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新型コロナ対応、現状の打開に何が必要か~東京都医師会尾崎会長インタビュー

 1都3県を皮切りに各地で2度目の緊急事態宣言が発令され、医療体制がひっ迫した状況が続いている。患者の急増で病床は不足。自宅・宿泊療養者のケアや回復後の転院調整などについて課題が指摘され、ワクチン接種への体制整備も求められる中、東京都医師会としてその役割をどのように捉え、どのような対策をとっていくのか。尾崎 治夫会長に聞いた。民間病院がもっと受け入れるべき? 1年あれば医療体制は整備できた? 連日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報が報道される中で、「民間病院がコロナ患者をほとんど受け入れていない」「医療崩壊というが1年あれば準備できたのではないか」などの意見もみられるようになった。「第1波のときから一貫して発信しているのは、日本の医療体制はCOVID-19のような感染症に対応できるようには作られていない。対応するには患者数の増加速度をできるだけゆるやかにして乗り越えていくしかないということ」と尾崎会長。コロナ前の東京都の指定感染症医療機関は15医療機関、118床。保健所も含め、無症状や軽症が多く感染力も強くて市中に急速に拡がって行くCOVID-19のような感染症に対応できる仕組みにはなっていなかった。 そのような枠組みの中では、通常医療を提供しながら、状況に応じて対応病床を増やすしかないが、急峻な患者数増加には対応できない。何度か波が来ることは避けられないが、その波の上がり方をできるだけゆるやかにして、その都度医療側も準備を整えて対応していくしかない。「そのためには国民の協力が欠かせないし、政府には一時経済を止めるという判断も含め、状況を的確に把握して指示を出す強力なリーダーシップが必要で、今後の課題としてパンデミック時の指示系統を担う新組織を立て、指揮系統をより明確にすることも必要だと考える」と同氏。公民の病院も診療所も高齢者施設も、一丸となって乗り越えるしかない 東京都では第1波以降、医師会主導で各地区にPCRセンターを設置し、インフルエンザとの同時流行に備え検査を担う診療所が約2,300、検査はできないが発熱患者を診療できる診療所も含めると診療検査医療機関が3千強設置されている。尾崎氏は、「民間病院も、現状ですでにある程度の病床数を持つところは受け入れてくれている」と話す。都立・公社3病院が重点医療機関となることで、今後病床数は一定数拡充できると考えられるが、それでも十分とは言えない。 「これ以上病床を増やす余地があるとしたら、やはり規模の大きい公的病院にもう一歩協力してもらうしかないだろう」と指摘。「民間病院は、経営が厳しくなれば本当に潰れてしまいかねない。コロナ後の医療を保つためにも、民間病院にはコロナ以外の医療と、感染力のない回復後患者の受け入れにまわってもらうのが現実的だと考えている」。 第3波で高齢者の感染が増えたことで、“コロナは軽症あるいは治ったが、体力低下などで自宅には帰れない”患者の受け入れ先がないことが課題となっている。「後方病院がない、あるいはこれまで急性期後の高齢患者の受け皿となっていた高齢者施設で受け入れてもらえないという問題が発生している」。これらの連携がスムーズにいくよう、仕組みづくりに着手しているという。宿泊療養施設はなぜフル活用されないのか? 現場で起こっていること 東京都の宿泊療養施設の運用について、1月中旬時点では利用率が3割程度に留まっていることが報道された。これに大きく影響しているのが、患者本人の希望だという。現状、陽性となって無症状または軽症の場合、保健所職員が電話で状況を確認する。自宅か宿泊療養を二択で提示すると、自宅を選ぶ患者が多いという。「無症状者は宿泊あるいは自宅療養でかかりつけ医や訪問看護で見守る体制を作り、軽症者については、場合によっては宿泊療養を義務づけるような法制整備も有効かもしれない」と指摘した。 また、検査の結果、陽性となった患者はすべて一度保健所で管理され、入院調整も保健所が行う。保健所の負担が増す中、地域によっては陽性後2~3日連絡を待つという状況も発生してしまっている。この間のプロセスに、法的には医師が関与できない仕組みとなっている。普段から診ているかかりつけ医がフォローすることで、異変を早期に察知できる可能性もある。トリアージのプロセスに制度として医師を加えてもらえないかと働きかけている、と同氏。「陽性が判明後、かかりつけ医がトリアージを行い、それに基づき保健所が受け入れ先を調整する仕組みにできないかと考えている」。 「東京都では現在、保健師や医師が常在し、急変時に対応するフォローアップセンターの設立を準備しており、それを地区医師会が支援する仕組みを作りたい。しかし、急変したことがわかっても受け入れ先がなければ意味がない。23区、そして多摩地区でそれぞれ数床ずつ、必ず空きベッドを用意する体制整備も必要」と話した。医療従事者へのワクチン接種、可能な限り自院で ワクチン対応について、まず目前に迫るのが医療従事者への接種だ。「どこか一ヵ所に集めて接種するというのは現実的ではない」と同氏。各地域で保管場所を作って、基本的には病院は自院で接種、診療所についても自院で接種するか地域のある程度スぺースのある診療所・病院で接種という形を現時点では想定しているという。 続く高齢者への接種についても、集団接種よりはかかりつけ医が実施するほうが望ましいとの見解を示した。「いま、日本の高齢者の多くがかかりつけ医をもっている。このシステムの良い部分を生かして、予診や接種後のフォローを含め、かかりつけ医が役割を果たしていけるのではないか」と話した。また、「医療者がどれだけワクチンの効果と副反応の可能性をわかりやすく説明できるかが大きなポイント」と指摘。副反応としてどんなものが起こる可能性があるのかをあらかじめわかりやすく伝え、理解してもらうことの重要性を強調した。尾崎 治夫(おざき はるお)氏東京都医師会会長・おざき内科循環器科クリニック院長1951年東京都生まれ。77年順天堂大卒。87年同大循環器内科講師。90年東久留米市・おざき内科循環器科クリニック開設。2002年東久留米医師会会長、11年東京都医師会副会長を経て15年より現職。

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第42回 新型コロナのPCR検査、偽陰性の解釈をほったらかすリスク

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染者急増により、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県に新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出されて4週目に突入しようとしている。新型コロナのPCR検査陽性報告数は減少傾向を示しつつあるものの、東京都ではまだ1日の陽性報告数はおおむね1,000人以上である。私の場合、過去の本連載でも取り上げたように身近で初めて感染者が発生したのは昨年4月下旬とかなり早い時期で、その後は8月に知人の感染とスポーツジムでの陽性者とすれ違いが判明していたが、その後しばらくは周囲で感染者の報告はなかった。ところが、世の感染実態を反映してか、昨年12月以降、ポツリポツリとFacebook上で「陽性でした」という友人のカミングアウト投稿が目につくようになった。こうしたカミングアウトに又聞きでの知人の感染事例まで含めると周囲での感染者はこの2ヵ月で軽く二桁に上る。そうした中で先週経験した事例は今まで以上にヒヤッとしたものだった。10年以上の付き合いになる友人の編集者から「後輩が新型コロナ問題に関心を持っているので、紹介したい。ぜひ、バックグラウンドブリーフィングをしていただけないか」という打診が来たのが先週の火曜日。最近では取材もかなりリモート化し、私も他人との接触を限りなく減らしている。とはいえ人と会うのが商売のようなものであり、そのような立場にいながら私は初対面で相当緊張するので、共通の友人・知人がいるならば同席してもらえた方がありがたかった。ということで、まさに先週の金曜日の日中、友人とその後輩に会うことになった。その友人からまさに金曜日当日の約束の時間から2時間ほど前、LINEメッセージが着信した。曰く、月曜日に打ち合わせで同席した会社の先輩が保健所から感染者の濃厚接触者として認定され、自分自身も会社から自宅待機を指示されたとのこと。そしてたった今、会社が契約している医療機関でPCR検査を行うため唾液検体を発送したので、本日の同席は控えたいとの連絡だった。当然の対応である。結局、私は当初の約束の場所で緊張気味の友人の後輩と面談をすることになった。その日の夜のことだった。再び友人からLINEメッセージがあり、濃厚接触者として認定されていた先輩がPCR検査で陽性だったとの連絡。「ともかく、本日はご一緒しなくてよかったです」とのメッセージに、私もかなりほっとしたのが本心である。その後、より詳細な成り行きを聞かされ、LINEメッセージのやり取りが続いた。友人曰く、先輩とは著者との打ち合わせで同席し、先輩の対面に著者、先輩の隣に友人という位置関係。基本、お茶を飲むとき以外はマスクをして会話していたものの、打ち合わせは2時間以上に及んだという。この場合、濃厚接触者と認定される可能性はある。友人はこの日の昼、すなわちウイルスに曝露した可能性がある日から4日後に採取した検体を送付し、検査結果はまだ判明していない。だが、ここで私は新型コロナのPCR検査偽陰性に関するある研究のことを思い出した。簡単に言えば、曝露直後は検査をしても圧倒的に偽陰性率が高く、その後この確率は徐々に低下し、曝露から8日前後で最低の20%前後になるというものだ。ちなみに友人が検体を採取した曝露4日後の場合は、感染していても70%弱が陰性という結果になる。世間の一部では無症状の人も含めPCR検査を積極的に行って陽性者を炙り出し、残る陰性者で経済を回せば良いというような主張も見受けられるが、この研究の結果はそのロジックがいかに乱暴かを示している。私は友人にそのことを伝え、もしPCR検査で陰性と判明しても油断しないようにとメッセージを送った。結局、翌日に判明した友人の検査結果は陰性。そのまま週末にかかったため、彼の先輩の濃厚接触者の認定は週明けにずれこみ、最終的に濃厚接触者とも認定されず、今週火曜日には会社から出社しても良いとの指示があったという。ただ、友人は「無理していくほどの用事はない」として、今もリモートワークを続けている。だが、会社の出社解禁宣言もなんと危ういことかと思う。新型コロナウイルスの感染性に関する研究報告では、2次感染は発症3日前から発症5日後まで起こりうることはよく知られている。この感染症では無症候感染者も少なくないことを考えれば、平均的な潜伏期間といわれる5日強に二次感染が起こりやすい発症5日後まで加えた曝露10日後までは最低限人との接触は控えるべきだ。にもかかわらず、会社が出社して良いと指示したのは曝露8日後なのである。昨年来、1年以上もPCR検査のことについては耳にタコができるほど報道され、一部ではやや問題のある内容があるものの、最近のこの件に関する報道の主流は「PCR検査を妄信すべからず」だと認識している。だが、現実には今回私が見聞したようなケースはまだまだあるのだろう。そして今やテレビで特定のクリニックによるPCR検査のCMが流れてしまう状況である。私は医療機関による自由診療でのPCR検査実施を全面的に否定するつもりはない。だが、この手の検査を受けた人たちとやり取りするにつれ、検査の盲点があまりにも認識されていないことに愕然とすることが少なくない。実際、自由診療でPCR検査を行っている医療機関はこの点をどの程度時間をかけて説明しているのだろうか? 従来からかなり疑問に思っている。

