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腎移植者への細胞治療、免疫抑制による感染症を抑制/Lancet

 生体腎移植患者の免疫抑制療法において、制御性細胞療法は施行可能かつ安全であり、標準的な免疫抑制薬による治療と比較して感染性合併症が少なく、1年目の拒絶反応の発生率はほぼ同等であることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBirgit Sawitzki氏らの検討「The ONE Study」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年5月23日号に掲載された。免疫抑制薬は臓器移植の適応を拡大したが、副作用や慢性拒絶反応のため、この10年、生着期間は横ばいだという。長期の免疫抑制薬の使用は合併症や医療費の増加をもたらすため、拒絶反応の予防においては、免疫抑制薬への依存度を低減する新たな戦略が求められている。細胞由来医薬品(cell-based medicinal product:CBMP)は、臓器移植における免疫抑制薬の削減に寄与する最先端のアプローチとして期待を集めている。同一デザインの7つの非無作為化単群試験 本研究は、5ヵ国(フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国)の8つの病院が参加した、同一のデザインを共有する7つの医師主導の単群試験であり、2012年12月11日~2018年11月14日の期間に実施された(第7次欧州連合フレームワークプログラムの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の生体腎移植患者であった。また、追跡期間は60週だった。 7つの試験のうち1つは参照群試験(RGT)であり、8病院で標準的な免疫抑制薬による治療(バシリキシマブ、ステロイド漸減、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス)が行われた。 RGTへの患者登録が終了した後、6つの非無作為化第I/IIa相試験として、細胞療法群(CTG)の試験が7病院で実施された。これらの試験では、各病院で6つのCBMPのうち1つが投与され、患者データをプールして解析が行われた。バシリキシマブによる導入療法をCBMPで代替し、ミコフェノール酸モフェチルの漸減療法を可としたものを除き、患者選択や免疫抑制療法はRGTと同様だった。 6つのCBMPは、2つの多クローン性制御性T細胞(pTreg-1、pTreg-2)、2つのドナー抗原反応性Treg(darTreg-CSB、darTreg-sBC)、自家免疫寛容誘導性樹状細胞(ATDC)、制御性マクロファージ細胞(Mreg)であった。 主要エンドポイントは、移植後60週以内に生検で確定された急性拒絶反応(BCAR)とした。BCAR発生率:12% vs.16%、感染症はRGTで約6倍 130例が登録され、治療を受けた104例が解析に含まれた。RGTで治療を受けた66例の年齢中央値は47歳、73%が男性であった。6つのCTG試験で治療を受けた38例は、それぞれ45歳および71%だった。 RGTの標準的免疫療法を受けた移植患者における60週時のBCAR発生率は12%(8/66例)であり、予測範囲内(3.2~18.0%)であった。また、6つのCTG試験のBCAR率は16%(6/38例)で、これも予測の範囲内だった。また、初発BCARの重症度別(Banff分類スコア)の患者分布は、RGTとCTG試験で類似していた。 CBMPの投与を受けた患者38例のうち15例(40%)はミコフェノール酸モフェチルからの離脱に成功し、試験終了時にはタクロリムス単剤による維持療法に移行していた。これに対し、RGTの患者では、98%(60/61例)が2剤以上の免疫抑制薬の併用療法を続けていた。 CTG試験の有害事象の統合データおよびBCARエピソードからは、RGTと比較して安全性に関する懸念は示されなかった。 治療関連の重篤な有害事象の発生状況は、感染症を除き全般にRGTとCTG試験で類似していた。治療関連の重篤な感染症エピソードの発生率は、RGTがCTG試験の約6倍であった。また、すべての感染症の発生率もCTG試験で低く、このパターンは6つの試験で共通しており、腎移植後の観察期間全体を通じて一貫して認められた。 著者は、「免疫細胞療法は、一般的な免疫抑制薬の負担を最小化し、腎移植患者における有用な治療アプローチとなる可能性がある」としている。

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唾液によるPCR検査開始、対応可能な医療機関の要件は?/日本医師会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査検体として、6月2日、新たに唾液が保険適用された。これを受け、6月3日の日本医師会定例記者会見において、釜萢 敏常任理事が同時に発出・改訂された通知や検体採取マニュアルなどについて紹介し、今後幅広い医療機関で活用されるようになることに期待感を示した。「症状発症から9日以内」であれば、唾液を用いたPCR検査が可能 COVID-19と診断され自衛隊中央病院に入院した患者の凍結唾液検体(発症後14日以内に採取された88症例)の分析を行い、鼻咽頭ぬぐい液を用いたPCR検査結果との一致率を検証した厚生労働科学研究(研究代表:国際医療福祉大学成田病院・加藤 康幸氏)において、発症から9日以内の症例では、鼻咽頭ぬぐい液と唾液との結果に高い一致率が認められた1)。この結果を受け、厚生労働省では6月2日に、「症状発症から9日以内の者について、唾液を用いたPCR検査を可能とする」として、検査実施にかかるマニュアルの改定やPCR検査キットの一部変更承認・保険適用を実施した2)。 検査キットについては、鼻咽頭ぬぐい液によるPCR検査キットとして薬事承認されているものに加え、国立感染症研究所により同等の精度があると予備的に確認され現在使われている商品も対象(島津製作所やタカラバイオなど)。「これまで認められているすべてのキットについて、唾液検体を用いたPCR検査が可能になるという整理」と釜萢氏は説明した。唾液検体の採取のみを行う医療機関も? 要件を整理 同氏は、唾液検体のメリットとして、これまでの咽頭ぬぐい液を採取することに比べて感染リスクが少ないことを挙げた。また、PCR検査がこれまで広がらなかった原因として、感染防護具が不足していたことに加えて、検査をするに当たって、都道府県と医療機関が契約を締結しなければならなかったことがあるとし、「今回、その解決策として、都道府県医師会が間に入って、集合契約を結ぶことも可能となっているので、契約もしやすくなり、検査の実施数も増やすことができるのではないか」と述べた。また、すべての医療機関で一様に実施できるというものではないが、感染リスクを抑えられることから、より多くの医療機関で、唾液検体採取のみを担うといった役割も果たすことができるようになるのではないかと期待感を示した。 厚生労働省が2日に発出した通知では、感染症指定医療機関や感染症法に基づき患者が入院している医療機関以外の医療機関で、唾液検体採取を行う場合の要件を以下のようにまとめている3): 次のア~ウのすべてを満たすこと。ア 疑い例が新型コロナウイルス感染症以外の疾患の患者と接触しないよう、可能な限り動線を分けられている(少なくとも診察室は分けることが望ましい)こと。イ 必要な検査体制が確保されていること。ウ 医療従事者の十分な感染対策を行うなどの適切な感染対策が講じられていること。具体的には、以下のような要件を満たすことであり、詳細は、「新型コロナウイルス感染症が疑われる者等の診療に関する留意点について(その2)」(令和2年6月2日付け厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部事務連絡)4)を参照すること。・標準予防策に加えて、飛沫予防策及び接触予防策を実施すること。 ・採取された唾液検体を回収する際には、サージカルマスク及び手袋を着用すること。検体採取・輸送マニュアルも更新 国立感染症研究所ホームページ上で公開されている「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」も6月2日に更新版を公開5)。唾液検体の取り扱いについて追記されている。唾液検体採取時の留意点としては、下記のようにまとめられている: 唾液…滅菌容器(50mL遠沈管等)に1~2mL程度の唾液を患者に自己採取してもらう(5~10分間かけると1~2mL採取できる)。唾液は粘性が高いため検体取扱時のピペット操作が困難なことがある。その際、検査にあたっては、唾液に対して容量で1~3倍量(唾液により粘性が異なるので、適宜、容量を変更)のPBSを加えボルテックスミキサーおよび激しい転倒混和により懸濁し、遠心後、上清を用いて核酸抽出を行う。  釜萢氏は検体をすみやかに、安全に検査実施機関に搬送するためのシステム作りが急務とし、この問題についても早急に解決していきたいと話した。

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COVID-19に対するレムデシビルによる治療速報―米中のCOVID-19に対する治療薬・ワクチンの開発競争(解説:浦島充佳氏)-1238

