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うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法、不安レベルにより有効性に違いはあるか

 うつ病患者でよくみられる不安症状は、治療反応の低下と関連している。ブレクスピプラゾールの8週間第IV相オープンラベル試験「ENGAGE試験」において、抗うつ薬への治療反応が不十分なうつ病患者に対するブレクスピプラゾール0.5~2mg/日補助療法により、ライフ・エンゲージメント、抑うつ症状、不安症状の改善が認められた。大塚カナダファーマシューティカルのFrancois Therrien氏らは、臨床的に関連するサブグループにおけるブレクスピプラゾール補助療法の有用性を、ベースライン不安レベル別に明らかにするため、ENGAGE試験の事後解析を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年12月29日号の報告。 ベースラインの不安に関するサブグループは、7項目の全般性不安障害評価尺度(GAD-7)の総スコアに基づき、なし/軽度(10未満)、中等度(10~14)、重度(14超)に分類した。各サブグループにおいて、10項目の自己記入式うつ症状尺度(IDS-SR10)のライフ・エンゲージメントサブスケールスコア、IDS-SR総スコア、その他の有効性アウトカムの変化を評価した。安全性についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール補助療法を受けた患者120例のうち、ベースライン時点での不安症状が、なし/軽度は30例(25.0%)、中等度は43例(35.8%)、重度は47例(39.2%)であった。・IDS-SR10ライフ・エンゲージメントサブスケールスコアおよびIDS-SR総スコアは、ベースラインから8週目までの全サブグループにおいて改善が認められた(nominal p<0.001)。・その他の有効性エンドポイントについても改善が認められた(全サブグループでnominal p<0.05)。・治療下での有害事象の発現率は、76.7%(なし/軽度)、72.1%(中等度)、57.4%(重度)であった。・新たな安全性シグナルは認められなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾール補助療法は、ベースラインの不安レベルにかかわらず、患者のライフ・エンゲージメントおよび抑うつ症状の8週間にわたる改善と関連していた。この観察結果は、不安症状の有無にかかわらず、うつ病患者の治療におけるブレクスピプラゾール補助療法の臨床的意思決定を支持している」としている。

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月経血によるHPV検査、子宮頸がん検診に有望/BMJ

 Grade2/3以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2+/CIN3+)の検出において、ミニパッドで採取した月経血を用いたヒトパピローマウイルス(HPV)検査は、医師が採取した子宮頸部検体による検査との比較において同等の診断精度であることが、中国・華中科技大学のXun Tian氏らによる地域住民を対象とした研究で示された。月経血を用いたHPV検査は子宮頸がん検診の非侵襲的な代替手段として有望視されており、パイロット研究では医師が採取した子宮頸部検体とHPV遺伝子型の高い一致率が報告されているが、エビデンスは限定的であった。著者は、「本研究の結果は、月経血検体によるHPV検査を子宮頸がん検診ガイドラインに組み込むことを支持するものである」とまとめている。BMJ誌2026年2月4日号掲載の報告。3つの検体でCIN2+/CIN3+検出の診断精度を比較 研究グループは、2021年9月~2025年1月に、中国・湖北省の7地域(都市部4地域、農村部3地域)において、適格基準を満たした月経周期が規則的な20~54歳の女性3,068例を対象に前向き研究を実施した。 参加者から3種類の検体、すなわち、HPV検査用ミニパッドを用いた月経血検体(3ヵ月以内に参加者自身が採取して中央検査室へ直接郵送)、HPV検査用子宮頸部検体およびThinPrep細胞診用子宮頸部検体(医師採取)を採取した。 いずれかの検体でHPV陽性、または細胞診で意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)以上の判定であった場合はコルポスコピーによる生検を実施し、病理組織学的にCIN2+またはCIN3+を確定させた。 主要評価項目は、CIN2+およびCIN3+検出の診断精度であった。月経血検体によるHPV検査の感度は94.7%で、医師採取の子宮頸部検体検査と同等 CIN2+検出の感度は、ミニパッド採取検体を用いたHPV検査が94.7%(95%信頼区間[CI]:80.9~99.1)、医師採取検体によるHPV検査が92.1%(77.5~97.9)、細胞診検査が78.9%(62.2~89.9)であり、ミニパッドによるHPV検査は医師採取検体のHPV検査と同等の感度を示し(p=1.00)、統計学的有意差は認められなかったものの細胞診検査よりポイント推定値は高かった(p=0.11)。 CIN2+検出の特異度については、ミニパッドによるHPV検査は医師採取検体のHPV検査より低かったが(89.1%[95%CI:88.0~90.2]vs.90.0%[88.9~91.1]、p=0.001)、陰性的中率は同等であり(99.9%[95%CI:99.7~100.0]vs.99.9%[99.7~100.0]、p=1.00)、陽性的中率(9.9%[95%CI:7.1~13.5]vs.10.4%[7.4~14.3]、p=0.82)およびスクリーニング効率(10.1 vs.9.6、p=0.82)も同等であった。 CIN3+検出に関しても、感度、特異度、陰性予測値、陽性予測値およびスクリーニング効率のいずれもCIN2+検出と同様の結果であった。

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がん患者の急性冠症候群、6ヵ月転帰を予測する新スコア/Lancet

 がんを有する急性冠症候群(ACS)患者の全死因死亡、大出血および虚血性イベントを予測するONCO-ACSスコアが開発され、臨床的に有用で実用的なツールであることが、英国国民保健サービス(NHS)イングランドのFlorian A. Wenzl氏らによる、イングランド、スウェーデンおよびスイスの国民医療データを用いたモデル開発・検証研究の結果で示された。がんを有するACS患者における死亡、出血、およびアテローム血栓症リスクの正確な評価は、新たな個別化治療戦略の策定に役立つ可能性があるが、この目的のために標準化されたツールは存在していなかった。Lancet誌2026年1月31日号掲載の報告。3ヵ国のACS患者約102万例のデータを用いて予測モデルを開発・検証 研究グループは、国民医療データを用いて2004年1月1日~2023年8月8日にACSを呈した101万7,759例のコホートを作成し、ACS発症前5年以内にがんの既往または現病歴を有する患者(がん患者)と、いずれもない患者(非がん患者)に層別化した。解析対象の内訳は、イングランド81万5,170例(うち、がん患者3万6,771例)、スウェーデン19万4,059例(がん患者1万262例)、スイス8,530例(がん患者203例)であった。 まず、イングランドのがんを有するACS患者群(中部地域の患者を除く3万1,193例)のデータを用いてONCO-ACS予測モデル(全死因死亡、大出血、虚血性イベント)を開発した。主要アウトカムは、ACSで入院後6ヵ月時までの、全死因死亡、大出血イベント、および虚血性イベント(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合イベントの初回発生)で、機械学習アルゴリズムのeXtreme Gradient Boosting(XGBoost)を用いて予測モデルを構築した。大出血および虚血性イベントの解析では、それぞれ非出血関連死と非虚血関連死を競合リスクとして扱った。 最終モデル(ONCO-ACSスコア)には、11項目の入院時変数(腫瘍タイプ、がん診断からの期間、転移性疾患、年齢、ヘモグロビン、心拍数、eGFR、BMI、Killip分類、心停止、入院前6ヵ月以内の大出血)を組み込んだ。 続いて、モデル性能を6ヵ月時点の時間依存ROC曲線下面積(tAUC)を用いて評価するとともに、イングランド中部地域(5,578例)、スウェーデン(1万262例)、およびスイス(203例)のがんを有するACS患者群においてモデル性能の外部検証を行った。ONCO-ACSスコアは臨床的に応用可能 がんを有するACS患者は、死亡率(累積発生率27.8%、95%信頼区間[CI]:27.3~28.3)、大出血イベント(7.3%、95%CI:7.0~7.5)、虚血性イベント(16.1%、15.7~16.4)の発生率が高く、明確なリスクプロファイルを有していた。 従来のリスク因子およびがん関連リスク因子を考慮した内部検証において、ONCO-ACSスコアの6ヵ月時のtAUCは、全死因死亡で0.84(95%CI:0.83~0.85)、大出血イベントで0.70(0.68~0.73)、虚血性イベントで0.79(0.78~0.81)であった。 外部検証においても同様の性能が確認され、全死因死亡のtAUCはイングランド中部で0.84(95%CI:0.82~0.85)、スウェーデンで0.80(0.79~0.82)、スイスで0.83(0.76~0.91)、大出血イベントでそれぞれ0.70(0.67~0.74)、0.67(0.65~0.70)、0.74(0.57~0.91)、虚血性イベントで0.76(0.74~0.78)、0.70(0.69~0.72)、0.73(0.61~0.86)であった。 ONCO-ACSは良好なキャリブレーションを示し、決定曲線分析により好ましい臨床的有用性が示唆された。また、ONCO-ACSを現在のガイドラインに適用すると、がんを有するACS患者のほとんどが、侵襲的治療およびクロピドグレルを用いた長期の2剤併用抗血小板療法の対象となることが示唆された。

