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プロカルシトニン値は抗菌薬使用の指標となるか/NEJM

 下気道感染症が疑われる患者への、プロカルシトニン値を指標とする抗菌薬の開始/中止の決定は、抗菌薬曝露量を削減しないことが、米国・ピッツバーグ大学のDavid T. Huang氏らが行った「ProACT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年5月20日号に掲載された。プロカルシトニンは、ウイルスに比べ細菌感染によって上昇するペプチドで、上昇の程度は感染の重症度と相関し、感染の改善に伴って経時的に低下する。欧州の試験では、プロカルシトニンに基づくガイダンスは、明確な有害性を呈することなく抗菌薬の使用を抑制することが報告されている。米国食品医薬品局(FDA)は、これらの試験を含むメタ解析の結果に基づき、2017年2月、下気道感染症疑い例における抗菌薬使用の指標としてプロカルシトニン測定を承認したが、日常診療への適用の可能性は不明だという。米国の14施設の救急診療部受診患者1,656例を登録 本研究は、プロカルシトニン値に基づく抗菌薬処方ガイドラインは、有害事象を増加させずに抗菌薬曝露量を削減するかを検証する無作為化試験である(米国国立一般医科学研究所[NIGMS]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、下気道感染症の疑いで救急診療部を受診し、抗菌薬治療の適応の可否が不明な患者であった。被験者は、プロカルシトニン群と通常治療群に無作為に割り付けられた。 プロカルシトニン群の治療医には、プロカルシトニンの測定値と、測定値を4段階に分け、それぞれの推奨治療が記載された抗菌薬使用のガイドラインが提供された。通常治療群にもプロカルシトニンの測定が行われたが、臨床には使用されなかった。 登録後30日以内に、プロカルシトニン群は通常治療群に比べ、抗菌薬の総投与日数が削減され、有害なアウトカムを発症する患者の割合の差が4.5ポイント(非劣性マージン)を超えないとの仮説を立て、検証を行った。 2014年11月~2017年5月の期間に、米国の14施設1,656例が登録され、プロカルシトニン群に826例(平均年齢:52.9±18.4歳、男性:43.2%)、通常治療群には830例(53.2±18.7歳、42.7%)が割り付けられた。1,430例(86.4%)がフォローアップを完遂した。有害アウトカム率:プロカルシトニン群11.7% vs. 通常治療群13.1% 最終診断のデータが得られた1,645例のうち、646例(39.3%)が喘息の増悪、524例(31.9%)が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪、398例(24.2%)が急性気管支炎、328例(19.9%)が市中肺炎であった。782例(47.2%)が入院し、984例(59.4%)が30日以内に抗菌薬の投与を受けた。 プロカルシトニン群の治療医は、826例中792例(95.9%)のプロカルシトニン測定結果を受け取り、通常治療群の治療医も、830例中18例(2.2%)の測定結果を得た。プロカルシトニン群の血液サンプル採取から測定結果の取得までの時間の中央値は77分だった。両群とも、プロカルシトニン値が高いほど、救急診療部での抗菌薬処方の決定が多かった。 intention-to-treat(ITT)解析では、30日までの平均抗菌薬投与日数は、プロカルシトニン群が4.2±5.8日、通常治療群は4.3±5.6日と、両群間に有意な差はなかった(差:-0.05日、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.5、p=0.87)。per-protocol解析、per-guideline解析、complete-case解析、missing-not-at-random解析でも、結果はほぼ同様だった。 ITT解析による有害なアウトカムを発症した患者の割合は、それぞれ11.7%(96例)、13.1%(109例)であり、プロカルシトニン群の通常治療群に対する非劣性が示された(差:-1.5ポイント、95%CI:-4.6~1.7、非劣性:p<0.001)。他の解析法による結果もほぼ同様だった。 30日までに抗菌薬投与を受けた患者の割合や、最終診断名別の平均抗菌薬投与日数にも、両群間に差はなかった。 著者は、「抗菌薬曝露量が削減されなかった原因として、通常治療群の医師は測定値を知らないにもかかわらず、高値例に比べ低値例への抗菌薬の処方が少なかった点などが挙げられる」とし、「以前の試験と対照的な結果であった理由としては、case mix、デザイン、セッティングなどの違いが考えられる」と指摘している。

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愚痴を言うべからず【Dr. 中島の 新・徒然草】(223)

二百二十三の段 愚痴を言うべからず前回、「日本に来るやつは全員大阪城で転んでウチに来るんか!」と余計なことを言ってしまいましたが、そのせいかバチが当たりました。今回はフランス人のオジサンです。石垣にのぼって写真を撮ろうとして転倒したとかで、ERに担ぎ込まれてきました。再び国際親善です。・ボンジュール(こんにちは)・ジュスィファティゲ(疲れちまったよ)・ジュテーム(愛してる)私の知っているフランス語はこの3つだけ。乏しいとはいえ、日仏友好のためにありったけの知識を動員してコミュニケーションを図りました。言うまでもないことですが、使ったのは前二者だけです。中島「ボンジュール! ジュスィファティゲ」オジサン「ジュフフフフ(そう聞こえた)」中島「すみませーん。フランス語わかりませーん」私がフランス語をしゃべれると思ったのか、オジサンはいろいろ訴えてました。でも、なにがなにやらさっぱり分かりません。そこで同行してきた通訳の女性に助けてもらうことにしました。中島「とにかく、これは縫った方がきれいに治ると思います」通訳「わかりました」病院スタッフ「処置の間、奥様と通訳の方は外に出ていてくださーい」中島「ちょっと待った。通訳が居なくてどないするねん!」病院スタッフ「?」このオジサンも言葉の通じない人に囲まれて処置されるのだから、1つ1つ説明してあげないと不安でしょう。中島「処置する時には、その都度、説明するので、横で通訳をお願いします」通訳「わかりました」わかったと言いつつ、通訳さんは顔を背けたままです。どうも血が苦手な人のようでした。中島「まずは局所麻酔をしまーす」通訳「ジュジュジュジュジュ」オジサン「OK、OK」中島「針はできるだけ細いのを使って痛くないようにします」通訳「ジュフジュフジュフ」オジサン「サンキュー、サンキュー」中島「(皮膚をつまんで)これ、痛いですか?」通訳「ジュフフジュフフ?」オジサン「ジュフフのフ」通訳「痛くないそうです」中島「じゃあ、2針ほど縫いますね」通訳「ジュフフ、ドゥ、フフ」中島「ちょっと予定が変わって4針になりました」通訳「フジュフフフフ」オジサン「サンキュー、サンキュー」というわけで処置は何とか済みました。後は例によって診断書です。ここは医学の世界の共通言語である英語で適当に済ませました。2018年5月〇日、このジェントルマンは転倒して前額部と右肘と右下腿を打撲した。我々はそれぞれの創部を水で洗った。前額部の切創は4針縫った。1週間後に抜糸する必要がある。抗菌薬は、〇〇を△△mg、8時間毎に3日間服用するよう処方した。まったく愛想のない診断書ですが、必要な情報は入れたつもりです。診断書を完成させてオジサン夫婦と通訳さんに見てもらいました。3人とも英語をしゃべるのは苦手だけど、書いたものはよく分かるようで、確認のための質問も的確です。最後にオジサンと握手をして一件落着。ホッとしたけど疲れました。毎週のように国際親善していますが、せめて各国語で「大阪にようこそ。日本旅行を楽しんでいますか?」くらいのことを言って周囲をびっくりさせたいですね。最後に1句愚痴言うと 仕事が増えて ジュスィファティゲ(疲れちまったよ)

