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第248回 骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府

<先週の動き> 1.骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府 2.コロナワクチンの接種の遅れ、孤独感や誤情報、公衆衛生の新たな課題/東京科学大など 3.「かかりつけ医機能」の再設計へ、次期改定で評価を見直し/中医協 4.オンライン診療1.3万施設まで増加、精神疾患が主領域に/厚労省 5.病床転換助成、利用率わずか1%台 延長か廃止かで紛糾/厚労省 6.ハイフ施術でやけど多発、違法エステ横行に警鐘/厚労省 1.骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府政府は、医療費削減の一環として「OTC類似薬(市販薬と成分・効果が類似する医療用医薬品)」の保険適用見直しを検討しており、6月13日に閣議決定された「骨太の方針2025」にその方針が盛り込まれた。自民・公明・日本維新の会の3党が合意し、社会保障費抑制と現役世代の保険料軽減を目的としている。見直し対象は、花粉症薬や解熱鎮痛薬、保湿剤、湿布などで、最大で7,000品目とされる。仮に保険給付から除外されれば、患者の自己負担は数千円~数万円単位で跳ね上がる。とくに慢性疾患や難病患者、小児、在宅患者への影響が懸念されている。日本医師会の松本 吉郎会長は18日の記者会見で、「医療提供が可能な都市部と異なり、へき地では市販薬へのアクセスも困難。経済性を優先しすぎれば、患者負担が重くなり、国民皆保険制度の根幹が揺らぐ」と指摘。医療機関での診療や処方の自由度が制限されることにも懸念を示した。また、現場の開業医からも、「処方薬が保険適用外となれば、治療選択肢が狭まり、医師としての判断が制限される」「市販薬への誘導が誤用や副作用を招きかねない」との声が上がっている。とくに皮膚疾患やアレルギー疾患、疼痛管理においては、治療の中核となる薬剤が影響を受けるとされる。6月18日には、難病患者の家族らが約8万5千筆の署名とともに厚生労働省に保険適用継続を要望。厚労省は「具体的な除外品目は未定で、医療への配慮を踏まえて議論する」としているが、今後の制度設計次第で現場への影響は甚大となる可能性がある。次期診療報酬改定との整合性も含め、制度の動向を注視しつつ、患者支援の観点から声を上げていくことが求められる。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針2025(内閣府) 2) 市販薬と効果似た薬の保険外し、患者に懸念 医療費節約で自公維合意(日経新聞) 3) 日医会長、3党合意のOTC類似薬見直しに懸念 骨太方針は高評価、次期診療報酬改定に期待(CB news) 4) 「命に関わる」保湿剤・抗アレルギー薬などの“OTC類似薬”保険適用の継続を求め…難病患者ら「8.5万筆」署名を厚労省に提出(弁護士JPニュース) 5) 「OTC類似薬」保険適用の継続を 難病患者家族が厚労省に要望書(NHK) 2.コロナワクチンの接種の遅れ、孤独感や誤情報、公衆衛生の新たな課題/東京科学大など新型コロナウイルス感染症におけるワクチン接種の効果と課題が、複数の研究から改めて浮き彫りになっている。東京大学の古瀬 祐気教授らの推計によれば、2021年に国内で行われたワクチン接種がなければ、死者数は実際より2万人以上増えていたとされる。ワクチン接種の開始が3ヵ月遅れた場合、約2万人の追加死亡が生じた可能性があり、接種のタイミングが公衆衛生に与える影響の大きさが示された。一方、接種を妨げた要因として「誤情報」と「孤独感」の影響が注目されている。同チームの調査では、誤情報を信じた未接種者が接種していれば、431人の死亡を回避できたとの推計もなされている。さらに、東京科学大学らの研究では、若年層のワクチン忌避行動に「孤独感」が強く影響していたことが判明した。都内の大学生を対象とした調査では、孤独を感じる学生は、感じない学生と比べてワクチンをためらう傾向が約2倍に上った。社会的孤立(接触頻度)とは異なり、孤独感という主観的要因がワクチン行動に与える心理的影響が独立して存在することが示された。東京都健康長寿医療センターの研究でも、「孤独感」はコロナ重症化リスクを2倍以上高めるとの結果が示されており、孤独感が接種率の低下だけでなく、重症化リスクの増大にも寄与している可能性がある。今後の感染症対策では、誤情報対策だけでなく、心の健康や社会的つながりを強化する施策が、接種率の向上および重症化予防の両面において重要になると考えられる。次のパンデミックに備えるためにも、若年層に対する心理的支援や信頼形成のアプローチが不可欠である。 参考 1) 若年層のワクチン忌避、社会的孤立より“孤独感”が影響(東京科学大学) 2) ワクチン接種をためらう若者 孤独感が影響 東京科学大など調査(毎日新聞) 3) 接種遅れればコロナ死者2万人増 21年、東京大推計(共同通信) 4) 「孤独感」はコロナ感染症の重症化リスクを高める、今後の感染症対策では「心の健康維持・促進策」も重要-都健康長寿医療センター研究所(Gem Med) 3.「かかりつけ医機能」の再設計へ、次期改定で評価を見直し/中医協厚生労働省は、6月18日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、2026年度の診療報酬改定に向け、「かかりつけ医機能」の診療報酬評価の見直しについて検討した。今年の医療法改正により医療機関機能(高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、急性期拠点機能など)報告制度が始まったことを踏まえ、「機能強化加算」や地域包括診療料などの体制評価が現状に即しているかが問われている。厚労省は6月に開かれた「入院・外来医療等の調査・評価分科会」で、医療機関が報告する「介護サービス連携」「服薬の一元管理」などの機能は診療報酬で評価されているが、「一次診療への対応可能疾患」など一部機能は報酬上の裏付けがない点を指摘。これに対し支払側委員からは、既存加算は制度趣旨に適さず、17領域40疾患への対応や時間外診療など実態に即した再評価を求める声が上がった。また、診療側からは、看護師やリハ職の配置要件など「人員基準ありきの報酬」が現場に過度な負担を強いており、患者アウトカムや診療プロセスを評価軸とすべきとの意見も強調された。とりわけリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は基準が厳しく、取得率が1割未満に止まっている現状が報告された。今後の改定論議では、「構造(ストラクチャー)」評価から「プロセス」「アウトカム」重視への段階的な移行とともに、新たな地域医療構想や外来機能報告制度との整合性が問われる。かかりつけ医機能の再定義とそれを支える診療報酬のあり方は、地域包括ケア時代における制度の根幹をなす論点となる。 参考 1) 第609回 中央社会保険医療協議会 総会(厚労省) 2) 「かかりつけ医機能」の診療報酬見直しへ 機能強化加算など、法改正や高齢化踏まえ(CB news) 3) 診療側委員「人員配置の要件厳し過ぎ」プロセス・アウトカム重視を主張(同) 4) 2026年度診療報酬改定、「人員配置中心の診療報酬評価」から「プロセス、アウトカムを重視した診療報酬評価」へ段階移行せよ-中医協(Gem Med) 4.オンライン診療1.3万施設まで増加、精神疾患が主領域に/厚労省2025年4月時点でオンライン診療を厚生労働省に届け出た医療機関数が1万3,357施設に達し、前年より2,250件増加したことが厚労省の報告で明らかになった。届け出数は、初診からのオンライン診療が恒久化された2022年以降増加傾向にあり、対面診療全体に占める割合も2022年の0.036%から2023年は0.063%に上昇した。厚労省の分析によれば、オンライン再診では精神疾患の割合が高く、2024年7月の算定データでは「適応障害」が最多で8,003回(9.1%)、次いで高血圧症や気管支喘息、うつ病などが続いた。とくに対面診療が5割未満の施設では、再診での適応障害(22.2%)やうつ病、不眠症など精神科領域の算定が顕著だった。この結果から中央社会保険医療協議会(中医協)の分科会では、「オンラインと対面での診療内容の差異を調査すべき」との指摘もあった。こうした中、日本医師会は6月18日、「公益的なオンライン診療を推進する協議会」を発足。郵便局などを活用した地域支援型の導入モデルを想定し、医療関係4団体や自治体、関係省庁、郵政グループとともに初会合を行った。松本 吉郎会長は「利便性や効率性のみに偏らず、安全性と医療的妥当性を担保した導入が不可欠」と強調し、とくに医療アクセスに困難を抱える地域、在宅医療、災害・感染症時の手段としての有効性に言及した。郵便局のインフラを活用した実証事業も一部地域で始動しており、診療報酬制度の課題、患者負担への配慮、医師会・自治体との連携が今後の焦点となる。 参考 1) オンライン診療に1.3万施設届け出 厚労省調べ、4月時点(日経新聞) 2) オンライン再診、精神疾患の割合が高く 厚労省調べ(CB news) 3) オンライン診療で医産官学の協議会発足 郵便局など活用で連携を強化(同) 5.病床転換助成、利用率わずか1%台 延長か廃止かで紛糾/厚労省厚生労働省は6月19日、医療療養病床から介護施設などへの転換を支援する「病床転換助成事業」の今後の在り方について、社会保障審議会・医療保険部会で実態調査結果を報告した。2008年度に開始され、これまでに7,465床の転換に活用されたが、今後の活用予定医療機関は2025年度末時点で1.4%、2027年度末でも3.0%に止まり、活用実績も病院7.3%、有床診療所3.7%と低迷している。事業延長については委員の間で意見が分かれ、健康保険組合連合会の佐野 雅宏委員らは既存支援策との重複や利用率の低さを理由に廃止を主張。一方、日本医師会の城守 国斗委員は、申請手続きの煩雑さや認可の遅れがネックとなっていると指摘し、当面の延長と支援対象の拡大を提案した。今後、厚労省は部会の意見を整理し、年度内に方針を提示する見通し。地域医療の再編を進める上で、同事業の位置付けと実効性が改めて問われている。 参考 1) 病床転換助成事業について(厚労省) 2) 病床転換の助成事業、活用予定の医療機関1-3% 事業の延長に賛否 医療保険部会(CB news) 6.ハイフ施術でやけど多発、違法エステ横行に警鐘/厚労省痩身やリフトアップ目的で人気を集めるHIFU(高密度焦点式超音波)による美容医療で、違法施術により重篤な被害を受けた事例が再び注目を集めている。2021年に東京都内のエステサロンで医師免許のない施術者からHIFUを受け、重度のやけどを負った女性が損害賠償を求め提訴。2025年6月、エステ側が謝罪し、解決金を支払う形で和解が成立した。厚生労働省は2024年6月、「HIFU施術は医師による医療行為であり、非医師が行うことは医師法違反」と明確化したにもかかわらず、違法施術による健康被害は依然として後を絶たない。美容医療に起因する健康被害の相談件数は2023年度に822件と、5年前の1.7倍に増加。熱傷、重度の形態異常、皮膚壊死などの深刻な合併症が報告されている。こうした背景から、東京・新宿の春山記念病院では、美容医療トラブル専門の救急外来を本格的に開始。美容クリニックと施術情報の事前共有を行うなど、連携体制を整備している。厚労省も、美容医療を提供する医療機関に対し、合併症時の対応マニュアル整備や他院との連携構築、相談窓口の報告を義務化する方向で検討を進めている。医師が美容医療に携わる場合は、医療行為の厳密な定義のもと、適切な説明責任とアフターフォロー体制の構築が不可欠である。また、美容分野に参入する無資格者の排除に加え、トラブル患者の受け皿となる救急医療体制との連携も、今後の制度整備における重要課題となる。 参考 1) 「やせる」美容医療でやけど、エステ店側と和解 被害「氷山の一角」(朝日新聞) 2) 医師以外の「ハイフ施術」でやけど エステサロンと被害女性が和解(毎日新聞) 3) “美容施術 HIFUでやけど” 会社が謝罪し解決金で和解成立(NHK) 4) 美容医療トラブルに特化した救急外来が本格開始 東京 新宿(同)

