サイト内検索|page:1032

検索結果 合計:36089件 表示位置:20621 - 20640

20621.

第4回 糖尿病患者の認知症、予防と対応は【高齢者糖尿病診療のコツ】

第4回 糖尿病患者の認知症、予防と対応はQ1 糖尿病における認知機能障害のスクリーニング法、どう使い分けたらいいですか?糖尿病は認知症や軽度認知機能障害(MCI)をきたしやすい疾患です。アルツハイマー病は約1.5倍、血管性認知症は約2.5倍起こりやすいとされています1)。糖尿病患者における認知症の発症には、高血糖によるMCI、微小血管障害、脳梗塞の合併、アルツハイマー病の素因などの複数の因子が関連しているとされています。また、MCIを呈することで、記憶力、実行機能、注意・集中力、情報処理能力などの領域が軽度から中等度に障害されます。この中で、記憶力障害や実行機能障害は糖尿病におけるセルフケア(服薬やインスリン注射など)の障害につながります。実行機能は物事の目標を設定し、順序立てて誤りなく遂行する能力です。実行機能の障害によって、買い物、食事の準備、金銭管理など手段的ADLが低下します。手段的ADLが低下し、セルフケアが障害されると、血糖コントロールが悪化して、さらに実行機能障害が起こるという悪循環に陥りやすくなるのです。この実行機能障害は前頭前野の障害が原因とされており、種々の検査がありますが、時計描画試験、言語流暢性試験が簡単に行える検査です。糖尿病における認知機能障害のスクリーニング検査を表に示します(詳細は、日本老年医学会の高齢者診療におけるお役立ちツールを参照)。画像を拡大するまず、一般的にはMMSEや改訂長谷川式知能検査のいずれかを行います。それらが高得点でも認知機能障害が疑われる場合には、時計描画などが含まれているMini-Cog試験、MoCAなどを行うことをお勧めします。Mini-Cog試験は3つの単語を覚えた後に、丸の中に時計の文字盤と10時10分の秒針を書いて、最初に覚えた3つの単語を思い出すという簡単な試験です。時計が書けて2点、思い出すことができた単語の個数を点数として合計点を出します。5点満点中2点以下は認知症疑いとされます。MoCAはMCIかどうかをスクリーニングするのに有用な検査であり、時計描画試験などの種々の検査が含まれていますが、複雑な検査なので臨床心理士などが行う場合が多いと思います。MoCAはMMSEよりも糖尿病における認知機能障害を見出すことに有用であると報告されています2)。上記のMMSEなどの神経心理検査は非日常的なタスクを患者さんに行ってもらうので、メディカルスタッフや介護職が行うには抵抗が大きいように思います。そこで、メディカルスタッフなどが簡単な質問票によって認知機能を評価できるものに、DASC-21とDASC-8があります。DASC-21は地域包括ケアシステムのための認知症アセスメントシートであり、記憶、見当識、判断力(季節に合った服を着る)、手段的ADL(買い物、交通機関を使っての外出、金銭管理、服薬管理など)、基本的ADL(トイレ、食事、移動、入浴など)をみる21項目の質問からなります(「DASC」ホームページを参照)。各質問を4段階の1~4点で評価し、合計点を出して31点以上が認知症疑いとなります。31点以上でかつ場所の見当識、判断力、基本的ADLの質問のいずれかが3点以上の場合は中等度以上の認知症疑いになります。DASC-8は日本老年医学会が11月に公開したDASC-21の短縮版であり、記憶、時間見当識、手段的ADL3問(買い物、交通機関を使っての外出、金銭管理)、基本的ADL3問(トイレ、食事、移動)の8問を同様に4段階に評価し、合計点を出します。DASC-8は認知機能だけでなく、手段的ADL、基本的ADLといった生活機能が評価できるので認知・生活機能評価票とも呼ばれます。Q2 糖尿病患者の認知症予防または進行防止のための対策にはどのようなものがありますか?糖尿病における認知症発症の危険因子は高血糖、重症低血糖、CKD、脳血管障害、PAD、身体活動量低下などです。とくに重症低血糖と認知症は双方向の関係があり、悪循環をきたすことがあります3)。したがって、認知機能障害の患者では適切な血糖コントロールと、高血圧などの動脈硬化性疾患の危険因子の治療を行うことが大切です。日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会により、認知機能とADLの評価に基づいた高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)が発表されています(図)。SU薬やインスリンなど低血糖のリスクが危惧される薬剤を使用する場合で、中等度以上の認知症合併患者はカテゴリーIIIとなり、HbA1c値の目標は8.5%未満で下限値7.5%となります。また、MCIから軽度認知症の場合はカテゴリーIIとなり、HbA1c値の目標は8.0%未満で下限値7.0%となり、柔軟な目標値を設定します。画像を拡大する治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する。ただし、加齢に伴って重症低血糖の危険性が高くなることに十分注意する。 注1)認知機能や基本的ADL(着衣、移動、入浴、トイレの使用など)、手段的ADL(IADL:買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理など)の評価に関しては、日本老年医学会のホームページを参照する。エンドオブライフの状態では、著しい高血糖を防止し、それに伴う脱水や急性合併症を予防する治療を優先する。注2)高齢者糖尿病においても、合併症予防のための目標は7.0%未満である。ただし、適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法の副作用なく達成可能な場合の目標を6.0%未満、治療の強化が難しい場合の目標を8.0%未満とする。下限を設けない。カテゴリーIIIに該当する状態で、多剤併用による有害作用が懸念される場合や、重篤な併存疾患を有し、社会的サポートが乏しい場合などには、8.5%未満を目標とすることも許容される。注3)糖尿病罹病期間も考慮し、合併症発症・進展阻止が優先される場合には、重症低血糖を予防する対策を講じつつ、個々の高齢者ごとに個別の目標や下限を設定してもよい。65歳未満からこれらの薬剤を用いて治療中であり、かつ血糖コントロール状態が図の目標や下限を下回る場合には、基本的に現状を維持するが、重症低血糖に十分注意する。グリニド薬は、種類・使用量・血糖値等を勘案し、重症低血糖が危惧されない薬剤に分類される場合もある。【重要な注意事項】糖尿病治療薬の使用にあたっては、日本老年医学会編「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を参照すること。薬剤使用時には多剤併用を避け、副作用の出現に十分に注意する。(日本老年医学会・日本糖尿病学会編・著.高齢者糖尿病診療ガイドライン2017,p.46,図1 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値),南江堂;2017)高齢者をカテゴリーI~IIIに分類するためにはDASC-8またはDASC-21を行うことが有用です。DASC-8では8~10点がカテゴリーI、11~16点がカテゴリーII、17~32点がカテゴリーIIIとなります。DASC-21では21~26点がカテゴリーI、27~38点がカテゴリーII、39点以上がカテゴリーIIIに相当します4)。DASC-8の質問票と使用マニュアルについては、こちらを参照してください。認知症と診断されないMCIの段階、すなわちカテゴリーIIの段階からレジスタンス運動、食事療法、心理サポート、薬物治療の単純化、介護保険など社会資源の確保を行うことが大切です。運動療法を行い、身体活動量を増やすことは認知機能の悪化防止のために重要です。身体機能の低下した高齢糖尿病患者にレジスタンス運動、有酸素運動などを組み合わせて行うと、記憶力や認知機能全般が改善するという報告もあります5)。可能ならば、週2回の介護保険によるデイケアを利用し、運動療法を行うことを勧めます。市町村の運動教室、太極拳、ヨガなど筋力を使う運動もいいでしょう。低栄養は認知症発症のリスクになるので、食事療法においては十分なエネルギー量を確保します。認知機能に影響するビタミンA、ビタミンB群などの緑黄色野菜の摂取不足にならないように注意することが大切です。薬物療法でもMCIの段階から、低血糖の教育を介護者にも行うことが必要です。低血糖のリスクはMCIの段階から高くなるからです(第2回、図3参照)。また、この段階から服薬アドヒアランスが低下することから、服薬の種類や回数の減少、服薬タイミングの統一、一包化などの治療の単純化を行います。薬カレンダーや服薬ボックスの利用も指導するのがいいと思います。カテゴリーIIIで目標下限値を下回った場合は、減量、減薬の可能性を考慮します。介護保険を利用し、デイケアまたはデイサービスを利用することで、孤立を防ぎ、社会とのつながりを広げ、介護者の負担を減らすことが大切です。家族や介護相談専門員と相談し、ヘルパーによる食事介助、訪問看護による服薬やインスリンの管理、または週1回のGLP-1受容体作動薬の注射などの支援の活用を検討していきます。徘徊、興奮などの行動・心理症状(BPSD)があると、糖尿病治療が困難になることが多くなります。BPSDの対策は環境を調整し、その原因となる疼痛、発熱、高血糖、低血糖などを除くことです。またBPSDは患者の何らかの感情に基づいており、叱責などによってBPSDが悪化することも多いので、介護者の理解を促すことも必要となります。抗認知症薬も早期に投与することでBPSDが軽減し、感情の安定や、意欲の向上、会話の増加がみられることがあるので専門医と相談し、使用を考慮しています。メディカルスタッフと協力して、認知症だけでなく、MCIの早期発見を行い、適切な血糖コントロールとともに、運動・食事・薬物療法の対策を立て、社会サポートを確保することが大切です。1)Cheng G, et al. Intern Med J. 2012;42:484-491.2)Alagiakrishnan K, et al. Biomed Res Int. 2013:186-106.3)Mattishent K, Loke YK. Diabetes Obes Metab.2016;18:135-141.4)Toyoshima K, et al. Geriatr Gerontol Int 2018;18:1458-1462.5)Espeland MA, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2017;72:861-866.

