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看護学校で教えるコツ【Dr. 中島の 新・徒然草】(639)

六百三十九の段 看護学校で教えるコツ台風が来たり、梅雨が続いたり。今の時期は出水期(しゅっすいき)の真っただ中。水害にも気をつけなくてはなりません。さて、私は毎年、春から秋にかけて看護学校で教えています。もう20年近くにもなるでしょうか。今回は、その苦労とコツを述べたいと思います。(1)いかに省エネを図るか20年前はオリジナルのスライドを作成して講義をしていました。現在は教科書に沿った形でスライドを作っています。なので使っているスライドは毎年ほぼ同じもの。ただ、前年に使ったスライドを見ても「何を言いたいのかな?」と思うことがよくあります。自分が作ったものであるのにもかかわらず……情けない。「3年後の自分が読んでもわかるようにノートを書け」という格言がありますが、私の場合は「1年後にはもうわからない」という状態です。そういう時は、意味不明なところを修正したり、新たに作成し直したりするしかありません。(2)複数学年に教えると混乱する2024年春から1年生に神経解剖、2年生に脳神経外科を教えています。そうすると、どちらの学生に何を言ったかわからなくなることも。これが医学的知識なら同じことを何度言ってもいいのですが、ギャグをかました時に「前にも言ってましたよね」と言われたら、関西人としてこれ以上恥ずかしいことはありません。中には1年目の試験で落ちて2年目に同じ講義を聴いている学生もいるので、よけいに事態がややこしくなっています。(3)講義の時間調整講義というのは時間通りに終わるとは限りません。そのため、時間調整を目的とした余談をいくつか準備しています。医療関係のニュースや自分の体験を題材にとることが多いですね。たとえば飛行機の中でドクターコールがあった時にどうするか、みたいな話です。日本語ではドクターコールと言いますが、英語だとmedical personnel(医療従事者)なので、看護師も対象範囲。もしドクターコールに名乗り出るならどのような心掛けが必要なのか、そして何を求められるのか、そういうことを伝授しています。(4)勉強、勉強!もちろん学生のモチベーションを保つのも大切な役割。「医療業界は慢性的な看護師不足だ。だから看護師免許証さえ持っていれば失業することはない」ということも常に強調しています。要するに「とにかく勉強して看護師国家試験には必ず受かれ」ということですね。(5)思わぬ質問をされる時に虚を突かれるような質問が来ることがあります。たとえば「脳腫瘍はなぜグリア細胞由来の方が多く、神経細胞由来は少ないのですか?」みたいな。すぐには答えられなかったので「次回の講義で説明します」と言って、後で調べました。考えてみれば、グリア細胞は分裂するけど、成熟した神経細胞は分裂しないので腫瘍化する機会がないわけです。当たり前といえば当たり前なんですけど。(6)専門用語が鬼門同じような意味のさまざまな専門用語があるのが、学生には難しいみたいです。たとえば、灰白質/白質、皮質/髄質、神経細胞/軸索、ニューロン/アクソンといった類語的な専門用語。われわれは無意識のうちに種々雑多な専門用語を使っていますが、学生を混乱させてしまうので注意しなくてはなりません。神経線維についても同様です。上行性/下行性、求心性/遠心性、感覚性/運動性といった専門用語も要注意。意味がほぼ同じなのに呼称が違うと学生が混乱するので、スライドでは併記するよう心掛けています。(7)興味を持たせる工夫無味乾燥な神経解剖においては、できるだけ役に立つ話を心掛けています。ある解剖学的知識がどのような疾患に関係するのか。その疾患は自分や家族にも起こるくらい多い病気だから覚えておくべし、とか。もし珍しい病気の場合は「○○さんという有名人がかかったぞ」とか「国家試験にこういう形で出たぞ」とか、そういう形で強調すると印象に残りやすいと思います。(8)講義のスライドは事前配付配付資料をPDFにして看護学校に送っておくと、学生たちのタブレットに一斉送信してくれます。もちろん講義で使う予定の試験問題については、解答を抜いておかなくてはなりません。また余談についてもネタバレになるので、中身は抜いておきます。(9)学生を当てる出席している学生に順番に当てて寝させないようにしています。使うのは国家試験に出た4択問題がメイン。看護師国家試験だけでは足りないので、臨床検査技師や理学療法士などの国家試験問題を借用することもあります。講義で使った4択問題については、正答集を講義直後に配付。学生にとっては、当てられる恐怖を味わった直後こそが知識を定着させる最高の瞬間に違いありません。以上、自分なりに工夫したさまざまなコツを語らせてもらいました。看護学校や医学部で教える立場にある読者の皆さまの参考になれば幸いです。最後に1句 雨続く 教室の中 熱気あり 

