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第Xa因子阻害薬の中和薬、抗凝固活性の抑制効果を確認/NEJM

 第Xa因子阻害薬の抗凝固作用に対する中和薬として開発が進められているandexanet alfaについて、カナダ・マックマスター大学のDeborah M. Siegal氏らによる健常高齢者ボランティアを対象に行った臨床試験の結果が報告された。アピキサバン、リバーロキサバンのいずれの抗凝固薬に対しても数分以内で中和作用を示し、臨床的毒性作用は認められなかったという。第Xa因子阻害薬治療では出血の合併症が伴うことから、中和薬の開発が期待されている。NEJM誌オンライン版2015年11月11日号掲載の報告。アピキサバン、リバーロキサバンに対する中和作用を評価 試験は、50~75歳の健常高齢者ボランティアに、アピキサバン5mgを1日2回またはリバーロキサバン20mgを1日1回投与して行われた。2段階の無作為化プラセボ対照試験にて、andexanetのボーラス投与またはボーラス投与+2時間静注を評価した。 主要アウトカムは、平均%でみた抗第Xa因子活性の変化とし、抗凝固薬ごとに抑制効果を評価した。 2014年3月~15年5月に、計101例の被験者(アピキサバン試験48例、リバーロキサバン試験53例)がandexanet投与を、44例(アピキサバン試験17例、リバーロキサバン試験27例)がプラセボ投与を受けるよう無作為に割り付けられた。被験者の平均年齢は57.9歳、女性が39%であった。抗凝固活性、ボーラス投与でアピキサバンは94%、リバーロキサバンは92%抑制 結果、抗第Xa因子活性は、andexanetボーラス投与群においてプラセボ投与群と比べて、急速(2~5分以内)に抑制された。 アピキサバン試験のボーラス投与群(24例)の抑制効果は94%に対し、プラセボ投与群(9例)は21%であった(p<0.001)。また、非結合アピキサバンの血中濃度は9.3ng/mLと有意に抑制され(プラセボ群1.9ng/mL、p<0.001)、トロンビン生成は被験者の100%で2~5分以内に完全に回復した(プラセボ群11%、p<0.001)。 リバーロキサバン試験では、ボーラス投与群(27例)の抑制効果は92%、プラセボ投与群(14例)は18%であった(p<0.001)。また非結合リバーロキサバン血中濃度は23.4ng/mLに有意に抑制され(プラセボ群4.2ng/mL、p<0.001)、トロンビン生成は被験者の96%で完全に回復した(プラセボ群7%、p<0.001)。 同様の効果は、andexanetのボーラス投与+2時間静注の検討においても維持されていた。 サブグループにおいて、Dダイマー値、プロトロンビンフラグメント1、2の一過性の上昇がみられたが、24~72時間で回復した。なお、有害事象や血栓性イベントの報告はなかった。

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FDA、ダビガトランの中和剤idarucizumabを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、抗凝固薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の特異的中和剤idarucizumab(商品名:Praxbind)を迅速承認した。対象はダビガトラン服用中で緊急に抗凝固作用の中和を要する患者。 idarucizumabは初めて承認されたダビガトランの特異的中和薬。ダビガトランに結合し、その作用を無効化する。 idarucizumabの効果と安全性は、ダビガトランを服用した283例の健康成人(抗凝固治療を必要としない成人)による3つの試験で検討された。その結果、idarucizumabが投与された健康成人において、ダビガトランの血中量(非結合型ダビガトランの血漿中濃度を測定)は迅速に減少し、その作用は24時間持続した。また、ダビガトラン服用中で、止血困難な出血が発生した、あるいは緊急手術が必要となった123例の患者による試験が行われた。この進行中の試験では、89%の患者でダビガトランの抗凝固作用が完全に中和され、その作用はidarucizumab投与後 4時間以上持続した。同試験において、idarucizumabの頻度の高い副作用は高カリウム血症、意識錯乱、便秘、発熱、肺炎であった。 ダビガトランの作用中和により、患者は血栓や心房細動による脳卒中のリスクにさらされることになる。そのため、idarucizumabの添付文書では、医療者が医学的に適切だと判断し次第、すみやかに抗凝固療法を再開することを推奨している。FDAのプレスリリースはこちら。

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正常眼圧緑内障の乳頭出血、血小板機能低下で発見されやすい?

 正常眼圧緑内障にみられる乳頭出血は、血小板機能の低下と関連していることが、韓国・成均館大学のSeong Hee Shim氏らの前向き横断研究によって明らかになった。著者は「乳頭出血を有する正常眼圧緑内障患者では、血小板凝集が遅れて出血が長引き吸収が遅延するため、乳頭出血が検出されやすい可能性がある」とまとめている。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。 研究グループは、正常眼圧緑内障と乳頭出血を有する患者(NTG・DH+群)120例、乳頭出血のない正常眼圧緑内障患者(NTG・DH-群)75例、および健常者(対照群)120例、合計315例を対象に、視野検査、カラー眼底写真撮影、光干渉断層計(OCT)検査を行うとともに、血小板機能アナライザー(PFA-100システム)を用いてコラーゲン/エピネフリン閉塞時間を測定した。 主な結果は以下のとおり。・コラーゲン/エピネフリン閉塞時間は、NTG・DH+群141.92±53.44秒、NTG・DH-群124.60±46.72秒、対照群114.84±34.84秒で、NTG・DH+群が他の群と比較して約14~24%長かった(一元配置分散分析、p<0.001)。・NTG・DH+群の活性化部分トロンボプラスチン時間も、対照群より長かった。・ステップワイズ多重ロジスティック回帰分析の結果、コラーゲン/エピネフリン閉塞時間の延長のみが独立して乳頭出血と関連していることが明らかとなった(年齢、性別、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、糖尿病、高血圧、低血圧、心疾患、甲状腺機能低下症、片頭痛、脳卒中、脂質異常症で調整したオッズ比=2.94、95%信頼区間:1.40~6.17)。・血小板機能を年齢別に3群で比較したときも同様の傾向が観察された。

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優れた抗血栓性を目指し、ポンプ本体の内面をすべて生体材料で構成したCARMAT完全植込み完全置換型の開発と世界最初の臨床応用(解説:許 俊鋭 氏)-394

 2008年に、僧帽弁形成手術で世界的に著名な心臓外科医Alain Carpentier氏が、真に心臓移植の代替治療となりうる完全植込み完全置換型(fully implantable artificial heart)の臨床治験を、2011年までに実施する準備ができたと発表した1)。 ポンプ本体の内面はすべて生体材料 (“biomaterials”or a“pseudo-skin”of biosynthetic、microporous materials)で構成され、これまでの人工心臓でまったく未解決の問題であった、ポンプ内血栓形成が生じない人工心臓をつくるという、きわめて野心的なプロジェクトであった。 CARMAT完全植込み完全置換型(C-TAH)は、4つの生体弁を持つ電気駆動型拍動流拍動完全置換型で、現時点では体外のバッテリーと接続し、エネルギーは体外から供給するシステムではあるが、近い将来、経皮的エネルギー伝送により完全植込み型デバイスになることも可能である。ポンプ内面は、表面処理された生物心膜組織(processed bioprosthetic pericardial tissue)および拡張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から成り、抗凝固療法の軽減が潜在的に可能である2)。12頭の牛(体重102~112kg)を用いた平均3日間の実験で、4頭が4日以上(最長10日)生存した。まったく抗凝固療法なしで術後管理されたが、剖検では2頭に小さな腎梗塞がみられたのみであった。 2015年になって立て続けに3本の論文2)3)4)が発表され、本論文はその1つで2013年から始まった臨床例の最初の報告である。ただし、この臨床試験では当初目指した完全植込みには至らず、デバイスは外径8mmのきわめて屈曲性に富んだドライブラインで、体外のリチウムイオンバッテリーに接続して使用している。 C-TAHは2人の男性の患者に植え付けられた。患者1(76歳)は、2013年12月18日の植込み症例、患者2(68歳)は2014年8月5日の植込み症例で、C-TAH植込み手術の人工心肺時間は、157分、170分であった。2例とも術後12時間以内に抜管され、呼吸および循環機能は急速に回復した。 患者1は、術後23日に心タンポナーデのために再開胸止血手術施行し、以後抗凝固療法を中止した。C-TAHは良好に機能し、4.8~5.8L/分の良好な流量が得られた。術後74日目にデバイス機能不全のため患者は死亡した。抗凝固薬なし期間が50日間あったにもかかわらず、剖検ではポンプ内や末梢臓器に血栓はみられなかった。 患者2は、一時的な腎不全と心嚢液貯留に対してドレナージを必要としたが、それ以外は問題なく、術後150日で携帯電源システムとともに自宅に戻った。在宅4ヵ月後に低心拍出状態になりデバイス交換を試みたが、多臓器不全のために患者は死亡した。 本論文掲載決定時にはすでに3症例目の植込みが成功していて、術後104日目で退院直前の状態にある。 日本では、年間20万例が心不全のため死亡している。人口の高齢化とともに心不全はますます増加傾向にあり、65歳以上の循環器疾患医療費はがんを中心とした新生物医療費の2倍(13.3% vs.27.4%、2011年)を要している。心臓移植の対象となる65歳未満の心不全死亡は2万例弱であり、全心不全死亡数の9.7%にしか過ぎない。しかも、日本における年間心臓移植数は40例弱であり、2万例の65歳未満心不全死亡数はおろか、現在心臓移植登録・待機している400例に対しても極端に少ない。 すなわち、心臓移植治療はその絶対数において末期心不全に対する標準的治療とはなり得ない。そのため、米国で2002年に年齢などにより心臓移植適応除外となった症例に対する、心臓移植代替治療としての植込み型補助人工心臓(LVAD)を用いたDestination Therapy(DT)がFDAにより承認され、保険償還が始まった。DTは当初2年生存を目標にスタートしたが、INTERMACSデータでは現時点で2年生存率60%、3年生存率50%が達成されていて5)、今後、さらに治療成績が向上していくものと考えられる。長期の補助人工心臓の成績向上のために解決しなければならない主な課題として、(1)システムの長期耐久性、(2)抗血栓性の向上、(3)感染防止がある。その中で、今日の第2・第3世代の定常流植込み型LVADにおいて、すでに10年生存症例も報告され「(1)システムの長期耐久性」は達成されているが、「(2)抗血栓性の向上」と「(3)感染防止」はまったく解決できていない課題である。C-TAHは「(2)抗血栓性の向上」を目指した野心的なプロジェクトであり、抗凝固療法なしで50日間管理し、まったく血栓が生じなかったことは大きな成果である。また、C-TAHは近い将来、完全植込みを目標としており「(3)感染防止」にも意欲を示している。 残念なことに、ポンプシステムが第1世代拍動流ポンプであることにより、C-TAHには「(1)システムの長期耐久性」は期待できない。しかし、C-TAHポンプ本体の内面をすべて生体材料で構成するという試みは、今日の長期耐久性に優れた第2・第3世代の定常流植込み型LVAD製造技術と結び付くことにより、植込み型LVADの「(2)抗血栓性の向上」に大きく貢献するものと期待される。 近い将来、経皮的エネルギー伝送システムの導入で有効な「(3)感染防止」技術が確立した暁には、植込み型LVADの心臓移植に匹敵するQOL・長期生存率が達成されるものと期待される。