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COVID-19によるうつ症状や孤独感と社会的および性的つながりとの関係

 米国・インディアナ大学のMolly Rosenberg氏らは、COVID-19によるうつ症状や孤独感の有症率を推定し、社会的および性的つながりの頻度との関係について調査を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2021年1月2日号の報告。 18~94歳の米国成人の代表的なサンプル1,010例を対象に2020年4月10日~20日にオンライン横断調査を実施した。うつ症状(CES-D-10スケール)、孤独感(UCLA3項目孤独感尺度)、対面およびリモートでの社会的つながりの頻度(家族とのハグ、ビデオチャットなど4項目)、性的関係の頻度(パートナーとの性的関係、マッチングアプリの使用など4項目)について調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の3分の1にうつ症状が認められ(32%)、孤独感が高かった(平均:4.4±1.7)。・うつ症状を有する人は、女性、20~29歳、未婚、低所得である可能性が高かった。・非常に頻繁な対面によるつながりは、うつ症状や孤独感の低下と関連が認められたが、頻繁なリモートによるつながりでは、この関連は認められなかった。 著者らは「米国におけるCOVID-19パンデミックの初期において、うつ症状や孤独感の上昇が認められた。リモートではなく、対面による社会的および性的つながりを維持した人では、メンタルヘルスのより良い結果が得られた。COVID-19に対する社会的な制限は依然として必要であるが、高リスクの人のためのメンタルヘルスサービスの拡充、リモートによる社会的および性的なつながりを維持する効果的な方法の特定が重要となる」としている。

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新型コロナ流行で糖尿病重症化予防ケアの実施数が減少

 メディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は自社が保有する大規模診療データベースを用い、宮脇 敦士氏(東京大学大学院医学系研究科・公衆衛生学 助教)の研究チーム、中村 正樹氏(MDV)、二宮 英樹氏(慶應義塾大学医学部医療政策管理学教室/株式会社データック 代表取締役兼CEO)、および杉山 雄大氏(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター 室長)らと共同で、昨年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時の糖尿病重症化予防ケア(透析予防、フットケアなど)の実施数について調査を行った。その結果、外来で糖尿病患者が定期測定するHbA1cの1週間あたりの検査数などが減少していたことを明らかにした。この研究論文はJournal of General Internal Medicine誌2021年1月19日号に掲載された。 2020年4月の1回目の緊急事態宣言が発令される前後に、 COVID-19の感染リスクを警戒して糖尿病患者が定期受診を延期するケースが見られた。糖尿病ケアの実施数が減少すると公衆衛生上、重大な影響を与える可能性があったが、ケア実施数の実際はわかっていなかった。 本研究はMDVが構築した急性期病院の診療データベースを使用し、2020年の年初第2~8週と、同年の緊急事態宣言発令期間の前半を含む第9~17週目の間に、外来診療で実施された1週間当たりの糖尿病患者の定期検査およびケアの実施数を186の病院で比較。 その結果、糖尿病患者が定期測定するHbA1cの1週間あたりの検査数は、2020年第2~8週の5万2,392件/週から、同年第9~17週には4万4,406件/週と、15.2%減少していた。そのほかにも、血清クレアチニンや尿タンパク測定、眼底検査、糖尿病フットケアサービス、および糖尿病透析予防指導を含むすべての検査・ケア数も減少していたことが明らかになった。 宮脇氏は「糖尿病患者の血糖値コントロールがどのくらい悪くなったのか、それとも変わっていないのかが今後の検討課題になる」とコメントしている。

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新型コロナ感染拡大、Go Toトラベルが影響か

 西浦 博氏(京都大学環境衛生学 教授)が率いる研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行中の旅行者向けキャンペーン(Go Toトラベル)実施による疫学的影響について、キャンペーン実施前後の旅行・観光関連の症例発生率を比較し検証を行った。その結果、Go Toトラベル開始後の1日当たりのCOVID-19発生率は、2020年6月22日~7月21日までの期間と比較して約3倍、7月15~19日の開始直前期間との比較では約1.5倍にまで増加していたことを明らかにした。また、観光目的で感染した人は、6月22日~7月21日の期間との比較では約8倍、7月15~19日との比較では2〜3倍も増加していた。研究者らは「日本での第2波は、8月中旬までに減少し始めたが、Go Toトラベル開始初期の7月22日~26日の間に旅行関連のCOVID-19症例が増加した可能性がある」としている。Journal of Clinical Medicine誌オンライン版2021年2月号掲載の報告。 日本政府は 7月22日よりGo Toトラベルを開始。ホテル料金の大幅割引を提供し、国内の旅行先での消費に使用できる地域共通クーポンを発行したが、人の移動性を高めることでCOVID-19感染拡大に繋がる恐れがあったため、世論からはキャンペーン実施に対して停止や延期が求められていた。 本研究では国内における旅行が原因とされるCOVID-19症例の疫学的パターンに焦点を当て、5月1日~8月31日までに県や政府から報告されたCOVID-19症例を分析した。旅行に関連するケースとして、県境を越えた人、国境を越えた人と接触した人と定義。旅行の目的は「ビジネス」「家族に会う」「観光(tourism/sightseeing)」に分類した。 主な結果は以下のとおり。・2020年5月1日~8月31日までに24都道府県で合計3,978件のCOVID-19症例が報告された。・症例のうち2,211例(57.3%)は男性で、119例は性別不明だった。・患者の平均年齢は42.6歳だった。・診断時に症状を有したのは3,060例(76.9%)で、そのうち軽症2,150例(70.3%)と無症状891例(29.1%) が含まれていた。・3,978例のうち817例(20.1%)は、県境を越えた旅行歴、または県境を越えた他人との接触歴があった。・旅行関連の症例の平均年齢は36.2歳で、残りの症例の平均年齢は44.2歳だった。・24都道府県の月別の全例報告数は、7月が2,074例(52.7%)、8月が1,597例(40.5%)で、そのうち旅行関連の症例は7月が482例(23.2%)、8月が289例(18.1%)だった。

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第42回 「病床過剰なのに病床逼迫」のなぜ? コロナ禍で露呈した国の先送り問題

欧米に比べて病床が過剰なのに、なぜ病床が逼迫するのか―。コロナ禍が「医療機能の分化と連携」の停滞ぶりを改めて浮き彫りにしている。82大学の医学部長・附属病院長などで構成する全国医学部長病院長会議が1月19日に公表した「新型コロナウイルス感染症患者の受入れ状況調査結果(1月6日午前0時現在)」によると、全大学病院(1,216床)の「中等症・軽床病床」における「無症状患者」の比率は27.3%を占め、緊急事態宣言下の4都県の21病院(494床)では33%にも上ることがわかった。転院できないコロナ患者が大学病院に滞留回答のあった67病院のうち、記載のあった65病院の集計結果によると、「後方施設の整備状況」について「整えられている」と回答した病院はわずか16病院(25%)だった。つまり、回復後も持病などで入院が必要な患者は、転院先の後方支援病院がないため、高度医療機関である大学病院に留まらざるを得ない。その結果、ベッドが空かず、重症患者が入院できない状態を招いている。大学病院は診療報酬が優遇される特定機能病院でもあり、医療資源の非効率な利用と言える。そんな中、日本医師会、四病院団体協議会の日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、そして全国自治体病院協議会の計6団体は1月20日、「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を設置し、新型コロナ感染症患者の受け入れ病床を確保するための具体策を協議することにした。日医の中川 俊男会長は同日の記者会見で、中小病院にはコロナから回復後も入院が必要な患者を受け入れる役割が期待されると具体案を述べた。前述の大学病院に関する調査結果然り、このような案が出るということ自体、大学病院と中小病院との連携ができていない実情が垣間見える。一方、厚生労働省が公表した設立主体別のコロナ患者受け入れ状況では「公立病院71%、公的病院83%、民間病院21%」となっている。全病院数の7割が民間病院ということもあり、民間病院の受け入れ率の低さが批判されがちだ。しかし、民間病院の病床数は全体の半分強で、経営の体力も人材調達力も脆弱な病院が多い。院内感染が起きて休院に追い込まれたり赤字になったりしても、誰も補填してくれない。コロナ対応できる中規模民間病院は1割未満医療ビッグデータの分析に基づき情報発信しているグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの調査によると、コロナ感染者に対応できる医療資源が比較的整っている中規模(200床)以上の民間病院は1割にも満たないことがわかった。政府は高額な支援金を用意したり、コロナ患者受け入れを拒否する病院名を公表する措置を感染症法改正で検討したりしているが、民間病院側としては受け入れようにも受け入れられない状況にあることをどれほど理解しているのだろうか。日本は欧米に比べて病院・病床数が多く、医師や看護師などの医療資源が分散している。OECD(経済協力開発機構)加盟国で比較すると、ドイツは1人の医師が2床、アメリカは1床、イギリスは0.8床を診ているのに対し、日本は5床と突出している。病床が逼迫する中、医療資源の充足状況に応じた病院間の役割分担の明確化と連携が必要だ。国が施策として掲げながらも先送りしてきた「医療機能の分化と連携」を、コロナ禍の緊急事態下で改めて指摘しなければいけない状況が情けない。

