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Sepsis-3の予後予測に最適な指標について(解説:小林 英夫 氏)-638

 本論文は、オセアニア地域の18万例以上のデータベースを用いた後方視的コホート研究で、結論は、感染症疑いで集中治療室(ICU)に入院した症例の院内死亡予測には「連続臓器不全評価(SOFA)スコア2点以上」が、全身性炎症反応症候群(SIRS)診断基準や迅速SOFA(qSOFA)スコアよりも有用、となっている。この研究背景は、集中治療以外の医師にとっては、ややなじみにくいかもしれないので概説する。 敗血症(Sepsis)の定義が、2016年にSepsis-3として改訂された。Sepsisは病態・症候群であり決定的診断基準が確立していないため、研究の進歩とともにその基準が改定される。SIRSという過剰炎症に引き続き、代償性抗炎症反応症候群(CARS)という免疫抑制状態が生じるなど、敗血症ではより複雑多様な変化が生じていることから、その視点を臓器障害に向ける必要性が指摘された。Sepsis-3は、15年ぶりの改定で従来と大きく変化している。その新定義は「感染症に対する制御不十分な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」となった。1991年のSepsis-1の定義「感染によって生じたSIRS」とは大きく変化した。定義の変更は診断基準の変更を伴い、ICUにおいては「SOFAスコア計2点以上」がSepsis-3で導入された。SOFAスコアとは、呼吸・凝固・肝・血圧・中枢神経・腎の6項目を各々5段階評価し、合計点で評価する手法である。Sepsis-3は、菌血症やSIRSの有無が条件から消え、より重症度が高い患者集団すなわち旧基準の重症敗血症に限定されている。 さらに、Sepsis-3ではICUとICU以外の診断手順が異なる。ICU以外では検査やモニタリングをせずとも、ベッドサイドの観察だけで判定可能なqSOFAがスクリーニングツールに導入された。スコア2つ以上でSepsis疑いとなり、引き続きSOFAスコア評価を実施することとなる(qSOFAは、呼吸数22回/分以上、収縮期血圧100mmHg以下、意識障害(GCS<15)で規定される)。この診断特異度は低いものの、外来やベッドサイドでのSepsis-3疑い検出には簡便で、多方面での普及が望まれる。なお、本論文に直接関わらないが、Septic shockとは「死亡率を増加させるのに十分に重篤な循環、細胞、代謝の異常を有する敗血症のサブセット」で、適切な輸液負荷にもかかわらず平均血圧65mmHg以上を維持するための循環薬を必要とし、かつ血清乳酸値の2mmol/L以上、と定義されている。 以上の背景を鑑みれば、文頭に記述した本論文の結論は予測された内容であろう。注意点として、Sepsisには絶対的指標がないため、Sepsis-3診断基準が何をみているのかを常に念頭に置く必要がある。また、院内死亡率は全死亡率なので死亡原因は時期によっても異なり、敗血症以外の死亡集団も含んでしまうことになるといった側面も指摘できよう。参考までに、日本集中治療医学会・日本救急医学会のホームページには日本版敗血症診療ガイドライン2016が、JAMA誌2017年1月19日号にはManagement of Sepsis and Septic Shockが公表されている。参考Howell MD, et al. JAMA. 2017 Jan 19.[Epub ahead of print]日本版敗血症診療ガイドライン2016(日本集中治療医学会/日本救急医学会)PDF

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救急での死亡予測に有用な敗血症の新規国際基準/JAMA

 感染症が疑われる救急部門受診患者に対して、迅速連続臓器不全評価(qSOFA)スコアの使用は、全身性炎症反応症候群(SIRS)基準や重症敗血症基準と比較して、院内死亡の予測能に優れることが、フランス・パリ第6大学のYonathan Freund氏らによる国際前向きコホート試験の結果、示された。著者は、「所見は、最近新たに定義された敗血症敗血症性ショックの国際基準Sepsis-3の、救急部門での使用を支持するものであった」とまとめている。Sepsis-3では、高死亡リスクの患者を識別するためSIRS基準に代わってqSOFAスコアを使用することが推奨されている。しかし、この新基準については前向きな確認が行われていない臨床設定があり、救急部門で付加価値をもたらすのかは不明であった。JAMA誌2017年1月17日号掲載の報告。院内死亡を、qSOFA、SOFA、SIRSを用いて評価 qSOFAの死亡予測を前向きに確認し、敗血症の新たな基準と既存の基準の有用性を比較する試験は、2016年5~6月に、フランス、スペイン、ベルギー、スイスの計30の救急部門で被験者を登録して行われた。4週の期間中に感染症が疑われ救急部門を受診した連続患者について、敗血症の既存および新定義の検体をすべて集め、退院または死亡まで追跡した。 主要評価項目は院内死亡で、qSOFA、SOFA、SIRSを用いて評価した。qSOFAの予測能、SIRS基準と重症敗血症基準より優れる 1,088例がスクリーニングを受け、879例が解析に包含された。年齢中央値は67歳(四分位範囲:47~81歳)、女性が47%、また379例(43%)が呼吸器感染症であった。 結果、院内全死亡率は8%であった。qSOFAスコア2点未満の院内死亡率は3%に対し、同2点以上は24%で、両スコアによる院内死亡率の絶対差は21%(95%信頼区間[CI]:15~26%)であった。 qSOFAスコアの院内死亡率の予測能は、SIRS基準および重症敗血症基準よりも優れていた。受信者動作特性曲線下面積(AUROC)は、qSOFAスコア0.80(95%CI:0.74~0.85)に対し、SIRS基準および重症敗血症基準はいずれも0.65(95%CI:0.59~0.70)で、有意差が認められた(p<0.001、増分AUROC:0.15[95%CI:0.09~0.22])。 qSOFAスコア2点以上の院内死亡との関連ハザード比は6.2(95%CI:3.8~10.3)であった。これに対して重症敗血症基準は3.5(95%CI:2.2~5.5)であった。

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感染症疑いICU患者の院内死亡予測能に優れる指標とは/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した感染症が疑われる成人患者について、院内死亡やICU入室(LOS)が3日以上などのアウトカムの識別能は、連続(敗血症関連)臓器不全評価(SOFA)スコアの2点以上増加の指標が、全身性炎症反応症候群(SIRS)基準スコア2以上や迅速SOFA(qSOFA)2点以上の指標に比べて、予後の正確さが有意に高いことが明らかになった。オーストラリア・アルフレッド病院のEamon P Raith氏らが、感染症によるICU入室患者18万4,875例を対象とした後ろ向きコホート解析により明らかにし、JAMA誌2017年1月17日号で発表した。ICU182ヵ所の感染症疑い入室患者について、AUROCで識別能を評価 研究グループは2000~15年に、オーストラリアとニュージーランドの182ヵ所のICUに、感染症の主診断で入室した患者18万4,875例を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。入室24時間以内のSOFAスコアの2点以上増加、SIRS基準スコアが2以上、qSOFAスコアが2点以上の、アウトカムに対する識別能の優劣を検証した。識別能については、受信者動作特性曲線下面積(AUROC)で評価した。 主要評価項目は、院内死亡だった。副次的評価項目は、院内死亡または3日以上のICU入室の複合エンドポイントだった。院内死亡またはICU入室3日以上もSOFAが高い識別能 被験者の平均年齢は62.9歳(標準偏差:17.4)、女性被験者は8万2,540例(44.6%)で、最も多い診断名は細菌性肺炎で3万2,634例(17.7%)だった。 結果、院内死亡は3万4,578例(18.7%)で、同死亡または3日以上のICU入室は10万2,976例(55.7%)だった。SOFAスコアが2点以上増加した人の割合は90.1%、SIRS基準スコアが2以上は86.7%、qSOFAスコアが2点以上は54.4%だった。 院内死亡の識別能に関するAUROCは、SIRS基準が0.589、qSOFAスコアが0.607に対し、SOFAスコアは0.753と有意に高かった(p<0.001)。 院内死亡または3日以上のICU入室に関する識別能も、SIRS基準が0.609、qSOFAスコアが0.606に対し、SOFAスコアは0.736と有意に高かった(p<0.001)。 著者は、「結果は、ICU入室患者の死亡予測の有用性について、SIRS基準とqSOFAは限定的であることを示すものだった」と述べている。

