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川柳で広める抗菌薬の適正使用

 世界規模で抗菌薬が効かないAMR(薬剤耐性)をもつ細菌が増え、問題となっていることに鑑み、WHO(世界保健機関)は、2015年5月に「薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プラン」を採択。WHO加盟国は2年以内に自国のアクション・プランを策定するよう要請された。わが国でも厚生労働省が中心となり、アクション・プランを策定し、不要な抗菌薬の使用削減に向け、さまざまな活動が行われている。 その一環として2018年11月、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは、AMRに関して理解を深め、考えてもらう機会として、「第2回薬剤耐性(AMR)あるある川柳」の公募を行った。全国から計1,816句の川柳の応募があり、今回厳正な審査を経て、金賞、銀賞、佳作の入選作品が決まり、公表された。 金賞 「変えていく 念のためから 明日のため」(ペンネーム:メチコ) 銀賞 「飲み薬 余り物には 福はなし」(ペンネーム:先細り人) 銀賞 「抗菌薬 正しく使い 次世代へ」(ペンネーム:かんかん) この発表を受け同センターの大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター センター長)は総評として、「“薬剤耐性”という言葉が、聞きなれないもの、認知も不十分ななかで、川柳を通じてAMRを多くの方に考えてもらったことを大変うれしく思う。応募作品は、昨年と比べ、“AMR”や“抗菌薬”を正しく捉えた作品、正しい知識を広めていけるような作品、AMR対策を推し進めていくという強いメッセージが込められた作品が多く見受けられた。正しい知識、医師と患者のコミュニケーション問題、強い意志、これらはいずれもAMR対策にとって大切なことと考えている。今後、“AMRや“抗菌薬の適正使用”につき、さらに多くの方々に知ってもらうため、この川柳を使って啓発を進めていきたい」と展望を語る。なお受賞者には賞状と賞品が贈られる。■参考第2回 薬剤耐性あるある川柳■関連記事診療よろず相談TV第30回 抗微生物薬適正使用の手引き第32回 「抗微生物薬適正使用の手引き」の活用法

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米国の外来抗菌薬処方、7例に1例は不適正/BMJ

 2016年の米国の外来診療における0~64歳(民間保険加入者)への抗菌薬処方のうち、23.2%が不適正で、28.5%は最新の診断コードに該当しないことが、米国・ミシガン大学のKao-Ping Chua氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年1月16日号に掲載された。国際疾病分類第9版改編版(ICD-9-CM)の診断コードおよび2015年以前のデータを使用した米国の研究では、外来患者への不適正な抗菌薬処方が広範に及ぶことが示されているが、2015年10月1日に、ICD-9-CMに替わって導入されたICD-10-CMに含まれる包括的な診断コード分類に基づく適正使用の検討は行われていなかった。約1,920万例のデータを解析 研究グループは、ICD-10-CMの包括的な診断コード分類を用いて、民間保険に加入する子供(0~17歳)および非高齢成人(18~64歳)の外来患者に処方された抗菌薬の適切性を評価する目的で横断的研究を行った(米国医療研究・品質調査機構[AHRQ]の助成による)。 解析には、Truven MarketScan Commercial Claims and Encountersのデータベースに登録された2016年の患者データ(0~64歳)を用いた。ICD-10-CMの9万1,738項目の個々の診断コードにつき、抗菌薬の使用が正当化されるかを判定する分類体系を新たに開発した。 主要アウトカムは、4つの相互排他的なカテゴリー(適正、適正の可能性あり、不適正、該当する診断コードなし)別の処方箋の割合とした。 1,920万3,264例のコホート参加者のうち、1,457万1,944例(75.9%)が成人、463万1,320例が子供(24.1%)で、993万5,791例(51.7%)が女性であった。約7例に1例で1つ以上の不適正な処方 1,545万5,834件(1,000例当たり805件の処方)の外来患者への抗菌薬処方のうち、最も使用頻度が高い抗菌薬はアジスロマイシン(293万1,242件、19.0%)であり、次いでアモキシシリン(281万8,939件、18.2%)、アモキシシリン/クラブラン酸配合剤(178万4,921件、11.6%)であった。また、91万7,140件(5.9%)がリフィル処方箋によるものだった。 2016年に、抗菌薬は762万5,438例(コホートの39.7%)に処方されていた。このうち399万5,690例(52.4%)が1回、181万5,305例(23.8%)が2回、85万2,979例(11.2%)が3回、96万1,464例(12.6%)は4回以上の処方を受けていた。平均処方数は2.0回だった。 1,545万5,834件の処方のうち、197万3,873件(12.8%)が適正、548万7,003件(35.5%)は適正の可能性あり、359万2,183件(23.2%)は不適正、440万2,775件(28.5%)は該当する診断コードはないと判定された。 不適正処方箋(359万2,183件)のうち、254万1,125件(70.7%)が診察室で作成され、22万2,804件(6.2%)は緊急外来診療施設(urgent care center)で、16万8,396件(4.7%)は救急診療部(emergency department)で記載されたものであった。 2016年に、1,920万3,264例中269万7,918例(14.1%)で1つ以上の不適正処方が行われ、そのうち子供(463万1,320例)が49万475例(10.6%)、成人(1,457万1,944例)は220万7,173例(15.2%)であった。 著者は、「2016年は、約7例に1例が、1つ以上の不適正な抗菌薬処方を受けたことになる」とまとめ、「ICD-10-CMの診断コード分類体系は、将来的に、米国の外来診療における抗菌薬の適正使用を包括的に評価する取り組みを促進する可能性があり、ICD-10の診断コードを使用する他国にも適用できると考えられる」としている。

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素材か道具か人間か-ベスト・プラクティスは何処に?(解説:今中和人氏)-1001

 本論文は16の退役軍人病院における冠動脈バイパス1,150例をランダム化し、大伏在静脈(SVG)を576例は内視鏡的に、574例は切開して採取し、中央値2.78年までの臨床成績を検討している(造影検査は検討対象外)。特徴的な制約として、内視鏡的採取100例以上(切開へのコンバート5%以下)、臨床経験2年以上の熟練者のみがSVG採取を行った。結論は、死亡、非致死性心筋梗塞、再血行再建などの主要転帰はまったく同等で14~15%、SVG採取時間も1時間前後で有意差はなかったが、下肢合併症(感染、疼痛、滲出、抗菌薬投与)は、いずれも有意に内視鏡群で低率であった。 過去には内視鏡的採取は成績が著しく劣るとする論文も多く、それを支持するメタ解析もあって、この論文はそれらに異を唱える形である。そんな本論文の著者が強調しているのはSVG採取を熟練者に限定したことで、結論が食い違った理由は、過去の論文には不慣れな採取者による質の良くないSVGが含まれているためではないかと推論している。 確かに内視鏡的SVG採取には習熟が必要で、それは一理あるかもしれない。ただ、切開してのSVG採取と言えば、心臓血管外科を選んだ者が最も初期に担当させてもらう手技である。多くの若き医師は、当初はグラフトの質の予後への影響を強く意識してきわめて愛護的に、悪く言えばおっかなびっくり、時間をかけて採取するものだが、多少慣れてくると、あまりゆっくりでは先輩や術者にもいろいろ言われるし、そもそも誉れ高き人が多く、「こんなの私は楽勝だ!」とばかり、SVGの扱いが大胆(雑)になる傾向は否めない。補修だらけとか、随分引っ張って「それじゃ静脈さんが可哀想…」というような状況もなくはない。概して、押したり引いたりしながら周囲組織をかなり鈍的に削ぎ落とし、採取後はグイグイ圧をかけて拡張するのでは、いかに丁寧に行ったところで組織を虐げており、不慣れなら不慣れなりに、熟練者なら熟練者なりに、どちらの手技もSVGに相当のダメージを与えているに相違ない。 一方、no touch SVG、つまりSVGを周囲組織ごとpedicleで採取する方法は従来法より成績が良く、そういうメタ解析や内胸動脈に比肩する報告もある。この方法の愛護性という主張は、内皮細胞機能や血管平滑筋機能などの優位性を示した論文もあって説得性が高い。ただno touch法は創部合併症が明らかに多く、確認しきれなかった細い分枝からの出血で再開胸、なんてこともあるようである。 SVGの開存性なんてこの程度、と達観して脚を派手に切らない方針が良いか、長期開存性を追求すべきか、ベスト・プラクティスは何であるのか非常に興味深い。なお、内視鏡が90%超とも言われるアメリカに比べ、保険非償還が主な原因で日本では大幅に普及が遅れているが、これからのご時勢、経済も若手のモチベーションも併せ考える必要があってなかなか悩ましい。 もう1つ、採取の愛護性という点で言うと、SVGは若手が上述のように採取することが多いが、内胸動脈をはじめ多くの動脈グラフトは一定以上の熟練者か、エキスパートである術者が注意深く採取し、高圧で拡張することもない。こういう違いが開存性に有利に作用している可能性を考慮すべきかもしれない。大差がつく内胸動脈はともかく、SVGと「いいとこ勝負」の他の動脈グラフトたちは、愛護的採取というゲタをはかせてもらっているだけで、実は素材という点ではSVGに劣るのかもしれない。

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全医師必携【Dr.倉原の“俺の本棚”】第13回

【第13回】全医師必携少し昔話をしましょう。私は洛和会音羽病院というところで初期研修を受けたのですが、総合診療科や救急が非常に活発で、抗菌薬の勉強についても、良い意味でとても厳格でした。私たちは毎日のように救命センターの端でGram染色をして、お気に入りのスライドは検査科で固定してもらって自分のデスクにコレクションしていました※。スライドを入れるケースまで買ったりして、昆虫標本を集める子供のような目をしていました。私の医師人生で、一番感染症にアツかったのがあの頃かもしれません。青春。※…あれって今やったら怒られるんじゃないかな、知らんけど。『抗菌薬の考え方、使い方 ver.4』岩田 健太郎/著. 中外医学社. 2018私がレジデントの頃、感染症といえば岩田 健太郎先生でした(今でも圧倒的にそうなのですが)。岩田先生の『Dr.岩田の感染症アップグレード-抗菌薬シリーズ-』(ケアネットDVD)はレジデント同士で奪い合いながら全部見ました。岩田先生の素晴らしいところは、医学書を教科書ではなく読み物にしたところなのです。それまでの医学書は堅苦しくて読みづらいものばかりでした。しかし岩田先生の本は、レジデントにとって親しみやすい口語体で書かれており、研修医時代は『抗菌薬の考え方、使い方』の第1版と第2版を非常に重宝しました。隅々まで読んで、ボロボロにしました。今や、『抗菌薬の考え方、使い方』も第4版(ver.4)になりました。ひえー、私も歳を取りました。Gram染色なんて、もうほとんどしていませんし(技師さんがテキパキやってくれるので…)、感染症診療も呼吸器感染症に偏っており、他臓器感染症の診療とはやや疎遠になりつつあります。それでも、感染症診療のベーシックな部分は忘れたくないと思い、『抗菌薬の考え方、使い方』は毎版読ませていただいているのです。読むたびに新しい発見があります。私のような「岩田感染症」で育った中堅医師は多いでしょう。そして、このシリーズのおかげで、現在の日本の感染症診療があると言っても過言ではないのです。逆にこの本がなかったら、日本の感染症診療はどうなっていたことか!手に取るとわかりますが、第4版(ver.4)はものすごく分厚いです。だって500ページ以上あるんですから。すべての医師が読むべき一冊ですよ。『抗菌薬の考え方、使い方 ver.4』岩田 健太郎/著出版社名中外医学社定価本体4,000円+税サイズA5判刊行年2018年

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集団感染発生の多剤耐性菌、温床は院内配管/NEJM

 スフィンゴモナス・コリエンシス(Sphingomonas koreensis)は、米国国立衛生研究所(NIH)臨床センターのインフラに時間と空間を超えて持続的に存在し、医療関連感染症を引き起こすヒト日和見病原体であることを、米国・国立ヒトゲノム研究所のRyan C. Johnson氏らがゲノム疫学調査で突き止めた。病院内の配管システムは、頻度は低いものの入院患者が感染する可能性がある日和見感染病原体の温床として知られている。今回の調査は、2016年に発生したスフィンゴモナス種細菌の集団感染を受けて行われた。NEJM誌2018年12月27日号掲載の報告。臨床分離株の全ゲノムDNAシークエンス解析を実施 研究グループは、2006~16年にNIH臨床センターにおいて同定された多剤耐性S. koreensisの臨床分離株について、全ゲノムDNAシークエンス解析を行った。 病院のインフラ内の定着場所を特定する目的で、病室の流し台から得たS. koreensisを培養して全ゲノムシークエンス解析およびショットガンメタゲノミクスシークエンス解析を実施し、他の施設で得た臨床分離株ならびに環境分離株と比較した。集団感染で同定された分離株6株中4株は、99.92%の遺伝子相同性 2016年の集団感染で同定された患者6例から得たS. koreensis分離株のうち、2株は関連がなかったが、4株は99.92%を超える遺伝子相同性が認められ、抗菌薬に対する多剤耐性が示された。また、保存されていたNIH臨床センターにおけるスフィンゴモナス臨床分離株を後ろ向きに解析した結果、過去10年間にクローン株が断続的に出現していたことが明らかとなった。さらに、S. koreensis分離株で同定された固有の一塩基変異から、院内の配管における定着場所が特定された。 他施設のS. koreensis臨床分離株は、NIH分離株とは遺伝的に異なっていたことから、微生物培養ならびに詳細なゲノム解析の結果に基づき院内の改善戦略が進められた。

