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水曝露後の皮膚軟部組織感染症【1分間で学べる感染症】第39回

画像を拡大するTake home message水曝露後の軟部組織感染症では、典型的な皮膚軟部組織感染症の起因菌である黄色ブドウ球菌やβ溶血性連鎖球菌に加え、特殊な起因菌が原因となる場合があることを理解しよう。通常の皮膚軟部組織感染症では、黄色ブドウ球菌やβ溶血性連鎖球菌が原因となることは皆さんもご存じだと思います。とくに水辺での外傷や動物との接触、魚介類の処理中の創傷などでは、水環境に特有の原因微生物を考慮する必要があります。起因菌を覚えるための語呂として知られているのが「AVEEM」です。A:Aeromonas hydrophilaAeromonas hydrophilaは、淡水中に広く存在するグラム陰性桿菌です。とくに夏季に多く、川や湖、洪水、溺水などの状況で感染することがあります。外傷部位から侵入し、急速に進行する蜂窩織炎や壊死性軟部組織感染症を引き起こすことがあります。潜伏期間は比較的短く、24~48時間以内に発症することが多いとされています。V:Vibrio vulnificusVibrio vulnificusは、温暖な海水環境に生息する菌で、海水への創傷曝露や牡蠣などの生食によって感染することがあります。とくに肝硬変を中心とした肝疾患を有する男性では重症化しやすいことが知られており、壊死性筋膜炎や敗血症を伴うことがあります。潜伏期間は3時間~7日程度で、重症例では急速に進行するため、早期診断が重要です。E:Edwardsiella tardaEdwardsiella tardaは主に淡水に生息する菌で、魚類との接触やナマズの棘刺傷などが感染契機となることがあります。免疫抑制状態や肝疾患を有する患者では重症感染のリスクが高くなる可能性があります。潜伏期間は24~48時間と比較的短いのが特徴です。E:Erysipelothrix rhusiopathiaeErysipelothrix rhusiopathiaeは魚や海産物に関連する菌で、魚をさばく作業中の創傷からの感染例が多く報告されています。臨床的には「erysipeloid」と呼ばれる局所皮膚感染症を引き起こすことがあり、潜伏期間は24~48時間程度です。M:Mycobacterium marinumMycobacterium marinumは水槽や海水環境に存在する非結核性抗酸菌で、「fish tank granuloma」として知られる慢性感染を引き起こします。水槽清掃中の小外傷や海洋生物(カニ、ウニなど)による刺傷が感染契機となることがあります。潜伏期間は1週間~数ヵ月と長く、平均21日程度とされています。水曝露後の皮膚軟部組織感染症では、「どこで受傷したか」「淡水か海水か」「魚や海洋生物との接触があったか」といった曝露歴が診断のカギになります。AVEEMという語呂を覚えておくことで、これらの特殊な起因菌を想定し、適切な抗菌薬選択につなげることができる可能性があります。ぜひ、これらそれぞれの菌について学習を深めてください。1)Soft tissue infections following water exposure/UpToDate

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最適な輸液ルート選択の考え方 その壱【ケースで学ぶ輸液オーダー】第2回

最適な輸液ルート選択の考え方 その壱これから集中治療を行う患者さんに対して、「どこから、何のために、どんなルートを確保するのが安全か」ということをあまり考えずに、先輩医師のやり方を見てなんとなく慣習で選んでいたということは少なくないかもしれません。今一度、輸液ルート選択の思考回路を一緒に整理してみましょう。症例肺炎によるI型呼吸不全、敗血症性ショックでICUに入室した患者さんに対応するよう、指導医とともに緊急呼び出しされた初期研修医A君。酸素10L/分(マスク)、両側肘正中皮静脈から18Gを1本ずつ確保、両側とも細胞外液補充液を急速投与中、それでも血圧80/40mmHg、脈拍120/分、呼吸回数30回/分、SpO2 88%、ショックと低酸素血症が持続しています。迅速導入気管挿管(rapid sequence intubation)を行い、人工呼吸管理となりました。指導医は「あとは頼んだよ」と言って去っていきました。挿管後、患者さんは強い体動を認め、上肢をばたつかせています。ショックの治療と並行して持続的な鎮静・鎮痛が必要です。併存症に糖尿病があり血糖800mg/dL、さらに播種性血管内凝固症候群(DIC)も合併しています。さて、A君は次に何を行うべきでしょうか?考えかたの整理集中治療では、複数の薬剤・輸液を同時並行で安全に投与する必要があります。想定される投与内容は、ショックに対する細胞外液補充液・昇圧薬、人工呼吸中の鎮静薬・鎮痛薬、抗菌薬、維持輸液(将来的に栄養輸液に移行する可能性あり)、インスリンなどです。ここで大切なことが3つあります。1. 流量変動の影響を受けてはいけない薬剤がある例:昇圧薬、鎮静薬・鎮痛薬、インスリン持続投与などこれらは流量が変わると、血圧や鎮静レベル、血糖値が一気に変動するため、急速に注入するラインと同じラインにすべきではありません。2. 配合変化がありうる例:オメプラゾール、セフトリアキソン、アミオダロンなど他剤との混合で沈殿・失活が起こる薬剤があるため、不明な場合は必ず薬剤師に相談しましょう。ちなみに輸血と同一ラインで流せるのは生理食塩液のみです。3. 末梢で理論上可能でも現実的ではないことがある理論上、すべて末梢静脈から投与可能な薬剤でも、必要な薬剤が多すぎて、メイン点滴ルートの側管などを駆使しても現実的にすべて末梢から行えない場合もあります。その場合は、ルートの本数かせぎに複数のルーメンを持つトリプルやクワッドルーメンの中心静脈カテーテル挿入が必要です。中心静脈カテーテル挿入の主な適応は、(1)末梢静脈の確保困難、(2)薬剤の多剤併用、(3)刺激性、腐食性、高浸透圧性の薬剤投与(抗がん剤、昇圧薬、50%ブドウ糖、高カロリー輸液など)、(4)血行動態のモニタリング(スワンガンツカテーテル挿入、中心静脈圧測定などの圧モニター)です。本症例は、(2)多剤併用、(3)昇圧薬投与が該当します。本症例の対応本症例には以下の輸液、薬剤の投与が必要です。ショック:細胞外液補充液、ノルアドレナリン人工呼吸中の鎮静、鎮痛:プロポフォール、フェンタニル敗血症:抗菌薬維持輸液(将来的に中心静脈栄養に移行する可能性あり)インスリン(持続投与)本患者は強い体動を認めているため、現在の両側肘静脈ラインは今にも抜けそうで不安定であり、流量管理が困難かつ薬剤が組織侵襲性のある薬剤を投与すると血管外へ漏出する恐れがあります。以上から、組織侵襲性のある薬剤や一定の流量で投与すべき薬剤を複数かつ安全に投与する目的で、マルチルーメン中心静脈カテーテル挿入が必須です。中心静脈カテーテルの挿入部位はさまざまでそれぞれ長所・短所がありますが、本症例はDICを合併していることから止血の確実性が重要であり、動脈誤穿刺時の圧迫止血の容易さを考えると、内頸静脈または大腿静脈が有利です。ただし、清潔性・感染管理・将来の離床を考えると、右内頸静脈が第1選択となることも多いでしょう。もちろん、超緊急時は理想に固執せずに最も得意な部位から確実に挿入することも許容されます。図1 中心静脈カテーテル各挿入部位の利点、欠点1)画像を拡大する本症例はベテランICUナースによって図2で示す投与経路が組み立てられました。医師が投与経路の組み立てを自ら行うことはまれですが、たとえば昇圧薬、鎮静薬や鎮痛薬、時間をかけて静注する必要のある薬剤にグループ分けするなど、看護師が多くの薬剤を限られたルートからいかに工夫して投与しているか、そのオキテに着目するのは勉強になります。図2 本症例における輸液・薬剤投与経路の実際2)画像を拡大する目的に見合う最適な輸液ルートやカテーテルを選択しましょう。混ぜても大丈夫?注射薬は単独での使用を想定し開発されていますが、臨床現場では輸液バッグやルート内で配合されて投与される場合が多く、配合変化の危険が存在します。配合変化とは、2種類以上の注射薬を混合した際に生じる変化であり、物理的配合変化(例:混濁・沈殿)と化学的配合変化(例:有効成分の力価低下)に分けられます。配合変化による影響としては、力価の低下やルート閉塞、まれではありますが国外において死亡例が報告されています3)。ICUでは複数の静注薬を限られたルートの中で同時投与せざるを得ない状況があります。そのため、最適なルート選択をする上で配合変化の有無の確認は欠かせません。施設によっては配合変化表を作成し、ICUに配置していると思います。ルート選択の際に活用することにより、配合変化の頻度を下げる可能性が報告されており4)、有用なツールです。最後に、ルート管理において注射薬から内服薬への変更や不要な薬剤の中止を検討することも大事な視点になります。安易に継続処方とせず、薬剤の投与方法についても検討するようにしましょう。図3 (左)坂総合病院ICUの配合変化の問い合わせ記録集、(右)坂総合病院救急室の配合変化の有無の一覧表画像を拡大する1)Marino PL. ICUブック第4版. MEDSI;2015.p15-33.2)濱野繁. 10薬剤投与. In:道又元裕. これならわかるICU看護:照林社;2018.p.159.3)セフトリアキソンナトリウム 添付文書4)Kondo M, et al. J Nippon Med Sch. 2022;89:227-232.

