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強迫症併存の双極症I型に対するLAI抗精神病薬補助療法の有用性

 双極症と強迫症は、併存することが多く、このような場合の治療には、大きな課題がある。双極症における強迫症の併存は、自殺リスクの増加や機能障害などの重篤な臨床的特徴と関連している。強迫症には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が有効であるが、双極症の躁症状への転換リスクを増加させる可能性がある。アリピプラゾール月1回製剤やパリペリドン月1回製剤などの長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用は、双極症治療における有病な代替治療として期待されるが、強迫症併存の双極症に対する有効性および安全性は、十分に研究されていない。イタリア・Asl Napoli 1 CentroのVassilis Martiadis氏らは、強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の有効性および忍容性を評価するため、本研究を実施した。Journal of Clinical Medicine誌2025年2月2日号の報告。 対象は、強迫症併存の双極症患者27例。気分安定薬(リチウムまたはバルプロ酸)と併用してLAI抗精神病薬による治療を行った。臨床的および精神病理学的評価は、ベースラインおよび定期的に実施し、評価尺度にはYale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を用いた。安全性および忍容性の評価には、UKU副作用評価尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・LAI抗精神病薬治療は、躁病エピソードを引き起こすことなく、強迫症の症状や気分安定に対する有意な改善が認められた。・アリピプラゾールLAIは、パリペリドンLAIと比較し、体重増加に対する忍容性が良好であった。・アリピプラゾールLAIとパリペリドンLAIとの間に、全体的な有効性の有意な差は認められなかった。 著者らは「強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の補助療法は、効果的かつ忍容性の良好な治療選択肢である可能性が示唆された。このような患者に対する治療戦略を改善するためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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慢性不眠症に対する睡眠薬の切り替え/中止に関する臨床実践ガイドライン

 現在のガイドラインでは、慢性不眠症の第1選択治療として、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)が推奨されている。欧州ガイドラインにおける薬理学的治療の推奨事項には、短時間または中間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬・Z薬(エスゾピクロン、zaleplon、ゾルピデム、ゾピクロン)、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA:ダリドレキサント)、メラトニン受容体拮抗薬(徐放性メラトニン2mg)などの薬剤が含まれている。不眠症は慢性的な疾患であり、一部の治療に反応しない患者も少なくないため、さまざまな治療アプローチや治療薬の切り替えが必要とされる。しかし、現在の欧州では、これらの治療薬切り替えを安全かつ効果的に実践するためのプロトコールに関して、明確な指標が示されているわけではない。イタリア・ピサ大学のLaura Palagini氏らは、このギャップを埋めるために、不眠症に使用される薬剤を切り替える手順と妥当性を評価し、実臨床現場で使用可能な不眠症治療薬の減量アルゴリズムを提案した。Sleep Medicine誌2025年4月号の報告。 不眠症治療薬の切り替え手順の評価には、RAND/UCLA適切性評価法を用いた。PRISMAガイドラインに従い実施された文献をシステマティックにレビューし、いくつかの推奨事項を作成した。 主な結果と結論は以下のとおり。・選択された文献は21件。・ベンゾジアゼピン系睡眠薬およびZ薬の中止は、段階的に行う必要があり、1週間当たり10〜25%ずつ減少すること。・マルチコンポーネントCBT-I、DORA、エスゾピクロン、メラトニン受容体拮抗薬は、必要に応じて減量期間を延長可能なクロステーパプログラムにより、ベンゾジアゼピン系睡眠薬およびZ薬の中止を促進することが示唆された。・DORA、メラトニン受容体拮抗薬は、特別な切り替えや処方中止のプロトコールは不要であった。

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認知症の臨床診療ガイドライン―韓国認知症協会の推奨事項

 韓国・江原大学校のYeshin Kim氏らが、エビデンスに基づく推奨事項をまとめた韓国認知症協会の臨床診療ガイドラインについて、アルツハイマー病およびその他のタイプの認知症に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)およびN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬に関する推奨事項に焦点を当て、Dementia and Neurocognitive Disorders誌2025年1月号に発表した。また同誌にて、同国・カトリック大学校のGihwan Byeon氏らは本ガイドラインについて、患者のQOLや介護者の負担に影響を及ぼす認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する、抗精神病薬、抗うつ薬、抗認知症薬など薬理学的治療に関する臨床実践ガイドラインとして提示した。 PICOフレームワークを用いて主要な臨床上の疑問を作成し、システマティックに文献レビューを実施した。韓国認知症協会が組織した多分野の専門医パネルにより、ランダム化比較試験および観察研究の評価を行った。推奨事項には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いて、エビデンスの質および強度に基づき等級付けを行った。 ChEIおよびNMDA受容体拮抗薬に関する主な推奨事項は以下のとおり。・アルツハイマー病では、認知機能および日常機能の改善にChEI(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)が強く推奨される(エビデンスの質:中)。・ChEIは、血管性認知症およびパーキンソン病性認知症に条件付きで推奨され、レビー小体型認知症には強く推奨される。・中等度~重度のアルツハイマー病には、NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が強く推奨され、認知機能および日常機能の有意な改善が実証されている。・いずれの薬剤クラスにおいても副作用のマネジメントは可能であり、良好な安全性プロファイルが認められた。 BPSDに対する薬理学的治療に関する主な推奨事項は以下のとおり。・薬剤の種類および症状の重症度により推奨事項は異なる。・リスペリドンやブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬は、認知症の攻撃性や精神症状のコントロールに条件付きで推奨され、抗うつ薬、とくにcitalopramはアルツハイマー病の興奮に推奨される。・ChEIおよびNMDA受容体拮抗薬などの抗認知症薬は、レビー小体型認知症の一般的なBPSDの改善および急速眼球運動睡眠行動障害に中程度の有効性を示した。・pimavanserinなどの特定の薬剤は、アルツハイマー病患者の精神症状に対する有効性が認められた。 著者らは本ガイドラインについて、「ChEIおよびNMDA受容体拮抗薬に関する具体的なガイダンスと共に、認知症マネジメントに関する標準化されたエビデンスに基づく推奨事項を提案している」「認知症のBPSDに対する薬理学的マネジメントにおける構造化されたアプローチを提供している」「リスクを最小限にしながら治療アウトカムを最適化するための個別化された治療計画を強調している」とし、「本ガイドラインは認知症ケアにおける患者アウトカムの改善を目的としている。認知症マネジメントの進歩を反映し、アミロイド標準療法などの新たな治療法について、さらに更新されるだろう」とまとめている。

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認知症の急速悪化、服用中の薬剤が引き金に?【外来で役立つ!認知症Topics】第27回

