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新型コロナウイルス、国内3症例の経過と得られた示唆

 2月7日、日本感染症学会・日本環境感染学会は「新型コロナウイルス2019-nCoVへの対応について」と題し、学会員に向けた緊急セミナーを開催した(司会は日本感染症学会理事長 館田 一博氏、日本環境感染学会理事長 吉田 正樹氏)。 この中で、大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター センター長)は、「新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症 臨床・感染防止対策」とのテーマで、これまで同センターが診療した3症例の紹介と、そこから得た知見を紹介した。1例目33歳女性・主訴:咽頭痛、倦怠感 1月19日に武漢のホテルに1泊し、20日に来日。23日に咽頭痛出現。24日に1回目の受診。インフルエンザ迅速検査は陰性。初診時の診断は上気道炎。発熱が改善せず、27日に2回目の受診。胸部レントゲンで肺野に浸潤影を確認できず、2019-nCoV感染は否定的と判断。30日に3回目の受診。胸部レントゲンでは両側下葉にスリガラス影と浸潤影の出現があり即日入院。その後2019-nCoV感染が確定。2例目54歳男性・主訴:咽頭痛、鼻汁 2018 年 5 月から武漢に滞在中の日本人。2020 年1月27日から咽頭痛と鼻汁が出現。帰国した29日の飛行機内で軽度の悪寒が出現し、37.1℃の発熱と上気道症状が見られた。30日に2019-nCoV感染が判明、胸部レントゲン検査および胸部CT検査を行うがいずれも肺炎を示唆するような陰影なし。急性上気道炎と診断し、入院継続と経過観察。第6病日まで37℃台の発熱と倦怠感は継続、呼吸状態の悪化はなし。3例目41歳男性・主訴:発熱、咳嗽 2019年12月20日から武漢に仕事で滞在中の日本人、以前も何度も滞在歴がある。帰国した2020年1月31日から38℃の発熱と軽微な咳嗽が出現。発熱と上気道症状あり。2月1日2019-nCoV感染が判明。胸部CT検査で左肺突部と左肺舌区に一部浸潤影を伴うスリガラス影があり肺炎と診断。3日時点で37℃台の発熱はあるが呼吸状態の悪化はなし。※3症例の詳細や胸部レントゲン・CT画像を日本感染症学会サイトに掲載。最初の1週間は風邪との区別は困難、その後の経過を観察 3症例の病状と現在までの経緯を紹介したのち、大曲氏は「現時点において、論文などで紹介される2019-nCoV感染症患者の症状は、中国国内の重症患者から得たものが大半。日本国内でヒト-ヒト感染が広まって受診者が増加した場合、その多くを占めるであろう軽症患者の症状として、今回の3例を参考にしてほしい」と述べた。 軽症患者の臨床的特性としては、「症例数がまだ限られ、現時点で断定的なことは述べるには早すぎる」と断ったうえで、「私たちが診療した例に限れば、最初の1週間は軽い感冒とほぼ同じ症状で、微熱と倦怠感が主訴となり、この時点で2019-nCoV感染の診断は困難。そのまま良くなるケースもあれば、1週間経過時に呼吸苦を訴え、肺炎と診断されたケースもあった」と説明。「感冒様症状が1週間ほど続き、かつ患者の倦怠感が強い点は、通常の感冒やインフルエンザと経過とは明らかに異なるため、臨床的に疑うカギとなるかもしれない」とした。 さらに、中国から報告される症例は重症例が多く、軽症例が報告から漏れている可能性がある点に注目。中国以外の報告例には軽症例が多く、中国国内でも実際には軽症から重症まで幅広く発症していると考えられるため、軽症患者の臨床的特徴を検証する必要性があること、軽症者を母数に加えることで現在報じられている2019-nCoVの致死率が下がる可能性があることを指摘した。 加えて、今回の3例の患者は30~50代であり、「国内で高齢者が罹患した場合のデータはまだない。中国の例を見る限り高齢者は重篤化する危険が高いため、その点も注視したい」とした。 本セミナーの動画は後日、日本感染症学会のYou Tubeチャンネルで公開予定。

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新型コロナウイルス肺炎41例の臨床的特徴(解説:小金丸博氏)-1186

