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第4回 楽天は新型コロナ最前線のデストロイヤーか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの勃発以来、国内で常に議論となっているのが、PCR検査の対象範囲を巡る是非である。当初は中国ローカルな感染症と考えられていたため、PCR検査の基準には中国の渡航歴あるいは渡航者との接触が必須だったが、現在では緩和されている。とはいえ以前ほどではないにせよ、この議論は今も炭火のようにくすぶり続けている。背景には臨床医が検査の必要性を感じる患者に遭遇しても、地域によって検査にたどり着ける難易度の違いがあるとみられる。しかし、ここにきてこの議論に大砲がぶち込まれた。あの楽天が突如、法人向けと称した「新型コロナウイルスPCR検査キット(定価:1万4,900円/キット[税込])」を発売したからだ(現時点では東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県のみ)。楽天が発表したニュースリリースによると、同検査キットは個人向け遺伝子検査キットなどを発売しているジェネシスヘルスケア株式会社と連携し、医療法人社団 創世会の協力のもと開発したもので、国立感染症研究所のPCR検査法を厳守しているという。導入法人は、同キットを従業員などに配布し、各人が検査試料を自己採取後、防漏性容器に収め、これをジェネシスヘルスケアが回収し、最短即日から土日祝を除く約3日以内に結果が通知されるとうたっている。ちなみに、ニュースリリースには注意事項として「本検査キットを用いたリスク判定は、いかなる意味でも診断や医行為を行うものではありません」と付記され、「厚生労働省が新型コロナウイルス感染症に関する相談・受診の目安として挙げている症状の出ている方は本検査キットを使用いただけません」とも記述している。診断目的ではないとしているのは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)への抵触を避ける(すり抜ける?)ためだろう。早速、楽天に問い合わせてみた。ちなみに私たち報道関係者は企業への問い合わせ時は、おおむね各社広報担当部門(最近ではコーポレート・コミュニケーション部門ともいう)の直通電話に連絡するか、会社の代表番号に電話し、そこから広報部門に取り次いでもらうことが一般的。また、こうした問い合わせ連絡先はニュースリリースに記載されていることも多い。ところが楽天は企業HP・ニュースリリースともに問い合わせ連絡先の記載はなく、ニュースリリースのページに報道の問い合わせ先としてメールアドレスが記載してあるのみ。いわゆるネット時代を象徴する企業らしい対応とも言えるのだが、一方でネット時代に象徴されるスピード感には欠けると言わざるを得ない。とりあえずメールで問い合わせをしたところ、問い合わせて7時間後に広報担当者から電話がかかってきた。―今回発売した検査キットですが、そもそも検査の感度、特異度はどの程度なのでしょうか?【楽天・広報】検査キットの感度、特異度に関して「〇%です」という表現はできないのですが、提携先のジェネシスヘルスケアが医療機関向けに同種のサービスを提供しており、その検査手法とまったく同じです。医療機関で行っているPCR検査と今回の検査キットの違いは、お客様自身で(検体を)採っていただく点だけです。―ということは、医療機関あるいは保健所を経由する新型コロナウイルスのPCR検査と質は同等のものと捉えてよろしいのですね? ですが、一般の方が鼻の奥から正確に検体を採取できない可能性は?【楽天・広報】同等かはその通りです。慣れない個人が採取棒を鼻の奥に入れて検体採取が可能かどうかについてですが、そもそも医療機関での検体採取ですら100%の精度とは言えません。ではなぜ検査を提供するのかですが、在宅勤務ができない人の中で、無症状だが感染の不安を抱えている人、実は感染しながら無症状のため感染していないと信じて勤務し、周囲にも感染させている可能性がある人の判断にお役立ていただきたいということです。―現在、診断目的で行われている新型コロナウイルスに対するPCR検査は感度が7割程度と言われています。つまり約3割の陽性者は陰性と判断されてしまいます。この検査キットを使った対象法人がこの不確実性を認識せず、検査キットで陰性ながら実は陽性の従業員に「安全宣言」をしてしまう危険性があります。【楽天・広報】まず、この検査キットは診断目的ではないので、私たちは陽性、陰性と申し上げず、「新型コロナウイルスに特徴的なRNA配列が含まれているかどうかの判定」と表現しています。また、在宅勤務が可能な企業にではなく、在宅勤務が不可能でかつ無症候感染の可能性を持つ従業員を抱える企業のみへの販売を原則しています。そのうえで言えば、一般的にPCR検査の感度は100%ではないので、実際には感染しながら陰性と判定されてしまう人がいること、そしてその方が陰性の判定で安心して出歩くリスクは承知しています。ただ、現下の情勢を考えれば、導入した法人では「新型コロナウイルスに特徴的なRNA配列が含まれていなかった」と判定された従業員にも、感染予防・感染拡大防止のために「不要不急の外出は控えましょう」「万全の注意を払いましょう」となるはずで、当社もそこを大前提としています。―御社としては問い合わせのあった法人に対しては、この検査キットの結果が万全ではないと説明しているのですか?【楽天・広報】もちろんです。そもそもこの検査キットは医療行為ではないので、陽性・陰性を判断できるものではないとご説明しています。―では、もしこの検査で御社が言うところの「新型コロナウイルスに特徴的なRNA配列が含まれていた」という結果が出たらどうなりますか?【楽天・広報】それは新型コロナウイルスに感染している可能性が高いという一つのデータとして使っていただいて、たとえば現場で働いていた人に自宅待機をしてもらう判断が法人としてはできます。―しかし、検査で「新型コロナウイルスに特徴的なRNA配列が含まれていた」と判定が出た人は医療機関に向かう可能性が高く、結果として医療機関の負荷を高めてしまう可能性が高いと思われます。【楽天・広報】検査キットで感染の可能性が高いとなれば、自宅待機になるか、あるいは保健所に連絡を取るかということになるのかもしれませんが、当社が指示・強制するものではなく、利用する法人の判断になります。以上がやり取りの概略だが何とも隔靴掻痒感は否めない。確かに在宅勤務ができない人向けという点では、一見すると「大義」がありそうだが、結局のところ現時点はPCR検査で陽性と判定された人は、実際の感染確定にかかわらず医療機関受診か自宅待機、陰性と判定された人も実際の感染確定にかかわらず蔓延を防ぐためなるべく自宅待機、結果としてすべての人が「stay at home」で対応すべき情勢。だからこそ無症候の人への検査はリソースの無駄使いと思わざるを得ないのだが。既に日本医師会は常任理事の釜萢 敏氏が記者会見で、検査を受ける本人が検体採取を行う時の正確性への疑問、採取時に周囲へ感染がおよぶ危険性、偽陰性の可能性などに言及して、「この検査を普及させ、ご自身でやってみることについては、非常にリスクが高いと今考えざるを得ません」との認識を示している。ベンチャー出身の楽天らしい発想とも言える検査キット発売だが、やや使用する側のモラルに丸投げしすぎではないか? 今回はベンチャー得意のイノベーションと言うよりは、単なるカオスを生み出すデストロイヤー、漫画「ドラえもん」の登場人物でいうところのガキ大将・ジャイアンの暴走となってしまうと思うのは私だけだろうか?

