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募集した質問にエキスパートが答える!心房細動診療 Q&A (Part.2)

今回も、4つの質問に回答します。「抗凝固薬服薬者が出血した時の対処法」「抗血小板薬と抗凝固薬の併用」「レートコントロールの具体的方法」「アブレーションの適応患者と予後」ワルファリンまたは新規抗凝固薬を服薬中に出血した場合、どのように対処すべきでしょうか?中和方法等を含めて教えてください。緊急の止血を要する場合の処置法は図5のとおりです。まずは、投与中止し、バイタルサインを見ながら止血と補液を行います。脳出血やくも膜下出血の場合には十分な降圧を行います。最近、Xa阻害剤の中和剤(PRT4445)が開発され、健常人を対象に臨床研究が始まることが報告されました。今後の結果が待たれます。ダビガトランは透析可能とされておりますが、臨床データは十分ではなく、また出血の起きているときに太い透析用のカテーテルを留置するのはあまり現実的ではないでしょう。図5.中等度~重度の出血(緊急の止血を要する場合)画像を拡大する虚血性心疾患既往例など抗血小板薬と抗凝固療法を併用する場合、どのような点に注意すべきでしょうか?抗血小板薬2剤+抗凝固薬1剤という処方パターンなどは許されますでしょうか?大変悩ましい質問です。抗血小板薬と抗凝固療法の併用は、出血事故を増加させます。このため併用者が受診した時には、出血がなかったかどうかを毎回問診します。ヨーロッパ心臓病学会(ESC)の2010年ガイドラインには、虚血性心疾患で抗血小板薬と抗凝固療法を併用する場合の治療方針が掲載されております(表2)。その指針には、(1)HAS-BLED出血スコアを考慮し、次に(2)待機的に加療する狭心症か、あるいは緊急で治療を要する急性冠症候群か、そして(3)ステント性状がベアメタルか薬剤溶出性か、の3つのステップを踏んで薬剤の種類と投与期間を決定すると示されています。確かに合理的と思いますが、これには十分なエビデンスがないことより、今後の検証を待つべきでしょう。しかしながら、個人差があると思いますが、原則としてステント留置後1年が経過したらワルファリン単剤で様子を見たいと思います。ただし、新規抗凝固薬についての言及はありません。表2.心房細動+ステント症例の抗血栓療法画像を拡大するレートコントロールを具体的にどのように行えばよろしいでしょうか?(薬剤の選択、β遮断薬の使い方、目指すべき脈拍数等)レートコントロールは洞調律の維持を切望しない、すなわち心房細動症状があまり強くない人に行うことが主です。しかしながら、リズムコントロール薬と併用することもありますし、反対にリズムコントロール薬よりもレートコントロール薬の方が有効である症例も経験します。まず、心機能別の薬剤使い分けを表示します(表3)。高齢者は薬物の代謝能力が落ちていることがありますので、投与前には肝・腎機能を調べるとともに、併用薬がないかどうかも確認します。まず表3に記載された薬剤は少量から使用すべきでしょう。たとえばジギタリスは常用量の半量から使用し、β遮断薬は(分割や粉砕などの手間がかかりますが)常用量の1/4 ~1/2量から開始します(最近は低用量製剤も使用可能です)。ベラパミルは朝と日中の2回のみ使用します。投与後は過度な徐脈になっていないかどうかを、自覚症状とホルター心電図で検討します。私は、夜間の最低脈拍数は40台まで、また、3秒までのポーズは良しとしております。動いたときに息切れがひどくなったと言われれば中止することもあります。喘息のある場合はジギタリスかCa拮抗薬がお勧めですが、ベータ1選択性の強いビソプロロールは投与可能とされます。目標心拍数についてはRACE II試験が参考になります(NEJM 2010)。この試験では、レートコントロールは厳密に行うべきか(安静時心拍数が80/分未満で、かつ日常活動時に110/分未満)、あるいは緩徐でよいか(安静時心拍数が110/分未満であれば良しとする)の2群に分けて3年間の予後を比べました。その結果、2群間に死亡や入院、およびペースメーカ植込みなどの複合エンドポイントに有意差はなかったことより、レートコントロールは緩めで良いと結論付けられました。その後のサブ解析(JACC 2011)、左房径や左室径のりモデリング(拡大)は、レートコントロールの程度で差はないことが報告されました。白衣高血圧と同様の現象で、診察時や心電図をとるときに緊張すると、心拍数はすぐに増加します。しかしながら、いつも頻脈が続く場合や、頻脈による症状が強い時には、何か疾患が隠れていることもありますので注意が必要です。たとえば、COPD、貧血、甲状腺機能亢進症、および、頻度は低いのですがWPW症候群に合併した心房細動(頻脈時にQRS幅が広い)のこともありますのでレートコントロールがうまくいかない場合には専門医を受診させるとよいでしょう。薬剤によるレートコントロールがうまくいかない場合には、房室結節をカテーテルアブレーションによって離断し、同時にペースメーカを植込むこともあります。表3.心機能別にみた薬剤の使い分け画像を拡大するアブレーションはどのような患者に適応されますか?また、長期予後はどうでしょうか?教えてください。機器の改良と経験の積み重ねによってアブレーションの成功率は高くなってきました。この結果、適応範囲は拡大し、治療のエビデンスレベルは向上しております。日本循環器学会のガイドラインでは年間50例以上の心房細動アブレーションを行っている施設に限ってはClass Iになりました。すなわち内服治療の段階を経ることなく、アブレーションを第一選択治療法として良いとしました。しかながら、心房細動そのものは緊急治療を要する致死性不整脈ではありません。このため、アブレーションの良い適応は心房細動が出ると動悸症状が強くてQOLが低下する患者さんでしょう。心房細動がでると心不全に進展する場合も適応です。最近は、マラソンブームをうけて一般ランナーやジムでトレーニングを続けるアスリートなどが心房細動を自覚して紹介来院される人が増えてきたように思います。心房細動がでるとパフォーマンスが落ちて気分が落ちるためにアブレーションを希望されるようです。現時点では、心房細動アブレーションに生命予後の改善や脳梗塞の予防効果があるかどうかのエビデンスがそろったわけではありません。図6のようにアブレーションを一回のみ施行した場合は5年間の追跡で約半数が再発します(左)。再発に気付いて追加アブレーションを行うことにより洞調律維持効果が上がります(右)。発生から1年以上持続した持続性心房細動や左房径が5cmを超えている場合は再発率が高いため、最初から複数回のアブレーションを行うことも説明します。また、合併症は0ではありません。危険性を十分説明し、患者さんが納得したところで施行すべきです。アブレーションが成功したと思ってもその後に無症候性の心房細動が発生していることも報告されておりますので、CHADS2スコアにしたがって抗凝固療法を継続することも必要でしょう。また、最近は図7のようにCHADS2スコアが心房細動アブレーションの効果を予測するとする報告がなされました。CHADS2スコアが1を超えると再発率が高く、追加アブレーションが必要とされるようです。図6.洞調律維持効果(中期)画像を拡大する図7.CHADS2スコアと洞調律維持効果(長期)画像を拡大する

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募集した質問にエキスパートが答える!心房細動診療 Q&A (Part.1)