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急性単純性膀胱炎に対するガイドライン推奨治療の比較試験(解説:小金丸博氏)-860

 膀胱炎に代表される尿路感染症はとてもありふれた感染症であり、とくに女性では一生涯で半数以上が経験すると言われている。膀胱炎に対して世界中で多くの抗菌薬が処方されることが薬剤耐性菌出現の一因になっていると考えられており、2010年に米国感染症学会(IDSA)と欧州臨床微生物感染症学会(ESCMID)は「女性の急性単純性膀胱炎および腎盂腎炎の治療ガイドライン」を改訂した。このガイドラインでは、急性単純性膀胱炎に対する第1選択薬としてnitrofurantoin monohydrateやfosfomycin trometamolなどを推奨しており、これらの薬剤の使用量が増加してきているが、治療効果を比較したランダム化試験はほとんど存在しなかった。 本試験は、妊娠をしていない18歳以上の女性を対象に、急性単純性膀胱炎に対するnitrofurantoinとfosfomycinの治療効果を検討したオープンラベルのランダム化比較試験である。少なくとも1つの急性下部尿路感染症状(排尿障害、尿意切迫、頻尿、恥骨上圧痛)を有し、尿亜硝酸塩あるいは白血球エステラーゼ反応陽性を示すものを対象とした。その結果、プライマリアウトカムである28日目の臨床的改善率はnitrofurantoin群70%、fosfomycin群58%であり、nitrofurantoin群で有意に高率だった(群間差:12%、95%信頼区間:4~21%、p=0.004)。また、セカンダリアウトカムの1つである28日目の微生物学的改善率もnitrofurantoin群で有意に高率だった(74% vs.63%、群間差:11%、95%信頼区間:1~20%、p=0.04)。 本試験で検討された治療薬の用法は、それぞれnitrofurantoin100mgを1日3回・5日間経口投与とfosfomycin3gを単回経口投与であった。ガイドラインではnitrofurantoin100mgを1日2回・5日間経口投与が推奨されており、nitrofurantoinの至適投与方法は今後検討の余地がある。fosfomycinの単回投与は患者のコンプライアンスを考えると魅力的なレジメンであるが、臨床的改善率と微生物学的改善率の両方が有意に低率だったことは、今後の治療薬の選択に影響を与える結果であると考える。 本試験の治療成功率は、過去の報告と比較して低率だった。その理由の1つとして、大腸菌以外の細菌(Klebsiella sppやProteus sppなど)の割合が高かったことが挙げられており、尿路感染症の原因菌として大腸菌が多い地域であれば、もう少し治療成功率が高かった可能性はある。また、過去の試験より治療成功の定義が厳格であったことも影響したと考えられる。 実は、本試験で検討された2つの抗生物質はどちらも日本では発売されていない。日本で発売されているホスホマイシン経口薬はホスホマイシンカルシウムであり、fosfomycin trometamolとは異なる薬剤である。本邦における膀胱炎治療は、ST合剤、βラクタム薬、フロオロキノロンなどの中から選択することが多いと思われるが、地域での薬剤感受性情報や副作用を勘案し、総合的に判断することが求められる。

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国際親善地獄【Dr. 中島の 新・徒然草】(222)

二百二十二の段 国際親善地獄先日もERに呼び出されてしまいました。若手「中島先生、ちょっと来てもらえませんでしょうか?」中島「どうした!」若手「香港から来た子供が大阪城公園で転んで・・・」中島「また大阪城で子供が? 日本に来るやつは全員大阪城で転んでウチに来るんか!」若手「とにかくお願いします」というわけでERに行きました。母親に抱かれた2歳ぐらいの子供がギャーギャー泣いていて、看護スタッフが前額部の挫創を水で洗っていたところでした。母親もシクシク泣いているばかりか、そばに立っている5歳くらいの男の子もワーワー泣いています。君まで泣くな、関係ないやろ。スタッフ「誰か中国語のできる人、呼んできて!」中島「いやいや、香港から来たんやろ。英語ができるはずやぞ」スタッフ「ホンマですか?」中島「ちょっと前までイギリスが統治しとったがな」考えてみれば香港がイギリスから中国に返還されたのは1997年、はや20年以上も経っています。とりあえず、母親に英語で尋ねてみました。やはり私なんかよりずっと流ちょうにしゃべります。中島「私はドクター・ナカジーマです。男の子ですか、女の子ですか?」母親「女の子よ。ねえ、この怪我はシリアスなの? (泣)」中島「全然シリアスじゃないですよ」母親「ああ、良かった!」中島「ちょっと傷口を洗って、上から被覆しておきます」母親「わかったわ。明日帰国するんだけど」中島「診断書を書きましょう。あなたのドクターと、多分、保険会社向けに必要でしょうから」母親「そうね」左右から子供に泣かれてイライラするものの、顔には出さずにニコニコ対応を心掛けました。看護師さんたちは、「iPad 持ってきてー。動画を見せたら泣きやむかも」と言っています。それを耳にしながら、「何をヌルイことを。押さえつけてサッサと処置してしまったらいいのに!」と思わずにはいられません。驚いたことには本当にどこからかiPadが出てきて、「キティちゃんかな、アンパンマンかな?」と、ますます私の思惑を無視する形で事態が進んでいきます。次に私がすべきは英文診断書(兼、紹介状)の作成です。「診断:頭部外傷、前額部挫創。2018年5月〇日、この子は、転んで頭を打ったけど、終始意識清明で吐いたりけいれん発作を起こしてはいない。傷口を洗って抗菌薬を処方した」と書いて、母親に確認してもらいました。サッと斜めに読んだ彼女に、さっそく2ヵ所指摘されてしまいました。母親「名前が間違っているわ。“o”じゃなくて“u”なの。それと誕生日は1月じゃなくて6月ね」中島「これは失礼しました。すぐに書き直します」途中で父親らしき男性が登場しましたが、夫婦の会話は中国語です。香港だから広東語になるのでしょうか? ふと気づくと泣き声がしません。子供たちを見ると、2人ともiPadの動画に夢中です。恐るべし、キティちゃん!薬の受け渡しとか支払手続きは若いモンに任せて、私は早々にERを退散しました。それにしてもカナダ、オーストラリア、アメリカ、中国、韓国、香港と、ここのところ国際親善地獄です。毎週のようにコミュニケーションに苦労してきたせいか、最近は頭の中で思ったことが、間髪を入れずに英語で口から出てくるようになりました。英語コミュニケーションのコツを1つ挙げるとしたら、とりあえず何かそれらしい英単語を口にして、ズレていたら言い直すということかもしれません。黙って的確な表現を考えているよりは、まずは何か言った方が、患者さんも「ひょっとして〇〇かしら?」と助け舟を出してくれるので話が通じやすいように思います。それにしても大変な時代になったもんです。だんだん世の中についていけなくなってきました。ぼちぼち中国語を勉強するべき時期なのかもしれませんね。最後に1句ER、国際親善、もう嫌だ

