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コーヒーや紅茶、牛乳など飲料別の胃食道逆流リスク~初の前向き研究

 胸焼けなどの胃食道逆流症状を軽減するために、コーヒーや紅茶、炭酸入り飲料を避けることが推奨されるが、この推奨をサポートする前向き研究データはなかった。今回、米国マサチューセッツ総合病院のRaaj S. Mehta氏らが、前向き研究のNurses' Health Study IIで検討した結果、コーヒーや紅茶、炭酸入り飲料の摂取により胃食道逆流症状のリスクが26~34%増加し、水や牛乳、ジュースの摂取ではリスク増加がみられないことが示された。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2019年11月28日号に掲載。胃食道逆流症状のハザード比はコーヒーで1.34、紅茶で1.26 著者らは、Nurses' Health Study IIで「習慣的な胃食道逆流症状がない」「がんではない」「プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬を服用していない」の条件を満たした42〜62歳の女性4万8,308人のデータを収集した。飲料摂取と胃食道逆流症状リスクとの関連は多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。 コーヒーや紅茶、牛乳などの飲料摂取と胃食道逆流症状との関連を評価した主な結果は以下のとおり。・26万2,641人年の追跡期間中に、胃食道逆流症状を週1回以上報告した7,961人の女性を特定した。・多変量調整後、各飲料について摂取量が最も多い女性(1日6杯以上)の最も少ない女性(1日0杯)に対する胃食道逆流症状のハザード比(HR)は、コーヒーで1.34 (95%CI:1.13~ 1.59、傾向のp<0.0001)、紅茶で1.26(95%CI:1.03~1.55、傾向のp<0.001)、炭酸入り飲料で1.29(95%CI:1.05~1.58、傾向のp<0.0001)であった。・カフェインの有無で層別化しても同様の結果が得られた。・水、牛乳、ジュースの摂取と胃食道逆流症状リスクとの関連は認められなかった。・1日2杯のコーヒー、紅茶、炭酸入り飲料を水に置き換えた場合、胃食道逆流症状のHRはコーヒーで0.96(95%CI:0.92~1.00)、紅茶で0.96(95%CI:0.92~1.00)、炭酸入り飲料で0.92(95%CI:0.89~0.96)であった。

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第31回 ACE阻害薬で誤嚥性肺炎が予防できる場合、できない場合【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の有名な副作用である空咳は5~20%の患者さんで起こるため、問い合わせを受けたことがある薬剤師さんは多いと思います。特徴としては、女性で起こりやすく、治療開始後数時間~1週間以内に発生し、中止すると4~7日程度で治まるものの、再開ないし別のACE阻害薬に切り替えると再発することなどが挙げられます1)。この空咳は副作用である一方、誤嚥性肺炎の予防に有効という報告もあるため、誤嚥性肺炎のリスクの高い高血圧症患者さんではあえて選択されることもあります。このACE阻害薬の肺炎予防の側面は、とくにアジア人において肺炎発症リスクが下がることが東北大学の研究で示唆されています。オーストララシア、欧州およびアジアで行われたランダム化試験で、脳卒中または一過性虚血発作の病歴を有する6,105例の患者を対象に、ペリンドプリルを中心とするACE阻害薬群またはプラセボ群に割り付けて、ACE阻害薬の肺炎予防効果を検討しています。結果として、中央値3.9年の追跡期間で261例が肺炎を発症しています。全体としてはプラセボ群と比較してACE阻害薬群の肺炎リスクは19%低下(95%信頼区間[CI]=-3~37)していたものの、有意差はありませんでしたが、アジア人では47%低下(95%CI=14~67)と有意差があった一方で、非アジア人では5%低下(95%CI=-27~29%)と有意差はありませんでした。ACE I/Dの遺伝子多型が関連するという説もありますが、検出力の限界もあり確定的なことはいえないという結果です2)。別のファクターとして、組織透過性やACE阻害作用の観点から、脂溶性のACE阻害薬のほうが水溶性のACE阻害薬よりも肺炎防止に有用ではないかという説もあり、肺炎で入院した患者787例を対象とした後ろ向きコホート研究で検証されています3)。なお、脂溶性ACE阻害薬にはシラザプリル、エナラプリル、ペリンドプリルなど、水溶性ACE阻害薬にはカプトプリル、リシノプリルなどがあります。この研究では、登録患者の24%(n=186)がACE阻害薬を使用しており、111例が脂溶性、74例が水溶性で、30日時点の全体の死亡率は9.2%でした。脂溶性ACE阻害薬群のオッズ比は0.3(95%CI=0.1~0.8)、水溶性ACE阻害薬群のオッズ比は0.7(95%CI=0.3~1.7)であり、脂溶性ACE阻害薬群で30日死亡率が有意に低下していました。ただし、サンプルサイズが小さいため確信度が高いわけではありません。2012年には、ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の肺炎予防効果を検証した37件の研究を含めたシステマティック・レビューが発表されました4)。主解析項目は肺炎発生率、2次解析項目は肺炎関連の死亡率です。ACE阻害薬群では対照群と比べて肺炎発症のオッズ比が0.66(95%CI=0.55~0.80)、ARB群と比べて直接的・間接的比較を併せた推定オッズ比が0.69(95%CI=0.56~0.85)と有意に低く、2年間のNNTは65(48~112)でした。脳卒中患者においてもACE阻害薬群のオッズ比は0.46(95%CI=0.34~0.62)と有意な低下でした。とくにアジア人ではオッズ比が0.43(0.34~0.54)とリスクの低下が大きく、非アジア人では0.82(95%CI=0.67~1.00)と小さい傾向にありました。ACE阻害薬間での差は測りかねますが、遺伝子多型や既往症によってはメリットを享受できる可能性が示唆されています。ハイリスク患者では肺炎予防の効果はみられない一方で、ネガティブな結果の研究もあります。低用量のACE阻害薬が経管導入されている高齢患者の肺炎を予防できるかを検討したランダム化比較試験です5)。被験者は、脳血管疾患による嚥下障害のために2週間以上経管栄養を受けている高齢患者93例で、26週間にわたりリシノプリル2.5mgまたはプラセボが投与されました。主解析項目として肺炎発症率、2次解析項目として死亡率および嚥下能力をみました。中間解析で71例が試験を完了し、完了した患者の死亡のオッズ比は、介入群で未調整オッズ比が2.94、調整オッズ比が7.79と有意に高かった一方で、群間で肺炎ないし致命的な肺炎の発生率に有意差はありませんでした。12週時点の嚥下機能は介入群でやや良好でした。対象がハイリスク患者さんですので、理論上は介入の効果が検出されやすいはずですが、死亡率が高いことから研究自体が途中で終了しているほど結果は逆でした。低用量かつ患者群がかなり限定されることから一般化はしづらいですが、こうした経管栄養を受けているハイリスク患者さんでは有望な肺炎予防法ではなさそうです。さらに、直近の東京大学による研究では、ACE阻害薬がARBと比較して脳卒中後の誤嚥性肺炎を減少させるかどうかを検討しています。2010年7月~2016年12月までの間に脳卒中で入院し、入院中に誤嚥性肺炎を発症した患者をDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースから分析検討しています6)。DPCデータベースは全国の施設から収集された入院患者データベースで、近年このビッグデータを分析に用いた文献も増加傾向にあります。ここでは、アウトカムとして、脳卒中後誤嚥性肺炎に対する14日、30日、90日時点の再入院率をみています。35,586例の患者が抽出され、うち5,846例(16%)がACE阻害薬を服用していました。傾向スコアマッチングで5,789のペアが作成され、ACE阻害薬群とARB群で比較した結果、14日の再入院は0.8% vs.0.7%、30日の再入院は1.3% vs.1.3%、90日間の再入院は2.6% vs.2.4%といずれも有意差はなく、両群のハザード比も1.21(95%CI=0.98~1.48)と有意差はありませんでした。日本の全国的な後ろ向き研究では、脳卒中後のACE阻害薬が誤嚥性肺炎予防に有効であるとは結論付けられないというところでしょうか。現実的には肺炎予防としては口腔ケアや行動介入などが優先して行われますが、薬剤による予防という観点で話題になることもありますので、参考にしていただければ幸いです。1)Israili ZH, et al. Ann Intern Med. 1992;117:234-242.2)Ohkubo T, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2004;169:1041-1045.3)Mortensen EM, et al. Am J Med Sci. 2008;336:462-466.4) Caldeira D, et al. BMJ. 2012;345:e4260. 5)Lee JS, et al. J Am Med Dir Assoc. 2015;16:702-707.6)Kumazawa R, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2019 Oct 18. [Epub ahead of print]

