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てんかんとQOL

てんかん患者のQOLは、患者の毎日の生活において重要な役割を果たし、QOLの改善には、障害や困難の重症度の緩和が大きく影響する。兼子 直氏(北東北てんかんセンター センター長)は「てんかんとQOL」と題して講演を行い、患者の状況(知的障害の有無、介護者とのコミュニケーション、身体障害による歩行障害の有無、施設入居の有無、家族による世話など)によってQOLに影響を与える因子の重要度は異なるとした。そのうえでQOLの改善を考慮するにあたり、個々の患者によって努力を集中すべき領域が異なることを認識する必要性を訴えた。また、てんかんにおけるQOLの予測因子について言及し、これまでの研究から予測因子として、「心理的要因、抗てんかん薬の有害な影響、発作の有無、知的障害および身体的併存症」などが挙げられていることを紹介した。このうち発作に関しては、発作が完全に抑制される場合、ほとんどのてんかん患者のQOLは一般人口のQOLとほぼ変わらないことが報告されているなど、発作抑制の重要性が示されている。また、抗てんかん薬の有害な影響および併存症としてのうつ病は、活動性てんかん患者の健康状態に最も悪い影響を及ぼすと考えられており、とくに、発作が抑制されていないてんかん患者では、これらの因子は発作頻度よりもQOLとのより強い関連が示されているとして、重視すべき因子であると述べた。兼子氏は最後に、「個々の患者はそれぞれに特徴があり、特別なケアの知識を必要としている。個別の患者の能力障害と環境との不均衡を最小にするよう、多くの困難な課題に立ち向かうべきである」とし、講演を結んだ。(ケアネット 萩原 充)

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韓国におけるてんかんの名称変更

韓国では、てんかんはかつて「癇疾」との名称で呼ばれ、てんかんに対する偏見も存在し、一般人、患者を含めて多くの韓国人にとって、てんかんは触れたくない病気、すなわち禁じられた病気とされてきた。最近は一般的な意識は改善傾向にあるものの、地方ではいまだに偏見の改善の意識は乏しいという。このような状況を改善すべく、韓国では癇疾の名称を変更するプロジェクトが行われ、現在は「脳電症」との名称に変更されている。Byung In Lee氏(延世大学校医科大学 神経内科学 教授)はこのプロジェクトの趣旨、進捗について講演した。「癇疾」もしくはかつて日本で用いられていた「癲癇」という名称は、北東アジアで何千年にもわたって使用されてきた経緯があり、その文字の意味から誤った概念が固定されてしまっている。Lee氏は、「疾患に対する誤った概念は不適切な疾患名を招き、不適切な疾患名はさらに概念を悪化させてしまい、疾患への偏見につながる」とし、そのため適切な名称を付与することで、てんかんに対する偏見を変えていく試みに至ったことを説明した。こうして、「てんかんの名称変更プロジェクト」が「てんかん名称変更事業特別委員会」のもとで進められた。新名称として、当初は10の候補が挙がったという。新名称を選択するにあたっては、癇疾という用語のもつネガティブな意味から離れ中立的であることてんかんの科学的根拠(脳内の神経細胞の異常な電気現象)を適切に反映すること多くの類似する用語(けいれん、発作、スパズムなど)と明確に区別できること名詞、形容詞として簡単に使えること国際的にも受け入れられる専門用語であることの4点を基準に選考。2009年6月、最終的に韓国てんかん学会総会にて新名称として「脳電症」が採用された。その後、2010~2011年の間に韓国の他の関連学会も公式名称として脳電症を承認したほか、韓国国会でも、脳電症は癇疾に代わる法令用語として承認され、名称変更過程は終了した。すでに、名称変更に続く取り組みとして、脳電症を公式用語としていくための活動を始めているという。Lee氏は講演を終えるにあたり、「てんかんへの偏見に抗する長い道のりにおいて、名称変更は始まりに過ぎず、これから長期間にわたり取り組むべき課題が山積している」と、偏見をなくすために行動を継続していくことの重要性を訴えた。(ケアネット 萩原 充)

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Stand up for epilepsy with one voice

国際抗てんかん連盟(ILAE)は、「てんかんが生活の妨げとなることのない世界」を目指して1909年に設立された組織である。ILAEで前理事長を務めたSolomon L. Moshé氏(アルバート・アインシュタイン医科大学 教授)は、てんかんをめぐる現在の課題とILAEの今後の取り組みについて講演した。ILAEは、世界各国の医療従事者・患者とそのケアを担う人々・行政機関・一般市民に対し、てんかんに関する教育と研究リソースを提供することを使命とし、「医療従事者にてんかんの予防・診断・治療・研究のための最新の知見を提供すること」、「最適かつ包括的なてんかんケアを支援すること」を目標として活動を行ってきた。しかし、現状では問題が山積しているという。てんかんは、一般の人々からの理解が乏しく、偏見の対象となりやすい疾患である。患者やその家族は、自分たちの状況を人目にさらしたがらず、このことは患者の治療・ケア・早期診断・医学研究・人権擁護―すなわち患者・家族の生活そのものに影響を与えている。また、研究・薬剤開発においては、「てんかん予備群を同定できる信頼性の高いバイオマーカーがなく、てんかんの予防医療を開発するうえでの重大な制約となっている」、「過去20年間に開発された薬剤は薬剤抵抗性てんかんにはほとんど効果がない」などの壁に突き当たっている。Moshé氏は、今後、治療・ケアの面での課題を国際的に解決していくには、「てんかん患者、NGOおよびWHO」「政府機関」「医療従事者」「研究者」の4者の連携が不可欠であることを強調。その理由として、てんかんの未知の原因の特定や新たな治療法・予防医療戦略の開発にはさらなる共同研究が必要であることを挙げ、連携により「各国の認可治療による知見への理解や専門性の高い研究活動への参加」、さらに「各国のさまざまな衛生調査・医療福祉サービスの理解」などが可能となるだろう、と展望を述べた。薬剤抵抗性てんかんについては前述のような問題はあるものの、近年の病態生理研究の進展とともに、薬剤抵抗性のメカニズムが解明されつつある。Moshé氏は、「研究が進展している今こそ、てんかんを取り巻く諸問題の改善のため、研究資金提供者を含めた関係者間の連携およびコミュニケーションが重要である」と訴え講演を結んだ。(ケアネット 萩原 充)

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日本におけるてんかん児のキャリーオーバー問題について

小児てんかんは、50~60%が小児期に発作が寛解する一方で、残りの40~50%の患者がてんかんを成人期に持ち越すキャリーオーバーの問題がある。小国 弘量氏(東京女子医科大学 小児科 教授)は、わが国におけるてんかんのキャリーオーバー問題の現状について講演した。キャリーオーバーにおいては、小児科から成人科への転科が問題となる。その時期と方法が、医師と患者・家族の双方にとって重要である。しかし、小児神経科医と神経内科医では、患者・家族との関係性、およびてんかん・併存症に対する治療の方法が異なり、現状では成人科への転科に障壁が存在している。小国氏は、引き継ぎ・転科においては、双方の科が関与するのが最良の策であると訴えた。続いて小国氏は、てんかんのキャリーオーバーにおける現状について、小児神経科医および神経内科医へのアンケート結果を紹介した。小児神経科医へのアンケート結果からは、診療しているてんかん患者のうち27%が成人患者と、小児神経科医が多数の成人患者の診療に関わっている状況が報告された。また、成人患者の診療においては、小児神経科医の76%が精神・心理的合併症の治療に困難を感じていることや、患者・家族が転科を嫌がったり、紹介できる成人科のてんかん専門医が地域にいないために、小児神経科医が成人科への転科を勧めていないという実態を紹介した。神経内科医へのアンケート結果では、神経内科医の46%がキャリーオーバー問題を認知しており、78%がてんかんの診療に困難を感じていた。とくにキャリーオーバー患者に対しては、「小児期からの経過が把握しにくい、小児期特有のてんかん症候群に不慣れである」などの理由のため、引き受け時に困難を感じるとの回答がみられたという。小国氏は、これらのアンケートにみられた、成人科のてんかん専門医が不足している問題の背景として、「成人のてんかん診療を担う科として精神科から神経内科への移行が遅れた」というわが国特有の伝統的な医療制度が原因であると指摘。「今後、転科をスムーズにするためのシステムの確立には、てんかん診療に携わる複数の診療科間の連携に加え、全国規模のてんかん教育活動が急務である」と訴え、講演を締めくくった。(ケアネット 萩原 充)