認知症の急速進行性患者(Rapid Decliner)少なからぬ認知症の患者さん、とくにアルツハイマー病(AD)患者の外来治療は長期にわたりがちで、2年や3年はざら、時には10年ということもある。そうした中で、この病気が進行していくスピード感というものがだんだんとわかってくる。ところが、「なぜこんなにも急速に悪化するのか」という驚きと、主治医としての後ろめたさを感じてしまうような症例を少なからず経験する。こうした患者さんは、医学的には急速進行性患者(Rapid Decliner:RD)と呼ばれる。急速進行性認知症とは、本来プリオン病をプロトタイプとするが、プリオン病との鑑別で最も多いのは急速進行性のADだとされる。このようなケースでは、本人というよりも主たる介護者が、そのことを嘆かれ、治療の変更や転医などを相談されることもある。しかし担当医として容易にはお答えができず、忸怩たる思いを経験する。また新薬の治験のようにADの経過を評価する際にもRDはしばしば問題になる。というのは、こうした新薬の効果は、多くの場合、わずかなものである。そこに一般的な患者の経過から飛び抜けて悪化を示すケースがあると、「結果解析ではこうしたRDを例外として対象から除外するのか?」などの統計解析上の取り扱いが問題になると聞く。急速進行性アルツハイマー病(RD AD)の定義さて急速進行性AD(RD AD)の定義では、MMSEのような認知機能評価尺度の点数悪化や発症から死亡に至るまでの時間により示されることが多い。RD ADの定義として、MMSEの年間点の得点低下が6点以上とするものが多い1)。一般的には年間低下率は、2~3点とされるから、その倍以上である。また普通は7~8年とされるADの生存期間だが、RD ADでは、それが2年以内とされることも多い2)。つまり約3~4分の1程度も短命である。このようなRD ADを予測する要因としては、合併症として、血管性要因、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満などがある。また慢性的な心不全や閉塞性肺疾患の関与も注目されてきた。しかしいずれも確立していない。さらに一般的には若年性が悪いと思われがちだが、必ずしもそうではない。バイオマーカーでは、脳脊髄液中の総タウ、リン酸化タウの高値は予測要因の可能性があるとされる。多くの遺伝子多型も研究報告されてきた。最もよく知られた遺伝子多型のAPOEだが、この役割については賛否両論ある。以上をまとめると、RD ADの予測要因として確立したものはなさそうである。RD ADの症状:体力低下、BPSD、IADLの障害もっとも実臨床の場面でRD ADが持つ意味は上記のような医学的な定義とは少し異なる。つまり体力低下、認知症にみられる行動および神経心理学的な症状(BPSD)や道具的ADL(Instrumental Activity of Daily Living:IADL)の障害などが急速に進んで日常生活の維持が困難になって、急速進行が事例化するケースが多いと思う。たとえば、大腿骨頸部骨折や各種の肺炎後に衰弱が急に進むという訴えがある。IADLでは、排泄の後始末ができない・汚れたおむつで便器を詰まらせる、着衣失行など衣類が着られなくなった、などが多い。またBPSDでは、多くの介護者にとって、幻視や幻聴、そして妄想の出現はショックが大きい。つまり家族介護者は、認知機能の低下というよりは、衰弱やIADLの低下、衰弱や幻覚妄想による言動のように、目に見える変化が急速な悪化と感じやすい。服用中の薬剤が急速悪化の引き金にさて問題は、こうしたケースへの対応である。これには2つのポイントがある。まず診断の見直しという基本の確認である。ここでは必要に応じてセカンドピニオンも考慮すべきである。次にRDの危険因子とされた要因を点検することである。とくに注目すべきは、服用薬剤の副作用だろう。診断の見直しでは、まずビタミンB群、梅毒やHIVを含む血液検査はしておきたい。新たな脳血管障害などが加わった可能性もあるからCTやMRI等の脳画像の再検査も考慮する。また脳脊髄液検査や脳波検査も、感染症やプリオン病などの可能性を踏まえてやっておきたい。高度検査では、遺伝学的な検査、また悪性腫瘍の合併を考慮してWhole body PET-CTが必要になるケースもあるだろう。さらに炎症系の関りも視野に入れて、専門医との相談に基づいて、抗炎症治療による治療的診断として、イムノグロブリン、高用量ステロイドなどの投与もありうる。いずれにせよこれらでは、躊躇なくセカンドオピニオンが求められる。危険視の中でも、服用薬剤が重要である。まず向精神薬がある程以上に長期間にわたって投与されていれば、これらが心身の機能にも生命予後にも悪影響を及ぼす可能性がある。なお向精神薬には、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬のほかに、抗てんかん薬、抗パーキンソン薬などが含まれる。とりわけ、他科から処方されている薬剤は案外盲点かもしれない。他科の担当医はご自分の領域の治療薬に精通されていても、それが認知症に及ぼす影響まではあまり注意されていないかもしれない。それだけに「おくすり手帳」などを見せてもらう必要がある。さまざまな薬剤の中でも、とくに抗コリン薬は要注意である。これは過活動性膀胱の治療薬など泌尿器科用薬剤、循環器用薬剤に多い。またヒスタミンH2受容体拮抗薬、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、循環器系治療薬、抗菌薬などにも目配りが求められる。参考1)Soto ME, et al. Rapid cognitive decline in Alzheimer's disease. Consensus paper. J Nutr Health Aging. 2008;12:703-713. 2)Harmann P, Zerr I. Rapidly progressive dementias – aetiologies, diagnosis. Nat Rev Neurol. 2022;18:363-376.

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統合失調症の精神症状自己モニタリングアプリは再発の早期発見に有効

 精神疾患に対するデジタル技術を活用した研究は増加している。しかし、統合失調症患者自身によるスマートフォンアプリケーションを用いた症状の自己モニタリングシステムに関して、具体的に調査した研究は限られている。韓国・全南大学のSung-Wan Kim氏らは、コミュニティベースの早期介入センターであるMindlinkの統合失調症患者に対するスマートフォンアプリケーションを用いた症状の自己モニタリングシステムの妥当性および信頼性を評価した。Digital Health誌2025年1月31日号の報告。 対象は、統合失調症スペクトラム症の若年患者53例。対象患者の5つの精神症状領域(妄想、幻覚、不安、抑うつ、知覚ストレス)について、11段階リッカート尺度を用いて評価した。精神症状の評価は、ベースライン時、1週目、8週目、16週目に行った。再テストの信頼性は、ベースラインと1週目の評価における級内相関係数(ICC)により評価した。妥当性は、アプリベースの評価を、Eppendorf Schizophrenia Inventory、ハミルトン統合失調症プログラム幻聴尺度、ベックうつ病評価尺度、7項目一般化不安障害質問票、知覚ストレス尺度などの確立された自己報告尺度および臨床医尺度と相関させることで評価した。アプリのうつ病評価精度は、ROC分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・再テストの信頼性のICCは、すべての症状領域において高く、その範囲は0.741〜0.876であった(p<0.001)。・すべての評価時点において、アプリベースの評価と標準的な評価尺度による評価との間に、有意な相関が確認された。・アプリを用いた単一項目の自己評価についてのROC分析では、AUCが0.829であり(p=0.002)、良好な精度が示唆された。 著者らは「統合失調症患者の主要な症状やストレスを自己モニタリングするためのスマートフォンアプリケーションは、有効かつ信頼できるツールであることが示唆された。統合失調症患者の症状マネジメントを強化し、再発の早期検出を可能にするうえで、アプリの可能性を支持するものである」と結論付けている。

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週末2~3時間のキャッチアップ睡眠でCKDリスク低下

 中国・広西中医薬大学のSheng Chen氏らは、米国成人における週末のキャッチアップ睡眠と慢性腎臓病(CKD)との関連を調査した。Renal Failure誌2025年12月号の報告。 対象は、2017〜20年の国民健康栄養調査(NHANES)データより抽出した20歳以上の成人4,934人。週末のキャッチアップ睡眠と関連したCKDリスクを評価した。週末のキャチアップ睡眠時間に基づくCKDリスクを評価するため、対象者を睡眠時間に応じて4群に分類した。週末のキャチアップ睡眠時間が1時間未満を対照群とし、1〜2時間群、2〜3時間群、3時間以上群との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・完全に調整した多変量ロジスティックモデルでは、CKDと週末のキャッチアップ睡眠のオッズ比(OR)は0.86(95%信頼区間[CI]:0.61〜1.22、p=0.31)であった。・2〜3時間群において、CKDとの有意な関連が認められた(OR:0.44、95%CI:0.21〜0.88、p=0.03)。・サブグループ解析では、キャッチアップ睡眠2〜3時間群の男女、2〜3時間群の60歳未満の成人、1時間未満群のBMI25〜29.9の人、2〜3時間群でBMIが25未満または30以上の人、平日の睡眠時間が7時間未満で週末のキャッチアップ睡眠時間が2〜3時間の人で、より強い負の相関が認められた(p<0.05)。・BMIとの相互作用は、統計学的に有意であった(p for interaction=0.04)。 著者らは「平日の睡眠時間が7時間未満の場合、週末に2〜3時間のキャッチアップ睡眠を行うことで、CKDリスクを低下させる可能性が示唆された」と結論付けている。

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炎症性関節炎患者に対するメンタルヘルスケアには課題あり

 乾癬性関節炎や関節リウマチなどの炎症性関節炎患者は、うつ病や不安障害などの気分障害のリスクが大幅に高いにもかかわらず、こうしたメンタルヘルス上の懸念に対する医師の対応は十分ではないことが、新たな研究により明らかになった。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のMary De Vera氏らによるこの研究結果は、「Arthritis Research & Therapy」に1月21日掲載された。 この研究でDe Vera氏らは、ブリティッシュコロンビア州の行政保険データ(2000年1月2日〜2018年3月31日)を用いて、うつ病と不安障害のいずれかまたは両方を発症した炎症性関節炎(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ)患者に対する最小限の適切な薬物療法や心理療法の実施について評価した。最小限の適切な薬物療法は「84日分以上の抗うつ薬の処方」、最小限の適切な心理療法は「4回以上のカウンセリング/心理療法サービスの実施」と定義された。 うつ病を発症した炎症性関節炎患者6,951人(平均年齢54.8±18.3歳、女性65.5%)と不安障害を発症した炎症性関節炎患者3,701人(平均年齢52.9±16.8歳、女性74.3%)が特定された。炎症性関節炎のない患者を対照群とし、炎症性関節炎患者と年齢、性別、うつ病または不安障害の発症日(±5年)を基準に1対1の割合でマッチングさせた。 分析の結果、うつ病に対する最小限の適切な薬物療法と心理療法を受けた患者の割合は、炎症性関節炎患者群で50.5%と19.6%、対照群で48.0%と19.7%であった。炎症性関節炎患者がうつ病に対する最小限の適切な薬物療法と心理療法を受ける調整オッズ比(aOR)は、それぞれ1.09(95%信頼区間1.02〜1.17)と0.99(同0.90〜1.08)であり、薬物療法に関してのみ統計学的に有意であった。 一方、不安障害に対する最小限の適切な薬物療法と心理療法を受けた患者の割合は、炎症性関節炎患者群で46.9%と20.2%、対照群で44.1%と19.0%であった。炎症性関節炎患者が不安障害に対する最小限の適切な薬物療法と心理療法を受けるaORは、それぞれ1.10(95%信頼区間1.00〜1.21)と1.07(同0.94〜1.21)であり、薬物療法に関しては対照群に比べてやや高い傾向が認められたが、心理療法については対照群との間に有意な差は認められなかった。 De Vera氏は、「メンタルヘルスはあまり注目されないことが多く、メンタルヘルスの問題に対する治療が不十分であることが十分に立証されているため、これらの結果は必ずしも驚きではなかった。しかし、炎症性関節炎患者と炎症性関節炎を持たない患者との間に、うつ病と不安障害に対する最小限の適切な治療に関して有意な差がなかったことには、多少驚かされた。なぜなら、炎症性関節炎患者は医療機関を受診することも多いため、うつ病や不安障害に対する治療を受ける機会も多いはずだと考えていたからだ」と話す。その上で同氏は、「炎症性関節炎と精神疾患は複雑な関係にあり、特に、炎症は根本原因として重要な役割を果たしていることを考えると、このギャップは解決すべきだ」と述べている。