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第15回 高齢糖尿病患者の高血圧、どこまで厳格に管理する?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第15回 高齢糖尿病患者の高血圧、どこまで厳格に管理する?Q1 やや高め?厳密?高齢糖尿病患者での降圧目標の目安日本高血圧学会は、5年ぶりの改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を2019年4月に発表しました1)。その中で後期高齢者(75歳以上)の降圧目標は、従来の150/90mmHg未満から140/90mmHg未満に引き下げられています。また、忍容性があれば個人の症状や検査所見の変化に注意しながら、最終的には130/80mmHg未満を目標に治療することを求めています。さまざまな介入試験のメタ解析の評価・検討が行われた結果、高齢者においても高血圧治療によって心血管イベントや脳卒中イベントリスクが有意に低くなり、予後の改善が見込めると示唆されたためです。一方、糖尿病合併患者や蛋白尿陽性の慢性腎臓病(CKD)患者の降圧目標は、従来の130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)に据え置かれました。血圧が140/90mmHg以上を示した場合には、ただちに降圧薬を開始するとなっています(図)。欧米のガイドラインでは、糖尿病を合併した患者の場合、降圧目標は「140/80mmHg未満」や「140/85mmHg未満」と、比較的緩やかに設定されています2,3)。しかし日本では厳格な管理目標を維持することになりました。その理由の1つは、ACCORD-BP試験において厳格降圧群(目標収縮期血圧120mmHg未満)では通常降圧群(140mmHg未満)に比べて脳卒中が41%有意に減少したと報告されたためです4)。日本では欧米と比較して脳卒中の発症率が高いことから、脳卒中の発症予防に重きを置いた降圧目標を設定すべきと考えられ、「130/80mmHg未満」とされたのです。なお、JSH2019で設定された降圧目標は年齢と合併症に基づいて決められているため、降圧目標の設定基準を複数持つ状態が生じます。たとえば、75歳以上の高齢糖尿病患者の場合、糖尿病患者としてみると130/80mmHg未満ですが、後期高齢者としてみると140/90mmHg未満となり、2つの降圧目標が出来てしまいます。このように年齢と合併症の存在によって降圧目標が異なる場合、忍容性があれば130/80mmHg未満を目指すとされました。ただし高齢者では極端な降圧により臓器への血流障害を来す可能性も危惧されます。そのため、まずは140/90mmHgを目指し、達成できればその後緩徐に130/80mmHg未満を目指していけば良いと思われます。Q2 目標値にいかないことが多い・・・強化のタイミングや注意点は?糖尿病に合併した高血圧の降圧療法での第一選択は、微量アルブミン尿またはタンパク尿がある場合にはARBやACE阻害薬を考慮し、それ以外ではARB、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、少量のサイアザイド系利尿薬が推奨されています5)。高齢糖尿病患者さんでは腎機能障害を呈していることが多く、ARBやACE阻害薬のみでは十分な降圧効果が得られないこともあります。Ca拮抗薬や利尿薬等を併用したり用量を増加したりして血圧をコントロールします。この場合、多剤併用に至り、服薬管理が困難になることもありますので、薬物療法の単純化を行う必要があります。薬物療法の単純化には、1)1日1回の薬剤に変更して服薬回数を減らす2)薬剤を一包化して服薬を単純化する3)服薬管理の比較的簡単な合剤を使用して調整するなどの対策も有効です。高血圧症の多くは自覚症状がないため、治療に積極的になれないことが服薬管理困難の一因と思われます。ただし、高血圧を有する糖尿病患者では動脈硬化が進行しやすくなります。UKPDSの結果では、糖尿病患者において通常の血圧コントロール(154/87mmHg以下を目標)を行った群と、厳格な血圧コントロール(144/82mmHg以下を目標)を行った群で比較すると、厳格な血圧コントロールを行った群の方が糖尿病合併症発症リスクの有意な減少を認めました6)。患者さんは「透析はしたくない」等、腎障害に対して危機感を抱く方が多いため、腎機能を保持するには血圧コントロールが重要であることを説明すると、服薬に理解を示される場合が多いです。高齢糖尿病患者さんでは、神経障害の進行に伴い起立性低血圧を来すことも珍しくありません。そのため、家庭での収縮期血圧は少なくとも100mmHg以上を維持している方が安全でしょう。さらに、めまいやふらつきの訴えが増える場合には、降圧薬の減量や中止にて対応した方がADLやQOLを維持できると考えられます。起立性低血圧について、患者さんや家族、介護スタッフには、「悪性の病態ではないこと」「注意によって予防可能であること」「転倒打撲のリスクの方が問題であること」を説明し、急激な体位変換や頭位変換を避けるよう指導します。排便後は深呼吸後に立ち上がること、めまいが強い場合には一度仰臥位に戻り、状態が安定してから緩徐に起き上がることなどを実行すると、起立性低血圧に伴う転倒予防に役立ちます。また、状態の改善には血糖コントロールが重要であることも理解していただくと良いでしょう。病態の原因について説明を行い、具体的な対策を指導することで、恐怖感が軽減され、適切に対応できるようになります。高血圧を合併する高齢糖尿病患者さんに食事療法を行う際は、厳格な塩分制限による食欲低下や低栄養に注意が必要です。そのため、まずは「現在の摂取量の8割程度の摂取にとどめる」といった実行可能な塩分制限から開始することが重要です。Q3 80代や90代の超高齢者でも同じように管理しますか?SPRINTのサブ解析では、75歳以上の高齢者において、収縮期血圧の目標を120mmHg未満とした方が、心血管疾患の発症率が低いことが示されました。また、フレイルの程度に関わらず積極的降圧治療が予後を改善させるとも報告しています7)。この研究では非糖尿病患者を対象としていますが、80代や90代の超高齢糖尿病患者においても、降圧が予後改善につながる可能性があります。ただし、寝たきりなど身体能力の極めて低下した高血圧患者に対しては、降圧療法による予後改善効果は示されておらず、逆に予後が悪化することも懸念されています。高度の認知症や身体機能低下を来している場合には、従来通り個別判断での対応が望ましいと考えられます。とくに新規に降圧薬を開始する場合には、通常の半量程度から開始し、数ヵ月かけて徐々に降圧を図るなど、柔軟性のある対応で臨むことが良いと思われます。高齢糖尿病患者では、降圧薬増量による他臓器への影響や経済的負担増も考慮する必要があります。家族や介護スタッフの協力が得られればより良い調整が期待できますが、難しい場合には服薬アドヒアランスを考慮し、一包化や合剤の使用も検討が必要です。認知症が強い場合には、薬剤師と連携を取り、服薬カレンダーの設置や服薬支援のロボットを導入することなども効果的です。しかし、90歳以上の超高齢糖尿病患者さんでもADLが自立しており、元気な方も増えています。加齢と共に個人差は大きくなるため、あまり年齢にこだわる必要はないと考えられます。JSH 2019でも、提示した降圧目標はすべての患者における降圧目標ということではないと強調されていました。ガイドラインや最近の大規模試験の結果などを参考にしながら、個別に降圧目標を設定し対応することが重要です。1)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版;2019.2)American Diabetes Association. Standards of medical care in diabetes—2013. Diabetes Care. 2013;36: S11-66.3)Mancia G, et al.The Task Force for the management of arterial hypertension of the European Society of Hypertension(ESH) and of the European. 2013 ESH/ESC Guidelines for the management of arterial hypertension Society of Cardiology (ESC). J Hypertens. 2013;31:1281-1357.4)Cushman WC, et al. N Eng J Med. 2010;362:1575-1585.5)日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂,245-260, 2019.6)Tight blood pressure control and risk of macrovascular and microvascular complications in type 2 diabetes: UKPDS 38. UK prospective diabetes study group.BMJ.1998;317: 703-713.7)Williamson JD, et al. JAMA.315: 2673-2682, 2016.

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アルドステロン拮抗薬の死角を制する!(解説:石上友章氏)-1130

 腎ネフロンは、高度に分化した組織であり、ヒトの水・電解質の恒常性の維持に重要な働きをしている。ナトリウムの出納についての恒常性の維持機構が発達しており、尿細管の各セグメントごとに、特徴的なナトリウムトランスポーターが発現している。ナトリウムイオンは、原尿中にろ過されたのち、各セグメントのナトリウムトランスポーターにより再吸収される。NHE1(Sodiumu-Hydrogen-Exchanger)は、近位尿細管のapical membrane(頂端側)に発現し、Naイオンと、Hイオンの交換に関与している。ヘンレのループ(loop of Henle)には、NKCC:Na+-Cl--K+共輸送体が発現しており、ループ利尿薬であるフロセミドが特異的な阻害薬である。遠位尿細管の近位部(proximal DCT)には、サイアザイド感受性NCCT:Na+-Cl-共輸送体が、そして遠位部では、上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)が、ナトリウムイオンの再吸収を行っている。 ENaCの局在する、遠位尿細管遠位部(distal DCT)~結合尿細管(CNT)~皮質集合管(CCD)は、アルドステロンの核内受容体であるMR(mineralocorticoid receptor)と、コルチゾールの代謝酵素である11βHSD2が発現している。MRは、コルチゾールに強い親和性があり、11βHSD2のない上皮細胞では、アルドステロンと結合することができない。ENaCが発現している腎尿細管を、ASDN(aldosterone-sensitive distal nephron)と総称し、アルドステロンはASDNに働いて、さまざまな遺伝子の発現を調整している(AIP:aldosterone-inducible protein)。ENaCはAIPの代表的なタンパク質であるが、アルドステロンはROMK(renal outer medullary potassium channel)というカリウムチャネルの発現も制御している。 アルドステロン拮抗薬を投与するとENaCを抑制することで、ナトリウム再吸収量を抑制し、降圧を得ることができるが、ROMKをも抑制してしまうために、カリウムイオンの分泌も抑制されてしまう。これが、アルドステロン拮抗薬による、高カリウム血症の機序であると考えられている。高カリウム血症は、致死的な不整脈の誘因になることから、アルドステロン拮抗薬の内服には、細心の注意が必要である。いわばアルドステロン拮抗薬の死角ともいえる副作用である。 米国・インディアナ大学のRajiv Agarwal氏らが、10ヵ国62外来医療センターを通じて行った第II相の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験は、こうした背景のもとに計画された。CKDを合併した治療抵抗性高血圧症に、アルドステロン拮抗薬と共に、ナトリウムを含まない陽イオン結合非吸着性ポリマーであるpatiromerを併用し、服薬継続率を比較検討した。 結果は、patiromer併用群で、期待どおりに服薬継続率が高率であった。アルドステロン拮抗薬の降圧作用は、ENaCの抑制だけではないが、ENaCを直接制御する薬物による降圧治療が可能であれば、このような変則的な薬物治療も必要ないのかもしれない。