今回は、4つの質問に回答します。「高齢者への抗凝固療法」「抜歯、手術、消化器内視鏡時の抗凝固療法」「新規抗凝固薬の違い、使い分け」「新規抗凝固薬のモニタリング」新規抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の違い、使い分け方法について教えてください。確かに大変気になるところです。新規抗凝固薬は超高齢社会に突入した日本において、今後ニーズが高くなる薬剤でしょう。新規抗凝固薬はいずれもワルファリンを対照薬とした臨床試験によって、その効果と副作用が明らかになりました。しかしながら、この3つの新規抗凝固薬は、機序や内服回数が異なるうえ、いずれも異なる臨床背景を持つ症例を対象に臨床試験が行われています。いわば「土俵」が違うのです。このため、3剤の使い分けの指針はありません。下記に示す表1に従って禁忌症例に注意し、腎機能によって投与量を選択するとともに、薬剤特有の副作用に注意してください。たとえば、ダビガトランに特有の副作用はディスペプシアです。コップ一杯の水とともに内服するようにし、それでもディスペプシアの症状が出る場合は、プロトンポンプ阻害薬や消化管運動賦活剤(イトプリド塩酸塩、商品名:ガナトンなど)などが有効であるとも聞きます。表1.新規抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の違い、使い分け画像を拡大するなおアピキサバンは、「80歳以上、血清クレアチニン(Cr)1.5 mg/dL以上、体重60kg以下」のうち2項目以上に該当する場合は低用量(1回2.5㎎を1日2回)とするよう記載があります。新規抗凝固薬はまだ十分な使用経験がないので、出血事象が危惧されるような高齢者、低体重者、腎機能低下者、抗血小板薬併用者を避け、このような因子が複数ある場合にはワルファリンを使用するべきと思います。心不全などで利尿剤を服用している場合は腎機能が大きく変動することがあります。まず、安全性の高い症例への投与経験を積んで持ち寄ることが重要と思います。新規抗凝固薬のコントロール指標、検査の間隔、薬剤量調節方法について教えてください。表1に一般の病院や医院で測定可能な出血モニター指標をまとめました。凝固線溶系マーカーの基準値は試薬によって異なるため、外注の場合は同一ラボに依頼すべきでしょう。検査の間隔についてのエビデンスは少ないようです。ただし、少なくともワルファリンのように毎月測定する必要はありません。腎機能が保たれている場合には年に1~2回の採血で良いのではないでしょうか。高齢者や利尿剤を内服している場合には、腎機能の悪化によって新規抗凝固薬の効果が高まることも予想されるため、もう少し頻回に調べるべきでしょう。ダビガトランはaPTTでモニターします。心臓血管研究所の報告ではaPTT値は個人差が大きく、低用量(220mg/日)であっても、~70秒に延長する症例もあるようです。多くの症例では、内服2~3時間後の血中濃度ピーク時に測定すると45~50秒位となり、トラフ時は~40秒となるようです。内服開始1週間以内にピーク時を狙って1度は測定し、aPTT高値例では減量やワルファリンへの切り替えを検討するべきでしょう。リバーロキサバンのモニターはPT-INRで行います。内服2~3時間後位のピーク時のPT-INRは~2が多いようですが、中には2.5を超えることもあります。PT-INRが2を常時超えるとなると出血事象が増加すると思いますので、その際には減量かワルファリンへの切り替えが良いと思います。アピキサバンも理論的にはPT-INRが指標になりますが、リバーロキサバンと比べてPT-INRはあまり上がらないようです。まずは、安全性の高い症例に投与してその経験を持ち寄り、日本人のエビデンスをつくることが重要と思います。高齢者への抗凝固療法について薬剤選択や投与量の注意点、決定方法について教えてください。また、何歳まで抗凝固療法を行うべきか(効果はあるか)? 逆に、何歳で抗凝固療法をやめるべきでしょうか? 教えてください。大変悩ましい問題です。ワルファリンは、Net clinical benefitの考えで計算すると、若年者より高齢者の方が塞栓症の予防効果が高く算出されます。しかしながら、超高齢者に継続投与するのが現実的かどうか、症例ごとの判断が必要でしょう。私の外来でワルファリンを処方している最高齢者は88歳の発作性心房細動の男性で、CHADS2スコア2点です。この方は78歳時に前医によってワルファリンが開始され、その後も続けています。ADLは保たれ、内服薬の自己管理は完璧で、幸いこれまで出血事故は経験していません。対照的な症例として、3ヵ月前にワルファリンを中止した75歳の女性がいます(CHADS2スコア2点)。この方は70歳時にワルファリンが開始されましたが、2年間に3度の出血事故を起こしたために中止しました。老老介護のため内服管理が困難で、決められた錠数が守れなかったり、転倒して眼窩出血を起こしたりしたほか、感冒や感染で抗炎症剤や抗生剤を長期連用して消化管出血と鼻出血で来院したなど、を経験しました。逆説的ですが、出血の既往は大出血の危険因子です。何らかの出血事象を経験した症例は、その後も出血を繰り返す確率が上がります。高齢者に抗凝固療法を開始する場合には(個人的には私は80歳が1つのラインかと思っていますが・・・)、全身状態やADL、認知症の有無などを総合的に判断し、家族を含めた話し合いを行うべきでしょう。抜歯、消化器内視鏡検査時や外科的手術施行時に、抗凝固療法はどのようにするべきでしょうか? 教えてください。外科的処置の侵襲度と患者さんのCHADS2スコア、とくに塞栓症既往の有無などを勘案しなければいけません。抜歯の際にワルファリンを中止すると1%の確率で塞栓症を発症するとされます。このため、ワルファリンは中止しない、あるいは若干の減量で対処し、PT-INRが2未満となったことを確認して抜歯していただくとよいと思います。もちろん、日頃のPT-INR値が1.6位と低い場合にはそのまま抜歯が可能でしょう。しかし、地域によっては歯科医院の数に限りがあり、ワルファリンを中止しないと治療は行わないとする先生もあると聞いています。その際には、ワルファリンを中止したらとくに脱水に留意するとともに、止血が確認できたら速やかにワルファリンを(中止前の錠数で)再開するなどの処置をとってください。CHADS2スコアが高い場合には、紹介入院の下で処置をお願いすることも考えてください。ビガトランの場合は、薬剤半減期が短いので治療の1日前に中止すれば血中濃度が下がりますが、腎機能が低下している場合には2日前に中止することが推奨されます(図1)。しかしながら、塞栓症リスクの高い場合は、1日完全にやめてしまうことに不安を感じます。そのような場合には、血中濃度が下がっている時間帯に治療を行うとよいでしょう。朝食後の内服を中止し午前中に抜歯し、就寝直前に1回内服する。あるいは朝食後に内服した場合は、午後の遅い時間帯に抜歯し、就寝直前に2回目を内服する、などの方法により止血困難な時間帯を避けられるのではないかと考えます。リバーロキサバンの場合は、内視鏡による生検や内視鏡下での観血的処置を実施する場合には、処置当日のみ中止し、その翌日より再開するとよいとされます(図2)(手技終了後に出血のないことを確認し、さらに後出血の危険がないと考えられる時点で速やかに再開する)。2012年(平成24年)7月に日本消化器内視鏡学会から、「抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療ガイドラン」が刊行されました。抗血栓薬を継続して使用することによる消化管出血だけでなく、休薬による血栓塞栓症発症にも配慮されています。ただし、消化管出血に対する緊急内視鏡には適応されません。下記に抗凝固薬服用者の治療の流れを示します(図3、4)。内視鏡検査の侵襲度に応じて「休薬なし」から「ヘパリン置換」まで変わります。PT-INRが治療域越えの場合には治療域に入ったことを確認してから検査とするようご配慮ください。また施設によっても対処が変わるかと思います。科をまたいだ連携が必要でしょう。他に抗血小板薬を用いる場合も掲載されておりますが、紙面の都合上割愛致しました。図1.手術等を行う場合の中止手順画像を拡大する図2.抜歯等の侵襲的処置を行う場合の対応画像を拡大する図3.フローチャート画像を拡大する図4.出血危険度による消化器内視鏡の分類画像を拡大する

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ダビガトラン、VTEの延長治療に有効、出血リスクも/NEJM

 直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)による抗凝固療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)の延長治療として有効であり、大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高いことが、カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らの検討で示された。VTE治療はビタミンK拮抗薬が標準とされ、複数の血栓エピソードなど再発のリスク因子を有する場合は長期投与が推奨されるが、大出血のリスクとともに頻回のモニタリングや用量調整を要することが問題となる。ダビガトランは固定用量での投与が可能なうえ、頻回のモニタリングや用量調節が不要で、VTEの治療効果についてワルファリンに対する非劣性が確認されており、初期治療終了後の延長治療に適する可能性がある。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告実薬対照非劣性試験とプラセボ対照優位性試験の統合的解析 RE-MEDY試験は、初期治療終了後のVTE延長治療におけるダビガトラン(150mg、1日2回)のワルファリンに対する非劣性を検証する実薬対照試験であり、RE-SONATE試験はダビガトラン(150mg、1日2回)のプラセボに対する優位性を評価するプラセボ対照試験。 両試験ともに、対象は年齢18歳以上、症候性の近位型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)と診断され、標準的抗凝固薬による初期治療を終了した症例とした。 RE-MEDY試験では、有効性のハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が2.85を超えない場合、および18ヵ月後のVTE再発のリスク差が2.8ポイント以内の場合に非劣性と判定した。ACSのリスクにも留意すべき RE-MEDY試験には、2006年7月~2010年7月までに33ヵ国265施設から2,856例が登録され、ダビガトラン群に1,430例(平均年齢55.4歳、女性39.1%)、ワルファリン群には1,426例(同:53.9歳、38.9%)が割り付けられた。また、RE-SONATE試験には、2007年11月~2010年9月までに21ヵ国147施設から1,343例が登録され、ダビガトラン群に681例(平均年齢56.1歳、女性44.1%)、プラセボ群には662例(同:55.5歳、45.0%)が割り付けられた。 RE-MEDY試験では、VTE再発率はダビガトラン群が1.8%(26例)と、ワルファリン群の1.3%(18例)に対し非劣性であった(HR:1.44、95%CI:0.78~2.64、非劣性検定:p=0.01、リスク差:0.38ポイント、95%CI:-0.50~1.25、非劣性検定:p<0.001)。 大出血の頻度はダビガトラン群が0.9%(13例)と、ワルファリン群の1.8%(25例)に比べほぼ半減したものの有意な差はなかった(HR:0.52、95%CI:0.27~1.02、p=0.06)。一方、大出血または臨床的に重要な出血の頻度はダビガトラン群で有意に減少した(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。急性冠症候群(ACS)がダビガトラン群の0.9%(13例)にみられ、ワルファリン群の0.2%(3例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.02)。 RE-SONATE試験のVTE再発率はダビガトラン群が0.4%(3例)と、プラセボ群の5.6%(37例)に比べ有意に良好であった(HR:0.08、95%CI:0.02~0.25、p<0.001)。大出血の発生率はそれぞれ0.3%(2例)、0%であったが、大出血または臨床的に重大な出血の発生率は5.3%(36例)、1.8%(12例)とダビガトラン群で有意に高値を示した(HR:2.92、95%CI:1.52~5.60、p=0.001)。ACSは両群に1例ずつ認められた。 著者は、2つの試験の結果を踏まえ、「ダビガトランによる抗凝固療法はVTEの延長治療として有効である。大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高かった」とまとめている。

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結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療に新たな選択肢

