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肺血栓塞栓症における診断基準導入の意義(解説:今井靖氏)-827

 肺血栓塞栓症が疑わしい場合、d-dimerなどの血液検査に加え、本邦ではCT検査で肺血管から下肢静脈までをスキャンする肺静脈血栓症・深部静脈血栓症スクリーニングが普及しているが、一方で、本来不要な検査の実施が少なからず行われている実情がある。そのような状況において本論文については一読の価値があると思われる。今回取り上げる論文においては、低リスクの救急部門受診患者における肺血栓塞栓症の除外基準を導入することで血栓塞栓症イベントが抑制されるか否かについて検討した、PROPER研究の報告である。 肺血栓塞栓症を除外するための基準(PERC:pulmonary embolism rule-out criteria)、これは8つの項目(酸素飽和度94%以下、心拍数100/分以上、年齢50歳以上、片側の下腿浮腫、血痰、最近の外傷または手術歴、過去の肺血栓塞栓症または深部静脈血栓症の既往、エストロゲン補充療法の有無)からなるが、その安全性についてランダム化比較試験での検討が今まで施行されていなかった。この研究ではPERC基準を用いて肺血栓塞栓症を除外することの有用性を前向きに検討するものであり、PERC基準で該当項目がなければそれ以上のwork-upは施行せず、1つでも該当項目があればd-dimer、CTアンギオグラフィ、血流シンチグラムといった検査を施行するというものであり、対照群は初めからwork-upするということでの比較検討がなされた。 主要エンドポイントは初期診断がなされず、3ヵ月の追跡期間の間の血栓塞栓症発症とし、副次的エンドポイントとしてCTアンギオグラフィ施行率、救急部門の滞在期間の中央値、入院率とされた。平均年齢44歳、51%が女性という背景の1,916例について、PERCガイダンス群962例、対照群954例が割り付けられた。1,749例が試験を完遂し、初期段階ではPERC群で14例1.5%、対照群で26例2.7%、p=0.052であった。経過観察後の血栓塞栓症はPERC群で1例、対照群で0例であった。CTアンギオグラフィ施行率はPERC群で13%、対照群で23%と統計的有意差をもってPERC群で少なかった(p<0.001)。PERC群において救急部門滞在時間が短く(中央値:4時間36分vs.5時間14分)、かつ入院率が低かった(13% vs.16%)。肺血栓塞栓症が疑われるが非常に低リスクの患者においては、3ヵ月を超えてフォローしたところPERCガイド治療は従来の治療法に比較して血栓塞栓症の発症において非劣性を示し、PERC基準をガイドとすることの安全性を支持する結果となった。 PERC基準は、過去に欧州でその有用性が検証された試験があり、基準陰性にもかかわらず肺血栓塞栓症発症が思いのほか多かったことがあったとされるが、少なくとも今回の検討により非常にリスクが少ない集団においてPERC基準で該当項目の有無を評価することの安全面が確認されたこともあり、日常診療における意思決定の一助になるものと思われる。その経済効果などについての検討を含め、今後のさらなる検討が期待される。

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下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

 下肢静脈瘤と診断された成人患者では、深部静脈血栓症(DVT)のリスクが有意に高いことが明らかにされた。肺塞栓症(PE)と末梢動脈疾患(PAD)については、潜在的交絡因子のためはっきりしなかったという。台湾・桃園長庚紀念医院のShyue-Luen Chang氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。下肢静脈瘤は一般的にみられるが、重大な健康リスクと関連することはまれである。一方、DVT、PE、PADも血管疾患であるが、全身に重大な影響を及ぼす。これまで下肢静脈瘤とDVT、PE、PADとの関連性はほとんど知られていなかった。著者は、「下肢静脈瘤とDVTとの関連が、因果関係によるのか、あるいは共通のリスク因子があるのかについて、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2018年2月27日号掲載の報告。下肢静脈瘤患者約21万人について下肢静脈瘤群などの発症を比較 研究グループは、台湾の国民健康保険プログラムの請求データを用いて、後ろ向きコホート研究を実施した。2001年1月1日~2013年12月31日の間に下肢静脈瘤と診断された20歳以上の患者21万2,984例(平均[±SD]年齢54.5±16.0歳、女性69.3%)を登録し、傾向スコアを用いてマッチングした下肢静脈瘤を有しない患者(DVT、PE、PADの既往歴がある患者は除く)を対照群(21万2,984例、平均年齢54.3±15.6歳、女性70.3%)として、下肢静脈瘤の有無によるDVT、PE、PADの発症率を比較した。 追跡終了日は2014年12月31日。Cox比例ハザードモデルを用いて、対照群に対する相対ハザードを推定した。下肢静脈瘤群は対照群に比べ深部静脈血栓症のリスクが5.3倍 追跡期間中央値は、下肢静脈瘤群ではDVTに関して7.5年、PE 7.8年、PAD 7.3年、対照群ではそれぞれ7.6年、7.7年、7.4年であった。 下肢静脈瘤群では対照群と比較して、いずれも発症頻度(/1,000人年)が高く、DVTは6.55 vs.1.23(1万360例 vs.1,980例、絶対リスク差[ARD]:5.32、95%信頼区間[CI]:5.18~5.46)、PEは0.48 vs.0.28(793例 vs.451例、ARD:0.20、95%CI:0.16~0.24)、PADは10.73 vs.6.22(1万6,615例 vs.9,709例、ARD:4.51、95%CI:4.31~4.71)であった。対照群に対する下肢静脈瘤群のハザード比は、DVTが5.30(95%CI:5.05~5.56)、PEが1.73(95%CI:1.54~1.94)、PADが1.72(95%CI:1.68~1.77)であった。 なお、著者は、観察研究であるため因果関係は結論付けられないこと、下肢静脈瘤群の対照群には未診断の下肢静脈瘤を有する患者が含まれている可能性があること、下肢静脈瘤の重症度については調べていないことなどを、研究の限界として挙げている。

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人工関節全置換術後のVTE予防、アスピリンへの切り替えは有効か/NEJM

 股関節および膝関節の人工関節全置換術(THA/TKA)後にリバーロキサバンの短期投与を受けた患者では、その後アスピリンに切り替えても、リバーロキサバンを継続した場合と比較して、症候性静脈血栓塞栓症(VTE)の予防効果に差はないことが、カナダ・ダルハウジー大学のDavid R. Anderson氏らが行ったEPCAT II試験で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2018年2月22日号に掲載された。アスピリンは、安価で、副作用プロファイルが十分に確立されており、THA/TKA後のVTE(近位深部静脈血栓症、肺塞栓症)の予防効果を有する可能性が臨床試験やメタ解析で示されているが、退院後の延長投与の予防効果を直接経口抗凝固薬と比較した試験は、これまで行われていなかった。アスピリンへの切り替えの有用性を無作為化試験で評価 EPCAT II試験は、THA/TKA施行後のVTEの予防として、リバーロキサバンの短期投与を受けた患者において、アスピリンの延長投与の有効性と安全性を評価する二重盲検無作為化対照比較試験である(カナダ保健研究機構の助成による)。 待機的に、片側の初回または再置換(revision)THA/TKAを受ける患者が、術後5日までリバーロキサバン(10mg、1日1回)の投与を受けた後、アスピリン(81mg/日)へ切り替える群またはリバーロキサバンを継続する群にランダムに割り付けられた。TKA例は9日間、THA例は30日間の投与が行われ、追跡期間は90日であった。 有効性の主要アウトカムは症候性VTEであり、安全性の主要アウトカムは出血性合併症(大出血、大出血ではないが臨床的に問題となる出血)であった。VTE発生率:0.64% vs.0.70%、非劣性を確認 2013年1月~2016年4月の期間に、カナダにある15の大学関連医療センターに3,424例(THA:1,804例、TKA:1,620例)が登録され、アスピリン切り替え群に1,707例(THA:902例、TKA:805例)、リバーロキサバン継続群には1,717例(THA:902例、TKA:815例)が割り付けられた。 全体の平均年齢は62.8歳、47.8%が男性であった。初回手術例が90%以上を占め、術後の平均入院期間は3.5日だった。 VTEの発生率は、切り替え群が0.64%(11/1,707例)と、継続群の0.70%(12/1,717例)に比べ優越性は認めなかったが、非劣性が確認された(群間差:0.06ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.55~0.66、優越性:p=0.84、非劣性:p<0.001)。 大出血の発生率は、切り替え群が0.47%(8例)、継続群は0.29%(5例)であり(群間差:0.18ポイント、95%CI:-0.65~0.29、p=0.42)、大出血ではないが臨床的に問題となる出血の発生率は、それぞれ1.29%(22例)、0.99%(17例)であった(群間差:0.30ポイント、95%CI:-1.07~0.47、p=0.43)。 著者は、「症候性VTEの発生率は両群とも低く、ほぼ同じであった」とまとめ、「いくつかの限界はあるが、これらの知見は臨床的に重要である。本試験は規模が大きく、アスピリンのリバーロキサバンに対する非劣性を示すに十分な検出力を持っている」としている。

