サイト内検索|page:11

検索結果 合計:36020件 表示位置:201 - 220

201.

神経疾患外来で患者と医師に“認識ギャップ”、機械学習モデルが予測可能性示す

 神経疾患の外来診療では、患者と医師の評価や満足度に小さなズレが生じることがある。この認識ギャップは、治療理解の不十分さや信頼関係の低下を通じて、生活の質や長期的な治療アウトカムに影響し得る。今回、パーキンソン病、多発性硬化症、てんかんの患者と医師のペアを対象にアンケートを実施し、認識ギャップを定量化するとともに、機械学習モデルでギャップを予測できることを明らかにした。研究は、順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科の大山彦光氏(現:埼玉医科大学医学部脳神経内科)、富沢雄二氏、服部信孝氏らによるもので、詳細は2月9日付で「Scientific Reports」に掲載された。 パーキンソン病、多発性硬化症、てんかんなどの神経疾患は慢性かつ症状が多様で、進行に伴い日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす。近年は共同意思決定(SDM)の重要性が強調されているが、診察時の限られた情報に基づく判断では、患者と医師の間で疾患認識や治療目標に認識ギャップが生じる可能性がある。実際、神経疾患領域でも症状の重要度や治療目標、再発評価などを巡るズレが報告されているが、患者と主治医のペアで直接比較した研究は限られている。さらに、こうした認識ギャップを予測する試みも十分ではない。そこで本研究(GAP-AI研究)は、神経疾患患者と主治医の間の認識ギャップを定量化し、その関連因子を検討するとともに、機械学習モデルによる予測可能性を評価することを目的とした。 本研究は単施設の観察研究であり、患者197人とその主治医12人を対象に、2回の外来受診時に質問票への回答を求めた。質問票には、患者満足度を評価する18項目のPatient Satisfaction Questionnaire Short Formや、患者と医師双方が回答する9項目のShared Decision Making Questionnaire、Barthel Index、SF-36の各下位尺度を用いた。主要評価項目は、患者と医師の回答を項目ごとに対応させて算出した差(すなわち認識ギャップ)とした。差は絶対値でも評価し、ギャップの大きさを中央値で「一致群」と「不一致群」に分類した。患者背景および医師の年齢・経験年数などの属性との関連を単変量解析で検討し、さらに重回帰分析により認識ギャップに影響する独立因子を同定した。 本研究は2023年1~8月に実施された。患者の平均年齢は58.1歳で、女性が60.4%を占めた。疾患はパーキンソン病が最多(69.5%)で、多発性硬化症、てんかんが続き、平均罹病期間は7.4年であった。多くは同居者がおり、介護を要しない軽~中等症例が中心であった。一方、医師の半数は35~44歳で、83.3%が男性であった。4割超が20年以上の経験を有し、多くがパーキンソン病を専門とする神経内科専門医であった。 患者と医師の回答には各質問票で一定の認識ギャップが認められ、総得点は有意に異なり、一致度(κ係数)は全体に低値であった。SF-36下位尺度の一致は19.3%にとどまった。ギャップには患者年齢、診断名、介護者の有無、通院頻度、障害度などの患者側因子に加え、医師の年齢、経験年数、専門医資格、担当患者数などの医師側因子が関連していた。重回帰分析では患者年齢や介護者の有無、医師の経験年数などが独立因子として抽出され、一部疾患では年収も関連していた。 また、研究データに基づき複数の機械学習アルゴリズムを用いて予測モデルを構築したところ、k近傍法(k-nearest neighbors)アルゴリズムが、主要評価項目で定義した患者と医師の認識ギャップの有無を予測する上で最も良好な性能を示した。 著者らは、GAP-AI研究により神経疾患患者と医師の間に認識ギャップが存在することが明らかになったと述べている。ギャップは患者背景や医師の経験など複数の因子に影響され、機械学習により予測可能であるとしている。さらに、その把握と是正が患者中心医療の向上につながる可能性があると指摘している。 なお、本研究の限界として、単施設研究であり特にてんかん症例数が少ないことから一般化に制限がある点、主観的な患者報告アウトカムを用いたことや医師用に十分検証されていない質問票の使用が結果の解釈に影響し得る点などを挙げている。

202.

イプタコパンがIgA腎症の腎機能障害を有意に抑制(解説:浦信行氏)

 イプタコパンは補体代替経路の補体B因子の経口阻害薬であり、2025年2月のNEJM誌(Perkovic V, et al. N Engl J Med. 2025;392:531-543.)に9ヵ月時点での有意な蛋白尿減少効果が報告されている。今回は最終24ヵ月までの推算糸球体濾過率(eGFR)の変化度をプラセボ群と対比した。結果の概要はCareNet.comの2026年4月14日配信の記事に示されているが、イプタコパン群のeGFRの変化は-3.10mL/分/1.73m2/年とプラセボ群の-6.12mL/分/1.73m2/年に比較して腎機能障害進行の程度が半減していた。有害事象はやはり感染関係が多かったが、有害事象の発生率と重篤な有害事象の発生率に差はなかった。サブグループ解析では、年齢、性別、アジア人と非アジア人、尿蛋白の程度、eGFRの程度、血尿の有無、SGLT2阻害薬使用の有無で効果に差はなかった。わが国では発症が多いとされるIgA腎症であるが、効果は同様に期待でき、またSGLT2阻害薬使用下でも同様の効果があることから併用療法の有効性もあるものと考えられる。 近年はIgA腎症の病態の一端が徐々に明らかとなり、その病態の各段階に作用する薬剤の開発が盛んに行われ、多くの開発中の薬剤の尿蛋白低減効果が報告されている。しかし、長期の腎機能保護効果を報告するものは少なく、また長期とは言っても24ヵ月程度の成績である。現時点では腸管に限定的に作用するグルココルチコイドのブデソニドはやはり腎機能障害の程度は有意に半減したが、エンドセリンとアンジオテンシン両者の受容体阻害効果を示すsparsentanは減少の傾向にとどまった。その他の新規開発薬剤もこれから報告が相次ぐと思われるが、より長期の保護効果に関する成績や、組織的にも有意な改善があるかの検討も待たれる。なお、現時点での成績では腎機能障害の程度は半減しているが、それでも毎年eGFRが3mL/分減少するため末期腎不全までの進行は避けられない。この減少が1mL/分/1.73m2/年以内にとどまれば言うことはないのだが。

203.

