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次世代コロナワクチン、第III相試験で良好な中間結果を達成/モデルナ

 米国・Moderna社は3月26日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「スパイクバックス」について、次世代の「mRNA-1283」が、第III相試験の結果、同社の既存のオミクロン株対応2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)ワクチン「mRNA-1273.222」と比較して、SARS-CoV-2に対するより高い免疫応答の誘導を示したこと発表した。この次世代コロナワクチン「mRNA-1283」は、より長い保存期間と保存上の利点をもたらす可能性があり、インフルエンザとCOVID-19の混合ワクチン「mRNA-1083」の構成要素となる予定だ。 次世代コロナワクチン「mRNA-1283」と既存の「mRNA-1273.222」とを比較した第III相ピボタル試験「NextCOVE試験(NCT05815498)」は、米国、英国、カナダの12歳以上の約1万1,400人を対象とした無作為化観察者盲検アクティブ対照試験だ。本試験の結果、「mRNA-1283」は、SARS-CoV-2のオミクロンBA.4/BA.5および起源株の両方に対して、より高い免疫応答を引き起こすことが認められた。とくにこの免疫応答は、COVID-19による重篤な転帰リスクが最も高い65歳以上の参加者に顕著にみられたという。主な局所有害事象は注射部位の疼痛で、主な全身性の有害事象は頭痛、疲労、筋肉痛、悪寒だった。 「mRNA-1283」は、冷蔵庫での保存で安定するように設計されており、有効期限も従来のものよりも長くなっていることから、医療従事者の負担を軽減し、ワクチン接種へのアクセスを改善することで、公衆衛生に貢献する可能性があるという。

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モデルナのコロナワクチン、通常承認を取得し、引き続き供給

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを提供するモデルナは、2024年3月29日付のプレスリリースで、特例承認を受けていた「スパイクバックス筋注」の通常承認を3月27日付で取得したと発表した。 なお厚生労働省によると、2024年4月1日以降、65歳以上の人および60~64歳で対象となる人※には、新型コロナウイルス感染症の重症化予防を目的として秋冬に自治体による定期接種が行われ、費用は原則有料となる。ただし、定期接種以外の時期であっても接種を希望するすべての人が、自費による任意接種が可能である。※60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人。 これについてモデルナは、「さまざまな理由で4月以降に任意接種を希望する方に対しても十分なワクチンを供給すべく体制を整えており、引き続き日本の国民の皆さまを新型コロナウイルスの脅威から守るため邁進していく」としている。

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現場の断捨離、始めませんか?~働き方改革に先行した日本医科大学の実例

医師の働き方改革がついに始まった。それでも、今もなお議論が絶えないのが、診療行為以外にあたる“研究や自己研鑽時間”の捉え方である。厚生労働省が2024年1月15日に『医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について』を発出したものの、これまで根付いてきた労働環境に対するパラダイムシフトは、そう簡単なものではないはずだ。今回、臨床研究法や大規模臨床試験のDx化などに力を入れている松山 琴音氏(日本医科大学医療管理学 特任教授/学校法人日本医科大学研究統括センター副センター長)に治験効率化の視点から医師の働き方改革のヒントになるポイントを聞いた。土日対応の治験、働き方にメス小児への新型コロナワクチン普及が遅れている日本の状況を危惧し、今後の再流行に備えるべく、小児のワクチン接種の有効性・安全性の証明や国産ワクチン開発の進展に尽力する―。その活動を担う一人である松山 琴音氏は日本医科大学とその付属病院をはじめとするさまざまな臨床研究の基盤整備やDx化に力を注ぐ。その松山氏が所属する日本医科大学は、新型コロナワクチンの大規模接種会場運営の応需や、小児5,000例を対象とした『新型コロナワクチン(国産不活化)とインフルエンザワクチンの同時接種に関する大規模臨床試験』(現在、募集中)を行うなどしている1)。しかし、こういった取り組みは土日の業務対応が必須であり、治験においても治験の責任は大学病院の医師らが担う必要があるため、時間外労働は当たり前となる。「この治験では、パンデミック下に構築された大規模職域接種の仕組みを再利用し、医師、看護師や担当のスタッフは正当な対価の支払いを受けられるようにした」と話した。一方、病院経営には当然ながら収益が求められるが、それには医療者という人材がなくてはならない。「治療を担う医師の確保もさることながら、入院患者の受け入れ人数は看護師の人員配置基準によって決定付けられる。コンプライアンスの達成のみならず病床数確保のための人員確保が病院としての課題」と述べ、コロナパンデミックの発生によって医療者の“働き型”に少しずつ変化が見られたことを契機に、臨床研究の視点から同氏らは医師の働き方の課題解決に乗り出した。治験開始までを効率化させ、医療者の満足度up臨床試験や治験業務にはさまざまな医療者が関わり、当たり前のように時間外勤務も発生する。なかでも治験業務の大半を病院職員の1人である治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)が担うわけだが、CRCの時間内業務が達成されれば、医師を含むそのほかの職員の業務も効率化を図ることができるため、まずこの目標達成に向け、日本医科大学は治験運用ルールを設定し長時間労働是正のための断捨離を決行した。「一般的な治験業務で最も問題なのは、プロセスばかりが冗長で人材を掛け過ぎていること。無駄な対人業務を断捨離すれば、国内治験のスピードが加速しジャパンバッシングが起こらなくなる」と松山氏は国内の治験の在り方を指摘した。その課題解決策として、同氏はビッグデータの利活用のために、『SmarTrial』(Activade株式会社)と共同開発した費用算定機能を導入したことを明かした。「治験に登録可能な症例データはレセプトデータ、いわゆるビッグデータを活用することでフィージビリティ調査への対応をいち早く完了させ、治験責任医師や院内チームとともに早期からリクルートプランの作成やグローバル標準であるベンチマークコスト導入に向けた対応ができる」。また、治験の症例管理が可能である『SmarTrial』を導入したことで、「自施設では治験者ごとのToDo管理と試験全体のToDo管理を臨床開発モニター(CRA:Clinical Research Associate)と参加施設間で共有・完了確認できるシステムを導入し、費用算定機能と連結させた。治験の進捗状況が一覧化され、請求情報が紐付けられれば、CRA・CRC・医療者、そして医事課のスタッフの知っておくべき情報が統合され、登録症例ごとに治験のどの段階まで進んでいるのかが見えるようになった」と話した。さらにその結果として、「CRCの業務時間が週あたり1時間半も削減できた」というから驚きだ。「このシステムを利用することで候補被験者を事前に共有し、治験の状況の予測を立てられたり患者のvisit予定が把握できたりするため、医師のワークロード軽減にも貢献できた」と述べ、来るべき分散化臨床試験(DCT:Decentralized Clinical Trial)やサイトレス試験を見据えてDx化してきたことが、働き方改革に通じる取り組みであったことを説明した。画像を拡大する業務効率のポイント「丸抱えしない」「業務を見える化」また、“時間内”に業務を収めるポイントとして、「1人で業務を丸抱えしない」「業務プロセスを見える化」することだと述べ、リクルートマネージャーの設置、トヨタのかんばん方式にならった各治験の進捗管理を“見える化”のためのダッシュボードの導入が課題解決に繋がったことを説明した。リクルートマネージャーの設置画像を拡大する治験業務の場合、外部モニターからの進捗状況などの問い合わせや院内調整に多くの時間を割かれ、サテライト医療機関から紹介された患者が治験による受診をすると、窓口がはっきりせずに院内をたらい回しにされるリスクもある。リクルートマネージャーという外部対応に特化、患者の治験同意などを介在する人材を配置したことで、CRCは治験の質向上に向けたquality managerという新たな役割を果たし、ほかの院内スタッフの労力を軽減させることに繋がった。ダッシュボードの活用画像を拡大する治験の複雑さが招く業務過多を見える化画像を拡大する直接的な治験状況の確認、やるべきこと・問題点を早期に可視化、ワークロードを可視化するために、1)IRB・必須文書の電子化、2)Delegation listや教育研修記録の作成、3)フェアバリュー方式への対応、4)契約書における手順書の標準化、5)想定される症例数の調査、6)混み具合や収支に関する情報を収集・見える化した。このような取り組みのために、幾度となく病院経営層との対話を繰り返し、実行に至るまでに数年を要したそうだが、その苦労の甲斐もあり、今では某グローバル企業の治験において、日本医科大学系列全体での症例登録数は世界2位を誇るまでに至っている。同氏らは将来展望として、「病院ごとの仕組みのバラつきを統一し、情報を集約するための管理機能を研究統括センターに組み入れた。この取り組みを日本医科大学のある種のブランディングと捉え、“治験ブランディングチーム”と称して活動していく」と話した。また、「治験施設に足を運ばなくてもリジットなコミュニケーションを円滑に実行していくためにはこのようなリモート環境の整備が重要で、VRの利活用を検証するための実証実験や治験に対する社会の理解を進めるための患者市民参画に向けた活動も始めている」と、コロナ禍で定着し始めたリモート環境の更なる可能性を引き出すために奮闘している。働き方改革の“一歩先行く”国内のドラッグラグ・ロス問題が喫緊の課題となる日本。働き方改革が臨床研究の足かせになり研究を担う人材の確保に苦戦しては本末転倒である。今を生きる、そして次世代のための医療基盤として臨床研究の根を絶やさぬためも、リモート環境整備の加速化の波に乗り、医療全体の質の向上を目指す松山氏らによる取り組みが、患者、臨床研究を担う医師・医療者や製薬企業、ひいては日本国の未来を照らす手立てになるのではないだろうか。(取材・文:ケアネット 土井 舞子)参考1)日本医科大学治験サイト日本医科大学 研究統括センター厚生労働省:「医師の働き方改革」.jp講師紹介

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コロナ後遺症は月経異常、QOLやメンタルヘルスに影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人のうち、約3人に1人が悩まされるといわれる「コロナ後遺症(Long COVID)」。新たに、コロナ後遺症のある18~50歳の女性を対象とする研究が行われた。その結果、約20%の女性がさまざまな月経異常を訴え、それに伴いQOLやメンタルヘルスが悪化していることが明らかとなった。岡山大学病院 総合内科・総合診療科の櫻田泰江氏、大塚文男氏らによる研究であり、詳細は「Journal of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology」に1月25日掲載された。 コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、オミクロン株の流行期には、倦怠感、頭痛、不眠が増加傾向であると報告されている。また、女性の健康に焦点を当てた最近の研究では、COVID-19の流行が女性の月経にさまざまな悪影響を及ぼしていることなども示されている。そこで著者らは、日本人の女性を対象として、コロナ後遺症としての月経異常の臨床的特徴を明らかにする研究を行った。 この研究は、岡山大学病院のコロナ・アフターケア外来を2021年2月15日~2023年3月31日に受診した、コロナ後遺症の女性患者(18~50歳)を対象に行われた。コロナ後遺症の定義は、感染から4週間以上にわたり何らかの症状が持続している状態とした。患者の診療記録より、月経情報、健康関連QOL、抑うつ症状、ホルモン検査などの臨床データが解析された。 研究対象の女性223人のうち、月経異常を訴える女性は44人(19.7%、年齢中央値42.5歳)で、月経異常のない女性(同38歳)よりも有意に年齢が高かった。44人中34人(77.3%)は、オミクロン株の流行期(2022年1月以降)に感染していた。月経異常の中で最も多い症状は月経周期の不順(63.6%)であり、次いで月経痛の悪化(25%)、過多月経(20.5%)、更年期症状(18.2%)、月経前症候群(15.9%)などの症状が見られた。 また、月経異常のある女性では月経異常のない女性に比べて、倦怠感(75対58.1%)や抑うつ気分(9.1対1.1%)を伴う人の割合が有意に高かった。さらに、健康関連QOLの評価指標(FASおよびEQ-5D-5L)による評価では、月経異常のある女性の方が、倦怠感やQOLが有意に悪化していた。 ホルモン検査では、月経異常のある女性の方が、血清コルチゾール値(中央値8.5対6.7μg/dL)が有意に高かった。その他の検査結果に有意差はなかったものの、月経異常のある女性の方が、血清卵胞刺激ホルモン(FSH)値(同28.7対8.3mIU/mL)は高く、血清エストラジオール(E2)値(同12対17.95pg/mL)は低い傾向が認められた。 研究結果について著者らは、「コロナ後遺症は日本人女性の月経にも影響を及ぼし、QOLとメンタルヘルスの悪化につながるというエビデンスを提供するものである」と結論付けている。コルチゾール値が高かったことに関しては、月経異常などによるストレス状態が存在し、視床下部-下垂体-性腺軸を介してE2の産生障害につながる可能性を指摘。月経状態は心身の状態に影響を及ぼし得ることから、「正常な月経状態を維持することは重要である」と総括している。