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薬剤師による尿培養陽性患者のフォローアップが抗菌薬の適正使用を支援

 薬剤師が主導するフォローアッププログラムが尿培養陽性となった患者における抗菌薬の適正使用を改善した。 この後ろ向きコホート研究では、救急外来(ED:emergency department)または緊急治療センター(UC:urgent care)を受診した際に尿培養検査で陽性反応が出た成人女性患者を対象とした。薬剤師がフォローアップと症状評価のために連絡を取り、尿路症状のある患者には抗菌薬療法を開始または変更し、症状のない患者には新たな抗菌薬処方は行わなかった。・対象:EDまたはUCを受診した際に尿培養検査で陽性反応が出た成人女性患者・尿路症状のある患者:抗菌薬療法を開始または変更(標準治療:SOC群)・症状のない患者:新たな抗菌薬処方は行わない(介入群)・主要評価項目:追跡後30日以内に症候性尿路感染症を治療した割合・副次評価項目:薬剤師の業務量評価、30日以内の有害事象およびClostridioides difficile感染症の両群間比較など 主な結果は以下のとおり。・対象患者は合計214例で、内訳はSOC群97例、介入群117例であった。・初回受診時、SOC群の患者の83.5%が尿路症状を報告したのに対し、介入群では53%であった(p<0.001)。・経験的抗菌薬処方は両群で同様であった(SOC群37.1%、介入群25.6%、p=0.392)。・追跡調査30日以内に症候性尿路感染症を治療した割合は、SOC群14.4%、介入群11.1%で統計的な差は認められなかった(p=0.466)。・追跡調査は退院後平均2.5日後に行われ、電話連絡の中央値は1回、連絡と記録に要した時間は中央値で15分であった。 今回の研究結果は、尿培養陽性であっても無症状の患者に対しては、フォローアップ時に抗菌薬を処方しないことが、EDおよびUC患者における不必要な抗菌薬曝露を防ぐための適切な抗菌薬適正使用介入であることを支持している、と筆者らは述べる。

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爪白癬治療薬の推奨度に変化「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」

 新たな白癬菌抗原キットの保険収載、爪白癬に対する経口抗真菌薬のエビデンスの蓄積、耐性株の出現などを背景に、6年ぶりの改訂版となる「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」が2025年12月に公開された。ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福田 知雄氏(埼玉医科大学総合医療センター)に、改訂のポイントと実臨床での活用について話を聞いた。足白癬・爪白癬の患者数は70代にピーク、80代以上の患者が増加 現在、日本人の7人に1人が足白癬、13人に1人が爪白癬に罹患していると推測される。このデータは16年ぶりに実施された足白癬・爪白癬の潜在罹患率調査(Foot Check 2023)1)によるもので、前回調査(Foot Check 2007)と比較すると減少傾向にある。この減少については、2023年の調査がより厳しい確定診断の条件を課していたことによる影響、新規抗真菌薬の治療効果により潜在罹患率が減少した可能性が考えられるという。 また、5年ごとに実施される全国調査の最新結果(2021年)2)では、足白癬・爪白癬の患者数はともに70代にピークがみられ、80代以上の足白癬患者は前回調査と比較して12.1%から16.7%に、爪白癬患者は17.6%から21.9%へ増加している。福田氏は、同調査結果のこれまでの経年変化をみても、足白癬・爪白癬ともに患者の高齢化傾向が続いていると指摘した。新たな白癬菌抗原キットの使いどころ 2022年、新たな白癬菌抗原キット(商品名:デルマクイック爪白癬)が保険収載された。同キットは、抽出液で爪甲中の白癬菌抗原を抽出し、免疫クロマトグラフィーの原理で検体中の白癬菌抗原を検出するもの。福田氏は「真菌検査の主軸はKOH直接顕鏡と真菌培養であることに変わりはない」とし、ガイドラインでも同キットはKOH直接鏡検の補助検査として位置付けられている。 KOH直接顕鏡は簡便で繰り返し検査可能な優れた検査であるが、経験豊富な医師では検出率が高くなる一方、不慣れな医師の場合は検出率が低くなる傾向がある。福田氏は、「同キットは検体採取の熟練度や菌の特性によらず検出が可能なため、併用することで不慣れな医師は誤診を減らすことができ、経験豊富な医師にとっても偽陰性を防ぐために活用できる」と話した。顕微鏡のない施設や訪問診療などでも、迅速なスクリーニングのための活用が期待される。爪白癬へのイトラコナゾールは推奨度Bに、ホスラブコナゾールはエビデンス増 爪白癬に対する内服薬として、前版ではテルビナフィン、イトラコナゾール、ホスラブコナゾールの3剤がいずれも推奨度A(行うよう強く勧める)と判定されていた。3剤を直接比較したデータはないものの、テルビナフィンとの比較においてイトラコナゾールはやや有効性が劣るという報告があること、併用禁忌・併用注意薬が非常に多いことから、今回は推奨度B(行うよう勧める)に引き下げられた。 2018年に発売されたホスラブコナゾールについては、前版発行後にいくつかのリアルワールドデータが報告され、いずれも臨床試験と同等あるいは上回る有効率が確認された。75歳以上の高齢者を対象とした試験、難治性・再発症例への追加投与・再投与について検討した試験においても有効性と安全性が確認されている。福田氏は、「他の薬剤にもいえることだが、推奨期間の投与を終えても治癒しない症例がある。ホスラブコナゾールの場合、12週の投与で治癒が期待できる症例は6割程度とされる。治りきらない症例においてどのような対応をすればよいのかがエビデンスとして示された点は大きい」と話す。テルビナフィンとの比較においては、薬価が大きく異なる点にも留意が必要となる。内服可能な症例には、まず内服薬でしっかり治すことが原則 現在爪白癬に対する外用薬として選択できる2剤については、ともに有効率は15%前後とされるが、実臨床では外用薬が優先して使われている。外用薬はリスクが低く使いやすいが、有効率は内服薬のほうが明確に高いことが示されており、福田氏は「外用薬と内服薬どちらも投与可能な患者さんに対しては、まず内服薬を使うことを推奨したい」と話した。ただし、高齢患者が増えている中で、多剤併用の観点などから外用薬を選択するケースもあるとし、「外用薬で治療を開始して、治癒が得られなかった場合に内服薬に切り替えるという選択もありえる」とした。ペット由来など、近年注意が必要な原因菌 現状、耐性株の出現率は日本では低く、実臨床では1~3%と推定される。注意が必要なのはテルビナフィンに対する耐性株だが、アゾール系(イトラコナゾール、ホスラブコナゾール)に対する耐性株も今後出てくる可能性はあり、福田氏はその可能性を認識しておくことが重要とした。今回のガイドラインでは各CQで耐性株に対するコメントも記載されている。 原因菌に関して、近年分類法が変更・精度が向上し、名称や分類が一部変更されている。今回のガイドラインでは、「留意すべき皮膚真菌症」として以下の4項目について記載が追加された。1.動物から感染する皮膚真菌症 ペットの多様化などにより、ヒトからヒトへの感染だけでなく、動物からの感染もあるということを認識しておく必要がある。例:ペットのデグーに由来するTrichophyton benhamiae var. luteum、ネコからのSporothrix globosaなど(本邦での報告はなし)2.Trichophyton tonsurans感染症 本邦では2000年頃より柔道、レスリングなどの格闘技選手間での集団発生が多発した。近年報告症例は減少しているものの、撲滅はできていない。3.耐性菌の中心となる可能性のあるTrichophyton indotineae 本邦に在留中のインド人の体部白癬から分離された。海外で安価で入手されるステロイド外用薬と抗真菌薬、抗菌薬配合のOTC外用薬の乱用が感染拡大に関与している可能性が指摘されており、本邦でもTrichophyton indotineaeによる体部白癬を繰り返す症例の報告が徐々に増加している。4.死亡率の高い侵襲性医療関連感染症を引き起こすCandida auris 本邦で見つかった株だが、世界的に急速に拡大している。現在は本邦では少数ではあるが分離はされており、認識しておく必要がある。

