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第22回 希望者は全員無料へ 政府検討の新型コロナワクチン接種体制

<先週の動き>1.希望者は全員無料へ 政府検討の新型コロナワクチン接種体制2.季節性インフルエンザ、疑い例をかかりつけ医で診療できる体制作りへ3.新型コロナウイルス感染拡大による病床稼働率低下の実態4.厚生労働事務次官に旧・厚生省出身の樽見 英樹氏が就任5.新型コロナによる診療報酬上の臨時的対応で、病院の実績要件など緩和1.希望者は全員無料へ 政府検討の新型コロナワクチン接種体制現在、国内外で研究が進められている新型コロナウイルスワクチンだが、内閣府は8日、7,000億円超の予備支出について閣議決定した。ワクチン購入費として充てる見込み。ワクチンの優先接種については、1)新型コロナ患者に直接対応する医療従事者、2)重症化リスクの高い65歳以上の高齢者および基礎疾患がある人を接種順位上位に位置付けている。ゆくゆくは希望者全員に無料で接種できるようにする案を検討。実施主体は市町村で、費用は全額国が負担する方針。また、重篤な副反応による健康被害などが生じた場合、健康被害救済を目的とした新たな立法措置を検討している。(参考)新型コロナウイルス感染症対策分科会(第8回)議事次第(内閣府)コロナワクチン、希望者全員無料に 政府検討(日本経済新聞)2.季節性インフルエンザ、疑い例をかかりつけ医で診療できる体制作りへ厚生労働省は4日、都道府県に対して事務連絡「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」を発出した。季節性インフルエンザは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との鑑別が困難であり、インフルエンザ流行時期に備えた体制整備を行う必要がある。各都道府県に対して、発熱患者などが帰国者・接触者相談センターを介することなく、かかりつけ医などの身近な医療機関に相談・受診し、必要に応じて検査を受けられる体制について、10月中を目途に整備することを求めている。(参考)次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について(厚労省)3.新型コロナウイルス感染拡大による病床稼働率低下の実態厚労省は4日に今年度5月分の病院報告を発表した。報告によると、2020年3月から5月にかけて、病院の1日平均外来患者数並びに1日平均在院患者数が減少し続けていた。一般病床、介護病床をはじめ、感染病床を除くすべての病床で平均在院日数が延長していることが明らかとなった。(参考)病院報告(令和2年5月分概数)結果の概要(厚労省)4.厚生労働事務次官に旧・厚生省出身の樽見 英樹氏が就任厚労省は4日、鈴木 俊彦事務次官の退任と後任人事を発表した。新しく厚生労働事務次官に就任するのは樽見 英樹新型コロナウイルス感染症対策推進室長。今回の次官人事により、4代続けて旧・厚生省出身の官僚が就任することとなった。樽見氏の後任には吉田 学氏が就任する。通常の定期異動時期は7月であり、9月に厚労省の次官人事がずれ込んだのは新型コロナウイルス感染拡大のためで、ようやく発令となったと考えられる。(参考)厚労次官に樽見氏(時事通信)5.新型コロナによる診療報酬上の臨時的対応で、病院の実績要件など緩和厚労省は8月31日付けで、事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)」を都道府県などに発出した。今回の新型コロナウイルス感染拡大によって、診療実績などの要件が満たせなくなった場合について、新たな解釈を発表。COVID-19患者などを受け入れた医療機関では、平均在院日数、重症度、医療・看護必要度、在宅復帰率および医療区分2または3の患者割合などについて、当該要件を満たさなくなった場合においても、ただちに施設基準の変更届出を行わなくてもよいなど、現場の声を反映したもの。加算要件に必要な研修会についても、実施予定を示すことで、新型コロナの影響により開催されなかったとしても、届出は可能であるとしている。(参考)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)(厚労省)

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COVID-19での嗅覚・味覚障害、アジア人と白人で3倍の差:メタ解析

 新型コロナウイルス陽性例ではかなりの割合で嗅覚・味覚障害が認められる。しかし、発現率は報告によって大きく異なり、その理由は不明である。米国・ネバダ大学リノ校のChristopher S. von Bartheld氏らは、系統的レビューとメタ解析を実施し、嗅覚・味覚障害の有病率について統合解析を行ったところ、白人がアジア人の3倍高いことがわかった。ACS Chemical Neuroscience誌オンライン版2020年9月1日号に掲載。COVID-19の嗅覚・味覚障害の有病率は白人54.8%、アジア人17.7% 著者らは、米国国立衛生研究所のCOVID-19ポートフォリオを検索し、COVID-19患者の嗅覚・味覚障害の有病率を報告した研究を調査した。3万8,198例を含む104件の研究を適格と判断し、系統的レビューとメタ解析を行った結果、推定ランダム有病率は、嗅覚障害が43.0%、味覚障害が44.6%、全体で47.4%であった。 また、年齢、性別、疾患重症度、人種による嗅覚・味覚障害の有病率への影響を調べたところ、高齢者、男性、重症者(入院患者)で有病率が低かった。人種による差が最も大きく、白人(54.8%)がアジア人(17.7%)の3倍であった。 著者らは、ウイルス変異株(D614G)では感染力が異なる可能性のほか、宿主側ではウイルス結合侵入蛋白の人種別の変異株が嗅上皮および味蕾へのウイルス侵入を促進する可能性を挙げ、「どちらもCOVID-19パンデミックにおけるウイルス感染力、診断、管理に大きな影響を与える」としている。

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新型コロナワクチンAZD1222、日本での第I/II相臨床試験を開始/アストラゼネカ

 9月4日、アストラゼネカは、新型コロナウイルスワクチンAZD1222の日本国内における第I/II相臨床試験を開始したことを発表した。国内の複数の施設で18歳以上の被験者約250名を対象に実施し、日本人に接種した際の安全性と有効性を評価していく。 AZD1222は、アストラゼネカと英オックスフォード大学と共に開発を進めており、世界各国で治験を行っている。現在、南アフリカで第I/II相試験、英国で第II/III相試験、ブラジル・米国で第III相試験を実施している。

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ACE阻害薬とARBがCOVID-19重症化を防ぐ可能性/横浜市立大学

 新型コロナウイルスは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して細胞に侵入することが明らかになっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とレニン-アンジオテンシン系(RAS)との関連が注目されている。ACE阻害薬またはARBの服用とCOVID-19患者の重症度を解析 今回、横浜市立大学附属 市民総合医療センター 心臓血管センターの松澤 泰志氏らの研究グループが、COVID-19罹患前からのACE阻害薬またはARBの服用と重症度との関係について、多施設共同後ろ向きコホート研究(Kanagawa RASI COVID-19 研究)を行った。Hypertension Research誌オンライン版2020年8月21日号での報告。 本研究では、2020年2月1日~5月1日の期間、神奈川県内の6医療機関(横浜市立大学附属市民総合医療センター、神奈川県立循環器呼吸器病センター、藤沢市民病院、神奈川県立足柄上病院、横須賀市立市民病院、横浜市立大学附属病院)に入院したCOVID-19患者151例を対象に、病態に影響を与える背景や要因の解析が行われた。 追跡調査の最終日は2020年5月20日で、すべてのデータは医療記録から遡及的に収集された。高血圧症およびほかの既往歴の情報は、通院歴、入院時の投薬、およびほかの医療機関からの提供内容に基づいている。ACE阻害薬/ARBがCOVID-19患者の意識障害を減らす可能性 COVID-19罹患前からのACE阻害薬またはARBの服用と重症度との関係について研究した主な結果は以下のとおり。・平均年齢は60±19歳で、患者の59.6%が男性だった。151例のうち、39例(25.8%)が高血圧症、31例(20.5%)が糖尿病、22例(14.6%)にACE阻害薬またはARBが処方されていた(ACE阻害薬:3例[2.0%]、ARB:19例[12.6%])。・151例中、14例(9.3%)の院内死があり、14例(9.3%)で人工呼吸、58例(38.4%)で酸素療法が必要だった。入院時、肺炎に関連する意識障害は14例(9.3%)、収縮期血圧<90mmHgに関連する意識障害は3例(2.0%)で観察され、少なくとも13例において、新型コロナウイルス感染が原因とされた。22例(14.6%)がICUに入院した。・患者全体を対象とした単変量解析では、65歳以上(オッズ比[OR]:6.65、95%信頼区間[CI]:3.18~14.76、p<0.001)、心血管疾患既往(OR:5.25、95%CI:1.16~36.71、p=0.031)、糖尿病(OR:3.92、95%CI:1.74~9.27、p<0.001)、高血圧症(OR:3.16、95%CI:1.50~6.82、p=0.002)が、酸素療法以上の治療を要する重症肺炎と関連していた。・多変量解析では、高齢(65歳以上)が重症肺炎と関連する独立した要因だった(OR:5.82、95%CI:2.51~14.30、p<0.001)。・高血圧症患者を対象とした解析の結果、ACE阻害薬またはARBをCOVID-19罹患前から服用している患者では、服用していなかった患者よりも、主要評価項目の複合アウトカム(院内死亡、ECMO使用、人工呼吸器使用、ICU入室)における頻度が少ない傾向だった(14.3%vs.27.8%、p=0.30)。また、副次評価項目については、COVID-19に関連する意識障害が有意に少なかった(4.8%vs.27.8%、p=0.047)。 著者は「われわれの知る限りでは、これがわが国で初めてCOVID-19患者の臨床アウトカムを検討した研究だ。今回、炎症に対するRAS阻害薬の保護効果が、ACE阻害薬/ARBの使用と意識障害の発生減少を関連させる1つのメカニズムである可能性が明らかになった」と記している。