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抗微生物薬適正使用の手引き改正へ向けて

 2018年5月14日、第4回の抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(座長:大曲 貴夫氏[国立国際医療研究センター病院国際感染症センター長])が、厚生労働省で開催され、「抗微生物薬適正使用の手引き」の改正の方向性の確認、改正内容の検討が行われた。今後、数度の部会での検討を経たうえで、薬剤耐性(AMR)に関する小委員会および厚生科学審議会感染症部会で審議、発表される。なお、発表時期は未定。「抗微生物薬適正使用の手引き」改正では学童期以下の小児に焦点 「抗微生物薬適正使用の手引き 第1版」は、抗微生物薬の適正使用を推進するために学童期以降の急性気道感染症と急性下痢症を対象に、2017年6月に発表・発行された。発行後、さらなる抗微生物薬の適正使用推進のため、扱うべき領域拡大の必要性が求められ、学童期未満の小児を対象とした「抗微生物薬適正使用の手引き」の改正が行われている。 今回示された改正案では、「1.小児における急性気道感染症の特徴と注意点」「2.小児の急性気道感染症各論」「3.小児の急性下痢症」の3点が示され、個別の検討が行われた。急性気道感染症と急性下痢症を詳細に記載 「抗微生物薬適正使用の手引き」改正案の「1.小児における急性気道感染症の特徴と注意点」では、小児の急性気道感染症で多くを占める感冒、咽頭炎、クループ、気管支炎などを取り上げるとともに、A群連鎖球菌による咽頭炎、細菌性副鼻腔炎などとの鑑別の重要性、リスクを加味した年齢ごとの診療の必要性、治療薬の小児特有の副作用について記載されている。 とくに小児特有の副作用については、10種類ほど治療薬が列挙され、たとえばST合剤では新生児に核黄疸のリスクがあること、マクロライド系抗菌薬では肥厚性幽門狭窄症のリスクが上がることなどが述べられている。 「2.小児の急性気道感染症各論」では、感冒・急性鼻副鼻腔炎、急性咽頭炎、クループ症候群、急性気管支炎、急性細気管支炎を取り上げ、個々の病態、疫学、診断と鑑別、抗菌薬治療、患児および保護者への説明などが記載されている。 「3.小児の急性下痢症」では、2.と同様に下痢症の病態、疫学、診断と鑑別、抗菌薬治療、患児および保護者への説明を述べるとともに、そのほとんどがウイルスが原因であるとし、とくに小児では原因診断よりも緊急度の判断が重要とされ、脱水への対応についても多く記述されている。 部会では「抗微生物薬適正使用の手引き」改正案に対し、「ワクチンの有効性の記載」「治療薬の商品名の記載」「中耳炎の追加」「記載方法の定式化」「非専門医ができる診療法の記載」「具体性のある表記」などの意見や提案がなされ、今後これらを踏まえて修正、議論を行っていく。

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単純性尿路感染症、nitrofurantoin vs.ホスホマイシン/JAMA

 単純性下部尿路感染症(UTI)の女性患者において、nitrofurantoin5日間投与はホスホマイシン単回投与と比較して、治療終了後28日時の臨床的および微生物学的改善が有意に大きいことが示された。スイス・ジュネーブ大学医学部のAngela Huttner氏らが、多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。nitrofurantoinとホスホマイシンは、米国およびヨーロッパの臨床微生物感染症学会による2010年のガイドライン改訂で、下部UTIの第一選択薬として推奨されるようになってから、その使用が増加してきたが、これまで両者を比較した無作為化試験はほとんどなかった。JAMA誌2018年4月22日号掲載の報告。下部UTI女性患者約500例で、nitrofurantoinとホスホマイシンの有効性を比較 研究グループは、2013年10月〜2017年4月に、スイスのジュネーブ、ポーランドのウッジおよびイスラエルのペタチクバの病院において、非盲検/解析者盲検の無作為化試験を実施した。対象は、妊娠をしていない18歳以上の女性で、急性下部UTIの症状(排尿痛・尿意切迫感・頻尿・恥骨上圧痛のいずれか1つ以上)を有し、尿亜硝酸塩または尿白血球エステラーゼを検出する尿試験紙検査が陽性かつ治験薬に耐性を示す尿路病原菌の感染既往または定着を認めない513例であった。nitrofurantoin群(100mgを1日3回、5日間経口投与)、またはホスホマイシン群(3gを単回経口投与)に1対1の割合で無作為に割り付け、治療終了後14日および28日に臨床評価ならびに尿培養を行った。 主要評価項目は、治療終了後28日時の臨床効果で、臨床的改善(症状およびUTI徴候の消失)、治療失敗(抗菌薬の追加/変更または無効による中止)、判定不能(客観的な感染所見のない症状の持続)と定義した。副次評価項目は、細菌学的効果と有害事象などであった。28日臨床的改善率、nitrofurantoin群70% vs.ホスホマイシン群58%で有意差あり 無作為化された513例(平均年齢44歳、四分位範囲:31~64歳)のうち、475例(93%)が試験を完遂し、377例(73%)でベースラインにおいて尿培養陽性が確認された。 28日時の臨床的改善率は、nitrofurantoin群70%(171/244例)、ホスホマイシン群58%(139/241例)であった(群間差:12%、95%信頼区間[CI]:4~21%、p=0.004)。また、微生物学的改善率はそれぞれ、74%(129/175例)および63%(103/163)であった(群間差:11%、95%CI:1~20%、p=0.04)。 有害事象はわずかであった。主なものは悪心および下痢で、発現率はそれぞれ、nitrofurantoin群で3%(7/248例)および1%(3/248例)、ホスホマイシン群で2%(5/247例)および1%(5/247例)であった。 なお著者は、非盲検試験であり、臨床検査が中央化されておらず検査方法が異なる可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

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「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」通知へ:厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 5月7日の会合で、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」について大筋で了承した。本指針では65歳以上の高齢者、とくに平均的な服薬薬剤数が増加する75歳以上に重点をおいて、処方見直しの基本的な考え方や評価・減薬までの流れ、よく使われる薬剤の高齢者における留意点などをまとめている。 早ければ5月中旬を目途に、関連団体や都道府県宛に通知が発出される見通し。また、同検討会では引き続き、主に急性期での対応をまとめた本指針の追補として、外来・在宅などの療養環境別の特徴を踏まえた「高齢者の医薬品適正使用の指針(詳細編)」の作成を開始し、2018年度中のとりまとめを目指す。 本指針は多剤服用やポリファーマシーといった言葉の概念から、処方見直し時のポイントや進め方のフローチャート、減薬する際の注意点などをまとめた本文と、薬効群ごとの薬剤処方における留意点、慎重な投与を要する薬物リストなどの別表から構成される。別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」では、A~Lの12の薬効群ごと(下記参照)に薬剤選択や投与量・使用法に関する注意点、他の薬剤との相互作用に関する注意点が一覧化されている。A.催眠鎮静薬・抗不安薬B.抗うつ薬(スルピリド含む)C.BPSD 治療薬D.高血圧治療薬E.糖尿病治療薬F.脂質異常症治療薬G.抗凝固薬H.消化性潰瘍治療薬 I.消炎鎮痛剤J.抗微生物薬(抗菌薬・抗ウイルス薬)K.緩下薬L.抗コリン系薬剤 なお、詳細編では認知症や骨粗鬆症、COPDなどについても取り上げることが検討されている。■参考厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」