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フルオロキノロン系薬に大動脈瘤・解離に関する使用上の注意改訂指示

 フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書について、2019年1月10日、厚生労働省より使用上の注意の改訂指示が発出された。フルオロキノロン系抗菌薬と大動脈瘤および大動脈解離との関連性を示唆する疫学研究や非臨床試験の文献が報告されたことによるもので、改訂の概要は以下のとおり。1.「慎重投与」の項に、「大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者、大動脈瘤又は大動脈解離の既往、家族歴若しくはリスク因子(マルファン症候群等)を有する患者」を追記する。2.「重要な基本的注意」の項に、観察を十分に行うとともに、腹部、胸部又は背部に痛み等の症状があらわれた場合には直ちに医師の診察を受けるよう患者に指導する旨、上記 1.にて追記する患者では、必要に応じて画像検査の実施も考慮する旨を追記する。3.「重大な副作用」の項に「大動脈瘤、大動脈解離」を追記する。■該当薬剤の一般名(商品名:承認取得会社)・モキシフロキサシン塩酸塩(アベロックス:バイエル薬品)・トスフロキサシントシル酸塩水和物(オゼックス:富士フイルム富山化学、トスキサシン:マイラン EPD、ほか)・レボフロキサシン水和物(クラビット:第一三共、ほか)・シタフロキサシン水和物(グレースビット:第一三共、ほか)・シプロフロキサシン塩酸塩水和物(シプロキサン:バイエル薬品、ほか)・シプロフロキサシン(シプロキサン:バイエル薬品、ほか)・メシル酸ガレノキサシン水和物(ジェニナック:富士フイルム富山化学)・プルリフロキサシン(スオード:MeijiSeika ファルマ)・オフロキサシン(タリビッド:第一三共、ほか)・ノルフロキサシン(バクシダール:杏林製薬、ほか)・塩酸ロメフロキサシン(バレオン:マイラン EPD)・パズフロキサシンメシル酸塩(パシル:富士フイルム富山化学、パズクロス:田辺三菱製薬)

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急性膵炎手術で患者に優しいステント

 11月28日、 ボストン・サイエンテフィックジャパン株式会社は、同社の“Hot AXIOS”システムの新製品発表に合わせ、都内でセミナーを開催した。 セミナーでは、同器具発売による手術へのインパクト、今後の展望についてレクチャーが行われた。医療現場のニーズに応えた国内初の専用デバイス はじめに同社の前田 卓治氏(エンドスコピー事業部マーケティング部)が、Hot AXIOSシステムの概要を述べた。 このシステムは、急性膵炎に伴う局所合併症治療を目的とした専用デバイスの総称で、適用疾患は「膵仮性嚢胞」と「被包化壊死」となる。具体的には、内視鏡的壊死組織除去術(ネクロセクトミー)の実施を目的とした瘻孔形成補綴材であり、超音波内視鏡下で経消化管(胃または十二指腸)的に消化管壁と嚢胞壁を引き寄せて瘻孔を形成するデバイス。 治療では、この瘻孔をアクセスポートとして、ドレナージ、内視鏡挿入による壊死組織の除去、嚢胞内洗浄・観察を行うことができる。そして、Hot AXIOSシステムでは、従来別々のデバイスなどにより行われてきた瘻孔形成時の穿刺やガイドワイヤー留置や、ネクロセクトミー実施時のステント抜去などが短時間できるようになると説明した。患者の負担を軽減する待望のシステム つぎに糸井 隆夫氏(東京医科大学消化器内科学分野 主任教授)を講師に迎え、「急性膵炎後局所合併症に対する最新の治療と患者さんへの貢献」をテーマに、急性膵炎の診療の概要と本システムの意義についてレクチャーが行われた。 急性膵炎とは、膵液に含まれる消化酵素により膵臓自体が消化され、膵臓や関連する器官の急激な炎症が起こる疾患とされる。「お腹のやけど」とも言われ、重症例では、死亡率は10~30%にものぼる。男性ではアルコール性、女性では胆石性によるものが多く、患者数は増加傾向にあり、2011年の全国調査では年間6万3千人超の受療患者が推定されている。 本症で問題となるのは、急性膵炎後に合併症としてできる嚢胞であり、「仮性嚢胞」と「被包化壊死」の2種類がある。現在、「急性膵炎診療ガイドライン」では、この膵局所合併症に対する治療として、抗菌薬を使用する保存的治療とインターベンション治療(ドレナージおよびネクロセクトミー)が記載されている。 超音波内視鏡下のドレナージが再発率や安全性の面から優れている1)が、従来の器具では、ステントが2mm程度の大きさしかなく、数本を挿入する必要があったり、手技に時間を要したりと課題があり、以前から大口径ステントが望まれていたという。 そこで開発されたのが、ダンベル形の金属ステントのAXIOSステントである。「このステントを使用した本システムを使えば、約10分でステント留置ができ、難しい瘻孔拡張がすぐにでき、メリットも大きい」と同氏は期待を込めた。また、「システム化されたことで、穿刺からステント留置までワンステップかつ短時間ででき、患者にも優しい治療ができる。ステントを取り付け、退院してもらい経過観察をしつつ治療をすることもできるし、外すのも簡単にできる」とその使用感を同氏は語った。 本システムは、日本内視鏡学会より医療ニーズの高い医療機器として要望書がだされ、2017年10月に薬事承認された。使用に際しては、講習プログラムを修了した医師による使用などの条件が付されている。「今後、研修システムをわが国でいかに作るかが普及の鍵になる」と同氏は、課題を提起する。 最後に同氏は、「被包化壊死は、ドレナージでの寛解は難しく、壊死部位の除去にネクロセクトミーが必要となる。こうしたデバイスシステムの普及により開腹手術のリスクが減り、内視鏡下で簡便かつ確実に施術することは、治療成績の向上だけでなく、患者に優しい医療の実現ができる」と期待を述べ、レクチャーを終えた。●参考文献1)Vosoghi M,et al. MedGenMed. 2002;4:2.■参考ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社 ニュースリリース

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不整脈デバイスの感染防止に抗菌薬追加投与は有効か(PADIT試験)【Dr.河田pick up】

 植込み型の医療機器の感染は重大な結果へとつながりうる。心調律デバイスの場合、術前のセファゾリンが標準的な予防的抗菌薬であるが、デバイス感染症によくみられるメチシリン耐性グラム陽性球菌には有効でない。また、術中よく行われる抗菌薬によるポケット内の洗浄についても明確なエビデンスはない。この研究は、標準的なセファゾリンに加えて、周術期に抗菌薬を追加投与することの有効性を評価することを目的として行われた。なお、本研究のユニークな点は患者ではなく、施設ごとに無作為化を行っている点である。 Andrew D. Krahn氏らによるカナダとオランダで行われた多施設研究で、Journal of American College of Cardiology誌2018年12月号掲載の報告。クラスター無作為化クロスオーバー試験で抗菌薬追加投与の有効性を検討 筆者らは各施設を6ヵ月ごと、4つの群に割り当てるクラスター無作為化クロスオーバー試験を行った。期間中、各施設ではすべての植込み型心臓デバイス手技に対して標準的な抗菌薬もしくは周術期の抗菌薬の追加投与が行われた。標準的治療(セファゾリン術前投与) vs.追加抗菌薬の周術期投与 標準的治療群では術前にセファゾリンが投与され、 追加投与群では術前のセファゾリンに加えバンコマイシン、術中にバシトラシンによるポケット内洗浄、そして術後2日間の経口セファレキシンが投与された。主要評価項目は、ハイリスク患者群の1年間のデバイス感染に伴う入院で、階層ロジスティック回帰モデルにより評価され、無作為化クラスターとクラスター期間の影響が調整された。追加投与により感染症減少傾向がみられたが、有意な差ではなかった デバイス手技は28施設で1万9,603例の患者に行われ、そのうち1万2,842例はハイリスク患者であった。感染は標準的治療群で99例(1.03%)、追加投与群の78例(0.78%)で発生した (オッズ比: 0.77、95%信頼区間[CI]: 0.56~1.05、p=0.10) 。ハイリスク患者において、入院を伴う感染は標準的治療群で77例(1.23%)、追加投与群では66例(1.01%)で発生した(オッズ比: 0.82、95% CI: 0.59~1.15、p=0.26) 。サブグループ解析でも追加投与により有意に恩恵を受ける患者や施設の特徴は明らかにならなかった。想定よりも感染症発生率が低く、有意差に結びつかず 追加投与群で感染の減少傾向がみられたが、全体の感染症発生率が想定していたよりも低く、統計的な有意差には結びつかなかった。 クラスタークロスオーバーデザインを用いることで、効率的に抗菌薬の追加投与の有効性を調べることが可能であった。 術前に投与するセファゾリンに追加して抗菌薬を投与することによる心調律デバイス感染症の有意な減少は認められなかったが、感染の減少傾向は認められた。しかしながら、抗菌薬の追加投与による心調律デバイス感染症が20%減少したとしても、全体の発生率が低いため、追加投与により防ぐことのできる感染症は500例に1例である。どのような症例が追加投与の恩恵を受けるかを、引き続き調べていく必要があると考えられる。(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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第20回 小児科クリニックからの セフカペンピボキシル の処方(後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1患児の保護者に確認することは?Q2疑義照会しますか?Q3 抗菌薬について説明することは?今は必要ないかもしれないが、必要になる可能性もあると説明 中堅薬剤師さん(薬局)提示された情報から、ウイルス性感冒(ヘルパンギーナ、咽頭結膜炎など)の可能性は高いと思われますが、溶連菌感染症の可能性もあり、フロモックス®の必要性は否定できません。医師との関係性を壊したくない思いを尊重し、フロモックス®を服用するかどうかの選択も残したいと思います。「今は必要ないかもしれないが、今後、必要になる可能性もある」と説明し、調剤は受けてもらい、フロモックス®以外の対症療法薬で経過観察をするよう助言します。対症療法薬で軽快しないようであれば、溶連菌感染症の可能性があるので、耳鼻咽喉科に相談することを勧めます(小児科には行きにくいでしょうから・・・)。そして、フロモックス®は使わずに残してあることを伝えた上で、今後の対処を相談してもらいます。鑑別が難しいこと、重症化のリスク 奥村雪男さん(薬局)処方医と患児家族の関係を損なわぬよう、「ウイルスが原因となる初期の風邪だと思うが、患児は2歳未満であり、今後咳がひどくなって細気管支炎になると重症化するリスクがある。その場合、ウイルス性か細菌性か明確に鑑別するのが難しいので、効率は良くないが、慣行として抗菌薬をあらかじめ処方することがある」と説明します。低血糖の危険性 中西剛明さん(薬局)未熟児で生まれた子は、筋肉量が少ないことが多く、健常児より低血糖を起こしやすいと言われています。フロモックス®はピボキシル基を有する抗菌薬なので、低血糖の危険があります。出生時体重を参考に、未熟児であれば低血糖の危険について説明します。散剤の与薬の仕方 わらび餅さん(病院)小児病棟で、赤ちゃんへうまく薬を飲ませられない母親を何人も見てきました。理論通りではうまくいかない、赤ちゃんの機嫌に合わせた工夫も必要です。赤ちゃんが9カ月なら、母親の与薬経験が未熟な可能性があるので、薬を飲ませられるか聞いて、それに応じて散剤の与薬の仕方を説明します。フロモックス®は、マクロライドなどに比べるとひどい味ではないですが、飲み残しがないように食前に飲ませていいこと、たくさんの水で溶かないことなどです。鼻水や痰を除去すること JITHURYOUさん(病院)本人が苦しいばかりでなく、細菌の二次感染の引き金になる可能性があるので、鼻水や痰などはできるだけ取るように説明します。Q4 その他、気付いたことは?医療関係者でも知識に乏しいことがある ふな3さん(薬局)発熱(のおそれ)+咽頭炎ということで、溶連菌の疑いがあっての抗菌薬投与なのか、額面通り「二次感染予防」なのか微妙です。それ故、飲ませないという保護者の希望を後押しするかどうか悩ましいところです。「医療関係者」という言葉の範囲には、医師、看護師、薬剤師などの専門職から、受付事務まで非常に幅広く含む場合があります。たとえ医師でも、専門分野以外については知識が浅い場合もあります。こちらが「これくらいは知っているだろう。説明しなくてもいいな」と考えていても、実は相手は、説明を聞きたい、相談したい、と思っている可能性もあります。会話をしながらその辺りの「雰囲気」をくみ取ることは、さじ加減が難しいですが大切だと思います。また「医療関係者」である場合に、「薬歴管理料を算定するか?」という問題も同時に発生します。その医師と完全にツーカーの間柄で、飲み方の指示などを受けているようなら薬歴料は算定しませんし、前述のような「相談したい」というような雰囲気であれば、算定すると思います(今回のケースは患者負担はゼロなので、お会計には影響ないのですが・・・)。フォローアップがあるとすれば、さり気なく保護者に「どちらの病院にお勤めですか?」とか、医師との面会時に「○○さんとは、親しいんですね!」などと、お互いの関係性に"探り"を入れておくと、今後の展開が違うかも・・・と思います。薬剤師も同じ「医療関係者」です。「医師との信頼関係」と同時に、「薬剤師との信頼関係」が築けたらいいな、と思います。Von Harnack表を活用 奥村雪男さん(薬局)フロモックス®の1日量は9mg/kg、ムコダイン®の1日量は30mg/kgで、いずれも体重に比してやや少ないように思います。その他の薬剤は、Von Harnack表※より、6カ月で成人量の1/5、1歳で成人量の1/4なので、概ね妥当な用量だと思います。※成人量を1としたとき、それぞれの年齢での用量の目安。になっている。未熟児新生児6カ月1歳3歳7歳半12歳1/101/81/51/41/31/22/3VON HARNACK GA. Monatsschr Kinderheilkd 1956; 104(2): 55-56.ペリアクチンの副作用 柏木紀久さん(薬局)9カ月というとハイハイやつかまり立ちをする頃なので、ペリアクチンの傾眠によるケガなども心配です。痙攣の閾値も下がるので、鼻水や発赤疹がなければペリアクチンが疑義の対象になると思います。薬剤師も一般への啓発を 荒川隆之さん(病院)私は学校薬剤師として、何度か保護者に「風邪に抗菌薬は不要」という話をしております。北欧やオランダなど薬剤耐性菌の少ない国では、耐性菌に関する国民の知識がしっかりしていると聞きます。日本においても薬剤耐性(AMR)対策アクションプランなど国がようやく動き出したところですから、我々薬剤師もそれぞれにできることを少しずつやっていくことが大切なのでは、と考えます。1回で飲ませきれない量では 中西剛明さん(薬局)ペリアクチンが処方されていることが気になります。抗ヒスタミン薬を使うと痙攣の閾値が下がるので、発熱している場合は熱性けいれんも含め、痙攣の危険が高まります。数ある抗ヒスタミン薬の中でペリアクチンを選んだ意図がわかりません。加えて、近隣の小児科医は「抗ヒスタミン薬で鼻水が固くなって、鼻づまりが解消しにくくなり困る」と言っていました。あと、7種類の薬剤は出しすぎでは?1回で飲ませ切れない「かさ」になってしまっています。症状に合わせて用量を調節 児玉暁人さん(病院)ムコダインDSの量が少ないですが、症状に合わせているのだろうと考え、これに関しては疑義照会しません。医師の処方意図を理解しておくべき JITHURYOUさん(病院)医師に処方意図の確認が必要だと感じます。抗菌薬が必要ならば薬剤の処方の必要性を患者家族にもきちんと説明しなければいけません。服用しないならば、症状が悪化するリスクもあります。さまざまな可能性のリスク回避をしておきたいという医師の考えがあるのかもしれません。なぜ抗菌薬処方をしたのか、その医師の処方傾向をできれば把握したいです。調剤するだけではなく患者さんと向き合うこと 中堅薬剤師さん(薬局)私は「医師の治療方針に同意していない患者さん」には調剤をしない方針です。ただ、簡単に「調剤をしない」としてしまうと、後で治療する機会を奪うことにもなるので、十分な説明の上、患者さんの意向を尊重して調剤するかどうか決定します。私の経験ですが、「喘息ではないのに吸入を強要された」と言う患者さんがいました。医師法第二十三条に基づいて考えると、処方医は患者が納得する十分な医学的指導をしていない可能性があり、その結果、治療に対して強い拒否を示していると推察しました。ただ、咳喘息の可能性は否定できないので、「使ってみて改善しなければ、呼吸器科以外の医師に相談することをお勧めしたい」と助言しました。治療前から否定するのではなく、治療をしてから継続の可否を判断する方がよいのではないか、と患者さんに話したのです。その後、患者さんから感謝の言葉をいただきました。「医師よりも私の治療に向き合ってくれた気がする」と。同時に、医師はどうして患者側に寄り添って治療を考えてくれないのか、という不満も打ち明けてくれました。ですから、今回の症例は薬剤師はただ調剤すればいいというものではないと、考えさせられる症例だと感じました。医師法第二十三条・・・医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。担当した薬剤師の対応フロモックス®の量が少ないことを疑義照会し、添付文書上の用量まで増量した。また、患児の保護者から、処方箋提出時に「抗菌薬だけ別包にしてほしい」と言われたので、別包にて調剤した。[PharmaTribune 2017年9月号掲載]