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コントロール不良の軽症喘息、albuterol/ブデソニド配合薬の頓用が有効/NEJM

 軽症喘息に対する治療を受けているが、喘息がコントロールされていない患者において、albuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる)単独の頓用と比較してalbuterol/ブデソニド配合薬の頓用は、重度の喘息増悪のリスクが低く、経口ステロイド薬(OCS)の年間総投与量も少なく、有害事象の発現は同程度であることが、米国・North Carolina Clinical ResearchのCraig LaForce氏らBATURA Investigatorsが実施した「BATURA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月19日号に掲載された。遠隔受診の分散型無作為化第IIIb相試験 BATURA試験は、軽症喘息に推奨される薬剤による治療を受けているが喘息のコントロールが不良な患者における固定用量のalbuterol/ブデソニド配合薬の頓用の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化イベント主導型・分散型第IIIb相比較試験であり、2022年9月~2024年8月に米国の54施設で参加者を登録した(Bond Avillion 2 DevelopmentとAstraZenecaの助成を受けた)。本試験は、Science 37の遠隔診療プラットフォームを用い、すべての受診を遠隔で行った。 年齢12歳以上で、短時間作用型β2刺激薬(SABA)単独またはSABA+低用量吸入ステロイド薬あるいはロイコトリエン受容体拮抗薬の併用療法による軽症喘息の治療を受けているが、喘息のコントロールが不良な患者を対象とした。 これらの参加者を、albuterol(180μg)/ブデソニド(160μg)配合薬(それぞれ1吸入当たり90μg+80μgを2吸入)またはalbuterol単独(180μg、1吸入当たり90μgを2吸入)の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付け、最長で52週間投与した。 主要エンドポイントは、on-treatment efficacy集団(無作為化された治療の中止前、維持療法の強化前に収集した治療期間中のデータを解析)における重度の喘息増悪の初回発生とし、time-to-event解析を行った。重度の喘息増悪は、症状の悪化によるOCSの3日間以上の使用、OCSを要する喘息による救急診療部または緊急治療のための受診、喘息による入院、死亡とし、治験責任医師によって確認された記録がある場合と定義した。 主な副次エンドポイントはITT集団(on-treatment efficacy集団のようなイベント[治療の中止や強化]を問わず、すべてのデータを解析)における重度の喘息増悪の初回発生とし、副次エンドポイントは重度の喘息増悪の年間発生率と、OCSへの曝露とした。年齢18歳以上でも、2集団でリスクが低下 解析対象は2,421例(平均[±SD]年齢42.7±14.5歳、女性68.3%)で、albuterol/ブデソニド群1,209例、albuterol単独群1,212例であった。全体の97.2%が18歳以上で、ベースラインで74.4%がSABA単独を使用していた。事前に規定された中間解析で、本試験は有効中止となった。 重度の喘息増悪は、on-treatment efficacy集団ではalbuterol/ブデソニド群の5.1%、albuterol単独群の9.1%(ハザード比[HR]:0.53[95%信頼区間[CI]:0.39~0.73]、p<0.001)に、ITT集団ではそれぞれ5.3%および9.4%(0.54[0.40~0.73]、p<0.001)に発生し、いずれにおいても配合薬群で有意に優れた。 また、年齢18歳以上に限定しても、2つの集団の双方で重度の喘息増悪のリスクがalbuterol/ブデソニド群で有意に低かった(on-treatment efficacy集団:6.0%vs.10.7%[HR:0.54、95%CI:0.40~0.72、p<0.001]、ITT集団:6.2%vs.11.2%[0.54、0.41~0.72、p<0.001])。 さらに、年齢12歳以上のon-treatment efficacy集団における重度の喘息増悪の年間発生率(0.15vs.0.32、率比:0.47[95%CI:0.34~0.64]、p<0.001)およびOCSの年間総投与量の平均値(23.2vs.61.9mg/年、相対的群間差:-62.5%、p<0.001)は、いずれもalbuterol/ブデソニド群で低い値を示した。約60%がソーシャルメディア広告で試験に参加 頻度の高い有害事象として、上気道感染症(albuterol/ブデソニド群5.4%、albuterol単独群6.0%)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(5.2%、5.5%)、上咽頭炎(3.7%、2.6%)を認めた。 重篤な有害事象は、albuterol/ブデソニド群で3.1%、albuterol単独群で3.1%に発現し、投与中止に至った有害事象はそれぞれ1.2%、2.7%、治療関連有害事象は4.1%、4.0%にみられた。治療期間中に2つの群で1例ずつが死亡したが、いずれも試験薬および喘息との関連はないと判定された。 著者は、「分散型試験デザインは患者と研究者の双方にとってさまざまな利点があるが、患者が費用負担を避けることによる試験中止のリスクがあり、本試験では参加者の約19%が追跡不能となった」「特筆すべきは、参加者の約60%がソーシャルメディアの広告を通じて募集に応じており、近隣の診療所や地元で募集した参加者のほうが試験参加を維持しやすい可能性があるため、これも試験中止率の上昇につながった可能性がある」「青少年の参加が少なく、今回の知見のこの年齢層への一般化可能性には限界がある」としている。

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咳嗽・喀痰の診療GL改訂、新規治療薬の位置付けは?/日本呼吸器学会