オリジナルニュース新型コロナウイルス、感染患者の臨床的特徴とは?/Lancet(2020/01/28掲載)論文に対するコメント: 2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(2019-nCoV)による感染症が世界中に拡大しつつあり、本稿執筆時点(2020年2月4日)で確定患者は2万人を超え、そのうち約400人が死亡したと報告されている。そんな中Lancet誌オンライン版(2020年1月24日号)より、2020年1月2日までに新型コロナウイルス肺炎で入院となった41例の患者背景、臨床症状、臨床経過、放射線画像検査の特徴などが報告された。結果の概要は以下のとおりだが、今回の報告は肺炎を発症し入院となった重症患者のまとめであり、自然軽快する軽症例は含まれていないことに留意しながら結果を解釈する必要がある。患者背景: 患者の73%が男性で、年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲:41.0~58.0)だった。32%が何らかの基礎疾患(糖尿病、高血圧、心血管疾患など)を有していた。66%が感染源と推測されている華南海鮮市場と何らかの接点があった。男性が多い理由としては、海鮮市場の関係者が多く含まれていることが要因と思われる。臨床症状: 頻度の高い症状は、37.3℃以上の発熱(98%)、咳嗽(76%)、呼吸困難(55%)、筋肉痛または疲労感(44%)だった。ウイルス性肺炎であるためか喀痰は28%とそれほど多くなかった。下痢などの消化器症状の報告は少なく、鼻汁、咽頭痛などの上気道症状をほとんど認めなかったことも特徴的である。臨床経過: 重症例では、発症から約1週間で入院、8日目ごろに呼吸困難が出現、9日目ごろに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を合併し、10日目以降に集中治療室(ICU)へ入室するという経過をたどった。合併症としてARDS(29%)、急性心障害(12%)、2次感染(10%)などを認めた。32%がICUへ入室し、15%が死亡した。軽症例を含めれば、合併症発生率や致死率は低下することが予想される。放射線画像所見: 胸部CT画像では、98%で両肺野に浸潤影を認め、非ICU入室患者ではスリガラス影が典型的な所見だった。治療: 全例に抗菌薬の投与、93%に抗ウイルス薬(オセルタミビル)の投与、22%に全身ステロイド投与が行われた。ステロイドの有用性については、さらなる症例の集積が必要である。また、新型コロナウイルス感染症に対して、抗HIV薬であるロピナビルとリトナビルの併用療法の有用性を検討するランダム化比較試験が開始されている。 本論文は、新型コロナウイルス肺炎の臨床的特徴を初めて記載したものである。今後さらに症例を蓄積していくことで、軽症例や無症候例の存在、伝染性、正確な致死率などが判明していくと思われる。 コロナウイルスはいわゆる「風邪」の原因ウイルスであるが、ヒトに対して強い病原性を示したSARSやMERSの原因ウイルスでもある。今までの報告からはSARSやMERSほど致命率は高くないと考えられるものの、まだ明らかとなっていないことが多く、今後の動向を注視したい。医療従事者への院内感染事例も報告されており、手指衛生や咳エチケットなどの標準予防策に加え、適切な経路別予防策の実施を心掛けたい。

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新型コロナウイルス、ドイツで無症候性接触者からの感染症例/NEJM

 中国・武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(2019-nCoV)を巡り、無症状の潜伏期間中に接触者へ感染を広げるケースが相次いで報告されている。ドイツ・ミュンヘン大学医療センターのCamilla Rothe氏ら研究グループが、ドイツ国内で報告された、直近に渡航歴のないビジネスマンが無症候の初発患者から感染したとみられる症例を報告した。NEJM誌2020年1月30日号オンライン版に掲載。 報告症例は、1月29日に2019-nCoV陽性反応が確認されたドイツ人男性(33歳)について。男性は20~21日、ミュンヘン郊外の会社でビジネスパートナーである中国人女性と会議に同席。24日に咽頭痛および悪寒、筋肉痛を自覚し、25日には39.1度の発熱があった。その後、26日夕方には症状が改善し始め、翌日には仕事に復帰できるまでに回復したという。 一方、女性は1月19~22日に上海から渡独。滞在中は感染の兆候や症状は見られなかったが、帰国便の機中で体調が悪くなったという。その後、26日に2019-nCoV陽性の検査結果が判明したため接触者の追跡調査が行われ、ドイツ人男性も調査対象となり、29日にRT-PCR法で2019-nCoV陽性反応が出た。男性の喀痰から得られたウイルス量は108コピー/mLと多かった。 また、28日にはドイツ人男性の同僚3人についても、検査の結果2019-nCoV陽性反応が確認された。3人のうち1人は中国人女性と接触しており、ほか2人は接触がなかった。男性と同僚3人はミュンヘンの医療機関に入院したが、いずれもこれまでに重い症状は見られないという。 著者らは、「本症例は、無症候性の初発患者の潜伏期間中に感染が広がったとみられ、2019-nCoVの伝播動態について改めて評価が必要だろう」と述べている。

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2019-nCoV、類似ウイルスのゲノムと86.9%が一致/NEJM