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Long COVIDの原因は高レベルのサイトカイン産生?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(long COVID)が生じている患者では、通常はウイルスの除去に伴い産生されなくなるサイトカインの一種であるインターフェロン(IFN)-γが、長期にわたって高レベルで産生され続けていることが明らかになった。研究グループは、これがlong COVIDの根本的なメカニズムである可能性があると述べている。英ケンブリッジ大学医学部およびケンブリッジ治療免疫学・感染症研究所のBenjamin Krishna氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に2月21日掲載された。 米疾病対策センター(CDC)が2023年9月に発表した最新データに基づくと、6.9%の米国人がlong COVIDを経験している。Long COVIDの症状として最も頻繁に挙げられるのは慢性的な倦怠感であるが、ブレインフォグや慢性的な咳などの症状も珍しくない。しかし、long COVIDがなぜ生じるのかについては解明されていない。 今回の研究でKrishna氏らは、新型コロナウイルスのRT-PCR検査で陽性と判定されて入院した患者111人の転帰を追跡した。これらの患者は、陽性判定から28日目(51人)、90日目(20人)、180日目(40人)のいずれかの時点で血液検体を採取されており、55人がlong COVIDを発症していた。これらの血液サンプルに、2019年10月以前に採取された新型コロナウイルスに曝露していない54人の血液サンプルを合わせて、解析を行った。 その結果、新型コロナウイルスに感染すると、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのIFN-γの産生レベルが急上昇することが明らかになった。IFN-γのレベルは、COVID-19の症状が治まった患者では次第に減少していったが、症状が長引いたlong COVID患者では高いままであった。また、long COVID患者で新型ワクチンの接種前後でのIFN-γのレベルを比較したところ、ワクチン接種後にレベルが低下し、それが一部の症状の消失と関連することが示された。 Krishna氏は、「IFN-γはC型肝炎などのウイルス感染症の治療薬に使われているが、副作用として倦怠感、発熱、頭痛、筋肉痛、抑うつなどの症状を引き起こすことが知られている。これらの症状はlong COVIDに特徴的な症状でもある。われわれにとってこのことも、IFN-γの産生レベル上昇がlong COVIDの原因であることを支持する証拠だと思われた」と説明している。 では、何がIFN-γ産生レベルの上昇を引き起こすのだろうか。研究グループがさらに研究を進めたところ、CD8陽性T細胞とCD14陽性単球の2種類の免疫細胞の相互作用がIFN-γの過剰産生の鍵を握っていることが明らかになった。 こうした結果を受けてKrishna氏は、「われわれは、long COVIDの根底にあると思われるメカニズムを発見した。この発見がlong COVIDの治療法開発に道を開くとともに、一部の患者に確実な診断を下す一助となることを期待している」と話している。 ただしKrishna氏は、IFN-γの産生増加というメカニズムだけがlong COVIDの発症要因とは言い切れない点を強調している。例えば、先行研究では微小血栓の形成もlong COVIDの原因である可能性が示唆されている。Krishna氏は、「さまざまなLong COVIDの症状が全て同じ原因により引き起こされているとは考えにくい」として、微小血栓を原因の一つと見なすことは理にかなっていると述べている。 Krishna氏は、long COVID患者の血中のIFN-γ濃度を確認して、症状が長引くのか、徐々に回復するのかなどのサブタイプに分類することで、治療を個別化できる可能性があるとの考えを示している。

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新型コロナウイルス感染症の認知機能障害は徐々に軽症化している(解説:岡村毅氏)

 イングランドで80万例を対象にした、新型コロナウイルス感染症と認知機能の大規模調査である。まだよくわかっていないことの全体像をつかむための研究であり、規模が大きく、情報の確度も高く、適切な時期に適切な報告がなされたと思う。 対象者は、期間(無症状/4週以内に完治/12週以内に完治/12週以上かかったが完治/12週以上かかってまだ症状がある)、感染株(オリジナル/アルファ/デルタ/オミクロン)、医療(救急受診/入院/集中治療室)などで分類している。認知機能は、直後再生、空間記憶、語義、抽象思考、空間操作、遅延再生などをみっちりとられる。なかなか大変である。 まず、認知機能の全体を見ると、2020年1月に始まった世界的流行であるが、それから時間がたてばたつほどに感染者の認知機能低下は軽くなっている。古い株ほど、また症状の期間が長いほど、認知機能低下は重度である。常識的な結果といえる。 さらに詳しく認知機能を見てみると、記憶、抽象思考、空間操作が新型コロナウイルスの影響が出やすい領域のようだ。抽象思考とは「高い/低いに対して速い/遅い。では、人間/猿に対して速い/遅いは正しい?」みたいな課題をさせられる。空間操作はロンドン塔ゲームをさせられる。なかなか大変である。また主観的な記憶の障害や、いわゆるブレインフォグを訴えている人は、直後再生、抽象思考、空間記憶に特に低下があるようだ。これらの症状は、「頭が回らない」というような表出がなされることが多いため、納得の結果であろう。 この研究が(あえて?)触れていないことにも触れておく。この研究の枠組みでは分析のしようもないが、認知機能は精神状態の影響を大きく受けることは指摘しておきたい。長期的に症状に苦しんでいる人(例えば息苦しさが続き生活や仕事に支障が出ている)では、当然の反応として抑うつ的になり、結果的に一時的に認知機能が低下している可能性があるだろう。あるいは、未知の感染症が世界を襲い多くの人が死んでいる中で感染した場合には、心的影響が大きく、やはり認知機能への影響が軽微に残っている可能性は十分にあるだろう。 最後に、新型コロナウイルスについて発言するのはとても難しいが、これを読んでいる人には、将来精神科領域で働くことを検討している人もいるだろうから、一人の精神科医にはパンデミックがどのように見えていたのかを記して、精神科医的な思考を体験していただこう(以下は筆者個人の意見であり、いかなる所属組織とも関係ない)。 パンデミックの初期は「人類はまた新しい感染症に遭遇したが、医学の進んだ現代でよかった」と認識していた。一方でそう語ると、『世界が破滅するかもしれない』と興奮している人達とは、会話にならないこともわかっていた。 さらに高齢者施設で感染が広がり、高齢者は面会が禁止され、認知機能低下が進んだ。高齢者施設で働く人への偏見も助長された。この時には「そもそも高齢者施設では毎年インフルエンザで感染対策を繰り返していたのに、一般の人は全く知らなかったんだな」と悲しくなったが、真面目にやれば感染は防げると思いこむクレーマーの人とはわかりあえないだろうとあきらめていた。 さて、現在は明らかに弱毒化しているが、患者さんは元気に歩き回るから、逆に感染コントロールが難しくなっている。引き続き淡々と注意が必要だ。 今後はいつかエボラ出血熱のようなものが、世界的に感染を起こすことがあるだろう。その日まで私が生きていたら、その時こそ本当に恐怖を感じることだろう。 とまあ、こんなふうに見てきた。精神科医になるということは、様々な主観世界を生きる人々と出会い、その世界を冒険することにほかならない。例えば統合失調症の症状に「世界没落体験」というのがあり、世界の終末を主観的には生きている人と話したこともある。このような仕事をしていると、執着が減り、先入観から徐々に自由になり、何が起きても淡々と対応できるようになってくる。あくまで個人的な意見だが、新型コロナウイルス感染症の社会的パニックにおいて、もっとも傷を負わなかったのは精神科医かもしれない。

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第204回 ワクチンマニアが最後の公費接種に選んだコロナワクチンメーカーは…