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春は他人の「くしゃみ」が気になる季節/ノバルティスファーマ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収束をみせない中で迎える花粉症の季節。花粉症の患者さんは、くしゃみや目のかゆみ、鼻水などの諸症状で、マスクを外したり、顔を不用意に触れる機会が増えそうだ。 万が一、COVID-19の感染者であった場合、周囲に感染させる恐れとなる「くしゃみ」について、ノバルティスファーマ株式会社は、「新型コロナウイルス感染症流行下における、くしゃみに対する意識・実態調査」と題し、アンケート調査を行い、その結果を発表した。 今回の調査では、人のくしゃみに対する意識や、自分自身のくしゃみに対する意識と対策について探った。アンケート調査の概要 期間:2020年12月11日~12月13日 対象:首都圏在住の20~40代の男女 調査人数:600人アンケートの概要〔回答者の花粉症状況〕・花粉症と自覚する人が56.5%・花粉症と自覚する人のうち、1~4月の期間に症状が出るという人は85.5%・「くしゃみ」が重症花粉症にあたる「1日に11回以上」の人は約半数の49.8%・花粉症と自覚する人のうち、病院で治療を受けるという人は24.2%〔くしゃみに対する意識〕・COVID-19流行後、人の「くしゃみ」が気になる度合が増した人が80.3%・場面別にみると、「電車の同じ車両内で」人が「くしゃみ」をしていると気になる人が89.5%、「飲食店内で」が87.7%、「職場のデスクで」が80.0%。一方、「家庭内で」は61.2%・「くしゃみ」をする人がマスクをしていても「変わらず気になる」という人が8.7%、「少し安心するけどやはり気になる」という人が62.3%・新型コロナウイルス感染症の流行後、自身が「くしゃみ」をした際に周囲の目が気になる度合が増した人は88.4%。家庭内では「特に気にならない」が40.3%〔新型コロナウイルス感染症流行下における花粉症への意識〕・花粉症による「くしゃみ」が人に感染させるリスクになると思う人が83.8%・花粉症の治療に前年より力を入れたいと思っている人は23.9%(特に変わらない72.6%) 以上のアンケート結果を受け、大久保 公裕氏(日本医科大学大学院医学系研究科頭頸部感覚器科学分野 教授)は、「新型コロナウイルス感染症の流行下では『くしゃみ』や『目のかゆみ』など花粉症の症状はリスクになるので、今シーズンはとにかく症状が出ないようにしなければならない。この点、7割もの人が治療に関して昨年と変わらないとしていることは心配」と不安をのぞかせるとともに、「重症花粉症の場合には、症状のひどさだけではなく、花粉量が少なくても症状が出やすく、症状を抑えるのは簡単ではないということがあるので、しっかりした対処が必要。重症度が高い患者さんの症状を抑えるための治療というのもあるので、重症度に応じた治療法を選択し、今年はしっかりと症状の発現を抑えるように努めていただきたい」と花粉症治療でのCOVID-19リスクへの対応を提案している。

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第42回 民間検査で陽性、陰性、陰性、陽性…、ころころ変わる結果に振り回された友人の話

周囲でもポツリポツリと陽性者がこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。1月7日に緊急事態宣言が出せれてからまもなく3週間が経とうとしています。東京都の1日当たりの陽性者数は1月26日時点で1,026人と、2,000人を超えた1月7~9日と比べるとずいぶん落ち着いて来たようには見えます。しかし、街の賑わいは変わらず、変異ウイルスの伝播も考えられるため、そうは簡単に500人レベルまでは下がらない気もします。さて、私の周囲でもポツリポツリと陽性者が出ています。症状があったにもかかわらず、最初に民間の検査を受けてしまった友人(Aさん、都内在住)のケースが興味深かったので、本人の了解を得たうえで紹介します。発熱相談センターにつながらず民間検査へAさんは50代の男性。正月明けの1月5日に寒気、喉の痛み、発熱の症状が出ました。「これはコロナかも?」と思い、東京都発熱相談センターに電話したのですが、まったくつながりません。ちょうど東京都の患者数が激増していた頃で、発熱相談センターもパニックになったいたのかもしれません。幸い症状は軽く、重症化する感じもなかったので、この日はそのまま様子を見ることにしました。翌1月6日、熱がさらに上がり、症状も悪化してきたため、止むなくマスコミでも大きく報道された、木下グループが運営する「新型コロナPCR検査センター」新宿店をネットで予約しました。同センターは新橋、新宿の2店舗ありますが、新宿店のほうが空いていたそうです。それでも最短の予約日は1月9日でした。検査当日、Aさんは山手線で新宿に向かい、歌舞伎町の入り口近くにある新宿店で検査を受けました。方法は、店内のブースで採取セットを使って自分で唾液を採取し、提出する、というものです。Aさんによれば「店舗のスペースは小さな立ち食いそば屋くらい。狭くて外に検査待ちの行列ができていた」とのことです。症状が出て、陽性が疑われる人間が公共交通機関を使って繁華街にある検査所に行く、という行為は少々責められるべきかもしれませんが、都の発熱相談センターにアクセスできなかったのですから、ここは大目に見てあげたいところです。検査料金は3,190円(税込)と激安だったそうです。未承認の研究用試薬で料金圧縮か同センターのWebサイトには、検査について次のように説明されています。「厚生労働省健康局結核感染症課及び国立感染症研究所が、『臨床検体を用いた評価結果が取得された2019nCoV遺伝子検査方法について(2020年9月30日版)』として公表している中で、感染研法との陽性一致率及び陰性一致率を求めた結果が、陽性一致率及び陰性一致率ともに100%である製品となります。本検査は、この製品を用いたリアルタイムPCR法による遺伝子検査を行います」。試薬は東洋紡の「SARS-COV-2 Detection Kit Multi NCV-403」。医薬品医療機器等法に基づく体外診断用医薬品としての承認を受けていない研究用試薬です。東洋紡のWebサイトでは100回用セットが9万8,000円となっており、そうしたところで料金の低廉化を図っているのかもしれません。なお、民間のPCR検査としては、一部の診療所が自費検査を実施していますが、料金の相場は2〜3万円と高額です。本連載の「第12回 夏本番!冷やし中華ならぬ『抗体検査始めました』の怪」でも書きましたが、最近はPCR検査も「外来患者が減った医療機関にとっては、割のいい“臨時収入”」となるため、導入するところが増えています。しかし、そうした医療機関に限って、東京都発熱相談センターからの紹介患者を受ける「新型コロナ外来」には協力してないという話も聞きます。それはそれで問題と言えそうです。「陽性2、陰性2だから、まだわからないな」さて、Aさんの検査結果は翌10日24時(11日0時)までに新型コロナPCR検査センターからメールで届くことになっていました。検査後は自宅にこもって療養していたAさんに結果が届いたのは、10日の23時過ぎでした。結果は「感染が疑われる結果となりました」。予想はしていたもののショックを受けたAさんでしたが、その5分後に再び届いたメールで混乱に陥ります。同じセンターから今度は、「結果は、陰性となりました」という内容が届いたのです。Aさんはすぐさま同センターに対し、「どちらが正しいのか? 検査結果に不備があるなら返金してほしい」とメールで質問しました。すると、約30分後に「記載に不備があり、大変申し訳ございません。訂正して、再送させていただきます。結果は陰性となりました」というメールが届きました。この時点で「ひとまず安心」と思ったAさんですが、さらにその30分後。今度は「お詫び」というタイトルでメールが届きました。なんと4通目です。その内容は「システム上に不備があり、急ぎ、代替システムを使用する過程において誤動作がありました。正しい情報は『感染が疑われる結果となりました』です」というものでした。この時点で、怒りを通り越して呆れたAさんは、「陽性2通、陰性2通だから、まだわからないな」と考えることにし、お酒を飲んで寝てしまったそうです。なお、12日の夜、再び「念のため再度送ります。感染が疑われる結果となりました」という旨のメールが届いたため、同センターの結果は「3対2で陽性有利」となったそうです。結局、近所の「新型コロナ外来」へシステム上の不備とはいえ、このドタバタはちょっとひどいですね。おそらく、この日の同センターの結果報告の混乱はAさんだけではなく、相当数の被害者がいたに違いありません。11日朝、Aさんは私に怒りの電話をしてきました。「3,000円をドブに捨てた。どうしたらいいか?」と聞かれたので、「根気よく都の発熱相談センターに連絡し、つながったら『民間検査で陽性になった。近所で検査してもらえる医療機関を紹介してくれ』と相談したら」とアドバイスしました。結果、その日の夕方に何とか電話がつながり、Aさんは翌12日朝に、近所の診療所で検査を受けられることになりました。診療所から検査結果を伝える電話が来たのは14日の夕方で、「陽性でした。保健所からの連絡を待って下さい」と言われました。保健所から連絡が来たのはそのまた2日後の16日の夕方でした。この間、咳がひどくなったり、倦怠感が続いたりはしましたが、とくに重症化することなく徐々に軽快していったAさん。保健所の担当者からも「(医師と相談した結果)発症から10日以上経って、軽快されているので、もう自宅療養も解除していいです」と言われ、一件落着となったとのことです。Aさんは「最初から近所の診療所に行けばよかった」と後悔しきりでしたが、東京都は埼玉県のように公費(行政検査)でPCR検査をする「新型コロナ外来」がある医療機関名を公開していません(基本、発熱相談センターの担当者が必要と判断した場合のみ、医療機関名を教える仕組みになっています)。そのあたりも今後、改善の余地がありそうです。急拡大する民間PCR検査マーケット1月16日付の日本経済新聞の「民間検査 医療機関と連携」という記事によれば、「厚生労働省は新型コロナウイルスの検査で、民間検査機関に医療機関との連携を促す。現在は結果が陽性でも医療機関に連絡が届かず、患者の治療や隔離が進まない場合がある。感染症法の改正で医療機関との連携を国が勧告できるようにする」とのことです。この記事では「日本経済新聞社の調べによると、木下グループやソフトバンクグループなど主要4社の1日あたりの検査可能件数は2月末に計7万5,000件になる見通しで、12月末比で3倍強に膨らむ」と民間検査会社の急拡大も報じています。民間検査会社と医療機関を連携させることは妥当な対策だとは思いますが、システムがぐちゃぐちゃで、陰性か陽性もはっきりしない、利用者を混乱させるだけの結果しか出せない企業も存在することを考えると、安易に結果だけを医療機関と連携しても、混乱がさらに増すだけのような気もします。幸い私の友人は軽症で済みましたが、万が一重症化していたら、このケースは事件になっていた可能性もあります。民間検査会社に対しては、単に検査の精度向上を求めるだけではなく、全体の運用についても、相応の監視システムやレギュレーションが必要ではないかと切に感じたお正月の出来事でした。