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いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【2】(解説:後藤 信哉 氏)-383

 ワルファリンは第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、抗トロンビン、抗Xa薬により凝固因子の効果が阻害され続けるので、薬剤が体内から消失するまで止血効果を期待できない。第Xa因子の場合には、血漿中の抗凝固効果以上に、細胞膜上のprothrombinase complexを構成するXaも中和しなければならないので、抗Xa薬中和剤の開発はいっそう困難である。 中和剤の開発は、抗トロンビン薬ダビガトランにおいて抗Xa薬よりも容易である。そこで、ダビガトランに対する選択的モノクロナール抗体を用いて、「ダビガトランの抗トロンビン効果の指標である希釈トロンビン時間、エカーリン凝固時間、a-PTTなど」を指標とした抗トロンビン効果を確認したproof of concept試験が、以前にLancet誌に発表された。 ダビガトラン抗体が、血液凝固指標を用いた抗トロンビン効果を中和できるとのコンセプトを、実臨床においてダビガトラン急速中和の必要な症例を対象とした本試験が施行され、N Engl J Med誌に発表された。Lancet誌のPOC試験同様、本試験でも、抗ダビガトラン抗体Fabの投与の後、数分以内に希釈トロンビン時間、エカーリン凝固時間、a-PTTなどを指標とした抗トロンビン効果は中和された。われわれは実臨床の場において、ダビガトランの抗トロンビン作用を急速中和する薬剤を手にしたと理解して、大きな誤りはない。 解析対象とされた症例は、(1)重篤な出血により急速止血が必要な症例、(2)8時間以内の手術介入が必要な症例、の2種類であり、両者共にリスクの高い症例である。ダビガトランの抗トロンビン効果は急速中和されても、これらの症例の臨床的予後は目に見えるほどは改善されていない。実際、抗ダビガトランヒト化抗体Fab(idarucizumab)投与後90日以内の死亡は、90例の対象中18例(重篤な出血に対して投与を受けた51例中9例、および緊急手術を必要とした39例中9例)であった。 重篤な出血が致死的出血であれば、idarucizumabの急速中和効果により救命できた可能性は期待できるが、臨床的エビデンスは不明確である。 本試験は、経口抗トロンビン薬ダビガトラン服用中の重篤な出血、緊急手術により抗トロンビン効果の中和が必要なリスクの高い症例を対象とした。いずれの症例群においてもidarucizumabは速やかに抗トロンビン効果を中和した。われわれは、重篤な出血を経験した症例の1例でも中和剤により救命できれば、その1例にとって中和剤は意味があったと考える。しかし、その1例があったか否かは本試験では明確ではない。idarucizumabはダビガトランの抗トロンビン作用を急速中和した。その結果が救命に意味があったのかに関しては不明である。ヒト化モノクローン抗体Fabを受けるという大きな決断を踏み出すには、臨床経験は不十分である。難しい症例を対象とした試験ではあったが、血液学的中和剤が完成した事実には意味が大きい。

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ダビガトランに対するidarucizumab、患者での中和効果は?/NEJM

 ダビガトラン(商品名:プラザキサ)投与中の患者に対して、idarucizumabは数分以内で抗凝固作用を完全に中和することが、米国・ペンシルベニア病院のCharles V. Pollack, Jr氏らによる検討の結果、報告された。idarucizumabは、経口非ビタミンK拮抗薬に対する特異的な中和薬がない中、ダビガトラン特異的に抗凝固作用を中和するために開発されたヒト化モノクローナル抗体フラグメントである。これまでボランティア被験者(腎機能正常の健常若年者、65~80歳高齢者など)を対象とした試験で、迅速かつ完全な中和作用をもたらすことが示されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告より。重大出血患者群と要緊急手術患者群で安全性と有効性を検討 今回の報告は、現在も進行中の多施設共同前向きコホート試験RE-VERSE AD(38ヵ国400施設で300例登録を計画)の、早期登録患者90例(2014年6月~2015年2月に35ヵ国184施設で登録)において得られた中間解析の所見である。 RE-VERSE AD試験は、重大出血を呈した患者(A群)または緊急手術を要した患者(B群)におけるidarucizumab 5g静注の安全性を確認すること、およびダビガトラン抗凝固作用の中和能を確認することを目的とした。 主要エンドポイントは、idarucizumab投与後4時間以内のダビガトラン抗凝固作用の最大中和率(%)で、中央ラボにて確認(希釈トロンビン時間とエカリン凝固時間)が行われた。また、止血までの時間を副次エンドポイントのキーとした。88~98%の患者で、数分以内の抗凝固作用の中和を確認 登録患者90例の内訳は、A群51例、B群39例であった。患者の90%超が心房細動後の脳卒中予防のためダビガトラン治療を受けていた。年齢中央値は76.5歳、クレアチニンクリアランス中央値は58mL/分であった。 結果、ベースラインで希釈トロンビン時間の上昇がみられた68例、およびエカリン凝固時間の上昇が認められた81例において、最大中和率が100%であった(95%信頼区間[CI]:100~100)。 idarucizumab投与により、希釈トロンビン時間は、上昇がみられたA群98%の患者、およびB群93%の患者において正常化が認められた。またエカリン凝固時間についてはA群89%、B群88%の患者において正常化が認められた。それぞれの効果は、血液サンプルの結果から、初回投与後、数分以内に発現したことが明らかとなった。 また、24時間時点で、79%の患者において非結合ダビガトラン濃度は20ng/mL以下にとどまっていた。 止血に関する評価については、A群35例(中央ラボではない研究者による)の、止血までの時間中央値は11.4時間であった。手術を受けたB群36例のうち33例で、正常な周術期止血が報告され、軽度止血異常は2例、中等度止血異常は1例の報告であった。 また、抗凝固薬が再投与されていなかった患者1例において、idarucizumab投与後72時間以内の血栓性イベントが報告された。(武藤まき:医療ライター)関連記事 dabigatranの中和薬、リアルワールドな試験で良好な成績

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いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【1】(解説:後藤 信哉 氏)-380

 長らく使用されてきたワルファリンには、経験的に中和法が確立されている。ワルファリンの抗凝固薬としての作用機序は、経験に基づいて理解されてきた。ワルファリンは、基本的には第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、ダビガトラン存在下では第II因子機能、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン存在下では第Xa活性の速やかな回復は期待できない。第Xa因子は血漿中でプロトロンビントロンビンに転換するのみならず、活性化血小板膜上のprothrombinase complexにより、固相でもトロンビンを産生するため、生体におけるXa活性の中和は論理的にも困難である。 ダビガトランは、主に液相で起こるトロンビンによるフィブリンの産生を阻害する薬剤であるため、血漿からダビガトランを取り除けば効果の中和を期待できる。そこで、スポンサーはダビガトランに対する選択的モノクロナール抗体を作成した。抗体を作成し、抗体をヒト化して免疫原性を減らす方法は、すでに血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIaに対する選択的阻害薬治療として技術は確立している。ダビガトラン中和剤の投与を一生1回と割り切れば、アナフィラキシーの心配も大きくない。出血がコントロールできない場合、緊急手術時には欠点の多い抗体でも少数例でも出血死亡例は減らせると期待されて、idarucizumabというヒト化抗ダビガトラン抗体Fab(IgGのFcを切り離し、Fabを1ドメインのみ製剤化したという意味)が開発された。 本論文は、idarucizumab開発の第I相試験である。NEJM誌、 Lancet誌などの臨床的一流雑誌に第I相試験が掲載されることは少ない。上記の解説のごとく、ヒト化monovalent Fabとはいえ、アナフィラキシーショックの可能性が否定できないので一生に2度は使えない(すなわち、本試験に参加したヒトが将来ダビガトランを必要とし、なお、その中和が必要になってもこの薬を使うと、アナフィラキシーのリスクが高くなるという問題)。本論文は第I相試験であるので、健常人に対して「重篤な出血イベントリスクを増加させる」ダビガトランを「臨床的にメリットがない」と想定される状態で使用されている。さらに、まったく新しいヒト化monovalent Fabを、「臨床的に必要がないのに」ダビガトランを服用している症例に重ねてランダムに介入している。完全に実験的研究であり、今後繰り返される可能性はない。 本実験的研究によりidarucizumabは、ダビガトランにより惹起されたdiluted thrombin time(dTT)、ecarin clotting time(ECT)、activated partial thromboplastin time(aPTT)の延長を正常化することが示された。確かに、本試験は既存の薬剤開発システムの中ではproof of concept (POC)として必須と考えられる。しかし、被験者は出血のリスク、抗体投与のリスクなどを負うがメリットがあるとは考えにくい。ハードエンドポイントを含まないサロゲートエンドポイントを指標としたtrickyな試験なので、ヒトを用いず実証実験により精緻化されたsimulationなどにより、このような試験をスキップできる方法を考えるべきである。 日本ではとても、このような第I相試験はできないだろうな(というよりも、このような試験をする国にはなりたくないな)と思いました。

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よくある話【2】見えなかったリスクに対する過小評価:カテ前出血リスクの定量的評価(解説:香坂 俊 氏)-377