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その1)【当たり前すぎて気づかなかった!?(学校教育の良さと危うさ)】Part 1

今回のキーワード規律協調性忍耐力同調圧力ダブルバインドモラルハラスメント相互監視スケープゴート海外の人から見ると、日本の電車がいつも時間どおりに来ること、日本人が礼儀正しく穏やかであること、責任感が強く残業してまで仕事を終えようとすることなど、私たちが当たり前と思うことがどうやらすごいことと思われているようです。そして、そのメンタリティを育んだのは日本の小学校ではないかと指摘され始めています。今回は、ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」を取り上げます。2021年のコロナ禍、東京のとある公立小学校を1年間密着取材しています。ジャケットに書かれている“The making of a Japanese”(日本人のつくり方)というサブタイトルからわかるように、「外国から見た日本の小学校とは」という視点で、私たちが当たり前に思っていた学校の日常から、学校の内情、生徒と先生の喜怒哀楽にまで迫ってます。日本人ならではの規律、協調性、忍耐力を育む学校の取り組みを明らかにして、生徒たちの成長をドラマチックに捉えており、日本の教育の良さが伝わり、海外の教育関係者から注目されています。と同時に、日本の教育関係者から見ると、そのあり方は何やら時代遅れになってきているのではないかという危うさも、監督が意図してなのか、さりげなくもひしひしと伝わってきます。それではまず、この映画のいくつかのシーンを通して、日本の学校教育の良さと危うさをそれぞれ整理しましょう。なお、この映画はドキュメンタリーであり、実在する人物が登場しますが、この記事で教師個人を批判する意図はまったくありません。あくまでその教師たちすら巻き込む文化としての日本の学校教育の危うさを指摘しています。また、この映画の短編バージョンは、以下のThe New York Timesの公式チャンネルから視聴できます。Instruments of a Beating Heart【Youtube】日本の学校教育の良さとは?日本の学校教育は、単に勉強だけでなく、生活指導を通して社会性を高めることにも重きを置いていると説明されます。それでは、具体的にどんな良さがあるのでしょうか? 実際に撮影されたシーンを通して、大きく3つ挙げてみましょう。(1)ルールを守る―規律生徒は、校則という細かいルールに従って、学校生活を送っています。たとえば、当然ながら「廊下は歩く」という張り紙があります。授業が始まる時と終わる時は、私たちにとっては当たり前の「起立、気をつけ、礼」の儀式が毎回行われます。1年生の教室で、発言したい時は、腕をピンと真っすぐにして手を挙げ、大きな声で元気に「はい」と言うようにと発言のルールを細かく指導されます。とくにコロナ禍のさなかであったこともあり、生徒たちは、全員マスクをしています。ソーシャルディスタンスを守るため、廊下に並ぶときは、床に張られた足跡のシールの上に足を合わせて並びます。1つ目の良さは、ルールを守る、規律です。このおかげで、私たちは、大人になってもルールに忠実であろうとする規範意識がとても強いです。たとえば、外国の観光客から、町にごみが落ちていなくて清潔だとびっくりされます。並ぶ時は、当たり前のようにきれいな列を作ります。犯罪率は、世界トップレベルで低いです。実際に、財布を落とした場合、外国ではまず見つかりませんが、日本では警察に届けられていることが多いという話はよく聞きます。(2)周りに合わせる―協調性学校では、給食当番が決まっており、自分が当番の時は白衣を着て、当番のメンバーで連携して食事を取り分けます。その際にぶつかってお盆を落とした生徒は、先生から「周りをよく見てね」と指導されていました。掃除もみんなで手分けして行います。ほうきを掃く時は、「ほうきは膝下まで」と指導されていました。このように、クラスメートと協力する場面が多いことから、必然的に仲間意識が強くなります。クラスメート同士で、持ち物がなくなった生徒や、悲しんでいる生徒がいたら、すぐに気遣っていました。2つ目の良さは、周りに合わせる、協調性です。このおかげで、私たちは、集団で周りとうまくやっていこうとする謙虚な気持ちがとても強いです。たとえば、接客は、礼儀正しく丁寧です。「おもてなし」の精神から、お店やホテルなどでは、サービスが行き届いています。電車が時刻どおりに動いているだけで世界的にはすごいことなのに、3分遅れただけでお詫びのアナウンスが流れます。(3)努力する―忍耐力ある生徒は、縄跳びの二重飛びができませんでしたが、根気強く練習を続けて、最後にはできるようになり、運動会の晴れ舞台で披露します。ある1年生の女子は、音楽会でシンバル演奏に選ばれたのですが、練習に来なかったためにうまく演奏できず、先生に怒られます。しかし、周りの支えもあって、やがて自分から練習して演奏会を見事やりきります。3つ目の良さは、努力する、忍耐力です。このおかげで、私たちは個人や集団で何かを達成することへの思い入れがとても強いです。たとえば、PISA(国際学習到達度調査)の成績は毎回トップレベルの成績です。世界的にも、日本人は責任感が強く、自分の仕事は頑張って成し遂げようとします。そして、災害が起きても、忍耐強く冷静でパニックになりません。次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その1)【当たり前すぎて気づかなかった!?(学校教育の良さと危うさ)】Part 2

日本の学校教育の危うさとは?日本の学校教育の良さは、ルールを守る規律、周りに合わせる協調性、努力する忍耐力であることがわかりました。一方で、その危うさは何でしょうか?実際に撮影されたシーンを通して、大きく3つ挙げてみましょう。(1)周りと同じことをやらせすぎる―同調圧力この映画のなかで、たびたび生徒たちの靴箱のワンカットが映し出されます。上靴に履き替えるという海外の人にとっては珍しい文化をわかりやすく捉えています。あるシーンでは、その靴箱の前で高学年の生徒3人が、「〇〇さん花丸、△△さんは三角」と言って靴の揃え方をチェックしていました。靴のかかとの部分が靴箱のふちに揃っているか、向きが真っすぐかどうかで判定し、記入用紙に点数化しています。さらに、その靴箱の写真まで撮っていました。おそらく、あとでそれぞれの教室のモニターに映し出し、ダメ出しをするのでしょうか? それともクラス別のランキングでもするのでしょうか。別のワンシーンでは、生徒たちは、教室に入る時、いったんドアの手前で足を揃えて入っていました。これも、指導されているようです。また、ある1年生の男子が廊下をふざけて飛び跳ねるように歩いていると、通りがかった先生が「普通に歩いて!」と注意していました。確かに、規律を厳しくすることは規範意識を高めるためには良いことのように思われます。武道と同じように、靴をきれいに靴箱に入れること、教室の前でいった足を揃えること、廊下を姿勢良く歩くことなどの行動は、1つのルーチンとして癖にすることで心が落ち着きます。しかし、これらはどれもそれぞれの生徒にお勧めすべきことではありますが、生徒全員に強いることに合理的な理由がありません。なぜなら、そうしないと周りに迷惑をかける(権利を侵害する)わけではなく、そうすることが大人になって社会生活を送るうえで必要でもないからです。簡単に言えば、やりたい人だけが選んでやればいいだけの話です。それなのに、やりたいわけではない人を巻き込んでいます。さらに、授業中のワンシーンで、ある先生が生徒に「(できるからって)先に進んだりしたらいけないんだ」と言っていました。また、別の先生は、ある生徒に成績表を渡すのですが、すべての項目で高い評価だったので先取り学習をしていると察して、「(すでに答えがわかってても)一つひとつ丁寧にやってね」と先生は伝えています。つまり、勉強ができるからといって、授業中に先に進むことは禁止されているのです。いくら丁寧にやれと言われても、答えはもうわかってしまっているので、授業が退屈でしかありません。逆に、できない生徒は先生がある程度フォローしてくれますが、できたことにして授業は進みます。つまり、できない生徒にとってはわからないので、授業が苦痛でしかありません。つまり、どっちにしても、無理やり足並みを揃えさせられているのです。1つ目の危うさは、周りと同じことをやらせすぎる、同調圧力です。これによって、周りに合わせなければならない、みんなと同じでなければならないという意識が強くなり、自分はこうしたいという「自分らしさ」(アイデンティティ)が育まれにくくなります。そもそも自分らしさは、選ぶ自由があり、多様性があってこそ豊かになります。逆に、同調圧力のなかで選ぶ自由も多様性もなく、自分らしさは削がれていきます。皮肉にも、映画の中では、先生たちはたびたび「自分らしさ」という言葉を口にして、その大切さを強調していました。そのわりに彼らは「普通に(しろ)」という言葉を使って真逆のことを強いており、その矛盾に気付いていないのでした。先生たちの意味する「自分らしさ」とは、生徒が望んだ多様なものではなく、あくまで先生たちが望む限定されたものなのでした。それでは、どうすれば良かったのでしょうか? たとえば、靴箱の取り組みや教室の前で足を揃える取り組みは、あくまでお勧めとして個人的に褒めることにとどめて、全員に強要しないことです。先ほどの飛び跳ねるように歩く生徒は、確かにちょっと危なっかしいかもしれませんが、「普通に」という言葉は、「みんなと同じように」という意味合いになるので使わないようにして、代わりに「ぶつからないように気をつけて」と具体的に言うべきでしょう。むしろ、飛び跳ねるように歩くことは、ユーモアの素質があるという自分らしさと言えます。なお、同調圧力(同調性)の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その1)【当たり前すぎて気づかなかった!?(学校教育の良さと危うさ)】Part 3