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ドパミンD2受容体占有率が服薬に影響?:慶應義塾大学

 慶應義塾大学精神・神経科学教室の竹内 啓善氏らは、Clinical Antipsychotic Trials in Intervention Effectiveness(CATIE)のデータを基に、非定型抗精神病薬の血漿中濃度から推定されるドパミンD2受容体の占有率と患者の服薬態度との関連について検討した。その結果、非定型抗精神病薬の種類により傾向は異なるものの、ドパミンD2受容体占有率が統合失調症患者の服薬態度に影響を及ぼす可能性を示唆した。Schizophrenia Research誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告。ドパミンD2受容体占有率とDAI-10スコアの関連を371例で解析 本研究は、統合失調症患者において、血漿中の非定型抗精神病薬濃度から推定されるドパミンD2受容体の占有率と主観的な体験/服薬態度との関連を、横断的かつ縦断的に評価することを目的としたものであった。解析に用いたCATIEの横断的データの対象は、治療開始6ヵ月後にDrug Attitude Inventory(DAI-10)による評価を完了し、血漿中抗精神病薬濃度を測定できた、リスペリドン、オランザピンまたはジプラシドン(国内未承認)の投与を受けている371例であった。DAI-10総スコアと血漿中濃度から推定されるドパミンD2受容体占有率との関連について、スピアマン順位相関を用いて解析した後、重回帰解析を行った。さらに、DAI-10スコア変化とドパミンD2受容体占有率との関連を明確にするため、6~12ヵ月の間に抗精神病薬を増量した45例の縦断的データを解析した。血漿中抗精神病薬濃度に基づく平均ピーク濃度とドパミンD2受容体占拠のトラフ濃度の推定は、母集団薬物動態解析により行った。 ドパミンD2受容体の占有率と主観的な体験/服薬態度と主な評価は以下のとおり。・横断的データにおいて、ジプラシドン投与患者で、ドパミンD2受容体占有率とDAI-10総スコアとの間に正の関連が認められた(rs=0.395、p=0.001)。・一方、縦断的データにおいて、オランザピン投与患者でドパミンD2受容体占有率とDAI-10総スコアとの間に負の関連が認められた(rs=-0.534、p=0.010)。・リスペリドン投与患者、また横断的および縦断的データの両方の点からみた全体においても、有意な関連は認められなかった。・統合失調症患者では、ドパミンD2受容体占有率が主観的な体験/服薬態度に影響を与える可能性がある。抗精神病薬の種類により傾向が異なるため、さらなる検討が必要である。

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SSRIで著効しない強迫性障害、次の一手は

 強迫性障害は、WHOが指摘するところの、最も手立てのない疾患の一つである。セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)は強迫性障害の治療薬としてFDAで承認されている唯一の薬剤であるが、SSRI単独で症状を最小限にできる患者は少ない。このような例には、抗精神病薬またはexposure(強迫行為のきっかけとなる刺激への曝露)とritual prevention(強迫行為の回避)(EX/RP)からなる認知行動療法を追加することが、プラクティスガイドラインで推奨されている。米国・コロンビア大学のHelen Blair Simpson氏らは、強迫性障害患者へのSSRI治療において認知行動療法を追加することの効果について、ランダム化臨床試験にて検討した。その結果、exposureとritual prevention(EX/RP)の追加は、リスペリドンならびにプラセボの追加と比較して、症状のほか見識、機能およびQOLの改善に優れることを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2013年9月11日号の掲載報告。 本研究では、成人強迫性障害の初回治療としてのSSRI治療において、抗精神病薬による強化療法、EX/RPの追加およびプラセボとを無作為化試験で比較検討した。2007年1月から2012年8月までに、強迫性障害と不安障害を専門とする外来クリニック2施設において、試験登録12週以前にSSRIを服用したにもかかわらず中等度以上の強迫性障害を認める患者(18~70歳)を適格として実施された。適格例163例のうち100例を、リスペリドン群(40例)、EX/RP群(40例)、またはプラセボ群(20例)に無作為に割り付け、86例が試験を完了した。SSRIを同量で維持している期間中に、リスペリドン(最大4mg/日)の8週間投与群、EX/RP群(1週間に2回、17セッション)、またはプラセボ群に無作為化し、独立評価委員会による4週間ごとの評価が行われた。主要評価項目は、エール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度(Y-BOCS)によるOCD重症度とした。 主な結果は以下のとおり。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して8週目におけるY-BOCSスコア減少が有意に大きいことが、混合効果モデルにより示された(対リスペリドン 平均[SE]:-9.72[1.38]、p<0.001/対プラセボ 同-10.10[1.68]、p<0.001)。なお、リスペリドン群とプラセボ群間で有意な差は認められなかった(平均[SE]:-0.38[1.72]、p=0.83)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して反応性が良好であった(Y-BOCSスコアが25%以上減少した割合:EX/RP群80%、リスペリドン群23%、プラセボ群15%、p<0.001)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して症状を最小限に抑えられた患者の割合が多かった(Y-BOCSスコア12以下:EX/RP群43%、リスペリドン群13%、プラセボ群5%、p=0.001)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して見識、機能およびQOLの改善においても優れていた。・SSRIへのEX/RPの追加は、リスペリドンまたはプラセボを追加した場合と比較して優れていた。・以上を踏まえて著者は「SSRI投与中で臨床的に重大な症状が続いている強迫性障害患者に対しては、抗精神病薬を投与する前に、有効かつ問題となる有害事象プロファイルが少ないEX/RPの適用を考慮すべきである」と結論している。関連医療ニュース 難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」/a> なぜ?第二世代抗精神病薬投与による“強迫症状”発現機序 自閉症スペクトラム障害に対するSSRIの治療レビュー

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若年発症統合失調症への第二世代抗精神病薬治療で留意すべき点

 統合失調症患者は一般集団と比較して寿命が短く、その主な死亡原因として心血管疾患が関与している。一方で、第二世代抗精神病薬(SGA)の使用は、有意な体重増加と代謝性副作用と関係していることが知られるが、特定の診断群、とくに若年発症統合失調症における情報は限定的であった。オーストラリア・Orygen Youth HealthのBrian O'Donoghue氏らによる検討の結果、若年発症統合失調症へのSGA治療では、代謝性の副作用に関する定期スクリーニングの必要性が強調されるとともに、肥満症やメタボリック症候群に対する予防および治療の介入が必要であることが報告された。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2013年8月22日号の掲載報告。 研究グループは、若年発症統合失調症の初発エピソードを有した未治療の小児および若者コホートについて、SGA(とくにオランザピン、リスペリドン、クエチアピン)の代謝性副作用について調査した。BMI、血清コレステロール値、同トリグリセリド値を、ベースラインと追跡中央値7ヵ月時点で測定し検討した。 主な結果は以下のとおり。・コホート被験者は合計49例であった。そのうち追跡調査が完了したのは36例(74%)であった。・SGA治療開始後、任意に抽出したコホートにおいて、BMI、トリグリセリド、コレステロールの有意な上昇がみられた。・小児と若者の3人に1人は、トリグリセリドとコレステロールの値が異常値であった。用量依存反応はみられなかった。・オランザピンとクエチアピンは、トリグリセリドの上昇がより大きかった。・以上を踏まえて著者は、「若年発症統合失調症では、代謝性副作用について定期スクリーニングの必要性が強調されるとともに、肥満症やメタボリック症候群に対する予防および治療の介入が必要である」と結論した。関連医療ニュース 若年者への抗精神病薬投与、2型糖尿病リスクが3倍に 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査 抗精神病薬治療中の若者、3割がADHD

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ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか

 ヨガは、うつ病患者またはうつレベルが高い人の補助的治療の選択肢となりうることが、ドイツ・デュイスブルグ-エッセン大学のHolger Cramer氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、示された。心身医学的介入は、うつ病への対応として一般的に用いられており、なかでもヨガは最も高頻度に用いられる心身医学的介入の1つである。Depression and Anxiety誌オンライン版2013年8月6日号の掲載報告。 研究グループは、2013年1月時点でのMedline/PubMed、Scopus、Cochrane Library、PsycINFO、IndMEDを介して、うつ病障害を有する患者またはうつレベルが高い人に対するヨガ介入の無作為化比較試験(RCT)を検索した。主要アウトカムは、うつ病重症度と寛解率、副次アウトカムは、不安症、QOL、安全性についてであった。 主な結果は以下のとおり。・12件のRCT、被験者合計619例が解析に組み込まれた。3件のRCTは、バイアスリスクが低かった。・うつ病重症度に関しては、ヨガのほうが通常ケアと比較して、わずかだが短期的効果のエビデンスが認められた(標準化平均差[SMD]:-0.69、95%信頼区間[CI]:-0.99~-0.39、p<0.001)。・リラクゼーション法との比較(SMD:-0.62、95%CI:-1.03~-0.22、p=0.003)、また有酸素運動との比較(同:-0.59、-0.99~-0.18、p=0.004)に関するエビデンスは限定的であった。・不安症に関して、リラクゼーション法と比較したヨガの短期的効果のエビデンスも限定的であった(同:-0.79、-1.3~-0.26、p=0.004)。・サブグループ解析では、うつ病性障害を有する患者、うつレベルの高い人への効果に関するエビデンスが示された。・長期的効果についてのメタ解析は、RCTの不足と不均一性により実行できなかった。また安全性については、データ報告をしたRCTがなかった。・上記を踏まえて著者は、「解析に含んだ試験には方法論的欠陥があるが、ヨガはうつ病患者およびうつレベルの高い人に対する補助的治療の選択肢と考えられた」と結論している。関連医療ニュース 1日1杯のワインがうつ病を予防 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学  担当者へのご意見箱はこちら

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成人の慢性疼痛患者 6人に1人は小児期から

 小児期の慢性疼痛は成人期になっても続く場合があることが、米国・ミシガン大学のAfton L. Hassett氏らのアンケート調査で確認された。成人の慢性疼痛患者の6人に1人は小児期または青年期に慢性疼痛の既往があり、こうした患者の多くは広範痛で、神経障害を来しており、精神疾患や身体機能悪化を伴う傾向にあったという。Journal of Pain誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告。 疼痛のため大学病院の疼痛専門クリニックを新たに受診した、成人患者1,045例(平均年齢49.5±15.4歳)を対象に、自己評価質問票を用い疼痛の特性を小児期も含めて調査した。 主な結果は以下のとおり。・成人慢性疼痛患者の約17%(176例)が小児期(または青年期)に慢性疼痛の既往があり、そのうち約80%の患者は小児期の疼痛が現在まで続いていた。・小児期慢性疼痛の既往を有する患者は、68%が女性で、85%は広範痛を有していた。・同患者は小児期慢性疼痛の既往がない患者に比べ、線維筋痛症のリスクが約3倍(オッズ比[OR]:2.94、95%信頼区間[CI]:2.04~4.23)であり、慢性疼痛の家族歴がある場合のリスクは約2倍(同:2.03、1.39~2.96)、精神疾患を有する近親者がいる場合のリスクは約3倍(同:2.85、1.97~4.11)であった。・小児期慢性疼痛の既往を有する患者は既往がない患者に比べ、疼痛に関して神経障害性疼痛をうかがわせる表現を用い(OR:1.82、95%CI:1.26~2.64)、やや身体機能状態が悪く(p=0.002)、不安が増加していた(OR:1.77、95%CI:1.24~2.52)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?