 咳嗽・喀痰の診療ガイドラインが2019年版以来、約6年ぶりに全面改訂された。2025年4月に発刊された『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025』1)では、9つのクリニカル・クエスチョン(CQ)が設定され、初めてMindsに準拠したシステマティックレビューが実施された。今回設定されたCQには、難治性慢性咳嗽に対する新規治療薬ゲーファピキサントを含むP2X3受容体拮抗薬に関するCQも含まれている。また、本ガイドラインは、治療可能な特性を個々の患者ごとに見出して治療介入するという考え方である「treatable traits」がふんだんに盛り込まれていることも特徴である。第65回日本呼吸器学会学術講演会において、本ガイドラインに関するセッションが開催され、咳嗽セクションのポイントについては新実 彰男氏(大阪府済生会茨木病院/名古屋市立大学)が、喀痰セクションのポイントについては金子 猛氏(横浜市立大学大学院)が解説した。喘息の3病型を「喘息性咳嗽」に統一、GERDの治療にP-CABとアルギン酸追加 咳嗽の治療薬について、「咳嗽治療薬の分類」の表(p.38、表2)が追加され、末梢性鎮咳薬としてP2X3受容体拮抗薬が一番上に記載された。また、中枢性と末梢性をまたぐ形で、ニューロモデュレーター(オピオイド、ガバペンチン、プレガバリン、アミトリプチリンが含まれるが、保険適用はモルヒネのみ)が記載された。さらに、今回からは疾患特異的治療薬に関する表も追加された(p.38、表3)。咳喘息について、前版では気管支拡張薬を用いることが記載されていたが、改訂版の疾患特異的治療薬に関する表では、β2刺激薬とロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)が記載された。なお、抗コリン薬が含まれていない理由について、新実氏は「抗コリン薬は急性ウイルス感染や感染後の咳症状などに効果があるというエビデンスもあり、咳喘息に特異的ではないためここには記載していない」と述べた。 咳症状の観点による喘息の3病型として、典型的喘息、咳優位型喘息、咳喘息という分類がなされてきた。しかし、この3病型には共通点や連続性が存在し、基本的な治療方針も変わらないことから、1つにまとめ「喘息性咳嗽」という名称を用いることとなった。ただし、狭義の慢性咳嗽には典型的喘息、咳優位型喘息を含まないという歴史的背景があり、咳だけを呈する喘息患者の存在が非専門医に認識されるためには「咳喘息」という名称が有用であるため、フローチャートでの記載や診断基準は残している。 咳喘息の診断基準について、今回の改訂では3週間未満の急性咳嗽では安易な診断により過剰治療にならないように注意することや、β2刺激薬は咳喘息でも無効の場合があるため留意すべきことが記されている。後者について新実氏は「β2刺激薬に効果がみられない場合は咳喘息を否定するという考えが見受けられるため、注意喚起として記載している」と指摘した。 喘息性咳嗽について、前版では軽症例には中用量の吸入ステロイド薬(ICS)単剤で治療することが記載されていたが、喘息治療においてはICS/長時間作用性β2刺激薬(LABA)が基本となるため、本ガイドラインでも中用量ICS/LABAを基本とすることが記載された。ただし、ICS+長時間作用性抗コリン薬(LAMA)やICS+LTRA、中用量ICS単剤も選択可能であることが記載された。また、本ガイドラインの特徴であるtreatable traitsを考慮しながら治療を行うことも明記されている。 胃食道逆流症(GERD)については、GERDを疑うポイントとしてFSSG(Fスケール)スコア7点以上、HARQ(ハル気道逆流質問票)スコア13点以上が追加された。また、治療についてはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)とアルギン酸が追加されたほか、treatable traitsへの対応を十分に行わないと改善しにくいことも記載されている。難治性慢性咳嗽に対する唯一の治療薬ゲーファピキサント 難治性慢性咳嗽は、治療抵抗性慢性咳嗽(Refractory Chronic Cough:RCC)、原因不明慢性咳嗽(Unexplained Chronic Cough:UCC)からなることが記されている。本邦では、RCC/UCCに適応のある唯一の治療薬が、選択的P2X3受容体拮抗薬のゲーファピキサントである。本ガイドラインでは、RCC/UCCに対するP2X3受容体拮抗薬に関するCQが設定され、システマティックレビューの結果、ゲーファピキサントはLCQ(レスター咳質問票)合計スコア、咳VASスコア、24時間咳嗽頻度を低下させることが示された。ガイドライン作成委員の投票の結果、使用を弱く推奨する(エビデンスの確実性:B[中程度])こととなった。 慢性咳嗽のtreatable traitsとして、気道疾患、GERD、慢性鼻副鼻腔炎などの12項目が挙げられている。このなかの1つとして、咳過敏症も記載されている。慢性咳嗽患者の多くはtreatable traitsとしての咳過敏症も有しており、このことを見過ごして行われる原因疾患のみの治療は、しばしば不成功に終わることが強調されている。新実氏は「原因疾患に対する治療をしたうえで、P2X3受容体拮抗薬により咳過敏症を抑えることで咳嗽をコントロールできる患者も実際にいるため、理にかなっているのではないかと考えている」と述べた。国内の専門施設では血痰・喀血の原因は年齢によって大きく異なる 前版のガイドラインは、世界初の喀痰診療に関するガイドラインとして作成されたが、6年ぶりの改訂となる本ガイドラインも世界唯一のガイドラインであると金子氏は述べる。 喀痰に関するエビデンスは少なく、前版の作成時には、とくに国内のデータが不足していた。そこで、本ガイドラインの改訂に向けてエビデンス創出のために多施設共同研究を3研究実施し(1:血痰と喀血の原因疾患、2:膿性痰の色調と臨床背景、3:急性気管支炎に対する抗菌薬使用実態)、血痰と喀血の原因疾患に関する研究の成果が英語論文として2件報告されたことから、それらのデータが追加された。 血痰と喀血の原因疾患として、前版では英国のプライマリケアのデータが引用されていた。このデータは海外データかつプライマリケアのデータということで、本邦の呼吸器専門施設で遭遇する疾患とは異なる可能性が考えられていた。そこで、国内において呼吸器専門施設での原因を検討するとともに、プライマリケアでの原因も調査した。 本邦での調査の結果、プライマリケアでの血痰と喀血の原因疾患の上位4疾患は急性気管支炎(39%)、急性上気道感染(15%)、気管支拡張症(13%)、COPD(7.8%)であり2)、英国のプライマリケアのデータ(1位:急性上気道感染[35%]、2位:急性下気道感染[29%]、3位:気管支喘息[10%]、4位:COPD[8%])と上位2疾患は急性気道感染という点、4位がCOPDという点で類似していた。 一方、本邦の呼吸器専門施設での血痰と喀血の原因疾患の上位3疾患は、気管支拡張症(18%)、原発性肺がん(17%)、非結核性抗酸菌(NTM)症(16%)であり、プライマリケアでの原因疾患とは異なっていた。また「呼吸器専門施設では年齢によって、原因疾患が大きく異なることも重要である」と金子氏は指摘する。たとえば、20代では細菌性肺炎が多く、30代では上・下気道感染、気管支拡張症が約半数を占め、40~60代では肺がんが多くなっていた。70代以降では肺がんは1位にはならず、70代はNTM症、80代では気管支拡張症、90代では細菌性肺炎が最も多かった3)。また、80代以降では結核が上位にあがって来ることも注意が必要であると金子氏は指摘した。近年注目される中枢気道の粘液栓 最近のトピックとして、閉塞性肺疾患における気道粘液栓が取り上げられている。米国の重症喘息を対象としたコホート研究「Severe Asthma Research program」において、中枢気道の粘液栓が多発していることが2018年に報告され、その後COPDでも同様な病態があることも示されたことから注目を集めている。粘液栓形成の程度は粘液栓スコアとして評価され、著明な気流閉塞、増悪頻度の増加、重症化や予後不良などと関連していることも報告されており、バイオマーカーとして期待されている。ただし、課題も存在すると金子氏は指摘する。「評価にはMDCT(multidetector row CT)を用いて、一つひとつの気管支をみていく必要があり、現場に普及させるのは困難である。そのため、現在はAIを用いて粘液スコアを評価するなど、さまざまな試みがなされている」と、課題や今後の期待を述べた。CQのまとめ 本ガイドラインにおけるCQは以下のとおり。詳細はガイドラインを参照されたい。【CQ一覧】<咳嗽>CQ1:ICSを慢性咳嗽患者に使用すべきか慢性咳嗽患者に対してICSを使用しないことを弱く推奨する(エビデンスの確実性:D[非常に弱い])CQ2:プロトンポンプ阻害薬(PPI)をGERDによる咳嗽患者に推奨するかGERDによる咳嗽患者にPPIを弱く推奨する(エビデンスの確実性:C[弱い])CQ3-1:抗コリン薬は感染後咳嗽に有効か感染後咳嗽に吸入抗コリン薬を勧めるだけの根拠が明確ではない(推奨度決定不能)(エビデンスの確実性:D[非常に弱い])CQ3-2:抗コリン薬は喘息による咳嗽に有効か喘息による咳嗽に吸入抗コリン薬を弱く推奨する(エビデンスの確実性:D[非常に弱い])CQ4:P2X3受容体拮抗薬はRefractory Chronic Cough/Unexplained Chronic Coughに有効かP2X3受容体拮抗薬はRefractory Chronic Cough/Unexplained Chronic Coughに有効であり、使用を弱く推奨する(エビデンスの確実性:B[中程度])<喀痰>CQ5:COPDの安定期治療において喀痰調整薬は推奨されるかCOPDの安定期治療において喀痰調整薬の投与を弱く推奨する(エビデンスの確実性:C[弱い])CQ6:COPDの安定期治療においてマクロライド少量長期投与は有効かCOPDの安定期治療においてマクロライド少量長期投与することを弱く推奨する(エビデンスの確実性:B[中程度])CQ7:喘息の安定期治療においてマクロライド少量長期療法は推奨されるか喘息の安定期治療においてマクロライド少量長期療法の推奨度決定不能である(エビデンスの確実性:C[弱い])CQ8:気管支拡張症(BE)に対してマクロライド少量長期療法は推奨されるかBEに対してマクロライド少量長期療法を強く推奨する(エビデンスの確実性:A[強い])

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喘息治療における吸入薬投与の最適なタイミングとは

 喘息患者は、1日1回の吸入ステロイド薬を遅めの午後に使用することで、夜間の症状を効果的にコントロールできる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英マンチェスター大学のHannah Jane Durrington氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に4月15日掲載された。 薬物投与のタイミングを体内時計に合わせる治療法はクロノセラピー(時間治療)と呼ばれ、薬の治療効果を高めることが期待されている。Durrington氏らによると、喘息には明確な日内リズムがあり、気流閉塞と気道炎症の主要な影響は夜間にピークに達する。実際、致死的な喘息発作の約80%は夜間に発生しているという。 このことを踏まえてDurrington氏らは、25人の喘息患者を対象にランダム化クロスオーバー試験を実施し、クロノセラピーの効果を検討した。対象患者は、吸入ステロイド薬のベクロメタゾンプロピオン酸エステルを、以下の3通りの投与法でランダムな順序で投与した。1)午前8〜9時の間に400μgを1日1回投与(午前投与)、2)午後3〜4時の間に400μgを1日1回投与(午後投与)、3)午前8〜9時の間と午後8〜9時の間の2回に分けて200μgずつ投与(2回投与)。投与期間は28日であり、各投与法の間には2週間のウォッシュアウト期間を設けた。 25人中21人が全ての投与法を完了した。治療により肺機能は全ての投与法でベースラインより改善していたが、改善のタイミングは投与法により異なり、午後10時のFEV1(1秒量)については、午後投与での改善が最も大きかった。FEV1とは、最大限に息を吸った後、できるだけ強く、速く息を吐き出した際の最初の1秒間の呼出量のこと。具体的には、午後投与では中央値で160mLの改善が認められたのに対し、2回投与では中央値で80mLの改善にとどまっており、午前投与では中央値で−20mLと改善は認められなかった。また、午後投与は夜間(午後10時と午前4時)の血中好酸球数の抑制に最も効果的だった。好酸球の増加は、気道の炎症や過敏性、狭窄の原因として知られている。 研究グループは、「これらの結果は、人の体内時計に合わせて投与のタイミングを調整するクロノセラピーの有効性を裏付けるものだ」と述べている。研究グループは、喘息の症状に関連する炎症の連鎖は午後半ばに始まる傾向があり、そのときに予防的な吸入薬を投与すると効果が高まる可能性がある」と指摘している。 一方、本論文の付随論評では、午後投与では肺機能と好酸球数の点で臨床的に重要な違いが確認されたものの、全体的な症状のコントロールが優れていたとは言えないことが指摘されている。ただし、それは対象者数の少なさと追跡期間の短さが原因である可能性はある。付随論評の著者の1人である英キングス・カレッジ・ロンドンのRichard Edward Russell氏は、「これらの研究結果を臨床実践に応用する場合、最大の課題は喘息治療の遵守になるだろう。一般人口の約30~40%が吸入ステロイド薬を指示通りに使用することに苦労している現状を考えると、使用時間を限定することは事態をさらに複雑にする可能性がある」と述べている。 研究グループは、本研究で確認された吸入ステロイド薬の投与のタイミングが夜間の発作に与える影響を確認するために、より大規模な試験の実施を推奨している。

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円形脱毛症の予後に慢性炎症性疾患の併存が影響

 慢性炎症性疾患(CID)の併存が円形脱毛症(AA)の予後に影響を与えるとするリサーチレターが、「Allergy」に1月8日掲載された。 ボン大学(ドイツ)のAnnika Friedrich氏らは、CIDの併存とAAの予後に関する臨床的特徴との関連性について検討するために、主に中央ヨーロッパ系のAA患者2,657人から取得した自己申告データを使用し、包括的な分析を実施した。全体として、AAコホートの患者のうち53.7%が1つ以上のなんらかのCID併存を報告しており、そのうち44.5%がアトピー性CID、17.4%が非アトピー性CIDであった。 解析の結果、アトピー性皮膚炎(AD)、気管支喘息、慢性甲状腺炎(橋本病)のいずれかを併発している患者では、併存CIDを有さない患者と比較して、AAの早期発症、重症化、長期化の報告率が有意に高いことが分かった。鼻炎または白斑を併発している患者では、AAの長期化リスクが有意に上昇した。気管支喘息を併発している患者では、ADまたは鼻炎を併発している患者と比べて、AAの早期発症、重症化、長期化リスクがより高かった。CIDの併存は、AAの発症年齢や重症度よりも、有病期間との関連が顕著であった。早期発症、重症、長期化したAA患者の方が、遅発性、軽症、長期化しないAA患者より、アトピー性併存疾患の報告数が有意に多かった。アトピー性併存疾患が1つ増えるごとに、早期発症、重症化、長期化するオッズがそれぞれ1.179、1.130、1.202上昇した。AAの平均発症年齢は、AD、気管支喘息、鼻炎の全てを有する患者の方が、AAのみを有する患者と比べてほぼ10年早かった。 著者らは、「われわれの研究結果は、異なる併存疾患の組み合わせが、予後の異なるAAのサブタイプを示唆している可能性を示した」と述べている。