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「外出自粛で運動ができない」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第30回

■外来NGワード「不要不急の外出は控えなさい」(すでに控えている)「3密を避けなさい」(具体性に欠ける指導)「家で何か運動しなさい!」(あいまいな運動指導)■解説 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化には、糖尿病と喫煙が関係しているとの報告があります。一般的に、血糖コントロールが不良であるとウイルスに対する抵抗力が低下し、インフルエンザなどの感染症リスクが高まることが知られていますので、COVID-19も例外ではないのでしょう。患者クラスター発生のリスクとして掲げられた「3密」という言葉は、もともとは仏教用語の「三密」です。それが、今では「換気の悪い密閉空間」(むんむん)、「多数が集まる密集場所」(ぎゅうぎゅう)、「間近で会話が発生する密接場面」(がやがや)の3つの“密”がそろった意味での「3密」として用いられています。この3密を徹底的に避けるため、不要不急の外出自粛で仕事は在宅体制になり、出掛けることもできず、運動不足になりがちです。家にいるとついつい何かをつまんでしまい、気付けば体重が増えている…なんてことにもなりかねません。そうやって患者さんの自己管理がおろそかになる前に、「もし(if)」を使った質問をしてみましょう。患者さんの運動嗜好を知ることができるかもしれません。新型コロナウイルス感染対策をきっかけに、家での運動習慣を付けられるといいですね。 ■患者さんとの会話でロールプレイ患者新型コロナウイルスの影響で、運動ができなくて…。医師皆さん、そう言っておられますね。家ではどのように過ごされていますか?患者テレビばかり見ています。以前はジムで運動していたのですが。医師そうでしたか。今はどのくらい運動していますか?患者買い物で少し歩くぐらいです。ほかはほとんど運動していません。医師なるほど。3密を避けて運動場所を確保するのは、なかなか難しいですよね。もし、家で運動するとしたら、どんな運動がいいと思いますか?患者そうですね、ラジオ体操なんかはどうでしょう?医師いいですね。テレビでは、1日に2~3回体操を放送していますから、まずは時間になったらチャンネルを変える習慣付けから始めたいですね。患者えっ、そうなんですか。知らなかったです。まずは見ることからですね。医師はい。これを機に、1番だけでなく、2番までやると、食後血糖値が改善するかもしれませんよ。家でも歩数計を着けておくと、だいたいの運動量を把握することができます。この機会に、家の大掃除をしている患者さんもいますよ。患者確かに、工夫すればいろいろできそうです。頑張ってやってみます。■医師へのお勧めの言葉「もし、家で運動するとしたら、どんな運動がいいと思いますか?」「せっかくの機会ですから、家の中を掃除してみませんか?」

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新型コロナ危機に直面した米国ニューヨークの今【臨床留学通信 from NY】番外編3

番外編:新型コロナ危機に直面した米国ニューヨークの今(3)コロナの激震地となったニューヨークの患者総数は、4月22日現在で25万人を超えています1)。しかしながらクオモ知事の声明によりますと、総入院患者がマイナス傾向になったということで、ようやくピークを超えつつあるようです2)。また、ようやく(?)ニューヨークにおいてもマスクが義務付けられました。通常のマスクは、防御機構に関しては不明ですが、ウイルスを拡散しないという効果はあると私は思います。もちろん市民に対し早めに声明を出したかったのだとは思いますが、医療従事者への確保が先決であり、それがようやく担保されたためとも考えられます。当院(Mount Sinai Beth Israel)の現状は、相変わらずの病床拡大傾向ですが、それがそのままレジデントの労働時間の負担になっている訳ではなく、外部から委託することで人員を確保しているという状況です。実際に、待機的な一般病院や開業医の不要不急の外来はすべて閉鎖されており、そこから人的資源を確保していると考えられます。現在、市内中心部のマンハッタンよりも郊外に位置するクイーンズ地区などで医療崩壊が起きており、ピークを超えていても当院がいまなお病床拡大傾向にあるのは、そこの負担を軽減するための措置であります。確かに、マンハッタンには多くの病院がありますが、実際に住んでいるのは郊外のほうが多く、患者さんの数も同様に多いため、医療の需要と供給のアンバランスが起きやすいのです。それは東京都23区とそれ以外の関係にも似ているように思えますし、関東でパンデミックが起きると、人口が多く医者の数が少ない郊外エリアで医療崩壊が起きる懸念があります。私の病院はMount Sinai医科大学系列なので、経営母体が同じグループ内で疲弊している病院があれば、それらの患者を受け入れるたり人的資源を派遣することは合理的であり、経営的にも好ましいとも言えます。そのような協力は日本においてはなかなか難しく、パンデミックではない地区からのボランティアでしか成り立たないのかもしれませんが、一般病院だけでなく開業医の先生方の協力もニューヨークのように必要なのかもしれません。肝心の治療方法については、依然として模索状態が続いています。前稿で紹介したヒドロキシクロロキンおよびアジスロマイシンについては、ウイルス量を減らすかもしれないと言われていますが3)、あまり効果がないように思いつつ使い続けているというのが正直なところです。QT延長が双方に副作用があり、心電図を何度も取ることで医療従事者への曝露を助長しているようにも思われ、大規模な研究が待たれます。アクテムラ(トシリズマブ)は重症例に使用しておりますが、当院でRCTが始まったのは、同じIL-6 inhibitorのサリルマブでした。抗ウイルス薬のremdesivirについてもRCTも始まりましたが、観察研究の結果を見る限り、ある程度の期待は持てるのかなと思います4)。しかし、これらの治療法が正しいのかどうかも、やはり大規模な研究を待たなければわからない部分も多いです。また、D-Dimerが高値ならば、死亡率が上昇するというデータが出ており5)、D-Dimer高値の重症例については、当院では抗凝固療法を開始しておりますが6)、ほかの施設では推奨していないなど、まったくのエビデンス不足であり、欧米人より出血が多いと言われる日本人に当てはまるかどうかも不明です。ただ、治療に当たった実感としては、COVID-19の重症患者では凝固系が更新しているのだとは思います。ステロイドも予後を改善するというデータが出たため7)使い始めたところ、その後、真菌感染が発症したため、現時点では使用を控えております。ECMOについては、パンデミックになってしまうと医療資源の兼ね合いで推奨されるものではないように思えます8)。また、一度挿管すると抜管は非常に厳しく、低めの酸素飽和度であったとしても、なるべく避けたほうがいいのではないかという印象があります。いざ挿管が必要となった場合、管理は通常のARDSと異なるのかもしれません9)。以上は個人的見解が含まれており、治療法は刻一刻と変化すること、また当院の意見を代表するものではありませんので、その点をご了承ください。1)https://en.wikipedia.org/wiki/2020_coronavirus_pandemic_in_New_York_(state)2)https://twitter.com/NYGovCuomo3)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/322052044)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/322758125)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Lancet+2020%3B+395%3A+10546)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=322201127)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/321675248)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/322790189)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32228035

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COVID-19濃厚接触者の定義を変更し、網を拡大/国立感染研

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の「濃厚接触者」の定義について国立感染症研究所 感染症疫学センターは、4月20日に「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」を発表し、定義を変更した。 新しい「濃厚接触者」の定義では、「患者(確定例)」の感染可能期間(症状を呈した2日前から隔離開始までの間)に接触した者のうち、次の範囲に該当する者として4項目を示した。・患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内などを含む)があった者・適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者・患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液などの汚染物質に直接触れた可能性が高い者・その他:手で触れることのできる距離(目安として1m)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況など個々の状況周辺の環境や接触の状況など個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。 これにより、従来は発症日以降に接触した人から「発症の2日前から接触した人」に拡大され、また、「2m以内を目安に接触していた人」の定義を「1m以内を目安に15分以上接触した人」に変更された。 この定義は保健所などで聞き取り調査の際に使用され、より多くの感染疑い者の絞り込みに活用される。

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新型コロナ陽性および疑い患者への外科手術について、12学会が共同提言/日本外科学会など

 日本医学会連合、日本外科学会をはじめとする外科系12学会は4月1日、連名で「新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言」を発出した。流行下での手術トリアージの目安のほか、気管挿管・抜管時のリスク回避策など、医療従事者の感染リスク防止のための方策がまとめられている。 本提言の内容は以下の通り:・患者および術式選択について・個人用防護具(PPE:Personal Protective Equipment)について・気管挿管・抜管時のリスク回避について・その他の手術リスクについて・手術後の対応について・帰宅時の対応について・緊急手術について なお、今後の状況に応じて提言は適宜見直されるとし、日本外科学会では4月14日に外科手術トリアージ表の改訂版を発表。4月21日には、提言の中で推奨された排煙装置の使用について、日本外科教育研究会により「新型コロナウイルス感染症とサージカルスモーク」の解説が提供されていることを紹介。この解説では、サージカルスモークによる感染を防ぐため、関連の参考文献とともに医療用マスクや排煙装置の防護法などについて記載されている。 日本外科学会ホームページでは、「新型コロナウイルス(COVID-19)特設ページ」が設けられており、これらの情報が随時更新されている。

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アイスランドの新型コロナウイルス、遺伝子型が変化/NEJM

