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第312回 臨床研修医9,054人、6都府県以外の採用割合60.6% 2年連続6割超/厚労省

<先週の動き> 1.臨床研修医9,054人、6都府県以外の採用割合60.6% 2年連続6割超/厚労省 2.紹介状・退院サマリも全国共有へ 電子カルテ情報共有サービス、今冬から全国展開/厚労省 3.時間外労働、年1,860時間から960時間へ 医師の時短どう進めるか、慎重論も/厚労省 4.東大など12法人が赤字 附属病院の物価・人件費高騰が重荷/文科省 5.日本人4人がラスカー賞 睡眠研究と血友病治療、新薬開発に貢献/ラスカー財団 6.未婚者の3割超「子供望まず」希望する子供数も過去最少/社人研 1.臨床研修医9,054人、6都府県以外の採用割合60.6% 2年連続6割超/厚労省厚生労働省は、2026年度の臨床研修医の採用実績を公表した。全国1,028ヵ所の臨床研修病院を対象に集計した結果、採用人数は9,054人で、前年度の9,429人から375人減少し、全国の採用人数は2年連続の減少となった。地域別では、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、福岡県の大都市部6都府県を除く41道県の採用割合が60.6%となり、前年度の60.9%から0.3ポイント低下したものの、2年連続で6割を超えた。逆に6都府県の割合は39.4%で、前年の39.1%からわずかに上昇した。厚労省は、臨床研修医が特定地域に集中していたことを背景に、2010年度から都道府県別の募集定員上限を設定するなど、地域偏在是正策を続けている。都道府県別で採用人数の増加率が最も高かったのは福井県で、54人から75人へ38.9%増。次いで山形県が69人から87人へ26.1%増、熊本県が105人から115人へ9.5%増、鳥取県が9.3%増、岩手県が6.9%増となった。その一方で、岐阜県は171人から134人へ21.6%減となり、全国では33都府県で前年度を下回った。愛知県も552人から517人へ35人減少した。地方での採用割合は6割超を維持したものの、大都市部が2年ぶりに微増へ転じるなど、是正のペースは頭打ちになりつつある。また、全国の採用数自体が減少傾向にある中、地域ごとの増減差も目立つ。今後は単純な大都市集中の抑制にとどまらず、各地域が研修先として選ばれる教育環境や指導体制、将来のキャリア形成を含めた魅力作りがより重要となる。 参考 1) 令和8年度の臨床研修医の採用実績を公表します(厚労省) 2) 臨床研修医の採用9,054人、26年度実績 大都市6都府県の割合が2年ぶり上昇(CB news) 3) 26年度の臨床研修医採用9,054人 大都市圏以外が2年連続6割超(MEDIFAX) 2.紹介状・退院サマリも全国共有へ 電子カルテ情報共有サービス、今冬から全国展開/厚労省厚生労働省は、2030年までに電子カルテ普及率を「約100%」とすることを柱とした電子カルテ普及計画をまとめた。電子カルテを単なる院内の診療記録システムではなく、医療機関同士で患者情報を共有する基盤と位置付け、現在主流の自院内にサーバーを設置するオンプレミス型からクラウド環境での運用が基本のクラウドネイティブ型への移行も進める。政府目標では、2028年度までに療養病床中心の施設を除く電子カルテ未導入の200床以上病院で普及率100%、2030年までに全医療機関で約100%を目指す。大きな柱となる「電子カルテ情報共有サービス」は今冬(2026年度冬)の全国展開を予定している。全国10地域でのモデル事業に加え、今秋から冬にかけて再度検証を行い、準備が整った医療機関から順次利用可能となる。共有対象はまず、診療情報提供書、退院時サマリ、健康診断結果報告書の「3文書」と、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査情報、処方情報の「6情報」。他院での検査結果や治療歴を参照できるため、重複検査・重複投薬の回避や救急診療時の迅速な情報把握などが期待される。電子化により、紹介状などの紙・ファックス送付の削減や、文書共有の迅速化・標準化にもつながる。その一方で、電子カルテの普及には病院の規模による差が残っている。オンライン資格確認導入施設を対象とした支払基金の調査では、2026年6月時点の導入率は、400床以上の病院94.4%、200~399床86.0%に対し、20~199床では73.5%、医科診療所では72.6%だった。厚労省は未導入施設へのクラウド型電子カルテ導入、既存システム更新時のクラウドネイティブ型や標準的なパッケージ版への移行を支援する。今後、2027年度には訪問看護指示書・計画書・報告書等へ拡大し、2029年度には歯科情報へ拡大が目標とされているが、全国接続が進むほどサイバーセキュリティ対策の重要性も高まる。このため、計画では地域の拠点病院のセキュリティ対策100%を2030年までの目標に掲げた。電子カルテ改革は今後、単なる「紙から電子へ」ではなく、診療情報を全国で安全に共有し、医療の質と業務効率を同時に高める段階へ移ることになる。 参考 1) 電子カルテ普及計画(案)の概要について(厚労省) 2) 電子カルテ普及計画(案)-クラウドネイティブ型電子カルテの普及/全国的な医療情報の連携/サイバーセキュリティ対策の強化 ー(同) 3) 第35回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ資料(同) 4) 電子カルテ、今冬にも病院間共有 厚労省、診療の質高める(日経新聞) 5) 2030年度の電子カルテ導入率100%達成に向け、クラウドネイティブ型電子カルテ普及を強力推進-医療等情報利活用ワーキング(Gem Med) 6) 電子カルテの普及計画決定 厚労省、2030年までに「約100%」(朝日新聞) 7) サイバー対策促進、地域の拠点病院に重点「医療情報化推進方針」の厚労省案(CB news) 8) 全国に電子カルテ情報共有網 令和12年度にも基盤構築 普及へ費用軽減がカギ(産経新聞) 3.時間外労働、年1,860時間から960時間へ 医師の時短どう進めるか、慎重論も/厚労省厚生労働省は9月10日、「医師の働き方改革の推進等に関する検討会」の第2回会合を開き、地域医療確保暫定特例水準(B・連携B水準)の時間外労働の短縮目標や、医療勤務環境改善支援センター(勤改センター)、臨床研修・C水準の運用などを議論した。医師の時間外労働上限規制は2024年4月より開始され、B・連携B水準は現在、年1,860時間が上限。2035年度末までに年960時間へ縮減し、暫定特例水準を解消する方針で、短縮目標ラインは3年ごとに見直すことになっている。厚労省の調査では、B・連携B水準の医師で年960時間を超えて働いた割合は2024年度から25年度に1.3ポイント低下し、全体として時短は進んだ。その一方で、医療機関ごとにみると、所属医師の最大時間外労働が年960時間を超える施設はなお約8割ある。960時間超の医師は循環器内科、外科・消化器外科、心臓血管外科、救急科で多く、診療科による偏りも鮮明となっている。検討会では、2035年度の年960時間という方向性を維持しつつ、地域医療への影響を考慮して段階的に縮減すべきとの意見が相次いだ。2026年度診療報酬改定の地域医療体制確保加算では、対象医師について2026(令和8)年度1,635時間以下、2027(令和9)年度1,560時間以下との基準が設けられており、これを1つの目安とする意見も出た。とくに大学病院から地域への医師派遣に関わる連携B水準については、B水準と一括せず、地域医療への影響を踏まえて慎重に検討すべきとの指摘があった。勤改センターについても、認知度不足や医療機関側の改革への熱意低下、ICT・AIに詳しい人材不足などが課題となった。長時間労働の医師が残る施設を選定し、相談を待つだけでなく伴走型で支援する方向性が示されている。厚労省も、重点施設の選定や継続的な状況把握、課題分析、フォローアップを勤改センターの役割として強化する案を示した。また、C水準では、若手医師の修練機会を確保しつつ健康を守ることが課題となった。厚労省は、修練時間を確保する必要がある場合、就業終了後の院内滞在を一律に禁止するような過剰な制限までは求めていないことを周知する方向を示している。医師の働き方改革は「上限規制を守る」段階から、地域医療や医師養成を維持しながら実効的に労働時間を減らす次の段階に入りつつある。 参考 1) 第2回令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会(厚労省) 2) 残業年960時間超1.3ポイント減、特例水準の医師 厚労省「全体として縮減傾向」(CB news) 4.東大など12法人が赤字 附属病院の物価・人件費高騰が重荷/文科省文部科学省は9月11日、国立大学85法人の2025年度決算を公表した。全体では354億円の当期総利益を確保したものの、前年度比22%減となり、東京大学や東京科学大学など12法人が赤字となった。赤字法人は前年度の16法人から減少したが、大学病院の経営悪化が引き続き大きな重荷となっている。文科省資料によると、国立大学附属病院全体の2025年度の経常損益は244億円の赤字。附属病院収益は増加した一方で、物価高や人件費上昇、高額な医薬品・医療材料、医療安全体制の整備などで診療経費と人件費がさらに膨らみ、「増収減益」となった。附属病院は全国立大学法人の業務活動の約44%、附属病院を持つ41法人では約51%を占める重要な事業部門で、その収支悪化は大学経営全体を直撃している。法人全体の人件費が前年度比約551億円増加する中、附属病院部門でも人件費が約259億円、診療経費が629億円増加した。両者の増加額だけで計888億円となり、附属病院収益の増加額859億円を上回った。政府は2025年度補正予算で物価・人件費高騰への対応として運営費交付金421億円を措置したほか、大学病院機能強化推進事業として国立大学病院分196億円を計上。2026年度の診療報酬改定では約400億円の改善効果を見込む。その一方で、東大は附属病院以外の部門も赤字で、文科省は固定資産除却による一過性の要因はあるものの「なお経営努力が必要」と指摘され、また、東科大では国際卓越研究大学の認定に向けた先行投資が膨らんだ。大学病院は高度医療、研究、医療人材育成を担う一方で、物価や人件費上昇の影響を強く受ける形となった。今回の決算では、診療報酬だけでなく、教育・研究・医療を一体として支える財政基盤の確保が課題となっていることを改めて示した。 参考 1) 2025年度における国立大学法人等の決算について(文科省) 2) 国立大学法人等の決算について(同) 3) 東大など12大学赤字、国立大学85法人の25年度決算 病院経費が重荷(日経新聞) 5.日本人4人がラスカー賞 睡眠研究と血友病治療、新薬開発に貢献/ラスカー財団米国・ラスカー財団は9月9日、2026年のラスカー賞を発表し、日本人4人が基礎医学、臨床医学の両部門で受賞した。基礎医学部門では、筑波大学教授の柳沢 正史氏と米国・スタンフォード大学教授のエマニュエル・ミニョー氏が、覚醒維持に重要な神経ペプチド「オレキシン」の発見と、オレキシン欠乏がナルコレプシーを引き起こすことを解明した功績で選ばれた。柳沢氏は1998年にオレキシンを発見し、その欠損マウスがナルコレプシー様症状を示すことから、睡眠・覚醒制御における中核的役割を明らかにした。この知見は創薬にも直結し、オレキシン受容体を遮断して睡眠を促す不眠症治療薬が実用化されたほか、2026年にはナルコレプシー1型に対する世界初の治療薬として、武田薬品が開発したオレキシン2受容体作動薬オベポレクストン(商品名:オーゼイフル)が日本、米国、中国で相次いで承認された。臨床医学部門では、中外製薬の服部 有宏氏、北沢剛久氏、井川 智之氏が血友病A治療薬エミシズマブ(同:ヘムライブラ)の開発で受賞した。血友病Aでは第VIII因子機能が不足するが、エミシズマブは活性化第IX因子と第X因子を結び付け、第VIII因子の機能を代替する二重特異性抗体である。従来の頻回静注から皮下注射へ変更でき、4週に1回の投与も可能となり、インヒビター保有患者にも有効性が期待できるなど、治療負担を大きく軽減した。今回の受賞は、基礎研究から病態解明、標的同定、抗体工学、臨床試験を経て実際の治療薬に至る創薬の流れを象徴する。政府も創薬・先端医療を成長戦略の重点分野に位置付けており、日本発の基礎研究を臨床応用へつなげる研究基盤の重要性が改めて示された。 参考 1) 2026年アルバート・ラスカー基礎医学研究賞国際統合睡眠医科学研究機構 柳沢 正史(筑波大学) 2) 「ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞」 受賞記者会見(中外製薬) 3) 米ラスカー賞に日本の4人 睡眠研究、筑波大教授ら(MEDIFAX) 4) 米ラスカー賞に日本人4人 基礎と臨床でダブル受賞 睡眠研究の筑波大・柳沢氏ら(時事通信) 5) ラスカー賞に睡眠研究の筑波大・柳沢正史教授ら 中外製薬3人も(毎日新聞) 6) 米国ラスカー賞、日本から4人ダブル受賞 睡眠研究の柳沢正史さんら(朝日新聞) 6.未婚者の3割超「子供望まず」希望する子供数も過去最少/社人研国立社会保障・人口問題研究所が9月11日に公表した2025年の出生動向基本調査で、若年層の結婚・出産意欲の低下が一段と鮮明になった。18~34歳の未婚者で「子供を1人も望まない」と答えた割合は男性33.0%、女性32.4%となり、比較可能な2002年以降で初めて3割を超えた。希望する子供の数も男性平均1.30人、女性1.36人と、いずれも過去最少だった。結婚意識も低下している。「一生結婚するつもりはない」とした未婚者は男性24.0%、女性21.5%で初めて男女とも2割を超え、「いずれ結婚するつもり」は男性75.1%、女性77.8%と初の8割割れとなった。結婚に「利点がある」と考える割合も男性56.3%、女性63.4%で過去最低だった。既婚者でも出生希望は縮小している。夫婦が理想とする子供数は前回調査の2.25人から2.18人に低下し、予定子供数は1.95人と初めて2人を下回った。理想の人数を持たない理由では「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が52.9%で最多だったほか、高年齢での出産や育児の心理・肉体的負担も挙げられた。日本経済新聞の試算では、結婚希望者が全員結婚し希望する人数の子供を持てた場合の「希望出生率」も2025年は1.46程度まで低下する見通しという。背景には、収入・貯蓄、住宅費、長時間労働、共働き・育児負担への不安などがある。政府の少子化対策は児童手当や保育など結婚後の支援が中心で、結婚前の所得・雇用・住宅を含む環境整備も今後の課題となる。 参考 1) 第17回出生動向基本調査:結婚と出産に関する全国調査(社人研) 2) 希望出生率1.46へ低下試算、結婚意欲が減退薄い婚姻前支援(日経新聞) 3) 未婚者3割「子ども望まず」希望数平均1.3人で過去最少(共同通信)

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第329回 医師にバトンは渡された、OTC類似薬の保険給付の見直し

INDEX負担の対象となる医療用医薬品「別途の負担を求めない者」と「求めない療養」の範囲医師にも判断が委ねられる負担の対象となる医療用医薬品6月5日に公布された改正健康保険法などにより、これまで懸案だった一部の医療用OTC類似薬の処方に関し、2027年3月より一部保険外療養として別途の負担が求められることが決まっている。新たな制度で対象となるのはOTC医薬品と成分・投与経路が同一で、1日最大用量が同じ医療用医薬品77成分。主な対応症状は、「鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥肌」などとされる。これらを使用する患者は、薬剤費の4分の1を保険外の別途負担として追加で支払うことになる1)。もっともこれを機械的に適用すると、一部の患者に不利益が生じる可能性がある。具体的には、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えているような医学的観点からOTC類似薬の長期使用が必要となる患者である。このため厚生労働省は「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」を設置し、6月から4回にわたって会合を開き、別途の負担を求めない患者や求めない療養の範囲について検討を行い、中間とりまとめを8月に公表した2)。まず前述のOTC類似薬77成分は、多くの場合、各成分とも医療用医薬品としての適応は複数ある。これと1日最大用量が同じ同一成分のOTC医薬品の適応を比較し、原則双方で適応が共通する場合は別途の負担の対象、医療用医薬品のみにある適応を別途の負担の対象外としている。この結果、77成分267適応のうち、184適応が対象、83適応が対象外となった。比較的わかりやすい事例を挙げると、抗アレルギー薬はOTC医薬品では花粉症に伴うアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎の適応で販売されているものが多く、この適応でのOTC類似薬側の処方は別途の負担の対象になるが、OTC医薬品が適応としていない気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などは対象外となっている。また、酸化マグネシウムではOTCの適応である便秘症は支払い対象、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、尿路シュウ酸カルシウム結石の発生予防では対象外である。「別途の負担を求めない者」と「求めない療養」の範囲一方、別途の負担を求めない患者やその療養範囲に関しては、患者分類などに応じて分かれている。まず、がん患者では「がんの治療中に、がんやその治療に関連して生じた状態」に対するOTC類似薬の使用は対象外。がん治療中の定義については「がんおよびその治療に関連して生じた状態に対し、現に治療行為を伴う診療を継続的に受けている場合または治療開始に向けて具体的な治療計画の下で継続的な診療管理を受けている場合」としている。これらの表現はややわかりにくいため、理解を深めるために『がん治療中(別途の負担の対象外)』には該当しない(=別途の負担が課される)事例を列挙する。がんの診断歴はあるものの、現在は再発なく、定期受診のみ継続しているがん術後で定期的な画像検査などによる経過観察を受けているものの、がんに対する薬物療法などの治療行為は終了がんの疑い・再発疑いで精査中前がん病変の状態がんやその治療に関連して生じた症状以外また、指定難病やそれに付随して発生する症状、国の公費負担医療の対象者が対象症状に対して用いる場合、医師の管理下で集中的かつ継続的な治療を受けている入院患者、検査・処置・手術の管理目的での14日以内の処方も、別途の負担の対象外となる。医師にも判断が委ねられる以上は比較的わかりやすいが、かなり判断がグレーになるのが「医師が対象医薬品の長期使用などが医療上必要と考える患者」である。ここでは、症状が季節や環境要因によらず持続し、医師の管理下で継続的な治療が行われている状態を指し、必ずしもその時点までのOTC類似薬の処方期間の長短を問わない。ただし、内服薬に関しては比較的使用期間が把握しやすいことから、年間処方日数がおおむね50週を目安としている。ただし、負担対象を判断する時点で50週の継続処方に該当しなくとも、初診から6ヵ月間にわたり、症状の持続・反復と対象OTC類似薬の継続的・反復的な使用が確認され、通年使用することが医療上必要であると医師が認めている場合は対象外である。さらに長期使用で問題になるのが、内服薬と異なり、使用量や使用頻度に個人差が大きく、処方量のみで長期使用が判断しにくい外用薬である。これについては、以下を踏まえて総合的に判断するとした。明確なようでかなり曖昧である。(1)慢性または反復性の疾患として明確に診断されている(2)該当成分の継続的または反復的な使用が症状緩和にとどまらない有用性・必要性があることが診療ガイドラインなどで示されている(3)継続の必要性が患者の自覚症状や使用感に過度に依存せず客観的に判断できる(4)同一または類似薬効群との均衡やOTC医薬品で対応している患者との公平性を確保できるちなみにこれ以外でも薬の類型による目安も設けられ、抗真菌外用薬、消毒薬、ステロイド外用薬、消炎鎮痛外用薬は、一時的な治療や急性増悪時に用いられることが多いとして、別途の負担の対象とし、皮膚保湿剤・保護剤はアトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質と尿素、通年性アレルギーに対する点眼薬は対象外となった。この内容は8月26日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会でも事務方から報告され、この日の総会の議論の中心となった1)。とくに診療側委員から出た意見の中心は医療機関側の業務負担の増大である。以下は各診療側委員からの主な意見だ。<日本医師会常任理事 江澤 和彦氏>「これらの複雑な仕組みについて医師が患者さんの診察の都度判断し、医療機関として対応しなければならないこととなり、日常診療へ支障をおよぼすことにもなる。一般診療所の45%、一般病院の35%は紙カルテを用いて診療を行っており、この場合はこれらの管理は極めて困難をきたし、日々の診療に多大なる支障をきたすことが想定される」「今後の導入に向け、医師や医療機関の事務負担が最小限となる簡略なチェックリストの活用、あるいは電子カルテ・レセコンのベンダーに対する必要な情報の迅速な提供をお願いしたい」「制度が実施されると、医療機関の窓口で患者さんへの説明業務など混乱が生じることは明白。会計計算の複雑化など事務負担も非常に大きくなる。国が国民に対してこの制度についてわかりやすく説明いただくことが必須」<日本医療法人協会副会長 太田 圭洋氏>「対象薬を処方する際に、効能・効果、がんや難病との関連、長期使用の医学的必要性などを確認して、対象外の場合にはその理由をレセプトに記載するとともに、処方箋にも必要な情報を記載する形。これらを個々の医師が処方の度に確認して判断・入力することになれば、外来診療で相当な負担が生じることは明らか。年齢、公費、対象薬剤、過去の処方歴など機械的に判定できる項目は、可能な限りシステムで自動判定して、医師による入力は医学的判断が必要な最小限の項目に限定することが必要」「今後も当然、スイッチOTC化が進めば新たな成分が対象に加わることが想定される。その都度、医療機関や薬局にシステム改修やマスター更新を求めることになれば、恒常的な負担となる。対象薬の見直しを年1回など一定の時期に集約するとともに、対象薬の決定から実施まで十分な準備期間を設ける必要がある」<日本歯科医師会常務理事 大杉 和司氏>「歯科の特徴は院内処方で対応する小規模な歯科診療所が多いこと。窓口での患者説明や会計事務が新たに発生することが確実」<日本薬剤師会副会長 渡邊 大記氏>「長期収載品の選定療養と違い、対象患者(自身)が選択できない状況で負担が発生する。薬局は説明するというより、納得してもらう必要が生じてくる。その分、大変な業務負担がかかると思っている」<全国自治体病院協議会副会長 小阪 真二氏>「対象外の理由をレセプトに記載し査定があった場合は、最終的に患者自己負担として払うことになる。2~3ヵ月後に査定があったら、患者にもう一回請求するのか? 請求するならば当然事前に伝えねばならない。処方箋を渡す時に査定があったら2~3ヵ月後に再徴収がありますと説明しなければならないのか」中医協の診療側委員の意見は、一般論として「医療機関側の都合ばかり」と厳しい指摘もあるが、今回は「医療機関の混乱」≒「患者の混乱」の部分が多い。正直、私個人もこの制度には個別細部ではかなりモノ申したいことはそれなりにある。そもそもOTC類似薬の保険給付のあり方については、過去から同様の議論が行われながら、医学的・制度的な困難さと当事者からの反発で具体的な進展はなかったものだ。それが今回は政治主導、より踏み込んで言うならば自民党が連立を組む日本維新の会の主張に寄り添う形で性急に決められたものである。いわば結論ありきで帳尻合わせが行われている。少なくとも制度スタートまで半年を切った今、順調にスタートできそうだとはとても思えないのだが…。参考1)厚生労働省:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(令和8年8月26日)2)OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ

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第310回 インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省

<先週の動き> 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市 1.インフル異例の早期流行 新型コロナも増加、同時流行に注意/厚労省厚生労働省は8月28日、インフルエンザが全国的な流行シーズンに入ったと発表した。8月17~23日の第34週に全国約3,000ヵ所の定点医療機関から報告された患者数は4,094人、定点当たり1.11人となり、流行開始の目安である1.00人を上回った。感染症法施行後の1999年以降では、前年から流行が継続していた2023年を除き、2009年に次いで2番目に早い流行入りで、昨年の第39週より5週早い。全国の定点当たり報告数は第30週0.24人、第31週0.37人、第32週0.52人、第33週0.69人、第34週1.11人と、7月下旬以降増加が加速している。都道府県別では沖縄県4.43人が最多で、岩手県2.10人、青森県2.08人、神奈川県1.99人、埼玉県1.83人、千葉県1.80人などで高かった。東京都は1.49人で、患者の5割弱を10歳未満、8割弱を20歳未満が占めており、夏休み明けの学校・家庭内での感染拡大が懸念される。その一方で、愛知県は0.74人と現時点では流行開始目安を下回っている。厚労省の資料によると、第34週には全国約500ヵ所の基幹定点からインフルエンザによる入院患者167人が報告され、うちICU入室9人、人工呼吸器使用5人だった。高齢者や基礎疾患のある人では重症化リスクが高く、医療機関受診時や高齢者施設訪問時などにはマスク着用が推奨される。手洗い、咳エチケットなど基本的感染対策も重要となる。インフルエンザワクチンには発症抑制および重症化予防の効果があり、とくに高齢者や基礎疾患保有者への接種が重要とされる。定期接種の対象は(1)65歳以上の高齢者、(2)60~64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能障害やHIVによる免疫機能障害など(日常生活が極度に制限される障害)を有する者であり、新型コロナワクチンとの同日接種も可能である。 専門家は10月以降の速やかなワクチン接種を推奨している。また、新型コロナも同週に定点当たり1.18人と前週(1.12人)から増加傾向にあり、医療機関においては例年より早いインフルエンザ対応と重複流行への備えが求められる。 参考 1) インフルエンザの発生状況をお知らせいたします(厚労省) 2) インフルエンザ、全国で流行入り 2009年に次ぎ2番目の早さ(産経新聞) 3) インフルエンザが流行入り、1999年以降で2番目に早く・沖縄が最多…専門家「ワクチンを受けにいって」(読売新聞) 4) 昨年より5週早く、インフル流行開始目安到達東京都(CB news) 2.OTC類似薬77成分に25%の特別負担 がん・難病患者への配慮を/患者団体2027年3月から、OTC医薬品と同一成分などの医療用医薬品「OTC類似薬」について、患者に薬剤費の25%を特別料金として求める一部保険外療養制度が始まる。対象は2026年8月時点で77成分1,042品目(解熱鎮痛薬ロキソプロフェン、抗アレルギー薬フェキソフェナジン、保湿剤ヘパリン類似物質など)。残る75%部分には従来通り保険給付と自己負担が適用される。中間とりまとめでは、がん患者、指定難病患者、公費負担医療の対象者、入院患者、一定の長期使用などは条件付きで特別負担の対象外とする方針。ただし、がん治療終了後の短期・中期使用は扱いが曖昧で、患者団体から見直しを求める声が出ている。全国がん患者団体連合会は、乳房切除後疼痛症候群、リンパ浮腫に伴う疼痛、薬物療法後の関節痛や末梢神経障害、皮膚障害など、治療終了後にも鎮痛薬や外用薬、保湿剤などが必要となるケースを提示した。とくに問題となるのが「年間おおむね50週以上」とされる長期使用の判定である。同じ病態でも頓用・間欠投与となる患者では基準を満たさず、追加負担となる可能性がある。また、皮膚科や整形外科、かかりつけ医など、がん診療医以外が処方する場合に「がん治療との関連性」を判断しにくい点も指摘されているほか、処方時点で将来の使用期間を予測することも困難である。小児がん経験者は、治療終了後も内分泌障害や神経障害、心腎機能障害などの晩期合併症を長期間抱え、頓用薬を生涯使用する例もある。患者団体は、50週という期間だけでなく、治療歴、臓器機能、医師管理下での使用、代替可能性などを総合的に判断するよう求めている。厚労省は9月中に対象外となる患者の範囲などを取りまとめる予定。医療現場では、対象判定に加え、患者説明、処方箋・レセプト対応、システム改修も必要となるため、実務上分かりやすい基準作りが求められる。 参考 1) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(厚労省) 2) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ(同) 3) 全国がん患者団体連合会提出資料(同) 4) 対象外の範囲設定で「柔軟運用」求める声 医療保険部会 OTC類似薬の一部保険外療養巡る議論で(CB news) 5) 「OTC類似薬を使用する場合、患者特別負担がいくらになるのか」の具体例提示し、国民の不安を軽減せよ-社保審・医療保険部会(Gem Med) 3.医療費5年連続最高、49.2兆円に 75歳以上が4割、介護費も12兆円に/厚労省厚生労働省は、2025年度の概算医療費(速報値)が前年度比2.6%増の49兆2,000億円となり、5年連続で過去最高を更新したと発表した。受診延べ日数は0.7%減少した一方で、医療技術の高度化や抗がん剤など高額薬剤の使用増加が医療費を押し上げた。増加率2.6%の内訳は、医療技術の高度化など「それ以外の影響」が2.9%増、高齢化の影響が0.6%増、人口増の影響が0.5%減、診療報酬改定などの影響が0.39%減となった。診療種類別では、入院が2.3%増、入院外が1.6%増、歯科が3.5%増、調剤が3.9%増。歯科では貴金属価格上昇(歯科用貴金属医療費が10.1%増)、調剤では腫瘍用薬やホルモン剤などの使用増が影響した。年齢別では、75歳以上の医療費が20兆3,000億円(3.9%増)で全体の41.3%を占め、1人当たり医療費は98万9,000円と、75歳未満(26兆5,000億円、1人当たり26万1,000円)の3.8倍に達した。その一方で、2024年度の介護費は、高額介護サービス費などを含め12兆952億円となり、前年度比3.2%増加した。介護保険制度開始時の2000年度と比べると3.3倍の規模で、要介護・要支援認定者は720万7,000人に達した。介護給付費は居宅サービス3.4%増、地域密着型2.6%増、施設3.6%増となり、施設サービスの伸びも目立った。第1号被保険者の認定率は19.7%で、都道府県別では大阪府24.3%、茨城県16.5%と1.47倍の差がある。1人当たり介護給付費も29万6,300円と3.5%増えた。団塊世代が全員75歳以上となり、今後は85歳以上人口の比率上昇と現役世代の減少が同時に進む。医療・介護の複合ニーズが増す中、サービス確保や人材確保、質の向上に加え、給付の効率化と地域差の検証など、制度の持続可能性をどう確保するかが一段と重要になる。2027年度には介護報酬改定も予定されており、増大する需要と担い手不足をどう両立させるかが焦点となる。 参考 1) 医科医療費(電算処理分)の動向 ~令和7年度版~(厚労省) 2) 医療費総額49.2兆円、5年連続で過去最高を更新…高齢化・医療技術の高度化など要因(読売新聞) 3) 25年度の概算医療費、2.6%増49.2兆円 医療高度化で増加(日経新聞) 4) 2024年度の介護費、高額介護サービス費など含めれば12兆952億円で、前年度から3.2%の増加-介護保険事業状況報告(Gem Med) 4.来年度の概算要求、過去最大36兆5,803億円 医療DXに約930億円/厚労省厚生労働省は2027年度予算の概算要求として、2026年度当初予算比1兆5,370億円増の36兆5,803億円を計上した。要求段階では過去最大で、このうち年金・医療などの社会保障関係費は33兆6,872億円。高齢化などによる自然増として3,397億円を見込む。今回の特徴は、要求上限のない「『強く豊かな日本』投資枠」に1兆337億円を計上した点である。重点分野として、創薬・先端医療分野に約1,969億円(うち創薬スタートアップ支援・人材育成に355億円、治験・臨床試験体制強化に155億円、AI創薬環境整備に541億円)、感染症危機対応医薬品等の確保支援に2,129億円を要求した。医療DXの推進には934億円を要求し、標準仕様準拠の認証電子カルテの普及支援(604億円)やクラウドネイティブ化、全国的なデータ連携基盤整備を進める。さらに医療機関のサイバーセキュリティ対策や、医療・福祉分野におけるAI・ICTを活用した生産性向上・データ共有推進(829億円)などを盛り込んだ。その一方で、医療機関にとって最大の焦点となる物価・人件費高騰への対応は、診療報酬上の加算を含め金額を示さない「事項要求」とされた。2027年度の介護・障害福祉報酬改定も同様で、具体額は年末の予算編成で決まる。前年度の概算要求でも、物価高など重要政策は予算編成過程で検討する仕組みが示されており、病院経営が厳しさを増す中、年末にどこまで実効性ある財政支援が盛り込まれるかが注目される。 参考 1) 厚労省予算要求、最大の36兆円 創薬強化や福祉人材確保(共同通信) 2) 厚生労働省 概算要求で過去最大の36兆5,803億円を計上(NHK) 3) 厚労省概算要求、過去最大の36兆5千億円 投資枠で創薬力強化(朝日新聞) 4) 厚労省の概算要求は過去最大の33兆7,929億円に-『強く豊かな日本』投資枠に1兆337億円(日本医事新報) 5.医療DX工程表を提示 28年度に200床以上病院の電子カルテほぼ100%へ/厚労省厚生労働省は8月27日の社会保障審議会医療部会・医療保険部会を開き、医療DXの今後の工程を示す「医療情報化推進方針(案)」と電子カルテ情報共有サービスの進捗を報告した。第1期の対象期間は2026年10月1日~2030年3月31日までの3年半で、9月末までに厚生労働大臣が官報告示する予定。社会保険診療報酬支払基金は10月1日に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構)」へ改組され、同方針に基づく中期計画を策定する予定。電子カルテ情報共有サービスは現在、全国10地域でモデル事業を実施中で、2026年度冬をめどに全国運用を開始する。共有対象はまず診療情報提供書、退院時サマリ、健診結果報告書の3文書と、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査、処方の6情報。モデル事業では、感染症情報を患者への説明前に共有する場合の扱いや、院内コードと共有用コードの対応などの課題を検証している。運用開始時には、全国721の地域医療支援病院を対象に、電子診療録等情報の提供・利用体制の整備を努力義務とする方針であり、冬までに省令で規定する。運用開始後は普及状況を踏まえて対象を拡大する考えで、医療部会では特定機能病院や災害拠点病院、救急病院などへの拡大を求める意見も出された。厚労省の資料でも、まず地域医療支援病院を指定し、その後、普及計画の効果を見ながら努力義務の対象拡大を検討するとしている。同時に電子カルテ自体の普及も加速する。2027年度から共有サービスなどに対応する「認証クラウドネイティブ型電子カルテ」および「標準型電子カルテ(導入版)」の導入を進め、2028年度までに療養病床等が中心の病院を除く200床以上病院で普及率約100%、2030年末までに全医療機関で普及率約100%を目指す。オンプレミス型からクラウド型への移行により、業務効率化、セキュリティ強化、データの二次利用を含めた共有を推進する。医療・介護情報の連携も段階的に拡大する。2026年度から介護情報基盤を標準化対応済み自治体から順次開始し、2028年度をめどに全自治体へ広げる。あわせて2028年度には医科・DPC向け共通算定モジュールの請求支援機能や労災版モジュールの運用開始、電子カルテ情報を創薬等に二次利用するデータベースの運用開始を目指す。電子カルテ情報共有サービスでは2027年度に訪問看護指示書・計画書・報告書等を共有対象に加え、2029年度には歯科情報にも拡大する予定である。その一方で、医療部会では電子カルテの新規導入・更新費、クラウド利用時の通信費、停電や回線断絶時の事業継続性などへの懸念が相次いだ。厚労省は2027年度予算概算要求で、新規導入だけでなく更新・買い替えも含む支援を盛り込む方針。医療DXは構想段階から全国実装へ移りつつあり、医療機関には今後数年間で、システム更新時期や費用、地域連携、災害・サイバー対策を一体的に見据えた対応が求められる。 参考 1) 医療情報化推進方針案等について(厚労省) 2) 医療DXの進捗状況等について(同) 3) 2028年度までに療養除く200床以上病院で、30年度までに全医療機関で「電子カルテ導入率100%」を目指す-社保審・医療部会等(Gem Med) 4) 電子カルテ情報共有、地域医療支援病院に努力義務運用開始後に対象拡大検討 厚労省方針(CB news) 6.「9月の給与払えない」公立病院の資金繰り危機が表面化/日野市東京都日野市は、市立病院で9月の給与支払いに必要な資金が不足するとして、緊急に1億円を貸し付ける。医師、看護師ら約700人の給与は約2億7,000万円。9月の5連休で給与支給が18日に前倒しされる一方で、診療収入の入金は24日となるため、一時的に資金がショートする見通しとなった。ただし、朝日新聞の報道で原因とされている連休は直接のきっかけにすぎず、背景には長年の経営悪化がある。日野市立病院は300床の地域医療支援病院で、二次救急、周産期、災害・感染症医療などを担う。2023年策定の経営強化プランでは、病床利用率を高めて経常黒字化を目指していた。しかし、2026年5月の経営再建支援報告書によると、コロナ禍では補助金により黒字を維持したものの、補助金終了と人件費増で2023年度の経常利益率はマイナス15.2%、2024年度はマイナス18.6%、約14億円の赤字に悪化した。医業収支の赤字も約17億7,200万円で、同規模病院と比べ下位4分の1を下回る水準だった。収益面では、2024年度の病床稼働率は62.0%、DPC症例の1日単価は5万8,453円。黒字化には、単価を維持したままなら稼働率89.5%、稼働率を維持するなら1日単価8万4,401円が必要と試算され、現状との差は大きい。救急応需率も2024年度55.2%にとどまり、東京消防庁からの搬送要請を約半分断っていた。さらに、2024年度の経常収益約77億円に対し、損益分岐点は約90億円で、黒字化には約13億円の増収が必要とされた。赤字の積み重ねで手元資金が細り、市は昨年度10億円を貸し付け、今年度も別途10億円を支援する方針だった。そこへ入出金の6日間のずれが重なり、追加融資が必要となった。今回の事例は、低い病床稼働率(62.0%)、低水準の救急応需率、診療単価の低迷と高い固定費により、短期の資金ギャップを吸収できない財務体質に陥っていた結果といえる。日野市立病院は2026年4月に地方公営企業法「全部適用」へ移行して経営強化を進めていたが、全国自治体病院協議会の2025年度決算調査でも自治体病院の84%(有効回答494病院中)が経常赤字に陥っている実態が示されており、公立病院の経営難が決算上の赤字にとどまらず、日々の運転資金や給与支払いに直結する危機的局面を迎えていることを示している。 参考 1) 日野市立病院経営強化プラン(日野市立病院) 2) 令和7年度日野市立病院 経営再建支援業務委託報告書(日野市) 3) 日野市立病院「9月の給与払えない」財政難に連休も影響、市が支援へ(朝日新聞)

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高齢者フレイルの漢方治療ガイド

フレイル予防と健康長寿の実現に向け、高齢者一人ひとりの生活機能と人生の質を支える超高齢社会の現在、健康と要介護状態の中間に位置する可逆的な状態であるフレイルが重要性を増している。漢方医学的にはフレイルは気虚であり未病と捉えられ、補剤などの漢方薬により健康を取り戻す効果が期待されている。本書は、老年病学、漢方医学、歯科・嚥下医学、整形外科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、眼科の専門家がフレイルへの漢方治療のノウハウを最新の知見と豊富な臨床経験をもとに解説した実践的なガイドブックある。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する高齢者フレイルの漢方治療ガイド定価4,180円(税込)判型A5(並製)頁数192頁発行2026年7月編集小川純人(東京大学)/加藤士郎(筑波大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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よくかめる小学生ほど体力が高い傾向、男子でより顕著

 子どもの口腔機能は、食べることだけでなく全身の発育や健康との関わりも注目されている。今回、日本の小学生約1,200人を対象とした研究で、よくかめる小学生ほど体力が高い傾向があり、その関連は男子でより顕著であることが明らかになった。研究は大阪大学大学院歯学研究科有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の平松里彩氏、高阪貴之氏らによるもので、詳細は7月6日付で「Journal of Dentistry」に掲載された。 子どもの体力は、現在の健康状態だけでなく将来の健康にも影響するとされ、体力に関わる要因を明らかにすることは公衆衛生上の重要な課題となっている。一方、咀嚼機能は食物をかみ砕いて栄養を摂取する上で重要な役割を果たすだけでなく、成人や高齢者では身体機能やフレイル、生活の質(QOL)との関連も報告されている。しかし、子どもの咀嚼能力と体力との関連については十分な検討が行われておらず、特に総合的な体力との関連や男女差を調べた研究は限られていた。こうした背景から、著者らは日本の小学生を対象に、総合体力スコアを用いて咀嚼能力と体力との関連を検討し、さらに男女差についても解析した。 研究では、大阪MELON研究(Mastication research in Elementary school student teaching applying LONgitudinal Study)の一環として、大阪市内29校の市立小学校に通う小学4年生1,225人(男子608人、女子617人)を対象とした。2023年4月~2024年3月に身体測定や歯科検診を実施し、咀嚼能力と体力との関連を調べた。咀嚼能力は、色が変化するガムを1秒に1回のペースで1分間かんでもらい、60回咀嚼後の色の変化を専用アプリで解析して評価した。体力については、握力、上体起こし、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げの7項目を測定し、これらを基に総合体力スコアを算出した。さらに、身長や体重の影響を考慮した統計解析を行い、咀嚼能力と総合体力スコアとの関連を検討した。 解析の結果、咀嚼能力は、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、ソフトボール投げ、および総合体力スコアと有意に関連していた。男女別では、男子で上体起こし、20mシャトルラン、ソフトボール投げ、総合体力スコアとの関連が認められ、女子では20mシャトルランとの関連が認められた。 さらに、身長や体重などを考慮した解析では、全体および男子で咀嚼能力と総合体力スコアとの有意な関連が認められたが、女子では有意な関連はみられなかった。ただし、性別によって関連の強さが異なることを示す統計的な差は認められなかった。著者らは、女子で明確な原因が認められなかった背景として、発達段階や生活習慣など今回評価していない要因が影響した可能性を挙げている。 著者らは、咀嚼能力は口腔機能の指標にとどまらず、学童期の身体的な発達や機能状態とも関連する可能性があると指摘している。今回の研究は横断研究であるため因果関係は明らかにできないものの、子どもの健全な成長を支える観点から、適切な咀嚼習慣や口腔機能の発達を促すことの重要性が示唆されたとしている。

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第328回 「骨太の方針2026」の注目ポイント(後編) 地域医療構想ガイドライン公表を受け医療提供体制への言及多数、「攻めの予防医療」は総花的で斬新さなし

