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COVID-19ワクチン接種率向上にリマインダーが有効

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むにつれ、ワクチンの効果や安全性に疑問を持ち接種を避けるいわゆる「ワクチン忌避者」の存在が各国で問題となっている。忌避者を接種につなげるために効果的なコミュニケーション戦略についての研究結果が、Nature誌オンライン版2021年8月2日号に掲載された。 UCLA アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントで行動経済学を専門とするHengchen Dai氏らによる本研究では、メールによるリマインダーとその内容がワクチン接種率向上にどの程度寄与するのかを調査した。 研究者らは、2021年1月29日からUCLAの医療システムから抽出したワクチン接種対象者に対象に、接種予約の案内メール送付から1日後(n=9万3,354例)および8日後(n=6万7,092例)にリマインダーを配信した。解析は5月25日に終了した。主要評価項目はリマインダー受信後6日以内の初回接種の予約、副次評価項目は受信後4週間以内の初回接種だった。 登録者は、リマインダーを受け取る群(受信群)と受け取らない群(不受信群)に、4:1の比率で無作為に割り付けられた。受信群にはリマインダーの内容によって行動が変わるかを調査するために、さらに2つの要素を追加した。1つめは「心理的所有感を誘発するメッセージ(UCLA Health:(参加者の名前)さん、COVID-19ワクチンがUCLA Healthで入手できるようになりました。uclahealth.org/scheduleで予防接種の予約をして、今すぐ接種を受けてください)」、もう1つは「ワクチンの有効性に関する2分間の動画メッセージ」で2要素の組み合わせによって4群に無作為に割り付けられた(基本リマインダーのみ:1万8,629、所有感メッセージ:1万8,592、有効性メッセージ:1万8,757、所有感+有効性メッセージ:1万8,627)。1回目のリマインダーから7日以内に予約・接種した人等を除いた6万7,092例を対象に2回目のリマインダーを送付した。全群において年齢、性別、人種のバランスがとれていることを確認した。 主な結果は以下のとおり。・1回目のリマインダーによって、受信群の不受信群と比較した予約率は6.07%、接種率は3.57%上昇した。2回目のリマインダーによって、各1.65、1.06%上昇した。・1回目のリマインダーでは予約・接種共に所有感メッセージが有効だった。一方で、有効性に関するメッセージには効果が見られなかった。・受信群と不受信群の初回接種率の差は8週間後でも続いていた。 研究者らは「全タイプのリマインダーが接種率を上昇させることがわかり、特に心理的所有感を誘発するメッセージが有効なことがわかった。2回目のリマインダーの効果は1回目に比べて落ちたが、対象にワクチン接種に懐疑的な人の割合が増えているだろうことを考慮すると、一定の効果を発揮した。また、リマインダーを受け取ることの効果が長期に持続したという事実は、この間に対象者が多くの情報に触れていたであろうことを考慮すると驚きに値する」とし、「行動科学的な洞察を使うことで、ワクチン接種を低コストで増加、スピードアップすることができる」としている。

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新型コロナワクチン、6~7月の有効率は95%/感染研

 国立感染症研究所は8月31日、ワクチンを接種して14日以上経過した者は未接種者と比較し感染のオッズが有意に低かったことから、さまざまな変異株が流行する状況においても国内承認ワクチンは有効であることを示唆した。また、ワクチンの接種回数、(短期的には)接種からの期間の長さによって有効率が高くなる傾向も明らかにした。ワクチン有効率を症例対照研究での調整オッズ比から推定 現在、ファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチンの有効性は90%以上、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンも有効性は70%程度と報告されているが、変異株出現により有効性の低下が指摘されている。そこで、国立感染症研究所は、5つの医療機関の発熱外来など新型コロナウイルス検査を受けた患者を対象として、症例対照研究(test-negative design)を行った。 今回の報告は2021年6月9日~7月31日の暫定結果で、対象者はPCR検査陽性者が症例群、陰性者が対照群に分類された。検査前には基本属性、新型コロナワクチン接種歴などを含むアンケートが実施された。また、発症から14日以内、いずれか1症状のある者(37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、寒気、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害)に限定して解析が行われた。 ワクチン接種歴については、「未接種」「1回接種のみ」「2回接種」の3つに区分。さらに、接種後の期間を考慮するため「未接種」「1回接種後13日目まで」「1回接種後14日から2回接種後13日目まで(partially vaccinated)」「2回接種後14日以降(fully vaccinated)」の4つのカテゴリーに区分した。ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比と95%信頼区間(CI)を算出。また、ワクチン有効率は多変量解析から得られた調整オッズ比を使用し、(1-オッズ比)×100%で推定した。多変量解析における調整変数としては、先行研究を参照し、年齢、性別、基礎疾患の有無、医療機関、カレンダー週、濃厚接触歴の有無、過去1ヵ月の新型コロナウイルス検査の有無をモデルに組み込んだ。ワクチン有効率、ワクチン2回接種14日以降では95%・都内5医療機関の発熱外来などを受診した成人1,525 例が調査に同意。そのうち除外基準に該当する者を除く1,130例(うち陽性者416例[36.8%])を解析した。・年齢中央値は33歳(範囲:20~83)、男性は546例(48.3%)、女性は584例(51.7%)で、267例(23.6%)が何らかの基礎疾患を有していた。・ワクチン接種歴について、未接種者は914例(83.4%)、1回接種者は141例(12.9%)、2回接種者は41例(3.7%)だった。・調整オッズ比は1回接種者では0.52(95%CI:0.34~0.79)、2回接種者では0.09(同:0.03~0.30)だった。・接種からの期間別の調整オッズ比は、「1回接種13日目まで」が0.83(同:0.51~1.37)、「1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)」が0.24(同:0.12~0.47) 「2回接種14日以降(fully vaccinated)」では、0.05(同:0.00~0.28)だった。・今回の解析ではワクチン接種歴不明例・接種日不明例を対象から除外したが、未接種として解析に含めた場合も調整オッズ比は同様だった。・ワクチン有効率は「1回接種13日目まで」は17% (同:-37~49%)、「1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)」では76%(同:53~88%)、「2回接種(接種からの期間を問わない)」では91%(同:70~97%)、「2回接種14日以降(fully vaccinated)」では95%(同:72~100%)だった。 なお、研究者らは留意すべき点として、「ワクチンの有効性は、流行状況、各変異株の割合、感染対策の緩和、ワクチン接種からの期間(免疫減衰の可能性)などの要素が影響している可能性があり、総合的に、経時的に判断すべき。一方で、本報告では1回接種13日目までは有効性が認められず、これは先行研究と一致する結果であった」とし、「本調査はあくまでも迅速な情報提供を目的としている暫定的な解析であり、今後もより詳細な解析を適宜行い、変異株や感染対策の緩和の影響、免疫減衰の可能性などをみていくために、経時的に評価していくことが重要。調査期間においては、アルファ株からデルタ株の置き換わり期であり、デルタ株が大部分を占めるようになった際の有効性についても今後検討していく必要がある」としている。

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シノバック製ワクチン、ガンマ株蔓延下のブラジルで有効性検証/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のγ変異株(ブラジル型)が広くまん延している状況下で、70歳以上の集団における不活化全粒子ワクチンCoronaVac(中国Sinovac Biotech製)の2回接種者は非接種者と比較した場合、2回目接種から14日以降における症候性の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症に対するワクチン有効率は47%であり、COVID-19関連の入院に対する有効率は56%、死亡に対する有効率は61%との研究結果が、スペイン・ISGlobalのOtavio T. Ranzani氏らによって報告された。研究の詳細は、BMJ誌2021年8月20日号に掲載された。サンパウロ州で、診断陰性例コントロール試験 研究グループは、γ変異株まん延下のブラジル・サンパウロ州(地方自治体数645、人口4,600万人、70歳以上人口323万人)の高齢者を対象に、CoronaVacワクチン接種の有効性を評価する目的で、診断陰性例コントロール試験(negative case-control study)を行った(外部からの研究助成は受けていない)。 対象は、サンパウロ州の居住者で、COVID-19の症状がみられる70歳以上の集団であった。2021年1月17日~4月29日の期間に、4万4,055人が逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)によるSARS-CoV-2の検査を受け、2万6,433人が陽性(症候性COVID-19)、1万7,622人はCOVID-19の症状がみられるものの陰性(コントロール)であった。 年齢、性別、自己申告の人種、居住する地方自治体、COVID-19様疾患の既往、RT-PCR検査日(±3日)に関して、症例(陽性者)1人に対しコントロール(陰性者)を最大で5人までマッチさせた(症例1万3,283人、コントロール4万2,236人)。 マッチング集団のCoronaVacワクチン接種者と非接種者で、症候性COVID-19(RT-PCR検査で確定)と、これに伴う入院および死亡の比較が行われた。年齢層が高いほど有効率が低下 CoronaVacワクチン非接種者との比較における、2回接種者の症候性COVID-19に対する調整後のワクチン有効率(発症予防効果)は、2回目の接種から0~13日が24.7%(95%信頼区間[CI]:14.7~33.4、p<0.001)、14日以降は46.8%(38.7~53.8、p<0.001)であった。 また、COVID-19関連入院に対するワクチン有効率は、2回目の接種から0~13日が39.1%(95%CI:28.0~48.5、p<0.001)、14日以降は55.5%(46.5~62.9、p<0.001)であり、死亡に対するワクチン有効率はそれぞれ48.9%(34.4~60.1、p<0.001)および61.2%(48.9~70.5、p<0.001)であった。 2回目接種から14日以降のワクチン有効率は、最も若い年齢層(70~74歳)で優れており、年齢層が高くなるに従って低下した。すなわち、症候性COVID-19のワクチン有効率は70~74歳が59.0%(43.7~70.2)、75~79歳が56.2%(43.0~66.3)、80歳以上は32.7%(17.0~45.5)であり、入院のワクチン有効率はそれぞれ77.6%(62.5~86.7)、66.6%(51.8~76.9)、38.9%(21.4~52.5)、死亡のワクチン有効率は83.9%(59.2~93.7)、78.0%(58.8~88.3)、44.0%(20.3~60.6)だった。 著者は、「COVID-19の流行に対応した集団予防接種キャンペーンの一環としてCoronaVacを使用する場合は、ワクチンの供給を優先し、2回接種完了者数を最大限に増やす必要がある」としている。

