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がんを有する急性冠症候群(ACS)患者の全死因死亡、大出血および虚血性イベントを予測するONCO-ACSスコアが開発され、臨床的に有用で実用的なツールであることが、英国国民保健サービス(NHS)イングランドのFlorian A. Wenzl氏らによる、イングランド、スウェーデンおよびスイスの国民医療データを用いたモデル開発・検証研究の結果で示された。がんを有するACS患者における死亡、出血、およびアテローム血栓症リスクの正確な評価は、新たな個別化治療戦略の策定に役立つ可能性があるが、この目的のために標準化されたツールは存在していなかった。Lancet誌2026年1月31日号掲載の報告。3ヵ国のACS患者約102万例のデータを用いて予測モデルを開発・検証 研究グループは、国民医療データを用いて2004年1月1日~2023年8月8日にACSを呈した101万7,759例のコホートを作成し、ACS発症前5年以内にがんの既往または現病歴を有する患者(がん患者)と、いずれもない患者(非がん患者)に層別化した。解析対象の内訳は、イングランド81万5,170例(うち、がん患者3万6,771例)、スウェーデン19万4,059例(がん患者1万262例)、スイス8,530例(がん患者203例)であった。 まず、イングランドのがんを有するACS患者群(中部地域の患者を除く3万1,193例)のデータを用いてONCO-ACS予測モデル(全死因死亡、大出血、虚血性イベント)を開発した。主要アウトカムは、ACSで入院後6ヵ月時までの、全死因死亡、大出血イベント、および虚血性イベント(心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合イベントの初回発生)で、機械学習アルゴリズムのeXtreme Gradient Boosting(XGBoost)を用いて予測モデルを構築した。大出血および虚血性イベントの解析では、それぞれ非出血関連死と非虚血関連死を競合リスクとして扱った。 最終モデル(ONCO-ACSスコア)には、11項目の入院時変数(腫瘍タイプ、がん診断からの期間、転移性疾患、年齢、ヘモグロビン、心拍数、eGFR、BMI、Killip分類、心停止、入院前6ヵ月以内の大出血)を組み込んだ。 続いて、モデル性能を6ヵ月時点の時間依存ROC曲線下面積(tAUC)を用いて評価するとともに、イングランド中部地域(5,578例)、スウェーデン(1万262例)、およびスイス(203例)のがんを有するACS患者群においてモデル性能の外部検証を行った。ONCO-ACSスコアは臨床的に応用可能 がんを有するACS患者は、死亡率(累積発生率27.8%、95%信頼区間[CI]:27.3~28.3)、大出血イベント(7.3%、95%CI:7.0~7.5)、虚血性イベント(16.1%、15.7~16.4)の発生率が高く、明確なリスクプロファイルを有していた。 従来のリスク因子およびがん関連リスク因子を考慮した内部検証において、ONCO-ACSスコアの6ヵ月時のtAUCは、全死因死亡で0.84(95%CI:0.83~0.85)、大出血イベントで0.70(0.68~0.73)、虚血性イベントで0.79(0.78~0.81)であった。 外部検証においても同様の性能が確認され、全死因死亡のtAUCはイングランド中部で0.84(95%CI:0.82~0.85)、スウェーデンで0.80(0.79~0.82)、スイスで0.83(0.76~0.91)、大出血イベントでそれぞれ0.70(0.67~0.74)、0.67(0.65~0.70)、0.74(0.57~0.91)、虚血性イベントで0.76(0.74~0.78)、0.70(0.69~0.72)、0.73(0.61~0.86)であった。 ONCO-ACSは良好なキャリブレーションを示し、決定曲線分析により好ましい臨床的有用性が示唆された。また、ONCO-ACSを現在のガイドラインに適用すると、がんを有するACS患者のほとんどが、侵襲的治療およびクロピドグレルを用いた長期の2剤併用抗血小板療法の対象となることが示唆された。