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高血圧の第1選択薬、単剤での有効性を比較/Lancet

 降圧治療の単剤療法を開始する際、サイアザイド(THZ)系/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬に比べて優れており、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、その他の第1選択薬4クラスの降圧薬に比べ有効性が劣ることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMarc A. Suchard氏らが行った系統的な国際的大規模解析の結果、示された。残余交絡や出版バイアスなども補正した包括的フレームワークを開発し、米国、日本、韓国などの490万例の患者データを解析して明らかにしたもので、その他の第1選択薬については、現行ガイドラインに合わせて降圧治療の単剤療法を開始した場合の有効性は同等であったという。高血圧に対する至適な単剤療法については曖昧なままで、ガイドラインでは、並存疾患がない場合はあらゆる主要な薬剤を第1選択薬に推奨されている。この選択肢について無作為化試験では精錬がされていなかった。Lancet誌オンライン版2019年10月24日号掲載の報告。高血圧の第1選択薬による治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較 研究グループは、数百万の患者の観察データを含む多くの薬剤の有効性アウトカムおよび安全性評価を比較可能とする、残余交絡、出版バイアス、p値ハッキングなどを最小限に補正したリアルワールドの包括的フレームワークを開発した。同フレームワークを用いて、6つの診療報酬請求データベースと、3つの電子診療録データベースについてシステマティックに解析を行い、高血圧の第1選択薬の降圧薬について治療の有効性と安全性に関する55のアウトカムを比較した。 有効性に関する主要アウトカムは3つ(急性心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中)、副次アウトカムは6つ、安全性に関するアウトカムは46で、相対リスクを算出して比較した。高血圧の第1選択薬のうち、THZ系利尿薬はACE阻害薬に比べ良好 患者データ490万例の解析において、全クラスおよびアウトカムを比較した2万2,000の補正後・傾向スコア補正後ハザード比を得た。 高血圧の第1選択薬による単剤療法を開始する際、ほとんどの比較推算値は治療薬クラス間に差は認められないことを示すものだった。しかし、THZ系/THZ系類似利尿薬は、ACE阻害薬に比べ、主要有効性アウトカムが有意に高かった。初回治療におけるリスクは、急性心筋梗塞のハザード比(HR)0.84(95%信頼区間[CI]:0.75~0.95、p=0.01)、心不全による入院が0.83(0.74~0.95、p=0.01)、脳卒中が0.83(0.74~0.95、p=0.01)だった。安全性プロファイルも、THZ系/THZ系類似利尿薬はACE阻害薬よりも良好だった。 また、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の有効性は、その他の高血圧の第1選択薬4クラスの降圧薬(THZ系/THZ系類似利尿薬、ARB、ACE阻害薬、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)に比べ有効性は有意に劣っていた。

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世界初、経皮吸収型の統合失調症治療薬「ロナセンテープ20mg/30mg/40mg」【下平博士のDIノート】第36回

世界初、経皮吸収型の統合失調症治療薬「ロナセンテープ20mg/30mg/40mg」今回は、抗精神病薬「ブロナンセリン経皮吸収型製剤(商品名:ロナセンテープ20mg/30mg/40mg)」を紹介します。本剤は、統合失調症治療薬として初めての経皮吸収型製剤であり、これまで経口薬での管理が困難だった患者のアドヒアランス向上が期待されています。<効能・効果>本剤は、統合失調症の適応で、2019年6月18日に承認され、2019年9月10日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはブロナンセリンとして40mgを1日1回貼付します。患者の状態により、1日量上限の80mgを超えない範囲で適宜増減することができます。本剤は、胸部、腹部、背部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替えて使用します。<副作用>国際共同第III相試験における安全性解析対象例521例中、臨床検査値異常を含む副作用が310例(59.5%)に認められました。主な副作用はパーキンソン症候群(14.0%)、アカシジア(10.9%)、適用部位紅斑(7.7%)などでした。また、国内第III相長期投与試験における安全性解析対象例200例中、臨床検査値異常を含む副作用が137例(68.5%)に認められました。主な副作用は適用部位紅斑(22.0%)、プロラクチン上昇(14.0%)、パーキンソン症候群(12.5%)、適用部位そう痒感(10.0%)、アカシジア(9.0%)、不眠(8.0%)などでした。なお、同成分の経口薬では重大な副作用として、高血糖(0.1%)、悪性症候群、遅発性ジスキネジア、麻痺性イレウス、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、横紋筋融解症、無顆粒球症、白血球減少、肺塞栓症、深部静脈血栓症、肝機能障害、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡(いずれも頻度不明)が認められているため、経皮吸収型製剤でも注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内のドパミン、セロトニンなどのバランスを整えることで、幻聴、妄想、不安、緊張、意欲低下などの症状を和らげます。2.毎日同じ時間を目安に、前日に貼った薬を剥がしてから、前回とは異なる場所に新しい薬を1日1回貼ってください。3.胸部、腹部、背部のいずれにも貼付可能ですが、発疹、水ぶくれ、過度の日焼けやかゆみが生じることがあるので、貼付時~2週間程度は貼付部位が直射日光に当たらないようにしてください。4.使用後は、接着面を内側にして貼り合わせ、子供の手の届かないところへ捨ててください。5.眠気、注意力・集中力・反射運動能力の低下などが起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないでください。6.本剤の使用により、高血糖が現れることがあります。喉の渇き、過度の水分摂取、尿の量が多い、尿の回数が多いなど、いつもとは違う症状が現れた場合はすぐに受診してください。<Shimo's eyes>本剤は、世界で初めて統合失調症を適応として承認された経皮吸収型製剤です。本剤および同成分の経口薬(錠剤・散剤)は、非定型抗精神病薬のセロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)に分類され、既存のSDAとしては、リスペリドン(商品名:リスパダール)、ペロスピロン(同:ルーラン)、パリペリドン(同:インヴェガなど)があります。統合失調症の治療では、アドヒアランス不良による再発・再燃率の高さがしばしば問題となります。貼付薬である本剤には、貼付の有無や投与量を視認できるため、投薬管理が容易にできるというメリットがあります。また、食事のタイミングを考慮する必要がなく、食生活が不規則な患者さんや嚥下困難などで経口服薬が困難な患者さんへの投与も可能ですので、アドヒアランスの向上が期待できます。消化器系の副作用軽減も期待できますが、一方で貼付部位の皮膚関連副作用には注意が必要です。貼付薬は激しい動きによって剥がれることもありますが、患者さん自身が剥がしてしまうこともあります。かゆみなどの不快感で剥がしていることもありますので、理由や希望を聞き取るとよいでしょう。なお、薬物相互作用については経口薬と同様となっていますが、グレープフルーツジュースとの相互作用は主に消化管で生じるため、本剤では併用注意は設定されていません。経口薬から本剤に切り替える場合、次の投与予定時刻から本剤を使用することが可能です。一方で、本剤から経口薬へ切り替える場合には、添付文書の用法・用量に従って、1回4mg、1日2回食後経口投与より開始し、徐々に増量する必要があります。患者さんが安心して治療継続できるよう、副作用や併用薬、残薬などの聞き取りを行い、しっかりサポートしましょう。

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CABG後のグラフト不全の予防に、抗血小板薬2剤併用が有効/BMJ

 冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者では、アスピリンへのチカグレロルまたはクロピドグレルの追加により、アスピリン単独に比べ術後の大伏在静脈グラフト不全の予防効果が大きく改善されることが、カナダ・ウェスタン大学のKarla Solo氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月10日号に掲載された。アスピリンは、CABG後の大伏在静脈グラフト不全の予防に推奨される抗血小板薬である。一方、アスピリンへのP2Y12阻害薬または直接経口抗凝固薬の追加の利点については不確実性が残るという。グラフト不全と出血を評価するネットワークメタ解析 研究グループは、CABGを受けた患者の大伏在静脈グラフト不全の予防における経口抗血栓薬の有用性を評価する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2019年1月25日現在、医学関連データベース(Medline、Embase、Web of Science、CINAHL、the Cochrane Library)に登録された文献を検索した。 対象は、CABG後の大伏在静脈グラフト不全の予防として、経口抗血栓薬(抗血小板薬または抗凝固薬)の投与を受けた年齢18歳以上の患者が参加する無作為化対照比較試験であった。 有効性の主要エンドポイントは大伏在静脈グラフト不全、安全性の主要エンドポイントは大出血とされた。副次エンドポイントは、心筋梗塞と死亡であった。2種の抗血小板薬2剤併用で、中等度の確実性を有するエビデンス 1979~2019年に発表された20件の無作為化対照比較試験に関する21編の論文が、ネットワークメタ解析に含まれた(4,803例、9種の介入[8種の実薬とプラセボ])。8種の実薬は、クロピドグレル、アスピリン、ビタミンK拮抗薬、チカグレロル、リバーロキサバン、アスピリン+チカグレロル、アスピリン+リバーロキサバン、アスピリン+クロピドグレルであった。 アスピリン単独と比較して、アスピリン+チカグレロル(オッズ比[OR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.31~0.79、治療必要数[NNT]:10例)、アスピリン+クロピドグレル(0.60、0.42~0.86、19例)の2種の併用療法は、大伏在静脈グラフト不全を有意に抑制することを支持する、中等度の確実性を有するエビデンスが得られた。 大出血、心筋梗塞、および死亡については、アスピリン単独と個々の抗血栓療法の差に関して、強力なエビデンスは認められなかった。 非推移性(intransitivity)の可能性を排除できないものの、試験間の異質性(heterogeneity)と非整合性(incoherence)は、すべての解析で低かった。また、グラフトごとのデータを用いた感度分析では、有効性の推定値に変化はなかった。 著者は「CABG後の抗血小板薬2剤併用療法は、重要な患者アウトカムへの安全性と有効性プロファイルのバランスをみながら、患者に合わせて調整する必要がある」とし、「今後のガイドラインの改訂では、CABGを受けた患者の抗血栓療法による管理を最適化する必要があり、2種の抗血小板薬2剤併用療法は、多くの患者で考慮されるべきであろう」と指摘している。

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第12回 痛みの治療法【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第12回 痛みの治療法これまで11回にわたって、痛みの基本的概念から身体各部の痛みについて述べてまいりました。この<痛み>シリーズの最終回として、今回は痛みの治療法を概説いたします。痛み治療は末梢→中枢が原則、治療法は多岐に基本的な痛みの治療方針としては、神経の末梢部位から攻めていきます。たとえば神経ブロックにおきましても、罹患部分が末梢であれば痛みのトリガーポイントからブロックしていきます。効果が見られなければ、順次中枢部へと進んでいきます。末梢神経ブロックの次には、硬膜外ブロックが適応となります。その次には、脊髄や脳組織もターゲットとなります。電気神経刺激療法におきましても、体表の末梢神経から始めまして、脊髄電気刺激、脳電気刺激などへ移行し、鎮痛効果が見られなければ、神経ブロック同様に刺激部位を上位中枢へと移動していきます。大脳皮質を刺激する電気痙攣療法(ECT)は、うつ病に効果が認められておりますが、難治性慢性疼痛の治療にも応用されています。ECTによって嫌な記憶を忘れることも、疼痛の緩和をもたらすからです。低出力レーザー治療を含む光線療法も広く応用されてきております。レーザー治療は、神経ブロックの効果には多少及ばないものの、高齢患者を想定すると副作用が少ないために安全で有用性も高いと考えられております。患者参加型の疼痛治療法も試みられております。痛みは患者本人にしかわからないために、患者が痛みを感じた時に痛み治療薬を患者自身で投与する方法です。Patient Controlled Analgesia (PCA:自己調節鎮痛法)と呼ばれておりますが、ディスポーザブルセットからコンピュータ内蔵機器まで様々な装置が使用されております。主として鎮痛薬の静脈投与ですが筋肉投与も可能です。経口投与による頓服投与スタイルもPCAの一種ですが、あらかじめ基本となる鎮痛薬をベースとしまして、痛い時に使用する頓服用の鎮痛薬を、痛みが強くなるようであれば患者自身の判断で服用してもらいます。インターベンショナルな痛みの治療法も様々考案されております。そのうち、仙骨硬膜外腔癒着剥離術は腰痛治療にも応用されております。ビデオガイドカテーテルを仙骨裂孔から挿入し、ディスプレイ画面にて、癒着部を確認しながら、剥離を行っていきます。それと同時に生理食塩水で炎症部を洗浄し、発痛物質を洗い出すことによって、鎮痛を得る方法です。近年、分子生物学的手法の進展によって、痛みに関連する神経の受容体が次々と発見され、複雑な痛みの機序が徐々に解明されてきております。また、個々の患者さんによって、その疼痛機序は異なっておりますので、責任受容体や痛みの機序を容易に見つけ出すためのテストが必要になってきました。このためにドラッグチャレンジテスト(DCT)を活用することによって有効的な薬物を見出して、より効果的な薬物療法を施行していくことが大切です。使用される薬物としては、ケタミン、ATP(アデノシン3燐酸)、チオペンタール、ミダゾラム、モルヒネ、リドカイン、フェントラミンなどです。ケタミンはN-メチル‐D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗薬であり、NMDA受容体の活性化が原因の痛みに効果的です。ATPは脊髄A1受容体を介する神経調節機構に働きます。チオペンタールは、抗痙攣作用や精神的原因などの中枢神経抑制作用によって、痛みを軽減する効果を持っています。ミダゾラムも、チオペンタールと同様の作用を持っておりますが、筋緊張の改善作用もありますので、疼痛も緩和されます。モルヒネは、脊髄オピオイド受容体に作用するとともに、下行性抑制系も賦活して、強い鎮痛効果を発揮します。リドカインは、痛み神経の異常興奮を抑制する作用を有しておりますので、神経が原因となる神経障害性疼痛に効果がみられます。フェントラミンは、痛みの機構に交感神経系の関与があるときに効果があります。このようにして、それぞれの患者の痛みの機構を解明することによって、関連する薬物の投与や、脊髄・脳電気刺激療法などの適応が考慮され、治療法が重点的に応用されるために患者の負担が少なくなる上、より良い効果が早く得られるため、有効率もそれだけ高くなります。難治性疼痛の患者さんには、認知行動療法、マインドフルネスなどの心理療法も活用されております。運動療法を含む理学療法にも効果が見られております。最近、痛み患者の遺伝子の解析も試みられております。痛みが残存する人、しない人などの遺伝子の違いが解明されれば、痛み治療対象者や治療対象薬の選定にも有用となります。人生100年時代への対策の一つとして、2,000万人と言われる慢性疼痛の患者さんが、痛みを軽減することによって、患者さん自身で完結できる人生を歩んでいただければ、この上ない喜びです。<CareNet.com編集部よりお知らせ>本連載は、今回でいったん完結となります。2020年1月より、花岡一雄先生執筆による新連載を開始予定です。痛みの治療法をより具体的に掘り下げ、密度の濃い内容でお届けいたします。ぜひ、ご期待ください!

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スボレキサントの睡眠改善効果と聴覚刺激による目覚め効果

 不眠症患者の夜間の反応性に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)スボレキサントの安全性プロファイルについて、米国・Thomas Roth Sleep Disorders and Research CenterのChristopher L. Drake氏らが、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験により検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2019年9月15日号の報告。 不眠症患者(DSM-5診断)12例を対象に、スボレキサント10mg群、スボレキサント20mg群、プラセボ群にランダムに割り付けた。薬物最大血中濃度に達した時点で、安定期N2睡眠中に聴覚刺激音を再生し、目覚めるまで5デシベル(db)ずつ増加した。覚醒時のdbを聴覚刺激覚醒閾値(AAT)とし、群間比較を行った。また、85db超の割合についても比較を行った。最終的に、閾値周辺(80db、90db)を用いて感度分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・スボレキサント群は、プラセボ群と比較し、平均AATに有意な差は認められなかった。・AAT85dbで覚醒しなかった患者の割合についても、差は認められなかった。・スボレキサント20mg群では、プラセボ群と比較し、中途覚醒の減少および総睡眠時間の増加が認められた。 著者らは「スボレキサントのようなDORAは、不眠症改善効果が期待できる一方で、夜間の聴覚刺激に対する覚醒を可能とすることが示唆された」としている。

