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EGFR陽性NSCLC、術前オシメルチニブの有用性は?(NeoADAURA)/ASCO2025

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)において、術前補助療法が治療選択肢となっているが、EGFR遺伝子変異陽性例では病理学的奏効(MPR)がみられる割合が低いと報告されている。そこで、術前補助療法としてのオシメルチニブ±化学療法の有用性を検討する国際共同第III相試験「NeoADAURA試験」が実施されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Jamie E. Chaft氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、本試験のMPRの最終解析結果と無イベント生存期間(EFS)の中間解析結果を報告した。本試験において、オシメルチニブ+化学療法、オシメルチニブ単剤は化学療法と比べてMPRを改善したことが示された。本結果はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された1)。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:EGFR遺伝子変異(exon19欠失変異またはL858R変異)陽性の切除可能なStageII~IIIB(AJCC第8版)のNSCLC患者・試験群1(オシメルチニブ+化学療法群):オシメルチニブ(80mg、1日1回、9週以上)+カルボプラチン(AUC5、3週ごと3サイクル)またはシスプラチン(75mg/m2、3週ごと3サイクル)+ペメトレキセド(500mg/m2、3週ごと3サイクル)→手術→医師選択治療 121例・試験群2(オシメルチニブ単剤群):オシメルチニブ(同上)→手術→医師選択治療 117例・対照群(化学療法群):カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド(いずれの薬剤も同上)→手術→医師選択治療 120例・評価項目:[主要評価項目]MPR[副次評価項目]EFS、病理学的完全奏効(pCR)、N因子のダウンステージング、安全性など 主な結果は以下のとおり。・全体として女性の割合が高く、オシメルチニブ+化学療法群60%、オシメルチニブ単剤群65%、化学療法群75%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、それぞれ50%/50%、/51%/49%、51%/49%であった。StageII/IIIの割合は、それぞれ49%/51%、50%/50%、51%/49%であり、N因子がN2の割合は、それぞれ39%、35%、34%であった。・手術施行割合は、オシメルチニブ+化学療法群92%、オシメルチニブ単剤群97%、化学療法群93%であり、R0切除は、それぞれ91%、95%、93%であった。いずれの群でも完全切除に至った患者の91%が、術後補助療法でオシメルチニブの投与を受けた。・主要評価項目のMPR割合は、オシメルチニブ+化学療法群26%、オシメルチニブ単剤群25%、化学療法群2%であり、化学療法群と比較してオシメルチニブ+化学療法群(オッズ比:19.8、95%信頼区間[CI]:4.6~85.3、p<0.0001)、オシメルチニブ単剤群(同:19.3、1.7~217.4、p<0.0001)が有意に良好であった。いずれのサブグループにおいても、オシメルチニブ使用群が良好な傾向にあった。・pCR割合は、オシメルチニブ+化学療法群4%、オシメルチニブ単剤群9%、化学療法群0%であった。・ベースライン時にN2であった患者集団において、ダウンステージングが認められた割合は、オシメルチニブ+化学療法群53%、オシメルチニブ単剤群53%、化学療法群21%であった。・12ヵ月EFS率は、オシメルチニブ+化学療法群93%、オシメルチニブ単剤群95%、化学療法群83%であり、化学療法群と比較してオシメルチニブ+化学療法群(ハザード比[HR]:0.50、99.8%CI:0.17~1.41、p=0.0382)、オシメルチニブ単剤群(HR:0.73、95%CI:0.40~1.35)が良好な傾向にあった。しかし、中間解析時の有意水準は0.002であり、統計学的に有意な差ではなかった。本解析時点の成熟度は15%であり、今後も解析が継続される。・術前補助療法において、Grade3以上の有害事象の発現割合は、オシメルチニブ+化学療法群36%、オシメルチニブ単剤群13%、化学療法群33%であった。治療中止に至った有害事象は、それぞれ9%、3%、5%に発現した。 本結果について、Chaft氏は「EGFR遺伝子変異陽性の切除可能なStageII~IIIBのNSCLC患者の治療戦略に、オシメルチニブ±化学療法を組み込むことを検討すべきであることが示された」とまとめた。

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高齢者の不安症状に最も効果的な薬剤クラスは?

 不安とその障害は、高齢者で頻繁にみられる症状である。高齢者における精神薬理学的治療リスクを考慮すると、不安のマネジメントに関する臨床的意思決定は、入手可能な最も強力なエビデンスに基づき行われるべきである。カナダ・マックマスター大学のSarah E. Neil-Sztramko氏らは、高齢者における不安の薬物療法に関するエビデンスを包括的に統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet. Psychiatry誌2025年6月号の報告。 2024年4月23日までに公表された研究をMEDLINE、Cochrane Central、Embase、PsycINFO、CINAHLよりシステマティックに検索した。対象研究は、高齢者(60歳以上、平均年齢65歳以上またはこれらの基準を満たすサブグループ解析)における不安に対する薬物療法に関するランダム化比較試験とした。主要アウトカムは、不安症状の軽減、治療反応、寛解とした。連続変数は標準化平均差(SMD)、二値変数は絶対差とリスク比(RR)を算出した。バイアスリスクの評価にはCochrane Risk of Biasツール、エビデンスの確実性の評価にはGRADEを用いた。本研究の実施には、経験を有する人たちが関与した。 主な結果は以下のとおり。・適格研究19件、2,336例(女性:1,592例[68.15%]、男性:722例[30.91%]、性別不明:22例[0.94%])が特定された。・人種または民族について報告した研究は8件のみ、大部分の対象は白人であった(1,428例中1,309例[91.6%])。性別に関するアウトカムを報告した研究はなかった。・抗うつ薬使用群は、不安症状の軽減において、プラセボ群または待機リスト対照群と比較し、より効果的であった(SMD:−1.19、95%CI:−1.80〜−0.58)。エビデンスの確実性は中程度、異質性は顕著であった(I2=92.34%、p<0.0001)。・抗うつ薬群は、治療反応または寛解においても、プラセボ群または待機リスト対照群と比較し、より効果的であった(相対リスク:1.52、95%CI:1.21〜1.90、絶対差:1,000人当たり146人、95%CI:59〜252)。エビデンスの確実性は低く、異質性も低かった(I2=8.09%、p=0.36)。・計画されたサブグループ解析では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SMD:−1.84、95%CI:−2.52〜−1.17)は、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SMD:−0.46、95%CI:−0.65〜−0.27)と比較し、不安症状の軽減効果が大きかった。しかし、治療反応率または寛解率には差が認められなかった。・ベンゾジアゼピン系薬剤使用群は、プラセボ群と比較し、不安症状を軽減する可能性はあるが、エビデンスの確実性は非常に不確実であり、バイアスリスクも高かった。・主要アウトカムに関する他の薬剤クラスのメタ解析は実施できなかった。 著者らは「抗うつ薬は、高齢者の不安症状軽減に対して効果的であり、安全性および忍容性を裏付けるエビデンスも認められた。一方、ベンゾジアゼピン系薬剤の有効性、安全性に関するエビデンスは弱かった」とし「これらの知見は、高齢者の不安症状治療において、エビデンスに基づく診療指針となりうる」としている。