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喘息の検査には時間帯や季節が影響する

 喘息の診断に用いられる気道可逆性検査の精度は、実施する時間帯、季節により異なる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、定期的な喘息検査は午前中に行う方が信頼性の高い結果を得られる可能性があるとしている。英ロイヤル・パプワース病院NHS財団トラストのBen Knox-Brown氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に3月11日掲載された。 典型的な喘息の検査は、2段階のプロセスで行われると研究グループは説明する。まず、患者はチューブを通してできるだけ深く息を吸い、次にできるだけ強く、速く息を吐くように指示される。患者の肺の中を出入りする息は、肺機能を測定する装置であるスパイロメーターにより測定される。次に、患者は即効性の気管支拡張薬を吸入してから、同じ呼吸テストを行う。2回目の結果が1回目よりも良好である場合、つまり気管支拡張薬反応性が認められた場合は、テスト前にすでに気道が狭くなっていたことを意味し、患者が喘息であることが示唆される。 今回の研究でKnox-Brown氏らは、2016年1月1日から2023年12月31日の間に喘息の検査を受けた18歳以上の患者1,620人(平均年齢53.2歳、女性62%)のデータを後ろ向きに解析し、検査が行われた時間帯や季節と喘息の診断との関連を検討した。 その結果、午前8時30分から検査を開始した場合、開始時間が1時間遅くなるごとに、気管支拡張薬反応性を示すオッズが8%ずつ低下することが示唆された(オッズ比0.92、95%信頼区間0.88〜0.97)。検査する時間帯を午前と午後に分けて解析した場合でも同様の傾向が見られ、午後の方が気管支拡張薬反応性を示すオッズが低かった(同0.68、0.54~0.85)。季節別に見ると、秋に検査を受けた場合には冬に受けた場合と比べて気管支拡張薬反応性を示すオッズが33%低かった(同0.67、0.48〜0.92)。 研究グループは、喘息薬の効果が午後よりも午前の方が高いことは知られていたが、これらの結果には驚かされたという。Knox-Brown氏は、「喘息発作のリスクが昼と夜で違うことから、肺機能検査に対する反応にも違いがあると予想していたが、その大きさには驚かされた」と話す。同氏は、「この結果は重要な意味を持つ可能性がある。午前中に検査を行えば、午後に行うよりも患者の薬に対する反応をより確実に知ることができる。これは喘息などの診断を確定する際に重要だ」と英ケンブリッジ大学のニュースリリースの中で述べている。 論文の上席著者である、ケンブリッジ大学のAkhilesh Jha氏は、「この違いの背景には、複数の要因が関与している可能性が高い」と指摘する。同氏は、「われわれの体には体内時計と呼ばれる自然なリズムが備わっている。例えば、1日を通して、体内のさまざまなホルモンのレベルは上下するし、免疫システムの働きも異なる。これらの要因の全てが、人々が肺機能検査にどう反応するかに影響を与える可能性がある」と話す。 Jha氏は、このような体内時計による影響のエビデンスは、医学の他の分野でも認められていると指摘する。同氏は、「例えば、ワクチン接種を午前に受けるか午後に受けるかによって反応が異なることが知られている。われわれの研究結果は、この考えをさらに裏付けるものだ。一般的に行われている喘息の検査結果を解釈する際には、検査実施の時間帯や時期を考慮する必要があるのかもしれない」と述べている。

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呼吸器病の漢方治療ガイド プライマリ・ケアで役立つ50処方

呼吸器疾患の漢方がわかると診察力が大幅アップ外来医師必携の漢方処方ガイド。総論として、漢方の概念や考え方、診察方法、漢方薬の成り立ちと副作用、西洋薬と漢方薬の違い、呼吸器疾患に頻用する漢方薬の特徴、各論では、かぜ症候群、インフルエンザ、COVID-19などのウイルス感染症の急性期や遷延期治療、喘息、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔気管支症候群、逆流性食道炎、嚥下性肺炎、非定型抗酸菌症、肺癌に関する漢方治療を解説。さらに本書で解説のある50処方の適応イラストを掲載。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する呼吸器病の漢方治療ガイド プライマリ・ケアで役立つ50処方定価3,850円(税込)判型A5判(並製)頁数136頁(写真・図・表:119点)発行2025年4月著者加藤 士郎(筑波大学附属病院臨床教授)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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最新の鼻アレルギー診療ガイドラインの読むべき点とは

 今春のスギ・ヒノキの花粉総飛散量は、2024年の春より増加した地域が多く、天候の乱高下により、飛散が長期に及んでいる。そのため、外来などで季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)を診療する機会も多いと予想される。花粉症診療で指針となる『鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症- 2024年 改訂第10版』(編集:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)が、昨年2024年3月に上梓され、現在診療で広く活用されている。 本稿では、本ガイドラインの作成委員長である大久保 公裕氏(日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授)に改訂のポイントや今春の花粉症の終息の見通し、今秋以降の花粉飛散を前にできる対策などを聞いた。医療者は知っておきたいLAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎の概念 今回の改訂では、全体のエビデンスなどの更新とともに、皮膚テストや血清特異的IgE検査に反応しない「LAR(local allergic rhinitis)血清IgE陰性アレルギー性鼻炎」が加わった。また、図示では、アレルギー性鼻炎の発症機序、種々発売されている治療薬について、その作用機序が追加されている。そのほか、「口腔アレルギー症候群」の記載を詳記するなど内容の充実が図られている。それらの中でもとくに医療者に読んでもらいたい箇所として次の2点を大久保氏は挙げた。(1)LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎の概念の導入: このLAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎は、皮膚反応や血清特異的IgE抗体が陰性であるにもかかわらず、鼻粘膜表層ではアレルギー反応が起こっている疾患であり、従来の検査や所見でみつからなくても、将来的にアレルギー性鼻炎や気管支喘息に進展する可能性が示唆される。患者さんが来院し、花粉症の症状を訴えているにもかかわらず、検査で抗体がなかったとしても、もう少し踏み込んで診療をする必要がある。もし不明な点があれば専門医へ紹介する、問い合わせるなどが必要。(2)治療法の選択の簡便化: さまざまな治療薬が登場しており、処方した治療薬がアレルギー反応のどの部分に作用しているのか、図表で示している。これは治療薬の作用機序の理解に役立つと期待している。また、治療で効果減弱の場合、薬量を追加するのか、薬剤を変更するのか検討する際の参考に読んでもらいたい。 実際、本ガイドラインが発刊され、医療者からは、「診断が簡単に理解でき、診療ができるようになった」「『LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎』の所見をみたことがあり、今後は自信をもって診療できる」などの声があったという。今春の飛散終息は5月中~下旬頃の見通し 今春の花粉症の特徴と終息の見通しでは、「今年はスギ花粉の飛散が1月から確認され、例年より早かった一方で、寒い日が続いたため、飛散が後ろ倒しになっている。そのために温暖な日が続くとかなりの数の花粉が飛散することが予測され、症状がつらい患者さんも出てくる。また、今月からヒノキの花粉飛散も始まるので、ダブルパンチとなる可能性もある」と特徴を振り返った。そして、終息については、「例年通り、5月連休以降に東北以外のスギ花粉は収まると予測される。また、東北ではヒノキがないので、スギ花粉の飛散動向だけに注意を払ってもらいたい。5月中~下旬に飛散は終わると考えている」と見通しを語った。 今秋・来春(2026年)の花粉症への備えについては、「今後の見通しは夏の気温によって変わってくる。暑ければ、ブタクサなどの花粉は大量飛散する可能性がある。とくに今春の花粉症で治療薬の効果が弱かった人は、スギ花粉の舌下免疫療法を開始する、冬季に鼻の粘膜を痛めないためにも風邪に気を付けることなどが肝要。マスクをせずむやみに人混みに行くことなど避けることが大事」と指摘した。 最後に次回のガイドラインの課題や展望については、「改訂第11版では、方式としてMinds方式のCQを追加する準備を進める。内容については、花粉症があることで食物アレルギー、口腔アレルギー症候群(OAS)、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)など複雑に交錯する疾患があり、これが今問題となっているので医療者は知っておく必要がある。とくに複数のアレルゲンによる感作が進んでいる小児へのアプローチについて、エビデンスは少ないが記載を検討していきたい」と展望を語った。主な改訂点と目次〔改訂第10版の主な改訂点〕【第1章 定義・分類】・鼻炎を「感染性」「アレルギー性」「非アレルギー性」に分類・LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎を追加【第2章 疫学】・スギ花粉症の有病率は38.8%・マスクが発症予防になる可能性の示唆【第3章 発症のメカニズム】・前段階として感作と鼻粘膜の過敏性亢進が重要・アレルギー鼻炎(AR)はタイプ2炎症【第4章 検査・診断法】・典型的な症状と鼻粘膜所見で臨床的にARと診断し早期治療開始・皮膚テストに際し各種薬剤の中止期間を提示【第5章 治療】・各治療薬の作用機序図、免疫療法の作用機序図、スギ舌下免疫療法(SLIT)の効果を追加〔改訂第10版の目次〕第1章 定義・分類第2章 疫学第3章 発症のメカニズム第4章 検査・診断第5章 治療・Clinical Question & Answer(1)重症季節性アレルギー性鼻炎の症状改善に抗IgE抗体製剤は有効か(2)アレルギー性鼻炎患者に点鼻用血管収縮薬は鼻噴霧用ステロイド薬と併用すると有効か(3)抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎のくしゃみ・鼻漏・鼻閉の症状に有効か(4)抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランジンD2(PGD2)・トロンボキサンA2(TXA2薬)はアレルギー性鼻炎の鼻閉に有効か(5)漢方薬はアレルギー性鼻炎に有効か(6)アレルギー性鼻炎に対する複数の治療薬の併用は有効か(7)スギ花粉症に対して花粉飛散前からの治療は有効か(8)アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法の効果は持続するか(9)小児アレルギー性鼻炎に対するSLITは有効か(10)妊婦におけるアレルゲン免疫療法は安全か(11)職業性アレルギー性鼻炎の診断に血清特異的IgE検査は有用か(12)アレルギー性鼻炎の症状改善にプロバイオティクスは有効か第6章 その他Web版エビデンス集ほかのご紹介

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鼻茸を伴う難治性慢性副鼻腔炎、テゼペルマブ追加が有効/NEJM

