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エキスパートDrへのQ&A

高齢者の水分制限(とくに夜間)をどの程度すべきでしょうか?高齢者であっても、水分、アルコール、カフェインの摂取は控えたほうがよいでしょう。高齢者の中には、飲水による「血液さらさら」効果を期待して過度の飲水をされる方がいますが、実際には、過度の飲水をしても血液粘調度は生理的な範囲内に留まり、いわゆる「血液さらさら」効果は認められないと報告されています1)。このことからも、虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが無い限り、睡眠前に水分をたくさん摂取する必要はないと考えます。就寝前の摂取はもちろんですが、夕食後にも摂取を制限することも有用です。高齢者では、お茶を飲まれる方も多いものです。「お茶を飲むなら夕方までにしてください」などと伝えることも有効です。水分摂取量の目安ですが体重の2~2.5%程度とされています。体重60kgの方であれば1日1200~1500mLとなります。ある程度、目安を示しながら水分制限を試みてください。1)Sugaya K,et al.Int J Urol 2007;14:470-472.夜間多尿が原因の夜間頻尿が最も困ります。実際に保険適応の薬もなく、ガイドラインの内容では対応できない症例が多いです。診療のコツを教えてください。『夜間頻尿診療ガイドライン』には、はじめに排尿日誌を記載いただき、尿量を把握したうえで診断を行うアルゴリズムが示されています。しかし、一般医家では、まず投薬してみて、効果があるかないかで判断するケースもあるのではないでしょうか。難治例には排尿日誌をつけていただくという方針でも結構かと思います。そのうえで、「夜間多尿」と診断された場合の対応ですが、水分、カフェイン、アルコールの過剰摂取が原因となっていることもあるため、まずは問診などで病因把握を行ってみてください。とくに就寝前の水分摂取が原因となる場合が多いので、その場合は水分制限が重要です。また利尿作用を有する薬剤を就寝前に服用しているケースもあります。とりわけ、利尿薬やCa拮抗薬は、服用者も多いので注意が必要です。その場合、薬剤を就寝直前に服用しないことはもちろん、逆に夕方までに服用していただき、就寝までに排尿してしまうなどの工夫で、就寝後の利尿を少なくすることができると期待できます。夜間頻尿については、本サイトの症例検討会でも取り上げていますので、そちらも参考にしていただきたいと思います。夜間頻尿で睡眠障害がある方に対して、睡眠薬を使用する場合に、どのような睡眠薬を推奨されますか?まず、患者さんの睡眠障害のタイプを把握することが大切です。寝入りばなにトイレに行きたくなる人やトイレが気になって寝付けないといった方は入眠障害に効く超短時間型が適切ですし、中途覚醒がある場合には短時間~中時間型でゆっくり眠らせることが重要になります。患者さんの不眠症のタイプに応じて適切な睡眠薬を選択することが望ましいといえます。ただし、最近、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因で頻尿になっている方もみられます。気道の狭い方に睡眠薬を投与することで、SASの症状を悪化させてしまう可能性もありますので、いびきがひどく、無呼吸になることがあるなどSASの可能性が疑われる場合には、SASの専門医に一度受診を勧めてみてはいかがでしょうか。過活動膀胱の薬物投与における、効果判定と薬剤の追加や変更のタイミングについて教えてください。効果判定は、I‐PSSやOABSSなどの質問票を用いるもよいかと思いますが、過活動膀胱は患者さんのQOLを向上させることが重要なため、患者さんに直接質問し、QOLの向上を効果判定基準にすることが重要だと思います。次に、判定の時期ですが、排尿障害治療薬の効果は一般的に3~4ヵ月程度で安定してくるため、その時点で一度効果を判定するのがよいでしょう。薬剤の追加や変更ですが、同じカテゴリーの薬剤であってもそれぞれ特徴があります。たとえば主要なα1遮断薬としてタムスロシン、ナフトピジル、シロドシンの3剤がありますが、各薬剤に特徴があります。具体的には、ナフトピジルは蓄尿障害に効果がある、シロドシンは排尿障害に効果がある、タムスロシンはその中間、などです。そこで、シロドシンで夜間頻尿が改善しない場合、ナフトピジルに変更する、タムスロシンで排尿障害が改善しない場合にはシロドシンに変更する、など患者さんの症状に応じて薬剤を変更することも有用と考えています。ミラベクロンの男性への投与は解禁と考えていいのでしょうか?また、ミラベクロンと抗コリン剤の併用について、適応や注意点などを教えてください。これまでもミラベクロンの男性への投与は禁止されていませんでしたが、警告欄に「生殖可能な年齢の患者には投与を出来る限り避ける」と注意喚起されていることから、投与を躊躇していた方も多いと思います。これは、生殖機能があるときの投与が推奨されない、ということですので、患者さんが子供を作る予定がないのであれば第一選択薬としてもよいでしょう。ただし、ミラベクロンも排出障害をまったく起こさないわけではありません。尿閉も報告されていますので、個人的には、単独投与よりはα1遮断薬と併用しながら慎重に使っていただきたいと思います。ミラベクロンと抗コリン薬の併用については、エビデンスが確立するまでは、まだ待っていただきたいと思います。現在、日本で臨床試験を実施中ですので、2剤の併用については試験結果の発表を待って判断すべきと考えています。

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エキスパートDrへのQ&A

前立腺肥大症、過活動膀胱合併例の治療法について教えてください。前立腺肥大症については、通常、排出症状と蓄尿症状の両方を合併している場合がほとんどです。特に、蓄尿症状がQOLを低下させる傾向にあります。その場合、α1遮断薬のみでは対応できないため、抗コリン薬を併用することになります。この2剤の併用は、エビデンスもあることから専門医は積極的に行っています。しかし、抗コリン薬は尿閉のリスクがあるため、一般医科の先生方に積極的に勧められるものではありません。一般医科で抗コリン薬を使用する場合には、まず残尿をモニターできる施設であることが必要となります。α1遮断薬投与しても、残尿が50mL以上を認める場合、抗コリン薬の投与は望ましくないと考えて下さい。次に、前立腺肥大症に夜間頻尿を合併している場合ですが、抗コリン薬を朝投与した場合は有効性が低下するといわれています。短時間作用型の抗コリン薬を就寝前1回または夕食後に投与することが有効といえます。排尿障害患者さんの治療において、専門医を紹介するタイミングについて教えてください。α1遮断薬を投与しても、50mL以上の残尿が認められる患者さんは専門医へ紹介ください。残尿のモニターが可能であれば抗コリン薬を併用してもよいですが、併用後残尿が50mLを超える場合にも相談いただく方がよいと思います。そのほか、排尿障害の背景にがんが隠れている可能性もあります。前立腺肥大症の診断の際には必ずPSAを測定してください。カットオフ値としては4.0ng/mLを参考としますが、若い方はより低めの値から注意して経過観察を行う必要があります。また血尿が持続する場合は、膀胱癌のほか、尿路結石などの可能性がありますので専門医へご紹介ください。デュタステリドは基本的にはα1遮断薬と併用するというスタンスでよいのですか?ファーストチョイスになりえますか?PSA低下作用や、高価なこともあり、基本的にファーストチョイスにはしていないのですが・・・。いかがでしょうか?デュタステリドは前立腺体積30mL以上の場合に適応になります。第一選択薬にもなりえますが、α1遮断薬と併用するというスタンスでよいでしょう。ただし性機能障害の副作用があるので、50代以下の男性に投与する場合はその点を理解していただいてから投与することが大切です。デュタステリドの効果発現には3~4ヵ月を要しますので、即時効果を期待する場合は、α1遮断薬との併用が必要になります。ただし、デュタステリドはPSAを低下させるため、前立腺癌の存在をマスクしてしまう可能性があります。投与中は必ずPSAをモニターしておくことが重要です。なお、デュタステリドはPSA値を低下させますが、がん発生抑制効果はないと考えられています。デュタステリドは約1年で3割程度前立腺体積を減少させ、PSA値を6ヵ月~1年で50%程度低下させます。投与後、徐々にPSAが増加するようであれば前立腺癌の可能性があると判断し、専門医へ紹介ください。デュタステリドの投与を中止すると前立腺体積も戻ります。数ヵ月程度で増加しますが、30mL以内に留まっている分にはデュタステリドの中止を継続して問題ありません。α1遮断薬と抗コリン薬の併用で十分な効果がない場合の次の一手について、漢方薬も含めて教えてください。漢方薬としては、八味地黄丸や牛車腎気丸があります。ガイドライン上の記載では推奨グレードC1「行ってもよい」となっています。治療選択肢のひとつにはなりますが、積極的に勧められるわけではありませんので、患者さんの希望などを加味したうえでご判断いただければと思います。

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排尿障害』アンケート結果

対象ケアネット会員の医師(一般内科・泌尿科)455名方法インターネット調査実施期間2013年9月10日~9月17日Q1先生が診療されている、薬物治療中の排尿障害患者さん(前立腺肥大症、過活動膀胱など)についてお伺いします。薬物治療期間で最も多い層をお選びください。Q2排尿障害の診断に、IPSS(国際前立腺症状スコア)、OABSS(過活動膀胱症状質問票)などの質問票を用いていますか?Q3「抗コリン薬で治療中の排尿障害患者さん」の残尿測定の実施状況についてお伺いします。先生の診療状況に最も近いものをお選びください。Q4PSA(前立腺特異抗原)検査についてお伺いします。先生の診療状況に最も近いものをお選びください。Q5生活習慣病と排尿障害の関係についても示唆される報告があるようです。生活習慣病の患者さんに、排尿障害の有無について確認することはありますか?2013年9月ケアネット調べ

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5-ARI、前立腺がんリスクを低減、重症がんは抑制せず/BMJ

 前立腺肥大症による下部尿路症状の治療として5α還元酵素阻害薬(5-ARI)の投与を受けた男性では、Gleasonスコア2~7の前立腺がんのリスクは低下するが、Gleasonスコア8~10のリスクには影響がみられないことが、スウェーデン・ウメオ大学のDavid Robinson氏らの検討で示された。2つの無作為化試験(PCPT試験、REDUCE試験)により、5-ARI投与は前立腺がん全体のリスクを23~25%低下させる一方で、Gleasonスコア8~10の前立腺がんのリスクはむしろ増大させることが示されている。この知見に基づき、米国食品医薬品局(FDA)は2011年、「5-ARIはより重篤な前立腺がんのリスクを増大させる可能性がある」との安全性に関する勧告を発表している。BMJ誌オンライン版2013年6月18日号掲載の報告。前立腺がんのリスクを症例対照研究で評価 研究グループは、下部尿路症状の治療として5-ARIの投与を受けた男性における前立腺がんの発症状況を評価する地域住民ベースの症例対照研究を実施した。 Prostate Cancer data Base Sweden 2.0から2007~2009年に前立腺がんと診断された男性のデータを抽出し、全国的な前立腺がんレジストリーなどを用いて前立腺がんの診断前に5-ARIを投与されていた患者のデータを収集した。 1症例に対し背景因子をマッチさせた5例の対照を無作為に選出した。2万6,735例の症例(平均年齢69.3歳、前立腺切除術3.7%)と13万3,671例の対照(同:69.3歳、4.2%)のうち、それぞれ1,499例、6,316例が5-ARIの投与を受けていた。Gleasonスコア8~10の診断の前に5-ARIを使用していたのは412例だった。Gleasonスコア8~10の前立腺がんのリスク上昇は認めず 全体の前立腺がんリスクは5-ARI投与期間が長くなるに従って低下し、投与期間が3年以上の男性における発症リスクのオッズ比(OR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.59~0.89、傾向性検定:p<0.001)であった。同様のパターンが、Gleasonスコア2~6および7の患者にも認められた(いずれも傾向性検定:p<0.001)。 これに対し、Gleasonスコア8~10の前立腺がんのリスクは5-ARI投与期間が延長しても低下せず、投与期間0~1年のORは0.96(95%CI:0.83~1.11)、1~2年のORは1.07(同:0.88~1.31)、2~3年は0.96(同:0.72~1.27)、3年以上は1.23(同:0.90~1.68)であった(傾向性検定:p=0.46)。 著者は、「前立腺肥大症による下部尿路症状の治療として5-ARIの投与を受けた男性では、Gleasonスコア2~7の前立腺がんのリスクは低下したが、最長で4年の治療を行ってもGleasonスコア8~10の前立腺がんのリスク低下のエビデンスは得られなかった」と結論し、「以前の2つの試験で報告されたGleasonスコア8~10の前立腺がんのリスク上昇は、本試験では確認されなかった。5-ARIは下部尿路症状や手術の可能性を抑制し、精神面におけるベネフィットや重篤な副作用がないという長所を持つことからバランスのよい治療法と考えられる」と考察している。