前回、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の無償ワクチン接種が3月31日で終了する件について書いた。私のような高齢者にも基礎疾患保有者にも該当しない人間が、接種が始まった2021年2月17日~2024年3月31日までの期間に新型コロナワクチンを接種できる最大回数は5回だ。やはり過去の連載でも触れたように、私は一昨年末に4回目のワクチン接種を完了。昨秋には5回目のオミクロン株XBB.1.5系統対応ワクチン接種券が届いていたが、ちょうど1年間隔、すなわち昨年12月末くらいに接種しようと考えていた。しかし、予定が合わず12月末の接種はお流れ。とりあえず年初の1月接種に計画を変更したが、能登半島地震の発生でそちらの取材に時間を割き、3月に入ってしまった。というわけで、今週前半に駆け込みで5回目接種を完了した。今回も前回と同じく東京都が開設した大規模接種会場の1つ、都庁北展望室会場を選んだ。前回は当時の最新流行変異株であるオミクロン株BA.4、BA.5系統対応ワクチンのうち、ファイザー製よりも承認が1ヵ月遅れたモデルナ製を接種できる数少ない会場の1つがここだった。モデルナ製にこだわったのは、接種後の抗体価がファイザー製より高めとの研究報告が多かったからである。そして今回再び同会場で接種したのは、昨年8月に承認された国産初のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンである第一三共製での接種を望んだ結果、やはりここになったというわけだ。この選択は、1、2回目はファイザー製、3、4回目はモデルナ製を選択したので、とりあえず第一三共製も試してみたいという、自称「ワクチンマニア」の好奇心に過ぎない。前回は新型コロナの感染症法5類移行前であり、接種予約サイトにアクセスしても最短で空きがあったのは約2週間先だったが、今回はアクセスした日の翌日接種でも予約可能だった。ただし、実際の予約日は、業務の都合などを考慮し、アクセス日の1週間後にした。接種日には予約時間の20分前に都庁1階に到着。前回は北展望室行きのエレベーター脇に比較的大きな受付ブースが設置され、接種券を提示して予約確認と検温を経てエレベーターに乗る流れだった。今回はエレベーター前の案内担当者から口頭で予約有無の確認があり、さらにそこで接種券と予診票を見せて非接触式体温計を使って検温。そのまま45階への直通エレベーターに乗り込む形に簡素化されていた。ちなみにここでやや“失態”。エレベーター前の案内担当者から「マスク、お持ちですか?」と聞かれ、ハッとした。マスクは持ち歩いているものの、最近は医療機関に入る時しか着用していなかった。慌ててカバンから取り出そうとするも、担当者から「これ使って良いですよ」とマスクの入った箱を差し出されてしまい、恥ずかしながらそこから“税金”マスクを1枚頂戴することになった。45階でエレベーターを降りると、誘導に従い、受付ブースに並ぶ。前回は1階に設置されていたブースがこちらに移動した模様だ。そこで接種券と予診票を渡し、氏名と生年月日を言うように指示され、受付担当者は私が告げた内容を耳で聞きながら、接種券を凝視して確認していた。その後、ノートPCを操作し、予約を確認。第一三共製の接種希望者とわかると、「オミクロン 第一三共 XBB.1.5 3~7回目」と印字された緑の紙を予診票に貼りつけるとともに、同じ紙が挿入されたネックストラップ付カードホルダーを首から下げるように指示された。さらに受付担当者は接種券と予診票の目視確認を2回繰り返し行った。無事に受付が済み、背後の予診室のほうを振り返ると、後ろにいた誘導担当者がこちらを見ながら「はい、第一三共のワクチンはこちらです」と、予診室へ案内してくれた。どうやらカードの色で接種ワクチンを判別しているらしい。これも前回同様、通り抜け式になっている予診室に着席すると、医師から再び氏名、生年月日を告げるよう指示される。医師は私が告げた氏名、生年月日を接種券・予診票と照合し、さらに記入した予診票のチェック項目を指でなぞりながら確認した。そのうえで、今現在の不調や過去の新型コロナワクチンやそのほかのワクチン接種後の不調の有無、過去2週間のワクチン接種歴を尋ねた。「なし」と回答すると、「今回のワクチン接種で何かお尋ねになりたいことはありますか?」と返答がきた。これも「とくになし」と答えると、そのまま予診室を通り抜けて接種室に移動するよう告げられた。わずか5歩ほどで、接種室へ到着。再び氏名、生年月日、接種ワクチン種類の確認を受け、袖をまくった右腕を差し出すと、アルコール消毒によるアレルギーはないかと聴取された。それも「なし」と答えると、消毒後数秒で「ちょっとチクッとしますね」と言われ、軽い圧力を感じた直後に「はい終了です」。接種部分に絆創膏を張られ、目前の机の下にある段ボール箱に私に使用した注射器が放り投げられた。今度はアナフィラキシーチェックの待機ブースに移動。前回同様パイプ椅子が並べられた開放空間だが、着席人数は前回の3割程度だろうか。前回までの新型コロナワクチン接種では、アレルギー体質ということも考慮し、念のため30分待機をお願いしていたが、これまでとくに副反応経験がないことから、今回は15分待機組入り。スマホで仕事の資料を読んでいるうちに、待機時間を1分過ぎていたことに気付く。慌てて席を立ち、最後に予診票と接種券を記録するブースへ。ここでいつものごとくWHO版、米・CDC版の2種類のイエローカードの記入もお願いする。今回のイエローカード対応は「はいはい」という感じでシステマティックに進んだ。保管用の接種券記録、イエローカードを返却してもらい、再びエレベーターで1階に到着。時間を確認すると、展望室に向かった時から換算してわずか19分。なんとそんな短い時間だったかと驚いた。接種者の減少も影響しているだろうが、オペレーションも磨きがかかっていた感じだ。そして接種から丸1日以上経過しても接種部位の軽い圧痛以外は何の変化もなし。いつも通りか。しかし、今春以降、私が接種する場合は完全な自費。1回あたりセンベロ10回分以上かかるという野暮な算盤を弾いてしまう。痛い出費になるが、止むを得ないと考えるしかない。

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高齢者への2価コロナワクチン、脳卒中リスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するファイザー製またはモデルナ製のいずれかの2価ワクチンを接種後に脳卒中を発症した65歳以上の米国メディケア受給者において、接種直後(1~21日間)に脳卒中リスクが有意に上昇したことを示すエビデンスは確認されなかった。米国食品医薬品局(FDA)のYun Lu氏らが、自己対照ケースシリーズ研究の結果を報告した。2023年1月、米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAは、ファイザー製の「BNT162b2」(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)を接種した65歳以上の高齢者における虚血性脳卒中に関する安全性の懸念を指摘していた。JAMA誌2024年3月19日号掲載の報告。2価コロナワクチン接種後に脳卒中を発症した65歳以上約1万例を検証 研究グループは、BNT162b2(ファイザー製)またはmRNA-1273.222(モデルナ製)いずれかの2価コロナワクチン接種後に脳卒中を経験した65歳以上のメディケア受給者1万1,001例を含む、自己対照ケースシリーズ研究を行った。本研究の期間は2022年8月31日~2023年2月4日である。 主として着目したのは2価コロナワクチン後の脳卒中であったが、高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンにも着目し、(1)いずれかの2価コロナワクチンを接種、(2)いずれかの2価コロナワクチンと同日に高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンを接種、(3)高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンを接種した場合における脳卒中リスク(非出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作の複合アウトカム、または出血性脳卒中)を、ワクチン接種後1~21日または22~42日のリスクウィンドウと、43~90日の対照ウィンドウとの間で比較した。 脳卒中リスクについて、主要解析として2価コロナワクチン接種と、副次解析として高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンとの関連を評価した。製品によらず2価コロナワクチン接種直後の脳卒中リスク上昇は認めず いずれかの2価コロナワクチンを接種したメディケア受給者は、539万7,278例であった(年齢中央値74歳[四分位範囲[IQR]:70~80]、女性56%)。BNT162b2接種者は317万3,426例、mRNA-1273.222接種者は222万3,852例。 いずれかのワクチン接種後に脳卒中を発症した1万1,001例において、製品の違い、リスクウィンドウ(1~21日または22~42日)と対照ウィンドウとの比較評価で、非出血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作の複合、または出血性脳卒中との間に、統計学的に有意な関連は認められなかった(発生率比[IRR]の範囲:0.72~1.12)。高用量/アジュバント付加型インフルエンザワクチン併用接種者で有意な関連 いずれかのワクチン+高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチンの併用接種後に脳卒中を発症した4,596例では、BNT162b2の場合、接種後22~42日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と非出血性脳卒中との間に統計学的に有意な関連が認められた(IRR:1.20[95%信頼区間[CI]:1.01~1.42]、接種10万回当たりのリスク差:3.13[95%CI:0.05~6.22])。mRNA-1273.222の場合、接種後1~21日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と一過性脳虚血発作との間に統計学的に有意な関連が認められた(IRR:1.35[95%CI:1.06~1.74]、接種10万回当たりのリスク差:3.33[95%CI:0.46~6.20])。 また、高用量またはアジュバント付加型インフルエンザワクチン接種後に脳卒中を発症した2万1,345例において、接種後22~42日のリスクウィンドウで、ワクチン接種と非出血性脳卒中との間に有意な関連が確認された(IRR:1.09[95%CI:1.02~1.17]、接種10万回当たりのリスク差:1.65[95%CI:0.43~2.87])。

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がん罹患数が著増、がん死は減少~英国の25年/BMJ

 英国の年齢35~69歳の集団では、1993~2018年の25年間にがん罹患数が大きく増加したのに対し、がんによる死亡率は減少しており、この減少にはがんの予防(喫煙防止策、禁煙プログラムなど)と早期発見(検診プログラムなど)の成功とともに、診断検査の改善やより有効性の高い治療法の開発が寄与している可能性があることが、英国・Cancer Research UKのJon Shelton氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2024年3月13日号に掲載された。23部位のがんの後ろ向き調査 研究グループは、1993~2018年の英国の年齢35~69歳の集団における、23の部位のがんの診断数および死亡数を後ろ向きに調査した(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、国家統計局、ウェールズ公衆衛生局、スコットランド公衆衛生局、Northern Ireland Cancer Registry、イングランド国民保健サービスなどのデータを用いた。 主要アウトカムは、がんの年齢調整罹患率と年齢調整死亡率の経時的変化とした。前立腺がんと乳がんが増加、ほかは安定的に推移 35~69歳の年齢層におけるがん罹患数は、男性では1993年の5万5,014例から2018年には8万6,297例へと57%増加し、女性では6万187例から8万8,970例へと48%増加しており、年齢調整罹患率は男女とも年平均で0.8%上昇していた。 この罹患数の増加は、主に前立腺がん(男性)と乳がん(女性)の増加によるものだった。これら2つの部位を除けば、他のすべてのがんを合わせた年齢調整罹患率は比較的安定的に推移していた。 肺や喉頭など多くの部位のがんの罹患率が低下しており、これは英国全体の喫煙率の低下に牽引されている可能性が高いと推察された。一方、子宮や腎臓などのがんの罹患率の増加を認めたが、これは過体重/肥満などのリスク因子の保有率が上昇した結果と考えられた。 また、罹患数の少ない一般的でないがんの傾向については、たとえば悪性黒色腫(年齢調整年間変化率:男性4.15%、女性3.48%)、肝がん(4.68%、3.87%)、口腔がん(3.37%、3.29%)、腎がん(2.65%、2.87%)などの罹患率の増加が顕著であった。男女とも胃がん死が著明に減少 25年間のがんによる死亡数は、男性では1993年の3万2,878例から2018年には2万6,322例へと20%減少し、女性では2万8,516例から2万3,719例へと17%減少しており、年齢調整死亡率はすべてのがんを合わせて、男性で37%(年平均で-2.0%)低下し、女性で33%(-1.6%)低下していた。 死亡率が最も低下したのは、男性では胃がん(年齢調整年間変化率:-5.13%)、中皮腫(-4.17%)、膀胱がん(-3.24%)であり、女性では胃がん(-4.23%)、子宮頸がん(-3.58%)、非ホジキンリンパ腫(-3.24%)だった。罹患率と死亡率の変化の多くは、変化の大きさが比較的小さい場合でも統計学的に有意であった。 著者は、「喫煙以外のリスク因子の増加が、罹患数の少ない特定のがんの罹患率増加の原因と考えられる」「組織的な集団検診プログラムは、がん罹患率の増加をもたらしたが、英国全体のがん死亡率の減少にも寄与した可能性がある」「この解析の結果は、新型コロナウイルス感染症の影響を含めて、がんの罹患率およびアウトカムの今後10年間の評価基準となるだろう」としている。

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第187回 医療事故の報告件数が増加傾向、分娩を含む手術が最多/医療安全調査機構