われわれはどうも昔から「見えないところ」の評価であっても、自分たちの経験による見立てはそれほど大きく的をはずさない、と考えるようである。今回は、冠動脈インターベンション(PCI)の合併症の予測に関する話題であるが、この手技には穿刺に伴う出血や造影剤使用による腎症といった問題点がつきまとう。そうした合併症を誰が起こしやすく、誰が起こさないのかということは、医師の評価の「正しさ」に関わる事象であり、これまでその領域があまり問題視されたことはなかった。John Spertus氏は、これまでそうしたリスク評価について、循環器分野で先駆的な役割を果たしてきた。そのSpertus氏がこれまでの集大成として提示したのが今回BMJ誌に掲載された論文である。扱われている内容はPCIに伴う出血の予測である。米国にはbivalirudinという、わが国のアルガトロバン(商品名:スロンノン)に近いトロンビン阻害薬が存在し、このbivalirudinはPCIに際し標準治療よりも出血率を下げることができる、とされている。ただ高額な薬剤であり、症例を選んで使わなくてはならない。Spertus氏がまず提示したのは、そのbivalirudinの使用率である。その使用率を客観的に計算された出血リスクに応じて振り分けたのが下図となる。わかりにくいかもしれないが、1本1本の曲線が各ドクターのbivalirudin使用率を示していて、人によって使い方がさまざまであることがおわかりいただけるかと思う。ただ、注目すべきは、ドクターによってはリスクが低い患者にbivalirudinを多く使用し、リスクが高い患者に使用していないといった傾向がみられるというところである(赤矢印方向)。これは本来のbivalirudinの用途からすると合目的ではない。そこで、Spertus氏は各施設にその客観的に計算された出血リスクを提示し、PCIの同意書に強制的にその数値を印刷する、という介入を行った。すると、その結果として、bivalirudinの使用は以下のように変化した。右上がりの曲線(赤矢印方向)が多くみられるようになり、bivalirudinの使用がその目的に沿ったものとなっていることがうかがえる。リスクの提示でここまで医師の判断や行動が変化するということも驚きであるが、この研究の成果はこれだけにとどまらない。上の図は、客観的に計算された出血リスクが同意書に提示されるようになる前後での実際の出血率を表したものである。グラフ右側に注目していただきたいが、高リスク患者における出血率が劇的に改善している。幾多もの薬剤、そしてデバイスの進歩よりも明確な「予後改善効果」がここには示されており、この分野注)での画期的な成果として特筆すべきことと(自分には)思われる。おそらく、これからの医療はデータを積極的に活用する時代を迎え、こうしたリスク計算なしには成立しえない方向に向かっていくであろう。好むと好まざるとにかかわらず、それが患者さんの安全の担保につながるからである(定量的なリスク評価なしに手技や手術に踏み込むことは、海図を持たずに航海に出るに等しい)。そのランドマークとなる発見がここにあった、といつの日かいわれる時がくるのではないか。注:Spertus氏はこうした研究分野を好んでOutcome Researchと呼び、米国では今後臨床研究はTranslational Research、Clinical Trial、そして Outcome Researchの3つに分かれていくと多くの研究者が考えている。

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ダビガトランの中和薬としてidarucizumabが有望/Lancet

 ヒト化モノクローナル抗体フラグメントidarucizumabは、用量依存的にダビガトラン(商品名:プラザキサ)の抗凝固作用を、迅速かつ完全にリバースすることが明らかになった。薬剤関連の有害事象についても、重篤なものは認められなかった。ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社のStephan Glund氏らが健康な男性47例について行った第I相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、示された。ダビガトランは心房細動後の脳卒中予防に、また静脈血栓塞栓症の治療および予防に関して、ワルファリンに代わる効果があることが示されている。Lancet誌オンライン版2015年6月15日号で発表した。idarucizumabを1g~7.5g投与、安全性、忍容性、有効性を検討 試験は、2013年2月23日~11月29日にかけてベルギーのSGS Life Sciences Clinical Research Servicesで、18~45歳の健康なボランティア男性47例を対象に行われた。被験者のBMIは18.5~29.9だった。 同グループは被験者全員に対し、ダビガトランエテキシラート220mg、1日2回を3日間、4日目には1回量を投与した。また被験者を無作為に分け、ダビガトラン最終投与2時間後に、idarucizumabを1g、2g、4gをいずれも5分静注投与、または5gと2.5gを1時間間隔で5分静注投与、またはプラセボ投与を、それぞれの群に行った。 主要評価項目は、薬剤関連有害事象だった。副次評価項目は、希釈トロンビン時間(dTT)、エカリン凝固時間(ECT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、トロンビン時間のリバースなどで、2~12時間の効果曲線下面積(AUEC2-12)で評価した。用量依存的に、抗凝固作用は迅速かつ完全にリバース 結果、薬剤関連有害事象は7例報告されたが、注射部位紅斑や鼻出血など、全員が軽症だった。 idarucizumabは、投与量に応じて、ダビガトランによる抗凝固作用を、迅速かつ完全にリバースした。ダビガトラン投与4日目の同3日目に対するAUEC2-12の平均比率は、dTTはプラセボ群が1.01に対し、idarucizumab 1g群が0.26(74%抑制)、2g群 0.06(94%抑制)、4g群 0.02(98%抑制)、5g+2.5g群が0.01(99%抑制)だった。 重篤または重度の有害事象は報告されなかった。治療中断となった有害事象はなく、治療群間で有害事象発生の臨床的に重大な差はみられなかった。 なお本剤に関する臨床試験はさらに継続中である。

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TRIGGER試験:急性上部消化管出血に対する限定的輸血対自由な輸血;実用的・非盲検かつ集団をランダム化した実現可能性試験(解説:上村 直実 氏)-368

 臨床現場で上部消化管出血(UGIB)患者に対する診療においては、迅速に出血源を発見して止血することと同時に、輸血を行うか否かを判断することが重要となる。「非盲検集団無作為化試験」が、この輸血施行の判断基準に関するエビデンスを得るための研究デザインとして、適切であるか否かを検証するために施行されたTRIGGER試験の結果が公表された。 TRIGGER試験では、大量出血症例を除くUGIB全症例を登録し、病院単位でヘモグロビン(Hb)濃度が8g/dL未満で輸血を行う制限群と、10g/dL未満でも輸血できる非制限群の2群に割り付けて検討した結果、「集団無作為化デザインは、両群共に被験者の迅速なエントリーが可能で、高いプロトコル順守率および貧血の解消に結び付き、有意ではないが制限群で赤血球輸血の減少に寄与する可能性が示唆された」。すなわち「臨床診療ガイドラインでUGIB患者に対する輸血の基準を明確にするためには、『非盲検集団無作為化試験』が適切な研究デザインであり、その実施が必須である」と結論されている。 UGIB患者に対する輸血に関して明確な基準はなく、大規模研究によるエビデンスの構築が期待されるところである。しかし、緊急症例に対するエントリー率や診療現場での無作為割り付けの困難性、さらに症例バイアスが大きいなどの理由から、実現可能で精度の高い介入試験デザインが探索されてきた。TRIGGER試験の結果から、施設を無作為に分ける方法が信頼性の高いエビデンス構築に有用であると示されたことから、今後、同デザインを用いた大規模なRCTが実践されるであろう。しかし、わが国におけるUGIBに対する診療の中心は、内視鏡検査での出血源の確認に引き続く内視鏡的止血の成否により輸血の必要性を決定することが多く、日本で本デザインを使用した多施設共同試験を実施する際には、各施設間において異なる内視鏡診療精度が課題となろう。

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Vol. 3 No. 3 経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI) 手技と治療成績

