サイト内検索|page:22

検索結果 合計:860件 表示位置:421 - 440

421.

第15回 発熱の症例・全てのバイタルが異常。何を疑う?-2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回の症例は、発熱を来した症例です。発熱のため受診される高齢者は少なくありませんが、なかには早期に治療を開始しないと生命にかかわる場合もあります。患者さんDの場合◎経過──2 の続き観察とバイタルサインより今回の患者さんは、すべてのバイタルサインに異常があります。病態を知るためのヒントは数日間続いた発熱です。何らかの感染症(今回は尿路感染症)が増悪して、ABCのうちの呼吸や循環、さらに意識の状態にも異常を来したと考えられます。全身性炎症反応症候群(SIRS)と敗血症敗血症は、感染症によって生じた全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)と定義されます。と、いわれてもピンとこない人が多いと思いますので、図1をご覧ください。図1の右側の大きな円がSIRSで、感染症・外傷・熱傷・膵炎・その他の原因により、全身性に炎症反応を来した状態です。何らかの生体侵襲が加わると、まずは局所でサイトカインが産生されて炎症反応が起こります。さらに炎症が進むと炎症は局所に留まらず全身に広がります。そして、本来は有益であるはずの炎症反応が生体への破壊因子として働き、循環動態が悪くなり臓器不全が生じます。このように炎症反応は進行していきますが、表3の診断基準を満たすとき、私たちはSIRSと判断します。図1の左側の大きな円が感染症ですから、感染症によってSIRSを生じた場合(左右の大きな円が重なる部分です)、敗血症と診断されるわけです。ここで強調したいことは、SIRS診断基準の4項目〈表3〉のうち白血球数を除く3項目がバイタルサインであることです。詳しい診察や手間のかかる検査は必要なしにSIRSを見つけることができ、感染症があれば敗血症と診断できます。敗血症であれば一刻も早い抗菌薬の投与が必要になります。通常、補液(生理食塩液、乳酸リンゲル液)を開始しながら各種培養検査(細菌学的検査)を提出し、抗菌薬を開始しますが、この女性の場合は施設内での訪問診療なのでまずは補液を行いました。抗菌薬は広域の抗菌スペクトラムを持つ抗菌薬で開始し、細菌検査結果より狭域の抗菌薬にスイッチします。

422.

セファゾリンナトリウム注射用の代替薬

 2019年3月29日、厚生労働省は、事務連絡として「セファゾリンナトリウム注射用「日医工」が安定供給されるまでの対応について」を全国の関係機関に発出し、各医学会でも周知が開始された。 セファゾリンナトリウムは、日医工株式会社が製造・供給に大きなシェアをもつ抗菌薬だが、本年2月に製品供給に支障をきたす可能性がある旨の周知があり、現在も供給再開の目途が立っていない。そして、同製品の代替品と考えられる製品の一時的な供給不足も危惧されることから、安定供給が再開されるまでの間の対応として周知された。 利用にあたっては、「抗菌薬の処方に関する最終的な決定は、治療にあたる医師が行う」「一覧の病態・術式に対し本来の推奨薬とは限らない薬剤も含まれるので、個別の患者マネジメントにおいては病態や術式を十分に検討して決定すること」などの諸注意を踏まえ、院内などで情報共有をしつつ、活用してほしいとしている。周術期予防抗菌薬(カッコ内はターゲットとする細菌)・脳神経外科(黄色ブドウ球菌/レンサ球菌) 代替薬例:セフォチアム、セフォタキシムなど・耳鼻咽喉科(黄色ブドウ球菌/口腔内嫌気性菌/レンサ球菌) 代替薬例:アンピシリン・スルバクタム、セフォチアムなど・心臓血管外科(黄色ブドウ球菌/レンサ球菌) 代替薬例:セフォチアム、セフォタキシムなど・胸部外科(口腔内嫌気性菌/レンサ球菌) 代替薬例:アンピシリン・スルバクタム、セフォチアムなど・乳腺外科(黄色ブドウ球菌/レンサ球菌) 代替薬例:セフォチアム、クリンダマイシン・上部消化管外科(大腸菌/肺炎桿菌) 代替薬例:アンピシリン・スルバクタム、セフォチアム・消化器外科(腸内細菌科細菌) 代替薬例:アンピシリン・スルバクタム、セフォチアムなど・婦人科(腸内細菌科細菌、Bacteroides fragilisグループ) 代替薬例:アンピシリン・スルバクタム、セフォチアムなど・泌尿器科(腸内細菌科細菌) 代替薬例:アンピシリン・スルバクタム、セフォチアムなど・整形外科(黄色ブドウ球菌/レンサ球菌) 代替薬例:セフォチアム、セフメタゾールなど治療用抗菌薬(カッコ内はターゲットとする細菌)・黄色ブドウ球菌菌血症(黄色ブドウ球菌) 代替薬例:アンピシリン・スルバクタム、セフォタキシム、セフトリアキソンなど・軟部組織感染症[蜂窩織炎、丹毒など](黄色ブドウ球菌/レンサ球菌) 代替薬例:アンピシリン・スルバクタム、セフォタキシム、セフトリアキソンなど・急性骨髄炎、化膿性関節炎(黄色ブドウ球菌) 代替薬例:セフォタキシム、セフトリアキソン、クリンダマイシンなど・尿路感染症[急性腎盂腎炎](大腸菌) 代替薬例:セフォチアム、セフメタゾール、フロモキセフなど なお上記リストは、同製品の供給不足に伴う影響を最小限にし、かつ抗菌薬適正使用の観点から、既存の診療ガイドラインなどを踏まえ、国立研究開発法人国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンターの協力のもと作成された。■参考厚生労働省「セファゾリンナトリウム注射用「日医工」が安定供給されるまでの対応について」

423.

