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免疫療法の対象とならない進行TN乳がんの1次治療、SGがPFS延長(ASCENT-03)/ESMO2025

 PD-1/PD-L1阻害薬の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、サシツズマブ ゴビテカン(SG)が化学療法より有意な無増悪生存期間(PFS)の延長と持続的な奏効をもたらしたことが、第III相ASCENT-03試験で示された。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。なお、本結果はNEJM誌オンライン版2025年10月18日号に掲載された。・試験デザイン:国際共同ランダム化非盲検第III相試験・対象:PD-1/PD-L1阻害薬投与対象外(PD-L1陰性、PD-L1陽性でPD-1/PD-L1阻害薬の治療歴あり、併存疾患により不適格)で未治療(治療歴がある場合は6ヵ月以上無治療)の局所進行切除不能/転移TNBC患者・試験群:SG(21日サイクルの1日目と8日目に10mg/kg点滴静注)279例・対照群:化学療法(パクリタキセルもしくはnab-パクリタキセルもしくはゲムシタビン+カルボプラチン)279例、病勢進行後クロスオーバー可・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)・奏効期間(DOR)・奏効までの期間、安全性、QOL 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2025年4月2日)時における追跡期間中央値は13.2ヵ月、349例にPFSイベントが発生していた。患者の地域別の構成は米国/カナダ/西ヨーロッパが32%、その他が68%であった。・主要評価項目であるBICRによるPFSは、SG群が化学療法群に比べて有意に改善した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.50~0.77、p<0.0001、中央値:9.7ヵ月vs.6.9ヵ月)。このベネフィットは、事前に規定された主要なサブグループで一貫して認められた。・ORRは、SG群が48%、化学療法群が46%と同程度であったが、DOR中央値はSG群(12.2ヵ月)が化学療法群(7.2ヵ月)より長かった。・OSは今回の解析ではimmatureであった。HRは0.98で、中央値はSG群で21.5ヵ月、化学療法群で20.2ヵ月であった。・PFS2(ランダム化から後続治療後の病勢進行/死亡までの期間)中央値は、SG群(18.2ヵ月)が化学療法群(14ヵ月)より長く、HRは0.70(95%CI:0.55~0.90)であった。・Grade3以上の治療関連TEAEは、SG群61%、化学療法群53%であった。TEAEによる治療中止割合は、SG群4%、化学療法群12%、減量に至った割合は、SG群で37%、化学療法群で45%であった。治療関連死はSG群で6例(すべて感染症による死亡)、化学療法群で1例報告された。・SGの有害事象は既知の安全性プロファイルと一致しており、Grade3以上の発現割合は好中球減少が43%、下痢が9%であった。 Javier Cortes氏は「本試験のデータは、PD-1/PD-L1阻害薬を投与できない未治療の転移TNBC患者における新たな標準治療の可能性としてSGを支持する」と結論した。

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ALK陽性非小細胞肺がんにおけるアレクチニブ後ブリグチニブの有効性/ESMO2025

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療にはアレクチニブが広く使われるが、後治療については確立されていない。ALK陽性NSCLCに対する第2世代ALK-TKIブリグチニブの前向き多施設共同観察研究であるWJOG11919L/ABRAID試験が行われている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、アレクチニブ直後治療として同剤を評価したコホートAの初回解析結果が発表された。 対象はStageIIIB/IIIC/IVまたは再発のALK陽性NSCLC、主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、CNS病変症例におけるPFS(CNS-PFS)、安全性である。 主な結果は以下のとおり。・登録対象から102例が有効性評価対象となった。患者の年齢中央値は66.5歳、PS 0~1が89%を占め、CNS転移は36%に認められた。アレクチニブ中止の理由は94%が疾患進行であった。・ブリグチニブのPFS中央値は6.5ヵ月で95%信頼区間は4.83〜8.84ヵ月、12ヵ月PFS割合は33.3%、24ヵ月PFS割合は20.5%であった。事前に特定した95%信頼区間の下限値4.0ヵ月を達成した。・ORRは31.4%、DCRは70.6%であった。・CNS-PFS中央値は10.8ヵ月であった。・ctDNAを解析した87例中16例(18.3%)でALK変異が検出され、ALK変異陽性例と陰性例のPFS中央値は同程度であった(7.3ヵ月対6.9ヵ月)。・TP53変異は87例中19例(21.8%)で検出され、TP53変異陽性例では陰性例に比べPFS中央値が短い傾向が見られた(5.8ヵ月対8.3ヵ月)。・安全性は従来の知見と一貫していた。頻度が高い有害事象は、CPK上昇(48.1%)、AST上昇(34.6%)、ALT上昇(26.9%)など。肺臓炎/ILDは10.6%(Grade3は4.8%)に発現した。

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世界の死亡パターン、過去30年の傾向と特徴/Lancet

