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第3回 訪問の最後にはここを押さえる-基本を復習しましょう 接し方3-【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は、患者さんとの信頼関係を築くための基本的なポイントをお伝えします。ご存じのことが多いと思いますが、復習してみてください。目次信頼関係を築くためのポイント基本を復習しましょう 接し方1基本を復習しましょう 接し方2基本を復習しましょう 接し方3 ←今回はココ訪問したときに患者さんとの会話でキャッチできる情報以外に、聞いただけ、見ただけでは分からない患者さんの病状の変化や薬の副作用をキャッチしたいものです。この連載では、病態が急変した患者さんはもとより、普段と違う小さなサインを見逃さないためにも知っておきたいバイタルサインの基礎知識を具体的な症例とともに紹介します。今回はバイタルサインを見るまえに押さえておきたい患者さんとの接し方です。訪問の最後に患者さんとの話が終わる頃には、「質問はありませんか?」と聞くとよいでしょう。「次回は○月○日に伺います」など、今後の予定や計画がわかっていれば、確認しておくとよいですね。退席する時には是非「お大事に」と一言付け加えてください。患者さんと会った後に内容を記録する時には、主観的ではなく、客観的な記録を残すようにします。その記録に、次からお話しする「バイタルサイン」が加わるとよいですね。気を付けること医療従事者によるカンファレンスの場合などを除いて、患者さんの情報をむやみに話してはいけません(守秘義務)。「壁に耳あり障子に目あり」です。仲間と外食に行って「こんな患者さんがいて...」などと話をしていると、実は患者さんの関係者が近くにいたりして、信頼が損なわれるだけでなく思わぬトラブルとなることがあります。最後にひとこと患者さんの多くは高齢者や、障害のために身体が不自由な方だと思います。話しかけても意思疎通がとれないことがあるかもしれません。我々医療従事者は、そうした方々から多くを学ばせていただいていることを忘れてはいけないと思います。患者さんあっての我々です。どんな時でも敬意を持って接したいものです。よりよい医療を提供するためにはよりよい人間関係が大切です。自らをチェックしながら患者さんと接しましょう。

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境界性パーソナリティ障害の長期臨床経過に関するメタ解析

 スペイン・バルセロナ大学のIrene Alvarez-Tomas氏らは、成人臨床患者における境界性パーソナリティ障害(BPD)の長期臨床経過に関するプロスペクティブ研究の初めてのメタ解析を実施した。European Psychiatry誌オンライン版2018年12月23日号の報告。 1990~2017年の報告をMedline、PsycINFO、PsycArticles、PubMed、Scopusよりシステマティックに検索した。包括基準は、検証済みの半構造化面接によってBPDと診断された成人患者が対象、アウトカムのプロスペクティブ評価が2つ以上、フォローアップ期間が5年以上とした。エビデンスの質は、SAQOR(Systematic Assessment of Quality in Observational Research)を用いて評価した。BPD診断から寛解、自殺完遂、うつ症状、機能の4つのアウトカムについて、混合効果法を用いてメタ解析を行った。自然経過および初回治療に関する潜在的な調整因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・包括基準を満たした研究は11件、9ヵ国から837例をフォローした。・BPD患者の長期寛解達成率は、50~70%であった。・うつ症状や機能障害の有意な減少も認められた。・平均自殺率は、2~5%であった。・より高い寛解率は、若年患者において関連が認められた。・機能改善の低さは、女性において相関が認められた。・治療の調整因子と長期アウトカムの間には、いくつかの傾向は認められたものの、有意な関連性は認められなかった。 著者らは「BPDの経過は、長期的な症状改善と少しの機能改善を特徴としていることが示唆された。年齢および性別は、長期予後に影響し、治療リソースを最適化するために考慮されるべきである。心理療法的介入に関する長期的な影響を評価するためには、さらなる研究が必要である」としている。

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高齢者糖尿病の食事療法、フレイルを防ぐには?

 2019年1月11~13日の3日間、第22回日本病態栄養学会年次学術集会が開催された。1日目のシンポジウム1では、演者の一人である幣 憲一郎氏(京都大学医学部附属病院疾患栄養治療部 副部長)が「高齢糖尿病患者におけるサルコペニア・フレイル対策の現状と課題」について講演を行った。糖尿病患者の高齢化とサルコペニア・フレイル 日本人の平均寿命は延び続け、糖尿病患者の平均寿命もこの10年間で男女ともに約3.5歳延びている。30年前の調査と比べても、男性で8.3歳、女性で10.2歳も延びているが、現代人は単なる寿命の延命ではなく、自力で快適な生活ができる“健康寿命の延伸”を望んでいる。しかし、糖尿病患者は高齢化に伴い合併症問題が深刻化し、「その1つがサルコペニア・フレイル」と同氏は考える。 現在の糖尿病患者に対する食事療法は、エネルギー管理を主とした血糖コントロールの視点が強過ぎるため、低栄養を来し、サルコペニアやフレイルを招きかねない。そんな現状を踏まえ、同氏は糖尿病患者における栄養摂取における二重負荷の問題、食品の多様性とオーラルフレイル対策の重要性について語った。糖尿病食事療法に生じる栄養不良の二重負荷の問題 糖尿病患者は、壮年期では糖・脂質代謝異常などの生活習慣病予防による過剰栄養対策を、老年期から介護予防としてのサルコペニア・フレイルに関連する低栄養対策が必要となる。これについて同氏は、「生活習慣病予防の教育を受けていた患者が、高齢になったにもかかわらずそのままの食事療法を続けてしまうと、介護予防とは相反する状況が生まれてしまう」と問題提起。さらに、「高齢者の体重減少が“加齢に伴う自然な変化”として見過ごされている」と指摘し、「患者個々をみて、ある段階から低栄養対策を考えていく必要がある」と訴えた。 筋肉は20代をピークに年齢と共に衰え、骨格筋量は低下していく。また、体重の約半分を占め、血糖の80%を取り込む骨格筋の減少は、糖尿病の血糖管理にも悪影響を及ぼすため、これをいかに食い止めるかがサルコペニア対策において重要な問題となる。現在、サルコペニアの診断にはアジア人のサルコペニアの診断手順(AWGS)が用いられ、年齢、握力、歩行速度、筋肉量の測定によって分類されている。しかし、この手順において、「下肢筋肉測定を行い、筋肉量だけではなく筋力も判定基準として使用するか否か検証していく必要がある」と述べた。咀嚼回数と肥満の関係 筋肉の減少は咀嚼機能にも関連し、「噛むことを維持することが大切」と強調する同氏は、平成29年度の国民健康栄養調査における歯・口腔の健康に関する状況のデータを提示。これによると、何でも噛んで食べることができる者の割合、歯を20本以上有する者の割合が60代から急激に低下している。 肥満や血糖上昇にも影響を及ぼす食後誘発熱産生(DIT)は、食事を摂取した後に産生する体熱のことで、咀嚼によって上昇する。味わい、よく噛んで食べる群と、胃に直接流し込む群、それぞれにおける時間経過によるカロリーの消費量をみたデータ1)によると、前群のほうがカロリーの消費量は高く、体重管理にも噛むことが重要であることがうかがえる。 また、咀嚼回数は認知機能にも影響を及ぼすと言われ、歯を失い、義歯を使用していない場合、認知症発症リスクは最大で1.9倍にもなるという報告もある。ただし、自身の歯がほとんどなくとも義歯を装着して噛んでいれば、認知機能の予防につながるとの見解も出ている2)。 このような咀嚼やエネルギー消費量に関する問題は、多様な食品摂取が問題を解決へと導く。自施設の報告では、血糖管理の改善やエネルギー摂取量の増大にも寄与することが明らかになっており、熱産生やカロリー消費の面からも、同氏は「柔らかい単一の食事が高血糖や肥満を招くので、多様な食品摂取が重要」とし、「ささいな“口の衰え”を認識し、しっかりと噛まなければならないおかずを一品加える」などのオーラルフレイルにおける予防策を講じていることを紹介した。 最後に同氏は、「食事療法の実施において、口腔環境や社会背景の把握を行うことは不可欠であり、生活の質の担保、その方法が長期実施可能かどうか」が重要であるとコメント。栄養管理の姿勢について、「単なるエネルギー管理や血糖管理の視点だけではなく、将来的に危惧される合併症も、総合的に勘案して個別に対応すること」を強く求めた。■参考1)LeBlanc J, et al.Am J Physiol.1984;246:E95-101.2)Yamamoto, et al.Psychosomatic Medicine.2012;74: 241-248.■関連記事高齢者のフレイル予防には口腔ケアと食環境整備をDXA法で判定したサルコペニア肥満は心血管リスクの予測に有用筋肉内の脂肪蓄積が高齢者のサルコペニアと関連

20224.