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「てんかんと社会」国際シンポジウム

2013年8月24日、国際シンポジウム「てんかんと社会」が都内にて開催された。100人に1人が発症する「てんかん」は、患者によって原因・症状・予後はさまざまであるが、てんかんへの誤解・偏見の問題はいまだに解消されていない。シンポジウムでは、てんかんへの偏見・治療・ケアに対する、国内外での取り組みについて討論された。てんかんが生活の妨げにならない社会とするための、現状の課題と今後の展望について報告する。

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てんかんと偏見 ~その本質は何か~

中里 信和氏(東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野 教授)は「てんかんと偏見 ~その本質は何か~」と題して講演を行った。てんかんは反復性の脳の異常活動(てんかん発作)を特徴とする疾患で、さまざまな臨床症状および検査所見が伴うことも忘れてはならない。有病率は約1%であり、発症率では乳幼児期と高齢期で高い。一言で「てんかん」といっても、原因や発作型、合併症、予後などは患者さんによりさまざまであり、「病名だけで一括りにできない」ことを中里氏は強調した。てんかん診療においては、問診が非常に重要であり、中里氏は病歴、生活歴などの聞き取りを含め、一人の患者さんに1時間ほどかけて診察するという。脳波検査も必須であるが決して万能ではない。理想的には入院の上、発作の瞬間を捕捉するビデオ脳波モニタリング検査が重要であるとした。てんかんでは、適切な治療で約7割の症例は発作をコントロールできるという。また、てんかんは誤解や偏見・差別と深い関係がある疾患でもある。中里氏は、Twitterで積極的な情報発信をしていることで知られており、フォロワーとのやりとりを踏まえ、誤解や偏見・差別を解消させるには教育が重要であると説いた。てんかんの患者のすべてが適切な治療を受けられれば、GNP(国民総生産)が0.4%上昇するというデータを、中里氏は最後に紹介し、てんかんの診療改革は、日本社会全体にとっても有益であることを訴え、講演を結んだ。(ケアネット 有田衣里)

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高齢化社会とてんかん

赤松 直樹 氏(産業医科大学 神経内科 准教授)は、「高齢化社会とてんかん」と題して講演を行った。まず冒頭で、てんかんはかつて「小児の疾患」と捉えられることが多かったが、高齢者人口の増加に伴い、高齢者のてんかんの発症率も増加傾向にあるという現況を紹介した。高齢者のてんかんについて、わが国における大規模研究のデータはまだないものの、米国てんかん協会(American Epilepsy Society: AES)の研究によれば、てんかん治療患者の約3分の1は高齢者であるという。高齢者てんかんで多くみられる複雑部分発作は、認知症による異常行動との鑑別が難しく、誤診される場合も多いため、結果としててんかんが見逃され、診断の遅れや誤りにつながっている。また、認知症患者ではてんかん発症リスクが10~20%と高いが、この発症率の高さはあまり知られていないようである。赤松氏は、てんかん診断のポイントについて、まず基本として「問診」と「脳波」を挙げた。また、発作型を念頭においた診断、鑑別診断も重要であり、高齢者てんかんでは初発発作から治療を開始することも多いという。また赤松氏は、高齢者てんかんの臨床的特徴を明らかにするべく、産業医科大学てんかん専門外来を受診した高齢者てんかん患者125人を対象として行った比較検討において、高齢者てんかんは65歳以上で発症する割合が高い症候群診断は、発症年齢にかかわらず側頭葉てんかんが最も多い発作型は複雑部分発作、二次性全般化発作が多いが、高齢発症では複雑部分発作の割合がより高くなる発症原因は明らかでない症例が最も多く、発症時期が高齢であるほどその確率が高い傾向にある。原因が明らかな症例では、脳血管障害が最も多い高齢発症では9割近くの症例が単剤で治療されているといった結果をデータと共に紹介した。最後に、てんかんの診断が高齢者に与える影響として、発作による転倒・骨折、内服による副作用といった「日常生活」に関するもの、偏見や不安などの「心理面」に関するものを挙げた。そして、「高齢者てんかん治療の際にはこうした高齢者特有の問題に配慮することが重要である」という言葉で講演を結んだ。(ケアネット 有田衣里)

5293.

てんかんと運転免許

てんかんなどの意識障害を伴う疾患が関係する道路交通法が可決・成立し、一定の病気*と関連して生じた交通死傷事故の処罰に関する法律をまとめた刑事法新法を策定しようとする動きがある(添付資料1)。しかし、これらの法改正がてんかんやその他の疾患に対する偏見や誤解を助長する可能性があると懸念されており、日本てんかん学会をはじめ関連学会では、これらの法改正について協議を重ねている。【道路交通法改正】2013年5月に日本てんかん学会と日本てんかん協会の共催で開かれた、緊急シンポジウム(「事故をなくしたい-病気や障害と自動車社会の共存をめざして-」)の中で、道路交通法改正に関して、「排除の論理が優先しており、実効性に疑問があるばかりか、差別社会につながりかねない。関連支援法の整備や数年後の見直しなどの付帯決議が必要である」との提言が出された。これにより、2013年6月7日衆議院本会議で可決した改正道路交通法には、付帯決議が追加された(添付資料2)。詳細な通報ガイドラインや運用基準の見直しについては、関連学会と警察庁で協議を重ねている。【刑事法新法】2013年8月に開かれた法的問題検討委員会・関連学会合同会議では、今回の刑事法新法が一定の病気*を理由に刑罰が加重されるという法律であるため、問題視する声が大きかった。これらの病気による事故率が他の要因と比較して高いという医学的根拠はなく、疾患に対する差別を助長しかねず、疾患の適切な治療を阻害しかねない。今後、関連学会の連名にて、新法の慎重な運用と付帯決議追加の要望書を提出する予定である。* 一定の病気とは、統合失調症、てんかん、再発性失神、無自覚性の低血糖症、躁うつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害をいう。添付資料1画像を拡大する添付資料2画像を拡大する(ケアネット 岸田有希子)

5294.

日本のてんかん医療と社会 ~その新しい姿をめざして~

近年、てんかんと申告せずに自動車を運転したために発生した事故が多く、虚偽回答に対する罰則を強化しようとする動きもみられている。厚生労働省「てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究」班代表の大槻泰介氏(国立精神・神経医療研究センター てんかんセンター センター長)は、「罰則強化だけでは事故を減らす解決策にならない。運転をしなければならないてんかん患者への対策と、医師によるてんかんの申告が“患者への支援”と“よりよい医療”に結びつく仕組みを考える必要がある」と訴える。大槻氏は、日本のてんかん医療における問題点は、てんかんを担当する診療科および行政の担当部署が不明確であり、これまでてんかんという疾患を中軸に据えた対策がなされてこなかったことだという。具体的には以下のような問題点が挙げられる。(1)地域保健、地域医療、専門医療の整備が不十分。(2)患者が必要とする医療・福祉・生活支援の実態が把握されていない。(3)自動車運転事故等てんかん医療が直面する社会的課題に対し、組織の枠組みを超えた適切な対応がとれない。そこで厚生労働省研究班では、医療資源の有効活用と診療レベルの向上を目的とした対策に取り組んでいる。まず、スムーズに専門医・専門施設へ紹介できるように、紹介料の加算など診療報酬への反映を含めた診療連携システムの構築を行っている。また、地域のどこで誰がどのようにてんかん治療を行っているのかを医師も患者さんも把握することができるように、てんかん診療ネットワークのサイトを構築してんかん診療モデルの提案を行っている。このような対策により、新しいてんかん医療システムの提言と実現が期待されている。最後に大槻氏は、「てんかん医療と社会は深く関わらざるを得ない。しかしながら、わが国ではてんかん医療に関わる行政の責任部署が不明確なことが問題である。そのため、日本てんかん学会には日本のてんかん医療の現状を変える強いリーダーシップが求められている。」と述べている。てんかん診療ネットワーク http://www.ecn-japan.com/(ケアネット 岸田有希子)

