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前立腺がんの生検、マイクロ超音波ガイド下vs.MRI/超音波融合ガイド下/JAMA

 臨床的に重要な前立腺がんの検出において、高解像度マイクロ超音波ガイド下生検はMRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検に対し非劣性であり、画像ガイド下前立腺生検においてMRIの代替法となる可能性があることが、カナダ・アルバータ大学のAdam Kinnaird氏らOPTIMUM Investigatorsが実施した「OPTIMUM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月23日号に掲載された。8ヵ国20施設の無作為化非劣性試験 OPTIMUM試験は、前立腺がんの検出におけるマイクロ超音波ガイド下生検とMRI融合画像ガイド下生検の有用性の比較を目的とする第III相非盲検無作為化非劣性試験であり、2021年12月~2024年9月に8ヵ国20施設で患者を登録した(Exact Imagingの助成を受けた)。 年齢18歳以上、臨床的に前立腺がんが疑われ(前立腺特異抗原[PSA]上昇または直腸診で異常所見、あるいはこれら双方)、前立腺生検の適応とされ、生検を受けたことがない男性678例(年齢中央値65歳[四分位範囲[IQR]:59~70]、PSA中央値6.9ng/mL[IQR:5.2~9.8]、白人83%)を対象とした。 被験者を、マイクロ超音波ガイド下生検を受ける群(マイクロ超音波群、121例)、マイクロ超音波/MRI融合画像ガイド下生検を受ける群(マイクロ超音波/MRI群、226例、MRIを非盲検化する前にマイクロ超音波ガイド下生検を施行)、MRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検を受ける群(MRI/従来型超音波群、331例)の3つの群に無作為に割り付けた。全例で、これらと同時に系統的生検が行われた。 主要評価項目は、マイクロ超音波ガイド下生検+系統的生検と、MRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検+系統的生検を用いて検出された臨床的に重要な前立腺がん(Gleason Grade Group≧2と定義)の差とした。非劣性マージンは10%に設定した。マイクロ超音波/MRI群も非劣性 Gleason Grade Group≧2のがんは、マイクロ超音波群57例(47.1%)、マイクロ超音波/MRI群106例(46.9%)、MRI/従来型超音波群141例(42.6%)で検出された。 Gleason Grade Group≧2のがんの検出に関して、マイクロ超音波群はMRI/従来型超音波群に対し非劣性であった(群間差:3.52%[95%信頼区間[CI]:-3.95~10.92]、非劣性のp<0.001)。また、副次評価項目として、マイクロ超音波/MRI群もMRI/従来型超音波群に対し非劣性だった(群間差:4.29%[95%CI:-4.06~12.63]、非劣性のp<0.001)。とくにMRI禁忌例にとって利用しやすい新たな生検法 標的生検だけで診断されたGleason Grade Group≧2のがんは、マイクロ超音波群46例(38.0%)、マイクロ超音波/MRI群91例(40.3%)、MRI/従来型超音波群113例(34.1%)であり、これらの差は有意ではなかった。 著者は、「マイクロ超音波は、前立腺生検を検討している患者、とくにMRIが禁忌の患者にとって、より利用しやすい方法となる可能性がある新たな画像診断法、生検法である」「本試験の結果は、一方の画像技術でしか見えず、他方の画像技術では見えない腫瘍が存在するという、これまでの知見を裏付けるものである。マイクロ超音波で可視、MRIで不可視の腫瘍が、マイクロ超音波で不可視、MRIで可視の腫瘍と予後が異なるかは明らかにされていない」としている。

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レンチウイルス抗CD20/抗CD19 CAR-T細胞、再発・難治性マントル細胞リンパ腫で全奏効率100%(第I/II相試験)/JCO

 再発・難治性マントル細胞リンパ腫(MCL)に対する二重特異性レンチウイルス抗CD20/抗CD19(LV20.19)CAR-T療法の第I/II相試験の結果、100%の全奏効率(ORR)を示し、88%で完全奏効(CR)を達成した。米国・Medical College of WisconsinのNirav N. Shah氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年3月31日号で報告。 本試験は、2ラインの治療に失敗または移植後に再発したMCL患者を対象とし、LV20.19 CAR-T細胞はCliniMACS Prodigyを用いて施設内で製造された。ナイーブT細胞と幹細胞メモリー(SCM)様T細胞を増やし最終CAR-T細胞を最適化するため、8日間もしくは12日間のフレキシブルな工程で製造した。 主な結果は以下のとおり。・再発・難治性MCL患者17例(第I相:3例、第II相:14例)にLV20.19 CAR-T細胞を2.5✕106個/kg単回投与した結果、最良ORRが100%(CR:88%、部分奏効:12%)で、第II相における90日CR率の有効性基準を超えた。・データカットオフ時点で2例が再発したが、追跡期間中央値15.8ヵ月において無増悪生存期間および全生存期間の中央値には達していない。・サイトカイン放出症候群が94%(16例)に発現したが、すべてGrade1または2であった。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群が28日間で18%(3例)に発現し、うち2例は可逆的なGrade3であった。・非再発死亡が3例にみられたが、いずれもB細胞無形成の状況だった。・最終のLV20.19 CAR-T細胞はSCM様T細胞/ナイーブT細胞の割合が高く、ほとんどの患者がアフェレーシスから8日以内に投与された。 本試験から、著者らは「施設内でフレキシブルな工程で製造されたLV20.19 CAR-T細胞が、再発・難治性MCLに対して実現可能で安全かつ有効であることを示した」と結論している。

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食物繊維の摂取による肥満リスク低下、男性でより顕著?

 2型糖尿病患者で、食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった。新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野のEfrem d'Avila Ferreira氏、曽根博仁氏らの研究によるもので、詳細は「Public Health Nutrition」に2月4日掲載された。 肥満の予防と管理においては、食物繊維が重要な役割を果たすことは示されているが、性別で層別化した場合に相反する結果が報告されるなど、一貫したエビデンスは得られていない。このような背景からFerreira氏らは、日本人の2型糖尿病患者集団を性別・年齢別に層別化し、食物繊維摂取量と肥満との関連を検討した。さらに、この関連に寄与する可能性のある生活および食習慣についても検討を行った。 この横断研究では、一般社団法人糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)のデータが用いられた。対象は、2014年12月~2019年12月の期間に、JDDMに参加する日本の糖尿病専門医クリニックで治療を受けた30~89歳までの外来患者とした。解析対象は1,565名(平均年齢62.3±11.6歳、男性63.1%)だった。 参加クリニックでは、希望する外来患者に対して、JDDMの開発した生活習慣に関するアンケートを実施。患者は身長・体重を自己申告し、食習慣については、それぞれ食物摂取頻度調査票(FFQ)に記入してもらった。栄養素および食品の摂取量は標準化された栄養計算ソフトウェアで計算し、1日当たりの摂取量が600kcal以下または4,000kcal以上の場合は外れ値として解析から除外した。身体活動は国際標準化身体活動質問表(IPAQ)の短縮版を用いて計算した。肥満の定義は日本肥満学会に従い、BMIが25kg/m2以上とした。 性別・年齢およびライフスタイル要因、主要栄養素の摂取量を調整した多変量解析を行った結果、全患者において食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった(オッズ比OR 0.591〔95%信頼区間0.439~0.795〕、P trend=0.002)。層別解析では、男性(P trend=0.002)および59~68歳群(P trend=0.038)で有意な逆相関の傾向が認められ、69~89歳群(P trend=0.057)でも有意傾向がみられた。一方で女性(P trend=0.338)および30~58歳群(P trend=0.366)では逆相関の傾向は認められなかった。また、男性では食物繊維の摂取量が多いほど、ライフスタイルが健康的であることも分かった。その特徴として、身体活動レベルが高いこと(p<0.001)や、喫煙率の低さ(p<0.001)が挙げられる。 食物繊維摂取量と食品群との相関関係をみると、全患者において、野菜、果物、大豆/大豆製品が強い相関を示したが、穀物は弱い相関を示した。ビタミンおよびミネラルの場合は、葉酸、カリウム、ビタミンCなどが食物繊維の摂取量と強い相関を示していた。 研究グループは本研究について、横断研究であり、日本人の2型糖尿病患者集団のみを対象としたことからも一般化できないといった限界点を挙げた上で、「肥満を効果的に管理するには、食物繊維の豊富な様々な食品を推進するような的を絞った取り組みが必要。また、多様な集団における食物繊維と肥満の関係を理解するには、さらなる研究が必要と考える」と総括している。