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COVID-19流行下、3次医療機関でのがん患者の入院は安全か/JCO

 オーストリア・ウィーンの3次医療機関で、COVID-19に対する政府や施設の感染対策実施後に、入院中のがん患者のSARS-CoV-2感染率を調査したところ、一般集団と同様であり、また、がん以外の患者よりも低かったことが報告された。今回の結果から、人口全体および施設の厳格な感染対策が実施された場合には、大規模な3次医療機関において積極的ながん治療や通院が実現可能で安全であることが示唆された。Medical University of ViennaのAnna S. Berghoff氏らによる報告が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年8月14日号に掲載された。 本研究の対象は、2020年3月21日~5月4日、当院で定期的に鼻腔または咽頭スワブを用いたRT-PCRによりSARS-CoV-2 RNAを検査していたがん患者。このコホートでの結果を、代表的な全国ランダムサンプル研究のコホート(対照コホート1)および当院のがん以外の患者のコホート(対照コホート2)のSARS-CoV-2の感染率と比較した。 主な結果は以下のとおり。・連続した1,016例のがん患者に1,688回のSARS-CoV-2検査を実施した。1,016例中270例(26.6%)がネオアジュバントまたはアジュバント治療を受け、560例(55.1%)が緩和療法を受けていた。・1,016例中53例(5.2%)がCOVID-19の疑われる症状を自己申告し、4例(0.4%)でSARS-CoV-2が検出された。SARS-CoV-2陽性の4例とも当科での検査時には無症状で、2人は症候性COVID-19から回復した患者であった。また4例中3例で、陽性判定から14〜56日後に陰性となった。・がんコホートの対照コホート1に対するSARS-CoV-2感染の推定オッズ比は1.013(95%CI:0.209〜4.272、p=1)、対照コホート2のがんコホートに対する推定オッズ比は18.333(95%CI:6.056〜74.157)であった。 著者らは「無症状のウイルス保有者を発見し、ウイルス蔓延を回避するために、がん患者の定期的なSARS-CoV-2検査が勧められる」としている。

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レムデシビル、中等度COVID-19への効果は?/JAMA

 中等度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、5日間のレムデシビル投与は標準的治療に比べ、11日目の臨床状態の改善が統計学的に有意であることが示された。10日間投与は標準的治療に比べ、同改善について統計学的な有意差は認められなかったという。ドイツ・ミュンヘン工科大学Rechts der Isar大学病院のChristoph D. Spinner氏らが、596例の入院患者を対象に行った国際共同無作為化試験で明らかにした。レムデシビルは、重症COVID-19患者を対象としたプラセボ対照試験で、臨床的ベネフィットがあることが示されているが、中等度の患者への効果は不明であった。なお、5日間投与で有意差が示された結果について著者は、「示された有意差の臨床的意義については不確実である」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年8月21日号掲載の報告。レムデシビル5日、10日投与の有効性を標準的治療と比較 研究グループは、レムデシビル5日間または10日間投与の投与開始後11日時点の臨床状態について、標準的治療と比較する非盲検無作為化試験を行った。 2020年3月15日~4月18日に、米国、欧州、アジアの105病院で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による中等度のCOVID-19肺炎を発症した入院患者を登録した。中等度COVID-19肺炎の定義は、X線所見による肺浸潤と室内気動脈血酸素飽和度94%超とした。 被験者を1対1対1の割合で無作為に3群に分け、レムデシビル(初回200mg/日、翌日から100mg/日)10日間静脈投与(197例)、同5日間静脈投与(199例)、標準的治療(200例)を、それぞれ実施した。 主要エンドポイントは、11日目の臨床状態で、7ポイント順序尺度(死亡[カテゴリー1]~退院[カテゴリー7])で評価した。レムデシビル群と標準的治療群の差については、比例オッズモデルを用いてオッズ比(OR)を求めた。 最終フォローアップは2020年5月20日であった。レムデシビル10日投与群は標準的治療群と有意差なし、5日群で有意差 無作為化を受けた596例のうち、584例が試験を開始し、レムデシビル投与または標準的治療を受けた(年齢中央値57歳[四分位範囲:46~66]、女性227例[39%]、心血管疾患56%、高血圧症42%、糖尿病40%)。試験を完了したのは533例(91%)だった。レムデシビル5日群の投与期間中央値は5日、10日群は6日だった。 11日目の臨床状態は、レムデシビル5日群が標準的治療群に比べ良好で、7ポイント順序尺度で評価したORは1.65(95%信頼区間[CI]:1.09~2.48、p=0.02)だった。 一方で、レムデシビル10日群については、11日目の臨床状態は、標準的治療群と有意差は認められなかった(Wilcoxon rank sum検定のp=0.18)。 なお、28日目までに報告された死亡は、レムデシビル5日群2例(1%)、レムデシビル10日群3例(2%)、標準的治療群4例(2%)だった。また、レムデシビル治療群では標準的治療群と比べて、悪心(レムデシビル群10%vs.標準的治療群3%)、低カリウム血症(6% vs.2%)、頭痛(5% vs.3%)の発生頻度が高かった。

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新型コロナワクチンの国内第I相試験を開始/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソンは2020年9月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2に対するワクチン候補「Ad26.COV2.S」を用いた国内第I相臨床試験の開始について発表した。 本試験は、20~55歳までの健康な成人および65歳以上の高齢者の計250名を対象とし、「Ad26.COV2.S」の接種による安全性、反応原性、免疫原性の評価を行う。 この「Ad26.COV2.S」によるサル対象の前臨床試験は米国で行われており、一回の接種で中和抗体を含む強力な免疫反応を誘発し、接種後に感染防御することが明らかにされている。この良好なデータに基づき、7月から米国とベルギーにて第I/IIa相試験を実施しており、9月には第III相試験へと移行する予定。また、オランダ、スペイン、ドイツでの第IIa相試験も予定されている。「Ad26.COV2.S」について SARS-CoV-2のワクチン候補である「Ad26.COV2.S」は、アデノウイルスの血清型26(Ad26)を使用した組換体ベクターワクチン。同社のAdVac(R)技術(新規ワクチン候補の迅速な開発と最適なワクチン候補の大量生産を可能にする)を活用し、非増殖型アデノウイルス26をベクターとして、SARS-CoV-2に特徴的なスパイクタンパク質の遺伝子情報を組み込み、接種後に体内の免疫系を刺激してSARS-CoV-2に対する抗体を作り出す。この技術は、欧州で承認されたエボラウイルスワクチン、さらに開発中のジカウイルス、RSウイルス、およびHIVの各ワクチン候補における臨床試験でも使用され、これまで9万例以上に投与した実績を有している。