 2019年12月、中国・湖北省武漢市で、海鮮卸売市場に関連する原因不明の肺炎患者集団が確認された。中国疾病対策予防センター(CDC)は、同年12月31日に武漢市へ迅速対応チームを派遣し、疫学および病因調査を実施。肺炎患者の検体でのシークエンシングから、今まで知られていなかったβコロナウイルスを発見した。この新たなウイルスをヒト気道上皮細胞を用いて分離し「2019-nCoV」と命名。MERS-CoVおよびSARS-CoVとは異なる、ヒトに感染する7番目のコロナウイルスであることが明らかにされた。これら一連の新型コロナウイルスの特定と、臨床的特徴が入手できた肺炎患者2例について、中国CDCのNa Zhu氏らがNEJM誌オンライン版2020年1月24日号で報告している。下気道4検体から2019-nCoVを特定・分離 2019-nCoVの特定は、2019年12月21日以降に原因不明の肺炎を呈した患者から採取した下気道由来の4検体(気管支肺胞洗浄液[BAL法検体]を含む)を用いて行われた。患者はいずれも臨床症状を呈する直前に、武漢市の海鮮市場にいたことが確認されている。対照として、北京の病院の原因不明の肺炎患者から採取された7検体を用いた。 検体から核酸を抽出して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により22の病原体(18ウイルスと4バクテリア)について解析するとともに、PCRで同定できない病原体については、不偏ハイスループットシークエンスを用いてシーケンスを探索した。 ウイルス分離は、採取したBAL法検体を用いて行った。遠心分離で得た上清をヒト気道上皮細胞に接種して培養した後、細胞変性効果を示したヒト気道上皮細胞培地から上清を採取し超遠心機で分離し、ネガティブ染色を行い透過型電子顕微鏡で観察した。また、BAL法検体と培養上清から抽出されたRNAを使用し、イルミナシークエンスとナノポアシークエンスを組み合わせてウイルスゲノムを特定した。発熱・咳症状を認めてから、1例は4日後に入院、1例は7日後に呼吸困難に 患者の臨床的特徴については、2019年12月27日に、重症肺炎で武漢市の病院に入院した成人患者3例について報告している。 症例1は、49歳女性、海鮮卸売市場の小売業者で基礎疾患なし。2019年12月23日に発熱(体温37~38℃)と胸部不快感を伴う咳症状を認める。4日後、熱は低下したが、咳と胸部不快感が悪化。CTスキャンで肺炎と診断された。 症例2は、61歳男性、海鮮卸売市場を頻繁に訪れていた。2019年12月20日、発熱と咳症状を認める。7日後に呼吸困難となり、その2日後に状態が悪化し人工呼吸管理を開始したが、2020年1月9日に死亡した。生検検体は得られていない。 症例3は32歳男性。詳細情報は得られなかったが、この症例3と、前述の症例1は病状が回復し、2020年1月16日に退院した。コウモリ由来SARS-like CoVのゲノム配列と86.9%が同一 2019-nCoVの検出と分離は、2019年12月30日に武漢市金銀潭医院(Wuhan Jinyintan Hospital)で集められた3検体(BAL法による)を用いて行われた。 3検体すべて2019-nCoVが同定された。そのゲノム配列は、以前に公表されたコウモリ由来のSARS-like CoVで確認されたゲノム配列と86.9%が同一であった。また、2019-nCoVは、コウモリで検出されたいくつかのβコロナウイルスと相同性を示したが、SARS-CoVおよびMERS-CoVとは異なっていた。 2019-nCoVは、オルソコロナウイルス亜科βコロナウイルス属サルべコウイルス亜属に属する新しいクレードとして分類され、ヒトへ感染する7番目のコロナウイルスであることが明らかとなった。

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新型コロナウイルス感染症、“疑い例”の定義について/日本医師会

 刻々と状況が変化する中、新型コロナウイルス感染症の「臨床的特徴」や「感染が疑われる患者の要件」について、適時アップデートが行われている。2月5日の日本医師会の定例会見では、厚生労働省発出の文書に基づく現時点での定義や、今後の医療機関での対応の見通しについて、釜萢 敏常任理事が説明した。初めて“濃厚接触”を具体的に定義 厚生労働省では、2月4日付の感染症法に基づく届出基準の一部改正についての都道府県宛通知1)において、同感染症の「臨床的特徴」および「感染が疑われる患者の要件」を下記のように定義している。<臨床的特徴(2020年2月2日時点)> 臨床的な特徴としては、潜伏期間は2~10日であり、その後、発熱、咳、全身倦怠感等の感冒様症状が出現する。一部のものは、主に5~14日間で呼吸困難等の症状を呈し、胸部 X 線写真、胸部 CT などで肺炎像が明らかとなる。高齢者及び基礎疾患を持つものにおいては重症化するリスクが一定程度あると考えられている。<感染が疑われる患者の要件> 患者が次のア、イ、ウ又はエに該当し、かつ、他の感染症又は他の病因によることが明らかでなく、新型コロナウイルス感染症を疑う場合、これを鑑別診断に入れる。ただし、必ずしも次の要件に限定されるものではない。ア)発熱または呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者であって、新型コロナウイルス感染症であることが確定したものと濃厚接触歴があるものイ)37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航又は居住していたものウ)37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域に渡航又は居住していたものと濃厚接触歴があるものエ)発熱、呼吸器症状その他感染症を疑わせるような症状のうち、医師が一般に認められている医学的知見に基づき、集中治療その他これに準ずるものが必要であり、かつ、直ちに特定の感染症と診断することができないと判断し(法第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症に相当)、新型コロナウイルス感染症の鑑別を要したもの※濃厚接触とは、次の範囲に該当するものである。・ 新型コロナウイルス感染症が疑われるものと同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があったもの・ 適切な感染防護無しに新型コロナウイルス感染症が疑われる患者を診察、看護若しくは介護していたもの・ 新型コロナウイルス感染症が疑われるものの気道分泌液若しくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高いもの 釜萢氏は上記イ、ウで示される「WHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域」について、中国湖北省が該当と説明。中国の湖北省以外の地域は該当しないのかとの問合せもあるが、検査対象となる疑い例イ、ウの定義としては、現時点では原則として同地域に限定されるとした。「帰国者・接触者相談センター」で受け付け、「帰国者・接触者外来」で受診・検査 また、厚生労働省は2月1日付の事務連絡2)で、都道府県宛に「帰国者・接触者相談センター」ならびに「帰国者・接触者外来」の設置を指示。相談センターは当面主に保健所が担い、帰国者・接触者外来は主に感染症指定医療機関が担う。ただし、今後検体が増加する可能性に備えて、標準予防策を講じられる医療機関については、感染症指定医療機関に限らず医療機関の同意のうえ指定の可能性があるとした。 一般医療機関においては、本来帰国者・接触者外来を受診すべき疑い例であることが判明した場合は、まず相談センターへ連絡のうえ、センターで検体採取が必要と判断された場合に、帰国者・接触者外来の受診という流れとなる。中国からの報告と、国内で診察した医師の印象は乖離か 中国からの報告では、2割強が重症例で、死亡率は2%台とされているが、まず前提としてこれらの報告が感染者のうちの肺炎患者に限られている点を同氏は指摘。一方、まだ数例ではあると前置きしたうえで、国内で症例を診察した医師の印象は中国からの報告から得られる印象とは乖離しているようだと話した。PCR法に代わる簡易検査法や治療薬(タイからの報告はまだエビデンスといえるレベルではない)の開発等にはまだ時間を要すると考えられ、収束の見通しについても正確な見極めはこれからの段階であると強調した。