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今年の薬剤師国家試験の合格率は68.5%、新設の山口東京理科大が好調【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第149回

今年も新たな薬剤師たちが誕生しました! 第110回薬剤師国家試験の合格率は68.5%で、新設薬学部が躍進しています。厚生労働省は3月25日、第110回薬剤師国家試験について、合格率は68.85%(前年度比0.42%増)だったと発表した。合格者数は9164人と前年から132人減り、新卒に限った合格率は84.96%、合格者数は6849人だった。新卒と既卒を合わせた合格率の最下位は2025年度から入学者の募集を停止した姫路獨協大学の25.98%。次いで、薬学部の廃止を条件とした公立化を見送り、別法人への事業譲渡により薬学部を存続させた千葉科学大学の36.54%、第一薬科大学の36.98%となっている。(2025年3月26日付 RISFAX)単純に、薬剤師国家試験って110回もやってるんだ…と感慨にふけってしまいました。年に2回のチャンスがあった時代もあるので、110年間続いているわけではありませんが、薬剤師の資格の歴史の重さを感じずにはいられません。さて、今回の第110回試験の合格率や合格者数は、昨年からほぼ横ばいといった印象でしょうか。20年ほど前に受験した身としては、10年ほど前にガクンと合格率が下がったことは衝撃的でしたが、それから少し回復し、合格率は横ばいを維持しているようです。既卒者の合格率が厳しいことは今も昔も変わらないようですが、きちんと勉強した人がきちんと合格するという仕組みが保たれているようで安心します。ここ最近は、薬剤師国家試験の合格率が発表されると必ず話題になるのが、合格率が下のほうの大学についてです。新設の大学のレベルが低い、国家試験の合格率が低い、と話題になりがちですが、姫路獨協大学の薬学部が学生の募集を停止したり、千葉科学大学の薬学部は事業譲渡されたりするなど、次の展開になっています。しかしながら、既存の教育方針や教員が大きく変わる変革が行われない限り、合格率の大幅なアップは難しいのではないかと思ってしまいます。今回の結果で注目したいのが、山口東京理科大学薬学部です。2018年4月に薬学部がない山口県の公立大学薬学部として誕生しました。名前のとおり、東京理科大学が全面サポートしている大学です。卒業生を輩出する2年目となる第110回試験の合格率は92.25%でした。新設大学としては素晴らしい合格率ですね!新設だからダメということではなく、カリキュラムや教員、その地域の特性など、薬学部の作り方によってはきちんとよい薬学部が作れるという好例になったのではないでしょうか。新設ラッシュ時に創設された大学のさまざまな課題や学力の低下が懸念されている一方で、薬学部がない都道府県の薬局・薬剤師不足や過疎地域の医療なども問題になっています。山口東京理科大学の飛躍は、新たな光になるような気がします。

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下痢後に急速に進行する筋力低下と腱反射低下【日常診療アップグレード】第27回

下痢後に急速に進行する筋力低下と腱反射低下問題26歳女性が下肢に力が入らないと訴えて来院した。3週間前に数日間続く下痢があった。10日前から腰痛が出現し、下肢の力が入りにくく階段を上がることが次第に困難になってきた。バイタルサインは体温37.2℃、血圧120/80mmHg、脈拍数116/分、呼吸数20/分。膝蓋腱反射とアキレス腱反射は低下している。脳脊髄液検査では細胞数、タンパク質、グルコースの値は正常である。血漿交換を行うこととした。

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がんは、治す時代へ──今いちばん熱い「腫瘍内科」の魅力

「腫瘍内科」は臓器横断的にがん診療を行う、比較的新しい診療科だ。若くして腫瘍内科の教授になった3人が、次々登場する薬剤や治療法のダイナミズムなど、腫瘍内科の魅力やキャリアについて語り合った。【主な内容】なぜ腫瘍内科を選んだのか教授になるまでのキャリアの歩み現在の講座について(スタッフ数、関連病院、担当授業など)腫瘍内科の魅力とは?学生に魅力をどう伝える?臨床実習での工夫(37分)講師紹介

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遺伝性腫瘍症候群に関する多遺伝子パネル検査(MGPT)の手引き 2025年版

遺伝性腫瘍症候群診療に携わるすべての医療従事者必携の1冊!多遺伝子パネル検査(MGPT)と遺伝性腫瘍症候群・関連遺伝子に関する情報や臨床上の扱いについて包括的にまとめた、初の指針。遺伝性腫瘍症候群の診療に関する基礎的な事項、MGPTを用いた診療・管理体制など、詳しく解説している。さらに臓器・遺伝子ごとのマネジメントに関する記載も充実。診療科を問わず、遺伝性腫瘍症候群の診断・治療に携わるすべての医療従事者にオススメの1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する遺伝性腫瘍症候群に関する多遺伝子パネル検査(MGPT)の手引き 2025年版定価3,960円(税込)判型B5判頁数256頁発行2025年3月編集日本遺伝性腫瘍学会/令和6年度厚労科研 がん対策推進総合研究事業 平沢班ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第261回 セマグルチド使用と脱毛リスク上昇が関連