動かない衛生委員会に産業医はどう関わるか?~権限なきファシリテーターとしての役割~【実践!産業医のしごと】

衛生委員会とは、労働安全衛生法に基づき、職場の健康障害・安全対策を労使で調査・審議する機関です。常時50人以上の労働者を使用する事業場で設置が義務付けられており、産業医が所属する企業であればほぼ必ず設置されています。この衛生委員会、形だけはきちんと回っていることが多いものです。毎月開催され、出席者もそろい、資料も配られる。健診受診率、長時間労働者数、巡視報告が順番に読み上げられ、最後に「何かございますか」との問いに何の質問も出ずに終わる。法令上の体裁は整っていますが、委員会を経て職場が良くなったという実感は誰もが持てないことが多い。産業医も、この「流れ」に乗りがちです。季節ごとの健康講話を数分行い、意見を求められれば無難にコメントをして終わる。嘱託産業医であれば月に一度の訪問で、衛生委員会に出るだけが仕事になることも珍しくありません。漫然と過ごせばすぐに終わってしまう時間ですが、それで職場が良くなるかといえば心もとないのが実情です。企業の出席者側にも事情があります。委員会での発言がそのまま自分の仕事に跳ね返ることがあります。ある部署の負荷に踏み込めば部署との調整が必要になり、設備の不備を指摘すれば予算の話になる。そうした調整に時間を割いても、自身の業績評価には反映されないことが大半です。誰しも職場を良くしたい気持ちがないわけではありませんが、面倒を引き受ける動機付けが弱いのです。衛生委員会が形骸化するのは、議題が足りないだけではなく、議題に踏み込んだときのコストを誰も引き受けたがらないためなのです。では、産業医に何ができるのでしょうか。産業医にできるのは、問いを通じて議論の向きを変えること産業医として、衛生委員会で医学的に正しいことを述べるのは当然ですが、正しいことを言うだけでは会議は動きません。「過重労働には注意が必要です」「職場環境の改善が大切です」……。誰も反対しませんが、誰も自分の問題として受け止めてもいません。産業医は衛生委員会の必須の参加者ですが、人事や予算の権限はありません。だからこそ、できるのは、参加者に自分たちの職場の問題を考えてもらうための「問い」を投げ掛けることです。「過重労働対策は実施していますか?」と聞けば、「はい」で終わります。しかし、「先月80時間超の方が3名いて、いずれも同じ課ですが、業務の偏りは課内で把握されていますか?」と問えば、話の向きが変わります。「職場環境に問題はありませんか?」ではなく、「巡視の時、あの現場は午後かなり室温が上がっていましたが、熱中症はどのように対策していますか?」と尋ねれば、議論は一般論からその職場の現実に移ります。月に一度の訪問でそんな問いが立てられるのか、と思われるかもしれません。しかし、限られた訪問だからこそ、巡視で目にした光景、面談で繰り返し出てくる訴え、健診事後措置で感じた違和感は印象に残ります。「これは個人の問題ではなく、職場の仕組みの問題ではないか」と感じたものをメモしておけば、委員会で投げ掛ける問いの材料になります。ただし、問いを立てても「いい指摘ですね、今後検討します」で終わってしまったら、一般論を述べたのと変わりません。空調の話であれば、判断するのは総務か施設管理か。長時間労働の偏りであれば、課長レベルで見直せるのか部長判断が要るのか。委員会の出席者の中でその話を引き取れる人は誰か。そこまで見えたうえで問いを投げ掛ければ、「では次回までに確認します」という、変化の動きが生まれやすくなります。小さな動きの積み重ねが、委員会を変えるこうして生まれる変化は、いずれも小さな一歩です。巡視で指摘した点が次回までに確認される。心の健康づくり計画の策定が始まる。熱中症発生時の連絡経路が見直される。どれも一つひとつは大きな変化ではありません。しかし、こうした動きが積み重なることで、委員会の位置付けは少しずつ変わっていきます。報告を聞いて終わる場ではなく、報告を基に考え、次の対応につなげる場へと変わっていくのです。職場の課題について、担当者が事前に現場の状況を確認したうえで委員会に臨むようになれば、議論の質もおのずと高まります。産業医が問いを投げ掛け、委員会で考え、担当者が持ち帰って次回に報告する。そうした小さなサイクルが回り始めれば、委員会はもはや形だけの場ではなくなっていくはずです。産業医だからこそできるのは、現場で拾った問いを、届くべき相手に届く形で投げ掛けることです。地味な作業ではありますが、それがあるかないかで、衛生委員会の雰囲気も、果たす役割も、かなり違ったものになるのではないでしょうか。

204.

添付文書改訂:抗てんかん薬の運転の一律禁止が変更/セリチニブとCYP3A基質薬剤が併用禁忌に ほか【最新!DI情報】第61回

抗てんかん薬<対象薬剤>抗てんかん薬であるカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、ラコサミド、レベチラセタムを有効成分とする医薬品<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]重要な基本的注意自動車の運転等危険を伴う機械操作の適否は、関連学会の留意事項を十分理解の上、医師が慎重に判断し、危険を伴う機械操作を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること。また、眠気等があらわれた場合には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に指導すること。<ここがポイント!>対象の抗てんかん薬は、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下といった中枢神経系に影響を与える副作用を起こすことがあるため、従来の添付文書では「重要な基本的注意」の項において、薬剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する旨が記載されていました。しかし、道路交通法では、てんかんのある患者の自動車運転を一律に禁止しているわけではありません。運転免許の取得・更新は、一定の条件を満たせば医師の診断書をもとに公安委員会が判断する仕組みとなっており、実際に多くの患者が医師の管理下で安全に運転を継続しています。今回の改訂により、薬剤投与中であっても一律に自動車運転等を禁止するのではなく、医師が関連学会の留意事項※に基づき、個別の患者の病状、服薬順守状況、副作用の有無等を総合的に評価し、自動車運転等の適否を判断できることが添付文書上で明確化されました。これは、患者の社会生活の質(QOL)向上と安全性の確保を両立させるための重要な改訂といえます。なお、対象の抗てんかん薬5剤には欧州および米国の添付文書においても、薬剤服用中の自動車運転等を一律に禁止する記載はなく、今回の改訂は国際的な動向とも合致しています。※抗てんかん発作薬を服用しているてんかんのある人において、自動車運転や危険を伴う機械操作を行う際の留意事項(2026年3月17日)CYP3A基質薬剤<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、イブルチニブ、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、キニジン硫酸塩水和物、シンバスタチン、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、チカグレロル、トリアゾラム、バルデナフィル塩酸塩水和物、フィネレノン、ブロナンセリン、マシテンタン・タダラフィル、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ルラシドン塩酸塩、ロミタピドメシル酸塩<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「セリチニブ」を追記<ここがポイント!>セリチニブは強力なCYP3A阻害作用を有するため、CYP3A基質薬剤との併用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現リスクが増大する可能性があります。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、セリチニブとCYP3A基質薬剤の併用を禁忌とするものです。対象となる20成分には、降圧薬、抗不整脈薬、睡眠薬、抗精神病薬、脂質異常症治療薬など、日常診療で頻用される薬剤が多く含まれており、処方監査時には十分な注意が必要となります。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、セリチニブの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1 併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様に上記薬剤が追記されました。これにより、双方向での併用禁忌が明確化され、より安全な薬物治療の実施が期待されます。アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「クラリスロマイシン」を追記<ここがポイント!>生理学的薬物速度論モデルの解析により、アゼルニジピンとクラリスロマイシン400mgまたは800mgを併用した場合、アゼルニジピンのAUCが約3.4倍または5.4倍に増加することが予測され、副作用の発現が懸念されます。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、クラリスロマイシンとアゼルニジピンの併用を禁忌とするものです。アゼルニジピンはCYP3A4で代謝される薬剤であり、CYP3A4阻害薬であるクラリスロマイシンとの併用により、血中濃度の上昇が生じ、過度の血圧低下、めまい、ふらつきなどの副作用リスクが高まることが想定されます。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシンの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様にアゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピンが追記されました。とくにヘリコバクター・ピロリ除菌療法においてクラリスロマイシンを含む3剤併用療法を行う際には、患者の降圧薬の確認が重要となります。タクロリムス<対象薬剤>タクロリムス水和物(商品名:プログラフカプセル0.5mg/1mg/5mg、同顆粒0.2mg/1mg、同注射液2mg/5mg、グラセプターカプセル0.5mg/1mg/5mg(アステラス製薬株式会社)等)<改訂年月>2026年3月<改訂項目> [追加]妊婦 海外で実施された、Transplant Pregnancy Registry Internationalのデータベースから利用可能な2,905件の肝移植および腎移植患者の妊娠事例に関するコホート研究において、前向きに調査された症例について以下の結果が報告されている。 大奇形が認められた症例は、本剤曝露群では6/297例(2.0%)、本剤非曝露群注1)では1/53例(1.9%)であった注2)。 小奇形が認められた症例は、本剤曝露群では12/297例(4.0%)、本剤非曝露群では認められなかった注2)。 自然流産が認められた症例は、本剤曝露群では33/335例(9.9%)、本剤非曝露群では3/56例(5.4%)であった注2)。 腎移植患者において、子癇前症が認められた症例は、本剤曝露群では84/226例(37.2%)、本剤非曝露群では7/37例(18.9%)であった。 早産児が認められた症例は、本剤曝露群では156/352例(44.3%)、本剤非曝露群では25/59例(42.4%)であった。 妊娠週数に対して児が正常な出生体重であった症例は、本剤曝露群では289/352例(82.1%)、本剤非曝露群では40/59例(67.8%)であった。 注1 アザチオプリン、シクロスポリン、エベロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾロン、シロリムスのいずれか1つ以上を含むレジメンによる治療を受けた患者 注2 妊娠の6週間前から出産までの間にミコフェノール酸モフェチルに曝露している患者を除外した解析結果 <ここがポイント!>臓器移植後の妊娠レジストリであるTransplant Pregnancy Registry International(TPRI)データを用いた本剤の児および母体への影響に関する海外疫学研究の結果は、臓器移植患者の妊娠という限定された集団に関する大規模な研究データであるため、本研究結果を添付文書に記載することは臨床上有用であると考えられます。このコホート研究では、2,905件という大規模な症例数を解析しており、タクロリムス曝露群と非曝露群での大奇形発生率に有意な差は認められませんでした(2.0%vs.1.9%)。一方で、小奇形、自然流産、子癇前症については本剤曝露群でやや高い傾向が示されています。とくに腎移植患者における子癇前症の発生率は本剤曝露群で37.2%と高く、慎重な周産期管理が必要となることが示唆されます。このことから、今回の改訂で「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.5 妊婦」の項に海外疫学研究の結果を追記することになりました。本データは、移植後妊娠を希望する患者への説明や、妊娠中の管理方針決定において重要な情報となります。

205.