 米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Causes of Death Collaboratorsは、過去30年の世界における死亡のパターンを、改善された推定法を用いて調査し、COVID-19パンデミックのような重大イベントの影響、さらには低所得地域での非感染性疾患(NCD)の増加といった世界で疫学的転換が進んでいることを反映した、より広範な分野にわたる傾向を明らかにした。死因の定量化は、人々の健康を改善する効果的な戦略開発に向けた基礎的な段階である。GBDは、世界の死因を時代を超えて包括的かつ体系的に解析した結果を提供するものであり、GBD 2023では年齢と死因の関連の理解を深めることを目的として、70歳未満で死亡する確率(70q0)と死因別および性別の平均死亡年齢の定量化が行われた。Lancet誌2025年10月18日号掲載の報告。1990~2023年の292の死因について定量化 GBD 2023では、1990~2023年の各年について、204の国と地域および660のサブナショナル(地方政府)地域における年齢・性別・居住地・暦年ごとに分類した292の死因の推定値を算出した。 ほとんどの死因別死亡率の算出には、GBDのために開発されたモデリングツール「Cause of Death Ensemble model:CODEm」が用いられた。また、損失生存年数(YLL)、死亡確率、死亡時平均年齢、死亡時観測年齢および推定平均年齢も算出した。結果は件数と年齢標準化率で報告された。 GBD 2023における死因推定法の改善点は、COVID-19による死亡の誤分類の修正、COVID-19推定法のアップデート、CODEmモデリングフレームワークのアップデートなどであった。 解析には5万5,761のデータソースが用いられ、人口動態登録および口頭剖検データとともに、サーベイ、国勢調査、サーベイランスシステム、がん登録などのデータが含まれている。GBD 2023では、以前のGBDに使用されたデータに加えて、新たに312ヵ国年の人口動態登録の死因データ、3ヵ国年のサーベイランスデータ、51ヵ国年の口頭剖検データ、144ヵ国年のその他のタイプのデータが追加された。死因トップは2021年のみCOVID-19、時系列的には虚血性心疾患と脳卒中が上位2つ COVID-19パンデミックの初期数年は、長年にわたる世界の主要な死因順位に入れ替わりが起き、2021年にはCOVID-19が、世界の主要なレベル3のGBD死因分類の第1位であった。2023年には、COVID-19は同20位に落ち込み、上位2つの主要な死因は時系列的には典型的な順位(すなわち虚血性心疾患と脳卒中)に戻っていた。 虚血性心疾患と脳卒中は主要な死因のままであるが、世界的に年齢標準化死亡率の低下が進んでいた。他の4つの主要な死因(下痢性疾患、結核、胃がん、麻疹)も本研究対象の30年間で世界的に年齢標準化死亡率が大きく低下していた。その他の死因、とくに一部の地域では紛争やテロによる死因について、男女間で異なるパターンがみられた。 年齢標準化率でみたYLLは、新生児疾患についてかなりの減少が起きていた。それにもかかわらず、COVID-19が一時的に主要な死因になった2021年を除き、新生児疾患は世界のYLLの主要な要因であった。1990年と比較して、多くのワクチンで予防可能な疾患、とりわけジフテリア、百日咳、破傷風、麻疹で、総YLLは著しく低下していた。死亡時平均年齢、70q0は、性別や地域で大きくばらつき 加えて本研究では、全死因死亡率と死因別死亡率の平均死亡年齢を定量化し、性別および地域によって注目すべき違いがあることが判明した。 世界全体の全死因死亡時平均年齢は、1990年の46.8歳(95%不確実性区間[UI]:46.6~47.0)から2023年には63.4歳(63.1~63.7)に上昇した。男性では、1990年45.4歳(45.1~45.7)から2023年61.2歳(60.7~61.6)に、女性は同48.5歳(48.1~48.8)から65.9歳(65.5~66.3)に上昇した。2023年の全死因死亡平均年齢が最も高かったのは高所得super-regionで、女性は80.9歳(80.9~81.0)、男性は74.8歳(74.8~74.9)に達していた。対照的に、全死因死亡時平均年齢が最も低かったのはサハラ以南のアフリカ諸国で、2023年において女性は38.0歳(37.5~38.4)、男性は35.6歳(35.2~35.9)だった。 全死因70q0は、2000年から2023年にかけて、すべてのGBD super-region・region全体で低下していたが、それらの間で大きなばらつきがあることが認められた。 女性は、薬物使用障害、紛争およびテロリズムにより70q0が著しく上昇していることが明らかになった。男性の70q0上昇の主要な要因には、薬物使用障害とともに糖尿病も含まれていた。サハラ以南のアフリカ諸国では、多くのNCDについて70q0の上昇がみられた。また、NCDによる死亡時平均年齢は、全体では予測値よりも低かった。対象的に高所得super-regionでは薬物使用障害による70q0の上昇がみられたが、観測された死亡時平均年齢は予測値よりも低年齢であった。

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急性期脳梗塞、再灌流後のアルテプラーゼ投与は有益?/JAMA

 前方循環の主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中を呈し、機械的血栓除去術による血管内再灌流を達成した患者において、アルテプラーゼ動脈内投与は90日時点で優れたアウトカムを示す可能性が高いことを、中国・中山大学のXinguang Yang氏らPEARL Investigatorsが無作為化試験の結果で示した。アルテプラーゼ動脈内投与群では、全死因死亡率および頭蓋内出血の発現率が高かったが、統計学的有意差は認められなかった。主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中を呈し、血栓除去術を受けた患者における機能的アウトカムは、依然として最適とはいえず、血栓除去術後のアルテプラーゼ動脈内投与の有益性は不明のままであった。JAMA誌オンライン版2025年10月13日号掲載の報告。中国の28病院で無作為化試験、アルテプラーゼ動脈内投与vs.標準治療 研究グループは、前方循環の主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中を呈し、発症後24時間以内に血栓除去術を受け、再灌流を達成した患者(expanded Thrombolysis in Cerebral Infarction[eTICI]スケールスコア≧2b50)を対象に、多施設共同無作為化試験を行った。 試験は2023年8月1日~2024年10月16日に中国の28病院で行われた。被験者は、アルテプラーゼ動脈内投与(0.225mg/kg、最大用量20mg)群または標準治療群に無作為に割り付けられ追跡評価を受けた。最終フォローアップは2025年1月7日。 主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡]、0または1が最良のアウトカムを示す)が0または1の患者の割合であった。安全性アウトカムは、無作為化後36時間以内に発現した症候性頭蓋内出血、90日以内の全死因死亡率および36時間以内のあらゆる頭蓋内出血などであった。90日時点の修正Rankinスケールスコア0/1達成割合で有意差 324例がアルテプラーゼ動脈内投与群(164例)または標準治療群(160例)に無作為化された(年齢中央値68歳[四分位範囲:58~75]、女性99例[30.6%])。各群1例がフォローアップを受けなかった。 90日時点で修正Rankinスケールスコアが0または1の患者の割合は、アルテプラーゼ動脈内投与群44.8%(73/163例)、標準治療群30.2%(48/159例)であった(補正後リスク比[RR]:1.45、95%信頼区間[CI]:1.08~1.96、p=0.01)。 36時間以内に症候性頭蓋内出血が発現した患者の割合は、アルテプラーゼ動脈内投与群4.3%(7/164例)、標準治療群5.0%(8/160例)であった(補正後RR:0.85、95%CI:0.43~1.69、p=0.67)。90日以内の全死因死亡率は、それぞれ17.1%(28/164例)と11.3%(18/160例)であり(1.60、0.88~2.89、p=0.12)、36時間以内のあらゆる頭蓋内出血は32.9%(54/164例)と26.9%(43/160例)だった(1.22、0.92~1.63、p=0.17)。

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PSMA陽性mHSPC、177Lu-PSMA-617追加でrPFS改善(PSMAddition)/ESMO2025