 鼻茸を伴う重症の難治性慢性副鼻腔炎の成人患者において、ヒト抗TSLPモノクローナル抗体テゼペルマブ(本邦適応は気管支喘息のみ)による治療はプラセボと比較して、鼻茸サイズ、鼻閉および副鼻腔症状の重症度、鼻茸切除および全身性グルココルチコイド治療を有意に減少したことが示された。英国・ダンディー大学のBrian J. Lipworth氏らWAYPOINT Study Investigatorsらが第III相の「WAYPOINT試験」の結果を報告した。テゼペルマブ治療は、重症の難治性気管支喘息で鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎既往の患者の副鼻腔症状に対する有効性は示されていたが、鼻茸を伴う重症の難治性慢性副鼻腔炎の成人患者に対する有効性および安全性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年3月1日号掲載の報告。日本を含む10ヵ国112施設で、成人患者を対象に第III相試験を実施 第III相WAYPOINT試験は、多施設共同並行群間二重盲検無作為化比較試験で、2021年4月22日~2023年8月23日に日本を含む10ヵ国112施設で行われた。 研究グループは、医師の診断を受けた症候性の鼻茸を伴う重症の慢性副鼻腔炎の成人(18歳以上)患者を、標準治療(鼻腔内グルココルチコイド療法)に加えてテゼペルマブ(用量210mg)またはプラセボを受ける群に無作為に割り付け、4週ごと52週間にわたり皮下投与した。 主要エンドポイントは2つで、52週時点の総鼻茸スコア(範囲:0~4[各鼻孔について]、高スコアほど重症度が高いことを示す)と平均鼻閉スコア(範囲:0~3、高スコアほど重症度が高いことを示す)のベースラインからの変化とした。 全集団で評価した重要な副次エンドポイントは、嗅覚喪失スコア、Sinonasal Outcome Testの総スコア(SNOT-22、範囲:0~110、高スコアほど重症度が高いことを示す)、Lund-Mackayスコア(範囲:0~24、高スコアほど重症度が高いことを示す)、総症状スコア(範囲:0~24、高スコアほど重症度が高いことを示す)、および鼻茸切除または全身性グルココルチコイド治療(あるいはその複合治療)の最初の決定(time-to-event解析で個別的および複合的に評価)であった。テゼペルマブ治療の有効性、安全性を確認 410例が無作為化を受け、408例(テゼペルマブ群203例、プラセボ群205例)が有効性および安全性のエンドポイント解析に包含された。両群の試験薬中止の理由で最も多かったのは鼻茸切除であった。被験者の人口統計学的およびベースラインの臨床的特徴は両群間でおおむねバランスが取れており、408例の平均年齢は49.7±13.6歳、男性が65.2%、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎と診断されてからの期間は12.75±10.37年などであった。 52週時点で、テゼペルマブ群は総鼻茸スコア(対プラセボとの平均群間差:-2.07、95%信頼区間[CI]:-2.39~-1.74)、平均鼻閉スコア(-1.03、-1.20~-0.86)が有意に改善した(両スコアp<0.001)。 また、テゼペルマブ群は、嗅覚喪失スコア(対プラセボとの平均群間差:-1.00、95%CI:-1.18~-0.83)、SNOT-22総スコア(-27.26、-32.32~-22.21)、Lund-Mackayスコア(-5.72、-6.39~-5.06)、総症状スコア(-6.89、-8.02~-5.76)も有意に改善した(全スコアp<0.001)。 鼻茸切除が適応された患者は、テゼペルマブ群(0.5%)がプラセボ群(22.1%)と比べて有意に少なかった(ハザード比:0.02、95%CI:0.00~0.09)。全身性グルココルチコイド治療もテゼペルマブ群(5.2%)がプラセボ群(18.3%)と比べて有意に少なかった(0.12、0.04~0.27)(両方のtime-to-event解析p<0.001)。

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小児の喘息のエンドタイプを特定できる新たな検査法を開発

 新しい迅速かつ簡便な鼻腔スワブ検査により、小児の喘息の背後にある特定の免疫システムや病態に関する要因(エンドタイプ)を特定できる可能性のあることが、新たな研究で示された。研究グループは、この非侵襲的アプローチは、臨床医がより正確に薬を処方するのに役立つだけでなく、これまで正確に診断することが困難で、研究の進んでいないタイプの喘息に対するより良い治療法の開発につながる可能性があると見ている。米ピッツバーグ医療センター(UPMC)小児病院呼吸器科部長で上級研究員のJuan Celedon氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に1月2日掲載された。 Celedon氏は、「喘息は、エンドタイプによって関与している免疫細胞や治療方法が異なる多様な疾患である。そのため、エンドタイプの正確な診断がより良い治療法への第1歩となる」と述べている。 喘息は小児期に最も頻発する慢性疾患であり、米国立衛生研究所の統計によると、米国では10人に1人の小児が喘息に罹患している。喘息は通常、気道に炎症を引き起こす免疫細胞に基づきいくつかのエンドタイプに分類される。主なエンドタイプは、Tヘルパー2(T2)細胞が関与する免疫反応が亢進し、T2サイトカイン(インターロイキン〔IL〕-4、IL-5、IL-13)の産生と免疫グロブリンE(IgE)の分泌、および気道中の好酸球増加を特徴とする「T2-high」、好中球による気道の炎症とIL-17およびIL-22の血清レベル上昇を特徴とする「T17-high」、および好酸球性または好中球性の気道炎症を欠き、病態の解明が進んでいない「T2-low/T17-low」などである。 研究グループによると、喘息のエンドタイプを正確に診断するには、小児に麻酔を施して肺組織のサンプルを採取し、その遺伝子解析を行う必要があるという。しかし、この処置は極めて侵襲的であるため、軽症の喘息の小児には適応されない。そのため医師は血液、肺機能、その他のアレルギーの検査の結果に基づいて喘息のエンドタイプを推測しているのが現状だとCeledon氏は説明する。同氏は、「これらの検査により、小児の喘息のエンドタイプがT2-highであるか否かを推測することはできるが、100%正確とは言えない。また、T17-highかT2-low/T17-lowかについては、臨床マーカーがないため分からない。この格差が、喘息エンドタイプ診断の精度を向上させるためのより良いアプローチを開発する動機となった」と話す。 今回の研究では、小児459人の鼻上皮細胞のサンプルを用いて、トランスクリプトーム解析により、T2経路に関連する3つの遺伝子とT17経路に関連する5つの遺伝子の転写プロファイルを調査した。研究グループによると、これらのサンプルは、喘息の罹患率が高く、喘息で死亡リスクも高いプエルトリコ人とアフリカ系米国人の小児に焦点を当てた米国の3件の研究から採取されたものであったという。 その結果、この鼻腔スワブを用いた解析により、小児の喘息の特定のエンドタイプを正確に特定できることが明らかになった。全体で、参加者の23~29%がT2-high、35~47%がT17-high、30~38%がT2-low/T17-lowの喘息であった。 Celedon氏らによると、重度のT2-highの喘息の治療には、強力な新クラスの生物学的製剤を利用できるが、それ以外のエンドタイプの喘息に対して有効な治療薬はないという。Celedon氏は、「T2-highの喘息に対する治療法が改善されたのは、より優れたマーカーがこのエンドタイプの研究を推進したおかげでもある。今後は、この簡便な検査により他のエンドタイプの喘息を検出できるようになるため、T17-high、およびT2-low/T17-lowの喘息に対する生物学的製剤の開発にも着手できるだろう」と話している。

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添付文書改訂:SGLT2阻害薬にケトアシドーシス注意喚起/レキサルティにアルツハイマー型認知症に伴う焦燥感など追加【最新!DI情報】第30回

SGLT2阻害薬<対象薬剤>選択的SGLT2阻害薬(商品名:スーグラ錠、ジャディアンス錠、カナグル錠/OD錠、フォシーガ錠、デベルザ錠、ルセフィ錠/ODフィルム)<改訂年月>2024年12月<改訂項目>[追加]重要な基本的注意本剤を含むSGLT2阻害薬の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと。<ここがポイント!>SGLT2阻害薬全般において、重要な基本的注意に「投与中止後の尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスの遷延に関する注意喚起」が追記されました。国内において、投与中止後の尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスの遷延に関連する症例が集積されています※。改訂前にも、SGLT2阻害薬の使用上の注意としてケトアシドーシスに関連する注意喚起がなされていましたが、遷延に関する事象は予測できないことから、今回追記が行われました。※投与中止後3日以上遷延するケトアシドーシスとして承認取得者ごとの基準により抽出された症例レキサルティ錠<対象薬剤>ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg、製造販売元:大塚製薬)<改訂年月>2024年9月<改訂項目>[追加]効能・効果アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動[追加]用法・用量通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回0.5mgから投与を開始した後、1週間以上の間隔をあけて増量し、1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日1回2mgに増量することができるが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこと。[追加]効能・効果に関連する注意高齢認知症患者への抗精神病薬投与により死亡リスクが増加するとの海外報告がある。また、本剤の国内プラセボ対照試験において、治験薬投与との関連性は明らかではないが死亡例が本剤群のみで報告されている。本剤の投与にあたっては上記リスクを十分に考慮し、臨床試験における有効性及び安全性の結果等を熟知した上で、慎重に患者を選択すること。また、本剤投与中は患者の状態を注意深く観察すること。<ここがポイント!>本剤は2018年1月に「総合失調症」の効能で製造販売承認を取得し、2023年12月には「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の効能が追加されました。さらに、2024年9月には「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動または攻撃的言動」の効能も国内において初めて追加されました。アルツハイマー型認知症の約半数の患者に過活動や攻撃的言動が認められ、これにより家族・介護者の負担が増大し、生活の質が低下します。本適応の追加により、アルツハイマー型認知症の患者と介護者の双方にとって、重要な転換点となることが期待されます。ヌーカラ皮下注<対象薬剤>メポリズマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:ヌーカラ皮下注100mgペン/シリンジ、製造販売元:グラクソ・スミスクライン)<改訂年月>2024年8月<改訂項目>[追加]効能・効果鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)[追加]用法・用量通常、成人にはメポリズマブ(遺伝子組換え)として1回100mgを4週間ごとに皮下に注射する。[追加]効能・効果に関連する注意本剤は全身性ステロイド薬、手術等ではコントロールが不十分な患者に用いること。<ここがポイント!>100mgペンおよび100mgシリンジの適応症は、これまで「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」および「既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」でしたが、2024年8月に「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)」※が追加されました。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の患者では、鼻閉や嗅覚消失、顔面圧迫、睡眠障害、鼻汁などの症状がみられ、身体的・精神的負担が大きい疾患です。治療はステロイド薬や内視鏡下副鼻腔手術などが行われていますが、再発が多く、長期間のコントロールも困難です。本剤の適応追加によって、手術や全身ステロイドに代わる新たな治療選択肢が増えました。※最適使用推進ガイドライン対象レボレード錠<対象薬剤>エルトロンボパグ オラミン(商品名:レボレード錠12.5mg/25mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)<改訂年月>2024年11月<改訂項目>[追加]用法・用量(小児患者に対する追加)<慢性特発性血小板減少性紫斑病>通常、成人及び1歳以上の小児には、エルトロンボパグとして初回投与量12.5mgを1日1回、食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する。なお、血小板数、症状に応じて適宜増減する。また、1日最大投与量は50mgとする。[追加]効能・効果に関連する注意診療ガイドライン等の最新の情報を参考に、本剤の投与が適切と判断される患者に使用すること。<ここがポイント!>慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の小児患者は多くが自然寛解しますが、重症化すると脳出血などの重篤かつ致死的な出血症状を引き起こすことがあります。本剤は海外では1歳以上の患者に使用が承認されていましたが、国内では成人のみに使用できる状況でした。しかし、国内の診療ガイドラインでは、副腎皮質ステロイド治療などに効果が不十分な小児患者の2次治療として本剤が推奨されています。このため、日本小児血液・がん学会から要望書が提出され、小児患者(1歳以上)に対する用法・用量の追加の公知申請※が行われました。この効能追加によって、ガイドラインで推奨される治療を添付文書上の適応症に沿って実施できるようになりました。※公知申請:医薬品(効能追加など)の承認申請において、その有効性や安全性が医学的に公知であるとして、臨床試験の全部または一部を新たに実施することなく承認申請を行うことができる制度

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喘息コントロールの確認【日常診療アップグレード】第20回

喘息コントロールの確認問題36歳男性。気管支喘息のため通院中である。ブデソニド/ホルモテロール吸入(商品名:シムビコート)を使用していて、喘息の症状は落ち着いている。喫煙の習慣はない。吸入器の使い方も問題がない。身体診察ではバイタルサインを含め異常なし。呼気一酸化窒素濃度(FeNO)を測定し、喘息のコントロールがうまくいっているかどうかを確かめた。

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喘息やCOPDの増悪に対する新たな治療法とは?

