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レポーター紹介[目次]PROTEUS試験TALAPRO-3試験RAMPART試験SARC041試験SAKK 06/19試験米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)の年1回の総会は、今年も米国イリノイ州シカゴで開催され、2026年は5月29日から6月2日まで5日間の日程で行われた。昨今の円安はさらに進み、5月29日時点で1ドル=160円前後と、現地参加へのモチベーションをそぐには十分な水準であり、今年もオンラインでの参加を選択した。泌尿器腫瘍領域では、前立腺がんを中心に、Oral Abstract Session、Rapid Oral Abstract Session、Poster Sessionで多数の演題が報告された。毎年の目玉であるPlenary SessionにはPractice changingな演題が選出されるが、今年は高リスク限局性/局所進行前立腺がんに対する周術期アパルタミド+ADTを検証したPROTEUS試験がLBA1として選出され、泌尿器腫瘍領域にとっても注目度の高い総会となった。今年のASCOでは、手術を中心とした限局性前立腺がん治療への全身療法の導入に加え、転移を有する前立腺がんにおける分子異常に基づく治療強化、腎細胞がん術後補助療法における免疫療法の位置付けなど、日常診療への影響を考えさせる報告が相次いだ。また、しばしば後腹膜腫瘍として携わる脱分化型脂肪肉腫に対する新たなエビデンスとして、アベマシクリブのSARC041試験もPlenary Sessionで報告された。膀胱がんの免疫併用療法の新時代を感じさせる報告も含め、PROTEUS、TALAPRO-3、RAMPART、SARC041、SAKK 06/19の5演題を取り上げて報告する。目次に戻るPlenary Session 前立腺がん#LBA1 高リスク限局性/局所進行前立腺がんに対する周術期アパルタミド+ADTは病理学的奏効とMFSを改善(PROTEUS試験)Perioperative(neoadjuvant and adjuvant) apalutamide(APA)+androgen deprivation therapy(ADT)vs placebo(PBO)+ADT with radical prostatectomy(RP) in high-risk localized or locally advanced prostate cancer(HR LPC/LAPC): Final analysis of the PROTEUS phase 3 study.Mary-Ellen Taplin(Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, United States)高リスク限局性/局所進行前立腺がんでは、根治的前立腺全摘術後も一定割合で再発や遠隔転移を来すが、手術に全身療法を組み合わせる周術期治療は標準治療として確立していなかった。PROTEUS試験は、根治的前立腺全摘術を予定する高リスク限局性/局所進行前立腺がんを対象に、術前6サイクルおよび術後6サイクルのアパルタミド+ADTとプラセボ+ADTを比較した国際共同二重盲検ランダム化比較第III相試験である。主要評価項目は、病理学的完全奏効または微小残存病変(pCR/MRD)および中央判定による無転移生存期間(MFS)であった。2,109例が登録され、追跡期間中央値約5年時点で、pCR/MRDはアパルタミド+ADT群で8.9%、プラセボ+ADT群で1.0%(オッズ比:10.17、p<0.0001)と有意に改善した。5年MFS率は78.2%と73.5%であり、ハザード比[HR]:0.80(95%信頼区間[CI]:0.67~0.96、p=0.02)と、遠隔転移または死亡リスクを20%低下させた。無イベント生存期間(EFS)も57.1ヵ月と38.4ヵ月で延長し、次治療開始までの期間も約3年遅延したと報告された。Grade 3/4有害事象は39.6%と31.0%で、主な差は皮疹などアパルタミドに関連する毒性であった。本試験は、手術を予定する高リスク前立腺がんにおいて、周術期のアンドロゲン受容体経路阻害薬+ADTが病理学的奏効だけでなくMFSも改善することを示した初の第III相試験であり、前立腺がん周術期治療の考え方を変える報告であった。日本でもアパルタミドは転移を有する去勢感受性前立腺がん(mHSPC)および転移のない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)で使用可能であり、本試験に日本人も含まれており承認される可能性が高い。高リスク限局性前立腺がんの治療は放射線治療も選択肢となり、PROTEUS試験では従来非切除アプローチを優先してきたN1症例も含まれる。