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退院後30日以内の再受診のうち救急部門受診が約4割/JAMA

 米国・エール大学医学部のAnita A. Vashi氏らは、米国内3州の約1年間の退院データ解析の結果、急性期病院からの退院後30日以内の救急部門再受診が成人患者で一般的にみられ、急性期病院の再受診患者のうち39.8%を占めることを報告した。再入院率は急性期治療後における医療ケアの質の改善の指標とされており、退院後早期の救急部門受診も同様に、退院後における急性期の医療ケアの質の指標とみなされているが、これまで退院後早期の救急部門利用に関する調査はほとんど行われていなかった。JAMA誌2013年1月23・30日号掲載の報告より。米国3州の503万件余の退院データを解析 研究グループは、2008年7月1日~2009年9月31日に、カリフォルニア州、フロリダ州、ネブラスカ州の急性期病院を退院した18歳以上の患者データ(Healthcare Cost and Utilization Project state inpatient and ED databases)を入手し前向きに解析した。解析には、402万8,555人の患者に関する503万2,254件の入院データが組み込まれた。 主要エンドポイントは退院後30日以内の、(1)救急部門を受診(再入院せず)した割合、(2)再入院(理由は問わず)した割合、(3)救急部門を受診し再入院した割合の3つとした。 解析患者の平均年齢は53.4歳であり、65歳以上は29.2%だった。退院後30日以内の急性期病院受診は17.9% 解析の結果、退院後30日間に、17.9%(95%信頼区間:17.9~18.0)が1回以上の急性期病院を受診していた。また、退院後に急性期病院を受診した123万3,402件のうち、救急部門の受診は、39.8%(同:39.7~39.9)だった。 退院1,000件につき、再入院を伴わなかった救急部門受診は、97.5件(同:97.2~97.8)であり、再入院は147.6件(同:147.3~147.9)だった。 再入院を伴わない救急部門受診の頻度は、乳房悪性腫瘍患者が最も低く、退院1,000件当たり22.4件(同:4.6~65.4)である一方、最も頻度が高いのは単純性良性前立腺肥大症患者で、退院1,000件当たり282.5件(同:209.7~372.4)だった。 退院後の救急部門受診の理由はさまざまであったが、入院時に受けた手術や処置、退院時の病状との関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)本記事に対するコメント(名郷 直樹 氏)国民皆保険の日本こそこういう解析を!

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女性医師1,000人に聞きました!出産後の復職どうする?復帰にあたっての不安材料は

