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コロナワクチンの血栓症リスク、種類別比較を定量化/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンのうち、アデノウイルスベースのワクチンであるChAdOx1-S(アストラゼネカ製)はmRNAベースワクチンのBNT162b2(ファイザー製)と比較して、初回接種から28日以内の血小板減少症のリスクが30%以上高く、アデノウイルスベースのワクチンAd26.COV2.S(ヤンセン製)はBNT162b2に比べ、血小板減少症を伴う血栓症候群(TTS)の中でも静脈血栓塞栓症のリスクが高い傾向にあることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らが行った欧米6ヵ国のデータセットの解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月26日号で報告された。欧州5ヵ国と米国のネットワークコホート研究 研究グループは、COVID-19に対するアデノウイルスベースのワクチンとmRNAベースのワクチンとで、TTSまたは血栓塞栓イベントのリスクの定量的な比較を目的に、国際的なネットワークコホート研究を実施した(欧州医薬品庁[EMA]の助成を受けた)。 解析には、欧州の5ヵ国(フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、英国)の各1つのデータセットと、米国の2つのデータセットが使用された。 対象は、2020年12月から2021年の半ばまでの期間に、2つのアデノウイルスベースのCOVID-19ワクチン(ChAdOx1-S、Ad26.COV2.S)または2つのmRNAベースのCOVID-19ワクチン(BNT162b2、mRNA-1273[モデルナ製])のいずれかの接種を少なくとも1回受け、初回接種時に年齢18歳以上の集団であった。 主要アウトカムは、ワクチン接種から28日以内のTTS(深部静脈血栓症、血栓塞栓症など)または静脈・動脈血栓塞栓イベント(深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳静脈洞血栓症、心筋梗塞など)とされた。 傾向スコアマッチング後に罹患率比が推算され、陰性コントロールのアウトカムを用いて較正が行われた。変量効果によるメタ解析で、データベースごとの推算値が統合された。今後の予防接種キャンペーンの際に考慮すべき ドイツと英国のデータの解析では、血小板減少症は、ChAdOx1-Sの初回接種を受けた集団で862件、BNT162b2の初回接種を受けた集団で520件発生した。 ドイツと英国のデータのメタ解析では、ChAdOx1-S初回接種はBNT162b2初回接種と比較して、28日後の血小板減少症のリスクが高く、較正後の統合罹患率比は1.33(95%信頼区間[CI]:1.18~1.50)であり、較正後罹患率の差は1,000人年当たり1.18(95%CI:0.57~1.8)、絶対リスク差は10万人当たり8.21(95%CI:3.59~12.82)であった。 TSSはきわめてまれであった。米国とスペインのデータのメタ解析では、Ad26.COV2.SはBNT162b2に比べ、TTSのうち静脈血栓塞栓症のリスクが高い傾向が認められ、較正後の統合罹患率比は2.26(95%CI:0.93~5.52)であった。不確実性はより高いものの、TTSの深部静脈血栓症にも同様の傾向がみられた(較正後統合罹患率比:1.83、95%CI:0.62~5.38)。 著者は、「罹患数はきわめて少ないが、アデノウイルスベースのワクチン接種後に観察された血小板減少症のリスクは、今後、予防接種キャンペーンやワクチン開発を計画する際に考慮すべきと考えられる」としている。

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第122回 感染症法改正案、衆議院厚生労働委員会で可決、法案成立へ/国会

<先週の動き>1.感染症法改正案、衆議院厚生労働委員会で可決、法案成立へ/国会2.かかりつけ医機能、8項目を3項目に整理を求める提言提出/日本病院会3.燃料費、物価高騰で、病院・介護事業者の経営悪化一段と/四病協4.大阪急性期・総合医療センター、ランサムウェア攻撃で電子カルテ障害/大阪府5.在宅医療やオンライン診療でもマイナンバー活用へ/厚労省6.医師不足対策で、埼玉医科大学と群馬大学が人材育成で協定/埼玉医大・群馬大1.感染症法改正案、衆議院厚生労働委員会で可決、法案成立へ/国会11月4日に衆議衆院厚生労働委員会が開催された。今後の感染症の流行に備え、規模の大きな公立・公的病院や特定機能病院、地域医療支援病院に対して、感染症患者向けの病床を事前に確保を義務付ける感染症法改正案を、自民党、公明党のほか立憲民主党、日本維新の会など賛成多数で可決した。11月8日にも衆議院本会議で可決され、参院に送付され、今月中に成立の見通し。(参考)感染症法改正案、衆院委で可決=大病院の病床確保義務付け(時事通信)中核病院に病床確保義務付け 感染症法改正案、衆院委可決(産経新聞)感染症法等の一部を改正する法律案について(厚労省)2.かかりつけ医機能、8項目を3項目に整理を求める提言提出/日本病院会日本病院会は、「かかりつけ医機能」について提言書をまとめ、厚生労働省に提出した。現状、「かかりつけ医」に求められる機能について、地域包括診療加算の届出、地域包括診療料の届出、小児かかりつけ診療料の届出、機能強化加算の届出のほか、日常的な医学管理および重症化予防や地域の医療機関などとの連携、在宅医療支援、介護などとの連携の8項目について医療機能情報提供制度で報告が求められていた。今回、かかりつけ医機能について見直しを求め、特定の領域に偏らない広範囲にわたる全人的医療の提供、診療時間内外を問わず地域住民に自院で対応、もしくは他の医療機関と連携して対応、総合的な医学的管理を行なうの3機能に整理する必要があるとした。11月2日に日本医師会も「かかりつけ医機能」について提言をまとめ公表しており、患者さんのフリーアクセスを維持しつつ、地域の役割分担や連携で発揮するよう求めている。(参考)「かかりつけ医機能」に関する提言(日本病院会)地域における面としてのかかりつけ医機能~かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて~(第1報告)(日本医師会)かかりつけ医機能、広範囲の全人的医療など提言 日病、3項目に整理を(CB news)日医、かかりつけ医機能への評価の強化を目指す(日経メディカル)3.燃料費、物価高騰で、病院・介護事業者の経営悪化一段と/四病協団体協議会今年に入って、光熱費、燃料代の上昇による物価高騰によって病院や介護事業者の経営が圧迫されている報道が相次いでいる。11月2日に開催された四病協団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)の総合部会にて、入院患者に提供する食事の材料費や燃料光熱費が高騰しているため、1食当たり640円の入院時食事療養費では食事提供が十分にできなくなってきているとし、このままでは食事提供が困難になるため、入院時食事療養費の引き上げを求めていく考えを示した。通常の入院時食事療養費の引き上げは2024年度の診療報酬改定時であり、補助金の支給など早急な対応を求めていく。また、今年に入って1月~9月までの介護事業者の倒産が100件となり、去年の51件の2倍近くと、過去最多のペースとなっている。これも物価高騰や人件費の上昇、さらにはコロナウイルス感染拡大による利用控えなどが影響しているとみられている。(参考)物価高騰・円安により「病院での食事提供」が困難を極めている! 政府に緊急の対応を要望へ-四病協(Gem Med)入院患者の食事療養費、見直しを再度働き掛けへ 四病協(CB news)円安、資源高騰で「地域医療が崩れる」 JA厚生連病院も経営圧迫(日本農業新聞)介護事業者の倒産 過去最多ペース コロナで利用控えや物価高も(NHK)4.大阪急性期・総合医療センター、ランサムウェア攻撃で電子カルテ障害/大阪府10月31日、大阪市住吉区にある大阪急性期・総合医療センター(865床)は、電子カルテのサーバーにランサムウェアによる攻撃を受け、電子カルテが使用できない障害が発生した。このため同院では緊急以外の手術や外来診療の一時停止など通常診療ができない状況となり、救急患者の受け入れを停止している。同院によれば11月4日から前立腺がん手術など予定手術については一部再開しているが、全面的な復旧はまだ目処が立っていないため、システムが復旧するまで、救急や災害対応については近隣の病院に依頼している。同院は、大阪府の基幹災害医療センターであり、災害対応に24時間備えられるなど大阪市南部の中核的医療機関であるが、近年、急増している医療機関を狙うサイバー攻撃を受けた形。今年はランサムウェアによるサイバー攻撃が国内で合計8件と過去最悪のペースで報道が続いている。厚生労働省は今年3月に医療機関などを対象とするセキュリティリスクが顕在化していることへの対応して「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の第5.2版を改定し、医療機関に対応を求めている。(参考)「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」第5.2版(厚生労働省)カルテ人質に、狙われた病院 大阪でもサイバー攻撃(日経新聞)電子カルテには治療・投薬履歴など記録…「診療の質落ちる」攻撃受けた病院、診療停止続く(読売新聞)大阪急性期・総合医療センター、一部手術再開 外来診療は引き続き停止(CB news)5.在宅医療やオンライン診療でもマイナンバー活用へ/厚労省厚生労働省は10月28日に開催した社会保障審議会医療保険部会において、オンライン資格確認のシステムを訪問診療や訪問看護など在宅医療現場にも導入する方針を示した。また、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の利用をオンライン診療にも導入する方針を厚生労働省は明らかにしており、今後、マイナンバーカードの取得を促進することが狙い。 一方、紙レセプトの使用している医療機関については、23年4月以降もオンライン資格確認システムの導入は強制されないが、政府はマイナンバーカードの利用によって資格過誤によるレセプト返戻が減るなど窓口業務が削減されるメリットをアピールしている。(参考)訪問診療や訪問看護にもオンライン資格確認導入へ 厚労省方針(CB news)オンライン診療でも「マイナ保険証」、政府が24年導入の方針(読売新聞)オンライン資格の導入で事務コスト削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として~(厚労省)マイナンバーの利活用拡大による国民の利便性向上に向けて(経済財政諮問会議)6.医師不足対策で、埼玉医科大学と群馬大学が人材育成で協定/埼玉医大・群馬大11月4日、埼玉県の人口10万人当たりの医師数が全国一少なく、医師不足が深刻であるとして、埼玉医科大学と群馬大学は、埼玉県北部と群馬県南部で活躍する医師を育成する目的で、相互に連携・協力する協定を締結した。この協定は、今年の6月に文部科学省の「ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業」に採択され、埼玉医科大学と群馬大学以外にも、埼玉県立大学や両県の医師会、埼玉県内7病院と群馬県内6病院とも締結しており、将来この地域で活躍し続ける医師の育成を目指して令和10年度まで実施する。(参考)医療人材育成で協定 埼玉医大や群馬大、両県境域で連携(日経新聞)埼玉医大、群大などと医療人材育成へ協定 医師不足対応(産経新聞)「ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業」(文部科学省)