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第19回 小児科クリニックからのセフカペンピボキシルの処方(前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 患児の保護者に確認することは?熱の有無や熱性けいれんの既往など ふな3さん(薬局)発熱の有無は、アセトアミノフェン坐剤の処方意図(すぐに使用するか予備か)やペリアクチン®による熱性けいれん誘発リスクの推測にも利用できるため、必ず確認します。他に、熱性けいれんやてんかんの既往、副作用歴、併用薬、発疹の有無も確認したいです。検査したかどうか 清水直明さん(病院)アレルギー歴は必ず確認します。もしA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌、S.pyogenes )だったら抗菌薬が必要だと思うので、「何か検査はされましたか」と確認します。セフェム系抗菌薬のアレルギーや過去1カ月以内に抗菌薬を使用したか 奥村雪男さん(薬局)患児の性別や、特にセフェム系抗菌薬に対してアレルギーはないかを確認します。他にも過去1カ月以内に抗菌薬を使用したか、いつから症状があったか、全身状態はどうか、咳や鼻水などの症状、アデノウイルスなどの迅速検査や血液検査を行っているかも確認します。可能なら検査結果や白血球数やCRPなどの検査値、肺炎球菌、ヒブなどのワクチンを接種しているかも聞きます。Q2 疑義照会しますかする・・・7人フロモックス®の用量 キャンプ人さん(病院)フロモックス®細粒は1日9mg/kgですので、少し量が少ないのでは? と照会します。そのときに、抗菌薬の処方を望まれていないことを「母親が伝え忘れた」として医師へ伝えます。もちろん母親にそのように照会してよいか確認しておきます。普段から風邪に抗菌薬は不要と医師に示し続ける 荒川隆之さん(病院)保護者がなぜ抗菌薬の処方を望んでいないのか、よく聴き取りを行います。風邪に抗菌薬は不要ということで望んでいないのならば、疑義照会を行ってよいか、保護者と話をします。そして、フロモックス®の投与量がやや少ないことで疑義照会するついでに、風邪に抗菌薬は不要ではないか確認します。最初は、保護者がそのように希望していると言わず、医師から保護者の意志を聞かれた場合に回答します。ただし、この疑義照会は、医師と薬剤師のそれまでの関係も大きく関係すると思います。普段から風邪に抗菌薬は不要というスタンスを医師に示し続ける必要があります。抗菌薬は必要? 柏木紀久さん(薬局)患児の主症状が発熱と咽喉頭炎なので、あまり抗菌薬の必要性を感じません。3日後の再診時に抗菌薬の投与を考慮してもいいのではないかと思います。体重9kgでアセトアミノフェン坐剤が処方されており、発熱の期間が長い、または日内変動が強い状態でぐずったり、食欲がなかったりして状態がよくないことも考えられます。この場合、説明通り二次感染が考えられ抗菌薬処方の妥当性を感じますが、食欲や水分摂取が少なくなっている場合は、低カルニチン血症も気になります。保護者が医師に言えなかったことを薬剤師に打ち明けているので、照会してみると思います。溶連菌の可能性も 児玉暁人さん(病院)フロモックス®の投与量が少ないので確認します。ウイルス性の単なる風邪では抗菌薬は不要です。ただトランサミン®散の処方、のどの発赤から溶連菌の可能性も捨てきれず、その場合は抗菌薬が必要です。溶連菌の合併症予防を風邪の二次予防と受け取ってしまったなど、知識があるだけにややこしくしている可能性もありえます。保護者には、投与量と処方意図の再確認をしたい旨を伝え、納得と了承を頂いてから疑義照会します。あとは、疑義照会への返答内容にもよりますが、抗菌薬を服用する/しない場合のメリット・デメリットを伝えて、服用するかどうかを保護者に判断してもらうかと思います。ですので、疑義照会時に「服用を保護者の判断に任せてよいか」と確認しておきます。容態が悪化したら飲ませるつもりなら、疑義照会する ふな3さん(薬局)処方を望んでいないという意味では、疑義照会しません。医師との関係を気にしているなら、あえて蒸し返す必要はないと考えます。また、調剤の際に下記のように3種に分包して、フロモックス®だけ(もしくはラックビー®Rも)は服用しなくて済むようにできます。(1)フロモックス®(2)ラックビー®R(3)トランサミン® /ペリアクチン® /アスベリン® /ムコダイン® 混合この患者さんに限らず、普段から対症療法用の薬剤(症状改善したら中止)と、抗菌薬・整腸剤(処方日数飲みきり)は別包にしています。これらの対応をした上で、「望んではいない」と言いながらも、「容態が悪化したら飲ませるかも」と考えている場合、フロモックス®の添付文書上用量(3mg/kg)に満たないため、0.81g(~0.9g程度)/日への増量を提案するため疑義照会をします。保護者自身の風邪であれば「抗菌薬は飲まずに治せる」と簡単に割り切れると思いますが、発話できない乳児で急な発熱であれば、「この子のためにできることは?」「やっぱり抗菌薬を飲ませるべきかも」と頭をよぎるのが親心だと思います(だからこそ、小児科医も抗菌薬処方を簡単には止められないのでしょうが...)。その意味合いも含めて、抗菌薬は適切な量に修正した上で、「飲み始めたら飲みきる」の条件の下、お渡ししておきたいと思います。抗菌薬は感染が起きたと推定されるときに服用する JITHURYOUさん(病院)当然、医師の指示通りに調剤しなければならないのですが、その話をしてもなお服薬拒否ということになるのならば、医師に確認したいですね。連鎖球菌による咽頭炎でも、フロモックス®ではなくペニシリンが第一選択なので、この場合処方変更の必要性があるのではと考えます。二次感染予防目的の抗菌薬処方だとしても、臨床経過を勘案して疑義照会したいところです(遷延していたら細菌による二次感染の可能性=抗菌薬適応)。となると、症状の変化などで感染が起きたと推定されるときに服用する方がベストのような感じがします。フロモックス®はそういう場合に服用していただく方が耐性菌を増やさないという観点でも必要ではないかと考えます。よって、調剤は別包装にすべきではないでしょうか。母親の気持ちを聞き取った上で わらび餅さん(病院)フロモックス®が1日量9mg/kgではないので、疑義照会はします。また、母親からどうして抗菌薬を希望しないのかを聞きます。二次感染予防の必要性を感じてない、風邪という診断に納得してない、赤ちゃんだからあまり薬を飲ませたくないなど、理由によって対応も変わってきます。しない・・・4人処方医は不要なリスクを避けたいと考える 奥村雪男さん(薬局)抗菌薬以外の処方内容からは、典型的なウイルス性の上気道炎に見えます。全身状態が悪くないのであれば、抗菌薬なしで数日の経過観察後、悪化した場合に細菌性肺炎などの診断がついた時点で、それに応じた抗菌薬を選択するのが理想的だと思います。ただ、実際には疑義照会しないと思います。ウイルス性上気道炎に第三世代セフェムを処方するのは現在の日本の慣行であり、慣行と異なる行為はリスクを伴います。仮に抗菌薬なしの経過観察中に細菌性肺炎を発症すれば、最悪の場合、訴訟問題に発展するかもしれません。処方医は不要なリスクを負うことは避けたいと考えるはずです。遠回りのようですが、ウイルス性上気道炎に抗菌薬を処方した場合の治療必要数※などのエビデンスを国民に提示し、抗菌薬の二次感染予防は効率の悪い治療行為であることを一般常識とすることが、疑義照会に優る方法だと思います。※治療必要数NNT(number needed to treat)のこと。死亡や病気の発症などのイベント発生を1人減らすために、何人の患者を治療する必要があるか、という疫学の指標。例えばNNTが100なら、1人の患者のイベント発生を減らすためには100人に治療を行う、ということになる。フロモックス®は別包に 清水直明さん(病院)抗菌薬をどうしても持ち帰りたくないと言うのであれば、そのことを説明して取り消してもらうことも可能でしょうが、医師が必要としたものを不要と説得するだけの材料が弱いかなと思います。風邪との診断であるならば、それほど重症感はなさそうです。抗菌薬を服用させたくないのであれば、親の責任の範囲でそれでもいいと思います。フロモックス®は別包とします。そもそも、このぐらいの年齢から保育園・幼稚園ぐらいまでのお子さんは、よく風邪をひきます。これからも外界と接する機会が増えるにつれて、いろいろな感染症を拾ってくることでしょう。もし、本当に抗菌薬が必要な感染症に罹ったとき、ちゃんと効いてくれないと大変です。風邪をひくたびに予防的に抗菌薬を飲んでいたら、耐性菌のリスクは上がってしまうと思います。フロモックス®など多くの抗菌薬には二次感染予防という適応はないし、そのことがよく分かっている親御さんであるならば、飲ませるか飲ませないかの判断は任せていいと思います。ただし、薬剤師の指導としては微妙ですが・・・後編では、抗菌薬について患者さんに説明することは?その他気付いたことを聞きます。