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深部静脈血栓症、カテーテル血栓溶解療法併用の効果(解説:中澤達氏)-802

 急性近位深部静脈血栓症の患者692例を、抗凝固療法単独と抗凝固療法+薬理機械的カテーテル血栓溶解療法(以下、カテーテル血栓溶解療法)に無作為に割り付けて追跡した。 フォローアップ中6~24ヵ月の血栓後症候群の発生について、両群間で有意差はなかった。(カテーテル血栓溶解療法群47%、抗凝固療法単独群48%、p=0.56)。一方で、カテーテル血栓溶解療法群では、10日以内の大出血イベントがより多かった(1.7% vs.0.3%、p=0.049)。フォローアップ24ヵ月間の全体でみた静脈血栓塞栓症の再発は、両群間で有意差はなかった(12% vs.8%、p=0.09)。 中等症~重症の血栓後症候群の発生は、カテーテル血栓溶解療法群18%に対し、抗凝固療法単独群は24%であった(p=0.04)。また、血栓後症候群の重症度スコア(Villalta scores)は、フォローアップ6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月いずれの時点の評価でも、対照群よりカテーテル血栓溶解療法群が有意に低かった(各評価時点におけるスコアの比較のp<0.01)。しかし、ベースラインから24ヵ月までのQOLの改善に関して、両群間で有意差はなかった。 急性近位深部静脈血栓症を発症した患者において、抗凝固療法にカテーテル血栓溶解療法を追加しても、血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは高まることが示された。血栓後症候群は静脈弁破壊と内皮細胞障害で生じると考えられる。CaVenT研究では、カテーテル血栓溶解療法の有益性が示されたが、本研究では有益性はなく出血性イベントが増加した。 静脈弁破壊と内皮細胞障害が生じない内に血栓がなくなれば、血栓後症候群は発症しないであろう。 従って、効果は近位深部静脈血栓症発症から治療開始までの時間に依存していると思う。本研究の対象は、"急性"近位深部静脈血栓症と一括りにしている多施設研究であることが有益性を証明できなかった一因であろう。

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深部静脈血栓症、薬理機械的血栓溶解併用は有益か/NEJM

 急性近位深部静脈血栓症を発症した患者において、抗凝固療法に薬理機械的カテーテル血栓溶解療法(以下、薬理機械的血栓溶解療法)を追加しても、血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは高まることが、米国・セントルイス・ワシントン大学のSuresh Vedantham氏らによる無作為化試験の結果で示された。近位深部静脈血栓症を発症した患者は、抗凝固療法を行っても血栓後症候群を呈する頻度が高い。研究グループは、薬理機械的血栓溶解療法は血栓を速やかに除去し、血栓後症候群のリスクを低減すると仮定し検証試験を行った。NEJM誌2017年12月7日号掲載の報告。抗凝固療法単独群と比較し、血栓後症候群の発生を評価 試験は、急性近位深部静脈血栓症の患者692例を対象とし、抗凝固療法単独(対照群)または抗凝固療法+薬理機械的血栓溶解療法(ステント併用ありまたはなしで、カテーテルまたはデバイスを介して遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータを送達し、血栓を吸引または破砕する)に無作為に割り付けて追跡した。 主要アウトカムは、フォローアップ中6~24ヵ月の血栓後症候群の発生であった。血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは増大 主要アウトカムの発生について、両群間で有意差はなかった。発生率は、薬理機械的血栓溶解療法併用群47%、対照群48%であった(リスク比[RR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.82~1.11、p=0.56)。一方で、薬理機械的血栓溶解療法併用群では、10日以内の大出血イベントがより多かった(1.7% vs.0.3%、RR:6.18[95%CI:0.78~49.2]、p=0.049)。フォローアップ24ヵ月間の全体でみた静脈血栓塞栓症の再発は、両群間で有意差はなかった(12% vs.8%、p=0.09)。 中等症~重症の血栓後症候群の発生は、薬理機械的血栓溶解療法併用群18%に対し、対照群は24%であった(RR:0.73、95%CI:0.54~0.98、p=0.04)。また、血栓後症候群の重症度スコア(Villalta scores)は、フォローアップ6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月いずれの時点の評価でも、対照群より薬理機械的血栓溶解療法併用群が有意に低かった(各評価時点におけるスコアの比較のp<0.01)。しかし、ベースラインから24ヵ月までのQOLの改善に関して、両群間で有意差はなかった。■「深部静脈血栓症」関連記事下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

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大腿骨骨折手術、実施は24時間以内に/JAMA

 大腿骨骨折手術を受けた成人患者において、待機時間が長いと30日死亡およびその他の合併症のリスクが増大することが明らかにされた。カナダ・トロント大学のDaniel Pincus氏らによる住民ベースの後ろ向きコホート試験の結果で、待機時間24時間が、リスクが高まる閾値と定義される可能性が示唆されたという。世界中で、大腿骨骨折手術の待機時間は死亡と関連しており、ケアの質の指標として用いられているが、合併症に結び付く待機時間については議論の的となっていた。JAMA誌2017年11月28日号掲載の報告。オンタリオ州72病院で手術を受けた4万2,230例について分析 研究グループは、合併症リスクが増大する前に大腿骨骨折手術を行うべき至適な時間帯を特定するために、住民ベースの待機時間データを用いて検討を行った。 2009年4月1日~2014年3月31日に、カナダ・オンタリオ州の72病院で同手術を受けた成人を対象とした。待機時間でみた各合併症の発生率を、リスク補正後の制限3次スプラインモデルで描出し、合併症が増大し始めた変曲点(時間)を用いて、手術実施が早期と定義されるのか、待機的と定義されるのかを調べた。また、この定義の頑健さを評価するために、傾向スコアで適合した早期手術群と待機的手術群でアウトカムの比較を(%でみた絶対リスク差[%RD]を95%信頼区間[CI]とともに用いて)行った。 待機時間は、病院到着から手術までの時間と定義。主要アウトカムは、30日以内の死亡率で、副次アウトカムは、死亡またはその他の内科的な合併症(心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、肺炎)の複合などであった。 試験適格基準を満たした大腿骨骨折患者は4万2,230例。平均年齢(SD)80.1(10.7)歳、女性が70.5%であった。30日死亡率、合併症発生率ともに、24時間を過ぎてから手術を受けた群で有意に高率 30日時点の死亡率は、全体で7.0%であった。 待機時間が24時間より長い場合、考えられる合併症リスクはいずれも増大が認められた。 30日死亡リスクは、24時間を過ぎてから手術を受けた待機的手術群(1万3,731例)が、傾向スコアで適合した24時間以内に手術を受けた早期手術群(1万3,731例)と比較して有意に高かった。死亡件数はそれぞれ898例(6.5%)vs.790例(5.8%)で、%RDは0.79(95%CI:0.23~1.35、p=0.006)であった。また、合併症複合アウトカムの発生も待機的手術群が有意に高く、1,680件(12.2%)vs.1,383件(10.1%)、%RDは2.16(95%CI:1.43~2.89、p<0.001)であった。