<先週の動き>1.医療事故の報告件数が増加傾向、分娩を含む手術が最多/医療安全調査機構2.マダニ感染症SFTS、ヒトからヒトへの感染、国内で初めて報告/国立感染症研究所3.看護師国家試験、合格率87.8%と4年ぶりに低下/厚労省4.不整脈手術中の医療過誤、福岡高裁が九州医療センターに約2億円の賠償命令5.同一の執刀医による肝臓がん手術後の3人の死亡事故を公表/東海中央病院6.コロナ補助金8,500万円を不正受給した病院に返還命令/福岡県1.医療事故の報告件数が増加傾向、分娩を含む手術が最多/医療安全調査機構日本医療安全調査機構は、医療事故調査・支援センターの2023年の年報を発表した。対象期間は2023年1月1日~12月31日。この期間に報告された医療事故件数は361件と前年より2割ほど増えた。新型コロナウイルス感染拡大時は、医療事故発生報告件数の減少が認められたが、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、医療事故発生報告件数に増加傾向がみられた。2015年10月の医療事故調査制度開始以来、2023年末までに2,909件の医療事故が報告され、その87.3%で院内調査が完了していた。年報によると、1施設当たりの医療事故発生報告件数が最も多かったのは「900床以上」(1床当たり0.53件)で、ついで多かったのが「600~699床」(1床当たり0.44件)と病床規模が大きな病院ほど1床当たりの事故件数が多い傾向が認められた。また、人口100万人当たりで最多の医療事故報告数を記録したのは宮崎県であり、医療事故の起因としては依然として「分娩を含む手術」が最も多くを占めていた。医療事故報告から院内調査結果報告までの期間は平均458.5日に短縮していた。センターへの調査依頼は遺族から21件、医療機関から7件であり、センターへの相談件数はコロナ禍前の水準を超える2,076件だった。これらのデータは、医療事故の正確な報告と透明性の向上、再発防止策の重要性を浮き彫りにしているだけでなく、医療施設での安全対策強化への取り組みがますます求められており、医療事故報告数が多いことが必ずしも医療安全に問題があるわけではなく、正しく報告する文化の醸成が重要であることが示されている。参考1)『2023年 年報』について(日本医療安全調査機構)2)医療事故調査・支援センター 2023年 年報(同)3)医療事故調査・支援センター 2023年 数値版(同)4)人口100万人あたり医療事故報告件数の最多は2023年も宮崎県、手術・分娩に起因する医療事故が依然多い!-日本医療安全調査機構(Gem Med)2.マダニ感染症SFTS、ヒトからヒトへの感染、国内で初めて報告/国立感染症研究所マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」のヒトからヒトへの感染例が国内で初めて確認されたことが、国立感染症研究所によって明らかにされた。2023年4月、90代男性患者がSFTSと診断された後、患者を担当した20代の男性医師が、患者の死後に行った処置により感染。医師は処置時にマスクや手袋を着用していたが、ゴーグルはしておらず、11日後に38℃の発熱などSFTSの症状が現れた。患者と医師のウイルス遺伝子が同一と判断され、これが国内初のヒトからヒトへの感染例と認定された。医師の症状は現在軽快している。これまで、SFTSのヒトからヒトへの感染は中国や韓国で報告されていたが、わが国での確認はこれが初めて。SFTSは、主にマダニに刺されて感染する感染症で、発熱や腹痛などを引き起こし、重症化すると死亡することもある。国立感染症研究所と厚生労働省は、医療従事者に対して患者の血液や体液に触れる可能性がある際の感染予防対策の徹底を改めて呼びかけている。参考1)本邦で初めて確認された重症熱性血小板減少症候群のヒト-ヒト感染症例(国立感染症研究所)2)マダニの媒介による感染症SFTS ヒトからヒトへ感染 国内初確認(NHK)3)マダニ感染症、国内初の人から人への感染確認…患者を処置した医師に症状(読売新聞) 3.看護師国家試験、合格率87.8%と4年ぶりに低下/厚労省厚生労働省は、第113回看護師国家試験の結果を発表した。これによると今年の合格率は87.8%で、4年ぶりに9割を下回ったことが明らかとなった。2月11日に実施された看護師国家試験は、6万3,301人が受験し、そのうち5万5,557人が合格した。新卒者の合格率は93.2%となり、新卒者の合格者数は5万3,903人だった。一方で、経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の合格者は17人(受験者294人)だった。助産師および保健師の国家試験においても、助産師は98.8%、保健師は95.7%といずれも新卒者の合格率が高くなっていた。今回の結果は、国の医療人材育成の現状を示すと同時に、外国人看護師候補者に対する支援の必要性を改めて浮き彫りにしている。参考1)第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験及び第113回看護師国家試験の合格発表(厚労省)2)看護師国家試験2024、新卒合格率は93.2%(リセマム)3)看護師国家試験、合格率87.8% 4年ぶりに9割を下回る(CB news)4)看護師国試、外国人候補者は17人合格(MEDIFAX)4.不整脈手術中の医療過誤、福岡高裁が九州医療センターに約2億円の賠償命令カテーテルアブレーション手術中の医療過誤をめぐる医療訴訟で、福岡高等裁判所は九州医療センター(福岡市)に約2億円の賠償命令を命じた。福岡県内の60代男性が不整脈の手術中に心停止し、その際の蘇生措置の遅延により低酸素脳症による意識障害の後遺症を負ったとして、約2億円の損害賠償を求めていた。1審では医療ミスを認めず訴えを退けたが、福岡高裁は控訴審判決で医師の過失を認め、1審判決を変更し約1億8,600万円の賠償を命じた。判決によると、男性は平成26年11月にカテーテルアブレーション治療中に心停止が発生し、医師らによる胸骨圧迫の蘇生措置の開始が遅れたため、約4分50秒間、脳への血流が停止状態にあったことが、男性の重い後遺症と因果関係があるとされた。この過失と後遺症の間の因果関係を認め、1審とは逆に男性側の訴えを認めた。男性の妻は医師の過失が認められたことに対して安堵のコメントを表明するとともに、病院には再発防止に努めるよう要望している。国立病院機構九州医療センターは判決文を精査した上で今後の対応を検討するとしている。参考1)心臓手術後寝たきり状態、国立病院機構に1億8,600万円賠償命令…請求棄却の1審判決を変更(読売新聞)2)手術中の医療過誤認める、国立病院機構に約2億円賠償命令「蘇生措置の開始に遅れ」(産経新聞)3)九州医療センターの過失認め 約2億円賠償命じる 福岡高裁(NHK) 5.同一の執刀医による肝臓がん手術後の3人の死亡事故を公表/東海中央病院岐阜県の東海中央病院(岐阜県各務原市)は、2016~2022年にかけて、同一の外科医が行った肝臓がんの手術により患者3人が死亡した医療事故を公表した。病院によると肝臓がんの手術中に大量出血が発生し、患者はいずれも出血性ショックで死亡した。執刀していた外科医は2023年6月に依願退職している。病院側は医療事故調査委員会の調査結果をもとに報告書をまとめ、医療事故調査・支援センターに再発防止策を含め報告した。報道によれば、病院側は3件のうち2件を医療事故と認めていなかったが、岐阜県の行政指導を受けて全件を医療事故として認定した。病院は、外部委員を含む調査委員会を設置し、再発防止策を公表した。これによると、施設内で対応可能な手術症例の明確化、術前・術後カンファレンス実施体制の構築、病院幹部への再教育などが含まれている。病院は患者の遺族に対して説明を行い、事故調査の結果を真摯に受け止め、医療の安全確保と再発防止に努めると表明した。参考1)当院で発生した医療事故について(東海中央病院)2)東海中央病院 患者3人が死亡する医療事故公表 岐阜 各務原(NHK)3)同じ外科医の手術中に患者3人死亡 各務原の東海中央病院で医療事故、肝切除の手術(中日新聞)4)同じ医師の手術で死亡事故3件、がん患者が肝切除で大量出血…2件は「事故でない」判断覆す(読売新聞)6.コロナ補助金8,500万円を不正受給した病院に返還命令/福岡県「飯塚みつき病院」(福岡県飯塚市)が、新型コロナウイルスに関連する補助金を不正に受給した問題で、福岡県から8,500万円余りの返還命令が出された。この補助金は、新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れるための病床確保や設備整備を支援する目的で提供されていたが、同病院は実際には患者受け入れのための体制が整っていないにも関わらず、不正に補助金を申請していたことが判明した。2022年9月~2023年9月にかけての不正申請により、約7,600万円がすでに交付されており、さらに加算金約900万円の支払いが求められている。会計検査院と県の実地検査で、病院が必要な看護師を配置していないことや、補助金申請に際して虚偽の申請書を作成していたことが明らかになった。とくに、病院では2022年度、新型コロナの患者を1人も受け入れておらず、感染症対策として必要な病棟工事や人工呼吸器の購入などに関する証拠もみつからなかったと報告されている。さらに、病院は今年2月、職員が大量に退職し、診療継続が困難な状況に陥っているため、高齢者を中心とした入院患者は、他の病院への転院を余儀なくされている。福岡県は、この問題を重要視し、不正行為を行ったと判断し、返還命令を出した。病院側は、不正申請の経緯について「前任者に聞かないとわからない」と説明しており、県は県警に情報を提供している。福岡県は、このような悪質な不正行為を許すことはできないとして、他の医療機関に対しても同様の不正がないか調査を進めることにしている。参考1)コロナ病床の補助金8,500万円不正受給…福岡県飯塚市の病院、22年度の患者受け入れゼロ(読売新聞)2)飯塚市の病院 県の新型コロナ補助金8,500万円余を不正申請(NHK)3)新型コロナウイルス感染症対策事業の不正行為の対応について (福岡県)

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第203回 コロナワクチン有償化へ、最も弊害を受ける関係者とは