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ASCO2026 レポート 泌尿器腫瘍

レポーター紹介[目次]PROTEUS試験TALAPRO-3試験RAMPART試験SARC041試験SAKK 06/19試験米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)の年1回の総会は、今年も米国イリノイ州シカゴで開催され、2026年は5月29日から6月2日まで5日間の日程で行われた。昨今の円安はさらに進み、5月29日時点で1ドル=160円前後と、現地参加へのモチベーションをそぐには十分な水準であり、今年もオンラインでの参加を選択した。泌尿器腫瘍領域では、前立腺がんを中心に、Oral Abstract Session、Rapid Oral Abstract Session、Poster Sessionで多数の演題が報告された。毎年の目玉であるPlenary SessionにはPractice changingな演題が選出されるが、今年は高リスク限局性/局所進行前立腺がんに対する周術期アパルタミド+ADTを検証したPROTEUS試験がLBA1として選出され、泌尿器腫瘍領域にとっても注目度の高い総会となった。今年のASCOでは、手術を中心とした限局性前立腺がん治療への全身療法の導入に加え、転移を有する前立腺がんにおける分子異常に基づく治療強化、腎細胞がん術後補助療法における免疫療法の位置付けなど、日常診療への影響を考えさせる報告が相次いだ。また、しばしば後腹膜腫瘍として携わる脱分化型脂肪肉腫に対する新たなエビデンスとして、アベマシクリブのSARC041試験もPlenary Sessionで報告された。膀胱がんの免疫併用療法の新時代を感じさせる報告も含め、PROTEUS、TALAPRO-3、RAMPART、SARC041、SAKK 06/19の5演題を取り上げて報告する。目次に戻るPlenary Session 前立腺がん#LBA1 高リスク限局性/局所進行前立腺がんに対する周術期アパルタミド+ADTは病理学的奏効とMFSを改善(PROTEUS試験)Perioperative(neoadjuvant and adjuvant) apalutamide(APA)+androgen deprivation therapy(ADT)vs placebo(PBO)+ADT with radical prostatectomy(RP) in high-risk localized or locally advanced prostate cancer(HR LPC/LAPC): Final analysis of the PROTEUS phase 3 study.Mary-Ellen Taplin(Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, United States)高リスク限局性/局所進行前立腺がんでは、根治的前立腺全摘術後も一定割合で再発や遠隔転移を来すが、手術に全身療法を組み合わせる周術期治療は標準治療として確立していなかった。PROTEUS試験は、根治的前立腺全摘術を予定する高リスク限局性/局所進行前立腺がんを対象に、術前6サイクルおよび術後6サイクルのアパルタミド+ADTとプラセボ+ADTを比較した国際共同二重盲検ランダム化比較第III相試験である。主要評価項目は、病理学的完全奏効または微小残存病変(pCR/MRD)および中央判定による無転移生存期間(MFS)であった。2,109例が登録され、追跡期間中央値約5年時点で、pCR/MRDはアパルタミド+ADT群で8.9%、プラセボ+ADT群で1.0%(オッズ比:10.17、p<0.0001)と有意に改善した。5年MFS率は78.2%と73.5%であり、ハザード比[HR]:0.80(95%信頼区間[CI]:0.67~0.96、p=0.02)と、遠隔転移または死亡リスクを20%低下させた。無イベント生存期間(EFS)も57.1ヵ月と38.4ヵ月で延長し、次治療開始までの期間も約3年遅延したと報告された。Grade 3/4有害事象は39.6%と31.0%で、主な差は皮疹などアパルタミドに関連する毒性であった。本試験は、手術を予定する高リスク前立腺がんにおいて、周術期のアンドロゲン受容体経路阻害薬+ADTが病理学的奏効だけでなくMFSも改善することを示した初の第III相試験であり、前立腺がん周術期治療の考え方を変える報告であった。日本でもアパルタミドは転移を有する去勢感受性前立腺がん(mHSPC)および転移のない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)で使用可能であり、本試験に日本人も含まれており承認される可能性が高い。高リスク限局性前立腺がんの治療は放射線治療も選択肢となり、PROTEUS試験では従来非切除アプローチを優先してきたN1症例も含まれる。術前においても泌尿器科と腫瘍内科、放射線治療科が連携して全身療法を検討する流れが必要かもしれない。本試験の結果を解釈するためのハードルは以下の3点である。1.現在の標準治療である手術単独との比較ではなく両群にADTが行われていたこと2.試験参加およびフォローアップにPSMA-PETが用いられていたこと3.全生存期間(OS)は主要/副次評価項目に入っていないこと、また、この治療を適用するに当たり術後治療まで行う必要性があるかどうか目次に戻るOral abstract session 前立腺、精巣、陰茎#LBA5007 HRR遺伝子異常を有するmHSPCに対するタラゾパリブ+エンザルタミドはrPFSを延長(TALAPRO-3試験)TALAPRO-3: Talazoparib(TALA)+enzalutamide(ENZA) compared with placebo (PBO)+ENZA for the treatment of patients(pts) with metastatic castration-sensitive prostate cancer(mCSPC) harboring homologous recombination repair(HRR) gene alterations.Neeraj Agarwal(Huntsman Cancer Institute[NCI-CCC], University of Utah, Salt Lake City, UT)タラゾパリブはPARP阻害薬であり、エンザルタミドとの併用は転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象としたTALAPRO-2試験で有効性が示されている。ASCO2026では、この併用療法をmHSPCに前倒しし、HRR遺伝子異常を有する症例に対象を絞って検証したTALAPRO-3試験(NCT04821622)の結果が報告された。本試験は国際共同二重盲検ランダム化比較第III相試験で、対象となるHRR遺伝子はATM、ATR、BRCA1、BRCA2、CDK12、CHEK2、FANCA、MLH1、MRE11A、NBN、PALB2、RAD51Cの12遺伝子であった。患者はタラゾパリブ+エンザルタミド+ADT群とプラセボ+エンザルタミド+ADT群にランダム化され、主要評価項目は治験担当医判定による画像上の無増悪生存期間(rPFS)であった。599例が登録され、84%がde novo転移、71%がhigh-volume diseaseであり、アジア人は約39%を占めていた。rPFSはタラゾパリブ群で有意に改善し、3年rPFS率は77%と56%、HR:0.48(95%CI:0.36~0.65、p<0.001)であった。BRCA変異例ではHR:0.37、non-BRCA HRR変異例でもHR:0.57と、一貫した改善が示された。OSは中間解析時点でHR:0.77(95%CI:0.56~1.04)と未成熟であった。安全性については、重篤な有害事象はタラゾパリブ群42%、対照群32%であり、Grade3/4の貧血は51%、輸血は40%に認められた。TALAPRO-3試験は、mHSPCにおいてHRR陽性集団をPARP阻害薬併用による治療強化の対象として確立した試験である。日本人を含む試験であり、承認されればmHSPC診断時からHRR検査を行い、分子異常に基づいて初回治療を選択する診療へ移行する可能性がある。一方で、治療期間が長くなりうるmHSPCでは、貧血を中心とした血液毒性管理と、OS成熟後のベネフィットの評価が今後の課題である。目次に戻るClinical Science Symposium -腎&膀胱-#LBA4511 切除後腎細胞がんに対する術後デュルバルマブ単剤はDFSを有意に改善せず(RAMPART試験)Durvalumab monotherapy versus active monitoring for resected primary renal cell carcinoma in RAMPART: An international, phase 3, randomized controlled trial. James Larkin(The Royal Marsden NHS Foundation Trust, London, United Kingdom)腎細胞がんに対する術後補助療法では、KEYNOTE-564試験によりペムブロリズマブが無病生存期間(DFS)およびOSを改善し、日本でも再発リスクの高い淡明細胞型腎細胞がんに対する標準治療となっている。一方、術後免疫療法の有効性は試験間で一貫しておらず、免疫チェックポイント阻害薬の種類や併用療法の意義は重要な臨床疑問であった。RAMPART試験は、腎摘除後に再発リスクを有する腎細胞がんを対象に、active monitoring、デュルバルマブ単剤、デュルバルマブ+トレメリムマブを比較した国際共同ランダム化比較第III相試験である。対象はLeibovich scoreで中間または高リスク、あるいは完全切除後(M1 NED)症例で、主要評価項目はDFSであった。ASCO2026では、デュルバルマブ単剤とactive monitoringの比較結果が報告された。追跡期間中央値3.5年時点で、3年DFS率はデュルバルマブ単剤群78%、active monitoring群72%であり、HR:0.74(95%CI:0.53~1.04、片側p=0.041)と数値上は改善したものの、事前に規定された有意水準には到達しなかった。一方、既報のデュルバルマブ+トレメリムマブ群では、3年DFS率80%と72%、HR:0.65(95%CI:0.45~0.93、片側p=0.0094)と有意な改善を認めた。OSは未成熟であり、3年OS率はデュルバルマブ+トレメリムマブ群96%、デュルバルマブ単剤群98%、active monitoring群96%で、明らかな差は認められていない。安全性では、Grade3/4有害事象はデュルバルマブ+トレメリムマブ群41%、デュルバルマブ単剤群30%、active monitoring群9%であり、重篤な有害事象はそれぞれ34%、19%、6%であった。まれではあるが、致死的な免疫関連有害事象として重症筋無力症や心筋炎も報告された。RAMPART試験は、デュルバルマブ単剤を術後補助療法の新たな標準とする結果ではなかった。一方で、CTLA-4抗体を加えた併用療法ではDFS改善が示され、とくに高リスクまたはM1 NED症例で利益が大きい可能性がある。日本の日常診療では、すでにOS延長を示したペムブロリズマブ術後療法が標準であり、RAMPARTの結果をただちに診療へ反映する場面は限られるが、術後補助免疫療法におけるリスク選択、併用療法の意義、毒性とのバランスを再考させる重要な報告であった。目次に戻るPlenary Session 脱分化型脂肪肉腫#LBA2 進行脱分化型脂肪肉腫に対するアベマシクリブはPFSを有意に延長(SARC041試験)SARC041: A phase 3 randomized double-blind study of abemaciclib versus placebo in patients with advanced dedifferentiated liposarcoma.Mark Dickson(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY)脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma;DDLS)は、後腹膜原発として診療に携わることも多いまれな軟部肉腫であり、再発・転移例では薬物療法の選択肢が限られている。DDLSではCDK4を含む12番染色体領域の増幅が高頻度に認められることから、CDK4/6阻害薬による治療開発が進められてきた。SARC041試験は、再発または転移を有するDDLSを対象に、アベマシクリブとプラセボを比較した二重盲検ランダム化第III相試験である。アベマシクリブは日本では乳がんに対して使用されている経口CDK4/6阻害薬であり、連日投与可能であることが特徴である。本試験では、進行DDLS 108例がアベマシクリブ200mg 1日2回またはプラセボに1:1で割り付けられた。ベースラインで前治療歴0の患者が両群で約50%ずつ含まれた。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後はプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。PFS中央値はアベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、HR:0.38、p<0.001と有意な延長が示された。6ヵ月PFS率は60%と22%、12ヵ月PFS率は39%と13%であった。奏効率は9%と高くはないものの、プラセボ群では奏効例がなく、DDLSにおいて病勢制御を得る治療としての意義が示された。OS中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月、HR:0.55、p=0.07であり、プラセボ群の85%がクロスオーバーしたことを踏まえると良好な傾向であった。有害事象は下痢、血球減少、悪心など、既知のアベマシクリブの安全性プロファイルに沿うものであった。アベマシクリブ群の39%で減量を要したが、忍容性は管理可能と報告された。SARC041試験は、DDLSにおいて初めて明確なPFS改善を示した第III相試験であり、希少肉腫における分子標的治療の開発として重要な報告であった。ただし、本試験では腫瘍量が多く緊急に細胞障害性化学療法を要する症例や、プラセボ対照試験に適さないほど急速に進行する症例は除外されており、ドキソルビシンなど既存の細胞障害性化学療法に置き換わる治療と位置付けるには慎重な解釈が必要である。また、米国のみで行われた試験であり、日本を含め各国で承認を得られるかどうかは不透明である。目次に戻るOral abstract session -腎&膀胱-#4503 筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱内rBCG+chemo-IO周術期治療は高いpCR率を示す(SAKK 06/19試験)Intravesical recombinant BCG combined with chemo-immunotherapy (chemo-IO) as perioperative therapy for patients with muscle-invasive bladder cancer (MIBC): Primary analysis of SAKK 06/19.Richard Cathomas(Division of Oncology, Cantonal Hospital Graubunden, Chur, Switzerland)筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)では、根治的膀胱全摘術にシスプラチン併用術前化学療法を組み合わせることが標準治療であり、近年はNIAGARA試験により周術期化学療法と免疫療法の併用(chemo-IO)の有効性も示されている。一方で、pCR率はなお十分とはいえず、さらなる治療強化の余地がある。BCG膀胱内注入療法は筋層非浸潤性膀胱がんで広く用いられ、局所免疫反応を誘導する治療であるが、MIBCに対する使用は全身性合併症への懸念もあり十分に検討されてこなかった。SAKK 06/19試験では、免疫原性の増強と安全性改善を目的に開発された組換えBCGワクチンVPM1002BC(rBCG)を、周術期chemo-IOに組み合わせる治療戦略が検討された。本試験は、シスプラチン適格で根治的膀胱全摘術を予定するcT2-T4aN0-1 MIBCを対象とした、オープンラベル単群第II相試験である。rBCGはday 1、8、15に週1回計3回膀胱内注入され、アテゾリズマブ1,200mgはday 1から3週ごとに計4回投与された。ゲムシタビン+シスプラチン療法はday 22から3週ごとに4サイクル行われ、その後に根治的膀胱全摘術が実施された。術後病理でypT2以上またはypN陽性の場合には、アテゾリズマブを術後13サイクル追加する設定であった。主要評価項目は中央病理判定によるpCR(ypT0N0)であり、副次評価項目には病理学的奏効(PaR、ypT1N0以下)、EFS、OS、実施可能性、安全性が含まれた。2022年4月から2025年4月までにスイス国内10施設で47例が登録され、このうち40例が根治的膀胱全摘術を受けた。手術例の臨床病期はcT2が53%、cT3が37%、cT4が10%であり、cN1は12%であった。rBCGは95%の症例で投与され、78%が3回すべての投与を受けた。アテゾリズマブ4回投与は98%、プラチナ併用化学療法4サイクルは95%で実施され、20%ではカルボプラチンへ変更された。中央病理判定による手術例のpCR率は65%(26/40)、PaR率は80%(32/40)であり、登録例全体でみてもpCR率は55%(26/47)であった。治療関連有害事象は、rBCG関連では全Gradeが48%、Grade3が9%、アテゾリズマブ関連では全Gradeが55%、Grade3が15%、Grade4が2%、化学療法関連では全Gradeが98%、Grade3が38%、Grade4が17%であった。治療関連死亡は認められず、追跡期間中央値11.8ヵ月時点で1年EFS率は88%、1年OS率は95%であった。本試験は、chemo-IOにさらに膀胱内rBCGを加えることで、非常に高い病理学的奏効を示した。これは、従来の化学療法単独で期待されるpCR率27~33%を30%程度上回る数値でありChemo+IOで+10%程度、抗体薬物複合体製剤+IOで+20%程度であることを考慮すると、膀胱がんにおいて腫瘍局所の免疫賦活がいかに重要であるかを示唆する貴重な報告である。BCGにより膀胱局所の自然免疫・獲得免疫を刺激し、全身の免疫チェックポイント阻害薬および化学療法と相乗効果を狙うという発想は、MIBC治療開発の新たな方向性として興味深い。もちろん、本試験は単群第II相試験であり、NIAGARA試験やEV+ペムブロリズマブを用いた第III相試験との直接比較ではない。また、EFSやOSの追跡期間はまだ短く、pCRの高さが長期予後改善につながるかは今後の検証が必要である。それでも、MIBCにおいて局所免疫療法を全身治療に組み込むというコンセプトを示した点で、今後のランダム化比較試験や膀胱温存療法への応用に期待が膨らむ内容であった。目次に戻る