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mRNAワクチン、初回接種後2週間は要注意/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチンは、2回接種により症候性感染と重症化に対する高い有効性が認められることが示された。ただし、1回接種の場合、とくに高齢者では接種直後は有効性が低かった。カナダ・ICESのHannah Chung氏らが、診断陰性例コントロール試験の結果、明らかにしたもので、結果を踏まえて著者は、「mRNAワクチンの症候性感染に対する効果は、1回接種では中程度であることから、とくに初回接種後最初の2週間(高齢者ではさらに長い期間)は効果がないこと、マスク着用や物理的距離、社会的な集まりを避けるなどの推奨されている公衆衛生対策を継続して行うべきであることを、人々に伝える必要がある」と指摘している。BMJ誌2021年8月20日号掲載の報告。有症者約32万例でmRNAワクチンの有効性を評価 研究グループは、SARS-CoV-2の症候性感染および重症化に対するワクチンの有効性を検証する目的で、診断陰性例コントロール試験を実施した。対象は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状があり2020年12月14日~2021年4月19日にSARS-CoV-2検査を受けた16歳以上のオンタリオ州の住民32万4,033例であった。 主要評価項目は、RT-PCR法による症候性SARS-CoV-2感染(検査陽性)、ならびに症候性感染の重症化(入院または死亡)で、検査データはOntario Laboratories Information System、アウトカムはCase and Contact Management system、Canadian Institute for Health Information's Discharge Abstract DatabaseおよびOntario Registered Persons Database、ワクチン接種状況はオンタリオ州の一元化されたCOVID-19ワクチン情報システムであるCOVaxONを用いて特定した。なお、対象ワクチンは、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)およびmRNA-1273(Moderna製)とし、ChAdOx1(Oxford-AstraZeneca製)の接種者は除外した。 多変量ロジスティック回帰モデルを用い、検査陽性例と検査陰性例(ワクチン未接種者を参照群とする)でワクチン接種状況を比較した。高い効果が得られるのは初回接種後14日以降、2回目接種後7日以降 症状があり検査を受けた32万4,033例中、5万3,270例(16.4%)が検査陽性で、2万1,272例(6.6%)は少なくとも1回のワクチン接種を受けていた。検査陽性例のうち、2,479例(4.7%)が入院(2,035例)または死亡(444例)した。 1回目のワクチン接種後14日以降に確認された症候性感染に対するワクチンの有効性は60%(95%信頼区間[CI]:57~64)であり、14~20日後は48%(41~54)であったが、35~41日後には71%(63~78)に上昇した。一方、2回目のワクチン接種後7日以降に確認されたワクチンの有効性は91%(89~93)であった。 1回目のワクチン接種後14日以降に確認された入院または死亡に対するワクチンの有効性は70%(95%CI:60~77)であり、1回目接種14~20日後は62%(44~75)であったが、35日以降には91%(73~97)に上昇した。一方、2回目のワクチン接種後7日以降に確認された同ワクチンの有効性は98%(88~100)であった。 70歳以上の成人では、1回目接種後の期間が短い間はワクチンの有効性が低く、28日後以降で若年者の14日後以降に相当する有効性が得られた。また、2回接種後は、E484K変異(ガンマ株)に対して高い有効性を示すことが確認された。

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新型コロナ変異株「ミュー株」国内で2例確認/厚労省

 WHOが8月30日、感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される「注目すべき変異株(VOI)」に位置付けたことを発表した「ミュー株」について、厚生労働省は9月1日、これまでの検疫結果を改めて集計したところ、今年6月および7月に空港検疫で新型コロナウイルスの検査で陽性が確認された2例がミュー株と確認されたことを発表した。 WHOが8月31日に公表した週報によると、コロンビアで今年1月に初めて報告されたB.1.621系統の変異株が、8月30日にVOIと位置付けられ、ミュー株と命名された。これを受け、厚労省が国内の新型コロナウイルス感染症患者について国立感染症研究所の検査の結果を遡及的に調べたところ、2例がミュー株に該当したという。2例は空港検疫で確認され、▽6月26日にアラブ首長国連邦から成田空港に到着した40代女性▽7月5日に英国から羽田空港に到着した50代女性。いずれも無症状であった。

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新型コロナとインフルのワクチン接種間隔、現時点の考え方/日医

 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量とそれに伴う予約の設定についての留意点、新型コロナウイルスワクチン接種との接種間隔の考え方について、日本医師会の釜萢 敏常任理事は9月1日の定例会見で情報提供を行った。昨シーズンと比較すると供給量減る見込み、予約の組み立てに注意を 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量は、8月時点で約2,567万本から約2,792万本(1mLを1本に換算)の見込みであり、昨シーズンより減る見通しとなっている。同日開催された厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会)において示された1)。とくに接種開始の10月供給量が少なく、供給時期が12月2週目まで続くことから、例年と比較して後ろにずれる見込みという。 昨年は供給量3,342万本に対し使用量は3,274万本と製造効率等がとくに良好だったために供給量が多く、使用量も平成8年以降最大となっていた。しかし一昨年は供給量2,964万本に対し使用量は2,825万本となっており、昨年と比較すると少ないが、例年の使用量に相当する程度は供給される見込みという2)。 釜萢氏は、「11~12月には増えていく見込みとなっているが、接種開始の10月の供給量が少ない。“早く打ちたい”という方への情報提供が重要になる。各医療機関が自分のところに供給されるワクチンの見通しを把握したうえで、希望される方への予約を設定していく必要がある」と説明。とくに小児(13歳未満)の場合は2回接種が推奨されるため、それを踏まえた予約の組み立てをお願いしたいと呼びかけた。新型コロナワクチンは他のワクチンと前後2週間の接種間隔が必要 また、現在接種が進む新型コロナウイルスワクチンとの接種間隔についても留意が必要になる。9月1日時点で、わが国では新型コロナウイルスワクチンは他のワクチンと前後2週間の接種間隔をとることとされている3)。同氏は、「たとえばファイザー社のワクチンは1回目と2回目の間隔が3週間となっており、この間にインフルエンザワクチン接種をスケジュールすることは難しい」とした。 一方、米国疾病予防管理センター(CDC)では、以前は他のワクチンと前後2週間の接種間隔をとることが推奨されていたが、現在では変更され、新型コロナウイルスワクチンを他のワクチンの接種タイミングと関係なく接種することが可能とされている4)。釜萢氏は日本でも今後変更される可能性はあるが、現時点では前後2週間の接種間隔が必要なことに留意が必要とした。

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第73回 これが現実?コロナ患者受け入れ病院の厳しい末路