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既感染によるBA.4/5感染予防効果、半年で5割低下/NEJM

 現在、COVID-19感染の主流となっているオミクロン株BA.4およびBA.5について、既感染による再感染予防効果は時間経過と共に急速に減退する可能性がある。カタール・ドーハのWeill Cornell MedicineのHeba N. Altarawneh氏らによる検討がNEJM誌2022年10月27日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 研究者らは、SARS-CoV-2の検査結果、臨床経過、ワクチン接種、人口統計学的データ、カタールの医療施設で実施されたPCRおよび迅速抗原検査の全結果のデータを、全国SARS-CoV-2データベースから抽出した。感染リスクの違いをコントロールするため、性別、年齢、国籍、併存疾患数、検査した週、検査方法、検査理由によって、試験群と対照群をマッチングさせた。さらに、過去の感染について、オミクロン株による感染の波の開始(2021年12月19日)より前(前感染)とそれ以後(後感染)に分類した。 2022年5月7日~7月28日のPCR検査におけるS遺伝子標的不全(SGTF)の判定を用いて、BA.4/5への再感染に対する既感染の有効性を推定した。6月8日~7月28日の間に診断されたSARS-CoV-2感染は、この期間に支配的な亜種であったため、すべてBA.4/5感染であると仮定して有効性を推定した。・前感染では、有症状のBA.4/5再感染に対する有効性は35.5%(95%信頼区間[CI]:12.1~52.7)、症状の有無にかかわらない感染に対する有効性は27.7%(95%CI:19.3~35.2)であった。・後感染では、有症状のBA.4/5再感染に対する有効性は76.2%(95%CI:66.4~83.1)、症状の有無にかかわらない感染に対する有効性は78.0%(95%CI:75.0~80.7)であった。 診断された感染症がすべてBA.4/5であると仮定した既感染の有効性に関する解析でも、主解析と同様の結果が得られた。また、既感染からの間隔によって層別化した有効性の解析でも、時間の経過とともに予防効果が低下することが示された。 研究者らは、「BA.4/5再感染に対する既感染の有効性は、前感染ではわずかだったが、BA.1/2含む後感染では高かった。これは、時間の経過とともに免疫防御力が低下し、BA.4/5の免疫回避力が高くなることが原因だ」とした。

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認知症患者のインフルエンザワクチン接種の抗体反応に対する光曝露の影響

 認知症受け入れ施設の照明条件を改善すると、患者の睡眠、概日リズム、健康状態の改善がみられる。スイス・Ecole Polytechnique Federale de LausanneのMirjam Munch氏らは、日中に明るい光を浴びると、認知症患者のインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答がサポートされる可能性について報告を行った。この結果は、毎日より多くの光を浴びることで、認知症患者の免疫応答が上昇することを示唆しており、今後の研究において、定期的な光曝露がヒトの免疫系に対し直接的または安定した概日睡眠覚醒リズムを介して良い影響を及ぼすかが明らかになることが期待される。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年9月20日号の報告。 施設に入所している認知症患者80例を対象に、光曝露と休息および活動サイクルとの関係を評価するためアクティビティトラッカー活動量計を8週間使用した。毎年のインフルエンザワクチン接種前と接種4週間後に採血した血液サンプルを用いて、患者の免疫反応を分析した。3つのインフルエンザウイルス株(H3N2、H1N1、IB)に対する抗体濃度は、赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition)アッセイで定量化した。 主な結果は以下のとおり。・個々の光曝露プロファイル(日光を浴びるを含む)を定量化し、照度392.6ルクスを中央値として低光曝露群と高光曝露群に分類した。・両群間で、認知機能障害の重症度、年齢、性別に違いは認められなかった。・高光曝露群は、低光曝露群と比較し、ワクチン接種前の濃度が同等であったにもかかわらず、H3N2ワクチンに対する抗体価が有意に増加し、概日活動の振幅が有意に大きかった(日中の活動量が多く、夜間の活動量が少ない)。・全対象者の75%以上で、3つのインフルエンザウイルス株に対する十分な血清保護応答が確認された。

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イベルメクチン、軽~中等症コロナ患者の回復に寄与せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、イベルメクチン400μg/kgの1日1回3日間投与はプラセボと比較し回復までの期間を改善しないことが、米国・デューク大学のSusanna Naggie氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果、示された。著者は、「軽症~中等症のCOVID-19患者に対して、イベルメクチンの使用は支持されない」とまとめている。JAMA誌2022年10月25日号掲載の報告。外来患者で、持続的回復までの期間をイベルメクチンvs.プラセボで評価 ACTIV-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた、進行中の完全遠隔法による分散型臨床試験である。 研究グループは、米国の93施設において、SARS-CoV-2感染が確認されCOVID-19の症状発現後7日以内の30歳以上の外来患者のうち、2つ以上の症状(疲労、呼吸困難、発熱、咳、吐き気、嘔吐、下痢、体の痛み、悪寒、頭痛、喉の痛み、鼻の症状、味覚・嗅覚の異常のいずれか)を有する患者を、イベルメクチン(400μg/kgを1日1回3日間投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、持続的回復までの期間(少なくとも3日間連続して症状がないことと定義)、副次評価項目は28日目までの入院または死亡の複合を含む7項目とした。持続的回復までの期間は12日vs.13日、有意差なし 2021年6月23日~2022年2月4日の期間に、計1,800例が無作為化された(平均[±SD]年齢48±12歳、女性932例[58.6%]、SARS-CoV-2ワクチンを2回以上接種753例[47.3%])。このうち、1,591例(イベルメクチン群817例、プラセボ群774例)が試験を完遂し、解析に含まれた。 持続的回復までの期間の中央値は、イベルメクチン群12日(四分位範囲[IQR]:11~13)、プラセボ群13日(IQR:12~14)であり、持続的回復までの期間の改善に関するハザード比(HR、HR>1が有益であることを示す)は1.07(95%信用区間[CrI]:0.96~1.17、事後解析のp=0.91)であった。 28日目までの入院または死亡は、イベルメクチン群で10例、プラセボ群で9例確認された(1.2% vs.1.2%、HR:1.1、95%CrI:0.4~2.6)。 最も多く報告された重篤な有害事象は、COVID-19肺炎(イベルメクチン群5例、プラセボ群7例)と静脈血栓塞栓症(1例、5例)であった。

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モデルナのBA.4/5対応2価ワクチンを特例承認/厚労省

 厚生労働省は11月1日、モデルナのオミクロン株BA.4/5に対応した新型コロナウイルス2価ワクチン「スパイクバックス筋注」(2価:起源株/オミクロン株BA.4/5)について、承認事項の一部変更の特例承認をしたことを発表した。 一部変更申請の概要として、起源株およびオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードする mRNAを含む2価ワクチンが追加された。有効成分のエラソメランはSARS-CoV-2の起源株を、イムエラソメランはオミクロン株BA.1を、ダベソメランはオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードするmRNAだとしている。 本剤の接種対象者は、過去に初回免疫または追加免疫としてSARS-CoV-2ワクチンの接種歴のある18歳以上であり、追加免疫として、1回0.5mLを筋肉内に接種する。接種間隔は通常、前回のワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種を行うことができる。

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第133回 『かかりつけ医』制度化は骨太ならぬ“骨抜き”方針か!?