 英国、バンベリー在住のGeoffrey Pointingさん(77歳)は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪がもたらす苦痛を表現するのは難しいと話す。「正直なところ、増悪が起きているときは息をすることさえ困難で、どのように感じるのかを他人に伝えるのはかなり難しい」とPointingさんはニュースリリースの中で述べている。しかし、既存の注射薬により、こうした喘息やCOPDの増悪の恐ろしさを緩和できる可能性のあることが、新たな臨床試験で示された。「The Lancet Respiratory Medicine」に11月27日掲載された同試験では、咳や喘鳴、息苦しさ、痰などの呼吸器症状の軽減という点において、モノクローナル抗体のベンラリズマブがステロイド薬のプレドニゾロンよりも優れていることが明らかになった。論文の上席著者である英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)呼吸器科のMona Bafadhel氏は、「この薬は、喘息やCOPDの患者にとってゲームチェンジャーになる可能性がある」と期待を示している。 ベンラリズマブは、肺の炎症を促す好酸球と呼ばれる特定の白血球を標的としている。米食品医薬品局(FDA)は2017年、同薬を重症喘息の管理を目的とした薬として承認している。研究グループによると、好酸球性増悪は、COPDの急性増悪の最大30%、喘息発作の約50%を占めているという。このようなエピソードでは、肺内で好酸球を含む白血球が急増し、喘鳴、咳、胸部の圧迫感を引き起こす。このことを踏まえてBafadhel氏らは今回の臨床試験で、喘息とCOPDの発作に対するベンラリズマブの有効性を評価した。 対象とされた158人の喘息またはCOPD患者(平均年齢57歳、男性46%)は、急性増悪時(好酸球数が300cells/μL以上)に、以下の3群にランダムに割り付けられた。1)プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間経口投与し、ベンラリズマブ100mgを1回皮下注射する群(ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、52人)、2)プラセボを1日1回、5日間経口投与し、ベンラリズマブ100mgを1回皮下注射する群(ベンラリズマブ群、53人)、3)プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間経口投与し、プラセボを1回皮下注射する群(プレドニゾロン群、53人)。 その結果、90日後の治療失敗率は、プレドニゾロン群で74%(39/53人)、ベンラリズマブ群とベンラリズマブ+プレドニゾロン群を合わせた群(統合ベンラリズマブ群)で45%(47/105人)であり、統計学的に統合ベンラリズマブ群はプレドニゾロン群よりも治療失敗率が有意に低いことが示された(オッズ比0.26、95%信頼区間0.13〜0.56、P=0.0005)。また、28日目に症状をVAS(視覚的アナログスケール)で評価したところ、統合ベンラリズマブ群がプレドニゾロン群よりも49mm(95%信頼区間14〜84mm、P=0.0065)高い改善を示し、ベンラリズマブの方が症状の改善に効果的であることが示された。いずれの群でも致死的な有害事象は発生せず、ベンラリズマブの忍容性は良好であることも確認された。 これらの結果を受けて研究グループは、「すでに喘息の治療薬として承認されている薬が、喘息やCOPDの増悪を抑える手段としてステロイド薬に代わるものとなる可能性がある」との見方を示している。 この臨床試験に参加したPointingさんは、ベンラリズマブは「素晴らしい薬」であると言う。「ステロイド薬の錠剤を使用していたときには副作用があり、初日の夜はよく眠れなかったが、今回の臨床試験では初日の夜から眠ることができ、何の問題もなく自分の生活を続けることができた」とPointingさんは振り返っている。 今回の臨床試験では、医療従事者がベンラリズマブの皮下注射を行ったが、家庭や診療所でも安全に投与できる可能性があるとBafadhel氏らは話している。なお、本試験はベンラリズマブを製造するAstraZeneca社の助成を受けて行われた。

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喘息予防・管理ガイドライン改訂、初のCQ策定/日本アレルギー学会

 2024年10月に『喘息予防・管理ガイドライン2024』(JGL2024)が発刊された。今回の改訂では初めて「Clinical Question(CQ)」が策定された。そこで、第73回日本アレルギー学会学術大会(10月18~20日)において、「JGL2024:Clinical Questionから喘息予防・管理ガイドラインを考える」というシンポジウムが開催された。本シンポジウムでは4つのCQが紹介された。ICSへの追加はLABAとLAMAどちらが有用? 「CQ3:成人喘息患者の長期管理において吸入ステロイド薬(ICS)のみでコントロール不良時には長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の追加はどちらが有用か?」について、谷村 和哉氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座)が解説した。 喘息の治療において、ICSの使用が基本となるが、ICS単剤で良好なコントロールが得られない場合も少なくない。JGL2024の治療ステップ2では、LABA、LAMA、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤のいずれか1剤をICSへ追加することが示されている1)。そのなかでも、一般的にICSへのLABAの追加が行われている。しかし、近年トリプル療法の有用性の報告、ICSとLAMAの併用による相乗効果の可能性の報告などから、LAMA追加が注目されており、LABAとLAMAの違いが話題となることがある。  そこで、ICS単剤でコントロール不十分な18歳以上の喘息患者を対象に、ICSへ追加する薬剤としてLABAとLAMAを比較した無作為化比較試験(RCT)について、既報のシステマティックレビュー(SR)2)のアップデートレビュー(UR)を実施した。 8試験の解析の結果、呼吸機能(PEF[ピークフロー]、トラフFEV1[1秒量] )についてはLAMAがLABAと比べて有意な改善を認め、QOL(Asthma Quality of Life Questionnaire[AQLQ])についてはLABAがLAMAと比べて有意な改善を認めたが、いずれも臨床的に意義のある差(MCID)には達しなかった。また、喘息コントロール、増悪、有害事象についてはLABAとLAMAに有意差はなく、同等であった。 以上から、「ICSへの追加治療としてLABAとLAMAはいずれも同等に推奨される(エビデンスの確実性:B[中])」という推奨となった1)。ただし、谷村氏は「ICS/LAMA合剤は上市されていないため、アドヒアランス・吸入手技向上の観点からはICS/LABAが優先されうると考える。個別の症状への効果などの観点から、LABAとLAMAを使い分けることについては議論の余地がある」と述べた。中用量以上のICSでコントロール良好例のステップダウンは? 「CQ4:成人喘息患者の長期管理において中用量以上のICSによりコントロール良好な状態が12週間以上経過した場合にICS減量は推奨されるか?」について、岡田 直樹氏(東海大学医学部 内科学系呼吸器内科学)が解説した。 高用量のICSの長期使用はステロイド関連有害事象のリスクとなることが知られ、国際的なガイドライン(GINA[Global initiative for asthma]2024)3)では、12週間コントロール良好であれば50~70%の減量が提案されている。しかし、適切なステップダウンの時期や方法、安全性については十分な検討がなされていないのが現状であった。 そこで、中用量以上のICSで12週間以上コントロール良好な喘息患者を対象に、ICSのステップダウンを検討したRCTについて、既報のSR4)のURを実施した。 抽出された7文献の解析の結果、ICSのステップダウンは経口ステロイド薬による治療を要する増悪を増加させず、喘息コントロールやQOLへの影響も認められなかった。単一の文献で入院を要する増悪は増加傾向にあったが、イベント数が少なく有意差はみられなかった。一方、重篤な有害事象やステロイド関連有害事象もイベント数が少なく、明らかな減少は認められなかった。 以上から、「中用量以上のICSでコントロール良好な場合はICS減量を行うことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])」という推奨となった1)。岡田氏は、今回の解析はすべての研究の観察期間が1年未満と短く、骨粗鬆症などの長期的なステロイド関連有害事象についての評価がなかったことに触れ、「長期的な高用量ICSの投与により、ステロイド関連有害事象のリスクが増加することも報告されているため、高用量ICSからのステップダウンにより、ステロイド関連有害事象の発現が低下することが期待される」と述べた。FeNOに基づく管理は有用か? 「CQ1:成人喘息患者の長期管理において呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)に基づく管理は有用か?」について、鶴巻 寛朗氏(群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科)が解説した。 FeNOは、喘息におけるタイプ2炎症の評価に有用であることが報告されている。FeNOは、未治療の喘息患者ではICSの効果予測因子であり、治療中の喘息患者では経年的な肺機能の低下や気道可逆性の低下、増悪の予測における有用性が報告されている。しかし、治療中の喘息におけるFeNOに基づく長期管理の有用性に関するエビデンスの集積は十分ではない。 そこで、臨床症状とFeNO(あるいはFeNOのみ)に基づいた喘息治療を実施したRCTについて、既報のSR5)のURを実施した。 対象となった文献は13件であった。解析の結果、FeNOに基づいた喘息管理は1回以上の増悪を経験した患者数、52週当たりの増悪回数を有意に低下させた。しかし、経口ステロイド薬を要する増悪や入院を要する増悪については有意差がみられず、呼吸機能の改善も得られなかった。症状やQOLについても有意差はみられなかった。ICSの投与量については、減少傾向にはあったが、有意差はみられなかった。 以上から、「FeNOに基づく管理を行うことが提案される(エビデンスの確実性:B[中])」という推奨となった1)。結語として、鶴巻氏は「FeNOに基づく長期管理は、増悪を起こす喘息患者には有用となる可能性があると考えられる」と述べた。喘息の長期管理薬としてのマクロライドの位置付けは? 「CQ5:成人喘息患者の長期管理においてマクロライド系抗菌薬の投与は有用か?」について、大西 広志氏(高知大学医学部 呼吸器・アレルギー内科)が解説した。 小児を含む喘息患者に対するマクロライド系抗菌薬の持続投与は、重度の増悪を減らし、症状を軽減することが、過去のSRおよびメタ解析によって報告されている6)。しかし、成人喘息に限った解析は報告されていない。 そこで、既報のSR6)から小児を対象とした研究や英語以外の文献などを除外し、成人喘息患者の長期管理におけるマクロライド系抗菌薬の有用性について検討した適格なRCTを抽出した。 採用された17文献の解析の結果、マクロライド系抗菌薬は、入院を要する増悪や重度の増悪を減少させず、呼吸機能も改善しなかった。Asthma Control Test(ACT)については、アジスロマイシン群で有意に改善したが、MCIDには達しなかった。同様にAsthma Control Questionnaire(ACQ)、AQLQもマクロライド系抗菌薬群で有意に改善したが、MCIDには達しなかった。 以上から、本解析の結論は「マクロライド系抗菌薬の持続投与は、喘息患者に有用な可能性はあるものの、長期管理に用いることを推奨できる十分なエビデンスはない」というものであった。これを踏まえて、JGL2024の推奨は「マクロライド系抗菌薬を長期管理の目的で投与しないことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])」となった1)。また、この結果を受けてJGL2024の「図6-5 難治例への対応のための生物学的製剤のフローチャート」における2型炎症の所見に乏しい喘息(Type2 low喘息)から、マクロライド系抗菌薬が削除された。■参考文献1)『喘息予防・管理ガイドライン2024』作成委員会 作成. 喘息予防・管理ガイドライン2024.協和企画;2024.2)Kew KM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015:CD011438.3)Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2024. Updated May 20244)Crossingham I, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;2:CD011802.5)Petsky HL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2016;11:CD011439.6)Undela K, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021;11:CD002997.

