などであった。被験者は、ペメトレキセド+シスプラチン+ベバシズマブ投与のPCB群、またはベバシズマブの代わりにプラセボを投与するPC群に無作為に割り付け、3週間に1回を最大6サイクル、病勢進行または毒性効果が認められるまで投与した。主要アウトカムはOSである。 計448例が無作為化され、PCB群223例、PC群225例、男性75%、年齢中央値65.7歳、上皮型中皮腫81%であった。6サイクルを完遂したのは、PCB群74.9%、PC群76.0%。フォローアップ中央値は39.4ヵ月で両群に差はなかった。 主要アウトカムであるOS中央値は、PC群(16.1ヵ月、95%信頼区間[CI]:14.0~17.9)と比べPCB群(18.8ヵ月、15.9~22.6)で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.62~0.95、p=0.0167)。なお、PFS(無増悪生存)もPCB群で有意な改善が認められた(9.2ヵ月 vs.7.3ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.50~0.71、p<0.0001)。 Grade3/4の有害事象は、PCB群158/222例(71%)、PC群139/224例(62%)であった。PC群と比べてPCB群では、Grade3以上の高血圧症(51/222例[23%] vs.0例)、血栓イベント(13/222例[6%]vs. 2/224例[1%])の頻度が高かった。 これまで進行性悪性中皮腫へのペメトレキセド+カルボプラチン療法効果は、OS中央値は約12ヵ月、無増悪生存(PFS)中央値は約6ヵ月、とされていた。抗血管新生治療の上乗せ効果は期待できそうだが、それでも5年生存率は20%弱であり、さらなる検討が望まれる。また、血清VEGF値により治療効果に差が生じる可能性も示唆されており、今後、中皮腫のバイオマーカーとして活用していくことも考慮される。 悪性胸膜中皮腫の臨床試験は、現在本邦で4試験が実施されている。免疫チェックポイント阻害薬トレメリムマブ、がん抑制遺伝子アデノウイルスベクター、シスプラチン+ペメトレキセド+Napabucasin、アネツマブ・ラブタンシン、の第I、II相試験であり、どのような結果が得られるのか注視していきたい。なお、胸膜腫瘍WHO分類は2015年に改訂され、Journal of thoracic oncology誌2016年2月号(オンライン版2015年12月22日号)1)で発表されている。

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救急の“裏”ABC【Dr. 中島の 新・徒然草】(105)

百五の段 救急の“裏”ABC遠い昔、病院で隣の席におられた救急の先生が人事異動で去っていかれました。「あの先生も去ってしまったんだなあ」残された机の周囲のガランとした空間を眺めながら感慨にふけっていると…。パーティションに1枚のメモが留めてありました。そこに書かれていたのはこんな英語です。Avoid the situation.Behind the curtain.Call another doctor.Deny your responsibility.Escape quickly.思わず苦笑い。同業者の皆さまには説明不要だと思いますが敢えて意訳してみましょう。危なそうな状況には近づくな。カーテンの後ろに隠れておけ。他のドクターも呼ぶんだ。自分の責任はとことん否定せよ。隙を見てとっとと逃げろ。ABCDEと綺麗に並べられているところを見ると、「救急の裏ABC」とも言うべき格言のようです。同僚と2人で大笑い。中島「よくできているなあ、この格言は」同僚「誰でも考えることは一緒かよ」中島「真面目にやっている奴ほど身に覚えがあるよな」同僚「このギャグはたぶん世界中で通じるぞ」中島「そういや救急の正式ABCは何やったかな?」で、思い出そうとしたのですが、正式のABCがなかなか出てきません。Airway、Breathing、Circulation 、まではすぐ出ますが、D が何だったかな?研修医の頃に Drug と学んだような気もします。調べてみると dysfunction of CNS(中枢神経機能不全)が出てきました。裏は出てくるのに、正式が出てこないとは本末転倒もはなはだしい!何に役立つかよくわからない「救急の裏ABC」ですが、諸外国のお医者さんと酒を飲むことがあったら披露してみてはいかがでしょうか?必ずウケることと思います。最後に1句ABC たまに確認 思い出せ

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抑うつ症状は認知症の予測因子となりうるのか

 抑うつ症状は、健忘型軽度認知機能障害(aMCI)においてもよく見られる症状である。抑うつ症状と認知症への転換との関連はまだ明らかになっていない。ベルギー・ブリュッセル自由大学のEllen De Roeck氏らは、aMCI患者における抑うつ症状が認知症への転換を予測するかを確認するため、縦断的研究を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年1月18日号の報告。 本研究にはaMCI患者35例が参加した。すべての参加者について、認知機能検査を行い、抑うつ症状の有無を確認するため高齢者用うつ尺度(GDS)を用いて評価した。GDSスコア11以上を、有意な抑うつ症状ありのカットオフ値とした。認知症への転換は、1.5、4、10年後のフォローアップ訪問にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・31.4%の患者は、ベースライン時に抑うつ症状が認められた。・ベースライン時のいずれの認知機能検査においても、うつ症状の有無による有意差は認められなかった。・1.5、4、10年後に認知症へ転換した患者は、それぞれ6、14、23例であった。・ベースライン時のGDSスコアは認知症への転換を予測しなかったが、認知機能検査、具体的には手がかり再生検査(記憶障害スケールを含む)は転換の良好な予測因子であった。・今回の対象者において、MCI患者における抑うつ症状は、認知症への転換を予測する因子とは言えなかった。関連医療ニュース 軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標 アルツハイマー病、進行前の早期発見が可能となるか 認知症、早期介入は予後改善につながるか

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メニエール病へのベタヒスチン、めまい発作予防効果は認められず/BMJ

