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添付文書改訂:抗てんかん薬の運転の一律禁止が変更/セリチニブとCYP3A基質薬剤が併用禁忌に ほか【最新!DI情報】第61回

抗てんかん薬<対象薬剤>抗てんかん薬であるカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、ラコサミド、レベチラセタムを有効成分とする医薬品<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]重要な基本的注意自動車の運転等危険を伴う機械操作の適否は、関連学会の留意事項を十分理解の上、医師が慎重に判断し、危険を伴う機械操作を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること。また、眠気等があらわれた場合には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に指導すること。<ここがポイント!>対象の抗てんかん薬は、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下といった中枢神経系に影響を与える副作用を起こすことがあるため、従来の添付文書では「重要な基本的注意」の項において、薬剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する旨が記載されていました。しかし、道路交通法では、てんかんのある患者の自動車運転を一律に禁止しているわけではありません。運転免許の取得・更新は、一定の条件を満たせば医師の診断書をもとに公安委員会が判断する仕組みとなっており、実際に多くの患者が医師の管理下で安全に運転を継続しています。今回の改訂により、薬剤投与中であっても一律に自動車運転等を禁止するのではなく、医師が関連学会の留意事項※に基づき、個別の患者の病状、服薬順守状況、副作用の有無等を総合的に評価し、自動車運転等の適否を判断できることが添付文書上で明確化されました。これは、患者の社会生活の質(QOL)向上と安全性の確保を両立させるための重要な改訂といえます。なお、対象の抗てんかん薬5剤には欧州および米国の添付文書においても、薬剤服用中の自動車運転等を一律に禁止する記載はなく、今回の改訂は国際的な動向とも合致しています。※抗てんかん発作薬を服用しているてんかんのある人において、自動車運転や危険を伴う機械操作を行う際の留意事項(2026年3月17日)CYP3A基質薬剤<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、イブルチニブ、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、キニジン硫酸塩水和物、シンバスタチン、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、チカグレロル、トリアゾラム、バルデナフィル塩酸塩水和物、フィネレノン、ブロナンセリン、マシテンタン・タダラフィル、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ルラシドン塩酸塩、ロミタピドメシル酸塩<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「セリチニブ」を追記<ここがポイント!>セリチニブは強力なCYP3A阻害作用を有するため、CYP3A基質薬剤との併用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現リスクが増大する可能性があります。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、セリチニブとCYP3A基質薬剤の併用を禁忌とするものです。対象となる20成分には、降圧薬、抗不整脈薬、睡眠薬、抗精神病薬、脂質異常症治療薬など、日常診療で頻用される薬剤が多く含まれており、処方監査時には十分な注意が必要となります。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、セリチニブの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1 併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様に上記薬剤が追記されました。これにより、双方向での併用禁忌が明確化され、より安全な薬物治療の実施が期待されます。アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「クラリスロマイシン」を追記<ここがポイント!>生理学的薬物速度論モデルの解析により、アゼルニジピンとクラリスロマイシン400mgまたは800mgを併用した場合、アゼルニジピンのAUCが約3.4倍または5.4倍に増加することが予測され、副作用の発現が懸念されます。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、クラリスロマイシンとアゼルニジピンの併用を禁忌とするものです。アゼルニジピンはCYP3A4で代謝される薬剤であり、CYP3A4阻害薬であるクラリスロマイシンとの併用により、血中濃度の上昇が生じ、過度の血圧低下、めまい、ふらつきなどの副作用リスクが高まることが想定されます。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシンの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様にアゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピンが追記されました。とくにヘリコバクター・ピロリ除菌療法においてクラリスロマイシンを含む3剤併用療法を行う際には、患者の降圧薬の確認が重要となります。タクロリムス<対象薬剤>タクロリムス水和物(商品名:プログラフカプセル0.5mg/1mg/5mg、同顆粒0.2mg/1mg、同注射液2mg/5mg、グラセプターカプセル0.5mg/1mg/5mg(アステラス製薬株式会社)等)<改訂年月>2026年3月<改訂項目> [追加]妊婦 海外で実施された、Transplant Pregnancy Registry Internationalのデータベースから利用可能な2,905件の肝移植および腎移植患者の妊娠事例に関するコホート研究において、前向きに調査された症例について以下の結果が報告されている。 大奇形が認められた症例は、本剤曝露群では6/297例(2.0%)、本剤非曝露群注1)では1/53例(1.9%)であった注2)。 小奇形が認められた症例は、本剤曝露群では12/297例(4.0%)、本剤非曝露群では認められなかった注2)。 自然流産が認められた症例は、本剤曝露群では33/335例(9.9%)、本剤非曝露群では3/56例(5.4%)であった注2)。 腎移植患者において、子癇前症が認められた症例は、本剤曝露群では84/226例(37.2%)、本剤非曝露群では7/37例(18.9%)であった。 早産児が認められた症例は、本剤曝露群では156/352例(44.3%)、本剤非曝露群では25/59例(42.4%)であった。 妊娠週数に対して児が正常な出生体重であった症例は、本剤曝露群では289/352例(82.1%)、本剤非曝露群では40/59例(67.8%)であった。 注1 アザチオプリン、シクロスポリン、エベロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾロン、シロリムスのいずれか1つ以上を含むレジメンによる治療を受けた患者 注2 妊娠の6週間前から出産までの間にミコフェノール酸モフェチルに曝露している患者を除外した解析結果 <ここがポイント!>臓器移植後の妊娠レジストリであるTransplant Pregnancy Registry International(TPRI)データを用いた本剤の児および母体への影響に関する海外疫学研究の結果は、臓器移植患者の妊娠という限定された集団に関する大規模な研究データであるため、本研究結果を添付文書に記載することは臨床上有用であると考えられます。このコホート研究では、2,905件という大規模な症例数を解析しており、タクロリムス曝露群と非曝露群での大奇形発生率に有意な差は認められませんでした(2.0%vs.1.9%)。一方で、小奇形、自然流産、子癇前症については本剤曝露群でやや高い傾向が示されています。とくに腎移植患者における子癇前症の発生率は本剤曝露群で37.2%と高く、慎重な周産期管理が必要となることが示唆されます。このことから、今回の改訂で「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.5 妊婦」の項に海外疫学研究の結果を追記することになりました。本データは、移植後妊娠を希望する患者への説明や、妊娠中の管理方針決定において重要な情報となります。

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桂枝湯の派生処方 生薬の±で方剤を覚える【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第5回