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2020までに万全な髄膜炎菌感染症対策を

 2018年4月18日、サノフィ株式会社は、4月25日の「世界髄膜炎デー」に先立って、髄膜炎菌感染症診療に関するメディアセミナーを都内で開催した。本セミナーでは、「日本に潜む10代の髄膜炎菌感染症 アウトブレイクのリスク~海外・国内の感染事例と関連学会による対策変更~」をテーマに、髄膜炎菌感染症のオーストラリアでの疫学的状況と公衆衛生当局による対応、日本の置かれた現状と今後求められる備えなどが語られた。IMD発症後、20時間以内の診断が予後の分かれ目 髄膜炎は、細菌性と無菌性(ウイルス性が主)に大別される。なかでも細菌性髄膜炎は、症状が重篤なことで知られている。今回クローズアップした髄膜炎菌は、2018年現在、わが国での発症率は低いが、ワクチンの定期接種が行われているインフルエンザ菌b型(Hib)、肺炎球菌などと比較して感染力が強く、また症状が急激に悪化するので、対応の遅れが致命的な結果を招く恐れがある。 髄膜炎菌は、飛沫感染により鼻や喉、気管の粘膜などに感染し、感染者は無症状の「保菌」状態となる。日本人の保菌率は0.4%ほどだが、世界では3%とも言われており、19歳前後の青年期がピークとなる1)。保菌者の免疫低下など、さまざまな要因で髄膜炎菌が血液や髄液中に侵入して起こるのが、侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)である。 IMDは、感染して2~10日(平均4日)後、突発的に発症する。初期症状は風邪症状と類似し、発症後13~20時間ごろに皮下出血、傾眠、呼吸困難など(プライマリ診療では、これらの症状が高度医療機関へ転送の目安となる)が見られ、それ以降、意識障害、痙攣発作など急速に進行する。IMDでは、発症から24~48時間以内に患者の5~10%が死亡するという報告があり2)、回復した場合でも約10~20%の割合で難聴、神経障害、四肢切断など重篤な後遺症が残るという報告もある3)。海外での事例を参考に、先取りしたIMD対策を 本セミナーでは、はじめにロドニー・ピアース氏(MEDICAL HQ Family Clinic)が、オーストラリアにおけるIMDの状況などについて説明した。オーストラリアでは過去に壊滅的なIMDの流行があり、2003年にワクチンが導入され、2013年までは減少傾向が続いていた。しかし、近年、致命率の高い血清型に変化した可能性があり、2014年から再び発症報告が増加している。新しい型(W型)の集団感染は、イギリスを経由してオーストラリアにやってきたと考えられている。イギリスでは2015年8月に、青少年を対象に4価ワクチンの単回接種が導入され、1年目の結果、接種率が36.6%と低かったにもかかわらず、W型の感染例が69%減少したとの報告がある4)。 「IMD予防のためには、適切なワクチンを正しい時期に接種する必要がある」とピアース氏は語る。オーストラリアでは、州ごとに集団感染予防の対応を行っていたが、昨年から国での対応が開始され、2018年7月からは、全国プログラムが導入される予定である。同氏は、「IMDは命を脅かす疾患だが、ワクチンで防ぐことができる。日本でも、関連学会の推奨に基づき、10代はワクチン接種を行う必要がある」と締めくくった。オリンピック前に、IMDの流行対策が必要 次に、川上 一恵氏(かずえキッズクリニック 院長、東京都医師会 理事)が、IMDへの備えを語った。わが国では、IMDは感染症法により5類感染症に指定されているが、学生寮などで集団生活を送る10代の感染リスクについては、注意喚起に留まっている。現在の発症状況は年間30人前後と落ち着いているが、戦後1945年頃は年間患者数が4,000人を超えていた時期もあり、2014年に国内で流行したデング熱のように、再来する可能性も否めないと川上氏は指摘する。 IMDの迅速検査は現在未開発で、インフルエンザ検査後、血液検査でCRPの上昇を見て鑑別される方法が行われている。早期に気付き治療を施せば、抗菌薬は効果があると同氏は語る。しかし、特効薬はなく、耐性菌の出現により抗菌薬は使いづらいのが現状だ。このため、世界的にワクチン頼りの対策となっている。 医療従事者を含めて、IMDの重篤性、ワクチン接種に対する認知度が低く、発症リスク(年齢、密集した集団生活、海外の流行地域など)は十分に知られていない。また、適切に対応できる医師が少ない問題点が指摘された。同氏は、「2020年に迎える東京オリンピックを機にIMDが流行する恐れがある」と警告し、「疾患の啓発を進め、感染リスクが高い環境にある者はワクチンを接種すべき」と締めくくった。同氏のクリニックでは、髄膜炎菌に暴露する危険性を考慮し、スタッフ全員がワクチン接種を済ませているという。 4価髄膜炎菌ワクチン(商品名:メナクトラ筋注)は、日本では2015年に発売され、任意接種が可能である。在庫確保の都合上、希望者は、事前に医療機関にその旨を伝えるよう併せて説明が必要となる。■参考1)Christensen H, et al. Lancet Infect Dis. 2010;12:853-861.2)World Health Organization. Meningococcal meningitis Fact sheet No.141. 2012.3)Nancy E. Rosenstein, et al. N Engl J Med. 2001;344:1378-1388.4)Campbell H, et al. Emerg Infect Dis. 2017;23:1184-1187.

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蜂蜜は小児の急性咳嗽に効くのか?

 小児の咳症状は、外来受診の理由となることが多い。蜂蜜は、小児の咳症状を和らげるために、家庭で一般的に用いられている。University of Calabar Teaching HospitalのOlabisi Oduwole氏らは、小児の急性咳嗽に対する蜂蜜の有効性を評価するためにシステマティックレビューを実施し、2018年4月10日、Cochrane Database of Systematic Reviewsに公開した。本レビューは、2010、2012、2014年に続く更新。本レビューの結果、蜂蜜は、無治療、ジフェンヒドラミン、プラセボと比較して、咳症状を多くの面で軽減するが、デキストロメトルファンとはほとんど差がない可能性が示唆された。また、咳の持続時間についてはサルブタモール、プラセボより短縮する可能性はあるが、蜂蜜使用の優劣を証明する強固なエビデンスは認められなかったと結論している。 著者らは、MEDLINE、Embase、CENTRAL(Cochrane Acute Respiratory Infections Group's Specialised Registerを含む)などをソースとして、2014~18年2月のデータを検索した。また、2018年2月にはClinicalTrials.govとWHOのInternational Clinical Trial Registry Platformも同様に検索した。対象とした試験は、急性の咳症状で外来受診した12ヵ月~18歳の小児に対する治療(蜂蜜単独、蜂蜜と抗菌薬の併用、無治療、プラセボ、蜂蜜ベースの咳止めシロップ、その他の咳止め薬)における無作為化比較試験で、899例の小児を含む6試験。今回の更新で、3試験331例の小児が追加された。これらの試験では、蜂蜜をデキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、サルブタモール、ブロメライン(パイナップル科の酵素)、無治療、プラセボと比較していた。 主な結果は以下のとおり。・蜂蜜は、無治療、プラセボより咳の頻度を減らす可能性がある。無治療との平均差(MD)は-1.05(95%CI:-1.48~-0.62、I2=0%、2試験・154例、エビデンスの確実性は中)、プラセボとのMDは-1.62(95%CI:-3.02~-0.22、I2=0%、2試験・402例、エビデンスの確実性は中)であった。・蜂蜜は、デキストロメトルファンと同じ程度、咳の頻度を減らす可能性がある(MD:-0.07、95%CI:-1.07~0.94、I2=87%、2試験・149例、エビデンスの確実性は低)。・蜂蜜は、ジフェンヒドラミンより咳の頻度を減らす可能性がある(MD:-0.57、95%CI:-0.90~-0.24、1試験・80例、エビデンスの確実性は低)。・咳症状の緩和を目的とした蜂蜜の投与は、3日以内は効果的である可能性があるが、3日を超える投与は、咳の重症度、わずらわしい咳、親子の睡眠への咳の影響を減少させることにおいて、プラセボやサルブタモールを上回る優位性がない(エビデンスの確実性は中)。・咳尺度を用いた5試験では、蜂蜜と、蜂蜜を混ぜたブロメラインを比較して、咳の頻度と重症度を下げる効果にほとんど差がなかった。・有害事象については、蜂蜜群と対照群に差はなかった。