 メニエール病の患者に対しベタヒスチンを投与しても、プラセボと比べて、メニエール病発作の予防効果は認められなかった。一方で、プラセボ群を含めすべての投与群で、治療開始7~9ヵ月の発作回数は約4分の3に減少した。ドイツ・ミュンヘン大学病院のChristine Adrion氏らが、221例を対象に行った第III相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験(BEMED試験)の結果、明らかにした。JAMA誌2016年1月21日号掲載の報告。ベタヒスチン9ヵ月投与し、7~9ヵ月の発作回数を比較 Adrion氏らは2008年3月~12年11月にかけて、21~80歳の片側性・両側性メニエール病の患者221例を対象に、無作為化試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、低用量ベタヒスチン(1日2回、1回24mg、73例)、高用量ベタヒスチン(1日3回、1回48mg、74例)、およびプラセボを、それぞれ9ヵ月間投与した。 主要評価項目は、30日間ごとの発作回数で、治療開始後7~9ヵ月間の患者の日誌に基づき評価した。副次評価項目は、発作の持続時間や重症度、QOLスコアの変化などだった。ベタヒスチン群の発作回数はプラセボ群と同等 結果、メニエール病発作の回数は、3群で同等だった(p=0.759)。被験者全体の月間発作回数減少率は、0.758(95%信頼区間:0.705~0.816、p<0.001)だった。発作率比は、プラセボ群に比べ低用量群は1.036(同:0.942~1.140)、高用量群は1.012(同:0.919~1.114)だった。 評価期間中の全集団平均月間発作回数は、プラセボ群が2.722回(同:1.304~6.309)、低用量群が3.204(同:1.345~7.929)回、高用量群が3.258回(同:1.685~7.266)だった。 副次評価項目についても、3群間で有意な差は認められなかった。

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大腸がんは肥満・高血圧・糖尿病と関連

 大腸新生物とアテローム性動脈硬化はどちらも内臓脂肪蓄積によって生じうる。しかし、進行期大腸がんと心血管/脳血管疾患との関連は不明である。東京大学の山地 裕氏らは、わが国における入院患者の全国データベースを用いて、肥満・代謝性疾患との関連からみた大腸がんと血管疾患との関連性を、非心臓性の胃がん患者(肥満・代謝性疾患に関連がないと考えられる)を基準として検討した。その結果、肥満と代謝性疾患は、胃がんと比べて大腸がんとの関連が強かったが、冠動脈疾患は大腸がんと逆相関していた。Digestive Diseases and Sciences誌オンライン版2016年2月1日号に掲載。 著者らは、DPC(Diagnosis Procedure Combination)データから大腸がん5万4,591例、胃がん1万9,565例の患者を同定した。本データは、性別、年齢、BMI、喫煙状況、併存疾患、薬物治療データ(高血圧、糖尿病、高脂血症、冠動脈疾患、脳卒中)を含んでおり、これらの横断的なデータを多変量解析により比較した。 主な結果は以下のとおり。・女性、BMI高値、高血圧(オッズ比[OR] 1.11、95%CI:1.07~1.15、p<0.0001)、糖尿病(OR 1.17、95%CI:1.12~1.23、p<0.0001)は、胃がんに比べて大腸がんとの関連が強いことが、多変量ロジスティック回帰分析で示された。・喫煙、アスピリン使用(OR 0.85、95%CI:0.79~0.92、p<0.0001)、冠動脈疾患(OR 0.90、95%CI:0.86~0.95、p=0.0001)は、大腸がんと逆相関していた。

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第3世代薬剤溶出性ステント「シナジー ステントシステム」の可能性とは?

 ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社は2016年1月12日、新型の薬剤溶出性ステント(Drug Eluting Stent、以下DES)である「シナジー ステントシステム」を新発売。これを受けて2016年1月26日、都内にて説明会が行われた。薬剤溶出性ステントが虚血性心疾患治療の主流 ステントは狭心症・心筋梗塞など虚血性心疾患の治療に広く使われている医療機器である。髪の毛ほどの細さの金属のチューブで、管の内側から圧力をかけることによりステント部分が網状に広がる。これを閉塞している血管に留置することで機械的に血管を支え、血流を確保し閉塞を改善する。従来は薬剤が塗布されていないベアメタルステントが使用されていたが、現在は薬剤溶出性ステントが主流となっている。薬剤溶出性ステントは第1世代・第2世代とさまざまなタイプが登場 薬剤溶出性ステントのステント表面には血管内膜を新生する物質を抑制する薬剤がしみ込んだポリマーがコーティングされている。ポリマーが薬剤の溶出量をコントロールすることで、均一な量の薬剤が、長期間にわたって放出され続ける。しかし、ポリマーによる血管内の炎症反応は動脈硬化を促進し、ステント血栓症などさまざまな反応を引き起こす。そのため、薬剤の放出が終わった残存ポリマーが課題とされていた。 2000年代後半に本邦に薬剤溶出性ステントが登場して以来、第1世代・第2世代とさまざまなタイプのステントが登場したが、この課題は依然として残っており、さらなるステントの改良が望まれてきた。次世代の薬剤溶出性ステントとしてのシナジーステントシステムの改善点 シナジーステントシステムはポリマーの長期残存の低減と血管の早期内皮化・早期治癒を目的として設計された次世代の薬剤溶出性ステントである。 シナジーステントシステムの主な改善点は3点ある。(1)プラットフォーム:ステントの構造をより使用しやすい形へ改良した(2)ステントの薄さ:ステントと血液の間の抵抗が減らし、血栓症リスクを低下させるため従来より薄くした(3)コーティング:生体吸収性ポリマーを血管の壁側に接する部分にのみ塗布する「アブルミナルコーティング」が特徴、ステント内の内皮化を促進させ、血管内炎症を減少させた とくに、薬剤放出後、体内に残存していたポリマーによる血管内炎症という長期的結果への課題は、シナジーステントシステムに採用されている生体吸収性ポリマーによって解決されるという。本ステントに採用されているポリマーは留置後4ヵ月程度で生体内に吸収され、ステントの早期内皮化を促進する。さらに、アブルミナルコーディングにより、ポリマーが塗布されているのは血管壁側のみのため、ポリマーの減量にも成功している。ポリマーの長期残存を低減し永続的な炎症の原因となるポリマーがなくなることで、後期ステント血栓症のリスクを低下させる可能性がある。 また、シナジー ステントシステムのステントの厚さは74μmと非常に薄く、ステント血栓症リスクをさらに減少させる可能性もあるという。新たに開発中のステントが第3世代ステントを治療成績で上回るのかは現時点では不明 新型ステントのエビデンス収集も徐々に進んでおり、現在「EVOLVE Short DAPT試験」が進行しつつある。これは、出血性リスクが高い患者にこのステントを利用し、DAPT投与期間が短縮できるかを検証する目的のグローバル臨床試験である。同試験結果によってはさらにステントの有効性が評価され、出血リスクの高い患者のDAPTの投与期間の大幅な短縮も可能となるかもしれない。 演者の中村 正人氏(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 教授)は、シナジー ステントシステムについて「DESではかなり完成された形」とした。中村氏は、今回の新型ステントについて、以下の2点の可能性に期待を寄せた。(1)DAPTが短期間で中止できる短期的効果(2)DAPT投与中止後もイベント発生を抑制し、PCIの長期成績を改善する長期的効果 ステントはさらに進化を続けており、現在ポリマーをまったく使用していないステントが開発中である。ポリマーを使用していなければポリマーにより惹起される炎症が減る可能性はあるが、中村氏は、今回発売された第3世代ステントより治療成績が上回るのかについては現時点では不明である、と付け加えた。本サイトも、これからのステントの進化に注目していきたい。