先生の勤務先には、出産後に職場復帰された女性の先生はいらっしゃいますか?あるいは先生ご自身がまさに子育て真っ最中でしょうか。いまや国家試験合格者の3割が女性である現在、妊娠中のフォロー、出産・子育て期間中の業務分担をどうするかは避けて通れない問題です。今回は女性医師1,000人に、出産後の復職についてどのように考えるか、経験者の方へは経験談をお尋ねしました。制度の利用、上司・同僚の反応、仕事と家庭生活の両立、キャリア形成の壁などいくつもジレンマを抱えていることが明らかに…セキララコメントも必見です!コメントはこちら結果概要約7割の女性医師が時短・非常勤の勤務を望むが、経験者の半数近くがフルタイムで復帰今後出産を考えている女性医師のうち、施設の別を問わず『短時間あるいは非常勤で復帰したい』と回答したのは約7割。一方、実際に出産した医師の経験で最も多い回答は『同じ施設にフルタイム勤務』で37.7%。『別の施設でのフルタイム勤務』(8.4%)と併せると約半数がフルでの復帰という結果となった。50代以上では「時短勤務どころか育休すらなかったため」「妊娠中・授乳中も当直した」「夜間の呼び出しに子どもを連れて行った」といったエピソードが多く寄せられた。経験者のうち『時短・非常勤』を選択した医師は若い年代ほど増えるが、30~40代においても「フルで復帰するか退職かを迫られた」「上司の理解がなく、制度があっても使えなかった」といった声が多数見られた。いちばんの不安材料は『子どもを預ける施設』、病院に勤務しながら病児保育探しに奔走産後の生活を検討する際の不安材料について上位3つまで選択してもらったところ、経験者から最も多く挙がったのが『保育所・病児保育など施設の利用』で48.9%に上った。「自院の保育所は看護師しか利用できない」「自分が手術中に、発熱した子どもをすぐ迎えに来るよう保育所から連絡がきて途方にくれた」といったコメントが寄せられ、通常の保育所の確保に加え、病院勤務にも関わらず病児保育探しに奔走していることを嘆く声が多く挙がった。一方「子どもはペットではない、長時間預けっぱなしにできれば解決する問題ではなく、医師全体での勤務時間短縮が必要」といった意見も寄せられた。同僚の厳しい視線、精神的に耐えかねて退職・転職も産後の復帰形態を大きく左右する要因として、“上司・同僚の理解”を挙げる声が多く寄せられた。「施設の制度が整っていても、『所属科の前例がない』と言われる」「産後の当直免除について男性医師から『オレにも子どもはいる』などと反対された」などのほか、子どものいない女性医師の視線がいちばん厳しいといった意見もあった。周囲の冷遇に加えて、同僚の負担が増えることへの申し訳なさから退職を選んだとする回答も。子どものいる女性医師だけの問題ではなく、医師全体が過重労働であることの改善が必要との声も挙がった。家族の協力の有無に大きく左右される復帰形態特にフルタイム勤務の継続に関し、家族(特に実母)の育児協力の有無が大きいとした意見が多かった。実家から遠いその他の理由で協力が得られない状況の場合、時短・非常勤勤務を選ばざるを得ない医師が多いこともコメントからうかがえる。一方、「子どもはほとんど母が育てたようなもので、それでよかったのか疑問」といった声も。また夫も医師という場合は特に家事・育児への協力が得られない場合が多く、「夜中に患者が急変し、寝ている子どもをおいて出かけざるを得ず、綱渡りのような生活」など、周囲の環境と子ども、自分の心身のバランスに疲弊する日々を“綱渡り”と表現する医師も複数見られた。描いていた将来像に必要な知識・経験の不足から、やむなくキャリア転換も今後出産したいとする医師の最大の不安点として、『現場感覚の薄れ』『技術・知識の遅れ』が挙げられた。実際に経験者からは、「勉強や学会参加など自己研鑽に充てられる時間が大幅に減った」「病棟を担当できず知識・経験を蓄積できないため専門医取得ができないまま」、その他、本来の専門をあきらめ転科あるいは産業医や公衆衛生関係などに転向したというケースも寄せられた。設問詳細女性医師の出産後の復職についてお尋ねします。12月3日の長崎新聞によると『厚生労働省の2010年の調査によると、医師は全国に約29万5千人おり、そのうち女性は18.9%の約5万6千人。県内でも医師4062人のうち、15.3%の621人が女性で、1996年の327人からほぼ倍増した。20年後には医師の4人に1人が女性になるのではないかともみられている。しかし、医師不足などを背景に産休や育児休暇を取りにくいなど、職場環境が整備されていないために妊娠、出産を機に辞めてしまうケースもある。女性医師が増える中でそうした課題を放置しておくことは、医療崩壊を招く原因にもなるという(略)』とのこと。そこで先生にお尋ねします。Q1.ご自身について当てはまるものをお選び下さい。1.配偶者あり、子どもあり2.配偶者あり、子どもなし3.配偶者なし、子どもあり4.配偶者なし、子どもなしQ2.出産後数年間について、どういった働き方を選びたいですか?出産された方は当時の選択に近いものをお答え下さい。1.出産前と同じ施設にフルタイム勤務2.出産前と同じ施設に短時間あるいは非常勤で勤務3.一度退職し、別の施設でフルタイム勤務4.一度退職し、別の施設で短時間あるいは非常勤で勤務5.退職し、医師としての仕事はしない6.子どもをもうけるつもりはない7.その他(Q2で「子どもをもうけるつもりはない」を選択した方以外)Q3.出産後の生活をどうするか検討するにあたり、特に不安に感じることはありますか?出産された方はその当時の考えをお選び下さい(3つまで選択可) 1.医療技術・知識が遅れること 2.臨床現場の感覚が薄れること 3.勤務施設内で、短時間・非常勤勤務などの仕組みが整備されていないこと 4.勤務施設内で、先輩女性医師の実例があまりないこと 5.職場の同僚・上司の、理解・協力が得られるかどうか 6.託児所・保育所・病児保育など子どもを預ける施設の利用について 7.専門医など資格取得について 8.診療科選択、留学の有無などキャリア形成について 9.自分の働き方に対する、夫・家族との考えの違い10.仕事と家庭生活との両立について11.特にない12.その他Q4.コメントをお願いします(Q2.3の選択に関して思うこと、周囲の方を含め具体的なエピソード、出産された方は想像していたことと現実とのギャップ、施設や社会に望むことなどどういったことでも結構です)2012年12月19日(木)~29日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員の女性医師コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)【子どものいる医師】「託児所等は子供が病気になったとき預かってくれません。医療施設に勤めているのだから、そうなった時のサポートを配慮してくれたらいいのにと思いました。」(40代,内科,その他)「男性医師の感覚では、最も理解のある方々でさえ、子供を長時間預かる施設や病児保育所さえ開設すればよいと考える人が多いですが、子供はペットではないので勤務時間の短縮は不可欠。また、そして勤務時間短縮によってまず諦めなければいけないのは学会活動や研究、自己研鑽の時間となります。今の状況で子育て中の医師がバランスのよいキャリアを築くことはほぼ絶望的です。」(50代,麻酔科,一般病院)「17年前に第1子を出産。先輩女医の実例がほとんどなく、妊娠判明と同時に退職、医局に戻らされる状態でした。医局でも特に仕事に対する義務や強制はなく、自然と仕事の割合が減り家庭に入っていくという状態でした。しかしそれが前例となり、どんどん後輩達も出産後は当直なし・パートと負の連鎖となり、むしろ医局崩壊の一原因になったように思います。組織としての女医の未来のビジョンがあったらと思います。」(40代,小児科,一般病院)「医師としてキャリアを積むには病棟管理は必要。となると緊急呼び出しにも対応せざるを得ないが、子供が小さいうちは、夜間でもいつでも頼める人がいないと難しい。年老いた母に気軽に毎回お願いするのも気が引ける。信頼できる第三者にはなかなか巡り会えず、結局自分が非常勤でみている。外来だけで専門医の知識・経験の蓄積は難しいです。本当はフルタイム勤務したい。家事育児のサポートが必要。」(40代,腎臓内科,一般病院)「出産は女性にしかできないが、育児、家事は男性でもできる。男性の家事育児への積極的な参加が必要と思われる。男性は参加しているつもりでも、女性にしてみればまだ不十分と思うことはたくさんある。育児についての支援は、女性ばかりでなく、男性にも反映されるものである。」(40代,内科,一般病院)「出産前後で勤務先を変えるかどうかは出産前の勤務先が短時間勤務でも可能か、自宅から通いやすいか、職場での理解が得られるかなど、様々なことに影響されると思います。実際に産後、復帰に向けて勤務先と調整をしていく中では、事前に話し合っていた条件と少しずつずれる場合もあり、育児をしながらの復帰についてはまだまだ理解が得られにくいと感じています。保育園は長時間預かってもらえますが、小学校は下校が早い日も多く、仕事と育児の両立がより難しい。地域によって、学童保育の終了時間も様々なようです。」(20代,精神・神経科,一般病院)「勉強をする時間がない、病棟を持ちづらくなる、家事の負担は大きくのしかかる、加えて、とくに教育機関病院の場合診療時間を超えた仕事(研究会発表、学生の勧誘、指導など)ができないことで、年齢を重ねフルタイムで働いていても立場は研修医と同じ、それが現実です。」(40代,血液内科,大学病院)「祖父母の応援がない、子供が病気がちなど、どうしても突発での休み・早退が避けられないことがあります。特に医師は男性的社会なので育児に関して理解のない人が多い。『男性社会』でなく『男性的社会』というのは女性医師であっても理解のない人が数多くいることを指します。意識改革をしなければ働きにくい職場が減らず、復職しない又はフルタイムで働かない女性医師が増え、医師不足はどんどん加速すると思います。」(40代,放射線科,一般病院)「当時は院内保育所はあっても女医は利用できず、看護師さんのためだけのものでした。病院から一番近い保育所に預けましたが、手術中に保育所から電話がかかり、子供が発熱したのですぐに迎えに来て欲しいと言われ途方にくれたことがありました。「あと3時間何とかみていて欲しい、責任は自分が取るから」とお願いしたことが忘れられません。結局5時間後となり、保母さんたちから白い目で見られ針の筵のように感じました。病児保育がなかったことが一番つらいことでした」(50代,皮膚科,一般病院)「院内保育に預け、時短で勤務しています。時短ゆえ主治医免除なのですが、主治医制なので、担当がなく手持ち無沙汰なことも。周りは担当患者の仕事で忙しくしている中、どう観られているのだろうと気になります。手術も第2助手程度で、後輩たちが助手や執刀医として手術するのに焦りを感じます。かといって、主治医になって、こどもがインフルエンザにでもかかろうものなら遅刻、早退となりかねず・・・キャリアは頑張ればいつでも積めるが、子育ては今しかできない、そう言い聞かせて毎日仕事に向かっています。朝6時から夜11時、12時まで仕事をしているときにはつらいと思ったことはありませんが、今の勤務の方が精神的につらい。意外でした」(30代,産婦人科,大学病院)「勤務先は女性に優しい職場で、出産後は復帰を考えていました。 が、つわり時に半休を月1-2回取った時点で、”今後絶対に休まないという100%の保証ができないなら、年度末に辞めてもらう”と言われました。結局、妊婦検診のときの代診も他科Drに頼んで、必死で産休までつなげて職場を去ることになりました。産前、産後に使える制度があっても上司、同僚がそれを認めなければ何の意味もないと思いました。」(40代,腎臓内科,その他)「近くに頼れる親類がいないため、子供の急な病気の時や休日出勤、出張などで困る。自分はバリバリ働くタイプだと思っていたが、子供の病気の際などは置いて出たり病児保育に預けるのもはばかられ、結局比較的自由のきく研究職にとどまっています。一番仕事のできる30代をこのように過ごしてしまい、今後自分が医師としてどうやって生きていけばいいのかわからなくなることが多い。」(40代,消化器科,その他)「子供は急に病気をします。事前に急病時の体制を依頼し事務長も了解との事でしたが、実際は『代替えの医師はいない』と言われ困った記憶があります。診療所出向時は、3歳児と一緒に出勤した事があります」(50代,内科,一般病院)「子育てというと『3歳あるいは就学まで』ととらえられがちですが、子供の成長を見守る上では少なくとも大学入学までは親の目(見守り)が必要。子供一人あたり約20年間という長い目での支援が望まれます。具体的には小学生・中学生をひとり置いて、宿泊を伴う学会参加はかなりの困難が伴います。 未就学児であれば学会で託児が可能ですが、小学生以上はそれもありません。いざという時に子供を夜間、安心して任せられるサービスがあればと思います。保育園・学校・職場・学会活動、いつも「すみません」と謝ってばかりでちょっと疲れます。(心の中では「悪いことをしている訳ではないのに…」と独り言を言っていますが)」(50代,神経内科,一般病院)「どんな形でも働き続けていれば、いつかは貴重な戦力となりうる。子育ても社会貢献であり、プライベートなこととして切り捨てない社会であってほしい。子育ての経験は、患者に共感できる医師になるために大切」(50代,内科,診療所)「法的に産休があっても、教師の産休用員のような補填システムがないため同僚に多大な迷惑をかけることになり、精神的に非常につらい。また産休は6週(今は8週)しかないが、0歳児を預かる認可保育所でも4月時点で6カ月になっていなければ入れず、無認可保育所で浪人しなければならない。そういう制度の矛盾が障壁」(60代以上,内科,その他)「産休以外は働いてきました。子守りは両方の親に助けてもらいながら、2人目の出産後は夫の実家に同居。当時は出産した女性Drが復帰すること自体珍しく、出産前後の当直を免除する規定さえ院内にはありませんでした。妊娠4カ月目で当直の夜中にDOAがきて心マッサージをしながら病棟に挙げ、その後お腹が張って具合が悪くなり、やっと診療部長に当直免除を申し出たことを覚えています。今はだいぶん環境が整備されてきましたが、女性側から妊娠出産に関連する要望を主張しにくい雰囲気は続いていると感じます。また現在の女性医師復帰援助の流れ自体、『医師が不足しているから』であって、女性医師の生涯の負担の大きさについて本当に理解し改善しようとしているわけではないのではと皮肉に考えてしまいます。」(50代,神経内科,一般病院)「復帰に向けての研修制度のようなものがあれば利用したかった。フルタイム=朝から夜まで(残業有)の勤務・病棟主治医(休日回診、呼び出し有)と、パート=時短・外来のみの格差がありすぎ。もっと負担を軽減しながらも臨床の仕事が可能な制度の確立が必要と感じる。」(30代,消化器科,一般病院)「周囲の環境整備もとても大切ですが、一番大事なのは、子育てを楽しみながら、医者として第一線でよい仕事がしたいという高いモチベーションだと自分の経験上、確信しています。」(60代以上,眼科,大学病院)「専門医取得準備期間中に産休になりました。年齢的にも女性は専門医取得と出産は重なりやすいと思う。認定機関に連絡したところ、『産前6週、産前8週以上休むと専門医取得要件を満たさないため1年遅れになる』とのこと。産後8週の時点でまだ帝王切開の傷が痛んだし、歩くだけで痔になる状態での復帰をしましたが、産前産後の体調は全員が良好とは限らない。母乳も出ていたのにあきらめました。専門医を同級生が取っていく中で自分だけ遅れたくないとの思いで頑張りましたが、産休期間の取り扱いについてもう少し選択肢の幅を持たせてほしい」(30代,泌尿器科,一般病院)「女性医師は転地・休職・復職を余儀なくされがちである。その是非はさておき、キャリアが途切れがちであるからこそ資格取得は必須と考えられます。産休中の自宅学習についてプランニング・指導など厚生労働省が主導となりe-learning,各大学、大学院との連携モデルを確立していただきたい。男性の育児休業取得に繋がるよう確固なシステム構築をお願いしたい。医師はその人口問題に介入すべき職種と考える」(50代,内科,一般病院)「周囲におられる年配の女医は家政婦を雇って開業医を続けている人が多く、比較的若い女医さんは実家のお母様が同居され手助けをうけつつ勤務医を続けている人が多いように思います。逆に親のサポートがない女医さんは、子供を保育園に預けて勤務時間を短くされています。常勤で勤務しようと思ったら両親(特に実母)のサポートが不可欠のように思います。」(40代,耳鼻咽喉科,診療所)「育児と大学でのキャリアの両立を目指している。第1子出産時は産休のみの取得で復帰したが、キャリア上に受けた不利益を思い出すとなかなか第2子妊娠に踏み切れない。」(30代,神経内科,大学病院)「優秀でかつ人間的にも申し分ない女医の知人の多くが子どもをあきらめている。 こうした女性が子供を産まないことは社会にとって損失だと思う。」(40代,眼科,大学病院)「今は良い時代になったと思います。私はこどもと一緒に当直もしましたし、重症の患児がいるときは自分のこどもと小児科病棟で寝泊まりもしました。病児保育も未だそれほどなかった。核家族で、夫が産婦人科医で、私がフルタイムで働くことは無理で、2人目から非常勤に。ロールモデルもいなかったし、なにより孤独でした。」(40代,小児科,一般病院)「周囲の人々の協力なくしては、女性医師が仕事を続けていくことは不可能。保育園、自分の親、兄弟、知人、近所のおばちゃんなど、子育てに総動員。悩む時間すらもなかった、あのころが懐かしいなあ・・・」(50代,整形外科,診療所)「勤務医では周囲の理解が得られず、結局開業医をえらびました。」(40代,内科,診療所)「Q3は全部選びたいぐらいでしたが、上位3つにしました。 医師は“卒後○年目”で見られるので、年数だけ経ってしまい、復職した際の研修・指導が十分ではないのでは、などの不安があります。 医局などでの位置も産前より低いところに置かれているように感じます」(30代,代謝・内分泌科,一般病院)「しばらくは義母に子どもを預けて当直もしていましたが、どうしても帰宅時間が遅くて家事ができなくなり、当直なしの外来のみの個人病院へうつりました。そこで数年間働きましたが、自分の専門の患者さんを診る機会がなくなって技術も知識も古くなってしまいました。もう本来の専門分野の一線では働けないとあきらめています。」(50代,小児科,その他)「いわゆる「昇進」は遅れましたが、出産後研究生活で学位取得、専門領域での研究、学会発表等、得るものはたくさんありました。ただ、専門外来で予約制でしたので、子供が具合悪くても休めず、朝早く実家の母に1時間半かけて出てきてもらうことがあり「自分の子供は診られないの」と言われたのが、辛く、申し訳なかったです。」(50代,内科,診療所)「医師になるまでに、多くの税金や学費が使われている。女医は、出産育児などある一定の時期は、仕事をペースダウンせざるをえない。しかし、どのようなかたちであれ仕事を継続しやめないことが、社会への還元として重要と考える。そういう覚悟をもって、現在、育児と仕事を継続している。」(40代,耳鼻咽喉科,大学病院)「勤務先に病児保育室が併設されているのでとても便利です。保育園も勤務先から徒歩数分圏内。 発熱などで、園から連絡があったら、10分だけ仕事を中断し迎えに行き、そのまま病児保育室へ入れてます。恵まれた環境だと思います。育児が落ちつく数年間はお給料の安さや仕事の内容関係なく、今の環境で仕事する予定」(30代,小児科,一般病院)「当時は、フルタイムでの勤務でしたが、当直や病棟から外れて、外来、検査を中心とした仕事内容にかわりました。 周囲に女性医師が多く、経験した先輩に相談しながら、仕事を続けました。検査(心エコー)を中心に仕事をしましたが、のちにその仕事から、留学や論文に結び付き、帰国後の就職にも心エコーを中心の仕事に就くことができました。 出産を機に自分のできることが新たに見つかることもあるのだと思います。 若い先生にも、希望を持って仕事を続けていただきたいです。」(40代,循環器科,診療所)「就学前までは保育所やシッターサービス等、子供が病気の時や時間外、休日など保育をサポートしてくれる方法が複数ありました。むしろ小学校に入学し、1人で過ごさせるのが心配な1,2年生の頃、学童になじめなかったり、学童自体がなかったりして短時間勤務や休職を余儀なくされるケースが散見されました。低学年児童を抱えるワーキングマザーを支える方策(ワークシェアリングなど)がもう少しあった方がよいと思います。」(40代,産業医,その他)「私の働いている病院はとても制度も文化も恵まれていて、出産後、産休、育休をとって、娘が1歳から家庭医療の後期研修をスムーズにスタートし、育休中も給与はある程度保障されていましたし、働き始めても、こどもの急な病気などでの急な欠勤なども問題なく過ごすことができています。今後第2子も考えていますが、後期研修も途中で途切れても継続できる仕組みになっています」(20代,総合診療科,一般病院)「まだ勉強したいことも多いのにドロップアウトしそうで怖かった。大学院+パート勤務で復帰したが、子供の体調変化等で穴をあけがちで、気持ちと現実のギャップを感じました。周囲も忙しいし、身近に頼れる環境もなく皆さんに迷惑をかけた」(40代,内科,診療所)「看護師からの見えない意地悪に翻弄させられましたが、自分が先陣をきっているので、後輩たちが仕事をしやすいよう頑張り続けました。男性医師の三倍は仕事をしました。ひたすら根性です。子供の寝顔で救われました。」(50代,精神・神経科,一般病院)「出産まではほかの先生達とも問題なく仕事をしており、第1子出産後職場に復帰したところひどいいじめにあい、退職しました。