新型コロナウイルス感染症を巡っては、希望と懸念を感じる動きがそれぞれあった。希望は、研究者らが声明で出した感染対策1)。「策が尽きた」との閉塞感を打破する可能性がある。懸念は、大阪市で新型コロナ患者受け入れ病院を運営する医療法人が、全国で初めて民事再生法を申請したことだ。医療が逼迫する中、「臨時医療施設」設置の動きが出ているが、肝心のコロナ患者受け入れ病院が倒産するようでは、コロナ患者受け入れに対する医療機関の懸念を招きかねない。日本ではほとんど議論されていない空気感染声明は、本堂 毅氏(東北大学大学院理学研究科准教授)と平田 光司氏(高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設ダイアモンドフェロー)らがまとめ、全国の感染症研究者や医師ら30人超が賛同者になっている。声明では「空気感染が主な感染経路」という前提で、「いまだ様々な方法が残されており、それらによる感染拡大の阻止は可能である」と訴えている。厚生労働省は、新型コロナの感染経路として唾による「飛沫感染」や「接触感染」が一般的としているが、世界保健機関(WHO)や米疾病対策センター(CDC)はエアロゾルの吸引も感染経路としている。また欧米の医学界でも、空気感染がコロナ感染拡大の主因であるということがコンセンサスになっているという。日本では空気感染に関してほとんど議論されていない中、この声明の意義は大きいのではないだろうか。研究者らが空気感染の具体策を提言空気感染は、感染者の口腔から放出されるウイルスを含んだエアロゾル(0.005ミリ以下)が空間に滞留する量(濃度)に応じて起こる。声明では「エアロゾル滞留濃度を下げることで感染抑止は可能なはず」とし、▽若者に広く使われているウレタンや布のマスクはエアロゾルの吸入阻止に無力だが、不織布マスクは抑制できる▽ドイツでは公共の場などでは一定以上の性能を持つマスク着用が罰則付きで義務化され、ウレタンマスクの着用は禁止されたが、日本では制約もなく、正式な呼びかけすらない▽1時間に2回程度の換気は不十分で、空気清浄機などを含めた機械的換気の適切な活用が重要―と指摘した。その上で、国や自治体に▽不織布マスク装着の周知と必要な制度的措置▽換気装置や空気清浄機などを正しく活用するための市民へ周知▽中立的組織による感染対策効果の検証―を求めた。企業や飲食店などで、飛沫感染防止用のアクリル製パーテーションをよく見かけるが、空気感染が主な感染経路となると、予防に必要な対策もおのずと異なってくる。国や自治体は、声明で求められた対策を早急に検討すべきだろう。コロナ患者受け入れを萎縮させる病院倒産報道新型コロナ患者を受け入れていた松本病院の運営主体である医療法人友愛会(大阪市福島区)が、8月26日に大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。帝国データバンクによると、コロナ患者受け入れの医療法人の倒産は全国で初めてで、負債総額は約52億円。今後はスポンサーの支援を受け、病院の運営を継続していくという。同病院は地域の中核病院で、大阪府の要請を受けて今年1月から新型コロナの軽症と中等症の患者を受け入れ、それによって外来患者が減り経営破綻したと報じられた。同病院は申請理由として「過去の設備投資に伴う過大な有利子負債の負担など、法人経営の稚拙さに起因するもの」と、コロナ患者受け入れによる経営悪化を否定。しかし、速報時の衝撃は大きく、厚労省と東京都が都内医療機関にコロナ患者受け入れ病床の確保などを要請する中、コロナ患者受け入れによる経営悪化を懸念する医療機関も出ている。国や都は、正当な理由なく応じなかった場合、医療機関の名称公表などの“脅し”をちらつかせているが、そんなことよりも先にやるべきなのは、コロナ患者を受け入れる医療機関に対し、経営を強固にバックアップする公的な支援策を示すことではないだろうか。参考1)最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明

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COVID-19重症化リスク因子ごとの致死率、年代別では?/厚労省アドバイザリーボード

 COVID-19の重症化リスク因子ごとの致死率についてHER-SYSデータを集計し年代別に解析したところ、どの年代でも慢性腎臓病が独立したリスク因子として示された。8月25日に開催された「第49回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(厚生労働省に対し、新型コロナウイルス感染症対策推進に必要となる医療・公衆衛生分野の専門的・技術的な助言を行うもの)の資料として報告された。 本結果は、COVID-19重症化リスク因子(慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、慢性腎臓病、悪性腫瘍、肥満、喫煙、免疫抑制)を保有するCOVID-19患者の致死率について、2021年4月1日~6月30日(発生届ベース)のHER-SYSデータを集計し、年齢階級別(65歳以上、50~64歳、40~49歳)に解析したもの。<65歳以上>・各リスク因子の非保有者/保有者における致死率は、慢性閉塞性肺疾患で5.63%/13.4%、糖尿病で5.47%/8.15%、脂質異常症で5.78%/5.99%、高血圧症で5.42%/7.03%、慢性腎臓病で5.30%/18.0%、悪性腫瘍で5.40%/11.8%、肥満で5.69%/7.69%、喫煙で5.53%/6.93%、免疫抑制で6.64%/14.4%であった。 ・年齢・性別・各リスク因子を加えた多変量解析(ロジスティック回帰分析)で独立したリスク因子として示されたのは、加齢(1歳ごとのオッズ比OR:1.099、95%信頼区間[CI]:1.088~1.109)、男性(女性と比較したOR:1.767、95%CI:1.487~2.100)、糖尿病(OR:1.33、95%CI:1.070~1.653)、慢性腎臓病(OR:2.239、95%CI:1.669~3.004)、悪性腫瘍(OR:1.569、95%CI:1.183~2.079)、喫煙(OR:1.401、95%CI:1.059~1.853)、免疫抑制(OR:2.125、95%CI:1.511~2.990)だった。<50~64歳>・各リスク因子の非保有者/保有者における致死率は、慢性閉塞性肺疾患で0.33%/3.56%、糖尿病で0.29%/1.16%、脂質異常症で0.35%/0.53%、高血圧症で0.33%/0.66%、慢性腎臓病で0.31%/6.59%、悪性腫瘍で0.33%/2.28%、肥満で0.32%/1.35%、喫煙で0.36%/0.55%、免疫抑制で0.44%/2.07%だった。・多変量解析で独立したリスク因子として示されたのは、加齢(1歳ごとのOR:1.133、95%CI:1.062~1.210)、男性(女性と比較したOR:3.445、95%CI:1.756~6.761)、糖尿病(OR:3.545、95%CI:1.718~7.312)、慢性腎臓病(OR:12.167、95%CI:4.932~30.02)、悪性腫瘍(OR:4.550、95%CI:1.562~13.26)、肥満(OR:3.596、95%CI:1.376~9.399)だった。<40~49歳>・各リスク因子の非保有者/保有者における致死率は、慢性閉塞性肺疾患で0.08%/0%、糖尿病で0.07% /0.65%、脂質異常症で0.08%/0.28%、高血圧症で0.06%/0.57%、慢性腎臓病で0.07%/1.42%、悪性腫瘍で0.08%/0.47%、肥満で0.06%/0.84%、喫煙で0.08%/0.10%、免疫抑制で0.14%/0%だった。・多変量解析では、慢性腎臓病(OR:44.739、95%CI:7.817~256.06)が独立したリスク因子だった。

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ファイザーワクチン後の重篤な有害事象リスク、感染後より低い/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ほとんどの臨床的に重要な有害事象のリスク増大とは関連しておらず、ワクチン接種と心筋炎の過剰リスクとの関連は認められたが(10万人当たり1~5件)、これら心筋炎を含めた重篤有害事象リスクは、SARS-CoV-2感染後のほうが大幅な増大が認められた。イスラエル・Clalit Research InstituteのNoam Barda氏らが、イスラエルの半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。NEJM誌オンライン版2021年8月25日号掲載の報告。イスラエル国民データを基に、臨床的に重要な有害事象のリスクを解析 研究グループは、イスラエルで最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータ(イスラエル国民の約52%が加入)を用い、2020年12月20日~2021年5月24日にBNT162b2ワクチン接種を受けた人(接種群)、ならびにワクチン接種者と人口統計学的および臨床的特徴をマッチングさせたワクチン未接種者(対照群)を対象として、BNT162b2ワクチンの安全性を評価した。 臨床的に重要な短期および中期の潜在的な有害事象(発熱、倦怠感、局所注射部位反応などの軽度の有害事象は含まない)について、Kaplan-Meier法を用いてワクチン接種後42日目の各有害事象のリスク比とリスク差を算出。また、SARS-CoV-2感染者と非感染者をマッチさせ、同様の解析を行った。心筋炎リスク、ワクチン接種vs.未接種群は約3倍、感染者vs.非感染者では約18倍 解析対象は、ワクチン接種群および対照群で各88万4,828例、SARS-CoV-2感染者群および非感染者群で各17万3,106例であった。 ワクチン接種は、心筋炎(リスク比[RR]:3.24[95%信頼区間[CI]:1.55~12.44]、リスク差:2.7件/10万人[95%CI:1.0~4.6])、リンパ節腫脹(2.43[2.05~2.78]、78.4件/10万人[64.1~89.3])、虫垂炎(1.40[1.02~2.01]、5.0件/10万人[0.3~9.9])、および帯状疱疹感染(1.43[1.20~1.73]、15.8件/10万人[8.2~24.2])のリスク上昇と強い関連が認められた。 一方で、SARS-CoV-2感染者は非感染者と比較し、心筋炎(RR:18.28[95%CI:3.95~25.12]、リスク差:11.0件/10万人[95%CI:5.6~15.8])のほか、急性腎障害(14.83[9.24~28.75]、125.4件/10万人[107.0~142.6])、肺塞栓症(12.14[6.89~29.20]、61.7件/10万人[48.5~75.4])、頭蓋内出血(6.89[1.90~19.16]、7.6件/10万人[2.7~12.6])、心膜炎(5.39[2.22~23.58]、10.9件/10万人[4.9~16.9])、心筋梗塞(4.47[2.47~9.95]、25.1件/10万人[16.2~33.9])、深部静脈血栓症(3.78[2.50~6.59]、43.0件/10万人[29.9~56.6])、不整脈(3.83[3.07~4.95]、166.1件/10万人[139.6~193.2])の大幅なリスク上昇が認められた。