(2)言いなりにさせるーモラルハラスメント避難訓練のシーン。生徒たちが教室からいっせいに校庭に出ていきます。そんななか、ある先生がいきなり「行動が遅い! なんでそんなにゆっくりしてんだよ!」と声を張り上げます。この声のトーンは、一般の社会で昨今あまり聞かれることのない、恫喝のレベルでした。おそらくその先生は、生徒たちの気を引き締めるために必要だと判断したからでしょう。しかし、訓練であるため、パニックにならないために慎重さも必要です。もしかしたら、毎回の訓練でタイムを計っており、前回よりも速い記録を出して、教師としての評価を上げたいという意図があり、最初から用意されたセリフかもしれません。また、引き締めの意図があるなら、逆に生徒が急いで転びそうになったら、今度は「あわてるな!」と声を張り上げることが予測されます。つまり、どっちにしても、何をしても、生徒たちは怒られるのです。心理学では、これをダブルバインド(板挟み)と呼んでいます。6年生の卒業式の練習シーン。卒業証書の授与で生徒が呼ばれた時の返事の仕方の見本を見せようと、ある先生が「はい!」と大声で返事をします。その声はびっくりするくらい大声であったため、一部の生徒たちから笑いが起こります。その瞬間、その先生は「なんで笑った!? おかしい!? 私は気持ちを込めていった。気持ちを込めて何が悪いんだ!」と言って、語気を強めます。確かに言っていることはわかるのですが、生徒によってはあえてのお笑いのボケだと受け取られるので、笑いが起こるのは避けられません。彼はただナメられたくなかったからなのか、最初からこの流れを予定して怒ったふりをしていたのか、どちらにしても強い口調で言うのは不適切です。一般社会の職場で、それをやったらモラルハラスメントに当たります。しかし、子供が相手なら、指導という建前でやっても良いと考えているのでしょう。生徒からして見れば、笑いが起きる状況で笑っていいのか笑ってはいけないのか混乱します。これも、ダブルバインドの心理です。この先生は、「終わっちゃうんだな、一緒にすごした時間も」とつい涙を流してもいました。そして、「なんで泣いちゃうかって、好きだからです。おれは君たちが好きです」と言い出します。このシーンだけを切り取ると、「感動シーン」のように見えるわけですが、よくよく考えると、「好きだから」「相手のためだから」と理由をつけることで、たとえハラスメントであっても自分は許されると正当化しようとしています。実はこれは、典型的なモラルハラスメントの加害者の心理です。ちなみに、このシーンを見て、自分の子育てに重なった親御さんもいるでしょう。「愛しているから」「子供のためだから」という決めゼリフを使って、つい独りよがりになって、子供を言いなりにさせてしまう可能性には、私たちも意識する必要があります。また、この先生が言った「気持ちが大事」のほかに、別のシーンで別の先生たちは「殻を破れ」「気持ちが乗ってない」「強い心」などと抽象的な言葉を多用していることに気付きます。これらは、かつての「根性が足りない」「精神力を鍛えろ」の新しい言い回しでもあります。これらの言葉かけは、一見生徒たちの注意を引くわけですが、具体的な改善点を先生が指摘しているわけではない(実は指摘できない)ので、結局ダブルバインドと同じように、生徒たちはどうしていいかわからないまま先生の顔色をうかがうばかりになります。2つ目の危うさは、教師の言いなりにさせる、モラルハラスメントです。これによって、上の立場の人(権威)が望む答えを探す意識が高まり、自分からこうしたいという「自主性」(勤勉性)は育まれにくくなります。そもそも自主性は、自分が自由に行動を選び、その行動を温かく受け入れる環境があってこそ高まります。逆に、先生たちによるモラルハラスメントが横行する学校のなかでは受け身になり、自主性が削がれていきます。皮肉にも、映画の中では、先生たちはたびたび「自主性を育む」という言葉を口にして、その大切さを強調していました。そのわりに彼らは受け身にさせることばかりしており、その矛盾に気付いていないのでした。先生たちの意味する「自主性」とは、生徒が望む自由な行動ではなく、あくまで先生たちが喜ぶ行動を「自主的」にやることなのでした。それでは、どうすれば良かったのでしょうか? たとえば、避難訓練で声かけするとしたら、せめて「急いで」と冷静に言うことです。また、卒業式の練習でびっくりするくらいの大声で返事をした先生は「ちょっとおかしかったかな? でも、これぐらい元気よく返事をすることをお勧めするよ」と答えることです。なお、モラルハラスメントの心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その1)【当たり前すぎて気づかなかった!?(学校教育の良さと危うさ)】Part 4