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第23回 免許証サイズ、5ドル15分のCOVID-19検査を米国が許可して早速大量購入~入館許可証の役割を担う?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査の進歩は目覚ましく、免許証ほどの大きさで他に装置不要の持ち運び自由なカード型抗原検査BinaxNOW COVID-19 Ag Card(以下BinaxNOW COVID-19)を米国FDAが先週水曜日26日に認可しました1)。メーカーのAbbott(アボット)社は、15分足らずで結果が判明して費用わずか1コイン(5ドル)程の同検査を9月には数千万個、10月からは毎月5,000万個を出荷する予定です。安かろう悪かろうというわけではなく、COVID-19が疑われる症状が生じてから7日以内の患者を医療従事者がBinaxNOW COVID-19で検査した試験での検出感度は97.1%、特異度は98.5%でした。鼻ぬぐい液のウイルス抗原を検出するBinaxNOW COVID-19は医師や看護師をはじめとして保健室の先生・薬剤師・企業の医療担当の専門家などの医療の心得のある人が必要に応じてそれぞれの持ち場で使うことができます。それら医療従事者による検査を受けた人はAbbott社が提供するNAVICAというアプリを使ってその結果をスマートフォン等のiPhone/Android携帯機器にQRコードと共に以下の写真のように表示し、検査結果の提示を求める施設へ入る時に非感染証明証として提示することができます。感染を示す陽性結果の場合には隔離して受診することを求めるメッセージが表示されます。検査証明は一定期間が過ぎると失効します。米国政府もぞっこん?米国政府はBinaxNOW COVID-19を相当有望視して高く買っているらしく、FDA認可の翌日27日に1億5,000回分を7億6,000万ドルで買う契約をAbbott社と交わしました。調達分は学校に配備したり必要に応じて供給される予定です2)。検査結果を入室許可証とする取り組みを大学が開始NAVICAが表示するような陰性検査結果を入館許可証として使って感染者との接触を未然に防いで流行を食い止めつつ日常を取り戻そうとする取り組みは米国ですでに実行に移されています。6万人が通う米国・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校では、今学期週に2回の頻度で生徒や職員全員がCOVID-19の唾液検査を受け、構内の建物に入ることができるのは感染していないことを示す陰性結果を提示した人のみとしています3-5)。数時間以内に判明する検査結果は携帯電話にすぐに通知され、感染を示す陽性であれば10日間の隔離が必要となります。感染者と密に接した人の追跡もなされます。陽性の人は無料の食事や十分な支援と手当てを得て隔離期間を罪悪感なく安心して過ごすことができるようになっています。毎日2万人を検査するために同大学は獣医科施設を専用に模様替えしました。検査体制準備の予算は600万ドル、1回10ドルの検査の今学期の総費用は最大で1,000万ドルになる見込みです5)。今のところ検査は非常によく受け入れられていると同大学の化学者Martin Burke氏は科学ニュースThe Scientistに話しています5)。Burke氏は同校で使われている唾液検査の開発に携わりました。検査は果たして有効なのか?イリノイ大学のようにとにかくくまなく検査して感染者を早期発見して感染者にはしばらく待機してもらう取り組みが流行阻止の一翼を担いうることを裏付ける結果が米国メイン州でのキャンプ場で得られています。徹底的な検査に加えて感染食い止め対策も怠らなかった甲斐あり、そのキャンプ場が6月中旬から8月中旬の4回で迎えた宿泊小児やスタッフ合わせて1,022人の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者数はわずか3人のみでした6-8)。キャンプする小児と世話係は全員が到着前に検査を受け、陽性だった4人は自宅隔離10日間の後にキャンプに参加しました。キャンプ場へ到着してからすぐに検査は再度実施され、参加者は5~44人のグループに分かれて44~62日間のキャンプ生活を送りました。グループは家族のようなもので、別のグループの人と接する場合にはマスクを着用し、距離を保つことが求められました7)。キャンプ場へ到着後の再検査で世話係2人と小児1人の合計3人が陽性となり、陰性となるまで隔離されました。3人の所属グループの30人はしばらく隔離状態でキャンプ活動を続け、隔離中の検査で陽性は1人もおらず、陽性となった3人から他の参加者への感染は結局生じませんでした。参考1)Abbott's Fast, $5, 15-Minute, Easy-to-Use COVID-19 Antigen Test Receives FDA Emergency Use Authorization; Mobile App Displays Test Results to Help Our Return to Daily Life; Ramping Production to 50 Million Tests a Month 2)Trump Administration Will Deploy 150 Million Rapid Tests in 20203)Media advisory: On-campus COVID-19 testing available for faculty members, staff, students.4)COVID-19 briefing: Homegrown models inform university's safety measuresAUG5)U of Illinois Returns to School with 20,000 Saliva Tests Per Day/TheScientist6)Preventing and Mitigating SARS-CoV-2 Transmission - Four Overnight Camps, Maine, June-August 2020. MMWR. August 26, 20207)How four summer camps in Maine prevented COVID-19 outbreaks8)COVID-19 testing helps sleep-away summer camps to avoid outbreaks/Nature

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COVID-19治療薬レムデシビルの添付文書改訂

 8月31日、ギリアド・サイエンシズ社は同社が製造販売するレムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液/点滴静注用)の添付文書の一部記載を自主改訂した。改訂箇所は「重要な基本的注意」「相互作用」「副作用」の3つ。 改訂の詳細は以下のとおり。●重要な基本的注意 これまでの「Infusion Reaction」にかかる注意喚起を、「Infusion Reaction、アナフィラキシーを含む過敏症」へ変更し、後段にこれらの発現を回避できる可能性のある方法として、本剤の緩徐な投与を考慮することについて注意喚起を追加した。 ●相互作用 本剤とヒドロキシクロロキン硫酸塩(商品名:プラケニル、国内においてSARS-CoV-2 による感染症に対して未承認)及びクロロキン(国内未承認)との相互作用について「レムデシビルの抗ウイルス活性が低下する可能性がある」と注意喚起を追加した。●副作用 重大な副作用の事象名を、「Infusion Reaction」から「過敏症(Infusion Reaction、アナフィラキシーを含む)」へ変更し、これらの徴候及び症状について追加及び変更した(低血圧、嘔気、嘔吐、発汗、振戦等があらわれることがある。→ 低血圧、血圧上昇、頻脈、徐脈、低酸素症、発熱、呼吸困難、喘鳴、血管性浮腫、発疹、悪心、嘔吐、発汗、悪寒等があらわれることがある)。

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第21回 検査1日20万件など、安倍首相が最後にまとめたコロナ対策