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うつ病に対するアリピプラゾール強化療法、低用量で改善

 大うつ病性障害(MDD)に対する低用量アリピプラゾールの強化療法について、プラセボと比べてうつ病サブスケールについては有意な改善が示されることが明らかになった。米国・マサチューセッツ総合病院のChristina Dording氏らによる検討の結果で、忍容性については身体症状の悪化がない場合に良好である可能性が示された。結果を踏まえて著者は、さらなる前向き試験において同療法がもたらす効果をMDDの症状別に検討する必要があるとまとめている。International Clinical Psychopharmacology誌2013年9月号の掲載報告。 研究グループは最近、MDDに対する低用量アリピプラゾール強化療法についての検討を行い、有意ではなくとも有益であることが認められたとした。また、二次的研究において、アリピプラゾールがケルナー症状質問票(KSQ)の4つのサブスケール(抑うつ、不安、身体症状、敵意)について改善をもたらすかを調べた。本検討では、SSRIまたはSNRIに対する十分な反応を示さなかったMDD患者221例の主要アウトカム試験のデータを再解析した。被験者は、経時的並行群間比較デザインを用いて、30日間ずつの2つのフェーズからなる次の3つの投与群、(1)試験薬(アリピプラゾール2mg/日)/ 試験薬(アリピプラゾール5mg/日)投与群、(2)プラセボ/ 試験薬(アリピプラゾール2mg/日)投与群、(3)プラセボ/ プラセボ投与群、に無作為に割り付けられ追跡された。Well-beingサブスケールとReversal Distressed Anxiety Subscalesについて、ベースラインからエンドポイントまでのKSQスコアの変化を調べた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病サブスケールについてのKSQスコア変化は、プラセボよりもアリピプラゾールのほうが有意に改善したことが示された(p=0.0327)。・不安および敵意サブスケールにおいても、アリピプラゾールの改善がプラセボよりも優れていたが、有意ではなかった。・身体症状サブスケールは、有意な変化がみられなかった。・以上のように、アリピプラゾール強化療法はプラセボと比べて、KSQのうつ病サブスケールにおいてのみ有意な改善を示した。低用量投与は、不安と敵意のスケールには十分な影響を及ぼさない可能性が示された。・低用量の良好な忍容性は、身体症状の悪化がない場合に認められる可能性があった。・MDDの症状別に、低用量アリピプラゾール強化療法の効果をより明らかにする前向き研究が必要である。関連医療ニュース アリピプラゾール治療を見極めるタイミングは何週目か 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学 抗精神病薬による高プロラクチン血症に関するレビュー