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薬剤耐性菌の拡大を防ぐ「かぜ診療」最前線

 薬剤耐性(AMR)の問題は、これに起因する死亡者数が2050年には1,000万人に上ると推定されている喫緊の課題だ。2018年12月8日、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは抗菌薬の適正使用を目指し「かぜ診療ブラッシュアップコース」を都内で開催した。患者は抗菌薬ではなく、症状を緩和する薬を求めている 「適切なかぜ診療を行う際に知っておきたいこと」と題し、藤友結実子氏(国立国際医療センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)が、一般市民の抗菌薬に関する意識調査の結果を紹介した。抗菌薬抗生物質という言葉を聞いたことがある割合は94.2%だが、効果に関しては、71.9%が「細菌が増えるのを抑える」と正しく認識している一方、40.9%「熱を下げる」、39.9%が「痛みを抑える」とも回答している。 抗菌薬がどのような病気に有用か尋ねた質問には、49.9%が「かぜ」、49.2%が「インフルエンザ」と回答しており、ウイルス性疾患に抗菌薬が効くと誤解している一般市民は多いことが伺える。その一方で、かぜで受診したときに処方してほしい薬は、咳止め(61.9%)、解熱剤(59.8%)、鼻水を抑える薬(53.0%)が上位に挙がり、抗菌薬は30.1%であった。 また、2018年2月に実施したアンケート調査では、一般市民の57.6%は不必要に抗菌薬を飲んではいけないという情報を知らなかったが、59.4%が情報提供によって抗菌薬の使用可否についての考えが変わったと回答した。これらの結果から、患者が求めているのは抗菌薬ではなく症状を緩和する薬剤であるということを踏まえた正しい情報提供の重要性を強調した。「かぜ」は急性気道感染症の4つに分けるが、ほとんどの場合に抗菌薬不要 黒田 浩一氏(亀田総合病院 感染症科)は、抗菌薬使用を減らすために「かぜ」と訴える患者の中から細菌感染症を見分け、必要な人にのみ処方することが肝要であると述べ、「急性気道感染症の診断」について抗微生物薬適正使用の手引き第1版に則って解説を行った。 患者が申告する 「かぜ」は急性気道感染症だが、その90%以上はウイルス感染症であり、基本的に抗菌薬は不要だ。抗菌薬が必要なのは、中等症または重症の急性副鼻腔炎、A群連鎖球菌が検出された急性咽頭炎のみ。これらを確実に見つけるために、急性気道感染症の4病型‐感冒・急性副鼻腔炎・急性咽頭炎・急性気管支炎それぞれについて、特徴や対応を解説。ピットフォールとして、高齢者はかぜをひきにくく、かぜをひいたと言って受診した場合、細菌感染の可能性が高いという点にも触れた。抗菌薬の第1選択はアモキシシリン。第3世代セファロスポリンは極力避けて では抗菌薬が必要となった場合にどの薬を選択すべきなのか、山本 舜悟氏(京都大学医学部附属病院 臨床研究教育・研修部)が、細菌性副鼻腔炎、細菌性咽頭炎いずれも原則としてアモキシシリンが推奨される点を解説。その理由として腸管からの吸収に優れ、中耳や副鼻腔などへの移行性が良好であるなどの根拠を提示した。注意点として経口第3世代セファロスポリンはバイオアベイラビリティが低く、薬剤耐性菌を増加させる可能性があるため、原則として使用しないよう注意喚起を行った。手引きでは抗菌薬以外の対症療法薬について豊富な情報が記載されており、こちらも参考になるだろう。抗菌薬の代わりに説明の処方を 第1部で紹介されたように正しい情報提供によって患者の行動は変わりうるという点を踏まえて、かぜ受診で抗菌薬を求める患者に対する説明のロールプレイが行われた。実際に説明をしてみると患者が納得するように説明するのは難しいとの感想が会場から上がった。説明する際のポイントとして、患者の解釈・気になっていること・医療機関への期待を確認することが新規処方薬の少なさと関連する点に言及し、「抗菌薬の代わりに説明の処方を」と呼びかけセミナーは終了した。 同センターではセミナーを全国各地で行っており、来年も継続予定とのこと。■参考抗微生物薬適正使用の手引き第一版薬剤耐性AMR情報サイト各種啓発用ツールAMR臨床リファレンスセンター■関連記事Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー

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第18回 救急科からのノルフロキサシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?赤痢菌※・・・9名下痢原性大腸菌・・・7名カンピロバクター・・・7名サルモネラ・・・7名赤痢アメーバ・・・6名腸炎ビブリオ・・・3名ノロウイルス、ロタウイルス・・・3名チフス・・・2名※細菌性赤痢の原因菌で、潜伏期1~5日(通常1~3日)で発症し、全身の倦怠感、悪寒を伴う急激な発熱、水様性下痢を呈する。発熱は1~2日続き、腹痛、しぶり腹(テネスムス)、膿粘血便などの症状が現れる。全数報告対象(3類感染症)であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない1)。抗菌薬から考える 奥村雪男さん(薬局)途上国旅行中に生じる下痢は、非常に多くの微生物が関与します2)。推奨される治療については、ガイドライン3)を参照すると、赤痢アメーバ腸炎、ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)であればメトロニダゾールを使用するクリプトスポリジウム症は免疫能が正常であれば自然治癒が見込めるサイクロスポーラ感染症ではST合剤を使用する以上から、現時点では原虫症は鑑別の上位にないように思います。また、腸管出血性大腸菌(EHEC)以外の下痢原性大腸菌は、経過観察か補液で自然軽快することがほとんどEHECでは早期にレボフロキサシンの投与を考慮するカンピロバクターは自然治癒するサルモネラは、健常者の軽症~中等症において抗菌薬の投与は推奨されていない細菌性赤痢の第一選択はレボフロキサシン、シプロフロキサシンである以上から、現時点で想定されている原因菌は、前述の原虫以外の細菌およびロタウイルスと考えます。旅行者下痢症は、特にempiric therapyを考慮するケースとされ、第一選択としてレボフロキサシン、 シプロフロキサシンが挙げられています。潜伏期間を考慮 清水直明さん(病院)現地で何かに感染したとすると、比較的潜伏期間が短い感染症を考える必要があります。厚生労働省検疫所(FORTH)によれば、フィリピンでは1 年を通じて、腸チフス(潜伏期間:1~3週)、アメーバ赤痢(2~4週)、細菌性赤痢(1~5日)、A型肝炎(2~7週)などのリスクがありますが、症状および潜伏期間から、この中で細菌性赤痢が最も当てはまります。カンピロバクター(2~4日)、サルモネラ(12~72時間)などもありえそうですが、重症度を考慮して、まずは細菌性赤痢を念頭に置いた治療で様子を見るということだと思います。処方内容、渡航先、症状を踏まえる ふな3さん(薬局)腸管毒素原性大腸菌(ETEC)、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、コレラ、赤痢菌などを想定した処方ではないかと思います。ただし、あくまで「処方から」予想される原因菌であって、渡航先と症状からは、ロタウイルス、ノロウイルス、赤痢アメーバなども考えられます。Q2 患者さんに確認することは?副作用歴と止瀉薬について 中堅薬剤師さん(薬局)副作用歴、止瀉薬の所持を必ず確認します。可能であれば、症状変化の詳細も聞いてみたいです。アレルギーや金属イオンを含む薬剤 奥村雪男さん(薬局)ニューキノロン系抗菌薬に対するアレルギーがないか確認します。酸化マグネシウムや鉄剤などの金属イオンを含む薬剤やサプリメントは、ノルフロキサシンの吸収を低下させてしまうため(併用注意記載あり)、確認します。現地での食事状況 JITHURYOUさん(病院)PPIやステロイドを服用している場合は、感染しやすくなっている可能性があります。水分や食事(薬剤)が取れるか? 発熱は? 点滴したかも確認します。赤痢菌は水系感染で、現地で水道の水などは飲んでいないと思いますが、氷でも感染する場合があります。水で汚染されている可能性がある果物類の他、魚介類や熱が十分に通っていない食材などを摂取したかも確認したいです。渡航先、渡航期間を医師に話したか ふな3さん(薬局)渡航先・渡航期間を医師に話したか、必ず確認します。渡航歴を伝えない患者、聞かない医師もいるからです。感染者が家族・職場などにいると、感染拡大する可能性もあります。できれば、菌の同定検査をしたか、同行者に同様の症状がないかも聞きたいです。食欲と水分補給について 清水直明さん(病院)「食欲はありますか? 水分は取れそうですか?」もしも食欲がなくて水分・電解質が十分取れない状況ならば、脱水を引き起こす危険性があるため、点滴などの処置が必要になるかもしれません。ロコア®テープにも注意 児玉暁人さん(病院)併用禁忌確認のため、フロベン®(フルルビプロフェン)の内服をしていないか、ロコア®テープ(エスフルルビプロフェン)を使用中でないか確認します。ロコア®テープは貼付薬ながら血中濃度が上昇するため、併用禁忌にノルフロキサシンの記載があります。Q3 疑義照会する?する・・・4人なぜノルフロキサシン? 清水直明さん(病院)細菌性赤痢であればキノロン系抗菌薬が第一選択になりますが、今どき、腸管感染症に対してノルフロキサシンを使うのかなと感じます。なぜレボフロキサシンやシプロフロキサシンではなく、ノルフロキサシンなのか聞いてみたいです。抗菌薬の用量 JITHURYOUさん(病院)ノルフロキサシンの投与量が少ないです。添付文書では腸チフスの場合、1回400mg 1日3回投与14日間とされています(症状から腸チフスではないようにも思いますが、可能性はあります)。整腸剤の変更 キャンプ人さん(病院)ラックビー®微粒Nはキノロン服用時の乳酸菌製剤としては効果が減弱するため、ミヤBM®への変更を依頼します。想定している原因菌について 荒川隆之さん(病院)ラックビー®微粒Nはキノロン系抗菌薬で失活する恐れがありますので、ビオスリー®などへの変更を提案します。提案するときに、医師が想定している原因菌についても同時に確認すると思います。また、旅行者下痢症は通常3~5日で回復しますので、投与期間は5日で妥当と考えます。しない・・・6人やや用量は少ないが・・・ 中堅薬剤師さん(薬局)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン―腸管感染症―2015によれば、ノルフロキサシンの投与は1回2~4mg/kg、1日3回とされていて、22歳だと1回100mgはやや少ない気がしますが、疑義照会まではしないです。耐性乳酸菌に変える必要はない 中西剛明さん(薬局)疑義照会しません。エンテロノン® -Rなどの耐性乳酸菌を使う必要はないと思います。耐性乳酸菌を使うと、併用できる抗菌薬にノルフロキサシンが入っていないので、保険で査定されてしまう恐れがあります。ちなみに、乳酸菌製剤は死菌で十分効果があるという説もあります。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?光線過敏の副作用について 中堅薬剤師さん(薬局)具合が悪いので外で紫外線を浴びることは少ないかもしれませんが、ノルフロキサシンによる光線過敏の可能性を話しておきます。止瀉薬は使わないこと、水分は経口補水液を少量ずつ摂取することなども説明します。服用方法についての説明例 ふな3さん(薬局)「抗菌薬は5日間飲みきってください。8時間ごととなっていますが、生活パターン上、服薬が難しいようなら、7~9時間の間隔であれば大丈夫です。食前・食後でも大丈夫ですが、カルシウムなどのミネラルを摂取すると薬の吸収が悪くなることがあるので、カルシウムやマグネシウムなどのサプリメントなどは控えてください。飲み忘れた場合は、すぐに1回分を飲んで、できるだけ1日3回の服用を続けてください」「帰宅後、激しい嘔吐、発熱、強い腹痛、血便、便意があるのに便がほとんど出ない状態を繰り返す(しぶり腹)など体調変化があった場合、また、3日以上経過しても症状が改善しない場合は、すぐに再受診してください」抗菌薬の服用前後2時間は牛乳などを避ける 清水直明さん(病院)「牛乳などの乳製品や一部の制酸薬、貧血の薬(鉄剤)と一緒に服用すると効果が弱くなる可能性があるので、抗菌薬服用の前後2時間は、それらの摂取を避けるようにしてください。」家族の感染対策 キャンプ人さん(病院)家族などの同居者にも、感染対策するよう指導します。服用時間について わらび餅さん(病院)症状がひどいうちは食事が取れないだろうと考えて、用法を8時間ごととしたのだろうと思います。ですが、厳密に8時間ごととする必要はなく、内服は多少時間がずれても構わないことを伝えます。Q5 その他、気付いたことは?脱水予防 JITHURYOUさん(病院)とにかく脱水予防が必要です。吐き気などで経口できない場合は、補液がファーストだと考えます。抗菌薬はセフトリアキソンなどでしょうか。経口可能であればニューキノロン系抗菌薬、特にレボフロキサシンなどがよいと思いますが、耐性化が進んでいるのでアジスロマイシンなども候補とします。原因菌の特定は重要であり、報告義務のある赤痢菌、コレラの検出であれば、その消失を確認しないといけない旨を伝えます。寄生虫検査は複数回行われる場合があり、周囲のへの感染予防も必要です。腸炎ビブリオの可能性 ふな3さん(薬局)なぜレボフロキサシンではなく、わざわざノルフロキサシンを選んだのか気になります。レボフロキサシンとノルフロキサシンを比較すると、レボフロキサシンでは適応菌種として腸炎ビブリオが含まれていないので(キノロン系抗菌薬ではノルフロキサシンのみに適応あり)、ひょっとしたら腸炎ビブリオが最も疑われているのかもしれない、と思います。注)添付文書上、適応菌種には記載されていないが、JAID/JSCガイドライン2015―腸管感染症―において、レボフロキサシンは腸炎ビブリオに第一選択(ただし重症例に対して)になっている。後日談(担当した薬剤師から)患者は医学生で、熱帯医療のサークルでフィリピンに滞在していたそうです。今回は4回目の渡航で、赤痢を警戒し、食事や水には非常に気を使っていたとのことです。赤痢アメーバは内視鏡で否定され、検査結果は腸炎ビブリオで、ブドウ球菌の毒素も絡んでいる可能性もあるとのことでした。帰国前に魚料理を食べており、これが原因かもしれないということでした。1)NIID 国立感染症研究所.細菌性赤痢とは.2)青木眞.レジデントのための感染症マニュアル.第2版.東京、医学書院、2008.3)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015‒腸管感染症‒.一般社団法人日本感染症学会、2016.[PharmaTribune 2017年8月号掲載]