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高リスク抜管後患者への高流量酸素療法、NIVに非劣性/JAMA

 高リスクの抜管後患者に対する高流量鼻カニューレ酸素療法は、再挿管および呼吸不全の予防に関して非侵襲的人工呼吸器療法(NIV)に非劣性であることが、スペイン・Hospital Virgen de la SaludのGonzalo Hernandez氏らが行った3施設604例対象の多施設共同無作為化試験の結果、示された。両療法とも再挿管の必要性を減じるが、高流量鼻カニューレ酸素療法のほうが、快適性、利便性、低コスト、付加的な生理学的機構の面で優っていた。今回の結果を踏まえて著者は、「高リスクの抜管後患者には、高流量鼻カニューレ酸素療法のほうが有益のようだ」とまとめている。JAMA誌オンライン版2016年10月5日号掲載の報告。抜管後72時間以内の再挿管および呼吸不全を評価 試験は、スペインの3ヵ所のICUで2012年9月~2014年10月にかけて行われた。クリティカルな疾患を有し、計画的な抜管の準備ができており、以下のうち1つ以上の高リスク因子を有する患者を対象とした。すなわち、65歳以上、抜管日のAPACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)スコアが12超、BMIが30超、分泌物の管理不十分、ウィーニング困難または遷延、1つ以上の併存疾患あり、人工呼吸器装着の主要指標としての心不全、中等症~重症のCOPD、気道開存に問題、長期人口呼吸器(PMV)であった。 患者は抜管後24時間以内に、高流量鼻カニューレ酸素療法またはNIVを受ける群に、無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、抜管後72時間以内の再挿管および呼吸不全の発生で、非劣性マージンは10%と定義された。副次アウトカムは、呼吸器感染症、敗血症、多臓器不全、ICU入室の長期化、死亡、有害事象および再挿管までの時間などであった。高流量酸素のNIVに対する非劣性を確認 604例(平均年齢65±16歳、男性64%)が無作為に、NIV群(314例)、高流量酸素群(209例)に割り付けられた。 結果、再挿管を必要としなかった患者は、高流量酸素群66例(22.8%)、NIV群60例(19.1%)であった(絶対差:-3.7%、95%信頼区間[CI]:-9.1~∞)。また、抜管後呼吸不全を呈した患者は、それぞれ78例(26.9%)、125例(39.8%)であった(リスク差:12.9%、95%CI:6.6~∞)。 再挿管までの時間中央値について、両群間で有意差は認められなかった。高流量酸素群26.5時間(IQR:14~39)、NIV群21.5時間(10~47)であった(絶対差:-5時間、95%CI:-34~24)。 無作為化後のICU入室期間中央値は、3日間(IQR:2~7) vs.4日間(2~9)で、高流量酸素群が短かった(p=0.48)。 割り付け療法の中断を要した有害事象の発生は、高流量酸素群では観察されなかったが、NIVでは42.9%観察された(p<0.001)。

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ショック未発症の重症敗血症にヒドロコルチゾンは有用か/JAMA

 ショックを発症していない重症敗血症患者に対し、ヒドロコルチゾンを用いた補助療法を行っても、2週間以内の敗血症性ショック発症リスクは減少しないことが示された。集中治療室(ICU)内および院内死亡リスクや、180日時点の死亡リスクについても減少しなかった。ドイツ・シャリテ大学のDidier Keh氏らが、380例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、「検討の結果は、ショック未発症の重症敗血症患者に対するヒドロコルチゾン補助療法の適用を支持しないものだった」とまとめている。同療法は「Surviving Sepsis Campaign」において、難治性敗血症性ショックに対してのみ推奨されており、ショック未発症の重症敗血症に対する同療法については議論の的となっていた。JAMA誌オンライン版2016年10月3日号掲載の報告。14日以内の敗血症性ショックを比較 研究グループは、2009年1月13日~2013年8月27日にかけて、ドイツ国内34ヵ所の医療機関を通じて、重症敗血症敗血症性ショック未発症の成人380例について、無作為化二重盲検試験を開始した。追跡期間は180日間で、2014年2月23日まで行った。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(190例)にはヒドロコルチゾン200mgを5日間注入し、11日目までに徐々に減量・中止し、もう一方の群(190例)にはプラセボを投与した。 主要評価項目は、14日以内の敗血症性ショック。副次的評価項目は、同ショック発症までの期間、ICU内または院内の死亡率、180日死亡率、2次感染症発症率、ウィーニング失敗、筋力低下の発生率、高血糖症(血糖値>150mg/dL)発症率などだった。敗血症ショック発症率は、いずれの群も21~23% ITT(intention-to-treat)解析対象者は353例。平均年齢65.0歳、男性が64.9%だった。 敗血症性ショックの発症率は、ヒドロコルチゾン群が21.2%(36/170例)で、プラセボ群が22.9%(39/170例)と、両群で同等だった(群間差:-1.8%、95%信頼区間[CI]:-10.7~7.2、p=0.70)。 敗血症性ショック発症までの期間やICU内・院内死亡率も、有意差はみられなかった。28日死亡率は、ヒドロコルチゾン群8.8%、プラセボ群8.2%(差:0.5%、95%CI:-5.6~6.7、p=0.86)、90日死亡率はそれぞれ19.9%と16.7%(3.2%、-5.1~11.4、p=0.44)、180日死亡率は26.8%と22.2%(4.6%、-4.6~13.7、p=0.32)と、いずれも同等だった。 2次感染の発症率は、ヒドロコルチゾン群21.5% vs.プラセボ群16.9%、ウィーニング失敗は8.6% vs.8.5%、筋力低下30.7% vs.23.8%、高血糖症90.9% vs.81.5%だった。

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アジスロマイシン追加で緊急帝王切開の母体感染リスク低減/NEJM