原発性硬化性胆管炎〔primary sclerosing cholangitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)は、小胆管周囲にonion-skin様の結合織に囲まれる炎症により特徴付けられる肝の慢性炎症である。結合織の増加により胆管は狭窄、閉塞を起こし、胆汁うっ滞を来し、閉塞性黄疸となり、最終的には肝硬変、肝不全に進展する。PSCの発症・進展には、自己免疫機序が深く関わることが推定されているものの、血清学的に特異的な免疫指標は残念ながら同定されておらず、病因は現在も不明である。■ 疫学2012年の全国疫学調査によると、国内症例数は2,300名前後、人口10万人当たりの有病率は0.95程度と推測されている。しかし、欧米諸国で近年発症率の増加が報告されていること、画像検査の進歩により診断率が向上していることにより、実際の患者数はもう少し多いことが推察される。患者は、男性にやや多く、20代と60代の二峰性を示す。わが国では肝内・肝外胆管両者の罹患症例が多く、潰瘍性大腸炎の罹患合併が34%で、とくに若年者に高率である。また、胆管がんの合併を7.3%に認めている。■ 病因PSCには炎症性腸疾患との関連が認められており、欧米ではPSC患者の80%で合併がみられるが、わが国ではその頻度は低く、とくに高齢者では合併例は少ない。潰瘍性大腸炎患者の約5%とクローン病患者の約1%がPSCを発症する。こうした関連性といくつかの自己抗体(例:抗平滑筋抗体、核周囲型抗好中球抗体[pANCA])の存在から、免疫を介した発生機序が示唆されている。T細胞が胆管の破壊に関与するとみられることから、細胞性免疫の障害が示唆されている。家系内で集積傾向がみられ、自己免疫疾患との相関もしばしば報告され、HLAB8およびHLADR3を有する人々での頻度がより高いことから、遺伝的素因の存在が示唆されている。遺伝的素因のある人々では、おそらく原因不明の誘因(例:細菌感染、虚血性の胆管傷害など)によってPSCが引き起こされると考えられている。■ 症候病初期には無症状で、偶然の機会に胆道系酵素の上昇などで発見されることもある。発症は通常潜行性で、進行性の疲労や掻痒感が認められる場合が多い。約10~15%の症例では、右上腹部痛と発熱を認める。診断時の症状についての全国アンケート調査では、黄疸28%、掻痒感16%が認められるとの報告がある。病態が進行すれば、脂肪便、脂溶性ビタミン欠乏を来す場合があり、持続性の黄疸により病態は進行し、肝硬変の症状を呈する。約75%の症例で症状を伴う胆石や総胆管結石症を伴うことが報告されている。なお、一部の症例では晩期まで無症状のまま経過し、肝脾腫、肝硬変の状態で診断される場合もあるが、本疾患は緩徐ながら確実に進行し、末期には非代償期肝硬変に至る。診断から肝不全に至るまでの期間は、約12年とされている。なお、合併が多い炎症性腸疾患とは独立した経過をたどり、潰瘍性大腸炎はPSCに数年遅れて発現するケースがあり、合併が認められた場合、潰瘍性大腸炎は比較的軽症の経過をとる傾向があるとされている。結腸全摘術を施行された場合でも、PSCの経過には変化がないことが報告されている。そのほか、PSCと炎症性腸疾患両者が存在すると大腸がんのリスクが上昇し、このリスクはPSCに対して肝移植を施行しても変わらないことが報告されている。■ 予後わが国の全国調査によれば、肝移植なしの5年生存率は75%とされている。肝移植症例では、とくに近親者からの移植症例で再発が高頻度であるとの報告がある。早期症例では、肝硬変に至るまでの期間は15~20年とされているが、8~10%の症例では胆管がんの合併があるので注意が必要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)確定診断に至る臨床的特異的マーカーは存在せず、また、肝生検でも確定診断は困難である。診断は、肝内外胆管病変の画像診断によるが、類似の画像所見を示す疾患、とくに自己免疫性膵炎(AIP)に伴う胆管炎との鑑別が重要である。診断に当たっては、以下の臨床像に十分留意する。(1)胆汁うっ滞に基づく腹痛、発熱、黄疸などの症状、(2)炎症性腸疾患、とくに潰瘍性大腸炎の存在、(3)6ヵ月以上持続する胆道系酵素、AlPの正常上限2~3倍以上の持続上昇。 また、画像所見や超音波検査では、(1)散在する胆管内腔の狭窄と拡張、(2)散在する胆管壁肥厚に留意が必要となる。そして、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)では(1)肝内外胆管の散在する輪状、膜状、帯状狭窄および憩室様突出、数珠状狭窄、(2)肝内外胆管の毛羽立ち、刷子縁様の不整像、(3)肝内胆管分枝像の減少、(4)肝外胆管狭窄に符合しない肝内胆管拡張、などの特徴的所見が認められ、ERCP施行によりこれら所見はより明確になる(図1、2)。(図1、2入る)画像を拡大する画像を拡大するなお、診断確定に当たっては、以下の(1)~(9)の疾患の除外が重要であり、IgG4関連硬化性胆管炎の鑑別も重要である(下に挙げた厚生労働省研究班の診断基準を参照)。(1)IgG4関連硬化性胆管炎、(2)胆道感染症による胆管炎、(3)胆道悪性腫瘍、(4)胆管結石、(5)腐食性硬化性胆管炎、(6)先天性胆道異常、(7)虚血性胆管狭窄、(8)胆道外科手術後状態、(9)floxuridine動注による胆管障害。病変の広がりにより、1)肝内型、2)肝外型、3)肝内外型に分類される。2016年原発性硬化性胆管炎診断基準厚生労働省難治性肝・胆道疾患に関する調査研究班(滝川班)【原発性硬化性胆管炎の疾患概念】原発性硬化性胆管炎は病理学的に慢性炎症と線維化を特徴とする慢性の胆汁うっ滞を来す疾患であり、進行すると肝内外の胆管にびまん性の狭窄と壁肥厚が出現する。病因は不明である。胆管上皮に強い炎症が惹起され、胆管上皮障害が生ずる。診断においてはIgG4関連硬化性胆管炎*、発症の原因が明らかな2次性の硬化性胆管炎**、悪性腫瘍を除外することが重要である。わが国における原発性硬化性胆管炎の診断時年齢分布は2峰性を呈し、若年層では高率に炎症性腸疾患を合併する。持続する胆汁うっ滞の結果、肝硬変、肝不全に至ることがある。有効性が確認された治療薬はなく、肝移植が唯一の根治療法である。【原発性硬化性胆管炎の診断基準】IgG4関連硬化性胆管炎*、発症の原因が明らかな2次性の硬化性胆管炎**、胆管がんなどの悪性腫瘍を除外することが必要である。A.診断項目I.大項目A. 胆管像1)原発性硬化性胆管炎に特徴的な胆管像の所見を認める。2)原発性硬化性胆管炎に特徴的な胆管像の所見を認めない。B. アルカリフォスファターゼ値の上昇II.小項目a. 炎症性腸疾患の合併b. 肝組織像(線維性胆管炎/onion skin lesion)B.診断上記による確診・準確診のみを原発性硬化性胆管炎として取り扱う。*IgG4関連硬化性胆管炎は、“Clinical diagnostic criteria of IgG4-related sclerosing cholangitis 2012”(Ohara H,et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2012;19:536-542.)により診断する。**2次性硬化性胆管炎は以下の通りである(Nakazawa T, et al. World J Gastroenterol. 2013;19:7661-7670.)。先天性カロリ病Cystic fibrosis慢性閉塞性総胆管結石胆管狭窄(外科手術時の損傷によるもの、慢性膵炎によるもの)Mirizzi症候群肝移植後の吻合狭窄腫瘍(良性、悪性、転移性)感染性細菌性胆管炎再発性化膿性胆管炎寄生虫感染(cryptosporidiosis、microsporidiosis)サイトメガロウイルス感染中毒性アルコールホルムアルデヒド高張生理食塩水の胆管内誤注入免疫異常好酸球性胆管炎AIDSに伴うもの虚血性血管損傷外傷後性硬化性胆管炎肝移植後肝動脈塞栓肝移植後の拒絶反応(急性、慢性)肝動脈抗がん剤動注に関連するもの経カテーテル肝動脈塞栓術浸潤性病変全身性血管炎アミロイドーシスサルコイドーシス全身性肥満細胞症好酸球増加症候群Hodgkin病黄色肉芽腫性胆管炎通常、肝生検は診断に必須ではないが、施行した場合には、胆管増生、胆管周囲の線維化、炎症、および胆管の消失が認められる。疾患が進行するにつれて、胆管周囲の線維化が門脈域から拡大していき、最終的には続発性胆汁性肝硬変に至る。なお、小児症例では、自己免疫性肝炎との鑑別が困難な症例が多数存在することに、注意が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)確立された治療法は現在なく、進行した場合は、肝移植が唯一の治療法となる。通常、無症状の患者はモニタリング(身体診察と肝機能検査を年2回など)のみで経過観察する。ウルソデオキシコール酸(商品名:ウルソ[5mg/kg、1日3回、経口、最大15mg/kg/日])は、掻痒を緩和し、生化学マーカー値を改善し、現在第1選択薬となっており、2012年の全国調査でも81%の症例で投与されているが、残念ながら、生存率は改善できない。脂質異常症の治療薬であるベザフィブラート(同:ベザトール)のPSCに対する有効性も報告されているが、報告では胆道系酵素の改善のみで、組織学的な改善や画像診断上の改善を促すものではないが、ウルソデオキシコール酸治療で十分な効果が得られなかった症例でも一定の改善効果がある点が注目されている。慢性胆汁うっ滞および肝硬変に至った場合には、支持療法が必要である。細菌性胆管炎の発症時には、抗菌薬が必要であり、必要に応じて治療的ERCPも施行する。単一の狭窄が閉塞の主な原因と考えられる場合(優位な狭窄、約20%の患者にみられる)は、ERCPによる拡張術(腫瘍の確認のための擦過細胞診も行う)とステント留置術により症状を緩和することができる。PSC患者では、肝移植が期待余命を延長する唯一の治療法であり、治癒も可能である。繰り返す細菌性胆管炎または肝疾患末期の合併症(例:難治性腹水、門脈大循環性脳症、食道静脈瘤出血)には、肝移植が妥当な適応である。脳死肝移植が少ない本邦では生体肝移植が主に行われているが、生体肝移植後PSCの再発率が高い可能性が、わが国から報告されている。4 今後の展望診断に有用な臨床マーカーの確立、病態の解明とそれに基づいた治療法の確立が大きな課題である。5 主たる診療科消化器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 原発性硬化性胆管炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Nakazawa T, et al. J Gastroenterol. 2017;52:838-844.2)Chapman R,et al. Hepatology. 2010;51:660-678.公開履歴初回2019年4月9日

424.

プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症には速やかな抗菌薬処方が有効(解説:小金丸博氏)-1023

 尿路感染症は高齢者における最も代表的な細菌感染症である。重症度は自然軽快する軽症のものから、死亡率が20~40%に至る重症敗血症まで幅広い。高齢者では典型的な臨床経過や局所症状を認めないことも多く、診断は困難である。そのうえ、65歳以上の女性の20%以上に無症候性細菌尿を認めることが尿路感染症の診断をさらに困難にする。 現在、薬剤耐性菌を減らすための対策として世界中で抗菌薬の適正使用を推進する動きがある。最近の英国からの報告によると、2004年~2014年の間にプライマリケアにおける高齢者の尿路感染症に対する広域抗菌薬の処方は減少していたが、その一方でグラム陰性菌による血流感染症が増加しており、その関連性が議論されている。 本研究は、高齢者の下部尿路感染症患者に対する抗菌薬治療介入の方法と治療成績の関係を検討した後ろ向きコホート研究である。英国のプライマリケアを受診した65歳以上の患者のうち、下部尿路感染症と確定診断、あるいは疑われた全患者を対象とした。無症候性細菌尿、複雑性尿路感染症、入院例などは除外された。抗菌薬の処方タイミングによって、即時処方群(初回診断日に処方)、待機処方群(初回診断日から7日以内に処方)、処方なし群の3群に分類し、診断から60日以内の血流感染症、全死亡率などを比較した。その結果、60日以内の血流感染症の発生率は即時処方群が0.2%だったのに対し、待機処方群は2.2%、処方なし群は2.9%と有意に高率だった(p=0.001)。共変量で補正すると、即時処方群と比較した待機処方群の血流感染症のオッズ比は7.12(95%信頼区間:6.22~8.14)、処方なし群のオッズ比は8.08(同:7.12~9.16)だった。60日以内の全死亡率は、即時処方群が1.6%、待機処方群が2.8%、処方なし群が5.4%だった。多変量Cox回帰モデルで解析した結果、高齢、男性、Charlson併存疾患指数、喫煙などが60日以内の死亡と関連があった。特に、85歳以上の男性において死亡リスクが高かった。 本研究において、高齢者の下部尿路感染症に対して抗菌薬を即時処方することで、その後の血流感染症発生率や死亡率を減らすことが示された。後ろ向き研究であるものの、英国のデータベースを用いた非常に患者数の大きい研究であり、結果の信頼度は高い。研究のlimitationとして、菌名や耐性菌の割合など原因微生物の情報がないこと、患者の服薬遵守率が不明なこと、続発した血流感染症の侵入門戸が尿路かどうか不明なことなどが挙げられる。耐性菌を蔓延させないために抗菌薬の使用量を減らす努力は重要であるが、高齢者の尿路感染症に対して抗菌薬を投与することは妥当と考える。ただし、無症候性細菌尿に対して抗菌薬を投与することは厳に慎まなければならない。 本研究の結果をみると即時処方群が86.6%を占めていたが、本邦では高齢者の尿路感染症に対してもっと高率に抗菌薬を処方していると思われる。処方された抗菌薬をみてみると、トリメトプリム、ニトロフラントインがセファロスポリンやペニシリン系より多かった。キノロン系抗菌薬の割合が4.4%と少なかったことは、日本のプライマリケアの現場でも大いに見習うべき点であろう。

425.

