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生存曲線の比較、ハザード比でよいのか

 がん領域の臨床試験で生存曲線の差を評価するとき、ハザード比(HR)がよく使用される。しかし、HRによる評価では治療効果の不正確な評価につながる恐れがある。そこで、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のLudovic Trinquart氏らは、がん領域の無作為化比較試験における治療効果の評価におけるHRと生存曲線下面積(RMST)の差(および比)について比較した。その結果、概して、HRがRMST比よりも治療効果推定値が有意に大きかった。著者らは、絶対的効果が小さい場合にはHRが大きくなる可能性があり、イベント発生までの期間のアウトカムを評価する無作為化試験では、RMSTによる評価をルーチンに報告すべきと結論している。Journal of clinical oncology誌オンライン版2月16日号に掲載。 著者らは、2014年の後半6ヵ月間における主要5誌から、がん領域の無作為化比較試験を選択し、各試験のイベント発生までの期間のアウトカムに関して、個々の患者データを再構築した。それぞれの試験を再分析し、HRにより推定された治療効果をRMSTの差(および比)により推定された治療効果と比較した。さらに、RMST比に対するHRの平均比率を推定した(平均比率が1未満ならば、HRによる評価のほうが楽観的なことを示す)。 主な結果は以下のとおり。・合計54のランダム化比較試験、3万3,212例の患者を解析した。・21試験(39%)において、全生存がアウトカムに選択されていた。・非比例ハザード性のエビデンスが13試験(24%)で認められた・HRとRMSTベースの評価は、1つのケース以外は、効果の統計的有意性について一致した。・HRの中央値は0.84(Q1~Q3の範囲:0.67~0.97)、RMST差の中央値は1.12ヵ月(範囲:0.22~2.75ヵ月)であった。・RMST比に対するHRの平均比率は1.11(95%CI:1.07~1.15)で、試験間のばらつきは大きかった(I2=86%)。・アウトカムの違い(全生存と他のアウトカム)や比例ハザード性の成立・不成立にかかわらず、結果は一致していた。

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診療録ビッグデータを治療効果の検証には使うべきではない(解説:折笠 秀樹 氏)-486

 病院の診療録というビッグデータを利用して治療効果を見た後で、同じテーマに関して複数のRCT(ランダム化比較試験)が実施された16件の事案を検討した。 複数のRCTはメタ解析により統合された。診療録ビッグデータの解析結果のほうが、RCTのメタ解析結果より1.31倍有効へと傾いていた。つまり、診療録ビッグデータでは有効であったとしても、検証的RCTによって有効性が覆ることを示唆する。診療録ビッグデータなどの観察研究では、Confounding by indicationバイアスが入るため、傾向スコア解析などの特殊な解析を用いてはいるものの、RCTよりも治療効果が過剰に出る傾向がみられた。 これらのことから、やはり治療効果を検証するにはRCTが必須だと思われる。しかしながら、16件のテーマはマイナーなものが多く、後に実施されたRCTは比較的小規模のものが多いように見受けられた。したがって、この研究結果はもう少し慎重に評価したほうがよいかもしれない。 診療録や検診など、医療ビッグデータを有効活用するプロジェクトが全世界的に始まりつつある。これを治療効果の検証に用いることは期待せず、危険因子の探索などに限るなど、方向性を間違わないように気を付けるべきだろう。

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“糖尿病合併高血圧にはRAS阻害薬”という洗脳から解き放たれるとき(解説:桑島 巖 氏)-487