ホルモン補充療法のVTEリスク、製剤で異なる/BMJ

 ホルモン補充療法(HRT)による静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクは、製剤のタイプによって異なり、経口薬は全般にリスクが高く、経皮吸収薬はリスクと関連がないことが、英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年1月9日号に掲載された。更年期症状がみられる女性の無作為化対照比較試験では、HRTを受けている女性は受けていない女性に比べVTEリスクが高いと報告されているが、ほとんどの試験は結合型エストロゲン製剤または結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロン配合薬が使用されている。また、観察研究では、HRTは全般にリスクの上昇と関連するとされるが、異なるタイプの製剤の詳細な比較に関して、これらの研究には十分な検出力はなかったという。製剤別のVTEリスクをコホート内症例対照研究で評価 研究グループは、VTEのリスクとHRTの製剤のタイプとの関連を評価するコホート内症例対照研究を行った(研究助成は受けていない)。解析には、英国の2つのプライマリケア研究データベース(QResearch、Clinical Practice Research Datalink[CPRD])のデータを用いた。 HRTには、経口薬としてエストロゲン単剤(結合型エストロゲン、エストラジオール)およびエストロゲンと各種黄体ホルモンの配合薬が用いられ、経皮吸収薬(貼付薬、皮下投与、ゲル)としてエストロゲン単剤およびエストラジオール配合薬が使用された。 1998~2017年の期間に、VTEの初回診断を受けた40~79歳の女性8万396例(症例群)と、この集団と年齢、受療中の一般診療、index dateをマッチさせた女性39万1,494例(対照群)を比較した。 主要評価項目は、一般診療記録や入院、死亡記録に基づくVTEであった。人口統計学的データ、喫煙状況、アルコール摂取、併存疾患、直近の医学的イベント、他の処方薬で補正したオッズ比(OR)を算出した。約8割が経口薬を使用、リスクは1.5倍以上 症例群の5,795例(7.2%)および対照群の2万1,670例(5.5%)が、index date前の90日間にHRTを受けていた。 このうち症例群の4,915例(85%)および対照群の1万6,938例(78%)が経口薬を使用していた。HRT非使用例に比べ、これら経口薬使用例はVTEのリスクが有意に高く(補正後OR:1.58、95%信頼区間[CI]:1.52~1.64、p<0.001)、エストロゲン単剤(1.40、1.32~1.48、p<0.001)およびエストロゲン・黄体ホルモン配合薬(1.73、1.65~1.81、p<0.001)の双方で有意差が認められた。 経口薬のうち、エストロゲン単剤のエストラジオールは結合型エストロゲンよりもVTEリスクが低く(補正後OR:0.85、95%CI:0.76~0.95、p=0.005)、エストラジオール配合薬は結合型エストロゲン配合薬に比べ低リスクであった(0.83、0.76~0.91、p<0.001)。 HRT非使用例と比較して、経口薬の結合型エストロゲン・酢酸メドロキシプロゲステロン配合薬は最もVTEリスクが高く(補正後OR:2.10、1.92~2.31、p<0.001)、エストラジオール・ジドロゲステロン配合薬(1.18、0.98~1.42、p=0.09)が最も低リスクであった。 高用量エストロゲンは、低用量に比べVTEリスクが高かった。経皮吸収薬使用例の多くがエストロゲン単剤の製剤を使用していた(症例群:80%、対照群:76%)。経皮吸収薬はどの製剤も、VTEリスクと関連がなかった(全体の補正後OR:0.93、95%CI:0.87~1.01、p=0.07)。 著者は、「VTEリスクの高い経口薬が好まれ、リスクと関連のない経皮吸収薬は十分に利用されていない現状が明らかとなった」としている。

20225.

ビーリンサイトは急性リンパ性白血病の再発・難治例に有効か

 世界初の二重特異性T細胞誘導抗体による免疫療法が、移植を待ち望んでいる急性リンパ性白血病患者に救いの手を差し伸べる。12月10日、「急性リンパ性白血病の治療戦略と新たな免疫療法の役割」と題して、小林 幸夫氏(国際医療福祉大学三田病院悪性リンパ腫・血液腫瘍センター副センター長)、堀部 敬三氏(名古屋医療センター臨床研究センター長小児科部長)による講演が開催された(主催:アステラス・アムジェン・バイオファーマ)。ブリナツモマブ(商品名:ビーリンサイト)の初回寛解導入療法 日本における成人急性リンパ性白血病(ALL)の発症率は10万人に1人程度であり、年間約1,000人が発症していると推測される。長期生存率は、小児での約80%に対し、15~35%と言われており、圧倒的に低く、再発患者は多い。 ALLの再発時の治療法の1つに同種移植があり、移植可能な年齢の患者では、なんらかの抗がん剤治療で寛解導入に成功、ドナーが見つかり、移植(血縁一致、非血縁いずれも含む)ができさえすれば、ある程度の長期生存が得られる。しかし、現在は「再発後の確立した抗がん剤治療がなく、再寛解状態を維持して移植可能な状態まで確実に導ける薬剤はない」と、小林氏は再発時の現況についてコメント。新たに登場したブリナツモマブ(商品名:ビーリンサイト)は、このような現況を打破し、移植の橋渡しを担う薬剤となるのか。同氏は国内外の臨床試験の結果を提示した。 海外第III相比較対照臨床試験(TOWER study)は、成人の再発または難治性のPh陰性B細胞性ALL患者を対象に、ブリナツモマブ単剤群と標準化学療法群(FLAG、大量Ara-C療法など)を2:1に割り付けて行われた。その結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、ブリナツモマブ群(7.7ヵ月)が標準化学療法(4.0ヵ月)に比べて、有意に延長した。また、移植を「打ち切り」とした場合でも、OS中央値は6.9ヵ月vs.3.9ヵ月と有意差が得られた。主な有害事象(AE)として発熱、頭痛、貧血があったが、これまでの治療法との差はみられず、むしろ標準療法より少なかった。 類似の国内臨床試験として、ブリナツモマブの推奨用量、有効性、安全性を評価した第Ib/II相臨床試験(Horai study)がある。対象者を成人および小児の再発または難治性のB細胞性ALL)患者とし、参加者5例中4例において2サイクル以内でのCR/CRhが得られているという。 以上を踏まえ、同氏は「初回寛解導入療法への使用」についても、ブリナツモマブに対する期待を示した。ビーリンサイト発売は小児の急性リンパ性白血病治療に有用 ALLは小児がんのなかで最も多い疾患であり、小児期新規診断例は年間約500例である。最新の全生存率データによると、3年生存率は91.9%、10年生存率は87%に達しており、最も多く発症するB前駆細胞性ALLの治療成績も非常に良好であるという。ところが、現在、小児で行われている治療は1970年代に以前に開発された薬剤などを組み合わせたレジメンであり、治療期間(Burkitt型を除く)は平均2~3年を要し、成長期特有の副作用や成長・発達障害や臓器機能へ影響するAEが懸念される。このような状況下においてビーリンサイトが発売されたことを受け、堀部氏は「これは副作用やAEが回避できる治療薬。難治例に対する治療の開発が急務であるなか、有用である」とコメントした。 小児の再発・難治性急性リンパ性白血病患者を対象にブリナツモマブ投与による完全寛解率や微小残存病変(MRD)奏効率、AEをみた海外の第I/II相臨床試験によると、推奨用量で投与された患者群において、CRが得られた患者のPFS中央値は4.4ヵ月と短かった。しかし、投与中止に至るようなAEの発現率は5.7%で、ほとんどはサイクル1の最初の数日に発生していたことが明らかになった。 予後因子として重要な所見となるPCR法によるMRD量は、寛解導入療法後のTime Point1と地固め療法後のTime Point2に測定するときれいに予後が分かれることから、欧米ではこの検査で層別化を図っているという。同氏によると、この骨髄微小残存病変量測定 (PCR-MRD検査)は2018年4月から日本でも保険承認され、間もなく全国で検査が可能となる。 最後に同氏は「ブリナツモマブは造血幹細胞移植などによる根治を目指した橋渡し治療としての有用性、MRD陽性CRにおける有用性への検討が課題」と締めくくった。■参考アステラスメディカルネット■関連記事BiTE抗体ブリナツモマブ、B細胞性ALLに国内申請

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スプリット【なぜ記憶がないの?なぜ別人格がいるの?どうすれば良いの?(解離性障害)】