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泣かないと決めた日(続)【パワーハラスメント(差別)】

「あんたなんか辞めればいいのに」みなさんは、職場で「あんたなんか辞めればいいのに」と言われたり、そうした状況を見かけたことはありませんか?そして、そう言う人が、相手にしないわけにはいかない立場の人だったことはありませんか?このように、人間関係で優位な立場を使って行う嫌がらせやいじめは、パワーハラスメントと呼ばれます。これは、学校のいじめよりも力関係がはっきりしており、教育・指示・命令の名を利用している点で、その線引きが難しいことがあります。今回は、このパワーハラスメントをテーマに、7月号の続編として、2010年に放映されたテレビドラマ「泣かないと決めた日」を取り上げます。主人公の美樹は、新入社員として夢と希望と期待を胸いっぱいに抱えて、憧れの大企業に入社します。ところが、その職場で彼女を待ち構えていたのは、理不尽なパワーハラスメントでした。可哀想なシーンが続き、見ている私たちまでもつらくなります。彼女はくじけそうになりますが、持ち前の強さで這い上がります。そして、彼女が職場の雰囲気を変えていくのです。このドラマでは、様々な人の心の動きが描かれています。7月号では、助け合い、裏切り、噂好き、自尊心などの心のメカニズムを、新しい科学の分野である進化心理学の視点から明らかにしました。今回はさらに掘り下げて、パワーハラスメントの根源でもある心理―「なぜ人は優位に立ちたいのか?」(自己愛)、「なぜ人は誰かを悪者にするのか?」(カテゴリー化)、そして「なぜ人は調子を合わせるのか?」(同調)などの心のメカニズム―の解明に迫っていきたいと思います。そして、私たちができる具体的な取り組みについて考えていきたいと思います。パワーハラスメント―力関係により身体的または精神的な苦痛を負わせる美樹は、新人として職場に来て早々に、ぴりぴりとした空気を感じ取ります。全く歓迎されていません。そんな中、美樹の教育係となった1つ上の先輩の同僚がミスを起こします。社外秘の書類を誤って取り引き先へファックスしてしまったのです。それを美樹が見てしまいます。しばらくして発覚すると、その同僚は、みんなの前で、「コピー機(ファックス兼用)の使い方、分からなかったのよね?」と美樹に言い、すかさずそのミスを美樹になすりつけたのです。完全な濡れ衣です。しかも、他の同僚たちもその同僚に加勢します。さらには、職場のリーダーは、美樹に有無を言わさず謝罪を迫るのです。そして、けっきょく、謝罪を無理矢理させられた美樹の心は、深く傷付くのでした。この状況は、パワーハラスメントです。パワーハラスメントとは、職場などでの力関係によって身体的または精神的な苦痛を負わせることです。美樹は、その後も数々のパワーハラスメントを受け続けます(表1)。このパワーハラスメントは、以前から指摘されてきたセクシャルハラスメントも含みます。そして、このパワーハラスメントを大きな括りとして、現在では状況や加害者との関係性によって、「アカハラ(アカデミックハラスメント)」「アルハラ(アルコールハラスメント)」「ドクハラ(ドクターハラスメント)」「マタハラ(マタニティハラスメント)」など様々なネーミングが生まれています。もともとこのパワーハラスメントという言葉は、2000年に入って生まれた和製英語です。パワーハラスメントに当たる言葉として、欧米ではモラルハラスメントが一般的です。日本のモラルハラスメントは、権力や利害の関係がないはずの夫婦や家族の間のDV(家庭内暴力)などに限定されて使われることが多く、ニュアンスに違いがあります。また、児童虐待や患者虐待などの虐待は、圧倒的な力の差がある場合に起こるパワーハラスメントとも言えます。さらに広げて言えば、人種差別や男女差別などの差別は、差異によって不当な分け隔てをするパワーハラスメントともいえます。今回は、これらの全てのハラスメントを含めた広い意味として、パワーハラスメントを考えていきましょう。表1 パワーハラスメントのタイプタイプ美樹の場合能力の否定「辞めればいいのに」と嫌味を言われるリーダーから「考える頭もないわけ?」と大声で怒鳴られる企画書をくしゃくしゃに丸めて投げられる無視行事などの日程を知らされない仕事が与えられない不要な仕事を押し付けられる脅迫男性の同僚に肩をつかまれ怒鳴られる椅子を蹴られる商品の豆をぶつけられる権利の否認仕事の仕方を教えてもらえないミスを押し付けられる仕事が知らない間に変更されている個の侵害同僚のプライベートの使い走り(ただし、美樹の場合は自ら申し出ている)パワーハラスメントの3つの心理実は、美樹が入社する前にいた新人も、同じような目に遭い、心の傷を負って辞めていました。この職場では、同じことが繰り返されているのでした。もっと広げて言えば、パワーハラスメントは、職場だけでなく、学校、地域社会、そして国家でも起っています。集団という社会ができる場所では、世界中のどこの場所でも、そして人間の歴史のいつの時代にも、変わらず起こってきました。それでは、なぜパワーハラスメントが私たちに起こるのでしょうか?進化心理学的に考えれば、普遍的に存在することには、必ずそこに理由があります(究極要因)。この究極的な理由を探るため、その源となった原始の時代の私たちの心まで遡り、パワーハラスメントの根源となるとなる3つの心理―自己愛、カテゴリー化、同調をそれぞれ考えてみましょう。(1)自己愛―競争の動機付け1. 優位に立ちたい心理同僚たちは、美樹に対して無愛想で高圧的です。特に、教育係となった1つ上の先輩の同僚の当たりは、とてもきついです。美樹に不要な仕事を押し付け、遅い時間まで残業させます。指導するどころか、ミスをなすり付け、そして手柄を横取りします。また、リーダーも、美樹を追い込んでいます。部下たちの前で、美樹を一方的に厳しく叱り付けたり、部下たち全員に謝らせたり、あえて仕事を与えません。こうして、「私が上だ」「私を舐めるな」というパワー(力関係)の見せつけが露骨に起きています(威嚇、ディスプレイ)。なぜ同僚たちやリーダーは美樹をここまでして追い込むのでしょうか?それは、このように「優位に立ちたい」と思ってしまうのは、人間の闘争本能の心理だからです。これは、自己愛の心理と言えます。同僚たちにとっては、実力や経験年数が近いほど、その葛藤が強くなります。また、リーダーにとっては、罰の見せしめとして、他の部下たちへの引き締めになります。よって、美樹が惨めな思いをすればするほど、つまり美樹の自尊心が傷付けられれば傷付けられるほど、同僚たちやリーダーは自分のパワーを実感できて(万能感)、安心できるのです。さらには、ドラマの中で、同僚たちもリーダーもそれぞれ「思い通り」にならない悩みを抱えていることが明かされます。つまり欲求不満の状態です。そこから沸き起こるエネルギーが、いら立ちとして表れます。この欲求不満(ストレス)のエネルギーの発散のはけ口(置き換え)として美樹をしつこく責めることで、「思い通り」にしたいという自分のパワー(支配力)を代わりに実感しようともしているのです。表2 自己愛の二面性困った面良い面「私が上だ」「私を舐めるな」→パワー(力関係)の見せつけ(威嚇、ディスプレイ)→攻撃性「自分を大切にする」「優位に立ちたい」(闘争本能)2. 自己愛の起源それでは、そもそも私たちはなぜ人間関係の中で「優位に立ちたい」と本能的に思ってしまうのでしょうか?その答えは、原始の時代から、相手と自分は「どちらが強いか」「どちらが優れているか」という相手との力関係を意識し振る舞う種ほど生き残り、その遺伝子が現在の私たちに引き継がれているからです。逆に言えば、「優位に立ちたい」と思う遺伝子を持たない種は、生存競争の中で生き残り、子孫を残すことは難しいでしょう。つまり、優越感と劣等感の狭間で生きてしまうのは、人間の本質なのです。動物行動学的には、群れで飼われる鶏はお互いつつき合うことで、それぞれの強さ(序列)を確かめて、群れの秩序を保っています(つつき順位)。また、サル山のサルたちは、うなり声や攻撃のポーズをとったり、「どけ」と攻撃を仕掛けるなどして威嚇することで、相手との力関係を探り合います。また、ケンカをしている2匹のサルを見て、群れの他のサルたちは、おのおの自分との力関係を推し量ります。こうして、群れの序列ができていきます。そして、ボスザルが決まれば、歯向かうサルはいなくなり、群れの秩序は保たれます。こうして、ボスザルは自分の子孫をより多く残していき、ますます優位に立とうとする遺伝子が広がっていくのです。私たち人間は、他の動物よりも高度な社会を築く中で、この「優位に立ちたい」(自己愛)という心理と「助け合う」「分け合う」(公平性)という心理のバランスを取りながら進化してきました。人は、平等を唱える一方で、自分は特別扱いされたいという矛盾した心の働きを持っているとも言えます。実際に、平等な集団ほど力関係の葛藤が生まれています。例えば、学校に存在する生徒の間のスクールカースト、公園に集まるママ友の間に勃発するお受験戦争、そして慈善団体の職員の間に見られる手柄の奪い合いなどです。(2)カテゴリー化―競争か協力かの区別の動機付け1. 誰かを悪者(敵)にする心理美樹は、出勤の初日に、だめなメンバーのレッテルを貼られました(ラベリング)。そして、その後も、トラブルが起きるたびに、「またあなたなの!?」とその原因は理不尽にも全て美樹のせいだとみんなに決め付けられます(ステレオタイプ化)。さらに、ある同僚は、美樹の後ろでみんなに聞こえるように「辞めちゃえばいいのに」と独り言を言い、美樹は職場の厄介者として蔑(さげす)まれています(排斥、オストラシズム)。なぜ美樹はここまで悪者扱いされなければならないのでしょうか?それでは、なぜターゲットは美樹だったのでしょうか?その後にリストラで辞めていく同僚が本音を漏らします。「誰でもいいのよ、会社に慣れてなくて、どこかに付け込むスキがあれば」「みんなの嫌がらせのターゲットになって」と。つまり、その理由は、美樹が「付け込むスキ」がある新人だからです。新人(新参者)は、集団に受け入れられるどうかの葛藤があり、自己主張がしづらく、立場が弱いため、付け込まれやすいのです。このような立場が弱く無抵抗な人―外国人(新参者)、障害者、貧困者、少数派(マイノリティ)などは、昔から偏見(差別)の格好の餌食にされてきた歴史があります。表3 カテゴリー化の二面性困った面良い面決め付け(ステレオタイプ化)レッテル貼り(ラベリング)烙印(スティグマ)極端化→偏見、差別、排斥思い込み(暗示、妄想)概念化因果関係に気付く傾向分析予測ひいき想像力2. カテゴリー化の起源それでは、そもそも私たちはなぜ人間関係の中で「誰かが悪者である」と本能的に思ってしまう、つまり悪者を仕立て上げてしまうのでしょうか?その答えは、原始の時代から、「誰が味方で誰が敵か」と鋭敏に感じ取る種ほど生き残り、その遺伝子が現在の私たちに引き継がれているからであると考えられます。当時から、人は、助け合う心理(協力)と「優位に立つ」ための騙す心理(非協力、裏切り)を使い分けながら、限られた資源を取り合う生存競争の中で子孫を残してきました。その中でも、騙してくる相手つまり裏切り者を未然に見つけ出し、区別する心理(カテゴリー化)に長けている人は、騙されずに済んで、生存確率が高まります。もっと言えば、多少の誤作動があっても、裏切りの脅威に対して敏感な方が鈍感な方よりも生き残ります。こうして、人間は、カテゴリー化によって、相手やものごとの共通点と相違点を見いだし(概念化)、社会生活をより円滑にして、知能を進化させてきたのでした(社会脳)。そして、発見された因果関係の積み重ねによって、傾向分析や予測が可能になり、科学を進歩させてきました。つまり、人間の心の進化の負の産物として、誰かを選んで助ける心理(ひいき)と同じように、誰かを選んで助けない、敵意を向ける心理(偏見)は人間の本質的なものなのです。しかし、現在、かつてないほど平和で豊かな時代にようやくなりました。誰かに裏切られても殺されたり飢え死にしたりすることはありません。つまり、悪者(裏切り)の脅威センサーはそれほど働かなくてもよくなったのです。しかし、脅威が減ったことに合わせて、脅威センサーの感度が下がるように心が進化するには時間があまりにも短すぎます。つまり、脅威が減っても、それを感じ取る私たちの脅威センサーはほぼ原始時代仕様の敏感なままということです。すると、何が起きるでしょうか?もともと脅威ではないものを脅威として感じやすくなります。つまり、悪者(裏切り)の脅威センサーの誤作動です。本来裏切っていない、つまり敵ではない相手を、見た目や振る舞いの些細な違いから「得体が知れない」と不気味に思い、敵意を抱いてしまうことです。3. 原始時代仕様の心と体原始時代仕様であるのは、脅威センサーだけでなく、心もですし、体もです。例えば、現代は、原始の時代とは違い、文明によって、運動をほとんどしなくてもよくなりました。だからと言って、人は運動をしなくなったでしょうか?人は、運動をしなければ、体調や気分がすぐれなくなり不健康になることを実感しています。だから、逆にあえて運動をするために、私たちは散歩したりスポーツジムに通うなどして体と心の健康を維持しています。さらには、現代は、科学や法律によって、得体が知れないものへの恐怖や身の危険を感じることが少なくなってきました。しかし、人はそれでそのままハッピーなのでしょうか?では、なぜ人はジェットコースターに乗るのでしょうか?なぜお化け屋敷に行くのでしょうか?なぜアクション映画やホラー映画を見るのでしょうか?その答えはこうです。原始の時代から人は、得体が知れない恐怖や身の危険を感じることが当たり前の環境で生きてきました。そして、当たり前だと思う遺伝子が現代の私たちに引き継がれてきました。だから、現代になって、いきなりそれらの刺激(ストレス)がなくなると、逆に物足りないということです。人は、ある程度のハラハラドキドキの擬似体験が必要なのです。体のアレルギー反応になぞらえてみましょう。花粉症や喘息などの体のアレルギー反応では、自分の免疫の抗体が自分の体を間違って攻撃します。その原因の1つは、現代の生活環境があまりにも清潔になってしまい、本来攻撃していた細菌があまりにもいなくなってしまったからなのです。これと同じように、心のアレルギー反応、つまり脅威へのアレルギー反応によって、脅威が全くなくても脅威を抱く矛先がどこかに向けられてしまいます。その時にたまたま選ばれた誰かが、生け贄(身代わり)としてターゲットとなるのです(スケープゴート現象)。そして、悲しいことに、私たちは、脅威のターゲットがその誰かに特定されていることで、心のバランスが保たれ、安心が得られるのです。たとえそのターゲットが全く見当違いだとしてもです。4. 黒い羊効果私たちは、この心理を感覚的に知っており、逆に利用してさえいます。