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Modernaの新型コロナワクチン、400万人でのアレルギー反応/CDC

 米国で2020年12月21日~2021年1月10日に初回投与されたModernaのCOVID-19ワクチン接種404万1,396回で、10例(2.5例/100万回)にアナフィラキシーが発現し、9例は15分以内、1例は45分後に発現したことを、米国疾病予防管理センター(CDC)が2021年1月22日に発表した。 米国では2021年1月10日の時点で、ModernaのCOVID-19ワクチンの1回目の投与が404万1,396人(女性246万5,411人、男性145万966人、性別不明12万5,019人)に実施され、1,266例(0.03%)に有害事象が報告された。そのうち、アナフィラキシーを含む重度のアレルギー反応の可能性がある108例を調査した。これらのうち10例(2.5例/100万回)がアナフィラキシーと判断され、うち9例はアレルギーまたはアレルギー反応の既往(薬剤6例、造影剤2例、食物1例)があり、そのうち5例はアナフィラキシーの既往があった。 アナフィラキシー発現例の年齢中央値は47歳(範囲:31~63歳)。接種から症状発現までの中央値は7.5分(範囲:1〜45分)で、9例が15分以内、1例が45分後であった。10例すべてがアドレナリン(エピネフリン)を筋肉内投与された。6例が入院(うち集中治療室が5例、そのうち4例が気管内挿管を要した)し、4例が救急科で治療を受けた。その後の情報が入手可能な8例は回復もしくは退院した。アナフィラキシーによる死亡は報告されていない。 アナフィラキシーではないと判断された98例のうち、47例は非アナフィラキシー性のアレルギー反応、47例は非アレルギー性の有害事象と判断され、4例は評価に十分な情報が得られなかったという。

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花粉症シーズンで新型コロナの思わぬ流行が!?これを解決するには

 いよいよ花粉症シーズンに突入する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下で類似症状を示す花粉症の見極めは非常に難しいが、医療者が留意しておくべきことは何だろうかー。この状況に先駆け、花粉症治療の第一人者である大久保 公裕氏(日本医科大学大学院医学系研究科頭頸部感覚器科学分野 教授)と、日本感染症学会理事長で政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバーでもある舘田 一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座 教授)による意見交換会が2020年10月に実施された(主催:ノバルティス)。*本稿はノバルティス社の取材情報について許可を得て加筆・編集したものです。無症状感染者が花粉症による“くしゃみ”でウイルスを拡散させる!? 昨年12月9日に発表された『2021年春の花粉飛散予測(第2報)』によると、スギ花粉の飛び始めは全国的に例年並み、早い所では2月上旬から飛散すると言われている。また、飛散量は広範囲で例年より少ないものの、前シーズン比では所々で非常に多くなることが予想されている。 このようななか、COVID-19流行下での花粉症対策はこれまで以上に困難を極めると考えられる。というのは、新型コロナウイルス対策として“換気”が必要なのに対し、花粉症対策は“密閉”がそれぞれの基本姿勢であるからだ。これについて、大久保氏は「換気のために風通しを良くしている店舗では花粉が舞いやすく症状が出やすくなってしまう」と話した。これに対し、舘田氏は「主症状としてとくに注意が必要なのがくしゃみ」とし、「COVID-19患者の中には症状がなくても、咽頭にウイルスを持っている人がたくさんいる。そのような無症状感染者はくしゃみや咳などの症状がないため、本来であれば症状がある人に比べウイルスを拡散するリスクが低い。しかし、花粉症の症状が現れることでウイルスを拡散するリスクが高まる」と懸念した。  また、花粉症で顔を触る頻度が増えることもリスクの増加につながる。舘田氏は「人の手が触れるところはすべてウイルスで汚染されている可能性がある。それを触っただけでは感染は起きないが、その手を目や鼻、口に持っていくことで感染するため、花粉症で痒くなった目や鼻を触ればリスクは高まる」とも説明した。重症例は少量の花粉でも症状出現、インフルエンザ予防と同じ意識で対策を ウィズコロナ時代のなかでもこの季節の花粉症治療はとくに重要になる。大久保氏は「花粉症は治療すれば症状もかなりゼロに近づけることが可能だろう。薬物療法以外に今はアレルギー免疫療法などもあり、この治療法は 3 年間続けると、後の 5 年間は実に軽くなるということがわかっている」と述べた。 症状が出やすく、くしゃみなどの頻度も多くなりやすい重症花粉症については、大久保氏は「2020年シーズンのように飛散量が例年の5分の1であれば、軽い人は症状が出ない。しかし、重症花粉症の場合は飛散量が少なくてもすぐに症状が出てしまう。症状としては鼻を1 日に11回以上かむ、くしゃみの発作が11回以上、鼻が1日中つまるなど、どれか一つでも当てはまれば重症だと思っていい」と解説1)。 治療においては、「重症の場合にはその時だけでも症状をゼロにできるような抗体療法もある。この抗体療法は日本でしか適用はないが、それだけ日本の花粉症は重症だということ。抗体療法を含めた治療選択肢をうまく組み合わせて治療を続けていくことが、ウィズコロナの時代においては大切」とも話した。 また、大久保氏によると花粉症の有病率は人口の 40%を超えることがわかっており、日本人1億2千万人のうち3~4千万人は花粉症になっている1)。その患者たちが症状を抑えることは、大きなCOVID-19対策にもなるという。 大久保先生によると「花粉症は致死的な病気ではないため、治療しないままの患者が多い。外から見ているとくしゃみをたくさんしているような人でも、本人は毎年のことだから慣れてしまっている」という現状がある。これに対し「症状があるのに何も治療しないで、くしゃみや鼻水、涙目、目のかゆみなどを放置していると、新型コロナウイルスをほかの人にうつす可能性も高くなるため、医療機関を受診してほしい」と訴えた。舘田氏も「病院内には専門家がおり、一方通行にしたり、経路を遮断したり、換気を行ったりとリスクを抑えるために対策を行っているので、受診控えなどは避けてほしい」と話し、両氏は過剰な受診控えがかえってリスクになることを強調した。<情報交換会に関する資料提供> ノバルティスファーマ

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第44回 南アの変異株は免疫をかわし、ワクチンは絶えず手入れが必要かもしれない~実際のワクチン効果