桂枝湯の派生処方 生薬の±で方剤を覚える前回 、桂枝湯(けいしとう)が麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)に比べて虚証向きの漢方薬で、お腹に優しいということを述べました。その理由としては、桂枝湯には麻黄(まおう)が含まれていないこと、代わりに芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)といった胃腸の調子を整える生薬が含まれていることが関係しているのでした(図1)。今回は、この話を芍薬、あるいは芍薬と甘草(かんぞう)のコンビに着目して掘り下げていこうと思います。図1 桂枝湯の構成生薬画像を拡大する桂枝湯±芍薬芍薬が入っている桂枝湯がお腹に優しいということは、芍薬を「もっと」増やすとお腹にも「もっと」優しくなりそうですよね。では、桂枝湯を芍薬マシマシにしてみましょう。すると、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)ができあがります。これは、過敏性腸症候群で腹痛と下痢に悩まされている患者に使うといい薬です。しかし、過敏性腸症候群は下痢型だけではありません。便秘型もありますよね。そうしたら、センノシドを含む生薬をブレンドすればいいのです。大黄(だいおう)という生薬がちょうどセンノシドを含むため、桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)を使えばいいという話になるわけです。逆に、桂枝湯から芍薬を抜いてくるとどうなるか。すると、桂枝去芍薬湯(けいしきょしゃくやくとう)という漢方薬になります。これは、お腹への優しさが減る代わりに、胸に優しくなります。感冒の患者の中には、肺炎や痰詰まりがなくても、胸が苦しいという方がたまにいらっしゃいますよね。そういった患者には、桂枝去芍薬湯が効いてきます。もっとも、桂枝去芍薬湯はエキス製剤がないので、実臨床で使うのにはハードルが高いという問題があります。桂枝去芍薬湯のニュアンスを丸ごと含む漢方薬としては、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)という漢方薬があって、これはちょうど「東洋の抗不整脈薬」に相当するもので、動悸・息切れに効く漢方薬なんですね。やはり胸に優しいという話になってくるわけです。ここまでを図2にまとめます。図2 桂枝湯±芍薬に派生する漢方薬画像を拡大する建中湯シリーズの派生いったん話題を戻して、桂枝加芍薬湯まで戻ってきましょう。漢方薬の味が苦手だという患者もいると思います。そのような場合は、桂枝加芍薬湯に水飴を加えてやると、子供にも飲みやすい漢方薬ができると思いませんか。そこで、桂枝加芍薬湯に水飴、厳密には膠飴(こうい)という生薬ですが、これを入れてしまいます。そうすると、なんと小建中湯(しょうけんちゅうとう)ができあがります。これは、虚弱体質の小児が体調不良になった時に使う薬です。体調不良でエネルギー不足なので、お腹に優しい漢方薬と飴から得られるエネルギーで消化管から体調をたて直そうというコンセプトの漢方薬です(図3)。図3 小建中湯への派生画像を拡大するさらにさらに! 小建中湯からいわゆる「建中湯」シリーズを派生させることができます。たとえば、小建中湯から飴を抜いて、補血作用のある当帰(とうき)を加えると、当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)になって、消化管だけでなく女性器由来の腹痛にも対応しやすくなります(図4)。図4 当帰建中湯への派生画像を拡大するまた、小建中湯に黄耆(おうぎ)というお肌を引き締めてくれる生薬を加えると、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)になって、虚弱体質の小児で寝汗がひどい場合や、アトピー性皮膚炎に悩まされている場合に対応できる漢方薬になります(図5)。図5 黄耆建中湯への派生画像を拡大する大建中湯(だいけんちゅうとう)は小建中湯と生薬の組み合わせが大きく異なるため(図6)、そこだけ注意していただきたいのですが、このように、生薬に着目することで建中湯シリーズを一気にたくさんインプットすることができるのです。この勉強法は知っておいて損はないかと思います。図6 小建中湯と大建中湯の構成生薬画像を拡大するまとめ桂枝湯は芍薬など胃腸を整える生薬が複数含まれていて、この部分を強化すると漢方薬の派生形を生み出すことができます。たとえば、胃腸を整える生薬のひとつとして芍薬がありますが、芍薬を桂枝湯に加えることで、いわゆる建中湯と呼ばれる漢方薬のグループを生み出すことができます。生薬を足し引きすることで、漢方薬を芋づる式にインプットする。これも漢方上達の近道だと個人的には考えています。次回は、小柴胡湯を取り上げ、感冒の初期段階が終わった後の漢方治療のお話をします。お楽しみに!

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「心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン」をフォーカスアップデート/日本循環器学会

 『2026年JCS/JSOGガイドラインフォーカスアップデート版 心血管疾患患者の妊娠・出産の適応と診療』1)が第90回日本循環器学会学術集会(2026年3月20~22日)会期中の3月20日に発刊された。本ガイドラインの研究班長を務めた神谷 千津子氏(国立循環器病研究センター循環器病周産期センター)と桂木 真司氏(宮崎大学産科・婦人科 主任教授)が本学術集会プログラム「ガイドラインを学ぶ2」において、妊娠を避けることを強く望まれる心疾患、妊産婦に注意が必要な循環器用薬を中心に解説した。 本書では、新規薬物治療をはじめとした循環器診療の進歩、思春期以降の男女を対象にしたプレコンセプションケアの取り組み、国内外からの心血管疾患合併妊娠を中心に、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)を支えることも目標として作成され、今回のアップデート版では以下の7項目を主に取り扱う。そこで本稿では、とくに押さえておきたい項目として、「妊娠を避けることを強く推奨する疾患、病態」「妊娠中、授乳中の循環器薬物治療の安全性」にフォーカスする。―――――――――――――――――――・日本の疫学(周産期データベース、妊産婦死亡症例検討)・プレコンセプションケアと妊娠関連ハートチーム(PHT)・妊娠を避けることを強く推奨する疾患、病態・妊娠中、授乳中の循環器薬物治療の安全性・周産期管理:産科(分娩方法の選択、妊娠高血圧症候群)・周産期管理:麻酔科(麻酔方法の選択、硬膜外麻酔)・産後の注意点―――――――――――――――――――周産期の死亡原因として挙がる心大血管疾患とは 日本産婦人科学会の周産期データベースによると、2014~23年に登録された母体約220万人のうち、基礎疾患に何らかの心疾患を有したのは1.2%(2万6,894例)であった。神谷氏は「心疾患を有する母体は基礎内科疾患がない者と比較して、無痛分娩率、帝王切開率、帝王切開時の全身麻酔率、分娩時出血量、転科率、そして母体死亡率が高い傾向にある」と指摘。また、日本産婦人科医会による妊産婦死亡症例登録システムのデータでは、心大血管疾患は間接産科的死亡*1の第1位であり、大動脈解離、周産期心筋症、肺高血圧症などが原因であることが明らかになっている。同氏は「周産期に初めて診断され、産科と内科の連携が不十分な場合もある。これを解消するために循環器医ができることとして、コンサルテーションの閾値を低く、速やかな検査・治療が求められる」と強調した。*1 妊娠前から存在した疾患または妊娠中に発症した疾患により死亡したもの2)妊娠を避けることを強く望まれる心疾患 妊娠の際に厳重な注意を要する、あるいは妊娠を避けることが強く望まれる心疾患は、第2版までは6項目にとどまっていた。今回、大幅にアップデートがなされ、10項目が表13(p.25)に示された。・高度な体心室機能低下(LVEF<30%、体心室RVEF<40%)や心不全(NYHA心機能分類III~IV度)・重症閉塞性肥大型心筋症(HOCM)・周産期心筋症の既往と左心室機能低下の残存・中等度から重度のPAH(アイゼンメンジャー症候群含む)・重症僧帽弁狭窄(MS)・妊娠前から症状を伴う重度流出路狭窄(大動脈弁高度狭窄:平均圧較差≧40mmHg)・マルファン症候群(上行大動脈拡張期径>45mm、高リスク症例では≧40mm)や大動脈二尖弁を伴う大動脈疾患(大動脈径>50mm)・症状、有意な合併症のあるフォンタン術後・未修復の重症大動脈縮窄症・重症チアノーゼ性心疾患(SpO2<85%) 第3章では上記に対する推奨がCQ1~7とFRQ1で示されている*2。主な変更点について「妊娠を避けることを推奨する左室駆出率(LVEF)が以前は35~40%未満であったが、30%未満へと引き下げた(CQ1)。肺高血圧症患者では、血行動態の重症度が中等度~重度の場合は妊娠を避けることを強く推奨するが、状態の安定した軽症例であれば、妊娠を前向きに考えることが可能と、世界に先駆けてリスク分類した(CQ2)。また、機械弁置換後のリスクは抗凝固療法に起因するものであるため、強く妊娠を希望する場合は、周産期の抗凝固療法に習熟した専門施設での妊娠・分娩管理を強く推奨する(CQ3)。ただし、状態の安定した軽症の肺高血圧症患者や機械弁を有する患者が妊娠継続を希望する場合、各専門施設で周産期管理が求められるため、施設要件が合致した場合にのみ前向きに検討が可能である(p.25、表14)点には留意してほしい」と解説した。 続けて、「流出路狭窄がある場合には、妊娠前から症状を伴うような重症例では妊娠を避けることを強く推奨する一方で、平均圧較差が40~50mmHgで無症状の場合は主治医と相談しながら検討していくことが推奨される(CQ4)。さらに、有症状、有意な合併症をもつフォンタン術後の場合は妊娠リスクを避けることが推奨される(CQ6)。周産期心筋症の既往をもつ場合、LVEF50%未満が継続する患者では妊娠を避けることを強く推奨する(CQ7)」と説明した。*2 CQ:クリニカルクエスチョン、FRQ:フューチャーリサーチクエスチョン なお、これらは妊娠についての意思決定を支える推奨であり、医療的「介入」ではないため、推奨強度は付記しない方針とされている点には注意が必要である。妊娠中に選択できる循環器薬、アテノロールは実は危険! 心疾患合併妊娠のリスク因子のなかで、調整可能な因子の1つに薬剤選択が挙げられる。今回アップデートされた薬剤クラスには、抗凝固薬、降圧薬、利尿薬、抗不整脈薬、肺高血圧症や心不全、脂質異常症の治療薬がある。このなかで特筆すべきはβ遮断薬のアテノロールで、これまで妊娠中の禁忌記載がないβ遮断薬であったにもかかわらず、近年ではアテノロールが最も胎児へのリスクが高いと報告された3)ため、「使用可能だが、在胎不当過小児(SGA)のリスクが最も大きく、他剤への変更が推奨される」と変更した(p.58、表23)ことを強調した。 スタチンについては「添付文書上は禁忌であるが、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)患者や2次予防目的について、FDAでは使用を勧告している。本フォーカスアップデートでもその旨を記載した」と述べ、DOACについては、「妊娠中の安全性は未確立だが、リバーロキサバンにおいては授乳安全性が確立されつつある」とコメント。降圧薬のうちCa拮抗薬については、前版よりニフェジピン、アムロジピン、カルベジロール、ビソプロロールが妊娠中禁忌から有益性投与に変更している。ACE阻害薬やARBは妊娠中に禁忌であるが授乳中の安全性は確立しているため、「出産後に速やかに再開処方することは可能」と話した。 続いて桂木氏は、薬剤選択・用量・投与速度が妊娠中や分娩前後で調節が可能であること、循環器・産科・麻酔科で情報共有・管理することが重要である点に触れ、「妊娠中の薬物は禁忌も多いが、一律に禁忌ではなく症例に応じた病態別評価が必要であり、妊娠は循環器治療を止める理由ではない。また、母体へのリスクは即時的で致死的なものが多いため、母体のベネフィットと胎児リスクを比較して代替薬の選択を検討してほしい」とコメントした。さらに、「薬剤管理は母体死亡を減らす鍵となる。そのためには、妊娠中の循環器薬剤は“中止”より“最適化”を目指してほしい。産科薬剤は循環動態に影響するため、投与を慎重に判断し、分娩前から循環器・産科・麻酔科による情報共有を行ってほしい」と強調した。これまでのガイドラインと改訂の経緯 これまで、心血管疾患患者の妊娠中の病態について取り扱ったガイドラインは、2005年に初版が発刊、2018年に第2版となる『心血管疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン』が日本産科婦人科学会と合同で作成されていた。それから8年が経過し、新たなエビデンスが集積したことから、今回は前版の内容に補足するかたちで作成・公表がなされた。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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アブレーションしたら抗凝固薬やめられる?(解説:後藤信哉氏)