 緊急帝王切開時の標準的な予防的抗菌薬投与に、抗菌スペクトルを拡大するためにアジスロマイシンを追加すると、術後の母体の感染リスクが低減することが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のAlan T N Tita氏らが行ったC/SOAP試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年9月29日号に掲載された。米国では、妊娠関連感染症は母親の死因の第4位を占めており、母体感染は入院期間を延長し、医療費を増加させる。帝王切開は最もよく行われる手術手技であり、子宮内膜炎や創感染を含む手術部位感染率は経膣分娩の5~10倍に達するという。2,000例以上の妊婦のプラセボ対照無作為化試験 C/SOAPは、緊急帝王切開を受ける女性において、標準的な予防的抗菌薬投与に、抗菌スペクトラムを拡大するためにアジスロマイシンを併用するアプローチの有用性を評価するプラグマティックな二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Eunice Kennedy Shriver米国国立小児保健発達研究所の助成による)。 対象は、妊娠24週以降の単胎妊娠で、分娩時または破水後に緊急帝王切開が施行された女性であった。 被験者は、アジスロマイシン500mgを静脈内投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。すべての妊婦が、各施設のプロトコルに従って、切開の前または切開後可及的速やかに、標準的な予防的抗菌薬投与(セファゾリン)を受けた。 主要アウトカムは、術後6週以内に発生した子宮内膜炎、創感染、その他の感染症(腹腔または骨盤内膿瘍、敗血症、血栓性静脈炎、腎盂腎炎、肺炎、髄膜炎)であった。 2011年4月~2014年11月に、米国の14施設に2,013例の妊婦が登録され、アジスロマイシン群に1,019例、プラセボ群には994例が割り付けられた。主要アウトカムがほぼ半減、新生児の有害なアウトカムは増加せず 平均年齢は、アジスロマイシン群が28.2±6.1歳、プラセボ群は28.4±6.5歳であった。妊娠中の喫煙者がアジスロマイシン群でわずかに少なかった(9.5 vs.12.3%)が、これ以外の背景因子は両群で類似していた。帝王切開の手技関連の因子にも両群に差はなかった。 主要アウトカムの発生率は、アジスロマイシン群が6.1%(62/1,019例)と、プラセボ群の12.0%(119/994例)に比べ有意に良好であった(相対リスク[RR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.38~0.68、p<0.001)。 子宮内膜炎(3.8 vs.6.1%、RR:0.62、95%CI:0.42~0.92、p=0.02)および創感染(2.4 vs.6.6%、0.35、0.22~0.56、p<0.001)では有意な差が認められ、その他の感染症(0.3 vs.0.6%、0.49、0.12~1.94、p=0.34)には差はみられなかった。 副次複合アウトカムである新生児の死亡および合併症の発生率は、アジスロマイシン群が14.3%(146/1,019例)、プラセボ群は13.6%(135/994例)であり、差を認めなかった(RR:1.05、95%CI:0.85~1.31、p=0.63)。 母体の重篤な有害事象の発現率は、アジスロマイシン群が有意に低く(1.5 vs.2.9%、RR:0.50、95%CI:0.27~0.94、p=0.03)、新生児の重篤な有害事象には差がなかった(0.7 vs.0.5%、1.37、0.43~4.29、p=0.77)。 著者は、「抗菌スペクトラムの拡大を目的とするアジスロマイシンの追加により、新生児の有害なアウトカムを増加させることなく、母体の感染症が低減し、医療リソースの使用が抑制された」としている。

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敗血症性ショックへのバソプレシンの腎不全改善効果は?/JAMA

 敗血症性ショック患者に対する昇圧薬の1次治療では、バソプレシンの腎不全の改善効果はノルエピネフリンを上回らないことが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnthony C Gordon氏らが実施したVANISH試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年8月2日号に掲載された。敗血症性ショックには感染症治療に加え輸液および昇圧薬の投与が行われる。米国では昇圧薬の1次治療はノルエピネフリンが推奨されているが、バソプレシンは糸球体濾過量の維持や、クレアチニンクリアランスの改善の効果がより高いことが示唆されている。腎不全への効果を無作為化要因(2×2)試験で評価 VANISH試験は、敗血症性ショック患者において、バソプレシンとノルエピネフリンの早期投与による腎不全への有効性を比較する二重盲検無作為化要因(2×2)試験(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 対象は、年齢16歳以上、発症後6時間以内に初期蘇生輸液を行ったものの昇圧薬の投与を要する病態を呈する敗血症性ショックの患者であった。 被験者は、バソプレシン(最大0.06U/分まで漸増)+ヒドロコルチゾン、バソプレシン+プラセボ、ノルエピネフリン(最大12μg/分まで漸増)+ヒドロコルチゾン、ノルエピネフリン+プラセボを投与する4つの群に無作為に割り付けられた。目標平均動脈圧(MAP)は65~75mmHgが推奨された。 主要評価項目は、割り付け後28日間の腎不全(AKIN基準ステージ3)のない日とし、(1)腎不全が発現しない患者の割合、および(2)死亡、腎不全あるいはその双方が発現した患者の生存または腎不全のない日数(中央値)の評価を行った。より大規模な試験で検証を 2013年2月~2015年5月までに、英国の18の集中治療室(ICU)に409例が登録された。全体の年齢中央値は66歳、男性が58.2%を占め、ショックの診断から昇圧薬の投与までの期間中央値は3.5時間だった。 腎不全がみられない生存者の割合は、バソプレシン群が57.0%(94/165例)ノルエピネフリン群は59.2%(93/157例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:-2.3%、95%信頼区間[CI]:-13.0~8.5%)。 死亡、腎不全あるいはその双方が発現した患者における腎不全のない日数中央値は、バソプレシン群が9日(IQR:1~24)、ノルエピネフリン群は13日(IQR:1~25)であり、有意な差はみられなかった(群間差:-4日、95%CI:-11~5日)。 腎代替療法の導入率は、バソプレシン群が25.4%と、ノルエピネフリン群の35.3%に比べ有意に低かった(群間差:-9.9%、95%CI:-19.3~−0.6%)。 28日死亡率は、バソプレシン群が30.9%(63/204例)、ノルエピネフリン群は27.5(56/204例)であり、有意な差はなかった(群間差:3.4%、95%CI:-5.4~12.3%)。 また、重篤な有害事象の発現率は、バソプレシン群が10.7%(22/205例)、ノルエピネフリン群は8.3%(17/204例)であり、有意差はなかった(群間差:2.5%、95%CI:-3.3~8.2%)。 著者は、「これらの知見は、ノルエピネフリンの代替としてバソプレシンを使用することを支持しないが、95%CIの範囲はバソプレシンが臨床的に意味のあるベネフィットをもたらす可能性を含んでおり、より大規模な試験での検証を要すると考えられる」と指摘している。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q35

Q35 急性前立腺炎を疑って治療を開始する際に、前立腺炎への移行性を考慮してフルオロキノロンで治療を開始するべきですか? 「急性」前立腺炎であれば、基本的に移行性について考慮する必要はありません。大腸菌のフルオロキノロン耐性割合の多さを考えると、初期治療としてフルオロキノロン単剤治療は勧められるものではありません。 「臓器移行性」という言葉は一人歩きしやすいキーワードです。抗菌薬選択の際に考慮するべき要素ではありますが、それだけで決まるものではありません。前立腺は炎症がない状態では組織内へ移行する抗菌薬が限られていますが、急性炎症の存在下ではほとんどの抗菌薬が移行します1)。ですので、「急性」前立腺炎の初期治療を考えるうえでは臓器移行性はことさら考慮する必要はなく、地域や施設での耐性菌状況に応じて選択するべきだと思います。2014年のJANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)のデータでは、レボフロキサシンに耐性を示す大腸菌の割合は36.1%でした2)。「移行性」だけで抗菌薬を選択すると失敗しかねません。初期治療としてはセフトリアキソンやセフタジジムといった第3世代のセファロスポリン(後者は院内発症で緑膿菌を考慮する場合)を選択することが多いです。敗血症性ショックでESBL産生菌まで外せない場合は初期治療としてカルバペネムを使用するのも妥当だと思います(感受性検査判明後にde-escalationします)。これに対して「慢性」前立腺炎は組織の炎症が乏しいため、組織内に移行する抗菌薬は限られます。耐性がなければフルオロキノロンが良い選択薬になります。フルオロキノロンに耐性がある場合は、ST合剤やテトラサイクリン系抗菌薬が移行性の観点からは使用可能です1)。 1)Lipsky BA, et al. Clin Infect Dis. 2010;50:1641-1652.2)公開情報 2014年1月~12月年報 院内感染対策サーベイランス検査部門.厚生労働省 院内感染対策サーベイランス事業.(参照 2016.6.20)

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再挿管リスク、ネーザルハイフロー vs.従来酸素療法/JAMA