今回のキーワード解離性同一性障害トラウマ体験PTSD境界性パーソナリティ障害憑依寝た子は起こさないみなさんは、ふと思い出して「あいつ~!」と急に腹が立ったり、自分の恥ずかしい失敗を思い出して「自分のバカ!」と一人で叫んでしまったりしたことはありませんか? または、あまりの怖さや怒り、興奮で、その時のことを思い出せなかったことはありませんか? さらには、記憶がない間に、実はもう1人の自分がいて、何かしていたらどうでしょう?このように、われを忘れたり、記憶がなくなったり、別人格が出てくるなど、程度の違いはありますが、自分が自分ではなくなることを精神医学では解離と言います。解離とはどんなものでしょうか? なぜ解離するのでしょう? そもそもなぜ解離は「ある」のでしょうか? そして、どうすれば良いのでしょうか?これらの疑問を解き明かすために、今回は、2017年の映画「スプリット」を取り上げます。ファンタジーを含んだエンターテイメントの要素もありますが、解離が出てくるメカニズムを分かりやすく描いています。この映画を通して、解離を進化精神医学的に掘り下げ、解離性障害の理解を深め、私たちにも身近な解離への対策を一緒に考えていきましょう。解離とは?ストーリーは、3人の女子高生が、見知らぬ男に拉致監禁されるところから始まります。その男性の元々の名前はケビン。密室に入ってくるたびに、人相や振る舞いがまったく変わっていきます。彼には、23の人格が1つの体に宿り、それぞれが別々の名前を名乗っているのでした。このように、意識から人格が分離してしまうのは、解離性同一性障害と言います。もともと「多重人格」と呼ばれていました。分離した別人格は、人格部分と言います。もともと「交代人格」と呼ばれていました。これは、人格のつながり(統合)がうまくいっていない状態です。人格部分が存在せず、単純に記憶がない場合もあります。これは、意識から記憶が分離してしまう解離性健忘です。特定の記憶だけを思い出せない場合(選択的健忘)と、いわゆる「記憶喪失」のように自分が何者で今までどんな生活をしていたのか、自分の生活史の全てを思い出せない場合(全般性健忘)があります。これは、記憶のつながり(連想)がうまくいっていない状態です。記憶がないわけではなく、何となくぼんやりして体の感覚や実感に違和感がある場合もあります。これは、意識から身体感覚が分離してしまう離人症です。例えば、いわゆる「幽体離脱」のように、自分が上から自分自身を見ている感覚です(離人感)。また、周りがぼんやりとして、スローモーションのように動いている感覚です(現実感喪失)。これは、身体感覚のつながり(連動)がうまくいっていない状態です。以上の解離性障害、解離性健忘、離人症の3つをまとめて、解離性障害と言います。人格、記憶、身体感覚などの精神機能が意識から解き離れてしまった状態です。意識の分離、意識の統合の機能不全、簡単に言えば、自分で自分をコントロールできなくなるとも言えます。なぜ解離するの?ケビンの主治医のフレッチャー先生は、今まで落ち着いていた人格部分が次々と出てきている事態に仮説を立てます。「この前、職場で事件があったわよね。校外学習に来た女子高生2人が、あなたに近付いて、手を取って、服の下から自分たちの胸に当てて、笑いながらいなくなった。一種の度胸試しだと思うけど」「それが、あなたの子どもの時の虐待を思い出させてしまった」と。実際に、別のシーンで彼は「3歳児のしつけに、母は厳しすぎる罰を与えていた」「怒られないためには何でも完璧にこなすしかない」と語っています。彼の回想シーンでは、ベッドの下に隠れている幼い彼に、母親が「散らかしたわね。出てきなさい!」とムチを持って怒鳴りながら迫ってきていました。このように、解離が起きる原因として、虐待など身の危険を感じる極度のストレス(トラウマ体験)が考えられています。とくに、幼少期の子どもの脳は発達途中でとても不安定です。複数の記憶を結び付けたり、関連付けたりすることが難しいです。この点で、子どもはその瞬間を反射的に生きており、意識はその瞬間でころころ変わっているとも言えます。そのため、虐待が繰り返されると、そのたびにその時の記憶が思い出せなくなります。その体験が封印・密閉された人格部分として、次々と心の奥底で眠ってしまい、何事もなかった人格として、けろっとしてしまうのです。その後に、その人格部分が、似たような体験やストレスで次々とまた目を覚ましてしまうというわけです。実際に、解離性同一性障害の90%に小児期の虐待があるとの報告があります。大人になって極度のストレスを受けた場合は、記憶がなくなることはあっても、もはや別人格ができることは少なくなります。なぜなら、大人の脳は十分に発達していて、子どもと比べて人格は分離しにくくなるからです。ただし、記憶がない中、名無しのまま、本人のゆかりがない場所で保護されたりする場合はあります(解離性遁走)。これは、トラウマの現場から無意識に離れようとする心理が働いているからです。また、ストレスのレベルが比較的軽かった場合は、記憶がなくならず、ぼんやりとして体の感覚に違和感があるだけにとどまっていると言えるでしょう。なぜ解離しないの?拉致された女子高生の1人のケイシーは、ほかの2人とは振る舞いが明らかに違っていました。彼女は、観察力が鋭く、最初から冷静です。ケビンの幼い人格部分と交渉したり、欺こうとしています。しかし、単に賢いわけではなく、彼女には陰があります。そのわけが彼女の回想シーンが進むにつれて明らかになります。彼女は、幼い時に親を失ったあと、育ての親となった叔父から性的虐待を受けていたのでした。これは、回想というよりは、フラッシュバックとも言えるでしょう。そんなケイシーの体中にリストカット痕があることを知ったケビンの人格部分は、「おまえはほかの連中とは違う」と言うのでした。トラウマ体験により、極限状況を生き抜いてきたという点では、2人は似た者同士だったのです。それでは、なぜケイシーは解離しなかったのでしょうか? 彼女の生い立ちから解き明かしてみましょう。幼い時のケイシーが、近付いてくる叔父に銃を向けて、取り上げられるシーンがあります。親代わりとなった叔父は、決して安全を守ってくれる安心感のある存在ではないことが分かります。むしろ真逆で、自分を脅かす存在です。彼女には味方がいませんでした。やがて思春期になり、家出を繰り返し、学校では反抗的で、問題児扱いされています。彼女は「学校でわざとトラブルを起こす。そうすると、居残りさせられて、みんなと離れられるから。独りになれるから」と打ち明けています。心のよりどころがないことから、空虚感や周りへの過剰な警戒心を抱き、人間関係を避けています。そして、そのやるせない思いを自傷行為によってかき消そうとしていたのです。彼女は、トラウマ症状(PTSD)から、傷つきやすい性格になってしまったのでした(境界性パーソナリティ障害)。同時に、極限状況を生き延びるサバイバルスキルとして、観察力と演技力が研ぎ澄まされてしまったのです。そして、ラストシーンで迎えに来た叔父を拒絶することで、叔父に支配されない自分の人生を歩むことを決意したことが見てとれます。ケイシーは、苦悩に堪えて、傷付きながらも自分の人生に向き合っています。一方、ケビンは、苦悩に堪えられなくなり、楽になるために自分の人生から逃げ隠れています。これが解離しなかったケイシーと解離してしまったケビンの違いです。解離は、良かれ悪しかれ、傷ついた自分の心を守り、その極限状況に順応するための無意識の心理戦略であるとも言えるでしょう。なぜ解離は「ある」の?それでは、そもそもなぜ解離は「ある」のでしょうか? そのメカニズムを大きく3つに分けて、進化精神医学的に考えてみましょう。(1)ぼんやりして生き延びる約5億年前に誕生した魚類は、天敵などの危険に警戒する扁桃体を進化させました。この反応は、「戦うか逃げるか(fight or flight)」という興奮性に働くだけでなく、天敵に気付かれないために身を潜める、息を凝らすという抑制的にも働くように進化しました(警戒性徐脈)。つまり、「戦うか逃げるか、固まるか(”fight, flight, or freeze”)」という反応です。これが、ぼんやりして体の感覚に違和感が出てくる離人症の起源です。つまり、解離の一症状である離人症は、生存に必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。(2)記憶をなくして生き延びる約2億年前に誕生した哺乳類は、あまりにも驚いたら気絶するという反応を進化させました(迷走神経反射)。例えば、タヌキは天敵に捕らえられた時に気絶して死んだふりをします。そして、目覚めて、スキを見て逃げます。いわゆるタヌキ寝入りです。捨て身の生存戦略とも言えます。気絶して精神状態が一旦リセットされたほうが、慌てずに対応できるでしょう。また、イルカや渡り鳥は、ずっと泳いだり飛び続けるために、大脳半球を交互に眠らせることができます(半球睡眠)。最近の研究では、人間の睡眠も、脳全体で一様ではなく局所で多様に行われている、そして起きている時にストレスのかかった脳の領域ほど深い睡眠になることが分かってきました(ローカルスリープ)。つまり、極度のストレスで、記憶中枢が部分的にも全般的にも睡眠状態になると説明できます。約700万年前、ついに人類が誕生して、300-400万年前にアフリカの森からサバンナに出て、集団になって社会をつくりました(社会脳)。災害や争いで、自分の家族が死んだり殺された時、その記憶やそれまでの人生の記憶をいっそ思い出せないほうが、その後の新しい家族や敵の部族の中で馴染めて、新しい生活ができて、子孫を残す確率を高めます。そもそも、原始の時代、その瞬間を生きていて、過去とのつながりは現代ほど重要ではなかったとも言えます。これが、記憶がなくなるという解離性健忘の起源です。つまり、解離の一症状である解離性健忘は、生存に必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。ちなみに、解離性健忘は記憶を消去するメカニズムであるのに対して、PTSD(心的外傷後ストレス障害)によるフラッシュバックや悪夢は記憶を強化するメカニズムです。記憶について、症状としてはあたかも真逆ですが、生存戦略としては同じと言えるでしょう。そして、フラッシュバックも自分が自分ではなくなる点では、解離とつながっているとも言えるでしょう。実際に、PTSDや、ケイシーがなった境界性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)には、解離症状も含まれています。(3)別人格になって生き延びる20万年前に、喉の構造が進化して、言葉を話すようになりました。10万年前に、抽象的思考ができるようになりました(概念化)。この時、ようやく神の存在や死後の世界を想像できるようになりました。宗教の誕生です。記憶をなくして別の人生を生き延びるのと同じように、宗教という文化の中で、別人格を全うすることが受け入れられるようになりました。それが、神の預言者、死者と交流する霊媒師、エクソシストなどです(憑依)。これが、別人格が出てくる解離性同一性障害の起源です。つまり、解離の一症状である解離性同一性障害は、生存に必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。ちなみに、社会脳の進化によって、人類は相手の視点に立つ想像力を手に入れました(メタ認知)。さらに、自分自身を離れて自分自身を見る視点も持つようになり、自分と周りの世界を区別できるようになりました。これが極度のストレスによって過剰になると、周りから自分自身を見る視点が自分から周りを見る視点を圧倒して、あたかも幽体離脱している感覚になります。これが、先ほどの離人症の症状の1つの離人感です。解離に対してどうすれば良いの?それでは、解離に対して、どうすれば良いでしょうか? 治療のポイントを大きく3つに分けてみましょう。(1)寝た子は起こさない -心のゆとりケビンは、23の人格が1つの体に、うまく「同居」することで、動物園の飼育係として10年間真面目に働いてきました。治療のポイントの1つ目は、寝た子は起こさないことです。「寝た子」である健忘や人格部分は、日常生活や社会生活で大きな問題が起きなければ、そっとしておくことです。また、「寝た子」が起きないような落ち着いた暮らしをすることです(環境調整)。ケビンの人格部分の出現には、女子高生のいたずらが引き金になっていました。いたずらは避けられなかったかもしれませんが、このようなストレスをなるべく避けた生き方を本人に見いだしてもらうことです。これは、ちょうど恐怖症の治療と同じです。例えば、高所恐怖があるからと言って、無理に高い所を克服する訓練は必要ないです。高い所を避ければ良いだけの話です。私たちも同じように、自分に解離が起きたとしても、そのこと自体はあまり気にせず、代わりに解離が起こらない生活を心がける、つまり心のゆとりが治療的であると言えるでしょう。(2)寝た子が起きたら、ほどほどにあやして寝かす -心の風通しケビンの主治医のフレッチャー先生は、診療の中で、「今のあなたは誰?」「今、話してるのはバリーじゃなくて、デニスだと思う」「デニス、あなたはいつ誕生したの?」と尋ねています。1990年代までは、この治療アプローチが脚光を浴びていました。しかし、現在の欧米の治療ガイドラインには「名前のない人格部分に名前を付けたり、現在の人格部分が今以上に精緻化されることには慎重になるべき」との記載があります。つまり、現在では、この治療アプローチは望ましくないとされています。治療のポイントの2つ目は、寝た子が起きたら、ほどほどにあやして寝かすことです。周りの家族や医療者が安心感のある態度でほどほどに接して受け止めることです(支持療法)。これは、過保護や過干渉をしない「ほどほど」の母親が望ましいとされる子育てにも通じます。逆に言えば、フレッチャー先生のように寝た子が起きても、よりはっきりと起こさないことです。人格部分の名付けをしないだけでなく、たとえ人格部分が自ら名乗っていたとしても、その名前については触れないことです。名前とは、本来付けられるものであり、勝手に名乗るものではないです。名前で呼ぶと言う行為は、その人格部分を一個の人格として分けて扱うことになり、解離をより促進してしまうおそれがあります。ましてや人格部分の正体や原因を追求しないことです。ただし、だからと言って、主人格を呼んだり、人格部分に消えるよう拒絶したり、無視したりもしないことです。これは、統合失調症の関わり方に似ています。例えば、幻聴や被害妄想について根掘り葉掘り聞いてしまうと、その症状を悪化させてしまいます。逆に、その症状は実在しないと否定してしまうと、信頼関係は築けないです。その症状の細かい内容については置いておいて、まずは症状のつらさに共感して、受け止めることです。私たちも同じように、自分に解離が起きたとしても、掘り下げず、代わりに解離とは関係のない日々の生活の話を自分の理解者にする、つまり心の風通しが治療的であると言えるでしょう。(3)寝た子の親である自覚をさせる -心の割り切り主人格であるケビンに戻った時、ケビンはケイシーに「何が起きたの?」「何かしてしまった?」と問います。彼は、ケイシーたちを拉致したことの記憶がまったくなかったのでした。治療のポイントの3つ目は、寝た子の親である自覚をさせることです。寝た子である人格部分が問題行動を起こしたとしても、それは自分の体が起こしたことには変わりがなく、社会のルールとして責任をとる必要があることを伝えることです(行動療法)。これは、親がいないところで、未成年の子どもが何かやらかしても、親が謝り償うという社会通念にも通じます。逆に言えば、自覚をさせないで、責任がないと特別扱いしてしまうと、都合が悪いことには責任逃れをするという心理戦略(疾病利得)が無意識に発動されてしまい、解離を促進してしまうおそれがあります。これは、依存症の治療に通じます。例えば、アルコール依存症の発症には本人の責任はないのですが、その治療、つまり断酒を続けることには本人の責任があるのと同じです。私たちも同じように、自分に解離が起きたとしても、受け身にならず、自分の人生に向き合って責任をとる、つまり心の割り切りが治療的であると言えるでしょう。解離はどうなっていくの?フレッチャー先生は、学会で、「それぞれの人格部分によって、コレステロール値が上がったり、蜂アレルギーになったり、糖尿病になったりする」「体力も違う」「苦悩を通じて脳の潜在能力を開放したのかも」「超能力は彼らに由来するかも」と大げさに語ります。実際にケビンは、人知を超えたモンスターになってしまいます。動物園での勤務中に動物たちの野生を取り込んでしまったというストーリー設定です。さすがに、これら全ては実際とは違います。解離によって、精神機能が変わり、身体機能が落ちることはあっても、身体機能が高まったり別の機能に変化することはないです。それでは、実際に解離はどうなっていくのでしょうか?解離の予後は、年齢を経て自然に落ち着いていきます。20代をピークに、40代以降は消えてしまいます。これは、運動能力などの身体機能や、記憶力などの精神機能が加齢によって衰えていくプロセスにも重なります。そうなるまでの間を、なるべく「寝た子を起こさない」サポートするのが、医療としての役割でしょう。フレッチャー先生のように、治療者の個人的な好奇心や野心で人格部分を掘り起こすべきでないです。ケビンがモンスターになってしまったのは、治療が不適切であったことを暗喩しているようにも思えます。解離を身近に感じる解離は、もともと原始の時代までに、環境に不適応を起こすどころか、むしろ適応的だったことが分かりました。しかし、18世紀の産業革命以降に、解離は、社会に不適応を起こし、病として問題視されるようになってしまったのでした。なぜでしょうか?その答えは社会構造の変化です。進化の歴史からすれば、私たちの脳、つまり精神は、ほとんど原始の時代のままです。それなのに、産業革命以降に個人主義や合理主義から「人格は1つで理性的である」という考え方が広がってしまいました。しかし、それは、私たちがただそう思い込んでいるだけにすぎないかもしれません。そう思い込んでいる人が多いから、あたかもそれが真実のように世の中に受け入れられてしまっているのかもしれません。実は、私たちの心は、思っている以上に、バラバラで一貫しておらず、曖昧な感情や記憶の断片からなる複合体であると言えるかもしれません。この映画を通して、私たちの心の不透明さや不確かさをよく理解した時、解離とは、得体の知れない訳の分からない心の病気ではなく、私たちの心の揺らぎが際立った先にある1つの形でもあると思えるのではないでしょうか? そして、その時、解離をより身近に感じることができるのではないでしょうか?1)解離新時代:岡野憲一郎、岩崎学術出版社、20152)こころの科学「解離」:田中究、日本評論社、2007