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アシクロビルとバラシクロビルに重大な副作用追加、エンシトレルビルの併用禁忌一部変更/厚労省

 2026年2月10日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出された。アシクロビル(経口剤、注射剤)とバラシクロビル塩酸塩(以下、バラシクロビル)の「重大な副作用」の追加、エンシトレルビル フマル酸(以下、エンシトレルビル)とロナファルニブとの併用が禁忌とされていたリオシグアトの併用注意への変更などが含まれる。アシクロビルとバラシクロビルの重大な副作用に「急性汎発性発疹性膿疱症」を追加 単純疱疹や帯状疱疹などの治療に用いられる抗ウイルス薬アシクロビルおよびバラシクロビルについて、国内外の急性汎発性発疹性膿疱症症例を評価した結果、因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。重大な副作用として、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)に加え「急性汎発性発疹性膿疱症」が記載される。<対象医薬品>・アシクロビル(商品名:ゾビラックス)・バラシクロビル(同:バルトレックス)エンシトレルビルとロナファルニブ、リオシグアトは「併用注意」に 抗SARS-CoV-2薬エンシトレルビルおよび早老症治療薬ロナファルニブについては、これらの薬剤が強いCYP3A阻害作用を有することから、製造販売承認時より、ほかの強い CYP3A阻害薬を参考としてリオシグアトとの併用は禁忌とされてきた。今回、薬物相互作用に関するin vitro試験結果や安全性データベースにおける国内外の症例検索、文献検索などに基づき、相互作用によるリオシグアトの曝露量増加に伴う低血圧などに対するリスク最小化策がなされることを前提に、リオシグアトとエンシトレルビルまたはロナファルニブの併用を可能として差し支えないと判断された。 エンシトレルビルおよびロナファルニブの禁忌および併用禁忌の項からはリオシグアトが削除され、併用注意が新設されてリオシグアトが加えられ、臨床症状・措置方法として「リオシグアトの血中濃度を上昇させるおそれがある。本剤との併用が必要な場合は、患者の状態に注意し、必要に応じてリオシグアトの減量を考慮すること」と記載される。<対象医薬品>・エンシトレルビル(同:ゾコーバ)・ロナファルニブ(同:ゾキンヴィ)・リオシグアト(同:アデムパス)

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点鼻のアナフィラキシー補助治療薬「ネフィー」発売/アルフレッサファーマ

 アナフィラキシー補助治療薬「ネフィー点鼻液(1mg、2mg)」がアルフレッサファーマから2026年2月12日に発売された。アナフィラキシー補助治療薬としては自己注射製剤のエピペンに続く2剤目となるが、点鼻液での発売は国内初となる。 本製剤はアドレナリンを有効成分とする点鼻液で、蜂毒、食物、および薬物などに起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療薬で、点鼻により簡便な投与が可能である。 ただし、適正使用の観点から安全性および有効性を十分に理解し、使用に関して適切かつ十分な指導ができる医師のみによって本剤が処方・使用されるよう、あらかじめ動画講習を受講し、処方医師登録を済ませておく必要がある。 アルフレッサファーマは2020年4月、米国のバイオ医薬品企業ARS Pharmaと日本国内でのアドレナリン点鼻液の開発および販売におけるライセンス契約を締結。その後、日本人健康成人を対象とした薬物動態試験および第III相臨床試験を実施し、その有効性と安全性が認められたことから、2025年9月19日に製造販売承認を取得していた。<製品概要>販売名:ネフィー点鼻液1mg、2mg一般名:アドレナリン効能又は効果:蜂毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療(アナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人に限る)用法及び用量: 通常、体重30kg未満の患者には、アドレナリンとして1回1mgを、体重30kg以上の患者には、アドレナリンとして1回2mgを鼻腔内に投与する。薬価:1mg:2万2,975.30円/瓶、2mg:2万4,672.10円/瓶製造販売承認日:2025年9月19日薬価基準収載日:2025年11月12日発売日:2026年2月12日製造販売元:アルフレッサファーマ株式会社

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衆院選の結果【Dr. 中島の 新・徒然草】(618)

六百十八の段 衆院選の結果先日の2026年2月8日、大阪にも雪が降りました。ちょうどこの日は第51回衆議院選挙の日です。いつもは歩いて投票所まで行くのですが、寒すぎたので車で行くことにしました。が、まずは車に積もっている雪を落とさなくてはなりません。ようやくの思いで車に乗って女房と共に出かけたのですが、誰もが同じことを考えているのか、投票所の駐車場は予想外の混雑ぶりでした。さて、今回の選挙。注目すべきは、高市 早苗首相率いる自由民主党が198議席からどこまで票を伸ばすことができるのか。与党で過半数を取れなければ、首相を辞任するとまで言っていたわけですから。一方、立憲民主党と公明党が組んだ中道改革連合がどれだけ議席を獲得できるのかにも興味があります。新党結成のニュースが出た直後には、公明党の支持基盤である創価学会票の動きによっては自民党を逆転する可能性を予測していた報道もありました。さらに前回の参院選で躍進した国民民主党、参政党、保守党などの保守系野党はどうなるのか。今回の衆院選では高市首相と政策が被っているので、かなり自民党に票を持っていかれるかもしれません。そして大阪で圧倒的に強い維新は今や与党です。大阪在住の私ですら、なんで維新がこんなに強いのかはよくわかりません。外来患者さんたちとの政治談議では、現在の政治に対して不満を持っている人たちの受け皿になっているようにも思えます。で、選挙の蓋を開けてみると、自民党の圧勝!これまで最多だった2009年の民主党を上回る316議席で、与党過半数どころか単独で3分の2を超えてしまいました。歴史的勝利というより、戦後最高の議席獲得率(67%台)です。一方で中道改革連合は49議席と半分以下になりました。野田 佳彦共同代表、安住 淳共同幹事長は責任を取るとのこと。野田氏はさすがに元首相だけあって、東京・千葉・埼玉・神奈川の首都圏80選挙区のうちの唯一の勝利者です。残り79は自民党が勝ちました。安住氏は小選挙区で負けたうえに比例復活もならず、落選です。旧立憲民主党は壊滅状態ですが、比例代表に的を絞った旧公明党はむしろ議席数を増やしたので、明暗クッキリです。あるネット記事には、自民党幹部の「大勝した理由がわからない。中道が弱かった」というコメントがあり、ちょっと笑いました。また大物議員、元大臣、元代表などの落選も目立ちます。他の政党に目を向けてみると。日本維新の会は、大阪の19ある小選挙区で18勝1敗。大阪の小選挙区で維新が負けるのは数年ぶりなのだとか。与党でありながら自民党と選挙協力せずに戦うという姿勢はすごいですね。素直に感心します。保守系野党の国民民主党、参政党は合計するとかなり増加。革新系野党のれいわ新選組、日本共産党、社会民主党は壊滅状態。驚くのは右でも左でもないチームみらい。設立から1年も経っていないのに、独自の政策を打ち出し11議席を獲得しました。ほとんどの政党が消費税減税を打ち出すなか、チームみらいは消費税ではなく社会保険料の減額を訴えています。選挙対策用の政策ではなく、彼らなりの根拠ある主張に有権者の一定数が賛同したからでしょうか。総括すると、有権者にとっての関心事をどのように捉えるか、だったと思います。裏金議員や統一教会も大切な問題かもしれませんが、毎日の生活に直接関わることではありません。それよりも、物価高対策、外国人政策、安全保障政策のほうが、はるかに切実な問題ではないかと思います。さて、圧勝した自民党そして高市首相。思い通りの舵取りができるようになったわけですが、すべての政策が当たるかどうかは未知数です。有権者の期待が大きいだけに、うまくいかなければ次の選挙で煮え湯を飲まされることでしょう。ちょうど2009年の衆院選で308議席と大勝した民主党が、2012年の衆院選で57議席の惨敗をしたみたいに。ということで、当選した人たちには、ぜひとも日本を良い方向に引っ張ってほしいですね。最後に1句 雪の日の 歴史を変える 選挙かな