髙木 健督 氏新東京病院心臓内科治療手技Edwards SAPIEN(Edwards Lifesciences Inc, Irvine, CA)は、経大腿動脈、経心尖部アプローチが可能である(本誌p.27図1を参照)。(1) 経大腿動脈アプローチ(transfemoral:TF)(図1)現在、Edwards SAPIENの留置は16、18FrのE-Sheathを用いて行っている。E-Sheath挿入は、外科的cutdown、またはpunctureで行う2つの方法があり、どちらの場合も術前の大動脈造影、造影CTを用いて石灰化の程度、浅大腿動脈と深大腿動脈の分岐位置を確認することが大切である。TAVIに習熟している施設では、止血デバイス(パークローズProGlideTM)を2~3本使用し、経皮的に止血するケースも増えてきている。しかしながら、血管の狭小化、高度石灰化を認める場合、またTAVIを始めたばかりの施設ではcutdownのほうが安全に行うことができる。E-Sheathは未拡張時でも5.3~5.9mmあり、通常ExtrastiffTMのような固いワイヤーを用いて、大動脈壁を傷つけないよう慎重に進める。ガイドワイヤーの大動脈弁通過は、Judkins Right、Amplatz Left-1、Amplatz Left-2カテーテルを上行大動脈の角度に応じて使い分ける。また、ストレートな形状(TERUMO Radifocus、COOK Fixed Core wire)を用いると通過させやすい。ガイドワイヤーを慎重に心尖部に進めたあと、カテーテルも注意深く左室内に進める。その後、通常のコイルワイヤーを用いてPigtailカテーテルに入れ替える。さらに、Pigtailの形を用いながら、心尖部にStiffワイヤーを進める。StiffワイヤーはAmplatz Extra Stiff Jカーブを用いることが多い。左室の奥行きを十分に観察するため、RAO viewで可能な限りガイドワイヤーの先端を心尖部まで進めるが、経食道エコーを用いるとより正確に心尖部へ進めることが可能である。Edwards SAPIEN23mmには20/40mm、26mmには23/40mmのバルーンが付随しており、通常はこれを使用する。バルーン内の造影剤は15%程度に希釈すると粘度が下がり、バルーン自体の拡張、収縮をスムーズにする。バルーンを大動脈弁まで進め、一時的ペースメーカーにて180~200ppmのrapid pacingを行い、血圧を50mmHg以下にし、バルーンをinflation、そしてdeflationする。Rapid pacingは、血圧が50mmHg以下になるように心拍を調整する。一時pacingが1:2になるときは、160〜180ppmの低めからスタートし徐々に回数を上げるとよい。Pigtailカテーテルからの造影は、バルーンinflationの際に、冠動脈閉塞の予測、valveサイズの決定に有用である(図2a)。大動脈内にデリバリーシステムを進め、E-Sheathから出たところで、バルーンを引き込み、ステントバルブをバルーン上に移動させる。デバイスのalignment wheelを回転させバルーンのマーカー内にステントバルブの位置を調整する(図2b)。大動脈弓でデバイスのハンドルを回し、デバイスを大動脈に添わせるように進めていく(LAO view)。デバイスを左室内に進めたあと、システムの外筒をステントバルブから引き離し、Pigtailからの造影剤で位置を確認し、rapid pacing下で留置する(図2c, d)。留置後、経食道エコー、大動脈造影でparavalvular leakがないことを確認し、問題なければE-Sheathを抜去、止血を行う。図1 経大腿動脈アプローチ画像を拡大する(1)画像を拡大する(2)画像を拡大する(3)画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する図2 経大腿動脈アプローチの画像a 画像を拡大するb 画像を拡大するc 画像を拡大するd 画像を拡大する(2) 経心尖部アプローチ(transapical:TA)(図3)左胸部に5~7cmの皮膚切開をおき、第5、6肋間にて開胸を行う。ドレーピング後に清潔なカバーをした経胸壁エコーを用いてアクセスする肋間を決定する。心膜越しに心尖部をふれ、心尖部であることを経食道エコーで確認する。心尖部の心膜を切開し、心膜を皮膚に吊り上げる。穿刺部位を決定したら、その周囲にマットレス縫合またはタバコ縫合をかける。縫合の中央より穿刺し、透視下にガイドワイヤーを先行させる。その後、Judkins Rightを用いて下行大動脈まで進め、Stiffワイヤーに変更する。さらに、24Frデリバリーシースに変更し、20mmバルーンで拡張したあとにスタントバルブを留置する(図4a, b)。図3 経心尖部アプローチ画像を拡大する(1)画像を拡大する(2)画像を拡大する(3)画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する図4 経心尖部アプローチの画像a 画像を拡大するb 画像を拡大する治療成績症候性重症大動脈弁狭窄症(symptomatic severe AS:s AS)に対して、効果的な薬物療法がないため、保存的治療を選択した患者の予後が悪く、手術可能である患者には、外科手術(sAVR)が標準治療となっている1-3)。しかしながら、30%以上のs ASは、さまざまな理由で、sAVRは見送られているのが現状である4,5)。TAVIは、ハイリスクs ASに対して、sAVRの代替治療として2002年にDr. Alain CribierによってFirst In Man(FIM)が施行され6)、現在はヨーロッパを中心に10万例以上の治療が施行されている。TAVIは、balloon expandableタイプのEdwards SAPIEN、self expandableのCoreValve system(Medtronic, Minneapolis, MN)といった2つのシステムが、欧州を中心に用いられている。(1) Edwards' Registries現在までにEdwards SAPIENを用いたregistryでは、さまざまな報告がなされているが、有害事象が施設ごとに異なり統一された基準を用いていなかった。そうした状況を踏まえ、2011年には統一評価基準を定めたValve Academic Research Consortium (VARC)guidelines7)が発表され、その後はVARCを用いた治療成績が発表されるようになった。2012年に報告されたFrance 2 registryでは、3,195例の初期成績と1年成績が報告された(平均82.7歳、logistic EuroSCORE 21.9±14.3%、STS score 14.4±12.0%)。Edwards SAPIENが66.9%で用いられ、CoreValveは33.1%であった。アプローチはTF 74.6%、TS 5.8%、TA 17.8%であり、手技成功は96.9%で得られた。また、30日全死因死亡率9.7%、1年死亡率24.0%、30日心血管死亡率7.0%、1年心血管死亡率13.6%であり、手術ハイリスクであるs ASに対してTAVIは妥当な治療法であることが示された8)。また、長期予後に関しては、Webbら9)が、84人のTAVI施行後5年成績を発表しており、5年間で3.4%の中等度valve dysfunctionを認めたものの重篤なvalve dysfunctionを引き起こした症例は認めず、SAPIEN valveの長期耐久性が優れていることを証明した。またそのなかで、生存率は1年83%、2年74%、3年53%、4年42%、5年35%であり、COPD、中等度以上のmoderate paravalvular aortic regurgitation(PR)が全死因死亡に与える影響が大きいことを示した。(2) 無作為化比較試験PARTNER試験(Placement of AoRtic Tra-NscathetER Valves)はs ASにおけるハイリスク手術、手術不適応症例において、TAVIと標準治療(バルーン拡張術+薬物療法)、外科手術を比較した初めての多施設無作為試験である。Cohort Aは、手術ハイリスクのs AS患者をTAVIとsAVRに割りつけ、cohort Bにおいては手術適応がないと判断されたs AS患者をTAVIと標準治療(バルーン拡張術)に割りつけた。手術ハイリスクとは、(1) STSスコアが10%以上、(2)予想30日死亡率が15%以上、(3)予測30日死亡率が高く、また50%以上の死亡率の併存疾患がある状態、と考えられた。除外基準は、2尖弁、非石灰化大動脈弁、クレアチニン3.0mg/dLまたは透析の重症腎不全、血行再建が必要な冠動脈疾患、左室機能低下(EF 20%以下)、大動脈弁径18mm以下または25mm以上、重症僧帽弁逆流症(>3+)、大動脈弁逆流症(>3+)、そして6か月以内に起きた一過性脳虚血発作または脳梗塞であった。2つのコホートの主要エンドポイントは研究期間中の全死亡であり、全死亡、再入院を合わせた複合イベントも検討された。PARTNER trial -cohort A-PARTNER trial cohort Aでは、手術ハイリスク(STS平均スコア11.8%)と判断されたs AS患者(25施設、699例)をTAVIとsAVRに割りつけ、術後1年時(中央値1.4年)の全死因死亡、心血管死亡、NYHA分類のクラス、脳卒中、血管合併症、出血を比較した。TA 104人に対しsAVRから103人、TF 244人に対しsAVRから248人が割りつけられた。30日全死因死亡率はTAVI群全体で3.4%、sAVR群で6.5%(p=0.07)であった。またTF群3.3%に対しsAVR群は6.2%(p=0.13)、TA群3.8%に対しsAVR群は7.0%(p=0.32)で有意差は認めなかった。主要エンドポイントに設定された1年時死亡率は、TAVI群24.2%とsAVR群26.8%(p=0.44)であり、TAVIの非劣性が確認された(非劣性のp=0.001)。TF、TAに分けて分析しても、sAVRと比較し非劣性が確認された。脳卒中または一過性脳虚血発作の発生率はTAVI群で高かった(30日TAVI 5.5% vs. sAVR 2.4% p=0.04、1年時8.3% vs. 4.3% p=0.04)。しかしながら、重症の脳卒中(修正Rankinスケールが2以上)では、有意差はみられなかった(30日TAVI 3.8% vs. sAVR 2.1% p=0.20、1年5.1% vs. 2.4% p=0.07)。全死因死亡または重症脳卒中を合わせた複合イベントの発生率に差はなかった(30日TAVI 6.9% vs. sAVR 8.2% p=0.52、1年26.5% vs. 28.0% p=0.68)。主要血管合併症は、TAVI群に有意に多かったが(11.0% vs. 3.2% p<0.001)、大出血と新規発症した心房細動はsAVR群で多かった(出血9.3% vs. 19.5% p<0.001、心房細動8.6% vs. 16.0% p=0.006)。TAVI群では、sAVR群より多くの患者が30日時点で症状の改善(NYHA分類でクラスII以下)を経験していたが、1年経つと有意差がなくなった。TAVI群のICU入院期間、全入院期間はsAVR群より有意に短かった(3日 vs. 5日 p<0.001、8日間 vs. 12日間 p<0.001)。以上のように、PARTNER trial -cohort A-より、1年全死因死亡率においてTAVIはsAVRに劣らないことが証明された10)。PARTNER trial -cohort B-PARTNER trial cohort Bでは、手術不適応と判断されたs AS患者(21施設、358例)を、バルーン大動脈弁形成術を行う標準治療群(control群)と、TAVI群に無作為に割りつけ比較検討を行った。1年全死因死亡率はTAVI群30.7%、control群50.7%であり(p<0.001)、全死因死亡または再入院の複合割合は、TAVI群42.5%、control群71.6%であった(p<0.001)。1年生存は、NYHA分類でⅢ/Ⅳ度を示した症例はTAVI群のほうが有意に少なかった(25.2% vs. 58.0% p<0.001)。しかし、TAVI群はcontrol群と比較して30日での脳卒中(5.0% vs. 1.1% p=0.06)と血管合併症(16.2% vs. 1.1% p<0.001)を多く発症した。血管、神経合併症が多いものの、全死因死亡率、全死因死亡または再入院の複合割合は有意に低下し、心不全症状は有意に改善した10)。その後、2年成績も報告され、2年全死因死亡(TAVI群43.3% vs. control群68.0% p<0.001)、心臓関連死(31.0% vs. 68.4% p<0.001)はTAVI群で著明に少なく、TAVIで得られたadvantageは2年後も継続していることが示された11)。上記2つの試験により、現時点では手術不適応、手術がハイリスクであるs AS患者に対するTAVIはsAVRの代替療法になることが示されたが、中等度リスク患者においては、未だエビデンスが不十分である。そのため、中等度手術リスクのs AS患者に対する、TAVIの有効性、安全性を証明するには、TAVIとsAVRを比較したPARTNER2 trialの結果が待たれるところである。TAVIに関連する特記事項血管合併症(vascular complication)血管合併症はTFアプローチのTAVIの大きな問題であり、大口径カテーテルを用いること、治療対象がハイリスク症例であることから高率に発生する。小血管径、重篤な動脈硬化、石灰化、蛇行した血管はTAVIにおける血管合併症の主な原因である。最新の報告であるFrance 2 registryでは、デバイスは18Fr Edwards SAPIEN XTを含んではいるものの、全体で4.7%、TF群で5.5%と主要血管合併症の発生頻度は減少している8)。主要血管合併症、または主要出血と生存の関係は、何人かの著者によって証明されており、この合併症を予防するために、十分なスクリーニングが最も重要である。脳卒中(stroke)TAVIにおける有症状の脳梗塞は、致命的合併症である(1.7~8.3%)10-17)。脳梗塞発症の機序ははっきりしていないが、大口径のカテーテルが大動脈弓を通過するとき、高度狭窄した大動脈弁を通過させるとき、大動脈弁拡張時、rapid pacing中の血行動態に伴うもの、デバイス留置など、手技中のさまざまな因子によって引き起こされている可能性が示唆されている。現在のTAVI症例は、高齢であり心房細動、そして動脈硬化病変の割合が高く、脳梗塞イベントを増加させている。Diffusion-weighted magnetic resonance imaging(DW-MRI)を用いた2つの研究において、TFアプローチTAVI後に、新規に発症した脳梗塞が70%以上の患者に発生していたことが報告された18,19)。また、Rodés-CabauらはDW-MRIによってTAで71%、TFでも66%と同じように、脳梗塞を発症していることを報告した20)。しかしながら、ほとんどの症例が症状を伴わないため、臨床的なインパクトを決定するにはさらなる研究が必要である。脳梗塞予防デバイスが開発中であり、TAVI後の無症候性、症候性脳梗塞を減少させると期待されていたが、満足できる結果は報告されていない。また、術後の抗血小板療法については、抗血小板薬2剤併用療法を3か月以上行うのが主流だが、はっきりとした薬物療法の効果については報告されておらず、議論の余地がある。調律異常(rhythm disturbance)文献により新規ペースメーカー植え込み率は異なっているものの(CoreValve 9.3~42.5% vs. Edwards SAPIEN 3.4~22%)、CoreValveは、左室流出路深くに留置し、長期間つづく強いradial forcesを生じることから、Edwards SAPIENよりも新規ペースメーカー留置を必要とする頻度が高いと報告されている。持続する新しい左脚ブロックの新規発現は、TAVI後の最も明らかな心電図上の所見であると報告されており、CoreValve留置後1か月の55%の症例で、そしてSAPIEN留置後1か月の20%の症例において認められ21)、その出現は全死因死亡の独立した因子であることが報告されている22)。一方で、TAVI後の完全房室ブロックの予測因子は、右脚ブロック、低い位置での弁の留置、植え込まれた弁と比較して小さな大動脈弁径、手技中の完全房室ブロック、そしてCoreValveと報告されており23,24)、一般的に心電図モニター管理は最低72時間、TAVI後の患者すべてに行われるが、この合併症の高リスク患者は退院するまでのモニター管理が必要である。弁周囲逆流(paravalvular regurgitation)Paravalvular regurgitation(PR)は、TAVI後に一般的にみられる。多くの症例では、mild PRを認め、7~24%の患者でmoderate以上のPRが観察される12,25-28)。SAPIEN Valveにおいて、moderate以上のPRの割合に経年的変化は認められない12,28)。一方、CoreValveは強いradial forcesによりPRが改善したと報告があるが25)、はっきりとしたコンセンサスは得られていない。TAVI後のmoderate PRは(PARTNER試験ではmild PRであっても)長期成績に影響を与えることがわかっており29-31)、PRを減らすことが非常に重要な問題となっている。PRを減らすためには、より大きなvalve sizeを選択する必要があるが32,33)、致命的な合併症である大動脈弁破裂を引き起こす可能性が増える。そのため、慎重なCT、エコーでの大動脈弁径、石灰化分布の評価が必要である。冠動脈閉塞(coronary obstruction)左冠動脈主幹部閉塞は稀であるが、BAV、TAVIの最中に起こりうる重篤な合併症である。急性冠動脈閉塞に対して迅速なPCI、またはバイパス手術で救命されたという報告がされている34-36)。大動脈弁輪と冠動脈主幹部の距離は、分厚い石灰化弁と同様に重要な予測因子となり、3Dエコー、CTでの正確な評価がこの致命的な合併症を避けるために必要である37)。ラーニングカーブTAVIにはラーニングカーブがあり、正確な大動脈弁径、腸骨大腿動脈径の測定、リスク評価、適切な症例選択、手技の習熟により、治療成績は劇的に改善することが報告されている。Webbらは168例の成績を報告し、初期の30日死亡率がTF 11.3%、TA 25%から、後半でTF 3.6%、TA 11.1%と改善したことを示し、TAVIにおけるラーニングカーブの重要性を明らかにした38)。おわりに本邦でも、Edwards SAPIEN XTを用いたPREVAIL JAPAN試験の良好な成績が発表され、2013年から保険償還され、本格的なTAVIの普及が期待されている。しかしながら、現在の適応となる患者群のTAVI治療後の1年全死因死亡率は20%以上であり、TAVIの適応については、議論の余地がある。特にADLの落ちている高齢者、frailtyの高い患者は、ブリッジ治療としてBAVを行い、心機能だけでなくADLが改善することを確認したうえで、TAVI治療を選択するといったstrategyも考慮する必要があるのではないだろうか。文献1)Bonow RO et al. 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事例48 APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の査定【斬らレセプト】