『かかりつけ医』は、たぶん一般にはある程度聞き慣れた言葉になっているだろうが、その定義はかなり曖昧と言って良いかもしれない。慢性疾患を有する患者の場合は、その主治医がいわゆる『かかりつけ医』だと思っているはずだ。しかし、ここでは釈迦に説法だが、厚生労働省や日本医師会が考える「かかりつけ医」の定義は異なる。厚生労働省(以下、厚労省)では「健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」となる。ちなみに日本医師会の考える『かかりつけ医』は、同会ホームページで、この厚労省の定義をさらに詳しく説明したような内容になっている。というか、そもそも厚労省のホームページの説明の下にわざわざ「参考」として日医へのリンクが張られているのは、今風に言うと、なんとも「もにょって」しまう。さて、この定義に厳密に沿えば、前述の慢性疾患の主治医は実は多くの場合、かかりつけ医とは言えない。ちなみに日本医師会総合政策研究機構の「日本の医療に関する意識調査 2022 年臨時中間調査」によると、一般生活者1,152人に聴取した結果では「かかりつけ医がいる」との回答は55.7%で50代以降になると50%を超えるものの、20代では30%弱だ。前述の厚労省、日医の『かかりつけ医』の定義を見て「もにょる」を通り越して、やや言葉は悪いが「ウソつけ」と言いたくなる部分がある。それは厚労省のホームページの「『かかりつけ医』はご自身で選択できます」と日医の「『かかりつけ医』とは、患者さんが医師を表現する言葉です」である。文字上で言えばそうだろう。だが、現実にはそうなっていない。この問題を顕在化させたのは、今般の新型コロナウイルス感染症のワクチン接種開始時である。同ワクチンは超低温冷凍による保管が必要だったことから、当初は自治体主導の大規模接種会場での接種がモデルとして考えられたが、それが突如として多くの自治体で地域医師会の協力を得て個別医療機関での接種が中心となった。その先鞭が東京都練馬区の作成した「練馬区モデル」である。先日、ある自治体のワクチン接種担当の職員が、「練馬区モデルが出る前の自治体向けマニュアルを見ると、どう考えても大規模接種を前提としているようにしか読めないので、その路線での接種計画を組んでいたが、突如練馬区モデルの話が厚労省から出てきて驚いた」と聞かされた。これが全国での接種計画を一変させたのは間違いないようだ。かく言う私は練馬区民。この話を聞いた時は、「いやいや練馬区住民でよかった」と思っていたのだが、以前の本連載でも書いたように、いざ接種開始となって送付されてきた案内を見てややのけぞった。接種医療機関リストは白とオレンジの2色刷りで、色付きの医療機関は「かかりつけの患者のみ」という区分だったのである。しかも、誰でもが接種できる白色の医療機関は全体の3分の1程度。あの当時は「これは絵に描いた餅?」と思いもしたが、mRNAワクチンの接種自体が初の試みだったので、まあやむを得ないのだろうとくらいに捉えていた。後に区内在住の知人から「過去に急に体調が悪くなった時に2、3回受診した医療機関にワクチン接種の申し込み連絡をしたら、“申し訳ないですが、かかりつけは一定頻度で定期的に受診している方を指しています”と断られた」と聞かされた。ワクチンマニアを自認する私にも、先日ようやくオミクロン株対応ワクチンの4回目接種の接種券が届いた。だが、まだ接種はしていない。というのも「マニア心」で、より抗体価が上がりやすいモデルナの2価ワクチンの承認を待っていたからである。今月半ば過ぎには、たぶん安定的な供給も開始されるだろう。そして再び個別接種医療機関リストを見て、ため息が出てしまった。相変わらずオレンジ色の「かかりつけの患者のみ」が多いばかりではなく、逆にかつては誰でも受けられるはずだった白色のリスト分類だった医療機関の一部がオレンジ色に変更されていたからである。アナフィラキシーに対する懸念が今よりも強かった初期ならまだしも、もう最多では5回接種者がいる状態である。にもかかわらず、逆にかかりつけ患者のみに新たに限定してしまう理由とは何だろう? まったく意味不明である。前述の知人の体験である「医師から選ばれたかかりつけ患者」という現状も併せると、まったく納得できない。さてそんな昨今、話題になっているのは「『かかりつけ医』を制度上、どのように位置付けるか?」である。これは政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022 について(骨太方針2022)」で、「かかりつけ医機能の制度整備」が謳われたからである。該当部分を抜粋する。また、医療・介護提供体制などの社会保障制度基盤の強化については、今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めることとし、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うとともに、地域医療連携推進法人の有効活用や都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想を推進する。敢えて太字にしたが、かかりつけ医機能にかかっているのが上の太字部分である。もっと言えば、「コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ」の意味するところが大である。端的に言ってしまえば、前述のワクチン接種問題や、政府の呼びかけにもかかわらず発熱外来が思ったように増えなかった経験を踏まえ、「もう制度的に縛っちゃいますよ」と言っているのだ。そもそも岸田 文雄首相は就任当初からコロナ対策として、非常時の診療体制整備に国が関与を明言していたので、特段驚きはない。国が考える「かかりつけ医機能の制度整備」には、ヨーロッパやオーストラリアやカナダの家庭医登録制度に近いものが念頭にあると思われる。これまでフリーアクセスを維持しつつ、患者の受診行動を変えるために選定療養費制度などの政策誘導を行ったものの、ほぼ目的を達成できていない現実を考えればさもありなんだろう。そしてこうした家庭医制度を念頭に置くなら、当然ながら最終的な診療報酬は人頭払いと疾患別包括払いが視野に入る。もちろん開業医中心の日医は経営環境が激変するため、議論の入口から反対姿勢を示している。もっともヨーロッパの家庭医制度をモデルとした場合、日本への制度導入には大きなハードルが2つある。1つは今さっき触れた診療報酬の抜本的な改定である。これはかなり難儀な話であるのだが、DPC制度の前例を踏まえれば完全に不可能なことではない。現にこれを匂わす診療所向けの診療報酬点数は現時点でも存在する。その意味では家庭医への登録に基づく人頭払いをどのように導入していくかだが、そこは行政お得意の最初は日医などが受け入れしやすい軽い縛りを設け、徐々に真綿で首を締めるが如く浸透させていくのではないだろうか?むしろ最大の問題は家庭医の質の担保だろう。日医には会員の『かかりつけ医』機能の強化に向けて生涯教育制度はあるが、これは連続した3年間の単位数とカリキュラムコード数(同一コードは加算不可)の合計数が60以上の者に「日医生涯教育認定証」を発行するというもので、一部の人にはお叱りを受けるかもしれないが、はっきり言えば形式だけ整えたようなものだ。これに対してヨーロッパの家庭医制度は、世界家庭医機構(WONCA)が認証した研修プログラムがあり、日医の生涯教育制度よりもはるかに上位レベルの研修内容である。とくにWONCAの家庭医プログラムは医師と患者・家族、地域との関係性についてはかなり重点的なプログラムがあり、この点は日医の生涯教育制度はかなり薄め。かつ、そもそも海外の家庭医とは、日本でかかりつけ医と見なされる診療所の多くを占める一般内科とは異なり、軽度の外科や産科、手術以外の耳鼻咽喉科、眼科領域までも網羅的に最新のエビデンスに基づく診療に対応できることが原則である。このWONCAの国際認証を受けた日本プライマリ・ケア連合学会の研修プログラムを終了し、家庭医療専門医として認定された医師は現時点で1,000人を超えたぐらいである。日医が生涯教育制度に変えて、こうした制度を利用してかかりつけ医機能を強化するが、その代わりに国による“過度な”介入はご免こうむりたいと言うならばまだしも、そうした妥協はこれまでの日医の姿勢からは期待できないだろう。もちろん一部の日医会員の中には日本プライマリ・ケア連合学会の家庭医療専門医研修を受けたいという人もいるだろうが、すでにかかりつけ医を自認している市中の開業医の多くはむしろ敬遠するだろう。国、日医、日本プライマリ・ケア連合学会という3者を当事者として、落しどころを探ろうにしても、たぶんWONCAの国際認証を受けている日本プライマリ・ケア連合学会は過度な妥協はしないだろうし、それは国民のためにしてはならない。もし国がかかりつけ医を海外の家庭医制度に寄せていくなら、それこそ大きな政治的な決断が必要になる。しかし、日医による後ろ盾が選挙を勝ち抜く大きな武器になっている与党・自民党にとってそれは無理だろうし、それ以前にかかりつけ医の定義ですら日医への忖度丸出しの厚労省が政治へのけん制に入ってしまうのは目に見えている。とくに今、支持率低迷にあえぐ岸田首相にとってはそんな危険な決断は無理と断言しても良い。その意味では一瞬威勢が良いように読める「骨太方針2022」も間もなく「骨抜き方針2022」になるという構図が見えてくる。私たちは不幸な歴史の証人になるだけなのだろうかと暗澹たる気持ちになってしまう。