その後もっと責任を持って働きたいのですが、近くの病院に適切な病院がなく、つらい思いをしています。子供をもつと他の医師と全く同じように働くことは不可能であり、 病院として枠組みをきちんと整備されていない現在、自分のような医師が多数いると思う」(30代,皮膚科,一般病院)「『夫も医師で経済的にも困っていないのにどうしてそんなに頑張るの?』と聞かれると心が折れそうになります。身近な友人や親戚から『子供がかわいそう』とか『しつけや教育が行き届かないのでは』と無神経な言葉を投げかけられることも。 そんな中、上司や同僚の励まし、夫の就業に前向きな姿勢に助けられています。」(30代,麻酔科,一般病院)「第2子出産後、仕事育児に関しての夫との考えの違いが広がった。第3子の妊娠中、育児と仕事に頑張りすぎ肉体的精神的無理がたたり、死産となった。この子の死をきっかけに夫と子育てについての歩み寄りができた。」(50代,小児科,一般病院)「実は、女性同士のほうがつめたい」(40代,腎臓内科,大学病院)「意外だったのは、独身女性の同僚や子育て経験のある15~20年上の女性医師の視線が1番厳しいこと。もっとも理解があるのは、同じ境遇か子育て世代の男性医師(特に奥様が女医の家庭)。」(20代,麻酔科,大学病院)「職場では、当時出産した女医はほとんどいなくて、こどもが1歳過ぎたら当直は当然という風潮がありました。が、こどもによって、母がいなくても夜寝られるかどうかは全く違い、私の場合は全く不可能でした。1年~小学校低学年の現在まで、当直でなく日直に振り替えてやらせてもらい、フルタイムの勤務を続けることができています。必要に応じて選択できるとありがたいです。 発熱時は、幸い主人の職場に病児保育があったので、外来に穴を開けずに済みましたが、働き続けるには、病児保育は必須と思います。」(40代,血液内科,一般病院)「出産前は大学病院に医員で勤めていました。出産時は当然のように一旦退職し、1年後に復帰しました。看護師は産休、育休などがきちんとあるのに、医師はやめてもらわなければ補充できないとのこと。すこし不満に感じました。」(40代,内科,一般病院)「大学院で研究をする・・という選択は時間的や精神的には非常に居心地がよかった。研究のペースを子供の病気などで都合することができたし、臨床に多忙を極める同僚にもあまりあてにされずに楽だったように思う。ただし、経済的な部分や臨床のスキルはどうしてもペースダウンしたが、その後非常勤として戻り、リハビリすることができた。」(40代,麻酔科,その他)「周囲は『働くのであれば前と同様に』って感じ。当直や緊急の呼び出しは無理なので、結局仕事をあきらめざるを得ない状況。健康診断ばかりで専門的な知識を活かす場所がない。周囲は別に頑張らなくてもいいんじゃないかという雰囲気。働きたいのに。」(40代,血液内科,一般病院)「短時間、非常勤のシステムがなく、自分のできないことをほかの医師に押し付けてしまう(当直、入院の受け持ち、救急など)ことに罪悪感を感じ、職場をやめた。」(40代,その他,その他)「大学病院勤務だが、附属の保育園が看護師しか利用できない。医師、検査技師、放射線技師、栄養士、医療事務など多数の女性職員がいるのに全く理解できない。一番困るのが病児保育や病後児保育の手配。せっかく病院が隣にあり、小児科も充実しているのだから是非とも院内保育園で病児保育を導入してほしい。」(30代,神経内科,大学病院)「多様な就労形態を許容するシステム作りが必要.例えば当直は一切しないが昼間はOK,という人と,当直も昼間の勤務もするという人との基本給が全く同じでは不公平感が生ずる可能性がある.基本給が同じで当直手当を手厚くするなど工夫が必要. 出産後の女性医師側も,日和らないでまずはフルで戻ることを考え,何が障害なのか,何ができないのかを考えて,戻るためにはどういう配慮が必要なのかを申し出るべき.最近は,出産したらフルで働きたくないから非常勤,という後ろ向きな人がいて不愉快かつ残念. 復帰は早い方がいい.時短でもいいから早く復帰する.育休が長い方がいいということは絶対ない.」(40代,産婦人科,大学病院)「いかに意識を維持するかが大切で、家族の考えも大きい。医師を妻にするという意義を良く考えていただきたいと思います。男性にも責任があります。」(50代,呼吸器科,大学病院)「働く母親にとっては自分の母親(もしくは実家)がしっかりとサポートしてくれている場合は比較的キャリアも子育ても安定しているケースが多いと思います。そうでなければ(自分含む)、自分が3役こなさなければならず、フルの仕事は厳しい。特に夫も医師で多忙である場合は余計困難 」(40代,腎臓内科,一般病院)「来年度から復職予定ですが、働き先は大学病院しかないと言われました。通勤にかなり時間がかかるため一歳の子供を一日12時間も保育園に預けることになり、心が痛みます。」(30代,代謝・内分泌科,大学病院)「上司が理解のある人で、その方のおかげで続けてこられたようなものだったと思う。今と比べ保育所も少なく、綱渡りのような生活だったが、続けてきてよかった。若い先生にも、短縮勤務でもいいから続けて欲しいと思うし、そのための助力としたいと願っています。医師会でも相談窓口を作っているので、困ったときには相談してみてください。医師会に加入していなくても構いません。」(50代,耳鼻咽喉科,その他)「実母と姑の全面的な応援により、仕事をすることができました。つらいことは沢山ありましたが、こどもは母が必死に仕事していたことをきちんと理解していました。 ただ、私のようなつらい思いは、娘や嫁にはさせたくありません。」(50代,耳鼻咽喉科,その他)「勤めていた施設に託児所がなく、別の病院に転勤しました。そこで二人目も出産しましたが、同僚の先生方が協力してくださるので、非常に快適に仕事を続けられました。職場の人間関係と院内保育園この二つが大事だと感じます」(40代,小児科,一般病院)「第1子妊娠時に痛烈な嫌味を言う上司がおり、大学では産後復帰は無理だなと思いました。復帰はアルバイトに行っていた先(保育所あり)の外来時短勤務を直接交渉してお願いしました。第2子出産後は家族のサポートが必要となるため転居し、以前お世話になっていた先輩に相談して新しい職場(保育所あり)で外来時短勤務で復職しています。実際に子供のことで急にお休みをせざるをえないことがあるので自分がやすんでも助けていただける環境を探しました。人の好まない仕事を率先してすることで他の先生方とのバランスをとって働いています。子供をもつまで救急対応をずっとしてきていたのでかなり違う状況になっているのが現状です。子供の成長をみつつ過ごせる時間をもつためには仕方がありません。」(30代,循環器科,一般病院)「独身の頃と同じように働きたいと思って努力したが、難しかった。身近な同僚、所属大学の医局は理解があったが、派遣先の病院では他科の男性医師から嫌味や陰口を言われ、辛かった。」(40代,眼科,一般病院)「主人も勤務医(中間職)で、子供が病気になった時も夜間の面倒はみられないと言われました。私も産前同様に仕事をしたかったが、夜間呼び出しに応じられないこともあり、短時間・非常勤勤務としました。」(40代,内科,診療所)「出産するまでは、育児中で当直をしない時短勤務の人が同じ職場にいると、働くモチベーションが激しく低下していました。自分が出産後に同様の勤務体制となったとき、同僚たちが同様に考えるのではないかと思い、時短勤務は自分としてしたくありませんでした。現在当直は免除させてもらってますが、それ以外はフルタイムで働いています。 周囲の人の理解とは言いますが、こちらが理解して欲しいと思っても、不公平と思ってしまうのは事実で、そう思われてまで働きたいとは思えません。」(30代,小児科,一般病院)「3人目を出産後、体力的にも精神的にもきつくなって、退職しました。一度退職してから、復職するのは大変でした。また、離職期間が長かったので、以前と同じような働き方はできなくなり、また専門医取得もできませんでした。」(50代,内科,診療所)「医師になった息子から『乳児期から何故自分を他人に預けてまで仕事をしたのか』と非難されました。仕事、育児、家事で息つく暇も無かった30年ほど前の自分の生活は、子供にとっては憎むべき姿だったのかと」(60代以上,内科,一般病院)「病院併設の保育園の充実が大切だと実感しました。当時無認可保育園でしたので保育士や職員のボーナスの獲得にバザーを開いたり寄付をお願いしたりしてなんとかしのぎました。技術的な遅れは後からとりもどせます。 最初はあせりましたが、63歳の現在もまだまだ勉強は続けています。家族や医局の先輩、後輩の理解があったこともラッキーだったと思います。娘たちも同じ職業を選んでくれました。大変な時は一時です。 恐れず、腐らず一生懸命やればなんとかなります。」(60代以上,循環器科,診療所)「職場で時間外勤務を免除してもらい、常勤で仕事を続けることができている。 しかし子供の病気の時に病児保育や親に頼らざるを得ず、場合によっては仕事を休まなければならないのでいつも綱渡りの状態。」(30代,代謝・内分泌科,一般病院)「出産前は脳神経外科専攻だったので、両立困難であった。私の場合は母親が子供をほとんど育ててくれたが、それはそれで寂しい思いもしたし、これでいいんだろうかとずいぶん迷った。結局は内科系に移らざるを得なかった」(60代以上,神経内科,一般病院)「子育てしながらフルタイムで働いていて、子どもの急な病気の時に、自分の外来を代われる医師がおらず、休むことが難しかった。ベビーシッター、病児保育、県外の祖父母など子どもをみてくれる人・場をやりくりしたり、夜中に患者さんが急変した時も、寝ている子どもだけを家において出かけることもあり、今から思い起こしても綱渡りのような生活だった。 一人で責任を負う形ではなく、仕事を同僚とシェアできたり、労働時間も個人の状況に合わせ、フレキシブルに選択できるような働き方ができると子育て中の女性医師は働きやすくなると思う。」(40代,小児科,一般病院)「単独主治医制でなく、複数主治医制になっていくことがこれからは必要と思う。」(40代,内科,一般病院)「臨床特有の「勘」が薄れてしまって、取り戻せるのかどうかがとても怖かったです。 出産して職場復帰して思うのは、「早めの復帰に限る」これに尽きます。 ただそれには、周囲の理解や環境整備がまだまだ必要だと思います」(30代,精神・神経科,一般病院)「出産後、大学勤務を退職し、夫の留学についていったが、子供が小さかったため自分はセミナーにしか参加できず、せっかくの海外留学の機会もうまく活かせなかった。また夫は医師であるため、育児を分担することはほぼ不可能で、帰国後も保育所、一時保育の問題から、常勤勤務、研究会、学会への参加は難しく、アルバイト生活を続けた。そのため、自分のキャリアは出産前から著しく後退してしまった。常勤復帰後、出産前に技術がもどるまで約2年がかかり、さらに専門医取得は同期男性と比べると4年以上遅れた。 常勤の職場や研究会にも保育所または学童等の施設を併設しなければ、女医が常勤で働くことは難しいと思われる。」(40代,基礎医学系,大学病院)「どんなに頑張っていてもつわりによる仕事の量激減で周囲の評価が下がる(出産経験のある女性医師からは理解が得られるが)。子供の突然の発熱などでの早退、休診の場合のフォロー体制、子供の迎え時間に制限があることなどなかなかまだ理解が得られにくい。『わかるけど、あとの仕事は誰がするの?』って感じです」(30代,外科,大学病院)「同僚に女性医師がいなかったので、その科の医局会(20名程度出席)で、『出産後はいつから当直が可能か』などその時点では答えることが困難な質問をいくつもされ、誰も助け舟を出してくれず、セクハラ・パワハラにあたるのではないかと思われる状況でした。若い医師であったならば退職に追いこまれていたかもしれません」(40代,内科,一般病院)「現在、子供2歳。フルタイムで夜間・休日呼び出しありの勤務であるが、正直きつい。近くに住む祖父母の助けを借りて何とかこなしているが、綱渡りのような日々である。そろそろ、勤務形態を変えようと思っている。」(30代,耳鼻咽喉科,一般病院)「保育園は子ども3人合わせて15年間通いました。毎朝診療前に保育園に送り届けるという戦争のような日々は、体力・気力が必要でとても疲れます。しかしこれなしには仕事も続けられず、フレキシブルな保育園の存在が大切」(50代,代謝・内分泌科,診療所)【子どものいない医師】「上司に来年度子供を作る予定だから妊娠中は当直業務からはずしてほしいというと『他の医師にしめしがつかない、今の働き方ができないなら辞めてもらう』といわれました。私だって働きたいけど、先輩たちの流産、切迫早産を見ているので退職することにしました。仕事を継続している医師でも、小学校に上がると子供を預けるシステムがなくなるためそこでやめざるを得ない、という人も。妊娠・育児しながら働きたい、けれども上司との意見の相違・医療界のシステム(36時間労働など)の問題でやめていく女医は本当に沢山いると思います。」(20代,心療内科,大学病院)「残念なことですが、女性が男性と対等になるには、同じではだめで、それ以上の働きを示す必要があります。 例え2~3か月の産休でさえ、劣ってみなされてしまいます。 そう考えると産む気になりません」(40代,形成外科,診療所)「出産適齢期に不妊治療を受けられるようにしてほしい」(40代,神経内科,その他)「出産後の女医が働きやすければ離職せず、独身女医や男性医師の負担も軽減するので、出産後の女医が働きやすい環境はすべての人にとって重要だと考えます。私の属する医局は今大変な人手不足ですが、職場環境が整備されていないため、医局を離れ民間病院に転職する女医が後を絶たないという悪循環。そういった女医のために、私たち後輩まで「女医はいつ妊娠してやめるかわからない」という目で見られて、非常に迷惑しているのも事実です。産後の女医ばかりに目が行って、独身女医や男性医師にしわ寄せが行くことはあってはならないと思います。この高齢社会では、男性医師も家族の看病や介護をする可能性は十分にあります。職場の全員が働きやすく、必要時は休みやすい環境を整えていくことが大切だと考えます。」(20代,産婦人科,一般病院)「医学部増設よりも女医の復職環境を整備する方が、医師不足の解決に繋がる」(40代,循環器科,診療所)「出産はしていませんが、介護でも結局同じことだと思います。経過さえ順調なら、ある意味出産のほうが気持ちの上での準備ができるだけよいのかも。患者から、医師は時間外対応も休日がつぶされても当然と思われているような状況では、一般病院は男女とも単身で親も元気というときでないと勤務は無理なのでは?」(40代,産業医,その他)「高齢となり、妊娠は難しそうです。当直して流産したことが悔やまれてなりません。」(40代,精神・神経科,一般病院)「今妊娠中ですが、不妊治療など含め理解を得ることが難しく、一生懸命働くことも一人の女性としての幸せも両方という選択肢を選ぶのが難しく感じてしまう。病院側は大事な戦力を最終的には失う方向になるのではないでしょうか。」(30代,消化器科,一般病院)「育児を理由に働かない先輩医師がいます。純粋に能力給が支払われるなら良いのですが。週4日外来のみ・入院診ない・オンコールや当直免除にも関わらず常勤扱いを受けている人をみると、働く意欲を失う」(30代,小児科,一般病院)「私は結婚しませんでした。どうしても医師として、しっかりした仕事をしたかった為です。周りの出産後の女医を見ていると、嫌な面が多くどうしても好きになれません。せっかく多くの税金を使って、あるいは親の金を使って医師になったのに辞めてしまう女医、そのために医学部に入れずに医師になれなかった人がでるんですよ、と言いたい。税金を、親の苦労を無駄にしている。仕事に出てくる人にも言いたい、仕事をするのなら、他医に甘えるな、負担をかけるな、どれだけ同僚に迷惑を掛けているかわかっているのか、と。」(60代以上,小児科,診療所)「キャリア・収入・勤務内容、これらに優先順位をつけて周囲と折り合っている女医さんは応援したいと思う。正直、自分のキャリアアップに繋がる仕事、収入に繋がる仕事はする、だが医局の皆でまわしている雑用は子持ちだからしない、という母親医師は応援したくない。周囲が納得して協力できるような体制も考えてもらえたらと思う。」(40代,内科,一般病院)「私の年代では育児をしながら仕事を続けている女性医師のロールモデルが身近にありませんでした。私自身こどもを持たない人生を選択しました。」(40代,精神・神経科,一般病院)「女性医師の出産や子育てを考えていくのはいいが、一方で結婚しない女性医師、子供を産まない女性医師、子供が産めない女性医師の気持ちは置き去りになっている気がする。ある意味、逆差別のような・・・。そう考えるのは、子供が産めない女のひがみでしょうか。」(40代,代謝・内分泌科,一般病院)「医師の世界は男性を中心に回っているので、結婚・妊娠・出産は考えられない状況にある。」(40代,代謝・内分泌科,診療所)「私の勤務先では女性医師の待遇改善を積極的に進めており、診療部長の先生や事務長が率先的に週30時間以上で常勤扱い、夜間オンコールや当直免除などを導入しているので、そういった病院を探して転職するのもよいかと思います。産婦人科のくせに医局員は妊娠出産禁止と言っていた大学病院とは大違いです。」(30代,小児科,一般病院)「女医さんが多ければ理解を得て働きやすいかと思いきや、若い女医さんが産休や当直免除に入ると晩婚の女医さんが妊娠出来なくて大変そう。男性と女性のバランスが大事。人手不足の診療科、医員を守れる医局かどうかは大事と思う。施設の整備(遅い時間の保育、病児保育)を進めて欲しい。」(30代,内科,大学病院)「欧米のように当たり前に働き方が選べたり、勤務時間の調整が受けられ、それに対して後ろめたさを感じないでいいようになればいいと思います。 男性医師がフルタイムで働けるのも、妻が女性医師の場合、そうやって時間をやりくりしているおかげだと思うから。 子育てで一時的に休職することは、とても大切なことだと思いますが、以後完全に医師をやめてしまう人に関しては少し憤りも感じます。 何のために医師になったのか。だったら、その人の代わりにずっと医師を続けられる人を合格させた方が社会にとって良かったのではと思います。」(30代,その他,一般病院)「出産後の女医が働きやすければ離職せず、独身女医や男性医師の負担も軽減するので、出産後の女医が働きやすい環境はすべての人にとって重要だと考えます。私の属する医局は今大変な人手不足ですが、職場環境が整備されていないため、医局を離れ民間病院に転職する女医が後を絶たないという悪循環。そういった女医のために、私たち後輩まで『女医はいつ妊娠してやめるかわからない』という目で見られて、非常に迷惑しているのも事実です。産後の女医ばかりに目が行って、独身女医や男性医師にしわ寄せが行くことはあってはならないと思います。この高齢社会では、男性医師も家族の看病や介護をする可能性は十分にあります。職場の全員が働きやすく、必要時は休みやすい環境を整えていくことが大切だと考えます。」(20代,産婦人科,一般病院)「2回の流産歴があり、通院しながら常勤で働いています。通院時間の都合もあり、専門病院の消化器内科から地域病院の内科に転職しました。無事に妊娠・出産する方も仕事を続けるにあたり苦労があると思いますが、不妊・不育症の場合は周りが気づかなかったり理解してもらえなかったりするので、本当のことを上司や同僚に伝えられず肉体的にも精神的にもつらかったことがあります。 専門分野は続けられないと思い半分あきらめていますが、非常勤でも勤務ができるところがないかまた探そうと思っています。 仕事は続けたいので、ワークシェアや非常勤など、ある程度自由の利く勤務体制が広まるといいなと思います」(30代,消化器科,一般病院)「家庭の協力がある先輩は上手に両立していて、独身の医者より活動的に働いていた。周囲の状況と本人自身の意思が、結果を左右すると思う。」(40代,麻酔科,診療所)「今妊娠中ですが、不妊治療など含め理解を得ることが難しく、一生懸命働くことも一人の女性としての幸せも両方という選択肢を選ぶのが難しく感じてしまう。病院側は大事な戦力を最終的には失うのでは」(30代,消化器科,一般病院)「両立という言葉はどちらも中途半端という意味に聞こえる」(30代,循環器科,一般病院)「外科医であるため妊娠から産後の落ち着くまでの期間は第一線を退かざるを得ないということが一番不安。現場に少しでも携われるように外来などにはできる限り関わっていたい。」(20代,外科,一般病院)「子供がいるという理由で、周りに何の配慮もなく早く帰り自分の論文を仕上げていた時には許せないと思った」(40代,内科,診療所)「診療体制としては主治医制度をやめていく方向とし,夫側は育児休暇を取りやすくする,本人側としては病児保育・24時間保育のある病院(もしくは確保できる病院環境)で出産・育児したり職場内で出産・育児期間が重ならないように計画するなどの工夫が必要。また両親・親族などの協力が得られない状況での出産・育児は無計画と言わざるを得ない。」(40代,その他,一般病院)「家庭を持ち、出産あるいは子供のいる同僚の手助けはもちろんしたいと考えています。しかし、「手助けされて当然」という受け身は納得いきません。全てではないが、そういった方に対しては、手助けするのも躊躇されます(終日の講習会や夜の飲み会などには出席するのに、午前中のみ1日のみの出勤を拒否される、とか)。」(30代,救急医療科,一般病院)「現在勤めている病院では、産休をとった先輩女性医師がおらず、自分が将来出産したり、復職したりする際、立場や勤務体制がまったく分からない。病院側からは、「将来出産しても勤務を継続してほしい」とのことだが、口約束であり心配である。出産・育児もしたいが、フルタイム勤務は難しいだろうし、親も年をとってきておりどれだけ子供を預かってもらえるか分からず、保育所の確保も難しそうで、不安だらけである。」(30代,眼科,一般病院)

