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ファイザー・ビオンテック、LP.8.1対応コロナワクチンの承認取得

 ファイザーおよびビオンテックは8月8日付のプレスリリースにて、オミクロン株JN.1系統の変異株であるLP.8.1に対応した新型コロナウイルスワクチンについて、8月7日に厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表した。承認されたのは「コミナティ筋注シリンジ12歳以上用」「コミナティRTU筋注5~11歳用1人用」「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用3人用」の3製品。これらのワクチンは2025~26年秋冬シーズンで使用される予定。 今回の承認は、両社が開発した新型コロナワクチンの安全性と有効性を示した臨床、非臨床およびリアルワールドデータを含むさまざまなエビデンスに基づいている。申請データには、品質に係るデータに加え、LP.8.1対応ワクチンが、XFG、NB.1.8.1、LF.7、および現在流行している他の変異株に対し、昨年度のJN.1対応ワクチンより優れた免疫反応を示した非臨床試験データなどが含まれている。 また、ワクチンの抗原株の変更と合わせて、以下の承認事項も変更された。・有効期間の延長:冷蔵(2~8℃)において8ヵ月から12ヵ月へ延長・包装単位の追加:1シリンジ包装に加え、5シリンジ包装を追加

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冠動脈疾患への抗血栓療法、アウトカムに性差はあるか/BMJ

 冠動脈疾患の女性患者は、心血管リスクが男性患者に比べて高いにもかかわらず、いわゆる抗血栓療法への反応の違いを理由に、薬物療法やインターベンションを受ける機会が男性患者より少ないという。ジェンダーに基づくアウトカムに関する無作為化試験のデータは十分でないため、心血管治療における男女間の格差が今後も広がる可能性が指摘されている。イタリア・University of Naples Federico IIのRaffaele Piccolo氏らは、冠動脈疾患に対する抗血栓療法において、全死因死亡や心筋梗塞の発生、大出血のリスクに性差はないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年7月29日号で報告された。有効性と安全性の性差の存在をメタ解析で評価 研究グループは、冠動脈疾患を有する患者における抗血栓療法(抗血小板薬、抗凝固薬)の有効性と安全性に性差が存在するかを評価する目的で系統的レビューとメタ解析を行った(イタリア教育省の助成を受けた)。 2025年4月の時点で、医学関連データベースに登録された文献を検索した。冠動脈疾患患者において抗血栓療法の比較を行い、性別に基づくアウトカム(虚血イベント、大出血イベントなど)の記述がある無作為化対照比較試験を対象とした。 主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、大出血(BARC基準のタイプ3または5)とした。抗血栓療法のレジメンを、高強度と低強度に分類(未分画ヘパリン±GP IIb/IIIa阻害薬vs.bivalirudin、抗凝固薬vs.プラセボ、静注P2Y12受容体阻害薬vs.クロピドグレル、長期DAPT vs.短期DAPTなど)して解析した。死亡、心筋梗塞に性別関連の異質性はない 1999~2025年に33件の試験に登録された27万4,433例を解析の対象とした。13万1,014例(52.4%)が高強度、11万9,189例(47.6%)が低強度の抗血栓療法に割り付けられた。7万2,601例が女性で、33試験の女性の比率中央値は25%(四分位範囲[IQR]:22~30.7)であった。全体の年齢中央値は64.5歳(IQR:62~67)だった。 22試験の参加者18万7,580例のうち6,018例が死亡した(高強度群3,064例、低強度群2,954例)。男性患者では、低強度群に比べ高強度群で全死因死亡のリスクがわずかに低かった(ハザード比[HR]:0.94[95%信頼区間[CI]:0.88~1.00]、p=0.05)が、女性患者ではこのような差はなかった(0.99[0.90~1.09]、p=0.90)。全体として、死亡の発生に関して性別に関連した異質性は認めなかった(交互作用のHR:1.06[95%CI:0.94~1.19]、pinteraction=0.33、I2=0.00%、pheterogeneity=0.76)。 心筋梗塞は、21試験の17万2,504例で7,558件発生した。男性患者では、低強度群に比べ高強度群で心筋梗塞のリスクが低く(HR:0.85[95%CI:0.80~0.90]、p<0.001)、女性患者でも有意に低かった(0.89[0.82~0.97]、p=0.01)。全体として、心筋梗塞の発生に関して性別に関連した異質性はみられなかった(交互作用のHR:1.05[95%CI:0.95~1.17]、pinteraction=0.36、I2=14.05%、pheterogeneity=0.28)。性別に依拠しない選択を 大出血は、28試験の24万4,179例で4,003件発現した(高強度群2,384件、低強度群1,619件)。男性患者では、低強度群に比べ高強度群で大出血のリスクが高く(HR:1.48[95%CI:1.37~1.60]、p<0.001)、女性患者でも有意に高かった(1.47[1.30~1.66]、p<0.001)。全体として、大出血のリスクに関して性別に関連した異質性はなかった(交互作用のHR:0.99[0.86~1.15]、pinteraction=0.93、I2=33.56%、pheterogeneity=0.05)。 著者は、「これらのデータは、虚血保護効果と出血リスクの程度は男女間でほぼ同じであると示唆している」「本研究の知見は、冠動脈疾患患者における抗血栓療法の選択は性別に依拠して行うべきではないとの考え方を裏付けるものである」「女性患者における抗血栓療法戦略の最適化に向けたさらなる研究の必要性が浮き彫りとなった」としている。

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免疫不全状態の皮膚扁平上皮がん患者、β-HPVが発がんに直接関与か/NEJM