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災害時にLINEを活用し糖尿病患者の命を守る/糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第68回年次学術集会(会長:金藤 秀明氏[川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授])が、5月29~31日の日程で、ホテルグランヴィア岡山をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「臨床と研究の架け橋 ~translational research~」をテーマに、41のシンポジウム、173の口演、ポスターセッション、特別企画シンポジウム「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 地震や洪水などの自然災害が発生した場合、糖尿病患者、とくにインスリン依存状態の患者はインスリンの入手などに困難を来し、生命の危機に直面するケースが予想され、災害時に患者の様子や不足する薬剤をいかに把握するかが、課題となっている。 そこで本稿では「口演62 災害医学」から「糖尿病患者に対するLINEによる双方向性の情報伝達システムの構築」(演者:西田 健朗氏[熊本中央病院糖尿病・内分泌・代謝内科])をお届けする。災害時に困る患者の居場所、健康状態の把握の一助となるLINE 2016年に発生した熊本地震を経験した熊本中央病院の西田氏が JADEC DiaMAT推進委員会を代表して、災害時に役立てることができるLINEを利用した双方向情報伝達システムの構築について口演を行った。 日本糖尿病協会(JADEC)と日本糖尿病学会は協働して、自然災害などから糖尿病患者を守る取り組みを強化している。具体的には、糖尿病医療支援チーム(DiaMAT:Diabetes Medical Assistance Team)を創設し、災害発生時に災害派遣医療チーム(DMAT)などの後方支援や被災者への直接支援などを行う体制の構築を目指している。 この災害時の情報伝達体制構築の一環として、わが国で普段から広く使用されている通信アプリ“LINE”を基盤にしてシステムを構築した。システムでは、アカウント管理の簡便性からJADEC本部のアカウントのみを作成し、患者が登録していく方式で双方向の情報伝達を行っている。LINEにはインスリン依存状態の患者などから登録をしてもらい、氏名や住所などの個人情報や自分の病状、かかりつけ医療機関や処方薬局などを細かく入力してもらうようにした。 2025年5月28日現在で1,517人の患者などが登録しており、登録に際しては使用しているインスリンの入力ができる。災害時には、必要なインスリンやデバイスなどの情報をJADEC事務局に連絡することができ、JADEC事務局は位置情報で患者の位置を把握、インスリンやデバイスの搬送での活用が期待されている。 実際にこうした情報システムが稼働するのか、患者のニーズを満たしているのかの検証を西田氏らは、2024年9月1日(防災の日)に訓練として行った。 LINE登録者約300人中87人、医師5人が訓練に参加し、登録者が事務局との双方向通信を行った。訓練では、登録者のLINE操作や事務局の内容確認が行われたほか、必要により個別の質問には医師が対応した。 訓練後のアンケートについて、「登録者の満足度」は5点中4.15点であり、「このLINEを紹介したい」は5点中4.44点であり、肯定的な意見が多数を占めていた。また、登録者の自由記載では、「使われている言葉が難しい」「インスリンの入手について安心材料になった」などの課題や感想を聞くことができた。 西田氏は、「今後はさらにLINEシステムを向上させ患者の位置情報から、災害時に患者へ必要なインスリンや治療薬を届けることができるようにシステム構築を進めていく」と展望を語った。

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術前療法でリンパ節転移陰転の乳がん、照射は省略できるか/NEJM

 乳がん治療では、病理学的に腋窩リンパ節転移陽性の患者における領域リンパ節照射の有益性が確立しているが、術前補助化学療法後に病理学的にリンパ節転移なし(ypN0)の患者でも有益かは不明だという。米国・AdventHealth Cancer InstituteのEleftherios P. Mamounas氏らは、無作為化第III相試験「NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験」において、術前補助化学療法後に腋窩リンパ節転移陰性となった患者では、術後補助療法として領域リンパ節照射を追加しても、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のリスクは低下しないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年6月5日号で報告された。7ヵ国の無作為化第III相試験 NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験は、日本を含む7ヵ国で実施され、2013年8月~2020年12月に参加者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 臨床病期T1~T3 N1 M0の切除可能な乳がんで、生検で病理学的に腋窩リンパ節転移陽性と確認され、標準的な術前補助化学療法(アントラサイクリン系またはタキサン系[あるいはこれら両方]をベースとするレジメン)を8週間以上受け、HER2陽性例は抗HER2療法も受けており、手術時に病理学的に腋窩リンパ節転移陰性(ypN0)であった患者を対象とした。 被験者を、領域リンパ節照射(総線量50 Gy、25分割)を受ける群、またはこれを受けない群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のない期間(浸潤性乳がん無再発期間)であり、副次評価項目は、局所・領域リンパ節無再発期間、無遠隔再発期間、無病生存期間、全生存期間などとし、安全性の評価も行った。副次評価項目にも有意差はない 1,641例を登録し、照射群に820例、非照射群に821例を割り付けた。全体の年齢中央値は52歳(四分位範囲:44~60)で、40.3%が50歳未満であった。59.9%が臨床的T2腫瘍(腫瘍径2~5cm)、53.2%がホルモン受容体陽性、56.7%がHER2陽性で、79.0%がトリプルネガティブまたはHER2陽性のがんであった。78.2%で病理学的完全奏効(乳房とリンパ節)が得られ、57.7%が乳房の部分切除術、42.3%が全摘術を受け、55.4%でセンチネルリンパ節生検が行われた。 1,556例(照射群772例、非照射群784例)を主解析の対象とした。追跡期間中央値59.5ヵ月の時点で、主要評価項目のイベントは109件発生した(照射群50件[6.5%]、非照射群59件[7.5%])。領域リンパ節照射は、浸潤性乳がん無再発期間の有意な延長をもたらさなかった(ハザード比[HR]:0.88[95%信頼区間[CI]:0.60~1.28、p=0.51])。 また、主要評価項目のイベントのない生存率の点推定値は、照射群が92.7%、非照射群は91.8%であった。 照射群では、局所・領域リンパ節無再発期間(HR:0.57[95%CI:0.21~1.54])、無遠隔再発期間(1.00[0.67~1.51])、無病生存期間(1.06[0.79~1.44])、全生存期間(1.12[0.75~1.68])についても、改善効果はみられなかった。Grade3の放射線皮膚炎は5.7% プロトコールで規定された治療関連の死亡の報告はなく、予期せぬ有害事象は認めなかった。Grade4の有害事象は、照射群で0.5%、非照射群で0.1%に、Grade3はそれぞれ10.0%および6.5%に発現した。最も頻度の高いGrade3の有害事象は放射線皮膚炎で、照射群の5.7%、非照射群でも3.3%に発現した。 著者は、「本試験は、生検で腋窩リンパ節転移が確認された患者では、術前補助化学療法でypN0に達した場合に、領域リンパ節照射を行っても、5年後の腫瘍学的なアウトカムは改善しないことを示している」「これらの結果は、術前補助化学療法を受けた患者ではリンパ節の病理学的な反応に基づいて領域リンパ節照射の実施を決められるという治療戦略への転換を支持するものである」「長期的なアウトカムの評価のために追跡調査を継続中である」としている。

