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処方箋に基づく避妊法は、多くの国でその費用がアクセスの障壁となっており、とくに最も効果的な避妊法とされる子宮内避妊器具や皮下避妊インプラントなどの長期作用型可逆的避妊法(long-acting reversible contraception:LARC)は、初期費用が高額なため利用度が顕著に低いとされる。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLaura Schummers氏らは、同国ブリティッシュコロンビア(BC)州では無料で処方箋避妊法へのアクセスが可能となる公的保健医療サービスの導入により、使用者が好みの方法を選択できるようになったことでLARCの使用が著しく増え、ひいては処方箋避妊法全体の増加につながったと報告した。研究の成果は、BMJ誌2025年7月28日号に掲載された。無料でない他州と比較する分割時系列解析 研究グループは、BC州において処方箋を要する避妊法の使用を無料化する公的保健医療サービスを導入する施策の効果を評価する目的で、BC州を含むカナダの全10州で住民ベースの対照比較分割時系列解析(interrupted time series analysis)を行った(カナダ健康研究所[CIHR]の助成を受けた)。 2021年4月1日~2024年6月30日に、BC州で生殖年齢(15~49歳)の女性に調剤された処方箋医薬品について、他の9州を合わせた対照群、およびBC州に居住する年齢15~49歳の住民ベースの女性コホート(処方箋医薬品の調剤の有無を問わない集団、85万9,845人)と比較した。 本研究の介入として、2023年4月1日、BC州で処方箋に基づく避妊法の費用を全額、公的保険で支払う保健医療サービスが導入された。 避妊法の使用に関して5つの評価項目について検討した。(1)LARCの月間の調剤数、(2)LARCを含むすべての処方箋避妊法の月間の調剤数、(3)LARCを使用した生殖年齢女性の割合、(4)すべての処方箋避妊法を使用した生殖年齢女性の割合、(5)処方箋避妊法の使用者のうちLARC使用者の割合(LARCの市場占有率)。導入後15ヵ月でLARC調剤数が1.49倍に BC州におけるLARCの月間調剤数は、無料化施策導入前は、2021年4月の3,249件(95%信頼区間[CI]:3,066~3,391)から2023年3月には2,841件(2,616~2,945)へと、2年間で毎月17件(-30~-7)ずつ減少したが、無料化施策導入後、ただちにLARCの月間調剤数が1,050件(95%CI:942~1,487)に増え、その後は増加した状態が堅調に続いた。 BC州の施策導入から15ヵ月後(2024年6月)の月間LARC調剤数は、無料化施策がなかったと仮定した場合の予測値よりも1,273件(95%CI:963~1,698)多く、介入によって1.49倍(95%CI:1.34~1.77)に増加した。 一方、介入のなかった対照群では、BC州での施策導入の前後でLARC調剤数の水準と傾向に大きな変化はなかった。15ヵ月後のLARC市場占有率が1.9%上昇 BC州のLARCを含むすべての処方箋避妊法の月間調剤数は、施策導入15ヵ月後に、無料化施策がなかった場合よりも1,981件(95%CI:356~3,324)増え、介入によって1.04倍(95%CI:1.01~1.07)に増加した。 また、BC州の年齢15~49歳の女性85万9,845人のうち、2021年4月の時点で9.1%がLARCを使用していた。施策導入15ヵ月後の月間LARC調剤数は、無料化施策がなかった場合の予測値よりも1万1,375件(95%CI:1万273~1万3,013)多く、人口の1.3%(95%CI:1.2~1.5)に相当する数の増加を示した。 この施策導入により、15ヵ月後のBC州の生殖年齢女性の処方箋避妊法の使用率が導入前の傾向に基づく予測値よりも1.7%(95%CI:1.5~2.3)増え、15ヵ月後のLARCの市場占有率は1.9%(1.2~2.3)上昇した。 著者は、「大規模で多様な集団を対象に無料の避妊法を提供する施策は、処方箋に基づく避妊法の使用の増加をもたらし、最も効果的な方法への移行を促した」「人口レベルでの避妊法の使用とその選択に、費用は重要な影響を及ぼすと考えられる」「ほぼすべての処方箋避妊法の無料化により、使用者が好みの方法を選択できるようになったことが、LARCの使用が著しく増えた要因と思われる」としている。