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ブータンでの経験【非専門医のための緩和ケアTips】第117回

ブータンでの経験緩和ケアは、さまざまな環境で取り組むことが求められます。今回は医療資源の限られた環境での緩和ケアについてのご質問です。緩和ケアに限らず、「資源の限られた中での医療」という話題について、私の経験と学びをお話しします。今日の質問離島で診療をしているのですが、島の限られた医療体制の中で緩和ケアを実践する大変さを感じます。私よりもさらに少ない医療資源の中で取り組まれている方もいることでしょう。先生はこのような環境で診療経験はありますか。あればぜひ教えてほしいです。私は普段、急性期病院に勤務しており、比較的医療資源の潤沢な環境にいます。ただ、年に数回、離島での緩和ケアアウトリーチ(医療者が地域に出向く支援)の手伝いに参加しています。また、2024年からは年に1度、ブータンでの医療支援活動に参加しています。2025年は私にとって2回目のブータン訪問でした。アジア各国から指導医チームが結成され、ブータンの現地で1週間のレクチャーやベッドサイドティーチングを行います。今回は、ブータンの在宅緩和ケアを通じて貴重な経験をしました。ブータンは国土の大半が山岳地帯です。今回、私が往診に同行したお宅は、病院から車で1時間以上かかる場所にありました。市街地を出発し、その後ずっと山道を走り、さらに未舗装路に入っていきます。途中に牛を何頭も見かけ、標高はどんどん高くなっていきます。「どこまで行くのだろう」「夜間や天気が悪いときに往診が必要になっても、この立地では行けないな…」などと考えていると、やっと到着しました。訪問先のお宅が、山の頂上のようなところに、ポツンと立っていました。患者さんは末期の大腸がん、すでに会話が難しい状況で発語がやっとの状態でした。現地の訪問看護師から、「嘔気があるが、もともと内服していたモルヒネをどのように調整すべきか?」と質問されました。皆さんだったらどう答えるでしょうか? もちろん、PCA(自己調節鎮痛)ポンプなんてありません。このような環境で診療をした経験はありませんでしたが、この環境でのベストを考える必要があります。数日内に内服が難しくなりそうだったので、モルヒネの投与経路を皮下注射に切り替えるように提案しました。内服が困難になり、症状が強くなっても、医療者がすぐに駆けつけることができないことが理由です。その後も、日本の診療環境と大きく異なる光景を目の当たりにしました。モルヒネの投与量を計算して訪問看護師に伝えると、持参したモルヒネ注射薬をシリンジに引き、家族に皮下注射の指導を始めたのです。日本で医療用麻薬を家族が注射することはまずありません。再度現地の訪問看護師から、「こうした場合、日本ではどのように対応するのか?」と質問がありました。私は「日本では、在宅用の持続投与が可能なデバイスがあり、それを使っているケースが多い。家族が注射をすることはほぼなく、本人や家族が自分たちで注射するのは、在宅医療ではインスリンの自己注射製剤くらいです。でも、ブータンの環境を考えると、今皆さんがやっていることがベストプラクティスだと思いますし、緩和ケアを届けていることを尊敬しています」と英語でお伝えしました。ブータンでの国際支援活動を通じて、世界中で緩和ケアを必要としている患者さんがいること、そして緩和ケアを届けようと頑張っているスタッフがいることを実感しました。日本でもさまざまな地域で、それぞれの地域にあった形で緩和ケアを実践している仲間がいます。世界中で同じ思いの仲間が頑張っていることを忘れず、われわれもできることを少しずつ頑張っていきたいですね。今日のTips今日のTips今、この瞬間も世界のどこかで緩和ケアを届けている仲間がいることを忘れないようにしよう。

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第48回 世界のがんの4割は予防可能。しかし日本には「欧米とは異なる」決定的なリスク構造がある

今月、Nature Medicine誌に非常に示唆に富む研究結果が報告されました1)。この研究は、世界185ヵ国のがん罹患データ(GLOBOCAN 2022)をもとに、修正可能なリスク要因が、どのがんの負担にどれほど寄与しているかを包括的に解析したものです。日々の診療で私たちが接するがん患者さんの中には、「なぜ自分が」と運命を呪う方も少なくありません。しかし今回のデータは、世界で新たに診断されたがんの約37.8%、実に4割近くが、理論上は「防ぐことのできたがん」であることを示唆しています。今回はこの論文の要点と、日本を含む東アジア特有の事情、そして解釈上の限界について、共有したいと思います。潜伏期間まで考慮した、より「リアル」な推計これまでもGlobal Burden of Disease研究などで同様の解析は行われてきましたが、今回の研究にはいくつかのユニークな強みがあります。まず、評価対象とするリスク要因の包括性です。喫煙やアルコール、BMIといった代謝・行動要因だけでなく、これまでの研究では除外されがちだった「感染症(ピロリ菌、HPV、肝炎ウイルス等)」や「紫外線」を含む30もの要因を網羅しています。さらに特筆すべきは、曝露から発がんまでのタイムラグ、いわゆる「潜伏期間」をモデルに組み込んでいる点です。多くのがんにおいて、現在の罹患率は「今」ではなく「過去」の生活習慣の結果です。そこで研究チームは、10年前の曝露状況などのデータを用いることで、因果関係の推定精度をより高めようと試みています。世界と異なる「東アジア」のリスク構造解析の結果、世界全体ではがんの約4割が予防可能なリスク要因に起因しており、とくに男性ではその割合が約半数(45.4%)に達することがわかりました。女性は約3割(29.7%)です。この性差は、主に喫煙率とアルコール摂取量の男女差を反映していると考えられます。ここで、私たち日本人の医療者がとくに注目すべきデータがあります。地域別の解析を見ると、高所得国グループの中でも、欧米と東アジアではリスクの顔ぶれが大きく異なるのです。欧米諸国では、喫煙、高BMI(肥満)、アルコールが主要なリスク要因となっています。一方で、日本を含む東アジア地域では、依然として「感染因子」による疾病負担がきわめて高い水準にあります。具体的には、胃がんの主因であるヘリコバクター・ピロリ、肝細胞がんの主因である肝炎ウイルス(HBV/HCV)、そして子宮頸がん等に関与するヒトパピローマウイルス(HPV)です。これらががん負担の大きな部分を占めているという事実は、日本の臨床現場における感染症対策(具体的には、ピロリ菌の除菌、肝炎ウイルスの拾い上げ、そしてHPVワクチンの普及)が、がん予防において依然として重要であることを如実に物語っています。もちろん、食の欧米化に伴い、高BMIによるリスクも年々増加傾向にあります。感染症対策の手を緩めず、同時に肥満などの代謝リスクへも介入していくという、「二刀流」が私たちには求められているといえるでしょう。研究データの解釈における「限界」非常に精緻な研究ではありますが、解釈にあたっては、いくつかの限界も念頭に置く必要があります。まず挙げられるのが、データの質の地域差です。世界185ヵ国すべてにおいて高品質なリスク曝露データが揃っているわけではなく、一部の国や地域では推計モデルに依存しているため、数値の精度にはばらつきがある可能性があります。また、潜伏期間の設定についても課題が残ります。本研究では多くの要因で一律に「10年」という潜伏期間を設定して解析していますが、実際の発がんプロセスはがん種や要因によって千差万別です。10年という期間設定が、必ずしもすべての病態を正確に反映しているとは限らない点には注意が必要です。さらに、今回は各リスク要因の影響を足し合わせるモデルを基本としています。しかし実際の生体反応では、たとえば「喫煙」と「アスベスト曝露」が組み合わさることでリスクが跳ね上がるといった相互作用が起こりえます。こうした複合的なシナジー効果については、今回の数値には十分に反映されていない可能性があり、実際のリスクはさらに高いかもしれません。臨床現場への示唆こうした限界はあるものの、この研究が私たちに提供してくれているものの価値は揺らぎません。がんの4割は、運ではなく、対策可能なリスクによって引き起こされているのです。患者さんへの生活指導において、禁煙や節酒の重要性を伝えることはもちろんですが、東アジア特有のリスクである感染症への介入を徹底することが、将来のがんを減らす価値のある投資になります。私たち医療従事者が、このエビデンスを日々の診療や啓発活動に落とし込んでいくことが、10年後、20年後の日本の「がんの風景」を変えることにつながるのかもしれません。 1) Fink H, et al. Global and regional cancer burden attributable to modifiable risk factors to inform prevention. Nat Med. 2026 Feb 3. [Epub ahead of print]

