14.
<先週の動き> 1.国内医師数34.8万人で過去最多、診療所シフトと深刻な地域格差が鮮明に/厚労省 2.本体3.09%増で決着、賃上げ・物価高に「段階的」対応へ/政府 3.高額医療費の上限引き上げ決定、長期療養に配慮し「年間上限」を新設/政府 4.ロキソニン、ヒルドイドも対象、OTC類似薬「25%追加負担」の詳細判明/厚労省 5.周産期医療の再編加速、NICU利用率低下で「地域センター」の集約化が焦点に/厚労省 6.介護職員の賃上げ月最大1.9万円、介護報酬2.03%の臨時プラス改定が決定/政府 1.国内医師数34.8万人で過去最多、診療所シフトと深刻な地域格差が鮮明に/厚労省厚生労働省が発表した2024年末時点の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、国内の医師数は前回調査から1.3%増加し、34万7,772人と過去最多を更新した。人口10万人当たりの医師数も全国平均で267.4人と、前回から5.3人増加していた。施設別では、診療所に勤務する医師が4.1%増の11万1,699人と大きく伸びた一方、病院勤務者は0.3%減の21万9,393人となった。また、大学病院などの教育・研究機関に所属する医師数も減少傾向にあり、専門医志向の高まりを背景とした大学院進学者の減少が浮き彫りとなっている。診療科別では、内科が全体の約19%を占めて最多だが、注目すべきは明暗が分かれた特定診療科の動向。近年、自由診療の拡大を背景に美容外科医が急増しており、前回から4割近い増加をみせた。対照的に、外科医はピーク時から約4%減少していた。過酷な労働環境や訴訟リスクが敬遠される要因とみられるが、2026年度からの専門研修登録状況では、外科を志望する医師が前年比で16.9%増と大幅な回復の兆しをみせている。これは一部の病院による給与引き上げや学会の魅力発信が功を奏した形である。地域格差も依然として深刻であり、人口10万人当たりの医師数が最も多い徳島県の345.4人に対し、最少の埼玉県は189.1人と、1.8倍以上の開きがある。また、産婦人科・産科医が全体として1.2%減少する中、福井県と埼玉県の格差も顕著となっている。総数が増加する一方で、医師の働き方改革や専門科の偏在、地域間格差といった課題は山積している。日本専門医機構は今後、若手医師の意識調査や、自己研鑽と労働の切り分けに関する標準時間の策定を進め、持続可能な医療体制の構築を急ぐ方針。 参考 1) 令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(厚労省) 2) 医師、約35万7,000人=過去最多を更新、24年末-厚労省(時事通信) 3) 国内医師数34.8万人、24年は過去最多 診療所勤務が増加(日経新聞) 4) 2026年度からの専門医資格取得を目指す研修、「外科医を目指す医師」が大幅増の可能性大-日本専門医機構・渡辺理事長(Gem Med) 2.本体3.09%増で決着、賃上げ・物価高に「段階的」対応へ/政府政府は12月24日、2026年度当初予算案の一般会計総額を、過去最大の122兆3,000億円程度とする方向で最終調整に入った。高齢化に伴う社会保障関係費の増大に加え、物価高や賃上げへの対応により、歳出は2年連続で過去最大を更新する。税収も過去最高を見込むものの、足りない分は29兆6,000億円に及ぶ新規国債の発行で賄う、厳しい財政運営となった。今回の予算編成の大きな焦点とされた2026年度診療報酬改定については、医療従事者の人件費にあたる「本体」部分を2年度平均でプラス3.09%引き上げることで合意した。本体の3%を超える引き上げは1996年度以来、実に30年ぶりの高水準。上野 賢一郎厚生労働大臣と片山 さつき財務大臣の折衝を経て、物価高騰に直面する病院経営の安定と、全職種にわたる確実な賃上げを実現するための財源確保が決着した。