若い女性の膀胱炎治療【日常診療アップグレード】第54回

若い女性の膀胱炎治療問題26歳女性。3日前からの頻尿と残尿感、排尿時痛を訴え来院した。発熱や悪寒、腰痛、帯下の増加はない。決まったパートナーが1人いる。6ヵ月前と2ヵ月前に2回の尿路感染症を経験し、トリメトプリム・スルファメトキサゾールを服用した。性感染症の既往はない。バイタルサインは正常である。恥骨上部に軽度の圧痛がある。CVA叩打痛は認めない。尿検査(尿試験紙)では、尿中白血球と白血球エステラーゼ、亜硝酸塩が陽性である。尿培養は結果待ちである。トリメトプリム・スルファメトキサゾールを投与した。

207.

桂枝湯の派生処方 生薬の±で方剤を覚える【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第5回

桂枝湯の派生処方 生薬の±で方剤を覚える前回 、桂枝湯(けいしとう)が麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)に比べて虚証向きの漢方薬で、お腹に優しいということを述べました。その理由としては、桂枝湯には麻黄(まおう)が含まれていないこと、代わりに芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)といった胃腸の調子を整える生薬が含まれていることが関係しているのでした(図1)。今回は、この話を芍薬、あるいは芍薬と甘草(かんぞう)のコンビに着目して掘り下げていこうと思います。図1 桂枝湯の構成生薬画像を拡大する桂枝湯±芍薬芍薬が入っている桂枝湯がお腹に優しいということは、芍薬を「もっと」増やすとお腹にも「もっと」優しくなりそうですよね。では、桂枝湯を芍薬マシマシにしてみましょう。すると、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)ができあがります。これは、過敏性腸症候群で腹痛と下痢に悩まされている患者に使うといい薬です。しかし、過敏性腸症候群は下痢型だけではありません。便秘型もありますよね。そうしたら、センノシドを含む生薬をブレンドすればいいのです。大黄(だいおう)という生薬がちょうどセンノシドを含むため、桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)を使えばいいという話になるわけです。逆に、桂枝湯から芍薬を抜いてくるとどうなるか。すると、桂枝去芍薬湯(けいしきょしゃくやくとう)という漢方薬になります。これは、お腹への優しさが減る代わりに、胸に優しくなります。感冒の患者の中には、肺炎や痰詰まりがなくても、胸が苦しいという方がたまにいらっしゃいますよね。そういった患者には、桂枝去芍薬湯が効いてきます。もっとも、桂枝去芍薬湯はエキス製剤がないので、実臨床で使うのにはハードルが高いという問題があります。桂枝去芍薬湯のニュアンスを丸ごと含む漢方薬としては、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)という漢方薬があって、これはちょうど「東洋の抗不整脈薬」に相当するもので、動悸・息切れに効く漢方薬なんですね。やはり胸に優しいという話になってくるわけです。ここまでを図2にまとめます。図2 桂枝湯±芍薬に派生する漢方薬画像を拡大する建中湯シリーズの派生いったん話題を戻して、桂枝加芍薬湯まで戻ってきましょう。漢方薬の味が苦手だという患者もいると思います。そのような場合は、桂枝加芍薬湯に水飴を加えてやると、子供にも飲みやすい漢方薬ができると思いませんか。そこで、桂枝加芍薬湯に水飴、厳密には膠飴(こうい)という生薬ですが、これを入れてしまいます。そうすると、なんと小建中湯(しょうけんちゅうとう)ができあがります。これは、虚弱体質の小児が体調不良になった時に使う薬です。体調不良でエネルギー不足なので、お腹に優しい漢方薬と飴から得られるエネルギーで消化管から体調をたて直そうというコンセプトの漢方薬です(図3)。図3 小建中湯への派生画像を拡大するさらにさらに! 小建中湯からいわゆる「建中湯」シリーズを派生させることができます。たとえば、小建中湯から飴を抜いて、補血作用のある当帰(とうき)を加えると、当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)になって、消化管だけでなく女性器由来の腹痛にも対応しやすくなります(図4)。図4 当帰建中湯への派生画像を拡大するまた、小建中湯に黄耆(おうぎ)というお肌を引き締めてくれる生薬を加えると、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)になって、虚弱体質の小児で寝汗がひどい場合や、アトピー性皮膚炎に悩まされている場合に対応できる漢方薬になります(図5)。図5 黄耆建中湯への派生画像を拡大する大建中湯(だいけんちゅうとう)は小建中湯と生薬の組み合わせが大きく異なるため(図6)、そこだけ注意していただきたいのですが、このように、生薬に着目することで建中湯シリーズを一気にたくさんインプットすることができるのです。この勉強法は知っておいて損はないかと思います。図6 小建中湯と大建中湯の構成生薬画像を拡大するまとめ桂枝湯は芍薬など胃腸を整える生薬が複数含まれていて、この部分を強化すると漢方薬の派生形を生み出すことができます。たとえば、胃腸を整える生薬のひとつとして芍薬がありますが、芍薬を桂枝湯に加えることで、いわゆる建中湯と呼ばれる漢方薬のグループを生み出すことができます。生薬を足し引きすることで、漢方薬を芋づる式にインプットする。これも漢方上達の近道だと個人的には考えています。次回は、小柴胡湯を取り上げ、感冒の初期段階が終わった後の漢方治療のお話をします。お楽しみに!

208.

第315回 キノコが作る抗酸化物質L-エルゴチオネインが生理痛を緩和

キノコ(真菌)が作る硫黄含有アミノ酸の類いのL-エルゴチオネイン(L-ergothioneine、以下「EGT」)が安全に女性の生理痛を和らげました1,2)。EGTは抗酸化作用を担うことで知られます。有機カチオン輸送体のOCTN1を介して細胞内に取り込まれ、蓄積し、フリーラジカルを捕らえてDNAやタンパク質が酸化で傷つかないようにする働きを有します。生理痛を引き起こす原発性月経困難症(PD)は若年女性に最も多い婦人科疾患で、骨盤に明らかな病変がないにもかかわらず月経の直前や最中に生じる下腹部痛を特徴とします。PDの有病率は高ければ9割を超え、患者の生きやすさ、学業、仕事の生産性を大きく損なわせます。子宮の過剰収縮、虚血、低酸素を招く子宮内膜プロスタグランジンの過剰生成がPDの根源とされ、それらの虚血が炎症反応と重度の酸化ストレスを招くようです。抗酸化物質の枯渇と並行して活性酸素種(ROS)や脂質過酸化指標が増えることは生理痛の重症度と密接に関連します。そこで中国の南京市のGene III Biotechnology社のGuohua Xiao氏らは抗酸化物質のEGTに白羽の矢を立て、その生理痛緩和効果を調べる臨床試験を実施しました。試験にはPDと診断済みで、先立つ1ヵ月間に鎮痛薬や漢方薬などのPD治療を試みたことがない18~30歳の女性40例が参加しました。半数の20例は120mgのEGTを3回の月経の間に毎日服用し、あとの半数の20例にはプラセボが与えられ、生理痛のピークの推移が視覚アナログ尺度(Visual Analog Scale:VAS)で測定されました。EGT投与群のVASはベースライン時に4.8で、その後の1、2、3回目の生理時にはそれぞれ4.1、3.6、2.3に有意に下がっていました。プラセボ群では有意なVAS低下は認められませんでした。EGTは細胞に蓄積することから投与を続けるほどより有効なようです。実際、3回目の生理のときのEGT投与のVAS低下はプラセボを有意に上回りました。今回の試験で血中の炎症バイオマーカーはEGT群とプラセボ群で差がありませんでした。炎症を減らしてプロスタグランジンの生成を阻止するイブプロフェンなどの昔ながらの鎮痛薬が今のところ生理痛の緩和に使うべきとされていますが、どうやらEGTはそれら鎮痛薬が手を出す馴染みの炎症経路とは独立した細胞保護経路を介して鎮痛効果を発揮するのかもしれません。EGTは全身の炎症反応の誘発に至るより前に細胞ストレス発生源のフリーラジカルを排除してしまうらしいとXiao氏は言っています2)。Xiao氏は多施設でのより大規模な試験を計画しています。今回の試験で有害事象は幸いにも認められませんでしたが、大規模試験を実施すればEGTの効果を支える仕組みのみならず、安全性もより正確に把握できそうです。Xiao氏が年初に報告した別の試験では、肝機能異常を示す被験者の肝機能、体調、睡眠の指標がEGTで改善しています3)。2024年に報告された無作為化試験では軽度認知障害の高齢者の記憶/学習能力を改善しうるEGTの効果が示されており4)、その取り柄は生理痛緩和にとどまらず幅広いようです。参考1)Guo C, et al. Efficacy and Safety of Oral L-Ergothioneine Supplementation in Primary Dysmenorrhea: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Clinical Trial. medRxiv. 2026 Mar 27.2)Antioxidant in mushrooms may target uterus cells to ease period pain / NewScientist3)Guo C, et al. Hepatoprotective Efficacy of GeneIII L-Ergothioneine Capsules: A Self-Controlled Clinical Trial. medRxiv. 2026 Jan 2.4)Yau YF, et al. J Alzheimers Dis. 2024;102:841-854.