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新型コロナウイルスあれこれ【Dr. 中島の 新・徒然草】(309)

三百九の段 新型コロナウイルスあれこれ読者の皆さんも、それぞれの医療機関で新型コロナウイルス対策を行っていることと思います。大阪医療センターでもしばしば会議や打ち合わせが行われており、また大勢の人の集まる行事も中止になったりしています。さて、私自身は感染症に詳しいというわけではなく、一般市民と同じように玉石混交のネット情報に振り回されているわけですが、今回のことをキッカケに色々考えさせられたので、自分なりにわかりやすくまとめました。もし間違っていたら御指摘ください。【疫病の怖さを感染力と病原性の2軸で考える】疫病の怖さを感染力の強さと病原性の高さで考えるというのが、1つの方法かと思います。感染力がやたら強くても病原性がさほど高くない感染症なら、そんなに恐れる必要はありません。感染力を数値で表す基本再生産数(1人の患者が何人に感染させるか)は、新型コロナウイルスの場合、1.4~5.5と色々な説がありますが、権威あるジャーナルに発表された論文によれば2.21)とか2.682)と見積もられています。ちなみに我々に馴染みの深いインフルエンザが2前後だということなので、同じ程度だと言ってよさそうです。一方、新型コロナウイルスの病原性については、中国から発表されている死者数を患者数で割ると、致死率は約2%。これに対し、現在のインフルエンザの致死率は通常0.1%程度だとされています。1918~19年に猛威をふるったスペインかぜの致死率が2%程度だったと推測されており、同程度の新型コロナウイルスも侮れません。とはいえ、上記に述べた感染力や病原性については種々の条件によって大きく異なってくるので、中国と日本を同一に論じることはできなさそうです。感染予防策によって感染拡大を防止し、個人の体調管理と我が国の医療体制によって致死率を下げることができれば、日本での死者数を抑え込むことができるのではないでしょうか。是非そうなってほしいですね。余談ですが、新型コロナウイルスに対する恐怖が人々の感染対策意識を向上させたのか、同じ飛沫感染であるインフルエンザの流行が例年に比べて低く抑えられていることが、東京都感染症情報センターのホームページにある定点医療機関当たり患者報告数から読み取れます3)。もっとも、単に暖冬のせいでインフルエンザが流行っていないだけかもしれませんけれど。というわけで、あれこれ考えさせられる新型コロナウイルス、どちらに向かって進んでいくのでしょうか?最後に1句コロナ来て あわてて勉強 今日もまた1)Li Q, et al. N Engl J. 2020 Jan 29. [Epub ahead of print]2)Joseph T Wu, et al. Lancet. 2020 Jan 31. [Epub ahead of print]3)東京都感染症情報センター

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新型コロナウイルスのゲノムの特徴/Lancet

 2019年12月に中国・武漢市で患者が報告され、その後、病原体として同定された新型コロナウイルス(2019-nCoV)について、中国疾病予防管理センターのRoujian Lu氏らがゲノム配列を調べた。その結果、2019-nCoVはSARS-CoVとは異なり、ヒトに感染する新たなβコロナウイルスと考えられた。系統解析では、コウモリがこのウイルスの最初の宿主である可能性が示唆されたが、武漢市の海鮮卸売市場で販売されている動物はヒトでのウイルス出現を促進する中間宿主である可能性が示された。さらに構造解析から、2019-nCoVがヒトのアンジオテンシン変換酵素(ACE)2受容体に結合できる可能性が示唆された。Lancet誌オンライン版2020年1月30日号に掲載。 著者らは、入院患者9例(うち8例は海鮮卸売市場を訪れた症例)の気管支肺胞洗浄液サンプルと培養分離株の次世代シークエンシングを行った。これらの症例から全体および部分的な2019-nCoVゲノムシークエンスを取得し、2019-nCoVゲノムとほかのコロナウイルスの系統解析を用いてウイルスの進化について同定し、可能性のある起源を推定した。 主な結果は以下のとおり。・9例から得られた2019-nCoVの10のゲノム配列は非常に類似し、同一性は99.98%以上だった。・2018年に中国東部の舟山で収集された2匹のコウモリ由来の重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(bat-SL-CoVZC45、bat-SL-CoVZXC21)は、2019-nCoV と88%の同一性であった。しかし、SARS-CoV(約79%)およびMERS-CoV(約50%)とは同一性は低かった。・系統解析により、2019-nCoVはβコロナウイルス属サルべコウイルス亜属に分類され、最も近縁のbat-SL-CoVZC45およびbat-SL-CoVZXC21より比較的長い分岐長を有し、SARS-CoVとは遺伝的に異なることが認められた。・ホモロジーモデリングから、2019-nCoVはキーである残基におけるアミノ酸変化にもかかわらず、受容体結合ドメイン構造がSARS-CoVと似ていることがわかった。

