サイト内検索|page:30

検索結果 合計:2863件 表示位置:581 - 600

581.

第160回 アミノ酸服用がコロナ疲労に有効

たかがアミノ酸、されどアミノ酸。6種類のアミノ酸とその誘導体を成分とする経口薬の新型コロナウイルス感染症罹患後症状(以下、コロナ後遺症)改善効果が被験者41例の無作為化試験で示唆されました1)。コロナ後遺症は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染からずいぶん経つにもかかわらず疲労などの不調が続くことを特徴とし、いくつか示唆されている原因にはミトコンドリア機能低下や細胞のエネルギー生成障害が含まれます。SARS-CoV-2は自身の複製のためにミトコンドリアを乗っ取り、そのせいで代謝がより不効率な解糖系に切り替わってしまって慢性の疲労が現れると考えられています。その仮説に一致し、アミノ酸などを原料とするエネルギー生成障害がコロナ後遺症によく似た病態である慢性疲労症候群(CFS)の患者に生じることが知られています。今回紹介する試験で検討されたのは米国のバイオテクノロジー企業であるAxcella Therapeutics社がAXA1125という名称で開発している経口薬で、アミノ酸5つ(ロイシン、イソロイシン、バリン、アルギニン、グルタミン)とアミノ酸誘導体1つ(N-アセチルシステイン)を成分とします。AXA1125はより燃費のよいエネルギー生成反応である酸化的リン酸化の原料を生み出すβ酸化を促し、ミトコンドリア機能を改善します。試験には疲労を主徴とするコロナ後遺症患者41例が参加し、AXA1125を1日2回4週間服用する群とプラセボ群におよそ均等に振り分けられました。試験の一番の目的であったミトコンドリア機能指標の変化はAXA1125とプラセボで差がありませんでしたが、CFQ-11検査に基づく疲労の程度がプラセボに比べてAXA1125投与群のほうがより改善しました。CFQ-11検査は11の質問によって疲労の程度を見積もります。11の質問のうち7つは肉体的疲労、残り4つは精神的疲労を調べるものです。それぞれの質問への回答は0~3の4択で、患者は無症状なら0、最も重症なら3を選びます。すなわちCFQ-11合計点数の幅は0~33点で、点数が大きいほど深刻であり、24点以上は中等症~重症と判定されます。AXA1125投与群のCFQ-11合計点数の平均は投与開始前は中等症~重症域の26.2点でしたが、4週間の投与後にはその水準を脱して21.0点に落ち着きました。一方、プラセボ投与群ではほとんど変化がなく中等症~重症の水準のままでした。AXA1125投与のかいあって肉体的疲労が改善した患者ではミトコンドリア機能や6分間歩行距離(6MWD)の改善も認められました。プラセボ群ではそのような関連はありませんでした。Axcella社はより大人数を募る第IIb/III相試験の準備を進めており、本年2月にはその試験の開始が米国FDAに許可されています2)。となればすぐに始めたいところですが、いかんせん懐具合が寂しく、さらなる開発には救いの手や提携が必要との苦しい胸の内を同社が最近明かしています3)。資金難を乗り越えてAXA1125の開発が前進することは今回の試験を担った英国・オックスフォード大学のチームも望んでおり、コロナ後遺症に広く有効なことがさらなる試験で判明することを期待しています4)。 参考1)Finnigan LEM, et al. eClinicalMedicine. April 14, 2023. [Epub ahead of print] 2)Axcella Announces FDA IND Clearance Supporting Regulatory Path to Registration of AXA1125 for Long COVID Fatigue / BusinessWire3)Axcella seeks 'light speed' swing at long Covid, but needs cash / Endpoints4)Trial investigating potential treatment for fatigue relief in people with long COVID reports results / University of Oxford

582.

第144回 大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省

<先週の動き>1.大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省2.国内初の経口中絶薬メフィーゴパック承認へ/厚労省3.健保財政が急速に悪化、今年度は5,600億円超の大幅赤字/健保連4.内閣法改正で危機管理庁を設置、今年の秋発足/国会5.75歳以上も保険料引き上げの健康保険法改正案が参議院で審議入り/国会6.マイナンバーカード、受給者証の機能も追加へ/河野デジタル相1.大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省2024年4月から労働基準法に基づく時間外労働時間の上限が適応されるのを前に、大学病院の勤務医の働き方に関する調査結果が公表された。この調査は、文部科学省の委託事業として、全国の81の国公私立の大学病院や医師を対象にアンケート形式で2022(令和4)年7月~8月に実施された。その結果、大学病院で働く医師の4万9,791人のうちおよそ3割の1万5,070人が、来年度、時間外労働の上限となる年間960時間を超える見込み。また、研究時間では、助教の約65%が週5時間以下で、まったく行っていない者も15%に上るなど、深刻な状況であることが判明している。ヒアリングでは、臨床業務のタスクシフトが働き方改革につながるとして、事務や看護師、コメディカルスタッフへのタスクシフトを行うことが必要というコメントも寄せられている。(参考)大学病院、研究13%どまり 週当たり平均労働時間 文科省調査(時事通信)大学病院の医師3割、残業960時間超の見込み 研究の時間不足(朝日新聞)大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書(全国医学部長病院長会議)2.国内初の経口中絶薬メフィーゴパック承認へ/厚労省イギリスの製薬企業ラインファーマが薬事申請していた経口中絶薬「メフィーゴパック」(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)について、4月21日に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会において、製造販売の承認を了承した。国内初の経口中絶薬については、先月の審議会の開催前のパブリックコメントに、通常の100倍もの意見が集まったため、3月24日の審議が延期された経緯がある。日本国内で中絶手術で行われている掻爬術などと比べて、母体への負担が少なく母体保護の観点からも早期の承認が求められてきた。海外ではすでに70ヵ国以上で承認されており、世界保健機関(WHO)は、安全で効果的だとして「必須医薬品」に指定している。(参考)「経口中絶薬」 厚労省の分科会が了承 国内初の承認へ(NHK)国内初、経口妊娠中絶薬を承認へ 薬食審・分科会が了承(CB news)飲む中絶薬製造販売の承認を了承 国内初の経口中絶薬 厚労省分科会(毎日新聞)3.健保財政が急速に悪化、今年度は5,600億円超の大幅赤字/健保連健康保険組合連合会(健保連)は4月20日に、大企業の従業員と家族が加入する健保組合の2023年度の予算の集計結果を発表した。約1,400組合の健康保険組合の経常収支は5,623億円の赤字となり、過去最大で前年度の2倍が見込まれている。赤字が予想されている健保組合は2022年度から130組合増えて1,093組合と、全体の8割近くになる。赤字の原因は、医療費の伸びに加え、高齢者医療への拠出金が増大しており、現役世代にとって負担が増している。政府は、少子化対策の財源を社会保険料からの拠出を検討しており、今後、現役世代にとって負担増となる可能性がある。また、社会保障制度の持続可能性のため、政府は全世代型社会保障構築会議などを通して、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を急いでいる。(参考)大企業健保、赤字最大に 今年度見通し 5600億円超へ倍増(日経新聞)健保組合、8割が赤字見通し 実質保険料は10%超えに 23年度(朝日新聞)健保組合 今年度収支 5600億円余の赤字の見通し 前年度の2倍に(NHK)健保組合、過去最大の赤字5,600億円超に 23年度見込み、約8割が赤字(CB news)健康保険組合 予算編成状況-早期集計結果(概要)について-(健保連)4.内閣法改正で危機管理庁を設置、今年の秋発足/国会新たな感染症危機に備える目的で、感染症対応の司令塔として新たに「内閣感染症危機管理統括庁」を内閣官房に新設する改正内閣法と新型コロナウイルス対策特別措置法が4月21日に参議院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。感染症危機管理統括庁は、内閣府に設置され、トップの内閣感染症危機管理監には官房副長官が就く。早ければ9月1日にも発足する。新たな感染症が発生した際に、省庁横断して初動対応を担う。平時は専従職員38人、救急時は101人体制で対応する。(参考)感染症で首相権限強化=危機管理庁設置、改正法成立(時事通信)危機管理庁、今秋めどに 改正法成立 感染症対策の司令塔(日経新聞)感染症対応の司令塔、内閣官房に秋ごろ設置へ 改正インフル特措法・内閣法が成立(CB news)5.75歳以上も保険料引き上げの健康保険法改正案が参議院で審議入り/国会75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」の保険料引き上げと、「出産育児一時金」の増額などを盛り込んだ健康保険法などの改正案が4月19日から参議院で審議が開始された。岸田総理は「すべての世代が能力に応じて社会保障制度を支え合う仕組みの構築は重要だ」と述べ、早期成立に理解を求めた。一方、野党からは高齢者の保険料から出産費用を捻出する案に対して批判する声が上がり、これに対して岸田総理は、高齢者も含めた全世代で支え合う仕組みに転換を図りたいと答弁した。(参考)医療保険料の75歳以上負担増、参院審議入り 首相出席(産経新聞)健康保険法などの改正案 参院で審議始まる(NHK)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案[概要](厚労省)6.マイナンバーカード、受給者証の機能も追加へ/河野デジタル相河野太郎デジタル相は記者会見で、マイナンバーカードと健康保険証との一体化を進めるに当たり、従来は紙で行われていた子供の医療費の医療費助成の「受給者証」を、マイナンバーカードを活用して機能を追加できるように取り組むことを発表した。また、マイナンバーカードを予防接種の接種券や妊婦健診の受診券として活用することも目指す。これらの取り組みを全国展開する前に、今年度中に希望する自治体を募り、試行する予定。(参考)「受給者証」もマイナカードに 医療分野の活用促進 河野デジタル相(時事通信)医療費助成にマイナカード 一部自治体で先行へ(産経新聞)河野大臣記者会見(デジタル庁)

583.