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リバーロキサバンの安定型冠動脈疾患に対する効果(解説:高月誠司氏)-745

 本研究は、抗Xa薬リバーロキサバンの冠動脈疾患患者に対する心血管イベントの2次予防効果を検証した二重盲検試験である。2万7,395例の安定した冠動脈疾患患者を対象とし、リバーロキサバン2.5mg 1日2回+アスピリン100mgの併用群、リバーロキサバン5mg 1日2回単剤群、アスピリン100mg単剤群の3群に無作為割り付けした。主要評価項目は心血管死、脳卒中、心筋梗塞の複合エンドポイントで、平均23ヵ月の追跡期間である。 結果、主要評価項目の発生は、リバーロキサバン・アスピリン併用群のほうがアスピリン単剤群よりも少なかった(4.1% vs.5.4%、ハザード比0.76、p<0.001)。しかし、大出血の頻度はリバーロキサバン・アスピリン併用群のほうがアスピリン単剤群より多かった(3.1% vs.1.9%、ハザード比1.70、p<0.001)。ただし、脳出血や致死的な出血の頻度は変わらなかった。リバーロキサバン単剤群とアスピリン単剤群との比較では、主要評価項目は変わらなかったが、大出血はリバーロキサバン単剤群で多かったという。試験は主要評価項目において、リバーロキサバン・アスピリン併用群が一貫して優位であり、早期中止された。 抗Xa薬、抗トロンビン薬といった新規経口抗凝固薬は心房細動や深部静脈血栓症に対する抗凝固療法薬として広く使用されているが、冠動脈疾患に対する効果も検証されている。アピキサバンのAPPRAISE-2、リバーロキサバンのATLAS ACS-TIMI 51や最近報告されたダビガトランのRE-DUAL PCIなどの報告があり、後2者では肯定的な結果が得られている。本研究の特徴は安定した冠動脈疾患が対象で、心房細動の有無を問わないという点で、リバーロキサバン・アスピリン併用群のアスピリン群に対する有用性が明らかとなった。冠動脈疾患に対しても、抗Xa薬は有用と考えていいだろう。ただし、リバーロキサバン単剤群は5mg 1日2回、併用群のリバーロキサバンは2.5mg 1日2回という用法・用量で、これらはいずれも心房細動に対するそれとは異なる。 心房細動に対する用法・用量は、欧米では20mg 1日1回(減量時15mg 1日1回)、本邦では15mg 1日1回(減量時10mg 1日1回)であり、本研究では低用量を分服している。それでも、本研究のリバーロキサバン単剤群はアスピリン群よりも大出血の頻度が高かった。本研究はリバーロキサバン・アスピリン併用群でアスピリン群よりも、心血管死、脳卒中、心筋梗塞の頻度が少なかったが、サブグループ解析の結果では、その優位性は75歳以上の患者、体重60kg以下の患者では認めなかった。ワルファリンとは異なり、用量調節不要というのが新規経口抗凝固薬の利点であるが、用法・用量の設定が大事だということがわかる。 欧米人と日本人を比較すると、平均で約20kgの体重差がある。少なくとも本研究で用いられた用量は本邦で用いることはできないだろうし、本邦における検討が必要であろう。また、本研究では主要エンドポイントに致命的な出血や有症状の主要臓器の出血を加えたネットクリニカルベネフィットも併用群で頻度が少なかったと報告している。通常ネットクリニカルベネフィットの算出には症状によって重み付けし、たとえば脳出血は1.5倍や2倍として計算することがあるが、本研究では単純に頻度が比べられている。高齢者、低体重など出血が危惧される患者で本当にベネフィットがあるかどうか検証が必要である。

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潜因性脳梗塞、PFO閉鎖術の長期的効果は?/NEJM

 原因不明の潜因性脳梗塞を発症した成人患者において、卵円孔開存(PFO)閉鎖術群は薬物療法単独群より脳梗塞の再発が低率であったことが、980例を登録して行われた多施設共同無作為化非盲検試験「RESPECT試験」の、延長追跡期間中(中央値5.9年)の解析で示された。PFO閉鎖術の無作為化試験での主要解析は、平均2~4年の期間をベースに行われている。RESPECT試験も、追跡期間中央値2.1年時点で主要解析が行われ、PFO閉鎖術群で脳梗塞の再発率が低かったことが示されたが、有意なベネフィットは示されなかった(N Engl J Med. 2013;368:1092-1100.)。RESPECT研究グループは、長期的な影響を探索的に評価するため、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJeffrey L. Saver氏らが延長フォローアップデータの解析を行った。NEJM誌2017年9月14日号掲載の報告。追跡期間中央値5.9年のアウトカムを評価 RESPECT試験は米国とカナダの69施設で、2003年8月23日~2011年12月28日に潜因性脳梗塞を発症した18~60歳の患者980例(平均年齢45.9歳)を登録して行われた。被験者は、PFO閉鎖術を受ける群(499例)または薬物療法(アスピリン、ワルファリン、クロピドグレル、アスピリン+ジピリダモール徐放薬)のみを受ける群(481例)に無作為に割り付けられ追跡を受けた。 主要有効性エンドポイントは、無作為化後の非致死的脳梗塞・致死的脳梗塞・早期死亡の複合で、エンドポイントイベントの判定は盲検下で行われた。 研究グループは、2016年5月31日時点で延長フォローアップのデータベースをロックし解析を行った。追跡期間中央値は5.9年(四分位範囲:4.2~8.0)。脱落率が薬物療法群で高く(33.3% vs.20.8%)、安全性フォローアップの期間中央値は、2群間で有意な差があった(PFO閉鎖術群3,141患者年vs.薬物療法群2,669患者年、p<0.001)。主要複合エンドポイントのハザード比0.55、原因不明の脳梗塞再発は0.38 有効性解析には、PFO閉鎖術群3,080患者年、薬物療法群2,608患者年が包含された。intention-to-treat集団において、脳梗塞の再発は、PFO閉鎖術群18例、薬物療法群28例で、発症率(100患者年当たり)は、それぞれ0.58、1.07であった(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.31~0.999、log-rank検定のp=0.046)。また、原因不明の脳梗塞の再発は、PFO閉鎖術群10例、薬物療法群23例であった(HR:0.38、95%CI:0.18~0.79、p=0.007)。 安全性の解析では、重篤有害事象の総発現率は、PFO閉鎖術群40.3%、薬物療法群36.0%であった(p=0.17)が、個別にみると、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症と深部静脈血栓症を含む)の発現頻度が、PFO閉鎖術群が薬物療法群よりも高かった。肺塞栓症のHRは3.48(95%CI:0.98~12.34、p=0.04)、深部静脈血栓症のHRは4.44(95%CI:0.52~38.05、p=0.14)であった。