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喘息は子どもの記憶能力に悪影響を及ぼす

 子どもの喘息は記憶能力の低下と関連し、特に、喘息を早期発症した子どもではその影響が顕著であることが、米カリフォルニア大学デービス校心と脳センターのSimona Ghetti氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。Ghetti氏らは、「この研究は、子どもの喘息と記憶能力の問題との関連を示した初めてのものだ」と述べている。 米国では、子どもの喘息患者数は460万人程度と見積もられている。論文の筆頭著者である同大学デービス校心理学分野のNicholas J. Christopher-Hayes氏は、「幼少期は記憶能力、より一般的には認知能力が急速に向上する時期だ。子どもに喘息があると、その向上が遅れることが考えられる」と大学のニュースリリースで述べている。 この研究では、9歳から10歳の子ども約1万1,800人を登録して2015年に開始された、思春期脳認知発達(Adolescent Brain Cognitive Development;ABCD)研究の観察データを用いて、喘息が記憶能力に及ぼす影響が縦断的および横断的に検討された。 縦断的な分析では、喘息のある子どもおよび喘息のない子ども(対照群、平均年齢9.89歳、男子51%)237人ずつが対象とされた。喘息のある子どものうち、135人(平均年齢9.90歳、男子56%)は試験開始時に、102人(平均年齢9.88歳、女子53%)は2年後の追跡調査時に、親により喘息のあることが報告されていた(それぞれ、早期発症群、後期発症群)。分析の結果、主要評価項目としたエピソード記憶(個人が経験した出来事に関する記憶)は全体的に向上していたものの、早期発症群では対照群に比べてその向上率が有意に低かったことが明らかになった。後期発症群と対照群との間に有意な差は認められなかった。 横断的な分析では、研究期間のいずれかの時点で喘息があった子ども(1,031人、平均年齢11.99歳、男子57%)と喘息歴のない子ども(1,031人、平均年齢12.00歳、女子54%)が対象とされた。分析の結果、喘息のある子どもでは喘息のない子どもに比べて、エピソード記憶、副次評価項目とした処理速度、抑制力、注意力の全ての指標において、スコアが有意に低いことが示された。 こうした結果を受けてGhetti氏は、「この研究結果は、子どもの認知能力を低下させ得る原因として喘息を考慮することの重要性を強調している」と話す。同氏はさらに、「喘息だけでなく、糖尿病や心臓病などの慢性疾患が子どもの認知能力に問題が生じるリスクを上昇させ得ることに対する認識は高まりつつある。リスクを高める要因やその保護要因について理解する必要がある」と述べている。 研究グループは、本研究で認められたような記憶能力の低下は、長期的な影響を及ぼす可能性があるとの見方を示し、高齢者の喘息が、認知症やアルツハイマー病のリスク増大と関連付けられていることを指摘する。Christopher-Hayes氏は、「喘息は、子どもが大人になってから認知症のようなより深刻な病気を発症するリスクを高める可能性がある」と話す。研究グループはまた、このような記憶能力の低下は、喘息による長期にわたる炎症、あるいは喘息発作による脳への酸素供給の度重なる中断が原因となっている可能性があると推測している。

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Jmedmook94 今日の診療に活かせる 喘息・COPDポイント解説

今日から目の前の患者さんに活かせる!プライマリ・ケア医やジェネラリストの先生方が“今日の診療”において一歩ステップアップすることを目的とした、キュート先生こと田中 希宇人先生の著書がついに完成!喘息、COPDそれぞれについては国内外のガイドラインや治療の手引きなど数々の指針がありますが、何を参考にすれば? という若い先生の声も聞かれます。本書は、「今日から目の前の患者さんに活かせる」というコンセプトのもと、喘息とCOPDのポイントを1冊にまとめました。病態から診察、治療についてのキュート先生のわかりやすい解説に加え、長尾 大志先生、倉原 優先生、中島 啓先生など日本を代表する呼吸器内科の専門家が実臨床でのコツを伝授。キュート先生の質問に各先生が答えるQ&Aも必読です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するJmedmook94 今日の診療に活かせる 喘息・COPDポイント解説定価4,180円(税込)判型B5判頁数176頁発行2024年10月編著田中希宇人(日本鋼管病院呼吸器内科診療部長)ご購入はこちらご購入はこちら電子版でご購入の場合はこちら電子版でご購入の場合はこちら

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最近、疲れやすいんです…【漢方カンファレンス】第11回

最近、疲れやすいんです…以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】50代男性主訴易疲労感、腰痛既往気管支喘息病歴1年前から易疲労感を自覚するようになった。仕事はできているが、疲れがなかなか抜けず休日はゴロゴロしている。また腰痛が悪化したこともあり趣味のゴルフがしばらくできていない。これまで健康診断や人間ドックで異常を指摘されたことはない。妻に漢方治療を勧められて受診した。現症身長174cm、体重64kg(BMI 22kg/m2)。体温36.2℃、血圧120/56mmHg、脈拍56回/分 整、呼吸数16回/分。身体所見に特記すべき異常はない。経過初診時「???」3包 分3を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)1ヵ月後調子は変わらない。2ヵ月後なんとなく調子がよい。夜間尿の回数が減った。3ヵ月後久しぶりにゴルフができた。6ヵ月後腰痛が軽減している。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?最近、寒がりになりました。下肢が冷えます。下肢はどこが冷えますか?とくに膝から下が冷えます。入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は好きですか?入浴時間は長いです。冷房は好きです。飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか?のどは渇きませんか?1日どれくらい飲み物を摂っていますか?よくのどは渇きます。冷たい物をよく飲みます。1日およそ1.0L程度です。<ほかの随伴症状を確認>食欲はありますか?胃は弱くないですか?食欲はあります。胃は丈夫です。倦怠感はありますか?昼食後に眠くなりませんか?横になりたいほどきついですか?朝は調子が悪いですか?疲れやすいですが、いつも横になりたいほどではありません。昼食後に眠くなることはありません。朝は比較的調子がよいです。尿は1日に何回出ますか?夜間尿はありますか?便秘・下痢はありませんか?汗はよくかきますか?尿は1日7~8回で、夜間尿2~3回です。便秘・下痢はありません。汗はよくかきます。よく眠れますか?よく眠れますが、尿のために起きることが最近増えました。腰痛について教えてください。夜間安静時に痛みはありますか?入浴で温まると楽になりますか?動かすとベルトのあたりが痛みます。夜間に痛むことはありません。温まると痛みは軽減します。下肢はむくみますか?靴下の痕はつきませんか?はっきりむくむことはありませんが、夕方には靴下の痕がついています。ほかに気になるところはありませんか?最近、老眼が進んだ気がします。【診察】顔色は普通。脈診ではやや沈、強弱中間脈。また、舌は暗赤色、乾燥した白苔が中等量、舌下静脈の怒張あり、腹診では腹力は中等度、心窩部に抵抗あり。下腹部の腹力の低下あり。四肢末端に明らかな冷えはない。カンファレンス今回は50代前半男性の易疲労感、腰痛が主訴の症例ですね。寒がりになった、下肢、とくに膝下が冷える、入浴時間は長い、などから陰証が示唆されます。しかし触診では冷えを認めない、冷房が好き、横になりたいほどの倦怠感はないということからと強い冷えはないようです。そうだね。少なくとも少陰病でみられるような全身の冷え、倦怠感はないね。ただし、寒がりや下肢の冷えのほか、腰痛が入浴で温まると改善するということは、冷えの関与が考えられるね。入浴で痛みが軽減するかどうかも有用な情報になるのですね。少陰病ほど強い冷えはないとすると太陰病ですね。冷えの程度が軽いことから太陰病が考えやすいですね。虚実はどうでしょう?脈は強弱中間、腹力は中等度であることから虚実間と考えられます。そうですね。では漢方診療のポイント(3)の気血水の異常を考えましょう。疲れやすいというものの、食欲があって、昼食後の眠気はないということで気虚ということではなさそうです。朝調子が悪いという気欝の特徴もありません。血の異常(瘀血)では、舌暗赤色、舌下静脈の怒張でしょうか。倦怠感の漢方医学的鑑別が上手になりましたね。あとは、浮腫はないけれども下肢に靴下の痕がつくということを軽度の水毒(第9回「今回のポイント」の項参照)と考えてもよいでしょう。排尿異常も水毒とみなしますので、夜間頻尿も水毒と考えます。本症例では、易疲労感に加えて、瘀血や水毒の異常があるということですね。そのほかには、夜間頻尿、腰痛、老眼と現代医学的には複数の科に渡る症状が並んでいます。これらはすべて加齢に伴ってよく出現するものだと思うのですが…。漢方では加齢に伴って出現する症状をまとめて、加齢とともに腎の機能が衰えてくる「腎虚」(本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)と考えて治療をするよ。そうすると本症例の夜間頻尿、下肢の冷え、腰痛、老眼などが一連の症状として考えることができますね。また、本症例の腹部の診察で、上腹部と比べて、下腹部の抵抗が弱いことを小腹不仁(しょうふくふじん)とよびます(写真)。これは腎虚を示唆する腹部の所見です。それでは本症例をまとめましょう。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、下肢(とくに膝下)が冷える、長湯できる、冷房が好き、冷水を好む、横になりたいほどの倦怠感はない脈:やや沈→陰証(太陰病)(2)虚実はどうか脈:強弱中間、腹力:中等度→虚実間(3)気血水の異常を考える疲れやすい→気虚?舌暗赤色、舌下静脈の怒張→瘀血下肢浮腫、夜間頻尿→水毒浮腫、夜間頻尿、腰痛、老眼→腎虚(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む下肢の冷え、小腹不仁解答・解説【解答】以上から本症例は、腎虚に対して用いる八味地黄丸(はちみじおうがん)を用いて治療しました。【解説】腎虚に対する治療薬が八味地黄丸です。もとの古典を参考に八味丸という名前で丸剤として製造するメーカーもあります。主に下半身の症状が多く、冷えはとくに膝下が冷えることが特徴です。腰痛、下肢痛、下肢のしびれなどのほか、排尿異常(とくに夜間頻尿)、下肢浮腫などが代表的な症状で、視力障害、聴力障害、精力減退なども含まれます。もちろん加齢に伴う症状ですから内服によりすべての症状が改善するとはいえませんが、じっくりと内服することで症状が軽減していくことはよく経験します。構成生薬では、地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)が体を栄養・滋潤する作用があるとされ、そのほか利水作用のある沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、駆瘀血作用のある牡丹皮(ぼたんぴ)に加え、体を温める附子(ぶし)などが含まれます。八味地黄丸は太陰病の虚証に適応となる漢方薬ですが、虚証の程度は軽く、虚実間からやや実証まで、幅広く適応になります。そのためひどく虚弱で胃が弱い人ではしばしば胃もたれすることがあるので注意が必要です。そのため食前ではなくあえて食後に内服する、あるいは減量して用いる場合もあります。八味地黄丸に牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)が加わったものが牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)で浮腫が強い、しびれが強いなどの場合に用います。また、腎虚はあるものの冷えが目立たない症例では桂皮(けいひ)と附子を除いた六味丸(ろくみがん)という漢方薬もあります。八味地黄丸が適応となるのは、高齢者でも倦怠感や腰痛などのひどい症状があって困っている状態や施設で寝たきりの高齢者よりも、元気に外来通院してくる人というイメージです。また、内服して短期間に効果を実感できることは少なく、数ヵ月間じっくりと内服して、少しずつ症状が改善していくことが多いため、注意深く効果判定する必要があります。そのため効果判定として、夜間尿は回数として客観的に評価できるのでお勧めです。今回のポイント「腎虚」の解説生命活動を営む根源的エネルギーである気は「先天の気」と「後天の気」に分けられます。生まれた後は、呼吸や消化によって後天の気を取り入れることができます。一方、先天の気は、生まれながらの生命力というべきもので、「腎は先天の気を主(つかさど)る」といわれ、漢方医学的な腎に宿ります。腎は成長、発育、生殖能などと関連し、腎の働きは年齢とともに弱くなります。腎の機能が衰えてくることを腎虚といい、加齢に伴って出現する排尿異常、下半身の冷えや痛み、聴力障害、視覚障害、精力減退などをまとめて腎虚による症状と考えることができます。