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の生後6ヵ月以上の国民に対する全額公費でのワクチン接種がついに3月31日に終了する。2024年4月1日から新型コロナはインフルエンザと同じく個人での予防を主眼とする予防接種法のB類疾病となり、ワクチン接種の対象者を65歳以上の高齢者および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染で免疫機能に障害があって日常生活がほとんど不可能な人とし、秋冬の定期接種へと切り替わる。これ自体は現状を考えれば、多くの医療従事者が納得するだろう。B類疾病となれば、ご存じのように定期接種対象者は無償とはいかない。厚生労働省が示した自己負担額の標準的な接種費用は7,000円である。ワクチン製造企業に対する非公開ヒアリングで希望小売価格を聞いた結果を踏まえ、ワクチン価格を1万1,600円とし、これに医師の手技料3,740円を加え、接種1回あたりの費用は1万5,300円程度と試算。国は接種1回あたり8,300円を助成金として自治体に交付する計画だ。また、従来からB類疾病の定期接種は、住民税非課税世帯や生活保護世帯の対象者は無償なため、これを念頭に市区町村には接種費用総額の3割を地方交付税として手当てする1)。ワクチン価格は私個人の予想からそう外れてはいなかったが、接種対象者の自己負担額はインフルエンザワクチンの約4倍。新規モダリティのワクチンであるため、この価格はある意味仕方ないが、消費者目線ではかなりに高いと言える。おそらく市区町村によっては、接種対象者の自己負担分も負担して無料にするところも出てくるだろうが、全体から見れば、おそらくそれは少数派ではないだろうか?こうなると定期接種対象者の中には接種の差し控えも増えてくるだろうと思われる。もっとも国内の高齢者の新型コロナワクチン接種率は3回目までで90%超、4回目以降の総接種回数も2024年3月17日現在9,364万7,589回であることを考えれば、この先1年程度の短期で見るならば、高齢者での感染拡大とそれに伴う重症者・死亡者の増加懸念はそれほど大きくはないだろうと個人的には受け止めている。ただ、長期的に見ると、やや違う見方ができる。とりわけ高齢者に関わる層の接種率の低下が不安要素の一つだ。代表格は若年の医療従事者と介護関係者だが、これまでのインフルエンザでの経験や個人あるいは所属組織の可処分所得から考えると、懸念すべきは後者の介護従事者である。医療従事者と比べても重症化リスクの高い高齢者に集中的に接する介護従事者の平均給与(手当・賞与を含む)は、厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇等調査結果」によると、同年12月時点で月額31万8,230円。国税庁による「令和3年分民間給与実態統計調査」の民間給与所得者の平均給与月額(同調査年額を月額換算)36万9,417円と比べれば、5万円以上の格差がある。ちなみに前述の介護職員の平均給与月額は、岸田 文雄首相が就任直後から介護・看護・保育従事者の賃上げを政権の重要方針に掲げ、介護従事者に関しては2022年2月から補助金、同年10月から介護職員等ベースアップ等支援加算を介護報酬に新設した後の結果である。実際、同調査結果からは前年同月と比べて平均給与月額は1万7,490円増えたが、それでもまだこれほどの格差があるのだ。この状態で介護従事者を任意接種にして1万5,000円以上の自己負担を求めるのはやや酷である。さらに今さら言うまでもなく、人によってはこの経済的負担に加え、接種後2~3日の倦怠感と発熱の副反応という肉体的負担を凌がなければならない。しかも、高齢者施設の経営状況は近年厳しさを増している。独立行政法人福祉医療機構が2月上旬に発表したデータによると、施設系サービスの代表格とも言える特別養護老人ホームのサービス活動収益対サービス活動増減差額比率(企業で言えば利益率に相当)は、2022年度で従来型が0.3%、ユニット型が4.1%。それぞれ前年度から1.1ポイント、0.7ポイント低下している。同年度の赤字施設割合は従来型が48.1%、ユニット型が34.5%で、いずれも前年度から拡大し、従来型の約半数が赤字となる極めて深刻な状況だ。施設側に介護従事者のワクチン接種を補助できる余裕はないと言ったほうがよいだろう。インフルエンザワクチンの接種に関しては、東京都目黒区のように高齢者施設を含む入所系福祉施設職員への接種補助を行っているケースもあるが、まだ稀な動きである。確かに現時点での高齢者の新型コロナワクチン接種率を考えれば、介護従事者の持ち込みによる感染・発症が発生しても、重症化は短期的には避けられるかもしれない。しかし、新型コロナでは感染・発症を繰り返すほど、後の重症化リスクが高まるとの報告もある。また、昨今の変異株に対し新型コロナワクチンの感染・発症予防効果は低下している。介護従事者などを通じて施設に繰り返し感染が持ち込まれれば、あまり良い結末は想像できないはずである。その意味で、とりわけ介護従事者の新型コロナワクチン接種に関しては、別枠の補助を設けたほうが望ましいのではないかと個人的には思わずにいられないのだが…。参考1)厚生労働省:新型コロナウイルスワクチンの接種について(令和6年3月15日)

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酒で顔が赤くなる人は、コロナ感染リスクが低い?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時、日本は欧米などと比較して人口当たりの感染率・死亡率が低かったことが報告されている1,2)。この要因としては、手洗いやマスクなどの感染予防策が奏効した、日本の高い衛生・医療水準によるものなどの要因が考えられているが、アジア人に多い遺伝子型も一因となっている可能性があるとの報告がなされた。佐賀大学医学部 社会医学講座の高島 賢氏らによって国内で行われた本研究の結果は、Environmental Health and Preventive Medicine誌に2024年3月5日掲載された。 日本人をはじめとした東アジア人には、アルコールを分解するアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の活性が弱く、飲酒時に顔が赤くなる特性を持つ人(rs671変異体)が多い。研究者らは、遺伝子型と新型コロナウイルス感染の防御効果の関連を検証するため、rs671変異体の代替マーカーとして飲酒後の皮膚紅潮現象を用い、後ろ向きに解析した。調査はWebツールを使って2023年8月7~27日に行われ、参加者は感染歴、居住地、喫煙・飲酒歴、既往症などの質問に回答した。 主な結果は以下のとおり。・計807例(女性367例、男性440例)から有効回答を得た。362例が非紅潮群、445例が紅潮群だった。・2019年12月~23年5月の42ヵ月間の観察期間全体で、非紅潮群は40.6%、紅潮群は35.7%がCOVID-19に感染した。年齢、性別、居住地等で調整後、初感染までの時間は紅潮群のほうが遅い傾向があった(p=0.057)。・COVID-19による入院例は、非紅潮群は2.5%、紅潮群は0.5%であった。COVID-19感染および関連した入院リスクは、紅潮群で低かった(p=0.03および<0.01)。・日本人の多くがCOVID-19ワクチンの2回接種を終える前である2021年8月31日までの21ヵ月間では、紅潮群の非紅潮群に対するCOVID-19感染のハザード比は0.21(95%信頼区間:0.10~0.46)と推定された。 研究者らは、「本研究は、飲酒後の皮膚紅潮現象とCOVID-19の感染および入院のリスク低下との関連を示唆しており、rs671変異体が防御因子であることを示唆している。本研究は感染制御に貴重な情報を提供するとともに、東アジア人特有の体質の多様性を理解する一助となる」としている。

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新型コロナによる世界の死亡率と平均余命への影響/Lancet

 世界の成人死亡率は、2020年および2021年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に著しく上昇し、それまでの減少傾向が逆転した一方、小児死亡率は以前より緩やかではあるものの減少が続いていた。米国・保健指標評価研究所(IHME)のAustin E. Schumacher氏らGBD 2021 Demographics Collaboratorsが解析結果を報告した。COVID-19はパンデミックの最初の2年間に多くの人口統計学的指標に大きな影響を及ぼしたが、評価した72年間にわたる世界全体の保健医療の進歩は大きく、死亡率と平均余命は著しく改善していたという。また、低所得国では人口が安定または増加しているにもかかわらず、2017年以降、世界の人口増加の減速と共に、世界的に人口年齢構造の高齢化が続いていた。著者らは、「このような人口変動は、今後、保健医療制度、経済および社会に課題をもたらす可能性が高い」と指摘している。Lancet誌オンライン版2024年3月11日号掲載の報告。GBD 2021のデータを解析 2021年版の世界疾病負担研究(Global Burden of Disease Study:GBD)では、1950~2021年の204の国と地域、および811のサブナショナル地域について、とくに2020~21年のCOVID-19パンデミック中の死亡率と平均余命の変化に重点を置いて、新しい人口統計学的推計を提供している。 研究グループは、政府系ウェブサイト、統計年鑑、人口統計、大規模調査などから得た2万2,223のデータソースを用い死亡率を推定した。これらのデータソースの一部は、COVID-19パンデミックによる超過死亡の推定にのみ用いた。人口推計には2,026のデータソースを用い、移住、HIV流行の影響、紛争・飢餓・自然災害・パンデミックによる人口統計の不連続を推計するために追加のデータソースを用いた。時空間ガウス過程回帰モデル(ST-GPR)を使用して5歳未満児の死亡率を算出するとともに、成人(15~59歳)の死亡率も推定し、生命表を作成した。HIVの流行国では、HIV特異的死亡率の推定値により生命表を調整した。 2020年と2021年のCOVID-19パンデミックによる超過死亡率は、パンデミックがなかった場合に予想される死亡から、観察された全死因死亡を差し引いて算出した。全死因死亡のデータが得られなかった地域・年では、パンデミックに関する共変量を含む回帰モデルにより超過死亡率を推定した。人口規模は、階層ベイズコホートコンポーネントモデルを使用し、平均余命は年齢別死亡率と標準的な人口統計学的手法を使用して算出した。COVID-19パンデミック中の成人死亡率は増加、小児死亡率は緩やかな低下が続く 年齢標準化死亡率は1950~2019年の間に減少し(62.8%、95%不確定区間[UI]:60.5~65.1)、COVID-19パンデミック期間中に増加した(2020~21年:5.1%、95%UI:0.9~9.6)。一方、小児の死亡率は減少を続け、世界の5歳未満児の死亡数は、2019年は521万人(95%UI:450万~601万)であったのに対し、2021年は466万人(95%UI:398万~550万)であった。 2020年と2021年を合計すると、世界中で推定1億3,100万人が死亡(全死因)し、そのうちCOVID-19パンデミックによるものは1,590万人であった。パンデミックの少なくとも1年間の超過死亡率は、80の国と地域で人口10万人当たり150人を超えたが、20ヵ国では2020年または2021年の超過死亡率がマイナスとなり、これらの国ではパンデミック中の全死因死亡率が過去の傾向に基づく予想より低値であったことが示された。 世界の出生時平均余命は、1950年の49.0歳から2021年には71.7歳と、22.7歳上昇した。しかし、2019~21年の間は1.6歳低下しており、過去の傾向が逆転した。2019~21年の間に平均余命の上昇が確認されたのは、204の国と地域のうち32(15.7%)のみであった。 世界の人口は2021年に78.9億人に達したが、その時点までに204の国と地域のうち56は人口がピークに達し、その後は減少している。2020~21年に人口増加が大きかったのは、サハラ以南アフリカ(39.5%)と南アジア(26.3%)であった。また、2000~21年にかけて、15歳未満の人口に対する65歳以上の人口の比は、204の国と地域のうち188(92.2%)で増加した。

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ワクチン接種、腕を交互にすることで免疫力アップ?

 ワクチンを複数回接種する際には、接種する腕を同じ側にするのではなく交互にかえることで、より高い効果を得られる可能性があるようだ。新型コロナワクチンの2回目接種時に接種する腕を逆にした人の方が、同側の腕に接種した人よりも免疫力が高いことが確認された。米オレゴン健康科学大学の感染症専門医であるMarcel Curlin氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Clinical Investigation」に1月16日掲載された。 研究グループは、「新型コロナワクチンに関しては、パンデミック時にすでに何百万人もの米国人が複数回の接種を受けたので、今回の研究で得られた知見はもはやさほど重要ではないかもしれないが、小児用予防接種を含む複数回接種のワクチン全てに影響を与える可能性がある」述べている。 今回の研究でCurlin氏らは、新型コロナワクチンを2回接種した947人(平均年齢44.5歳、女性73%)を対象に、2回目接種を初回と同じ腕に受けた場合(同側)と反対側の腕に受けた場合(対側)とで血清中の特定の抗体反応がどのように変わるのかを評価した。対象者のうち507人は同側に、440人は対側に接種を受けていた。 その結果、対側群では同側群に比べて新型コロナウイルスに特異的な抗体の抗体価(以下、総抗体価)が時間とともに有意に増加しており、2回目接種の後(約21日後)で1.2倍(P=0.020)、3回目接種の直前(0.5日前、2回目接種から約8カ月後)と接種後(2回目接種から約14カ月後)では1.4倍(P<0.001)であることが示された。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合部位(RBD)に特異的な抗体(IgG抗体)についても、3回目接種直前で同側群の1.2倍(P=0.004)、3回目接種後で1.3倍(P=0.021)と同様の傾向が認められた。 次に、年齢、性別、ワクチンの接種間隔を一致させた54組の抗体価の推移を検討した。その結果、対側群の総抗体価とIgG抗体価は、3回目接種直前で同側群の1.7倍と1.5倍、3回目接種後で1.3倍と1.7倍であることが示された。さらに、初期の新型コロナウイルスに近い擬似ウイルスと、南アフリカで2021年11月に最初に報告されたオミクロン変異株(B.1.1.529)に対する中和抗体価を調べたところ、3回目接種直前では擬似ウイルスに対する中和抗体価について対側群と同側群の間に有意差は認められなかった。しかし3回目接種後では、対側群での擬似ウイルスに対する中和抗体価は同側群の約2倍、また、B.1.1.529に対する中和抗体価は約3.5〜4倍、有意に高かった(いずれもP<0.001)。 Curlin氏は、「この結果についてはさらに詳しく調査する必要があるため、現時点で、2回目は初回と反対側の腕に接種するべきだと推奨するつもりはない」と述べつつも、「全ての条件が同じであれば、反対側の腕に接種することを検討すべきだ」と話している。 一方、トロント大学(カナダ)免疫学分野のJennifer Gommerman氏はNew York Times紙に対し、「カナダでの新型コロナワクチン接種で行われたように、接種間隔を3カ月から4カ月に延長する方が、接種する腕の切り替えを行うよりも大きなベネフィットをもたらす可能性がある」と語る。同氏はさらに、「免疫不全患者にとっては、免疫力を高める助けになることなら何であれ試してみて損はない」ため、こうした接種方法の効果を研究する価値はあるとの見方を示している。