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ワクチン回数と感染歴、オミクロン感染予防効果の高い組み合わせは?/NEJM

 米国・スタンフォード大学のElizabeth T. Chin氏らは、感染ハイリスク集団である刑務所の収容者とスタッフ合計約7万6,000例を対象に行った後ろ向きコホート試験で、COVID-19のmRNAワクチン接種および既感染は、SARS-CoV-2のB.1.617.2(デルタ)変異株優勢前の感染予防効果は低かったが、B.1.1.529(オミクロン)変異株に対しては感染予防効果を有していたことを明らかにした。また、既感染者も含め、ワクチン3回接種が2回接種よりも感染保護効果が顕著に大きかったことも示されたという。NEJM誌オンライン版2022年10月26日号掲載の報告。米国カリフォルニア州刑務所の収容者・スタッフ対象に試験 研究グループは、米国カリフォルニア州立刑務所35ヵ所の収容者5万9,794例とスタッフ1万6,572例を対象に、mRNAワクチン接種と既感染のSARS-CoV-2オミクロン変異株感染への保護効果を評価した。 オミクロン変異株優勢時の2021年12月24日~2022年4月14日に集めたデータを用いて後ろ向きコホートデザインにより解析。加重Coxモデルを用いて、ワクチン接種歴(mRNAワクチンの接種回数により層別化)と感染歴(なし、またはデルタ変異株優勢前または優勢中に感染あり)の組み合わせ別にみた、ワクチン接種と既感染の有効性(1-ハザード比[HR]で算出)を比較した。 副次解析では、ローリング適合コホートデザインを用いて、ワクチン2回接種と比較した3回接種の有効性を評価した。ワクチン3回接種、2回接種に比べ有効性は25%以上増大 オミクロン変異株感染予防に関する推定有効率は、ワクチン未接種でデルタ変異株優勢前感染者では16.3%(95%信頼区間[CI]:8.1~23.7)だったが、ワクチン未接種でデルタ変異株優勢中感染者では48.9%(41.6~55.3)だった。 オミクロン変異株感染予防に関するワクチン接種の推定有効率は、感染歴で大きく違いがあり、2回接種では未感染18.6%(95%CI:7.7~28.1)~デルタ変異株優勢中感染83.2%(77.7~87.4)、3回接種では未感染40.9%(31.9~48.7)~デルタ変異株優勢中感染87.9%(76.0~93.9)にわたっていた。 ワクチン3回接種(ブースター)による有効性の推定増加幅は、未感染者の25.0%(95%CI:16.6~32.5)~デルタ変異株優勢前感染者57.9%(48.4~65.7)にわたっていた。

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第18回 もう個人防護具(PPE)を緩和していますか?

新型コロナの致死率は低下新型コロナの致死率は当初よりも低下しました1)。単純計算では、現在0.12%まで低下しています(図1)。季節性インフルエンザと同じレベルじゃないかという議論も出てきていますね。図1. 各波の新型コロナ死亡者数(左軸)と致死率(右軸)(厚生労働省のデータをもとに筆者作成)いつかはこういう楽観フェーズが来るだろうと思っていましたが、新興感染症の過渡期の対応は本当に難しい。とくに、どのように国民に説明していくのかというところで、かなりのコミュ力が問われます。現実的には全然説明が成されていないんですが…。こうなってくると、新型コロナとどのように医療従事者が向き合うかも考える必要が出てきます。ただ、現時点では多くの病院では「フルPPE」対応で新型コロナを診療していると思われます。個人的には、キャップとかもう要らないと思っているのですが、どうでしょう。「過渡期」の感染対策分科会メンバーらの有志による「『感染拡大抑制の取り組み』と『柔軟かつ効率的な保健医療体制への移行』についての提言」2)では、専用病棟でなくてもよい、個人防護具(PPE)の着用を少し緩和させる、などの策が紹介されています(図2)。これ結構現場に即した感じで、よい資料だと思います。ただ、こういう「少しずつ緩和していこうね」って日本人は苦手なんですよね。実際、病棟ゾーニングもやむなしとしている病院もあるでしょう。たとえば重症病床がメインの病院で、院内クラスターが出ても、それを他の軽症病床に転院させることはできませんので、自施設で患者をコホートせざるを得ません。図2の「ステップ2」のところ、「N95マスクは大事」いうのが強調されていますが、接触感染についてはそこまで重要視していません。確かに、飛沫・エアロゾルによる感染よりも、伝播リスクは低いとされていますが、院内クラスターや施設内クラスターをみていると、どう考えてもこれは接触感染だろうという場面はいまだによく見かけます。ベタベタ触って、その手で目や鼻などの粘膜を触れば、そりゃ感染するだろうとは思います。画像を拡大する図2. 「感染拡大抑制の取り組み」と「柔軟かつ効率的な保健医療体制への移行」についての提言 医療対応(参考資料2)どこかのモデル病院が、「うちはこうやっていますよ」みたいな啓発をしてくださるとよいかもしれませんね。あるいは学会レベルでのガイドラインをちゃんと出すとか(他力本願)。日本の病院は、周囲の動向を伺いながらおずおずと緩和していくことになるのですが、病院同士がそこまで連携を取っていないと、我流のままで「まだこんなことやってんの」みたいな病院が出てくるかもしれません。参考文献・参考サイト1)Horita N, et al. J Med Virol. 2022 Oct 17. [Epub ahead of print]2)第93回(令和4年8月3日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 「感染拡大抑制の取り組み」と「柔軟かつ効率的な保健医療体制への移行」についての提言

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コロナ流行で糖尿病関連死が30%増加、とくに若年で顕著

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、米国における2021年および2022年の糖尿病関連の死亡が、パンデミック以前と比べて30%以上増加したことを、中国・西安交通大学のFan Lv氏らが報告した。糖尿病は新型コロナ感染症の重症化の重大なリスク因子であるとともに、新型コロナウイルス感染は血糖コントロールの悪化につながることが報告されている。同氏らは、パンデミックによって糖尿病患者の治療の提供が混乱したことから、パンデミック中の糖尿病関連の死亡の傾向を調査した。eClinicalMedicine誌9月23日掲載の報告。 調査は、米国人の出生と死亡に関する人口データベース「National Vital Statistics System(NVSS)」を用い、2006年1月1日~2021年12月31日に25歳以上であった死亡者のデータを解析した。糖尿病関連の死亡は、死亡診断書に記載された原死因と関連死因に糖尿病が記録されていた場合とした。超過死亡率は、2006~19年の死亡率より、年齢調整死亡率の観測値と期待値を線形および多項式回帰モデルで比較して推定した。 主な結果は以下のとおり。・2006~21年の間に、25歳以上の糖尿病関連の死亡は424万3,254例あった。その多くは、65歳以上の高齢者グループ(76%)、男性(54%)、非ヒスパニック系白人(71%)であった。・10万例あたりの年齢調整死亡率は、2006年(116.1)から2015年(103.9)にかけて減少し、2019年(106.8)にかけてわずかに増加した後、2020年(144.1)および2021年(148.3)に大きく増加した。・糖尿病関連の死亡の超過死亡率は、2020年が33.3%(95%信頼区間[CI]:30.5~36.2)、2021年が35.3%(同:31.7~39.0%)であった。この超過死亡率の増加は、25~44歳、女性、ヒスパニック系において著しかった。・米国全人口の全死因の超過死亡率は2020年が15.3%(同:13.2~17.4)、2021年が17.8%(同:15.2~20.6)であり、糖尿病関連死の超過死亡率のほうが高かった。・糖尿病関連の超過死亡例の約3分の2が、パンデミック中の新型コロナウイルス感染症に関連していた。