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Step By Step!初期診療アプローチ【マイナー症候シリーズ】

第25回「動悸」第26回「肉眼的血尿」第27回「排尿障害」第28回「浮腫」 第25回「動悸」今回から4回にわたって[マイナー症候シリーズ]をお届けします。マイナーといっても決して「症例が少ない」わけではなく、意外と学ぶ機会が少ないという意味であり、症候としては非常にcommonなものばかりです。初回は「動悸」がテーマです。循環器疾患は当然ながら、他にも様々な全身の基礎疾患によって動悸は起こり得ます。状況によってはカルジオバージョンなどで早急に対処しなければならない場合も少なくありません。検査で代表的なものは12誘導心電図ですが、そのチェックポイントや問診・身体所見で把握すべきポイントについて解説します。また、動機が持続している場合はACLSプロトコールによって不整脈のコントロールを行いますが、その概要についてもお話します。第26回「肉眼的血尿」「肉眼的血尿」の症状のみを主訴として夜間救急などを受診するケースは多数とはいえませんが、この症候も必ず知識として身につけておかなければなりません。肉眼的血尿をみた時、それは何科の領域になるのでしょうか。当然ながら殆どの場合は泌尿器科、或いは腎臓内科の区分になります。それでは、そのどちらの科なのかを判断する根拠は何でしょう?それを考えるためには、先ず腎臓から尿細管を通って膀胱、排泄にいたる尿のメカニズムを知っておく必要があります。また、赤血球の性状による診断を行う場合によく用いられる「均一赤血球」「不均一赤血球」という言葉をより理解するために、今回は特別に模型を用いて解説します。百聞は一見に如かずの分かりやすさは必見です!第27回「排尿障害排尿障害をみるためには正常な排尿の生理を知らなくてはなりませんが、さて医学部で習ったかどうか? 今回もあいまいになってしまいがちな知識の整理と復習を兼ねて臨床に役立てるように学習してゆきましょう。排尿障害には麻痺などによる神経因性と、膀胱や括約筋、前立腺などの泌尿器が原因となるものがあります。神経因性による排尿障害は、主に痙性と弛緩性に分けられ、治療のための薬剤が違ってきます。また、臨床でよく遭遇する泌尿器系の障害による排尿障害には尿閉や無尿などがあります。いずれも1年目の研修医でも導尿などの処置ができなくてはなりません。更に持続的尿閉をきたしていれば緊急処置が必要な場合もあり要注意です。この機会に見極めのコツなどをしっかり覚えてください!第28回「浮腫」浮腫を主訴として来院する患者さんは多くはありませんが、医師として浮腫をみたことがない方はいないはずです。当直明けにご自身の足が浮腫んでいる…そんな方も多いでしょう。それでは一体どういったメカニズムで浮腫は起こり、どのように対処すべきなのでしょうか。浮腫が体内の浸透圧と血圧の不均衡によって起こるのは明白ですが、それを示す法則があります。その法則を使って浮腫を考えれば、原因が見えてきます。また後半は浮腫を来たす疾患でピックアップしなければならない心不全の評価についても詳しく解説します。

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Dr.林の笑劇的救急問答6

第3回「気胸に絶叫 ! ? 」第4回「感染巣を捜し出せ ! 」 第3回 「気胸に絶叫 ! ? 」交通事故外傷などで、特に見逃してはならないのが緊張性気胸です。緊張性気胸の対応は一刻を争うため、全ての所見が揃わなくても処置をしなくてはならないケースがしばしば発生します。そこで、今回は次の3 点を到達目標に解説していきます。 1. 緊張性気胸に強くなる ! 2. 胸腔チューブ速攻裏技をゲットする ! 3. 気胸を見つける名人になる !実際の臨床現場で遭遇するのは希なことですが、命に関わる疾患のため、しっかりおさえてきっちり対応できるようにしておきましょう。 35歳男性 車対車の交通事故外傷で救急車搬送されてきた。車は大破。血圧90/70mmHg、脈拍120/m、15L酸素投与でSpO2 92%。病院到着時には意識喪失。気管挿管直後、脈が触知できなくなった。 28歳男性 交通事故の高エネルギー外傷だが意識はあり胸を痛がっている。右の呼吸音が減弱、皮下気腫(+)。血圧90/70mmHg、脈110/m、SpO2 94%。研修医は胸腔穿刺を実施しようとするがDr.林はそれを止める…第4回 「感染巣を捜し出せ ! 」Focus 不明の発熱では身体のどこかに感染症が潜んでいると疑われますが、患者が高齢で認知症や麻痺がある場合や、所見が揃わない場合など感染巣を特定するのが難しい事もあります。そんなとき感染巣を捜し出すには、患者の背景や生活スタイルをよく考えること、病歴から推察すること、そして何より身体所見を隈なくしっかり取ることがとても大事です。“患者さんの感染巣はどこにあるのか”を症例提示ドラマで一緒に考えながらご覧ください ! 88歳男性 深夜、発熱を主訴に数年前から入所しているナーシングホームから連れて来られた。認知症と脳梗塞後遺症で右片麻痺がある。研修医は各種検査を試みるも発熱の原因を特定できない。血圧130/60mmHg、脈100/m、体温38. 8℃、SpO2 98%。 82歳男性 Focus不明な高熱で孫がインフルエンザを疑い心配して来院した。前立腺肥大で同院に通院中のほか特記すべき既往はない。血圧100/50mmHg 、脈拍125 /m 、体温39.0℃、10L酸素投与後のSpO2 100%。

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抗精神病薬による性機能障害、改善の可能があるのは?