 COVID-19に対して各国で治療薬・ワクチンの開発が進められている1)。エイズの治療薬であるカレトラは期待が持たれたが、ランダム化臨床試験でその効果を否定された2)。4月29日、レムデシビルは武漢のランダム化臨床試験で、明らかに治療薬群で有害事象による薬剤中止例が多く、途中で中止された。したがって十分な症例数ではないが、レムデシビル群の死亡率は14%、プラセボ群のそれは13%であり治療効果を確認することはできなかった3)。ところが同日、米国国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ博士は同じくランダム化臨床試験[NCT04280705]の結果、レムデシビルを投与された患者の回復期間の中央値は11日で、プラセボを投与された患者(15日)よりも31%短かったことにより、「レムデシビルには、回復までの期間を短縮させる効果がある」と発表した。通常、記者会見は論文が誌上で公表された直後に行われる。トップジャーナルでは、たとえば「○月○日の東部時間○時に誌上発表になる。それ以前よりメディアと打ち合わせして、ニュースをどのように構成するかを相談してもよいが、記者会見はそれ以降とすること」などと厳しく規定される。記者会見の場にはトランプ大統領も同席し、腕を組んでファウチ博士のことをにらみつけていたのが印象的であった。これを受けて米国はレムデシビルをCOVID-19の治療薬として認可し、日本政府も続いて承認手続きに入った。 しかしながら、この米国の臨床試験では、途中で研究計画上の変更が行われている。患者受け入れ期間を20日間延長し、研究対象の範囲も中~重症を酸素投与が不必要な軽症入院事例まで拡大し、対象人数も394人から1,063人に増やし、プラセボを途中から生理食塩水に変更し、効果判定項目も重症度の改善から酸素不要あるいは退院(在宅酸素を含む)に変更している。これは通常の治験あるいは臨床試験ではあり得ない変更だ。たとえば、プラセボが生理食塩水に切り替わったことにより、主治医は目の前の患者がレムデシビル群かプラセボ群かどちらに振り分けられたのかを知りえるかもしれない。主治医がレムデシビルに強い期待を持つことにより、意図的にレムデシビル群で早く酸素を中止したり、早めに退院を誘導し在宅酸素療法に切り替えたりする、逆に生理食塩水の群に含まれた患者で主治医がこの逆をすれば、本当はレムデシビルにCOVID-19患者の症状を改善する効果がないのに、「効果がある」という誤った結論を導く可能性がある。 この治験の詳細な結果は5月22日のNEJM誌に速報として掲載された。内容を精査すると、中等症から軽症の患者には有効であるが、人工呼吸器やECMO を使用するような重症例では効果を認めていない。今後のエビデンスに期待したいが、少なくとも現時点でレムデシビルは致死的COVID-19 に対して有効であるとはいえない。 これは私の考え過ぎかもしれないが、レムデシビルは米国の製薬会社、ギリアド社の開発した薬剤であり、中国はこれを否定し、米国がこれを是が非でも肯定したいという政府の思惑に見えてしまう。1)Borba MGS, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e208857.2)Cao B, et al. N Engl J Med. 2020;382:1787-1799.3)Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.

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第9回 黒人差別とアフターコロナの「マスク着用」励行は同罪か

今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題を眺め、かつ医療ジャーナリストとして記事を執筆していながら、とりわけ扱いが難しい、伝わりにくいと感じるテーマがある。それはマスク着用に関してだ。ご存じのようにマスク着用によるウイルス感染予防効果に関して、数少ない研究では予防できないとの結果がほとんどだ。有症状者やウイルスキャリアによる感染拡散を減らすという報告はある。つまるところ、マスクは第一義的に感染者が非感染者へと拡散させないための道具である。私も記事を執筆する際にはそのこととともにマスク着用以前に手洗いを徹底すべきと繰り返し記述してきた。ところが市中で見かけるマスク着用者はたぶんほとんどが感染を予防するためと考えているのではないだろうか?実は自分のfacebookのタイムラインでも時々このマスク問題が話題になることがある。そうなるとコメント欄はマスク着用を巡る賛否でやや荒れ模様となる。中にはそれなりに自分で情報をキャッチして「政府の専門家会議が推奨している」「自分がもしかして感染者だったらと考えて着用すべき」との声もある。新しい生活様式、論文や生活の優先順位を反映せずまず政府の新型コロナウイルス感染症専門家会議が提唱した「新しい生活様式」の実践例では確かに「感染防止の3つの基本」として(1)身体的距離の確保、(2)マスクの着用、(3)手洗い、とし、マスクについては「外出時、屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスクを着用」と記述している。しかし、この記述について個人的には相当異論がある。まず3つの基本の順番である。もしかしたら専門家会議、それを受けて内容を公表した官僚たちは、その辺は何も意識せずに並列で記述したのかもしれないが、一般人は素直に(1)から順に重要なことと受け取る。その意味では感染を予防するために(1)が最優先なのは異論がない。しかし、重要度が順番通りならば(2)と(3)は逆であるべきだ。過去の研究でもマスクが予防に有効とされた研究は手洗いの励行との併用の場合である。そもそも、マスクを着用すれば、必然的に顔を触る回数が増えるので手洗いの励行がなければ逆に感染の危険性は増す。実際、世界保健機関(WHO)のホームページでもマスクの着用に際しては、マスクを触る前後で手洗いを推奨している。日常に置き換えた場合、1日喋らない生活と1日手を使わない生活のどちらが難易度が高いかといえば後者なはず。よって、手を介した接触感染のリスクはどんな人でもそこそこ以上に高いはずである。また、「外出時、屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスクを着用」と記述もやや難ありだ。正確に文脈を読み解くことができる人ならば、これは「外出中に屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスクを着用」との意味であることは分かるはずだ。そうでないならば、自宅に一人でいる時もマスクをしなければならないことになる。実際、この記述の仕方では反射的に「外出時も屋内にいる時も会話の時も」と解釈する人もいる。そもそも、この新しい生活様式の実践例は、食事に際して「対面ではなく横並びで座ろう」「料理に集中、おしゃべりは控えめに」など衝撃的過ぎる大きなお世話な内容が満載されているので、そちらのほうが印象に残り、こうした微細な表現はスルーされがちだ。本来、屋外ではアーケード商店街などを除き、多くの人が自然とソーシャルディスタンスを取っており、この初夏の炎天下が始まった屋外で誰かと会話せずに歩行するならば、感染予防でのマスク着用はほぼ不要と考えられる。ところが今現在、爽快な青空の下、そこここで繰り広げられているのは、リチャード・プレストン著によるエボラ出血熱のドキュメント「ホット・ゾーン」のドラマ化の撮影シーンかと思うようなマスクマン大行進の光景である。一方、感染者の約8割が無症候・軽症で発症前に感染力のピークがあるこのウイルスの性質を考えれば、自分が感染者である前提でマスクを着用するという考え方は筋が通っているとも言える。しかし、この理論も今後の行く末を考えると、どうしても引っ掛かりを感じてしまう。こうした考えの人はおそらくCOVID-19に対するワクチンが上市され、多くの人がそれを接種完了した際にマスクなしの日常を送れると考えているだろう。しかし、私はこの考えはかなり見通しが甘いと思っている。マスク着用のマナー化を懸念する理由COVID-19の原因となっているSARS-CoV-2は変異しやすいRNAウイルスである。ワクチンが開発できたとしても、その効果は季節性インフルエンザワクチンのように、一定頻度は接種者でも感染が起こりうるものになる可能性はあるだろう。となると、他人に感染させないためにマスクを着用する理論に従えば、症状発症後に感染力のピークがあるインフルエンザとは異なるSARS-CoV-2の感染拡散を防止するため、ワクチン登場後も自宅外では生涯マスク着用の生活を強いられることになる。このように書くと、「揚げ足取り」と言われかねないかもしれないが、私が最も危惧するのは、マスク着用にリスクがある人が着用を強いられるような空気を懸念するからである。たとえば、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスでは、「2歳以下の幼児」「呼吸機能に問題がある人」「装着に介助が必要な人」はマスクをすべきではないと注意を促している。さらにマスク装着でソーシャルディスタンスの代用はできないとも強調している。また、これから暑くなる時期に心疾患患者などではマスク着用が逆にリスクとなる人もいるはずである。しかも、こうした人たちは外見では判断できない。ところがマスク着用を「マナー」化してしまうと、こうした人たちは無用な差別に晒されることになる。マスクだってタダではない。しかも、手洗いに要する石けんや水と違って比較的ごく当たり前に一般家庭にあるものではなく、今回多くの人が思い知ったように供給状態は不安定で、かつてと比べ価格は高騰している。低所得家計ではマスク購入が家計を圧迫するケースがあってもおかしくはない。実際、こうした空気が影響したのだろう。感覚過敏のためマスク着用ができない人向けの意思表示カードなるものまで登場した。いわゆるヘルプマークのようなもので、これが一定の効果を生むかもしれない。しかし、どんな疾患に罹患しているかは究極の個人情報であり、そのことを進んで公にしたい人はそう多くないはずだ。むしろ、こうした人たちに結果としてここまでさせた私たちのほうが恥じ入らねばならない。どう見てもマスクを着用していない人の中には、リスクのある人とは思えない人が混じっている、と考える人もいるだろう。だが、そうした人には次の問いに答えて欲しい。「ある部屋で財布がなくなりました。被害者を除き、2人がいます。1人が白人、もう1人は黒人です。さて犯人はどちらでしょう?」この問いに根拠もなく黒人と答える人が一定数いることこそが、今ニュースで話題になっているアメリカでのカオスを生み出す。そうである以上、リスクがあってマスクを着用できない人に、何の考えもなしにマスク着用しない人、リスクはなくとも考えがあって着用しない人という誤差範囲も含め、着用できない人と社会全体が考えて接する以外に解決方法はないように思える。今回この意思表示カードを目にし、私自身はやっぱり「蟷螂之斧(とうろうのおの)」だとしても、機会をとらえてマスクについて繰り返し言及していこうという意を新たにしている。