 米国国立衛生研究所(NIH)・国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のPeiying Ye氏らの研究チームは、ZAP70遺伝子に病的な変異を認め、β-ヒトパピローマウイルス(β-HPV)のゲノム組み込みを伴い、再発を繰り返す切除不能な浸潤性皮膚扁平上皮がん(SCC)を含む、良性および悪性のHPV関連疾患を呈する34歳の女性患者について報告した。本研究はNIHの助成を受けて行われ、NEJM誌2025年7月31日号に掲載された。ZAP70変異による免疫不全と、β-HPV19のゲノム組み込みを伴う 皮膚SCCは、皮膚がんの中で最も一般的なもので、主に紫外線による体細胞DNA変異が原因で、がん遺伝子の活性化と腫瘍抑制遺伝子の機能不全が引き起こされて発生する。β-HPVはこれまで、皮膚SCCの維持に不可欠ではなく、初期段階における単なる促進因子として間接的な役割を果たすと考えられてきた。 本症例(34歳、女性)は、クリプトコッカス髄膜炎と神経眼科的病変の既往歴があり、皮膚および粘膜のHPV関連疾患が進行性に悪化し、口腔コンジローマ、びまん性の疣状病変を認め、日光曝露皮膚表面の、生検で確認された43ヵ所の病変または部位に、多発性再発性皮膚SCCを呈していた。 また、T細胞受容体(TCR)のシグナル伝達に必須のアダプター分子であるZAP70に、生殖細胞系列の病原性の遺伝子変異がみられ、これに起因するTCRシグナル伝達の欠損による免疫不全状態を確認した。さらに、この浸潤性で切除不能な高リスクの皮膚SCCは、β-HPV19のゲノム組み込みを伴っていた。基盤にあるTCRシグナル伝達欠損のため根治的治療に抵抗性を示したため、遠隔転移がないことを確認したうえで、統合的な管理計画を立案した。HLA半合致造血幹細胞移植でTCRシグナル伝達の完全性が回復 治療は、セツキシマブ+5-フルオロウラシル+シスプラチン併用療法に続き、皮膚SCCの予防としてカペシタビン+ニコチンアミドを投与し、根本的な免疫不全の治療としてHLA半合致造血幹細胞移植(HCT)を行った。この治療過程において臨床的な合併症は発生しなかった。 HCTによりTCRシグナル伝達の完全性が回復し、すべてのHPV関連皮膚疾患が安定的に解消した。この良好な状態は、最新のフォローアップの時点(HCT後35ヵ月)まで維持されていた。 これらの知見により、T細胞の適応免疫応答が不完全な免疫不全状態においては、β-HPVは単なる補助的な因子ではなく、皮膚の発がんに直接関与していることが示唆された。 著者は、「本研究は、腫瘍の維持におけるβ-HPVの関与を直接的に証明した。HCTによるTCRの機能回復が進行性SCCの根治をもたらした例はきわめてまれである」「今後、β-HPV関連SCC患者に対する免疫療法の検討と共に、TCRシグナル解析によるSCCの進行リスクの評価や、HPV特異的T細胞応答を標的とした治療戦略の開発が進むと考えられる」としている。

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ワクチンがないチクングニア熱の診療

ワクチンがないチクングニア熱の症状と治療●原因と感染経路チクングニア熱とは、チクングニアウイルスを持った蚊(ネッタイシマカ・ヒトスジシマカ)に刺されることで生じる感染症。病源体は、図のチクングニアウイルス(Chikungunya virus)。チクングニアウイルスを持っている蚊に刺されることによって感染が成立し、ヒトからヒトに直接感染することはない。●症状蚊に刺されてから3~12日の潜伏期後、「発熱」「発しん」「関節痛」などが出現。急性症状が軽快した後も、数週間~数年にわたり、リウマチに似た関節痛や腫脹、圧痛が続くことがある。●治療症状に応じた対症療法が行われ、関節痛・関節炎の程度に応じて解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)が使用される。現在有効なワクチンはない。●予防のポイントチクングニア熱の流行する地域(たとえばセネガル、インドネシア、タイ、べトナム、中国など)に渡航する際、蚊に刺されないような衣服の着用や虫除けなどの工夫が重要。国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト チクングニア熱より引用(2025年8月6日閲覧)https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/chikungunya/010/chikungunya-intro.htmlCopyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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「運」も実力のうち? 先生の人生を変える資産形成、その秘訣を解き明かす【医師のためのお金の話】第95回

世の中で成功を収めるには、「運」が不可欠だと感じています。どれほど努力を重ねても、運に見放されては大きな成功をつかむことは難しいでしょう。では、どのようにすれば「運」を味方につけることができるのでしょうか。巷には、スピリチュアルなものから論理的なものまで、幸運を引き寄せるためのさまざまな方法論が紹介されています。そして、怪しげな物品販売からセミナーまで多種多彩なモノで溢れています。何だか気持ち悪いですね。しかし、ここで言う「運が良い」というのは、宝くじに当たるといった一時的な幸運や、その日のちょっとした良い出来事を指すのではありません。私が考える「運の良さ」とは、人生を大きく変えるような変化を捉える幸運のことです。そして、資産形成においても、運の良さは必須です。えっ、資産形成なんて努力を積み重ねるものじゃないの? という声もあるかもしれませんね。しかし、私の30年近い資産形成の経験では、転機になった多くの出来事は「運」の要素が強かったと思います。たしかに、私は運の良い人間ではありますが、その運の良さは決して偶然だけで片付けられるものではありません。ここでは、資産形成で成功するための「運」をどのようにつかむかという具体的な方法論を考えてみましょう。資産形成における「運」をつかむ3つの条件資産形成において「運が良い」と評される人は、次の3つの条件を満たしています。1.タネ銭(資産の元手)がある2.チャンスに気付ける3.即断即決してチャンスをつかめる1.前提条件:まず「タネ銭」を用意するまず、大前提として「タネ銭」、つまり投資の元手となる資金があることは必須です。何も持たない状態では、たとえ目の前に絶好のチャンスが訪れても、ただ指をくわえて見ているしかありません。たとえば、非常に魅力的な不動産物件情報が出たとします。それを購入できるのは、頭金を用意できる人、すなわちタネ銭のある人なのです。いくら幸運が舞い降りても、それを受け止める土台がなければ何も始まりません。2.チャンスを見極める「気付く力」次に、「チャンスに気付く能力」も非常に重要です。たとえば、株式市場が暴落している局面でも、それを危機と捉えるか、それとも大きなチャンスと捉えるかで行動は大きく異なります。もちろん、株価が暴落するのには何らかの理由がありますが、それが企業の本質的な価値を損なう原因でないのであれば、その時点での投資はまさにチャンスをつかむことにほかなりません。このような状況が本当にチャンスなのかどうかを見極める力がなければ、何もできずに終わってしまうでしょう。この「チャンスに気付ける能力」は、成功への道を切り開くうえで不可欠です。3.躊躇しない即断即決の実行力そして最後に、「チャンスを思い切ってつかむこと」もまた重要です。タネ銭もあり、それがチャンスだとわかっていても、実際に行動を起こさなければ意味がありません。このチャンスをつかみ取るには、一種の瞬発力が必要です。もちろん、それに伴う勇気も欠かせません。この「瞬発力」と「勇気」がなければ、最終的にチャンスをものにすることはできないのです。たとえば、直近で言えば2020年3月のコロナショック。あの状況で勇気をもって飛び込んだ人は大成功したことでしょう。成功への道は、決して不可能ではない成功へとつながるチャンスをつかむための3つの要素(タネ銭、気付く力、即断即決の実行力)を挙げました。これらすべてを兼ね備えるのは意外と難しいと感じられたかもしれません。しかし、決して不可能な話ではありません。世の中に成功者が少ないのは、これらの3つの要素をすべて持ち合わせている人が少ないことの裏返しとも言えます。しかし、事前にこの事実がわかっていれば、それぞれの能力を持つための対策を講じることも可能です。単に待っているだけでは、チャンスが訪れることはありません。成功するためには、それなりの下準備が必要です。次は、あなたがチャンスをつかむ番かもしれません。この3つの条件を意識して、ご自身の「運」を引き寄せてみてはいかがでしょうか。