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最近の話題 TRK阻害薬【侍オンコロジスト奮闘記】第70回

第70回:最近の話題 TRK阻害薬キーワードNTRK遺伝子融合がんTRK阻害薬larotrectinibOkamura R, et al. Analysis of NTRK Alterations in Pan-Cancer Adult and Pediatric Malignancies: Implications for NTRK-Targeted Therapeutics.JCO Precision Oncology. Nov 15, 2018[Epub ahead of print]Drilon A, et al.Efficacy of Larotrectinib in TRK Fusion–Positive Cancers in Adults and Children.N Engl J Med 2018; 378:731-739.

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022)教科書には載ってない!?顕微鏡検査の豆知識【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第22回 教科書には載ってない!?顕微鏡検査の豆知識しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科外来ではおなじみの、顕微鏡検査。白癬菌やカンジダ菌、疥癬虫など、皮膚に住まうさまざまな微生物を観察するのに大変役立ちます。患者さんの手足や爪などの角質を微量採取し、プレパラート上に水酸化カリウム溶液(KOH液)を滴下して、硬い組織を融解させ、真菌を顕微鏡で観察するのですが、このKOH液がなかなかの曲者です。まず、強アルカリ性で角質を溶かすため、手に付くと手荒れを起こします。また、顕微鏡のステージ(プレパラートをのせる台)に付着すると、乾いた後に白く変色するので、非常に見栄えが悪いです。少量だからと油断していると、プレパラートの縁から裏側をつたって、ステージに付着することがあるので、ティッシュなどで余分な液を拭き取るべし!(新しい顕微鏡の黒さ、守ってあげたい…!)大学など設備の整った施設では、プレパラートを温めて角質の融解を早めるホットプレートのような機械があるのですが、こうした便利アイテムがない病院もあります。機械がなくても、時間が経てば角質組織は軟らかくなるのですが、結果をすぐに見たいときに便利なのが、「ライター」。プレパラートの端を手で持ち、ライターの炎の先端で軽く炙ることで、ホットプレートと同様に融解を早めることができます。ただし、このときにもいくつか注意点があります。1つ目は、手袋の着用による火傷。検体採取の際、ゴム手袋を使う先生が多いかと思いますが、手袋を着けたままライターで炙ると、プレパラートを持っている側の手袋に引火することがあり、大変危険です。必ず、手袋を外してから火を扱うようにしましょう。2つ目は、炙り過ぎによるKOH液の沸騰。少量のKOH液は、数秒で沸騰します。沸騰で発生した気泡で、小さい検体がカバーガラスの外側へ飛び散ってしまうので、炙り過ぎには注意しましょう。また、炎を近付け過ぎると、プレパラートに黒いすすが付いてしまうので、プレパラートから炎を少し離して、軽めに温めるのがコツです。ここまでの手順をまとめると、1)手袋をして検体を採取し、プレパラートにのせる2)カバーガラスを被せ、KOH液を垂らす3)手袋を外し、ライターの炎で軽く炙る4)色鉛筆の先などでカバーガラスを軽く押す。余分なKOH液を拭き取る5)顕微鏡のステージにセットし、観察するという感じです。デルぽんが先輩方から学んだ何気ない検鏡の豆知識。若き先生方の参考になりましたら幸いです☆それでは、また~!