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肺塞栓症診断の新アルゴリズム、CTPA施行数を低減/Lancet

 YEARSと呼ばれる新たな肺塞栓症疑い例の診断アルゴリズムは、肺塞栓症を安全に除外し、年齢を問わず、さまざまなサブグループに一貫してCT肺アンギオグラフィ(CTPA)の施行数を減少させることが、オランダ・ライデン大学医療センターのTom van der Hulle氏らが行ったYEARS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年5月23日号に掲載された。妥当性が確認されている肺塞栓症疑い例の診断アルゴリズムは、正確に使用されないことが多く、便益は一部の患者に限られるため、CTPAの濫用を招いているという。YEARSの、発症時の鑑別的なDダイマーのカットオフ値が組み込まれた臨床的意思決定基準は、迅速性や実地臨床への適合性を有し、あらゆる年齢でCTPA施行数を減少させるために開発された。3項目とDダイマー値から成る簡便なアルゴリズム 本研究は、新たに開発された急性肺塞栓症疑い例の簡便な診断アルゴリズムであるYEARSを前向きに評価する多施設共同コホート試験であり、オランダの12施設の参加の下、2013年10月5日~2015年7月9日に実施された(各参加施設の助成を受けた)。 YEARSの臨床的意思決定基準は、3つの項目(深部静脈血栓症の臨床徴候、喀血、肺塞栓症が最も可能性の高い診断名)とDダイマー値から成り、肺塞栓症疑い例はこれらの同時評価によって管理された。3項目が1つも当てはまらずDダイマー値<1,000ng/mLの患者と、3項目のうち1つ以上が確認されDダイマー値<500ng/mLの患者は、肺塞栓症の診断から除外した。これ以外の患者はCTPAの適用と判定した。 主要評価項目は、診断戦略の安全性に関するもので、肺塞栓症除外から3ヵ月間に発生した静脈血栓塞栓症のイベント数とし、per-protocol解析を行った。副次評価項目は診断戦略の有効性に関するもので、Wells診断アルゴリズムと比較した必要なCTPAの施行数とし、intention-to-diagnose解析を行った。CTPA数が14%減少、より簡便で効果的な診断管理 肺塞栓症疑いの3,465例(平均年齢53[SD 18]歳、女性62%、外来患者86%)がYEARSアルゴリズムによる管理を受けた。ベースライン時に456例(13%)で肺塞栓症が検出された(3項目が1つもなかった1,743例のうち55例[3.2%]、1つ以上を認めた1,722例のうち401例[23%])。 ベースライン時に肺塞栓症が除外され、治療が行われなかった2,946例(85%)のうち、3ヵ月間に18例(0.61%、95%信頼区間[CI]:0.36~0.96)が症候性静脈血栓塞栓症と診断され、このうち6例(0.20%、0.07~0.44)が致死的肺塞栓症であった。 CTPA非適用例の割合は、YEARSアルゴリズムが48%(1,651例)であり、Wells基準とDダイマー値の固定閾値<500ng/mLを用いた標準的診断アルゴリズムを用いた場合の34%(1,174例)に比べ、14%(95%CI:12~16)の差があった。 YEARSアルゴリズムによるCTPA非適用例(1,629例)のうち、3ヵ月間に7例(0.43%、95%CI:0.17~0.88)が静脈血栓塞栓症を発症し、このうち2例(0.12%、0.01~0.44)が致死的肺塞栓症であった。また、YEARSアルゴリズムでCTPA適用と判定され、CTPAで肺塞栓症が除外された1,317例では、3ヵ月間に11例(0.84、0.47~1.5)が症候性静脈血栓塞栓症を発症し、4例(0.30%、0.12~0.78)が致死的肺塞栓症であった。 著者は、「全年齢を通じたCTPA施行数の14%の減少は、肺塞栓症疑い例の不要な放射線被曝の回避における大きな前進である。また、YEARSは、標準的な診断アルゴリズム(Christopher Studyアルゴリズムなど)に比べ、診断管理がより簡便で効果的なアルゴリズムであることが示された」としている。

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循環器内科 米国臨床留学記 第20回

第20回 米国の電子カルテ事情日本でも電子カルテが一般的になっていますが、米国では電子カルテのことをElectrical Medical Record (EMR)と言います。今回は、米国におけるEMR事情について書いてみたいと思います。米国のEMRの特徴の1つとして、どこからでもアクセスできるというのが挙げられます。「今日は疲れたから、残りのカルテは家で書きます」といった感じで、インターネットで世界中のどこからでも電子カルテにアクセスできます。実際、私も帰国時に日本から米国の患者に処方したり、カルテをフォローしたりすることがあります。日本でも電子カルテが登場して久しいですが、インターネットを介して患者のカルテにアクセスするのはまだ一般的でないかもしれません。Medscapeのリポートによると、2016年の段階で91%の医師が電子カルテを使用しており、これは2012年の74%から比べても大幅な増加です。その中でも、41%と圧倒的なシェアを誇るのがEPICというシステムです。ほかのEMRと比べても、EPICはuser friendlyで使いやすく、日常臨床を強力にサポートしてくれます。私のいるカリフォルニア大学アーバイン校では、現在はEPICと異なるシステムを使っていますが、評判が悪いため、来年EPICに移行します。乱立していたEMRの会社も徐々に淘汰され、数社に絞られてきているようです。また、同じEMRシステムを使うと、異なる病院間でも情報が共有できるといったサービスもあります。以前いたオハイオ州のシンシナティーという町にはEPIC everywhereというシステムがあり、EPICを使っているシンシナティー市内すべての病院の情報が共有されていました。ほかの病院の情報に簡単にアクセスできると、無駄な検査を減らすことができます。EMRは、入院時に必要なオーダーを入れないとオーダーを完了できないシステムになっています。例えば、深部静脈血栓症(DVT)予防は、入院時に必須のオーダーセットに入っているため、オーダーせずに患者を入院させようとすると、ブロックサインが現れ、入院させることが難しくなっています。このようなシステムは日本の電子カルテにもあると思います。また、代表的なEMRのシステムには、ガイドラインに準じたクリニカルパスが組み込まれています。 主なものとしては、敗血症ショックセット、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)セット、急性冠動脈症候群(ACS)セットなどが挙げられます。例えばACSで入院すると、ヘパリン、アスピリン、クロピドグレル、スタチン、β遮断薬をクリック1つで選択するだけですから、確かに処方し忘れなどは減ります。オーダーセットは非常に楽ですし、DKAなどは勝手に治療が進んでいき、うまくいけば入院時のワンオーダーで、ほぼ退院まで辿り着けるかもしれません。しかしながら、一方で医者が状況に応じて考えなければいけないことが減り、時には危険なことも起こります。患者の状態は、1人ずつ異なりますから、tailor madeな治療が必要になります。実際、DKAで入院した患者がDKAオーダーセットによる多量の生理食塩水で心不全を起こすというようなことは、何度も見てきました。このほか、EMRで問題となっているのは、いわゆる“copy and paste”です。デフォルトのカルテでは、正常の身体所見が自動的に表示されます。注意を怠ると、重度の弁膜症患者にもかかわらず「雑音がない」とか、心房細動なのに脈拍が“regular”などといった不適切な記載となります。実際に、このようなことはしょっちゅう見受けられます。他人のカルテをコピーすることも日常茶飯事なので、4日前に投与が終わったはずの抗生剤が、カルテの記載でいつまでも続いているということもあります。Medscapeの調査でも66%の医者が“copy and paste”を日常的に(時々から常に)使用しているとのことでした。外来でのEMRは、Review of System、服薬の情報、予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)、スクリーニング(大腸ファイバーなど)などをすべて入力しなければ、カルテを終了(診察を終了)できなくなっています。こうした項目を入力しないと医療点数(診療費)に関わってくるからです。その結果、EMRに追われてしまい、患者を見ないでひたすらコンピューターの画面を見て診療しているような状況に陥りがちです。こうなると、自分がEMRを操作しているのか、EMRに操作されているのかわからなくなります。いろいろな問題がありますが、EMRは日々進歩している印象があります。使い勝手は良いのですが、最終的には医者自身が頭を使わければ患者に不利益が被ることもあるため、注意が必要です。