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“the lower, the better”だけならば、苦労はない(解説:石上 友章 氏)-477

 降圧治療についての、Ettehad氏らのシステマティック・レビュー(SR)/メタ解析の論文1)は、米国心臓協会(AHA)学術会議での発表と同時にNew England Journal of Medicineに掲載された、“鳴り物入り”のSPRINT試験2)同様に、降圧治療における、いわゆる“the lower, the better”戦略の正当性を証明する重要な研究成果である。 本研究のように確度の高い臨床試験の結果は、ガイドラインの記述に大きな影響を与え、一国のヘルスプロモーション政策にも重大な変更をもたらしうることから、大いに注目される。この一連の研究成果からは、一見すると、アンチ“the lower, the better”派に逆風が吹いているようにも思える。2014年前後に相次いで公表された各国の高血圧ガイドラインでは、ACCORD-BP試験3)の結果や、元来エビデンスに乏しく、演繹的に設定された降圧目標値について高く設定し直した経緯があり、本研究とSPRINT試験の結果を合わせると、確実に振り子のゆり戻しのような現象が起こるのではないかと予想される。 降圧治療における“the lower, the better”戦略については、疫学研究による証明4)や、Staessen氏らのメタ解析5)の結果から、その正当性が支持されている。それに対して、古くはCruickshankの解析6)であるとか、近年ではMesserli氏らによるINVEST試験のpost-hoc解析7)や、ONTARGET試験のpost-hoc解析8)からは、過降圧によるJカーブ現象の存在が示唆されていた。ここに一見すると相反するデータがあり、長年にわたって研究者だけでなく、多くの臨床家の注目の的になっていた。 しかし、多くの日本の臨床家は実のところ、この2つの治療戦略が、相反するものではなく、共存するものであることに気付いているのではないか9)。 ガイドラインの記述は、エビデンスに基づくことだけではなく、わかりやすさを求められることから、ややもすると短いセンテンスが一人歩きしてしまうことがあるように思える。Staessenのメタ解析5)にしても、Ettehad氏らのメタ解析1)にしても、さらには解析対象の多くが重複すると考えられる、2009年のLaw氏らのメタ解析10)にしても、治療前血圧に依存せずに、一定の降圧治療に治療効果があることを示してはいても、“一律”の降圧目標を支持しているわけではない(EBMがもたらした、究極の“心血管イベント抑制”薬ポリピルは、実現するか[参照])。SPRINT試験の成果は、研究者の名誉を満たす一大快挙であるが、過去の臨床試験の結果を基に、対象患者を絞った末の“狙った”結果である。 2014年に発表された、本邦のHONEST試験の結果を示したい11)。2年間の観察試験の結果で、限定的ではあるが、相対リスクが1になる早朝家庭血圧144~124を示した患者と、124未満の患者において、そのリスクが同等ではないことを読み取ることができる。SPRINT試験の積極的降圧療法群にあっては、低血圧・急性腎障害などの重篤な有害事象や電解質異常が多く認められたと報告されている2)。こうした患者は、潜在的に降圧治療によるリスクが高い群であり、HONEST試験でいえば95%CIでみた相対リスクの高い患者群に該当する。このことは、高血圧を対象にした試験でありながら、降圧値のみを治療効果指標とするならば、こうした群のリスクを完全には回避することができないことを示している。1)Ettehad D, et al. Lancet. 2015 Dec 23.[Epub ahead of print]2)SPRINT Research Group, et al. N Engl J Med. 2015;373:2103-2116.3)ACCORD Study Group, et al. N Engl J Med. 2010;362:1575-1585.4)Lewington S, et al. Lancet. 2002;360:1903-1913.5)Staessen JA, et al. Lancet. 2001;358:1305-1315.6)Cruickshank JM. BMJ. 1988;297:1227-1230.7)Messerli FH, et al. Ann Intern Med. 2006;144:884-893.8)Deleon E, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2009;50:1360-1365.9)Bhatt DL, et al. JAMA. 2010;304:1350-1357.10)Law MR, et al. BMJ. 2009;338:b1665.11)Kario K, et al. Hypertension. 2014;64:989-996.