解説事例では、D006 2 PT(プロトロンビン時間)とD006 7 APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を実施したところ、APTT がD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの: 社保)にて査定となった。医師から、「ワーファリン®錠の添付文書には、『本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である』とあったために、PTとAPTTの組み合わせで血液凝固能管理を行っていたが、なぜAPTTが査定となったのか」と問い合わせがあった。添付文書で示されている検査は、PTとTT(トロンボテスト)であり、APTTは含まれていない。また、ワーファリン®錠投与中はコントロールされた血液凝固異常状態である。したがって、投与量をモニタリングするために認められるPT以外は、定期的検査として認めないとされたものであろう。しかし、術前検査や副作用チェックなど、医学的に必要としたコメントがある場合には査定となっていないことも申し添える。

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天馬PEGASUSは空を駆けるか?心筋梗塞後長期の抗血小板療法の意味と価値:PEGASUS-TIMI 54試験(解説:後藤 信哉 氏)-340

 1980年代に循環器内科に進んだわれわれ世代の循環器内科医にとって、「心筋梗塞は死に至る病」であった。実際、再灌流療法も、抗血栓療法も標準化していない当時の心筋梗塞は院内死亡率も10%を超えていた。日本以上に冠動脈疾患の有病率の高い欧米では、「心筋梗塞」が日本の「がん」並みに恐ろしい病気と理解されたことは容易に想像できる。1970~80年代には心筋梗塞の原因が「冠動脈血栓」であるとの知識も普及していなかった。筆者ら、血栓症の専門家がAHA、ACCなどの欧米のmajorな学会では1990年代になってもマイノリティーであった。 循環器内科医一般に血栓症と抗血栓療法の知識が乏しかったため、心筋梗塞、ステント血栓症などの冠動脈イベントが「血栓症」とわかった後は、メーカーの強烈な宣伝に抗うすべもなく、抗血栓薬は循環器内科領域の標準治療として急速に普及した。多くの循環器内科医は、アスピリン、クロピドグレルの薬効メカニズムは理解していないが、使用の経験は蓄積されている状態にある。実際、アスピリンは抗血小板薬と言い切れない部分もある各種細胞のシクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害薬であるが、薬効メカニズムの詳細は筆者にもよくわからない。 クロピドグレルも臨床試験の結果に基づいて1997年に米国で承認された。「心筋梗塞が怖い」欧米人は、「冠動脈血栓予防」のためにクロピドグレルも大量使用した。クロピドグレルの薬効標的P2Y12がクローニングされたのは2001年である。われわれは、抗血小板薬は薬効メカニズムもわからないままに使用していたのだ。これが1990年代の医療の実態であった。P2Y12クローニング後、この標的に対する選択的阻害薬が開発された(日本のプラスグレルはクロピドグレルの類似薬として開発された)。その成功例がチカグレロルである。P2Y12 ADP受容体はADPに特異的な受容体であるが、構造上ADPはATPに近い。チカグレロルの構造もATPに近い。低分子の非可逆的受容体阻害薬である。 薬効もわからないクロピドグレルの急性冠症候群の試験が成功したので、薬効を理解したチカグレロルはクロピドグレルに対する優越性を示すPLATO試験に挑戦した。試験の内部には不均一性があり、日本と東アジアにて施行されたPHILO試験もPLATO試験と同様の傾向ではないので、PLATO試験の全体としての成功は「運の良さ」の寄与が大きい。それでもPLATO試験では死亡率低減効果を示したので、欧州では急性冠症候群に対する標準治療になろうとしている。 さて、チカグレロルが天馬の如く世界を駆けるか否かを規定するのは、急性冠症候群以外の慢性期の疾病適応を取得できるか否かにかかっている。クロピドグレルは、「冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患」という広い適応をCAPRIE試験により取得した。国際共同試験に「脳血管疾患」を入れると、画像診断の普及していない諸国にて脳梗塞と脳出血の弁別ができず、脳出血の増加により試験が失敗するリスクがある。 PEGASUS試験を実施したTIMI groupは、クロピドグレルの類似薬プラスグレル、トロンビン受容体vorapaxarの開発試験のデータベースを保有しているので、「脳血管疾患」の危険性を十分に理解していた。クロピドグレルのように「冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患」という広い適応が取れなくても、「心筋梗塞後慢性期の血栓イベント抑制」の適応を取得できれば、冠動脈疾患は急性期から慢性期までチカグレロルを天馬として羽ばたかせることができる。その意味でPEGASUS試験はきわめて重要であり、医師、企業関係者、投資家などの注目を集めた。 Gene Braunwald氏率いるTIMI groupは、「臨床の科学」にも妥協のない科学者グループである。PLATO試験ではチカグレロル群において出血が多い傾向を認めたことから、発症後1~3年の心筋梗塞では出血リスクが血栓リスク低減効果を超えることを危惧した。急性期に用いた90mg1日2回に加えて、60mg1日2回のチカグレロルのアームを作った。低用量のアームがあったことで、安全性重視のわが国の参加もPLATO試験よりは容易になった。実際、PLATO試験には本邦は参加しなかったが、PEGASUS試験には参加した。 「臨床の科学」の質を上げるためには、ランダム化した症例の追跡の徹底化を図る必要がある。実際、追加リスクがあるとはいっても、心筋梗塞後1~3年後の症例の心血管イベントリスクは、アスピリン単剤でも年率3%程度にすぎない(9.04%/3年)。60mg、90mgのチカグレロル服用により、年率2.6%程度(7.77%/3年:60mg、7.85%/3年:90mg)に低下したとはいっても、これだけの軽微な差異を統計学的に検出するためには、数例の追跡不能すら許されないのだ。心血管領域では、標準治療の進歩により「現在の標準治療」下における心血管イベントリスクが低い。1980年代に「怖い病気」であった心筋梗塞の「怖さ」は21世紀になって激減した。わずかな差異を科学的に占めるためには大量の症例を登録し、徹底的に追跡する必要がある。有効性を示したことでチカグレロルは天馬になるかもしれないが、関係者が尽くした努力は計りしれない。 抗血小板薬なので、出血リスクが増えることは予測の範囲である。「科学的に質の高い」試験であるため、出血イベントも精緻に計測した。われわれは、2次予防におけるアスピリン服用時の重篤な出血イベント発症率を、年率0.2~0.5%程度と理解して、患者からインフォームド・コンセントを取得していた。PEGASUS試験はわれわれの想定が現在も大きく違っていないことを裏付けた。アスピリン群の重篤な出血イベント発症率は1.06%/3年(年間0.3%程度)であった。60mg1日2回、90mg1日2回のチカグレロルを追加すると、重篤な出血イベント発症率は2.30%/3年、2.60%/3年と2倍以上に増加した。プラセボとの比較において、アスピリン服用者の頭蓋内出血が約1.6倍に増加していた過去の事実に比較すると、頭蓋内出血、致死性出血が増えていないことに関係者は胸をなでおろしたであろう。 アスピリン使用時には「この薬を飲むと1,000人のうち、2~5人くらいが重篤な出血を起こすけど、将来の心筋梗塞を25%減らせる。どうしようか?」との患者さんとのICのプロセスが、「アスピリンにチカグレロルを追加すると、1,000人のうち、5人に重篤な出血が起こるけど心筋梗塞や心血管死亡、脳卒中は15%くらい減る。どうしようか?」となる。重篤な出血に頭蓋内出血、致死的出血が含まれないことは朗報であるが、このような説明によって、どの程度の患者さんが長期のチカグレロルの服用を希望するかを予測することは難しい。ATPに似たチカグレロルでは徐脈、呼吸困難感などの自覚的、他覚的副作用の増加も実臨床では問題になる。認可承認後に爆発的に売り上げを伸ばしたクロピドグレルは、CAPRIE試験ではほんのわずかにアスピリンに勝る優越性を示したのみであった。筆者ら血小板研究の専門家は、クロピドグレルの爆発的売り上げを予測できなかった。抗血小板薬に比較すれば、はるかに重篤な出血イベントリスクの多い新規経口抗トロンビン薬、抗Xa薬が予防介入において広く使用されているのも、ランダム化比較試験を主導した研究者としての筆者の予測を超えた。チカグレロルがクロピドグレル並みの天馬となれば、わずかの差異のランダム化比較試験の結果が世界の医療界に影響を与える「てこ」のメカニズムを理解したいものである。