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ブロークンハート症候群による死者数は依然として多い

 「ブロークンハート症候群」と聞くと、深い喪失感から心が打ちひしがれるといったロマンチックなおとぎ話をイメージするかもしれない。しかし、正式には「たこつぼ型心筋症(Takotsubo cardiomyopathy;TC)」と呼ばれるこの疾患は、高い死亡率や合併症の発生率に関連しており、こうした状況は改善していないことが、米アリゾナ大学サーバー心臓センター臨床教授のMohammad Reza Movahed氏らによる研究で示された。詳細は、「Journal of the American Heart Association」に5月14日掲載された。 TCは、大切な存在との死別や離婚などの精神的あるいは肉体的にストレスフルな出来事がきっかけでストレスホルモンの分泌量が急増し、それに対する反応として発症すると考えられている。研究グループによると、TCでは心臓の一部が一時的に肥大してポンプ機能が十分に働かなくなるため、短期的な心不全や心臓に関連した死亡のリスクが高まるという。 Movahed氏らは今回、全米の病院の医療記録を用いて、2016年から2020年にTCにより入院した18歳以上の患者の死亡率と合併症について調べた。 その結果、この期間に19万9,890人がTCにより入院していたと推定された。発症時の平均年齢は67.09歳で、83%が女性であった。TCの発症率は61歳以上の人で最も高く、また46~60歳の人では31~45歳の人と比べて3倍もリスクが高かった。診断件数が継続的に増加している傾向は見られなかったが、全体的には2016年の3万9,015例から2020年には4万1,290例に増加していた。 TCの主な合併症のうち発生頻度が高かったのは、うっ血性心不全(35.93%)、心房細動(20.79%)、心原性ショック(6.66%)、脳卒中(5.38%)、心停止(3.42%)であった。また、TCのない患者と比べて、TC患者では合併症発生のオッズが、心原性ショックで12.71倍、心停止で4.79倍、心不全で3.52倍、脳卒中で2倍、心房細動で1.43倍高いことも示された。 死亡率については、TCがない患者の2.41%に対してTC患者では6.58%と約3倍高かった。さらに、TC患者は女性が大多数を占めるものの、この疾患は特に男性に重い負担を強いており、TCによる死亡率は、女性が5.5%であるのに対し男性では11.2%と女性の2倍以上であることが示された。 Movahed氏は、「TCによる死亡率は比較的高く、5年間の研究期間中に有意な変化はなかった。また、院内合併症の発生率も高かった。これらの結果にはわれわれも驚いた。死亡率が高い状態が続いていることは気がかりであり、より良い治療法と新たな治療アプローチを明らかにするため、さらなる研究を行う必要がある」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースの中で述べている。

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多疾患併存はうつ病リスクを高める?

 慢性疾患との闘いは人を疲弊させ、うつ病になりやすくするようだ。新たな研究で、長期にわたり複数の慢性疾患を抱えている状態(多疾患併存)は、うつ病リスクの上昇と関連することが明らかにされた。リスクの大きさは慢性疾患の組み合わせにより異なり、一部の組み合わせでは特にリスクが高くなることも示されたという。英エディンバラ大学一般診療学分野教授のBruce Guthrie氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に5月13日掲載された。 Guthrie氏らは、UKバイオバンク研究参加者のうち、ベースライン時に1つ以上の慢性疾患を有していた37〜73歳の成人14万2,005人のデータを、69種類の慢性疾患の有無に基づき分類した。次いで、4種類のクラスタリング手法を比較検討し、最適と判断されたモデルを選定した。その後、ベースライン時にうつ病の既往のなかった14万1,011人(うち3万551人はベースライン時に身体疾患のなかった対照)を対象に、多疾患併存の特徴による分類(クラスター)ごとに、その後のうつ病発症との関連を比較検討した。 平均6.8年に及ぶ追跡期間中に、5,904人(4.2%)がうつ病を発症していた。心疾患や糖尿病などの心代謝疾患を多く含むクラスターは全対象者に占める割合が特に高く、全体の15.5%、女性では19.7%、男性では24.2%に上った。うつ病発症のハザード比は、加齢黄斑変性・糖尿病での1.29から、極めて多岐にわたる慢性疾患での2.42(女性2.67、男性2.65)までの範囲であり、ほとんどのクラスターで身体疾患のない人と比べて高かった。対象者全体で顕著なリスク上昇が見られたのは、片頭痛(同1.96)、呼吸器疾患(同1.95)、心血管疾患・糖尿病(同1.78)などであった。男女別で分けて見ると、セリアック病などの消化器疾患は男女の双方で(男性:同2.06、女性:同1.83)、心血管疾患・慢性腎臓病・痛風は男性において(同1.87)うつ病リスクを大幅に上昇させていた。一方、女性では、関節や骨の健康問題がうつ病リスクを大幅に上昇させていた(同1.81)。 Guthrie氏は、「医療では身体的健康と精神的健康を全く別のものとして扱うことが多いが、この研究は、身体疾患を持つ人におけるうつ病の発症をより適切に予測し、管理する必要があることを示している」と述べている。 一方、論文の筆頭著者であるエディンバラ大学のLauren DeLong氏は、「身体的健康状態とうつ病の発症の間には明確な関連が見られたが、この研究はまだ始まりに過ぎない。本研究結果が他の研究者にも刺激を与え、身体的健康状態と精神的健康状態の関連性を調査・解明するきっかけになることを期待する」と述べている。

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マウステーピングは睡眠の質を改善する?