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ニューキノロンの使用は、動脈瘤や動脈解離のリスクを高める(解説:佐田政隆氏)-839

 スウェーデンでは、nationwideの国民の医療に関するビッグデータが登録されており、薬の副作用など各種のコホート研究を行うことができる。本研究では、2006年7月から2013年12月に、ニューキノロンを服用した36万88人と、傾向スコアでマッチングしたアモキシシリンを服用した36万88人で、服用60日以内の大動脈瘤、大動脈解離の発症を比較検討した。結果として、ニューキノロン群がアモキシシリン群に比較して、大動脈瘤、大動脈解離の発症が、ハザード比1.66と多かったという。 ニューキノロンは以前からアキレス腱などの腱障害を増加させると報告されている。その機序としては、抗菌以外の薬理作用として、マトリックスメタロプロテアーゼを活性化してコラーゲンなどの細胞外基質の変性を促進するとか、コラーゲンの産生を抑制するとか、酸化ストレスを亢進させるためといわれている。今回、動脈瘤や大動脈解離の発生頻度を増やしたのも同様の機序が働いたものと思われる。 そうすると、動脈硬化プラークの被膜の菲薄化も促進して、急性冠症候群の発症を増加させるかもしれない。このnationwideのregistryの次の解析に興味が持たれる。ニューキノロンは、ほかにも、心電図のQT時間を延長させ、致死性不整脈を誘発することがよく知られている。ウイルス性の感冒などに、ニューキノロンが安易に処方されることをよく見かけるが、不要な抗生物質の処方は慎むべきであろう。

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汗だく対応、再び【Dr. 中島の 新・徒然草】(216)

二百十六の段 汗だく対応、再び前回は中国人相手に筆談で頑張った話でした。今回は英語をしゃべる人たち相手の苦労話。とにかく外国人が続きます。看護師「発熱の外国人ですけど通訳も一緒なんで大丈夫ですよね」中島「今日は研修医も一緒やし、ちょうどええがな(えらいことになってもた! )」ということで、日本人の通訳を含む女性4人組が診察室にやってきました。通訳「あの、私は専門用語とか全然分からないですから(泣)」中島「とにかく力を合わせて頑張りましょう」通訳「よ、よろしくお願いします」患者さんは50歳代の黒人女性です。日本を旅行している途中に熱が出たとか。中島「私はドクター・ナカジーマです」患者「ハ~イ」中島「こちらは研修医で、私はそのメンターです」一同「おおーっ」私は研修医が一緒の時は必ず患者さんに紹介するようにしています。でも、メンターってのは「師匠」とかそんな意味なので、言い過ぎだったかも。中島「おっとメンターじゃなくてトレーナーです」一同「おおーっ」中島「・・・(ほんまに通じているのかな? )」患者さんの友人らしき白人女性が説明を始めます。友人「熱が出たから薬を飲んだのよ」中島「ほう、何という名前の薬ですか? 」友人「ただの over-the-counter よ。タイレノールみたいな」中島「なるほど」後で聞いたところによると、この人はナースだそうです。患者「ちょっと待って。この薬よ、お見せするわ」そう言いながら彼女がバッグから探り出したのは薬ではなくチョコバーでした。中島「何だこれは! 」患者「ああーっ! 間違えた」中島「こんなモンが出てくるとは、さてはアメリカ人だな」患者「ギャハハ、当たりっ! 」中島「アメリカのどこ? 」患者「テキサスよ」友人「私はカリフォルニア」こんな賑やかな人たちは英語圏の中でもアメリカ人しかあり得ません。中島「まあアメリカ人にとってはチョコバーこそ薬だな」一同「アハハ、そりゃそうだ! 」いろいろ病歴を尋ねると、どうやら尿路感染のようでした。CVA叩打痛もあるので甘く見るわけにはいきません。中島「ともかく、培養検体をとってから」通訳「culture? 何ですか、それ」彼女は慌ててスマホで調べ始めます。中島「抗菌薬を使います」友人 「何使うの? 」中島「ペニシリンかな」友人 「合格よ! 」何とか落第せずに済んだみたいです。患者「何でペニシリン? 」中島「尿路感染の原因で多いのは大腸菌と腸球菌だからね。両方に効かせようとするとペニシリンが無難なわけ」患者「大腸菌? 腸球菌? 」さすがに医学用語は分からないみたいなので、紙に書いてあげました。中島「入院してもらうのが1番いいのだけど」一同 「ダメダメ、これから東京に行くし、その後は帰国するから」中島「あらら」患者 「ねっ、一緒に写真撮っていい? 」中島「いいけど」患者 「先生も入ってよ」研修医「私もですか」患者 「そうそう」病院に来るというのも観光の一環なのでしょうか。通訳「皆さん、仏教徒なんです」中島「そうだったんですか! 」彼女は日本を本拠地とする宗教団体の名前をあげました。年齢も人種もバラバラな人達だけど、宗教が結びつけていたというわけです。そう言われれば、あまりスレていない気もします。そんなこんなで、外来で抗菌薬を点滴してから経口薬を処方しました。中島「普通は処方箋を出して調剤薬局に行ってもらうのですけど、大変そうだから院内で薬を受け取れるようにしときましょうか? 」通訳「ぜひお願いします! 」患者「アメリカも日本みたいに洗練されたシステムだったらいいのになあ。職員は皆さん親切だし」苦労はしたものの何とか日本に好印象を持ってもらうことに成功しました。でも、外国人相手だとすべての医療行為に説明を求められるし、言葉の壁はあるし、汗だくです。いつの間にか研修医を放置してしまっていました。ここはなんとか指導らしいことをしなくてはなりません。中島「英語がうまくなる方法を伝授しようか? 」研修医「ぜひ教えてください」中島「まず、外国人相手に苦労する」研修医「は? 」中島「こんなことではだめだ! と思って必死に努力する」研修医「なるほど」中島「2ヵ月もしたらモチベーションが落ちる」研修医「はい」中島「再び外国人相手に恥をかいてモチベーションをあげる」研修医「はあ」中島「要するに2ヵ月ごとに恥をかくのが大切なんや」できもせんのに何を偉そうに、と自分でもあきれてしまいます。ま、指導なんてものは自分のことを棚に上げるところから始まるものなんでしょうね。ということで最後に1句恥かけば 英語上達 待ったなし

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日本人若年者のピロリ除菌療法、第1選択は?