セマグルチド使用と脱毛リスク上昇が関連患者1,600万例から無作為に抽出した3千例強を調べたところ、糖尿病や肥満の治療に使われるGLP-1受容体活作動薬(GLP-1薬)セマグルチドと脱毛が生じやすことが、女性に限って関連しました1)。GLP-1薬は世界で最も処方されている薬の類いの1つであり、米国ではおよそ8人に1人がその使用経験を有します。GLP-1薬の有害事象で調べられているのはもっぱら胃腸障害ですが、使う患者がそれだけ多いと脱毛などのまれな有害事象にも注目が集まります。米国FDAに集まる有害事象を解析した昨年9月の報告では、セマグルチド使用患者の脱毛はほかの糖尿病薬に比べてより多く認められました2)。その糸口をカナダのバンクーバーのUniversity of British ColumbiaのMahyar Etminan氏らは深掘りすべく、米国のすべての外来処方と診断記録の93%を集めるデータベースIQVIA PharMetrics Plus for Academicsを使って、セマグルチドと別の肥満薬Contrave(naltrexone HCl / bupropion HCl)使用患者の脱毛の発生率を比較しました。Etminan氏らはIQVIA PharMetrics Plus for Academicsに記録された1,600万例からセマグルチドを使い始めた患者とContraveを使い始めた患者を無作為に抽出しました。糖尿病患者や血糖降下薬を先立って使ったことがある患者は除外されました。最終的な解析対象のセマグルチド使用患者は1,926例、Contrave使用患者は1,348例となり、脱毛の発生率は1,000人年当たりそれぞれ26.5と11.8でした。男女別で比較解析したところ、女性に限ってセマグルチドと脱毛が生じやすいことが関連しました。具体的には、セマグルチド使用の女性患者は、Contrave使用の女性患者に比べて脱毛の発生率が2倍ほど高いという結果となりました(ハザード比:2.08、95%信頼区間:1.17~3.72)。全被験者と男性患者のハザード比はそれぞれ1.52と0.86で、95%信頼区間はどちらも1を跨いでいました(それぞれ0.86~2.69と0.05~14.49)。セマグルチドの臨床試験結果に改めて目を向けると、Etminan氏らの解析結果と一致する傾向が見てとれます。肥満薬としての臨床試験での脱毛の発生率は、セマグルチド投与群3.3%、プラセボ群1.4%で、セマグルチド群のほうがプラセボ群より2倍半ほど高いという結果となっています3)。また、セマグルチドで体重がより減った患者ほど脱毛をより多く被りました。セマグルチド投与で体重が2割以上減った患者は、体重減少が2割未満の患者に比べて脱毛の発生率が2倍ほど高いことが示されています(5.3%vs.2.5%)。体重を減らすためだけにセマグルチドを使おうとしている人、とくに女性にとって脱毛の有害事象はそれを思いとどまらせる要因となりうるかもしれません1)。今後の課題はいくつもありますが、一例としてセマグルチド投与患者の脱毛がどれほど重症でどれだけ続くのかを調べる必要がある、とEtminan氏は言っています4)。 参考 1) Sodhi M, et al. Risk of Hair Loss with Semaglutide for Weight Loss. medRxiv. 2025 Mar 6. 2) Nakhla M, et al. Cardiovasc Drugs Ther. 2024 Sep 12. [Epub ahead of print] 3) Wegovy Product Monograph 4) Hair Loss: Another Wegovy Side Effect? / MedpageToday

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がん術前1ヵ月間の禁煙で合併症が減少~メタ解析

 がん手術の前に4週間禁煙した患者では、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が有意に少なかったことを、オーストラリア・ディーキン大学のClement Wong氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年3月7日号掲載の報告。 喫煙は術後合併症のよく知られた危険因子であり、喫煙する患者では合併症リスク増大の懸念から外科手術の延期を検討することもある。しかし、がん患者の手術が延期された場合、患者が禁煙している間に病勢が進行するリスクがある。今回、研究グループはがん患者の喫煙状態や禁煙期間とがん手術後の合併症との関連を調べるために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。 Embase、CINAHL、Medline Complete、Cochrane Libraryを2000年1月1日~2023年8月10日に体系的に検索し、喫煙しているがん患者と喫煙していないがん患者の術後合併症を調査した介入研究と観察研究を抽出した。評価項目は、がんの手術前の4週間も喫煙していた患者と4週間は禁煙した患者、手術前の4週間も喫煙していた患者と生涯で一度も喫煙したことがない患者などにおける、あらゆる術後合併症のオッズ比(OR)であった。●24件のランダム化比較試験の3万9,499例が解析対象となった。肺がんは最も多く研究されたがん種であった。●手術前の4週間も喫煙していた群は、4週間は禁煙した群および生涯で一度も喫煙したことがない群と比較して、術後合併症のORが高かった。 -術前4週間も喫煙群vs.4週間は禁煙群のOR:1.31、95%信頼区間(CI):1.10~1.55、1万4,547例(17研究) -術前4週間も喫煙群vs.非喫煙群のOR:2.83、95%CI:2.06~3.88、9,726例(14研究)●手術前の2週間も喫煙していた群と、最後に喫煙したのが2週間~1ヵ月前および2週間~3ヵ月前であった群の術後合併症のORに有意な差はなかったが、点推定では禁煙期間が長いほうが有利であった。 -術前2週間も喫煙群vs.2週間~1ヵ月前に禁煙群のOR:1.20、95%CI:0.73~1.96、n=3,408(5研究) -術前2週間も喫群煙vs.2週間~3ヵ月前に禁煙群のOR:1.19、95%CI:0.89~1.59、n=5,341(10研究)●手術前の1年間に喫煙していた群の術後合併症のORは、少なくとも1年前に禁煙した群よりも高かった(OR:1.13、95%CI:1.00~1.29、3万1,238例[13研究])。 研究グループは、手術前の2週間も喫煙していた群と2週間~1ヵ月前および2週間~3ヵ月前に禁煙した群のORに有意差がなかった点について、「短い禁煙期間を比較した研究が少ないことや出版バイアスの可能性により、長い禁煙期間よりも短い禁煙期間を支持する研究が過小評価されている可能性がある」と言及したうえで、「禁煙とがんの術後合併症に関するこのシステマティックレビューおよびメタ解析では、手術の4週間前から禁煙していたがん患者は、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が少なかった。最適な禁煙期間を特定し、がん手術延期と病勢進行リスクとのトレードオフについての情報を臨床医に提供するためには、さらに質の高いエビデンスが必要である」とまとめた。

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健康行動変容支援システムは体重のリバウンド対策に有効か

 ダイエットでは体重のリバウンドが常に課題となる。では、減量した体重の維持には、認知行動療法(CBT)などを活用した健康行動変容支援システム(HBCSS)は有効だろうか。この課題に対し、フィンランドのオウル大学生体医学・内科学研究ユニットのEero Turkkila氏らの研究グループは、ウェブベースのHBCSSの長期的有効性評価を目的に、2年にわたり検証を行った。その結果、12ヵ月間のHBCSS介入では、5年後の体重減少について非HBCSSよりも良好に維持することはできなかった。この結果は、International Journal of Obesity誌2025年3月15日オンライン版で公開された。5年間の追跡では体重変化に群間差がなかった 研究グループは、合計532例の過体重または肥満(BMI27~35)の参加者を、CBTに基づくグループカウンセリング、自助ガイダンス(SHG)、通常ケアの介入強度の異なる3つのグループに分けた。これらの群はさらにHBCSS群と非HBCSS群に分けられ、HBCSSは52週間のプログラムとし、5年間追跡した。 主な結果は以下のとおり。・HBCSS群と非HBCSS群のベースラインからの平均体重変化率と95%信頼区間[CI]は、5年後にそれぞれ1.5%(-0.02~2.9、p=0.056)、1.9%(0.3~3.3、p=0.005)だった。・6群のうちHBCSSを用いなかったSHG群では、5年後の体重増加率が3.1%(95%CI:0.6~5.6、p=0.010)とベースラインから統計的に有意に増加したが、他の群では体重の有意な増加はみられなかった。・5年経過時点で体重変化では群間に有意差はなかった。・HBCSS群では、5年間で降圧薬の服用開始数が少なくなった(p=0.046)。 研究グループでは、これらの結果から「12ヵ月間のHBCSS介入群では、5年後の体重減少を非HBCSS群よりも良好に維持することはできなかった一方で、5年間を通じ有意な体重差はHBCSS群に有利であった。降圧薬の必要性が減少したことは、HBCSS群による早期からの有意な体重減少が、健康増進へレガシー効果を持ったことを示唆する」と結論付けている。