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単純性膀胱炎に対するイブプロフェンの効果(解説:小金丸 博 氏)-476

 女性の単純性膀胱炎は抗菌薬で治療されることが多い疾患だが、自然軽快する例も少なからずみられる。また、尿路感染症の主要な原因菌である大腸菌は、薬剤耐性菌の増加が問題となっており、耐性菌の増加を抑制するためにも、抗菌薬を使用せずに膀胱炎の症状緩和が図れないか研究が行われてきた。79例を対象としたPilot studyでは、症状改善効果に関してイブプロフェンは抗菌薬(シプロフロキサシン)に対して非劣性であり、イブプロフェン投与群の3分の2の患者では、抗菌薬を使用せずに改善したという結果が得られた。さらなる評価のため、規模を拡大した研究が実施された。 本研究は、女性の単純性膀胱炎に対するイブプロフェン投与が、症状増悪、再発、合併症を増やさずに抗菌薬の処方を減らすことができるかどうかを検討した二重盲検ランダム化比較試験である。下部尿路感染症の典型的な症状(排尿障害、頻尿/尿意切迫、下腹部痛)を呈した18~65歳の女性494例を対象とし、イブプロフェン投与群(400mg×3錠)とホスホマイシン投与群(3g×1錠)に分けて、28日以内の抗菌薬投与コース回数と、第7日までの症状負担度スコアの推移をプライマリエンドポイントとして評価した。両群ともに症状の経過に応じて抗菌薬を追加処方した。上部尿路感染症状(発熱、腰部叩打痛)、妊婦、2週間以内の尿路感染症、尿路カテーテル留置があるものは試験から除外された。症状負担度スコアは、排尿障害、頻尿/尿意切迫、下腹部痛をそれぞれ0~4点(計12点満点)で評価した。 28日以内の抗菌薬投与コース回数は、イブプロフェン投与群で94回、ホスホマイシン投与群で283回であり、イブプロフェン投与群で有意に減少した(減少率66.5%、95%信頼区間:58.8~74.4%、p<0.001)。イブプロフェン投与群で抗菌薬を投与された患者数は85例(35%)だった。 第7日までの症状負担度スコアの平均値は、イブプロフェン投与群が有意に大きく、症状改善効果に関してホスホマイシンに対する非劣性を証明できなかった。イブプロフェン投与群では、排尿障害、頻尿/尿意切迫、下腹部痛すべての症状の改善が有意に不良だった。 近年「抗菌薬の適正使用」が叫ばれており、不適切な抗菌薬投与を減らそうとする動きが世界的に広がっている。本研究では、女性の単純性膀胱炎を対象として、安全に抗菌薬投与を減らすことができるかどうかが検討されたが、症状改善に関してイブプロフェンは抗菌薬の代替薬としては不十分な結果となった。膀胱炎症状を呈した女性に対しては、従来通り、抗菌薬治療を第1選択とすべきであろう。 しかしながら、本研究でもPilot studyと同様に、イブプロフェン投与群の約3分の2の膀胱炎患者では抗菌薬を投与せずに症状が改善したのも事実である。サブグループ解析の結果では、尿培養が陰性だった患者に限ると、症状増悪に関して2群間で有意差はなかった。尿のグラム染色などで細菌性膀胱炎かどうかを見極めることができれば、抗菌薬を処方しない症例を増やすことができる可能性がある。著者らも述べているが、症状が比較的軽度で、症状が増悪した場合に遅れて抗菌薬を投与することを許容してくれる患者であれば、初回はイブプロフェン投与で経過をみるのも1つの選択肢になりうると考える。