 最近、ソーシャルメディアを席巻しているトレンドの一つであるマウステープの使用について、残念な研究結果が報告された。睡眠時にテープなどで口を閉じた状態にすること(マウステーピング)は、口呼吸を防いで鼻呼吸をサポートし、口腔内の乾燥を防ぎ、いびきや睡眠時の一時的な呼吸停止(睡眠時無呼吸)を防ぐことで睡眠の質を高めるとされている。しかし新たな研究で、マウステーピングが実際に睡眠の質の改善に有効であることを示すエビデンスは限定的であり、場合によっては窒息のリスクを高める可能性のあることが明らかにされた。ロンドン健康科学センター(カナダ)耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野のBrian Rotenberg氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に5月21日掲載された。 女優のグウィネス・パルトローはInstagramでマウステープについて、「これはおそらく最近見つけた中で最高の健康ツールだわ。一晩中、鼻呼吸をすると、体内がアルカリ性に傾き、質の高い睡眠を促すそうよ」と述べたことをUs Weeklyは伝えている。しかしRotenberg氏は、「ソーシャルメディアで大量に喧伝されているマウステーピングの効果はエビデンスに乏しく、重度の鼻詰まりの人には有害な影響さえもたらす可能性がある」と述べている。 この研究では、1999年2月から2024年2月の間に発表されたマウステーピングの効果に関する既存の研究から10件の研究を抽出し、そのレビューが行われた。これらの研究では、サージカルテープやマウスピースなどさまざまな器具を用いたマウステーピングが検討されており、対象者の総計は213人に上った。 その結果、マウステーピングが無呼吸低呼吸指数(AHI)や酸素飽和度低下など睡眠時無呼吸の指標に対して統計学的に有意な改善を示した研究は、10件中わずか2件にとどまることが明らかになった。それ以外の研究では、マウステーピングの効果は何も確認されず、それどころか、鼻づまりがある状態でマウステーピングを行うと窒息のリスクが生じる可能性のあることが示唆されていた。 研究グループは、「例えば、花粉症や風邪、鼻中隔湾曲、扁桃腺肥大などの症状がある人は、鼻から十分な酸素を取り込めないため口呼吸をしている可能性がある」と指摘している。また、マウステーピングにより口が閉じられていると、睡眠中に嘔吐した際に吐瀉物で窒息する危険性もあるとしている。 その上で研究グループは、「マウステーピングは、有名人が推奨することの多い現代的な習慣だが、その効果は必ずしも科学的に証明されたものではない。マウステーピングに適さない人も多く、場合によっては深刻な健康被害のリスクにつながる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。 一方で研究グループは、「本研究で対象とした研究は一貫して高品質ではなかったため、さらなる調査が必要だ」とも述べている。

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静脈血栓塞栓症のリスクが低い経口避妊薬「スリンダ錠28」【最新!DI情報】第41回

静脈血栓塞栓症のリスクが低い経口避妊薬「スリンダ錠28」今回は、経口避妊薬「ドロスピレノン(商品名:スリンダ錠28、製造販売元:あすか製薬)」を紹介します。本剤は単剤型プロゲスチン製剤であり、従来の混合型経口避妊薬よりも静脈血栓塞栓症のリスクが少なく、深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往、喫煙者、肥満者、高血圧や弁膜症を有する患者などに対して推奨度が高い避妊薬です。<効能・効果>避妊の適応で、2025年5月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1錠を毎日一定の時刻に白色錠から開始し、指定された順番に従い28日間連続経口投与します。以上28日間を投与1周期とし、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。なお、服用開始日は、経口避妊剤を初めて服用する場合、月経第1日目から開始します。<安全性>副作用として、不正性器出血(月経中間期出血、異常子宮出血)(89.9%)、下腹部痛(13.4%)、月経異常(過少月経、過長過多不規則月経、重度月経出血)(14.9%)、頭痛(16.3%)、腹痛(12.3%)、乳房不快感、悪心、下痢、ざ瘡(いずれも5%以上)、無月経、卵巣嚢胞、子宮頸部上皮異形成、子宮筋腫、カンジダ症、外陰部炎、性器分泌物、乳頭痛、乳腺良性腫瘍、乳腺嚢胞症、傾眠、いらいら感、不安感、めまい、片頭痛、上腹部痛、嘔吐、胃腸障害、発疹、そう痒症、背部痛、倦怠感、浮腫、発熱、体重増加(いずれも1~5%未満)、陰部そう痒症、子宮ポリープ、外陰腟痛、卵巣腫大、乳房痛、抑うつ、便秘、消化不良、腹部膨満、口内炎、紅斑、皮膚乾燥、関節痛、肋軟骨炎、貧血、肝機能検査値異常(いずれも1%未満)、リビドー減退、高カリウム血症、ほてり(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1. この薬は、妊娠を防ぐための経口避妊薬です。2. 毎日1錠、決まった時間に服用することで、排卵を抑えたり、子宮内膜や子宮頸管の状態を変化させたりして、妊娠を防ぎます。3. この薬は、喫煙者や高血圧の人など、従来の避妊薬が使えなかった人にも適しています。4. 毎日一定の時刻に白色錠から服用を開始し、指定された順番に従い28日間服用してください。5. 1日(24時間以内)の飲み忘れがあった場合、気付いた時点で直ちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。6. 2日連続して飲み忘れた場合は、気付いた時点で直ちに飲み忘れた錠剤を1錠服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。7. 2日以上連続して飲み忘れた場合は妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用し、必要に応じて医師に相談してください。<ここがポイント!>現在、日本で使用されている経口避妊薬の主流は、低用量エストロゲンとプロゲスチンを配合した混合型経口避妊薬(Combined Oral Contraceptives:COC)です。しかし、COCに含まれるエストロゲンには、静脈血栓塞栓症をはじめとする血栓症のリスクがあることが知られています。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、プロゲスチン単剤の経口避妊薬(Progestin-Only Pill:POP)は、COCと比較して静脈血栓塞栓症のリスクが低く、深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往、喫煙者、肥満者、高血圧や弁膜症を有する患者などに対して推奨度が高い避妊薬とされています。本剤は、ドロスピレノン(DRSP)4mgを含有する国内初のPOPであり、排卵の抑制、子宮内膜の菲薄化、子宮頸管粘液の高粘稠による精子の侵入障害などにより避妊効果を発揮します。避妊を希望する日本人女性を対象とした国内第III相臨床試験(LF111/3-A試験)において、13周期投与期終了時の暴露周期(3,319周期)の間に1例が妊娠し、主要評価項目とされた全般パール指数※は0.3917(95%信頼区間[CI]:0.0099~2.1823)でした。95%CIの上限が閾値である4下回ったことから、本剤の有効性が検証されました。なお、妊娠例に関して、受胎推定日は未服薬期間内と判断されています。※パール指数(Pearl index):100人の女性がその避妊法を1年間(13周期)用いたときの妊娠数(対100女性年)日本で発売されているCOCは、血栓症に関連する既往歴や現病歴を有する患者は禁忌でしたが、本剤では禁忌に該当しません。本剤では禁忌に該当しない血栓症関連の疾患などは以下のとおりです。血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患またはその既往歴のある患者35歳以上で1日15本以上の喫煙者血栓症素因のある女性抗リン脂質抗体症候群の患者大手術の術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内および長期間安静状態の患者脂質代謝異常のある患者高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)

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血小板減少【日常診療アップグレード】第32回

血小板減少問題32歳男性。健康診断で血小板減少を指摘され、二次検査のため来院した。症状はない。既往歴に特記すべきことはない。内服薬やサプリメントの服用もない。バイタルサインを含む身体診察では異常を認めない。白血球数は正常で、貧血はない。血小板数は4万8,000/μLである。経過観察とした。

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秋田大学 臨床腫瘍学講座(腫瘍内科)【大学医局紹介~がん診療編】