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組み換え帯状疱疹ワクチン シングリックス、定期接種として使用可能に/GSK

 グラクソ・スミスクラインは、2025年4月1日、予防接種法施行規則および予防接種実施規則の一部改正で帯状疱疹が予防接種法のB類疾病に位置づけられたことにより、同社の帯状疱疹のワクチン「シングリックス筋注用(以下、シングリックス)」が定期接種として使用可能となったと発表した。 シングリックスは、帯状疱疹の予防を目的とした世界で初めての遺伝子組換え型のサブユニットワクチンで、現在50ヵ国以上で販売されている。日本では、2018年3月23日に50歳以上を対象に、2023年6月26日に帯状疱疹発症リスクの高い18歳以上を対象に承認を取得している。また、シングリックスは、50歳以上で10年以上の帯状疱疹の予防効果の持続が示されている。 日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスがすでに体内に潜んでいる可能性があり、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症が増え始め、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれている。 また、高血圧・糖尿病・リウマチ・腎不全といった基礎疾患罹患者は、帯状疱疹の発症リスクが高くなるという報告がある。たとえば、高血圧患者は、非高血圧患者と比較して発症リスクが約1.9倍、糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較して約2.4倍というデータが報告されている。帯状疱疹ワクチンの定期接種対象者定期接種の対象者:・65歳の者・60歳以上65歳未満の者であって、ヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害を有する者対象者の経過措置:・令和7年4月1日から令和12年3月31日までの間に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳又は100歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間にある者・令和7年4月1日から令和8年3月31日までの間、令和7年3月31日において100歳以上の者帯状疱疹ワクチン「シングリックス」 製品概要製品名:シングリックス筋注用一般名:乾燥組換え帯状疱疹ワクチン効能又は効果:帯状疱疹の予防国内製造販売承認取得日:・50歳以上:2018年3月23日・帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上:2023年6月26日販売国数:50ヵ国以上(2025年3月時点)用法及び用量:・50歳以上:0.5mLを2回、通常、2ヵ月の間隔をおいて、筋肉内に接種する。・帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上:0.5mLを2回、通常、1~2ヵ月の間隔をおいて、筋肉内に接種する。有効性:・50歳以上の成人:97.2%・50~59歳:96.6%・60~69歳:97.4%・70歳以上:97.9%予防効果の持続性:10年以上安全性:・重大な副反応:ショック、アナフィラキシー・主な副反応:疼痛、発赤、腫脹、胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、疲労、悪寒、発熱

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双極症とADHD併発患者における認知機能/心理社会的機能の特徴

 双極症や注意欠如多動症(ADHD)は、神経認知および心理社会的機能に重大な影響を及ぼす慢性的な神経精神疾患である。双極症とADHDの併発は、特有の臨床的課題を呈し、認知機能および機能障害をさらに悪化させる可能性がある。スペイン・Vall d'Hebron Research InstituteのSilvia Amoretti氏らは、双極症またはADHD患者および併発した患者と健康対照者における神経認知機能および心理社会的機能の違いを明らかにするため、最新情報を統合したシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neuroscience and Biobehavioral Reviews誌2025年4月号の報告。 主な内容は以下のとおり。・包括的な検索により特定された5,639研究のうち、システマティックレビューの包括基準を満たした研究は34件、メタ解析の包括基準を満たした研究は31件。・双極症/ADHD併発患者と双極症患者では、評価された認知機能のいずれにおいても有意な差は認められなかった。・双極症/ADHD併発患者は、ADHD患者と比較し、視覚記憶の有意な低下が認められた(標準化平均差[SMD]:−0.29、95%信頼区間[CI]:−0.53〜−0.04、p=0.022)。・双極症/ADHD併発患者は、健康対照者と比較し、さまざまな認知機能の低下が認められた。【処理速度】SMD:−0.54、95%CI:−0.86〜−0.22、p<0.001【持続性注意】SMD:−0.40、95%CI:−0.62〜−0.19、p<0.001【視覚記憶】SMD:−0.47、95%CI:−0.69〜−0.26、p<0.001【作業記憶】SMD:−0.79、95%CI:−1.13〜−0.44、p<0.001【認知的柔軟性および高次実行機能】SMD:−0.52、95%CI:−0.84〜−0.20、p=0.001【言語記憶】SMD:−0.95、95%CI:−1.43〜−0.47、p<0.001・双極症/ADHD併発患者の心理社会的機能は、双極症患者(SMD:−0.46、p<0.001)、ADHD患者(SMD:−1.00、p<0.001)、健康対照者(SMD:−3.54、p<0.001)よりも有意に不良であった。 著者らは「双極症とADHDの併発は、重大な神経認知機能および心理社会的機能の悪化と関連している可能性が示唆された。本結果は、これらの併存疾患特有の課題に対処するための介入の必要性を示唆しており、臨床実践や将来の研究に役立つであろう」としている。

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オフポンプCABGの周術期管理、NIRS+血行動態モニタリングは有効か/BMJ

 オフポンプ冠動脈バイパス術(CABG)の周術期管理において、通常ケアと比較して、近赤外線分光法(NIRS)による組織酸素飽和度モニタリングと血行動態モニタリングのガイドに基づくケアは、組織酸素化をほぼベースラインの水準に維持するが、このアプローチは術後の主要な合併症の発生率を減少させないことが、中国・天津大学のJiange Han氏らBottomline-CS investigation groupが実施した「Bottomline-CS試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2025年3月24日号で報告された。中国の単施設無作為化対照比較試験 Bottomline-CS試験は、NIRSによる組織酸素飽和度の測定と血行動態モニタリングによる周術期管理が、オフポンプCABGの術後合併症を減少させるかの評価を目的とする評価者盲検単施設無作為化対照比較試験であり、2021年6月~2023年12月に三次教育病院である天津市胸科医院で行われた(Tianjin Science and Technology Projectなどの助成を受けた)。 年齢60歳以上の待機的オフポンプCABGを予定している患者1,960例(平均年齢69歳、男性70%)を登録し、このうち修正ITT集団として1,941例をガイド下ケア群(967例)または通常ケア群(974例)に無作為に割り付けた。 全患者で、NIRSによる複数部位(左・右前額部と片側前腕の腕橈骨筋)の組織酸素飽和度モニタリングと血行動態モニタリングを行った。また、両群とも通常ケア(適応がある場合に、動脈圧、中心静脈圧、心電図、経食道心エコー図などの検査を行う)を受けた。 ガイド下ケア群では、麻酔開始から、抜管あるいは術後最長24時間まで、手術の24~48時間前に設定した術前ベースライン値の±10%以内の組織酸素化の維持を目標に、NIRSと血行動態モニタリングをガイドとしたケアを行った。通常ケア群では、治療医に組織酸素濃度測定値と血行動態データを隠蔽した状態で、通常のケアを行った。 主要アウトカムは、術後30日時点での術後合併症(脳、心臓、呼吸器、腎臓、感染症、死亡)の複合の発生率とした。組織酸素飽和度は改善、複合アウトカムに有益性はない 麻酔中に、ベースライン値の±10%の範囲を超える組織酸素飽和度測定値の曲線下面積は、通常ケア群に比べガイド下ケア群で有意に小さく(左前額部:32.4 vs.57.6%×分[p<0.001]、右前額部:37.9 vs.62.6[p<0.001]、前腕:14.8 vs.44.7[p<0.001])、ガイド下ケアによる組織酸素飽和度の改善を確認した。 これに対し、主要複合アウトカムの発生率はガイド下ケア群で47.3%(457/967例)、通常ケア群で47.8%(466/974例)と、両群間に有意な差を認めなかった(リスク比:0.99[95%信頼区間[CI]:0.90~1.08]、p=0.83)。副次アウトカムにも有意差はない 副次アウトカム(複合アウトカムの個々の項目、初発の心房細動、入院期間)にも、両群間に有意差はなかった。最も差が大きかったのは肺炎の発生率で、通常ケア群(12.4%[121/974例])よりもガイド下ケア群(9.1%[88/967例])で低く、未補正では有意差(リスク比:0.73[95%CI:0.56~0.95]、p=0.02)を認めたものの、多重比較で補正すると有意ではなくなった(p=0.60)。 著者は、「これらの知見は、オフポンプCABG中に組織酸素化を維持するためにNIRSと血行動態モニタリングをルーチンに使用することを支持しない」「主要複合アウトカムの相対リスクは95%CIの範囲が狭く(幅0.18)、これはこの偏りのない所見の頑健性を強調するものであり、本試験の検出力に不足はないことを示している」としている。