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新型コロナウイルス、ヒト-ヒト感染は12月中旬から/NEJM

 中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染による肺炎(NCIP)について、中国疾病管理予防センターのQun Li氏らが、2020年1月22日までにNCIPが確認された425人について調べ、疫学的特徴を明らかにした。平均潜伏期間は5.2日、基本再生産数の推定値は2.2で、早期段階では7.4日ごとに感染者が倍増していたことなどが判明したという。著者は「これらの情報は、2019年12月中旬から濃厚接触(close contact)によるヒト-ヒト感染が起きていたというエビデンスを示すものであった」と述べ、「もし同様の感染力がほかでも起きているようなら、感染を減らしアウトブレークをコントロールするには相当な努力が必要になるだろう。リスク集団で感染予防・抑制の手段を講じなければならない」と指摘した。NEJM誌オンライン版2020年1月29日号掲載の報告。2020年1月22日までに検査で確認・報告されたNCIP感染者425人を調査 研究グループは、2020年1月22日までに検査で確認・報告されたNCIP感染者425人について、人口統計学的特性、曝露歴、病状経過について情報収集し分析した。 症例の特徴を描出し、鍵となる疫学的遅延分布を推定。指数関数的に増加している時期に、疫学的患者倍加時間と基本再生産数を推定した。2019年12月中の感染者は47人、そのうち55%が武漢海鮮卸売市場と関連 感染が確認された初期の425人は、年齢中央値59歳(範囲:15~89歳)、男性が56%だった。2019年12月31日までの感染者は47人(11%)で、そのうち26人(55%)について武漢華南海鮮卸売市場との関連が認められた。一方、1月1日以降の感染者(~11日:248人、12~22日:130人)で同関連が認められたのは8.6%だった。 平均潜伏期間は5.2日(95%信頼区間[CI]:4.1~7.0)で、感染者の95パーセンタイルが12.5日であった。また、早期の段階では、7.4日で感染者が倍増した。 連鎖感染の連続症例について、その発症間隔の予測値は7.5日(95%CI:5.3~19)だった。基本再生産数の予測値は、2.2(同:1.4~3.9)だった。

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新型コロナウイルス肺炎99例の疫学的・臨床的特徴/Lancet

 中国・武漢市金銀潭医院のNanshan Chen氏らは、2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)による肺炎の疫学的・臨床的特徴を調べるため、自院の全症例について調査した。その結果、2019-nCoVは併存疾患のある高齢男性が感染するリスクが高く、急性呼吸窮迫症候群などの重症で致命的な呼吸器疾患を引き起こす可能性があることが示唆された。Lancet誌オンライン版2020年1月30日号に掲載。 著者らは、2020年1月1~20日に武漢市金銀潭医院で2019-nCoVが確認された全症例について後ろ向き調査を実施した。症例はリアルタイムRT-PCRで確認し、疫学的、人口統計学的、臨床的、放射線学的特徴および検査データを解析した。アウトカムは2020年1月25日まで追跡。 主な結果は以下のとおり。・2019-nCoV肺炎の99例のうち、49例(49%)が海鮮卸売市場を訪れていた。・平均年齢は55.5歳(SD:13.1歳)、男性67例、女性32例であった。・リアルタイムRT-PCRにより、全症例で2019-nCoVが検出された。・50例(51%)は慢性疾患を有していた。・症状は、発熱82例(83%)、咳嗽81例(82%)、息切れ31例(31%)、筋肉痛11例(11%)、錯乱9例(9%)、頭痛8例(8%)、咽頭痛5例(5%)、鼻漏4例(4%)、胸痛2例(2%)、下痢2例(2%)、悪心・嘔吐1例(1%)であった。・画像検査では、74例(75%)に両側性肺炎、14例(14%)に多くの斑状およびすりガラス状の陰影、1例(1%)に気胸が認められた。・17例(17%)が急性呼吸窮迫症候群を発症し、そのうち11例(11%)が短期間で悪化し多臓器不全で死亡した。

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新型コロナウイルス、推計感染者数は約7万6,000人か/Lancet

 中国湖北省・武漢市で発生し、急速に拡大している新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症を巡り、中国・香港大学李嘉誠医学院のJoseph T Wu氏ら研究グループは、2019年12月以降の感染の広がりについて予測。1月25日時点で、武漢市および周辺都市における感染者数は約7万6,000人に上ると見られる推計値を発表した。なお、中国保健当局が2月4日付で公表した中国国内の感染者数は約2万400例で、本研究の推計値とは3倍超の大きな開きがある。Lancet誌オンライン版1月31日号掲載の報告。 研究グループは、中国疾病管理予防センターが公表した症例報告数を基に、2019年12月1日~20年1月25日の間に、武漢市から国内外にさまざまな交通機関を利用して移動した人の追跡データを分析、移動先で確認された症例数からモンテカルロ法によって推定値を算出した。 主な結果は以下のとおり。・推定基本再生産数は2.68(95%信頼区間[CI]:2.47~2.86)。・感染者数が2倍となるのに要したのは6.4日であった(95%CI:5.8~7.1)。・これらの計算から、武漢の患者数は1月25日時点で7万5,815人と推定(95%CI:3万7,304~13万330)。・武漢以外の主要都市でも局所的な感染の流行が見られ、重慶461例(95%CI:227~805)、北京113例(95%CI:57~193)、広州111例(95%CI:56~191)、上海98例(95%CI:49~168)、深セン80例(95%CI:40~139)などと推定。 著者らは、「人口レベルおよび個人レベルの両方で実質的かつ公衆衛生的な介入が即座に実施されなければ、中国と密接な交通輸送手段を有する海外の大都市においても、今後アウトブレイクの中心となる可能性がある」と述べている。