異例の措置として、改定率は2026年度にプラス2.41%、2027年度にプラス3.77%と段階的に引き上げる手法が初めて導入される。これにより、各年度で3.2%のベースアップを目指すとともに、他産業との人材獲得競争が激しい看護補助者や事務職員には5.7%の上乗せ措置が講じられる。その一方で、医薬品の公定価格である薬価は市場実勢価格を踏まえ0.87%引き下げられ、薬価引き下げを含めたネットでは2.22%のプラス改定となり、12年ぶりの全体プラスとなる。しかし、現役世代の保険料負担を抑えるため、患者には新たな負担も求められる。市販薬と成分が重なる「OTC類似薬」については、薬剤費の4分の1を患者が特別料金として上乗せ負担する仕組みが2027年3月から開始される。また、後発薬がある先発品を希望する際の追加負担も現行の4分の1から2分の1へと引き上げられ、高額療養費制度の上限額も所得に応じて段階的に引き上げられる。今回の改定は、30年ぶりの大幅なプラス改定で医療現場の窮状を救う一方、薬剤費や一部の自己負担を「聖域」とせずメスを入れる、全世代型社会保障への大きな転換点と位置付けられる。今後、医師にはリフィル処方の推進やエビデンスに基づく薬剤選択が求められるようになり、医療機関の経営と診療の質、そして患者負担のバランスをどう取るかが、現場の新たな課題となる。予算案は12月26日に閣議決定が行われた。また、同日、診療報酬改定について中央社会保険医療協議会(中医協)総会で了承され、中医協総会は公聴会を1月23日に開催することで決定した。なお、政府は2026年1月23日に召集される通常国会で予算案について審議し、3月末までに成立を目指している。 参考 1) 診療報酬改定について(厚労省) 2) 来年度予算案、122.3兆円程度 国債前年度上回る29.6兆円-26日閣議決定(時事通信) 3) 診療報酬2.22%引き上げ、薬価0.87%引き下げも全体で12年ぶりプラス改定…閣僚折衝で合意(読売新聞) 4) 「2026→27年度」と物価・人件費が高騰する点踏まえ2026年度2.41%、27年度3.77%の診療報酬本体引き上げ-上野厚労相(Gem Med) 5) 診療報酬本体はプラス3.09%、医科の実質的な増加分は0.23%(日経メディカル) 6) 122兆円の来年度予算案が閣議決定…過去最大の社会保障関係費・防衛費、「責任ある積極財政」路線鮮明に(読売新聞) 7) 第639回総会資料(厚労省) 3.高額医療費の上限引き上げ決定、長期療養に配慮し「年間上限」を新設/政府政府は12月24日、医療費の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」の見直し案を正式に決定した。今回の改正では、現役世代の保険料上昇を抑制する狙いから、1ヵ月当たりの負担上限額を2027年8月までに段階的に引き上げる一方、長期治療が必要な患者の生活を守るための新たなセーフティーネットが導入される。具体的な引き上げ幅について、来年8月に現行の所得区分に応じ4~7%引き上げられ、さらに2027年8月には所得区分を現在の5~13段階へと細分化した上で、最大38%程度の引き上げを実施する。政府の試算によると、年収約650~770万円の層では、月額上限が現在の約8万円から約11万円へと上昇する。これは昨年末に検討されていた「最大70%超」という大幅な引き上げ案が患者団体の強い反発で凍結されたことを受け、上げ幅を約半分に抑制した形。特筆すべきは、がんや難病などで長期にわたり高額な治療を続ける患者への配慮である。過去12ヵ月で3回上限に達した場合、4回目から負担が下がる「多数回該当」の金額は原則として据え置かれた。さらに、月ごとの支払額の変動による家計の破綻を防ぐため、所得に応じて年間の支払い総額に上限を設ける「年間上限額」が新設される。平均的な年収世帯の場合、年間上限は53万円に設定される。