 結節性硬化症は、遺伝子(TSC1、TSC2)の異常により、全身に良性の腫瘍が形成され、それに伴い、さまざまな症状が引き起こされる遺伝性の希少疾患である。胎児期から成人まで、年齢に応じて特徴的な腫瘍がさまざまな部位に発生するため、それぞれの腫瘍に対してすべて1つの科で診療することはできず、小児から成人に至る過程で発生する腎血管筋脂肪腫などを見逃す可能性がある。その現状と課題について、ノバルティス ファーマ メディアフォーラム(2013年2月26日開催)にて、大阪大学泌尿器科 教授 野々村 祝夫氏が講演した。その内容をレポートする。■結節性硬化症は症状の個人差が大きい 結節性硬化症は、脳(上衣下巨細胞性星細胞腫、脳室上衣下結節、大脳皮質結節、てんかん発作、発達遅延、自閉症など)、眼(網膜過誤腫)、心臓(心横紋筋腫)、肺(肺リンパ脈管筋腫症など)、腎臓(腎血管筋脂肪腫、腎嚢胞など)、皮膚(白斑、顔面血管線維腫など)など、全身性に腫瘍が形成され、さまざまな症状が現れる疾患である。潜在患者数は、日本では1~2万人とされる。問題となる症状の発症時期は年齢期ごとに異なり、心臓や脳の腫瘍は10歳未満、腎臓の腫瘍は10~40歳、肺の腫瘍は20歳以上に注意する必要がある。また、症状の個人差が大きく、多くの症状が現れる場合もあれば、生涯を通じて症状が現れない場合もある。 これまで対症療法しかなかったこれらの腫瘍のうち、腎血管筋脂肪腫と上衣下巨細胞性星細胞腫に対して、2012年11月、mTOR阻害薬であるエベロリムス(商品名:アフィニトール)が承認された。■結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療 腎血管筋脂肪腫は浸潤・転移をしない良性腫瘍であるが、次第に大きくなること、出血などのさまざまな症状が出現すること、腎機能が低下することが問題となる。腫瘍径が4cmを超えると出血や側腹部痛などの臨床症状が呈することが多く、また、破裂した腫瘍は4cmをすべて超えていたという報告がある。 腎血管筋脂肪腫のマネージメントの基本方針は、腎機能を温存しつつ出血のリスクを減らすことであり、出血した場合は速やかに止血する必要がある。 治療は、腫瘍径が4cm以上であれば症状が出る前に予防的に、4cm未満なら症状が出てから行う。この治療介入の必要性を判断するために、野々村氏は、定期的なモニタリングの重要性を指摘した。治療には、血管内治療である塞栓術と手術(腎摘、腎部分切除)が施行されている。塞栓術は効果的でよく施行されるようになってきたが、壊死に伴う発熱や痛みなどの合併症や、再発(約30%)の問題がある。■薬物治療が治療選択肢の1つに このような状況のなか、昨年、初めて薬物治療としてエベロリムスが承認され、新たな選択肢が加わった。結節性硬化症においては、TSC1またはTSC2遺伝子の変異によりmTORの活性を制御するTSCタンパクが抑制され、mTORが過剰に活性化することにより腫瘍の形成や症状が発生する。エベロリムスはmTOR活性を阻害することにより、腫瘍の増大や症状を抑制する。 結節性硬化症あるいは孤発性リンパ脈管筋腫症における腎血管筋脂肪腫患者に対するエベロリムスの効果をプラセボと比較したEXIST-2試験では、エベロリムス群(79例、うち日本人7例)の奏効率が41.8%(95%信頼区間:30.8~53.4)と、プラセボ群(39例、うち日本人3例)の0%(95%信頼区間:0.0~9.0)に対して、有意(p<0.0001)に高い結果が得られた。 有害事象は、口内炎、ざ瘡、高コレステロール血症などがエベロリムスに特徴的であり、これまでの忍容性プロファイルと一致していた。また、野々村氏は、22歳女性の症例で腫瘍の縮小とともに自閉症の症状も改善したことを紹介し、結節性硬化症の他の症状にも効果が期待できることを示した。■どのように組み合わせて治療するかが課題 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の今後の治療戦略として、野々村氏はまず、4cm以上の腫瘍では症状がなくても、動脈瘤などからの出血リスクが高い場合には、エベロリムスあるいは塞栓術による積極的治療を実施することを提唱し、どちらを先に行うかはこれから解決すべき課題であると述べた。また、4cm以下の腫瘍でも症状があれば、エベロリムスあるいは塞栓術による何らかの治療が必要であり、手術は、塞栓術あるいはエベロリムスが無効な場合に考慮するとした。 一方、エベロリムスが治療の選択肢に加わったとはいえ、課題として、長期投与のデータが乏しいこと、高価(約70万円/月)であること、投与方法に関する工夫の必要性などを挙げ、今後、実際の臨床の場で情報を出して行く必要があると述べた。 最後に野々村氏は、結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療に薬物療法という選択肢が増えたが、今後、これをどのように組み合わせて治療していくか、課題として投げかけられていると述べ、講演を締めくくった。関連ページ ケアネット 希少疾病ライブラリ(毎週木曜日更新)

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過多月経に対するレボノルゲストレル-IUS vs. 従来薬物療法/NEJM

 過多月経の治療について、レボノルゲストレル放出子宮内避妊システム(商品名:ミレーナ)(以下、レボノルゲストレル-IUS)は、トラネキサム酸などの従来薬物療法よりも、長期的な改善幅が有意に高かったことが示された。英国・ノッティンガム大学のJanesh Gupta氏らが、600人弱の女性を対象とした無作為化試験の結果、報告したもので、「重度の月経出血によるQOLへの影響を低減する効果が高かった」と結論している。過多月経はよくある問題症状だが、これまで有効な治療に関するエビデンスは限られていたという。NEJM誌2013年1月10日号掲載報告より。2年間追跡し、その間の過多月経多属性評価尺度を比較 研究グループは2005~2009年にかけて、英国内63ヵ所の医療機関を通じ、過多月経の女性571人を無作為に2群に分け、一方にはレボノルゲストレル-IUSを、もう一方には従来薬物療法(トラネキサム酸、メフェナム酸、エストロゲン-プロゲステロン配合剤、プロゲステロンのいずれか)を行った。 2年間追跡し、その間の過多月経多属性評価尺度(MMAS)を比較し主要アウトカムとした。副次アウトカムには、一般的QOLスコア、性的活動スコア、手術の実施などが含まれた。症状は両群で改善、レボノルゲストレル-IUS群でより大幅改善 その結果、試験開始時点から6ヵ月までのMMASの平均増加幅は、レボノルゲストレル-IUSで32.7ポイント、薬物療法群21.4ポイントと、両群ともに有意な改善が認められた(いずれもp<0.001)。 これら症状の改善は、両群ともに2年間にわたり維持されたが、レボノルゲストレル-IUS群のほうが薬物療法群より改善幅は大きかった(2年間のMMAS平均格差:13.4ポイント、95%信頼区間:9.9~16.9、p<0.001)。 また、2年後の時点で、レボノルゲストレル-IUSを使用している人の割合は64%であり、薬物療法を継続していた人の割合38%に比べて有意に多かった(p<0.001)。 なお、性的活動スコアや手術率、有害事象発生率については両群で同程度だった。

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Step By Step!初期診療アプローチ 【呼吸器シリーズ】

第17回「咽頭痛」第18回「咳・痰」第19回「喀血」第20回「呼吸困難」 第17回「咽頭痛」非常にコモンであるにも関わらずあまり取り上げられない症候でもある「咽頭痛」。その殆どが感染症に因るものですが、今回は抗菌薬を投与する場合と投与しない場合との違いや、処方する場合の処方例について具体的に学んでいきます。また、咽頭痛の中で危機介入しなければいけない疾患が背景にある場合があります。「疑わないと見逃してしまう」といった重篤疾患もぜひ押さえておきたいですね!第18回「咳・痰」咳や痰は経験がないという人がいない位、非常にメジャーな症候です。咳や痰を起こしうる疾患は咽頭痛と同じく殆どが上気道の感染症ですが、中には喘息や肺炎など時に生命に関わる重篤な疾患も有り得ます。他にも鑑別診断は多岐にわたるため、咳や痰をみる時には何を考え、どのように診察や治療を行っていくかがプライマリ・ケア医の腕の見せどころともいえるでしょう。 ところで咳や痰を発する「気道」は人体のどこからどこまでをいうのでしょうか。基礎的な事ですが意外と忘れていませんか? まずそこから始めます。他にも肺炎、とくに市中肺炎へのアプローチや咳に対する抗菌薬の適応、また入院させるべき患者の判定など、咳と痰についてじっくり考えていきます。第19回「喀血」「喀血」は現在ではさほど多くみられることはなく、寧ろ頻度は非常に少ない疾患でありますが、呼吸器の救急としては必ず押さえておきたい症候です。 なぜ喀血は臨床的に重要なのか。また似て非なる症候である「吐血」や「血痰」とはどのように違うのか。これらをきちんと見分けないと、その後の治療が全く違うものになってしまうので気を付けなければいけません。今回はそれらの鑑別方法について学習していきます。あわせて喀血を来す原因疾患や、喀血をみた時の緊急の処置、さらにStep upして気管支鏡による止血が困難な場合の対処法もぜひ覚えておきたいものです。 すっかりお馴染みになった田中先生オリジナルのアプローチ法のアルゴリズムを用いて喀血をすっきりと整理しましょう!第20回「呼吸困難」患者数が多く、かつ緊急度も高い「呼吸困難」。そもそも「呼吸」とは一体何だろうか?また、換気と呼吸はどう違うのか?という基礎的な理解から臨床に結びつけていきます。まずは生理学から理解しましょう。そして呼吸困難をみた時の挿管の適応や、必ず覚えておきたい緊急挿管法、緊急処置を終えた後になすべき検査なども併せて学習します。もちろん呼吸困難へのアプローチのためのアルゴリズムも登場します。更に、これを知っていると診療が楽しくなる(!?)特別オマケコーナーも見逃せません!