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コロナ軽症でも、高頻度に罹患後症状を発症/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症の急性期後6~12ヵ月の時期における、患者の自己申告による罹患後症状(いわゆる後遺症、とくに疲労や神経認知障害)は、たとえ急性期の症状が軽症だった若年・中年の成人であってもかなりの負担となっており、全体的な健康状態や労働の作業能力への影響が大きいことが、ドイツ・ウルム大学のRaphael S. Peter氏らが実施した「EPILOC試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月13日号に掲載された。ドイツ南西部住民270万人ベースの研究 EPILOC試験は、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州の4つの地域(人口計約270万人)で行われた住民ベースの研究で、2020年10月1日~2021年4月1日にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でSARS-CoV-2陽性と判定された18~65歳の集団が解析の対象となった(バーデン・ビュルテンベルク州Ministry of Science and Artの助成を受けた)。 1万1,710人が解析に含まれた。平均年齢は44.1(SD 13.7)歳、6,881人(58.8%)が女性であった。既存の慢性疾患として、筋骨格系疾患(28.9%)、心血管疾患(17.4%)、神経・感覚障害(16.2%)、呼吸器疾患(12.1%)などがみられた。 SARS-CoV-2による感染症の急性期には、77.5%は医療を必要とせず、19.0%が外来治療を受け、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院を要したのは3.6%であった。平均追跡期間は8.5ヵ月だった。 主要アウトカムとして、症状の頻度が感染症の急性期後6~12ヵ月と急性期以前で比較され、症状の重症度とクラスタリング、リスク因子、全体的な健康の回復や労働の作業能力との関連の評価が行われた。胸部症状、嗅覚/味覚障害、不安/抑うつも20%以上で発現 急性期前にはみられず、急性期後6~12ヵ月の時期に発現した症状クラスターでは、疲労(急激な身体的消耗、慢性疲労など、37.2%[4,213/1万1,312人、95%信頼区間[CI]:36.4~38.1])と、神経認知障害(集中困難、記憶障害など、31.3%[3,561/1万1,361人、30.5~32.2])の頻度が高く、いずれも健康回復や労働能力の低下に最も強く寄与していた。 また、胸部症状(呼吸困難、胸痛など、30.2%[95%CI:29.4~31.0])、不安/抑うつ(睡眠障害、抑うつ気分、不安など、21.1%[20.4~21.9])、頭痛/めまい(19.9%[19.2~20.6])も高頻度にみられ、労働能力に影響を及ぼしていたが、性別や年齢別で多少の差が認められた。 嗅覚/味覚障害(嗅覚の変化、味覚の変化)は23.6%(95%CI:22.9~24.4)、筋骨格系の疼痛(筋肉痛、関節痛、四肢痛)は16.8%(16.1~17.5)、上気道症状(咳嗽、咽頭痛、嗄声)は13.9%(13.3~14.6)で発現した。 日常生活を少なくとも中程度に低下させる新たな症状が発現し、健康回復や労働能力を80%以下に低下させたと考えると、post-COVID症候群の全体の推定値は28.5%(3,289/1万1,536人、95%CI:27.7~29.3)であった。一方、これに該当しない参加者は完全に回復したと仮定すると、post-COVID症候群の発生の推定値は6.5%(3,289/5万457人)で、このうち男性は4.6%(1,145/2万4,959人)、女性は8.4%(2,144/2万5,483人)であった。真の値は、これらの推定値の間と考えられる。 著者は、「このようなcovid後の後遺症(post-covid sequelae)の個人的、社会的な負担の大きさを考えると、適切な治療選択肢を確立し、有効なリハビリテーション法を開発するために、その基礎となる生物学的異常と原因を早急に明らかにする必要がある」としている。

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痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」【下平博士のDIノート】第109回

痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」今回は、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体「ネモリズマブ(遺伝子組換え)注射剤(商品名:ミチーガ皮下注用60mgシリンジ、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を標的とした抗体医薬品であり、掻破行動による皮膚症状の悪化やそう痒の増強を防ぐことで、患者QOLの向上が期待されています。<効能・効果>アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2022年3月28日に承認され、8月8日より販売されています。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬および抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として1回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。本剤はそう痒を治療する薬剤であり、そう痒が改善した場合であっても本剤投与中はアトピー性皮膚炎の必要な治療を継続します。<安全性>国内第III相試験において、本剤投与群210例中122例(58.1%)に副作用が認められました。主な副作用は、アトピー性皮膚炎34例(16.2%)、サイトカイン異常11例(5.2%)、好酸球数増加および上咽頭炎各8例(3.8%)、蜂巣炎および蕁麻疹各7例(3.3%)でした。重大な副作用として、ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症(3.4%)、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹)などの重篤な過敏症(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、体内のリンパ球が産生するIL-31の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎のそう痒を改善します。2.血圧低下、息苦しさ、意識の低下、ふらつき、めまい、吐き気、嘔吐、発熱、咳、のどの痛みなどの症状が現れた場合はご連絡ください。3.そう痒が治まっていても、普段と異なる新たな皮疹が生じたり、悪化したりした場合は受診してください。4.刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控え、身体を清潔にして規則正しい生活を心がけましょう。睡眠中に皮膚をかかないように工夫して、皮膚刺激の少ない衣類を選択し、アレルゲン対策などにも留意しましょう。<Shimo's eyes>本剤は、アトピー性皮膚炎の「痒み」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体製剤です。そう痒に伴う掻破行動は、皮膚症状を悪化させ、さらに痒みが増強するという悪循環(Itch-scratch cycle)を繰り返すとともに、皮膚感染症や眼症状などの合併症を誘引する恐れがあります。また、そう痒はアトピー性皮膚炎患者において、寝られない、仕事や勉強に集中できない、など大きな悩みであり、そう痒が解消されることでQOLの改善が期待できます。アトピー性皮膚炎のそう痒に対する治療法としては、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の併用のもとで、抗ヒスタミン薬の内服が推奨されています。シクロスポリン内服液も痒みを軽快させることが知られていますが、安全性の観点から対象患者や投与期間が限定されています。抗体医薬品としては、デュピルマブ皮下注(商品名:デュピクセント)が承認されていますが、皮疹の炎症が強い場合はデュピルマブ、そう痒を主訴とする場合はネモリズマブが選択されるなど、投与対象患者は異なると考えられます。本剤はアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中はそう痒が改善した場合であっても、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、保湿外用薬など、アトピー性皮膚炎の他の症状に対する治療は中止せずに継続します。経口ステロイド薬の急な中断にも注意が必要です。既存治療を実施したにも関わらず中等度以上のそう痒を有するアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験において、本剤投与開始16週後のそう痒変化率は、プラセボ群に比べて有意に改善しました。臨床試験において、投与翌日よりプラセボに対して有意な改善が認められ、多くの患者は治療開始から16週頃までには効果が発現しています。なお、2023年6月1日より、本剤は在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となり、在宅自己注射が保険適用となりました。

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英語で「性交渉はありますか」は?【1分★医療英語】第52回

第52回 英語で「性交渉はありますか」は?Are you sexually active?(性交渉はありますか?)Yes. With my wife.(はい、妻と性交渉をしています)《例文1》Have you ever been sexually active?(これまでに性交渉の経験はありますか?)《例文2》What types of sexual activity do you have?(どのような性交渉をしますか?)《解説》問診で十分な情報を得るためには性交渉歴の聴取は不可欠ですが、センシティブな内容でもあり、英語で聞くのをためらう方も多いのではないでしょうか。まず、言語以前の問題として、当然ながら患者さんが安心して話すことができるよう、個室などプライバシーが保たれる状況を確保する必要があります。また、導入には“I’m going to ask a few questions about your sexual history. These are routine questions I ask all my patients.”(性交渉について少し質問させてください。これは皆さんにしている質問です)などと前置きをしておくとスムーズです。現在、性交渉を行うパートナーがいる状況を“sexually active”と表現し、性交渉は“sexual activity”と言います。さらに、性交渉がある場合には以下の「5つのP」を加えて問診すると、性感染症などのリスクの評価に有効です。1.Partners(パートナーの性別、人数)2.Practice(性交渉の内容)3.Protection from STIs(コンドームなど、性感染症の予防)4.Past history of STIs (性感染症の既往)5.Prevention of pregnancy(避妊方法)講師紹介

