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多枝病変を有する急性心筋梗塞患者において、完全血行再建を行う戦略は責任病変のみを対象としたPCI戦略と比較し、心血管死または新規心筋梗塞の複合アウトカム、および心血管死単独のリスクを減少させ、全死因死亡率も低いことが、カナダ・McMaster UniversityのShamir R. Mehta氏らComplete Revascularisation Trialists' Collaborationによるメタ解析の結果で示された。著者は、「今回のデータは、完全血行再建が心血管疾患の重要な臨床アウトカムを改善するという、これまでで最強かつ頑健なエビデンスである」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年11月9日号掲載の報告。完全血行再建vs.責任病変のみPCIの無作為化試験をメタ解析 研究グループは、急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の患者を対象としており、250例以上の患者が登録され、完全血行再建戦略(PCIを含む)と責任病変のみのPCI戦略を比較した無作為化試験を適格として、個々の患者データのメタ解析を行った。 試験の見落としがないように、Ovid MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)を用いて、1996~2025年9月15日に発表された無作為化比較試験を検索した。 主要アウトカムは、心血管死または新規心筋梗塞の複合、ならびに心血管死単独の2つであった。これらは階層的検定手順を用い、心血管死または新規心筋梗塞の複合について有意水準0.04で検定し、有意であることが認められた場合に心血管死単独について有意水準0.05で検定を行うことが事前に規定された。 メタ解析は、個別患者データをプールし、試験をランダム効果としたCoxフレイルティモデル(1段階解析)を用いた。 全死因死亡を副次アウトカム、非心血管疾患死および新規心筋梗塞を追加のアウトカムとした。完全血行再建は「心血管死または新規心筋梗塞の複合」「心血管死単独」のリスクをいずれも24%減少 計6件の無作為化比較試験(合計8,836例)が解析対象となった。年齢中央値は65.8歳(四分位範囲[IQR]:57.0~76.0)、女性2,088例(23.6%)、男性6,748例(76.4%)であった。また、7,768例(87.9%)がSTEMI、1,068例(12.1%)がNSTEMIであった。 追跡期間中央値36.0ヵ月(IQR:30.6~48.0)において、心血管死または新規心筋梗塞は、完全血行再建群で4,259例中382例(9.0%)に発生したのに対し、責任病変のみ群では4,577例中528例(11.5%)に発生した(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.67~0.87、p<0.0001)。 心血管死単独は、完全血行再建群で155例(3.6%)、責任病変のみ群で209例(4.6%)にみられた(HR:0.76、95%CI:0.62~0.93、p=0.0091)。 全死因死亡は、完全血行再建群では308例(7.2%)、責任病変のみ群では370例(8.1%)であった(HR:0.85、95%CI:0.73~0.99、p=0.039)。非心血管疾患死は両群で同程度であった(完全血行再建群153例[3.6%]vs.責任病変のみ群161例[3.5%]、HR:0.98、95%CI:0.78~1.22、p=0.85)。 完全血行再建群では、責任病変のみ群と比較して新規心筋梗塞が減少した(255例[6.0%]vs.357例[7.8%]、HR:0.76、95%CI:0.65~0.90、p=0.0011)。