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新型コロナウイルスはどうヒト-ヒト感染するのか、親子感染の症例/NEJM

 中国・武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(2019-nCoV)が、世界を巻き込んだ健康懸念になっている。ヒト-ヒト感染の事例も次々と明らかになっている中、ベトナム・ホーチミン市パスツール研究所のLan T. Phan氏らの研究グループが、ベトナムを訪れていた中国人家族1例について、親子間の感染に関する経緯と臨床転帰を報告した。NEJM誌2020年1月28日号オンライン版に掲載。 報告症例は、武漢市から旅行でホーチミン市を訪れていた中国人男性(65歳)とその家族について。男性は、高血圧や2型糖尿病、心血管疾患の持病があった。男性は妻と共に13日からベトナムに入り、飛行機や電車、タクシーなどを利用しながら4都市を旅行した後、同国で暮らす息子(27歳)と17日に合流し、ホテルの同室で3日間共に過ごしたが、17日時点で発熱があったという。 一方、息子にも20日時点で咳と発熱の症状が出始め、嘔吐や軟便の症状が見られた。22日、男性と息子が39度の発熱でホーチミン市内の病院に救急搬送された。 男性については、RT-PCR法によって新型コロナウイルスに感染していることが明らかになった。入院時の胸部X線検査では、左肺上葉に浸潤が確認された。男性は、25日に呼吸困難を来したものの、その後症状は改善した。一方、息子については、検査の結果インフルエンザウイルスおよびデング熱はいずれも陰性だったが、新型コロナウイルスに陽性の結果が出た。容体は23日以降安定している。なお、2人と同行していた男性の妻については、旅行中からこれまでの間に症状は出なかった。また、この旅行中に計28人の濃厚接触者を確認したが、いずれも上気道感染は見られなかったという。 本症例では、最初に発症した男性が新型コロナウイルス発生と関連しているとみられる武漢市の海鮮市場(華南海鮮城)を訪れておらず、息子についても、同ウイルスが確認された地域への渡航および同地域からの帰国者との接触はなかったという。著者らは、「本症例は、新型コロナウイルスが男性から息子に感染したと見られること、潜伏期が3日以下であったことを示唆している」と述べている。

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新型コロナウイルスから医療現場を守るために/日本医師会

 相次ぐ新型コロナウイルス感染の報告を受け、厚生労働省は、国内でもヒト-ヒト感染が確認されたと発表した。日本医師会は、横倉 義武氏(会長)を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置し、対応している。 新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく「指定感染症」(二類感染症相当)と検疫法の「検疫感染症」に指定する政令が閣議決定され、診療可能な医療機関として、第2種感染症指定医療機関(348施設)、第1種感染症指定医療機関(55施設)、特定感染症指定医療機関(4施設)が指定されている。 日本医師会・副会長の松原 謙二氏は、「武漢市から14日以内に帰国・入国した人あるいはこれらの人と接触した人で、咳や発熱などの疑わしい症状がある場合には、必ず医療機関を受診する前に、厚生労働省か最寄りの保健所に電話して指示を受けてほしい」と、正しい対応策の周知を呼び掛けた。・厚生労働省 電話相談窓口 電話番号:03-3595-2285(受付時間:9~21時) 日本医師会のホームページでは、新型コロナウイルス関連感染症に関する「患者さんへのお願い」として、掲示用の資料をダウンロードすることができる。・院内入口掲示用:患者さんへのお願い・院内掲示用:患者さんへのお願い

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新型肺炎で感染症2学会が声明「継続観察も、冷静な対応を」