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抑うつ症状のある人は体温も高い

 抑うつと体温上昇は関連していることが、新たな研究で示唆された。どちらが原因であるのかまでは明らかになっていないものの、研究グループは、体温の調節が抑うつに対する新たな治療法となり得る可能性を示唆する結果だとの見方を示している。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)精神医学分野のAshley Mason氏らによるこの研究の詳細は、「Scientific Reports」に2月5日掲載された。 この研究では、2020年春からおよそ7カ月にわたって実施された研究(TemPredict Study)のデータを用いて、体温と抑うつとの関連が検討された。TemPredict Studyは、大規模集団の中から初期段階の新型コロナウイルス感染症患者を見つけ出すために市販のウェアラブルデバイス(以下、デバイス)で収集したデータを活用できるかどうかを検討した研究である。研究参加者はデバイスの装着により体温を測定したほか、体温計で測定した体温の報告も行っていた。また、毎月1回、電子メールを通じて抑うつ症状に関する調査に回答していた。自己報告による体温に関する解析は2万880人(平均年齢46.9歳、男性53%)、デバイスにより測定された体温に関する解析は2万1,064人(平均年齢46.5歳、男性56%)を対象に行われた。 解析の結果、自己報告による体温とデバイスにより測定された体温の両方で、覚醒時の体温が高いほど、抑うつ症状の重症度も高まることが明らかになった。また、統計的に有意ではなかったが、デバイスで測定された体温のデータから計算された日内の体温振幅が小さいほど、抑うつ症状の重症度が高い傾向があることも示された。 ただし本研究では、体温の上昇が抑うつ症状を誘発するのか、あるいは抑うつ症状が体温の調節機能を低下させて体温上昇を招いているのか、それとも抑うつ症状と体温の関連性に両者が少しずつ関与しているのかについては明らかにならなかった。 Mason氏はUCSFのニュースリリースで、「地理的に広範な人々において、自己報告とウェアラブルセンサーの両方で評価された体温と抑うつ症状との関連を調べた本研究は、われわれが知る限りでは、これまで実施された同様の研究の中で最も規模が大きい」と語り、「米国でうつ病の罹患率が上昇していることを考えると、新たな治療法の可能性が見えたことに対してわれわれは興奮している」と付け加えている。 Mason氏らは今後の研究で、うつ病患者の体温を追跡することで、温熱療法を適切なタイミングで実施できるかどうかを検討する予定だと話している。

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医学生の英語力、コロナ禍のオンライン授業で向上

 2020年のコロナ禍以降、オンライン教育が取り入れられてきた。今回、新たな研究で、医学部2年生の英語力に関するオンライン教育の効果が検証された。その結果、「対面授業」と比べて、「オンライン授業」や「オンラインと対面の併用授業」を受けた医学生の英語力は向上していたという。北海道大学大学院医学研究院 医学教育・国際交流推進センターの高橋誠氏らによるこの研究は、「BMC Medical Education」に1月17日掲載された。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、大学や医療機関における教育は混乱に陥った。現場では「オンライン授業」に切り替えることで教育活動を維持してきたが、オンライン教育が医学教育に及ぼした影響については、まだ十分に解明されていない。そこで著者らは、北海道大学医学部における医学英語のコースを受講した大学2年生の成績を3年分調査し、オンライン教育の影響を検証した。 同コースでは毎年4~7月に、計15回の授業が行われた。全てが対面授業だった2019年、オンライン授業のみの2020年、オンラインと対面が半分ずつ併用された2021年の各年、受講した医学部2年生のうち計321人が対象となった。医学のための英語として、医学用語、問診・診察、根拠に基づいた医療(EBM)などの内容が、日本語と英語で指導された。 まず、コース前後に質問紙を用いて、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングのスキルを主観的に評価した。また、客観的な評価項目を3つ設定。1つ目は「医学用語」として、各授業の前後で知識を評価。2つ目の「EBM」は、学生を6~7人のグループに分け、「The New England Journal of Medicine」誌の論文を読んで分析し、最新の医学情報を抽出する方法を指導。コース終了後に、レポート提出、論文の要約、ポスター作成、ポイントの口頭発表を課した。3つ目の「最終試験」では、コース終了後に筆記試験を実施した。 解析対象の学生は、2019年が106人(女性19人)、2020年が104人(同19人)、2021年が111人(同27人)だった。各年で、女性の割合や、大学入学試験の英語の点数に有意差はなかった。主観的評価の結果、コース開始時に比べて、「対面授業」の2019年はリスニングとスピーキングの2つが有意に向上した。「オンライン授業」の2020年は、有意に向上していたのはライティングのみだった。「併用授業」の2021年には、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの全てのスキルが有意に向上していた。 客観的な評価項目のうち、「医学用語」と「EBM」は、各年とも成績が有意に向上し、授業形態による違いは認められなかった。「最終試験」については、各年の平均点(100点満点)が2019年は78.6±8.8、2020年は82.8±8.2、2021年は79.7±12.1だった。すなわち、「オンライン授業」の方が、「対面授業」や「併用授業」よりも点数が有意に高かった。ただし、「対面授業」と「併用授業」の間では、点数の差は有意ではなかった。 著者らは研究論文の考察において、特筆すべきこととして、オンラインと対面の併用授業で全ての英語スキルが向上したことを挙げている。また今後、医学英語の他にも、多くの臨床前コースを対象とした大規模な研究が必要とした上で、「オンライン授業や併用授業による教育は、対面授業に劣らず効果的だった」と総括している。

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第204回 アドレナリンを「打てない、打たない」医者たちを減らすには(前編) アナフィラキシーが呼吸器系の症状や循環器症状が単独で起こった場合は判断が難しい

インタビュー: 海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)昨年11月8日掲載の、本連載「第186回 エピペンを打てない、打たない医師たち……愛西市コロナワクチン投与事故で感じた、地域の“かかりつけ医”たちの医学知識、診療レベルに対する不安」は、2023年に公開されたケアネットのコンテンツの中で最も読まれた記事でした。同記事が読まれた理由の1つは、この事故を他人事とは思えなかった医師が少なからずいたためだと考えられます。そこで、今回と次回はこの記事に関連して行った、日本アレルギー学会理事長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)へのインタビューを掲載します。愛西市コロナワクチン投与事故の背景には何があったと考えられるのか、「エピペンを打てない、打たない医師たち」はなぜ存在するのか、「アナフィラキシーガイドライン2022」のポイントなどについて、海老澤氏にお聞きしました。(聞き手:萬田 桃)アドレナリンは“心肺蘇生に使う薬”というイメージを抱いている方がまだまだ多い――この記事が多くの読者に読まれた理由について、先生はどうお考えですか。海老澤タイトルにあるように、「エピペンを打てない、打たない医師」は実際に少なくなく、そうした方が読んだということが1つ考えられます。また、ワクチンの集団接種会場ということで、医師会などから依頼されて医師等が接種を行うわけですが、アナフィラキシーなど、万が一のことが起こった場合に、その場ですぐに全身管理ができるような体制は多くの会場で整っていなかったと考えられます。そういった意味で、「自分にも起こり得た事件だった」と捉えた方も多かったのかもしれません。――「エピペン」こと、アドレナリンを「打てない、打たない医師」はまだ結構いるのでしょうか。海老澤アドレナリンの筋肉注射については、僕らの世代から上の医師だと、”心肺蘇生に使う薬”というイメージを抱いている方がまだまだ多い印象です。最近は、医師国家試験でもアナフィラキシーの時のアドレナリン筋注は第一選択だということが設問になるくらいで、若い医師たちには十分浸透していることだと思います。しかし、一方で少し世代が上になると、「まずアドレナリン筋注」とは考えない医師は存在します。使った経験がない人だと躊躇してしまうことはある――今回のコロナワクチンのアナフィラキシーに最初に対応した医師は、事故報告書によれば「内科医、医師歴5年以上10年未満」となっていました。海老澤比較的若い医師だったのですね。今回のケースに当てはまるかどうかはわかりませんが、アナフィラキシーの患者にこれまで遭遇したことがある医師は、アナフィラキシーの患者を目の前にして、すぐに筋注しても問題はないと理解していると思うのですが、使った経験がない人だと躊躇してしまうことはあると思います。これまでにアナフィラキシーの患者さんを1人も診たことがなく、対処法に慣れていない医師は全国で少なくないと思います。仮に病院での治療中に起きたアナフィラキシーだったら、筋注後すぐにICUに運びルートを取り、アドレナリンを希釈して投与することも可能です。酸素投与もできます。また、手術中であればすでにルートが取れているので、即時対応が可能です。しかし、アナフィラキシーの初期対応としてアドレナリン筋注(0.1%アドレナリンの筋肉内注射、またはアドレナリン自己注射用製剤〈エピペン0.3mg製剤の投与〉)が第一選択だというのは基本中の基本です。もちろん、糖尿病や高血圧、動脈硬化など基礎疾患があるような方だと、アドレナリンを打って血圧が急上昇して脳出血を起こしたりするリスクは全くゼロではありません。そうしたリスクとベネフィットを考えて投与するわけですが、打って害になることは少ないと思います。アナフィラキシーが呼吸器系の症状や循環器症状が単独で起こった場合は判断が難しい――報告書によれば、看護師の1人は、アナフィラキシーの可能性を考え、アドレナリン1mgプレフィールドシリンジに22ゲージ針を付け、医師の指示があればいつでも筋注できるよう準備をしていましたが、「医師の判断を尊重するため、アドレナリンの準備ができていることを積極的に伝えようとはしなかった」とのことです。海老澤なるほど。ただ、そこは医師の判断ですから難しいですね。あともう1つ考えられるのは、アナフィラキシーの症状が典型的なパターンではなく、それが見逃しにつながった可能性です。――報告書では、「接種前から体調不良、呼吸苦があったようだという看護師からの情報と、粘膜所見、皮膚所見、掻痒感、消化器症状など『アナフィラキシーで典型的な症状』がなかったことから、女性の病態はアナフィラキシーの可能性が低いと判断し、アドレナリンの筋肉内注射を第一治療選択から外した」と書かれています。海老澤アナフィラキシーが呼吸器系の症状や、血圧低下などの循環器症状が単独で起こった場合は、判断が難しいというのは確かにあります。2022年に改訂した「アナフィラキシーガイドライン」1)では、診断基準が2つに集約されました。1つは、「皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、瘙痒または紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間)で発症した場合」。もう1つが「典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性が高いものに曝露された後、血圧低下または気管支痙攣または咽頭症状が急速に(数分〜数時間)で発症した場合」となっています。この2番目は、循環器症状と呼吸器症状の単独の場合を言っているわけです。アナフィラキシーの基本は皮膚症状なのですが、典型的な皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面で、血圧低下または気管支攣縮、咽頭症状などの呼吸器症状があればアドレナリンを打つ、というのが2022年改訂の大きなポイントです。ワクチンもそうですが、薬剤等の場合にこうした呼吸器症状、循環器症状単独のアナフィラキシーが起こりやすく、かつ症状が進行するスピードも早く時間的余裕もないので、そこはとくに注意が必要です。重症の方の場合、アドレナリン投与1回では効かないこともある――今回の事故で「打たなかった」背景にはいろいろな原因が考えられるわけですね。海老澤今回の事例に直接当てはまるかどうかは軽々に言えませんが、「アナフィラキシーの典型的な症状ではなく判断が難しかった」「アナフィラキシーに対する医療者の経験値、慣れが足りなかった」「何か起こった場合に対応する医療体制が乏しかった」ことなどが教訓として挙げられると思います。ただ、症状の進行はものすごく速かったと考えられるので、アドレナリンの1回の筋注で軽快していたかどうかはわかりません。重症の方の場合、アドレナリン投与1回では効かないこともあります。それでもダメな場合は、ルートを取って輸液したり、酸素を投与したりと全身管理が必要になってきます。救命できるかどうかは、そういった一連の流れの中で決まってきます。(この項続く)(2024年1月23日収録)【事故の概要】2022年11月、愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナワクチンを接種した女性(当時42)が直後に容体が急変し死亡しました。愛西市がまとめた報告書2)によれば、接種4分後から女性に咳嗽と呼吸苦が発現したにもかかわらず、看護師らは「ワクチン接種前からマスク着用の圧迫感による過呼吸発作状態にあったもの」と解釈していました。また、体調不良者が出たことで対応を依頼された医師も「接種前から体調不良、呼吸苦があったようだ」という看護師からの情報と、粘膜所見、皮膚所見、掻痒感、消化器症状など「アナフィラキシーで典型的な症状」がなかったことから、女性の病態はアナフィラキシーの可能性が低いと判断し、アドレナリンの筋肉内注射を第一治療選択から外してしまいました。女性は接種14分後に心停止、3次救急病院に搬送されるも到着時にはすでに心肺停止状態で、心肺蘇生を試みた後、死亡が確認されました。報告書で愛西市医療事故調査委員会は、「ワクチン接種後待機中の患者の容体悪化(咳嗽、呼吸苦の訴え)に対し、看護師らがアナフィラキシーを想起できなかったこと、問診者に接種前の患者の状態を確認することなく、患者は接種前から調子が悪かったと解釈したことは標準的ではなかった。また、その情報に影響を受け、ワクチン接種後患者の容体変化に対し、アドレナリンの筋肉内注射が医師によって迅速になされなかったことは標準的ではなかった」とし、「本事例は、ワクチン接種後極めて短時間に患者が急変し、死亡に至ったものである。非心原性肺水腫による急性呼吸不全及び急性循環不全が直接死因であると考えられ、この両病態の発症にはアナフィラキシーが関与していた可能性が高い。本事例は短時間で進行した重症例であることから、アドレナリンが投与されたとしても救命できなかった可能性はあるが、特に早期にアドレナリンが投与された場合、症状の増悪を緩徐にさせ、高次医療機関での治療につなげ、救命できた可能性を否定できない」と結論付けました。参考1)アナフィラキシーガイドライン2022/日本アレルギー学会2)事例調査報告書/愛西市