術前においても泌尿器科と腫瘍内科、放射線治療科が連携して全身療法を検討する流れが必要かもしれない。本試験の結果を解釈するためのハードルは以下の3点である。1.現在の標準治療である手術単独との比較ではなく両群にADTが行われていたこと2.試験参加およびフォローアップにPSMA-PETが用いられていたこと3.全生存期間(OS)は主要/副次評価項目に入っていないこと、また、この治療を適用するに当たり術後治療まで行う必要性があるかどうか目次に戻るOral abstract session 前立腺、精巣、陰茎#LBA5007 HRR遺伝子異常を有するmHSPCに対するタラゾパリブ+エンザルタミドはrPFSを延長(TALAPRO-3試験)TALAPRO-3: Talazoparib(TALA)+enzalutamide(ENZA) compared with placebo (PBO)+ENZA for the treatment of patients(pts) with metastatic castration-sensitive prostate cancer(mCSPC) harboring homologous recombination repair(HRR) gene alterations.Neeraj Agarwal(Huntsman Cancer Institute[NCI-CCC], University of Utah, Salt Lake City, UT)タラゾパリブはPARP阻害薬であり、エンザルタミドとの併用は転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象としたTALAPRO-2試験で有効性が示されている。ASCO2026では、この併用療法をmHSPCに前倒しし、HRR遺伝子異常を有する症例に対象を絞って検証したTALAPRO-3試験(NCT04821622)の結果が報告された。本試験は国際共同二重盲検ランダム化比較第III相試験で、対象となるHRR遺伝子はATM、ATR、BRCA1、BRCA2、CDK12、CHEK2、FANCA、MLH1、MRE11A、NBN、PALB2、RAD51Cの12遺伝子であった。患者はタラゾパリブ+エンザルタミド+ADT群とプラセボ+エンザルタミド+ADT群にランダム化され、主要評価項目は治験担当医判定による画像上の無増悪生存期間(rPFS)であった。599例が登録され、84%がde novo転移、71%がhigh-volume diseaseであり、アジア人は約39%を占めていた。rPFSはタラゾパリブ群で有意に改善し、3年rPFS率は77%と56%、HR:0.48(95%CI:0.36~0.65、p<0.001)であった。BRCA変異例ではHR:0.37、non-BRCA HRR変異例でもHR:0.57と、一貫した改善が示された。OSは中間解析時点でHR:0.77(95%CI:0.56~1.04)と未成熟であった。安全性については、重篤な有害事象はタラゾパリブ群42%、対照群32%であり、Grade3/4の貧血は51%、輸血は40%に認められた。TALAPRO-3試験は、mHSPCにおいてHRR陽性集団をPARP阻害薬併用による治療強化の対象として確立した試験である。日本人を含む試験であり、承認されればmHSPC診断時からHRR検査を行い、分子異常に基づいて初回治療を選択する診療へ移行する可能性がある。一方で、治療期間が長くなりうるmHSPCでは、貧血を中心とした血液毒性管理と、OS成熟後のベネフィットの評価が今後の課題である。目次に戻るClinical Science Symposium -腎&膀胱-#LBA4511 切除後腎細胞がんに対する術後デュルバルマブ単剤はDFSを有意に改善せず(RAMPART試験)Durvalumab monotherapy versus active monitoring for resected primary renal cell carcinoma in RAMPART: An international, phase 3, randomized controlled trial. James Larkin(The Royal Marsden NHS Foundation Trust, London, United Kingdom)腎細胞がんに対する術後補助療法では、KEYNOTE-564試験によりペムブロリズマブが無病生存期間(DFS)およびOSを改善し、日本でも再発リスクの高い淡明細胞型腎細胞がんに対する標準治療となっている。一方、術後免疫療法の有効性は試験間で一貫しておらず、免疫チェックポイント阻害薬の種類や併用療法の意義は重要な臨床疑問であった。RAMPART試験は、腎摘除後に再発リスクを有する腎細胞がんを対象に、active monitoring、デュルバルマブ単剤、デュルバルマブ+トレメリムマブを比較した国際共同ランダム化比較第III相試験である。