柴田 浩行 氏(教授)福田 耕二 氏(講師)松本 朋大 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴2009年2月に秋田大学に臨床腫瘍学講座が開設されました。当初は化学療法部のマネージメントのみでしたが、腫瘍内科として病床を持って直接患者を診ることが私の願望で、翌年4月に待望の診療科を開設できました。まず2床からのスタートでしたが、2018年までには10床に増え、2025年6月に13床に増えました。入院患者は開設時の約5倍、年間のべ4,823人に達しました。外来患者も開設時の約3倍、年間のべ3,522人に達しています。高齢化日本一の秋田県では進行がん患者が増えています。これは近未来の日本の縮図です。日本の疾病構造はどんどん変化し、患者が集まらない診療科があるなかで、進行がん患者を担当する腫瘍内科医のニーズは年々高まっています。私の着任以前、秋田県ではがん薬物療法の専門医はゼロ、がん拠点病院すらも初年度には1つも指定されないという、まさに「がん薬物療法不毛の地」でした。今では県内のすべての二次医療圏に腫瘍内科医を派遣しています。2024年度は県内8病院で、のべ5,952人の患者の診療にあたりました。ウチは秋田県のがん医療の主力です。これまでに8名の仲間が秋田大学腫瘍内科の発展に貢献してくれました。現在の在籍者は7名と少数ではありますが、各人が重責を認識した精鋭揃いです。ここは密度の高い臨床経験を積める場だと自負しています。総回診だけでなく、私も指揮官先頭で毎日若手と病棟を回り、日々、臨床腫瘍学の新たな発見に遭遇し、自らの進歩も自覚しています。力を入れている治療・研究テーマ私は、消化器がんを中心に診療を行っております。また、原発不明がんや軟部肉腫といった希少がん、さらには同時多発がんなど、より高度な専門知識が求められる分野にも積極的に取り組んでいます。秋田県は全国6位の面積を持つ一方で、人口密度は全国で3番目に低く、医療へのアクセスが困難な地域です。臨床腫瘍学講座では、県内のがん治療の均てん化を重要なテーマとして掲げています。私は地域の中核病院でキャンサーボードやミニカンファレンスを通じて、治療方針の決定や副作用対策に関する助言を行うなど、地域医療の質の向上に努めています。医局の雰囲気・魅力当講座は、柴田教授を含めて7名の比較的小規模な医局であり、風通しの良い、働きやすい環境が整っています。各医師の研究活動や臨床での取り組みを把握しやすく、診療上の疑問点も気軽に相談・解決できるため、診療スキルを高める場として最適です。医局員の半数は、消化器内科や消化器外科から腫瘍内科に転向して専門医資格を取得しており、さまざまなキャリアパスを示すロールモデルとなっています。また、有給休暇の取得率向上にも積極的に取り組んでおり、ワークライフバランスを重視した働き方が可能です。医学生・初期研修医へのメッセージがん治療は、2019年にゲノム医療が導入されて以降、急速に専門性が求められる分野へと進化しています。高い専門知識と判断力が必要とされる一方で、社会的ニーズも増加しており、今後ますます重要性が高まる領域です。現在、日本では腫瘍内科医がまだまだ不足しています。この分野を専門にし、がん医療の未来を担う存在として活躍してみませんか?これまでの経歴私は医学部入学以前、別の大学でがんに関わる基礎研究に携わっていました。基礎研究を通じてがんの奥深さを知るとともに、基礎領域のみでなく、より臨床に近い立場で、実際の病態と関連させながら進めていくことが重要であると考えるようになり、秋田大学医学部に学士編入しました。医学部で過ごすうちに自然豊かな秋田の魅力に触れ、卒業後は秋田に残ることを決意しました。卒業後は、秋田県内の市中病院の初期研修で3次救急とcommon diseaseを学びました。その後、同院の内科専攻医として1年間一般内科と抗がん剤治療を学び、4年目で大学病院に赴任しました。同医局を選んだ理由秋田大学臨床腫瘍学講座は秋田県全県のがん診療を担っており、幅広い領域のがん治療を学ぶことができると考えました。また、基礎研究の領域においても、スパイスの一種であるクルクミンの抗がん作用を調べ、さらにクルクミンアナログを用いたがんを予防するカレーの開発という非常にユニークな研究を行っております。がん予防は今後の医療において重要な役割を果たすと考えられ、ぜひ研究に携わりたいと考えました。今後のキャリアプラン秋田県のがん診療に携わりながら、臨床で得られた知見を活かして基礎研究を行えればと思います。また、機会があればぜひ留学を経験し、学んだことを秋田で活かして仕事をしたいと考えています。秋田大学 臨床腫瘍学講座(腫瘍内科)住所〒010-8543 秋田県秋田市本道1-1-1問い合わせ先hiroyuki@med.akita-u.ac.jp医局ホームページ秋田大学大学院医学系研究科 医学専攻 腫瘍制御医学系 臨床腫瘍学講座専門医取得実績のある学会日本内科学会日本臨床腫瘍学会日本消化器病学会日本消化器内視鏡学会日本肉腫学会研修プログラムの特徴(1)初期研修から社会人大学院生(がんプロ)として学位取得も目指せる。(2)腫瘍内科領域の総合医(ジェネラル・オンコロジスト)を目指す。(3)ユニークなオリジナル研究を展開し、フィジシャン・サイエンティストを目指す。詳細はこちら秋田大学医学部附属病院がん薬物療法専門医取得プログラム