20622.

速報!AHA2018

AHA(米国心臓協会)学術集会が、米国・シカゴにて11月10~12日に開催されました。ホットな演題を厳選し、速報でお届けします。ブルースの街で、どんなトピックが発表されたのか!?AHA2018 ピックアップ演題一覧11月11日発表MI後標準治療下でのhsCRP高値例への、IL-1β抗体で、心不全入院減少の可能性:CANTOS探索的解析急性非代償性心不全例へのARNi、ACE阻害薬よりNT-proBNP濃度が低下:PIONEER-HF11月10日発表低用量メトトレキサートは冠動脈疾患例のMECEを抑制せず:CIRTTG低下療法によるCVイベント抑制作用が示される:REDUCE-ITCV高リスク・高LDL-C血症の日本人高齢者に対するLDL-C低下療法の有用性は?:EWTOPIACV高リスク2型DMへのSGLT2iのCV死・MI・脳卒中はプラセボに非劣勢:DECLARE-TIMI58J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とはJ-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

20623.

本庶 佑氏が語るがんと共生する未来

 ノーベル生理学・医学賞受賞が決まった、本庶 佑氏(京都大学高等研究院副院長/特別教授)が、2018年11月1日、都内の日本医師会館で、「驚異の免疫力」と題して特別講演を行った。本講演では、がん免疫療法の現状と課題、そして将来への展望が語られた。PD-1阻害薬への期待と現状の課題 本庶氏が発見した抗PD-1抗体とその応用による「免疫療法」は、ヒト個人の免疫力・体力によってがん細胞を殺す新たな治療法だ。ノーベル賞受賞のきっかけとなったPD-1阻害によるがん免疫治療は、1)すべての種類のがんに効く可能性が高い、2)投与を止めても数年以上有効なので再発が少ない、3)がん細胞を直接攻撃せず、免疫系を活性化するので副作用があっても軽い、という理由から画期的な治療法だと、本庶氏は自信を持って紹介した。 また、今後の展望として「PD-1抗体による治療はこれからのがん治療法の第1選択になるだろう」と期待を語った。免疫療法は、がん治療の初期に使うほうが効果が高く、副作用も少ない可能性があり、従来行われている化学療法・放射線療法・外科手術は、患者の免疫力を弱めてしまうため、導入のタイミングには注意が必要だという。 免疫療法の基礎研究における当面の課題としては、メラノーマなど著効するがん種もあるが、一般的な有効率は30%程度であるため、有効率を向上させることや、有効例・無効例を投与前・直後に判定する方法の開発などが残されている。また、臨床現場の課題としては、がん専門医の免疫分野における知識不足を指摘し、「ときどき重大な副作用を見逃したり、死ななくてもいい患者さんを救えなかったりするという問題が起こる」と、とくに副作用対応プロトコルの充実が急務だと強調した。有効性に対する免疫系の影響と進行中の試験 PD-1阻害療法の有効性予測マーカーとしては、腫瘍遺伝子の変異率が高いことが1つ挙げられるが、必ずしも高いとは限らないという。「最も重要なのは、個人の間の免疫力の違い。しかし、これに関しては非常に幅があり、遺伝子を解析しただけでわかるほど免疫系は単純でない。われわれの知識はまだまだ不足している」と語った。 有効性に関して、「キラーT細胞が腫瘍細胞にどれだけ集まるか、キラーT細胞の活力がどれだけ高いかという2つの問題がある」と課題を呈した。腫瘍細胞に存在するキラーT細胞は、PD-1阻害薬によって活性化され、その結果、腫瘍細胞自身が放出したケモカインに、さらにリンパ節で活性化されたキラーT細胞が引き寄せられる。「PD-1阻害薬は、リンパ節から腫瘍細胞へキラーT細胞が移入することで能力が発揮されるので、リンパ節を取れば取るほどいい、という認識は間違っている」と指摘した。 次に、現在行っている試験として、「低分子薬とPD-1阻害薬を組み合わせると、さらに強力ながん免疫治療の開発が可能になるかもしれない。たとえば、抗体の用量を減らしたり、有効性を向上させたりできるのではないかと考えている」と一部を紹介した。「希望的観測として、現在がん免疫療法の割合は全体からみるとわずかだが、これから次第に免疫療法が増えていき、2024年にはPD-1阻害薬関連の売上高は4兆円を超えるといわれている。将来的に、がん治療の主流になり、がんは完全になくさなくてもよく、自分の体力とのバランスで共存することも、がん治療の1つの目標になるかもしれない」と展望を語った。 現在、PD-1阻害薬との組み合わせによるがん治療は、米国だけで1,000件以上の試験が行われている1)。最も多いのは、CTLA-4抗体と組み合わせたもので、ほかにも、化学療法、放射線療法などと組み合わせた試験が行われている。本庶氏は、「今世紀中にがん死はなくなる可能性が出てきた」と期待を表し、講演を終えた。

20624.

慢性うつ病と非慢性うつ病の差に関するシステマティックレビュー

 慢性うつ病(Chronic Depression:CD)が、非CDと対照的に、明確な特徴をどの程度有しているかはよくわかっていない。ドイツ・シャリテー大学病院のStephan Kohler氏らは、CD患者の社会人口統計学的要因、精神病理および疾患の経過に関して、非CD患者との比較を行うため、システマティックレビューを行った。Depression and Anxiety誌オンライン版2018年10月9日号の報告。 構造化データベース検索(MEDLINE、PsycINFO、Web to Science、CENTRAL)を実施した。CD患者と非CD患者を比較したすべての研究が含まれた。DSM-IVまたはDSM-5に従い、サブグループの診断を行ったコホート研究、横断研究、観察研究を含む28件の研究が特定された。主要アウトカムは、社会人口統計学的要因、小児期虐待、疾患発症、併存疾患、抑うつ症状の重症度および経過、明確な精神病理に関するグループ間の比較とした。 主な結果は以下のとおり。・CD患者は、非CD患者と比較し、抑うつ症状の早期発症、精神医学的併存疾患の高率な合併、複雑な治療経過(例:高い自殺念慮率)が認められた。・非CD患者と対照的な、CD患者の精神病理学的に明確な特徴(従順および敵対的な対人関係)がいくつか認められた。・小児期の虐待については、一貫性が認められなかった。・抑うつ症状の重症度および多くの社会人口学的要因に関して、差は認められなかった。 著者らは「いくつかの矛盾はあったものの、CD患者と非CD患者の間に重要な差が認められた。しかし、より多くの治療戦略を見いだすためには、今後、非CD患者と比較したCD患者の明確な精神病理を特徴付けるための研究が必要とされる」としている。■関連記事たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能治療抵抗性うつ病を予測する臨床的因子~欧州多施設共同研究治療抵抗性うつ病の予測因子に関するコホート研究

20625.