209.

受診ごとのBMI変動、とくに女性で認知症リスクと関連

 これまでの研究では、認知症リスクを検討する際に、BMIのスロープや変動を別の概念として区別することは一般的ではなかった。東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らは、スロープ調整済み受診ごとのBMI変動と認知症リスクとの関連性を評価した。International Journal of Obesity誌オンライン版2026年3月13日号の報告。 5年間の年次健康診断を受けた50~74歳を対象に、日本の国民健康保険データ(2015~23年)を用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。BMI変動は、経時的な傾向を考慮するため、スロープ調整済み標準偏差(SD)を用いて評価した。抗認知症薬の投与開始を認知症の代理指標とし、死亡を競合リスクとして考慮したFine-Gray競合リスクモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・参加者30万3,042例(平均年齢:66.6歳、男性の割合:38.6%)を平均2.17±1.19年間フォローアップした結果、665例に抗認知症薬(主にドネペジル:67.4%)の投与が開始され、2,394例に死亡が認められた。・ベースライン時のBMIおよび年間BMI変化量を含む共変量を調整した後、スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群(0.50kg/m2以上)は、最低三分位群(0.31kg/m2以下)と比較して、認知症リスクの増加と有意な関連が認められた。・年間BMI変化量は、認知症リスクとU字型の関連を示し、とくに第1三分位群(BMI減少率が-0.31%以下)で顕著な上昇が認められた(ハザード比:1.60、95%信頼区間:1.32~1.93)。・ベースライン時のBMIを除くベースライン共変量を含む基本モデルでは、ベースライン時のBMIを追加した場合とスロープ調整済みBMI-SDを追加した場合で、C統計量の改善に有意な差は認められなかった(+0.0147 vs.+0.0146)。一方、BMI低下-0.31%以下を追加した場合、C統計量の改善が最大であった。・スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群と認知症リスクとの関連は、男性よりも女性のほうが強かった(p for interaction=0.0039)。 著者らは「スロープ調整済みBMIの変動は、とくに女性において認知症リスクと独立して関連しており、BMI低下パターンは認知症の強力なリスク因子であることが示唆された。ルーチンの認知症スクリーニングに、受診ごとのBMI変動の縦断的モニタリングを組み込むことは有益な可能性がある」と結論付けている。

210.

6割超が年収2,000万円以上を適正と回答したのは◯◯科/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。そのなかで、自身の年収額を妥当と感じるか尋ねたところ、60.2%(そう思う、ややそう思うの合計)が妥当と考えていた。また、自身の業務内容・仕事量に見合った適正年収を尋ねたところ、2,000万円以上と回答した割合は36.3%であった(実年収2,000万円以上は24.0%)。現在の年収、「妥当」と感じる医師は約6割 年収額の妥当性について、自身の年収額が妥当だと思うかという問いに対し「そう思う」が25.8%、「ややそう思う」が34.4%であり、合計すると60.2%となった。2016年もそれぞれ25.2%、36.4%で合計61.6%となり、大きな変化はみられなかった。年代が上がるほど年収の納得感が高い 年代別にみると、年代が上がるほど自身の年収を妥当と感じる割合が高くなる傾向がみられた。「そう思う」「ややそう思う」の割合は、35歳以下がそれぞれ20.5%、33.0%、合計53.5%であったのに対し、66歳以上はそれぞれ32.5%、40.5%、合計73.0%となった。大学病院勤務は年収の納得感が低い 勤務先別にみると、大学病院に勤務する医師は自身の年収を妥当と感じる割合が低い傾向がみられた。「そう思う」「ややそう思う」の割合は、一般診療所がそれぞれ33.9%、33.9%、合計67.8%と最も高かった。一方、大学病院はそれぞれ15.8%、28.3%、合計44.1%と低かった。診療科別の年収の納得感の傾向は? 「そう思う」「ややそう思う」と回答した医師の割合が70%以上、50%以下であった診療科は以下のとおりであった(30人以上の回答が得られた診療科を抽出)。<70%以上>・糖尿病・代謝・内分泌科(31人):74.2%(35.5%、38.7%)・呼吸器内科(34人):70.6%(32.4%、38.2%)<50%以下>・消化器外科(34人):29.4%(5.9%、23.5%)・小児科(52人):50.0%(19.2%、30.8%)適正年収2,000万円以上は36.3% 自身の業務内容・仕事量に見合った適正年収について尋ねた結果、「2,000万~2,500万円」が16.1%、「2,500万~3,000万円」が7.8%、「3,000万円以上」が12.4%で合計すると36.3%となった。2016年もそれぞれ17.1%、6.7%、10.9%で合計34.7%となり、大きな変化はみられなかった。実年収より高い額を適正年収として回答した割合は52.9%であり、実年収別にみると、実年収よりも適正年収を高く回答した割合は1,200万~1,400万円の集団(69.7%)が最も高かった。男性のほうが適正年収を高く回答 男女別にみると、男性のほうが自身の適正年収を高く回答する傾向がみられた。「2,000万~2,500万円」「2,500万~3,000万円」「3,000万円以上」の割合(括弧内は実年収の割合)は、男性がそれぞれ17.7%(14.9%)、8.4%(5.8%)、13.6%(5.3%)、合計41.7%(26.0%)であったのに対し、女性はそれぞれ4.3%(4.3%)、3.4%(4.3%)、3.4%(0%)、合計11.1%(8.6%)となった。消化器外科、脳神経外科は半数以上が適正年収2,000万円以上と回答 「2,000万~2,500万円」「2,500万~3,000万円」「3,000万円以上」と回答した医師の割合が50%以上、30%以下であった診療科は以下のとおりであった(30人以上の回答が得られた診療科を抽出)。<50%以上>・消化器外科(34人):64.7%(32.4%、20.6%、11.8%)・脳神経外科(37人):56.7%(21.6%、10.8%、24.3%)<30%以下>・内科(197人):29.4%(16.8%、2.0%、10.7%)・精神科(78人):29.5%(7.7%、6.4%、15.4%)アンケート概要対象:ケアネット会員医師1,000人(男性883人、女性117人)実施日:2026年3月2〜9日手法:インターネット調査 その他、詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2026【第3回】年収の妥当性・適正年収

211.

乳がんサバイバー、個々に合わせた運動で10年死亡率が低下

 乳がんサバイバーにおいて、個々の患者に合わせた運動がガイドラインで推奨されているが、長期的な死亡率への影響に関するデータは限られている。今回、米国・Kaiser Permanente Northern Californiaの研究グループがPathways Studyのデータを用いて検討したところ、個別に調整された運動戦略が乳がんサバイバーの10年全死亡率および乳がん死亡率を有意に低下させることが示唆された。米国国立衛生研究所のJinani Jayasekera氏らがJAMA Network Open誌2026年4月1日号で発表した。 本研究は、2006~13年に登録された乳がんサバイバーを対象としたコホート研究である。既存の臨床試験を模倣するTarget Trial Emulationを用いて、個々の健康状態の変化に応じて運動内容を調整する戦略の効果を分析した。評価項目は、全死亡率および乳がん死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・1つ目の標的試験(959例)において、有酸素運動戦略が健康教育介入と比較して8年全死亡率が8.0パーセントポイント(95%信頼区間[CI]:3.4~13.3)低下した。・2つ目の標的試験(2,107例)において、中等度の有酸素運動を週120分、または激しい有酸素運動を週60分まで段階的に増やす個別化戦略が、介入なしと比較して10年全死亡率が3.1パーセントポイント(95%CI:2.0〜4.6)有意に低下した。乳がん死亡率も2.4パーセントポイント(同:1.2〜3.5)低下した。

212.