 国内外で感染が拡大している新型コロナウイルス(2019-nCoV)を巡り、日本感染症学会と日本環境感染学会は、1月29日付で共同声明を出した。各学会員に対し、今後も本ウイルスについて継続的に観察および評価しつつも、「冷静な対応が必要」と呼び掛けている。 声明の主なポイントは以下のとおり。(1)感染症の専門家として冷静な対応を 情報が限られている中での難しい判断が必要だが、信頼できる情報を参考に本ウイルスの感染性、病原性を考慮した対応を指導してほしい。(2)2019-nCoVの病原性や伝播性が変化する可能性否定できず、継続観察が必要 2019-nCoVが、遺伝学的にSARS-CoVに近縁であることが報告されている。現段階で変異を起こしているという情報はないものの、外来遺伝子の獲得や突然変異により常に強毒化する可能性が考えられ、今後本ウイルスの病原性や伝播性が変化する可能性も否定できないことから、継続した観察が必要。(3)感染伝播の現状、広がりの可能性は推定難しい状況 現在、武漢市を中心に、ほぼ中国全土で感染例が報告されている。世界的には、日本をはじめ、アジア、米国、欧州など、20を超える国と地域で感染例が報告されている。これから数週間に渡って、検査人数の増加と相まって2019-nCoV感染患者の増加が予想されるが、感染源不明の2次感染例の検出頻度が重要な情報となる。2次感染例の推移を参考に、2019-nCoVの感染性および今後の広がりについての評価が重要となる。(4)2019-nCoVが直接原因の重症例・死亡例は、正しい評価困難 2019-nCoV感染例を巡っては、日々、刻々と状況が変化し、正確な数を把握できないことから、致死率および重症化率を推定することは困難。しかし、死亡数だけを見て国民がパニックになることが最も危険である。気を緩めることなく、感染症の専門家としての知識と経験を総動員し、冷静な対応が求められる。(5)感染対策は、標準予防策+飛沫・接触予防策の徹底 コロナウイルスは原則として飛沫感染で伝播し、現時点では空気感染の可能性はきわめて低い。そのため、感染対策は標準予防策に加えて飛沫・接触予防策の徹底が基本となる。ウイルスで汚染した手指を介した目・口の粘膜からの感染伝播にも注意。気管吸引、挿管などエアロゾル発生リスクが高い処置を行う場合には、一時的に空気感染のリスクが生じると考えられ、N95マスクを含めた空気予防策の実施も必要。(6)指定感染症となった2019-nCoV、公費負担で隔離可能に 1月28日、2019-nCoVを指定感染症とする政令が閣議決定され、2月1日から施行される。これにより、2019-nCoV患者を医療費の公費負担の下で隔離できるようになる。また、武漢市など中国からの訪問者で、臨床症状や検査から肺炎が疑われる場合には、ただちに行政機関に報告する必要がある。(7)2019-nCoV関連の重要情報 1.厚生労働省:新型コロナウイルスに関するQ&A 2.国立感染症研究所 3.CDC情報WHOが30日付で緊急事態宣言 WHO(世界保健機関)は、1月30日、2019-nCoVについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。緊急事態宣言は、アフリカ・コンゴで発生したエボラ出血熱の感染が拡大した2019年7月に出されて以来で、今回で6例目となる。

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新型肺炎で緊張高まる中、感染症予防連携プロジェクトが始動

 東京オリンピック・パラリンピックを迎える年となる2020年1月、日本感染症学会・日本環境感染学会は感染症予防連携プロジェクト「FUSEGU(ふせぐ)2020」を発足、発表会を行った。年頭から中国での新型コロナウイルス感染がニュースとなり、図らずとも感染症への一般の関心が高まる中でのスタートとなった。 挨拶に立った日本感染症学会理事長の舘田 一博氏は、本プロジェクトの意義を「オリンピックイヤーを迎え、マスギャザリング(一定期間、限定された地域において同一目的で多人数が集まること)に向けた注意喚起が重要。既に各学会・団体がさまざまな取り組みをしているがそれを連携させ、産官学が協働して一般市民を巻き込んで情報提供をしていく必要がある」と述べた。 東京オリンピックを昨年行われたラグビーW杯と比較すると、参加国・ボランティア数において約10倍の規模となり、政府は2020年の来日外国人旅行者数を過去最高の4,000万人と見込む。これまでもマスギャザリングにおける集団感染は頻繁に発生しており、前回のリオオリンピックではジカ熱、昨年のラグビーW杯では髄膜炎菌感染症の患者が出た。会期中のすべての感染症発生を防ぐことは難しくとも、予防と早期発見によりアウトブレイクにまで至らせないことが重要となる。 「FUSEGU」の具体的な活動として、昨年夏には患者の症状から考えられる感染症を解説する医療者向けサイト「感染症クイック・リファレンス」を開設したほか、一般市民/医療関係者/大会関係者/メディア関係者に区分けしたうえで「事前に受けておきたいワクチン」の推奨度を示す一覧表を作成し、メディア側にも発信を求めた。今後は「感染症に関する意識調査」をはじめ、大学生を対象にした感染症カレッジ、市民公開講座などを行っていく予定だ。 舘田氏は「1学会ができることには限界がある。各学会に連携を呼びかけたところ、すでにほかの9学会、製薬企業を中心とした12社から賛同表明をいただいた。今後もさらに各団体との連携を図っていきたい」とまとめた。

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新型コロナウイルス、感染患者の臨床的特徴とは?/Lancet

 中国湖北省・武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染が、急速に拡大している。中国・金銀潭医院のChaolin Huang氏らは、2020年1月2日までに新型コロナウイルスの感染が確認された入院患者について、現段階で判明している疫学的特徴と臨床転帰について前向きに調査、分析した。Lancet誌オンライン版1月24日号掲載の報告。 調査対象は、新型コロナウイルス感染が疑われ、武漢市内の指定病院に入院した患者のうち、RT-PCR法および次世代シーケンシングによって同症と特定された41例で、国際重症急性呼吸器・新興感染症協会(ISARIC)のデータを基に分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・41例中30例(73%)が男性であった。・年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲:41.0~58.0)。・13例(32%)が何らかの基礎疾患を有していた(糖尿病:8例、高血圧:6例、心血管疾患:6例)。・27例(66%)が海鮮市場(華南海鮮城)に何らかの直接的関係があった。・最初に特定された症例の発症日は2019年12月1日で、当該例ではほかの家族に発熱や呼吸器症状は見られなかったが、その後1例の家族クラスターが判明している。・発症時の一般的症状は、発熱(98%)、咳(76%)および筋肉痛または疲労(44%)で、喀痰や頭痛、喀血および下痢などもわずかに見られた。・全症例で肺炎があり、胸部CTで異常な所見が認められ、98%で両側性病変を有していた。・40例中22例(55%)で呼吸困難が見られ、発症から呼吸困難までの期間の中央値は8.0日(四分位範囲:5.0~13.0)。・合併症として、急性呼吸促迫症候群(29%)、RNAaemia(15%)、急性心障害(12%)、2次感染(10%)などが見られた。・32%がICUに入り、15%が死亡した。 著者らは、本研究以降も感染者および死亡者数が急速に増加していることを踏まえ、「今回の新型コロナウイルスが効率的なヒト-ヒト感染能力を獲得したのではないかと懸念している」とし、「パンデミックの可能性があるため、今後の宿主適応、ウイルスの進化、感染性、伝染性および病原性を注意深く監視しなければならない」と述べている。