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第68回 ゴールを守るか、頭を守るか。W杯でも活躍するサッカー選手の「その後」が教えてくれること

サッカーワールドカップがアメリカで開幕し、こちらニューヨークでも街のあちこちで歓声が上がっています。選手たちの華麗なプレーに見とれながら、医師という立場からはこんなことにも気が向いてしまいます。ピッチの上で輝いた選手たちは、その後の人生を健康に過ごせているのだろうか。実は近年、この問いに真正面から答えようとした大規模な研究が複数発表され、少し意外な、そして考えさせられる結果が明らかになっています。まず朗報から。選手はむしろ「長生き」だったまず、最初にお伝えしたいのは、明るいニュースです。英国スコットランドの元プロサッカー選手7,676人を、年齢や社会的背景をそろえた一般の人2万3,028人と比べた研究では、選手たちは70歳になるまでの死亡率がむしろ低い、という結果が出ています1)。とくに「虚血性心疾患」で亡くなるリスクは2割ほど低く、肺がんによる死亡に至っては約半分でした。若い頃から体を鍛え、走り続けてきた人生が、心臓や血管を守ってくれたのでしょう。運動が健康に良いという、私たちがよく知る事実はここでも裏付けられたわけです。ところが、認知症などの脳の病気に目を向けると、風向きが変わります。同じ研究で、神経変性疾患が主な死因となった人の割合は、一般の人が0.5%だったのに対し、元選手では1.7%。統計的に調整すると、そのリスクはおよそ3.5倍に上りました。病気の種類ごとに見ると差はさらにはっきりし、アルツハイマー病では約5倍、パーキンソン病でも約2倍でした。認知症の治療薬が処方される頻度も、元選手では約5倍多かったのです。長生きした先で、脳という別の臓器が思わぬ代償を払っていた。そう読み取れる結果でした。興味深いのは「守備位置による差」ではなぜ、脳にだけこうした影響が出るのでしょうか。ここで多くの方が「なるほど」と膝を打つのが、続いて発表された研究です。同じ選手たちをポジションごとに分けて調べたところ、神経変性疾患のリスクはポジションによってはっきり異なっていました2)。最もリスクが高かったのはディフェンダーで一般の人の約5倍、ミッドフィルダーが約4.6倍と続き、フォワードは約2.8倍でした。一方で、ゴールキーパーはわずか約1.8倍にとどまり、統計的には一般の人と差があるとは言い切れないレベルだったのです。この違いを説明する最有力の候補が「ヘディング」です。ボールを頭で受ける回数は、フィールドを走り回る選手ほど多く、ゴールキーパーではごくまれです。実際、プロとしての現役期間が15年を超える選手では、リスクが約5倍まで高まっていました。つまり、頭部への衝撃を繰り返し受けた「量」がカギを握っている可能性があるのです。ボールを頭で受けるか、それとも手でキャッチするか。その差が、何十年も先の脳の健康につながっているのかもしれません。私たちがここから学べること誤解しないでいただきたいのは、これは「サッカーは危険だからやめましょう」という話では決してない、ということです。運動がもたらす心臓や血管への恩恵は本物ですし、これらはあくまでトップレベルで長年プレーした選手を対象にした観察研究で、原因を確定できたわけでもありません。それでも、こうしたエビデンスを考えると、選手たちの繰り返す頭部への衝撃を減らす工夫(たとえば育成年代でのヘディング制限など)には、十分な意味がありそうです。1)Mackay DF, et al. Neurodegenerative disease mortality among former professional soccer players. N Engl J Med. 2019;381:1801-1808.2)Russell ER, et al. Association of field position and career length with risk of neurodegenerative disease in male former professional soccer players. JAMA Neurol. 2021;78:1057-1063.

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PPI中止後のGERD再燃、プロバイオティクスが抑制

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)にプロバイオティクスを併用することで、胃食道逆流症(GERD)患者におけるPPI中止後の症状再燃が抑制され、その効果が腸内細菌叢および代謝物のリモデリングを介して維持される可能性が報告された。中国・南昌大学のLi Yingmeng氏らによる研究成果はmSystems誌オンライン版2026年1月29日号に掲載された。 GERDに対する標準治療であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)は高い有効性の一方、長期使用による腸内細菌叢の乱れや中止後の症状再燃が課題となっている。研究者らは、多菌種プロバイオティクス製剤をPPIに併用することで、PPI中止後も症状改善効果が持続するかを検証した無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。 本試験には18~65歳のGERD患者120例が登録された。全例がPPI(ラベプラゾール)20mg/日を8週間投与され、介入群(64例)は3菌株から成るプロバイオティクス製剤を、対照群(56例)はプラセボを併用した。その後、PPIは中止し、さらに4週間プロバイオティクスまたはプラセボのみを継続した。主要評価項目は胃食道逆流症(Reflux Disease Questionnaire:RDQ)スコアの変化、副次評価項目には消化器疾患症状尺度(GSRS)、内視鏡的治癒率、腸内細菌叢解析が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・8週間のPPI併用期間では、両群ともRDQスコアは改善したが、群間差は認められなかった。一方で便秘スコアや下痢スコアはプロバイオティクス群で有意に改善した。・PPI中止後4週間の経過では、プロバイオティクス群では改善が維持されたのに対し、プラセボ群では症状が再燃した。中止後4週間のRDQスコアはプロバイオティクス群5.67±4.59、プラセボ群8.93±7.10で、プロバイオティクス群が有意に良好であった(p=0.017)。RDQスコアに加え、GSRSの逆流症状サブスコアも有意に改善した。・内視鏡評価を受けた27例では、治癒率はプロバイオティクス群36.8%でプラセボ群と比べて12.5%と高かったものの、有意差には至らなかった(p=0.365)。・安全性では重篤な有害事象の増加は認められず、検査値異常もみられなかった。・腸内細菌叢解析では、全体の細菌叢多様性に大きな変化は認められなかったものの、Bifidobacterium animalisやLactiplantibacillus plantarumなどの有益菌が増加し、Bacteroides uniformisなど症状悪化との関連が示唆される菌種は減少した。 著者らは、PPI中止後にみられる症状再燃はGERD診療上の重要な課題である一方、本研究ではプロバイオティクス併用により症状改善が維持され、腸内細菌叢と代謝物のリモデリングがその背景にある可能性を示したとしている。ただし、対象が中国人に限られること、食道炎に対する内視鏡評価例が少数であったことなどから、他地域での再現性や長期予後を検証するためのさらなる研究が必要だとしている。

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日本人統合失調症外来患者の再発率と関連する要因は~MUSASI研究

 社会機能障害は、統合失調症患者の生活の質に大きな影響を及ぼすが、社会機能に関連する因子が再発頻度によって異なるかどうかは明らかになっていない。関西医科大学の嶽北 佳輝氏らは、日本人統合失調症外来患者を対象に、再発頻度別にこれらの因子の違いを検討するため、本研究を実施した。Psychological Medicine誌2026年5月29日号の報告。 本研究は、日本の精神科診療所における統合失調症の多施設共同治療調査・評価(MUSASI)として実施された全国横断研究である。2023年9~10月にかけて日本国内の精神科診療所330施設で実施した。解析対象は、統合失調症関連疾患と診断された患者1万81例。対象患者は、非再発群、低頻度再発群(再発回数:1~2回)、高頻度再発群(再発回数:3回以上)に分類した。社会機能の評価には、社会的職業的機能評価尺度(SOFAS)を用い、61点以上を高機能と定義した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、非再発群3,670例、低頻度再発群4,428例、高頻度再発群1,983例が含まれた。・全体として、患者の55.8%(5,631例)が高社会機能群に分類された。・全群において、高社会機能と有意に関連していた因子は、就労、過去1年間の不安定期間の短縮、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコアの低さ、陰性症状の少なさであった。・非再発群と低頻度再発群では、陽性症状と薬剤関連因子が関連していた。・低頻度再発群と高頻度再発群では、婚姻歴が関連していた。・高頻度再発群では、遅発性ジスキネジアの欠如が因子として浮上した。 著者らは「社会機能に関連する因子は再発頻度によって異なり、再発頻度に基づいた層別介入戦略の必要性が示唆された」としている。

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早期HR+/HER2-乳がん、術後アベマシクリブ初回用量漸増後24週時点での忍容性(TRADE)/ESMO Open