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第13回 糖尿病合併症の管理、高齢者では?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第13回 糖尿病合併症の管理、高齢者では?高齢糖尿病患者は罹病期間が長い例が多く、進行した合併症を有する例も多く経験します。今回はいわゆる三大合併症について解説します。合併症の進展予防には血糖管理だけではなく、血圧、脂質など包括的な管理が必要となりますが、すべてを厳格にコントロールしようとするがあまり“ポリファーマシー”となり、症例によっては、かえって予後を悪化させる場合もありますので、実際の治療に関しては個々の症例に応じて判断していくことが重要になります。Q1 微量アルブミン尿が出現しない場合も? 糖尿病腎症の管理について教えてください。高齢糖尿病患者でも、高血糖は糖尿病腎症の発症・進展に寄与するため、定期的に尿アルブミン・尿蛋白・eGFRを測定・計算し、糖尿病腎症の病期分類を行うことが推奨されています1)。症例にもよりますが、血液検査は外来受診のたび、尿検査は3~6カ月ごとに実施していることが多いです。高齢者では筋肉量が低下している場合が多く、血清Cre値では腎機能をよく見積もってしまうことがあり、BMIが低いなど筋肉量が低下していることが予想される場合には、血清シスタチンCによるeGFR_cysで評価します。典型的な糖尿病腎症は微量アルブミン尿から顕性蛋白尿、ネフローゼ、腎不全に至ると考えられており、尿中アルブミン測定が糖尿病腎症の早期発見に重要なわけですが、実際には、微量アルブミン尿の出現を経ずに、あるいは軽度のうちから腎機能が低下してくる症例も多く経験します。高血圧による腎硬化症などが、腎機能低下に寄与していると考えられていますが、こういった蛋白尿の目立たない例を含め、糖尿病がその発症や進展に関与していると考えられるCKDをDKD (diabetic kidney disease;糖尿病性腎臓病)と呼びます。加齢により腎機能は低下するため、DKDの有病率も高齢になるほど増えてきます。イタリアでの2型糖尿病患者15万7,595例の横断調査でも、eGFRが60mL/min未満の割合は65歳未満では6.8%、65~75歳で21.7%、76歳以上では44.3%と加齢とともにその割合が増加していました2)。一方、アルブミン尿の割合は65歳未満で25.6%、 65~75歳で28.4%、76歳以上で33.7%であり、加齢による増加はそれほど目立ちませんでした。リスク因子としては、eGFR60mL/min、アルブミン尿に共通して高血圧がありました。また、本研究では80歳以上でDKDがない集団の特徴も検討されており、良好な血糖管理(平均HbA1c:7.1%)に加え良好な脂質・血圧管理、体重減少がないことが挙げられています。これらのことから、高齢者糖尿病の治療では、糖尿病腎症の抑制の面からも血糖管理だけではなく、血圧・脂質管理、栄養療法といった包括的管理が重要であるといえます。血圧管理に関しては、『高血圧治療ガイドライン2019』では成人(75歳未満)の高血圧基準は140/90 mmHg以上(診察室血圧)とされ,降圧目標は130/80 mmHg未満と設定されています3)。75歳以上でも降圧目標は140/90mmHg未満であり、糖尿病などの併存疾患などによって降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合、忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満への降圧を目指すとしています。しかしながら、こうした患者では収縮期血圧110mmHg未満によるふらつきなどにも注意したほうがいいと思います。降圧薬は微量アルブミン尿、蛋白尿がある場合はACE阻害薬かARBの使用が優先されますが、微量アルブミン尿や蛋白尿がない場合はCa拮抗薬、サイアザイド系利尿薬も使用します。腎症4期以上でARB、ACE阻害薬を使用する場合は、腎機能悪化や高K血症に注意が必要です。また「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」では、75歳以上で腎症4期以上では、CCBが第一選択薬として推奨されています4)。腎性貧血に対するエリスロポエチン製剤(ESA)の使用については、75歳以上の高齢CKD患者では「ESAと鉄剤を用い、Hb値を11g/dL以上、13g/dL未満に管理するが、症例によってはHb値9g/dL以上の管理でも許容される」となっています。高齢者ではESAを高用量使用しなければならないことも多く、その場合はHbA1c 10g/dL程度を目標に使用しています。腎臓専門医への紹介のタイミングは日本腎臓学会より示されており、蛋白尿やアルブミン尿の区分ごとに紹介基準が示されているので、ご参照ください(表)。画像を拡大するQ2 網膜症、HbA1cの目安や眼科紹介のタイミングは?高血糖が糖尿病網膜症の発症・進展因子であることは高齢者でも同様です。60歳以上の2型糖尿病患者7万1,092例(平均年齢71歳)の追跡調査では、HbA1c 7.0%以上の患者ではレーザー光凝固術の施行が10.0%以上となり、HbA1c 6.0%未満の患者と比べて約3倍以上となっています5)。また、罹病期間が10年以上の高齢者糖尿病では、10年未満の患者と比べて重症の糖尿病性眼疾患(失明、増殖性網膜症、黄斑浮腫、レーザー光凝固術施行)の頻度は高くなりますが、80歳以上ではその頻度がやや減少すると報告されています6)。このように、高齢糖尿病患者では罹病期間が長く、光凝固術の既往がある例も多く存在します。現在の血糖コントロールが良好でも、罹病期間が長い例では急激に糖尿病網膜症が進行する場合があり、初診時は必ず、その後も少なくとも1年に1回の定期受診が必要です。増殖性前網膜症以上の網膜症が存在する場合は急激な血糖コントロールにより網膜症が悪化することがあり、緩徐に血糖値をコントロールする必要があります。どのくらいの速度で血糖値を管理するかについて具体的な目安は明らかでありませんが、少なくとも低血糖を避けるため、メトホルミンやDPP-4阻害薬単剤から治療をはじめ、1~2ヵ月ごとに漸増します。インスリン依存状態などでやむを得ずインスリンを使用する場合には血糖目標を緩め、食前血糖値200mg/dL前後で許容する場合もあります。そのような場合には当然眼科医と連携をとり、頻回に診察をしていただきます。患者さんとのやりとりにおいては、定期的に眼科受診の有無を確認することが大切です。眼科との連携には糖尿病連携手帳や糖尿病眼手帳が有用です。糖尿病連携手帳を渡し、受診を促すだけでは眼科を受診していただけない場合には、近隣の眼科あての(宛名入りの)紹介状を作成(あるいは院内紹介で予約枠を取得)すると、大抵の場合は受診していただけます。また、収縮期高血圧は糖尿病網膜症進行の、高LDL血症は糖尿病黄斑症進行の危険因子として知られており、それらの管理も重要です。高齢者糖尿病の視力障害は手段的ADL低下や転倒につながることがあるので注意を要します。高齢糖尿病患者797人の横断調査では、視力0.2~0.6の視力障害でも、交通機関を使っての外出、買い物、金銭管理などの手段的ADL低下と関連がみられました7)。J-EDIT研究でも、白内障があると手段的ADL低下のリスクが1.99倍になることが示されています8)。また、コントラスト視力障害があると転倒をきたしやすくなります9)。Q3 高齢者の糖尿病神経障害の特徴や具体的な治療の進め方について教えてください。神経障害は糖尿病合併症の中で最も多く、高齢糖尿病患者でも多く見られます。自覚症状、アキレス腱反射の低下・消失、下肢振動覚低下により診断しますが、高齢者では下肢振動覚が低下しており、70歳代では9秒以内、80歳以上では8秒以内を振動覚低下とすることが提案されています10)。自律神経障害の検査としてCVR-Rがありますが、高齢者では、加齢に伴い低下しているほか、β遮断薬の内服でも低下するため、結果の解釈に注意が必要です。検査間隔は軽症例で半年~1年ごと、重症例ではそれ以上の頻度での評価が推奨されています1)。しびれなどの自覚的な症状がないまま感覚障害が進行する例もあるため、自覚症状がない場合でも定期的な評価が必要です。とくに、下肢感覚障害が高度である場合には、潰瘍形成などの確認のためフットチェックが重要です。高齢者糖尿病では末梢神経障害があると、サルコペニア、転倒、認知機能低下、うつ傾向などの老年症候群を起こしやすくなります。神経障害が進行し、重症になると感覚障害だけではなく運動障害も出現し、筋力低下やバランス障害を伴い、転倒リスクが高くなります。加えて、自律神経障害の起立性低血圧や尿失禁も転倒の誘因となります。また、自律神経障害の無緊張性膀胱は、尿閉や溢流性尿失禁を起こし、尿路感染症の誘因となります。しびれや有痛性神経障害はうつのリスクやQOLの低下だけでなく、死亡リスクにも影響します。自律神経障害が進行すると神経因性膀胱による排尿障害、便秘、下痢などが出現することがあります。さらには、無自覚低血糖、無痛性心筋虚血のリスクも高まります。無自覚低血糖がみられる場合には、血糖目標の緩和も考慮します。また、急激な血糖コントロールによりしびれや痛みが増悪する場合があり(治療後神経障害)、高血糖が長期に持続していた例などでは緩徐なコントロールを心がけています。中等度以上のしびれや痛みに対しては、デュロキセチン、プレガバリン、三環系抗うつ薬が推奨されていますが、高齢者では副作用の点から三環系抗うつ薬は使用しづらく、デュロキセチンかプレガバリンを最小用量あるいはその半錠から開始し、少なくとも1週間以上の間隔をあけて漸増しています。両者とも効果にそう違いは感じませんが、共通して眠気やふらつきの副作用により転倒のリスクが高まることに注意が必要です。また、デュロキセチンでは高齢者で低Na血症のリスクが高くなることも報告されています。1)日本老年医学会・日本糖尿病学会編著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2017.南江堂; 2017.2)Russo GT,et al. BMC Geriatr. 2018;18:38.3)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版;20194)日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社会; 20185)Huang ES, et al. Diabetes Care.2011; 34:1329-1336.6)Huang ES, et al. JAMA Intern Med. 2014; 174: 251-258.7)Araki A, et al. Geriatr Gerontol Int. 2004;4:27-36.8)Sakurai T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2012;12:117-126.9)Schwartz AV, et al. Diabetes Care. 2008;31: 391-396.10)日本糖尿病学会・日本老年医学会編著. 高齢者糖尿病ガイド2018. 文光堂; 2018.