「注釈」で「有床診療所も含めて医療機関の役割分担の明確化を図ることを含む」と有床診の役割見直しを示唆こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、5月に内側側副靱帯損傷で傷めた左ひざの最終リハビリ目的で、山梨県の茅ヶ岳(「日本百名山」の著者・深田 久弥が登山中に急逝した山)に登ってきました。3ヵ月ぶりの登山でしたが、左足はほぼ完調で、急な上り下りが特徴の山でしたが、ストックを使うこともなく無事山行を終えました。が、下山してみると今度は右足の裏、土踏まずのあたりに痛みが発生し、次第に強くなりました。足底腱膜炎の症状です。登山中、知らず知らずのうちに左足をかばっていたツケと思われます。左足を受傷して3ヵ月、歩行のシンメトリー(対称性)の重要性に改めて気づかされた登山でした。ちなみに、茅ヶ岳の麓にある深田記念公園には、深田直筆の「百の頂に百の喜びあり」の言葉が刻まれた記念碑があります。実に深い言葉です。しかし、今の私には「百の頂に百の苦しみあり」と読めました。さて、今回も前回に引き続き、7月21日にようやく閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026 『責任ある積極財政』元年 ~日本の挑戦を起動する!」(骨太の方針2026)の注目ポイントについて書いてみたいと思います。「骨太の方針2026」では前回書いた社会保障改革関連の記述以外では、新たな地域医療構想のガイドラインが公表されたことを受け、次のように医療提供体制への言及が多くありました。「2040年に向けて、病床数の適正化を着実に実施した上で、2027年度以降の地域医療構想を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を促進するとともに、地域包括ケアシステムの深化を図り、地域の実情に応じた質の高い効率的な医療・介護サービス提供体制を構築する」。なお、本文中の「医療機関の連携・再編・集約化」の文言には、「有床診療所も含めて医療機関の役割分担の明確化を図ることを含む」とする「注釈」が付きました。有床診療所の施設数・病床数は減少傾向にあり、人材不足、経営悪化、後継者不足などによりその存続が危ぶまれています。一方で、2040年に向けて、高齢者救急、在宅医療、看取り、介護施設との連携の需要は高まると考えられ、既存の有床診療所をそうした機能を提供するインフラとしてどう活用していくかが大きな課題となっています。この「注釈」から、有床診療所の役割の明確化と再評価が行われるだろうということが予想できます。救急医療体制の確保、人生の最終段階における医療・ケア、医師偏在対策、医学部定員削減も盛り込むその他の医療提供体制関連では、「妊娠・出産の経済的負担軽減と安心・安全な小児・周産期医療提供体制の両立、救急医療体制の確保、ドクターヘリの安全で持続可能な運航の確保、看取りなど人生の最終段階における患者中心の適切な医療・ケア、精神医療に関する地域医療構想を踏まえた取組、訪問看護の適切な実施、中山間・人口減少地域での柔軟な介護・障害福祉サービスの提供」などが挙げられていました。加えて、「かかりつけ医機能の発揮や医師の地域・診療科偏在の更なる是正策、大学病院等からの医師派遣の推進を含めた総合的な医師偏在対策、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減に取り組む」と、医師偏在対策、医学部定員削減も盛り込まれました。また、「医療分野においては、新たな地域医療構想の下、将来需要を踏まえ、老朽化・災害対策を含む地域に不可欠な施設・設備の計画的な整備への必要な支援の在り方を検討する。介護・福祉分野においても、老朽化・災害対策を含む施設・設備の計画的な整備を支援する」と、地域医療構想を前提としながらも、施設・設備の整備についても記述されました。建設費や設備費の高騰で病院の建て替えや新設が滞っている地域は少なくありませんが、補助金等による国による何らかの対応が行われそうです。薬剤処方の適正化、効率化に関する検討項目が多数列挙医療保険制度関連では、前回詳しく書いた70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合に関する記述のほかは、「長期処方やリフィル処方箋の活用、地域フォーミュラリの全国展開、休薬・減薬などの効果的・効率的な治療の促進等により、給付の効率化や適正化を図りつつ、質の高いサービスを提供する。セルフメディケーション推進の観点からの更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策を検討し、必要な措置を行う」など、薬剤処方の適正化、効率化に関する検討項目が多数列挙されました。一見目新しい「攻めの予防医療と疾病対策」今回の「骨太の方針2026」で一見目新しいのは、高市 早苗首相が過去の記者会見でも強調していた「攻めの予防医療と疾病対策」の項目です。「国民のWell-beingの向上と健康寿命の延伸を図り、誰もが社会の担い手として活躍できる日本を実現する」として、「攻めの予防医療」を推進するとしています。具体的には、「健康増進、肥満症を含む疾病予防、早期発見、早期介入及び行動変容に関係機関が連携して取り組む。栄養・食生活を含む健康リテラシーの向上、地域住民の健康増進に資する薬局機能及び薬剤師の果たす役割の強化、学齢期の健康診断の在り方の見直し、予防接種、HIVや性感染症の予防、下水サーベイランス等の感染症対策、がん検診や精密検査の受診率向上、循環器病・糖尿病を含む生活習慣病等の予防、いわゆる国民皆歯科健診の具体化、口腔と全身の健康の関係に基づく歯科疾患対策・口腔健康管理、認知症の早期診断・早期対応、予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーション、PHRの利活用と情報連携を推進する」としています。さらに、「更年期世代の女性への医療の推進や女性の健康総合センターの機能強化、『プレコンセプションケア推進5か年計画』の工程表の策定と実行、企業と保険者のコラボヘルス、睡眠対策を含む健康経営の推進等、予防・健康づくりを支えるヘルスケア産業の育成等を図る。 がん、脳卒中・心臓病その他の循環器病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、慢性疼痛、難病、アレルギー、依存症、難聴、睡眠障害等の疾病対策や移植医療対策を推進する」ともしています。新しさに欠ける「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療 厚生労働省関係施策~」よく読んでみると、予防医療と疾病対策の項目が総花的に羅列してあるだけで、どこが「攻め」なのかよくわかりません。「責任ある積極財政」と同じように、実態は二の次に、見た目(読んだ感じ)が一見カッコいいキャッチコピーにしたのでしょう。7月27日付のミクスオンライン等の報道によれば、上野 賢一郎厚生労働大臣は7月24日の閣議後会見で、「骨太方針2026」に盛り込んだ「攻めの予防医療」について、「健康寿命の更なる延伸や社会保障を支える基盤の維持・強化に向けて、取り組みを速やかに実施していく」と述べたとのことです。なお、具体化に向けて厚労省は「骨太の方針2026」が閣議決定された2日後の7月23日、「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~」を公表しています。「U.E.N.O.」は厚労大臣の名前から取ったキャッチコピーで、「Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」の略だそうです。ちょっと強引なコピーですね。同プランは「栄養・食生活」「がん・循環器病等」「歯科保健」「認知症」「リハビリテーション」「性差に由来するヘルスケア」の6領域を「直ちに取り組むべき第一弾の重点領域」として位置づけ、「攻め」の取り組みを具体化するため施策を盛り込んだものとのことです。ただ、その内容を見てみると、「栄養・食生活」は「食事ガイドを作成する」、「がん・循環器病等」は「がん検診の受診率60%、精密検査受診率90%の達成」、「認知症」は「新たな検査技術を活用し、早期診断・早期対応等を推進」というように、「攻め」という割には、従来施策の踏襲で、それほど斬新な取り組みが並んでいるわけではありません。というわけで、高市政権のさまざまな政策においても指摘されている、「華々しくぶち上げていること」と「実際にやっていること」の乖離を感じた今年の「骨太の方針」でした。

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重度歯周炎、高齢者の脳卒中リスク上昇――医療費増加とも関連

 口腔の健康状態は、脳卒中発症だけでなく、その後の医療負担にも影響するのだろうか。今回、高齢者1,997人を対象とした5年間の追跡研究で、重度歯周炎は脳卒中発症リスクの上昇と関連し、脳卒中後の医療費増加にも関与する可能性が示された。研究は愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の齋藤瑞季氏、嶋崎義浩氏らによるもので、詳細は6月12日付で「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された。 歯周炎は口腔内の慢性炎症性疾患であり、歯周病菌や炎症反応が血管に影響することで、心血管疾患リスクを高める可能性が指摘されている。脳卒中との関連を示した報告もある一方、因果関係については十分な結論が得られていない。また、歯周炎と脳卒中発症との関連を検討した研究はあるものの、脳卒中後の医療費や入院日数との関係を評価した研究はほとんどない。こうした背景から著者らは、日本の後期高齢者を対象に、歯周炎と脳卒中発症との関連に加え、脳卒中後の医療費や入院日数との関連を検討した。 著者らは、2014年に三重県で実施された後期高齢者歯科健診のデータと、2014~2019年度のレセプトデータを用いて解析を行った。対象は75歳または80歳で、20本以上の歯を有し、脳卒中や心疾患の既往がない1,997人とした。歯周炎の重症度はCommunity Periodontal Index(CPI)を用いて評価し、歯周炎なし、中等度歯周炎、重度歯周炎の3群に分類した。参加者を5年間追跡し、歯周炎と脳卒中発症との関連を検討したほか、追跡期間中に脳卒中を発症した参加者については、脳卒中関連医療費および入院日数との関連も評価した。また、生存曲線が交差していたため、制限付き平均生存時間(restricted mean survival time:RMST)解析も併用した。 5年間の追跡期間中に232人(11.6%)が脳卒中を発症した。脳卒中発症との関連を検討したところ、重度歯周炎を有する高齢者では発症リスクが高い傾向がみられた。ただし全追跡期間での解析では有意な関連は認められず、追跡開始から22カ月までの解析でも明確な関連は示されなかった。一方で、23カ月以降の解析では重度歯周炎と脳卒中発症との有意な関連が認められた(ハザード比 1.65、95%信頼区間〔CI〕 1.08~2.53)。 また、RMST解析でも、重度歯周炎群では脳卒中を発症せずに過ごせる期間が短く、追跡期間中における非歯周炎群と比べたRMST差は−0.80カ月(95%CI:−1.21~−0.39)だった。 さらに、脳卒中を発症した80歳の参加者では、非歯周炎群のない群と比べて、中等度または重度歯周炎群で脳卒中後の医療費および入院日数が有意に増加していた。医療費は中等度歯周炎群で4.18倍、重度歯周炎群で6.32倍、入院日数はそれぞれ7.14倍、21.85倍だった。一方、75歳ではこれらの関連は認められなかった。 著者らは、歯周炎が脳卒中リスクや脳卒中後の医療負担の増加に関与する可能性があるとしている。その背景として、歯周病菌による慢性炎症や動脈硬化の促進を挙げ、口腔健康の維持の重要性を強調している。また、80歳で医療費や入院日数との関連がより明確に認められたことについては、加齢に伴う身体機能低下により、脳卒中後の回復に時間を要しやすくなる可能性を挙げている。 なお、本研究は80歳群で医療費や入院日数との関連を認めたが、解析対象者数が少なく信頼区間も広かった。著者らは、結果の解釈には注意が必要であり、さらなる大規模研究による検証が求められるとしている。

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医師の4割が抱える歯の悩みとは/医師1,000人アンケート

 近年、口腔疾患は糖尿病、脳梗塞、動脈硬化に伴う心筋梗塞など、全身疾患リスクとの関連性が見いだされたり、高齢者の健康寿命を縮める10大原因の1つとしても問題視されたりしている。このような状況を踏まえ、日本でも2026年度より『歯周病検診マニュアル2023』1)や歯科健康診査票を用いた歯周病検診がスタートし、国を挙げて国民の歯周病の早期発見・重症化予防に乗り出している。そこで今回、日々患者の健康を守る医師自身の定期検診や歯周病検診の受診率、口腔ケアの実態についてアンケート調査を行い、医師自身の歯科領域に対する意識を可視化した。歯周病や歯間への挟まりに悩む まず、自身の歯の健康やオーラルケアに対する意識(Q1)について、「意識している」と回答した医師は約90%に上り、年齢による差はみられなかった。診療科別では、血液内科(100%)、脳神経外科(97%)、呼吸器科(95%)の順で意識が高いものの、眼科医は76%と意識が低かった。 口腔内の健康で気になっていること・悩み(Q2)については、歯周病(38%)が最も多く、歯と歯の間にものが挟まりやすい(29%)、歯の着色・黄ばみ(26%)と続いた。しかし、これらは加齢による影響も大きいことから、歯周病に対する意識は年齢とともに上昇する傾向がみられた。一方で、20代医師の悩みの多くは、歯の着色・黄ばみ、口臭、歯並びなど審美的要素が中心であった。 日常のオーラルケア・審美目的で行っていること(Q3)は、デンタルフロス・歯間ブラシの使用(59%)、電動歯ブラシ・特殊な歯ブラシの使用(32%)、マウスウォッシュ・洗口液の使用(26%)と続いた。デンタルフロス・歯間ブラシの使用はいずれの年代でも最も多く、上述の悩みの解消のために実践されていた。歯周病検診や定期検診の受診率は約60% 歯周病検診を含め、定期検診やメンテナンスで歯科受診している医師の割合は60%に上り、20代を除く30代以降の半数以上が、なんらかの目的で1年に1回以上は歯科受診していた。その年間費用は、80%以上の医師で「5万円未満」であったが、50万円以上という回答も30代以上では1%ほどみられた。意識と行動のギャップ、「頭で理解していても通えていない」 全体を通して、日常のオーラルケアへの意識がある医師は約90%と非常に高い水準であるが、不定期を含め受診経験のある医師は約60%(定期的に通う医師は54%)にとどまり、約40%は受診していなかった。歯のケアなどに関する自由記入では、以下のような声が寄せられた。―――・定期検診の必要性はわかるが、予約が取りづらく、なかなか歯科に行けない(60代、形成外科)・セカンドオピニオンが医科よりも難しい(60代、耳鼻咽喉科)・どれくらいの間隔で歯科受診したらいいのか?(50代、小児科)・顎関節症、口臭、舌痛など、どの医療機関に相談したらよいかわからないことが多い(50代、耳鼻咽喉科)・歯石除去予防が困難(60代、内科)・若いうちにケアしておくべきだったと後悔しています(50代、麻酔科)――― このように、口腔の悩みやセルフケアの必要性を認識しているものの、通院時間や業務の忙しさなどのアクセス面が障壁となり、適切な治療に到達できていない可能性が浮き彫りになった。また、医師であっても自身の受診のみならず、医科歯科連携先の歯科医院選択などの悩みを抱えており、その詳細は以下のページに掲載している。医師自身の口腔ケア問題、その対策は?/医師1,000人アンケート

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第306回 無医地区が575地区に増加 医師不足エリア再拡大/厚労省

<先週の動き> 1.無医地区が575地区に増加 医師不足エリア再拡大/厚労省 2.高額療養費、8月から患者負担増 長期療養者には年間上限/厚労省 3.24年度の社会保障給付費138兆円 医療はコロナ費減で1.9%減/社人研 4.ドクターヘリの安定運航へ財政支援 広域搬送網の再設計も/厚労省 5.自由診療の再生医療に行政処分 患者死亡受け改善命令/厚労省 6.移植患者の術後管理置き去り 有償あっせんの元NPO理事長を再逮捕/警視庁 1.無医地区が575地区に増加 医師不足エリア再拡大/厚労省厚生労働省は、2025年10月末時点の「無医地区」が全国で575地区となり、2022年の前回調査から18地区増えたと公表した。無医地区人口も12万2,206人から13万4,753人へ1万2,547人増加した。国による定義では無医地区とは「医療機関がなく、中心地点からおおむね半径4キロ以内に50人以上が居住し、受診に長時間を要するなど医療機関を容易に利用できない地域」を指す。長期的には1984年の1,276地区から徐々に減少してきていたが、今回の調査で増加に転じ、医師不足地域が再び広がり始めた可能性が示された。都道府県別では、大分県が44地区で前回より6地区増え、岩手県、島根県、山口県、沖縄県が各4地区増加した。無医地区人口は大分県で5,852人、沖縄県で3,861人、山口県で1,920人増えるなど、地区数以上に住民への影響が拡大した地域もある。その一方で、福岡県は4地区、富山県と奈良県は各2地区減少した。山形県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、佐賀県には無医地区がなかった。厚労省は、診療所の閉院や高齢医師の引退後に後継者を確保できないことが増加の主因とみている。なお、これとは別に厚労省は7月31日に「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、2028年度以降、医学部臨時定員を全国で削減する方針を示している。厚労省としては医師少数県や全国の医師偏在指標を下回る県には削減幅を緩和する考えだが、定員増は想定していない。このため、医師不足を訴える自治体からは地域偏在が固定化・助長される懸念が出ており、単純な医師養成数だけでなく、地域枠医師の離脱防止、結婚や育児、介護を含む柔軟な勤務、キャリア形成を支える伴走型支援が重要となる。さらに、基幹病院とへき地診療所が医師を融通する地域医療連携推進法人、巡回診療、オンライン診療、搬送体制を組み合わせ、1人の医師に依存しない広域ネットワークへ転換する必要がある。無医地区の拡大は、慢性疾患の継続管理や予防接種だけでなく、救急受診の遅れ、在宅医療・看取りの空白、基幹病院への患者集中にもつながる。医師には、地域の診療所単位ではなく、2次医療圏全体で外来、救急、在宅、訪問看護、薬局をどう維持するかという視点が求められる。 参考 1) 令和7年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します(厚労省) 2) 575地区で医療機関ゼロ 22年比18増、厚労省調査(共同通信) 3) 「無医地区」増加に転じる 25年10月末 18増の計575地区に(CB news) 4) 「全国値」未満は緩和検討 厚労省 医学部臨時定員、28年度は全都道府県で削減へ(同) 2.高額療養費、8月から患者負担増 長期療養者には年間上限/厚労省高額な医療費の患者負担を抑える高額療養費制度が8月1日から見直された。所得区分ごとの月額自己負担上限は、住民税非課税世帯で4~5%、それ以外でおおむね7%引き上げられる。たとえば70歳未満で年収約370~770万円の場合、従来の「8万100円+医療費の一定部分の1%」から「8万5,800円+(総医療費-28万6,000円)×1%」となり、定額部分で5,700円増える。さらに2027年8月には所得区分を細分化し、年収約650~770万円では定額部分が11万400円となるなど、現行制度と比べ最大38%の負担増となる見通し。その一方で、長期療養者への配慮として、8月から年間自己負担上限が新設された。年収約370~770万円では年53万円で、所得に応じ18~168万円に設定される。直近12ヵ月で3回、月額上限に達すると4回目以降の負担が軽減される「多数回該当」の上限額は原則据え置く。これまで月ごとの上限にわずかに届かず、多数回該当の対象にならなかった患者も、年間上限により負担が抑えられる場合がある。ただし年間上限は償還払いとなるため、患者がいったん上限を超える金額を立て替えなければならない可能性がある。厚生労働省は今回の見直しにより、2027年度時点で保険料と公費による医療給付を年間約2,450億円削減できると試算する。このうち約1,070億円は、患者の受診行動の変化による医療費減少を見込んだものだ。厚労省は、長期療養者や低所得者に配慮しており、必要な受診が抑制されるとは想定していないと説明する。しかし、患者団体や医療関係者からは、がんや難病など高額な治療を継続する患者の受診控えや治療断念、生活困窮につながるとの懸念が出ている。また、今回の見直しによる患者側の負担増(所得区分や受療状況によって年間負担は異なる)に対し、保険料の軽減効果は1人当たり年約1,400円(月額約117円)にとどまり、負担増とのアンバランスさを疑問視する指摘もある。今回の見直しでは、高所得者ほど医療利用時の負担を重くする「応能負担」が強化された点も論点となる。保険料や税の段階ですでに所得に応じた負担を求める中、専門家からは給付を受ける際にも負担差を広げることが、国民皆保険を支える連帯を損なうとの意見もある。医療現場では、患者の年齢や所得区分、多数回該当、年間上限、加入する健康保険の付加給付を確認し、治療費の見通しを早期に説明する必要がある。また、マイナ保険証を利用すれば、原則として限度額適用認定証がなくても窓口負担を上限額までに抑えられる。がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーと連携し、経済的理由による治療の中断を防ぐ支援が一層重要となる 参考 1) 高額療養費制度 自己負担の上限額引き上げも 年間上限額を新設(NHK) 2) 高額療養費、負担上限が8月から最大7%増 来夏には最大38%増(朝日新聞) 3) 高額療養費見直し 政府説明をデータでたどると? ロジックに異論(同) 4) 所得高ければ医療費負担も重く…広がる「応能負担」、専門家は問題視(同) 5) 今日から変わる「高額療養費制度」 “年間上限”導入も自己負担増に患者団体「治療断念につながる」懸念(弁護士JPニュース) 3.24年度の社会保障給付費138兆円 医療はコロナ費減で1.9%減/社人研国立社会保障・人口問題研究所は、2024年度の社会保障費用統計を公表した。年金、医療、介護、子育て支援などに充てられた社会保障給付費(ILO基準)は138兆3,019億円で、前年度から2兆6,703億円、2.0%増加した。増加は3年ぶりで、新型コロナウイルス対策に伴う支出が膨らんだ2021年度の138兆7,544億円に次ぐ過去2番目の規模となった。人口1人当たりでは111万7,100円と、前年度より2万6,400円、2.4%増えた。部門別では、年金が57兆8,528億円と最も多く、前年度比1兆4,592億円、2.6%増加した。物価や賃金の動向を反映し、2024年度の年金改定率が+2.7%となったことなどが影響した。介護や子供・子育て、生活保護などを含む「福祉、その他」は35兆6,436億円で、2兆836億円の増加、6.2%増えた。介護報酬の+1.59%改定や児童手当の所得制限撤廃などが押し上げ要因となった。その一方で、医療は44兆8,055億円で、前年度から8,726億円、1.9%減少し、2年連続のマイナスとなった。新型コロナ対策費の縮小が主因で、医療需要そのものの減少を示すものではない。給付費全体に占める構成割合は、年金41.8%、医療32.4%、福祉その他25.8%だった。社会保障給付費の国内総生産(GDP)比は21.53%で、前年度より0.37ポイント低下した。給付費は増えたものの、GDPの伸びがそれを上回ったためで、2021年度の24.07%をピークに低下が続く。社会保障財源(ILO基準)は155兆6,896億円で、年金積立金の運用実績低下に伴う資産収入の減少により21.4%減少した。財源構成は社会保険料53.3%、公費37.5%など。高齢化に加え、物価・賃金、報酬改定、少子化対策が給付費を左右する構造が改めて示された。 参考 1) 令和6(2024)年度 社会保障費用統計の集計を公表します~社会保障給付費、3年ぶりに増加~(社人研) 2) 24年度の社会保障給付費138兆円 高齢化で2番目の水準 厚労省(時事通信) 3) 2024年度の社会保障給付費、過去2番目に多い138兆円 GDP比は低下(日経新聞) 4) 社会保障給付費が3年ぶりに増加 対GDP比は減少続く 24年度(朝日新聞) 5) 24年度の社会保障給付費、「医療」は1.9%減 社人研(MEDIFAX) 4.ドクターヘリの安定運航へ財政支援 広域搬送網の再設計も/厚労省厚生労働省は、整備士不足などで一部地域のドクターヘリが運休している問題を受け、「救急医療搬送体制等のあり方に関する検討会」を開催し、安定運航に向けた議論を始めた。ドクターヘリは、救急医療機器を備え、医師・看護師が同乗して現場や搬送中に診療を行う専用機で、一般的に操縦士、整備士、医師、看護師らが搭乗する。2022年までに京都府を除く46都道府県へ導入されたが、整備士の確保難から東京、大阪、徳島などで運休が発生している。運休地域では、近隣県のドクターヘリ、消防防災ヘリ、ドクターカー、救急車による代替や相互応援が行われ、例外的に整備士を同乗させず操縦士2人で運航する「ツーパイロット制」も検討されている。大阪府は新たにエアロトヨタへ委託し、8月24日から月10日程度の限定運航を再開する予定だが、予備機を利用するため不具合時には再び停止する可能性がある。厚労省によると、2025年度は46都道府県57機で事業を実施した一方で、2026年4月時点で運航を委託できていたのは43都道府県54機にとどまった。年間受諾件数は2024年度に2万8,405件で、救急医療の基盤として定着している。国は今年度の当初予算に100億円を確保し、飛行時間に応じた運航委託費の補助基準額を引き上げた。さらに、機体整備や資機材、整備士確保などを支援する緊急事業として補正予算22億円を計上した。検討会では、短期的には運航事業者への財政支援、共同運航、規制の見直しを進め、9月にも中間取りまとめを行う。中長期的には整備士、操縦士、医療従事者の必要数を推計し、養成・確保策を構築する。今後は、ヘリ単独の維持ではなく、地域の搬送距離や疾病構造を踏まえ、消防防災ヘリやドクターカーを含む広域救急搬送網として再設計する視点が求められる。 参考 1) 救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)の現状について(厚労省) 2) ドクターヘリ安定運用に向けて必要な支援は何か、社会構造変化の中でドクターヘリの役割をどう考えるか-救急医療搬送体制検討会(Gem Med) 3) 大阪府のドクターヘリ、新たな委託先はエアロトヨタ 8月下旬から一部運航再開へ(産経新聞) 5.自由診療の再生医療に行政処分 患者死亡受け改善命令/厚労省厚生労働省は7月31日、自由診療の再生医療を提供していた「ネオポリス診療所銀座クリニック」(東京都中央区)と「大阪ベテスダクリニック」(大阪府泉佐野市)の管理者に対し、再生医療等安全性確保法に基づく改善命令を出した。銀座クリニックでは今年3月、慢性疼痛に対する治療として本人の脂肪由来細胞を投与された外国籍の60代女性が急変し、搬送先で死亡。厚労省は同月13日、治療の一時停止を命じ、その後、提供体制を調査していた。調査では、細胞加工を委託する事業者を介し、韓国の再生医療グループが患者ごとの投与細胞数や投与方法を指定したリストを作成し、クリニックがその内容に従って処置していたことが判明した。医師ではない第三者が実質的に治療内容を決定する体制が常態化し、治療で得た利益の大部分も同グループなどに渡っていたという。さらに、国に届け出た再生医療提供計画から逸脱した治療を行うなど、複数の法令違反が認められた。厚労省は、第三者の影響力を排除し、医療機関が自らの責任で適正な提供体制を構築するよう求めた。大阪ベテスダクリニックでも同様に第三者主導の提供体制が確認され、再生医療後に体調不良で入院を要した患者1人について必要な報告をしていなかったとして改善命令を受けた。銀座クリニックの死亡原因については引き続き調査中である。今回の事案は、患者死亡事故を契機とした立ち入り調査により、外部事業者主導の不適正な運営体制や計画逸脱が発覚し、法に基づく改善命令が出された(因果関係の調査は継続中)。さらに、高額な自由診療として拡大する再生医療で、治療の医学的妥当性だけでなく、指示系統、利益配分、有害事象報告、届け出内容との整合性を含む管理体制の検証が不可欠であることを示した。再生医療等安全性確保法では、医療機関が提供計画を作成し、認定再生医療等委員会の審査を経て国に届け出ることなどを求めている。外部の事業者が治療設計や集患、収益配分まで事実上支配すれば、医師の独立した判断や緊急時対応が損なわれる恐れがある。自由診療の再生医療を提供する医療機関は、委託先との契約関係や治療決定過程を点検し、重篤な有害事象を速やかに報告する体制の再確認が求められる。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく改善命令等について(厚労省) 2) 不適切再生医療で銀座の診療所に改善命令 厚労省 細胞投与で外国籍の患者死亡(産経新聞) 3) 患者死亡の再生医療クリニックなどに改善命令 厚労省(NHK) 4) 「銀座クリニック」の黒幕/「再生医療」謳う自由診療に札付きの輩(FACTA online) 6.移植患者の術後管理置き去り 有償あっせんの元NPO理事長を再逮捕/警視庁警視庁などの合同捜査本部は7月28日、カンボジアでの生体腎移植を別の患者に有償であっせんしたとして、NPO法人「難病患者支援の会」の元理事長で、一般社団法人「国際医療相談室」を実質的に運営していた菊池 仁達容疑者(66)を臓器移植法違反の疑いで再逮捕した。再逮捕容疑は2025年、千葉県内の60代男性にカンボジアでの生体腎移植をあっせんし、医師への謝礼や手数料名目で約850万円を受け取った疑い。男性は渡航後、中国人コーディネーターに現地医療費などとして約13万ドル、当時約1,900万円を支払い、カンボジア人男性とみられるドナーから腎臓移植を受けたとされる。渡航前には、菊池容疑者と協力関係にあった大阪市内の病院で血液検査などを受け、病院長の紹介状が中国人コーディネーターを介して現地の中国人医師団に送られていた。その一方で、男性は「アフターケアも万全」と説明されていたにもかかわらず、帰国後の受け入れ先が確保されておらず、受診を断られるなどして10ヵ所余りの医療機関を転々とした。このため移植後に必要な処置を受けるまで2ヵ月以上かかったというが、現在の容体は安定している。捜査本部は、同法人が設立された2024年3月以降、少なくとも患者5人から計4,500万円以上を受け取り、その一部が菊池容疑者の保釈金調達に伴う借金返済へ充てられたとみている。患者ごとの請求額は約500~900万円と幅があった。菊池容疑者は過去にもベラルーシでの無許可移植あっせんで実刑判決を受けており、保釈中に今回の事業を主導した疑いがある。臓器移植法は、患者とドナーを対価により結び付ける行為や、無許可のあっせんを禁じている。今回の事件は、海外渡航移植の不透明な費用構造に加え、免疫抑制剤の投与や感染対策など、帰国後の国内医療への引き継ぎが整わないまま患者が置き去りにされる危険性も浮き彫りにしたが、海外での移植内容やドナー情報、感染症・免疫抑制療法に関する情報が不十分な場合、国内医療機関で安全な術後管理を引き継ぐことが困難になる問題も浮き彫りとなった。 参考 1) 臓器移植法違反事件 帰国後の男性 受診拒否で医療機関を転々(NHK) 2) 別の男性にも臓器移植手術あっせんか NPO元理事を再逮捕へ(同) 3) 臓器移植あっせん事件、別の患者からも対価か 元NPO理事再逮捕へ(朝日新聞) 4) 臓器有償あっせん、患者から受け取った現金を菊池被告が借金返済に…保釈金1,800万円の調達でできた借金(読売新聞)