 高リスクの早期ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がんにおけるアベマシクリブ術後療法は再発率を低下させ、全生存期間を改善するが、毒性、とくに下痢で減量や早期の中止をせざるをえない場合がある。TRADE試験においてはすでに、アベマシクリブの早期用量漸増により12週までに目標用量である1日2回150mgに到達し、維持できることが報告されている。今回、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIlana Schlam氏らが本試験の24週時点での臨床アウトカムに関する解析結果について、ESMO Open誌2026年7月6日号で報告した。 TRADE試験は、アベマシクリブ術後療法の適応となる早期リンパ節転移陽性HR+/HER2-乳がんを対象とした医師主導の前向き単群第II相試験である。アベマシクリブを50mg1日2回で2週間投与後、100mg1日2回で2週間投与し、その後、計画された2年間にわたり150mg1日2回に増量した。主要評価項目は、12週時点での複合エンドポイント(あらゆる理由によるアベマシクリブの投与中止率および/または目標標準用量である150mg1日2回投与に到達または維持できなかった割合)で、今回は24週時点での主要評価項目を報告。 主な結果は以下のとおり。・評価可能な89例中、治療開始24週時点で16例(18.0%)がアベマシクリブの投与を中止しており、うち7例(7.9%)が有害事象により中止した。・24週時点でアベマシクリブの投与を継続していた73例(82.0%)のうち、47例(64.4%)が150mg1日2回、18例(24.7%)が100mg1日2回、8例(11.0%)が50mg1日2回の投与を受けていた。・89例中29例(32.6%)が少なくとも1回のアベマシクリブの減量が必要であり、そのうち22例(24.7%)は当初150mg1日2回の用量に達した後、減量された。・患者報告アウトカムによると、治療開始時から5ヵ月目まで、QOLに臨床的に有意な変化は認められなかった。 著者らは「24週の追跡調査における結果は、術後療法としてのアベマシクリブ開始時の早期用量漸増戦略が治療継続率および忍容性を最適化するうえで有用であることを引き続き示している。計画された2年間の治療期間にわたる治療アウトカムを評価するため、追跡調査を継続する」としている。

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再発・難治性B-NHLへのglofitamab、日本人第I相試験の結果

 glofitamabは、T細胞誘導型CD20/CD3二重特異性抗体であり、欧米において再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に承認されている。今回、日本人の再発・難治性B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)患者における安全性・薬物動態・有効性を評価した第I相試験で、glofitamabが管理可能な安全性プロファイルを示し、有望な奏効率が認められたことを、がん研究会有明病院の城内 優子氏らが報告した。International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年7月2日号に掲載。 本試験では、glofitamabの初回投与の7日前にオビヌツズマブ(1,000mg)を前投与し、1サイクル目のday1、8に段階的に増量、2サイクル目のday1(1サイクル目のday8の7日後)から3週ごとに目標用量(コホート1:2.5/10/16mg、コホート2:2.5/10/30mg)を病勢進行まで投与した。主要評価項目は安全性および薬物動態、副次評価項目は有効性であった。 主な結果は以下のとおり。・B-NHL患者8例(DLBCL:5例、濾胞性リンパ腫:2例、形質転換した濾胞性リンパ腫:1例)が登録され(コホート1:5例、コホート2:3例)、年齢中央値は64.5歳、7例がAnn Arbor分類III/IV期であった。・濾胞性リンパ腫の2例は、オビヌツズマブ投与後の血液学的有害事象のため、glofitamabは投与されなかった。・glofitamabの投与サイクルの中央値は、コホート1が48サイクル、コホート2が43サイクルであった。・7例にGrade3/4の有害事象が認められたが、Grade5は報告されなかった。・重篤な有害事象は2例に認められたが、用量制限毒性は認められなかった。・glofitamab投与を受けた全患者でサイトカイン放出症候群が認められた(Grade1:3例、Grade2:2例、Grade3:1例)が、ほとんどがコホート1で発現した。・血清glofitamab濃度は両コホートで同様の経時変化を示し、曝露量は用量に比例して増加した。・全奏効率および完全奏効率はいずれも75.0%(8例中6例)で、コホート1で60.0%(5例中3例)、コホート2で100%(3例中3例)であった。

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PSSA菌血症、ペニシリンG vs.抗ブドウ球菌ペニシリン/Lancet

 ペニシリン感受性黄色ブドウ球菌(PSSA)菌血症の治療について、90日死亡率に関するベンジルペニシリン(ペニシリンG)の抗ブドウ球菌ペニシリン(flucloxacillinまたはクロキサシリン)に対する事前既定の非劣性基準は満たされなかった。しかし、非劣性の事後確率は96.1%であり、急性腎障害(AKI)のリスク低減が認められたことが、オーストラリア・メルボルン大学のJoshua S. Davis氏らStaphylococcus aureus Network Adaptive Platform(SNAP)Trial Groupによる、研究者主導の国際的な多施設共同無作為化非盲検試験「SNAP試験」の結果で示された。過去にはまれであると考えられていたPSSA菌血症が世界的に再興している。ペニシリンGは薬物動態や有害事象の面で優れる可能性があるが、検出できないペニシリン耐性への懸念から、重症感染症には抗ブドウ球菌ペニシリンを基本とする抗菌薬治療が推奨されている。Lancet誌オンライン版2026年6月17日号掲載の報告。90日時点の全死因死亡についてペニシリンGの非劣性を評価 SNAP試験は8ヵ国(オーストラリア、カナダ、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、シンガポール、南アフリカ共和国、英国)で実施されている現在進行中の試験で、複数の臨床疑問に取り組んでいる(ジャーナル四天王「MSSA菌血症、セファゾリンは抗ブドウ球菌ペニシリンに非劣性/NEJM」)。本論では、黄色ブドウ球菌菌血症に対する複数の治療(例:抗菌薬治療、クリンダマイシン併用療法、早期の経口薬への切り替えなど)を評価している研究グループの、抗菌薬治療のPSSAに関する結果が報告された。 研究グループは8ヵ国の67病院に黄色ブドウ球菌菌血症で入院したあらゆる年齢層の患者を登録し(本論では18歳以上の成人に関する結果を報告)、ペニシリンG投与群、flucloxacillinまたはクロキサシリン投与群のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付け、ペニシリンGの非劣性を評価した。推奨標準投与量は、ペニシリンGが1.8g(4時間ごと)または2.4g(6時間ごと)静脈内投与、flucloxacillinは2.0g(6時間ごと)静脈内投与、クロキサシリンは2.0g(4時間ごと)静脈内投与。クロキサシリンはflucloxacillinが承認されていない国(カナダ、イスラエル、シンガポール、南アフリカ共和国)でのみ使用された。 主要アウトカムは、試験登録後90日時点の全死因死亡であり、データが得られた全患者を対象とするITT集団で評価した。解析には階層ベイズロジスティック回帰モデルが用いられ、ペニシリンGの非劣性は補正後オッズ比(OR)が1.20未満であることと定義した。解析は、500例の被験者が90日間の追跡期間を完了するごとに行われた。90日死亡率のaORは0.67、AKI発生のaORは0.50 試験は第4回の中間解析後、データ安全性モニタリング委員会から、flucloxacillinまたはクロキサシリン群においてAKI増加が認められたことを理由に、早期の被験者登録の中断が要請され、2024年8月7日に終了した。 2022年2月18日~2024年6月21日に、PSSAが検出された成人493例のうち適格基準を満たした281例が無作為化された(ペニシリンG群156例、flucloxacillinまたはクロキサシリン群125例)。患者背景は、年齢中央値67歳(四分位範囲:56~77)、87例(31%)が女性、194例(69%)が男性であった。 主要アウトカムの90日死亡率は、ペニシリンG群21/152例(14%)、flucloxacillinまたはクロキサシリン群26/121例(22%)、補正後オッズ比(aOR)は0.67(95%信用区間[CrI]:0.35~1.28)であり、ペニシリンG群の非劣性の事後確率は96.1%、優越性の事後確率は88.9%であった。 AKIの発生は、ペニシリンG群17/153例(11%)、flucloxacillinまたはクロキサシリン群27/124例(22%)、aORは0.50(95%CrI:0.26~0.94)であり、ペニシリンG群の非劣性の事後確率は99.8%、優越性の事後確率は98.4%であった。 重篤な有害事象は、ペニシリンG群6/156例(4%)から7件、flucloxacillinまたはクロキサシリン群9/125例(7%)から10件が報告された。 結果を踏まえて著者は、「成人PSSA菌血症の治療について、有効性改善の可能性および安全性が良好であるという観点から、flucloxacillinまたはクロキサシリンよりもペニシリンGを優先すべきであることが示唆された」とまとめている。

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前糖尿病者、生活習慣改善やメトホルミンは多疾患併存リスクを軽減するか/JAMA

 前糖尿病の成人において、生活習慣の改善は多疾患併存の負担軽減と関連するが、メトホルミン介入ではそのような関連は示されなかった。米国国立老化研究所のMarcel E. Salive氏らDPP Research Groupによる、無作為化試験の被験者を長期にわたって追跡評価した観察コホート研究で示された。個別疾患のみならず多疾患併存の予防や発症遅延についての研究は、公衆衛生上きわめて重要であるが、長期的な追跡調査で有効性が実証された介入方法はほとんどない。今回の結果について著者は、「生活習慣改善プログラムは、慢性疾患の発症を長期にわたって抑制する可能性がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年6月15日号掲載の報告。無作為化試験に参加した前糖尿病患者を、試験後21年間にわたり追跡 研究グループは、前糖尿病の成人における多疾患併存の発症との関連性について、生活習慣への介入またはメトホルミンによる介入とプラセボを比較する検討を、1996年6月1日~2021年12月31日に米国27施設で実施した。1996年6月1日~1999年5月28日の3年間にわたるDiabetes Prevention Program(DPP)に、2型糖尿病リスクの高い成人3,234例が登録され、これらの被験者はその後にDPP Outcomes Study(DPPOS)に登録された。本コホートのうち、2021年までのCenters for Medicare & Medicaid Services疾患データが入手可能であり、同意が得られた1,173例のデータについて、2024年6月5日~2025年11月7日に解析を行った。 DPPにおいて被験者は、生活習慣改善群、メトホルミン群、プラセボ群に無作為化された。DPPOSにおいては、プラセボ投与が中止され薬物治療が非盲検化された。メトホルミン治療は継続された。 生活習慣改善群には年2回の集団介入が提供され、また全被験者について2014年までに年4回、生活習慣改善の介入が提供された。 主要アウトカムは多疾患併存の発症で、Medicare支払いデータベースで定義される15の主要な慢性疾患のうち2つ以上の発症が認められる場合と定義した。 Cox比例ハザードモデルを用いて、各治療群のアウトカム発症リスクを推定した。対プラセボの多疾患併存リスク、生活習慣改善群は低下、メトホルミン群は差異なし 1,173例(年齢中央値74歳[四分位範囲[IQR]:70~80]、795例[68%]が女性)のうち、993例(85%)で2つ以上(中央値5[IQR:3~7])の疾患の併存が、フォローアップ終了時点までに認められた(生活習慣改善群316/385例[82%]、メトホルミン群327/385例[85%]、プラセボ群350/403例[87%])。 多疾患併存のリスクは関連する共変量補正後、生活習慣改善群がプラセボ群と比較して低下した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.68~0.93)。メトホルミン群とプラセボ群では有意差がみられなかった(HR:0.91、95%CI:0.78~1.07)。 これらの関連性は、多疾患併存の定義から糖尿病を除外した場合も維持されていた。また、最も医療費が高い疾患の組み合わせに限定した場合、生活習慣改善群とプラセボ群を比較した関連性のHRは0.57(95%CI:0.38~0.85)であった。