患者集団を対象とした医療からの脱却法は?(解説:後藤信哉氏)

 ランダム化比較試験は、患者集団の標準治療の確立に役立った。しかし、新型コロナウイルス感染症などの病名にて患者集団を規定しても、集団を構成している個別症例の病態、予後には不均一性がある。たとえば、新型コロナウイルス感染症の入院例においてヘパリン治療がECMOなどを避けるために有効であることはランダム化比較試験にて示されたが、標準治療が集団を構成する全例に対して有効・安全なわけではない。 本研究はヘパリン治療の不均一性を検証するために3つの方法を利用した。(1)は通常のサブグループ解析である。新薬開発の臨床試験では事前に設定した年齢、性別、腎機能などにより分けたサブグループにて不均一性がないことを示している。本研究ではサブグループ解析にて結果の不均一性に注目した。(2)はrisk based model法である。集団からリスクに寄与する因子を抽出して、その因子により個別症例のリスクを事前に予測してグループ分けした。(3)はEffect-Based Approachである。いわゆるrandom forest plotにて効果を予測してグループ分けする方法である。 集団の不均一性を定量化する(1)~(3)の方法とも、新型コロナウイルス感染症による入院例に対するヘパリンの効果の不均一性を示した。 ランダム化比較試験は患者集団に対する標準治療の確立には効果があった。今後は、集団の不均一性に注目して、未来の個別最適化医療を目指すことになる。

584.

事例022 SARS-CoV-2検査過剰による返戻【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、発熱患者にSARS-CoV-2抗原検出定性とSARS-CoV-2核酸検出を同時に行っていたところ、複数件が返戻となりました。支払機関からの返戻理由には、「検査前の確率が低いときには感度・特異度の高い検査方法での実施が望ましいとされております。状況に応じた適切な検査の実施をご検討ください。上記の場合であって、どうしても同一日に施行しなければならない必要性がある場合などでは、患者ごとにその医学的根拠を記載してください。記載のない場合や画一的・傾向的なコメントの場合は査定の対象となりますのでご注意ください」とありました。「新型コロナウィルス感染症病原体検査の指針」(第6版)には、「抗原定性検査は、発症から9日目以内の症例では確定診断に用いることができる」とあり、核酸検出、抗原定量、抗原定性の実施が推奨されています。核酸検出と抗原定性の同一検体同時測定は問題ないと考えていました。実際は抗原定性または核酸検出いずれかの実施のみでことが足りると判断されているようです。数件のレセプトのコメントには「抗原検出定性結果の確定のため核酸検出を行った」と記載されていましたが、同じコメントがついていて返戻となっていました。患者ごとに医学的な詳しい状況の記載が必要になるものと考えられますので、この点はご留意ください。医師にはこのことを伝え、検査オーダー時に検査重複のアラートが表示されるように改修して査定対策としました。

585.

重症化リスクの高いコロナ患者、ニルマトレルビルで入院・死亡減/BMJ

 重症化リスクの高いSARS-CoV-2感染者へのニルマトレルビル投与は非投与と比較して、ワクチン非接種者・接種者、ブースター接種者、再感染者において、30日時点の入院または死亡のリスクが低下していたことが明らかにされた。米国・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らが、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを活用し、電子カルテを用いた無作為化ターゲット模倣試験(emulation of a randomized target trial)で明らかにした。ニルマトレルビルの有効性の検証は、オミクロン変異株が優勢となる前、ワクチン非接種のSARS-CoV-2感染者とSARS-CoV-2感染歴のない人々を対象に行われたものであった。BMJ誌2023年4月11日号掲載の報告。非投与と比較、検査陽性から30日以内の入院/死亡の発生を評価 検討は、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを用いて、2022年1月3日~11月30日に、COVID-19重症化リスク因子を1つ以上有するSARS-CoV-2感染陽性者25万6,288例を対象に行われた。このうち3万1,524例は、SARS-CoV-2検査陽性から5日以内にニルマトレルビル投与を受け、22万4,764例は同投与を受けなかった。 検討では、SARS-CoV-2検査陽性から30日以内の入院または死亡の複合アウトカムが評価された。 SARS-CoV-2検査陽性から5日以内にニルマトレルビルを開始した場合の有効性を非投与と比較して推定。有効性は、30日時点の入院または死亡リスクの低下とし、ワクチン接種を受けていない人、1回または2回接種を受けた人、ブースター接種を受けた人、およびSARS-CoV-2初回感染者または再感染者それぞれにおいて推定した。 評価では、逆確率加重法を用いてグループ間の個人・健康特性を平均化した。また、相対リスクと絶対リスクの低下を、30日時点の累積発生率から算出した。有効性は、加重Kaplan-Meier推定量で推算した。オミクロン変異株感染者でもリスク低下 ワクチン非接種者(7万6,763例:投与群5,338例、非投与群7万1,425例)において、非投与と比較したニルマトレルビル投与による30日時点の入院または死亡の相対リスクは、0.60(95%信頼区間[CI]:0.50~0.71)、絶対リスク低下は1.83%(95%CI:1.29~2.49)であった。 ワクチン1回または2回接種者(8万4,620例:投与群7,989例、非投与群7万6,631例)ではそれぞれ0.65(95%CI:0.57~0.74)、1.27%(95%CI:0.90~1.61)、ブースター接種者(9万4,905例:1万8,197例、7万6,708例)では0.64(0.58~0.71)、1.05%(0.85~1.27)、SARS-CoV-2初回感染(22万8,081例:2万6,350例、20万1,731例)では0.61(0.57~0.65)、1.36%(1.19~1.53)、再感染者(2万8,207例:5,174例、2万3,033例)では0.74(0.63~0.87)、0.79%(0.36~1.18)であった。 ニルマトレルビルと入院または死亡のリスク低下との関連は、65歳以下および65歳超の人々で、男性および女性、黒人および白人の参加者で、また、COVID-19重症化リスク因子が1~2、3~4、5以上の人々、そしてオミクロン変異株BA.1またはBA.2およびBA.5の優勢期の感染者で認められた。

586.

第156回 コロナで収益を得た製薬企業が次々と買収発表、思わずうなる戦略とは

国際的な製薬大手企業による企業買収が再び活発化している。3月13日に米・ファイザー社ががんの抗体薬物複合体(ADC)技術を有するシージェン社を約430億ドル(約5兆7,000億円)で買収すると発表。さらに4月16日には米・メルク社もベンチャーで自己免疫疾患治療薬を手がけるプロメテウス社を約108億ドル(約1兆4,500億円)で買収すると発表した。両社が現在抱える事情はほぼ似通っている。まず、共に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)パンデミックで特需を経験した。ファイザー社はご存じのように新型コロナワクチン(商品名:コミナティほか)、経口新型コロナ治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)の売上が伸長した。2022年の売上高は、前年比23%増収の1,003億3,000万ドル(約13兆4,400億円)と、前年に引き続き製薬企業で世界1位となっただけでなく、製薬企業史上初の1,000億ドルプレーヤーとなった。この売上高の6割弱はコロナワクチンと治療薬で占められている。一方の米・メルク社も2022年度売上高が前年比22%増収の592億8,300万ドル。前年からの増収分の44%は、新型コロナ治療薬のモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)の売上伸長が占める。この両者のコロナ関連特需が今後急速にしぼんでいくことは確実である。実際、ファイザー社はすでに2023年通期で、コロナ関連売上高が約60%減少するとの予想を発表している。またメルク社のモルヌピラビルはニルマトレルビル/リトナビルに比べ、効果が劣ることが各種の研究で明らかにされつつあるため、治療選択肢としてのプライオリティは、今後、一層低下していくことは避けられない。さらに両社に共通するのがコロナ関連以外の主力品の特許権失効である。ファイザー社の場合、コロナ関連を除いた売上筆頭製品が抗凝固薬のアピキサバン(商品名:エリキュース)の約65億ドル(約8,700億円)。その特許権は2025~26年にかけて失効すると言われており、もう目前に迫っている。経口薬の場合、アメリカなどではジェネリック医薬品登場から半年程度で先発品市場の約7割がジェネリック医薬品に置き換わるのが一般的だ。ファイザー社にとって事態は深刻である。前述のシージェン社は現在ADC技術を利用したがん治療薬で年間20億ドル程度の売上があるため、これをファイザー社の巨大販路で売上を伸長させ、ファイザー社側としてはアピキサバンの特許権の失効に伴う急速な売上減の穴埋めにしようという腹積もりなのだろう。一方、メルク社の売上高の筆頭は、ご存じの免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の209億ドル(約2兆8,000億円)。実に現在のメルク社の総売上高の約3分の1を占める。そのペムブロリズマブのアメリカでの特許権失効見込みは2028年である。私が今回やや驚いたのはこのメルク社の買収決断である。まず、特許権の失効まではまだ5年はある。かつ、注射剤のペムブロリズマブは抗体医薬品であり、いわゆるバイオ医薬品のジェネリックは「バイオシミラー」と称されるが、経口の低分子薬に比べ、開発難易度も高い。確かにペムブロリズマブの特許権失効後は同薬のバイオシミラーが登場すると思われるが、現状はアメリカですらバイオシミラーの普及が進まず、先発品市場の20%程度しか市場を奪えていない。にもかかわらず、日本円にして1兆円を超える金額を使い、まだ市場投入製品がないプロメテウス社を買収するのは何ともすごい決断と言わざるを得ない。ただ、よくよく考えれば、この決断は一つひとつが頷けてしまう。まず、アメリカでは近年、バイオシミラーの浸透をより容易にする規制変更の動きがある。オール・オア・ナッシング的に急激な政策決定が進みやすいアメリカの特性を考えれば、今後、バイオシミラーが急速に浸透する可能性はある。また、もしペムブロリズマブの特許権失効時にバイオシミラーの市場侵食が現状の20%程度だったとしても、もともとの売上高が巨大過ぎるため、日本円換算で4,000億円ほどの売上喪失となり、メルク社はかなり打撃をこうむることになるのは確かである。その意味で、この段階から手を打つというのも方策としてはあり得る。とりわけ近年の新薬開発の所要期間、開発費、開発難易度が年々増していることを考えればなおさらだ。そしてプロメテウス社が現在開発中の新薬候補は、潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)に対する抗体医薬品。この領域は近年、市場拡大中である。この新薬候補の開発段階は現在第II相試験。今後順調に開発が進めば、3~5年後の2026~28年に上市となるはず。そうすると、ペムブロリズマブの特許権失効への備えとしては時期的にも間に合うだろう。さらにIBDのような自己免疫性疾患の抗体医薬品は、ほかの自己免疫性疾患への適応拡大が容易なことは、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)などの例を見れば明らか。つまりプロメテウス社は今後、全世界で数千億~1兆円規模の売上高を生み出す可能性を秘めているというわけだ。たしかに不確定要素はあるものの、現状からロジカルにさまざまな想定をすると1兆円の買収は十分割に合う可能性がある。すでに四半世紀近く製薬業界を眺めている自分も、一瞬、発表内容をぎょっとして受け止めたが、中身を考えるほど久々にうならされる買収発表だった。ただ、このニュースに接して、あえて残念と思うことがあるとするならば、それは日本の製薬企業の多くが、このような大胆かつ機動的な戦略が取れないことである。