 若年者のHelicobacter pylori(以下、ピロリ菌)感染に対する除菌治療は、胃がん予防に有効である。今回、JAPAN GAST Study Groupが、プロトンポンプ阻害薬ベースのトリプル療法(PACおよびPAM)について若年者での有効性を多施設無作為化比較試験で検討したところ、PAMによる除菌率がPACより有意に高いことが示された。研究グループは「抗菌薬感受性試験が実施できない場合、PAMが若年者のピロリ菌除菌の第1選択となりうる」としている。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2018年3月28日号に掲載。 本試験は2012年2月~2015年3月に実施。ピロリ菌感染者を青年期(13~19歳)と若年成人期(20~39歳)に層別化し、クラリスロマイシンベース(PAC)またはメトロニダゾールベース(PAM)のトリプル療法(1週間)に無作為に割り付けた。 主な結果は以下のとおり。・137人がPAC、169人がPAMによる除菌治療を受けた。・青年における除菌率は、ITT(intention-to-treat)解析およびPP(per-protocol)解析でそれぞれ、PACで60.5%および63.4%、PAMで98.3%および100%であった。・若年成人における除菌率は同様に、PACで67.0%および66.7%、PAMで95.5%および96.3%であった。・PAMによる除菌率はどちらの年齢層でもPACより有意に高かった。・両群とも重篤な有害事象は認められなかった。

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.3

第9回  消化器(肝胆膵) 第10回 消化器(消化管) 第11回 感染症 第12回 呼吸器 内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第3巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第9回 消化器(肝胆膵)出題数の多い消化器領域は、まずは民谷式の解剖図を用いて肝臓の病態や疾患を解説します。ミクロの視点で疾患を整理していくと、長い臨床問題を論理的な筋道を追いながらスムーズに解いていけるようになります。また、この領域でとくに出題が多いのはIgG関連疾患。試験に役立つポイントが丸わかりです。第10回 消化器(消化管) 出題数の多い消化器領域の消化管領域について取り上げます。まずは消化管の壁断面をおさらいしてから、それぞれの疾患について掘り下げていきます。クローン病と潰瘍性大腸炎、マロリー・ワイス症候群と特発性食道破裂。症状が似たの疾患の区別も、民谷式オリジナルシェーマを用いた解説ですんなりと頭に入ります。第11回 感染症 感染症の領域では、原因微生物・薬理学・臨床症状を総合して理解することが大切になります。民谷式でわかりやすくまとめた表で一つひとつ整理していくと、長い臨床問題を短い時間で解くためのポイントがわかっていきます。さらにどの抗菌薬がどこまでカバーしているかをまとめた表は、試験に必ず役に立ちます。第12回 呼吸器 呼吸器領域では、肺の疾患を中心におさらいしていきます。民谷式オリジナルの簡略化したシェーマでまずは全体の流れを掴みます。臨床問題では、低酸素血症と二酸化炭素が不足している状態をしっかり分けて考えることが、問題文を読み解くヒントになります。

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抗菌薬が効かなくなる -AMR(薬剤耐性)との闘いに人類は勝てるのか?

感染症のエキスパートとAMR対策行政官が、その「危機」を伝えますフレミングが「ペニシリン」を発見して90年。人類は感染症を克服するかにみえましたが、すぐさま病原菌は抗菌薬に対し耐性を獲得、再び人類を脅かす存在となりました。薬剤耐性(AMR)の問題です。2050年には耐性菌による死者は1,000万人と推定され、2015年世界保健機関(WHO)は「薬剤耐性に関する国際行動計画」を採択し、厚生労働省もただちに動きだしました。この運動のきっかけとなったのが本書("The Drugs Don’t Work")です。原著者のサリー・デービスは英国保健省のトップであり、監訳に感染症専門医の忽那賢志医師を迎え、井上肇WHO事務局長補、長谷川学内閣官房国際感染症対策調整室企画官が編集を務め、ここに「感染症エキスパート」と「AMR対策行政官」がタッグを組んだ書籍が出来上がりました。日本語版には,オリジナルコンテンツ(わが国の薬剤耐性菌対策)も加わり、まさに感染症に関わる臨床医、専門家、行政官が訴える危機と対策が各視点で述べられています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    抗菌薬が効かなくなる-AMR(薬剤耐性)との闘いに人類は勝てるのか?定価1,900円 + 税判型A5判 ソフトカバー頁数124頁発行2018年4月原著者Sally C. Davies監訳忽那 賢志編集井上 肇・長谷川 学訳・著者高山 義浩Amazonでご購入の場合はこちら

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全国の抗菌薬の使用状況が一目瞭然

 薬剤耐性(AMR)対策のために国立国際医療研究センターに設置された「AMR臨床リファレンスセンター」(センター長:大曲 貴夫氏)は、国内初の取り組みとして「国内都道府県別抗菌薬使用量(販売量)統計データ」の公開ならびに「薬剤耐性(AMR)ワンヘルス動向調査」のWEBサイト開設を4月3日に発表した。これら抗菌薬使用量や薬剤耐性菌のサーベイランス(調査・監視システム)は、今後のAMR対策の重要な基礎データとなる。2016年の抗菌薬使用量が一番多いのは石川県 「都道府県別抗菌薬使用量(販売量)集計データ」は、AMRアクションプラン実行のため、都道府県別抗菌薬使用量や使用増減率を発表することで、医療従事者をはじめ行政団体への抗菌薬処方量の意識改革につなげる。また、サーベイランス事業を通じ、情報の収集・分析・発信を積極的に行うことでAMRの認知、啓発を行うことを目的に公開される。 今回公開された2016年の「都道府県別抗菌薬使用量」では、石川県、徳島県、大分県、東京都、広島県の順で多く、とくに石川県では、「ペニシリン以外のβラクタム」の使用が目立った。また、「都道府県別抗菌薬使用量増減2013~2016」では、石川県、沖縄県、大分県の順で増加していることが示された。 主な公開データとして「抗菌薬使用量変化2013-2016(抗菌薬種類別)」「同(投与経路別)」「都道府県別抗菌薬使用量2013-2016」「同(薬効割合)」「都道府県別抗菌薬使用増減 2013-2016」などを照会することができる。・都道府県別抗菌薬使用量サーベイランス薬剤耐性をワンヘルスの視点からみる 「薬剤耐性ワンヘルス動向調査」は、ヒト・動物・食品および環境から分離される薬剤耐性菌に関する統合的なワンへルス動向調査データである。これらのデータは、AMRの現状把握、問題点抽出、適切な施策の遂行に役立てられ、データは視覚的なグラフと表形式を用意し、直感的でわかりやすく提供されている。 今後、多分野間の連携・協力が進むことで、AMR対策のさらなる前進が期待され、これら先進的な調査が、世界のAMR対策をリードするうえでも重要になると考えられている。 主な統計データとして「耐性菌・感染症の推移」「抗菌薬の推移」「一般国民の意識」「医療関係者の意識」の4つを照会することができる。・薬剤耐性ワンヘルス動向調査