 PSMA陽性の転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)患者において、アンドロゲン除去療法(ADT)+アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)への[177Lu]Lu-PSMA-617(177Lu-PSMA-617)追加が画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善した。米国・Weill Cornell MedicineのScott T. Tagawa氏が、第III相PSMAddition試験の2回目の中間解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。・対象:全身治療歴なしまたは全身治療歴の短い(術前/術後ADTおよび/または転移疾患に対する最大45日までのADT/ARPIは許容)PSMA陽性mHSPC患者(ECOG PS 0~2、ADT+ARPIに対する適格性あり)・試験群(177Lu-PSMA-617群):177Lu-PSMA-617(7.4GBq±10%を6週ごとに6サイクル)+標準治療(ADT+ARPI) 572例・対照群:標準治療(ADT+ARPI) 572例※盲検下独立評価委員会(BIRC)の評価により画像上の進行(rPD)が認められた患者は試験群にクロスオーバー可能・評価項目:[主要評価項目]PCWG3/RECIST v1.1に基づくBIRC判定によるrPFS[重要な副次評価項目]OS[その他の副次評価項目]RECIST v1.1に基づくBIRC判定による奏効率(ORR)、転移去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)/PSA progression/症候性骨関連事象発生までの期間、安全性、QOLなど・層別化因子:CHAARTED基準に基づく腫瘍量(高vs.低)、年齢(≧70歳vs.<70歳)、原発巣に対する照射あるいは手術歴(ありvs.なし)・観察期間中央値23.6ヵ月(データカットオフ:2025年1月13日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はともに68.0歳、PSA中央値は177Lu-PSMA-617群12.06ng/mL vs.対照群11.64ng/mL、高腫瘍量の患者が68.0%vs.68.2%、ECOG PS 0の患者が69.4%vs.71.2%を占めた。・対照群の15.9%が177Lu-PSMA-617群にクロスオーバーした。・BIRC判定によるrPFS中央値は177Lu-PSMA-617群NR(95%信頼区間[CI]:NE~NE)vs.対照群NR(95%CI:29.7~NE)で、177Lu-PSMA-617群で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.58~0.90、p=0.002)。・177Lu-PSMA-617群におけるrPFSベネフィットはすべてのサブグループで一貫していた。・OS中央値は、未成熟なデータではあるがともにNR(95%CI:NE~NE)で、177Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられた(HR:0.84、95%CI:0.63~1.13、p=0.125)。・BIRC判定によるORRは177Lu-PSMA-617群85.3%(95%CI:79.9~89.6)vs.対照群80.8%(95%CI:74.8~85.8)、完全奏功(CR)は57.1%vs.42.3%であった。・PSA progressionまでの期間(HR:0.42、95%CI:0.30~0.59)、症候性骨関連事象発生までの期間(HR:0.89、95%CI:0.62~1.26)、mCRPCまでの期間(HR:0.70、95%CI:0.58~0.84)はいずれも177Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられた。・Grade3以上の重篤な有害事象は177Lu-PSMA-617群26.6%vs.対照群22.8%で発現し、177Lu-PSMA-617群におけるGrade3以上の177Lu-PSMA-617関連有害事象は13.8%であった。Grade3以上の血球減少症が、177Lu-PSMA-617群でより多く認められた(14.4%vs.5.0%)。・患者報告評価(FACT-P、BPI-SF)における、健康関連QOLと痛みの悪化までの期間に両群間で臨床的に意味のある差は認められなかった。 Tagawa氏は「これらの結果は、177Lu-PSMA-617とADT+ARPIの併用が、PSMA陽性mHSPC患者において臨床的に意義のあるベネフィットをもたらすことを示しているとし、安全性についても177Lu-PSMA-617の既知のプロファイルと一致しており、ADT+ARPIとの併用に関する新たな懸念は認められていない」とまとめた。OS解析は進行中となっている。

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すでに承認されている経口薬が1型糖尿病の進行を抑制

 関節リウマチや脱毛症などの自己免疫疾患の治療薬としてすでに承認されている経口薬であるバリシチニブが、1型糖尿病の進行抑制に役立つのではないかとする研究結果が、欧州糖尿病学会年次総会(EASD2025、9月15~19日、オーストリア・ウィーン)で発表された。 この報告は、セントビンセント医学研究所(オーストラリア)のMichaela Waibel氏らの研究によるもので、新たに1型糖尿病と診断された人がバリシチニブを連日服用すると、インスリン分泌が維持され血糖変動が安定したという。さらに、同薬の服用を中止した後は、インスリン分泌量が減少して血糖変動の安定性が失われ、糖尿病が進行し始めるという変化が見られたとのことだ。 Waibel氏は、「これは本当に素晴らしい前進だ。これまでの1型糖尿病の治療はインスリン療法に大きく依存していたが、その依存度を軽減し、患者が日常の治療から解放される時間を提供できる、初めての経口での疾患修飾療法と言える。さらにこの薬は、長期合併症のリスクを低下させる可能性もある」と話している。 1型糖尿病は、免疫系が膵臓のインスリン分泌細胞(β細胞)を誤って攻撃することで発症する。発症とともにインスリン分泌量が低下し、最終的には分泌が停止するため、患者は生涯にわたって、血糖値を管理するためインスリン療法を続ける必要がある。一方、バリシチニブは、免疫系を刺激する信号を抑制する作用があり、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、脱毛症などの自己免疫疾患の治療薬としてすでに承認されている。これらの理論的な背景を基に研究チームは、バリシチニブが1型糖尿病の診断後早期の患者のβ細胞を保護する可能性があるのではないかと考えた。 今回の研究には、過去100日以内に1型糖尿病と診断された10~30歳の91人が参加。無作為にバリシチニブ群またはプラセボ群に割り付けられ、48週間にわたり毎日服用した。その結果、バリシチニブ群では対照群に比べてβ細胞機能が維持され、血糖値の変動が少なく、インスリンの必要量も少なかった。さらに、48週が経過しバリシチニブの服用を中止すると、血糖コントロールは72~96週目にプラセボ群とほぼ同じレベルまで悪化した。また、バリシチニブ群の患者も最終的には、プラセボ群と同量のインスリンを必要とする状態となった。 これらの結果からWaibel氏は、「1型糖尿病患者のβ細胞機能を維持することが示された有望な薬剤はいくつかあるが、それらの中でバリシチニブは経口投与が可能という点で小児を含む多くの患者が使用しやすく、明らかに有効であるという点で際立っている」と解説。「この薬の効果が長年にわたって持続するか、また、より早期に治療を開始することで1型糖尿病の診断を回避または遅らせることができるかを判断するため、さらなる試験を継続することが正当化される」と述べている。さらに、「この薬の有効性が証明されれば、遺伝的に1型糖尿病のリスクがある人を特定し予防的介入を行うことで、1型糖尿病発症を抑止できるようになるかもしれない」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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レボドパは脳卒中の回復を促進するか?(解説:内山真一郎氏)

 レボドパは、ドーパミンシグナルを促進し神経可塑性を刺激するので、脳卒中後の運動機能の回復を促進する可能性があり、脳卒中のリハビリに用いられているが、その効果に関するエビデンスは確立されていない。ESTREL試験は、スイスで行われた二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、臨床的意味のある片麻痺を伴った虚血性または出血性脳卒中610例を対象として、標準的なリハビリテーション療法に加えてレボドパ/カルビドパ(100mg/25mg)またはプラセボを投与して3ヵ月後の運動機能をFugl-Meyer Assessmentで評価したが、両群間には有意差がなかった。 この結果は、ドーパミン系が非刺激状態ですでに最高レベルまで達しており、さらなる薬理学的刺激が作用しないのか、脳卒中後はドーパミン系が破綻しており、ドーパミン受容体遺伝子の反応性が低下しているためかもしれない。今後は、バイオマーカー、遺伝子変異、画像データも活用して、レボドパが有効な症例を見いだす努力も必要であろう。

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大会長に聞く第66回日本肺学会学術集会(JLCS2025)の注目トピック【肺がんインタビュー】第115回

第115回 大会長に聞く第66回日本肺学会学術集会(JLCS2025)の注目トピック2025年11月6~8日に開催される第66回日本肺学会学術集会。開催に先立ち、会長である順天堂大学の髙橋 和久氏に大会のテーマや見どころを聞いた。 参考 第66回日本肺学会学術集会ホームージ

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第286回 連立に向けた与野党の最低パフォーマンスのあげく、高市早苗総理大臣の誕生へ 連立参加で維新の社会保障政策案はどこまで実現できる?