 抜管後の酸素療法について、再挿管リスクが低い患者ではネーザルハイフロー療法が従来酸素療法よりも、72時間以内の再挿管リスクが有意に低下したことが、スペイン、ビルヘン・デ・ラ・サルード病院のGonzalo Hernandez氏らによる多施設共同無作為化試験の結果、示された。これまでに、再挿管リスクの高低を問わない機械的人工換気療法を受ける重篤疾患患者の試験で、抜管後のネーザルハイフロー療法が従来酸素療法よりも酸素化を改善することは示されていた。しかし、再挿管リスクに関するデータはなかった。JAMA誌オンライン版2016年3月15日号掲載の報告。再挿管低リスクの527例を対象に無作為化試験 研究グループは、再挿管リスクが低い機械的人工換気療法を受ける患者の再挿管の回避について、ネーザルハイフロー療法のほうが従来酸素療法よりも優れるか否かを調べる検討を行った。 試験は2012年9月~14年10月に、スペイン国内7つのICUで行われた。対象は、成人重篤患者で、計画的抜管に関する基準を完全に満たし再挿管リスクが低いと判定された527例であった。低リスク判定の定義は、「65歳未満」「抜管日のAPACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)IIスコアが12未満」「BMI 30未満」「気道分泌物調節能あり」「離脱が容易に施行」「併存疾患0もしくは1」「心不全なし」「中等症~重症のCOPDなし」「気道開存性の問題なし」「機械的人工換気の施行期間が非長期(7日以内)」であった。 患者は、抜管後24時間、ネーザルハイフロー療法もしくは従来酸素療法を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、抜管後72時間以内の再挿管で、Cochran-Mantel-Haenszel χ2検定法を用いて比較した。副次アウトカムは、抜管後の呼吸不全、呼吸器感染症、敗血症、多臓器不全、ICU入室および入院期間、死亡、有害事象、再挿管までの時間などであった。再挿管の発生、ハイフロー群4.9%、従来群12.2% 被験者527例は、平均年齢51(範囲:18~64)歳、男性62%であった。264例がネーザルハイフロー療法を受け(ハイフロー群)、263例が従来酸素療法を受けた(従来群)。 結果、抜管後72時間以内の再挿管の発生頻度は、ハイフロー群で有意に低かった。ハイフロー群13例(4.9%) vs.従来群32例(12.2%)で、絶対差は7.2%(95%信頼区間[CI]:2.5~12.2%、p=0.004)であった。 抜管後呼吸不全の発生は、ハイフロー群で低かった。ハイフロー群22/264例(8.3%) vs.従来群38/263例(14.4%)で、絶対差は6.1%(95%CI:0.7~11.6%、p=0.03)であった。 再挿管までの時間は、両群で有意差はなかった。ハイフロー群19時間(四分位範囲:12~28) vs.従来群15時間(9~31)で、絶対差は-4(95%CI:-54~46、p=0.66)であった。 有害事象の報告はなかった。

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敗血症患者のICUでの2次感染、死亡への影響は?/JAMA

 ICUでの2次感染は、重症度が高い敗血症入室患者でより多く発生していたが、全死亡に対する寄与はごくわずかであることが、オランダ・アムステルダム大学のLonneke A. van Vught氏らが、Molecular Diagnosis and Risk Strati- fication of Sepsis(MARS)プロジェクトの一部として行った前向き観察研究の結果、示された。なお、敗血症患者のゲノム応答を調べたところ、免疫抑制は2次感染発症時に起きたことを示すものであったという。これまで、敗血症は免疫抑制を引き起こし、2次感染と死亡との関連感度を高めるのではないかと考えられていた。JAMA誌オンライン版2016年3月15日号掲載の報告。ICUへの敗血症入室約1,700件、非感染症入室約1,900件を解析 研究グループは、2011年1月~13年7月、オランダ2施設のICUに連続48時間以上入室した患者を対象に、前向き観察研究を行った。患者は、入室時の診断によって敗血症入室と非感染症入室に層別化され、解析対象は敗血症入室1,719件(1,504例、年齢中央値62歳、四分位範囲[IQR]:51~71歳、男性924例[61.4%])、非感染症入室1,921件(1,825例、年齢中央値62歳、IQR 49~71歳、男性1,128例[61.8%])であった。 主要評価項目は、ICU入室48時間以降に発症したICUでの2次感染(ICU内感染)で、time-to-eventモデルを用いて寄与死亡割合(リスク因子やICU内感染を排除することで予防されうる死亡の割合)を算出した。 また、一部の敗血症入室例(461件)について、血中遺伝子発現の分析(白血球の全ゲノムトランスクリプトーム)を、ベースラインとICU内感染発症時、および急性心筋梗塞などの非感染性イベント発症時に行った。ICUでの2次感染、重症敗血症患者で多いが全死亡への寄与はわずか ICU内感染を発症したのは、敗血症入室群13.5%(232件)、非感染症入室群15.1%(291件)であった。 敗血症入室群について、ICU内感染発症患者の疾患重症度スコアは、非発症患者と比べてICU入室期間を通して高かった(APACHE IV スコア中央値:90 [IQR:72~107] vs.79 [62~98]、p<0.001)。しかし、両者のベースラインでの遺伝子発現に違いはみられなかった。 60日目までの敗血症入室患者におけるICU内感染の人口寄与死亡割合は10.9%(95%CI:0.9~20.6%)であった。また、敗血症入室全患者の死亡とICU内非感染患者の死亡との差は2.0%と推定された(95%CI:0.2~3.8%)。 一方、非感染症(非敗血症)入室群について、60日目までのICU内感染の人口寄与死亡割合は21.1%であった(95%CI:0.6~41.7%)。 敗血症入室群について行った遺伝子発現の分析の結果、ベースラインと比較しICU内感染発症時において、糖新生や解糖に関連する遺伝子発現の低下が認められた。

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抗PD-L1抗体atezolizumab、既治療NSCLCのOS延長/Lancet