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最新の鼻アレルギー診療ガイドラインの読むべき点とは

 今春のスギ・ヒノキの花粉総飛散量は、2024年の春より増加した地域が多く、天候の乱高下により、飛散が長期に及んでいる。そのため、外来などで季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)を診療する機会も多いと予想される。花粉症診療で指針となる『鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症- 2024年 改訂第10版』(編集:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)が、昨年2024年3月に上梓され、現在診療で広く活用されている。 本稿では、本ガイドラインの作成委員長である大久保 公裕氏(日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授)に改訂のポイントや今春の花粉症の終息の見通し、今秋以降の花粉飛散を前にできる対策などを聞いた。医療者は知っておきたいLAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎の概念 今回の改訂では、全体のエビデンスなどの更新とともに、皮膚テストや血清特異的IgE検査に反応しない「LAR(local allergic rhinitis)血清IgE陰性アレルギー性鼻炎」が加わった。また、図示では、アレルギー性鼻炎の発症機序、種々発売されている治療薬について、その作用機序が追加されている。そのほか、「口腔アレルギー症候群」の記載を詳記するなど内容の充実が図られている。それらの中でもとくに医療者に読んでもらいたい箇所として次の2点を大久保氏は挙げた。(1)LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎の概念の導入: このLAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎は、皮膚反応や血清特異的IgE抗体が陰性であるにもかかわらず、鼻粘膜表層ではアレルギー反応が起こっている疾患であり、従来の検査や所見でみつからなくても、将来的にアレルギー性鼻炎や気管支喘息に進展する可能性が示唆される。患者さんが来院し、花粉症の症状を訴えているにもかかわらず、検査で抗体がなかったとしても、もう少し踏み込んで診療をする必要がある。もし不明な点があれば専門医へ紹介する、問い合わせるなどが必要。(2)治療法の選択の簡便化: さまざまな治療薬が登場しており、処方した治療薬がアレルギー反応のどの部分に作用しているのか、図表で示している。これは治療薬の作用機序の理解に役立つと期待している。また、治療で効果減弱の場合、薬量を追加するのか、薬剤を変更するのか検討する際の参考に読んでもらいたい。 実際、本ガイドラインが発刊され、医療者からは、「診断が簡単に理解でき、診療ができるようになった」「『LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎』の所見をみたことがあり、今後は自信をもって診療できる」などの声があったという。今春の飛散終息は5月中~下旬頃の見通し 今春の花粉症の特徴と終息の見通しでは、「今年はスギ花粉の飛散が1月から確認され、例年より早かった一方で、寒い日が続いたため、飛散が後ろ倒しになっている。そのために温暖な日が続くとかなりの数の花粉が飛散することが予測され、症状がつらい患者さんも出てくる。また、今月からヒノキの花粉飛散も始まるので、ダブルパンチとなる可能性もある」と特徴を振り返った。そして、終息については、「例年通り、5月連休以降に東北以外のスギ花粉は収まると予測される。また、東北ではヒノキがないので、スギ花粉の飛散動向だけに注意を払ってもらいたい。5月中~下旬に飛散は終わると考えている」と見通しを語った。 今秋・来春(2026年)の花粉症への備えについては、「今後の見通しは夏の気温によって変わってくる。暑ければ、ブタクサなどの花粉は大量飛散する可能性がある。とくに今春の花粉症で治療薬の効果が弱かった人は、スギ花粉の舌下免疫療法を開始する、冬季に鼻の粘膜を痛めないためにも風邪に気を付けることなどが肝要。マスクをせずむやみに人混みに行くことなど避けることが大事」と指摘した。 最後に次回のガイドラインの課題や展望については、「改訂第11版では、方式としてMinds方式のCQを追加する準備を進める。内容については、花粉症があることで食物アレルギー、口腔アレルギー症候群(OAS)、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)など複雑に交錯する疾患があり、これが今問題となっているので医療者は知っておく必要がある。とくに複数のアレルゲンによる感作が進んでいる小児へのアプローチについて、エビデンスは少ないが記載を検討していきたい」と展望を語った。主な改訂点と目次〔改訂第10版の主な改訂点〕【第1章 定義・分類】・鼻炎を「感染性」「アレルギー性」「非アレルギー性」に分類・LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎を追加【第2章 疫学】・スギ花粉症の有病率は38.8%・マスクが発症予防になる可能性の示唆【第3章 発症のメカニズム】・前段階として感作と鼻粘膜の過敏性亢進が重要・アレルギー鼻炎(AR)はタイプ2炎症【第4章 検査・診断法】・典型的な症状と鼻粘膜所見で臨床的にARと診断し早期治療開始・皮膚テストに際し各種薬剤の中止期間を提示【第5章 治療】・各治療薬の作用機序図、免疫療法の作用機序図、スギ舌下免疫療法(SLIT)の効果を追加〔改訂第10版の目次〕第1章 定義・分類第2章 疫学第3章 発症のメカニズム第4章 検査・診断第5章 治療・Clinical Question & Answer(1)重症季節性アレルギー性鼻炎の症状改善に抗IgE抗体製剤は有効か(2)アレルギー性鼻炎患者に点鼻用血管収縮薬は鼻噴霧用ステロイド薬と併用すると有効か(3)抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎のくしゃみ・鼻漏・鼻閉の症状に有効か(4)抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランジンD2(PGD2)・トロンボキサンA2(TXA2薬)はアレルギー性鼻炎の鼻閉に有効か(5)漢方薬はアレルギー性鼻炎に有効か(6)アレルギー性鼻炎に対する複数の治療薬の併用は有効か(7)スギ花粉症に対して花粉飛散前からの治療は有効か(8)アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法の効果は持続するか(9)小児アレルギー性鼻炎に対するSLITは有効か(10)妊婦におけるアレルゲン免疫療法は安全か(11)職業性アレルギー性鼻炎の診断に血清特異的IgE検査は有用か(12)アレルギー性鼻炎の症状改善にプロバイオティクスは有効か第6章 その他Web版エビデンス集ほかのご紹介

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新たなリスクスコアで若年層の大腸がんリスクを予測できる?