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健康サポート薬局を「知らない」92%【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第17回

「健康サポート薬局」の届け出が2016年10月に始まってから、早いもので2年以上がたちました。皆さんの薬局では届け出をされていますか? この健康サポート薬局に関する興味深いアンケート結果が公表されましたので紹介します。・「健康サポート薬局」を知らない人は92%、認知率が高いエリアは「近畿」・「健康サポート薬局」を使いたい人は51%、健康サポート薬局を知っている人では83%が「使いたい」と回答(日本薬剤師会調べ)このアンケートは、日本薬剤師会が「健康サポートと薬剤師に関する意識調査1)」として行ったインターネット調査です。調査会社のネットエイジアリサーチのインターネットモニター会員である20~79歳の男女1,000人を対象として、2018年9月5日~6日に実施されました。まず、健康サポート薬局を知っているかを聞いたところ、「知っている」が8.4%、「知らない」が91.6%と回答しています。認知率の最も高い近畿エリアでも10.7%で、最も低い北海道・東北エリアではわずか5.4%でした。うーん…、なかなか厳しい結果ですよね。開始から2年たち、健康サポート薬局はようやく1,000軒を超えました。単純計算して60軒に1軒の割合ですので、一般の方が認知するのはまだ難しいとは思いますが、約92%が知らない、というのは健康サポート薬局の制度がほとんど機能していないと言えると思います。とはいえ、この結果が意外かと考えると、そうでもないような気もします。この2年間で自分たちは健康サポート薬局を十分にアピールしてきたのか? この表示をできるようにするために必死に情報収集や行動をしていたか? と聞かれ、自信を持って「はい」と言える薬局は少ないのではないでしょうか。健康サポート薬局の軒数が少ないのは、健康サポート薬局はかかりつけ薬局・薬剤師としての基本的機能を有する必要があるため、第一歩としてかかりつけ薬局・薬剤師になることを優先されていたのかもしれません。また、土日開局の時間や要指導医薬品の在庫などが数値で規定されそうになったり、地域をまとめる中核薬局になるようなイメージがあったりするなど、健康サポート薬局のハードルが高く感じて二の足を踏んだ方もいると思います。そして、健康サポート薬局に加算がつかないというのも、積極的になれなかった要因かもしれません。薬剤師に相談したいのはダイエット!?薬剤師の健康サポートに対する一般の方のニーズは高いこともこのアンケートで示されました。健康サポート薬局を使いたいと思うか聞いたところ、「そう思う」が全体で51.3%、健康サポート薬局を知っている人では83.3%と好意的な反応です。「健康をサポートしてほしい専門家は?」という質問に対しても、病気については医師に次ぐ2位、市販薬と健康食品についてはともに1位に薬剤師が選ばれています。また、「薬剤師に相談できたらいいなと思うこと」では、「適切な診療科や近隣の病院の相談」「健康的な食事の相談」や、20代の5人に1人が希望した「ダイエットの相談」など意外な内容も挙げられています。一般の方の「こんなサポートをしてほしい」「誰かに聞きたいけれど誰に聞いたらよいかわからない」というニーズも読み取ることができますので、どんなことができるか考える際の参考にしてはいかがでしょうか。すべての保険薬局がすぐに「健康サポート薬局」を目指すというのはハードルが高いこともわかりますが、それぞれの薬局なりのかかりつけ薬局・薬剤師に向けての取り組みを続けるとともに、そろそろ地域の方の幅広い健康サポートにも目を向けてみませんか。出典1.https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pr-activity/PressRelease_20181129.pdf

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加齢黄斑変性、死亡リスクとの関連は?

 加齢黄斑変性(AMD)は、網膜下の血管新生を未治療のまま放置すると、不可逆的な視覚障害や失明に至る。中国・中山大学のZhuoting Zhu氏らは、AMDと生存との関連を知ることは、AMDの発現機序の理解に役立つとして解析を行った。その結果、後期AMDは全死因死亡、ならびに心血管疾患とがん以外の原因による死亡の独立した関連因子であることが示されたという。著者は、「この関連は、後期AMDの未測定または評価不十分な交絡因子による可能性もあるが、後期AMDが生物学的老化のマーカーになる可能性を示唆している」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年12月20日号掲載の報告。 研究グループは、AMDと全死因死亡および原因別死亡との関連を調べる目的で、前向きコホート研究である米国国民健康栄養調査(NHANES)の2005~08年のデータを解析した。 40歳以上の参加者5,603例の網膜写真を、初期AMD、後期AMDまたはAMDなしに分類し、全死因死亡リスクと原因別死亡リスクを、それぞれCox比例ハザードモデルとFine-Grayモデルを用いて評価した。 死亡までの時間は、ベースラインから死亡日まで、または2011年12月31日までのいずれか早いほうとし、解析は2018年4月1日~30日に行った。 主要評価項目は、2011年12月31日までの全死因死亡と原因別死亡のそれぞれの割合とした。主な結果は以下のとおり。・対象者は、女性52.6%(2,793例)、白人77.1%(3,017例)、平均年齢±SE:56.4±0.4歳であった。・全AMD群の加重有病率は6.6%で、初期AMD群は386例(5.8%)、後期AMD群は55例(0.8%)であった。・追跡期間中央値4.5年(四分位範囲:3.6~5.6年)において、全死因死亡は433例(5.3%)で、このうち361例(83.1%)はAMDなし群、初期AMDの徴候がみられた群は54例(11.5%)、後期AMDの徴候がみられた群は18例(5.4%)であった。なお、72例(16.9%)はベースライン時点で、すでにAMDを有してした。・全般的に、未調整全死因死亡および原因別死亡の割合は、AMDなし群に比べ、初期AMD群、後期AMD群または全AMD群で高かった。・しかし、交絡因子で調整後は、後期AMD群にのみ関連が認められ、全死因死亡の割合は2倍以上(ハザード比[HR]:2.01、95%信頼区間[CI]:1.00~4.03)、心血管疾患とがん以外の原因による死亡の割合は3倍以上高かった(HR:3.42、95%CI:1.38~8.49)。・全AMD群または初期AMD群と、全死亡死因または原因別死亡との間に関連は認められなかった。

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日本におけるスボレキサントの市販後調査結果

 MSD株式会社の浅井 有子氏らは、スボレキサント錠剤の日本における市販後調査結果の報告を行った。Drugs in R&D誌オンライン版2018年12月14日号の報告。 対象は、日本におけるスボレキサント初回投与の不眠症患者。観察期間は、投与開始後6ヵ月以内とした。医薬品の有効性および安全性に関する情報を収集した。評価期間は、2015年7月21日~2017年8月12日までとした。目標患者数は、3,428例であった。 主な結果は以下のとおり。・安全性解析対象3,248例における平均投与期間は、113日であった。・投与開始後6ヵ月時点での継続投与患者は48.6%(1,577例)であり、51.4%(1,671例)は6ヵ月以内に中止または脱落していた。・投与中止または脱落した患者の30%以上は、症状改善のために投与が中止されていた。・症状改善のために投与を中止した患者における平均投与期間は、62日であった。・安全性解析対象患者における薬物有害反応発生率は、9.7%であった。主な薬物有害反応は、傾眠(3.6%)、不眠(1.2%)、めまい(1.1%)、悪夢(0.8%)であり、これらはすべて既知のものであった。・顕著な薬物有害反応は、新たに観察されなかった。・最終全般総合評価対象患者2,439例において、睡眠が改善したと医師が判断した患者は74.0%であった。・最終全般総合評価患者2,424例における改善率は73.2%であり、医師の判断による改善率と同程度であった。・臨床効果(患者の睡眠日誌または医師の評価)、睡眠潜時中央値の減少(ベースラインの60分から50分に減少)、総睡眠時間の増加(ベースラインの300分から360分に増加)は、投与開始後1週間で観察され、効果は6ヵ月間持続した。・年齢やスボレキサントの使用理由にかかわらず、同様の効果が認められた。 著者らは「本調査は、対照群を用いない探索的観察研究であり、人口統計学的特性や他剤の影響など、結果に影響を及ぼす可能性のある因子を考慮する必要性があるかもしれない」としながらも、「日常臨床において不眠症を治療する際、スボレキサントは有用な薬剤である可能性を示唆している」としている。■関連記事不眠症へのスボレキサント切り替えと追加併用を比較したレトロスペクティブ研究日本人高齢不眠症患者に対するスボレキサントの費用対効果分析不眠症患者におけるスボレキサントの覚醒状態軽減効果に関する分析

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心不全に対するヒス束ペーシング vs.両心室ペーシング【Dr.河田pick up】