 既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、新規免疫チェックポイント阻害薬atezolizumabは、ドセタキセル(商品名:タキソテールほか)に比べ予後が良好であることが、米国・カイザーパーマネンテ医療センターのLouis Fehrenbacher氏らが行ったPOPLAR試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年3月9日号に掲載された。ニボルマブやペムブロリズマブがT細胞上のPD-1を標的とするのに対し、atezolizumabは腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞上に発現しているPD-L1(PD-1のリガンド)に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体で、T細胞上のPD-1だけでなくB7.1(CD80)との結合を阻害する。それゆえ、T細胞活性化阻害作用の抑制効果が抗PD-1抗体よりも高い可能性があり、またPD-L2とPD-1の相互作用には影響しないことから、免疫系の恒常性への影響を回避できると考えられている。ドセタキセルと比較する無作為化第II相試験 POPLAR試験は、既治療のNSCLC患者においてatezolizumabとドセタキセルの有用性を比較し、PD-L1発現レベルを評価する非盲検無作為化第II相試験(F Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、プラチナ製剤による化学療法後に病勢が進行したNSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、測定可能病変(RECIST ver.1.1)を有する患者であった。 被験者は、腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1の状態、組織型、前治療レジメン数で層別化され、atezolizumab(1,200mg、静脈内投与)またはドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群に無作為に割り付けられた。 免疫組織化学(IHC)検査に基づき、腫瘍細胞上のPD-L1(TC3:≧50%、TC2:5~50%、TC1:1~5%、TC0:<1%)および腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1(IC3:≧10%、IC2:5~10%、IC1:1~5%、IC0:<1%)をスコア化した。 主要評価項目は全生存期間(OS)とし、探索的解析としてバイオマーカーの評価を行った。 2013年8月5日~14年3月31日までに、13ヵ国61施設に287例が登録された。atezolizumab群に144例、ドセタキセル群には143例が割り付けられ、それぞれ142例、135例が1回以上の投与を受けた。OS中央値:約3ヵ月延長、PD-L1発現率が高いほど良好 年齢中央値は両群とも62歳、男性はatezolizumab群が65%、ドセタキセル群は53%であり、喫煙者/元喫煙者がそれぞれ81%、80%、前治療レジメン数は1が65%、67%、2が35%、33%だった。 OS中央値はatezolizumab群が12.6ヵ月であり、ドセタキセル群の9.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.53~0.99、p=0.04)。 また、OS中央値はPD-L1の発現率が高い患者ほど良好であった(TC3またはIC3=HR:0.49[0.22~1.07]、p=0.068/TC2/3またはIC2/3=HR:0.54[0.33~0.89]、p=0.014/TC1/2/3またはIC1/2/3=HR:0.59[0.40~0.85]、p=0.005/TC0およびIC0=HR:1.04[0.62~1.75]、p=0.871)。 既存免疫(エフェクターT細胞およびインターフェロン-γの関連遺伝子発現≧中央値で定義)を有する患者の探索的解析では、atezolizumab群のOS中央値が有意に改善された(HR:0.43、95%CI:0.24~0.77)。 atezolizumab群で頻度の高い全原因有害事象として、食欲減退、呼吸困難、悪心、下痢、発熱などが認められ、免疫関連有害事象としてAST上昇(4%)、ALT上昇(4%)、肺臓炎(3%)、腸炎(1%)、肝炎(1%)がみられた。 治療関連有害事象の発現率は、atezolizumab群が67%、ドセタキセル群は88%であった。有害事象による治療中止は、atezolizumab群が8%(11例)、ドセタキセル群は22%(30例)、Grade 3/4の治療関連有害事象はそれぞれ11%(16例)、39%(52例)であり、atezolizumab群で少なかった。治療関連死はatezolizumab群が<1%(1例:心不全)、ドセタキセル群は2%(3例:敗血症、急性呼吸窮迫症候群、原因不明)だった。 著者は、「atezolizumabはドセタキセルに比べ既治療のNSCLC患者の予後を改善した」とまとめ、「PD-L1の発現は、atezolizumabのベネフィットを予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆される」と指摘している。

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電極リードも不要、ジェネレーター用の皮下ポケットも不要。近未来のリードレスペースメーカ(解説:矢崎 義直 氏)-498

 ペースメーカが、初めて人体に植込まれてから50年以上もの月日が経つ。現在に至るまで、安全性に関してさまざまな改良がなされてきたが、電極リードを経静脈的に挿入する従来のペースメーカにおける合併症の発生率は、10%前後といまだ高い。そのほとんどが、電極リードやジェネレーター用の皮下ポケットに関連するものである。 これらデバイスの感染は、とくに敗血症などの致命的な合併症へと進展する可能性があり、細心の注意が必要だが、経皮的に皮下、静脈内、心腔内に異物を留置する限り、デバイス感染は一定の確率で起こる。よって、“リードレス”ペースメーカは、まさに循環器医が切望してきたデバイスである。ペースメーカの小型化が進み、すべてが心腔内のみに収まる、体積わずか0.8cm3、重さ2gのジェネレーターと電極が一体型のデバイスが開発され、ついに、リードレスペースメーカの時代が訪れた。 リードレスペースメーカは、大腿静脈経由でデリバリー用カテーテルを用いて右室心尖部に4本のタインにて固定される。レートレスポンス等の機能が備わり、電池寿命も10年前後と従来のペースメーカ機能と遜色ない。 本試験は、多施設共同の前向き研究で、リードレスペースメーカ植込みの安全性と効果を検討した。対象は、恒久的ペースメーカ(VVIモード)植込みの適応となる725症例である。対象年齢は19~94歳と幅は広いが、平均76歳と多くは高齢者であり、約70%が心房細動症例などであるという患者背景をみると、リアルワールドに近いVVI適応群が対象となっている。 本試験は初期のラーニングカーブを含んでいるにもかかわらず、植込み成功率が99.2%と高い。今までにない新しいデバイス植込みの方法ではあるが、従来の植込みより際立って難しい手技ではないといえる。安全性に関しては、従来型ペースメーカの6つの既報の臨床試験から2,667例をコントロール群として、比較している。安全性の1次エンドポイントは、死亡、デバイス機能の停止、再入院、入院の延長に関与した有害事象の発生である。 従来のペースメーカで懸念されるリードやポケットのトラブルの心配もなく、有害事象の発生率は、全体の4%と経静脈的ペースメーカと比較すると有意に少ない。合併症のうち、唯一、心臓穿孔を1.6%に生じており、有意差はないもののコントロール1.1%と比較して多かった。 デリバリー用のカテーテルの外径が27Frとかなり太く、操作には注意が必要である。とくに日本人は欧米人と比較して体格が小さく、サイズが問題となる場合もあるが、本試験の対象患者の身長、体重はともに幅広く、比較的体格の小さな症例も多く含まれている。 治療効果の1次エンドポイントは、植込みから半年後のデバイスチェックでペーシング閾値が低く(0.24msecで2.0V未満)、安定した(閾値上昇が1.5V以内)症例の割合を評価した。症例297例のうち、98.3%の症例が6ヵ月後のペースメーカチェックにてエンドポイントの条件を満たした。全症例で、デバイスの位置移動や脱落はなく、植込み後6ヵ月を通して、閾値や感度、抵抗値の変動はみられず、非常に安定したペースメーカ機能を保っていた。 本試験は、従来のペースメーカと無作為割り付けされた試験ではないので強くはいえないが、リードレスペースメーカは、より安全に植込むことが可能であり、安定したペーシング機能が期待できそうである。本デバイスは、まだシングルチャンバーのみで、適応に制限はあるが、デュアルチャンバーやICDとの連携システムも開発中であり、今後、リードレスがペースメーカの主流になる日も近いかもしれない。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q31