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COVID-19中等症、レムデシビル5日間投与で有意に改善/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズ (本社:米国・カリフォルニア州)は、2020 年 6 月 1 日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の中等症入院患者を対象としたレムデシビル(商品名:ベクルリー)の第III相試験(SIMPLE試験)の主要結果を発表。レムデシビル5日間投与群の臨床症状は標準治療単独群より有意に改善し、入院患者に対するレムデシビルの有用性が示されたことを明らかにした。 本試験は、COVID-19の診断が確定し、肺炎がみられるものの酸素飽和度の低下を認めない患者を標準治療に加えレムデシビル5日間もしくは10日間投与する群、標準治療群に1:1:1で割り付けた無作為非盲検試験。主要評価項目は、投与から11日目の臨床状態とし、退院から酸素補給の程度の増加、人工呼吸器の使用、死亡までを指標とする7段階スケールにて評価した。副次評価項目として、レムデシビルの各投与群と標準治療群の有害事象発現率を比較した。 その結果、11日目に臨床状態の改善がみられた患者の割合は、レムデシビル 5日間投与群で標準治療群より65%高く(オッズ比[OR]:1.65、95%信頼区間[CI]: 1.09~2.48、 p=0.017)、7段階スケールで1段階以上の改善がみられた患者の割合に有意差が認められた(p=0.026)。一方、レムデシビル10日間投与群の標準治療群に対する臨床改善はORで肯定的な傾向がみられたものの、有意差はなかった(OR:1.31 、95%CI:0.88~1.95、p=0.18)。 また、臨床状態が悪化した患者と死亡例の各割合は、標準治療群のほうがレムデシビル 5日間投与群および 10日間投与群より高値だったが、有意差は認められなかった。レムデシビルの忍容性は5日間および10日間投与群ともおおむね良好だった。レムデシビル5日間及び10日間投与群で発現率が5%以上であった有害事象は、悪心(5日間投与群:10%、10日間投与群:9%、標準治療群:3%)、下痢(同:5%、5%、7%)と頭痛(同:5%、5%、3%)だった。SIMPLE試験とは SIMPLE試験はレムデシビルを検討する2件の無作為化非盲検多施設共同第III相試験。米国、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本をはじめ180ヵ国の医療機関で実施された。1件目の試験は、重度のCOVID-19症状を呈する入院患者を対象に、レムデシビル5日間投与と10日間投与の安全性および有効性を評価。2件目の試験では、COVID-19症状を呈する中等症の入院患者を対象に、標準治療に加えてレムデシビルを5日間または10日間投与する群の安全性および有効性について、標準治療単独群と比較して評価したものである。なお、拡大フェーズを設け、1件目の試験は人工呼吸器使用例を含む5,600名を追加登録、2件目の試験では中等症例を最大1,000名追加登録する予定。

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COVID-19重症患者、レムデシビル投与5日vs.10日/NEJM

 人工呼吸器を必要としていない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者において、レムデシビル投与期間は5日間と10日間とで有意差は認められなかった。米国・ワシントン大学のJason D. Goldman氏らが、COVID-19重症患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験の結果を報告した。レムデシビルは、in vitroで強力な抗ウイルス活性を示し、COVID-19の動物モデルで有効性が示されたRNAポリメラーゼ阻害薬であるが、レムデシビルを用いた治療の効果のある最短投与期間を明らかにすることが、喫緊の医療ニーズであった。NEJM誌オンライン版2020年5月27日号掲載の報告。レムデシビルの投与期間5日と10日で有効性を比較 研究グループは、米国、イタリア、スペイン、ドイツ、香港、シンガポール、韓国および台湾の55施設にて本臨床試験を実施した。2020年3月6日~26日の期間に、PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認され、酸素非投与/投与下で酸素飽和度94%以下、画像で肺炎所見を認めた入院患者を登録。レムデシビル5日間静脈内投与(5日)群または10日間静脈内投与(10日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日目にレムデシビル200mg、その後は1日1回100mgを投与した。 主要評価項目は、投与開始14日時点における臨床状態(7段階評価 1:死亡、2:侵襲的機械換気またはECMO、3:非侵襲的機械換気または高流量酸素療法、4:低流量酸素療法、5:酸素投与は不要だが治療を継続、6:入院しているが酸素投与や治療は不要、7:退院)、副次評価項目は、レムデシビル最終投与後最長30日までの有害事象であった。レムデシビル投与期間の違いによる有効性に有意差なし 計402例が無作為化され、このうち397例でレムデシビル投与による治療が開始された(5日群200例、10日群197例)。治療期間中央値は、5日群が5日(四分位範囲:5~5)、10日群が9日(四分位範囲:5~10)であった。ベースラインの患者背景は、5日群に比べ10日群で段階評価が2(2% vs.5%)および3(24% vs.30%)の患者が多く、結果的に臨床状態が有意に悪かった(p=0.02)。 14日時点における臨床状態がベースラインから2段階以上改善していた患者の割合は、5日群64%、10日群54%であった。ベースラインの臨床状態を補正後、14日時点における各臨床状態の分布は5日群と10日群で類似していた(p=0.14、層別ウィルコクソン順位和検定)。 レムデシビル投与期間の違いによる有害事象の発現率は、全Gradeが5日群で70%(141/200例)、10日群で74%(145/197例)、Grade3以上がそれぞれ30%および43%で、重篤な有害事象はそれぞれ21%および35%、投与中止に至った有害事象は4%および10%に認められた。 主な有害事象は、悪心(10% vs.9%)、急性呼吸不全(6% vs.11%)、ALT増加(6% vs.8%)、便秘(6% vs.7%)などであった。

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「複合的減塩」のすすめ―まずは、カリウム代用塩の活用を!(解説:石上友章氏)-1237

 高血圧と食塩摂取との間には、緊密な関係が証明されており、高血圧の生活習慣指導の中心は「減塩」とされている。日本高血圧学会も、「減塩」に力を入れており、減塩サミット・適塩フォーラムといったイベントや、学会推奨の減塩食品の開発を行っている。したがって、公衆衛生的な取り組みが、高血圧ならびに、高血圧に起因する心血管病の制圧に有効とされている。英国では、国家的に食品(主にパン)中の食塩を減らすことで、血圧の低下、心血管イベントの抑制に成功している1)(CASH Project In UK、Consensus Action on Salt & Health:CASH)。中国では、パンに代わり、主要な食塩源が卓上塩であることから、卓上塩をカリウム代用塩に置き換えることで、同様の効果が期待できる。 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学、Matti Marklund氏らは、卓上塩をカリウム代用塩(25~67%の塩化カリウム含有)に置き換えることで、血圧ならびに、各種アウトカム(益のアウトカムである心血管イベントだけでなく、害のアウトカムであるCKD患者の高カリウム血症)へ与える効果を比較検討した。「comparative risk assessment model」を採用し、中国の既存のランダム化比較試験、大規模レジストリ研究のデータから計算した2)。その結果、卓上塩をカリウム代用塩に切り替えることで、心血管疾患死の約9分の1を予防できることが判明した。これは、年間にすると約46万1,000例(95%不確定区間[UI]:19万6,339~70万4,438)の心血管疾患死を防ぐと推定された。中国における、年間心血管疾患死の11.0%(95%UI:4.7~16.8%)、年間非致死的心血管イベント74万3,000例(95%UI:30万5,803~127万3,098)、心血管疾患に関連する障害調整生命年790万(95%UI:330万~1,290万)に相当する。一方で、慢性腎臓病(CKD)患者では、高カリウム血症関連死が推定1万1,000例(95%UI:6,422~1万6,562)増加すると推定された。 しかし、減塩一辺倒がよいかというと、そうではない。腎臓に生理的な異常がなければ、理論的に食塩摂取量は、食塩排泄量と一致するはずで、血圧の上昇は必発ではない。食塩摂取による、血圧上昇には、「食塩感受性」という病態があり、その機序の解明も進んでいる3-5)。したがって、「食塩感受性」の有無にかかわらず、一律の減塩により、すべての国民にメリットがあると言い切ることはできない。減塩と心血管イベントとの間に、Jカーブ現象があるとする研究成果も認められる6-8)。心血管イベントの抑制には、DASH食に代表される、「複合的減塩」にも、より効果があるとされている9)。参考文献1)Huang, L, et al. BMJ. 2020;368:m315.2)Marklund M, et al. BMJ. 2020;369:m824.3)Minegishi S, et al. Sci Rep. 2016;6:27137.4)Minegishi S, et al. Int J Mol Sci. 2017;18:1268.5)Kino T, et al. Int J Mol Sci. 2017;18;1250.6)O'Donnell M, et al. BMJ. 2019;364:l772.7)Stolarz-Skrzypek K. et al. JAMA 2011;305:1777-1785.8)O'Donnell MJ, et al. JAMA. 2011;306:2229-2238.9)Vollmer WM, et al. Ann Intern Med. 2001;135:1019-1028.