 新たに開発された臨床的因子に基づくシンプルなリスクスコアが、進行性腫瘍(advanced neoplasia;AN)の発症リスクが高く、大腸内視鏡検査によるスクリーニングの開始が推奨される45歳未満の人の特定に有用な可能性のあることが明らかになった。ANとは、10mm以上の管状腺腫、または絨毛成分を含む腺腫(管状絨毛腺腫、絨毛腺腫など)、高度異型腺腫、10mm以上の鋸歯状病変、異形成を伴う鋸歯状病変、鋸歯状腺腫、浸潤性腺がんを包括する概念である。米クリーブランドクリニックの消化器科医であるCarole Macaron氏らによるこの研究は、「Digestive Diseases and Sciences」に2月13日掲載された。 この研究は、2011年から2021年にかけて第3次医療機関で大腸内視鏡検査を受けた18〜44歳の成人9,446人(平均年齢36.8±5.4歳、女性61.0%)を対象にしたもの。Macaron氏らはまず、対象者を、ANが確認された症例群(346人)と、大腸に異常がないか非進行性腫瘍(NAN)のみが確認された対照群(9,100人)に分類した。その上で、4,723人をトレーニングセットとして抽出し、多変量ロジスティック回帰分析を用いてさまざまなリスク因子とANの関連を評価した。 ANと有意な関連を示す因子として、大腸がんの家族歴(第一度近親者、その他)、BMI、喫煙(元喫煙者、現喫煙者)が特定された。この解析結果を基に各リスク因子にポイントを割り振ったスコアモデル(1〜12点)を作成し、検証セットでも、ANと同様の有意な関連を示すかを検証した。その結果、モデルの予測精度は中程度であり、妥当性が確認された。最後に、全データセットにスコアを適用してAN検出率を推定したところ、1点の場合で1.8%、9点以上で14%超であり、スコアが高いほど検出率も上昇することが確認された。 研究グループは、「このリスクスコアに基づくことで、医師は45歳未満の成人の大腸がんやがん化する可能性のあるポリープを発症するリスクを推定できる。リスクがあると予測された人は、現在推奨されている年齢よりも早い段階で大腸がん検診を受け始めることができる」と述べている。 Macaron氏は、「現在、大腸がん発症に対するリスクが平均的な人の場合、検査を開始する推奨年齢は45歳だが、データによると、若年性大腸がんと診断された患者の約半数は45歳未満だ」と指摘する。その上で同氏は、「このリスクスコアは、45歳未満の患者に対するスクリーニング検査推奨の個別化に役立つ」と述べている。

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音楽療法で認知症患者の抑うつ症状が軽減、レビューで示唆

 音楽療法は認知症患者の気分を高め、抑うつ症状を和らげるのに役立つ可能性のあることが、新たなエビデンスレビューにより明らかになった。また、音楽療法により行動上の問題が改善する可能性のあることも示されたという。論文の筆頭著者である、ライデン大学(オランダ)医療センターのJenny van der Steen氏は、「この調査により、音楽療法の効果についての理解が深まり、特に、介護施設での認知症ケアに音楽を取り入れることの根拠が強まった」と述べている。この研究の詳細は、「Cochrane Database of Systematic Reviews」に3月7日掲載された。 この研究では、総計1,720人を対象に15カ国で実施された30件の研究データがレビューされた。このうち28件の研究データ(対象者1,366人)はメタアナリシスに用いられた。目的は、認知症患者に対する音楽療法が、感情的ウェルビーイング(生活の質〔QOL〕を含む)、感情障害や否定的な感情(抑うつ症状や不安など)、行動上の問題(全体的な行動上の問題や神経精神症状、特に興奮や攻撃性)、社会的行動、認知機能に与える影響を調べることだった。対象者のほとんどは介護施設に入所しており、個別またはグループでセラピーを受けていた。 その結果、5回以上のセッションから成る音楽療法ベースの介入は、通常のケアと比べて認知症患者の抑うつ症状をわずかに改善する可能性があり(標準化平均差−0.23、95%信頼区間−0.42〜−0.04、9件の研究、エビデンスの確実性は中)、行動上の問題を改善する可能性のあることが示唆された(同−0.31、−0.60〜−0.02、10件の研究、エビデンスの確実性は低)。一方で、音楽療法は興奮や攻撃性を改善しない可能性が高いことも示唆された(同−0.05、−0.27〜0.17、11件の研究、エビデンスの確実性は中)。さらに、感情的ウェルビーイング、不安、社会的行動、認知機能についても改善しない可能性が示唆された(いずれもエビデンスの確実性は低〜非常に低い)。しかし、他の治療法と比較すると、音楽療法は社会的行動を改善し(同0.52、0.08〜0.96、4件の研究、エビデンスの確実性は低)、不安を軽減する(同−0.75、−1.27〜−0.24、10件の研究、エビデンスの確実性は非常に低)可能性が示唆された。 Van der Steen氏は、「音楽療法は、他のグループ活動以上の効果があり、認知症の後期段階であっても魅力的で利用しやすい方法で気分や行動をサポートするのに役立つ」と述べている。同氏は、「介護施設の管理者は、認知症ケアに対するパーソンセンタード・アプローチの一環として、構造化された音楽セッションを組み込むことを検討すべきだ」と付け加えている。 共著者の1人である、アートEZ芸術大学(オランダ)のAnnemieke Vink氏は、「音楽療法は、薬を使わずに悲しみや不安を和らげる方法だ。われわれは、最近の研究の質の向上とエビデンスの蓄積により、音楽療法やその他の非薬物療法にさらなる注目が集まることを期待している。効果の大きさを見ると、音楽療法は薬物療法の代替手段として妥当であり、より患者中心的だ」と述べている。 ただし研究グループは、特に介護施設以外の地域社会での音楽療法の長期的な効果については、さらなる研究が必要だとしている。

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TIA後の脳卒中リスクは長期間持続する(解説:内山真一郎氏)

 本研究は、38件の研究に登録された17万1,068例のTIAまたは軽症脳梗塞(大多数はTIA)のメタ解析である。脳卒中の再発リスクは最初の1年で5.9%、5年で12.5%、10年で19.8%であり、2年後からは毎年1.8%再発していた。われわれの行ったTIA registry.org研究でも、発症後2年後から5年後まで累積再発曲線は減衰することなく直線的に推移し、ブレーキがかかっていなかった(Amarenco P, et al. N Engl J Med. 2018;378:2182-2190.、本論文の引用文献14)。 このメタ解析やわれわれの研究結果は、現行のガイドラインによる長期の再発予防対策が不十分であることを示唆している。抗血栓療法のアドヒアランスを維持するとともに、脳卒中の危険因子の管理が十分であったかも見直す必要がある。さらに、高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙、心房細動のような伝統的危険因子以外の残余リスクがないかにも目を光らす必要がある(Uchiyama S, et al. Eur Stroke J. 2024 Nov 21. [Epub ahead of print])。

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第237回 百日咳が流行、全国で累計4,100人に、速やかにワクチン接種を/厚労省