587.

5月8日から何が変わる? コロナ5類化に向けた医療機関の対策まとめ

2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置付けられる。医療機関や医師は、どう対応すればいいのか。ケアネットでは「COVID-19 5類移行でどう変わる?」と題したCareNeTVライブを3月22日に配信した1)。講師の黒田 浩一氏(神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 副医長)が、制度の変更点、院内感染対策の工夫、早期診断・早期治療の重要性、発症早期の治療における薬剤の選択などについて解説した。臨床面における対応策を中心に、ポイントをまとめて紹介する(フル動画はこちらから[60分・CareNeTVプレミアムの登録要])。5月8日以降、医療体制における主な変更点1)医療提供体制【全体】入院措置を原則とした行政の関与を前提とする限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な通常の対応へ。ほかの疾病同様に、入院可否を医療期間が判断し、医療機関同士での調整を基本とする。COVID-19診療に対応する医療機関の維持・拡大を強力に促す。「地域包括ケア病棟」も含めた幅広い医療機関での受け入れを促進する。病床稼働状況を地域の医療機関で共有するためのIT(例:新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム:G-MIS)の活用を推進する。マスク着用は個人の判断に委ねられるが、医療機関・介護施設は「マスクの着用が効果的である場面」とされ、医療者は引き続きマスク着用が推奨される。事業者(病院・高齢者施設)が利用者にマスクの着用を求めることは許容される(新型コロナウイルス感染症対策本部方針より)。【個別事項】【外来】COVID-19(疑いを含む)を理由とした診療拒否は「正当な事由」に該当せず、応召義務違反となる(診療体制が整っていない場合は、他機関を紹介する必要がある)。【外来】現在約4.2万のCOVID-19対応医療機関を最大6.4万(インフルエンザ対応と同数)まで増やすことを目標とする。【入院】行政による入院措置・勧告がなくなる。【入院】全病院でのCOVID-19対応を目指しつつ、病院機能ごとの役割分担や、高齢者を中心とした地域包括ケア病棟での受け入れを推進する。2)診療報酬・病床確保料【外来】発熱外来標榜:250点→終了、COVID-19患者診療:950点→147点【在宅】緊急往診2,850点→950点など減額【入院】中等症~重症患者の入院:従前の半額、病床確保料:従前の半額など減額(2023年9月まで。10月以降の措置は今後検討される)3)患者に対する公費支援【外来医療費】2023年9月まで抗ウイルス薬は公費負担継続(10月以降の措置は今後検討される)【入院医療費】高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額検査費用の公費支援は終了相談窓口は継続、宿泊療養施設は終了医療機関が準備すべきこと1)院内感染対策の継続とレベル向上【基本】職員のワクチン接種(3回以上かつオミクロン対応2価ワクチン1回以上。医療従事者は2023年5~8月と9月以降に2価ワクチン接種が可能となる)施設内でのユニバーサルマスキング(症状にかかわらず全員がマスク着用)と適切な換気目の防護のルーティン化、手指衛生の徹底体調不良時にすぐに休める文化・制度の醸成スタッフの旅行・会食制限は不要。但し、職員の感染者・濃厚接触者増加のため病院機能を維持できなくなる可能性がある場合は期間を決めて検討体液・排泄物を浴びる可能性が低い場合(問診/診察/検温、環境整備、患者搬送)はガウン・手袋は不要【流行期に検討される追加の対策】ルーティンでN95マスクを使用大部屋にHEPAフィルターを設置2)診療体制の構築行政による入院調整がなくなるため、これまで以上に地域の病病連携・病診連携が重要となる。大規模な流行が起こった場合に、入院患者の受け入れ先が見つからない可能性があるため、早期診断・早期治療を可能とする外来診療体制の構築(重症化予防)、夜間も含めた施設連携医・往診医による診療の充実、行政機関による病床利用率共有システムの構築と入院・紹介ルールの明確化(円滑な医療機関の連携)、COVID-19入院対応可能な病院を増やすことが重要である。現在、保健所が行う療養中の患者の健康観察と受診調整も診断した医療機関が対応することになるため、医療機関の業務は増加する見込み。【外来】診察スペースの確保検査能力の確保(抗原/PCRの使い分けも医療機関ごとに検討)治療ガイドラインの作成電話/オンライン診療によるフォローアップの検討【入院】COVID-19対応可能な病床の適切な運用職員・COVID-19以外の理由で入院した患者がCOVID-19に感染していたとしても、院内感染伝播が起こりにくい感染対策の実施院内感染事例への対応(早期診断、早期隔離、早期治療の徹底)COVID-19治療薬の最新情報医療ひっ迫の原因となる救急搬送・入院症例・高次医療機関への搬送を減らすためには、ワクチン接種と並び、軽症・中等症Iの患者に対する早期診断・早期治療が非常に重要となる。患者の年齢、ワクチン接種回数、重症化リスク因子、免疫不全の有無などから薬物治療の必要性を判断し、ガイドライン、および現在の科学的証拠に基づいて、適切な抗ウイルス治療を選択する。現在軽症~中等症Iの患者で重症化リスクがある場合に適応となる、承認済の抗ウイルス薬は以下のとおり。なお、2023年4月時点では、軽症・中等症Iの患者に対する中和抗体薬・抗炎症薬の使用は推奨されていない。・ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビット、内服)発症5日以内、成人または12歳以上かつ40kg以上。重症化予防効果は非常に高い。呼吸不全、腎障害等の場合は使用できず、併用注意薬も多いものの、実際に使用できないケースは限られる。・レムデシビル(商品名:ベクルリー、点滴)発症7日以内、成人または12歳以上かつ40kg以上。ワクチン未接種者に対する重症化予防効果は非常に高いことが示されているが、ワクチン接種者への効果はほとんど検討されていない。3日間の点滴投与となり、入院が必要。・モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ、内服)発症5日以内、18歳以上。重症化予防効果は上記2剤に劣るため、上記2剤が利用できない場合に使用する。・エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ、内服)発症3日以内、成人または12歳以上。妊婦または妊娠の可能性のある女性は禁忌。現時点ではワクチン接種者への重症化予防効果の有無やほかの薬剤との使い分けははっきりしていない。参考1)COVID-19 5類移行でどう変わる?/CareNeTV(※視聴はCareNeTVプレミアムへの登録が必要)(配信:2023年3月22日、再構成:ケアネット 杉崎 真名)

588.

重症コロナ患者、ACEI/ARBで生存率低下か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症成人患者において、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与は臨床アウトカムを改善せず、むしろ悪化させる可能性が高いことを、カナダ・University Health NetworkのPatrick R. Lawler氏ら「Randomized, Embedded, Multifactorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia trial:REMAP-CAP試験」の研究グループが報告した。レニン-アンジオテンシン系(RAS)の中心的な調節因子であるACE2は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の受容体であることから、RASの過剰活性化がCOVID-19患者の臨床アウトカム不良につながると考えられていた。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。RAS阻害薬または非RAS阻害薬による治療で21日間の無臓器補助日数を評価 REMAP-CAP試験は、現在も進行中の、重症市中肺炎およびCOVID-19を含む新興・再興感染症に対する複数の治療を評価する国際多施設共同無作為化アダプティブプラットフォーム試験で、今回はその治療ドメインの1つである。 研究グループは、2021年3月16日~2022年2月25日の期間に、7ヵ国69施設において18歳以上のCOVID-19入院患者を登録し、重症群と非重症群に層別化するとともに、参加施設をACEI群、ARB群、ARB+DMX-200(ケモカイン受容体2型阻害薬)群、非RAS阻害薬(対照)群に無作為に割り付け、治療を行った。治療は最大10日間または退院までのいずれか早いほうまでとした。 主要評価項目は、21日時点における無臓器補助日数(呼吸器系および循環器系の臓器補助を要しなかった生存日数)で、院内死亡は「-1」、臓器補助なしでの21日間の生存は「22」とした。 主解析では、累積ロジスティックモデルのベイズ解析を用い、オッズ比が1を超える場合に改善と判定した。無臓器補助日数はACEI群10日、ARB群8日、対照群12日 2022年2月25日で、予定された564例の安全性データの評価に基づき、対照群と比較しACEI群およびARB群で死亡および急性腎障害が高頻度であることが懸念されたため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により重症患者の登録が中止された。非重症患者の登録も同時に一時中断され、その後、2022年6月8日に試験は中止となった。最終追跡調査日は2022年6月1日であった。 全体で779例が登録され、ACEI群に257例、ARB群に248例、ARB+DMX-200群に10例、対照群に264例が割り付けられた。このうち、同意撤回やアウトカム不明、ならびにARB+DMX-200群を除く各群の重症患者計679例(平均年齢56歳、女性35.2%)が解析対象となった。 重症患者における無臓器補助日数の中央値(IQR)は、ACEI群(231例)で10日(-1~16)、ARB群(217例)で8日(-1~17)、対照群(231例)で12日(0~17)であった。 対照群に対する改善の調整オッズ比中央値は、ACEI群0.77(95%信用区間[CrI]:0.58~1.06)、ARB群0.76(0.56~1.05)であり、治療により無臓器補助日数が対照群より悪化する事後確率はそれぞれ94.9%および95.4%であった。 入院生存率は、ACEI群71.9%(166/231例)、ARB群70.0%(152/217例)、対照群78.8%(182/231)であり、対照群と比較して入院生存率が悪化する事後確率は、ACEI群95.3%、ARB群98.1%であった。