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日本人の腸内細菌叢、世界と異なる特徴は?

 ヒトの腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は、宿主の免疫や代謝、健康状態と密接に関わっている。東京大学の西嶋 傑氏らの研究グループは、日本人5,000人以上の腸内メタゲノムデータを解析し、世界37ヵ国と比較した。その結果、日本人の腸内細菌叢にはビフィズス菌が豊富であり、9割が海藻の分解酵素を持つという独自の特徴や、腸内細菌叢の構成には特定の薬剤が大きく影響することなどが判明した。Proceedings of the Japan Academy, Series B誌2026年2月号に掲載。 本研究では、疾患(Disease)、薬剤(Drug)、食習慣(Diet)、アルコール、喫煙、睡眠などの生活習慣(Daily life)、などの詳細な情報と腸内細菌データを統合して収集した大規模オミクス研究基盤である「Japanese 4Dマイクロバイオームコホート」を用いて、日本人5,466人(平均年齢65.9±13.2歳、男性56.9%)の腸内メタゲノムデータを、世界37ヵ国3万1,695人のデータを比較解析し、日本人の独自性を特定した。さらに、1,500項目以上の変数を用いて、細菌叢の多様性に寄与する要因を評価した。 主な結果は以下のとおり。・日本人の腸内には、他の高所得国と比較してビフィズス菌(Bifidobacterium属)が豊富に存在することが認められた。これは日本人に乳糖不耐症が多く、乳製品を摂取して消化されない乳糖が腸に到達し、ビフィズス菌の増殖を促進する可能性が示唆されている。・日本人において、ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解する酵素遺伝子を持つ個人の割合が約90%に達し、欧米諸国(0~16.7%)より圧倒的に多かった。・腸内細菌叢の構成には、生活習慣よりも薬剤の影響が大きかった。関連の強い順に、胃腸薬、糖尿病薬、抗菌薬/抗ウイルス薬であった。・プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は腸内細菌の多様性を上昇させる一方で、口腔内に多い細菌(レンサ球菌[Streptococcus属]、Lactobacillus属など)が腸内で増加し、日和見感染症の原因となる多剤耐性菌(肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae]、Enterococcus faecium、肺炎球菌[Streptococcus pneumoniae]など)の定着を促進するリスクが示された。・5種類以上の多剤併用により、有益な短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌(Roseburia属、Dorea属、Faecalibacterium属、Alistipes属、Coprococcus属、Eubacterium属など)が減少し、日和見病原菌が増加して、腸内細菌叢の多様性が低下することが示された。 本研究により、日本特有の文化的・遺伝的背景によって形成された、集団特異的な腸内細菌叢の特徴が示された。著者らは、とくに高齢者における不要な薬剤の使用中止を含む薬物療法の最適化が、腸内環境の健全性を維持するうえで不可欠だと指摘し、国際的な腸内細菌叢データセットの構築は、精密医療(プレシジョンメディシン)を推進する鍵となるだろうとまとめている。

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子どもの食物アレルギー、原因は遺伝だけではない

 子どもが食物アレルギーを発症するかどうかを決める要因は、遺伝子だけではないようだ。新たな研究で、抗菌薬の使用や他の免疫疾患の存在、アレルゲンとなる食品の導入が遅れることも、子どもの食物アレルギーの発症に関与している可能性のあることが示された。マクマスター大学(カナダ)のDerek Chu氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Pediatrics」に2月9日掲載された。Chu氏は、「われわれの研究結果は、食物アレルギーの傾向を遺伝だけで完全に説明することはできず、遺伝子、皮膚の健康、マイクロバイオーム、環境要因が重なり合って食物アレルギーの発症に関与していることを示している」とニュースリリースで述べている。 この研究では、6歳未満の子どもを対象にした世界40カ国の190件の研究データ(対象者は総計280万人)が分析された。食物経口負荷試験を用いた16件の研究を統合して解析した結果、IgE媒介性アレルギーの6歳までの平均発症率は4.7%と推定された。176件の研究で342種類のリスク因子が特定されていたが、エビデンスの確実性が高く、IgE媒介性アレルギーとの関連が最も強いと判断されたのは、乳児期のアレルギー性疾患の既往であった。具体的には、生後1年以内のアトピー性皮膚炎(オッズ比3.88)、アレルギー性鼻炎(同3.39)、喘鳴(同2.11)が、いずれも大幅なリスク上昇と関連していた。 また、食物アレルギーの家族歴もリスク因子であり、特に、両親(同2.07)やきょうだい(同2.36)にアレルギーがある場合にはリスクが2倍以上に上昇した。さらに、ピーナッツ、ナッツ類、卵などのアレルゲン食品の導入が遅いことも関連因子であり、例えば、1歳を過ぎてからピーナッツを食べた場合にピーナッツアレルギーになるオッズは2倍以上であった(同2.55)。このほか、妊娠中の母親の抗菌薬使用(同1.32)や、生後1カ月以内(4.11)、または1年以内(1.39)の乳児の抗菌薬使用でもリスク上昇が見られた。 一方で、食物アレルギーに関与すると疑われていた多くの要因、例えば低出生体重や予定日超過の出産、母乳育児をしていないこと、母親の妊娠中の食事やストレスとIgE媒介性アレルギーとの間に有意な関連は認められなかった。 研究グループは、「これらの結果は、食物アレルギーのリスクがある乳児を特定し、早期予防に役立つ可能性がある」と述べている。また、Chu氏は、「この結果は、食物アレルギーに対するわれわれの理解を広げるものだ。今後の研究では、同じ主要因子を測定・調整し、より多様な集団を対象とし、食物経口負荷試験をもっと活用すべきだ」と述べている。さらに同氏は、「今回の発見を実際に活かすためには、新たなランダム化臨床試験とガイドラインを早急に更新することが必要だ」と付け加えている。