「野球史上最高のパフォーマンス」と日本政治史上最低レベルのパフォーマンスこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ロサンゼルス・ドジャースが本拠地でミルウォーキー・ブルワーズを破りワールドシリーズ進出を決めたナショナル・リーグ優勝決定シリーズ第4戦、すごかったですね。大谷 翔平選手は投打の二刀流で先発出場、投げては6回0/3を2安打無失点、10奪三振の快投。打っては先頭弾、場外弾を含む3本塁打を放ちました。漫画や映画でもありえないような異次元の大活躍に、米国CBSスポーツ電子版は「野球史上最高のパフォーマンス(the greatest single-game performance in baseball history)」と称賛しました。さて、日本政治の歴史の中でも与野党含め多くの党が最低レベルのパフォーマンスを見せ、心底うんざりした連立協議、政界再編劇ですが、10月20日、自民党と日本維新の会が連立政権合意書を取り交わし、高市 早苗総理大臣が誕生することになりました(10月20日現在)。公明党が自民党との連立政権離脱を表明してから10日あまり、この間、「大義」「大義」と叫びながら、結局、国民は二の次で自分たちの選挙のことしか考えていない国会議員の言動を見て、維新の吉村 洋文代表が自民党に突きつけた「国会議員定数の1割削減」はぜひとも実現してもらいたいと思った国民は少なくないでしょう。「比例区だけ削減」という案には問題もありそうですが、ひょっとしたらこれで、日本維新の会の党勢は一気に強まるかもしれません。維新、連立政権合意書で「3党合意」を確実に履⾏することを自民党に求める10月20日に交わされた自民党との連立政権合意書には、社会保障政策について、「25年通常国会で締結したいわゆる『医療法に関する3党合意書』および『骨太方針に関する3党合意書』に記載されている医療制度改革の具体的な制度設計を25年度中に実現しつつ、社会保障全体の改革を推進することで、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す」と書かれています。そして、2025年度中に具体的な骨子について合意し、2026年度中に具体的な制度設計を行い順次実行するという項目が13項目列挙されています。13項目は、保険者の権限・機能の強化、都道府県の役割強化、病院機能の強化、大学病院機能の強化、高度機能医療を担う病院の経営安定化など、まあ誰もが考えそうな政策がほとんどですが、中には保険財政健全化策推進(インフレ下での医療給付費の在り方と、現役世代の保険料負担抑制との整合性を図るための制度的対応)、患者の声の反映およびデータに基づく制度設計を実現するための中央社会保険医療協議会の改革、医療費窓口負担に関する年齢によらない真に公平な応能負担の実現など、いわゆる「現役世代」を重視したエッジの効いた政策も並んでいます。維新はかねてより、現役世代の社会保険料の負担を軽減するための社会保障改⾰として、「⼀般病床・療養病床・精神病床の余剰な約11万床の削減」「OTC類似薬への保険給付の⾒直し」「地域フォーミュラリの全国展開」などの政策を掲げてきました。今年6⽉13⽇に公表された「⾻太⽅針2025」の策定に当たっては、6⽉6⽇に⾃⺠・公明・維新による「3党合意」が行われ、現在、3党で協議が進んでいることになっています(「270回 『骨太の方針2025 』の注目ポイント(後編) 『 OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し』に強い反対の声上がるも、『セルフメディケーション=危険』と医療者が決めつけること自体パターナリズムでは?」参照」。連立政権合意書にある「骨太方針に関する3党合意書」がそれに当たります。その具体的な内容を今一度おさらいしておきましょう。●自民党、公明党、日本維新の会の3党が6月11日に合意した社会保障改革案1.OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し2.新たな地域医療構想に向けた病床削減3.医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現4.地域フォーミュラリの全国展開5.現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底6.生活習慣病の重症化予防とデータヘルスの推進※以上6項目のうち、「OTC類似薬」「病床削減」「電子カルテ(医療DX)」の3項目には検討の期限と数値目標が明記された。「現役世代」を重視する維新に対し、高齢者の支持率が比較的高く日本医師会という強力な支持団体も有する自民党との間で、この3党合意の社会保障制度改革がどこまで進むかは依然未知数です。しかし、連立政権が誕生したことでその圧力は相当強まるに違いありません。10月17日付のメディファクスは、「維新は社会保障について、これまでの3党協議(自民、維新、公明党)に 続く形で、自民と『第2ステージ』の協議に入りたい構えだ。 協議後の会見で、維新の藤田 文武共同代表は『第2ステージの本丸は構造改革』と説明。 構造改革は『既得権の抵抗が非常に大きい』と述べ、真正面から取り組むべきだとした」と書いています。「既得権の抵抗」とは日本医師会などのことだと思われます。日医にとっては、今まで考えられなかったような厳しい政権が誕生することになるわけです。維新が大臣を出さず「閣外協力」とする理由ところで、高市総裁はこれまでの協議で、維新に「閣内協力」を求め、複数の閣僚ポストを用意する意向を示したそうですが、維新側の結論としては、閣僚を出さない「閣外協力」になりました。入閣すると内閣の政策失敗や不祥事に対して閣僚として責任を負うことになるため、連帯責任やイメージ悪化などのリスクを避けたい狙いがあるためとみられます。そもそも閣議決定には大臣の全員一致が必要です。仮に維新の大臣が誕生すれば、維新の基本政策に合致しない政策でも「賛成」しないと罷免されてしまいます。自民党の政策に対して是々非々の対応を行うために閣外協力という形にして、「支持はするが一体化はしない」という立ち位置を確保するのでしょう。その意味では、大臣ポストが欲しかった公明党とは異なる連立の仕方ということになります。OTC類似薬の公的医療保険の適用見直しについての議論スタートそんな連立協議に向けての調整があちこちで行われていた10月16日、厚生労働省は社会保障審議会医療保険部会を開催、3党協議で一番目の項目に挙がったOTC類似薬の公的医療保険の適用見直しについての議論を本格的にスタートさせました。エムスリーなどの報道によれば、この日の議論では健康保険組合連合会からの委員が「やはり保険給付のあり方を見直すべき。(中略)子どもや慢性疾患、低所得者の方については配慮し、広い範囲を対象として追加の自己負担を求める方法や、保険適用の対象から除外する方法などについて具体的な検討を」と発言した一方で、日本医師会からの委員は「保険適用を外すのは時期尚早で反対」として、患者がOTC類似薬を自己判断で服用する危険性、患者や家族の経済的負担の増大、へき地で薬局がない場合に薬が入手できないなどの問題点を挙げたとのことです。「第277回  いよいよ本格化するOTC類似薬の保険外し議論、日本医師会の主張と現場医師の意向に微妙なズレ?(前編)」でも書いた、いつもの日本医師会のロジックですが、相変わらずの頑なさを感じます。OTC類似薬の公的医療保険の適用見直しについては、さらに医療保険部会で議論を継続していくとのことですが、どんな決着を見せるのでしょうか。連立政権合意書に記載された他の社会保障政策も含めて、高市政権での今後の議論の行方が気になるところです。