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第9回 コロナ禍で一転?日医会長選“にわか禅譲劇”の舞台裏

6月27日に投開票される日本医師会(日医)の会長選挙は、いずれも現職で5選を目指す横倉 義武氏(75歳)と、副会長の中川 俊男氏(68歳)との事実上の一騎打ちとなりそうだ。横倉氏は中川氏に禅譲の意向を伝えていたが、公示日の6月1日、一転して出馬を表明。同日記者会見した中川氏は横倉氏から「君に任せる」と2度言われたと主張、「びっくりした」とも述べた。大阪府医師会の内部対立も絡み、副会長選も混迷しそうで、日医内部に禍根を残すかもしれない。横倉氏は福岡県医師会会長、日医副会長を経て、2012年から日医会長を務め、17~18年は世界医師会会長に就任。安倍 晋三首相、麻生 太郎副総理兼財務相ら政権中枢に太いパイプを持ち、診療報酬改定では本体部分のプラス改定を勝ち取ってきた。横倉氏は2018年の会長選で4選を果たしたものの、副会長選以下の選挙で波乱が起きたこともあり、世界医師会会長就任を花道に4期で勇退するとみられていた。しかし、日医が“ポスト横倉”で弱体化することを見越した財務省が、外来の受診時定額負担の導入などの医療費抑制策に切り込んできたことから、危機感を抱いた横倉氏は昨年8月、地元の九州医師会連合会の会合で事実上の5選目出馬を表明していた。しかし今年に入り、収束の見通しのつかない新型コロナウイルス感染対策への疲れや、会長選で東京都医師会に次ぐ大票田である大阪府医師会の内部対立を反映した横倉退陣論の発信などを背景に、一時勇退を決意した。横倉氏が中川氏に会長職の禅譲を打診したことが、5月26日、中川氏の出身母体で顧問を務める北海道医師会の常任理事会で明らかになり、公になった。横倉氏は5月末、大手紙の取材に対して「新型コロナウイルス感染症への第2波に備えるためにも選挙戦を避けたい」と述べていたが、6月1日の記者会見では「引退も考えたが、この状況での交代とは何事かとお叱りを受けた」と説明している。出身母体の福岡県医師会に自らの引退と中川氏への禅譲を伝えに行くとの話もあったことから、逆に説得され出馬に転じたようだ。自らの行動が意に反した選挙戦を招く結果となったのは皮肉なことである。一方の中川氏は、札幌医科大学医学部卒業。北海道医師会常任理事、日医常任理事を経て、2006年から2期4年に渡り日医の常任理事、2010年から現在まで4期10年に渡り副会長を務めている。中央社会保険医療協議会(中医協)や社会保障審議会(社保審)の委員を務めたほか、日医では医療政策・医療保険・地域医療などを担当し、51の会内委員会の中でもとりわけ重要な「社会保険診療報酬検討委員会」で主導的な役割を担ってきた。事情通は、「この会は主要な学会や病院団体のトップも加わったクローズドな会で、ここでの中川氏の努力は光っていた」と話す。中川氏は2018年の会長選に出馬を模索したが、横倉氏が世界医師会会長に就いていたこともあり、断念した。しかし、今回の出馬に向けた根回しは水面下で続けていたようで、北海道医師会役員は「北海道はもとより、東北、北陸、東京を含めた関東、近畿、中国、四国、九州の多くの医師会が中川氏支持を決めている」と説明する。ただ、横倉氏の出馬表明で態度が揺らいでいるように見える医師会もある。中川氏の6月1日の東京選対事務所開きに東京都医師会から出席したのは、会長ではなく副会長だった。横倉氏と中川氏の違いについて、前述の役員は「横倉氏は政治家とのパイプが売りだったが、中川氏は政治家をあまり信用していない。それに、安倍政権の支持率が落ちている中、政権中枢とのパイプはPR点にならない」と話す。また、霞が関に対するスタンスは「財務省は敵、厚労省は味方」とよく言っているという。問題は大阪だ。横倉氏は大阪府医師会(府医)出身の松原 謙二・日医副会長の手腕を疑問視し、2018年の役員選ではクビのすげ替えを図ったが失敗。茂松 茂人・府医会長の日医副会長抜擢を念頭に、今年1月、府医の賀詞交換会に出席したが、反茂松派が反発。横倉退陣論を発信するようになったという。反茂松派の中心人物と目される伯井 俊明・元府医会長は、日医で府医出身の植松 治雄会長時代に常任理事を務め、松原氏の後見人的存在でもある。松原氏は5月から、日医副会長選を念頭に置いたと思われる医療制度改革案を日医代議員・予備代議員に複数回郵送しており、「副会長選には、府医から松原氏と茂松会長派の2人が出馬する可能性がある」と前述の事情通は予測する。くしくも、植松氏が当選した2004年の日医会長選には、北海道医師会参与で日医副会長だった青柳 俊氏も出馬したが、東京・大阪連合の前で涙をのんだ。今回、北海道勢は雪辱を果たせるか。コロナ禍がまだまだ油断ならない中、各地で「密」な選挙対策が練られていることだろう。

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COVID-19へのレムデシビル、国際共同治験の中間報告:国立国際医療研究センター

 国立国際医療研究センター(NCGM)は5月29日(金)、メディア勉強会を行い、これまでのCOVID-19に関する取り組みや現在行う治療、研究開発について発表した。このうち、NCGMセンター病院 国際感染症センター長の大曲 貴夫氏がレムデシビル(商品名:ベクルリー)のアダプティブCOVID-19治療治験(ACTT、国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験)について中間解析結果を発表した。 対象患者の主な選択基準は以下のとおり。・PCRまたはその他の検査法でSARS-CoV-2 感染が確定された入院患者・成人男性または妊娠していない成人女性・以下のいずれかが認められる患者(胸部X線撮影/CTスキャンなどによるX線撮影浸潤/臨床評価(検査時のラ音・断続性ラ音の所見)および室内空気でSpO2が94%以下/酸素補給が必要/機械換気が必要) 1,063例が登録され、無作為化後のデータが入手可能な1,059例が解析対象となった。対象患者は、レムデシビル群(538例)とプラセボ群(521例)に無作為に割り付けられた。アジア人は12.6%(134例)と少なく、白人が53.2%(565例)と最多だった。主要評価項目は、「酸素補給・治療の継続とも不要」な状態以上に回復するまでの時間だった。 主な結果は以下のとおり。・回復時間中央値はレムデシビル群11日(95%信頼区間[CI]:9~12)、プラセボ群15日(95%CI:13~19)と有意な差が見られた。・一方で、14日までの死亡率はレムデシビル群7.1%、プラセボ群で11.9%と有意差は見られなかった(死亡のハザード比0.70、95%CI:0.47~1.04)。・有害事象の発現率は、レムデシビル群114例(21.1%)、プラセボ群141例(27.0%)であった。・Lancetに掲載された中国における試験結果1)と同様の傾向が認められた。 ACTTは、レムデシビルによる回復時間短縮が確認されたことから盲検化を早期解除した。現在、データのチェックを行っており、最終報告、論文化の目処は未定としている。 さらに、JAK1/JAK2阻害薬バリシチニブをレムデシビルに併用する効果を見るACTT-2(多施設共同無作為化二重盲検比較試験)の登録を開始したことを発表。これは抗ウイルス薬のCOVID-19治療効果の可能性を認めつつも依然死亡率が高いことを受け、サイトカインおよびケモカイン作用の炎症性免疫応答を標的としたバリシチニブの併用によって、抗ウイルス薬だけでは得られない相乗効果を期待したものだ。必要患者数は1,032例、現在国内では患者数が減少傾向にあることから、試験終了までにはある程度時間がかかる見込みだという。(ケアネット 杉崎 真名)※本文中に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2020年6月4日11時)。

