サイト内検索|page:2

検索結果 合計:35608件 表示位置:21 - 40

21.

前立腺肥大に伴う下部尿路症状【日常診療アップグレード】第51回

前立腺肥大に伴う下部尿路症状問題54歳男性。5ヵ月前から尿意切迫感と頻尿、夜間1~2回の排尿を主訴に受診した。排尿痛や多飲症はない。国際前立腺症状スコア(IPSS)は6(軽度の症状)。前立腺がんの家族歴はない。既往歴は高血圧。内服薬はアムロジピンである。身体診察では、バイタルサインは正常。直腸診で前立腺は軽度肥大し、結節は認めず、表面は滑らかである。尿検査結果は異常なし。超音波検査で残尿量50mLを認める。就寝前の水分摂取制限や膀胱刺激物の回避を含む生活習慣指導を行い、タムスロシンを処方した。

22.

西海岸へ就職面接、猛吹雪とLCCでフライトトラブル続出【臨床留学通信 from Boston】第21回

西海岸へ就職面接、猛吹雪とLCCでフライトトラブル続出1月下旬から2月のボストンは、まさに雪まみれです。ひどい日には車が埋もれて出せなくなるほど。道路の除雪は比較的速やかに行われますが、四駆の車であっても、まずは自分で雪をかき出さないとタイヤが空回りして動けません。あいにく、西海岸のオレゴン州ポートランドへの就職面接が、まさにその大雪の日に重なってしまいました。直行便がキャンセルとなったため、急遽チケットを取り直したものの、通常なら6時間かからない行程に、搭乗から到着まで14時間も費やすこととなりました。さらに復路では、乗り継ぎ便がキャンセルとなるという追い打ちが。空港に朝3時に向かう道中でその事実を知り、絶望的な状況でした。幸い、もともと予約していたアメリカン航空がアラスカ航空と提携していたため、2時間遅れではありましたが、アラスカ航空の直行便に変更でき、経由便よりもスムーズに帰れました。就活といえども、飛行機でこれほどの移動を強いられるのは、本当につらいところです。さて、2月中旬にPresidents’ Dayという祝日があり、学校も休みになることが多い時期です。そのため2月はハイシーズンにあたり、旅行費用も高騰します。私はあらかじめ4ヵ月ほど前から準備を進め、家族4人分のメキシコ・カンクン行きの飛行機を2,800ドルで確保。ホテルはクレジットカードのポイントを使い、4泊分をカバーしました。カンクンは2回目ですが、1泊900ドル相当の、飲食やサービスがすべて含まれている「オールインクルーシブ」のホテルです。しかし、問題はアメリカの飛行機でした。ボストン発の直行便は便数が少ないせいか、ニューヨーク発よりも割高です。4ヵ月前でも、1人1,100ドルと高額だったため、やむなく「フロンティア航空」という格安航空(LCC)の乗り継ぎ便を選びました。ところが、これが大失敗。朝6時の出発15分前になって、急に「3時間の遅延」が告げられました。これではアトランタでの乗り継ぎが絶望的。結局、その場で1人1,600ドルもするデルタ航空の片道直行便を、泣く泣く買い直すしか選択肢はありませんでした。フロンティア航空側のチケットはキャンセル可能でしたが、追加出費の痛手はそれよりはるかに多く、安く済ませるはずの旅行が、とんだ大損害になってしまいました。格安航空にはもう懲り懲りです。

23.

第309回 臨床医が扱い慣れたGLP-1薬なら依存症治療の敷居を低くできそう

セマグルチドやチルゼパチドなどのGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)の使用が、アルコールやその他の薬物乱用を生じ難くするらしいことを示す大規模観察試験結果がまた1つ報告されました1-4)。BMJ誌に今回報告されたのは、米国の2型糖尿病の退役軍人の解析結果です。言わずもがなGLP-1薬は膵臓の受容体に働いてインスリン分泌を促します。しかしそれだけでなく、脳でも作用することが知られ、薬物乱用やアルコール依存を促す脳の報酬回路へのGLP-1薬の働きが盛んに検討されています4)。試験ではそのように脳でも働くGLP-1薬か、腎臓でもっぱら働くエンパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬を使い始めた60万例超の経過が調べられました。3年間追跡したところ、薬物依存症の既往がない人のGLP-1薬使用は大麻、アルコール、コカイン、ニコチン、オピオイドの依存症の発生率がSGLT2阻害薬使用に比べて14%低いことと関連しました。すでに依存症の人の薬物乱用と関連した救急科受診、入院、オーバードーズの割合の比較でもGLP-1薬使用に分があり、SGLT2阻害薬に比べてそれぞれ約30%、25%、40%低いことが示されました。薬物乱用と関連する死亡や自殺念慮/自殺企図もGLP-1薬使用群がより少なく、SGLT2阻害薬群に比べてそれぞれ50%と25%低い割合で済んでいました。依存症へのGLP-1薬の効果は無作為化試験でも示されつつあります。昨年2月にはアルコール依存患者の飲酒量を減らすセマグルチド週1回注射の効果を裏付けた無作為化試験が報告されています5)。進行中の試験もあり、GLP-1薬の類いのmazdutideのアルコール依存治療を調べているプラセボ対照無作為化第II相試験がLillyの手によって実施されています。結果は今夏8月に判明するようです6)。セマグルチドの別の無作為化試験も米国立薬物乱用研究所(NIDA)医師のLorenzo Leggio氏の主導で進行中です7)。Leggio氏は、たいていが治療されないままのアルコール依存症の治療にGLP-1薬の類いが光明をもたらしうると考えています4)。日本もおよそ似たような状況と思われますが、Leggio氏によるとアルコール依存症患者のほぼ全員の98%は米国で承認されているアルコール依存治療薬を手にしていません。その原因の一端は臨床医のほとんどが依存症治療薬に精通していないことにあるとLeggio氏は言っています。アルコール依存症とは対照的に、糖尿病患者のほとんどの85%超は米国で承認された治療を受けており、臨床医はGLP-1薬を含む糖尿病薬の扱いに手慣れています。GLP-1薬が誰にでも効くというわけにはいかないでしょうが、もし効果の裏付けが済んでGLP-1薬による依存症治療が承認されたら専門医限定という垣根を超えて普及するだろうとLeggio氏は示唆しています。それに、糖尿病治療として社会的により受け入れられているGLP-1薬なら依存症の薬物治療への偏見も減らせるかもしれません4)。米国などでは承認されているnaltrexoneなどのめぼしい依存症治療薬が未承認の日本では、あくまでも有効性が確立して承認されればの話ですが、臨床医が扱いに慣れたGLP-1薬による依存症治療はとくに重宝されそうです。参考1)Cai M, et al. BMJ. 2026;392:e086886.2)GLP-1 diabetes drugs linked to reduced risk of addiction and substance-related death / Eurekalert3)GLP-1 medications get at the heart of addiction: study / Eurekalert4)GLP-1 drugs linked to lower addiction rates in large study of veterans / Science5)Hendershot CS, et al. JAMA Psychiatry. 2025;82:395-405.6)ClinicalTrials.gov(NCT06817356)7)ClinicalTrials.gov(STAR)

24.

未破裂脳動脈瘤のある健康な人、全死亡リスクが5倍に

 MRIの普及に伴い、症状のない未破裂脳動脈瘤(UIA)が偶然発見される機会が増加している。しかし、偶然発見されたUIAを持つ人の長期的な死亡率や死因については、これまで十分に解明されていなかった。佐賀大学の緒方 敦之氏らが実施した、脳ドック受診者を対象とした前向きコホート研究「The Kashima Scan Study」の結果、偶然UIAが発見された健康な人は、UIAがない人と比較して全死亡リスクが約5倍高く、その主な死因は動脈瘤の破裂ではなく悪性腫瘍であることが判明した。Stroke and Vascular Neurology誌オンライン版2026年2月24日号に掲載。 本研究では、2005年12月~2011年11月に脳ドックを自費で受診した神経学的に健康な成人1,670例(平均年齢57.7歳[範囲23~84]、男性47.5%)を対象とした。平均追跡期間8.7年(SD 2.3)において、MRIおよびMRAで診断されたUIAの有無と死亡率の関連性を、年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙習慣などの要因を調整したCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・全対象者1,670例のうち90例にUIAが認められた。UIA群90例(5.4%)、非UIA群1,580例(94.6%)。・追跡期間中に36例が死亡した。全死因死亡は、UIA群で7例(死亡率:7.8%)、非UIA群で29例(同:1.8%)であり、UIA群で死亡率が有意に高かった(p=0.002)。・多変量解析の結果、UIAの存在は死亡リスクの有意な上昇と独立して関連していた(調整ハザード比[HR]:4.95、95%信頼区間[CI]:2.14~11.4)。・全死因のうち、最も多かったのは悪性腫瘍(15例)であった。悪性腫瘍による死亡は、UIA群の死亡例の57%(4/7例)、非UIA群の38%(11/29例)を占めた。・UIA群の死亡例(7例)のうち、動脈瘤破裂による死亡は1例のみであった。 本研究の結果、偶然見つかったUIAを持つ神経学的に健康な人は死亡リスクが著しく高いことが示された。著者らはこの原因として、動脈瘤形成に関与する「全身性の炎症状態」が、心血管疾患やがんの発症・進行という共通の病理学的経路を介している可能性を指摘している。UIAが発見された人に対しては、従来の動脈瘤の経過観察だけでなく、より集中的な健康モニタリングや総合的なリスク因子管理が有益である可能性を示唆している。

25.