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腸内細菌の医療への応用

過去10年間で急速な発展を遂げてきた腸内細菌叢領域。健康や疾患との関連性も明らかになってきており、医学・医療分野での注目度も高まっている。そのようななか、腸内細菌叢解析のビジネス化にいち早く着目したのが株式会社サイキンソーだ。サイキンソー代表取締役 沢井悠氏に、腸内細菌叢の解析が医療にもたらす可能性について聞いた。インタビュイー腸内細菌叢が注目されるようになった背景や、サイキンソーが提供する腸内細菌叢検査サービスについて教えていただけますか?ゲノム解析技術の革新を背景に、2010年台前半から世界的に腸内細菌叢研究が活発化するようになりました。そのようななか、サイキンソーは2014年に創業しました。創業当時は、腸内細菌叢に対する認知度はそれほど高くありませんでしたが、その後メディアが取り上げたことがきっかけで一気に認知が広がり、一般の方も関心を持たれるようになりました。私どもの提供する個人向け腸内細菌叢検査サービス「マイキンソー(Mykinso)」も、そうした背景から注目されるようになりました。マイキンソーは、生活習慣に関する問診票に回答し、専用のキットを使って採取した糞便サンプルを郵送するだけの、手軽な腸内細菌叢検査サービスです。キットを返送いただいてから約4週間で結果が出ます。個人向けとして展開していましたが、医師から問い合わせをいただくことが増えたため、現在は医療機関にもサービスを提供しています。検査では、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌、エクオール産生菌などの主要な細菌の割合、腸内細菌の多様性、細菌の構成比率などがわかります。医療機関向けには、問診票に書かれた悩みや症状に関連する細菌の解析結果などをまとめた「腸内フローラカルテ」を作成しています。腸内フローラカルテには、患者さん一人ひとりに管理栄養士から具体的な生活習慣のアドバイスがあり、検査後の患者指導にも役立てられると思います。腸内フローラカルテの一例画像を拡大する画像を拡大する検査サービスを利用いただく方は30~50代が中心で、医療機関を通して検査を受けるのは60~70代の方が多い傾向にあります(図)。特に、20代や60歳以上では症状や体調の悩みが強い方が多く、投薬やプレバイオティクス・プロバイオティクスなど、症状改善のためにすでに色々なことを試しているケースが多く見受けられます。(図)腸内細菌叢検査「マイキンソー」の利用者属性画像を拡大する医療機関ではどのように活用されているのでしょうか?マイキンソーは、北海道から沖縄まで、幅広い地域の医療機関に採用いただいています。診療科別では消化器内科が多く、産婦人科や整形外科での導入実績もあります。便秘や下痢などの症状が従来の検査・治療ではなかなか改善しない患者さんに対し、腸内細菌叢の検査を勧めるという流れで活用されることが一般的です。全国に先駆けて腸内細菌外来を設置した愛知県一宮市の山下病院では、従来の検査で原因が特定できず、投薬でも便秘や下痢が改善しない患者さんに対し、腸内細菌叢検査の結果を基にした生活指導を行っています。指導は医師が行うだけでなく、看護師や管理栄養士もフォローアップをしているそうです。機能性の消化管障害の場合、治療をしても満足のいく改善効果が得られないケースが一定数ありますが、腸内細菌叢検査を活用することで、そうしたケースでも適切な指導が行えるようになったと伺っています。これまでに蓄積した解析データから、機能性の消化管障害を有する人では健常な人と比べて腸内細菌叢のバランスが崩れており、検出される菌叢が大きく異なることがわかっています。具体的には、短鎖脂肪酸を産生する細菌が少ない、細菌の多様性を示すスコアが低い、ファーミキューテス門菌とバクテロイデーテス門菌の比率(FB比)が高いなどの違いが見つかります。菌叢のバランスが崩れている場合、プレバイオティクスやプロバイオティクスを取り入れてバランスを整えていくことで症状の改善につながることも期待できるようです。将来的に、腸内細菌叢検査は医療にどのような影響をもたらすと期待されますか?腸内細菌叢との関連に関する研究が最も進んでいるのは、炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)、便秘、下痢などの下部消化管の疾患・症状です。そのほかに、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの肝臓の疾患や関節リウマチなどの自己免疫疾患との関連も多く調べられています。エビデンスの集積が進めば、疾患の治療戦略の検討や予防を目的として、腸内細菌叢を解析するようになっていくものと期待されます。腸内細菌叢は、抗菌薬をはじめとするさまざまな薬の影響を受けると考えられています。また逆に、腸内細菌叢のバランスが崩れていると、薬の効果や副作用の発現が減弱・増強される可能性があることもわかってきています。将来的に、投薬のベースとして腸内細菌叢を整えることが重要視されるようになれば、腸内細菌叢を解析する意義がより明確になるものと考えられます。米国では、日本より先んじて臨床での腸内細菌叢検査の活用が広がっています。細菌叢検査領域のベンチャー企業の代表格である米国uBiomeでは、IBDやIBSなどの疾患と関連する腸内細菌を検出する腸内細菌叢検査サービス「SmartGut」を展開していますが、この検査は大多数の健康保険会社で保険償還されています。近い将来、日本でも腸内細菌叢検査が評価され、血液検査のように日常診療で実施されるようになることを期待しています。

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多剤耐性グラム陰性桿菌、ICUでのベストな感染予防は?/JAMA

 多剤耐性グラム陰性桿菌(MDRGNB)感染の発生率が中等度~高度のICUにおいて、人工呼吸器装着患者に対する、クロルヘキシジン(CHX)による口腔洗浄や、選択的中咽頭除菌、選択的消化管除菌の実施は、いずれも標準的ケア(CHXによる毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラム)と比べて、MDRGNBによるICU血流感染の発生率を低下させないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のBastiaan H. Wittekamp氏らが行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2018年11月27日号で発表した。CHXによる口腔洗浄、選択的中咽頭、消化管除菌を各1日4回実施 試験は2013年12月1日~2017年5月31日に、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌による血流感染が5%以上を占める、ヨーロッパ13ヵ所のICUで行われた。被験者は、人工呼吸器の24時間超の使用が予測された患者で、追跡調査は2017年9月20日まで行った。 標準ケアは、CHX2%による毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラムの実施で、ベースラインとして6~14ヵ月実施した。その後、クロルヘキシジン1~2%による口腔洗浄、選択的中咽頭除菌(コリスチン、トブラマイシン、ナイスタチン入り口腔ペースト:SOD)、選択的消化管除菌(同口腔ペーストの使用と同種抗菌薬による胃腸混濁液:SDD)をそれぞれ1日4回、6ヵ月ずつ、無作為順序で行った。 主要評価項目は、各介入期間におけるMDRGNBによるICU血流感染の発生率で、副次評価項目は28日死亡率だった。ICU血流感染の発生率、28日死亡リスクともに低下せず 被験者総数は8,665例で、年齢中央値は64.1歳、うち男性は64.2%だった。ベースライン群、CHX群、SOD群、SDD群の被験者数は、それぞれ2,251例、2,108例、2,224例、2,082例だった。 試験期間中のMDRGNBによるICU血流感染は全体で144例(154件)に発生し、発生率はベースライン群が2.1%、CHX群が1.8%、SOD群1.5%、SDD群が1.2%。 絶対リスク減少は、ベースライン群と比較して、CHX群が0.3%(95%信頼区間[CI]:-0.6~1.1)、SOD群0.6%(-0.2~1.4)、SDD群が0.8%(0.1~1.6)だった。対ベースラインの補正後ハザード(HR)は、それぞれCHX群1.13(95%CI:0.68~1.88)、SOD群0.89(0.55~1.45)、SDD群0.70(0.43~1.14)だった。 また、補正前28日死亡リスクは、ベースライン群が31.9%、CHX群32.9%、SOD群32.4%、SDD群34.1%。28日死亡に関する対ベースラインの補正後オッズ比は、CHX群1.07(95%CI:0.86~1.32)、SOD群1.05(0.85~1.29)、SDD群1.03(0.80~1.32)だった。