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COVID-19、レムデシビル投与で入院患者の回復期間短縮/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院し下気道感染が認められた患者の回復までの期間中央値について、プラセボ投与群15日に対してレムデシビル静脈内投与群は11日と、有意に短縮したことが速報として発表された。また、推定14日死亡率も、プラセボ群11.9%に対し、レムデシビル群7.1%だった。米国国立衛生研究所(NIH)のJohn H. Beigel氏らが、COVID-19で入院した1,000例超を対象に行った、プラセボ対照二重盲検無作為化比較試験の中間結果で、レムデシビルの有効性が示唆されたこの中間結果を受けて、同試験は早期に盲検が中止された。NEJM誌オンライン版2020年5月22日号掲載の報告。 レムデシビルを最長10日間投与 研究グループは、COVID-19で入院し下気道感染が認められた成人患者を対象に試験を行い、レムデシビル静脈内投与の有効性を検証した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはレムデシビル(1日目200mg、その後100mg/日を最長9日間)、もう一方にはプラセボを最長10日間投与した。 主要アウトカムは回復までの期間で、具体的には退院または感染予防目的のみによる入院継続までの期間とした。レムデシビルの回復に関する率比1.32 1,063例が無作為化を受けた。データ安全性モニタリング委員会は、回復までの期間がレムデシビル群で短縮したとする中間解析結果を受けて、早期の非盲検化を勧告した。 無作為化後にデータが得られた1,059例(レムデシビル群538例、プラセボ群521例)を対象にした中間解析の結果、回復までの期間中央値は、プラセボ群15日(95%信頼区間[CI]:13~19)に対し、レムデシビル群は11日(同:9~12)と有意に短かった(回復に関する率比:1.32、95%CI:1.12~1.55、p<0.001)。 Kaplan-Meier法で求めた推定14日死亡率は、プラセボ群11.9%に対し、レムデシビル群7.1%だった(死亡に関するハザード比:0.70、95%CI:0.47~1.04)。 重篤な有害事象の報告は、レムデシビル群114/541例(21.1%)、プラセボ群141/522例(27.0%)だった。

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第9回 「つぶれる前に助けてくれ!」 医療機関の叫びをどうとらえるか(後編)

一般の病院、診療所、保険薬局についても補助が決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。緊急事態宣言が解除されて初めての週末、久しぶりに東京近郊の代表的な低山、奥多摩に山歩きに行ってきました。青梅線の川井駅で降りて、赤杭尾根から川苔山、本仁田山を経て奥多摩駅というやや長いコース。途中、少人数のパーティとは何度もすれ違ったのですが、高齢者(60~70代)の大人数パーティにはまったく出会いませんでした。最近の山ではよく見かける高齢者パーティは大勢で電車に乗って目的地に向かいます。さらに、登りながら、休憩しながらのおしゃべりが絶えません。そんなことから、彼ら彼女たちの山登りはまだ自粛中なのかもしれません。さて、コロナ禍と医療機関経営について書いた前回の続きです。5月27日、新型コロナウイルス感染症に伴う追加経済対策を盛り込んだ2020年度第2次補正予算案が閣議決定されました。一般会計の歳出総額は31兆9,114億円に上ります。前回でも触れた医療関係団体の窮状訴えに対しては、数多くの施策が講じられることになりました。新型コロナと闘う医療機関への支援として3兆5,000万円を確保。そのうち、新型コロナ感染症緊急包括支援交付金として医療分1兆6,279億円(全額国費)が計上されています。主な具体的施策としては、コロナ患者を受入れる重点医療機関(コロナ専門病院、専門病棟等)に対し、患者を受入れていない病床について「空床確保料」が支払われます。これまでは、入院病床には診療報酬収入(従来の3倍)が入っていましたが、空き病床の収入は当然ながらゼロでした。重点医療機関に向けには、超音波診断装置や血液浄化装置、生体情報モニターなど、高度医療向け設備の整備にも支援交付金が出されます。重点医療機関以外の一般の病院、診療所、保険薬局、訪問看護ステーション、助産所についても補助が決まりました。それぞれの役割や機能に応じた医療を地域に提供するため、感染拡大防止対策などに要する費用に対する補助、という名目です。院内の消毒や待合室の分離、動線の確保やレイアウトの変更、電話等情報通信機器を用いた診療体制の確保などの費用が想定されています。補助額は、病院の場合、200万円に1病床あたり5万円を乗じた実費を上限に補助。同様に有床診療所は200万円、無床診療所は100万円、薬局、訪問看護ステーション、助産所は70万円をそれぞれ上限に必要な費用が設定されるとのことです。新型コロナウイルス感染症の診療等にあたった医療従事者には慰労金も支払われますから、一般の店舗や事業所に対する支援と比べても厚遇と言えます。さすがに、診療報酬の基本診療料まで手は付けられませんでしたが、日本医師会の横倉 義武会長は第2次補正予算に対し「日医が主張してきたことがほぼ反映された」と評価しつつ、「4月、5月のレセプト状況を見た上で、必要に応じて診療報酬上のさらなる対応を求めたい」と記者会見で述べ、将来的には単価の引き上げを検討すべきとの見解も示しています。基本診療料アップは“新しい生活様式”を無視した考え方さて、「コロナ禍で医業収入が減った分は補填してもらわないと」という考え方は果たして100%妥当なのでしょうか。例えば、これまで軽い風邪や、胃腸障害、花粉症などで近所の医療機関にかかっていた人が、医療機関は感染の危険があるのでOTCを飲んだり、あるいは自宅静養したりして自分で治した(あるいは自然に治った)場合、単純に「コロナで患者が減った」と言ってしまっていいのでしょうか。また、近隣の診療所が閉まってしまい、渋々、医療機関にかからずにいたら治ってしまったという人も少なくないと思われます。今回のコロナ禍が、図らずも、あるカテゴリーの病気は医療機関にかからなくても治せるもの(治るもの)という意識を一定数の国民に植え付けたとしたら、その分、今後も医療機関の受診は減るはずです。また、マスクと手洗いの定着は、インフルエンザや風邪などの感染症の患者も減らすことでしょう。2022年診療報酬改定に向けての議論も始まっているようですが、働き方が在宅勤務にシフトしていくように、ポスト・コロナ時代の患者の受療行動が、セルフメディケーションやオンライン診療といった新しいタイプの医療に多少なりともシフトするとしたら、それを勘案した診療報酬のあり方を考えるべきでしょう。単純に「患者が減ったから基本診療料を上げろ」というのは、“新しい生活様式”を無視した古い考え方のように思えますが、皆さんはどう見るでしょう。先週半ば、日本医師会の横倉会長は6月の任期満了に伴う役員選挙に立候補せずに退任し、現副会長の中川 俊男氏に禅譲する、との報道がありました。しかし、蓋を開けてみると6月1日に横倉会長は5期目に向け立候補を表明し、同じく立候補を表明した中川氏と選挙戦を戦うことになりました。この数日間に日本医師会、官邸、厚労省、医療関係団体の中でどんな駆け引きが行われたかわかりませんが、中川氏(中医協委員の頃は医師第一の視点からいつも厳しい発言をしておられました)ではなく、横倉会長の続投を願う何らかの大きな力が働いたのでしょう。このコロナ禍の真っ只中、医師の職能団体が敢えて会長選に突入するのは「ご苦労様」としか言いようがありませんが、“新しい生活様式”“新しい受療行動”を十分に理解できるリーダーに、これからの日本の医療を引っ張っていってもらいたいものです。

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新型コロナ患者の退院基準、2回の陰性確認が不要に/厚労省