経口CGRP受容体拮抗薬「アクイプタ錠」、片頭痛発作の発症抑制の適応で発売/アッヴィ

 アッヴィは2026年4月17日に、アクイプタ錠(一般名:アトゲパント水和物)を発売したと発表した。適応は「片頭痛発作の発症抑制」である。 本剤は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり、1日1回経口投与する。CGRPとその受容体は片頭痛の病態生理に関与しており、片頭痛発作時にCGRP濃度が上昇することが示されている。現在、世界60ヵ国以上で片頭痛の予防治療薬として承認されており、国内においては2026年2月19日に、片頭痛患者に対する片頭痛発作の発症抑制に関して製造販売承認を取得した。 国内の疫学研究では、15歳以上の片頭痛の有病率は8.4%と報告されており1)、患者の労働生産性の低下や社会的活動への制限が大きな課題となっている2,3)。また、同社は2025年12月に、本剤の片頭痛発作の急性期治療に関する製造販売承認も申請している。 『頭痛の診療ガイドライン2021』では、片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障を来す頭痛が月に3日以上ある患者に対して、予防療法の実施を検討することが推奨されている4)。本剤が新たな選択肢に加わることで、より多様な予防治療ニーズに応えることが期待される。【製品概要】商品名:アクイプタ錠10mg、同30mg、同60mg一般名:アトゲパント水和物効果・効能:片頭痛発作の発症抑制用法・用量:通常、成人にはアトゲパントとして60mgを1日1回経口投与する製造販売承認日:2026年2月19日薬価基準収載日:2026年4月15日発売日:2026年4月17日製造販売元:アッヴィ合同会社

213.

冠動脈中等度狭窄への血行再建、vFFRガイドは有用か/NEJM

 欧米の現行の血行再建ガイドラインでは、中等度の狭窄を呈する冠動脈病変に対する血行再建の必要性を判断するための指針として生理学的評価を推奨しているが、プレッシャーワイヤーや血流増加薬を必要とせずに3次元定量的冠動脈造影から得られる冠血流予備量比(vFFR)に基づく血行再建と、従来のプレッシャーワイヤーを用いた血流予備量比(FFR)に基づく血行再建を比較したデータは十分でないという。オランダ・エラスムス大学医療センターのJoost Daemen氏らは、FAST III試験において、1年後の死亡、心筋梗塞、再血行再建術の複合エンドポイントに関して、vFFRに基づく血行再建はFFRに基づく血行再建に対して非劣性であることを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月29日号に掲載された。欧州7ヵ国の研究者主導型無作為化非劣性試験 FAST III試験は、欧州7ヵ国の37施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2021年11月~2024年5月に参加者を登録した(Pie Medical ImagingとSiemens Healthineersの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上の慢性冠症候群、不安定狭心症、または非ST上昇型急性冠症候群で、中等度狭窄(定量的冠動脈造影で血管径の30~80%の狭窄)を呈する少なくとも1つの冠動脈病変を有する患者であった。 被験者を、冠動脈の中等度狭窄病変に対しvFFRガイド下血行再建術またはFFRガイド下血行再建術を施行する群に1対1の比率で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、1年の時点における全死因死亡、心筋梗塞、再血行再建術の複合とした。非劣性マージンは3.0%ポイントに設定し、発生率の群間差の両側95%信頼区間(CI)の上限値がこれを下回った場合に非劣性と判定した。生理学的評価の成功率は高い 2,211例(最大の解析対象集団、平均年齢67歳、女性24.3%)を登録し、vFFR群に1,116例、FFR群に1,095例を割り付けた。全体の18.7%が急性冠症候群、26.6%が糖尿病であった。1例当たりの平均(±SD)病変数は、vFFR群が1.27(±0.55)、FFR群は1.28(±0.55)だった。 完全な生理学的評価の成功率はvFFR群で96.7%、FFR群で99.1%であり、vFFR中央値は0.83、FFR中央値は0.85であった。血行再建の適応閾値(vFFR、FFRとも≦0.80)を満たした病変の割合はそれぞれ40.9%および31.3%で、実際に血行再建術が施行された患者の割合は45.0%および36.0%だった。 このうち経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者における施術の平均所要時間は、vFFR群で55.8(±26.8)分、FFR群で60.9(±28.5)分であった(群間差:-5.13分、95%CI:-8.55~-1.71)。対象血管不全、重篤な有害事象の頻度も同程度 1年の時点で、主要エンドポイントのイベントの発生を認めた患者は、vFFR群が80例(Kaplan-Meier推定値7.5%)、FFR群は79例(7.5%)であり(リスク群間差:-0.02%ポイント、95%CI:-2.25~2.21)、vFFRのFFRに対する非劣性が示された(非劣性のp<0.004)。 また、対象血管不全(心臓死、対象血管心筋梗塞、臨床的に適応のある対象血管の再血行再建術)のイベントは、vFFR群で43例(Kaplan-Meier推定値4.0%)、FFR群で49例(4.6%)にみられた(リスク群間差:-0.62%ポイント、95%CI:-2.35~1.10)。 重篤な有害事象の発生は両群で同程度であった。生理学的評価時の経皮的血行再建術関連の手技中の合併症は、vFFR群で3.7%、FFR群で6.0%に発現した。血行再建術の高施行率の意味を探る検討が必要 著者は、「数多くの臨床的妥当性の検証試験の結果が、その高い診断精度を裏付けていることから、本試験の知見は、血行再建の生理学的ガイダンスが適応となる場合には、プレッシャーワイヤーや充血の誘発を必要としない血管造影に基づく手法の使用を支持するものである」としている。 また、「vFFR群ではFFR群よりも血行再建術を受けた患者の割合が高かったこと(45.0%vs.36.0%)が、vFFRのほうが生理学的に意義のある病変をより的確に検出できたことを示すのかなどの疑問点を解決するために、新たな研究が必要である」と指摘している。

214.

医療に伴う負債は医療の後回しと関連

 医療に伴う負債がある人は、将来の疾病予防に必要な医療を後回しにしがちであることが、新たな研究で明らかになった。この傾向は、特に歯科とメンタルヘルス領域で顕著であったという。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCatherine Ettman氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of General Internal Medicine」に3月10日掲載された。 Ettman氏は、「定期的なケアや予防医療を受けないことは、患者の健康状態を悪化させ、結果として医療費の増加につながる。その負担は、患者だけでなく、保険者や米国の医療費の多くを負担している納税者にも及ぶ」とニュースリリースで述べている。 この研究では2023年に実施された米国国民健康面接調査(National Health Interview Survey;NHIS)のデータを用いて、医療に伴う負債が一般診療、メンタルヘルス医療、歯科医療の後回しと関連するのかを検討した。 データが揃った2万8,699人の参加者のうち、10.7%に当たる2,835人が過去12カ月間に医療に伴う負債があったことを報告した。負債は保険未加入者で最も多く(19.5%)、次いでメディケイド加入者(12.6%)、民間保険加入者(9.3%)、メディケア加入者(8.1%)の順だった。医療に伴う負債がある人の33.3%が費用を理由に医療受診を後回しにしていたのに対し、負債のない人での割合は5.3%だった。メンタルヘルスの受診を後回しにした人は、医療に伴う負債がある場合は20.3%、ない場合は5.1%、歯科受診ではそれぞれ53.2%と17.3%だった。社会人口統計学的特徴を調整して解析した結果、医療に伴う負債は受診を後回しにする可能性の増大と関連し、その増加幅は歯科受診で24.6パーセントポイントと最も大きく、次いで医療受診で17.6パーセントポイント、メンタルヘルス受診で9.3パーセントポイントであった。 研究グループは、必要な医療を後回しにすることは、早期に発見できたはずの健康問題のリスクを高めると指摘している。こうした未治療の問題は、別の疾患を引き起こす可能性もある。例えば、口腔の健康状態の悪化は、心疾患や認知機能の低下などと関連していることが報告されている。論文の筆頭著者である同大学のKyle Moon氏は、「医療費を患者が無理なく支払えるようにする政策や、医療に伴う負債が連鎖的にもたらす影響に対処する政策は、受診の遅れが健康や経済に及ぼす影響を軽減する上で極めて重要だ」と述べている。

215.