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ネフローゼ症候群〔Nephrotic Syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ネフローゼ症候群は高度の蛋白尿(3.5g/日以上)と低アルブミン血症(3.0g/dL以下)を示す疾患群であり、腎臓に病変が限局するものを一次性ネフローゼ症候群、糖尿病や全身性エリテマトーデスなど全身疾患の一部として腎糸球体が障害されるものを二次性ネフローゼ症候群と区別する(表1)。ネフローゼ症候群には浮腫が合併し、高コレステロール血症を来すことが多い。ネフローゼ症候群の診断基準を表2に示す。また、治療効果判定基準を表3に示す。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する■ 疫学新規発症ネフローゼ症候群は、平成20年度の厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害調査研究班の調査では年間3,756~4,578例の新規発症があると推定数が報告されている。日本腎生検レジストリーの中でネフローゼ症候群を示した患者の内訳は図1に示すように、IgA腎症を含めると一次性ネフローゼ症候群が2/3を占める。二次性ネフローゼ症候群では糖尿病が多く、ループス腎炎、アミロイドーシスが続く。ネフローゼ症候群を示す各疾患の発症は、図2に示すように年齢によって異なる。15~65歳ではループス腎炎、40歳以上で糖尿病、アミロイドーシスが増加する。図2に示すように一次性ネフローゼ症候群は、40歳未満では微小変化型(MCNS)が最も多く、60歳以上では膜性腎症(MN)が多くなる。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は全年齢を通じて発症する。画像を拡大する画像を拡大する■ 病因ネフローゼ症候群において大量の蛋白尿が出るときには、糸球体上皮細胞(ポドサイト)が障害を受けている。MCNSの場合には、この障害に液性因子が関連している可能性が示唆されているが、その因子はいまだ同定されていない。FSGSは、ポドサイトを構成するいくつかの遺伝子の異常が同定されており、多くは小児期に発症する。特発性のFSGSは成人においても発症するが、原因は不明である。MNの原因の1つに、ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)に対する自己抗体の存在が証明されており、ポドサイトに発現するPLA2Rに結合して抗原抗体複合物を産生することが示されている。MPGNは糸球体基底膜の免疫複合体の沈着位置によってI、II、III型に分類される。I型の原因は、補体の古典的経路による活性化が原因と考えられている。III型も同じ原因との説があるが、まだ明確にはわかっていない。II型は補体成分に対する、後天的な自己抗体が産生されることによるとされている。最近、MPGNはC3腎症として定義され、C3が主として糸球体に沈着する腎症群とする考え方に変わってきた。■ 症状1)浮腫ネフローゼ症候群には浮腫を合併する。浮腫の発症機序を図3に示す。画像を拡大する浮腫の発生には2つの仮説がある。循環血漿量不足説(underfill)と循環血漿量過剰説(overfill)である。underfill仮説は、低アルブミン血症のために、血漿膠質浸透圧が低下するとStarlingの法則に従い水分が血管内から間質へ移動することにより循環血漿量が低下する。その結果、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)や交感神経系が活性化され、二次的にNa再吸収を促進し、さらに浮腫を増悪するとされる。2つ目はoverfill仮説であり、遠位尿細管や集合管におけるNa排泄低下・再吸収の亢進が一次的に生じて、Na貯留により血管内容量が増加した結果、静水圧が高まり浮腫を生じるというものである。この原因に、糸球体から大量に漏れてくるplasminなどの蛋白分解酵素が、遠位尿細管や集合管に存在する上皮Naチャネルの活性化に関連し、Na再吸収が亢進するとの報告もある。低アルブミン血症が徐々に進行する場合には膠質浸透圧勾配はほとんど変化しないこと、ネフローゼ症候群患者では必ずしもRAS活性化がみられないことなど、underfill仮説に反する報告もあり、とくに微小変化型ネフローゼ症候群の患者が寛解する際、血清アルブミン値が上昇する前に浮腫が改善し始めるという臨床的事実は、overfill仮説を支持するものである。浮腫成立の機序は必ずしも単一ではなく、症例ごと、また同じ症例でも病期により2つの機序が異なる比率で存在するものと思われる。2)腎機能低下ネフローゼ症候群では腎機能低下を来すことがある。MCNSでは低アルブミン血症による腎血漿流量の低下から、一過性の腎機能低下はあっても、通常腎機能低下を来すことはない。それ以外の糸球体腎炎では、糸球体障害が進めば腎機能の低下を来す。3)脂質異常症肝臓での合成亢進と分解の低下から、高LDLコレステロール血症を来す。■ 予後MCNS、FSGS、MNの治療後の寛解率を図4に示す。画像を拡大するMCNSは2ヵ月以内に85%が完全寛解する。FSGSは6ヵ月で約45%、1年で約60%が完全寛解する。MNは6ヵ月では30%しか完全寛解しないが、1年で60%が完全寛解する。平成14年度厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害調査研究班の報告で、膜性腎症と巣状糸球体硬化症に関する予後調査の結果が報告されている。膜性腎症1,008例の腎生存率(透析非導入率)は10年で89%、15年で80%、20年で59%であった。巣状糸球体硬化症278例の腎生存率は10年で85%、15年で60%、20年で34%と長期予後は不良であった。2 診断 (病理所見)ネフローゼ症候群の診断自体は尿蛋白の定量と血清アルブミン値、血清総蛋白量を測定することにより行うことができる。しかし、実際の治療に関しては、二次性ネフローゼ症候群を除外した後、腎生検によって診断をする必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 浮腫に対する治療浮腫に対しては、利尿薬を使用する。第1選択薬としてループ利尿薬を使用する。効果がみられない場合には、サイアザイド系利尿薬を追加する。それでも効果のない場合や、低カリウム血症を合併する場合には、スピロノラクトンを使用する。アルブミン製剤は使用しないことが原則であるが、血清アルブミン値2.5g/dL以下で、低血圧、急性腎不全などの発症の恐れがある場合に使用する。しかし、その効果は一過性であり、かつ利尿効果はわずかである。利尿薬に反応しない場合には、体外限外濾過による除水を行う。■ 腎保護を目的とした治療1)低蛋白食ネフローゼ症候群への食事療法の有効性に十分なエビデンスはないが、摂取蛋白量を減少させることにより尿蛋白が減少することが期待できるため、通常以下のように行う。(1)微小変化型ネフローゼ症候群蛋白 1.0~1.1g/kg体重/日、カロリー 35kcal/kg体重/日、塩分 6g/日以下(2)微小変化型ネフローゼ症候群以外蛋白 0.8g/kg体重/日、カロリー 35kcal/kg体重/日、塩分 6g/日以下2)身体活動度ネフローゼの治療において運動制限の有効性を示すエビデンスはない。しかし、身体活動を制限することにより、深部静脈血栓のリスクが増大する。このため、入院中の寛解導入期であっても、ベッド上での絶対安静は避ける。維持治療期においては、適度な運動を勧める。3)レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬微小変化型ネフローゼ症候群を除き、尿蛋白の減少と腎保護を目的として、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、あるいはアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用する。このとき高カリウム血症に注意する。RAS阻害薬を使用することにより、血圧が低下して、臓器障害を起こす可能性がある場合には、中止する。利尿薬との併用は、RAS阻害薬の降圧作用を増強するので注意する。アルドステロン拮抗薬を追加することにより、尿蛋白が減少する。■ 合併症の予防1)感染症の予防ネフローゼ症候群では、IgGや補体成分の低下がみられ、潜在的に液性免疫低下が存在することに加え、T細胞系の免疫抑制もみられるなど、感染症の発症リスクが高い。日和見感染症のモニタリングを行いながら、臨床症候に留意して早期診断に基づく迅速な治療が必要である。肺炎球菌ワクチンの接種を副腎皮質ステロイド治療前に行う。ツベルクリン反応陽性、胸部X線上結核の既往がある者、クオンティフェロン陽性者は、イソニアジド300mgを6ヵ月投与する。副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬の治療と並行して投与を行う。1日20mg以上のプレドニゾロンや免疫抑制薬を長期間にわたり使用する場合には、顕著な細胞性免疫低下が生じるため、ニューモシスチス肺炎に対するST合剤の予防的投薬を考慮する。β-Dグルカン値を定期的に測定する。2)血栓症の予防ネフローゼ症候群では、発症から6ヵ月以内に静脈血栓形成のリスクが高く、血清アルブミン値が2.0g/dL未満になればさらに血栓形成のリスクが高まる。過去に静脈血栓症の既往があれば、ワルファリンによる予防的抗凝固療法を考慮する。D-dimer、FDPにて、血栓形成の可能性をモニターする。