130mmol/L未満の低Na血症、積極補正vs.標準ケア

 入院患者の低ナトリウム(Na)血症は、転倒や認知機能障害、死亡のリスク上昇と関連することが知られている。しかし、Na値の補正による臨床アウトカムの改善効果は不明である。そこで、Julie Refardt氏(スイス・バーゼル大学病院/オランダ・エラスムス医療センター)らの研究グループは、Na値の積極的な補正が30日以内の死亡または再入院に及ぼす影響を検討することを目的として、多施設共同無作為化比較試験「HIT試験」を実施した。その結果、慢性低Na血症を有する患者に対し、標的介入による積極的な補正を行っても、標準ケアと比較してリスクは低下しなかった。本研究結果は、NEJM Evidence誌2026年3月号に掲載された。 本研究は、欧州5ヵ国9施設で実施された。対象は、血漿Na値が130mmol/L未満の慢性の低Na血症を有する18歳以上の入院患者2,173例とした。対象患者は、専門チームによる連日の評価に基づいて原因疾患に応じた段階的な治療(水分制限、経口尿素、トルバプタンなど)を行う標的介入群(1,079例)、主治医の裁量による治療を行う標準ケア群(1,094例)に、1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、30日以内の死亡または再入院の複合アウトカムとした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は73歳(四分位範囲[IQR]:63~81)、男性の割合は48%であった。ベースライン時の血漿Na値の中央値は127.0mmol/L(IQR:124.0~128.0)であった。重度の低Na血症(120mmol/L未満)の割合は6.2%であった。・治療期間中の血漿Na値の最大変化量(平均値±標準偏差)は、標的介入群10.0±5.6 mmol/L、標準ケア群8.7±5.6mmol/Lであった。・血漿Na値が正常値(135~145mmol/L)に到達した割合は、標的介入群60.4%に対し、標準ケア群46.2%であり、標的介入群が有意に高かった(絶対差14.3%、ハザード比:1.54、95%信頼区間[CI]:1.37~1.74)。・主要評価項目の30日以内の死亡または再入院の複合の発生は、標的介入群20.5%、標準ケア群21.8%であり、両群間に有意差は認められなかった(推定絶対差-1.3%、95%CI:-4.9~2.2、p=0.45)。・30日死亡率は両群共に8.0%であった。30日以内の再入院は、標的介入群13.2%、標準ケア群で14.1%であった。・両群の患者を統合したpost-hoc解析において、退院時に血漿Na値が正常値に到達していた集団は、未到達の集団と比較して30日以内の死亡または再入院の複合のリスクが低かった(オッズ比:0.74、95%CI:0.60~0.91)。・入院期間中央値は両群共に7日であった。また、退院時および30日時点の神経認知機能評価、QOL、転倒・骨折についても両群間で差はみられなかった。・過剰補正(24時間で12mmol/L超、または48時間で18mmol/L超の上昇)は標的介入群2.3%、標準ケア群1.4%に観察されたが、両群間に有意差はみられなかった。浸透圧性脱髄症候群はいずれの群でも観察されなかった。 本研究結果について、著者らは「慢性低Na血症を有する入院患者において、多角的な標的介入による積極的な補正は、標準ケアと比較してNa値の正常化を向上させたものの、30日以内の死亡や再入院といった臨床アウトカムの改善には寄与しなかった」とまとめた。また「本結果は慢性低Na血症を治療しない理由として解釈されるべきではなく、入院中の強化治療が、必ずしも短期的な予後やQOLの改善に結びつかないことを示唆するものである」と考察している。

26.

膵臓内脂肪沈着に予防効果があるのは食事かリラグルチドか

 肥満症について、カロリー制限食(CRD)の食事療法とリラグルチドによる薬物療法では、脂肪関連指標の変化に違いはあるのだろうか。このテーマに対し中国の南京医科大学附属無錫人民病院内分泌科のHaiyan Cheng氏らの研究グループは、肥満者におけるCRDとリラグルチドの膵内脂肪沈着への影響を比較し、脂肪関連指標と血糖関連パラメータの変化との関連性を探った。その結果、両療法ともに膵脂肪率(PFF)を改善することが判明した。この結果はObesity誌2026年オンライン版2月24日号で公開された。食事療法でもリラグルチドでもPFFを改善 研究グループは、肥満患者46例について24週間の前向き非無作為化試験を行った。患者はCRDによる食事療法またはリラグルチド治療を受けた。主要評価項目はPFFの変化とした。また、副次的評価項目には、体重、肝脂肪率(LFF)、内臓脂肪面積(VFA)、および血糖関連パラメータの変化が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・CRD群(n=23)とリラグルチド群(n=23)のいずれも、PFFの有意かつ同等の減少を示した(時間効果:p<0.001、交互作用効果:p=0.560)。・体重、LFF、VFA、HbA1c、インスリン抵抗性指標(HOMA2-IR)、Insulin Sensitivity Index Matsuda(ISIM)においても、有意かつ同程度の改善が認められた(全時間効果:p<0.001、全交互作用効果:p>0.05)。・回帰分析では、ΔHOMA2-IRはΔ体重およびΔLFFと正の相関、ΔPFFと負の相関を示した一方で、ΔISIMはΔVFAと負の相関、ΔPFFと正の相関を示した。 この結果から研究グループは「CRDとリラグルチドはいずれも、肥満患者において膵脂肪、肝脂肪、内臓脂肪を有意かつ同程度に減少させると同時に、血糖関連パラメータを改善した。予備的な知見によれば、インスリン抵抗性の改善は主に肝脂肪および内臓脂肪の減少によって生じる一方、膵脂肪の減少はより微妙なインスリン動態の変化に関連している可能性があり、さらなる調査が必要」と結論付けている。

27.

胃がんリスク因子の年齢別解析、ピロリ感染と喫煙が高齢で増加

 胃がんは依然として世界的ながん死亡の主要な原因の1つであり、その発症には感染、生活習慣、遺伝など複数の要因が関与する。中国の病院を対象とした後ろ向き研究により、胃がん患者におけるリスク因子の分布が年齢層によって異なる可能性が示された。Frontiers in Oncology誌2026年1月22日号掲載の報告。 本研究では、中国南部の複数の3次医療機関で診断された胃がん患者903例を対象とし、アンケート調査により生活習慣や臨床背景に関する情報を収集した。解析対象は、18~30歳(50例)、31~55歳(163例)、56歳以上(690例)の3つの年齢群に分類された。評価項目には、Helicobacter pylori(H. pylori)感染、喫煙歴、肥満、萎縮性胃炎、食習慣、既往歴、胃がん家族歴などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・年齢群によってリスク因子の分布に明確な違いが認められた。H. pyloriの感染率と喫煙率は年齢とともに有意に増加した。・燻製・焼いた食品の摂取は、とくに高齢者において胃がんリスクと有意な関連を示した(オッズ比[OR]:2.05、95%信頼区間[CI]:1.29~3.27、p=0.002)。肥満および果物・野菜の摂取量不足は統計的に有意な関連を示さなかった。・高齢群では、H. pylori感染、喫煙、燻製・焼いた食品の摂取といった環境要因への長期曝露が多く、これらが累積的に胃がん発症リスクを高めている可能性が示唆された。・一方、若年患者ではこれらの生活習慣関連因子の影響は比較的小さく、相対的に家族歴やその他の要因が重要となる可能性が示された。 研究者らは、本研究の臨床的意義として、年齢層に応じた予防介入の必要性を挙げている。具体的には、高齢者ではH. pylori感染検査と除菌プログラム、若年~中年期ではH. pylori除菌、禁煙指導、食習慣の改善などを実施することで、将来的な胃がん発症リスクの低減につながる可能性があるとした。

28.