(3)吊し上げをする―スケープゴート1年生の生徒たちが音楽会の練習をするシーン。ある先生は生徒たちに「練習してる時に、心が揃い、音が揃うようになってきていると思います。練習に来ない人は、その心が揃うのを壊しています。台無しです」と練習の大切さを強調します。「台無し」という言葉に語気を強めており、何やら嫌な予感がします。すると、やはりです。先ほどにも登場した1年生の女子は、シンバル担当に選ばれていたのですが、なかなかうまくできていないようで、彼は心配します。彼からの「練習に来てね」という手紙が彼女の靴箱に添えてあるシーンが映し出されます。しかし、彼女は来ません。そして案の定、彼女はみんなで演奏の練習をするなかでミスを繰り返します。すると、彼は「タイミング違ったね」「そこ(のタイミング)あったっけ?」「あなた1人しか(シンバルは)いないんです。その責任があなたにあります」ときつい口調で問い詰めます。彼女は「楽譜忘れた…」と小声で答えるのですが、彼は「ちょっと待って、今楽譜ないとできないよって人いますか? 手を挙げてごらん」と他の生徒たちに聞きますが、誰も手を挙げません。そして彼は「なんでみんな楽譜なくてもできるんですか?」とあえて生徒たちにたずねます。すると、生徒たちが「練習しているから」といっせいに答えます。先生は「そうだよね。…一生懸命練習を続けてるんだよね。それをあなたはやってるんですか?」と言って迫ります。彼女が泣き出すと、いったん休憩させるかと思いきや、なんと彼は「オーディションに受かったらそれでおしまいなの? それがゴールなの?…泣いたら上手になるの?…どうしますか? 変わってもらいますか? どうしますか?」と畳みかけます。そして、この一連のやり取りをみんなが静かに見ています。そして、彼女は半ば無理やり練習の約束をさせられて、彼女がまだ泣いているのに、彼は非情にもそのまま演奏を再開するのです。もちろん、彼女は演奏どころではなく、他の生徒たちの楽器から奏でられる音の中に、彼女の泣き声が響いているのでした。彼女があまりにも気の毒で、私たちは胸が張り裂けそうな思いになります。と同時に、これは俳優たちが演技したフィクションではなく、実在する人物たちが実際にやり取りしたドキュメンタリーだったと我に返ると、この先生のやり方には疑問が沸いてきます。一般社会の職場で、上司が部下にこれをやったら明らかなモラルハラスメントで、一発アウトです。しかし、子供が相手なら、指導という建前でやっても良いと考えているのでしょう。さらに、巧妙なのは、その翌日くらいあと、再度のみんなでの練習の時、彼女は演奏するのですが、練習が終わった後、先生は彼女に駆け寄り、笑顔で「できたじゃん!あなたができるところはちゃんと音が鳴ってたよ」と今度は笑顔でベタ褒めするのです。彼女はその間に練習をしておらず、しかもこの時は楽譜を真横に置いていたのにです。彼の褒め叱りには、実は一貫性がないのでした。最初に叱ったのも、あとに褒めたのも最初から予定していたように見えてきます。予定していなかったとしたら、彼は単なる気分屋で、先ほどと同じくモラルハラスメントであり、それはそれで問題です。最も問題なのは、どっちにしても、結果的に彼女は見せしめのために利用されたということです。つまり、「練習しないとこうなるぞ」という他の生徒への裏メッセージです。また、別のワンシーンでは、1年生の教室で、先生がある生徒を教壇に立たせ、「姿勢係」の役割を与えていました。彼を教壇に立たせ、教室に座っている生徒を名指しで「姿勢がいいのは〇〇さんです」「姿勢がいいのは△△さんです」と無邪気な笑顔で言わせるのです。この取り組みは、姿勢を良くしようとする意識を高め、一見良いように思われます。しかし、今度は別のシーンで、同じく1年生の生徒たち数人が休み時間に教室から校庭で遊んでいる他の生徒たちを見下ろして、「あ、マスクしてない。」「よくないねー」「よくないねー」と言い合い、自主的に「マスク警察係」として審判を始めるのです。これは、生徒が生徒を監視する、相互監視です。仲間同士なのに監視役という権力を与える指導によって、仲間外れを見つける練習をさせてしまっていることがわかります。再び6年生の卒業式の練習のシーン。生徒たち全員が体育館のステージの階段状の足場に並ぶ時、混んでて身動きが取りづらく、きれいな整列にはなっていないようです。その時、ある先生が全員に向けて「きょろきょろしてる人、目立ちます」と注意します。これは、「保護者席から見て1人だけ違うとかっこ悪いよ」という否定的なニュアンスがあります。ここにも、先ほどの「普通に」と同じように「みんなと違う人=目立つ人=良くない」という仲間外れにする裏メッセージが読み取れます。先ほどの靴箱のシーンにしても、靴をきれいに入れていない生徒は、悪目立ちすることになります。つまり、これらの取り組みによって注意された生徒は、残りの生徒たちを引き締めて学校の規律を高めるための「生贄」と言えます。3つ目の危うさは、吊し上げをする、スケープゴートです。これによって、上の立場の人(権威)に従わない人や周り(主流秩序)と違うことをする人を差別する意識が高まり、見た目や考え方の違う人を排除しようとする「いじめ」(排他性)が育まれます。これまであれほど学校ではいじめ対策をしてきたのに、実は日本の教育文化そのものがいじめの温床であったという衝撃の事実です。皮肉にも、教員のための研修に招待された大学の教授が、「たとえば『ビー玉貯金』が有名です。クラス全員が忘れ物をしなかったら、大きなビー玉がもらえる。でも、もらえなかったら、『おまえのせいでこうなった』というふうになる。実はいじめの原因をつくるのは教員だった」「我々にも責任がある」と説明し、連帯責任の危うさを講義していました。確かに、集団として罰(正の弱化によるオペラント条件づけ)を与えるというあからさまな連帯責任はなくなりました。しかし、靴箱、演奏会の練習、「姿勢係」(相互監視)などのエピソードを見ると、集団としてご褒美(正の強化によるオペラント条件づけ)をもらえない可能性がある点で、これらは「ビー玉貯金」と同じように指示に従ってない人を悪目立ちさせ全員に対して責任を感じさせる新手の連帯責任と言えます。つまり先生たちは、すでに研修で危ういと指摘されている連帯責任を利用した取り組みを、相変わらずやり続けているという矛盾に気付いていないのでした。それでは、どうすれば良かったのでしょうか? たとえば、音楽会の先生は、いきなりみんなの前で叱責するのではなく、まずその女子を個別に呼んで気軽に話し合うことです。そして、楽譜を見れば間違えないなら、まずは楽譜を見て演奏するよう本人に合わせた指導をすることです。確かに、全員が楽譜を見ないで完璧な演奏をすることはすばらしいことです。しかし、いくらオーディションで選ばれた責任があるからといって、それをプロの大人ではない1年生の子供に強要するのは酷です。結果的には、彼女は褒められた気分の良さから、その後に自主的に練習をするようになり、演奏会の本番を見事まっとうして、「少女の成長物語」という美談になっていました。そして、この先生は優秀な教師と評価されるのでしょう。しかし、彼女のように頑張れる生徒、できる生徒ばかりではありません。もしも、もともと頑張れない生徒やもともとできない生徒にこんなやり方を繰り返していたら、どうなるでしょうか? 不登校のリスクが高まるのは明らかでしょう。また、「姿勢係」などの相互監視は即廃止です。靴箱のシーンでも触れたように、良い姿勢はお勧めすべきことではありますが、競わせるものでも取り締まられるものではないからです。この多様性の時代、インクルーシブ教育の時代、もしも脳性麻痺の生徒がいたらどうなるのでしょうか? 先生たちは明らかに時代遅れなことをやっています。卒業式の練習のシーンでは、せめて「真っすぐに向いているとすてきだよ」とポジティブに言うことです。ただ、スケープゴートのリスクを考えると、そもそも卒業式でステージの上に生徒全員を整列させることをはじめとして同調圧力を高める取り組み自体を止める時代に来ているでしょう。なお、スケープゴートの心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。ここで、再度誤解がないようにしたいのは、これまで取り上げた教師たちの指導方法には改善点が多々ありますが、教師個人は批判されるべきとは思われません。なぜなら、実は生徒たちだけでなく教師たちもまた、この日本の危うい教育文化から抜け出せない学校という職場環境に身を置いているからです。それは、いったいどういうことでしょうか?(次回に続く)<< 前のページへ■関連記事告白【いじめ(同調)】Part 1美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】泣かないと決めた日(続)【パワーハラスメント(差別)】

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アルツハイマー病リスクに影響する食べ物とは?

 食習慣とアルツハイマー病との因果関係を評価するため、中国・The First Affiliated Hospital of Ningbo UniversityのYi Huang氏らは、2サンプルのメンデルランダム化(MR)解析を用いて、本研究を実施した。Food & Function誌2025年2月17日号の報告。 ゲノムワイド関連研究(GWAS)データと並行し、2サンプルのメンデルランダム化解析を用いて、17食品の食習慣とアルツハイマー病リスクとの因果関係を包括的に評価した。結果のロバストを保証するため、単変量MR解析および多変量MR解析の両方を使用した。すべての分析には、逆分散重み付け(IVW)法を用いた。感度分析には、最尤法、MR-RAPS法、MR-Egger法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・単変量MR解析では、アルツハイマー病リスク上昇と有意な関連が認められた食品は、加工肉、鶏肉、牛肉であった。 【加工肉】オッズ比(OR):1.26、95%信頼区間(CI):1.01〜1.59、p=0.044 【鶏肉】OR:2.06、95%CI:1.18〜3.59、p=0.011 【牛肉】OR:1.79、95%CI:1.25〜2.57、p=0.002・感度分析では、加工肉、鶏肉、牛肉の摂取との関連は、各方法において一貫しており、正の相関を示すことが明らかとなった。・多変量MR解析では、うつ病を調整した後、加工肉、鶏肉、牛肉の摂取量と正の相関(有意または傾向)が確認された。 【加工肉摂取量】OR:1.376、95%CI:1.015〜1.864、p=0.040 【鶏肉摂取量】OR:2.174、95%CI:1.205〜3.922、p=0.010 【牛肉摂取量】OR:1.428、95%CI:0.866〜2.355、p=0.163 著者らは「加工肉、鶏肉、牛肉の摂取は、アルツハイマー病リスクと相関していることが明らかとなった」と結論付けている。

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慢性疾患を持つ労働者の多くが職場で病気を隠している

 糖尿病、心臓病、喘息などの慢性疾患を持つ米国の労働者の60%は、そのような健康上の問題を職場の管理者に伝えていないという実態が報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のGillian SteelFisher氏らが行った調査の結果であり、2月11日、同大学院のサイトにニュースリリースが掲載された。 調査の結果、慢性疾患を持つ労働者の3分の1以上が、過去1年間に、仕事の都合で必要な受診をしない日があったことも明らかになった。SteelFisher氏は、「慢性疾患を持つ労働者は、自分の健康状態のために差別を受けていると感じることが多く、そのために仕事と健康の双方に深刻な影響が及ぶこともある」と話している。 この調査は2024年10月2~16日にかけて、米国内の従業員数50人以上の企業に所属しているフルタイムおよびパートタイムの成人労働者1,010人を対象に実施された。このうち58%は、糖尿病、高血圧、心臓病、喘息などの慢性疾患を1種類以上有していた。この慢性疾患有病者のうち76%は、「勤務時間中に健康管理のための時間を割く必要がある」と回答していたが、60%は自分の病気について会社に伝えていなかった。また、36%は、過去1年以内に仕事を優先して受診の予約を入れなかったり予約を延期したりしていた。「健康管理のために休暇を取る必要があったのに、それができなかった」との回答も49%に上った。 このほかにも、慢性疾患を有する労働者の25%は、「健康上の理由で過去1年間に昇進を逃したことがある」と考え、21%は「健康状態のために自分の勤務に対する否定的な評価を受けたことがある」と答えていた。SteelFisher氏は、「これらの問題は全て、労働者だけでなく雇用者側にも負の影響を及ぼす可能性がある。従業員を引きとめるために雇用主は、従業員ともっとコミュニケーションを取り、双方にとってベストな方法を模索すべきではないか」と提案している。 一方、本調査では、本人が健康であっても、自宅に慢性疾患を持ちケアを要する同居者がいるというケースが少なくないことも分かった。回答者の3分の1がこのような状況にあり、そのほぼ半数(45%)は「勤務時間中にもしばしばケアにあたる必要がある」と回答した。それにもかかわらず、慢性疾患を患う家族がいる人の37%は「ケアのために休暇を取るのは困難」と答え、25%は「その状況に対処するために労働時間を減らし、収入減を受け入れざるを得ない」と答えた。 これらの結果について、調査に協力した米ド・ボーモン財団の会長兼CEOのBrian Castrucci氏は、「雇用主にとり、自分自身や家族の慢性疾患に悩む従業員を支援することは、重要な責務であると同時に大きなチャンスでもある。それを行うことで、従業員とその家族の健康が改善されるだけでなく、従業員の定着率が向上し欠勤も減るのではないか」と論評している。