CIED留置後感染予防、生体吸収性抗菌薬溶出メッシュが有益/NEJM

 心臓植込み型電気デバイス(CIED)留置後の感染症を予防するための、CIEDを包む生体吸収性抗菌薬溶出メッシュの安全性と有効性を評価した、米国・クリーブランド・クリニックのKhaldoun G. Tarakji氏らによる無作為化比較臨床試験「Worldwide Randomized Antibiotic Envelope Infection Prevention Trial:WRAP-IT」の結果が示された。抗菌薬溶出メッシュの使用により、標準ケアによる感染予防戦略のみの実施と比較し、合併症の発生が増加することなく、重大なCIED感染症の発生が有意に低下したという。CIED留置後の感染症はその後の病的状態や死亡と関連しているが、術前抗菌薬投与以外に感染症を予防する方法に関するエビデンスは限定的であった。NEJM誌オンライン版2019年3月17日号掲載の報告。約7,000例を、抗菌薬溶出メッシュ使用あり/なしに無作為化 研究グループは、CIEDポケットの再建、ジェネレーター取り換え、除細動機能付き両心室ペースメーカのシステムのアップグレード・初回留置を実施する患者を、抗菌薬溶出メッシュ使用群または非使用群に1対1の割合で無作為に割り付けた。感染症予防のための標準ケア(術前の抗菌薬静脈投与および滅菌技術)は、全患者に対して行った。 主要評価項目は、CIED留置術後12ヵ月以内の、システム除去/再建を要する感染症、感染症再発を伴う長期抗菌薬療法ならびに死亡とし、安全性の副次評価項目は12ヵ月以内の施術関連またはシステム関連の合併症で、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。 計6,983例の患者が登録された(使用群3,495例、非使用群3,488例)。抗菌薬溶出メッシュ使用で重大なCIED関連感染症の発生が約40%低下 主要評価項目の発生は、使用群25例、非使用群42例で確認された(12ヵ月Kaplan-Meier推定イベント発生率はそれぞれ0.7%、1.2%、ハザード比[HR]:0.60[95%信頼区間[CI]:0.36~0.98]、p=0.04)。安全性に関する副次評価項目は、使用群201例、非使用群236例で発生した(12ヵ月Kaplan-Meier推定イベント発生率はそれぞれ6.0%、6.9%、HR:0.87[95%CI:0.72~1.06]、非劣性のp<0.001)。 平均(±SD)追跡調査期間は、20.7±8.5ヵ月であった。追跡期間全体を通して、重大なCIED関連感染症は、使用群32例、非使用群51例で確認された(HR:0.63、95%CI:0.40~0.98)。 なお、著者は、抗菌薬の感受性に関するデータが不足していること、周術期および術後の抗菌薬使用などの感染予防戦略の比較はしていないことなどを研究の限界として挙げている。

426.

リファンピシン耐性結核に短期レジメンが有望/NEJM

 リファンピシン耐性結核の治療において、高用量モキシフロキサシンを含む9~11ヵ月の短期レジメンは、2011年のWHOガイドラインに準拠した長期レジメン(20ヵ月)に対し、有効性が非劣性で安全性はほぼ同等であることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAndrew J. Nunn氏らが実施したSTREAM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年3月13日号に掲載された。バングラデシュのコホート研究では、多剤耐性結核患者において、2011年のWHOの推奨治療よりも治療期間が短いレジメンを用いた既存薬の投与により、有望な治癒率が得られたと報告されている。アフリカとアジア4ヵ国の非劣性試験 本研究は、多剤耐性結核の治療における、バングラデシュ研究と類似の短期レジメンの、2011年版WHOガイドライン準拠の長期レジメンに対する非劣性を検証する無作為化第III相試験である(米国国際開発庁[USAID]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、フルオロキノロン系およびアミノグリコシド系抗菌薬に感受性で、リファンピシン耐性の肺結核患者であった。被験者は、高用量モキシフロキサシンを含む短期レジメン(9~11ヵ月)または2011年版WHOガイドライン準拠の長期レジメン(20ヵ月)を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは132週時の「良好な状態」とした。その定義は、132週時の培養および試験期間中の培養でMycobacterium tuberculosisが陰性で、不良なアウトカム(割り付けレジメンに含まれない2剤以上による治療の開始、許容期間を超える治療の延長、死亡、直近の2つの検体のうち1つで培養陽性、76週以降の受診がない)を認めないこととした。群間差の95%信頼区間(CI)上限値が10%以下の場合に、非劣性と判定した。 2012年7月~2015年6月の期間に、424例(エチオピア:126例、モンゴル:33例、南アフリカ共和国:165例、ベトナム:100例)が割り付けの対象となり、383例(短期レジメン群:253例、長期レジメン群:130例)が修正intention-to-treat(mITT)解析に含まれた。mITT集団の主要アウトカム:78.8% vs.79.8% ベースライン時に全体の32.6%でHIV感染が、77.2%でcavitationが認められた。治療期間中央値は、短期レジメン群が40.1週(5パーセンタイル値37.0、95パーセンタイル値46.3)、長期レジメン群は82.7週(72.1、102.3)だった。 mITT解析による主要アウトカムは、短期レジメン群が78.8%(193例)、長期レジメン群は79.8%(99例)に認められ、HIV感染で補正した群間差は1.0(95%CI:-7.5~9.5)であり、非劣性が示された(非劣性:p=0.02)。また、per-protocol集団(321例)においても、短期レジメン群の長期レジメン群に対する非劣性が確認された(補正群間差:-0.7%、95%CI:-10.5~9.1、非劣性:p=0.02)。 Grade3~5の有害事象は、短期レジメン群が48.2%、長期レジメン群は45.4%に、重篤な有害事象は、それぞれ32.3%、37.6%にみられた。8.5%、6.4%が死亡した。 短期レジメン群で、QT間隔または補正QT間隔(Fridericia法で補正)の500msecまでの延長が多く認められたため(11.0% vs.6.4%、p=0.14)、厳重なモニタリングとともに、一部の患者では投薬の調整が行われた。フルオロキノロン系またはアミノグリコシド系抗菌薬への獲得耐性が、短期レジメン群の3.3%(8例)、長期レジメン群の2.3%(3例)にみられた(p=0.62)。 著者は、「今回の結果は有望だが、多剤耐性結核の治療では、薬剤感受性結核と同等の有効性と安全性をもたらす短期の簡便なレジメンを見つけ出すことが、依然として重要である」としている。

427.