日本におけるアルコール使用障害に対する薬物療法の開始率はどの程度か

 アルコール使用障害(AUD)は、世界的に広く認められる疾患である。しかし、薬物療法が行われている患者の割合は依然として低いままである。また、日本におけるAUDに対する薬物療法開始パターンは、これまで十分に解明されていなかった。京都大学の北村 美智氏らは、日本で新たにAUDと診断された患者における薬物療法開始の累積発生率を定量化し、評価を行った。Alcohol and Alcoholism誌2026年1月14日号の報告。 日本の保険請求データベースを用いて記述的研究を実施した。2012~21年度にかけて新たにAUDと診断された20~64歳の成人を対象とした年次コホートを作成した。薬物療法開始の累積発生率は、死亡を競合リスクとして、推定した。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象患者数は1万3,936例。・2012~21年度のコホート全体での平均年齢は43.3~44.8歳、各コホートでの男性の割合は72.6~79.3%であった。・コホート登録時(0日目)における薬物療法開始の累積発生率は、2012年度の18.0%から2021年度には35.2%に上昇した。・1年間の対応する累積発生率は、それぞれ28.1%と44.9%であった。・アカンプロサート(2013年度)とナルメフェン(2018年度)の承認および日本のAUD治療ガイドライン(2018年度)の策定に伴い、薬物療法開始はそれぞれ前年比で顕著に増加した。 著者らは「薬剤処方前にAUDの診断を義務付ける日本の保険償還制度により、今回観察された発症率は過大評価されている可能性があるものの、薬物療法の開始件数は他国で報告されている件数を上回り、2012年度以降着実に増加している。新薬の導入とガイドラインの普及により、治療開始が加速し、治療方法が大きく変化したと考えられる。これらの知見は、臨床医や政策立案者が根深い治療ギャップを埋めるうえで役立つ可能性がある」と結論付けている。

29.

アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用時のアピキサバン、使用上の注意改訂/厚労省

 厚生労働省は2026年3月6日、アミバンタマブ、アミバンタマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ、ラゼルチニブメシル酸塩水和物、アピキサバンの添付文書について、改訂を指示した。改訂内容は、アミバンタマブとラゼルチニブの併用投与時において、静脈血栓塞栓症の発症抑制を目的としてアピキサバンを投与する場合の腎機能障害患者に対する注意喚起の追加である。アピキサバンは、腎不全(クレアチニンクリアランス15mL/min未満)の患者には禁忌であることから、使用上の注意の改訂が適切と判断された。【アミバンタマブ・ラゼルチニブ】 改訂後の添付文書に追加された記載は以下のとおり。<アミバンタマブ・ラゼルチニブ共通>7. 用法及び用量に関連する注意アピキサバンの電子添文を参照して、出血リスクに十分注意すること。ただし、腎不全(クレアチニンクリアランス(CLcr)15mL/min未満)の患者では、アピキサバンは投与できないことから、アミバンタマブ(遺伝子組換え)とラゼルチニブとの併用投与以外の治療選択肢を考慮すること。<アミバンタマブ>9.2 腎機能障害患者用法及び用量に関連する注意〈EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺〉9.2.1 腎不全(CLcr 15mL/min未満)の患者アピキサバンは投与できないことから、ラゼルチニブとの併用投与は避け、他の治療選択肢を考慮すること。<ラゼルチニブ>9.2 腎機能障害患者用法及び用量に関連する注意9.2.1 腎不全(CLcr 15mL/min未満)の患者アピキサバンは投与できないことから、他の治療選択肢を考慮すること。【アピキサバン】 改訂後の添付文書における「禁忌」「特定の背景を有する患者に関する注意」の変更箇所の記載は以下のとおり(下線部が変更箇所)。2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、アミバンタマブ(遺伝子組換え)とラゼルチニブとの併用投与による静脈血栓塞栓症の発症抑制〉2.4 腎不全(クレアチニンクリアランス(CLcr)15mL/min未満)の患者9. 特定の背景を有する患者に関する注意9.2 腎機能障害患者〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、アミバンタマブ(遺伝子組換え)とラゼルチニブとの併用投与による静脈血栓塞栓症の発症抑制〉9.2.1 腎不全(CLcr 15mL/min未満)の患者投与しないこと。腎不全(CLcr 15mL/min未満)の患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。9.2.2 腎障害(CLcr 15~50mL/min)のある患者出血の危険性が増大するおそれがある。

30.

乳がん検診、超音波併用で長期罹患率低下(J-START)/Lancet

 日本人女性における乳がん罹患率は40歳以降に著しく増加する。マンモグラフィは死亡率の低下が証明されている唯一の乳がん検診の方法だが、高濃度乳房の女性では、病変が乳腺に隠れマンモグラフィの感度が低下するとされ、40~49歳の日本人女性の約60~70%が高濃度乳房組織を有するという。一方、補助的超音波検査は高濃度乳房でも病変を描出する可能性があり、検診の感度とがん検出率を向上させることが示されている。東北大学大学院の原田 成美氏らJ-START investigatorsは「J-START試験」において、マンモグラフィ単独と比較してマンモグラフィ+乳房超音波検査の併用による検診が、40~49歳の日本人女性における進行乳がんの累積罹患率を低下させることを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年2月21日号に掲載された。7万2,000例超の女性で超音波併用検診vs.マンモ単独、累積罹患率を評価 J-START試験は、日本の42施設で実施した無作為化対照比較試験であり、2007年8月~2011年3月に、年齢40~49歳で、過去5年間に乳がんの既往がなく、5年以上の余命が期待でき、症状がみられない女性7万2,661例(平均年齢44.0歳、閉経前75.6%)を登録した(厚生労働省および日本医療研究開発機構の助成を受けた)。 被験者を、マンモグラフィ+乳房超音波検査の併用による検診を受ける群(介入群:3万6,723例)、またはマンモグラフィ単独による検診を受ける群(対照群:3万5,938例)に無作為化した。これらの参加者は、初回検診から2年後に2回目の検診を受けるよう要請された。 今回の事前に規定された2回目の解析では、データカットオフ日(2024年10月4日)の時点における、進行乳がん(TNM分類のステージ2以上[リンパ節転移陽性、T2以上、またはこれら両方])の累積罹患率を評価した。ステージ0または1は早期がんと定義した。進行乳がん罹患率、4年目ごろから有意な差 追跡期間中央値は、介入群で11.4年(範囲:0.0~16.1、四分位範囲[IQR]:9.3~12.9)、対照群で11.3年(0.0~16.1、8.9~12.9)であった。 初回検診からデータカットオフ日までに、介入群の894例で乳がんが検出され、このうち234例(26.2%)が進行乳がんであった。同様に、対照群の843例で乳がんが検出され、277例(32.9%)が進行乳がんだった。進行乳がんの累積罹患率は、対照群に比べ介入群で有意に低かった(ハザード比[HR]:0.83、95.6%信頼区間[CI]:0.70~0.98、p=0.026)。 Kaplan-Meier曲線を用いた解析では、進行乳がん罹患率の両群間の有意差は、初回検診後4年目(48ヵ月)ごろに現れ、8年目(96ヵ月)まで差の拡大が続き、それ以降はほぼ一定であった。 また、進行乳がんの10年累積罹患率は、介入群で0.64%(95%CI:0.56~0.73、イベント発生数:246件)、対照群で0.79%(0.69~0.89、286)だった。乳がん全体では差がない 介入群では646/894例(72.3%)が早期乳がんであったのに対し、対照群では551/843例(65.4%)が早期乳がんと診断された。 1回目と2回目の検診の間に診断された中間期乳がんは、介入群で36例に認め、このうち19例(52.7%)が早期乳がんであった。対照群では、中間期乳がんの49例中32例(65.4%)が早期乳がんだった。 また、追跡期間中に、介入群で297例、対照群で280例の死亡が確認され、このうち各群21例ずつが乳がんによる死亡であった。 乳がん全体の累積罹患率については両群間に差を認めなかった(HR:1.02、95%CI:0.93~1.13)。介入群における乳がん全体の5年間累積罹患率は1.33%(95%CI:1.21~1.46、イベント発生数902件)、対照群では1.20%(1.09~1.33、848件)であった。検診への超音波検査導入の価値を強調する知見 著者は、「初回検診後49~96ヵ月における介入群での進行がんの減少は、2年間隔の補助的超音波検査が、将来進行がん化する症例を検出したことを示唆する可能性がある」「これらの知見は、とくにアジア人集団において、高濃度乳房組織を有する女性の検診プログラムへの補助的超音波検査導入の潜在的価値を強調するものであり、将来の乳がん検診ガイドラインの策定に資する可能性がある」としている。 また、「がん検診の試験では死亡率低下の検証が重要となるが、本研究の知見は進行乳がん罹患率を死亡率の潜在的な代替指標として使用する一助となりうる。補助的超音波検査が乳がん死亡率を低下させるか否かを確認するには、継続的な追跡調査が必要である」と指摘している。

31.