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「エドキサバンは日本の薬なのに…」2~エドキサバン減量と出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-337

 EBM(Evidence Based Medicine)を基本原理とする現在の医療において、臨床データベースの保有には圧倒的な意味がある。エドキサバンは日本企業が開発した薬剤である。日本企業には抗トロンビン薬があるがトロンビンの時代から、選択的凝固因子阻害薬の開発力は外資企業に先行していた。残念ながら、分子としての抗Xa薬を介入したときの個人の反応は予測不可能な程度にしか、現在の医学は成熟していない。結果として、エドキサバン介入時の臨床データベースを持っているものが強い。 第一三共の開発したエドキサバンであるが、非弁膜症性心房細動におけるワルファリンとの比較試験「ENGAGE AF-TIMI 48」は、ハーバード大学のTIMI groupをスポンサーとして施行された。膨大なデータベースからは、多くの科学的事実が公表される。本論文も重要なサブ解析の1つである。日本企業が開発した薬剤を用いた試験の重要なサブ解析であるが、残念ながら日本人は著者として参加していない。 ENGAGE AF-TIMI 48試験のプロトコルは単純ではなかった。ワルファリンと2用量のエドキサバンの有効性、安全性の検証を目指した部分のみでも、十分に複雑であった。さらに、本試験では来院時にクレアチニン・クリアランスが30~50mL/分の人、体重が60kg以下の人、または、P糖タンパク質の相互作用のある併用薬を服用したときには、エドキサバン投与量を半減した。試験の最初のみでなく、中途でも減量する基準を設けることにより、抗Xa効果の標準化を目指した。試験の規模が大きいので、プロトコルに規定された30、60mgの標準投与量から減量した5,356例と、減量しなかった1万5,749例の比較が可能であった。抗Xa活性のトラフ値を6,780例にて把握できたことも、科学的試験として、多くの情報をわれわれに与えることができる試験であったといえる。 ランダム化比較試験では、基本的に1つの臨床的仮説の検証のみが可能である。ENGAGE AF-TIMI 48試験では、二重盲検二重ダミー試験として、実臨床に近い0.5mg刻みのワルファリンのコントロールを行った。PT-INR 2.0~3.0を仮の「標準治療」とすることも徹底していた。TTRもきわめて高い。質の高いワルファリン治療下では、血栓イベントも出血イベントも起こりにくい。仮説検証試験としてはエドキサバンの優越性は示せなかった。 50年使用してきたワルファリンに「PT-INR 2.0~3.0」という枠をはめても、ワルファリンが優れた薬剤であることを示したのがENGAGE AF-TIMI 48試験であった。それでも、臨床的特徴に基づいて減量することにより、エドキサバン群の出血イベントリスクを示すことができたので、減量好きな日本の臨床家にはありがたい研究結果であったといえる。 筆者は本試験のDSMB(Data and Safety Monitoring Board)であったので、筆者には資格がないが、本試験に症例を登録した研究者であれば、ぜひ、本研究のような日本の臨床家に役立つサブ解析を主導したいと思った。主導するのがTIMI groupであることを受け入れるとしても、日本人研究者の1人として共著者になり、論文作成段階から寄与したかった魅力的研究である。

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急性冠症候群、経橈骨動脈アクセスの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する侵襲的処置では、経橈骨動脈アクセスが、経大腿動脈アクセスに比べ臨床的有害事象の抑制効果が優れることが、オランダ・エラスムス医療センターのMarco Valgimigli氏らが行ったMATRIX Access試験で確認された。ACS患者に対する抗血栓療法を併用した早期の侵襲的処置の重要な目標は、出血イベントを抑制しつつ効果を維持することである。侵襲的処置で頻度の高い出血部位は心臓カテーテル検査時の大腿動脈穿刺部であり、経橈骨動脈アクセスは技術的な困難を伴うが止血の予測がしやすいとされる。2つのアクセス法の有害事象を比較した試験では、相反する結果が提示されているという。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告。2つのアクセス法の有害事象を無作為化試験で比較 MATRIX Access試験は、経橈骨動脈的インターベンションにおける穿刺部位の出血や血管合併症の抑制効果を検討する多施設共同無作為化試験(Medicines Company社などの助成による)。対象は、冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応とされるACS患者(ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞)であった。 被験者は、経橈骨動脈または経大腿動脈的にアクセスする群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、30日時の重度の冠動脈有害事象(死亡、心筋梗塞、脳卒中)と、最終的な臨床的有害事象とした。後者の定義は、重度の冠動脈有害事象または冠動脈バイパス移植術(CABG)とは関連のない大出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]の出血性合併症重症度分類の3または5型)とした。 2011年10月11日~2014年11月7日までに8,404例が登録され、経橈骨動脈群に4,197例、経大腿動脈群には4,207例が割り付けられた。平均年齢は経橈骨動脈群が65.6歳、経大腿動脈群は65.9歳で、75歳以上はそれぞれ25.4%、26.2%含まれ、男性が74.5%、72.4%を占めた。メタ解析で大出血、冠動脈有害事象、死亡が改善 30日時の重度の冠動脈有害事象の発現率は、経橈骨動脈群が8.8%、経大腿動脈群は10.3%(率比[RR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.74~0.99、p=0.0307)であり、有意な差は認めなかった[α水準が2.5%(p<0.025)の場合に有意差ありと定義]。 最終的な臨床的有害事象の発現率は、経橈骨動脈群が9.8%、経大腿動脈群は11.7%(RR:0.83、95%CI:0.73~0.96、p=0.0092)と、有意差がみられた。この差には、非CABG関連のBARC 3/5型大出血(1.6 vs. 2.3%、RR:0.67、95%CI:0.49~0.92、p=0.0128)および全死因死亡(1.6 vs. 2.2%、RR:0.72、95%CI:0.53~0.99、p=0.0450)の影響が大きかった。 また、既報の試験(RIVAL試験)に本試験のデータを加えてメタ解析を行ったところ、経橈骨動脈アクセスにより大出血(RR:058、95%CI:0.46~0.72、p<0.0001)、重度の冠動脈有害事象(RR:0.86、95%CI:0.77~0.95、p=0.0051)、全死因死亡(RR:0.72、95%CI:0.60~0.88、p=0.0011)が減少したが、心筋梗塞や脳卒中の発症には影響はなかった。 さらに、本試験に関連してコホート内症例対照研究を行ったところ、BARC 2/3型の出血は出血以外の原因による死亡と強く関連した。 著者は、「経橈骨動脈アクセスは、ACS患者に対する侵襲的処置の標準とすべきことが示唆された」と結論付けている。

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ワルファリン出血の急速止血に新たな選択肢?(解説:後藤 信哉 氏)-333

 臨床家は50年にわたり、ワルファリンを使用してきた。新規の経口抗トロンビン薬、抗Xa薬が開発され、使用可能になったとはいっても、真の意味での血栓イベントリスクが高くない非弁膜症性心房細動など、薬剤の必要性が必ずしも高くない症例なので、これらの症例で出血が怖ければ薬剤を使用しないとの選択があった。ワルファリンを使用している症例は、人工弁、血栓性素因など抗凝固薬の必要性が著しく高い症例である。これらの症例でも、ワルファリンコントロールの良否にかかわらず、重篤な出血イベントが起こる場合がある。消化管出血などであれば、開腹、長時間の圧迫止血など、薬剤以外の手段がまったくないわけではない。頭蓋内出血となると、とても困る。時間と共に症状が増悪している頭蓋内出血では、頭蓋内圧増加が止血に寄与しても、ワルファリンの効果が持続している状態では止血は期待し難い。 ワルファリンは、ビタミンK依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する薬剤なので、凝固因子を外部から補えば止血に寄与できるとの発想があった。しかし、新鮮凍結血漿の凝固因子濃度は濃くない。血友病治療に用いる第VII因子濃縮製剤は、うまくいかなかった。血液凝固システムは複雑である。ワルファリンは、血小板上での活性化凝固因子複合体の産生阻害を介して抗凝固効果を発揮するので、単一凝固因子を補うよりも、複数因子からなる活性化凝固因子複合体を投与したほうが、止血効率が高いと想定された。同時に補給して酵素カスケード反応を効率化しようというのが、今回の臨床試験の試みである。複数因子を含む製剤の中でも第VII因子がほぼ正常の製剤と、第VII因子を少量含む製剤がある。本試験では、第VII因子を正常量含むfour factor PCCと新鮮凍結血漿の止血効果とPT-INRに及ぼす効果が検証された。 臨床家にとっては止血効果こそ重要である。試験に参加した医師は、止血効果を実感したと想定される。しかし、止血効果は感覚的なので科学的エンドポイントとしては十分性が乏しい。そこでPT-INRに対する効果も検証された。試験は薬剤開発の後期第II相試験である。 試験はオープンラベルの非劣性試験である。薬剤開発試験であるため、スポンサーバイアスもあるかもしれない。止血効果は活性化凝固因子複合体製剤が優越していた。INRの改善も認めた。「心房細動の脳卒中予防に対する抗凝固薬」の有効性を確認する試験など、薬剤が標的とするイベントの発現率が著しく低く、かつ、薬剤中止という選択により実際に患者さんが困るケースが少ない場合には、オープンラベルの第II相試験の後に、有効性を科学的検証する第III相試験が必要かもしれない。しかし、今回の試験の対象薬は「出血により時事刻々と実際に困っている症例」が対象である。認可承認のハードルを低くしても、実際に医師が臨床現場で使用すれば有効性を実感できる。少なくとも「医は仁術」として、ビジネスを度外視している日本の医師は、認可承認の後に「出血により時事刻々と実際に困っている症例」を救えない薬剤は使用しない。このような薬剤は、試験の科学的価値が低くても、臨床現場に早く届ける価値がある。実際に使用する症例数は多くないと想定されるので、認可承認の後、全数の登録レジストリなどをスポンサーに課して、期限内に科学的根拠を示せなければ、承認取り消しの条件に早期承認を可能とするシステムを考えたらよいと筆者は考える。

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ビタミンK拮抗薬の急速中和製剤(4F-PCC)の効果は?/Lancet