高齢者の尿路感染症、抗菌薬即時処方で死亡リスク減/BMJ

 プライマリケアにおいて尿路感染症(UTI)と診断された高齢患者では、抗菌薬の非投与および待機的投与は、即時投与に比べ血流感染症および全死因死亡率が有意に増加することが、英国・Imperial College LondonのMyriam Gharbi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年2月27日号に掲載された。大腸菌(Escherichia coli)による血流感染症の約半数が、原疾患としてのUTIに起因し、高齢患者はリスクが高いとされる。また、自然治癒性の疾患(上気道感染症など)では抗菌薬の「非投与」「待機的または遅延投与」は重度の有害アウトカムとはほとんど関連しないが、若年女性のUTI患者ではわずかだが症状発現期間が延長し、合併症が増加するとの報告がある。しかし、これらの研究は症例数が少なく、その一般化可能性は限定的だという。投与開始時期と血流感染症、入院、死亡との関連を評価 研究グループは、イングランドにおける高齢UTI患者への抗菌薬治療と重度有害アウトカムとの関連の評価を目的に、住民ベースの後ろ向きコホート研究を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。 英国のClinical Practice Research Datalink(2007~15年)のプライマリケアのデータを、イングランドの全入院情報を含むhospital episode statisticsおよび死亡記録と関連付けた。2007年11月1日~2015年5月31日の期間に、プライマリケア医を受診し、下部UTI疑い、または確定診断が1回以上なされた65歳以上の患者15万7,264例が解析の対象となった。 主要アウトカムは、UTIのインデックス診断日から60日以内の血流感染症、入院ならびに平均入院期間、全死因死亡率とした。抗菌薬の即時投与(初回UTI診断時または同日)、待機的投与(初回UTI診断から7日以内)、非投与の患者に分けて比較した。とくに85歳以上の男性患者でリスクが高い 全体の平均年齢は76.7(SD 9.2)歳で、22.1%が85歳以上、78.8%が女性であった。UTIエピソード31万2,896件(15万7,264例)のうち、7.2%(2万2,534件)で抗菌薬処方の記録がなく、6.2%(1万9,292件)では遅延投与の処方が記録されていた。 初診時に処方された抗菌薬(27万1,070件)は、トリメトプリム(54.7%)が最も多く、次いでnitrofurantoin(19.1%)、セファロスポリン系(11.5%)、アモキシシリン/クラブラン酸(9.5%)、キノロン系(4.4%)の順であった。 初回UTI診断から60日以内に、1,539件(0.5%)の血流感染症エピソードが記録されていた。血流感染症の発症率は、初診時に抗菌薬が処方された患者の0.2%に比べ、初診から7日以内の再診時に処方された患者は2.2%、処方されなかった患者は2.9%であり、いずれも有意に高率だった(p=0.001)。 主な共変量で補正すると、抗菌薬の即時投与群と比較して、待機的投与群(補正後オッズ比[OR]:7.12、95%信頼区間[CI]:6.22~8.14)および非投与群(8.08、7.12~9.16)は、いずれも血流感染症を経験する可能性が有意に高かった。 また、抗菌薬即時投与群と比較した血流感染症の有害必要数(number needed to harm:NNH)は、非投与群が37例と、待機的投与群の51例よりも少なく、非投与のリスクがより高いことが示された。これは、抗菌薬即時投与群では発症しないと予測される血流感染症が、非投与群では37例に1例、待機的投与群では51例に1例の割合で発症することを意味する。 入院の割合は、待機的投与群が26.8%、非投与群は27.0%と、いずれも即時投与群の14.8%の約2倍であり、有意な差が認められた(p=0.001)。平均入院日数は、非投与群が12.1日であり、待機的投与群の7.7日、即時投与群の6.3日よりも長かった(p<0.001)。 60日以内の全死因死亡率は、即時投与群が1.6%、待機的投与群が2.8%、非投与群は5.4%であった。死亡リスクは、60日のフォローアップ期間中のどの時期においても、即時投与群に比べ待機的投与群(補正後OR:1.16、95%CI:1.06~1.27)および非投与群(2.18、2.04~2.33)で有意に高かった。 85歳以上の男性は、血流感染症および60日以内の全死因死亡のリスクが、とくに高かった。 著者は、「イングランドでは、大腸菌による血流感染症が増加していることを考慮し、高齢UTI患者に対しては、推奨される1次治療薬の早期の投与開始を提唱する」としている。

428.

進行卵巣がん、後腹膜リンパ節郭清は必要か/NEJM

 進行卵巣がんの手術において、腹腔内腫瘍が肉眼的に完全切除され、術前・術中ともにリンパ節が正常な患者への骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清は、非郭清例と比較して全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間のいずれをも延長させず、術後合併症の頻度は高いことが、ドイツKliniken Essen-MitteのPhilipp Harter氏らが行ったLION試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年2月28日号に掲載された。肉眼的完全切除例に対する骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清がもたらす生存への有益性は、その可能性を示唆する後ろ向きの解析がいくつかあるが、無作為化試験のエビデンスは限られているという。郭清の有無でOSを比較する無作為化試験 研究グループは、進行卵巣がん肉眼的完全切除例における骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清に関する前向き無作為化対照比較試験を実施した(Deutsche ForschungsgemeinschaftとAustrian Science Fundの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、新規に進行卵巣がん(国際産婦人科連合[FIGO]分類IIB~IV期)と診断され、全身状態(ECOG PS)が0/1で、肉眼的完全切除を受け、術前・術中ともにリンパ節が正常の患者であった。 手術中に、肉眼的完全切除が達成された患者が、リンパ節郭清を受ける群または受けない群に無作為に割り付けられた。参加施設は試験参加前に、手術技術に関する基準を満たすことが求められた。主要評価項目はOS期間であった。OS:65.5ヵ月 vs.69.2ヵ月、PFS:25.5ヵ月 vs.25.5ヵ月 2008年12月~2012年1月の期間に、647例が無作為化の対象となり、リンパ節郭清群に323例(年齢中央値:60歳[範囲:21~83]、FIGO Stage IIIB/IV:80.8%)、非郭清群には324例(60歳[23~78]、75.3%)が割り付けられた。リンパ節郭清群における切除リンパ節数中央値は57個(骨盤リンパ節35個、傍大動脈リンパ節22個)だった。 OS期間中央値は、リンパ節郭清群が65.5ヵ月と、リンパ節非郭清群の69.2ヵ月との間に有意な差を認めなかった(リンパ節郭清群の死亡のハザード比[HR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.83~1.34、p=0.65)。また、PFS期間中央値は、両群とも25.5ヵ月であった(リンパ節郭清群の病勢進行または死亡のHR:1.11、95%CI:0.92~1.34、p=0.29)。 リンパ節郭清群では、退院時の抗菌薬治療を要する感染症(25.8% vs.18.6%、p=0.03)およびリンパ囊胞(無症状:4.3% vs.0.3%、p<0.001、有症状:3.1% vs.0、p=0.001)が有意に多かった。また、重篤な術後合併症として、術後60日以内の再開腹(12.4% vs.6.5%、p=0.01)および死亡(3.1% vs.0.9%、p=0.049)の頻度が有意に高かった。 術後の全身治療として、プラチナ製剤+タキサン系薬剤±ベバシズマブが、リンパ節郭清群の80.5%、リンパ節非郭清群の83.9%で施行された。 著者は、「この、前向きに無作為化され、十分な検出力を有する国際的な多施設共同試験の結果は、進行卵巣がんにおけるリンパ節郭清の役割に関する長年の議論にレベル1のエビデンスを付与するとともに、臨床エビデンスの創出における適切な研究方法の使用の重要性を繰り返し強調するものである」としている。

429.

新規のアミノグリコシド系抗菌薬plazomicinの複雑性尿路感染症に対する効果(解説:吉田敦氏)-1013

 腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の薬剤耐性は、現在、われわれが日常最も遭遇する薬剤耐性と言ってよいであろう。たとえば本邦で分離される大腸菌の約4割はフルオロキノロン耐性、約2割はESBL産生菌である。実際に複雑性尿路感染症の治療を開始する際に、主原因である腸内細菌科細菌の抗菌薬耐性をまったく危惧しない場合は、ほぼないと言えるのではないだろうか。そして結果としてβラクタム系およびフルオロキノロン系が使用できないと判明した際、残る貴重な選択肢の1つはアミノグリコシド系であるが、腎障害等の副作用が使用を慎重にさせている点は否めない。 今回の検討では、腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症例をアミノグリコシド系であるplazomicin群(1日1回静脈内投与)とメロペネム群にランダムに割り付け、少なくとも4日間以上続けた後、およそ8割の例で経口抗菌薬に変更し、合計7~10日の治療期間としている。なお投与開始から5日目、および15~19日目の臨床的、微生物学的改善がプライマリーエンドポイントとして設定された。そして結果としてplazomicinはおおよそメロペネムに劣らなかったが、特に15~19日目における臨床的、微生物学的改善率がplazomicin群において高かった。 本検討において最も関心が持たれる点はおそらく、(1)薬剤耐性菌の内訳と、それらへの効果、(2)plazomicinの副作用の有無と程度、(3)経口抗菌薬による影響、そして(4)再発に対する効果ではないだろうか。今回の検討例ではレボフロキサシン耐性は約4割、ESBL産生は約3割、カルバペネム系耐性(CRE)は約4%であるから、本邦の現在よりやや耐性株が多い。そしてESBL産生菌、アミノグリコシド(AMK、GM、TOBのいずれか)耐性株ともにplazomicin群がメロペネム群よりも微生物学的改善率が高かった。検討例はクレアチニンクリアランスが30mL/min以上の者であるが、うち30~60mL/minが35%、60~90mL/minが38%、90mL/min以上が26%を占める。このような集団でのCr 0.5mg/dL以上の上昇例がplazomicin群で7%、メロペネム群で4%認められた。一方、経口抗菌薬の第1選択はレボフロキサシンであるが、実際にはレボフロキサシン耐性株分離例の60%でレボフロキサシンが選択されていた。また治療後の無症候性細菌尿と、それに関連する再発がplazomicin群で低かった。 ほかにも結果解釈上の注意点がある。まず微生物学的改善の基準は、尿路の基礎状態にかかわらず、治療前に尿中菌数が105CFU/mL以上であったものが、治療後104CFU/mL未満になることと定義している点である。尿中菌数とその低下は基礎状態にも左右されるし、実際の低下度合いについては示されていない。さらに微生物学的改善の評価における重要な点として、当初から検討薬に耐性である例は除外されていることである(plazomicin感性は4μg/mL以下としている)。また治療前に感性であったものが、治療後に耐性になった例はplazomicin群の方がやや多かった。 以上のような注意点はあるものの、多剤耐性菌が関わりやすい複雑性尿路感染症の治療手段として有用な選択肢が増えた点は首肯できると言えよう。なおplazomicinはアミノグリコシド修飾酵素によって不活化されにくい点が従来のアミノグリコシドに勝る利点であるが、リボゾームRNAのメチル化酵素を産生するNDM型カルバペネマーゼ産生菌には耐性であり1)、ブドウ糖非発酵菌のPseudomonas、Acinetobacterについては従来のアミノグリコシドを凌駕するものではないと言われている2)。反面、尿路感染症では関与は少ないが、MRSAに対する効果が報告されている3)。本邦への導入検討に際しては、本邦の分離株を対象とした感受性分布ならびに耐性機構に関するサーベイランスが行われるのが望ましいと考える。そのような検討が進むことに期待したい。

430.