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新しい病気の登場(解説:後藤信哉氏)

 人類は時代に応じて各種疾病と戦ってきた。ペストの時代があり、結核の時代があり、心血管病の時代があった。数の多い疾病に対して、発症メカニズムを解明し、予防、治療手段を開発してきた。新型コロナウイルスも人類が克服すべき疾病である。ワクチンは新型コロナウイルス感染に対する人類の反撃の第一歩である。 ヒトの細胞にウイルスの蛋白を作らせる新型コロナウイルスワクチンも歴史的な医学の進歩として記録されるだろう。しかし、革新的ワクチン特有の副反応も見つかってきた。ワクチンによる免疫血栓症(vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia:VITT)も新規に出現した問題である。実証的な英国医学では理論よりも現実を注視する。英国の規制当局は、ワクチン接種を担う医師たちにワクチン接種後の脳静脈洞血栓症の報告を依頼した。本研究では2021年4月1日から5月20日までに報告された99例の脳静脈血栓症のまとめである。70例はVITTとされた。新しい病気に対する新しいワクチンなので、どんな合併症がどれだけ起こるか、誰も知らない。新型コロナウイルス感染による死亡を減らせるのであれば、まずワクチンを使ってみよう! しかし、合併症があれば、公開してみんなで議論しよう! というのは英国人の良いところである。 新しい病気の新しいワクチンによる合併症の治療法は誰も知らない。VITTに類似した血栓症であるヘパリン惹起血小板減少・血栓症ではヘパリンは増悪因子となる。ヘパリン以外の抗凝固薬は効くかもしれないし、免疫グロブリンは有効かもしれない。よくわからないけれども、わかるところだけは公開しようとの英国の姿勢を反映した論文である。しかし、厄介な病気が増えたものだ。ペスト、結核、心血管病のように、予防、治療の基本が明確になるまでどのくらいかかるのだろうか?

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第73回 中外製薬ロナプリーブ記者説明会で気になった「確保量」「デリバリー」「高齢者優先」

抗体カクテルに過大な期待かける菅首相こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は、渋谷のPARCO劇場に、宮藤 官九郎作・演出の「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」を観に行きました。劇場内はマスク着用で私語禁止というなかなかに厳しい環境でしたが、相変わらずの、くだらなくて笑い満載の芝居(クドカンによればロックオペラだそうです)を楽しんできました。もっとも、底に流れるテーマは、分断と多様性で、過激な笑いとともに提示されるクドカンのメッセージには考えさせられるものがありました。劇場の斜向かいは、「予約なしワクチン接種」で話題となった渋谷区立勤労福祉会館で接種初日だったのですが、観劇後は既に大混乱は収まっていました。それにしても、ワクチン接種を高齢者優先にしたことは最善だったのでしょうか。検証し直す必要もありそうです。さて、今回は菅 義偉首相が治療法の切り札として過大とも言える期待をかける抗体カクテル療法、中外製薬のロナプリーブについて考えてみたいと思います。ロナプリーブ投与可能場所がどんどん拡大菅首相は8月17日、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象県拡大を説明する記者会見で、抗体カクテル療法について「重症化リスクを7割も減らすことができる画期的な薬です。政府としては、十分な量を確保しており、今後、病院のみならず、療養するホテルなどでも投薬できるよう、自治体と協力を進めていく方針」と述べ、投与可能場所の拡大を大きくアピールしました。翌18日には、宿泊療養施設・入院待機施設での投与を認める事務連絡が発出されています。その1週間後、8月25日の記者会見でも菅首相は、「新たな中和抗体薬は、重症化を防止する高い効果があります。既に1,400の医療機関で1万人に投与しています。これまで入院患者のみを対象にしていましたが、多くの人に使いやすくなるよう、外来で使うことも可能とし、幅広く重症化を防いでいきます」と述べ、同日、今度は一定の条件を満たした医療機関において、外来診療による日帰りでの投与も認める事務連絡を発出しました。7月の承認段階では入院患者限定でしたが、投与可能な施設がどんどん広がっていったわけです。軽症や中等症の自宅療養の患者が激増する中、発症前〜中等症Iに有効とされるこの薬に過大な期待をかけざるを得ない、菅首相と政府の苦しい事情が透けて見えます。外来にまで拡大された日の翌日、8月26日に中外製薬がロナプリーブに関するメディア等向け説明会を電話会議形式で開きました。発症7日以内の軽症、中等症1で重症化リスク因子を持つ人対象抗体カクテル療法は、2種類の抗体を混ぜ合わせて投与することで、新型コロナウイルスの働きを抑える薬剤です。アメリカのトランプ前大統領の治療にも使われ(「第27回 トランプ大統領に抗体カクテル投与 その意味と懸念」参照)、去年11月に米食品医薬品局(FDA)が緊急使用を許可しました。ちなみにこの緊急使用許可は改定され、この8月から抗体カクテルは濃厚接触者等、コロナウイルスに曝露した一部の未発症の人にも使用できるようになっています。日本では、開発した米国のバイオテクノロジー企業、リジェネロン・ファーマシューティカルズ社と契約したロシュ社とライセンス契約を結んだ中外製薬が承認申請を行い、厚生労働省が7月19日に特例承認をしています。添付文書の効能・効果には、「臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと」とされています。また、「用法・用量に関連する注意」には「臨床試験において、症状発現から8日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない」と書かれています。つまり、発症から7日以内の軽症・中等症Iの患者で重症化リスク因子を持つ人が対象ということになります。なお、承認時の評価資料などによれば、これまでに報告されている有効性は、入院および重症化・死亡の抑制(70%以上)、 症状改善までの期間短縮(約4日)、ウイルス量の減少(高ウイルス群で抑制効果)などとなっています。濃厚接触者への適応拡大や皮下注射も検討中と中外製薬26日の中外製薬のメディア等向け説明会では、奥田 修代表取締役社長が出席し、「デルタ株がまん延し、治療薬の需要が世界的に高まっているが、日本政府からの要請に応じて、必要な供給量を確保したい」と述べ、政府が容認した外来診療での投与に対応するためにも必要な量を確保する考えを示しました。また、今後は米国で認められている濃厚接触者に対する予防的投与について適応拡大として申請する方向で国と協議していることや、点滴に限定して認められている投与方法について皮下注射でも使えるよう申請を検討する考えも示しました。さらに、同社は米アテア社が創製し、ロシュ社と共同開発した経口タイプのRNAポリメラーゼ阻害薬「AT-527」も軽症から中等症の患者を対象に国内で最終段階の治験を進めており、2022年に申請予定であることも明らかにしました。ロナプリーブの日本の確保量は本当に十分なのか?説明会に同席し、新型コロナ感染症の現状とロナプリーブについて説明した東邦大学医学部の舘田 一博教授は「ロナプリーブが承認され、その有効性が確認されてきている。臨床の先生方から、本当に多くの期待が寄せられてきている。外来投与ができるようになり、自宅などで経過を観察しなければならないような、まさに使ってほしい人たちに投与できるのは大きい」と述べ、説明会は全体として新型コロナウイルス感染症の今後の治療に期待を抱かせる内容でした。しかし、気になった点もいくつかありました。一つはロナプリーブの確保量です。2021年5月に中外製薬がロナプリーブの2021年分確保について日本政府と合意した際、「年内20万人分、当面7万人分」という報道がありました。その後、7月の承認の際や、菅首相の記者会見の際などに確保量についての質問が度々行われてきたのですが、明確な数字は公表されていません。この日も奥田社長は「具体的な数字は政府との契約上明かすことはできない。政府と連携しながら、必要な供給量をロシュ社から確保するため努力している」と述べるにとどまりました。なお、8月17日の記者会見で菅首相は確保量について質問を受けた際、具体的な数字は示さず、「政府としては十分な量を確保しています。これは私が指示して確保しています」と述べています。「私が」とわざわざ強調している点が気になります。投与場所を拡大し、軽症、中等症Iに広く使えるようにしたのに、途中で“弾切れ”になったのでは、首相のメンツは丸つぶれです。誰も“十分な量”の具体的な数字を明かさない、明かせないのは、国(首相)が過度な要求をし、中外製薬が供給元のロシュとタフな交渉をしているからかもしれません。年内20万人分という数字は今の感染状況を考えると、いかにも足りない気がします。抗体カクテル療法の普及・定着がある程度進んだ段階で、ワクチンのように「足りません」という事態にならなければいいのですが…。対象患者はロナプリーブまで辿りつけるか?もう一つ気になったのは、本当に必要とする患者に、タイムリーに抗体カクテル療法が提供されるのか、というデリバリーの問題です。適応は発症7日以内の軽症、中等症Iの患者ですが、現在、この状態の患者の多くが自宅療養を余儀なくされ、コロナを治療する医療機関にアクセスできない状況です。重症化リスクのある人に、悪化する前、あるいは発症7日を過ぎる前に、ロナプリーブを点滴静注できる医療機関や施設の早急の整備が求められます。しかし、現実には、自宅待機が長引き、入院した段階では発症1週間が過ぎてしまっている人が少なくありません。ロナプリーブにはアナフィラキシーの報告もあり、厚生労働省は投与施設に24時間健康観察を十分にできる体制を確保するよう求めています。病院のベッドが中等症、重症で埋まっている現状では、宿泊療養施設・入院待機施設などで対応するしかありませんが、この人材不足のなか、24時間体制の構築は難しいところです。今回の説明会で舘田教授は「ロナプリーブ・ステーションのような施設も必要だ」と話していましたが、ロナプリーブを本当に効果的に使うには、“野戦病院”的施設の検討に加え、軽症者治療に特化した治療ステーションの整備も必要でしょう。ワクチン同様、結局は高齢者優先になってしまうのでは?最後に、もう1点気になったのは、投与対象に「発症7日以内の軽症、中等症Iで重症化リスク因子を持つ人」と、「重症化リスク因子」が入っている点です。単純に考えれば、重症化リスク因子のあるなしにかかわらず、軽症、中等症Iに打ってしまえばいいわけですが(濃厚接触者への適応拡大も検討中ですし)、そうはできないのは、確保量や投与場所、そして費用の問題があるからでしょう。重症化リスク因子は、65歳以上、悪性腫瘍、COPD、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満(BMI 30以上)、喫煙などとなっています。そうすると、結局、ワクチン接種と同様、高齢者が優先されるケースが多くなり、若者はまた後回しにされる状況が起きてくるかもしれません。デルタ株の蔓延に伴い、基礎疾患がなくても重症化する人も増えています。そうした状況の中、「ロナプリーブを打っていれば…」という人が、若年者を中心に増えていくことが懸念されます。それもこれも、「確保量」と「デリバリー」次第です。そもそも「十分な確保量」があるなら、重症化リスク因子は大目に見て、軽症者にもどんどん投与して欲しいものです。ところで、現在は国費で賄われているロナプリーブ投与ですが、仮に新型コロナが5類感染症となり、治療が保険診療になれば、自己負担は3割負担で約6万円(米国での医療費約20万円)と高額になるかもしれません。そうなった時にこの治療法が現場でどう使われるかも気になるところですが、それについてはまた機会を改めて書きたいと思います。