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不眠症患者に対するスボレキサントの安全性プロファイル~市販後調査サブグループ解析

 スボレキサントは、不眠症治療に用いられるデュアルオレキシン受容体拮抗薬である。MSD株式会社の佐野 秀樹氏らは、日常でみられるさまざまな初期治療下におけるスボレキサントによる不眠症治療の安全性プロファイルと臨床経過を明らかにするため、検討を行った。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2019年9月3日号の報告。 市販後調査(PMS;2015~17)より、スボレキサントによる初期治療時の患者の状態に基づき、睡眠薬未治療群(N群)、これまでの睡眠薬からの切り替え群(S群)、追加投与群(A群)、その他(O群)に分類し、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・PMSより抽出された患者3,248例の内訳は、N群1,946例(59.9%)、S群703例(21.6%)、A群536例(16.5%)、O群63例(1.9%)であった。・不眠症関連薬剤性副作用の発現率は、S群では5.3%であり、N群(0.46%)およびA群(1.5%)よりも高い傾向が認められた。・6ヵ月時点における効果不十分による中止率は、S群では14.9%であり、N群(9.6%)およびA群(10.4%)よりも高い傾向が認められた。 著者らは「他の不眠症治療薬から切り替えてスボレキサントによる治療を開始する際には、不眠症関連薬剤性副作用を注意深くモニタリングする必要がある。このことは、切り替え前の不眠症治療薬を突然中断したことが原因である可能性が示唆された」としている。

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アルツハイマー病患者における抗コリン薬の不適切な使用

 認知症でよくみられるアルツハイマー病は、通常、アセチルコリンレベルを上昇させる薬剤で治療を行う。コロンビア・Universidad Tecnologica de PereiraのLuis Fernando Valladales-Restrepo氏らは、アルツハイマー病と診断された患者に使用された抗コリン作用を有する薬剤の特定を試みた。Geriatrics & Gerontology International誌2019年9月号の報告。 コリンエステラーゼ阻害薬およびグルタミン酸N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬で治療されたアルツハイマー病外来患者を、コロンビアの国民データベースより特定し、横断的研究を実施した。抗コリン作動性負荷は、抗コリン作用評価尺度(Anticholinergic Cognitive Burden scale)を用いて評価し、抗コリン作用に応じて軽度~中等度(1~2点)または重度(3点以上)に分類した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者4,134例が抽出された。・平均年齢は81.50±8.16歳、女性の割合は67.8%であった。・抗コリン作用を有する薬剤を使用していた患者は、22.9%以上であった。・最も頻繁に使用されていた薬剤は、クエチアピン(8.6%)であった。・86歳以上の年齢は、抗コリン作動性負荷リスクの重度と関連が認められた(OR:2.19、95%CI:1.159~4.162)。・コリンエステラーゼ阻害薬と抗コリン薬との潜在的な相互作用は、7.8%の患者で認められた。 著者らは「抗コリン薬を使用していたアルツハイマー病患者の多くは、高齢女性であり、総抗コリン作動性負荷が大きく、コリンエステラーゼ阻害薬との薬理学的相互作用が認められた。抗コリン薬の使用は、抗認知症薬の臨床効果を低下させ、副作用のリスクを高める可能性がある」としている。

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ブロナンセリンのドパミンD3受容体への作用

 ブロナンセリンは、リスペリドンやオランザピンなどの他の抗精神病薬と異なり、セロトニン5-HT2A受容体よりもドパミンD2/D3受容体に対する高い親和性を有する薬剤である。名城大学の竹内 佐織氏らは、動物モデルで観察された社会的欠損に対するブロナンセリンの効果へのドパミンD3受容体の関与を調査し、その作用の分子メカニズムの解明を試みた。Neurochemistry International誌2019年9月号の報告。ブロナンセリンのドパミンD3受容体アンタゴニスト作用が新規治療戦略として有用 マウスに、非競合的N-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬であるフェンシクリジン(PCP、10mg/kg、皮下注射)を1日1回14日連続投与した。その後、これらのマウスにおける社交性(社会的相互作用テスト)およびGluN1サブユニット(NMDA受容体の必須サブユニット)の発現を評価した。 ブロナンセリンの効果へのドパミンD3受容体の関与を調査した主な結果は以下のとおり。・ブロナンセリンでは、PCP誘発性社会的欠損の有意な改善が認められたが、オランザピンとハロペリドールでは認められなかった。・ブロナンセリンのこの作用は、7-OH-DPAT(ドパミンD3受容体アゴニスト)およびSCH23390(ドパミンD1受容体アンタゴニスト)によって拮抗された。・しかし、ブロナンセリンの改善効果は、DOI(セロトニン5HT2A受容体アゴニスト)によって阻害されなかった。・PCP誘発性社会的欠損は、U99194(ドパミンD3受容体アンタゴニスト)およびSKF38393(ドパミンD1受容体アゴニスト)によっても改善が認められ、7-OH-DPATまたはSCH23390によって拮抗された。・ブロナンセリンは、PCP投与マウスの前頭前野のプロテインキナーゼA(PKA)によるSer897でのGluN1リン酸化レベルの低下を有意に抑制した。 著者らは「ブロナンセリンのPCP誘発性社会的欠損の改善効果は、GluN1サブユニットのSer897リン酸化によるNMDA受容体活性(前頭前野のドパミンD3受容体アンタゴニスト作用を介したドパミンD1受容体PKAシグナル伝達)が関与していることが示唆された。そしてこの結果は、ブロナンセリンのドパミンD3受容体アンタゴニスト作用が新規治療戦略として有用であり、統合失調症患者でみられる社会的欠損にドパミンD3受容体が新規治療標的分子となりうることを示唆している」としている。

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ザンタック自主回収、海外での発がん性物質検出受け予防的措置―GSK

 グラクソ・スミスクライン(GSK、東京都港区)は、9月26日付でH2受容体拮抗薬「ザンタック」(一般名:ラニチジン塩酸塩)の一部製品につき、自主回収を発表した。海外において、発がん性物質であるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されたとの報告を受け、同社では既に製品の出荷を停止し、調査・分析を進めている最中だが、予防的措置として自主回収に踏み切った。 自主回収の対象製品は、「ザンタック錠75」「ザンタック錠150」「ザンタック注射液50mg」「ザンタック注射液100mg」。 これまでの経緯としては、欧州医薬品庁(EMA)、米国食品医薬品局(FDA)などにおいて、ラニチジン塩酸塩の製剤および原薬から、微量のNDMAが検出された旨が発表され、厚生労働省が9月17日付で国内の製造販売業者に対し、ラニチジン塩酸塩の分析を進めると共に、同製剤及び原薬の新たな出荷を行わないよう指示していた。 GSKでは、諸外国において、当該国の規制当局と協議の結果、回収に至るケースが発生していることや、同社が同製剤を製造委託している海外工場から、欧州における販売を中断する旨の通告があったことを踏まえ、このたびの自主回収を決めた。同社では、ラニチジン塩酸塩の安全性監視活動は定期的に行っており、これまでに発がん性を示唆する事象は認められていないという。 一方、厚労省は17日付で、ラニチジン塩酸塩を服用している患者や医療機関等への対応について、各都道府県の衛生主管部宛てに文書を発出している。

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急性冠症候群へのプラスグレル、チカグレロルより高い有効性/NEJM

 ST上昇の有無を問わず急性冠症候群患者の治療では、プラスグレルはチカグレロルと比較して、1年後の死亡、心筋梗塞および脳卒中の複合の発生率が有意に低く、大出血の発生率は両群間に差はないことが、ドイツ心臓センターミュンヘンのStefanie Schupke氏らが行ったISAR-REACT 5試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。抗血小板薬2剤併用療法(アデノシン二リン酸受容体拮抗薬とアスピリン)は、急性冠症候群の標準治療とされる。プラスグレルとチカグレロルは先行薬のクロピドグレルに比べ、血小板阻害作用が強く、効果の発現が迅速かつ安定しているとされる。一方、侵襲的評価が予定されている患者における、これらの薬剤による1年間の治療の相対的な優劣のデータはこれまでなかったという。2剤を直接比較する医師主導の無作為化試験 本研究は、ドイツの21施設とイタリアの2施設が参加した医師主導の多施設共同非盲検無作為化第IV相試験であり、2013年9月~2018年2月の期間に患者登録が行われた(German Center for Cardiovascular Researchなどの助成による)。 対象は、急性冠症候群(ST上昇型心筋梗塞[STEMI]、非ST上昇型心筋梗塞[NSTEMI]、不安定狭心症)で入院し、侵襲的評価(冠動脈造影検査)が予定されている患者であった。 被験者は、プラスグレル(負荷用量60mg、維持用量10mg、1日1回)またはチカグレロル(負荷用量180mg、維持用量90mg、1日2回)を投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、1年後の死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合とし、主な副次エンドポイントは出血であった。主要エンドポイント:6.9% vs.9.3%、大出血:4.8% vs.5.4% 4,018例が登録され、プラスグレル群に2,006例(平均年齢64.6±12.1歳、女性23.8%)、チカグレロル群には2,012例(64.5±12.0歳、23.8%)が割り付けられた。STEMIが41.1%、NSTEMIが46.2%、不安定狭心症が12.7%であった。84.1%が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を、2.1%が冠動脈バイパス術(CABG)を受けていた。 主要エンドポイントは、プラスグレル群が2,006例中137例(6.9%)で発生し、チカグレロル群の2,012例中184例(9.3%)と比較して有意に低かった(ハザード比[HR]:1.36、95%信頼区間[CI]:1.09~1.70、p=0.006)。 主要エンドポイントの個々の要素の発生率は、死亡がプラスグレル群3.7%、チカグレロル群4.5%(HR:1.23、95%CI:0.91~1.68)、心筋梗塞がそれぞれ3.0%、4.8%(1.63、1.18~2.25)、脳卒中は1.0%、1.1%(1.17、0.63~2.15)であり、プラスグレル群における主要エンドポイントの発生率の低さは、主に心筋梗塞が少ないためであった。 ステント血栓症(definite、probable)は、プラスグレル群が1.0%、チカグレロル群は1.3%(HR:1.30、95%CI:0.72~2.33)で発現し、このうちdefiniteはそれぞれ0.6%、1.1%に認められた。 大出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]基準の3、4、5)は、プラスグレル群が4.8%、チカグレロル群は5.4%にみられた(HR:1.12、95%CI:0.83~1.51、p=0.46)。 著者は「いくつかの過去の知見により、チカグレロルに基づく戦略はプラスグレルに基づく戦略よりも優れるとの仮説を立てたが、結果は予想とは異なっていた」としている。