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長寿の村の細菌がうつ病や鼻炎に有効

長寿の村の細菌がうつ病や鼻炎に有効中国の長寿の村で見つかった細菌が、プラセボ対照無作為化試験でうつ病や鼻炎の治療効果を示しました1,2)。精神の不調の世界的な負担の主因であるうつ病と、便秘などの胃腸不調の関連が最近になって報告されています。たとえば、米国人口を代表する米国国民健康栄養調査 (NHANES)の情報を調べた試験で、慢性の下痢や便秘がうつ病患者でより多く認められています3)。うつ病患者495例の慢性の下痢と便秘の有病率はそれぞれ15.53%と9.10%で、うつ病でない4,709例のそれらの有病率(それぞれ6.05%と6.55%)より高いことが示されました。いくつかの報告によると、うつ病などの気分障害と胃腸不調の関連には腸-脳軸(gut-brain axis)と呼ばれる腸と中枢神経系(CNS)のやり取りが関係しているようです。また、胃腸の微生物が胃腸と脳の通信を促しており、その乱れはうつ病、自閉症、パーキンソン病などの神経や精神の疾患と関連するようです。そこで、ためになる細菌(プロバイオティクス)などで腸内微生物環境を手入れして精神不調を治療する試みが増えています。長寿で知られる中国南西部の村(巴馬)の1人の長寿老人(centenarian)の便から見つかったBifidobacterium animalis subsp. Lactis A6(BBA6)という細菌の研究はその1つで、BBA6が微生物-腸-脳軸を手入れして注意欠如・多動症を模すラットの海馬や記憶の障害を緩和しうることが北京農業大学のRan Wang氏らの研究で示されています4)。その後Wang氏らはBBA6の研究を臨床段階へと進め、うつ病、具体的には便秘でもあるうつ病患者へのBBA6の効き目を調べるプラセボ対照無作為化試験を実施しました。試験にはうつ病患者107例が参加し、便秘でもあるうつ病患者と便秘ではないうつ病患者がそれぞれ8週間のBBA6かプラセボを投与する群に割り振られました。BBA6投与の効果は便秘合併うつ病患者に限って認められました。それら便秘合併うつ病患者への8週間のBBA6投与後のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)はプラセボ投与群より低くて済んでいました1)。便秘症状の評価尺度PAC-SYMもBBA6投与群のほうがプラセボ群より下がりました。便秘とうつ病の合併を模すラットで調べたところ、BBA6はうつ病患者に有害らしいキヌレニンを減らしてセロトニンを増やすことが示されました5)。便秘合併うつ病患者のBBA6投与後の血液や便にはセロトニンが多く、キヌレニンが少ないことも確認されており、ラットでの検討と一致する結果が得られています。また、BBA6が投与された便秘合併うつ病患者は先立つ研究でうつ病治療効果やセロトニン生成促進効果が示唆されているビフィドバクテリウムとラクトバチルスがより多く、トリプトファン生合成経路が盛んでした。どうやらBBA6はセロトニンやキヌレニンの出所であるトリプトファン代謝を手入れすることで便秘とうつ病の合併を緩和するようです。さて、BBA6が役立ちうる用途はうつ病治療に限られるわけではなさそうで、Wang氏らによる別のプラセボ対照無作為化試験では、アレルギー性鼻炎の治療効果が示されています2)。試験には通年性アレルギー性鼻炎患者70例が参加し、うつ病試験と同様にBBA6かプラセボが8週間投与され、ベースライン時と比べた8週時点の鼻症状検査点数低下の比較でBBA6がプラセボに勝りました。Wang氏らは便秘とうつ病の合併への長期の効果を調べる試験を予定しています5)。また、アレルギー性鼻炎治療効果のさらなる裏付け試験が必要と述べています2)。 参考 1) Wang J,et al. Sci Bull(Beijing). 2025 Apr 21. [Epub ahead of print] 2) Wang L, et al. Clin Transl Allergy. 2025;15:e70064. 3) Ballou S, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2019;17:2696-2703. 4) Yin X, et al. Food Funct. 2024;15:2668-2678. 5) Probiotic breakthrough: Bifidobacterium animalis subsp. Lactis A6 shows promise in alleviating comorbid constipation and depression / Eurekalert

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「ICIの投与は早い時間が良い」をRCTで再現/ASCO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与は、午前中などの早い時間が良いという報告が多数存在する。しかし、これらは後ろ向き解析やそれらのメタ解析に基づくものであり、無作為化比較試験により検討された報告はこれまでにない。そこで、Yongchang Zhang氏(中国・中南大学湘雅医学院)らの研究グループは、ICIの投与時間が非小細胞肺がん(NSCLC)患者の予後へ及ぼす影響を検討する無作為化比較試験「PACIFIC15試験」を実施した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において本試験の結果が報告され、早い時間にICIを投与した群は無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が良好であったことが示された。・試験デザイン:海外第III相無作為化比較試験・対象:ICI+化学療法を開始するドライバー遺伝子陰性のStageIIIC~IV NSCLC患者・試験群(早時間帯群):15時以前にICIの投与を開始 105例・対照群(遅時間帯群):15時1分以降にICIの投与を開始 105例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価によるPFS[副次評価項目]OS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・全体として男性の割合が高く、早時間帯群90.5%、遅時間帯群90.5%であった。PD-L1発現状況は、PD-L1 1%未満/1~49%/50%以上/不明が、それぞれ39.0%/29.5%/24.8%/6.7%、44.8%/27.5%/21.0%/6.7%であった。ICIの内訳は、sintilimab/ペムブロリズマブが、それぞれ77.1%/22.9%、78.1%/21.9%であった。・追跡期間中央値23.2ヵ月時点において、主要評価項目のBICR評価によるPFS中央値は、早時間帯群11.3ヵ月、遅時間帯群5.7ヵ月であり、早時間帯群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.42、95%信頼区間[CI]:0.31~0.58、p<0.0001)。PD-L1発現状況によらず、PFSは早時間帯群が良好な傾向にあった。・OS中央値は、早時間帯群未到達、遅時間帯群16.4ヵ月であり、早時間帯群が有意に良好であった(HR:0.45、95%CI:0.30~0.68、p<0.0001)。PD-L1発現状況によらず、OSも早時間帯群が良好な傾向にあった。・ICI投与開始後、早時間帯群はCD8陽性T細胞がベースライン時より増加したが、遅時間帯群は減少した。・活性化T細胞(CD38陽性HLA-DR陽性CD8陽性T細胞)の疲弊T細胞(TIM3陽性PD-1陽性CD8陽性T細胞)に対する比率(活性化/疲弊比)は、ICI投与後に上昇したが、上昇幅は早時間帯群が遅時刻帯群と比べて大きかった。 本結果について、Zhang氏は「早時間帯群と遅時間帯群を比較すると、末梢血中のCD8陽性T細胞の状態に違いが認められた。サーカディアンリズムが免疫療法に及ぼす潜在的影響を考慮すると、免疫療法に関する臨床研究では投与時刻を記録することや投与時間で層別化することが推奨されるだろう」とまとめた。

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降圧薬で腎臓がんリスク上昇、薬剤による違いは?

 降圧薬が腎臓がんのリスク上昇と関連するというエビデンスが出てきている。さらに降圧薬の降圧作用とは関係なく腎臓がんリスクを上昇させる可能性が示唆されているが、腎臓がんの危険因子である高血圧と降圧薬の腎臓がんへの影響を切り離して評価したエビデンスは限られている。今回、米国・スタンフォード大学医療センターのMinji Jung氏らのメタ解析で、降圧薬と腎臓がんリスクが高血圧とは関係なく関連を示し、そのリスクはCa拮抗薬において最も高いことが示唆された。BMC Cancer誌2025年6月6日号に掲載。 本研究では、2025年1月までの降圧薬使用と腎臓がんとの関連を調査した観察研究を検索した。高血圧とは独立した降圧薬の影響を明らかにするため、高血圧を考慮した群と考慮しない群で層別解析を実施した。ロバスト分散推定を用いたランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施し、統合相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・39研究が適格研究とされた。・高血圧を考慮した推定値に基づいた場合、降圧薬は腎臓がんリスク上昇と関連していた。・高血圧を考慮した場合の降圧薬のクラス別のRR(95%CI)は、ARBが1.15(1.00~1.31)、β遮断薬が1.09(1.03~1.16)、Ca拮抗薬が1.40(1.12~1.75)、利尿薬が1.36(1.20~1.55)と、腎臓がんリスク上昇と関連し、Ca拮抗薬が最もリスクが高かった。ACE阻害薬は1.19(0.93~1.52)と有意な関連は認められなかった。