超加工食品は骨の健康にも影響か

 長年にわたり親は、「そんなものを食べていたら歯が悪くなる」と言って、子どもをジャンクフードから遠ざけようとしてきた。だが最新の研究によると、こうした超加工食品(UPF)は、骨にも悪影響を及ぼす可能性があるとのことだ。UPFの摂取量が多い人では少ない人に比べて、骨密度(BMD)が低く、骨折リスクが高くなることが示された。米チューレーン大学公衆衛生学分野のLu Qi氏らによるこの研究結果は、「The British Journal of Nutrition」に3月6日掲載された。 UPFとは、飽和脂肪酸やデンプン、添加糖など、食品から抽出された成分を主原料として作られる食品で、冷凍ピザ、シリアル、砂糖入りの炭酸飲料、温めるだけで食べられる食事などがその例である。UPFには、味や見た目、保存性を高めるために、さまざまな添加物が加えられている。研究グループによると、米国人の総摂取カロリーの約55%はUPFが占めているという。 今回の研究では、UKバイオバンク参加者16万3,855人(平均年齢56.0歳、女性54.5%)のデータを用いて、UPFの摂取とBMDおよび骨折リスクとの関連が検討された。参加者は1日平均8.1サービングのUPFを摂取していた。 12.0年の追跡期間中に1,097件の大腿骨近位部骨折と7,889件の骨折が発生していた。解析の結果、UPFの摂取量が多いほど、大腿骨頸部、腰椎および全身のBMDは低いことが示された。一方で、大腿骨大転子部では逆U字型の関連が認められた。この関連性は、65歳未満の参加者および低BMIの参加者でより顕著であった。この結果について研究グループは、「低BMIは骨の健康不良の既知のリスク因子であり、こうした栄養状態がUPFの影響を増強している可能性がある。また、若年者では消化機能が比較的高いことから、UPFに含まれる好ましくない成分をより多く吸収し、その影響を受けやすい可能性がある」との見方を示している。 さらに、UPFの摂取量が1標準偏差増加するごとに、大腿骨近位部骨折リスクは10.5%、(ハザード比1.105、95%信頼区間1.029~1.186、P<0.01)、あらゆる骨折リスクは2.7%(同1.027、1.000~1.055、P<0.05)増加した。なお、この1標準偏差は約3.7サービング/日に相当する。 Qi氏は、「UPFは、普段の買い物先で簡単に手に入る。今回の結果は、UPFが骨の健康に与える影響への懸念をさらに高めるものだ」とチューレーン大学のニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「この結果は驚くものではない。UPFは、これまでもさまざまな栄養関連疾患との関連が示されている。骨の健康は、適切な栄養に依存しているのだ」と付け加えている。(HealthDay News 2026年3月13日)

216.