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リバーロキサバン、VTE再発リスクを有意に低下/NEJM

 6~12ヵ月間の抗凝固薬投与を完了した静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、リバーロキサバンの治療用量(20mg)または予防用量(10mg)はいずれも、アスピリンと比較し、出血リスクを増加させることなく再発リスクを有意に低下させることが認められた。31ヵ国244施設で実施された無作為化二重盲検第III相試験「EINSTEIN CHOICE」の結果を、カナダ・マックマスター大学のJeffrey I Weitz氏らが報告した。抗凝固療法の長期継続はVTEの再発予防に有効であるが、出血リスクの増加が懸念されることから、6~12ヵ月以上の抗凝固療法には抵抗感も強い。長期治療時の出血リスクを減少するため、低用量の抗凝固薬あるいはアスピリンの使用が試みられているが、どれが効果的かはこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。リバーロキサバン2用量とアスピリンの有効性および安全性を比較 研究グループは、2014年3月~2016年3月に、ワルファリンまたは直接経口抗凝固薬(DOAC)による6~12ヵ月の治療を完了した18歳以上のVTE患者3,396例を、リバーロキサバン20mg、10mgまたはアスピリン100mgの各投与群(いずれも1日1回)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間投与した。 有効性の主要評価項目は、致死的または非致死的な症候性再発性VTE、安全性の主要評価項目は大出血(2g/dL以上のヘモグロビン低下、2単位以上の赤血球輸血または致死的)とした。解析にはCox比例ハザードモデルを使用し、診断(深部静脈血栓症/肺塞栓症)で層別化も行った。リバーロキサバンで症候性再発性VTEの相対リスクが約70%減少 3,365例がintention-to-treat解析に組み込まれた(治療期間中央値351日)。 致死的/非致死的症候性再発性VTEの発生は、リバーロキサバン20mg群が1,107例中17例(1.5%)、リバーロキサバン10mg群が1,127例中13例(1.2%)、一方、アスピリン群では1,131例中50例(4.4%)であった(リバーロキサバン20mg群 vs.アスピリン群のハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.20~0.59/リバーロキサバン10mg群 vs.アスピリン群のHR:0.26、95%CI:0.14~0.47、いずれもp<0.001)。 大出血の発生率は、リバーロキサバン20mg群0.5%、リバーロキサバン10mg群0.4%、アスピリン群0.3%、重大ではないが臨床的に問題となる出血はそれぞれ2.7%、2.0%および1.8%であった。有害事象の発生率は3群すべてにおいて同程度であった。 本研究では、治療用量での抗凝固薬長期投与を必要とする患者は除外されていた。また、試験期間が最大12ヵ月と短かった。著者は「より長期にわたる継続投与の有益性を検証するさらなる試験が必要である」とまとめている。

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スタチンが静脈血栓塞栓症を予防~メタ解析

 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症と肺塞栓症)に対するスタチンの予防効果が示唆されているが、明確なエビデンスはない。英国ブリストル大学のSetor K Kunutsor氏らは観察コホート研究と無作為化比較試験(RCT)の系統的レビューおよびメタ解析を行ったところ、静脈血栓塞栓症の1次予防にスタチンが有益であることが示唆された。また、スタチンによって効果に差があることも示された。Lancet Haematology誌オンライン版2017年1月12日号に掲載。 スタチンと静脈血栓塞栓症との関連を報告した研究について、MEDLINE、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryのデータベース、2016年7月18日までに出版された研究の参考文献のマニュアル検索、研究者との電子メールのやりとりから特定した。スタチン使用と成人の静脈血栓塞栓症/深部静脈血栓症/肺塞栓症との関連を調べた観察コホート研究、スタチン治療の効果をプラセボ投与や無治療と比較し、静脈血栓塞栓症/深部静脈血栓症/肺塞栓症の転帰に関するデータを収集している介入試験を特定した。なお、スタチンの効果を他のスタチンや脂質低下薬と比較した試験は除外した。ランダム効果モデルを用いて試験特異的な相対リスク(RR)を統合し、研究レベルによってグループ分けした。 主な結果は以下のとおり。・13のコホート研究(314万8,259例)、スタチン治療をプラセボもしくは無治療と比較した23のRCT(11万8,464例)の36試験を適格とした。・観察研究において、スタチン使用群を不使用群と比較した場合の静脈血栓塞栓症の統合RRは0.75(95%CI:0.65~0.87、p<0.0001)で、この関連性は研究レベルによってグループ分けされた場合でも同様であった。・RCTにおいて、スタチン治療をプラセボもしくは無治療と比較した場合の静脈血栓塞栓症のRRは0.85(95%CI:0.73~0.99、p=0.038)であった。・サブグループ解析では、ロスバスタチンが他のスタチンと比べ静脈血栓塞栓症リスクが最も低く(RR:0.57、95%CI:0.42~0.75、p=0.015)、スタチンの効果がスタチンによって有意に異なることが示された。・肺塞栓症へのスタチンの効果についてはエビデンスが得られなかった。・深部静脈血栓症のエンドポイントのリスクは、スタチン使用が不使用に比べて有意に低下した(RR:0.77、95%CI:0.69~0.86、p<0.0001)。

