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州による敗血症治療のプロトコール導入は、成人敗血症の院内死亡の減少に寄与したか(解説:吉田敦氏)-1141

 12歳の男児が敗血症で死亡したことを受け、ニューヨーク州は2013年に「Rory’s Regulations」を定めた。この規則はすべての急性期病院に対し、敗血症の早期診断と治療開始に関するプロトコールを導入し(たとえば抗菌薬ならば3時間以内に開始)、診療にあたること、ならびにその順守に関して職員の教育を行うとともに、順守割合と臨床的転帰について報告を求めたものである。 本研究はプロトコール導入が実際に成人の院内死亡の減少に寄与したかを、本規則が定められていない対照4州と比較して明らかにしようとした。プライマリーアウトカムは30日院内死亡率で、ニューヨーク州では規則導入の前後で26.3%から22.0%であったのに対し、対照4州では該当期間の変化は22.0%が19.1%となっており、ニューヨーク州では患者・病院特性と規則導入前からの傾向を調整しても、対照州に比べその減少幅は有意に大きかった。ただしセカンダリーアウトカムでは対照州に比較し、ICU入室率の減少幅は差がなく、入院期間の短縮幅とC. difficile発症率の減少幅はやや大きく、CVカテーテル使用率の減少幅は少なかった。 本研究は509ヵ所の病院を含む、合計101万の敗血症入院を解析した非常に大規模な試験である。ニューヨーク州の敗血症死亡率はもともと対照州より高かったが、対照州と比較して、病院の特徴が異なり(100床以下の医療機関や、規模の小さなICUが多い一方、教育病院の割合が高いなど)、ICU入室率やCVカテーテル使用率も低かった。つまり対照州のほうが、もともと規模の大きな病院でICUに入室させやすく、CVカテーテル使用率も高かったといえるであろう。また本研究では患者・病院特性の調整が行われたとはいえ、ニューヨーク州ではほかに患者背景、重症度、合併症、受診までの時間や経緯、医療保険などに、複雑かつ多様な要因があることも否めない。したがってニューヨーク州独自の事情が強く影響している下での、敗血症死亡率の低下、ICU滞在期間短縮を目指した努力が行われた結果をみていると考えたほうがよいと思われる。 複雑かつ多様な要因が影響している中、規則による介入が現場の診療の向上に寄与したかどうか、本論文のようにポジティブに関連付けることには、議論があるかもしれない。ニューヨーク州でのプロトコールの順守状況については情報がなく、さらにアウトカム指標としては5個のみで介入の効果をみているに過ぎない。現場での向上のプロセスの詳細は含まれていないが、介入によって実際のプロセスが具体的にどう変わり、どのように定着したか、読み手としてはそこが知りたいところではないだろうか。現在プロトコール導入を行う州が増えているとのことであるが、各州で行われているプロセス改善を目的とした現場での状況について、詳細な報告がまとめられることに期待したい。

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経口の糞便移植で死亡例、その原因は?/NEJM

 糞便微生物移植(FMT)の臨床試験に参加した被験者で、死亡1例を含む4例のグラム陰性菌血症が発生していたことが明らかにされた。米国・ハーバード大学医学大学院のZachariah DeFilipp氏らによる報告で、そのうち術後にESBL産生大腸菌(Escherichia coli)血症を発症した2例(1例は死亡)は、別々の臨床試験に参加していた被験者であったが、ゲノムシークエンスで同一ドナーのFMTカプセルが使用されていたことが判明したという。著者は、「有害感染症イベントを招く微生物伝播を限定するためにもドナースクリーニングを強化するとともに、異なる患者集団でのFMTのベネフィットとリスクを明らかにするための警戒を怠らない重要性が示された」と述べている。FMTは、再発性/難知性クロストリジウム・ディフィシル感染症の新たな治療法で、その有効性・安全性は無作為化試験で支持されている。他の病態への研究が活発に行われており、ClinicalTrials.govを検索すると300超の評価試験がリストアップされるという。NEJM誌オンライン版2019年10月30日号掲載の報告。使用されていたのは検査強化前の冷凍FMTカプセル 研究グループは、術後にESBL産生大腸菌血症を発症した2例(1例は死亡)について詳細な調査報告を行った。 まずドナースクリーニングと、カプセル製剤手順を検証したところ、ドナースクリーニングは施設内レビューボードと米国食品医薬品局(FDA)による承認の下で行われており、集められたドナー便はブレンダーでの液化や遠心分離などの処置を経て懸濁化され、熱処理などを受けて製剤化が行われていた。ただし、2019年1月にFDAの規制レビューを受けてドナースクリーニングを強化していたが、件の2例に使用されたFMTカプセルは2018年11月に製造されたものであったという。この時に強化された内容は、ESBL産生菌、ノロウイルス、アデノウイルス、ヒトTリンパ親和性ウイルス タイプ1およびタイプ2抗体を検査するというものであった。規制レビューを受けた後も、それ以前に製剤化・冷凍保存されていたFMTカプセルについて、追加の検査や廃棄はせず試験に使用されていた。FMT前の被験者の便検体からはESBL産生菌は未検出 患者(1)は、C型肝炎ウイルス感染症による肝硬変の69歳男性で、難治性肝性脳症の経口カプセルFMT治療に関する非盲検試験に参加した被験者であった。2019年3月~4月に、15個のFMTカプセルを3週間に5回にわたって移植。術後17日(2019年5月)までは有害事象は認められなかったが、発熱(38.9度)と咳を呈し、胸部X線で肺浸潤を認めレボフロキサシンによる肺炎治療が行われた。しかし、臨床的改善が認められず2日後に再受診。患者(1)は、その際に前回受診時での採血の血液培養の結果でグラム陰性桿菌が確認されたことを指摘され、ピペラシリン・タゾバクタムによる治療を開始し入院した。培養されたグラム陰性桿菌を調べた結果、ESBL産生大腸菌であると同定された。患者(1)の治療はその後カルバペネムに切り替えられ、さらに14日間のメロペネム投与(入院治療)、さらにertapenem投与(外来治療)を完了後、臨床的安定性を維持している。フォローアップ便検体のスクリーニングでは、ESBL産生菌は検出されなかった。 患者(2)は、骨髄異形成症候群の73歳男性で、同種異系造血幹細胞移植の前後に経口カプセルFMTを行う第II相試験に参加していた。15個のFMTカプセルを、造血幹細胞移植の4日前と3日前に移植。造血幹細胞移植の前日に、グラム陰性菌血症リスクを最小化するためのセフポドキシム予防投与を開始した。しかし、造血幹細胞移植後5日目(最終FMT後8日目)に発熱(39.7度)、悪寒、精神症状の異変を呈した。血液培養の採血後、ただちに発熱性好中球減少症のためのセフェピム治療を開始したが、その晩にICU入室、人工呼吸器装着となる。予備血液培養の結果、グラム陰性桿菌の存在が示され、メロペネムなど広域抗菌薬を投与するが、患者の状態はさらに悪化し、2日後に重篤な敗血症で死亡した。最終血液培養の結果、ESBL産生大腸菌が検出された。 なお患者(1)(2)とも、FMT前の便検体からESBL産生菌は検出されなかったという。

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「日本版敗血症治療ガイドライン2020」の改訂ポイントを公開