AI搭載聴診器で心臓弁膜症の検出率が2倍に

 人工知能(AI)搭載聴診器は、医師が心臓弁膜症(VHD)の兆候を検出する能力を約2倍に高めることが、新たな研究で示された。米カリフォルニア州の医療テクノロジー企業であるEko Health社で医療業務シニアマネージャーを務めるRosalie McDonough氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal-Digital Health」に2月5日掲載された。 McDonough氏は、「AI搭載聴診器は、実臨床において、従来の聴診器よりも中等度から重度のVHDを持つ患者を見つける能力が格段に高いことを示した。この技術により、患者に対する心エコー検査がより早く実施され、VHDが確認された場合には迅速に治療が開始されることが期待されている。集団レベルで見ると、この技術は入院を減らし、医療費全体の削減につながる可能性がある」とニュースリリースで述べている。 医師は通常、聴診器を使って心臓の音を聞き、異常がないか確認する。心雑音はそうした異常音の一つで、心拍中に血流の乱れによって生じる「ザーッ」や「シュッ」のような音として聴こえる。心雑音は、VHDの所見の一つとされている。 今回の研究では、心臓病のリスクがある50歳以上の357人を対象に、AI搭載聴診器を用いることで、従来の聴診器と比べてプライマリケア医によるVHDの検出率が向上するかどうかが検討された。AI搭載聴診器は、心臓の音を録音し、AIがVHDに関連する音のパターンを解析する仕組みである。参加者は、プライマリケア医による従来の聴診器を用いた標準的な診察と、訓練を受けた研究コーディネーターによるAI搭載聴診器での診察の両方を受けた。心雑音が確認された患者は、心エコー検査によるVHDの有無が確認された。 その結果、心雑音検出の感度は、AI搭載聴診器の方が従来の聴診器に比べて有意に高かった(92.3%対46.2%、P=0.01)。このことから、AI搭載聴診器を使うことで、医師が患者の心臓の音をより正確に聴取し、VHDの見逃しが減ることが示唆された。一方、特異度は従来の聴診器の方が優れていた(86.9%対95.6%、P<0.001)。 McDonough氏は、「AIの活用は、耳だけでは確実に検出することが難しい異常音を明確にする、新たな解析的視点を提供する。しかし、この技術が医師に取って代わるわけではない。このデバイスを使いこなすには医師自身の臨床判断が必要だ」と述べている。 研究グループは、検出率向上以外の利点も挙げている。この点についてMcDonough氏は、「AI搭載聴診器で診察を受けた患者は、診察中の関与度が高まったように見えた。これは、医師がどのような音や所見に反応しているかを患者自身が見たり聞いたりできたためであり、治療のフォローアップへの信頼や関与が高まった可能性がある」と述べている。 ただし、研究グループは、さまざまな臨床環境やより多様な患者群における性能を検証するために、さらなる研究が必要だとしている。McDonough氏は、「この研究は、AIが従来の臨床ツールを実用的かつ責任ある方法で強化できるという、増え続けているエビデンスに加わるものだ。AIは医療従事者に取って代わるものではない。AIが提供するのは、患者の評価において、より自信を持つためのツールなのだ」と述べている。

33.

コスパ重視の「直美」「直産」はもったいない? 元猛烈医師が語る社会的地位と資産を同時に手に入れる戦略【医師のためのお金の話】第102回

アインシュタインが人類最大の発明と称した複利効果。資産形成において「72の法則」を意識するのは投資家としての常識ですが、じつはこの法則は、医師のキャリア形成でも劇的な格差をもたらすことをご存じでしょうか。最近、若手医師の間ではコスパを重視して、初期研修後に「直美(ちょくび:美容医)」「直産(ちょくさん:産業医)」など、早期の転身を図る動きも目立ちます。しかし、目先のキャッシュフローを優先する選択は、将来のスキルと人脈の複利を放棄するリスクを孕んでいるのではないでしょうか。そんなことを言っても、ロートル医師の「最近の若い者は…」的な単なる感情論でしょ? と思う方がいるかもしれません。しかし、3次救急での泥臭い臨床経験を○○億円の資産へと変えてきた医師の実感だとすればどうでしょうか。卒後10年間の研鑽が、40代以降にどのような爆発的なリターンを生むのかを、私自身の経験を踏まえて考えてみました。実体験を踏まえて、生涯年収と社会的地位を最大化する合理的戦略を提言してみます。資産形成で複利の効果を最大限享受するには?資産形成において、複利効果ほど重視すべき要素はありません。あのアルベルト・アインシュタインが人類最大の発明と評したほど、複利が持つ力は強大です。この複利計算を直感的に理解するための指標に「72の法則」があります。72 ÷ 運用利回り(%) = 資産が2倍になるまでの年数たとえば利回り3%で運用すれば、資産が2倍になるのに24年かかります。単純計算(足し算)では「3%×24年=72%」の増加にとどまるはずが、利息が利息を生む複利の力によって、24年後には100%増(2倍)に到達するのです。この効果は「運用利回りが高いほど」「運用期間が長いほど」爆発的な差を生みます。だからこそ、資産運用は1日でも早く始めるのが鉄則とされているのです。ここまでは、資産形成を志す人にとって、常識といえる知識でしょう。キャリアとスキルに適用される「複利の法則」私は、複利の法則は単なる資産形成の話ではなく「医師としてのキャリア形成」にも当てはまると考えています。資産形成と医師としてのキャリア形成は、意外なほど近似しています。医師免許取得後の20~30代前半までの約10年間。この時期に脇目も振らず自分の専門領域を深く研鑽して、知識・経験・人脈という「元本」を積み上げること。ここで得た資産は、40代以降に同じ努力で始めるのと比べて、将来的に圧倒的な差となって返ってきます。若いころの「猛烈な努力」という投資は、その後の10年、20年という長い運用期間を経て、雪だるま式に成果を膨らませてくれます。同じ100の努力でも、20代でするのと40代でするのとでは、その後の人生で得られる総アウトプットが劇的に異なるのです。「コスパ」という言葉の落とし穴最近、若手医師の間で、専門医取得を避けて初期研修後すぐに美容医療や産業医へ転身する、いわゆる「直美」「直産」などのルートを選ぶ医師が増えています。もちろん、明確なビジョンを持って美容医療や産業医の世界で勝負する医師は素晴らしいと思います。しかし、もしそれが単に「コスパが良いから」「手っ取り早く高給を稼いでQOLを上げたいから」という理由であれば、私は懐疑的にならざるを得ません。なぜなら、若いうちに楽をして稼げる環境は、スキルや人脈の「複利」が効きにくいからです。目先のキャッシュフローは良くても、医師としての「本質的な資産」が積み上がらなければ、10~20年後の医師としての実力、ひいては資産形成も頭打ちになるでしょう。私の実体験から伝えたいこと私自身、卒後10年間は寝食を忘れて医療に没頭してきました。誰にも負けないほど働いたという自負があります。そして、当時の泥臭い経験や、現場で築いた医師同士・多職種との繋がりこそが、現在の私の資産形成、ひいては人生の強固な土台になっています。「若いころの苦労は買ってでもせよ」という言葉は、根性論ではなくきわめて合理的な複利戦略なのです。医師の生涯年収は、単なる給与の積み上げではなく、その時々の「専門性」という元本が生み出す利息のようなものです。専門医を取得する王道ルートでは、30代前半まで研鑽を積み、専門医・指導医を取得します。その後、市中病院の部長職や開業を選択します。難易度の高い症例経験は、年齢を重ねるほど「代えのきかない価値」になります。また、学会活動や論文、地域連携のネットワークが、いざ開業や転職をする際の強力な集客力・ブランドとなります。人生の質を向上させるため、そして真の意味で豊かな資産を築くためにも合理的な選択肢といえるでしょう。私自身の経験では、若いころの「苦労」という投資が、投資家、起業家、そして市中病院の病院長としての「経済的余裕」と「社会的地位」の両輪となって、単なる労働収益をはるかに超えるリターンをもたらしてくれました。若い先生たちには、まずは自分の専門分野という最強の資産に、全力で「自己投資」することを強くお勧めします。その努力は、数十年後に想像を超える果実となって返ってくるはずですから。

34.