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ニキビ治療はコメドの段階から

 マルホ株式会社(本社:大阪府大阪市北区、代表取締役社長:高木幸一)は、ニキビが日常生活に与える影響やニキビの初期段階「コメド」の認知度を測ることを目的として、全国47都道府県のニキビ・吹き出物が現在ある、もしくは過去に出来た経験のある10~30代の男女9,682人(各都道府県206人)を対象に、インターネット調査1)を実施した。10年以上ニキビに悩む人も 「ニキビに悩んでいる(いた)」と回答した人は9割(92.6%)を超え、そのうち10年以上悩んでいると回答した人は5人に1人(23.2%)にのぼった。「ニキビにより外出頻度が減る」と回答した人は3割以上(32.8%)、「ニキビがあると集中度合が減る」と回答した人は半数近く(47.4%)と、日常生活に影響を及ぼす実態が明らかになった。白いニキビ(コメド)はニキビの初期段階 よくできるニキビの種類に「白いニキビ(肌の表面がぶつぶつ・ざらざらした状態)」と回答した割合は43.4%であった。白いニキビは、皮膚科で「コメド」と呼ばれ、古い角質や角栓が毛穴に詰まったり、性ホルモンの影響で皮脂分泌が過剰になったりして、皮脂が毛穴にたまった状態である。放っておくと炎症を起こしたニキビになる可能性がある。しかし、白いニキビがニキビの初期段階である「コメド」であることを知っていた人は、全体の10.5%にとどまった。現在は「コメド」の治療ができる ニキビがあっても皮膚科を受診する人は1割にすぎない。ニキビを皮膚の病気としてとらえていないため、症状がひどくなるまで放置してしまいがちである。従来のニキビ治療は、抗生物質を使った炎症への対処が中心であったが、現在は初期段階である「コメド」の治療ができるようになった。ニキビの再発や瘢痕を予防するには、炎症を起こす前の「コメド」の段階から医療機関を受診し、治療を行うことが重要である。「たかがニキビ」ではなく、早期から適切な治療を マルホ株式会社では、ニキビやニキビの初期段階である「コメド」の正しい理解と対処のために、ニキビで皮膚科を受診中の患者、ニキビに悩む20~30代女性・学生・その保護者に向けて、ニキビ情報ウェブサイト「ニキビ一緒に治そう Project」などで情報提供を行っている。「たかがニキビ」ではなく、きちんと治療意識を持ち適切な治療を受けることで、ニキビに悩む患者が減少することを願う。■アンケート概要1)「ニキビに関する意識と実態47都道府県調査」  調査期間:2017年9月22日~10月2日  調査対象:47都道府県9,682人      (ニキビ・吹き出物経験者10~30代の男女/各都道府県206人)  調査方法:インターネットアンケート調査

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早期胃がん切除後のピロリ除菌は有益か/NEJM

 早期胃がんまたはハイグレード腺腫で内視鏡的切除を受けた患者に対し、抗菌薬によるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の除菌治療はプラセボと比較して、1年以降に評価した異時性胃がんの発生リスクは低く、3年時に評価した胃体小彎の腺萎縮についても改善効果があることが示された。韓国・国立がんセンターのIl Ju Choi氏らが、470例を対象に行った前向き二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果で、NEJM誌2018年3月22日号で発表した。これまで、H. pylori除菌治療による、組織学的改善や異時性胃がんの予防に関する長期的効果は不明だったという。異時性胃がんの発生と胃体部小彎の腺萎縮の程度を比較 研究グループは、早期胃がんまたはハイグレード腺腫で内視鏡的切除を行った470例を、無作為に2群に分け、一方には抗菌薬によるH. pylori除菌治療を行い、もう一方にはプラセボを投与した。 主要評価項目は2つで、(1)追跡1年以降に内視鏡検査で認められた異時性胃がんの発生、(2)追跡3年時点における胃体部小彎の腺萎縮の程度のベースラインからの改善とした。治療群の半数で胃体部小彎腺萎縮が改善 被験者のうち修正intention-to-treat解析の対象者は、治療群が194例、プラセボ群が202例の計396例だった。平均年齢は、治療群59.7歳、プラセボ群59.9歳、男性がそれぞれ72.7%、77.7%を占めた。飲酒者は55.2%、63.4%、喫煙者は41.2%、37.6%。 中央値5.9年の追跡期間中に、異時性胃がんを発生したのは、プラセボ群が13.4%(27例)だったのに対し、治療群は7.2%(14例)だった(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.26~0.94、p=0.03)。 組織学的解析を行ったサブグループ327例において、胃体部小彎における腺萎縮の程度についてベースラインからの改善が認められた患者の割合は、プラセボ群15.0%だったのに対し、治療群は48.4%と大幅に有意に高率だった(p<0.001)。 重篤な有害事象は認められなかったが、軽度の薬剤性有害事象(味覚変化、下痢、めまいなど)については、治療群の頻度が有意に高かった(42.0% vs.10.2%、p<0.001)。

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経口フルオロキノロンが大動脈瘤リスク増と関連/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のBjorn Pasternak氏らは、スウェーデン国内の登録データを用いたコホート研究を行い、経口フルオロキノロン系抗菌薬の使用が大動脈瘤のリスク増加と関連していることを報告した。フルオロキノロンには、血管壁の細胞外マトリックスの完全性を損なう可能性のある非抗菌的特性があり、最近の研究でフルオロキノロン系抗菌薬が大動脈瘤のリスクを増加させる懸念が高まっていた。BMJ誌2018年3月8日号掲載の報告。フルオロキノロンとアモキシシリンによる大動脈瘤/解離の発生を72万人を対象に比較 研究グループは、2006年7月~2013年12月のスウェーデンの全国患者登録、処方薬登録、統計局ならびに死因登録のデータを用い、コホート研究を実施した。対象は、フルオロキノロン系抗菌薬使用例36万88件(78%はシプロフロキサシン)と、傾向スコアでマッチングした対照のアモキシシリン使用例36万88件であった。 主要評価項目は、治療開始から60日以内の大動脈瘤/解離の初回診断(大動脈瘤/解離による病院/救急部への入院、または大動脈瘤/解離による死亡)とし、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。フルオロキノロン系抗菌薬使用で、大動脈瘤/解離のリスクが66%増加 治療開始後60日間の大動脈瘤/解離の発生頻度は、フルオロキノロン系抗菌薬使用群1.2例/1,000人年、アモキシシリン使用群0.7例/1,000人年であった。両群の大動脈瘤/解離発生推定絶対差は、60日までの治療100万人当たり82例(95%信頼区間[CI]:15~181)で、フルオロキノロン系抗菌薬使用が大動脈瘤/解離のリスク増加と関連していることが認められた(ハザード比:1.66、95%CI:1.12~2.46)。 副次解析の結果、フルオロキノロン系抗菌薬使用に関連するハザード比は、大動脈瘤が1.90(95%CI:1.22~2.96)、大動脈解離が0.93(95%CI:0.38~2.29)であった。

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複雑性尿路感染症に対するメロペネム/vaborbactamの効果(解説:吉田 敦 氏)-826