 筆者は20年以上、発作性心房細動に悩んでいる。臨床エビデンスにかかわらず、患者として直感的に洞調律の維持が予後の改善に役立つことを感じている。長年、抗不整脈薬にて洞調律を維持した。脳卒中予防の重要性はわかるが、ワルファリン、DOAC共に年間3%程度の重篤な出血イベントリスクと考えると、とても抗凝固薬に手は出せなかった。薬による洞調律の維持に限界を感じてカテーテルアブレーションを受けることにした。アブレーションには心タンポナーデなどの重篤な合併症リスクがあることは承知した。アブレーションに内膜障害が起こるので短期間は抗凝固薬が必須と考え、内膜障害が消失するまで数ヵ月はDOACも使用することにした。アブレーションが成功して洞調律に戻れば抗凝固薬はやめられるか? 年間3%の重篤な出血イベントリスクから離れられる価値は、きわめて大きい。本試験の結果には医師としても患者としても注目したい。 アブレーションによる内膜障害が改善すれば、心房細動自体による血栓性の亢進は著しくないと推定される。実際、リバーロキサバンとアスピリンの比較でも、リバーロキサバンによる脳卒中減少効果は、アブレーション成功後1年以上経過した症例では明確ではなかった。リバーロキサバンを世界の標準用量の20mgから15mgに減量したこともあり、重篤な出血リスクは年間3%には達しなかったがリバーロキサバン群にてアスピリン群より多かった。 DOACについては各独占企業の特許が切れるので、出血イベントリスクとの案分における至適使用法の確立を目指す臨床的研究が活発になることを期待したい。

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アブレーション後は抗凝固薬をやめてよい?(解説:後藤信哉氏)

 筆者は自ら長年非弁膜症性心房細動を患っているので、この論文は他人事ではない。心房細動だからといって、みんなが抗凝固薬を使う必要はない。現在の抗凝固薬では年間に3%程度の症例に重篤な出血イベントが起こることが、DOAC開発のランダム化比較試験にて示されている。長期間に抗凝固薬を使用すれば重篤な出血イベントリスクは身近な問題となる。筆者は20年程度、抗不整脈薬にて自らの心房細動をコントロールしてきた。しかし、いよいよ薬剤の調節が難しくなったのでアブレーションを受けた。アブレーション後に内膜が焼灼されるので、内膜の回復までは抗凝固薬が必要と考えた。心房細動のリスクがなくなった場合に抗凝固薬をやめられることが明確に示されればアブレーション治療の価値は大きく増加する。本研究の症例数は840例と多くないが、必須であった薬剤が不要になることを示せば患者さんにとっても医療経済的にも価値が大きい。 術後に不整脈が起こらない症例に限れば、抗凝固薬の中止により血栓イベントなどが増加しないことを示した本研究の価値は大きい。抗凝固薬をやめれば出血リスクが減少する。出血が減れば、出血により抗凝固薬を比較的にやめることによるリバウンドも減る。この研究成果は心房細動の症例にとっては価値が大きいと思う。

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抗不整脈薬のリズムコントロール作用を少し考えてみよう!【モダトレ~ドリルで心電図と不整脈の薬を理解~】第9回

抗不整脈薬のリズムコントロール作用を少し考えてみよう!Question年齢相応の心機能で、とくに大きな異常のない発症後4時間経過した発作性心房細動の50歳台女性に、胸部違和感改善のためリズムコントロールを目指しピルシカイニド注を投与しましたが、リズムコントロールできず別の薬剤で再度リズムコントロールを目指すこととなりました。画像を拡大する

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房室結節を抑制する薬剤を考えてみよう!【モダトレ~ドリルで心電図と不整脈の薬を理解~】第8回

房室結節を抑制する薬剤を考えてみよう!(抗不整脈薬)QuestionもともとΔ波を有するウォルフ・パーキンソン・ホワイト(Wolf-Parkinson-White;WPW)症候群で突然心房細動となった方がいました(心電図は以下のとおり)。画像を拡大する

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持続性AF、線状アブレーション+肺静脈隔離術は有益か?/JAMA

 持続性心房細動(AF)患者の治療において、肺静脈隔離術(PVI)にマーシャル静脈内エタノール注入(EIVOM)を併用した線状アブレーションを追加することにより、PVI単独と比較して12ヵ月以内の心房性不整脈再発が有意に改善された。中国・Beijing Anzhen HospitalのCaihua Sang氏らPROMPT-AF investigatorsが、中国の3次医療機関12施設で実施した研究者主導の多施設共同無作為化非盲検試験「PROMPT-AF試験」の結果を報告した。これまでの無作為化試験では、PVI後に線状アブレーションを追加したときのPVI単独に対する優越性は検証されていなかった。EIVOMは僧帽弁輪峡部でのアブレーションを容易にし、線状アブレーション戦略の有効性を改善する可能性があるとされていた。JAMA誌オンライン版2024年11月18日号掲載の報告。EIVOM併用線状アブレーション追加の有効性をPVI単独と比較 研究グループは、2021年8月27日~2023年7月16日に、18~80歳で、少なくとも1種類の抗不整脈薬に抵抗性を示し、AFアブレーション歴のない持続性AF(持続性AFエピソードが3ヵ月以上持続)患者498例を対象に試験を行った。被験者を、PVI群またはPVI+EIVOM+線状アブレーション群(介入群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群では、最初にEIVOMを行った後、PVIと左房天蓋部、僧帽弁輪峡部、三尖弁下大静脈間峡部の線状アブレーションを行った。 患者にウェアラブル単極誘導心電図(ECG)パッチを1週間に24時間装着してもらいモニタリング。また、症状発現時にECGやホルター心電図を追加した。 主要エンドポイントは、アブレーション後12ヵ月以内(3ヵ月のブランキング期間を除く)に抗不整脈薬を使用せず30秒以上続くあらゆる心房性不整脈が認められなかった患者の割合であった。副次エンドポイントには、心房性不整脈の再発、AF、複数回の処置後の心房性不整脈の再発、抗不整脈薬の有無にかかわらず記録された心房頻拍または心房粗動、AFの重症度、および生活の質(QOL)の改善が含まれた。主要エンドポイントはEIVOM併用線状アブレーション追加が良好 無作為化された患者498例のうち、495例(99.4%)が主要解析に組み入れられた。平均(±SD)年齢は61.1±9.7歳、男性が361例(72.9%)であった。 主要エンドポイントである12ヵ月以内の抗不整脈薬不使用で30秒以上続く心房性不整脈が認められなかった患者の割合は、介入群で246例中174例(70.7%)、PVI単独群で249例中153例(61.5%)であった(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.54~0.99、p=0.045)。介入効果は、事前に規定されたすべてのサブグループで一貫していた。 副次エンドポイントについては、有意な結果は認められなかった。また、手技に関連する有害事象の発現率に両群で差はなかった(p=0.15)。