<先週の動き> 1.百日咳が流行、全国で累計4,100人に、速やかにワクチン接種を/厚労省 2.救急受診の判断に生成AIの活用、一般人の利用には誤解リスクあり/救急医学会 3.マイナンバー利用率26%に停滞、マイナ保険証“スマホ対応”化へ/厚労省 4.「日本版CDC」始動、感染症対応の司令塔・JIHSが発足/政府 5.医療費約4,336億円を削減へ、第4期医療費適正化計画が始動/厚労省 6.検査ビジネスに警鐘、疾患リスク通知は医師のみ可/厚労省・経産省 1.百日咳が流行、全国で累計4,100人に、速やかにワクチン接種を/厚労省2025年に入り、百日咳の患者報告数が急増している。国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所などが統合)によると、3月23日までの1週間で全国から458人の患者が報告され、今年の累計は4,100人に達した。これは前年(2024年)の年間累計4,054人をすでに上回っている。都道府県別では、大阪府336人、東京都299人、新潟県258人、沖縄県252人、兵庫県233人の順で多く、都市部および一部地域での患者増加が顕著である。百日咳は主に小児の間で感染が拡大し、生後6ヵ月未満の乳児では無呼吸発作、肺炎、脳症など重篤な合併症を引き起こす可能性が高い。背景には、新型コロナウイルス感染症流行下での感染対策により百日咳の発生が抑えられていたことで、集団免疫が低下した可能性が指摘されている。また、患者の増加に伴い、従来のマクロライド系抗菌薬に対する耐性菌の報告も複数の地域で確認されており、日本小児科学会は注意喚起を行っている。耐性菌感染例では、標準的な治療にもかかわらず感染拡大リスクが残るため、治療薬の選択については感染症に詳しい小児科医との連携が推奨される。現行の定期予防接種には百日咳成分を含む四種混合ワクチン(DPT-IPV)があり、生後2ヵ月から接種ができる。厚生労働省および専門家は、生後2ヵ月を迎えた段階での速やかな接種を呼びかけており、とくに乳児家庭では感染拡大防止の観点からも接種率の向上が重要とされている。 参考 1) 「百日ぜき」急増 今年すでに4,100人、去年の患者数上回る(毎日新聞 ) 2) 百日せき ことしの累計患者数が4,100人に 去年1年間を上回る(NHK) 3) 百日せき「耐性菌」各地で報告 “速やかにワクチン接種を”(同) 4) 百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について (小児科学会) 2.救急受診の判断に生成AIの活用、一般人の利用には誤解リスクあり/救急医学会日本救急医学会は、対話型AI「ChatGPT」による救急受診のアドバイスについて、「一般利用者が正確に理解できない可能性がある」とする研究結果を公表した。研究では、総務省消防庁の救急受診ガイドを基に466の症例(うち314例は緊急度が高い)をAIに判断させ、その回答を救急専門医7人と一般人157人が評価した。専門医の評価では、AIの回答は重症例で97%、軽症例で89%の精度で適切な判断をしているとされた。しかし、一般人は、同じ回答をみても重症例で「救急受診が必要」と解釈できたのは43%、軽症例で「不要」と判断できたのは32%に止まった。これはAIの助言が正確であっても、専門用語の受け取り方や伝わり方にズレが生じている可能性が指摘されている。さらに、AIの助言に「信頼して従った」とする人は全体の約半数に止まり、逆に不安が増したと答えた人も約13%存在した。研究を主導した東京慈恵医科大学の田上 隆教授は「AIの判断精度は高いが、解釈の誤りによる危険があるため、過度な依存は避けるべき」と述べている。学会は、体調に不安がある場合はAIだけに頼らず、医療者に相談し、わかりやすく説明を受けることの重要性を強調している。また、AIが正しく使われるためには、表現の工夫や専門家のサポートが不可欠であり、とくに緊急時には人との連携が不可欠だとしている。 参考 1) 救急受診すべきか「チャットGPT」助言、利用者が解釈誤る恐れ…「過度な依存避けるべき」(読売新聞) 2) 生成AIによる救急外来受診の推奨に関する妥当性研究-生成AIの回答に対する専門家と非医療従事者の解釈の差が明らかに-(日本救急医学会) 3.マイナンバー利用率26%に停滞、マイナ保険証“スマホ対応”化へ/厚労省厚生労働省は4月3日に社会保障審議会の医療保険部会を開き、マイナ保険証のスマホ搭載のスケジュール案を示した。部会では、マイナンバーカードに保険証機能を搭載した「マイナ保険証」をスマートフォンで利用できるようにして、2025年9月頃から希望する医療機関から順次導入を開始する方針を示した。まず、同年6~7月に全国10ヵ所程度の医療機関や薬局で実証事業を実施し、スマホでの操作性や資格確認のエラーなどを検証。問題がなければ、9月から環境の整った医療機関で本格運用を始める。スマホ保険証により、患者はマイナンバーカードを持参しなくても診療を受けられるようになるが、導入は医療機関ごとの任意対応であり、全施設への義務付けは行われない。そのため、スマホ対応していない医療機関も存在し、初めて受診する際にはマイナ保険証や資格確認書の持参が推奨される。マイナ保険証の全国利用率は2025年2月時点で26.6%と依然として低迷しており、政府は利用促進策の一環として、医療機関の診察券とマイナンバーカードの一体化、外付けリーダー導入への補助、顔認証付きカードリーダーの改善などを進めている。救急現場での活用を目指す「マイナ救急」や訪問看護ステーションへのオンライン資格確認導入も併せて推進している。また、後期高齢者医療制度の対象者には、スマホ対応やマイナ保険証の有無にかかわらず、2026年7月まで有効な「資格確認書」を交付し、受診機会の確保を図る。現役世代を中心にスマホ対応の需要は高く、今後の普及とシステム整備に向けた国の支援と広報強化が求められている。 参考 1) マイナ保険証の利用促進等について(厚労省) 2) 「マイナ保険証」機能搭載のスマホでの受診 9月ごろから導入へ(NHK) 3) “スマホ保険証”9月ごろから順次運用開始へ マイナ保険証の利用底上げ策 厚労省(CB news) 4) マイナ保険証、利用率26%に(日経新聞) 5) スマートフォンへマイナ保険証機能を搭載、2025年夏頃から対応済医療機関で「スマホ保険証受診」可能に-社保審・医療保険部会(Gem Med) 4.「日本版CDC」始動、感染症対応の司令塔・JIHSが発足/政府2025年4月1日、感染症危機に備える新たな専門組織「国立健康危機管理研究機構」(JIHS:Japan Institute for Health Security)が発足した。国立感染症研究所(感染研)と国立国際医療研究センター(NCGM)の統合により設立され、感染症をはじめとする健康危機への科学的かつ実践的な対応を一元的に担う。米国のCDC(疾病対策センター)をモデルにした「日本版CDC」として、初動対応の迅速化、研究と臨床の連携強化、情報発信の向上を目指す。JIHSでは、新型コロナウイルス流行時の教訓を踏まえ、感染症の調査・分析、ワクチン・治療薬の開発、診療支援体制の構築を平時から推進。有事の際には、病原体の特徴や患者情報の早期把握、リスク評価を政府に助言する。また、災害派遣医療チーム(DMAT)の事務局も機構内に設置され、現場対応力の強化が図られる。初代理事長にはNCGM前理事長の國土 典宏氏、副理事長には感染研前所長の脇田 隆字氏が就任。厚生労働省や内閣感染症危機管理統括庁と連携し、政策決定に科学的知見を提供する。福岡 資麿厚生労働大臣は「感染症危機管理体制の強化を着実に進める」と述べている。政府はJIHSに対し、6年間の中期目標として「初動対応の迅速化」「研究開発の強化」「有事の臨床機能の整備」「人材育成と国際連携」の4項目を掲げ、国民への平時からの情報発信にも取り組み、次なるパンデミックに向けた備えを社会全体で推進していく方針。4日には東京都内で設立記念式典が開催され、政府関係者や医療機関が参加。國土理事長は「科学と実践を融合し、次の健康危機にも即応できる体制を構築する」と意気込みを語っている。 参考 1) 国立健康機器管理研究機構 2) 日本版CDCが1日発足 感染研と国際医療センターを統合(時事通信) 3) 健康危機に備え新機構発足 略称は「JIHS」 有事の対応能力強化(産経新聞) 4) 健康危機に備え新機構「JIHS」発足 有事対応強化(日経新聞) 5.医療費約4,336億円を削減へ、第4期医療費適正化計画が始動/厚労省厚生労働省は、4月3日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会で、第3期全国医療費適正化計画(2018~2023年度)の実績を報告した。後発医薬品の数量シェアは全国平均81.2%と目標を達成した一方、特定健診・保健指導の実施率(58.1%・26.5%)およびメタボ該当者の削減率(16.1%)は未達となった。医療費は推計49.7兆円に対し、実績48.0兆円と1.7兆円削減されたが、新型コロナによる受診抑制の影響も含まれていた。新たに実施される第4期全国医療費適正化計画(2024~2029年度)では、医療費を全国で約4,336億円削減する方針であり、主な施策として、後発薬・バイオシミラー使用の促進(約2,186億円)、多剤・重複投薬の適正化(約976億円)、効果が乏しい医療(風邪や急性下痢への抗菌薬処方など)の見直し(約270億円)、白内障手術や化学療法の外来移行(約106億円)などが挙げられている。この他、特定健診・保健指導推進による効果は約120億円、生活習慣病重症化予防で約678億円を見込む。加えて、医薬品の使用標準化を進める「地域フォーミュラリ」の導入も検討されている。第4期ではコロナの影響が少ないため、施策の効果がより明確に評価される見込み。また、医療費上限を定める「高額療養費制度」の見直し議論は2025年秋に持ち越された。医療費増加に直面する中、制度の持続可能性と公平性の両立が課題となっている。 参考 1) 第3期医療費適正化計画の実績評価及び第4期全国医療費適正化計画について(厚労省) 2) 後発薬数量シェア81.2%、3期計画 目標達成 メタボ健診は未達(CB news) 3) 2024-29年度の第4期医療費適正化計画、全国で約4,336億円の医療費適正化効果を見込んでいる-社保審・医療保険部会(Gem Med) 6.検査ビジネスに警鐘、疾患リスク通知は医師のみ可/厚労省・経産省民間企業による唾液・尿などを用いた疾患リスク判定サービス(いわゆるDTC検査)の拡大を受け、厚生労働省と経済産業省は、「無資格者が個人に疾患の罹患可能性を通知することは医師法違反に当たる」との見解を、3月28日付の事務連絡として都道府県に通知した。DTC(Direct to Consumer)検査は、消費者と事業者が直接検体や検査結果をやりとりする仕組みで、近年は遺伝子解析を用いたものも多く、市場拡大が進んでいる。一方で、サービスの品質や信頼性には課題があり、医療行為との境界線が不明確との指摘もあった。今回の通知では、無資格の民間事業者は医学的判断を下すことができないため、検査後のサービスは一般的な測定結果や基準値、測定項目に関する一般的情報の提供に止めるべきとされている。疾患リスクや罹患可能性に関する通知は、医師法に抵触する恐れがあり、今後の規制強化も視野に入る。通知は、医療・介護分野と関連する「健康寿命延伸産業」の事業活動指針の改定に伴い出されたもので、DTC検査を提供する事業者への影響が注目される。 参考 1) 健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン(厚労省・経産省) 2) 医師資格ない検査ビジネス、疾患リスク通知は「違法」 厚労省と経産省が事務連絡(産経新聞) 3) 疾患リスク通知は「違法」 検査ビジネスで事務連絡(東京新聞)