静脈血栓症由来の肺塞栓症が発症すれば、ただちにヘパリンを投与し、APTTを2.0~2.5倍に延長させて、血栓の状況を確認しながらワルファリン内服に移行し、PT-INRを2.0(1.5~2.5)とするように抗凝固療法を行う。肺塞栓症が発症すれば、ただちにヘパリンを経静脈的に投与し、APTTを2.0~2.5倍に延長させる。また、経口FXa阻害薬を投与する。■ 各組織型別の特徴と治療1)微小変化型(MCNS)小児に好発するが、成人にも多く、わが国の一次性ネフローゼ症候群の40%を占める。発症は急激であり、突然の浮腫を来す。多くは一次性であるが、ウイルス感染、NSAIDs、ホジキンリンパ腫、アレルギーに合併することもある。副腎皮質ステロイドに対する反応は良好である。90%以上が寛解に至る。再発が30~70%で認められる。ステロイド依存型、長期治療依存型になる症例もあり、頻回再発型を示す場合もある。わが国で行われた無作為化比較試験にて、メチルプレドニゾロンを使用したパルス療法は、尿蛋白減少効果において、経口副腎皮質ステロイドと変わらないことが示されている。寛解導入後の治療は、少なくとも1年以上継続して行ったほうが再発が少ない。(1)再発時の治療プレドニゾロン20~30 mg/日もしくは初期投与量を投与する。患者に、検尿試験紙を持たせて、自己診断できるように教育し、再発した場合にすぐに来院できるようにする。(2)頻回再発型、ステロイド依存性、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群免疫抑制薬(シクロスポリン〔商品名:サンディミュン、ネオーラル〕1.5~3.0 mg/kg/日、またはミゾリビン〔同:ブレディニン〕150 mg/日、または、シクロホスファミド〔同:エンドキサン〕50~100 mg/日など)を追加投与する。シクロスポリンは、中止により再発が起こるリスクが高く、寛解が得られる最小量にて1~2年は治療を継続する。頻回再発を繰り返す症例や難治症例ではリツキサンを500mg/日 1回点滴静注投与することも検討する。2)巣状分節性糸球体硬化症巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)は、微小変化型ネフローゼ症候群(minimal change nephrotic syndrome:MCNS)と同じような発症様式・臨床像をとりながら、MCNSと違ってしばしばステロイド抵抗性の経過をとり、最終的に末期腎不全にも至りうる難治性ネフローゼ症候群の代表的疾患である。糸球体上皮細胞の構造膜蛋白であるポドシン(NPHS2)やα-アクチニン4(ACTN4)などの遺伝子変異により発症する、家族性・遺伝性FSGSの存在が報告されている。(1)初期治療プレドニゾロン(PSL)換算1mg/kg標準体重/日(最大60mg/日)相当を、初期投与量としてステロイド治療を行う。重症例ではステロイドパルス療法も考慮する。(2)ステロイド抵抗性4週以上の治療にもかかわらず、完全寛解あるいは不完全寛解I型(尿蛋白1g/日未満)に至らない場合は、ステロイド抵抗性として以下の治療を考慮する。必要に応じてステロイドパルス療法3日間1クールを3クールまで行う。a)ステロイドに併用薬として、シクロスポリン2.0~3.0 mg/kg/日を投与する。朝食前に服用したシクロスポリンの2時間後の血中濃度(C2)が、600~900ng/mLになるように投与量を調整する。副作用がない限り、6ヵ月間同じ量を継続し、その後漸減する。尿蛋白が1g/日未満に減少すれば、1年間は慎重に減量しながら、継続して使用する。b)ミゾリビン 150 mg/日を1回または3回に分割して投与する。c)シクロホスファミド 50~100 mg/日を3ヵ月以内に限って投与する。シクロホスファミドは、骨髄抑制、出血性膀胱炎、間質性肺炎、発がんなどの重篤な副作用を起こす可能性があるため、総投与量は10g以下にする。(3)補助療法高血圧を呈する症例では積極的に降圧薬を使用する。とくに第1選択薬としてACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬の使用を考慮する。脂質異常症に対してHMG-CoA還元酵素阻害薬やエゼチミブ(同:ゼチーア)の投与を考慮する。高LDLコレステロール血症を伴う難治性ネフローゼ症候群に対してはLDLアフェレシス療法(3ヵ月間に12回以内)を考慮する。必要に応じ、蛋白尿減少効果と血栓症予防を期待して抗凝固薬や抗血小板薬を併用する。3)膜性腎症膜性腎症は、中高年者においてネフローゼ症候群を呈する疾患の中で、約40%と最も頻度が高く、その多くがステロイド抵抗性を示す。ネフローゼ症候群を呈しても、尿蛋白の増加は、必ずしも急激ではない。特発性膜性腎症の主たる原因抗原は、ポドサイトに発現するPLA2Rであり、その自己抗体がネフローゼ症候群患者の血清に検出される。PLA2R抗体は、寛解の前に消失し、尿蛋白の出現の前に検出される。特発性膜性腎症の抗体はIgG4である。一方、がんを抗原とする場合の抗体はIgG1、IgG2である。約1/3が自然寛解するといわれている。したがって、欧米においては、尿蛋白が8g/日以下であれば、6ヵ月間は腎保護的な治療のみで、経過をみることが一般的である。また、尿蛋白が4g/日以下であれば、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬は使用しない。わが国における本症の予後は、欧米のそれに比較して良好である。この原因は、尿蛋白量が比較的少ないことによる。このため、ステロイド単独投与により寛解に至る例も少なくない。通常、免疫抑制薬の併用により尿蛋白が減少し、予後の改善が期待できる。(1)初期治療プレドニゾロン(PSL)0.6~0.8mg/kg/日相当を投与する。最初から、シクロスポリンを併用する場合もある。(2)ステロイド抵抗性ステロイドで4週以上治療しても、完全寛解あるいは不完全寛解Ⅰ型(尿蛋白1g/日未満)に至らない場合はステロイド抵抗性として免疫抑制薬、シクロスポリン2.0~3.0 mg/kg/日を1日1回投与する。朝食前に服用したシクロスポリンの2時間後の血中濃度(C2)が、600~900ng/mLになるように投与量を調整する。副作用がない限り、6ヵ月間同じ量を継続し、その後漸減する。尿蛋白1g/日未満に尿蛋白が減少すれば、1年間は慎重に減量しながら、継続して使用する。シクロスポリンが無効の場合には、ミゾリビン 150 mg/日、またはシクロホスファミド 50~100 mg/日の併用を考慮する。リツキサン500mg/日 1回を、点滴静注することにより寛解することが報告されており、難治例では検討する。(3)補助療法a)高血圧(収縮期血圧130mmHg 以上)を呈する症例では、ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用する。b)脂質異常症に対して、HMG-CoA還元酵素阻害薬やエゼチミブの投与を考慮する。c)動静脈血栓の可能性に対してはワルファリンを考慮する。4)膜性増殖性糸球体腎炎膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)はまれな疾患であるが、腎生検の6%を占める。光学顕微鏡所見上、糸球体係蹄壁の肥厚と分葉状(lobular appearance)の細胞増殖病変を呈する。係蹄の肥厚(基底膜二重化)は、mesangial interpositionといわれる糸球体基底膜(GBM)と内皮細胞間へのメサンギウム細胞(あるいは浸潤細胞)の間入の結果である。また、増殖病変は、メサンギウム細胞の増殖とともに局所に浸潤した単球マクロファージによる管内増殖の両者により形成される。確立された治療法はなく、メチルプレドニゾロンパルス療法に加えて、免疫抑制薬(シクロホスファミド)の併用の有効性が、観察研究で報告されている。4 今後の展望ネフローゼ症候群の原因はいまだに不明な点が多い。これらの原因因子を究明することが重要である。膜性腎症の1つの原因因子であるPLA2R自己抗体は、膜性腎症の発見から50年の歳月をかけて発見された。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本腎臓学会ホームページ エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2014(PDF)(医療従事者向けの情報)日本腎臓学会ホームページ ネフローゼ症候群診療指針(完全版)(医療従事者向けの情報)進行性腎障害に関する調査研究班ホームページ(医療従事者向けの情報)難病情報センターホームページ 一次性ネフローゼ症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働省「進行性腎障害に関する調査研究」エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン作成分科会. エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2014.日腎誌.2014;56:909-1028.2)厚生労働省難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する調査研究班難治性ネフローゼ症候群分科会編.松尾清一監修. ネフローゼ症候群診療指針 完全版.東京医学社;2012.3)今井圓裕. 腎臓内科レジデントマニュアル.改訂第7版.診断と治療社;2014.4)Shiiki H, et al. Kidney Int. 2004; 65: 1400-1407.5)Ronco P, et al. Nat Rev Nephrol. 2012; 8: 203-213.6)Beck LH Jr, et al. N Engl J Med. 2009; 361: 11-21.公開履歴初回2013年09月19日更新2016年02月09日