 2019年10月2~4日に行われた第47回日本救急医学会総会・学術集会において、2020年夏に向け2回目の改訂作業が進む「日本版敗血症治療ガイドライン2020(J-SSCG2020)」の編集方針と改訂ポイントをテーマにしたパネルディスカッションが行われた。日本版敗血症治療ガイドライン2020改訂のポイント 冒頭に、2016年の日本版敗血症治療ガイドライン(J-SSCG2016)の作成委員会委員長を務めた藤田医科大学教授の西田 修氏が前回改訂を振り返った。「敗血症のガイドラインとしては『敗血症診療国際ガイドライン(SSCG)』があり、2004年に初版が刊行され、2020年には4回目の改訂が予定される同ガイドラインは国際的評価も高い。作成当初はこれを訳せばいいのでは、という声も多かった」と振り返った。敢えて日本版敗血症治療ガイドラインを作成した意義については、「日本独自の視点も大切にしながら、国際ガイドラインに劣らない質を追求し、それを人材育成につなげることを目指した」と述べた。日本版敗血症治療ガイドラインは当初は日本集中治療医学会が作成し、1回目の改訂にあたる日本版敗血症治療ガイドライン2016からは、同学会と日本救急医学会の合同作成となっている。 続いて、日本版敗血症治療ガイドライン2020作成委員会共同委員長を務める大阪大学准教授の小倉 裕司氏が、今回の改訂のポイントを述べた。「J-SSCG2016から委員は4割が入れ替わり、一般臨床の場で役立つ、SSCGにはない斬新な内容を取り入れる、時間的要素を取り入れ見せ方を工夫する、若手医師の積極的な参加を促して次世代育成を目指す、という4点を重視した」と述べた。 日本版敗血症治療ガイドライン2020の作成における特徴は以下のとおり。日本版敗血症治療ガイドライン2016から引き継がれた点も多い。・広い普及を目指す…一般の臨床家に使いやすく、質の高いガイドラインとする・適切な判断をサポート…臨床上必要なクリニカルクエスチョン(CQ)であれば、質の高いエビデンスの有無にかかわらず、すべてを取り上げる・質の担保/透明性の向上…若手メンバー中心に各領域を横断してサポートや査読を行う独立組織「アカデミックガイドライン推進班」を設置/パブリックコメントを複数回募集敗血症治療ガイドライン日本版独自の内容 日本版敗血症治療ガイドライン2020から新たに加わった内容・変更点は以下のとおり。・CQが89→117(予定)と約1.5倍に・神経集中治療・ストレス潰瘍・Patient-and family-centered care・Sepsis Treatment Systemの4領域を新たに追加・8領域の作成に多職種のワーキング・グループが参加・CQを24のバックグラウンドクエスチョン(BQ)と92のフォアグラウンドクエスチョン(FQ)に分け、FQはさらにエビデンスの強固さによって3つのグレードに分類 体温管理・ICU-AW、PICS、小児、神経集中治療の領域は、敗血症診療国際ガイドラインに含まれない日本版独自の内容となる。改訂ごとに増える内容を臨床の現場で有効に使ってもらうため、ダイジェスト版・電子版の発行とあわせ、今回新たにアプリ開発を進めるなど、多様な手段で新ガイドラインを提供する計画だ。また、ガイドライン策定にあたってのシステマティックレビューから複数の論文が生まれる、診療報酬改定に影響を与えるなど、副次的な効果も出ているという。また、敗血症に世間の関心が高まる中、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本感染症学会の3学会合同で一般向け情報サイト「敗血症.com」を設置・運営し、積極的な情報提供も行っている。 日本版敗血症治療ガイドライン2020は2020年春の公開、夏の刊行が予定されており、ダイジェスト版、英語版も続いて出版される。

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ストレス関連障害、重症感染症発症と関連/BMJ

 ストレス関連障害は、その後の命に関わる感染症のリスクと関連することが、アイスランド大学のHuan Song氏らによるスウェーデンの住民を対象とした同胞・適合対照コホート研究で明らかにされた。関連性は家族的背景や身体的・精神的並存疾患を調整後に確認されている。精神的ストレスは、免疫力を低下し感染症への罹病性を増す可能性があり、ヒトおよびその他の動物における一連の実験的研究で、精神的ストレスと急性呼吸器感染症との関連性が示唆されている。しかしながら、髄膜炎や敗血症のような命に関わる重症感染症との関連についてはデータが限定的であった。BMJ誌2019年10月23日号掲載の報告。敗血症、心内膜炎、髄膜炎など死亡率が高い感染症のリスクを検証 検討はスウェーデン住民を対象に、1987~2013年にストレス関連障害(外傷後ストレス障害[PTSD]、急性ストレス反応、適応障害、その他のストレス反応)を有した14万4,919例を特定し、ストレス関連障害と診断されていない同胞18万4,612例および一般住民からの適合対照144万9,190例と比較した。 主要評価項目は、高死亡率の重症感染症(敗血症、心内膜炎、髄膜炎またはその他の中枢神経系感染症など)であった初発入院または外来受診の1次診断(Swedish National Patient Registerで確認)、およびそれらの感染症またはあらゆる原因の感染症による死亡(Cause of Death Registerで確認)とした。 複合交絡因子について調整後、Coxモデルを用いてこれら命に関わる感染症のハザード比を推算した。発生増大リスクは同胞ベース解析で1.47倍、住民ベース解析で1.58倍 ストレス関連障害診断時の平均年齢は37歳(5万5,541例、男性38.3%)であった。 平均追跡期間8年の間に、命に関わる感染症の発生(1,000人当たり)は、ストレス関連障害群2.9、同診断のない同胞群1.7、同診断のない適合対照群1.3であった。 同診断のない同胞群と比較して、ストレス関連障害群は命に関わる感染症リスクの増大が認められた。ハザード比は、あらゆるストレス関連障害については1.47(95%信頼区間[CI]:1.37~1.58)、PTSDは1.92(1.46~2.52)であった。 同様の増大リスクは、住民ベースの適合対照との比較でも認められた。ハザード比は、あらゆるストレス関連障害については1.58(95%CI:1.51~1.65、同胞ベース解析における増大リスクとの差に関するp=0.09)、PTSDは1.95(1.66~2.28、p=0.92)。 ストレス関連障害は、検証したすべての重症感染症と関連していた。最も相対リスクが高かったのは髄膜炎(同胞ベース解析で1.63[95%CI:1.23~2.16])、次いで心内膜炎(1.57[1.08~2.30])であった。また、「ストレス関連障害診断時の年齢が若い」および「精神科合併障害の併存」、とくに「薬物使用障害」においてハザード比が高かった。一方で、ストレス関連障害の診断後最初の年にSSRI薬を使用していた場合は、ハザード比が減弱されていた。

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低リスク妊娠、第3期のルーチン超音波は有益か?/BMJ

 低リスク単胎妊娠において、妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことは通常ケアと比較して、出産前の在胎不当過小(SGA)胎児の検出率を高めるが、重度有害周産期アウトカムの発生減少には結びつかないことが明らかにされた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのJens Henrichs氏らが、1万3,046例の妊婦を対象に行った無作為化比較試験の結果で、著者は「妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことを支持しない結果であった」とまとめている。BMJ誌2019年10月15日号掲載の報告。妊娠28~30週、34~36週に超音波検査を提供し通常ケアと比較 研究グループは2015年2月1日~2016年2月29日にかけて、オランダ国内の助産施設60ヵ所を通じて登録した、16歳以上の低リスク単胎妊娠の妊婦を対象に無作為化比較試験を行った。 施設では通常のケアとして、定期的な子宮底長測定と、臨床的に必要な超音波検査を行った。試験開始3、7、10ヵ月の各時点で、被験者の3分の1をコントロール群から介入群に割り付け、介入群に対しては、通常ケアに加え、妊娠28~30週、34~36週に2回のルーチン超音波検査を提供した。両群に対して同様の多専門的アプローチを行い、胎児発育の特定とケアを行った。 主要アウトカムは、複合重度有害周産期アウトカム(周産期死亡、Apgarスコア4未満、意識障害、仮死、てんかん発作、補助呼吸、敗血症、髄膜炎、気管支肺異形成症、脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、壊死性腸炎と規定)だった。副次アウトカムは、母体の重篤な病的状態、自然分娩・出生だった。重度有害周産期アウトカム発生、介入群32%、コントロール群19% 試験には1万3,520例(平均妊娠22.8週)が登録され、解析には、オランダ全国周産期レジストリまたは病院記録のデータがある1万3,046例(介入群7,067例、コントロール群5,979例)が包含された。 SGA胎児の検出率は、コントロール群19%(78/407例)に対し、介入群は32%(179/556例)と有意に高率だった(p<0.001)。 一方で、主要アウトカム発生率は、介入群1.7%(118例)、コントロール群1.8%(106例)だった。交絡因子を補正後、両群には有意差は認められなかった(オッズ比[OR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.70~1.20)。 なお、介入群ではコントロール群に比べ、誘発分娩の発生率が高く(OR:1.16、95%CI:1.04~1.30)、陣痛促進の発生率は低かった(0.78、0.71~0.85)。母体のアウトカムとその他の産科学的介入について有意な差はなかった。