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家庭血圧測定値の遠隔モニタリングで心血管イベントリスクが低下

 動脈硬化性疾患(ASCVD)と診断された50歳以上の成人において、帯状疱疹(HZ)ワクチンの接種は、主要心血管イベント(MACE)およびその他の心血管アウトカムのリスク低下と関連するという研究結果が、米国心臓病学会年次総会(ACC.26、3月28~30日、米ニューオーリンズ)で発表予定である。 米カリフォルニア大学リバーサイド校のRobert Nguyen氏とAditya Desai氏は、米国のTriNetXデータベースを用い、2018年1月1日~2024年1月1日にASCVDと診断された50歳以上の成人を対象とした後ろ向きコホート研究を実施し、この集団において帯状疱疹ワクチン接種が心血管リスクを低減するかどうかを検討した。傾向スコアマッチング後、HZワクチン接種群27万5,304人と非接種群27万5,304人が解析対象となった。 解析の結果、HZワクチン接種は、MACE、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスク低下と有意に関連していた(ハザード比はそれぞれ、0.54、0.39、0.73、0.73)。さらに、HZワクチン接種は、静脈血栓塞栓症、心不全、心房細動または心房粗動のリスク低下とも関連していた(同0.63、0.67、0.70)。 Nguyen氏は、「このワクチンは、心筋梗塞、脳卒中、死亡のリスク低減に対する心血管保護作用を繰り返し示している。既に心血管疾患を有する高リスク集団では、その効果は一般集団よりもさらに大きい可能性がある」と述べている。 自宅で血圧を測定するよう患者に促すことで、心血管イベントの発生リスクを低減できる可能性を示した新たな研究が報告された。家庭血圧を測定し、その結果を医師と共有した人では、急性冠症候群(ACS)、脳卒中、心不全による入院や死亡のリスクが約34%低かったという。英エディンバラ大学プライマリケアeヘルス分野名誉教授のBrian McKinstry氏らによるこの研究の詳細は、「European Heart Journal-Digital Health」に5月26日掲載された。 McKinstry氏は、「本研究は、家庭血圧測定値の遠隔モニタリングが血圧を低下させるだけでなく、脳卒中や心筋梗塞の発生も減少させることを示した、これまでで最も強力なエビデンスである」とニュースリリースで述べている。 今回の研究では、2019年3月1日から2021年2月28日の間に第一選択の降圧薬を処方された高血圧患者45万4,180人を対象に、2022年3月1日まで追跡し、家庭血圧測定値の遠隔モニタリングと心血管アウトカムとの関連を評価した。心血管アウトカムは、ACS、脳卒中、コントロール不良の心不全による入院または死亡を対象とした。 対象者のうち9,465人が「Connect Me BP」と呼ばれる遠隔モニタリングサービスを利用していた。このモニタリングサービスでは、患者に家庭血圧の測定を促すショートメッセージが送信され、その測定値が収集される。その後、毎週・毎月・3カ月ごとの測定値の報告書が主治医に送られ、必要に応じて医師が患者に連絡を取る仕組みとなっている。 その結果、遠隔モニタリング群では開始から3カ月以内に血圧の低下が認められ、その効果は1年以上にわたって維持された。この遠隔モニタリングサービスを1年以上にわたり利用した患者と一度も利用しなかった患者(通常ケア群)を対象に、3年間の心血管イベントの発生率を比較したところ、ACSは遠隔モニタリング群で2.7%、通常ケア群で4.0%、心不全はそれぞれ1.1%と3.6%、脳卒中は1.4%と2.2%であった。年齢や性別、降圧薬数などの因子を一致させた遠隔モニタリング群5,297人、対照群18万7,232人を対象に解析した結果、遠隔モニタリング群でACS、脳卒中、心不全による入院または死亡のリスクが33.5%低く(調整オッズ比0.665、95%信頼区間0.501~0.884)、全死因死亡リスクも約40%低かった(同0.602、0.392~0.925)。 論文の筆頭著者であるエディンバラ・ネピア大学のJanet Hanley氏は、「脳卒中、心筋梗塞、心不全は死亡や障害の主要な原因であり、そのリスクを低減できるのであれば大きな意義がある。血圧の遠隔モニタリングは、血圧コントロールの改善を支援することで、このリスク低減に役立つ。その上、このシステムには、簡便で使いやすいという利点もある」とニュースリリースで述べている。 研究グループは今後、心血管リスクがより高い患者において、遠隔モニタリングによりさらに大きな利益が得られるのかを検証する必要があるとしている。 英国心臓財団(BHF)の研究部門ディレクターであるJames Leiper氏は、「高血圧は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める。高血圧と診断された患者は、治療が適切に行われていることを確認するため、綿密なモニタリングを受ける必要がある」と述べている。同氏はまた、「本研究は、自宅で定期的に血圧を測定し、その結果を医師に送信するとともに、測定を促す定期的なリマインダーを受けることが、血圧コントロールの改善に役立つ効率的なアプローチであることを示す新たなエビデンスである」と評価した。さらに同氏は、「今回の研究で示された、重篤な心血管イベントによる入院や死亡リスクの低下は心強い結果である。このような革新的なアプローチは、人々がより長く健康に生活することに貢献する可能性がある」と結論付けている。

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保護者の料理スキル、子どものレジリエンスや思いやり行動と関連

 子どもの心の健康には、家庭環境や親子関係が大きく関わることが知られている。今回、日本の小学生と保護者を対象とした縦断研究により、保護者の料理スキルが高いほど、子どものレジリエンス(困難への対処力)や向社会的行動(思いやり行動)が高い傾向にあることが示された。さらに、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが、この関連に一部関与している可能性も示唆された。研究は、東京科学大学大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野の谷友香子氏らによるもので、詳細は5月1日付の「BMC Psychology」に掲載された。 思春期は多くの精神疾患が発症し始める時期とされ、この時期にレジリエンスや向社会的行動を育むことは、その後のメンタルヘルスに重要と考えられている。これまで、家族の結び付きや親の関わりなどの家庭環境が、子どもの心理的発達に関与することが報告されてきた。なかでも食事や調理は、親子のコミュニケーションや家族のつながりを生む日常的な活動とされる。日本の「おふくろの味」という言葉にも家庭料理への情緒的価値観が表れている。こうした背景から、著者らは保護者の料理スキルと子どものレジリエンスや向社会的行動との関連を検討した。 著者らは、東京都足立区の全69公立小学校に通う小学4年生と保護者を対象とした「A-CHILD研究」のデータを解析した。2018年のベースライン調査参加者を2年間追跡(追跡率87%)し、最終的に3,641組を解析対象とした。保護者の料理スキルを4群に分け、2年後の小学6年時点における子どものレジリエンスや向社会的行動との関連を検討した。解析ではベースライン時点の心理指標や家庭背景因子を調整したほか、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが、この関連を媒介するかも解析した。 多変量解析の結果、ベースライン時点で保護者の料理スキルが高いほど、2年後の子どものレジリエンスおよび向社会的行動のスコアが高いことが示された。交絡因子を調整した解析では、料理スキルが最も低い群と比べ、最も高い群ではレジリエンススコアが8.75点高く(95%信頼区間〔CI〕 7.38~10.1)、向社会的行動スコアが9.51点高かった(95%CI 7.68~11.3)。これらの関連は、ベースライン時点の各スコアを調整後も維持され、料理スキルが高い群ほどスコアが段階的に高くなる傾向が認められた。さらに、この関連は世帯収入や子どもの性別によらず一貫していた。 また、保護者の料理スキルが高い群では、子どもの野菜摂取頻度や親子で一緒に料理する頻度、学校生活について親子で会話する頻度なども高かった。この関連について媒介分析を行ったところ、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが関連の一部を説明していた。 著者らは、「保護者の料理スキルは単なる調理技術ではなく、家庭内の関係性や生活習慣を通じて子どもの精神的発達に影響し得る『修正可能な家庭資源』であり、調理教育などの支援を通じて思春期のメンタルヘルス向上につながる可能性がある」と述べている。 なお、著者らは本研究の限界として、保護者1名による評価や自己報告バイアスの可能性、食事の質の未評価、残余交絡や因果関係の不確実性、COVID-19の影響、単一地域調査による一般化可能性の制約などを挙げている。

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手術やPCIはどこまで「本当に効いている」のか?―シャム対照試験とORBITA試験シリーズが示した医療の本質―【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第98回