 緊急の外科的・侵襲的手技においてビタミンK拮抗薬(VKA)投与を必要とする患者について、4因子含有プロトロンビン複合体濃縮製剤(4F-PCC)の血漿製剤に対する、急速VKA中和および止血効果に関する非劣性と優越性が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院のJoshua N Goldstein氏らによる第IIIb相の非盲検非劣性無作為化試験の結果、示された。VKAによる抗凝固療法は、緊急外科的・侵襲的手技を要する患者に関して迅速中和を必要とする頻度が高い。しかしこれまでその至適な手法について、臨床比較試験による確定は行われていなかったという。Lancet誌オンライン版2015年2月26日号掲載の報告より。止血効果と急速INR低下の2つを主要エンドポイントに比較 研究グループは、4F-PCCの有効性と安全性を血漿製剤と比較して検討した。試験は国際多施設共同(33病院;米国18、ベラルーシ2、ブルガリア4、レバノン2、ルーマニア1、ロシア6)にて行われ、緊急外科的・侵襲的手技の前に急速VKA中和を必要とする18歳以上の患者を登録した。 患者を、VKA投与と共に4F-PCC(Beriplex/Kcentra/Confidex;ドイツ・CSLベーリング社製)または血漿製剤を単回投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。投与量は国際標準化比(INR)と体重に基づき調整した。 主要エンドポイントは2つで、止血効果と急速INR低下(投与後0.5時間時点で1.3以下)。 解析は、最初に両エンドポイントについて非劣性(両群差の95%信頼区間[CI]下限値が-10%超と定義)を評価し、次いで非劣性が認められた場合に優越性(同0%超と定義)を評価した。 有害事象と重篤有害事象は、それぞれ10日時点、45日時点まで報告された。いずれのエンドポイントも4F-PCCの非劣性、優越性を確認 181例の患者が無作為に割り付けられた(4F-PCC群90例、血漿製剤群91例)。有効であったintention-to-treat比較集団は168例(それぞれ87例、81例)であった。 止血効果が認められたのは、4F-PCC群78例(90%)に対し血漿製剤群61例(75%)で、4F-PCCの血漿製剤に対する非劣性および優越性が確認された(両群差14.3%、95%CI:2.8~25.8%)。 また、急速INR低下を達成したのは、4F-PCC群48例(55%)に対し血漿製剤群8例(10%)で、こちらについても4F-PCCの血漿製剤に対する非劣性および優越性が確認された(両群差45.3%、95%CI:31.9~56.4%)。 4F-PCCと血漿製剤の安全性プロファイルは類似していた。有害事象の発現は4F-PCC群49例(56%)、血漿製剤群53例(60%)であった。とくに注目された有害事象は、血栓塞栓イベント(4F-PCC群6例[7%] vs. 血漿製剤群7例[8%])、輸液過剰または関連心イベント(3例[3%] vs. 11例[13%])、遅発性出血イベント(3例[3%] vs. 4例[5%])であった。

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週1回の投与で血友病患者のQOL向上へ イロクテイトがもたらす定期補充療法

 3月10日、都内においてバイオジェン・アイデック・ジャパン株式会社による血友病のプレスセミナーが、花房 秀次氏(荻窪病院 理事長/血液科 部長)を講師に迎え、開催された。これは同社の血友病A治療薬エフラロクトコグアルファ(商品名:イロクテイト)の発売に関連し行われたものである。血友病の診療の今 はじめに花房氏は、疾患概要について次のように説明を行った。 血友病とは、止血に関与する数種類の凝固因子の1つが不足または欠乏している遺伝性の疾患(家族歴がなく突然変異で出現する場合もある)であり、血液凝固第VIII因子が不足・欠乏しているものを「血友病A」、血液凝固第IX因子が不足・欠乏しているものを「血友病B」と呼んでいる。 患者は、全世界で約14万人。わが国では総患者数5,769人(うち血友病Aの患者は4,761人)、圧倒的に男性に多いのが特徴で、潜在的な患者も2,000人前後存在すると推定される。 症状としては、出血時に血が止まりにくくなることはもちろん、重症化すると肘、膝などで関節内出血を繰り返し、これに伴う痛みや出血により日常行動に支障を来し、歩行困難を起こすなどQOLを著しく下げる。現在、根治治療法はなく、注射による凝固因子の出血時、予備的または定期補充療法が行われている。 患者のライフサイクルでは、出産時、幼児期・青年期、高齢期でそれぞれリスクがあるが、ただ予後は良好で、定期補充療法を受けている患者は、健常人の平均寿命まで生存できるとされている。患者QOLを改善する次のステージへ 日常的に定期補充療法は、現在ガイドラインでも推奨されており、成人で週3回ほど行われ、出血頻度の減少、関節障害の予防に役立っている。しかし、年間150回超の静脈注射のアドヒアランスや注射時間の問題など、患者にとってはまだまだ煩わしいという声が聞かれ、長時間作用製剤への期待が高まっていた。 今回発売されたエフラロクトコグアルファは、こうした期待に応えたもので、血友病Aに対し、生体内のヒト免疫グロブリンG1の自然な再循環経路を利用した機序により、血漿中に長く留まることができる性質を有する(血漿中消失半減期は約19時間)。定期的な投与により、週3~5日間隔、また患者状態によっては週1回の投与により出血を抑制する、長時間作用の血液凝固第VIII因子製剤である。 臨床試験(n=165/多施設共同非盲検一部無作為化試験)における年間出血回数について、定期的投与では、出血時群(n=23)との比較によると週1回群(n=24)で76%減少、個別化群(週3~5回/n=118)では92%減少していた。同じく関節内出血での年間出血回数についても、出血時群では年間18.6回だったのに対し、週1回群、個別化群ともに0回だったと報告された。 また、「本薬は予防的に病状進行を中等症、軽症に抑える効果がありそうだ」と花房氏は述べるともに、心配される副作用(n=164中の9例)については、「倦怠感、関節痛などの風邪症状程度の例しか報告されておらず、死亡例もない」とエフラロクトコグアルファに寄せる期待を語った。血友病診療の発展と期待について 最後に花房氏は、これからの展望として「今後は血液科の医師だけでなく整形外科や歯科、看護師、遺伝カウンセラーなどが連携する包括的ケアチームが必要であり、診断では短時間で精度の高い遺伝子検査ができること、治療薬ではさらなる長時間作用型製剤の開発、根治へ向け遺伝子治療薬の研究が期待される」と語った。 また、課題として「患者への医療費助成継続の問題や、新治療薬発売後すぐに長期処方ができない現行制度下で、専門医偏在が診療に地域間格差を生じさせていることへの解決が必要」と語り、レクチャーを終了した。参考資料新薬情報:発売(イロクテイト静注用250・500・750・1000・1500・2000・3000)

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Vol. 3 No. 2 AF患者の脳卒中にどう対応するか? NOAC服用患者への対応を中心に