589.

重症コロナ患者へのRAS調節薬、酸素投与日数を短縮せず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院し低酸素症を呈した重症の成人患者において、開発中の「TXA-127」(合成アンジオテンシン1-7)または「TRV-027」(アンジオテンシンII受容体タイプ1に対するβアレスチンバイアス作動薬)投与によるレニン-アンジオテンシン系(RAS)の調節は、プラセボ投与と比較して酸素投与日数を短縮しなかった。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのWesley H. Self氏らが、2つの無作為化試験の結果を報告した。前臨床モデルで、SARS-CoV-2感染によってRASの調節不全(アンジオテンシン1-7に比べてIIの活性が増大)が引き起こされることが示唆され、新型コロナ病態生理の重要な要因である可能性が仮説として示されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「重症COVID-19患者へのRAS調節薬投与を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。「TXA-127」「TRV-027」をそれぞれ5日間静脈内投与 研究グループは2021年7月22日~2022年4月20日に米国35病院で、急性COVID-19で入院し低酸素血症を呈した成人を対象に、2つの無作為化比較試験(TXA-127試験、TRV-027試験)を行った。TXA-127試験では、開発中のTXA-127の静脈内投与(0.5mg/kg/日)を、TRV-027試験では同様に開発中のTRV-027の持続的静脈内投与(12mg/時)をいずれも5日間実施し、それぞれプラセボ投与と比較した。  主要アウトカムは酸素非投与日数で、28日時点における死亡と酸素投与期間に基づく患者の状態の分類序数的アウトカムを評価した(RAS調節薬vs.プラセボの優越性は調整オッズ比[aOR]が1.0超)。主要副次アウトカムは、28日全死因死亡だった。安全性アウトカムは、アレルギー反応、腎代替療法導入、低血圧などだった。酸素非投与日数は両群ともにプラセボと有意差なし 両試験ともに、事前規定の基準で両薬剤が有効である可能性は低いことが示唆され、早期に中止となった。 TXA-127試験は、被験者数343例(31~64歳226例[65.9%]、男性200例[58.3%]、白人225例[65.6%]、非ヒスパニック系274例[79.9%])で、TXA-127群170例、プラセボ群173例だった。TRV-027試験は、被験者数290例(31~64歳199例[68.6%]、男性168例[57.9%]、白人195例[67.2%]、非ヒスパニック系225例[77.6%])で、TRV-027群145例、プラセボ群145例だった。 プラセボ群と比較して、TXA-127群(調整前平均群間差:-2.3[95%信用区間[CrI]:-4.8~0.2]、aOR:0.88、95%CrI:0.59~1.30)、TRV-027群(調整前平均群間差:-2.4[95%CrI:-5.1~0.3]、aOR:0.74、95%CrI:0.48~1.13)ともに、主要アウトカムの酸素非投与日数について有意差は認められなかった。 TXA-127試験では、28日全死因死亡はTXA-127群22/163例(13.5%)、プラセボ群22/166例(13.3%)報告された(aOR:0.83、95%CrI:0.41~1.66)。TRV-027試験では、28日全死因死亡はTRV-027群29/141例(20.6%)、プラセボ群18/140例(12.9%)報告された(aOR:1.52、95%CrI:0.75~3.08)。 安全性アウトカムの発生頻度については、TXA-127、TRV-027ともに、対プラセボについて同程度だった。

590.

第157回 新教授の下、体制立て直し再スタート切った三重大麻酔科。小野薬品は奨学寄附金中止、寄附講座への拠出も終了へ

汚職事件で壊滅的なダメージを被った三重大病院麻酔科こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週の4月14日金曜夜は、千葉ロッテマリーンズの佐々木 朗希投手と、オリックス・バファローズの山本 由伸投手の投げ合いを観戦するため、千葉のZOZOマリンスタジアムに行ってきました。同球場は、昨年のちょうど今頃、“野球感染”リスクの取材で訪れて以来です(参考:第105回 進まないリフィル処方に首相も「使用促進」を明言、日医や現場の“抵抗”の行方は?)。試合は、両投手合わせて20奪三振(うち佐々木投手11)という素晴らしい投手戦で、佐々木投手が7回1安打無失点の好投で今季2勝目をあげました。MLBに行ってしまうまでにどこまで成長するのか。これからがますます楽しみです。ちなみにコロナでさまざまな制限が行われていた応援ですが、マリンスタジアムではジェット風船以外、ほとんどが解禁されていました。それにしても同球場の2階席最上段は風が強く、春山並みに寒くて風邪をひきそうでした。さて、今回はランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)の積極的な使用や医療機器の納入に便宜を図る見返りに現金を受け取ったなどとして、元臨床麻酔部教授や准教授、講師などが次々逮捕され、壊滅的なダメージを被った三重大病院の麻酔科の現在について書いてみたいと思います。同病院の麻酔科には、昨年4月に新任教授が着任、体制も抜本的に見直され、今年4月からは麻酔科の専門医を育成する研修プログラムもスタートしています。懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を不服として元教授は控訴この事件については、事件発覚直後の2020年9月からこの連載でも度々取り上げて来ました。元教授の裁判の判決が下った今年1月には、「第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は『オノアクト使用の見返りだった』」で、元教授に対する判決の内容を詳説しました。判決では、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決が言い渡されました。裁判で最大の争点となったのは小野薬品工業からの寄附金200万円が賄賂に当たるかどうでした。判決は、被告が小野薬品の薬剤「オノアクト」の使用を増やす見返りを約束した上で寄附を求めたと認め、賄賂に当たると結論付けました。なお、元教授はこの判決を不服として、2月1日付で名古屋高等裁判所に控訴しています。三重大病院の年間手術数は約5,000件程度まで激減さて、一連の事件で三重大病院の麻酔科は大きなダメージを受けました。日経メディカル Onlineは4月6日付で「事件で手術や地域医療に多大な影響、再スタートの三重大麻酔科の今後 三重大麻酔科学講座教授、賀来隆治氏に聞く」と題するインタビュー記事を掲載しています。岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 麻酔蘇生学講師だった賀来氏が、教授選を勝ち抜き三重大学大学院 医学系研究科臨床医学系講座 麻酔科学教授となったのがちょうど1年前の2022年4月でした。インタビュー記事では、事件が三重大病院に及ぼした影響や、麻酔科の新体制について語っていて、とても興味深いです。同記事によれば、事件の影響などで、手術の麻酔を担当する臨床麻酔部だけでもピーク時には18人いた麻酔医は3人まで減ったとのことです。一方、麻酔科医が担当するもう一つの部門であった麻酔集中治療科も、賀来教授着任直前には2人まで減っていました。そうした影響もあって、三重大病院の手術数は激減、事件前は年間7,000件以上、8,000件に迫るほどだった手術件数は、新型コロナウイルス感染症の影響も加わり、2020年、2021年度は約5,000件程度にまで激減していたそうです。麻酔集中治療科と臨床麻酔部の2つの部署を統合賀来教授の着任した昨年4月から、麻酔科の体制変更が行われました。それまであった麻酔集中治療科(ペインクリニック外来、集中治療部の管理などを担当)と臨床麻酔部(手術の麻酔を担当)の2つの部署を統合、名称も麻酔科として運営していくことになりました。それまで、2つの部署は完全に分かれており、どちらかの麻酔科医がもう1つの部署の業務を手伝うこともなかったそうです。このように非常にいびつな形で麻酔科が運営されていた遠因は、20年近く前の麻酔科医大量退職にあったと考えられます。三重大病院では、2000年代初めに当時の麻酔科学教室教授から離反する形で麻酔科医の大量退職が起こっています。大学病院の手術にも影響が及んだため、2006年に麻酔科学教室とは独立した組織として麻酔管理と臨床実習に業務を特化した臨床麻酔部が新設され、2009年には大学医学部の講座(臨床麻酔学講座)も設けられました。その講座を率いていた元教授が今回の一連の事件を引き起こしました。2つの部署統合によって、2006年以前の元の体制(多くの大学病院と同様の体制)に戻ったことになります。麻酔科医の専門医研修プログラムも2023年度から再開麻酔科医については、賀来教授含め、岡山大から3人の麻酔科医が着任、8人体制となりました。専門研修指導医の数も満たしたため、事件を機に2020年10月から停止していた麻酔科医の専門医研修プログラムも2023年度から再開しました。今年度は、三重大関連施設で初期臨床研修を修了した医師1人が、プログラムに参加したとのことです。インタビュー記事で賀来教授は、「6人まで対応できると考えていましたが、今回は残念ながら1人でした。やはりかなりインパクトの強い事件が起こった医局なので、教授が替わったからといって、そのイメージはすぐにはマイナスからプラスには変わりません。(中略)私が医学部の学生と関わったとしても、それが専門医研修プログラムへの参加につながってくるのは何年か後になります。ですから、長い目で取り組んで行こうと考えています」と語っています。結果として岡山大のジッツとなったわけですが、麻酔科医も揃い、専門医研修プログラムも再開できたことは、地域医療にとっては喜ばしいことです。“黒歴史”が繰り返されないことを願うばかりです。小野薬品、寄附講座への拠出を全て終了へところで、事件のもう一方の“主役”とも言える小野薬品工業は、今回の事件で問題となった寄附講座について、2023年度に拠出予定の2件をもってすべて終了することを4月14日に同社サイト上で明らかにしました。公表された「コンプライアンス体制強化のための取り組み」と題する文書によれば、「2020年度に起こした不祥事以降、再発防止に向け取り組んできた」として、コンプライアンス体制をより強化するとともに、社員教育を充実させ、奨学寄附金の取り扱いの見直しを行うとしています。具体的には、「奨学寄附金(一般講座への寄附)の拠出に関しては、まず2021年度の寄附は中止とし、さらに、2022年度以降も引き続き行わないことを社内決定」したとしています。その上で、「アカデミアへの貢献の必要性や研究振興の社会的意義を鑑みながら、独立性、公平性を担保し得る新たな貢献方法を引き続き検討してきた結果、財団(小野薬品がん・免疫・神経研究財団)を設立し、2023年度より研究助成事業を行うことを決定」したとのことです。また、寄附講座への寄附については「2020年10月以降新たな寄附依頼に対して全てお断りし、それ以前に拠出を約束していた先、および複数年契約のもとに拠出を約束していた先のみへの対応としました。なお、これら寄附に関しても、2023年度中に全ての対応を終了します(2021年度の実施:21件、2022年度の実施:8件、2023年度実施予定:2件)」としています。実際、この事件をきっかけとして、製薬企業の奨学寄附金や寄附講座への寄附を廃止する動きは加速しているようです。これらは基本的に使い道を定めず無償提供されるため、大学や研究室にとっては使い勝手が良い研究費でした。奨学寄附金の廃止傾向が強まれば、研究力が弱い大学の資金調達がこれまで以上に難しくなるでしょう。もともと国からの研究費が少ない地方大学の教授たちの中には、三重大の事件を「とんでもないことをしてくれた」と苦々しく思っている人も少なくないはずです。大学間、医局間の研究力の差が、今後ますます広がっていくことが懸念されます。