 向精神薬服用と性機能障害の関連について、ドイツ・フライブルグ大学医学部のHannah M Schmidt氏らは、抗精神病薬の投与戦略の違い(投与量減少、休薬期間を設ける、補助薬、他剤への切り替えなど)による性機能障害への影響について評価を行った。2012年11月14日Cochrane Library発表より。 研究グループは、統合失調症と性機能障害を有する患者が関与している無作為化対照試験を、Cochrane Schizophrenia Group's Trials Register(2012年5月3日時点)とその参考文献などを検索し選定した。独立レビュワーがデータを抽出し、2値データについてランダム効果リスク比(RR)を95%信頼区間(CI)ととともに算出し、クロスオーバー試験についてはオッズ比(OR)と95%CIを算出した。また連続データについて、ランダム効果モデルに基づく平均格差(MD)を算出し、クロスオーバー試験については対応尺度の相関を検討し解析した。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、4つの先駆的研究(総被験者138例、介入2週間~4ヵ月間)を組み込んだ。そのうち2つはクロスオーバー試験であった。・1試験の報告において、シルデナフィルの投与がプラセボと比較して、性行為に十分な勃起について有意であり(被験者数32例、MD:3.20、95%CI:1.83~4.57)、勃起持続時間も有意に長く(同:32例、1.18、0.52~1.84)、良好な性交渉の頻度も有意に高かった(同:32例、2.84、1.61~4.07)。・投与戦略の違いを検討した試験では、抗精神病薬による性機能障害について、対症療法としてのセレギリンとプラセボを比較したエビデンスはみつからなかった(被験者数10例、Aizenbergの性機能障害スケールの変化についてのMD:-0.40、95%CI:-3.95~3.15)。・リスペリドンからクエチアピンへの切り替えによる性機能障害改善のエビデンスはみつからなかった(被験者数36例、MD:-2.02、95%CI:-5.79~1.75)。・1試験の報告において、リスペリドンまたは定型抗精神病薬からオランザピンへと切り替えた時に性機能障害の改善が有意であった(同54例、MD:-0.80、-1.55~-0.05)。・本検討は、クロスオーバー試験の被験者群がベストな状態で安定していたか、介入は精神的および身体的なキャリーオーバーがなく適切に行われたか、不確かであった。また、シルデナフィルは統合失調症の男性における抗精神病による性機能障害の治療に有用な選択肢といえるかもしれないが、この報告は小規模短かつ期間の1試験のみをベースとした結論である。オランザピンへの切り替えは、男性および女性の性機能を改善するとの結果が得られたが、この試験についても小規模のオープンラベル試験の評価であった。よりよくデザインされた無作為化試験(盲検、適切な管理と報告、抗精神病薬による性機能障害を有した人における投与量減少・休薬・対症療法・切り替えによる効果の検討)の速やかな実施が必要である。関連医療ニュース ・性的強迫観念は、統合失調症患者で頻度が高く、自殺行動と独立して関連 ・早漏治療にはSSRI、トラマドールが有効?! ・抗精神病薬の効果をどのタイミングで見極めるべきか?

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過活動膀胱治療剤ミラベグロン 米国FDA諮問委員会にて承認推奨を取得

アステラス製薬は6日、過活動膀胱(OAB)の適応症で現在審査中のミラベグロン(一般名、開発コード:YM178)に関して、4月5日(米国時間)に開催された米国食品医薬品局(FDA)の諮問委員会(Reproductive Health Drugs Advisory Committee)が、ミラベグロンの有用性を認め、承認の推奨を採択したことを発表した。諮問委員会の勧告は、FDAが新薬承認審査の最終判断を行う際に考慮されるが、FDAの判断を拘束するものではないという。なお、ミラベグロンに対するFDAの審査終了目標日(PDUFA date)は2012年6月29日に指定されているとのこと。ミラベグロンは、同社が創製・開発した1日1回経口投与の選択的β3アドレナリン受容体作動薬で、安全性と有効性は、これまで実施された数多くの臨床試験において検証されている。同社は、ミラベグロンについて2011年8月24日に欧州医薬品庁(EMA)、2011年8月26日にFDAに、それぞれ販売許可を申請している。また、日本国内においてはベタニス錠の製品名で2011年9月に発売している。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/fda-1.html

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テストステロン補充にデュタステリド併用、除脂肪体重の増加量を減らさず

 テストステロン補充療法の際に、5α-レダクターゼ阻害薬のデュタステリド(国内では前立腺肥大症としてのみ適応、商品名:アボルブ)を併用しても、筋肉・臓器・骨などを計測対象とした除脂肪体重の増加への影響はほとんどないことが明らかにされた。デュタステリドには、テストステロンの5α-ジヒドロテストステロンへの変換を阻害する作用がある。米国・ボストン大学のShalender Bhasin氏らが、約140人の健康な男性について行った、無作為化プラセボ対照試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月7日号で発表した。テストステロン4つの用量とデュタステリドを併用、20週間後の除脂肪体重変化を比較 研究グループは、2005年5月~2010年6月にかけて、18~50歳の健康な男性139人を対象に試験を行った。被験者を無作為に8群に分け、うち4群にはテストステロンとデュタステリド(2.5mg/日)を、別の4群にはテストステロンとプラセボを、それぞれ20週間投与した。テストステロンの投与量は各群とも、50、125、300、600mg/週の4つだった。 主要アウトカムは、除脂肪体重の変化で、副次アウトカムは脂肪体重、筋力、性機能などの変化とされた。デュタステリド群とプラセボ群に、変化に有意差なし 被験者のうち、20週間の試験を完了したのは102人だった。 テストステロン投与量補正後、デュタステリド群(いずれの投与量群とも)とプラセボ群で、除脂肪体重の変化量に有意差はなかった(p=0.18)。 具体的には、除脂肪体重の増加量平均値は、デュタステリド群でテストステロン50 mg/週群では0.6kg、同125 mg/週群では2.6kg、同300 mg/週群では5.8kg、同600mg/週では7.1kgだった。一方でプラセボ群は、テストステロン50 mg/週群では0.8kg、同125 mg/週群では3.5kg、同300 mg/週群では5.7kg、同600mg/週では8.1kgだった。 副次アウトカムの各指標についても、デュタステリド群とプラセボ群で有意差はなかった。

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妊婦へのベタメタゾン投与、早産児の呼吸器障害を低減せず:ブラジルの調査

妊娠期間34~36週の妊婦に対する出産前のコルチコステロイド投与は、新生児の呼吸器障害の発生を抑制しないことが、ブラジルInstituto de Medicina Integral Professor Fernando FigueiraのAna Maria Feitosa Porto氏らの調査で示された。妊娠後期の早産児は呼吸器障害の頻度が満期出産児に比べて高く、酸素吸入や換気補助、集中治療のための入院を要するリスクが高い。そこで、特に妊娠期間34週以前の新生児肺の成熟促進を目的に、妊婦に対する出産前コルチコステロイド投与が行われてきたが、妊娠期間34~36週の早産児でも、特に一過性多呼吸の発生リスクが高いという。BMJ誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月12日号)掲載の報告。早産児呼吸器障害の予防効果を無作為化試験で評価研究グループは、妊娠期間34~36週で出生した早産児の呼吸器障害の予防における、出産前の妊婦に対するコルチコステロイド投与の有効性を検討する三重盲検無作為化試験を実施した。2008年4月~2010年6月までに、ブラジル北東部の大規模3次教育病院(Instituto de Medicina Integral Professor Fernando Figueira)を受診した切迫早産のリスクを有する妊娠34~36週の女性が登録された。これらの妊婦が、プラセボ群あるいはベタメタゾン(商品名:リンデロン)12mgを2日連続で筋注する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は新生児の呼吸器障害(呼吸窮迫症候群、一過性多呼吸)の発生率とし、副次的評価項目は換気補助、新生児罹病率、在院期間とした。いずれの評価項目も両群で同等320人の妊婦が登録され、ベタメタゾン群に163人が、プラセボ群には157例が無作為に割り付けられた。最終解析の対象となった新生児は、それぞれ143人、130人であった。呼吸窮迫症候群の頻度は両群ともに低く[ベタメタゾン群:1.4%(2/143人) vs. プラセボ群:0.8%(1/130人)、p=0.54]、一過性多呼吸は両群ともに高頻度であった[24%(34/143人) vs. 22%(29/130人)、p=0.77]が、いずれも有意差は認めなかった。妊娠期間の長さのサブグループで調整後も、ベタメタゾンの使用は呼吸器障害罹病率のリスクを低減しなかった(調整後リスク:1.12、95%信頼区間:0.74~1.70)。換気補助の施行率はベタメタゾン群が20%(28/143人)、プラセボ群は19%(24/130人)であり、両群で同等であった(p=0.81)。新生児罹病率はそれぞれ62%(88/143人)、72%(93/130人)であり(p=0.08)、在院期間は5.12日、5.22日(p=0.87)と、いずれも両群間に有意な差はみられなかった。光線療法を要する新生児黄疸の頻度は、ベタメタゾンの投与を受けた妊婦の子どものほうが有意に低かった(リスク比:0.63、95%信頼区間:0.44~0.91、p=0.01)。著者は、「妊娠期間34~36週の妊婦に対する出産前コルチコステロイド投与は、早産児の呼吸器障害の発生率を低減しない」と結論し、「現在、US National Institute of Child Health and Human Development (NICHD)により、2,800人の早産リスクのある妊婦を対象に出産前ステロイド投与の臨床試験が進行中で、2013年に最終解析が予定されており、この結果が報告されるまでは、早産児の呼吸器障害の予防を目的としたコルチコステロイドのルーチンな使用は正当化されない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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進行性特発性肺線維症にシルデナフィルは有効か?

ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬シルデナフィル(商品名:レバチオ、ED治療薬としてはバイアグラ・保険未適応)について、進行性特発性肺線維症(IPF)に対する有効性をプラセボとの対照で検討した追加適応を目指す臨床試験の結果が報告された。主要評価項目(6分間歩行改善)での有益性は認められなかったが、副次評価項目ではさらなる研究の必要性をうたうに相当する、肯定的な結果がみられたという。シルデナフィルは進行性特発性肺線維症患者で、肺換気の比較的良好な領域の血流量を選択的に改善し、ガス交換能を改善する可能性があると期待されていることから、IPF臨床研究ネットワークのDavid A. Zisman氏らは、シルデナフィル投与による治療で、進行性IPF患者の歩行距離、呼吸困難、そしてQOLが改善するとの仮説を立て、検証のための臨床試験「STEP-IPF」を実施した。NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年5月18日号)より。2期から成る二重盲検・非盲検試験で評価STEP-IPF(Sildenafil Trial of Exercise Performance in Idiopathic Pulmonary Fibrosis)試験では、進行性IPFの定義は一酸化炭素拡散能が予測値の35%未満であることとした。試験は二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、2期間で構成された。被験者数は計180例。第1期試験では、被験者はシルデナフィル群(89例)またはプラセボ群(91例)に無作為に割り付けられ、12週間時点で評価が行われた。主要評価項目は、6分間歩行距離の20%以上延長を示した患者の比率だった。副次評価項目は、動脈血酸素化、呼吸困難の程度、QOLの変化などとされた。第2期試験は、非盲検試験で、全患者にシルデナフィルが投与され12週時点で評価が行われた。6分間歩行距離延長に有意差なし主要評価項目の6分間歩行距離の20%以上改善がみられたのは、シルデナフィル投与群では9例(10%)、プラセボ投与群6例(7%)で、両群間に有意差は認められなかった(P=0.39)。一方、副次評価項目である動脈血酸素化、一酸化炭素拡散能、呼吸困難の程度、QOLには、シルデナフィル投与を支持する、わずかながらも有意差が認められた。重篤な有害事象の発生は、両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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尿道スリング手術、恥骨後式と経閉鎖孔式どちらが有効?