 多くの臨床医は、“糖尿病合併高血圧にはRAS阻害薬”という考えにとりつかれてはいないだろうか。この問題にあらためて挑戦し、メタ解析を行ったのが、“的確な臨床試験コメンテーター”で知られるMesserli氏らのグループである。 彼らは、PubMed、Embaseやコクランライブラリーなどといった信頼性の高いデータベースから、糖尿病患者に対するRAS阻害薬の心血管合併症予防効果を、他の降圧薬と比較するメタ解析を行った。メタ解析で最も注意すべきセレクションバイアスは、独立した3名の専門家による論文選択と、コクランライブラリー基準にのっとりながら極力除外している。 RCT選択は、100例以上のサンプルサイズであること、最低1年以上の追跡期間であること、プラセボ対照試験を除外していること、そして注意すべきことは心不全を含んだトライアルは除外していることである。ACE阻害薬の心不全予防効果が他の降圧薬よりも優れていることは、証明されているからとしている。 そのメタ解析の結果、総死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中のいずれにおいても、RAS阻害薬が他の降圧薬よりも優れているという結果は得られなかったと結論付けている。個々の降圧薬との比較をみると、Ca拮抗薬との比較では、心不全以外ではまったく差が認められず、利尿薬、β遮断薬との比較においても、心血管イベント抑制効果に優位性は認めることができなかった。 そもそも、臨床医が“糖尿病合併高血圧ではRAS阻害薬”という考えにとりつかれたきっかけは、糖尿病性腎症に対するRAS抑制薬の蛋白尿抑制効果が大規模臨床試験で報告され、以来“糖尿病にはRAS阻害薬”というように拡大解釈された結果ではないかと著者らは考察している。 わが国の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病合併高血圧患者における降圧薬選択に関しては、糖脂質への影響と糖尿病性腎症に対する効果のエビデンスより、RA系阻害薬(ARB、ACE阻害薬)を第1選択薬として推奨するとある。 しかも、その根拠としてABCD試験やFACET試験のようなきわめて小規模なトライアルを引用しているにすぎない。さらに問題は、CASE-Jのサブ解析結果を引用していることである。CASE-JにおけるARBカンデサルタンの糖尿病新規発症予防効果は、実はスポンサーの指示によって定義を後付けで変更するという不正な操作によって導き出されたことが、調査報告書で明らかになっているのである。それにもかかわらず、ガイドラインはいまだこの部分を訂正していない。 本メタ解析では、ベースライン時に腎症を合併している糖尿病のアウトカムについても解析しているが、他の降圧薬に比べて優位性を認めることができなかったとしている。 ここ20年間、ARBの降圧を超えて臓器保護効果や、糖尿病にはRAS阻害薬といった、誤ったマインドコントロールから覚めるときが来たようである。

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一次性進行型多発性硬化症における経口フィンゴリモド療法(INFORMS):第III相二重盲検プラセボ対照試験(解説:内山 真一郎 氏)-485

 一次性進行型多発性硬化症(MS)に、有効性が証明されている治療法は存在しない。フィンゴリモドは、経口のスフィンゴシン-1-リン酸受容体修飾薬であり、再発型MSに効果があるが、一次性進行型MSには試されたことがない。 INFORMS試験は、一次性進行型MS患者970例において、フィンゴリモド1.25mg/日またはプラセボを3~5年間投与して比較した、国際共同研究による二重盲検並行群間試験であったが、フィンゴリモドは、MSによる神経障害の進行を遅らせることができなかった。 フィンゴリモドは、中枢神経の炎症を抑制する効果があるが、一次性進行型MSは再発型MSに比べて炎症の関与が少なく、神経変性過程の関与が大きいために有効性が示されなかったと考えられる。一次性進行型MSには、再発型MSに用いられるような抗炎症戦略は有効性が期待しにくいので、今後は新たな治療戦略が必要になるであろう。

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ADHD症状とギャンブル依存との関連

 現時点では、ADHDと問題ギャンブル(problem gambling)との関連についての文献には矛盾がある。カナダ・マニトバ大学のJennifer Theule氏らは、ADHD症状と問題ギャンブルの症状との関連を明確にするためメタ分析を行った。Journal of attention disorders誌オンライン版2016年2月1日号の報告。ADHDとギャンブルとは年齢上昇に伴って強い関連 ADHD症状と問題ギャンブルの症状との関連を明確にするためのメタ分析には、ランダム効果モデルを用いて行った。PsycINFO、PubMed、ProQuest Dissertations & Theses、Google Scholarより、関連する研究を検索した。 ADHD症状と問題ギャンブルの症状との関連を明確にするためメタ分析を行った主な結果は以下のとおり。・ADHD症状とギャンブル重症度との間の加重平均の相関は、r=0.17(95%CI:0.12~0.22、p<0.001)であった。・サンプルの平均年齢は、有意性に近い唯一の調整因子であり、年齢上昇に伴いADHD症状とギャンブル重症度との間に強い関連が認められた。・臨床医は、問題のあるギャンブラーに対応するときはADHD症状リスクが高いことを認識する必要があり、逆の場合もまた同様である。関連医療ニュース 成人ADHDをどう見極める 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係 ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのか

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非高リスク症例における頸動脈ステント留置術 vs.内膜剥離術/NEJM

 頸動脈ステント留置術(CAS)の頸動脈内膜剥離術(CEA)に対する非劣性が、高リスクではない高度無症候性頸動脈狭窄症患者において示された。5年の追跡調査で、非手術関連脳卒中、全脳卒中および全生存率も、両群間で有意差は認められなかった。これまでの臨床試験で、遠位塞栓を予防するデバイス(embolic protection device:EPD)を用いたCASは、手術による合併症の標準または高リスク患者において、CEAの代替として効果的な治療であることが示唆されていたが、米・マサチューセッツ総合病院のKenneth Rosenfield氏らは、高リスクに該当しない患者のみを対象にEPD併用CASとCEAを比較する多施設共同無作為化比較試験「Asymptomatic Carotid Trial(ACT) I」を実施、その結果を報告した。NEJM誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告。1,453例でEPD併用CASとCEAを比較する非劣性試験 研究グループは、無症候性(登録前180日以内の脳卒中・一過性脳虚血発作・一過性黒内障の既往なしなど)の高度(70%以上)内頸動脈狭窄を有する79歳以下の患者で、合併症高リスクに該当しない患者を、EPD併用CAS群とCEA群に3対1の割合で無作為割り付けした。試験は当初1,658例の患者登録を予定していたが、登録が進まず1,453例で中止となった。追跡調査期間は5年間であった。 主要複合エンドポイントは、術後30日以内の死亡・脳卒中・心筋梗塞、または1年以内の同側脳卒中とし、非劣性マージン3%で評価した。CASの非劣性を証明、5年転帰も有意差認められず 解析対象は2005~13年に無作為化された計1,453例(CAS群1,089例、CEA群364例)で、平均年齢は両群とも68歳、ほとんどが65歳以上であった。 主要複合エンドポイントのイベント発生率はCAS群3.8%、CEA群3.4%で、CASのCEAに対する非劣性が認められた(非劣性に関するp=0.01)。30日以内の死亡または脳卒中の発生率は、CAS群2.9%、CEA群1.7%であった(p=0.33)。 副次エンドポイントの合併症複合評価項目(術後30日における脳神経損傷、血管損傷、脳出血以外の出血など)のイベント発生率は、CAS群2.8%、CEA群4.7%であった(p=0.13)。術後30日から5年までの手術に関連しない同側脳卒中の無発生率はCAS群97.8%、CEA群97.3%(p=0.51)、全生存率はそれぞれ87.1%および89.4%(p=0.21)。5年間の累積無脳卒中生存率は93.1%および94.7%であった(p=0.44)。

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DPP-4阻害薬は心不全入院リスクを高める可能性/BMJ