ひとしきり新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)を済ませるかワクチンを接種すればあとは大丈夫というわけではなさそうなことが示されつつあります。南アフリカで見つかった変異株は備わった免疫をかわしうるSARS-CoV-2変異株のうち南アフリカで去年遅くに見つかった501Y.V2は最も懸念されています1)。501Y.V2は免疫系の主な狙い所であるスパイクタンパクに多くの変異を有し、厄介なことにそれらの変異のいくつかは抗体を効き難くします。南アフリカの生物情報学者Tulio de Oliveira氏やウイルス学者Alex Sigal氏等は、同国で501Y.V2が急に広まったことへのその免疫回避の寄与を調べるべく、感染者から単離した501Y.V2を他のSARS-CoV-2感染を経た6人の血清と相見えさせました2,3)。感染を経た人の血清にはウイルスを中和、すなわち阻止する抗体が主に備わっています。検討の結果、感染者血清の501Y.V2の中和活性はより初期の感染流行で出回ったSARS-CoV-2の中和活性に比べてだいぶ劣りました。SARS-CoV-2そのものではなくその代理ウイルス(pseudovirus)を使った別の研究でも501Y.V2変異が中和活性を妨げうることが示されています4)。代理ウイルスはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を使って細胞に侵入するように加工したHIVです1)。南アフリカのヨハネスブルクのウイルス学者Penny Moore氏のチームは501Y.V2の変異一揃いを持つ代理ウイルスと感染者検体(血清/血漿)をde Oliveira氏等の試験と同様に相見えさせました4)。その結果、44の感染者検体のうち約半数(48%;21/44人)は501Y.V2変異代理ウイルスを中和できませんでした。南アフリカでは501Y.V2の再感染がすでに確認されています1)。COVID-19が席巻した地域でその変異株が広まるのは先立つ感染で人々に備わった免疫を切り抜けうることを後ろ盾としていることはかなり確かになりつつあるようです1)。mRNAワクチンは定期的な手入れが必要かもしれないSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を作るmRNAを成分とするPfizer/BioNTechやModernaのワクチン(mRNA-1273やBNT162b2)が計画通り2回接種された20人の血液を調べたところスパイクタンパク質受容体結合領域(RBD)へのIgMやIgG抗体は先立つ報告と同様に豊富で、COVID-19を経た人と同等のSARS-CoV-2細胞侵入阻止(中和)活性やRBD特異的メモリーB細胞量を備えていました5,6)。しかし、英国や南アメリカで見つかって広まるスパイクタンパク質変異・E484K、N501Y、K417N:E484K:N501Yを擁するSARS-CoV-2変異株へのワクチン接種者血漿の中和活性は劣りました。それに、ワクチン接種者に備わった最も強力なモノクローナル抗体一揃いの大部分(17のうち14)の中和活性はE484K、N501Y、K417N:E484K:N501Yで減じるか消失しました。英国ケンブリッジ大学のウイルス学者Ravindra Gupta氏が率いた別の研究でも、BNT162b2ワクチンが1回接種された後の血清は英国で見つかった変異株B.1.1.7のスパイクタンパク質変異に効き難いことが示されています7)。この研究に血清を提供した人はほとんどが高齢者で年齢の中央値は82歳でした。一方、BNT162b2を生み出したドイツのバイオテクノロジー企業BioNTechのチームの検討では変異の有意な影響はみられず、BNT162b2が2回接種された16人から採取した血清はB.1.1.7の変異スパイクタンパク質を纏った代理ウイルスを対照ウイルスとほぼ変わらず中和しました8)。血清を提供した16人のうち8人は比較的若く18~55歳、あとの8人はより高齢で56~85歳です。いずれにせよそれらはいずれも試験管研究であり、実際(real life)はどうかを調べる必要があるとGupta氏は言っています7)。変異はいまのところワクチンの予防効果に差し支えないかもしれないが、備わった抗体が減ってきたら影響があるかもしれません。また、SARS-CoV-2感染予防mRNAワクチンはインフルエンザワクチンがそうであるように効果を保つために定期的な手入れが必要かもしれません5)。[追記] その予想どおり、南アフリカで見つかった変異株(南ア変異株)を標的とする新たなCOVID-19ワクチンの開発にModerna社が早くも着手しています(プレスリリース)。すでに世界で接種され始めたmRNA-1273が南ア変異株に弱いらしいことが接種者血清と代理ウイルスを使った実験(bioRxiv. January 25, 2021)で示されたからです。実験の結果、mRNA-1273が臨床試験で2回投与された8人(18~55歳)の血清は南ア変異株の変異スパイクタンパク質を纏った代理ウイルスを中和し、その抗体活性は感染防御に必要な水準を恐らく満たしていたものの低めでした(対照ウイルス中和活性の6分の1)。その結果を受けてModerna社は南ア変異株を専門とするワクチン候補mRNA-1273.351の開発に着手しており、前臨床試験が始まります。また、Modernaの現在のワクチン接種は2回ですが、さらに多く接種したときの中和活性増強を調べる第I相試験も始まります。イスラエルでPfizerのCOVID-19ワクチン1回目接種が感染の3割を防いだCOVID-19ワクチンのこれからは別にして、世界に出回り始めた現在のワクチン普及の効果の一端がイスラエルから発表されました。イスラエルはアラブ首長国連邦と並んでワクチン接種率が世界で最も高く、両国とも人口のおよそ4分の1を占める200万人超が接種を済ませています9)。イスラエルの今回の解析ではPfizer/BioNTechのワクチンBNT162b2が接種された60歳超高齢者20万人と非接種20万人が比較されました。その結果、2回接種が必要なそのワクチンの1回目を済ませてから2週間後の検査陽性(感染)率は非接種者より33%低いことが示されました。もう何週間かすると2回目の接種を済ませた人が揃ってさらに確かな結果が判明します9)。今回のひとまずの結果を受け、BNT162b2の1回目接種後の感染阻止効果は思ったより低いようだとイスラエル最大の医療団体Clalit Health Servicesの疫学者Ran Balicer氏は言っています10)。参考1)Fast-spreading COVID variant can elude immune responses / Nature 2)Escape of SARS-CoV-2 501Y.V2 variants from neutralization by convalescent plasm.medRxiv. January 21, 20213)New Covid-19 501Y.V2 variant escapes antibodies / Africa Health Research Institute 4)SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma. bioRxiv. January 19, 20215)mRNA vaccine-elicited antibodies to SARS-CoV-2 and circulating variants. bioRxiv. January 19, 2021. 6)COVID vaccines might lose potency against new viral variants / Nature 7)Impact of SARS-CoV-2 B.1.1.7 Spike variant on neutralisation potency of sera from individuals vaccinated with Pfizer vaccine BNT162b2. medRxiv. January 20, 20218)Neutralization of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7 pseudovirus by BNT162b2 vaccine-elicited human sera. bioRxiv. January 19, 20219)Are COVID vaccination programmes working? Scientists seek first clues / Nature10)Single Covid vaccine dose in Israel 'less effective than we thought' / Guardian

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新型コロナ、5割以上が無症状者から感染/CDC

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に、どのくらい無症状の感染者が関与しているのだろうか。米国疾病管理予防センター(CDC)のMichael A. Johansson氏らが、無症状の感染者からの感染割合について決定分析モデルを用いて検討した結果、全感染の半分以上を占めることが示唆された。JAMA Network Open誌2021年1月7日号に掲載。無症状者からの感染が全感染のうち59%を占める可能性 CDCではこの決定分析モデルを用いて、症状が発現しないままの人からの感染割合と感染期間を変化させた複数のシナリオについて、症状発現前の人、症状が発現しないままの人、症状のある人からの感染の相対量を検討した。すべての推定において、潜伏期間はメタ解析のデータより中央値を5日間として設定した。感染期間は10日間とし、感染のピークは3〜7日で変化させた(潜伏期間中央値の-2〜+2日)。全体的なSARS-CoV-2の割合は、可能な割合で幅広く評価するために0~70%で変化させた。主要アウトカムは、症状発現前の人、症状が発現しないままの人、症状のある人からのSARS-CoV-2の感染とした。 このモデルのベースラインは、感染のピークが症状発現中央値で、感染者の30%が症状を発現せず、その相対感染率は症状発現者の75%であると仮定した。これらのベースラインの仮定を総合すると、症状が発現しないままの感染者による感染が全感染の約24%を占める可能性が示される。この基本のケースでは、全感染のうち59%が無症状者からの感染で、35%が症状発現前の人からの感染、24%が症状が発現しないままの人からの感染だった。これらの仮定において、それぞれ広い範囲で変化させて推定すると、新規感染の50%以上が無症状の感染者への曝露によると推定された。 著者らは、「感染拡大を効果的に制御するには、症状のある感染者の特定と隔離に加えて、無症状者からの感染リスクを減らす必要がある。この結果は、安全で効果的なワクチンが利用可能になり広く使用されるまで、マスクの着用、手指衛生、ソーシャルディスタンス、具合が悪い人以外への戦略的検査といった対策が、COVID-19の拡大を遅らせるための基礎となることを示唆している」と考察している。

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第39回 新型コロナワクチン接種の手引きを医療機関向けに公開/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種の手引きを医療機関向けに公開/厚労省2.ワクチン先行接種、国立病院機構など100施設が対象3.新型コロナワクチン特設サイトが首相官邸HPにオープン4.受け入れ病床促進策、入院料に1日当たり9,500円を上乗せ5.使用厳罰化を見据え、「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が発足1.新型コロナワクチン接種の手引きを医療機関向けに公開/厚労省厚生労働省は、18日に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向けの手引き」を発出した。新型コロナワクチン接種に当たっては、確保できる在庫に限りがあるため、ワクチンの供給量および管理方法に応じた体制構築を進める。各都道府県は28日までに接種場所の一覧を作成し、2月中旬までに医療従事者がどの接種会場で接種を受けるのかなどの把握をすることになっている。医療機関はこうした都道府県のスケジュールに合わせて準備しなければならない。また都道府県には、ワクチン接種後の副反応に係わる専門的な相談などを住民から受け付ける体制を確立することが求められており、専用窓口やコールセンターを設置予定。厚労省は、接種会場の確保や、相談受け入れ体制の構築に対する費用などを全額負担する。(参考)ワクチン副反応の専門機関、全都道府県に確保…厚労省方針(読売新聞)新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(2.0版)(厚労省)※最新版の改定に伴い、2021.3.8にリンク先を変更いたしました。2.ワクチン先行接種、国立病院機構など100施設が対象厚労省健康局は、20日に「医療従事者向け先行接種の実施医療機関について」を各自治体に通知した。2月下旬から先行して医療従事者向けに接種を行い、接種後の副反応などの健康状況調査を実施し、3月下旬以降に開始される高齢者などへの接種前に公表される予定。先行接種の対象は、独立行政法人国立病院機構52施設、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)27施設、独立行政法人労働者健康安全機構21施設に所属する医師や看護師ら医療従事者の約1万人で、施設ごとに希望者を募る。(参考)医療従事者向け先行接種の実施医療機関について(厚労省)3.新型コロナワクチン特設サイトが首相官邸HPにオープン20日、田村厚労大臣は、新型コロナウイルスワクチンについて、年内に7,200万人分の供給契約をファイザーと正式に結んだことを発表した。また、ワクチン担当相に河野行革相が就任し、さっそく22日にコロナワクチンの情報をまとめた特設ページを首相官邸の公式ホームページに開設した。同時に、首相官邸の公式アカウントが各SNSに開設されている。具体的な接種のスケジュールは、2月下旬に医療従事者から始め、3月中にも65歳以上の高齢者に広げる想定であり、さらに春以降に一般向けの接種となる見込み。政府は各市区町村が接種対象者に接種券(クーポン)の発行から接種まで一連の記録を管理するのにマイナンバーを活用する。(参考)新型コロナワクチンについて 接種推進担当 河野大臣からのメッセージ(首相官邸)マイナンバー、自衛隊も活用 政府検討、ワクチン接種へ総力体制―混乱になお懸念(時事ドットコム)4.受け入れ病床促進策、入院料に1日当たり9,500円を上乗せ21日に開催された経済財政諮問会議で、菅総理は新型コロナウイルス感染者の受け入れが困難となっている状況に対して、「わが国は人口当たりの病床数がほかの国に比べて多い中で、より幅広い病院に新型コロナ患者を受け入れていただく必要がある」と述べた。諮問会議の民間議員からは、「全国で1万人を超える療養先調整者を早急に解消し、状況に応じて適切な医療を受けられるようにすることにより、一人でも救える命を救っていくことが喫緊の課題である。命にかかわる重症者に重点を置いた入院調整が急務」であると、公立・民間を問わず、大胆なインセンティブ措置を求めた。厚労省はこれを受けて、後方支援病院の新型コロナ回復患者の受け入れを促進する目的で、翌日22日に「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その34)」を通知した。これにより、回復後の患者を引き受けた病院の診療報酬に、入院料1日当たり9,500円、最大90日間を上乗せする。昨年12月からも1日7,500円を上乗せしていたが、さらに増額して合計1万7,000円となる。これにより、感染者の受け入れが困難となっている急性期病院の受け入れがスムーズになることが期待される。(参考)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その34)(厚労省)医療提供体制の確保に向けて 田村臨時議員提出資料(同)諮問会議で菅首相 新型コロナ病床確保に全力 補助金など活用で「幅広い病院で受け入れを」(ミクスオンライン)5.使用厳罰化を見据え、「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が発足厚労省は、20日に第1回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を開催した。現行の大麻取締法では、大麻の所持や栽培は禁止されているが、使用については罰則の対象となっていない。大麻は、覚醒剤などほかの違法薬物の乱用につながるゲートドラッグとなる事例が多く、大麻取締法違反で検挙された人数が6年連続で増加しており、10~20代の乱用が急増するなど、社会問題となっている。再乱用防止対策(依存症対策)など、薬物関連の施策についても検討課題とする。(参考)第1回「大麻等の薬物対策のあり方検討会」資料(厚労省)罪に問われない大麻「使用」、罰則の創設検討へ…20歳代以下の乱用増受け(読売新聞)