<先週の動き>1.検査1日20万件など、安倍首相が最後にまとめたコロナ対策2.経営悪化で3,500診療所、1,000病院が無利子・無担保融資を利用3.医師労働時間短縮計画策定ガイドライン案が取りまとめられた4.自民党内に国民皆保険を守る国会議員連盟が発足5.“GLP-1ダイエット”製薬メーカーからも警告1.検査1日20万件など、安倍首相が最後にまとめたコロナ対策28日、新型コロナウイルス感染症対策本部による取りまとめ結果が、安倍 晋三首相の記者会見で発表された。季節性インフルエンザとの同時流行なども踏まえ、抗原簡易キットによる検査能力を1日20万件程度まで拡充させることや病床確保を弾力的に行うことなど、トータルパッケージとして今後の対策方針を打ち出した。さらに、2類相当の指定感染症として感染症法に基づく権限の運用について、政令改正も含め、柔軟に見直しを行っていく方針を固めた。今後、国際的な人的交流を部分的・段階的に再開するため、成田・羽田・関西空港における入国時の検査能力・体制の拡充を行うことを目指し、9月までに1万人超の検査能力を確保する見込み。10月を目処にビジネス目的の出国者が市中の医療機関において検査証明を迅速に取得するのを支援目的に、インターネットで予約・マッチングすることができる仕組みを構築することが打ち出されている。(参考)新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組(新型コロナウイルス感染症対策本部)新型コロナウイルス感染症対策本部(第42回)議事次第(内閣官房)政府、検査1日20万件に拡充へ 「コロナ対策パッケージ」公表(毎日新聞)2.経営悪化で3,500診療所、1,000病院が無利子・無担保融資を利用経営が悪化した病院向けに独立行政法人 福祉医療機構が実施している、無利子・無担保融資の決定件数が明らかとなった。7月21日時点で、3,538件の診療所で1,248億円、1,077件の病院で2,779億円に上り、これは全国8,200病院の1割強に当たる。政府は新型コロナウイルスの影響で経営が悪化した医療機関を支援するため、官民ファンド「地域経済活性化支援機構(REVIC)」を活用した新たな医療機関支援を開始するとし、福祉医療機構との連携協定の締結を行った。このスキームにより、REVICの経営ノウハウ提供など、地域の医療・福祉サービスの提供体制の維持・強化を図ることが可能となる。(参考)1000病院、無利子融資活用 診療所は3500件 受診減り経営悪化(日本経済新聞)地域経済活性化支援機構との連携協定の締結について~病院等事業者に対する経営支援~(福祉医療機構)病院経営動向調査(2020年6月調査) 新型コロナウイルス感染症の影響等に関する特別調査結果(同)3.医師労働時間短縮計画策定ガイドライン案が取りまとめられた28日、厚生労働省は「医師の働き方改革の推進に関する検討会」を開催した。これまで、2024年4月の新時間外労働規制の適用に向けて、医師の時間外労働の上限規制に関して、医事法制・医療政策における措置について、8回にわたって討議を重ねてきた。これまでの議論をもとに、今回「医師労働時間短縮計画策定ガイドライン(案)」がまとまった。今後、ガイドラインに沿って実際に医師の労働時間を短縮していくために、各医療機関内で取り組める事項について作成し、PDCAサイクルを進めていくこととなる。ガイドラインによれば、年間の時間外・休日労働時間数が960時間を超える医師の勤務する医療機関については、2024年までになるべく早期の計画策定が求められることとなる。(参考)医師労働時間短縮計画策定ガイドライン(案)(厚労省)第8回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料(同)4.自民党内に国民皆保険を守る国会議員連盟が発足27日、自民党有志による「国民皆保険を守る国会議員連盟」(会長・鴨下 一郎元環境相)の設立総会が自民党本部で開催された。呼びかけ人代表の鴨下一郎議員が会長として承認された。設立趣意書によると、「本議員連盟は、国民の健康を守り、安心により生活・経済を支える国民皆保険制度を、将来にわたり持続可能なものとするよう、幅広い観点から検討することを目的とする」とあり、高齢化や新型コロナウイルス対応で政府の財政悪化の状況下で、皆保険制度の持続性を高める方策を議論する方向性が打ち出されている。(参考)国民皆保険維持へ自民議連(時事ドットコム)松本純の国会奮戦記2020年8月5.“GLP-1ダイエット”製薬メーカーからも警告ダイエット目的でのGLP-1受容体作動薬の使用・処方が国内で問題になってきている。20日、製造販売元4社が共同して文書による適正使用を呼び掛け、医療機関などに周知を開始している。海外では肥満症の適応で処方可能とされているが、日本国内では適応が承認されていない。このため、日本糖尿病学会より2020年7月9日付で「GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」が発出されている。2型糖尿病を有さない日本人における安全性と有効性は現時点では確認されておらず、低血糖による健康被害の可能性もあり、医薬品副作用被害救済制度による救済の支給対象外となるため、適正な処方が望まれる。(参考)GLP-1 受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(PMDA)GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(日本糖尿病学会)

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第21回 大統領選のダシにされたCOVID-19血漿療法、日本でも似たようなことが!?

まだ、治療薬もワクチンも決定打がない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。そんな最中、米国食品医薬品局(FDA)は8月23日、COVID-19から回復した患者の新型コロナウイルスの中和抗体を含む血漿を用いた回復期血漿療法に対し、緊急使用許可を発行した。FDAによる緊急使用許可は抗ウイルス薬レムデシビルに次いで2例目だ。この緊急時使用許可の直後の会見でドナルド・トランプ米大統領は「信じられないほどの成功率」「死亡率を35%低下させることが証明されている」「この恐ろしい病気と戦う非常に効果的な方法であるとわかった」などと絶賛。同席したFDAのステファン・ハーン長官もこの死亡率35%低下を強調。しかし、この死亡率低下の根拠データが不明確との批判を受け、ハーン長官自身が謝罪に追い込まれる事態となった。さてこの1件、そもそも発端となっているのはメイヨークリニック、ミシガン州立大学、ワシントン大学セントルイス医学大学院が主導する「National COVID-19 Convalescent Plasma Expanded Access Program」により行われた臨床研究である。この結果は今のところプレプリントで入手可能である。そもそもこの試験は単群のオープンラベルという設定である。ここで明らかになっている主な結果を箇条書きすると以下のようになる。診断7日後の死亡率は、診断3日以内の治療開始群で8.7%、診断4日目以降の治療開始群で11.9% (p<0.001)。診断30日後の死亡率は、診断3日以内の治療開始群で21.6%、診断4日目以降の治療開始群で26.7% (p<0.0001)。診断7日後の死亡率は、IgG高力価 (>18.45 S/Co)血漿投与群で8.9%、IgG中力価(4.62~18.45 S/Co)血漿投与群で11.6%、IgG低力価 (<4.62 S/Co) 血漿投与群で13.7%と、高力価投与群と低力価投与群で有意差を認めた(p=0.048)。低力価血漿投与群に対する高力価血漿投与群の相対リスク比は診断7日後の死亡率で0.65 、診断30日後の死亡率で0.77 だった。これらを総合すると、トランプ大統領が言うところの死亡率35%低下は、最後の診断7日後の高力価血漿投与群での相対リスク比を指していると思われる。もっとも最初に触れたようにこの臨床研究は単群のオープンラベルであって、対照群すらない中では確たることは言えない。その点ではトランプ大統領もハーン長官も明らかなミスリードをしている。そして各社の報道では、11月に予定されている米大統領選での再選を意識しているトランプ大統領による実績稼ぎの勇み足発言との観測が少なくない。とはいえ、COVID-19により全世界的に社会活動が停滞している現在、治療薬・ワクチンの登場に対する期待は高まる中で、今回の一件は軽率の一言で片づけて良いレベルとは言えないだろう。そして少なくともトランプ大統領周辺では大統領への適切なブレーキ機能が存在していないことを意味している。大統領選のダシにされた血漿療法、日本は他人ごと?もっとも日本国内もこの件を対岸の酔っぱらいの躓きとして指をさして笑えるほどの状況にはない。5月には安倍 晋三首相自身が、COVID-19に対する臨床研究が進行中だった新型インフルエンザ治療薬ファビピラビル(商品名:アビガン)について、その結果も明らかになっていない段階で、「既に3,000例近い投与が行われ、臨床試験が着実に進んでいます。こうしたデータも踏まえながら、有効性が確認されれば、医師の処方の下、使えるよう薬事承認をしていきたい。今月(5月)中の承認を目指したいと考えています」と前のめりな発言をし、後のこの試験でアビガンの有効性を示せない結果になったことは記憶に新しい。もっと最近の事例で言えば、大阪府の吉村 洋文知事が8月4日、新型コロナウイルス陽性の軽症患者41例に対し、ポビドンヨードを含むうがい薬で1日4回のうがいを実施したところ、唾液中のウイルスの陽性頻度が低下したとする大阪府立病院機構・大阪はびきの医療センターによる研究結果を発表。これがきっかけで各地のドラッグストアの店頭からポビドンヨードを含むうがい薬が一斉に底をついた。これについては過去にこの結果とは相反する臨床研究などがあったことに加え、医療現場にも混乱が及んだことから批判が殺到。吉村知事自身が「予防効果があるということは一切ないし、そういうことも言ってない」と釈明するに至っている。もっとも吉村知事はその後も「感染拡大の一つの武器になる、という強い思いを持っています」とやや負け惜しみ的な発言を続けている。ちなみに今年2月から始動し、7月3日付で廃止された政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の関係者は以前、私にこんなことを言っていたことがある。「吉村大阪府知事や鈴木北海道知事など新型コロナ対策で目立っている若手地方首長に対する総理の嫉妬は相当なもの。会議内で少しでもこうした地方首長を評価するかのような発言が出ると、途端に機嫌が悪くなる」今回の血漿療法やこれまでの経緯を鑑みると、新型コロナウイルス対策をめぐる政治家の「リーダーシップ」もどきの行動とは、所詮は自己顕示欲の一端、いわゆるスタンドプレーに過ぎないのかと改めて落胆する。新型コロナウイルス対策でがっかりな対応を見せた政治家は日米以外にもいる。もはや新型コロナウイルスが炙り出した「世界びっくり人間コンテスト」と割り切ってこの状況を楽しむ以外方法はないのかもしれない。