 2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬使用をめぐる心不全リスクの増大について、中国・四川大学のLing Li氏らが、無作為化比較試験(RCT)および観察研究のシステマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、心不全リスクを増加させるかどうかは、研究の追跡期間が相対的に短くエビデンスの質も低いため不確かであるが、心血管疾患またはそのリスクを有する患者においては非使用との比較で心不全による入院のリスクが増大する可能性があることを明らかにした。BMJ誌オンライン版2016年2月17日号掲載の報告より。無作為化比較試験43件、観察研究12件についてメタ解析 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、ClinicalTrials.govを用いて2015年6月25日までの論文を検索し、成人2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬と、プラセボ/生活習慣改善/血糖降下薬を比較したRCT、非RCT、コホート研究ならびに症例対照研究で、心不全または心不全による入院のアウトカムを明確に報告した研究を選択した。 解析対象研究のスクリーニング、バイアスのリスク評価およびデータ収集は、研究者2人1組からなるチームがそれぞれ独立して行った。臨床試験と観察研究のデータはそれぞれメタ解析を行い、エビデンスの質はGRADEシステムを用いて評価するとともに、研究の異質性をコクランχ2検定とI2統計量を用いて検証した。 RCTは43件(6万8,775例)および観察研究12件(コホート研究9件、症例対照研究3件;177万7,358例)が本研究に組み込まれた。入院リスクは増大の可能性も 心不全について報告しているRCT38件を解析した結果、DPP-4阻害薬群と対照群との間で心不全のリスクに有意差は認められなかった(イベント数42/1万5,701 vs.33/1万2,591、オッズ比0.97、95%信頼区間[CI]:0.61~1.56)。リスク差、すなわち5年間における2型糖尿病患者1,000例当たりの心不全イベント数の差は、-2(95%CI:-19~+28)であった。ただし、バイアスリスク等のためエビデンスの質は低かった。観察研究でも臨床試験とほぼ同様の結果であったが、エビデンスの質は非常に低かった。 一方、心不全による入院に関しては、RCT5件の解析において、DPP-4阻害薬群で対照群よりリスクが増加することが示され、エビデンスの質は中等度であった(イベント数622/1万8,554 vs.552/1万8,474、オッズ比:1.13、95%CI:1.00~1.26)、リスク差は、8(95%CI:0~16)。観察研究では、DPP-4阻害薬群(シタグリプチン)と非使用群を比較した2件の統合解析の結果、DPP-4阻害薬群で心不全による入院のリスク増加が示唆されたが(統合調整オッズ比:1.41、95%CI:0.95~2.09)、エビデンスの質は非常に低かった。 著者は、「報告されたデータには限界があり、心不全による入院のリスク増加が1つのクラス効果なのかは不明である」と述べている。

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がん免疫療法薬・安全性は「多職種連携」がカギ

 2016年2月17日、都内にて「がん免疫療法で変わる肺がん治療」をテーマにプレスセミナーが開催された(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ株式会社)。脚光を浴びているがん免疫療法、安全性は? ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は2014年9月に発売された、世界初の抗PD-1モノクローナル抗体で、がん免疫療法薬と呼ばれている。がん免疫療法は従来の化学療法や手術、放射線療法とはまったく異なる新たな治療法で、身体の免疫系に直接作用してがんと闘う機序を持つ。本邦において、ニボルマブは「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺」の2つの疾患に適応がある。免疫系に作用するという新しいアプローチと、治験時における有害事象、とくに骨髄抑制の少なさからがん治療において大きな期待を寄せられている。 しかし、使用経験の蓄積からこれまでの薬剤では経験のない免疫関連有害事象が報告されている。注意すべき、免疫関連有害事象とは? がん免疫療法薬は全身の臓器にも働きかけるといわれており、過度の免疫反応により免疫関連有害事象が複数の臓器で報告されている。演者の中西 洋一氏(九州大学大学院 呼吸器内科学分野 教授)は、とくに注意すべき副作用として間質性肺炎、重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害の4つを挙げた。 とくに劇症1型糖尿病は、インスリンを産生する膵島細胞の急速な破壊により急激に高血糖を来す。また、時には致死的であり、たとえ回復してもインスリン産生の枯渇により、血糖コントロール困難となり、社会生活に高度の支障を来す重大な疾患である。ニボルマブの臨床試験において、劇症1型糖尿病は報告されていなかったが、使用経験の蓄積により報告が上がってきた。2016年1月に日本腫瘍学会と日本糖尿病学会より、連名でステートメントが出たことは記憶に新しい1)。副作用に立ち向かうには? 九州大学病院の事例 上記の重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害などの副作用は必ずしもオプジーボを使用している医師の専門であるとはいえない。このような副作用に、どのように対応していけばよいのだろうか? 対応策の一例として、中西氏は九州大学病院の「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」を挙げた。同委員会では、副作用対策において、呼吸器内科・腫瘍内科・皮膚科など免疫療法実施診療科を、他の専門科や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどがサポートする、診療科・職域横断的なチェック体制づくりに取り組んでいる。専門外の医師をはじめとし、看護師・薬剤師などコメディカルとの連携によって、副作用の早期発見や適切な管理、細やかな対応が可能になるという。 ニボルマブは安全性の面以外にも、コストとの兼ね合い、バイオマーカーの探索、他剤との併用などさまざまな点に課題があるものの、これまで治療の選択肢に難渋していた患者にとって希望の光となりうる薬剤である。しかし、2016年2月より包括医療費支払い制度(DPC)の対象外となったため、今後さらなる使用患者数の増加が予想され、これに伴い予期せぬ副作用が生じる可能性も否定できない。治療医師のみならず、多職種が連携することで患者にとって最適な医療を行うことが望まれる。【参考】1)免疫チェックポイント阻害薬に関連した劇症 1 型糖尿病の発症について(PDFがダウンロードされます)