プライマリケアでの抗菌薬処方、推奨期間を超過/BMJ

 英国では、プライマリケアで治療されるほとんどの一般感染症に対し、抗菌薬の多くがガイドラインで推奨された期間を超えて処方されていたことが、英国公衆衛生庁(PHE)のKoen B. Pouwels氏らによる横断研究の結果、明らかとなった。プライマリケアにおける抗菌薬の使用削減戦略は、主に治療開始の決定に焦点が当てられており、抗菌薬の過剰な使用に、どの程度治療期間が寄与しているかは不明であった。著者は、「抗菌薬曝露の大幅な削減は、処方期間をガイドラインどおりにすることで達成できる」とまとめている。BMJ誌2019年2月27日号掲載の報告。13適応症に対する抗菌薬の実際の処方期間とガイドラインの推奨期間を比較 研究グループは、英国プライマリケアの大規模データベース(The Health Improvement Network:THIN)を用い、2013~15年にプライマリケアで13の適応症(急性副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性咳嗽/気管支炎、肺炎、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪、急性中耳炎、急性膀胱炎、急性前立腺炎、腎盂腎炎、蜂窩織炎、膿痂疹、猩紅熱、胃腸炎)のうち、いずれか1つに対して抗菌薬が処方された93万1,015件の診察を特定し、解析した。 主要評価項目は、ガイドラインの推奨期間よりも長く抗菌薬が処方された患者の割合と、各適応症に対する推奨期間を超えた合計処方日数であった。呼吸器感染症では80%以上がガイドラインの推奨期間超え 抗菌薬が処方された主な理由は、急性咳嗽/気管支炎(38万6,972件、41.6%)、急性咽頭炎(23万9,231件、25.7%)、急性中耳炎(8万3,054件、8.9%)、急性副鼻腔炎(7万6,683件、8.2%)であった。 上気道感染症と急性咳嗽/気管支炎への抗菌薬処方が、全体の3分の2以上を占めており、これらの治療の80%以上がガイドラインの推奨期間を超えていた。一方で、注目すべき例外としては、急性副鼻腔炎の治療で9.6%(95%CI:9.4~9.9%)のみが推奨期間の7日を超えており、急性咽頭炎については2.1%(95%CI:2.0~2.1%)のみが同10日を超えていた(最新の推奨期間は5日間)。女性の急性膀胱炎に対する抗菌薬の処方では、半分以上が推奨期間よりも長く処方されていた(54.6%、95%CI:54.1~55.0%)。 大半の非呼吸器感染症では、推奨期間を超えて抗菌薬が処方された割合は低値であった。抗菌薬を処方した診察93万1,015件において、ガイドラインの推奨期間を超えて抗菌薬が処方された期間は約130万日間であった。

431.

1日1回plazomicin、複雑性尿路感染症に有効/NEJM

 多剤耐性株を含む腸内細菌科細菌による複雑性尿路感染症(UTI)および急性腎盂腎炎の治療において、plazomicin1日1回投与はメロペネムに対し非劣性であることが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian M. E. Wagenlehner氏らが行ったEPIC試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月21日号に掲載された。近年、グラム陰性尿路病原菌では多剤耐性菌が増加し、重篤な感染症に対する新たな治療薬が求められている。plazomicinは、アミノグリコシド系抗菌薬で、カルバペネム耐性を含む多剤耐性腸内細菌科細菌に対し殺菌活性を発揮するという。非劣性を検証する無作為化試験 本研究は、急性腎盂腎炎を含む複雑性UTIの治療におけるplazomicinのメロペネムに対する非劣性の検証を目的とする国際的な二重盲検無作為化第III相試験である(Achaogen社などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、クレアチニンクリアランス>30mL/分で、膿尿がみられ、4日以上の抗菌薬静脈内投与を要する複雑性UTIまたは急性腎盂腎炎の患者であった。 被験者は、plazomicin(15mg/kg体重、1日1回)またはメロペネム(1g、8時間ごと)を静脈内投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。4日以上の静脈内投与を施行後、経口投与へのステップダウンを選択できることとし、合計7~10日の治療が行われた。 主要エンドポイントは、微生物学的修正intention-to-treat(ITT)集団における治療開始5日時と治癒判定の受診時(治療開始から15~19日)の複合治癒(臨床的治癒、微生物学的除菌)であった。非劣性マージンは15ポイントとした。24~32日時の微生物学的・臨床的再発率も良好 2016年1月~9月の期間に、北米と欧州の68施設で609例が登録され、このうち604例(99.2%)が修正ITT集団(安全性解析の対象)、388例(63.7%)が微生物学的修正ITT集団に含まれた。 微生物学的修正ITT集団の平均年齢は59.4歳、72.2%に腎機能障害が認められた。複雑性UTIが58.2%、急性腎盂腎炎は41.8%であった。平均静脈内投与期間は両群とも5.5日、平均静脈内投与+経口投与期間はplazomicin群が9.2日、メロペネム群は8.9日であり、それぞれ80.6%、76.6%で経口薬(主にレボフロキサシン)へのステップダウン治療が行われていた。 有効性の主要エンドポイントに関して、plazomicinはメロペネムに対し非劣性であった。治療開始5日時の複合治癒は、plazomicin群の88.0%(168/191例)、メロペネム群の91.4%(180/197例)で観察された(差:-3.4ポイント、95%信頼区間[CI]:-10.0~3.1)。また、治癒判定受診時の複合治癒は、それぞれ81.7%(156/191例)および70.1%(138/197例)で観察された(11.6ポイント、2.7~20.3)。 治癒判定受診時の除菌率は、plazomicin群がメロペネム群に比べ、アミノグリコシド系抗菌薬に感受性のない腸内細菌科細菌(78.8 vs.68.6%)および基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌(82.4 vs.75.0%)において高かった。 治療開始24~32日のフォローアップでは、plazomicin群はメロペネム群に比し、複合治癒の割合が高く(77.0 vs.60.4%、差:16.6ポイント、95%CI:7.0~25.7)、微生物学的再発率(3.7 vs.8.1%)および臨床的再発率(1.6 vs.7.1%)が低かった。 plazomicin群で頻度の高い有害事象は、下痢(2.3%)、高血圧(2.3%)、頭痛(1.3%)、悪心(1.3%)、嘔吐(1.3%)、低血圧(1.0%)であった。腎機能低下に関連する有害事象は、plazomicin群の3.6%、メロペネム群の1.3%にみられ、重篤な有害事象は両群とも1.7%に認められた。また、血清クレアチニン値のベースラインから0.5mg/dL以上(40μmol/L以上)の上昇が、plazomicin群の7.0%(21/300例)およびメロペネム群の4.0%(12/297例)に発生した。 著者は、「これらの知見は、他のアミノグリコシド系抗菌薬に感受性のない腸内細菌科細菌や、ESBL産生腸内細菌科細菌に起因する感染症を含む複雑性UTIおよび急性腎盂腎炎の成人患者の治療における、plazomicin 1日1回投与を支持するものである」としている。

432.

感染性心内膜炎の静注抗菌薬による治療を部分的に経口抗菌薬に変更できるか(解説:吉田敦氏)-1007

オリジナルニュースPartial Oral versus Intravenous Antibiotic Treatment of Endocarditis 感染性心内膜炎の静注抗菌薬による治療は長期にわたる。中には臨床的に安定したため、抗菌薬の静注が入院の主な理由になってしまう例もある。安定した時期に退院とし、外来で静注抗菌薬の投与を続けることも考えられるが、この場合、患者本人の負担は大きく、医療機関側の準備にも配慮しなければならない。このような背景から、今回デンマークにおいて左心系の感染性心内膜炎を対象とし、静注抗菌薬による治療を10日以上行って安定した例において、そのまま静注抗菌薬を継続・完遂するコントロール群と(治療期間中央値19日)、経口抗菌薬にスイッチして完遂する群(同17日)について、死亡率、(あらかじめ想定されていない)心臓手術率、塞栓発生率、菌血症の再発率が比較された(プライマリーアウトカム指標)。 結果として、プライマリーアウトカム指標の発生率に差はなかった(コントロール群:12.1%、経口スイッチ群:9%)。このため著者らは、左心系の心内膜炎例でも安定していれば、静注抗菌薬の継続に比べ経口スイッチは劣らないと結論付けている。ただし、ここで検討された患者の内訳・原因微生物・除外基準・治療レジメンについてよく確認したうえで、結果は解釈すべきと考える。 まず原因微生物については、Streptococcus、E. faecalis、S. aureus、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の4種のみであり、半数近くをStreptococcusが占め、S. aureusは2割程度であった。それもMSSAのみでMRSAは含まれていない。さらにHACEKや培養陰性IEも含まれていない。自己弁・人工弁両方の心内膜炎が含まれるが、人工弁は25%程度であり、ペースメーカー感染が明らかであった例は3~4%、大きな疣贅(径>9mm)を有していた者は4~6%であった。心内膜炎に対する手術適応あるいはペースメーカー抜去の判断は主治医チームに委ねられており、詳細や施設間差の有無は不明である。さらには2群の割り付けの際、経食道心臓超音波を施行して膿瘍や手術を要するほどの弁異常がないことを確認し、加えて吸収不良がないといった複数の選択基準・除外基準をクリアすることが要求される。治療レジメンについては、代謝経路の異なる2薬剤を併用するが、この中には本邦で市販されていないdicloxacillinとfusidic acidの内服や、高価であるリネゾリドの内服も含まれている。 一方で、経口抗菌薬の血中濃度の測定も行っており、内服薬の吸収とバイオアベイラビリティに配慮している点は評価できる。今回の報告は、画一的な結論は付けがたいと考えられる。つまり、ある範囲の集団で、条件を満たし、臨床的に安定し、かつ腸管吸収にも問題がない例において、特定の組み合わせの経口抗菌薬が適応になるのではないかということである。この意味においては、ある集団に特化した(たとえば「Streptococcusによる自己弁の感染性心内膜炎」に対する「アモキシシリン+リファンピシン」のような)検討が今後さらに必要になるであろうし、半面、別な集団に対しては内服スイッチが適応でないという提示も行われるべきであろう。さらには、そのような層別化を行うにあたって、個別の症例の評価そのものが、よりいっそう精密さを求められるといえる。今回の検討は、あくまで嚆矢としての位置付けではないだろうか。