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抗菌薬・PPI、NSCLCの術前ICI+化学療法への影響は?(CReGYT-04 Neo-Venus副次解析)

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)において、抗菌薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性の低下と関連する可能性が指摘されている。しかし、術前ICI+化学療法などの周術期治療に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、切除可能NSCLCに対する術前ICI+化学療法について、抗菌薬やPPIが及ぼす影響を多施設共同後ろ向き観察研究「CReGYT-04 Neo-Venus」の副次解析で評価した。その結果、抗菌薬やPPIの使用は、術前ICI+化学療法の奏効と有意な関連がみられなかった。本研究結果は、戸田 道仁氏(関西労災病院 呼吸器外科)らによって、Lung Cancer誌2026年4月号で報告された。 本研究は日本の29施設で実施された。対象は、2023年3月~2024年7月の期間に、ニボルマブ+化学療法による術前治療を開始した切除可能StageIIA~IIIBのNSCLC患者131例とした。根治的手術を受け、外科的転帰の解析対象となった113例について、治療開始前30日以内の抗菌薬やPPIの使用と奏効割合(ORR)、病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(MPR)などとの関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・抗菌薬の使用は4.4%(5例)、PPIの使用は20.4%(23例)にみられた。・抗菌薬の有無別にORR、pCR、MPRを評価した結果、抗菌薬の有無による差はみられなかった。詳細は以下のとおり(抗菌薬ありvs.なしの値を示す)。 ORR:80.0%vs.70.4%(p=1.000) pCR:40.0%vs.35.8%(p=1.000) MPR:60.0%vs.59.6%(p=1.000)・PPIの有無別にORR、pCR、MPRを評価しても、PPIの有無による差はみられなかった。詳細は以下のとおり(PPIありvs.なしの値を示す)。 ORR:78.3%vs.68.9%(p=0.532) pCR:43.5%vs.33.3%(p=0.507) MPR:60.9%vs.58.9%(p=1.000)・感度解析として、逆確率重み付け解析を実施しても抗菌薬やPPIの使用は、ORR、pCR、MPRに有意な影響を示さなかった。・多変量解析の結果、PD-L1 TPS 50%以上(オッズ比[OR]:9.660、95%信頼区間[CI]:3.493~30.405、p<0.05)およびStageII(OR:5.208、95%CI:1.895~16.075、p<0.05)がpCRの独立した予測因子であった 。・PD-L1 TPS 50%以上(OR:7.259、95%CI:2.650~23.628、p<0.05)は、MPRについても独立した予測因子であった。 本研究結果について、著者らは「切除可能NSCLC患者において、抗菌薬やPPIの使用は、術前ICI+化学療法の効果との有意な関連はみられなかった」とまとめた。また「より大規模なサンプルサイズで、長期フォローアップを伴う研究が必要である」と指摘している。

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市中肺炎への抗菌薬、72時間以内の経口剤への切り替えは安全?

 市中肺炎の入院治療において、注射用抗菌薬から経口抗菌薬への早期切り替えは、入院期間や抗菌薬投与日数の短縮につながることが報告されている。そのため、本邦の『成人肺炎診療ガイドライン2024』でも「市中肺炎治療において、症状・検査所見の改善に伴い、注射用抗菌薬から経口抗菌薬への変更(スイッチ療法)を行うことは推奨されるか」というクリニカルクエスチョンが設定され、推奨は「症状・検査所見の改善が得られればスイッチ療法を行うことを強く推奨する(エビデンスの確実性:B)」となっている1)。 米国・Iowa City Veterans Affairs Health Care SystemのLogan Daniels氏らの研究グループは、実臨床における経口抗菌薬への早期切り替えの実施状況の検討を目的として、米国退役軍人省が運営する124の急性期病院を対象とした調査を実施した。その結果、72時間以内の早期切り替えは約半数の症例で実施されており、切り替えが積極的に行われた施設と積極的ではなかった施設で、転帰に差は認められなかった。このことから、早期切り替えの安全性が改めて示唆された。本報告は、Infection Control & Hospital Epidemiology誌オンライン版2026年2月2日号に掲載された。 研究グループは、2018~23年に急性期病院に入院し、入院時に注射用抗菌薬で治療が開始された市中肺炎患者を対象として、後ろ向きコホート研究を実施した。入院後72時間以内に注射用抗菌薬から経口抗菌薬へ切り替えた患者の割合、30日以内の死亡および再入院の複合などを評価した。施設ごとの患者構成の違いを調整するため、各施設における早期切り替えの観察値/期待値(O:E)比を算出した。さらに、このO:E比に基づいて施設を四分位(Q1~Q4)に分類し、30日以内の死亡および再入院の複合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった入院3万1,183件のうち、55.4%(1万7,282件)が72時間以内に経口抗菌薬へ切り替えられた。・早期切り替えが行われた1万7,282件のうち、87.4%(1万5,113件)が3日目までに退院し、12.6%(2,169件)は3日目時点で入院継続中であった。・30日以内の死亡および再入院の複合は、全体で18.1%(5,629件)に認められた。・施設ごとの早期切り替えのO:E比は、Q1群0.78、Q4群1.23であり、施設間で実施状況に差がみられた。・施設ごとの早期切り替え実施の度合い(O:E比の四分位)別にみた場合、30日以内の死亡および再入院の複合に有意差は認められなかった。・3日目まで入院を継続していた患者において、早期切り替えが行われにくい因子として、βラクタム系薬+非定型病原体をカバーする抗菌薬の併用によるエンピリック治療(オッズ比[OR]:0.808、95%信頼区間[CI]:0.725~0.900)、広域抗菌薬によるエンピリック治療(OR:0.657、95%CI:0.594~0.727)、最近の入院(2022年のOR:0.779、95%CI:0.681~0.891、2023年のOR:0.668、95%CI:0.582~0.767)が抽出された。・早期切り替えと関連する因子としては、高齢(OR:1.009、95%CI:1.004~1.013)、フルオロキノロン単独によるエンピリック治療(OR:1.619、95%CI:1.378~1.902)が抽出された。 本研究結果について、著者らは「注射用抗菌薬から経口抗菌薬への早期切り替えが積極的に行われた施設でも、転帰の悪化がみられなかったことから、早期切り替えの安全性が示唆された。早期切り替えを推進するために、組織的な取り組みが求められる」とまとめた。

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急性単純性虫垂炎、手術か抗菌薬か?APPAC 10年追跡(解説:寺田教彦氏)