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痛みを抑える目的でタバコを吸う人々の存在とその特徴/順天堂大

 喫煙者の一部は、身体の痛みを抑えることを目的にタバコを吸っている。そのような人々は若年者に多く、痛みをより強く感じているといった特徴があるようだ。これは、順天堂大学大学院医学研究科疼痛制御学の山田恵子氏らの研究によるもので、「Neuropsychopharmacology Reports」に1月2日、短報として掲載された。 タバコに含まれるニコチンには「ごく一時的な」鎮痛作用があるらしいことが過去に報告されている。ただし喫煙と痛み(疼痛)との関連は複雑で、長期にわたる喫煙は痛みを生じるリスク因子であることや、ニコチン離脱時(タバコを吸えない時や禁煙開始時)には、痛みがむしろ強まることも報告されている。タバコを吸うという行動と潜在的に関係する心理的な要因や生活環境も、痛みに影響を及ぼし得ると推測される。しかし、痛みを緩和する目的での喫煙の実態は、これまでほとんど調査されていない。山田氏らは本研究を「痛みの緩和を目的としてタバコを吸う人々の存在にスポットを当てた、国内初の研究」と位置付けている。 この調査は、2020年10~11月に、インターネット調査会社の登録者から、年齢が20~69歳で過去1カ月以内に体のどこかに痛みのあった人を、年齢、性別、居住地の分布を日本の人口構成に近くなるよう調整し、2,000人を抽出して実施した。回答者から、元喫煙者399人と喫煙歴のない人1,129人を除外し、現喫煙者472人(女性23.1%、慢性疼痛患者〔症状持続期間3カ月以上〕が57.6%)を解析対象とした。 主要な質問項目は二つで、「痛みを抑える目的でタバコを吸うか」と「タバコを吸うと痛みが和らぐか」を質問した。それぞれ「まったくそのとおりだ」、「そのとおりだ」、「どちらともいえない」、「そうではない」、「まったくそうではない」の五つから選択してもらい、いずれも前二者を同意(痛みを緩和する目的で喫煙している人、および、喫煙により痛みが緩和すると感じている人)と判定した。 痛みの緩和目的での喫煙者は、472人中31人(6.6%)だった(急性・亜急性疼痛患者〔症状持続期間3カ月未満〕の3.5%、慢性疼痛患者の8.8%)。また、痛みの緩和目的ではない喫煙者441人(93.4%)のうち、5.2%が喫煙による痛みの緩和を実感していると回答した。 このほかに、喫煙本数や鎮痛薬(市販薬/処方薬)の使用、痛みの強さ、不安・うつレベル、治療中の精神疾患、運動習慣、世帯収入なども調査し、前記二つの質問の回答との関連を解析した。なお、解析では、背景因子を検討するために合計26回の検定を行い、偽陽性のリスクを避ける目的で、有意水準を通常の0.05を26で割った値に近い0.002未満に設定した。 喫煙の目的が痛みの緩和の人とそうでない人を比較すると、前者の群は若年であり(平均38.1対46.5歳)、痛みに対する治療中(71.0対22.9%)、鎮痛薬使用中(市販薬は67.7対25.2%、処方薬は51.6対21.3%)、統合失調症治療中(9.7対0.7%)の割合が高いという有意差が認められた。また、痛みがより強く(NRSという10点満点のスコアが6.5対5.1点)、痛みの増強に関与する中枢感作が強く生じていると推測され(CSIという100点満点のスコアが41.0対27.5点)、運動習慣のある割合が高い(68.9対19.4%)という有意差も認められた。 貧困傾向やうつ病治療中の割合、3カ月以上続く慢性の痛み、痛みに対する悲観的な思考、不安レベルなどについては、喫煙の目的が痛みの緩和である群で高い傾向が認められた(P値が0.002~0.05の間)。P値は、結果が偶然である可能性を示す値であり、この範囲では一定の関連性が示唆される。一方、性別の分布、喫煙本数、教育歴、短時間睡眠者の割合などには有意差が見られなかった(P>0.05)。 山田氏らは、「痛みのある喫煙者の6.6%が痛みの緩和を期待してタバコを吸っており、その行動には心や生活環境など多面的な要因が関係していて、鎮痛薬などによる痛み治療が十分な効果を発揮していない可能性が示唆された」と結論付けている。そして、日本で慢性の痛みのある人が約2500万人という推計値と、慢性の痛みのある人の42~68%が喫煙者であるとする過去の調査報告、および本調査で得られたデータに基づき、痛みの緩和目的で喫煙している人が国内に90万~150万人いる可能性があると推算し、「今後の喫煙や慢性の痛み対策ではこのような人々の存在を考慮する必要があるのではないか」と付け加えている。 なお、山田氏らは現在、対象者の数を増やした上で、より詳細な質問内容を使ったデータ解析を進めていて、その解析でも本報と同様の傾向が観察されているという。

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小児ADHDの作業記憶に対して最も好ましい運動介入は〜ネットワークメタ解析

 注意欠如多動症(ADHD)は、小児によくみられる神経発達障害であり、作業記憶障害を伴うことが多い疾患である。最近、小児ADHDの認知機能改善に対する潜在的な戦略として、運動介入が注目されている。しかし、さまざまな運動介入が作業記憶に及ぼす影響は、明らかとなっていない。中国・北京師範大学のXiangqin Song氏らは、さまざまな運動介入が小児ADHDの作業記憶に及ぼす影響を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychology誌2025年1月27日号の報告。 関連する研究を、各種データベース(PubMed、Cochrane、Embase、Web of Science)より包括的に検索した。包括基準および除外基準に従ってスクリーニングした後、17件の研究が分析対象に特定された。ネットワークメタ解析を実施してデータを統合し、認知有酸素運動、球技、心身運動、インタラクティブゲーム、一般的な有酸素運動が小児ADHDの作業記憶に及ぼす影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・小児ADHDに対するさまざまな種類の運動介入効果には、有意な違いが認められた。・最も有意な効果を示した運動介入は、認知有酸素運動(標準化平均差[SMD]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.44〜1.00)、次いで球技(SMD:0.61、95%CI:−0.12〜1.35)であった。・心身運動とインタラクティブゲームは、中程度の効果を示したが、一般的な有酸素運動の効果は比較的小さかった。 【認知有酸素運動】SMD:0.72、95%CI:0.44〜1.00 【球技】SMD:0.61、95%CI:−0.12〜1.35 【心身運動】SMD:0.50 【インタラクティブゲーム】SMD:0.37 【一般的な有酸素運動】SMD:0.40、95%CI:0.19〜0.60・SUCRA分析では、作業記憶の改善に対し、認知有酸素運動が最も有用であることが確認された。・メタ回帰分析では、介入頻度および総介入期間は、認知有酸素運動の効果に有意な影響を及ぼすことが示唆された。他の変数の影響は認められなかった。 著者らは「認知有酸素運動は、小児ADHDの作業記憶改善に最も効果的である運動介入であることが示唆された。介入頻度を上げ、介入期間を長くするほど、その介入効果は高まる可能性がある。今後の研究において、これらの因子の影響を調査し、調整因子の役割を検証するためにも、より大きなサンプルサイズによる検討が必要とされる」と結論付けている。

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介護が必要となった主な原因(男女別)

介護が必要となった主な原因(男女別)視覚・聴覚障害1.1%呼吸器疾患3.4%視覚・聴覚障害 1.0%呼吸器疾患 1.3%脊髄損傷 1.6%その他11.4%脳卒中25.2%脊髄損傷3.4%男性がん3.9%認知症13.7%パーキンソン病5.4%n=3万4,777人パーキンソン病2.5%女性骨折・転倒17.8%脳卒中11.2%関節疾患12.7%高齢による衰弱8.7%骨折・転倒6.6%認知症18.1%がん 2.1%心臓病4.4%糖尿病5.2%関節疾患 心臓病5.4% 6.5%その他10.0%糖尿病 1.7%高齢による衰弱15.6%n=6万5,223人厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査」第023表「介護を要する者数、介護が必要となった主な原因・通院の有無・性・年齢階級別」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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3年間の長期抗CGRPモノクローナル抗体治療は、片頭痛の経過にどう影響するか