第285回 診療科名に「睡眠障害」追加へ 18年ぶり見直し、受診導線改善狙う/厚労省

<先週の動き> 1.診療科名に「睡眠障害」追加へ 18年ぶり見直し、受診導線改善狙う/厚労省 2.MMRワクチン承認へ、麻疹再拡大で接種体制強化が課題に/厚労省 3.急性期病院の要件厳格化 救急・手術実績で拠点化進める/厚労省 4.医師偏在対策が次の段階へ 地域医療構想と医師養成を一体で見直し/厚労省 5.社会保険料抑制へ制度改革 OTC類似薬と高額療養費が焦点/政府 6.美容クリニックの再生医療で訴訟相次ぐ 安全性と説明責任が焦点に 1.診療科名に「睡眠障害」追加へ 18年ぶり見直し、受診導線改善狙う/厚労省厚生労働省は、医道審議会医道分科会の専門部会で、医療機関が看板や広告で掲げる診療科名に「睡眠障害」を追加することを了承した。診療科名の見直しは2008年以来で、政令改正を経て、今春にも施行される見通し。医療機関は「睡眠障害内科」「睡眠障害精神科」など、既存の基本診療科名と組み合わせた形で標榜できるようになる。診療科名は医療法に基づき規制されており、医療機関が自由に名乗ることはできない。現在は「内科」「外科」「小児科」など約20の基本診療科名に加え、「糖尿病」「腫瘍」など疾患名や臓器名を組み合わせる形で標榜が認められている。今回の見直しで「睡眠障害」もこの組み合わせ名称の1つとして追加される。背景には、睡眠に関する医療ニーズの拡大がある。不眠症や睡眠時無呼吸症候群、過眠症など睡眠障害は多様で、成人の約5人に1人が何らかの睡眠問題を抱えるとされる。その一方で、どの診療科を受診すればよいか、わかりにくいことから受診が遅れるケースも多いとされ、日本睡眠学会が診療科名の追加を要望していた。睡眠障害の診療は内科、精神科、耳鼻咽喉科など複数の領域にまたがる。精神科受診への心理的抵抗から適切な診療につながるまで時間を要する例もあり、診療科名として明示することで受診先の選択が容易になり、早期診断や治療につながることが期待されている。一方、制度上は専門資格がなくても「睡眠障害科」を標榜できるため、専門性を伴わない医療機関が患者集めを目的に掲げる可能性も指摘されている。睡眠障害治療では、睡眠薬の長期使用による依存や離脱症状の問題もあり、専門的な診断や治療体制の整備が課題とされる。日本睡眠学会の専門医は約660人にとどまり、地域偏在も大きい。診療科名の追加を契機に、専門医育成や診療体制整備をどう進めるかが今後の課題となる。 参考 1) 第8回医道審議会医道分科会診療科名標榜部会(厚労省) 2) 病院の診療科名に「睡眠障害」追加 厚労省部会が了承(日経新聞) 3) 「睡眠障害」の診療科名追加を了承、今春にも導入…通院先選びの利便性向上期待(読売新聞) 4) 「睡眠障害」診療科名に追加へ、受診の目印に 08年以来の見直し(朝日新聞) 2.MMRワクチン承認へ、麻疹再拡大で接種体制強化が課題に/厚労省厚生労働省は3月2日に開かれた薬事審議会医薬品第二部会で、麻疹(はしか)、おたふくかぜ、風疹を防ぐ3種混合ワクチン(MMRワクチン)の製造販売承認を了承した。開発した第一三共の製品「ミムリット皮下注用」が正式に承認されれば、わが国で使用可能なMMRワクチンは約30年ぶりとなる。今後、定期接種に組み込むかどうかの検討が進められる。わが国では1989年にMMRワクチンが導入されたが、おたふく風邪成分に関連した無菌性髄膜炎の報告が相次ぎ、1993年に使用が中止された経緯がある。今回のワクチンは、無菌性髄膜炎の発生頻度が極めて低い株を使用しており、臨床試験でも重大な副作用は確認されていないとされる。海外では100以上の国・地域でMMRワクチンが定期接種として導入されており、わが国でも接種回数の減少など接種体制の効率化が期待される。その一方で、麻疹の感染は国内外で拡大の兆しを見せている。国内では愛知県で高校を中心に感染が広がり、2026年に入ってすでに20例以上の感染が確認された。東京都や埼玉県、神奈川県、岐阜県、鹿児島県などでも散発的な患者が報告され、医療機関や商業施設で不特定多数と接触した可能性のある事例も相次いでいる。海外渡航歴のない患者も複数確認されており、地域内感染の可能性も指摘されている。麻疹は、空気感染で感染する極めて感染力の強いウイルス感染症で、発熱や咳、結膜充血などの症状の後に高熱と発疹が出現する。肺炎や脳炎を合併すると重症化することがあり、ワクチン接種が最も有効な予防策とされる。海外でも流行は深刻化している。米国では、今年に入り約2ヵ月で1,100例以上の感染が報告され、前年の年間患者数を上回る可能性が指摘されている。患者の大半はMMRワクチン未接種、または2回接種を完了していない人だった。米疾病対策センター(CDC)はワクチン接種を改めて呼びかけている。国内でのMMRワクチン承認は、麻疹対策の強化に向けた制度的転換となる可能性がある。麻疹排除状態の維持には、2回接種率の向上とともに、集団免疫を維持するためのワクチン政策の整備が重要となりそうだ。 参考 1) 新薬等15製品が承認へ 第一三共のMMRワクチン・ミムリットなど 薬事審・第二部会が了承(ミクスオンライン) 2) 麻疹・おたふく・風疹の3種混合ワクチン承認へ…かつて報告された無菌性髄膜炎の発生頻度、極めて少なく(読売新聞) 3) はしか感染の20歳代男性、2月21日に日本医科大付属病院で不特定多数と接触か…東京都が注意呼びかけ(同) 4) 愛知県内で新たに2人が「はしか」に感染(NHK) 5) 米はしか感染 2カ月で1、100人 高水準だった去年の年間2,300人を上回る見通し(東日本放送) 6) 米CDC所長代理、はしかワクチン接種呼びかけ(ロイター) 3.急性期病院の要件厳格化 救急・手術実績で拠点化進める/厚労省令和8(2026)年度の診療報酬改定の詳細が明らかになってきた。今回の改定では、急性期入院医療の評価軸が「病棟単位」から「病院全体の急性期機能」へと変更され、実質的に急性期の担い手は急性期A、看護・多職種協働加算を組み合わせた急性期B、急性期1、同様の急性期4に集約される流れが強まった。厚生労働省は、3月5日に「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」として通知を発出し、その中で急性期病院Bの実績要件として救急搬送1,500件以上、または500件以上+全麻手術500件以上などを示し、さらに急性期総合体制加算では、総合性と高い手術実績を備えた拠点病院を評価する仕組みに再編した。中央社会保険医療協議会(中医協)でも、人口の少ない地域では救急搬送の受入件数に加え、外来・在宅診療体制の確保を支援する拠点病院を評価する方向性が示されている。その一方で、人口減少地域への影響は大きい。地域の急性期病床を持つ病院が同時に高度急性期を目指せば、看護師やリハビリスタッフ、症例数が分散し、どこも基準を満たせず、かえって経営不振や医療の質の低下を招きかねない。仮に50床の病棟で多職種7対1を実現するには看護師24人に加え、多職種約10人が必要で、人材が少ない地域の病院にはハードルが高くなる。結果として、急性期機能は一部病院へ集約され、周辺病院は包括期医療や在宅医療へ役割転換を迫られる可能性が高い。住民にとっては、高度急性期病院へのアクセスが遠のく一方で、地域内での「救急受け止め→早期転院→在宅復帰」の流れが整えばメリットもある。ただし、その前提は地域のかかりつけ医や在宅医療機関や介護施設の協力医療機関が軽症の救急患者の受け入れ、退院後のフォロー、看取りの支援を担えることだ。今回、介護施設の入所者の救急搬送は、協力医療機関で対応可能な例を原則として急性期A・Bの実績に算入しない方針も示され、急性期病院と地域密着病院で役割分担する発想がより鮮明になった。過疎地では、病院再編だけでなく、クリニックや訪問看護ステーションとの連携強化、訪問診療、余剰病床の介護施設への転換を含めた検討が不可欠になる。 参考 1) 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(厚労省) 2) 急性期入院医療の提供主体は「急性期A、多職種7対1の急性期B、急性期1、多職種7対1の急性期4」に集約されるのでは(Gem Med) 3) 急性期総合体制加算の施設基準詳細、「総合的かつ高度な体制を整え、小児・周産期含めた十分な手術実績」持つ病院が加算1を取得(同) 4) 救急患者応需係数で底上げ、地ケア病棟は対象外 看護必要度 C項目に腰椎穿刺など追加(CB news) 4.医師偏在対策が次の段階へ 地域医療構想と医師養成を一体で見直し/厚労省厚生労働省は、3月3日に「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」を開き、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」についてガイドラインを取りまとめた。