 アイスランドでは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染陽性率が、10歳以上および男性と比較して、10歳未満児および女性では低いことが明らかになった。アイスランド・deCODE Genetics-AmgenのDaniel F. Gudbjarsson氏らが、同国における高リスクの特定集団と市民を対象に実施した住民ベースの調査結果を報告した。アイスランドでは2月末に初めてCOVID-19と診断された患者が発生したが、COVID-19の原因ウイルスSARS-CoV-2が、どのようにアイスランドの住民に感染・拡大したかについてはデータが限られていた。今回の調査では、SARS-CoV-2のハプロタイプは多様で経時的な変化が認められること、一般市民で確認された感染陽性率はスクリーニング期間中あまり変化していないことも示され、著者は「封じ込め策が有効であったと考えられる」との見解を示している。NEJM誌オンライン版2020年4月14日号掲載の報告。感染リスクが高い特定集団と一般市民を対象にPCR検査を実施し実態を調査 研究グループは、アイスランドで行われた2つのSARS-CoV-2検査(感染リスクが高い人を対象とした検査と集団スクリーニング)について分析する検討を行った。 同国では2020年1月31日より、感染リスクが高いと考えられる住民(咳・発熱・関節痛・息切れなどの症状を有し、最近、高リスク国/地域から帰国した人、または感染者と接触した人)を対象とした検査を開始(特定集団群)。これに加えて3月13日より、無症状または軽度の風邪症状の同国在住者にも検査を拡充し、オンラインでの登録・検査が開始された(公募群)。 研究グループはこれらのデータに加えて、集団スクリーニングのサンプリング法を評価する目的で、20~70歳のアイスランド人6,782例を無作為に抽出し、3月31日~4月1日に携帯電話へメッセージを送信し、4月4日までに検査を受けてもらった(無作為抽出群)。 さらに、陽性例のうち643例についてSARS-CoV-2のシークエンシングを行った。4月4日時点で市中感染率は0.6%、10歳未満と女性は陽性率が低い 4月4日時点のSARS-CoV-2陽性者は、1月31日~3月31日に検査を受けた特定集団群は9,199例中1,221例(13.3%)、集団スクリーニングのうち3月13日~4月1日に検査を受けた公募群は10,797例中87例(0.8%)、4月1日~4日に検査を受けた無作為抽出群は2,283例中13例(0.6%)であった。全体で、検査を受けたのは人口の6%であった。 特定集団群のうち、初期(1月31日~3月15日)に検査を受けた1,924例では、SARS-CoV-2陽性者が177例(9.2%)で、このうち65%(115/177例)に最近の海外渡航歴(高リスク国を含む)があったのに対し、後期(3月16日~31日)に検査を受けた7,275例では陽性者が1,044例(14.4%)で、このうち海外渡航歴があったのは15.5%(162/1,044例)であった。 いずれの検査群でも、平均年齢は参加者全体(特定集団の初期群、特定集団の後期群、公募群、無作為抽出群でそれぞれ40.0、40.4、38.6、45.4歳)に比べ陽性者(それぞれ44.4、41.3、40.8、50.5歳)で高かった。特定集団群では、10歳未満(38/564例、6.7%)は10歳以上(1,183/8,635例、13.7%)と比較して陽性率が低い傾向にあり、この傾向は集団スクリーニング群でも同様であった(10歳未満0%、10歳以上0.8%)。また、女性のほうが男性より陽性率が低く、特定集団群では11.0% vs.16.7%(オッズ比[OR]:1.66、95%信頼区間[CI]:1.47~1.87)、集団スクリーニング群で0.6% vs.0.9%(1.55、1.04~2.30)であった。多様なSARS-CoV-2 ハプロタイプが広がっている 643検体から抽出したSARS-CoV-2 RNAのシーケンシングの結果、ハプロタイプは多様で経時的に変化していることが明らかになった。すなわち、特定集団の初期と集団スクリーニング群とでハプロタイプの構成が異なっており、初期はイタリアやオーストリアが起源のタイプがほとんどであったのに対して、3月中旬以降の集団スクリーニング群では当初高リスク国と見なされていなかった英国などから帰国した人によってアイスランドに持ち込まれたと考えられた。 集団スクリーニングにおける感染陽性率は20日間にわたり安定しており、公募群と無作為抽出群とで感染率に大きな違いはなかった。

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楽天のPCR検査キット、「大変危惧の念を抱いている」/日本医師会

 4月22日、日本医師会・釜萢 敏氏(常任理事)は、民間企業による新型コロナウイルスPCRキット販売に関して、「大変危惧の念を抱いている。(一般人が)自身で検体採取することはリスクが高いと考えざるを得ない」と強い懸念を示した。近日中に、問題点を具体的に示した専門家会議の意見が取りまとめられる見込み。東京都ほか4県の法人向けにPCR検査キットを販売 20日、楽天が「新型コロナウイルスPCR検査キット」を、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県の法人向けに提供開始したことを発表した。同キットは、遺伝子検査キットを手掛けるジェネシスヘルスケアが、医療法人社団 創世会の協力を受けて開発したもの。定価は1キット1万4,900円(税込)で、100キットから購入できる。 なお、同社プレスリリースでは、「導入する法人は、検査キットを従業員等に配布し、利用者は同封されている説明書に従って、各自で自宅にて検査試料を自己採取後、防漏性容器に収めます。容器を三重密封できる封筒に入れていただき、封をして目安として2時間以上経過してから、法人が指定する場所に設置する専用回収ボックスに入れていただきます。ジェネシスヘルスケアによる回収後、結果通知までにかかる日数は最短即日から約3日以内(土日祝除く)となります」と説明している。自宅での検査実施は感染拡大リスクにつながる恐れ これについて、釜萢氏は「検体の採取は正確に行うことが必要。それが不適切であれば、結果も不正確になりかねない」として、「検査を実施した企業が、本キットの結果を見て出勤の可否などを判断すると、実際の陽性・陰性とは異なる結果が含まれることで、感染拡大を引き起こすなどの問題につながりかねない。結果を医療機関に持って来られても、対応は困難である」と懸念を表明した。また、検査に伴う危険の周知も十分でなく、結果の取り扱いにおける個人情報保護の問題も残されている。 同氏は、同日開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議においても、同検査キットに対し問題意識が示されたことを説明した。実際に企業が同キットを購入し検査を実施した場合は、大きな混乱を来たす可能性がある。 PCR検査がなかなか実施されない、希望しても受けられないことに対する策なのではないか、という意見に対し、「PCR検査は医師が必要と認めたケースにのみ実施することが大事で、国民全員に実施すべきものではない」との認識をあらためて強調し、「今後同様の事例が起きないよう、厚生労働省と協議を行い、国民の安全を確保する視点で対応していく」と述べた。 なお、米国において、コロナウイルスについての自己検体採取キットが緊急使用認可されているが、「米国の検体採取自己キットは通常承認ではないものの、米国食品医薬品局(FDA)が緊急に使用を認可したものであり、政府機関が関与している」、「使用に当たっては医師の指示が必要」という2点が、今回わが国で発売されたキットと大きく異なる点だ。

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SARS-CoV-2との戦いーACE2は、味方か敵か?(解説:石上友章氏)-1218