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【速報!AHA2012】ダビガトラン長期投与で、脳梗塞リスクと出血リスクはどう変わる?

 非弁膜症性心房細動(AF)例を対象とした大規模試験 "RE-LY" において、直接的トロンビン阻害薬ダビガトランは、220mg/日と300mg/日の2用量が用いられた。その結果、300mg/日は220mg/日に比べ脳梗塞リスクは有意に減少させるも、大出血は増加傾向にあった(ただしいずれの用量でもワルファリンよりは低出血率)。この結果は、より長期の服用においても維持されるようだ。Stuart J. Connolly氏(マクマスター大学:カナダ)がRELY-ABLEの結果として、学会最終日となる7日、Clinical Science:Special Reportsセッションで報告した。  RELY-ABLEはRE-LYの延長試験である。対象は、RE-LY参加18,113例中、終了時にダビガトランを服用していた9011例のうち、RELY-ABLE参加施設に登録され、かつ同意の得られた5,851例である(RE-LY全体の32.3%)。RE-LYと同様の「脳卒中・全身性塞栓症の抑制率」・「出血リスク」が維持されるか検討した。その結果、下記のデータからConnolly氏は、「RE-LYで示された傾向は維持されている」と結論している。  すなわち、平均2.3年間のRELY-ABLE追跡期間中、「脳卒中・全身性塞栓症」発生率は、300mg/日群:1.46%、220mg/日群:1.60%、だった(RE-LYではそれぞれ1.11%、1.53%)。 この結果をRE-LY参加18,113例のデータと併せると、平均3年間の追跡期間で、ダビガトラン300mg/日群の「脳卒中・全身性塞栓症」発生率は1.25%/年、220mg/日群は1.54%となり、300mg/日群で有意に低かった(ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.66~0.96)。  次に大出血は、RELY-ABLE追跡期間中、300mg/日群で3.74%/年、220mg/日群は2.99%/年だった(RE-LYではそれぞれ3.11%、2.71%)。リスクを比較すると、300mg/日群で有意に高かった(ハザード比:1.26、95%信頼区間:1.04~1.53)。 こちらもRE-LY全例のデータと併合すると、大出血の年間発生率は、300mg/日群:3.38%、220mg/日群:2.83%となり、やはり300mg/日群のリスクが有意に高かった(ハザード比:1.20、95%信頼区間:1.07~1.35)。頭蓋内出血も同様の傾向を示した(ハザード比:1.45、95%信頼区間:0.98~2.16)。 生存率は、RELY-ABLE追跡期間中、RELY-ABLE+RE-LY全例のいずれにおいても、300mg/日群と220mg/日群で同等だった。  この成績について指定討論者のRobert P Giugliano氏(ハーバード大学:米国)は、RELY-ABLEに参加する時点で対象は多くのセレクションを経ているため、300mg/日群と220mg/日群の背景はRE-LY開始時のように揃っていない(無作為化は維持されていない)点を指摘。さらに、RELY-ABLEでは服用中止時点で追跡も終了するため、「レジストリ研究というよりは観察研究」に近いと指摘した。取材協力:宇津貴史(医学レポーター)「他の演題はこちら」

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(32)〕 心臓手術における抗線溶薬アプロチニンは安全性に懸念が残る:メタ解析

心臓手術では人工心肺離脱後の止血が重要である。止血剤としては従来からトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)やイプシロンアミノカプロン酸が使用されている。アプロチニンも以前は頻用されていたが、安全性の理由から2008年以降、市場供給が停止されていた。しかし最近、ヨーロッパとカナダで再上市されている。 心臓手術におけるアプロチニンの使用について、カナダ・オタワ病院のBrian Hutton氏らは無作為化試験106件と観察研究11件(4万3,270例)を解析の対象としたシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。 無作為化試験の解析の結果、トラネキサム酸はアプロチニンと比較して、死亡リスクは低かった(オッズ比:0.64)。観察データを組み込んだ場合も、アプロチニンの死亡率は、トラネキサム酸(対アプロニチンとの比較によるオッズ比:0.71)、イプシロンアミノカプロン酸(対アプロニチンとの比較によるオッズ比:0.60)より増加した。また、腎不全あるいは腎機能障害リスクも、すべての比較群と比べて増加していた。 本解析結果からアプロチニンの安全性には懸念が残り、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸がより安全で効果的な選択肢である可能性が高いと考えられる[エビデンスレベルA]。

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ボラパクサール、心筋梗塞既往例で上乗せ効果、出血リスクは増大

 心筋梗塞の既往歴のある患者の2次予防において、標準的な抗血栓療法にボラパクサール(国内未承認)を追加する治療アプローチは、心血管死や虚血性イベントのリスクを抑制する一方で、中等度~重度の出血のリスクを増大させることが、米国・ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のBenjamin M Scirica氏らが行ったTRA 2°P-TIMI 50試験のサブグループ解析で示された。プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗薬であるボラパクサールは、トロンビンによって誘導されるヒト血小板表面上のPAR-1の活性化に対し拮抗作用を発揮することで、血小板の活性化を阻害する新規の抗血小板薬。心筋梗塞の既往歴を有する安定期の患者の長期的な2次予防におけるボラパクサールの上乗せ効果は不明だという。Lancet誌2012年10月13日号(オンライン版2012年8月26日号)掲載の報告。標準治療への上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価TRA 2°P-TIMI 50(Thrombin Receptor Antagonist in Secondary Prevention of Atherothrombotic Ischemic Events)試験は、アテローム血栓症(心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患)の既往歴のある患者における標準治療へのボラパクサールの上乗せ効果を検討する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験。今回は、あらかじめ規定されたサブグループとして、心筋梗塞の既往歴(登録前2週~12ヵ月に発症)のある患者の解析を行った。2007年9月~2009年11月まで患者の登録を行い、標準治療(アスピリン、チエノピリジン系薬剤)に加えボラパクサール 2.5mg/日を投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。患者、治療医と医療スタッフ、アウトカムの評価者、解析担当者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発現とし、intention-to-treat解析を行った。イベントの発生状況はKaplan-Meier法で解析し、群間の比較にはCox比例ハザードモデルを用いた。心血管死、心筋梗塞、脳卒中の推定3年発生率:8.1% vs 9.7%全登録患者2万6,449例のうち心筋梗塞の既往歴を有する患者は1万7,779例で、ボラパクサール群に8,898例(年齢中央値59歳、75歳以上8%、女性21%、アスピリン98%、チエノピリジン系薬剤78%)、プラセボ群には8,881例(同:59歳、8%、20%、98%、78%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は2.5年だった。心血管死、心筋梗塞、脳卒中を発症した患者はボラパクサール群が610例で、Kaplan-Meier法による推定3年発生率は8.1%と、プラセボ群の750例、推定3年発生率9.7%に比べ有意に低頻度であった[ハザード比(HR):0.80、95%信頼区間(CI):0.72~0.89、p<0.0001]。中等度~重度の出血をきたした患者は、ボラパクサール群が241例で、Kaplan-Meier法による推定3年発生率は3.4%と、プラセボ群の151例、2.1%よりも有意に頻度が高かった(HR:1.61、95%CI:1.31~1.97、p<0.0001)。頭蓋内出血は、ボラパクサール群では43例にみられ、推定3年発生率は0.6%、プラセボ群は28例、0.4%で、両群間に有意な差はなかった(p=0.076)。その他の重篤な有害事象の発現状況は両群間で同等だった。著者は、「心筋梗塞の既往歴のある患者において、アスピリンを含む標準的な抗血栓療法にボラパクサールを追加する治療アプローチは、心血管死や虚血性イベントのリスクを抑制するが、中等度~重度の出血のリスクを増大させる」と結論し、「総合的な臨床ベネフィットはボラパクサール群が良好であり、とくに出血リスクの背景因子の少ない患者ではより良好な予後の改善が達成された」と指摘している。

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心臓手術における抗線溶薬アプロチニンは安全性に懸念が残る:メタ解析/BMJ