「効く」とは何か―RCTとプラセボの基本医学において「治療が効く」とは何を意味するのでしょうか。単に「治療後に症状が改善した」という事実だけでは、その治療の有効性を証明したことにはなりません。人間の身体には自然治癒力があり、時間の経過とともに軽快することも多いからです。また、医師の熱心な態度や、最新治療を受けるという期待感が心理的に影響し、実際に痛みを和らげてしまうこともあります。これら、純粋な治療のメカニズム以外で評価を歪めうる要因を、医学では「バイアス」と呼びます。このバイアスを排除するために確立された方法が、無作為化比較試験(RCT)です。患者をランダムに「治療群」と「対照群」に分けることで背景を均等にし、純粋な治療効果をあぶり出そうとします。しかし、この方法の本質は「どう分けるか」ではなく、「比較対象(対照)に何を置くか」にあります。新薬の試験では、見た目がそっくりな「プラセボ(偽薬)」が用いられますが、これは患者の期待感や安心感(プラセボ効果)を制御するためです。つまり、現代医学における真の治療効果とは、「全体の改善度」から「プラセボ効果」を差し引いた、残りの部分を指すのです。侵襲的治療とシャム手術―その意義と歴史では、手術やカテーテル治療のような侵襲的医療ではどうでしょうか。実は、これらの手技は薬以上に強力なプラセボ効果を伴うことが知られています。「手術室に入り、麻酔を受け、専門医の処置を受ける」という強烈な体験は、患者に「治るはずだ」という強固な暗示を植え付けるからです。この影響を排除するために考案されたのが、「シャム手術(sham procedure)」です。これは、皮膚の切開などは行うものの、肝心の手術操作(病変の切除など)はせずに終了する「偽の手術」です。歴史的に見れば、シャム手術はときに医療界の常識を冷酷に覆してきました。その最も古典的な例が、1959年にアメリカのLeonard A. Cobb氏らが発表した内乳動脈結紮術(狭心症の手術)の試験です1)。当時、この手術で多くの患者が「胸の痛みが消えた」と喜び、医師も効果を確信していました。しかし、本物の手術と「切開するだけのシャム手術」を厳密に比較したところ、両群の症状改善度にまったく差がないことが判明したのです。それまで大真面目に行われていた手術の効果は、すべて強力なプラセボ効果でした。しかし、シャム手術の実施には高い壁が立ちはだかります。・倫理的・安全性の問題:効果が期待できないにもかかわらず、患者に麻酔や切開という利益のないリスクを負わせることの是非。・実施の困難さ:完全な盲検化(患者や医師に隠し通すこと)が難しく、また「痛み」のような主観的指標はプラセボ効果が最大化しやすいこと。シャム対照試験は、「科学的な厳密性を追求すればするほど、倫理的なジレンマに直面する」という、臨床研究の超え難い溝を象徴しています。ORBITA試験からORBITA-2へ―PCIのパラドックスこの困難を極限まで乗り越え、現代の循環器内科の領域に激震を走らせたのが、2017年のORBITA試験です2)。対象は、心臓の血管が狭くなる安定狭心症へのカテーテル治療(PCI)です。血管をステントで広げれば胸痛は消える。これは疑いようのない自明の理とされていました。同試験では、患者全員に徹底的な薬物治療を行ったうえで、本物のPCI群とシャムPCI群にランダムに分け、厳密な盲検化のもとで比較しました。結果は衝撃的でした。運動ができる時間の延長や症状の改善において、本物のPCIはシャムPCIに対して有意な差を示せなかったのです。この結果は当時、「PCIは意味がない」という極端な誤解を生みましたが、本質はそこではありません。「血管を物理的に広げる劇的な治療でさえ、その効果の大部分はプラセボ効果、あるいは徹底的な薬物療法の恩恵であった」という事実を証明した点にあります。医療界はこの事実を真摯に受け止め、さらなる検証へと進みました。それが2023年のORBITA-2試験です3)。今度は「抗狭心症薬をあえて中止・最小限にした状態」で比較したところ、PCI群がシャム群に対して症状を明確に改善させることが示されました。ここから、治療の価値とは手技そのものに絶対的に宿るのではなく、「どのような患者に、どのような治療環境のもとで行うか」という、関係性の中で流動的に決まるものだという重要な示唆が得られます。ORBITA-CTOと「医療の真の目的」この考え方は、最も治療難易度が高いとされる慢性完全閉塞(CTO)病変にも適用され、ORBITA-CTO試験が行われました4)。試験の結果、CTO-PCIはシャム群に比べて患者の狭心症症状を減らし、生活の質(QOL)を向上させることが証明されました。その一方で、死亡率や心筋梗塞の発症率といった「予後(寿命)」の改善には明確な差が認められませんでした。この結果は、CTO病変へのカテーテル治療の本質をクリアに定義しました。この治療は「命を延ばすための戦略」ではなく、「患者の日々の苦痛を和らげ、人生の質を豊かにするための戦略」であるということです。医療の目的を、病気の完治や延命だけに置きがちな私たちに、この研究は「いま目の前の患者が求めている利益(ベネフィット)とは何か」という根源的な問いを突きつけています。結びにかえて―シャム猫の瞳が教えてくれること ここで少しだけ、私の個人的な思い出話をさせてください。私は大の猫好きで、かつて美しいサファイアブルーの瞳を持つシャム猫と暮らしていました。そのため、医学の世界で初めて「シャム手術(sham surgery)」という言葉に出会ったとき、胸がチクリと痛んだのを覚えています。私の愛したあの気品ある猫の血統が、「偽物」や「見せかけ」という意味の形容詞として使われているのだろうか、と。しかし調べてみると、すぐに誤解は解けました。医学の “sham” は「欺瞞」「見せかけ」を意味する古い英語に由来し、猫のシャムはタイの旧国名(Siam)に由来する、まったく別の語源だったのです。あの美しい猫が「偽物の象徴」ではないとわかり、ホッと胸をなでおろしました。現代医学は、科学の光によって「本物の効果」と「見せかけの効果(プラセボ)」を冷徹に切り分けようとします。その厳密さは、患者を過剰な医療介入から守るために不可欠なものです。しかしその一方で、日常の中にある大切なもの――かつて私を癒やしてくれたシャム猫のぬくもりや、医師が患者に与える安心感の価値は、そのような科学的な二分法とは無関係な場所に存在しています。医学がどれだけ進歩し、手術の効果が数値化されたとしても、医療の本質には依然として「言葉にできない安心感」というプラセボ効果(=見せかけの優しさ)が満ちています。そして、それらもまた患者を救う大切な医療です。「本物」と「偽物」の狭間で葛藤すること、そしてその両方の価値を認めること。それこそが、医学という不完全で、しかし限りなく人間的な学問を学ぶ本当の意義なのかもしれません。 1) Cobb LA, et al. An evaluation of internal-mammary-artery ligation by a double-blind technic. N Engl J Med. 1959;260:1115-1118. 2) Al-Lamee R, et al. Percutaneous coronary intervention in stable angina (ORBITA): a double-blind, randomised controlled trial. Lancet. 2018;391:31-40. 3) Rajkumar CA, et al. A Placebo-Controlled Trial of Percutaneous Coronary Intervention for Stable Angina. N Engl J Med. 2023;389:2319-2330. 4) Khan S, et al. Randomized, Placebo-Controlled Trial of Chronic Total Occlusion Percutaneous Coronary Intervention in Stable Angina: The ORBITA-CTO Trial. J Am Coll Cardiol. 2026 Mar 29. [Epub ahead of print]

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CVカテーテルがフォーカスなら抜去すべき?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第30回

Q30 CVカテーテルがフォーカスなら抜去すべき?ICUに入るような患者について、どうしても中心静脈カテーテルを抜きたくなくても、フォーカスとして疑われた場合には抜くべきですか?

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消化管閉塞への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第127回

消化管閉塞への対応進行がん患者の緩和ケアで悩まされる病態の1つに「消化管閉塞」があります。症状緩和が難しく、食という楽しみを奪うという意味でも生活の質(QOL)への影響が大きいですよね。今回は消化管閉塞に対する対応を考えてみます。今日の質問在宅で大腸がん患者を担当しているのですが、消化管閉塞症状が強くなってきました。もともと食べることが好きな方なので、食べると吐いてしまうといった様子に、こちらもつらくなります。何かできる工夫はありますか?悪性疾患の消化管閉塞は、診ているこちらもつらいですね。私も質問者の方と同じような経験をしてきました。器質的な閉塞の場合は手術ができない時点で、なかなか根本的な介入が難しいのが現実です。その中でもQOLを低下させないために、私が取り組んでいる工夫を紹介します。最初に、大腸がんなど消化管閉塞を生じやすいがん種の場合、患者・家族と治療方針を話し合っておくことが重要です。将来的に消化管閉塞を来すと食事の経口摂取が難しくなる可能性が高いことなどを共有し、「経皮的減圧胃瘻を選択肢として検討するか」といった話し合いをしましょう。将来生じうることに対する心構えができている場合とそうでない場合では、感じるつらさも違ってくる印象があります。実際に消化管閉塞症状が生じ始めたタイミングでは、閉塞の程度を評価するのが大切です。完全に閉塞しているのか、不完全な閉塞で内容物の状態次第で通過が可能なのかで大きく対応は異なります。閉塞部位では腸管内圧が上昇するため、減圧が重要な治療となります。不完全閉塞であれば、症状の具合に合わせて食事量の調整や薬物療法、減圧などを組み合わせることが重要なアプローチとなります。完全閉塞の場合、経鼻胃管がなければ、経口摂取をするたびに腹痛や嘔吐をすることになります。経鼻胃管の留置を提案しますが、留置自体も苦痛にはなるので、そこも患者との話し合いが必要です。私の経験上も、「どうしても経鼻胃管は嫌だ」と拒否した方もいました。こうした苦痛をゼロにすることは難しいので、患者ごとのベストを実現できるように一緒に取り組んでいくことが重要です。症状緩和だけでなく、ケア提供者と患者・家族が一緒に取り組む中で関係を構築していくことも、重要なケアの一部なのです。今日のTips今日のTips悪性疾患による消化管閉塞は、目標の設定と点滴・胃管・薬物療法の組み合わせが大切です。

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第323回 財務省、「春の建議」で「医学部・歯学部・薬学部の大胆な定員削減」「医療法人の業務範囲の拡大」を提言