また、医師の偏在について「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」での検討を重ねてきていた第8次「医師確保計画」の見直し方針をとりまとめ、公開した。今回の2つの検討会の取りまとめは、病床数の議論だけでなく、医師偏在対策や医師養成過程の見直しまで一体で進める点にある。人口減少と高齢化、医療人材不足を前提に、地域ごとに「どの病院が急性期を担い、どこが高齢者救急や在宅を支えるか」を再設計する考えだ。まず、新たな地域医療構想では、人口減少と高齢化を前提とした医療提供体制の再編を進めるため、2040年の必要病床数を最新のNDBデータで推計し、高度急性期79%、急性期84%、包括期89%、慢性期92.5%の病床稼働率で換算する。急性期は少なめ、包括期は厚めに見積もる方向で、厚労省はこの数値を「必要病床数を算定するための換算値」であって、各病院が目標とすべき経営指標ではないと明示した。また、2028年度までに全病院・有床診療所が将来担う医療機関機能を整理し、地域で協議する枠組みを示している。医師確保計画の見直しでは、従来の「目標医師数」だけでなく、「地域で不足する診療科」などの定量指標を導入する。さらに、医師数は極端に少なくなくても、へき地尺度(RIJ)が高くアクセスに課題のある地域を新たに支援対象とする。小児科や産科に加え、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科なども、人口減少地域では常勤確保が難しい診療科として位置付けられ、遠隔医療の活用も検討対象となる。医師にとって重要なのは、外来医師過多区域への新規開業で、地域に不足する医療機能の提供を要請する仕組みが本格化する。その一方で、医療資源が乏しい地域では、承継支援や医師派遣、代替医師確保への支援が行われる。また、国は都道府県任せにせず、運用状況を毎年度把握し、必要なフォローを行う方針も示している。今後は、病院の再編だけでなく、診療所が休日夜間対応、在宅医療、退院後フォロー、遠隔診療をどう担うかが、地域医療構想の実効性を左右しそうだ。医師養成では、医学部の地域枠、臨床研修、専門研修、総合的な診療能力を持つ医師の育成を組み合わせる方向性が整理された。政府は、2040年の医療提供体制を「病床再編」と「医師配置」、さらに「医師の育て方」まで連動させて作り直そうとしている。2040年に向けた医療体制は、急性期医療の集約、高齢者救急への対応、在宅医療との連携、医師偏在是正を一体で進める形となる。病院にとっては、自院が地域で担う医療機能を明確にすることが求められ、外来患者数減少に直面する開業医は、医師会や地域の病院と連携して、地域で何を担うかがこれまで以上に問われる局面に入った。今後は限られた医療人材の中で、どう医療提供体制を維持するか重要な課題となりそうだ。 参考 1) 第12回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(厚労省) 2) 「医師確保計画策定ガイドラインの見直しに向けた医師養成過程における取組のとりまとめ」(同) 3) 急性期病床2040年の必要数、稼働率84%で推計 高度急性期79%、包括期89%、慢性期92.5%(CB news) 4) 2040年の必要病床数、病床利用実態・業務効率化等加味し「急性期は少なめ・包括期は多め」に推計-地域医療構想・医療計画検討会(Gem Med) 5.社会保険料抑制へ制度改革 OTC類似薬と高額療養費が焦点/政府政府が進める医療保険制度改革により、公的医療保険の加入者1人当たりの社会保険料が年間約2,200円減少する見通しであることがわかった。上野 賢一郎厚生労働大臣が3月6日の閣議後の会見で明らかにした。改革の柱は、高額療養費制度の見直しと、市販薬と成分や効能が類似する「OTC類似薬」の保険給付の見直しなどで、医療費の抑制を通じて保険料負担の軽減を図る狙いがある。高額療養費制度では、医療費が高額になった場合の患者自己負担の月額上限を段階的に引き上げる。2026年8月と2027年8月の2段階で実施され、最終的には現行より最大38%引き上げられるケースも想定される。厚生労働省は、この見直しにより医療費を年間約2,450億円削減できると試算しており、保険料は加入者1人当たり年間約1,400円程度の軽減効果が見込まれるとしている。薬剤費の見直しも改革の柱となる。市販薬と成分や効能が近い「OTC類似薬」については、保険給付を受ける場合でも薬剤費の4分の1を患者が「特別の料金」として負担する制度を新設する。対象は鼻炎、胃痛、解熱鎮痛薬など77成分、約1,100品目とされ、2027年3月の施行を予定している。これにより社会保険料は年間約400円の減少が見込まれる。また、後発医薬品(ジェネリック)があるにもかかわらず先発薬を選択した場合の追加負担も拡大する。現在は差額の4分の1を患者が負担しているが、これを差額の2分の1まで引き上げる方針だ。こうした薬剤関連の見直し全体では年間約800円の保険料軽減効果が見込まれている。その一方で、高額療養費の上限引き上げに対しては、患者団体や野党から「重症患者の負担増につながる」との批判も出ている。国会審議では、保険料軽減が月額150円程度にとどまるとの指摘もあり、受診控えが生じる可能性への懸念も示された。政府は制度の持続可能性確保のための改革と説明するが、患者負担と保険財政のバランスをどう取るかが引き続き議論となりそうだ。 参考 1) 医療保険制度改革で保険料1人当たり年2,200円減、高額療養費制度やOTC類似薬の負担見直し(読売新聞) 2) 高額療養費見直しなどで社会保険料年2,200円減 厚労相が見通し(毎日新聞) 3) OTC類似薬の負担見直し、保険料減は月額33円程度 高額療養費は117円減 上野厚労相(CB news) 4) 「ペットボトル1本分の社会保険料負担軽減のために、高額療養費の負担増やすのか」共産議員が見直し迫る 衆院予算委で質疑(ABEMA TIMES) 6.美容クリニックの再生医療で訴訟相次ぐ 安全性と説明責任が焦点に美容医療を巡る訴訟が相次いでいる。焦点となっているのは、顔のしわやたるみ改善をうたう「プレミアムPRP皮膚再生療法」を受けた後に、頬や目の下にしこりや隆起が残ったとする事案だ。2026年2月には女性3人が東京都内のクリニックを東京地裁に提訴し、施術費用の返還、原状回復のための治療費、慰謝料など計約1,850万円を求めた。原告側は、施術前に重い合併症や除去の困難さ、使用成分の実態について十分な説明がなく、安全性を強調する宣伝の下で同意が取られたと主張している。被害相談の増加を受け、医療問題弁護団は3月1日にプレミアムPRP皮膚再生療法の被害者救済を目的に無料ホットラインも開設し、同種事案の掘り起こしを進めている。この訴訟で争点となるのは、単なる仕上がり不満ではなく、説明義務違反と再生医療法令への適合性だ。報道では、「bFGFを加えたPRP療法は未承認の再生医療に当たり、患者への説明事項は省令で定められているのに、同意書や説明内容が不十分だった可能性」が指摘されている。実際、2025年1月には同種の美容目的再生医療を巡る別件で、東京地裁が医療法人の責任を認める決定が確定した。そこでは、「施術の有効性に十分な科学的根拠が乏しいこと」、「bFGFによる長期のしこりや隆起が起こりうることを説明すべき義務があったのに尽くされなかった」と判断され、解決金支払いと再発防止が求められた。今回の3人提訴は、この先行事例を踏まえ、同種施術の説明体制や広告表示を改めて司法の場で問う意味合いが大きい。美容医療トラブルが急増する背景として、過度な広告、一括払いの勧誘、十分な訓練を経ない医師の参入が挙げられる。消費者保護の視点から患者側は施術を受ける前に「専門医かどうか」「リスク説明が十分か」を見極める必要性がある。今回の訴訟は、その問題が個人の後悔ではなく、説明不足を伴う構造的な消費者被害として司法判断の対象になり始めたことを示している。美容医療では、適応外使用や未承認技術を含む施術ほど、インフォームド・コンセントの質そのものが法的責任の核心になる。 参考 1) 「鏡向くたびに絶望」顔にしこりなど副作用…美容医療受けた女性ら、都内のクリニック提訴(産経新聞) 2) 「成功してるじゃん」美容医療で“しこり”も医師が失敗認めず…被害者が施術費用の返還など求めクリニックを提訴(弁護士JPニュース) 3) 3月1日(日)プレミアムPRP皮膚再生療法被害ホットラインを実施しました(医療問題弁護団) 4) 「美容目的の再生医療で合併症」 医療法人の責任認定、訴訟が終結(朝日新聞) 5) トラブル急増・美容医療の見極め方 消費者保護に取り組む医師・大塚篤司(TBS)【動画】 6) プレミアムPRP皮膚再生療法で被害相談ホットライン開設 医療問題弁護団が3月1日に電話受付 2026年2月には3人の女性が美容クリニックを提訴