 心臓手術における抗線溶薬アプロチニンの使用について、カナダ・オタワ病院のBrian Hutton氏らはメタ解析の結果、断定的なことは言えないとしながらも、観察データを含めれば安全性に関して懸念が残ることが示唆されたと述べ、トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)やイプシロンアミノカプロン酸がより安全で効果的な選択肢であると結論づけた。アプロチニンは安全性の理由から2008年以降、市場供給が停止されていたが、最近、ヨーロッパとカナダで再上市されたという。BMJ誌2012年9月11日号より。無作為化試験、観察試験をメタ解析研究グループは、アプロチニン投与群と非投与群との死亡、心筋梗塞、脳卒中、腎不全あるいは腎機能障害の相対的リスクを推定するシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。コクラン・レビューをシステマティックレビューの起点とし、Medline、Embase、Cochraneの試験登録から文献検索した。解析は、心臓手術を受けた患者に行われた2つ以上の介入(アプロチニン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、投薬なし)について治療傾向が一致または調整が行われた観察研究を対象とした。ネットワーク・メタ解析にて治療を比較し、オッズ比とその95%確信区間(credible intervals)を算出した。メタ解析は無作為化試験単独か、観察研究と合わせた無作為化試験に限定した。アプロチニンの安全性に懸念残る結果無作為化試験106件と観察研究11件(4万3,270例)が解析の対象となった。無作為化試験の解析の結果、トラネキサム酸はアプロチニンと比較して、概して死亡リスクの減少と関連した(オッズ比:0.64、95%確信区間:0.41~0.99)。観察データを組み込んだ場合も、アプロチニンの死亡率は、トラネキサム酸(対アプロニチンとの比較によるオッズ比:0.71、95%確信区間:0.50~0.98)、イプシロンアミノカプロン酸(同0.60、0.43~0.87)より平均的に増大を示した。また、腎不全あるいは腎機能障害リスクは、すべての比較群と比べて平均的に増大した。非投与群のオッズ比は0.66(95%確信区間:0.45~0.88)、トラネキサム酸群は同0.66(0.48~0.91)、イプシロンアミノカプロン酸は同0.65(0.45~0.88)だった。

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外傷性出血患者へのトラネキサム酸投与、重症度を問わず死亡リスクを減少

 外傷性出血患者の死亡および血栓イベントに関するトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)投与の効果について検討した、国際多施設共同無作為化試験「CRASH-2」データ解析の結果、トラネキサム酸投与は重症度を問わず幅広い患者に、安全に投与可能であることが明らかにされた。英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのIan Roberts氏らによる報告で、BMJ誌2012年10月6日号(オンライン版2012年9月11日号)で発表した。ベースライン死亡リスク別にみたトラネキサム酸使用との関連を評価 CRASH-2試験は、トラネキサム酸投与により回避できた可能性がある早期死亡の割合を推定することを目的とする。研究グループは、同試験データを用いて事前特定した層別解析を行った。 被験者は、UK Trauma and Audit Research Networkに登録された1万3,273例で、外傷受傷後3時間以内に、トラネキサム酸(1gを10分超で、続いて1gを8時間超で)またはプラセボにより処置された。被験者はベースラインで死亡リスクにより階層化(<6%、6~20%、21~50%、>50%)された。 主要評価項目は、ベースライン死亡リスク別にみたトラネキサム酸使用との関連についての、オッズ比と95%信頼区間(CI)で、外傷4週以内の院内死亡、出血による死亡、致死的または非致死的血栓イベントとの関連について評価した。 有効性の不均一性(p<0.001)の強いエビデンスがない限り、全体オッズ比は全階層において最も確実なオッズ比を導くものとして利用された。死亡リスク<6%群17%、6~20%群36%、21~50%群30%、>50%群17%が死亡回避可 結果、トラネキサム酸群は、全死因死亡および出血による死亡が有意に減少した。 ベースライン死亡リスク階層群のいずれにおいても、トラネキサム酸群の死亡が低かった。 全死因死亡(相互作用p=0.96)、および出血死亡(p=0.98)とも、ベースライン死亡リスク階層群によるトラネキサム酸の効果について不均一性のエビデンスはなかった。 トラネキサム酸の治療を受けた患者では、致死的または非致死的血栓イベントのオッズ比が有意に減少した(オッズ比:0.69、95%CI:0.53~0.89、p=0.005)。また動脈血栓イベントも有意に減少した(同:0.58、0.40~0.83、p=0.003)。しかし、静脈血栓イベントの減少は有意ではなかった(同:0.83、0.59~1.17、p=0.295)、 トラネキサム酸の血栓イベントについて、不均一性のエビデンスはなかった(p=0.74)。 トラネキサム酸の効果が全リスク階層で同等である場合、受傷後3時間以内でトラネキサム酸投与を受けたことによる死亡回避の割合は、死亡リスク<6%群で17%、同6~20%群で36%、同21~50%群で30%、同>50%群で17%であった。

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手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。システマティックレビューで129試験・総患者数1万488例を解析 Ker氏らは、手術患者へのトラネキサム酸投与に関する輸血、血栓塞栓症イベント、死亡に関する効果の評価を目的とした。Cochrane対照設定試験中央レジスター、Medline、Embaseの初刊行~2011年9月の間の発表論文、WHO国際臨床試験登録プラットフォームと関連論文参照リストを検索し、解析論文を特定した。 対象となったのは、手術患者についてトラネキサム酸投与と非投与またはプラセボ投与を比較した無作為化対照試験で、アウトカムとして、輸血を受けた患者数、血栓塞栓症イベント件数(心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、死亡件数を測定していたものとした。論文執筆の言語や刊行の有無などは問わなかった。 結果、1972~2011年の間の129試験・総患者数1万488例のデータが解析に含まれた。血栓塞栓症イベントに対する効果は不明、死亡に対する効果も不確定 トラネキサム酸投与は輸血を受ける確率を3分の1低減することが認められた(リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)。この効果は、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合も維持された(同:0.68、0.62~0.74、P<0.001)。 一方で、心筋梗塞(同;0.68、0.43~1.09、P=0.11)、脳卒中(同:1.14、0.65~2.00、P=0.65)、深部静脈血栓症(同:0.86、0.53~1.39、P=0.54)、肺塞栓症(同:0.61、0.25~1.47、P=0.27)については効果が明らかではなかった。 死亡の発生は少なかった(同:0.61、0.38~0.98、P=0.04)が、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合は、考慮すべき不確定さが認められた(同:0.67、0.33~1.34、P=0.25)。 累積メタ解析の結果、輸血に対するトラネキサム酸の効果のエビデンスは確たるものであること、過去10年にわたってそのエビデンスは確実に入手できることが示された。

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第34回 日本血栓止血学会学術集会のご案内 会長の内山氏より

2012年6月7~9日に新宿のハイアットリージェンシー東京で第34回日本血栓止血学会学術集会が行われます。会長の内山真一郎氏より寄稿文をいただきました。是非ご覧ください。2012年6月7~9日に新宿のハイアットリージェンシー東京で第34回日本血栓止血学会学術集会を会長として主催致します。本学会のテーマは「血栓症への挑戦」です。血栓症は世界の死因の3割を占める人類最大の疾患です。私は日本人に最も多い血栓症である脳卒中を専門としていることから、このようなテーマを選びました。脳卒中、心筋梗塞、末梢動脈疾患といった動脈血栓症や、深部静脈血栓症や肺塞栓症といった静脈血栓症は、死亡や身体障害の主要な原因となっていることから社会的な関心も高く、このようなテーマを本学会で取り上げることは国民のニーズに答える意味でも意義が大きいと考えます。血栓症はあらゆる臓器の障害を生じることから、極めて多岐にわたる診療科が関与しており、学際的な疾患病態であるといえます。平成23年3月11日、我が国は未曽有の大震災に見舞われ、多くの人命が失われました。この東日本大震災では、震災後に血栓症による心血管死も多く発生したことが報じられています。そこで、本学術集会では、特別企画として「震災関連死と血栓症」について取り上げました。抗血栓薬は長い間、アスピリン、ワルファリン、へパリンの時代が続きましたが、近年、分子標的薬が次々と開発され、新規抗血栓薬が臨床現場でも使用されるようになり、抗血栓療法は新時代を迎えています。また、血管内治療も新たなデバイスが次々と開発され、著しい進歩がみられます。本学術集会では、基礎と臨床のクロストークによる活発な議論が展開され、日本発の多くのトランスレーショナルリサーチが芽生えるような契機となればと願っています。特別講演として、ミシガン大学のHassouna先生には抗リン脂質抗体症候群について、ボストン大学のHylek先生には新規抗凝固薬について、京都大学の江藤浩之先生にはiPS細胞研究の血栓止血領域への応用について講演をしていただきます。また、会長要望シンポジウムとして「脳動脈再開通療法の進歩」と題して、脳梗塞急性期治療に大変革をもたらそうとしている血管内治療を取り上げました。さらに、多くの教育講演、関連学会との合同シンポジウム、SPCシンポジウム、共催シンポジウムが予定されています。会場となるハイアットリージェンシー東京は、東京のどこからもアクセスが便利な新宿駅に近く、新宿駅周辺には無数のショップやレストランがあり、歓楽街の歌舞伎町も至近距離であり、学会と同時に国際都市東京のエンターテインメントも存分にお楽しみいただければと存じます。皆様の御来場を心よりお待ちしております。 第34回日本血栓止血学会学術集会会長 内山 真一郎東京女子医科大学医学部神経内科学講座主任教授

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ACC 2012 速報 動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