 5月29日、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法)における新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(一部改正)」において、退院に関する基準の改正通知が発出された。原則、発症日から14日、症状軽快後72時間経過で退院基準を満たす 改正後の通知で、感染症法第22条の「症状が消失したこと」とは、原則として次の(1)に該当する場合とされる。ただし、次(2)に該当する場合も差し支えない。(1)発症日から14日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合(2)発症日から10日経過以前に症状軽快した場合に、症状軽快後24時間経過した後に核酸増幅法(PCR)検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した24時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合 また、無症状病原体保有者については、発症日から14日間経過した場合に、退院の基準を満たすものとされる。 「発症日」とは、患者が症状を呈し始めた日とし、無症状病原体保有者または発症日が明らかでない場合については、陽性確定に係る検体採取日とする。「症状軽快」とは、解熱剤を使用せずに解熱し、かつ、呼吸器症状が改善傾向にあること。 上記(2)のPCR検査で陽性が確認された場合でも、(1)に該当した場合は(1)と同様の扱いになる。それ以外の例では、24時間後にPCR検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した24時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認されるまで、PCR検査を繰り返すものとする。 なお、患者が再度症状を呈した場合や無症状病原体保有者が新たに症状を呈した場合は、症状軽快後に上記に該当するまで退院の基準を満たさないものとされる。退院基準改正で、症状軽快者による病床数の圧迫は解消となるか これまで、新型コロナウイルス感染症の入院患者は、PCR検査で2回陰性にならないと退院できないため、陰性が出るまで何回も検査を繰り返し、その結果ベッドが空かず、新規入院を受け入れられないような状況が問題視されることもあった。今回の改正は、そういった状況の解消を見込んだものと考えられる。 なお、通知以前に新型コロナウイルス感染症または無症状病原体保有者として入院している患者で、本通知による改正前の退院の取り扱いに基づき検体採取などを行っている場合については、従前のとおり取り扱って差し支えないものとされる。

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JAK1を強く阻害する関節リウマチ治療薬「リンヴォック錠7.5mg/15mg」【下平博士のDIノート】第51回

JAK1を強く阻害する関節リウマチ治療薬「リンヴォック錠7.5mg/15mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ウパダシチニブ水和物(商品名:リンヴォック錠7.5mg/15mg、製造販売元:アッヴィ合同会社)」を紹介します。本剤は、中等度から重度の関節リウマチ患者において、メトトレキサート(MTX)などとの併用の有無にかかわらず、1日1回の投与で臨床的寛解を達成することが期待されています。<効能・効果>本剤は既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2020年1月23日に承認され、4月24日に発売されました。なお、2021年5月に「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」、同年8月に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」の効能・効果が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与します。なお、患者の状態に応じて7.5mgを1日1回投与することもできます。免疫抑制作用の増強により感染症リスクの増加が予想されるので、本剤とほかのJAK阻害薬や生物学的製剤、タクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビンなどの免疫抑制薬(局所製剤以外)との併用はできません。<安全性>関節リウマチ患者を対象とした本剤のプラセボ対照第III相試験において、本剤が投与された1,035例中275例(26.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、悪心23例(2.2%)、上気道感染、頭痛、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加各19例(1.8%)、血中クレアチンホスホキナーゼ増加17例(1.6%)、気管支炎16例(1.5%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、肺炎(0.1%未満)、帯状疱疹(0.7%)、結核(頻度不明)などの重篤な感染症(日和見感染症を含む)、消化管穿孔(頻度不明)、好中球減少(1.4%)、リンパ球減少(0.8%)、ヘモグロビン減少(貧血:0.7%)、ALT上昇(1.8%)、AST上昇(1.4%)、間質性肺炎(頻度不明)および静脈血栓塞栓症(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬はJAKという酵素を強く阻害することで、関節リウマチの症状を改善します。2.薬の成分が少しずつ出るようにコーティングされているので、かみ砕かないでください。3.本剤の服用を長期間続けると、免疫力が低下する可能性があります。持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感、水疱、痛みを伴う皮疹などが現れた場合は、すぐにご連絡ください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および最終服用後一定の期間は、適切な避妊を行ってください。なお、国内治験においては、最終投与から30日まで避妊を行うよう定められていました。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。通常、発症初期はMTXをはじめとする従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)が使用されますが、十分量用いても効果が不十分な場合には、生物学的製剤、もしくは本剤のようなJAK阻害薬が選択されます。本剤は、関節リウマチに適応を持つ4番目のJAK阻害薬です。JAKには4種類のサブタイプ(JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2)があり、本剤は炎症性サイトカインシグナルの伝達においてとくに重要な役割を持つJAK1を強く阻害することで、TNFαやIL-6の働きを遮断し、炎症性サイトカインの産生を抑制すると考えられています。本剤は、MTXで効果不十分な関節リウマチ患者を対象とした第III相無作為化二重盲検比較試験で、12週時のACR50改善率、患者による疼痛評価およびHAQ-DIのベースラインからの変化量において、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)に対する優越性が示されました。また、ウパダシチニブ+MTX群では、プラセボ+MTX群およびアダリムマブ+MTX群と比較して、有意に高い臨床的寛解達成率が示されました。安全性に関する留意事項としては、警告欄で結核、肺炎などの重篤な感染症について注意喚起されています。また、トファシチニブ(同:ゼルヤンツ)、ペフィシチニブ(同:スマイラフ)と同様に、重度の肝機能障害患者には禁忌となっています。本剤は徐放性フィルムコーティング錠であり、調剤時に半割・粉砕することはできません。患者に対しても、割ったりかみ砕いたりしないように伝えましょう。※2022年3月、添付文書の改訂情報を基に一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA添付文書 リンヴォック錠7.5mg/リンヴォック錠15mg

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第10回 COVID-19へのヒドロキシクロロキン、決着を付ける無作為化試験は計画通り続行

抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者死亡率上昇の関連を示した5月22日のLancet誌掲載の観察試験1)は発表後すぐに疑問視され始め2)、この週末の日曜日5月28日にはとうとう世界の専門家120人以上3)がその方法やデータを懸念する公開書簡の通知に踏み切りました。幸い、英国で進行中の無作為化試験(RECOVERY)はこれまでのデータを検討したところMehra氏等によるLancet報告の結果とは異なっており、安全性懸念による患者組み入れ停止の必要はないとして計画通り続行されています4)。対照的に、世界保健機関(WHO)はRECOVERYと同様の無作為化試験(Solidarity)のヒドロキシクロロキン投与群被験者組み入れをいったん停止しました5)。Mehra氏等によるLancet掲載の試験は臨床研究の絶対的な拠り所である無作為化試験(RCT)ではなく観察試験であるとはいえ、患者数が約9万6,000人と多数であることなどを、WHOは重く見たのです。WHOは検討の後にヒドロキシクロロキン群の今後の扱いを来週頃までに決める予定です。一方、英国のRECOVERY試験運営者の対応は息を呑むほど素早く、22日のLancet報告から24時間と経たない翌日23日に急遽データが検討され、明くる日の24日には患者組み入れ続行が試験担当医師に通知されています6)。RECOVERY試験のヒドロキシクロロキンと死亡率の関連はMehra氏等のLancet報告に似つかず、ヒドロキシクロロキン群の被験者組み入れ停止を要するような安全性懸念はないと判断されました。英国医薬品庁(MHRA)もその判断に同意しています。多数の専門家が声を上げたことが示すようにMehra氏等のLancet報告に対する疑問点は多く、たとえばどういうわけか世界のどこでも肥満率や喫煙率がほぼ同じです7)。また、人工知能(AI)技術・機械学習や統計の標準的な手法を守っておらず、倫理レビューがなされていません。データを提供した国や病院の説明が不足しています。データ提供への謝辞もありません3)。残念ながらそれら数々の疑問を調べる手立てはありません。Natureのニュース7)によると試験の原資料は占有物となっており、データやプログラムが公表されていないため、他の研究者が手に入れて検証することが今のところ不可能です。データを提供した国や病院を開示することを著者は拒否しています。ただし、それらデータを所有している米国ミシガン州のSurgisphere社は29日のニュース8)で情報提供に向けて準備を進めていると言っており、その説明が本当なら喜ばしいことに他の研究者による検証はやがて可能になるでしょう。それにしてもMehra氏の報告はWHOも言及しているように被験者数が多く、一流誌とみなされているLancetに掲載されたことも手伝ってか影響が大きく、低用量ヒドロキシクロロキンによるCOVID-19予防を検討しているオックスフォード大学主催の国際試験COPCOVも被験者組み入れ停止に追い込まれています9)。これまでの観察試験ですでに旗色が軒並み悪いヒドロキシクロロキンが、Mehra氏等のLancet報告でいよいよ無作為化試験停止を強いられるほど窮地に立たされているのです。しかしそのように無作為化試験を停止に追いやっているMehra氏等のLancet報告で、皮肉にも無作為化試験なしでは何も決まらないと結論されているように、ヒドロキシクロロキンや別のマラリア薬クロロキンによるCOVID-19治療の益害の決着を付けるには同氏等のLancet報告のような観察試験ではなく、無作為化試験が必要です。試験続行を早々に決めたRECOVERY試験の運営者もそれはよく分かっています。RECOVERYはヒドロキシクロロキンやその他のCOVID-19薬候補の世界最大の無作為化試験であり、その被験者組み入れを継続することこそ確かな結論を導く最善手だと、同試験を率いるオックスフォード大学教授の2人・Peter Horby氏とMartin Landray氏は言っています4)。参考1)Mehra MR, et al. Lancet. May 22, 2020. [Epub ahead of print]2)Disputed Hydroxychloroquine Study Brings Scrutiny to Surgisphere3)Concerns regarding the statistical analysis and data integrity4)Recruitment to the RECOVERY trial continues as planned5)WHO Halts Hydroxychloroquine Trial Over Safety Concerns6)Recruitment to the RECOVERY trial (including the Hydroxychloroquine arm) REMAINS OPEN7)Safety fears over hyped drug hydroxychloroquine spark global confusion8)Response to Widespread Reaction to Recent Lancet Article on Hydroxychloroquine9)COPCOV study paused