益と害を見極めてポリファーマシーを解消させる

 超高齢化社会に伴い多剤併用が問題視されているが、果たして何が原因なのだろうか。2018年11月6日にMSD株式会社が主催する「高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)に関する実態と不眠症治療の課題」について、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座教授)と池上 あずさ氏(くわみず病院院長)が登壇し、ポリファーマシーの原因と不眠症治療のあり方について語った。ポリファーマシーはなぜ起こり、何が問題なのか 多剤服用でも、とくに害をなすものをポリファーマシーと呼ぶ。そして、薬物有害事象、アドヒアランス不良など多剤に伴う諸問題だけを指すのではなく、不要な処方、過量・重複投与などあらゆる不適正処方を含む概念に発展している。 ポリファーマシーが高齢者で起こる理由は、年齢とともに疾患リスクが上昇するからであり、脳心血管疾患、生活習慣病、消化器や運動器などの併存疾患、そして老年症候群に対する処方薬剤の積み上がりが原因とされている。 秋下氏は、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が不眠症治療薬としても利用されている点を問題視しており、「患者は両者が同じ系統の薬剤であることを理解せずに、さまざまな医師に相談をもちかける。結果、重複して服用することになる」と、問題が起こる状況の例を示した。高齢者の多剤併用、どうやって何を減らすと良いのか 患者からの『なぜこれまで飲んでいた薬を減らすのか』という問いに対し、「きちんと説明できない医師が多い」と同氏は語る。こういう場合は、急性期から慢性期、外来から在宅へ移行するタイミングがチャンスだという。東大病院では、薬剤師が主導となり、入院時に“持参薬評価テンプレート”を用いて薬剤調整を実施している。6剤以上服用かつ7つの評価項目のいずれかに該当する場合は、調整対象となり、対象者の21%で薬剤の必要性が見直され、減薬に成功している。 また、さまざまな疾患で使用される抗コリン系薬剤は、認知症リスクを高める報告があるため、高齢者や認知機能が低下している患者において、同氏は「この種の薬剤の重複投与をなるべく避けるよう検討することが重要」と、注意を促した。“中止を前提”として不眠症治療薬を処方する 漫然と処方されがちな不眠症治療薬であるが、高齢者の場合は、服用時の転倒・骨折だけではなく、長期間の服用継続によるせん妄誘発や認知症リスクの増大、さらにはそれらが引き金となり、誤嚥性肺炎から死につながることもある。 不眠症には3つのタイプがあり、入眠困難が年齢と関係ないのに対し、中途覚醒や早朝覚醒は60歳以上になると増える傾向にある。これを踏まえ池上氏は、「夜間頻尿など患者の不眠原因を追求したうえで、“5時間以上眠れたらOK”、“無駄に布団にいない”よう指導する」など、服用中断への導き方を指南した。 また、糖尿病をはじめ生活習慣病に罹患している患者は、不眠症治療薬の服用率が高い。これに対し同氏は、「生活習慣病で病院に受診していると先生に不眠であることを訴えやすく、不眠症治療薬に手が届きやすい」と疾患以外の原因についても言及した。減薬には時間をかけることが大切 「ポリファーマシーに関する診療所医師と保険薬局薬剤師の意識調査」1)における、ポリファーマシーに対する減薬アプローチについて、医師は41.3%が関与していた。一方、服薬指導を行う立場である薬剤師の関与は7.2%であった。これについて秋下氏は、「ポリファーマシーの問い合わせを疑義照会と同じタイミングで行おうとしているのではないか。その場で減薬ができなくても、次やその次に減薬ができれば良いという感覚で問い合わせを行えば、もっとアプローチができるのではないか」と、医師への問い合わせにためらいをみせる薬剤師に対してアドバイスした。 池上氏は、「患者は不眠症治療薬を飲むうえで、“依存性があり止められなくなる”、“効果がなくなる(量が増える)”などの不安を抱え、本当は飲みたくない方が多い。患者一人ひとりの生活環境を把握し、コーヒーやお茶などカフェインを含む飲料は睡眠の4時間前にとるように指導するなど、患者に寄り添うことで減薬は可能である。しかし、減薬する際は、反跳性不眠などのリスクを考慮しながら、しっかり時間をかけて行ってほしい」と、減薬におけるリスクとベネフィットを説明した。 最後に、秋下氏は「レセプトデータ等の処方解析やエビデンス蓄積に努めていく」とし、池上氏は「不眠症も生活習慣病の一つと考え、睡眠衛生指導を行い、出口を見据えた不眠症薬物療法を実践する」と今後の方針や意気込みを示した。■参考日本老年学会:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015日本睡眠学会:睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン1)AMED長寿科学研究開発事業 平成28年度~29年度「高齢者の多剤処方見直しのための医師・薬剤師連携ガイド作成に関する研究」■関連記事身体能力低下の悪循環を断つ診療高齢者の処方見直しで諸リスク低減へ待望の刊行 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」

20626.

父親が高齢、早産児や妊娠糖尿病が増大/BMJ

 父親が高齢であることにより、母親の妊娠糖尿病とともに、子供の早産、低出生時体重などが増加することが、米国・スタンフォード大学のYash S. Khandwala氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年10月31日号に掲載された。米国では、父親の平均年齢が過去40年間上昇してきた。高齢の母親においては、不妊、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症、帝王切開による分娩に関して広範囲の調査が行われているが、出生時のアウトカムに及ぼす高齢の父親の影響はほとんど知られていないという。最近の研究では、高齢男性の精子におけるエピジェネティックな変化が、胎盤や胚の発育に悪影響を及ぼす可能性が示唆されている。父親の年齢の影響を評価する後ろ向きコホート研究 研究グループは、父親の高い年齢が、母親および子供の出生時のアウトカムに及ぼす影響をレトロスペクティブに評価する住民ベースのコホート研究を行った(研究助成は受けていない)。 解析には、2007~16年の期間に記録された生児出生4,052万9,905件のデータを用いた。 新生児の主要アウトカムは、早産(妊娠期間<37週)、低出生時体重(<2,500g)、出生後5分時Apgarスコア(<8)、新生児集中治療室(NICU)入室、分娩後の抗菌薬を要する状態、痙攣(発作)とした。母親の主要アウトカムは、妊娠糖尿病および妊娠高血圧腎症であった。また、副次アウトカムとして、予防可能な出生時イベントの評価を行った。父親が45歳未満で、早産13.2%、妊娠糖尿病18.2%を予防 調査対象の期間中(2007~2016年)に、父親の平均年齢は30.0歳から31.2歳に上昇した。 父親の年齢が上昇するに従って、新生児の早産、低出生時体重、低Apgarスコアのリスクが増加した。 母親の年齢で補正すると、父親が45歳以上の時に出生した子供は、父親が25~34歳の子供に比べ、妊娠期間とは独立して早産のオッズが14%高く(補正後オッズ比[OR]:1.14、99%信頼区間[CI]:1.13~1.15)、痙攣のオッズが18%高かった(1.18、0.97~1.44)。 パートナーが最も高齢(≧55歳)の母親は、パートナーが25~34歳の母親に比べ、妊娠糖尿病のオッズが34%高かった(OR:1.34、99%CI:1.29~1.38)。 父親が若い場合に予防可能と考えられるイベントの検討では、父親が45歳未満の子供は、父親が45歳以上の子供に比べ、早産が13.2%(95%CI:12.5~13.9)少なかった。同様に、低出生時体重は14.5%(13.6~15.4)、低Apgarスコアは5.9%(4.5~7.2)、NICU入室は15.1%(14.2~15.9)、抗菌薬の使用は6.2%(4.4~8.0)、痙攣は19.9%(2.9~36.7)少なかった。 また、パートナーが45歳未満の母親は、パートナーが45歳以上の母親に比べ、妊娠糖尿病が18.2%(17.5~18.9)少なく、妊娠高血圧腎症は3.9%(2.8~5.0)少なかった。 著者は、「米国では、高齢の父親は相対的に少ないと考えられ、現時点の人口レベルでの影響はわずかだが、前世代を通じた高齢の父親の増加に伴い、出生時のアウトカムや公衆衛生への影響を評価する調査の継続が求められる」としている。

20627.