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終末期には患者家族との意思疎通に訓練が必要

 2010年10月2日~4日の3日間、都内において「第47回 日本救急医学総会・学術集会」(会長:田中 裕[順天堂大学大学院医学研究科救急災害医学 教授])が、「不断前進、救命救急 今、ふたたび『仁』」をテーマに開催された。 学会では、「病院前診療」「心肺蘇生」「外傷診療」「敗血症診療」などをテーマに特別講演、シンポジウム、パネルディスカッションをはじめ、さまざまな企画が開催されたほか、市民向けには敗血症の説明講座やAEDを使用した実技講習会などが開催された。 本稿では、終末期の現場で患者や残された家族にどのように医療者がコミュニケーションをとるか、救急現場で要望の高いテーマについてお届けする。遅れている日本の事前指示書の作成 「高齢者救急」の口演の中で「VitalTalkを用いた救急・集中治療領域End-of-Life Discussionトレーニング:米国での経験から」をテーマに、伊藤 香氏(帝京大学医学部救急医学講座)が、自己の米国での研修体験から終末期の現場で必要とされる医師のコミュニケーショントレーニングについて講演した。 超高齢化社会の進展に伴い、終末期診療での自己決定は大切な課題となっている。しかし、事前指示書の所有率は、米国では40%であるのに対し、わが国ではわずか5%と進んでいない現状である。厚生労働省の意識調査でも「事前指示書の作成に賛成」が70%近くにも上っているにも関わらず、実際に作成した人は8%程度であると同氏は「日本でのアドバンスケアプランニング(ACP)の不足」を指摘する。 一例として帝京大学附属病院の救命センターの例を挙げ、75歳以上の高齢者の受診率が40%を超え、そのうちの60%近くが初療室や翌日に亡くなっている。わが国では、死の直前まで、侵襲的な集中治療を受け、亡くなるケースが多いことを報告。こうした医療の遠因には、ACPの不足もあると同氏は指摘した。“VitalTalk”を日本で普及させるために 米国と日本の違いとして、救急の現場では、死というデリケートな問題に近いことから、患者家族へのコミュニケーションスキルの向上が望まれ、新任の外科・外科集中治療の修練を受けた際に、End-of-Life(EOL)discussionコース(VitalTalk)の受講が米国では必須だったという。 “VitalTalk”とは、あらゆる重症疾患患者とその家族が対象となり、医療者と患者・患者家族のよりよいコミュニケーションを目指して、アメリカで作られた対話訓練法である。同氏が受講したカリキュラムでは、集中治療室入室中の患者家族に模した役者を相手に、延命治療終了などの意思決定にまつわる話し合いの仕方をトレーニングしたという。具体的には、相手の感情を読み取り、理解可能な手段(イラストなどへの落とし込み)などで、的確に伝えることを訓練するものであり、その効果として、患者の疾患への理解度の向上、より良い医療の提供や訴訟リスクの低下がみられるとされる。 コースでは、深刻なニュースを患者家族に伝える方法の「Ask-Tell-Ask」や感情を言語化する「NURSE」、診療のゴールについて話し合う「REMAP」などを学ぶという。具体的に「NURSE」とは、突然の悪い知らせに直面し、戸惑う患者家族の感情に寄り添うための会話スキルで、家族の様子を観察しながら、抱いていると予想される感情に名前を付けて(Name)、理解を示し(Understand)、尊重し(Respect)、支援(Support)、探索(Explore)する共感力養成のトレーニングである。トレーニングは、半日または1日コースがあり、医師、看護師などが受講をしている。 同氏は、現在“VitalTalk”の日本語版開発に携わっており、「総合診療や緩和ケアのみならず、集中治療や救急に携わる医療者にも広げていきたい」と今後の展望を語り、講演を終えた。 2020年の「日本救急医学総会・学術集会」は、11月18日~20日の会期で岐阜県にて開催される。

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12週間ごとに投与する新規乾癬治療薬「スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL」【下平博士のDIノート】第34回

12週間ごとに投与する新規乾癬治療薬「スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL」 今回は、ヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤「リサンキズマブ(商品名:スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL)」を紹介します。本剤は、初回および4週時の後は12週ごとに皮下投与する薬剤です。少ない投与頻度で治療効果を発揮し、長期間持続するため、中等症から重症の乾癬患者のアンメットニーズを満たす薬剤として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月24日に発売されています。<用法・用量>通常、成人にはリサンキズマブとして、1回150mgを初回、4週後、以降12週間隔で皮下投与します。なお、患者の状態に応じて1回75mgを投与することができます。<副作用>尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の患者を対象とした国内外の臨床試験(国際共同試験3件、国内試験2件:n=1,228)で報告された全副作用は219例(17.8%)でした。主な副作用は、ウイルス性上気道感染27例(2.2%)、注射部位紅斑15例(1.2%)、上気道感染14例(1.1%)、頭痛12例(1.0%)、上咽頭炎10例(0.8%)、そう痒症9例(0.7%)、口腔ヘルペス8例(0.7%)などでした。150mg投与群と75mg投与群の間に安全性プロファイルの違いは認められていません。なお、重大な副作用として、敗血症、骨髄炎、腎盂腎炎、細菌性髄膜炎などの重篤な感染症(0.7%)、アナフィラキシーなどの重篤な過敏症(0.1%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となるIL-23の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.体内の免疫機能の一部を弱めるため、ウイルスや細菌などによる感染症にかかりやすくなります。感染症が疑われる症状(発熱、寒気、体がだるい、など)が現れた場合には、速やかに医師に連絡してください。3.この薬を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹、風疹、麻疹・風疹混合、水痘、おたふく風邪など)の接種はできないので、接種の必要がある場合には医師に相談してください。4.入浴時に体をゴシゴシ洗ったり、熱い湯船につかったりすると、皮膚に過度の刺激が加わって症状が悪化することがありますので避けてください。5.風邪などの感染症にかからないように、日頃からうがいと手洗いを心掛け、体調管理に気を付けましょう。インフルエンザ予防のため、流行前にインフルエンザワクチンを打つのも有用です。<Shimo's eyes>乾癬の治療として、以前より副腎皮質ステロイドあるいはビタミンD3誘導体の外用療法、光線療法、または内服のシクロスポリン、エトレチナートなどによる全身療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在発売されている生物学的製剤は、本剤と標的が同じグセルクマブ(商品名:トレムフィア)のほか、抗TNFα抗体のアダリムマブ(同:ヒュミラ)およびインフリキシマブ(同:レミケード)、抗IL-12/23p40抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)、抗IL-17A抗体のセクキヌマブ(同:コセンティクス)およびイキセキズマブ(同:トルツ)、抗IL-17受容体A抗体のブロダルマブ(同:ルミセフ)などがあります。また、2017年には経口薬のPDE4阻害薬アプレミラスト(同:オテズラ)も新薬として加わりました。治療の選択肢は大幅に広がり、乾癬はいまやコントロール可能な疾患になりつつあります。本剤の安全性に関しては、ほかの生物学的製剤と同様に、結核の既往歴や感染症に注意する必要があります。本剤の投与は基本的に医療機関で行われると想定できますので、薬局では併用薬などの聞き取りや、生活指導で患者さんをフォローしましょう。本剤は、初回および4週後に投与し、その後は12週ごとに投与します。国内で承認されている乾癬治療薬では最も投与間隔が長い薬剤の1つとなります。通院までの間の体調を記録する「体調管理ノート」や、次回の通院予定日をLINEの通知で受け取れる「通院アラーム」などのサービスの活用を薦めるとよいでしょう。参考日本皮膚科学会 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2019年版)アッヴィ スキリージ Weekly 体調管理ノート

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関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」【下平博士のDIノート】第30回

関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ペフィシチニブ臭化水素酸塩(商品名:スマイラフ錠50mg/100mg)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用でJAKファミリーの各酵素(JAK1/2/3、チロシンキナーゼ2[TYK2])を阻害し、関節リウマチによる関節の炎症や破壊を抑制します。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年7月10日より発売されています。なお、過去の治療において、メトトレキサート(MTX)をはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬などによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人はペフィシチニブとして150mg(状態に応じて100mg)を1日1回食後に投与します。なお、中等度の肝機能障害がある場合は、50mg/日を投与します。<副作用>後期第II相試験、第III相臨床試験2件および継続投与試験の4試験における安全性併合解析において、本剤が投与された患者1,052例中810例(77.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、上咽頭炎296例(28.1%)、帯状疱疹136例(12.9%)、血中CK増加98例(9.3%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、帯状疱疹(12.9%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎などを含む)(4.7%)、敗血症(0.2%)などの重篤な感染症、好中球減少症(0.5%)、リンパ球減少症(5.9%)、ヘモグロビン減少(2.7%)、消化管穿孔(0.3%)、AST(0.6%)・ALT(0.8%)の上昇などを伴う肝機能障害、黄疸(5.0%)、間質性肺炎(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することにより、関節の炎症や腫れ、痛みなどの関節リウマチによる症状を軽減します。2.持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感などの症状が現れた場合はすぐにご連絡ください。3.痛みを伴う発疹や皮膚の違和感、局所の激しい痛み、神経痛などが現れた場合は速やかに受診してください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合には主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および服用終了後少なくとも1月経周期は、適切な避妊を行ってください。6.本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。関節破壊の進行抑制を含めた病態コントロールのため、発症初期にはMTXをはじめとする従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARDs)が使用されます。MTXなどを十分量で用いても効果不十分な場合には、生物学的製剤であるTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)やIL-6阻害薬(トシリズマブなど)、T細胞活性抑制薬(アバタセプト)、もしくは低分子標的薬であるJAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)が使用されます。本剤は、関節リウマチに用いる3剤目のJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を阻害し、関節の炎症や破壊を抑制します。生物学的製剤は点滴または皮下注射での投与となりますが、しばしば発疹などの投与時反応や注射部位疼痛が問題となることがあります。JAK阻害薬は経口投与のため、非侵襲性の治療を望む患者さんや自己注射が困難な患者さんであっても、好みや生活環境に合わせた治療を選択することができると期待されています。また、本剤は相互作用も少なく、1日1回投与であるため、高齢者でも使用しやすいと考えられます。留意点としては、中等度の肝機能障害を有する患者については投与量の制限があることが挙げられます。また、本剤は免疫反応に関与するJAK経路の阻害により、結核、肺炎、敗血症などの感染症リスクが増大する懸念があることから、既存のJAK阻害薬2剤と同様に、生物学的製剤や他のJAK阻害薬などの免疫を抑制する薬剤との併用はできません。承認時の臨床試験では、副作用として12.9%で帯状疱疹が報告されているので、とくに高齢の患者さんでは、使用前に帯状疱疹ワクチン接種の有無などについて確認し、服用後に帯状疱疹が現れる可能性について注意喚起をしておく必要があるでしょう。