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中足骨の痛み・しびれ・灼熱感【日常診療アップグレード】第36回

中足骨の痛み・しびれ・灼熱感問題48歳女性。1ヵ月前から右足前部(中指と薬指の間)の痛みとしびれ、灼熱感が続くため来院した。歩行時は砂利の上を歩いているような違和感がある。既往歴はない。バイタルサインは正常。右足の第3および第4中足骨の遠位部に圧痛を認める。右足のレントゲン像は正常である。ステロイドの局所注射を行った。

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軽度認知障害は自らの努力で改善できるのか?【外来で役立つ!認知症Topics】第32回

MCIからUターンする要因軽度認知障害(MCI)とは、アルツハイマー病などの認知症の前駆状態、つまり予備軍として知られる。ところが、その4人に1人は健康な状態に戻れることも有名である。これをリバートといい、そうなる人はリバーターと呼ばれる。MCIからリバートできる要因を検討した臨床研究も少なからずある。筆者自身、10年以上前に、とても励まされた論文の記憶が残る。これは「好奇心が強いこと」「複雑な知的作業に熱心なこと」などがリバート要因であったと報告したオーストラリアの論文である1)。この種の研究はその後多くなされ、今日までにそれらのメタアナリシスも報告されている2, 3)。MCIと診断された人にとって、「自分の努力次第で改善するかもしれない」という希望は大きな励みになる。そのため、診察の場では「どうすればリバートできるのか、その要因を教えてほしい」という質問をしばしば受ける。リバート要因の現状と課題当然、われわれは患者さんに勇気を持ってもらい、実際に役立つ回答がしたいのだが、実はこれが容易でない。なぜなら、ご本人の努力や心掛けで変えられる確実な要因を伝えたいものの、まだほとんど確立されていないのである。既述した好奇心や複雑な知的作業といった要因も、知る限りではその後の研究で再確認されていない。一方で、リバートを予測する因子としてある程度確立されているのは、APOE4のような遺伝子型や、現時点での認知機能テストの成績といった、患者さん自身では変えられないものばかりだ。だがそれを教えても当事者にはあまり意味がない。以上を踏まえ、こうしたリバート要因に関する研究のメタアナリシス1, 2)を改めて整理し、臨床の場で使える要因を探ってみたい。リバート要因:4つの分類これまでに注目されてきたリバートの要因は、大きく4つに分けられる。1.身体・脳神経の医学に関わる要因2.年齢などいわゆる基本属性3.認知機能テストなど評価に関わる要因4.ライフスタイルに関わる要因1. 医学的要因まず医学的要因では、遺伝子APOE4の存在は確定しているだろう。そのほか、脳画像上の海馬容積が大きいこと、拡張期血圧が低いこと、BMIが低いこと、うつ病なども報告されているが、これらはまだ「有望な候補」といったレベルだ。2. 基本属性基本属性としては、年齢が若いこと、男性、高学歴、一人暮らしではないことなどが注目されている。興味深いことに、「一人暮らしのほうが緊張感があり、心身ともに活発になるためリバートしやすい」と考察する研究もある。しかし、個々の研究はもとより、メタアナリシスでさえも正反対の結果を示すものがあり、このような要因は確実とはいえない。たとえば、「男やもめにうじが湧き、女やもめに花が咲く」、つまり「独り暮らしの男性は家事がおろそかで不潔になりがちだが、独り暮らしの女性は清潔で華やかだ」という意味の古いことわざがあるように、一人暮らしでも性別によって結果が反対になることもありえるからである。3. 認知機能テストの成績認知機能テストに関しては、MMSEなどの得点が高いこと、あるいはMCIの中でも、複数の領域で障害が見られる「複数ドメインMCI」ではなく、1つの領域のみの障害である「シングルドメインMCI」であることが代表的要因だ。これらに関しては筆者も納得するのだが、そのことをMCI当事者に伝えても直接的な改善策にはなりにくいだろう。4. ライフスタイル要因ライフスタイルでは、規則的な家事労働が良いとする報告がある。しかし意外なことに、認知症の予防因子として知られる有酸素運動などは、リバート要因としてまだ確実とはいえないようだ。また、さすがに喫煙が良いとする報告はないが、規則的な飲酒は良いとする報告もみられる。中国の報告では、新鮮な果物の摂取、読書の習慣、マージャンなどゲームが予防的に働くという報告もある。こうした研究は興味深いが、今後の精緻な研究が待たれるだろう。以上から、残念ながらMCIの人自身が修正可能な要因は、現時点ではまだ確立されていないようだ。臨床で丁寧に伝えたい4原則今回、このMCIのリバート要因と、中年期からの難聴など、近年Lancet誌で報告された認知症のリスクファクターは重複する部分もあるが、すべて同じではないかもしれないと感じた。とはいえ、臨床の現場では、リバート要因としても、運動、栄養、休養、そして社会交流(孤独にならないこと)の4原則を伝えることが基本となるだろう。また筆者の印象ながら「MCIと診断された人は、一般の健康成人に比べて、予防に対してより切実・真摯である」ことは事実であろう。それだけに、これらの原則をより丁寧に伝えたい。また、MCIの合併症は改めて要注意だ。うつ、複雑部分発作などのてんかん、発達障害(ADHD)は合併症でもありえるが、実はMCIの主因だということもある。しかもこれらは原則的に、薬物治療によって改善する可能性があるので、忘れてはならない。終わりに近い将来、MCIのリバート要因の探索は、ビッグデータを用いてさまざまな注目要因を組み合わせ、その相互作用をAIで解析することで、大きな進歩があるかもしれない。参考1)Sachdev PS, et al. Factors predicting reversion from mild cognitive impairment to normal cognitive functioning: a population-based study. PLoS One. 2013;8:e59649.2)Xue H, et al. Factors for predicting reversion from mild cognitive impairment to normal cognition: A meta-analysis. Int J Geriatr Psychiatry. 2019;34:1361-1368.3)Zhao Y, et al. The prevalence and influencing factors of reversion from mild cognitive impairment to normal cognition: A systemic review and meta-analysis. Geriatr Nurs. 2025;63:379-387.