その一方で、70歳以上の外来受診費を軽減する「外来特例」についても、負担上限額が段階的に引き上げられる。年収約200~370万円の層では、現在の月額1万8,000円から2年後には2万8,000円となる。政府は今回の見直しにより、累計1,600億円規模の保険料負担の圧縮を見込んでいる。上野厚労大臣は「長期療養者の経済的負担に配慮した内容であり、丁寧に説明して理解を得たい」と述べているが、患者団体からは依然として、現役世代の負担増が治療の断念につながりかねないとして、さらなる抑制を求める声も上がっている。 参考 1) 高額療養費の自己負担上限、年収に応じ最大38%引き上げ…石破内閣時の70%超案から抑制(読売新聞) 2) 高額療養費、月の上限4~38%上げ 27年8月、患者配慮で改革縮む(日経新聞) 3) 高額療養費制度 月当たり負担上限額 所得に応じ引き上げへ(NHK) 4) 高額療養費の見直し、背景に少子化財源も 患者は「更なる抑制を」(朝日新聞) 4.ロキソニン、ヒルドイドも対象、OTC類似薬「25%追加負担」の詳細判明/厚労省厚生労働省は、2026(令和8)年度の診療報酬改定および医療保険制度改革において、市販薬(OTC医薬品)と成分・効能が類似する医療用医薬品、いわゆる「OTC類似薬」の自己負担の在り方を見直す方針を固めた。現役世代の負担抑制と医療保険制度の持続可能性を高める不断の取組の一環として、保険適用は維持しつつも、対象薬剤に対して「特別の料金」を求める新たな仕組みを創設する。新しい制度の最大の柱は、薬剤費の4分の1(25%)を保険外の特別負担とし、残る4分の3(75%)を従来の保険給付対象とする点。具体的な対象として、ロキソニンやアレグラ、ヒルドイドなど、日常診療で頻用される77成分、約1,100品目が検討されている。実施時期は2027年3月を目指しており、これによる医療費削減効果は約900億円と試算されている。ただし、受診行動や重症化への影響を考慮し、配慮が必要な層については追加負担を求めない方針である。具体的には、子供、がん患者、難病患者、低所得者、入院患者のほか、医師が医療上長期間の使用が不可欠と判断した慢性疾患患者などが除外対象として検討されている。また、今回の改革ではOTC類似薬以外にも薬剤給付の適正化が並行して進められる。後発医薬品の使用促進を目的とし、先発品(長期収載品)を希望した場合の特別料金を、現在の薬価差の4分の1から「2分の1」へ引き上げることが決定した。加えて、症状が安定した患者へのリフィル処方せんや長期処方の原則化を視野に入れ、院内掲示の必須化など普及に向けた環境整備を加速させる。厚労省は、この新たな負担増について国民の理解を得るため、セルフメディケーションの推進やスイッチOTC化の目標達成に向けた取り組みを強化し、2027年度以降はさらなる対象範囲の拡大や負担割合の引き上げも視野に検討を継続する構えである。医療現場においては、患者への丁寧な説明とともに、医学的妥当性や経済性の視点も踏まえたより効率的な処方の推進が求められる。 参考 1) アレグラ、ロキソニンに追加料金 市販類似薬、負担25%上乗せ(共同通信) 2) ロキソニンやアレグラに上乗せ料金 OTC類似薬、77成分判明(日経新聞) 3) OTC類似薬 特別料金上乗せ対象 まずは77成分 約1,100品目の方針(NHK) 4) 特別料金の対象となる医薬品の成分一覧[案](厚労省) 5.周産期医療の再編加速、NICU利用率低下で「地域センター」の集約化が焦点に/厚労省厚生労働省は、12月22日に「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を開き、急速に進む少子化に対応するため、小児および周産期医療体制の再編に向けた論点を提示した。2030年度から始まる第9次医療計画を念頭に、限られた医療資源の効率的な配置と、質の高い医療の維持が大きな柱となる。