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敗血症診療規則の導入で死亡低減/JAMA

 米国ニューヨーク州の病院は、プロトコール化された敗血症診療(Rory's Regulations)の実施が義務付けられている。米国・ピッツバーグ大学のJeremy M. Kahn氏らは、この診療規則の有効性に関する調査を行い、導入以降ニューヨーク州は、非導入の他州に比べ敗血症による死亡が減少していることを示した。研究の詳細は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。2013年以降、ニューヨーク州の病院は、敗血症管理においてエビデンスに基づくプロトコールの実施とともに、プロトコール順守や臨床アウトカムに関する情報の州政府への報告が義務付けられている。敗血症診療規則導入前後で敗血症入院例のアウトカムを比較 研究グループは、ニューヨーク州の敗血症診療規則と、敗血症による入院患者のアウトカムの関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(米国医療研究品質庁[AHRQ]の助成による)。 解析には2011年1月1日~2015年9月30日の、ニューヨーク州と規則非導入の対照4州(フロリダ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州)の成人敗血症入院患者の退院時のデータを用いた。規則導入前後で複数回測定された時系列データを比較解析した。 2013年のニューヨーク州の敗血症診療規則の導入前(2011年1月1日~2013年3月31日)と導入後(2013年4月1日~2015年9月30日)の敗血症による入院について評価を行った。 主要評価項目は、30日院内死亡率とした。副次評価項目は、集中治療室入室率、中心静脈カテーテル使用率、Clostridium difficile感染率、入院期間であった。敗血症診療規則の導入で入院期間が有意に短縮 最終解析には509施設に入院した敗血症患者101万2,410例が含まれた。平均年齢は69.5(SD 16.4)歳、女性が47.9%であった。敗血症診療規則導入前の入院患者数は、ニューヨーク州が13万9,019例、対照4州は28万9,225例であり、導入後はそれぞれ18万6,767例および39万7,399例であった。 補正前30日院内死亡率は、敗血症診療規則導入前がニューヨーク州26.3%、対照4州22.0%で、導入後はそれぞれ22.0%および19.1%であった。患者および病院の背景因子と、導入前の一時的な傾向や季節性で補正すると、導入後の30日院内死亡率はニューヨーク州が対照4州に比べ有意に低下した(導入前後で複数回測定された時系列データの比較値の同時検定のp=0.02)。 たとえば、敗血症診療規則導入後の第10(最終)四半期(2015年7月~9月)の補正後絶対死亡率は、対照4州と比較したニューヨーク州の予測値よりも3.2%(95%信頼区間[CI]:1.0~5.4)有意に低かった(p=0.004)。 敗血症診療規則導入により、両群間で集中治療室入室率の有意な差は認めなかったが(同時検定のp=0.09)(第10四半期の補正後の両群差:2.8%、95%CI:-1.7~7.2、p=0.22)、ニューヨーク州は対照4州に比べ、入院期間が有意に短縮し(p=0.04)(0.50日、-0.47~1.47、p=0.31)、Clostridium difficile感染率(p<0.001)(-1.8%、-2.6~-1.0%、p<0.001)、中心静脈カテーテル使用率(p=0.02)(4.8%、2.3~7.4、p<0.001)は有意に増加した。 著者は、「ベースラインの死亡率がニューヨーク州と対照4州で異なるため、これらの知見が、この研究には含まれない他州に一般化可能かどうかは不明である」としている。

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Sepsisの4タイプの表現型の提唱とその評価(解説:吉田敦氏)-1077

 敗血症にはさまざまな症例が含まれ、臨床症状・徴候のスペクトラムは幅広い。このため臨床病型を分別し、より精確なマネジメントにつなげようとする試みはこれまで長く続けられてきた。2016年には「敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義 第3版(Sepsis-3)」が発表され、定義も新しくなり、SOFA(PaO2/FiO2、血小板数、ビリルビン、平均動脈圧、Glasgow Coma Scale[GCS]、クレアチニン)・qSOFA(収縮期血圧、呼吸数、GCS)が導入されたが、このような試みはそれ以前からのものである。今回3個の観察コホート研究と3個のランダム化臨床試験(合計6個)から得られたデータを後方視的に解析することで、病型自体導出できるのか、できるならば病型はいくつか、導出された病型の妥当性・再現性はどうか、検討が行われた。 本研究はピッツバーグ大学を中心として行われたもので、この中にはSOFA・qSOFAの提唱に使われたSENECA試験も含まれている。6試験はそれぞれ特色を有するが、最も影響する因子は組み入れ基準(inclusion criteria:Sepsis-3のものもあれば、以前のSIRSを用いたものも、重症敗血症を来した肺炎のものもある)と場所(Emergency departmentのほか、ICUのみならず内科病棟も)であろう。導出されたタイプはα、β、γ、δの4種類であり、概して、αは異常値が少なく、臓器障害が少ないタイプ、βは慢性疾患を有する高齢者に多いタイプ、γは炎症関連バイオマーカーの上昇が大きなタイプ、δは乳酸値やトランスアミナーゼの上昇と低血圧を特徴とするタイプであった。炎症マーカーの上昇と凝固異常・血管内皮細胞の異常はγ・δで、腎障害のマーカーの異常はβ・δで、心血管および肝臓のマーカーの異常はδで多く、来院時のSOFAスコアと死亡率もやはりδで最も高かった。 興味深いのは、これら4タイプは生体側の免疫反応と深く関連している一方で、それぞれがさまざまな感染巣(focus)の患者を含んでおり、タイプの導出にも、菌血症の証明や、原因微生物の分類・種類、菌の侵入門戸を問うていない点である。微生物側の詳しい因子を含めることなく、導出されたこれら4タイプによる成績に、もし微生物側の因子も加えて解析したら、結果はどうであろうか。今回のような複数の大規模試験の集合であっても、どれほどの差が認められるか予測し難いところがあるが、それこそが臨床医が日常的に敗血症・菌血症例を診療する際に、「感染臓器」・「微生物」・「患者個々の背景・基礎疾患」の3因子を重ね合わせて考え、評価する、その思考プロセスに似てはいないだろうか。 本検討で得られた結論は、背景と重症度が異なる集団であっても、27以上のバイオマーカーから導出された4表現型が、再現性よく臨床的重症度・予後と相関するというものであった。臨床応用にはまだ距離はあろうが、たとえばバイオマーカーから4タイプを導出するプログラムを電子カルテに実装しておき、敗血症疑い例の初期評価の進行に同期させつつ、自動的に表示させるようにするのも、有用かもしれない。本検討の所見のさらなる評価の継続とともに、実用にもまた期待したいところである。

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SCARLET試験:敗血症関連凝固障害に対する遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモジュリンの有効性(解説:小金丸博氏)-1066