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チカグレロル、心筋梗塞延長治療の適応をEUにて取得:アストラゼネカ

 アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):Pascal Soriot、以下、アストラゼネカ)は、欧州連合(EU)において、心筋梗塞発症後1年以上経過し、アテローム血栓性イベントの再発リスクが高い患者の治療薬として、経口抗血小板薬チカグレロルの新用量である60mgに販売承認が付与されたことを2016年2月19日に発表した。 チカグレロル90mgはすでに、急性冠症候群(ACS)成人患者におけるアテローム血栓性イベントの発症抑制を適応としてEUで承認されており、ACSイベント発症後1年間のACSの管理における推奨維持用量は90mg1日2回投与。 今回の承認により、発症後1年以上経過している心筋梗塞の既往患者に、アスピリン1日維持用量75~150mgとチカグレロル60mgを1日2回投与する併用療法を継続することができる。 今回の承認は、2万1千例超の患者を対象とした大規模アウトカム試験PEGASUS TIMI-54の結果に基づいたもので、その結果は2015年3月の米国心 臓病学会議(ACC)において発表され、同時にThe New England Journal of Medicineに掲載された。PEGASUS TIMI-54試験では、試験への組み入れ前1~3年の間に心筋梗塞の既往歴がある患者を対象に、チカグレロル・低用量アスピリンとの併用と、プラセボ・低用量アスピリンとの併用と比較して、心血 管死、心筋梗塞および脳梗塞の長期にわたる2次的な発症抑制効果を評価した。その結果、チカグレロルはプラセボに比べて心血管死、心筋梗塞あるいは脳梗塞からなる複合主要評価項目を有意に低減したことが示された。3年時の複合イベント発症率は、チカグレロル60mg群で7.77%、プラセボ群で9.04%であった。本承認はEU加盟国28ヵ国に加えてアイスランド、ノルウェーおよびリヒテンシュタインに適応される。 アストラゼネカのプレスリリースはこちら。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第27回

第27回:食事における栄養の「神話」は本当?監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 日々の食事は健康の維持やあらゆる疾患管理に重要な役割を持っています。そして、健康的な食事は罹患率や早期死亡の減少に関係しています。 今回は、微量栄養素(ビタミンやミネラル)、主要栄養素(炭水化物、タンパク質、および脂肪)、非栄養素、食物エネルギーに関しての「神話」とエビデンスの比較をみてみましょう。日常診療における食事指導の参考になれば幸いです。 タイトル:臨床における栄養療法の神話と食事指導についてNutrition Myths and Healthy Dietary Advice in Clinical Practice以下、American family physician 2015年5月1日号1) より◆「骨の健康のために集中的なカルシウム摂取が必要」骨折予防に対するカルシウムサプリメントの効果は限定的で、NNT=1,000(住民女性)、NNT=111(施設入所者)である(推奨レベルA)。また、腎結石のリスクを高め、心血管イベントや大腿骨頸部骨折を高めるかもしれない(推奨レベルB)。乳製品など自然食品は、骨の健康に関する利点は明らかでないものの、サプリメントと同様のリスクはもたらさないと思われる。◆「脂質は肥満につながり、心血管系に有害」高脂質食の摂取は、低脂質食やカロリー制限食の摂取と比較して、同等かそれ以上の体重減少を示す(推奨レベル A)。ultra-processed食品(過剰加工食品:甘味料や乳化剤などをわざわざ添加しすぐに食べられるようにした食品、保存肉など)は飽和脂肪酸が多く含まれており、心血管イベントや全死亡率の増加と関連している。一方、飽和脂肪酸を含む自然食品(乳製品など)は不慮の心血管疾患、2型糖尿病、肥満の減少と関連している(推奨レベルB)。◆「あらゆる食物繊維は有益である」自然の食物繊維を豊富に摂取すると、心血管イベントや糖尿病、便秘、消化器がん、乳がんの発症を抑制しうる。しかし人工的な食物繊維の有用性は示されていない(推奨レベルB)。◆「3,500カロリーは体重1ポンド(0.45kg)に相当する」1週間で3,500カロリー制限しても体重0.45kg減量するわけではない(推奨レベルC)。しかし1日100カロリー制限すれば、ほかに何をしなくても1年後には50%の人が、3年後には95%の人が体重4.5kg減少する(推奨レベルC)。ここに示した「神話」は微量栄養素、主要栄養素、非栄養素、エネルギーとして多くの栄養学、食品成分の評価に基づいているが、患者は食品成分ではなく食品として食べているということに注意が重要である。また、ultra-processed食品の消費量を制限し、できるだけ自然に近い形の加工食品の摂取が勧告されている。家庭医は、患者のために上記の神話を払拭し、実際の食品や広い食事パターンに着目してアドバイスを与えることが望ましい。※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Lesser LI, et al. Am Fam Physician. 2015;91:634-638.