例えば、美樹の1つ先輩の同僚は、ターゲットが美樹でなくなったら、次は自分になるという危機感を募らせています。誰かが犠牲になれば、自分は安全だという心理です。だからこそ、この同僚は、「必死」に美樹に強く当たっているのです。また、リーダーは、部下たちが自分の陰口を言っているのを立ち聞きしてしまい、その不満をかわそうとしていました。実際に、かつて国の支配者が、民衆の不満を逸らすため、国家的に「悪者」を作り出し、不満のはけ口としてその「悪者」を攻撃させるという偏見(差別)の心理を利用してきた悲しい歴史もあります。ヨーロッパでは、昔から日常用語として、「悪者」になった人を「黒い羊」と呼ぶことがあります。羊はたいてい白く、もともと従順で群れに馴染みやすいイメージがあります。その白い羊毛が様々な色に染められるのに対して、黒い羊毛は黒色にしかならない、つまり他の色に染められないことから、黒い羊は、否定的な「悪者」のイメージが付いてしまいました。英語のことわざに「どんな群れにも1頭の黒い羊がいる(There is a black sheep in every flock.)」があります。これは、人間の世界に当てはめると、群れという社会には、黒い羊、つまり裏切り者、ならず者、厄介者、異端者、逸脱者という「悪者」が必ずいるという意味になります。ただ、カテゴリー化の中の偏見(差別)の心理を踏まえると、正確には、「1頭の黒い羊がいる」のではなく、「1頭が黒い羊に見える」ということになります。他の羊が全て真っ白だと、たまたまある羊がちょっと黒いだけでも、とても黒く見えてしまうのです。つまり、他の人たちが全員同じ方向を向いていればいるほど、ある1人の人が少しでもずれた方向を見ると、全員がその人へより大きな敵意を感じてしまうということです(黒い羊効果)。かつて「歩きタバコ」は当たり前に行われていました。しかし、最近は「歩きタバコ」が規制されることで、ほとんど見かけることはなくなりました。すると、逆に「歩きタバコ」をしている人をたまに見かけると、規制の地域以外であっても、不快に思い、その人に敵意を抱いてしまいます。これと同じように、きっと近い将来、「歩きスマホ」が規制されれば、「歩きスマホ」をする人に敵意を私たちは抱くでしょう。よく冗談で言われる「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言い回しがあります。その逆の「みんなが渡らない青信号を渡る」傾向のある人―例えば、「新卒」ではない就職活動者(フリーター)―は、就職面接などでは採用されにくいという現実もあります。(3)同調―協力の動機付け1. 周りに合わせる心理美樹以外のチームの同僚6人は、とても結束が強いです。特に4人の女性の同僚たちは、美樹の悪口でいつも盛り上がっています。そして、同僚たちだけでなくリーダーも、美樹が受け続けるパワーハラスメントを当たり前のように見ています。こうして、周りが傍観者として黙認することで、事態の容認が生まれています。つまり、傍観者であることは、パワーハラスメントに手を貸しているとも言えます(傍観者効果)。なぜ同僚たちは、これほどまでに温度差なく揃って美樹に敵意を抱いてしまうのでしょうか?それは、周りに調子を合わせることは人間の本能的な心理だからです。この心理は、同調と呼ばれています。さきほど、大御所芸能人が弱ったスキャンダル芸能人を吊り仕上げることで、自分の地位を固めようとする自己愛の心理を紹介しました。実は、それを見ている私たちの多くもそうなることを望んでいます。また、国家が民衆の不満をかわすために「悪者」のターゲットを作り出すという偏見(差別)の心理をさきほどに紹介しましたが、これも同じです。さらにこの心理は、国内だけでなく国際的な問題としてもよく見られます。その国の国内の政治に国民の不満が高まった時、「悪者」として特定の他国の脅威やかつての復讐心を煽ることで、不満がすり替わるだけでなく、いとも簡単に国家としての一体感(愛国心)が高まります。これは、政治の常套手段でもあります。表4 同調の二面性困った面良い面馴れ合い、横並び意識甘え、しがらみイエスマンカリスマ崇拝(極端化)仲間外し(「村八分」)仲良し思いやり、助け合い分け合い(公平性)信頼感一致団結、一体感2. 同調の起源それでは、そもそも私たちはなぜ人間関係の中で、周りに調子を合わせようと本能的にしてしまう、つまり同調するのでしょうか?その答えは、原始の時代から、「周りに調子を合わせよう」と心が動く種ほど生き残り、その遺伝子が現在の私たちに引き継がれているからです。当時、人は猛獣の襲撃や飢餓の脅威を目の前にして、助け合う(協力)ために、周り(集団)に調子を合わせる、つまり多数派の考え(集団規範)に従い、集団のメンバーたちと心を1つにして協力しました。そうするのが心地良いと同調の心理が動機付けられる種ほど生存確率が高まったのでした。実際に、ある心理実験では、人の印象において、相手が少数派であるというだけでその相手への評価が否定的になるという結果が得られています(印象形成のバイアス)。「寄らば大樹の陰」ということわざは、これを端的に表しています。また、「差別は普通ではないことである」「差別する人は普通の人ではない」「私は普通の人だから差別をするはずがない」と言う人がいます。しかし、普通(多数派)であるという意識を高めるほど同調の心理が強まり、結果的に少数派を否定的に見てしまうという差別の心理が生まれています。つまり、逆説的にも「普通の人」ほど差別をしてしまうということです。原始の時代の心を引き継ぐ私たちは、共通の脅威がある時ほど同調(協力)し、一体感の心地良さを味わうことが分かりました。逆に言えば、その心地良さを味わうには、共通の敵(脅威)が必要です。つまり、脅威を同じもの(共通)にしようとする心理こそが、同調の源なのです。しかも、共通の脅威が集団の外にない場合は、集団の中に見いだします。こうして、集団の共通の脅威となったターゲット(スケープゴート)は、集団のメンバーから敵意を向けられるわけです。集団内において、人は、仲良し(協力関係)になるために、仲間外れ(脅威の身代わり)を作らなければならないという矛盾した心理を持っているのです。表5 パワーハラスメントの心理と動機付け心理自己愛カテゴリー化同調「私が上よ」「(悪者は)あの人に決まってる」「ですよねえ」動機付け競争競争か協力かの区別協力敵意を抱いて優位に立つ悪者(裏切り)の脅威センサーの誤作動に乗っかり安心を得る悪者(裏切り者など)の脅威を共有し、協力する組織としての具体的な取り組み美樹を見守る唯一の味方のキャラクターとして登場するマネージャーが言います。「生き残りたいなら強くなれ」「このまま黙って静かに消えたら、お前の思いもやってきたことも何もなかったことになるんじゃないか」「どんなに辛くても、逃げずに立ち向かえば絶対に誰かの心に残る」と。生き残って這い上がって来いという力強い励ましメッセージが込められています。このマネージャーのお陰で、美樹は成長し強くなりました。このドラマの展開から学ぶことは、パワーハラスメントは個人のひたむきさやコミュニケーションの能力、そして支えてくれる味方によって乗り越えられる場合があることです。と同時に、以前にいた新人が心の傷を負ったように、必ずしも全ての人が乗り越えていけるほど生易しいものでもないことです。これまで、パワーハラスメントの根源となるとなる3つの心理―自己愛、カテゴリー化、同調―を解明してきました。そして、パワーハラスメントは、進化の産物としての集団の心理であることも分かってきました。つまり、パワーハラスメントは、特別な集団の特別な人たちがするのではなく、ごく普通の集団でごく普通の人たちがしてしまうということです。しかも、武器や権力などのパワーを持てば持つほど、潜んでいたその遺伝子が目を覚ましてしまうということです。これから、パワーハラスメントは、人間の本質を美化して「起きない」ことを前提にするのではなく、人間の本質を直視して「起きる」ことを前提にする必要があります。私たちがつくる集団(社会)に理想郷は存在しないことを自覚することが出発点です。この前提に立てば、個人だけではなく、集団としての組織の具体的な取り組みが見えてきます。それでは、みなさんのそれぞれの組織の中で具体的に何ができるか、ドラマのエピソードに触れながら、3つのポイントを整理してみましょう。表6 組織としての具体的な取り組み具体例客観化トラブルが起きたらオープンにするメンバー同士がチェックできる部下もリーダーを評価する外部の相談窓口の設置定期的な研修注意喚起のための張り紙構造化メンバーが具体的なビジョン(目標)を共有する役割をはっきりさせる限界設定個人として自分の限界を示し、泣き寝入りしないICレコーダーや携帯電話の録音機能により、証拠を押さえる労働組合や弁護士に相談する(1)客観化美樹が冷凍室に閉じ込められた事件では、美樹のせいにされました。そして、原因は美樹の「不注意」という始末書が作成されます。詳しく調査をすれば、原因は美樹の不注意ではなく、別の同僚のせいであることに辿りつくのは明らかなのにです。そのわけは、リーダーは、美樹の不注意と決め付けて、詳しく調べなかったのでした。一方、美樹は、冷凍室事件では、その前にミスをしていた引け目もあり、自分の言い分を言うことができません。ここから学ぶ1つ目の取り組みは、パワーハラスメントによるトラブルが起きたらオープンにすることです(客観化)。私たち日本人は、自分の言い分を言うことは目立ったり迷惑になったりして恥ずかしいと思いがちです。しかし、パワーハラスメントは起きるものであることが分かりました。大事なのは、これを集団の共通認識とすることです。逆に、うやむやにしたり隠すこと(隠ぺい体質)は、憶測から思わぬ犯人探しの心理(偏見)を生み出します。また、ドラマでは、咎められなかったことを良いことにその同僚の仕業はエスカレートしていきました。オープンにする組織の文化が次の被害者を出さないためにも大事です。また、逆に、パワーハラスメントという言葉が、センセーショナルな響きから独り歩きし、悪用されることもあります。いわゆる「逆パワハラ」です。部下が傷付いたと騒ぎ、上司を訴えるパターンです。この状況も、オープンにしていることで、予防ができます。大事なのは、集団のメンバーに公正な判断材料が十分にあり、お互いが客観的にチェックできることです。例えば、組織内でのメールは公開し、それぞれの指示などもメンバーがチェックできるようにすることです。また、人事の評価は、リーダーからだけでなく、部下たちからも行うことです(360度査定)。さらには、外部の相談窓口の設置、定期的な研修、「言葉の暴力も懲戒の対象になります」との具体例を示すなどの貼り紙を義務付けることで、パワーハラスメントを語ること自体が開かれていることも大切です。(2)構造化美樹が、チームの同僚たちに受け入れられるようになったきっかけとして、美樹のひたむきさや前向きさに加えて、いっしょに協力しなければ成功しないというプロジェクトが始まったことです。それまでは仕事の奪い合いで、チームのメンバーたちは競争の関係にありました。しかし、プロジェクトの成功という報酬が目の前にあることで、協力の関係が動機付けられます。つまり、同僚たちの敵(脅威)は、それまでは美樹でしたが、その後はプロジェクトの失敗という未来に差し替えられたのでした。ここから学ぶ2つ目の取り組みは、メンバーが具体的なビジョン(目標)を共有する枠組みを作ることです(構造化)。協力の本質は、共通の脅威を乗り越えることでした。協力するための脅威は、肯定的な「脅威」、つまり目標に置き換えることができるということです。不適切な例は、「とにかくリーダーである私の言うことを聞きなさい」という関係です。これは、共有すべきビジョンも部下の役割も、曖昧です。よって、適切な例は、上司が具体的なビジョン(目標)のための取り決めを前もってはっきりさせることです。そして、「あなたには何ができる?」「私に何を求める?」と確認し合うことです。すると、メンバーは、言われたままにやるのではなく、自分の行動に責任を持つようになり、役割がはっきりしてきます。部下だけでなく上司も、目標に向かって取り決めを守り、役割を果たしているという姿勢を見せることです。もはや、リーダーも部下も人としては対等で、職場においての決められた役割が違うだけになります(フラット化)。これは、ちょうどジグゾーパズルのピースのように、集団のメンバー1人1人の役割が対等に果たされることで1つの仕事が達成されれば、メンバーのそれぞれが相手に敵意を抱かなくなる仕組みです(ジグゾー法)。これは仕事においてだけでなく、スポーツ観戦においても見られます。ひいきのスポーツチームを応援するために、ファンやサポーターがスタジアムに集まり共に熱狂することで、ファン同士が仲良くなることです。敵チームを疑似脅威と見立てることで、集団の一体感を高める効果が期待できます。(3)限界設定ドラマでは、皮肉にも、ある同僚の隠し撮りの映像が美樹の窮地を救いました。ここから学ぶ3つ目の取り組みは、証拠を確保し、自分の限界を示し、泣き寝入りしないことです(限界設定)。これは、1つ目と2つ目の集団での取り組みでもパワーハラスメントが改善されない場合の個人の取り組みです。例えば、パワーハラスメントが日常的に起きている場合は、ICレコーダーや携帯電話の録音機能を使い、証拠をまず押さえることです。証拠を持って、労働組合や弁護士に相談することです。いくら組織が変わらないからと言って、泣き寝入りをしないことがより良い組織作りにおいて必要です。逆に言えば、管理者は職場においても録音されている可能性があるという発想を持つ必要があります。パワーハラスメントの裁判において、録音などの証拠があって初めて、パワーハラスメントが認定されます。例えば、管理者が、パワーハラスメントが起きている状況を知りながら放置している場合は、従業員の安全に配慮する義務(安全配慮義務)や従業員の心身の健康を保つ義務(就業環境調整保持義務)に違反していることになります。より良い職場(社会)のために心を「進化」させる心の働きは、進化心理学という理論的なフィルターを通して見ると、すっきりしてきます。ただし、パワーハラスメントの心理が進化の産物であるからと言って、私たちは遺伝子の操り人形ではありません。そのような本能的で感情的な「野生の心」を俯瞰(ふかん)して見ることができる、理性的な「文明の心」も私たちは持ち合わせています。より良い職場(社会)のために、この「文明の心」をフルに活用させ、人間関係における様々な心理をよく理解することで、私たちの心はより理性的により賢く「進化」していくことができるのではないでしょうか。1)岡田康子・稲尾和泉:パワーハラスメント、日経文庫、2011年2)それ、パワハラです:笹山尚人、光文社新書、2012年3)大渕憲一:新版 人を傷つける心、サイエンス社、2011年4)本間美智子:集団行動の心理学、サイエンス社、2011年5)石川幹人:人は感情によって進化した、ディスカヴァー携書、2011年