矢坂 正弘 氏国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科はじめに非弁膜症性心房細動において新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)の「脳卒中と全身塞栓症予防」効果はワルファリンと同等かそれ以上である1-3)。大出血や頭蓋内出血が少なく、管理が容易であることを合わせて考慮し、ガイドラインではNOACでもワルファリンでも選択できる状況下では、まずNOACを考慮するように勧めている4)。しかし、NOACはワルファリンより脳梗塞や頭蓋内出血の発症頻度が低いとはいえ、その発症をゼロに封じ込める薬剤ではないため、治療中の脳梗塞や頭蓋内出血への対応を考慮しておく必要がある。本稿では、NOACの療法中の脳梗塞や頭蓋内出血時の現実的な対応を検討する。NOAC療法中の急性脳梗塞NOAC療法中の症例が脳梗塞を発症した場合、一般的な脳梗塞の治療に加えてNOAC療法中であるがゆえにさらに2つの点、rt-PA血栓溶解療法施行の可否と急性期抗凝固療法の実際を考慮しなくてはならない。(1) rt-PA血栓溶解療法の可否ワルファリン療法中は適正使用指針にしたがってPTINRが1.7以下であればrt-PA血栓溶解療法を考慮できる5)。しかし、ダビガトラン、リバーロキサバンおよびアピキサバン療法中の効果と安全性は確立しておらず、明確な指針はない。表1にこれまで発表されたダビガトラン療法中のrt-PA血栓溶解療法例を示す6-8)。ダビガトラン療法中の9例のうち中大脳動脈広範囲虚血で190分後にrt-PAが投与された1例を除き、8例で良い結果が得られている。それらに共通するのは、ダビガトラン内服から7時間以後でrt-PAが投与され、投与前APTTが40秒未満であった。ダビガトランの食後内服時のTmaxが4時間であることを考慮すると、rt-PA投与が内服後4時間以降であり、APTTが40秒以下(もしくは前値の1.5倍以下)であることがひとつの目安かもしれない。内服時間が不明な症例では来院時のAPTTと時間を空けてのAPTTを比較し、上昇傾向にあるか、低下傾向にあるかを見極めてTmaxを過ぎているかどうかを判断することも一法であろう。NOAC療法症例でrt-PA血栓溶解療法を考慮する場合は、少なくとも各薬剤のTmax 30分から4時間程度、ダビガトランではAPTTが40秒以下、抗Xa薬ではプロトロンビン時間が1.7以下であることを確認し、論文を含む最新情報に十分に精通した上で施設ごとに判断をせざるを得ないであろう5)。アピキサバンはAPTTやPT-INRと十分に相関しないことに注意する。抗Xa薬では、血中濃度と相関する抗Xa活性を図る方法も今後検討されるかもしれない。表1 ダビガトラン療法中のtPA血栓溶解療法に関する症例報告画像を拡大する(2) 急性期抗凝固療法心原性脳塞栓症急性期は脳塞栓症の再発率が高いため、この時期に抗凝固療法を行えば、再発率を低下させることが期待されるが、一方で栓子溶解による閉塞血管の再開通現象と関連した出血性梗塞もこの時期に高頻度にみられる。したがって、抗凝固療法がかえって病態を悪化させるのではないかという懸念もある。この問題はまだ解決されていないため、現時点では、脳塞栓症急性期の再発助長因子(発症後早期、脱水、利尿薬視床、人工弁、心内血栓、アンチトロンビン活性低下、D-dimer値上昇など)や、抗凝固療法による出血性合併症に関連する因子(高齢者、高血圧、大梗塞、過度の抗凝固療法など)を考慮して、個々の症例ごとに脳塞栓症急性期における抗凝固療法の適応を判断せざるを得ない。われわれの施設では症例ごとに再発の起こりやすさと出血性合併症の可能性を検討して、抗凝固療法の適応を決定している。具体的には感染性心内膜炎、著しい高血圧および出血性素因がないことを確認し、画像上の梗塞巣の大きさや部位で抗凝固療法開始時期を調整している(表2)9)。表2 脳塞栓症急性期の抗凝固療法マニュアル(九州医療センター2013年4月1日版)画像を拡大する(別タブが開きます)出血性梗塞の発現は神経所見とCTでモニタリングする。軽度の出血性梗塞では抗凝固療法を継続し、血腫型や広範囲な出血性梗塞では抗凝固薬投与量を減じたり、数日中止し、増悪がなければ再開する10)。新規経口抗凝固薬、ヘパリン、およびワルファリン(ワーファリン®)の投与量および切り替え方法の詳細も表2に示す。ワルファリンで開始する場合は即効性のヘパリンを必ず併用し、PT-INRが治療域に入ったらヘパリンを中止する。再発と出血のリスクがともに高い場合、心内血栓成長因子である脱水を避けること,低容量ヘパリンや出血性副作用がなく抗凝血作用のあるantithrombin III製剤の使用が考えられる11)。NOAC療法中に脳梗塞を発症した症例で、NOAC投与を考慮する場合、リバーロキサバンとアピキサバンは第III相試験が低用量選択基準を採用した一用量で実施されているので、脳梗塞を発症したからといって用量を増量したり、調節することは適切ではない2,3)。他剤に変更するか、脳梗塞が軽症であれば、あるいは不十分なアドヒアランスで発症したのであれば、継続を考慮することが現実的な対応であろう。一方ダビガトランは第III相試験が2用量で行われ、各々の用量がエビデンスを有しているので、低用量で脳梗塞を発症した場合、通常用量の可否を考慮することは可能である1)。NOAC療法中の頭蓋内出血ここではNOAC療法中の頭蓋内出血の発症頻度や特徴をグローバルやアジアでの解析結果を参照にワルファリン療法中のそれらと対比しながら概説する。(1) グローバルでの比較結果非弁膜症性心房細動を対象に脳梗塞の予防効果をワルファリンと対比したNOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)の4つの研究(RE-LY、ROCKET AF、ARISTOTLE、ENGAGE-AF)においてワルファリン群と比較してNOAC群の頭蓋内出血は大幅に減少した(本誌p.24図1を参照)1-3,12)。(2) アジアでの比較結果各第III相試験サブ解析から読み取れるアジアや東アジアの人々の特徴は、小柄であり、それに伴いクレアチニンクリアランス値が低く、脳卒中の既往や脳卒中発症率が高いことである13-16)。またワルファリンコントロールにおけるtime in therapeutic range(TTR)が低く、PT-INRが低めで管理されている症例が多いにもかかわらず、ワルファリン療法中の頭蓋内出血発症率は極めて高い特徴がある(本誌p.24図2を参照)13-16)。しかし、NOACの頭蓋内出血発症率はワルファリン群より大幅に低く抑えられており、NOACはアジアや東アジアの人々には一層使いやすい抗凝固薬といえよう。(3) NOAC療法中に少ない理由NOACで頭蓋内出血が少ない一番の理由は、脳に組織因子が多いことと関連する16-18)。組織が損傷されると組織因子が血中に含まれる第VII因子と結びつき凝固カスケードが発動する。NOAC療法中の場合は第VII因子が血液中に十分にあるので、この反応は起こりやすい。しかし、ワルファリン療法中は第VII因子濃度が大幅に下がるのでこの反応は起こりにくくなり止血し難い。次にワルファリンと比較して凝固カスケードにおける凝固阻止ポイントが少ないことが挙げられる。ワルファリンは凝固第II、VII、IX、X因子の4つの凝固因子へ作用するが、抗トロンビン薬や抗Xa薬はひとつの凝固因子活性にのみ阻害作用を発揮するため、ワルファリンよりも出血が少ない可能性がある。さらに安全域の差異を考慮できる。ある薬剤が抗凝固作用を示す薬物血中濃度(A)と出血を示す薬剤の血中濃度(B)の比B/Aが大きければ安全域は広く、小さければ安全域は狭い。ワルファリンはこの比が小さく、NOACは大きいことが示されている19)。最後に薬物血中濃度の推移も影響するだろう。ワルファリンはその効果に大きな日内変動はみられないが、ダビガトランは半減期が12時間で血中濃度にピークとトラフがある。ピークではNOAC自身の薬理作用が、トラフでは生理的凝固阻止因子が主となり、2系統で抗凝固作用を発揮し、見事に病的血栓形成を抑制しているものと理解される(Hybrid Anticoagulation)(図)16,17)。トラフ時には生理的止血への抑制作用は強くないため、それが出血を減らすことと関連するものと推測される。図 ハイブリッド抗凝固療法画像を拡大する(4) 特徴NOAC療法中は頭蓋内出血の頻度が低いのみならず、一度出血した際に血腫が大きくなり難い傾向も有するようだ。われわれはダビガトラン療法中の頭蓋内出血8例9回を経験しケースシリーズ解析を行い報告した20)。対象者は高齢で9回中7回は外傷と関連する慢性硬膜下出血や外傷性くも膜下出血などで、脳内出血は2例のみであった。緊急開頭が必要な大出血はなく、入院後血腫が増大した例もなく、多くの転帰は良好であった。もちろん、大血腫の否定はできず、血圧、血糖、多量の飲酒、喫煙といった脳内出血関連因子の徹底的な管理は重要であるが、ダビガトラン療法中の頭蓋内出血が大きくなりにくい機序としては、前述の頻度が低い機序が同様に関連しているものと推定される。(5) 出血への対応1.必ず行うべき4項目基本的な対応として、まず(1)休薬を行うこと、そして外科的な手技を含めて(2)止血操作を行うことである。(3)点滴によるバイタルの安定は基本であるが、NOACでは点滴しバイタルを安定させることで、半日程度で相当量の薬物を代謝できるので極めて重要である。(4)脳内出血やくも膜下出血などの頭蓋内出血時には十分な降圧を行う。2.場合によって考慮すること急速是正が必要な場合、ワルファリンではビタミンK投与や新鮮凍結血漿投与が行われてきたが、第IX因子複合体500~1,000IU投与(保険適応外)が最も早くPT-INRを是正できる。NOACの場合は、食後のTmaxが最長で4時間程度なので、4時間以内の場合は胃洗浄や活性炭を投与し吸収を抑制する。ダビガトランは透析で除去されるが、リバーロキサバンやアピキサバンは蛋白結合率が高いため困難と予測される。NOAC療法中に第IX因子複合体を投与することで抗凝固作用が是正させる可能性が示されている21)。今後の症例の蓄積とデータ解析に基づく緊急是正方法の開発が急務である。抗体製剤や低分子化合物も緊急リバース方法の1つとして開発が進められている。おわりにNOACは非常に有用な抗凝固薬であるが、実臨床における諸問題も少なくない。登録研究や観察研究を積極的に行い、安全なNOAC療法を確立する必要があろう。文献1)Connolly SJ et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151 and Erratum in. N Engl J Med 2010; 363: 1877.2)Patel MR et al. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011;365: 883-891.3)Granger CB et al. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-992.4)http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf5)日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法指針改訂部会: rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版 http://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA02.pdf6)矢坂正弘ほか. 新規経口抗凝固薬に関する諸問題.脳卒中2013; 35: 121-127.7)Tabata E et al. Recombinant tissue-type plasminogen activator (rt-PA) therapy in an acute stroke patient taking dabigatran etexilate: A case report and literature review, in press.8)稲石 淳ほか. ダビガトラン内服中に出血合併症なく血栓溶解療法を施行しえた心原性脳塞栓症の1例―症例報告と文献的考察. 臨床神経, 2014; 54:238-240.9)中西泰之ほか. 心房細動と脳梗塞. 臨牀と研究 2013;90: 1215-1220.10)Pessin MS et al. Safety of anticoagulation after hemorrhagic infarction. Neurology 1993; 43:1298-1303.11)Yasaka M et al. Antithrombin III and Low Dose Heparin in Acute Cardioembolic Stroke. Cerebrovasc Dis 1995; 5: 35-42.12)Giugliano RP et al. Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2013;369: 2093-2104.13)Hori M et al. Dabigatran versus warfarin: effects on ischemic and hemorrhagic strokes and bleeding in Asians and non-Asians with atrial fibrillation. Stroke 2013; 44: 1891-1896.14)Goto S et al. Efficacy and safety of apixaban compared with warfarin for stroke prevention in atrial fibrillation in East Asia with atrial fibrillation. Eur Heart J 2013; 34 (abstract supplement):1039.15)Wong KS et al. Rivaroxaban for stroke prevention in East Asian patients from the ROCKET AF trial. Stroke 2014, in press.16)Yasaka M et al. Stroke Prevention in Asian Patients with Atrial Fibrillation. Stroke 2014, in press.17)Yasaka M et al. J-ROCKET AF trial increased expectation of lower-dose rivaroxaban made for Japan. 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吸収性局所止血材、膝関節全置換術後リスクを低下

 人工膝関節全置換術(TKA)において、術後出血は重大な合併症の原因となり輸血を要することもある。米国・St. Francis Memorial HospitalのJohn H. Velyvis氏は、ヒトトロンビン含有ゼラチン使用吸収性局所止血材の使用がTKA術後ドレーン排液量および輸血予測確率を低下させることを報告した。結果について著者は「今後、多施設無作為化試験などさらなる研究が必要である」とまとめている。Orthopedics誌2015年2月号の掲載報告。 検討は、初回TKAを受ける連続症例を前向きに登録し、74例にヒトトロンビン含有ゼラチン使用吸収性局所止血材(商品名:フロシール)5mLを用いた。さらに83例に10mLを用いて評価した。 フロシール群の登録に先立ち、対照群としてフロシールを使用しなかったTKA施行連続100例のデータを診療記録より抽出した。 なお、全例、手術の翌日から血栓予防としてワルファリンが投与された。 主な結果は以下のとおり。・術後ドレーン排液量は、フロシール5mL群236.9mL、10mL群120.5mLで、どちらも対照群(430.8mL)より有意に少なかった(ともにp<0.0001)。・また、フロシール5mL群と比較するとフロシール10mL群が有意に低値であった(p<0.0001)。・輸血予測確率は、フロシール5mL群と対照群とで差はなかったが(6.0% vs 7.6%、p=0.650)、フロシール10mL群は対照群より有意に低率であった(0.5% vs 5.5%、p=0.004)。・フロシール10mL群のうちフロシールの使用が止血帯解除前であった群と解除後であった群のどちらも、対照群との間で排液量ならびに輸血予測確率が有意に低かった。・使用された麻酔の種類は、転帰に影響を及ぼさなかった。・フロシール使用に関連した有害事象は認められなかった。

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