対象はLeibovich scoreで中間または高リスク、あるいは完全切除後(M1 NED)症例で、主要評価項目はDFSであった。ASCO2026では、デュルバルマブ単剤とactive monitoringの比較結果が報告された。追跡期間中央値3.5年時点で、3年DFS率はデュルバルマブ単剤群78%、active monitoring群72%であり、HR:0.74(95%CI:0.53~1.04、片側p=0.041)と数値上は改善したものの、事前に規定された有意水準には到達しなかった。一方、既報のデュルバルマブ+トレメリムマブ群では、3年DFS率80%と72%、HR:0.65(95%CI:0.45~0.93、片側p=0.0094)と有意な改善を認めた。OSは未成熟であり、3年OS率はデュルバルマブ+トレメリムマブ群96%、デュルバルマブ単剤群98%、active monitoring群96%で、明らかな差は認められていない。安全性では、Grade3/4有害事象はデュルバルマブ+トレメリムマブ群41%、デュルバルマブ単剤群30%、active monitoring群9%であり、重篤な有害事象はそれぞれ34%、19%、6%であった。まれではあるが、致死的な免疫関連有害事象として重症筋無力症や心筋炎も報告された。RAMPART試験は、デュルバルマブ単剤を術後補助療法の新たな標準とする結果ではなかった。一方で、CTLA-4抗体を加えた併用療法ではDFS改善が示され、とくに高リスクまたはM1 NED症例で利益が大きい可能性がある。日本の日常診療では、すでにOS延長を示したペムブロリズマブ術後療法が標準であり、RAMPARTの結果をただちに診療へ反映する場面は限られるが、術後補助免疫療法におけるリスク選択、併用療法の意義、毒性とのバランスを再考させる重要な報告であった。目次に戻るPlenary Session 脱分化型脂肪肉腫#LBA2 進行脱分化型脂肪肉腫に対するアベマシクリブはPFSを有意に延長(SARC041試験)SARC041: A phase 3 randomized double-blind study of abemaciclib versus placebo in patients with advanced dedifferentiated liposarcoma.Mark Dickson(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY)脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma;DDLS)は、後腹膜原発として診療に携わることも多いまれな軟部肉腫であり、再発・転移例では薬物療法の選択肢が限られている。DDLSではCDK4を含む12番染色体領域の増幅が高頻度に認められることから、CDK4/6阻害薬による治療開発が進められてきた。SARC041試験は、再発または転移を有するDDLSを対象に、アベマシクリブとプラセボを比較した二重盲検ランダム化第III相試験である。アベマシクリブは日本では乳がんに対して使用されている経口CDK4/6阻害薬であり、連日投与可能であることが特徴である。本試験では、進行DDLS 108例がアベマシクリブ200mg 1日2回またはプラセボに1:1で割り付けられた。ベースラインで前治療歴0の患者が両群で約50%ずつ含まれた。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後はプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。PFS中央値はアベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、HR:0.38、p<0.001と有意な延長が示された。6ヵ月PFS率は60%と22%、12ヵ月PFS率は39%と13%であった。奏効率は9%と高くはないものの、プラセボ群では奏効例がなく、DDLSにおいて病勢制御を得る治療としての意義が示された。OS中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月、HR:0.55、p=0.07であり、プラセボ群の85%がクロスオーバーしたことを踏まえると良好な傾向であった。有害事象は下痢、血球減少、悪心など、既知のアベマシクリブの安全性プロファイルに沿うものであった。アベマシクリブ群の39%で減量を要したが、忍容性は管理可能と報告された。SARC041試験は、DDLSにおいて初めて明確なPFS改善を示した第III相試験であり、希少肉腫における分子標的治療の開発として重要な報告であった。ただし、本試験では腫瘍量が多く緊急に細胞障害性化学療法を要する症例や、プラセボ対照試験に適さないほど急速に進行する症例は除外されており、ドキソルビシンなど既存の細胞障害性化学療法に置き換わる治療と位置付けるには慎重な解釈が必要である。