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妊婦の定期健診とSARS-CoV-2感染リスクの相関は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に懸念されたことの1つに、患者の受診自粛がある。しかし、医療機関を訪れることが感染リスクにどう影響するかについては、十分に明らかになっていない。本研究は、米国・Brigham and Women's HospitalのSharon C. Reale氏らの研究チームが、コロナパンデミックの中にあっても定期的な診察が必要だった妊婦を対象に、受診回数がSARS-CoV-2感染のリスクと関連しているかどうかを検証した。JAMA誌オンライン版2020年8月14日号リサーチレターでの報告。 本研究の対象は、2020年4月19日~6月27日(産科患者全員が入院時にSARS-CoV-2のRT-PCR検査を実施した期間)にマサチューセッツ州ボストンの4つの医療機関で出産した2,968例。リスクセットサンプリングを用いて、妊娠中または分娩・出産のための入院時にSARS-CoV-2陽性と判明した症例を最大5例の対照とマッチさせた、ネステッドケースコントロール研究を実施した。症例がSARS-CoV-2陽性と判明した日(±6日)における妊娠期間、人種/民族、保険の種類および患者の居住地域におけるSARS-CoV-2感染率に基づいて対照とマッチさせた。電子カルテデータから、3月10日(マサチューセッツ州で必要不可欠ではない業種が停止される2週間前)から症例における陽性判定日までの受診回数を調べた。 主な結果は以下のとおり。・対象集団2,968例中、SARS-CoV-2が検出された患者は111例(3.7%、95%CI:3.1%~4.5%)であった。このうち、45例は出産前にSARS-CoV-2陽性であり、66例は分娩・出産のための入院時に陽性が判明した・州外居住者(2.2%)と、マッチングに必要なデータが欠落している患者(0.8%)を除く、SARS-CoV-2陽性93例(症例群)と372例(対照群)を比較したところ、平均受診回数は、症例群3.1回(SD:2.2、範囲:0~10)に対し、対照群は3.3回(SD:2.3、範囲:0~16)だった。・妊婦健診の受診回数とSARS-CoV-2感染の関連性について、受診を1回追加することによるオッズ比は0.93(95%CI:0.80~1.08)だった。 本結果について、著者らは「ボストンエリアにおける産科患者のサンプルでは、妊婦健診の受診回数とSARS-CoV-2感染率の間に有意な関連は見られなかった」と結論。マサチューセッツ州では、2020年春のコロナ患者急増時に感染率が全米で3番目に高く、とくにボストンエリアで多くの感染者が出た。著者らは、「病院に行くことが感染の重要な危険因子である可能性は低く、コロナ流行下においても妊婦健診を受けることは必要であり、かつ安全に実施できることを本研究は示唆している」と結んでいる。

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第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」を策定/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」を策定し、同学会のホームぺージで公開した。 本計画は、増加を続ける糖尿病患者の歯止めと診療の進歩への寄与などを盛り込んで、2004年より策定されているもの。第3次計画では、糖尿病予備群の数の減少、健康寿命の延伸、わが国独自の糖尿病の疫学・臨床データの蓄積、専門知識を持つさまざまな職種の人材の育成などが予測される成果として標榜され、検証されている。 第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」では、同学会作成委員会(委員長:綿田 裕孝)を中心に作成され、次の2項目を具体的な目標として掲げている。 1)糖尿病患者と非糖尿病患者の寿命の差をさらに短縮させる 2)糖尿病患者の生活の質(QOL)を改善させる これらについて「本計画を教育などさまざまな場面で活用いただきたい」と委員会では一読を呼び掛けている。1,000万通りの個別化医療構築にむけて 今回の計画では、糖尿病患者のQOLを維持・改善させ、非糖尿病者との寿命の差を短縮させるために、個々の患者の病態と置かれているさまざまな状況を考慮した「個別化医療の推進」が不可欠としている。そこで、併存疾患の病態とその進行度を総合的に把握する方法の開発、患者の置かれている状況にもとづく、血糖コントロール目標および動脈硬化性疾患の危険因子などのコントロール目標を個別設定し、食事、運動、薬物療法を含む最適な治療レシピの構築や効果的な新規治療法の確立を目指すとしている。 また、「J-DREAMS」など蓄積された診療データからより細かい患者ごとの血糖コントロール目標値の設定や将来的には治療シミュレーションを示すことで、複数の適切な治療が提示できるようなシステムをつくり、1,000 万通りの個別化医療の構築を目指すとしている。将来の糖尿病対策を担う人材の育成にむけて 計画の達成には、糖尿病専門医、看護師、栄養士、理学療法士を中心とした医療スタッフのみならず合併症予防のために他科診療科との連携が必要不可欠となる。また、先述の包括的データベースによるエビデンスの構築では基礎研究者、医療データの活用ができる人材育成が喫緊の課題としている。 そのために糖尿病専門医、研修指導医の育成はもとより、国際的にわが国発の糖尿病に関する論文数が減少していることに憂慮し、学会などでも若手研究者の奨励賞や研究助成金の充実、地方会などでの発表の奨励などを行うほか、ビッグデータの利活用のできる人材の育成のために日本医療情報学会や日本公衆衛生学会などとも連携し、人材育成を行うとしている。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)にも言及した今後の展開 国民への啓発と情報発信は、糖尿病の発症予防、合併症への進展防止に以前より行われてきた。現在でも糖尿病予備群の増加、高齢者の患者も多くなっていることから市民公開講座、各種リーフレット、ホームページなどを通じて引き続き情報発信を行うとともに、糖尿病への偏見や誤った知識の是正などにも取り組んでいくとしている。 最後に「新興・再興感染症の脅威と糖尿病」として、糖尿病は肥満症、心血管障害などと同様にCOVID-19の重症化リスク因子と想定されることを考慮し、国際協力をしつつエビデンスを確立する必要があるとしている。また、患者や患者家族が不確かな情報で不利益を被らないように、COVID-19に関しても正しい知識を広く周知していくとしている。具体的には、エビデンスの収集と整理、ワクチンなどの有効策ができた場合の普及と啓発、迅速な症例把握のための症例登録システムの樹立などを含め、COVID-19以外の新興感染症が流行した場合に迅速に対応ができ、糖尿病患者が安心して生活できる体制構築にむけて準備を進めると述べている。

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SARS-CoV-2変異株、重症度が変化/Lancet

 遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)8領域に382ヌクレオチド欠損(Δ382)を認める新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異体の感染者は、症状が軽症であることが明らかにされた。シンガポール・国立感染症センターのBarnaby E. Young氏らによる観察コホート試験の結果で、著者は「観察されたORF8における欠損の臨床的影響は、治療やワクチン開発に影響を与えるものと思われる」と述べている。ORF8領域にΔ382を有するSARS-CoV-2遺伝子変異体は、シンガポールおよびその他の国でも検出されていた。Lancet誌オンライン版2020年8月18日号掲載の報告。Δ382変異体感染者と野生型感染者の低酸素症の発生を比較 研究グループは、シンガポールの公立病院7ヵ所で2020年1月22日~3月21日に、PCR検査によりSARS-CoV-2感染が確認された患者のうち、Δ382変異のスクリーニングを受けた患者を後ろ向きに特定し、それら患者を集めた前向きコホート試験「PROTECT試験」を行った。 被験者の臨床情報や臨床検査・放射線検査データを、電子カルテおよび入院中・退院後に採取された血液・呼吸器検体情報から収集して、Δ382変異体感染者と野生型SARS-CoV-2感染者を比較。精確ロジスティック回帰法を用いて群間の関連性と、酸素補充療法を要する低酸素症の発生(主要エンドポイントで重症COVID-19の指標)について調べた。低酸素症発生リスク、Δ382変異体群は野生型群より低い 278例がPCR検査でSARS-CoV-2への感染が確認され、Δ382変異のスクリーニングを受けていた。そのうち131例がPROTECT試験に登録。92例(70%)が野生型に感染、10例(8%)が野生型とΔ382変異体の混合感染で、29例(22%)がΔ382変異体に感染していた。 酸素補充療法を要する低酸素症の発生率は、Δ382変異体感染群が野生型感染群よりも低率だった。Δ382変異体感染群は0%(0/29例)、野生型感染群は28%(26/92例)で絶対群間差は28%(95%信頼区間[CI]:14~28)だった。年齢や併存疾患について補整後、Δ382変異体感染群の酸素補充療法を要する低酸素症の発生に関するオッズは、野生型感染群と比べてより低かった(補正後オッズ比:0.07、95%CI:0.00~0.48)。(8月27日 記事の一部を修正いたしました)

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コクラン共同計画のロゴマークからメタ解析を学ぶ【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第27回