現在、周産期医療においては、NICU(新生児特定集中治療室)の整備が目標を大きく上回る一方で、出生数の減少により、とくに「地域周産期母子医療センター」での病床利用率の低下が顕著となっている。一部の施設では利用率が50%を割り込んでおり、専門医の偏在も課題となっている。これに対し、支払側委員からは、利用率の低い施設の再編や、NICUとGCU(新生児回復期治療室)の整備バランスの見直しを求める声が上がっている。一方、小児医療については、単純な施設の集約化に対して慎重な意見が相次いだ。日本小児科学会の滝田 順子会長は、小児医療の広範な専門性を指摘し、安易な集約は地域医療の崩壊を招くと警鐘を鳴らす。まずは、外来を担う「かかりつけ機能」と、入院を担う「拠点機能」の役割分担を地域ごとに明確にすることが優先されるべきとの考えである。また、最重症例への対応については、都道府県をまたいだ広域連携の構築が必要であることも議論された。今後の対策として、2025年度補正予算に計上された「地域連携周産期医療体制モデル事業」を通じ、集約化の先行事例を収集し、全国へ展開する方針である。少子化が想定を上回るペースで進む中、ワーキンググループは今年度内に一定の取りまとめを行い、地域の実情に応じた持続可能な提供体制の構築を急ぐ考え。 参考 1) 第3回小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(厚労省) 2) 周産期医療体制、さらなる集約へ 地域周産期母子センターの再編求める声も 厚労省WG(CB news) 3) 少子化進む中で小児、産科医療機関の「集約化」論議進む、ただし「小児科の単純な集約は危険」との指摘も―小児・周産期WG(Gem Med) 6.介護職員の賃上げ月最大1.9万円、介護報酬2.03%の臨時プラス改定が決定/政府政府は12月24日、介護従事者のさらなる処遇改善を図るため、2026年度に「介護報酬」を全体で2.03%引き上げる臨時改定を行うことを正式に決定した。本来、介護報酬は3年に1度の改定サイクルだが、加速する他産業の賃上げや物価高騰に対応するため、異例の前倒し実施となる。今回の改定の最大の柱は、介護・障害福祉分野で働く職員の給与を、月額最大1万9,000円引き上げる。具体的には、訪問看護やケアマネジャーを含む幅広い介護従事者を対象に、一律で月1万円の賃上げを実施。これに加え、ICT活用によるケアプランデータ連携システムの導入など、生産性向上や協働化に取り組む事業所の職員には、さらに月7,000円が上乗せされる。ここに定期昇給分を加え、最大1万9,000円の増額を実現し、全産業平均との賃金格差の解消を目指す。その一方で、制度の持続可能性を確保するための効率化も進められる。これまで全額保険給付(自己負担なし)であったケアマネジメントについて、一部有料化に踏み切る。「住宅型有料老人ホーム」や、それに準ずる「サービス付き高齢者向け住宅」の入居者を対象に、ケアプラン作成や生活相談を行う業務を新たなサービス区分とし、原則1割の自己負担を求めることとなる。焦点となっていた「利用料2割負担」の対象者拡大については、高齢者の生活実態や医療保険の負担増との兼ね合いを慎重に見極める必要があるとして、年内の決定を見送った。2027年度から始まる第10期介護保険事業計画の開始前までに改めて結論を出す方針。今回の臨時改定は、深刻な人手不足が続く現場にとって大きな支えとなるが、同時に利用者や現役世代への負担転嫁という課題も突きつけている。政府は2026年6月の施行に向け、具体的な算定要件の詳細を詰める方針である。 参考 1) 介護報酬、2.03%増へ 来年度臨時改定で職員賃上げ-政府(時事通信) 2) 介護報酬は2026年度の臨時改定で2.03%引き上げ(日経メディカル) 3) 介護報酬 来年度臨時で2.03%引き上げ “職員給与増やすため”(NHK)