591.

第159回 アルツハイマー病行動障害の初の承認薬誕生近し?/コロナ肺炎患者への欧米認可薬の効果示せず

アルツハイマー型認知症の難儀な振る舞いの初の承認薬誕生が近づいているアルツハイマー型認知症患者の半数近い約45%、多ければ60%にも生じうる厄介な行動障害であるアジテーション(過剰行動、暴言、暴力など)の治療薬が米国・FDAの審査を順調に進んでいます。大塚製薬がデンマークを本拠とするLundbeck社と開発した抗精神病薬ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ)は昨夏2022年6月に速報された第III相試験結果でアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(agitation associated with Alzheimer’s dementia、以下:AAD)を抑制する効果を示し1)、今年初めにその効能追加の承認申請がFDAに優先審査扱いで受理されました2)。アジテーションは誰もが生まれつき持つ感情や振る舞いが過度になることや場違いに現れてしまうことであり、多動や言動・振る舞いが攻撃的になることを特徴とします。アジテーションは患者本人の生きやすさを大いに妨げるのみならずその親しい人々をも困らせます。第III相試験では徘徊、怒鳴る、叩く、そわそわしているなどの29のアジテーション症状の頻度がプラセボと比較してどれだけ減ったかがCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)という採点法によって調べられました。29のアジテーション症状それぞれの点数は1~7点で、点数が大きいほど悪く、症状がない(Never)場合が1点で、1時間に繰り返し認められる場合(Several times an hour)は最大の7点となります。試験にはAAD患者345例が参加し、ブレクスピプラゾール投与群の12週時点のCMAI総点がプラセボ群に比べて5点ほど多く低下し、統計学的な有意差を示しました(22.6点低下 vs.17.3点低下)3)。同試験結果をもとに承認申請されたその用途での米国審査は順調に進んでおり、先週14日に開催された専門家検討会では同剤が有益な患者が判明しているとの肯定的判断が得られています4)。FDAの審査官も肯定的で、同剤の効果はかなり確からしいとの見解を検討会の資料に記しています5)。AADを治療するFDA承認薬はありません。ブレクスピプラゾールのその用途のFDA審査結果は間もなく来月5月10日までに判明します。首尾よく承認に至れば、同剤はFDAが承認した初めてのAAD治療薬の座につくことになります。その承認は歴史的価値に加えて経済的価値もどうやら大きく、その効能追加で同剤の最大年間売り上げが5億ドル増えるとアナリストは予想しています6)。重症コロナ肺炎患者へのIL-1拮抗薬anakinraの効果示せずスペインでの非盲検の無作為化第II/III相試験でIL-1受容体拮抗薬anakinraが重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎患者の人工呼吸管理への移行を防ぐことができませんでした7)。ANA-COVID-GEASという名称の同試験は炎症指標の値が高い(hyperinflammation)の重症コロナ肺炎患者を募り、179例がanakinraといつもの治療(標準治療)または標準治療のみの群に割り振られました。プラセボ対照試験ではありません。主要転帰は15日間を人工呼吸なしで過ごせた患者の割合で、解析対象の161例のうちanakinra使用群では77%、標準治療のみの群では85.9%でした。すなわちanakinraなしのほうがその割合はむしろ高く、人工呼吸の出番を減らすanakinraの効果は残念ながら認められませんでした。侵襲性の人工呼吸を要した患者の割合、集中治療室(ICU)を要した患者の割合、ICU滞在期間にも有意差はありませんでした。それに死亡率にも差はなく、28日間の生存率はanakinra使用群と標準治療のみの群とも93%ほどでした。試験の最大の欠点は非盲検であることで、他に使われた治療薬の差などが結果に影響した恐れがあります。同試験の結果はanakinraが有効だった二重盲検のプラセボ対照第III相試験(SAVE-MORE)の結果と対照的です。欧州は600例近くが参加したそのSAVE-MORE試験結果に基づいてコロナ肺炎患者へのanakinraの使用を2021年12月に承認しています8)。SAVE-MORE試験は重度呼吸不全か死亡に至りやすいことと関連する可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(suPAR)上昇(6ng/mL以上)患者を対象としました。今回発表されたスペインでの試験結果と異なり、SAVE-MORE試験では重症呼吸不全への進展か死亡がanakinra使用群ではプラセボ群に比べて少なく済みました(20.7% vs.31.7%)9)。また、生存の改善も認められ、anakinraは28日間の死亡率をプラセボ群の半分以下に抑えました(3.2% vs.6.9%)。SAVE-MORE試験の被験者選定基準にならい、欧州はsuPARが6ng/mL以上の酸素投与コロナ肺炎患者への同剤使用を認めています10)。米国もsuPARが上昇しているコロナ肺炎患者への同剤使用を取り急ぎ認可しています11)。参考1)Otsuka Pharmaceutical and Lundbeck Announce Positive Results Showing Reduced Agitation in Patients with Alzheimer’s Dementia Treated with Brexpiprazole / BusinessWire 2)Otsuka and Lundbeck Announce FDA Acceptance and Priority Review of sNDA for Brexpiprazole for the Treatment of Agitation Associated With Alzheimer’s Dementia / BusinessWire3)Otsuka Pharmaceutical and Lundbeck present positive results showing reduced agitation in patients with Alzheimer’s dementia treated with brexpiprazole at the 2022 Alzheimer's Association International Conference / BusinessWire4)Otsuka and Lundbeck Issue Statement on U.S. Food and Drug Administration (FDA) Advisory Committee Meeting on REXULTI® (brexpiprazole) for the Treatment of Agitation Associated with Alzheimer’s Dementia / BusinessWire5)FDA Briefing Document6)Otsuka, Lundbeck head into key FDA panel meeting with agency support for their Rexulti application / FiercePharma7)Fanlo P, et al. JAMA Netw Open. 2023;6:e237243.8)COVID-19 treatments: authorised / EMA9)Kyriazopoulou E, et al. Nature Medicine. 2021;27:1752-1760.10)Kineret / EMA11)Kineret® authorised for emergency use by FDA for the treatment of COVID-19 related pneumonia / PRNewswire

592.