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スーさんの急変エコー 裏ワザ小ワザ

第1回 ショック検索の心エコー 第2回 肺エコー 第3回 気道エコー 第4回 胃のエコー 第5回 下肢深部静脈のエコー 第6回 眼のエコー あなたは、エコーを有効に使いこなせていますか?疾患の鑑別と病態評価だけの使い途ではありませんか?患者の急変時に手軽で役立つ“裏ワザ小ワザ”を発明し、提案し続けているのがスーさんこと鈴木昭広氏。救急の現場においてエコーを使えば、目の前の患者が「ヤバいかどうか」を反射的に判断できます。ショックの原因を探るために心臓、肺のどこをどう見ればいいのか。また、見ておくと安心な気道、腹部、下肢深部静脈、脳圧を測る眼のエコー術も伝授します! 気管挿管や穿刺を勘に頼らず、エコー画像で確認しながら行えば、より正確に、安心して処置できます。 スーさんのワザをマスターして、エコーをあなたの頼れるパートナーにしましょう!第1回 ショック検索の心エコーショック患者を前にしたときに必要なのは、煩雑な計測や確定的な診断ではなく「ヤバいかどうか」の判断です。この番組では、直感的に短時間で出血を確認するためのFASTや、心臓の形や動きからおおまかに病態を判断するFATEを解説します。救急の現場で活躍してきたスーさんこと鈴木昭広先生が、簡単で“知って得する”新しいエコーの使い方をレクチャーします!第2回 肺エコー第2回は「肺エコー」編。肺をエコーで見るなんてクレイジーと言われた時代もありましたが、気胸の確定診断もできるんです。体幹への穿刺には必ず気胸のリスクが伴いますが、施術の前後にエコーで確認すれば異常を見逃しません!超音波で正常な肺はどう見えるのか?胸膜の動きからわかる異常とは?肺描出のコツとテクニックを習得すれば、さまざまな肺疾患を見つけられます。第3回 気道エコー第3回では救急に携わる医師にぜひ知っておいてほしい「気道エコー」を紹介します。気道エコーが必要になるのは救急時の気管挿管の場面。エコー画像で位置を確認しながら行えば、食道への誤挿管を防ぐことができます。やむなく気管切開しなければならない場合にも、エコーで穿刺部位を見ながら施行すれば確実です。勘だけを頼りに行えば誤挿管はいつでも起こりうるミスです!ぜひ気道エコーによる確認をこの番組で学んでください。エコーは急変患者のみならず、あなたをも守ってくれる心強いパートナーです!第4回 胃のエコー第4回では「胃のエコー」を紹介します。胃のエコーでは急変患者を診る際に把握しておきたい“フルストマックかどうか”を知ることができます。患者の胃にあるものは液体か固体か、嘔吐のリスクはどれだけかを判断すればより安全に挿管を施行できます。また、胃のエコーは大量服薬患者への応用も可能です。患者が飲んだ錠剤がどれだけ胃に残っているのかが画像を通して確認できるため、胃洗浄を行うかどうかの判定に役立ちます。番組内では胃のエコーで錠剤がどのように見えるかも紹介しています。第5回 下肢深部静脈のエコー第5回では深部静脈血栓症(DVT)を発見できる「下肢エコー」を紹介します。ロングフライトなど、長時間同じ体勢でいると起こりやすい深部静脈血栓症。手術後の安静解除の際などはとくに肺血栓塞栓症を引き起こすリスクが高く、予防ガイドラインにも記載されています。下肢エコーではそんな下肢深部静脈の血栓を「大腿部」「膝窩部」「ひらめ筋」で確認することができるんです。DVTは被災地の避難所でも問題になりますので、簡便なエコーでのスクリーニング方法を、ぜひ習得してください!第6回 眼のエコーこれぞ裏ワザ!最終回は「眼のエコー」を紹介します。眼のエコーとは患者の眼球にエコーを当て、そこで見える視神経の太さから脳圧亢進を評価できるというもの。脳出血が疑われ、CT検査や脳外科医を待っている間に、この方法で脳圧上昇が確認できれば、先行して上半身挙上などの処置を行うことができます。実技編では顔面損傷の場合の小ワザも紹介、事故現場の傷病者にも使える“目ウロコ”ワザは必見です!

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テストステロン療法によるVTE、6ヵ月以内が高リスク/BMJ

 テストステロン療法は静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク増加と関連しており、投与開始6ヵ月以内が高く(ピークは3ヵ月)、その後は漸減することが、ドイツ・Statistics and Informatics GmbHのCarlos Martinez氏らによる症例対照研究の結果、明らかとなった。この関連は、既知のVTEリスク因子を有していない症例で最も高かった。男性へのテストステロン療法は、主に性機能障害や活力減退に対する治療として2010年以降に増えている。テストステロン療法とVTEリスクとの関連性は、これまで一貫した結果が得られていなかったが、VTEリスクへのテストステロン療法の時間的影響は調査されていなかった。著者は、「先行研究では、テストステロン療法のタイミングと継続期間を見落としていたため、テストステロン療法と心血管イベントとの関連が見いだされなかった」とまとめている。BMJ誌2016年11月30日号掲載の報告。VTE患者約2万例、対照約91万例のデータを解析 研究グループは、英国プライマリケアのデータベースである臨床診療研究データリンク(Clinical Practice Research Datalink:CPRD)を用い、2001年1月~2013年5月の間に、VTE(深部静脈血栓症と肺塞栓症)と確定診断された患者1万9,215例、ならびにVTE患者と年齢・VTEリスク・既往歴等をマッチさせた対照90万9,530例を特定した。 それぞれテストステロン療法に関して、VTE発症日前2年間投与されていない未治療群、発症日が投与中であった治療群(投与開始後6ヵ月以内、6ヵ月超)、発症日前2年以内に投与歴のある既治療群の3群に層別し、テストステロン療法とVTE発症との関連について条件付きロジスティック回帰分析にて、併存疾患とマッチング因子を補正したVTE罹患率比を算出した。VTEリスクはテストステロン開始後6ヵ月以内で1.6倍 1,210万人年の追跡において、VTE罹患率は15.8/万人年(95%信頼区間[CI]:15.6~16.0)であった。 未治療群に対する治療群の補正後VTE罹患率比は、治療群全体では1.25(95%CI:0.94~1.66)であったが、テストステロン投与開始後6ヵ月以内の症例群では1.63(1.12~2.37)であり、テストステロン療法によるVTEリスクの増加が認められた。これは、VTE罹患率にするとベース罹患率より10.0/万人年(95%CI:1.9~21.6)増加に相当する。一方、投与開始後6ヵ月超の症例群の補正後VTE罹患率比は1.00(95%CI:0.68~1.47)、既治療群は0.68(95%CI:0.43~1.07)であった。 補正後VTE罹患率比の時間的推移(時間関数)を検討したところ、テストステロン投与開始後急速に増加し、約3ヵ月でピークに達した後、漸減して約2年でベースラインに復した。 テストステロン投与開始後6ヵ月以内の補正後VTE罹患率比の増加は、コホート全体のみならず、病理学的に診断された原発性または続発性性腺機能低下症の有無、あるいはVTEリスク因子の有無にかかわらず認められた。具体的な同比は、性腺機能低下症あり群1.52(95%CI:0.94~2.46)、性腺機能低下症なし群1.88(95%CI:1.02~3.45)、VTEリスク因子あり群1.41(95%CI:0.82~2.41)、VTEリスク因子なし群1.91(95%CI:1.13~3.23)であった。

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日本初のDOAC中和剤発売、迅速・完全・持続的な効果

 経口抗凝固薬ダビガトランに対する特異的中和剤であるイダルシズマブ(商品名:プリズバインド、日本ベーリンガーインゲルハイム)が、7ヵ月という短い審査期間で今年9月に承認され、11月18日に発売された。11月15日の発売記者説明会では、国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科の矢坂正弘氏が、抗凝固薬による出血リスク、イダルシズマブの効果や意義について紹介し、「迅速・完全・持続的に効果を示すイダルシズマブは臨床現場で有用な薬剤になるだろう」と述べた。DOACでも大出血は起こりうる 心原性脳塞栓症予防のための抗凝固療法において、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)はワルファリンと比較し、「管理が容易」「脳梗塞予防効果は同等かそれ以上」「大出血は同等かそれ以下」「頭蓋内出血が大幅に低下」というメリットがあり、ガイドラインでも推奨されるようになった。しかしDOACでも大出血は起こりうる、と矢坂氏は強調する。大出血時の一般的な対応は、まず休薬し、外科的処置を含めた止血操作、点滴でのバイタルの安定、出血性脳卒中なら十分な降圧を行うことである。この処置に加えて、活性炭や第IX因子複合体(保険適応外)の投与などの工夫がなされてきたが、より急速な中和剤が望まれていた。このような現状の中、ダビガトランに特異的な中和剤イダルシズマブが承認された。 商品名のプリズバインド(PRIZBIND)は、PRazaxaとIdaruciZumabがBIND(結合)して効果を発揮することに由来しているという。効能・効果は次のとおり。 以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和  ・生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時  ・重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時中和剤に求められる特性を達成 矢坂氏は、中和剤に求められる特性として、「迅速に」「完全に」「持続的に」効くという3つを挙げ、「イダルシズマブはこれを達成した中和剤と言える」と紹介した。 国内第I相試験によると、イダルシズマブ静注後1分以内に、希釈トロンビン時間(dTT)が正常値上限を下回り(すなわち、抗凝固作用を完全に中和)、それが24時間持続することが示され、第III相試験(RE-VERSE AD試験)においても同様に、迅速・完全・持続的な中和効果が認められている。 RE-VERSE AD試験における患者において、出血の種類は消化管出血・頭蓋内出血が大部分を占め、緊急手術・処置の理由は骨折が最も多かった。 また、同試験の中間集計では、243例中13例(5.3%)に脳梗塞や深部静脈血栓症などの血栓性イベントが発現したが、1例を除き血栓性イベント発現時点で抗凝固療法を再開していなかった。矢坂氏は、これは抗凝固療法を適切な時点で再開するようにというメッセージを示していると述べた。ダビガトランの場合は24時間後に再開が可能であり、他の抗凝固薬であれば24時間以内でも投与できる。中和剤は自動車のエアバッグのようなもの 矢坂氏は、中和剤の必要性について、「DOACはワルファリンに比べて頭蓋内出血は大幅に低下するがゼロになるわけではなく、また避けられない転倒や事故による出血も起こりうるので、リバースする中和剤は必要である」と指摘した。 中和剤はよく自動車のエアバッグに例えられるという。エアバッグがなくても運転できるし、ほとんどの人は事故に遭わないが、なかには衝突し、エアバッグがあったので助かったということも起こりうる。このエアバッグに相当する中和剤があるということは「抗凝固薬選択のオプションの1つになるだろう」と矢坂氏は述べ、講演を終えた。