 ヒス束ペーシングは心臓の再同期療法(CRT)の新しい手段として注目され、実臨床でも利用されている。本研究では、ヒス束ペーシングと従来行われてきた両心室ペーシングによるCRTを急性期のクロスオーバー試験で比較し、急性期の心室興奮と血行動態を計測した。Ahran D. Arnold氏らLondonのグループによるJournal of American College of Cardiology誌オンライン版12月18日号掲載の報告。心不全と左脚ブロックを有する患者が対象 心不全と左脚ブロックを有し、従来の両心室ペーシングによるCRTが必要とされた患者が研究に組み入れられた。非侵襲的な心外膜の心電位画像化技術(ECGI)を用いて、ヒス束ペーシングにより左心室の興奮時間が短縮されている患者を同定した。これらの患者で、ヒス束ペーシングと両心室ペーシングによる血行動態に対する効果を、自然に起きる血行動態の変化やノイズの影響を抑えながら、複数回繰り返し測定し、同時に心室の興奮時間も測定した。 この研究では252極の検出電極を有する心電図ベスト(メドトロニック)を用いて、非侵襲的に心外膜の心電図イメージを作成している。なお、事前に低用量CTにより電極と心臓の位置を確認している。ヒス束ペーシングは一時的に行われ、大腿からは4極カテーテルで、鎖骨下静脈からはペーシングリードを用いて行われたが、リード先端のスクリューによる固定(active fixation)は行われていない。ヒス束ペーシングは、急性期において心室興奮、血行動態ともにより改善 左室の興奮時間は、ヒス束ペーシングで23例中18例で有意に減少した(4例で左心室の興奮時間の有意な短縮はみられず、1例では心室の興奮時間が技術的な問題で得られなかった)。そして、17例で完全な電気および機械的収縮のデータが得られた。 これらの患者で、ヒス束ペーシングでは両心室ペーシングに比べてより有効な心室再同期を得ることができた[QRSの短縮:-18.6ms(95%信頼区間[CI]:-31.6~-5.7ms、p=0.007)、左室の興奮時間:-26ms(95%CI:-41~-21ms、p=0.002)、左室同期不全インデックス:-11.2ms(95%CI:—16.8~-5.6ms、p<0.001)]。 ヒス束ペーシングは、急性期の血圧もより上昇させた(4.6mmHg、95%CI:0.2~9.1mmHg、p=0.04)。また、両心室ペーシングと比較してヒス束ペーシングでは、興奮時間がより短縮するほど、血行動態の改善が見られていた(R=0.70、p=0.04)。 長期効果の確認には無作為比較試験が必要 ヒス束ペーシングは両心室ペーシングと比較して、心臓再同期においてより優れた効果を示し、血行動態のパラメーターにおいてもより良い改善が見られた。 この研究は急性期の血行動態を比較したものであり、急性期の興奮時間の短縮や血行動態の良好なレスポンスが、長期フォローアップ成績の向上につながるかはわからない。両心室ペーシングとヒス束ペーシングの無作為比較試験における長期フォローアップ後の成績が、この疑問の答えとなると考えられる。(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン、8年ぶりに改訂

 2018年12月28日、日本痛風・核酸代謝学会は『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(GL) 第3版』を発刊した。改訂は2010年以来8年ぶりとなる。近年、尿酸値の上昇は、痛風だけではなく、脳・心血管疾患や腎障害にも影響を及ぼすとの報告が増えているため、これらのイベント予防も目的として作成されている。高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版の特徴とは 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版は全3章で章立てられており、第1章は作成組織・作成方針、第2章は、診療上重要度の高い7つのクリニカルクエスチョン(CQ)と、それに対するエビデンスならびに推奨度が示されている。第3章は治療マニュアルとして、リスク因子、診断、治療などが項目ごとに記載され、「医療経済」の項が新規で追加されている点などが主な特徴である。治療アルゴリズムにはこれらのCQが盛り込まれており、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインの集大成と言っても過言ではないそうだ。 また、これまでの病型分類は、尿酸産生過剰型と尿酸排泄低下型の2つのタイプであった。今回の高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインには、腸からの排泄低下により血清尿酸値が上昇するという“腎外排泄低下型”の概念が追加されている。 以下に第2章の各CQのみを高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインより抜粋して示す。第2章 クリニカルクエスチョンと推奨CQ1)急性痛風関節炎(痛風発作)を起こしている患者において、NSAID・グルココルチコイド・コルヒチンは非投薬に比して推奨できるか?CQ2)腎障害を有する高尿酸血症の患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ3)高尿酸血症合併高血圧患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ4)痛風結節を有する患者に対して、薬物治療により血清尿酸値を6.0mg/dL以下にすることは推奨できるか?CQ5)高尿酸血症合併心不全患者に対して、尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?CQ6)尿酸降下薬投与開始後の痛風患者に対して、痛風発作予防のためのコルヒチン長期投与は短期投与に比して推奨できるか?CQ7)無症候性高尿酸血症の患者に対して、食事指導は食事指導をしない場合に比して推奨できるか? 高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインはCQにおいて、とくに重要なポイントはCQ2、3で、腎機能低下を抑制する目的での尿酸降下薬の使用を条件付きで推奨している(欧米のGLでは推奨されていない)。一方、心血管発症リスクの軽減を目的とした尿酸降下薬の使用は、条件付きで推奨されない。ただし、降圧薬使用中の高血圧患者では痛風や腎障害を合併しやすいため、痛風や腎障害の抑制を目的に尿酸降下薬の投与が推奨されている。

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食道がんのハイブリッド低侵襲食道切除術、重大な合併症を低減/NEJM

 食道がんに対するハイブリッド低侵襲食道切除術は、開胸食道切除術に比べ術中・術後の重大な合併症の発生率が低く、3年時の全生存率および無病生存率は低下しないことが、フランス・Claude Huriez University HospitalのChristophe Mariette氏の検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年1月10日号に掲載された。ハイブリッド低侵襲食道切除術は、腹腔鏡を用いる経腹的アプローチと開胸食道切除術を組み合わせた手術法で、肺合併症が少なく、手技の再現が容易などの利点があるとされる。開胸食道切除術では、半数以上の患者で肺合併症を主とする術後合併症が認められるが、合併症に関してハイブリッド低侵襲食道切除術との比較はこれまで行われていなかった。合併症の発現を比較するフランスの無作為化試験 研究グループは、食道がん患者の治療におけるハイブリッド低侵襲食道切除術の、合併症の発現を開胸食道切除術と比較する、多施設共同非盲検無作為化対照比較試験を行った(フランス国立がん研究所の助成による)。 対象は、18~75歳、中部または下部食道の切除可能な食道がん(扁平上皮がんまたは腺がん)患者であった。被験者は、ハイブリッド低侵襲食道切除術(ハイブリッド手術群)または開胸食道切除術(開胸術群)を受ける群に無作為に割り付けられた。 手術の質の保証は、外科医の資格認定、手技の標準化、技能の監視により行った。ハイブリッド手術群は、腹部と胸部の2つの手術野を設定し(Ivor-Lewis手術とも呼ばれる)、それぞれ腹腔鏡下胃授動術と右開胸食道切除術を実施した。開胸術群は、開腹下胃授動術と右開胸食道切除術を行った。 主要エンドポイントは、術中または術後30日以内に発生したClavien-Dindo分類のGrade2以上の合併症(介入を要する重大な合併症)であった。重大な合併症が77%、肺合併症は50%低減 2009年10月~2012年4月に、フランスの13施設で207例が登録され、ハイブリッド手術群に103例、開胸術群には104例が割り付けられた。両群1例ずつが、実際には手術を受けなかった。全体の年齢中央値は61歳(範囲:23~78)、男性が85%を占めた。扁平上皮がんが41%、腺がんが59%で、74%が術前補助療法を受けていた。 110例に312件の重篤な有害事象が発現した。術中または術後30日以内に重大な合併症を発現した患者は、ハイブリッド手術群が37例(36%)と、開胸術群の67例(64%)に比べ有意に少なかった(オッズ比[OR]:0.31、95%信頼区間[CI]:0.18~0.55、p<0.001)。補正後の術中または術後30日以内の合併症リスクは、ハイブリッド手術群で77%低下した(補正後OR:0.23、0.12~0.44、p<0.001)。 30日以内の重大な肺合併症の発現は、ハイブリッド手術群では102例中18例(18%)であったのに対し、開胸術群は103例中31例(30%)に認められ、ハイブリッド手術群でリスクが50%低下した(OR:0.50、95%CI:0.26~0.96)。 全生存期間中央値は、ハイブリッド手術群が52.2ヵ月、開胸術群は47.2ヵ月であった。3年時の全生存率は、ハイブリッド手術群が67%、開胸術群は55%で、5年全生存率はそれぞれ60%、40%であり、いずれもハイブリッド手術群で高率であったが、有意な差はなかった(死亡のハザード比[HR]:0.67、95%CI:0.44~1.01)。 また、3年無病生存率はそれぞれ57%、48%で、5年無病生存率は53%、43%であり、ハイブリッド手術群で高かったが、有意差は認めなかった(初回腫瘍再発、二次がん、死亡のHR:0.76、95%CI:0.52~1.11)。 著者は、「本試験は、生存に関して十分な検出力を持たないが、今回の知見を考慮すると、生存をエンドポイントとする試験デザインは、依然として今後の研究において重要な領域である」と指摘している。