原著論文Renin-Angiotensin-Aldosterone System Inhibitors in Patients with Covid-19 COVID-19は、新興感染症であり、科学的な解明が不十分である。これまでの報告から、致死的な重症例から、軽症例・無症候例まで、幅広い臨床像を呈することがわかっており、重症化に関わる条件に注目が集まっている1,2)。中国からの報告により、疾病を有する高齢者、なかでも高血圧を有する高齢者が多く重篤化する可能性が指摘された3,4)。 SARS-CoV-2の類縁であるSARS-CoVは、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)の原因ウイルスである。標的である肺胞上皮細胞に感染する際に、細胞表面にあるACE2(アンジオテンシン変換酵素2)を受容体として、ウイルス表面のスパイク蛋白と結合する。ACE2と結合したスパイク蛋白は、細胞表面の膜貫通型セリン・プロテアーゼであるTMPRSS2などにより切断され、標的細胞の細胞膜と融合することで細胞内に侵入することが知られている(『感染の成立』)5,6)。SARS-CoV-2の感染症であるCOVID-19でも、同様の機序が想定されている。 降圧薬(ACE阻害薬、ARB)の使用とCOVID-19との関係が注目されており、Vaduganathanらの手による、Special ReportがNEJM誌に掲載された7)。ACE2がSARS-CoV-2の感染の成立に重要な働きを有していることから、高齢者・高血圧患者におけるACE阻害薬、ARBの使用と、感染の重篤化との間に因果関係があるのではないかという疑問があがった。有効な治療法が確立していない現在、既存の蛋白分解酵素阻害薬である、ナファモスタット、カモスタットの、TMPRSS2の阻害作用により、SARS-CoV-2の感染を抑制する可能性があると報告されたことも、既存薬であるRA系阻害薬とCOVID-19との関連が注目された一因であろう8,9)。 図のように、ACE2はAng(1-7)-Mas受容体系に関与していると考えられており、ACE2の活性化はアンジオテンシンIIの働きに拮抗・相殺する作用であり、生体にとって好ましいとされている10)。ACE2が、SARS-CoV-2の感染の成立に重大な働きをすることから、直接的にCOVID-19の発症に関わっている可能性がある。ACE2活性の亢進や抑制が、COVID-19の発症・重篤化に関係しているのであれば、RA系阻害薬の内服によるACE2活性の変化によって、予後が決定される可能性がある。(原図:石上 友章氏) 個々の研究に目をやると、SARS-CoVによる重症肺炎が、ロサルタンの投与で軽快すると報告されている5)。またオルメサルタンには、ACE2活性化作用を介して、Ang II→Ang(1-7)への変換を促進し臓器保護作用があると報告されているが11)、いずれもげっ歯類を対象にした動物実験であり、ヒトではっきりと証明された報告はない。したがって、米国・欧州の主要な学会のポジション・ステートメントは、RA系阻害薬使用とCOVID-19との間の相関には否定的で、RA系阻害薬の内服の継続を推奨している。(https://www.eshonline.org/spotlights/esh-statement-covid-19/ほか) ARB(ロサルタン)ならびに、ACE2賦活薬(APN01:recombinant human soluble ACE2)を使った、臨床研究(NCT00886353、NCT04311177、NCT04312009)が計画されている。ヒトでのPOCがとれるか否かで、今回の降ってわいたような疑問への回答を得られることが期待される。References1)Bouadma L, et al. Intensive Care Med. 2020;46:579-582.2)Wu Z, et al. JAMA. 2020 Feb 24. [Epub ahead of print]3)Zhou F, et al. Lancet. 2020;395:1054-1062.4)Pan X, et al. Lancet Infect Dis. 2020;20:410-411.5)Kuba K, et al. Nat Med. 2005;11:875-879.6)Imai Y, et al. Circ J. 2010;74:405-410.7)Vaduganathan M, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 30. [Epub ahead of print]8)Yamamoto M, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2016;60:6532-6539.9)Hoffmann M, et al. Cell. 2020;181:271-280.e8.10)Ishigami T, et al. Hypertens Res. 2006;29:837-838.11)Agata J, et al. Hypertens Res. 2006;29:865-874.

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037)疲労困憊のコロナ電話対応【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第37回 疲労困憊のコロナ電話対応しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆新型コロナウイルスの流行で、公私共に落ち着かない日々が続きますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。私の皮膚科外来では、病院に来る患者さんの数がガクッと減り、少しずつ電話再診を希望する患者さんが増えてきています。緊急事態宣言の発令以降、病院が初診の受け付けを当面の間休止したこともあり、来られるのは定期処方の患者さんばかり。幼稚園や学童保育の休業により出勤できないスタッフもいるようで、スタッフも患者さんも少人数、広い外来棟が閑散としています。勤務医であるデルぽんは外来業務が減り、正直なところ手持ち無沙汰な状態です。一方、医師以外のスタッフは、電話での問い合わせ対応や、電話再診による処方箋の送付など、少ない人数でイレギュラーな業務に追われている様子。問い合わせの電話をしてくる患者さんの中には、芸能人の名前を出して30分間延々とクレームを言ってくる人や、無理難題を言ってごねる人も。身近な病院が、患者さんの不安な気持ちのはけ口になってしまっているようです。そうはいっても、医療者も限られた資源の中、精神をすり減らして対応しているので、どうかわかっていただきたいところ。感染症の最前線で戦う医療者の皆さまには、本当に頭があがりません。どうかご自愛ください。非日常で落ち着かない日々。早くこの事態が収まるとよいなと願っています。それでは、また~!

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第4回 新型コロナ、アカデミアと臨床医が会議設立したワケ

メディアは日々、新型コロナウイルスの感染症数や死亡者数を報じている。コロナの終息のみならず、休業要請などによりわれわれの生活ですら見通しが立たない中、増加する一方の感染者数や死亡者数の累積数ばかりを見せつけられては不安感が増すばかりだ。そうしたことが、買い占めなどを誘発している面がある。都内から茨城県内のパチンコ店への“遠征”や、長野県・軽井沢や沖縄県・石垣島などへの“コロナ避難”も、行く先の地域のコロナ患者の受け入れ態勢の情報がないことから、自身が感染したり、当地の人に感染させてしまったりした場合の地域へのダメージや、医療機関の受け入れの可否に思いが至らない面があるのではないだろうか。都道府県内の自治体ごとに、退院者数・完治者数、確保されているベッド数や使用されているベッド数、軽症者の宿泊療養施設数なども、行政やメディアには日々公表してほしい。地域の住民は、地元の細やかな情報をこそ求めているのだ。買い物なども、そのような情報があれば違う地域へ行く選択肢ができる。商店街の混雑情報などもスマホなどで見ることができるサービスがあれば、なお良い。自治体で情報提供専属の人材を採用すれば、雇用対策にもなる。市民目線の欠如という点では、安倍晋三首相の「何様」批判を招いたSNS動画、麻生 太郎副総理兼財務相の「手を挙げたら10万円給付」発言、国会議員の歳費2割削減などがある。安倍・麻生両氏は苦労知らずの3世議員だ。とくに麻生副総理は、国民への現金給付に関して限定的な給付にこだわる一方で、国際通貨基金(IMF)の途上国支援基金にはポンと5,500億円を追加、融資枠を2倍に引き上げる気前の良さを見せた。途上国支援も重要だが、今は国内対策で少しでも国民の不安を払拭するのが優先ではないだろうか。官僚においても同様だ。政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で現状分析や提言などを行っているが、医療系の構成員の視点に対し、事務方の官僚からの経済的な視点が入ってしまい、感染症や公衆衛生の「専門家」の提言としては政治色を帯びた内容にならざるを得ない。このような状況下、日本医師会は4月18日、アカデミアと臨床医による「COVID-19 医学有識者会議(仮称)」を立ち上げ、初会合を開いた。医療現場の症例からデータベースを作り、治療や検査の知見を現場で共有したり、対策を提言したりしていくという。新型コロナ対策ではエビデンス不足が指摘されているだけに、医療現場からの期待は大きそうだ。座長は永井 良三氏(自治医科大学学長)だが、立ち上げの中心は副座長の笠貫 宏氏(早稲田大学特命教授)だ。構成員の1人は「笠貫教授がアカデミアの動きが鈍いことに憤りを覚え、3日前に日医の横倉 義武会長らに声を掛け、賛同した医療界を代表するような医療人16人で立ち上げた」と打ち明ける。新型コロナ対策では政府らの対応の遅さがたびたび批判される中、この会議の設立はスピーディーだった。ある意味、市民目線の動きといえる。