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虚血性心筋症の心室頻拍、カテーテルアブレーションは有効か/NEJM

 虚血性心筋症で心室頻拍を有する患者において、抗不整脈薬治療と比較してカテーテルアブレーションによる初期治療は、複合エンドポイント(全死因死亡、心室頻拍発作、適切な植込み型除細動器[ICD]ショック、内科的治療を受けた持続性心室頻拍)のイベントリスクを有意に低下したことが、カナダ・ダルハウジー大学のJohn L. Sapp氏らVANISH2 Study Teamが実施した「VANISH2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年11月16日号で報告された。欧米3ヵ国の医師主導型無作為化試験 VANISH2試験は、3ヵ国(カナダ、米国、フランス)の22施設で実施した医師主導の非盲検(エンドポイントのイベント判定は盲検下)無作為化試験であり、2016年11月~2022年6月に患者を登録した(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成を受けた)。 心筋梗塞の既往があり、臨床的に重要な心室頻拍(心室頻拍発作、適切なICDショックまたは抗頻拍ペーシングの実施、緊急治療により停止した持続性心室頻拍と定義)を有する患者416例を登録した。これらの患者を、カテーテルアブレーションを受ける群に203例(平均[±SD]年齢67.7±8.6歳、男性95.1%)、抗不整脈薬治療を受ける群に213例(68.4±8.0歳、92.5%)を無作為に割り付けた。 全例がICDを装着していた。カテーテルアブレーションは無作為化から14日以内に施行し、抗不整脈薬治療は事前の規定に従ってソタロールまたはアミオダロンを投与した。 主要エンドポイントは、追跡期間中の全死因死亡と、無作為化から14日以降の心室頻拍発作・適切なICDショック・内科的治療を受けた持続性心室頻拍の複合とした。死亡、心室頻拍発作、ICDショックには差がない 追跡期間中央値4.3年の時点で、主要エンドポイントのイベント発生率は、抗不整脈薬群が60.6%(129/213例)であったのに対し、カテーテルアブレーション群は50.7%(103/203例)と有意に低かった(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.58~0.97、p=0.03)。 追跡期間中の全死因死亡(カテーテルアブレーション22.2% vs.抗不整脈薬群25.4%、HR:0.84[95%CI:0.56~1.24])、無作為化から14日以降の心室頻拍発作(21.7% vs.23.5%、0.95[0.63~1.42])、無作為化から14日以降の適切なICDショック(29.6% vs.38.0%、0.75[0.53~1.04])には両群間に差を認めず、無作為化から14日以降の内科的治療を受けた持続性心室頻拍(4.4% vs.16.4%、0.26[0.13~0.55])はカテーテルアブレーション群で少なかった。重篤な非致死的有害事象の頻度は同程度 重篤な非致死的有害事象は、カテーテルアブレーション群28.1%(57例)、抗不整脈薬群30.5%(65例)で発現した。また、カテーテルアブレーション群では、術後30日以内の有害事象として死亡が2例(1.0%)で発生し、非致死的有害事象は23例(11.3%)に認めた。抗不整脈薬群では、抗不整脈薬に起因する有害事象として肺毒性による死亡が1例(0.5%)で発生し、非致死的有害事象は46例(21.6%)に発現した。 著者は、「これまでの研究で、カテーテルアブレーションと抗不整脈薬治療は心室頻拍の再発とICDショックのリスクを減少させることが知られているが、両方とも有害事象を伴い、有効性は完全ではないため、これらの治療法をいつ使用するかが重要な臨床的判断となる」「初期治療として薬物を使用し、薬物療法が無効であればアブレーションを行うというのが一般的な方法であり、現行のガイドラインにも合致する」としている。

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症候性心房細動への肺静脈隔離術vs.シャム/JAMA

 症候性心房細動に対する肺静脈隔離術(PVI)はシャム(偽手技)との比較において、6ヵ月時の心房細動負荷が統計学的に有意に減少し、症状と生活の質は大幅に改善した。英国・Eastbourne District General HospitalのRajdip Dulai氏らが、無作為化二重盲検比較試験「SHAM-PVI試験」の結果を報告した。心房細動の治療において、PVIには大きなプラセボ効果があるかもしれないとの懸念があるが、これまで無作為化二重盲検比較試験は実施されていなかった。JAMA誌オンライン版2024年9月2日号掲載の報告。埋込み型ループレコーダーで心房細動負荷を評価 研究グループは、2020年1月~2024年3月に英国の3次医療機関2施設で、クラスIまたはIIIの抗不整脈薬(β遮断薬を含む)による治療にもかかわらず症候性の発作性または持続性心房細動を有し、カテーテルアブレーションのため紹介された患者を登録し、クライオバルーンカテーテルを用いたPVI群または横隔神経ペーシングのみのシャム群に無作為に割り付けた。 主な除外基準は、長期(1年以上)にわたる持続性心房細動、左心房アブレーションまたは外科的アブレーション既往の患者、アブレーションを必要とするその他の不整脈を有する患者、左房径5.5cm以上、駆出率35%未満の患者などであった。 登録時に未装着の患者全例に埋込み型ループレコーダーが装着され、主要手技の2週間以上前には装着が完了し、心房細動負荷(心房細動累積時間)が評価された。 主要エンドポイントは、最初の3ヵ月間(ブランキング期間)を除く6ヵ月時の心房細動負荷(3ヵ月時~6ヵ月時の心房細動累積時間)であった。副次エンドポイントには、心房細動の症状やQOL(Atrial Fibrillation Effect on Quality of Life[AFEQT]質問票、Mayo AF-Specific Symptom Inventory[MAFSI]、European Heart Rhythm Association[EHRA]スコア、SF-36)、イベント発生までの時間、安全性などが含まれた。心房細動負荷、プラセボと比較してPVIで有意に減少 2020年1月~2023年8月に(2020年3月~2021年7月はCOVID-19のため一時中断)、126例が無作為化され(平均年齢66.8歳、男性89例[70.63%]、発作性心房細動20.63%)、123例が主要評価の解析対象集団となった。 6ヵ月時の心房細動負荷はベースラインからの絶対平均変化量としてPVI群で60.31%、シャム群で35.0%低下した(幾何平均群間差:0.25、95%信頼区間[CI]:0.15~0.42、p<0.001)。 6ヵ月時のAFEQT要約スコア(範囲:0~100、高スコアほど心房細動関連障害が軽度)の推定群間差は、PVI群が18.39ポイント(95%CI:11.48~25.30)高かった。MAFSIの頻度スコアおよび重症度スコアについても、PVI群が良好であった。また、SF-36で評価した健康関連QOLはPVIによる改善が示され、6ヵ月時の推定群間差は9.27ポイント(95%CI:3.78~14.76)とPVI群が良好であった。 なお、著者は研究の限界として、試験期間が6ヵ月と短かったこと、PVIに限定されていたこと、2施設のみの実施であったことなどを挙げている。

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肺静脈隔離術+左心耳結紮術、心房細動の予後を改善するか/JAMA