CV高リスク2型DMへのSGLT2iのCV死・MI・脳卒中はプラセボに非劣性:DECLARE-TIMI58/AHA

 先ごろ改訂された米国糖尿病学会・欧州糖尿病学会ガイドラインにおいてSGLT2阻害薬は、心血管系(CV)疾患既往を有する2型糖尿病(DM)例への第1選択薬の1つとされている。これはEMPA-REG OUTCOME、CANVAS programという2つのランダム化試験に基づく推奨だが、今回、新たなエビデンスが加わった。米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会の10日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて発表された、DECLARE-TIMI 58試験である。SGLT2阻害薬は、CV高リスク2型DM例のCVイベント抑制に関しプラセボに非劣性であり(優越性は認めず)、CV死亡・心不全(HF)入院は有意に抑制した。Stephen D. Wiviott氏(Brigham and Women’s Hospital、米国)が報告した。3分の2近くが1次予防例 DECLARE-TIMI 58試験の対象は、1)虚血性血管疾患を有する(6,974例)、または2)複数のCVリスク因子を有する(1万186例)2型DM例である。クレアチニン・クリアランス「60mL/分/1.73m2未満」例は除外されている。本試験における1次予防例の割合(59%)は、CANVAS Program(34%)に比べ、かなり高い。 平均年齢は64歳、DM罹患期間中央値は11年、平均BMIは32kg/m2だった。併用薬は、82%がメトホルミン、43%がSU剤を服用し、41%でインスリンが用いられていた。CVイベント抑制薬は、レニン・アンジオテンシン系抑制薬が81%、スタチン/エゼチミブが75%、抗血小板薬も61%、β遮断薬が53%で用いられていた。 これら1万7,160例は、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン群(8,582例)とプラセボ群(8,578例)にランダム化され、二重盲検法で4.2年間(中央値)追跡された。MACE抑制はプラセボに非劣性が示された その結果、CV安全性1次評価項目であるMACE(CV死亡・心筋梗塞[MI]・脳梗塞)の発生率は、SGLT2阻害薬群:8.8%、プラセボ群:9.4%(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.84~1.03)となり、SGLT2阻害薬による抑制作用は、プラセボに非劣性だった(p<0.001)。このように、プラセボに比べMACEの有意減少は認められなかったものの、もう1つのCV有効性1次評価項目である「CV死亡・心不全入院」*リスクは、SGLT2阻害薬群で有意に減少していた(HR:0.83、95%CI:0.73~0.95)。*試験開始後、MACEリスク中間解析前に追加 有害事象は、服用中止を必要とするものがSGLT2阻害薬群で有意に多かった(8.1% vs.6.9%、p=0.01)。なおメタ解析でリスク増加が懸念されていた膀胱がんは(Ptaszynska A, et al. Diabetes Ther. 2015;6:357-75.)、プラセボ群のほうが発症率は有意に高かった(0.5% vs.0.3%、p=0.02)。CANVAS programとの併合解析で、1次予防例におけるMACE有意抑制は示されず SGLT2阻害薬による2型DMのCVイベント抑制作用を検討した大規模ランダム化試験は、このDECLARE-TIMI 58で3報目となる。そこでWiviott氏らは、既報のEMPA-REG OUTCOME、CANVAS programと合わせたメタ解析により、SGLT2阻害薬のMACE抑制作用を検討した。 その結果、CV疾患既往例では、SGLT2阻害薬によりMACEのHRは0.86(95%CI:0.80~0.93)と有意に低下していたものの、リスク因子のみの1次予防例(1万3,672例)では、SGLT2阻害薬によるリスク低下は認められなかった(HR:1.00、95%CI:0.87~1.16)。なお、CV疾患既往の有無による交互作用のp値は「0.05」である。一方、CV死亡・HF入院のHRは、CV疾患既往例で0.76(95%CI:0.69~0.84)、リスク因子のみ例で0.84(95%CI:0.69~1.01)だった(交互作用p値:0.41)。 本試験はAstraZenecaの資金提供を受け行われた(当初はBristol-Myers Squibbも資金提供)。また学会発表と同時にNEJM誌にオンライン掲載された。「速報!AHA2018」ページはこちら【J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは】J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

20628.

外傷性脳損傷の再生医療、目の前に…細胞薬SB623有意差示す

 サンバイオ株式会社は、平成30年11月1日、再生細胞薬SB623の外傷性脳損傷を対象にした日米グローバル第II相STEMTRA試験において、主要評価項目を達成したと発表。 STEMTRA試験の主要評価項目である脳卒中後感覚運動機能回復度評価尺度のFugl-Meyer Motor Scaleにおいて、SB623投与群は、コントロール(プラセボ)群と比較して、運動障害を伴う慢性期外傷性脳損傷(TBI)患者の運動機能を、統計学的に有意に改善し、主要評価項目を達成した。24週時点のFugl-Meyer Motor Scaleのベースラインからの改善量は、SB623投与群の8.7点に対し、コントロール群では2.4点であった。SB623の治験で運動機能の有意な改善が認められた また、安全性についても、SB623のこれまでの試験の安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性の懸念は認められなかった。 サンバイオ株式会社のメディカルディレクター兼開発部長である金子健彦氏は、本誌のインタビューで、SB623の治験によって「コントロール群で見られるように本来は筋力の改善が起こりにくい慢性期の頭部外傷の患者に、統計学的に明らかな改善が認められたことは頭部外傷の患者さんに大きな福音となると考えております。これまで治療の選択肢が限られた頭部外傷の患者さんに、新しい治療の選択肢が提供できることを、心よりうれしく存じます。治験にご協力いただいた患者さんやご家族、先生方や病院スタッフの皆さまに心よりお礼申し上げます」と述べた。また、サンバイオグループのチーフメディカルオフィサーで研究責任者であるDamien Bates氏は同社のニュースリリースの中で、「このグローバルな臨床試験は、TBIに対するこれまでで最大の幹細胞の試験であり、この厳密な無作為化二重盲検試験で、多くの患者さんがSB623の治療によって運動機能の有意な改善が認められたことは非常に刺激的です。これは再生医学にとって、そして、TBIによる持続的な後遺症に苦しむ多くの患者さんにとって、重要なマイルストーンとなりました」と述べている。

20629.

中強度運動が緑内障の視野欠損進行を遅らせる?

 身体活動レベルと緑内障による視野欠損には関連があるのだろうか。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のMoon Jeong Lee氏らは、縦断研究において、1日の平均歩数、中等度以上の身体活動(MVPA)時間および非座位活動時間の増加が、緑内障患者の視野欠損の進行抑制と関連していることを明らかにした。毎日5,000歩または非座位活動を2.6時間行えば、緑内障における視野欠損の平均的な割合が10%減少するという。著者は、「今後、身体活動が緑内障の視野欠損を遅らせることができるか、または視野欠損の進行が活動制限をもたらすかを、前向き研究で検討する必要がある。もし前者が確認されれば、身体活動は緑内障によるダメージを防ぐ新たなリスク因子として特徴付けられるだろう」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2018年10月10日号掲載の報告。緑内障における身体活動レベルと視野欠損の関連 研究グループは、緑内障における身体活動レベルと視野欠損の関連を調べる目的で、緑内障疑いまたは緑内障と診断された高齢者141例(平均年齢64.9±5.8歳)を対象として研究を行った。その間に、加速度センサーを1週間着用してもらい、1日の平均歩数、MVPA時間および非座位活動時間を測定した。また、身体活動評価前後における入手可能なすべてのVF測定値を後ろ向きに分析し、視野欠損の割合を評価した。主要評価項目は、身体活動測定値に関連するVF感度におけるPointwiseの変化であった。 主な結果は以下のとおり。・身体活動評価時における視野測定の結果、平均偏差(MD)は-6.6dB、1日の平均歩数は5,613±3,158歩であった。・視野感度をPointwiseで測定した際、視野欠損の未調整の平均的な割合は0.36dB/年(95%信頼区間[CI]:-0.37~-0.35)であった。・多変量解析の結果、歩数が多い(1日1,000歩で+0.007dB/年、p<0.001)、MVPA時間が多い(MVPA 1日10分以上で+0.003dB/年、p<0.001)、非座位活動時間が多い(非座位活動時間1日30分以上で+0.007dB/年、p=0.005)患者において、視野欠損が緩徐であることが観察された。・視野欠損率の進行速度と関連する因子は、年齢(高齢)、非白色人種、緑内障手術、白内障手術、ベースライン時点の視野障害が軽度(MD>-6dB)に対して中等度視野障害(-6dB≧MD>-12dB)があることであった。・他の期間(たとえば、活動評価1年、3年および5年以内)でも、ベースライン時に加速度センサーで測定した身体活動値と視野欠損の割合との間に、同様の関連が観察された。

20630.