 虫垂切除術は、100年以上にわたり虫垂炎における唯一の治療法とされ、現在も虫垂炎の主要な治療法である。一方で、CTで合併症を伴わない急性単純性虫垂炎に限れば、抗菌薬による保存的治療が一定の成績を示す研究が蓄積し、近年のガイドラインでも「特定集団では選択肢になりうる」と整理されるようになった(Podda M, et al. JAMA Surg. 2026 Jan 28. [Epub ahead of print] )。 2026年1月にJAMA誌に掲載された本論文で扱われているAPPAC試験は、フィンランドの6施設で実施した非盲検無作為化非劣性試験で、2009年11月から2012年6月に、18歳から60歳までの、CTで合併症がない急性単純性虫垂炎と診断された患者を虫垂切除群と抗菌薬治療群に無作為に割り付けた試験であり、今回は10年追跡解析を報告している。これまでにも5年間の追跡の結果を報告しており(Salminen P, et al. JAMA. 2018;320:1259-1265.)、保存的治療を選択するエビデンスを提供してきたが、今回の10年追跡解析結果により、適切な患者選択を行えば、抗菌薬治療が長期経過でも安全でかつ合理的な選択肢になりうるエビデンスを追加した。 従来、抗菌薬による保存的治療が手術より劣ると懸念されていた点には、(1)保存的治療を選択時は手術を回避できても、その後に手術が必要となるのではないか?(2)手術の遅れにより合併症のリスクが増大するのではないか?(3)虫垂腫瘍の見逃しが起きないか? といった点があっただろう。 本研究結果を基に整理すると、次のようになる。(1)再発と手術回避:抗菌薬治療群の10年間の再発率は37.8%、累積虫垂切除率は44.3%で、再発や虫垂切除は主に2年以内に集中していた。つまり、再発の大半は2年以内に集中しており、半数以上の患者(55.7%)は10年後も手術を回避できていた。(2)安全性:合併症は、腸閉塞や創部感染などを含む合併症発生率が手術群で27.4%、抗菌薬群が8.5%と報告されている。適切な患者選択と経過観察を行えば、再燃がただちに重篤な合併症に直結する懸念は乏しいだろう。(3)腫瘍リスク:抗菌薬群における腫瘍発見率は0.9%(MRI追跡含む)であり、初めから手術を行った群(1.5%)と統計的な差はなかった。発見された腫瘍も低悪性度であり、待機的な手術で完治している。 本結果を日本で適用するに当たり次の2点は検討が必要かもしれない。1点目は、対照群の手術様式とそれに伴う合併症率である。本研究の手術群で合併症発生率が高い理由として、当時行われていた開腹手術に起因したヘルニアや創部感染が関与している可能性がある。現在の日本で行われる腹腔鏡を含めた手術では、合併症率がより低いことが予測され、手術の優位性は本研究より高いかもしれない。2点目は、使用する抗菌薬の種類である。本研究で使用されたertapenemは、広域抗菌薬として知られるカルバペネム系抗菌薬であり、AMRの観点などからは全例での使用は推奨しがたい。また、内服治療で使用されているレボフロキサシンは日本では大腸菌の耐性化が進んでおり、こちらは治療失敗のリスクの点から推奨しにくい場合がある。抗菌薬による治療を選択する場合も、各施設のアンチバイオグラムや患者の全身状態を参考にしながら、日本ではセフメタゾールなどの薬剤が検討されることになるだろう。

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PPIやNSAIDsの併用、ICIの有効性に影響せず

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療中、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの一般的な併用薬が治療効果に影響するとの報告があるが、その因果関係には議論がある。米国・ミシガン大学のDaria Brinzevich氏らは、米国退役軍人保健局(VHA)の全国データベースを用い、非小細胞肺がん(NSCLC)患者における一般的併用薬とICI治療成績の関連を検証した。Cancer誌オンライン版2025年12月15日号掲載の報告。 2005~23年に治療を受けたStageIVのNSCLC患者のうち、1次または2次治療でICI(n=3,739)または化学療法(n=6,585)を受けた患者を対象とした。20種類の薬剤クラス(PPI、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、抗菌薬、スタチン、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB、NSAIDs、オピオイド、ステロイド、抗凝固薬など)について「治療開始前3ヵ月内の処方」を併用と定義した。主要評価項目は全生存期間(OS)とTTNT(次治療開始までの期間)と併用薬の関連で、傾向スコアに基づく重み付けを用いたCox比例ハザードモデルで解析した。ICI群で名目上有意(p<0.05)な関連が認められた薬剤については、化学療法群でも同様の解析を行い、非特異的な影響を検証した。 主な結果は以下のとおり。・ICI群は男性が97%、60~79歳が81%、ICI+化学療法併用が45%、1次治療が71%だった。対照群(化学療法群)は多くの背景因子でICI群と類似していたが、59歳以下が24%(ICI群9.4%)と若年者が多く、併存疾患もやや少なかった。・ICI群において、20の薬剤クラスの中で15はOSと、14はTTNTと有意な関連を示さなかった。一方で、ループ利尿薬、抗凝固薬、オピオイド、ペニシリン系およびフルオロキノロン系抗菌薬はOS不良と関連した。しかし、これらの関連は化学療法群でも同様に認められ、ICIの特異的な影響ではないことが示唆された。これらの薬剤はICI群においてTTNTの悪化とも関連したが、化学療法群でも同様の関連性が観察された。・抗菌薬(1点)、PPI(1点)、ステロイド(2点)から構成される「immunomodulatory drug score」もICI群でOSおよびTTNT不良と関連したが、化学療法群でも同様の関連が認められた。すなわち、同スコアはICI効果修飾因子ではなく、一般的な予後指標である可能性が高いと考えられた。 著者らは、「本研究では、一般的に処方される併用薬がStageIV NSCLCにおけるICIの有効性を変化させることは認められなかった。従来報告されてきた併用薬とICI効果の関連の多くは、疾患重症度や基礎疾患など、未測定の交絡因子による可能性が高い。ICI治療中であっても、併存疾患の治療を過度に制限する必要はない可能性が示唆される」としている。

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飲んでないのに酔っぱらう? その原因は腸のまれな病気の可能性

 お酒を全く飲んでいないのに酔ったようになることがあるとしたら、それは「自家醸造症候群」という、腸内細菌が関与している珍しい病気のせいかもしれない。この病気の発症メカニズムの一端を解明した、米マサチューセッツ総合病院マス・ジェネラル・ブリガムのElizabeth Hohmann氏らの研究結果が、「Nature Microbiology」に1月8日掲載された。 食品中の炭水化物が消化の過程で腸内細菌の働きを受けると、ごくわずかなアルコール(エタノール)が生成されることがある。このような反応は誰にでも起こり得るが、生成されるエタノールは微量であるため酔うようなことはない。ところが、エタノールが大量に生成されてしまう自家醸造症候群という非常にまれな疾患があり、その患者は一切飲酒をしていないにもかかわらず酔いを呈することがある。 論文の共同責任著者の1人であるHohmann氏は、「この疾患は誤解されやすく、検査法や治療法もほとんどない。しかしわれわれの研究からは、糞便移植により治療できる可能性が示された」と話している。実際、糞便移植を受けた1人の患者は、移植後に症状が改善したという。同氏は、「この病気の原因となる腸内細菌を特定し、その細菌がエタノールを発生するメカニズムを明らかにすることが、診断・治療戦略の確立と患者の生活の質(QOL)向上につながるだろう」とも述べている。 研究者によると、自家醸造症候群は確かにまれではあるものの、これまでに考えられてきたほど希少ではない可能性があるという。米クリーブランド・クリニックの研究によれば、これまでの症例報告は100件に満たないが、この疾患の認知度が低いため、患者および医師も飲酒せずとも酔うという現象を認識できず、診断されていない患者が存在すると考えられるとのことだ。 Hohmann氏らは、自家醸造症候群の患者(22人)と、その患者と同居している健康な人(21人)、および患者と同居していない健康な人(22人)を対象とする研究を行った。論文には、この研究参加者数は自家醸造症候群に関する研究として、これまでで最大の規模だと記されている。 各群の便を採取して、エタノールをどのくらい生成するかを比較したところ、患者の症状が悪化した時に採取した便は、他群に比べて有意に多くのエタノールを生成することが分かった。この結果は、便検体を用いる検査によって、自家醸造症候群を診断できる可能性を示していると、研究者らは考えている。さらに、便検体の分析により、大腸菌やクレブシエラ菌といった一般的な細菌を含むいくつかの細菌が、この疾患の発症に関係していることが示された。 また、抗菌薬を複数回服用後に自家醸造症候群を発症した男性に対する、糞便移植による治療も試みられた。健康なドナーから採取した腸内細菌が含まれているカプセルを服用してもらったところ、その後3カ月間は症状が現れず、さらに2度目の糞便移植後には16カ月以上にわたり症状のない状態が続いた。 著者らは、「現時点で自家醸造症候群に対するコンセンサスや標準的な治療法はなく、この衰弱性疾患を持つ患者は、残念ながら診断の遅延やQOLの著しい低下を経験し、家族的・社会的・法的に困難な状況に陥ることが多い」と、本研究の背景や現状の課題を述べている。