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COVID-19、早期診断や重症化の因子は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)の予測モデルに関する公表・公表前の試験結果についてシステマティック・レビューを行ったところ、31個の予測モデルが見つかったが、大半でバイアスリスクが高く、それら予測モデルを医療現場で活用することには、信頼性の点で懸念があることが示された。オランダ・マーストリヒト大学のLaure Wynants氏らによる検討で、BMJ誌2020年4月7日号で発表した。COVID-19は世界中の医療システムに負荷をもたらしており、効果的な早期検出、診断および予後に関する差し迫ったニードが生じている。ウイルス学的検査、胸部CTは診断の標準方法となっているが時間を要する。一方、先行研究報告で、高齢で、慢性疾患(COPD、心血管疾患、高血圧)がある患者や呼吸器症状のある患者は、重症となりやすく死亡率も高まることが示唆されていた。PubMed、Embase、medRxivなどをレビュー 研究グループは、COVID-19の感染が疑われる患者の診断に関する予測モデル、および罹患者の予後に関する予測モデル、さらにCOVID-19で入院となるリスクがある人を一般集団で検出するための予測モデルについて、公表・公表前の報告をレビューおよび批評した。 PubMed、Embase、Ovid、Arxiv、medRxiv、bioRxivを基に、2020年3月24日までに発表されたCOVID-19に関する試験結果についてシステマティック・レビューを行った。COVID-19関連の多変量予測モデルの開発または検証に関する試験を抽出し、評価した。2人以上の著者がCHARMSチェックリスト(予測モデル試験のシステマティック・レビューのためのクリティカルな評価とデータ抽出を行うためのツール)を用いてそれぞれがデータの抽出を行った。診断モデル18件、予後予測モデルは10件 スクリーニングを行った2,696本の論文中に、27試験・31個の予測モデルの記述があった。 そのうち、一般集団における肺炎およびその他イベント(COVID-19肺炎の代替アウトカムとして)による入院の予測モデルは3個、COVID-19感染を検出する診断モデルは18個(うちCT画像検査の結果に基づく機械学習が13個)、死亡リスクや重症化進行リスク、および入院日数を予測する予後モデルは10個だった。また、中国以外の患者データを用いていたのは1試験のみだった。 感染が疑われる患者について最も多かった予測因子は、年齢、体温、徴候および症状であり、また、重症化について最も多かった予測因子は、年齢、性別、CT画像検査の所見、CRP、乳酸脱水素酵素値、リンパ球数だった。 予測モデルのC統計量は、一般集団を対象としたモデル(3モデルすべてで報告)は0.73~0.81、診断モデル(18モデルのうち13モデルで報告)は0.81~0.99超、予後モデル(10モデルのうち6モデルで報告)は0.85~0.98だった。 一方で、全試験についてバイアスリスクが高く、予測モデルを実際に活用した際の予測能は試験結果より低い可能性が高いとの評価が示された。理由としては、被験者にCOVID-19患者以外が含まれていない(診断モデル)、試験終了までに評価アウトカムが発生しなかった被験者は除外されている(予後モデル)、およびサンプルサイズが小さいことによるモデルの過剰適合などだった。 結果報告の質にもばらつきがあり、多くが試験対象集団や予測モデルの使用意図についての説明がなく、また予測の較正はほとんどされていなかったという。

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新型コロナウイルス感染症患者に対するremdesivir人道的使用(解説:浦島充佳氏)-1220

オリジナルニュース重症COVID-19へのremdesivir、68%で臨床的改善か/NEJM 現在、COVID-19に対する有効な治療薬はない。そこでSpO2 94%以下の低酸素症を伴うCOVID-19患者61例にremdesivirを使用した。しかし、結果の不明な7例と薬物使用量の不適切だった1例を除外し53例で解析が成された。投与開始中央値18日(IQR:12~23日)において53例中36例(68%)で酸素投与法の改善をみた。一方、有害事象として60%に肝臓酵素の上昇、下痢、発疹、腎機能障害、低血圧を認めた。23%に多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧を、人工換気をしている患者に認めた。 SARS-CoV-2はRNAウイルスであり、remdesivirのRNAポリメラーゼ阻害作用に期待しての人道的使用によるデータを集めての報告である。データを解釈するうえで気になった点は以下の4つである。1. 除外された8例の詳細がない2. アウトカム評価の方法が事前に決められていない3. 有害事象が多い4. 製薬会社(Gilead Sciences)主導の研究である 結論にも記載があるように、現在ランダム化プラセボ比較試験が進行中であり、その結果が待たれるところである。 SARSにおいてHIV治療薬の1つであるロピナビル・リトナビルを41例に投与したところ21日以内に呼吸窮迫症候群ないし死亡したケースは1例のみであった(2.4%)。一方、ロピナビル・リトナビルを投与しない過去のSARS 111例では、同アウトカムが32例(28.8%)に発生した1)。この研究デザインはhistorical controlであるが、今回のCOVID-19に対して非盲検ランダム化プラセボ比較試験が実施された2)。199例のCOVID-19患者を対象としたが、臨床症状の改善までの日数、死亡率ともに両群で有意差を認めなかった。 第II相試験で比較的良好な結果であり、第III相試験に進んでも効果が実証されないことは多い。米国の大規模臨床腫瘍グループの実施した第III相試験では、わずか28%(26/94試験)のみが、主要評価項目で既存治療に対する優越性を示したと報告した3)。 remdesivirのCOVID-19に関してもランダム化プラセボ比較試験の結果が待たれるところである。1)Chu CM, et al. Thorax. 2004;59:252-256.2)Cao B, et al. N Engl J Med. 2020 Mar 18. [Epub ahead of print]3)Unger JM, et al. JAMA Oncol. 2016;2:875-881.

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第4回 新型コロナで変わるか、医学部受験事情

研修医を新型コロナ感染症治療の最前線へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件について、あれやこれや書いていきたいと思います。緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されました。ゴールデンウィークの“民族大移動”前に早めに対象を全国に広げ、旅行や行楽地を訪れることを自粛させるのが狙いでしょう。私が好きな山登りも当然「不要不急の外出」になるわけで、今年の春山はどうしようか、と思い悩む今日この頃です。地元のスーパーに寄らないよう、車に食料をすべて詰み込んで登山口まで直行し、山小屋ではなくテントに泊まれば感染リスクは極力抑えられそうですが、まあダメでしょうね…。さて、今週気になったのは事件ではなく、西村康稔経済再生担当相が4月16日の参院議員運営委員会で発した言葉です。西村大臣は「場合によっては、研修医が現場に出ることもあり得る。引退したお医者さんで元気な方も現場に行くのはリスクがあるが、帰国者・接触者相談センターで電話の相談を受けている例もある」と述べ、研修医を新型コロナ感染症治療の最前線に投入する可能性について言及しました。前回のこのコラムでは、慶應義塾大学病院の研修医たちが開いたパーティについて書きましたが、週刊文春の続報によれば、懇親会後に陽性が判明した研修医たちは入院後も騒ぎ放題で、SNSに「コロナはテキーラで消毒!」と書き込んだ女性研修医もいたとか。そんな彼らならいきなり最前線に行かされてもビビらないでしょうが、多くの若手研修医は一瞬、肝を冷やしたのではないでしょうか。同様の動きは米国が先んじています。医師や看護師の確保が急務となったニューヨーク州では、クオモ知事が4日の記者会見で「医師や看護師が必要だ。われわれは迅速に対応する」と述べ、医療従事者を支援するため州内の医学生を病院などに派遣する行政命令を出しています。入試難度が上がる一方の医学部だったが……さて、このニュースを読んで思ったのは、「ひょっとしたら来年以降、大学医学部の偏差値は少しは下がるのではないか」ということです。ここ10年ほどの間に医学部の入試難度は相当上がりました。特に私立大学の難化が顕著です。かつて私大医学部は比較的難易度が低く、偏差値50台半ばから後半でも合格できる大学がありました。しかし、今では最低でも60台前半は必要と言われています。その背景には、優秀な学生を獲得したい私大医学部の中に学費を大幅に下げるところが出てきたことがあります。6年間で3000~4000万円かかっていた学費が2000万円前半で済む医学部も出てきました。サラリーマン家庭でも私大医学部を目指せるようになり、難易度がさらに高まったわけです。医学部人気の理由には、受験生(中高生)とその父兄の安定志向もあります。かつては優秀な受験生は官僚を目指したり、大企業を目指したりしたものですが、国際競争が激しい今、大企業すら存続が危ぶまれる状況です。「最も手堅いのは医師」と考える人が増えているのでしょう。官僚の人気低下は言わずもがな、です。こうした理由から優秀な理系の高校生は国公立、私立を問わず医学部を目指す傾向が強まっており、東大の理I、理IIよりも地方の国公立の医学部が選ばれる時代になっています。さて、そんな医学部人気の最中に起こった新型コロナウイルス感染症によるパンデミック。医療崩壊が迫る現場の過酷さや、医療機関での院内感染が連日報道されています。一連の報道を見て「医療現場は危ない」と考える人が増えています。「さっさと開業して、感染症治療の最前線に立たなければいい」という人もいそうですが、研修医の段階から現場に立たされては、そうもいきません。息子や娘に「医師は危ないからやめなさい」という親が出てきても、不思議ではありません。そうなると、来年以降、安定志向の医師志望者は減り、純粋に「医師になって人の命を救いたい!」と考える若者だけが医学部を目指すのではないでしょうか。来年の医学部入試の偏差値と受験者数に注目したいと思います。