 敗血症関連凝固障害はINR延長や血小板数低下で定義され、28日死亡率と相関することが報告されている。遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモジュリン(rhsTM)製剤は、播種性血管内凝固(DIC)が疑われる敗血症患者を対象とした第IIb相ランダム化試験の事後解析において、死亡率を下げる可能性が示唆されていた。 今回、敗血症関連凝固障害に対するrhsTM製剤の有効性を検討した第III相試験(SCARLET試験)の結果が発表された。本試験は、26ヵ国159施設が参加した二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験であり、集中治療室に入室した心血管あるいは呼吸器障害を伴う敗血症関連凝固障害患者を対象とした。プライマリアウトカムに設定した28日全原因死亡率は、rhsTM投与群が26.8%(106/395例)、プラセボ投与群は29.4%(119/405例)であり、両群間に有意差を認めなかった(p=0.32)。絶対リスク差は2.55%(95%信頼区間:-3.68~8.77)だった。重篤な出血有害事象の発生率は、rhsTM投与群が5.8%、プラセボ投与群は4.0%だった。 本試験では、敗血症関連凝固障害に対するrhsTM製剤の投与は、28日全原因死亡率を有意に低下させることができなかった。有効性を示せなかった要因として、(1)約20%の患者がベースライン時に凝固障害の基準を満たしていなかったこと、(2)プラセボ投与群の死亡率が予想より高かったこと、(3)深部静脈血栓症予防に用いたヘパリンがrhsTMの効果を弱めた可能性があること、(4)試験に参加した159施設中55施設では登録患者数が1例であり、有効性の結果に影響した可能性があることが挙げられている。 サブグループ解析では、ベースラインのAPACHE IIスコア25点未満の患者(439例)は28日全原因死亡率がrhsTM投与群で低く(リスク差:4.66%)、25点以上の患者(283例)はrhsTM投与群で高かった(リスク差:-1.45%)。また、ヘパリンを投与された患者(416例)は28日全原因死亡率がrhsTM投与群で高く(リスク差:-0.87%)、ヘパリンを投与されなかった患者(384例)はrhsTM投与群で低かった(リスク差:6.25%)。敗血症患者の病態は不均一であり、敗血症関連凝固障害に対して一律にrhsTMを投与しても有効性を見いだせないかもしれない。しかしながら、サブグループ解析や事後解析の結果はrhsTM投与が有効な病態が存在することを示唆しており、今後の研究結果を待ちたい。

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敗血症関連凝固障害への遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤、第III相試験結果/JAMA

 敗血症関連凝固障害がみられる重症患者の治療において、遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモデュリン(rhsTM)製剤ART-123はプラセボと比較して、28日以内の全死因死亡率を改善しないことが、ベルギー・Universite Libre de BruxellesのJean-Louis Vincent氏らが実施した「SCARLET試験」で示された。研究の詳細はJAMA誌オンライン版2019年5月19日号に掲載された。rhsTMは、播種性血管内凝固症候群(DIC)が疑われる敗血症患者を対象とする無作為化第IIb相試験の事後解析において、死亡率を抑制する可能性が示唆されていた。26ヵ国159施設のプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む26ヵ国159施設が参加する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2012年10月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(Asahi-Kasei Pharma America Corporationの助成による)。 対象は、心血管あるいは呼吸器の障害を伴う敗血症関連凝固障害で、集中治療室に入室した患者であった。被験者は、rhsTM(0.06mg/kg/日、最大6mg/日、静脈内ボーラス投与または15分注入)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、1日1回、6日間の治療が行われた。 主要エンドポイントは、28日時の全死因死亡であった。28日全死因死亡率:26.8% vs.29.4% 816例が登録され、このうち800例(平均年齢60.7歳、男性54.6%)が試験を完遂し、最大の解析対象集団(FAS)に含まれた。rhsTM群が395例、プラセボ群は405例であった。 28日全死因死亡率は、両群間に有意な差は認めなかった(rhsTM群26.8%[106/395例]vs.プラセボ群29.4%[119/405例]、p=0.32)。絶対リスク差は2.55%(95%信頼区間[CI]:-3.68~8.77)だった。 サブグループ解析では、ヘパリンの投与を受けた患者(416例)は、28日全死因死亡率がrhsTM群で低かった(差:-0.87%、95%CI:-9.52~7.77)のに対し、ヘパリンの投与を受けていない患者(384例)は、rhsTM群のほうが高かった(6.25%、-2.72~15.22)。 重篤な出血有害事象(頭蓋内出血、生命に関わる出血、担当医が重篤と判定した出血イベントで、赤血球濃厚液1,440mL[典型的には6単位]以上を2日で輸血した場合)の発生率は、rhsTM群が5.8%(23/396例)、プラセボ群は4.0%(16/404例)であった。 なお著者は、これらの知見に影響を及ぼした可能性のある原因として、次のような諸点を挙げている。(1)患者の約20%が、ベースライン時に凝固障害の基準を満たさなかった、(2)プラセボ群の死亡率が、試験開始前にサンプルサイズの算出に使用した予測値よりも高かった、(3)深部静脈血栓症の予防に用いたヘパリンが、rhsTMの効果を減弱させた可能性がある、(4)無作為化の際に施設で層別化したが、159施設中55施設は登録患者が1例のみであり、効果の結果に影響を及ぼした可能性がある。

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敗血症、新規の臨床病型4つを導出/JAMA

 敗血症は異質性の高い症候群だという。米国・ピッツバーグ大学のChristopher W. Seymour氏らは、患者データを後ろ向きに解析し、宿主反応パターンや臨床アウトカムと相関する敗血症の4つの新たな臨床病型を同定した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年5月19日号に掲載された。明確に分類された臨床病型が確立されれば、より精確な治療が可能となり、敗血症の治療法の改善に結び付く可能性があるため、検討が進められていた。敗血症の4つの臨床病型の頻度、臨床アウトカムとの相関、死亡率などを評価 研究グループは、臨床データから敗血症の臨床病型を導出し、その再現性と、宿主反応バイオマーカーや臨床アウトカムとの相関を検討し、無作為化臨床試験(RCT)の結果との潜在的な因果関係を評価する目的で、後ろ向きにデータ解析を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 敗血症の臨床病型は、ペンシルベニア州の12の病院(2010~12年)を受診し、6時間以内にSepsis-3の判定基準を満たした2万189例(1万6,552例のunique patientを含む)のデータから導出した。 再現性と、生物学的パラメータおよび臨床アウトカムとの相関性の解析には、2次データベース(2013~14年、全4万3,086例、3万1,160例のunique patientを含む)、肺炎に起因する敗血症の前向きコホート研究(583例)および3件の敗血症のRCT(4,737例)のデータを用いた。 評価項目は、導出された臨床病型(α、β、γ、δ)の頻度、宿主反応バイオマーカー、28日および365日時点の死亡率、RCTのシミュレーション出力とした。敗血症の臨床病型の実臨床における効用性確立には、新たな研究が必要 解析コホートには、敗血症患者2万189例(平均年齢64[SD 17]歳、男性1万22例[50%]、SOFAスコアの最長24時間平均値3.9[2.4]点)が含まれた。検証コホートは、4万3,086例(67[17]歳、男性2万1,993例[51%]、3.6[2.0]点)であった。 導出された敗血症の4つの臨床病型のうち、α型の頻度が最も高く(6,625例、33%)、この型は入院中の昇圧薬の投与日数が最も短かった。β型(5,512例、27%)は高齢で慢性疾患や腎不全の罹患者が多く、γ型(5,385例、27%)は炎症の測定値が上昇した患者や肺機能不全の患者が多く、δ型(2,667例、13%)は肝不全や敗血症性ショックの頻度が高かった。 検証コホートでも、敗血症の臨床病型の分布はほぼ同様であった。また、臨床病型によるバイオマーカーのパターンには、一貫した違いが認められた。 解析コホートの累積28日死亡率は、α型が5%(unique patient、287/5,691例)、β型が13%(561/4,420例)、γ型が24%(1,031/4,318例)、δ型は40%(897/2,223例)であった。すべてのコホートと試験における28日および365日死亡率は、δ型が他の3つの型に比べ有意に高かった(p<0.001)。 シミュレーションモデルでは、治療に関連するアウトカム(有益、有害、影響なし)は、これら敗血症の臨床病型の分布の変化と強く関連した(たとえば、早期目標指向型治療[EGDT]のRCTで臨床病型の頻度を変化させると、>33%の有益性から>60%の有害性まで、結果の可能性が変動した)。 著者は、「実臨床におけるこれら臨床病型の有用性を確定し、試験デザインやデータの解釈に有益な情報をもたらすには、さらなる研究を要する」としている。

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ABO血液型不適合腎移植は、生存・生着を改善するか/Lancet