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線形回帰(重回帰)分析 その4【「実践的」臨床研究入門】第53回

重回帰分析の実際前回は重回帰分析の考え方を説明しました。今回は実際に仮想データ・セットを用いて、EZR(Eazy R)を使用した重回帰分析の操作手順と結果の解釈について解説します。仮想データ・セットの取り込み仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。まずは以下の手順で仮想データ・セットをEZRに取り込みましょう。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」重回帰分析の実行次に「統計解析」→「連続変数の解析」→「線形回帰(単回帰、重回帰)」の順にメニューバーを選択すると、ポップアップウィンドウが開きます(下図)。モデル名:「重回帰分析_GFR変化量」などと入力します。目的変数(1つ選択):「diff_eGFR5」を選択します。※「diff_eGFR5」は、われわれのResearch Question(RQ)のセカンダリアウトカム(O)に設定されている、ベースラインから5年後の糸球体濾過量(GFR)変化量(低下速度)(連載第49回参照)。説明変数(1つ以上選択):以下の複数の変数を選択します(連載第46回、第48回、第49回、第52回参照)。※複数の変数を選択するには、キーボードの「Ctrl」キーを押しながらクリックします。検証したい要因(E):treat(厳格低たんぱく食の遵守の有無)交絡因子:age (年齢)、sex(性別)、dm(糖尿病の有無)、sbp(血圧)、eGFR(ベースラインeGFR)、Loge_UP(蛋白尿定量_対数変換)、albumin(血清アルブミン値)、hemoglobin(ヘモグロビン値)重回帰分析結果の確認「OK」をクリックすると、EZRの出力ウィンドウに下に示したコードが表示されます。lm(diff_eGFR5~age+albumin+dm+eGFR+hemoglobin+Loge_UP+sbp+sex+treat, da-ta=Dataset)このコードの意味は下記のとおりです(連載第52回参照)。lm:線形回帰モデル(Linear Model)関数を用いて重回帰分析を実行。diff_eGFR5~age+albumin+dm+eGFR+hemoglobin+Loge_UP+sbp+sex+treat:左辺の目的変数(diff_eGFR5)を右辺の説明変数(複数の交絡因子+E)で予測する重回帰モデルの「式」を指定。data=Dataset:解析に使用するデータ・セット名(Dataset)。重回帰分析の主要な結果である、回帰係数とその統計量は下図のように表示されます。画像を拡大するここでは、検証したい要因(E)であるtreat(厳格低たんぱく食の遵守の有無)の解析結果に注目します。回帰係数推定値:2.03(以下、数値はすべて有効数字3桁で丸めています)。95%信頼区間(95% confidence interval:95%CI):1.61~2.45P値:2.99e-20=2.99×10-20(連載第51回参照)※p値は通常、小数点以下3桁までの記載が推奨されます。非常に小さな値の場合、「p<0.001」と上限を示す形で表記するのが一般的です(連載第51回参照)。重回帰分析結果の解釈この結果の解釈は以下の通りです。厳格低たんぱく食遵守群(treat=1)は非遵守群(treat=0)と比較して、「diff_eGFR5」が統計学的有意(p<0.001)に2.03mL/分/1.73m2高い。したがって、厳格な低たんぱく食の遵守は、種々の交絡因子を調整したうえでもGFR低下速度を抑制する可能性を示唆する。という解釈になります。

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英語で「気胸」、患者さんに通じないときの言い換えは?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第12回

医学用語紹介:気胸 pneumothorax患者さんに説明する際に、「気胸」を意味する専門用語であるpneumothoraxという言葉が通じなかった場合、どのような一般用語で言い換えればよいでしょうか?講師紹介

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