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新型コロナウイルス検出用抗体、開発に成功/横浜市立大

 横浜市立大学大学院医学研究科の梁 明秀氏(微生物学・分子生体防御学 教授)らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原を特異的に検出できるモノクローナル抗体の開発に成功したことを2020年4月20日に発表した。今後は、本抗体を用い簡便かつ短時間にSARS-CoV-2だけを正しく検出できるイムノクロマトキットの開発を目指す。 今回作製された抗体は、近縁のSARSコロナウイルスや風邪の原因となるヒトコロナウイルスとは交差反応を示さず、SARS-CoV-2抗原にだけ正確に反応するという。現時点でSARS-CoV-2のみを的確に検出できる高性能なモノクローナル抗体は実用化されておらず、この開発が進めば国内初の検査キットの実用化となる。 研究成果のポイントは以下のとおり。・ コムギ胚芽無細胞タンパク質合成法により作製した高品質な抗原を用いて、SARS-CoV-2を正確に検出できるマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを複数株、樹立することに成功。・ 本抗体は、SARS-CoV-2だけに高い親和性を示し、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、およびその他の一般の風邪症状を引き起こすヒトコロナウイルスとは交差反応しない。・ 今後、本抗体を用いて、簡便かつ短時間に、しかも正確にSARS-CoV-2が検出できるイムノクロマトキットが開発できれば、PCR法などの遺伝子検出法と比べて臨床現場の負担が軽くなり、検査数の大幅増が期待できる。

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色素性乾皮症〔XP:xeroderma pigmentosum〕

1 疾患概要■ 概念・定義色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)は、紫外線(ultraviolet:UV)により生じるDNA損傷の修復能が先天的に欠損することにより発症する重篤な光線過敏症である。常染色体劣性形式で遺伝し、UVによる皮膚がん誘発リスクがきわめて高くなる。皮膚症状に加え、原因不進行性の神経変性症状を合併することがあるため、わが国では指定難病、小児慢性特定疾病の1つとして国から認定されている。■ 疫学XPの頻度はわが国では約2.2万人に1人とまれであるが、欧米(2.7/100万人)に比べれば15倍以上と高頻度である。■ 病因紫外線のDNAへの直接曝露で誘発されるシクロブタン型ピリミジン2量体、6-4光産物を除去するヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair:NER)、あるいはNERのバックアップ的な修復系である複製後修復(損傷乗り越え複製、translesion synthesis:TLS)の機能が単一遺伝子異常により欠損する。■ 症状典型例では乳幼児期から外出のたびに激しい日焼け様反応を繰り返したあと、顔面など露光部皮膚が乾燥し、雀卵斑様の小色素斑が出現する。この色素異常は徐々に進行し、厳重な遮光を怠れば若年齢で基底細胞がん、日光角化症、扁平上皮がん、悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍が多発し、その発生のリスクは健常人に比べて数千倍とされる。また、わが国の患者では約半数で精神運動発達遅滞、難聴、歩行障害などの神経症状がみられ、これらの症状は徐々に進行する。■ 分類XPは遺伝学的に異なる8つのグループ(群)が存在し、NERに異常のあるA〜G群、NERに異常はないがTLS機能が損なわれるXPバリアント型(XP-V)に分類される。XP症状の進行度、重症度や予後は各群で異なる。わが国では皮膚症状、神経症状いずれも最重症型であるXPA群が過半数を占め、次いで皮膚症状のみを呈するXP-Vが25%、XPD群が8%、XPF群が7%、XPE群、XPG群はまれ、XPB群の日本人報告例はまだない。また、XPは臨床的には皮膚症状のみを呈する皮膚型XP(XPC群、XPE群、XPF群、XP-V)、皮膚症状に加え神経症状を伴う神経型XP(XPA群)、XPの皮膚所見に他の遺伝性光線過敏症であるコケイン症候群(Cockayne syndrome:CS)様の臨床像(著明な発育低下、老人様顔貌など)を合併するXP/CS complexに分類される。欧米例とは違い、本邦症例ではXPD群のほとんどが皮膚型XPである。■ 予後神経型XPの代表であるXPA群の典型例では、むせや嚥下困難が15歳前後から生じ、20歳頃には気管切開となる。その後は誤嚥、感染症、糖尿病の悪化などにより30歳前後で死亡するケースが多い。皮膚型XP患者では皮膚がん予防が徹底されていれば予後は良好である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)XPの確定診断は主として患者皮膚由来の培養線維芽細胞を用いた(1)紫外線照射後の不定期DNA合成能(unscheduled DNA synthesis:UDS)測定、(2)紫外線感受性試験、(3)宿主細胞回復能を指標にした相補性群試験、(4)遺伝子解析(血液でも可能)によりなされる。 UDSはNERの指標であり、XPではXP-Vを除いて低下する。XP細胞はXP-V細胞を除いて紫外線に高感受性であり、カフェイン添加により紫外線感受性が増強するという所見が得られればXP-Vの可能性が示唆される。わが国で過半数を占めるXPA群患者ではXPA遺伝子のイントロン3,3`側のスプライシング受容部位のGからCへのホモ変異(89%)、ヘテロ変異(9%)がPCR-RFLP法により簡易迅速に検出できる(創始者変異)。他群のXP患者に対しては紫外線照射レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ発現ベクターなど)の宿主細胞回復能あるいはEdUを用いたUDSを指標にした相補性試験、遺伝子解析にて診断確定する。XPの鑑別疾患としては、通常の雀卵斑、遺伝性ポルフィリン症があげられる。前者では皮疹は学童期に出現し、思春期がピークで以後消退傾向を示し、色素斑の大きさは小さく比較的均一であり、皮膚の乾燥・萎縮を伴わない点がXPとは異なる。後者では、光線曝露後に生じる疼痛感が特徴であり、血中・尿中の各種ポルフィリン検査を実施すれば鑑別可能である。3 治療XPは遺伝性疾患であるため根治的な治療法はない。したがって患者への対応は、患児の親や担当教員の協力の下での厳重な紫外線防御、対症療法、合併症対策が中心となる。日焼け様皮疹が生じた場合には、局所の冷却、ステロイド外用療法を行う。皮膚悪性腫瘍が発生した場合、可能な限り腫瘍切除術を施行する。皮膚腫瘍が多発して切除が困難な場合には適宜イミキモド(商品名:ベセルナ)、5FU、ブレオマイシン(同:ブレオ)などを用いた外用療法を実施する。XP患者では生涯、UVB(+UVA)曝露からの回避を厳重に行う必要がある。そのため物理的遮光(長袖、長ズボンの衣服、帽子、UVカットフィルムなど)、化学的遮光(サンスクリーン使用)いずれもが適切に行えるよう指導する。重症例では不要な屋外活動を制限し、外出の際はUV防護服の着用を指示する。4 今後の展望 (治験中・研究中の診断法、治療薬剤など) iPS細胞を用いた創薬研究が始まったばかりであり、現時点ではまだ治療薬候補は明らかではなく、臨床応用の段階には至っていない。5 主たる診療科 (紹介すべき診療科)皮膚科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 色素性乾皮症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国色素性乾皮症(XP)連絡会(患者とその家族および支援者の会)1)森脇真一ほか. 日皮会誌. 2015;125:2013-2022.公開履歴初回2020年04月21日

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第4回 AIが予想する、開発中のCOVID-19ワクチン成功率