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J&Jの新型コロナワクチン、 安全性と免疫原性を確認/NEJM

 開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規ワクチン候補Ad26.COV2.Sは、18~55歳および65歳以上のいずれの集団においても、良好な安全性と免疫原性プロファイルを示すことが、オランダ・Janssen Vaccines and PreventionのJerald Sadoff氏らが行ったCOV1001試験の中間解析で明らかとなった。これらの知見は、このワクチンのさらなる開発の継続を支持するものだという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年1月13日号に掲載された。Ad26.COV2.Sは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の完全長・安定化スパイク(S)蛋白質をコードする遺伝子組み換え非増殖型アデノウイルス血清型26(Ad26)ベクターで、武漢株の最初の臨床分離株に由来する。Ad26ベクターは、欧州医薬品庁(EMA)の承認を受けたエボラワクチンや、RSウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ジカウイルスのワクチン候補として使用されており、Ad26ベクターをベースとするワクチンは一般に安全で、免疫原性が高いとされる。2種の用量とプラセボの1または2回接種の安全性を評価する第I/IIa相試験 研究グループは、2つの年齢コホートの健康な成人における、Ad26.COV2.Sの安全性、反応原性(reactogenicity)、免疫原性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化第I/IIa相試験を進めている(Johnson & Johnsonなどの助成による)。本試験は、ベルギーと米国の12施設が参加し、2020年7月22日に開始された。今回は、中間解析の結果が報告された。 本試験のいくつかのコホートのうち、コホート1(年齢18~55歳)およびコホート3(同65歳以上)が解析に含まれた。被験者は、Ad26.COV2.Sをウイルス粒子量5×1010/mL(低用量)、同1×1011/mL(高用量)、プラセボを1回または2回(56日間隔)接種(筋肉内投与)する群に無作為に割り付けられた。 コホート1の1回目および2回目、コホート3の1回目の接種のデータについて解析が行われ、コホート3の2回目接種のデータは今回の解析には含まれなかった。また、1回接種と2回接種を比較する長期的なデータ(コホート2)も収集されているが、今回は報告されなかった。 主要エンドポイントは、各接種用量スケジュールの安全性および反応原性であった。中和抗体は57日に100%、少なくとも71日まで安定 805例が解析の対象となった。コホート1では、2020年7月22日~8月7日の期間に登録された402例(平均年齢35.4±10.2歳、女性52%)がAd26.COV2.Sの1回目の接種を受け、2020年11月7日までに2回目の接種を受けた。コホート3では、2020年8月3日~24日の期間に403例(69.8±4.0歳、50%)がAd26.COV2.Sを接種された。 非自発的に報告された有害事象のうち最も頻度が高かったのは、疲労、頭痛、筋肉痛、注射部位疼痛であった。全身性の有害事象で最も頻度が高かったのは発熱であった。全身性の有害事象は、コホート3がコホート1よりも頻度が低く、低用量接種者が高用量接種者よりも低頻度だった。 反応原性は、1回目よりも2回目の接種後のほうが少なかった。また、野生型ウイルスに対する中和抗体価は、1回目の接種後29日の時点で全参加者の90%以上で検出され(幾何平均抗体価[GMT]:224~354)、その後も接種用量や年齢層を問わず抗体価が上昇して57日には100%に達した(GMT:288~488)。抗体価は、少なくとも71日までは安定していた。2回目の接種により抗体価は2.6~2.9倍(GMT:827~1,266)にまで上昇した。 スパイク結合抗体反応は、中和抗体反応と同程度であった。また、14日目には、CD4陽性T細胞反応が、コホート1の76~83%、コホート3の60~67%で検出され、1型ヘルパーT細胞の免疫応答が優位な状態への明らかな傾きが認められた。CD8陽性T細胞反応は、全体として頑健性が高かったが、コホート3では低かった。 著者は、「これらの知見と、前臨床のウイルス曝露試験の結果を合わせると、低用量(ウイルス粒子量5×1010/mL)のAd26.COV2.Sの単回接種と2回接種の有効性を評価する2つの第III相試験を進めるという、われわれの決定を支持するものであった」としている。

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コロナ受け入れ病院の緊急支援金、申請は2月まで/日医

 日本医師会・松本 吉郎常任理事が、新型コロナ患者受け入れ病床のさらなる確保を目的とした緊急支援事業補助金について記者会見で解説した。なお、この補助金は昨年末に厚労省から通知が出され、1月7日に緊急事態宣言の発令を受け改正されたもの。この度、対象条件などを明確化したリーフレットが発行された。申請期限は2月28日まで。コロナ患者用の最大確保病床数に応じた補助上限(基準)額 補助金の対象医療機関は、病床が逼迫している都道府県において新型コロナ患者・疑い患者の受け入れ病床を割り当てられている医療機関とされ、12/25~2/28までの最大確保病床数に応じて補助額の上限が計算される(12/24以前から継続している確保病床も対象となる)。《補助上限額》(1)確保病床数に応じた補助(1~3の合計額) 1.新型コロナ患者の重症者病床数×1,500万円 2.新型コロナ患者のその他病床数×450万円 3.協力医療機関の疑い患者病床数×450万円(2)緊急的に新たに受け入れ病床を確保する観点からの加算(新型コロナ患者の重症者病床およびその他病床)○緊急事態宣言が発令された都道府県・12/25~2/28までに新たに割り当てられた確保病床数×450万円を加算○上記に該当しない都道府県・12/25~2/28までに新たに割り当てられた確保病床数×300万円を加算 なお、(2)について、協力医療機関の疑い患者病床数は対象とならない。人件費、コロナ対応手当て、雇用関連費、外部委託費などに幅広く活用 補助の対象としては、12/25~3/31までにかかる以下の経費とされる。1.新型コロナ患者などの対応を行う医療従事者の人件費(新型コロナ対応手当て、新規職員雇用にかかる人件費など、処遇改善・人員確保を図るもの) 支給額や範囲は、治療への関与や院内感染・クラスター防止の取り組みへの貢献度合いなどを考慮しつつ、医療機関側で決定できる。従前から勤務する職員を含めた新型コロナ対応手当てなどが該当し、一日ごとの手当て、特別賞与、一時金などの支給方法が想定されている。2.院内などでの感染拡大防止対策や診療体制確保などに要する次の経費(従前から勤務している者および通常の医療の提供を行う者に係る人件費は除く) 例えば、看護師が消毒・清掃・リネン交換などを行っている場合は、負担軽減の観点から、医療機関はこれらの業務を民間事業者に委託するような使い方もできる。なお、2については補助基準額(上限額)の3分の1までとされる。  本補助金の対象は新型コロナ患者を受け入れる病棟の医療従事者に限られず、外来部門、検査部門など、すべての新型コロナおよび疑い患者の対応を行う医療従事者が対象となりうる。医療資格の有無は問わない。時間外勤務手当ても対象となり、雇用形態による限定もない。 松本氏は、「申請期限は2月28日まで。概算で申請できるので、早めの検討をお願いしたい。上限はあるが、十分に医療機関で活用しうる補助金。コロナと闘う医療機関の本当の助けになる支援が実現されるよう、今後も政府に働きかけを行うと同時に、経営体制の確保について、地域の医師会や医薬関係団体にも協力を呼び掛けたい」とまとめた。《申請はこちらから》厚労省「令和2年度新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関緊急支援事業補助金」について