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第305回 「攻めの予防医療」公表 がん検診60%と国民皆歯科検診の実現へ検討/厚労省

<先週の動き> 1.「攻めの予防医療」公表 がん検診60%と国民皆歯科検診の実現へ検討/厚労省 2.日本人の平均寿命、男女とも延伸 女性は41年連続世界一/厚労省 3.高額療養費、8月から負担増 社会保障費膨張で改革圧力強まる/政府 4.電子カルテ、2030年にほぼ100%へ 国はクラウドと情報共有を標準に/政府 5.看護学生、10年で3割減 地域医療を脅かす看護師不足/厚労省 6.医療機関の倒産、上半期で過去2番目 後継者難が深刻化/東京商工リサーチ 1.「攻めの予防医療」公表 がん検診60%と国民皆歯科検診の実現へ検討/厚労省厚生労働省は、7月23日に健康寿命の延伸を目指す施策パッケージ「U.E.N.O.Plan」を公表した。従来のように国民の自主的な健康行動を促すだけでなく、行政や保険者が能動的に介入し、行動変容を後押しする「攻めの予防医療」への転換を掲げている。重点領域は、「がん・循環器病等、栄養・食生活、歯科保健、認知症、リハビリテーション、性差に由来するヘルスケア」の6分野である。がん対策では、2028年度までに胃、大腸、肺、乳房、子宮頸部の主要5がん検診の受診率目標を60%、精密検査受診率を90%としている。就業状況に応じた受診勧奨、職域と自治体の連携、受診率の見える化、未受診理由の調査、ポータルサイトの開設を進めるほか、事業者と保険者による「コラボヘルス」を強化する。要精密検査者への勧奨や相談支援も充実させ、検診を受けるだけでなく、診断・治療につなげる仕組みを重視する。歯科保健では、2027年度から「国民皆歯科検診」の実現に向け、現在10歳ごとの歯周病検診を5歳ごとに拡大し、希望者が唾液などによる簡易検査を毎年受けられる仕組みを検討する。栄養分野では、生活習慣病予防に向けた「食事ガイド」を2026年度中に作成する。リハビリテーションは、心身機能の回復にとどまらず、日常生活動作の改善、社会参加、健康増進を支える重点領域とされた。急性期での早期・休日リハビリ、地域の通いの場や短期集中予防サービス、訪問・通所リハビリなどを予防、医療、介護を通じて切れ目なく提供し、科学的根拠に基づくポータルサイトで本人の主体的参加を促す。ただし、新規施策は情報発信が中心で、実効性は今後の診療報酬・介護報酬や予算措置に左右される。日本慢性期医療協会は、この提言に関連して、高齢者の要介護化や重度化の大きな要因である転倒・骨折を防ぐ「攻めのリハビリ戦略」を提言した。理学療法士・作業療法士が、身体機能、住環境、栄養、服薬、骨粗鬆症を評価する「転倒リスク健診」、ICT・AIを用いた自宅環境評価、要介護前の予防的リハビリの制度化が柱である。「転倒させない、転倒しても骨折させない、骨折しても寝たきりにさせない」の3段階で介入し、健康寿命の延伸と医療・介護費の抑制を目指す。今後は、理念を現場で実行できる人員配置、財源、評価制度の具体化が焦点となる。 参考 1) U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~(厚労省) 2) 攻めの予防医療推進する「U.E.N.O.Plan」を公表 主要ながん検診受診率60%達成へ 28年度までに(CB news) 3) 日慢協、「攻めのリハビリ戦略」提言 骨折・転倒を防ぐリスク健診など(同) 4) 厚労省「攻めの予防医療」、リハビリを予防・医療・介護貫く重点領域に位置づけ(PT-OT-ST.net) 2.日本人の平均寿命、男女とも延伸 女性は41年連続世界一/厚労省厚生労働省は、7月24日に2025年の「簡易生命表」を公表した。それによると、日本人の平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳で、前年よりそれぞれ0.25歳、0.20歳延びた。男女とも前年を上回るのは2023年以来2年ぶり。女性は41年連続で世界1位を維持し、男性はスウェーデン、スイス、イタリアなどに次いで7位となり、前年から順位を1つ下げた。男女差は5.98年で、前年より0.05年縮小した。平均寿命は、その年の年齢別死亡率が今後も続くと仮定した場合に、0歳児が平均して何歳まで生きるかを示す指標である。今回の数値は、わが国に住む日本人を対象とした2025年の簡易生命表に基づく。わが国では男性が2020年まで9年連続、女性が8年連続で過去最高を更新していたが、新型コロナウイルス感染症による死亡増加の影響で2021年、2022年は男女ともに低下した。2023年にはいったん回復したものの、2024年は男性が横ばい、女性が0.01歳短くなっていた。今回の延伸には、がん、心疾患、新型コロナによる死亡率の低下が寄与した。男性ではがん、女性では新型コロナや心疾患による死亡率低下の影響がとくに大きかった。その一方で、肺炎や老衰による死亡割合は増加しており、高齢化に伴う死因構造の変化もみられる。国際比較では、女性は日本に続き韓国、スペインが上位となり、男性はスウェーデンが82.52歳で首位、スイスが82.40歳と続いた。ただし、各国の公表年や集計方法には違いがあり、順位は参考値として捉える必要がある。厚労省は、わが国の平均寿命は男女とも世界トップクラスで、保健福祉水準の高さを示す一方で、なおコロナ禍前の水準(2020年時点で男性81.56歳、女性87.71歳)には戻っていないとしている。今後は寿命の延伸だけでなく、健康寿命との差を縮め、フレイルや生活習慣病を予防し、要介護期間を短くする取り組みが一層重要となる。 参考 1) 令和7(2025)年簡易生命表の概況 2) 2025年の平均寿命 男女とも前年上回る 女性は世界1位(NHK) 3) 平均寿命、男女とも延び 昨年、女性は87.33歳で世界首位 厚労省まとめ(日経新聞) 4) 日本人の平均寿命、女性は41年連続「世界一」の87.33歳…男性81.35歳(読売新聞) 3.高額療養費、8月から負担増 社会保障費膨張で改革圧力強まる/政府政府は、7月24日に医療費の自己負担を一定額に抑える高額療養費制度について、2026年8月と2027年8月の2段階で患者負担の上限を引き上げる関連政令を閣議決定した。8月1日から所得区分ごとの月額上限を4~7%引き上げ、さらに2027年8月には所得区分を細分化したうえで、現行比最大38%まで引き上げる。年収約370~770万円では、現在の基準額8万100円が2026年8月から8万5,800円となり、2027年8月以降、年収約650~770万円では11万400円となる。その一方で、長期療養者への配慮として、2026年8月から所得に応じた年間上限を新設し、同年収帯では53万円とする。現行制度は、月ごとの自己負担限度額を超えた分を保険者が給付する仕組みで、直近12ヵ月で3回以上該当した場合、4回目以降の負担を軽減する「多数回該当」がある。今回、この多数回該当の限度額は原則据え置く。厚生労働省の資料では、健保組合の1,000万円以上の高額レセプトは2010年度の174件から2024年度には2,328件に増えており、高額医薬品や高度医療の普及を背景に制度の持続可能性が課題となっている。さらに70歳以上の外来通院の負担を抑える「外来特例」も見直し、一般区分の月額上限は現在の1万8,000円から2026年8月に2万2,000円、2027年8月に2万8,000円へ引き上げる。低所得層には据え置きや年間上限を設ける。政府は給付費を抑え、現役世代の保険料軽減につなげる狙いだが、患者団体は、がんや難病など継続治療が必要な患者の受診控えや治療中断を懸念する。背景には、膨張を続ける社会保障費がある。2026年度当初予算で社会保障費は39兆円と歳出の約3割を占め、財務省は2027年度の自然増を約4,000億円と見込む。政府・与党内では、70歳以上の窓口負担引き上げ、介護サービスの2割負担対象拡大、外来特例の廃止、OTC類似薬の追加負担などを巡り温度差がある。介護報酬改定による賃上げ対応も歳出増要因となる。さらに「骨太の方針」から例年の「財政健全化」の文言が消え、長期金利が一時2.9%に達するなど、市場は歳出膨張への警戒を強めている。制度の持続可能性と患者のセーフティーネットを両立できるかが焦点で、医療現場には所得区分、年間上限、多数回該当を踏まえた丁寧な説明と相談支援が求められる。 参考 1) 高額療養費制度の概要(厚労省) 2) 高額療養費、8月から負担増 月4~7%、年間上限額を新設(共同通信) 3) 高額療養費の上げ決定 負担上限、来月から2段階(日経新聞) 4) 社会保障費の膨張止まらず、自然増は0.4兆円 来年度の概算要求基準(日経新聞) 4.電子カルテ、2030年にほぼ100%へ 国はクラウドと情報共有を標準に/政府政府は7月21日に、新たな規制改革実施計画を閣議決定した。医療分野では、電子カルテを単に院内で保存する装置から、全国で医療情報を共有・活用する基盤へ転換する方針を打ち出している。政府目標として2028年度までに200床以上の病院、2030年までに全医療機関での普及率ほぼ100%を掲げる一方、上野 賢一郎厚生労働大臣は記者会見で法改正に基づく目標達成義務は「政府に課されたものであり、医療機関に導入を義務付けるものではない」との見解を示している。現在使用している電子カルテや紙カルテの継続利用も可能とされているが、政策の全体像としてはクラウド化と情報共有を軸としたデジタル化が加速している。中心となるのはクラウドネイティブ型電子カルテである。厚生労働省は一定の標準仕様、情報連携、セキュリティ要件を満たす製品の認証制度を2026年度中に整備し、2027年春の認証開始を目指す。多要素認証やペネトレーションテスト、電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスとの接続を想定し、中小病院や診療所には認証製品の導入補助も検討する。院内サーバー中心の仕組みから、ベンダーが更新や防御を担うクラウド型へ誘導する狙いがある。政府の重点計画も、クラウドネイティブ型の認証制度と標準型電子カルテの普及を明記した。電子カルテ情報共有サービスは2026年度中に全国運用を開始し、以後はバイタル、画像、病理・画像診断レポートなど共有情報を拡大する。薬局、訪問看護、介護事業所との連携も視野に入り、診療情報は施設内で完結せず、患者を軸に流通する方向となる。保存期間も、先天性疾患や小児がんなど長期追跡が必要な疾患を念頭に延長が検討される。既存カルテの継続使用は当面可能だが、更新時には標準化、クラウド、外部連携への対応が事実上の選択条件になっていく。医師にとって電子カルテは単なる記録媒体ではなく、地域連携、救急、処方、研究、AI活用の入口となる。その一方で、システム障害時の診療継続、アクセス権限、情報漏えい対策、入力負担への備えは不可欠である。医療機関は「義務化されるまで待つ」のではなく、次回更新を見据え、データ移行性、標準規格、バックアップ、サイバー対策を早期に点検すべき段階に入った。 参考 1) 規制改革実施計画(内閣府) 2) デジタル社会の実現に向けた重点計画(デジタル庁) 3) 電子カルテ、厚労省が認証制度 中小病院や診療所の導入補助を検討(日経新聞) 4) 電子カルテデータの保存期間を延長へ 年内結論、規制改革実施計画(CB news) 5) 厚労相「医療機関に電子カルテ導入の義務はない」(保団連) 5.看護学生、10年で3割減 地域医療を脅かす看護師不足/厚労省看護師不足が、地方を中心に病床削減や病棟閉鎖という形で地域医療を直撃している。看護師養成課程の受験者は2025年度に14万1,234人で、10年間で30.8%も減少している。18歳人口の減少はこの期間に9.1%に過ぎず、単なる少子化だけでは説明できない。とくに専門学校の受験者は63.2%減り、宮城県、沖縄県を除く全都道府県で定員割れとなっている。さらに2030年度までに94課程が廃止される予定で、卒業生の8割超が地元で就職する専門学校の縮小は、地域の看護師不足に深刻な影響を与える。背景には、看護師の夜勤を含む不規則な勤務形態、責任の重さ、実習負担、学費、賃金の伸び悩みがある。看護師養成には102単位が必要で、そのうち約4分の1を実習が占める。SNSでは「実習がきつい」との印象も広がる。さらに50~54歳の看護師の平均月収は20~24歳より7万7,000円高い程度で、年齢や経験を重ねても処遇が伸びにくいこともある。購買力平価ベースの給与でも米国やオーストラリアを大きく下回り、診療看護師など公的なキャリアアップ制度が乏しいことも職業選択上の弱点となっている。影響はすでに顕在化している。岐阜県立下呂温泉病院では看護職員が約10年で50人減り、配置基準に合わせて実質稼働病床を130床まで縮小した。市立金山病院も看護師不足を一因に療養病棟を閉鎖した。青森県むつ市でも患者受け入れ制限が検討されるなど、看護師不足は医師不足と同様に、病院の診療機能そのものを規定する問題である。病院に空床があっても看護配置がなければ入院を受けられず、救急、手術、病棟運営、退院支援、在宅移行まで連鎖的に影響するため、地域にとって非常に重要な課題となる。また、医師の業務を看護師へ一方的に移すだけでは看護師の業務負担が増えるため、医師事務作業補助者や看護補助者を含む役割分担、指示の標準化、不要な慣行の見直しに医師も関与しなければならない。厚生労働省は2040年までの需要推計、新人研修の充実、ICT教材、遠隔授業、養成校の統廃合・サテライト化、教員配置基準の柔軟化を検討する。日本病院会からは、看護師偏在対策として卒後臨床研修や地域マッチングを導入する案も出ている。自治体による修学支援、地元勤務を条件とした学費給付、外国人看護補助者の活用も進む。ただし、確保策だけでなく、賃金、夜勤負担、教育支援、柔軟な勤務、専門性に応じた評価を一体で見直さなければ、看護師の志望者数減と離職の連鎖は止まらない。看護師の確保は、看護部門だけの課題ではなく、病院経営と地域医療構想の根幹に位置付けるべき大きな課題となっている。 参考 1) 消える看護学生、10年で3割減 地域医療の持続に黄信号(日経新聞) 2) 新人看護職員研修充実による看護師の資質向上、看護師養成校の人員体制柔軟化等による経営支援等を検討-看護職員養成・確保検討会(Gem Med) 3) 看護師の確保策にとどまらず「偏在対策」が必要、医師と同様の「卒後一定期間の臨床研修」制度を検討せよ-日病・相澤会長(同) 4) 看護師不足、人材確保へ模索 岐阜県下呂市、行政連携や外国人材活用(NHK) 6.医療機関の倒産、上半期で過去2番目 後継者難が深刻化/東京商工リサーチ東京商工リサーチによると、2026年上半期に倒産した病院、診療所、歯科医院は前年同期比15.1%増の38件と医療機関の経営悪化が一段と鮮明になっていることが明らかになった。上半期としては、2006年以降で2009年の39件に次ぐ2番目の高水準である。内訳は病院が4件と前年同期から半減した一方で、診療所は19件、歯科医院は15件に増加。診療所は過去20年間で最多となり、地域の身近な医療機関ほど厳しい状況に置かれている。倒産原因は、患者数や収入の減少など「販売不振」が22件、「既往のしわ寄せ」が8件で、合わせて約8割を占めた。さらに、後継者難による倒産は過去最多の11件に上り、全体の約3割を占めた。倒産の37件、97.3%が破産で、民事再生は1件だけだった。経営不振に陥った医療機関では、第三者への承継や再建が難しい実態がうかがえる。その一方で、裁判所への申し立てなどを伴う倒産には至らないものの、事業継続を断念し、廃業を選ぶ医療機関も急増している。帝国データバンクによると、2024年の休廃業・解散は722件だったが、2025年には823件へ増え、2年連続で過去最多を更新した。うち診療所が661件を占め、診療所経営者の56.7%が70歳以上とされる。2025年の倒産も66件で過去最多となった。背景には、光熱費、医薬品、医療材料、給食費、建設費、人件費の上昇に対し、公定価格である診療報酬へ十分に転嫁できない医療特有の構造がある。厚生労働省の調査でも、2024年度は一般病院の67.6%、医療法人の一般診療所の37.4%が赤字だった。患者数の減少、職員不足、施設の老朽化、後継者不在が重なれば、地域から医療機関が失われ、救急や在宅医療を含む残存施設への負担集中を招く。資金支援だけでなく、早期の事業承継、医療機関の再編・連携、物価や賃金を反映した診療報酬上の対応が急務となっている。 参考 1) 2026年上半期「医療機関」倒産 増勢続く 上半期で2番目の38件、「後継者難」は最多(東京商工リサーチ) 2) 日本の医療は崩壊寸前? 医療機関の休廃業・解散は過去最多722件(AERA)