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新学期に向けてCOVID-19感染対策の提言/感染研

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のデルタ株の猛威に社会が混乱している。とくに小児などの低年齢層のCOVID-19感染者数の増加により、新学期を前に学校・塾などの教育機関は、生徒を受け入れるべきか、リモートで授業を行うべきかの判断に悩み、その扱いは全国的に感染の強弱もあり一律ではない。 こうした状況の中で国立感染症研究所は、「乳幼児から大学生までの福祉施設・教育機関(学習塾等を含む)関係者の皆様への提案」を8月26日に公開した。 提案では、教職員の感染予防法の習熟やICTの活用の推進、ワクチン接種、体調確認アプリの活用など具体的な取り組みが示されている。中学生以上では部活などで広がる可能性 はじめに代表的な所見として下記の8つを示している。・10代以下の感染者数が増加傾向にある。保育所・幼稚園において、これまで保育士・教員における感染の検出が主であったが、園児の感染例が増加している・とくに小学生を中心とする授業の場で、教職員を発端とした、比較的規模の大きなクラスターが複数発生した・小学校において、児童を端緒とした、同じクラス内などの規模の小さな感染伝播は多く見受けられたが、児童間の感染伝播が規模の大きなクラスターに至ったケースは確認できなかった・障害児通所支援事業所での感染が各地で散発しており、長期化する場合がある・学習塾における比較的規模の大きなクラスターが散見される・中学生以上では、部活動など・寮生活において、適切なマスク着用や身体的距離の確保などの感染予防策の不十分な生徒・学生間の長時間に渡る交流が、感染伝播に寄与していた。とくに部活動などにおいて、最近は大会や遠征時のクラスターが複数発生した・感染しても無症状・軽症が多く行動範囲も広い大学生は市中で感染が拡大する要因の一部を占める・とくにデルタ株流行後、小児から家庭内に広がるケースが増えている予防は、今までの感染予防策の徹底とワクチン接種の両輪で 次に共通する対策に関する提案として、具体的な事項が示されている。・初等中等段階ではやむを得ず学校に登校できない児童生徒などに対する学びの保障を確保することを主目的として、加えて高等学校・大学ではオンライン(オンデマンド)の促進により、理解をより高める側面を含めて、ICTなどを活用した授業の取組を進める・教職員(塾を含む)それぞれがCOVID-19の感染経路に基づいた適切な予防法、消毒法について習熟し、園児・児童・生徒・学生、保護者、自施設に出入りする関係者に対して正しく指導できるようにする・上記を目的とした、地域の感染管理専門家(感染管理認定看護師など)からの指導・協力を仰ぐ体制を構築する・教職員、園児・児童・生徒・学生は、全員が出勤・登園・登校前の体調の確認、体調不良時のすみやかな欠席連絡および自宅待機時の行動管理をより徹底する。中学生以下の有症時には受診を原則とする・各施設の健康管理責任者は、当該施設の教職員、園児・児童・生徒・学生がCOVID-19の検査対象になった場合の情報を迅速に把握する。対象者の検査結果判明まで、範囲を大きく、たとえばクラス全体として、園児・児童・生徒・学生・教職員などに対して感染予防に関する注意喚起を厳重に行う・対象者が陽性となった場合の施設のスクリーニング検査の実施と施設内の対策は保健所からの指示に従う。流行状況などによって、保健所による迅速な指示が困難な場合には、クラス全体など幅広な自宅待機と健康観察、有症状時の医療機関への相談を基本に対応する。体調確認アプリ(例:N-CHAT)や抗原定性検査の活用は、施設における発生時の自主的な対応として有用である・教室、通学バス(移動時全般)、職員室などにおける良好な換気の徹底に努める。施設内では、効率的な換気を行うための二酸化炭素センサーの活用も推奨される・塾では児童・生徒・学生・講師などの体調管理を徹底した上で、密にならない工夫とともに換気の徹底(とくに入れ替わり時。場合によって二酸化炭素センサーの活用)、リモート授業の活用も検討することが推奨される・人の密集が過度になるリスクが高いイベント(文化祭、学園祭、体育祭など)においては延期や中止を検討し、感染リスクの低い、あるいはリスクを低減できると考えられたイベントについては事前の対策を十分に行う・教職員は、健康上などの明確な理由がなければ、新型コロナワクチン接種を積極的に受ける・部活動については日々の体調の把握や行動管理への注意を基本とした活動を行う一方で、やむを得ず県境をまたいだ遠征が必要な場合には、2週間前から引率者、児童・生徒における上記注意事項の遵守を強化し、出発前3日以内(できるだけ出発当日)を目途に、抗原定量検査あるいはPCR検査を受ける・大会遠征時には教職員を含む引率者や児童・生徒ともに、競技外での他校との交流は部活動の範囲に留める・これまで以上に保健所との連携(報告や相談)を強化する。保健所が多忙を極める場合、とくに発生時の対応については、当センター(感染研)は保健所と連携を取りながら施設へ助言を行うことも可能である

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新たな変異有するコロナ・デルタ株確認、国内1例目/東京医科歯科大