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第279回 経口GLP-1薬orforglipronで体重が12%ほど減少~投資家落胆

経口GLP-1薬orforglipronで体重が12%ほど減少~投資家落胆1日1回服用の経口GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)orforglipron高用量が、72週間の第III相ATTAIN-1試験で太り過ぎか肥満の患者の体重を平均12.4%減らしました1)。orforglipronはLillyが開発しています。ATTAIN-1試験には高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)、心血管疾患などの体重関連の持病を有している太り過ぎか肥満の成人3,127例が参加しました。先立つ第III相ACHIEVE-1試験は2型糖尿病患者を対象としましたが2)、今回のATTAIN-1試験に糖尿病患者は含まれません。ATTAIN-1試験のorforglipron投与群の被験者はまず全員が1mgを服用し、低(6mg)、中(12mg)、高(36mg)の3つ維持用量へと段階的に服用量を増やしました。orforglipron低、中、高用量の72週時点のベースライン時と比べた体重低下率はそれぞれ7.8%、9.3%、12.4%で、プラセボ群の0.9%低下を有意に上回り、試験の主要評価項目を達成しました。しかし競争が激しいGLP-1薬界隈では目標を達成しただけで十分とは限らず、今回の試験結果に投資家はかなり落胆したようで3)、Lillyの米国ニューヨーク証券取引所での株価は木曜日の取引で1割超下落しました。先立つ第II相試験でのorforglipron 36mg投与群の36週時点の体重は13.5%低下しました4)。第II相試験は今回の第III相試験と同様に糖尿病ではない太り過ぎか肥満の成人を募っています。現在の肥満薬市場を切り開いたNovo NordiskのGLP-1薬セマグルチドの経口剤は、64週間の第III相OASIS 4試験の解析で、多ければ16.6%の体重低下を示しています5,6)。そのような背景があって投資家の多くはATTAIN-1試験でorforglipron高用量群の体重は14~15%ほど減るだろうと期待していましたが、実際はその予想にほんの2%ばかり届きませんでした3)。糖尿病患者を募った先立つ第III相ACHIEVE-1試験に比べて安全性も若干不調なようで、10例に1例ほどの10.3%が有害事象のためにorforglipron高用量服薬を止めています。GLP-1薬につきものの胃腸症状はやはり多く、高用量投与群の4例に1例ほどの24%に嘔吐が生じました。そんなこんなでLillyの株価はだいぶ下落しましたが、過剰反応だと見る向きもあります。効果に関して議論はあるでしょうが、体重減少が2%ほど不足したばかりにorforglipronの需要に大した影響が出るかどうかは不明であり、今回の発表を受けてのLillyの株価下落は買い時だろうとアナリストの1人は言っています3)。ともあれLillyは今年中に世界の国々でのorforglipronの承認申請を始めます。Novo Nordiskのセマグルチド25mg経口薬による体重管理の開発はorforglipronに比べてだいぶ先行しており、今年2月に米国FDAにすでに承認申請されています5)。この5月初めまでにFDAはその承認申請を受理しており、審査結果は今年中に判明する見込みです7)。ちなみにATTAIN-1試験結果の発表を受けて、Novo Nordiskの株価は木曜日に7%ほど上昇しています。 参考 1) Lilly's oral GLP-1, orforglipron, delivers weight loss of up to an average of 27.3 lbs in first of two pivotal Phase 3 trials in adults with obesity / PR Newswire 2) Rosenstock J, et al. N Engl J Med. 2025 Jun 21. [Epub ahead of print] 3) Lilly's obesity pill lags Novo's Wegovy injection in key trial / Reuters 4) Wharton S, et al. N Engl J Med. 2023;389:877-888. 5) Novo Nordisk:Financial report for the period 1 January 2025 to 31 March 2025 6) Novo Nordisk:Investor presentation First three months of 2025 7) FDA accepts filing application for oral semaglutide 25 mg, which if approved, would be the first oral GLP-1 treatment for obesity / PR Newswire

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HER2+炎症性乳がん、術前アントラサイクリン上乗せは有用か?

 HER2陽性乳がんの術前療法にアントラサイクリンを追加することによるベネフィットは、無作為化臨床試験において示されなかったが、炎症性乳がんにおける有効性は明らかになっていない。HER2陽性の炎症性乳がんを対象とした後ろ向き研究の結果、術前療法でのアントラサイクリン追加は病理学的完全奏効(pCR)との関連は示されなかったものの、疾患コントロール期間の延長に寄与する可能性が示唆された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの岩瀬 俊明氏らによるBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2025年8月2日号への報告。 2014~21年に、MDアンダーソンがんセンター、IBCネットワーク関連施設、ダナ・ファーバーがん研究所にて術前療法と胸筋温存乳房切除術を受けたHER2陽性原発性炎症性乳がん患者を対象に後方視的な検討が行われた。主要評価項目はpCR率、副次評価項目には、局所・領域再発までの期間(TLRR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が含まれた。単変量解析および多変量解析が、臨床的に関連する交絡因子を調整したうえで実施された。 主な結果は以下のとおり。・対象となった101例のうち、39例はドセタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(TCHP)を受け、62例はドセタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドキソルビシン+シクロホスファミド併用療法(THP-AC)を受けた。追跡期間中央値は3.02年であった。・pCR率は治療レジメン間で有意差を認めなかった(TCHP:48.7%vs.THP-AC:53.2%、p=0.659)。・年齢とエストロゲン受容体の状態で調整した多変量ロジスティック回帰分析において、pCR率と治療レジメンの間に関連はみられなかった。・一方、多変量Cox比例ハザードモデルでは、THP-AC群においてTLRR(ハザード比[HR]:0.279、95%信頼区間[CI]:0.102~0.765、p=0.0131)およびEFS(HR:0.462、95%CI:0.228~0.936、p=0.032)が有意に良好であったが、全生存期間(OS)には差を認めなかった。