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第Xa因子阻害薬の中和薬、急性大出血の79%を止血/NEJM

 第Xa因子阻害薬に関連する急性大出血において、andexanet alfaは抗第Xa因子活性を大幅に低減し、高い止血効果をもたらすことが、カナダ・マクマスター大学のStuart J. Connolly氏らが実施したANNEXA-4試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年8月30日号に掲載された。第Xa因子阻害薬は、心房細動患者の静脈血栓塞栓症の治療や予防および脳卒中の予防に有効であるが、大出血や致死的出血のリスクがある。andexanet alfaは、遺伝子組換えヒト第Xa因子デコイ蛋白で、第Xa因子阻害薬の作用を特異的に、直接かつ間接に中和する。67例の記述的分析の初期結果 ANNEXA-4試験は、第Xa因子阻害薬投与後に、生命を脅かす可能性のある急性大出血を来した患者において、andexanet alfaの止血効果を評価する進行中の非盲検単群試験(Portola Pharmaceuticals社の助成による)。今回は、2016年6月17日の時点で、すべてのデータが得られた67例の記述的分析の結果が報告された。 2015年4月10日に、米国の20施設、英国の1施設、カナダの1施設で患者登録が開始された。年齢18歳以上、アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン、エノキサパリンのうち1剤を投与され、18時間以内に急性大出血を来した患者を対象とした。 被験者には、andexanet alfaがボーラス投与され、その後2時間の点滴静注が行われた。点滴静注終了後12時間の抗第Xa因子活性および臨床的な止血効果の評価が行われ、30日間のフォローアップが実施された。 安全性の解析は全67例で行い、ベースライン時の抗第Xa因子活性が≧75ng/mL(エノキサパリン投与例は≧0.5IU/mL)の47例を有効性解析集団とした。12時間後の止血効果が極めて良好/良好の割合は79%、重篤な副作用は認めない 全体の平均年齢は77.1±10.0歳で、男性が52%を占めた。抗凝固薬の適応疾患は、心房細動が70%、静脈血栓塞栓症が22%、その双方が7%であり、出血部位は消化管が49%、頭蓋内が42%であった。 有効性解析集団の救急診療部入室からandexanet alfaのボーラス投与までの平均所要時間は4.8±1.8時間であった。 リバーロキサバンを投与された患者は、andexanet alfaのボーラス投与後に、抗第Xa因子活性中央値がベースラインに比べ89%(95%信頼区間[CI]:58~94)減少し、アピキサバン投与例では93%(95%CI:87~94)低下した。これらの値は、点滴静注中の2時間にわたりほぼ一定に維持された。 点滴静注終了後4時間の時点で、リバーロキサバン投与例の抗第Xa因子活性は、ベースラインに比べ相対的に39%低く、アピキサバン投与例では30%低かった。 点滴静注終了後12時間における止血効果は、極めて良好(excellent)が31例、良好(good)が6例であった(79%、37/47例)。 30日のフォローアップ期間中に、18%(12/67例)に血栓イベントが発生した。このうち、心筋梗塞が1例、脳卒中が5例、深部静脈血栓症が7例、肺塞栓症が1例に認められた。15%(10/67例)が死亡し、死因は心血管イベントが6例、非心血管イベントは4例であった。 著者は、「進行中のコホート研究の初期結果において、andexanet alfaは抗第Xa因子活性を迅速に逆転させ、重篤な副作用とは関連がなかった」とまとめ、「血栓イベントのリスクが高い患者において、これらのイベントの頻度が予測を上回るかを評価するには、対照比較試験を要する」としている。

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OCTAVIA試験:深部静脈血栓症後のストッキング圧迫療法は1年か、2年か?(解説:中澤 達 氏)-559

 オランダの多施設単盲検非劣性無作為化試験OCTAVIAで、近位深部静脈血栓症(DVT)患者に対する弾性ストッキングによる圧迫療法(ECS)の継続期間を、1年と2年で比較検討した。 主要アウトカムは、DVT診断後24ヵ月間の血栓後症候群(PTS)の発生率で、標準化されたVillaltaスケールで評価(intention-to-treat解析)した。 両群の発生率の絶対差は6.9%(95%CI上限値12.3%)であり、1年治療群の2年治療群に対する非劣性は認められなかった。副次アウトカムのQOLについては、両群間で有意差は認められなかった。 現行ガイドラインでは、ECS を24ヵ月間施行することになっているが、最近はより短期間とする提案がなされていた。この試験結果は、ガイドラインが追認されたことになる。しかし、この試験では、ECS治療に応じ1年後にPTSを呈していなかった適格患者518例を、DVT診断後継続群(262例)と中止群(256例)に無作為に割り付けている。 つまり、ストッキング着用ができる症例で、かつ1年間PTSを生じなかった軽症例のみエントリーされた可能性が高い。DVT診断3,603例中518例である14%の予後しか反映されていないのである。実臨床に適応する場合には、その点に注意が必要だ。 ちなみに、本邦のガイドラインでも欧米の論文を根拠に2年のECSを推奨している。

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深部静脈血栓症後の弾性ストッキング、2年以上が理想的/BMJ