 初回カテーテルアブレーションを受ける非発作性心房細動患者では、肺静脈隔離術(PVI)単独と比較して左心耳(LAA)結紮術+PVIは、術後30日以内の重篤な有害事象の発現(安全性)を有意に改善するものの、12ヵ月後の時点で心房細動の発現がない状態(有効性)に有意な差はないことが、米国・Kansas City Heart Rhythm InstituteのDhanunjaya R. Lakkireddy氏らが実施した「aMAZE試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2024年4月2日号で報告された。米国53施設の非盲検無作為化試験 aMAZE試験は、非発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションにおけるLAA結紮デバイス(LARIAT、AtriCure製)の安全性と有効性の評価を目的とする非盲検無作為化試験。2015年10月~2019年12月に米国の53施設で患者を登録し行われた(AtriCureの助成を受けた)。 過去3年以内に症候性の非発作性心房細動と診断され、少なくとも1剤のI/III群抗不整脈薬による治療が無効で、カテーテルアブレーションが予定されている患者610例を登録し、LAA結紮術+PVI群に404例(年齢中央値68.0歳[範囲:29~80]、男性71%)、PVI単独群に206例(68.0歳[40~80]、77%)を無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、PVI施行後12ヵ月以内に30秒以上持続する心房性不整脈が記録されないことであった。また、安全性の主要エンドポイントは、事前に規定された重篤な有害事象の複合であり、術後30日時の性能目標(10%)と比較した。有効性の主要エンドポイントは満たさず、安全性は確認 ベイズ適応分析による有効性の主要エンドポイントの発生率は、LAA結紮術+PVI群が64.3%、PVI単独群は59.9%であり(群間差:4.3%、95%信用区間[CrI]:-4.2~13.2)、優越性の事後確率は0.835と、優越性を確立するための統計学的基準(0.977)を満たさなかった。 また、安全性の主要エンドポイントである30日以内の重篤な有害事象の発生率は、LAA結紮術+PVI群で3.4%(95%CrI:2.0~5.0、事後確率1.0)と、事前に規定された閾値である10%を下回っており、安全性が確認された。12ヵ月時の左心耳完全閉鎖は80%、残存血流5mm以下は99% PVI施行後12ヵ月の時点での左心耳完全閉鎖(残存血流0mm)の割合は、LAA結紮術+PVI群が80%(250/314例)、PVI単独群は84%(253/302例)であり、5mm以下の残存血流はそれぞれ99%(307/310例)および99%(295/299例)で達成された。 著者は、「補助的LAA結紮術は、心房性不整脈の再発においてPVIに有意な有益性を付加しないが、持続的な長期の左心耳閉鎖をもたらし、安全性に関して重篤な有害事象を有意に抑制した」としている。

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医師が過小評価した心房細動、予後にどう影響?/慶應義塾大学

 医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連を調査した結果、医師は心房細動患者の健康状態を過小評価していることが少なくなく、過小評価している場合はその後の治療の積極性が低く、1年後の健康状態の改善が乏しいことを、慶應義塾大学の池村 修寛氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。 外来における心房細動の主な治療目標は、患者の症状・機能や生活の質を最適化することであるが、これは医師が心房細動患者の健康状態を正確に評価することで可能になる。そこで研究グループは、医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連性を調査するため、多施設共同前向きコホート研究を実施した。 対象は、2018年11月8日~2020年4月1日に東京都内の3次医療機関2病院(慶應義塾大学病院、東京医療センター)で新たに心房細動と診断された患者、または心房細動の初回評価のために紹介されて外来を受診した患者であった。データ分析は2022年12月22日~2023年7月7日に実施された。主要アウトカムは、医師・患者の健康状態の評価の一致と治療エスカレーション(抗不整脈薬の変更または開始、除細動やカテーテルアブレーションの実施)との関連、1年後のAFEQT(Atrial Fibrillation Effect on Quality-of-Life)スコアの変化であった。 患者報告による健康状態として、AFEQT質問票を用いて、症状、日常生活、治療不安の3領域の評価を組み合わせたAFEQTスコアを登録時と1年後に収集した。医師は、診察直後に簡略版の質問票を用いて、心房細動患者の前月の症状、日常生活、治療不安を評価した。各領域の項目に対する患者回答と医師評価のスコアの差から、医師が患者の健康状態を適正評価、過小評価、過大評価しているかを判断した。 主な結果は以下のとおり。・心房細動患者330例が登録・解析された。男性は238例(72.1%)、平均年齢(SD)は67.9(11.9)歳、発作性心房細動は163例(49.4%)であった。・医師が健康状態を適正に評価した患者は112例(33.9%)、過小評価した患者は42例(12.7%)、過大評価した患者は176例(53.3%)であった。・健康状態が過小評価された群は、適正に評価された群に比べてより若く(平均年齢[SD]:63.7[10.6]歳vs.65.6[12.3]歳)、心房細動アブレーションの治療歴があった(19.0% vs.8.0%)。・206例(62.4%)の患者が初回評価から1年以内に治療がエスカレーションされた。健康状態が過小評価された群の実施率は47.6%で、適正に評価された群(63.6%)や過大評価された群(66.3%)よりも少なかった。・多変量調整後、健康状態の過小評価は治療エスカレーションの頻度の低さと独立して関連していた(調整オッズ比:0.43、95%信頼区間:0.20~0.90、p=0.02)。・適正または過大評価された群と比べて、過小評価された群では1年後のAFEQTスコアの改善が有意に低く(p=0.01)、とくに症状領域のスコアの改善が顕著に低かった(p<0.001)。

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心房細動患者のうつ・不安の改善、アブレーションvs.薬物療法/JAMA

 症候性心房細動(AF)を有する患者において、不安や抑うつなど精神症状の改善はカテーテルアブレーション施行患者では観察されたが、薬物療法のみの患者では認められなかったことを、オーストラリア・Royal Melbourne HospitalのAhmed M. AI-Kaisey氏らが、医師主導の無作為化評価者盲検比較試験「Randomized Evaluation of the Impact of Catheter Ablation on Psychological Distress in Atrial Fibrillation:REMEDIAL試験」の結果、報告した。AFカテーテルアブレーションがメンタルヘルスに及ぼす影響についてはよくわかっていなかった。JAMA誌2023年9月12日号掲載の報告。AF患者100例を、カテーテルアブレーション群と薬物療法のみ群に無作為化 研究グループは、2018年6月~2021年3月にオーストラリアのAFセンター2施設において、発作性または持続性AFを有し少なくとも2種類の抗不整脈薬治療の対象となる18~80歳の患者を登録。アブレーション群または薬物療法群に1対1の割合で無作為に割り付け、AFカテーテルアブレーションが薬物療法のみと比較して、精神的苦痛を改善するかどうかを、評価尺度を用いて調べた。 薬物療法群では洞調律を維持するため最適な抗不整脈薬治療が行われ、アブレーション群では無作為化後1ヵ月以内にカテーテルアブレーションが行われた。 主要アウトカムは、12ヵ月時の病院不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)スコア、副次アウトカムは重度の精神的苦痛(HADS合計スコア>15)を有する患者の割合、HADS不安スコア、HADSうつ病スコア、うつ病自己評価尺度(Beck Depression Inventory-II:BDI-II)スコアであった。不整脈再発およびAF負荷のデータも解析した。 計100例(平均[±SD]年齢59±12歳、女性31例[32%]、発作性AF54%)が登録され、アブレーション群(52例)および薬物療法群(48例)に割り付けられた。このうち、4例(それぞれ3例および1例)が追跡不能または脱落となり、96例が試験を完遂した。アブレーション群の全例(49例)で肺静脈隔離に成功した。アブレーション群で、12ヵ月時の病院不安抑うつ尺度の合計スコアが有意に低下 12ヵ月時(主要アウトカム)のHADS合計スコア(平均±SD)は、アブレーション群7.6±5.3、薬物療法群11.8±8.6、群間差は-4.17(95%信頼区間[CI]:-7.04~-1.31、p=0.005)であり、アブレーション群が薬物療法群より有意に低かった。なお6ヵ月時もそれぞれ8.2±5.4、11.9±7.2で、有意差が認められた(p=0.006)。 アブレーション群と薬物療法群において、重度の精神的苦痛を有する患者の割合はそれぞれ6ヵ月時14.2%、34%(p=0.02)、12ヵ月時10.2%、31.9%(p=0.01)であり、HADS不安スコアは6ヵ月時4.7±3.2、6.4±3.9(p=0.02)、12ヵ月時4.5±3.3、6.6±4.8(p=0.02)であった。HADS抑うつスコアは3ヵ月時3.7±2.6、5.2±4.0(p=0.047)、6ヵ月時3.4±2.7、5.5±3.9(p=0.004)、12ヵ月時3.1±2.6、5.2±3.9(p=0.004)。また、BDI-IIスコアは6ヵ月時7.2±6.1、11.5±9.0(p=0.01)、12ヵ月時6.6±7.2、10.9±8.2(p=0.01)であった。 AF負荷の中央値も、アブレーション群0%(四分位範囲[IQR]:0~3.22)、薬物療法群15.5%(1.0~45.9)であり、アブレーション群が有意に低かった(p<0.001)。

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発作性AFのアブレーション、パルスフィールドvs.クライオ/高周波バルーン/NEJM