433.

細菌性皮膚感染症に新規抗菌薬、MRSAにも有効/NEJM

 新規抗菌薬omadacyclineの急性細菌性皮膚・軟部組織感染症への効果は、リネゾリドに対し非劣性で、安全性プロファイルはほぼ同等であることが、米国・eStudySiteのWilliam O’Riordan氏らが行ったOASIS-1試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月7日号に掲載された。急性細菌性皮膚・軟部組織感染症は合併症の発症率が高く、高額な医療費を要する。omadacyclineは、抗菌薬耐性株を含め、この種の感染症を高い頻度で引き起こす病原菌に活性を有する。本薬は、1日1回の経口または静脈内投与が可能なアミノメチルサイクリン系抗菌薬で、テトラサイクリン系薬剤由来の抗菌薬だが、テトラサイクリン耐性の機序である薬剤排出およびリボソーム保護を回避するという。早期臨床効果を無作為化非劣性試験で評価 本研究は、米国、ペルー、南アフリカ共和国および欧州諸国の55施設が参加し、2015~16年に実施された二重盲検ダブルダミー無作為化非劣性第III相試験(Paratek Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の皮膚感染症患者であり、創感染(辺縁部からの最短距離が5cm以上)、蜂巣炎/丹毒、大膿瘍(辺縁部からの最短距離が5cm以上、試験集団の最大30%に制限)が含まれた。 被験者は、omadacycline群(100mgを12時間ごとに2回静脈内投与し、以降は24時間ごとに投与)またはリネゾリド群(600mgを12時間ごとに静脈内投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。3日間静脈内投与を行った後、それぞれomadacycline経口投与(300mgを24時間ごと)およびリネゾリド経口投与(600mgを12時間ごと)への移行を可とした。総投与期間は7~14日であった。 主要エンドポイントは、48~72時間の時点での早期臨床効果(救済抗菌薬治療を受けず、病変が20%以上縮小し、生存していることと定義)であった。副次エンドポイントは、最終投与から7~14日後の投与終了後評価時の担当医評価による臨床効果(徴候または症状がそれ以上の抗菌薬治療が不要な程度にまで消失または改善し、生存していることと定義)とされた。非劣性マージンは、10ポイントであった。MSSA、MRSAでの臨床効果はほぼ同等 645例が登録され、omadacycline群に323例(年齢中央値:48歳[範囲:19~88]、女性:37.2%)、リネゾリド群には322例(46歳[18~90]、33.9%)が割り付けられた。修正intention-to-treat(ITT)集団として、それぞれ316例、311例が解析に含まれた。 早期臨床効果の達成率は、omadacycline群が84.8%、リネゾリド群は85.5%と、omadacyclineのリネゾリドに対する非劣性が示された(差:-0.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-6.3~4.9)。また、投与終了後評価で担当医が臨床効果ありと評価した患者の割合は、修正ITT集団ではそれぞれ86.1%、83.6%(差:2.5ポイント、-3.2~8.2)、臨床per-protocol集団では96.3%、93.5%(2.8ポイント、-1.0~6.9)であり、いずれにおいてもomadacyclineの非劣性が確認された。 また、病原菌別の投与終了後評価では、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA、omadacycline群84% vs.リネゾリド群82%)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、83% vs.86%)に対する臨床効果は、両群でほぼ同等であった。 有害事象は、omadacycline群が48.3%、リネゾリド群は45.7%と報告された。治療関連有害事象はそれぞれ18.0%、18.3%に、重篤な有害事象は3.7%、2.5%に認められた。 消化器系有害事象の頻度が最も高く(それぞれ18.0%、15.8%)、なかでも吐き気(12.4%、9.9%)および嘔吐(5.3%、5.0%)の頻度が高かった。omadacycline群の1例(オピエート過量摂取)およびリネゾリド群の2例(心停止、心不全)が死亡した。 著者は、「早期臨床効果を達成した患者のうちomadacycline群の93.7%およびリネゾリド群の90.2%が、投与終了後評価で臨床効果ありと評価された。これは他試験の結果と一致しており、経口薬治療への移行と早期退院の潜在的な臨床ツールとして、リアルワールド設定で早期臨床効果を検討する好機の到来を示唆するものであった」としている。

434.

市中肺炎に新規抗菌薬、第III相試験の結果/NEJM

 omadacyclineは、1日1回の静脈内または経口投与が可能な新規アミノメチルサイクリン系抗菌薬。ウクライナ・City Clinical Hospital #6, ZaporizhzhiaのRoman Stets氏らOPTIC試験の研究グループは、本薬が市中細菌性肺炎の入院患者(ICUを除く)へのempirical monotherapyにおいて、モキシフロキサシンに対し非劣性であることを示し、NEJM誌2019年2月7日号で報告した。omadacyclineは、肺組織で高濃度に達し、市中細菌性肺炎を引き起こす一般的な病原菌に対し活性を発揮するという。早期臨床効果を評価する無作為化非劣性試験 本研究は、欧州、北米、南米、中東、アフリカ、アジアの86施設が参加し、2015~17年の期間に実施された、第III相二重盲検ダブルダミー無作為化非劣性試験である(Paratek Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、4つの症状(咳嗽、膿性痰産生、呼吸困難、胸膜痛)のうち3つ以上がみられ、2つ以上のバイタルサインの異常、1つ以上の市中細菌性肺炎に関連する臨床徴候または検査所見があり、画像所見で肺炎が確認され、Pneumonia Severity Index(PSI、クラスI~V、クラスが高いほど死亡リスクが高い)のリスクがクラスII(割り付け患者の15%以下に制限)、III、IVの患者であった。 被験者は、omadacycline群(100mgを12時間ごとに2回静脈内投与し、以降は100mgを24時間ごとに投与)またはモキシフロキサシン群(400mgを24時間ごとに静脈内投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。3日間静脈内投与を行った後、それぞれomadacycline経口投与(300mgを24時間ごと)およびモキシフロキサシン経口投与(400mgを24時間ごと)への移行を可とした。総投与期間は7~14日であった。 主要エンドポイントは、早期臨床効果(救済抗菌薬治療を受けず、72~120時間の時点で上記の4つの症状のうち2つ以上が改善し、症状が増悪せずに生存していることと定義)とされた。副次エンドポイントは、最終投与から5~10日後の投与終了後評価時の担当医評価による臨床効果(徴候または症状がそれ以上の抗菌薬治療が不要な程度にまで消失または改善することと定義)であった。非劣性マージンは、10ポイントとされた。主要・副次エンドポイントとも非劣性示す intention-to-treat(ITT)集団として、omadacycline群に386例(年齢中央値:61歳[範囲19~97]、>65歳:39.4%、男性:53.9%)、モキシフロキサシン群には388例(63歳[19~94]、44.3%、56.4%)が割り付けられた。 ベースライン時に、ITT集団の49.9%で市中肺炎の原因菌が同定された。M. pneumoniae(33%)の頻度が最も高く、次いでS. pneumoniae(20%)、L. pneumophila(19%)、C. pneumoniae(15%)、H. influenzae(12%)の順だった。 早期臨床効果の達成率は、omadacycline群が81.1%、モキシフロキサシン群は82.7%と、omadacyclineのモキシフロキサシンに対する非劣性が示された(差:-1.6ポイント、95%信頼区間[CI]:-7.1~3.8)。また、投与終了後評価で担当医が臨床効果ありと評価した患者の割合は、それぞれ87.6%、85.1%であり、omadacyclineの非劣性が確認された(差:2.5ポイント、95%CI:-2.4~7.4)。 投与開始後に発現した有害事象は、omadacycline群が41.1%、モキシフロキサシン群は48.5%と報告された。治療関連有害事象(治療割り付け情報を知らされていない医師が判定)は、それぞれ10.2%、17.8%に認められた。重篤な有害事象はそれぞれ6.0%、6.7%にみられた。 消化器系の有害事象の頻度が最も高く(それぞれ10.2%、18.0%)、発現率の差が最も大きかったのは下痢(1.0%、8.0%)で、このうちモキシフロキサシン群の8例(2.1%)はClostridium difficile感染によるものであった。12例(8例、4例)が試験中に死亡し、すべて65歳以上の患者であった。 著者は、「本試験で得られたomadacyclineの定型および非定型呼吸器病原菌に対する抗菌スペクトルや、他の抗菌薬との交差耐性がないなどの知見は、抗菌薬耐性が増加している時代の市中細菌性肺炎の治療における本薬の潜在的な役割を示唆する」としている。

435.