経口プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗剤は、「トロンビンによる血小板凝集」の抑制という、新たな機序を持つ抗血小板剤である。しかし、動脈硬化性疾患例全般に対する有用性は、TRA 2°P-TIMI 50試験の結果、疑問符がついた。ブリガム・アンド・ウィミンズ病院(米国)のDavid A. Morrow氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。なお、本試験は2月7日、米国Merck社から概要が公表されている。本試験の対象は、心筋梗塞(MI)、虚血性脳血管障害(iCVD)あるいは末梢動脈疾患(PAD)の既往を有する26,449例。全例、病態は安定しており、標準的薬物治療を受けていた。既往歴はMIが最多で67%、次いでiCVDの19%、PADの14%だった。チエノピリジン系を含む抗血小板薬併用(DAPT)は、MI既往例の80%弱、PADの28%、iCVDの8%に認められた。これら26,449例は、PAR-1拮抗剤 "vorapaxar" 2.5mg/日群(13,225例)とプラセボ群(13,224例)に無作為化され、二重盲検法で追跡された。しかし試験開始1年後、PAR-1拮抗剤群におけるiCVD既往例の頭蓋内出血増加を、安全性監視委員会から指摘される。iCVD例(4,883例)の追跡はこの時点で中止され、残り21,556例が、最終的に2.5年間〔中央値〕追跡された。ただし、評価項目の解析には、iCVD例も含めた。その結果、有効性の一次評価項目である「心血管系死亡、心筋梗塞、脳卒中」は、PAR-1拮抗剤群でプラセボ群に比べ有意に減少していた(9.3%/3年 vs 10.5%/3年、ハザード比 [HR]:0.87、95%信頼区間 [CI]:0.80~0.94、p<0.001)。iCVD例を除外しても同様で、PAR-1拮抗剤群におけるHRは0.84だった(p<0.001)。一方、PAR-1拮抗剤群では、出血も有意に増加していた。安全性一次評価項目である「GUSTO分類中等度~重度出血」(要輸血・血行動態著明増悪 [含む頭蓋内出血])発生率は、プラセボ群の「2.5%/3年」に対し「4.2%/3年」だった〔HR:1.66、p<0.001)。iCVD例を除外して解析しても同様だった(HR:1.55、p=0.049)。そこで、上記「有効性一次評価項目」と「安全性一次評価項目」を併せ、「全般的有効性」として発生リスクを比較した。その結果、PAR-1拮抗剤群とプラセボ群に有意差は認められなかった(HR:0.97、95%CI:0.90-1.04、vsプラセボ群)。iCVD例を除いて解析しても、同様の結果だった(HR:0.96、95%CI:0.88~1.05) 。この結果を受けMorrow氏は、PAR-1拮抗剤が全ての動脈硬化性疾患例に適しているとは思わないとした上で、有用性が期待できる患者群の特定が重要だと述べた。本試験のサブ解析からは、体重60kg以上でiCVD既往のないMI患者における、有用性が示唆されている。

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重症型急性アルコール性肝炎に対するプレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法

 死亡率が高い重症型急性アルコール性肝炎について、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法が生存率を改善するかについて検討した試験が行われた。結果、1ヵ月生存率は上昇したが、主要転帰とした6ヵ月生存率は改善されなかったという。フランス・Picardy大学のEric Nguyen-Khac氏らが、174例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。同疾患患者の死亡率は、グルココルチコイド治療を行っても6ヵ月以内の死亡率が35%と高い。NEJM誌2011年11月10日号掲載報告より。プレドニゾロン単独療法と、+N-アセチルシステイン併用療法とを比較 Nguyen-Khac氏らAAH-NAC(Acute Alcoholic Hepatitis–N-Acetylcysteine)研究グループは、2004~2009年にフランスの11大学病院に重症型急性アルコール性肝炎で入院した患者174例を対象に試験を行った。 被験者は無作為に、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法を受ける群(85例)とプレドニゾロン単独療法を受ける群(89例)に無作為に割り付けられた。被験者は全員4週間にわたってプレドニゾロン40mg/日の経口投与を受け、そのうち併用群は最初の5日間にN-アセチルシステイン静注を受けた。同投与量は、1日目は150mg/kg体重を5%ブドウ糖液250mLに溶解したものを30分間、50mg/kgを同500mLに溶解したものを4時間、100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを16時間かけて投与。2~5日目は、1日当たり100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを投与した。 単独群はその間、5%ブドウ糖液1,000mLのみが投与された。試験中、腹水治療のための利尿薬投与などや門脈圧亢進症のためのβ遮断薬の使用は認められた。飲酒癖は本人任せであった。アセトアミノフェン、ペントキシフィリン、抗TNF-αの使用は禁止された。全患者は標準病院食(1日1,800~2,000kcal)を受けた。主要転帰6ヵ月生存、併用群のほうが低かったが有意差は認められず 主要転帰は6ヵ月での生存とした。結果、併用群(27%)のほうが単独群(38%)よりも低かったが有意ではなかった(P=0.07)。 副次転帰は、1ヵ月、3ヵ月の生存、肝炎の合併症、N-アセチルシステイン使用による有害事象、7~14日のビリルビン値の変化などであった。結果、1ヵ月時点の死亡率は併用群(8%)のほうが単独群(24%)よりも有意に低かったが(P=0.006)、3ヵ月時点では有意差は認められなくなっていた(22%対34%、P=0.06)。6ヵ月時点の肝腎症候群による死亡は、併用群(9%)のほうが単独群(22%)よりも低かった(P=0.02)。 多変量解析の結果、6ヵ月生存に関連する因子は、「年齢がより若いこと」「プロトロンビン時間がより短いこと」「基線のビリルビン値がより低いこと」「14日時点でのビリルビン値低下」であった(いずれもP<0.001)。 感染症は、単独群よりも併用群で頻度が高かった(P=0.001)。その他副作用は両群で同等であった。

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ダビガトラン、非弁膜症性心房細動患者で良好なbenefit-harmバランス示す

 トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンに比べ有益性(benefit)と有害性(harm)のバランスが優れることが示唆されている。今回、これを裏付ける知見が、イギリスBangor大学のJoshua Pink氏らが実施した定量的なbenefit-harm解析および経済的解析によって示された。ダビガトランは、非弁膜症性心房細動患者においてワルファリンと代替可能な血栓予防薬とされるが、適正用量、benefit-harmバランス、費用対効果は明確にされておらず、費用対効果については相反する結果が報告されているという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月31日号)掲載の報告。高用量と低用量の費用対効果を検討 研究グループは、非弁膜症性心房細動患者におけるダビガトラン110mgまたは150mg(1日2回)と、ワルファリンの有益性を評価し、ダビガトランの費用対効果ついて検討を行った。 離散的事象シミュレーションモデルにRE-LY(Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy)試験で得られた知見を外挿して、定量的な経済的解析を行った。脳卒中リスクが中~高で、ベースラインのCHADS2[うっ血性心不全(CHF)、高血圧(HT)、年齢(Age)75歳以上、糖尿病(DM)、脳卒中(Stroke)/一過性脳虚血発作の既往でスコア化して脳塞栓症リスクを低、中、高に分類]の平均スコアが2.1の5万人の患者を想定し、シミュレーションを実施した。主要評価項目は、質調整生存年(QALY)およびQALY当たりの増分コストとした。INRの管理が良好な施設では費用対効果が低い ワルファリンに比べ、ダビガトランはnet benefitが0.094増加し、QALYは0.146延長した。高用量ダビガトラン(150mg×2回/日)のnet benefitは、ワルファリンに比べ94%増加し、低用量ダビガトラン(110mg×2回/日)よりも76%増加した。経済的解析では、ワルファリンとの比較における高用量ダビガトランの費用対効果比は低用量よりも優れ、延長したQALY当たりの費用は高用量の2万3,082ポンド(約2万6,700ユーロ、3万5,800ドルに相当)に対し、低用量は4万3,074ポンドと高価であった。また、ベースラインのCHADS2スコアが3以上の患者で高用量の費用対効果が優れた。 一方、国際標準化比(INR、検体と標準正常血漿のプロトロンビン時間の比)が良好にコントロールされている施設では、高用量ダビガトランによって延長したQALY当たりの費用は4万2,386ポンドに達し、費用対効果が低かった。 著者は、「ダビガトランは、ワルファリンに比べbenefitとharmのバランスが優れるとの知見を支持する結果が得られた」と結論し、「臨床的にも経済的にも、高用量よりも低用量のほうが高い利益をもたらすサブグループは認めなかった。高用量ダビガトランは、脳卒中リスクの高い患者やINRのコントロールが比較的不良な場合に費用対効果が優れる」と指摘している。

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周術期のトラネキサム酸投与、前立腺がん手術においても輸血率を有意に低下

前立腺がんに対する開腹式の根治的恥骨後式前立腺摘除術は、腹腔鏡手技が普及後もなお標準的手術療法である。ただしこの処置で最も多い重大な合併症が、術中・術後の出血で、実際多くの患者が輸血を必要とする。イタリア・Vita-Salute San Raffaele大学のAntonella Crescenti氏らは、術中に止血剤の低用量トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)を用いることで輸血率が低下するかどうか、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。結果、安全で輸血率低下に有効であることが示された。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月19日号)掲載報告より。根治的恥骨後式前立腺摘除術を受けた200例を対象に無作為化プラセボ対照試験トラネキサム酸は止血剤の中でも非常に安価で、最近の大規模無作為化試験で外傷大出血患者の死亡率を低下することが示されており、心臓外科では周術期輸血率を低下するため標準的となっている。整形外科手術、肝臓手術でもその有効性は示されているが、泌尿器科では明らかになっていなかった。そこでCrescenti氏らは、2008年4月~2010年5月にSan Raffaele大学病院で、18歳以上で本試験に参加することに同意した根治的恥骨後式前立腺摘除術を受けた200例を対象に試験を行った。本試験では、心房細動の人、薬剤溶出性ステント治療を受けた冠状動脈疾患の人、重症の慢性腎不全、先天性または後天性血栓形成傾向、トラネキサム酸に対するアレルギーがあるまたはその疑いがある人は除外された。被験者は無作為に、トラネキサム酸もしくはプラセボ(食塩水)を受ける群に割り付けられた。トラネキサム酸投与は、術前に負荷量500mg量を20分間、術中は250mg/時間の持続点滴が行われた。 主要アウトカムは、手術時に輸血を受けた患者数とし、副次アウトカムは術中の失血とした。トラネキサム酸群の輸血率、術中失血量が有意に低下被験者は200例全員が手術を受け、追跡も完了した。輸血患者の割合は、トラネキサム酸群34例(34%)、プラセボ群55例(55%)で、トラネキサム酸群の輸血率の有意な低下が認められた(P=0.004)。トラネキサム酸群の輸血率の絶対低下は21%(95%信頼区間:7~34)であり、相対的リスクは0.62(同:0.45~0.85)、治療必要数(NNT)は5(同:3~14)だった。術中の平均失血量は、プラセボ群よりトラネキサム酸群で有意に少なかった(P=0.02)。両群間の差は232 mL(同:29.7~370.7)だった。フォローアップにおいて死亡患者はいなかった。また血栓塞栓症イベント発生については、両群間に格差はなかった。