 東京医科歯科大学は8月30日付のプレスリリースで、同大の附属病院を受診した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者から検出されたデルタ株から、N501S変異を有する新たなデルタ株の市中感染事例を確認したと発表した。N501S変異を有するデルタ株は、世界では8例報告されており、国内ではこれが初めての確認例となる。 東京医科歯科大学の武内 寛明准教授ら研究チームは、同大附属病院に入院もしくは通院歴のあるCOVID-19患者由来検体のSARS-CoV-2全ゲノム解析を進める中で、8月中旬のCOVID-19患者から検出されたデルタ株から、アルファ株主要変異(N501Y)の類似変異であるN501S変異を有する新たなデルタ株の市中感染事例を確認した。患者に海外渡航歴はなく、国内において新たな変異を獲得した可能性が極めて高いという。 新型コロナウイルスの変異株を巡っては、関東圏を中心とする感染伝播の増大に関わったとされるアルファ株とデルタ株の共存がしばらく続いていたが、直近のスクリーニング検査における陽性率は、各地でデルタ株が9割を超える状況と推計されており、現在は一部の地域を除きアルファ株からほぼ置き換わったと考えられている。 N501S変異を有するデルタ株については、世界で8例報告されており、国内ではこれが1例目となるが、東京医科歯科大は「現時点においては、変異発生要因の判断が難しく、さらなる性状解析と疫学調査が必要」と説明している。

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科学的情報早期共有の重要性(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染のすべてが解明されているわけではない。予防ワクチンの副反応もすべてが解明されているわけではない。生命現象は複雑精妙な調節系であり、基本原理は未知である。実際に疾病にかかってみる、あるいは実際にワクチンを受けてみる、ことにより反応を実証的に積み重ねていかないと正解にはたどり着けない。法律、規制のYes/Noはヒトが決めることができる。しかし、規制当局が承認した薬剤、ワクチンがすべての症例に有効、安全であるわけではない。アストラゼネカ(AZ)ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)では血栓症の発症がファイザー、モデルナワクチンよりも多いように報道されている。AZワクチンによる血栓症についても実態を正確に把握する必要がある。NEJMは、世界で最も信頼されている医学雑誌である。本研究は約1,600万人の50歳以上の症例と約800万人の50歳以下の、最低1回AZワクチンを受けた症例からワクチンによる血栓症を疑われた294例の専門家による解析結果である。実際に、ワクチンによる免疫血栓症(vaccine induced immuno-thrombosis:VIIT)を疑われた症例のうち、170例は確実にVIIT、50例はVIIT疑いとされた。VIIT発症者の中間年齢は48歳、ワクチン接種から発症までの期間の中間値は14日であった。リスクの高い症例を事前予測する性別などのリスク因子を明確にすることはできなかった。VIITによる死亡率は22%であった。死亡率の高い症例は脳静脈洞血栓症、経過中の血小板減少、経過中のフィブリノゲン減少などであった。本研究は英国における経験である。健常者のワクチン接種により致死的合併症が起こることを容認できないヒトもいるかもしれない。VIITの死亡率22%を容認できないヒトもいるかもしれない。世の中にはいろいろな考えるのヒトがいるものだ。しかし、2千万人以上のワクチン接種の経験を速やかに論文発表してpublic domainにする英国には強さを感じる。結果を数値にして公表してしまえば、メディアでも国会でも数値を客観的事実として共有するのみである。 大東亜戦争初戦にてマレー沖にて最新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスが日本海軍航空隊により沈没されたことに首相チャーチルは戦慄したという。しかし、時の政府にとって不利な結果を即座に議会に報告している。一見、不利に思えることでも事実を公表することによって道がひらかれる。AZワクチンのVIIT発症リスクは事実であるが、英国におけるラフな発症率は200程度/2,000万人以上でリスクは少ない。新型コロナ感染拡大を抑えるためには早急なワクチン接種が必要で、VIITリスクはワクチンのメリットに比較すれば著しく少ない。事実は数値にて社会で共有することが大事である。

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第75回 感染経験のデルタ株防御効果はワクチンよりずっと高い

新型コロナウイルス感染(COVID-19)を経た人のデルタ変異株の感染しやすさは先立つ感染なしのPfizerワクチンBNT162b2接種2回完了者に比べてずっと低く、発症も入院もより免れていることがイスラエルの試験で示されました1)。試験ではイスラエル人およそ250万人のデータベースが解析され、今夏(6月1日~8月14日)のデルタ変異株感染率は先立つ新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染なしで今年初め(1~2月)にワクチン接種2回目を済ませた人の方が感染を経験したワクチン非接種の人に比べて6~13倍高いという結果が得られました。また、感染経験者は先立つ感染なしのワクチン接種完了者に比べてCOVID-19発症率はわずか27分の1、COVID-19関連入院率は8分の1で済んでいました。試験の結果は人間の生来の免疫系の優秀さを物語るものですが、Pfizerワクチンや他のCOVID-19ワクチンの重症化や死亡を防ぐ効果は健在です。ワクチンを接種していない人がワクチン接種の代わりにあえて感染するなどもってのほかであり、そんなことをすれば死人がでるでしょう2)。被験者のCOVID-19関連死亡は一例もなく、今回の試験でも幸いにしてワクチンは重病を防ぐ効果を依然として維持していることが伺えました。感染経験とワクチン接種が組み合わさればデルタ変異株をいっそう寄せ付けなくなることも示されました。感染経験があってワクチンを1回接種した人の再感染率は感染経験のみでワクチン非接種の人に比べておよそ半分で済んでいたのです。その結果は、感染経験がある人へのPfizerやModernaのmRNAワクチン2回接種の必要性の検討を前進させるでしょう。SARS-CoV-2感染経験があればワクチン接種推奨の対象外ということにはいまのところなってはおらず、米国は感染を経験した人も決まりの回数のワクチンを接種することを推奨しています。日本でも感染経験がある人に決まりの回数が接種されています3)。しかし今回の試験結果によると感染を経験した人へのmRNAワクチンの接種はひとまずは1回で十分かもしれません。Scienceのニュースによると、ドイツ、フランス、イタリア、イスラエルなどでは感染を経験した人へのワクチン接種はひとまず1回きりとなっています2)。感染経験者がワクチンを1回接種すれば現在出回るどのワクチンもそれだけでは到達し得ない防御レベルを身につけうるとScripps Researchの著名研究者Eric Topol氏は述べています2)。参考1)Comparing SARS-CoV-2 natural immunity to vaccine-induced immunity: reinfections versus breakthrough infections. medRxiv. August 25, 2021.2)Having SARS-CoV-2 once confers much greater immunity than a vaccine-but no infection parties, please / Science3)厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」

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一部の抗がん剤の投与患者、新型コロナ感染率が低い/JAMA Oncol

 アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を減少させる可能性のある抗がん剤(mTOR/PI3K阻害薬や代謝拮抗薬など)を投与している患者では、他の抗がん剤の投与患者と比べて有意にSARS-CoV-2感染率が低かったことが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMichael B. Foote氏らのコホート研究で示された。JAMA Oncology誌オンライン版2021年8月19日号に掲載。 本研究ではまず、Library of Integrated Network-Based Cellular Signaturesのデータベースを使用し、細胞株全体でACE2遺伝子の発現低下に関連する抗がん剤を特定した。次に、COVID-19パンデミック中にMemorial Sloan Kettering Cancer Centerでがん治療を受けていた1,701例の後ろ向きコホートについて、ACE2を減少させる抗がん剤での治療がSARS-CoV-2感染のオッズ比(OR)と関連があるかどうかを検討した。対象は、がんの積極的治療を受け、2020年3月10日~5月28日にSARS-CoV-2検査を受けた患者で、主要アウトカムはACE2を減少させる可能性のある抗がん剤による治療とSARS-CoV-2検査陽性との関連とした。 主な結果は以下のとおり。・抗がん剤治療を受けているがん患者1,701例(平均年齢±SD:63.1±13.1歳、女性:949例、男性:752例)のSARS-CoV-2感染率を調べた。・抗がん剤治療後の遺伝子発現シグネチャーのin silico解析により、細胞株全体でのACE2減少に関連する91の化合物が特定された。・全コホートのうち215例(12.6%)が、mTOR/PI3K阻害薬(エベロリムス、テムシロリムス、alpelisib)、代謝拮抗薬(デシタビン、ゲムシタビン)、有糸分裂阻害薬(カバジタキセル)、その他のキナーゼ阻害薬(ダサチニブ、クリゾチニブ)の8つの薬剤で治療されていた。・ACE2を減少させる抗がん剤を投与した患者の多変量解析(交絡因子を調整)では、215例中15例(7.0%)がSARS-CoV-2検査陽性、他の抗がん剤を投与した患者では1,486例中191例(12.9%)が陽性だった(OR:0.53、95%CI:0.29~0.88)。・この関連は、がんの種類やステロイド使用を含んだ多変量解析や、複数の特徴に基づくペア患者を分析した傾向スコアマッチング多変量回帰感度分析でも確認された。・ゲムシタビン投与はSARS-CoV-2感染の減少と関連していた(OR:0.42、95%CI:0.17~0.87)。

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デルタ流行下、ワクチン完了者の感染・入院・死亡率は?/CDC