第291回 診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省

<先週の動き> 1.診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省 2.麻しん236人、コロナ後最多ペース 10~20代中心に感染拡大/小児学会 3.中東情勢緊迫化で医療物資「目詰まり」 5月に手袋5,000万枚放出/内閣府 4.2040年の外科医不足に備え、がん治療の拠点病院を再編へ/厚労省 5.医師偏在対策の柱・地域枠が再設計へ 2028年度以降は定員減も/厚労省 6.医療機関倒産、20年で最多 人件費高騰が経営圧迫/東京商工リサーチ 1.診療報酬「ベースアップ評価料」の対象が拡大、5月中の再届出が必須/厚労省人件費や物価の上昇で経営環境が厳しさを増すなか、厚生労働省はクリニックや中小病院に対して支援策を拡充し、日本医師会はその活用を呼びかけている。国は2026年度の「働き方改革推進支援助成金」を拡充し、常勤10人未満の小規模事業所では賃上げ加算の上限を引き上げ、最大300万円を上乗せできるようにした。労務管理研修やソフト導入、勤務間インターバル導入、時間外労働削減などの取り組みに応じ、補助上限は最大520万円となる。加えて、月60時間以内の時間外労働の割増賃金率を5%以上引き上げた場合の加算も新設された。その一方で、診療報酬ではベースアップ評価料が見直され、対象職種は看護師や薬剤師に加え、40歳未満の医師や歯科医師、事務職員にも広がった。点数も大幅に引き上げられ、継続的な賃上げを行う医療機関はより高く評価される。しかし、診療所の届出率は病院よりも低く、無床診療所59.2%、有床診療所70.0%にとどまっている。6月の診療報酬改定に向けて、算定するためには医療機関は5月中に必ず届出を行う必要がある。また、2024年度にすでに届け出ている医療機関も再届出が必要となる。賃金改善計画書は不要となり、手続き負担は軽減された。さらに、評価料収入は全額を賃上げに充てること、8月の実績報告に備えて対象職員数や賃上げ実績を整理しておくことが重要となる。人材流出を防ぎ、他産業に見劣りしない処遇改善を進めるためにも、診療所は助成金と評価料を組み合わせて活用する姿勢が求められる。 参考 1)働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)(厚労省) 2)令和8年度診療報酬改定ベースアップ評価料による賃上げについて(日医) 3)日医がベースアップ評価料の積極的な算定を呼びかけ、届け出率は無床診療所で約6割(日経メディカル) 4)日医がベースアップ評価料の届け出を呼びかけ(MEDICAL TRIBUNE) 2.麻しん236人、コロナ後最多ペース 10~20代中心に感染拡大/小児学会麻しん(はしか)の感染拡大が続いている。2026年4月上旬までに報告された患者は236人に達し、新型コロナ禍後で最多だった2025年(265人)を上回るペースで推移している。感染者は10~20代が半数を占め、若年層を中心に流行の兆しが強まっている。麻しんは極めて感染力が強く、免疫を持たない場合ほぼ100%発症するほか、肺炎や脳炎など重篤な合併症を引き起こす可能性がある。わが国は2015年に世界保健機関(WHO)から「排除状態」と認定されたが、近年は海外からの持ち込みを起点とした感染が続いている。世界的にも患者数は増加しており、各国で流行が拡大している。国内ではコロナ禍の水際対策で患者数は一時減少したが、2023年以降は増加に転じた。地域別では東京都が最多で、鹿児島県、愛知県と続く。とくに都市部での感染が目立ち、成人を含む若年層への広がりが確認されている。背景にはワクチン接種率の低下がある。麻疹の排除維持には2回接種で95%以上の接種率が必要とされるが、現状はこれを下回っている。感染者の半数以上が未接種、1回接種、あるいは接種歴不明であり、十分な免疫を持たない層の存在が流行拡大の要因となっている。麻しんへの予防接種は1歳時と小学校入学前の2回接種で高い予防効果が得られる。日本小児科学会は、接種歴を確認し未接種や不明の場合は任意接種を検討するよう呼びかけるとともに、発熱や発疹などの症状がある場合は事前連絡のうえで医療機関を受診するよう求めている。流行抑制には、ワクチン接種の徹底と早期受診が不可欠だ。 参考 1)麻しん累積報告数の推移 2019~26年 (JIHS) 2)2026年における麻疹患者数増加に関する注意喚起 (小児科学会) 3)はしか感染、230人超 新型コロナ後で最多ペース-10~20代が中心(時事通信) 4)はしか感染者増加“子どもの定期接種確実に”日本ワクチン学会(NHK) 5)海外からの流入・予防接種率低下等で麻疹(はしか)流行の兆し、適切なワクチン接種(定期・任意)と医療機関受診を-小児科学会(Gem Med) 3.中東情勢緊迫化で医療物資「目詰まり」 5月に手袋5,000万枚放出/内閣府中東情勢の緊迫化による原油・ナフサ供給不安が、医療物資の流通に影響を及ぼしている。政府は4月16日に「中東情勢に関する関係閣僚会議」を開き、対策として感染症流行に備え備蓄している医療用手袋約5億枚のうち、5,000万枚を2026年5月から医療機関向けに放出する方針を決定した。放出対象は、採血や検査で用いる非滅菌手袋で、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて医療機関が必要量を申請し供給される仕組みを整備する。厚生労働省によると、医療物資の供給不安に関する相談はメーカー・卸・医療機関を合わせ2,956件に上り、うち34件が供給に影響ありと判断された。消毒液や透析関連物資など一部は解決が進む一方で、透析用チューブや滅菌関連資材などでは中長期的な供給不安が残る。医療機関からの相談は急増しており、需給逼迫の兆しが強まっている。背景には、医療用手袋やガウン、チューブなど多くの医療消耗品が石油由来であり、原料のナフサを中東に依存している構造がある。現場では価格上昇や出荷制限の動きもみられ、手術や透析など生命維持医療への影響を懸念する声が上がる。実際に通販業者では購入制限が導入され、需給の不安定化が流通段階にも波及している。政府は約1.3万の医療機関から情報収集できるシステムを稼働させ、専門チームを増員して供給状況の把握と対策を強化している。また、アジア諸国との連携によるサプライチェーン強靭化にも着手し、エネルギー供給の安定化を通じた医療物資確保を図る方針。医療物資の安定供給は、エネルギー安全保障と一体の課題となっており、短期対応と中長期対策の両立が求められる。 参考 1)石油関連製品の供給不足に伴う厚生労働分野の影響・対応について(厚労省) 2)中東情勢に関する関係閣僚会議(首相官邸) 3)高市首相 5月から医療用手袋5,000万枚の備蓄放出を表明(NHK) 4)高市首相、医療用手袋5,000万枚放出表明 中東情勢で確保困難(毎日新聞) 4.2040年の外科医不足に備え、がん治療の拠点病院を再編へ/厚労省厚生労働省は、4月16日に「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」を開き、高度ながん治療を担う病院の集約化を進める方針を明確にした。従来は全国どこでも一定水準のがん医療を受けられる「均てん化」を重視してきたが、今後は人口減少や医師不足、医療の高度化を踏まえ、質の高い治療を維持するために「集約化」との両立へ軸足を移す。とくに消化器外科では担い手不足が深刻で、現状のままでは2040年にがん治療を担う外科医が約9,200人と足元から39%減り、需要の5,200人を下回る見通しとなっている。一般の医師数は増加している一方で、一般外科医・消化器外科医はこの10年で減少し、若手ほど減り幅が大きい。長時間労働や負担に見合わない処遇が背景にあり、外科医がいる病院の約半数で消化器外科医は1~2人にとどまる。こうした状況から、厚労省は食道がんや膵がんなど高難度手術を拠点病院や大学病院へ集約し、希少がんでは県域を超えた集約も視野に入れる。その一方で、胃がんや大腸がんの標準的手術、長期の薬物療法や検診などは地域の医療機関で担う考え。今後は、新たな地域医療構想と連動し、各医療機関の機能を2028年度までに整理し、第9次医療計画へ反映する。がん診療連携拠点病院の整備指針も見直され、指定期間は最長3年に短縮される見通しで、構想や医療計画との整合性を高める。もっとも、都道府県ごとの議論の進捗にはばらつきが大きく、実施時期未定の地域も多い。国によるデータ提供や技術支援を強化しつつ、患者の受療アクセス低下を防ぎながら、医療の質、病院経営、勤務環境改善を両立できる再編を進められるかが焦点となる。 参考 1)第20回がん診療提供体制のあり方に関する検討会(厚労省) 2)がん医療・地域医療構想・医療計画等を連動させ「集約化すべき病院、高度医療の内容」等を明確化する-がん診療提供体制検討会(Gem Med) 3)がんの医療体制、地域医療構想と連動して整備へ 厚労省案 「28年度までに決定」(CB news) 4)がん手術維持へ病院集約 40年に外科医5,000人超不足、厚労省(日経新聞) 5.医師偏在対策の柱・地域枠が再設計へ 2028年度以降は定員減も/厚労省医師偏在対策の柱として拡大してきた医学部の地域枠が、現在見直しの局面に入っている。厚生労働省は、4月17日に開催した「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」で、2027年度の医学部臨時定員の調整方法を了承し、医師多数県を中心に削減を進めつつ、へき地尺度などを用いて一部地域では削減幅を緩和する方針を示した。医学部定員に占める地域枠などは2007年度の173人から2025年度には1,847人へと増え、全体の19.9%を占めるまで拡大しており、医学部定員9,393人のなかで大きな比重を占めている。この拡大は2008年度以降の臨時定員増を背景とするが、近年は医師数の増加ペース見直しの議論が進み、今後は臨時定員の縮減とともに、地域枠を恒久定員内で運用する方向が示された。検討会では、2027年度以降は医師多数県の臨時定員削減を基本としつつ、へき地尺度や高齢化の進展を踏まえて調整する方針を確認した。さらに2028年度以降は、医師多数県に限らず定員適正化を進める方向性が示され、量的拡大から質的最適化への転換が明確になりつつある。地域枠の制度設計も見直し対象となっている。現在は卒後9年以上の地域勤務が求められ、一定期間を医師不足地域で従事する仕組みとなっているが、義務履行中断者が約7%に上るなど、若手医師のライフイベントや専門医取得との両立が課題となっている。厚労省の資料でも、仕事と育児の両立志向の高まりなど、若年層の価値観変化が制度運用に影響していることが示されている。実際、日経メディカルの調査では「地域枠は必要だが見直しが必要」との回答が約半数を占め、当事者では6割近くに達した。背景には、都市部の生活の利便性や教育環境、キャリア形成機会の偏在があり、単なる配置義務では地域定着につながらない現実がある。地域枠は一定の成果を上げつつも、若手医師の価値観変化や医師需給の転換期を受け、制度疲労が顕在化している。今後は定員管理、勤務環境改善、経済的インセンティブを組み合わせた総合的な再設計が求められる。 参考 1)医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針について(厚労省) 2)今後の地域枠等の運用について(同) 3)27年度臨時定員、へき地尺度で多数県の削減幅を緩和 検討会が了承(MEDIFAX) 4)地域枠、医師48%が「従事期間や奨学金の利息見直しが必要」(日経メディカル) 6.医療機関倒産、20年で最多 人件費高騰が経営圧迫/東京商工リサーチ東京商工リサーチの調査によると、2025年度に倒産した医療機関(病院、診療所、歯科医院)は前年度比20.3%増の71件となり、過去20年で最多を更新した。コロナ禍では支援策により低水準に抑えられていたが、収束後の2023年度以降は53件、59件、71件と増加が続き、経営の悪化が顕在化している。業態別では診療所が32件、歯科医院が31件といずれも最多で、とくに歯科は前年度比1.5倍と急増した。その一方で、病院は8件と減少したものの、依然として高い水準にある。負債規模では1億円以上の案件も多く、中堅規模以上の医療機関の倒産が目立つ点も特徴だ。原因は「販売不振」が66%を占め、「既往のシワ寄せ」と合わせ約9割に達した。人口減少による患者数減少や診療報酬改定の影響に加え、光熱費や人件費、医療材料費の上昇により収益構造が悪化している。さらに、経営者の高齢化や人手不足、設備の老朽化も重なり、経営継続が困難となるケースが増えている。倒産形態は破産が69件で全体の97%を占め、再建型の民事再生は2件にとどまった。医療機関は収益規制や後継者不足などから再建が難しく、退出に直結しやすい構造が浮き彫りとなっている。医療機関の倒産は地域の医療提供体制に影響を及ぼし、とくに高齢化が進む地方では受診機会の喪失につながる懸念が強い。2026年6月の診療報酬改定の効果は不透明で、今後、公的支援の強化に加え、M&Aなどを含めた医療機関の再編・集約が一層進む可能性がある。 参考 1)2025年度の「医療機関」倒産 20年で最多の71件 クリニック・歯科医院の淘汰が加速、「破産」が97%超(東京商工リサーチ) 2)25年度の医療機関倒産、過去20年で最多の71件 商工リサーチ調べ(日経新聞)

217.