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肥満症薬物療法の「出口戦略」なき処方への警鐘!(解説:島田俊夫氏)

1. はじめに:体重減量薬ブームの陰に潜む「不都合な真実」 GLP-1受容体作動薬などの新薬の登場により、肥満症治療は劇的な変貌を遂げました。しかし、これら「魅惑の肥満治療薬」がもたらす減量は、果たして「治癒」と言えるのでしょうか。2026年1月にBMJ誌に掲載されたOxford大学Sam West氏らの体系的レビュー/メタ解析論文は、薬物療法の中止後に待ち受ける過酷なリバウンドの現実を浮き彫りにし、現在の安易な処方ブームに冷や水を浴びせています。2. 論文が示す衝撃的なデータ:リバウンドの速度と健康指標の消失 本論文は、肥満治療薬(WMM)と行動療法(BWMP)の中止後を比較し、以下の事実を明らかにしました。・リバウンドの「速さ」:薬物療法を中止すると、月平均0.4kgという猛烈な速度で体重が戻ります。これは行動療法中止後のリバウンド速度の約4倍に相当します。・「元のもくあみ」までの期間:薬を中止してから平均1.7年で、元の体重に完全に逆戻りすると予測されています。・健康指標の消失:薬で改善した血圧、血糖値、脂質代謝などの臨床的ベネフィットも、中止から約1.4年以内にその利得のほとんどが失われます。3. 臨床的な解釈:高血圧モデルとの類似と相違 肥満症を「慢性的で再発しやすい疾患」と捉えるならば、高血圧や慢性心不全と同様に「生涯にわたる薬物管理」が必要であるという議論もあります。しかし、現実には約50%の患者が1年以内に服薬を中止しています1)。急性感染症に対する抗菌薬が「原因をたたく」ものであるのに対し、現在の肥満治療薬は、食欲という生体システムを「薬理的に強制修正」しているにすぎません。「病態生理に基づいた包括的アプローチ」を欠いたままでは、薬はやめた瞬間に生体側の強力な巻き返し(リバウンド)を招く、いわば「addiction(依存)」に近い構造を作り出しかねません。4. 内科医が取るべき「治療の王道」 論文の結論は、安易な短期的投薬に「注意喚起」を促しています。内科医が目指すべきは、以下のような戦略的治療ではないでしょうか。・「敵」と「己」を知る:薬をやめれば猛烈なリバウンドが来ること(敵)をあらかじめ認識し、薬に頼らない自己調整能力(己)をどこまで高められるかを治療の主眼に置くことを忘れない。・薬を「行動療法の窓」として活用する:薬物療法は「目的」ではなく、生活習慣を劇的に変えるための「強力な補助手段(スターター)」と位置付ける2)。体重が減少して体が動きやすくなった時期を逃さず、睡眠時無呼吸の改善、食事の質の是正、適度な運動の定着を図る。・出口戦略の同時並行:投薬開始時から「どうやって薬を減らし、薬から離脱するか」を患者と共有する。生活習慣改善の努力なしに薬による上面だけの治療の危うさを、エビデンスに基づき説明することが大事ではないでしょうか。5. 真の患者利益のためのメッセージ 「痩せればいい」という短絡的な思考は、医療費を増大させ、患者を終わりのない薬物依存へと誘うリスクをはらんでいます。この論文が真にアピールしているのは、**「薬は介入のきっかけであっても、解決そのものではない」**臨床の原点です。 臨床医は、最新の薬を賢く使いつつも、その限界を冷徹に見極め、患者が自律的に健康を維持できる「王道」へと導く伴走者であるべきではないでしょうか。

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未治療・再発肺MAC症、吸入アミカシン上乗せの有用性は?(ARISE)

 肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)のうち、Mycobacterium avium complex(MAC)を原因菌とするものが肺MAC症である。肺MAC症に対し、国際的なガイドラインではマクロライド系抗菌薬、エタンブトール、リファンピシンによる3剤併用療法が推奨されている1)。また、本邦の指針である『成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2023年改訂―』でも、空洞がなく重度の気管支拡張所見がない場合は、マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)、エタンブトール、リファンピシンの併用が標準治療とされている2)。ただし、この3剤併用療法には忍容性や治療成功率に課題も存在する。 そのような背景から、肺MAC症に対する新規治療薬としてアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS、商品名:アリケイス)が承認されているが、適応は「多剤併用療法による前治療において効果不十分な患者」に限定されている。そこで、米国・National Jewish HealthのCharles L. Daley氏らは、未治療または再発の非空洞性肺MAC症患者を対象に、アジスロマイシン+エタンブトールへALISを上乗せする治療の有用性を検討する国際共同第III相試験「ARISE試験」を実施した。その結果、ALIS併用群は対照群と比較して、6ヵ月時点および治療終了1ヵ月後の7ヵ月時点における排菌陰性化率が数値的に高く、より早期に排菌陰性化を達成することが示唆された。本研究結果は、Annals of the American Thoracic Society誌オンライン版2026年1月23日号で報告された。試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験対象:未治療または再発の非空洞性肺MAC症の成人患者99例試験群(ALIS群):アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+ALIS(590mg/日)を6ヵ月 48例対照群:アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+吸入プラセボを6ヵ月 51例評価項目:[主要評価項目]患者報告アウトカム(PRO)ツールの妥当性検証[副次評価項目]排菌陰性化率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は69歳で、女性の割合は77.8%、白人の割合は80.8%であった。・6ヵ月時点の排菌陰性化率(5ヵ月・6ヵ月時点の連続で陰性)は、ALIS群80.6%、対照群63.9%であった(群間差16.7%、95%信頼区間[CI]:-1.4~34.9、p=0.0712)。・治療終了1ヵ月後の7ヵ月時点における排菌陰性化率(6ヵ月・7ヵ月時点の連続で陰性)は、ALIS群78.8%、対照群47.1%であり、ALIS群が高かった(群間差31.7%、95%CI:12.9~50.5、p=0.0010)。・排菌陰性化達成までの期間中央値は、ALIS群1.0ヵ月に対し、対照群では2.0ヵ月であった。・排菌陰性化を達成した患者のうち、7ヵ月時点までに再発が確認された割合は、ALIS群12.8%(5例)に対し、対照群では50.0%(20例)と対照群が高かった。・PRO評価(QOL-B RDスコア)において、ALIS群では7ヵ月時点まで継続的な改善傾向がみられた一方、対照群では3ヵ月以降に改善が頭打ちとなり、その後低下した。・安全性について、有害事象はALIS群91.7%、対照群80.4%に発現した。ALIS群で多くみられた有害事象は、発声障害(41.7%)、下痢(27.1%)、咳嗽(27.1%)などであり、新たな安全性シグナルは認められなかった。 本研究結果について、著者らは「本試験は6ヵ月間という短期間の検討であり、ガイドライン推奨の治療期間を反映していないものの、早期介入における吸入アミカシンの有用性を示す重要なデータである」と述べている。現在、同様の集団を対象とした12ヵ月間の長期投与による検証試験「ENCORE試験」が進行中である。

17.