 米国・カリフォルニア州における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者についての分析で、ワクチン未接種者はワクチン接種完了者と比較して感染率が4.9倍高く、入院率は29.2倍高かった。同地域ではデルタ株への感染が広がり、感染者の約9割と最も優勢となっていた。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)8月24日号での報告。デルタ株感染が広がる中での死亡率はワクチン未接種者0.6%、接種完了者0.2% 本解析では、ワクチン接種完了者を2回投与のワクチン(Pfizer-BioNTech社、Moderna社)の場合2回目投与後14日以上、1回投与のワクチン(Janssen社)の場合初回投与後14日以上経過した人と定義。ワクチン接種未完了者は2回投与のワクチンで初回投与後14日以上経過あるいは2回目投与後14日未満、1回投与のワクチンで初回投与後14日未満の人と定義された。 COVID-19に関連する入院は、SARS-CoV-2感染が確認された日から14日以内に発生した入院と定義。COVID-19に関連する死亡は、SARS-CoV-2感染が確認された日から60日以内に発生する死亡、またはCOVID-19が死亡原因として報告されている死亡と定義された。 デルタ株の感染が広がる中、ワクチン接種完了者の感染・入院・死亡率などを解析した主な結果は以下の通り。・2021年5月1日から7月25日までの間の、16歳以上の住民における4万3,127件のSARS-CoV-2感染者のうち、1万895人(25.3%)がワクチン接種完了者、1,431人(3.3%)がワクチン接種未完了者、3万801人(71.4%)はワクチン未接種者だった。・7月25日時点でのワクチン接種完了者のうち、55.2%がPfizer-BioNTech社、28.0%がModerna社、16.8%がJanssen社のワクチンを接種していた。・入院、ICU入室、人工呼吸器を使用した患者の割合は、未接種者(7.6%、1.5%、0.5%)および未完了者(6.2%、1.0%、0.3%)と比較して完了者(3.2%、0.5%、0.2%)で低かった(p<0.001)。・入院およびICU入室患者における年齢中央値は、未接種者(49歳[35.0~62.0]、56歳[41.0~66.0])と比較して、未完了者(59歳[46.0~72.0]、65歳[57.0~80.0])および完了者(64歳[53.0~76.0]、64歳[54.0~76.0])で高かった(p<0.001)。・デルタ株の感染が広がる中で死亡率は、未接種者(0.6%、176人)および未完了者(0.5%、7人)と比較して、完了者(0.2%、24人)で低かった(p<0.001)・死亡例について、完了者24人のうち6人が、HIV感染、がん、肝移植などの免疫不全状態にあった。死亡例の年齢中央値は未接種者(63歳[51.5~79.5])と比較して、未完了者(74歳[58.0~80.0])および完了者(78歳[63.5~87.5])で高かった(p=0.01)。・本解析では、期間中7日ごとに年齢調整感染率と入院率を算出した。5月1日時点で、ワクチン未接種者の年齢調整感染率(人口10万人当たり35.2)は完了者(4.2)の8.4倍、年齢調整入院率(4.6)は完了者(0.46)の10.0倍であった。・7月25日時点で、ワクチン未接種者の年齢調整感染率(315.1)は完了者(63.8)の4.9倍、年齢調整入院率(29.4)は完了者(1.0)の29.2倍であった。・5月1日から7月25日までの間のデルタ株感染者の割合は、完了者で8.6%から91.2%へ、未完了者で0%から88.1%へ、未接種者では8.2%から87.1%へ増加した。・5月時点では、完了者と未完了者と比較して未接種者でCt値中央値が低い傾向がみられた。しかし7月には、ワクチン接種状況による差異は認められなかった。

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子供たちはどこで感染しているのか/厚労省アドバイザリーボード

 全国的に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のデルタ株による感染者数が増加している。デルタ株の特徴は、広範かつ強力な感染力であり、陽性者も従来の高齢者や基礎疾患のある者から若年・中年層へと変化している。こうした社会環境の中で、新学期を控え、子供たちをこのまま就学をさせてよいかどうか、社会が揺れている。 8月25日に開催された厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(第49回)の資料で、「3~18歳の新型コロナウイルスの感染場所等」が示された。自宅と学校とではどちらで感染数が多いか 調査はHER-SYSデータを用いて、年齢階級別(3~5歳、6~12歳、13~15歳、16~18歳)の感染場所について、それぞれの割合を算出した。なお、感染場所の入力率が非常に少ないという点に留意が必要(期間は2021年4月1日~2021年7月22日)。また、COVID-19陽性者のうち、17.8%が感染場所抽出可能であり、そのデータを利用した。 調査の結果、下記の事項が判明した。・3~15歳は自宅での感染が多かった。・児童・生徒については、年齢が上がるほど学校などでの感染が多くなっていた。・4月~7月にかけて直近になるほど、児童・生徒の学校などでの感染の割合は低くなっており、自宅での感染の割合が高くなっていた。・幼児(3~5歳)の感染場所は、自宅が最も多く、続いて福祉施設(児童)・学校などでの感染が多かった。 年齢階級別による感染の多い場所は下記の通り(上位2つ)。・3~5歳:自宅(59.8%)、福祉施設[児童](19.8%)・6~12歳:自宅(76.6%)、学校など(14.6%)・13~15歳:自宅(60%)、学校など(33%)・16~18歳:学校など(45.7%)、自宅(39.4%) 以上より、3~15歳は自宅での感染が多かったが、児童・生徒は年齢が上がるほど学校などでの感染が多かった。

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第68回 モデルナワクチン異物混入でロット回収、該当会場を公表/厚労省