 発作性心房細動のカテーテル治療において、パルスフィールドアブレーション(PFA)は従来のサーマルアブレーション(高周波またはクライオバルーンアブレーション)に対して、1年時点の治療成功および重篤な有害事象に関して非劣性であることが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のVivek Y. Reddy氏らが、無作為化単盲検非劣性試験「ADVENT試験」の結果を報告した。カテーテルによる肺静脈隔離術は、発作性心房細動の有効な治療法である。マイクロ秒の高電圧電界を送達するPFAは、心筋以外の組織の損傷を抑えることが可能であるが、従来のサーマルアブレーションと比較したPFAの有効性および安全性はこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号掲載の報告。治療抵抗性の発作性心房細動患者607例を対象 研究グループは、75歳以下で、1種類以上の抗不整脈薬に抵抗性の発作性心房細動患者を、PFA群または従来のサーマルアブレーション(高周波またはクライオバルーンアブレーション)群に、1対1の割合に無作為化に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、治療成功(以下がないこと:肺静脈隔離の初期手技失敗、3ヵ月のブランキング期間後に30秒以上持続する心房頻脈性不整脈、3ヵ月のブランキング期間後のクラスIまたはIIIの抗不整脈薬または電気的除細動の使用、アミオダロンの使用、再アブレーション)、安全性の主要エンドポイントは、7日以内のデバイスおよび手技関連の重篤な有害事象(左房食道瘻および肺静脈狭窄は発生時期を問わず含む)の複合とした。 2021年3月1日~2022年6月3日に、計706例が登録され、ロールイン症例80例(1施設1~3例)の治療完了後、626例が無作為に割り付けられた。このうち治療前に同意を撤回した患者を除く607例(PFA群305例、サーマルアブレーション群302例)が解析対象集団となった。PFAは、有効性および安全性ともにサーマルアブレーションに対して非劣性 追跡期間1年時点で、主要有効性エンドポイントの達成は、PFA群204例(推定確率73.3%)、サーマルアブレーション群194例(71.3%)で、群間差は2.0ポイント(95%ベイズ信用区間:-5.2~9.2、非劣性の事後確率>0.999)であった。 主要安全性エンドポイントのイベントは、PFA群で6例(推定発現率2.1%)、サーマルアブレーション群で4例(1.5%)に認められ、群間差は0.6ポイント(95%ベイズ信用区間:-1.5~2.8、非劣性の事後確率>0.999)であった。

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心房細動アブレーション後の認知機能障害は一過性

 心房細動カテーテルアブレーション後に認知機能障害が報告されているが、長期的に持続するかどうかは不明である。今回、オーストラリア・Royal Melbourne HospitalのAhmed M. Al-Kaisey氏らがアブレーション後12ヵ月間の追跡調査を実施したところ、アブレーション後にみられる認知機能障害は一過性であり、12ヵ月後には完全に回復していたことが示された。JACC Clinical Electrophysiology誌2023年7月号に掲載。 本研究は、1種類以上の抗不整脈薬が無効であった症候性心房細動患者100例を対象にした前向き研究で、継続的な内科的治療または心房細動カテーテルアブレーションに無作為に割り付け、12ヵ月間追跡した。認知機能の変化は、ベースライン時および追跡期間中(3、6、12ヵ月)に6種類の認知機能検査で評価した。 主な結果は以下のとおり。・計96例が研究プロトコルを完了した。平均年齢は59±12歳(女性32%、持続性心房細動46%)であった。・新規の認知機能障害の有病率は、アブレーション群、内科的治療群の順に、3ヵ月後で14%、2%(p=0.03)、6ヵ月後で4%、2%(p=NS)、12ヵ月後で0%、2%(p=NS)であった。・アブレーションの時間は、術後認知機能障害の独立した予測因子であった(p=0.03)。・12ヵ月後にアブレーション群の14%で認知スコアの有意な改善がみられたが、内科的治療群ではみられなかった(p=0.007)。

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心不全患者とポリファーマシーの本質を考える【心不全診療Up to Date】第8回

第8回 心不全患者とポリファーマシーの本質を考えるKey Pointsポリファーマシーの「質」と「量」を考えるポリファーマシーへの対策潜在的不適切処方、有害事象を起こす可能性のある薬剤はないか?本気の多職種連携で各施設・地域に合った効率良い対策を考えるはじめにこれまで、心不全患者において、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)を行うことの重要性を詳しく説明してきた。ただ、その際、常に議論となるのが、ポリファーマシー(多剤併用)問題である。この問題の本質は何か、そしてその対策としてすぐにできることは何か、本稿ではこのポリファーマシーを取り上げてみたい。 ポリファーマシーの「質」と「量」を考えるポリファーマシーを考える上で大切になってくるのが、「質」と「量」という視点である。「質」的なポリファーマシーとは、臨床的に必要とされる以上に多くの薬剤を処方されている状態であり、「量」的なポリファーマシーとは、5種類以上の薬剤内服と定義される。「量」的なポリファーマシーの中でも、10種類以上を内服している場合を“ハイパーポリファーマシー”と呼ぶが、TOPCAT試験(EF≥45%、平均69歳)のサブ解析1)にて、このような症例では入院のリスクが1.2倍であったという報告もあり(図1)、数が多いということも予後に大きく関連することがわかっている。つまり、「質」と「量」の両面から、このポリファーマシーというものをしっかり考えることが、薬剤数を適切に減らすうえで、極めて重要となる。(図1)心不全患者のポリファーマシー画像を拡大するでは、「質」的なポリファーマシーを考えるうえで何が一番重要となるか。それは、患者の生命予後やQOLに最も影響を及ぼす疾患・病態をしっかり把握し、薬剤の中でもできる限りの優先順位をつけておくことであろう。この連載のテーマは、心不全診療であるので、今回は、患者の生命予後やQOLに最も影響を及ぼすものが心不全である場合を考えていきたい。たとえば、駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者においては、第1回で説明した通り、生命予後・QOL改善のために、原則4剤(RAS阻害薬/ARNi、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬)の投与が推奨されており、どれだけ薬剤数が多くて何かを減らしたいとしても、この4剤は原則最後まで残しておくべきである。もちろん、食事摂取状況やADLなどの患者背景、腎機能などの検査所見などから、この4剤のうちどれかを中止せざるを得ない場面に遭遇することもあるが、安易な中断はかえって予後を悪化させるリスクもあり、注意が必要である。さらに例えて言うと、高カリウム血症よりも心不全予後改善薬を中止するほうが、長期的には予後やQOLを悪化させる可能性もあり2)、一旦中止してもその後に再開できないかを常に検討することが重要と考えられる。そして、もしその4剤の中のどれか1つでも投与開始や再開を見送る場合は、その薬剤を『投与しないリスク』についても患者側としっかり共有しておくことも忘れてはならない。そして、ポリファーマシーを考える上で、もう一つのキーとなる言葉が、『服薬アドヒアランス』である。この大きな原因は、患者自身がなぜその薬剤を飲んでいるか理解していないことが挙げられる。ある研究では、心不全患者の41%において、服薬アドヒアランスの低下を認め、この群では、アドヒアランス良好な群と比較して、心不全入院または死亡のリスクが2.2倍に上昇していたと報告されている3) 。つまり、ポリファーマシー対策を考える上で、患者といかに共同意思決定(Shared Decision Making)を行うか、など服薬アドヒアランス向上のための戦略もセットで、それぞれの施設や地域に適した形で考えることも大変意義のあることである。では少し具体的な対策について考えてみたい。ポリファーマシーへの対策1. 潜在的不適切処方(Potentially inappropriate medications:PIMs)、有害事象を起こす可能性がある薬剤(Potentially harmful drug:PHD)はないか?ポリファーマシー改善の第一歩は、PIMsがないか、適宜、処方されているすべての薬剤の見直しを行うことである。とくに、外来主治医が一人ではない場合、システム上それが漏れてしまうことが多く、年に1回でもよいので、総点検を実施することが大切である(できれば病院のシステムとして)。その際に参考となるプロトコル、アルゴリズムを表と図2に示す。(表)処方中止プロトコル画像を拡大する(図2)処方薬の中止/継続を判断するためのアルゴリズム画像を拡大するこのようなものをベースに、それぞれの施設に合った形で実施していただければ、大変効果的であると考える。そして、もう一つ重要なのが、心不全患者で注意すべき有害事象を起こす可能性がある薬剤(PHD)を服用していないか、ということにも注意を払うことである。その薬剤については、米国のガイドラインに明記されており、(1)抗不整脈薬、(2)Ca拮抗薬(アムロジピン以外)、(3)NSAIDs、(4)チアゾリジン薬(商品名:アクトスほか)である10)。とくに、抗不整脈薬は、加齢に伴い生理・代謝機能が低下することで、体内の薬物動態が変化し、本来の目的ではない催不整脈作用や併用薬の相互作用が顕在化するリスクがあるので、きわめて注意が必要である。また、NSAIDsは、腎臓の血管拡張を抑制(低下)させる腎プロスタグランジンの合成を阻害し、太いヘンレ係蹄上行脚や集合管でのナトリウム再吸収を直接阻害することで、ナトリウムと水分の貯留を引き起こし、利尿薬の効果を鈍らせる可能性がある4-9)。いくつかのコホート研究にて、心不全患者がNSAIDsを使用することで罹患率、死亡率が増加すること、また2型糖尿病患者のデータで、1ヵ月以内の短期のNSAIDsの使用であっても、その後の心不全新規発症率上昇と有意に関連していたという報告も最近されており、たとえ短期の使用であっても定期内服はかなり注意が必要と言える11)。 なお、心不全入院からの退院後90日以内に処方された潜在的有害薬物と再入院・死亡との関連をみた観察研究によると、潜在的有害薬物が実際に処方されていた割合は約12%で、最も頻繁に処方されていた薬剤はNSAIDs(6.7%)であった。次に多かったのが、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(4.7%)で、Ca拮抗薬はその後の再入院とも有意に関連していた12)。これらのことから、とくに高齢心不全患者では、上記4種の薬剤のなかでも、抗不整脈薬、NSAIDsの定期投与は、必要最小限に留め、処方する場合も常に中止を検討することが望ましいと考える。2. 本気の多職種連携で、それぞれの施設、地域に合った効率良い対策を考えるこれまで述べてきたポリファーマシー対策を効率よく実施し、それを長続きさせるには、医師だけでできることは時間的にも大変限られており、薬剤師、看護師、心不全療養指導士の皆さまにも積極的に介入してもらえるようなシステム作りが重要と考える。薬剤師による介入は、高齢者における薬剤有害事象のリスクを軽減することに有用であるという報告もあるし13)、これらのスタッフ全員がうまく役割分担をして、尊重し合い、サポートし合いながら、ポリファーマシー対策を実施することが、高齢心不全患者が増加しているわが国ではとくに必要であり、今後その重要性はますます増してくるであろう。このような多職種が介入する心不全の疾病管理プログラムの重要性は本邦の心不全診療ガイドラインでも明記されており14)、ぜひ、年に1回は、『処方薬、総点検週間』を設けるなど、積極的なポリファーマシーへの介入を実施していただければ幸いである。1)Minamisawa M, et al. Circ Heart Fail. 2021;14:e008293.2)Rossignol P, et al. Eur Heart Fail. 2020;22:1378-1389.3)Wu JR, et al. J Cardiovasc Nurs. 2018;33:40-46.4)Gislason GH, et al. Arch Intern Med. 2009;169:141-149.5)Heerdink ER, et al. Arch Intern Med. 1998;158:1108-1112.6)Hudson M, et al. BMJ. 2005;330:1370.7)Page J, et al. Arch Intern Med. 2000;160:777-784.8)Feenstra J, et al. Arch Intern Med. 2002;162:265-270.9)Mamdani M, et al. Lancet. 2004;363:1751-1756.10)Yancy CW, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;62:e147-239.11)Holt A, et al. J Am Coll Cardiol. 2023;81:1459–1470.12)Alvarez PA, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:1862-1871.13)Vinks THAM, et al. Drugs Aging. 2009;26:123-133.14)日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