第96回 効果量とは何ですか?【統計のそこが知りたい!】

第96回 効果量とは何ですか?効果量(effect size)は、統計解析において、「ある処置や介入の効果の大きさを数量的に示す指標」です。これは、単に「差があるかどうか」を示す有意確率(p値)とは異なり、その差が「どれほど大きいのか」を明確にするために用いられます。今回は、「効果量」について解説します。■効果量の意味効果量は、研究における2つのグループ間の差や、変数間の関連性の強さを定量的に評価するための指標です。たとえば、新薬の効果を評価する際、治療群と対照群の平均値の差だけでなく、その差がどの程度の大きさであるかを知ることが重要です。効果量は、この差の大きさを標準化し、他の研究や異なる測定尺度間で比較可能にします。例として2群の差の程度を表す効果量を考えてみましょう。一般にばらつき(標準偏差)の大きいデータでは、平均の差も大きくなったり小さくなったり変動しやすくなります。また、単位が異なる場合は、単純比較はできません。そこで、両者の標準偏差を標準化して同じ値(標準偏差=1)とし、その標準化した標準偏差を考慮した平均の差を求めるのが効果量です。ただ単に平均そのものを比較するのではなく、データのばらつきや単位を比べられるように標準化して、平均の差の程度を比較します。つまり、「差の効果量は、標準化した差の程度」を表しています。■効果量の種類効果量には多様な種類があり、研究の目的やデータの性質に応じて適切な指標を選択します。主な効果量として、以下のものがあります。(1)Cohenのd:2つのグループ間の平均値の差を、標準偏差で割った値です。主に平均値の差を評価する際に用いられます。一般的な解釈として、0.2は小さい効果、0.5は中程度の効果、0.8は大きい効果とされています。(2)Hedgesのg:Cohenのdに似ていますが、小さいサンプルサイズに対して補正を加えた効果量です。サンプルサイズが50例未満の場合に使用が推奨されます。(3)相関係数(r):2つの変数間の関連の強さを示す指標で、-1から1の範囲を取ります。0に近いほど関連が弱く、1または-1に近いほど強い関連を示します。(4)決定係数(R2):回帰分析において、独立変数が従属変数の変動をどの程度説明できるかを示す指標です。0から1の値を取り、1に近いほどモデルの説明力が高いことを示します。■効果量のd族とr族効果量は、その性質に応じて「d族(d family)」と「r族(r family)」の2つに大別されます。d族の効果量主に平均値の差に関する指標であり、グループ間の差の大きさを評価します。「Cohenのd」や「Hedgesのg」がこれに該当します。d族の効果量は、上限・下限が無限であるため、効果の大きさを解釈する際には基準値(たとえばCohenの基準)を参考にします。r族の効果量相関の強さや、モデルで説明される分散の割合に関する指標です。相関係数(r)や決定係数(R2)、η(イータ)、Φ(ファイ)、Cramer(クラメール)のVなどが含まれます。r族の効果量は0から1の範囲を取り、値が大きいほど効果の大きさが強いことを示します。■効果量の重要性効果量は、以下の点で重要な役割を果たします。実質的な意義の評価統計的に有意であっても、効果量が小さい場合、その差や関連性が実際の臨床や実践において重要でない可能性があります。効果量を確認することで、結果の実質的な意義を評価できます。メタ分析での比較効果量は、異なる研究間での結果の比較や統合を可能にし、総合的な結論を導く際に有用です。サンプルサイズの設計研究計画の段階で、期待される効果量を基に必要なサンプルサイズを算出することで、適切な検出力を確保できます。■効果量の解釈効果量の解釈には、一般的な基準が存在しますが、研究分野や文脈によって異なる場合があります。たとえば、Cohenのdでは0.2を小さい効果、0.5を中程度の効果、0.8を大きい効果と解釈しますが、これはあくまで目安であり、各研究の文脈に応じて判断することが重要です。効果量を判断する際には、以下の点に注意が必要です。(1)研究の文脈を考慮する:効果量の大きさは、研究の目的や分野によってその意味合いが異なります。たとえば、医療分野では小さな効果量でも臨床的に重要な意味がある場合があります。効果量の解釈には、研究の背景や目的を十分に考慮する必要があります。(2)サンプルサイズの影響を理解する:効果量はサンプルサイズの影響を受けにくい指標ですが、サンプルサイズが極端に小さい場合、効果量の推定に不確実性が生じる可能性があります。一方、サンプルサイズが大きいと、統計的に有意な結果が得られやすくなりますが、効果量が小さい場合、その実質的な意義を慎重に評価する必要があります。(3)効果量の種類を適切に選択する:効果量にはd族(平均差の指標)やr族(相関の指標)など、さまざまな種類があります。研究のデザインやデータの性質に応じて、適切な効果量の指標を選択することが重要です。(4)効果量の解釈における基準値の限界:「Cohenのd」など、効果量には一般的な基準値がありますが、これらはあくまで目安であり、すべての研究に当てはまるわけではありません。各研究の特性や分野の基準に応じて、効果量の大きさを解釈することが求められます。(5)効果量のみで判断しない:効果量は効果の大きさを示す指標ですが、統計的有意性や信頼区間と併せて評価することで、より総合的な判断が可能となります。効果量だけでなく、他の統計指標とも組み合わせて解釈することが重要です。以上の注意点を踏まえることで、効果量の適切な解釈と研究結果の正確な評価が可能となります。このように効果量は、統計解析において効果の大きさを定量的に評価するための重要な指標です。d族とr族の効果量を適切に使い分け、研究結果の実質的な意義を正確に評価することが求められます。d族の効果量は、グループ間の平均値の差を標準化したものであり、「Cohenのd」や「Hedgesのg」が代表的です。一方、r族の効果量は、相関の大きさを表す指標であり、相関係数(r)や決定係数(R2)などが含まれます。論文を読む際には、これらの効果量を理解し、適切に解釈することが大切です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第11回 リスク比とオッズ比の違いは?第12回 オッズ比は、なぜ臨床研究で使われるのか?第50回 クラメール連関係数とは?第51回 期待度数がわかれば簡単! クラメール連関係数の計算法

218.

4月20日 腰痛ゼロの日【今日は何の日?】

【4月20日 腰痛ゼロの日】〔由来〕「腰(4)痛(2)ゼロ(0)」と読む語呂合わせから「420の会」代表の本坊 隆博氏が制定。腰痛で悩んでいる人をゼロにしたいとの思いが込められており、腰痛に対する対処法、予防法が指導されている。関連コンテンツ腰痛予防には普段の姿勢の確認を(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)米国でのCTO治療、腰痛防止の無重力防護服に驚き!【臨床留学通信 from Boston】腰痛時の日常動作、症状を悪化させるのか?腰痛の重症度に意外な因子が関連~日本人データ腰痛リスクが低下する1日の歩行時間は?

219.

親ががんのとき、子供のケアはどうする?【非専門医のための緩和ケアTips】第122回

親ががんのとき、子供のケアはどうする?今回はがんになった親を持つお子さんのケアについてです。悩むことも多いこの話題について考えてみたいと思います。今日の質問大学病院から、若年のがん患者を紹介されました。お子さんがいて、まだ親の病状について、きちんと理解できていない様子です。患者の予後は3〜6ヵ月程度と予想され、治療効果は乏しくなっているものの、しばらくは大学病院に通院するようです。ただ、近い将来、私たちの訪問診療で看取る可能性が高いと予想しています。子供のケアはどのように取り組むとよいでしょうか?地域で緩和ケアに取り組んでいると、時々遭遇する難しい状況かと思います。幸い大学病院からの紹介が比較的早いタイミングだったため、これから関係構築に取り組みながら、お子さんのケアも考えることができそうです。まず、われわれが理解する必要があるのは、子供の発達段階を理解して適切な対応を考える必要があるという点です。ご質問の情報だけではお子さんの具体的な状況がわからないのですが、仮に10歳程度としましょう。10歳程度の子供の発達段階は、徐々に抽象的な概念の理解や先々の予測などについても考えが及ぶようになります。つまり、10歳児は多くの場合、死の概念や不可逆性を理解できるのです。また、事実を隠すような対応は、短期的には平穏でも長期的には家族に対する不信感や「知っていたら、こうしたかった」といった不全感につながるといわれています。一方、緩和ケアの実践では難しいときがあるのも事実です。患者である親やほかの親族が子供への説明を望まないというケースがしばしばあります。多くの場合、子供への影響を心配する気持ちや、どのように話せばよいかわからない、といった苦しさに基づいたものです。また、このような状況にある患者は、若い就労世代であることが多く、がん治療で収入が絶たれているにもかかわらず、介護保険の対象年齢(原則40歳以上)に該当しない場合があります。そういった意味からも、さまざまな支援が必要になる状況です。こうした状況での子供のケアは、一般知識を身に付けたうえで、社会福祉士や公認心理師・臨床心理士といった各職種にも力を借りることが必要です。私のように地域の基幹病院に勤務していれば院内で他職種と連携できますが、在宅医療や診療所の医師はどのように対応すればよいのでしょうか?おそらく地域ごとにできることは異なると思います。もし皆さんがこういった難しいケアを提供する必要性に直面した際は、地域の基幹病院の緩和ケア部門に相談してみてはいかがでしょう? さまざまな事情で入院が必要になる可能性の高い患者でもあり、情報共有の意味合いもあります。基幹病院の専門職に相談できるだけでも対応の幅が広がるでしょう。誰が対応しても難しい状況ですので、地域の緩和ケアリソースをフル活用して、ケアに取り組んでいただけたらと思います。今日のTips今日のTips子供の発達段階に合わせ、ほかの専門職も交え、地域のリソースを使って対応することが大切。

検索結果 合計:36020件 表示位置:201 - 220