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うつ病予防に対するカフェインの作用メカニズム

 疫学研究において、カフェイン摂取はうつ病と逆相関しており、腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性があることが示唆されている。中国・重慶医学大学のWentao Wu氏らは、うつ病と腸内細菌叢との関連に着目し、予防的なカフェイン摂取が腸脳軸に作用することでうつ病発症に影響を及ぼすかを調査するため、本研究を実施した。European Journal of Pharmacology誌2025年8月5日号の報告。 オスC57BL/6Jマウスを対照群、慢性予測不能ストレス(CUS)を負荷した群(CUS群)、カフェイン(CAF)を腹腔内投与後、CUSを負荷した群(CAF群)にランダムに割り付けた。うつ病様行動および不安様行動を評価し、腸脳軸関連分子を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対照群と比較し、CUS群は、体重、スクロール嗜好、中心距離(%)が有意に低く、不動時間が長かった。しかし、対照群とCAF群では、これらの指標に差は認められなかった。・CUS群で有意な減少がみられた腸管バリア完全性関連因子(ZO-1、claudin-1、MUC2)は、CAF群では認められなかった。また、CUS群で認められた2つの血漿中炎症因子(LPS、NLRP3)の変動、4つの海馬中炎症関連因子(TNF-α、IL-1β、AC、BDNF)の変動は、CAF群では認められなかった。・対照群とCUS群との間で6つの分化遺伝子が同定されたが、対照群とCAF群との間では同定されず、これら6つの鑑別疾患のうち、5つとスクロール嗜好との有意な相関が確認された。 著者らは「これらの結果は、早期カフェイン介入が、腸内細菌叢、腸管バリアの完全性、神経炎症を調節することで、うつ病予防につながる可能性を示唆している」と結論付けている。

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術前化療後の乳房温存術、断端陽性で再発リスク3倍~日本人1,813例での研究

 術前化学療法後に乳房温存療法(乳房温存手術および放射線療法)を受けた乳がん患者において、切除断端陽性例では温存乳房内再発リスクが3.1倍であったことが、1,813例を対象にした日本の多施設共同後ろ向き研究で示された。大阪はびきの医療センターの石飛 真人氏らがBreast Cancer誌オンライン版2025年6月9日号で発表した。 本研究の対象は、新たにStageI~III乳がんと診断され、術前化学療法後に乳房温存療法を受けた1,813例で、切除断端の状態が温存乳房内再発に与える影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値8.0年(範囲:0.1~17.0)において、8年温存乳房内無再発生存率は95.9%であった。切除断端陽性例(87.6%)は陰性例(96.2%)と比べて有意に低かった(p=0.010)。・多変量解析では、切除断端の状態が温存乳房内無再発生存率と有意に関連することが示された(ハザード比:3.1、95%信頼区間:1.3~7.2、p=0.0081)。 今回の結果は、術前化学療法を受けずに最初から手術を行った症例での結果と一致する結果であった。

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多発性骨髄腫の導入療法後MRD陰性、Isa-KRd vs. ASCT(MIDAS)/NEJM

 新規診断の多発性骨髄腫において、導入療法後に感度10-5で測定可能残存病変(MRD)が陰性と判定された患者では、より厳格な感度10-6で維持療法前MRD陰性の割合は、地固め療法としてイサツキシマブ+カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン4剤併用療法(Isa-KRd)を受けた患者と自家幹細胞移植(ASCT)を受けた患者で差はなく、導入療法後に感度10-5でMRD陽性と判定された患者では、感度10-6で維持療法前MRD陰性の割合は、地固め療法としてのシングルASCTとタンデムASCTでも差はないことが、フランス・Universite de ToulouseのAurore Perrot氏らMIDAS Study Groupが実施した「MIDAS試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年6月3日号に掲載された。フランスとベルギーの非盲検無作為化第III相試験 MIDAS試験は、フランスとベルギーの72施設が参加した進行中の非盲検無作為化第III相試験であり、2021年12月~2023年7月に患者を登録した(Intergroupe Francophone du Myelomeなどの助成を受けた)。 年齢65歳以下、新規に診断された未治療の骨髄腫で、測定可能病変を有し、ASCT適応の患者を対象とした。被験者を、導入療法(Isa-KRd、6サイクル)後のMRDの状態に応じて、次のように4つの地固め療法のうち1つを受ける群に無作為に割り付けた。 MRD陰性は感度<10-5(次世代シーケンシングによる評価で、正常細胞10万個当たりがん細胞が1個未満)の場合とし、MRD陽性は感度≧10-5とした。導入療法後にMRD陰性の患者は、地固め療法としてASCT+Isa-KRd(2サイクル)を受ける群(ASCT群)またはIsa-KRd(6サイクル)を受ける群(Isa-KRd群)に、導入療法後MRD陽性の患者は、地固め療法として短期間にASCTを2回受ける群(タンデムASCT群)またはASCT+Isa-KRd(2サイクル)を受ける群(シングルASCT群)に割り付けた。 主要評価項目は、感度10-6における維持療法前MRD陰性とした。MRD陰性の持続、無増悪生存期間の評価にはデータが不十分 718例が無作為化の対象となった。年齢中央値は59歳(範囲:25~66)、57%が男性であった。導入療法終了時にITT集団の485例(68%)が感度10-5でMRD陰性で、242例をASCT群、243例をIsa-KRd群に割り付けた。また、感度10-5でMRD陽性であった233例(32%)のうち、124例をタンデムASCT群、109例をシングルASCT群に割り付けた。 導入療法終了後に感度10-5でMRD陰性であった患者における、感度10-6で維持療法前MRD陰性の患者の割合は、ASCT群で86%(208/242例)、Isa-KRd群で84%(205/243例)と両群間に差を認めなかった(補正後相対リスク:1.02[95%信頼区間[CI]:0.95~1.10]、p=0.64)。 また、導入療法終了後に感度10-5でMRD陽性であった患者においては、感度10-6で維持療法前MRD陰性の患者の割合は、タンデムASCT群で32%(40/124例)、シングルASCT群で40%(44/109例)であり、両群間に差はなかった(補正後相対リスク:0.82[95%CI:0.58~1.15]、p=0.31)。タンデムASCT群の15%は、2回目のASCTを受けなかった。 地固め療法中に、5例(Isa-KRd群2例、タンデムASCT群3例)で病勢進行を認め、2例(Isa-KRd群2例)が病勢進行とは関連のない原因で死亡した。追跡期間中央値は、ASCT群とIsa-KRd群が16.8ヵ月、タンデムASCT群とシングルASCT群は16.3ヵ月であり、MRD陰性の持続状況や無増悪生存期間を評価するにはデータが十分ではなかった。新たな安全性シグナルは発生しなかった 導入療法段階と比較して、地固め療法中に新たな安全性シグナルは発生しなかった。地固め療法中に発現したGrade3以上の有害事象は、タンデムASCT群の粘膜炎(12%)と口内炎(14%)を除き、いずれも10%未満であった。 重篤な有害事象はASCT群で44例、Isa-KRd群で29例に、とくに注目すべき有害事象はそれぞれ4例および2例にみられた。また、タンデムASCT群で20例、シングルASCT群で23例に重篤な有害事象が、それぞれ7例および4例にとくに注目すべき有害事象が発現した。 著者は、「ASCTの有益性が示されなかった理由として、ASCT群とIsa-KRd群は導入療法後にすでに感度10-6でMRD陰性の患者の割合が高かったこと(それぞれ73%、76%)が影響している可能性がある」「これらの結果は、強力な4剤併用療法の時代を迎えた現在、導入療法後にMRD陰性の患者におけるfirst-line ASCTの役割に疑問を投げかけるものである」「抗CD38抗体とプロテアソーム阻害薬を含む有効な導入療法後に、タンデムASCTをルーチンに行うことは、もはや正当化されない可能性が示唆される」「本試験は進行中で、無増悪生存期間や全生存期間の評価にはより長期の追跡調査を要する」としている。