ミノサイクリンは急性期脳梗塞に有益か/Lancet

 急性期虚血性脳卒中に対する発症後72時間以内に開始したミノサイクリン療法は、プラセボとの比較において、安全性への懸念なく90日時点で有意な機能的アウトカムの改善をもたらしたことが示された。中国・首都医科大学のYao Lu氏らEMPHASIS Investigatorsが、同国58病院で行った多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「EMPHASIS試験」の結果を報告した。ミノサイクリンは、広く使用されている忍容性が良好で安価なテトラサイクリン系の抗菌薬で、さまざまな神経疾患に対する有望な薬剤として注目されており、前臨床モデルおよび小規模臨床試験で虚血性脳卒中に対する潜在的なベネフィットが示されていた。著者は、「さらなる研究を行い、今回示された知見を確認し、より重症または軽症の脳卒中患者にも同様のベネフィットが及ぶかどうかを明らかにする必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年1月30日号掲載の報告。発症後72時間以内に投与開始、90日時点の優れた機能的アウトカムを評価 EMPHASIS試験の対象は、18~80歳、脳CTまたはMRIで虚血性脳卒中が確認された、発症から72時間以内、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコア範囲4~25、意識レベルスコア(NIHSSのサブスケール1a)≦1の患者であった。 被験者は、ルーチンに行われていた治療に加えてミノサイクリンの経口投与を受ける群(初回投与量200mg、その後12時間ごとに100mgを4日間)またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。コンピュータ生成無作為化シークエンス法によるブロック無作為化(試験施設により層別化された固定4ブロックサイズ)が用いられた。 主要アウトカムは、90日時点の優れた機能的アウトカム(修正Rankinスケール[mRS]スコア:0~1)であり、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者を対象に、欠損データの補完を行うことなく解析した。 安全性のアウトカムは、試験薬を少なくとも1回投与され、少なくとも1回安全性の評価を受けた患者を対象とし、24時間時点および6日時点の症候性頭蓋内出血などを評価した。主要アウトカム、ミノサイクリン群52.6%、プラセボ群47.4% 2023年5月19日~2024年5月20日に、1,724例がミノサイクリン群(862例)またはプラセボ群(862例)に無作為化された。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、男性が1,151例(66.8%)、女性が573例(33.2%)であり、ベースラインのNIHSSスコア中央値は5(IQR:4~7)であった。 4例(ミノサイクリン群3例、プラセボ群1例)が同意を取り下げ、19例(9例、10例)が追跡不能であった。 90日時点でmRSスコアが0~1の被験者は、ミノサイクリン群で447/850例(52.6%)、プラセボ群で403/851例(47.4%)であった(補正後リスク比:1.11、95%信頼区間[CI]:1.03~1.20、p=0.0061)。 mRSスコアの全範囲にわたる順序解析でもミノサイクリン群が優れ、補正後共通オッズ比は1.19(95%CI:1.03~1.38、p=0.018)であった。 症候性頭蓋内出血の発生はミノサイクリン群とプラセボ群で、24時間時点(1/860例[0.1%]vs.0/861例[0%])、6日時点(3/859例[0.3%]vs.0/861例[0%])でいずれも同程度であった。重篤な有害事象(ミノサイクリン群40/862例[4.6%]vs.プラセボ群51/862例[5.9%]、p=0.24)を含むその他の安全性アウトカムについて有意差は認められなかった。

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気管支拡張症へのbrensocatib、日本人サブグループ解析結果(ASPEN)

 非嚢胞性線維症性気管支拡張症は、慢性的な咳嗽や膿性痰を伴い、増悪を繰り返すことで肺機能低下やQOL低下を招く進行性の炎症性呼吸器疾患である。炎症には好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼが深く関与しており、その活性化を担うのがジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)とされている。そこで、DPP-1阻害薬brensocatibが開発され、非嚢胞性線維症性気管支拡張症患者を対象とした国際共同第III相試験「ASPEN試験」において、増悪を抑制することが示された。本試験の結果から、米国食品医薬品局(FDA)は2025年8月に非嚢胞性線維症気管支拡張症を適応症として、brensocatibを承認した(本邦では承認申請中)。 ASPEN試験は日本人87例が含まれる試験である。そこで、森本 耕三氏(公益財団法人結核予防会 複十字病院 呼吸器センター)らは本試験の日本人サブグループ解析を実施し、Respiratory Investigation誌2026年3月号で結果を報告した。本解析において、brensocatibは日本人においても増悪を抑制し、良好な安全性を示すことが示唆された。・試験デザイン:国際共同第III相二重盲検無作為化比較試験・対象:過去12ヵ月に2回以上の増悪歴(12~17歳は1回でも可)を有する非嚢胞性線維症性気管支拡張症患者・試験群1(brensocatib 10mg群):brensocatib(10mg、1日1回)を52週間 583例(日本人30例)・試験群2(brensocatib 25mg群):brensocatib(25mg、1日1回)を52週間 575例(日本人28例)・対照群(プラセボ群):プラセボ(1日1回)を52週間 563例(日本人29例)・評価項目:[主要評価項目]増悪の年間発現率[主要な副次評価項目]初回増悪までの期間、52週時点の無増悪割合、52週時点の1秒量(FEV1)のベースラインからの変化、重度増悪の年間発現率、QOL-B呼吸器症状ドメイン 日本人サブグループにおける主な結果は以下のとおり。・日本人87例の平均年齢は66.4歳で、女性の割合は56.3%であった。いずれの群もマクロライド系抗菌薬を使用している患者が多かった(brensocatib 10mg群80.0%、brensocatib 25mg群75.0%、プラセボ群79.3%)。・日本人サブグループは全体集団と比較して、男性の割合、75歳以上の割合、マクロライド長期投与を受けている割合、過去1年に増悪が3回以上あった患者の割合、気管支拡張薬吸入後の%FEV1値が高い傾向にあった。・主要評価項目である増悪の年間発現率(回/年)は、プラセボ群が1.20であったのに対し、brensocatib 10mg群0.45(率比:0.37、95%信頼区間[CI]:0.16~0.87)、25mg群0.39(率比:0.32、95%CI:0.14~0.75)であり、いずれの用量でもプラセボ群と比較して改善した。・初回増悪までの期間の中央値は、プラセボ群が40.1週であったのに対し、brensocatib 10mg群および25mg群ではいずれも未到達であった。プラセボ群と比較したハザード比は、それぞれ0.46(95%CI:0.19~1.12)、0.48(95%CI:0.20~1.17)であった。・52週時点の無増悪割合は、プラセボ群が47.6%であったのに対し、brensocatib 10mg群72.9%(オッズ比[OR]:3.10、95%CI:0.99~9.69)、25mg群71.2%(OR:2.77、95%CI:0.89~8.67)であった。・52週時点のFEV1のベースラインからの最小二乗平均変化量は、プラセボ群が-107mLであったのに対し、brensocatib 10mg群-59mL、25mg群-9mLであった。プラセボ群との群間差は、それぞれ47mL(95%CI:-20~115)、97mL(95%CI:32~162)であった。・重度増悪の年間発現率(回/年)は、プラセボ群が0.33であったのに対し、brensocatib 10mg群0.04(率比:0.11、95%CI:0.01~1.04)、25mg群0.10(率比:0.30、95%CI:0.06~1.62)であった。・52週時点のQOL-B呼吸器症状ドメインのベースラインからの最小二乗平均変化量は、プラセボ群が-2.38であったのに対し、brensocatib 10mg群3.26、25mg群5.01であった。プラセボ群との群間差は、それぞれ5.64(95%CI:-0.88~12.15)、7.39(95%CI:0.73~14.06)であった。・有害事象の発現割合は各群で同様であった(プラセボ群89.7%、brensocatib 10mg群90.0%、25mg群85.7%)。注目すべき有害事象の角化症はbrensocatib 25mg群の4例(14.3%)のみに認められ、すべて軽度であった。 以上の結果について、著者らは「ASPEN試験に登録された日本人患者において、現在の気管支拡張症管理にbrensocatibを追加した際の有効性および安全性は、全体集団で報告された結果と同様であった。brensocatib 10mgおよび25mgはいずれも、増悪抑制、呼吸機能低下抑制、患者報告アウトカム改善において、プラセボと比較して数値上の有用性を示した」とまとめた。