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セクション7 見落としが怖い筋骨格系の診断

セクション7 見落としが怖い筋骨格系の診断廣瀬 知人氏(筑波メディカルセンター病院 総合診療科)第7弾は、救急外来からの症例を学習します。このセッションでは、とくに筋骨格系に焦点を絞り、診断が難しい症例や認知症の患者さんへの診療法などを学んでいきます。野獣クラブからフィジカルクラブへの挑戦、受けてみてください!

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超人伝説【Dr. 中島の 新・徒然草】(107)

百七の段 超人伝説遠い遠い昔、ICUで研修医をしていたころのことです。何かの拍子に超人的な記憶力を持つ先生のことが話題になりました。その先生は、これまでにICUに入室した個々の患者さんの経過はもとより、細かい検査の数値に至るまで、すぐに答えていたそうです。ところがある日のこと、何故その先生が何でも覚えているかが判明してしまいました。なんと!週刊誌代わりにいつも患者さんのチャートをペラリ、ペラリとめくって眺めていたのだそうです。チャートというのは、あの上半分が方眼紙みたいになっているICU特有の熱形表のことです。たしか1日分がA3くらいの大きさでした。その先生、特に数字を覚えようとか勉強しようとか、そんな気もなく、単に眺めていただけ。でも、常時ペラリ、ペラリとやっていると、いつの間にか内容が頭に入ってしまい、驚異の記憶力を持つ人間だと周囲に誤解されてしまったのです。さて、このエピソードからは学ぶべきことは2つあります。1つは、「ペラリ、ペラリ」は常人を超人にする力があるということです。単なる習慣だけで「驚異の記憶力」を持つことができたら素晴らしいですよね。もう1つ。「ペラリ、ペラリ」だけで通用するのは、せいぜいチャート止まりだろうということです。ICUのチャートには、特別複雑なことが書かれているわけではありません。バイタルや輸液量、簡単な検査結果くらいです。なので、「ペラリ、ペラリ」だけで中身がいつの間にか頭に定着したのも当然です。でも、小難しい教科書をいくら「ペラリ、ペラリ」とやっても、わからないまま残ってしまいます。まずは、机の前に座り、腰を据えて本気で内容を理解するべきです。いったん理解しさえすれば、後は「ペラリ、ペラリ」が本領発揮です。ということで某先生の「ペラリ、ペラリ」戦法、よかったら皆さんもお使い下さい。最後に1句常人を 超人化する ペラリかな