 ABO血液型不適合腎移植(ABOi-rTx)は、脱感作プロトコルや最適化に進展がみられるものの、3年以内の死亡率や移植腎の非生着率がABO血液型適合腎移植(ABOc-rTx)を上回ることが、ドイツ・オットー・フォン・ゲーリケ大学マクデブルクのFlorian G. Scurt氏らによるメタ解析で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年4月18日号に掲載された。ABOi-rTxは、提供臓器不足の打開策としてその使用が増加しているが、早期および長期のABOc-rTxに対する非劣性のエビデンスが求められている。ABOc-rTxを対照とし追跡期間1年以上の観察研究のメタ解析 研究グループは、ABOi-rTxとABOc-rTxのアウトカムを比較した観察研究を系統的にレビューし、メタ解析を行った。2017年12月31日までに発表され、ABOc-rTxを対照として移植術後1年以上のフォローアップが行われ、移植腎および移植を受けた患者の生存に関するデータを含む論文を選出した。死体腎ABOc-rTxは除外した。 主要エンドポイントは、術後1、3、5年および8年以降の全死因死亡、および移植腎の生着率とした。メタ解析では、I2が0の場合は固定効果モデルを、I2が0以上の場合は固定効果と変量効果モデルの双方を用いた。 1998年1月~2017年9月に発表された40件(日本の12件を含む)の試験に参加した6万5,063例を解析の対象とした。ABOi-rTx群が7,098例(平均年齢:44.9歳[範囲:34~56])、ABOc-rTx群は5万7,965例(43.1歳[31~55])であった。長期的な生存、生着には差がない、組み直し腎臓提供の強化を ABOi-rTx群はABOc-rTx群に比べ、移植後の1年死亡率(オッズ比[OR]:2.17、95%信頼区間[CI]:1.63~2.90、p<0.0001、I2=37%)、3年死亡率(1.89、1.46~2.45、p<0.0001、I2=29%)および5年死亡率(1.47、1.08~2.00、p=0.010、I2=68%)が有意に高かったが、8年以降の死亡率に有意差は認めなかった(1.18、0.92~4.51、p=0.19、I2=0%)。 移植腎生着率(death-censored graft survival)については、ABOi-rTx群はABOc-rTx群に比べ、1年時(OR:2.52、95%CI:1.80~3.54、p<0.0001、I2=61%)および3年時(1.59、1.15~2.18、p=0.0040、I2=58%)は有意に低く、5年時(1.31、0.96~179、p=0.09、I2=75%)および8年以降(1.07、0.64~1.80、p=0.79、I2=66%)は有意な差がなかった。 移植腎喪失の割合は、5年時および8年以降は両群で同等であった。一方、ABOi-rTx群で敗血症の割合が高かったが、尿路感染症やサイトメガロウイルス感染症には有意な差はなかった。また、ABOi-rTx群は出血や血腫、リンパ嚢腫の頻度が高かった。拒絶反応の割合は、全体、境界領域、T細胞関連型には両群で差はなかったが、急性抗体関連型の拒絶反応はABOi-rTx群で高かった。 リツキシマブベースの脱感作プロトコルは、これを用いた場合および用いなかった場合の死亡率が、初回脱感作プロトコルの有無にかかわらず、1年時(リツキシマブ不使用[OR:2.70、95%CI:1.74~4.18、I2=27%、pheterogeneity=0.23]、リツキシマブ使用[1.97、1.14~3.42、I2=45%、pheterogeneity=0.02])および3年時(リツキシマブ不使用[2.37、1.04~5.42、I2=47%、pheterogeneity=0.11]、リツキシマブ使用[1.77、1.20~2.60、I2=11%、pheterogeneity=0.33])ともに、ABOi-rTx群がABOc-rTx群よりも高かった。 出版バイアスは検出されなかった。また、移植後5年までの結果は頑健であったが、それ以降のデータは無効または非結論的だった。 著者は、「これらの知見は、ABO血液型不適合腎移植を進めるのではなく、組み直し腎臓提供(kidney paired donation)を支持するものであり、腎臓交換プログラムのネットワークを拡大し、その活用を強化する行動を求めるものである」としている。

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第16回 発熱の症例・全てのバイタルが異常。何を疑う?-3【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回の症例は、発熱を来した症例です。発熱のため受診される高齢者は少なくありませんが、なかには早期に治療を開始しないと生命にかかわる場合もあります。患者さんDの場合◎経過──3家族の到着後、医師・訪問看護師、施設の職員とあなたは、家族とよく相談して、近隣の救急病院に救急搬送することにしました。その晩、帰宅したあなたは、SIRSと敗血症について調べてみました。「サーズ、サーズっと。あら?SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome;重症急性呼吸器症候群)とは違うのね?」教科書を読むと、細菌毒素などにより様々なサイトカインや血管拡張物質が放出されて末梢血管抵抗が低下し、相対的に循環血液量が減少することで血圧が低下、臓器への低灌流や臓器障害を来すことが書かれていました。臓器への低灌流や臓器障害を来している場合は重症敗血症(severe sepsis)」と呼ばれ、適切な補液を行っても改善しない血圧低下があること、血圧を維持するためにドパミンやノルアドレナリンなどの昇圧薬を必要とする場合には「敗血症性ショック(septic shock)」といわれること、さらに循環動態を安定化させるための初期治療(Early Goal Directed Therapy; EGDT)について学びました。「すぐに点滴を始めたのは、このためだったのね」敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016)と新しい敗血症の定義つい最近、敗血症診療ガイドラインが新しくなったのをご存知ですか?新しいガイドラインでは敗血症の定義は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と変更されました。敗血症の病態について、「感染症による全身性炎症反応症候群」という考え方から、「感染症による臓器障害」に視点が移されたわけです(図2)。本文の「経過3」には「臓器への低灌流や臓器障害を来している場合は『重症敗血症』と呼れ・・・」とありますが、この以前の重症敗血症が今回の敗血症になりました。また、敗血症性ショックの診断基準は、「適切な輸液にもかかわらず血圧を維持するために循環作動薬を必要とし、『かつ血清乳酸値>2mmol/Lを認める』」となりました。そこで何か感じませんか?そうなんです、敗血症の定義からSIRSがなくなったんです。SIRSは体温・脈拍数・呼吸数・白血球数から診断できますね。新しい敗血症はバイタルサインからその徴候に気付くことができるのでしょうか・・・。敗血症の診断「感染症によって臓器障害が引き起こされた状態」が新しい敗血症の定義でしたね。そこで、どうしたら臓器障害がわかるんだろうという疑問が出てきます。臓器障害は「SOFA(sequential organ failure assessment)スコア」によって判断します(表4)。感染症があり、SOFAスコアが以前と比べて2点以上上昇していた場合に臓器障害があると判断して、敗血症と診断します。この表をみるとすぐに点数を付けるのは難しいな・・・と思いますよね。そこで、救急外来などではqSOFA(quick SOFA)を使用します(表5)。意識の変容・呼吸数(≧22回/分)・収縮期血圧(≦100mmHg)の3項目のうち2項目以上を満たすときに敗血症を疑います。ガイドラインが新しくなったといっても、やはりバイタルサインによって敗血症かどうか疑うことができますね。敗血症が疑われたら、その次にSOFAスコアを評価して、敗血症と診断するわけです。具体的な診断の流れを図に示します(図3)。スライドを拡大するスライドを拡大するEGDT(Early Goal Directed Therapy)についてEGDTは、中心静脈圧・平均動脈圧などを指標にしながら、補液・循環作動薬などを使用して、尿量・血中乳酸値などを早期に改善しようとする治療法ですが、近年の臨床試験ではEGDTを遵守しても有益性は見いだせなかったという結果が得られました。ただ、敗血症性ショックに対する初期治療の一つは補液であることにかわりはありません。時の流れでガイドラインが変わっても患者さんを診るときにバイタルサインが重要なことは変わっていないようですね。エピローグ救急搬送先の病院で細菌学的検査、抗菌薬の投与、およびドブタミン、ノルアドレナリンによる治療が行われました。敗血症性ショックでした。約3週間が経ち、退院後にあなたが訪問すると、その91歳の女性は以前と同じようにベッドの上に寝ていました。以前と同じように寝たきりの状態で、以前と同じように職員の介助で何とか食事をしていました。本人の家族(長男)に新しく処方された薬について説明する機会がありました。ベッドサイドで長男と話をしていると、普段無表情な本人が、長男が来ているところを見て少しニコッと微笑んだように見えました。五感を駆使して、患者さんの状態を感じとる今回のポイントは、敗血症とSIRSの概念を知り、急を要する発熱を見極めることができるようになることでした。それともう1つ、今回のあなたは五感を駆使して患者さんの状態を知ろうとしました。ぐったりしているところや呼吸の状態を"視て"、呼吸が速い様子(息づかい)を耳で"聴き"ながら、手や手首を"触れて"体温や脈の状態を確認しました(味覚と嗅覚が入っていないなんて言わないでくださいね)。緊急度を素早く察知する手段のひとつですから、バイタルサインと併せて患者さんを注意して観察するとよいと思います。