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腎不全リスク別にみたSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性

 2型糖尿病患者において、腎不全リスクの高低によるSGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の腎不全や心血管アウトカムを調査した結果、GLP-1受容体作動薬は腎不全の中等度リスクの患者に、SGLT2阻害薬は高度リスクの患者にそれぞれより有益である可能性が、米国・ユタ大学のSydney E. Hartsell氏らによって報告された。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年1月13日号掲載の報告。 研究グループは、2018年1月1日~2021年12月31日にSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬(非エキセンジン系)またはインスリン グラルギンのいずれかを新たに開始した2型糖尿病を有する米国退役軍人コホートを用いて観察研究を行った。対象は16万428例で、治療確率逆重み付けを用いてベースライン特性のバランスを調整し、2023年3月31日までの追跡データを用いて各薬剤の新規使用者間でアウトカムを比較した。評価項目には、腎不全(慢性腎臓病のステージ5または腎代替療法)、主要心血管イベント(MACE[心不全、心筋梗塞、脳卒中])、心血管・腎・代謝(CKM)複合エンドポイント(腎不全またはMACE)、全死因死亡、死亡を含む複合アウトカムが含まれた。また、将来の腎不全発症リスクを推定する腎不全リスク方程式(Kidney Failure Risk Equation:KFRE)スコアを用いて、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性の差が腎不全リスクの高低によって異なるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・新規に使用開始した薬剤は、SGLT2阻害薬が53%、GLP-1受容体作動薬が14%、インスリン グラルギンが34%であった。・SGLT2阻害薬群とGLP-1受容体作動薬群の死亡リスクは同程度であったが、SGLT2阻害薬群で腎不全リスクが低下する傾向にあった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.74~1.06)。・SGLT2阻害薬群では、GLP-1受容体作動薬群と比較してMACE(HR:1.14、95%CI:1.09~1.20)およびCKM複合エンドポイント(HR:1.13、95%CI:1.08~1.19)の発生リスクが有意に高かった。・中等度の腎不全リスク(KFRE 2~6%未満)の患者ではGLP-1受容体作動薬が腎不全、MACEおよびCKM複合エンドポイントに対してより保護的であることが示唆された一方で、高度の腎不全リスク(KFRE 6%以上)の患者ではSGLT2阻害薬がより保護的であることが示唆された。

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日本の帯状疱疹罹患率、約10年で増加

 日本における帯状疱疹罹患率は2014年以降の約10年間で増加傾向にあり、罹患率は加齢に伴い増加することが明らかになった。自治医科大学の片山 真穂氏らが、日本のレセプトデータベースを用いた大規模解析の結果を、BMC Infectious Diseases誌2026年1月10日号に報告した。 本研究では、2014年4月~2023年3月の帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛の標準化罹患率を検討するため、日本のレセプトデータベース(DeSCデータベース、約1,250万人のデータを含む)を用いた大規模解析を実施した。帯状疱疹発症後の入院および帯状疱疹後神経痛のリスクを評価するとともに、国のサーベイランスデータを用いて水痘罹患率の解析も行った。 主な結果は以下のとおり。・2014年4月~2023年3月、69万2,502人における72万7,117件の帯状疱疹エピソードを特定した。このうち、9万6,450人(13.9%)で9万9,153件の帯状疱疹後神経痛エピソードが確認された。・標準化罹患率は、帯状疱疹が1,000人年当たり9.58、帯状疱疹後神経痛が1.00であった。・2014~23年にかけて帯状疱疹の標準化罹患率は増加しており、推定年間変化率は帯状疱疹で1.16%(95%信頼区間:0.52~2.00)、帯状疱疹後神経痛で0.99%(同:0.09~3.04)であった。・帯状疱疹の標準化罹患率は加齢に伴い増加し、40~49歳では7.17、50~59歳では9.73、60~69歳では13.96、70~79歳では17.99、80歳以上では18.81であった。・加齢の影響は帯状疱疹後神経痛においてより顕著であり、同年齢群における標準化罹患率はそれぞれ0.37、0.78、1.78、2.97、および2.98であった。・帯状疱疹発症後の入院および帯状疱疹後神経痛の発生割合はそれぞれ4.8%および10.4%であり、70歳以上の群では50~59歳の群と比較して、リスク比が約2~3倍高かった。・帯状疱疹の罹患率は夏季に高かったが、水痘罹患率との関連はほぼ認められなかった。

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気管支拡張症へのbrensocatib、日本人サブグループ解析結果(ASPEN)

 非嚢胞性線維症性気管支拡張症は、慢性的な咳嗽や膿性痰を伴い、増悪を繰り返すことで肺機能低下やQOL低下を招く進行性の炎症性呼吸器疾患である。炎症には好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼが深く関与しており、その活性化を担うのがジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)とされている。そこで、DPP-1阻害薬brensocatibが開発され、非嚢胞性線維症性気管支拡張症患者を対象とした国際共同第III相試験「ASPEN試験」において、増悪を抑制することが示された。本試験の結果から、米国食品医薬品局(FDA)は2025年8月に非嚢胞性線維症気管支拡張症を適応症として、brensocatibを承認した(本邦では承認申請中)。 ASPEN試験は日本人87例が含まれる試験である。そこで、森本 耕三氏(公益財団法人結核予防会 複十字病院 呼吸器センター)らは本試験の日本人サブグループ解析を実施し、Respiratory Investigation誌2026年3月号で結果を報告した。本解析において、brensocatibは日本人においても増悪を抑制し、良好な安全性を示すことが示唆された。・試験デザイン:国際共同第III相二重盲検無作為化比較試験・対象:過去12ヵ月に2回以上の増悪歴(12~17歳は1回でも可)を有する非嚢胞性線維症性気管支拡張症患者・試験群1(brensocatib 10mg群):brensocatib(10mg、1日1回)を52週間 583例(日本人30例)・試験群2(brensocatib 25mg群):brensocatib(25mg、1日1回)を52週間 575例(日本人28例)・対照群(プラセボ群):プラセボ(1日1回)を52週間 563例(日本人29例)・評価項目:[主要評価項目]増悪の年間発現率[主要な副次評価項目]初回増悪までの期間、52週時点の無増悪割合、52週時点の1秒量(FEV1)のベースラインからの変化、重度増悪の年間発現率、QOL-B呼吸器症状ドメイン 日本人サブグループにおける主な結果は以下のとおり。・日本人87例の平均年齢は66.4歳で、女性の割合は56.3%であった。いずれの群もマクロライド系抗菌薬を使用している患者が多かった(brensocatib 10mg群80.0%、brensocatib 25mg群75.0%、プラセボ群79.3%)。・日本人サブグループは全体集団と比較して、男性の割合、75歳以上の割合、マクロライド長期投与を受けている割合、過去1年に増悪が3回以上あった患者の割合、気管支拡張薬吸入後の%FEV1値が高い傾向にあった。・主要評価項目である増悪の年間発現率(回/年)は、プラセボ群が1.20であったのに対し、brensocatib 10mg群0.45(率比:0.37、95%信頼区間[CI]:0.16~0.87)、25mg群0.39(率比:0.32、95%CI:0.14~0.75)であり、いずれの用量でもプラセボ群と比較して改善した。・初回増悪までの期間の中央値は、プラセボ群が40.1週であったのに対し、brensocatib 10mg群および25mg群ではいずれも未到達であった。プラセボ群と比較したハザード比は、それぞれ0.46(95%CI:0.19~1.12)、0.48(95%CI:0.20~1.17)であった。・52週時点の無増悪割合は、プラセボ群が47.6%であったのに対し、brensocatib 10mg群72.9%(オッズ比[OR]:3.10、95%CI:0.99~9.69)、25mg群71.2%(OR:2.77、95%CI:0.89~8.67)であった。・52週時点のFEV1のベースラインからの最小二乗平均変化量は、プラセボ群が-107mLであったのに対し、brensocatib 10mg群-59mL、25mg群-9mLであった。プラセボ群との群間差は、それぞれ47mL(95%CI:-20~115)、97mL(95%CI:32~162)であった。・重度増悪の年間発現率(回/年)は、プラセボ群が0.33であったのに対し、brensocatib 10mg群0.04(率比:0.11、95%CI:0.01~1.04)、25mg群0.10(率比:0.30、95%CI:0.06~1.62)であった。・52週時点のQOL-B呼吸器症状ドメインのベースラインからの最小二乗平均変化量は、プラセボ群が-2.38であったのに対し、brensocatib 10mg群3.26、25mg群5.01であった。プラセボ群との群間差は、それぞれ5.64(95%CI:-0.88~12.15)、7.39(95%CI:0.73~14.06)であった。・有害事象の発現割合は各群で同様であった(プラセボ群89.7%、brensocatib 10mg群90.0%、25mg群85.7%)。注目すべき有害事象の角化症はbrensocatib 25mg群の4例(14.3%)のみに認められ、すべて軽度であった。 以上の結果について、著者らは「ASPEN試験に登録された日本人患者において、現在の気管支拡張症管理にbrensocatibを追加した際の有効性および安全性は、全体集団で報告された結果と同様であった。brensocatib 10mgおよび25mgはいずれも、増悪抑制、呼吸機能低下抑制、患者報告アウトカム改善において、プラセボと比較して数値上の有用性を示した」とまとめた。