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統合失調症患者の体重増加に関与する遺伝子は

 抗精神病薬治療中の体重増加および食欲変化と複数の候補遺伝子との関連性を調査するために、韓国・三星医療院のS Ryu氏らは検討を行った。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2016年2月4日号の報告。 60の候補遺伝子内の233の一塩基多型(SNP)を決定した。抗精神病薬を処方された統合失調症患者84例における最大8週間のBMI変化を、線形混合モデルを用いて分析した。さらに、薬物関連の摂食行動に関するアンケートを用い、統合失調症患者異なるグループの46例における、抗精神病薬治療中の食欲変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・多重検定による補正後、BMI、食欲の変化との間に、統計的に有意な差が認められるSNPはなかった。・11遺伝子内の19個のSNPと体重増加、5遺伝子内の7個のSNPと食欲変化との間に関連傾向が認められた(p<0.05)。・とくに、GHRL内のrs696217は、体重増加(p=0.001)だけでなく食欲変化(p=0.042)においても関連性が示唆された。・rs696217のGG遺伝子型を有する患者は、GT/TT遺伝子型を有する患者と比較して、BMIと食欲の両方において高い増加が示された。・抗精神病薬治療中の統合失調症患者において、とくに食欲変化が影響する体重増加へのGHRL遺伝子多型の関与が示唆された。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か 抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学

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糖尿病患者へのRAS阻害薬、他の降圧薬より優れるのか?/BMJ

 糖尿病患者へのレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の使用について、他の降圧薬と比べて心血管リスクや末期腎不全リスクへの影響に関して優越性は認められないことを、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らが、19の無作為化試験について行ったメタ解析で明らかにした。多くのガイドライン(2015米国糖尿病学会ガイドライン、2013米国高血圧学会/国際高血圧学会ガイドラインなど)で、糖尿病を有する患者に対しRAS阻害薬を第1選択薬として推奨しているが、その根拠となっているのは、20年前に行われたプラセボ対照試験。対照的に、2013 ESH/ESCガイドラインや2014米国合同委員会による高血圧ガイドライン(JNC8)は、近年に行われた他の降圧薬との試験結果を根拠とし、RAS阻害薬と他の降圧薬は同等としている。BMJ誌オンライン版2016年2月11日号掲載の報告。死亡、心血管死、心筋梗塞や末期腎不全などの臨床的アウトカムを比較 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane centralを基に、糖尿病患者を対象とした、RAS阻害薬 vs.その他の降圧薬に関する無作為化試験についてメタ解析を行った。 主要評価項目は、死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、末期腎不全だった。心血管・腎不全の臨床的アウトカムで、RASは他の降圧薬と同等 メタ解析の対象となったのは、19の無作為化試験で、糖尿病被験者総数2万5,414例、延べ追跡期間9万5,910患者年だった。 RAS阻害薬はその他の降圧薬と比較して、全死因死亡(相対リスク:0.99、95%信頼区間:0.93~1.05)、心血管死(同:1.02、同:0.83~1.24)、心筋梗塞(同:0.87、同:0.64~1.18)、狭心症(同:0.80、同:0.58~1.11)、脳卒中(同:1.04、同:0.92~1.17)、心不全(同:0.90、同:0.76~1.07)、血行再建術(同:0.97、同:0.77~1.22)のいずれのエンドポイントのリスクについても同等だった。 また、末期腎不全の臨床アウトカムについても、他の降圧薬との比較で、有意差はなかった(同:0.99、同:0.78~1.28)。 結果を踏まえて著者は、「初見は、ESH/ESCガイドラインやJNC8の推奨を支持するものであった。それらのガイドラインでは、腎障害を有していない糖尿病患者に対しては、いずれの降圧薬も同等に推奨されている」とまとめている。

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インスリン抵抗性の脳梗塞/TIA例、ピオグリタゾンが効果/NEJM