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国内2例目の新型肺炎感染確認、厚労省が積極的疫学調査実施へ

 中国湖北省・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が急速に広がっている問題で、厚生労働省は24日、日本国内で2例目となる新型コロナウイルスに関連した感染症の症例が確認されたことを発表した。患者は武漢市から渡航した40代男性で、今月19日に来日。22日に発熱、咽頭痛があったため医療機関を受診したところ、肺炎像を認め、東京都内の医療機関に入院。国立感染症研究所が調べたところ、今日未明に新型肺炎の感染が確認された。 新型肺炎を巡っては、これまでに少なくとも18人が死亡、感染者は中国本土だけでも600人超が確認されている。厚労省は、23日付で「新型コロナウイルスに関する検査対応について(協力依頼)」を発布。感染研が新型コロナウイルスの病原体検出のためのPCR用プライマーを作成して地方衛生研究所へ送り、医療機関に検査協力を呼び掛けるなど、積極的疫学調査に乗り出した。 一方、WHO(世界保健機関)は、日本時間の24日未明に緊急委員会を開いて協議した結果、現段階では「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC:Public Health Emergency of International Concern)」には該当しないと発表している。 中国は今日から春節で、30日まで1週間の大型連休に入る。日本国内はもとより、近隣のアジア諸国や米国でも新型肺炎の感染者が確認されている中、人の移動が増えることでさらに感染が拡大する恐れもある。 旅行者が不調を訴え受診した際には、武漢市への渡航歴や、「武漢市への渡航歴があり、発熱かつ呼吸器症状を有する人」との接触歴を聴取するなど、慎重に疑い例のスクリーニングを実施し、確定例および疑い例に対しては万全の感染対策を講じていただきたい。また、厚労省のウェブサイトでも特設ページで医療機関向けの情報が随時更新されている。

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新型コロナウイルスに関連する患者への対応について/厚生労働省

 中国・湖北省武漢市当局は1月20日現在、新型コロナウイルスの感染者が136人増えて198人となり、3例の死亡が確認されたことを発表している。 一方わが国でも、神奈川県内の医療機関を受診した武漢市の滞在歴がある肺炎患者において、国内で初めて新型コロナウイルス陽性の結果が確認された。厚生労働省が発表している患者の情報は以下のとおり。■患者概要・年代:30代・性別:男性・居住都道府県:神奈川県・症状:1月3日から発熱あり。6日に帰国し、同日に医療機関を受診。10日から入院。15日に症状が軽快し、退院。・滞在国:中華人民共和国(湖北省武漢市)・滞在国での行動歴:本人からの報告によれば、「武漢市の海鮮市場(華南海鮮城)には立ち寄っていない」とのこと。ただし中国において、詳細不明の肺炎患者と濃厚接触の可能性がある。■疑い患者に関しても、保健所へ相談など慎重な対応を 日本医師会に向けて、厚生労働省健康局結核感染症課から「新型コロナウイルスに関連した肺炎患者の発生に係る注意喚起について」(令和2年1月17日 事務連絡)が発出されている。 新型コロナウイルスに関連した肺炎の疑いがある患者への対応に当たっては、「中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する対応と院内感染対策」を参考に、画像検査などで肺炎と診断された場合には、「疑似症サーベイランスの運用ガイダンス(第三版)」における「重症」の定義に合致しない場合でも、同サーベイランスの運用について保健所へ相談するよう呼び掛けている。

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中国で原因不明の肺炎59例、厚労省が注意呼び掛け

 中国・湖北省武漢市で、先月中旬から下旬にかけて、原因となる病原体が特定されていない肺炎の発生が複数報告されている。厚生労働省によると、現在までにヒト-ヒト感染は明らかになっておらず、爆発的な広がりが懸念される段階ではないが、引き続き情報収集を進めている。 国立感染症研究所などが今月5日時点でまとめた内容によると、症例数は59例で、臨床徴候と症状は主に発熱。いずれも2019年12月12日~29日に発症したとみられ、このうち7例が重症となっている。感染経路は不明であるが、ヒト-ヒト感染については明らかな証拠がなく、医療従事者における感染例も確認されていない。発生場所の疫学的な特徴としては、海鮮市場と関連した症例が多いとのこと。当該の海鮮市場(華南海鮮城)は、野生動物を販売する区画もあるが、現在は閉鎖中という。 なお、現段階でインフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)および中東呼吸器症候群(MERS)の可能性はいずれも否定されている。 日本は年末年始の休暇を利用した海外渡航者が一段落したところだが、中国では人の出入りが大きく増える春節(旧正月の大型連休)を2週間後に控えている。厚労省健康局結核感染症課は、「現段階においては、人から人への感染が確認されていないので、通常の診療で対応できると考える。ただし、咳や発熱等の症状がある患者が来院したら、直近の渡航歴はしっかり確認していただきたい。また、インフルエンザなどが否定され、原因が明らかでない肺炎患者を診察した際には、各自治体に報告してほしい」と話している。

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