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髄外病変を有する多発性骨髄腫、CAR-T細胞vs.二重特異性抗体

 多発性骨髄腫で骨髄外に悪性形質細胞腫瘍がある場合は髄外病変(EMD)と定義され、通常は予後不良である。今回、ドイツ・University Hospital of WurzburgのMaximilian J. Steinhardtらは、再発多発性骨髄腫に有効なCAR-T細胞療法(イデカブタゲン ビクルユーセル[ide-cel]、シルタカブタゲン オートルユーセル[cilta-cel])と二重特異性抗体療法(テクリスタマブ、トアルクエタマブ)のEMDへの効果を後ろ向きに評価した結果、CAR-T細胞療法が意味のあるベネフィットをもたらす可能性が示唆された。Blood Cancer Journal誌2025年7月30日号に掲載。 本研究では、ドイツの 3 つの大学病院でide-cel、cilta-cel、テクリスタマブ、トアルクエタマブによる治療を受けた、骨に隣接しないEMD患者80例を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者は複数の前治療歴があり、すべてのコホートにおいて5〜7ラインの治療歴(中央値)があった。患者の41%以上に高リスクの細胞遺伝学的プロファイルが認められた。cilta-cel、ide-cel、テクリスタマブを投与された患者の88%超はB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とした前治療歴はなかった。・奏効率は、CAR-T細胞療法(cilta-cel:100%、ide-cel:82%)が二重特異性抗体療法(トアルクエタマブ:29%、テクリスタマブ:36%)よりも有意に高かった(p<0.0001)。・完全奏効率は、CAR-T細胞療法(cilta-cel:69%、ide-cel:41%)が二重特異性抗体療法(トアルクエタマブ:18%、テクリスタマブ:24%)よりも高かった(p=0.001)。・追跡期間中央値は12.2ヵ月で、無増悪生存期間中央値はcilta-celは未到達、ide-celは7.3ヵ月で、トアルクエタマブ(4.0ヵ月)やテクリスタマブ(2.6ヵ月)より有意に延長していた。

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インフルワクチン接種回数と認知症リスクが逆相関~メタ解析

 インフルエンザワクチン接種と認知症リスク低下との関連性については、一貫性のない結果が報告されており、この関連性は明確になっていない。台湾・Keelung Chang Gung Memorial HospitalのWen-Kang Yang氏らは、全人口および慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、血管性疾患などの認知症高リスク患者におけるインフルエンザワクチン接種と認知症リスクとの関連を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Age and Ageing誌2025年7月1日号の報告。 2025年4月6日までに公表された研究をPubMed、Embase、CENTRALよりシステマティックに検索し、ランダム効果メタ解析を実施した。バイアスリスクの評価には、ニューカッスル・オタワ尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・8件のコホート研究より993万8,696人をメタ解析に含めた。・1件を除き、メタ解析に組み込んだ研究のバイアスリスクは低かった。・インフルエンザワクチン接種は、認知症高リスク患者において認知症発症リスクの低下と関連していたが、全人口においては関連が認められなかった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.86〜1.01)。・高リスク患者においては、インフルエンザワクチン接種を2回以上受けると認知症発症リスクの低下との関連が認められた。【2〜3回接種】HR:0.84、95%CI:0.76〜0.92【4回以上接種】HR:0.43、95%CI:0.38〜0.48 著者らは「インフルエンザワクチン接種と認知症発症リスク低下との関連には、用量反応関係が認められた」と結論付けている。

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処方箋避妊法の無料化で、LARCが著増/BMJ

 処方箋に基づく避妊法は、多くの国でその費用がアクセスの障壁となっており、とくに最も効果的な避妊法とされる子宮内避妊器具や皮下避妊インプラントなどの長期作用型可逆的避妊法(long-acting reversible contraception:LARC)は、初期費用が高額なため利用度が顕著に低いとされる。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLaura Schummers氏らは、同国ブリティッシュコロンビア(BC)州では無料で処方箋避妊法へのアクセスが可能となる公的保健医療サービスの導入により、使用者が好みの方法を選択できるようになったことでLARCの使用が著しく増え、ひいては処方箋避妊法全体の増加につながったと報告した。研究の成果は、BMJ誌2025年7月28日号に掲載された。無料でない他州と比較する分割時系列解析 研究グループは、BC州において処方箋を要する避妊法の使用を無料化する公的保健医療サービスを導入する施策の効果を評価する目的で、BC州を含むカナダの全10州で住民ベースの対照比較分割時系列解析(interrupted time series analysis)を行った(カナダ健康研究所[CIHR]の助成を受けた)。 2021年4月1日~2024年6月30日に、BC州で生殖年齢(15~49歳)の女性に調剤された処方箋医薬品について、他の9州を合わせた対照群、およびBC州に居住する年齢15~49歳の住民ベースの女性コホート(処方箋医薬品の調剤の有無を問わない集団、85万9,845人)と比較した。 本研究の介入として、2023年4月1日、BC州で処方箋に基づく避妊法の費用を全額、公的保険で支払う保健医療サービスが導入された。 避妊法の使用に関して5つの評価項目について検討した。(1)LARCの月間の調剤数、(2)LARCを含むすべての処方箋避妊法の月間の調剤数、(3)LARCを使用した生殖年齢女性の割合、(4)すべての処方箋避妊法を使用した生殖年齢女性の割合、(5)処方箋避妊法の使用者のうちLARC使用者の割合(LARCの市場占有率)。導入後15ヵ月でLARC調剤数が1.49倍に BC州におけるLARCの月間調剤数は、無料化施策導入前は、2021年4月の3,249件(95%信頼区間[CI]:3,066~3,391)から2023年3月には2,841件(2,616~2,945)へと、2年間で毎月17件(-30~-7)ずつ減少したが、無料化施策導入後、ただちにLARCの月間調剤数が1,050件(95%CI:942~1,487)に増え、その後は増加した状態が堅調に続いた。 BC州の施策導入から15ヵ月後(2024年6月)の月間LARC調剤数は、無料化施策がなかったと仮定した場合の予測値よりも1,273件(95%CI:963~1,698)多く、介入によって1.49倍(95%CI:1.34~1.77)に増加した。 一方、介入のなかった対照群では、BC州での施策導入の前後でLARC調剤数の水準と傾向に大きな変化はなかった。15ヵ月後のLARC市場占有率が1.9%上昇 BC州のLARCを含むすべての処方箋避妊法の月間調剤数は、施策導入15ヵ月後に、無料化施策がなかった場合よりも1,981件(95%CI:356~3,324)増え、介入によって1.04倍(95%CI:1.01~1.07)に増加した。 また、BC州の年齢15~49歳の女性85万9,845人のうち、2021年4月の時点で9.1%がLARCを使用していた。施策導入15ヵ月後の月間LARC調剤数は、無料化施策がなかった場合の予測値よりも1万1,375件(95%CI:1万273~1万3,013)多く、人口の1.3%(95%CI:1.2~1.5)に相当する数の増加を示した。 この施策導入により、15ヵ月後のBC州の生殖年齢女性の処方箋避妊法の使用率が導入前の傾向に基づく予測値よりも1.7%(95%CI:1.5~2.3)増え、15ヵ月後のLARCの市場占有率は1.9%(1.2~2.3)上昇した。 著者は、「大規模で多様な集団を対象に無料の避妊法を提供する施策は、処方箋に基づく避妊法の使用の増加をもたらし、最も効果的な方法への移行を促した」「人口レベルでの避妊法の使用とその選択に、費用は重要な影響を及ぼすと考えられる」「ほぼすべての処方箋避妊法の無料化により、使用者が好みの方法を選択できるようになったことが、LARCの使用が著しく増えた要因と思われる」としている。