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体を3年以上使用することが片頭痛の経過にどのような影響を及ぼすかを判断するため、イタリア・IRCCS San Raffaele RomaのPiero Barbanti氏らは、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体治療を3回繰り返した後、治療を中止した際の片頭痛頻度を明らかにするため、多施設プロスペクティブ実臨床試験を実施した。Journal of Neurology誌2025年1月25日号の報告。 対象は、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体の皮下投与を1サイクルとし、3回完了した高頻度片頭痛または慢性片頭痛患者212例。中止期間(D1、D2、D3)は、3回の治療サイクル(T1、T2、T3)後、最初の1ヵ月間と定義した。主要エンドポイントは、D2と比較したD3での50%以上の治療反応率とした。副次的エンドポイントには、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、1ヵ月当たりの鎮痛薬摂取量(MAI)、数値評価尺度(NRS)、頭痛影響テスト(HIT-6)、D3とD1およびD2の50%以上治療反応率の変化、慢性片頭痛の再発率、薬物過剰使用の再発率を含めた。 主な結果は以下のとおり。・D3では、D2と比較し、50%以上の治療反応率、MMD、MHD、MAI、NRS、HIT-6の有意な改善(p<0.001)、慢性片頭痛および薬物過剰使用の再発率の低下が認められた。 【50%以上の治療反応率】77.8%vs.53.8% 【MMD】−2.1±1.7 【MHD】−2.9±2.4 【MAI】−2.6±2.4 【NRS】−0.7±1.3 【HIT-6】−7.2±5.9 【慢性片頭痛の再発率】2.3%vs.18% 【薬物過剰使用の再発率】1.3%vs.10.1%・D3では、D1と比較し、MMD、MHD、MAI、NRS、HIT-6のより大きなベネフィットが示され(p<0.001)、50%以上の治療反応率が高く、慢性片頭痛および薬物過剰使用の再発率の低下が認められた。 【50%以上の治療反応率】77.8%vs.25.0% 【MMD】−2.6±1.9 【MHD】−5.8±3.3 【MAI】−4.9±3.4 【NRS】−1.0±1.6 【HIT-6】−9.4±7.0 【慢性片頭痛の再発率】2.3%vs.67.7% 【薬物過剰使用の再発率】1.3%vs.34.2% 著者らは「3年間の抗CGRPモノクローナル抗体治療により、50%以上の治療反応率は徐々に増加し、片頭痛の負担が大幅に軽減されることが明らかとなった。抗CGRPモノクローナル抗体による片頭痛治療を長期的に実施することで、片頭痛の経過が好転する可能性が示唆された」としている。

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楽観的な人ほど貯蓄額が多い?

 物事の明るい面を見ることは、気持ちを前向きにさせるだけでなく貯蓄にも役立つ可能性のあることが新たな研究で示唆された。米コロラド大学ボルダー校のJoe Gladstone氏と米ニューハンプシャー大学のJustin Pomerance氏らによる研究で、楽観性が高い人ほど貯蓄額が多い傾向があり、この傾向は特に低所得者層で顕著であることが示唆された。この研究結果は、「Journal of Personality and Social Psychology」1月号に掲載された。 Gladstone氏は、「楽観主義は、それをかけると全てが素晴らしく見えてしまう『バラ色のメガネ』であり、将来のための貯蓄を減らす原因になる可能性があると考えられがちだ。しかし、本研究では、特に経済的困難に直面しているときには、楽観主義が貯蓄に役立つ重要な心理的資源である可能性が示唆された」と話している。 この研究でPomerance氏らは、米国、英国、およびヨーロッパ14カ国で実施された8件の調査(参加者の総計14万3,461人)のデータを用いて、楽観主義(素質的楽観主義)と貯蓄行動との関連を検討した。いずれの調査でも、「将来について常に楽観視している」や「全体的に悪いことよりも良いことの方が多く起こると思っている」などの質問を通して調査参加者の楽観主義が評価されていた。8件の調査のうち、3件はある時点でのみ調査を行う横断調査であり、残りの5件は同じ参加者を追跡して複数回の調査を行う縦断調査であった。 その結果、楽観性の高い参加者ほど、概して貯蓄額も多いことが明らかになった。例えば、貯蓄額の中央値が8,000ドル(1ドル152円換算で121万6,000円)の世帯の場合、楽観性の1標準偏差増加は貯蓄の1,352ドル(約20万5,500円)の増加と関連することが示された。この結果は、年齢、性別、交際状況、子どもの有無、小児期の社会経済的状況、健康状態、雇用状況、および「ビッグファイブ(開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向)」など、貯蓄と楽観主義の両方に影響を与える可能性がある因子を調整した後も変わらなかった。 さらに、楽観主義が貯蓄行動に与える影響は、低所得者層で最も強いことも明らかになった。この結果についてGladstone氏は、「毎月の給料を使い切るような生活をしている人は、貯蓄に意味を見出せないかもしれない。しかし、楽観的な見通しがあれば、たとえ今、大変な状況に置かれていても、貯蓄しようという動機が生まれる可能性はある」と述べている。 研究グループは、「本研究結果は、特に低所得者層の貯蓄を増やすことを目的とした金融教育プログラムや政策に影響を与える可能性がある。従来の金融リテラシー訓練に楽観主義を育む手法を組み合わせることで、貯蓄行動を促す効果を高められる可能性がある」との見方を示している。Gladstone氏は、「最終的には、将来に対する希望と貯蓄を賢く管理するスキルを組み合わせることが、より多くの人々が経済的安定を築くための鍵となるかもしれない」と米国心理学会(APA)のニュースリリースで述べている。

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第233回 コロナ罹患後症状の診療手引きがアップデート-支援制度を明記/厚労省