Q31 妊婦の無症候性細菌尿はスクリーニングするべきですか? 日本国内のガイドラインには記載がなく、最近の研究結果では先進国でのルーチンのスクリーニングの有効性には疑問が持たれています。 2005年の米国感染症学会のガイドラインでは、妊娠早期に尿培養を用いて細菌尿をスクリーニングし、陽性なら治療すべきだと推奨されています1)。コクランレビューによれば、妊婦の無症候性細菌尿に対する治療は、腎盂腎炎の発症リスク低下(リスク比0.23、95%信頼区間0.13~0.41)37週未満の早産リスク低下(リスク比0.27、95%信頼区間0.11~0.62)2,500g未満の低出生体重児出産のリスク低下(リスク比0.64、95%信頼区間0.45~0.93)といいことずくめです。しかし、日本の妊婦健診での尿検査は、尿糖と尿蛋白のチェックのみで、尿培養は妊婦健診でカバーされません。国内のガイドラインでは、言及すらされていません2)。こんなに効果のある介入をなぜ日本では行っていないのだろうか? と筆者は以前から疑問を持っていましたが、近年では妊婦の無症候性細菌尿のスクリーニングの有効性に疑問が持たれているようです。まず、前述のコクランレビューで解析対象になった研究は1960~70年代のものが多く、最も新しいものでも1987年のものです。腎盂腎炎の発症割合は単純計算で無症候性細菌尿に対する治療群:55/983=5.6%、対照群:197/949=20.8%と現代の感覚では少し高すぎるのではないか、という印象を持ちました。古い研究ですが、妊婦の無症候性細菌尿はsocioeconomic statusが低い人に多いようです3)。40~50年前とは生活環境が異なるであろうことを考えると、コクランレビューの結果をそのまま現代の日本の医療に当てはめるのは無理があるかもしれません。一方で、近年、妊娠中の抗菌薬曝露による小児てんかんの増加の可能性4)や脳性麻痺のリスクの増加の可能性5)、耐性菌による新生児早期敗血症のリスク増加の可能性6)など妊娠中の抗菌薬投与のデメリットも報告されるようになりました。抗菌薬使用に伴う耐性菌増加の問題もあります7)。こうした背景から、妊婦に対する無症候性細菌尿スクリーニングを行っていない国の1つだったオランダで2011~2013年に前向きコホート研究およびランダム化比較試験(RCT)が行われました8)。5,621人のコホート中、5,132人がスクリーニング対象であり、4,283人が本コホートに残りました。248人(5.8%)に無症候性細菌尿があり、40人がニトロフラントイン、45人がプラセボにランダムに割り付けられ、RCTに参加しなかった残りの163人は治療せずにフォローアップされました。コホート研究の結果では、細菌尿陽性で治療なし群と細菌尿陰性群を比較すると、プライマリアウトカム(腎盂腎炎+早産の複合エンドポイント)で有意差はありませんでした。腎盂腎炎の発症についてはそれぞれ2.4%と0.6%で調整オッズ比3.9(95%信頼区間:1.4~11.4)と統計学的な有意差はありましたが、絶対リスク差は1.8%です。また、無症候性細菌尿陽性群と陰性群での出産までの期間もほぼ差がありませんでした8)。細菌尿陽性に対して治療ありと治療なしを比較したRCTの結果はプライマリアウトカム(腎盂腎炎+早産の複合エンドポイント)で有意差はありませんでした8)。プライマリアウトカムの発生が想定よりもかなり少なく、十分なサンプルサイズを確保できずに終了になりました。このため、新生児のアウトカムについて確定的なことはいえませんが、RCTへの参加を拒否した人が比較的多かったので、無症候性細菌尿を治療しなかった163人の転帰を評価することができ、このコホートでは、腎盂腎炎、早産の発生は高くありませんでした。さらに、腎盂腎炎が起きたとしても抗菌薬に感受性があったようです8)。無症候性細菌尿は腎盂腎炎の発症増加と有意に関連しましたが、治療しなかった無症候性細菌尿での腎盂腎炎発症の絶対リスクは小さく、妊婦の無症候性細菌尿をルーチンにスクリーニングして治療する方針に対して疑問を投げかけました。日本国内のデータは少ないですが、聖路加国際病院では、妊娠初期に尿定性・沈渣でスクリーニングを行ったところ、2004年の1年間で641例中、細菌陽性割合5.3%、白血球陽性割合8.6%でした。無症候性細菌尿陽性例をどれくらい治療したかについては記載がありませんが、期間中、入院を要する尿路感染症の発症はなく、無症候性細菌尿と早産、低出生体重児との関連性もみられませんでした9)。また、京都府立医科大学病院の報告では、2008~2013年の5年間で、分娩1,556例中、妊娠中の急性腎盂腎炎は6例(0.39%)でした。一般的な妊婦の腎盂腎炎発症割合の1~2%よりも低かったのは、無症候性細菌尿、急性膀胱炎の時点で治療しているからかもしれないと考察されていましたが、無症候性細菌尿と膀胱炎の発生頻度については記載がなく、どれくらいスクリーニングを行っていたかについても不明です10)。国内のデータは限られており、また症状のない人へ行うスクリーニングおよび治療ですので、費用対効果が優れるかどうかの検討も必要です。国内の一般的な医療機関における妊婦の無症候性細菌尿や膀胱炎、急性腎盂腎炎の発生率に関するデータが乏しいため、国内でスクリーニングをすべきかどうかについて答えは出せませんが、ガイドラインで言及すらされない現状は、ちょっとまずいのではないかと思います。(注意:症状のある膀胱炎の治療適応やB群溶連菌(GBS)のスクリーニングの適応とはまた別の話ですので混同しないようにご注意を) 1)Nicolle LE, et al. Clin Infect Dis. 2005;40:643-54.2)日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン―産科編 2014.3)TURCK M, et al. N Engl J Med. 1962;266:857-860.4)Miller JE, et al. Paediatr Perinat Epidemiol. 2012;26:589-595.5)Kenyon S, et al. Lancet. 2008;372:1319-1327.6)Wright AJ, et al. Pediatr Infect Dis J. 2012;31:1206-1208.7)Goossens H, et al. Lancet. 2005;365:579-587.8)Kazemier BM, et al. Lancet Infect Dis. 2015;15:1324-1333.9)藤田聡子, 佐藤孝道. 産婦人科治療. 2007; 95: 89-94.10)岩破一博. 日本化学療法学会雑誌. 2015; 63: 175-80.

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q30

Q30 ICUに入るような患者さんでどうしても中心静脈カテーテルを抜きたくなくても、フォーカスとして疑われた場合には抜くべきですか? 回答:カテーテル関連血流感染症(CRBSI)と診断した場合は、原則抜去するべきです。 IDSA(米国感染症学会)のガイドラインでは、とくにグラム陰性桿菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌、真菌、抗酸菌による短期的カテーテルのCRBSIではカテーテルを抜去するべきだと推奨されています1)。抜去しない限り、カテーテルに付着した微生物を除去することは困難で、治療失敗の原因になります。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が原因であれば、例外的に抗菌薬ロック療法を併用することによりカテーテルの温存ができることがありますが、手技が煩雑なこともあり、可能な限り抜去した方がよいと思います。カテーテル刺入部から排膿があったり、刺入部の発赤や圧痛がはっきりしていたりすれば、新しいカテーテルを別の部位から確保したうえで、感染しているカテーテルは速やかに抜去するべきです。排膿がある場合は、膿のグラム染色や培養提出も行うべきです2)。まだCRBSIと確定していない段階で熱源がはっきりしていない場合、「疑い」の段階で抜去するべきかどうかは悩ましいです。敗血症性ショック状態ではソースコントロールが大事になりますので、血管内カテーテルが感染源になっている可能性があるならば、可能な限り入れ替えたほうがよいです2)、3)。一方で、血行動態が安定していて、CRBSIかどうかはっきりしていない場合は、状態血液培養を2セット採取して、必要に応じて抗菌薬を開始しつつ、結果を待ってもよいと思います2)。培養結果を踏まえてCRBSIと診断した場合はカテーテルを抜去するべきだと思います。 1)Mermel LA, et al. Clin Infect Dis. 2009;49:1-45.2)O'Grady NP, et al. Crit Care Med. 2008;36:1330-1349.3)Dellinger RP, et al. Crit Care Med. 2013;41:580-637.