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第136回 ウイルス2種が融合して免疫をかいくぐる

異なる呼吸器ウイルス2種が融合し、免疫をより回避する新たな素質を備えうることが示されました1,2)。2つ以上のウイルスの共感染は呼吸器ウイルス感染の10~30%に認められ、とくに子供ではよくあることですが、それがどういう結末をもたらすのかは定かではありません。共感染したところで経過にどうやら変わりはないという試験結果がある一方で肺炎が増えたという報告もあります。共感染者の細胞内での2つ以上のウイルスの相互作用もよく分かっていませんが、細胞内での直接的な相互作用でウイルスの病原性が変わるかもしれません。たとえば別のウイルスの表面タンパク質を取り込んでそのウイルスもどき(pseudotyping)になるとかウイルスゲノムの再編が起きる可能性があります。ゲノムの再編は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やパンデミックインフルエンザウイルスのような世界的に流行しうる新たなウイルス株の原因となりうる現象です。世界で500万人を超える人が毎年インフルエンザAウイルス(IAV)感染で入院しています。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は5歳までの小児の急な下気道感染症の主因となっています。新たな研究で英国グラスゴー大学の研究者等は一緒に出回ることが多くて重要度が高いそれら2つの呼吸器ウイルスをヒトの肺起源の細胞内に同居させて何が起きるかを調べました。生きた細胞の撮影や顕微鏡で観察したところIAVとRSVの双方からの成分を併せ持つ融合ウイルス粒子(HVP)が確認され、HVPは他の細胞に感染を広げることができました。HVPに抗IAV抗体は歯が立たないらしく、その感染細胞に抗IAV抗体を与えても感染の他の細胞への広がりを防ぐことはできませんでした。HVPはRSVからの糖タンパク質を流用して抗IAV抗体を逃れることができるのです。一方、抗RSV抗体は依然としてHVPと勝負できるらしく、HVPの細胞から細胞への広がりを防ぎました。著者によるとIAVがRSVからの授かりものを使って免疫を回避できるようになるのとは対照的にRSVはIAV糖タンパク質に細胞侵入を手伝わせることはできないようです。“IAVはRSVとの融合によりより重症の感染を招く恐れがある”と今回の研究には携わっていない英国リーズ大学のウイルス学者Stephen Griffin氏は同国のニュースTheGuardianに話しています3,4)。RSVは季節性インフルエンザに比べてより奥の肺に下って行こうとします。よってインフルエンザがRSVと同様に肺へと深入りするとより重症化するおそれがいっそう高まるかもしれません。体外での研究で今回認められたようなウイルス融合の人体での発生はまだ観察されておらず、ウイルス融合が人の健康に影響するのかどうかを今後の研究で調べる必要があります。IAVとRSVが手を取り合うのとは真反対に一方がもう一方を抑えつける関係もどうやら存在します。たとえば、風邪ウイルスとして知られるライノウイルスとSARS-CoV-2が細胞内でそういう排他的関係にあるらしいことが昨年3月の報告で示されています5,6)。その報告によるとライノウイルスはSARS-CoV-2複製を防ぐインターフェロン(IFN)反応を誘発し、ライノウイルスがいる呼吸上皮細胞でSARS-CoV-2は増えることができません。巷にあまねく広まるライノウイルスとSARS-CoV-2の相互作用は計算によると世間全般に及ぶ影響があり、ライノウイルス感染が増えるほどSARS-CoV-2感染は減るらしいと推定されています5)。参考1)Haney J, et al. Nat Microbiol. 2022;7:1879-1890.2)NEW RESEARCH SHEDS LIGHT ON HIDDEN WORLD OF VIRAL COINFECTIONS / University of Glasgow3)Immune system-evading hybrid virus observed for first time / TheGuardian4)Flu/RSV Coinfection Produces Hybrid Virus that Evades Immune Defenses / TheScientist5)Dee K, et al. J Infect Dis. 2021;224:31-38.6)Coronavirus: How the common cold can boot out Covid / BBC

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オミクロン感染7日目、3割が抗原検査陽性

 米国疾病対策予防センター(CDC)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染時の隔離期間について症状の有無にかかわらず5日間を推奨している。また日本では、症状のある人は発症日から7日間隔離、症状がない人は検査陽性となった日から7日間隔離で抗原検査陰性になれば5日間に短縮可能としている。今回、米国・スタンフォード大学のJessica Tsao氏らが、SARS-CoV-2陽性を示した学生スポーツ選手において、診断日から7日目の迅速抗原検査で27%が依然として陽性であったことを報告した。また、症状ありの感染者、オミクロンBA.2変異株感染者で陽性率が高かった。JAMA Network Open誌2022年10月18日号に報告。コロナ隔離後7日目でも27%で抗原検査が陽性 本研究は、オミクロン株が優勢であった2022年1月3日~5月6日、SARS-CoV-2陽性となった全米大学体育協会第一部大学キャンパスの学生スポーツ選手に、隔離期間最終日である診断7日目以降に迅速抗原検査を実施した。 コロナ診断7日目以降に迅速抗原検査を実施した主な結果は以下のとおり。・学生スポーツ選手264人(女性:53%、平均年齢:20.1±1.2歳、範囲:18~25歳)における268件の感染(症状あり:66%、症状なし:34%)で調査した。・7日目に検査した248例のうち67例(27%、95%信頼区間[CI]:21~33%)で抗原検査が陽性のままであった。・症状ありの感染者の7日目の抗原検査陽性率は35%(95%CI:28~43%)で、症状なしの感染者(11%、同:5~18%)より有意に高かった(p<0.001)。・BA.2変異株感染者の7日目の抗原検査陽性率は40%(95%CI:29~51%)で、BA.1変異株感染者(21%、同:15~27%)より有意に高かった(p=0.007)。 今回、学生スポーツ選手の調査において、隔離後7日目でも27%で迅速抗原検査が陽性であったことから、米国CDCが推奨する5日間の隔離期間では、感染拡大を防ぐには不十分である可能性が示唆された。

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妊婦へのコロナワクチン接種をメタ解析、NICU入院や胎児死亡のリスク減

 妊娠中のCOVID-19ワクチン接種による周産期アウトカムへの影響について、有効性と安全性を評価するため、筑波大学附属病院 病院総合内科の渡邊 淳之氏ら日米研究グループによりシステマティックレビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種が新生児集中治療室(NICU)入院、子宮内胎児死亡、母親のSARS-CoV-2感染などのリスク低下と関連することや、在胎不当過小(SGA)、Apgarスコア低値、帝王切開分娩、産後出血、絨毛膜羊膜炎などといった分娩前後の有害事象のリスク上昇との関連がないことが示された。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年10月3日号に掲載の報告。 本研究では、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種に関連する新生児アウトカムを調査したすべての前向き研究および観察研究について、2022年4月5日にPubMedとEmbaseデータベースで包括的な文献検索を行い、(1)査読付き雑誌に掲載された研究、(2)妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受けた妊婦と受けなかった妊婦を比較した研究、(3)新生児アウトカムにおいて、早産(妊娠37週未満での出産)、SGA、Apgarスコア低値(出生5分後のApgarスコアが7未満)、NICU入院、子宮内胎児死亡のうち少なくとも1つを報告する研究、という3つの条件を満たすものを対象とした。最終的に9つの研究を抽出し、妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受けた妊婦8万1,349例(ワクチン接種群)と受けていない妊婦25万5,346例(ワクチン非接種群)について検証した。オッズ比(OR)はランダム効果モデルを用いて算出された。 被験者のベースラインは次のとおり。平均年齢は、ワクチン接種群:32~35歳vs.ワクチン非接種群:29.5~33歳。合併症については、妊娠前/妊娠糖尿病は、1,267例(1.6%)vs.3,210例(1.3%)。妊娠前/妊娠高血圧は、1,176例(1.4%)vs.3,632例(1.4%)。肥満は、8,420/4万8,231例(17.5%)vs.2万6,108/11万4,355例(22.8%)。喫煙歴は、4,049/8万35例(5.1%)vs.1万8,930/25万2,990例(7.5%)。ワクチン接種群では、98.2%がmRNAワクチン(ファイザー製:6万1,288例、モデルナ製:1万6,036例、規定なし:2,575例)、1.1%がウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ製:488例、ヤンセン製:425例)、0.7%が明確に記録されていなかった。6つの研究で投与回数が報告されており、5万2,295/6万1,255例(85.4%)が妊娠中にmRNAワクチンを2回投与されていた。 主な結果は以下のとおり。【新生児のアウトカム】・妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、NICU入院、子宮内胎児死亡のリスク低下と関連していた。NICU入院は、OR:0.88(95%信頼区間[CI]:0.80~0.97)。子宮内胎児死亡は、OR:0.73(95%CI:0.57~0.94)。・そのほかの主要アウトカムは2群間で統計的有意差を示さなかった。早産は、OR:0.89(95%CI:0.76~1.04)。SGAは、OR:0.99(95%CI:0.94~1.04)。Apgarスコア低値のOR:0.94(95%CI:0.87~1.02)。・妊娠初期に1回目のワクチン接種を受けた妊婦と、妊娠中にワクチン接種を受けなかった妊婦の間では、早産(OR:1.81、95%CI:0.94~3.46)、SGA(OR:1.09、95%CI:0.95~1.27)の発生率で有意差はなかった。一方、中期または後期のワクチン接種は、妊娠中にワクチン接種を受けなかった人と比較して、早産(OR:0.80、95%CI:0.69~0.92)、SGA(OR:0.94、95%CI:0.88~1.00)のリスクの低下と関連していた。【母親のアウトカム】・妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、追跡期間中の母親のSARS-CoV-2感染リスク(OR:0.46、95%CI:0.22~0.93)の低下と有意に関連した。・妊娠中のワクチン接種は、帝王切開分娩(OR:1.05、95%CI:0.93~1.20)、産後出血(OR:0.95、95%CI:0.83~1.07)、絨毛膜羊膜炎(OR:1.06、95%CI:0.86~1.31)のリスクとは関連がなかった。 本研究により、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種は、新生児および母親の有害事象のリスク上昇と関連せず、新生児のNICU入院、子宮内胎児死亡のリスク低下と関連し、妊娠中期以降の接種で早産、SGAのリスク低下と関連したことが示され、妊婦に対するワクチン接種の安全性と有効性が裏付けられた。さらに研究チームは、集中治療を必要とするCOVID-19に罹患した妊婦のほとんどがワクチン未接種であり、また、無症状感染であっても、子癇前症や早産などのリスク上昇と関連しているとし、新生児および母親をSARS-CoV-2から保護するため、妊婦のワクチン接種率を高めることが最も重要だと指摘している。