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第17回 内科からのレボフロキサシンの処方(後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1予想される原因菌は?Q2患者さんに確認することは?Q3 疑義照会する?しない・・・8人PRSPを想定? 荒川隆之さん(病院)しません。経口へのスイッチングの場合、わざわざブロードスペクトルであるレボフロキサシンにする必要性は低く、クラブラン酸/アモキシシリンなどでもよい気はするのですが、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)を想定されているのかもしれません。ガイドラインを参考に 奥村雪男さん(薬局)疑義照会しないと思います。JAID/JSC感染症治療ガイド2014でdefinitive therapyとして推奨される治療に、PSSP外来治療の第二選択と、PRSP外来治療の第一選択にレボフロキサシンが記載されています。投与期間については、「症状および検査所見の改善に応じて決定する。5~7日間が目安となる」とあるので、セフトリアキソン4日間+レボフロキサシン5日間で、不自然な日数ではないと思います。する・・・3人ガレノキサシンへの変更提案 清水直明さん(病院)発熱・呼吸器症状・食欲不振があるので、喘息発作ではなく呼吸器感染症と考えます。本来、肺炎球菌と確定しているのならば高用量ペニシリンを推奨すべきところですが、肺炎球菌の検査をしたかどうか、胸部レントゲンも撮ったかどうか不明確ですので、外来静注抗菌薬療法後のスイッチ療法としてはキノロン系抗菌薬もありだと思います。ただし、幾つかの成書から呼吸器感染症に対してはレボフロキサシンよりもガレノキサシンが有効性が高いと思いますし、特に、肺炎球菌に対してはレボフロキサシンとガレノキサシンのMICは結構異なっているので、「レボフロキサシン500mgでも特別問題ないかもしれませんが、より有効性を期待するという意味で、ジェニナック®錠 1回400mg 1日1回をお勧めします」と提案します。アモキシシリン高用量かアジスロマイシン単回投与に JITHURYOUさん(病院)疑義照会します。喘鳴がなく、熱があることを考えると、喘息発作ではなく呼吸器感染症でいいと思います。食欲がない、発熱からも肺炎の可能性があると考えます。その場合、呼吸器学会の鑑別基準でいくと、1~5の項目で3項目が該当するため非定型肺炎の可能性があると思われます。喘息があることや、非定型のカバーを考えるとレボフロキサシン経口内服指示は理解できます。しかし、セフトリアキソン点滴に効果があることから非定型肺炎はカバーしなくてよいと思います。PRSPである場合は、レボフロキサシン投与もうなずけます。しかし、結核のリスクがあること、喘息の管理としてステロイド吸入やマクロライド系抗菌薬を使用していないこと、飲酒習慣などもなく耐性菌リスクが少ないのではないかと考えられるため、今回のレボフロキサシンの処方は一考した方がいいのではないかと考えました。アモキシシリン高用量かアジスロマイシン単回投与(アドヒアランス考慮)を提案すると思います。細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別1.年齢60 歳未満2.基礎疾患がない、あるいは軽微3.頑固な咳嗽がある4.胸部聴診上所見が乏しい5.喀痰がない、あるいは迅速診断で原因菌らしきものがない6.末梢血白血球数が10,000/μL未満である1-6の6項目中4項目以上合致した場合、非定型肺炎の感度77.9%、特異度93.0%。1-5の5項目中3項目以上合致した場合、非定型肺炎の感度83.9%、特異度87.0%日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会.成人市中肺炎診療ガイドライン.東京、日本呼吸器学会、2007.Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?再受診のタイミングや他院受診時の注意 ふな3さん(薬局)必ず指示された日(3日後)から服用を開始すること食欲がなくても、食事が取れなくても、毎日必ず1錠服用すること症状が改善しても5 日分服用を続けること服薬して3日以上(=治療開始から7日以上)経過しても症状が改善しない場合には、すぐに医療機関を再受診すること他院(喘息治療など)に通院の際は、必ずレボフロキサシンを服用中であることを伝えることしっかり飲みきることと副作用について JITHURYOUさん(病院)耐性菌が出現しないよう、しっかり飲み切ること。確率は低いですが、アキレス腱炎や痙攣、光線過敏症などに気を付けること。患者さんへの説明例 清水直明さん(病院)「薬のせいでお腹が緩くなることがあります。我慢できる程度の軽い症状ならば抗菌薬をやめれば戻るので問題ありませんが、ひどい場合には服用を中止してご連絡ください」「牛乳などの乳製品や一部の制酸薬や下剤、貧血の薬(鉄剤)と一緒に服用すると効果が弱くなる可能性があるので、抗菌薬服用の前後2時間はそれらの摂取を避けるようにしてください」併用薬はなしとのことですが、OTCやサプリメントを服用している可能性はあり、その中に相互作用を起こすアルミニウムやマグネシウムなどが入っていることがあるので、一応伝えておきます。結核検査をしていた場合 キャンプ人さん(病院)「4日間点滴後の内服薬なので、飲み始める日にちを間違えないようにしてください」と言います。結核の検査をしていたなら、病院から検査結果の連絡があれば必ず受診するなど、そのままほったらかしにしないよう説明します。車の運転について 柏木紀久さん(薬局)3日後からの服用を理解しているかの確認と、5日間きちんと服用してもらうこと。車や機械などの運転を極力控えること。Q5 その他、気付いたことは?肺炎球菌→レボフロキサシン? 中堅薬剤師さん(薬局)肺炎球菌にすぐレボフロキサシン、はオーバートリートメントかな、と個人的に思います。できれば、アモキシシリン5~7日の投与で十分とコメントしたいです。地域のアンチバイオグラムは? 荒川隆之さん(病院)原因菌も肺炎球菌とされているので、通常ならレボフロキサシンではなく、クラブラン酸/アモキシシリンなどの経口の方が適しているものと考えますが、原因菌がPRSPであった場合は、レボフロキサシンでもよいのかもしれません。PRSPかどうかは尿中抗原などでは診断が付かず、培養の結果を待たなければなりません。喀痰培養などで肺炎球菌は増殖しづらく、処方の時点でPRSPだと断定はできていないものと考えます。地域のアンチバイオグラムにおいてPRSPの頻度が高い地域なのでしょうか。処方タイミング ふな3さん(薬局)4日間の点滴での容体の変化を見て、その後の抗菌薬フォローアップを決めるのが一般的だと思うので、なぜこのタイミングで処方なのかは疑問です。GWや年末年始でクローズする調剤薬局が多いタイミングだったのでしょうか。治療後の残存症状として、喘息症状の遷延や悪化があった場合、喘息治療薬も必要になる可能性があるので、やはり点滴投与後の処方が望ましいと感じます。また、出勤などは控えるように伝えられているのではと思うので、その点も確認したいです。肺炎球菌の耐性度は、ほとんどが中等度まで 奥村雪男さん(薬局)薬剤耐性対策としては可能であれば、レボフロキサシンより高用量のアモキシシリンなどのペニシリンが好ましかったのではと思います。日常診療で遭遇するほとんどの肺炎球菌はせいぜい中等度耐性(MICが1~2μg/mL)であり、高用量のペニシリンで対応可能とされています1)。処方例としては、アモキシシリン500~1,000mgの1日3~4回経口が挙げられています。感受性の結果次第ではペニシリン系を提案 児玉暁人さん(病院)セフトリアキソンで効果があるようであれば、レボフロキサシンでなくてもよいかもしれません。喀痰培養で感受性結果が分かれば、自信を持ってペニシリン系を処方できると思います。判定が早いので迅速キットでの検査だったのかもしれません。検査室がありグラム染色ができれば、その日でも肺炎球菌を想定はできますが。初日に培養を出せば4日目の点滴時には感受性結果が出るはずですので、そこで抗菌薬を決めて処方箋を出すというのでもいいのでは。検査が外注だとそうはいかないのですが。喘息の定期受診と生活指導 JITHURYOUさん(病院)喘息で併用薬なしということですが、本当に定期的な受診をしているのかは不明です。日常生活の支障がないのでしょう。しかし、発作がなくてもステロイド吸入で気道リモデリングの予防と喘息死の予防をすることは欠かせないこと、感染症が発作の引き金になるので合わせて定期受診すべきであることを伝えたいです。男性一人暮らし、ハウスダストアレルギーなので定期的な部屋の掃除なども指導したいですね。また、患者の身長体重から、BMIは17.31となります。やせ型の若い男性で気胸のリスクがあるので、咳が続き胸痛や呼吸困難などの症状があれば受診するように指導します(登山や出張などで飛行機など乗ること、楽器演奏、激しい運動などは治療が終わるまでできれば避けること)。さらに可能であれば、運動を少しずつしていき筋肉や体力をつけていき、呼吸器感染症や喘息、気胸予防をしていくように指導したいです。後日談(担当した薬剤師から)翌週、無事に回復しましたと処方箋を持って来局。咳症状が少し残っていたのでしょう、デキストロメトルファン錠15mgとカルボシステイン錠250mgを1回2 錠 1日3回 毎食後7日分を受け取って帰られました。後日談について 中堅薬剤師さん(薬局)後日談の咳が残るという主訴(おそらく感染後咳嗽)に対して、デキストロメトルファンは微妙かなあと感じました。呼吸器門前で働いてきた経験から、むやみな鎮咳剤投与は無意味ではないか、と考えるようになったからです。本当につらい咳なら、コデイン投与で間欠的にするべきですし、そもそもの治療が奏功していない可能性もあります。そんなにひどくない咳であれば、麦門冬湯でもよいと思います。1)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.[PharmaTribune 2017年7月号掲載]

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胎児へのトキソプラズマ垂直感染を抑制する抗原虫薬「スピラマイシン錠150万単位」【下平博士のDIノート】第14回

胎児へのトキソプラズマ垂直感染を抑制する抗原虫薬「スピラマイシン錠150万単位」今回は、「抗トキソプラズマ原虫薬スピラマイシン(商品名:スピラマイシン錠150万単位)」を紹介します。本剤は、妊娠中にトキソプラズマに初感染した妊婦が服用することで、胎児の先天性トキソプラズマ症の発症を抑制します。<効能・効果>本剤は先天性トキソプラズマ症の発症抑制の適応で、2018年7月2日に承認され、2018年9月25日より販売されています。トキソプラズマのタンパク合成を阻害することで、増殖抑制効果を示します。<用法・用量>通常、妊婦に1回2錠(スピラマイシンとして300万国際単位)を1日3回経口投与します。抗体検査や問診などにより妊娠成立後のトキソプラズマ初感染が疑われる場合に使用します。<患者さんへの指導例>1.妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した場合に、胎児が感染することで発症する恐れのある「先天性トキソプラズマ症」を防ぐための薬です。2.胎児への感染が確認されないうちは、分娩まで続けて服用します。3.薬によって腸内細菌のバランスが崩れると、便が緩くなったり、おなかが痛くなったりすることがあります。4.高熱、激しい腹痛を伴う血便、めまい、動悸、胸痛などの症状がありましたら、服用をやめてすぐに医師の診察を受けてください。5.母乳中に移行することが報告されているため、本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>トキソプラズマは人畜共通の寄生原虫であり、猫を終宿主としますが、豚、牛、鶏、羊、馬などのほか、食肉用の動物以外も含めて、ほぼすべての哺乳類や鳥類に感染します。ヒトへの主な感染経路としては、加熱不十分な食肉、猫の糞便や洗浄不十分な野菜などによって、トキソプラズマ原虫を経口的に摂取することが挙げられます。また、園芸などの土いじりや砂場遊びが原因になることも考えられます。通常、健康な成人がトキソプラズマに感染した場合、風邪様の症状が出現することもありますが、多くの場合は無症状のまま潜伏感染に移行します。しかし、妊婦がトキソプラズマに初感染すると、胎盤を介して胎児に感染し、先天性トキソプラズマ症を発症する可能性があります。先天性トキソプラズマ症は流産・死産の原因になったり、生まれた子供に水頭症、網脈絡膜炎による視力障害、脳内石灰化、精神・運動機能障害などといった重大な臨床症状が認められたりすることがあるため、胎児への感染を抑制する必要があります。本剤は、抗菌活性に加え、抗トキソプラズマ活性を有する16員環のマクロライド系抗菌薬で、海外の診療ガイドラインではトキソプラズマに初感染した妊婦に対し、本剤が標準的治療薬として推奨されています。しかし、わが国ではこれまでトキソプラズマを適応症として承認されている薬剤はなかったため、日本産科婦人科学会より開発の要望がなされていました。本剤の抗原虫作用はトキソプラズマに対する増殖抑制であり、感染後早期に服用を開始することで、垂直感染が約60%低下するという報告があります。ただし、殺原虫効果はないため、胎児への感染が疑われる場合には、本剤の投与・継続の適否について慎重に検討する必要があります。実際には先天性トキソプラズマ症で生まれてくる児はわずかですが、加熱不十分な食肉を食べること、素手での飼い猫の糞便の処理や土いじりは、トキソプラズマ感染を引き起こすリスクがあることを薬剤師も再認識し、妊娠中または妊娠を予定している患者さんに対して調理方法や手袋の着用、十分な手洗いなどの注意喚起を行えるとよいでしょう。