今こそ風邪診療を見直す時【Dr.倉原の“俺の本棚”】第14回

【第14回】今こそ風邪診療を見直す時最近、TwitterなどのSNSで「風邪診療に抗菌薬を処方する医師はいかがなものか」みたいな論調が高まっていて、風邪診療を見直すブームがまたやってきそうな気がします。こういうのって1年おきくらいに流行がありますね。風邪に抗菌薬をやみくもに処方する医師は、ヤブといわれても仕方がない時代になりました。『かぜ診療マニュアル 第2版』山本 舜悟/編著. 日本医事新報社. 2017私が風邪診療において最も推薦している本が、この『かぜ診療マニュアル』です。群を抜いてコレ。何がなんでもコレ。絶対コレ。私の研修医時代の指導医だった山本 舜悟先生が編著をされていますが、別に山本先生をヨイショしようとかそんな意図はありません。落ち着いた立ち居振る舞いの中に熱い闘志がみなぎっている先生で、右も左もわからぬヒヨコ研修医にとってアレが一般的な医療だと思っていました。しかし、音羽病院でかなりレベルの高い診療を目の当たりにしていたことを後から知り、タイムマシンに乗って過去に戻れないものかと悔やんだものです。風邪ってエビデンスがないようで、ある程度わかっているところもあるモヤっとした疾患で、我流で診療している医師も多いと思います。しかしこの本は、どの診断・治療にエビデンスがあるのか・ないのか、という観点を示してくれており、実臨床に即座に応用できるのです。漢方薬の代表的な使い方も明記されており、私みたいな漢方素人には助かる一冊に仕上がっています。小児の風邪が別項目で記載されているため、子供も大人も診るクリニックドクターにとってはバイブルみたいな本になるんじゃないですかね、コレ。市中肺炎のことをレクチャーしてくれる指導医はいても、風邪のことをレクチャーできる指導医はなかなかいません。この本は、風邪診療のノウハウを惜しみなく出しているレクチャーが200回分くらい詰まった一冊です。なんとなく総合感冒薬やレスピラトリーキノロンを処方している医師は、これを読まなければこの先も間違った医師人生を送りかねません。この本を読んで、己の診療を見直しましょう。2013年に第1版、2017年に第2版が出ているので、2021年に第3版をぜひとも期待したいところです。『かぜ診療マニュアル 第2版』山本 舜悟/編著出版社名日本医事新報社定価本体4,000円+税サイズA5判刊行年2017年■関連記事Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー

436.

国内初の慢性便秘症PEG製剤「モビコール配合内用剤」【下平博士のDIノート】第18回

国内初の慢性便秘症PEG製剤「モビコール配合内用剤」今回は、慢性便秘症治療薬「マクロゴール4000/塩化ナトリウム/炭酸水素ナトリウム/塩化カリウム(商品名:モビコール配合内用剤)」を紹介します。本剤は、慢性便秘症に対する国内初のポリエチレングリコール(PEG)製剤で、併用薬などの使用制限もなく、小児や腎機能が低下した高齢者にも使いやすい薬剤として期待されています。<効能・効果>本剤は、慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)の適応で、2018年9月21日に承認され、2018年11月29日より販売されています。本剤は、PEG(マクロゴール4000)の浸透圧効果により、腸管内の水分量を増加させることで、便の軟化と便容積の増大を促し、用量依存的に便の排出を促進します。<用法・用量>本剤は、水で溶解して経口投与します。通常、成人および12歳以上の小児には、初回用量として1回2包を1日1回経口投与します。症状に応じて1日1~3回まで適宜増減可能ですが、最大投与量は1日に6包(1回量として4包)までです。増量は2日以上空けて行い、増量幅は1日2包までです。2歳以上7歳未満の幼児では、初回用量1回1包、7歳以上12歳未満の小児では、初回用量1回2包を1日1回経口投与します。症状に応じて1日1~3回まで適宜増減可能ですが、いずれも最大投与量は1日4包(1回量として2包)までです。増量は2日以上空けて行い、増量幅は1日1包までです。<副作用>承認時までの国内の臨床試験(成人、小児それぞれを対象とした第III相試験)では、192例中33例(17.2%)に副作用が認められています。主な副作用は、下痢7例(3.6%)、腹痛7例(3.6%)でした。なお、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー(頻度不明)が現れることがあるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.お薬によって腸管内の水分量を増やし、便を軟らかくして排便を促します。2.この薬は、1包当たりコップ3分の1程度(約60mL)の水に溶かして服用します。飲みにくい場合は、ジュースなどに溶かしても構いません。3.溶かした後すぐに服用しない場合や飲み切れなかった場合は、ラップをかけて冷蔵庫に保管し、当日中に飲み切るようにしてください。4.腹痛、おなかの張り、腹部の不快感が現れた場合には、主治医か薬剤師までご連絡ください。5.蕁麻疹、喉のかゆみ、息苦しさ、動悸、顔のむくみなどが現れた場合はすぐに受診してください。<Shimo's eyes>本剤は、日本で初めて慢性便秘症に適応を持つPEG製剤です。塩化ナトリウムなどの電解質を含有しており、浸透圧性下剤に分類されます。海外では欧州を中心に、小児を含めた慢性便秘症治療薬として広く用いられており、ガイドラインでも使用が推奨されています。わが国では、日本小児栄養消化器肝臓学会から、小児慢性便秘症に対する開発要請が出され、2015年5月に開発が開始されました。従来、浸透圧性下剤として酸化マグネシウムが汎用されていますが、高齢者などの腎機能低下患者では高マグネシウム血症に注意が必要であったり、ビスホスホネート製剤やニューキノロン系抗菌薬などとの相互作用が問題となったりすることがあります。さらに、酸化マグネシウムは胃酸分泌抑制時に効果が減弱するため、プロトンポンプ阻害薬などを服用している場合や胃切除後では効果が低下する可能性もあります。本剤の主薬であるPEG(マクロゴール4000)には併用禁忌、併用注意の薬剤はありません。本剤は2歳から使用でき、水に溶解して服用しますが、味などが気になって服用しにくい場合は、ジュース、スポーツドリンク、お茶などの冷たい飲料で溶解することも可能です。効果は用量依存的なので、患者さんの便秘の状態に応じて適切な服用量に調節することができます。とくに小児や、高マグネシウム血症が問題となる高齢患者でも安心して使える薬と考えられるでしょう。

437.

川柳で広める抗菌薬の適正使用

 世界規模で抗菌薬が効かないAMR(薬剤耐性)をもつ細菌が増え、問題となっていることに鑑み、WHO(世界保健機関)は、2015年5月に「薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プラン」を採択。WHO加盟国は2年以内に自国のアクション・プランを策定するよう要請された。わが国でも厚生労働省が中心となり、アクション・プランを策定し、不要な抗菌薬の使用削減に向け、さまざまな活動が行われている。 その一環として2018年11月、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは、AMRに関して理解を深め、考えてもらう機会として、「第2回薬剤耐性(AMR)あるある川柳」の公募を行った。全国から計1,816句の川柳の応募があり、今回厳正な審査を経て、金賞、銀賞、佳作の入選作品が決まり、公表された。 金賞 「変えていく 念のためから 明日のため」(ペンネーム:メチコ) 銀賞 「飲み薬 余り物には 福はなし」(ペンネーム:先細り人) 銀賞 「抗菌薬 正しく使い 次世代へ」(ペンネーム:かんかん) この発表を受け同センターの大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター センター長)は総評として、「“薬剤耐性”という言葉が、聞きなれないもの、認知も不十分ななかで、川柳を通じてAMRを多くの方に考えてもらったことを大変うれしく思う。応募作品は、昨年と比べ、“AMR”や“抗菌薬”を正しく捉えた作品、正しい知識を広めていけるような作品、AMR対策を推し進めていくという強いメッセージが込められた作品が多く見受けられた。正しい知識、医師と患者のコミュニケーション問題、強い意志、これらはいずれもAMR対策にとって大切なことと考えている。今後、“AMRや“抗菌薬の適正使用”につき、さらに多くの方々に知ってもらうため、この川柳を使って啓発を進めていきたい」と展望を語る。なお受賞者には賞状と賞品が贈られる。■参考第2回 薬剤耐性あるある川柳■関連記事診療よろず相談TV第30回 抗微生物薬適正使用の手引き第32回 「抗微生物薬適正使用の手引き」の活用法

438.