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AI勤務表は看護の「質」と「満足度」をどう変える?【論文から学ぶ看護の新常識】第36回

AI勤務表は看護の「質」と「満足度」をどう変える?AIが作成した勤務表は、従来の手動作成より優れているのか。Hye Won Kang氏らが行った比較研究により、AIで作成した勤務表に、仕事の質を維持し、職務満足度を向上する効果がある可能性が示された。BMC Nursing誌2025年7月1日号に掲載の報告。仁荷大学病院看護AIスケジューリングシステム(IH-NASS)導入後のシフト看護師の仕事の質と職務満足度研究チームは、仁荷大学病院看護AIスケジューリングシステム(IH-NASS)の導入後の仕事の質を組織・個人の両方の視点から比較し、IH-NASSに対する看護師の認識と仕事の質に焦点を当てて看護師の職務満足度に影響を与える要因を分析した。韓国の三次大学病院でIH-NASSが導入された14病棟のシフト勤務看護師253名が対象となった。従来の手動スケジュール(2022年12月、後ろ向き研究)と、IH-NASSによって作成されたスケジュール(2023年12月、前向き研究)のデータを比較し、看護師の一般特性、IH-NASSに対する認識(利便性、満足度、公平性)や職務満足度を調査・分析した。主な結果は以下の通り。組織の視点:IH-NASSで作成したスケジュールは、従来の手動スケジュールと比較して、日勤勤務の経験1年未満の看護師数が有意に減少した(t=2.70、p=0.018)。個人別の視点:深夜勤-休み-準夜勤(NOE)シフトの数が有意に少なかった(t=2.64、p=0.009)。さらに、2日以上の連続休日(t=-3.78、p<0.001)、2回以上の夜勤後の2日以上の休日(t=-2.13、p=0.034)、土日休み(t=-2.24、p=0.026)、および日曜休み(t=-3.50、p<0.001)が有意に多かった一方、平日の非社交的な時間帯(深夜勤や早朝勤務など)のシフトは少なかった(t=2.74、p=0.007)。職務満足度への影響:シフト勤務看護師の職務満足度に影響を与える要因には、IH-NASSへの満足度、IH-NASSの利便性に対する認識、および不健康な勤務スケジュール下でのNOEシフト回数、過度の眠気、学歴、睡眠時間があげられ、これらが合わさって職務満足度のばらつきの約27%を説明した。AIベースのスケジューリングは、仕事の質を維持しながら、人員配置を最適化し、看護師のポジティブな認識を高め、職務満足度を向上させることができる。今回は、韓国の大学病院で導入されたAI勤務表作成システム(IH-NASS)の導入効果に関する最新論文を紹介します。このAIシステムは、従来、看護師長などが手作業で作成してきた勤務表の限界を克服するために、17年以上の臨床経験を持つ看護師7名とIT専門家2名のチームによって開発されたものです。このシステムの目的は、単なる自動化ではなく、勤務の最適化です。看護師の希望勤務はもちろん、シフトごとの必要人数、次の勤務まで最低14時間の間隔を確保、5日連続勤務後の2日間休日といった健康に配慮した条件がアルゴリズムに組み込まれています。また人員の経験値に偏りが出ないよう、「1年未満」「1~3年」「3年以上」と経験年数ごとにスタッフを分類しています。IH-NASS導入前後の勤務表を比較した結果、日勤における経験1年未満の看護師配置の有意な減少、2日以上の連続休日や、連続夜勤後の2日以上の休日数、土日休みが増加しました。これは、限られた人員数の中でも勤務を最適化することで看護師の生活の質を向上させたと考えられます。また導入後の調査では、「IH-NASSに対する満足度」「利便性」、そして「NOEシフトの少なさ」が看護師の仕事満足度を向上させる要因であることが示されました。手作業での勤務表作成は、多大な時間的コストに加え、公平性の担保が難しいという課題があります。IH-NASSのように個人の希望を反映しつつ、組織として必要な熟練度バランスを客観的に確保するAIは、看護師の業務負担を軽減するだけでなく、不満の矛先がAIに向けられることで、管理者の精神的負担が軽減でき、スタッフ間の無用な軋轢も防げるかもしれません。さらに経験の浅い看護師が日勤に過度に配置されるリスクをAIが管理することで、主要な治療が行われる日勤帯の熟練度バランスが保たれ、部門全体の看護の質や患者の安全性が担保される可能性もあります(もちろん夜間の人員バランスも重要です)。日本でも、看護師向けの勤務表作成サービスいくつかリリースされています。看護師がより良い環境で働き続けるためにも、こうしたテクノロジーが普及することを期待しています。論文はこちらKang HW, et al. BMC Nurs. 2025;24(1):792.