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第186回 65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省

<先週の動き>1.65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省2.医師国家試験合格者、7年連続9,000人超え/厚労省3.進む医師の働き方改革、診療体制の縮小が課題に/厚労省4.地域医療構想の加速化、国がモデル推進区域を選定/厚労省5.ゲノム医療に共同提言、エビデンスなき遺伝子検査ビジネスに警鐘/医学会・日医6.労組結成後のストライキ、医療法人が職員に莫大な損賠を請求/大阪1.65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省厚生労働省は、2024年度から65歳以上の高齢者を中心とした新型コロナウイルスワクチンの定期接種開始について、自己負担額が最大7,000円程度に設定することを発表した。これまで無料で提供されていたワクチン接種が、4月からは季節性インフルエンザワクチン同様、一部自己負担が必要な定期接種へと移行する。接種費用は、1回当たり約1万5,300円と見積もられ、このうち8,300円を国が市町村に助成し、残額を個人が負担する形となる。ただし、市町村による独自の補助がある場合、実際の自己負担額はこれより低くなる可能性がある。定期接種の対象は、65歳以上の高齢者と60~64歳で基礎疾患がある人に限られ、それ以外の人は任意接種として全額自費負担となるが、低所得者に対しては無料接種が継続される。厚労省は、新型コロナワクチンの価格が想定より3倍以上高額になることを受け、急激な自己負担額の増加を緩和するために追加助成を行うことを上記のように決定した。今後、新型コロナウイルスワクチンの接種は、年1回秋冬の接種となり、65歳未満で健康な人は4月以降、定期接種の対象ではなく任意接種の扱いとなるため、自己負担額は7,000円を超える見込み。参考1)コロナ定期接種、自己負担7,000円程度 24年度65歳以上(日経新聞)2)新型コロナワクチン、自己負担7,000円程度に 4月から国の助成で(毎日新聞)3)新型コロナ ワクチン定期接種の自己負担額 最大約7,000円で決定(NHK)4)コロナ定期接種、最大7千円負担 4月から65歳以上対象 厚労省(産経新聞)2.医師国家試験合格者、7年連続9,000人超え/厚労省2024年3月15日、厚生労働省は、2月に実施された第118回医師国家試験の結果を発表した。合格率は92.4%に達し、前年比0.8ポイント上昇、過去10年で最高を記録した。合格者数は9,547人で、7年連続で9,000人を超える結果となった。とくに、新卒者の合格率は95.4%で、全体の合格者数の中で9,048人を占めた。女性合格者は3,307人(全体の34.6%)、男性は6,240人で、男女別の合格率はそれぞれ91.7%、93.6%だった。学校別の合格率では、自治医科大学が新卒・既卒共に100%の合格率を達成し、このほか群馬大学医学部、名古屋大学医学部、東海大学医学部も新卒者の合格率が100%だった。ほかに高い合格率を示した学校では、国際医療福祉大医学部99.2%、兵庫医科大学99.1%、産業医科大学99.0%などがあった。合格基準については、必修問題の採点に一般問題を1問1点、臨床実地問題を1問3点とし、200点満点中160点以上が合格ラインとされた。また、一般問題と臨床実地問題はそれぞれ1問1点で、300点満点中230点以上が必要となった。今回の医師国家試験は、過去10年間で最も高い合格率を記録し、医療界への新たな人材の供給が期待されている。また、性別や大学別のデータは、今後の医療教育の改善や方針策定に役立つ貴重な情報となる。参考1)第118回医師国家試験の合格発表について(厚労省)2)医師試験9,547人合格 厚労省発表(東京新聞)3)医師国家試験、合格率92.4% 新卒の合格者は9千人を突破(CB news)4)第118回医師国家試験(2024年)合格発表…合格率92.4%(リセマム)5)医師国家試験2024、自治医科大学100%合格…学校別合格率(同)3.進む医師の働き方改革、診療体制の縮小が課題に/厚労省2024年4月の医師の働き方改革施行を控え、厚生労働省は、労働時間の上限規制に関する「C水準」の上限見直しを検討している。C水準は、研修医や高度な技能を目指す医師に適用される特例で、現在は年間1,860時間の上限が設けられている。厚労省は、医師の労働時間短縮推進と、地域医療の提供体制と働き方改革の関係に焦点を当て、具体的な対応策の検討を進めている。その一方で、「医療機関勤務環境評価センター」が受け付けた医師の労働時間短縮の取り組みに対する評価の申し込みは、想定を下回る483件に留まっている。これは、タスクシフトや労働基準監督署長による宿直許可取得など、働き方改革が進んだ結果とみられている。厚労省は、診療体制の縮小や派遣医師の引き揚げによる地域医療への影響を調査することで、改革の実施に伴う課題に対応していきたいとしている。また、全国約7,000医療機関を対象にした調査では、49医療機関で派遣医師の引き揚げによる診療体制の縮小が見込まれ、地域医療への影響が懸念されている。これに対し、厚労省は、地域医療の維持に向けた支援策を強化する方針。働き方改革の影響調査や都道府県との連携による医療機関の支援は、改革の進展に伴い重要性を増している。労働時間の短縮だけでなく、地域医療の維持と医師のスキルアップを両立させるための施策が求められ、これらの取り組みは、医師の働き方改革が単なる時間規制に留まらず、より質の高い医療サービスの提供と医師自身のキャリア発展を促す方向に進むことを示している。参考1)第19回医師の働き方改革の推進に関する検討会(厚労省)2)派遣医師の引き揚げで49施設が診療体制縮小の可能性-働き方改革準備状況調査(医事新報)3)医師の働き方改革“地域医療への影響調査を”厚労省検討会(NHK)4)医師働き方改革に向け都道府県-医療機関の連携深化、2024年4月以降も勤務医の労働環境・地域医療への影響を注視-医師働き方改革推進検討会(Gem Med)5)医師の時短評価受審申し込み483件、想定下回る 厚労省「働き方改革が進んだため」(CB news)6)C水準の上限見直し検討へ、厚労省方針 働き方改革推進の課題に「縮減のあり方」(同)7)診療体制縮小の見込み「あり」457カ所 医師の残業上限規制で、厚労省調査(同)4.地域医療構想の加速化、国がモデル推進区域を選定/厚労省厚生労働省は、3月13日に第8次医療計画等に関する検討会の分科会の地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループを開き、地域医療計画の進捗などについて討論した。第8次医療計画の策定に向けて、各都道府県に対して「推進区域」と「モデル推進区域」を指定し、支援を実施する方針を固めた。この後ワーキンググループでの了承を経て、厚労省は今後の詳細な計画を策定し、通知として各都道府県へ発出する予定。人口動態の変更を加味し、2次医療圏ごとに病床の必要量と実際の見込み病床数の乖離、医療提供体制の課題解決に向けた工程表作成など、地域ごとの取り組みには差がある。国は、これらの課題に対して「地域の医療提供体制の見える化」「都道府県が行うべき事項のチェックリスト作成」などの支援を提供することで、2025年の目標実現を促進する。とくに注目されるのは、地域医療構想の実現に向けた具体的な支援策。これには、地域別の病床機能などのデータの可視化、都道府県および医療機関の好事例の共有、地域医療介護総合確保基金などの支援策の活用方法の周知、都道府県や医療機関の取り組みを評価するチェックリストの作成と公表が含まれる。また、モデル推進区域では、伴走支援として技術的、財政的支援を実施する。この新方針に対する構成員からの意見も考慮され、推進区域やモデル推進区域の選定、医師働き方改革の影響の検討、ポスト地域医療構想に向けた準備など、今後の地域医療の提供体制構築に向けた課題と解決策が議論されている。参考1)第14回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(厚労省)2)地域医療構想実現に向けた取り組みはバラつき大、国が「推進区域、モデル推進区域」指定し支援実施-地域医療構想・医師確保計画WG(Gem Med)5.ゲノム医療に共同提言、エビデンスなき遺伝子検査ビジネスに警鐘/医学会・日医日本医学会と日本医師会は、3月13日共同で記者会見を開き、「ゲノム医療の推進に関する共同提言」を発表した。ゲノム研究の国際競争が激化する中、わが国の国家的な体制整備の遅れに対する危機感を表明し、オープンサイエンスの推進と大規模な基盤構築の必要性を強調している。また、ゲノム情報の取り扱いに関し、不当な差別を防ぐための罰則を含む法整備も求めた。2023年6月に公布されたゲノム医療推進法は、良質かつ適切なゲノム医療の提供を目的としている。日本医学会は142の分科会の意見を取り入れ、提言ではゲノム医療が医学・医療分野全体に関わる事項であることを強調、国家レベルでの大規模データ収集とその利活用の進め方、オープンサイエンスの理念の重要性を指摘している。また、ゲノム医療の推進が厚生労働省だけでなく、総務省、文部科学省、経済産業省など関連するすべての省庁にまたがる課題でもあるとしている。具体的な提案としては、ゲノム医療に関する特別法の制定、遺伝・ゲノムリテラシーの向上、遺伝子検査ビジネスの規制などが挙げられている。また、遺伝カウンセリング体制の充実やゲノム情報に基づく不利益や差別の防止に向けた罰則のある法律の策定も求められている。そして、提言では、ゲノム医療の安心・安全な提供とその推進に向けた国家的な取り組みの加速を促すもので、わが国が新たな科学立国としての地位を世界に示し、サイエンス分野での地位の維持と向上に直結するものであるとの視点から、具体的な行動計画の策定と実施が急務であると訴えている。参考1)ゲノム医療推進のため大規模な基盤構築を-日本医学会と日医が提言(医事新報)2)「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」に関する提言について(日本医学会・日本医師会)6.労組結成後のストライキ、医療法人が職員に莫大な損賠を請求/大阪大阪地域合同労働組合は、大阪市で開かれた記者会見で、クリニックの待遇改善を求めてストライキを行った男性組合員とその労働組合に対し、運営する医療法人から約8,400万円の損害賠償を請求されたことを公表した。この訴訟提起は、組合活動を抑圧する目的で行われたスラップ訴訟(訴訟による嫌がらせ)に当たると主張し、「組合つぶしの意図が明らかで不当である」と非難している。被告の男性組合員は、大阪にある精神科「ブレインクリニック」の職員で、2022年10月に同僚らと合理性のない基本給の減給廃止、昇給制度廃止の撤廃などの待遇悪化および診療方針の改善を求めて労働組合を結成し、大阪地域合同労組に加盟した。しかし、団体交渉での応答がゼロだったため、2023年8~11月にかけて、大阪および名古屋で合計6回のストライキを実施した。また、原告のクリニックは、発達障害の専門外来として経頭蓋磁気刺激治療(TMS)などの保険適用外の自由診療を提供していることが明らかにされている。医療法人による損害賠償請求は、労働者の組合活動を支援する大阪地域合同労組によって強く反発されており、今後の展開が注目されている。参考1)医療法人がストに損賠提訴 8,400万円、組合側反発(中日新聞)2)発達障害外来、学会の指針逸脱 クリニックが高額治療(共同通信)