突然死予防のためのライフジャケットは有効か?(解説:香坂俊氏)-947

心臓突然死は恐ろしい。その恐ろしさはどう表現すればわかってもらえるかわからないが、たとえば自分の患者さんが突然外来に来なくなり、後日ご家族の方から「突然亡くなりました」と聞かされたときの衝撃は相当なものである。この突然死を防ぐためさまざまな試みがなされている。ここ10年の最大の進歩といえばAEDが人の集まるところに設置されるようになった、ということではないか。かつて2010年のNEJM誌に、AEDの普及に伴い日本での院外の心肺停止例の予後が改善傾向にあることが示された(Kitamura T, et al. N Engl J Med. 2010;362:994-1004.)。残る課題はいろいろあるが、「集団」ではなくハイリスクの「個人」に対してどう介入していくかというところが大きい。一回でも心肺停止を経験した個人に対してはその2次予防として除細動器(ICD)が植え込まれるが、心肺停止を起こしたことがなく、単にそのリスクが高いと判断される個人(心不全症状があり、かつEFが極端に低い等)に対しては、米国などではまず40日程度(PCI症例は90日)ガイドラインベースの薬物療法を試みることとなっている。おおよそ1/3くらいの方の状況はそれで改善する。しかし、その40日間で実際にイベントが起きたらどうするのか? 日本では、たとえば東京都が主導して自宅用のAEDを貸し出したりすることが行われてきたが、本当にそれだけで医療者側として「ベストを尽くした」といえるのだろうか?こうした疑問に回答するためにデザインされたのがVEST試験である(このVESTは着用ベストを想定したものであり、BESTとは違う)。この試験で用いられたのは、イベントを検出すると自動的に伝導用のゲルを排出して除細動をかけるという高機能の着用ベストで、これがランダムにハイリスクと考えられる患者に貸与された。その結果であるが、不思議なことに循環器関連のイベントは低下せず、非循環器関連の死亡のみが低下するという結果であった(プライマリエンドポイントは心臓突然死のイベントであり、ここにはランダム化された群間で差がつかなかった)。これをどう解釈するかということはいろいろと議論を呼んでいる。とくにベストを直接地肌に着用しなければならないため、長期的なコンプライアンスの低さは問題だろう。ランダム化当初は8割くらいがベストを常時身に着けていたが、これが90日で4割まで低下している。実際にベスト着用群の突然死の半分以上はベストを着用していないときに起こっており、この試験では着用ベストの効果を過小評価している可能性が高い(一方でリアルにこのベストを使ってもコンプライアンスはさらに下がるだろう、ともいえる)。いずれにせよ悩ましい結果である。コンプライアンスが高いと見込まれる患者さんにはよい選択肢となるのかもしれないが、現段階でこのベストをすべての患者さんに提供しても得られるメリットは少なそうである。

20631.

妊娠中の細菌性膣症に対する早期のクリンダマイシンの効果:多施設二重盲検ランダム化比較試験(PREMEVA)(解説:吉田敦氏、吉田穂波氏)-949

 細菌性膣症(BV)では、膣内のラクトバチルス属が減少、嫌気性菌やマイコプラズマが増加する。いわば膣のマイクロバイオータ(microbiota)のバランスが乱れるものとされているが、妊娠中ではBVは2倍以上に増加する。とくに16~20週での合併率は4~7倍に上昇するという。さらにBVを有する妊婦では、自然流産のリスクが9倍、母体感染のリスクが2倍以上になると報告されたが、この相関の原因は不明であった。 しかしながら膣細菌叢の乱れが、子宮への感染を生じることで流早産を来すと考えれば、妊娠早期の抗菌薬投与によって早期産が減ると予想される。ただし先行研究をまとめたメタアナリシスでは相反する結果にとどまっていた。このため今回の大規模PREMEVA試験に至った訳であるが、結果としてfirst trimesterにクリンダマイシンを内服しても、後期流産やごく早期の自然早産は減少せず、クリンダマイシンの副作用によると思われる下痢や腹痛が増加した。 クリンダマイシン自体は、内服あるいは膣クリーム・坐剤として、メトロニダゾールと並んでBVの治療に用いられる。BVに対してはこれらの治療は有効であるが、不良な転帰を減らすことが証明できなかった「限界」として、著者らは(1)内服のコンプライアンス、(2)軽快と再燃を繰り返すBV自体の性質、(3)対象者が低リスクで、早期産が少ない集団であったことを挙げており、今後はハイリスク群での、クリンダマイシンの投与の有無での検討を示唆している。 膣のマイクロバイオータに関する知見は、急速に蓄積されつつあるものの、それらを総括し、病態との相関について結論を出すにはまだ至っていない。妊婦は非妊婦に比べて構成する微生物の豊富さ、多様性が減少していることが指摘されている一方1)、自然早産では豊富さ・多様性が増しているものの、構成菌によるタイプには偏りが示せなかったともいう2)。マイクロバイオータ自体、多くの指標を設定して解析していく必要性がうかがわれる。今後のBV治療と流早産の関連の検討についても、膣あるいは子宮内のマイクロバイオータの解析が求められるかもしれない。

20632.

「血圧の薬は一生飲み続ける」と思い込む患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第23回

■外来NGワード「飲まないとあとあと大変なことになりますよ!」「治療のガイドラインでは薬が推奨されています」「倒れたら、誰があなたの面倒を見るんですか?」■解説 血圧が高いのに医療機関を受診せず、薬を飲むのを嫌う患者さんがいます。その理由の1つとして「血圧の薬を飲み始めると、一生飲み続けなければいけない」と思い込んでいることが挙げられます。しかし、血圧コントロールが良好な患者さんでは、降圧薬を中止しても血圧が正常範囲に保たれる割合が40%程度存在したとの報告があります1)。こういった患者さんには、もともと軽症の高血圧(I度高血圧)だった、減塩・減量などで生活習慣を改善できた、1種類の降圧薬で良好な血圧コントロールができた若年者などのパターンがあると考えられます。また、血圧には季節変動があることが知られており、夏季に血圧が低下する患者さんでは、一時的に降圧薬の減量あるいは休薬を考慮してもよいです。一方、冬季には血圧が上昇して増量や追加が必要になることも少なくありません。患者さん一人ひとりの血圧変動に合わせた服薬調整が大切です。血圧を良好に保つことが将来的な動脈硬化を防ぎ、脳血管疾患、心血管疾患、認知症などの予防につながることを強調して説明してみてはいかがでしょうか。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師今まで、血圧の薬を飲んだことはありますか?(服薬歴の確認)患者ありません。血圧の薬を飲み始めると、一生やめることができないんでしょう?医師そんなことはありませんよ。薬を飲み始めても、食事や運動などに気を付けて、血圧が落ち着いたら薬の量を減らすことや、お休みすることもできます。患者えっ、そうなんですか?医師それに、血圧の薬を飲むことは血圧を下げるためだけでなく、動脈硬化を予防するためでもあるんです。患者動脈硬化を予防するということは…?医師動脈硬化の予防は、脳卒中や心筋梗塞、そして認知症の予防にもつながりますよ。患者なるほど…。医師ただし、薬ですから、副作用が起こることもあります。血圧の薬はたくさんありますから、自分に合った薬を見つけることが大切です。患者そうなんですよね。副作用が心配で、なかなか気が進まなくて…。医師それでは、血圧の薬について、どういう種類があるか説明させてもらいますね。患者はい。よろしくお願いします。■医師へのお勧めの言葉「血圧の薬を飲み始めても、食事や運動などに気を付ければ、薬の量を減らせたり、お休みできたりする人もいます」「血圧を正常範囲に保つことは、動脈硬化の予防になります。脳卒中や心筋梗塞、さらには認知症の予防にもつながりますよ」1)Nelson M, et al. Am J Hypertens. 2001;14:98-105.