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認知機能低下リスクを考慮した高齢者の適切な睡眠時間は

 睡眠時間は、認知機能に重要な役割を果たしており、認知機能の低下と密接に関連している。しかし、中国人を対象に睡眠時間と認知機能の関係について検討した研究は、これまで十分ではなかった。中国・北京中医薬大学のGuolin Guo氏らは、中国の中高年における睡眠時間と認知機能の関連性を評価するため、横断的研究を実施した。JMIR Human Factors誌2025年9月8日号の報告。 China Health and Retirement Longitudinal Study 2020に参加した1万5,526例のデータを用いて、エピソード記憶、思考力、総合的認知機能を含む3つの複合指標を用いて認知機能の評価を行った。また、対面インタビューにより、自己申告による夜間の睡眠時間のデータも取得した。人口統計学的、ライフスタイル、健康関連の共変量を考慮し、多重一般化線形回帰モデルを用いて調整した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象1万5,526例のうち、女性は53.02%(8,232例)、男性は46.98%(7,294例)、平均年齢は61.5±9.27歳であった。・1晩の睡眠時間が4時間以下(β=-1.85、95%信頼区間[CI]:-2.07~-1.62)、5時間(β=-0.55、95%CI:-0.78~-0.33、p<0.001)、9時間(β=-1.78、95%CI:-2.17~-1.39)、10時間以上(β=-3.01、95%CI:-3.39~-2.63)と回答した人は、認知機能と有意な負の相関関係が認められた。・調整モデルでは、10時間以上の長時間睡眠が全般的な認知機能に対する悪影響がより顕著であり(β=-3.01、95%CI:-3.39~-2.63、p<0.001)、次いで4時間以下の極端に短い睡眠(β=-1.85、95%CI:-2.07~-1.62、p<0.001)が顕著であった。 著者らは「睡眠時間と全般的な認知機能低下の間に逆U字型の関係があることが明らかとなった。これは、睡眠時間が短い場合でも長い場合でも、認知機能を注意深くモニタリングする必要があることを示唆している。したがって、公衆衛生戦略においては、とくに文化的に特有の状況において、加齢に伴う認知リスクを軽減するために、適度な睡眠の促進を優先すべきである」と結論付けている。

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2型糖尿病の全死亡、亜鉛欠乏で増加

 亜鉛不足が心不全の予後に関連することはいくつかの研究より報告されているが、今回、台湾・Chi Mei Medical CenterのYu-Min Lin氏らは、2型糖尿病患者における亜鉛欠乏が全死亡および心血管系合併症リスクを有意に高めることを明らかにした。 本研究はTriNetXが保有するデータベースを用いて、後ろ向きコホート研究を実施。亜鉛測定が行われていた18歳以上の2型糖尿病患者を亜鉛欠乏群(血清亜鉛<70μg/dL)と対照群(70~120μg/dL)に分類し、傾向スコアマッチング(PSM)を行った。主要評価項目は全死亡および心血管疾患の複合アウトカム(脳血管合併症、不整脈、炎症性心疾患、虚血性心疾患、その他の心疾患[心不全、非虚血性心筋症、心停止、心原性ショック]、血栓性疾患)で、各ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・適格患者2万3,041例のうち亜鉛欠乏患者は9,503例、亜鉛正常値患者は1万3,538例で、PSM後、各群に7,886例が割り付けられた。・対照群と比較した場合、亜鉛欠乏群での全死亡はHR:2.08(95%CI:1.72~2.51、p<0.001)、心血管アウトカムの複合はHR:1.15(95%CI:1.08~1.24、p<0.001)といずれの発生率も高かった。・亜鉛欠乏群では、不整脈(HR:1.20、95%CI:1.10~1.32、p<0.001)、炎症性心疾患(HR:1.54、95%CI:1.07~2.21、p<0.001)、そのほかの心機能障害(HR:1.23、95%CI:1.08~1.40、p<0.001)の発生率も上昇した。 本結果を踏まえ研究者らは、「2型糖尿病患者の管理において、血清亜鉛値をモニタリングし、対処することの潜在的な臨床的重要性を強調する」としている。

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喘息・COPD吸入器が温室効果ガス排出量を増大/JAMA

 米国における吸入器関連の温室効果ガス排出量は過去10年間で24%増加し、全体の98%を定量噴霧式吸入器が占めることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のWilliam B. Feldman氏らによる観察研究で明らかにされた。吸入器は喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主要な治療手段であるが、定量噴霧式吸入器には多量の温室効果ガス排出につながるハイドロフルオロアルカン噴射剤が含まれる。米国連邦政府は国際条約義務に基づきハイドロフルオロカーボン(HFC)の段階的削減を進めているが、排出量などの現状把握は不十分であった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年10月6日号で報告された。米国の2014~24年の連続横断研究 本研究は、2014~24年の米国における吸入器関連の温室効果ガス排出の規模、発生源、社会的コストの定量化を目的とする連続横断研究である(筆頭著者のFeldman氏は、この領域の研究に当たり米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。 米国の外来向け医薬品市場全体の集計調剤データを、吸入器別の温室効果ガスの推定排出量と関連付け、喘息およびCOPDの治療用に承認された全吸入器の排出量を推定した。57のブランド名の吸入器が解析に含まれた。10年間で16億個の吸入器を調剤 2014~24年に、米国で調剤された吸入器は合計16億個であった。内訳は、定量噴霧式吸入器が11億個(70%)、乾燥粉末吸入器が4億900万個(26%)、ソフトミスト吸入器が5,800万個(4%)だった。 調剤された吸入器の85%を3つの治療薬クラスが占めており、短時間作用型β刺激薬(SABA)が7億8,400万個(50%)、吸入コルチコステロイド-長時間作用型β刺激薬(ICS-LABA)が4億1,200万個(26%)、ICSが1億5,100万個(10%)であった。 最も多く使用された薬剤はalbuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる、7億7,300万個[49%])であった。また、吸入器の85%を4社が製造していた。総排出量は2,490万メトリックトンCO2e 10年間に16億個の吸入器が排出した温室効果ガスの総量は、二酸化炭素(CO2)換算で2,490万メトリックトンCO2e(mtCO2e)と推定された。年間排出量は、2014年の190万mtCO2eから2024年には230万mtCO2eへと24%増加した。また、調査期間中の総排出量の98%を定量噴霧式吸入器が占めた。 10年間の温室効果ガス排出量は、SABAが1,450万mtCO2e(58%)、ICS-LABAが750万mtCO2e(30%)、ICSが230万mtCO2e(9%)であった。また、総排出量の87%を3つの吸入薬が占めており、albuterolが57%、ブデソニド・ホルモテロールが23%、フルチカゾンプロピオン酸エステルが6%だった。全体で57億ドルの社会的コスト 吸入器による温室効果ガス排出の社会的コストは、全体で57億ドル(下限35億ドル、上限100億ドル)と推定された。排出量の増加に伴い、これらのコストは2014年の3億9,000万ドル(下限2億2,900万ドル、上限7億300万ドル)から2024年には5億8,800万ドル(3億6,100万ドル、10億ドル)へと増加した。 著者は、「喘息およびCOPDの治療に承認された吸入器は、過去10年間にわたり温室効果ガス排出の一因となっていた。これらの排出削減を目指す施策立案者と規制当局は、現在市販されている低排出代替品の使用拡大を奨励し、乾燥粉末製剤のICS-ホルモテロールを米国市場に導入するとともに、経済的負担を増大させずに、低排出の定量噴霧式吸入器製品への移行を促すべきである」としている。

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小細胞肺がん1次治療、タルラタマブ上乗せで1年OS率80.6%(DeLLphi-303)/ESMO2025