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第11回 QRS電気軸(完結編)~進化したトントン法は無敵!~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第11回:QRS電気軸(完結編)~進化したトントン法は無敵!~新年の誓い、初心に返って心電図を丹念に読もうという第10回を挟みましたが、今回はいよいよ電気軸の完結編です。“トントン法”の進化系、“トントン法Neo”を披露しましょう! これを学べば、ほぼすべてのパタ-ンの電気軸に角度対応できるでしょう。それは、もはやゲ-ムを超えた知的興奮です。さぁ、Dr.ヒロのレクチャ-が始まりますよ!症例提示45歳、男性。高血圧で通院中。定期検査時の心電図を示す。(図1)定期検査時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図(図1)のQRS電気軸を求めよ。解答はこちら-15°解説はこちらおさらいですが、電気軸は肢誘導でQRS波の「向き」を確認します。I誘導が上向き、aVF誘導は下向きなので、定性的には「左軸偏位」。ところが、II誘導は上向きなので「軽度の」という枕言葉がつく「-30~0°」の領域に入ります(ギリギリ正常と見なしてよい)。実際に自動診断を見てみると「電気軸:-15度」となっていますよね。もちろん、これを写しても正解です(笑)。QRS波の向きの連続性からTPを予想~トントン法Neo~でも、熱心な読者なら、昨年最後の回で扱った“トントン法”をやってみたくなりませんか? 肢誘導を見渡して、上向きと下向きの波とが等しい“トントン”のQRS波を探し出すのがポイントでした(第9回)。でも、今回の心電図には…ない、ない、ないっんですっ! どこにも。こういう場合どうしたらいいのでしょう?ずばり“トントン法”を改良することで、状況を打開することができますよ。心電図(図1)では、肢誘導を上から下まで6個すべてのQRS波形を見渡しても、“トントンポイント(TP)”はありません。専門書などでは最も“トントン”に近い誘導で代用せよと書いてあるので、ならばaVF誘導を“仮TP”すれば、求める電気軸は「0°」です(I誘導の向きも参照)。人によってII誘導のほうがもっと“トントン”だと考えたら「-30°」ですかね。自動診断は「-15°」ですから、両者とも“痛み分け”、当たらずとも遠からずって感じですか。でも…な-んかシックリこない。そこで、徹底的に悩んだ結果、ボクなりの“解決策”を見つけました。QRS電気軸を求める独自のメソッド“トントン法Neo”を次の図で説明します(図2)。(図2)図1の肢誘導を並べ替えてTPを探す画像を拡大する今回も“肢誘導の世界”の円座標で考えましょう(以下、“~誘導”は省略)。円座標はIを基準(0°)として、30°刻みに肢誘導が配置されています。図2を見ると、aVRだけは肢誘導界の上半分に位置するので、“-aVR”と逆転させて下半分に迎えいれてみましょう。すると、aVL(-30°) → I(0°) → -aVR(+30°) → II(+60°) → aVF(+90°) → III(+120°)→ -aVL(+150°)と、キレイに30°ごとに並んで半周をカバ-できるんです[(図2)では薄ピンク色に網掛けしました]。これが、肢誘導のどれかをTPにしたら「30°刻み」で電気軸が何度か言える“トントン法”のカラクリです。ちなみに、心電図“業界”の一部では、肢誘導をこのように並べ替えた順(配列)に名前をつけているようですが、ボクはあまり重要視しません(実際あまり流行らず)。次に、図2で各誘導の波の向きを見てください。“-aVR”についてはaVRの真反対に位置するので、元の波形を上下逆さまにしたものと考えて下さい。左からQRS波の「向き」を見ていくと、IIまでは上向き、aVFで下向き、IIIも下向きです。-aVRから下向き波(S波)が出始め、IIでS波はより深くなり、そして次のaVFでは下向き(R波<S波)となっています。ここで、“連続性”を意識して、上向き波≒下向き波となるTPは原理的にQRS波の向きが変化するII(+60゜)とaVF(+90゜)の間にあるはずと考えるんです。そこで、まず、大胆にその中間をTPと考えます。IIの“上向き具合”とaVFの“下向き具合”が同程度と考えられる場合は妥当な考えです。角度で言えば「+75°」でしょうか。ここがTPとわかれば、あとはいつもと同じ要領で、電気軸は「-15°」と導けるのです(I誘導の向きを参照して、±90゜した方向のどちらかを選んで下さい)。すごいでしょう? 肢誘導6つにTPが見つからない場合、どの誘導の“間”にTPがあるかを推測せよ、という半歩進んだ“Neo”なやり方です。では、実際にこの“トントン法Neo”を使って実践してみましょう。【問題2】66歳、女性。遺伝性肺高血圧症。定期受診時の心電図を示す。(図3)定期受診時の心電図画像を拡大する【問題2】心電図(図3)のQRS電気軸を求めよ。解答はこちら+110°(もしくは自動診断の+106°、トントン法による+120°)解説はこちらパッと見でI誘導:下向き、II誘導:上向きなので「右軸偏位」の範疇です。日常臨床ではそれで十分ですし、原疾患的にも“さもありなん”な結果だと思います(右心系負荷が推察される)。自動診断的には106度との表示であり(これを写しても正解)、こちらなら“軽度”と言える領域でしょうか。前回ご紹介した普通のトントン法ならaVR誘導(-150°)を仮TPとし、I誘導が下向きなので「-60°」ではなく「+120°」が、求める電気軸です。でも、aVR誘導もジックリ見ると若干ですが、下向きの方が強いなぁ、そう考えた時にすべきことは…そう、Neoなやり方です!“どっち寄り“の視点も追加すれば完璧この問題も“トントン法Neo”で考えてみます。慣れてくれば、即座にaVL → I → -aVR →…の順に目で追っている自分に気づくかもしれません。今度はIと-aVRの間でQRS波が下向き→上向きに変化しており、この間にTPがあります。前問のように『エイッ、中間だ!』と割り切ればTPは「+15°」、そこから±90°を考慮、Iが下向きなので「+105°」ですかね。自動計測は「106°」になってますから、ニアピンです。このやり方だと、「15°刻み」で物が言えますよね。ここで、単純に中間でなく、少し欲張りましょう。TPが存在するならば、それは両端どちらの誘導に近いのかを予想するのです。このように、TPが“どっち寄り”かを考えるためのボクの頭の中を図示します(図4)。(図4)真ん中から“どっち寄り”の視点を追加画像を拡大するTPはI(0°)と-aVR(+30°)の間、すなわち真ん中(+15°)付近にあるのですが、この30°を10°ずつに刻んで、+10°なら“I寄り”、+20°なら“-aVR寄り”と考えるのです。ここでも連続性を意識して“どっち寄り”かは、両端のIと-aVRの“トントン”具合で決めるのが自然だと思いませんか? 細かく言うと、Iは上向き3.5mm、下向き7.5mmでさし引き-4mm、-aVRは上向き3mmちょい、下向き4mmで-0.5mmとなるので、-aVR寄りにTPがある、すなわち「+20°」をTPと予想します。ただ、この例もそうですが、細かく何mmと測らなくても、だいたい見た目で-aVRがよりトントンに近いとわかるはずです。こうして、TPが+20°、I誘導下向きから…ボクなりの推定電気軸は「+110°」となるわけです。心電計から4°のズレにまで迫ることができました。この“どっち寄り”のスタンスを追加することで、QRS電気軸を「10°刻み」で議論できるようになるんです。この精度が上がる方法、悩みに悩んだボクが自力でたどり着いた結果なんですが、これに気付いた時は、すごい“発明”をしたような錯覚にとらわれました(笑)しかも、ほぼ正常軸の125例でこの手法の“実力”を検証したことがあります。自動診断結果とのズレが1ケタ(0~9°)なら「優」、10~15°なら「良」としますと、「優」81%(101例)、「良」14%(18例)でした。実に95%は計算機も何も使わずに誤差15°以内でQRS電気軸が言えたことになるわけです。ビックリでしょ!?では、トントン法Neoをまとめましょう。■トントン法Neoのまとめ■頭の中で肢誘導の連続性を意識した順番に並べ替える:aVL、I、-aVR、II、aVF、IIIQRS波の「向き」に着目してTPを探す明らかなTPがなくても、QRS波の向きの移り変わりに着目し、1)波の上下がどこの“間”で変化するか、2)変化する両端の誘導に対し“どっち寄りか”を考慮してTPを予想するI誘導の向きなどを参考にTP±90°方向からから真のQRS電気軸を導く最後に、今回の症例ではQRS電気軸にそれぞれ軽度の偏位がありましたね。症例1は軽度の左軸偏位。これは”左軸偏位”として正常亜型のように扱う節があります。一方、症例2の軽度の右軸偏位については、言葉上では“軽度”でも、若年者以外なら病的所見(右心系負荷)の可能性を一度は念頭に置く必要があることも、ぜひ覚えておいてください。Dr.ヒロ考案の“トントン法Neo”はどうでしたか?全国の医学生や研修医を教えている先生方にも、教材としてこのやり方はおすすめです。“できる喜び”は、勉強を続ける大きなモチベ-ションになるとも信じています。Take-home Message肢誘導に“トントン”のQRS波がなくても、“連続性”を意識したトントン法Neoでかなり正確に電気軸が予想できる!【古都のこと~青龍殿大舞台~】蹴上(けあげ)からほど近い、東山の山頂にある青蓮院門跡 将軍塚青龍殿。平成26年秋に移築された際、真後ろに造設された木造の大舞台は絶景夜景スポットの一つとなっています。清水が“表”舞台なら、こちらは“裏”舞台。表舞台の4倍以上のスペース、そして何より空、雲、山を身近に感じることができます。寒空の下、西山を遠くに、眼下に広がる京都市街の様子を眺めながらの深呼吸は、ボクにとって極上のリフレッシュです。

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原稿の推敲を遂行して発表に臨むべし【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第7回