20633.

第7回 p値(probability)とは何の確率を示す?【統計のそこが知りたい!】

第7回 p値(probability)とは何の確率を示す?薬剤の効果を調べる場合、その薬剤を必要とするすべての人に薬剤を投与してみれば効果はわかりますが、それは不可能です。そのため臨床研究では、一部の人に薬剤を投与して、そこで得られたデータが世の中の多くの人たちにも通じるかどうかを検証します。ここでは、例として「解熱剤である新薬Yは母集団において解熱効果がある」という仮説を立て、検定的手法を用いてこの仮説が正しいかどうかを確認します。確認する方法を「仮説検定(hypothesis test)」と言います。仮説検定は、母集団検定、統計的検定とも言われます。今回は、仮説検定、そしてp値(probability)とは何の確率を示すのかについて解説します。■帰無仮説と対立仮説統計的仮説検定で最初にすることは、帰無仮説と対立仮説を立てることです。まず、帰無仮説と対立仮説についてご説明します。製薬会社は、多大な時間と開発費を投じて新薬を開発します。よって新薬Yは自信をもって開発された薬剤ということになります。ですから、新薬Yは解熱作用に優れている、つまり、低下体温は0℃より大きいと言えそうです。したがって、母集団における低下体温を0℃と仮定すると、その仮説はほとんど起こらない事象であると言えます。低下体温が0℃という仮説を「無」にしたいという、この仮説が帰無仮説です。帰無仮説は、棄却されて「無」に帰する仮説という意味です。帰無仮説の反対の仮説を対立仮説といいます。解析目的で明らかにしたかったことが対立仮説になります。帰無仮説がほとんど起こらない事象であることを示す、つまり帰無仮説を棄却することができれば、対立仮説が採択されます。■仮説検定の手順仮説検定の手順は次の手順によって行います。1.帰無仮説と対立仮説を立てる。2.基本統計量を計算する。調査データについて、平均値、標準偏差、標準誤差(SE)を算出する。3.検定統計量を算出する。仮説検定の公式に標準誤差(SE)を当てはめ、検定統計量を算出する。検定統計量は、t値、p値、信頼区間の3つである。4.有意差判定を行う。t値やp値と統計学が決めた値(有意水準という)とを比較し、有意差判定を行う。■p値による仮説検定の仕方p値による仮説検定の仕方を説明します。p値はt値と密接な関係があります。t値が大きくなるほど、p値は小さくなるという関係があります。p値とは「probability(確率)」の頭文字です。pの値は0~1の間の値です。p値は小さくなればなるほど、誤る確率は低くなり、母集団において効果がある(違いがある)という結論の確からしさが高まります。p値と統計学が定めた基準の値を比較し、「p値<有意水準」であれば、帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択します。すなわち、「新薬Yは母集団において解熱効果がある」と判断します。有意水準は通常0.05の定数を適用します。体を屈めてバーをくぐるリンボーダンスを例にすると、屈んだ高さがp値、バーの高さが有意水準です。バーをくぐればセーフ、くぐれなければアウトです。検定では、p値が有意水準0.05を下回れば差がある(効果がある、有意差あり)と判断します。p値が有意水準0.05(5%)よりも小さいときは、差がある(効果がある、有意差あり)と判断できますが、この判断はもしかしたら間違っているかもしれません。つまり、p値(probability)とは、仮説が正しい場合にこの手順を多数回実施して検定を行うとき、間違って帰無仮説を棄却する割合が5%未満であるということです。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション4 仮説検定の意味と検定手順セクション10 p値による仮説検定第4回 ギモンを解決! 一問一答質問1 p値は小さければ小さいほど差がある(よく効いた)といえるのか?

20634.

薬機法改正で明文化される「薬局薬剤師の役割」の方向性【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第7回

以前にもご紹介しましたが、来年(2019年)、医薬品医療機器等法の改正が予定されており、現在、医薬品医療機器制度部会において議論がされています。いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上になる2025年をめどとして、地域包括ケアシステムを構築することを前提に、テーマの1つである「薬局・薬剤師のあり方・医薬品の安全な入手」について、先日、以下の問題点が取り上げられました。薬局・薬剤師のあり方、医薬分業のあり方(その1)(平成30年10月18日 第7回医薬品医療機器制度部会 資料2)20ページから抜粋薬剤師による情報提供及び薬学的知見に基づく指導の強化【現状と課題】現行法では、薬剤を販売等の目的で調剤した時に、薬剤師が薬学的知見に基づく指導を行うことが義務づけられている。有効で安全な薬物療法の提供のためには、患者の服薬状況等を継続的に把握し、その情報を処方医等に情報提供を行うことが必要であるが、薬局の薬剤師はこれを必ずしも十分実施できているとは言えない実態がある。【主な意見】病院の薬剤師は患者が薬を服用した後の状況を見ているが、薬局の薬剤師はそれができていない。服薬状況の継続的な把握が重要。薬局の薬剤師が処方箋に記載された情報のみで調剤、薬学的知見に基づく指導を行うことには限界がある。疾患名や検査値等、調剤や服薬指導に必要な患者に関する情報を共有する仕組みが必要。処方箋への疾患名記載については慎重な議論を要する。服薬情報の一元的・継続的把握のためには、外来と入院での情報の連携(薬薬連携)が必要。処方(レジメン)提案は薬剤師の業務として重要。ただし、チーム医療として医療機関の中で行われる場合と、医薬分業の中で薬局薬剤師が処方医に対して行う場合について整理すべき。薬を受け取るときだけではなく、その後の安全管理もかかりつけ薬剤師が適切に担うことを検討すべき。【論点】薬剤師の職能発揮のため、以下の内容を法令上明確にすべきではないか。・調剤時のみならず、医薬品の服用期間を通じて、服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行うこと・患者の服薬状況等に関する情報を、必要に応じて処方医等へ提供するよう努めることにより、薬物療法の最適化に寄与すること「服用後の管理」も役割として明文化へこの資料の「論点」によれば、服用期間を通じて服薬状況の把握や指導を行うこと、医師への情報提供に努めることの2点を法令上明確にすることについて議論されています。以前から、薬剤師は、薬剤を交付する時だけでなく、服用後のフォローが重要と言われていましたが、これが条文に明記されることには大きな意味があります。このような議論になるということは、服用後の管理を薬剤師が担うことに対して期待されていると考えられるので、薬剤師はそれに応えていきたいところです。一方、仮に、このような義務が医薬品医療機器等法に記載されれば、服用後の管理が薬剤師の義務であることが明確になりますので、服薬期間中に、薬剤師が適切に患者の管理をしていなかったために、健康被害などが起こってしまえば、薬剤師や薬局の責任問題にもなることが想定されますので、その覚悟は必要でしょう。また、医師への服薬状況に関する情報などの提供については、努めることとあるので努力義務としての検討のようですが、薬物療法の最適化に寄与するとありますので、必要に応じた処方提案なども含まれると考えれば、これも今後さらに大きな役割になっていくのではないでしょうか。実際にどのような改正になるかはわかりませんが、仮にこのような条項が加われば、薬局や薬剤師の機能として、大きな影響のある改正かと思います。また、改正がどのような形になるとしても、国が現状でこのような問題意識を持っているということについて、薬剤師として理解しておく必要があります。今後も、医薬品医療機器等法の改正の議論には注目しておきたいところです。参考資料1)厚生労働省 厚生科学審議会 平成30年度第7回医薬品医療機器制度部会 資料

20635.

第13回 若い薬剤師よ、先輩に遠慮するな!【週刊・川添ラヂオ】

動画解説今回は岡山県キラきら薬局の明石宙郎先生とキャンプ場からお届け。院長回診に付き添っていた病院時代から、在宅ケアに注力する現在までの薬剤師人生を振り返ります。他職種連携で、地域住民の健康に責任を持つのが薬剤師としてのポリシー。そんな明石先生から若い薬剤師へのメッセージは意外にも…。

20636.