 近位深部静脈血栓症(DVT)患者に対する弾性ストッキングによる圧迫療法(ECS)は、2年以上が理想的であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学のG C Mol氏らが多施設単盲検非劣性無作為化試験OCTAVIAの結果、報告した。1年治療群の2年治療群に対する非劣性が認められなかったという。ECSはDVT患者の血栓後症候群予防のために用いられるが、至適期間は明らかではない。現行ガイドラインでは、24ヵ月間の使用としているが、最近の試験で、この現行戦略に疑問符を呈し、より短期間とする提案がなされていた。BMJ誌オンライン版2016年5月31日号掲載の報告。1年治療群を中止群と継続群に割り付け、血栓後症候群の発生を評価 OCTAVIA試験は2009年2月~2013年9月に、オランダの1大学病院を含む8教育病院の外来クリニックで行われた。超音波で確認された症候性の脚部近位DVTを呈し12ヵ月間ECSを受けた患者を対象とし、研究グループは被験者を、ECSを継続する群と中止する群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、DVT診断後24ヵ月間の血栓後症候群の発生率で、標準化されたVillaltaスケールで評価(intention-to-treat解析)した。本検討は、ECSの1年群は同2年群に対して非劣性であるとの仮定に基づき行われ、事前規定の非劣性マージンは10%であった。また、主な副次アウトカムとしてQOL(VEINES-QOL/Sym)を評価した。1年治療群の2年治療群に対する非劣性認められず、QOLは両群間で有意差なし 3,603例がスクリーニングを受け、ECS治療に応じ血栓後症候群を呈していなかった適格患者518例が、DVT診断後1年後に継続群(262例)と中止群(256例)に無作為に割り付けられた。 結果、中止群では、51/256例の血栓後症候群の発生がみられ、発生率は19.9%(95%信頼区間[CI]:16~24%)であった。一方、継続群の同発生は34/262例で、発生率は13.0%(同:9.9~17%)であった。継続群では、85%が週6~7日間ECSを使用していた。 両群の発生率の絶対差は6.9%(95%CI上限値12.3%)であり、1年治療群の2年治療群に対する非劣性は認められなかった。 ECS継続群で、血栓後症候群の発生1例を予防するのに必要な治療数(NNT)は14(95%CI下限値8)であった。 副次アウトカムのQOLについては、両群間で有意差は認められなかった。■「深部静脈血栓症」関連記事下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

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急性内科疾患への長期抗血栓療法は有効?/NEJM

 Dダイマー高値の急性内科疾患患者に対し、経口抗Xa薬のbetrixaban長期投与とエノキサパリン標準投与について比較検討した結果、有効性に関する有意差は認められなかった。英国キングス・カレッジ・ロンドンのAlexander T. Cohen氏らが国際多施設共同二重盲検ダブルダミー無作為化試験「APEX」の結果、報告した。急性内科疾患患者は、静脈血栓症(VT)の長期的リスクを有するが、抗血栓療法の適切な継続期間については明らかになっていない。NEJM誌オンライン版2016年5月27日号掲載の報告。エノキサパリン群 vs. betrixaban群の無作為化試験で評価 APEX試験は2012年3月~2015年11月に、35ヵ国460施設から被験者を募って行われた。8,589例がスクリーニングを受け、適格であった7,513例が無作為化を受けた。 研究グループは被験者を、10±4日間エノキサパリン皮下注(1日1回40mg)+35~42日間betrixabanプラセボを経口投与する群(エノキサパリン群)、または10±4日間エノキサパリンプラセボ皮下注+35~42日間betrixaban(1日1回80mg)を経口投与する群(betrixaban群)に無作為に割り付けた。 解析は、事前規定の漸増3コホート(コホート1:Dダイマー高値の患者を包含、コホート2:Dダイマー高値および75歳以上の患者を包含、コホート3:すべての登録患者を包含)について行った。統計的解析は、この連続3コホートのいずれかの解析で群間の有意差が示されない場合、その他の解析は探索的な解析と見なすこととした。 主要有効性アウトカムは、無症候性近位深部静脈血栓症(DVT)・症候性DVTの複合。第一安全性アウトカムは、重大出血で評価した。Dダイマー高値患者群の解析では有意差なし コホート1(betrixaban群1,914例、エノキサパリン群1,956例)の解析において、主要有効性アウトカムの発生は、betrixaban群6.9%、エノキサパリン群8.5%、betrixaban群の相対リスク(RR)は0.81(95%信頼区間[CI]:0.65~1.00、p=0.054)であった。 コホート2(2,842例、2,893例)では、それぞれ5.6%、7.1%(RR:0.80、95%CI:0.66~0.98、p=0.03)、コホート3(全集団;3,112例、3,174例)では、それぞれ5.3%、7.0%(RR:0.76、95%CI:0.63~0.92、p=0.006)であったが、コホート1で有意差が示されなかったため、他の2つの解析は探索的な解析結果とみなされた。 安全性について、全集団(コホート3)の解析において、重大出血の発生はbetrixaban群0.7%。エノキサパリン群0.6%で有意差は示されなかった(RR:1.19、95%CI:0.67~2.12、p=0.55)。 これらの結果を踏まえて著者は、「事前規定の主要有効性アウトカムについて、両群間で有意差は認められなかった。しかし事前規定の探索的解析の結果、より大きな2つの集団における解析では、betrixabanにベネフィットがあるとのエビデンスが示された」と報告をまとめている。

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抗凝固薬選択のためのリスク予測モデルを開発/BMJ

 無作為化試験でダビガトランまたはワルファリン治療を受ける人の血栓塞栓症の推定発生率は、ルーチンケアを受ける人で観察された発生率と近接しており、一方、重大出血の発生率は、過小に評価していることが、米国ハーバード・メディカル・スクールのShirley V Wang氏らが2万1,934例のデータを解析し、報告した。心房細動患者における血栓塞栓症や重大出血のリスクについては、CHADS2やHAS-BLEDという確立されたリスクスコアがあり、ベースラインでのリスク推定、および抗凝固薬治療の導入ガイドとして用いられている。しかし、これらのスコアでは、抗凝固薬の選択肢は不明である。一方で、最近の無作為化試験により、ダビガトランまたはワルファリン治療下での血栓塞栓症および重大出血の推定リスクが示されており、研究グループは、それらのデータを統合解析することで、新たなリスクモデルの開発を試みた。BMJ誌オンライン版2016年5月24日号掲載の報告。心房細動を呈した2万1,934例のデータを解析 研究グループは、無作為化試験からのイベント発生率を層別化し、観察データから開発したモデルのイベント予測率と比較すること、また同モデルが、ルーチンケアの一部としてダビガトランまたはワルファリンを受ける患者の血栓塞栓症および重大出血の発生を正確に捕捉できるかを評価した。 検討はUnited Healthのデータ(2009年10月~2013年6月)と、米国の民間医療費支払データベースを活用して、新規導入コホート研究法を用いて行われた。被験者は、心房細動を呈した2万1,934例で、ダビガトラン(用量150mgのみ)またはワルファリン治療をルーチンケアの一部として受けた。 主要評価項目は、血栓塞栓症または重大出血の年間予測発生率で、無作為化試験からの推定値に基づくもの、ルーチンケア患者群で開発したモデルに基づくもの、およびベースラインリスクスコア(CHADS2、CHA2DS2-VASc、HAS-BLED)に基づくものとした。血栓塞栓症は、虚血性または脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、肺塞栓症、深部静脈血栓症、全身性塞栓症などの複合アウトカムで評価した。重大出血は、入院中の脳出血発生コード、泌尿器等の重大出血とした。無作為化試験データでは重大出血を過小評価か ダビガトラン新規導入患者は6,516例(30%)、ワルファリン新規導入患者は1万5,418例(70%)であった。年間イベント発生率は、100患者当たり血栓塞栓症が1.7例、重大出血は4.6例であった。 血栓塞栓症について、無作為化試験からの推定値の検定結果は、予測ベースモデルの検定結果と類似していた。しかし、重大出血については、試験からの推定値は、ルーチンケア患者における出血発生率を一環して過小に見積もることを示すものであった。出血率についての過小評価は、とくにHAS-BLEDスコア高値でワルファリンを導入した場合に認められた。この場合、過小評価は、最大100人年当たり4.0件まで認められた。 Harrell's c指数で評価した、ダビガトランおよびワルファリン導入による血栓塞栓症または重大出血に関する識別能は、無作為化試験をベースにした予測では0.59、0.66、交差確認されたモデルベースの予測では0.52、0.70であった。

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