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断食模倣食、歯周病患者の炎症マーカー低下と関連

 断食を模倣した食事スタイルを短期間実施することで、歯周病に伴う炎症が軽減されるとする、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のGiuseppe Mainas氏らによる論文が6月10日、「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「本研究結果は歯周病の治療において、適切な歯磨きに加えて生活習慣の改善も重要であることを示唆している」と述べている。 歯周病対策として多くの歯科医は、歯の周囲の感染部位の清掃に重点を置いている。一方で、食生活が歯周病に何らかの影響を及ぼす可能性について検討している研究者もいる。 Mainas氏らの研究は、スペインで実施された。歯周病患者28人を募集し、無作為に2群に分けて、1群を短期間の断食模倣食を実施する断食群、他の1群を通常の食事を続ける対照群とした。断食群では6カ月の間に3回にわたり、5日間の断食模倣食を実施した。5日間のうち初日の摂取量は約1,100kcalとし、2~5日目は1日当たり約750kcalとして、6日目は普段の食事への移行日、7日目からは通常の食事とした。 6カ月間に複数回にわたり、血液と歯肉溝滲出液(歯と歯茎の間の小さな隙間からにじみ出ている液体)を採取して、炎症に関わるマーカーを測定した。その結果、断食群に割り当てられていた患者では、血液と歯肉溝滲出液の双方で炎症マーカーの低下が認められた。 論文の上席著者であるKCLのLuigi Nibali氏は、「断食が歯茎の健康に良い影響を与えるメカニズムとして、いくつかの要因が考えられる」とし、以下のような解説を加えている。 まず断食は、細胞やDNAにダメージを与え得る「炎症」の主要な原因である、体内の酸化ストレスを軽減するという。また、ケーキやビスケットのような高カロリー食品や精製された炭水化物の摂取も炎症を引き起こす可能性があることから、断食によってそれらの食品の摂取が減ることも、体内の酸化ストレス軽減につながる、としている。 Nibali氏はまた、体内の健康維持に有用なマイクロバイオームに対して、断食が有益な効果をもたらす可能性もあるとしている。ただし、「この関係性を確認するには、さらなる研究が求められる」という。 Mainas氏らは、今回の研究結果を今後の歯周病治療に反映させるよりも先に、より大規模な研究を行う必要があると考えている。「糖尿病患者など、食事制限の実施が危険なケースもあるため、断食模倣食は対象患者を慎重に選んで推奨すべきだろう。われわれは現在、断食模倣食の実施が困難な高リスク者に対して、明らかにされたメリットをどのような形で適用可能かを検討している」と同氏は述べている。

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高齢者のポリファーマシー対策啓発資材が完成/厚労省

 さまざまな疾患を併存していることが多い高齢の患者では、処方された治療薬の副作用や相互作用などが大きなリスクとなるケースもある。そこで、厚生労働省では2018年に『高齢者の医薬品適正使用の指針』を公開し、いわゆる「ポリファーマシー対策」を示した。今回、高齢者のポリファーマシー対策を進めるための医療従事者向けの普及啓発資材が完成。厚労省は6月24日より公開、配信を行っている。処方の一元管理がポリファーマシー対策の鍵 ポリファーマシー啓発資材の利用対象者は、医師、歯科医師、薬剤師、看護師などの多職種を対象とするもので理解しやすいように図表やイラストが多用されている。 主な目次と内容は以下のとおり。【1.ポリファーマシーの概念】 「ポリファーマシーの概念」として「多剤服用の中でも害をなすものをとくにポリファーマシーと呼び、本指針でも両者を使い分けた。ポリファーマシーは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態」と定義し、服用薬剤数が6種類以上で発生が多いことが示されている。【2.多剤服用の現状】 高齢になるに伴い服用薬剤数が多くなる傾向があること、有害事象が発生しやすくなることが示されている。また、処方が一元管理されていないとポリファーマシーが形成されやすいことが示されている。【3.薬剤見直しの基本的な考え方およびフローチャート】 処方見直しのフローチャートを示し、実施する際の考え方やポイント、注意点、他職種との連携の重要性などが記載されている。【4.多剤服用時に注意する有害事象と診断、処方見直しのきっかけ】 有害事象として、「ふらつき・転倒」「せん妄」「食欲低下」「排尿障害・尿失禁」「記憶障害」「抑うつ」「便秘」が示されている。【5.多剤服用の対策としての高齢者への薬物投与の留意事項】 多剤服用の対策では、加齢による腎機能などの低下を考慮し、「少量開始」「徐々に増量」などの注意が記載され、相互作用の影響や重複処方への注意、OTC医薬品などとの併用への注意、急性期・療養期・慢性期での見直しが示されている。【6.服薬支援】 服薬アドヒアランス低下の要因として「視力低下」「認知機能の低下」「独居」などの例示とともに、処方や服薬支援の工夫が記載されている。【7.多職種・医療機関および地域での協働】 多職種連携の重要性だけでなく、地域の薬局、介護サービスとの協働の必要性が示されている。【8.国民的理解の醸成】 薬剤の適正な使用法の啓発について記載されている。【9.参考資料】 薬剤別の高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意の詳細、とくに慎重な投与を要する薬物のリスト、加齢に伴う薬物動態および薬力学の変化などが詳細に記載されている。

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第323回 財務省、「春の建議」で「医学部・歯学部・薬学部の大胆な定員削減」「医療法人の業務範囲の拡大」を提言

財源問題先送りの骨太原案に市場が動揺こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。6月30日に政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案(あくまでもまだ原案)がまとまりましたが、昨年まで明記されていた「財政健全化」の文言が消えたことで、債券市場が大きく動揺、長期金利も約30年振りの高水準となっています。高市政権下での積極財政による財政悪化リスクを懸念して債券売りが広がっているのです。消費税の減税分を何で賄うかの問題も解決していません。戦略17分野への官民投資など、一見華々しい“成長戦略”をぶち上げる一方で、財源問題を先送りする高市政権、結局最後に割を食うのは社会保障費ということにならなければいいのですが……。70歳以上の患者自己負担割合については、「可及的速やかに現役世代と同様に原則3割とすべき」ということで、まだ原案段階の「骨太」の前に、今回は「建議」について書いてみたいと思います。財務省の財政制度等審議会は6月26日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に向けた「春の建議」を取りまとめ、片山 さつき財務相に提出しました。「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」と題された建議の「III.社会保障」の項では、社会保障負担率(国民所得に対する社会保険料負担の割合)を指標として、「具体的な数値目標と年限を明確に掲げるとともに、その達成に向けた社会保障改革の具体的な改革項目について、工程表を改めて作成すべき」と提言。そのうえで、ロードマップに沿った社会保障制度改革の着実な実施を通じ、家計可処分所得の持続的な増加につなげる必要性を指摘しました。中でも70歳以上の患者自己負担割合については、「可及的速やかに現役世代と同様に原則3割とすべき」「その実現に向けた具体的な道筋を明確に示すべき」としました。現行の患者自己負担割合は70歳未満は3割、70~74歳は2割、75歳以上は1割が原則となっています。財制審は患者自己負担割合を収入などの支払い能力ではなく年齢で決めるのは「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心の構造の象徴だ」と指摘、まず70~74歳を原則3割に引き上げ、75歳以上も経過措置を許容しつつ3割にすべきだと訴えました。70歳以上の患者自己負担割合については、自民党と日本維新の会も社会保障改革の論点の1つとして挙げており、維新は70歳以上を原則3割とするよう訴え、自民は慎重姿勢を示しています。ちなみに、6月30日にまとめられた骨太の方針の原案には、高齢者の患者自己負担については「原則3割負担」とは明記されておらず、「高齢者の受診行動や所得状況等を踏まえた窓口負担の見直しについて、令和9年度(2027年度)予算編成過程で結論を得る」とマイルドな表現になっています。「理系分野の高等教育を受ける人材配分の在り方として課題がないか、社会経済全体の発展・成長に向け検証が加えられるべき」「春の建議」には「秋の建議」と同様、財務省がその時点で考える医療制度のさまざまな改革案が盛り込まれます。時にはややエッジの効いた政策(診療報酬の地域別単価など)が記されることもあります。今回も、なかなか興味深い提案がいくつかありましたので、そのいくつかを紹介しておきましょう。「II.人口減少と不確実性の時代における総合的な国力の強化」の項では、「医学部・歯学部・薬学部の定員数の削減」を提言しています。建議は、「最新の医師需給推計によれば、2029年から2032年の間で需給が均衡することが見込まれており、医学部は6年制であることを踏まえると、現在の定員水準を維持した場合、医師数が過剰となることは既に確定的であり、医学部定員を計画的に削減していく必要がある」としています。そして、「歯科医師・薬剤師についても、2012年以降、国家試験の合格者数が平均で定員数の8割程度となっており、既に定員数が過剰な状況にある。歯科医師・薬剤師を更に増加させる必要性は乏しい」と断じ、「理系の学問分野間の人材配分の適正化の観点からも、医学部・歯学部・薬学部の大胆な定員削減に踏み切るべき」としています。建議ではまた、「医療分野への人材配分及び専門人材の効率的活用」も提言、理系の優秀な人材が医療分野に集中していることを、「人口減少が続く中で、特定の業種・分野に人材が偏ることは、他の業種・分野への専門人材の供給に影響を及ぼしていることが懸念される」と問題視しています。とくに医学部について、「足もとの医学部定員が今後も維持された場合、2050年には約85人に1人(1970年における割合の約5倍)が医学部に進学する見込みとされている。こうした状況について、理系分野の高等教育を受ける人材配分の在り方として課題がないか、社会経済全体の発展・成長に向け、希少な人材を最大限に有効活用する観点から検証が加えられるべきである」と、需給とは別の観点からも医学部・歯学部・薬学部の定員削減の必要性を説いています。「MCDBの報告項目の精緻化」は財務省が日本医師会と対峙していくための武器の強化「III.社会保障」の項では、「医療機関の経営情報の更なる『見える化』」を提言、とくに「MCDBの報告項目の精緻化」と「職種別給与の見える化」について言及しています。MCDBとは、「医療法人の経営情報のデータベース」のことです。建議では、2026年度診療報酬改定の検討においてMCDBが活用され、医療機関の施設類型ごとの費用構造や経営実態についてのデータ分析に基づき、きめ細やかな対応が実施されたことを評価、その上で、「次期改定において更に精緻な対応を行うためには、MCDBにおける必須報告項目の追加や細分化が必要である。また、医療機関の経営実態をより正確に分析する観点から、経営上特別な利害関係にある法人との取引についても把握することができるよう検討を行う必要がある」としています。一方、「職種別給与の見える化」については、医療機関の経営情報の「見える化」のコアとも言うべき、職員の職種別の給与・人数が現状、任意提出項目となっていることを問題視、「保険料・税を財源に運営される医療提供施設としての説明責任を果たすため、職種別の給与・人数の提出の義務化は必須である。このことは、今後、時代の要請である賃上げをよりきめ細かく科学的に行っていくのに必須であり、職種別の給与水準をより精緻に把握する観点から、記載対象項目の追加の検討も求められる」としています。財務省は、2026年度改定に向けた財政制度等審議会の議論で、MCDBのデータを活用し医療機関の経営実態を踏まえた改定の方向性を検討、「病院は経営がかなり厳しく、診療所は相対的に余裕があるところがある」という結論を導き出し、日本医師会を焦らせました(第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の「メリハリ」参照)。「MCDBの報告項目の精緻化」は、財務省が日本医師会と対峙していくための“武器”をより強化するための方策という見方もできるでしょう。「医療法人の業務範囲の拡大」に日医は慎重姿勢このほか、「III.社会保障」の項では「医療法人の業務範囲の拡大」も提言しています。建議は、「医療は公的財源で支えられており、効率的な医療提供には、地域や機能によっては『競争より協調』、『拡大より撤退』が求められる場面もあるため、医療法人の非営利性は担保されるべき」としつつも、「同時に、経営基盤強化の観点からも、医療法人による業務範囲の拡大は検討の余地がある。例えば、社会医療法人の認定要件の緩和や医療法人の収益事業を条件付きで可能とするなどの方策が考えられる」として、その検討を進めるべきだとしています。現状、社会医療法人には認められている収益事業を医療法人にも拡大していこうという案ですが、こうした収益事業への取り組みについて、日本医師会は「公益性の高い医療法人が収益拡大を優先すると、医療の公共性が薄れかねない」といった理由から慎重な姿勢をみせています。ただ、医業がさまざまな要因からこれだけ追い込まれている状況では、業務範囲を拡大して収益の幅を広げる分には歓迎すべきことだと思うのですが……。実際、かつて日本医師会の常任理事を務めていた関東地方のある医療法人理事長は、「医療法人の業務範囲を拡大してほしい」とよくこぼしていました。日医の慎重姿勢は医療の公共性への危惧というより、地方で限られた有力な医療法人だけが勢いづき、成長することへの恐怖からなのかもしれません。

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第301回 高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省