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肥満・過体重の減量に、cagrilintide/セマグルチド配合薬が高い効果/NEJM

 肥満または過体重の成人において、プラセボと比較してcagrilintide/セマグルチド配合薬(以下、CagriSema)は、有意で臨床的に意義のある体重減少をもたらし、消化器系有害事象の頻度が高いものの多くは一過性で軽度~中等度であることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のW. Timothy Garvey氏らREDEFINE 1 Study Groupが実施した「REDEFINE 1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年6月22日号で報告された。22ヵ国の第IIIa相無作為化対照比較試験 REDEFINE 1試験は、非糖尿病の肥満または過体重の成人における固定用量のcagrilintide(長時間作用型アミリン類似体)とセマグルチド(GLP-1受容体作動薬)の配合薬による減量効果の評価を目的とする第IIIa相二重盲検無作為化プラセボ/実薬対照比較試験であり、2022年11月~2023年6月に22ヵ国で参加者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 糖尿病がなく、BMI値30以上、またはBMI値27以上で少なくとも1つの肥満関連合併症を有し、減量を目的とする食事制限に1回以上失敗したと自己報告した成人を対象とした。 被験者を、CagriSema(各0.25mgで開始、4週ごとに増量して16週までに各2.4mgとし、これを維持量として52週間投与)、セマグルチド単剤(2.4mg)、cagrilintide単剤(2.4mg)、プラセボの皮下投与(週1回)を受ける群に、21対3対3対7の割合で無作為に割り付け68週間投与した。全例にライフスタイルへの介入を行った。 主要エンドポイントは、プラセボ群との比較におけるCagriSema群のベースラインから68週までの体重の相対的変化量と、5%以上の体重減少の2つであった。また、検証的副次エンドポイントとして、20%以上、25%以上、30%以上の体重減少について評価した。2つの単剤群との比較でも有意な減量効果 3,417例を登録し、2,108例をCagriSema群、302例をセマグルチド群、302例をcagrilintide群、705例をプラセボ群に割り付けた。全体の平均年齢は47.0歳、女性が67.6%で、白人が72.0%であった。ベースラインの平均体重は106.9kg、平均BMI値は37.9、平均ウエスト周囲長は114.7cmであり、最も頻度の高い肥満関連合併症は脂質異常症と高血圧症で、32.1%が糖尿病前症だった。 ベースラインから68週までの体重の推定平均変化率は、プラセボ群が-3.0%であったのに対し、CagriSema群は-20.4%と有意な減量効果を示した(推定群間差:-17.3%ポイント、95%信頼区間[CI]:-18.1~-16.6、p<0.001)。セマグルチド群の体重の推定平均変化率は-14.9%(-5.5%ポイント[-6.7~-4.3]、p<0.001)、cagrilintide群は-11.5%(-8.9%ポイント[-10.1~-7.7]、p<0.001)であり、いずれもCagriSema群のほうが有意に優れた。 また、5%以上の体重減少の達成割合は、プラセボ群の31.5%に比べCagriSema群は91.9%であり有意に高率であった(推定群間差:60.4%ポイント[95%CI:56.4~64.5]、p<0.001)。 20%以上の体重減少(53.6%vs.1.9%、p<0.001)、25%以上の体重減少(34.7%vs.1.0%、p<0.001)、30%以上の体重減少(19.3%vs.0.4%、p<0.001)の達成割合についても、CagriSema群はプラセボ群と比較し有意に優れた。 さらに、ベースラインから68週までの推定平均変化量は、ウエスト周囲長がCagriSema群-17.5cm、プラセボ群-4.0cm(p<0.001)、収縮期血圧はそれぞれ-9.9mmHgおよび-3.2mmHg(p<0.001)、SF-36の身体機能スコアは7.1点および3.6点(p<0.001)と、いずれもCagriSema群で有意に良好だった。これまでで最も高水準の減量効果 悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などの消化器系の有害事象の頻度が、プラセボ群(39.9%)に比べCagriSema群(79.6%)で高かったが、その多くが一過性で重症度は軽度~中等度であった。注射部位反応(12.2%vs.3.0%)と胆嚢関連障害(4.1%vs.1.0%)もCagriSema群で多かった。 重篤な有害事象(9.8%vs.6.1%)、恒久的な投与中止に至った有害事象(5.9%vs.3.5%)、恒久的な投与中止に至った消化器系有害事象(3.6%vs.0.6%)も、CagriSema群で多く発現した。同群で2例(自殺、原発不明がん)が死亡した。 著者は、「CagriSema群で観察された体重減少は、既存の減量介入でこれまでに達成されたものの中で最も高い水準にある」「プラセボ群に比べ同群では糖化ヘモグロビン値も改善しており、これはベースライン時に糖尿病前症であった集団における血糖値が正常化した患者の割合(87.7%vs.32.2%)に反映している」「同群では、体重減少が最大値に到達する前に血圧の改善が起き、68週まで持続しており、降圧の程度は降圧薬の臨床試験に匹敵するものだった」としている。

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免疫介在性炎症性疾患患者のCVDによる死亡率は、男性よりも女性の方が高い