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抗凝固剤 エドキサバン(商品名:リクシアナ)

 新規抗凝固薬であるエドキサバン(商品名:リクシアナ)が、2011年4月、「膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」を適応として承認された。今年7月にも薬価収載・発売が予定されている。静脈血栓塞栓症とは 今回、エドキサバンで承認された膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術施行患者は、いずれも静脈血栓塞栓症を発症しやすいとされている。静脈血栓塞栓症とは、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症の総称で、血流停滞、血管内皮障害、血液凝固能亢進を3大要因とし、上記患者においてその予防は重要となっている。 また、対象となる患者数は、膝関節および股関節の全置換術施行患者があわせて10万人、股関節骨折手術患者は10万人存在するとみられている。現在の静脈血栓塞栓症予防法と課題 下肢整形手術後における静脈血栓塞栓症予防法は、理学療法と薬物療法の2種類に大別される。理学療法における予防法としては、弾性ストッキングの着用や間欠的空気圧迫法などで、わが国ではすでに多くの症例で実施されている。薬物療法においては、未分画ヘパリン、ワルファリン、Xa阻害薬などが使用されているが、頻繁な血中モニタリング、ビタミンKの摂取制限、注射薬投与の煩雑さなどのアンメットニーズが存在している。エドキサバンはわが国初の経口Xa阻害薬 こうした状況を背景に、わが国初の経口Xa阻害薬となるエドキサバンが承認された。これまでにもXa阻害薬は存在していたが、いずれも注射薬であり、また従来のXa阻害薬がアンチトロンビンへの作用を介した間接的Xa阻害薬であるのに対し、エドキサバンはXaを直接阻害し、さらに可逆的に作用する。エドキサバンの第Ⅲ相試験結果 エドキサバンにはすでに多くのエビデンスが存在している。エドキサバンでは、人工膝関節全置換術、人工股関節全置換術施行患者を対象に、静脈血栓塞栓症および大出血または臨床的に重要な出血の発現率を検討した第Ⅲ相二重盲検試験が行われている。 人工膝関節全置換術施行患者を対象とした試験において、静脈血栓塞栓症の発現率は、エドキサバン群(30mg、1日1回、11~14日経口投与)で7.4%(95%信頼区間:4.9-10.9)、エノキサパリン群(2,000IU、1日2回、11~14日皮下注射)で13.9%(同:10.4-18.3)となり、有意に静脈血栓(塞栓)症の発現を抑制した。また、大出血または臨床的に重要な出血の発現率は、エドキサバン群で6.2%(同:4.1-9.2)、エノキサパリン群で3.7%(同:2.2-6.3)となり、群間の有意な差は認められなかった。 また、人工股関節全置換術施行患者を対象とした試験においては、静脈血栓塞栓症の発現率は、エドキサバン群(30mg、1日1回、11~14日経口投与)で、2.4%(同:1.1-5.0)、エノキサパリン群(2,000IU、1日2回、11~14日皮下注射)で6.9%(同:4.3-10.7)となり、有意に静脈血栓(塞栓)症の発現を抑制した。大出血または臨床的に重要な出血の発現率は、エドキサバン群で2.6%(同:1.3-5.1)、エノキサパリン群で3.7%(同:2.1-6.4)となり、群間の有意な差は認められなかった。 さらに、股関節骨折手術施行患者を対象に、エドキサバンまたはエノキサパリンを投与したオープンラベルでの臨床試験も行われており、この試験において、静脈血栓塞栓症の発現率は、エドキサバン群(30mg、1日1回、11~14日経口投与)で6.5%(同:2.2-17.5)、エノキサパリン群(2,000IU、1日2回、11~14日皮下注射)で3.7%(同:0.7-18.3)となった。なお、この股関節骨折手術施行患者を対象とした試験におけるエノキサパリン群は、参考として設定された群であり、統計学的な比較対象群とはならない。 こうしたエドキサバンの特徴やエビデンスを鑑みると、エドキサバンの登場により、医療従事者および患者の精神的・肉体的負担、静脈血栓塞栓症の発現率、頻回な血中モニタリング、食事制限といった、これまでのアンメットニーズの解決が期待される。リスクとベネフィットのバランスを鑑みた適切な使用を 近年、高い効果と使いやすさを兼ね備えた新しい抗凝固薬が開発され、抗凝固療法は大きな転換期を迎えつつある。しかし、どの抗凝固薬であっても少なからず出血リスクはつきまとい、また、ひとたび大出血を起こすと、場合によっては生命にかかわることもある。 その中で、わが国初の経口Xa阻害薬であるエドキサバンは、患者のリスクとベネフィットのバランスを鑑み、適切に使用すれば、多くの患者の役に立つ特徴を持った薬剤だといえる。■「リクシアナ」関連記事リクシアナ効能追加、静脈血栓症、心房細動に広がる治療選択肢

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准教授 長谷部光泉 先生「すべては病気という敵と闘うために 医師としての強い気持ちを育みたい」