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日本における認知症有病率、2012年から変化〜久山町研究

 2010年代以降、アジア地域における認知症の有病率、発症率、生存率がどのように変化したかを調査した集団ベースの研究は、これまでほとんどなかった。九州大学の小原 知之氏らは、日本のコミュニティにおける37年間の疫学データを用いて、認知症の有病率、発症率、生存率の変化を調査した。Alzheimer's Research & Therapy誌2025年12月29日号の報告。 65歳以上の日本の地域住民を対象に、認知症に関する横断調査を7回実施した(1985、1992、1998、2005、2012、2017、2022年)。また、1988年(803例)、2002年(1,231例)、2012年(1,519例)に、認知症を発症していない65歳以上の住民を対象とした3つのコホートを設定し、それぞれ10年間フォローアップ調査を行った。認知症有病率の傾向は、ロジスティック回帰モデルを用いて検証した。年齢と性別で調整した後、コホート間で認知症発症率と認知症発症後の生存率を比較するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・認知症の粗有病率は、1985〜2012年にかけて有意な増加が認められた(1985年:6.7%、1992年:5.7%、1998年:7.1%、2005年:12.5%、2012年:17.9%、p for trend<0.01)。その後、2012〜22年にかけて有意な減少が認められた(2017年:15.8%、2022年:12.1%、p for trend<0.01)。・年齢と性別を調整した後でも、同様の傾向が認められた。・さらに、年齢および性別で調整した認知症発症率は、1988〜2002年のコホートで有意な増加が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.38〜2.06)。その後、2002〜12年のコホートでは有意な減少が認められた(aHR:0.60、95%CI:0.51〜0.70)。・認知症発症後の年齢および性別で調整した5年生存率は、1988〜2002年のコホートでは有意な増加が認められた(47.3%→65.2%、p<0.01)が、2002〜12年のコホートでは有意な変化は認められなかった(65.2→58.9%、p=0.42)。 著者らは「2012年以降、日本における認知症の有病率と発症率は、減少傾向が観察された。認知症の発症率の低下は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防とマネジメントの改善、そして健康的な生活習慣行動への意識向上と促進によるものと考えられる」と結論付けている。

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AI支援マンモ検診、中間期乳がんが減少/Lancet

 人工知能(AI)支援マンモグラフィスクリーニングは、2人の放射線科医が読影を行う標準的な二重読影と比較して、中間期乳がん(スクリーニングとスクリーニングの間あるいは最後の定期スクリーニング後2年以内に診断された、スクリーニングでは未検出であった原発乳がん)の発生率に関して非劣性で、予後不良の中間期乳がんの減少という良好なアウトカムに結び付き、高い感度、同等の特異度を示しながら、読影者の作業負荷も軽減したことが示された。スウェーデン・Lund UniversityのJessie Gommers氏らが同国で行った無作為化非劣性試験「MASAI試験」の結果を報告した。先行研究で、AI支援のマンモグラフィスクリーニングにより、がんの検出率が増加しかつ読影者の作業負荷を軽減可能であることがエビデンスとして示されているが、中間期乳がんへの有益性は明らかにされていなかった。Lancet誌2026年1月31日号掲載の報告。二重読影による標準的スクリーニングと比較 MASAI試験は、スウェーデンで行われた、住民ベースの単盲検無作為化対照非劣性スクリーニング精度試験。同国では40~74歳の女性は1.5~2年ごとにマンモグラフィスクリーニングへの受診勧奨を受け、中等度の遺伝的リスクを持つ女性と乳がん既往を持つ女性には、毎年スクリーニングが提供され、後者は80歳まで実施される。 スクリーニングへの参加者を1対1の割合で、AI支援マンモグラフィスクリーニング群(介入群)またはAIを用いず2人の放射線科医が読影を行う標準的な二重読影群(対照群)に無作為に割り付け追跡評価を行った。 介入群のAIは、放射線科医1人または2人による読影トリアージおよび検出支援に使用された。 主要評価項目は中間期乳がんの発生率で、プロトコールに基づき解析された。非劣性マージンは20%であった。 副次評価項目は、中間期乳がんの特徴、感度、特異度、年齢・乳腺濃度・乳がんタイプ別(非浸潤性、浸潤性)の感度などであった。中間期乳がんの発生率(/1,000人)は介入群1.55、対照群1.76 2021年4月12日~2022年12月7日に、10万5,934例の女性が介入群または対照群に無作為化された(除外は19例)。年齢中央値は、介入群(5万3,043例)53.8歳(四分位範囲:46.5~63.3)、対照群(5万2,872例)53.7歳(46.5~63.2)であった。 中間期乳がんの発生率は参加者1,000人当たり、介入群1.55(95%信頼区間[CI]:1.23~1.92)、対照群1.76(1.42~2.15)で、非劣性割合比は0.88(95%CI:0.65~1.18、p=0.41)であった。 介入群では対照群と比較して、浸潤性(75例vs.89例)、T2+(38例vs.48例)、非Luminal A(43例vs.59例)の中間期乳がんが少なかった。 感度は、介入群(80.5%、95%CI:76.4~84.2)が対照群(73.8%、68.9~78.3)よりも高く(p=0.031)、この効果は年齢や乳腺密度によらず浸潤性乳がんでは一貫して認められたが、非浸潤性乳がんでは認められなかった。特異度は両群とも98.5%(95%CI:98.4~98.6)であった(p=0.88)。 著者は、「その後の検診回および費用対効果の解析で、長期的なベネフィットと有害性のバランスが明らかになり、とくに人手不足の状況にある住民ベースのマンモグラフィスクリーニングプログラムにおいて、AIを導入することに関する強力な根拠が示唆された」とまとめている。

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心停止ドナー心移植、再拍動・機械灌流なしのREUP法の実用性/JAMA