腹圧性尿失禁の手術療法である尿道スリング手術について、スリングタイプの違い(恥骨後式と経閉鎖孔式)の有効性と合併症に関する大規模な比較検討試験が行われた。結果は両者の有効性は同等で、合併症がそれぞれ異なることが明らかにされている。米国アラバマ大学バーミンガム校のHolly E. Richter氏ら尿失禁治療ネットワークの研究グループによるもので、NEJM誌2010年6月3日号(オンライン版2010年5月17日号)で発表された。術後12ヵ月時点の手術の成功率を、主観的、客観的に評価し比較1996年にUlmstenらが発表した、メッシュテープを用いて恥骨裏側に吊り上げる恥骨後式は、従前のバーチ法(膣断端を腹部靱帯に固定し尿道を吊り上げる)と有効性・安全性で差異はない。それでも尿道スリング手術実施は100万件を超え手術療法の標準治療となりつつあるという。一方で、恥骨後式で術後問題となる合併症(排尿困難、切迫性尿失禁など)回避のため編み出されたのが経閉鎖孔式で、合併症の原因となる膀胱や腸への傷害を回避するために開発された。しかし両タイプについては、小規模な優位性試験で有効性は同等であると確認されているのみで、Richter氏らは大規模な多施設共同の無作為化同等試験を行った。試験は、2006年4月~2008年6月の間に3,521例が登録、うち597例が無作為化され、術後12ヵ月時点の治療成功を主要アウトカムに評価が行われた。被験者平均年齢は66歳、43人の外科医が平均10例ずつ手術を施行していた。主要アウトカムは、客観的判定(誘発テスト陰性、24時間尿パッドテスト陰性、再治療なし)と主観的判定(MESA調査票に基づく症状の自己申告なし、3日間排尿日誌に尿漏れエピソード記録なし、再治療なし)の両方で行われた。同等性マージンは、±12ポイントと定められた。合併症は、恥骨後式が排尿障害、経閉鎖孔式は神経学的症状12ヵ月時点の主要評価が行われたのは、565例(94.6%)だった。客観的評価による治療成功率は、恥骨後式80.8%、経閉鎖孔式77.7%で、両式の差は3.0ポイント(95%信頼区間:-3.6~9.6)で同等性マージンの基準も満たしていた。一方、主観的評価では、それぞれ62.2%、55.8%で6.4ポイント差(同:-1.6~14.3)と、同等ではあったがマージンの基準は満たさなかった。合併症に関しては、手術を要した排尿障害発生の割合は、恥骨後式の方が高く2.7%で、経閉鎖孔式は0%だった(P=0.004)。反対に神経学的症状(麻痺、脱力感)の発生は、恥骨後式4.0%に対し、経閉鎖孔式が9.4%だった(P=0.01)。術後の切迫性尿失禁の発生は有意差がなかった。また、術後満足感、QOLに対する満足感についても有意差がなかった。これらからRichter氏は、「有効性はほぼ同等。手術を考慮する患者とは合併症の違いについて、十分話し合う必要があるだろう」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

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教授 白井厚治先生の答え

最近のゼロカロリージュースについて0キロカロリーのコーラなどが最近は多く売られてますが、代謝内分泌学的には糖尿病の方に自信を持って勧められているのでしょうか?あくまで噂に過ぎないのですが、ああいうゼロカロリー飲料そのものには確かにカロリーがなくても、一緒に他の食事を摂った時に他の糖質の吸収を促進する作用があると聞きました。。。。PS:そもそも、人工甘味料のアスパルテームが身体に良いかどうかわかりませんし、炭酸飲料は身体に悪いのかもしれませんが。。。実際に、カロリーゼロ表示の飲料物を飲んでもらい、30分から120分まで、採血したところ、血糖の増加はほとんど見られないものもありましたが、なかにはあがるものもあり、原因は、カロリーゼロ表示は、糖質0.5%以下で使っているとのことでした。ですから、成分表示で、糖分ゼロと明記しているものは大丈夫でしょうが、それ以外のものは、大量飲めば、血糖は上がる可能性があります。アスパルテームについては、アミノ酸摂取として評価してよいと思われます。極端に、多用しなければ問題ないと思います。高感度CRPについて高感度CRPは動脈硬化の一つのいい指標でしょうが、上気道炎、歯肉炎などの炎症にても上昇すると理解しています。そうすると、風邪の流行している季節などでは動脈硬化の判定ができずらくなるということはないでしょうか?その通りで、CRPは体内でほかに目立った炎症がない場合にのみ、動脈硬化(炎症性反応としての)の指標として意味がありますが、特異性は、高感度CRPを用いてもありません。大規模スタデイで、ある治療の効果などをみるにはよいでしょう。しかし、日常診療で、個々の例に当てはめ、それのみで、あなたは動脈硬化があります、ありませんとの判定に用いるのは、困難と思います。逆に、動脈硬化のためと決め込んで、ほかの炎症、癌などの初期を見逃す可能性もあります。個人には参考にする程度でよいのではないでしょうか。破壊性甲状腺炎の診断動悸、全身倦怠、微熱、軽い咽頭痛の症状で他院受診。FT3 10.4,FT4 4.6 TSH感度以下、 抗体陰性(TPO、TG、TRAb,TSAb)でCRP 1前後、血沈正常からやや亢進、甲状腺エコーでまだら様low echo部位のある患者さんが当院紹介となりました。ヨードuptake 1%以下で破壊性甲状腺炎と診断しましたが、一貫して頸部痛はありません。頸部痛のない亜急性甲状腺炎と判断するのか、咽頭炎併発の無痛性甲状腺炎と迷いました。これでTPO抗体やTG抗体が陽性であればさらに橋本病の急性増悪とも迷うところです。頸部痛のない亜急性甲状腺炎という病態はあると考えて宜しいのでしょうか。また今回のケースではありませんが橋本病の抗体が陽性の場合、無痛性甲状腺炎と橋本病の急性増悪との鑑別についてもご教授いただければ幸いです。甲状腺機能亢進でTSAb、TRAb陰性、さらにヨードuptakeの低下という所見は破壊性甲状腺炎に矛盾しません。破壊性甲状腺炎には、亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎があります。亜急性甲状腺炎は炎症反応があり、low echo部位を認めるととも頸部痛はほぼ必発です。本例では頸部痛なしなので、亜急性甲状腺炎とは言えないでしょう。従って、無痛性甲状腺炎の可能性が強くなります。無痛性甲状腺炎は、多くは橋本病を基盤とした疾患とされており、本例がTPO、TGの抗体が陰性であることから、合致しません。まだ特定されていませんが何らかのウィルスによる甲状腺炎かもしれません。実際、本症例をどうするかですが、私なら経過観察が重要と考えます。ホルモン値を追跡し、下がればそれでよく、もし、炎症反応が強くなったり、頸部痛が出現してきたりすれば、亜急性甲状腺炎と考えて、ステロイド投与も考慮していくべきでしょう (当面はNSAIDでも十分)。甲状腺機能亢進症が長引くようであれば、甲状腺中毒症状に応じて、メルカゾールを適量処方、経過観察します。術前術後の糖尿病コントロール経口糖尿病薬は手術前後は禁忌となっています。手術前後とはどれくらいの期間をいうのでしょうか。その間はインシュリンでコントロールすることになりますが基本的なやりかたをご教示ください。手術の種類、術後の食事摂取の状況からも、ことなり、一律にはいえないと思います。一般に消化管手術は、吸収が不安定なこともあり、最低前1日、後7日間くらいは、血糖測定下でのインスリン治療が望まれます。SU剤を中止してのインスリン量の決定は、個々異なり、試行錯誤ですが、グリペングラマイド(2.5mg)3T/日では、およそ、インスリン必要量は、8-12単位くらいではないでしょうか。当院では、毎食前血糖測定後、血糖(mg/dl)100-120、  120-150、150-200、200-250、250-300 それぞれ、インスリン(レギュラー)2-4、4-6、6-8、8-10、10-12単位打つことを目安にしています。大学病院に足りないもの先生が大学病院の経営のみならず、臨床の現場でもご活躍されている様子、記事で拝見しました。大学病院の上から下までご存知の先生にお聞きしたいことがあります。「今、大学病院に足りないもの」を一つ挙げるとしたら、なんでしょうか?今や大学病院も収入につながる診療に振り回され、臨床研究の機会がどんどん減っているような感があります。周りの若手を見ても、診療に疲れて、「大学病院でバリバリ研究するぞ!」という気概を感じることができません。魅力ある大学病院を作るために何が必要なのか?何が足りないのか、日々悩んでいる状況です。ご教授頂けると幸いです。こんな時代の今こそなぜ、大学病院にいるのか、どのような姿勢をとるのか、原点が問われていると思います。それというのも、いろいろ言われていますが、医療の原点である患者さんの満足度(医療レベルもふくめ)を中心に、医師をきちんと配備し、グループ、科の壁を乗り越え、互いに手を出し合ってゆけば、大学病院は採算的にやってゆけるというのが実感でした。ただそこには、多くの若い医師たちがいるということ、即ち、採算的にみると、薄給でがんばってくれている若手医師がいるからこと成り立つことを忘れてはなりません。それに対して、彼らが大学病院にいる存在意義を見出すには、スタッフが魅力的な医療技能を提示でき、全身全霊をかけて患者さんを診ているすばらしい姿をみせること。若手医師は今の医療を学ぶのみでなく、医療を開拓していくメンバーの1人として、テーマを持ち未解決なものを解決する術を身につけることの充実感とそれによる自信が必要と思います。従って、大学スタッフの責任は重大で(それだけやりがいがあるという意味です)、面白い研究テーマを見つけ、その解決を目指してあらゆる手段を用い(基礎、臨床研究)、しかもそれを楽しみながらやっている姿勢を見せ続けることです。そして、病院の業務に追われ疲れているように見えた時こそ、それらを吹き飛ばす面白い研究テーマを突きつけるべきです。マンネリと疲労から脱出させる最良の方法となります。先生のようなやる気のある上級医師は、遠慮せず、怖がらず若手医師に語りかける続けることでしょう。今の医学教育は研究の面白さ楽しさを感じ取るレセプターを育成していませんから、苦労しますが、でも、わかってくれる日が必ず来ると思います。CAVIの開発についてCAVIにはいつもお世話になっています。お恥ずかしい話、先生が開発に携わっていたこと、知りませんでした。このような新しい技術や検査機械の開発はどのように始まり、進行していくものなのでしょうか?また、このように周りを上手く巻き込んでいく時のポイント、秘訣などありましたらご教授頂きたいです。宜しくお願いします。CAVIは、今次々と新しい事実が見出されています。大切なことは、若い先生方に興味を持ってもらえ、いったん途絶えていた血管機能学が代謝学と連携して再度面白くなり始めたことです。CAVIと巡り合ったいきさつですが、たまたま、開発初期に相談をうけたわけで、私が発想し持ち込んだわけではありません。ただ、血管機能については興味をもち30年前から大動脈脈波速度(長谷川法=血圧補正法)を毎年透析患者さんで10数年にわたり測定していました。そこでPWVの限界と可能性を私なりに理解していたつもりです。今回CAVIの初期のデータとりをする中で、計算式決定まで多少紆余曲折がありましたが、バイオメカニクスの科学と臨床成績から現在の式が最終決定され、以後広い臨床評価が始まりました。そこには、長年血管機能解析に興味を持ち続け誠実にデータを蓄積分析してくれていた施設と人がいたこと、会社も、科学性と臨床データ両面を尊重し互いに納得のいくまで検討できたこと、また脈波感知と分析に高度の技術を発揮した優秀なスタッフがいたことが幸運だったと思います。加えて、全国の大御所というよりは若手研究者の方がCAVIに素直に興味をもってくれ、いわゆる大学の研究室よりは、一般病院で、素養のある先生方が先行して出された研究が多く、現場で開拓心旺盛な医師の存在が大きく浮かび上がりました。新しい世界を開くのは情熱ある若手医師とつくづく思いました。無理に誰かを巻き込もうとしたこともなく、CAVIそのものの原理と測定の安定性が最大の牽引力であったと思います。でもまだまだ、これから多くを検証する必要があります。佐倉病院でないとできないこととある病院で研修医やっている者です。先生の記事を興味深く読ませて頂きました。文末にある「佐倉病院でないとできないことに向けて頑張っていく」という言葉が印象的です。記事を読んでいると、佐倉病院さんはとてもチームワークが良く、ドクターもコメディカルも同じ目標に向かって猛進しているような印象を受けました。(先生のところだけかもしれませんが...。)「佐倉病院にしかできないこと」というのは、そのように「チームワークが良い病院でしかできないこと」なのでしょうか?それともまた何か他とは違う特徴が佐倉病院さんにはあるのでしょうか?基礎も臨床もしっかり行い、しかも全て患者さんのためになっている様子に感銘を受けました。ご回答宜しくお願いします。どこの場にいても、そこを、地球上で一番すばらしいところにしてやろうという気持ちが大切です。恵まれてすべてが整っているところほど、これからの人にとってつまらない場所はないと思います。とにかく、その場での問題点を探し、皆が一番困っているところを見つけ出し、その解決に向けて、できるとところを一歩一歩解決してゆく姿勢を評価、支援しあえる環境が佐倉病院にはあるということです。内科も、外科医に負けないような患者さんに感謝される治療学を確立しようと、研究テーマの根幹は、酸化、再生、免疫制御、栄養の4本柱で、おのおの磨いているところです。たとえば、呼吸器は抗酸化療法で間質性肺炎に挑戦、代謝は、肥満治療を分子から栄養、こころの問題と多面的に捉える治療、特に肥満外科治療が開始されましたがその術前術後のフォロー、フォーミュラー食(低エネルギー低糖質、高たんぱく食)の応用と基礎、糖尿病腎症に対するプロブコールを用いた抗酸化療法で透析療法移行抑制試験、循環器は、インターベンションに加えて、これから、難治性心不全に対する鹿児島大鄭教授の開発した和温療法実施と評価、睡眠時無呼吸と不安定狭心症の関係をみつけその治療システムの確立、消化器は、炎症性腸疾患のメッカとして、顆粒球除去療法、レミケード療法、神経内科は、排尿障害を中心に、パーキンソン病の深部脳刺激治療のバックアップ、再生医療も狙っています。研究は、各グループ専門を超えて互いに連携しています。原則として、できれば自然の法則性を体感するため、医師は基礎研究もする機会を経験してもらいたいものです。研究開発部の協力のもとに細胞培養、酵素学、遺伝子実験をできる体制を敷いています。要するに、病気を多面的にいくつかの独自の視点をもって診、医療を開拓してゆける人の育成がもっとも大切と考え、それには、チーム医療、他コメヂィカルとも力を合わせ、初めてできることと考えています。理想の地域連携とは先生がお考えになる「理想の地域連携」の姿とはどんなものでしょうか?また、その理想の姿になれない、理想の姿になるのを阻んでいる障害はなんでしょうか?(実現されていたら申し訳ないです。)現在、私も地域連携について勉強はしているものの、なかなか思うような形にできません。障害が多すぎて、「理想的」どころが「現実的」な連携フローにもなっていません。宜しくお願いします。地域となるとさまざまな価値観の人がおり、同じ言葉でも受け取り方が違ったり、利益配分に問題が出たりで、そう簡単に理想的な地域連携ができるわけではありません。しかし、今の医療は、個々の医療人が隔離状態で医療行為を行えるほど甘くなく、互いに、助け合って連携せざるをえないと思います。でも問題は、ただ患者さんを送りあえば医療連携になるかといえばそうでもなく、問題は患者さんも含めて、互いにわかりあい納得できることが大切で、それには情報の整理集約が必須です。私どもは、生活習慣病を中心としたヘルスケアファイルと呼ばれるノートを患者さん全員にお渡ししています。そこには、動脈硬化リスク因子、標準体重、BMI、臓器障害の有無、程度、さらに主要な検査値はグラフで提示するシステムを用いています。これで、関わる医師は無論、クラークさん、看護師さんも経過が一目瞭然。するとアドバイスも適切。また家族もわかり、応援しやすくなります。これを地域に広げたいというのが私どもの夢です。ただこのファイルは、血圧、糖尿、脂質、尿酸、体重、一般検査を含んでおり、全部網羅していると思います。わがままかもしれませんが、これ一冊にしていただきたいのです。一般には、00手帳が3つも5つももっておられる方もいますね。でもなんだかわからないというのが実情です。大人版、母子手帳を作るべきだと思います。チームワーク先生、チームをまとめ上げるために必要なものはなんでしょうか?チームワークというと「みんな仲良く」というイメージがありますが、決してそうではないと思います。きっと先生は、今までのご苦労の中から「これが大事!」というもの発見されていると思います。それを教えてください。宜しくお願いします。リーダーは、今自分らの分野で何が問題で、それを解決するために、どう力を互いに出し解決するかを提言し続けること。 即ち、小さなグループミーチングでも、プロジェクトを提示し、その成果がささやかでも出たら皆で確認し、面白がること。プロジェクトは、参加者全員が順に一つずつ持つように絶えず心がけていると、みんなに参加意識と存在感さらい自信が生まれます。すると、とたんに楽しく動き始めます。低糖質食私も低糖質食でメタボを脱却したものですが、抵糖質食の心血管病変に対してrisk reductionあるのでしょうか?食事の内容によっても大きく変化するのでしょうか?低糖質、高蛋白食が減量に効果があるとともに、血圧、血糖、脂質異常などの冠動脈リスク因子を減らすことは、海外のスタデイでも、ほぼ一致して報告されています。インスリン抵抗性解除作用と思います。ただし長期(1年)になると元に戻るとの報告もあり、それを鵜呑みに意味がないという人もいます。しかしその食事調査結果をみると、実際の摂取成分がもとに戻っており、実はそう長くは自己調整を続けられなかたというのが実態で、低糖質、高蛋白食は長期になると効果がなくなるというものではないわけです。御質問の「では実際、心血管イベントを減らせたか」はもっとも重要な点ですが、上述のごとく、通常食で成分調整を長年にわたり継続すること自体がほとんど不可能なため、年余にわたる低糖質、高蛋白食の冠動脈疾患の発生を抑えるかどうかの研究自体ができないのです。本当は、このような基本となる栄養組成の研究こそ、国が、コンプライアンスを保障できる食事の宅配便制度などを利用し、長期にわたる調査を企画運営すべきです。そこにこそ研究費をつぎ込むべきです。薬物のようにメーカー主導のエビデンスベーストメデイシンは、この分野では行われることはないでしょう。現在、ある程度コンプライアンスをよくして低糖質、高蛋白食の効果を見る方法とすれば、フォーミュラ食を一日一回用いるなどの方法が考えられます。また、長期のイベントの発生調査を、より短期に予測しうる方法があれば、即ち、動脈硬化のよいサロゲートマーカーがあれば早期に結論が出せるかもしれません。それには、新しい動脈硬化指標CAVIが使えるかもしれないとの淡い期待を、持っています。教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