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COVID-19に対するモデルナ製のオミクロン株対応2価ブースターワクチン(オミクロン株対応2価ワクチン[BA.1])の安全性と免疫原性について(解説:寺田教彦氏)

 本論文は、COVID-19に対するモデルナ製のオミクロン株対応2価ブースターワクチン(オミクロン株対応2価ワクチン[BA.1])の安全性と免疫原性の評価の中間解析結果を示している。 新型コロナウイルスワクチンは、当初、野生株(従来株)に対して高い感染予防効果、発症予防効果、重症化予防効果が示されていた(Baden LR, et al. N Engl J Med. 2021;384:403-416.)。しかし、デルタ株が流行した時期には新型コロナウイルス感染症の感染予防効果や発症予防効果は減衰することも指摘されるようになった(Andrews N, et al. N Engl J Med. 2022;386:1532-1546.)。その後、オミクロン株の流行下では、ワクチンの効果は比較的短期間で減衰し、また効果も低下していることが示されていた。変異株に対する戦略としては、株に対応したワクチンの作成が行われ、ベータ株対応の2価ワクチンの使用では、従来のワクチンに比較して複数の変異体に対して一貫して高い中和抗体応答とスパイク結合応答を誘導することが報告されていた(Chalkias S, et al. Nat Med. 2022 Oct 6. [Epub ahead of print])。 今回の論文で取り上げられているオミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)は、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの1つで、起源株とオミクロン株の2種類のスパイク蛋白に対応している。オミクロン株は、伝播力の向上や免疫からの逃避能力の獲得により世界的に流行したが、オミクロン株対応ワクチンはこの流行の抑制に寄与することが期待されている。 本研究の結果、オミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)は、従来のワクチンに比して中和抗体応答がBA.1のみならずBA.4/5や他の複数の変異株に対しても高かった。過去のワクチンと中和抗体価に関する研究結果を参考にすると、感染予防効果はおおよそ相関することが考えられることから、本研究の結果を考えるとオミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)は、従来のワクチンよりも感染予防効果が高くなることが期待されるだろう。安全性に関しても、従来のモデルナワクチンと比較して有害事象はほぼ同等であり、ほとんどが軽症から中等症だった。 オミクロン株対応2価ワクチン(BA.1)のリアルワールドでの感染予防効果や発症予防効果、重症化予防効果のデータは今後の結果を待つ必要があるが、本論文の内容を参考にすると、オミクロン株も含めた多様な新型コロナウイルス株に対して旧来のワクチン(mRNA-1273)よりも高い中和抗体応答を誘導し、安全性の明らかな懸念も認められなかったことから、追加接種をする場合はオミクロン株対応2価ワクチンを接種することが良さそうである。 オミクロン株対応ワクチンの開発により、追加接種のタイミングも変更された。本論文では、オミクロン株対応ワクチンは、前回接種後3ヵ月以上経過している患者を対象に追加接種していた。本邦もこれらのデータを参考に2022年10月21日より、追加接種は前回の接種完了から3ヵ月以上経過している場合に接種と変更されている。ちなみに、米国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)はBA.4/5対応ワクチンを承認し、接種タイミングは最後の接種から2ヵ月以上空けてワクチン接種を追加することを推奨している(https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/interim-considerations-us.html#COVID-19-vaccines)。 本邦では、オミクロン株対応2価ワクチンのうち、BA.1対応ワクチンが先行して接種可能となったが、今後はBA.4/5対応ワクチンの接種も行われることになるだろう※。BA.4/5ワクチンのデータは限られているが、ファイザーは10月13日付のプレスリリースで、同ワクチンをブースター接種した7日後にオミクロン株BA.4/5に対する中和抗体応答が大幅に増加したことを報告しており、今後数週間以内にブースター接種後1ヵ月時点での中和抗体応答の結果を発表するとしている。 効果の高いワクチンが開発されることは喜ばしいことではあるが、ワクチン接種には費用がかかることや、接種に伴う副反応のリスクも伴う。今後は、2価ワクチンのリアルワールドでの感染予防効果、発症予防効果、重症化予防効果や安全性のさらなるデータを待つとともに、COVID-19に対するワクチンの追加接種の適切なタイミングを知るためにもワクチン効果の減衰に関するデータにも注目をしてゆきたい。※執筆時点において、モデルナ製のBA.1対応ワクチンは薬事承認され、BA.4/5対応の新型コロナワクチンは10月5日に薬事承認申請がなされている。ファイザー製はBA.1対応の2価ワクチンだけではなく、BA.4/5ワクチンも薬事承認されている。

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医療者ほか最前線労働者、デルタ・オミクロン株へのワクチン効果は/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタおよびオミクロン変異株に感染した米国の必須(essential)/最前線(frontline)労働者では、感染前149日以内のmRNAワクチン(BNT162b2[ファイザー製]、mRNA-1273[モデルナ製])の2回または3回接種は未接種と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状は軽度で、ウイルスRNA量は少なかったことが、米疾病対策センター(CDC)のMark G. Thompson氏らHEROES-RECOVERネットワークの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年10月18日号に掲載された。米国6州の前向きコホート研究 本研究は、COVID-19に対するmRNAワクチンの2回または3回接種と、その症状およびSARS-CoV-2のウイルスRNA量との関連の評価を目的とする前向きコホート研究であり、2020年12月14日~2022年4月19日の期間に、米国の6州(アリゾナ、フロリダ、ミネソタ、オレゴン、テキサス、ユタ)でSARS-CoV-2に感染した患者が登録されたHEROES-RECOVERネットワークのデータが使用された(米国国立予防接種・呼吸器疾患センターなどの助成を受けた)。 HEROES-RECOVERネットワークには、医療従事者や早期対応業務従事者、その他の必須/最前線労働者から成る大規模なコホートが含まれる。このコホートは、教育、農業、食品加工、輸送、固形廃棄物収集、公共事業、政府サービス、保育、環境サービス、接客業などの分野の労働者が含まれ、他者と3フィート(約91cm)以内の距離で定期的に接触する職業であり、この環境で週に20時間以上働く人々と定義された。 主要アウトカムには、症状の発現、特異的な症状(発熱、悪寒など)、症状発現期間、医療探索行動(受診)などの臨床アウトカムと、ウイルス量(定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応[RT-qPCR]法で評価)などのウイルス学的転帰が含まれた。オミクロン変異株では、3回接種者で症候性感染症のリスクが高い COVID-19感染患者1,199例(年齢中央値41歳、女性59.5%)が解析に含まれた。14.0%が始原ウイルス株、24.0%がデルタ変異株、62.0%がオミクロン変異株に感染していた。 デルタ変異株では、感染症出現の14~149日前に2回目のワクチン接種を受けた患者は未接種患者に比べ、症状発現の確率が有意に低かった(77.8%[21/27例]vs.96.1%[74/77例]、オッズ比[OR]:0.13[95%信頼区間[CI]:0.0~0.6])。症状が発現した場合は、感染前7~149日に3回目の接種を受けた患者は未接種患者に比べ、発熱または悪寒の報告が有意に少なく(38.5%[5/13例]vs.84.9%[62/73例]、OR:0.07[95%CI:0.0~0.3])、症状発現の平均日数が短かった(10.2日vs.16.4日、群間差:-6.1日[95%CI:-11.8~-0.4])。 一方、オミクロン変異株では、症候性感染症のリスクは2回接種患者と未接種患者で差はなかったが、3回接種患者は未接種患者よりもリスクが有意に高かった(88.4%[327/370例]vs.79.4%[85/107例]、OR:2.0[95%CI:1.1~3.5])。 また、症候性オミクロン変異株感染患者では、感染前7~149日に3回目の接種を受けた患者は、未接種患者と比較して発熱または悪寒の訴えが有意に少なく(51.5%[160/311例]vs.79.0%[64/81例]、OR:0.25[95%CI:0.1~0.5])、医療を求めて受診した患者も有意に少数だった(14.6%[45/308例]vs.24.7%[20/81例]、OR:0.45[95%CI:0.2~0.9])。 感染前14~149日に2回目の接種を受けたデルタおよびオミクロン変異株感染患者は未接種患者に比べて、平均ウイルス量が有意に低値を示した(デルタ変異株:3 vs.4.1 log 10コピー/μL、群間差:-1.0 log 10コピー/μL[95%CI:-1.7~-0.2]、オミクロン変異株:2.8 vs.3.5、-1.0[-1.7~-0.3])。 著者は、「オミクロン変異株によるCOVID-19の症状は、デルタ変異株に比べ軽度で、症状発現期間も短いようであり、これはウイルスRNAの排出量が少ないことと関連した」としている。