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コロナによる認知障害、症状持続期間による違いは?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へ感染し、症状が消失・回復しても、症状の持続期間にかかわらず軽度の認知機能障害が認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAdam Hampshire氏らが、オンライン評価による大規模コミュニティのサンプル調査(14万例超)の結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の認知機能障害はよく知られているが、客観的に測定可能な認知機能障害が存在するか、またどのくらいの期間持続するかは不明だった。NEJM誌2024年2月29日号掲載の報告。イングランドの成人を対象に認知機能のオンライン評価を実施 研究グループは、イングランドの試験に参加した成人80万例に対し、認知機能のオンライン評価の実施を依頼し、8タスクの全般的認知機能スコアを推定した。 感染発症後に12週間以上持続する症状を有した患者は、客観的に測定可能な全般的認知機能障害があり、とくに直近の記憶力低下または思考や集中困難(ブレインフォグ)を報告した患者では、実行機能と記憶の障害が観察されるだろうと仮説を立て、検証した。起源株感染者は、変異株感染者より認知機能障害の程度が大きい オンライン認知機能評価を開始した14万1,583例のうち、11万2,964例が評価を完了した。重回帰分析の結果、COVID-19症状が4週間未満で消失・回復した患者や12週以上症状が持続するも消失・回復した患者は、非COVID-19群(SARS-CoV-2に非感染または感染が不確定)と比較し、同程度に軽度の全般的認知機能障害を有していた(それぞれ、-0.23 SD[95%信頼区間[CI]:-0.33~-0.13]、-0.24 SD[-0.36~-0.12])。 一方、12週以上症状が持続し、認知機能評価時点においても消失していなかった患者は、非COVID-19群と比較し、認知機能障害の程度が大きかった(-0.42 SD、95%CI:-0.53~-0.31)。 起源株やB.1.1.7変異株が優勢の期間にSARS-CoV-2に感染した患者は、その後の変異株感染者より認知機能障害の程度が大きかった(たとえばB.1.1.7変異株vs.B.1.1.529変異株:-0.17 SD、95%CI:-0.20~-0.13)。また、入院した患者のほうが、入院しなかった患者より認知機能障害の程度が大きかった(たとえばICU入院患者:-0.35 SD、95%CI:-0.49~-0.20)。 解析結果は傾向スコアマッチング解析を実施しても同様だった。症状が持続する患者は非COVID-19群に比べて、記憶、推理、実行機能のタスクで障害が大きく(-0.33~-0.20 SD)、これらのタスクは、記憶力低下、ブレインフォグなどの最近の症状と弱い相関が認められた。 今回の結果を踏まえて著者は、「認知機能障害の長期的な持続の有無および臨床的影響は、依然として不明である」と述べている。

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認知症発症の危険因子としてのコロナ罹患【外来で役立つ!認知症Topics】第15回

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まってから、コロナと認知症との関係という新たなテーマが生まれた。まず予防には3密だと喧伝された。その結果、孤独化する高齢者が増えたので、認知症の発症が増加しているという報告が相次いだ。つまり孤独という認知症の危険因子を、コロナが一気に後押ししたという考え方である。そうだろうなとは思いつつ、このエビデンスは乏しかった。それから次第に前向きの疫学研究から、コロナ罹患と認知症発症との関係を報告するものが出てきた。そして最近では、こうしたもののレビューも報告されるようになり、なるほど、こういうことかとポイントが見えてきた。そこで今回は、認知症発症の危険因子としてのコロナ罹患を中心にまとめてみたい。スペイン風邪と認知症の関連は?まず人畜共通感染症による第1のパンデミックとされる「スペイン風邪(Spanish Flu)」を連想した。というのは、コロナはスペイン風邪をしのぐ人畜共通感染症によるパンデミックをもたらしたからだ。スペイン風邪の原因は、トリインフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスの遺伝子が混ざり合った新型のウイルス(Influenza A virus subtype H1N1の亜系)だと考えられている。そこで1918年の第1次世界大戦当時に世界的に流行したこのスペイン風邪の認知症への影響はどうだったのかと調べてみた。説得力の強いものに、デンマークで1918年当時妊娠中の母親の胎内にあったヒトに注目し、対象とコントロールで合計28万人余りのデータを用いた研究がある1)。ここでは、該当者が62~92歳に達した期間において、あらゆる認知症性疾患についての発症に注目し、その相対危険度を調査している。その結果、スペイン風邪罹患と認知症発症の間には有意な関係はなかったとされる。この報告のように、どうも積極的に両者の関係を指摘する報告は乏しいようだ。コロナと認知症、追跡期間が長いほど発症率が上昇?さてコロナについて成された近年の報告のレビューが注目された2)。多くの研究結果からは、コロナに罹患することでアルツハイマー病を含むすべての認知症の発症率はおよそ2倍と考えられている。実際、これまでの報告の多くは、60歳以上のヒトにおいては、コロナに罹患することで、亜急性期、慢性期の認知症発症は確かに高まりそうだと報告している。もっとも、コロナ罹患による認知症発症への影響力は、他の呼吸器系のインフルエンザ感染や細菌感染と大差がないとの結論になっている。一方で興味深いのは、追跡期間の違いによる認知症の発症率の相違である。すなわち発症から3ヵ月間もしくは6ヵ月間追跡した研究に比べて、1年間追跡した研究では認知症の発症率が高くなっているのである。このことは、コロナによる認知症の発症は、罹患ののち長期間にわたって続くことを示唆している。また疫学から、なぜコロナが認知症とくにアルツハイマー病に関連するかについてのレビューも興味深い3)。まずコロナへの罹患しやすさについては、加齢が最大にして唯一の危険因子だとされる。そしてその背景として高血圧、糖尿病、心疾患など、いわゆる生活習慣病が考えられている。またこうした要因が、回復を遅くすることも事実である。さらに、最初に述べたような孤独化と普通の生活に戻れないことが高齢者においてうつ病や不安を生じる間接的な要因になることも関係しているだろうとされる。ところで、すでに認知症であった人が、パンデミックによって社会的な交流がなくなったり、ケアが手薄になったりしたことで死亡率が高まった可能性もあることが述べられている。実際、パンデミック時代になってから、コロナ感染の有無にかかわらず、認知症者の死亡率が25%も高まったことを報告したメタアナリシスもある4)。認知症発症の原因として注目される炎症こうしたコロナによる認知機能の低下や認知症発症の原因として最も注目されるのは炎症、とくにこれに関わるサイトカインであろう。このサイトカインとは、ある細胞から他の細胞に情報伝達するための物質である。その中でも有名なのは、インターフェロンやインターロイキンだろう。感染量が多くなるほど、サイトカインも大量に放出されるが、それが著しい場合はサイトカインストーム(免疫暴走)と呼ばれる。サイトカインストームが起こることで大脳組織の炎症が生じる結果、認知機能に障害が生じる。なお近年では、アルツハイマー病の病因仮説として、脳の炎症説は主流の1つとなっている。また別の説として、新型コロナウイルスは、微小血管に障害をもたらし、肺の組織を障害することによって、大脳への酸素の流れに支障を来すことに注目するものがある。さらには、新型コロナウイルスとアミロイドやタウとの関係にも注目するもの、あるいはアルツハイマー病の危険因子とされるAPOE4を介して発症に関係するという考えなどもある。いずれにせよ現時点において新型コロナウイルスと認知症の発症との関係について確立しているわけではない。今後の長期的なフォローアップにより、少しずつ解明が進んでいくと思われる。参考1)Cocoros NM, et al. In utero exposure to the 1918 pandemic influenza in Denmark and risk of dementia. Influenza Other Respir Viruses. 2018;12:314-318.2)Sidharthan C. COVID-19 linked to higher dementia risk in older adults, study finds. News-Medical.Net. 2024 Feb 9.3)Axenhus M, et al. Exploring the Impact of Coronavirus Disease 2019 on Dementia: A Review. touchREVIEWS in Neurology. 2023 Mar 24.4)Axenhus M, et al. The impact of the COVID-19 pandemic on mortality in people with dementia without COVID-19: a systematic review and meta-analysis. BMC Geriatr. 2022;22:878.

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