財源問題先送りの骨太原案に市場が動揺こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。6月30日に政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案(あくまでもまだ原案)がまとまりましたが、昨年まで明記されていた「財政健全化」の文言が消えたことで、債券市場が大きく動揺、長期金利も約30年振りの高水準となっています。高市政権下での積極財政による財政悪化リスクを懸念して債券売りが広がっているのです。消費税の減税分を何で賄うかの問題も解決していません。戦略17分野への官民投資など、一見華々しい“成長戦略”をぶち上げる一方で、財源問題を先送りする高市政権、結局最後に割を食うのは社会保障費ということにならなければいいのですが……。70歳以上の患者自己負担割合については、「可及的速やかに現役世代と同様に原則3割とすべき」ということで、まだ原案段階の「骨太」の前に、今回は「建議」について書いてみたいと思います。財務省の財政制度等審議会は6月26日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に向けた「春の建議」を取りまとめ、片山 さつき財務相に提出しました。「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」と題された建議の「III.社会保障」の項では、社会保障負担率(国民所得に対する社会保険料負担の割合)を指標として、「具体的な数値目標と年限を明確に掲げるとともに、その達成に向けた社会保障改革の具体的な改革項目について、工程表を改めて作成すべき」と提言。そのうえで、ロードマップに沿った社会保障制度改革の着実な実施を通じ、家計可処分所得の持続的な増加につなげる必要性を指摘しました。中でも70歳以上の患者自己負担割合については、「可及的速やかに現役世代と同様に原則3割とすべき」「その実現に向けた具体的な道筋を明確に示すべき」としました。現行の患者自己負担割合は70歳未満は3割、70~74歳は2割、75歳以上は1割が原則となっています。財制審は患者自己負担割合を収入などの支払い能力ではなく年齢で決めるのは「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心の構造の象徴だ」と指摘、まず70~74歳を原則3割に引き上げ、75歳以上も経過措置を許容しつつ3割にすべきだと訴えました。70歳以上の患者自己負担割合については、自民党と日本維新の会も社会保障改革の論点の1つとして挙げており、維新は70歳以上を原則3割とするよう訴え、自民は慎重姿勢を示しています。ちなみに、6月30日にまとめられた骨太の方針の原案には、高齢者の患者自己負担については「原則3割負担」とは明記されておらず、「高齢者の受診行動や所得状況等を踏まえた窓口負担の見直しについて、令和9年度(2027年度)予算編成過程で結論を得る」とマイルドな表現になっています。「理系分野の高等教育を受ける人材配分の在り方として課題がないか、社会経済全体の発展・成長に向け検証が加えられるべき」「春の建議」には「秋の建議」と同様、財務省がその時点で考える医療制度のさまざまな改革案が盛り込まれます。時にはややエッジの効いた政策(診療報酬の地域別単価など)が記されることもあります。今回も、なかなか興味深い提案がいくつかありましたので、そのいくつかを紹介しておきましょう。「II.人口減少と不確実性の時代における総合的な国力の強化」の項では、「医学部・歯学部・薬学部の定員数の削減」を提言しています。建議は、「最新の医師需給推計によれば、2029年から2032年の間で需給が均衡することが見込まれており、医学部は6年制であることを踏まえると、現在の定員水準を維持した場合、医師数が過剰となることは既に確定的であり、医学部定員を計画的に削減していく必要がある」としています。そして、「歯科医師・薬剤師についても、2012年以降、国家試験の合格者数が平均で定員数の8割程度となっており、既に定員数が過剰な状況にある。歯科医師・薬剤師を更に増加させる必要性は乏しい」と断じ、「理系の学問分野間の人材配分の適正化の観点からも、医学部・歯学部・薬学部の大胆な定員削減に踏み切るべき」としています。建議ではまた、「医療分野への人材配分及び専門人材の効率的活用」も提言、理系の優秀な人材が医療分野に集中していることを、「人口減少が続く中で、特定の業種・分野に人材が偏ることは、他の業種・分野への専門人材の供給に影響を及ぼしていることが懸念される」と問題視しています。とくに医学部について、「足もとの医学部定員が今後も維持された場合、2050年には約85人に1人(1970年における割合の約5倍)が医学部に進学する見込みとされている。こうした状況について、理系分野の高等教育を受ける人材配分の在り方として課題がないか、社会経済全体の発展・成長に向け、希少な人材を最大限に有効活用する観点から検証が加えられるべきである」と、需給とは別の観点からも医学部・歯学部・薬学部の定員削減の必要性を説いています。「MCDBの報告項目の精緻化」は財務省が日本医師会と対峙していくための武器の強化「III.社会保障」の項では、「医療機関の経営情報の更なる『見える化』」を提言、とくに「MCDBの報告項目の精緻化」と「職種別給与の見える化」について言及しています。MCDBとは、「医療法人の経営情報のデータベース」のことです。建議では、2026年度診療報酬改定の検討においてMCDBが活用され、医療機関の施設類型ごとの費用構造や経営実態についてのデータ分析に基づき、きめ細やかな対応が実施されたことを評価、その上で、「次期改定において更に精緻な対応を行うためには、MCDBにおける必須報告項目の追加や細分化が必要である。また、医療機関の経営実態をより正確に分析する観点から、経営上特別な利害関係にある法人との取引についても把握することができるよう検討を行う必要がある」としています。一方、「職種別給与の見える化」については、医療機関の経営情報の「見える化」のコアとも言うべき、職員の職種別の給与・人数が現状、任意提出項目となっていることを問題視、「保険料・税を財源に運営される医療提供施設としての説明責任を果たすため、職種別の給与・人数の提出の義務化は必須である。このことは、今後、時代の要請である賃上げをよりきめ細かく科学的に行っていくのに必須であり、職種別の給与水準をより精緻に把握する観点から、記載対象項目の追加の検討も求められる」としています。財務省は、2026年度改定に向けた財政制度等審議会の議論で、MCDBのデータを活用し医療機関の経営実態を踏まえた改定の方向性を検討、「病院は経営がかなり厳しく、診療所は相対的に余裕があるところがある」という結論を導き出し、日本医師会を焦らせました(第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の「メリハリ」参照)。「MCDBの報告項目の精緻化」は、財務省が日本医師会と対峙していくための“武器”をより強化するための方策という見方もできるでしょう。「医療法人の業務範囲の拡大」に日医は慎重姿勢このほか、「III.社会保障」の項では「医療法人の業務範囲の拡大」も提言しています。建議は、「医療は公的財源で支えられており、効率的な医療提供には、地域や機能によっては『競争より協調』、『拡大より撤退』が求められる場面もあるため、医療法人の非営利性は担保されるべき」としつつも、「同時に、経営基盤強化の観点からも、医療法人による業務範囲の拡大は検討の余地がある。例えば、社会医療法人の認定要件の緩和や医療法人の収益事業を条件付きで可能とするなどの方策が考えられる」として、その検討を進めるべきだとしています。現状、社会医療法人には認められている収益事業を医療法人にも拡大していこうという案ですが、こうした収益事業への取り組みについて、日本医師会は「公益性の高い医療法人が収益拡大を優先すると、医療の公共性が薄れかねない」といった理由から慎重な姿勢をみせています。ただ、医業がさまざまな要因からこれだけ追い込まれている状況では、業務範囲を拡大して収益の幅を広げる分には歓迎すべきことだと思うのですが……。実際、かつて日本医師会の常任理事を務めていた関東地方のある医療法人理事長は、「医療法人の業務範囲を拡大してほしい」とよくこぼしていました。日医の慎重姿勢は医療の公共性への危惧というより、地方で限られた有力な医療法人だけが勢いづき、成長することへの恐怖からなのかもしれません。

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死亡リスクが低下する適切な筋トレ時間は?

 レジスタンス運動(筋力トレーニング)は生活習慣病の予防・治療だけでなく、日常生活でも広く行われている。とくに筋力トレーニングは、健康な体の維持に勧められている。では、筋力トレーニングは、運動すればするだけ死亡率を減らす効果があるのであろうか。米国・ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院栄養学部のYiwen Zhang氏の研究グループが、長期的な筋力トレーニングと死亡との関連を検討した結果、中程度の長期的な筋力トレーニングは全死因死亡リスクの低下と関連し、約120分/週以上の筋力トレーニングで死亡リスクは頭打ちとなることが判明した。この結果はBritish Journal of Sports Medicine誌2026年6月12日号に掲載された。筋トレは120分/週で死亡リスク低下効果が頭打ちに 研究グループは、長期的な筋力トレーニングが、全死因および死因別死亡率の低下と関連しているかどうか、その用量反応関係、有酸素運動との複合的な効果を検証することを目的に3つの大規模前向きコホートのデータを解析した。 対象は、Health Professionals Follow-up Study(1992~2022年)、Nurses' Health Study(2002~21年)、Nurses' Health Study II(2003~21年)の参加者。週当たりの筋力トレーニング時間および有酸素運動時間は、ベースライン時およびその後2年ごとに、妥当性が検証された質問票を用いて評価した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・最大30年間追跡された14万7,374例(男性3万1,540例、女性11万5,834例)のうち、3万5,798例の死亡が確認された。・有酸素運動の影響を調整した結果、筋力トレーニングを行わない場合と比較して、週90~119分の筋力トレーニングは全死因死亡リスクの13%低下(HR:0.87、95%CI:0.81~0.95)、心血管疾患による死亡リスクの19%低下(HR:0.81、95%CI:0.67~0.97)、神経疾患による死亡リスクの27%低下(HR:0.73、95%CI:0.58~0.92)と関連していた。・120分/週を超えると、それ以上の追加的な効果は認められなかった。・がんによる死亡リスクの低下は、筋力トレーニングの実施時間が短い場合にのみ認められ、週1~29分の場合でHR:0.91(95%CI:0.86~0.97)、週30~59分の場合でHR:0.88(95%CI:0.81~0.97)であった。・組み合わせ解析では、有酸素運動が不十分(週7.5MET・時間未満)で筋力トレーニングを行っていない群と比較して、有酸素運動量が多く筋力トレーニングも行っている参加者(例:有酸素運動30~45MET・時間/週未満、筋力トレーニング60~119分/週)(HR:0.55)や、筋力トレーニング量にかかわらず有酸素運動45MET・時間/週以上を達成した参加者(HR:0.53~0.58)では、死亡リスクが最も低かった。 以上の結果から研究グループは、「最大30年間の追跡調査における筋力トレーニングの反復測定データを用いると、中程度の長期的な筋力トレーニングは全死因死亡の低下と関連し、約120分/週以上の筋力トレーニングでリスクの最小値が頭打ちとなった。また、有酸素運動量が約45MET・時間/週以上に達するまでの各レベルで、筋力トレーニングは死亡リスクのさらなる低下と関連していた」と結論付けている。