第27回 コクラン共同計画のロゴマークからメタ解析を学ぶこの原稿を執筆している2020年7月末には、新型コロナウイルスへの感染者数が再び増加しています。パンデミック収束の気配はありません。数多くの、抗ウイルス薬やワクチンの開発の報道はありますが、決定的な方策はない状況です。どの薬剤にも、有効という臨床試験の結果もあれば、無効という結果もあるからです。同じ臨床上の課題について、それぞれの試験によって結果が異なることは、医学の世界では珍しいことではありません。このような場合に有効な方法がメタ解析です。メタ解析は、複数のランダム化比較試験の結果を統合し分析することです。メタ解析の「メタ」を辞書的にいえば、他の語の上に付いて「超」・「高次」の意味を表す接頭語で、『より高いレベルの~』という意味を示すそうです。メタ解析の結果は、EBMにおいて最も質の高い根拠とされます。ランダム化比較試験を中心として、臨床試験をくまなく収集・評価し、メタ解析を用いて分析することを、システマティック・レビューといいます。このシステマティック・レビューを組織的に遂行し、データを提供してくれるのが、コクラン共同計画です。英語のまま「コクラン・コラボレーション」(Cochrane Collaboration)と呼ばれることも多いです。本部は、英国のオックスフォード大学にあり、日本を含む世界中100ヵ国以上にコクランセンターが設立されています。システマティック・レビューを行い、その結果を、医療関係者や医療政策決定者、さらには消費者である患者に届け、合理的な意思決定に役立てることを目的としている組織です。フォレスト・プロット図をデザイン化した、コクラン共同計画のロゴマークをご存じでしょうか。早産になりそうな妊婦にステロイド薬を投与することによって、新生児の呼吸不全死亡への予防効果を検討した、メタ解析の結果が示されています。数千人の未熟児の救命につながったと推定される、システマティック・レビューの成功例なのです。この図を、Cochrane Collaborationの2つの「C」で囲んだデザインが、コクラン共同計画のロゴです。フォレスト・プロットの図から、メタ解析の結果を視覚的に理解することができます。横線がいくつか並んでいますが、これは、過去の複数のランダム化比較試験の結果を上から順に記載したものです。1本の縦線で左右に区切られており、この線の左側は介入群が優れていることを意味します。すべての研究を統合した結果が一番下の「ひし形」に示されます。ロゴの図をみると、7つの臨床研究の結果を統合し、ひし形が縦線の左にあることから、ステロイド薬使用という介入が有効であるという結果が読み取れます。縦線が樹木の幹で、各々の研究をプロットした横線が枝葉で、全体として1本の樹木のようにみえることからフォレスト・プロットと呼ばれるのです。個々の試験では、サンプルサイズが小さく結論付けられない場合に、複数の試験の結果を統合することにより、検出力を高めエビデンスとしての信頼度を高めるのがメタ解析です。症例数が多いほど、結論に説得力があるのです。数は力なのです。多ければ良いというものではない場合もあります。それは、猫の数です。面倒みることができないほど多くの猫の数になる、いわゆる多頭飼育崩壊です。メタ解析ではなく、「メチャ飼い過ぎ」でしょうか、苦しいダジャレです。仲良く猫たちが、じゃれ合う姿は可愛らしいものですが、何事にも程合いがあります。小生は、ただ1匹の猫さまに愛情を集中しています。ここでわが家の愛猫が、原稿を執筆しているパソコンのキーボードの上に横たわりました。自分が猫のことを考えているのが伝わったのか、邪魔をしようという魂胆のようです。ウーン可愛い過ぎる! 原稿執筆終了です。

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第21回 ワクチン2題。あなたはワクチン打ちますか、打たせますか?

ワクチンは高齢者、医療従事者が優先の方向こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。相変わらず猛暑が続きます。私は2週間前に越後駒ヶ岳を登った時の日焼けが思いの外ひどく、しばらく皮膚がめくれた醜い腕をさらしていたのですが、やっと収まってきました。NHKニュースでも「たかが日焼け?~甘く見ないで対策を」と、重症の日焼けについて報道していましたが、よく言われる「日焼けは皮膚がんになる」は、日本人(黄色人種)の場合、当てはまるのでしょうか?日焼けクリームがなかった昔から、農家の人は夏には真っ黒になって仕事をしてきました。でも、農業従事者に皮膚がんが多い、とは聞きません。また、登山やサーフィンを趣味にする人に皮膚がんが多い、とも聞きません。とくに肌が白い人はともかく、普通の日本人の肌の色であれば日焼けクリームはそんなに塗らなくてもいいのでは、と毎年思うのですが、皆さん、いかがでしょう?さて、今週はワクチンの話題について書きたいと思います。連日、全国各地でクラスター発生の報道がある中、8月21日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が開かれ、東北大の押谷 仁教授から、「東京都、大阪府、愛知県のいずれも7月末がピークだったとみられる」と、再流行が収束に向かう兆しがある旨の発言がありました。もっとも、「東京都は高止まりの可能性があり、急激には下がることはない」とのこと。一方、感染拡大が続いている沖縄県については「不確実だが、少しずつ減っている可能性もある」と述べました。全体として、このまま行けば徐々に収束に向かうのでは、との期待を持たせる報告でした。また、この分科会では、新型コロナウイルス感染症のワクチンが開発された場合にどのような優先順位で接種するかについて「現時点での考え方」が公表され、新聞他各メディアもそれを大きく報じました。そこでは、重症化の可能性が高い高齢者や基礎疾患を有する人、直接診療に当たる医療従事者は優先的に接種する必要性が高いと指摘。一方で、妊婦や高齢者施設で働く人は検討課題とされました。今後、政府は優先的に接種する対象をどこまで広げるかなどについて分科会で議論してもらい、秋にもワクチン接種のあり方を定めた基本方針を策定する予定とのことです。「国民が期待していない事実が出てくるかもしれない」と尾身氏この「考え方」、安全性や有効性に不確実な面があることを指摘し、情報収集と国民への正確な発信の重要性を強調するなど、全体としてかなり冷静でドライな内容となっています。例えば、「特に留意すべきリスク」として、「現在開発が進められているワクチンでは、核酸やウイルスベクター等の極めて新規性の高い技術が用いられていることである。また、ワクチンによっては、抗体依存性増強(ADE)など重篤な副反応が発生することもありうる。ワクチンの接種にあたっては、特に安全性の監視を強化して接種を進める必要がある」と、新規性の高い技術のためリスクの見極めが難しい点や、ADEの危険性にも言及しています。さらに、「一般的に、呼吸器ウイルス感染症に対するワクチンで、感染予防効果を十分に有するものが実用化された例はなかった。従って、ベネフィットとして、重症化予防効果は期待されるが、発症予防効果や感染予防効果については今後の評価を待つ必要がある」と、ワクチンが開発されたとしても当面期待できるのは重症化予防効果だけである点にも触れています。その上で、「わが国では、ワクチンの効果と副反応の関係については、長い間、国民に理解を求める努力をしてきたが、副反応への懸念が諸外国に比べて強く、ワクチンがなかなか普及しなかった歴史がある。 従って、国民が納得できるような、十分な対話を行っていくべきである」と国民への情報提供や配慮の重要性にも触れています。分科会長の尾身 茂氏も、「国民が必ずしも期待していない事実が出てくるかもしれない。100%理想のものでなかったらがっかりするが、副作用があるのかないのか透明性を持って伝えることが私どもの仕事だ」と話したとのことです。「全員接種」を強制の可能性も政府は、これまでに米国ファイザー社と英国アストラゼネカ社からワクチンの供給を受けることで合意。開発に成功した場合、来年初頭からワクチンの一部が日本に供給される予定です。今回のワクチン接種の優先順位は、とりあえず開発が先行するこの2社のワクチンを想定してのものと考えられます。さて、優先順位の上位に医療従事者が入っていますが、読者の皆さんは打ちたいと思いますか?医療関係者からは「ワクチンを打って安心して働きたい」という声の一方で、「安全性が確立していない初物のワクチンなんて打ちたくない」という声も聞こえてきます。開発を担当する製薬企業の研究者ですら、「私はちょっと…」とお茶を濁す人もいると聞きます。仮に来年、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種がスタートし、医療従事者が優先となった場合、医療機関によって「スタッフ全員接種」か「希望者のみに接種」か、対応が異なってくると思われます。先の「考え方」には、「接種を優先すべき対象者がリスクとベネフィットを考慮した結果、接種を拒否する権利も十分に考慮する必要がある」と書かれてはいますが、「あそこの病院はワクチンを全員打っていないから危険だ!」といった、意味のない風評を嫌う病院経営者(公立病院の場合は首長)が、「全員接種」を強制する可能性も考えられます。「今回のワクチンはあくまで重症化予防であり、感染予防ではない」ことを、一般人のみならず、大阪府知事など医学に疎い自治体の首長にも事前にしっかりと啓発し、ワクチンの登場までにヘルスリテラシーをしっかり高めておいて欲しいと思います。9価HPVワクチンが定期接種検討へワクチンということでは、今週はもう一つ興味深いニュースがありました。厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会「ワクチン評価に関する小委員会」が8月18日、MSDの9価HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン「シルガード9 (組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)」を、公費で接種できる定期接種に組み入れるかどうかの是非を今後検討することを了承したのです。同ワクチンは先月7月21日に製造販売が承認されたばかり。HPVワクチンは日本ではこれまで子宮頸がんになりやすいハイリスクな16型、18型への感染を防ぐ2価ワクチン(サーバリックス)と、その2つの型に加え尖圭コンジローマを起こす6型、11型も防ぐ4価ワクチン(ガーダシル)しか承認されていませんでした。シルガード9は上記に加え、やはりがんになりやすい31、33、45、52、58の5つの型も含めた9価ワクチンです。子宮頸がんの90%以上を防ぐとして先進国では主流(肛門のがんや性器イボも予防できるとして男性も接種対象)ですが、日本だけ承認が大幅に遅れていました。ちなみにMSDが製造販売の承認申請をしたのは2015年7月ですが、9価ワクチン承認に反対する団体の影響もあったのか、承認までになんと5年もかかっています。WHOからも叱られた「いい思い出がない」ワクチンHPVワクチンは日本のワクチン行政上、「いい思い出がない」ワクチンとも言えます。新型コロナウイルス感染症に関しての分科会の「考え方」で述べられた、「副反応への懸念が諸外国に比べ強く、ワクチンがなかなか普及しなかった歴史」とはHPVワクチンのことでもあるのです。2013年に予防接種法に基づき2価、4価ワクチンが定期接種化されたものの、接種後の副反応の疑い例が大々的に報道されました。その影響で自治体から接種対象者に接種時期を知らせたり、個別に接種を奨めたりするような積極的勧奨は中断したままです。現在の高校3年生以下の女子の接種率は1%未満という数字もあります。一方で、子宮頸がんの患者数は増加傾向にあり、毎年国内で約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡しています。特に20~30代のAYA世代に多く、30歳代後半がピークとなっています。こうした状況下、WHOは2015年の声明で、若い女性が本来予防し得るHPV関連がんのリスクにさらされている日本の状況を危惧し、「安全で効果的なワクチンが使用されないことに繋がる現状の日本の政策は、真に有害な結果となり得る」と警告。日本産科婦人科学会も、「科学的見地に立ってHPVワクチン接種は必要」との立場で、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を繰り返し発表し、9価ワクチンについても早期承認と定期接種化を求めてきました。その定期接種化に向けての動きがやっと始まった、というわけです。既に世界で効果と安全性の評価が固まっているHPVワクチンと、これから評価待ちの新型コロナウイルスワクチン。ワクチンに対しセンシティブで過剰反応が過ぎると言われる日本人が、この2つのワクチンにこれからどのような“反応”をし、“判断”を下すのか、とても気になります。