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第41回 新型コロナワクチンの体制強化へ、河野大臣の起用は安泰なのか?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するファイザー社ワクチンの接種が米英を中心に始まり、日本でも接種開始が現実味を帯びようとしている。そうしたなか、菅 義偉首相は突如ワクチン接種に関して担当大臣を設置し、その任に規制改革担当相の河野 太郎氏を当てることを発表した。支持率が低迷する菅政権にとって、新型コロナ対策に本腰を入れているとのアピール、悪く言えばパフォーマンスと言ったほうが良いかもしれない。そう思うのには主に2つの理由がある。そもそも厚生労働省が主導するワクチン接種に関して、別途担当相を設けること自体が指揮系統の複雑化を招きかねないにもかかわらず、わざわざ新設ポストを設置する意味が分からない。そして担当相は河野氏である。河野氏と言えば安倍前首相の辞意表明直後、Yahoo!ニュース独自の世論調査「みんなの意見」の「次期自民党総裁、ふさわしいと思うのは?」で、総裁選に出馬を表明した3氏を抑えてトップとなり、直近では毎日新聞と社会調査研究センターが1月16日に実施した全国世論調査「次の衆院選後の首相にふさわしいと思う人」でもトップとなっているほど国民的人気は高い。その背景にはTwitterで219万人を超えるフォロワーを有し、業務多忙なはずなのに、エゴサーチして自分に言及しているツイートに引用してツイートする手法が影響していると言われる。この行為は一般のTwitterユーザーからすれば「有名人に相手された」と喜び、親近感を抱かせるきっかけになる。つまり今回の人事は「ワクチン担当相新設+国民人気の高い担当相人選」の合わせ技で国民にアピールしようという菅首相の意図が透けて見えるのだ。担当相新設で指揮系統が複雑化する可能性があると前述したが、担当相が河野氏であることがさらことを複雑にする可能性がある。そもそも河野氏は、官僚答弁を真似たかのような建前論ばかり言う政治家が多い中にあって、Twitterのツイートだけでなくリアルでも刺激的な物言いが多い。自民党総裁選と言えば、一定の閣僚経験を積んだ議員が出馬することが半ば慣例と化しているが、河野氏はまだ初入閣すら果たせていなかった2009年の自民党総裁選に出馬。そこでは「腐ったリンゴを樽に戻せば樽の中は全部腐る。勇気を持って取り除くための総裁選だ」と自民党古参批判を展開した。ちなみに同総裁選では河野氏と同じく当時閣僚未経験で出馬した現新型コロナ対策担当相の西村 康稔氏もいたが、これは当時番狂わせで河野氏が当選しないよう、念のため党内若手票を分断させるために自民党古参幹部が後押しをして出馬させたと噂されている。また、河野氏は東日本大震災による東京電力福島第一原発事故を経験しても原発推進政策を維持する自民党の中にあって、数少ない原発反対論者。徹底した合理主義者で無駄と思われるものは大嫌い。外相時代に省内のこまごまとした作法を廃止し、Twitterでは文部科学省で副大臣、大臣政務官の初登頂を職員100人以上が深夜にわざわざ出迎えたことを批判した記事が出た際も引用し、わざわざ「ヤメレ。(要は深夜の出迎えなんかやめろと言う意味)」とツイートしている。その意味では規制改革担当相は打ってつけの役職とも言えそうだが、合理主義の徹底、根回し・忖度も一切しない、己の正しさを声高に主張するなど態度から周囲の反発を受けることも少なくない。規制改革担当相就任早々にアピールしたのは「押印廃止」キャンペーン。この時に、デジタル改革担当相の平井 卓也氏から送られたという「押印廃止」と彫られた印章と印影をTwitter上にアップし、業界関係者から批判を浴びた。印章・スタンプ生産額が国内有数の山梨県(2017年生産額国内6位)の長崎 幸太郎知事からは「唖然として言葉も出ません…ただただ限りない『嫌悪感』。(決してデジタル化に反対している訳ではない)印章関係者の健気な想いや切実さに対する敬意はおろか想像力すら微塵も感じられない…あたかも、薄ら笑いを浮かべながら土足で戦場の死体を踏み付ける残虐シーンの映画を見ているが如き」とツイートされたほど。結局この件は衆議院内閣委員会で野党議員の質問を受け、「意図が伝わらなかった。おわび申し上げたい」と陳謝する結末となった(該当ツイートはすでに削除)。そして、実はメディアとの関係も微妙だ。外相時代には北方領土問題に関連してロシア側の発言に関して大臣会見で意見を求められた際には関連する複数の質問にはまったく答えず、ただ「次の質問どうぞ」を繰り返した。確かに高度な政治判断が伴う領土問題については安易な発言はできないことを記者側は百も承知はしている。しかし、その場合は日本国内に限らず他国でも「両国で協議中のことであり、コメントは控えたい」旨の発言をすることが慣例である。結局この時も次回の会見冒頭で謝罪に追い込まれた。念のため言っておくと、「微妙なことなのだから質問するな」との意見もあるかとは思うが、ノーコメントでも一旦は質問し、必要あらば「『ノーコメント』だった」と書くのも記者の仕事である。一切のノーコメントから官僚答弁のような紋切り型の発言をし始めた段階で「潮目が変わった」ことが分かるし、それを伝えることがまた記者の仕事だからである。そんなこんなもあり、河野氏は自らの政治資金パーティーで、所属派閥・麻生派の領袖である副総理兼財務相の麻生 太郎氏から「何が政治家として今後伸びていくのに欠けているかといえば、一般的な常識に欠けている」とまで公言されてしまっている(麻生氏に「常識」という言葉を口にされたくないと思う人もいるかもしれないがそれは棚上げしておく)。さてその河野氏、ワクチン担当相就任から2日でまた「悶着」を起こしている。共同通信が新型コロナワクチン接種について、医療従事者や高齢者、基礎疾患保有者などの優先接種終了後の幅広い一般への接種開始について5月ごろを想定しているとする政府関係者談を紹介したベタ記事に「噛みついた」のだ。これに関連して河野氏はさらにNHKの報道を名指しで「デタラメ」とまで指摘した。河野氏のツイート直前のNHKのワクチンに関する報道と言えば、「政府 変異ウイルスの市中感染に危機感 全国の監視体制強化へ」。河野氏が「デタラメ」と評しているのは、どうやらこの記事のワクチン接種スケジュールで、共同通信の報道と同様に一般向けに「5月ごろ」と指摘している部分らしい。ちなみにこのうちの4月までに基礎疾患を有する人の接種を開始する旨は、すでに厚労省が自治体説明向けに昨年12月18日付で作成した資料(P46)に記載されている。まあ、これに共同通信やNHKは関係各所に取材をして、早ければ5月には広く一般向けの接種が開始される見込みと報じたわけだ。両社の取材の精度はここではわからない。だが、報道の世界に四半世紀以上身を置いている私の経験則では、少なくともこれら複数の会社がほぼ同時にあてずっぽうな報道をすることはほとんどないと言っていい。ここで河野氏が言う「デタラメ」を超訳すると、「まだしっかりは固まっていない」あるいは「俺は聞いていない」ということだろうと推察される。なぜそういうかと言うと、河野氏は昨年5月の防衛相時代に「前科」があるからである。これはアメリカの海上弾道ミサイル防衛システム「イージス・システム」の陸上コンポーネント、通称「イージス・アショア」の配備地を巡り山口県と秋田県が候補地となったが、最終的に防衛省がこれを断念した時のことだ。秋田県への配備を巡って最初に断念を報じたのは読売新聞。これに対して河野氏は「フェイクニュース」と引用ツイートした。同様の内容はNHKも報じたが、これもフェイクニュース扱いのツイートをした。しかし、6月になり配備計画は停止、河野氏自身が秋田県を訪れ謝罪する羽目になった。こうした河野氏の姿勢は一部のジャーナリストなどから辛辣な批判を浴びてきている。政治取材歴の長いフリーランスライター・畠山 理仁(みちよし)氏はその河野氏のキャラクターを詳細に分析している。端的に言えば、もともとの異端児気質に、権力の階段を登って身についた中途半端な「長いものに巻かれろ」感覚がプラスされているということだ。今回の担当相に就任した河野氏の対応次第ではワクチン接種で新たな波乱も起こるかもしれない。いずれにせよ、まずは今回「デタラメ」と断じた一般へのワクチン接種がいつになるのか?あと3~4ヵ月で答えははっきりする。

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新型コロナ、トイレでの感染リスクは?

 中国・江蘇省疾病予防管理センターの研究者らが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者専用病院内のトイレとトイレ以外での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出状況を調査するため、環境サンプリングを収集し、環境要因を分析した。その結果、SARS-CoV-2陽性を示した4点のサンプルはすべて患者トイレに関連するもので、病棟のドアハンドル、便座カバー、バスルームのドアハンドルから検出された。Science of The Total Environment誌2021年1月20日号掲載の報告。 研究者らはCOVID-19データとして気流及びCO2濃度の測定を実施。表面サンプルを107点(隔離室のトイレ:37点、隔離室のトイレ以外:34点、院内隔離室外のトイレ以外の表面:36点)、空気サンプルを46点、隔離室(1部屋3ベッド)内外の呼気凝縮液サンプルと呼気サンプルを2点ずつ収集し、分析した。 主な結果は以下のとおり。・陽性を示したサンプル4点のうち、3点は弱い陽性で、便座、洗面台のタップレバー、バスルームの天井排気ルーバーから収集したものだった。・空気サンプル46点のうち、廊下から収集された1点は弱い陽性だった。・呼気凝縮液サンプル2点と呼気サンプル2点はすべて陰性だった。・患者が使用したトイレのエアロゾル(糞便由来)には、院内で検出されたSARS-CoV-2のほとんどが含まれていた。 研究者らは、「今回の結果より、建物の環境設計と清掃習慣が見直されることとなった。また、患者介入する際には手指衛生とともにトイレ表面の定期消毒がCOVID-19対策として重要」としている。

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COVID-19の回復期血漿療法、高力価vs.低力価/NEJM