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第16回 内科からのレボフロキサシンの処方(前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?肺炎球菌・・・11名全員診療報酬明細書を確認 清水直明さん(病院)その場で肺炎球菌と言い切るということは、グラム染色で確認できたのでしょう。肺炎球菌尿中抗原・呼吸器検体中抗原迅速検査を行っている可能性もありますが、感度・特異度が決して高くなく、既感染の場合でも陽性になる場合があります。行った検査についての記載が診療報酬明細書にあると思うので、可能であれば確認します。HIV感染の可能性も 荒川隆之さん(病院)気管支炎なら連鎖球菌、肺炎ならインフルエンザ菌など他の原因菌も考えられますが、肺炎球菌と医師が断定しているということなので、尿中抗原もしくはグラム染色にて確定診断しているものと考えます。肺炎球菌感染ありきで考えますと、この感染の原因としてさらにHIV感染(初期の感冒様症状)が隠れている可能性もあるかもしれません。肺炎球菌以外の可能性も JITHURYOUさん(病院)恐らく迅速診断キットを使用し、医師から肺炎球菌と言われたと考えられます。肺炎球菌以外で考えると、グラム陽性菌では黄色ブドウ球菌など、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌なども可能性があります。また喘息でステロイド使用例では、肺炎桿菌やエンテロバクターなどのグラム陰性桿菌も検出されることがあるようです。ライノウイルスなどのウイルスやマイコプラズマ、クラミジア・ニューモニエなどの非定型菌も無視できないと思います。これらのウイルスなどの2次感染の可能性はないでしょうか。季節によってはインフルエンザウイルスなども考慮すべきではないかと考えます。そもそも細菌性肺炎? 児玉暁人さん(病院)成人の市中肺炎の可能性を考えれば、予想される原因菌は肺炎球菌、インフルエンザ菌、クレブシエラ、モラクセラ、マイコプラズマなどが考えられます。どのような説明で肺炎球菌と言われたのか不明なのと、レボフロキサシンの処方から肺炎球菌による肺炎なのか、そもそも細菌性肺炎なのかは不明です。点滴内容も不明ですが、喘息があり、点滴で改善していることから、ステロイドの点滴だった可能性もあります(または抗菌薬との併用)。喘息悪化を契機に肺炎を併発した可能性もあるかと思います。Q2 患者さんに確認することは?医師からどのような説明をされているか 荒川隆之さん(病院)なぜレボフロキサシンを3 日後から始めるのかわからないので、まず患者さんに医師からどのように聞いているのか確認します。患者さんの説明で要領を得ない場合は、疑義照会することになると思います。発熱や次回受診日について ふな3さん(薬局)点滴治療開始前の発熱の有無血液検査の結果(あれば)合併症「肺炎球菌」と言われたのは、今回か?「以前」か?次回通院予定日併用歴、副作用歴、既往歴など 中堅薬剤師さん(薬局)併用薬、副作用歴、既往歴と腎機能も確認したいところです。あとはA-DROPに従って考えると、年齢は若く、脱水も意識低下もなさそうですし、入院が必要になるぐらい重篤な感染症の可能性は低い気がします。発熱の情報もないですし。この受診の前にOTCのかぜ薬を服用しているのであれば、アスピリン喘息も疑う必要がありますね。過去に鎮痛薬や感冒薬で咳嗽が悪化したことはないかも確認してみたいです。A-DROPシステムA(age):男性70 歳以上、女性75 歳以上D(dehydration):BUN 21mg/dL以上または脱水ありR(respiration):SpO2 90%以下(PaO2 60Torr以下)O(orientation):意識障害ありP(pressure):血圧(収縮期)90mmHg以下軽 症:上記5 つの項目のいずれも満足しないもの。中等度:上記項目の1つまたは2つを有するもの。重 症:上記項目の3つを有するもの。超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの。ただし、ショックがあれば1項目のみでも超重症とする。どのような検査をしたか 奥村雪男さん(薬局)肺炎球菌と仮定した場合、definitive therapyで第一選択はペニシリンであり、仮にエンピリックに広域抗菌薬で開始したとしても、狭域抗菌薬にde-escalationしていない点が気になります。レスピラトリーキノロンのレボフロキサシンが選択されているのは疑問ですが、患者は βラクタムアレルギーがあるのかもしれません。また、喀痰の培養はしたのか。感受性まで分かるので、ペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP)か、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)かが分かれば、確認したいです。MIC>4.0μg/mLの高度耐性でレボフロキサシンを選択肢に挙げている書籍もあります1)。次に、点滴は何を使用したのか知りたいです。点滴から内服に切り替える場合、通常はクラスを変えないので1)、レボフロキサシン点滴静注の可能性が高いかと思います。いつから薬を飲むように言われているか?喘息治療は? わらび餅さん(病院)患者に、「○月○日から飲むように言われているか?」を確認します。1回/日投与のセフトリアキソン、もしくはレボフロキサシンを点滴したと予想しますが、切り替えに3日空けることが不思議です。また3日開けてしまうと、治療期間の考え方でも違和感があります。点滴2日+内服5日=計7日で効果判定、がしっくりきます。喘息治療はどうしているか?コントローラーは使用しているのか、リリーバーだけかを確認します。肺炎だったとしても、コントローラーは必要なので、アドヒアランスや肺炎治療中に発作が出たときにどう指示が出ているかを確認します。吸入薬の残量や使用期限を確認します。点滴の中身 中西剛明さん(薬局)点滴の中身が知りたいので、診療報酬明細書を確認させてもらいます。そして、次回の通院を確認し、点滴をいつまでするのか聞きます。その回答次第で、レボフロキサシンの開始日が特定できると思います。担当した薬剤師が聞き取った内容身長は175cm、体重53kg。1人暮らしの会社員。食欲がなく、朝から何も食べていなかった体温:37.8℃今回の受診のきっかけとなった咳の状況:夜、寝苦しい、横になると苦しくなって咳き込む、痰がよく出る診療報酬明細書の内容:点滴はセフトリアキソン1g+生理食塩液100mL(キット製剤)血液検査の結果はもらっておらず、詳細は不明今後の受診予定:明日、明後日の2日間は通院して点滴を受けるよう指示があった服用中の内服薬、吸入薬:なし日ごろの食事:朝は牛乳と食パン1枚、昼は会社の食堂で定食を、夜は外食して帰宅飲酒、喫煙習慣:なし副作用歴、アレルギー歴:医薬品ではなし。ハウスダストのアレルギーあり以上を踏まえて・・・後編では、本症例の疑義照会をする/しない、抗菌薬について、患者さんに説明することは?その他気付いたことを聞きます。1)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.

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第12回 びまん性汎細気管支炎にマクロライド系抗菌薬が長期投与されるのはなぜ?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗菌薬は必要なときに短期間処方されるのが一般的ですが、例外もあります。その代表的なものが、マクロライド系抗菌薬の長期投与です。COPDや非嚢胞性線維症性の気管支拡張に対して行われることも多い治療法ですが、今回はびまん性汎細気管支炎(Diffuse panbronchiolitis:DPB)に対するマクロライドの少量長期療法について紹介します。DPBは呼吸細気管支と呼ばれる細い気管支を中心に慢性炎症が起こり、咳や痰、呼吸困難が生じる疾患で、ほとんどの場合で慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を合併するのが特徴的です1)。日本人を含む東アジア人に多く、男女差はなく、40~50代が好発年齢です2)。もともとは未治療の場合、診断から5年以内に約50%が死亡するというきわめて予後の悪い疾患でしたが3)、マクロライドの少量長期療法が行われるようになって死亡率が急速に低下しました4)。日本発の治療法で、その効果が判明したのは1980年代になってのことです。それでは、数ある抗菌薬の中でもなぜマクロライド系抗菌薬がDPBに有効なのでしょうか。その説明として考えられているのが、その抗炎症作用です。抗菌作用も期待できるとは思われますが、DPBにおける投与量は通常よりも少なく、一般的な重感染症最小発育阻止濃度を下回っているので、主に抗炎症作用を期待しての治療なのでしょう。抗炎症作用といっても多くの説があり、バイオフィルム形成、免疫調整、肺胞マクロファージによる食作用の亢進作用などが知られています。一般にマクロライド系抗菌薬は、肺胞マクロファージによって細胞内に濃縮されやすく、血清濃度よりもクラリスロマイシンで約400倍、アジスロマイシンで約800倍高いレベルになるとされていて、これが比較的低用量で奏効する理由と考えられています5)。コクランのシステマティックレビューにおいてもDPBに対するマクロライド少量長期療法の効果が検証されています6)。システマティックレビューといっても、レビューへの組み入れ基準は「DPBに対するマクロライドの効果と安全性を検討したランダム化比較試験(RCT)ないし準ランダム化比較試験」で、RCTではない観察研究や対照群のない研究が除かれた結果、最終的に残ったRCTは1件だけでした。その内容は、20~70歳(平均年齢50歳)のDPB患者19例のうち12例をエリスロマイシン600mg/日の長期投与群、7例を無治療群に割り付けて比較したというものです。エリスロマイシン群の全例において、CT画像はベースラインからの改善がみられた一方、対照群では71.4%が悪化、28.6%が変化なしという結果でした。レビュー内でエビデンスの質は低いとされていますが、予後の悪い疾患でこれほどの差が出ていることは注目に値するのではないでしょうか。14員環、15員環なら有効性は高いが、16員環は無効エリスロマイシン以外の長期療法についても紹介しましょう。10例のDPB患者を組み入れ、クラリスロマイシン200mg/日で4年間治療したオープンラベルの研究です。肺機能検査などの項目は、ほとんどの被験者で6ヵ月以内に有意な改善がみられています。また、重大な副作用は認められず、長期間安全に服用できることが示唆されました7)。エリスロマイシンやクラリスロマイシンは14員環のマクロライドですが、15員環のアジスロマイシンにおいてもDPBに対する効果を検討した試験があります。51例のDPB患者を対象とした研究では、アジスロマイシン500mg/日を静注で1~2週間投与した後、1日1回経口服用で3ヵ月継続し、さらに週に3回経口服用を6~12ヵ月継続したところ、臨床的治癒は27.5%、改善は70.6%で、5年生存率は94.1%でした8)。また、別の研究では、アジスロマイシンを60例の患者に250mg/日を週2日3ヵ月間投与したところ、多くの被験者で喀痰量および呼吸困難が減少し、有効率は84.6%でした9)。なお、16員環を有するマクロライド(ジョサマイシンなど)はDPBに無効と考えられており、ガイドラインにおいても推奨されていません2)。長期療法と言われると気になるのはどのくらい長期かということですが、その最適な期間は明確には定まっていないようです。紹介してきた臨床試験においては、ほとんどの患者さんにおいて最低6ヵ月程度は継続され、大部分は治療開始2年後までには中止に至っています。基本的には、臨床症状、X線写真所見、および肺機能測定値が改善または安定するまでということになるようです。もちろん中止後も、呼吸困難、咳、痰の程度についてモニタリングすることが望ましく、再び気管支拡張症や副鼻腔炎のような徴候が出た場合には治療が再開される可能性があることには留意しておくとよいでしょう。また、マクロライド系抗菌薬にはモチリン様作用が知られているので、低用量であっても下痢が生じる可能性があります。モチリンは消化管の蠕動運動を活発にするホルモンですが、マクロライドも同様に消化管運動を活発にすることが報告されています10)。したがって、腸内細菌叢のバランスが崩れるという以外の理由で下痢や腹痛が生じることがあり、とくに服用当日など早期に生じる下痢はこの作用による可能性が高いとされています。便秘の方には逆によいケースもあるかもしれませんが、服薬指導時に説明しておくほうが安心かと思います。1)日本呼吸器学会 びまん性汎細気管支炎2)JAID/JSC感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―3)Kudoh S, et al. Clin Chest Med. 2012;33:297-305.4)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1998;157(6 Pt 1):1829-1832.5)Steel HC, et al. Mediators Inflamm. 2012;584262.6)Lin X, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD007716.7)Kadota J, et al. Respir Med. 2003;97:844-850.8)Li H. et al. Intern Med. 2011;50:1663-1669.9)小林 宏行ほか. 感染症学雑誌. 1995;69:711-722.10)Broad J, et al. Br J Pharmacol. 2013;168:1859-1867.