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第15回 発熱の症例・全てのバイタルが異常。何を疑う?-2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回の症例は、発熱を来した症例です。発熱のため受診される高齢者は少なくありませんが、なかには早期に治療を開始しないと生命にかかわる場合もあります。患者さんDの場合◎経過──2 の続き観察とバイタルサインより今回の患者さんは、すべてのバイタルサインに異常があります。病態を知るためのヒントは数日間続いた発熱です。何らかの感染症(今回は尿路感染症)が増悪して、ABCのうちの呼吸や循環、さらに意識の状態にも異常を来したと考えられます。全身性炎症反応症候群(SIRS)と敗血症敗血症は、感染症によって生じた全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)と定義されます。と、いわれてもピンとこない人が多いと思いますので、図1をご覧ください。図1の右側の大きな円がSIRSで、感染症・外傷・熱傷・膵炎・その他の原因により、全身性に炎症反応を来した状態です。何らかの生体侵襲が加わると、まずは局所でサイトカインが産生されて炎症反応が起こります。さらに炎症が進むと炎症は局所に留まらず全身に広がります。そして、本来は有益であるはずの炎症反応が生体への破壊因子として働き、循環動態が悪くなり臓器不全が生じます。このように炎症反応は進行していきますが、表3の診断基準を満たすとき、私たちはSIRSと判断します。図1の左側の大きな円が感染症ですから、感染症によってSIRSを生じた場合(左右の大きな円が重なる部分です)、敗血症と診断されるわけです。ここで強調したいことは、SIRS診断基準の4項目〈表3〉のうち白血球数を除く3項目がバイタルサインであることです。詳しい診察や手間のかかる検査は必要なしにSIRSを見つけることができ、感染症があれば敗血症と診断できます。敗血症であれば一刻も早い抗菌薬の投与が必要になります。通常、補液(生理食塩液、乳酸リンゲル液)を開始しながら各種培養検査(細菌学的検査)を提出し、抗菌薬を開始しますが、この女性の場合は施設内での訪問診療なのでまずは補液を行いました。抗菌薬は広域の抗菌スペクトラムを持つ抗菌薬で開始し、細菌検査結果より狭域の抗菌薬にスイッチします。

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第14回 発熱の症例・全てのバイタルが異常。何を疑う?-1【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回の症例は、発熱を来した症例です。発熱のため受診される高齢者は少なくありませんが、なかには早期に治療を開始しないと生命にかかわる場合もあります。患者さんDの場合◎経過──191歳、女性。脳梗塞による後遺症のため寝たきりの生活で、施設に入所しています。自力では起き上がることができず、介助により車いすに移乗します。食事も介助を必要とします。自分でトイレに行くことができないのでオムツを使用しています。本日、あなたが施設に薬を届けに行くと、いつもは車いすに座っているのですが、今日はぐったりした様子でベッドに横になっていました。「少し熱があるみたいなんです」と施設の職員が言いました。「そうですか...」あなたは本日嘱託医が処方した内服薬に、解熱鎮痛薬が含まれていることに気が付きました。その日のバイタルサインは、表1のとおりです。体温の調節と発熱私たちの体温は、脳の視床下部にある体温調節中枢で調節されており、病原体に感染したりして侵襲を受けると上昇します。これが発熱です。猛暑のときの高体温(熱中症)とは機序が異なり、治療法も異なることは知っておくべきです。また、体温が1℃上昇すると、脈拍数が約20回/分上昇することも、思い出しておいてくださいね。◎経過──2数日後、たまたま別の用件でその施設を訪れたあなたは、施設の職員に先日発熱していた女性が具合悪そうだと聞きました。昨日の夜から食事も摂れない状態でした。もともと元気のある方ではないのですが、先日よりぐったりして呼びかけても眼を開けません。呼吸は速いように見えます。手をとると体温がとても高いことがすぐにわかりました。手首の動脈(橈骨動脈)を触れると脈は速くて弱く、毛細血管再充満時間(capillary refilling time; CRT)は3秒にまで延長していました。あなたは「ショックの徴候がある...」と考えました。「先生への連絡は?」とあなたが職員に尋ねると、「先ほど連絡しましたから、もうそろそろ着く頃と思うのですが...」と言われました。あなたが確認したバイタルサインは、表2のとおりです。到着した医師・看護師は診察を行い、導尿(尿道に管を入れて尿を排出させること)すると、膿のような濁った尿が排出されました。「尿路感染による(敗血症)だ」医師はそうつぶやくと、職員に家族を呼ぶよう依頼しました。看護師は生理食塩液の点滴を末梢静脈から速い速度で開始しました。

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第11回 意識障害 その9 原因が1つとは限らない! それで本当におしまいですか?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)確定診断するまで思考停止しないこと!2)検査は答え合わせ! 異常値だからといって、原因とは限らない!3)急性か慢性か、それが問題だ! 検査結果は必ず以前と比較!【症例】68歳男性。数日前から発熱、倦怠感を認め、食事量が減少していた。自宅にあった解熱鎮痛薬を内服し様子をみていたが、来院当日意識朦朧としているところを奥さんが発見し救急要請。救急隊の観察では、明らかな構音障害や麻痺は認めず、積極的に脳卒中を疑う所見は乏しい。●搬送時のバイタルサイン意識10/JCS、E3V4M6/GCS血圧142/88mmHg脈拍78回/分(整)呼吸20回/分SpO295%(RA)体温38.2℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧(50歳〜)、脂質異常症(44歳〜)内服薬アムロジピン、アトルバスタチン今回は意識障害の最終回です。今までいろいろと述べてきましたが、復習しながら鑑別を進めていきましょう。意識障害の原因は“AIUEOTIPS”に代表されるように多岐にわたります。難しいのは、何か1つ意識障害の原因となりうるものを見いだしたとしても、それのみが原因とは限らないことです。脳出血+痙攣、敗血症+低血糖、アルコール+急性硬膜下血腫、急性期疾患+薬剤の影響、などはしばしば経験します。目の前の患者さんの症状は、自身が考えている原因できちんと説明がつくのか、矛盾点は本当にないのか、最終的に診断をつける際には必ず自問自答しましょう。救急外来での実際のアプローチ今回も10’s rule(表1)をもとに考えていきましょう。画像を拡大する患者さんは数日前から発熱を認め、徐々に状態が悪化しているようです。血圧はやや高めですが、CPSS※(構音障害、顔面麻痺、上肢の麻痺)陰性で、頭痛の訴えもなく脳卒中を積極的に疑う所見は認めませんでした。糖尿病の既往もなく、低血糖の検査前確率は低いですが、感染症(とくに敗血症)に伴う副腎不全や薬剤などの影響で、誰もが低血糖になりうるため、10’s ruleにのっとり低血糖は否定し、頭部CT検査を施行する方針としました。CTでは、予想通り明らかな異常は認めませんでした。qSOFAは意識障害以外該当しないものの、発熱も認め感染症の関与も考え、fever work upを施行する方針としましたが…。※ Cincinnati Prehospital Stroke Scale急性か慢性か、それが問題だ!採血(もしくは血液ガス)の結果でNa値が126mEq/Lを認めました。担当した研修医は、「低ナトリウム血症による意識障害の可能性」を考えました。これはOKでしょうか?採血以外にも、救急外来では心電図やX線、エコー、CTなどの検査を施行することは多々あります。その際、検査に何らかの異常を認めた際には、必ず「その異常はいつからなのか?」という視点を持つ必要があります。以前と異なる変化であれば、今後介入の必要はあるかもしれませんが、少なくとも急性の変化と比較し、緊急性はぐっと下がります。以前の結果と比較(問い合わせをしてでも)することを心掛けましょう。忙しい場合には面倒に感じるかもしれませんが、急がば回れです。不適切な介入や解釈を行わないためにも、その手間を惜しんではいけません。低ナトリウム血症は高齢者でしばしば認めますが、急性の変化でない限り、そして著明な変化でない限り、通常無症候性です。救急外来では120mEq/L台の低ナトリウム血症では、最低限の介入(塩分負荷または飲水制限)は原因に応じて行いますが、それのみで意識障害、痙攣、食思不振などの直接的な原因とは考えないほうがよいでしょう。慢性的な変化、もしくは何らかの急性疾患に伴う変化と考え対応する癖を持ちましょう。大切なのはHi-Phy-Vi!Rule 2にもありますが、やはり大切なのは病歴、身体所見やバイタルサイン(Hi-Phy-Vi:History、Physical、Vital signs)です。この患者さんは、急性の経過で発熱を伴っています。そして、熱のわりには心拍数は上昇していません。このような経過の患者さんに低ナトリウム血症を認めたわけです。何かピンッとくる疾患はあるでしょうか?急性の経過、そしてSIRSやqSOFAは満たさないものの、発熱を認め、呼吸回数も高齢者にしては多いという点からは、感染症の関与が考えられます。菌血症を疑わせる悪寒戦慄は認めませんでしたが、いわゆる細菌感染症として頻度が高いfocusは鑑別の上位に挙がります(参考に第6回 意識障害 その5)。肺炎、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症、胆道系感染症などは意識して所見をとらなければ高齢者では容易に見逃してしまうものです。この患者さんは改めて聴診すると、右下葉で“coarse crackles”を聴取しました。同部位のX線所見も淡い浸潤影を認めました。しかし、喀痰のグラム染色では有意な菌は認められませんでした。もうおわかりですね?レジオネラ症(Legionella disease)意識障害などの肺外症状(表2)、グラム染色で優位な菌が認められないとなると、必ず鑑別に入れなければならない疾患が「レジオネラ症」です。レジオネラ肺炎は重症肺炎の際には必ず意識して対応しますが、本症例のように明らかな酸素化低下などの所見が認められない場合や肺外症状をメインに来院した場合には、意識しなければ、初診時に診断することは容易ではありません。しかし、レジオネラ肺炎(Legionella pneumophila)は、マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)やクラミドフィラ(Chlamydophila pneumoniae)など、そのほかの非定型肺炎とは異なり、初診時に疑い治療介入しなければ、予後の悪化に直結します。見逃してはいけないわけです。画像を拡大するレジオネラ症を疑う手掛かりとしては、私は表3を意識するようにしています2,3)。そのほか、検査結果では、電解質異常(低ナトリウム血症、低リン血症)、肝機能障害、CPK上昇を意識しておくとよいでしょう。絶対的なものではありませんが、レジオネラ症らしいか否かを判断するスコアもあるので一度確認しておきましょう4)。画像を拡大するさいごに意識障害の原因は多岐にわたります。自信を持って確定診断するまでは、常に「本当にこれが原因でよいのか?」と自問自答し、対応することが大切です。忙しいが故に検査結果などの異常値を見つけると、そこに飛びつきたくなりますが、そもそも何故その数値や画像の異常が出るのか、それは本当に新規異常なのか、症状は説明がつくのか、いちいち考える癖をつけましょう。その場での確定診断は難しくとも、イチロー選手のように「後悔などあろうはずがありません!」と断言できるよう、診断する際にはこれぐらいの覚悟で臨みましょう。1)Cunha BA. Infect Dis Clin North Am. 2010;24:73-105.2)坂本壮. 救急外来ただいま診断中!. 中外医学社;2015.p.280-303.3)坂本壮. 救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに. シーニュ;2017.p.65-67.4)Gupta SK,et al. Chest. 2001;120:1064-1071.