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Ca拮抗薬からの処方カスケードを看破【うまくいく!処方提案プラクティス】第5回

 今回は、薬剤の副作用対策のために次々と薬剤が追加されていった処方カスケードの症例を紹介します。処方の経緯をたどることによって、処方カスケードを発見できる可能性が高まります。患者情報外来患者、72歳、女性現病歴:高血圧症、便秘症血圧は130/70台を推移両下肢足背に浮腫+処方内容1.アムロジピン錠10mg 1錠 分1 朝食後2.フロセミド錠20mg 1錠 分1 朝食後3.プロピベリン錠10mg 1錠 分1 夕食後4.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後症例のポイントある日、高血圧症にて近医を受診継続中の患者さんから、浮腫がひどくて足がだるいという相談を受けました。症状や処方薬を確認して、まず気になったのはアムロジピンが10mgという高用量で投与されていることでした。Ca拮抗薬は高用量であるほど、投与期間が長いほど浮腫の生じる可能性が高いことが知られています。そのため、高血圧症以外の特記すべき現病歴や既往歴がなく、心不全や甲状腺機能低下症、腎機能・肝機能低下などの指摘もないことから薬剤性の浮腫を疑いました。Ca拮抗薬が高用量で投与されるようになった理由を探るため、処方された順番をたどってみることにしました。処方は、(1)10年前、便秘症にて酸化マグネシウム錠660mg /日開始、(2)5年前、高血圧症にてアムロジピン錠5mg開始、(3)1年前、血圧が高くなったためアムロジピン錠10mgに増量、(4)下腿浮腫のためフロセミド錠20mg開始、(5)頻尿のためプロピベリン錠10mg開始、(6)便秘症の悪化のため酸化マグネシウム1,000mg/日に増量、という経緯であったことが確認できました。Ca拮抗薬が高用量となったタイミングで下腿浮腫が生じているため、やはり薬剤性の浮腫の可能性が高く、その浮腫を改善する目的でフロセミドが処方されたものと考えられます。アムロジピンはL型Caチャネル遮断を主作用として細動脈の強い拡張効果を示すが、細静脈は拡張しないことから浮腫を生じやすいと考えられる。また、浮腫は高用量服用群で報告例が多い。一方で、L/N型Caチャネル遮断作用を有するシルニジピンは、細静脈を拡張させるため下腿浮腫の報告は少ない。本症例は、アムロジピンによる浮腫→フロセミドの追加→フロセミドの利尿作用による頻尿および患者QOL低下→過活動膀胱薬の追加→過活動膀胱薬の抗コリン作用による便秘の悪化→酸化マグネシウムの増量、という処方カスケードの典型症例であると考えられる。処方提案と経過そこで、下肢浮腫はCa拮抗薬が原因である可能性があり、Ca拮抗薬を減量することで改善するのではないか、ということを医師にトレーシングレポートを用いて処方提案しました。トレーシングレポートには、アムロジピンの添付文書の副作用欄に記載されている、高用量(10mg)投与群を含む第III相試験および長期投与試験の結果である「高用量(10mg)投与時に浮腫が高い頻度で認められ、5mg群で0.65%、10mg群で3.31%であった」というエビデンスを引用しました。後日、トレーシングレポートの内容を確認した医師より電話がありました。Ca拮抗薬の副作用に浮腫があることを把握していなかったとのことで、血圧に変動がないことからアムロジピンを5mgに減量して様子をみることになりました。1ヵ月後の来局時に、足背の浮腫の改善がみられ、血圧も130/70台と変わりがないことが確認できたため、浮腫のために処方されていたフロセミドの中止を提案し、採用されました。さらに1ヵ月後も足背の浮腫や血圧の悪化はなく経過しました。プロピベリンも中止して差し障りはないと思いましたが、中止することで排尿トラブルが生じることを患者さんが心配したため、そのまま経過をみることになりました。今後、排便・排尿状況を確認しながら、プロピベリンの継続意向に変わりがないかどうかを確認していきたいと考えています。

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PCI後の心房細動、エドキサバンベース治療の安全性は?/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心房細動患者では、抗血栓薬による出血のリスクに関して、エドキサバンベースのレジメンはビタミンK拮抗薬(VKA)ベースのレジメンに対し非劣性であることが、ベルギー・ハッセルト大学のPascal Vranckx氏らが行ったENTRUST-AF PCI試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月3日号に掲載された。エドキサバンは、心房細動患者において、脳卒中および全身性塞栓症の予防効果がVKAと同等であり、出血や心血管死の発生率は有意に低いと報告されている。また、患者の観点からは、VKAよりも使用が簡便とされる。一方、PCI施行例におけるエドキサバンとP2Y12阻害薬の併用治療の効果は検討されていないという。18ヵ国186施設が参加した非劣性試験 本研究は、PCI施行心房細動患者におけるエドキサバン+P2Y12阻害薬の安全性の評価を目的に、18ヵ国186施設で実施された多施設共同非盲検無作為化非劣性第IIIb相試験であり、2017年2月24日~2018年5月7日の期間に患者登録が行われた(Daiichi Sankyoの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、安定冠動脈疾患または急性冠症候群でPCIを受け、経口抗凝固薬の投与を要する心房細動患者であった。 被験者は、PCI施行後4時間~5日の間に、エドキサバン(60mg、1日1回)+P2Y12阻害薬を12ヵ月間投与する群、またはVKA+P2Y12阻害薬+アスピリン(100mg、1日1回、1~12ヵ月)を投与する群に無作為に割り付けられた。エドキサバンの用量は、クレアチニンクリアランス15~50mL/分、体重≦60kg、特定の強力なP糖タンパク質阻害薬(シクロスポリン、dronedarone、エリスロマイシン、ケトコナゾール)の併用のうち1つ以上がみられる場合は、1日30mgに減量された。 主要エンドポイントは、12ヵ月以内の大出血または臨床的に重要な非大出血(ISTH基準)の複合とし、非劣性マージンは1.20であった。主解析はintention-to-treat集団で行い、安全性の評価は1回以上の薬剤投与を受けたすべての患者で実施した。大出血/臨床的に重要な非大出血:17% vs.20%、優越性は認めず 1,506例が登録され、エドキサバンレジメン群に751例、VKAレジメン群には755例が割り付けられた。全体の年齢中央値は70歳(IQR:63~77)で、386例(26%)が女性であった。 ベースラインで189例(13%)が脳卒中の既往歴を有しており、CHA2DS2-VAScスコア中央値は4.0(IQR:3.0~5.0)、HAS-BLEDスコア中央値は3.0(2.0~3.0)であった。456例(30%)にVKA投与歴があり、365例(24%)には新規経口抗凝固薬(NOAC)の投与歴があった。PCI施行から無作為割り付けまでの期間中央値は45.1時間(IQR:22.2~76.2)だった。 12ヵ月時の大出血または臨床的に重要な非大出血イベントの発生は、エドキサバンレジメン群が751例中128例(17%、年間イベント発生率20.7%)、VKAレジメン群は755例中152例(20%、年間イベント発生率25.6%)に認められた。ハザード比は0.83(95%信頼区間[CI]:0.65~1.05、非劣性のp=0.0010、優越性のp=0.1154)であり、エドキサバンレジメン群のVKAレジメン群に対する非劣性が確認され、優越性は認められなかった。 大出血の発生は、エドキサバンレジメン群が751例中45例(6%、年間イベント発生率6.7%)、VKAレジメン群は755例中48例(6%、年間イベント発生率7.2%)であり、両群間に有意な差はみられなかった(HR:0.95、95CI:0.63~1.42)。 致死的出血は、エドキサバンレジメン群が1例(<1%)、VKAレジメン群は7例(1%)に認められた。頭蓋内出血は、それぞれ4例(1%、年間イベント発生率0.6%)および9例(1%、年間イベント発生率1.3%)にみられた。 12ヵ月時の主要な有効性アウトカム(心血管死、脳卒中、全身性塞栓イベント、心筋梗塞、ステント血栓症[definite]の複合)は、エドキサバンレジメン群が49例(7%、年間イベント発生率7.3%)、VKAレジメン群は46例(6%、年間イベント発生率6.9%)に認められ、両群間に有意な差はなかった(エドキサバンのHR:1.06、95%CI:0.71~1.69)。 著者は「大出血/臨床的に重要な非大出血の発生に関して、エドキサバンベースの2剤併用抗血栓療法(DAT)は、VKAベースの3剤併用抗血栓療法(TAT)に対し非劣性であることが示された」とまとめている。

