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集中治療室(ICU)入室中の重症患者にタンパク質含有量の高い経腸栄養剤(100g/L)を用いても、通常(63g/L)と比較して90日時点の生存期間などは改善されなかった。オーストラリア・アデレード大学のMatthew J. Summers氏らが、同国およびニュージーランドの8施設のICUにて実施したクラスター無作為化非盲検クロスオーバー試験の結果を報告した。ガイドラインでは、重症患者におけるタンパク質含有量の高い経腸栄養が推奨されているが、患者のアウトカムに及ぼす影響は不明であった。JAMA誌オンライン版2025年6月11日号掲載の報告。タンパク質含有量100g/L vs.63g/Lを比較 研究グループは、経腸栄養におけるタンパク質強化が、生存日数と入院回避期間の延長に結び付くかを検証する目的で、4施設が2022年5月23日より、4施設が2023年8月23日よりそれぞれ12ヵ月間患者を募集し、2023年11月21日に最終追跡調査を行った。 対象患者は16歳以上で、ICUに入室し経腸栄養剤を処方された患者、または入院中にICUに入室し初めて経腸栄養剤を処方された患者とした。 各ICUは、12ヵ月間にわたり3ヵ月ごとに、タンパク質含有量の高い経腸栄養剤(タンパク質100g/L)(タンパク質強化群)→通常の経腸栄養剤(タンパク質63g/L)(通常群)を交互に、またはその逆の順で交互に治療を提供するよう、無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、90日時点の対象病院への非入院生存期間、副次アウトカムは90日時点の生存者における対象病院への非入院日数、90日時点での生存率、侵襲的人工呼吸を受けた患者における侵襲的人工呼吸期間、ICU入室期間および入院期間(生存退院までの期間)、気管切開・挿管および新規腎代替療法の実施率、ならびに退院先であった。主要評価項目に差はなし 計3,397例が登録された。年齢中央値は61歳(四分位範囲[IQR]:48~71)、男性が2,157例(64%)であった。 90日時点の対象病院への非入院生存期間中央値(IQR)は、タンパク質強化群で62日(0~77)、通常群で64日(0~77)であり、補正後の群間差の中央値は-1.97日(95%信頼区間[CI]:-7.24~3.30)であった(p=0.46)。 90日時点で、タンパク質強化群では1,681例中1,221例(72.6%)が生存し、通常群では1,716例中1,269例(74.0%)が生存していた(リスク比:0.99、95%CI:0.95~1.03)。 副次アウトカムに関する群間差は、生存者における非入院日数中央値の差が0.01日(95%CI:-1.94~1.96)、平均侵襲的人工呼吸期間の差が6.8時間(95%CI:-3.0~16.5)であった。また、ICU生存退室までの期間のハザード比は0.93(95%CI:0.88~1.00)、生存退院までの期間については0.96(0.90~1.02)、気管切開術のリスク比は1.15(0.66~2.01)、新規腎代替療法のリスク比は0.97(95%CI:0.81~1.16)であり、退院先は両群で類似していた。