1965年に英国の研究者が初めて報告したコロナウイルスは1)、およそ半世紀後のいま、世界で猛威を振るっています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン候補の先頭を切るModerna社の開発品mRNA-1273の成功確率はどれほどのものなのか? 人工知能(AI)が出した答えはわずか5%でした2)。なぜそのように低いかというと、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を標的とするmRNA-1273の成分がこれまでのワクチンにはないメッセンジャーRNA(mRNA)であり、まだ立証されていない技術だからだと解析を実施した情報会社Clarivateの製品リーダーは言っています。AIはほかのCOVID-19ワクチンにも手厳しく、今月初めに第I相試験が始まったInovio社のDNAワクチンINO-4800の成功確率は15%、上手く行ったとしても承認には5.5年を要すると判断しています。ワクチンの主な安全性上の懸念の一つに、意図とは裏腹により感染しやすくしてしまうという、厄介な現象があります。SanofiのデングワクチンDengvaxiaで広く知られるようになったその現象・ADE(antibody dependent enhancement)が、Moderna社やInovio社のSARS-CoV-2スパイクタンパク質標的ワクチンと無縁とは言い切れないことも、それらの成功確率をAIが低く予想していることに影響しているかもしれません。ADEは非中和抗体で促されることが知られており、中和抗体をより生み出すワクチンならADEを回避できる可能性があります。2002~03年に流行したコロナウイルス・SARS-CoV-1のスパイクタンパク質では、受容体結合領域(RBD:receptor-binding domain)に対する抗体の中和活性が強力なことが知られています。そこで、米国フロリダ州のScripps Research Instituteの研究チームはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質RBD領域ではどうかを、ラットへの接種で検証しています。結果は期待通りで、ウイルスを認識して細胞感染を防ぐ強力な中和抗体が作られ、ADEを介した感染増強は生じ得ないと示唆されました3)。AIの予想がどうあれ、Moderna社は米国政府機関からの最大4億8,300万ドル(500億円超)の助成を受けてmRNA-1273の開発を急ぎ、現四半期4~6月中に第II相試験を開始し、順調に進めば承認申請前の大詰め試験・第III相試験が今秋にも始まります4)。Moderna社の取り組みが失敗しても、Scripps Researchなどの基礎研究から新たなワクチン候補は次々に誕生するでしょう。Moderna社に続くCOVID-19ワクチンの層も厚く、ノルウェーのオスロを拠点とするCOVID-19ワクチン開発支援組織Coalition for Epidemic Preparedness Innovations (CEPI)によると、4月8日時点で世界で115のCOVID-19ワクチン候補が存在します5)。それらのうち78候補は確かに開発が進んでおり、Moderna社やInovio社に加えて中国企業のワクチン3つが臨床試験段階に至っています。いま世界が直面しているCOVID-19惨禍を終わらせ、将来の新たな流行に備えるために技術や資金を総動員してワクチン開発に取り組む必要がある、とCEPIは言っています。参考1)Tyrrell DA, et al. BMJ.1965 Jun 5;1:1467-70.2)Don't count on a COVID-19 vaccine for at least 5 years, says AI-based forecast / FiercePharma3)Quinlan BD, et al. bioRxiv. April 12, 2020.4)Moderna Announces Award from U.S. Government Agency BARDA for up to $483 Million to Accelerate Development of mRNA Vaccine (mRNA-1273) Against Novel Coronavirus / BUSINESS WIRE5)Thanh Le T, et al. Nat Rev Drug Discov. 2020 Apr 9.

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第4回 COVID-19診療医療機関の具体的な支援策が取りまとめられた

<先週の動き>1.COVID-19診療医療機関の具体的な支援策が取りまとめられた2.地域でのがん患者、透析患者、妊産婦などへの医療提供体制がまとまる3.医療・介護現場で足りないマスク、防護具、消毒薬の対策が進む4.新型コロナウイルスに対する新薬開発状況が明らかに1.COVID-19診療医療機関の具体的な支援策が取りまとめられた新型コロナウイルス感染による重症患者を診療する医療機関に対して、17日に開催された中央社会保険医療協議会 総会(第455回)において、具体的な支援策が打ち出された。中等症・重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の受入れに係る特例的な対応は以下の3点にまとめられている。1)重症COVID-19患者の治療に係る評価体外式心肺補助(ECMO)や人工呼吸器による管理が必要な重症患者などへの対応として、救命救急入院料、特定集中治療室管理料またはハイケアユニット入院医療管理料を算定する病棟において、2倍の点数を算定できる。また、急性血液浄化(腹膜透析を除く)を必要とする状態、急性呼吸窮迫症候群または心筋炎・心筋症のいずれかに該当する患者については21日間、ECMOを必要とする状態の患者については35日間まで、算定日数が延長される。2)患者の重症化等を防ぐための管理および医療従事者の感染リスクを伴う診療の評価中等症以上のCOVID-19患者については、患者の重症化や他患者および医療従事者への感染拡大を防ぐための管理の評価として、救急医療管理加算の2倍相当(1,900点)を算定可能になった。さらに、人員配置に応じて、追加的に二類感染症患者入院診療加算に相当する加算を算定できる。3)受入れに伴い必要な手続き等への柔軟な対応救命救急入院料、特定集中治療室管理料およびハイケアユニット入院医療管理料と同等の人員配置とした病床において、COVID-19患者または本来当該入院料を算定する病床において受け入れるべき患者を受け入れた場合には、運用開始日や人員配置など簡易な報告をした上で、該当する入院料を算定できる。なお、救命救急入院料について、COVID-19患者の受入れなどにより、当該医療機関内の特定集中治療室管理料などを算定する病棟に入院できない場合には、患者の同意を得た上で、入院経路を問わず算定可能。(参考)新型コロナウイルス感染症患者(中等症・重症患者)への診療報酬における対応について(中医協 第455回総会)2.地域でのがん患者、透析患者、妊産婦などへの医療提供体制がまとまる地域で医療提供体制を協議する上で配慮が必要となるがん患者、透析患者、障害児者、妊産婦、小児に係る対応について、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が、都道府県などに向けて14日付で事務連絡を発出した。がん治療を受けている患者がCOVID-19に罹患した場合には、重症化する可能性を念頭に置き、がん治療を中断し、コロナに対応した医療機関への入院を原則とするなど、細心の注意を要する。日本透析医学会の報告によると、国内の透析患者の感染者数は累計47人だ。全体の死亡率は、8.5%(4/47人)と、基礎疾患のない患者と比較して高率であることも含め、適切な病床の確保などが望まれる。都道府県には、各学会から発出される情報を参考にし、医療機関への周知を行うなどの対応が求められている。(参考)新型コロナウイルス感染症に対応したがん患者・透析患者・障害児者・妊産婦・小児に係る医療提供体制について(厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者数(2020年4月17日)(一般社団法人 日本透析医学会)3.医療・介護現場で足りないマスク、防護具、消毒薬の対策が進む厚生労働省は10日に「N95マスクは滅菌により2回までの再利用等が可能」とする事務連絡を出していたが、現場で増え続ける疑い症例への防護策として必要なマスクや防護具の不足に対して、新たな工夫をして乗り越えようとする動きが見られる。東京都医師会では、COVID-19の流行に伴うマスク不足を受け、「【縫わずに作れる!】簡易マスクの作り方」をホームページで公開している。フェイスシールドについても、100円ショップなどで入手可能なクリアファイルを利用して自作する代用案が動画サイトで共有されるなど、さまざまなアイデアが共有されている。消毒用アルコールについては、13日から若鶴酒造(富山県砺波市)が「砺波野スピリット77%」の発売開始、今月下旬からサントリースピリッツ大阪工場で医療機関等向けにアルコールの提供開始などが発表されており、不足が徐々に解消すると考えられる。また、17日に北里大学大村智記念研究所の片山 和彦教授らの研究グループが発表した「医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化効果について」により、一般の医薬部外品や生活雑貨の中でも、消毒用に使えるものが公開されている。(参考)N95 マスクの例外的取扱いについて(厚労省 事務連絡 令和2年4月10日/4月15日一部追記)消毒アルコール、酒で代替 品不足受け、業者次々参入―行政も柔軟対応・新型コロナ(時事通信)医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化効果について(学校法人 北里研究所)4.新型コロナウイルスに対する新薬開発状況が明らかに第94回 日本感染症学会学術講演会 特別シンポジウム(テーマ:COVID-19シンポジウム -私たちの経験と英知を結集して-)が18日に開かれた。最後の演題「臨床試験の進行状況と新知見」では、藤田医科大学の土井 洋平教授より、国内におけるファビピラビルの治療成績について観察研究の報告がされた。新型コロナウイルス感染患者300例に投与した結果、軽・中等症の患者で約9割、人工呼吸器が必要な重症・重篤患者で約6割に症状の改善が見られた一方、高尿酸血症や肝機能障害といった有害事象が17%で報告されたという。ほかにも、喘息治療に用いる吸入ステロイド薬シクレソニド(商品名:オルべスコ)、抗インフルエンザ薬のファビピラビル(同:アビガン)、エボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬レムデシビル(ギリアド・サイエンシズ)などが挙げられる。また、抗マラリア薬の一つで、新型コロナウイルスの治療薬として期待されるヒドロキシクロロキンについては、ブラジルで行われた治験で81例の被験者のうち11例が死亡し、臨床試験は6日目で中止となった。フランスでも同様の臨床試験に着手したが、副作用と心臓損傷のリスクのため直ちに中止になるなど、当初の期待通りとはいかないものもある。なお、日本感染症学会のCOVID-19シンポジウムについては、NHKチーフ・ディレクター市川 衛氏によるシンポジウム関連ツイートのまとめが掲載されている。(参考)アビガン投与2週間で重症者6割が改善、軽症者では9割…「それぞれの薬に長所と短所」(読売新聞)新型コロナ治療薬、開発急ピッチ 世界で治験650件(日経新聞)日本感染症学会ウェブセミナー COVID-19シンポジウムまとめ(市川衛@医療の「翻訳家」/@mam1kawa)