 多剤耐性グラム陰性桿菌、とくにカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の増加と蔓延は、抗菌薬療法の限界を示唆する耐性菌、いわゆる「悪魔の耐性菌」として今や人類の脅威となっている。現在使用できる抗菌薬が限られている中で、セリン型のクラスAおよびクラスC βラクタマーゼを阻害するボロン酸であるvaborbactamとカルバペネム(メロペネム)を配合したメロペネム/vaborbactam(以下MEPM/VBT)が登場し、体内動態に関する第I相試験が行われていたが、今回第III相試験の結果が発表された。 本試験は国際多施設参加ランダム化比較試験であり、18歳以上の複雑性尿路感染症あるいは腎盂腎炎の症例を無作為にMEPM/VBT投与群(2g/2gを3時間かけて投与、1日3回)とピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)投与群(4g/0.5gを30分で投与、1日3回)に割り付けた。15回以上投与した後、あらかじめ定めた臨床的な改善基準を満たした場合、経口のレボフロキサシンに変更可能とし、治療期間は計10日間とした。primary end pointにはFDA基準(臨床的改善・治癒と、静注薬終了時の尿細菌数が104 CFU/mL未満)とEMA(欧州医薬品庁)基準(治療終了後に治癒確認を目的に診察した際の尿細菌数が103 CFU/mL未満)を用いた。 最終的に17ヵ国550例を対象とすることができ、272例がMEPM/VBT投与群に、273例がPIPC/TAZ投与群に割り付けられた。このうち腎盂腎炎は59%、尿中菌数が105 CFU/mL以上であったのは69%であり、原因微生物のうち65%は大腸菌、15%はK. pneumoniaeであった。なお大腸菌のうちPIPC/TAZ耐性率は5%、MEPM耐性菌はなく、K. pneumoniaeのうちPIPC/TAZ耐性率は42%、MEPM耐性率は5%であった。Primary end pointを達成した成功率は、FDA基準ではMEPM/VBT群98.4%、PIPC/TAZ群94.0%であり、MEPM/VBTはPIPC/TAZに非劣性であるばかりか、それよりも優れていた。EMA基準では、MEPM/VBT群66.7%、PIPC/TAZ群55.7%であり、これでも非劣性が判明した。有害事象はMEPM/VBT群39.0%、PIPC/TAZ群35.5%で報告されたが、抗菌薬に関連したものはそれぞれ15.1%、12.8%であり、重度のものは2.6%、4.8%であった。MEPM/VBT群で多かったのは頭痛や下痢、ALT上昇などであったが、副作用のために投与を中止したのは2.6%とPIPC/TAZ群の5.1%より少なかった。 今回の報告は、βラクタマーゼ・カルバペネム配合剤のヒト感染症例でのランダム化比較試験としては、初めてのものである。この結果を受けて、FDAは2017年8月に成人の複雑性尿路感染症を対象に本剤を認可した(Vabomere)。ただし本試験にはいくつかの限界が存在する。SIRSの基準を満足している割合が1/3以下と高くないこと、原因微生物がメロペネム耐性菌である割合が低く(PIPC/TAZ耐性率は高い)、そもそもカルバペネム耐性菌を主対象とした研究でないことである。そしてこれまでの検討で、MEPM/VBTはCPEのうちKlebsiella pneumoniae Carbapenemase(KPC)には有効であるが、クラスBのメタロβラクタマーゼ産生菌(代表的なのはNDM)にはあまり有効でないことが指摘されている1)。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌による複数の感染症に対し、本剤の有効性を調べた続発試験(TANGO II)が行われたとも聞く。KPCが多い地域と、メタロβラクタマーゼ産生菌が多い本邦やアジアでは、本剤が適応となる状況は異なると思われる。メタロβラクタマーゼ産生菌に使用できる選択肢が増えることが、さらに望まれる状況にある。

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複雑性尿路感染症、メロペネム/vaborbactam配合剤の有効性/JAMA

 複雑性尿路感染症の治療において、メロペネム/vaborbactam配合剤の効果は、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤に対し非劣性であることが、米国・ミシガン大学のKeith S. Kaye氏らが実施したTANGO I試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年2月27日号に掲載された。カルバペネム系抗菌薬メロペネムとβ-ラクタマーゼ阻害薬vaborbactamの配合剤は、薬剤抵抗性グラム陰性菌による重症感染症に有効である可能性が示唆されている。2種の配合剤の非劣性を評価する無作為化試験 TANGO Iは、急性腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症の治療における、メロペネム/vaborbactam配合剤の有効性と有害事象の評価を目的とする二重盲検ダブルダミー無作為化実薬対照非劣性試験である(The Medicines Company社などの助成による)。 年齢18歳以上の尿路感染症または急性腎盂腎炎の確定例または疑い例が、8時間ごとにメロペネム/vaborbactam配合剤(2g/2g、3時間静注)またはピペラシリン/タゾバクタム配合剤(4g/0.5g、30分静注)を投与する群にランダムに割り付けられた。患者は、盲検を維持するために、薬剤を含まない生理食塩水(30分または3時間静注)の投与を受けた。 15回以上の静注後は、全10日間の治療を完了するために、事前に規定された改善の判定基準を満たす場合は、経口レボフロキサシン(500mg、24時間ごと)に切り替えることとした。 米国食品医薬品局(FDA)の基準による主要エンドポイントとして、微生物学的に修正したintent-to-treat(ITT)集団における静注投与終了時のoverall success(臨床的な治癒または改善と、除菌の複合)、および欧州医薬品庁(EMA)の基準による主要エンドポイントとして、微生物学的に修正したITT集団および微生物学的に評価可能な集団における治癒検査受診時の除菌の評価を行った。事前に規定された非劣性マージンは-15%であった。すべての主要エンドポイントで非劣性を確認 2014年11月~2016年4月の期間に、17ヵ国60施設に550例が登録され、545例(メロペネム/vaborbactam配合剤群:272例、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群:273例)が1回以上の投与を受けた(修正ITT集団)。 全体の平均年齢は52.8歳、361例(66.2%)が女性であった。微生物学的に修正したITT集団は374例(68.6%)、微生物学的に評価可能な集団は347例(63.7%)だった。 FDAの主要エンドポイントであるoverall successは、メロペネム/vaborbactam配合剤群の192例中189例(98.4%)で達成され、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の182例中171例(94.0%)に対し非劣性であった(群間差:4.5%、95%信頼区間[CI]:0.7~9.1%、非劣性のp<0.001)。 EMAの主要エンドポイントである微生物学的に修正したITT集団における除菌は、メロペネム/vaborbactam配合剤群の192例中128例(66.7%)で達成され、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の182例中105例(57.7%)に対し非劣性であった(群間差:9.0%、95%CI:-0.9~18.7%、非劣性のp<0.001)。また、微生物学的に評価可能な集団における除菌は、それぞれ178例中118例(66.3%)、169例中102例(60.4%)で達成され、同様に非劣性が示された(群間差:5.9%、95%CI:-4.2~16.0%、非劣性のp<0.001)。 有害事象は、メロペネム/vaborbactam配合剤群の272例中106例(39.0%)、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤群の273例中97例(35.5%)で発現し、試験薬関連有害事象はそれぞれ15.1%、12.8%に認められた。メロペネム/vaborbactam配合剤群で最も頻度の高い有害事象は頭痛(8.8%)で、すべて軽度~中等度であり、頭痛が原因で治療が中止された患者はなかった。 著者は、「メロペネム/vaborbactam配合剤が臨床的利益をもたらす患者のスペクトルを知るために、さらなる検討を要する」としている。

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