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“心が痛い”と“身体が痛い”

心療内科が痛みを診る:その理由心療内科が「疼痛」を診ることについては、馴染みのない方もいるかもしれないが、われわれにとっては自然なことである。当科で疼痛患者さんを多く診るようになったのは、当科の歴史的背景に起因する。初代教授である池見酉次郎先生は、早くから心と身体の結びつきに着目し、1961年に九州大学で精神身体医学研究施設を設立、1963年に「心療内科」という診療科名が冠された。「心療内科」が正式な標榜科として認可されたのは1996年であるから、それより30年以上前の話である。当初は過敏性腸症候群や気管支喘息、蕁麻疹など、内科的な分野を中心に研究が始まった。その後、当科の先輩である中井吉英先生(関西医科大学名誉教授/日本心療内科学会理事長)が慢性膵炎の研究の中で、腹痛についても積極的に取り組まれることとなる。また、ペインクリニックとの連携によって全身の痛みを扱うようになり、症例を重ねるうちに、さまざまな痛みに対して心身医学的アプローチが応用できることがわかってきた。こうした経緯から、当科は摂食障害、病的疲労、睡眠障害、生活習慣病などとともに、内科系でありながら慢性疼痛をもつ症例一般を治療対象とするようになってきている。心療内科のアプローチは身体医学とは異なる部分も含んでいる。身体医学では、ある時点での情報を重要視するが、心療内科では、その人の考え方、動き方、生き方(生活様式)の流れやそのルーツを重要視する。今はこういう状態だが以前はどうだったのか、何故そうなったのか、周囲の人たちとのつながりはどうなのか、など生活背景や流れに注目し、その患者さんの水面下にある苦悩を患者さんと一緒に対話するなかで見つけていき苦悩・苦痛の緩和をともに創造していくのである。画像を拡大する難治の慢性疼痛患者さんの傾向当科には全国から重症の疼痛を持つ患者さんが集まってくる。当科を受診する難治性の慢性疼痛患者さんを分析したところ、興味深いことに、厳しい被養育経験がトラウマになっているケースが多いことがわかってきた。厳しい体罰などの身体的虐待、言葉による心理的虐待、性的トラウマもあれば、親の過干渉や愛着障害もある。また、こういった患者さんには、大変な環境に過剰適応していくうちに「失感情症」という自らの気持ちを言葉で表現しにくい心理特性を持っている方が多い。さらに、病院を転々とし、医療に対し不信感を抱いている患者さんも多いのも特徴であろう。■失感情症と慢性疼痛の関係性われわれは日々の臨床経験を通して、失感情症が痛みに大きく影響していることを実感している。なぜ、そのようなことが起こるのだろうか?痛みの伝達には感覚系経路と情動系経路があることが知られている。感覚系は痛みの強さや位置を伝達し、情動系は不快感を伝え警報を鳴らす役割である。どんな痛みもこの感覚系と情動系の信号がミックスされている。情動系は脳の前部帯状回、島皮質、扁桃体、前頭前野を活性化する。この部位はまた、社会的ストレスによっても活性化されること(社会的痛みの体験)が明らかになっている。社会的ストレスに晒され不快情動系が活性化されていると、患者さんの頭の中で常に警報が鳴っている状態になると考えられ、社会的疎外感を感じている「いじめられ体験」にも通じる現象と考えられる。一方、失感情症の方は最近の脳画像研究で前部帯状回、島皮質などの上記の部位に異常があることがわかってきている。そのため、社会的ストレスが蓄積されると、不快情動の成分をしっかり体験しながらも感覚成分のみに注目がいき、身体的疼痛の訴えが強調され、「とにかく痛い、なんとかして」という切迫した訴え(破局化)につながると考えられる。自分の感情を自然に表現できない環境に育った失感情症の方は、「(心理的に)大丈夫です」といいながら、身体の痛みでSOSを出しているともいえる。実際、痛みという表面的な訴えの背景には不安・抑うつなどの否定的感情、虐待歴、社会的疎外感による心の痛みなど、患者さんの深い苦悩が存在することが多い。もうひとつ、医療不信についてお話しする。医療不信の方と信頼関係を構築して心境をうかがっていくと、両親との関係性に問題のある人間不信の方が多いことがわかる。医療不信は、身体的疼痛やそれに伴う心の苦しみを医師がきちんと診てくれないという思いから、ドクターショッピングを繰り返し成り立っていく。これは、子どもの頃、両親に一人の人間として自身の存在を大切にしてもらえなかった、という彼らの被養育体験からくる長年の人間不信の思いと共通する症例もある。久山町疫学研究における慢性疼痛と失感情症の調査からみえてきたこと失感情症と慢性疼痛の関連性については国際的なエビデンスはあるが、日本人に適用できるかどうかはまだ検証されていなかった。そこで本邦の心身症患者さんを対象とした検討を続ける一方で、一般住民を対象に慢性疼痛に関する心身医学的な疫学研究を行った。福岡県久山町の定期検診の際、40歳以上の一般住民において失感情症の質問紙TAS20のスコアと疼痛の有無の関係を調べたものである。被験者927名のなかで慢性疼痛(6ヵ月以上続く痛み)を有する割合は、失感情症なし群46%に対し、失感情症あり群では67%と、失感情症あり群で有意に多かった。さらに失感情症の程度を4分位し、慢性疼痛罹患リスクを解析した。罹患リスクは失感情症スコアが中央値を超えて重症化するにつれ上昇し、もっとも高い群(TAS20スコア 55以上)では、2.0倍(全体から急性疼痛あり群を除くと2.8倍)にも増加していた。さらに、慢性疼痛はQOL低下を招き、そこに失感情症を合併するとさらにQOLが低下することがわかった。また、慢性疼痛を有していても、失感情症がない場合は失感情症がある場合よりも生活満足度が高いという結果が出ている。画像を拡大する画像を拡大するTAS-20:トロント アレキシサイミア(失感情症)スケール日本人には、「つらくても表に出さずに耐え忍ぶ」「弱音は吐かない」といった国民性がある。これは日本文化では美徳とされるが、心身医学的な観点から言えば、失感情症につながるものであり、心身の健康という点からは決して喜ばしいものではない。QOL向上につながる失感情症のケアについては、今後さらに注目していくべきであると考える。慢性疼痛患者さんの診療におけるdos and don'ts慢性疼痛では、身体の訴えの強さと比較して基本にある身体的疼痛がみえにくいケースがある。そのような場合でも、始まりは社会的ストレスに伴った筋肉痛や関節痛などの機能性痛みが合併していたが、経過のなかで改善し、心理的苦悩の成分が残存していることがある。■まずは信頼関係の構築を心療内科では患者さんと医療者との信頼関係構築のため、初診の診療に時間をかける。一般の先生はわれわれのように長い時間をかけることはできないかもしれないが、せめて5分くらいは患者さんの顔を見て本人に自由に話していただく時間をとってほしい。そして患部を丁寧に診察する時間をつくっていただきたい。それだけでも患者さんは安心するものである。すぐに患者さんから話を聞き出すことができなくても、診察のたびに顔をみて話しかけていけば、徐々に信頼関係は構築されていく。そうすると、いざというときに患者さんの変化からSOSに気づくことができるし、治療効果を高めることにもつながる。もし一時的に状態が悪くなる時期があっても、「苦しい今をしのいで一緒に乗り越えていきましょう」と言えるような関係づくりが大切だと考える。■「痛くないはず」と思い込まないこと患者さんが強い痛みを訴えていても、医学的原因が判明しないことも少なくないが、それだけで、「痛くないはず」と治療者が思いこまないことは大切である。その際に、社会的疎外感だけでも身体的痛みのときと同様の苦しみを感じさせるという近年の知見を医学的情報として知っていることで病態評価が展開することがある。つまり、身体の痛みと感じている患者の体験は、身体の機能的異常とともに何らかの社会的疎外感を感じて苦しみが悪化しているのではないだろうかと考えて、生活環境の変化について、質問をしてみるとよい。そして患者さんには「最近は痛みに伴う心理的な要因を考慮した痛みの対処法が進んでいるから、専門の医師に相談してみてはどうか」とポジティブな言葉で専門医への紹介受診を促していただきたい。そうすれば「心が弱いから痛みが起こる」という誤解をすることなく、「がんばっている人の身体の痛みを社会的ストレスがより不快にする」という理解のもとに、患者さんは生活環境に合ったオーダーメイドの治療ステップへと進むことができるのである。■薬をむやみに切り替えないこと効かないからとすぐに薬を変更することは避けたいものである。プラセボ効果の反対で「ノセボ効果」という現象がある。「効かないだろう」という思い込みによって、効くはずの薬が効きにくくなってしまうのである。A先生に出してもらった薬はよく効いたが、同じ薬をB先生が出すと全然効かないというようなケースもある。同じ薬でも処方する医師への期待値によって効き方が違ってくる。その根底には医療あるいは医師への不信感がある。処方医に対して不信感があると薬の効果が減退してしまうのである。要するに、患者さんとの信頼関係が築けていない状況下では、どんなに薬を切り替えても適切な効果は期待できない。効果が出ずに投与量だけ増えている、というような場合には、まず患者さんとの信頼関係や服用のコンプライアンスを見直すところから始めてみてほしい。信頼関係なくしてよい治療は成り立たない。患者さんが安心して自分の気持ちを出せる場を提供し、信頼関係が築けたうえでその人に合うだろうという薬を少量から始める。そうすると、過去に効かなかった薬ですら効果が出る、ということも少なくない。患者さんと医療者との信頼関係が治療や予後に大きく影響するため、われわれは患者さんが話しやすい場をつくり、患者さんの人間としての全体像を知るように努めている。慢性疼痛においては、身体的な痛みについては標準的なアプローチは継続しながらも、対人交流不全の苦悩や、生活環境などによる社会的痛みや実存的な苦しみ(自尊心の問題)をターゲットとすることが効果的なことも多い。良好な患者ー医療者関係を築きながら、感情をうまく言葉にできず葛藤場面で適切な自己主張ができない患者さんの心身を疲弊させ、苦しめているものが具体的に何かを患者さんと一緒に探していくのである。慢性疼痛の心身医学的アプローチにより得られる知見が、今後一般診療にもさらに生かされ、患者・医療者がともに創り出す痛み治療に対して双方の満足感が増えることを期待したい。