 非糖尿病だがインスリン抵抗性を認め、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)を発症した患者に対し、ピオグリタゾンを投与することで、脳卒中または心筋梗塞リスクがおよそ4分の3に減少することが示された。糖尿病の発症リスクについても、ピオグリタゾン投与により半減したという。米国・イェール大学のW.N. Kernan氏らによる4,000例弱を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2016年2月17日号で発表された。HOMA-IRが3.0超の患者にピオグリタゾンを投与 虚血性脳卒中/TIAを発症した患者では、現行の予防的治療を行っても将来的な心血管イベントのリスクが高い。一方で、脳卒中や心筋梗塞のリスク因子としてインスリン抵抗性が確認されており、インスリン感受性を改善するピオグリタゾンは脳血管疾患を有する患者に対してベネフィットをもたらす可能性が示唆されている。 そこで研究グループは、糖尿病ではないが、インスリン抵抗性指標HOMA-IRが3.0超であり、最近、虚血性脳卒中またはTIAを発症した3,876例を対象に、ピオグリタゾンの有効性と安全性を調べる試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはピオグリタゾン(目標用量:1日45mg)を投与し(1,939例)、もう一方の群にはプラセボを投与した(1,937例)。 主要評価項目は、致死的・非致死的脳卒中または心筋梗塞だった。脳卒中・心筋梗塞リスクは0.76倍、糖尿病リスクは0.48倍に 被験者は2005~13年に、179の病院またはクリニックで集められた。両群とも平均年齢は63.5歳、グリコヘモグロビン値は5.8%、HOMA-IR中央値はピオグリタゾン群4.7、プラセボ群4.6、糖尿病(2010米国糖尿病学会ガイドラインに基づく)はそれぞれ6.0%、6.7%であった。 追跡期間の中央値は4.8年、試験中断は227例(5.9%)、追跡不能は99例(2.6%)だった。 解析の結果、脳卒中または心筋梗塞が発生した患者は、プラセボ群228/1,937例(11.8%)に対し、ピオグリタゾン群では175/1,939例(9.0%)と、有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.62~0.93、p=0.007)。 糖尿病を発症したのは、プラセボ群が149例(7.7%)に対し、ピオグリタゾン群では73例(3.8%)と、発症率は半分以下に低下した(HR:0.48、95%CI:0.33~0.69、p<0.001)。 一方で、全死因死亡率は両群で同等だった(HR:0.93、95%CI:0.73~1.17、p=0.52)。 なおピオグリタゾン群は、4.5kg超の体重増(ピオグリタゾン群52.2% vs.プラセボ群33.7%、p<0.001)、浮腫(それぞれ35.6% vs.24.9%、p<0.001)、手術や入院を要する骨折(それぞれ5.1% vs.3.2%、p=0.003)に関して、いずれも有意にリスクが高かった。

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コーヒーと膀胱がんリスク~わが国のコホート研究

 コーヒー摂取と膀胱がんリスクの関連について、最近の疫学的研究の結果は一致していない。東北大学の杉山 賢明氏らは、宮城県で実施された2つのコホート研究(宮城県コホート研究、大崎コホート研究)のプール解析により、コーヒー摂取と膀胱がん罹患率との関連を調べた。その結果、コーヒー摂取と膀胱がんリスクの間に有意な逆相関が示された。European journal of cancer prevention誌オンライン版2016年2月12日号に掲載。 著者らは、宮城県コホート研究では1990年、大崎コホート研究では1994年に、コーヒー摂取頻度と他の生活習慣因子についての自記式質問票調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・宮城県コホート研究は17.6年、大崎コホート研究は13.3年の間に、両コホートで7万3,346人を追跡し、膀胱がんを274例同定した。・コーヒーを時々飲む人、1日1~2杯飲む人、1日3杯以上飲む人において、まったく飲まない人に対する膀胱がん罹患率の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は、それぞれ1.22(0.90~1.66)、0.88(0.61~1.26)、0.56(0.32~0.99)であった(傾向のp=0.04)。・この逆相関は、喫煙状況による層別化後も認められた。

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呼吸音を可視化する電子聴診器を開発 広島大学

 広島大学病院の大下慎一郎講師、貞森拓磨助教、福島県立医科大学の谷川攻一副学長らの研究グループは、パイオニア株式会社と共同で、呼吸音を迅速かつ正確に評価できるコンピューター化電子聴診器を開発した。2016年2月16日発表した。 呼吸音評価は主観的であり、正確な評価をするにはトレーニングを必要とする。そのうえ、国際基準では呼吸音の周波数定義に重複があることも呼吸音評価を困難にしている。 研究グループは音の長さ・周波数・強度からなる予測推定値を用い、ブラインド信号源分離法(観測された混合信号を分離して、混ざり合う前の元の信号を推定する技術)によって呼吸音の解析を行った。また、生体から採取した呼吸音テンプレートとの一致度を照合する手法を用いることにより、解析性能の迅速性・正確性を向上させた。 研究成果はInnovation in Analysis of Respiratory Soundsとして、Annals of Internal Medicine誌2016年2月16日号オンライン版に掲載された。広島大学の記事紹介はこちら。

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