 免疫介在性炎症性疾患(IMID)患者の心血管疾患(CVD)による死亡率は1999年から2020年にかけて低下したが、死亡率の男女差が依然として認められることを示したリサーチレターが、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に5月5日掲載された。 米クリーブランド・クリニックのIssam Motairek氏らは、米疾病対策センター(CDC)が提供している1999~2020年の複合死因(Multiple Cause of Death)データを用い、基礎疾患としてIMIDを有する患者のCVD関連死を特定し、死亡率の男女差を検討した。IMID関連死28万1,355件から、CVD関連死12万7,149件を抽出して分析した。 解析の結果、粗死亡率は、女性では10万人当たり1999年の3.9人から2020年の2.1人に、男性では1.7人から1.2人に低下した。年齢調整死亡率は、女性では10万人当たり3.3人から1.4人に、男性では2.3人から1.1人に低下した。CVDの死亡率に見られる典型的な男女差とは対照的に、研究期間全体を通して女性における死亡率が男性よりも有意に高かった(死亡率比1.5)。1999年から2020年にかけて死亡率は男女ともに有意に低下したが、一貫して女性の方が高く、この差は縮小しつつも持続し、追跡調査の最終年でも有意であった。コホート内の主な死因は虚血性心疾患および脳血管疾患であり、いずれもIMIDを有する女性に不均衡に影響を与えていた。 米ケース・ウェスタン・リザーブ大学およびクリーブランド・クリニックLerner College of Medicineの上席著者Heba S. Wassif氏は、「われわれの研究は、免疫介在性炎症性疾患の患者では心血管疾患が深刻な負荷となっており、特に女性に対し不均衡に影響を与えていることを浮き彫りにしている。診断時に加え、それ以降も定期的に心血管リスク因子をスクリーニングし、早期に対応することが極めて重要である」と述べている。

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早過ぎる子どものスマホデビューは心の発達に有害

 子どもの心身の健康を大切に思うなら、子どもがティーンエイジャーに成長するまではスマートフォン(以下、スマホ)は与えないほうが良いかもしれない。新たな研究で、18~24歳の若者のうち13歳未満でスマホを与えられた人では、自殺念慮、攻撃性、現実からの乖離感、感情調節困難、自己肯定感の低下などのリスクが高いことが示された。米Sapien LabsのTara Thiagarajan氏らによる詳細は、「Journal of Human Development and Capabilities」に7月20日掲載された。 Thiagarajan氏は、「われわれのデータは、早期からのスマホの所持と、それに伴うソーシャルメディアの利用が、成人期早期の心の健康とウェルビーイングに大きく影響することを示している」とジャーナルの発行元であるTaylor & Francis社のニュースリリースの中で話している。その上で、「当初は研究結果が強力であることに驚いた。しかし、よく考えてみれば、発達段階にある若い心は、その脆弱性や人生経験の少なさからオンライン環境からの影響を受けやすいというのは当然のことかもしれない」と述べている。 Thiagarajan氏らは今回、現代社会がメンタルヘルスに与える影響を評価することを目的としたグローバル・マインド・プロジェクト(Global Mind Project)の一環として、世界の10万人以上の若年成人のデータを分析した。参加者は、社会的、感情的、認知的、身体的なウェルビーイングの状態を示す「心の健康指数(Mind Health Quotient ;MHQ)」を評価するための質問票に回答していた。本研究では、1997~2012年に生まれ、幼少期からスマホとソーシャルメディアのある環境で育った「Z世代」に着目して解析を行った。 その結果、13歳になる前からスマホを所持していた若年成人は、13歳以降にスマホを持つようになった人と比べてMHQ(Mental Health Quotient)のスコアが低く、自殺念慮に加えて、攻撃性や現実からの乖離感、幻覚などの深刻な症状が多く報告されていた。こうした傾向は、スマホを所持し始めた年齢が低いほど顕著であった。例えば、5、6歳でスマホを持つようになった女性の約半数(48%)が自殺念慮を報告していたのに対し、13歳時からスマホを持ち始めた女性ではその割合は28%にとどまっていた。さらに、低年齢時からスマホを持っていた女性は、セルフイメージや自己肯定感が低く、自信がなく、感情面のレジリエンス(立ち直る力)も弱い傾向が認められた。一方、低年齢時からスマホを持っていた男性では、精神的な安定性や自己肯定感、共感力が低い傾向が見られた。 これらの結果の原因を探ったところ、低年齢からのスマホの所持と早期成人期のメンタルヘルス状態の悪化との関連の約40%は早期のソーシャルメディア利用により説明できることが示された。また、ネットいじめ(10%)、睡眠の乱れ(12%)、不良な家族関係(13%)などもメンタルヘルス悪化の要因として挙げられた。 Thiagarajan氏は、「これらの結果とともに、世界各国で初めてスマホを手にする年齢が13歳未満となっている現状を踏まえ、われわれは政策立案者に飲酒や喫煙と同様の予防的アプローチを採用することを強く要求する。具体的には、13歳未満でのスマホ利用の制限、デジタルリテラシー教育の義務化、企業の説明責任の徹底を求める」と提言している。 なお、Thiagarajan氏によると、フランス、オランダ、イタリア、ニュージーランドなどでは、すでに学校でのスマホ使用を禁止または制限しているという。また米国でも、州によっては学校でのスマホの使用を制限または禁止する法律が可決されている。

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第255回 「専門医シーリング」、医師の偏在解消に効いてる?-偏在是正と医師のキャリアを読み解く