在宅医療で使う漢方薬の役割と活用法

 2018年10月24日、漢方医学フォーラムは、都内で第138回目のプレスセミナーを開催した。当日は、在宅医療における漢方薬の役割について講演が行われた。在宅医療は患者のレジリアンスを高める 講演では、北田 志郎氏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 准教授/あおぞら診療所 副院長)を講師に迎え、「地域包括ケアシステムと漢方~“暮らしのなかでいのちを支える” 在宅医療で発揮される漢方薬の役割~」をテーマに講演が行われた。 同氏は、内科ローテートを修めた病院で東洋医学を専攻。以降、精神医学の診療に従事するとともに、中国に短期留学をし、漢方専門外来に従事するなど、漢方薬には深い造詣を持つ。 講演では、少子高齢化、多死化、高齢者の独居化が増加する日本社会で、地域包括ケアの重要性を強調。最新の治療機器、治療薬などで医療を提供し、健康長寿国であるにも関わらず、受益者である患者の医療制度への満足度は低く、提供している医療者は疲弊しきっていることに言及し、その原因を医療需要(患者の思い)と供給(医療者の思い)のミスマッチにあると指摘する。たとえば、終末期の患者を病院で看取ることは、本当に患者が望んでいることなのか、医療者の思いだけで医療の提供をしているのではないかと疑問を呈した。 具体的例として、80代の認知症患者を挙げ、自宅での終末期の過ごし方が患者の病状緩和やQOLの向上に役立ったと自験例を説明した。これを同氏は「レジリアンス(復元力・打たれ強さ)」と呼び、古い記憶をたどる傾向のある認知症では自宅だからこそ医療・介護に役立つ利点があると語る(ただし、在宅医療に拘泥することなく、病の軌跡の局面に応じて使い分けるべきだとも指摘する)。 また、在宅医療では、先端医療の導入が困難であり、治療手段も限定される中で、患者の暮らしと乖離しない技術として伝統医学との親和性を提案する。とくに高齢者の在宅診療では、「虚弱に対する補法」として、代替医療が真価を発揮する場になるという。高齢者への5つの漢方薬の使い方 『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015』(日本老年医学会 編集)では、「漢方薬・東アジア伝統医薬品」と別章を作り、クリニカルクエスチョンとして5剤について有効と記載している。 ガイドラインでは、「半夏厚朴湯」につき、「誤嚥性肺炎の既往をもつ患者における嚥下反射を改善させ、肺炎発症の抑制に有効である」とされている。また、エビデンスについても「有意に肺炎発症を減少させただけでなく、自力経口摂取維持にも有効」とされる。その他の方剤として、「抑肝散」が(アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性)に伴う行動・心理症状のうち易怒、幻覚、昼夜逆転、興奮、暴力など、いわゆる「陽性症状」に、「大建中湯」は脳卒中後遺症における機能性便秘ならびに腹部術後早期の腸管蠕動運動促進に、「麻子仁丸」は高齢者の便秘に、「補中益気湯」は慢性閉塞性肺疾患における自他覚症状、炎症指標および栄養状態の改善にそれぞれ有効とされている。 在宅医療で漢方を用いる意義について同氏は「老いること、死ぬことは生活に属し、現代医学による管理を緩めつつ、医療者に見放されることなく、在宅の生をまっとうする契機を得ることができる」と説明し、最後に「在宅医療における漢方の導入は『医療の根幹部とは何か』を模索する思考につながる」と思いを語り、レクチャーを終えた。

20637.

知らずに食べている超悪玉脂肪酸、動脈硬化学会が警鐘

 農林水産省がトランス脂肪酸(TFA)に関する情報を掲載してから早10年。残念なことに、トランス脂肪酸に対する日本の姿勢には進展が見られない。2018年10月31日、動脈硬化学会が主催するプレスセミナー「トランス脂肪酸について」が開催され、丸山 千寿子氏(日本女子大学家政学部食物学科教授)、石田 達郎氏(神戸大学大学院医学研究科特命教授)がTFA摂取によるリスクに警鐘を鳴らした。トランス脂肪酸はどうやって体内に取り込まれるのか TFAと飽和脂肪酸を同量摂取して比較した場合、TFAは飽和脂肪酸と比べ動脈硬化の発症を10倍も増やし、糖尿病の原因となるインスリン抵抗性の悪化などを引き起こす。そのため、TFAは超悪玉脂肪酸とも呼ばれている。にもかかわらず、なぜ、TFAがいまだに食品に使用されているのだろうか。石田、丸山の両氏は「現時点では日本人において、直接その有害性を証明した根拠が少ないため」とコメント。 さらに、勘違いされやすいが、TFAは食品などに直接注入される添加物ではない。シス型で天然の液体植物油であるオレイン酸やリノール酸が工場などの食品加工の過程において、トランス型で固形油のエライジン酸やリノエライジン酸に変換・生成されるのである。ただし石田氏は、「家庭での一般の調理過程ではほとんど生じない」と家庭内調理の安全性を伝えた。TFAの新たな測定法と臨床研究の今後の展望 これまで日本でのTFA摂取量の検討は、摂取量に関するアンケート調査を実施し、それに基づいて推測することが多かった。石田氏らは、TFAの血中濃度について、ガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて直接測定することに成功。その結果、TFA摂取量がLDL-C値やTG値と正相関、HDL-C値と逆相関することを明らかにした。これは海外の疫学研究と結果が類似しており、石田氏は、「この研究において、TFA血中濃度とBMIや年齢の関係を見ると、高齢者(75歳以上)ではメタボ有無による差はないものの、若年層(60歳未満)のメタボ群では有意にTFA血中濃度が高値を示した。また、冠動脈疾患を有する患者でも同様の傾向を示した。ただし、この研究は入院患者、病院食摂取後、早朝空腹時で測定しているため、これでもTFAのリスクは過小評価されている可能性がある」と述べ、「今回われわれが行った約1,000例を対象とした試験の結果は、海外で証明されたTFAの有害性と酷似している。つまり、海外で証明された知見は日本人においても当てはまると考えることが妥当」とし、「日本の大規模臨床試験がなくても、TFAがリスクだと認識するべきだ」とコメントした。異なる見解を示す消費者庁と農林水産省、2023年までにトランスフリーなるか 摂取過多が認められた国々では、TFAの摂取削減や表示義務が課されている。実際、アメリカでは加工食品に含まれる脂質の含有量のみならず、その内容を重視し、total fatに加えてtrans fatが記載されている。残念ながら日本ではこのような表示義務がないため、食品を製造する各企業の努力に頼らざるを得ない。 そんな中、WHOは『Make the world trans fat free by 2023』という目標を掲げ、TFAによる冠動脈疾患の削減に取り組む具体策を講じている。丸山氏は、「一般の人だけでなく、各企業がTFAについての理解があるかどうかも問題」と、啓蒙活動の重要性を語った。 また、日本でのTFA削減が足踏みしている理由として、丸山氏は各省庁の対応を指摘。「消費者庁は“脂質の含有量だけではなく内容にも留意すること”を丁寧に提示している。一方の農林水産省は、ホームページに“食品中のTFAを減らす努力をしています”と記載していながらも、“TFAだけを必要以上に心配せず、脂質全体の摂取量に十分配慮”と記している」と、TFA摂取による健康被害に根拠がないとも読み取れる説明文に、同氏は悲憤した。 アメリカでは表示が義務化されたことでTFAの摂取が78%も減少したそうである。日本では、いくら“TFAをとらないで!”と言っても、何にどれくらい含まれているのかがわからないため、避けることができない。これを踏まえ両氏は、「日本人は表示されればそれを避ける傾向があるので、表示義務化が実現すればTFAの摂取量は減少するかもしれない。われわれは各省庁にお願いを続けていく」と、摂取規制実現へ向き合っていく姿勢を示した。■参考日本動脈硬化学会:栄養成分表示に関する声明農林水産省:トランス脂肪酸に関する情報消費者庁:トランス脂肪酸に関する情報■関連記事不眠症になりやすい食事の傾向トランス脂肪酸の禁止で冠動脈疾患死2.6%回避/BMJ

20638.