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尿路感染症疑い例管理の有効性:管理方法間で有意差なし、経験的投与も3日目以降で

尿路感染症疑い例に対する5つの管理方法の有効性について無作為化試験の結果、症状コントロール達成に5つの方法間に差異はなく、「48時間以降に試験紙法で処方抗菌薬を決定して」あるいは「48時間以降に経験的投与」が、より少量の抗菌薬投与で症状コントロール達成が可能なことが明らかになった。英国サウサンプトン大学地域臨床学部門プライマリ・ケア医学グループのP Little氏らの報告によるもので、BMJ誌2010年2月20日号(オンライン版2010年2月5日号)に掲載された。プライマリ・ケアベースで非妊娠女性309例を5つの管理方法群に無作為化し検証Little氏らが検討したのは、(1)速やかに抗菌薬を経験的投与、(2)48時間以降に抗菌薬を経験的投与、(3)排尿症状スコア(尿の混濁・異臭、夜間頻尿、排尿障害のうち2つ以上)に基づき抗菌薬投与、(4)試験紙法の結果(亜硝酸塩、白血球、潜血が陽性)に基づき抗菌薬投与、(5)中間尿検査で陽性なら抗菌薬投与、の5つの管理方法。研究グループは試験にあたって、(1)に比べて他の群では症状コントロール達成が悪いであろう、特に(2)(5)の待機群で悪いだろうと仮定し、また(4)試験紙法、(5)中間尿検査が他の3方法に比べて効果的であろうと仮定し、試験に臨んだ。被験者は、2003年6月~2005年9月の間、イングランド南部の62の開業医から、尿路感染症が疑われる妊娠していない女性309例(18~70歳)が集められ、5つの方法群に無作為化された。各群患者に対しては、無作為化試験が患者とのコンセンサスを得たうえで遂行されやすいよう、アドバイスシートを使用して介入をコントロールした。また、症状についての自己評価記録を依頼した。主要評価項目は、症状の重症度(2~4日目)と期間、抗菌薬の使用についてとした。抗菌薬減を目指すなら、試験紙法、48時間以降投与が有用(1)群の抗菌薬を速やかに投与された患者の、中等症期間は3.54日間だった。しかし同期間に関して、その他4群と有意差はみられなかった。(1)群との期間比で、(2)群1.12、(3)群1.11、(4)群0.91、(5)群1.21だった(5群の尤度比検定p=0.369)。重症度についても、5群間に有意差はなかった。重症度スコア0~6の平均値は、(1)群2.15、(2)群2.11、(3)群1.77、(4)群1.74、(5)群2.08だった(p=0.177)。一方、抗菌薬使用については5群間に違いがみられた。使用率は(1)群97%、(2)群77%、(3)群90%、(4)群80%、(5)群81%だった(P=0.011)。また、(2)群の48時間以降投与患者について、(1)群の速やかな投与患者と比べて再診の割合が少なかった(ハザード比:0.57、P=0.014)。しかし平均症状期間は37%長かった(発生率比:1.37、P=0.003)。これら結果を踏まえてLittle氏は、「5つの管理戦略とも、症状コントロール達成は同程度だった。48時間以降に試験紙法で抗菌薬を決定して処方、あるいは48時間以降に経験的投与が、抗菌薬使用を減らすことにつながると思われる」と結論している。中間尿検査には利点が見いだせず中間尿検査の実施については、(1)群23%、(2)群15%、(3)群33%、(4)群36%、(5)群89%と違いがみられた(P

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尿路感染症疑い例管理の費用対効果:試験紙法か経験的投与に軍配、価値基準設定で変化

英国サウサンプトン大学ウェセックス研究所のDavid Turner氏らが、尿路感染症に対する5つの治療管理方法の費用対効果について検討した結果、最も費用対効果に優れているのは「試験紙法」だったと報告した。ただし結果は条件付きのうえ不確定要素が多いとし、また費用対効果に求める価値基準設定によっては、「速やかな経験的投与」が最も費用対効果に優れることも示されている。BMJ誌2010年2月20日号(オンライン版2010年2月5日号)掲載より。5つの管理方法について1ヵ月間の費用対効果を検証Turner氏らが検討したのは、(1)速やかに抗菌薬を経験的投与、(2)48時間以降に抗菌薬を経験的投与、(3)排尿症状スコア(尿の混濁・異臭、夜間頻尿、排尿障害のうち2つ以上)に基づき抗菌薬投与、(4)試験紙法の結果(亜硝酸塩、白血球、潜血が陽性)に基づき抗菌薬投与、(5)中間尿検査で陽性なら抗菌薬投与、の5つの管理方法。尿路感染症が疑われる妊娠していない女性309例(18~70歳)を上記5群に割り付け有効性が比較検討された無作為化試験の、1ヵ月間の費用対効果について解析した。主要評価項目は、症状期間とケアに要した費用とした。中等症期間を1日回避することにどれだけの価値があるか1ヵ月間で最も費用を要したのは、(5)中間尿検査群で37.1ポンド(約5,200円)だった。次いで(4)試験紙法群で35.3ポンド。一方で最も少なかったのは、(1)速やかな経験的投与群で30.6ポンド(約4,300円)だった。(2)48時間以降に経験的投与群は31.9ポンド、(3)排尿症状スコア群は32.3ポンドだった。費用対効果については、中等症期間を1日回避しても10ポンド(約1,400円)の価値もないとみる場合は、(1)速やかな経験的投与群が最も優れた戦略のようだった。1日回避に10ポンド以上の価値があるとみる場合は、(4)試験紙法群が最も費用対効果があるようだった。ただし、その結果については70%以上の確信性を得ることはできなかったとしている。

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