35.

事例43 イグザレルト錠2.5mgの査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説下肢慢性動脈閉塞症の患者に投与のリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)錠2.5㎎が、A事由(医学的に適応と認められないもの)が適用されて査定となりました。査定の原因を探るためにカルテを参照しました。他院にて左下肢動脈血栓除去術と血管拡張術が行われたのち、当院にフォローアップのため紹介されたと記載がありました。紹介元からの診療情報提供書には、術後からイグザレルト錠2.5mgの投与が記載されており、「引き続き投与のお願い」の記載がありました。下肢慢性動脈閉塞の術後には必要な薬剤として当院でも投与を継続したものです。念のためイグザレルト錠2.5mgの添付文書を見てみました。成人への投与は「下肢血行再建術施行後の末梢動脈疾患患者における 血栓・塞栓形成の抑制」のみが記載されています。成分量に応じて用法・用量が異なることもわかりました。レセプト表示の「左下肢慢性動脈閉塞症」のみでは「血栓・塞栓形成の抑制投与」を必要とする病名には不十分と判断されてA事由が適用されたものと推測ができます。再審査請求をしました。他院で「血栓除去+血管拡張術」の施行をされたあとの「血栓・塞栓形成の抑制」のフォローアップ紹介であり、処方の継続依頼があったことをカルテの写しを添えて提出したところ、復活しました。これ以後は「下肢血行再建術後」を傷病名に「血栓塞栓症の発症抑制」をコメントに追加してレセプト請求しています。また、再発防止として、レセプトチェックシステムにこの内容のアラートを追加しました。

36.

英語で「足をひきずる」は?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第52回

医学用語紹介:間欠性跛行 claudication今回は「間欠性跛行」について説明します。医療現場ではclaudication(もしくはintermittent claudication)という専門用語が使われますが、患者さんとの会話では、どのような英語表現を使って伝えるのでしょうか?講師紹介

37.

苦痛の評価が難しい患者さん【非専門医のための緩和ケアTips】第119回

苦痛の評価が難しい患者さん症状緩和の講演をすると必ずと言っていいほど「苦痛の評価が難しい患者さんへの対応」を聞かれます。皆さん、悩まされることは一緒ですよね。この機会に私なりの工夫を整理してみます。今日の質問高齢者をケアすることが多いのですが、患者の苦痛を評価する難しさを感じます。苦痛の症状は和らげたいのですが、苦痛を評価するって実はかなり難しいのではと思います。皆さんはどのように対応されているのでしょうか?最初にお伝えしたいのが、今回の質問者は「しっかりと緩和ケアを実践されている」ということです。苦痛緩和を大切に考え、苦痛の評価を丁寧にしようとしているからこその質問ですよね。難しい状況に対し、丁寧なケアを提供しようとしていること自体が本当に大切な態度であり、自信を持ってほしいと思います。私が「苦痛の評価は難しい」と感じる患者の特性や状況があります。最初に思い浮かぶのは、患者に意識障害があり、言葉でのコミュニケーションが難しいケースです。お看取りが近くなると、大半の患者がこうした状況になるので、多くの医療者が経験しているでしょう。せん妄も意識障害ですので、この範疇に入るでしょう。こうした場合、もともと関わってきた患者であれば、表情などの非言語的なサインに注目して、家族や介護・医療関係者で「以前の様子と比べると苦しそうに見える」といった印象を擦り合わせるのが良いと思います。別の状況として、患者が苦痛を言いたがらないといったケースもあります。これはさまざまな要因で生じますが、私の経験からは、「介護者や医療者に遠慮している」「医療用オピオイドなど、薬剤への抵抗感がある」という理由が多かったです。前者の場合、苦痛を訴えることで周囲が対応することを気にされているのでしょう。苦痛を非常に強く訴える患者さんもいれば、医療者を気遣って夜通し苦痛に耐える患者さんもいて、苦痛に対する態度は本当に人それぞれだと感じます。遠慮しがちな方に対しては、「痛みや苦痛は訴えていただいたほうが助かります」「我慢されているのかと心配しています」と伝えることが多いです。ただ、前述のように苦痛との向き合い方は人それぞれの面もあり、「見守る姿勢」も大切だと思っています。薬剤への抵抗感が理由の場合、正確な情報提供をしたうえで、「どのような点が心配なのか」を聞くようにしています。「以前、鎮痛薬を飲んだ際に気分が悪くなったんです」といった過去の経験や、「モルヒネのせいで亡くなってしまった人がいると聞いた」という誤った知識に基づく場合も多いので、再度説明を試みます。ただし、考えを無理に修正しようとすると対立関係になることもあるので、注意が必要です。苦痛の評価が難しい患者の対応について考えてみました。さまざまな工夫ができる分野かと思いますので、皆さんの実践もぜひ聞かせてください。今日のTips今日のTips苦痛の評価が難しくなっている要因に合わせ、対応を考えよう。

38.

80歳以上の夜間高血圧、心血管リスクが2倍~日本の前向き研究

 夜間血圧は、診療室血圧や昼間の血圧よりも健康アウトカムの予測因子として優れているが、超高齢患者における夜間高血圧の臨床的意義はわかっていない。今回、自治医科大学の藤原 健史氏らが実施した80歳以上を対象とした前向き観察研究の結果、夜間高血圧群は夜間正常血圧群に比べて複合心血管アウトカムのリスクが2.15倍と高いことが示された。Hypertension誌2026年3月号に掲載。 本研究は80歳以上の日本人高齢外来患者を対象とした前向き観察研究で、全患者にベースライン時に24時間自由行動下血圧測定を実施した。夜間高血圧は夜間の収縮期血圧120mmHg以上または拡張期血圧70mmHg以上、昼間高血圧は昼間の収縮期血圧135mmHg以上かつ拡張期血圧85mmHg以上と定義した。これらの血圧フェノタイプと複合心血管アウトカム(冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全、大動脈解離および全死因死亡)との関連をCox回帰分析で検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3.9年(1,734人年)の間に、485例中72例(14.8%)に複合心血管アウトカムが発生した。年齢中央値は82歳(四分位範囲:81~85)、男性は44.7%、降圧薬服用者が89.3%であった。・夜間高血圧と昼間高血圧はそれぞれ54.2%と33.6%に認められた。・夜間正常血圧(夜間の収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧70mmHg未満)と比較して、夜間高血圧は複合心血管アウトカムのリスク増加と関連し(調整後ハザード比[HR]:2.15、95%信頼区間[CI]:1.18~3.93)、この関連は昼間の血圧を調整後も持続した。・昼間高血圧ではこのような関連は認められなかった(調整後HR:1.13、95%CI:0.57~2.22)。 本結果から、著者らは「夜間高血圧のスクリーニングにより、超高齢患者における複合心血管アウトカムの高リスク群が特定される」と結論している。

39.