また、米国のみで行われた試験であり、日本を含め各国で承認を得られるかどうかは不透明である。目次に戻るOral abstract session -腎&膀胱-#4503 筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱内rBCG+chemo-IO周術期治療は高いpCR率を示す(SAKK 06/19試験)Intravesical recombinant BCG combined with chemo-immunotherapy (chemo-IO) as perioperative therapy for patients with muscle-invasive bladder cancer (MIBC): Primary analysis of SAKK 06/19.Richard Cathomas(Division of Oncology, Cantonal Hospital Graubunden, Chur, Switzerland)筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)では、根治的膀胱全摘術にシスプラチン併用術前化学療法を組み合わせることが標準治療であり、近年はNIAGARA試験により周術期化学療法と免疫療法の併用(chemo-IO)の有効性も示されている。一方で、pCR率はなお十分とはいえず、さらなる治療強化の余地がある。BCG膀胱内注入療法は筋層非浸潤性膀胱がんで広く用いられ、局所免疫反応を誘導する治療であるが、MIBCに対する使用は全身性合併症への懸念もあり十分に検討されてこなかった。SAKK 06/19試験では、免疫原性の増強と安全性改善を目的に開発された組換えBCGワクチンVPM1002BC(rBCG)を、周術期chemo-IOに組み合わせる治療戦略が検討された。本試験は、シスプラチン適格で根治的膀胱全摘術を予定するcT2-T4aN0-1 MIBCを対象とした、オープンラベル単群第II相試験である。rBCGはday 1、8、15に週1回計3回膀胱内注入され、アテゾリズマブ1,200mgはday 1から3週ごとに計4回投与された。ゲムシタビン+シスプラチン療法はday 22から3週ごとに4サイクル行われ、その後に根治的膀胱全摘術が実施された。術後病理でypT2以上またはypN陽性の場合には、アテゾリズマブを術後13サイクル追加する設定であった。主要評価項目は中央病理判定によるpCR(ypT0N0)であり、副次評価項目には病理学的奏効(PaR、ypT1N0以下)、EFS、OS、実施可能性、安全性が含まれた。2022年4月から2025年4月までにスイス国内10施設で47例が登録され、このうち40例が根治的膀胱全摘術を受けた。手術例の臨床病期はcT2が53%、cT3が37%、cT4が10%であり、cN1は12%であった。rBCGは95%の症例で投与され、78%が3回すべての投与を受けた。アテゾリズマブ4回投与は98%、プラチナ併用化学療法4サイクルは95%で実施され、20%ではカルボプラチンへ変更された。中央病理判定による手術例のpCR率は65%(26/40)、PaR率は80%(32/40)であり、登録例全体でみてもpCR率は55%(26/47)であった。治療関連有害事象は、rBCG関連では全Gradeが48%、Grade3が9%、アテゾリズマブ関連では全Gradeが55%、Grade3が15%、Grade4が2%、化学療法関連では全Gradeが98%、Grade3が38%、Grade4が17%であった。治療関連死亡は認められず、追跡期間中央値11.8ヵ月時点で1年EFS率は88%、1年OS率は95%であった。本試験は、chemo-IOにさらに膀胱内rBCGを加えることで、非常に高い病理学的奏効を示した。これは、従来の化学療法単独で期待されるpCR率27~33%を30%程度上回る数値でありChemo+IOで+10%程度、抗体薬物複合体製剤+IOで+20%程度であることを考慮すると、膀胱がんにおいて腫瘍局所の免疫賦活がいかに重要であるかを示唆する貴重な報告である。BCGにより膀胱局所の自然免疫・獲得免疫を刺激し、全身の免疫チェックポイント阻害薬および化学療法と相乗効果を狙うという発想は、MIBC治療開発の新たな方向性として興味深い。もちろん、本試験は単群第II相試験であり、NIAGARA試験やEV+ペムブロリズマブを用いた第III相試験との直接比較ではない。また、EFSやOSの追跡期間はまだ短く、pCRの高さが長期予後改善につながるかは今後の検証が必要である。それでも、MIBCにおいて局所免疫療法を全身治療に組み込むというコンセプトを示した点で、今後のランダム化比較試験や膀胱温存療法への応用に期待が膨らむ内容であった。目次に戻る