<先週の動き>1.コロナ罹患後症状の診療手引きがアップデート-支援制度を明記/厚労省2.高額療養費の引き上げを凍結、参院選への影響か-与党内にも異論噴出/政府3.2026年度診療報酬改定、医療機関の経営危機対応が最優先課題/三保連4.自治医大卒業生が修学資金返還を巡り提訴、「契約は憲法違反」と主張/自治医大5.吉祥寺南病院、事業継承が決定 救急・災害医療の機能維持へ/東京都6.殺人隠蔽のみちのく記念病院、元院長ら2人を起訴/青森県1.コロナ罹患後症状の診療手引きがアップデート-支援制度を明記/厚労省厚生労働省は2025年2月26日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第3.1版」を公開した。前回の改訂から1年4ヵ月ぶりで、各章の要点をまとめた「Point」を追加し、罹患後症状が続く場合に利用できる支援制度の解説や患者向け説明資料を付録として掲載した。改訂では、罹患後症状の疫学に関する最新知見が追加され、大阪府八尾市の調査結果を基に、感染者の罹患後症状の割合が3ヵ月後の14.3%から18ヵ月後には5.4%に低下する傾向が示された。また、罹患後症状ごとの診療アプローチを整理し、プライマリ・ケアの対応や専門医への紹介基準などを明確化した。さらに、労災保険や障害年金、自立支援医療制度など、患者が利用できる支援制度を詳述し、厚労省は2月27日に関連Q&Aも改訂した。今回の改訂により、医療従事者の診療支援強化と患者への適切な情報提供が期待されている。参考1)新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第3.1版(厚労省)2)新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A(同)3)罹患後症状が続く場合に活用できる支援制度を追記「コロナ罹患後症状のマネジメント」が1年4ヵ月ぶりに改訂(日経メディカル)4)新型コロナウイルス感染症に係る罹患後症状 (いわゆる後遺症)実態把握調査結果について(愛知県)2.高額療養費の引き上げを凍結、参院選への影響か-与党内にも異論噴出/政府政府は3月7日、今年8月に予定していた高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げを見送ることを決定した。患者団体の強い反発に加え、与野党からの批判が高まり、夏の参院選への影響を懸念する声が強まったことが背景にある。当初、政府は医療費の増大に対応するため、2025年8月~2027年8月にかけて3段階で負担上限を引き上げる方針だった。しかし、患者団体から「治療を続けられなくなる」との訴えが相次ぎ、政府は2月末に2026年以降の引き上げを再検討すると発表した。それでも批判は収まらず、与党内でも選挙への悪影響を懸念する声が拡大。公明党や自民党の参議院議員が見直しを求め、政府は最終的に引き上げそのものを見送る判断を下した。石破 茂首相は7日夜、患者団体と面会し、「8月の改定を含め、全体の見直しを見合わせる。秋までに改めて方針を検討する」と述べた。患者団体の代表は「われわれの声が一定程度届いた」と評価する一方で、再検討の期間が短く、当事者の意見が十分反映されるか懸念を示した。政府がこの制度の見直しを進めた背景には、医療費の増加と社会保障費の持続可能性確保の問題がある。高額な医薬品の普及により高額療養費の支給額は増加傾向にあり、政府は負担区分の細分化や負担上限の引き上げによって、財政の健全化を図る考えだった。しかし、拙速な決定プロセスが批判を招き、結果的に3度目の方針転換を余儀なくされた。今後の焦点としては、秋までに政府がどのような新方針を打ち出すかにある。代替財源の確保や制度の持続可能性を維持しつつ、患者の負担を最小限に抑える方策が求められる。また、予算案の再修正が必要となるため、国会での審議にも影響が及ぶ見通しだ。参考1)石破首相、高額療養費上げ見送り=今秋までに新方針検討-25年度予算案再修正へ(時事通信)2)高額療養費制度 負担上限額 ことし8月の引き上げ見送りへ 政府(NHK)3)高額療養費の負担引き上げ見送り、参院選への影響考慮…新年度予算案は衆院で再議決の異例の展開へ(読売新聞)4)高額療養費上げ見送り、拙速議論のツケ 医療改革に逆風(日経新聞)5)高額療養費の負担増見送り表明、石破首相 秋までに改めて方針を検討・決定へ(CB news)3.2026年度診療報酬改定、医療機関の経営危機対応が最優先課題/三保連3月6日に開催された三保連合同シンポジウムで、2026年度の診療報酬改定において、病院の経営危機への対応が最優先課題であるとの声が相次いだ。内科系学会社会保険連合(内保連)の小林 弘祐理事長は「病院が赤字で潰れてしまえば、良い医療を提供することもできない」と強調し、医療従事者の人件費高騰や医療材料のコスト増加が経営を圧迫している現状を指摘した。政府が25年度予算案で社会保険料の負担軽減を目的に医療費削減を打ち出したことについて、関係者からは強い警戒感が示された。外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の瀬戸 泰之会長も「医療機関が経営危機にあるのは間違いない」と述べ、診療報酬の適切な引き上げを求めた。看護分野では、看護系学会等社会保険連合(看保連)が専門性の高い看護師を手術室や救急外来に配置することへの評価を求める方針を示し、具体的な提案を月内に厚生労働省へ提出する予定だ。また、がん患者への妊孕性相談指導の評価など、看護ケアの質向上に向けた要望も出された。外科分野では、外保連の渡邊 雅之実務委員長が、ロボット支援手術の評価向上や整形外科の手術コード(Kコード)の精緻化を求める方針を示した。現行の評価では、ロボット支援手術は従来の手術法に比べて収益が低く、医療機関の負担が大きいことが問題視されている。また、物価高騰や人件費増加が病院経営に大きな影響を与えており、診療報酬の総枠拡大が不可欠とされた。全国医学部長病院長会議の相良 博典会長は、高額医療機器の更新が困難になっている現状を指摘し、「医療の質を維持するためには診療報酬の適切な引き上げが必要」と述べた。今後、三保連は診療報酬改定に向けた提言をまとめ、政府への働きかけを強める方針だ。医療機関の経営基盤を強化し、持続可能な医療提供体制を確保するため、適切な診療報酬改定が求められる。参考1)令和8年度診療報酬改定に期待するもの 三保連の重点要求項目(三保連)2)経営危機への対応を最優先に、学会から指摘相次ぐ 三保連シンポで(CB news)3)2026年度診療報酬改定で医療技術の適切な評価・点数引き上げを行い、病院経営の持続性を確保せよ-内保連・外保連・看保連(Gem Med)4.自治医大卒業生が修学資金返還を巡り提訴、「契約は憲法違反」と主張/自治医大自治医科大学を卒業した医師が、同大学の修学資金貸与制度の違法性を主張し、自治医大と愛知県を相手取り訴訟を提起した。訴えの内容は、修学資金の返還義務の不存在確認と国家賠償請求である。自治医大の修学資金貸与制度は、医師不足地域の医療確保を目的とし、学生に修学資金を貸与し、卒業後に指定された公立病院などで一定期間勤務することで返還が免除される仕組み。しかし、途中で指定病院を辞職した場合、修学資金と損害金を一括返済する義務が発生する。原告の医師は、大学在学中に約2,660万円を貸与されたが、家庭の事情により指定勤務先を退職しようとした。しかし、自治医大や愛知県は退職を認めず、最終的に一方的に退職を迫られたと主張。その後、大学側から修学資金と損害金の一括返済を求められたため、契約条項の憲法違反や労働基準法違反を理由に訴訟を起こしたもの。代理人の弁護士は「指定勤務を強制することは憲法が保障する居住・移転の自由に反する可能性がある」と指摘し、修学資金返還義務の法的根拠の正当性を問うている。一方、自治医大は公式声明で「本学の修学資金制度は、地域医療を確保するために合理的かつ重要な制度であり、関係法令にも適合している」と反論。これまで原告に対し返還請求の説明を行ってきたとした上で、訴訟の提起を「遺憾である」と表明し、法廷で制度の正当性を主張していく方針を示している。今回の訴訟は、地域医療を担う医師確保の必要性と、医師のキャリア選択の自由とのバランスが問われる問題として、今後の医療政策にも影響を与える可能性がある。参考1)本学卒業生からの訴訟提起に関する本学の見解(自治医大)2)「無知な受験生を囲い込む、悪魔のような制度」自治医大の修学金貸与制度巡り卒業生の医師が提訴(弁護士JPニュース)3)Dr.NKMR〈自治医大卒医師/弁護士志望の法科大学院生/アンチ地域枠制度〉@自治医大・愛知県を提訴5.吉祥寺南病院、事業継承が決定 救急・災害医療の機能維持へ/東京東京都武蔵野市の吉祥寺南病院は老朽化と建設費高騰のため2024年9月に診療を休止していたが、社会医療法人社団・東京巨樹の会が事業を継承することが決定した。東京巨樹の会は関東や九州で病院を運営するカマチグループに属し、今後、既存の建物を取り壊し、新たな病院を建設する予定。新病院は、これまでの二次救急医療機関や災害拠点連携病院としての役割を引き継ぎ、病床数も増やす方針だが、開院時期は未定。吉祥寺エリアでは過去10年間で病院の閉鎖が相次ぎ、救急病床が大幅に減少していたため、地域住民の不安が高まっていた。小美濃 安弘市長は「地域医療の再建に向け、市としても支援を行う」と述べ、事業継承を歓迎した。市民からも「医療機関の減少は困る」「存続が決まり安心した」との声が上がっている。東京巨樹の会は「地域とともに、救急や災害対応に強い病院を作りたい」とし、早期の診療再開を目指している。参考1)“存続危機”の吉祥寺南病院、事業後継者が決定 診察再開時期は未定(TOKYO MX)2)吉祥寺南病院 品川の法人が事業継承 二次救急機能も受け継ぐ(東京新聞)3)休止の東京・吉祥寺南病院、東京巨樹の会へ事業承継(日経新聞)6.殺人隠蔽のみちのく記念病院、元院長ら2人を起訴/青森県青森県八戸市の「みちのく記念病院」で発生した患者間の殺人事件について、青森地検は7日、当時の院長・石山 隆被告(61)と主治医である弟の哲被告(60)を犯人隠避罪で起訴した。両被告は、2023年3月、入院患者の男性(73)が別の患者に殺害されたことを知りながら警察に通報せず、虚偽の死亡診断書を作成し、事件を隠蔽したとされる。死亡診断書の名義人となった医師は認知症を患い、実際には意思疎通が困難な状態であったことも明らかになった。青森県と八戸市は病院に対して立ち入り検査を実施し、医師の勤務実態と記録の不一致、病室の定員超過、許可を得ない設備変更などの問題を確認した。7日には病院に対し改善勧告を行い、勤務証明書類の提出や病床数の適正化を求めた。また、専門家は精神科病棟の特性として外部のチェックが入りにくいことを指摘し、病院内での権力乱用が放置されていた可能性を示唆した。さらに、行政の監査が書類確認に止まり、実質的な医療の質の検証が行われていなかった問題点も浮かび上がった。この病院では、死亡診断書を専門に作成する「みとり医」と呼ばれる高齢医師を雇用し、適切な診療を行わないまま死亡診断書を発行していた疑いもある。警察の捜査では、この名義の診断書が200件以上確認され、その7割が「肺炎」とされていた。事件の背景には、医療機関の管理体制の不備や、社会的に「必要悪」として機能してきた病院の構造的問題がある。地域医療の維持と患者の人権保護の両立が求められる中、今後の行政の対応が注視されている。参考1)病院内殺人隠蔽事件 死亡診断書専門の高齢“みとり医”も(NHK)2)殺人隠蔽の「みちのく記念病院」元病院長らを起訴 青森県と市が改善勧告も(産経新聞)3)患者殺害隠蔽で虚偽診断書 病院元院長ら2人を犯人隠避罪で起訴(毎日新聞)

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