米国の外来抗菌薬処方、7例に1例は不適正/BMJ

 2016年の米国の外来診療における0~64歳(民間保険加入者)への抗菌薬処方のうち、23.2%が不適正で、28.5%は最新の診断コードに該当しないことが、米国・ミシガン大学のKao-Ping Chua氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年1月16日号に掲載された。国際疾病分類第9版改編版(ICD-9-CM)の診断コードおよび2015年以前のデータを使用した米国の研究では、外来患者への不適正な抗菌薬処方が広範に及ぶことが示されているが、2015年10月1日に、ICD-9-CMに替わって導入されたICD-10-CMに含まれる包括的な診断コード分類に基づく適正使用の検討は行われていなかった。約1,920万例のデータを解析 研究グループは、ICD-10-CMの包括的な診断コード分類を用いて、民間保険に加入する子供(0~17歳)および非高齢成人(18~64歳)の外来患者に処方された抗菌薬の適切性を評価する目的で横断的研究を行った(米国医療研究・品質調査機構[AHRQ]の助成による)。 解析には、Truven MarketScan Commercial Claims and Encountersのデータベースに登録された2016年の患者データ(0~64歳)を用いた。ICD-10-CMの9万1,738項目の個々の診断コードにつき、抗菌薬の使用が正当化されるかを判定する分類体系を新たに開発した。 主要アウトカムは、4つの相互排他的なカテゴリー(適正、適正の可能性あり、不適正、該当する診断コードなし)別の処方箋の割合とした。 1,920万3,264例のコホート参加者のうち、1,457万1,944例(75.9%)が成人、463万1,320例が子供(24.1%)で、993万5,791例(51.7%)が女性であった。約7例に1例で1つ以上の不適正な処方 1,545万5,834件(1,000例当たり805件の処方)の外来患者への抗菌薬処方のうち、最も使用頻度が高い抗菌薬はアジスロマイシン(293万1,242件、19.0%)であり、次いでアモキシシリン(281万8,939件、18.2%)、アモキシシリン/クラブラン酸配合剤(178万4,921件、11.6%)であった。また、91万7,140件(5.9%)がリフィル処方箋によるものだった。 2016年に、抗菌薬は762万5,438例(コホートの39.7%)に処方されていた。このうち399万5,690例(52.4%)が1回、181万5,305例(23.8%)が2回、85万2,979例(11.2%)が3回、96万1,464例(12.6%)は4回以上の処方を受けていた。平均処方数は2.0回だった。 1,545万5,834件の処方のうち、197万3,873件(12.8%)が適正、548万7,003件(35.5%)は適正の可能性あり、359万2,183件(23.2%)は不適正、440万2,775件(28.5%)は該当する診断コードはないと判定された。 不適正処方箋(359万2,183件)のうち、254万1,125件(70.7%)が診察室で作成され、22万2,804件(6.2%)は緊急外来診療施設(urgent care center)で、16万8,396件(4.7%)は救急診療部(emergency department)で記載されたものであった。 2016年に、1,920万3,264例中269万7,918例(14.1%)で1つ以上の不適正処方が行われ、そのうち子供(463万1,320例)が49万475例(10.6%)、成人(1,457万1,944例)は220万7,173例(15.2%)であった。 著者は、「2016年は、約7例に1例が、1つ以上の不適正な抗菌薬処方を受けたことになる」とまとめ、「ICD-10-CMの診断コード分類体系は、将来的に、米国の外来診療における抗菌薬の適正使用を包括的に評価する取り組みを促進する可能性があり、ICD-10の診断コードを使用する他国にも適用できると考えられる」としている。

439.

素材か道具か人間か-ベスト・プラクティスは何処に?(解説:今中和人氏)-1001

 本論文は16の退役軍人病院における冠動脈バイパス1,150例をランダム化し、大伏在静脈(SVG)を576例は内視鏡的に、574例は切開して採取し、中央値2.78年までの臨床成績を検討している(造影検査は検討対象外)。特徴的な制約として、内視鏡的採取100例以上(切開へのコンバート5%以下)、臨床経験2年以上の熟練者のみがSVG採取を行った。結論は、死亡、非致死性心筋梗塞、再血行再建などの主要転帰はまったく同等で14~15%、SVG採取時間も1時間前後で有意差はなかったが、下肢合併症(感染、疼痛、滲出、抗菌薬投与)は、いずれも有意に内視鏡群で低率であった。 過去には内視鏡的採取は成績が著しく劣るとする論文も多く、それを支持するメタ解析もあって、この論文はそれらに異を唱える形である。そんな本論文の著者が強調しているのはSVG採取を熟練者に限定したことで、結論が食い違った理由は、過去の論文には不慣れな採取者による質の良くないSVGが含まれているためではないかと推論している。 確かに内視鏡的SVG採取には習熟が必要で、それは一理あるかもしれない。ただ、切開してのSVG採取と言えば、心臓血管外科を選んだ者が最も初期に担当させてもらう手技である。多くの若き医師は、当初はグラフトの質の予後への影響を強く意識してきわめて愛護的に、悪く言えばおっかなびっくり、時間をかけて採取するものだが、多少慣れてくると、あまりゆっくりでは先輩や術者にもいろいろ言われるし、そもそも誉れ高き人が多く、「こんなの私は楽勝だ!」とばかり、SVGの扱いが大胆(雑)になる傾向は否めない。補修だらけとか、随分引っ張って「それじゃ静脈さんが可哀想…」というような状況もなくはない。概して、押したり引いたりしながら周囲組織をかなり鈍的に削ぎ落とし、採取後はグイグイ圧をかけて拡張するのでは、いかに丁寧に行ったところで組織を虐げており、不慣れなら不慣れなりに、熟練者なら熟練者なりに、どちらの手技もSVGに相当のダメージを与えているに相違ない。 一方、no touch SVG、つまりSVGを周囲組織ごとpedicleで採取する方法は従来法より成績が良く、そういうメタ解析や内胸動脈に比肩する報告もある。この方法の愛護性という主張は、内皮細胞機能や血管平滑筋機能などの優位性を示した論文もあって説得性が高い。ただno touch法は創部合併症が明らかに多く、確認しきれなかった細い分枝からの出血で再開胸、なんてこともあるようである。 SVGの開存性なんてこの程度、と達観して脚を派手に切らない方針が良いか、長期開存性を追求すべきか、ベスト・プラクティスは何であるのか非常に興味深い。なお、内視鏡が90%超とも言われるアメリカに比べ、保険非償還が主な原因で日本では大幅に普及が遅れているが、これからのご時勢、経済も若手のモチベーションも併せ考える必要があってなかなか悩ましい。 もう1つ、採取の愛護性という点で言うと、SVGは若手が上述のように採取することが多いが、内胸動脈をはじめ多くの動脈グラフトは一定以上の熟練者か、エキスパートである術者が注意深く採取し、高圧で拡張することもない。こういう違いが開存性に有利に作用している可能性を考慮すべきかもしれない。大差がつく内胸動脈はともかく、SVGと「いいとこ勝負」の他の動脈グラフトたちは、愛護的採取というゲタをはかせてもらっているだけで、実は素材という点ではSVGに劣るのかもしれない。

440.

全医師必携【Dr.倉原の“俺の本棚”】第13回

【第13回】全医師必携少し昔話をしましょう。私は洛和会音羽病院というところで初期研修を受けたのですが、総合診療科や救急が非常に活発で、抗菌薬の勉強についても、良い意味でとても厳格でした。私たちは毎日のように救命センターの端でGram染色をして、お気に入りのスライドは検査科で固定してもらって自分のデスクにコレクションしていました※。スライドを入れるケースまで買ったりして、昆虫標本を集める子供のような目をしていました。私の医師人生で、一番感染症にアツかったのがあの頃かもしれません。青春。※…あれって今やったら怒られるんじゃないかな、知らんけど。『抗菌薬の考え方、使い方 ver.4』岩田 健太郎/著. 中外医学社. 2018私がレジデントの頃、感染症といえば岩田 健太郎先生でした(今でも圧倒的にそうなのですが)。岩田先生の『Dr.岩田の感染症アップグレード-抗菌薬シリーズ-』(ケアネットDVD)はレジデント同士で奪い合いながら全部見ました。岩田先生の素晴らしいところは、医学書を教科書ではなく読み物にしたところなのです。それまでの医学書は堅苦しくて読みづらいものばかりでした。しかし岩田先生の本は、レジデントにとって親しみやすい口語体で書かれており、研修医時代は『抗菌薬の考え方、使い方』の第1版と第2版を非常に重宝しました。隅々まで読んで、ボロボロにしました。今や、『抗菌薬の考え方、使い方』も第4版(ver.4)になりました。ひえー、私も歳を取りました。Gram染色なんて、もうほとんどしていませんし(技師さんがテキパキやってくれるので…)、感染症診療も呼吸器感染症に偏っており、他臓器感染症の診療とはやや疎遠になりつつあります。それでも、感染症診療のベーシックな部分は忘れたくないと思い、『抗菌薬の考え方、使い方』は毎版読ませていただいているのです。読むたびに新しい発見があります。私のような「岩田感染症」で育った中堅医師は多いでしょう。そして、このシリーズのおかげで、現在の日本の感染症診療があると言っても過言ではないのです。逆にこの本がなかったら、日本の感染症診療はどうなっていたことか!手に取るとわかりますが、第4版(ver.4)はものすごく分厚いです。だって500ページ以上あるんですから。すべての医師が読むべき一冊ですよ。『抗菌薬の考え方、使い方 ver.4』岩田 健太郎/著出版社名中外医学社定価本体4,000円+税サイズA5判刊行年2018年

検索結果 合計:860件 表示位置:421 - 440