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ダパグリフロジン、HFrEF患者でCV死・心不全悪化リスク26%低下(DAPA-HF)/ESC2019

 2型糖尿病合併の有無を問わず、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者における心血管死と心不全悪化の発現率を有意に低下させた。フランス・パリで開催された欧州心臓病学会(ESC2019)で、グラスゴー大学循環器リサーチセンターのJohn McMurray氏が、第III相DAPA-HF試験の結果を発表した。 DAPA-HF試験は、2型糖尿病合併および非合併の成人HFrEF患者を対象に、心不全の標準治療(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬[MRA]およびネプライシン阻害薬を含む薬剤)への追加療法としてのダパグリフロジンの有効性を検討した、国際多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験。 HFrEF患者(NYHA心機能分類IIからIV、LVEF;40%以下、NT-proBNP≧ 600pg/mL)に対し、標準治療への追加療法としてダパグリフロジン10mgを1日1回投与し、その有効性をプラセボとの比較で評価した。主要複合評価項目は、心不全イベント発生(入院または心不全による緊急受診)までの期間、または心血管死であった。 主な結果は以下のとおり。・ダパグリフロジン群に2,373例、プラセボ群に2,371例が無作為に割り付けられた。・ベースライン特性は、両群ともに平均LVEF:31%、平均eGFR:66mL/分/1.73m2、2型糖尿病罹患率:45%でバランスがとれていた。・心不全治療薬の使用状況は、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬:ダパグリフロジン群94% vs.プラセボ群93%、β遮断薬:両群ともに96%、MRA:両群ともに71%。・心血管死または心不全悪化の主要複合評価項目は、ダパグリフロジン群において有意に低下した(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.85、p=0.00001)。各項目の解析をみると、心不全悪化の初回発現リスク(HR:0.70、95%CI:0.59~0.83、p=0.00003)、心血管死のリスク(HR:0.82、95%CI:0.69~0.98、p=0.029)ともにダパグリフロジン群で低下した。主要複合評価項目におけるダパグリフロジンの影響は、2型糖尿病の有無を含む、検討された主要サブグループ全体でおおむね一貫していた。・全死亡率においても、100患者・年当たり1イベント換算で患者7.9例 vs.9.5例とダパグリフロジンで名目上有意な低下を示した(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97、p=0.022)。・Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire (カンザスシティ心筋症質問票:KCCQ)の総合症状スコアに基づいた、患者報告アウトカムの有意な改善が確認された。・安全性プロファイルについて、心不全治療において一般的な懸念事項である体液減少の発現率は7.5% vs.6.8%、腎有害事象の発現率は6.5% vs.7.2%、重症低血糖の発現率はともに0.2%であった。

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fremanezumab、4クラス抵抗性の片頭痛に有効/Lancet

 最大4クラスの予防薬が奏効せず、治療困難な片頭痛患者において、fremanezumabはプラセボに比べ片頭痛の発現を抑制し、忍容性も良好であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのMichel D. Ferrari氏らが行ったFOCUS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月16日号に掲載された。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体を標的とする抗体は、片頭痛発作の予防において有効性が確認されている。fremanezumabは、CGRPの2つのアイソフォームに選択的かつ強力に結合する完全ヒト化モノクローナル抗体である。2種の投与法とプラセボを比較する無作為化試験 本研究は、14ヵ国(ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国)の104施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第IIIb相試験であり、2017年11月10日~2018年7月6日に患者登録が行われた(Teva Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18~70歳、50歳またはそれ以前に片頭痛の診断を受け、12ヵ月以上の片頭痛の既往歴があり、試験登録時に反復性または慢性の片頭痛がみられ、過去10年間に2~4種のクラスの片頭痛予防薬(β遮断薬、抗けいれん薬、三環系抗うつ薬、Ca拮抗薬など)の投与を受けたが、治療に失敗した患者であった。 被験者は、fremanezumabを3ヵ月に1回皮下投与する群(1ヵ月目:675mg投与、2および3ヵ月目:プラセボ投与)、同薬を毎月1回皮下投与する群(1ヵ月目:反復性は225mg、慢性は675mg投与、2および3ヵ月目:反復性、慢性とも225mg投与)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、12週の治療が行われた。 有効性の主要アウトカムは、12週の治療期間における、1ヵ月間に片頭痛が発現した平均日数のベースラインからの変化とした。中等度以上の頭痛や急性期治療薬の使用も少ない 838例が登録され、3ヵ月投与群に276例、毎月投与群に283例、プラセボ群には279例が割り付けられた。全体の平均年齢は46.2歳(SD 11.0)、700例(84%)が女性、786例(94%)が白人であった。 片頭痛の診断からの平均経過期間は24.2年(SD 13.4)であり、慢性片頭痛(509例[61%])が反復性片頭痛(329例[39%])よりも多かった。無効であった片頭痛予防薬のクラスは、β遮断薬、抗けいれん薬、三環系抗うつ薬の割合が高かった。 12週の治療期間における、1ヵ月間に片頭痛が発現した平均日数のベースラインからの変化は、プラセボ群(最小二乗平均[LSM]:-0.6[SE 0.3])と比較して、3ヵ月投与群(LSM:-3.7[0.3]、プラセボ群とのLSMの差:-3.1、95%信頼区間[CI]:-3.8~-2.4、p<0.0001)および毎月投与群(LSM:-4.1[0.34]、プラセボ群とのLSMの差:-3.5、95%CI:-4.2~-2.8、p<0.0001)が、いずれも有意に低下した。 12週における、1ヵ月間に中等度以上の頭痛が発現した平均日数のベースラインからの変化についても、プラセボ群に比べ3ヵ月投与群(プラセボ群とのLSMの差:-3.2、95%CI:-3.9~-2.5、p<0.0001)および毎月投与群(プラセボ群とのLSMの差:-3.6、95%CI:-4.3~-2.9、p<0.0001)が、いずれも有意に低下した。 また、fremanezumabの両投与群はプラセボ群との比較において、あらゆる急性期治療薬の1ヵ月間の平均使用日数がベースラインから有意に短縮し(3ヵ月群:プラセボ群とのLSMの差:-3.1、95%CI:-3.8~-2.4、p<0.0001、毎月群:-3.4、-4.0~-2.7、p<0.0001)、同様に片頭痛に特異的な急性期治療薬(トリプタン、エルゴット化合物)についても有意な短縮が認められた(3ヵ月群、毎月群とも、p<0.0001)。 1件以上の有害事象(3ヵ月群55%、毎月群45%、プラセボ群48%)、1件以上の重篤な有害事象(<1%、1%、1%)、投与中止の原因となった有害事象(<1%、1%、1%)の頻度は、3群でほぼ同等であった。頻度の高い有害事象は、注射部位紅斑(7%、6%、5%)、注射部位硬結(4%、5%、4%)、注射部位疼痛(4%、3%、3%)、鼻咽頭炎(5%、2%、4%)などであった。 著者は、「プラセボと比較した治療効果は、患者の重症度が高かったにもかかわらず、あるいはおそらくその結果として、これまでに行われたfremanezumabや他の片頭痛予防薬の研究に比べて高かった」としている。

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ダパグリフロジンがHFrEF患者で主要評価項目達成、同クラスで初/AstraZeneca

 AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者:パスカル・ソリオ)は2019年8月26日までに、ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の心不全に対する有効性を検討した第III相DAPA-HF試験において、主要評価項目を達成したことを発表した。2型糖尿病合併の有無を問わず、心不全患者の標準治療への追加治療として、SGLT2阻害薬の有効性および安全性が実証されたのは初となる。 第III相DAPA-HF試験は、2型糖尿病合併および非合併の成人HFrEF(左室駆出率が低下した心不全)患者を対象に、心不全の標準治療(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬[MRA]およびネプライシン阻害薬を含む薬剤)への追加療法としてのダパグリフロジンの有効性を検討した、国際多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験。 HFrEF(NYHA心機能分類IIからIV、LVEF;40%以下)患者に対し、標準治療への追加療法としてダパグリフロジン10mgを1日1回投与し、その有効性をプラセボとの比較で評価した。主要複合評価項目は、心不全イベント発症(入院または心不全による緊急受診)までの期間、もしくは心血管死であった。 ダパグリフロジン群ではプラセボ群と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるリスク低下を示し、主要複合評価項目を達成した。本試験におけるダパグリフロジンの安全性プロファイルは、これまでに確立された同剤のプロファイルと一貫していた。AstraZenecaはプレスリリースの中で、同試験の全結果は、今後の学術集会において発表予定としている。 なお、ダパグリフロジンについては、HFpEF(左室駆出率が保持された心不全)患者対象の第III相DELIVER試験、HFrEFおよびHFpEF患者対象の第III相DETERMINE試験も進行中である。

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