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第15回 内科からのエリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Campylobacter coli属・・・11名全員Salmonella Enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス)・・・1名Escherichia coli(大腸菌)・・・1名Arcobacter属・・・1名Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)・・・1名腹痛、下痢、鶏肉から 奥村雪男さん(薬局)カンピロバクター属が原因菌と予想されます。下痢と腹痛から市中腸管感染症で、加熱不十分の鶏肉を食べたこと、検査はおそらくグラム染色だったのではないでしょうか。カンピロバクターのグラム染色での感度は30%程度のようですが、特異度が高いので確定診断に至ったのだと考えます。カンピロバクターは一般的には補液などの対症療法で自然軽快することがほとんどとされていますが、早期治療による菌の排出期間短縮と症状軽減があったとの報告があります1)。キノロン系薬剤への耐性化が進んでいるため、マクロライド系薬剤が第一選択であり、下記が推奨されています1)。クラリスロマイシン経口 1回200mg 1日2回 3~5日間アジスロマイシン経口 1回500mg 1日1回 3~5日間エリスロマイシン経口 1回200mg 1日4回 3~5日間Q2 患者さんに確認することは?どのような検査をしたか わらび餅さん(病院)できればどのような検査をしたか聞きます。培養ではっきり菌を特定するには、通常は数日かかるからです。下痢と腹痛が主訴ですが、可能なら血便など重症だと判断する情報があるのか聞きたいです。潰瘍性大腸炎の可能性も? 中堅薬剤師さん(薬局)併用薬と副作用歴です。また、可能であれば潰瘍性大腸炎の除外診断を医師がしているかどうかも確認したいです。今回は検査結果があるので可能性はあまりないと思いますが、開業医が第六感で「感染性腸炎」と誤診し、潰瘍性大腸炎が重症化することが非常に多い、と広域病院の消化器科医の講演を聞いたことがあります。必要に応じて、潰瘍性大腸炎の可能性も考慮して対応することが重要だと考えます。併用薬について 荒川隆之さん(病院)併用薬を必ず確認します。エリスロマイシンはCYP3A4で代謝される薬剤と併用した場合、併用薬の代謝が阻害され血中濃度が上昇する可能性があります。また、P糖タンパクを介して排出される薬剤と併用した場合、併用薬剤の排出が阻害され血中濃度が上昇する可能性があります。ピモジドなどの併用禁忌の確認 奥村雪男さん(薬局)エリスロマイシンはマクロライド系抗菌薬の中でもCYP3A4 阻害作用が強いので、ピモジドなどの併用禁忌薬剤を服用していないか確認します。マクロライド系抗菌薬のCYP3A4阻害様式はMBI(Mechanical based inhibition)で、服用開始から数日程度で阻害作用が最大になり、服用終了から数日程度で阻害作用は消失すると考えられます2)。そのため、服薬終了後も併用薬に注意が必要です。自炊かどうか 児玉暁人さん(病院)可能なら鶏肉をどこで食べたか確認します。飲食店なのか自宅で自炊をしてなのか。一人暮らしで自炊しているのであれば、しっかり加熱する、二食肉は他の食品と調理器具や容器を分けて処理や保存を行う、食肉を取り扱った後は十分に手を洗ってから他の食品を取り扱う、食肉に触れた調理器具などは使用後洗浄・殺菌を行うなどのアドバイスができるかもしれません。Q3 疑義照会する?する・・・5人エリスロマイシンの用量 キャンプ人さん(病院)エリスロマイシンの1 回用量が多いように思うので、確認します。ガイドラインでは1回200mg 1日4回 3~5日間1)とされています。重症でなければ自然軽快する場合が多い 清水直明さん(病院)カンピロバクター腸炎の場合、重症でなければ抗菌薬の投与なしで自然に軽快する場合がほとんどです。処方医と信頼関係ができていれば、説明した上で「抗菌薬は不要かもしれません」と提案するでしょう。他剤への変更 JITHURYOUさん(病院)本症例は、重症感がなくカンピロバクター自体は自然軽快することが多いため、抗菌薬は不要ではないかと感じます。それでも医師が抗菌薬は必要だとするなら、現時点で消化器症状があるのでクラリスロマイシンに変更提案します。エリスロマイシンより消化器作用が少ないこと、添付文書上の適応のためです。併用薬がある場合には、相互作用の少ないアジスロマイシンに変更提案します。可能なら抗菌薬処方なしにもっていきたいです。しない・・・6人3日間投与は適切 中堅薬剤師さん(薬局)ガイドラインには、カンピロバクターは世界的にキノロン系薬の耐性化が進んでおり、マクロライドを第一選択にすると記載されています1)が、マクロライド耐性も問題化しつつあるようなので、まず3日間投与は適切ではないでしょうか。エンピリック処方かどうか わらび餅さん(病院)患者さんの聞き取りを踏まえ、カンピロバクターと予想した上でのエンピリック処方だと判断できれば、疑義照会しません。ただし、原因菌と特定されていればエリスロマイシンの用法を確認します。もし、アドヒアランスなどを考慮して用法を1日3回としていたら、アジスロマイシン1日1回でもよいのでは、と聞ければ聞きます。海外での使用例やPAE※も考慮 ふな3さん(薬局)エリスロマイシンは半減期が1.5時間程度と短めのため、1日3回ではちょっと不安ですが、カンピロバクターへの適応はないものの米国などでは1,000mg/2×などの処方もあるようです。PAEも期待できることから、疑義照会はしないと思います。※post-antibiotic effect。血中や組織中から抗菌薬が消失しても、一定期間、病原菌の増殖が抑制される効果1日3回が難しければ処方提案 児玉暁人さん(病院)エリスロマイシンの1回量が多く、回数も3回ですが、適宜増減の範囲内と考え、疑義照会はしません。ただし、1日3回の内服が難しそうであればクラリスロマイシン1回200mg 1日2回 3日分の処方提案をします。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?しっかり飲みきること キャンプ人さん(病院)指示されている期間しっかり服用することです。また、エリスロマイシンのモチリン様作用(消化管運動亢進作用)により、消化管の蠕動運動が活発になることを説明しておきます。服用時間について ふな3さん(薬局)1回目の分はすぐに飲み始めること。2回目は6時間程度あけて服用。1日3回、3日間飲みきることを伝えます。下痢についての説明 清水直明さん(病院)「今回、下痢止めは出されていませんが、下痢止めを服用しなくても数日で回復してくると思います。治りを遅くすることがあるので、市販の下痢止めは服用しないでください。」脱水に注意 JITHURYOUさん(病院)現時点で重症感はなさそうですが、水分補給して脱水に注意し、安静にするよう伝えます。はっきりと重症化しないとはいえませんが、年齢的に考えてみても整腸剤だけで経過観察でもよかったかもしれませんね。他院受診時にお薬手帳を持参 奥村雪男さん(薬局)今回の抗菌薬は服薬終了後も数日間程度飲み合わせに注意が必要なので、他院にかかる場合はお薬手帳を持参することを伝えます。Q5 その他、気付いたことは?ボツリヌス毒素の可能性も? ふな3さん(薬局)「古いパックの食品も疑われた」という言葉から、ボツリヌス毒素の疑いもあったのかもしれません。また、カンピロバクターからのギランバレー症候群の発症のリスクもあるため、下記のような症状が出たら、すぐに医師に連絡するよう伝えたいです。口内乾燥、嚥下困難、複視、視力低下(ボツリヌス中毒)四肢の脱力(ボツリヌス中毒、ギランバレー)エリスロマイシンの処方意図 柏木紀久さん(薬局)今回の症例はあまり抗菌薬の必要性を感じませんが、排菌の促進や消化管運動の促進を期待して3日分の処方かな?と思いました。ギランバレー症候群と菌血症 奥村雪男さん(薬局)カンピロバクター感染症の合併症に、ギランバレー症候群と菌血症が知られています。0.1%以下でギランバレー症候群の報告があり、感染後2~3週後に発症するようです3、4)。発症はまれなので不安をあおらないように伝えません。菌血症は1%程度に報告があり4)、高齢者に多いようです。若年では検査陽性になるころには自然治癒するようで、あまり心配ないかもしれませんが、知識として持っておく必要があると思います。後日談(担当した薬剤師から)調剤した日の閉局間際に「薬を飲んだら、余計にお腹の調子が悪くなりました。どうしたらいいですか?」と電話がかかってきました。実は、薬を渡すときにモチリン様作用の説明をするのを忘れていたことに気付きました。「原因の菌を退治するだけでなく、胃腸の動きを活発にさせる作用もあるお薬ですので、自然とその症状は治まります。菌の排出も早まりますので、辛抱して内服を続けてください」と返事をしました。無事治療が終了したのか、後日の来局はありませんでした。1)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015―腸管感染症―. 一般社団法人日本感染症学会、2016.2)鈴木洋史監. これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践. 東京、じほう、2014.3)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.4)酒見英太監. ジェネラリストのための内科診断リファレンス. 第1版. 東京、医学書院、2014.[PharmaTribune 2017年6月号掲載]

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乾癬のようにみえて違う難治性皮膚疾患の掌蹠膿疱症

 2018年11月2日、ヤンセンファーマ株式会社は、都内において難治性皮膚疾患である「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」に関するプレスセミナーを開催した。セミナーでは、国内に患者が13万人ともいわれる本症の概要、疫学、治療法について説明が行われた。なお、同社では、既存の乾癬治療薬グセルクマブ(商品名:トレムフィア)の掌蹠膿疱症への適応追加につき、厚生労働省薬事・食品衛生審議会に11月8日に報告を行っている。掌蹠膿疱症は乾癬とは区別される慢性皮膚疾患 「掌蹠膿疱症」をテーマに村上 正基氏(愛媛大学大学院医学系研究科分子機能領域 皮膚科学 准教授)を講師に迎え、本症の概要についてレクチャーが行われた。 掌蹠膿疱症は、手掌や足底に生じる無菌性の膿胞を主徴とする慢性皮膚疾患であり、乾癬とは区別され、わが国では1958年よりこの疾患概念で診療が行われている(海外では膿疱性乾癬の限局型と捉えられ、世界的なコンセンサスは現在も得られていない)。 疫学情報として、男性よりもやや女性に多く、男女ともに30~50歳代で好発し、地域差はなく、特徴として女性患者の約9割、患者全体では約8割が喫煙者であるという。全国で約13万人の患者がいると推定されている。 掌蹠膿疱症の原因としては、病巣感染(歯周病、扁桃炎、中耳炎など)、喫煙、TNF-α阻害薬などの誘因が挙げられているが、明確な機序はわかっていない。患者の訴えでは、身体が疲労し、免疫力が落ちている状態のときに発症または悪化するという声も多い。 皮膚病変では、手掌や足底に最初に小水疱が生じ、膿疱に変化する。その後、周囲の皮膚にも紅斑、鱗屑がみられるようになり、紅斑落屑局面が混じった状態になる。周期的に良悪を繰り返し、痒み、ひび割れ、痛みを生じさせる。夏季に悪化することが多く、患者では落屑などから外見への精神的負担が大きいため、社会生活が阻害される例もある。また、足底などに症状が出た場合、歩行が困難となりQOLにも多大な影響を及ぼすケースもある。経過中に肘や膝、足背などに乾癬様皮疹を生じる掌蹠外病変も散見され、爪病変を伴うこともある。そのほか合併症では、胸鎖肋関節痛や甲状腺疾患、糖尿病、IgA腎症を伴うこともある。乾癬と間違いやすい掌蹠膿疱症の診断の手掛かりは多数 掌蹠膿疱症の診断では、視診による手掌や足底の水疱・膿疱の所見確認を行う。ダーモスコープによる診断では、水疱と膿疱が混在し、水疱の中央に小膿疱のあるpseudo-vesicleがみられる。掌蹠膿疱症は一見、乾癬とよく似ているが、皮疹を拡大すると、肉眼的に観察されにくい小膿疱も確認でき、この点で区別できるという。また、臨床検査所見では、特異的な指標となるものはないが、そのため除外診断で役立つ。鑑別疾患では、足白癬、汗疱、膿疱性乾癬などの疾患との鑑別が必要とされる。 掌蹠膿疱症の治療では、発症や悪化因子が明確な場合、根治を目指して病巣感染の治療などを行う。皮疹に対しては、外用薬が基本となる。 外用薬による治療では、手掌や足底の水疱・膿疱へステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬を併用する(軽症では活性型ビタミンD3外用薬単独)。治療中は2~4週に1回はフォローアップし、もし皮膚への刺激感が認容できない場合は中止する。内服薬ではレチノイドが処方されるが、催奇形性があるので処方では注意が必要。また、中波長紫外線療法では、外用薬の効果が限られる場合に行われ、ナローバンドUVBやエキシマを使用し、週1~3回行われる。以上が現在保険適用とされている治療となる。 これら以外にも抗アレルギー薬、抗菌薬、コルヒチン、生物学的製剤などの処方による掌蹠膿疱症の治療もあるが、いずれも保険適用外の治療となる。そのほか、ビオチン療法が提唱されているが、エビデンスがなく推奨はされていない。 入院適応はまれではあるが、合併症の関節症状がQOLに影響している場合、感染病巣として慢性扁桃炎が疑われ、この摘出手術を受ける場合などは入院となる。 最後に同氏は掌蹠膿疱症治療のアルゴリズムを示し、「悪化因子として扁桃炎や歯性病巣は重要。同じく骨・関節症状の有無もきちんと診断し、ケースによってはCTやMRI検査によりVASスコアによる痛みの評価も患者にとっては必要となる。治療ではこの20年近く新しい治療薬が開発されていないこともあり、患者の容態によっては保険適用外と断ったうえで、別の治療薬で苦痛を除くことも必要だ」と語り、レクチャーを終えた。

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