 循環停止ドナー(DCD)の移植心を、ドナーへの蘇生処置を行わずに摘出するために開発されたrapid recovery with extended ultraoxygenated preservation(REUP)法について、多様なドナーおよびレシピエントの集団において、予想された虚血時間に関係なく、安全性、実現可能性および有効性が実証されたことが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのAaron M. Williams氏らによって報告された。REUP法は、若年ドナー集団(16~30歳)および/または虚血時間が短い移植心(4時間未満)であれば、成人DCD心移植への使用が期待できることが示されていた。結果を踏まえて著者は、「現在のDCD移植心回復戦略はコストが高く複雑であり、また常温局所灌流を巡る倫理的な懸念があることから、REUP法の活用は移植心の有望な調達方法となる可能性がある」とし、「この新たな技術の持続的な発展を支持するさらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年1月26日号掲載の報告。ドナーの年齢や予想される虚血時間を問わず実現可能かを検証 研究グループは、成人DCD心移植におけるREUP法の使用が、ドナーの年齢や予想される虚血時間を問わず実現可能であるかをケースシリーズにて評価した。 対象は、2024年11月~2025年7月に米国の大規模心移植センター1施設で、REUP法を使用した成人DCD心移植を受けた患者であった。 REUP法は、DCD心臓同種移植の回復に用いられ、摘出前のドナーへの蘇生処置や機械的灌流は行われなかった。 主要アウトカムは、重篤な原発性移植片機能不全、30日生存率、初回心内膜心筋生検時の急性拒絶反応であった。ドナーの平均年齢32歳、レシピエントの30日生存率は96% 24個のREUP適用DCD心が移植された。 ドナーの平均年齢は32歳、9例(38%)が40歳超であった。レシピエントの50%は、胸骨切開術既往であった。 ドナー死亡の最初の告知からフラッシュ処置までの平均時間は9分であった。15例(60%)のドナー心は、虚血時間が合計4時間を超えており、1例は8時間であった。 レシピエントの30日生存率は96%であった。重篤な原発性移植片機能不全は1例(4%)のみで、二次性移植片機能不全は1例(4%)であった。 初回心内膜心筋生検では、1例(4%)にGrade 2Rの急性細胞性拒絶反応が認められたが、抗体関連型拒絶反応は認められなかった。

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発症前のアバタセプト投与により関節リウマチの発症が遅延

 長年使用されてきた生物学的製剤を事前に投与することで、関節リウマチ(RA)の発症を数年間遅らせることができる可能性のあることが、新たな研究で示された。アバタセプト(商品名オレンシア)を週1回、52週間にわたり投与された人では、RAの発症が最大で4年遅延したという。アバタセプトは、免疫細胞の活性化を抑えることでRAの原因となる免疫反応を低下させる薬剤であり、2005年末に米食品医薬品局(FDA)によりRA治療薬として承認された。英キングス・カレッジ・ロンドン、リウマチ性疾患センター長のAndrew Cope氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Rheumatology」に1月20日掲載された。 現在、RAを予防できる承認済みの治療法は存在しない。しかし研究グループは、今回の結果は、RA発症リスクの高い患者にアバタセプトを用いた治療を行うことで、疾患とともに生きる期間を短縮できる可能性があることを示していると述べている。論文の筆頭著者であるCope氏は、「RA高リスク者への早期介入が長期的な利益をもたらし得ることが示された。このアプローチは安全で、治療期間中はRAの発症を防ぐだけでなく症状を大きく緩和し、さらに治療終了後も数年間にわたりRAの発症を遅らせることが確認された。これにより、症状や合併症とともに生きる期間が短縮され、生活の質(QOL)は大きく改善される可能性がある」と述べている。 アバタセプトに関する臨床試験の一つであるAPIPPRAは、ACPA(抗シトルリン化蛋白抗体)陽性の213人を対象に英国とオランダで実施された第2b相ランダム化比較試験である。試験参加者は、週1回、52週間にわたりアバタセプトを皮下注射する群(110人)とプラセボを投与する群(103人)に割り付けられ、その後52週間追跡された。今回の解析では、APIPPRA参加者のうちアバタセプト群71人、プラセボ群72人の計143人(平均年齢48.2歳、女性78%)を対象に、4〜8年間の長期追跡を行い、アバタセプトの長期的効果が検討された。 その結果、ランダム化から2年時点で認められたRA発症までの期間の群間差は4年時点でも有意に維持されていた(差4.9カ月、95%信頼区間0.1〜9.6、P=0.044)。アバタセプトによる52週間の治療効果は、治療終了後も長期間にわたり持続することが明らかになったが、時間とともに群間差は縮小した。RA発症までの期間をカプラン・マイヤー曲線で検討すると、ランダム化から4年目まではアバタセプト群でRAへの進行割合が低かったものの、4年以降では群間差が認められなくなった。 アバタセプトの効果は、ACPA力価が高い人で顕著であった。これは、これらの高リスク者はRA発症リスクが高い一方で、早期治療から得られる利益も大きいことを意味する。一方、症状に関しては、関節痛や疲労感などの症状は、アバタセプト投与中には改善したが、1年間の治療終了後には通常のレベルに戻った。 研究グループは、「治療の中止後は、アバタセプトはRAの発症を遅らせるものの、完全に予防するわけではない。患者報告アウトカムに対する効果は短期間で、治療期間中に限られていたことから、疲労、疼痛、身体的・精神的健康障害などの症状を抑制するには継続治療が必要である」と述べている。 なお、本研究は、アバタセプトの製造元であるブリストル・マイヤーズ スクイブ社の資金提供を受けて実施された。

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政府主導の現金給付プログラムが死亡率に関連する行動および健康決定要因に与える影響:差の差研究(解説:名郷直樹氏)

 ランダム化比較試験で検討困難な疑問に関して、ビッグデータを用いた観察研究によって検討しようという流れの中にある研究である。37の低~中所得国家を対象とし、政府主導の現金給付プログラムを提供している国と提供していない国を比較し、また提供された国における提供前と提供後を比較して、死亡に関連する17のアウトカムを検討している。 解析方法は、“difference-in-differences study”とあるように、少し特殊である。具体的には、現在現金給付を行っている国の行っていない時期とのアウトカムの差から、行っていない国の現在のアウトカムと行っている国の行っていないのと同時期のアウトカムの差を差し引いたものを効果の指標としている。それぞれのアウトカムの差は、介入前後比較と呼ばれるもので、時間経過に伴う変化が大きなバイアスとなる。この研究で言えば、現金給付が行われる前後で比較すると、時代によるさまざまな変化があり、現金給付と無関係な社会の変化の影響を排除することができず、効果を過大評価しやすい。その影響を考慮するために、両国の時間的なアウトカムの変化を除いて、バイアスの影響を調整しているというわけである。実際の計算式であるが、現在現金給付を行っている国のアウトカムがa%、行っていない国でb%、現在現金給付を行っている国の行っていない時期のアウトカムがc%、行っていない国の同時期でd%としたときに、“difference-in-differences”、「差の差」は (a-c)-(b-d) ということになる。 実際の結果を見てみよう。アウトカムの変化における差95%信頼区間は、早期妊婦健診で+5.0%(2.1~7.9)、施設分娩 +7.3%(3.2~11.3)、熟練者による分娩 +7.9%(3.2~12.6)、望まれた妊娠 +1.9%(0.5~3.2)、排卵間隔の延長 +2.5ヵ月(1.8~3.1)、避妊法の情報不足 -10.3%(-15.2~-5.3)、完全母乳育児 +14.4%(13.3~15.5)、最低限の食事提供 +7.5%(5.5~9.5)、麻疹ワクチン接種 +5.3%(1.6~8.9)、男児の双胎出産0.8/1,000男児出産(0.3~1.4)、下痢の罹患率 −6.4%(-11.7~-1.1)、低体重 −2.0%(-3.6%~-0.4)で、17のうち12の項目で改善がみられている。 この「差の差」分析では、現金給付を行っている国と行っていない国でのアウトカムのトレンドが同様という仮定が必要である。行っていない国での改善が小さければ効果を過大評価するし、大きければ効果を過小評価する危険がある。それについてはほぼパラレルであることが示されている。しかしながら、ランダム化比較試験ほど交絡因子が排除できるわけではない。このデザインから言えるのは、因果というより相関と考えるのが妥当かもしれない。

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妊娠前・妊娠初期におけるGLP-1受容体作動薬の中止による影響(解説:小川大輔氏)

 妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常である「妊娠糖尿病」と、妊娠前から糖尿病を患っている「糖尿病合併妊娠」は、どちらも高血糖が胎児の発育に影響を与えるため妊娠中の血糖管理が非常に重要になる。そして妊娠中の糖尿病の薬物療法はインスリン療法が原則となる。妊娠前から経口血糖降下薬などで治療していた場合でも、妊娠する前、あるいは妊娠が判明した時点でインスリンへの変更が必要となる1)。これは、経口血糖降下薬が胎盤を通して胎児に運ばれ、低血糖を引き起こす可能性があるためである。 GLP-1受容体作動薬に関しては、ラットやラビットを用いた動物実験でGLP-1受容体作動薬の投与により胎児の構造異常、子宮内での発育制限、胎児の死亡などが報告されており、妊娠中はGLP-1受容体作動薬の使用を避けるべきとされている1)。ただ、GLP-1受容体作動薬の中止により、妊娠中の体重の過剰増加や血糖コントロールの悪化も懸念されている。これまでに妊娠前あるいは妊娠初期にGLP-1受容体作動薬を中止することで、母体や胎児にどのような影響が出るかを検討した報告はなかったが、今回妊娠14万9,790例を対象とした後ろ向きコホート研究の結果が報告された2)。 妊娠前3年間および妊娠後90日間に、GLP-1受容体作動薬の処方が確認された妊婦を曝露群、確認されなかった妊婦を非曝露群として、曝露群1例につき非曝露群3例を傾向スコアでマッチングした。その結果、妊娠中の体重増加量は曝露群で有意に多く、過剰体重増加のリスクも高かった。また、曝露群で早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスクが高かったが、巨大児および低出生体重児のリスク、帝王切開のリスクには差がなかった。 妊娠を契機にGLP-1受容体作動薬をインスリンに変更し、妊娠中に過剰な体重増加や血糖コントロールの悪化を経験することがしばしばある。妊娠出産を考えている女性に対するGLP-1受容体作動薬の使用は、開始前によく検討する必要があるだろう。妊娠前あるいは妊娠初期でのGLP-1受容体作動薬の中止は、母体の体重増加のほか、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスク上昇と関連する可能性が示唆され、今後さらなる検討が必要と思われる。

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論文投稿から採択まで 英文校正・カバーレター・査読対応のAI活用術(前編)【誰でも使えるChatGPT】第7回

はじめに皆さん、こんにちは。近畿大学皮膚科の大塚です。さて、今回は第5回(論文・ケースレポート作成)の発展編として、論文投稿から採択までのプロセスでChatGPTを活用する方法をご紹介します。論文を書き上げても、そこからが本当の勝負です。英文校正、カバーレターの作成、そして査読者への回答――これらの作業は、論文執筆と同じくらい、あるいはそれ以上に時間と労力がかかるものです。「カバーレターって何を書けばいいの?」「査読者からの厳しいコメントにどう返せば...」――こうした悩みを抱えている先生方は多いのではないでしょうか。今回は、これらのプロセスでChatGPTを「投稿支援アシスタント」として活用する実践的な方法をお伝えします。論文投稿プロセスの全体像まず、論文完成から採択までの流れを整理しておきましょう。論文完成↓【STEP 1】英文校正・推敲↓【STEP 2】カバーレター作成↓【STEP 3】投稿↓【STEP 4】査読結果への対応(Revision)↓【STEP 5】採択・校正(Proof)このうち、ChatGPTがとくに力を発揮するのはSTEP 1、2、4です。順番に見ていきましょう。STEP 1:英文校正・推敲なぜChatGPTが有用か英文校正サービスは1単語当たり数円〜十数円かかり、論文1本で数万円になることも珍しくありません。ChatGPTを活用すれば、このコストを大幅に削減しながら、十分な品質の英文を作成できます。私自身、現在は英文校正サービスを使わず、ChatGPTのみで英文校正を行っています。ただし、重要なのは校正後の確認方法です。後述しますが、ChatGPTで校正した英文をDeepLで日本語に戻し、意図した内容になっているかを確認するという二段階チェックを行っています。段落単位の英文校正あなたは医学論文の英文校正専門家です。以下の英文を、学術論文として適切な表現に修正してください。【修正してほしい英文】The patient was 67 years old female who had chronic kidney disease.She was started allopurinol for hyperuricemia.After 2 weeks from starting the medication, she developed skin rash which was diagnosed as Stevens-Johnson syndrome.【指示】1.文法的な誤りを修正2.より自然な学術英語に改善3.時制の一貫性を確認4.修正箇所と理由を日本語で説明【出力形式】-修正後の英文-修正箇所の解説(日本語)ChatGPTからの回答例 【修正後の英文】A 67-year-old woman with chronic kidney disease was initiated on allopurinol for hyperuricemia.Two weeks after starting the medication, she developed a skin rash that was subsequently diagnosed as Stevens-Johnson syndrome.【修正箇所の解説】1."The patient was 67 years old female"→ "A 67-year-old woman"理由:年齢は複合形容詞としてハイフンでつなぎ、冠詞"A"で始めるのが標準的。"female"より"woman"が自然。2."who had chronic kidney disease"→ "with chronic kidney disease"理由:関係代名詞を使わず、前置詞"with"で簡潔に。3."She was started allopurinol"→ "was initiated on allopurinol"理由:受動態での薬剤開始は"be initiated on"が一般的。4."After 2 weeks from starting"→ "Two weeks after starting"理由:数字は文頭ではスペルアウト。"from"は不要。5."skin rash which was diagnosed" → "a skin rash that was subsequently diagnosed" 理由:制限用法では"that"が好まれる。"subsequently"で時系列を明確に。表現の統一チェックあなたは医学論文の校正者です。以下の論文の一部について、用語・表現の一貫性をチェックしてください。【チェック項目】1.同じ概念に対する用語の統一(例:patient/case/subject)2.数値の表記(例:2 weeks/two weeks/2-week)3.略語の使用(初出でフルスペル+略語、以降は略語のみ)4.時制の一貫性(症例報告は過去形が基本)【対象テキスト】(ここに論文の一部を貼り付け)英文校正の最終確認:DeepLで日本語に戻すChatGPTによる英文校正には限界があります。医学用語の微妙なニュアンス、雑誌特有のスタイル、文脈に依存する表現の適切性などは、AIが見落とすこともあります。そこで私が実践しているのが、ChatGPTで校正した英文をDeepLで日本語に戻し、内容を確認するという方法です。【確認の手順】1.ChatGPTで英文校正を行う2.校正後の英文をDeepLに貼り付けて日本語に翻訳3.日本語訳を読んで、自分が意図した内容になっているか確認4.ニュアンスがずれている箇所があれば、英文を修正して再度確認この方法のメリットは、英語力に自信がなくても、日本語で内容確認ができる点です。とくに、複雑な文章や専門的な表現が正しく伝わっているかを確認するのに有効です。逆翻訳で意図と異なる日本語が出てきた場合は、英文の表現に問題がある可能性が高いです。その箇所をChatGPTに「この部分をより明確に」と指示して修正させるか、自分で書き直します。STEP 2以降の解説は次回に行います。

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第302回 衆院選で自民党が歴史的勝利、消費税減税で世の中と医療・介護はどうなる?