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喘息・COPD好酸球性増悪へのベンラリズマブ、症状・治療失敗率を改善/ERS2024

 好酸球性増悪は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪の30%、喘息増悪の50%を占めるとされている。治療には経口ステロイド薬(OCS)が用いられることがあるが、治療効果は短く、治療失敗率も高いという課題が存在する。そこで、好酸球を速やかに除去する作用を有するベンラリズマブの好酸球性増悪に対する効果を検討することを目的として、海外第II相無作為化比較試験「ABRA試験」が実施された。その結果、ベンラリズマブはOCSのプレドニゾロンと比較して、28日後における症状と90日後における治療失敗率を改善することが示された。2024年9月7~11日にオーストリア・ウィーンで開催された欧州呼吸器学会(ERS International Congress 2024)において、英国・オックスフォード大学のMona Bafadhel氏が報告した。・試験デザイン:海外第II相無作為化比較試験・対象:過去12ヵ月間に1回以上の増悪があり、好酸球性増悪(増悪時の好酸球数が300cells/μL以上)の認められる喘息またはCOPD患者・試験群1(ベンラリズマブ+プレドニゾロン群):ベンラリズマブ(100mg単回、皮下投与)+プレドニゾロン(30mg×5日、経口投与) 52例・試験群2(ベンラリズマブ群):ベンラリズマブ(同上) 53例・対照群(プレドニゾロン群):プレドニゾロン(同上) 53例・評価項目:[主要評価項目]28日後におけるVASで評価した症状、90日後における治療失敗率(死亡、入院、再治療)[副次評価項目]治療失敗までの期間、MRC息切れスケールで評価した息切れ、呼吸機能など なお、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群とベンラリズマブ群を統合し(ベンラリズマブ統合群)、プレドニゾロン群との比較により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の内訳は、喘息が55.7%(88例)、COPDが32.2%(51例)、喘息とCOPDのオーバーラップが12.0%(19例)であった。・主要評価項目の28日後におけるVASで評価した症状のベースラインからの変化量(平均値)は、プレドニゾロン群が103であったのに対し、ベンラリズマブ統合群は152であり、ベンラリズマブ統合群が有意に改善した(p=0.006)。・28日後におけるVASで評価した症状のベースラインからの変化量のサブグループ解析において、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、ベンラリズマブ群はいずれもプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(それぞれp=0.013、p=0.027)。・主要評価項目の90日後における治療失敗率は、プレドニゾロン群が73.6%(39例)であったのに対しベンラリズマブ統合群は45.2%(47例)であり、ベンラリズマブ統合群が有意に治療失敗率を改善した(オッズ比:0.264、95%信頼区間[CI]:0.125~0.556、p<0.001)。・90日後における治療失敗率のサブグループ解析において、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、ベンラリズマブ群はいずれもプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(それぞれp<0.001、p=0.005)。・治療失敗までの期間は、ベンラリズマブ統合群がプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(ハザード比:0.393、95%CI:0.252~0.612、p<0.001)。・28日後におけるMRCスケールの群間差は0.39(95%CI:0.08~0.69、p=0.013)であり、ベンラリズマブ統合群が有意に改善した。 本研究結果について、Bafadhel氏は「ベンラリズマブ単回投与は、好酸球性増悪に対する標準治療のプレドニゾロンに対し、優越性を示した」とまとめた。

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漫然使用のツロブテロールテープの処方意図を探って中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第61回

 今回は、長期使用されていたLABA貼付薬について疑問を抱き、スタッフ間の情報共有および医療連携を通じて中止を提案した事例を紹介します。患者さんが使用している薬剤の服用理由や開始の経緯が不明瞭な場合、改めて確認することが重要です。そうすることで、思わぬ漫然使用が明らかになることがあります。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、高血圧、前立腺肥大症、糖尿病介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.アムロジピン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.ジスチグミン錠0.5mg 1錠 分1 朝食後3.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後4.ダパグリフロジン錠10mg 1錠 分1 朝食後5.テネリグリプチン錠20mg 1錠 分1 朝食後6.メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後7.レンボレキサント錠5mg 1錠 分1 就寝前8.ツロブテロールテープ2mg 1枚 14時貼付本症例のポイントこの患者さんは、約3ヵ月前に施設に入居しました。薬剤の自己管理能力が乏しく、投薬や管理は施設職員が行っていました。嚥下機能に問題はなく、食事量もムラがなかったため、経口血糖降下薬のシックデイに関する懸念もない状況でした。2週間に1回の施設訪問の際に服用状況のモニタリングを実施したところ、ツロブテロールテープの使用に疑問を感じました。ツロブテロールテープは、気管支喘息や急性・慢性気管支炎、肺気腫を適応疾患1)としていますが、この患者さんにはこれらの既往がなく、夜間の咳や呼吸困難感などの症状も認められませんでした。そこで、初回介入した担当薬剤師の記録を確認したところ、施設入居前にCOVID-19関連肺炎で入院していたことが判明しました。COVID-19関連肺炎の急性期症状緩和のために処方されたツロブテロールテープが、退院後も漫然と継続されていた可能性があります。現状の呼吸機能や自覚症状から治療負担を検討し、テープの中止を提案することにしました。医師への相談と経過医師の訪問診療に同席し、ツロブテロールテープが3ヵ月間使用されていることを伝え、気管支疾患の既往や症状緩和の目的があるかどうかを確認しました。医師からも該当疾患がないことを聴取し、やはりCOVID-19関連肺炎の急性期治療の一環として使用されていたと推察されました。長期的なLABA貼付薬の使用は適切ではないという医師の判断により、当日の昼からテープが中止となりました。介護士には意図を説明するとともに、念のため昼夜の症状モニタリングを依頼しました。その後、夜間の呼吸困難感や咳症状は現れずに1週間が経過しました。長期的な観察でも気道症状の変化はなく、ツロブテロールテープの完全中止に成功しました。1)ホクナリンテープ添付文書

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最近増加している好酸球性食道炎に生物学的製剤は有効か?(解説:上村直実氏)

 好酸球性消化管疾患は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の消化管のいずれかに好酸球が浸潤して炎症を引き起こすアレルギー性疾患の総称であるが、確定診断が難しいことから比較的まれな疾患で厚生労働省の指定難病として告示されている。胸焼け、腹痛、下痢といったさまざまな消化器症状を引き起こすが、一般的には好酸球性食道炎と胃から大腸までのいずれかもしくは複数の部位に炎症の主座を有する好酸球性胃腸炎に大別されているが、最近の診療現場では好酸球性食道炎が増加している。つかえ感や胸焼けを慢性的に自覚する患者に対して行われる上部消化管内視鏡検査で、本疾患に特徴的な内視鏡所見である縦走溝や輪状溝および白苔を認めた際に行う生検組織を用いた組織学的検査により確定診断されるケースが多いが、健康診断や人間ドックなどで受けた内視鏡検査の際に偶然発見される無症状の症例も増加している。本疾患が気管支喘息などのアレルギー性疾患の合併率が高いことも、留意しておくべきである。 わが国における好酸球性食道炎に対する治療は、保険適用になっていないプロトンポンプ阻害薬やステロイド吸入薬の内服が使用される場合が多いが、それでも症状が改善しない場合は、全身性ステロイドの内服や原因として疑われる食材を除去する食事療法が行われている。以上の一般的治療でも症状が難治性の場合、海外では生物学的製剤の開発が進みつつある。難治性のアトピー性皮膚炎や気管支喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療薬であるインターロイキンIL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデュピルマブが、好酸球性食道炎に対しても承認されている。すなわち、2022年12月22日号のNEJM誌に掲載された国際共同試験の結果において、12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象としたデュピルマブ週1回皮下投与は、組織学的寛解率を改善すると共に嚥下障害症状を軽減することが明らかとなり、さらに11歳以下の小児を対象とした第III相無作為化試験において組織学的所見の改善を認めた結果が、2024年6月27日号のNEJM誌に掲載されると同時に米国などで承認されている。 今回、好酸球を減少させる抗IL-5受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブの有用性と安全性を検証した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果も、2024年6月27日号のNEJM誌で報告された。試験の結果、好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。以前の報告から、ベンラリズマブは血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少をもたらす薬剤であり、好酸球性食道炎の治療薬としても期待されたが、浸潤好酸球の減少が症状の改善につながらなかった結果から、今後、好酸球浸潤と症状発現の機序が残された課題と思われる。 現在、国内においてPPIや生物学的製剤も含めて好酸球性食道炎に対して保険適用となっている薬剤は皆無であるが、今後、増加傾向のあるアレルギー疾患である好酸球性食道炎の新たな知見に注目しておく必要があると思われた。

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