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1日1杯のワインがうつ病を予防

 うつ病はアルコール摂取に関連しているといわれている。スペイン・ナバラ大学のAlfredo Gea氏らはアルコール摂取とうつ病との関係をプロスペクティブに評価した。BMC medicine誌オンライン版2013年8月30日号の報告。 対象は、PREDIMEDトライアル(最大7年フォローアップ)の参加者のうちハイリスク群の男女5,505人(55~80歳)。試験登録時、対象者にうつ病の有病および既往歴はなく、アルコール関連の問題もなかった。アルコール摂取量を評価するため、栄養士によって管理された137項目の食物摂取頻度調査票による調査を毎年実施した。うつ病発症の定義は、臨床診断により新規にうつ病と診断された場合、あるいは抗うつ薬の使用を開始した場合とした。分析にはCox回帰分析を用いた(2万3,655人年)。 主な結果は以下のとおり。・適度なアルコール摂取(5~15g/日)は、うつ病発症の低いリスクと有意に関連していた(HR[95%CI]:0.72[0.53~0.98] vs 禁酒群)。・具体的には、1週間あたり2~7杯のワイン摂取がうつ病発症の低リスクと有意に関係していた(HR[95%CI]:0.68[0.47~0.98])。・適度なワインの摂取はうつ病発症リスクの軽減につながるが、大量飲酒ではリスクが増加する傾向がある。関連医療ニュース 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき 「抑うつ+過度な飲酒」その影響は? ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か?!

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統合失調症の再発、コスト増加はどの程度

 カナダ・Groupe d'analyse LteeのMarie-Helene Lafeuille氏らは、コストの側面から統合失調症の再発について評価を行った。その結果、再発エピソード期間中は薬局、外来、入院・救急などのリソース活用が有意に増えてコスト増大を招くこと、とくに入院や救急などの病院診療がコスト増大に大きく関わることを報告した。Journal of Medical Economics誌オンライン版2013年9月5日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症の再発ならびに再発の主要なコスト・ドライバーを、コストベースのアルゴリズムに基づいて明らかにすることを目的としたものであった。Multistate Medicaid dataを用いて、1997~2010年までに非定型抗精神病薬(AP)の投与を受けた成人統合失調症患者を抽出し、初めて統合失調症と診断されAP投与が開始された日をもってindex dateとした。再発エピソードは(1)index dateから2年以降に、ベースライン(index date前12ヵ月)から高額なコスト増加を認めた週、(2)週間絶対コスト高値とし、これら2つの基準によりcompound scoreを算出し、患者の54%でベースラインからの高額なコスト増加、および週間絶対コスト高値を認めた場合に再発とした。ベースラインおよび再発エピソード期間中のリソース使用とコストはincidence rate ratios (IRRs)およびブートストラップ法により比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・再発例は9,793例で、1例当たり平均9回の再発エピソードが認められた。・再発エピソードの期間は、経過とともに減少した(平均[中央]値:初回エピソードは34[4]週間、その後のエピソードは8[1]週間)。・しかし再発エピソード期間中は、薬局、外来および病院診療(入院、救急)におけるリソース活用が、ベースラインと比較して有意に増大していた(IRRsは1.9~2.4、すべてのp<0.0001)。・同様に1週間当たりの平均増分コストも、再発により2,459ドル(95%CI:2,384~2,539ドル)増加した。病院診療に関する増大が53%だった。・本研究には、以下の点で限界がある。再発例および再発エピソードをコストベースのアルゴリズムにより特定したが、これは臨床的再発の定義とは相反するものである。また、それらは統合失調症患者の約54%が2年間に1回以上の再発エピソードを経験するであろう、という文献からの仮定にすぎなかった。・以上を踏まえて、統合失調症の再発はコストを有意に増加することが認められた。それは主に入院、救急などの病院診療によるものであった。関連医療ニュース 統合失調症患者の再発を予測することは可能か? 統合失調症“再発”の危険因子は? 統合失調症の再燃や再入院を減少させるには:システマティックレビュ―

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自閉症スペクトラム障害への薬物治療、国による違いが明らかに

 香港大学のYingfen Hsia氏らは、自閉症スペクトラム障害(ASD)に対する処方薬の状況を多国間レベルで明らかにするため、IMS Prescribing Insightsのデータベースを用いた分析を行った。その結果、成人に比べ小児患者に対する処方率が高いこと、国により処方薬に違いがみられることなどを報告した。Psychopharmacology誌オンライン版2013年9月5日号の掲載報告。 これまでに、米国あるいは英国からASDに対する向精神薬処方に関する研究が報告されているが、それらの研究内容は必ずしも他国に当てはまらない可能性がある。研究グループは、エビデンスが欠如している地域を明らかにするため、ASD治療における精神薬理学的処方の範囲を多国間レベルで理解しておく必要があるとして本研究を行った。IMS Prescribing Insightsのデータベースを用いて、2010~2012年の成人および小児ASDにおける 向精神薬処方パターンを検討した。データは、ヨーロッパ(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国)、南米(メキシコ、ブラジル)、北米(カナダ、米国)、アジア(日本)から収集した。 主な結果は以下のとおり。・北米諸国での処方率が最も高く、次いでヨーロッパ諸国、南米の順であった。また、各国とも、処方率は成人に比べ小児のほうが高かった。・若年ASDに対して最も多く処方されていた薬剤は、英国と日本を除き、リスペリドンであった。英国で最も多く処方されていたのはメチルフェニデート、日本ではハロペリドールであった。・成人に対して最も多く処方されていたのは、リスペリドンをはじめとする抗精神病薬であった。なお、ブラジルではチオリダジン(国内販売中止)、米国ではジプラシドン(国内未承認)が抗精神病薬として最も多く処方されていた。・国により処方薬に違いがみられる点について著者は「診断基準、臨床ガイドラインあるいは保険制度によるものだと思われる」と指摘したうえで、「ASD患者に対する多くの向精神薬について、有効性と安全性のエビデンスが欠如している。処方のギャップを縮小するための研究が求められる」とまとめている。関連医療ニュース 自閉症スペクトラム障害に対するSSRIの治療レビュー 新たな選択肢か?!「抗精神病薬+COX-2阻害薬」自閉症の治療  自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か?

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