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COVID-19、第1波・第2波の特徴と転帰を比較/JAMA

 COVID-19感染流行において、初期と2度目の流行では、患者の属性や臨床的症状、転帰に違いはあるのか。Center for Outcomes Research(米国・ヒューストン)のFarhaan S. Vahidy氏らによる分析が、JAMA誌オンライン版2020年8月13日号のリサーチレターで報告されている。 著者らは、テキサス州ヒューストンの8病院が使うヘルスケアシステム・Houston Methodistの電子カルテから、PCR検査で陽性となったCOVID-19重症患者を抽出したうえで、年齢、性別、人種/民族、併存症、投薬、ICU入院、死亡率を分析した。第1波は2020年3月13日~5月15日、第2波は5月16日~7月7日までとした。2020年7月7日時点におけるCOVID-19の入院患者のユニーク数は2,904例、第1波が774例、第2波が2,130例だった。 第1波と比較した第2波の特徴は以下のとおり。・若年者が多かった(平均年齢:57.3 vs.59.9歳、p<0.001)。・ヒスパニック系が多かった(43.3 vs.25.7%、p<0.001)。・低収入地域の居住者が多かった(ZIPコード別世帯収入中央値:6万765 vs.6万5,805ドル、p<0.001) 。・糖尿病(32.0 vs.40.3%)、高血圧(38.8 vs.55.3%)、肥満(25.7 vs.33.9%。いずれもp<0.001)などの全身および特定の併存症を有する割合が低かった。・レムデシビル(22.2 vs.11.2%、p<0.001)、エノキサパリン(72.6 vs.63.8%、p<0.001)の投与例が多かった。・入院期間中央値は短く(4.8 vs.7.1日、p<0.001)、ICU入院率も低かった(20.1 vs.38.1%、p<0.001)。・死亡率が低かった(3.5 vs.12.1%、p<0.001)。 著者らは、第2波の流行前に地域の経済活動が再開されたことから、経済活動の主体となるヒスパニック系の若年層に患者層がシフトした可能性がある、と示唆している。

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COVID-19対策のうがいは是か非か

 8月上旬、大阪府知事の吉村 洋文氏は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策にうがい薬ポビドンヨード液を推奨する緊急記者会見を開いた。この会見の報道を受け、うがいは新型コロナ感染症対策として優先順位は低いなどと発言する一部の専門家もいたが、やはり口腔ケアは感染症対策として重要なのではないだろうかー。2020年8月5日に開催された第2回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナーで、阪井 丘芳氏(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学教室教授)が「COVID-19と唾液腺~重症化予防のための新たな口腔ケア」について講演し、口腔の衛生管理の重要性について語った。COVID-19拡大予防にうがいは重要 COVID-19流行前から口腔ケアと感染症に関連した研究を実施している阪井氏は、1)高齢者の誤嚥性肺炎と窒息のリスクの緩和、2)口腔ケアを行う医療従事者の効率化と安全性の向上、3)口腔ケア製品の抗菌性を高め、ウイルス性・細菌性肺炎を予防、4)現場のニーズに合った優れた口腔ケア用品の開発と普及を目標に活動を行っている。 今回のポビドンヨード液の報道時には、うがいの根拠について議論が巻き起こったものの、口腔ケアにより要介護高齢者の発熱・肺炎発生率が低下することは約20年前の論文1)ですでに裏付けされていた。また、感染には体内の2大細菌叢である腸内細菌叢と口腔細菌叢が影響するが、「後者はう蝕や歯周病の原因になり、口腔細菌が肺へ移行し肺炎リスクに繋がる」と説明。また、インフルエンザなどウイルスによる肺炎は上気道から侵入するケースが多い点にも触れた。 COVID-19の場合、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が肺に存在する受容体であるACE2に結合するため、肺へ直接侵入する可能性が高いと言われている。しかし、ACE2の発現量は肺よりも唾液腺にやや多いことが報告されている。これを踏まえて、同氏は「健康な肺にはもともと防御機構があるので、ある程度口腔細菌の制御は可能だが、SARS-CoV-2によって上皮細胞が損傷すると、細菌感染が生じる可能性がさらに高まる。現在までの研究報告によると、SARS-CoV-2自体単独では強毒性ではないかもしれないが、重症化因子として口腔細菌が関与している可能性もある。2次性細菌性肺炎を防ぐためにも口腔衛生の徹底が必要」と強調した。また、COVID-19の高齢患者の死亡率が高い理由として、「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん:気付かないうちに生じる誤嚥)をきっかけとして、2次性細菌性肺炎が重症化したのが原因では」と推測し、今後の検証の必要性を述べた。 新型コロナ感染対策でうがいは唾液中のウイルスを一時的に減少 現在、唾液を用いたCOVID-19のPCR検査が実施可能である。鼻咽頭ぬぐい液による検査では患者の負担だけではなく、医療者への感染リスクが問題とされたが、唾液PCR検査はそれらの問題解決に繋がるばかりか、無症状者への対応も可能となった。他方で、同氏は口腔・咽頭粘膜はSARS-CoV-2の侵入経路だけではなく、付近の唾液腺がその貯蔵庫になる可能性が示唆2)されていることに着目し、「効果的な口腔ケアと生活様式での対応の両者が必要」とコメント。しかし、現時点で口腔内の消毒薬として認められているのは、10%ポビドンヨード液と0.01~0.025%塩化ベンザルコニウム液のみであることから「要時生成型亜塩素酸イオン水溶液(MA-T:Matching Transformation system)などを用いた新たな口腔用消毒薬の確立に努めたい」と話した。 最後に同氏は「学校や会社を休みたくないがゆえに、ヨード系うがい薬でうがいをしてから唾液PCR検査を受けて偽陰性の結果や診断を得るような、社会的に逆効果になる問題も予想される」としつつも、「誰が感染しているかわからない状況下において、うがいは唾液中のウイルスを一時的に減少させるため、会話や会食前・最中のうがいは人にうつす可能性を減らすかもしれない。効果の持続時間やうがい方法、吐き出した液による洗面台周囲のウイルス汚染など、検証すべき事項が多数あり、結論を導くには時間を要するが、感染対策として口腔衛生管理を行うことは大切である」と、口腔ケアの必要性について言及した。