<先週の動き> 1.高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省 2.OTC類似薬の追加負担、対象外患者を定め2027年3月施行へ/厚労省 3.小児がん拠点病院を集約化、症例集積で医療の質確保へ/厚労省 4.高齢者の窓口負担3割化を提言、包括払い・病院再編も/財政審 5.ドクターヘリ運休相次ぐ、安定運航へ検討会設置/厚労省 6.長崎大病院など3病院、不急の救急搬送に選定療養費7,700円を徴収/長崎市 1.高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省厚生労働省は6月24日に開いた「高齢者医薬品適正使用検討会」で、高齢者のポリファーマシー対策を進めるため、医療従事者向けの普及啓発資材を公表した。多剤服用に伴う薬物有害事象、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などを防ぐため、「高齢者の医薬品適正使用の指針」や病院・地域での業務手順書の内容を分かりやすく整理したもの。主な対象は医師、歯科医師、薬剤師だが、看護師や介護職など多職種での活用も想定している。資材は指針の総論編、各論編のほか、病院向け、地域向けの計4種類。これまで本格的に取り組んでいなかった医療機関でも導入しやすいよう、イラストを多用し、文字量を抑えた構成としている。資材では、「ポリファーマシーとは、単に薬剤数が多い状態(多剤服用)ではなく、多剤服用に関連して有害事象や服薬困難などの問題が生じている状態を指す」としている。高齢者では、加齢に伴う腎機能低下や薬物動態の変化、複数医療機関の受診、処方カスケードなどにより形成されやすい。病院向け資材では、対策開始時の留意点として、剤数だけに着目せず、安全性や治療効果、患者の生活状況を踏まえて処方内容を適正化する必要性を強調した。対象患者を優先順位付けし、小規模から始めること、担当者を明確にして情報を一元化すること、多職種の役割分担を整理することが実践の鍵となる。薬剤服用後の体調不良が疑われる外来患者には受診や相談を促す。実務上は、「お薬手帳」を活用した処方・調剤情報の一元管理に加え、患者の日常生活動作や認知機能、栄養状態、生活環境、服薬管理能力などを総合的に評価することが重要となる。併せて、腎機能や薬物相互作用、同効薬の重複、一般用医薬品やサプリメントの使用状況も確認する。ふらつき、転倒、せん妄、食欲低下、便秘、排尿障害などが出現した場合は、薬剤起因性も疑う。薬剤を見直すときは、中止・減量・変更後の病状悪化や代替薬による有害事象にも注意が必要となる。2026年度の診療報酬改定では、病棟薬剤業務実施加算の見直しにより、ポリファーマシー対策や退院時薬剤情報連携が一層重視されている。薬剤総合評価調整加算などの実績向上にもつながる可能性があり、薬剤部門だけでなく、入退院支援、病棟看護、地域薬局、かかりつけ医を含めた組織的な取り組みが求められる。資材では、剤数だけに着目せず、安全性確保などを踏まえた処方内容の適正化が必要であると強調されている。 参考 1) 第22回 高齢者医薬品適正使用検討会 資料(厚労省) 2) 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)(同) 3) 高齢者の医薬品適正使用の指針 総論編の概要 普及啓発資材(同) 4) ポリファーマシー対策 普及啓発資材を公表 適正使用指針などの説明で活用 厚労省(CB news) 5) ポリファーマシー対策の始め方と進め方の普及啓発ツールが公表。薬剤総合評価調整加算等の実績向上が期待される(HCナレッジ) 2.OTC類似薬の追加負担、対象外患者を定め2027年3月施行へ/厚労省厚生労働省は6月25日、市販薬と成分や効能が似る「OTC類似薬」について、患者に薬剤費の一部追加負担を求める新制度の具体化に向けた有識者検討会の初会合を開いた。新制度は2027年3月の施行を想定し、対象薬剤の薬剤費の4分の1を保険給付から外し、「特別の料金」として通常の1~3割負担に上乗せする。対象は、ロキソニン錠やアレグラ錠、保湿剤、湿布などを含む77成分、1,066品目を機械的に選定した案が示されており、今後効能・効果を踏まえて整理される。制度の目的は、OTC医薬品で対応している患者との公平性を確保し、現役世代を中心とする保険料負担の上昇を抑えることにある。ただし、必要な受診を妨げないよう、追加負担を求めない患者や療養の範囲が大きな論点となる。厚労省案では、高校生年代までの子供、低所得者、入院患者、がん患者や指定難病患者など配慮が必要な慢性疾患患者は対象外とする方向。入院中の処方は退院時処方を含めて追加負担を求めない。がんについては、治療中または治療開始に向け継続診療中の患者や、副作用対策に用いる薬は除外する一方で、治療終了後の経過観察のみの場合や、がんと直接関係しない症状への処方は追加負担を求める方向である。長期使用が医療上必要なケースも除外候補で、内服薬は年間処方日数がおおむね50週以上、外用薬は、塗布剤・貼付剤・点眼剤・点鼻剤・吸入剤などについて、医師が毎日の塗布や貼付など日常的使用を指示している場合を目安とする。厚労省は今後、77成分ごとに医療用医薬品とOTC医薬品の効能・効果の違いを整理し、代替性の有無を検討する。検討会は8月ごろに中間整理を行い、医療保険部会や中医協での議論、患者団体ヒアリングを経て、秋ごろの取りまとめを目指す。医療現場では、対象外となる医学的必要性をどのように判断・記録するかが実務上の焦点となる。 参考 1) 一部保険外療養の施行に向けて(厚労省) 2) 負担対象OTC類似薬議論 除外条件も、厚労省(東京新聞) 3) OTC類似薬の追加負担、がん・通年処方は対象外 厚労省が案提示(日経新聞) 4) 日常使用の湿布は負担対象外 OTC類似薬の新制度-厚労省会議(時事通信) 3.小児がん拠点病院を集約化、症例集積で医療の質確保へ/厚労省厚生労働省は6月23日に開かれた「小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」で、小児がん診療提供体制の見直し案を示し、大筋で了承を得た。少子化に伴い小児がん患者数の減少が見込まれる中、高難度医療、希少がん診療、再発・難治例への集学的治療、国際共同治験などを担う施設に症例を集積し、医療の質を維持・向上させる狙い。現在全国15ヵ所の「小児がん拠点病院」は、10ヵ所程度に集約化する方針で、8月上旬までに整備指針を改定する。新たな小児がん拠点病院は、高度専門医療に加え、ドラッグ・ラグ/ロスの解消や新規治療開発への貢献も求められる。診療実績要件は、再発時の紹介を含む年間新規症例数30例以上に加え、年間手術数10例程度を新設する。放射線療法については、自施設で提供できない場合も他施設と連携して提供できる体制を要件化する。医師以外のスタッフの配置も見直し、細胞診断業務に携わる人員について「1人以上必要な数」の配置を求める方向。国立成育医療研究センターと国立がん研究センターは、引き続き小児がん中央機関として、中央診断体制や国際共同治験、医療技術開発を牽引する。その一方で、集約化による患者・家族の医療アクセス低下を防ぐため、新たに「都道府県小児がん拠点病院」を各都道府県に原則1ヵ所整備する。小児がん拠点病院と連携しながら標準的治療を提供し、標準治療が確立していないがんや再発・難治例では診療情報を共有し、必要に応じて専門施設へ紹介する。専門治療後や病状安定後には、地域医療機関へ円滑に逆紹介する体制も求められる。指定要件は、年間新規症例数20例以上、または都道府県内の小児がん年間新規症例の原則半数以上を診療していることとする。現行の小児がん連携病院145ヵ所は「小児がん連携医療機関」に見直され、病院だけでなく診療所も参加可能となる。標準的治療、特定がん種への対応、長期フォローアップ、移行期医療、在宅医療などを担う体制を整える。今後、全国小児がん拠点病院等連絡協議会と都道府県小児がん診療連携協議会を設け、広域・地域双方の課題を協議する。新たな指定類型は2027年4月から適用される見通し。 参考 1) 第5回 小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(厚労省) 2) 小児がん拠点病院を集約化して医療の質を確保し、患者・家族の医療アクセス確保にも配慮する-小児がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 3) 小児がん拠点病院 10ヵ所程度に集約化へ 8月上旬までに整備指針改定 厚労省(CB news) 4) 「小児がん拠点病院」集約化へ 患者減見据え10ヵ所程度に(MEDIFAX) 4.高齢者の窓口負担3割化を提言、包括払い・病院再編も/財政審財務省の財政制度等審議会は6月26日、「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」と題する建議を片山 さつき財務相に提出した。建議は、日本経済がデフレ型から供給制約型へ移りつつあるとし、「強い経済」には未来投資と実質賃金上昇による投資と賃上げの好循環が不可欠とした。その一方で、金利上昇局面では財政資源も制約下にあり、補正予算依存から脱却し、恒常的施策は当初予算で措置する改革の実効性と財政規律の両立を求めた。高市政権が掲げる「責任ある積極財政」や、債務残高対GDP比の安定的低下を中核目標とする方針についても、成長頼みでは市場の信任を損ないかねないとして、利払い費を含む財政収支の管理を促した。医療・介護分野では、現役世代の保険料負担を抑えるため、社会保障負担率に数値目標と年限を設け、改革工程表を作成すべきだと提言した。医療では「患者アクセスの保障」と「負担抑制」のバランスを掲げ、70歳以上の患者自己負担を可及的速やかに原則3割へ引き上げることを求めた。70~74歳を一律に高齢者扱いする現行の線引きの見直し、75歳以上への経過措置、外来特例の廃止、特定疾病制度の検証・見直しも論点とした。さらに、建議では、医療機関を受診する際の窓口業務のコスト(保険証確認や会計など)について、診療行為そのものではなく、初・再診料で評価する必然性は乏しいとして、保険給付外サービスとして患者に請求できる仕組みの検討を求めた。医療の提供体制については、小規模分散型の病院・診療所では人材不足下の効率化に限界があるとして、病院の集約・再編、地域医療連携推進法人の活用、外来機能の統合・大規模化、かかりつけ医機能強化を提起した。診療報酬についても、入院・外来診療ともに、出来高払い中心からアウトカム評価と包括払い中心へ移行し、医療DXで少ない人員でも質を保つ体制を後押しすべきだとした。あわせて、医療法人の経営情報の見える化、医療機関の職員の職種別給与・人数の提出義務化、医療法人の業務範囲拡大、2027年度薬価改定の完全実施、後期高齢者医療制度の都道府県化や金融所得を含む応能負担の徹底も盛り込んだ。医療界にとっては、患者負担増だけでなく、報酬体系、病院再編、経営情報開示まで含む包括的な制度転換の予告と受け止める必要がある。 参考 1) 人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営(財務省) 2) 「強い経済」へ投資と賃上げ循環 予算編成改革、実効性確保を-財政審建議(時事通信) 3) 70歳以上の医療費窓口支払い「速やかに3割負担を」財制審が意見書(日経新聞) 4) “高齢者も病院窓口負担を原則3割に” “大学は現在の半分程度まで縮減を” 財政制度等審議会が片山さつき財務大臣に意見書(TBS) 5) 診療報酬をアウトカム評価中心の包括払いに 財政審、入院・外来共に(CB news) 5.ドクターヘリ運休相次ぐ、安定運航へ検討会設置/厚労省厚生労働省は、東京や関西などでドクターヘリの運休が相次いでいることを受け、安定的な運航体制の確保に向けた検討会を7月中に立ち上げる。上野 賢一郎厚生労働相が6月26日の閣議後記者会見で明らかにした。検討会には医療関係者、航空関係者、自治体担当者、有識者などが参加し、救急医療搬送体制の在り方や国の関与、財政支援、人材確保策について議論する。ドクターヘリは、救急医療機器を搭載し、専門医と看護師が搭乗して現場に向かうことで、重症患者への早期医療介入と迅速搬送を担う。上野厚労相は「全国各地の救急医療体制を確保する上で極めて重要な役割を果たしている」と述べ、持続可能な運航体制の構築が急務との認識を示した。運休の背景には、運航事業者における整備士不足がある。東京や兵庫などでは昨年以降、整備士を確保できないことによる運航停止が発生しており、自治体からも国の対応を求める声が上がっている。加えて、公共ヘリの操縦には高度な技量と経験が必要で、操縦士の高齢化も課題となっている。ドクターヘリの操縦士は50歳以上が7割超を占め、2030年以降には毎年10人以上が不足するとの見通しもある。国土交通省も航空大学校を活用した若手操縦士の養成や、シミュレーター活用による飛行経験要件の見直し、養成費支援を進める方針。検討会では、医療現場と航空運航の双方の実情を踏まえ、財政支援、人材育成、整備士・操縦士の確保を含めた具体策を検討する。 参考 1) ドクターヘリ検討会設置へ 運休受け、安定運航議論(共同通信) 2) 整備士不足で運休相次ぐ「ドクターヘリ」 安定運航へ厚労省が検討会を立ち上げ(テレビ朝日) 3) 関西などドクターヘリ運休 7月中にも検討会立ち上げ 厚労省(NHK) 4) ドクター・防災ヘリ念頭…国交省、航空大で操縦士養成の背景(ニュースイッチ) 6.長崎大病院など3病院、不急の救急搬送に選定療養費7,700円を徴収/長崎市長崎市内の3病院は7月1日から、緊急性が認められない症状で救急搬送された患者に対し、選定療養費7,700円を徴収する。対象は長崎みなとメディカルセンター、長崎大学病院、日赤長崎原爆病院で、いずれも200床以上の急性期病院として脳卒中、心筋梗塞、重症外傷などに対応する役割を担う。これまで救急搬送では紹介状なし受診に伴う選定療養費の徴収対象外としていたが、救急車要請時の緊急性が医師により認められない場合に負担を求める運用へ改める。背景には、救急搬送件数の増加と大病院への軽症患者集中がある。長崎市消防局管内では、2022年度以降の救急搬送が2万5,000件超で高止まりし、医療機関の応需率は2019年度の80.7%から、近年は60%台前半まで低下している。長崎みなとメディカルセンターでは2023年度の救急搬送3,987人のうち36%が軽症だった。市消防局が病院へ11~20回問い合わせた搬送事例も、2019年度の2件から2024年度には109件へと急増しており、搬送先選定の長期化が問題となっている。同センター救命救急センターは年間約4,200台の救急車と約4,500人のウォークイン患者を受け入れる。輪番日の夜間は救急医1人、研修医4人、看護師5人で対応する体制だが、午後5~7時ごろに搬送が集中し、初療室5床が短時間で埋まることもある。早川 航一センター長は、安易な救急車利用の抑制により、真に緊急性の高い患者の治療時間と病床を確保する必要性を強調している。その一方で、制度運用には課題も残る。第三者が救急車を呼んだ場合や観光客でも、緊急性がないと判断されれば徴収対象となる一方で、警察など公的機関からの要請は原則対象外とされる。徴収判断は医師がガイドラインに基づき行うが、病院間で判断に差が出れば不公平感につながりかねない。救急車の有料化ではなく、救急医療資源を守る施策として位置付けつつ、個別事例の検証や市民への周知が不可欠となる。救急車を呼ぶか迷う場合は、救急安心センター「#7119」の活用も促されている。 参考 1) 救急搬送における選定療養費について(長崎市) 2) 不急の救急搬送に長崎市内の3病院が7月から特別料金、救急車の適正利用が狙い…「緊急性」線引きに課題も(読売新聞) 3) 「これ以上は危うい…」長崎県内最多の救急搬送患者を受け入れる救命救急センター、切迫する最前線の現状(長崎新聞) 4) 「とりあえず救急車」の前に…7月1日~長崎市の3病院で「救急搬送における選定療養費徴収」スタート 迷ったときは?(長崎放送)

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糖尿病患者の治療薬、残歯数と周術期死亡の関連/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第69回年次学術集会(会長:下村 伊一郎氏[大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授])が、5月21~23日の日程で、大阪国際会議場、リーガロイヤルホテル大阪をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「IMAGINE いのち輝く 糖尿病の医療・医学を共に目指して」をテーマに、41のシンポジウム、143の口演、ポスターセッション、会長特別企画による講演、特別企画「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 近年、口腔内の衛生状態が糖尿病や心不全をはじめとするさまざまな疾患と関連することが知られている。糖尿病患者では、治療薬と残歯数は手術後の死亡リスクに関係するのであろうか。この課題について尾崎 邦彰氏、高橋 裕氏ら(奈良県立医科大学糖尿病内分泌内科学講座)の研究グループは、同公衆衛生学教室との共同研究により、口演52「大規模臨床試験」において「糖尿病薬の周術期死亡リスクへの影響は残歯数によって異なる:レセプトビッグデータ解析」をテーマに発表を行った。 研究グループは、大規模レセプトデータを調査・解析し、その結果、一定の糖尿病治療薬と残歯数は手術後の死亡率と相関していることが判明した。糖尿病患者の口腔ケアは周術期の死亡リスクを減らす可能性 高橋氏らの研究グループは、糖尿病と残歯数はともに周術期リスクとなるが、同一コホートで検討した報告がないことから、周術期死亡に対して糖尿病治療薬と残歯数が与える影響を検討した。 研究は後方視的研究により1,700万人登録の商用DeSCデータベース(国民健康保険、後期高齢者医療広域連合および健康保険組合より提供されたレセプト情報・特定健診情報が含まれている)を使用した。対象者は18歳以上で全身麻酔下の手術が行われた人で、主要アウトカムは術後30日以内の死亡、副次的な解析として糖尿病治療薬と手術後死亡との関連、および残歯数について検討した。糖尿病の定義は、手術前6ヵ月以内に糖尿病治療薬が処方された人。 主な結果は以下のとおり。・手術を受けた対象者は124万1,425例、そのうち歯の本数の情報がある対象者は56万1,515例だった。このうち術後30日以内の死亡は3,414例だった。・対象者のプロフィールとして、糖尿病群では高齢、男性の割合が高く、死亡割合も高かった。・残歯数について、死亡者では糖尿病群と比べて約1.7本少なく、平均では残歯数20本の人が多かった。・残歯数23本以下では糖尿病患者が多く、残歯数26本以上では非糖尿病患者が多かった。・糖尿病を有することで死亡割合は約1.85倍に増加した。・糖尿病の有無によらず、残歯数が少ないほど死亡割合も増加していた。・手術後死亡の関連因子では、インスリン使用、加齢、残歯数の減少が死亡リスクの増加と関連していた。・層別化すると残歯数20本以上の群ではビグアナイド薬の使用が、20本未満の群ではチアゾリジン薬の使用が死亡リスクの低下と関連していた。 研究グループは、これらの結果から「糖尿病の罹患が周術期後の死亡の増加と関連し、残歯数も少なくなることとも関連することが判明した。また、残歯数が少ないことが周術期後の死亡の増加と関連することも判明した。糖尿病患者には、診断時から口腔(歯)への介入が推奨されている一方で、歯科受診は半分に満たないという報告もある。そして、糖尿病患者で残歯数20本未満の68歳の死亡リスクは、糖尿病ではない残歯数20本以上の80歳の死亡リスクと同等であることが示された。加齢、糖尿病の存在、残歯本数の減少はそれぞれが関連しながらも独立して死亡リスクと関連した。これらの結果から糖尿病患者には、歯の喪失に関連して、比較的若年であっても高齢者に相当するリスクを有するため、適切な歯科的介入の重要性が示される」と述べている。

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第300回 従来の保険証の暫定措置7月末で終了へ 窓口・救急対応で混乱防止を/厚労省

<先週の動き> 1.従来の保険証の暫定措置7月末で終了へ 窓口・救急対応で混乱防止を/厚労省 2.電子処方箋の導入促進へ 7月14日に医療機関・薬局向け説明会/厚労省 3.診療情報共有、チャットでは不可 DX関連加算の要件を明確化/厚労省 4.診療所にもサイバー対策調査へ 7月からG-MISで実態把握/厚労省 5.介護保険法改正が成立 人口減少地域と身寄りなし高齢者支援を強化/厚労省 6.成年後見制度が「終われる制度」へ 退院支援にも対応求められる/国会 1.従来の保険証の暫定措置7月末で終了へ 窓口・救急対応で混乱防止を/厚労省厚生労働省は6月18日に開催された社会保障審議会医療保険部会で、マイナ保険証の利用状況と、従来の健康保険証に関する暫定措置を7月末で終了する方針を示した。2025年12月に従来の保険証は廃止され、マイナ保険証または資格確認書による資格確認が原則となっていたが、期限切れの保険証を持参した患者についても、医療機関側で被保険者番号などを確認できる場合は3割などの通常負担で受診を認める暫定運用が続いていた。これが8月以降は終了し、受診時にはマイナ保険証か資格確認書の持参が必須となる。4月のマイナ保険証利用率は68.15%だった。施設別では病院68.50%、医科診療所71.16%、歯科診療所71.52%、薬局63.29%で、昨年12月以降は6割台で推移している。 その一方で、加入者に占める利用登録割合は全保険制度で7割を超え、共済組合84.6%、健康保険組合83.7%、後期高齢者医療75.8%などとなった。マイナンバーカード保有率も8割を超えており、制度は移行期から本格運用の段階に入ったといえる。医療機関にとって重要なのは、8月以降の窓口混乱への備えである。厚労省は保険者、医療機関、薬局向けにリーフレットを配布し、SNSや福祉関係団体を通じて周知する。とくに高齢者、障害者、施設入所者、在宅患者では、本人がマイナ保険証を持参できない、資格確認書の所在がわからない、家族や施設職員が制度変更を十分に把握していないといった事態が想定される。外来受付だけでなく、救急外来、入退院支援、訪問診療部門でも、患者・家族への早期案内が必要である。関連して、スマートフォン搭載のマイナ保険証利用も広がっている。対応施設は約12.5万、スマホ搭載件数は約800万件に達し、訪問診療・訪問看護で用いるマイナ資格アプリでも読み取りが可能となった。さらに令和8年度からは、スマホ読み取りや音声案内、顔認証エラー低減に対応した第2世代顔認証付きカードリーダーの導入も進む。救急領域では、救急隊がマイナ保険証から受診歴や薬剤情報を確認する「マイナ救急」の本格運用が始まっている。吐血患者で食道静脈瘤手術歴を推定できた事例、意識障害患者で抗てんかん薬の処方歴を把握できた事例など、病歴聴取が困難な場面で搬送先選定や初期対応に役立つ可能性が示された。制度変更は事務手続きにとどまらず、医療安全、救急医療、地域医療DXの基盤整備として捉える必要がある。 参考 1) マイナ保険証の円滑な利用について(厚労省) 2) マイナ保険証の最新利用率68% 7月末に暫定措置の終了「早期切り替えを」厚労省(テレビ朝日) 3) 8月から「マイナ保険証」か「資格確認書」必須に 期限切れた保険証でも保険診療認める「暫定措置」終了へ(東京新聞) 4) マイナ保険証、4月の利用率は68% 従来の保険証は7月末で完全終了(日経新聞) 5) マイナ保険証、病院の利用率68.50% 4月 医科診療所は71.16%(CB news) 2.電子処方箋の導入促進へ 7月14日に医療機関・薬局向け説明会/厚労省厚生労働省は、電子処方箋の導入・利用促進に向けたオンライン説明会を7月14日午後7~8時で開催する。名称は「令和8年度電子処方箋オンライン説明会~診療報酬改定でどう変わる? 業務・経営面のポイントを解説~」(視聴先URL)。医療機関や薬局を対象に、YouTubeでライブ配信し、参加登録は不要となっている。説明会後には、アーカイブ動画と説明資料を厚労省ウェブサイトに掲載する予定。説明会では、電子処方箋導入による医療安全や業務効率化のメリットに加え、導入補助金、2026年度診療報酬改定での位置付けを解説する。未導入施設だけでなく、すでに電子処方箋システムを導入した施設も対象としており、運用開始後の業務や経営上のポイントを確認できる内容となる。2026年度の診療報酬改定では、従来の医療DX推進体制整備加算などが整理され、新たに電子的診療情報連携体制整備加算が設けられた。同加算では、オンライン資格確認、マイナ保険証利用率、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなどが施設基準に関わる。疑義解釈では、当面の間、2名以上、常勤医師が1名のみの場合は1名以上の常勤医師が電子処方箋を発行できればよいことや、院外処方では電子処方箋の発行に加え、引換番号付き紙処方箋を発行し、処方情報を登録する運用でもよいことが示されている。その一方で、電子処方箋の導入には、システムの改修、HPKIカード、電子署名環境、院内運用ルールの整備が必要となる。導入補助金を活用した準備も求められる。医師にとっては、処方入力後の確認手順、重複投薬・併用禁忌チェック、薬局との情報連携、紙処方箋との併用時の運用整理が実務上の焦点となる。電子処方箋は、単なる処方箋の電子化ではなく、医療DX関連加算や地域医療連携、薬剤情報の共有と一体で進む仕組みである。各医療機関では、説明会を機に、自院の導入状況、常勤医師の利用体制、薬局との連携、補助金活用の可否を確認しておきたい。 参考 1) 電子処方箋の運用開始や導入準備に関するオンライン説明会(厚労省) 2) 令和8年度電子処方箋オンライン説明会の実施について(同) 3) 電子処方箋オンライン説明会「改定でどう変わる?業務・経営面のポイント」(ドラビズオンライン) 3.診療情報共有、チャットでは不可 DX関連加算の要件を明確化/厚労省厚生労働省は6月17日、2026年度診療報酬改定に関する疑義解釈資料(その8)を示し、新設項目を中心に算定上の取り扱いを明確化した。医療機関、とくに医師の実務に影響が大きいのは、医療DX関連加算、心不全管理、在宅医療、リハビリ・摂食嚥下、精神科、訪問看護などである。まず、電子的診療情報連携体制整備加算では、施設基準にある「地域の複数医療機関で検査結果や画像情報等を含む診療情報を共有・閲覧できるネットワーク」の考え方が整理された。厚労省は、診療情報提供料Iの検査・画像情報提供加算または電子的診療情報評価料の施設基準を満たし、電子カルテ情報を参加医療機関が随時閲覧できるネットワークであることが必要と明示した。単にチャットやメーリングリストで日々の報告や一部情報を共有するサービスでは要件を満たさないとした。さらに地域連携ツールを使っている医療機関は、実際に検査、画像、投薬、注射、退院時要約などを共有・閲覧できる体制か、アクセスログを含め確認が必要となる。電子処方箋については、当面、2名以上、常勤医師が1名のみの場合は1名以上の常勤医師が電子処方箋を発行できればよいとの扱いが再確認された。常に電子処方箋を発行する必要まではなく、引換番号付き紙処方箋を発行し処方情報を登録する運用でもよい。また、電子処方箋システムを導入済みで利用申請も行ったが、HPKIカード取得待ちの場合は、当面、接続インターフェース要件を満たすとされた。心不全再入院予防継続管理料では、心不全再入院予防チームに薬剤師や理学療法士が所属してよく、研修修了が望ましいとされた。管理料1・2を届け出る病院は、地域に管理料3を算定する医療機関がない場合でも研修会を開催する必要があり、二次医療圏の医療機関に広く参加や連携を呼びかけることが求められる。在宅CPAPでは、海外赴任などやむを得ない事情で3ヵ月以上中断し、再開時期が事前にわかる場合、再開時は開始後3ヵ月以内と同様に扱える。ただし中断理由を診療録に記載する必要がある。在医総管・施設総管の新規届出では、初回届出時はいったん基準該当として差し支えないが、その後は定期的な確認と届出が必要である。このほか、身体的拘束最小化推進体制加算は2026年度中の届出に限り、講習・委員会の開催予定を添付すれば1年間要件を満たす扱いとなるが、講習会の開催などの要件を満たさない場合には、直ちに届出を取り下げることが必要になる。さらに摂食嚥下支援計画の説明者、心理支援加算の再算定、認知行動療法の医師要件、脳血管内治療やてんかん手術の適正使用指針も明確化された。訪問看護では紹介料などによる利用者誘導の禁止が明記されたため、医療機関側も連携先の選定や患者紹介の透明性に注意が必要となる。 参考 1) 疑義解釈資料の送付について(その8)(厚労省) 2) 電子的診療情報連携体制整備加算、心不全再入院予防継続管理料、物価対応料等の詳細明確化-疑義解釈8(Gem Med) 3) 診療情報の共有、「チャット」では要件満たせず 新設のDX関連加算(MEDIFAX) 4) 26年度改定・疑義解釈資料(その8)医療DXの新加算、診療情報共有でチャットは対象外(CB news) 4.診療所にもサイバー対策調査へ 7月からG-MISで実態把握/厚労省厚生労働省は、医療情報システムのサイバーセキュリティ対策に関する実態調査を、従来の病院中心から診療所へ拡大する。医政局医療情報担当参事官室が6月15日付で事務連絡を発出し、医療機関等情報支援システム(G-MIS)を利用している診療所を対象に、7月6日~8月21日まで調査を実施する。回答は6月末時点の状況について求められ、医療情報システム安全管理責任者の設置、サイバー攻撃等を想定したBCP策定と訓練、サーバ・端末・ネットワーク機器の台帳管理、職員研修、電子カルテ利用の有無などを確認する。背景には、医療機関を狙うランサムウェア被害の増加がある。過去には徳島県の半田病院、大阪急性期・総合医療センター、岡山県精神科医療センターなどで、保守用VPNや外部委託業者の接続点を経由した攻撃により電子カルテが停止し、診療継続に大きな影響が出た。厚労省でも、中・大規模病院では外部ネットワーク接続点を網羅的に把握できていないことが課題とされ、病院調査では情報システム部門の人員不足、CSIRT未整備、二要素認証の遅れなどが明らかになっている。政府でも、AIを悪用したサイバー攻撃への警戒が強めている。高性能AIにより脆弱性の発見が高速化すれば、医療機関の未更新機器や外部接続点が狙われるリスクはさらに高まる。日本医師会も、医療機関は知識・人材・財源が不足しており、対策は自己責任ではなく地域医療を守る社会インフラ投資として支援すべきだと訴えている。医療法施行規則では、病院、診療所、助産所の管理者にサイバーセキュリティ確保のため必要な措置を講じる義務が位置付けられている。今回の診療所調査は、地域医療の足元にあるリスクを可視化し、チェックリストや安全管理ガイドラインに基づく具体的支援につなげる狙いがある。医療DXの前提として、院長・管理者主導のサイバーセキュリティ体制の確認が急務となる。 参考 1) 令和8年度診療所における医療情報システムのサイバーセキュリティ対策に係る調査について(厚労省) 2) 診療所のサイバー対策、実態調査へ 厚労省(MEDIFAX) 3) サイバー攻撃は激化、医療機関等は「チェックリスト」用いて自院のセキュリティ対策の再確認を-医療等情報利活用ワーキング(2)(Gem Med) 4) 医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策の課題等を共有(日医オンライン) 5.介護保険法改正が成立 人口減少地域と身寄りなし高齢者支援を強化/厚労省人口減少と高齢単身世帯の増加を背景に、介護保険法、社会福祉法、老人福祉法などの改正法が6月19日、参院本会議で可決・成立した。今回の改正は、医療機関にも退院支援、在宅療養調整、施設入所支援に直結する内容である。柱の1つは、中山間地域など人口減少地域で介護サービスを維持するための「特定地域サービス」の創設である。介護人材の確保が難しく、訪問に時間を要する地域では、全国一律の人員配置基準や出来高払いでは事業継続が困難になっていた。改正後は、対象地域に限って職員配置基準を弾力化し、訪問系サービスでは月単位の定額報酬も選択可能とする。これでも提供体制の維持が難しい場合には、介護保険財源を用いて市町村が居宅サービスなどを実施できる仕組みも設けられる。厚労省は今後、対象地域や基準を議論し、2027年度の導入を目指す。もう1つの重要な点は、頼れる身寄りのない高齢者への支援拡充である。これまで主に判断能力が不十分な人を対象としてきた金銭管理などの支援を広げ、入院・入所手続き、日常生活支援、葬儀・納骨・家財処分などの死後事務まで、地域の支援機関が担えるようにする。国の推計では2040年に単身高齢者世帯は1,000万世帯を超える。医療現場では、保証人の不在、退院先調整、死亡後の対応が大きな課題であり、地域包括支援センターや社会福祉協議会などとの連携がより重要になる。有料老人ホームについては、住宅型有料老人ホームなどで指摘されてきた「囲い込み」対策として登録制を導入する。入居者に同一・関連法人の介護サービス利用を求めること、ケアマネジャーやかかりつけ医の変更を強いることなどを防ぎ、ケアマネジメントの独立性を確保する狙いがある。医師が施設入所後の療養方針や訪問診療先を確認する際にも、患者本人の選択権が守られているかを意識する必要がある。このほか、ケアマネジャー資格の更新制は廃止される。ただし、研修受講は義務として残り、オンデマンド化や時間短縮で負担軽減を図る。夜間対応型訪問介護は、機能が重なる定期巡回・随時対応型訪問介護看護へ統合される方向である。今回の改正は、介護サービスを「全国一律」から「地域の実情に応じて維持する」方向へ転換するものといえる。病院側には、退院支援の早期介入、身寄りなし高齢者の意思決定支援、施設紹介時の透明性確認など、医療と介護の接点での実務対応が求められる。 参考 1) 改正社会福祉法など成立 身寄りない高齢者支援拡充 参院本会議(NHK) 2) 介護保険法が成立 人口減少地域のサービス維持へ基準を緩和(朝日新聞) 3) ケアマネ資格の更新制の廃止が正式決定 改正介護保険法が成立 研修受講は義務に オンデマンド化で負担減へ(Joint) 4) 介護保険法改正で有料老人ホームの“囲い込み”や人口減少地域の介護はどう変わる?専門家に聞いた3つのポイント(ジョブメドレー) 5) 国会審議中の2027年度介護保険法改正法案のポイント(メディカルサポネット) 6.成年後見制度が「終われる制度」へ 退院支援にも対応求められる/国会認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人を支える成年後見制度を抜本的に見直す改正民法が6月17日、成立した。現行制度では、1度利用を始めると本人の判断能力が回復しない限り原則として死亡まで継続し、後見人には包括的な代理権や取消権が与えられる。このため、本人の意思決定を過度に制限する、報酬負担が長期化する、必要な場面だけ使いにくいといった批判があった。改正後は、制度を「必要なときに、必要な範囲で」使える仕組みに改める。現在の後見、保佐、補助の3類型は、後見人と保佐人を廃止して補助人に一本化する。補助人の権限は、遺産分割、不動産売却、施設入所契約、預貯金管理など、本人に必要な個別行為ごとに家庭裁判所が判断する。必要がなくなれば途中終了でき、本人の利益のためとくに必要な場合は、不正がなくても補助人の交代が可能になる。補助人には年1回の家裁への状況報告も義務付けられる。医療現場では、認知症の高齢者や身寄りのない患者の入退院手続き、医療費の支払い、施設入所、相続・財産管理をめぐり成年後見制度が関わる場面が多い。今後は、単に「後見人を立てる」発想ではなく、患者本人の意思を確認し、どの法律行為にどの程度の支援が必要かを整理することが重要になる。退院支援では、地域包括支援センター、社会福祉協議会、法律専門職、行政との連携がより求められる。報酬面でも見直しが入る。これまでは本人の資産額が報酬判断で大きな比重を持っていたが、改正後は支援する事務の内容や難易度をより重視する方向となる。短期間・限定的な利用が可能になれば、利用者負担の軽減につながる可能性がある。その一方で、制度終了後の生活支援、金銭管理、意思決定支援を誰が担うのかは残された課題である。単身高齢者の増加を踏まえ、成年後見制度の改正は、医療と福祉が地域で本人を支える体制作りを迫るものといえる。 参考 1) 成年後見制度の見直し 改正民法などが成立 参院本会議(NHK) 2) 成年後見大改正「終われる制度」に 利用者が払う報酬どう変わる?(朝日新聞) 3) 「死ぬまで継続」廃止へ 成年後見制度見直し 背景に単身世帯増(毎日新聞) 4) 成年後見、終身利用を見直し 改正民法が成立、デジタル遺言導入(時事通信) 5) 財産管理の成年後見、途中終了・交代しやすく 改正民法が成立(日経新聞)