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Dr.林の笑劇的救急問答11 ショック編

第1回 低循環性ショック!「大量吐血の47歳男性」第2回 閉塞性ショック!「数日前から呼吸苦・動悸の80歳男性」第3回 心原性ショック!「呼吸苦を訴える67歳女性」第4回 分配性ショック!「造影CT実施中に咳込みと意識低下の30歳女性」 第11シーズン下巻は「ショック編」。ショック状態で患者が搬送!さあ、どう対応しますか?ショックは原因によって対応や処置が異なってきます。そのためにはまずは素早い診断が必要です。そう!慌てずに「サルも聴診器」。ショックを診断するために本当に必要なことをDr.林の目利きでお教えします。役に立たないものは、バッサリ切り捨てていきましょう。講師・研修医らが演じる爆笑症例ドラマもますますパワーアップ!笑って、泣いて、重要なポイントを身につけてください!第1回 低循環性ショック!「大量吐血の47歳男性」ショック編第1回は低循環性ショック!SHOCK INDEX、血圧、ATLSのショッククラス分類、US・・・など。ショックを診断するには、本当に何が有用なのか?役に立たないものに関しては、役に立たない!不要!と一刀両断!ほんとうに必要なことをDr.林の目利きでお教えします。第2回 閉塞性ショック!「数日前から呼吸苦・動悸の80歳男性」ショック編第2回は閉塞性ショックです。閉塞性ショックは、心臓へ戻る血液の流れが止まることによって起こるショックのことで、疑ってかからないと原因疾患を見逃してしまいがちです。代表的な原因疾患としては、緊張性気胸、心タンポナーデ、肺塞栓などがあげられます。今回は、心タンポナーデを中心に、その診断と治療について、詳しく解説します。身体所見と検査をうまく組み合わせて原因を検索していきましょう。(肺塞栓は、Season11心臓以外の胸痛編、緊張性気胸はSeason6(CareNeTVでは、Season1~6「第23回 気胸に絶叫!」)をご覧ください)第3回 心原性ショック!「呼吸苦を訴える67歳女性」急性心不全から起こる心原性ショックは、予後が悪いため、早めに原因を見つけ、その原因疾患の治療をできるだけ早期に開始することが重要です。ショックで来た患者にまずすべきことは何か、そして、心原性ショックとわかった場合に対処方法はどう変えるのか。まずは初期対応を確認しましょう。その上で、原因疾患の探索方法はと治療方法を見ていきます。エコーの「ABC」や 心不全悪化要因「FAILUTIRES」など、Dr.林ならでは。来院から治療までの一連の流れをスッキリと整理し、バッチリわかりやすく解説します。第4回 分配性ショック!「造影CT実施中に咳込みと意識低下の30歳女性」分配性ショックは、血液が再分配されることによって起こるショックで、血管の過度な拡張により生じます。敗血症ショック、ション軽減性ショック、アナフィラキシーショックが該当します。これらの分配性ショックは、ほかのショックと異なり、皮膚が温かいのが特徴です。

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ハイリスクIgA腎症への免疫抑制療法の効果は?/NEJM

 ハイリスクIgA腎症の患者に対し、積極的支持療法に加え免疫抑制療法を併用しても、臨床的完全寛解率に有意差はみられなかった。また、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下率についても有意差はみられず、一方で、併用群では有害事象の発生が多く観察された。ドイツ・アーヘン工科大学のThomas Rauen氏らが3年にわたる多施設共同の非盲検無作為化比較試験の結果、報告した。IgA腎症患者について、支持療法に免疫抑制療法を併用した場合のアウトカムについては、これまで明らかにされていなかった。NEJM誌2015年12月3日号掲載の報告。単独支持療法または免疫抑制療法併用で3年間治療 試験の対象は、1日の尿蛋白排泄量が0.75g以上の持続性蛋白尿の患者337例。当初6ヵ月は導入期間として、蛋白尿の程度に基づきレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与量などについて調整を行い、支持療法を行った。その後、被験者を無作為に2群に分け、一方には支持療法のみを(支持療法群)、もう一方には支持療法と免疫抑制療法を併用し(併用群)、いずれも3年間継続した。 主要エンドポイントは階層法で順序付けをした2つで、試験終了時の臨床的完全寛解(蛋白とクレアチニンをグラム測定した際の尿蛋白・クレアチニン比が0.2未満、eGFRのベースラインからの低下幅が5mL/分/1.73m2体表面積未満)と、eGFRの15mL/分/1.73m2体表面積以上の低下だった。臨床的完全寛解、eGFR低下率とも両群間の有意差はみられず 被験者のうち、導入期間を終了したのは309例。そのうち1日の尿蛋白排泄量が0.75g未満に減少したのは94例だった。 残る患者のうち、最終的に162例について無作為化を行い、80例を支持療法群、82例を併用群に割り付けた。 結果、試験終了後に臨床的完全寛解が認められたのは、支持療法群4/80例(5%)に対し、併用群は14/82例(17%)で、両群間の有意差は認められなかった(p=0.01)。 また、eGFRの15mL/分/1.73m2以上低下についても、達成患者は支持療法群22例(28%)、併用群21例(26%)で、両群間の有意差はみられなかった(p=0.75)。eGFRの年間低下率についても、有意差はみられなかった。 一方、有害事象は、重度感染症、糖代謝異常、当初1年間の5kg以上の体重増加が、いずれも併用群で支持療法群よりも高率に認められた。また併用群1例で敗血症による死亡が報告された。

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CLEAN試験:血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコール(解説:小金丸 博 氏)-440

 カテーテル関連血流感染症(CRBSI)はありふれた医療関連感染であり、死亡率も高いことが知られている。カテーテル挿入時の皮膚消毒は感染予防に重要であり、今までも適切な皮膚消毒薬について議論されてきた。米国疾病予防管理センター(CDC)は、カテーテル挿入時の皮膚消毒に、0.5%を超えるクロルヘキシジンを含むクロルヘキシジン・アルコールを推奨しているが、クロルヘキシジン・アルコールとポビドンヨード・アルコールをhead-to-headで比較した大規模試験は存在しなかった。 本研究は、血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒薬として、2%クロルヘキシジン・70%イソプロピルアルコールと5%ポビドンヨード・69%エタノールの有効性を比較した、ランダム化比較試験である。両群をさらに消毒前の皮膚洗浄(scrubbing)の有無で1:1:1:1の4群に割り付けした(2×2要因デザイン)。動脈カテーテル、血液透析カテーテル、中心静脈カテーテルの留置が48時間以上必要な18歳以上の成人2,546例を対象とし、カテーテル関連感染症の発生率を主要評価項目とした。カテーテル関連感染症の定義は、菌血症を伴わないカテーテル関連敗血症、あるいはCRBSI(血液培養が陽性)とした。 カテーテル関連感染症の発生率は、クロルヘキシジン・アルコール群で0.28/1,000カテーテル日、ポビドンヨード・アルコール群で1.77/1,000カテーテル日であり、クロルヘキシジン・アルコール群が有意に低率だった(ハザード比:0.15、95%信頼区間:0.05~0.41、p=0.0002)。CRBSIの発生率もクロルヘキシジン・アルコール群で低率だった(0.28 vs.1.32/1,000カテーテル日)。消毒前の皮膚洗浄の有無では、カテーテル関連感染症、CRBSIの発生率に差はなかった。 また、全身性の有害事象は認めなかったが、クロルヘキシジン・アルコール群で重篤な皮膚反応を多く認めた(3% vs.1%)。 カテーテル挿入部位や手術部位など皮膚の消毒には、クロルヘキシジンの有効性が報告されてきており、本研究でもポビドンヨードと比較してクロルヘキシジンの有効性が示された。過去の研究では、カテーテルコロニゼーション(カテーテルへの菌の定着)を主要評価項目としているものが多く、もともとCRBSIの発生率が低い集団において、カテーテル関連感染症の発生率を大きく低下させることを示した意義は大きい。今後さらに、クロルヘキシジン・アルコールを皮膚消毒に使用する流れが加速するだろう。 現時点で、日本では2%クロルヘキシジン製剤が発売されておらず、使用することはできない。多くの施設では、CDCガイドラインで推奨されている「0.5%を超える濃度のクロルヘキシジン」という文言を参考に、1%クロルヘキシジン・アルコール製剤を使用していると思われる。今後も1%クロルヘキシジン・アルコールを使用するのであれば、1%製剤はポビドンヨードより有効なのか、2%クロルヘキシジン・アルコールと効果は同等なのか、有害事象の発生率に差はないのか、といった疑問を解決してくれるような研究が必要と考える。

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ウィルムス腫瘍の術後補助療法、DOXは省略可/Lancet