1969年9月14日生まれ。博士(医学)、博士(工学)。1994年3月慶應義塾大学医学部医学科卒業後、同大学病院にて研修94年4月同大学大学院医学研究科博士課程。96年11月ハーバード大学医学部放射線科心臓血管造影およびIVR部門留学(~99年)。98年4月同大学医学部助手。04年4月同大学理工学部機械工学科・鈴木哲也研究室共同研究員および医療班チームリーダー。05年4月国家公務員共済組合連合会立川病院放射線科医長。08年4月東邦大学医療センター佐倉病院放射線科講師。09年8月同病院放射線科准教授。日本血管内治療学会評議員。日本IVR学会代議員、他。10年日本学術振興会 榊奨励賞受賞、第96回北米放射線学会Certificate of Merit受賞、他多数。低侵襲治療としてIVRカテーテル治療に大きな魅力を感じた放射線科領域を大別すると、X線検査、CT、MRI、核医学検査などに代表される放射線診断学とがん治療に代表される放射線治療学があります。CT、MRIなどが登場する前から存在した「血管造影法」は、私が専門とする放射線診断学の根幹です。血管のない臓器は存在しないため、古くから重要な診断法として発展してきました。しかしながら、CT、MRIなどの医療機器の技術革新によって血管造影の役割も変わってきました。皮膚に局所麻酔をしてほんの2㎜だけの傷をつけるだけで血管内に「カテーテル」と呼ばれる管を挿入し、臓器に直接アプローチできるので、たとえば循環器領域であれば心臓にアプローチして狭心症や心筋梗塞を治す。消化器領域では、肝臓がんであれば肝動脈塞栓術のように大腿動脈から患部のすぐそばまで細いカテーテルを挿入して抗がん剤を流して腫瘍を兵糧攻めにする。脳神経領域では、急性期の脳梗塞の血栓溶解療法や動脈瘤を詰めることもできます。また、下肢の動脈硬化の場合、風船付きカテーテルを挿入し直接狭くなった血管を広げ、歩けなかった患者さんが歩いて帰えれるようになる。CTやエコー、MRIなどの画像支援の下に血管内だけでなく臓器を直接穿刺して治療する。画像を使った血管内治療および血管以外の臓器などに対する、画像支援下の低侵襲治療、これが私の専門領域です。医学の世界に入った当初から、IVR(インターベンショナルラジオロジー)に興味があり魅力を感じていました。これからの治療は、身体に大きくメスを入れて手術するだけではなく、患者さんに優しい治療でありながら効果的な治療が求められています。カテーテルの技術にせよ、医療器具にせよ、どんどん進歩してくるであろうと考えました。その進歩と共に、カテーテル治療が今後の医療現場において主流になってくるのではないかとも考えていました。それは現実になってきていると確信しています。IVR治療で劇的に変わる患者さんのQOLIVRでできることは血管を開く、詰める、溶かす、生検のための組織を切除して取り出す、直接腫瘍を穿刺して治療する、簡単にいうとこれらが主な分野です。具体的には、動脈硬化で詰まった血管を開き、血栓で詰まった血管を溶かすことができる。体を大きく切開することなく組織を取り出し診断を確定する、ドレナージといって体内の深い部分の膿をCT・エコー・MRIで見ながら吸い取る。詰めるは塞栓術といって、肝臓がん治療の他、体の中で緊急出血した場合、血圧が低下し、身体を大きく開くことはできないので、救急治療として金属のコイルを詰めて止血し、一命を救うこともできます。今までは大きく開腹、開胸しなくてはならなかった手術が、IVR治療によって足の付け根や腕の部分を局所麻酔で2から3mm切開し、動脈や静脈にカテーテルを挿入して治すことができるようになっています。これにより患者さんの入院日数は劇的に短縮されました。局所麻酔のため危険性も減りますし、入院期間も短くなり、痛みが少ないなど多くのメリットがあります。心臓疾患の場合、以前ならば最低でも1から3ヵ月の入院を余儀なくされましたが、IVR治療では、長くて10日、われわれは3日から1週間入院を目安にしています。ただし、入院期間が短縮されたからといって、簡単な病気だったと勘違いはしないでほしい。血管内で手術は行われていますから、それなりのリスクがあることも十分知っておいてほしいと思います。患者さんにとって簡単そうに思えるIVR治療ですが、医師としては熟練した手技と全身疾患に対して知識や経験がないとできない分野です。実際に治療を行えるようになるまでには、綿密なトレーニングが必要です。東邦大学では後期研修医あるいは大学院生の1年目から血管内治療のトレーニングを本格的に重ねてもらいます。われわれの科では、画像診断もやりながら低侵襲の治療をする、研究にも取り組み積極的に国内外の学会で発表するという3本の柱を忘れることなく、必死で若手の医師が毎日を過ごしています。臨床医としての経験を活かした研究開発私がこの世界に入った時にはすでに、血管内治療のデバイスであるステントやバルーンの8割が輸入品でした。許認可の問題もあって、欧米の製品を平均2年遅れで買わなければいけない現状があります。その上、必ずしも日本人に適しているデバイスではありません。日本人にとって使いにくくて直してもらうにしても、製品ができあがってくるまでに1年、2年、3年かかる場合もあります。目の前の患者さんを治せるツールがあるのに、サイズが合わないだけで使えないという現実にジレンマを感じていました。私が慶應の研修医だった当時、恩師で、放射線医の第一人者であり、日本のIVRの父ともいえる平松京一教授(当時)の計らいで、医師になってから2年半後にハーバード大学で研鑚(けんさん)を積むようにと言われました。そこで約3年半、留学することになってしまいました。研修医が終わったばかりで、何の実力もないし、研究歴もなかった。渡米前には、多くの上司にも心配されました。ハーバード大学で最初の数ヵ月はお客さん扱いでしたし、もう帰国しようかとどまろうかと考えながら細々と実験を始めました。その実験データを基に数ヵ月後に書きあげたプロトコールが運良く認められて潤沢な公的研究費が与えられて、それをきっかけに状況が変わりました。そこのチームのチーフに任命され、血管の中の遺伝子治療研究が始まりました。詰まった心臓血管の中にステント(金属のメッシュ状の筒)を入れると、再狭窄が起こります。ステントは血流を劇的に改善しますが、血管を無理に開くため血管の内皮細胞や血管平滑筋細胞に傷がつきます。血管には破れると修復する作用があって、傷を修復する過程で、金属の周囲に血栓が付き、その刺激が過剰平滑筋細胞の増殖を促し、血管がまた詰まってしまうのです。それを治すために特殊なバルーンカテーテルというのを用いてそこから薬剤を出す。当時は、ステント留置後、20%から40%は半年後には詰まるといわれていました。確かに、血管内の遺伝子治療は実験的に成功し、米国IVR学会やNIHなどで受賞しました。けれども、やはり金属ステントそのものの留置が「諸刃の剣」だということに気づき、帰国後、材料工学の研究を独学で始めました。体になじみにくい金属が、長期的によい成績をだせるわけがないと考えたからです。しかしながら、金属の特性としてしなやかさや耐腐食性などを上回る素材はなかなかありません。それならば、既存のものにコーティングを施したらどうか、と考えました。ただし、コーティングするにしても体に害を及ぼすものでは当然使えません。行き着いたのがダイヤモンド系のコーティングでした。ダイヤモンドは、「物質の王様」といわれるだけあって、非常につるつるしているばかりではなく、耐摩耗性という特性があり、さらに炭素は身体を構成する成分の一つなので、人体に悪影響を及ぼしません。現在、主流となっている薬剤溶出性ステントから出てくる薬剤は薬効が強く正常の血管内皮細胞にダメージを与えるものが主流ですが、ダイヤモンドというのは化学的に安定しているばかりでなく、細胞に毒性を与えない特性を持っています。われわれは、さらにダイヤモンド系コーティングにフッ素を混在させることによって、血液の付着も防げることを初めて発見しました。つまり、フッ素を添加したDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)というコーティングは、血液をはじき付着を防ぐので、血栓ができにくい。さらに、血管内に残るのは炭素を主流とするダイヤモンド系素材なので、身体に悪いものではありません。これらの研究開発には、医学の知識だけではなく工学知識の力が不可欠でした。そこで、臨床医の立場で工学との通訳をしなければいけないと痛感しました。なぜならば、工学の思考と医学の研究者の思考回路はまったく違うからです。ですが、工学者も研究の応用の幅を広げたいと考えているし、医学者もテクノロジーを利用する考えが必要です。互いの歩み寄りを円滑にするために、私は医学部の栗林幸夫教授のご指導の下、医学博士を取得し、その後、工学部の鈴木哲也教授の下で工学博士を取得しました。これからも研究開発において、医工連携のための通訳になれたらと思いますし、私に続く若い医師や研究者を育成することに力を注いでいます。ゼロからのスタートに惹かれ挑戦慶應からこちらへ来たのは、ここはほぼゼロからということに興味を持ちました。現在の教室の寺田一志教授の誘いもあり、今までやってきたことをここで一度リセットして挑戦してみるのもいいだろうと考えました。慶應もいい環境ではありましたが、東邦大学の伝統と自由な気風、研究に対しても「自由にやれ」というムードがありました。特に、東邦佐倉病院では、他の臨床医の方々も、慶應から来た新参者にすごく親切にしてくれて、雰囲気もよかったし、全体的にやる気の気運が高まっている瞬間でした。今では県内でもトップクラスのIVR症例数を誇る施設になりつつありますが、こちらに来た当時はIVR治療もあまり積極的に行われていませんでした。それでも、循環器センターや消化器センターなど各診療科の多くの先生のご協力があって、現在にいたっています。これは、東邦大学の気風とセンター単位で行われるチーム医療にうまく融合した結果だと思います。前病院長の白井教授が臨床・研究に対する基礎を構築し、現在の田上病院長を中心にした執行部の積極的な支援の賜物だと思います。当院循環器センターの専門外来である「血管内治療・IVR外来」は、循環器内科医、心臓血管外科医、臨床検査医、放射線科医、心臓リハビリ医、形成外科医、糖尿病代謝内科医など本当の意味でのチーム医療ができるように構築してきました。カンファレンスの意思が医師同士の間で一貫しているというのは、患者さんにとっても安心できることだと思います。臨床としては主に肝臓がんや救急出血や動脈瘤などの塞栓術と下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans)に伴い、詰まってしまった血管の血管形成術がメインです。糖尿病や動脈硬化で足が壊死してしまうのを治療するのがメインです。私にとって医療器具の研究はライフワークですが、実は臨床が9割。この臨床の経験があるからこそ研究のテーマが明確に打ち出せるのだと思います。これからは教育にも力を注ぐ私がこれから望むものは、若い人の教育です。まだ私も若いですけど……(笑)。若い人を教育するということは、自分が教育されることでもあります。教えるというのは、教えられることでもあります。先入観のない眼で若い人と日本から何かを発信したい。座右の銘は「感謝して今日もニコニコ働きましょう」。決して一人で仕事をしているのではなく、周りのスタッフ、上司、親、自分の周りの人すべてが笑顔でいられる医療をやりたい。そのために臨床はもちろん、研究や医療器具の開発もしたい。若い医師には、どんどん広い世界を見て、自分のアイデンティティ、日本人であるとか医師になるという明確な自覚を持ってほしい。勇気を持って新しいことにもチャレンジしてほしい。それらを一緒にやっていきたい。だからうちの科では工学部との交流や留学なども積極的にプログラミングしています。若いうちから何でも経験させ、国際学会発表も全員が入局2年以内に経験するように指導しています。敵は病気なので、最高の技術、最高の人間性、患者さんを治したいという気持ちを強く身につけてほしいと考えています。是非、そんなピュアな高い志を持った若い先生と学閥や分野を越えて一緒に働きたいという希望を持っています。質問と回答を公開中!

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抗菌性創傷被覆・保護材「アルジサイト銀」新発売

 スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント株式会社は、本邦初のアルギン酸カルシウム繊維に銀イオン効果をプラスさせた抗菌性創傷被覆・保護材『アルジサイト銀』を2011年1月1日に発売した。アルジサイト銀は滲出液と細菌の両方をコントロール アルジサイト銀は、創傷の治癒を遅らせる過剰な滲出液と細菌の両方をコントロールできる製品。天然素材由来のアルギン酸繊維が創傷の滲出液を吸収し、ゲル化することにより創傷に適切な湿潤環境を提供し、治癒を促進するという。また、滲出液の吸収と同時に放出された銀イオンには、滲出液と共に被覆材内に流入した細菌や創傷接触面の細菌に対し抗菌効果を発揮することにより、創傷を清浄化し、治癒を促進する効果があるという。また、血液凝固第IV因子であるカルシウムイオンの効果も期待できるとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://wound.smith-nephew.com/jp/node.asp?NodeId=4117

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