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米国でC. difficile感染症の負担低減/NEJM

 米国の全国的なClostridioides difficile感染症と関連入院の負担は、2011年から2017年にかけて減少しており、これは主に医療関連感染(health care-associated infections)の低下によることが、米国疾病管理予防センター(CDC)のAlice Y. Guh氏ら新興感染症プログラム(EIP)Clostridioides difficile感染症作業部会の調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2020年4月2日号に掲載された。米国では、C. difficile感染症の予防への取り組みが、医療領域全般で拡大し続けているが、これらの取り組みがC. difficile感染症の全国的な負担を低減しているかは不明とされる。10州で、発生、再発、入院、院内死亡の負担を評価 研究グループは、米国におけるC. difficile感染症の抑制の全国的な進捗状況を評価するために、EIPのデータを用いて、2011年から2017年までのC. difficile感染症の負担と発生率の推定値および関連アウトカムの全国的な動向について検討した(米国CDCの助成による)。 C. difficile感染症のEIPでは、2017年、米国の10州35郡で1,200万人以上の調査を行い、このうち34郡が2011年以降の調査に参加した。 C. difficile感染症は、「1歳以上で、過去8週間に検査でC. difficile陽性がなく、便検体でC. difficileが陽性」と定義された。症例と国勢調査のサンプリングの重みを用いて、2011~17年の米国におけるC. difficile感染症の発生、初回再発、入院、院内死亡の負担を推定した。 医療関連感染は、医療施設で発症した症例、または最近の医療施設への入院に関連する症例と定義し、それ以外はすべて市中感染に分類した。動向分析では、負の二項分布による重み付け変量切片モデルとロジスティック回帰モデルを用いて、他検査より高い核酸増幅検査(NAAT)の感度を補正した。医療関連C. difficile感染症が年間6%低下、市中感染は変化なし NAATで診断されたC. difficile感染症の割合は、2011年の55%から2016年には84%まで増加し、2017年には83%に低下した。また、米国の10ヵ所のEIP施設におけるC. difficile感染症の症例数は、2011年が1万5,461件(10万人当たり140.92件、医療関連感染1万177件、市中感染5,284件)、2017年は1万5,512件(130.28件、7,973件、7,539件)であった。 NAAT使用の補正をしない全国的なC. difficile感染症の負担の推定値は、2011年が47万6,400件(95%信頼区間[CI]:41万9,900~53万2,900)で、これは10万人当たり154.9件(95%CI:136.5~173.3)であり、2017年は46万2,100件(42万8,600~49万5,600)で、10万人当たり143.6件(133.2~154.0)だった。 NAATの使用を考慮したC. difficile感染症の総負担の補正後推定値は、年間-4%(95%CI:-1~-6)変化し、2011年から2017年までに24%(6~36)減少した。このうち、医療関連C. difficile感染症は年間-6%(-4~-9)変化し、2011年から2017年までに36%(24~54)低下したのに対し、市中C. difficile感染症には変化が認められなかった(0%、-2~3)。 NAAT使用率を55%とすると、C. difficile感染症の初回再発と院内死亡の負担の補正後推定値には有意な変化はみられなかった。これに対し、C. difficile感染症による入院の負担の補正後推定値は、年間-4%(95%CI:-8~0)変化し、2011年から2017年までに24%(0~48)減少しており、医療関連感染の入院負担は年間-5%(-1~-9)変化したが、市中感染には有意な変化はなかった。 著者は、「CDCは、感染予防の実践や、医療領域全般における抗菌薬使用の改善に資する施策を進めている。また、1次予防におけるワクチン開発や腸内微生物叢などの革新的戦略の探索は、今後、C. difficile感染症の負担削減をもたらす可能性がある」としている。

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新型コロナ、病棟の床や靴底、患者から4mの空気からも検出

 病棟における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の分布について、中国・武漢のCOVID-19専門病院である火神山医院の空気と環境表面のサンプルを調査したところ、SARS-CoV-2は、床、コンピュータのマウス、ゴミ箱、ベッドの手すり、靴底など広く分布し、患者から約4m離れた空気からも検出された。Academy of Military Medical Sciences(北京)のZhen-Dong Guo氏らが、Emerging Infectious Diseases誌オンライン版2020年4月10日号で報告した。 著者らは、2020年2月19日~3月2日、火神山医院の集中治療室(ICU)とCOVID-19一般病棟(GW)における環境表面と空気のサンプルを検査した。ICUは重症患者15例、GWは軽症患者24例を収容した。床、マウス、ゴミ箱、ベッドの手すり、患者用マスク、個人用防護具(PPE)、排気口のサンプルは湿らせた無菌スワブで採取し、空気のサンプルはSASS 2300 Wetted Wall Cyclone Samplerで採取した。計425サンプルをRT-PCRを用いて検査した。 主な結果は以下のとおり。・陽性の割合はGW(7.9%)よりICU(43.5%)で大幅に高かった。・床のサンプルの陽性率は比較的高く(ICU:70%、GW:15.4%)、患者がいない薬局の床のサンプルの陽性率が100%であった。さらに、ICUの医療スタッフの靴底のサンプルの半数が陽性であった。・陽性の割合は、医療スタッフや患者が触る表面も比較的高く、最高はマウス(ICU:75%、GW:20%)、次いでゴミ箱(ICU:60%、GW:0%)、病床の手すり(ICU:42.9%、GW:0%)、ドアノブ(GW:8.3%)であった。・医療スタッフの袖口と手袋のサンプルは、散発的な陽性結果が得られた。・ICUおよびGWの隔離病棟での空気サンプルは35%が陽性だった。サンプリング場所別の陽性率は、吹き出し口付近が35.7%、病室が44.4%、医師のオフィスエリアが12.5%であった。・GW内のSARS-CoV-2エアロゾルの分布から、SARS-CoV-2の最大伝播距離は4mに達する可能性が示唆された。 本調査から、SARS-CoV-2はICUとGWともに空気中および環境表面に広く分布し、医療スタッフに潜在的に高い感染リスクがあり、また、環境汚染はGWよりもICUで多く、ICUの医療スタッフについてはより厳しい対策が必要なことが示唆された。 著者らは、「3月30日時点で、病院のスタッフはSARS-CoV-2に感染しておらず、適切な予防策で効果的に感染を防ぐことが可能で、COVID-19疑い例の自宅での隔離は適切な管理戦略ではない可能性がある」と述べている。

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