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持続性AF、PVI+左房後壁乖離術で不整脈の再発率は改善せず/JAMA

 持続性心房細動(AF)患者に対する初回カテーテルアブレーションでは、肺静脈隔離術(PVI)に左房後壁隔離術(PWI)を追加しても、PVI単独と比較して12ヵ月の時点での心房性不整脈の再発回避の割合は改善されず、複数回の手技後の再発回避にも差はないことが、オーストラリア・アルフレッド病院のPeter M. Kistler氏らが実施した「CAPLA試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月10日号に掲載された。PWI追加の意義を評価する3ヵ国の無作為化臨床試験 CAPLA試験は、3ヵ国(オーストラリア、カナダ、英国)の11施設が参加した医師主導の無作為化臨床試験であり、2018年7月~2021年3月の期間に患者の登録が行われた(メルボルン大学Baker Department of Cardiometabolic Healthの助成を受けた)。 年齢18歳以上、症候性の持続性AFで、初回カテーテルアブレーションを受ける患者が、PVI+PWIを行う群またはPVI単独群に無作為に割り付けられた。PVIでは、左右の肺静脈の周囲を広範に焼灼し、PVI+PWIでは、これに天蓋部(roof ablation line)と底部(floor ablation line)の焼灼が追加された。 主要アウトカムは、1回のアブレーション施行から12ヵ月の時点において、抗不整脈薬非使用下で30秒以上の心房性不整脈が記録されないこととされた。心房細動負担にも差はない 338例(年齢中央値65.6歳[四分位範囲[IQR]:13.1]、男性76.9%)が登録され、330例(97.6%)が試験を完遂した。PVI+PWI群に170例、PVI単独群に168例が割り付けられた。 12ヵ月の時点で、抗不整脈薬非使用下での心房性不整脈再発の回避が達成されたのは、PVI+PWI群が89例(52.4%)、PVI単独群は90例(53.6%)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-1.2%、ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.73~1.36、p=0.98)。 複数回のアブレーション後の、抗不整脈薬使用の有無を問わない心房性不整脈再発の回避(PVI+PWI群58.2% vs.PVI単独群60.1%、HR:1.10、95%CI:0.79~1.55、p=0.57)、複数回のアブレーション後の、抗不整脈薬使用の有無を問わない症候性AFの回避(68.2% vs.72.0%、HR:1.20、95%CI:0.80~1.78、p=0.36)、心房細動負担(AF burden、1年の追跡期間中における心房細動累積時間の割合)(0%[IQR:0~2.3]vs.0%[0~2.8]、p=0.47)にも、両群間に有意な差はなかった。 一方、平均手技時間(142分[SD 69]vs.121分[57]、p<0.001)とアブレーション時間(34分[SD 21]vs.28分[12]、p<0.001)は、PVI単独群で短かった。 合併症は、PVI+PWI群が6件、PVI単独群は4件発現した。手技関連死はなく、脳血管イベントや食道瘻の報告もなかった。 著者は、「PVIにPWIを追加することで、治療時間と焼灼時間が延長されるが、合併症の発生率は増加しないことが示された。この研究では、初回心房細動カテーテルアブレーションにPWIを経験的に導入する方法は支持されなかったが、PVI+PWIで利益が得られる可能性のあるサブグループを特定するために、さらなる研究が求められる」としている。

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難治性心室細動、新たな除細動法が生存退院率を改善/NEJM