 ステージII~IIIで中等度リスクのウィルムス腫瘍の標準的術後化学療法に関して、ドキソルビシン(商品名:アドリアシンほか)をレジメンに含む必要はないことが実証された。英国・ロンドン大学小児保健研究所のKathy Pritchard-Jones氏らが小児患者583例を対象に行った、国際多施設共同の第III相非盲検非劣性無作為化対照試験「SIOP WT 2001」の結果、示された。ドキソルビシンは標準レジメンに含まれているが、研究グループは、「ドキソルビシンの心毒性作用の回避が、術後予後が良好であった患児の長期アウトカム改善のために重要である」として、ドキソルビシンがレジメンから省略可能か検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年7月8日号掲載の報告より。ドキソルビシンを省略可能か2年時点の無再発生存率で評価 SIOP WT 2001は、26ヵ国251病院から原発性腎腫瘍と診断された小児(生後6ヵ月~18歳)を集めて行われた。患児は、ビンクリスチン(商品名:オンコビン)とアクチノマイシンD(同:コスメゲン)による4週間の術前化学療法を受けていた。 待機的腎切除後の評価でステージII~III中等度リスクのウィルムス腫瘍と判定された患児を、最小化法を用いて、ビンクリスチン1.5mg/m2(1~8、11、12、14、15、17、18、20、21、23、24、26、27週時)+アクチノマイシンD 45μg/kg(2週目から3週間に1回)とドキソルビシン50mg/m2を5回(2週目から6週間に1回)投与する(標準治療)群またはドキソルビシン非投与(実験的治療)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、2年時点の無再発生存率の非劣性についてで、intention to treatにて解析を行い規定マージンは10%であった。 また、安全性と有害事象について評価(肝毒性と心毒性を系統的にモニタリング)した。両群差4.4%で、省略群の非劣性が認められる 2001年11月1日~2009年12月16日の間に、583例の患児(ステージIIが341例、ステージIIIが242例)が集まり、ドキソルビシンを含む標準治療群に291例を、ドキソルビシンを省略した実験的治療群に292例を無作為に割り付けた。追跡期間中央値は60.8ヵ月(IQR:40.8~79.8)であった。 2年時点の無再発生存率は、標準治療群92.6%(95%信頼区間[CI]:89.6~95.7)、実験的治療群88.2%(同:84.5~92.1)で、両群差は4.4%(同:0.4~9.3)であり事前規定のマージン10%を超えなかった。 5年全生存率は、標準治療群96.5%(同:94.3~98.8)、実験的治療群95.8%(93.3~98.4)であった。 治療関連の毒性作用による死亡の報告は4例。標準治療群の死亡は1例(<1%)で敗血症によるものであった。残る3例が実験的治療群(1%)で、水痘、代謝性の発作、再発治療中の敗血症で死亡した。 また、17例の患児(3%)で肝静脈閉塞性疾患が、心毒性作用の報告は、標準治療群291例のうち15例(5%)であった。 腫瘍が再発し死亡に至ったのは、標準治療群12例、実験的治療群10例であった。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q17

Q17 急性腎盂腎炎の抗菌薬の第1選択は何ですか? 地域の耐性菌の状況によって異なりますが、市中発症で最近の抗菌薬曝露歴がなければ、第2世代セファロスポリンのセフォチアムを点滴で開始することが多いです。ESBL産生菌までカバーしようとする場合は、重症例でなければセフメタゾールでもよいと思います。 市中発症の腎盂腎炎の原因菌の大部分は大腸菌で、従来は第2世代セファロスポリンのセフォチアムで十分カバーできていました。最近は市中発症でもESBL産生菌が増えてきており、エンピリックにESBL産生菌をカバーするべきかどうかは悩ましい問題です。ESBL産生菌による感染症ではカルバペネムが第1選択薬とされます。重症例では迷わずカルバペネムを使用しますが、軽症例までも「ESBL産生菌が心配だから」という理由でカルバペネムばかり使っているとキリがありませんし、カルバペネム耐性菌が増加していくことは目に見えています。最近、ESBL産生菌でも急性腎盂腎炎(あるいは菌血症でも)であれば、セフメタゾールがカルバペネムと大差なさそうである、という小規模な研究が国内から発表されており1)2)、筆者自身も重症例でなければ使用できるという実感を持っています。来院時に敗血症性ショックの状態であれば、初期からカルバペネム使用もやむを得ない場面も多いと思います。カルバペネムをセーブするもう一つの方法として、セファロスポリンにゲンタマイシンのようなアミノグリコシド系抗菌薬を、尿培養の結果が返ってくるまでの2~3日の間かぶせておく方法があります。 1)Doi A, et al. Int J Infect Dis. 2013;17:e159-163.2)Matsumura Y, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2015 Jun 22. [Epub ahead of print]

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侮れない侵襲性髄膜炎菌感染症にワクチン普及願う

 サノフィ株式会社は2015年7月3日、侵襲性髄膜炎菌感染症(Invasive Meningococcal Disease、以下IMD)を予防する4価髄膜炎菌ワクチン(ジフテリアトキソイド結合体)(商品名:メナクトラ筋注)のプレスセミナーを開催。川崎医科大学小児科学主任教授 尾内 一信氏と、同大学小児科学教授 中野 貴司氏がIMDの疾患概要や予防ワクチンの必要性について講演した。  細菌性髄膜炎の起因菌にはHib(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌などがあるが、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)もその1つである。髄膜炎菌は髄膜炎以外にも菌血症、敗血症などを引き起こし、それらをIMDと呼ぶ。IMDの初期症状は風邪症状に類似しており、早期診断が難しい。だが、急速に進行し発症から24~48時間以内に患者の5~10%が死に至り、生存しても11~19%に難聴、神経障害、四肢切断など重篤な後遺症が残ると報告されている。また、髄膜炎菌は感染力が強く、飛沫感染で伝播するため集団感染を起こしやすい。そのため、各国の大学・高校、さらにスポーツイベントなどでの集団感染が多数報告されている。このような状況から、IMDは本邦でも2013年4月より第5類感染症に指定されている。 IMDは全世界で年間50万件発生し、うち約5万人が死亡に至っている。IMDの発生は髄膜炎ベルトといわれるアフリカ中部で多くみられるが、米国、オーストラリア、英国などの先進国でも流行を繰り返しており注意が必要だ。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、米国では2005年~2011年に年間800~1,200人のIMDが報告されている。発症年齢は5歳未満と10歳代が多くを占める。本邦でも、2005年1月~2013年10月に報告されたIMD 115例の好発年齢は0~4歳と15~19歳であった。 IMDの治療にはペニシリンGまたは第3世代セフェム系抗菌薬などが用いられるが、急速に進行するため予防対策が重要となる。IMDの予防にはワクチン接種が有効であることが明らかになっている。本邦の第III相試験の結果をみても、4価髄膜炎菌ワクチン接種後、80%以上の接種者の抗体価が上昇しており、その有効性が示されている。このような高い有効性から、発症数は多くないものの、米国、オーストラリア、英国においてはすでに定期接種ワクチンとなっている。 本邦でも4価髄膜炎菌ワクチン「メナクトラ筋注」が本年(2015年)5月に発売され、IMDの予防が可能となった。しかしながら、本邦におけるIMDの認知度は医師および保護者の双方で低い。また、IMDワクチンの医師の認知率は49%と約半分である。IMDの罹患率は低いが、そのリスクは無視できない。今後の啓発活動が重要となるだろう。サノフィプレスリリース「侵襲性髄膜炎菌感染症」に関する意識調査(PDFがダウンロードされます)「メナクトラ筋注」新発売のお知らせ(PDFがダウンロードされます)

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