医療者の無症候コロナ感染が増加、既感染の割合は?/順大

 本邦では、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されている。しかし、感染の既往を示す抗体の陽性率に関する研究は限られている。そこで順天堂大学では、医療者をはじめとした職員を対象として、2020年から年次健康診断時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査を実施している。2020年、2021年における抗N抗体※陽性率はそれぞれ0.34%、1.59%と低かったが、今回報告された2022年の調査結果では、17.7%に増加していた。また、抗N抗体陽性者のうち、約半数は感染の自覚がなかったことが明らかになった。本研究結果は、順天堂大学の金森 里英氏らによって、Scientific Reports誌2023年3月27日号で報告された。※ワクチンを接種した場合は抗S抗体が陽性となり、SARS-CoV-2に感染した場合は、抗N抗体と抗S抗体の両方が陽性になる。無症候コロナ感染が医療機関においても多く認められた 順天堂大学の年次健康診断(2022年7月17日~8月21日)を受診した3,788人(医師1,497人、看護師1,080人、検査技師182人、その他の医療従事者320人、事務職員542人、研究者157人、その他10人)を対象に、SARS-CoV-2抗体検査を実施した。 無症候コロナ感染を調査した主な結果は以下のとおり。・対象者3,788人の年齢(中央値)は36歳(範囲:20~86)で、女性が62.8%であった。ワクチン3回接種は89.3%であった。・2022年の年次健康診断時までに、357人がPCR検査に基づく新型コロナ感染歴を有していた。・2022年における抗N抗体陽性率は17.7%(669/3,788人)であった(2020年:0.34%、2021年:1.59%)。・抗N抗体陽性者669人のうち48.6%(325人)は、過去にPCR検査に基づく新型コロナ感染歴がなかった。また、抗N抗体陽性で、過去にPCR検査に基づく新型コロナ感染歴のある344人のうち、40人は無症候感染であった。・PCR検査に基づく新型コロナ感染歴のある357人のうち、79.0%(282人)は2022年1月以降(東京でのオミクロン株の初確認後)に感染していた。 著者らは、「ワクチン接種率が高く、徹底した感染対策がとられている医療機関においても無症候コロナ感染が多く認められたことから、無症候感染率の高さが急速な感染拡大を引き起こす要因となっている可能性がある。医療現場での感染拡大を完全に抑制することは難しいかもしれないが、医療現場では定期的な検温、衛生管理、マスクなどの継続的な取り組みが必要になる」とまとめた。

593.

第143回 コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省

<先週の動き>1.コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省2.新興感染症対策を加えた第8次医療計画のパブコメ募集/厚労省3.医療・介護人材不足につけ込む悪質な紹介業者へ対策を/規制改革推進会議WG4.出産費用の自己負担ゼロに向けて検討開始へ/岸田総理5.整形外科医の過労死を認定、病院側に賠償金4900万円の判決/群馬県6.花粉症への効果をうたう健康茶からステロイドを検出、販売停止へ/国民生活センター1.コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省厚生労働省は、4月14日に令和5年5月8日以降の感染症法の取扱いに関する事前の情報提供として、各都道府県、保健所設置市などに対して「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について」の事務連絡を発出した。この中で、新型コロナウイルスが感染症法の5類へ移行した後は、感染者の療養の目安を発症翌日から原則5日とするほか、医療体制については、発熱患者に対応する医療機関を約1.5倍の6万4千施設に増やすこと、医療費については高額な治療薬代以外は自己負担が発生するとしている。また、感染者数については5月8日以降、定点把握となり、毎週金曜日の公表となるほか、死亡者数は毎日の公表も中止し、5ヵ月後にまとめる人口動態統計により月単位での公表となる。5類への移行については今月後半に開催される感染症部会で最終確認の上、決定される見込み。(参考)コロナ死者数の公表、5か月後に月単位で…感染者数は毎週金曜日(読売新聞)療養期間やマスク、同居家族の感染は コロナ5類移行後の考え方公表(朝日新聞)コロナ5類移行後、感染者の外出自粛義務はなくなるが、「発症から5日間は外出を控える」などの留意を-厚労省(Gem Med)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について[令和5年5月8日以降の取扱いに関する事前の情報提供](厚労省)感染症法上の位置づけ変更後の療養に関するQ&A(同)2.新興感染症対策を加えた第8次医療計画のパブコメ募集/厚労省厚生労働省は、4月14日に「医療提供体制の確保に関する基本方針の見直し案」を公表し、同日、パブリックコメントの募集を開始した。去年12月にまとめた「第8次医療計画等に関する意見のとりまとめ」とは別にとりまとめられた「新興感染症発生・まん延時における医療」を含めて、第8次医療計画の「医療計画作成指針」などの策定で、新興感染症の発生・まん延時に、通常医療と両立しながら対応できる体制を確保するため、各都道府県に対して、病床確保について医療機関との協定を締結するよう求めている。パブリックコメントは4月20日まで受付け、適用開始は令和6年4月1日の予定。(参考)新興感染症対応、通常の医療と両立 医療体制確保へ基本方針案、厚労省(CB news)医療提供体制の確保に関する基本方針の一部を改正する件(案)について(概要)(厚労省)第8次医療計画等に関する意見のとりまとめ(同)医療提供体制の確保に関する基本方針の一部を改正する件(案)に関する御意見の募集について(同)3.医療・介護人材不足につけ込む悪質な紹介業者へ対策を/規制改革推進会議WG政府は4月14日に開催した規制改革推進会議のワーキンググループにおいて「医療・介護」の人材紹介業者について、質の向上や適正な競争の促進を図る方針を確認した。医療、介護分野では、人手不足が深刻な中、人材紹介会社が高額な手数料を提示して、介護事業者らの経営を圧迫しており、診療報酬や介護報酬の引き上げが賃上げにつながらないなど批判が上がっていた。今後は、お祝い金制度の提示や斡旋した就職者に対して就職後2年以内に転職勧奨する悪質な人材紹介会社への対策を強化する。(参考)医療・介護で人材紹介会社への対策を検討 政府方針 悪質業者が「悪循環を招いている」(Joint)医療・介護、悪質人材業にメス 許可要件厳格化を検討(日経新聞)2022 年度特別養護老人ホームの人材確保および処遇改善に関する調査について(福祉医療機構[WAM])特養の8割が人材紹介会社に「不満」 大多数が「手数料高い」と回答=WAM調(Joint)4.出産費用の自己負担ゼロに向けて検討開始へ/岸田総理岸田 文雄総理大臣は、4月13日に衆議院の厚生労働委員会で、出産費用に公的医療保険を適用する検討をめぐる議論で、「保険適用する際には原則、自己負担をゼロにする」意向を示した。公明党の吉田 久美子衆院議員の質問に対して、「出産育児一時金を引き上げることによって、平均的な費用をすべて賄えるようにするとしたわけでありますから、保険適用にあたっても、こうした基本的な考え方、これは踏襲していきたい」と答弁した。一方、全国一律の診療報酬となるとサービスの選択の幅を狭めることになるとして、「出産費用の見える化を進め、効果などの検証を行うことが大事だ」と強調した。これを受けて、自民党は13日、政務調査会などの合同会議を開き、財源を含め議論していく方向を確認し、政策に盛り込む議論に着手した。一方、日本産婦人科医会の石渡 勇会長は記者懇談会で、「正常分娩の出産費用への公的医療保険の適用を検討する政府の方針を受けて、保険を適用するなら、全国で分娩を行える体制を維持することが最優先課題だ」と見解を述べた。(参考)出産費用 “保険適用の場合 自己負担生じない制度検討” 首相(NHK)自民 少子化対策の強化 政策の優先順位や予算など議論開始(同)「出産費用の自己負担ゼロ」、岸田首相が実現に意欲 消極姿勢を転換(朝日新聞)出産保険適用、分娩可能な体制維持が最優先 日本産婦人科医会会長(CB news)5.整形外科医の過労死を認定、病院側に賠償金4900万円の判決/群馬県群馬県伊勢崎市の病院で、勤務していた整形外科医(当時46歳)が、手術後の執刀後に意識を消失し、1ヵ月後に心筋梗塞で死亡したのは、過労死だとして、運営していた法人を遺族が約3億円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が4月14日に前橋地方裁判所で言い渡された。杉山裁判官は「著しい疲労の蓄積を認識できたのに、人員の補充や業務の軽減を怠った」として、法人側に計約4,900万円の賠償を命じた。同院では、男性医師を含め常勤医2名の体制であったが、もう1人の医師が休職したため、1名での勤務による長時間労働が常態化していた。死亡の直前1ヵ月間の時間外労働は107時間であった。(参考)その日4回目の手術後に倒れ…医師の過労死を認定、病院側に賠償命令(朝日新聞)医師過労死で病院側に4900万円の賠償命令 手術終え心肺停止(毎日新聞)6.花粉症の効果をうたう健康茶からステロイドが検出、販売停止へ/国民生活センター国民生活センターは、健康茶にステロイド成分が混入されていることが判明したと発表した。花粉症に効くとして販売されていた健康茶を飲用し、劇的に花粉症が改善した患者の血液検査で、副腎皮質ホルモンの値が低下するなど異常があったとの報告が、医師からの事故情報に連絡があったことがきっかけ。国民生活センターの調査の結果、お茶1gあたりデキサメタゾンが3μg含まれていたため、医薬品医療機器法違反の恐れがあるため、国民生活センターは厚生労働省と消費者庁に対して、事業者への指導を求めた。また、国民生活センターは飲用している人に対して、医療機関に受診して医師に相談するよう求めている。(参考)花粉症への効果をほのめかした健康茶にステロイドが含有-飲用されている方は、医療機関にご相談を-(国民生活センター)花粉症への効果うたう健康茶からステロイド検出…「血液検査に異常」と報告あり判明(読売新聞)

594.

