進行性特発性肺線維症にシルデナフィルは有効か?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/08/25

 



ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬シルデナフィル(商品名:レバチオ、ED治療薬としてはバイアグラ・保険未適応)について、進行性特発性肺線維症(IPF)に対する有効性をプラセボとの対照で検討した追加適応を目指す臨床試験の結果が報告された。主要評価項目(6分間歩行改善)での有益性は認められなかったが、副次評価項目ではさらなる研究の必要性をうたうに相当する、肯定的な結果がみられたという。シルデナフィルは進行性特発性肺線維症患者で、肺換気の比較的良好な領域の血流量を選択的に改善し、ガス交換能を改善する可能性があると期待されていることから、IPF臨床研究ネットワークのDavid A. Zisman氏らは、シルデナフィル投与による治療で、進行性IPF患者の歩行距離、呼吸困難、そしてQOLが改善するとの仮説を立て、検証のための臨床試験「STEP-IPF」を実施した。NEJM誌2010年8月12日号(オンライン版2010年5月18日号)より。

2期から成る二重盲検・非盲検試験で評価




STEP-IPF(Sildenafil Trial of Exercise Performance in Idiopathic Pulmonary Fibrosis)試験では、進行性IPFの定義は一酸化炭素拡散能が予測値の35%未満であることとした。

試験は二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、2期間で構成された。被験者数は計180例。

第1期試験では、被験者はシルデナフィル群(89例)またはプラセボ群(91例)に無作為に割り付けられ、12週間時点で評価が行われた。主要評価項目は、6分間歩行距離の20%以上延長を示した患者の比率だった。副次評価項目は、動脈血酸素化、呼吸困難の程度、QOLの変化などとされた。

第2期試験は、非盲検試験で、全患者にシルデナフィルが投与され12週時点で評価が行われた。

6分間歩行距離延長に有意差なし




主要評価項目の6分間歩行距離の20%以上改善がみられたのは、シルデナフィル投与群では9例(10%)、プラセボ投与群6例(7%)で、両群間に有意差は認められなかった(P=0.39)。

一方、副次評価項目である動脈血酸素化、一酸化炭素拡散能、呼吸困難の程度、QOLには、シルデナフィル投与を支持する、わずかながらも有意差が認められた。

重篤な有害事象の発生は、両群で同程度だった。

(朝田哲明:医療ライター)