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調剤報酬改定で門前・医療モール薬局が狙い撃ちに【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第171回

2026年度の調剤報酬改定が6月1日から施行されました。今回、全体的にみるとプラス改定といわれていますが、そのほとんどが賃上げや物価対応分であり、医科・歯科・調剤についてはほとんど横ばいと言えるのではないかと思います。調剤基本料については、多くの薬局が算定していた調剤基本料1は45点→47点にという感じで、他の調剤基本料も1~2点引き上げられました。その一方で、「門前薬局等立地依存減算」(▲15点)という厳しい減算項目が新設されています。2015年に「患者のための薬局ビジョン」が策定され、10年以上が経ちましたが、特定の医療機関からの処方箋が集中する門前薬局が都市部で増え続けている問題は解消されていません。今回の減算は、処方箋の枚数をさばくことに重点を置いた、立地に依存する経営構造からの脱却と薬剤師の職能発揮を促進する観点から新設されました。減算対象が気になるところですが、これは「新規開設する保険薬局」を対象としており、都市部における門前薬局や医療モールなどへの新規出店に対して適用されます。ゾッとした人も少なくないかもしれませんが、措置期間が設けられており、2026年5月末時点ですでに保険薬局の指定を受けている薬局については、「当面の間、門前薬局等立地依存減算の対象外」としています。「当面の間」がどのくらいを指すのかはわかりません。1枚につき15点(150円)のマイナスというと、1日100枚の薬局では25日稼働で37万5,000円、1日200枚の薬局では75万円のマイナスになります。これが、どの程度の抑止力になるのか、動向を見守りたいと思います。減算なしの場合はプラス算定になるわけですから、今回の基本料の設計については、面分業に取り組む薬局には加算、立地に依存する薬局には減算、という明確なメリハリがつけられた形となります。薬局の場所を変更することは難しいとしても、今のうちから面の処方箋を獲得するなどして集中率を低下させる取り組みや対人業務の強化に取り組むことなどが重要です。また、かかりつけ薬剤師機能、在宅業務の仕組み化、地域支援・医薬品供給対応体制加算など機能評価型の加算で収益基盤を強化するなど、措置期間が解除となった場合の収益を確保する工夫も必要かもしれません。

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第298回 医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省

<先週の動き> 1.医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省 2.「やせ薬」目的で拡散するマンジャロ、個人売買の監視強化/厚労省 3.外来医師過多区域で新規開業対応を強化、9医療圏を候補に提示/厚労省 4.出生率1.14で過去最低、周産期・小児医療の集約化議論へ/厚労省 5.外科医への退職強要で大津市民病院側に100万円支払い命令/大津地裁 6.私物PCとクラウド利用に警鐘、患者情報1,365件漏えいの可能性/藤田医大 1.医学部地域枠「9年勤務」の運用緩和へ、留学・子育てに配慮/厚労省厚生労働省は、医学部入試の「地域枠」について、卒業後に特定地域で原則9年以上勤務する現在の運用を見直す検討に入った。地域枠は、一般入試とは別に定員を設け、奨学金の貸与と引き換えに、卒後一定期間、都道府県知事が指定する医療機関などで勤務する仕組み。2025年度は医学部定員9,393人のうち1,847人と約2割をこの地域枠の学生が占めた。医師偏在対策の柱の1つだが、若手医師の20~30歳代は、専門医取得、海外留学、結婚・出産・育児、家族介護などの時期と重なる。10~18年度に地域枠で入学した4,917人のうち、入学時の条件を満たさなかった人は301人。その理由としては「個人的な理由」が最多だった。厚労省は有識者検討会で議論を進め、留学や専門医資格取得のための猶予期間、一時中断の柔軟化などを検討し、年内の取りまとめを目指す。地域枠をめぐっては、都道府県ごとの運用差も課題となっている。育児休業による中断は全都道府県で認められている一方で、留学は35、介護は31都道府県にとどまる。高知大学のように、臨床研修後の残り7年間を15年間のうちに終えればよいとする柔軟な制度や、自治医科大学のように卒業生同士の結婚に配慮し、一定条件で配偶者の出身都道府県勤務を認める例もある。山梨県では、県内勤務を条件に修学資金返還を免除する制度について、条件を満たさない場合に最大約842万円を求める違約金条項を廃止する方針が示された。同条項をめぐっては、消費者機構日本が差し止めを求め、甲府地裁が今年1月に「平均的な損害を超え不当」として差し止めを命じていた。県は控訴していたが、制度を見直し、県による面接、在学中の地域医療実習、勤務年数に応じた段階的な返還免除、貸与額の引き上げなどを導入する。地域医療を支える制度の実効性を保ちつつ、18歳時点の選択で30代までのキャリアを過度に拘束しない制度設計が問われている。 参考 1) 医師の「地域枠9年」緩和 厚労省検討 医学部入試 留学・子育てに配慮(日経新聞) 2) 山梨県 医師確保のための「地域枠」制度 違約金条項を廃止へ(NHK) 3) 山梨県が医学部の修学資金制度を見直し、「違約金」を廃止(朝日新聞) 4) 山梨、医師修学資金貸与の違約金を廃止 裁判踏まえ見直し(毎日新聞) 2.「やせ薬」目的で拡散するマンジャロ、個人売買の監視強化/厚労省糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)をダイエット目的で使用したり、SNSで個人間売買したりする動きが広がっているとして、厚生労働省が注意喚起と監視を強化する。上野 賢一郎厚生労働大臣は6月5日の閣議後の会見で、「マンジャロを個人間で売買することは違法」と明言。都道府県など関係機関と連携し、SNSを含むネットパトロールを強化し、法違反には厳正に対処する考えを示した。マンジャロは米・イーライリリーが開発したGIP/GLP-1受容体作動薬で、国内では2型糖尿病において効能・効果で承認され、医師の処方のもとで使用されている。その一方で、食欲を抑える作用が注目され、美容・ダイエット目的での使用を勧めるSNS投稿や美容クリニックの広告が拡散している。上野厚労相は「糖尿病治療以外で使用した場合の安全性、有効性は確認されていない。思わぬ副作用につながる可能性も否定できない」と述べ、適正使用を呼びかけた。6月2日には、大阪府警がマンジャロをSNS経由で無許可販売したなどとして、大阪府・奈良県の20~30代の男女3人を医薬品医療機器法(薬機法)違反の疑いで書類送検した。薬機法は、許可を受けていない者が業として医薬品を販売することを禁じており、違反すれば3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となる。処方箋医薬品であるマンジャロは、許可業者であっても処方箋なしには販売できない。また、販売目的で保管する「貯蔵」も処罰対象となり得る。購入しただけの人を直接処罰する規定はないとされるが、余った薬を友人に有償で譲ったり、SNSで転売したりすれば無許可販売に問われる可能性がある。さらに、正規ルート外で入手した医薬品は偽造品や不適切な温度管理のリスクがあり、重い副作用が出ても医薬品副作用被害救済制度の対象外となる。医療者には、マンジャロが単なる「やせ薬」ではなく糖尿病治療薬であることを患者に説明し、安易な個人売買や自己判断での使用を避けるよう啓発する姿勢が求められる。 参考 1) マンジャロ個人間売買、厚労相「法違反は厳正に対処」 注意喚起強化(朝日新聞) 2) 糖尿病治療薬「マンジャロ」上野厚労相が適正な使用を呼びかけ(NHK) 3) 厚労相「法違反、厳正に対処」 マンジャロ個人売買の横行受け(毎日新聞) 4) 「やせ薬」危険な個人売買 糖尿病薬「マンジャロ」取引横行 許可なくSNSで販売疑い異例の立件(同) 5) マンジャロ無許可販売で書類送検、買う側には「罰則なし」? それでも弁護士が購入を勧めないワケ(弁護士ドットコム) 3.外来医師過多区域で新規開業対応を強化、9医療圏を候補に提示/厚労省厚生労働省は、2027年度から始まる第8次医療計画後期に向け、「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」を都道府県に通知した。今回の見直しは、都市部など診療所医師が集中する地域で新規開業への対応を強める一方で、医師不足地域では診療所の承継・開業支援を進めるもので、外来医療における偏在策が具体化しつつある。ガイドラインでは、外来医師偏在指標と可住地面積当たり診療所数を基に、とくに外来医師が多い「外来医師過多区域」の候補として、東京・区中央部、区西部、区西南部、区南部、区西北部、京都・乙訓、大阪市、福岡・糸島、神戸の9つの2次医療圏を提示した。外来医師過多区域では、無床診療所の新規開設希望者に対し、原則として開設6ヵ月前までの事前届出を求める。届出では、夜間・休日の初期救急、在宅医療、発熱外来、学校医・予防接種、警察医会への協力など、地域で不足する医療機能を担う意向の有無や内容を示す必要がある。要請や勧告に従わない場合には、内容の公表に加え、保険医療機関の指定期間を通常より短縮する対応も想定される。その一方で、制度は一律の開業抑制ではない。親の死亡に伴う急な診療所承継や、自治体の求めに応じて地域外来医療を担う場合などは、事前届出の猶予・免除の対象となり得る。また、診療所の全医師が育児や介護で夜間・休日対応ができない場合など、地域で不足する医療機能を担えない「やむを得ない事情」も例示された。医師不足地域では、国と都道府県による診療所の承継・開業支援が始まっている。2024年度補正予算で102億円、2026年度当初予算で20億円が措置され、施設整備、医療機器購入、職員給与や材料費などの運営経費を支援する。青森県では県内全6つの2次医療圏を重点医師偏在対策支援区域に定め、2025年度に19診療所が交付対象となった。承継10施設、新規開業9施設で、内科に加え産科や小児科の開業も含まれた。県内診療所数の減少幅は緩やかになっており、県や医師会からは支援事業を評価する声が出ている。外来医療の偏在対策は、開業の自由と地域に必要な医療機能の確保をどう両立させるかが焦点となる。都市部では新規開業医に地域で不足する医療機能への協力を求め、医師不足地域では経済的支援で承継・開業を後押しする「要請と支援」の両輪が動き出した。今後は、地域医療構想、かかりつけ医機能報告、外来機能報告のデータを活用しつつ、長期的な財源確保と、地域ごとの実効性ある協議が問われる。 参考 1) 外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン~第8次(後期)~」について(厚労省) 2) 開業規制の医師過多区域、5都府県の9圏域候補 国がガイドラインで示す(CB news) 3) 第8次後期外来医療計画のGLを通知、外来医師過多区域の取り組みを記載-厚労省(日本医事新報) 4) 第8次後期の外来計画でGL 過多区域の「特例」示す(MEDIFAX) 5) 重点区域の診療所支援、偏在是正に一定の効果 「長期的な財源確保」を(同) 4.出生率1.14で過去最低、周産期・小児医療の集約化議論へ/厚労省厚生労働省が公表した2025年人口動態統計(概数)で、わが国の出生数は前年比1万4,937人減の67万1,236人となり、10年連続で過去最少を更新した。合計特殊出生率は1.14で、3年連続の過去最低となった。出生数の減少率は2.2%と、近年の5%台からは縮小したが、死亡数158万9,489人との差である自然減は91万8,253人に達し、19年連続の人口減少となった。婚姻件数は48万9,119組で2年連続増加したが、この10年では14万組余り減っており、少子化の基調は変わっていない。都道府県別の出生率は、沖縄1.52、宮崎1.46、福井1.45が高く、東京0.96、北海道・宮城1.00と低かった。関東以北で低く、西日本で高い「西高東低」の傾向がみられた。この背景には、所得・雇用の不安定さ、出会いの少なさ、子育て費用、仕事と育児の両立困難、固定的な性別役割分担意識の地域差など、複数の要因が絡むとされる。政府は児童手当の拡充、子供誰でも通園制度、育児休業給付の充実、出産費用無償化などを進めるが、尾崎 正直官房副長官は「少子化に歯止めがかかっていない」との認識を示している。医療現場への影響はすでに顕在化している。国内の分娩取扱施設は2006年の3,098施設から2025年には1,856施設へ約4割減少し、診療所は初めて1,000施設を下回った。埼玉県本庄市では地域最後の分娩施設が少子化による経営難などを理由に分娩を休止し、妊婦健診は地域診療所、分娩は近隣施設で担うセミオープン型へ移行した。小児医療でも、低出生体重児や小児外科症例の減少により、NICU・GCUの空床、専門医・指導医育成の症例確保、こども病院の赤字が課題となっている。NICUは出生1万人当たり46.2床と、かつての整備目標を大きく上回る一方で、GCUの病床利用率が50%未満の地域周産期母子医療センターも多い。第9次医療計画に向けて、国は周産期・小児医療の病床数見直し、集約化、都道府県を越えた広域連携の検討を始める。少子化は単なる人口政策ではなく、分娩、小児救急、NICU、小児外科、思春期医療まで含む医療提供体制の再編問題である。安全性を維持しながら、患者・家族の移動負担や地域アクセスをどう支えるかが、今後の医療政策の焦点となる。 参考 1) 人口動態統計月報(概数)(令和7(2025)年12月分(年計を含む))(厚労省) 2) 13県で出生率上昇も…少子化に歯止めかからず 対策の拡充不可避 令和7年人口動態統計(産経新聞) 3) 出生率1・14、過去最低を更新 出生数は最少の67万人 令和7年人口動態統計(同) 4) 閉じる分娩施設、減る小児の症例数 世界最高水準を誇る医療の未来は(朝日新聞) 5) 少子化で経営成り立たず 地域最後のお産休止、空床増えるこども病院(同) 6) 去年の出生数67万人 過去最少 少子化対策ポイントは(NHK) 5.外科医への退職強要で大津市民病院側に100万円支払い命令/大津地裁大津市立大津市民病院に勤務していた外科医3人が、業績不振を理由に退職を強要され、パワーハラスメントを受けたとして、病院を運営する地方独立行政法人や前理事長、前院長に慰謝料や未払い退職金など計約2,900万円の支払いを求めた訴訟で、大津地裁は6月5日、原告のうち1人に対する退職強要を認め、病院側に慰謝料100万円の支払いを命じた。パワハラについては3人とも認めず、残る2人への退職強要も否定した。判決によると、前理事長らは2021年4~9月、外科などの業績不振を理由に「改善の兆しが見えないということで決断せざるを得ない」などと発言。同年9月の面談では、元副院長に対し、「外科の医師には退職してもらい、別の大学のチームに来てもらうよう頼む」趣旨の発言をした。田野倉 真也裁判官は、外科の経営低迷が元副院長らの責任とは認められないにもかかわらず、退職を求めた言動は「社会通念上相当と認められる退職勧奨の範囲を超えた」と判断。自由な退職意思の形成を妨げる退職強要に当たるとして、精神的苦痛と退職を余儀なくされたことへの慰謝料を認めた。その一方で、残る2人の医師については、問題となった面談に出席しておらず、前理事長らの意向を元副院長から伝えられたに過ぎないとして、退職を強要されたとは評価できないとした。また、原告側が主張したパワハラについても、3人いずれについても認定しなかった。前理事長が元副院長に対して名誉毀損を理由に550万円を求めた反訴も棄却された。今回の判決は、病院経営の改善や診療科再編を理由とする人事対応であっても、特定医師に退職を既定方針として繰り返し伝える行為は、適法な退職勧奨の範囲を超え得ることを示した。医師不足や経営悪化を背景に診療体制の見直しを迫られる医療機関では、業績評価の根拠、面談記録、本人の自由意思の確保、配置転換や業務改善の選択肢提示など、手続きの透明性が一層問われる。 参考 1) 大津市民病院の損賠訴訟 退職強要認め100万円支払命令 地裁判決(産経新聞) 2) 「退職の決定」何度も通知するパワハラ…市立病院側に医師1人に100万円の支払い命じる判決(読売新聞) 3) 大津市民病院の前理事長ら、医師に退職強要 100万円の損害賠償支払い命令、大津地裁(中日新聞) 6.私物PCとクラウド利用に警鐘、患者情報1,365件漏えいの可能性/藤田医大藤田医科大学病院は、6月3日に看護師の私物パソコン(PC)に保存されていた患者情報1,365件が外部に漏えいした可能性があると発表した。対象は、末期腎不全、腹膜透析、腎代替療法指導を受けた一部患者で、氏名、性別、生年月日、患者ID、病名、転帰、入退院日、検査データなどが含まれる。現時点で不正利用は確認されていないが、病院は対象患者への謝罪と経過報告、相談窓口の設置、全職員研修、個人情報の取扱実態調査を進める。今回の事案で注目すべきは、病院本体の電子カルテが直接侵害されたのではなく、職員が規定に反して患者情報を私物PCに保存し、自宅でサポート詐欺型の不正侵入を受けた点である。看護師は学会発表資料の作成などを目的に、2020年ごろからクラウドを介して患者情報を私物PCと共有していた。5月25日、自宅でウェブサイトを閲覧中に偽の警告画面が表示され、表示された連絡先やURLに応じた結果、第三者による遠隔操作を受けたとみられる。その後、ウイルス駆除名目の金銭請求、身に覚えのないクレジット請求、携帯電話アカウント変更通知などがあり、専門業者からサポート詐欺と情報漏えいの可能性を指摘された。医療機関のサイバー対策は、ランサムウェア対策のみを想定すれば足りる段階ではなくなっている。偽警告、遠隔操作、クラウド同期、私物端末、学会・研究用データの持ち出しが組み合わされば、重大な個人情報漏えいにつながる。とくに、匿名化が不十分な症例リストや検査データ、紹介状、退院サマリーを、発表準備や在宅作業のために個人端末へ移す運用は、診療所でも起こり得る。厚生労働省は5月29日に開かれた「医療等情報利活用ワーキンググループ」で示した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版(案)」は、病院だけでなく、一般診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業者も対象とする。医療情報を保存するシステムに限らず、医療情報を扱う情報システム全般が対象であり、私物PCやクラウド利用も管理外ではなくなっている。さらに令和8年度版チェックリスト案では、二要素認証、パスワード要件、端末・サーバ・ネットワーク機器の台帳管理、アクセス権限管理、USBなど外部記録媒体の制限、不要ソフトの停止、インシデント時の連絡体制、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)の策定が重視されている。まず、クリニックなどでも「患者情報をどの端末、クラウド、USB、メールに置いているか」を確認し、私物PC端末への保存禁止、学会・研究用データの匿名化手順、クラウド共有の承認制、偽警告が出た際に電話しない・URLを開かないなどのセキュリティ教育が必要となる。サイバー対策はもはや医療情報システム部門だけの課題ではなく、診療情報の持ち出しルールと緊急時対応を明文化するなど、医療機関の経営者にとって重要な課題になっている。 参考 1) 個人情報漏洩に関するご報告とお詫び(藤田医科大病院) 2) 第32回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省) 3) 患者情報1,365件漏えいか 藤田医科大病院 相談窓口設置へ(読売新聞) 4) 藤田医科大病院で1,300件超の患者情報漏えい 私物PCでサポート詐欺被害(CB news) 5) 藤田医大病院 私用パソコンに保存 患者の個人情報流出か(NHK)