過激派、左翼も衰退し、ノンポリの若者、国民が増えつつあった時代の映画こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。1月31日、映画監督の長谷川 和彦氏が亡くなりました。いくつかの報道では、1970年代にわずか2本の長編映画しか撮っていなかったにもかかわらず、生涯「映画監督」と呼ばれ続けたことが話題になっていました。私もデビュー作『青春の殺人者』、第2作『太陽を盗んだ男』を封切りの映画館で観て、大きな衝撃を受けた1人です。親殺しがテーマの『青春の殺人者』(1976年度・キネマ旬報邦画1位)は、水谷豊と原田 美枝子の迫真の演技と真っ赤ではないリアルな血の色に映画館で震えた記憶があります。中学の理科教師が原発から液体プルトニウムを盗み出し、原爆を自宅で作って政府を脅迫するという『太陽を盗んだ男』(1979年度・キネマ旬報邦画2位)は、その現実離れしたストーリー展開に加え、お金をかけたアクションシーンや教師役の沢田 研二のスターらしからぬ軽妙な演技に引き込まれました。というわけで、日曜日の夜は開票速報をテレビで観るのは止めにして、長谷川監督追悼の意味も込めて、『太陽を盗んだ男』を鑑賞しました(Amazonプライム・ビデオにありました)。久しぶりに観て感じたのは、1979年という時代の曖昧さです。過激派、左翼も衰退し、ノンポリの若者、国民が増えつつあった時代です。原爆を作った教師は政府に「プロ野球の中継時間を伸ばせ」「ローリング・ストーンズを来日させろ」という、どうでもいいような要求を突きつけるだけです。右でも左でもなく、西でも東でもないその政治性のなさに、当時の時代の空気が感じられて興味深かったです。それにしても、「一市民が原爆を作る」という内容の映画、今なら企画会議で即NGになっていたでしょうね。医療、介護にも影響大きい消費税減税さて、『太陽を盗んだ男』の公開から約半世紀、左翼どころか中道すら完全に衰退モードに入ったようです。日曜日の衆議院選挙は、自民党の圧勝に終わりました。高市 早苗首相は解散前に与党過半数(233議席)を割り込めば「退陣する」と明言していましたので、その目標を大きくクリアしたことになります。一方、中道改革連合は惨敗しました。「中道」という言葉自体に加え、代表2人が写ったポスターもなにやら古臭く、若者に訴求しなかったのかもしれません。選挙の翌日、2月9日に開かれた記者会見で、共同代表の1人、野田 佳彦氏は「われわれ2人の共同代表には時代遅れ感が付きまとっていた」と語っていましたが、その「時代遅れ感」に選挙前に気が付いていなかったこと自体が、大きな敗因と言えそうです。高市首相は「飲食料品については2年間に限り消費税の対象としない」公約を掲げ、選挙後は減税「実現に向けた検討を加速する」としていましたので、消費税減税がいよいよ現実味を帯びてきました。それにしても、今回の衆院選での与野党含めての減税公約にはほとほと呆れました(「チームみらい」以外)。本当に消費税減税が実現した場合、日本はどうなるのでしょうか。医療、介護にも影響大きい消費税減税について、考えてみます。日本経済新聞コラム「大機小機」、消費税減税後の未来を予測2月3日付の日本経済新聞に掲載された経済コラム「大機小機」が、消費税減税後の世界について興味深い予測を行っていたので、その内容を簡単に紹介します。この日の「大機小機」は、「自分が10年後の日本にいると仮定して、現在の消費税減税の提案を評価してみよう」という前提で、「今後10年間のことが過去形」で語られるというSFのようなユニークな内容でした。それによれば、「2026年2月の衆議院選挙の結果を受けて、食料品にかかる消費税が2年間限定で、27年4月からゼロになった。実際にやってみると次のようなことがわかった」として、10年間に起きたことを3点挙げています。「第1に経済活動に不規則な変動が起きた。(減税直前に)買い控えが起き、(減税終了前に)買い急ぎが起き、(中略)(GDPの前期比は)マイナスになったり、プラスになったりし、そのたびに経済論議が混乱した」「第2に、期待されていた消費の活性化と成長率の底上げはほとんど起きなかった」「第3に、減税に伴う5兆円の税収減を埋め合わせるほどの財源は確保できず、財源赤字が拡大した。減税で経済が活性化して税収が増えるという効果も小さかった。よく考えると、そんな手品のようなことが実現するはずなかったのだ」。以上の3点を指摘した上で、同コラムは「日本経済低迷の救世主であるかのごとく祭りあげられていた消費税減税は、(中略)実施に際しての混乱と将来への負の遺産を残しただけに終わった。その後、消費税減税を主張する議論はほとんどみられなくなった」と結んでいます。消費税を下げ、社会保険料も下げれば、医療・介護サービスの給付削減、質の低下が進むあくまでも「10年後から振り返る」というSF的予測記事なので、この通りにこれから進むかはわかりませんが、各党の消費税減税の目的やその財源策などを聞いていると、「大機小機」の予想する未来は、相当程度の確度で当たるような気がします。消費税は年金・医療・介護・子育て支援などの社会保障4分野の「基礎的財源」と位置付けられています。単純に消費税を減税し、その穴を埋めない場合、社会保障費全体の伸び抑制や給付水準の見直しが必要になります。それは、診療報酬や介護報酬にも影響が及ぶことを意味します。今回の衆院選、多くの党は社会保険料の削減も主張していました。消費税を下げ、社会保険料(健康保険料、介護保険料等)も下げれば、ますます社会保障の財源は逼迫し、医療・介護サービスの給付削減、質の低下が進むことになります。それは自明の理と言えますが、今回、給付削減や医療や介護のサービスの質低下の可能性について言及する党がまったくなかったのがとても心配です。ちなみに、「減税による減収は赤字国債で賄う」という公約の党もありましたが、その分だけ政府の債務が増え、将来世代が所得税などで負担することになります。「国債で」という時点で、その政治家は将来の日本は二の次で、今の自分のこと(=当落)しか考えていないことになります。2月9日に開かれた記者会見で、高市首相は消費税減税について実施時期は明言しなかったものの、「給付付き税額控除」の導入までの経過措置として2年間に限定して減税すると発言、財源について「特例公債には頼らない」と付け加えました。2年限定で、しかも「特例公債には頼らない」なんてことができるのでしょうか。「第300回 東大皮膚科教授、高級クラブやソープランドで約30回、約180万円の接待受け収賄で逮捕、国際卓越研究大学の認定に黄信号」の冒頭でも書いたように、自民党内にも消費税減税反対を唱える議員は少なくありません。前途は相当多難と言えます。「高負担で高福祉」の国を目指すのか、「低負担・低福祉」の国を目指すのかところで、欧米を見渡せば、「高負担・高福祉(フランス、デンマークなど)」、「低負担で低福祉(米国など)」と、国によってそのタイプはさまざまです。日本は税負担と福祉支出の両方でOECD平均に近く、高負担高福祉モデルと低負担低福祉モデルの中間に位置するとされています。つまり、「中負担・中(あるいは高)福祉」が今の日本です。今回の衆院選の各党の主張を聞いていると、「低負担・高福祉」という現実にはあり得ないモデルを提案しているように見えます。「低負担」を目指せば、当然、「低福祉」「低医療」になってしまうのに、なんと無責任な政治家たちでしょう。高市首相は、超党派の国民会議を開き、社会保障と税の一体改革や給付付き税額控除、消費税減税を議論する、としています。国民会議は「超党派」かつ「有識者も交えた」形で設置するとのことですが、「消費税減税ありき」のイエスマンばかりで構成することなく、日本が今後「高負担・高福祉」を目指すのか、「低負担・低福祉」を目指すのかという、国の方向性についてもしっかり議論してもらいたいと思います。

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男性アスリート、競技前の禁欲はパフォーマンスに影響するか

 運動前の性的活動が運動パフォーマンスに及ぼす影響については、いまだに議論がされている。このテーマについて、スペインのバリャドリッド大学医学部神経生物学研究グループのDiego Fernandez-Lazaro氏の研究グループは、男性アスリートを対象に運動前のマスターベーションが、その後の運動に影響するかどうかを検討した。その結果、運動前のマスターベーションは、運動パフォーマンスにネガティブな影響を及ぼさないことがわかった。この結果は、Physiology&Behavior誌2026年4月号に掲載された。 競技前の性的活動はその後の運動に影響せず 研究グループは、21人の十分にトレーニングを受けた男性アスリート(年齢22±1歳)を対象に、運動試験30分前に実施したマスターベーションによるオルガスムと性行為禁止の急性効果を比較する無作為化クロスオーバー研究を実施した。各参加者は両条件下で漸増性サイクリングテストおよび等尺性握力テスト行った。血液サンプルを分析し、筋損傷(CK、LDH、Mb)、炎症(CRP、IL-6)、ホルモン(テストステロン、コルチゾール、LH)マーカーを測定した。 主な結果は以下のとおり。・禁欲状態と比較し、マスターベーション後の状態では運動持続時間が3.2%延長(p<0.01)、心拍数上昇(p<0.001)が認められた。・平均握力もわずかに増加(p<0.05)した。・血漿LDH値の低下(p<0.001)は筋ストレスの軽減を示唆した。・テストステロンとコルチゾール濃度は有意に上昇(いずれもp<0.001)したが、炎症マーカー(CRP、IL-6)に有意な変化は認められなかった。 以上の結果から、「運動30分前のマスターベーションは、パフォーマンスや筋肉損傷に悪影響を及ぼさず、軽度の交感神経・ホルモン活性化を誘発した。これらの知見は、競技前の性的活動がトレーニングを受けた男性の運動パフォーマンスを損なわないことを示唆し、競技前の性的活動の禁止が必須であるという長年の通説に異議を唱えるものとなる」と結論付けている。

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