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統合失調症発症にビタミンDがどう関与しているのか

 統合失調症とビタミンDとの関連について、米国・マサチューセッツ医科大学のMathew Chiang氏らが臨床レビューを行った。Evidence-based mental health誌2016年2月号の報告。・ビタミンDがカルシウムのホメオスタシスおよび骨の健康において、重要な役割を担っていることは知られている。・ビタミンDは、日光によるUVB照射により皮膚から内因的に生成される。そして、ビタミンDは現在、脳の発達や正常な脳機能に重要な役割を有する強力な神経ステロイドホルモンであると考えられており、その抗炎症特性は、ヒトの健康のさまざまな側面に影響を与えることが知られている。・ビタミンDリガンド受容体(ビタミンDの生理学的作用の多くを仲介する受容体)は、中枢神経系を含む身体全体で見つかっている。・ビタミンD欠乏は、統合失調症など重篤な精神疾患を有する患者で一般的に認められる。・統合失調症のいくつかの環境リスク因子(誕生した季節、緯度、移住)は、ビタミンD欠乏症と関連付けられる。そして、最近の研究では、統合失調症の発症におけるビタミンDの潜在的な役割が示唆されている。たとえば、新生児のビタミンDの状態と、その後の肥満やインスリン抵抗性、糖尿病、脂質異常症および心血管疾患の発症リスクとの関連が、統合失調症患者でよく認められている。ビタミンD欠乏が、これら代謝の問題に関連していることは明らかになっている。・生物学的メカニズムは、炎症の調節や免疫プロセスにおけるビタミンD作用と関連しており、その結果、臨床症状の発現や統合失調症の治療反応に影響する。・ビタミンD補充の潜在的なベネフィットとして、統合失調症症状の改善および統合失調症患者の身体的健康についても、今後の研究で検討されるべきである。関連医療ニュース 統合失調症、ビタミンD補充で寛解は期待できるか 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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第6回医療法学シンポジウム開催のご案内