新型コロナ、5類感染症変更後の療養期間を発表/厚労省

 厚生労働省は4月14日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症に変更される5月8日以降の取り扱いについて発表した。5類変更後の療養期間は、法律に基づく外出自粛は求められず個人の判断に委ねられる。そのうえで外出を控えることが推奨される期間として、発症日を0日目として5日間は外出を控えること、かつ、5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは外出を控え様子を見ることとした。なお、学校における取り扱いについては、文部科学省にてパブリックコメントを実施予定。 国立感染症研究所のデータに基づいた厚労省の発表によると、新型コロナウイルスを人にうつす期間には個人差があるが、発症2日前から発症後7~10日間は感染性のウイルスを排出する。発症後3日間は、感染性のウイルスの平均的な排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少することから、とくに発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことに注意が必要だとしている。 5月8日以降の新型コロナ患者の外出自粛については以下の情報を参考とし、各医療機関や高齢者施設等でも、同情報を参考に新型コロナに罹患した従事者の就業制限を考慮するよう推奨している。なお、感染が大きく拡大している場合には、一時的により強い「お願い」を行う場合もあるという。(1)外出を控えることが推奨される期間・とくに発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことから、発症日を0日目(無症状の場合は検体採取日を0日目とする)として5日間は外出を控えること。※この期間にやむを得ず外出する場合でも、症状がないことを確認し、マスク着用等を徹底する。・5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見ること。(2)周りの方への配慮・10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクの着用や、高齢者等ハイリスク者と接触は控える等、周りの方へうつさないよう配慮する。発症後10日を過ぎても咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、マスクの着用など咳エチケットを心掛ける。 5月8日以降の「濃厚接触者」の取り扱いについては、一般に保健所から新型コロナ患者の「濃厚接触者」として特定されることはない。また、「濃厚接触者」として法律に基づく外出自粛は求められない。

595.

第40回 「5類新型コロナ」の出勤停止は何日間?

意外にも政府は「5日間」を推す形にインフルエンザには、学校保健安全法において「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」という細かい規定があり、学校だけでなく、企業でもこれを用いて運用しているケースが多いと思います。新型コロナが「5類感染症」になった後、これまであった「療養期間はなしになる」という理解が広まっていますが、さすがにそれはないでしょう。たぶん。ゴホゴホ咳をして3日目で出勤されたら、いくら何でも迷惑というものですが、政府からは、どういうわけか「5日間」という提案がなされているようです。現在はまだ新型インフルエンザ等感染症のもとにあるため、感染症法に基づいて、症状がある人は7日間が経過し症状軽快から24時間経過した場合、無症状の人は5日目に検査キットで陰性が確認できたら6日目から解除可能、と定められています。有症状だと、インフルエンザより2日間長いくらい対応しないと、感染が広がりやすいという認識だったのです。それがどういうわけか、インフルエンザと同様「5日間」ということになりそうです。PCRで新型コロナ陽性が確定した後、感染性の新型コロナウイルスが検出されなくなるまでの期間は、オミクロン株で中央値5日間とされています1)。また、国立感染症研究所のデータでは10日を超えての感染リスクは低いとされています2)。7日間というのはちょうどこの間くらいの位置で、全員が感染させないというわけではない点に注意が必要です。発症後7日目には、幾何平均ウイルス力価が検出限界値を下回るというデータも直近示されており3)、CDCも現時点では療養期間は5日間としています。現状、いくらインフルエンザと同じ「5類感染症」に移行するとはいえ、同じようなウイルスだからということで5日間に短縮するとなると、それなりのリスクを抱えることになるかもしれません。学校保健安全法に明記される方針であり、近々厚労省から「5類」後の療養期間について正式な発表があるでしょう。医療機関で働く人の場合、感染の危険性にさらされるのは患者さんですから、個々の病院で検討されてもよいかもしれません。濃厚接触者の概念は新型コロナの濃厚接触者の自宅待機期間は5日間とされていました。しかしもはや、濃厚接触者かどうかなどあまり気にされていないムードになっていて、これについては「5類」化によって消失するのではないかと思います。濃厚に曝露した人は注意してください、くらいの文言になるかもしれません。参考文献・参考サイト1)Boucau J, et al. N Engl J Med. 2022;387:275-277.2)国立感染症研究所:SARS-CoV-2 オミクロン株感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第6報):ウイルス学的・血清学的特徴3)国立感染症研究所:オミクロン系統感染者鼻咽頭検体中の感染性ウイルスの定量

596.

コロナ入院患者のヘパリンによる治療効果、重症度・BMIで差/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、治療量ヘパリン投与の効果にばらつきがあることが、カナダ・トロント総合病院のEwan C. Goligher氏らにより示された。治療効果の異質性(HTE)を3つの手法で評価した結果、入院時の重症度が低い人やBMI値が低い人では有益である可能性があるが、重症度が高い人やBMI値が高い人では有害となる可能性が高かったという。これまでに行われたCOVID-19入院患者を対象とした治療量ヘパリンに関する無作為化臨床試験(RCT)では相反する結果が示されており、個人間のHTEが原因ではないかとみなされていた。結果を踏まえて著者は、「RCTのデザインおよび解析では、HTEを考慮することが重要であることが示された」とまとめている。JAMA誌2023年4月4日号掲載の報告。治療効果の異質性を3つの手法で評価 研究グループは2020年4月~2021年1月に、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアで、COVID-19で入院した3,320例を登録し、治療量ヘパリン vs.通常ケアの薬物療法による血栓予防効果を比較した複数プラットフォーム適応型RCTについて、探索的解析を行った。また、治療量ヘパリンのHTEについて、(1)ベースライン特性の従来型サブグループ解析、(2)多変量アウトカム予測モデル(リスクベースのアプローチ)、(3)多変量因果フォレストモデル(効果ベースのアプローチ)の3つの方法で評価した。解析は、オリジナル試験と一貫したベイジアン統計を主として用いた。 主要アウトカムは、臓器支持療法を必要としない日数(入院中死亡は-1とし、退院まで生存した場合は、最大21日のうち心血管系・呼吸器系の臓器支援が不要だった日数)と、入院生存率だった。複数プラットフォームRCT集団では、治療量ヘパリンの効果認められず 治療量ヘパリン群と通常ケア群のベースラインの人口統計学的特性は似かよっており、年齢中央値は60歳、女性は38%、32%が非白人種、45%がヒスパニック系だった。 複数プラットフォームRCT集団では、治療量ヘパリンによる臓器支持療法を必要としない日数の増大は認められなかった(オッズ比[OR]の事後分布中央値:1.05、95%信用区間[CrI]:0.91~1.22)。 従来型サブグループ解析では、治療量ヘパリンの臓器支持療法を必要としない日数に対する効果は、ベースラインの臓器支持療法の必要性(OR中央値:重症0.85 vs.軽症1.30、OR差の事後確率99.8%)、性別(同:女性0.87 vs.男性1.16、96.4%)、BMI(30未満 vs.30以上、すべての比較において>90%)で差が認められた。 リスクベースの解析では、予後不良リスクが最も低い患者がヘパリンによる便益を得られる傾向が最も高く(最低十分位群:>1のORの事後確率92%)、予後不良リスクが最も高い患者がヘパリンによる害を受ける傾向が最も高かった(最高十分位群:<1のORの事後確率87%)。 効果ベースの解析では、害を受けるリスクが最も高い患者(治療効果の差に関するp=0.05)はBMI値が高く、ベースラインで臓器支持療法を要する可能性が高い傾向が認められた。

597.

BA.4/5対応2価ワクチン、初回接種での使用を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは4月11日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2価ワクチン「コミナティRTU筋注(起源株/オミクロン株BA.4-5)」について、生後6ヵ月~4歳における初回免疫と追加免疫、および5歳以上における初回免疫での使用を可能とするための承認事項の一部変更を厚生労働省に申請したことを発表した。 本剤は現在、国内において5歳以上の追加免疫での使用のみ承認されている。なお、米国においては、5歳以上の追加免疫での使用に加え、2022年12月8日に生後6ヵ月~4歳における初回免疫の3回目としての使用が、2023年3月15日には同年齢層における1回の追加免疫(初回免疫を1価ワクチンで3回接種完了した者が対象)が米国食品医薬品局(FDA)より承認されている。

598.

英語で「鼻うがい」は?【1分★医療英語】第75回

第75回 英語で「鼻うがい」は?My hay fever(seasonal allergy)is getting worse…(花粉症が悪化してきています)Nasal irrigation might help with your symptoms.(鼻うがいが良いかもしれません)《例文1》Gargling and nasal irrigation may ease sinus inflammation.([喉の]うがいと鼻うがいは、炎症を和らげる効果があります)《例文2》The idea behind nasal irrigation is that it helps flush out the nasal cavity.(鼻うがいは、鼻腔を洗い流す作業です)《解説》「鼻うがい」は“nasal irrigation”や“nasal rinse”と言いますが、うがいは“gargle”と言うので、“nasal gargle”と表現することもあります。日本では「手洗い・うがい」が習慣化されていますが、海外ではあまりうがいの習慣がないため、私が塩水でガラガラとうがいをしていたら、ルームメイトに注目されたこともありました。小規模な研究ですが、「1日2回の鼻うがいが新型コロナの感染後の入院や死亡率を下げる」という報告1)もあり、このときは米国でも鼻うがいが話題に上がりました。鼻孔のことを“nostril”と言います。鼻うがいのやり方の説明としては、“Pour the saline solution slowly into one nostril and let it drain out of the other nostril.”(片方の鼻孔から液体をゆっくり入れ、反対の鼻孔から流し出します)となります。“hay fever”(花粉症)の季節は毎年やってくるので、“personal hygiene”(清潔習慣)の一つである 鼻うがいの説明を覚えておくと、役に立つかもしれません。<参考>1)Baxter AL, et al. Ear Nose Throat J. 2022 Aug 25. [Epub ahead of print]講師紹介

599.