若年成人のがん、唯一死亡率が増えているのは?

 若年成人におけるがん罹患率の増加を報告する研究は多数存在するが、検出バイアスの影響を受けにくい死亡率ではどうか。50歳未満の人々における主要5大がんの死亡率の変化を検証した研究結果が、JAMA誌2026年2月17日号「Research Letter」に掲載された。 米国がん協会(アトランタ)のRebecca L. Siegel氏らは、米国健康統計センター(NCHS)の死亡証明データから、1990〜2023年に50歳未満でがん死に至った約約127万例を解析した。主要5大がん(大腸がん、肺がん、乳がん、白血病、脳腫瘍)を中心に、年間死亡数および10万人当たりの年齢調整死亡率の推移を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1990~2023年に、米国における50歳未満のがん死亡数は計126万7,520例(女性53%)で、年齢調整死亡率は10万人当たり25.5から14.2へと、44%減少した。・2014~23年の年間平均死亡率増減の平均は、脳腫瘍-0.3%(95%信頼区間[CI]:-0.6%~0.0%)、乳がん-1.4%(-1.7%~-1.1%)、白血病-2.3%(-2.3%~-2.2%)、肺がん-5.7%(-7.2%~-4.2%)であった。・大腸がん死亡率のみが2005年以降、年率1.1%(95%CI:0.9%~1.3%)増加しており、1990~94年のがん死因の5位から、2023年には1位となった。・一方、肺がんは1位から4位、白血病は3位から5位に順位を下げた。乳がんは全体では2位、女性では1位のままであった。子宮頸がんは研究期間を通じて減少を続けたものの、1990年と2023年ともに女性のがん死因の3位であった。・男性の順位は全体の傾向を反映していたが、乳がんに代わって1990年には非ホジキンリンパ腫(4位)、2023年には膵臓がん(5位)が入った。 研究者らは、「米国における50歳未満の人々のがん関連死因の上位では、大腸がんを除くすべてのがんで死亡率が低下した。乳がんと白血病は罹患率が増加しているにもかかわらず、死亡率は減少した。大腸がんのみ死亡率が増加している原因はさらなる研究が必要だが、過去の大腸がん検診の推奨開始年齢が50歳だったため、若年者の受診率が低いことは問題だ。若年発症大腸がんは約4分の3が進行期で診断されており、早期発見の重要性が一段と高まっている。現在、検診の推奨開始年齢は45歳に引き下げられたが、遺伝などのリスク要因がある場合や、血便や腹痛などの自覚症状がある場合は、さらに若い年齢からの受診を考慮すべきだ」としている。

40.

新規配合錠、高齢HIV-1感染者の新たな選択肢の可能性/Lancet

 HIV-1感染症の治療において、1日1回1錠で完結する単一の配合錠(STR)の登場は、服薬アドヒアランスと臨床アウトカムを劇的に改善させた。しかし、長期治療や多剤耐性の患者、副作用や薬物相互作用の問題のある患者の中には、既存のSTRを使用できず、依然として1日に複数の薬剤を服用する複雑な多剤併用療法を受けざるを得ない例が少なくない。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のChloe Orkin氏らは「ARTISTRY-1試験」において、高い耐性障壁を持つインテグラーゼ阻害薬(INSTI)ビクテグラビルと、新規作用機序を有するカプシド阻害薬レナカパビルを組み合わせた新しいSTRは、これらの患者の新たな治療選択肢として期待できることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年2月25日号で報告された。新規STR切り替えと継続投与を比較 ARTISTRY-1試験は、複雑な多剤併用療法を受けているHIV-1感染者における、新たなSTRへの切り替え効果の評価を目的に、日本を含む15ヵ国と地域の90施設で実施した非盲検無作為化実薬対照非劣性第III相試験(Gilead Sciencesの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、血漿中のHIV-1 RNA量が<50コピー/mLの状態が少なくとも6ヵ月間持続し、既存のSTRの抗レトロウイルス薬への耐性、不耐性、禁忌のため少なくとも6ヵ月間の複雑な多剤併用療法を受けているHIV感染者を対象とした。 被験者を、経口STR(ビクテグラビル75mg・レナカパビル50mg配合錠)の1日1回投与に切り替える群(371例)、または複雑な多剤併用療法を継続投与する群(186例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、48週の時点におけるHIV-1 RNA量≧50コピー/mLの患者の割合であった。2つ以上の合併症54%、治療期間28年、耐性81% 2024年1~9月に参加者557例(年齢中央値60歳[範囲:22~84]、年齢55歳以上427例[77%]、女性100例[18%])を登録した。 ベースラインにおいて、377例(68%)が脂質異常症、280例(50%)が高血圧、133例(24%)が高血糖/糖尿病、78例(14%)が慢性腎臓病であり、298例(54%)がこれらの合併症のうち2つ以上を有していた。 HIV治療期間中央値は28年(四分位範囲[IQR]:22~32)、複雑な多剤併用療法の1日の抗レトロウイルス薬数の中央値は3剤(範囲:2~11)で、218例(39%)が1日2回の抗レトロウイルス薬の投与を受けていた。 複雑な多剤併用療法を受ける理由は、薬剤耐性(450例[81%])が最も多く、次いで現時点で使用可能なSTRの成分に対する不耐性(128例[23%])、STRが禁忌(33例[6%])の順であった。HIV-1 RNA量≧50は非劣性、治療満足度が改善 48週の時点におけるHIV-1 RNA量≧50コピー/mLの患者は、新規STR切り替え群が3例(1%)、継続群は2例(1%)であった(群間差:-0.3%[95.002%信頼区間[CI]:-2.3~1.8])。非劣性マージン(両側95.002%CIの上限値<4%)を満たしたため、新規STR切り替え群の継続群に対する非劣性が示された。 CD4細胞数のベースラインから48週までの変化の中央値は、新規STR切り替え群が+18/μL(IQR:-72~98)、継続群は-12/μL(-82~93)であり(変化の群間差:+19.0、95%CI:-11.6~49.5)、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.22)。 HIV治療満足度質問票(HIVTSQ)の平均総スコアは、ベースラインから48週までに新規STR切り替え群で+7(SD 10.6)の改善を達成したのに対し、継続群では変化を認めなかった(0[SD 9.6])。有害事象の頻度は同程度 有害事象の頻度は両群で同程度であった(新規STR切り替え群82%、継続群84%)。上気道感染症(9%、13%)、鼻咽頭炎(7%、9%)、下痢(6%、6%)、頭痛(8%、2%)の頻度が高かった。Grade3以上の有害事象(14%、14%)、および重篤な有害事象(14%、12%)の頻度にも両群間で差はなかった。 新規STR切り替え群で、試験薬関連のGrade3以上の有害事象が2例(1%)、試験薬関連の重篤な有害事象が1例(<1%)で発現した。試験薬の投与中止の原因となった有害事象は、新規STR切り替え群で6例(2%)、継続群で1例(1%)にみられた。新規STR切り替え群で5例が死亡したが、これらの中に試験薬関連死はなかった。至適な長期治療選択肢の可能性 著者は、「これらの知見は、抗レトロウイルス薬耐性などの理由により既存のSTRの恩恵を受けられず、複雑な多剤併用療法によりウイルス学的抑制を維持しているHIV-1感染者(とくに、併存疾患を有し、多剤併用のリスクが高い高齢患者)において、新規の至適な長期治療の選択肢としてのビクテグラビル・レナカパビルの使用を支持するものである」としている。 また、「年齢中央値は60歳と、これまでにHIV治療の登録プログラムに登録された研究対象集団としては史上最高齢であった。抗レトロウイルス療法の進歩によりHIV感染者の平均余命がほぼ正常の水準に達し、医療資源が豊富な国ではほとんどの患者が50歳以上となっている現状を踏まえると、これはとくに重要な点である」と考察を加えている。

検索結果 合計:35608件 表示位置:21 - 40