統合失調症患者が正常に抗精神病薬を中止した臨床的特徴に関するレビュー

  抗精神病薬の中止は統合失調症患者の再発リスクを増加させるが、一部の患者では、抗精神病薬を継続することなく臨床的に良好な状態を持続することができる。しかし、このような患者の特徴に関するデータは不十分である。慶應義塾大学の谷 英明氏らは、正常に抗精神病薬を中止した統合失調症患者の臨床的特徴を明らかにするため、システマティックレビューを行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2018年10月8日号の報告。統合失調症患者における抗精神病薬中止を成功させるいくつかの予測因子を特定 統合失調症における抗精神病薬中止成功の予測因子を同定するため、PubMedを用いて2018年6月までの文献を検索し、システマティックレビューを行った。「antipsychotic* or neuroleptic」「withdraw* or cessat* or terminat* or discontinu*」「schizophreni* or psychosis」の検索キーワードを用いて、さらに英語で報告されたヒト対象の研究に絞り込んだ。フォローアップ期間が3ヵ月以上の研究のうち2つ以上で再現された場合、統合失調症の再発リスク低下に関連する因子とみなした。 統合失調症における抗精神病薬中止成功の予測因子を同定するレビューの主な結果は以下のとおり。・システマティックな文献検索により、37件の関連文献が特定された。・抗精神病薬中止後の平均再発率は、38.3%(95%CI:16.0~60.6%)であった。・統合失調症の再発リスク低下に関連する因子は以下のとおりであった。 ●中止前の抗精神病薬の投与量が少ない ●高齢者 ●未治療期間が短い ●高齢発症者 ●ベースライン時の陽性症状の重症度がより軽度 ●社会機能が良好 ●これまでの再発回数が少ない 著者らは「本レビューでは、統合失調症患者における抗精神病薬中止を成功させるためのいくつかの予測因子が特定された。しかし、非常に限定されたエビデンスであり、統合失調症における抗精神病薬の中止は再発率の上昇に影響を及ぼすため、リスクとベネフィットに関してさらなる検討が必要である」としている。

20639.

帯状疱疹ワクチン、弱毒生vs.組換え型/BMJ

 50歳以上における帯状疱疹ワクチンの有効性と安全性について、カナダ・St. Michael's HospitalのAndrea C. Tricco氏らは、弱毒生ワクチンとアジュバント組換え型サブユニットワクチンおよびプラセボを比較するシステマティックレビューとメタ解析を行った。これまで、弱毒生ワクチンとアジュバント組換え型サブユニットワクチンを直接比較する検討は行われていなかったが、今回の解析により、アジュバント組換え型サブユニットワクチンのほうが、より多くの帯状疱疹の発症を予防できる可能性が示された。ただし一方で同ワクチンは、注射部位での有害事象のリスクがより大きいことも示された。BMJ誌2018年10月25日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で検討 研究グループによるシステマティックレビューとメタ解析(ベイジアンメタ解析とネットワークメタ解析)は、2017年1月以降のMedline、Embase、Cochrane Libraryと、灰色文献(grey literature:検索困難・未公表の試験)や試験の参照文献リストなども検索して行われた。包含試験の適格基準は、実験的、準実験的および観察的な試験で、弱毒生ワクチンと、アジュバント組換え型サブユニットワクチン、プラセボ、あるいは非ワクチンを比較検討し、50歳以上を対象に行われた試験とした。 主要評価項目は帯状疱疹の発症で、ほかに眼部帯状疱疹の発症、帯状疱疹後神経痛、QOL、有害事象、死亡について評価した。有効性はアジュバント組換え型サブユニットワクチン 2,037のタイトルとアブストラクトおよび175の全文論文をスクリーニング後、被験者204万4,504例のデータを含む27試験(無作為化試験は22)と、18の関連試験報告(companion report)が適格基準を満たしていた。 5つの無作為化試験のネットワークメタ解析の結果、生ワクチンとプラセボの間に、検査室で確定された帯状疱疹の発症について統計的に有意差はないことが認められた。一方で、サブユニットワクチンは、生ワクチンに対しても(ワクチン有効性:85%、95%確信区間[CrI]:31~98)、プラセボに対しても(同:94%、79~98)統計的優越性が認められた(いずれもp<0.05)。 11の無作為化試験のネットワークメタ解析の結果、サブユニットワクチンは注射部位での有害事象が、統計的に有意に多いことが認められた。生ワクチンとの相対リスク(RR)は1.79(95%Crl:1.05~2.34)、リスク差は30%(95%Crl:2~51)であり、プラセボと比較したRRは5.63(95%Crl:3.57~7.29)、リスク差53%(95%Crl:30~73)であった。 9つの無作為化試験のネットワーク解析から、サブユニットワクチンはプラセボよりも、統計的に有意に全身性有害事象の発現が多いことが示された(RR:2.28、95%Crl:1.45~3.65、リスク差:20%、95%Crl:6~40)。

20640.

死亡への影響が強いのは酷暑か極寒か/BMJ

 中国・復旦大学のRenjie Chen氏らによる同国主要都市272を対象とした時系列研究の結果、中国では外気温と死亡(すべての自然死および主な心肺疾患死)の関連を包括的に描くと非線形の関係性が示され、疾患負荷は主に中程度の寒さに起因していることが明らかにされた。先行研究において、すべての死亡負荷原因は評価されているが、非至適気温に起因する特異的疾患についてはほとんど評価されていない。また、非至適気温と関連する死因の包括的評価は行われていなかった。BMJ誌2018年10月31日号掲載の報告。中国272市の非事故死データを分析、気温と死因の関連を調査 研究グループは、2013年1月~2015年12月のDisease Surveillance Point System of Chinaでカバーされた272市の非事故死データを分析し、気温と死因の関連を調べ、非至適気温に関係する疾患負荷を定量化した。 すべての非事故死および主な心肺疾患死の1日当たりの件数、人口統計学的、気候的、地理的、社会経済的特性などの潜在的影響修飾因子を調べ、市の特異的な関連を推定するために分布ラグ非線形モデルを用いて解析を行った。また、国レベルおよび地域レベルでの推定影響を入手するために多変量メタ回帰分析による解析も行った。中程度の寒さの影響が最も強い 対象期間中に、182万6,186例の非事故死の記録があった。分析の結果、気温と死亡は、一貫して逆J曲線の関連が示された。 国レベルの平均気温でみると、最小死亡気温(22.8℃、気温分布の79.1stパーセンタイル値に相当)との比較において、極度低温(-1.4℃、2.5thパーセンタイル値)のほうが極度高温(29.0℃、97.5thパーセンタイル値)よりも相対的に死亡リスクは高かった。極度低温の死亡リスクは1日後にはみられるようになり、5日後まで上昇した後は15日後まで低下を続け、その後も軽度の影響があり、14日以上続くことが示された。一方、極度高温の影響は、当日に最も強く、2~3日後には大幅に減弱され、その後は顕著な死亡率の転位(相対リスクが1.0を下回る)が認められた。 非事故死全体のうち、14.33%が非至適気温に起因していた。内訳をみると、中程度の寒さ(範囲:-1.4~22.8℃)の起因割合は10.49%、中程度の暑さ(22.8~29.0℃)は2.08%、極度の寒さ(-6.4~-1.4℃)は1.14%、極度の暑さ(29.0~31.6℃)は0.63%であった。 死因別割合は、すべての心血管疾患が17.48%、冠動脈性心疾患18.76%、すべての脳卒中16.11%、虚血性脳卒中14.09%、出血性脳卒中18.10%、すべての呼吸器疾患10.57%、COPDが12.57%であった。これら死因についても気温別の起因割合をみると、いずれの疾患も中程度の寒さが最も多くを占めていた。 分析の結果、死亡のリスクと負荷は、温暖なモンスーンおよび亜熱帯モンスーンの気候区分下、特異的サブグループ(女性、75歳以上、教育を受けた期間が9年以下)、また、都会化がより進んでいる、セントラルヒーティングの期間が短いといった特色がある市で、より顕著であった。

検索結果 合計:36089件 表示位置:20621 - 20640