<先週の動き>1.モデルナワクチン異物混入でロット回収、該当会場を公表/厚労省2.ロナプリーブ外来投与は24時間の電話対応が条件に/厚労省3.COVID-19中等症I~II以上、診療報酬引き上げ/中医協4.医学部定員、歯学部振り替え枠を廃止、診療科指定枠を検討へ5.来年度の厚労省概算要求、過去最大の33兆9,450億円に6.都内の全医療機関にコロナ病床確保を要請/厚労省1.モデルナワクチン異物混入でロット回収、該当会場を公表/厚労省厚労省は、異物混入が報告され使用を見合わせたモデルナ製ワクチンが使われた大規模接種会場55ヵ所を公表した。異物混入が確認されたロットと同じスペイン国内の生産ラインで製造された製品の回収を進めるため、ワクチン接種が一時中止や延期となった。厚労省は対象ワクチンを接種しても「健康に影響はない」と説明しているが、その後、同時期に製造された回収対象ロット以外のモデルナ製ワクチンを接種後に死亡した事例が2件報告されたこともあり、田村厚労大臣は、モデルナや武田薬品工業に対して、早急な原因究明と再発防止を求める考えを示した。武田薬品工業は28日、この問題についての検査結果を近日中に判明させると発表した。(参考)新型コロナワクチンの一部ロットの使用見合わせについて(厚労省)モデルナ異物混入“早急な原因究明と再発防止を”厚生労働相(NHK)ワクチン接種後に2人死亡 異物混入と同時期製造 因果関係は不明(毎日新聞)COVID-19ワクチンモデルナ筋注の使用見合わせ対象ロットの接種者に関する厚生労働省の発表内容について(武田薬品工業)2.ロナプリーブ外来投与は24時間の電話対応が条件に/厚労省厚生労働省は、25日に事務連絡を改正し、軽症・中等症COVID-19に使用される「カシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ点滴静注セット)」について、外来診療や宿泊療養施設での使用を認めると各地方自治体に向けて通知した。外来投与に関しては、投与後に患者の病態が悪化した際、入院治療などの緊急対応を行える医療機関において投与とし、投与から24時間以内は患者の病態悪化の有無を電話などで確認できる体制が確保されていること(夜間・休日含む)などを条件にした。また、保健所の介入によらず当該施設で必要な対応を完結できるよう、事前に役割分担および責任の所在を明確化することも明記されている。なお、本剤が使用される場合には、感染症法上の入院勧告・措置に基づく入院として公費負担となるが、例外として、患者が自宅療養中の外来、または宿泊療養・入院待機施設で往診・訪問診療により本剤を投与する場合、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金による新型コロナウイルス感染症対策事業の補助対象とすることが可能となる。(参考)厚労省 抗体カクテル療法の外来使用 新型コロナの「入院治療を行う医療機関」で(ミクスonline)抗体カクテル薬の外来使用、24時間の確認体制条件に(日経新聞)3.COVID-19中等症I~II以上、診療報酬引き上げ/中医協厚労省は26日、中央社会保険医療協議会を持ち回りで開催し、新型コロナウイルス感染者で酸素投与が必要とされる「中等症II」以上の患者についての診療報酬を、1日5万7,500円に引き上げる方針を示した。これまでも救急医療管理加算として通常点数の5倍を算定できるようにしていたが、今回6倍まで引き上げられた。また、酸素吸入までは必要ないが入院が必要な中等症Iに対応する加算も、3倍から4倍に引き上げ、1日3万8,000円となる。この特例措置は27日の閣議で決定された。若年層のコロナ患者の急増に備え、病床受け入れを促進するのが狙いだろう。(参考)コロナ中等症患者の診療負担増踏まえ診療報酬特例を拡大、救急医療管理加算の4倍・6倍算定認める―中医協総会(Gem Med)中等症対応の加算引き上げ 診療報酬、若年コロナ増で―厚労省(時事ドットコム)新型コロナウイルス感染症に伴う医療保険制度の対応について(中医協)4.医学部定員、歯学部振り替え枠を廃止、診療科指定枠を検討へ厚労省で医療従事者の需給に関する検討会の「医師需給分科会」が27日に開催され、2023年度の医学部定員について議論された。2023年度の医学部定員については、基本的に2022年度と同様の方法で行うが、役割はある程度果たされたとして、44名の歯学部振り替え枠を廃止し、2036年に向けた医師不足の解消のため、総合診療科、救急救命科、内科など、社会的なニーズに対応する枠(診療科指定の地域枠)として活用することとなった。また、分科会として「第5次中間とりまとめ(案)」が提出された。これまで段階的に医学部定員を増員し、全国レベルで毎年3,500~4,000人ずつ増加しているが、2029年頃には需給が均衡する見込み。その後も医師数は増加を続ける一方で、人口減少に伴い将来的には医師需要が減少局面になるため、医師の増加ペースについては見直しが必要だが、医師の地域偏在・診療科偏在への対応策を講じることは引き続き重要とされる。(参考)「歯学部振り替え枠」廃止、診療科指定枠に活用へ 厚労省・分科会が了承(CBnewsマネジメント)令和5年度医学部定員と歯学部振替枠の見直しについて(医師需給分科会)医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 第5次中間とりまとめ(案)5.来年度の厚労省概算要求、過去最大の33兆9,450億円に厚労省は26日、2022年度予算の概算要求を発表した。前年度の当初予算と比べて8,070億円(2.4%)増加と、過去最大の33兆9,450億円とした。医療や介護などの社会保障費は6,738億円増加で、高齢化に伴う社会保障費の自然増を見込んでいる。コロナワクチンの需要は来年度も続くことを前提に、自治体による接種体制の整備や国産ワクチンの開発支援を重点要求とした。このほか、地域医療構想の推進のために857億円、医師の偏在対策に21億円、医療従事者の働き方改革に75億円の要求も含め、31日に財務省に提出される。(参考)厚労省 概算要求 過去最大34兆円 感染症対策など 来年度予算案(NHK)厚労省概算要求33.9兆円 コロナ対策で増大も(日経新聞)過去最大33.9兆円要求へ、厚労省 22年度予算概算要求(CBnewsマネジメント)6.都内の全医療機関にコロナ病床確保を要請/厚労省厚労省は東京都とともに、今年2月に成立した改正感染症法に基づいて、都内すべての医療機関に新型コロナ患者の受け入れ病床確保や、医師・看護師の人材派遣を要請する方針を23日に決めた。東京都では受け入れ病床が逼迫しているため、軽症患者用の臨時の「酸素ステーション」や宿泊療養施設を開設しており、人手が必要になっている。入院患者を受け入れていない診療所についても、医師や看護師の派遣を求める。また、正当な理由なく協力に応じない病院については「勧告」を行い、さらに従わなかった場合には、医療機関名を公表することになる。すでに大阪府や奈良県、静岡県、茨城県などでは同様の要請が出されているが、東京都では初めてのこと。(参考)厚労省と都、都内の全医療機関に病床確保要請へ 政府初(朝日新聞)厚労省と東京都 新型コロナ拡大で都内全医療機関に病床確保と人材派遣を要請 (ミクスonline)初の感染症法に基づく協力要請へ 国と都 医療機関などに対し(NHK)

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コロナ禍のコミュニケーション【コロナ時代の認知症診療】第6回

認知症の最大の危険因子?「中年期からの難聴」2017年に「中年期からの難聴」が認知症の最大の危険因子だと報告されて以来、難聴への注目が高まった。これは予防のみならず、認知症になっても心身機能を維持する上で不可欠だと、筆者は経験的に思う。なぜ危険因子かについては、難聴からコミュニケーション不足、そこから孤立・うつ、そして認知症という考え方が主流のようだ。一方で我が国の認知症者の約80%は80歳以降だが、この世代において、コミュニケーション不足は脳の刺激・トレーニング不足になると考える。つまり受動的には聞き取りが困難になり、能動的には自らの考えをまとめ文章に練り上げて発声する機会が減る。聞き取りでは、一般的な難聴も多いが、実は音は聞こえているのに瞬時に意味が頭に沁みないケースも少なくない。難聴を専門とする耳鼻科医はこれを「われわれが未知の外国語を聞くようなもの」と表現した。加えて彼は「もう一つ、高齢者にはご都合性難聴もあるからね」と笑って言った。喋るという能動面では、高齢者の声は枯れ、小さくなり、不明瞭になりがちだ。こうした加齢性音声障害の原因は喉頭の筋力低下だが、これは同時に誤嚥の原因にもなる。そこに肺機能の低下も重なれば嚥下性肺炎のリスクも高まる。だとすると難聴が認知症発症の危険因子であったり、認知症をさらに悪化させたりしても不思議ではないと思う。加齢と声の出にくさの関係さて加齢と声の関係は以前から何となく知っていたが、恥ずかしながら声はどうしてできるかの生理学的メカニズムを知らなかった。そこで都内の大型書店に行って調べてみた。すぐにわかったのは「パタカラ体操」に代表される嚥下訓練の書がまさに溢れていることである。いい声になる、カラオケで上手に歌うための指導書も多い。それらはほぼすべて喉から上、つまり喉頭、咽頭から口腔を基盤に記述されている。ところが声が生まれるメカニズムという基本は医学書でも多少とも詳しいものが容易にみつからなかった。ようやくわかったことは以下のようにまとめられる1)。関わる器官はいわゆる口、喉頭、気管、肺である。まず音の発生源は肺だと読んで「ほーっ」と思った。そこで生まれた音エネルギーが喉頭、そして口腔などの器官に伝わり、加工をされて音になってでてくるのだそうだ。少し付け加えると、声は肺からの呼気流をエネルギー源とする。肺では、呼気筋群と吸気筋群の調節が行われ、空気の流れが作られる。音源を作り出す肺の呼吸運動では横隔膜そして肋間筋そして外腹斜筋等が大きな関わりをしている。喉頭では喉頭筋群が関わる。そして声帯が、音の振幅と周波数および振動などを調節している。これまで加齢性音声障害の対策として、大きな声で楽しく会話したり歌ったりすることが推奨されてきた。これが出来ないのが当世だが、病院や施設なら毎日1回ラジオ体操的に戸外や屋上で、十分な距離を取って誰もが知る歌などを大声で合唱してみるのもいいかもしれない。個人ならもっと容易にできるだろう。いずれにしても肺に力を入れると意識して、「ウン!」と動かすのが大事だなと思っている。制限のある中でどうコミュニケーションをとっていくかマスクをつけてアクリル板越しの会話が当たり前になった。だから私自身が聞き取れない、わかってもらえないやりとりをしょっちゅう経験している。そこで自助努力の他に優れもの機器の利用もある。最近のハイテク商品では、外付け補聴器もある。高価なこれも使っている筆者としては、実は量販店にあるような拡声器も結構役立つと思っている。慎重に音量を調整してアクリル板の向こうから話してもらう。また拡声器を反対に向けてこちらが返事をすることもある。なお拡声器の値段はピンキリながら、経験的には1万円位の品で実用に足りる。ところでIT音痴は現代版のコミュニケーション不足だと述べても、コロナ禍では、過言でなくなっている。昨年来、容易に家族間の面会が出来なくなった病院や施設では、スマホを介した動画のやり取りがとくに家族に喜ばれるようになった。このTV電話に代表されるようにITを介したやりとりでは、双方向性が要である。これを備えた機器がこれからの主流だろう。しかしIT機器と聞いただけで逃げ出す高齢者は多い。また施設の若い職員であっても、IT機器を十分使いこなせる人はそう多くない。またなにより操作が煩雑で、高齢利用者ごとに機器を立ち上げ、傍らで付き添うならその負担は大きい。そこでIT が使えない人に対して普通は若い送り手から高齢利用者に一方向性で画像や音声などを送る装置はすでにあった。最近では、高齢者がオプションとなる機器を用いてTV画面上で双方向性のやりとりを実現できる装置も生まれている。こうした新情報も集めつつ、飛沫感染をさけた双方向性を実現できる環境を整えることがコロナ時代には1つのポイントになる。参考文献・参考情報1)本田清志.音声学・言語学 第2版.医学書院.2020.第2章音声学.pp6-19.

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