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6ヵ月~5歳児へのモデルナワクチン、第II/III相中間解析/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNA-1273ワクチン(モデルナ製)25μgの2回接種は、生後6ヵ月~5歳の小児において安全であり、免疫原性は18~25歳の若年成人に対して非劣性であることが認められた。米国・エモリー大学医学部のEvan J. Anderson氏らが、6ヵ月~12歳未満の小児を対象に実施している第II/III相試験「KidCOVE試験」の6ヵ月~5歳児のコホートにおける中間解析結果を報告した。同試験の6~12歳未満のコホートにおける中間解析結果は、すでに報告されている。NEJM誌オンライン版2022年10月19日号掲載の報告。25μgの2回接種の有効性を18~25歳群と比較 KidCOVE試験では、米国の79施設およびカナダの8施設において、生後6~23ヵ月、2~5歳、6~12歳未満の3つの年齢コホートに分け参加者を登録し、パート1として非盲検用量漸増試験、パート2で評価者盲検無作為化プラセボ対照試験が実施された。 まずパート1において、2~5歳児224例にmRNA-1273ワクチン25μg(75例)または50μg(149例)、生後6~23ヵ月児150例には全例に25μgを28日間隔で2回接種した。その結果を受けて、パート2における接種用量は、両年齢コホートとも25μgが選択された。 パート2では、2~5歳児4,048例および6~23ヵ月児2,355例を、それぞれmRNA-1273ワクチン群(それぞれ3,040例、1,762例)またはプラセボ群(1,008例、593例)に3対1の割合で無作為に割り付け、25μgを28日間隔で2回接種した。 主要評価項目は、ワクチンの安全性と反応原性、ならびに第III相COVE試験(18歳以上、100μg×2回接種)における18~25歳の若年成人コホートと比較した免疫原性の非劣性の検証、副次評価項目はCOVID-19および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2感染)の発生率であった。推定有効率、6~23ヵ月児50.6%、2~5歳児36.8% パート2における2回目接種後の追跡期間中央値は、2~5歳児コホートで71日、6~23ヵ月児コホートで68日であった。 有害事象の大部分は一過性のGrade1または2であり、新たな安全性の懸念は特定されなかった。データカットオフ日までに死亡、心筋炎・心膜炎・小児多系統炎症性症候群の発生はなかった。 57日時点の中和抗体幾何平均値は、2~5歳児コホートで1,410(95%信頼区間[CI]:1,272~1,563)、6~23ヵ月児コホートで1,781(1,616~1,962)であり、第III相COVE試験の若年成人コホート1,391(1,263~1,531)に対する非劣性を達成した。 COVID-19(米国疾病予防管理センターの定義)の発生は、2~5歳児コホートでワクチン群4.6%(119/2,594例)、プラセボ群7.1%(61/858例)、6~23ヵ月児コホートでそれぞれ3.4%(51/1,511例)、6.6%(34/513例)に認められ、ワクチンの推定有効率は2~5歳児コホートで36.8%(95%CI:12.5~54.0)、生後6~23ヵ月児コホートで50.6%(21.4~68.6)であった。

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第17回 COVID-19による出血性ショック脳症症候群で女児が死亡、いまだ低い小児ワクチン接種率

出血性ショック脳症症候群で亡くなった女児10月14~15日に鹿児島県で開催された日本神経感染症学会で、自治医科大学附属病院小児科の若江 惠三氏が発表した症例報告が衝撃的でした。吐血を繰り返しながら脳症で亡くなった8歳の女児のCOVID-19の報告です。子供に多い予後不良の脳症として、出血性ショック脳症症候群(Hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome)が挙げられます。COVID-19に特異的な病態ではありませんが、ウイルス感染症などによって免疫応答が過剰になり、サイトカインストーム、播種性血管内凝固(DIC)、ショック、意識障害など、あっという間に多臓器不全に至る致死的な病態です。とはいえ、急性脳症の中でも極めてまれなタイプで、国内で発症する事例は、年間10例あるかないかのようです。出血性ショック脳症症候群はライ症候群との鑑別が重要になりますが、どちらかといえばライ症候群の好発年齢よりも若く、乳幼児に多いとされています。早期に、血性下痢、吐血、DICなどを生じる点が、ライ症候群と異なります。予後は極めて不良で、生存しても重度の神経学的後遺症を残すとされています1)。成人でもこのような事例はちらほら報告されており2)、脳症とウイルス感染症は、まれながら切っても切れない関係にあるようです。日本神経感染症学会の報告について報道したニュース番組では、親御さんのコメントを発表しています。「ワクチンを接種させなかったことを悔やんでいます。子供のワクチン接種を呼びかけてほしい」と悲痛な思いが紹介されていました。世界的に低い小児のワクチン接種率新型コロナワクチンは努力義務に位置付けられながらも、小児では接種率は低いまま推移しています。10月24日公表時点で、12~19歳の2回接種率は74.9%ですが、5~11歳の2回接種率はわずか19.1%です3)。8割の子供が打っていないということを意味しています。地域差もかなり大きく、私の住んでいる大阪に至っては接種率1桁%です4)(うちの子供は接種しましたが…)。海外においても小児のワクチン接種率は低く、アメリカでは多くの州が接種率30%未満です。小児の新型コロナワクチンについては、「軽症が多いのに、そもそも接種させる必要があるのか」という意見がマジョリティのようです。各種学会5)が提言しているように、「メリット(発症予防や重症化予防など)がデメリット(副反応など)を更に大きく上回る」というのがその理由なのですが、これがうまく国民に啓発できていない現状があります。■初回(1回目・2回目)接種に関するエビデンス6)発症予防効果は中等度の有効性、入院予防効果は接種後2ヵ月間で約80%の有効性が報告されている。米国の大規模データベースによる解析で、安全性に関する懸念はないと報告され、日本での副反応疑い報告の状況からも、ワクチンの接種体制に影響を与えるほどの重大な懸念はないとされている。■3回目接種に関するエビデンス6)時間の経過とともに低下した感染予防効果が3回目接種により回復することが、近接した年齢層(12~15歳)で確認され、日本において薬事承認されている。3回目接種による局所および全身反応について、その頻度は、2回目接種と比較して有意な差がなかったことが海外で報告され、日本の薬事審査でも、そのほとんどが軽症または中等症であり大きな懸念はないとされている。インフルエンザの流行や第8波など、これからいろいろな不安因子が待ち受けています。小児ワクチン施策については、明確にリスクコミュニケーションがうまくいっていないので、後で振り返っていただきたいと思います。参考文献・参考サイト1)Pollack CV Jr, et al. Hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome. Ann Emerg Med. 1991 Dec;20(12):1366-1370.2)Gnvir M, et al. Encephalopathy in the Setting of COVID-19: A Case Report. Curr Health Sci J. 2021 Apr-Jun; 47(2): 322-326.3)首相官邸 新型コロナワクチンについて 年齢階級別接種実績4)大阪府 ワクチン接種状況等について5)日本小児科学会 「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」に関するQ&A6)厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A「なぜ小児(5~11歳)の接種に「努力義務」が適用されるようになったのですか。」

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