 人工呼吸器未装着の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、抗SARS-CoV-2 IgG抗体価が高い血漿の投与は低力価の血漿の投与と比較して、死亡リスクが低下することが明らかとなった。米国・メイヨー・クリニックのMichael J. Joyner氏らが、全米レジストリのCOVID-19回復期血漿拡大アクセスプログラムに参加した患者データを後ろ向きに解析し報告した。回復期血漿療法は、COVID-19から回復した患者の血漿に、SARS-CoV-2への治療用抗体が存在し、その血漿をレシピエントに投与可能であるという推定の下で、COVID-19の治療法として広く利用されている。しかし、高力価血漿が低力価血漿よりも死亡リスク低下と関連するかについては不明であった。NEJM誌オンライン版2021年1月13日号掲載の報告。全米レジストリ登録患者約3,000例を後ろ向きに解析 研究グループは、全米レジストリベースの後ろ向き研究で、回復期血漿の投与を受けたCOVID-19入院患者の抗SARS-CoV-2 IgG抗体価を測定し、抗体価と血漿投与後30日以内の死亡との関連を解析した。 解析には、2020年7月4日まで、またはプログラムの当初3ヵ月間に登録され、投与された血漿の抗SARS-CoV-2抗体価のデータと30日死亡に関するデータが利用可能であった3,082例(全米680の急性期施設から登録)が組み込まれた。 抗SARS-CoV-2 IgG抗体価は、シグナル/カットオフ値(S/CO)が<4.62を低力価、4.62~18.45を中力価、>18.45を高力価とした。高力価血漿群が低力価血漿群より30日死亡リスク34%低下 解析対象3,082例は、男性61%、黒人23%、ヒスパニック系37%、70歳未満が69%であり、3分の2が侵襲的人工呼吸器装着前に血漿投与を受けていた。登録施設当たりの患者数中央値は2例(IQR:1~6)。低力価群(561例)、中力価群(2,006例)、高力価群(515例)の3群間の、人口統計学的特性、COVID-19との関連リスク因子、COVID-19の治療薬の併用使用は概して似通っていた。 血漿投与後30日以内の死亡は、高力価群で515例中115例(22.3%)、中力価群で2,006例中549例(27.4%)、低力価群で561例中166例(29.6%)に発生した。 抗SARS-CoV-2抗体価とCOVID-19による死亡リスクとの関連は、人工呼吸器の装着の有無で異なっていた。低力価群に対する高力価群の30日死亡リスク低下は、血漿投与前に人工呼吸器を装着していなかった患者で確認され(相対リスク[RR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.48~0.91)、人工呼吸器を装着していた患者では死亡リスクへの影響は認められなかった(RR:1.02、95%CI:0.78~1.32)。

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COVID-19、半年後も6割強に倦怠感・筋力低下/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で急性症状を呈した入院患者は、退院後6ヵ月時点で、主に倦怠感・筋力低下、睡眠困難、不安・うつに悩まされていることが明らかにされた。中国・Jin Yin-tan病院(武漢市)のChaolin Huang氏らが、1,733例の入院患者についてフォローアップ試験を行い明らかにした。COVID-19の長期的な健康への影響はほとんど明らかになっていないが、今回の検討では、入院中の症状が重症だった患者について、肺の拡散障害および画像所見の異常がより深刻であることも示され、著者は「これらの集団が、長期的な回復介入を必要とする主なターゲット集団である」と述べている。Lancet誌2021年1月8日号掲載の報告。退院後の症状の聞き取り、6分間歩行テスト、血液検査などを実施 研究グループは、COVID-19退院患者の長期的な健康への影響を明らかにし、関連するリスク因子、とくに疾患重症度を調べるため、2020年1月7日~5月29日に武漢市のJin Yin-tan病院から退院したCOVID-19患者を対象に、前後両方向コホート試験を行った。調査から除外されたのは、フォローアップ前に死亡、精神病性障害、認知症、または再入院のためフォローアップが困難、骨関節症で移動が困難、退院前後に脳卒中や肺塞栓症などの疾患により寝たきりの状態、試験参加を拒否、連絡が不可能、武漢市外に居住または介護・福祉施設に入居の患者すべてであった。 全対象患者に対し、退院後の症状、健康関連の生活の質(QOL)などに関する質問と、身体検査、6分間歩行テスト、血液検査を実施。層別任意不均等抽出法を用いて、被験者を入院中の重症度スケール(7段階評価)に応じて規定した3群(スケール3[酸素補給不要]、4[酸素補給を要する]、5~6[5:高流量鼻カニューレ、非侵襲的人工換気を要する、6:体外式膜型人工肺、侵襲的人工換気を要する])に分類し、肺機能検査、胸部高分解能CT、超音波検査を行った。Lopinavir Trial for Suppression of SARS-CoV-2 in China(LOTUS)試験に登録していた患者は、試験期間中にSARS-CoV-2抗体検査を受けていた。 多変量補整線形またはロジスティック回帰モデルを用いて、重症度と長期健康アウトカムの関連を検証した。入院中に重症だと、倦怠感/筋力低下リスクは約2.7倍に 試験期間中に退院した2,469例のうち、1,733例が同試験に参加した。被験者の年齢中央値は57.0歳(IQR:47.0~65.0)、男性は897例(52%)だった。フォローアップ検査は2020年6月16日~9月3日に行われ、症状発症後の追跡期間中央値は186.0日(IQR:175.0~199.0)だった。 最も多くの患者に認められた症状は、倦怠感または筋力低下(63%、1,038/1,655例)、睡眠困難(26%、437/1,655例)だった。不安やうつ症状も23%(367/1,617例)報告された。 6分間歩行テストの結果が正常値の下限を下回った割合は、入院中の症状重症度スケール3群で24%、同4群で22%、5~6群で29%だった。拡散障害はそれぞれ22%、29%、56%で、CTスコア中央値はそれぞれ3.0(IQR:2.0~5.0)、4.0(3.0~5.0)、5.0(4.0~6.0)だった。 多変量補整後、拡散障害発症に関するオッズ比(OR)は、重症度スケール3群に比べて、4群1.61(95%信頼区間[CI]:0.80~3.25)、5~6群4.60(1.85~11.48)だった。不安またはうつ症状のORは、それぞれ0.88(0.66~1.17)、1.77(1.05~2.97)であり、倦怠感または筋力低下のORはそれぞれ0.74(0.58~0.96)、2.69(1.46~4.96)だった。 フォローアップ時に抗体検査を受けていた94例において、血清陽性率(96.2% vs.58.5%)、中和抗体力価の中央値(19.0 vs.10.0)はいずれも急性期と比較して有意に低かった。 また、急性期に腎障害はなかったがeGFR値が90mL/分/1.73m2以上だった患者822例のうち、フォローアップ時のeGFR値が90mL/分/1.73m2以下だった患者は107例だった。

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京都の老舗にコロナ対策を学ぶ【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第32回

第32回 京都の老舗にコロナ対策を学ぶ新型コロナウイルスに振り回された2020年でした。コロナ前と比較すると、わずか1年で驚くほど多くのことが変化しました。学会も大きく変化しました。これまでは、世界各地で開催される国際学会が大きな意味をもっていました。自分が属する循環器領域でいえば、代表的な国際的学術集会として、3月のACC(アメリカ心臓病学会)、8月末のESC(欧州心臓病学会)、11月のAHA(アメリカ心臓協会)などが挙げられます。国内では、JCS(日本循環器学会)はアジアを中心とした海外からの参加も多く活気があります。これらの学会は数万人の規模で、多くの医師・研究者が演劇一座の巡業のように開催地を転々と移動していたのです。2020年は、現地での対面の集会ではなく、すべてがオンラインでの開催となりました。するとその良さもわかってきました。パソコンの画面を通じて自室から参加することが可能となり、時間的・空間的な制約もありません。参加のために長期間の休みをとる必要がありません。何よりもスライドが見やすいです。新型コロナウイルス感染症の拡大は大変なことですが、それをチャンスと捉えられる面もあるのではないでしょうか。平時において変革していくには時間が必要ですが、危機や困難は変化を加速させ、その変化を容認することを容易にします。COVID-19がなければ「学会をインターネット上でWeb開催するぞ」と言ったところで相手にもされなかったでしょう。それが、わずか半年~一年で皆がZOOMの操作に習熟するまでに普及したことも事実です。驚くべきスピードです。慣れない最初は失敗することもありましたが、今では皆さん上手に操っています。「習うより慣れろ」とは良く言ったものです。従来の対面での集会には、オンラインでは補うことできない良さがあることも事実です。しかし、COVID-19が収束したとしても、学術集会が元に戻ることはないでしょう。COVID-19がわずかな期間で世界中に広がったのは航空機の利用によって人の移動が活発化したことに関連していることは明白だからです。医療関係者が感染症拡大の原因となることは避けねばなりません。新型コロナウイルス感染症の出現を嘆き悲しみ、元通りの学会の復活を願うことは得策ではありません。新たな学術集会の在り方を考えていくことは喫緊の課題です。先日、テレビ番組で京都の老舗が紹介されていました。「変わることなく守り通してきたからこそ、江戸時代から店舗が維持できたのですね、素晴らしいですね」という趣旨で、司会者が紹介しました。チャラチャラしたお笑い芸人が、アポなし突撃取材するという今風の安っぽい番組です。登場した穏やかな雰囲気の主は、「ちゃいますな」と切って捨てました。何事にも本音を感じさせない京都人としては珍しい断定的な否定でした。変化することができなかった店はすべて潰れてしまったのだそうです。特に明治維新後の東京遷都が京都にとって最大のピンチで、バタバタと閉店を与儀なくされたのです。今も続く老舗というのは、フレキシブルに時代に合わせて変化してきたからこそ継続しているのです。京都における老舗とは、保守性の真逆で柔軟性の証なのだと、反論したのです。若手芸人は直立不動で聴いておりました。自分も頭を殴られたような衝撃を受けました。自分は、京都の老舗は変化を忌み嫌う保守の権化であると信じていたからです。柔軟に変化していくことが大切なのです。猫の身体は非常に柔軟性が高いことはご存じと思います。関節が緩やかで、筋肉や靭帯も柔らかいので可動範囲が大きいです。小さな鎖骨は靭帯で強固に繋がっておらず、人間でいうといつも肩が外れている状態です。そのため肩幅をとても小さくすることができ、身体で一番幅が広く調整不可能な頭より大きな空間は自由に通りぬけることができます。猫は、京都の老舗以上に柔軟性の権化なのです。何事においても猫は師匠と崇めておりますが、新型コロナウイルスへの対応も完了しているようです。あらためて入門します。弟子にしてください。

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