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第20回 新型コロナワクチン接種を見据え、今秋までに基本方針を策定

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種を見据え、今秋までに基本方針を策定2.接触アプリCOCOA、濃厚接触の通知で検査対象に DL数は人口の1割3.公立・公的病院の再編スケジュール、10月以降期限に見直しへ4.来年から通年化される病床機能報告制度、今年度の診療実績報告は不要に5.職員感染発生などはコロナ患者受け入れ医療機関と見なす提案、保留に/中医協1.新型コロナワクチン接種を見据え、今秋までに基本方針を策定新型コロナによる死亡者や重症者をできる限り抑制するため、ワクチン接種の実施体制を整えていく必要がある。21日に開催された新型コロナウイルス感染症対策分科会では、下記の検討が続く。接種の優先順位特定接種の実施実施体制国民の声現在、優先順位としては医療従事者、高齢者および基礎疾患を有する患者が挙げられており、感染リスクが高い人などを想定している。ただし、新型コロナウイルスワクチンはまだ開発中であり、現時点では安全性や有効性についてわかっていない点も多く、科学的な不確実性もある。一方で、国民の期待が極めて大きいため、しっかりと正確な情報提供が必要となる。来年初頭から国内で開始される見込みのワクチン接種を前に、今秋にも接種の基本方針を策定したい考え。ワクチンに対する懸念も踏まえ、有害事象の監視体制の整備や健康被害が生じた場合の賠償方針を固め、次の国会に新法を提出して早期成立を目指す。(参考)新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種に関する分科会の現時点での考え方(新型コロナウイルス感染症対策分科会)コロナワクチンの賠償、国が責任 海外製薬から調達促進 政府、次期国会に新法(日本経済新聞)2.接触アプリCOCOA、濃厚接触の通知で検査対象に DL数は人口の1割現在、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の通知で濃厚接触をした可能性のある人が、PCR検査を受けられないケースが発生している。厚労省は、全国の保健所に対して、COCOAの通知を受けた人については、症状の有無などにかかわらず検査の対象にするよう21日の事務連絡であらためて周知した。なお、COCOAについては、21日17時時点で、およそ1,416万件がダウンロードされている。(参考)事務連絡 令和2年8月21日 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)で通知を受けた者に対する行政検査等について(厚労省)接触確認アプリ 通知受けた人は検査対象 保健所に周知 厚労省(NHK)3.公立・公的病院の再編スケジュール、10月以降期限に見直しへ地域医療構想に向けて、各都道府県に求められていた公立・公的医療機関などにおける具体的対応方針の再検証について、当初は2020年9月末期限とされていたが、新型コロナ感染拡大に伴い、10月以降に延期される見込み。もともと再検証については、「骨太の方針2019」にて2020年秋頃とされていたが、「骨太の方針2020」ではこの点に触れられておらず、新型コロナ対策が優先されたと言える。なお、再検証の対象となっている医療機関数は昨年9月時点では424施設であったが、その後の精査により約440施設となっている。(参考)具体的対応方針に係る再検証の要請等、診療実績データ分析等の活用について(第24回地域医療構想に関するワーキンググループ)公的病院の再編・統合、スケジュール見直しへ コロナ影響、国への報告期限延期(毎日新聞)4.来年から通年化される病床機能報告制度、今年度の診療実績報告は不要に14日、厚労省は第26回 地域医療構想に関するワーキンググループを持ち回り開催で行った。来年度の病床機能報告では診療実績の報告を通年化することを踏まえ、今年は6月分のレセプト情報による診療実績の報告を不要としている。これは新型コロナウイルス感染症への対応で、病床機能報告対象病院に対する負担軽減を目的とされる。併せて、例年の報告項目の追加、変更についても行わないこととなった。(参考)令和2年度病床機能報告の実施について(第26回地域医療構想に関するワーキンググループ)5.職員感染発生などはコロナ患者受け入れ医療機関と見なす提案、保留に/中医協19日に開催された中央社会保険医療協議会総会で、新型コロナ患者の受け入れがなくても、職員の感染(疑い含む)が発覚した場合には、受け入れ医療機関と同様の取り扱いとすること、緊急事態宣言の発令期間にはすべての医療機関を「新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた医療機関」に該当するものと見なす提案があった。これは新型コロナの影響で受診抑制が続く中、厳しい経営状態に直面している医療機関を支援する側面もあるが、支払い側からは賛成が得られず、会長預かりとなった。厚労省では、2020年度診療報酬改定における経過措置の取り扱いについて議論された。急性期一般入院基本料や7対1入院基本料、看護必要度加算などの算定要件となっている「重症度、医療・看護必要度」について、2020年9月30日までの経過措置期限を、2021年3月31日まで延長することが提案され、了承された。なお、受診控えの傾向が今後も続くことを考慮して、経営支援策については厚労省により検討が着手されたことが報道された。(参考)新型コロナウイルス感染症への対応とその影響等を踏まえた診療報酬上の取扱いについて(中医協)感染恐れて受診控える傾向 医療機関の経営支援策検討へ 厚労省(NHK)

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新型コロナ、前立腺がん患者でアンドロゲン除去療法が感染を抑制か

 イタリアで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により最も影響を受けた州の1つであるヴェネト州における集団ベースの研究で、アンドロゲン除去療法(ADT)を受けている前立腺がん患者では新型コロナウイルス感染が抑制された可能性が示唆された。イタリア・パドヴァ大学のM. Montopoli氏らが報告した。Annals of Oncology誌2020年8月号に掲載。ADTを受けている前立腺がん患者は新型コロナ感染リスクが有意に低かった 新型コロナウイルスは、ウイルスのスパイク(S)蛋白であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)2への結合とTMPRSS2によるS蛋白のプライミングにより細胞に侵入する。そのため、TMPRSS2を阻害すれば、新型コロナウイルス感染を阻害または軽減する可能性がある。一方、TMPRSS2はアンドロゲン制御遺伝子であり、第1世代もしくは第2世代のADTはTMPRSS2レベルを低下させる。そこで著者らは、ADTが前立腺がん患者を新型コロナウイルス感染から保護するという仮説を立てた。本研究では、ヴェネト州の68病院から2020年4月1日時点の新型コロナウイルス陽性者9,280例(男性4,532例)のデータを収集し、性別、入院、ICU入室、死亡、がん診断、前立腺がん診断、ADTのパラメータを用いて検討した。 ADTが前立腺がん患者を新型コロナウイルス感染から保護する、という仮説検証の主な結果は以下のとおり。・男性は女性に比べ、より重症で入院が多く臨床転帰が悪かった。・ヴェネト州の男性の人口(240万人)でSARS-CoV-2陽性率を計算すると、全体で0.2%、がん患者で0.3%であった。・新型コロナウイルス陽性者数は、ADTを受けている前立腺がん患者に対して、受けていなかった患者のオッズ比は4.05(95%CI:1.55~10.59、p=0.0043)で、ADTを受けている前立腺がん患者では新型コロナウイルス感染リスクが有意に低かった。また、他の種類のがん患者のオッズ比は4.86(95%CI:1.88~12.56、p=0.0011)で、より大きな差が見られた。

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