 3月12日(土)に第6回医療法学シンポジウムが、「少子高齢化社会を乗り越える医療制度の実現に向けて」をテーマに開催される。少子高齢化が進展するわが国で、将来も安定した医療体制を提供することができるのか、国内の有識者が問題解決への糸口を探る。開催概要 内閣府の高齢社会白書によると、平成26年の65歳以上の人口は過去最高の約3,300万人であり、高齢化率は26.0%でした。今後、高齢者人口はおおむね横ばいとなるものの、低出生率(平成26年の合計特殊出生率1.42)のため生産者人口は減少し続け、このままの人口動態では、2035年の高齢化率は33.4%となり、その後も増加し続けると予測されています。 高齢化率が増加することは、生産年齢1人当たりが負担しなければならない医療費の増加につながることから、将来的には、現在と同程度の医療提供を維持することは困難となることが予測されます。したがって、限られた医療資源の効果的・効率的な分配がわが国の喫緊の課題であることは明白にもかかわらず、医療制度が国民の生命・健康に直結することから、国民に対して十分な情報提供がされ難く、その結果、卑近かつ短絡的な議論が散見されているのが現状です。 本シンポジウムでは、本問題の国内トップランナーたちをシンポジストとして迎え、前向きかつ具体的な議論をしていきます。徹底した情報公開のうえ、建設的かつ創造的な議論が期待されます。プログラム(敬称略)・開会のあいさつ 武見 敬三(参議院議員)・講演 羽鳥 裕(日本医師会常任理事、稲門医師会会長) 灰田 宗孝(東海大学理事、東海大学医療技術短期大学学長、稲門医師会副会長) 中田 善規(帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授) 大磯 義一郎(浜松医科大学法学教授、日本医科大学医療管理学客員教授、帝京大学医療情報システム研究センター客員教授、稲門医師会理事) 渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授) 井上 真智子(浜松医科大学地域家庭医療学講座特任教授)・パネルディスカッション・閉会のあいさつ 土屋 了介(がん研究会理事、神奈川県顧問、神奈川県立病院機構理事長)開催日時ならびに会場日時:2016年3月12日(土)    講演・シンポジウム 12:00~15:00   レセプション 15:30~17:30(要予約、場所は追って連絡いたします)会場:早稲田大学大隈記念講堂(大隈小講堂)   〒169-0071 東京都新宿区戸塚町1-104   早稲田大学へのアクセスマップはこちら費用:無料(ただしレセプション参加には3,500円必要)対象:医師、看護師、医療従事者、医学生など申込:氏名、所属、連絡先、レセプション参加希望の有無を記載のうえ、下記事務局宛までお申込みください。   事務局メールアドレス:lawjimu@hama-med.ac.jp

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腎移植後のbelatacept投与、7年時点のアウトカム/NEJM

 腎移植後の維持免疫抑制療法において、belataceptは従来の治療レジメンに比べ、長期的なアウトカムを改善するとの研究成果を、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のFlavio Vincenti氏らが、NEJM誌2016年1月28日号で報告した。免疫抑制療法は腎移植患者の短期的なアウトカムを改善することが知られているが、長期的な移植腎生着への効果を示すデータはほとんどない。belataceptは、ヒトIgG1のFc部分とCTLA-4の細胞外ドメインの融合蛋白で、共刺激の遮断を介してT細胞の活性化を選択的に阻害する(選択的共刺激遮断薬)。本薬は、従来のカルシニューリン阻害薬による有害作用を回避しつつ、高い免疫抑制効果をもたらすことで、腎移植患者の長期アウトカムを改善することを目的に開発されたという。移植後7年時の3群のアウトカムを比較 本研究(BENEFIT試験)は、腎移植患者の維持免疫抑制療法として、belataceptをベースとするレジメンと、シクロスポリンベースのレジメンを比較する無作為化第III相試験である(Bristol-Myers Squibb社の助成による)。 これまでの解析では、患者の生存率と移植腎生着率が同程度で、腎機能はbelataceptで有意に改善することが確認されており、研究グループは今回、本試験の最終結果を報告した。 被験者は、belataceptの治療強度の高いレジメン、治療強度の低いレジメン、シクロスポリンベースレジメンの3群のいずれかに無作為に割り付けられた。無作為化の対象となり、実際に移植を受けた全患者の有効性と安全性を、7年(84ヵ月目)の時点で解析した。 2006年1月13日~2007年6月14日に666例が移植を受け、660例が免疫抑制療法の対象となった(高強度群:219例、低強度群:226例、シクロスポリン群:215例)。このうち84ヵ月のフォローアップを完遂したのは、高強度群が153例、低強度群が163例、シクロスポリン群は131例だった。死亡/移植腎喪失リスクが改善、重篤な有害事象は増加せず 7年時の死亡または移植腎喪失のリスクは、シクロスポリン群に比べ、高強度群(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.35~0.95、p=0.02)および低強度群(HR:0.57、95%CI:0.35~0.94、p=0.02)の双方で43%有意に低下した。 死亡率は、シクロスポリン群に比し高強度群が38%(HR:0.62、95%CI:0.33~1.14、p=0.11)、低強度群は45%(HR:0.55、95%CI:0.30~1.04、p=0.06)低下し、いずれも改善の傾向がみられた。 移植腎喪失率はそれぞれ44%(HR:0.56、95%CI:0.25~1.21、p=0.12)、41%(HR:0.59、95%CI:0.28~1.25、p=0.15)低下し、やはり有意差はないものの改善の傾向が認められた。 平均推算糸球体濾過量(eGFR)は、2つのbelatacept群は7年間で増加した(高強度群=12ヵ月:67.0、36ヵ月:68.9、60ヵ月:70.2、84ヵ月:70.4mL/分/1.73m2、低強度群=66.0、68.9、70.3、72.1mL/分/1.73m2)が、シクロスポリン群は低下した(52.5、48.6、46.8、44.9mL/分/1.73m2)。belatacept群全体の腎機能の治療効果は、シクロスポリン群に比べ有意に良好だった(p<0.001)。 84ヵ月時の重篤な有害事象の累積発生率は、高強度群が70.8%、低強度群が68.6%、シクロスポリン群は76.0%であり、3群でほぼ同等であった。重篤な感染症の頻度が最も高く、高強度群の10.6%、低強度群の10.7%、シクロスポリン群の13.3%に認められた。 著者は、「これまでに報告された他剤のアウトカムの検討は移植後5年までであり、7年時の生存ベネフィットが確認されたことの意義は大きいと考えられる」としている。

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