第158回 胎児脳のコロナ感染 / コロナ入院患者死亡率は依然として高い

妊婦感染コロナの胎児脳への移行が初めて判明妊婦に感染した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の胎児の脳への移行とその害が、米国・マイアミ大学の研究者いわく初めて認められました1,2,3)。調べられたのはコロナに感染した妊婦から生まれ、生まれてすぐに発作を起こし、出産時には認められなかった小頭症をやがて呈し、発達の大幅な遅れを示した小児2例です。2例の出産時の鼻ぬぐい液のPCR検査ではSARS-CoV-2は検出されませんでした。しかし2例とも抗コロナ抗体を有しており、血液中の炎症指標が有意に上昇していました。母親2例の胎盤を調べたところSARS-CoV-2のタンパク質が認められ、生まれた小児の血液と同様に炎症指標の亢進が認められました。小児の1例は1歳を迎えて間もない生後13ヵ月で不慮の死を遂げました。その脳を免疫染色で調べたところSARS-CoV-2に感染していたことを示すタンパク質が脳全域で認められました。亡くなったその小児が生前そうであったようにもう1例の小児も出生時には認められなかった小頭症をやがて呈し、発達もかなり遅れました。1歳になっても寝返りを打ったり支えなしで座ったりすることができず、報告の時点でホスピスを利用していました。妊娠半ばに感染したSARS-CoV-2は胎児と胎盤、さらには胎児の脳に至って胎盤と胎児の両方に炎症反応を誘発しうることを今回の調査結果は示しています。そうして生じた炎症反応は生後間もないころを過ぎても続く脳損傷や進行性の神経不調とどうやら関連しそうです。今回報告された2例の小児はコロナ流行が始まって間もない2020年のデルタ株優勢のころに妊娠第2期で感染した母親から生まれました。母親の1例は肺炎や多臓器疾患で集中治療室(ICU)に入り、そこでSARS-CoV-2感染が判明します。胎児の経過はその後も正常でしたが、妊娠32週時点で帝王切開による出産を要しました。死後脳に感染の痕跡が認められたのはこの母親の子です。一方、もう1例の母親のコロナ感染は無症状で、妊娠39週に満期出産に至っています。それら2例の母親が感染したころはワクチンが普及した現在と状況が違っていますが、胎児の経過観察の目下の方針は不十分であると著者は言っています。胎児の脳がSARS-CoV-2による影響を受けるのであればなおさら慎重な様子見が必要です。それは今後の課題でもあり、脳の発達へのコロナ感染の長期の影響を検討しなければなりません。コロナ入院患者の死亡率はインフル入院患者より依然として高いコロナ流行最初の年のその入院患者の死亡率はインフルエンザによる入院患者より5倍近く高いことが米国での試験で示唆されています。さてウイルスそのもの、治療、集団免疫が様変わりした今はどうなっているのでしょうか?この秋冬の同国のコロナ入院患者のデータを調べたところ、幸いにも差は縮まっているもののインフルエンザ入院患者の死亡率を依然として上回っていました4,5,6)。調べられたのは2020年10月1日~2023年1月31日にコロナまたはインフルエンザの感染前後(感染判明の2日前~10日後)に入院した退役軍人のデータです。いわずもがな高齢男性を主とするそれら1万1,399例のうちコロナ入院患者8,996例の30日間の死亡率は約6%(5.97%)であり、インフルエンザ入院患者2,403例のその割合である約4%(3.75%)を1.6倍ほど上回りました。他のコロナ転帰の調査がおおむねそうであるようにワクチンの効果がその解析でも認められています。ワクチン非接種者に比べて接種済みのコロナ入院患者の死亡率は低く、追加接種(boosted)も受けていると死亡率はさらに低くて済んでいました。コロナによる死を防ぐワクチンの価値を今回の結果は裏付けています。参考1)Benny M, et al. Pediatrics. 2023 Apr 06. [Epub ahead of print]2)COVID caused brain damage in 2 infants infected during pregnancy -US study / Reuters3)SARS-CoV-2 Crosses Placenta and Infects Brains of Two Infants: 'This Is a First' / MedScape4)Xie Y, et al. JAMA. 2023 Apr 06. [Epub ahead of print]5)COVID-19 patients were more likely to die than flu patients this past flu season: study / NMC6)Covid Is Still Deadlier for Patients Than Flu / Bloomberg

600.

第142回 サル痘の国内感染が拡大傾向、注意喚起/厚労省

<先週の動き>1.サル痘の国内感染が拡大傾向、注意喚起/厚労省2.セキュリティ対策求め、オンライン診療のガイドラインを改定/厚労省3.医療DXで診療報酬改定の医療機関の負担を軽減を/厚労省4.飲む中絶薬、病院での待機を条件に月内に承認か/厚労省5.再生医療の産業育成、重点化で後押し/経産省6.民間病院グループが民事再生法申請、負債総額132億円/千葉県1.サル痘の国内感染が拡大傾向、注意喚起/厚労省厚生労働省は、去年、欧米を中心に流行した「サル痘」(感染症法上の4類感染症)の感染が、今年に入って国内でも感染者が増加しているため、「発疹など感染が疑われる症状がある人は医療機関に相談してほしい」と呼びかけている。厚生労働省によると、国内では2022年7月に1例目の患者が確認され、その後散発的に発生が報告されていたが、2023年4月4日時点で95例の患者報告が集積している。なお、厚生労働省は、WHOの新たな病名「エムポックス」の推奨を受けて、今後病名を変更するため政令改正の手続きを行っている。(参考)サル痘について(厚労省)サル痘の感染増加、今年87人感染 厚労省「疑う症状は相談を」(朝日新聞)「サル痘」感染 国内でことしに入り増加 “医療機関へ相談を”(NHK)サル痘感染者、100人に迫る 厚労省「疑い症状相談を」(共同通信)2.セキュリティ対策求め、オンライン診療のガイドラインを改定/厚労省厚生労働省は、このほど医療機関を標的とするサイバー攻撃の増加を受けて、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を改訂した。この中で、厚労省は、医療機関側に対して、使用するオンライン診療システムが患者の医療情報が漏洩や改ざんがされないように情報セキュリティ対策を確認するように要請している。また、オンライン診療を計画するときは、患者に対してセキュリティリスクを説明し、同意を得なければならないなど記載が追加されている。(参考)オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚労省)「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A(同)オンライン診療、セキュリティーの責任分界点確認を 厚労省が指針改訂(CB news)オンライン診療指針を改訂!「得られる情報が少ない」点を強調するとともに、過重なセキュリティ対策規定を見直し!-厚労省(Gem Med)オンライン診療の適切な実施に関する指針、2023年3月改訂版とQ&A更新(医療経営研究所)3.医療DXで診療報酬改定の医療機関の負担を軽減を/厚労省厚生労働省は、「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームを4月6日に持ち回り開催し、診療報酬改定DX対応方針案を公表した。令和6年度から医療DX工程表に基づいて、デジタル技術を最大限に活用し、共通算定モジュールの開発や共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善、標準様式のアプリ化とデータ連携などを行う。また、診療報酬改定の施行時期を後ろ倒しするなどで、中小病院や診療所などで負担となっている電子カルテなどのシステム改修コストを低減することを目的に、段階的に実装を目指す。(参考)第3回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム(厚労省)診療報酬改定DX対応方針(案)(同)診療報酬施行後ろ倒しへ、夏までに時期決定 厚労省が対応方針(CB news)4.飲む中絶薬、病院での待機を条件に月内に承認か/厚労省先月、厚生労働省が審議する予定の妊娠初期の中絶に使用される経口妊娠中絶薬の「メフィーゴパック」(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)[ラインファーマーズ]について、3月24日にパブリック・コメントが殺到したため、審議が見送りとなっていた。そして、今般、承認条件に新たに中絶が確認できるまで病院での待機を必須とする方向で検討していることが明らかとなった。厚生労働省は、インターネットや個人輸入により入手をしないよう、注意喚起を行っており、4月下旬に開催する薬事分科会で、製造販売の承認可否を審議する見通し。(参考)飲む中絶薬、病院待機を必須に 厚労省、月内にも承認審議(共同通信)ミフェプレックス(MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について(厚労省)5.再生医療の産業育成、重点化で後押し/経産省経済産業省は、細胞・遺伝子治療分野が2030年まで年率30%の成長が見込まれるとして、再生医療を開発している研究機関や医療機関について、重要性が高い研究を行う拠点を重点的に補助金で支援する方針で、今年の春に公募を行い数ヵ所を決定する予定。一方、再生医療の安全性について懸念が高まっているため、日本再生医療学会は、再生医療認定医や上級臨床培養士、臨床培養士などの認定資格を持つ人が、医療機関内に一定数いることを要件とする医療機関の認定制度を発足させる方針であることが明らかになった。(参考)再生医療の治療・研究拠点に「お墨付き」、経産省が重点支援へ…3~5か所想定(読売新聞)再生医療「どの病院なら安全?」学会が認定へ 年内にも新たな制度(朝日新聞)2040年には市場が20倍? 注目の再生医療・細胞治療に匹敵する、世界初の発見(財経新聞)6.民間病院グループが民事再生法申請、負債総額132億円/千葉県千葉県で八千代病院や成田リハビリテーション病院を運営する医療法人社団心和会(四街道市)が、4月4日に東京地裁に民事再生法の適用を申請した。健診サービスのほか訪問介護ステーションの開設や積極的な多角経営を展開していたところ、新型コロナウイルスのクラスター発生などが影響したほか、前理事長の不動産トラブルなどで資金繰りが悪化し、経営状況では2021年から赤字となっていた。医療法人側は、診療体制を維持しながら、新たなスポンサーを探して事業譲渡を行う方針。(参考)「八千代病院」の医療法人が民事再生法申請 負債総額132億円 四街道・心和会 コロナ、不動産トラブルで資金繰り悪化(千葉日報)千葉県内で八千代病院など複数の病院を経営する(医)社団心和会が民事再生を申請(東京商工リサーチ)

検索結果 合計:2863件 表示位置:581 - 600