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プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症には速やかな抗菌薬処方が有効(解説:小金丸博氏)-1023

 尿路感染症は高齢者における最も代表的な細菌感染症である。重症度は自然軽快する軽症のものから、死亡率が20~40%に至る重症敗血症まで幅広い。高齢者では典型的な臨床経過や局所症状を認めないことも多く、診断は困難である。そのうえ、65歳以上の女性の20%以上に無症候性細菌尿を認めることが尿路感染症の診断をさらに困難にする。 現在、薬剤耐性菌を減らすための対策として世界中で抗菌薬の適正使用を推進する動きがある。最近の英国からの報告によると、2004年~2014年の間にプライマリケアにおける高齢者の尿路感染症に対する広域抗菌薬の処方は減少していたが、その一方でグラム陰性菌による血流感染症が増加しており、その関連性が議論されている。 本研究は、高齢者の下部尿路感染症患者に対する抗菌薬治療介入の方法と治療成績の関係を検討した後ろ向きコホート研究である。英国のプライマリケアを受診した65歳以上の患者のうち、下部尿路感染症と確定診断、あるいは疑われた全患者を対象とした。無症候性細菌尿、複雑性尿路感染症、入院例などは除外された。抗菌薬の処方タイミングによって、即時処方群(初回診断日に処方)、待機処方群(初回診断日から7日以内に処方)、処方なし群の3群に分類し、診断から60日以内の血流感染症、全死亡率などを比較した。その結果、60日以内の血流感染症の発生率は即時処方群が0.2%だったのに対し、待機処方群は2.2%、処方なし群は2.9%と有意に高率だった(p=0.001)。共変量で補正すると、即時処方群と比較した待機処方群の血流感染症のオッズ比は7.12(95%信頼区間:6.22~8.14)、処方なし群のオッズ比は8.08(同:7.12~9.16)だった。60日以内の全死亡率は、即時処方群が1.6%、待機処方群が2.8%、処方なし群が5.4%だった。多変量Cox回帰モデルで解析した結果、高齢、男性、Charlson併存疾患指数、喫煙などが60日以内の死亡と関連があった。特に、85歳以上の男性において死亡リスクが高かった。 本研究において、高齢者の下部尿路感染症に対して抗菌薬を即時処方することで、その後の血流感染症発生率や死亡率を減らすことが示された。後ろ向き研究であるものの、英国のデータベースを用いた非常に患者数の大きい研究であり、結果の信頼度は高い。研究のlimitationとして、菌名や耐性菌の割合など原因微生物の情報がないこと、患者の服薬遵守率が不明なこと、続発した血流感染症の侵入門戸が尿路かどうか不明なことなどが挙げられる。耐性菌を蔓延させないために抗菌薬の使用量を減らす努力は重要であるが、高齢者の尿路感染症に対して抗菌薬を投与することは妥当と考える。ただし、無症候性細菌尿に対して抗菌薬を投与することは厳に慎まなければならない。 本研究の結果をみると即時処方群が86.6%を占めていたが、本邦では高齢者の尿路感染症に対してもっと高率に抗菌薬を処方していると思われる。処方された抗菌薬をみてみると、トリメトプリム、ニトロフラントインがセファロスポリンやペニシリン系より多かった。キノロン系抗菌薬の割合が4.4%と少なかったことは、日本のプライマリケアの現場でも大いに見習うべき点であろう。

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薬剤抵抗性AF、薬剤変更とアブレーションでQOL比較/JAMA

 1種以上の抗不整脈薬またはβ遮断薬に対し治療抵抗性を示す症候性心房細動(AF)患者に対して、カテーテルアブレーションの施行は、異なる抗不整脈薬を投与し薬物療法を続けた場合と比べ、12ヵ月後の生活の質(QOL)が大幅に改善したことが示された。スウェーデン・ウプサラ大学のCarina Blomstrom-Lundqvist氏らが、155例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年3月19日号で発表した。結果について著者は、「本試験は盲検化がなされていない点で限定的だが、カテーテルアブレーションはQOLに関しては優位な可能性がある」とまとめている。MOS SF-36で1年後のQOLを評価 研究グループは2008年7月~2013年5月に、スウェーデン4ヵ所、フィンランド1ヵ所の計5病院を通じて、6ヵ月以上のAFを認め、1種以上の抗不整脈薬またはβ遮断薬に対し治療抵抗性を示す30~70歳の患者155例を対象に試験を行い、4年間追跡した(試験終了は2017年9月28日)。主な除外基準は、駆出分画率35%未満、左心房径60mm超、心室ペーシング依存、アブレーション歴ありだった。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはカテーテルアブレーションを行い(79例)、もう一方には服用歴のない抗不整脈薬を投与した(76例)。 主要評価項目は、ベースラインと12ヵ月後の総合的健康状態(GH)サブスケールスコアで、MOS SF-36(Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Survey)を用いて非盲検下で評価した(範囲:0[最悪]~100[最良])。副次評価項目は、植込み型心臓モニターで測定したベースラインから12ヵ月後のAF負荷(時間の割合[%])の変化など26項目とした。なお当初3ヵ月間は、リズム分析から除外した。1年後GHスコア、アブレーション群で有意に増加 被験者155例は、平均年齢56.1歳、女性が22.6%を占め、97%が試験を完遂した。 アブレーション群79例のうち、実際にアブレーションを受けたのは75例だった。2例が抗不整脈薬群に移行した。アブレーション群75例のうちアブレーション再施行を受けたのは14例だった。抗不整脈薬群76例のうち、実際に薬を服用したのは74例だった(平均1.71剤を服用)。8例がアブレーション群に移行した。74例のうち、43例が服用1剤目で抵抗性を示した。 ベースラインから12ヵ月後のGHスコアは、抗不整脈薬群は62.7から65.4ポイントへの増加に対し、アブレーション群は61.8から73.9ポイントへ増加し、有意差が認められた(群間差:8.9ポイント、95%信頼区間[CI]:3.1~14.7、p=0.003)。 26の副次評価項目のうち5項目について解析した結果、2項目については意義のある結果は示されなかったが、2項目について統計的に有意な結果が認められた。そのうち、ベースラインから12ヵ月後のAF負荷の変化は、抗不整脈薬群は23.3%から11.5%への減少に対し、アブレーション群は24.9%から5.5%へと減少した(群間差:-6.8ポイント、95%CI:-12.9~-0.7、p=0.03)。また、MOS SF-36サブスケール7つのうち5つで有意な改善を認めた。 最も多くみられた有害イベントは、アブレーション群は尿路性敗血症(5.1%)、抗不整脈薬群は心房性頻脈(3.9%)だった。

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