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ヒドロキシクロロキンで新型コロナ陰性化せず、有害事象は3割/BMJ

 主に軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)を併用しても、標準治療単独に比べ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の陰性化の割合に差はなく、ウイルス除去効果は改善されないことが、中国・上海交通大学医学院のWei Tang氏らの検討で示された。また、HCQ併用で有害事象の発生率も増加した。研究の成果は、BMJ誌2020年5月14日号に掲載された。HCQは、COVID-19の治療薬としてin vitro研究や臨床試験で有望なデータが得られているが、その効果は十分に明確化されていないにもかかわらず、中国のガイドラインでは適応外使用が推奨されているという。また、HCQは、世界的に注目を集めたこともあり、その負の側面が目立たなくなっているが、マラリアやリウマチ性疾患の治療では、網膜症や消化器・心臓への副作用が報告されている。 本研究は、中国の16ヵ所の指定COVID-19治療センターが参加した非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年2月11日~29日の期間に実施された(中国Emergent Projects of National Science and Technologyなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、上気道または下気道の検体を用いたリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)で確定されたCOVID-19入院患者であった。登録時の胸部CTによる肺炎所見は必須ではなかった。 被験者は、HCQ+標準治療または標準治療単独を受ける群に、無作為に割り付けられた。HCQは、負荷投与量1,200mg/日を3日間投与後、維持投与量800mg/日を連日投与した。治療期間は、軽症~中等症患者は2週間で、重症患者は3週間とされた。 主要アウトカムは、28日以内のSARS-CoV-2の陰性化とし、intention to treat解析を行った。陰性化の定義は、24時間以上間隔を置いた2回の検査でSARS-CoV-2が連続して陰性で、試験終了までに陽性の報告がない場合とした。150例を登録、99%が軽症~中等症 150例が登録され、HCQ併用群に75例、標準治療単独群にも75例が割り付けられた。全体の平均年齢は46.1(SD 14.7)歳で、82例(55%)が男性であった。148例(99%)は軽症~中等症で、重症例が2例含まれた。 症状発現から無作為割り付けまでの平均期間は16.6(SD 10.5、範囲:3~41)日であった。無作為割り付け前に90例(60%)が併用薬物療法を受けており、52例(35%)には抗ウイルス薬が投与され、32例(21%)は抗HIV薬ロピナビル・リトナビルの投与を受けていた。割り付け後の抗ウイルス薬や抗菌薬の投与状況は、両群でほぼ同様であった。 2020年3月14日(データカットオフ日)の時点で、追跡期間中央値は、HCQ併用群が20日(IQR:3~31)、標準治療単独群は21日(2~33)であった。HCQ併用群のうち6例がHCQの投与を受けなかった。HCQ併用群の中等症の1例が、重症COVID-19に進行した。死亡例はなかった。28日陰性化割合:85.4% vs.81.3% 28日以内に、109例(73%、HCQ併用群53例、標準治療単独群56例)でSARS-CoV-2が陰性化した。残りの41例(27%、22例、19例)は、ウイルスの陰性化が達成されなったため打ち切りとした。カットオフ日の時点で、最長SARS-CoV-2陽性期間は23日だった。 28日陰性化割合は、HCQ併用群が85.4%(95%信頼区間[CI]:73.8~93.8)、標準治療単独群は81.3%(71.2~89.6)とほぼ同様であり、群間差は4.1%(95%CI:-10.3~18.5)であった。陰性化までの期間中央値も、HCQ併用群が8日(5~10)、標準治療単独群は7日(5~8)と、ほぼ同様だった(ハザード比[HR]:0.85、95%CI:0.58~1.23、p=0.34[log rank検定])。 4、7、10、14、21日時の陰性化割合にも両群間に差はなかった。また、28日時の症状軽減例の割合(HCQ併用群59.9% vs.標準治療単独群66.6%、群間差:-6.6%、95%CI:-41.3~28.0)および臨床症状軽減までの期間中央値(19日vs.21日、HR:1.01、95%CI:0.59~1.74、p=0.97[log rank検定])も、両群間に差を認めなかった。有害事象は30%、重篤2例、下痢10% 安全性の評価は、HCQ投与群(70例)と非投与群(80例)で行った(HCQ併用群のうちHCQの投与を受けなかった6例を非投与群、標準治療単独群のうちHCQの投与を受けた1例を投与群に含めた)。HCQ投与群のHCQ投与期間中央値は14日(範囲:1~22)だった。 有害事象は、HCQ投与群が21例(30%)、非投与群は7例(9%)で認められた。HCQ投与群は重篤な有害事象が2例(病勢進行、上気道感染症)で発現したが、非投与群では発現しなかった。 非重篤有害事象のうち、HCQ投与群で最も頻度が高かったのは下痢(7例、10%)であり、非投与群では下痢の報告はなかった。HCQ投与群で、霧視のため1例が投与を中止し、口渇を訴えた1例では減量が行われたが、いずれも一過性の有害事象であり、症状は1~2日で消散した。 著者は、「今回の研究は、COVID-19の治療におけるヒドロキシクロロキンのベネフィット・リスク評価に関する初期のエビデンスをもたらし、今後の研究を支援するリソースとして役立つ可能性がある」としている。

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第9回 5月分診療報酬などの一部概算前払い、6月5日が申請期限

<先週の動き>1.5月分診療報酬などの一部概算前払い、6月5日が申請期限2.日本医師会・横倉会長が5選を目指して同会長選挙出馬へ3.コロナウイルス感染で、地域医療構想は見直しとなる見込み4.厚労省が臨時サイト開設、コロナ対策で不足する医療人材確保を支援5.「希望出生率1.8」の明記、子育て支援が一段と打ち出される1.5月分診療報酬などの一部概算前払い、6月5日が申請期限5月27日、第2次補正予算案の閣議決定を受け、医療機関の資金繰り対策として、5月診療分診療報酬などの一部概算前払いの措置が取られることとなった。6月下旬の診療報酬など支払い時に、4月診療分に加えて、5月診療分が概算前払いされる。その分は、7月下旬における本来の5月診療分診療報酬などの支払時に減額調整される。今回の措置は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、受診抑制のために資金繰りが厳しくなっている医療機関などを支援するために臨時で行われる。前払いを希望する医療機関は、【6月5日(金)】までに、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険連合会の両方に、オンライン、または郵送での申請(6月5日必着)を行うことが必要となる。(参考)令和2年5月診療分診療報酬等の一部概算前払について(厚労省)2.日本医師会・横倉会長が5選を目指して同会長選挙出馬へ日本医師会の横倉 義武会長は、6月27日に予定されている同会長選挙に5選を目指して立候補する意向を固めた。2012年から4期8年を務めており、この春には勇退するという報道もあったが、「新型コロナウイルス対策で引き続き政府と連携していく考え」などとあらためて報じられた。現執行部の中川 俊男副会長が会長選の出馬準備を進めており、事実上の一騎討ち選挙となる見込み。(参考)日本医師会の横倉会長、5選目指す 安倍首相らとパイプ(朝日新聞)3.コロナウイルス感染で、地域医療構想は見直しとなる見込み5月26日、日本医師会の横倉会長は、緊急事態宣言の全面解除を受け、厚生労働省が進めている「地域医療構想」について、「二次医療圏ごとに感染症病床を一定数確保することが必要」とする意見を緊急記者会見で述べた。これまで人口減少時代を見据えた病床削減が進めてきた地域医療構想は、経営・経済効率などが中心であり、感染症対策などが計画に入っていなかったことを見直す形になると考えられる。翌日27日には、地域医療構想のスケジュールは、7月に予定されている「骨太の方針2020」において提示される見込みであることが、定例記者会見で明らかにされた。医療計画の一部である地域医療構想に新興感染症への備えが不足しており、これらを見直すことを厚労省医政局地域医療計画課に提案しているという。(参考)緊急事態宣言の解除を受けて(日本医師会)第二次補正予算の取りまとめを受けて」(同)4.厚労省が臨時サイト開設、コロナ対策で不足する医療人材確保を支援厚生労働省は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療現場での人手不足に対応して、人材募集する医療機関や保健所と、医師・看護師らの求職者をマッチングさせる求人サイトを6月上旬にも新設する。収束するまでの臨時的な対応として、利用する医療機関に手数料などは発生しない。厚労省が開設するのは、「医療のお仕事Key-Net」。各医療機関・保健所などにおける募集情報は、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて調査され、医療機関や保健所設置自治体などから随時収集する。募集の対象となる職種は、医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、薬剤師、救急救命士および事務職。(参考)厚生労働省に開設するWebサイト「医療のお仕事Key-Net」等を通じて行う医療人材等の緊急的な確保を促進するための取組(緊急医療人材等確保促進プラン)の実施に向けた準備について(厚労省 事務連絡 令和2年5月27日)5.「希望出生率1.8」の明記、子育て支援が一段と打ち出される新たな「少子化社会対策大綱」が5月29日に閣議決定された。わが国では2003年に少子化社会対策基本法を施行しており、少子化社会対策大綱は2004年に初めて策定され、5年ごとに見直してきた。2018年の出生数は91万8,400人、昨年(2019年)は86万4,000人(推定)と、前年に比べ5万人以上の減少によって、今後の総合的かつ長期的な少子化に対処するための具体的な施策の指針として取りまとめが急がれていた。少子化の進行は、日本の社会経済に影響を与えるため、若い世代が家庭を持ち、子供を育てることに希望が持てるよう、経済的な環境整備に重点を置く。今回、子供が欲しい人の希望が叶った場合に見込める出生率「希望出生率1.8」という数値目標が初めて明記され、これの達成のために、出産や子育て支援策が打ち出される見込み。(参考)少子化社会対策大綱(内閣府)第4次少子化社会対策大綱の策定に向けた提言(令和元年12月23日)