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移植適応のある未治療多発性骨髄腫へのテクリスタマブベースの導入療法~第II相試験(MajesTEC-5)

 移植適応のある未治療多発性骨髄腫(NDMM)に対する、BCMA/CD3二重特異性抗体テクリスタマブベースの導入療法の安全性と有効性を検討した第II相GMMG-HD10/DSMM-XX(MajesTEC-5)試験の結果、移植適応のあるNDMMに対して、テクリスタマブベースの導入療法レジメンが、構成する各薬剤と比較して一貫した安全性プロファイルと顕著な早期微小残存病変(MRD)陰性率を示した。ドイツ・Heidelberg University HospitalのMarc S. Raab氏らがNature Medicine誌オンライン版2026年6月25日号に報告した。 本試験は、移植適応のあるNDMMを対象とした第II相試験で、事前規定された3つのコホートのプール解析に49例が組み入れられ、テクリスタマブ+ダラツムマブ+レナリドミド(Tec-DR、arm AおよびA1)、またはTec-DRにボルテゾミブを併用したTec-DVR(arm B)の投与を受けた。主要評価項目は有害事象および重篤な有害事象の発現頻度と重症度、副次評価項目は全奏効率(ORR)、MRD陰性率、MRD陰性完全寛解(CR)率など。今回の解析は維持療法前時点までの導入療法および自家幹細胞移植フェーズであった。 主な結果は以下のとおり。・Grade3/4のTEAE(治療中に発現した有害事象)は91.8%にみられ、その多くは血液毒性(リンパ球減少59.2%、好中球減少59.2%、白血球減少18.4%)であった。Grade5のTEAEは報告されなかった。・重篤な有害事象は55.1%にみられ、発熱(12.2%)が最も多かった。感染症は全Gradeで81.6%、Grade3/4は36.7%で、最も頻度の高いGrade3/4の感染症はCOVID-19と肺炎(いずれも6.1%)であった。サイトカイン放出症候群は67.3%にみられたが、すべてGrade1または2で自然軽快し、治療中止には至った例はなかった。治療関連のICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群)は認められなかった。・維持療法前時点におけるMRD陰性CR率は91.8%であった。・MRD陰性率は、寛解導入後サイクル3時点(10-5:46/46例)、サイクル6時点(10-5:46/46例、10-6:46/46例)、維持療法前時点(10-5:40/40例)のいずれも100%であった。・ORRは100%であった。・総採取幹細胞数の中央値は8.1×106/kgであった。 著者らは、「これらのデータは、移植適応のあるNDMMにおけるTec-D(V)R導入療法の実現可能性を支持するものであり、レジメンの各薬剤と比較して一貫した安全性プロファイルと顕著な早期MRD陰性率が示された」としている。

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日本人片頭痛患者に対する3年間の抗CGRP抗体継続治療、その有用性は

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体については、治療期間が24ヵ月を超える長期的な実臨床のデータが乏しく、とくに治療継続率や目標達成後の計画的中止に関するデータは不足している。昭和医科大学の笠井 英世氏らは、実臨床における3年間にわたる抗CGRP抗体の有効性および安全性を評価するため、単施設レトロスペクティブ研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2026年5月13日号の報告。 対象は、2021年5月~2022年6月にガルカネズマブまたはフレマネズマブ(月1回/四半期ごと)の投与を開始した15歳以上の連続患者であった。具体的には、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の基準に基づき、発作性片頭痛(EM:1ヵ月当たりの頭痛日数15日未満)、高頻度発作性片頭痛(HFEM:1ヵ月当たりの頭痛日数8~14日)、慢性片頭痛(CM:1ヵ月当たりの頭痛日数15日以上)の患者を含めた。評価項目には、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、片頭痛評価尺度(MIDAS)、頭痛影響テスト(HIT-6)、視覚アナログ尺度(VAS)が含まれ、これらをベースライン時および1、3、6、12、36ヵ月時点で評価した。奏効率(50%以上、75%以上、100%)および治療継続/中止の理由は、事前に規定された解析および感度分析を用いて要約した。主なサブグループ解析は、事前に規定し、EM群とHFEM+CM群に分けて解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、50例が解析対象に含まれた(平均年齢:42.5歳、女性の割合:88%)。・3年間治療を継続した患者は、50例中28例(56%)であった。・治療を継続した患者群では、36ヵ月時点でのMMDが12.0±5.4から5.6±5.4に減少し、MIDAS、HIT-6、VASスコアも同様の改善が認められた(各々、p<0.01)。・奏効率は持続していた(36ヵ月時点で50%以上:55.6%、75%以上:29.6%、100%:11.1%)。・治療中止は、目標達成後の治療完了によるものが24%であり、有害事象による中止は認められなかった。 著者らは、「3年間にわたり、抗CGRP抗体は日常診療において持続的な予防効果と良好な忍容性を示し、治療継続、計画的中止、治療レジメン選択に関する個別化された意思決定を支援した」としている。

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タモキシフェン治療中の乳がん患者のホットフラッシュ、ベンラファキシンが有望(HOFLA-V試験)/日本乳学会

 内分泌療法治療中の乳がん患者において、発汗や動悸を伴う血管運動症状である「ホットフラッシュ」は、患者の約50~80%と高頻度に発生する。とくに閉経前患者や、LH-RHアゴニスト併用症例においては、その頻度や重症度が高い。更年期障害に伴うホットフラッシュに対しては、ホルモン補充療法が第一選択となるが、乳がん患者においては再発リスクを増加させる懸念があるため推奨されていない。非ホルモン療法の中では、抗うつ薬ベンラファキシン、抗けいれん薬ガバペンチンについて、NCCNガイドラインでは「preferred」とされ推奨度が高いが、日本人乳がん患者、とくに閉経前患者におけるエビデンスは不足している。こうした背景を踏まえ、日本人乳がん患者における内分泌療法中のホットフラッシュに対するベンラファキシンの有効性および安全性を検討した単施設前向き単群非盲検パイロット試験「HOFLA-V試験」が実施され、結果を筑波大学附属病院の佐藤 璃子氏が第34回日本乳学会学術総会で発表した。<HOFLA-V試験>・対象:18歳以上60歳以下、StageI~IIIC期の原発性乳がん患者。術後療法としてタモキシフェンを内服しており(LH-RHアゴニスト併用有無は問わない)、週に14回以上のホットフラッシュを認めるECOG PS 0~1の患者(大うつ病もしくはうつ病と診断されている患者、甲状腺疾患治療中の患者、重度の肝機能障害を有する患者、およびSSRI・SNRI・強力または中程度のCYP2D6阻害薬・CYP3A阻害薬およびCYP3A誘導薬・ガバペンチノイド・MAO阻害薬を使用している患者は除外)。・試験群:ベンラファキシン37.5mg/日を4週間投与。投与2週目の診察時に効果不十分かつ患者自身が希望した場合に限り、75mg/日への増量を可能とした。・評価項目:[主要評価項目]投与開始4週目における投与前からの「ホットフラッシュスコア」変化率(患者が毎日記録する日誌に基づき、日々の症状を軽度[1点]~非常に重度[4点]の4段階で評価し、それぞれの発生回数を乗じた合計値を1日のスコアとした)[副次評価項目]安全性(CTCAE v5.0を用い、投与2週目および4週目に評価)など 主な結果は以下のとおり。・2022年11月~2024年6月に20例が登録された。安全性解析集団は20例全例とし、主要解析集団については、Grade1の有害事象(めまいなど)により投与1週目で中止を希望した2例、および後日不適格が判明した1例を除く17例とした。・主要解析集団17例のベースライン特性は、平均年齢45.5歳、全例がECOG PS 0および閉経前であった。治療法については、LH-RHアゴニスト+タモキシフェン併用が11例(65%)、LH-RHアゴニスト+タモキシフェン+アベマシクリブ併用が2例(12%)、タモキシフェン単独が4例(24%)であり、LH-RHアゴニスト併用例が全体の約76%を占めた。・主要評価項目である投与4週目におけるホットフラッシュスコアの変化率は、平均で49.8%の減少(改善)を示した。個別の症例をみると、17例中16例でスコアの減少が認められた。・ホットフラッシュスコア実測値の推移をみると、ベースライン時の中央値79(範囲:49~125)から、投与4週目には中央値33(範囲:11~75)へと有意に低下した。この改善効果は投与1週目から速やかに発現し、各評価ポイント(1~4週目)のすべてにおいてベースラインと比較して有意な改善(すべてp<0.001)が維持されていた。・安全性に関して、認められた有害事象はすべてGrade1または2にとどまり、Grade3以上の有害事象は発生しなかった。全Gradeで報告された主な有害事象は、頭痛(35.0%)、悪心(35.0%)、不眠症(25.0%)、口内乾燥(20.0%)、浮動性めまい(20.0%)などであった。・内服完遂率および継続状況について、主要解析対象の17例は全例が全4週間の内服を完遂し、服薬遵守率は96.4%であった。2週目の時点で75mg/日への増量を希望したのは5例(29.4%)であった。試験終了時および3ヵ月後において、15例(88%)がベンラファキシンの継続投与を希望した。 佐藤氏は、単施設・単群のパイロット試験であることを研究の限界として挙げたうえで、ベンラファキシン投与によるホットフラッシュの約50%の改善効果は、これまでに海外で報告されている40~60%程度の改善率とおおむね一致していると説明した。特筆すべき点として、投与1週目という早期から症状緩和が得られること、そして、既存データが乏しかった「閉経前かつLH-RHアゴニスト併用例」を多く含む日本人集団において改善効果が示されたことを挙げ、非ホルモン療法の選択肢となりうるとした。

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