 PS0/1の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬、およびPD-L1阻害薬単剤による維持療法である。この標準治療による全生存期間(OS)中央値は12~15ヵ月と報告されており、さらなる治療成績の向上を目的として、タルラタマブの上乗せが検討されている。1次治療でのタルラタマブの安全性・有効性を検討する国際共同第Ib試験「DeLLphi-303試験」では、タルラタマブの上乗せ方法の1つとして、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬を1サイクル実施後にタルラタマブを上乗せし、維持療法にもタルラタマブを上乗せする治療法が検討されている(パート2、4、7)。その結果、タルラタマブ開始後のOS中央値は未到達、1年OS率80.6%と良好な治療成績が示されたことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)でMartin Wermke氏(ドイツ・ドレスデン工科大学)により報告された。DeLLphi-303試験パート2、4、7の概要試験デザイン:国際共同第Ib相試験対象:1次治療としてプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬の併用療法を1サイクル実施したED-SCLC患者96例投与方法:タルラタマブ(20mg、3週ごと)+プラチナ製剤(カルボプラチンAUC5、各サイクルのday1)+エトポシド(100mg/m2、各サイクルのday1~3)+PD-L1阻害薬(アテゾリズマブ1,200mgまたはデュルバルマブ1,500mg、3週ごと)を3サイクル→タルラタマブ(同)+PD-L1阻害薬(同)を病勢進行まで評価項目:[主要評価項目]用量制限毒性、治療中に発現した有害事象(TEAE)、治療関連有害事象(TRAE)[副次評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は63.0歳(範囲:37~86)、男性の割合は67%、PS1の割合は55%であった。ベースライン時に脳転移、肝転移を有していた割合はそれぞれ16%、45%であった。標的病変の径の和の中央値は82.3mmであった。PD-L1阻害薬の内訳はアテゾリズマブ56例、デュルバルマブ40例であった。・追跡期間中央値13.8ヵ月時点における治療期間中央値は46週(四分位範囲:14~60)であった。・用量制限毒性は3例(いずれもアテゾリズマブ使用集団)に認められた。・Grade3、4のTRAEの発現割合は、それぞれ43%、35%であった。死亡に至ったTRAEは1例報告された(カルボプラチン+エトポシドに関連する敗血性ショックと判定)。・タルラタマブの中止に至ったタルラタマブに関連するTRAEは6%に発現した。・サイトカイン放出症候群(CRS)のほとんどがサイクル1に発現し、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はすべてサイクル1に発現した。これらのほとんどはGrade1/2であった。・タルラタマブ開始時を基準としたORRは71%(CRは5%)で、DOR中央値は11.0ヵ月であった。DCRは82%であった。・タルラタマブ開始後のOS中央値は未到達で、1年OS率は80.6%であった。・同様に、PFS中央値は10.3ヵ月であり、1年PFS率は43.1%であった。 本試験結果について、Wermke氏は「ED-SCLCの1次治療におけるプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬へのタルラタマブ上乗せは、管理可能な安全性プロファイルと生存に関する有望な成績を示した。これは、タルラタマブ上乗せの有用性を標準治療との比較により検証する国際共同第III相試験『DeLLphi-312試験』の実施を支持する結果である」とまとめた。

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胃がん周術期、FLOT+デュルバルマブはPD-L1発現にかかわらず最終OSを改善(MATTERHORN)/ESMO2025

 MATTERHORN試験は、2025年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、切除可能な胃がん患者を対象に、術前術後療法のFLOTにPD-L1阻害薬デュルバルマブを上乗せすることの有用性を報告し注目を集めた。10月17~21日に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、Josep Tabernero氏(バルデブロン大学・スペイン)が本試験の全生存期間(OS)の最終解析結果を含む、最新データを発表した。・国際共同二重盲検ランダム化第III相試験・対象:切除可能なStageII~IVA期局所進行胃がん/食道胃接合部腺がん 948例・試験群:術前術後にFLOT+デュルバルマブ1,500mgを4週ごと2サイクル、術後にデュルバルマブ1,500mg 4週ごと10サイクル(デュルバルマブ群)474例・対照群:術前術後にFLOT+プラセボを4週ごと2サイクル、術後にプラセボを10サイクル(プラセボ群)474例・評価項目:[主要評価項目]無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、病理学的完全奏効(pCR)率、安全性など・データカットオフ:2024年12月20日 EFS、pCR、病理学的奏効(MPR)率の改善は報告、論文化済み。今回の発表では、最終OS、PD-L1発現レベルなどサブグループ別のOS、pCR・MPR・リンパ節転移とEFSとの関連について報告された。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は両群とも未到達(NR)だったものの、デュルバルマブ群はプラセボ群と比較して統計学的に有意なOSの改善を示した(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]: 0.63~0.96、p=0.021)。・デュルバルマブ群の統計学的に有意なOSの改善傾向は、人種、腫瘍部位、ECOG-PSなど、主なサブグループ間において一致していた。PD-L1<1%、PD-L1≧1%のHRはともに0.79で、PD-L1発現にも依存せずOSを延長することが確認された。・デュルバルマブ群はプラセボ群よりもリンパ節転移が陰性である率が高かった(58.2%対44.8%、オッズ比:1.72、95%CI:1.30~2.27)。・pCR/MPR達成例においては、デュルバルマブ群のEFS改善効果が顕著だった(pCR例のHR:0.29、MPR例のHR:0.32)。 これらの結果より、Tabernero氏は「デュルバルマブ群はプラセボ群に比べ、OSを統計的に有意に延長した。この効果はPD-L1陰性/陽性を問わず一貫していた。病理学的奏効(pCR/MPR)およびリンパ節陰性化は、EFS改善と強く相関していた。術前術後療法としてのデュルバルマブ+FLOTは、切除可能胃がんの新たな標準候補と考えられる」とまとめた。

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HER2+早期乳がんの術前療法、T-DXd→THPが標準治療を上回るpCR率(DESTINY-Breast11)/ESMO2025