19.

事例41 胃腸炎への抗生物質製剤の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例の診療所では、風邪から派生したと考えられる胃腸炎であっても、必要があれば経口用セフェム系製剤を投与していました。今回、C事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。査定理由を調べるためにカルテを参照しました。咽頭に発赤がある旨と下痢が複数回あったとの記録がありました。医師は、単なる感冒はウイルス性疾患であり、いわゆる抗生物質製剤は有効ではなく、他に必要性があると判断した場合に投与できることを承知されていました。添付文書を調べてみたところ適応に「咽頭・喉頭炎」と類似の病名がありました。事例には「咽頭・喉頭炎」が表示されていないために査定となったものと考えましたが、類似と考えられる「感冒性」が表示されているので適応があると考えられたのではないかと推測しました。しかしながら、支払基金の審査基準である「審査の一般的取り扱い」に、「支払基金・国保統一事例651(令和7年8月29日)」として、「感冒性胃腸炎」には「抗生物質製剤【内服薬】又は合成抗菌薬【内服薬】の算定は、原則として認められない」とあります。この基準に基づき査定となったものと推測できます。他には、感冒、小児のインフルエンザ、小児の気管支喘息、感冒性胃腸炎、感冒性腸炎、慢性上気道炎、慢性咽喉頭炎のみの病名では抗生物質製剤または合成抗菌薬の算定が認められない病名として列記されていました。医師には、この基準を伝えて、抗生物質製剤または合成抗菌薬を投与する場合は、医学的必要性がわかる病名を付与していただくようにお願いして査定対策としています。

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急性虫垂炎の抗菌薬治療、10年再発率・虫垂切除率は?/JAMA

 急性単純性虫垂炎の初回治療として抗菌薬治療を受けた成人患者を10年間追跡したところ、組織病理学的所見に基づいて確定された虫垂炎の再発率は37.8%、虫垂切除術の累積施行率は44.3%であったことが、フィンランド・トゥルク大学のPaulina Salminen氏らが実施した「APPAC試験」で示された。著者は、「成人の急性単純性虫垂炎患者の治療選択肢としての抗菌薬治療を支持するエビデンスだ」とまとめている。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年1月21日号で報告された。抗菌薬治療の10年再発率―事前に規定された2次解析 APPAC試験は、フィンランドの6施設で実施した非盲検無作為化非劣性試験(Sigrid Juselius Foundationなどの助成を受けた)。2009年11月~2012年6月に、年齢18~60歳、CT検査で合併症のない急性単純性虫垂炎と診断された患者530例を登録し、虫垂切除術を受ける群(273例)または抗菌薬治療を受ける群(257例)に無作為に割り付けた。 今回は、事前に規定された2次解析として、抗菌薬治療群における10年間の虫垂炎再発率に焦点を当てた検討を行った。 抗菌薬治療は、ertapenem sodium(1g/日)を3日間静脈内投与した後、レボフロキサシン(500mg、1日1回)+メトロニダゾール(500mg、1日3回)を7日間経口投与した。 事前に規定された10年時の副次エンドポイントは、抗菌薬投与から1年以降の虫垂切除術と虫垂炎再発率、および合併症(10年の追跡期間中に発生したすべての有害事象を含む)であった。また、事後解析として、抗菌薬治療群で虫垂切除術を受けた患者または虫垂が温存された患者において、MRIを用いて虫垂腫瘍の可能性を評価した。10年間の合併症発生率は有意に低い 抗菌薬治療群の257例のうち、253例(98.4%、年齢中央値33.0歳[四分位範囲:26.0~47.0]、女性102例[40.3%])を虫垂炎再発の評価対象とした。10年後までに8例が死亡したが、いずれも急性虫垂炎とは関連がなかった。 10年の時点における真の再発率(組織病理学的に確定された虫垂炎の発生率)は37.8%(95%信頼区間[CI]:31.6~44.1)(87/230例)であった。また、累積虫垂切除術施行率は、1年時が27.3%(22.0~33.2)(70/256例)、5年時が39.1%(33.1~45.3)(100/256例)、10年時は44.3%(38.2~50.4)(112/253例)であった。 一方、10年累積合併症発生率は、虫垂切除術群が27.4%(95%CI:21.6~33.3)(62/226例)であったのに対し、抗菌薬治療群は8.5%(4.8~12.1)(19/224例)と有意に低かった(p<0.001)。10年後の全体の腫瘍発生率は1.2% 抗菌薬治療群のうち10年後にMRI検査を受けた102例では、虫垂の炎症所見を認めた患者はいなかった。腫瘍が疑われたため虫垂切除術を受けた2例では、組織病理学的評価で低悪性度粘液性腫瘍(LAMN)を認めた(0.9%[2/212例]、いずれも追加治療は不要)。虫垂切除術群では、272例中4例(1.5%)で、1年後に虫垂腫瘍がみられた(神経内分泌腫瘍3例、低異型度腺腫1例)。腫瘍の発生率について、両群間で統計学的に有意な差はなく(p=0.70)、合併症を伴わない急性虫垂炎における10年後の全体の腫瘍発生率は1.2%(95%CI:0.3~2.2)(6/484例)ときわめて低かった。 EQ-5D-5Lで評価したQOLは、両群間に有意な差はなかった(p=0.18)。虫垂切除術群の78.0%(167/214例)と抗菌薬治療群の67.3%(111/165例)が、再度同じ治療を選択すると回答した。 著者は、「抗菌薬治療群における真の再発および虫垂切除術は、その多くが初回発症から2年以内に発生し(それぞれ、65/87例[74.7%]、87/112例[77.7%])、10年後の時点で抗菌薬治療の効果は持続しており、大部分の患者でそれ以上の再発は認めなかった」「将来、抗菌薬による外来治療が普及すれば、総費用と医療資源の節約効果が顕著に増加する可能性がある」としている。

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