 院外心停止で難治性心室細動が認められる患者において、二重連続体外式除細動(DSED)およびベクトル変化(VC)除細動は標準的な除細動と比較して、いずれも生存退院率が高く、修正Rankin尺度スコアで評価した良好な神経学的転帰の達成はDSEDで優れたものの、VC除細動には差がなかったことが、カナダ・トロント大学のSheldon Cheskes氏らが実施した「DOSE VF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年11月24日号で報告された。カナダのクラスター無作為化クロスオーバー試験 DOSE VF試験は、カナダの6つの救急医療サービス(合計約4,000人の救急隊員)が参加した3群クラスター無作為化対照比較クロスオーバー試験であり、2018年3月~2022年5月の期間に行われた(カナダ心臓・脳卒中財団の助成を受けた)。 6施設は、救急隊員がDSED(2つの除細動器により、急速に連続してショックを与える)、VC除細動(1つの除細動器で、身体前面と背面に装着した電極パッドを切り換えてショックを与える)、標準的除細動のいずれかを行う群(クラスター)に無作為に割り付けられ、6ヵ月ごとにクラスターのクロスオーバーが行われた。 対象は、年齢18歳以上、院外心停止中に心因性と推定される難治性心室細動を呈した患者であった。 主要アウトカムは、生存退院とされた。副次アウトカムは、心室細動の停止、心拍再開、退院時の良好な神経学的転帰(修正Rankin尺度スコア2以下)であった。 本試験は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行による救急隊員の不足に関連して、救命処置に要する時間が延長する可能性への懸念から、データ安全性監視委員会により早期中止が勧告された。DSEDは心室細動停止率、心拍再開率も良好 早期中止の前に登録された405例(平均年齢63.6歳、男性84.4%)が解析に含まれた。355例(87.7%)が割り付けられた除細動を受けた。DSED群に125例(30.9%)、VC除細動群に144例(35.6%)、標準的除細動群に136例(33.6%)が割り付けられた。 生存退院率は、標準的除細動群の13.3%に比べ、DSED群が30.4%(補正後相対リスク[aRR]:2.21、95%信頼区間[CI]:1.33~3.67)、VC除細動群は21.7%(1.71、1.01~2.88)であり、いずれも高率であった(3群の比較でp=0.009)。 心室細動停止率は、標準的除細動群の67.6%に対し、DSED群は84.0%(aRR:1.25、95%CI:1.09~1.44)、VC除細動群は79.9%(1.18、1.03~1.36)であり、心拍再開率は、標準的除細動群が26.5%に対し、DSED群は46.4%(1.72、1.22~2.42)、VC除細動群は35.4%(1.39、0.97~1.99)であった。 また、良好な神経学的転帰の達成率は、標準的除細動群の11.2%に比べ、DSED群が27.4%(aRR:2.21、95%CI:1.26~3.88)と優れたのに対し、VC除細動群は16.2%(1.48、0.81~2.71)であり、差はみられなかった。 著者は、「薬剤投与のタイミングや、エピネフリンおよび抗不整脈薬の平均投与量は、3群ともほぼ同様であり、これらの薬物療法による試験結果への治療上の影響に差があったとは考えにくい」と指摘し、「結果はDSEDが良好であったが、救急医療サービスのなかには2台目の除細動器の補給が困難な施設もある可能性がある。標準的除細動よりもVC除細動のほうが生存率が高いことから、院外心停止時に2台目の除細動器が用意できない場合に、1台の除細動器でVC除細動を行うことは、難治性心室細動の代替治療の方法として有効と考えられる」としている。

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発作性AF、冷凍アブレーションが持続性への移行を有意に抑制/NEJM

 未治療の発作性心房細動に対するクライオ(冷凍)バルーンアブレーションによる初期治療は、抗不整脈薬と比較して、3年間の追跡期間における持続性心房細動の発生率および心房頻脈性不整脈の再発率が低いことが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJason G. Andrade氏らがカナダの18施設で実施した医師主導の無作為化非盲検評価者盲検試験「EARLY-AF試験」の結果、示された。心房細動は慢性化する進行性の疾患で、心房細動の持続は血栓塞栓症や心不全のリスクを増加させる。初期治療としてのカテーテルアブレーションは、心房細動の発症機序に作用し持続性心房細動への移行を抑制する可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2022年11月7日号掲載の報告。全例に心臓モニタを植え込み、3年間追跡 研究グループは、症候性の発作性心房細動および、無作為化前24ヵ月以内に1回以上心電図で記録された心房細動のエピソードを有し、クラスIまたはクラスIII抗不整脈薬による治療歴のない18歳以上の患者を、冷凍バルーンアブレーション群(以下、アブレーション群)または抗不整脈薬群に無作為に割り付けた。患者は、登録時に全例が植込み型心臓モニタを植え込み、データの自動送信は毎日、手動送信は毎週行われるとともに、治療開始後7日目の電話連絡、3、6、12ヵ月時およびその後は6ヵ月ごとの来院で、少なくとも3年間追跡された。なお、アブレーション群では、経口抗凝固療法をアブレーション後3ヵ月以上実施した。 主要評価項目は、持続性心房細動(7日間以上持続する、または48時間~7日間持続し停止に除細動を要した心房頻脈性不整脈)の初発、ならびに心房頻脈性不整脈(30秒以上の心房細動、心房粗動、心房頻拍)の再発、副次評価項目は不整脈負荷(心房細動の時間の割合)、QOL、救急外来受診、入院、安全性などであった。 2017年1月17日~2018年12月21日に計303例が登録され、154例がアブレーション群、149例が抗不整脈薬群に無作為に割り付けられた。冷凍バルーンアブレーション群で持続性心房細動への移行率が低い 3年間の追跡期間において、主要評価項目の持続性心房細動はアブレーション群で1.9%(3/154例)、抗不整脈薬群では7.4%(11/149例)に発生し(ハザード比[HR]:0.25、95%信頼区間[CI]:0.09~0.70)、心房頻脈性不整脈の再発はそれぞれ56.5%(87/154例)、77.2%(115/149例)に認められた(HR:0.51、95%CI:0.38~0.67)。 心房細動の時間の割合(中央値)は、アブレーション群で0%(四分位範囲[IQR]:0.00~0.12)、抗不整脈薬群で0.24%(0.01~0.94)であった。また、3年時にアブレーション群で5.2%(8例)、抗不整脈薬群で16.8%(25例)が入院していた(相対リスク:0.31、95%CI:0.14~0.66)。重篤な有害事象は、アブレーション群で7例(4.5%)、抗不整脈薬群で15例(10.1%)に認められた。

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不整脈チームで試練の1ヵ月!【臨床留学通信 from NY】第39回

第39回:不整脈チームで試練の1ヵ月!先月は主に不整脈チームに配属されて、病棟のコンサルテーションを担当しました。米国では、心房細動にアミオダロンが使えるところが日本と大きく異なり、それ以外に、dronedarone、dofetilideといった聞きなれない薬も使用したりします。私は大学病院にいた期間が実は短かったため、不整脈研修も短く、大学関連病院にいた際にはアブレーションが可能な施設ではなかったこともあり、心血管インターベンションの素地はあっても、不整脈の専門的な薬剤、植込み型除細動器(ICD)などのデバイスチェックなどは非常に苦手な分野のため、ある意味、試練の1ヵ月でした。たとえば術後の心房細動などは、過去の研究からはリズムコントロールとレートコントロールに差がないこと1)は知ってはいましたが、それでもリズムコントロールを推し進めるのを好む不整脈医もいます。そして日本と比べると、すぐに除細動をするのも多い印象で、とりあえず1回依頼があったら心房細動罹患期間が長くてもトライしたり、逆に、抗不整脈薬を導入する時は、訴訟対策なのか、経食道心エコーなどで左心耳の血栓をかなり慎重に確認したりすることも多いです。米国の医療システム、とくに外来は、日本に比べてはるかに貧弱です。心房細動の頻脈で心不全を来していないような比較的軽症例でも、外来では治療できず、救急外来からほぼ入院となってしまう背景があるため、早めのリズムコントロールをより好むのかもしれません(ただし、早めのリズムコントロールが好ましい、というデータは昨今出てきてはいます2))。私は今、一般循環器内科(general cardiology)フェローの身分ですので、電気生理学(electrophysiology)を選べば、米国で華麗に不整脈医に転身することもできますが、やはり苦手なのでやめておこうと思います。しかし、改めて不整脈を少しかじると、薬物治療ではほかの循環器医がタッチしにくい治療をしたり、増え続ける心房細動のアブレーション、重症心不全のCRT(心室再同期療法)、致死的な心室性不整脈のアブレーション、リードレスペースメーカー、突然死の1次・2次予防のICD、皮下植込み型除細動器(S-ICD)など多彩な仕事があったり、かつカテーテル治療医に比べて夜間に働く必要性が低いことから、本当に魅力的な領域だと思います。参考1)Gillinov AM, et al. Rate Control versus Rhythm Control for Atrial Fibrillation after Cardiac Surgery. N Engl J Med. 2016;374:1911-1921.2)Kirchhof P, et al. Early Rhythm-Control Therapy in Patients with Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2020;383:1305-1316.Column最近私のグループから、妊娠中のコロナワクチン接種に関するメタ解析がJAMA Pediatrics誌に掲載されましたのでご覧ください。筆頭著者の先生から、1年前に直接私のメールアドレスをたどって連絡をいただきました。米国の集中治療(critical care)志望ということで、コロナ関連なら何か指導ができると考えました。そして指導してから3つ目でJAMA系とは、素晴らしいです。私は主にコンセプトと方法論を担当しました。共同筆頭著者の先生は、大学時代のテニス部のダブルスパートナーで小児科医のため、内容のサポートを頼みました。まさにダブルスペーパーと言えると思います。Watanabe A, Yasuhara J, Kuno T, et al. Peripartum Outcomes Associated With COVID-19 Vaccination During Pregnancy: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2022 Oct 3. [Epub ahead of print]

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