お盆休みに入り、のんびり過ごされている会員の先生も多いかと思いますが、今回は医師の偏在を左右するお話についてお届けします。さて、「専門医シーリング」って聞くと当事者の専攻医や研修医以外には関係がない印象がありますが、実は医師の働き方や進路に直結する重要な制度です。最近の審議会資料をもとに、医師偏在やキャリア形成の今後を一緒にのぞいてみましょう。同じ診療科にどれだけ残る? 男女差が見える「生残率」最初は、7月24日に開かれた医道審議会医師分科会医師専門研修部会で示された「診療科別生残率」や「病院・診療所勤務医師の平均勤務時間」です。これらは厚生労働科学特別研究「専門研修の募集定員設定のための都道府県別・診療科別の医療ニーズの算出に係る研究」の結果から引用されており、各診療科の医師の労働時間、専門医としてどれくらい同じ診療科を続けられるかという興味深いものでした。ここで述べられている診療科別生残率とは、医籍登録から3年後をスタートにして、「この診療科に何年残っているか」を年ごとに追ったもので、医師のキャリア選択と定着の実態を示唆する重要な指標となります。男女別に比較すると、生残率には顕著な差が見られており、とくに女性医師の離脱率の高さが一部の診療科では顕著であることが読み取れます(図1、2)。図1 診療科別生残率(男性)画像を拡大する図2 診療科別生残率(女性)画像を拡大するまず、外科系診療科(外科、整形外科、脳神経外科など)では、男性の生残率が比較的高いのに対し、女性はキャリア早期から離脱する傾向があり、登録後5〜10年で大きく低下する傾向があります。これには、当該診療科の医師の長時間労働や当直の頻度、技術習得のハードルの高さなどが背景にあると考えられます。加えて、外科系は男性医師が多いことから、女性にとって目標となるようなロールモデルが乏しく、育児や家庭を抱えながらキャリアを継続する意欲が阻害される環境要因も影響していると考えられます。その一方で、皮膚科や眼科、小児科などでは男女の生残率に大きな差が少なく、むしろ女性の方が高くなる診療科もあります。これらの診療科は、比較的勤務時間が安定しており、子育てや家庭生活との両立が可能とされるため、女性医師にとって継続しやすい職場環境が整っている可能性があります。近年では女性医師の数自体が増加しており、女性向きの診療科を選択をする傾向をさらに強めていると考えられます。興味深いのは、内科も例外ではなく、男女差が見られる点です。女性は一定期間までは生残率が高いものの、10年以降に大きく減少します。これは、内科領域でも勤務時間や責任の重さが影響していることに加え、専門医取得後に勤務形態の見直しや転科、開業を選択するケースがあるためと考えられます。このような傾向を踏まえると、専門医シーリング制度を運用する際には、単に医師数の需給だけでなく、性別による定着率の違いを考慮することが不可欠であると思われます。とくに女性医師のキャリア継続支援(時短勤務や復職支援、当直負担軽減など)は、診療科ごとの医師数の安定供給を図る上で欠かせない政策的課題といえるでしょう。医学部定員と専門医シーリングの今後次は8月6日に開催された「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」の『医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針等について』です。35歳未満医師数の割合と医師偏在指標(図3)を見ると、都道府県別の医療施設従事医師数に占める35歳未満医師数の割合では、栃木、千葉、東京、岡山、和歌山が高く、医師多数県であっても熊本、徳島は15%未満と低くなっています。図3 35歳未満医師数の割合と医師偏在指標画像を拡大するこのような医師偏在の対策の一環として導入された医学部の臨時定員制度は、今後も地域偏在の是正と専門医制度の地域定着強化のため、運用の見直しと恒久定員内での地域枠強化が図られる見通しです。とくに女性医師の働き方と都市部への若手集中という2つの課題は、制度設計において避けて通れない論点となっています。女性医師への配慮として、将来の出産・育児などによる勤務形態の変化や離職を前提としたキャリア設計が重要です。検討会では、恒久定員内への地域枠導入の加速が示されていますが、女性医師の地域定着率を高めるためには、地元出身女性を対象とした地域枠や、地域に戻りやすい仕組み作りがカギとなりそうです。たとえば柔軟な研修や、地元での復職を後押しする制度などがあると、安心して戻れるはずです。一方、若手医師の都市集中は依然として解消が難しい問題であり、現行の専門医シーリング制度では東京や大阪などの「医師多数県」において募集定員を制限する方針が維持される見通しです。今後のシーリング枠の改定で、足下の医師数に加えて「35歳未満医師割合」や「75歳以上医師割合」といった年齢構成指標を取り入れる方針が示されており、若手の集中度が高い都道府県では、より厳格な定数制限が導入される可能性があります。また、資料からは、医師多数県から医師少数県への「恒久定員の移し替え」や「地元大学を持たない県への大学間地域枠の設置」が打ち出されており、都市部に集まりやすい若手医師の進路誘導が進められる見込みです。さらに、都道府県知事が大学に地域枠設置を要請できる法制度がすでに整備されており、今後はより強制力を伴う運用が想定されます。総じて、今後のシーリング制度と医学部定員政策は、(1)女性医師のキャリア継続支援と、(2)若手医師の地域定着強化を両輪として再構築されていくことになります。今後、女性医師の働き方の多様化や、若手医師の都市集中といった課題に向き合う制度設計が求められます。とくに、専門医制度や人事交流を通じて、「地域で育て、地域で活躍できる」そんなキャリアの選択肢がもっと広がれば、働き方も未来も変わってくるかもしれません。 参考 1) 2025年度プログラム募集シーリング数(日本専門医機構) 2) 令和9(2027)年度のシーリングについて[医道審議会医師分科会医師専門研修部会](厚労省) 3) 厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)令和6年度 総括研究報告書 専門研修の募集定員設定のための都道府県別・診療科別の医療ニーズの算出に係る研究(同) 4) 医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針等について(同)

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40歳男性が健康診断で肝酵素上昇、適切な対応は?【腕試し!内科専門医バーチャル模試】

40歳男性が健康診断で肝酵素上昇、適切な対応は?40歳の男性。自覚症状はないが、健康診断で肝酵素の上昇を指摘された。血液検査は総ビリルビン 1.2mg/dL、AST 420IU/L、ALT 310IU/L、Alb 4.0g/dL、PT 1.0。昨年度の検査ではHBs抗原が陰性であったが、今年度はHBs抗原が陽性となった。HCV抗体は陰性である。

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耳鼻咽喉科ニューフロンティア -近未来医療を手にする

最新のエビデンスとサイエンスに基づく耳鼻咽喉科の臨床基準書「プラクティス耳鼻咽喉科の臨床」第7巻耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域で現在臨床現場に普及しつつある検査・診断・治療の最前線を中心に、さらに実験段階を終え臨床研究に入り将来が期待できる医療、ポストコロナ診療、医療DX、AI診療などにおいて第一線で活躍する執筆陣80名が解説。「感覚器医療・コミュニケーション医療」「QOL、生命維持」「診療支援」「医療DX」の機能的なカテゴリーに分けて構成。いま始まりつつある近未来の耳鼻咽喉科診療が1冊に。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する耳鼻咽喉科ニューフロンティア -近未来医療を手にする定価13,200円(税込)判型B5判(並製)頁数336頁発行2025年5月総編集・専門編集大森 孝一(京都大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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