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レカネマブによる治療はメモリークリニックでも可能

 レカネマブ(商品名レケンビ)は、アルツハイマー病(AD)の進行抑制に有効な初めての抗アミロイドβ抗体薬として、2023年に米食品医薬品局(FDA)に承認された。しかし、承認前の臨床試験で、この薬剤は脳浮腫や脳出血などの副作用を伴うことが示されたことから、実用化には懸念の声も寄せられていた。こうした中、レカネマブに関する新たなリアルワールド研究により、記憶に関する専門クリニック(メモリークリニック)でも副作用をコントロールしながら安全にレカネマブによる治療を行えることが示された。論文の上席著者である米ワシントン大学医学部神経学教授のBarbara Joy Snider氏らによるこの研究結果は、「JAMA Neurology」に5月12日掲載された。 Snider氏らは、2023年8月1日から2024年10月1日の間にワシントン大学記憶診断センターでレカネマブによる治療(2週間ごとに10mg/kgを静脈内注射)を開始した、早期症候性AD患者234人(平均年齢74.4歳、女性50%)を追跡調査し、メモリークリニックでのレカネマブによる治療の実現可能性と安全性を評価した。主要評価項目は、点滴関連反応、アミロイド関連画像異常(ARIA)、および治療の中止であった。 234人中194人は、レカネマブによる治療を4回以上、MRI検査を1回以上受けており、ARIAのリスクがあると見なされた。平均6.5カ月の治療期間中に、194人中42人(22%)にARIAが確認された。このうち22人(15%)では浮腫・滲出が見られ(ARIA-E)、出血・鉄沈着を伴うもの(ARIA-H)と伴わないものの両方が含まれていた。また、13人(6.7%)はARIA-Hだった。症状を伴うARIAは11人(5.7%)に見られた。このうち2人(1.0%)は入院を要するほどの重度の臨床症状を呈したが、残りは数カ月以内に改善し、微小脳出血を呈した患者や死亡した患者はいなかった。234人中23人(9.8%)がさまざまな理由で治療を中止しており、10人(4.3%)はARIAを原因とする中止だった。 Snider氏は、「レカネマブによる治療では、副作用に対する懸念が治療の遅れにつながる可能性がある」と指摘する。そして、「この研究は、メモリークリニックが、重篤な副作用を経験する可能性のある少数の患者を含め、患者にレカネマブを安全に投与し、適切にケアするためのインフラと専門知識を備えていることを示している」との見方を示している。 一方、論文の共著者の1人である、ワシントン大学医学部神経学准教授のSuzanne Schindler氏は、「レカネマブを投与された患者の大半で、この薬に対する認容性は良好だった」と述べている。その上で、「ADの症状が非常に軽度の患者ではレカネマブによる治療のリスクが低いことを示した本研究結果は、患者と医療提供者が治療のリスクをよりよく理解するのに役立つ可能性がある」と付け加えている。

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女性のCOPDリスクの高さはタバコでは説明できない

 女性はCOPD(肺気腫や慢性気管支炎)のリスクが男性より約50%高く、このリスクの高さはCOPDの主要原因とされる喫煙だけでは説明がつかないとする研究結果が報告された。米ワシントン大学のAlexander Steinberg氏らの研究の結果であり、詳細は「BMJ Open Respiratory Research」に5月8日掲載された。 COPDは‘chronic obstructive pulmonary disease’の略で、国内では慢性閉塞性肺疾患とも呼ばれる。肺の慢性的な炎症などのために呼吸機能が徐々に低下し、呼吸苦が生じて体を動かすことが困難となっていく。主要な原因は喫煙とされていて、生活習慣病の一つに位置付けられている。 近年、女性は喫煙率が低く、たとえ喫煙者であっても喫煙本数が少ないにもかかわらず、COPD有病率が高いことが注目されるようになり、その理由の一つとして、女性はタバコの煙の影響を受けやすいのではないかという仮説が提唱されている。このような状況を背景としてSteinberg氏らは、米国国民健康面接調査(NHIS)のデータを用いた検討を行った。 2020年のNHISに参加した40歳以上の成人(女性1万2,638人、男性1万390人)を対象とする解析で、電子タバコの使用率は女性と男性で同程度だったが、従来タイプのタバコ(紙巻きタバコなど)については、現喫煙者、元喫煙者ともに、男性より女性の方が少なかった。それにもかかわらず、COPDの有病率は、女性が7.8%、男性は6.5%で、女性の方が高かった。また、COPDの女性患者は男性患者よりも、喫煙経験のない人の割合が高かった(26.4対14.3%)。なお、女性の喫煙者の紙巻きタバコの喫煙本数は男性喫煙者より少なく(17.6対21.7本/日)、累積喫煙量も少なく(34.8対41.8パックイヤー〈1日の喫煙量と喫煙年数を積算した値〉)、15歳未満で喫煙を始めた人の割合が低かった(19.1対28.0%)。 喫煙経験者におけるCOPD有病率は、男性が11.5%であるのに対して女性は15.9%と高かったが、喫煙経験のない人のCOPDの有病率は、男性が1.7%であるのに対して女性は3.2%とほぼ2倍であり、喫煙経験者で見られる性別による乖離よりも大きかった。 年齢、人種、世帯貧困率、居住地域、喫煙開始年齢、電子タバコ使用状況などの潜在的な交絡因子を調整後、女性は男性よりCOPDの相対リスクが47%高いことが明らかになった(RR1.47〔95%信頼区間1.30~1.65〕)。喫煙経験の有無で層別化すると、経験あり群では、女性は男性より43%ハイリスク(RR1.43〔同1.25~1.63〕)であり、経験なし群では、女性は男性より62%ハイリスクだった(RR1.62〔1.22~2.15〕)。 これらの結果を基に研究者らは、「女性のCOPDリスクが高いのは、喫煙状況や累積喫煙量との関係から推測されるタバコに対する感受性の高さでは説明できない。そうなると改めて、女性のCOPDの有病率が高い原因は何なのかという疑問が浮かび上がる」と語り、いくつかの推論を述べている。例えば、女性は家庭内で調理する際の煙に曝露されたり、家庭用洗剤やエアロゾル化した化粧品を吸入したりする機会が多いことが、リスク上昇に関与している可能性があるという。また、女性は男性よりも気道が狭い傾向があることも、理由として考えられるとしている。

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