第7回 原稿の推敲を遂行して発表に臨むべし小生が初めて国際学会で発表したのは、医師になって5年目の1990年でした。急性心筋梗塞の再開通療法の手段として、t-PAを用いた血栓溶解療法とprimary PCIを比較した演題を米国心臓協会(AHA)年次集会に応募したところ、運良く採択されたのでした。それもポスター発表ではなく口述発表でした。ビギナーズラックだったのでしょうが、当時在籍していた北九州市の小倉記念病院で、発表に値する研究テーマと臨床データを解析するチャンスを得た幸運が最大の理由でした。今は、パワーポイントで作成したスライドを用いて学会発表が行われます。長老が昔話をするようで残念ですが、PCが普及する前の35mmスライド時代の話です。説明しましょう。まず、手書きの元原稿を用意します。元原稿から、写植屋さんに画用紙サイズの厚紙に活字で写植スライド原稿を作ってもらいます。これを写真屋さんに依頼してカメラで撮影し、35mmスライドを作成します。通常のフィルムでは白黒が反転するので、リバーサルフィルムという特殊なフィルムで撮影します。発表がスライド20枚の構成ならば、同数の小さなカルタのような35mmスライドが出来上がります。これを、カルーセルという大きなドーナツのようなスライドトレイに、発表順に並べてセットするのです。ここで大問題がありました。当時、小生は国際学会に、発表はおろか、聴講のために参加したことすらなかったのです。何とかスライド作成を完了し、読み原稿は暗記して、開催地のテキサス州ダラスに向かいました。会場では「speaker’s ready room」でスライドをセットし、係員に預けます。発表前の極度の緊張感は忘れられません。逃げて帰ることを本気で考えました。その時、「speaker’s ready room」で目にしたのは、発表直前まで読み原稿を推敲している、米国人の若手医師の姿でした。自分からすれば、英語が母国語の彼に準備は不要のように思われました。しかし、読み原稿をしっかり作成し、暗記しているようでした。同僚や先輩と思われる医師たちに対して、小声で予行演習しているのです。「もっとこう直したほうが良いぞ!」という感じで、やりとりが繰り返されていました。発表者の顔も緊張しているように感じられます。母国語で発表する者も緊張するのだとわかると、自分は少し解放されました。さらに、推敲に取り組んでいるのは1人だけではなく、同様の者が複数いることもわかりました。最後の最後まで、少しでも良いプレゼンテーションを行うために懸命であることが伝わってきました。日本よりも欧米では、学会発表の良し悪しやプレゼンテーション能力が、発表者の人生に大きな影響を持つのかもしれません。日本の学会会場でも、発表の質を高めるために最大限の努力を尽くす若手に出会うことを期待します。逆に発表の直前になってパワーポイントでスライドを作成する者も見かけます。もしかすると、35mmスライドの時代のほうが読み原稿の推敲に集中できたのかもしれません。また、昔話をしてしまいました。とにかく「推敲の遂行が鍵」ということです。では、おやすみなさい。

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第22回 目標のない在宅医療なんてありえないのだ【週刊・川添ラヂオ】

動画解説お薬カレンダーの設置だけを在宅とは言わせない!在宅医療の流れは目標、実行、報告。この3段階についてそれぞれのポイントをお話しします。目標を立てる前には必ずケアマネさんと情報共有しましょう。患者さんの生い立ちや生活習慣、実現可能なゴールなど、細かな課題分析をしているケアマネさんからきっとヒントをもらえるはずです。

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高尿酸血症の治療失敗に肥満が関連か~日本人男性

 高尿酸血症または痛風の日本人男性の治療目標達成率と治療成功に影響する因子について、順天堂大学の片山 暁子氏らが検討した結果、肥満と治療失敗との関連が示唆された。また、血清尿酸(SUA)管理の一部として脂質プロファイルを維持する重要性が強調された。著者らは「肥満と脂質異常症の両方をうまく管理し、健康的なSUA値を得ることで、心血管疾患を予防できるかもしれない」としている。Internal Medicine(Japan)誌オンライン版2019年1月10日号に掲載。 本研究は、2012年1~12月に実施した横断研究で、職場の健康診断に参加した13万6,770人のうち高尿酸血症または痛風の男性2,103人のSUA値および臨床的特徴を調べた。成功(SUA≦6.0mg/dLと定義)率を算出し、多変量解析を用いて「治療失敗」(目標SUA値に到達しない)に関連する因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・目標SUA値の達成率は37.5%であった。・BMIは治療失敗と有意に関連していた(カテゴリ[C]1<25.0と比較し、25.0≦C2<27.5の調整オッズ比[AOR]=1.35、27.5≦C3<30.0のAOR=1.69、C4≧30.0のAOR=1.94)。・腹囲(WC)と治療失敗との間にも有意な正の相関が観察された(C1<85.0cmと比較し、85≦C2<90のOR=1.29、90≦C3<95のOR=1.41、95≦C4のOR=2.28)。 ・BMIまたはWCの値の大きい人は小さい人よりも有意にSUA値が高い傾向があった。・治療失敗に対する予防因子として、脂質異常症治療薬の継続的服用が特定された。

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統合失調症患者のメタボリックシンドロームに対するオメガ3脂肪酸の影響

 統合失調症患者は、ライフスタイルや抗精神病薬の影響によりメタボリックシンドローム(MetS)を発症するリスクが高いと言われている。中国・上海交通大学のFeikang Xu氏らによるこれまでの研究では、MetSを合併した統合失調症患者では、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現や産生が増加することが示唆されていた。今回著者らは、TNF-αの抑制には、ω3脂肪酸が関連していると言われていることから、MetSを合併した統合失調症患者において、ω3脂肪酸が炎症を緩和し、代謝異常を改善することに役立つかどうかについて検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2018年12月5日号の報告。 本研究では、統合失調症患者のMetsに対するω3脂肪酸の効果を調査するため、無作為化プラセボ対照試験を実施した。対象は、長期オランザピン治療を行ったMetSを合併した統合失調症患者80例。対象患者は、ω3群(40例)またはプラセボ群(40例)にランダムに割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・MetSを合併した統合失調症患者では、対照群よりもTNF-αレベルが有意に高かった(Z=-4.37、p<0.01)。・本研究完了時、ω3脂肪酸治療とトリグリセライド(TG)レベル減少との間に有意な相関が認められた(F群×時間=13.42、df=1,66、p<0.01)。・ω3脂肪酸治療は、12週間後に、代謝改善とともにTNF-αレベルを減少させた(F群×時間=6.71、df=1,66、p=0.012)。・TNF-αレベルの減少とTG減少には有意な相関が認められた(r=0.38、p=0.001)。 著者らは「MetSを合併した統合失調症患者に対するω3脂肪酸治療は、炎症レベルの低下とともに、TG代謝に有用であることが示唆された」としている。■関連記事統合失調症とω3脂肪酸:和歌山県立医大初回エピソード統合失調症の灰白質に対するω-3脂肪酸の影響EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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後天性血栓性血小板減少性紫斑病の治療にcaplacizumabが有望/NEJM

 後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)の治療において、caplacizumabはプラセボに比べ、迅速に血小板数を正常化し、再発率を抑制することが、英国・University College London HospitalsのMarie Scully氏らが行ったHERCULES試験で示された。aTTPでは、von Willebrand因子の切断酵素であるADAMTS13の免疫介在性の欠損により、von Willebrand因子マルチマーが血小板や微小血栓に無制限に粘着可能となり、その結果として血小板減少、溶血性貧血、組織虚血が引き起こされる。caplacizumabは、抗von Willebrand因子ヒト化二価単一可変領域免疫グロブリンフラグメントであり、von Willebrand因子マルチマーと血小板の相互作用を阻害するという。NEJM誌オンライン版2018年1月9日号掲載の報告。血漿交換中止を伴う血小板数の正常化を検討 本研究は、aTTP患者の治療におけるcaplacizumabの有用性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2015年11月~2017年4月の期間に、世界92施設で145例が登録された(Ablynx社の助成による)。 被験者は、標準治療(血漿交換療法、グルココルチコイド)に加え、血漿交換療法中とその後30日間にcaplacizumab(初回は10mgを静脈内投与、その後は毎日1回皮下投与)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、血小板数の正常化(15万/mm3以上)までの期間(その後5日以内に血漿交換療法を中止できた場合)とした。副次アウトカムには、試験治療期間中のTTP関連死、TTP再発、血栓塞栓イベントの複合、フォローアップ期間を含む試験期間中のTTP再発、難治性TTP(治療開始4日目以降も血小板数が倍加せず、乳酸脱水素酵素が正常上限値を超えた状態)、臓器障害マーカー(乳酸脱水素酵素、心筋トロポニンI、血清クレアチニン)の正常化が含まれた。血小板数正常化の可能性が1.55倍に caplacizumab群に72例、プラセボ群には73例が割り付けられ、caplacizumab群の1例を除き1回以上の投与を受けた。全体で108例が試験を完遂した。平均年齢は46歳(範囲:18~79歳)で、69%が女性であった。 血小板数正常化までの期間中央値は、caplacizumab群が2.69日(95%信頼区間[CI]:1.89~2.83)と、プラセボ群の2.88日(2.68~3.56)に比べ有意に短く(p=0.01)、血小板数正常化の可能性はcaplacizumab群がプラセボ群の1.55倍(率比:1.55、1.09~2.19、p=0.01)であった。 試験治療期間中のTTP関連死、TTP再発、血栓塞栓イベントの複合の発生率は、caplacizumab群が12%(9例)であり、プラセボ群の49%(36例)よりも74%低下した(p<0.001)。試験期間中のTTP再発率は、caplacizumab群が12%(9例)と、プラセボ群の38%(28例)に比し67%低かった(p<0.001)。 難治性病変は、caplacizumab群では発現しなかったが、プラセボ群では4%(3例)に認められた(p=0.06)。臓器障害マーカーの正常化までの期間は、caplacizumab群がわずかに早かった(中央値、2.86日vs.3.36日)。また、caplacizumab群の患者は、プラセボ群に比べ血漿交換療法を要する日数(中央値、5.0日vs.7.0日)が短く、血漿量(中央値、18.1L vs.26.9L)が少なく、入院期間(中央値、9.0日vs.12.0日)が短かった。 最も頻度が高い有害事象は皮膚粘膜出血であり、caplacizumab群の65%、プラセボ群の48%にみられた。試験治療期間中にプラセボ群の3例が、治療期間終了後にcaplacizumab群の1例(脳虚血)が死亡し、いずれもTTPと関連した。 著者は、「caplacizumabによる血小板数の正常化は、おそらく本薬が微小血栓における血小板の消費を抑制するためと考えられる」としている。

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