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第296回 ナフサ不足で医療資材逼迫、医療用手袋5,000万枚を放出/政府

<先週の動き> 1.ナフサ不足で医療資材逼迫、医療用手袋5,000万枚を放出/政府 2.血管炎薬アバコパンで死亡20例、添付文書に「警告」新設/厚労省・キッセイ薬品 3.AIを悪用したサイバー攻撃に備え、医師会や病院団体と対策を協議/厚労省 4.マイナカード「任意」から義務化検討へ、全員保有を提言/自民党 5.禁忌の抗菌薬処方でSJS発症か、患者死亡で遺族に補償へ/三重県 6.東大医学系研究科の贈収賄事件、元特任准教授に有罪判決/東京地裁 1.ナフサ不足で医療資材逼迫、医療用手袋5,000万枚を放出/政府中東情勢の悪化を背景に、石油由来原料を使う医療資材の供給不安が医療現場に広がっている。政府は5月23日、感染症などの流行に備え国が備蓄していた医療用手袋のうち、まず5,000万枚の放出を開始した。都内の歯科診療所には同日、第1弾が到着。受け取った院長は「診療所は在庫を抱えられない。購入できて安心した」と語った。放出対象は、病院、診療所、訪問看護事業所、薬局、助産所など。在庫量が「今後1週間の想定消費量から購入見込み量を差し引いた数」の4週間分を下回る場合、医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて申請できる。販売は1,000枚単位で、価格は1セット5,980円、1枚当たり約6円。購入可能数は想定消費量の2週間分を基準に決まり、条件を満たせば複数回の申請も可能とされる。21日時点で2,000を超える医療機関が対象となっており、茨城県でも第1弾として63医療機関から27万1,000枚の購入申し込みがあった。ただ、逼迫しているのは手袋だけではない。ナフサ価格の上昇を受け、廃液回収容器、投薬瓶、軟こう容器、点眼瓶、松葉杖、透析回路、医薬品包装用フィルムなどでも値上げや納期遅延、受注制限が相次いでいる。調剤薬局では小児用シロップ容器が不足し、粉薬での処方を依頼する例も出ている。医療資材卸では4月以降、平均2~3割の値上げが行われ、製品によっては1.5~2倍の値上げ要請もあるという。診療報酬や薬価は公定価格であり、医療機関や製薬企業は一般産業のようにコスト上昇分を価格転嫁しにくい。物価高、人件費高、光熱費高に加え、資材不足が中小医療機関の経営をさらに圧迫している。政府は追加放出も検討するとしているが、手袋の使用量は月9,000万枚規模ともされ、備蓄放出だけで不安を払拭するのは難しい。医療提供体制を維持するには、資材供給の安定化に加え、物価変動を診療報酬や薬価に反映する仕組みの検討が求められる。 参考 1) 医療用手袋の政府備蓄品が到着 厚労省、都内歯科で公開(日経新聞) 2) 国が備蓄している医療用手袋 購入要請があった医療機関にきょうから配送開始 中東情勢の影響を受けて放出(TBS NEWS) 3) ナフサ不足で医療資材逼迫 軟こう容器・松葉杖・手袋…中小医院資材逼迫で苦境(日経新聞) 4) 中東情勢悪化に伴う医療用グローブの国家備蓄放出、「医療機関在庫が不足する」場合に購入可能-厚労省(Gem Med) 2.血管炎薬アバコパンで死亡20例、添付文書に「警告」新設/厚労省・キッセイ薬品厚生労働省は5月21日、選択的C5a受容体拮抗薬アバコパン(商品名:タブネオスカプセル10mg)について、製造販売元のキッセイ薬品に対し、添付文書に「警告」欄を新設し、医療関係者へ安全性速報(ブルーレター)を発出するよう指示した。同薬の服用後、肝臓の胆管がなくなる「胆管消失症候群」を含む重篤な肝機能障害が報告され、国内で20例の死亡があったことを受けた措置。ブルーレターの発出は5年ぶりで、迅速な安全対策が必要と判断された。アバコパンは、顕微鏡的多発血管炎と多発血管炎性肉芽腫症を対象とする飲み薬で、いずれも国の指定難病。ステロイド使用量を減らせる薬として期待され、国内では2022年6月に発売され、直近1年間で推定約8,500例に使用された。死亡した20例は60~90代で、19例は投与開始から3ヵ月以内に肝機能障害を発症。胆管消失症候群は22例報告され、このうち13例が死亡しており、とくに深刻な副作用とみられている。改訂後の添付文書では、投与開始前と投与中の定期的な肝機能検査を求める。投与開始後3ヵ月間は少なくとも2週間に1回、その後3ヵ月間は少なくとも4週間に1回、6ヵ月以降も定期的に検査する。ALTまたはASTが基準値上限の3倍を超えた場合は投与を中断し、8倍超、5倍超が2週間以上続く場合、総ビリルビンやALPの上昇、黄疸やかゆみなどがあれば中止する。胆管消失症候群が疑われる場合も速やかに中止することを求めている。キッセイ薬品は、新規患者への投与を控えるよう注意喚起していたが、その後は頻回の検査を前提に新規投与も可能とされた。すでに服用中の患者には、自己判断で中止せず、体調変化があれば医師や薬剤師に相談するよう呼びかけている。その一方で、米国食品医薬品局(FDA)は有効性や承認申請資料を巡る疑義から米国での承認撤回を提案しており、厚労省も海外当局と連携し、有効性や安全性の確認を進める。 参考 1) タブネオスの安全性確保のための注意喚起について(キッセイ薬品) 2) タブネオスにブルーレター発出、添付文書の「警告」欄を新設(日経ドラッグインフォメーション) 3) 血管炎治療剤タブネオス 安全性速報を発出-添付文書に「警告」新設 キッセイ薬品(CB news) 4) キッセイ薬品工業が「ブルーレター」発出 タブネオス服用後の死亡患者20人報告で(中日新聞) 5) 投与患者20人死亡の血管炎治療薬、添付文書に「警告」欄を新設・頻繁な肝機能検査を要請…厚労省(読売新聞) 6) キッセイ薬品の血管炎薬、添付文書に「警告」欄 有効性に疑義も(朝日新聞) 7) キッセイ薬品、血管炎治療薬で安全性速報 死亡報告で厚労省指示(日経新聞) 3.AIを悪用したサイバー攻撃に備え、医師会や病院団体と対策を協議/厚労省厚生労働省は5月22日に、AIを悪用したサイバー攻撃への懸念が高まっているとして、医療機関や病院団体とサイバーセキュリティ対策に関する意見交換会を開いた。背景にあるのは、米アンソロピックが4月に発表した高性能AI“Claude Mythos”(クロード・ミュトス)で、ソフトウエアの脆弱性を自律的に検出し、攻撃プログラムの生成にもつながり得るとされる。国家サイバー統括室は18日、AIの急速な進展により攻撃の規模が拡大する恐れがあるとして、医療や金融など重要インフラ15分野に注意を呼びかけていた。意見交換には上野 賢一郎厚労相、厚労省や国家サイバー統括室の担当者、全国自治体病院協議会、全日本病院協会、日本病院会、日本医療法人協会などの関係者が出席した。上野厚労相は、医療現場では日々の診療や運営に追われ、サイバー対策が後回しになりがちだと指摘し、「現場任せではなく経営層の主体的な関与が不可欠」と強調。「サイバー攻撃の脅威はさらに増大する。必要な対応を速やかに進める」と述べた。医療機関ではこれまでも電子カルテが使えなくなり、診療を一時中断する被害が発生している。出席した医療機関側からは、「対策に充てる財源が乏しい」や「専門人材を確保できないこと」への不安が示され、国による財政的・技術的支援を求める声が上がった。厚労省は、医療情報システムの安全管理ガイドラインに基づく基本対策の徹底、攻撃を受けた場合の事業継続計画作り、補助金や経営層向け研修の活用を呼びかけた。政府は重要インフラ15分野ごとに安全基準を整備する方針で、厚労省も医療分野の実情に応じた対策を具体化する。今後、関係機関に事務連絡を出し、医療機関の機能停止が国民生活に重大な影響を及ぼさないよう、医療現場と連携して実効性ある体制作りを進める。診療継続を支える経営課題として、各病院の備えが問われる。 参考 1) ミュトス対応 医療機関と意見交換、厚労省 セキュリティー対策具体化へ(CB news) 2) 医療機関にサイバー攻撃対策を要請 厚労省、AI「ミュトス」念頭(日経新聞) 3) 新型AI「ミュトス」 厚生労働省と医療機関が意見交換 上野大臣「必要な対応を速やかに進める」 サイバー攻撃で診療一時中断も 「財源ない」「専門人材いない」の声も(TBS NEWS) 4) 「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策に関する厚生労働省との意見交換」を開催します(厚労省) 4.マイナカード「任意」から義務化検討へ、全員保有を提言/自民党自由民主党は5月19日、マイナンバーカードの取得義務化の検討を政府に求める政策提言「デジタル・ニッポン2026」を公表した。国民全員がカードを保有することを前提に、行政サービスの拡充や民間利用を進める狙いで、早ければ来年の通常国会で関連法改正を目指す。現在、マイナンバーカードの取得は任意で、4月末時点の保有率は82.7%。提言では、取得を法的に義務付ける必要性や実効性を検討すべきとするが、罰則は設けない方針。背景には、中低所得の現役世代支援として検討される「給付付き税額控除」や迅速な現金給付への活用がある。提言では、給付に必要な公金受取口座の登録義務化の検討も盛り込み、マイナカードを「デジタル社会のパスポート」と位置付けている。党デジタル社会推進本部長の平井 卓也衆院議員は、交付開始当初に比べ肯定的に受け止める人が増えたとして、「持っていることを前提に政策を組み上げる」と説明した。その一方で、個人情報の漏えいや目的外利用、プライバシー侵害への懸念はいまだに根強い。マイナ保険証の原則化を巡っては、医療機関の受付負担や高齢者の利用困難、資格確認書の併存などから「事実上の義務化」との批判もある。会計検査院の調査では、2025年7月末までに本人希望で廃止されたカードが累計93万枚に上り、トラブルへの不安や利便性を実感できないことが背景にあるとの見方も出ている。コンビニ交付や本人確認で「期待通りの使い勝手になっていない」との指摘もあり、普及策の妥当性が問われている。松本 尚デジタル相は22日の会見で、義務化について「法的に縛り付けることは議論が必要だ」と述べ、必要性への明言を避けた。カードを持ちたくない人が納得できる根拠や、どの政策と一体で進めるのかを検討する必要があるとの認識を示した。利便性向上と行政効率化を掲げる政府・与党に対し、制度への信頼回復と不安払拭が課題となる。 参考 1) デジタル・ニッポン2026ー責任あるアジャイル・ガバナンスー(自民党) 2) マイナカード、取得義務化を提言 自民「来年国会で法改正めざす」(朝日新聞) 3) マイナカード義務化「必要性もう少し議論」 松本デジタル相(日経新聞) 4) 任意だったのに…「マイナカード義務化」自民が提言へ 給付付き税額控除の議論が「絶好のラストチャンス」(東京新聞) 5) 「93万枚」が廃止されていたマイナンバーカード このままでは“第2の住基カード”に? 「多くの人が“便利さ”を感じていない」(デイリー新潮) 5.禁忌の抗菌薬処方でSJS発症か、患者死亡で遺族に補償へ/三重県三重県桑名市の地方独立行政法人 桑名市総合医療センターは5月21日、気管支喘息で入院した60代男性に禁忌薬を誤って処方し、男性が重い薬剤アレルギーとみられる症状を発症後、3月23日に死亡したと発表した。病院側は薬剤投与ミスを認め、遺族に謝罪するとともに補償する方針を示している。男性は2月中旬、喘息発作で同センターに入院し、ステロイド治療に伴う感染症予防のため、担当医が抗菌薬トリメトプリム スルファメトキサゾール(商品名:バクトラミン)を処方した。男性は退院後に服用したが、高熱や全身の発疹、皮膚や口腔内のただれなどを起こし、愛知県内の病院に搬送された。その後、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)を発症したとみられ、より重篤な中毒性表皮壊死症(TEN)の可能性も指摘されている。最終的には腸閉塞を伴う敗血症性ショックなどで死亡した。バクトラミンは、スルファメトキサゾール・トリメトプリムを成分とするST合剤で、男性は過去に同じ成分を含む別の商品名の抗菌薬でアレルギー症状を起こしていた。電子カルテには投与禁忌の記載があったが、担当医は商品名の違いから同一成分だと認識せず、成分確認を十分に行わなかったという。一部報道では、医師がアレルギー歴を別系統の薬剤と誤認していたともされる。病院は、誤投薬とアレルギー反応との関連性は極めて高いと説明する一方で、死亡との直接の因果関係については病理解剖の結果や外部専門家を含む調査で検証する方針。県医師会には医療事故として報告しており、院内事故調査委員会や第三者委員会で原因究明と再発防止策を検討する。山田 典一病院長は記者会見で「痛切に責任を感じている」と謝罪し、「全職員がリスクを感じたら拾い上げる体制に変えなければならない」と述べた。 参考 1) 桑名市総合医療センターで男性に禁忌薬処方、難病発症 別の病院に転院後死亡(中日新聞) 2) 禁忌薬誤投与後に患者男性が死亡 三重の医療センター 因果関係調査(産経新聞) 3) 抗菌薬誤投与で難病発症、患者死亡 医師が成分確認せず-三重・桑名市総合医療センター(時事通信) 4) 桑名市総合医療センターの患者死亡 薬剤の投与ミス認める(NHK) 6.東大医学系研究科の贈収賄事件、元特任准教授に有罪判決/東京地裁東京大学大学院医学系研究科の共同研究を巡る贈収賄事件で、収賄罪に問われた元特任准教授の吉崎 歩被告(46)に対し、東京地裁は5月22日、懲役1年、執行猶予2年、追徴金約196万円の有罪判決を言い渡した。求刑は懲役1年2ヵ月、追徴金約196万円で、吉崎被告は公判で起訴内容を認めていた。判決によると、吉崎被告は2023年3月から2024年8月にかけて、東京大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の元教授、佐藤 伸一被告(62)とともに、一般社団法人日本化粧品協会の代表理事だった引地 功一被告(52)から、都内の高級クラブや性風俗店などで30回にわたり、計約196万円相当の接待を受けた。接待は、皮膚疾患に対する大麻草由来成分カンナビジオール(CBD)の有効性などを調べる「臨床カンナビノイド学社会連携講座」の設置や共同研究の推進で便宜を図る見返りだったとされた。吉崎被告は同講座の講座長として、佐藤被告と日本化粧品協会との間に入り、研究実務や接待の段取りを調整していた。弁護側は、吉崎被告が佐藤被告を師と仰ぎ、強い影響下にあったため異を唱えることは難しかったと主張。判決も、上司である佐藤被告の意向に反することが困難だった点は認めた。その一方で、吉崎被告が接待の調整役を担い、単独で接待を受けたこともあり、自ら積極的に接待を受けたい意向があったとして、「刑事責任は軽視できない」と指摘した。遊興接待の内容についても、職務の廉潔性を害したことは明らかだとした。判決はさらに、東大の社会連携講座についても言及。大学の看板を営利目的で利用しようとする企業に悪用されかねない側面があり、公益的な研究として適切に運用されるかどうかが、講座を統括する担当教授のモラルに大きく依存していたと指摘した。産学連携を進める上で、研究費の受け入れや企業との距離感を個人の倫理観に委ねる危うさが改めて浮き彫りになった形。しかしながら、吉崎被告が事件後に東大を退職し、犯行を認めて反省していること、再び公職に就く可能性が低く再犯の可能性も低いことなどから、執行猶予付き判決が相当と判断された。事件では、佐藤被告も収賄罪で起訴されているほか、贈賄罪に問われた引地被告の判決は5月26日に予定されている。東大では別件でも医療機器選定を巡る収賄事件が起きており、大学病院における企業連携と利益相反管理のあり方が厳しく問われている。 参考 1) 東大病院汚職、元特任准教授に有罪判決 風俗店やクラブで接待受ける(朝日新聞) 2) 東大院汚職で元特任准教授に有罪判決 東京地裁(日経新聞) 3) 懲役1年執行猶予2年、性接待などを受け 東大病院の収賄事件、「教授の強い影響下にあった」元特任准教授に有罪判決(日経メディカル)

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事例48 令和8年度診療報酬改定後の生活習慣病管理料留意点【斬らレセプト シーズン4】

令和8年度の診療報酬改定の内容が通知されています。本稿では、よく質問のある項目を紹介します。生活習慣病管理料(以下「同管理料」)(I)です。「必要な血液検査等を少なくとも6月に1回以上」行い、結果を患者に説明してカルテに記載することが義務付けられました。採血予定の診察日には空腹で来院されるなどの注意事項をあらかじめ患者に伝えておくことも必要です。同管理料(II)では、同月または同日に算定できる医学管理料が増えました。改定通知をご参照ください。同管理料(I)(II)にかかる共通事項は次のとおりです。1)「糖尿病を主病とする患者に、糖尿病用剤(薬剤名は通知をご参照ください)以外の自己注射用薬剤を投与する場合、在宅自己注射指導管理料が別に算定できる」とされました。2)療養計画書の「患者署名は不要」です。計画書写しのカルテ添付と説明した旨のカルテ記載は今までどおり必要です。3)糖尿病主病の患者の重症化予防に、眼科又は歯科に紹介などの連携を行うと、それぞれ年1回「眼科又は歯科医療機関連携強化加算」が算定できます。診療情報提供書料は別に算定できます。4)外来データ提出が望ましいとされました。届出は年2回とされており、詳細は通知を参照願います。届出後は、実績に応じて3段階の「充実管理加算」いずれかが算定できます。現時点では「望ましい」ですが、次回改定以降には算定要件化を予測しています。5)患者に対して次回の来院日を伝えるとありますが、患者と調整しても受診日が定まらないときは、「受診が必要な時期」を伝えてもよいとされています。カルテに受診予定日または時期の記載は必要です。今改定は、かかりつけ対応される診療所にとってはメリットのある改定と考えられています。改定にかかる漏れや査定を少しでも減らすために、通知などをよく確認されることをおすすめします。本稿は今回で最終回となります。長らくのご愛読ありがとうございました。

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