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心不全で突然死はどのくらい起こるのか?(解説:香坂俊氏)-1234

天気予報の精度が年々上がってきていることに皆さんはお気付きだろうか? とくにこの数年その進歩は著しく、翌日の天気であればほぼ時間単位での予測が可能になっている。これは実は「アルゴリズムの勝利」とも言うべきものであり、これまで集積されてきた情報をデータ化し、そこにAIを用いた数理モデルを駆使して予測を立てることができるようになってから飛躍的に進歩した分野なのである。そして、心不全の領域においても、そのイベントの発生の予測はだいぶできるようになってきた。これも天気予報と同様に数理モデルを応用して、危険因子をはじき出し、個々の患者さんの状況に当てはめるというやり方が成果を出しつつある(米国のフラミンガムリスクスコアや日本の吹田スコアなどはその好例だ)。現在「心不全領域での予測」ということに関して最後に残されているのが突然死の予測ではないだろうか? 心不全の突然死は実は若年者に多く、しかも従来からの概念からすると「比較的健康」とされる方々に多く観察される(起こる割合は低いのだが、何しろ母集団が大きいので絶対数は非常に多くなる)。今回のEU-CERT-ICD研究の解析では、周期性再分極動態(periodic repolarisation dynamics:PRD)がICD作動の予測に有用であることが示された。PRDは24時間ホルターで計測可能な項目であり、この値が低いと、ICDは生存利益がないか、ほとんどなかったが、高くなるに従ってICDの生存利益は持続的に増加した。上記の研究は、突然死の予測に関して久しぶりに朗報をもたらしたものである。ここ20年ほど、ICDが広く用いられるようになってきたものの、その価値は一部のサブグループに限定される可能性が次々と発表されてきた(※)。また、約4人に1人が10年以内にデバイス感染症や不適切なショック(inappropriate shock)などの深刻な合併症を経験するという。そうした観点から、今後PRDなどの電気生理学的な指標を予測モデルに組み込んでいくことは、患者さん側の負担を下げることにつながるものと期待される。※ICDの適応に関しては、従来、左室収縮能(LVEF)と症状の程度(NYHA分類)の2項目だけで判断されてきた。そこに近年、米国ワシントン大学のDr. Levyらにより、統計的に突然死のリスク予測を行うSeattle Proportional Risk Model(SPRM)が開発された(Shadman R, et al. Heart Rhythm. 2015;12:2069-2077.)。心不全患者の年齢/性別、BMI、LVEF、NYHA分類、血液検査所見などの10項目を入力することで、全死亡の中での突然死の確率が算出され、欧米では高い精度での突然死予測能が得られていた。日本でもこのSPRMの適合度は検証されており(C統計量=0.63)、突然死予測に使用できることが示されている(Fukuoka R, et al. Europace. 2020;22:588-597.)。本稿をまとめるに当たっては、当科所属の福岡良磨先生より貴重な示唆をいただいた。この場を借りて感謝させていただきたい。

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コロナ感染流行に一服、診療所医師の懸念はどう変化?~連続アンケート結果

 ケアネットでは、2020年4月第2週から週次で、病床を有していない診療所で勤務する会員医師を対象に「直近1週間のCOVID-19疑い例の診療状況」についてアンケートを行っている。調査対象地域は関東(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋(愛知県)、関西(京都府、大阪府、兵庫県)、福岡(福岡県)の4エリア、現在は第7回分まで、50日間の経過を掲載中だ。 毎回750~900人の医師から回答が集まり、エリアごとに多少の差はあるものの、全体で見ると4月第3週(調査対象期間:4月9~15日)をピークに、疑い例の平均患者数は50日間で半分近くまで減り(4月第3週:2.77人→5月第3週1.14人)、PCR検査で陽性となった平均患者数も半減した(4月第3週:0.12人→5月第3週0.06人)。また、PCR検査の照会から実際に検査実施した割合は4月第3週の21.7%だったものが5月第2週には31.4%と10ポイント近く上昇し、検査態勢に余裕が出てきたことが伺われる。 アンケートでは、自由回答で「現状の診療所における新型コロナウイルス感染症診療に関する問題点や今後の懸念、要望」についても聞いた。週次で集まった自由記述の回答からは診療所の現場の変化も見て取れる。 「PCR検査」の文字を含む回答が最も多かったのは4月第3週で62人が記述していた。以後、60→47→47→24→29人と5月第2週の時点で大きく減少しており、検査態勢が改善したことを伺わせる。記述内容にも変化があり、4月第2週時点では「保健所の対応が一番問題。PCR検査が遅すぎて、陽性と出た時点で挿管となってしまった」「保健所に電話し、指定の病院へ紹介しましたが、検査して頂けませんでした」といった、検査の遅さや検査適応基準を懸念する声が多数を占めていた。これが5月第2週以降になると「さすがにPCR検査適応のラインが厳しすぎていた気がする。保健所が一括して対応していたのも限界であったと思う」といった初期対応を振り返る声や、「唾液PCRが妥当かどうか早く知りたい」という新たな検査手法に関心を寄せる声に代わりつつある。 備品不足も大きな方向では解消に向かいつつあるようだ。自由回答内に「防護服」「PPE」「マスク」「フェイスガード(シールド)」の文字を含んだ記述(重複あり)が最多だったのは4月第3週。それが翌週の4月第4週には半減し、5月第2週には3分の1にまで減った。 一方で、週数が経過するにつれて増えてきたのが診療所の経営に関する不安の声だ。5月に入ってから「外来患者が減少し、経営が悪化する」「患者数が普段よりかなり減少し、収益が下がっています」「患者数が右肩下がり。4月は前年度比50%、5月は45%と減少が止まらない」といった回答が見られるようになった。 アンケート開始直後から多かったのが、感染症外来・発熱外来の設置要望だ。「PPEやN95マスクなどの資源を集中させて、発熱外来を作って運営することが必要」「防護服が少ないのですべての診療所では対応できず、発熱患者は地域ごとに発熱外来を設置して、集約して対応する必要がある」との声が5月に入ってからも依然多く寄せられている。「診療所での対応には限界がある。感染症指定病院や発熱外来をしている医療機関の情報がない。PPEなども手に入らない中でどうしろというのか」と悲鳴に近い声も上がる。 とはいえ、疑い数、患者数ともに減少傾向にあることは診療の最前線にいる回答者の実感と一致しているようで、5月第2週以降には「関西は収束傾向」「かなり数は減ってきている印象」といった記述が見られるようになった。 今後については「第2波の襲来の恐れが常にあり慎重を要する」「緊急事態宣言が解除されると患者が増加するのではないか」「学校再開による感染拡大が心配」「現在一旦終息しており、今後第2波が来たときにどのように対応するかを整備する必要あり」といった、警戒と体制整備を継続する、という声が目立っている。 アンケートの詳細については、以下のページに掲載中。COVID-19疑い例の診療状況とPCR検査の実施率について-会員医師アンケート

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