 DESTINY-Breast11試験において、再発リスクの高いHER2陽性(+)早期乳がん患者の術前療法として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)投与後のパクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)は、ドキソルビシン+シクロホスファミド投与後にTHP療法を行う現在の標準治療(ddAC-THP療法)に比べて、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある病理学的完全奏効(pCR)の改善を示したことを、ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのNadia Harbeck氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。 DESTINY-Breast11試験は、高リスクのHER2+早期乳がん患者における術前療法としてのT-DXdの有効性と安全性を検討する第III相試験。患者は、(1)T-DXdのみを投与する群、(2)T-DXdに続いてTHPを投与する群、(3)ddACに続いてTHPを投与する群のいずれかに無作為に割り付けられた。なお、独立データモニタリング委員会の勧告により、T-DXd単独群への登録は2024年3月12日に中止された。・試験デザイン:第III相多施設共同非盲検無作為化試験・対象:高リスク(cT3以上でN0~3またはcT0~4でN1~3または炎症性乳がん)で未治療のHER2+早期乳がん患者・試験群(T-DXd-THP群):T-DXd(5.4mg/kg、3週間間隔)を4サイクル→THP療法を4サイクル 321例・対照群(ddAC-THP群):ddAC療法を4サイクル→THP療法を4サイクル 320例・評価項目:[主要評価項目]盲検下中央判定によるpCR(ypT0/Tis ypN0)[副次評価項目]盲検下中央判定によるpCR(ypT0 ypN0)、無イベント生存期間(EFS)、無浸潤疾患生存期間、全生存期間、安全性など・データカットオフ:2025年3月12日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の年齢中央値はT-DXd-THP群50歳およびddAC-THP群50歳、アジア人が49.8%および49.1%、HER2ステータス IHC3+が87.2%および88.4%、HR+が73.5%および73.4%、cT0~2が54.8%および58.8%、リンパ節転移ありが89.4%および87.8%であった。・主要評価項目であるpCR率は、T-DXd-THP群67.3%、ddAC-THP群56.3%であった。絶対差は11.2%(95%信頼区間[CI]:4.0~18.3、p=0.003)であり、T-DXd-THP療法は統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるpCRの改善を示した。このベネフィットはHR+でもHR-でも同様に認められた。・残存腫瘍負荷(RCB)インデックス0~Iとなったのは、T-DXd-THP群81.3%、ddAC-THP群69.1%であった。このベネフィットもHR+でもHR-でも同様に認められた。・EFSはT-DXd-THP群で早期から良好な傾向がみられた(ハザード比:0.56、95%CI:0.26~1.17)。24ヵ月EFS率は、T-DXd-THP群96.9%(95%CI:93.5~98.6)、ddAC-THP群93.1%(95%CI:88.7~95.8)であった。・Grade3以上の有害事象(AE)はT-DXd-THP群37.5%およびddAC-THP群55.8%、重篤なAEは10.6%および20.2%に発現した。治療中断に至ったAEは37.8%および54.5%であった。・薬剤関連と判断された間質性肺疾患/肺臓炎はT-DXd-THP群4.4%(Grade3以上:0.6%)およびddAC-THP群5.1%(同:1.9%)、左室機能不全は1.3%(同:0.3%)および6.1%(同:1.9%)に発現した。 これらの結果より、Harbeck氏は「T-DXd-THP療法はddAC-THP療法よりも有効性が高く、毒性が少ない術前療法であり、高リスクのHER2+早期乳がんの新たな標準治療候補となる可能性がある」とまとめた。

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HR 0.40、シスプラチン不適格MIBCへの周術期EV+ペムブロリズマブ追加でEFS改善(KEYNOTE-905)/ESMO2025

 シスプラチン不適格または投与を拒否した筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者において、術前・術後のエンホルツマブ ベドチン(EV)+ペムブロリズマブの追加は、根治的膀胱全摘除術(RC)+骨盤リンパ節郭清術(PLND)のみと比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に改善した。ベルギー・アントワープ大学のChristof Vulstake氏が、第III相KEYNOTE-905試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。・対象:シスプラチン不適格(Galsky criteriaによる)または投与を拒否したMIBC患者(T2~T4aN0M0またはT1~T4aN1M0、ECOG PS 0~2)・試験群(EV+Pem群):EV(1.25mg/kg、3週ごと1・8日目)×3サイクル+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)×3サイクル→RC+PLND→EV×6サイクル+ペムブロリズマブ×14サイクル 170例・対照群:RC+PLNDのみ 174例※同試験は当初、術前ペムブロリズマブ→RC+PLND→術後ペムブロリズマブ投与群(ペムブロリズマブ群)と対照群との2アームで開始されたが、2020年にEV+Pem群が追加された。2022年にはペムブロリズマブ群への無作為化を中止、EV+Pem群と対照群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、対照群では術後ニボルマブ投与が可能となった。今回は、EV+Pem群と対照群の結果が報告されている。・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるEFS[重要な副次評価項目]OS、中央判定による病理学的完全奏効(pCR)・層別化因子:シスプラチン適格性(不適格vs.適格だが投与拒否)、臨床病期(T2N0 vs. T3/T4aN0 vs.T1~T4aN1)など[探索的評価項目]pCRステータスごとのEFS・観察期間中央値25.6ヵ月(データカットオフ:2025年6月6日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はEV+Pem群74.0歳vs.対照群72.5歳、シスプラチン不適格が83.5%vs.79.9%、T3/T4aN0が78.2%vs.75.9%、ECOG PS 2の患者が12.4%vs.14.9%含まれた。・BICRによるEFS中央値は、EV+Pem群NR(95%信頼区間[CI]:37.3~NR)vs.対照群15.7ヵ月(95%CI:10.3~20.5)で、EV+Pem群で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.28~0.57、片側p<0.0001)。なお、対照群の16.7%が術後ニボルマブ投与を受けていた。・OS中央値は、EV+Pem群NR(95%CI:NR~NR)vs.対照群41.7ヵ月(95%CI:31.8~NR)で、EV+Pem群で統計学的有意に改善した(HR:0.50、95%CI:0.33~0.74、片側p<0.0002)。12ヵ月OS率は86.3%vs.75.7%、24ヵ月OS率は79.7%vs.63.1%。EV+Pem群の4.7%、対照群の26.4%が次治療を受けていた。・EV+Pem群におけるEFSおよびOSベネフィットはすべてのサブグループで一貫していた。・pCR率はEV+Pem群57.1%(95%CI:49.3~64.6)vs.対照群8.6%(95%CI:4.9~13.8)、推定差48.3%(95%CI:39.5~56.5、片側p<0.000001)となり、EV+Pem群で統計学的有意に改善した。・pCRが得られた症例におけるEFSはEV+Pem群NR vs.対照群41.2ヵ月(HR:0.43、95%CI:0.16~1.06)、non-pCR症例では26.1ヵ月vs.14.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.51~1.14)であった。・投与サイクル中央値は術前EV+ペムブロリズマブが3.0サイクル、術後EVが6.0サイクル、術後ペムブロリズマブが12.0サイクルであった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はEV+Pem群71.3%vs.対照群45.9%で発現した。EV+Pem群でみられた主なGrade3以上のTEAEは尿路感染、貧血などで、これまでに報告されている安全性プロファイルと一致し、新たな安全性上の懸念は報告されていない。・有害事象による手術遅延はEV+Pem群4.0%vs.対照群0.6%で発生した。 Vulstake氏は、本試験はシスプラチン不適格のMIBC患者において手術療法と比較し周術期療法の有効性を示した初の第III相試験であるとし、高いアンメットニーズを抱えた同患者集団における新たな標準治療となる可能性を示したとまとめている。

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